(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-12
(54)【発明の名称】ビームフォーミングのための方法および装置
(51)【国際特許分類】
H04B 7/06 20060101AFI20240405BHJP
H04W 16/28 20090101ALI20240405BHJP
H04W 24/10 20090101ALI20240405BHJP
H04W 72/542 20230101ALI20240405BHJP
H04B 7/08 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
H04B7/06 960
H04W16/28
H04W24/10
H04W72/542
H04B7/08 810
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565366
(86)(22)【出願日】2022-04-26
(85)【翻訳文提出日】2023-12-21
(86)【国際出願番号】 US2022026256
(87)【国際公開番号】W WO2022232079
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516381806
【氏名又は名称】ブルー ダニューブ システムズ, インク.
【氏名又は名称原語表記】BLUE DANUBE SYSTEMS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】エン, クリス, ツン キット
(72)【発明者】
【氏名】ホッセイニ, セイエドアミルホセイン
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA21
5K067DD43
5K067EE02
5K067EE08
5K067EE10
5K067JJ17
5K067LL11
(57)【要約】
ビームフォーミングアンテナは、所定のユーザに対する信号強度の向上または干渉の低減によってパフォーマンスを向上させるために、セルラネットワークで使用される。ビームフォーミングパターンは本質的に周期的であり、例えば、月曜日の午前8時から午前9時の間に使用されるビームは、同じ時間帯の前の月曜日のビームと類似性がある。有望なビーム候補のリストから、所定の時間に所定のアンテナに対して最も適切なビームをテストし特定する少なくとも1つの方法が提供される。セルラネットワークがユーザにサービスを提供している間、ネットワークは同時に有望ビーム候補の各々をテストし、データを抽出する。抽出されたデータを使用して、ビーム候補リストの中から、特定の時間帯の間使用するために選択された最良のビームを決定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のユーザ機器(UE)と通信するためのフェーズドアレイ通信システムを動作させる方法であって、前記方法は:
通信ビームの第1のセットおよび通信ビームの第2のセットを定義するステップであって、通信ビームの前記第1のセットは、1つまたは複数の異なる指向および/または形状の第1のビームを含み、通信ビームの前記第2のセットは、前記第1のビームとは異なる1つまたは複数の異なる指向および/または形状の第2のビームを含む、ステップと;
動作サイクルを複数回実行するステップであって、前記動作サイクルは、第1のフェーズに続く第2のフェーズを含み、前記第1のフェーズは、第1の期間、通信ビームの前記第1のセットをアクティブ化することを含み;通信ビームの前記第1のセットをアクティブ化する間、通信ビームの前記第1のセットの各通信ビームについて複数のパフォーマンス測定値を取得し、前記第2のフェーズは、第2の期間、通信ビームの前記第2のセットをアクティブ化することを含み;通信ビームの前記第2のセットをアクティブ化する間、通信ビームの前記第2のセットの各通信ビームについて複数のパフォーマンス測定値を取得する、ステップと;
前記動作サイクルを複数回実行し、通信ビームの前記第1のセットおよび前記第2のセットの前記ビームについて取得された前記パフォーマンス測定値の統計的分析を実行するステップと;
どの前記通信ビームのセットが最良の通信パフォーマンスをもたらすかを特定するステップと;
前記最良の通信パフォーマンスを有する前記通信ビームのセットを使用して前記UEと通信するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
すべての前記動作サイクルの間、前記複数のUEとの通信リンクを維持するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
過去の長期データを使用して、通信ビームの前記第1のセットおよび前記第2のセットを選択し、前記過去の長期データは、ユーザの分布および活動レベルの週単位パターンおよび日単位パターンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記最良のビームのパターンは:
前記最良のビームのパターンを進めるためのトーナメントによる一対比較;
前記最良のビームのパターンを特定するためのラウンドロビン方式;または
3つ以上の通信ビームのセットの中の前記最良のビームのパターンを特定するための分散分析
を用いることによって、前記ビームの候補のセットから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記パフォーマンス測定値は、1つまたは複数のパフォーマンスデータを含み、前記パフォーマンスデータは、チャネル品質、ボリューム(データトラフィック量)、ユーザ数、スペクトル効率、セッション数、リソースブロック利用率、スループット、受信電力、および信号品質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の期間および前記第2の期間は持続時間が等しい、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の期間および前記第2の期間は異なる持続時間を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
インターフェースの観点から前記ビームを制御するステップをさらに含み、前記フェーズドアレイ通信システムは、オープン無線アクセスネットワーク(O-RAN)管理プレーン(M-Plane)ビームフォーミング仕様に従うオープンインターフェースを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
所定の場所で、複数の移動局と通信するための通信システムにおいてフェーズドアレイを作動させる方法であって、前記方法は:
曜日および時間帯のタイムスロットを選択するステップと;
前記タイムスロットを複数のサブタイムスロットに分割するステップと;
前記所定の場所について、前記タイムスロット内の前記複数のサブタイムスロットの各々について、データ記憶装置に記憶された過去の長期データおよびユーザ情報に基づいてビーム候補のセットを選択するステップと;
前記フェーズドアレイによって形成された対応する前記ビーム候補のセットに前記サブタイムスロットを循環させるステップであって、サブタイムスロットの各セットは複数回繰り返され、各繰り返しが単一の動作サイクルを形成する、ステップと;
前記複数のサブタイムスロットの対応する各サブタイムスロットが複数回繰り返される間、前記ビーム候補のセットを送信する各サブタイムの受信パフォーマンスデータを取得して記憶するステップと
前記受信パフォーマンスデータを統計的にテストして、前記複数のサブタイムスロットのそれぞれに対して、前記ビーム候補のセットの中から最良のビームパターンを見つけるステップであって、前記受信パフォーマンスデータに基づいて、最良の通信パフォーマンスをもたらす前記最良のビームパターンを選択するステップと;
前記複数のサブタイムスロットのそれぞれに対する前記最良のビームパターンを使用して前記移動局と通信するステップと
を含む、方法。
【請求項10】
前記フェーズドアレイを構成して、前記最良のビームパターンを生成するステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
すべての前記動作サイクルの間、前記複数のUEとの通信リンクを維持するステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
すべての動作サイクルを完了する時間は、1時間から1分未満までの範囲である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記タイムスロットでは、前記ビーム候補のセットを選択するための過去の長期データが使用され、前記過去の長期データは、ユーザの分布および活動レベルの週単位パターンおよび日単位パターンを含んでいる、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記最良のビームパターンは:
前記最良のビームパターンを進めるためのトーナメントによる一対比較;
前記最良のビームパターンを特定するためのラウンドロビン方式;または
3つ以上の通信ビームのセットの中の前記最良のビームパターンを特定するための分散分析
を用いることによって、前記ビーム候補のセットから選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記テストでは、通信ビームの2つのセットのうちの1つを選択するためにt検定を利用する、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
所定の場所で複数の移動局と通信するための通信システム内のビームフォーミングアクティブアンテナ無線ユニットであって:
前記複数の移動局への複数の送受信ビームをサポートするように構成された複数のアンテナ素子を備え;
同じ曜日および同じ時間帯における以前の期間を含む情報に基づいてビーム候補のリストが特定され;
各ビーム候補は前記ビーム候補のリストに基づいており、前記複数のアンテナ素子は、各前記ビーム候補からのデータを用いて構成され;
前記複数のアンテナ素子は、前記ビーム候補のリスト内の前記ビーム候補の各々に対して、第1の動作サイクル中に少なくとも1回構成され、2サイクル以上のパフォーマンスデータが収集され;
前記パフォーマンスデータを用いて、前記ビーム候補のリストを絞り込み、前記ビーム候補のリストの中から最良のビームを得る統計的パフォーマンステストフレームワークと;
前記同じ曜日および前記同じ時間帯の下で記憶されたデータ記憶装置内の前記ビーム候補のリストに追加される前記移動局に通信するために選択された前記最良のビームと、
を備える、ビームフォーミングアクティブアンテナ無線ユニット。
【請求項17】
前記情報は、過去の長期的環境、前記場所、過去のユーザデータ、および過去のネットワークデータをさらに含む、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記ビーム候補のそれぞれは、ビームステアリング角、そのビーム幅、必要とされるテーパリング、メインローブの送信電力、およびヌルの適切な配置を含む、請求項16に記載の装置。
【請求項19】
前記最良のビームのパターンは:
前記最良のビームのパターンを進めるためのトーナメントによる一対比較;
前記最良のビームのパターンを特定するためのラウンドロビン方式;または
3つ以上の通信ビームのセットの中の前記最良のビームのパターンを特定するための分散分析
を用いることによって、前記ビーム候補のセットから選択される、請求項16に記載の装置。
【請求項20】
前記動作サイクルの持続時間は、1分未満から1時間まで変化する、請求項16に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年4月26日に出願された「Beam Optimization Method」と題する米国仮特許出願第63/179,668号の利益を主張するものであり、米国仮特許出願第63/179,668号は、その全文が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
セルラネットワークにおいて、ビームフォーミングアンテナを使用してパフォーマンスを向上させる場合(例えば、所定のユーザに対する信号強度の向上または干渉の低減)、所定のアンテナに対して所定の時点で最も適切なビームをどのように特定するかという問題が浮上する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
一般に、最良のビームは、無線伝搬環境、ユーザの位置、および所定の時間におけるユーザの送受信活動レベルに依存し得る。これらのパラメータの多くは完全には分かっておらず、事実上、統計的特徴付けを用いた予測量として扱われる。例えば、無線伝搬はすべての散乱体の正確な位置および反射特性に依存するが、その知識を完全に得ることは事実上不可能である。同様に、次のビームフォーミングの瞬間のためのユーザの正確な位置および活動は、事実上、必然的に予測的なものである。
【0004】
本明細書で開示されるのは、ライブネットワークパフォーマンスおよび位置データとの相互作用に基づく閉ループビームフォーミング制御である。このようなリアルタイムのビームフォーミング適応を活かして、容量、カバレッジ、およびネットワークの信頼性を改善し、将来の完全に自律的な無線アクセスネットワーク(RAN)全体のオーケストレーションの基礎を形成することができる。ライブネットワークパフォーマンスおよび位置データとの相互作用に基づく閉ループビームフォーミング制御は、あるユーザが他のユーザと通信できるネットワークが「生きている」間同時に行われる。
【0005】
無線パフォーマンスを向上させるための最良のビームを特定するための方法論の少なくとも一実施形態について説明する。具体的には、2段階の方法論を利用する実施形態を提示する。第1の段階では、有望なビーム候補のリストが過去の長期的環境およびユーザ情報に基づいて特定される。第2の段階では、統計的パフォーマンステストのフレームワークを使用し、ビームセット候補を循環させることによって収集したパフォーマンスデータの統計的分析に基づいて、このリストをビーム候補の中から最良のビームに絞り込む。
【0006】
別の実施形態は、複数のユーザ機器(UE)と通信するためのフェーズドアレイ通信システムを動作させる方法であって、当該方法は:通信ビームの第1のセットおよび通信ビームの第2のセットを定義するステップであって、当該通信ビームの第1のセットは、1つまたは複数の異なる指向および/または形状の第1のビームを含み、当該通信ビームの第2のセットは、当該第1のビームとは異なる1つまたは複数の異なる指向および/または形状の第2のビームを含む、ステップと;動作サイクルを複数回実行するステップであって、当該動作サイクルは、第1のフェーズに続く第2のフェーズを含み、当該第1のフェーズは、第1の期間、当該通信ビームの第1のセットをアクティブ化することを含み;当該通信ビームの第1のセットをアクティブ化する間、当該通信ビームの第1のセットの各通信ビームについて複数のパフォーマンス測定値を取得し、当該第2のフェーズは、第2の期間、当該通信ビームの第2のセットをアクティブ化することを含み;当該通信ビームの第2のセットをアクティブ化する間、当該通信ビームの第2のセットの各通信ビームについて複数のパフォーマンス測定値を取得する、ステップと;当該動作サイクルを複数回実行し、当該通信ビームの第1のセットおよび第2のセットの当該ビームについて取得された当該パフォーマンス測定値の統計的分析を実行するステップと;どの当該通信ビームのセットが最良の通信パフォーマンスをもたらすかを特定するステップと;当該最良の通信パフォーマンスを有する当該通信ビームのセットを使用して当該UEと通信するステップとを含む、方法である。この方法は、すべての当該動作サイクルの間、当該複数のUEとの通信リンクを維持するステップをさらに含んでいてもよい。この方法は、過去の長期データを使用して、通信ビームの当該第1のセットおよび当該第2のセットを選択し、当該過去の長期データは、ユーザの分布および活動レベルの週単位パターンおよび日単位パターンを含んでいてもよい。この方法では、最良のビームパターンは:当該最良のビームパターンを進めるためのトーナメントによる一対比較;当該最良のビームパターンを特定するためのラウンドロビン方式;または3つ以上の通信ビームのセットの中の当該最良のビームパターンを特定するための分散分析を用いることによって、当該ビーム候補のセットから選択されてもよい。この方法では、当該パフォーマンス測定値は、1つまたは複数のパフォーマンスデータを含み、当該パフォーマンスデータは、チャネル品質、ボリューム(データトラフィック量)、ユーザ数、スペクトル効率、セッション数、リソースブロック利用率、スループット、受信電力、および信号品質を含んでいてもよい。この方法では、当該第1の期間および当該第2の期間は持続時間が等しくてもよい。この方法では、当該第1の期間および当該第2の期間は異なる持続時間を有していてもよい。この方法は、インターフェースの観点から当該ビームを制御するステップをさらに含み、当該フェーズドアレイ通信システムは、オープン無線アクセスネットワーク(O-RAN)管理プレーン(M-Plane)ビームフォーミング仕様に従うオープンインターフェースを特徴としていてもよい。
【0007】
別の実施形態は、所定の場所で、複数の移動局と通信するための通信システムにおいてフェーズドアレイを作動させる方法であって、当該方法は:曜日および時間帯のタイムスロットを選択するステップと;当該タイムスロットを複数のサブタイムスロットに分割するステップと;当該所定の場所について、当該タイムスロット内の当該複数のサブタイムスロットの各々について、データ記憶装置に記憶された過去の長期データおよびユーザ情報に基づいてビーム候補のセットを選択するステップと;当該フェーズドアレイによって形成された対応する当該ビーム候補のセットに当該サブタイムスロットを循環させるステップであって、サブタイムスロットの各セットは複数回繰り返され、各繰り返しが単一の動作サイクルを形成する、ステップと;当該複数のサブタイムスロットの対応する各サブタイムスロットが複数回繰り返される間、当該ビーム候補のセットを送信する各サブタイムの受信パフォーマンスデータを取得して記憶するステップと;当該受信パフォーマンスデータを統計的にテストして、当該複数のサブタイムスロットのそれぞれに対して、当該ビームパターン候補のセットの中から最良のビームパターンを見つけるステップであって、当該受信パフォーマンスデータに基づいて、最良の通信パフォーマンスをもたらす当該最良のビームパターンを当該選択するステップと;当該複数のサブタイムスロットのそれぞれに対する当該最良のビームパターンを使用して当該移動局と通信するステップとを含む、方法である。この方法は、当該フェーズドアレイを構成して、当該最良のビームパターンを生成するステップをさらに含んでいてもよい。この方法は、すべての当該動作サイクルの間、当該複数のUEとの通信リンクを維持するステップをさらに含んでいてもよい。この方法では、すべての動作サイクルを完了する時間は、1時間から1分未満(a fraction of a minute)までの範囲であってもよい。この方法では、当該タイムスロットは、当該ビーム候補のセットを選択するために過去の長期データを使用し、当該過去の長期データは、ユーザの分布および活動レベルの週単位パターンおよび日単位パターンを含んでいてもよい。この方法では、当該最良のビームパターンは:当該最良のビームパターンを進めるためのトーナメントによる一対比較;当該最良のビームパターンを特定するためのラウンドロビン方式;または3つ以上の通信ビームのセットの中の当該最良のビームパターンを特定するための分散分析を用いることによって、当該ビーム候補のセットから選択されてもよい。この方法では、当該テストは、通信ビームの2つのセットのうちの1つを選択するためにt検定を利用してもよい。
【0008】
別の実施形態は、所定の場所で、複数の移動局と通信するための通信システム内のビームフォーミングアクティブアンテナ無線ユニットであって:当該複数の移動局への複数の送受信ビームをサポートするように構成された複数のアンテナ素子を備え;同じ曜日および同じ時間帯における以前の期間を含む情報に基づいてビーム候補のリストが特定され;各ビーム候補は当該ビーム候補のリストに基づいており、当該複数のアンテナ素子は、各当該ビーム候補からのデータを用いて構成され;当該複数のアンテナ素子は、当該ビーム候補のリスト内の当該ビーム候補の各々に対して、第1の動作サイクル中に少なくとも1回構成され、2サイクル以上のパフォーマンスデータが収集され;当該パフォーマンスデータを用いて、当該ビーム候補のリストを絞り込み、当該ビーム候補のリストの中から最良のビームを得る統計的パフォーマンステストフレームワークと;当該同じ曜日および当該同じ時間帯の下で記憶されたデータ記憶装置内の当該ビーム候補のリストに追加される当該移動局に通信するために選択された当該最良のビームと、を備えた、ビームフォーミングアクティブアンテナ無線ユニットである。この装置では、当該情報は、過去の長期的環境、当該場所、過去のユーザデータ、および過去のネットワークデータをさらに含んでいてもよい。この装置では、当該ビーム候補それぞれが、ビームステアリング角、そのビーム幅、必要とされるテーパリング、メインローブの送信電力、およびヌルの適切な配置を含んでいてもよい。この装置では、最良のビームパターンは:当該最良のビームパターンを進めるためのトーナメントによる一対比較;当該最良のビームパターンを特定するためのラウンドロビン方式;または3つ以上の通信ビームのセットの中の当該最良のビームパターンを特定するための分散分析を用いることによって、当該ビーム候補のセットから選択されてもよい。この装置では、当該サイクルの持続時間は、1分未満から1時間まで変化してもよい。
【0009】
別の実施形態は、複数の移動局(UE)と通信するためのフェーズドアレイ通信システムを動作させる方法であって、方法は:通信ビームの第1のセットおよび通信ビームの第2のセットを定義するステップであって、通信ビームの第1のセットは、1つまたは複数の異なる指向および/または形状の第1のビームを含み、通信ビームの第2のセットは、第1のビームとは異なる1つまたは複数の異なる指向および/または形状の第2のビームを含む、ステップと;動作サイクルを複数回実行するステップであって、動作サイクルは、第1のフェーズに続く第2のフェーズを含み、第1のフェーズは、第1の期間、通信ビームの第1のセットをアクティブ化することを含む、ステップと;通信ビームの第1のセットをアクティブ化する間、通信ビームの第1のセットの各通信ビームについて複数のパフォーマンス測定値を取得するステップであって、第2のフェーズは、第2の期間、通信ビームの第2のセットをアクティブ化することを含む、ステップと;通信ビームの第2のセットをアクティブ化する間、通信ビームの第2のセットの各通信ビームについて複数のパフォーマンス測定値を取得するステップと;動作サイクルを複数回実行した後、通信ビームの第1のセットおよび第2のセットのビームについて取得されたパフォーマンス測定値の統計的分析を実行し、どの通信ビームのセットが最良の通信パフォーマンスをもたらすかを特定するステップと;特定されたビームのセットを使用してUEと通信するステップとを含む、方法である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】本開示の一実施形態による、
図1AのビームセットAおよび
図1BのビームセットBの2つのビーム候補セットを示す。
【
図1B】本開示の一実施形態による、
図1AのビームセットAおよび
図1BのビームセットBの2つのビーム候補セットを示す。
【0011】
【
図2A】本開示の一実施形態による、比較用パフォーマンス測定値を収集するための交互ビームパターンを示す。
【
図2B】本開示の一実施形態による、比較用パフォーマンス測定値を収集するための交互ビームパターンを示す。
【0012】
【
図3A】本開示の別の実施形態によるネットワークデータフィードバックに基づくビーム最適化プロセスの実施形態を示す。
【
図3B】本開示の別の実施形態によるネットワークデータフィードバックに基づくビーム最適化プロセスの実施形態を示す。
【0013】
【
図4】本開示の一実施形態を利用した、異なるタイムスロットでの交互ビームパターンに対応する測定値のセットを示す。
【0014】
【
図5】本開示のさらに別の実施形態による閉ループビームフォーミングのためのネットワークおよびモバイルユーザデータを示す。
【0015】
【
図6】本開示の別の実施形態による、無線周波数(RF)ビームをトラフィックホットスポットに集中させるように向けることによるスペクトルの改善を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ビームフォーミング候補
所定の時間における無線環境、ユーザ位置、およびユーザ活動は、事前に正確に知ることはできないものの、それらの可能な実現は、過去の長期データに基づいて特徴付けることができることが多い。例えば、無線伝搬は、過去のドライブテストまたは実伝搬データに基づくことができる。同様に、ユーザの分布および活動レベルは、しばしば強い週単位パターンを示し、それらの実現は、過去の傾向からの外挿法による推定に基づいて予測してもよい。例えば、月曜日の朝における所定の地域のユーザ分布および活動は、同じ曜日および時間帯における以前の期間から収集したデータに基づいて予測してもよい。
【0017】
この収集されたデータのコンパイルにより、週単位の過去の長期データおよびユーザ情報が提供される。このようなデータおよび情報は、所定の日の1つまたは複数の所定の時間、1時間未満(a fraction of hours)、または1分未満の間の周期的挙動を提供する。換言すれば、所定の月曜日の午前8時~午前9時の間、ある近辺の基地局で収集されたデータおよび情報は、その前の月曜日またはそれ以前の任意の月曜日に週単位で収集された同じデータおよび情報と同様の特性を持つ。その他の周期的パターンも存在する。平日(月曜日から金曜日)のある時刻に収集されたデータおよび情報も類似性があるが、週末(土曜日および日曜日)に収集されたデータおよび情報は、いくつかの点で平日に収集されたものと異なっている。
【0018】
これらの過去の長期データが収集されれば、所定の実現に対して最適化されたビームが見つけられ得る。これは、その開示が本発明において参照することによりその全文が組み込まれるS.Shahsavari,S.A.Hosseini,C.Ng,E.Erkip,“Adaptive Hybrid Beamforming with Massive Phased Arrays in Macro-Cellular Networks,”IEEE 5G World Forum,2018に記載されたビーム最適化法を使用することによって行うことができる。過去のデータは、予測的ではあるが決定的なものではないため、そのような過去のデータの様々なバリエーションおよび組み合わせが、対象の時間における可能な現実化されたスペクトルを生成するために使用されてもよい。その後、この可能なスペクトルの現実化のために、ビーム最適化法を使用して、環境およびユーザ条件の所与の現実に対応する最適化ビームを生成する。上記最適化ビームはそれぞれ、段階2のビームテストプロセスにおいて、有望なビーム候補の複数のセットを形成するために収集される。
【0019】
統計的ビームテスト
段階2の目的は、無線環境、ならびにユーザ分布および活動レベルの固有の不確実性を仮定して、所定の時間の候補ビームセットのコレクションの中から最良のビームセットを特定することである。統計的検定のフレームワークが所定の時間に対する最適なビームセットを特定するために採用される。説明を簡単にするため、以下の説明では、2つの候補ビームセット、すなわちビームセットAおよびビームセットBのうち、より優れたビームセットを特定することに焦点を当てる。本方法は、各候補ビームセットのビームに関するパフォーマンスメトリクスの測定値を取得することを含む。
【0020】
ビームフォーミングパフォーマンスに影響を与える要因(例えば、無線伝搬、ユーザ分布、およびユーザ活動レベル)には説明できない変動があるため、各ビームセットに関連する測定値のセットも変動を呈する。これに対処するため、各候補ビームセットについて、限られた期間で複数回測定が行われ、それによって、一方はビームセットA用、他方はビームセットB用の2セットの測定値が生成される。その後、統計的平均と、2セットの測定値間の変動との関係を考慮に入れた統計的t検定が、2セットの測定値に適用される。t検定は、2つのグループの平均値間に有意差があるかどうかを判定するために使用される推測統計学の一種である。一般に、t検定を計算するには、3つの重要なデータ値、すなわち、各データセットの平均値との差(平均差と呼ばれる)、各グループの標準偏差、および各グループのデータ値の数が必要である。これは周知の検定であり、その詳細は一般に入手可能な情報源で見つけることができる。
【0021】
このプロセスを説明するために使用される
図1Aおよび
図1Bは、2つの狭い有向通信ビーム12aおよび12b(ただし、3つ以上のビームを使用してもよい)を同時に生成することができるフェーズドアレイアクティブアンテナシステム10を示す。
図1Aに示す一実施形態では、フェーズドアレイは、2つのビーム12aおよび12bからなるビームセットAを生成しており、
図1Bでは、フェーズドアレイは、ビームセットAのビームとは方向、形状、電力分布、または、これらの組み合わせが異なる2つの他のビーム14aおよび14bからなるビームセットBを生成している。この2つのビームセットは、上述の段階1の操作中に使用された過去のデータまたは情報に基づいて特定された候補ビームセットであり、同様の状況、例えば、季節、時間帯、ユーザの数の下で最適なカバレッジを提供することが歴史的に示されているビームセットを表している。
【0022】
さらなる実施形態では、
図1に描かれたビーム(12a、12b、14a、14b)はそれぞれ、2つのサブビームをさらに含んでいてもよく、これらのサブビームの各々は、互いに直交するように偏光されている。例えば、第1のサブビームは垂直に偏光されるのに対し、第2のサブビームは水平に偏光される。さらに、2つのサブビームは、直交を保ちながら、それらの共通の軸を中心に回転させることができる。サブビーム間の直交(90°)は、第1のサブビームの通信信号が、通信信号全体の帯域幅を実質的に2倍の帯域幅にするような他のサブビームの通信信号と干渉するのを防ぐ。
【0023】
2つのセットのどちらが現在の期間に設定された最適なビームセットであるかを決定するために、操作の段階2が実行され、その間に各セットおよびそのセット内の各ビームに関するデータが取得される。より具体的には、
図1に描かれた例を参照すると、まず、ビームセットAのビーム12aおよび12bがアクティブ化され、特定のパフォーマンスメトリクス、例えばセッション数の測定値が取得され、記憶される間に、サービス対象セクタ内の移動局またはユーザ機器(UE)との通信に使用される。この例では、
図2Aに示すように、ビームセットAのビームは15分に等しい期間アクティブ化される。その後、次の15分間にビームセットBのビームがアクティブ化され、特定のパフォーマンスメトリクスの測定値が取得され記憶される間、UEとの通信に使用される。記載された実施形態では、このシーケンスが少なくとももう1回繰り返される。すなわち、ビームセットAがアクティブ化され、データが取得された後、再びビームセットBがアクティブ化され、さらにパフォーマンスデータが取得される。要するに、このフェーズの間、セルラネットワークにおけるビームセットのアクティブ化と、それに対応するパフォーマンスデータの取得とが交互に行われる。
図2Aに示す記載の実施形態では、1時間の間、ビームセットAおよびビームセットBが、所定のタイムスロット(15分、1分、または1分未満のタイムスロット)単位で交互にアクティブ化される。このシーケンスは、所望の数の測定値が得られるまで繰り返される。測定データは、その後、上記統計分析フレームワーク(例えばt検定)を用いてさらに処理される。
【0024】
t検定は、2つのサンプルの標準偏差を考慮しながら、2つのサンプル間の平均(または統計的平均)を比較する。例えば、パフォーマンスメトリクスの測定値の平均は、各セットについて計算され、そのセットのすべてのビームの測定値が集計される。統計学的に有意であるためには、標準偏差に対して、一方のサンプルの統計的平均が他方のサンプルの統計的平均よりも大きいことが望ましい。t検定により、一方の測定値のセットが他方の測定値のセットよりも優れていると確信を持って結論付けられた場合、対応するビームセットが、2つの候補セットのうちでより優れたビームセットとされる。また、そのビームセットは、その後の期間中、サービス対象エリアのUEとの通信に使用される。
【0025】
他の実施形態では、複数の狭い有向通信ビームは、以下の実施形態に示されるように、3つ以上のビーム候補から構成されてもよい。
【0026】
一実施形態では、ビームセット候補の数が2より多い場合、繰り返される2ビーム比較を用いても、またはテストフレームワークを一般化して一度に複数のビームセットを比較してもよい。単純に拡大すると、トーナメントのように2つずつの比較を適用することを含み、例えば、A、B、C、Dの比較は、A対B、C対D、次いでそれぞれの勝者間の最終比較となる。あるいは、別の実施形態では、ビーム候補の数が2より多い場合、ラウンドロビン方式でアクティブ化することができ:例えば、ビームセット候補が3つの場合、第1のタイムスロットの間ビームセットAをアクティブ化し、第2のタイムスロットの間ビームセットBをアクティブ化し、第3のタイムスロットの間ビームセットCをアクティブ化し、その後ビームセットに戻る。第4のタイムスロットでビーム、など。さらなる実施形態では、対象のメトリクスに関する統計的検定は、複数の入力を受け入れる統計的検定、例えば複数の測定値のセットでの分散分析(ANOVA)法を使用して実行してもよい。ANOVAは、比較が複数の(すなわち、2より大きい)候補の間で行われる上記のt検定と似ているが,より一般的なものである。統計的検定は、複数回の検定、すなわち、3回以上の測定を必要とする。運用上、アクティブアンテナの実地試験では、通常4~8回の測定が行われる。
【0027】
実際、より多くの測定を用いること(多ければ多いほど良い)と、タイムリーな測定(例えば、月曜日の午前9時~午前10時など、対象とする特定の期間に関連する測定)を行うこととはトレードオフの関係にある。例えば、午前9時から午後9時までのすべての(すなわち、12時間の)測定値を使用する場合、より多くの測定値が得られるが、異なる期間の測定値が混在することにもなるため、特に午前9時から午前10時のビームを標的とし最適化することはできない。
【0028】
運用上、実地試験では、通常、1時間から2時間の期間で収集された測定値が使用された。しかし、どの期間が最適かは、環境およびその変化の速さによる。
【0029】
図2Aに示すように、上記実施形態では、「単純な」方法、例えば、ビームセットAを15分間、次にビームセットBを15分間、次にビームセットAを15分間というような(すなわち、A、B、A、B、...)交互のビームパターンをとる。しかし、ビームセット候補を(B、A、A、B、...)などの他の任意の順序にすることもできる。この順序は、無作為化してもよく:すなわち、各期間に無作為にビームセットAまたはビームセットBのいずれかを選択してもよい。重要なのは、この順序は、ある継続時間(例えば、1~2時間)、ビームセットAおよびビームセットBの十分な測定値を収集するため、ビームはどんな任意の順序でもスケジュールされ得る。
【0030】
通常、ビーム切り替えの間隔はできるだけ短くしたいため、異なるビームセット候補で条件は類似している。理想的には、その期間は15分間(またはさらに良ければ5分間)である。ネットワーク機器が、特定の時間間隔(通常、1時間毎、15分毎、5分毎、1分毎、または1分未満(秒))でのデータ収集しかサポートしないという制限がある。データ捕捉は貴重な計算リソースを使用する;一実施形態における目標の1つは、ユーザが使用する通信チャネルの特性を実質的に劣化させないようにしながら、できるだけ多くのデータを捕捉することである。一方、このような状況では、最も長い有効期間は1時間であり得る。ビーム切り替え期間が1時間よりも長い場合、1時間経過後に環境(例えば、ユーザの位置)が変化しすぎて、収集したデータの価値が低下するか、または代表的でなくなることが懸念される。
【0031】
図2Bは、「単純」で無作為な、例えば、サイクル期間にビームセットAを10分間、次にビームセットCを10分間、次にビームセットAを10分間、次にビームセットBを10分間というような(すなわち、A、C、A、B、...)交互の複数のビームパターンの別の実施形態を示す。他の実施形態では、時間間隔をさらに1分、さらにはそれ未満に短縮してもよい。時間間隔が短くなるにつれて、サイクル期間全体にわたって捕捉されたすべてのデータを保持するためのデータ記憶容量は増加する。
【0032】
さらに、いくつかの実施形態では、ビームセットのアクティブ化期間は一定である必要はなく、データ収集フェーズを通じて変化してもよいことに留意すべきである。
【0033】
上記方法を実施するために使用されるステップのより完全な図を
図3Aおよび
図3Bに示す。
【0034】
図3Aのプロセスは入力(破線の箱の中に示される)を必要とする。入力パラメータ31のいくつかを示す:ビーム候補、最適化されるセクタ、切り替え期間、および訓練期間。さらに、セクタ毎容量およびセクタ毎データボリュームなどの別のカテゴリ(パフォーマンス指標32)からの入力も必要である。
【0035】
31の入力が送られた初期化ブロック33では、決定ブロック34(
図3B)の出力により与えられたノードAが、2つのビームセットAおよびBを選択する。初期化ステップは引き続き、候補リストから新しいビームセットを選択できることを示す決定ブロック34の出力によって提供された入力ノードBにより、ビームセットAを全セクタに適用する。ビームセットが選択されると、プロセスはビーム訓練ブロック35へと続き、タイマを0に初期化する。
【0036】
タイマ=0では、全セクタでビームセットAまたはBに切り替え、これによりタイマは切り替え期間になる(t=t+切り替え期間)まで待機し、t=訓練期間であるかどうかを判定する。もしそうでなければ、もう一方のビームセットに切り替え、データを収集し、切り替え期間が終了するまで待機する。t=訓練期間である場合、訓練期間が終了し、ステップ「セクタ毎のビームセットAおよびBの切り替え期間にわたってデータボリュームを平均する」に進み、平均データボリュームを決定する。
【0037】
上記の説明では単純平均を含むが、出来高加重平均または他の集計方法(例えば合計の比率)にも一般化できる。
【0038】
平均データボリュームに非対称性がある場合(いずれかのサイトのサブセクタ間で1:10を超えるボリューム非対称性がある)、ノードCに進む。決定ブロックでは、「両方のビームセットで非対称性があるか?」を確認する。そうでない場合は、「非対称ビームを捨て」、「候補から新しいビームセットを選択」し、ノードBに進む。次に「全セクタにビームセットAの対応するビームを適用する」。しかし、「両方のビームセットに非対称性がある?」が真であれば、ノードAに進み、「ビーム候補から2つのビームセットAおよびBを選択」し、次いで先のようにプロセスが進む。
【0039】
そうでなければ、平均データボリュームに非対称性がない場合、「切り替え期間毎に、ビームセット毎の全セクタの容量を加算」し、次いで「ビームセットAおよびBの容量和のt検定を行う」。次に、「P値<0.05?」が偽であるかどうかを判定する。P値はt検定の出力パラメータである。そうであれば、ノードDに進む。この時点で、「ビームセットAまたはBを無作為に選択し、それを捨て」、次に「候補から新しいビームセットを選択」し、先のように続ける。
【0040】
しかしながら、「P値<0.05?」が真であれば、ノードEに進む。ビームセットから、より平均容量が高いものを選択する。最適化が中止された場合、「勝ったビームセットを適用する」。最適化を継続する場合、「勝者を残し敗者を捨て」、「候補から新しいビームセットを選択」し、次いで先のように続ける。
【0041】
パフォーマンスデータには、チャネル品質、ボリューム(データトラフィック量)、ユーザ数、スペクトル効率、セッション数、リソースブロック利用率、スループット、受信電力、信号品質といったメトリクスを使用できる。これらのメトリクスの測定値はネットワーキング機器(例えば、セルラ基地局のベースバンドプロセッサ)によって記録され、無線オペレータによって収集され、タイムスタンプされる。これらの従来のメトリクスは、最も有用なメトリクスであり得る。時々使用される他のメトリクスには、ランクインジケータ(RI)、チャネル品質インデックス(CQI)、基準信号受信電力(RSRP)、基準信号受信品質(RSRQ)、タイミングアドバンス(TA)、および変調符号化方式(MCS)が挙げられる。
【0042】
また、上記実施形態では、比較されるビームのセットであって、独立したビームではないビームのセットであるため、ビームセットAのビーム数はビームセットBのビーム数と同じである必要はないことに留意されたい。例えば、単一のセクタと2つのセクタの構成を比較する場合、ビームセットAは単一ビームであるのに対し、ビームセットBは2つ以上のビームを有していてもよい。
【0043】
別の実施形態では、他の望ましくない特性を持つ結果を排除するためにフィルタが採用され得ることを含む。例えば、あるビームセットは、t検定によれば、より良いパフォーマンスであることが証明され得るが、サポートされるボリューム(またはユーザ数)が不十分であることがあり、この場合、ボリューム(またはユーザ数)は、ある最小要件または閾値を満たさない結果を拒絶するフィルタとして使用され得る。
【0044】
さらに、測定期間を形成するために、同じ曜日/時間帯または他の同様のグループ分けがまとめられてもよいことが理解されるべきである。例えば、複数の月曜日の午前9時から午前10時までのビームセットAの全測定値は、(例えば、複数の月曜日の朝の時間帯が全て同様の無線伝搬およびユーザ条件であると、ネットワークオペレータが考える場合)同じ測定値のセットに属すると考えてもよい。
【0045】
ライブセルラネットワークのケーススタディ
上述した統計的ビームテストおよび選択技術に基づき、大規模多入力多出力(MIMO)展開におけるほぼリアルタイムのネットワークおよびユーザデータのフィードバックに基づいてRFビームが最適化された結果が示される。2つのビームフォーミングアクティブアンテナ無線ユニット(RU)が、ある都市の繁華街において、高度無線サービス(AWS)の周波数分割複信(FDD)周波数帯域に配置され、それらは、そこではセル間干渉管理のためのビームフォーミング技術の研究を可能にするクラスタを形成するために互いに隣接して配置されている。ビームフォーミングアクティブアンテナは、従来のパッシブアンテナに似た72”x14”のフォームファクタを有していた。これは、4つの送信(TX)ビームおよび4つの受信(RX)ビームをサポートし、そこでは、各ビーム(TXおよび/またはRX)は独立して制御でき、TXの総電力は160Wである。アクティブアンテナには96のアンテナ素子(4列×12行×2偏波)があり、各アンテナ素子の位相および振幅の設定は各ビーム毎に個別にデジタル制御することができる。これらの位相および振幅の設定により、制御ビームのステアリング角(仰角および方位の両方)、ビーム幅(例えば、広いビームまたは狭いビーム)、テーパリング(スライドローブレベルに影響する)、ビームのメインローブの送信電力、さらにヌル(すなわち、ビームのローブ間の切り欠き)の配置場所を制御することができる。ビームを制御するためのインターフェースの点から、アクティブアンテナRU(無線ユニット)は、オープン無線アクセスネットワーク(O-RAN)の管理プレーン(M-Plane)ビームフォーミング仕様に準拠したオープンインターフェースを備え、拡張可能なマーク付け言語(XML)ベースのビーム構成要求を受け付けるサービス指向アーキテクチャを有する。特に、仰角および方位のビーム傾斜角はM-Planeのビームフォーミングメッセージを通じて指定でき、より高度なビーム形状制御はM-Planeのカスタムビーム構成により達成できる。M-Planeは、ネットワークサブシステムの一部を構成し、監視し、管理し、サービスを配信する。
【0046】
前述の「ライブネットワークパフォーマンスおよび位置データ」および「ライブセルラネットワークのケーススタディ」で使用される「ライブ」という用語は、ネットワークがユーザデータおよびトラフィックを伝送しているアクティブな使用中にネットワークのテストが行われることを示唆している。すなわち、ネットワークの動作がテストされている間、RUは同時にユーザトラフィックを伝送する。アクティブアンテナRUは、複数のサイクルにわたって有望なビーム候補の全リストのリアルタイムビームフォーミングを実行する。当該有望なビーム候補の各々のデータは収集され、段階2で当該有望な候補リストの中から最良のビームを決定するために使用される。
【0047】
パッシブアンテナからの広いビームの結果と、上記ビーム最適化手順によって得られたビームの1つである最適化ビームの結果とを比較した
図4に、ネットワークおよびモバイルユーザデータのサンプルが示されている。ネットワークデータ(例えば、セッション数、総ボリューム、リソースブロック利用率)およびユーザデータ(例えば、受信電力、信号品質、スループット)のコレクションは、閉ループビーム最適化アルゴリズムの入力として使用されるために利用可能である。ネットワークおよびユーザデータはさらに角度ビンに局所化され、メトリクスは角度ビンの小さなエリア内に寄与するユーザのみでフィルタリングされた。このように、ビームフォーミング最適化アルゴリズムは、セルラネットワークの位置特定メトリクス(角度ビンの解像度まで)を入力として効果的に使用することができた。
【0048】
図4は、通信チャネルの品質を評価するチャネル品質インジケータ(CQI)(左上のチャート)を示す。濃いボックスはビームセットAに相当し、異なる8回の測定を示す2時間にわたりビームセットB(薄いボックス)よりも低いCQIを有する。ユーザ数のチャートが左下のチャートに示される。このヒストグラムは、同じ2時間の間に、ビームセットAがビームセットBよりも多くのユーザにサービスを提供していることを示す。同じ2時間のデータボリューム(GB単位)は、右上のヒストグラムに示されている。最後に、右下のヒストグラムでは、同じ2時間にわたるビームセットAおよびBの両方のスペクトル効率を比較できる。
【0049】
図5は、ビームフォーミングアクティブアンテナRUが配備されたセルサイト周辺の場所におけるセッション数を示す。セッション数が多い場所は、アクティブユーザが高密度で集中しているトラフィックホットスポット(丸で囲んだエリア51を参照)と考えてもよい。これらのトラフィックホットスポットにRFビームをステアリングすることにより、ユーザが最も集中している場所の信号品質(例えば、基準信号受信電力、すなわちRSRP)を向上させることが可能である。さらに、複数の隣接するビームフォーミングアクティブアンテナRUが配備されているエリアでは、セルラネットワークのセル間干渉を緩和するために、異なるセルからのビームを同じ場所に向けることを回避するようにビームステアリング角度をさらに共同で最適化することが可能である。
【0050】
図5を参照すると、各角度ビン(所定の方位におけるアンテナからの所定の距離)は、特定の地理的領域における対象測定値を表す。左端の列のサブ図は、パッシブアンテナのセッション数(上のサブ図)および基準信号受信電力(RSPR)(下のサブ図)を示す。パッシブアンテナは広いエリアをカバーし、トラフィックホットスポット(セッション数が多い場所)にはそのRFエネルギーを向けないため、これに対応して、トラフィックホットスポットではRSRPの受信電力レベルが低い(丸で囲んだ領域52参照)ことが見てとれる。RSRPはこのエリア内では約-111dbmであり;さらに、より大きな破線エリア53内では、平均RSRPは-103dbmである。
【0051】
右端の列のサブ図に示されるビームフォーミングアンテナ(BeamCraft)はトラフィックホットスポット54(上のサブ図)に対してそのRFエネルギーを最適化しており、それらのトラフィックホットスポットはより高いRSRP55(下のサブ図)を観測している。ビームフォーミングアンテナは狭いエリアに対応し、トラフィックホットスポット(セッション数が多い場所)にそのRFエネルギーを向けるため、これに対応して、それらのトラフィックホットスポットは、パッシブアンテナに対して13dbのRSRPの受信電力レベル利得が生じる(丸で囲んだ領域55参照)ことが見てとれる。RSRPはこのエリア55内では約-98dbmであり;さらに、より大きな破線エリア56内では、平均RSRPは-98.5dbmであり、これはパッシブアンテナの結果53に対して4.5dbの利得を示す。
【0052】
セルラネットワークのユーザ分布は変化する。
図5は、その都市で集会があり、繁華街にあるコンベンションセンターの外に大勢のユーザが集まっていた場合を示す。ビームをこのコンベンションセンター付近の領域にステアリングすることにより、ビームフォーミングアクティブアンテナRUは、隣接するPCS帯域において、従来のパッシブアンテナと比較して3倍のスペクトル効率を達成できることが観察された。
【0053】
図6を参照すると、プロットは所定の日の異なるアンテナのスペクトル効率対時間を示す。挿入図は、対象期間である午後1時から午後5時までを拡大したものである。アクティブアンテナは、午後2時15分~午後3時15分に形成されたトラフィックホットスポットにそのRFエネルギーを集中させるようにビームパターンを最適化するのに対し、他のパッシブアンテナは(RFビームパターンを適応させることができない)その間トラフィックホットスポットに集中させることなく、広範囲に静的RFパターンを有している。トラフィックホットスポットに向けるようにビームパターンを最適化することにより、アクティブアンテナ(中破線60)は午後2時以前および午後4時以降のスペクトル効率と比較して約3倍のスペクトル効率を達成していることが、挿入図から見てとれる。対照的に、パッシブアンテナ(短い破線および長い破線)はスペクトル効率で同等の急上昇がない。
【0054】
ビームフォーミングアクティブアンテナRUが配備された第2のセルサイトでは、アンテナ設置場所は部分的に駐車場ビルの棟に遮られていた。その場所に設置されたパッシブアンテナでは、方位の調整ができなかったため、アンテナの放射パターンの約半分が駐車場ビルによって遮られ、このセルに接続しているセルラユーザの信号品質が低下した。このサイトのビームフォーミングアクティブアンテナRUは、駐車場ビルでの遮りを回避するようにビームをステアリングし、ビーム幅を狭いビームに設定し、RF信号が妨害されない領域にRFエネルギーを集中させることができた。駐車場ビルの背後に位置するユーザは、より良い信号品質で隣接するセルからサービスを受けることができた。
【0055】
他の実施形態は、特許請求の範囲の範囲内である。
【国際調査報告】