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特表2024-516195高い比較トラッキング指数を有する難燃性ポリカーボネート組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-12
(54)【発明の名称】高い比較トラッキング指数を有する難燃性ポリカーボネート組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20240405BHJP
   C08K 5/5399 20060101ALI20240405BHJP
   C08L 51/04 20060101ALI20240405BHJP
   C08L 25/12 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
C08L69/00
C08K5/5399
C08L51/04
C08L25/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565357
(86)(22)【出願日】2022-04-20
(85)【翻訳文提出日】2023-10-24
(86)【国際出願番号】 EP2022060331
(87)【国際公開番号】W WO2022228954
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/089937
(32)【優先日】2021-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】21174269.7
(32)【優先日】2021-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レン リリー
(72)【発明者】
【氏名】ワン シゥン
(72)【発明者】
【氏名】ガオ アーロン
(72)【発明者】
【氏名】グオ ヴィヴィアン
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BC06Z
4J002BN15Y
4J002BN16Y
4J002BN17Y
4J002CG01W
4J002CG01X
4J002EW156
4J002FD01Y
4J002FD02Z
4J002FD136
4J002GN00
4J002GP00
4J002GQ00
4J002HA09
(57)【要約】
本発明は、ポリカーボネート組成物であって、組成物の総重量に対して、以下の成分:A)30重量%~80重量%のコポリカーボネートと、B)10重量%~40重量%のホモポリカーボネートと、C)8重量%~25重量%のリン系難燃剤と、D)0重量%~8重量%の耐衝撃性改良剤と、E)0重量%~8重量%のスチレン-アクリロニトリルコポリマーとを含み、ここで、ホモポリカーボネートの重量平均分子量は24000g/mol~28000g/molの範囲内であり、耐衝撃性改良剤及びスチレン-アクリロニトリルコポリマーの総量は15重量%以下である、ポリカーボネート組成物に関する。本発明はまた、この組成物から作られた成形品に関する。本発明によるポリカーボネート組成物は、高い比較トラッキング指数、良好な流動性、及び良好な難燃性を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート組成物であって、前記組成物の総重量に対して、以下の成分:
A)30重量%~80重量%のコポリカーボネートであって、
i)24mol%~70mol%の式(1):
【化1】
(式中、
は、式(1)がポリマー鎖に接続される位置を示し、
は、それぞれ独立して、水素又はC~Cアルキルであり、
は、それぞれ独立して、C~Cアルキルであり、
nは、0、1、2、又は3である)の単位と、
ii)30mol%~76mol%の式(2):
【化2】
(式中、
は、式(2)がポリマー鎖に接続される位置を示し、
は、それぞれ独立して、H、直鎖状又は分岐状のC~C10アルキルであり、かつ、
は、それぞれ独立して、直鎖状又は分岐状のC~C10アルキルである)の単位と、
(ここで、mol%は、式(1)及び式(2)の単位の総モル数を基準に計算される)を含む、コポリカーボネートと、
B)10重量%~40重量%の前記で定義された式(2)の単位を含むホモポリカーボネートであって、その重量平均分子量が24000g/mol~28000g/molの範囲内である、ホモポリカーボネートと、
C)8重量%~25重量%のリン系難燃剤と、
D)0重量%~10重量%の耐衝撃性改良剤と、
E)0重量%~8重量%のゴム不含のビニルコポリマーと、
を含み、ここで、
前記耐衝撃性改良剤及び前記ゴム不含のビニルコポリマーの総量は15重量%以下であり、かつ、
前記ポリカーボネート組成物中の前記式(1)の単位の重量含有量は24重量%以上である、ポリカーボネート組成物。
【請求項2】
前記コポリカーボネートは、式(1’):
【化3】
(式中、
は、それぞれ独立して、水素又はC~C-アルキルを表し、
は、それぞれ独立して、C~C-アルキルを表し、
nは、0、1、2、又は3を表す)のジフェノール及び式(2’):
【化4】
(式中、
は、それぞれ独立して、H、直鎖状又は分岐状のC~C10アルキルを表し、
は、それぞれ独立して、直鎖状又は分岐状のC~C10アルキルを表す)のジフェノールを除くジフェノールから誘導される単位を含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記コポリカーボネートは、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(BPTMC)及びビスフェノールAを除くジフェノールから誘導される単位を含まない、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記コポリカーボネート中の前記式(1)の単位のモル含有量は、式(1)及び式(2)の単位の総モル数を基準に40mol%~70mol%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記コポリカーボネートは、ブロックコポリカーボネート及びランダムコポリカーボネートから選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記コポリカーボネートは、ポリカーボネート標準を使用して塩化メチレン中で25℃にてゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定された16000g/mol~40000g/mol、好ましくは17000g/mol~32000g/molの範囲の重量平均分子量(Mw)を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記ホモポリカーボネート中の前記式(2)の単位は、式(2’):
【化5】
(式中、
は、それぞれ独立して、H、直鎖状又は分岐状のC~Cアルキルを表し、かつ、
は、それぞれ独立して、直鎖状又は分岐状のC~Cアルキルを表す)のジフェノールから誘導される、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記式(2)の単位は、ビスフェノールAから誘導される、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記リン系難燃剤は、式(3):
【化6】
(式中、
、R、R、及びRは、それぞれ互いに独立して、任意にハロゲン化されたC~Cアルキル、C~Cシクロアルキル、C~C20アリール、又はC~C12アラルキルを示し、これらはそれぞれ、アルキル、好ましくはC~Cアルキル、及び/又はハロゲン、好ましくは塩素、臭素によって任意に置換されており、
nは、互いに独立して、0又は1を示し、
qは、0~30の範囲の数を示し、かつ、
Xは、6個~30個の炭素原子を有する単核若しくは多核の芳香族残基、又は2個~30個の炭素原子を有する直鎖状若しくは分岐状の脂肪族残基を示し、これらはOHで置換されていてもよく、最大8個のエーテル結合を含んでいてもよい)のリン化合物、及び式(5):
【化7】
(式中、
kは、1~10の整数、好ましくは1~8、特に好ましくは1~5の数であり、
三量体含有量(k=1)は、環状ホスファゼンを基準に98mol%超であり、かつ、
Rは、それぞれの場合に同一又は異なっており、かつ、
アミン基、
それぞれの場合に、好ましくはフッ素で任意にハロゲン化された、より好ましくはモノハロゲン化されたC~C-アルキル、好ましくはメチル、エチル、プロピル、若しくはブチル、
~C-アルコキシ、好ましくはメトキシ、エトキシ、プロポキシ、若しくはブトキシ、
それぞれの場合にアルキル、好ましくはC~C-アルキル、及び/又はハロゲン、好ましくは塩素及び/又は臭素によって任意に置換されたC~C-シクロアルキル、
それぞれの場合にアルキル、好ましくはC~C-アルキル、及び/又はハロゲン、好ましくは塩素若しくは臭素、及び/又はヒドロキシルによって任意に置換されたC~C20-アリールオキシ、好ましくはフェノキシ若しくはナフチルオキシ、
それぞれの場合にアルキル、好ましくはC~C-アルキル、及び/又はハロゲン、好ましくは塩素及び/又は臭素によって任意に置換されたC~C12-アラルキル、好ましくはフェニル-C~C-アルキル、又は、
ハロゲン基、好ましくは塩素若しくはフッ素、又は、
OH基、
である)の環状ホスファゼンから選択され、
好ましくは、前記リン系難燃剤は、式(4):
【化8】
によるビスフェノールAを基礎とするオリゴホスフェート、及びk=1の場合のオリゴマー含有量が98.5mol%~100mol%、好ましくは99mol%~100mol%である式(6):
【化9】
のフェノキシホスファゼンから選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
D1)5重量%~95重量%、好ましくは8重量%~90重量%、特に20重量%~85重量%の少なくとも1種のビニルモノマーを、
D2)95重量%~5重量%、好ましくは92重量%~10重量%、特に80重量%~15重量%の10℃未満、好ましくは0℃未満、特に好ましくは-20℃未満のガラス転移温度を有する1種以上のグラフトベース上に、
含むゴム変性ビニル(コ)ポリマーから選択される耐衝撃性改良剤(重量%は、前記ゴム変性ビニル(コ)ポリマーの重量を基準に計算される)を更に含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1種のビニルモノマーD1は、
D1.1)50重量%~99重量%、好ましくは65重量%~85重量%、特に75重量%~80重量%のビニル芳香族化合物及び/又は核上で置換されたビニル芳香族化合物(スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン等)及び/又はメタクリル酸(C~C)-アルキルエステル(メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等)と、
D1.2)1重量%~50重量%、好ましくは15重量%~35重量%、特に20重量%~25重量%のシアン化ビニル(アクリロニトリル及びメタクリロニトリル等の不飽和ニトリル)及び/又はメチルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸(C~C)-アルキルエステル、及び/又は不飽和カルボン酸の誘導体(無水物及びイミド等)、例えば無水マレイン酸及びN-フェニル-マレイミドと、
の混合物(重量%は、前記ビニルモノマーD1の重量を基準に計算される)であり、及び/又は、
前記グラフトベースD2は、ジエンゴム、EP(D)Mゴム、及びアクリレートゴム、ポリウレタンゴム、シリコーンゴム、及びエチレン/酢酸ビニルゴム、及びシリコーン/アクリレート複合ゴムから選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
モノマーD1.1がスチレンであり、モノマーD1.2がアクリロニトリル及びメチルメタクリレートから選択され、グラフトベースD2が純粋なポリブタジエンゴム又はシリコ(ー)ン-ブチルアクリレートゴム等のシリコーン/アクリレート複合ゴムから選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
E1)それぞれの場合にゴム不含のビニルコポリマーを基準に65重量%~85重量%、好ましくは70重量%~80重量%、特に74重量%~78重量%の、スチレン、α-メチルスチレン、及びp-メチルスチレンから選択される少なくとも1種のモノマーと、
E2)それぞれの場合にゴム不含のビニルコポリマーを基準に15重量%~35重量%、好ましくは20重量%~30重量%、特に22重量%~26重量%の、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、(C~C)-アルキル(メタ)アクリレート、無水マレイン酸、及びN-フェニルマレインイミドから選択される少なくとも1種のモノマーと、
から作られたコポリマーから選択されるゴム不含のビニルコポリマーを更に含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物から作られた成形品。
【請求項15】
請求項14に記載の成形品を作製する方法であって、請求項1~13のいずれか一項に記載のポリカーボネート組成物を射出成形、押出成形、ブロー成形、又は熱成形することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート(PC)組成物に関する。特に、本発明は、高い水準の比較トラッキング指数及び良好な難燃性を有するポリカーボネート組成物、並びにそれから作られた成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネートは、優れた光学的特性、機械的特性、及び耐熱特性、並びにその優れた熱加工能のため、自動車分野、電気分野、及び電子分野等の多岐にわたる用途に広く使用されている。
【0003】
コポリカーボネートは、特別な種類のポリカーボネートとして、電気分野及び電子分野において、照明のハウジング材料として、また特定の熱的特性及び機械的特性が必要とされる用途、例えばヘアドライヤー、自動車分野における用途、プラスチックカバー、拡散スクリーン又は導波エレメント、及びランプカバー又はランプベゼルにおいて広く使用されている。
【0004】
ポリカーボネートの耐熱変形性は、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)を基礎とする特定の構成単位をポリカーボネート主鎖に導入することによって改善することができることが知られている。これにより得られるコポリカーボネート(いわゆる高Tgポリカーボネート)は高価である。さらに、この種のコポリカーボネートの比較的高いガラス転移温度(Tg)のため、その流動性は高くない。
【0005】
近年、電気的利用及び電子的利用の分野においては、電子デバイス及び電気デバイスを小型化する傾向が見られる。これにより、プラスチック製のハウジング又は部品を含む電気デバイスのより複雑でコンパクトな設計の採用が進められている。したがって、エレクトロニクス及び電気的利用の分野においては、比較トラッキング指数(CTI)及び難燃性等のプラスチック材料の安全性関連特性が必要とされた。
【0006】
例えば、プラスチック材料には、高い水準の難燃性(例えば、UL94-2015に従って決定された1.5mmでのV0等級)及び高いCTIランク(例えば、IEC60112:2011に従って決定されたCTI=600V)が必要とされる。しかしながら、標準的なポリカーボネート樹脂についての比較トラッキング指数は、わずか250V付近であるか、又はそれさえも下回ることがよく知られている。
【0007】
さらに、標準的なビスフェノールAを基礎とするポリカーボネートに難燃剤を導入することは、最終的な混和物のCTI性能に有害であると一般に考えられており、難燃剤が多いほどCTIは低くなり、更なる詳細は、非特許文献1において見出すことができる。
【0008】
特許文献1は、ポリブチレンテレフタレート、臭素化ポリスチレン、芳香族ポリカーボネート、及び衝撃強さを向上させる作用物質からなる、良好な難燃性と高い水準の比較トラッキング指数との組合せを示すポリマー混合物を開示している。
【0009】
したがって、高いCTI、良好な流動性、及び良好な難燃性を有するポリカーボネート組成物を得ることは依然として難題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4,900,784号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】S. Sullalti et al., "Effect of phosphorus based flame retardants on UL94 and Comparative Tracking Index properties of poly(butylene terephthalate)", Polymer Degradation and Stability, 2012
【発明の概要】
【0012】
したがって、本出願の1つの目的は、比較トラッキング指数及び難燃性の良好な組合せを有するポリカーボネート組成物を提供することである。
【0013】
本出願のもう1つの目的は、比較トラッキング指数及び難燃性の良好な組合せを有する物品を提供することである。
【0014】
第1の態様において、本発明は、ポリカーボネート組成物であって、前記組成物の総重量に対して、以下の成分:
A)30重量%~80重量%のコポリカーボネートであって、
i)24mol%~70mol%の式(1):
【化1】
(式中、
は、式(1)がポリマー鎖に接続される位置を示し、
は、それぞれ独立して、水素又はC~Cアルキルであり、
は、それぞれ独立して、C~Cアルキルであり、
nは、0、1、2、又は3である)の単位と、
ii)30mol%~76mol%の式(2):
【化2】
(式中、
は、式(2)がポリマー鎖に接続される位置を示し、
は、それぞれ独立して、H、直鎖状又は分岐状のC~C10アルキルであり、かつ、
は、それぞれ独立して、直鎖状又は分岐状のC~C10アルキルである)の単位と、
(ここで、mol%は、式(1)及び式(2)の単位の総モル数を基準に計算される)を含む、コポリカーボネートと、
B)10重量%~40重量%の前記で定義された式(2)の単位を含むホモポリカーボネートであって、その重量平均分子量が24000g/mol~28000g/molの範囲内である、ホモポリカーボネートと、
C)8重量%~25重量%のリン系難燃剤と、
D)0重量%~10重量%の耐衝撃性改良剤と、
E)0重量%~8重量%のゴム不含のビニルコポリマーと、
を含み、ここで、
前記耐衝撃性改良剤及び前記ゴム不含のビニルコポリマーの総量は15重量%以下であり、かつ、
前記ポリカーボネート組成物中の前記式(1)の単位の重量含有量は24重量%以上である、ポリカーボネート組成物を提供する。
【0015】
本明細書において使用される場合、ポリカーボネート組成物中の式(1)の単位の重量含有量(C1/C/W)は、以下のように計算される:
1/C/W=(C1/CO/M×Mw1)×Cco/c/w/(C1/CO/M×Mw1’+C2/CO/M×Mw2
(式中、
1/C/Wは、ポリカーボネート組成物中の式(1)の単位の重量含有量を表し、
1/CO/Mは、コポリカーボネート中の式(1)の単位のモル含有量を表し、
w1は、式(1)の単位の分子量を表し、これは1モル当たりのグラム数で表され、
w1’は、式(1)の単位及び-C=O-の総分子量を表し、これは1モル当たりのグラム数で表され、
2/CO/Mは、コポリカーボネート中の式(2)の単位のモル含有量を表し、
w2は、式(2)の単位の分子量を表し、これは1モル当たりのグラム数で表され、かつ、
co/c/wは、ポリカーボネート組成物中のコポリカーボネートの重量含有量を表す)。
【0016】
本発明者らは、予想外にも、本発明による組成物が、IEC60112:2011に従って決定された最大600Vの比較トラッキング指数、及びUL94-2015に従って決定されたV0の難燃性レベルを有することを見出した。
【0017】
比較トラッキング指数(CTI)は、IEC60112:2011に従って決定される、5個の試験片が試験期間にトラッキング破壊及び持続炎を発生することなく50滴の特定の電解液に耐える最高電圧の数値を意味する。
【0018】
第2の態様において、本発明は、本発明の第1の態様によるポリカーボネート組成物から作られた成形品を提供する。
【0019】
第3の態様において、本発明は、本発明の第1の態様によるポリカーボネート組成物を射出成形、押出成形、ブロー成形、又は熱成形することを含む、上述の成形品を作製する方法を提供する。
【0020】
以下の詳細な説明及び実施例を読めば、本発明の他の主題、並びに特質、態様、及び利点が更により明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明の詳細な説明
以下では、別段の指示がない限り、値の範囲、特に「…から…の間」及び「…~…」という表現において、その境界はこの範囲内に含まれる。
【0022】
別段の定義がない限り、本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。本明細書における用語の定義が、本発明が属する技術分野における当業者によって通常理解される意味と対立する場合、本明細書において記載される定義が適用されるものとする。
【0023】
本出願全体を通して、「含む(comprising)」という用語は、全ての具体的に述べられた特徴だけでなく、任意の追加の未特定の特徴も包含すると解釈されるべきである。本明細書において使用される場合、「含む(comprising)」という用語の使用は、具体的に述べられた特徴以外の特徴が存在しない実施形態(すなわち、「からなる(consisting of)」)も表す。
【0024】
別段の特定がない限り、詳細な説明及び特許請求の範囲において使用される成分の量等を表す全ての数値は、「約」という用語によって修飾されるものと理解されるべきである。
【0025】
成分A
第1の態様によれば、本発明によるポリカーボネート組成物はコポリカーボネートを含む。
【0026】
本出願において、コポリカーボネートは、
i)24mol%~70mol%の式(1):
【化3】
(式中、
は、式(1)がポリマー鎖に接続される位置を示し、
は、それぞれ独立して、水素又はC~Cアルキルであり、
は、それぞれ独立して、C~Cアルキルであり、
nは、0、1、2、又は3である)の単位と、
ii)30mol%~76mol%の式(2):
【化4】
(式中、
は、式(2)がポリマー鎖に接続される位置を示し、
は、それぞれ独立して、H、直鎖状又は分岐状のC~C10アルキル、好ましくはH、直鎖状又は分岐状のC~Cアルキルであり、かつ、
は、それぞれ独立して、直鎖状又は分岐状のC~C10アルキル、好ましくは直鎖状又は分岐状のC~Cアルキルである)の単位と、
(ここで、mol%は、式(1)及び式(2)の単位の総モル数を基準に計算される)を含むポリカーボネートを指す。
【0027】
式(1)の単位は、式(1’):
【化5】
(式中、
は、それぞれ独立して、水素又はC~C-アルキルを表し、
は、それぞれ独立して、C~C-アルキルを表し、
nは、0、1、2、又は3を表す)のジフェノールから誘導され得る。
【0028】
好ましくは、式(1)の単位は、以下の式(1a):
【化6】
(式中、は、式(1a)がポリマー鎖に接続される位置を示す)を有する、すなわち、式(1)の単位は、式(1’a):
【化7】
を有するビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(BPTMC)から誘導される。
【0029】
式(2)の単位は、式(2’):
【化8】
(式中、
は、それぞれ独立して、H、直鎖状又は分岐状のC~C10アルキルを表し、
は、それぞれ独立して、直鎖状又は分岐状のC~C10アルキルを表す)のジフェノールから誘導され得る。
【0030】
好ましくは、式(2)の単位は、以下の式(2a):
【化9】
(式中、は、式(2a)がポリマー鎖に接続される位置を示す)を有する、すなわち、式(2)の単位は、ビスフェノールA、すなわち、式(2’a):
【化10】
のジフェノールから誘導される。
【0031】
好ましくは、コポリカーボネートは、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(BPTMC)及びビスフェノールAから誘導される単位を含む。
【0032】
好ましくは、コポリカーボネートは、式(1’)のジフェノール及び式(2’)のジフェノールを除くジフェノールから誘導される単位を含まない。
【0033】
好ましくは、コポリカーボネートは、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(BPTMC)及びビスフェノールAを除くジフェノールから誘導される単位を含まない。
【0034】
式(1’)及び式(2’)のジフェノールは既知であり、文献(例えば、H. J. Buysch et al., Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, VCH, New York 1991, 5th Ed., Vol. 19, p. 348)から知られる方法によって作製され得る。
【0035】
コポリカーボネート中の式(1)の単位のモル含有量は、式(1)及び式(2)の単位の総モル数を基準に24mol%~70mol%、より好ましくは40mol%~70mol%である。
【0036】
コポリカーボネート中の式(2)の単位のモル含有量は、式(1)及び式(2)の単位の総モル数を基準に30mol%~76mol%、より好ましくは30mol%~60mol%である。
【0037】
本発明による組成物において使用されるコポリカーボネートは市販されているか、又は当該技術分野において知られる方法によって製造され得る。
【0038】
例えば、本発明による組成物において使用されるコポリカーボネートは、界面法によって製造され得る。特に、式(1’)及び(2’)のジフェノール並びに任意の分岐剤をアルカリ水溶液中に溶解し、アルカリ水溶液、有機溶剤、及び触媒、好ましくはアミン化合物を含む2相混合物中で、任意に溶剤中に溶解されたホスゲン等のカーボネート供給源と反応させる。反応手順を多段階法において行うこともできる。
【0039】
このようなコポリカーボネートの作製方法は、原則的に、例えばH. Schnell, Chemistry and Physics of Polycarbonates, Polymer Reviews, Vol. 9, Interscience Publishers, New York 1964, page 33 et seq.、及びPolymer Reviews, Vol. 10, "Condensation Polymers by Interfacial and Solution Methods", Paul W. Morgan, Interscience Publishers, New York 1965, Chapter VIII, page 325において2相界面法として知られているため、基礎となる条件は当業者によく知られている。
【0040】
アルカリ水溶液中のジフェノールの濃度は、2重量%~25重量%、好ましくは2重量%~20重量%、より好ましくは2重量%~18重量%、更により好ましくは3重量%~15重量%である。アルカリ水溶液は、水にアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物が溶解されたものからなる。水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが好ましい。
【0041】
アミン化合物の濃度は、使用されるジフェノールのモル量に対して、0.1mol%~10mol%、好ましくは0.2mol%~8mol%、特に好ましくは0.3mol%~6mol%、より特に好ましくは0.4mol%~5mol%である。
【0042】
カーボネート供給源は、ホスゲン、ジホスゲン、又はトリホスゲン、好ましくはホスゲンである。ホスゲンが使用される場合、任意に溶剤を省いてもよく、ホスゲンを反応混合物に直接通過させてもよい。
【0043】
トリエチルアミン又はN-アルキルピペリジン等の第三級アミンを触媒として使用してもよい。適切な触媒は、トリアルキルアミン及び4-(ジメチルアミノ)ピリジンである。トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリイソブチルアミン、N-メチルピペリジン、N-エチルピペリジン、及びN-プロピルピペリジンが特に適している。
【0044】
塩化メチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、若しくはそれらの混合物等のハロゲン化炭化水素、又はトルエン若しくはキシレン等の芳香族炭化水素が有機溶剤として適している。反応温度は-5℃~100℃、好ましくは0℃~80℃、特に好ましくは10℃~70℃、非常に特に好ましくは10℃~60℃であり得る。アルカリ金属塩、アンモニウム化合物又はホスホニウム化合物等の触媒の存在下で溶融物において、ジフェノールと、ジアリールカーボネート、一般的にはジフェニルカーボネートとを反応させる溶融エステル交換法によるコポリカーボネートの作製も可能である。
【0045】
溶融エステル交換法は、例えば、Encyclopedia of Polymer Science, Vol. 10 (1969)、Chemistry and Physics of Polycarbonates, Polymer Reviews, H. Schnell, Vol. 9, John Wiley and Sons, Inc. (1964)、及び独国特許第1031512号において記載されている。
【0046】
エステル交換法においては、相境界法の場合に既に記載した芳香族ジヒドロキシ化合物を、溶融物において適切な触媒及び任意に更なる添加剤を用いて炭酸ジエステルとエステル交換する。
【0047】
芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを反応させてコポリカーボネートを得ることを、例えば撹拌槽、薄膜蒸発器、流下膜式蒸発器、撹拌槽カスケード、押出機、混練機、単純ディスク反応器(simple disc reactors)及び高粘度ディスク反応器(high-viscosity disc reactors)において回分式に又は好ましくは連続式に行うことができる。
【0048】
好ましくは、コポリカーボネートは、ブロックコポリカーボネート及びランダムコポリカーボネートから選択される。より好ましくは、コポリカーボネートはランダムコポリカーボネートから選択される。
【0049】
有利には、コポリカーボネートは、ポリカーボネート標準を使用してUV-IR検出器を用いて塩化メチレン中で25℃にてゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定された16000g/mol~40000g/mol、好ましくは17000g/mol~32000g/molの範囲の重量平均分子量(Mw)を有する。
【0050】
本発明による組成物に適したコポリカーボネートの市販製品についての一例としては、塩化カルボニルとビスフェノールA(BPA)及び3,3,5-トリメチル-1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(BPTMC)との共重合から作られるポリカーボネートコポリマーである、Covestro Polymer社(中国)によりAPEC(商標)の名称で販売されている製品を挙げることができる。
【0051】
好ましくは、コポリカーボネートは、本発明による組成物の総重量に対して、30重量%~80重量%、より好ましくは35重量%~75重量%、更により好ましくは35重量%~71重量%の範囲の量で存在する。
【0052】
成分B
第1の態様によれば、本発明によるポリカーボネート組成物は、式(2)の単位を含むホモポリカーボネートを含む。
【0053】
本出願において、ホモポリカーボネートは、上記で定義された式(2)の単位を含むポリカーボネートを指す。
【0054】
式(2)の単位は、式(2’):
【化11】
(式中、
は、それぞれ独立して、H、直鎖状又は分岐状のC~C10アルキル、好ましくは直鎖状又は分岐状のC~C-アルキル、より好ましくは直鎖状又は分岐状のC~Cアルキル、更により好ましくはH又はメチルを表し、かつ、
は、それぞれ独立して、直鎖状又は分岐状のC~C10アルキル、好ましくは直鎖状又は分岐状のC~Cアルキル、より好ましくは直鎖状又は分岐状のC~C-アルキル、更により好ましくはメチルを表す)のジフェノールから誘導される。
【0055】
好ましくは、式(2)の単位は、式(2’a):
【化12】
のジフェノール、すなわち、ビスフェノールAから誘導される。
【0056】
本発明による組成物において使用されるホモポリカーボネートは市販されているか、又は当該技術分野において知られる方法によって製造され得る。
【0057】
例えば、ホモポリカーボネートを、成分Aに関して記載された作製方法を参照することによって製造することができる。
【0058】
好ましくは、ホモポリカーボネートは、ポリカーボネート標準を使用してUV-IR検出器を用いて塩化メチレン中で25℃にてゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定された24000g/mol~28000g/molの範囲の重量平均分子量(Mw)を有する。
【0059】
本発明による組成物において使用するのに適したホモポリカーボネートの市販製品としては、Covestro Polymer社(中国)によって販売されるMakrolon(商標)2400及びMakrolon(商標)2600を挙げることができる。
【0060】
好ましくは、ホモポリカーボネートは、本発明によるポリカーボネート組成物中に、組成物の総重量に対して10重量%~40重量%、より好ましくは12重量%~35重量%の範囲の量で存在する。
【0061】
成分C
第1の態様によれば、本発明によるポリカーボネート組成物はリン系難燃剤を含む。
【0062】
好ましくは、本発明による組成物において使用するのに適したリン系難燃剤は、モノマー及びオリゴマーのリン酸エステル及びホスホン酸エステル、ホスファゼン、並びにそれらの混合物から選択される。
【0063】
好ましいモノマー及びオリゴマーのリン酸エステル及びホスホン酸エステルは、式(3):
【化13】
(式中、
、R、R、及びRは、それぞれ互いに独立して、任意にハロゲン化されたC~Cアルキル、C~Cシクロアルキル、C~C20アリール、又はC~C12アラルキルを示し、これらはそれぞれ、アルキル、好ましくはC~Cアルキル、及び/又はハロゲン、好ましくは塩素、臭素によって任意に置換されており、
nは、互いに独立して、0又は1を示し、
qは、0~30の範囲の数を示し、かつ、
Xは、6個~30個の炭素原子を有する単核若しくは多核の芳香族残基、又は2個~30個の炭素原子を有する直鎖状若しくは分岐状の脂肪族残基を示し、これらはOHで置換されていてもよく、最大8個のエーテル結合を含んでいてもよい)のリン化合物である。
【0064】
好ましくは、R、R、R、及びRは、互いに独立して、それぞれC~Cアルキル、フェニル、ナフチル、又はフェニルC~Cアルキルを示し、ここで、芳香族基R、R、R、及びRは、それら自体ハロゲン及び/又はアルキル基、好ましくは塩素、臭素、及び/又はC~Cアルキルで置換されていてもよい。特に好ましいアリール残基は、クレシル、フェニル、キシレニル、プロピルフェニル、又はブチルフェニル、並びにそれらの対応する臭素化誘導体及び塩素化誘導体である。
【0065】
好ましくは、式(3)中のXは、6個~30個の炭素原子を有する単核又は多核の芳香族残基を示す。
【0066】
より好ましくは、Xは、レゾルシノール、ヒドロキノン、ビスフェノールA、又はジフェニルフェノールから誘導される。特に好ましくは、XはビスフェノールAから誘導される。
【0067】
好ましくは、nは1と等しい。
【0068】
好ましくは、qは0~20、特に0~10の数を示し、一般式(3)のリン化合物の混合物が使用される場合に、平均値は0.8~5.0、好ましくは1.0~3.0、より好ましくは1.05~2.00、特に好ましくは1.08~1.60である。
【0069】
式(3)のリン化合物は、特にトリブチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレシルホスフェート、ジフェニルクレシルホスフェート、ジフェニルオクチルホスフェート、ジフェニル-2-エチルクレシルホスフェート、トリ(イソプロピルフェニル)ホスフェート、レゾルシノール架橋オリゴホスフェート、及びビスフェノールA架橋オリゴホスフェートである。ビスフェノールAから誘導される式(3)のオリゴマーリン酸エステルの使用が特に好ましい。
【0070】
最も好ましい式(3)のリン化合物は、式(4):
【化14】
によるビスフェノールAを基礎とするオリゴホスフェートである。
【0071】
式(3)のリン化合物は既知であるか(例えば、欧州特許出願公開第0363608号、欧州特許出願公開第0640655号を参照)、又は既知の方法により類似の様式で製造され得る(例えば、Ullmanns Enzyklopadie der technischen Chemie, vol. 18, pp. 301 ff. 1979、Houben-Weyl, Methoden der organischen Chemie, vol. 12/1, p. 43、Beilstein vol. 6, p. 177)。
【0072】
好ましいホスファゼンは、式(5):
【化15】
(式中、
kは、1~10の整数、好ましくは1~8、特に好ましくは1~5の数であり、
三量体含有量(k=1)は、環状ホスファゼンを基準に98mol%超であり、かつ、
Rは、それぞれの場合に同一又は異なっており、かつ、
アミン基、
それぞれの場合に、好ましくはフッ素で任意にハロゲン化された、より好ましくはモノハロゲン化されたC~C-アルキル、好ましくはメチル、エチル、プロピル、若しくはブチル、
~C-アルコキシ、好ましくはメトキシ、エトキシ、プロポキシ、若しくはブトキシ、
それぞれの場合にアルキル、好ましくはC~C-アルキル、及び/又はハロゲン、好ましくは塩素及び/又は臭素によって任意に置換されたC~C-シクロアルキル、
それぞれの場合にアルキル、好ましくはC~C-アルキル、及び/又はハロゲン、好ましくは塩素若しくは臭素、及び/又はヒドロキシルによって任意に置換されたC~C20-アリールオキシ、好ましくはフェノキシ若しくはナフチルオキシ、
それぞれの場合にアルキル、好ましくはC~C-アルキル、及び/又はハロゲン、好ましくは塩素及び/又は臭素によって任意に置換されたC~C12-アラルキル、好ましくはフェニル-C~C-アルキル、又は、
ハロゲン基、好ましくは塩素若しくはフッ素、又は、
OH基、
である)の環状ホスファゼンである。
【0073】
ホスファゼン及びその作製は、例えば、欧州特許出願公開第728811号、独国特許出願公開第1961668号、及び国際公開第97/40092号に記載されている。
【0074】
以下のものが好ましい:プロポキシホスファゼン、フェノキシホスファゼン、メチルフェノキシホスファゼン、アミノホスファゼン、及びフルオロアルキルホスファゼン、並びに以下の構造:
【化16】
のホスファゼン。
【0075】
上記に示した化合物において、k=1、2、又は3である。
【0076】
好ましくは、三量体含有量(k=1)は、環状ホスファゼンを基準に98.5mol%~100mol%、好ましくは99mol%~100mol%である。
【0077】
式(5)のホスファゼンが、例えば、反応が不完全な出発材料からリン上でハロゲン置換される場合に、リン上でハロゲン置換されたこのホスファゼンの割合は、好ましくは1000ppm未満、より好ましくは500ppm未満である。
【0078】
ホスファゼンを、それら単独で又は混合物として使用することができる、すなわち、基Rは同一であっても、又は式(5)中の2つ以上の基は異なっていてもよい。好ましくは、ホスファゼンの基Rは同一である。
【0079】
好ましくは、同一のRを有するホスファゼンのみが使用される。
【0080】
好ましくは、全てのRはフェノキシである。
【0081】
最も好ましいホスファゼンは、k=1の場合のオリゴマー含有量が98.5mol%~100mol%、好ましくは99mol%~100mol%である式(6):
【化17】
のフェノキシホスファゼン(全てのRはフェノキシである)(C1)である。
【0082】
それぞれの混和物試料中のホスファゼンのオリゴマーを、配合後に31P-NMR(化学シフト;三量体のδ:6.5ppm~10.0ppm;四量体のδ:-10ppm~-13.5ppm;より高次のオリゴマーのδ:-16.5ppm~-25.0ppm)によって検出し、定量化することもできる。
【0083】
ホスファゼンの市販製品の一例としては、Weihai Jinwei Chem Industry社から商品名HPCTPとして販売されるものを挙げることができる。
【0084】
好ましくは、リン系難燃剤は、本発明による組成物中に、組成物の総重量に対して8重量%~25重量%、より好ましくは8重量%~20重量%の範囲の量で存在する。
【0085】
成分D
第1の態様によれば、本発明のポリカーボネート組成物は、任意に耐衝撃性改良剤を含んでいてもよい。
【0086】
耐衝撃性改良剤には特に制限はない。ポリカーボネート組成物に一般に使用される耐衝撃性改良剤を、本発明によるポリカーボネート組成物に使用することができる。
【0087】
好ましくは、耐衝撃性改良剤は、
D1)5重量%~95重量%、好ましくは8重量%~90重量%、特に20重量%~85重量%の少なくとも1種のビニルモノマーを、
D2)95重量%~5重量%、好ましくは92重量%~10重量%、特に80重量%~15重量%の10℃未満、好ましくは0℃未満、特に好ましくは-20℃未満のガラス転移温度を有する1種以上のグラフトベース上に、
含むゴム変性ビニル(コ)ポリマーから選択される。
【0088】
重量%は、ゴム変性ビニル(コ)ポリマーの重量を基準に計算される。
【0089】
ガラス転移温度を、動的示差熱量測定(DSC)によって、規格DIN EN 61006に従って10K/分の昇温速度で、Tを中点温度として定義して(接線法)測定した。
【0090】
少なくとも1種のビニルモノマーD1は、好ましくは、
D1.1)50重量%~99重量%、好ましくは65重量%~85重量%、特に75重量%~80重量%のビニル芳香族化合物及び/又は核上で置換されたビニル芳香族化合物(スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン等)及び/又はメタクリル酸(C~C)-アルキルエステル(メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等)と、
D1.2)1重量%~50重量%、好ましくは15重量%~35重量%、特に20重量%~25重量%のシアン化ビニル(アクリロニトリル及びメタクリロニトリル等の不飽和ニトリル)及び/又はメチルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸(C~C)アルキルエステル、及び/又は不飽和カルボン酸の誘導体(無水物及びイミド等)、例えば無水マレイン酸及びN-フェニル-マレイミドと、
の混合物である。
【0091】
重量%は、ビニルモノマーD1の重量を基準に計算される。
【0092】
好ましいモノマーD1.1は、スチレン、α-メチルスチレン、及びメチルメタクリレートから選択される。好ましいモノマーD1.2は、アクリロニトリル、無水マレイン酸、及びメチルメタクリレートから選択される。より好ましくは、モノマーD1.1はスチレンであり、かつモノマーD1.2はアクリロニトリル及びメチルメタクリレートから選択される。
【0093】
グラフトベースD2の例としては、ジエンゴム、EP(D)Mゴム(すなわち、エチレン/プロピレン及び任意にジエンを基礎とするゴム)、及びアクリレートゴム、ポリウレタンゴム、シリコーンゴム、及びエチレン/酢酸ビニルゴム、及びシリコーン/アクリレート複合ゴムを挙げることができる。
【0094】
好ましいグラフトベースD2は、成分D2のガラス転移温度が10℃未満、好ましくは0℃未満、特に好ましくは-20℃未満であることを条件として、例えばブタジエン及びイソプレンを基礎とするジエンゴム、又はジエンゴムの混合物又はジエンゴムと更なる共重合可能なモノマー(例えば、D1.1及びD1.2による)とのコポリマー若しくはそれらの混合物から選択される。
【0095】
特に好ましいグラフトベースD2は、純粋なポリブタジエンゴム、又はシリコーン-ブチルアクリレートゴム等のシリコーン/アクリレート複合ゴムから選択される。
【0096】
特に好ましいゴム変性ビニル(コ)ポリマーは、例えば、独国特許出願公開第2035390号(=米国特許第3,644,574号)若しくは独国特許出願公開第2248242号(=英国特許第1409275号)、及びUllmanns, Enzyklopaedie der Technischen Chemie, vol. 19 (1980), p. 280 et seqに記載される、例えば、ABS、MBSポリマー、メチルメタクリレートがグラフトされたシリコーン-ブチルアクリレートゴムである。
【0097】
ゴム変性ビニル(コ)ポリマーは、フリーラジカル重合によって、例えば、乳化重合、懸濁重合、溶液重合、又は塊状重合によって、好ましくは乳化重合又は塊状重合によって、特に乳化重合によって作製することができる。
【0098】
本発明において使用することができるゴム変性ビニル(コ)ポリマーの市販製品の例としては、
ABSポリマーを基準に10重量%~15重量%のポリブタジエンゴム含有量を有するSINOPEC Shanghai Gaoqiao社から入手可能なABS 8391、
ABSポリマーを基準に42重量%~45重量%の、27重量%のアクリロニトリル及び73重量%のスチレンの混合物を、ABSポリマーを基準に55重量%~58重量%の架橋ポリブタジエンゴムの存在下で乳化重合することによって製造された、Styrolution社から入手可能なABS HRG粉末P60(平均粒径d50は0.3μmである)、
日本の株式会社カネカから入手可能なKane Ace M732、
三菱レイヨン株式会社から入手可能なMetablen(商標)のS-2130、S-2100、S-2001、S-2006等、
を挙げることができる。
【0099】
有利には、存在する場合、耐衝撃性改良剤は、本発明によるポリカーボネート組成物中に、ポリカーボネート組成物の総重量に対して5重量%~10重量%の範囲の量で存在する。
【0100】
成分E
第1の態様によれば、本発明のポリカーボネート組成物は、任意にゴム不含のビニルコポリマーを含んでいてもよい。
【0101】
好ましくは、ゴム不含のビニルコポリマーは、
E1)それぞれの場合にゴム不含のビニルコポリマーを基準に65重量%~85重量%、好ましくは70重量%~80重量%、特に74重量%~78重量%の、ビニル芳香族化合物から選択される少なくとも1種のモノマー(例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン)と、
E2)それぞれの場合にゴム不含のビニルコポリマーを基準に15重量%~35重量%、好ましくは20重量%~30重量%、特に22重量%~26重量%の、シアン化ビニル(例えば、アクリロニトリル及びメタクリロニトリル等の不飽和ニトリル)、(C~C)-アルキル(メタ)アクリレート(例えば、メチルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート)、不飽和カルボン酸、及び不飽和カルボン酸の誘導体(例えば、無水マレイン酸及びN-フェニルマレインイミド)の群から選択される少なくとも1種のモノマーと、
から作られたコポリマーである。
【0102】
特に好ましいのは、スチレン(E1)及びアクリロニトリル(E2)のゴム不含のコポリマーである。
【0103】
これらのコポリマーは既知であり、フリーラジカル重合、特に乳化重合、懸濁重合、溶液重合、又は塊状重合によって製造することができる。
【0104】
コポリマーの重量平均分子量Mは、ポリスチレンを標準として用いるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定された、好ましくは15000g/mol~250000g/mol、より好ましくは50000g/mol~160000g/mol、最も好ましくは80000g/mol~140000g/molである。
【0105】
本発明において使用することができるゴム不含のビニルコポリマーの市販製品の一例としては、130000g/molの重量平均分子量Mwを有する77重量%のスチレン及び23重量%のアクリロニトリルのスチレン-アクリロニトリルコポリマーであるLUSTRAN(商標)SAN DN50を挙げることができる。
【0106】
本発明者らは、ゴム不含のビニルコポリマーを添加すると、得られる組成物の流動性が更に改善されることを見出した。
【0107】
有利には、存在する場合、ゴム不含のビニルコポリマーは、ポリカーボネート組成物中に、ポリカーボネート組成物の総重量に対して0重量%~8重量%、好ましくは3重量%~6重量%の範囲の量で存在する。
【0108】
耐衝撃性改良剤(成分D)及びゴム不含のビニルコポリマー(成分E)の総量は、本発明によるポリカーボネート組成物の総重量に対して15重量%以下である。
【0109】
添加剤
上述の成分A~成分Eに加えて、本発明によるポリカーボネート組成物は、ポリカーボネート組成物において慣例的に使用される1種以上の添加剤を任意に含み得る。このような添加剤は、例えば、充填剤、カーボンブラック、UV安定剤、IR安定剤、熱安定剤、帯電防止剤、顔料、着色剤、滑沢剤、離型剤(例えば、ペンタエリスリトールテトラステアレート)、酸化防止剤、流動性向上剤、液垂れ防止剤(例えば、ポリ(テトラフルオロエチレン))等である。
【0110】
このような添加剤は、例えば国際公開第99/55772号の第15頁~第25頁、及び"Plastics Additives", R. Gachter and H. MUller, Hanser Publishers 1983において記載されている。
【0111】
当業者は、本発明によるポリカーボネート組成物の所望の特性に悪影響を及ぼさないように添加剤の種類を選択することができる。
【0112】
添加剤の総量は、好ましくは、本発明によるポリカーボネート組成物の総重量に対して、最大4重量%、好ましくは0重量%~3重量%、より好ましくは0重量%~2重量%である。
【0113】
好ましくは、本発明によるポリカーボネート組成物は、組成物の総重量に対して、以下の成分:
A)35重量%~71重量%のコポリカーボネートであって、
i)40mol%~70mol%の式(1):
【化18】
(式中、
は、それぞれ独立して、水素又はC~Cアルキルであり、
は、それぞれ独立して、C~Cアルキルであり、
nは、0、1、2、又は3である)の単位と、
ii)30mol%~60mol%の式(2):
【化19】
(式中、
は、それぞれ独立して、H、直鎖状又は分岐状のC~C10アルキルであり、かつ、
は、それぞれ独立して、直鎖状又は分岐状のC~C10アルキルである)の単位と、
(ここで、mol%は、式(1)及び式(2)の単位の総モル数を基準に計算される)を含む、コポリカーボネートと、
B)10重量%~40重量%の上記で定義された式(2)の単位を含むホモポリカーボネートであって、その重量平均分子量が24000g/mol~28000g/molの範囲内である、ホモポリカーボネートと、
C)8重量%~25重量%のリン系難燃剤であって、式(4):
【化20】
によるビスフェノールAを基礎とするオリゴホスフェート、及びk=1の場合のオリゴマー含有量が98.5mol%~100mol%、好ましくは99mol%~100mol%である式(6):
【化21】
のフェノキシホスファゼン(全てのRはフェノキシである)(C1)から選択される、リン系難燃剤と、
D)0重量%~10重量%の耐衝撃性改良剤と、
E)0重量%~8重量%のゴム不含のビニルコポリマーと、
を含み、ここで、
耐衝撃性改良剤及びゴム不含のビニルコポリマーの総量は15重量%以下であり、かつ、
ポリカーボネート組成物中の式(1)の単位の重量含有量は24重量%~50重量%である。
【0114】
ポリカーボネート組成物の作製
本発明によるポリカーボネート組成物は、例えばペレットの形態であり得る。
【0115】
本発明によるポリカーボネート組成物は、良好な加工挙動を示し、組成物中に所望される材料を緊密に混合することを含む多岐にわたる方法によって作製され得る。
【0116】
例えば、組成物中に所望される材料を最初に高速混合機において混和する。限定されるものではないが、手動混合を含む低剪断プロセスによって、この混和を達成することもできる。次いで、この混和物を、ホッパーを介して二軸スクリュー押出機のスロート部に供給する。代替的には、少なくとも1種の成分をスロート部で押出機に直接的に供給することによって、及び/又は側方ラム押出機(side stuffer)を介して下流に供給することによって、その成分を組成物に組み込むことができる。添加剤を所望のポリマー樹脂とともに配合してマスターバッチを得て、押出機に供給することもできる。押出機は一般に、組成物を流動させるのに必要な温度よりも高い温度で操作される。押出物を水浴中で直ちに急冷し、ペレット化する。ペレットは、記載されるように1/4インチ以下の長さであり得る。そのようなペレットを使用して、引き続き成形(molding)、賦形(shaping)、又はフォーミングすることができる。
【0117】
商用ポリマー加工施設において溶融混和装置が利用可能であるため、溶融混和法が好ましい。
【0118】
このような溶融加工法において使用される装置の例示的な例としては、同方向回転式押出機及び反転式押出機、単軸スクリュー押出機、共混練機、並びに他の様々な種類の押出装置が挙げられる。
【0119】
加工中の溶融物の温度を最小限に抑えて、ポリマーの過剰な分解を避けることが好ましい。溶融樹脂組成物においては、しばしば230℃から350℃の間の溶融温度を維持することが望ましいが、加工装置内での樹脂の滞留時間が短く保たれるのであれば、より高い温度を使用することができる。
【0120】
場合によっては、溶融組成物は、ダイにおける小さな出口孔を通って押出機等の加工装置から出る。得られた溶融樹脂のストランドを、ストランドを水浴に通すことによって冷却する。冷却されたストランドを小さなペレットに切断して、包装及び更なる取り扱いを行うことができる。
【0121】
成形品
本発明によるポリカーボネート組成物を使用して、例えば、様々な種類の成形品を製造することができる。
【0122】
第2の態様において、本発明はまた、本発明の第1の態様によるポリカーボネート組成物から作られた成形品を提供する。
【0123】
このような成形品の例としては、例えば、フィルム、異形材、ハウジング部品、例えば、家庭用電化製品用、又はモニター、フラットスクリーン、ノートブック、プリンター、及びコピー機等のオフィス機器用のハウジング部品、シート、チューブ、電線管、建築分野(内装用途及び外装用途)向けの窓、ドア、及びその他の異形材、キーパッド、スクリーンディスプレイカバー、スイッチ、プラグ、及びソケット等の電気部品及び電子部品、レンズ、並びに商用車用のボディ部品又は内装トリムを挙げることができる。
【0124】
成形品の作製
本発明によるポリカーボネート組成物を射出成形、押出成形、ブロー成形、又は熱成形等の多岐にわたる手段によって成形品に加工して、成形品を形成することができる。
【0125】
第3の態様において、本発明は、本発明の第1の態様による組成物から作られた成形品を作製する方法であって、本発明によるポリカーボネート組成物を射出成形、押出成形、ブロー成形、又は熱成形することを含む、方法を提供する。
【実施例
【0126】
以下の実施例を参照して、本発明を以下で詳細に説明する。実施例は例示を目的とするものにすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【0127】
使用される材料
成分A
CoPC-1:Covestro Polymer社(中国)から市販されており、ISO 1133:(2011)に従って330℃、1.2kgで測定された7cm/10分のMVR、及びポリカーボネート標準を使用して25℃にて塩化メチレン中でゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定された約30000g/molの重量平均分子量を有する、ビスフェノール単位の総量を基準に70mol%の3,3,5-トリメチル-1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールTMC)単位と、30mol%のビスフェノールA単位とを基礎とするコポリカーボネート。
【0128】
CoPC-2:Covestro Polymer社(中国)から市販されており、ISO 1133:2011に従って330℃、1.2kgで測定された16cm/10分のMVR、及びポリカーボネート標準を使用して25℃にて塩化メチレン中でゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定された約27000g/molの重量平均分子量を有する、ビスフェノール単位の総量を基準に44mol%の3,3,5-トリメチル-1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールTMC)単位と、56mol%のビスフェノールA単位とを基礎とするコポリカーボネート。
【0129】
成分B
PC-1:Covestro Polymer社(中国)から市販されており、ポリカーボネート標準を使用して25℃にて塩化メチレン中でゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定された20000g/molの重量平均分子量(Mw)を有する、ビスフェノールAを基礎とする線状ポリカーボネート。
【0130】
PC-2:Covestro Polymer社(中国)から市販されており、ポリカーボネート標準を使用して25℃にて塩化メチレン中でゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定された24000g/molの重量平均分子量を有する、ビスフェノールAを基礎とする線状ポリカーボネート。
【0131】
PC-3:Covestro Polymer社(中国)から市販されており、ポリカーボネート標準を使用して25℃にて塩化メチレン中でゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定された26000g/molの重量平均分子量を有する、ビスフェノールAを基礎とする線状ポリカーボネート。
【0132】
成分C
BDP:Zhejiang Wansheng Science社(中国)から入手可能なビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)。
HPCTP:Weihai Jinwei Chem Industry社から入手可能であり、k=1の場合のオリゴマー含有量が99.9mol%であり、かつk≧2の場合のオリゴマー含有量が0.1mol%である以下の式:
【化22】
のフェノキシホスファゼン。
【0133】
成分D
ABS:INEOS Styrolution GmbHから商品名P60として入手可能であり、ABSポリマーを基準に42重量%の線状ポリブタジエンゴムの存在下での、ABSポリマーを基準に58重量%の、24重量%のアクリロニトリル及び76重量%のスチレンの混合物の乳化重合によって作製されるコア-シェル型耐衝撃性改良剤。
MBS:日本の株式会社カネカから商品名Kane Ace M732として入手可能であり、コア/シェル構造を有するメチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン。
Si-MBS:三菱レイヨン株式会社から商品名Metablen(商標)S-2130として入手可能な、コア/シェルを有するメチルメタクリレートがグラフトされたシリコーン-ブチルアクリレートゴム。
【0134】
成分E
SAN:INEOS Styrolution GmbH社から商品名LUSTRAN(商標)SAN DN50として販売されるスチレン-アクリロニトリルコポリマー。
【0135】
他の添加剤
PTFE:Chemical Innovation Co., Ltd.社(タイ)から商品名ADS5000として販売されるマスターバッチ。
G2:Shanghai Coke Import社(中国)から商品名G2として販売されるペンタエリスリトールテトラステアレート。
Irganox(商標)B900:BASF社から販売される80%のIrgafos(商標)168及び20%のIrganox(商標)1076の混合物(ここで、Irgafos(商標)168は(トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト)であり、Irganox(商標)1076は(2,6-ジ-tert-ブチル-4-(オクタデカンオキシ-カルボニルエチル)フェノールである)。
【0136】
試験方法
実施例における試験片の物理的特性を以下のように試験した。
【0137】
比較トラッキング指数
比較トラッキング指数(CTI)を、IEC60112:2011に従って決定した。
【0138】
メルトボリュームフローレート(MVR)
メルトボリュームフローレート(MVR)を、ISO 1133:2011に従って、Roell製のZwick 4106機器を用いて300℃又は330℃及び1.2kgの荷重で決定した。
【0139】
曲げ弾性率
曲げ弾性率をISO178:2010に従って2mm/分で決定した。
【0140】
曲げ強さ
曲げ強さをISO178:2010に従って5mm/分で決定した。
【0141】
アイゾットノッチなし衝撃強さ
アイゾットノッチなし衝撃強さを、80mm×10mm×4mmの寸法を有する試験片においてISO180/A:2000(20℃、4mm、5.5J)に従って測定した。
【0142】
燃焼挙動
燃焼挙動を、127mm×12.7mm×1.5mmのバーにおいて、バーを23℃で48時間コンディショニングした後にUL94-2015に従って評価した。
【0143】
ビカット軟化温度
ビカット軟化温度(TVicat)を、ISO 306:2013に従って、Coesfeld Materialtest製のCoesfeld Eco 2920機器を用いて50Nのラム荷重及び120℃/時の加熱速度で、80mm×10mm×4mmの寸法の試験片において決定した。
【0144】
本発明の実施例(IE)1及び実施例2並びに比較例(CE)1~比較例11
表1に列挙される材料を、二軸スクリュー押出機(ZSK-26)(Coperion, Werner and Pfleiderer製)において、225rpmの回転速度、20kg/時の処理量、及び300℃~330℃の機械温度で配合し、造粒した。
【0145】
造粒物を、射出成形機(Arburg製)において300℃~330℃の溶融温度及び60℃~80℃の金型温度で対応する試験片へと加工した。
【0146】
得られた組成物の物理的特性(比較トラッキング指数(CTI)、メルトボリュームフローレート(MVR)、曲げ弾性率、曲げ強さ、アイゾットノッチなし衝撃強さ、燃焼挙動を含む)を試験し、結果を表1にまとめた。
【0147】
【表1】
【0148】
本明細書において使用される場合、ポリカーボネート組成物中のBPTMC単位の重量含有量(CBPTMC/C/W)は、以下のように計算される:
BPTMC/C/W=(CBPTMC/CO/M×MwBPTMC)×Cco/c/w/(CBPTMC/CO/M×MwBPTMC’+CBPA/CO/M×MwBPA
(式中、
BPTMC/C/Wは、ポリカーボネート組成物中のBPTMC単位の重量含有量を表し、
BPTMC/CO/Mは、コポリカーボネート中のBPTMC単位のモル含有量を表し、
wBPTMCは、BPTMC単位の分子量を表し、これは1モル当たりのグラム数で表され、
wBPTMC’は、BPTMC単位及び-C=O-の総分子量を表し、これは1モル当たりのグラム数で表され、
BPA/CO/Mは、コポリカーボネート中のBPA単位のモル含有量を表し、
wBPAは、BPA単位の分子量を表し、これは1モル当たりのグラム数で表され、かつ、
co/c/wは、ポリカーボネート組成物中のコポリカーボネートの重量含有量を表す)。
【0149】
本発明の実施例1を例に挙げると、CoPC-1中のBPTMC単位のモル含有量は70mol%であり、BPA単位のモル含有量は30mol%であり、BPTMC単位の分子量は308g/molであり、BPTMC単位及び-C=O-の総分子量は336g/molであり、BPA単位(-C=O-を含む)の分子量は254g/molであり、CoPC-1はポリカーボネート組成物中に57.6重量%の量で存在するため、本発明の実施例1におけるBPTMC単位の重量含有量は、
(70mol%×308g/mol)×57.6重量%/(70mol%×336g/mol+30mol%×254g/mol)=40重量%
である。
【0150】
難燃剤(BDP)及び耐衝撃性改良剤(MBS又はSi-MBS)と混和されたCoPC-1を含む比較例1、比較例2、比較例6、及び比較例7の各組成物は、難燃剤の含有量がポリカーボネート組成物中12重量%までであっても良好な難燃性を有しない。
【0151】
難燃剤(BDP)及び耐衝撃性改良剤(ABS又はMBS)及びSANと混和されたCoPC-1を含む比較例3及び比較例4の各組成物は、良好な難燃性を有しない。
【0152】
難燃剤(BDP)及び耐衝撃性改良剤(MBS)及びSANと混和されたPC-3を含む比較例5の組成物は、高い比較トラッキング指数を有しない。
【0153】
難燃剤を含まない比較例8~比較例11の各組成物は、良好な難燃性及び高い比較トラッキング指数を有しない。
【0154】
本発明の実施例1及び実施例2によって実証されるように、コポリカーボネート(CoPC-1)、ホモポリカーボネート(PC-3)、及び難燃剤(BDP)を含み、かつ組成物の総重量に対して24重量%以上のBPTMCの含有量を有する組成物は、高い比較トラッキング指数だけでなく、良好な難燃性も有する。
【0155】
本発明の実施例(IE)3~実施例6及び比較例(CE)12~比較例15
同様に、表2に列挙される材料を配合し、得られた組成物の物理的特性を試験し、結果を表2にまとめた。
【0156】
【表2】
【0157】
難燃剤(BDP)及び耐衝撃性改良剤(ABS)及びSANと混和されたPC-3を含む比較例12の組成物は、高い比較トラッキング指数を有しない。
【0158】
ホモポリカーボネート(PC-1又はPC-3)、難燃剤(BDP)、及び耐衝撃性改良剤(ABS)と混和されたCoPC-1を含み、かつ組成物の総重量に対して24重量%未満のBPTMCの含有量を有する比較例13~比較例15の各組成物は、高い比較トラッキング指数を有しない。
【0159】
本発明の実施例3~実施例6によって実証されるように、コポリカーボネート(CoPC-1)、ホモポリカーボネート(PC-3)、及び難燃剤(BDP)を含み、かつ組成物の総重量に対して24重量%以上のBPTMCの含有量を有する組成物は、高い比較トラッキング指数だけでなく、良好な難燃性も有する。
【0160】
本発明の実施例(IE)7~実施例11及び比較例(CE)16~比較例19
同様に、表3に列挙される材料を配合し、得られた組成物の物理的特性を試験し、結果を表3にまとめた。
【0161】
【表3】
【0162】
ホモポリカーボネートを含まず、かつ組成物の総重量に対して24重量%以上のBPTMCの含有量を有する比較例16~比較例19の各組成物は、該組成物が組成物の総重量に対して18重量%までのHPCTPを含むにもかかわらず、良好な難燃性を有しない。
【0163】
本発明の実施例7~実施例11によって実証されるように、コポリカーボネート(CoPC-1又はCoPC-2)、ホモポリカーボネート(PC-2)、及び難燃剤(BDP又はHPCTP)を含み、かつ組成物の総重量に対して24重量%以上のBPTMCの含有量を有する組成物は、高い比較トラッキング指数だけでなく、良好な難燃性も有する。
【国際調査報告】