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  • 特表-腫瘍疾患の治療における医薬の使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-12
(54)【発明の名称】腫瘍疾患の治療における医薬の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/64 20170101AFI20240405BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20240405BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240405BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
A61K47/64
A61K31/4745
A61P35/00
A61K39/395 T
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565918
(86)(22)【出願日】2022-04-28
(85)【翻訳文提出日】2023-12-19
(86)【国際出願番号】 CN2022089737
(87)【国際公開番号】W WO2022228497
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】202110482012.2
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517273308
【氏名又は名称】シチュアン ケルン-バイオテック バイオファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ゲ,ジュンヨウ
(72)【発明者】
【氏名】オウヤン,シュエンオン
(72)【発明者】
【氏名】ジン,シャオピン
(72)【発明者】
【氏名】ディアオ,イナ
(72)【発明者】
【氏名】リュウ,ゲシャ
(72)【発明者】
【氏名】チェン,イェジェ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ジンイ
(72)【発明者】
【氏名】シュ,イン
(72)【発明者】
【氏名】ラオ,チュン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076BB01
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB21
4C076BB29
4C076BB31
4C076CC27
4C076EE23
4C076EE26
4C076EE59
4C085AA26
4C085BB01
4C085CC23
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG05
4C085GG06
4C085GG08
4C085GG10
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB22
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA56
4C086MA60
4C086MA63
4C086MA66
4C086NA05
4C086ZB26
(57)【要約】
本発明は腫瘍疾患の治療における医薬の使用に関する。特に、本発明は、腫瘍疾患の治療における、式(I)によって表される生物活性コンジュゲートの使用を提供する。腫瘍疾患は、特に、そして好ましくは、乳癌、胃癌、肺癌、卵巣癌、尿路上皮癌、食道癌、肝臓癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、膵臓癌および脳腫瘍(これらに限定されるものではない)を含む、既存の治療基準で難治性である切除不能な局所進行性または転移性固形腫瘍を意味する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍疾患を治療するための医薬の製造における、式(I)
【化1】
[式中、

【化2】
であり;ここで、RおよびRは、それぞれ独立して、水素(例えば、プロチウムまたはジュウテリウム)、ハロゲン、カルボキシラート、スルホナート、シアノ、C1-6アルキル、ハロゲン化C1-6アルキル、シアノ置換C1-6アルキル(例えば、-CHCN)、C1-6アルコキシ、C2-10アルケニルまたはC2-10アルキニルであり;Zはアミノ酸、または2~10個のアミノ酸からなるペプチドであり;xおよびxは、それぞれ独立して、0、1、2、3、4、5または6であり;Lの位置1はDに結合し、Lの位置2はLに結合し;

【化3】
であり;ここで、y1は、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10であり;Lの位置1はLに結合し、Lの位置2はLに結合し;
は5~12員ヘテロ芳香環であり;

【化4】
であり;ここで、ZはC1-6アルキレン、C2-10アルケニレン、C2-10アルキニレンおよびC3-8シクロアルキレンから選択され;RはHおよびC1-6アルキルから選択され;Zは存在しない、またはC1-6アルキレンから選択され;あるいは、RとZとは、それらが結合している窒素原子と一緒になって4~8員ヘテロシクリルを形成し;αは、0、1、2、3、4、5または6であり、Lの位置2はEに結合し、Lの位置1はLに結合し;
Eは
【化5】
であり;ここで、各Rは、独立して、水素(例えば、プロチウムまたはジュウテリウム)であり、βは、0、1または2であり、Eの位置2は(例えば、A上のスルフヒドリルで)Aに結合しており、Eの位置1はLに結合しており;
、mおよびmは、それぞれ独立して、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10であり;
Dは生物活性分子断片であり;
γは1~10の整数から選択され、好ましくは、γは3~8の整数(例えば、3、4、5、6、7または8)から選択され;そして
AはTrop-2に対するモノクローナル抗体またはその抗原結合性フラグメントである]
で表される生物活性コンジュゲートの使用。
【請求項2】
腫瘍疾患が、標準治療に失敗した、または標準治療レジメンを有さない、または現段階で標準治療に適さない、切除不能な局所進行性または転移性固形腫瘍である、請求項1記載の使用。
【請求項3】
腫瘍疾患が、乳癌(例えば、ルミナル(Luminal)タイプA、ルミナルタイプB、Her-2陽性タイプおよびトリプルネガティブタイプ乳癌)、胃癌、肺癌、卵巣癌、尿路上皮癌、食道癌、肝臓癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、膵臓癌、膀胱癌または脳腫瘍(これらに限定されるものではない)を含み、好ましくは、乳癌(例えば、トリプルネガティブ乳癌またはHer2陽性乳癌)、卵巣癌(例えば、卵巣上皮癌)、胃癌、肺癌、膵臓癌、膀胱癌または尿路上皮癌を含み、より好ましくは、腫瘍疾患がトリプルネガティブ乳癌、Her2陽性乳癌、卵巣癌、胃癌、肺癌または膵臓癌であり、更に好ましくは、腫瘍疾患がトリプルネガティブ乳癌、Her2陽性乳癌、卵巣癌または胃癌であり、
好ましくは、卵巣癌がプラチナ感受性卵巣癌およびプラチナ耐性卵巣癌から選択され、
好ましくは、胃癌が胃腺癌、癌腺扁平上皮癌、癌扁平上皮癌、癌未分化癌および癌神経内分泌腫瘍から選択され、
好ましくは、膵臓癌が膵臓上皮腫瘍、膵臓外分泌腫瘍、膵臓境界腫瘍、膵臓管状腺癌、膵臓内分泌腫瘍、膵臓成熟奇形腫、膵臓間葉系腫瘍、膵臓悪性リンパ腫および膵臓続発性腫瘍から選択され、
好ましくは、膀胱癌が尿路上皮(移行上皮)癌、膀胱扁平上皮癌および膀胱腺癌から選択され、好ましくは、尿路上皮癌が基底型、管腔型および野生型尿路上皮癌から選択され、
肺癌が小細胞肺癌および非小細胞肺癌から選択される、請求項1または2記載の使用。
【請求項4】
コンジュゲートが以下の構造を有する、すなわち、

【化6】
から選択され、Lの位置1はDに結合しており、Lの位置2はLに結合し、

【化7】
であり、ここで、yは3、4、5、6、7、8、9または10であり、Lの位置1はLに結合しており、Lの位置2はLに結合しており、
が5~6員ヘテロ芳香環、例えばピラゾールまたはトリアゾールから選択され、

【化8】
であり、ここで、ZはC1-3アルキレンから選択され、RはHであり、ZはC1-3アルキレンから選択され、αは1であり、Lの位置2はEに結合しており、Lの位置1はLに結合しており、
Eが
【化9】
であり、ここで、各Rは、独立して、水素(例えば、プロチウムまたはジュウテリウム)であり、βは0、1または2であり、Eの位置2は(例えば、A上のスルフヒドリルで)Aに結合しており、Eの位置1はLに結合しており、
、mおよびmが全て1であり、
生物活性分子が
【化10】
から選択され、好ましくは、生物活性分子はそれ自身のヒドロキシルを介してLの位置1に結合しており、
γが3~8の整数(例えば、3、4、5、6、7または8)から選択され、
Aがサシツズマブまたはその抗原結合性フラグメントである、請求項1~3のいずれか1項記載の使用。
【請求項5】
コンジュゲートの構造が
【化11】
(式中、γは1~10の整数であり、好ましくは、γは5~8の整数から選択される)
であり、
好ましくは、コンジュゲートのDAR値が1~12であり、より好ましくは、コンジュゲートのDAR値が1~10であり、更に好ましくは、DAR値が5~8であり、例えば、DAR値が6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9または8.0である、請求項1~4のいずれか1項記載の使用。
【請求項6】
治療的有効量の請求項1、4もしくは5のいずれか1項記載の生物活性コンジュゲートおよび/または請求項1、4もしくは5のいずれか1項記載の生物活性コンジュゲートを含む医薬組成物を、それを要する個体に投与する工程を含む、腫瘍疾患の治療方法であって、腫瘍疾患が請求項1~3のいずれか1項記載の腫瘍疾患から選択される、前記方法。
【請求項7】
医薬組成物が、該生物活性コンジュゲートと薬学的に許容される担体および/または賦形剤とを含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
生物活性コンジュゲートまたは医薬組成物を、7~35日ごとに1回、好ましくは7~28日ごとに1回、例えば7日、14日、21日、28日または35日ごとに1回投与する、請求項6または7記載の方法。
【請求項9】
コンジュゲートまたは医薬組成物の投与経路は、経口投与、経皮注射、直腸投与、粘膜投与、筋肉内注射、髄内注射、静脈内注射または腹腔内注射(これらに限定されるものではない)を含み、好ましくは静脈内注射を含む、請求項6~8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
患者の体重に基づく毎回の生物活性コンジュゲートの用量が、1mg/kg~30mg/kg、好ましくは1mg/kg~20mg/kg、より好ましくは2mg/kg~12mg/kg、更に好ましくは2~5mg/kg、4~7mg/kg、6~9mg/kg、8~11mg/kg、10~13mg/kgまたは12~15mg/kgである、請求項6~9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
該方法が、1以上の投与段階(例えば、1、2、3または4段階)に分割され、各段階での投与サイクルが請求項8記載のとおりであり、および/または各段階における投与用量が請求項10記載のとおりである、請求項6~10のいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2021年4月30日付出願のCN出願第202110482012.2号(その開示の全体を参照により本明細書に組み入れることとする)に基づくものであり、その出願に基づく優先権を主張するものである。
【0002】
技術分野
本出願は、腫瘍疾患、特に、既存の治療基準で難治性である切除不能な局所進行性または転移性固形腫瘍、例えば、第1選択化学療法後に治療に失敗したおよび/もしくは再発した腫瘍、放射線療法後に治療に失敗したおよび/もしくは再発した腫瘍ならびに/または標的療法後に治療に失敗したおよび/または再発した腫瘍を含む、異常な細胞活性に関連する疾患の治療における医薬の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
がん(以下、癌と表記される)は世界の公衆衛生にとって大きな負担となっている。米国では、癌は、尚も、心血管疾患に次ぐ第2位の死亡原因である。中国でも、癌の症例数は増加している。2019年の中国における悪性腫瘍の新規症例数は約440万であり、死亡者数は約262万4000人であった。癌の患者数および死亡者数の増加は腫瘍治療の商業活動の規模全体の拡大につながる。
【0004】
化学療法は癌治療の主要な手段の1つであるが、伝統的な化学療法は腫瘍の認識において特異的でなく、これは正常細胞を容易に損傷し、患者において重大な有害反応を引き起こす。癌患者の生存率を改善するためには、発見および診断の進歩に合わせて治療方法の革新が急務となっている。多数の適応症において多大な進歩が遂げられているが、最も難治性の固形腫瘍の幾つかの死亡率は1970年代以降に有意には改善しておらず、副作用のより少ない、より有効な治療が尚も必要とされている。分子標的薬は、現在、ドラッグデザインの重要な動向となっている。
【0005】
モノクローナル抗体薬は強力な標的化(ターゲッティング)、高い特異性、および重大な有害反応の低い発生率という利点を有するが、それらの分子量は大きく、それらの治療効果は単独使用の場合には限定的である。ADC(抗体-薬物コンジュゲート)は、モノクローナル抗体が化学リンカーを介して種々の数の小分子細胞毒素(エフェクター分子)にカップリングしている薬物である。ADC分子は、体内に入った後、モノクローナル抗体の誘導を介して標的細胞の表面上の抗原に結合し、標的細胞に進入する。細胞に進入したADC分子は化学作用および/または酵素作用によってエフェクター分子を放出して、標的細胞を破壊するという目的を達成する。ADC薬はモノクローナル抗体の強力な標的化および小分子毒素の高い活性という利点を兼ね備えており、このことは小分子細胞毒素の毒性作用および副作用を軽減するだけでなく、薬物の有効性をも改善しうる。
【0006】
現在、世界中で種々のADC薬が商業的に入手可能であり、それらの適応症は白血病、リンパ腫および乳癌などを含む。しかし、幾つかのADC薬の薬物動態および安全性における幾つかの問題が尚も存在し、これらは使用後に患者における重大な有害反応を引き起こしうる。また、幾つかの転移性癌、再発性癌および/または難治性癌に対するそれらの奏効率は、尚も、更に改善される必要がある。したがって、これらの転移性、再発性および/または難治性の癌を治療するためのADC薬の使用または治療方法を開発して、それらの有効性を最大にし、それらの毒性を最小にして、癌患者の薬物需要を満たすことが尚も必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
概括
本発明は、腫瘍疾患を治療するための医薬の製造における、式(I)
【化1】
[式中、

【化2】
であり;ここで、RおよびRは、それぞれ独立して、水素(例えば、プロチウムまたはジュウテリウム)、ハロゲン、カルボキシラート、スルホナート、シアノ、C1-6アルキル、ハロゲン化C1-6アルキル、シアノ置換C1-6アルキル(例えば、-CHCN)、C1-6アルコキシ、C2-10アルケニルまたはC2-10アルキニルであり;Zはアミノ酸、または2~10個のアミノ酸からなるペプチドであり;xおよびxは、それぞれ独立して、0、1、2、3、4、5または6であり;Lの位置1はDに結合し、Lの位置2はLに結合し;

【化3】
であり;ここで、y1は、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10であり;Lの位置1はLに結合しており、Lの位置2はLに結合しており;
は5~12員ヘテロ芳香環であり;

【化4】
であり;ここで、Zは、C1-6アルキレン、C2-10アルケニレン、C2-10アルキニレンおよびC3-8シクロアルキレンから選択され;Rは、HおよびC1-6アルキルから選択され;Zは存在しない、またはC1-6アルキレンであり;あるいは、RとZとは、それらが結合している窒素原子と一緒になって4~8員ヘテロシクリルを形成し;αは、0、1、2、3、4、5または6であり、Lの位置2はEに結合し、Lの位置1はLに結合し;
Eは
【化5】
であり;ここで、各Rは、独立して、水素(例えば、プロチウムまたはジュウテリウム)であり、βは0、1または2であり、Eの位置2は(例えば、A上のスルフヒドリルで)Aに結合しており、Eの位置1はLに結合し;
、mおよびmは、それぞれ独立して、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10であり;
Dは生物活性分子断片であり;
γは、スルフィド結合を介してAに結合している部分{D-[L-(Lm1-(Lm2-(Lm3-E]の数を意味し、1~10の整数から選択される;好ましくは、γは3~8の整数(例えば、3、4、5、6、7または8)から選択され;そして
AはTrop-2に対するモノクローナル抗体またはその抗原結合性フラグメントである]
で表される生物活性コンジュゲートの使用を提供する。
【0008】
幾つかの実施形態においては、腫瘍疾患は、標準治療に失敗した、または標準治療レジメンを有さない、または現段階で標準治療に適さない、切除不能な局所進行性または転移性固形腫瘍である。幾つかの実施形態においては、標準治療は、診断および治療のためのNCCNガイドラインおよびCSCOガイドラインによって推奨されている、腫瘍疾患の標準治療レジメンを意味する。
【0009】
幾つかの実施形態においては、腫瘍疾患は、第1選択化学療法後に治療に失敗したおよび/または再発した腫瘍である。幾つかの実施形態においては、第1選択化学療法は、診断および治療のためのNCCNガイドラインおよびCSCOガイドラインによって推奨されている、腫瘍疾患に対する第1選択化学療法を意味する。
【0010】
幾つかの実施形態においては、腫瘍疾患は、放射線療法後に治療に失敗したおよび/または再発した腫瘍である。幾つかの実施形態においては、放射線療法は、診断および治療のためのNCCNガイドラインおよびCSCOガイドラインによって推奨されている腫瘍疾患に対する放射線療法レジメンを意味する。
【0011】
幾つかの実施形態においては、その腫瘍疾患は、標的薬または免疫療法後に治療に失敗したおよび/または再発した腫瘍である。幾つかの実施形態においては、標的薬または免疫療法は、診断および治療のためのNCCNガイドラインおよびCSCOガイドラインによって推奨されている、腫瘍疾患に対する標的薬または免疫療法を意味する。
【0012】
幾つかの実施形態においては、腫瘍疾患は、乳癌、胃癌、肺癌、卵巣癌、尿路上皮癌、食道癌、肝臓癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、膵臓癌、膀胱癌または脳腫瘍(これらに限定されるものではない)を含み、好ましくは、乳癌(例えば、トリプルネガティブ乳癌またはHer2陽性乳癌)、卵巣癌(例えば、卵巣上皮癌)、胃癌、肺癌、膵臓癌、膀胱癌または尿路上皮癌を含み、より好ましくは、腫瘍疾患はトリプルネガティブ乳癌、Her2陽性乳癌、卵巣癌、胃癌、肺癌または膵臓癌であり、更に好ましくは、腫瘍疾患はトリプルネガティブ乳癌、Her2陽性乳癌、卵巣癌または胃癌である。
【0013】
幾つかの実施形態においては、腫瘍疾患は乳癌である。
【0014】
幾つかの実施形態においては、乳癌は以下のタイプのものを含むが、それらに限定されるものではない:ルミナル(Luminal)タイプA、ルミナルタイプB、Her-2陽性タイプおよびトリプルネガティブタイプ。
【0015】
幾つかの実施形態においては、腫瘍疾患はトリプルネガティブ乳癌である。
【0016】
幾つかの実施形態においては、腫瘍疾患はHer2陽性乳癌である。
【0017】
幾つかの実施形態においては、腫瘍疾患は卵巣癌である。
【0018】
幾つかの実施形態においては、卵巣癌は以下のタイプのものを含むが、それらに限定されるものではない:プラチナ感受性タイプおよびプラチナ耐性タイプ。
【0019】
幾つかの実施形態においては、腫瘍疾患は胃癌である。
【0020】
幾つかの実施形態においては、胃癌は以下のタイプのものを含むが、それらに限定されるものではない:腺癌、腺扁平上皮癌、扁平上皮癌、未分化癌および神経内分泌腫瘍。
【0021】
幾つかの実施形態においては、腫瘍疾患は膵臓癌である。
【0022】
幾つかの実施形態においては、膵臓癌は以下のタイプのものを含むが、それらに限定されるものではない:上皮腫瘍、外分泌腫瘍、境界腫瘍、管状腺癌、内分泌腫瘍、成熟奇形腫、間葉系腫瘍、悪性リンパ腫および続発性腫瘍。
【0023】
幾つかの実施形態においては、腫瘍疾患は膀胱癌である。
【0024】
幾つかの実施形態においては、膀胱癌は以下のタイプのものを含むが、それらに限定されるものではない:尿路上皮(移行上皮)癌、扁平上皮癌および腺癌。
【0025】
幾つかの実施形態においては、腫瘍疾患は尿路上皮癌である。
【0026】
幾つかの実施形態においては、尿路上皮癌は以下のタイプのものを含むが、それらに限定されるものではない:基底型、管腔型および野生型尿路上皮癌。
【0027】
幾つかの実施形態においては、腫瘍疾患は肺癌である。
【0028】
幾つかの実施形態においては、肺癌は以下のタイプのものを含むが、それらに限定されるものではない:小細胞肺癌および非小細胞肺癌。
【0029】
幾つかの実施形態においては、コンジュゲートは以下の構造を有し:

【化6】
から選択され、Lの位置1はDに結合しており、Lの位置2はLに結合しており;

【化7】
であり、ここで、yは、3、4、5、6、7、8、9または10であり、Lの位置1はLに結合しており、Lの位置2はLに結合しており;
は5~6員ヘテロ芳香環、例えばピラゾールまたはトリアゾールから選択され;

【化8】
であり、ここで、ZはC1-3アルキレンから選択され、RはHであり、ZはC1-3アルキレンから選択され、αは0であり、Lの位置2はEに結合し、Lの位置1はLに結合し;
Eは
【化9】
であり、ここで、各Rは、独立して、水素(例えば、プロチウムまたはジュウテリウム)であり、βは、0、1または2であり、Eの位置2は(例えば、A上のスルフヒドリルで)Aに結合し、Eの位置1はLに結合し;
、mおよびmは全て1であり;
生物活性分子は
【化10】
から選択され、好ましくは、生物活性分子はそれ自身のヒドロキシルを介してLの位置1に結合し;
γは、3~8の整数(例えば、3、4、5、6、7または8)から選択され;
Aはサシツズマブまたはその抗原結合性フラグメントである。
【0030】
幾つかの実施形態においては、コンジュゲートは以下の構造を有し:

【化11】
から選択され、Lの位置1はDに結合しており、Lの位置2はLに結合し;

【化12】
であり、yは、3、4、5、6、7、8、9または10であり、Lの位置1はLに結合しており、Lの位置2はLに結合しており;
は5~6員ヘテロ芳香環、例えばピラゾールまたはトリアゾールから選択され;

【化13】
であり、ここで、ZはC1-3アルキレンから選択され、RはHであり、ZはC1-3アルキレンから選択され、αは1であり、Lの位置2はEに結合しており、Lの位置1はLに結合し、
Eは
【化14】
であり、ここで、各Rは、独立して、水素(例えば、プロチウムまたはジュウテリウム)であり、βは0、1または2であり、Eの位置2は(例えば、A上のスルフヒドリルで)Aに結合しており、Eの位置1はLに結合しており;
、m、mは全て1であり;
生物活性分子は
【化15】
から選択され、好ましくは、生物活性分子はそれ自身のヒドロキシルを介してLの位置1に結合し;
γは3~8の整数(例えば、3、4、5、6、7または8)から選択され;そして
Aはサシツズマブまたはその抗原結合性フラグメントである。
【0031】
幾つかの実施形態においては、Dは
【化16】
から選択される。
【0032】
幾つかの技術的解決手段においては、コンジュゲートは、以下の式:
【化17】
(式中、γは1~10の整数であり、好ましくは、γは5~8の整数から選択される)
で表される構造を有するコンジュゲートAである。
【0033】
幾つかの実施形態においては、コンジュゲートのDAR値は、1~12、好ましくは1~10であり、更に好ましくは、DAR値は、5~8である。例えば、DAR値は、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9および8.0である。
【0034】
もう1つの態様においては、本発明は、治療的有効量の前記の式(I)の生物活性コンジュゲートおよび/または式(I)の生物活性コンジュゲートを含む医薬組成物を、それを要する個体に投与する工程を含む、腫瘍疾患の治療方法を提供する。
【0035】
幾つかの実施形態においては、腫瘍疾患は、標準治療に失敗した、または標準治療レジメンを有さない、または現段階で標準治療に適さない、切除不能な局所進行性または転移性固形腫瘍である。幾つかの実施形態においては、標準治療は、診断および治療のためのNCCNガイドラインおよびCSCOガイドラインによって推奨されている、腫瘍疾患の標準治療レジメンを意味する。
【0036】
幾つかの実施形態においては、その腫瘍疾患は、第1選択化学療法後に治療に失敗したおよび/または再発した腫瘍である。幾つかの実施形態においては、第1選択化学療法は、診断および治療のためのNCCNガイドラインおよびCSCOガイドラインによって推奨されている、腫瘍疾患に対する第1選択化学療法を意味する。
【0037】
幾つかの実施形態においては、腫瘍疾患は、放射線療法後に治療に失敗したおよび/または再発した腫瘍である。幾つかの実施形態においては、放射線療法は、診断および治療のためのNCCNガイドラインおよびCSCOガイドラインによって推奨されている、腫瘍疾患に対する放射線療法レジメンを意味する。
【0038】
幾つかの実施形態においては、その腫瘍疾患は、標的薬または免疫療法後に治療に失敗したおよび/または再発した腫瘍である。幾つかの実施形態においては、標的薬または免疫療法は、診断および治療のためのNCCNガイドラインおよびCSCOガイドラインによって推奨されている、腫瘍疾患に対する標的薬または免疫療法を意味する。
【0039】
幾つかの実施形態においては、腫瘍疾患は、乳癌、胃癌、肺癌、卵巣癌、尿路上皮癌、食道癌、肝臓癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、膵臓癌、膀胱癌または脳腫瘍(これらに限定されるものではない)を含み、好ましくは、乳癌(例えば、トリプルネガティブ乳癌またはHer2陽性乳癌)、卵巣癌(例えば、卵巣上皮癌)、胃癌、肺癌、膵臓癌、膀胱癌または尿路上皮癌を含み、より好ましくは、腫瘍疾患はトリプルネガティブ乳癌、Her2陽性乳癌、卵巣癌、胃癌、肺癌または膵臓癌であり、更に好ましくは、腫瘍疾患はトリプルネガティブ乳癌、Her2陽性乳癌、卵巣癌または胃癌である。
【0040】
幾つかの実施形態においては、腫瘍疾患は乳癌である。
【0041】
幾つかの実施形態においては、乳癌は以下のタイプのものを含むが、それらに限定されるものではない:ルミナル(Luminal)タイプA、ルミナルタイプB、Her-2陽性タイプおよびトリプルネガティブタイプ。
【0042】
幾つかの実施形態においては、腫瘍疾患はトリプルネガティブ乳癌である。
【0043】
幾つかの実施形態においては、腫瘍疾患はHer2陽性乳癌である。
【0044】
幾つかの実施形態においては、腫瘍疾患は卵巣癌である。
【0045】
幾つかの実施形態においては、卵巣癌は以下のタイプのものを含むが、それらに限定されるものではない:プラチナ感受性タイプおよびプラチナ耐性タイプ。
【0046】
幾つかの実施形態においては、腫瘍疾患は胃癌である。
【0047】
幾つかの実施形態においては、胃癌は以下のタイプのものを含むが、それらに限定されるものではない:腺癌、腺扁平上皮癌、扁平上皮癌、未分化癌および神経内分泌腫瘍。
【0048】
幾つかの実施形態においては、腫瘍疾患は膵臓癌である。
【0049】
幾つかの実施形態においては、膵臓癌は以下のタイプのものを含むが、それらに限定されるものではない:上皮腫瘍、外分泌腫瘍、境界腫瘍、管状腺癌、内分泌腫瘍、成熟奇形腫、間葉系腫瘍、悪性リンパ腫および続発性腫瘍。
【0050】
幾つかの実施形態においては、腫瘍疾患は膀胱癌である。
【0051】
幾つかの実施形態においては、膀胱癌は以下のタイプのものを含むが、それらに限定されるものではない:尿路上皮(移行上皮)癌、扁平上皮癌および腺癌。
【0052】
幾つかの実施形態においては、腫瘍疾患は尿路上皮癌である。
【0053】
幾つかの実施形態においては、尿路上皮癌は以下のタイプのものを含むが、それらに限定されるものではない:基底型、管腔型および野生型尿路上皮癌。
【0054】
幾つかの実施形態においては、腫瘍疾患は肺癌である。
【0055】
幾つかの実施形態においては、肺癌は以下のタイプのものを含むが、それらに限定されるものではない:小細胞肺癌および非小細胞肺癌。幾つかの実施形態においては、医薬組成物は生物活性コンジュゲートと薬学的に許容される担体および/または賦形剤とを含む。
【0056】
幾つかの実施形態においては、生物活性コンジュゲートまたは医薬組成物を7~35日ごとに1回、好ましくは7~28日ごとに1回、例えば7日、14日、21日、28日または35日ごとに1回投与する。
【0057】
幾つかの実施形態においては、コンジュゲートまたは医薬組成物の投与経路は経口投与、経皮注射、直腸投与、粘膜投与、筋肉内注射、髄内注射、静脈内注射または腹腔内注射(これらに限定されるものではない)を含み、好ましくは静脈内注射を含む。
【0058】
幾つかの実施形態においては、患者の体重に基づく毎回の生物活性コンジュゲートの用量は、1mg/kg~30mg/kg、好ましくは1mg/kg~20mg/kg、より好ましくは2mg/kg~12mg/kg、更に好ましくは2~5mg/kg、4~7mg/kg、6~9mg/kg、8~11mg/kg、10~13mg/kgまたは12~15mg/kg、例えば2mg/kg、2.5mg/kg、3mg/kg、3.5mg/kg、4mg/kg、4.5mg/kg、5mg/kg、5.5mg/kg、6mg/kg、6.5mg/kg、7mg/kg、7.5mg/kg、8mg/kg、8.5mg/kg、9mg/kg、9.5mg/kg、10mg/kg、11mg/kgまたは12mg/kgである。
【0059】
幾つかの実施形態においては、生物活性コンジュゲートの投与レジメンは、1以上の投与段階(例えば、1、2、3または4段階)に分割され、各段階での投与サイクルおよび用量は、前記の投与サイクルまたは用量から独立して選択される。
【0060】
幾つかの実施形態においては、本発明の使用または方法は、腫瘍排除または体積減少をもたらす。
【0061】
幾つかの実施形態においては、本発明の使用または方法は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%または少なくとも40%の腫瘍体積減少をもたらす。
【0062】
定義
以下に特に定められていない限り、本明細書中で用いる全ての科学技術用語は、当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を有すると意図される。本明細書中で用いる技術に対する言及は、当業者にとって明らかな技術変更または同等技術の置換を含む、当技術分野で一般に理解されている技術に対する言及であると意図される。以下の用語は当業者によって十分に理解されていると考えられるが、本発明をより良く説明するために以下の定義を記載する。
【0063】
薬物-抗体比(DAR)はコンジュゲートにおける抗体による小分子毒素薬の平均負荷を意味する。特定のコンジュゲート分子に関しては、抗体部分に対する小分子毒素薬部分の結合比は厳密な値を有するが、多数の分子を含有するサンプルを説明するために用いられる場合には、この値は種々の特定のコンジュゲート分子の百分率に従い計算され、この平均負荷は本明細書においては平均カップリング比または「DAR」と称される。
【0064】
NCCNガイドラインは、National Comprehensive Cancer Networkによって発行された、種々の悪性腫瘍に関する臨床診療ガイドラインを意味する。
【0065】
診断および治療のためのCSCOガイドラインは、Chinese Society of Clinical Oncology(CSCO)によって発行された、種々の悪性腫瘍の臨床診断および治療のためのガイドラインを意味する。
【0066】
客観的応答率(客観的奏効率)(ORR)は、腫瘍が或る程度まで縮小し、ある期間にわたってその程度を維持している患者の割合を意味する(CRおよびPR症例を含む)。腫瘍の客観的応答は固形腫瘍における応答評価基準バージョン1.1(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors Version 1.1)(RECIST 1.1)によって評価される。被験者は、ベースライン時に、測定可能な腫瘍病変を伴っていなければならない。RECIST1.1の基準によれば、有効性の評価基準は、完全奏功(CR)、部分奏功(PR)、安定疾患(SD)および進行性疾患(PD)に分けられる。
【0067】
進行性疾患(PD):測定された標的病変の全ての直径の合計における最小値を基準として、直径の合計が、少なくとも20%、相対的に増加する(ベースライン測定値が最小の場合には、ベースラインが基準とみなされる);また、直径の合計の絶対値は少なくとも5mm増加する必要がある(1以上の新たな病変の出現も進行性疾患とみなされる)。
【0068】
安定疾患(SD):標的病変の縮小はPRに達せず、その増加はPDレベルに達せず、症状はそれらの中間であり、直径の最小合計が研究における基準として用いられうる。
【0069】
部分奏効(PR):標的病変の合計が、ベースラインと比較して少なくとも30%減少する。
【0070】
完全奏効(CR):全ての標的病変が消失し、全ての病的リンパ節(標的結節および非標的結節を含む)の短径が10mm未満に縮小する必要がある。
【0071】
用量制限毒性(DLT):薬物用量の継続的増加を制限する主な理由となる薬物の毒性作用および副作用。
【0072】
有害事象(AE):患者または臨床研究対象が薬物の投与を受けた後に発生する有害な医学的事象を意味するが、それは必ずしも治療と因果関係があるわけではない。
【0073】
治療出現有害事象(TEAE):初回投与時または初回投与後に発生または悪化するあらゆるAEを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0074】
図1】本出願において記載されている図面は、本発明の更なる理解をもたらすために用いられ、本出願の一部を構成する。本発明の例示的な実施例およびそれらの記載は、本発明を説明するために用いられ、本発明を不当に限定するものではない。図面においては、図1は、コンジュゲートA、および商業的に入手可能な薬物であるTrodelvy(商標)のインビトロ血漿安定性を示す。
【0075】
詳細な説明
以下においては、本発明の実施例における技術的解決手段を、本発明の実施例における図面を参照して明確かつ完全に記載する。明らかに、記載されている実施例は本発明の実施例の一部にすぎず、全てというわけではない。少なくとも1つの例示的な実施例の以下の記載は本質的に単なる例示であり、本発明、その適用または用途を何ら限定するとは意図されない。本発明における実施例に基づいて、創作的作業なしに当業者によって得られる全ての他の実施例は本発明の保護の範囲内に含まれる。
【0076】
実施例1.4-((S)-2-(4-アミノブチル)-35-(4-((6-(2-(メチルスルホニル)ピリミジン-5-イル)ヘキサン-5-アミド)メチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル)-4,8-ジオキソ-6,12,15,18,21,24,27,30,33-ノナオキサ-3,9-ジアザペンタトリアコンタンアミノ)ベンジル((S)-4-エチル-11-(2-(N-イソプロピルメチルスルホンアミド)エチル)-3,14-ジオキソ-3,4,12,14-テトラヒドロ-1H-ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-4-イル)カルボナート
【化18】
【0077】
工程1:6-(2-(メチルスルホニル)ピリミジン-5-イル)-N-(プロパン-2-アルキン-1-イル)ヘキサ-5-アルキンアミドの合成
25℃で、プロパ-2-イン-1-アミン(189mg、3.4mmol)および化合物3-4(800mg、2.83mmol)をジクロロメタン(10mL)に溶解し、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(738mg、5.67mmol)およびO-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチル尿素ヘキサフルオロホスファート(1.63g、4.25mmol)を順次加え、混合物を、2時間、撹拌して反応させた。反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣を迅速シリカゲルカラム(酢酸エチル/石油エーテル=3/1)で精製し、表題化合物(700mg)を得た。ESI-MS(m/z):306.1[M+H]+。
【0078】
工程2:4-((S)-35-アジド-2-(4-((4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル)アミノ)ブチル)-4,8-ジオキソ-6,12,15,18,21,24,27,30,33-ノナオキサ-3,9-ジアザペンタトリアコンタンアミノ)ベンジル((S)-4-エチル-11-(2-(N-イソプロピルメタンスルホンアミド)エチル)-3,14-ジオキソ-3,4,12,14-テトラヒドロ-2H-ピラノ[2,3-b]-1H-ピラノ[3’,4’:6,7]インダジノ[1,2-b]キノリン-4-イル)カルボナートの合成
25℃で窒素保護下、T-030(250mg、0.49mmol)をジクロロメタン(10mL)に溶解し、0℃に冷却し、次いでジクロロメタン(3mL)中の4-ジメチルアミノピリジン(478mg、3.91mmol)を加え、次いでジクロロメタン(10mL)中のトリホスゲン(72mg、0.24mmol)をゆっくりと滴下した。次いで混合物を0℃で20分間撹拌し、反応混合物に窒素を20分間吹き込んだ。ジクロロメタン(7mL)中の(S)-2-(32-アジド-5-オキソ-3,9,12,15,18,21,24,27,30-ノナオキサ-6-アザトリアセトアミジル)-N-(4-(ヒドロキシメチル)フェニル)-6(((4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル)アミノ)アセトアミド(518mg、0.49mmol)を加えた。次いで混合物を、1時間、撹拌して反応させた。反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣を分取HPLCで精製して表題化合物(500mg)を得た。ESI-MS(m/z):1597.5[M+H]+。
【0079】
工程3:(S)-4-エチル-11-(2-(N-イソプロピルスルホンアミド)エチル)-3,14-ジオキソ-3,4,12,14-テトラヒドロ-1H-ピラノ[3’,4’:6,7]インダジノ[1,2-b]キノリン-4-イル(4-((S)-2-(4-(((4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル)アミノ)ブチル)-35-(4-((6-(2-(メチルスルホニル)ピリミジン-5-イル)ヘキサン-5-アミド)メチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル)-4,8-ジオキソ-6,12,15,18,21,24,27,30,33-ノノキシ-3,9-ジアザペンタトリアコンタンアミノ)ベンジル)カルボナート]の合成
室温で、化合物33-1(14mg、0.05mmol)をジメチルスルホキシドおよび水(2.0mL:0.5mL)に溶解し、臭化銅(I)(11mg、0.08mmol)を加え、混合物を、1時間、撹拌して反応させた。該系を分取HPLCで精製して、表題化合物(30mg)を得た。ESI-MS(m/z):815.9[(M-273)/2+H]+。
【0080】
工程4:4-((S)-2-(4-アミノブチル)-35-(4-((6-(2-(メチルスルホニル)ピリミジン-5-イル)ヘキサン-5-アミド)メチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル)-4,8-ジオキソ-6,12,15,18,21,24,27,30,33-ノナオキサ-3,9-ジアザペンタトリアコンタンアミノ)ベンジル((S)-4-エチル-11-(2-(N-イソプロピルメチルスルホンアミド)エチル)-3,14-ジオキソ-3,4,12,14-テトラヒドロ-1H-ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-4-イル)カルボナート(化合物IM-1)の合成
化合物33-2(30mg、0.02mmol)をジクロロメタン(1.0mL)に溶解し、トリフルオロ酢酸(0.2mL)を反応液に加えて室温で30分間反応させた。分取高速液体クロマトグラフィー(方法C)による精製の後、表題化合物のトリフルオロアセタートを得た(20.0mg)。その構造は以下のとおりに特徴付けられる。
【0081】
【表1】
【0082】
実施例2.コンジュゲートAの製造
0.3mLのサシツズマブ抗体(抗Trop-2、33.5mg/mL)を取り、20mM PB、150mM NaClおよび20mM エデト酸ナトリウムを含有する溶液(pH7.6)の0.25mLで希釈し、次いで、20mM PBおよび150mM NaClを含有する溶液(pH7.6)の0.45mLを加え、混合物をよく混合した。反応混合物のpHを1M NaHPO溶液で7.4に調整し、10mM TCEP(トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン)溶液を加え、混合物をよく混合し、室温で30分間放置した。ジメチルスルホキシドに溶解した10倍モルのIM-1 トリフルオロアセタートを前記溶液系に加え、該系をよく混合し、室温で2時間放置した。次いで100mM システインの6.1μlを加えて、反応を停止させた。最後に、G-25ゲルカラムを使用してバッファー溶液をpH6.5のPBSバッファー溶液で置換し、サシツズマブ抗体にカップリングされたIM-1の生成物を得、これをコンジュゲートAと命名した。
【化19】
【0083】
コンジュゲートAの分子量をLCMSによって分析し、コンジュゲートAの軽鎖および重鎖の測定分子量を、異なる数の毒素にカップリングされた軽鎖および重鎖の理論的分子量と相関させた。コンジュゲートAにおける各抗体分子は1~10個の毒素にカップリングされていることが判明した(すなわち、γは1~10であった)。次いで、異なる数の毒素にカップリングされたコンジュゲート分子のそれぞれの割合に従い、平均カップリング比(DAR)が約6.9であると計算された。
【0084】
実施例2を参照して、6~8の範囲(例えば、7.3または7.4)のDAR値を有するコンジュゲートAサンプルをバッチで製造し、以下の非臨床試験および臨床試験を行った。
【0085】
実験例1.膵臓癌細胞株の増殖に対するコンジュゲートの阻害効果の検出
BxPC-3細胞(ATCCからの膵臓癌細胞株、TROP2陽性細胞)の増殖に対するコンジュゲートAの効果をCelITiter-Glo(登録商標)化学発光細胞生存性アッセイ(すなわち、CTG)によって検出した。実験初日に、対数増殖期におけるBxPC-3細胞を収集し、細胞懸濁液の濃度を培地で調整し、懸濁液を96ウェル細胞培養プレートに加えて、最終細胞濃度を2000細胞/ウェルにした。細胞を37℃の5% COインキュベーター内で一晩培養した。実験の第2日に、コンジュゲートA(最終濃度0.152~1000nM)を1:3の勾配で10倍希釈使用溶液へと希釈し、対応する10倍希釈使用溶液の10μlを各ウェル(各薬物濃度に関して3つの重複ウェル)に加えた。薬物の添加後、細胞を5% COインキュベーター内で37℃で72時間培養した。実験の第5日に、予め溶融され室温に平衡化されたCTG溶液の50μl(培養体積の1/2)を各ウェルに加え、混合物をマイクロプレートシェーカーで2分間よく混合した。室温で20分間静置した後、Envision 2104プレートリーダーを使用して、蛍光シグナル値を測定した。
【0086】
結果は、コンジュゲートAが、14.3nMのIC50および95.3%の最大阻害率で、TROP2陽性細胞BxPC-3の増殖を有意に阻害したことを示している。これは、コンジュゲートAがTROP2陽性膵臓癌細胞の増殖を阻害しうることを示しており、このことは、それが膵臓癌に対する治療効果を有することを示唆している。
【0087】
実験例2.心血管機能および呼吸器機能に対するコンジュゲートの効果の検出
カニクイザルを群当たり10頭(半分は雄および半分は雌)に分けた。コンジュゲートAを、2週間に1回、合計4回、それぞれ25mg/kg、50mg/kgおよび75mg/kgの用量で静脈内注射した。カニクイザルの心血管機能および呼吸機能に対するコンジュゲートAの効果を評価するために、II誘導ECGおよび呼吸頻度を大型動物非侵襲的生理学的信号遠隔測定システムによって検出し、動脈血圧を非侵襲的血圧計によって測定した。
【0088】
結果は、初回投与前、初回投与の2~3時間後、24~25時間後、72~73時間後、7日後、最終投与の約2~3時間後および回復期の終了前に、コンジュゲートAの投与を受けた各群におけるサルに関しては、II誘導ECG、および心拍数、RR間隔、P波時間、PR間隔、QRS波時間、QT間隔、補正QT間隔、およびII誘導心電図の他のパラメーターにおいて、不整脈は認められず、収縮期血圧、拡張期血圧、平均動脈圧および呼吸数に有意な異常は認められなかった。これらの結果は、コンジュゲートAがカニクイザルの心血管系および呼吸器系に影響を及ぼさず、臨床薬の安全性の、良好な有望性を有することを示している。
【0089】
実験例3.動物におけるコンジュゲートの毒性代謝挙動の検出
カニクイザルを、異なる用量に応じて、対照群、25mg/kg 用量群、50mg/kg 用量群および75mg/kg 用量群の4つの群に分け、各群は5頭の雄および5頭の雌から構成された。25mg/kgおよび50mg/kgの用量レベルで、カニクイザルにコンジュゲートAを2週間に1回、連続して4回、静脈内注射した。各群のサルに関して、初回投与および最終投与の前および直後(投与終了の0~1分後)ならびに4時間後、24時間後、48時間後、96時間後および168時間後、第2投与および第3投与の前および直後(投与終了の0~1分後)、ならびに最終投与の336時間後に、血液サンプルを採取した。75mg/kg 用量群のサルに関しては、更に、コンジュゲート、およびそれによってインビボで放出される毒素分子の毒物動態学的挙動を検出するために、第3投与後の4時間、24時間、48時間、96時間および168時間の時点で、血液サンプルを採取した。
【0090】
以下の表は、前記方法での投与の後の雄および雌のサルにおける、コンジュゲートA、およびコンジュゲートAによって放出された毒素分子のピーク血漿濃度(Cmax)およびそれらに対する曝露(AUC)を示す。結果は、コンジュゲートAの、重篤な毒性が発現しない最大用量(HNSTD)が50mg/kgであり、この用量での最終投与の後、雌および雄のサルにおける毒素分子に対する曝露がそれぞれ3.85hμg/mLおよび5.86hμg/mLであり、雌および雄のサルにおけるコンジュゲートAに対する曝露がそれぞれ45.8hmg/mLおよび64.2hmg/mLであったことを示している。
【0091】
【表2】
【0092】
実験結果によると、全ての動物群におけるADCおよび毒素の曝露またはCmaxデータが初回投与後と最終投与後とにおいてに近かったことが認められうる。このことは、コンジュゲートAが、連続的静脈内投与後に、明らかな毒性蓄積を示さず、動物における良好な忍容性を有し、したがって、それが臨床薬の安全性に関する良好な有望性を有することを示している。
【0093】
実験例4.インビトロでのコンジュゲートの代謝安定性
この実験においては、まず、コンジュゲートAおよびTrodelvy(商標)を、それぞれ、生理食塩水で3.4mg/mLの使用溶液へと製剤化し、次いでコンジュゲートAおよびTrodelvy(商標)使用溶液を、それぞれ、ヒトブランク血漿中に加えて、0.05mg/mLのヒト血漿サンプルを得た。血漿サンプルを37℃でインキュベートし、1時間、3時間、24時間、48時間、72時間および144時間の時点で毒素分子の放出を測定した。コンジュゲートAおよび商業的に入手可能な薬物Trodelvy(商標)をインビトロでの血漿安定性における差異に関して比較した。結果を図1に示す。
【0094】
本明細書の図1に示されているとおり、インキュベーション時間の増加と共にヒト血漿中の遊離毒素の収量が増加し、24時間のインキュベーションの後、ヒト血漿におけるコンジュゲートAおよび商業的に入手可能なADC薬Trodelvy(商標)の毒素分子の放出率は、それぞれ、28.5%および93.4%であり、48時間のインキュベーションの後、ヒト血漿におけるコンジュゲートAおよび商業的に入手可能なADC薬Trodelvy(商標)の毒素分子の放出率は、それぞれ、44.6%および109.1%であり、72時間のインキュベーションの後、ヒト血漿におけるコンジュゲートAおよび商業的に入手可能なADC薬Trodelvy(商標)の毒素分子の放出率は、それぞれ、53.7%および100.6%であり、144時間のインキュベーションの後、ヒト血漿におけるコンジュゲートAおよび商業的に入手可能なADC薬Trodelvy(商標)の毒素分子の放出率は、それぞれ、65.3%と104.8%であった。
【0095】
結果は、ヒト血漿におけるコンジュゲートAの毒素分子の放出速度がTrodelvy(商標)の場合よりも有意に低く、このことは、コンジュゲートAがヒト血漿において比較的安定であり、血漿において毒素の放出が少なく、標的腫瘍部位への到達後の毒素の放出という目標を有効に達成していることを示している。更に、商業的に入手可能な薬物Trodelvy(商標)と比較して、コンジュゲートAは、血漿における毒素の迅速なおよび過剰な放出によって引き起こされる重篤な副作用のリスクを低減しうる。
【0096】
治験例1.第I相臨床試験
I.プロトコル
組織学的検査によって診断された上皮由来の悪性腫瘍を有する患者をコンジュゲートAで治療した。患者の全ては、標準治療に失敗した、または標準治療レジメンを有さない、または現段階で標準治療に適さない、切除不能な局所進行性または転移性固形腫瘍を有していた。患者の体重に基づいて、2、4、6、9および12mg/kgの5つの用量レベルを設計し、これらを2週間に1回、28日を1サイクルとして静脈内注射し、疾患が進行するまで、または耐えられない毒性反応が生じるまで、サイクルごとに投与した。全ての計画用量群および幾つかの中間用量群の毒性はBLRMによって評価された。モデル解析に基づいて、スポンサーおよび研究者が共同で用量増加の決定を行った。
【0097】
II.安全性の結果
治療中に、2mg/kg用量群においてはグレード3以上の「治療出現有害事象(以下、TEAEと称される)」は生じなかった。4mg/kg用量群においては、口腔粘膜炎、貧血などを含むグレード3のTEAEが生じた。6mg/kg用量群においては、好中球数の減少、白血球数の減少などを含むグレード3以上のTEAEが生じた。前記のグレード3以上のTEAEは対症療法後に回復可能であり、該薬物は連続的に投与可能であり、このことは、コンジュゲートAが良好な臨床安全性を有することを示している。
【0098】
III.有効性の結果
種々の適応症に関する治療成績は以下のとおりである。
【0099】
1.トリプルネガティブ乳癌(TNBC)
トリプルネガティブ乳癌を有する患者の全てにおいて、一部の患者は部分奏効(部分的応答)を示した。
【0100】
事前のアドリアマイシン/シクロホスファミド/パクリタキセル・ネオアジュバント化学療法、左乳房切除術および左胸部放射線療法の後に進行性疾患を有していた患者に、前記投与サイクルに従い、コンジュゲートAを、患者の体重に基づいて4mg/kgの用量で静脈内注射した。18週間後、部分奏功が観察され、これは6週間続いた。数回の有効性評価において、対象病変の総体積が40%減少可能であった。患者は重篤な有害事象を示さなかった。
【0101】
2.卵巣癌
卵巣癌を有する患者の全てにおいては、一部の患者は部分奏功を示した。
【0102】
事前の子宮摘出術、卵巣腫瘍摘出術、カルボプラチン/パクリタキセル、ルカパリブ、カルボプラチン/ドセタキセル/ベバシズマブでの治療に失敗した卵巣癌を有する患者に、前記投与サイクルに従い、コンジュゲートAを、患者の体重に基づいて4mg/kgの用量で静脈内注射した。21週間後、部分奏功が観察され、これは15週間続いた。数回の有効性評価において、対象病変の総体積が64.8%減少可能であり、標的病変の1つが完全に消失した。患者は重篤な有害事象を示さなかった。
【0103】
3.HER2陽性乳癌
事前の根治的乳房切除術変法、エピルビシン/パクリタキセル、HER2モノクローナル抗体/ドセタキセルおよびカペシタビンでの治療に失敗したHER2陽性乳癌を有する患者に、前記投与サイクルに従い、コンジュゲートAを、患者の体重に基づいて6mg/kgの用量で静脈内注射した。8週間後、部分奏功が観察された。数回の有効性評価において、対象病変の総体積が49.6%減少可能であった。
【0104】
4.胃癌
事前の胃全摘術、パクリタキセル/テガフール、アンロチニブ/テガフール、アンロチニブ/カペシタビン、オキサリプラチン/フルオロウラシルおよびオキサリプラチン/ラルチトレキセドでの治療に失敗した胃癌を有する患者に、前記投与サイクルに従い、コンジュゲートAを、患者の体重に基づいて4mg/kgの用量で静脈内注射した。15週間後、部分奏功が観察され、これは10週間続き、尚も利益を受けている。数回の有効性評価において、対象病変の総体積が62.8%減少可能であり、標的病変の1つが完全に消失した。患者において重篤な有害事象は全く生じなかった。
【0105】
5.膵臓癌
事前の膵臓癌遠位切除、放射線療法、ゲムシタビン/カペシタビン、ゲムシタビン/イリノテカン/フルオロウラシル、ゲムシタビン/アルブミンパクリタキセル/オキサリプラチン/フルオロウラシル、およびニボルマブ/カビラリズマブの複数選択(マルチライン)療法での治療に失敗した膵臓癌を有する患者に、前記投与サイクルに従い、コンジュゲートAを、患者の体重に基づいて4mg/kgの用量で静脈内注射し、7週間後に安定疾患が観察され、これは30.3週間続いた。数回の有効性評価において、対象病変の総体積が8.8%減少可能であり、患者において重篤な有害事象は全く生じなかった。
【0106】
要約すると、第I相臨床試験は、コンジュゲートAが、少なくとも、標準治療に失敗した前記の切除不能な転移性TNBC、卵巣癌、HER2陽性乳癌、胃癌、膵臓癌に対して、臨床的使用を妨げうる重篤な毒性を誘発することなく、良好な有効性を有することを示した。これらの結果は、コンジュゲートAが腫瘍疾患の治療において良好な安全性および有効性を有し、種々のバッチで製造された6~8の範囲のDAR(例えば、DAR7.3またはDAR7.4)を有するコンジュゲートAが基本的に一貫した有効性および安全性を有することを証明している。
【0107】
本明細書に記載されているもの以外の本発明の種々の修飾は前記説明から当業者に明らかであろう。そのような修飾も添付の特許請求の範囲内に含まれると意図される。本出願において引用されている全ての参考文献(全ての特許、特許出願、雑誌論文、書籍および任意の他の刊行物を含む)の全体を参照により本明細書に組み入れることとする。
図1
【国際調査報告】