(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-12
(54)【発明の名称】神経導管
(51)【国際特許分類】
A61F 2/04 20130101AFI20240405BHJP
【FI】
A61F2/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565936
(86)(22)【出願日】2022-04-26
(85)【翻訳文提出日】2023-10-26
(86)【国際出願番号】 EP2022061084
(87)【国際公開番号】W WO2022229207
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517442557
【氏名又は名称】ティシウム ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】マラフォス,マリ
(72)【発明者】
【氏名】ムナン,シモン
(72)【発明者】
【氏名】コラン,エステル
(72)【発明者】
【氏名】ペレイラ,マリア
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA14
4C097AA20
4C097BB01
4C097CC01
4C097CC06
4C097DD01
4C097DD04
4C097EE08
(57)【要約】
本発明は、神経導管、ならびに、かかる神経導管を使用して神経損傷を治療する使用および方法の分野に関する。特に、本発明は、神経導管内への神経端部の適切な挿入および/または固定を促すことによって、神経損傷の修復をサポートする、神経導管に関する。細長い本体(12)を備える神経導管(10)であって、前記細長い本体(12)は、内空洞(16)を定める中央部分(14)と、複数の端部部分(18)であって、前記内空洞(16)へのそれぞれの開口部(20)を定め、前記中央部分(14)に隣接して、前記細長い本体(12)の互いに長手方向反対側にある複数の端部に配置された複数の端部部分(18)と、を備える神経導管(10)が提案される。本発明によれば、少なくとも1つの開口部(20)の横断面積は、前記中央部分(14)の前記内空洞(16)の横断面積よりも大きい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長い本体(12)を備える神経導管(10)であって、
前記細長い本体(12)は、
内空洞(16)を定める中央部分(14)と、
複数の端部部分(18)であって、前記内空洞(16)へのそれぞれの開口部(20)を定め、前記中央部分(14)に隣接して、前記細長い本体(12)の互いに長手方向反対側にある複数の端部に配置された複数の端部部分(18)と、
を備え、
少なくとも1つの開口部(20)の横断面積は、前記中央部分(14)の前記内空洞(16)の横断面積よりも大きい、神経導管(10)。
【請求項2】
前記中央部分(14)は、実質的に管状の形状として形成されており、
前記細長い本体(12)は、2つの端部部分(18)を備える、請求項1に記載の神経導管(10)。
【請求項3】
複数の前記開口部(20)および前記内空洞(16)は、単一の管腔または連続的な貫通穴を定めている、請求項1または2に記載の神経導管(10)。
【請求項4】
複数の前記開口部(20)の各開口部の横断面積は、前記内空洞(16)の横断面積よりも大きく、または、1つの端部部分(18)のみの開口部(20)の横断面積は、前記内空洞(16)の横断面積よりも大きい、請求項1~3のいずれか一項に記載の神経導管(10)。
【請求項5】
少なくとも1つの前記開口部(20)の横断面積は、前記中央部分(14)から長手方向に離れるにつれて増大する、請求項1~4のいずれか一項に記載の神経導管(10)。
【請求項6】
少なくとも1つの前記端部部分(18)および対応する前記開口部(20)は、前記細長い本体(12)によって定められる長手方向軸線に沿って、回転対称形状として形成されており、
前記形状は、実質的にU字の形状、シグモイド形状、円錐形状、凹面形状、漏斗形状、または放物面形状である、請求項5に記載の神経導管(10)。
【請求項7】
複数の前記端部部分(18)は、同じように形成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の神経導管(10)。
【請求項8】
前記内空洞(16)および複数の前記開口部(20)は、前記細長い本体(12)の内直径および外直径を定める当該細長い本体(12)の単一の壁(22)によって形成されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の神経導管(10)。
【請求項9】
前記壁(22)は、好ましくは、前記細長い本体(12)の周方向および長手方向に沿って実質的に連続的な厚さを備える、請求項8に記載の神経導管(10)。
【請求項10】
前記中央部分(14)の前記内直径および前記外直径は、前記細長い本体(12)の長手方向において実質的に連続的である、請求項8または9に記載の神経導管(10)。
【請求項11】
少なくとも1つの前記開口部(20)の直径は、前記中央部分(14)から長手方向に離れるにつれて増大する、請求項8~10のいずれか一項に記載の神経導管(10)。
【請求項12】
少なくとも1つの前記開口部(20)の最大直径(24)と前記内空洞(16)の直径(26)との比は、好ましくは、1.05:1.0~1.5:1.0であり、より好ましくは、1.05:1.0~1.2:1.0である、請求項11に記載の神経導管。
【請求項13】
少なくとも1つの前記開口部の最大直径(24)は、前記中央部分(14)の前記外直径よりも小さく、または前記中央部分(14)の前記外直径に一致している、請求項11または12に記載の神経導管(10)。
【請求項14】
前記中央部分(14)から延在する複数の前記端部部分(18)の外表面(38)は、前記中央部分(14)の外表面(40)に対して位置合わせされており、かつ/または、前記中央部分(14)の外表面(40)に対してステップまたはエッジがない、請求項1~13のいずれか一項に記載の神経導管(10)。
【請求項15】
長手方向における前記中央部分(14)の長さ(28)と端部部分(18)の長さ(30)との比は、1.2:1.0~15:1.0であり、好ましくは、1.2:1.0~12:1.0であり、より好ましくは、1.2:1.0~10:1.0である、請求項1~14のいずれか一項に記載の神経導管(10)。
【請求項16】
長手方向における前記中央部分(14)の長さ(28)と前記端部部分(18)の長さ(30)との比は、1.2:1.0~6.0:1.0であり、好ましくは、1.2:1.0~1.4:1.0、または1.8:1.0~2.2:1.0、または4.4:1.0~5.4:1.0である、請求項1~15のいずれか一項に記載の神経導管(10)。
【請求項17】
長手方向における前記中央部分(14)の長さ(28)と前記細長い本体(12)の長さ(32)との比は、0.3:1.0~1:1.0であり、例えば、0.3:1.0~0.8:1.0である、請求項1~16のいずれか一項に記載の神経導管(10)。
【請求項18】
長手方向における前記中央部分(14)の長さ(28)は、3mm~40mmであり、好ましくは、4mm~30mmであり、より好ましくは、4.5mm~25mmである、請求項1~17のいずれか一項に記載の神経導管(10)。
【請求項19】
長手方向における前記細長い本体(12)の長さ(32)は、5mm~50mmであり、好ましくは、6mm~40mmであり、より好ましくは、7mm~30mmである、請求項1~18のいずれか一項に記載の神経導管(10)。
【請求項20】
長手方向における前記端部部分(18)の長さ(30)は、1mm~8mmであり、好ましくは、1.3mm~6.5mmである、請求項1~19のいずれか一項に記載の神経導管(10)。
【請求項21】
長手方向における前記中央部分(14)の長さ(28)は、5mm~10mmであり、好ましくは、6.5mm~8.5mmであり、
長手方向における前記細長い本体(12)の長さ(32)は、7mm~25mmであり、好ましくは、9mm~22mmであり、かつ/または、
長手方向における前記端部部分(18)の長さ(30)は、1mm~8mmであり、好ましくは、1.3mm~6.5mmである、請求項1~20のいずれか一項に記載の神経導管(10)。
【請求項22】
前記中央部分(14)は、それぞれの端部部分(18)の間の、および/または、対応する開口部(20)の間の境界領域によって定められており、
長手方向における前記中央部分(14)の延在は、好ましくは、長手方向におけるそれぞれの開口部(20)および/または端部部分(18)の最小延在の約10パーセントよりも小さい、請求項1~21のいずれか一項に記載の神経導管(10)。
【請求項23】
前記内空洞(16)の直径(26)は、1mm~15mmであり、好ましくは、1mm~12mmである、請求項1~22のいずれか一項に記載の神経導管(10)。
【請求項24】
少なくとも1つの前記開口部(20)の最大直径(24)は、1mm~15mmであり、好ましくは、1.5mm~13mmであり、より好ましくは、1.75mm~7mmである、請求項1~23のいずれか一項に記載の神経導管(10)。
【請求項25】
前記内空洞(16)の直径(26)は、1mm~12mmであり、好ましくは、1.5mm~6.5mmであり、かつ/または、
少なくとも1つの前記開口部(20)の最大直径(24)は、1.5mm~11mmであり、好ましくは、1.75mm~6.5mmである、請求項1~24のいずれか一項に記載の神経導管(10)。
【請求項26】
前記中央部分(14)の前記内空洞(16)は、単一の管腔を定めており、
前記神経導管は、前記中央部分(14)の各端部に位置する2つの端部部分(18)を備え、
複数の前記端部部分(18)の最大外直径は、前記中央部分(14)の外直径よりも大きく、
前記端部部分(18)の外側端部は、連続的な縁部によって設けられている、請求項1~25のいずれか一項に記載の神経導管(10)。
【請求項27】
少なくとも1つの前記開口部(20)の横断面積は、前記中央部分(14)から長手方向に離れるにつれて増大し、
少なくとも1つの前記端部部分(18)および対応する前記開口部(20)は、前記細長い本体(12)によって定められた長手方向軸線に沿って、回転対称の漏斗形状および/または放物面形状として形成されており、
前記内空洞(16)および複数の前記開口部(20)は、前記細長い本体(12)の内直径および外直径を定める当該細長い本体(12)の単一の壁(22)であって、前記細長い本体(12)の周方向および長手方向に沿って実質的に連続的な厚さを有する当該細長い本体(12)の単一の壁(22)によって形成されており、
前記中央部分(14)の前記内直径および前記外直径は、前記細長い本体(12)の長手方向において実質的に連続的である、請求項1~26のいずれか一項に記載の神経導管(10)。
【請求項28】
複数の前記開口部(20)の各開口部の横断面積は、前記内空洞(16)の横断面積よりも大きく、かつ前記中央部分(14)から長手方向に離れるにつれて増大し、
少なくとも1つの前記端部部分(18)および対応する前記開口部(20)は、前記細長い本体(12)によって定められた長手方向軸線に沿って、回転対称の漏斗形状および/または放物面形状として形成されており、
前記内空洞(16)および複数の前記開口部(20)は、前記細長い本体(12)の周方向および長手方向に沿って実質的に連続的な厚さを有する当該細長い本体(12)の単一の壁(22)によって形成されている、請求項1~27のいずれか一項に記載の神経導管(10)。
【請求項29】
複数の前記端部部分(18)のうちの少なくとも1つの端部部分(18)は、前記細長い本体(12)の外表面に、1または複数の保定表面(41)を備え、
1または複数の前記保定表面(41)は、それぞれの前記端部部分(18)に医用接着剤を固定するように構成されている、請求項1~28のいずれか一項に記載の神経導管(10)。
【請求項30】
それぞれの端部部分(18)の1または複数の前記保定表面(42)は、前記細長い本体(12)の周方向における少なくとも1つの列に配置された複数の楕円体または円形の穴(44)として形成されている、請求項29に記載の神経導管(10)。
【請求項31】
複数の前記穴(44)は、2~4列に配置されており、
各列は、4~8個の穴(44)を備え、
隣り合う列の複数の前記穴(44)は、千鳥状に配置されている、請求項30に記載の神経導管(10)。
【請求項32】
各穴(44)は、前記細長い本体(12)を形成する壁における切抜き、凹部、または貫通穴として形成されている、請求項29または30に記載の神経導管(10)。
【請求項33】
それぞれの端部部分(18)の1または複数の前記保定表面(42)は、前記細長い本体(12)によって定められる長手方向軸線に沿って螺旋方向に延在する少なくとも1つの溝(46)として形成されている、請求項29に記載の神経導管(10)。
【請求項34】
少なくとも1つの前記溝(46)は、丸みを帯びた複数のエッジを備え、
かつ/または、
少なくとも1つの前記溝(46)は、少なくとも1つのアンダーカットを定めている、請求項33に記載の神経導管(10)。
【請求項35】
少なくとも1つの前記溝(46)は、前記細長い本体(12)の長手方向におけるそれぞれの前記端部部分(18)の最も外側の縁部を定めている、請求項33または34に記載の神経導管(10)。
【請求項36】
少なくとも1つの前記溝(46)は、少なくとも1つの前記開口部(20)の横断面積が前記中央部分(14)から長手方向に離れるにつれて増大するのに従って変化する半径方向深さを備える、請求項33~35のいずれか一項に記載の神経導管(10)。
【請求項37】
少なくとも1つの前記溝(46)は、前記細長い本体(12)によって定められる長手方向軸線の周りに0.5~10回転分延在する、請求項33~36のいずれか一項に記載の神経導管(10)。
【請求項38】
少なくとも1つの前記溝(46)は、前記細長い本体(12)によって定められる前記長手方向軸線の周りに2~6回転分延在する、請求項37に記載の神経導管(10)。
【請求項39】
それぞれの前記端部部分(18)は、互いに逆向きの周方向に延在する少なくとも2つの溝(46)であって、互いに交差する少なくとも2つの溝(46)を備え、
各溝(46)は、長手方向軸線の周りに0.5~5回転分延在する、請求項37に記載の神経導管(10)。
【請求項40】
それぞれの端部部分(18)の1または複数の前記保定表面(42)は、前記細長い本体(12)の外表面から延在する1または複数の周方向リブとして形成されている、請求項29に記載の神経導管(10)。
【請求項41】
1または複数の前記リブの延在部は、前記細長い本体(12)の長手方向において、周方向に沿って線状に配置されており、または、周方向に対して傾いた状態で配置されている、請求項40に記載の神経導管(10)。
【請求項42】
前記細長い本体(12)は、生体適合材料、不活性材料、生体移植可能材料、および/または生分解性材料から形成されている、請求項1~41のいずれか一項に記載の神経導管(10)。
【請求項43】
前記細長い本体(12)は、ポリマー系材料から形成されており、好ましくは、エラストマーから形成されている、請求項1~42のいずれか一項に記載の神経導管(10)。
【請求項44】
前記中央部分(14)および複数の前記端部部分(18)は、一体的に形成されており、または単一片から形成されている、請求項1~43のいずれか一項に記載の神経導管(10)。
【請求項45】
前記細長い本体(12)は、エステル基成分および酸性エステル基成分を含む重合および/または架橋ポリマーユニットから形成されており、
前記エステル基成分は、好ましくは、ポリオールであり、
前記酸性エステル基成分は、好ましくは、ポリ酸である、請求項1~44のいずれか一項に記載の神経導管(10)。
【請求項46】
3D印刷プロセスによって形成されている、請求項1~45のいずれか一項に記載の神経導管(10)。
【請求項47】
神経組織を修復、支持および/または案内するための、特に、末梢神経損傷を修復するための、請求項1~46のいずれか一項に記載の神経導管(10)の使用。
【請求項48】
医用接着剤と組み合わせた、請求項47に記載の神経導管(10)の使用。
【請求項49】
末梢神経損傷を治療する方法であって、
-請求項1~48のいずれか一項に記載の神経導管(10)を用意する工程と、
-前記中央部分(14)の前記内空洞(16)よりも大きな横断面積を有する開口部(20)を介して、損傷神経の一端部を前記神経導管(10)に挿入する工程と、
-前記細長い本体(12)の互いに長手方向反対側にある端部における端部部分(18)における開口部(20)を介して、前記損傷神経の別の端部を挿入する工程と
-複数の前記損傷神経端部を前記細長い本体(12)内に固定する工程と、
を含む、方法。
【請求項50】
複数の前記損傷神経端部を固定する前記工程は、前記内空洞(16)の外側に、かつ/または、複数の前記開口部(20)のうちの少なくとも1つの開口部(20)を介して複数の前記開口部(20)内へ、かつ/または、複数の前記開口部(20)の周りに、医用接着剤を塗布することによって行われる、請求項49に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経導管、ならびに、かかる神経導管を使用して神経損傷(神経病変:nerve lesion)を治療する使用および方法に関する。特に、本発明は、神経導管内への神経端部の適切な挿入および/または固定を促すことによって、神経損傷の修復をサポートする、神経導管に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトが外傷を負った時、末梢神経系の1または複数の神経損傷が組織損傷に伴う場合があり、その結果、部分的な感覚喪失および/または運動技能の障害が生じることがある。神経損傷を伴うかかる外傷は、特に、上肢(例えば、ヒトの手または手指)に生じる。その結果、もし神経損傷が適切に治療されなければ、ヒトは、例えば触覚(tactile)または触覚(haptic)のフィードバックにおける喪失を被り得、かつ/または、外傷領域における微細運動技能の制御が困難となり得る。
【0003】
神経損傷の現在の治療には、実質的に緊張(張力)のないようにそれぞれの神経端部間が接続されるよう、様々な縫合技術によって神経端部を接合することが含まれる。神経端部が互いに直接的に隣接しない、より重度の欠損が存在する場合には、対応するギャップを克服するために、再建が必要となる場合がある。例えば、自家(autologous)または同種(allogenic)の神経移植片によって、再建が行われ得る。あるいは、神経ガイド(nerve guide)が提供されるように管状構造をもたらすことによって、再建が実施され得る。例えば、自家もしくは同種の静脈構造(venous structures)によって、または、生体適合材料から作製された、人工的に作られた神経導管によって、かかる管状構造がもたらされ得る。管状構造体を用いることで、ギャップの存在にかかわらず、例えば、さらなる機械的支持および構造的安定性の提供、無緊張(張力)修復の提供、神経腫のリスクを制限する軸索成長(axonal growth)に対するガイドの提供、損傷の部位に対する炎症反応の低減、および/または線維組織成長の広がりの制限によって、損傷の修復がさらに促進され得る。
【0004】
管状構造体、特に神経導管は一般に、長手方向に延在して一方の端部から反対側の端部までの内部管腔または貫通穴を定める、実質的に円筒状の形状として形成される。当該形状は、例えば星形形状または雪片形状に似た横断面を有する、正規でない(irregular)円筒形状として形成されていてもよく、非対称の円筒形状として形成されていてもよく、または、実質的に(丸みを帯びた)矩形の横断面を有する形状として形成されていてもよい。寸法設定および形状は、外傷神経組織および周囲組織の冒された微細構造と適合するように選択される。神経損傷を治療するために、神経端部が、神経導管の一端部を介して神経導管に挿入され、対応する他方の神経端部が、神経導管の反対側の端部を介して神経導管に挿入される。次いで、例えば、縫合技術によって、または、医用接着剤を塗布しもしくは堆積させることによって、両端部が神経導管に固定または結合され得る。移植された(植込まれた)状態では、神経導管は、神経ガイドを形成する。この場合において、神経導管および内部管腔の連続的な円筒形状によって、神経発生の際に指向性のある経路が提供される。
【0005】
US2010/0016874には、互いに外翻(eversion)および非外翻(un-eversion)ができる第1および第2の内表面および外表面のそれぞれの間のフレキシブルな接続部によって定められた第1開口および第2開口を有する神経導管として用いられる、二重壁トロイダルシース構造体が記載されている。神経端部が当該構造体の1つの開口に配置された場合、外力が導管に及ぼされ、内表面および外表面の外翻および非外翻によって、神経にわたるシースの長手方向ロールシフトが可能となる。神経端部が第1開口および第2開口に配置された場合、連続的なシースシフトによって、それらの接続がもたらされる。
【0006】
CN110236622は、小さなギャップ(すなわち、2mm)のスリーブ接続を行い、種々のサイズの神経を縫合するための神経導管に関する。
【0007】
US3,833,002には、スライド可能な挿入が可能となるように、神経端部の直径よりもわずかに大きな内直径を有する管を備える神経導管が記載されている。有利には、当該導管は、管/神経接合部に封止材料を塗布する前に、管の内部に真空を掛けて、神経端部を直接的に接触させ、または互いに近接させることを可能にするように適合されている。
【0008】
WO2012/133019には、神経端部を適所に維持するために微小縫合または封止材料を必要としない、神経再生のためのスリーブ本体が記載されている。当該スリーブ本体は、本体の端部セクションから延在するスリットを介して複数のセクションに分割された、分離されたアームピースと、1つの締め付け本体と、を備える。使用時には、締め付け本体を移動させて半径方向の力をアームピースに加えることによって、神経の外周から離れた位置から、神経の外周と接触する位置へ、アームピースが変位される。神経の端部は巻かれて、縫合作業を必要とすることなくしっかりと保持される。
【0009】
以下、本発明の諸要素について説明する。これらの要素は特定の実施形態とともに列挙されるが、それらを任意の様態および任意の数において組み合わせて、追加の実施形態が創出され得ることを理解されたい。様々に記載された実施例および好ましい一実施形態は、明示的に記載された実施形態のみに本発明を限定するものと解されるべきではない。任意の数の開示されたかつ/または好ましい要素と明示的に記載された実施形態とが組み合わせられた実施形態を、本明細書がサポートおよび包含しているものと理解されるべきである。さらに、別段の定めのない限り、本出願における記載された全ての要素の任意の並べ替えおよび組み合わせが、本出願の明細書によって開示されているとみなされるべきである。
【0010】
別段の要請のない限り、本明細書およびそれに続く特許請求の範囲の全体を通じて、用語「comprise(含む、備える)」、ならびに「comprises」および「comprising」等の変形は、明記された部材、整数または工程を含むことを含意するが、他の任意の明記されない部材、整数または工程が除外されることを含意しないものと理解される。用語「consist of(~からなる)」は、用語「comprise」の特定の一実施形態であり、この場合、他の任意の明記されない部材、整数または工程は除外される。本発明の文脈において、用語「comprise」は、用語「consist of」を包含している。それゆえ、用語「comprising」は、「including」および「consisting」を包含している。例えば、Xを「含む(備える:comprising)」という構文では、Xのみからなってもよく、または、何か追加のものを含んでもよい(例えば、X+Y)。
【0011】
本発明を説明する文脈において(特に特許請求の範囲の文脈において)使用される用語「a」および「an」および「The」および同様の言及は、本明細書に別段の定めのない限り、または文脈との明らかな矛盾のない限り、単数および複数の両方を包含するものと解されるべきである。本明細書における値の範囲の記述は、単に、その範囲内に入る別々の各値に個々に言及する簡略な方法として機能することを意図するものである。本明細書に別段の定めのない限り、個々の各値は、あたかも個々に本明細書に記述されているかのように、本明細書に組み込まれる。本明細書中のいかなる用語も、本発明の実施に不可欠な特許請求されていない任意の要素を示すものと解されるべきではない。
【0012】
数値xに関する用語「約」は、x±10%を意味する。
【0013】
小数位を有する数値において、コンマ(「,」)または点(「.」)は、本明細書において、すなわち、本明細書および特許請求の範囲の全体を通じて、交換可能に使用される。そのため、小数位を有する数値は、コンマ(「,」)あるいは点(「.」)のいずれかによって表され得る。例えば、「0.5」という例示的な値は、「0,5」としても表され得る。このことは、小数位を有する他の値にも、同様に当てはまる。特に、数値内のコンマ(「,」)は小数位を示すものの、「桁区切り」としては使用されていない。
【発明の概要】
【0014】
公知の先行技術から出発して、神経損傷の修復をさらに容易にする必要がある。
【0015】
本発明によれば、現在(現状)の神経導管の連続的な円筒形状および寸法的制限によって、神経導管のそれぞれの端部に神経端部を挿入することが困難になることが認識されている。神経端部は、神経導管に押し込まれるか(神経損傷のリスクがある)、あるいは、例えば微小縫合または真空を用いて神経導管に引き込まれるか(面倒であり得るうえ、それぞれの神経端部にとって有害であり得る)のいずれかである。さらに、神経端部を神経ガイドに固定するための所定量の医用接着剤が、それぞれの神経端部が適切にガイド内へ収められるよう、適切に塗布または堆積されることを確実にするのは、困難であることが分かっている。すなわち、医用接着剤がそれぞれの神経端部の周りに均質に塗布されず、かつ/または、過剰量の医用接着剤が、それぞれの神経端部の間の空間内へ漏れ入り(神経成長が損なわれる可能性がある)、もしくは、導管から周囲組織の方へ漏れ出る場合がある(神経導管の可撓性が失われ、かつ/または当該周囲組織に悪影響を及ぶ可能性がある)。
【0016】
そこで、本発明の目的は、神経損傷の修復をさらに容易にすることであり、特に、微小縫合もしくは真空の必要なく、かつ/または、下にある神経へのダメージを最小限にして、神経導管内における、および、神経導管への、それぞれの神経端部の適切な挿入および固定を確実にすることである。
【0017】
上記の目的は、独立請求項によって達成される。好ましい一実施形態は、従属請求項、明細書、および図面に示される。
【0018】
そこで、第1の態様では、細長い本体を備える神経導管が提案される。当該細長い本体は、内空洞を定める中央部分と、複数の端部部分であって、前記内空洞へのそれぞれの開口部を定め、前記中央部分に隣接して、前記細長い本体の互いに長手方向反対側にある複数の端部に配置された複数の端部部分と、を備える。本発明によれば、少なくとも1つの開口部の横断面積は、前記中央部分の前記内空洞の横断面積よりも大きい。
【0019】
より大きな横断面を神経導管の少なくとも一端部に設けることによって、修復対象の神経のそれぞれの神経端部の挿入が著しく容易になる。特に、より大きな横断面によって、修復処置の間における、中央部分の内空洞の横断面に対する神経端部の挿入高さの(意図しない)オフセット(ずれ)の一定の許容範囲がもたらされ得る。それによって、かかるオフセットが生じたとしても、神経端部が神経導管内に受容され、神経端部の再挿入、または神経導管に対する特定の処置を要することなく、(わずかな)調整が行われ得ることが保証される。加えて、より大きな横断面は、外科医のための光ガイド面として機能することによって、それぞれの神経端部の適切な挿入をさらに容易にする。その結果、神経端部を神経導管内へ(例えば、(接続対象の神経端部を収容するように特に寸法設定され得る)内空洞内へ)適切に挿入および配置することが、より容易かつ効率的に、それぞれの神経端部に悪影響を及ぼすことなく達成され得る。
【0020】
同時に、神経導管は、依然として所望または所定の寸法に従って構成されてもよく、神経発生のための連続的な案内構造を提供してもよい。神経導管の特定の構造的安定性および寸法設定が達成され得るよう、中央部分の変更は必要ではない。しかしながら、細長い本体の管腔または内部、すなわち、中央部分および/または(1または複数の)端部部分の内壁は、溝、内部構造および/または穴を備えてもよい。これによって、神経導管内部における圧力上昇もしくは気泡形成の可能性が回避され得、かつ/または、神経導管の機械的性質が改善されかつ/もしくは神経成長が促進され得る。
【0021】
さらに、神経導管に使用される材料に応じて、細長い本体または神経導管全体の全体的な構造的特性に端部部分が(あまり)影響しないように、所定の可撓性および/または弾性(resilience)が少なくとも中央部分にもたらされてもよい。
【0022】
より大きな横断面はさらに、内空洞の方へのまたは内空洞の外側における医用接着剤の塗布の助けとなり得る。これは、接続対象の神経端部を、対応する開口部を介して、好ましくはそれぞれの開口部内へのみを収容するように、特に寸法設定され得る。例えば、より大きな横断面によって、医用接着剤が、神経導管の外表面へかつ/または中央部分の内空洞内に、不注意に塗布されることが防止され得る。加えて、これによって、医用接着剤が開口部と内空洞との間の境界の方を向き、かつ/または、所定量の医用接着剤を塗布または挿入するときに、相当量の医用接着剤が神経導管の外へ漏れ出、かつ/もしくは、中央部分の内空洞内へ漏れ入ることがないようになり得る。特に、より大きな横断面積によって、神経と神経導管との間の接合部、すなわち、挿入された神経端部と、中央部分から離れた方を向く開口部の端部部分における開口部の縁部との間の接合部に、医用接着剤を塗布することが容易になる。また、より大きな横断面(積)は、例えば塗布が不適切であった際に、ある特定の量の医用接着剤を受容するように設けられてもよく、その結果、所定量の医用接着剤が塗布されたことが示され得、または医用接着剤の塗布の際の塗布の誤りの発生が直ちに明らかになる。言い換えれば、より大きな横断面はさらに、過剰量の医用接着剤が塗布されており、または医用接着剤が適切に塗布されていないため、塗布が中断または停止される必要があることを示すように構成されてもよい。
【0023】
好ましい一実施形態によれば、
(i)医用接着剤と、中央部分から延在しより大きな横断面積を有する端部部分との間の接触面、および/または
(ii)中央部分から延在しより大きな横断面積を有する端部部分の上に医用接着剤を固定すること
は、中央部分から延在する端部部分の外表面上に、特定の幾何学的形状または不規則表面(穴、溝部または線条等)を有する外部構造があることによって改善される。
【0024】
神経導管は、様々な寸法および形状を有してもよく、1または複数の神経損傷を修復するように構成されてもよい。例えば、直接的に隣り合う神経は、単一の神経導管によって修復されてもよい。この場合において、内空洞および開口部には、例えば、隣り合う2つの神経がそれぞれ、分離された区画内において受容され得るように、分離壁が設けられ得る。
【0025】
細長い本体は、複数の端部部分を備えてもよく、かつ/または、細長い本体の長手方向端部における開口部は、複数の端部部分のうちの少なくとも1つの端部部分に複数の開口部を、例えば2つの別個の開口部を備えてもよく、または、それぞれの神経端部の挿入および収容を可能にする2つの別個の区画(または、受容部分)を定める単一の開口部として構成されてもよい。かかる実施形態には、複数の神経損傷および/または神経延長(nerve extension)に必要な神経導管が単一の神経導管のみとなり、神経損傷を修復しまたはそれぞれの神経端部を接続するための処置が容易になり得るという利点があり得る。細長い本体は、例えば、Y字形状を有してもよい。
【0026】
一部の実施形態では、神経導管は、単一の内部管腔、特に単一の内空洞のみを備える。様々な用途に関して、単一の内空洞で十分であり、当該単一の内空洞によって、可撓性が提供され、単純な製造および取扱いが可能となる。前記中央部分は、実質的に管状の形状として形成されていることが好ましい。言い換えれば、神経導管の中央部分は、好ましくは、中央部分の全長に沿って実質的に同じ厚さ(実質的に同じ内直径および実質的に同じ外直径)を有し得る単一の内空洞を有する、円筒形管等の管である。好ましくは、(前記神経導管の)前記細長い本体は、2つの端部部分を備え、特に、中央部分(管)の各端部に、1つの端部部分を備える。(同じ神経導管の)2つの端部部分の形状、寸法、および/または材料(、および/またはその他の特徴)は、実質的に同じであってもよい。(同じ神経導管の)2つの端部部分は、それらが(中央部分の長手方向軸線に沿って)鏡面対称に(中央部分の各端部に)配置され得る点のみにおいて異なっていることが好ましい。かかる構成によって、神経導管全体の構造的複雑さが低減され得、神経導管は、移植部位、および/または特定の神経損傷に関する要件に適合されるように、寸法設定され得る。かかる構成によって、より大きな横断面積を有する開口部におけるそれぞれの神経端部の挿入が、さらに容易になり得る。細長い本体が単一の神経に対してのみ構成され得、接続対象のそれぞれの神経端部に対応していない区画内への不注意な誤配置が効果的に回避され得るからである。
【0027】
管形状によって、外側寸法が連続的になり得る。このことは、周囲組織に対して神経導管を移植するのに有利であり得る。さらに、管状または円筒状の形状によって、十分な構造的安定性がもたらされ得、組織の運動、すなわち、収縮または伸展の際の鋭い(急な)屈曲またはねじれが防止され得る。中央部分に力が作用するときに(例えば、衝撃時に)中央部分全体に沿って所定の様態で反応する均質な構造が、管形状によってもたらされ得る。
【0028】
さらに、管状構造は、神経発生または神経成長のための連続的な案内構造がもたらされるように、実質的に内空洞の形状に対応(一致)してもよい。これによって、望ましくない偏り(biasing)がもたらされることなく、それぞれの神経端部の適切な成長および接続が容易になるとともに、内空洞の寸法設定が望ましくかつ/または必要最小限に保たれ得ることが達成される。
【0029】
複数の前記開口部および前記内空洞は、単一の管腔または連続的な貫通穴を定めていてもよい。言い換えれば、細長い本体内に、チャネルが設けられてもよい。当該チャネルは、それぞれの端部の外部間に(流体)接続または連通が内空洞を介してもたらされるように、細長い本体の一端部から細長い本体の反対側の端部まで長手方向に延在する。神経端部がそれぞれの端部部分の開口部を介して管腔または貫通穴へ導入され得るように中央管腔がそれぞれの端部部分に向かって延在および開口する当該中央管腔として、内空洞が理解されるべきである。上述したように、細長い本体または管腔の複数の部分は、穴、細孔、溝、もしくは特定の幾何学的形状もしくは不規則表面、および/または充填物(filler)を備えてもよい。これによって、それぞれの神経端部の挿入、保定、および/または成長が促され得る。これらの特徴部のうちの1または複数の特徴部は、細長い本体の内部または外部に配置され得るか、あるいは、細長い本体の内部と外部との間に延在し得る。さらに、細長い本体、および、特に管腔は、例えば、コーティングによって、または、細長い本体の材料に組み込まれることによって、薬剤を含有し得る。当該薬剤は、時間とともに放出され得、例えば神経成長を促進し得る。
【0030】
好ましくは、複数の前記開口部の各開口部の横断面積は、前記内空洞の横断面積よりも大きい。これは、神経導管内へのそれぞれの神経端部の各々の挿入および/または固定が容易になり、それによって、それぞれの神経損傷の修復処置がさらにサポートされる、という利点を有する。また、前記中央部分は、それぞれの端部部分の、および/または、開口部の間の境界領域によって定められていてもよい。この場合において、前記中央部分の長手方向または軸方向の延在は、端部部分および/または開口部の対応する延在と比較して、実質的に無視できる(例えば、0に近く、または、それぞれの開口部もしくは端部部分の最小軸方向延在の例えば10パーセントよりも小さい)。複数の開口部のうちの少なくとも1つの開口部は、中央部分の反対側の端部における少なくとも1つの他の開口部とは異なる横断面積を有し得、かつ/または、中央部分の内空洞の横断面積に一致する横断面積を有し得、その結果、非対称の神経導管が形成される。
【0031】
少なくとも1つの開口部の横断面がより大きければ、それぞれの(1または複数の)神経端部の挿入および/または固定の点で既に有利であるが、少なくとも1つの前記開口部の横断面は、前記中央部分から長手方向に離れるにつれて増大することが好ましい。言い換えれば、開口部は、中央部分から離れて延在する方向に、長手方向に沿って増大してもよい。中央部分が管状構造である場合、すなわち中央部分が円形横断面を有する場合、半径方向延在は、好ましくは全ての半径方向に増大し得る。一方、中央部分が楕円体形構造である場合、半径方向延在は、少なくとも1つの方向に増大し得る、すなわち、開口部は全体的な楕円体形形状を維持するか、または、開口部がより円形の形状へ変形する。好ましくは、それぞれの端部部分の開口部は、中央部分から直接的に開始して増大し、または直接的に中央部分から延在して増大する。
【0032】
増大する開口部は、様々な形状を有してもよい。中央部分とそれぞれの端部部分との間の境界における半径方向フレア(張り出し)は、例えば、移植中の神経導管の取り扱いに有利であり得るものの、それぞれの神経端部の挿入が容易となり、かつ/または、それぞれの神経端部の挿入中における案内面(誘導面)が提供されるように、開口部が漸進的に増大し、かつ/またはステップなく増大することが好ましくあり得る。言い換えれば、開口部または横断面積の漸進的な増大によって、挿入される神経端部が内空洞内へまたは内空洞の方へ方向付けられ得、それぞれの神経端部を適切に反らし(方向を変え)または案内することによって、屈曲または急な折り畳みの発生が回避され得る。このため、このように横断面積が漸進的に増大することによって、神経端部が直交面および/または平坦面と接触するときに生じ得るそれぞれの神経端部の断端外傷(stump trauma)または他の任意の悪影響が回避され得る。
【0033】
少なくとも1つの前記端部部分および対応する前記開口部は、好ましくは、前記細長い本体によって定められる長手方向軸線に沿って、回転対称形状として形成されており、前記形状は、実質的にU字の形状、シグモイド形状、円錐形状、凹面形状、漏斗形状、または放物面形状である。
【0034】
上に概説したように、かかる形状によって、横断面積の漸進的な増大がもたらされ得る。細長い本体の縦断面図に示すように、これらの好ましい形状は、実質的に中央部分から延在する形状として理解されるべきである。それらの好ましい形状は、好ましくは、それらの回転対称性に基づいて、周方向に連続的であり、すなわち、ギャップを形成しない。これらの特定の形状によって、実質的に応力(圧力)も張力もないように、それぞれの神経端部を開口部内へ前進させ、さらに、内空洞内へ前進させることが容易になり得る。神経端部と端部部分の内表面との間の接触によって、神経に著しい屈曲が起こるのではなく、神経端部またはその先端部の方向が、進行方向へ、すなわち、内空洞の方へ変更されるからである。このように、提供される案内面または案内構造によって外科医の挿入処置が容易になると同時に、挿入の間に、端部部分の内表面によってそれぞれの神経端部に悪影響が及ぼされることがない。
【0035】
この点に関して特に有利な実施形態には、端部部分の漏斗形状および/または放物面形状と、対応する開口部と、が含まれる。これらの形状によって、実質的に連続的かつ半径方向内向きの案内面、すなわち、細長い本体の内空洞へ向かう案内面が提供され得るからである。さらに、これらの形状によって、ステップまたは鋭いエッジ、または内空洞の方への横断面積の大きな変化、または内空洞と内空洞から延在する開口部との間の交差部における横断面積の大きな相違が回避されるとともに、構造的安定性がさらに向上する。漏斗形状は、例えば、実質的に円錐状に形成されていてもよく、または、例えば、最大横断面積は円錐形状と同じでありながら、対応する長手方向延在部がより小さく、かつ/または中央部分に対する角度が小さくなるように、放物面状の延在部を有してもよい。
【0036】
また、複数の端部部分のうちの少なくとも1つの端部部分は、端部部分の横断面図に示すような星形を備えてもよい。これは、回転対称的であることが好ましい。端部部分における細長い本体の壁は、開口部を半径方向に延在させた、丸みを帯びた2つ以上の膨出部を有してもよい。これらの膨出部は、周方向において互いに等しく離隔していてもよい。このため、膨出部は、内側溝および外側溝を形成している。これらはそれぞれ、それぞれの膨出部の周方向の幅および半径方向延在によって、または2つの膨出部どうしの間隔によって定められている。かかる形状によって、それぞれの開口部が増大することで、対応する神経端部の挿入が容易になり得る。さらに、かかる形状によって、手術中における把持面が改善されることで、それぞれの端部部分の取り扱いが容易になり得る。
【0037】
このように、星形はそれ自体で、すでに開口部の増大をもたらすものだが、かかる星形はさらに、横断面積が徐々に増大するように設けられてもよい。このため、かかる星形を、例えば、それぞれの端部部分における漏斗形状および/または放物面形状と組み合わせてもよい。さらに、かかる形状は、それぞれの端部部分に限定されるものではなく、互いに反対側にある端部部分、および中央部分を同じように形成し得るように、かかる形状を細長い本体の全体に関して設けてもよい。これによって、移植中および手術中における取り扱いがさらに容易になる。また、これは、製造の点で有利となり得る。さらに、上述したこれらの好ましい形状、特に、漏斗状および/または放物面状の形状は、例えば、塗布された医用接着剤を実質的に内空洞の外側に維持することで、かつ/または、医用接着剤を塗布するための接合部または外側エッジまたはリムを形成することで、医用接着剤の塗布を容易にする。その結果、それぞれの神経端部が神経導管内に保持されることが保証され、周囲組織および/または中央部分の内空洞の方への漏れが防止される。また、これらの形状は、区切られた容器(limited reservoir)または凹部を定め得る。これによって、例えば、過剰な医用接着剤が塗布された場合、または塗布が不正確であった場合に、医用接着剤が神経導管に進入することが防止され、医用接着剤が上記の接合部またはエッジ領域に保たれることが保証される。さらに、それぞれの端部部分の横断面の星形が形成する溝によって、医用接着剤との接触面の増大が促進され得る。それによって、それぞれの神経端部の当該端部部分への固定が改善され得る。
【0038】
端部部分は、特定の寸法の神経損傷に適合されていてもよく、全体としての神経導管は、それぞれの神経端部間の対応する距離に架橋構造をもたらすような寸法であってもよい。このため、細長い本体の複数の端部部分は、例えば種々の寸法の対応する神経端部を収容する、種々の特性(特徴)がもたらされように、異なるように構成されてもよい。しかしながら、複数の前記端部部分は、同じように(均等に)形成されていることが好ましい。このため、神経導管は、それぞれの端部部分の向きとは実質的に無関係に移植され(植込まれ)得る。言い換えれば、端部部分を均等に成形することによって、神経導管が実質的に鏡面対称であるように構成されてもよい。このため、神経導管は、いずれの方向に配置されてもよく、すなわち、180度逆向きに配置されてもよい。
【0039】
前記内空洞および複数の前記開口部は、前記細長い本体の内直径および外直径を定める当該細長い本体の単一の壁によって形成されていることが好ましい。これにより、神経導管が、細長い本体に作用する力に対して所定の様態で、かつ/または、予測可能に応答する、より堅牢なものとなるとともに、当該神経導管の構造的複雑さが低減し得る。例えば、細長い本体に作用する圧縮力および/または引張力は、応力(圧力)または張力の集中が回避されるよう、単一の壁によって、より良好に分散(または、吸収)され得る。さらに、細長い本体の材料に応じて、例えば、細長い本体が弾性(elastic)および/または弾性(resilient)の特性を有する壁から形成されている場合、神経導管の撓みがより均質となり得る。
【0040】
特定の状況では、壁は、複数の端部部分のうちの少なくとも1つの端部部分において、中央部分から開始してそれぞれの端部部分の(長手方向)最外側(最も外側の)端部に向かって、(徐々に)減少する厚さを有してもよい。このように、開口部のより大きな横断面積は、壁の厚さによって定められ(つくられ)得る。
【0041】
しかしながら、前記壁は、前記細長い本体の周方向および長手方向に沿って実質的に連続的な厚さを備えることが好ましい。これによって、神経導管の製造が容易になるだけでなく、同様の構造的特性が長手方向および周方向に沿ってもたらされることが保証される。面取り(ベベル)され(beveled)または面取り(チャンファ)された(chamfered)端部部分とは反対に、連続的な壁厚を設けることによって、改善した構造的特性のゆえに、より大きな長手方向延在にわたって、端部部分の直径および/または横断面積を徐々に増大させることが容易になる。かかる連続的な厚さは、細長い本体の長手方向延在の全体にわたって、最小の連続的な厚さによって設けられてもよく、厚さは、特定の部分において、好ましくは1または複数の端部部分において、最小の延在を超えてもよい。さらに、神経導管の適切な配置は、周方向における神経導管の向きに依存しない。
【0042】
神経成長条件を最適なものとし、成長する神経端部が望ましくない偏りなしに適切に案内されるのに有利な、実質的に均質な内空洞が得られるように、前記中央部分の前記内直径および前記外直径は、前記細長い本体の長手方向において実質的に連続的であることが好ましい。
【0043】
少なくとも1つの前記開口部の直径は、前記中央部分から長手方向に離れるにつれて増大してもよい。言い換えれば、対応する開口部のより大きな横断面積は、壁の内直径によって定められ得る。この場合において、中央部分から離れる方へ、かつ/または、中央部分から(直接的に)開始して、端部部分の長手方向端部へ向かって、直径が拡がっていく。開口部における増大は、いずれの半径方向の延在においても、漸進的かつ均質であることが好ましい。例えば、開口部の横断面は、それぞれの端部部分の長手方向の全体に沿って、円形であってもよい。この場合において、円形形状の直径は、徐々に増大する。かかる形状にはさらに、移植の際に、神経導管の配置が回転の向きから独立しているという利点がある。しかしながら、その他の形状(例えば、楕円体等)であってもよい。この場合には、開口部における(漸進的な)増大は、少なくとも1つの半径方向延在における増大によってもたらされる。
【0044】
少なくとも1つの開口部の最大(largest)直径または最大(maximum)直径は、神経導管の全体的な厚さを生理学的に許容可能な限界内に維持しつつ、それぞれの神経端部の挿入が十分に支持されるように、選択されてもよい。したがって、最大直径は、周囲組織に対して圧力点および/または摩擦点が生じることを回避し、収容された神経端部が端部部分によって十分に支持されるように選択される。
【0045】
対応して、少なくとも1つの前記開口部の最大直径と前記内空洞の直径との比は、好ましくは、1.05:1.0~1.5:1.0であり、好ましくは、1.05:1.0~1.2:1.0である。すると、直径における差、したがって横断面積における差が、比較的小さくなり得ることが見出された。それにもかかわらず、この好ましい比によって、それぞれの神経端部の挿入および/または固定に関して、さらなる改善が達成される。より小さな比では、医用接着剤の塗布がさらに改善される。これによって、それぞれの神経端部の間で接着剤を中央部分の内空洞内に塗布するリスクがさらに低減されるからである。
【0046】
少なくとも1つの前記開口部の前記最大(内)直径は、前記中央部分の前記外直径よりも小さく、または前記中央部分の前記外直径に一致していることが好ましい。すなわち、縦断面から見て、開口部は、内空洞の外直径を半径方向において超えない。その結果、例えば、壁の厚さ、および内空洞の寸法設定に応じて、開口部の最大直径は、全体的な外観が維持されるように、かつ/または、中央部分からの大規模な半径方向の突出が回避されるように、比較的小さなものとなり得る。
【0047】
前記中央部分から延在する複数の前記端部部分の外表面は、前記中央部分の外表面に対して位置合わせされていることが好ましい。一部の実施形態では、前記中央部分から延在する複数の前記端部部分の外表面は、前記中央部分の外表面に対してステップ(段)またはエッジがなくてもよい。好ましい一実施形態によれば、前記中央部分から延在する複数の前記端部部分の前記外表面はさらに、穴、溝または線条等の保定表面を形成するように成形された特定の幾何学的形状または不規則表面を有する外部構造を支持しまたは備えてもよい。
【0048】
(1または複数の)前記端部部分の最大外直径は、前記中央部分の(最大)外直径よりも大きいことが好ましい。(神経導管の端(部)を構成する)前記端部部分の外側端部は、好ましくは(横断面視において)実質的に円形または楕円体形の形状を有する、連続的な縁部(エッジ)によって設けられている(形成されている)ことが好ましい。特に、端部部分の外側端部を形成する縁部には、いかなる凹部も切抜き(cut-out)も含まれないことが好ましい。この結果、神経は、より容易に神経導管に挿入できる。一部の実施形態では、端部部分(の外表面)は、実質的に円錐台の形状を有し得る。
【0049】
特に、(円錐台形状の)(1または複数の)端部部分の最小外直径は、(管状の、例えば実質的に円筒状の)中央部分の外直径に一致し得る。これにより、中央部分と端部部分との間の滑らかな移行(遷移)が、神経導管の外側にもたらされ得る。(円錐台形状の)(1または複数の)端部部分の最小内直径は、(管状の、例えば、実質的に円筒状の)中央部分の内直径に一致し得る。これにより、中央部分と端部部分との間の滑らかな移行が、内側にもたらされる。この結果、神経導管は、神経の挿入が容易となるよう、(中央部分と比較して)拡大した端部を有し得るとともに、神経導管の壁の厚さが、最小限に保たれ得る。これによって、良好な可撓性がもたらされる。また、使用される材料がより少なくなり得る。一部の実施形態では、神経導管は、その全長にわたって、すなわち、(1または複数の)端部部分および中央部分において、実質的に同じ壁厚を有し得る。
【0050】
(円錐台形状の)(1または複数の)端部部分の最大(内側および外側)直径は、通常、神経導管の(1または複数の)端(部)を構成している。(好ましくは円錐台形状の)(1または複数の)端部部分の大きい方の端(部)に隣接する(第2の)円筒形部分は存在しないことが好ましい。
【0051】
好ましい一実施形態では、前記中央部分の前記内空洞は、単一の管腔を定めており(前記神経導管は、実質的に管状の形状を有する(単一の内空洞を有する)中央部分を備えることが好ましい)、前記神経導管は、前記中央部分の各端部に位置する2つの端部部分を備える。この場合において、複数の前記端部部分の最大外直径は、前記中央部分の外直径よりも大きいことが好ましく、(神経導管の端(部)を構成する)前記端部部分の外側端部は、(いかなる凹部も切抜きもない)連続的な縁部によって設けられて(形成されて)いる。この2つの端部部分は、(中央部分の長手方向軸線に沿って)鏡面対称に配置(構成)されているという点においてのみ、互いに異なっていることが好ましい。
【0052】
神経導管によって架橋(ブリッジ)される様々な長さに対応するために、神経導管は、種々の寸法で形成され得る。したがって、長手方向における中央部分の長さおよび端部部分の(または、各端部部分の)長さは、所定の構成ごとに、互いに異なり得る。好ましくは、長手方向における前記中央部分の長さと前記端部部分の長さとの比は、1.2:1.0~15:1.0であり、好ましくは、1.2:1.0~12:1.0であり、より好ましくは、1.2:1.0~10:1.0である。一部の実施形態では、長手方向における前記中央部分の長さと前記端部部分の長さとの比は、好ましくは、1.2:1.0~6.0:1.0であり、より好ましくは、1.2:1.0~1.4:1.0であり、または1.8:1.0~2.2:1.0であり、または4.4:1.0~5.4:1.0である。
【0053】
前記比は、神経導管または細長い本体の全長または絶対長(absolute length)に依存し得る。例えば、比較的小さな寸法を有する導管に関しては、より大きな比であってもよい。特に、より小さな寸法を有する神経導管に関しては、上記の大きい方の比、すなわち4.4:1.0~5.4:1.0という比がであってもよい。この場合、端部部分は、中央部分と比較して、比較的小さなものとなる。
【0054】
同様に、長手方向における前記中央部分の長さと前記細長い本体の長さとの比は、0.3:1.0~1:1.0であり、例えば、0.3:1.0~0.8:1.0であってもよい。かかる比は、細長い本体の全長が減少するにつれて増大し得る。その結果、細長い本体の長さは、中央部分によって主に定められ得、比較的小さい寸法または最小の寸法を有する神経導管に関しては、小さな端部部分しか含まれない。
【0055】
端部部分および中央部分の長さが全長に依存しているため、例えば外傷のため、対応する神経端部の間においてより長い距離が架橋される場合には、端部部分がより長くなり得る。この場合において、そのより長い端部部分は、それぞれの神経端部のより長い対応する部分に沿って延在し得る。これによって、さらなる構造的安定性が提供され得る。これらの端部部分は、(より大量の)医用接着剤を収容するように構成され得るからである。
【0056】
長手方向における前記中央部分の長さは、3mm~40mmであってもよく、好ましくは、4mm~30mmであってもよく、より好ましくは、4.5mm~25mmであってもよく、例えば、5mm~10mmであってもよく、または、6.5mm~8.5mmであってもよい。長手方向における前記細長い本体の長さは、5mm~50mmであってもよく、好ましくは、6mm~40mmであってもよく、より好ましくは、7mm~30mmであってもよく、例えば、7mm~25mmであってもよく、または、9mm~22mmであってもよい。長手方向における(1または複数の)前記端部部分の(各端部部分の)長さは、1mm~8mmであってもよく、好ましくは、1.3mm~6.5mmであってもよい。これらの寸法は、神経端部の挿入および/または固定を促しつ、神経欠損または損傷を架橋するのに、特に有利であることが見出されている。
【0057】
前記内空洞の直径は、1mm~15mmであってもよく、好ましくは、1mm~12mmであってもよく、例えば、1mm~12mmであってもよく、または、1.5mm~6.5mmであってもよい。少なくとも1つの前記開口部の最大直径は、1mm~15mmであってもよく、好ましくは、1.5mm~13mmであってもよく、例えば、1.5mm~7.5mmであってもよく、より好ましくは、1.75mm~7mmであってもよく、例えば、1.75mm~6.5mmであってもよい。この場合も、かかる寸法は、神経端部の挿入および/または固定を促しつつ、神経端部および神経成長のために必要なサポートを提供するのに、特に有利であることが見出されている。
【0058】
前記細長い本体は、生体適合材料、不活性材料、生体移植可能材料、および/または生分解性材料から形成されていてもよい。当該材料は、治療対象の患者の炎症反応を実質的に回避、または少なくとも低減しつつ、所定の構造的安定性を提供するように選択されてもよい。例えば、生体適合材料が選択されてもよい。当該生体適合材料は、移植後に時間とともに徐々に分解するが、神経損傷を適切に修復するための十分な構造的支持を最初に提供して、例えば組織の運動中に、それぞれの神経端部が適切にかつ十分安定的に接続されるのを保証し得る。
【0059】
さらに、例えば生理活性剤(biologically active agent)および/または1もしくは複数の神経栄養因子による対応するコーティングを、備え、あるいは組み込み、または含むことによって、神経成長を促進またはサポートするように、特定の材料が選択され得る。かかる生理活性表面機能物質(biologically active surface functionalities)の他の例には、例えば、抗炎症剤、免疫抑制剤、および神経保護剤が含まれるが、これらに限定されるものではない。生理活性剤は、細長い本体を定める(つくる)構造体(例えば、上述した壁)に、表面結合され(surface bound)、かつ/または捕捉され(entrapped)得る。かかる生理活性剤の例は、サイトカイン、神経成長因子、ヒアルロン酸、タクロリムス、シクロスポリンA、メラトニン、ビタミンB12、メチルプレドニゾロン、リルゾール(riluzole)、タキソール(taxol)、セツキシマブである。好ましい例は、タクロリムスである。
【0060】
好ましくは、細長い本体は、ポリマー系材料(polymer-based material)から形成されており、好ましくは、エラストマーから形成されている。これには、複数の製造方法が適用され得、かつ/または、例えばポリマーユニットに基づいて、特定の特性材料がしばしば得られうるという利点がある。特に、ポリマー系材料は、移植された状態で、修復された神経損傷を取り囲む組織の運動に神経導管が適応し得るように、弾性特性をさらに有する、生体適合材料であってもよい。
【0061】
前記細長い本体は、エステル基成分および酸性エステル基成分を含む重合(polymerized)および/または架橋(crosslinked)ポリマーユニットから形成されていてもよく、前記エステル基成分は、好ましくは、ポリオールであり、前記酸性エステル基成分は、好ましくは、ポリ酸である。
【0062】
中央部分に使用される材料は、端部部分の材料と同じであってもよい。それによって、製造がさらに容易になり得、神経導管の長手方向に沿って、細長い本体の構造的特性が実質的に均質となり得る。この場合、神経導管が相応して構成される場合には、生分解(および/または、生体吸収)が所定の様態、または予想される様態で起こり得る。しかしながら、複数の端部部分のうちの少なくとも1つの端部部分は、中央部分および/または反対側にある端部部分とは異なる材料から形成されてもよい。例えば、1つの端部部分が特定の機能性を有しており異なる特性を要し得る場合(例えば、かかる端部部分が、医用接着剤の塗布のための一次入口(primary inlet)として構成される場合)に、かかる構成が有利であり得る。
【0063】
好ましくは、前記中央部分および複数の前記端部部分は、一体的に形成されており、または単一片から形成されている。言い換えれば、前記細長い本体は、好ましくは、前記中央部分と複数の前記端部部分との間に特定の接続部を必要としない。代わりに、それは、中央部分および/または端部部分の材料によって提供される材料結合、ならびに、それぞれの要素の対応する構造的一体性をもたらす。細長い本体を単一片として設けることによって、神経導管のロバストネスがさらに向上し得る。構成要素間に別個の接続部を設けることが効果的に回避されるからである。
【0064】
前記神経導管は、3D印刷プロセスによって形成されていてもよい。これは、(例えば、WO2019/180208に記載されているように)神経導管の材料がポリマー系である場合に特に有利である。この場合において、材料の硬化は、例えば、(UV)光を使用して、実質的に瞬時に行われ得る。さらに、これによって、押出し(extrusion)処理および/または浸漬(dipping)処理によって、(容易には)達成され得ない精度水準が実現される。特に、3D印刷処理によって、神経導管の特定の形状を得ることが可能になる。この場合において、例えば、印刷処理によって、所定のパターンによる3D構造内、例えば、メッシュ構造内、および/または、特に、3D構造体によって形成されたポケットまたは空洞内に、特定の生理活性剤を組み込み得る。この結果、神経修復の協調(orchestration)および支持がさらに改善され得、かつ/または、より制御可能な物質で生分解が達成され得る。
【0065】
一部の実施形態では、本発明の神経導管は、接着剤を塗布するための装置(アプリケータ)、例えば、WO 2022/048799 A1に記載されているような接着剤を塗布するための装置と組み合わせて使用されてもよい。
【0066】
医用接着剤とそれぞれの端部領域との間の相対運動が正常な生理学的振る舞いの下で低減または回避されることを確実にするために、医用接着剤を神経導管へ固定することが有利であり得る。そこで、複数の前記端部部分のうちの少なくとも1つの端部部分は、前記細長い本体の外表面に、特に、(1または複数の)前記端部部分の外表面に、1または複数の保定表面を備えてもよい。この場合において、(1または複数の)前記保定表面は、特に、それぞれの前記端部部分に医用接着剤を固定するように構成されている。その結果、それぞれの端部領域および/または対応する神経端部に塗布された医用接着剤は、医用接着剤の硬化後でも、いかなる著しい移動もなくその場に留まり得る。言い換えれば、保定表面によって、医用接着剤は、好ましくは、1または複数の保定表面に対して形状適合的に、適所に保持されてもよい。保定表面によって、医用接着剤との接触面が増大し得る。さらに、保定表面によって、所定の表面粗さがもたらされ、その結果、それぞれの端部領域と結合する医用接着剤の有効性が改善され得る。したがって、医用接着剤の緩み(loosening)または滑り(slipping)は、保定表面の表面および/または形状によって、効果的に防止され得る。一部の実施形態では、(1または複数の)端部部分(の外表面)は構造化される、すなわち、(1または複数の)端部部分(の外表面)には構造が含まれる。特に、(1または複数の)端部部分(の外表面)のかかる構造は、「保定(保持)表面(retention surface)」を形成する。構造または保定表面を有する(1または複数の)端部部分の利点には、(i)端部部分の表面と接着剤/ガイドとの間の接触を増大させることと、(ii)接着剤のための固定点をつくり出すこととが含まれる。
【0067】
一部の実施形態では、それぞれの端部部分の(1または複数の)前記保定表面は、前記細長い本体の周方向における少なくとも1つの列に配置され得る複数の(例えば、楕円体または円形の)穴として形成され得る。穴は、細長い本体の周に沿って、線状に配置され得る。列の数は、好ましくは1~10列の範囲である。各列は、好ましくは、2~20個の穴を備える。この場合において、穴は、有利には、細長い本体の周方向において等しく離隔し得る。好ましくは、穴が2~4列に配置されており、かつ/または、各列は、4~8個の穴を備える。この場合において、隣り合う列の複数の前記穴は、千鳥状に(staggered)配置されることが好ましい。例えば、2つの列が、それぞれの端部領域に設けられてもよい。この場合において、各列は、例えば6つの穴を備えてもよい。
【0068】
穴および列の数ならびにそれらの配置は、必要な構造的安定性を提供および維持すると同時に、医用接着剤を神経導管に固定するための保持を改善するのに有利であることが見出されている。さらに、かかる実施形態は、回転対称性を呈し得る。これによって、標的となる組織部位における神経導管の正確な挿入および配置が容易になり得る。特定の実施形態において、穴のサイズまたは直径は、50μm~750μmであってもよく、構造的安定性のさらなる改善のために、穴のサイズまたは直径は、150μm~600μmの範囲であることが好ましく、特に、約500μmであってもよい。
【0069】
各穴は、前記細長い本体を形成する壁における切抜き、凹部、または貫通穴として形成されていてもよい。それによって、医用接着剤の固定の改善がもたらされ得る。特に、貫通穴は、さらに有利であり得る。かかる好ましい貫通穴によって、それぞれの端部部分において、特に、神経導管の外部と内部との両方において、医用接着剤が細長い本体を取り囲むことが容易になり得る。これは、選択された寸法、および/または、特に、穴の直径に依存し得る。さらに、これによって、挿入されるそれぞれの神経端部と医用接着剤が接触するようになり得る。穴は、細長い本体を定める(つくる)壁の強度に対応する半径方向の高さまたは深さを有し得るが、低減した高さを有してもよい。好ましくは、穴は、40μm~60μmの高さもしくは深さを有し、または、約50μmの高さもしくは深さを有する。
【0070】
一部の実施形態では、それぞれの端部部分の1または複数の前記保定表面は、好ましくは、前記細長い本体によって定められる長手方向軸線に沿って螺旋方向に延在する少なくとも1つの溝として形成されていてもよい。この螺旋形状によって、それぞれの前記端部部分の前記外表面に沿って延在する線条が定められていてもよい。
【0071】
1または複数の前記溝は、鋭いエッジを定めていてもよいが、少なくとも1つの前記溝は、好ましくは、丸みを帯びた複数のエッジを備える。当該丸みを帯びた複数のエッジは、それぞれの端部部分の頂部外表面との境界において、また、細長い本体を定める壁を有する溝の対向する底表面において、直線的な(角のある)エッジまたはステップが存在していない代わりに、溝の隅部の面に漸進的な移行(遷移)が設けられているようなものであると理解されるべきである。丸みを帯びたエッジによって、細長い本体の材料内における応力が低減され得、その結果、破断または破損の発生が低減される。丸みを帯びたエッジを設けることによって、少なくとも溝を支持する端部部分において、細長い本体を定める壁の必要な厚さが低減され得る。
【0072】
あるいは、または、(好ましくは)丸みを帯びたエッジに加えて、少なくとも1つの前記溝は、少なくとも1つのアンダーカットを定めていてもよい。アンダーカットを設けることによって、それぞれの端部部分に対する医用接着剤の固定が改善され得る。アンダーカットは、溝の底部部分が壁の外表面によって少なくとも部分的に覆われるように形成されていてもよい。すなわち、細長い本体の外壁は、少なくとも部分的に、長手方向に溝をの上に延在してもよい。好ましくは、かかる延在は、45度~90度、好ましくは60度~85度、より好ましくは70度~80度、さらにより好ましくは約75度の角度を(溝の側壁と底部との間に)形成する。これによって、塗布された医用接着剤とそれぞれの端部部分との間における形状適合性または確実な固定が改善され得る。
【0073】
前記細長い本体および前記神経導管の前記半径方向延在(範囲)を全体として低減するために、少なくとも1つの前記溝は、前記細長い本体の長手方向におけるそれぞれの前記端部部分の最も外側の縁部(エッジ)を定めて(つくって)いてもよい。したがって、前記溝は、中央部分の側部に対向する端部部分の端部面において終端して当該端部面における周全体に沿って延在してもよく、その結果、半径方向延在(範囲)は、当該端部において低減し得る。それによって、神経導管の全体的な寸法設定が低減し得る。あるいは、溝は、前記端部面に対して長手方向にオフセットして(ずれて)終端してもよい。このことは、構造的安定性をさらに改善するために有利であり得る。
【0074】
溝の深さまたは厚さは、周に沿って、かつその長手方向延在の全体にわたって、実質的に一定であってもよい。代替的な一実施形態では、少なくとも1つの前記溝は、少なくとも1つの前記開口部の横断面積が前記中央部分から長手方向に離れるにつれて増大するのに従って変化する半径方向深さを備えてもよい。好ましい例によれば、溝の内半径(inner radius)は、連続的に維持されてもよく、溝の外半径(outer radius)は、対応する壁部分の厚さが同じように増大する場合には、開口部の総サイズにおける増大に対応して増大してもよい。
【0075】
少なくとも1つの溝の延在(範囲)および/または角度は、変化してもよい。好ましくは、少なくとも1つの前記溝は、前記細長い本体によって定められる長手方向軸線の周りに0.5~10回転分延在する。その結果、((1または複数の)端部部分において、)螺旋構造が設けられる。前記溝は、前記細長い本体によって定められる長手方向軸線の周りに1回転よりも多い回転数分延在することが好ましい。特に、回転の数は、2~6であってもよく、好ましくは、3~5であってもよく、または4であってもよい。
【0076】
一部の実施形態では、前記端部部分(または、2つの端部部分の各々)は、単一の溝を備えてもよい。他の実施形態では、それぞれの(1または複数の)前記端部部分は、少なくとも2つの溝を備えてもよい。特に、2つ以上の溝が同じ端部部分に設けられる場合、各溝は、長手方向軸線の周りに0.5~5回転分延在してもよい。少なくとも2つの溝は、平行に延在してもよく、例えば、2つ以上の平行な(交差しない)螺旋を形成してもよい。その結果、平行な溝/螺旋の弧長、曲率および捩率は同じで、(端部部分上における)位置が異なるだけとなることが好ましい。好ましくは、2つ以上の平行な溝/螺旋間の距離は、規則的である(すなわち、ほぼ同じである)。一部の実施形態では、少なくとも2つの前記溝は、互いに逆向きの周方向に延在し、かつ互いに交差してもよい。両者の実施形態は、組み合わせられてもよい。すなわち、2つ以上の溝が平行に延在し、かつ、逆向きの周方向に、2つ以上の追加の溝が、任意選択的にこちらも平行に(平行に交差する複数の溝によって、「市松模様(checkered)」または「パイナップル(pineapple)」のパターンがつくられるように)、延在してもよい。各周方向における溝の数は、それぞれの端部部分の長手方向延在(範囲)および溝の角度に応じて、1~10であってもよく、好ましくは、6~8であり、または7である。さらに、溝の数は、周方向ごとに等しいことが好ましい。さらに、単一の端部部分において(または、各端部部分において)、溝/螺旋は、それらの方向(および、端部部分上における位置)のみが異なることが好ましいが、その他の螺旋パラメータは異ならないことが好ましい。言い換えれば、弧長、曲率および捩率は、ある(certain)端部部分において、全ての溝/螺旋について、実質的に同じであってもよい(交差する螺旋の方向は除く)。各周方向に複数の溝(例えば、2つ以上の溝)を設けることによって、ダイヤモンド形または菱形のパターンが、それぞれの端部部分の外表面につくられる。これは、パイナップル面に似たものであり得る。その結果、多数のエッジを有する複数の保定表面がつくられ得る。これは、医用接着剤をそれぞれの端部部分に固定するために有利であり得る。
【0077】
一部の実施形態では、それぞれの端部部分の1または複数の前記保定表面は、前記細長い本体の外表面から延在する1または複数の周方向リブ(細長い突出部)として形成されていてもよい。1または複数の前記リブの延在部は、前記細長い本体の長手方向において、周方向に沿って線状に配置されていてもよく、または、周方向に対して傾いた状態で配置されていてもよい。好ましくは、リブが複数個ある場合、例えば、リブが3~6個ある場合、それぞれの端部部分において、複数の前記リブは、互いに等しく離隔していてもよく、複数の当該リブは、交差していない、すなわち、好ましくは、互いに平行に配置されている。
【0078】
1または複数の保定表面は一般に、所望の保定表面の実装および端部部分における構造要件に適合した、それぞれの端部部分における厚くなった壁部分上に設けられてもよい。好ましくは、それぞれの端部部分における壁部分の厚さは、隣接する中央部分の厚さの1.0~3.5倍であってもよい。例えば、中央部分の壁厚が約200μmである場合、端部部分における壁の厚さは、200μm~700μmであってもよく、好ましくは、300μm~500μmであり、または400μmであり、すなわち、100μm~300μmの追加の厚さを含む。別の実施例では、中央部分の壁厚が約20μmである場合、端部部分における壁の厚さは、20μm~70μmであってもよく、好ましくは、30μm~50μmであり、または40μmであり、すなわち、10μm~30μmの追加の厚さを含む。当該厚くなった壁部分は、適切に丸み付けし、またはフィレット(fillet)を設けることによって、中央部分の外表面に対して端どうしが揃うようにされてもよい。
【0079】
さらに、1または複数の穴、特に、溝は、さもなければ実質的に連続的な厚さを有する細長い本体の壁の外表面における陽の(凸の:positive)特徴部として設けられてもよい。壁は、それぞれの溝または穴を定めるそれぞれの端部部分において、陽の突出部または盛り上がり(build-up)を備え得る。一方、中央部分は、かかる陽の特徴部を備えない。かかる場合において、壁の外表面は、それぞれの溝または穴の内半径を定めることが好ましい。
【0080】
医用接着剤の有効性を高めるために、そして好ましくは、医用接着剤と神経導管との形状適合性またはインターロック(かみ合い)を改善するために、保定表面はさらに、それぞれの端部部分に直接的に隣接する中央部分の一部分上に、少なくとも部分的に含まれてもよい。例えば、中央部分上に少なくとも1列の穴が、例えば、端部部分上にある隣接する列に対して千鳥状に、設けられてもよく、または、1もしくは複数の溝が、中央部分の直接的に隣接する部分にわたって延在してもよい(例えば、中央部分から始まってもよく、または、中央部分へと終端してもよい)。保定表面のかかる延在によって、保定表面の漸進的な移行(遷移)がもたらされるとともに、細長い本体上における負荷分散が改善し得る。
【0081】
神経導管のそれぞれの一端部部分のみに、1または複数の保定表面が設けられることがあってもよい。好ましくは、(同じ神経導管の)全ての端部部分、特に、互いに反対側にある端部部分のうちの全て、例えば、互いに反対側にある2つの端部部分は、1または複数の保定表面を備える。(同じ神経導管の)複数の端部部分は、異なる種類の保定表面を有してもよく、すなわち、一つの端部部分が溝を備え、他の端部部分が複数の穴を備えてもよい。しかしながら、(特に、神経導管の互いに反対側にある端部の、または神経導管の全ての端部の)端部部分は、同じように形成された保定表面を有することが好ましい。互いに反対側にある端部部分の保定表面は、例えば、それらが互いに逆向きの方向に位置(向き)調節(align)されるように、細長い本体を横断する中央平面に関して鏡面対称であってもよい。例えば、(同じ神経導管の)互いに反対側にある端部部分の各々は、上述したように、単一または複数の溝/螺旋を備えてもよい。この場合において、異なる端部部分の溝または螺旋は、互いに実質的に対応していてもよい(例えば、同じ数であり、かつ/または同じパターンを有する)が、(同じ神経導管の)当該異なる端部部分は、それらの溝/螺旋が細長い本体を横断する中央平面に関して鏡面配置で形成され、その結果、それらが互いに逆向きの方向に位置(向き)調節されているという点で、互いに異なっている。例えば、一方の端部部分では、溝は、時計回り方向に延在し得る一方、(同じ神経導管の)他方の端部部分では、溝は、反時計回り方向に延在し得る。しかしながら、あるいは、同じ神経導管の異なる端部部分の保定表面は、同じ方向を向きまたは同じ方向に配置されてもよく、例えば、同じ(時計回りまたは反時計回りの)方向に、溝または線条を有してもよい。
【0082】
また、上記の目的は、神経組織を修復、支持(サポート)および/または案内(誘導、ガイド)するための、特に、末梢神経損傷を修復するための、上述した神経導管の使用によって達成される。さらに、神経導管は、医用接着剤と組み合わせて使用されてもよい。
【0083】
本発明の別の一態様によれば、
末梢神経損傷を治療するための方法であって、
-上述した神経導管を用意する工程と、
-前記中央部分の前記内空洞よりも大きな横断面積を有する開口部を介して、損傷神経の一端部を前記神経導管に挿入する工程と、
-前記細長い本体の互いに長手方向反対側にある端部における端部部分における開口部を介して、前記損傷神経の別の端部を挿入する工程と
-複数の前記損傷神経端部を前記細長い本体内に固定する工程と、
を含む、方法が提案される。
【0084】
複数の前記損傷神経端部を固定する前記工程は、前記内空洞の外側に、かつ/または、複数の前記開口部のうちの少なくとも1つの開口部を介して複数の前記開口部内に、医用接着剤を塗布することによって行われることが好ましい。
【0085】
本発明による医用接着剤は、当技術分野の任意の医用接着剤であってもよい。一部の実施形態では、医用接着剤は、光に曝露したときに重合することができる。かかる重合の前には、医用接着剤は、流体であってもよく、または粘性を有してもよい。
【0086】
本発明の一部の実施形態において、医用接着剤には、一般式(-A-B-)nのポリマーユニットを備えるプレポリマーが含まれる。ここで、Aは、置換(substituted)エステルまたは非置換(un-substituted)エステルを表し、Bは、少なくとも2つの酸性エステル官能基を含む、置換酸性エステルまたは非置換酸性エステルを表し、nは、1より大きい整数を表す。
【0087】
成分(構成要素)Aは、ポリオール(例えば、ジオール、トリオール、テトラオールまたはそれ以上のポリオール)から誘導され得る。適切なポリオールには、ジオール(例えば、アルカンジオール);トリオール(例えば、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン);テトラッド(四価物:tetrad)(例えば、エリトリトール、ペンタエリトリトール);および、より高級のポリオール(例えば、ソルビトール)が含まれる。不飽和ジオール(例えば、テトラデカ-2,12-ジエン-1,14-ジオール)、または、マクロモノマージオールを含むその他のジオール(例えば、ポリエチレンオキシド、およびN-メチルジエタノアミン(methyldiethanoamine:MDEA))も使用され得る。前記ポリオールは、置換グリセロールまたは非置換グリセロールであることが好ましい。
【0088】
成分Bは、ポリ酸(例えば、二酸(diacid)またはより高次の酸)から誘導され得る。多種多様な二酸またはより高次の酸が使用され得る。例示的な酸には、クエン酸(3個の炭素)、グルタル酸(5個の炭素)、アジピン酸(6個の炭素)、ピメリン酸(7個の炭素)、セバシン酸(8個の炭素)、およびアゼライン酸(9個の炭素)が含まれるが、これらに限定されるものではない。例示的な長鎖二酸には、10個を超える炭素原子を有する二酸、15個を超える炭素原子を有する二酸、20個を超える炭素原子を有する二酸、および25個を超える炭素原子を有する二酸が含まれる。非脂肪族二酸(non-aliphatic diacid)が使用されてもよい。例えば、1または複数の二重結合を有する上記の二酸のバージョン(異形)を使用して、ポリオール-二酸コポリマーを生成することができる。前記二酸は、置換セバシン酸または非置換セバシン酸であることが好ましい。
【0089】
複数の置換基(例えば、アミン、アルデヒド、ヒドラジド、アクリレートおよび芳香族基)を炭素鎖に組み込むことができる。例示的な芳香族二酸には、テレフタル酸およびカルボキシフェノキシプロパンが含まれる。ポリ酸(例えば、二酸)も、置換基を含むことができる。例えば、アミンおよびヒドロキシル等の反応性の基を用いて、架橋に利用可能なサイト(site)の数を増大させることができる。アミノ酸およびその他の生体分子を用いて、生物学的特性を変更(modify)することができる。芳香族基、脂肪族基、およびハロゲン原子を用いて、ポリマー内の間鎖相互作用を変更することができる。
【0090】
プレポリマーは、ポリアミド骨格またはポリウレタン骨格をさらに備えてもよい。例えば、(2つ以上のアミノ基を含む)ポリアミンを用いて、ポリオールと一緒に、または、ポリオールと反応させた後に、ポリ酸と反応させてもよい。他の例では、(2つ以上のイソシアネート基を含む)ポリイソシアネートを用いて、ポリオールと一緒に、または、ポリオールと反応させた後に、ポリ酸と反応させてもよい。
【0091】
プレポリマーは、活性化できることが好ましい。プレポリマーは、反応できまたは架橋を形成するように反応させられ得る官能基を導入することによって、活性化され得る。プレポリマー骨格上で活性化される適切な官能基は、ヒドロキシ基、カルボン酸基、アミン、および、これらの組み合わせを含み、好ましくは、ヒドロキシおよび/またはカルボン酸である。プレポリマー上の遊離(した)ヒドロキシルまたはカルボン酸基は、ポリマー鎖間に架橋を形成できる部分を有するヒドロキシ基の官能化(functionalizing)によって活性化できる。活性化される基は、プレポリマー中のA部分および/またはB部分上の遊離ヒドロキシルまたはカルボン酸基であり得る。好ましくは、この官能基は、アクリレート基であり、またはアクリレート基を含有する。アクリレート基は、置換アクリロイル基または非置換アクリロイル基を含有する部分である。アクリレートは、以下の基:-C(=0)-CR1=CR2R3を含有し得る。ここで、R1、R2、R3は、互いに独立しており、H、メチルまたはエチル等のアルキル、フェニル等のアリール、置換アルキル、置換アリール、カルボン酸、エステル、アミド、アミン、ウレタン、エーテル、およびカルボニルからなる群から選択される。好ましくは、R1、R2およびR3がHであり;または、R1がCH3で、R2およびR3がHであり;または、R1およびR2がHで、R3がCH3であり;または、R1およびR2がHで、R3がフェニルである。
【0092】
好ましくは、プレポリマーのポリマー骨格上の活性化された基(例えば、アクリレート)の少なくとも一部分は、荷電原子を含有する化合物、好ましくは、正に荷電した窒素原子を含有する化合物と反応させられる。
【0093】
好ましくは、前記医用接着剤は、光硬化性化合物である。「光硬化性化合物(Light curable compound)」は、適切な放射エネルギー、より具体的には、光源からの光の形態における放射エネルギーを受け取ると、重合またはそれ他の方法で硬化するように構成された化合物を指す。
【0094】
好ましくは、前記光硬化性化合物は、プレポリマーおよび光重合開始剤(photoinitiator)を含み、前記光重合開始剤は、特定の波長の光に曝露したときの前記プレポリマーの重合を誘起することができる。
【0095】
一部の実施形態では、前記光重合開始剤は、紫外(UV)放射に感受性を有する(sensitive)。UV放射に感受性を有する適切な光重合開始剤の例には、2-ジメトキシ-2-フェニル-アセトフェノン、2-ヒドロキシ-1-[4-(ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチル-1-プロパノン(Irgacure 2959)、1-ヒドロキシシクロヘキシル-1-フェニルケトン(Irgacure 184)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン(Darocur 1 173)、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-[4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン(Irgacure 369)、メチルベンゾイルホルマート(Darocur MBF)、オキシ-フェニル-酢酸-2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステル(Irgacure 754)、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-(4-モルホリニル)-1-プロパノン(Irgacure 907)、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド(Darocur TPO)、ホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)(Irgacure 819)、およびこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0096】
一部の実施形態では、前記光重合開始剤は、可視光(典型的には、青色光または緑色光)に感受性を有する。可視光に感受性を有する光重合開始剤の例には、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド、エオシンYジナトリウム塩、N-ビニル-2-ピロリドン(N-Vinyl-2-Pyrrolidone:NVP)およびトリエタノールアミン、およびカンファキノンが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0097】
加えて、医用接着剤は、材料が接着剤として機能する期間中に放出され得る、1種または複数種の薬剤(pharmaceutical agent)、治療剤(therapeutic agent)、予防剤(prophylactic agent)を含有してもよい。当該剤は、(例えば、2000、1500、1000、750、または500Da未満の分子量を有する)小分子剤(small molecule agent)、生体分子(例えば、ペプチド、タンパク質、酵素、核酸、多糖類、成長因子)、細胞接着配列(例えば、RGD配列)もしくはインテグリン、細胞外マトリックス成分、またはこれらの組み合わせであってもよい。小分子剤の例示的なクラスには、抗炎症剤、鎮痛剤、抗菌剤、およびこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0098】
好ましくは、医用接着剤は、ポリグリセロールセバケートアクリレート(poly glycerol sebacate acrylate:PGSA)もしくはPGSAAであり、または、PGSAもしくはPGSAAを含む(例えば、WO2021078962に記載)。
【図面の簡単な説明】
【0099】
本開示は、以下の詳細な説明を添付の図面と関連させて考慮して参照することによって、より容易に理解されるだろう。
【
図1】本発明による神経導管の縦断面の概略図を示す。
【
図2】代替的な端部部分を有する、
図1に係る本発明による神経導管の縦断面の概略図を示す。
【
図3】一端部部分からの側面視による、
図2に係る神経導管の概略図を示す。
【
図4】
図2に係る神経導管を概略的に示す斜視図である。
【
図5】別の一実施形態による、本発明による神経導管の縦断面の概略図を示す。
【
図6】別の一実施形態による、本発明による神経導管の縦断面の概略図を示す。
【
図7】星形の外形を有する本発明による神経導管を概略的に示す。
【
図8】星形の外形を有する本発明による神経導管を概略的に示す。
【
図9】代替の保定表面を有する端部部分を有する、本発明による神経導管の斜視側面図の概略図を示す。
【
図10】代替の保定表面を有する端部部分を有する、本発明による神経導管の斜視側面図の概略図を示す。
【
図11】代替の保定表面を有する端部部分を有する、本発明による神経導管の斜視側面図の概略図を示す。
【
図12】
図10に係る溝によって定められるアンダーカットの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0100】
以下、添付の図面を参照して、本発明をより詳細に説明する。図面において、同様の要素は同一の参照符号を付されおり、重複する説明は冗長とならぬよう省略される場合がある。
【0101】
図1には、本発明による神経導管10が、縦断面に沿って概略的に示されている。神経導管10は、中央部分14を有する細長い本体12を備える。中央部分14は、内空洞16を定めている。本実施形態では、内空洞16は、実質的に、壁22によって定められている。壁22は、細長い本体12の長手方向において、連続的な管状または円筒状の形状を有し、周方向と長手方向との両方において、連続的な厚さを有する。その結果、内空洞16は、実質的に連続的な寸法を有する円筒形状を有する空洞として形成されている。しかしながら、本発明の実施形態は、かかる構成に限定されるものではなく、中央部分14および内空洞16以外の様々な壁厚および/または代替形状であってもよいことが理解されるだろう。
【0102】
この例示的な実施形態によれば、神経導管10またはその細長い本体12は、2つの端部部分18を備える。2つの端部部分18は、細長い本体12の互いに長手方向反対側にある複数の端部に配置されており、中央部分14に対して直接的に隣接して配置されている。
図1に係る概略図に示すように、神経導管10が移植された状態において、周囲組織に悪影響を及ぼし得る鋭いエッジ、凹部、および/または突出部のない、均質でステップのない外表面がもたらされるように、両方の端部部分18の外表面は、中央部分14の外表面に対して位置合わせされ、または中央部分14の外表面に対して端どうしが揃えられている。
【0103】
細長い本体12の一方の端部から細長い本体12の反対側の端部まで連続的な貫通穴が設けられ、かつ、内空洞16と細長い本体12の外部との間に流体連通が設けられるように、両端部部分18によって、内空洞16への開口部20が定められている。修復対象の神経の複数の神経端部は、例えば、神経損傷をもたらす外傷の後に、対応する端部部分18のそれぞれの開口部20を介して、内空洞16に挿入され得る。移植(植込み)の間、神経導管10が逆向きであることが手順(処置)に影響を及ぼさないように、本実施形態による複数の端部部分18は、同様に成形および寸法設定される。
【0104】
複数の端部部分18の各端部部分の開口部20は、細長い本体12の長手方向に沿って、中央部分14から離れる方向に増大する。言い換えれば、各開口部20またはその半径方向延在は、中央部分14から開始して、または中央部分14から延びて、(徐々に)増大する。この例示的な実施形態では、端部部分18またはその壁22が円錐形状であることによって、開口部20が徐々に増大している。このように、連続的な壁厚ならびに中央部分14および端部部分18の形状の結果、複数の開口部20の各開口部の横断面積は、中央部分14の内空洞16の横断面積よりも大きくなっている。その結果、それぞれの神経端部の内空洞16への挿入、および内空洞16の外側における医用接着剤の塗布、特に開口部の縁部領域または接合部における医用接着剤の塗布が容易になり得る。
【0105】
内空洞16と開口部20とはともに、横断面視において実質的に円形の形状を備える。内空洞16の直径26は、実質的に連続している。中央部分14または内空洞16との境界(インターフェース)における複数の開口部20の各開口部の直径は、実質的に、内空洞16の直径26に一致する。しかしながら、複数の開口部20の各開口部の直径はそれぞれ、中央部分14から離れる方へ、細長い本体12および端部部分18の最外側端部に向かって、長手方向に沿って増大する。このため、本実施形態では、複数の開口部20の各開口部の最大の直径24および/または半径方向延在、そして最大横断面積は、細長い本体12の互いに長手方向反対側にある複数の最外側端部にある。細長い本体16の最外側端部に最大横断面積を有することで、それぞれの神経端部の挿入がさらに容易になり、かつ/または、内空洞16の外側における、もしくは、内空洞16とそれぞれの開口部20との間の境界における、もしくは、それぞれの開口部20と挿入されたそれぞれの神経端部との間の境界における医用接着剤の塗布がさらに容易になる。
【0106】
図2には、神経導管10が示されている。これは、
図1に係る実施形態に実質的に対応する。しかしながら、この実施形態は、端部部分18の形状に関して異なっている。この実施形態では、端部部分18は、漏斗形状であり、中央部分14に面する端部から開始して細長い本体12の最外側端部に向かって延在する半径方向外向きの湾曲部または放物面状の延在部を定めている。このようにして、長手方向における端部部分18の長さを増大させる必要なく、また、中央部分14とそれぞれの端部部分18との間の境界において大きな角度オフセットを設ける必要なく、より大きな開口部20が最外側端部に設けられ得る。その結果、神経導管10の構造的安定性も向上する。さらに、かかる形状は、内空洞16に向かう漸進的な案内面を提供することによって、挿入時にそれぞれの神経端部の鋭い曲がりを回避するのに有利であり得る。
【0107】
図2に示すように、開口部20の最大直径24は、内空洞16の(一定の)直径26よりも大きい。さらに、
図2は、これらの直径24、26間の可能な比、および、細長い本体12の対応する部分14、18間の長さ比を示す。
【0108】
例えば、開口部20の最大直径24と内空洞16の直径26との比は、1.05:1.0~1.2:1.0であってもよい。開口部20の最大直径24は、1mm~15mmであってもよく、好ましくは、1.5mm~13mmであってもよく(例えば、1.5mm~7.5mm)、より好ましくは、1.75mm~7mmであってもよい(例えば、1.75mm~6.5mm)。内空洞16の直径26は、1mm~15mmであってもよく、好ましくは、1mm~12mmであってもよい(例えば、1mm~12mm、または、1.5mm~6.5mm)。対応して、開口部の最大直径26の横断面積は、約2.4mm2~約38.5mm2であってもよい。内空洞16の直径26の横断面積は、約1.75mm2~約33.2mm2であってもよい。一部の実施形態では、開口部20の最大直径24は、1.75mm~6.5mm、または最大で12mmであってもよく、内空洞16の直径26は、1.5mm~6mm、または最大で11mmであってもよい。対応して、開口部の最大直径26の横断面積は、約2.4mm2~約33.2mm2であってもよく、内空洞16の直径26の横断面積は、約1.75mm2~約28.3mm2であってもよい。
【0109】
特定の一実施例では、最大直径24は、例えば、1.75mmまたは3.5mmを含んでもよく、直径26は、例えば、対応してそれぞれ1.5mmおよび3mmを含んでもよい。その結果、最大直径24の対応する横断面積は、約2.4mm2および約9.6mm2であってもよく、内空洞16の直径26の対応する横断面積は、約1.75mm2および約7.1mm2であってもよい。そして、約1.17:1.0という比が得られる。
【0110】
かかる比は、神経導管の半径方向の延在を制限しつつ、それぞれの神経端部の挿入を容易にし、かつ/または医用接着剤を内空洞16内へ塗布するのに、特に有利であることが分かっている。実施形態には上記の構成が含まれ得るが、上記の例示的な寸法に限定されるものではなく、示された好ましい範囲内にある限り、その他の寸法または比であってもよいことを理解されたい。
【0111】
代替的に、または追加的に、長手方向における中央部分14の長さ28と端部部分18の長さ30との比は、好ましくは、1.2:1.0~15:1.0であってもよく、好ましくは、1.2:1.0~12:1.0であってもよく、より好ましくは、1.2:1.0~10:1.0であってもよい。一部の実施形態では、長手方向における中央部分14の長さ28と端部部分18の長さ30との比は、好ましくは、1.2:1.0~1.4:1.0であってもよく、または1.8:1.0~2.2:1.0であってもよく、または4.4:1.0~5.4:1.0であってもよい。さらに、長手方向における中央部分14の長さ28と細長い本体12の長さ32との比は、好ましくは、0.3:1.0~1:1.0であり、例えば、0.3:1.0~0.8:1.0である。例えば、長手方向における中央部分14の長さ28は、3mm~40mmであってもよく、好ましくは、4mm~30mmであってもよく、より好ましくは、4.5mm~25mmであってもよい(例えば、6.5mm~8.5mm)。長手方向における細長い本体の長さ32は、5mm~50mmであってもよく、好ましくは、6mm~40mmであってもよく、より好ましくは、7mm~30mmであってもよい(例えば、9mm~22mm)。長手方向における端部部分18の長さ30は、1mm~8mmであってもよく、好ましくは、1.3mm~6.5mmであってもよい。
【0112】
例示的な一実施形態では、中央部分14の長さ28は、例えば、8mmであってもよく、それぞれの端部部分18の長さ30は、例えば、6mmであってもよく、その結果、細長い本体12の全長32は、例えば、20mmであってもよく、結果として、中央部分14の長さ28とそれぞれの端部部分18の長さ30との間の比は、1.33:1.0および0.4:1.0となり、中央部分14の長さ28と細長い本体12の長さ32との間の比は、0.4:1.0となる。この場合も、実施形態には上記の構成が含まれ得るが、上記の例示的な寸法に限定されるものではなく、示された好ましい範囲内にある限り、その他の寸法または比であってもよいことを理解されたい。
【0113】
図3には、種々の横断面が、
図2に示す細長い本体を一方の最外側端部から見た神経導管の側面図において示されている。したがって、開口部の横断面積34は、内空洞の横断面積36よりも大きい。このことは、対応する異なる直径によって示されている。言い換えれば、開口部の最大直径を定める領域における細長い本体の壁は、内空洞を定める中央部分の内壁に対して半径方向にオフセットされている。上述したように、開口部の最大直径の横断面積、または開口部の最大直径における横断面積は、例えば、約2.4mm
2~約38.5mm
2であってもよく、内空洞16の横断面積は、約1.75mm
2~約33.2mm
2であってもよい。一部の実施形態では、開口部の最大直径の横断面積、または開口部の最大直径における横断面積は、例えば、約2.4mm
2~約33.2mm
2であってもよく、内空洞16の横断面積は、約1.75mm
2~約28.3mm
2であってもよい。破線40で示すように、端部部分の外表面38は、中央部分の外表面40を越えて延在していない。
【0114】
図3には、横断面が円形形状または丸い形状として含まれるが、図面に示された実施形態はかかる形状に限定されるものではなく、楕円体等の他の形状であってもよく、(1または複数の)開口部の横断面(積)34と内空洞の横断面(積)36との差は、少なくとも1つの半径方向にオフセットされた延在部によってつくられてもよいことが理解されるだろう。
【0115】
図4は、
図2および
図3に示す実施形態による神経導管10を概略的に示す斜視図である。この図から、開口部20が細長い本体12のそれぞれの最外側端部に向かって増大し、中央部分14の内空洞へのそれぞれの神経端部の挿入を容易にする案内面をつくりだすことが、それぞれの端部部分18の放物面形状によって実現されていることが理解され得る。同時に、開口部20の漸進的な増大および放物面形状によって、半径方向延在、および端部部分18の長さが必要最小限に保たれ得るため、外部および神経導管10の構造的安定性に無視できない影響が及ばない。そのため、本発明による神経導管10の有利な構成および寸法設定によって、神経導管10が移植された状態において、周囲組織に悪影響が及ぼされることなく、神経損傷の修復が促進される。
【0116】
図5には、異なる端部部分18および開口部20を有する一実施形態による神経導管10が、概略的に示されている。1つの開口部20のみが、中央部分14と比較して、より大きな横断面積を有する。すなわち、1つの開口部20のみが、内空洞16の直径26よりも大きな最大直径24を有する。このように、神経導管10は、非対称の神経導管10として形成されている。特に、これによって、大きな方の横断面積を有する開口部20に、より太い方の神経端部を挿入することが容易になり得る。
【0117】
実質的に同じ形状(例えば、漏斗形状)で形成された互いに対向する端部部分18および開口部20を有する神経導管10の一実施形態が、
図6に示されている。中央部分14および内空洞16は、破線で示すように、それぞれの開口部20間の境界領域として定められている。境界領域は、例えば、隣り合うそれぞれの開口部20または端部部分18の隣接端部によって形成されていてもよい。境界領域は、丸み付けされていてもよく、またはそれぞれの端部部分18間における著しいステップ(段、屈曲部)が回避されるように形成されていてもよい。言い換えれば、境界領域は、神経導管10を実質的に形成する壁の連続的な(切れ目のない)内表面および外表面をもたらすように形成されていてもよい。一実施形態によれば、中央部分14の長手方向または軸方向の延在は、端部部分18または開口部20の対応する延在と比較して、実質的に無視できる(例えば、0に近く、または、それぞれの開口部20もしくは端部部分18の最小軸方向延在の例えば10パーセントよりも小さい)。
【0118】
図7および
図8には、端部部分18の横断面図に見られるような星形の外形を備える細長い本体を有する本発明による神経導管10が示されており、回転対称となっている。この例示的な実施形態によれば、細長い本体の壁は、半径方向に開口部20を延在させ、周方向において互いに等しく離隔した、丸みを帯びた6つの膨出部41を備える。このため、膨出部41は、内側溝および外側溝を形成している。これらはそれぞれ、それぞれの膨出部41の周方向の幅および半径方向延在によって、または隣り合う2つの膨出部41間の間隔によって定められている。この実施例によれば、6つの膨出部41の各々は、隣り合う膨出部41間の間隔が周に沿って約40度にわたって延在するように、周に沿って約20度にわたって延在している。
【0119】
図示のように、星形は、端部部分18と中央部分14との両方を含め、細長い本体の全体を通じて延在する。さらに、好ましい一実施例によれば、細長い本体の星形は、それぞれの端部部分18における漏斗状および/または放物面状の形状を含む、開口部20の漸増する横断面と組み合わせられる。細長い本体の全体にわたってかかる形状を設けることによって、移植および手術中の取扱いが容易になり、同時に、それぞれの端部部分18における接触面が増大するため、それぞれの神経端部を固定する際の医用接着剤の有効性がさらに向上する。
【0120】
図9~
図11には、本発明による神経導管10の斜視側面図の概略図が示されている。端部部分18は、細長い本体12の外表面においてそれぞれの端部部分18への医用接着剤の固定が容易となるように構成された代替的な保定表面(保持表面)42を備える。これらの実施形態の一部では、保定表面42が部分的に、それぞれの端部部分18に直接的に隣接する中央部分上に含まれているよう描かれているが、かかる延在は任意選択的なものにすぎないことが理解されるだろう。
【0121】
したがって、
図9は、互いに反対側にある2つの端部部分18を有する神経導管10を示す。両方の端部部分18は、穴44の形態の複数の保定表面42を有する。この好ましい実施例による穴44は、実質的に円形であるものの、わずかに楕円体形状である。これは、例えば製造中に生じ得る。穴44は、細長い本体の壁を貫通する貫通穴として形成されている。例示的な実施形態では、穴44は、細長い本体の周方向に、かつ長手方向に離隔した2列として、すなわち、各列内における細長い本体の周に沿って線状に、かつ互いに対して列の長手方向オフセットを伴って、配置されている。図示のように、1列の穴44は、中央部分がそれぞれの端部部分18に直接的に隣接するところに、または、中央部分とそれぞれの端部部分18との間の境界に設けられている。しかしながら、穴44は、それぞれの端部部分にだけあってもよいことが理解されるだろう。各列は、細長い本体の周方向に等間隔に配置された6つの穴44であって、隣り合う列どうしで千鳥状に配置された6つの穴44を備える。
【0122】
図10に係る実施形態は、
図9に係る神経導管10におおよそ似ている。しかしながら、この実施形態によれば、互いに反対側にある端部領域18における保定表面42は、細長い本体の外表面に沿って、かつ当該細長い本体によって定められる長手方向軸線に沿って、螺旋状に延在する溝46として形成されている。溝46の螺旋形状は、実質的に、それぞれの端部部分18の外表面に沿って延在する線条形状を定める。複数の当該溝46または線条は、それらが互いに逆向きの方向に位置(向き)調節されるように、すなわち、時計回り方向および反時計回り方向に延在するように、細長い本体を横断する中央平面に関して鏡面配置で形成されている。回転の数はさまざまであってもよいが、本実施形態には、4回転を有する溝46が示されている。これは、神経導管10の構造的安定性および可撓性を維持しつつ医用接着剤の固定を促進する点で、特に有利であることが分かっている。さらに、溝46は、それぞれの端部部分18の端部面に対して長手方向にオフセットして(ずれて)終端している。このことは、構造的安定性の観点において、さらに有利である。
【0123】
図12の視角(
図10の破線の円によって示される)において以下にさらに詳細に示すように、溝46はさらに、丸みを帯びた複数のエッジを備え、実質的に連続的なアンダーカット(undercut)を定める。これは、形状適合的な(ぴたりと合った:form-fitting)幾何学的形状をなすことによって、医用接着剤の有効性を高める。
【0124】
図11は、互いに反対側にある端部部分18における保定表面42の別の一実施形態を示す。対応する矢印によって示すように、各端部部分18は、互いに逆向きの周方向に延在しかつ互いに交差する、複数の溝46を備える。本実施形態によれば、各端部部分18には各周方向に7つの溝46が設けられており、溝46の数は各周方向について等しい。
図11に示すように、各周方向における複数の溝46は一緒に、細長い本体によって定められる長手方向軸線に沿って螺旋状に半回転して、それぞれの端部部分18の外表面にダイヤモンド形状または菱形形状をつくる。これはパイナップルの表面にも似ている。その結果、多数のエッジを有する複数の保定表面42がつくられ得る。これは、医用接着剤をそれぞれの端部部分18に固定するために有利であり得る。
【0125】
図12は、
図10に示す破線部に係る溝46によって定められるアンダーカットの概略図を縦断面において示す。図示のように、溝46の頂部外表面および溝46の底表面は、それぞれ、外半径50および内半径48に対応し、溝の深さを定める。これらは、鋭いエッジを備える溝46を有する材料に生じる応力が低減されるように、丸み付けされている。さらに、頂部表面は、底表面の上に、長手方向に延在する。これによって、破線によって示されるように、溝46の角度52および対応するアンダーカットが底表面に形成されている。角度52(好ましくは、約75度)、および対応するアンダーカットによって、塗布された医用接着剤とそれぞれの端部部分18との間の形状適合性または確実な固定が半径方向にもたらされ得ることが可能となる。これによって、それぞれの端部部分18に損傷神経端部を固定する医用接着剤の有効性がさらに向上する。
【0126】
これらの実施形態および項目が、複数の可能性である実施例を示しているに過ぎないことは、当業者には明らかであろう。このため、本明細書に示す実施形態は、これらの特徴および構成の限定をなすものと理解されるべきではない。記載された特徴の任意の可能な組み合わせおよび構成を、本発明の範囲に従って選択することができる。
【0127】
本発明は、以下の項目にさらに示される。
1.
細長い本体(12)を備える神経導管(10)であって、
前記細長い本体(12)は、
内空洞(16)を定める中央部分(14)と、
複数の端部部分(18)であって、前記内空洞(16)へのそれぞれの開口部(20)を定め、前記中央部分(14)に隣接して、前記細長い本体(12)の互いに長手方向反対側にある複数の端部に配置された複数の端部部分(18)と、
を備え、
少なくとも1つの開口部(20)の横断面積は、前記中央部分(14)の前記内空洞(16)の横断面積よりも大きい、神経導管(10)。
【0128】
2.
前記中央部分(14)は、実質的に管状の形状として形成されており、
前記細長い本体(12)は、2つの端部部分(18)を備える、項目1に記載の神経導管。
【0129】
3.
複数の前記開口部(20)および前記内空洞(16)は、単一の管腔または連続的な貫通穴を定めている、項目1または2に記載の神経導管(10)。
【0130】
4.
複数の前記開口部(20)の各開口部の横断面積は、前記内空洞(16)の横断面積よりも大きく、または、1つの端部部分(18)のみの開口部(20)の横断面積は、前記内空洞(16)の横断面積よりも大きい、項目1~3のいずれか一項に記載の神経導管(10)。
【0131】
5.
少なくとも1つの前記開口部(20)の横断面積は、前記中央部分(14)から長手方向に離れるにつれて増大する、項目1~4のいずれか一項に記載の神経導管(10)。
【0132】
6.
少なくとも1つの前記端部部分(18)および対応する前記開口部(20)は、前記細長い本体(12)によって定められる長手方向軸線に沿って、回転対称形状として形成されており、
前記形状は、実質的にU字の形状、シグモイド形状、円錐形状、凹面形状、漏斗形状、または放物面形状である、項目5に記載の神経導管(10)。
【0133】
7.
複数の前記端部部分(18)は、同じように形成されている、項目1~6のいずれか一項に記載の神経導管(10)。
【0134】
8.
前記内空洞(16)および複数の前記開口部(20)は、前記細長い本体(12)の内直径および外直径を定める当該細長い本体(12)の単一の壁(22)によって形成されている、項目1~7のいずれか一項に記載の神経導管(10)。
【0135】
9.
前記壁(22)は、前記細長い本体(12)の周方向および長手方向に沿って実質的に連続的な厚さを備える、項目8に記載の神経導管(10)。
【0136】
10.
前記中央部分(14)の前記内直径および前記外直径は、前記細長い本体(12)の長手方向において実質的に連続的である、項目8または9に記載の神経導管(10)。
【0137】
11.
少なくとも1つの前記開口部(20)の直径は、前記中央部分(14)から長手方向に離れるにつれて増大する、項目8~10のいずれか一項に記載の神経導管(10)。
【0138】
12.
少なくとも1つの前記開口部(20)の最大直径(24)と前記内空洞(16)の直径(26)との比は、1.05:1.0~1.5:1.0であり、好ましくは、1.05:1.0~1.2:1.0である、項目11に記載の神経導管(10)。
【0139】
13.
少なくとも1つの前記開口部の最大直径(24)は、前記中央部分(14)の前記外直径よりも小さく、または前記中央部分(14)の前記外直径に一致している、項目11または12に記載の神経導管(10)。
【0140】
14.
前記中央部分(14)から延在する複数の前記端部部分(18)の外表面(38)は、前記中央部分(14)の外表面(40)に対して位置合わせされており、かつ/または、前記中央部分(14)の外表面(40)に対してステップまたはエッジがない、項目1~13のいずれか一項に記載の神経導管(10)。
【0141】
15.
長手方向における前記中央部分(14)の長さ(28)と端部部分(18)の長さ(30)との比は、1.2:1.0~15:1.0であり、好ましくは、1.2:1.0~12:1.0であり、より好ましくは、1.2:1.0~10:1.0である、項目1~14のいずれか一項に記載の神経導管(10)。
【0142】
16.
長手方向における前記中央部分(14)の長さ(28)と前記端部部分(18)の長さ(30)との比は、1.2:1.0~6.0:1.0であり、好ましくは、1.2:1.0~1.4:1.0、または1.8:1.0~2.2:1.0、または4.4:1.0~5.4:1.0である、項目1~15のいずれか一項に記載の神経導管(10)。
【0143】
17.
長手方向における前記中央部分(14)の長さ(28)と前記細長い本体(12)の長さ(32)との比は、0.3:1.0~1:1.0であり、例えば、0.3:1.0~0.8:1.0である、項目1~16のいずれか一項に記載の神経導管(10)。
【0144】
18.
長手方向における前記中央部分(14)の長さ(28)は、3mm~40mmであり、好ましくは、4mm~30mmであり、より好ましくは、4.5mm~25mmである、項目1~17のいずれか一項に記載の神経導管(10)。
【0145】
19.
長手方向における前記細長い本体(12)の長さ(32)は、5mm~50mmであり、好ましくは、6mm~40mmであり、より好ましくは、7mm~30mmである、項目1~18のいずれか一項に記載の神経導管(10)。
【0146】
20.
長手方向における前記端部部分(18)の長さ(30)は、1mm~8mmであり、好ましくは、1.3mm~6.5mmである、項目1~19のいずれか一項に記載の神経導管(10)。
【0147】
21.
長手方向における前記中央部分(14)の長さ(28)は、5mm~10mmであり、好ましくは、6.5mm~8.5mmであり、
長手方向における前記細長い本体(12)の長さ(32)は、7mm~25mmであり、好ましくは、9mm~22mmであり、かつ/または、
長手方向における前記端部部分(18)の長さ(30)は、1mm~8mmであり、好ましくは、1.3mm~6.5mmである、項目1~20のいずれか一項に記載の神経導管(10)。
【0148】
22.
前記内空洞(16)の直径(26)は、1mm~15mmであり、好ましくは、1mm~12mmである、項目1~21のいずれか一項に記載の神経導管(10)。
【0149】
23.
少なくとも1つの前記開口部(20)の最大直径(24)は、1mm~15mmであり、好ましくは、1.5mm~13mmであり、より好ましくは、1.75mm~7mmである、項目1~22のいずれか一項に記載の神経導管(10)。
【0150】
24.
前記内空洞(16)の直径(26)は、1mm~12mmであり、好ましくは、1.5mm~6.5mmであり、かつ/または、
少なくとも1つの前記開口部(20)の最大直径(24)は、1.5mm~11mmであり、好ましくは、1.75mm~6.5mmである、項目1~23のいずれか一項に記載の神経導管(10)。
【0151】
25.
前記細長い本体(12)は、生体適合材料、不活性材料、生体移植可能材料、および/または生分解性材料から形成されている、項目1~24のいずれか一項に記載の神経導管(10)。
【0152】
26.
前記細長い本体(12)は、ポリマー系材料から形成されており、好ましくは、エラストマーから形成されている、項目1~25のいずれか一項に記載の神経導管(10)。
【0153】
27.
前記中央部分(14)および複数の前記端部部分(18)は、一体的に形成されており、または単一片から形成されている、項目1~26のいずれか一項に記載の神経導管(10)。
【0154】
28.
前記細長い本体(12)は、エステル基成分および酸性エステル基成分を含む重合(polymerized)および/または架橋(crosslinked)ポリマーユニットから形成されており、
前記エステル基成分は、好ましくは、ポリオールであり、
前記酸性エステル基成分は、好ましくは、ポリ酸である、項目1~27のいずれか一項に記載の神経導管(10)。
【0155】
29.
3D印刷プロセスによって形成されている、項目1~28のいずれか一項に記載の神経導管(10)。
【0156】
30.
神経組織を修復、支持および/または案内するための、特に、末梢神経損傷を修復するための、項目1~29のいずれか一項に記載の神経導管(10)の使用。
【0157】
31.
医用接着剤と組み合わせた、項目30に記載の神経導管(10)の使用。
【0158】
32.
末梢神経損傷を治療する方法であって、
-請求項1~31のいずれか一項に記載の神経導管(10)を用意する工程と、
-前記中央部分(14)の前記内空洞(16)よりも大きな横断面積を有する開口部(20)を介して、損傷神経の一端部を前記神経導管(10)に挿入する工程と、
-前記細長い本体(12)の互いに長手方向反対側にある端部における端部部分(18)における開口部(20)を介して、前記損傷神経の別の端部を挿入する工程と
-複数の前記損傷神経端部を前記細長い本体(12)内に固定する工程と、
を含む、方法。
【0159】
27.
複数の前記損傷神経端部を固定する前記工程は、前記内空洞(16)の外側に、かつ/または、複数の前記開口部(20)のうちの少なくとも1つの開口部(20)を介して複数の前記開口部(20)内へ、かつ/または、複数の前記開口部(20)の周りに、医用接着剤を塗布することによって行われる、項目32に記載の方法。
【0160】
(参照符号の一覧)
10 神経導管
12 細長い本体
14 中央部分
16 内空洞
18 端部部分
20 開口部
22 壁
24 開口部の最大直径
26 内空洞の直径
28 中央部分の長さ
30 端部部分の長さ
32 細長い本体の長さ
34 開口部の横断面(積)
36 内空洞の横断面(積)
38 端部部分の外表面
40 中央部分の外表面
41 膨出部
42 保定表面(保持表面)
44 穴
46 溝
48 内半径
50 外半径
52 角度
【国際調査報告】