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特表2024-516201高い効力を有するCu系抗菌フィルム、並びにその基材及び作製方法
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  • 特表-高い効力を有するCu系抗菌フィルム、並びにその基材及び作製方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-12
(54)【発明の名称】高い効力を有するCu系抗菌フィルム、並びにその基材及び作製方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 59/20 20060101AFI20240405BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20240405BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20240405BHJP
   A01N 25/10 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
A01N59/20 Z
A01P1/00
A01P3/00
A01N25/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565383
(86)(22)【出願日】2022-04-26
(85)【翻訳文提出日】2023-12-22
(86)【国際出願番号】 US2022026270
(87)【国際公開番号】W WO2022232089
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】63/180,780
(32)【優先日】2021-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100224775
【弁理士】
【氏名又は名称】南 毅
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー,アンドリュー チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,テレサ
(72)【発明者】
【氏名】ゴヤル,サスミット スニール クマール
(72)【発明者】
【氏名】ジャヤラマン,シュリスダーサン
(72)【発明者】
【氏名】チー,ルイ
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ヴィナリア
(72)【発明者】
【氏名】ユエン,シュー
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA02
4H011AA03
4H011AA04
4H011BB18
4H011BC01
4H011BC03
4H011BC06
4H011BC09
4H011BC17
4H011BC19
4H011DA14
4H011DH02
4H011DH03
4H011DH06
(57)【要約】
抗菌フィルムを形成する方法であって:ポリマーコーティングを上に堆積させた基材を提供するステップであって、上記ポリマーコーティングは、抗菌材料、上記基材と接触する内面、及び上記内面の反対側の外面を含む、ステップ;並びに上記外面が表面微生物と相互作用するように、上記抗菌材料から上記外面へとイオンを抽出するステップを含む、方法。ポリマー;抗菌材料;並びに有機溶媒及び添加剤のうちの少なくとも一方を含む、組成物。上記抗菌材料は、銅含有ガラス粒子、酸化銅粒子、金属銅粒子、銅塩、銅配位錯体、赤銅鉱結晶、及びこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む。更に上記添加剤は、上記抗菌材料の耐酸化性を向上させるように選択できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって:
ポリマー;
Cu1+イオンを含む抗菌材料;及び
添加剤
を含み、
前記抗菌材料は、銅塩及び銅配位錯体のうちの少なくとも一方を含み;
前記添加剤は、有機リン酸塩、有機亜リン酸塩、有機ホスホン酸塩、及びホスフィンのうちの少なくとも1つを含む、組成物。
【請求項2】
前記添加剤は前記有機リン酸塩を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記有機リン酸塩は、リン酸2‐エチルヘキシル、リン酸ジブチル、リン酸ジフェニル、及びホスホン酸ジブチルのうちの少なくとも1つである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記添加剤は前記ホスフィンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ホスフィンは、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリプロピルホスフィン、及びトリスヒドロプロピルホスフィンのうちの少なくとも1つである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記添加剤は前記有機亜リン酸塩を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記添加剤は前記有機ホスホン酸塩を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記ポリマーは、ナイロン、メラミン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリスチレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリエチレン、ポリ(エーテルイミド)、ポリアミドイミド、ポリイミド、アラミド、ポリアクリロニトリル、コポリイミド、イミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾピロール、ピロール含有ポリマー、及びインドール含有ポリマーのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記銅塩及び銅配位錯体のうちの少なくとも一方は、ハロゲン化銅、硫酸銅、酢酸銅(I)、又はこれらのいずれの組み合わせを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物に由来する抗菌フィルムは:
EPA試験を用いて測定される少なくとも3log killの抗菌効力;
65℃及び相対湿度75%という加速劣化条件への少なくとも14日間の曝露後に、少なくとも3log killの抗菌効力;
EPA試験を用いて測定される、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)、緑膿菌(Pseudomomas aeruginosa)、メチシリン耐性(Methicillin Resistant)、大腸菌(E. coli)、エンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter cloacae)、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、クレブシエラ・アエロゲネス(Klebsiella aerogenes)、インフルエンザH1N1、アデノウイルス5、ノロウイルス、及びカンジダ・アウリス(Candida auris)のうちの少なくとも1つに対する少なくとも3log killの抗菌効力
のうちの少なくとも1つを示す、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
抗菌フィルムを形成する方法であって、前記方法は:
ポリマーコーティングを上に堆積させた基材を提供するステップであって、上記ポリマーコーティングは:
請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物、
前記基材と接触する内面、及び
前記内面の反対側の外面
を含む、ステップ;並びに
前記抗菌材料から前記外面へとCu1+イオンを抽出するステップ
を含み、
前記外面は、表面微生物と相互作用するよう構成される、方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、米国特許法第119条の下で2021年4月28日出願の米国仮特許出願第63/180,780号の優先権の利益を主張するものであり、上記仮特許出願の内容は依拠され、参照によりその全体が本出願に援用される。
【技術分野】
【0002】
本開示は、抗菌フィルム、及び上記フィルムを作製する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
様々な物体が、細菌、ウイルス、白カビ、カビ、真菌、藻類といった望ましくない汚染物質に曝露される可能性がある。これらの汚染物質への曝露によって、上記物体の外観が魅力的でないものになる、若しくは上記物体が特定の目的に適さないものとなる可能性があり、又は健康被害を引き起こす可能性さえある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、望ましくない汚染物質の、物体の表面と接触した後に成長する能力を軽減することが望ましい場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示されるのは、抗菌フィルム、及び上記フィルムを作製する方法である。
【0006】
いくつかの実施形態では、抗菌フィルムを形成する方法は:ポリマーコーティングを上に堆積させた基材を提供するステップであって、上記ポリマーコーティングは、抗菌材料、上記基材と接触する内面、及び上記内面の反対側の外面を含む、ステップ;並びに上記抗菌材料から上記外面へとイオンを抽出するステップを含み、上記外面は、表面微生物と相互作用するよう構成される。
【0007】
他の態様又は実施形態のいずれかと組み合わせることができる一態様では、上記抗菌材料は、銅含有ガラス粒子、酸化銅粒子、金属銅粒子、銅塩、銅配位錯体、赤銅鉱結晶、及びこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む。他の態様又は実施形態のいずれかと組み合わせることができる一態様では、上記抗菌材料は銅含有ガラス粒子を含む。他の態様又は実施形態のいずれかと組み合わせることができる一態様では、上記ガラス粒子は、SiO、Al、CaO、MgO、P、B、KO、ZnO、Fe、これらのナノ粒子、及びこれらの混合物のうちの少なくとも1つを含む。他の態様又は実施形態のいずれかと組み合わせることができる一態様では、上記抗菌材料は銅配位錯体を含む。他の態様又は実施形態のいずれかと組み合わせることができる一態様では、上記イオンはCu1+イオンを含む。
【0008】
他の態様又は実施形態のいずれかと組み合わせることができる一態様では、上記ポリマーコーティングは、ポリ(エーテルイミド)、ポリアミドイミド、ナイロン、ポリイミド、アラミド、メラミン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ポリアクリロニトリル、コポリイミド、イミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾピロール、ピロール含有ポリマー、及びインドール含有ポリマーのうちの少なくとも1つを含む。
【0009】
他の態様又は実施形態のいずれかと組み合わせることができる一態様では、ポリマーコーティングを上に堆積させた基材を提供する上記ステップは:上記抗菌材料を、有機溶媒中のポリマー、添加剤、又はこれらの組み合わせと組み合わせることによって、抗菌マトリクスを形成するステップ;及び上記抗菌マトリクスを押出成形、キャスト成形、又は射出成形して、上記ポリマーコーティングを形成するステップを含む。
【0010】
他の態様又は実施形態のいずれかと組み合わせることができる一態様では、上記ポリマーは、ポリ(エーテルイミド)、ポリアミドイミド、ナイロン、ポリイミド、アラミド、メラミン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ポリアクリロニトリル、コポリイミド、イミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾピロール、ピロール含有ポリマー、及びインドール含有ポリマーのうちの少なくとも1つを含む。
【0011】
他の態様又は実施形態のいずれかと組み合わせることができる一態様では、上記有機溶媒、添加剤、又はこれらの組み合わせは、N‐メチル‐2‐ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトアミド、ホルムアミド、2‐ピロリドン、N‐ホルミルモルホリン、環状アミド、β‐プロピオラクタム、γ‐ブチロラクタム、δ‐バレロラクタム、ε‐カプロラクタム、ニトリル含有分子、アセトニトリル、ベンゾニトリル、フタルイミド、メラミン、尿素、ニトリル、イミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾピロール、ピロール、インドール、マレイミド、スクシンイミド、有機リン酸塩、有機亜リン酸塩、有機ホスホン酸塩、及びこれらの置換誘導体のうちの少なくとも1つを含む。
【0012】
他の態様又は実施形態のいずれかと組み合わせることができる一態様では、上記添加剤は、リン酸塩、クラウンエーテル、有機硫黄化合物、ヒドロキシルアミン、尿素、及びホスフィンのうちの1つ以上を含む。
【0013】
他の態様又は実施形態のいずれかと組み合わせることができる一態様では、ポリマーコーティングを上に堆積させた基材を提供する上記ステップは:上記抗菌材料をポリマー及び添加剤と組み合わせることによって抗菌マトリクスを形成するステップ;並びに上記抗菌マトリクスを押出成形、キャスト成形、又は射出成形して、上記ポリマーコーティングを形成するステップを含み、上記添加剤は、上記押出成形、キャスト成形、又は射出成形ステップの後に示される上記抗菌材料の耐酸化性を向上させるように選択される。
【0014】
他の態様又は実施形態のいずれかと組み合わせることができる一態様では、上記添加剤はリン酸2‐エチルヘキシルを含み、上記ポリマーはポリ(メチルメタクリレート)を含み、上記抗菌フィルムは、65℃、相対湿度75%において、14日後に少なくとも3log killの抗菌効力を有する。他の態様又は実施形態のいずれかと組み合わせることができる一態様では、上記抗菌フィルムは、少なくとも3log killの抗菌効力を有する。他の態様又は実施形態のいずれかと組み合わせることができる一態様では、上記抗菌フィルムの厚さは約1μm~約100μmである。他の態様又は実施形態のいずれかと組み合わせることができる一態様では、上記抗菌フィルムの厚さは、上記抗菌材料の平均直径の約10%以内である。
【0015】
いくつかの実施形態では、抗菌フィルムを形成する方法は:ポリマーコーティングを上に堆積させた基材を提供するステップであって、上記ポリマーコーティングは、銅含有ガラス粒子、上記基材と接触する内面、及び上記内面の反対側の外面を含む、ステップ;並びに上記銅含有ガラス粒子から上記外面へとCu1+イオンを抽出するステップを含み、上記抗菌フィルムは、少なくとも3log killの抗菌効力を有する。
【0016】
他の態様又は実施形態のいずれかと組み合わせることができる一態様では、上記ポリマーコーティングは、ポリ(エーテルイミド)、ポリアミドイミド、ナイロン、ポリイミド、アラミド、メラミン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ポリアクリロニトリル、コポリイミド、イミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾピロール、ピロール含有ポリマー、及びインドール含有ポリマーのうちの少なくとも1つを含む。
【0017】
他の態様又は実施形態のいずれかと組み合わせることができる一態様では、ポリマーコーティングを上に堆積させた基材を提供する上記ステップは:上記銅含有ガラス粒子を、有機溶媒中のポリマー、添加剤、又はこれらの組み合わせと組み合わせることによって、抗菌マトリクスを形成するステップ;及び上記抗菌マトリクスを押出成形、キャスト成形、又は射出成形して、上記ポリマーコーティングを形成するステップを含む。
【0018】
他の態様又は実施形態のいずれかと組み合わせることができる一態様では、上記ポリマーは、ポリ(エーテルイミド)、ポリアミドイミド、ナイロン、ポリイミド、アラミド、メラミン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ポリアクリロニトリル、コポリイミド、イミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾピロール、ピロール含有ポリマー、及びインドール含有ポリマーのうちの少なくとも1つを含む。
【0019】
他の態様又は実施形態のいずれかと組み合わせることができる一態様では、上記有機溶媒、添加剤、又はこれらの組み合わせは、N‐メチル‐2‐ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトアミド、ホルムアミド、2‐ピロリドン、N‐ホルミルモルホリン、環状アミド、β‐プロピオラクタム、γ‐ブチロラクタム、δ‐バレロラクタム、ε‐カプロラクタム、ニトリル含有分子、アセトニトリル、ベンゾニトリル、フタルイミド、メラミン、尿素、ニトリル、イミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾピロール、ピロール、インドール、マレイミド、スクシンイミド、有機リン酸塩、有機亜リン酸塩、有機ホスホン酸塩、及びこれらの置換誘導体のうちの少なくとも1つを含む。
【0020】
他の態様又は実施形態のいずれかと組み合わせることができる一態様では、上記添加剤は、リン酸塩、クラウンエーテル、有機硫黄化合物、ヒドロキシルアミン、尿素、及びホスフィンのうちの1つ以上を含む。
【0021】
他の態様又は実施形態のいずれかと組み合わせることができる一態様では、ポリマーコーティングを上に堆積させた基材を提供する上記ステップは:上記銅含有ガラス粒子をポリマー及び添加剤と組み合わせることによって抗菌マトリクスを形成するステップ;並びに上記抗菌マトリクスを押出成形、キャスト成形、又は射出成形して、上記ポリマーコーティングを形成するステップを含み、上記添加剤は、上記押出成形、キャスト成形、又は射出成形ステップの後に示される上記抗菌材料の耐酸化性を向上させるように選択される。
【0022】
他の態様又は実施形態のいずれかと組み合わせることができる一態様では、上記添加剤はリン酸2‐エチルヘキシルを含み、上記ポリマーはポリ(メチルメタクリレート)を含み、上記抗菌フィルムは、65℃、相対湿度75%において、14日後に少なくとも3log killの抗菌効力を有する。
【0023】
いくつかの実施形態では、組成物は:ポリマー;抗菌材料;並びに有機溶媒及び添加剤のうちの少なくとも一方を含む。更に、他の態様又は実施形態のいずれかと組み合わせることができる一態様では、上記抗菌材料は、銅含有ガラス粒子、酸化銅粒子、金属銅粒子、銅塩、銅配位錯体、赤銅鉱結晶、及びこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む。
【0024】
他の態様又は実施形態のいずれかと組み合わせることができる一態様では、上記抗菌材料は銅含有ガラス粒子を含む。他の態様又は実施形態のいずれかと組み合わせることができる一態様では、上記ガラス粒子は、SiO、Al、CaO、MgO、P、B、KO、ZnO、Fe、これらのナノ粒子、及びこれらの混合物のうちの少なくとも1つを含む。他の態様又は実施形態のいずれかと組み合わせることができる一態様では、上記抗菌材料は銅配位錯体を含む。
【0025】
他の態様又は実施形態のいずれかと組み合わせることができる一態様では、上記ポリマーは、ポリ(エーテルイミド)、ポリアミドイミド、ナイロン、ポリイミド、アラミド、メラミン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ポリアクリロニトリル、コポリイミド、イミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾピロール、ピロール含有ポリマー、及びインドール含有ポリマーのうちの少なくとも1つを含む。
【0026】
他の態様又は実施形態のいずれかと組み合わせることができる一態様では、上記有機溶媒、添加剤、又はこれらの組み合わせは、N‐メチル‐2‐ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトアミド、ホルムアミド、2‐ピロリドン、N‐ホルミルモルホリン、環状アミド、β‐プロピオラクタム、γ‐ブチロラクタム、δ‐バレロラクタム、ε‐カプロラクタム、ニトリル含有分子、アセトニトリル、ベンゾニトリル、フタルイミド、メラミン、尿素、ニトリル、イミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾピロール、ピロール、インドール、マレイミド、スクシンイミド、有機リン酸塩、有機亜リン酸塩、有機ホスホン酸塩、及びこれらの置換誘導体のうちの少なくとも1つを含み、上記添加剤はリン酸2‐エチルヘキシルを含む。
【0027】
他の態様又は実施形態のいずれかと組み合わせることができる一態様では、上記組成物に由来する抗菌フィルムは、少なくとも3log killの抗菌効力を有する。
【0028】
他の態様又は実施形態のいずれかと組み合わせることができる一態様では、上記有機溶媒及び添加剤のうちの少なくとも一方は、上記抗菌材料の耐酸化性を向上させるように選択される。他の態様又は実施形態のいずれかと組み合わせることができる別の態様では、上記添加剤はリン酸2‐エチルヘキシルを含み、上記ポリマーはポリ(メチルメタクリレート)を含み、上記組成物に由来する抗菌フィルムは、65℃、相対湿度75%において、14日後に少なくとも3log killの抗菌効力を有する。
【0029】
上述の「発明の概要」及び以下の「発明を実施するための形態」はいずれも単なる例であり、請求対象の主題の性質及び特徴を理解するための概観又は枠組みを提供することを目的としていることを理解されたい。添付の図面は、更なる理解を提供するために含まれており、本明細書に組み込まれて本明細書の一部を構成する。これらの図面は1つ以上の実施形態を図示しており、本説明と併せて、これらの様々な実施形態の原理及び動作を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】いくつかの実施形態による、ポリマーマトリクスを通した銅イオンの輸送を示す概略図
図2】いくつかの実施形態による、剥き出しの状態の金属銅、及び異なる複数の溶媒からキャスト成形された様々なCuドープポリマーに関する、log kill率を示すプロット
図3】いくつかの実施形態による、ポリマーマトリクスを通したリガンドが配位した銅の輸送を示す概略図
図4】いくつかの実施形態による、剥き出しの状態の金属銅と、ある溶媒からキャスト成形された、銅の酸化を抑制するための添加剤を伴う又は伴わない様々なCuドープポリマーとに関する、log kill率を示すプロット
図5】いくつかの実施形態による、1価銅イオンの酸化を最小限に抑えるための添加剤を伴う又は伴わない、銅‐ガラス粒子を含有する様々な抗菌性塗料に対して、加速過酸化水素環境試験を実施する前及び実施した後に残存する、1価銅イオンのパーセンテージを示すプロット
【発明を実施するための形態】
【0031】
これより、添付の図面に図示された例示的実施形態を詳細に参照する。可能な限り、図面全体を通して、同一又は同様の部品を指すために同一の参照番号を使用する。図面中の構成要素の縮尺は必ずしも正確ではなく、例示的実施形態の原理を示すことに重点が置かれている。
【0032】
数値(範囲の端点を含む)は、本明細書では、用語「約(about)」、「およそ(approximately)」等が前に付けられた概数として表現され得る。このような場合、他の実施形態は、その特定の数値を含む。ある数値が概数として表現されているかどうかにかかわらず、本開示には:概数として表現されたもの;及び概数として表現されていないものという2つの実施形態が含まれる。更に、各範囲の端点は、他方の端点との関係でも、また他方の端点と独立しても、重要であることが理解されるだろう。
【0033】
本明細書中で使用される場合、用語「抗菌(antimicrobial)」は、細菌、ウイルス、白カビ、カビ、藻類、及び/又は真菌を含む微生物を殺滅する、又はその成長を阻害する、材料又は表面を意味する。用語「抗菌」は、上述の全ての科の微生物、又は上述の科に属する全ての種の微生物を殺滅する、又はその成長を阻害する、材料又は表面を意味するわけではなく、上記材料又は表面は、上述の科のうちの1つ以上の、1種以上の微生物を殺滅する、又はその成長を阻害する。
【0034】
本明細書中で使用される場合、用語「対数減少(log reduction)」は、log(C/C)の負の値を意味し、ここでCは、抗菌性表面のコロニー形成単位(colony form unit:CFU)数であり、Cは、抗菌性表面ではない対照表面のCFU数である。用語「log kill」は、対数減少と相互交換可能なものとして同等に使用できる。例として、3対数減少は、微生物の約99.9%の殺滅に相当し、5対数減少は、微生物の約99.999%の殺滅に相当する。様々な例によると、本明細書に記載の抗菌フィルムの対数減少は、少なくとも約2、少なくとも約3、少なくとも約4、少なくとも約5、少なくとも約6、少なくとも約7、少なくとも約8、少なくとも約9、少なくとも約10、約1~約10の範囲内、約3~約7の範囲内、約4~約6の範囲内、又は約1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは約10より小さい、若しくはこれらに等しい、若しくはこれらより大きいものとなり得る。特段の注記がない限り、対数減少は、米国環境保護庁の農薬プログラム局(Office of Pesticide Programs)の、2016年1月29日付の、硬質非多孔質銅含有表面製品の殺菌活性の評価のためのプロトコル(EPA試験)に概説されている手順に従って測定される。更に、いくつかの態様では、本開示の抗菌フィルムはこれらのlog killレベルを、例えば65℃、相対湿度(RH)75%という加速劣化条件への長期間の曝露にわたって、例えば7日間、更には14日間の曝露後に、示すことができる。
【0035】
動作時、抗菌フィルムは、この複合フィルム内又はその表面上の微生物といった望ましくない生物学的汚染物質と相互作用してこれらを殺滅するよう構成される。例えば、抗菌フィルムが細菌に対する殺生物特性を有するように構成される場合、細菌の好適な例としては、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)、緑膿菌(Pseudomomas aeruginosa)、メチシリン耐性(Methicillin Resistant)、大腸菌(E. coli)、エンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter cloacae)、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、クレブシエラ・アエロゲネス(Klebsiella aerogenes)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、及びこれらの混合物が挙げられる。抗菌フィルムが殺滅できるウイルスの例としては、インフルエンザH1N1、アデノウイルス5、及びノロウイルスが挙げられる。抗菌フィルムが殺滅できる真菌の例としては、カンジダ・アウリス(Candida auris)が挙げられる。
【0036】
特定の用途に有用な抗菌物品は、受動的な、又はユーザ若しくは外部の源(例えばUV光)による、追加の活性化を必要としない、継続的な抗菌特性を提供しながら、その使用目的に十分な耐久性を有する必要がある。更に抗菌物品は、制御された抗菌活性を提供する必要がある。更に抗菌物品は、その使用用途の要求に見合った持続時間又は耐用年数にわたって、抗菌特性を示す必要がある。
【0037】
状況によっては、従来の抗菌物品が示す抗菌効力は極めて低くなる。このような物品に関連する1つの課題は、抗菌剤がこれらの物品の表面に、所望の抗菌効力を提供するために十分な濃度で存在することを保証することである。別の課題は、いくつかの従来の抗菌物品のうちの1つ以上の露出した表面が、これらの物品中の抗菌剤を適切に露出させることによって必要な抗菌効力レベルを達成するために、コストの掛かる追加の表面処理、及び他の加工ステップを必要とする可能性があることである。更に、これらの処理の一部は、抗菌物品に関連する機械的及び/又は光学的特性を、劣化させるか又は他の様式で変化させる可能性がある。
【0038】
本明細書に記載の抗菌物品/フィルムは、所望の抗菌効力レベルを、他の特性を損なうことなく及び/又は低コストで生成するように構成できる、外側表面と、その作製のためのプロセスとを有する。
【0039】
本明細書に記載の抗菌フィルムは、抗菌フィラーがフィルム全体に均一に分散された抗菌フィルムに比べて、改善された性能を有することができる。例えば、抗菌材料がフィルムの外面付近に集中するような抗菌材料の非対称の分散によって、抗菌性能の向上を可能とすることができる。これは、フィルム中の抗菌材料のうち比較的多くの割合を、フィルムの外面上に存在する微生物との相互作用のためにフィルムの外面で利用できるためである。更に、又はあるいは、フィルムの外面付近における抗菌材料の濃度の上昇を、これに対応してフィルム中の抗菌材料のバルク濃度を上昇させることなく、達成でき、又はフィルム中の抗菌材料のバルク濃度の低下を、これに対応してフィルムの外面付近における抗菌材料の濃度を低下させることなく、達成できる。フィルムの外面付近における抗菌材料の濃度に対する、フィルム中の抗菌材料のバルク濃度の比率を、このように低下させると、ポリマー中のフィラー材料の投入量の多さに関連するものである可能性がある悪影響を回避することによって、フィルムの機械的特性の向上を可能とすることができる。
【0040】
良好な抗菌効力を達成するために、フィルム中で使用される抗菌材料の投入量を比較的多くすることができる。ポリマーマトリクスの内部に十分に分布した抗菌材料は、ポリマー材料の表面により十分に分布した抗菌材料に比べて、限定された抗菌効力しか示さない可能性がある。このような限定された抗菌効力は、フィルムの内部からフィルム表面への導通チャネルの欠如に起因する可能性がある。従って、本明細書に記載の抗菌フィルムでは、抗菌材料が、フィルム表面に向かって優先的に、非対称に分布できる。このように表面に向かって強く方向づけられた抗菌フィルムにより、抗菌効力の向上のための効率的かつ直接的な細菌又はウイルスとの接触を可能とすることができる。
【0041】
経時的な抗菌効力の低下も、抗菌物品及びフィルム、特に銅ベースの抗菌材料を採用した抗菌物品及びフィルムにとっての懸念事項である。本質的に、抗菌効力の点で非常に好ましいものであるCu1+イオンは、典型的な現実世界の状況において、空気及び湿気の存在下では不安定であり、比較的好ましくない(即ち抗菌効力の点で)原子価状態であるCu2+へと酸化する傾向がある。銅ベースの抗菌材料は時間の経過と共に酸化するため、抗菌効力は、目的とする用途にとって許容可能なレベル未満に低下する可能性がある。例えば、現実世界の状況ではいずれの抗菌性表面上に湿気が形成される可能性が高く、抗菌フィルム中の銅イオンが酸化される傾向がある場合がある。同様に、空気中には酸化剤の無尽蔵の供給源が存在するため、抗菌フィルムの気体環境が、銅ベースの抗菌材料の酸化に寄与する可能性がある。
【0042】
本開示の態様では、本開示の抗菌フィルム及び物品の寿命を改善するために、3つの側面からなるアプローチを採用できる。このアプローチの第1の側面は、銅に酸化安定性をもたらす、フィルムに含めるための特定のリガンド又は添加剤を選択することによって、銅ベースの抗菌材料の耐酸化性を向上させることである。第2の側面は、上記に加えてより短い鎖を有する、及び/又は周囲のポリマーマトリクスとの反応性が低い、銅の耐酸化性添加剤及びリガンドの選択によって、抗菌フィルムの表面への銅材料のマイグレーション及び移動を改善することである。第3の側面は、例えば銅ベースの抗菌材料との相互作用が弱く、従って銅ベースの抗菌材料の移動度にとって有利な、ポリマーマトリクスを選択することによって、銅ベースの抗菌材料が、より長期間にわたる物品又はフィルムの表面への銅の移動を促進するために十分な銅の貯蔵量を有することを保証することである。以上の側面のうちの全て又は一部を、本開示の抗菌フィルム及び物品の実施形態において採用することにより、それらの抗菌効力レベルの寿命を改善できる。
【0043】
本開示では、物品の内部から物品の表面へと抗菌剤を抽出することにより、銅含有抗菌剤を物品の表面に非対称に分布させる。物品がポリマーベースである例では、現行の抽出技法は、Cuイオンと相互作用するためのポリマー官能基を必要とするか、又はポリマーの移動度が制限されているために非効率的である。結果として、抗菌効力が欠如したり、抗菌効力の寿命が短くなったり、又は抗菌効力が不十分となったり(例えば利用可能な所与の量の銅に対して効力が低く見えたり)するようになる。本開示は、(物品の表面に非対称に分布した)抗菌剤を物品の表面に抽出することによって、少なくとも、内部に抗菌剤を含有する物品に関する低抗菌効力という課題を解決することを目的とする。いくつかの実施形態では、抽出効率は、抗菌剤の移動度を改善する溶媒を用いて向上させることができる。いくつかの実施形態では、ベースとなるポリマーがCuを抽出できない場合であってもCuイオンを抽出できる添加剤(又は溶媒)を、添加してよい。従って本明細書中で説明されるように、ポリマー/コーティングは、溶媒及び/又は添加剤を慎重に選択することによって、抗菌特性を有するように配合される。
【0044】
図1は、ポリマーマトリクスを通した銅の輸送を示す概略図である。抗菌特性を得るために突出した銅含有粒子を伴わない物品(例えば基材、コーティング、ポリマー、これらの組み合わせ(即ち複合体))については、銅貯蔵源(例えば銅含有ガラス粒子、酸化銅粒子、金属銅粒子、銅塩(例えばハロゲン化銅、酢酸銅(I)、硫酸銅等)、配位錯体形態の銅、赤銅鉱結晶、又はこれらの組み合わせ、これらはいずれも溶解されていても個体形態であってもよい)から物品の表面への銅イオン輸送のためのメカニズム及び推進力が必要であり、上記表面において、銅イオンは細菌、ウイルス又は他の微生物と相互作用することにより、これらを不活性化する。いくつかの実施形態では、Cuイオン(及び/又は錯体)は既にコーティング/ポリマー/物品(例えばCuドープポリマー)内に分散されていてよい。いくつかの実施形態では、銅貯蔵源とCuドープポリマーとが共に存在し、これにより、Cuイオン抗菌種の補充と、物品の抗菌活性の寿命とが確保される。
【0045】
銅含有ガラスの例としては、限定するものではないが、米国特許第9,622,483号「ANTIMICROBIAL GLASS COMPOSITIONS, GLASSES AND POLYMERIC ARTICLES INCORPORATING THE SAME」、及び米国特許出願公開第2019/0029260号「ANTIMICROBIAL PHASE‐SEPARABLE GLASS/POLYMER ARTICLES AND METHODS FOR MAKING THE SAME」に記載されているものが挙げられ、各上記文献はCorning, Inc.に譲渡されており、参照によりその全体が本出願に援用される。いくつかの実施形態では、上記銅含有ガラス粒子の無機ガラス部分は、SiO、Al、CaO、MgO、P、B、KO、ZnO、Fe、これらのナノ粒子、又はこれらの混合物のうちの1つ以上を含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、上記銅含有ガラス粒子は、銅成分又はCu種を含む無機ガラスを含む。例えば上記Cu種は、Cu1+、Cu、及び/又はCu2+を含む。いくつかの実施形態では、上記銅含有ガラス中の上記Cu種の合計濃度は、少なくとも約10重量%である。しかしながら、上記銅含有ガラスがCu2+を実質的に含まないように、Cu2+の量を最小限に抑える、又は削減することができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、Cu1+イオンは、銅含有ガラスの表面上及び/又はバルク内に存在する。例えばCu1+イオンは、上記銅含有ガラスのガラスネットワーク及び/又はガラスマトリクス中に存在し得る。ガラスネットワーク中に存在するCu1+イオンは、ガラスネットワーク中の原子と原子結合できる。ガラスマトリクス中に存在するCu1+イオンは、ガラスマトリクス中に分散されたCu1+結晶の形態で存在できる。例えば上記Cu1+結晶は、赤銅鉱(CuO)を含む。Cu1+イオンを含む実施形態では、Cu1+イオンが非結晶形態、結晶形態、又はこれらの組み合わせのいずれであるかにかかわらず、本明細書ではこの材料を銅含有ガラスと呼ぶことができる。結晶形態のCu1+イオン(例えば赤銅鉱結晶)を含む実施形態では、結晶を含むある特定のタイプのガラスを指すことを意図して、上記銅含有ガラスを銅含有ガラスセラミックと呼ぶこともでき、1つ以上の結晶相がガラス内に導入及び/又は生成される従来のセラミック形成プロセスを用いて又は用いずに形成できる。
【0048】
十分な量の活性種である銅を表面へと運ぶための輸送メカニズムは、(1)銅貯蔵源から物品(例えばポリマー)中への抽出、(2)物品全体への銅(Cu)の分布、及び(3)物品の表面へのアクセスを必要とする。Cuは物品のバルクから表面へと移動する際に共有結合又は非共有結合的な相互作用によって修飾される可能性があることを考慮すると、輸送プロセス全体を通して、Cuは、表面に到達したときに抗菌機能が残存しているような形態でなければならない。
【0049】
これより、銅貯蔵源から物品中への抽出のための改良された手段について詳述する。
【0050】
銅の抽出及び移動度
銅貯蔵源からの銅の抽出の効率は、物品の本体を通して表面へと分布させるために利用できる銅の量に影響する。物品がポリマーベースの材料であり得る場合、抽出効率は、抽出される銅イオンの溶媒和、又はより具体的には、結果として得られる銅‐リガンド錯体の安定性に関連する。ポリエーテルイミド等のアミノ化ポリマー(例えばアミノ基で官能化されたポリマー)、又は他のアミノ含有エーテル及びケトンは、銅に極めて強く結合し、高い抽出効率をもたらす。ナイロン、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミドイミド、又は他のアミド含有ポリマーといったポリマーでは、ポリマーと銅イオンとの間の弱い相互作用によって、銅イオンが抽出されてポリマー中へと移動する際に、ある程度の安定性が銅イオンにもたらされる。比較のために、より強い相互作用は、抽出物(例えばリガンド)が、より弱い相互作用に比べて、銅イオンをより良好に安定化させることができることを意味する。銅の抽出と銅の移動度との間にはバランスが必要であり、相互作用が弱すぎると抽出が低下し、相互作用が高すぎる(結合強度が強い)と、ポリマーを通したマイグレーションが小さくなる。反対に、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ポリ(塩化ビニル)、又はポリエチレンといった、官能基を有しないポリマーも、銅イオンを効果的に安定化させることができるものの、抽出効率は非常に限られたものとなる。
【0051】
抽出効率は、Cuと抽出基(例えば官能基)との間の相互作用の強度、及びCuの抽出に利用可能な抽出基の数に依存する。抽出されると、適合性によって、物品内での分布の均一性、及び物品の表面への体積に潜在的に有利な表面エネルギが決定される。換言すれば、適合性が高いと、物品内でのCuのより均一な分布、及び物品の表面へのCuの移動に有利な十分な表面エネルギが得られる。
【0052】
(ポリマーマトリクス、又は別個に含まれる添加剤、又は溶媒のいずれに対するものであるかにかかわらず)物品の相互作用種の結合強度もまた、抽出された銅イオンの移動度を決定する。例えば、銅に極めて強く結合する相互作用種は、銅イオン抽出において効率的であり得るものの、結合の破壊が困難となるため、物品の表面に到達できるようにするために物品を通る銅の移動度を阻害するものにもなる。抗菌効力には、物品の表面に十分なCuが必要となる。物品は経時劣化するため、上記移動度は、時間の経過に伴う物品の全体的な効力に関して重要な要素となる。物品の相互作用種の結合強度は、Cuイオンの酸化還元電位も変化させる可能性があり、これによって、結果として得られるCu種の抗菌効力に影響を及ぼす可能性がある。抗菌効力に対するプラス又はマイナスの影響は更に、安定性、酸化状態の保持(即ちCu2+又はCuへの変換に対してCu1+としてのその特性を保持すること)、及び他の因子にも依存する。
【0053】
以下で説明されるのは、本開示の銅含有抗菌物品及びフィルムの抗菌効力の寿命を改善するための、3つの側面からなるアプローチである。上述のように、このアプローチは、以下の側面:(1)銅で形成された錯体の酸化還元電位を最小限に抑えるための添加剤の選択;(2)銅のマイグレーションの動態を改善するための添加剤の選択;並びに(3)時間の経過に伴うフィルムの表面への銅の移動を促進するための、ポリマーマトリクスの選択及び/又は銅の投入のうちの、1つ以上を伴う。
【0054】
第1の側面に関して、銅源(例えばCorning(登録商標)Guardiant(登録商標)銅含有ガラス粒子中の1価銅イオン)の酸化の程度(即ち酸化還元電位)を最小限に抑えるように、リガンド及び/又は添加剤を選択できる。このようなリガンド及び/又は添加剤を選択することによって、銅が長期間にわたってその1価Cu1+状態で安定することを保証しながら、銅源の抗菌効力を保持できる。実施形態では、本開示の抗菌物品及びフィルムで採用される添加剤又はリガンドは、マトリクスとして機能する本開示の上述のポリマーのうちのいずれかと合わせた、リン酸塩(例えばリン酸2‐エチルヘキシル(2‐EHP)、ホスホン酸ジブチル、リン酸ジブチル、リン酸ジフェニル)、クラウンエーテル(例えばチアクラウンエーテル)、有機硫黄化合物(例えばチオ尿素、3,6‐ジチア‐1,8‐オクタンジオール、2,2’‐チオジエタノール)、ヒドロキシルアミン(例えばO‐エチルヒドロキシルアミン塩酸塩)、尿素、及びホスフィン(例えばジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリスヒドロプロピルホスフィン)のうちの1つ以上とすることができる。更に、抗菌効力の寿命について調整されたこれらの抗菌フィルム及び物品の実装には、これらの調製、配合、及び堆積中に、本開示の溶媒のうちのいずれを採用できる。
【0055】
第2の側面に関して、その目的は、上記に加えてより短い鎖を有する、及び/又は周囲のポリマーマトリクスとの反応性が低い、銅の耐酸化性添加剤及びリガンドの選択によって、銅イオン(例えばCorning Guardiant銅含有ガラス粒子中の1価銅イオン)の、抗菌フィルムの表面へのマイグレーション及び移動を改善することである。ポリマーマトリクスと同様の表面エネルギ及び官能基を有するリガンドについて、様々な立体構造を選択することにより、ポリマーマトリクス中での銅イオンのマイグレーションを制御できる。特に、短い側鎖を有する1つ以上のリガンドを選択することによって、上記1つ以上のリガンドと錯体化した銅イオンの、ポリマーマトリクスを通した抗菌フィルム又は物品の表面へのマイグレーションの動態を改善できる。いくつかの実施形態では、銅イオン(例えばCu1+又はCu2+)に関連するリガンドは、ポリマーマトリクス中で3.3×10-7cm/s超の拡散係数、及び/又は銅イオン単独での拡散係数の1.5倍超の拡散係数を示すように選択できる。いくつかの実施形態では、銅イオン(例えばCu1+又はCu2+)に関連するリガンドは、ポリマーマトリクス中で2.5×10-7cm/s未満の拡散係数、及び/又は銅イオン単独での拡散係数の0.75倍未満の拡散係数を示すように選択できる。
【0056】
更に、この第2の側面のいくつかの実装形態では、ポリマーマトリクス材料との弱~中程度の結合能、及び/又はマイグレーションに関する優先性を有するように選択できる(例えば過フッ素化されたリガンド、又はフルオロエーテル側鎖を有するリガンド)。例えば、弱い水素結合能を有するリガンドを、水素を有するポリマーマトリクスと併用するために採用できる。
【0057】
第3の側面に関して、その目的は、銅ベースの抗菌材料(例えばCorning Guardiant銅含有ガラス粒子)が、より長期間にわたる物品又はフィルムの表面への銅の移動を促進するために十分な銅の貯蔵量を有することを保証することである。いくつかの実装形態では、抗菌物品又はフィルム中の銅の貯蔵は、銅ベースの抗菌材料との相互作用が弱く、従って銅ベースの抗菌材料の移動度に関して有利なポリマーマトリクス材料を選択することによって、達成できる。
【0058】
複合体フィルムの抗菌効力を、本開示中で上述したEPA試験を用いて評価した。
【0059】
実施例1‐銅の抽出
以下の表1に示されている、Cuイオンと固有の相互作用を有する異なる複数の溶媒からキャスト成形された複数のCuドープポリマーについて、抗菌活性を決定した。
【0060】
【表1】
【0061】
ポリマーを、5~20重量%の範囲内の様々な量の銅含有ガラス粒子(例えばCorning Guardiant)でドープし、クロロホルム、又はアセトン、又はN‐メチル‐2‐ピロリドン(NMP)溶媒からキャスト成形した。
【0062】
ある例では、まずポリマーを溶解させて15重量%の溶液を形成する(例えば1:1のアセトン:トリフルオロ酢酸中のナイロン;NMP中のポリエーテルイミド等)。銅含有Corning Guardiantガラス粒子をこの溶液に粉末として(ポリマー固体の投入量に対して5~20重量%となるように)添加し、ボルテックスミキサで分散させ、マグネチックスターラで2時間混合する。溶液をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)皿に流し込み、オーブン内で、溶媒の沸点より約40~50度低い温度範囲で約16時間乾燥させた。得られた自立するフィルムを、1インチ四方(2.54センチメートル四方)の試験片に切断する。
【0063】
いくつかの実施形態では、銅含有ガラス粒子の銅は、いずれの好適な量で存在していてよい。例えば銅の濃度は、銅含有ガラス粒子の約5重量%~約80重量%の範囲内、約10重量%~約70重量%の範囲内、約25重量%~約35重量%の範囲内、約40重量%~約60重量%の範囲内、約45重量%~約55重量%の範囲内、約5重量%若しくはそれ未満若しくはそれ超、10重量%若しくはそれ未満若しくはそれ超、15重量%若しくはそれ未満若しくはそれ超、20重量%若しくはそれ未満若しくはそれ超、25重量%若しくはそれ未満若しくはそれ超、30重量%若しくはそれ未満若しくはそれ超、35重量%若しくはそれ未満若しくはそれ超、40重量%若しくはそれ未満若しくはそれ超、45重量%若しくはそれ未満若しくはそれ超、50重量%若しくはそれ未満若しくはそれ超、55重量%若しくはそれ未満若しくはそれ超、60重量%若しくはそれ未満若しくはそれ超、65重量%若しくはそれ未満若しくはそれ超、70重量%若しくはそれ未満若しくはそれ超、75重量%若しくはそれ未満若しくはそれ超、又は約80重量%若しくはそれ未満若しくはそれ超とすることができる。銅含有ガラス粒子中において、銅部分は、Cu金属、Cu1+、Cu2+、又はCu1+とCu2+との組み合わせのうちの1つ以上を含みていてよい。銅は錯体化されていないものであっても、リガンドが結合して錯体が形成されているものであってもよい。
【0064】
表1では、「+」は、剥き出しの状態の金属銅と同等の、Cuドープポリマーの高い抗菌効力を示し、「-」は低い抗菌効力(即ち3log kill未満)を示し、「N/A」は、Cuドープポリマーが溶媒に溶解しないため「該当なし(not applicable)」であることを表す。興味深くまた予想外なことに、NMPからキャスト成形されたポリマー(NMPはCuとの相互作用が弱い)は、官能基を有しないポリマー(例えばポリスチレン及びポリ(メチルメタクリレート))であっても、試験された全ての溶媒の中で最も高い抗菌効力を示す。従って、ポリスチレン及びポリ(メチルメタクリレート)に関するNMPとCuとの間の相互作用は、これらのポリマーの限定的な抽出効率を克服するのに十分なものである。ポリスチレン及びポリ(メチルメタクリレート)を、クロロホルム及びアセトンを用いてキャスト成形した場合、達成される抗菌効力は低い。1つの説明は、クロロホルムが自由な孤立電子対を有さないため、銅との相互作用が弱すぎるというものである。アセトンは孤立電子対を有するものの、クロロホルムと同様、銅との相互作用が弱すぎる。一般に、ケトン及びアルデヒドは銅の抽出に適していない。典型的には、窒素孤立電子対を有する化合物はより効率的である。
【0065】
あるいは、銅イオンとの相互作用が弱く、銅イオンの抽出時に銅イオンに安定性を提供するポリマーであるポリエーテルイミドは、Cuと相互作用する溶媒(NMP)からキャスト成形するかそうでない溶媒(クロロホルム)からキャスト成形するかにかかわらず、抗菌活性を有する。
ポリエーテルイミド(ポリマー)及びNMP(溶媒)のみが、両方ともCuイオン(孤立電子対)と相互作用する。抽出の観点から、相互作用(即ち配位)は、孤立電子対の電子軌道とCu1+のd軌道との重なりの程度として定義できる。
【0066】
表1は図2に数値的に示されており、この図2は、剥き出しの状態の金属銅(対照、比較例1A)、並びに異なる複数の溶媒からキャスト成形された様々なCuドープポリマー(即ち比較例1B(CHCl中のPMMA)、比較例1C(アセトン中のPS)、及び比較例1D(CHCl中のPS);並びに実施例1A(NMP中のPMMA)、実施例1B(NMP中のPS)、実施例1C(CHCl中のPEI)、及び実施例1D(NMP中のPEI))に関するlog kill率を示している。最小限のベースレベルの抗菌効力(即ち少なくとも3log kill)を達成できるようにするために、図2は、物品内のCuの均一な分布、及び物品の表面への堆積に有利な表面エネルギを依然として可能としたまま、銅貯蔵源からCuを抽出できるようにするには、ポリマー又は溶媒のうちの少なくとも一方が、Cuとの相互作用を必要とすることを示している。実際、少なくとも一方がCuと相互作用するポリマー‐溶媒の組み合わせは、剥き出しの状態の金属銅のlog killに匹敵する抗菌効力を達成できる。各棒グラフの下の「はい」又は「いいえ」は、ポリマー又は溶媒が銅イオンと相互作用する(そして銅イオンを抽出できる)かどうかを示している。「いいえ」と示されているもの、即ち比較例1B~1Dも対照とみなされる。
【0067】
従って、表1及び図2に示されているように、Cuドープポリマーは、(1)ポリマーがCuを抽出できる場合、又は(2)溶媒がCuを抽出できる場合に、抗菌効力を有することができる。銅を抽出できるポリマーとしては、ポリ(エーテルイミド)、ポリアミドイミド、ナイロン、ポリイミド、アラミド、メラミン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ポリアクリロニトリル、コポリイミド、イミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾピロール、ピロール含有ポリマー、及びインドール含有ポリマーが挙げられる。銅を抽出できる溶媒としては、NMP、及び他のアミド含有溶媒又は添加剤が挙げられる。
【0068】
Cuイオンと弱~中程度(NMPと同様)の強度で相互作用する他の溶媒及び/又は添加剤としては、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトアミド、ホルムアミド、2‐ピロリドン、N‐ホルミルモルホリン(及び他のアミド、尿素、又は環状であるかそうでないかを問わないアルキル化誘導体)、環状アミド(例えばβ‐プロピオラクタム、γ‐ブチロラクタム、δ‐バレロラクタム、及びε‐カプロラクタムといったラクタム(並びに他の置換誘導体))、ニトリル含有分子(アセトニトリル及びベンゾニトリルを含む、脂肪族又は芳香族)、フタルイミド、メラミン、尿素、イミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾピロール、ピロール、インドール、マレイミド、スクシンイミド、有機リン酸塩、有機亜リン酸塩、有機ホスホン酸塩、並びにこれらの置換誘導体が挙げられる。
【0069】
実施例2‐銅イオンの移動度
上述のように、抗菌効力は、銅貯蔵源から物品中への抽出能力だけでなく、Cuイオンの、物品本体を通って移動して、物品の表面への十分なアクセスを得る能力にも依存する。
【0070】
本開示のある態様は、Cuイオンの移動度、具体的には:(1)銅のリガンド結合能力を用いて抗菌効力及びCu1+の酸化還元安定性に影響を及ぼすこと;(2)リガンドの側鎖を用いて、ポリマー/コーティング中のCu‐リガンド錯体の適合性を改善すること;(3)ポリマー中のCu‐リガンド錯体の移動度を最適化すること;並びに(4)物品の表面へのマイグレーションに有利となるように、Cu‐リガンド錯体の表面エネルギを変化させることを伴う。
【0071】
図3は、ポリマーマトリクスを通した、リガンドが配位した銅の輸送を示す概略図である。銅は(酸化状態及び配位の幾何学的構造に応じて)4、5、及び6配位の錯体を形成する可能性があるため、リガンドの数(例えば1つの配位側を占めるもの、二座リガンド、三座リガンド、これらの組み合わせ)及びリガンドの官能基の選択によって、Cu1+イオンの酸化還元電位に影響を及ぼし、ある酸化状態を他の酸化状態に比べて優先させることができる。例えば、リガンドとしてのアセトニトリルのニトリルは、好ましいCu1+状態を優先させることによって、抗菌効力の特性を維持する。リガンド側鎖の選択は、抽出、及びポリマー/コーティングを通って表面までの移動度にとって有利となるように、Cu‐リガンド錯体の適合性に影響を及ぼすこともできる。
【0072】
実施例3‐抗菌フィルムの作製方法
抗菌フィルムの一般的な調製方法は、銅含有抗菌剤と共に相分離可能なガラスを含む粒子を、ポリマー(例えばポリマー粒子)を含むマトリクス前駆物質と混合して、抗菌マトリクスを画定するステップ;及び上記抗菌マトリクスを、マトリクスと、上記マトリクス内の第1の複数の粒子とを含む、抗菌複合体フィルムへと成形するステップを含んでよい。特定の態様では、上記方法は、上記抗菌複合体フィルムをバルク要素(例えば基材)の主要な表面に貼り付けるステップを含むこともできる。いくつかの態様では、抗菌物品は抗菌複合体フィルムである。上記方法の他の実施形態は、上記抗菌マトリクスの上記マトリクス前駆物質を溶融させて、上記第1の複数の粒子の分散液を提供するステップを更に含み、上記ポリマーは熱可塑性粒子である。いくつかの実施形態では、上記成形ステップは、上記抗菌マトリクスを上記抗菌複合体フィルムへと押出成形する、キャスト成形する、又は射出成形するステップを含み、上記ポリマーは熱可塑性粒子である。いくつかの実施形態では、上記分散液は、増粘剤、分散剤、他の添加剤材料(例えば共溶媒、pH調整剤、界面活性剤、消泡剤若しくは脱気剤、レオロジー的顔料、安定剤、レオロジー調整剤等)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0073】
いくつかの実施形態では、上記銅含有抗菌剤は、銅含有ガラス粒子、酸化銅粒子、金属銅粒子、銅塩(例えばハロゲン化銅、酢酸銅(I)、硫酸銅等)、配位錯体形態の(例えば銅含有有機金属としての)銅、赤銅鉱結晶、又はこれらの組み合わせを含み、これらはいずれも溶解されていても固体形態であってもよい。
【0074】
いくつかの実施形態では、抗菌フィルムは、約1μm、約2μm、約3μm、約4μm、約5μm、約6μm、約7μm、約8μm、約9μm、約10μm、約20μm、約30μm、約40μm、約50μm、約60μm、約70μm、約80μm、約90μm、約100μm、又は以上の値によって定義されるいずれの範囲の厚さを有してよい。更に、又はあるいは、抗菌フィルムの厚さは抗菌剤の粒子径に基づくものとすることもできる。例えば抗菌フィルムの厚さは、抗菌剤の粒子の中位径の約50%以内、約40%以内、約30%以内、約20%以内、又は約10%以内である。
いくつかの実施形態では、中位径は、抗菌剤の粒子のD50粒子径であり、ここで粒子径とは、粒子の最大寸法である。抗菌剤の粒子径に基づくこのような抗菌フィルムの厚さにより、抗菌材料を抗菌フィルム内の所定の位置に保持できるだけでなく、本明細書に記載されているように、外面に十分に近接させて保持でき、これにより十分な抗菌効力を発揮できる。更に、又はあるいは、抗菌フィルムの厚さを抗菌剤の粒子径に合わせることにより、本明細書に記載されているように、抗菌フィルムの表面付近の抗菌材料の投入量を相対的に大きくし、フィルム中の抗菌材料のバルク投入量を相対的に小さくすることができる。
【0075】
いくつかの実施形態では、抗菌材料は、抗菌材料が抗菌フィルムの内面付近よりも抗菌フィルムの外面付近に集中するように、抗菌フィルム中で非対称に分散されている。本明細書中で使用される場合、外面は、抗菌フィルムの、細菌及びウイルスといった表面微生物と相互作用する(例えば接触する)側面を含み、内面は、抗菌フィルムの、バルク要素(例えば基材)の主要な表面に貼り付けられる側面(例えば空気に面する表面、又は接触する可能性のある面)である。銅含有抗菌剤は抗菌フィルムの外面又はその付近に分布させることができ、これによって表面微生物と十分に接触でき、その一方で、抗菌フィルムの脆性(例えばポリマー中のフィラーの割合が高いことに通常関連する脆性を回避することによって)抗菌フィルムの脆性に対する抗菌材料の影響を制限できる。
【0076】
抗菌フィルムの更なる形成方法は、米国特許出願公開第2019/0029260号に記載されており、上記特許出願はCorning, Inc.に譲渡されており、参照によりその全体が本出願に援用される。
【0077】
実施例4‐銅の酸化を最小限に抑えるための添加剤
この実施例では、図4に示されているように、抗菌フィルムのサンプルを、0日間、7日間、及び14日間にわたる大気中加速劣化環境(65℃、75%RH)への曝露の関数としての、log kill率に関して評価する。この実施例におけるサンプルは、剥き出しの状態の金属銅(比較例4A)と、溶媒からキャスト成形された、銅の酸化を抑制するための添加剤を伴う又は伴わない様々なCuドープポリマーとを含む。特に、追加の対照例は、PMMA中のCorning Guardiant銅含有ガラス粒子を用いた抗菌フィルム(比較例4B)、及びPMMA中の銅塩(CuACN)を用いた抗菌フィルム(比較例4C)を含む。更に、本発明の実施例は、2EHP添加剤とPMMA中のCorning Guardiant銅含有ガラス粒子とを用いた抗菌フィルム(実施例4A)、及び2EHP添加剤とPMMA中の銅塩(CuACN)とを用いた抗菌フィルム(実施例4B)を含む。
【0078】
対照である剥き出しの状態の銅(比較例4A)、及び対照であるPMMA中の銅含有ガラス粒子(比較例4B)を除いて、各サンプルは以下のプロトコルに従って調製された:1.撹拌棒及び60~70℃に設定されたホットプレートで少なくとも4時間にわたって、2.5gのPMMAを12gのクロロホルム(又は比較例4BについてはNMP)中に溶解させる;2.0.14gのCorning Guardiant又は銅塩(CuACN)(それぞれ実施例4A及び4B)及び0.35gのリン酸2‐エチルヘキシルを、溶解後のPMMA溶液に加える;3.ボルテックスミキサで混合した後、撹拌棒で少なくとも2時間にわたって混合する;4.混合物をPTFE型に注ぎ込み、上記型を周囲温度に12時間にわたって排気しながら放置する;並びに5.抗菌フィルムを型から取り出し、抗菌効力試験のために1インチ×1インチ(2.54cm×2.54cm)に切断する。
【0079】
図4から明らかであるように、対照である剥き出しの状態の銅(比較例4A)は、0日間、7日間、及び14日間の加速劣化試験で少なくとも3log killの抗菌効力を示す。しかしながら、添加剤を含まない他の対照例(比較例4B及び4C)は、7日間及び14日間の加速劣化試験後に抗菌効力の有意な喪失を示す。理論によって束縛されるものではないが、これらの対照例では、加速劣化試験への曝露期間の関数として、Cu1+からCu2+への銅源の酸化によるAM効力の喪失が生じると考えられる。反対に、2EHP添加剤を含む本発明の実施例(即ち実施例4A及び4B)では、AM効力の喪失は生じず、0日間、7日間、及び14日間の加速劣化試験で少なくとも3log killの抗菌効力が維持される。
【0080】
実施例5‐銅の酸化を最小限に抑えるための添加剤
この実施例では、図5に示されているように、抗菌性塗料を、加速過酸化水素環境試験後に残存する1価銅イオンのパーセンテージについて評価する。この実施例のサンプル(実施例5A~5D)は、様々なCuドープガラス粒子及び水中のBehr(登録商標)塗料を、得られるポリマー中の1価銅イオンの酸化を最小限に抑えるためのリガンド添加剤(実施例5A:2,2’‐チオジエタノール;実施例5B:3,6‐ジチア‐1,8‐オクタンジオール;実施例5C:ヒドロキシルアミン;及び実施例5D:チオ尿素)と共に含む。更にこの実施例は、リガンド添加剤を伴わずに、Cuドープガラス粒子及び水中のBehr塗料を含む対照(比較例5A)を含む。
【0081】
この実施例の各サンプルは、以下のプロトコルに従って調製された:1.0.252gのCorning Guardiant銅含有ガラス粒子を1mlの水中に分散させ、25gのBehr塗料の混合物に添加し、十分に混合する;2.混合された塗料を1g取り、1価銅イオン(Cu1+)の量及び銅イオンの総量を安定化試験によって測定し、過酸化水素試験前の条件についてCu1+/総Cuのパーセンテージを計算する;3.1mlの3%Hをステップ1からの塗料に加え、2時間待機する;並びに4.1価銅イオン(Cu1+)の量及び銅イオンの総量を安定化試験によって測定し、過酸化水素試験後の条件についてCu1+/総Cuのパーセンテージを計算する。
【0082】
図5から明らかであるように、Corning Guardiant銅含有ガラス粒子を含むが添加剤を含まない塗料サンプルの対照群(比較例5A)は、加速過酸化水素環境試験の前後で46%から6%への1価銅イオンのパーセンテージの低下を示した。比較として、Corning Guardiant銅含有ガラス粒子並びに添加剤(実施例5A:2,2’‐チオジエタノール;実施例5B:3,6‐ジチア‐1,8‐オクタンジオール;実施例5C:ヒドロキシルアミン;及び実施例5D:チオ尿素)を含む、本発明の塗料サンプル群は、過酸化水素環境試験後に少なくとも32%の1価銅イオンのパーセンテージを示し、対照群(比較例5A)に比べて試験による有意な減少は少ない。
【0083】
請求対象の主題の精神又は範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変形が可能であることは、当業者には明らかであろう。従って請求対象の主題は、添付の特許請求の範囲及びその均等物を考慮しない限り、制限されないものとする。
【0084】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0085】
実施形態1
抗菌フィルムを形成する方法であって:
ポリマーコーティングを上に堆積させた基材を提供するステップであって、上記ポリマーコーティングは:
抗菌材料、
上記基材と接触する内面、及び
上記内面の反対側の外面
を含む、ステップ;並びに
上記抗菌材料から上記外面へとイオンを抽出するステップ
を含み、
上記外面は、表面微生物と相互作用するよう構成される、方法。
【0086】
実施形態2
上記抗菌材料は:
銅含有ガラス粒子、酸化銅粒子、金属銅粒子、銅塩、銅配位錯体、赤銅鉱結晶、及びこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、実施形態1に記載の方法。
【0087】
実施形態3
上記抗菌材料は銅含有ガラス粒子を含む、実施形態1又は実施形態2に記載の方法。
【0088】
実施形態4
上記ガラス粒子は、SiO、Al、CaO、MgO、P、B、KO、ZnO、Fe、これらのナノ粒子、及びこれらの混合物のうちの少なくとも1つを含む、実施形態3に記載の方法。
【0089】
実施形態5
上記抗菌材料は銅配位錯体を含む、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0090】
実施形態6
上記イオンはCu1+イオンを含む、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0091】
実施形態7
上記ポリマーコーティングは、ポリ(エーテルイミド)、ポリアミドイミド、ナイロン、ポリイミド、アラミド、メラミン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ポリアクリロニトリル、コポリイミド、イミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾピロール、ピロール含有ポリマー、及びインドール含有ポリマーのうちの少なくとも1つを含む、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法。
【0092】
実施形態8
ポリマーコーティングを上に堆積させた基材を提供する上記ステップは:
上記抗菌材料を、有機溶媒中のポリマー、添加剤、又はこれらの組み合わせと組み合わせることによって、抗菌マトリクスを形成するステップ;及び
上記抗菌マトリクスを押出成形、キャスト成形、又は射出成形して、上記ポリマーコーティングを形成するステップ
を含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0093】
実施形態9
上記ポリマーは、ポリ(エーテルイミド)、ポリアミドイミド、ナイロン、ポリイミド、アラミド、メラミン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ポリアクリロニトリル、コポリイミド、イミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾピロール、ピロール含有ポリマー、及びインドール含有ポリマーのうちの少なくとも1つを含む、実施形態8に記載の方法。
【0094】
実施形態10
上記有機溶媒、添加剤、又はこれらの組み合わせは、N‐メチル‐2‐ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトアミド、ホルムアミド、2‐ピロリドン、N‐ホルミルモルホリン、環状アミド、β‐プロピオラクタム、γ‐ブチロラクタム、δ‐バレロラクタム、ε‐カプロラクタム、ニトリル含有分子、アセトニトリル、ベンゾニトリル、フタルイミド、メラミン、尿素、ニトリル、イミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾピロール、ピロール、インドール、マレイミド、スクシンイミド、有機リン酸塩、有機亜リン酸塩、有機ホスホン酸塩、及びこれらの置換誘導体のうちの少なくとも1つを含む、実施形態8又は実施形態9に記載の方法。
【0095】
実施形態11
上記添加剤は、リン酸塩、クラウンエーテル、有機硫黄化合物、ヒドロキシルアミン、尿素、及びホスフィンのうちの1つ以上を含む、実施形態8又は実施形態9に記載の方法。
【0096】
実施形態12
ポリマーコーティングを上に堆積させた基材を提供する上記ステップは:
上記抗菌材料をポリマー及び添加剤と組み合わせることによって抗菌マトリクスを形成するステップ;並びに
上記抗菌マトリクスを押出成形、キャスト成形、又は射出成形して、上記ポリマーコーティングを形成するステップ
を含み、
上記添加剤は、上記押出成形、キャスト成形、又は射出成形ステップの後に示される上記抗菌材料の耐酸化性を向上させるように選択される、実施形態2~7のいずれか1つに記載の方法。
【0097】
実施形態13
上記添加剤はリン酸2‐エチルヘキシルを含み、上記ポリマーはポリ(メチルメタクリレート)を含み、更に上記抗菌フィルムは、65℃、相対湿度75%において、14日後に少なくとも3log killの抗菌効力を有する、実施形態12に記載の方法。
【0098】
実施形態14
上記抗菌フィルムは、少なくとも3log killの抗菌効力を有する、実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法。
【0099】
実施形態15
上記抗菌フィルムの厚さは約1μm~約100μmである、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0100】
実施形態16
上記抗菌フィルムの厚さは、上記抗菌材料の平均直径の約10%以内である、実施形態1~15のいずれか1つに記載の方法。
【0101】
実施形態17
抗菌フィルムを形成する方法であって:
ポリマーコーティングを上に堆積させた基材を提供するステップであって、上記ポリマーコーティングは:
銅含有ガラス粒子、
上記基材と接触する内面、及び
上記内面の反対側の外面
を含む、ステップ;並びに
上記銅含有ガラス粒子から上記外面へとCu1+イオンを抽出するステップ
を含み、
上記抗菌フィルムは少なくとも3log killの抗菌効力を有する、方法。
【0102】
実施形態18
上記ポリマーコーティングは、ポリ(エーテルイミド)、ポリアミドイミド、ナイロン、ポリイミド、アラミド、メラミン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ポリアクリロニトリル、コポリイミド、イミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾピロール、ピロール含有ポリマー、及びインドール含有ポリマーのうちの少なくとも1つを含む、実施形態17に記載の方法。
【0103】
実施形態19
ポリマーコーティングを上に堆積させた基材を提供する上記ステップは:
上記銅含有ガラス粒子を、有機溶媒中のポリマー、添加剤、又はこれらの組み合わせと組み合わせることによって、抗菌マトリクスを形成するステップ;及び
上記抗菌マトリクスを押出成形、キャスト成形、又は射出成形して、上記ポリマーコーティングを形成するステップ
を含む、実施形態17又は実施形態18に記載の方法。
【0104】
実施形態20
上記ポリマーは、ポリ(エーテルイミド)、ポリアミドイミド、ナイロン、ポリイミド、アラミド、メラミン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ポリアクリロニトリル、コポリイミド、イミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾピロール、ピロール含有ポリマー、及びインドール含有ポリマーのうちの少なくとも1つを含む、実施形態19に記載の方法。
【0105】
実施形態21
上記有機溶媒、添加剤、又はこれらの組み合わせは、N‐メチル‐2‐ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトアミド、ホルムアミド、2‐ピロリドン、N‐ホルミルモルホリン、環状アミド、β‐プロピオラクタム、γ‐ブチロラクタム、δ‐バレロラクタム、ε‐カプロラクタム、ニトリル含有分子、アセトニトリル、ベンゾニトリル、フタルイミド、メラミン、尿素、ニトリル、イミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾピロール、ピロール、インドール、マレイミド、スクシンイミド、有機リン酸塩、有機亜リン酸塩、有機ホスホン酸塩、及びこれらの置換誘導体のうちの少なくとも1つを含む、実施形態19又は実施形態20に記載の方法。
【0106】
実施形態22
上記添加剤は、リン酸塩、クラウンエーテル、有機硫黄化合物、ヒドロキシルアミン、尿素、及びホスフィンのうちの1つ以上を含む、実施形態19~21のいずれか1つに記載の方法。
【0107】
実施形態23
ポリマーコーティングを上に堆積させた基材を提供する上記ステップは:
上記銅含有ガラス粒子をポリマー及び添加剤と組み合わせることによって抗菌マトリクスを形成するステップ;並びに
上記抗菌マトリクスを押出成形、キャスト成形、又は射出成形して、上記ポリマーコーティングを形成するステップ
を含み、
上記添加剤は、上記押出成形、キャスト成形、又は射出成形ステップの後に示される上記抗菌材料の耐酸化性を向上させるように選択される、実施形態17又は実施形態18に記載の方法。
【0108】
実施形態24
上記添加剤はリン酸2‐エチルヘキシルを含み、上記ポリマーはポリ(メチルメタクリレート)を含み、更に上記抗菌フィルムは、65℃、相対湿度75%において、14日後に少なくとも3log killの抗菌効力を有する、実施形態23に記載の方法。
【0109】
実施形態25
組成物であって:
ポリマー;
抗菌材料;並びに
有機溶媒及び添加剤のうちの少なくとも一方
を含み、
上記抗菌材料は、銅含有ガラス粒子、酸化銅粒子、金属銅粒子、銅塩、銅配位錯体、赤銅鉱結晶、及びこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、組成物。
【0110】
実施形態26
上記抗菌材料は銅含有ガラス粒子を含む、実施形態25に記載の組成物。
【0111】
実施形態27
上記ガラス粒子は、SiO、Al、CaO、MgO、P、B、KO、ZnO、Fe、これらのナノ粒子、及びこれらの混合物のうちの少なくとも1つを含む、実施形態26に記載の組成物。
【0112】
実施形態28
上記抗菌材料は銅配位錯体を含む、実施形態25に記載の組成物。
【0113】
実施形態29
上記ポリマーは、ポリ(エーテルイミド)、ポリアミドイミド、ナイロン、ポリイミド、アラミド、メラミン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ポリアクリロニトリル、コポリイミド、イミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾピロール、ピロール含有ポリマー、及びインドール含有ポリマーのうちの少なくとも1つを含む、実施形態25~28のいずれか1つに記載の組成物。
【0114】
実施形態30
上記有機溶媒及び添加剤のうちの少なくとも一方は、N‐メチル‐2‐ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトアミド、ホルムアミド、2‐ピロリドン、N‐ホルミルモルホリン、環状アミド、β‐プロピオラクタム、γ‐ブチロラクタム、δ‐バレロラクタム、ε‐カプロラクタム、ニトリル含有分子、アセトニトリル、ベンゾニトリル、フタルイミド、メラミン、尿素、ニトリル、イミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾピロール、ピロール、インドール、マレイミド、スクシンイミド、有機リン酸塩、有機亜リン酸塩、有機ホスホン酸塩、及びこれらの置換誘導体のうちの少なくとも1つを含み、更に上記添加物はリン酸2‐エチルヘキシルを含む、実施形態25~29のいずれか1つに記載の組成物。
【0115】
実施形態31
上記組成物に由来する抗菌フィルムは、少なくとも3log killの抗菌効力を有する、実施形態25~30のいずれか1つに記載の組成物。
【0116】
実施形態32
上記有機溶媒及び添加剤のうちの少なくとも一方は、上記抗菌材料の耐酸化性を向上させるように選択される、実施形態25に記載の組成物。
【0117】
実施形態33
上記添加剤はリン酸2‐エチルヘキシルを含み、上記ポリマーはポリ(メチルメタクリレート)を含み、更に上記組成物に由来する抗菌フィルムは、65℃、相対湿度75%において、14日後に少なくとも3log killの抗菌効力を有する、実施形態32に記載の組成物。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】