IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフトの特許一覧

特表2024-516224持続可能性が改善されたポリカーボネート製造方法
<>
  • 特表-持続可能性が改善されたポリカーボネート製造方法 図1
  • 特表-持続可能性が改善されたポリカーボネート製造方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-12
(54)【発明の名称】持続可能性が改善されたポリカーボネート製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 64/22 20060101AFI20240405BHJP
   C08J 11/12 20060101ALN20240405BHJP
【FI】
C08G64/22
C08J11/12 ZAB
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566011
(86)(22)【出願日】2022-04-27
(85)【翻訳文提出日】2023-10-26
(86)【国際出願番号】 EP2022061161
(87)【国際公開番号】W WO2022229245
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】21171470.4
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブラン アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ヘイル ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェーバー ライナー
【テーマコード(参考)】
4F401
4J029
【Fターム(参考)】
4F401AA23
4F401BA06
4F401CA71
4J029AA09
4J029AB05
4J029AC01
4J029BB13A
4J029HA01
4J029HC01
4J029KA02
4J029KE09
4J029LA20
4J029LB01
(57)【要約】
本発明は、ポリカーボネートを製造する方法及びそれに適した装置システムに関する。この方法は、水溶液中のアルカリ塩化物、好ましくは塩化ナトリウムの塩素アルカリ電気分解14によって少なくとも塩素22及び水素29bを生成する工程と、一酸化炭素21及び塩素22からホスゲン20を合成する工程(1)と、ホスゲン20とジオール23とを反応させて(2)、ポリカーボネート24を形成する工程と、(i)COガス流31を供給する工程、及び二次成分を除去することによって二酸化炭素ガス流31を精製する工程(4)を含む方法の方法生成物として清浄二酸化炭素ガス流33を供給する工程と、精製二酸化炭素33をRWGS反応6によって一酸化炭素21及び水素29cに変換する工程とを含み、この一酸化炭素及び水素は、ポリカーボネート製造の原料として使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネートを製造する方法であって、少なくとも、
水溶液中のアルカリ金属塩化物、好ましくは塩化ナトリウムの塩素アルカリ電気分解(14)によって少なくとも塩素(22)及び水素(29b)を生成する工程と、
少なくとも、
COガス流(31)を供給する工程、
前記COガス流(31)を任意に吸着、ガススクラビング又は触媒処理によって二次成分(特に窒素酸化物、硫黄化合物、ダスト、水、酸素及びHCl)から精製して(4)、精製二酸化炭素のガス流(33)を得る工程、
を含む方法によって生成した精製COガス流(33)を供給する工程と、
水素(29a)を前記精製COガス流(33)とともにRWGS反応ゾーンに導入し、RWGSの原理に従って反応物を反応させて(6)、未変換の反応物だけでなく、蒸気(26b)、CO(21)及び任意に副生成物(32)、特に低級炭化水素、特に好ましくはメタンも含有する生成物ガス混合物(39)を得る工程と、
前記生成物ガス混合物(39)から前記蒸気(26b)の水を分離する工程(7)と、
前記分離(7)から得られたRWGS反応(6)のガス混合物(39a)から、特にアミンスクラビングによって、未変換の二酸化炭素(31b)を分離し(8)、該未変換の二酸化炭素(31b)を前記RWGS反応(6)に再循環させる工程と、
前記分離(8)後に得られた一酸化炭素及び水素のガス混合物(39b)から、特にコールドボックスを使用して、前記RWGS反応(6)において未変換の水素を分離し(9)、分離された水素(29c)を該RWGS反応(6)に再循環させる工程と、
前記分離(9)からの残りの一酸化炭素(21)をホスゲン合成(1)に導入する工程と、
先に形成された塩素(22)をホスゲン合成(1)に供給する工程と、
一酸化炭素(21)及び塩素(22)からホスゲン(20)を合成する工程(1)と、
少なくともホスゲン(20)と少なくとも1つのジオール(23)とを反応させて(2)、少なくとも1つのポリカーボネート(24)を得る工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記RWGS合成(6)が、焼却(10b)及び/又は熱分解(10a)によるポリカーボネート材料廃棄物(38)の回収(10)から二酸化炭素(31a)として供給され、前記精製(4)において精製される精製二酸化炭素(33)を用いることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも30体積%の酸素ガス含有量(O)を有するガスを用いる前記焼却(10b)を、特に水電解(5)から得られる酸素ガス(27a)を用いて行うことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ガスが少なくとも50体積%、好ましくは少なくとも95体積%、特に好ましくは少なくとも99体積%、とりわけ特に好ましくは少なくとも99.5体積%の酸素ガス含有量(O)を有することを特徴とする、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記水電解(5)を再生可能エネルギー、特に風力、ソーラーパワー又は水力の形態の再生可能エネルギーから生成された電気(28a)を用いて行うことを特徴とする、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
請求項3若しくは4に記載の前記水電解(5)及び/又は前記塩素アルカリ電気分解(14)を、前記ポリカーボネート材料廃棄物の焼却及び/又は前記RWGS反応の実行中に得られたフィードバックエネルギーからの電気を用いて行うことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記RWGS反応(6)に、再生可能エネルギーから生成された電気(28)、特に所望により風力、ソーラーパワー又は水力を用いて得られた電気によって生成された熱エネルギーを供給することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記RWGS反応(6)への熱エネルギーの供給を、前記ポリカーボネート材料廃棄物(38)の焼却から得られたフィードバックエネルギーを用いて行うことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記RWGS反応(6)の加熱を、再生可能資源からの炭化水素の燃焼、特にバイオメタンの燃焼によって達成することを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記COガス流(31)を供給するために、ポリカーボネート材料(37)を使用後にポリカーボネート材料廃棄物(38)として再循環させ、該ポリカーボネート材料廃棄物(38)を焼却して二酸化炭素(31c)を得て、該二酸化炭素(31c)を前記精製(4)における投入材料として用いることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくともホスゲン(20)と少なくとも1つのジオール(23)との反応(2)において、少なくとも1つのポリカーボネートだけでなく、アルカリ金属塩化物の溶液(25)も形成され、該溶液を分離及び精製(11)に供し、水溶液中に存在する分離及び精製されたアルカリ金属塩化物(25a)を前記塩素アルカリ電気分解(14)に供給することを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記塩素アルカリ電気分解(14)を、再生可能エネルギーから生成された電気(28a)、特に所望により風力、ソーラーパワー又は水力を用いて得られた電気(28a)を用いて行うことを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つのポリカーボネート(24)を得るための前記少なくともホスゲン(20)と少なくとも1つのジオール(23)との反応(2)に、好ましくは前記塩素アルカリ電気分解(14)から得られるアルカリ金属水酸化物溶液(30)を付加的に供給することを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも以下の装置部材を以下の構成で備える、ポリカーボネートを製造するための装置システム:
アルカリ金属塩化物、特に塩化ナトリウムの水溶液の少なくとも1つの入口と、塩素の少なくとも1つの出口と、水素の少なくとも1つの出口とを備える、塩素アルカリ電気分解のための少なくとも1つの電気分解装置;
少なくとも1つのRWGS反応ゾーンと、該RWGS反応ゾーンに熱エネルギーを供給するための装置としての少なくとも1つの加熱要素と、該RWGS反応ゾーンにCO及び水素を導入するための少なくとも1つの入口と、RWGS反応器からの一酸化炭素含有生成物ガスの少なくとも1つの出口とを備えるが、但し、
(i)前記RWGS反応ゾーンに水素を導入するための少なくとも1つの入口が、前記塩素アルカリ電気分解のための少なくとも1つの電解槽の水素の少なくとも1つの出口と流体接続し、
(ii)前記RWGS反応ゾーンにCOを導入するための少なくとも1つの入口が、少なくとも、
a)COガス流を供給する工程、
b)前記COガス流を任意に吸着、ガススクラビング又は触媒処理によって二次成分(特に窒素酸化物、硫黄化合物、ダスト、水、酸素及びHCl)から精製する工程、
によって生成された精製COガス流の少なくとも1つの供給源と流体接続し、
(iii)前記RWGS反応器からの一酸化炭素含有生成物ガスの少なくとも1つの出口が、水分離と流体接続する、
少なくとも1つのRWGS反応器;
改質装置からの一酸化炭素含有生成物ガスの出口と流体接続する少なくとも1つの入口と、分離水の少なくとも1つの出口と、乾燥一酸化炭素含有生成物ガスの少なくとも1つの出口とを備える、水を分離するための少なくとも1つの装置;
前記水を分離するための装置からの乾燥一酸化炭素含有生成物ガスの出口と流体接続する少なくとも1つの入口と、前記RWGS反応器のCOの少なくとも1つの入口と流体接続する分離COの少なくとも1つの出口と、予め精製された一酸化炭素含有生成物ガスの少なくとも1つの出口とを備える、COを分離するための少なくとも1つの装置;
前記COを分離するための装置からの予め精製された一酸化炭素含有生成物ガスの出口と流体連通する少なくとも1つの入口と、一酸化炭素の少なくとも1つの出口と、H-CO分離からの残留ガスの少なくとも1つの出口とを備える、H-COを分離するための少なくとも1つの装置;
一酸化炭素のために設けられた前記H-COを分離するための装置の出口と流体接続する一酸化炭素の少なくとも1つの入口を備え、ホスゲンの少なくとも1つの出口及び塩素の少なくとも1つの入口を備える、ホスゲンを生成するための少なくとも1つの装置であって、塩素の少なくとも1つの入口が、前記電解槽の塩素の少なくとも1つの出口と流体接続する、装置;
ジオールの少なくとも1つの入口と、ポリカーボネートの少なくとも1つの出口と、前記ホスゲンを生成するための装置のホスゲンの少なくとも1つの出口と流体接続するホスゲンの少なくとも1つの入口とを備える、ポリカーボネートを製造するための少なくとも1つの装置。
【請求項15】
少なくとも、
水溶液中のアルカリ金属塩化物、好ましくは塩化ナトリウムの塩素アルカリ電気分解によって少なくとも塩素及び水素を生成する工程、
供給された一酸化炭素をホスゲン合成に導入する工程、
先に形成された塩素をホスゲン合成に供給する工程、
一酸化炭素及び塩素からホスゲンを合成する工程、
少なくともホスゲンと少なくとも1つのジオールとを反応させて、少なくとも1つのポリカーボネートを得る工程、
によってポリカーボネートを製造するための、少なくとも、
COガス流を供給する工程、
前記COガス流を任意に吸着、ガススクラビング又は触媒処理によって二次成分(特に窒素酸化物、硫黄化合物、リン化合物、ダスト、水、酸素及びHCl)から精製して、精製二酸化炭素のガス流を得る工程、
を含む方法によって生成した精製COガス流を供給する工程と、
水素を前記精製COガス流とともにRWGS反応ゾーンに導入し、RWGSの原理に従って反応物を反応させて、未変換の反応物だけでなく、付加的な蒸気、CO及び任意に副生成物、特に低級炭化水素、特に好ましくはメタンも含有する生成物ガス混合物を得る工程と、
前記生成物ガス混合物から前記蒸気の水を分離する工程と、
前記分離から得られたRWGS反応のガス混合物から、特にアミンスクラビングによって、未反応の二酸化炭素を分離し、該未反応の二酸化炭素を前記RWGS反応に再循環させる工程と、
前記分離後に得られた一酸化炭素及び水素のガス混合物から、特にコールドボックスを使用して、前記RWGS反応において未変換の水素を分離し、分離された水素を該RWGS反応に再循環させる工程と、
を含む方法によって得られる供給一酸化炭素の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一酸化炭素及び塩素からホスゲンを合成し、ホスゲンを少なくとも1つのジオール、特にジアリールアルコールと反応させてポリカーボネートを得て、二酸化炭素ガス流を供給し、二酸化炭素ガス流を二次成分から精製し、続いて二酸化炭素を反応させて、ホスゲン合成に用いられる一酸化炭素を生成することにより、ポリカーボネート(以下、ポリカーボネートをPCとも称する)を製造する方法に関する。
【0002】
本発明は、廃棄物(以下、「ポリカーボネート材料廃棄物」とも称される)中に存在するポリカーボネート材料のポリカーボネート化合物を回収して、ポリカーボネートの製造のための化学原料を生成することを含む実施の形態に更に関し、ここで、二酸化炭素及び炭化水素、並びに任意に一酸化炭素及び水素が、例えば熱分解によりポリカーボネート材料廃棄物から生成され、二酸化炭素が、いわゆる逆水性ガスシフト反応(以下、RWGS反応)において水素との反応により一酸化炭素に変換され、得られる一酸化炭素がホスゲンを介してポリカーボネートに変換される。
【0003】
本発明は、RWGS反応と、水電解又は塩素を生成する電気分解からの水素の供給と、二酸化炭素を生じるポリカーボネート含有材料の焼却、及び任意にポリカーボネート含有材料から得られる熱分解残渣の焼却への水電解からの酸素の利用と、それぞれの場合に得られる二酸化炭素のRWGS反応の原料としての使用とを用いるポリカーボネートの低排出製造方法に特に関する。
【背景技術】
【0004】
ポリカーボネートの材料再利用アプローチの1つは、ポリマーのカーボネート基をアルコールと反応させて、ジアルキルカーボネート又はジアリールカーボネート及びジオールを得るアルコール分解である。この方法には、出発物質として実質的に純粋なポリカーボネートを必要とするという不利点がある。すなわち、上述のブレンドは、その出発物質として殆ど適していない。
【0005】
本発明の目的は、再循環プロセスを含み、バリューチェーンを閉じることによって、より持続可能なポリカーボネート製造方法を見出すことであった。ポリカーボネート製造に不可欠な要素、例えば一酸化炭素、水素、又は水電解及び塩素アルカリ電気分解等の電気分解を行うための電気は、これまで化石燃料から生み出されてきた。例えば、一酸化炭素及び水素は従来、天然ガス又は石炭から改質プロセスによって得られ、塩素は石油、石炭又は天然ガス等の化石燃料を使用して生み出された電気を用いる電気分解から得られる。
【0006】
方法の「持続可能性」は、「環境と開発に関する世界委員会」のブルントラント報告書において国際連合が作り出した持続可能性(持続可能な開発)の定義に従って当業者に理解され、これは、現在の方法の実施が、将来の世代が自身のニーズ、特に化石原料等の資源の使用に関するニーズ、特に生活空間の保全、例えば地球大気の保護に関するニーズを満たす能力を損なうことに対して最小限しか又は全く寄与しないことである。このため、本発明の目的は、ポリカーボネートの製造を、従来技術から知られている製造方法よりも持続可能なものにすることである。ポリカーボネート製造が将来の世代のニーズを満たす能力の低下に寄与することは、低減或いは回避すべきである。
【0007】
したがって、本発明の目的は、ポリカーボネート製造の反応物としての化石供給原料の使用、更には任意にポリカーボネート製造のエネルギーを供給するための化石供給原料の使用を低減することである。特に後者の目的は、地球大気を保護するためにポリカーボネート製造のカーボンフットプリントを更に改善することを意図したものである。
【発明の概要】
【0008】
したがって、本発明は、ポリカーボネートを製造する方法であって、少なくとも、
水溶液中のアルカリ金属塩化物、好ましくは塩化ナトリウムの塩素アルカリ電気分解によって少なくとも塩素及び水素を生成する工程と、
少なくとも、
COガス流を供給する工程、
COガス流を任意に吸着、ガススクラビング又は触媒処理によって二次成分(特に窒素酸化物、硫黄化合物、リン化合物、ダスト、水、酸素及びHCl)から精製して、精製二酸化炭素のガス流を得る工程、
によって生成した精製COガス流を供給する工程と、
水素を精製COガス流とともにRWGS反応ゾーンに導入し、RWGSの原理に従って反応物を反応させて、未変換の反応物だけでなく、蒸気、CO及び任意に副生成物、特に低級炭化水素、特に好ましくはメタンも含有する生成物ガス混合物を得る工程と、
生成物ガス混合物から蒸気の水を分離する工程と、
分離から得られたRWGS反応のガス混合物から、特にアミンスクラビングによって、未変換の二酸化炭素を分離し、該未変換の二酸化炭素をRWGS反応に再循環させる工程と、
分離後に得られた一酸化炭素及び水素のガス混合物から、特にコールドボックスを使用して、RWGS反応において未変換の水素を分離し、水素を該RWGS反応に再循環させる工程と、
分離からの残りの一酸化炭素をホスゲン合成に導入する工程と、
先に形成された塩素22をホスゲン合成に供給する工程と、
一酸化炭素及び塩素からホスゲンを合成する工程と、
少なくともホスゲンと少なくとも1つのジオールとを反応させて、少なくとも1つのポリカーボネートを得る工程と、
を含む、方法を提供する。
【0009】
「低級炭化水素」は、本発明によれば、1個~8個の炭素原子を有する炭化水素を意味すると理解される。
【0010】
RWGS反応の生成物ガスの「アミンスクラビング」は、ここでは、特に、モノエタノールアミン(MEA)、ジエタノールアミン(DEA)、メチルジエタノールアミン(MDEA)又はジグリコールアミン(DGA)等のアミンを用いた化学吸着の原理に従う、一般に知られているガス混合物のスクラビングを意味すると理解され、これは、吸収塔において比較的低圧であっても高純度の精製ガス混合物を達成する。
【0011】
「再生可能エネルギー」は、風力エネルギー、水力エネルギー又は太陽エネルギー等の枯渇しないエネルギー源からのエネルギーを意味すると当業者に理解される。
【0012】
ホスゲンの合成のために一酸化炭素を供給するには、精製され、RWGS反応に導入される二酸化炭素ガス流が必要とされる。好ましくはポリカーボネート材料廃棄物の回収によって生じる一酸化炭素を、塩素と反応させてホスゲンを得て、これをジオール、特にジアリールアルコールと反応させてポリカーボネートを得る。これによりバリューチェーンの一部が閉じられる。任意の水電解にCO及び再生可能エネルギー源からの電気を使用することで、持続可能性を更に改善したポリカーボネートの製造が可能となる。ポリカーボネート中の化石炭素の割合は、著しく減少する。
【0013】
ここで、回収に用いられるポリカーボネート材料廃棄物のポリカーボネート化合物及び本方法に従って製造されるポリカーボネートをどのように製造することができるかを例として説明する。
【0014】
例えば、製造は、例えばSchnell, "Chemistry and Physics of Polycarbonates", Polymer Reviews, Volume 9, Interscience Publishers, New York, London, Sydney 1964, pages 33-70、Freitag et al., BAYER AG, "Polycarbonates" in Encyclopedia of Polymer Science and Engineering, Volume 11, Second Edition, 1988, pages 651-692に記載されているような既知の界面プロセスによって行うことができる。
【0015】
界面プロセスによってポリカーボネートを製造するために、初めに水性アルカリ溶液若しくは懸濁液に投入したジフェノールのジナトリウム塩、又は初めに水性アルカリ溶液若しくは懸濁液に投入した2つ以上の異なるジフェノールの混合物を、不活性有機溶媒又は溶媒混合物の存在下でハロゲン化カルボニル、特にホスゲンと反応させるが、不活性の有機溶媒/溶媒混合物は、水相に加えて第2の有機相を形成する。主に有機相に存在する得られたオリゴカーボネートを、好適な触媒を用いて縮合に供して、有機相に溶解した高分子量ポリカーボネートを得るが、分子量は好適な連鎖停止剤、例えばフェノール又はアルキルフェノール、特にフェノール、p-tert-ブチルフェノール、イソオクチルフェノール又はクミルフェノール等の単官能性フェノールによって制御することができる。最後に有機相を分離し、様々な後処理工程によってポリカーボネートを有機相から単離する。例えばビスフェノールAについては、反応は以下のように表すことができる:
【化1】
ここで、R1及びR2は、互いに独立して成長ポリカーボネート鎖又は連鎖停止剤を表すことができる。
【0016】
したがって、少なくとも1つのポリカーボネートを得るための少なくともホスゲンと少なくとも1つのジオールとの反応において、特に好ましくは塩素アルカリ電気分解の作用によって少なくとも部分的に形成されたアルカリ金属水酸化物溶液(特に水酸化ナトリウム水溶液)を付加的に供給することが方法の好ましい実施の形態との関連で有利である。
【0017】
二相界面プロセスによるハロゲン化カルボニル、特にホスゲンを用いて縮合物を生成する連続プロセス、例えば芳香族ポリカーボネート若しくはポリエステルカーボネート、又はそれらのオリゴマーの製造には一般に、反応の加速及び/又は相分離の改善に、生成物のバランスに必要とされるよりも多くのホスゲンを用いる必要があるという不利点がある。過剰なホスゲンは、続いて副生成物、例えば付加的な食塩又はアルカリ金属炭酸塩化合物の形態で合成中に分解される。芳香族ポリカーボネートを製造する連続二相界面プロセスでは通例、添加されるジフェノキシドを基準として約20mol%のホスゲン過剰が用いられる。
【0018】
好ましい実施の形態における本発明の文脈において、ポリカーボネート及びポリカーボネート化合物は、少なくとも1つの反復単位が少なくとも1つの-O-C(=O)-O-構造単位(ここで、はポリマー骨格の価数を表す)を含む、ホモポリマー又はコポリマーから選択される高分子化合物を意味すると理解される。
【0019】
本発明の文脈におけるポリカーボネート及びポリカーボネート化合物という用語は、ホモポリカーボネート、コポリカーボネート及び/又はポリエステルカーボネートであり得る化合物を含み、ポリカーボネートは、既知の様式で直鎖状であっても又は分岐状であってもよい。本発明によると、ポリカーボネートの混合物を用いることも可能である。
【0020】
好適なポリカーボネート材料のポリカーボネート化合物及び好適なポリカーボネートには同様に、熱可塑性芳香族ポリエステルカーボネートを含む熱可塑性ポリカーボネートが含まれる。これらは、好ましくは18000g/mol~36000g/mol、好ましくは23000g/mol~31000g/mol、特に24000g/mol~31000g/molの平均分子量M(CHCl中、100mlのCHCl当たり0.5gの濃度にて25℃で相対溶液粘度を測定することによって決定される)を有する。
【0021】
本発明に従って用いられるポリカーボネート化合物及び製造されるポリカーボネート中のカーボネート基の最大80mol%、好ましくは20mol%~50mol%の一部が芳香族ジカルボン酸エステル基に置き換えられてもよい。分子鎖中に組み込まれた炭酸の酸ラジカル及び芳香族ジカルボン酸の酸ラジカルの両方を含む、かかるポリカーボネート及びポリカーボネート化合物は、芳香族ポリエステルカーボネートと称される。本発明の文脈において、これらは「熱可塑性芳香族ポリカーボネート」という包括的な用語に包含される。
【0022】
ポリカーボネート/ポリカーボネート材料のポリカーボネート化合物の製造は、少なくとも1つのジフェノール(以下、ジフェノールをジヒドロキシアリール化合物とも称する)、炭酸誘導体、任意に連鎖停止剤及び任意に分岐剤から既知の様式で行われ、ここで、ポリエステルカーボネートを製造するために、カルボン酸誘導体の一部が、芳香族ポリカーボネートにおいて置き換えられるカーボネート構造単位に応じて、芳香族ジカルボン酸又はジカルボン酸の誘導体、すなわち芳香族ジカルボン酸エステル構造単位に置き換えられる。
【0023】
本発明による方法によるポリカーボネート材料のポリカーボネート化合物の製造及びポリカーボネートの製造の両方に適したジヒドロキシアリール化合物は、式(1):
HO-Z-OH (1)
(式中、
Zは、6個~30個の炭素原子を有し、1つ以上の芳香環を含んでいてもよく、置換されていてもよく、脂肪族又は脂環式ラジカル/アルキルアリール又はヘテロ原子を架橋成員として含んでいてもよい芳香族ラジカルである)の化合物である。
【0024】
式(1)中のZは、式(2):
【化2】
(式中、
及びRは、互いに独立してH、C~C18アルキル、C~C18アルコキシ、Cl若しくはBr等のハロゲン、又はそれぞれ任意に置換されたアリール若しくはアラルキル、好ましくはH又はC~C12アルキル、特に好ましくはH又はC~Cアルキル、非常に特に好ましくはH又はメチルを表し、
Xは単結合、-SO-、-CO-、-O-、-S-、C~Cアルキレン、C~Cアルキリデン又はC若しくはCシクロアルキリデンを表し、これらはC~Cアルキル、好ましくはメチル若しくはエチルで置換されていてもよく、或いはXは、任意に更なるヘテロ原子含有芳香環に縮合していてもよいC~C12アリーレンを表す)のラジカルを表すのが好ましい。
【0025】
Xは単結合、C~Cアルキレン、C~Cアルキリデン、C若しくはCシクロアルキリデン、-O-、-SO-、-CO-、-S-、-SO-、
又は式(2a):
【化3】
のラジカルを表すのが好ましい。
【0026】
ジフェノール(すなわちジヒドロキシアリール化合物)の例は、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシジフェニル、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)アリール、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、1,1’-ビス(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼン、並びにそれらの環アルキル化化合物及び環ハロゲン化化合物である。
【0027】
ポリカーボネートの本発明による製造及び好ましくは回収ポリカーボネート材料のポリカーボネート化合物の製造に適したジフェノールとしては、例えばハイドロキノン、レゾルシノール、ジヒドロキシジフェニル、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、α,α’-ビス(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼン、並びにそれらのアルキル化化合物、環アルキル化化合物及び環ハロゲン化化合物が挙げられる。
【0028】
好ましいジフェノールは、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルプロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルエタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA(BPA))、2,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、1,3-ビス[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン(ビスフェノールM)、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、1,3-ビス[2-(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン及び1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC(BPTMC))、更には式(IV)~(VI):
【化4】
(式中、R’は、いずれの場合にもC~Cアルキル、アラルキル又はアリール、好ましくはメチル又はフェニルを表す)のジフェノールである。
【0029】
特に好ましいジフェノールは、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルエタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA(BPA))、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン及び1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC(BPTMC))、並びに式(III)、(IV)及び(V)(式中、R’は、いずれの場合にもC~Cアルキル、アラルキル又はアリール、好ましくはメチル又はフェニルを表す)のジヒドロキシ化合物である。
【0030】
これら及び更なる好適なジフェノールは、例えば米国特許第2999835号、米国特許第3148172号、米国特許第2991273号、米国特許第3271367号、米国特許第4982014号及び米国特許第2999846号、独国特許出願公開第1570703号、独国特許出願公開第2063050号、独国特許出願公開第2036052号、独国特許出願公開第2211956号及び独国特許出願公開第3832396号、仏国特許出願公開第1561518号、論文「H. Schnell, Chemistry and Physics of Polycarbonates, Interscience Publishers, New York 1964, p. 28 ff.; p.102 ff.」、並びに「D.G. Legrand, J.T. Bendler, Handbook of Polycarbonate Science and Technology, Marcel Dekker New York 2000, p. 72 ff.」に記載されている。
【0031】
ホモポリカーボネートの場合、1つのジフェノールのみが用いられるが、コポリカーボネートの場合、2つ以上の異なるジフェノールが用いられる。用いられるジフェノール又は用いられる2つ以上の異なるジフェノールは、合成に追加される他の全ての化学物質及び助剤と同様に、それ自体の合成、取扱い及び貯蔵に起因する不純物で汚染される可能性がある。しかしながら、可能な限り純粋な原料を扱うことが望ましい。
【0032】
使用する任意の分岐剤又は分岐剤混合物も同様に合成に追加される。一般的に使用される化合物は、トリスフェノール、クアテルフェノール(quaterphenols)、又はトリカルボン酸若しくはテトラカルボン酸の塩化アシル、或いはポリフェノール又は塩化アシルの混合物である。
【0033】
分岐剤として使用可能な3個又は4個以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物の幾つかは、例えばフロログルシノール、4,6-ジメチル-2,4,6-トリ(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタ-2-エン、4,6-ジメチル-2,4,6-トリ(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1-トリ(4-ヒドロキシフェニル)エタン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2-ビス[4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]プロパン、2,4-ビス(4-ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノール、テトラ(4-ヒドロキシフェニル)メタンである。
【0034】
他の三官能性化合物の幾つかは、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、トリメシン酸、シアヌル酸クロリド及び3,3-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロインドールである。
【0035】
好ましい分岐剤は、3,3-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロインドール及び1,1,1-トリ(4-ヒドロキシフェニル)エタンである。
【0036】
任意に用いることができる分岐剤の量は、この場合、それぞれの場合に用いられるジフェノールのモル数を基準として0.05mol%~2mol%であり、分岐剤に初めにジフェノールを投入する。
【0037】
ポリカーボネート/ポリカーボネート化合物を製造するためのこれらの手段(measures)は全て、当業者によく知られている。
【0038】
ポリエステルカーボネートの調製に適した芳香族ジカルボン酸の例としては、オルトフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、tert-ブチルイソフタル酸、3,3’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4-ベンゾフェノンジカルボン酸、3,4’-ベンゾフェノンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)プロパン、トリメチル-3-フェニルインダン-4,5’-ジカルボン酸が挙げられる。
【0039】
芳香族ジカルボン酸の中でも、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸を使用することが特に好ましい。
【0040】
ジカルボン酸の誘導体としては、ジカルボニルジハライド及びジアルキルジカルボキシレート、特にジカルボニルジクロリド及びジメチルジカルボキシレートが挙げられる。
【0041】
芳香族ジカルボン酸エステル基によるカーボネート基の置換えは、実質的に化学量論的、更には定量的であるため、反応物のモル比は、最終ポリエステルカーボネートにおいても維持される。芳香族ジカルボン酸エステル基は、無作為又はブロック単位のいずれかで組み込まれ得る。
【0042】
欧州特許出願公開第0304691号から知られるポリカーボネートを製造する連続界面プロセスにおいては、ジフェノールと必要な特定量のアルカリ金属水酸化物との水相を、静的ミキサーを用いて管内でホスゲン含有有機相と合わせる。20mol%~100mol%のホスゲン過剰は非常に高く、最初の反応工程についての反応管内での滞留時間は、10秒~75秒である。このプロセスは、4000g/mol~12000g/molの分子量を有するプレポリマーの製造にのみ使用することができる。所望の分子量に達するためには、少なくとも1つの触媒を用いた更なる縮合を続いて行う必要がある。好適な触媒は、第三級アミン及びオニウム塩である。トリブチルアミン、トリエチルアミン及びN-エチルピペリジンを用いることが好ましい。
【0043】
用いられるアミン触媒は、開鎖であっても又は環状であってもよく、トリエチルアミン及びN-エチルピペリジンが特に好ましい。触媒は、1重量%~55重量%の溶液として使用するのが好ましい。
【0044】
オニウム塩は、ここではNRX等の化合物を意味すると理解され、ここで、Rはアルキルラジカル及び/又はアリールラジカル及び/又はHとすることができ、Xはアニオン、例えば塩化物イオン、水酸化物イオン又はフェノキシドイオンである。
【0045】
最大でも微量(2ppm未満)のアリールクロロカーボネートしか含有しない、完全に反応した少なくとも二相の反応混合物を相分離のために沈降させる。水性アルカリ相(反応廃水)を除去し、有機相を希塩酸及び水で抽出する。合わせた水相を廃水後処理に送り、そこで溶媒及び触媒部分をストリッピング又は抽出によって除去し、再循環させる。続いて、例えば塩酸の添加により、例えば6~8の或る特定のpHに調整した後、残りの全ての有機不純物、例えばモノフェノール及び/又は未変換のジフェノール(単数又は複数)を活性炭での処理によって除去し、水相を塩素アルカリ電気分解に送る。
【0046】
後処理の別の変形例においては、反応廃水を洗浄相と合わせず、溶媒及び触媒残渣を除去するストリッピング又は抽出後に、例えば塩酸の添加により、例えば6~8の或る特定のpHに調整し、残りの有機不純物、例えばモノフェノール及び/又は未変換のジフェノール(単数又は複数)を活性炭での処理によって除去した後、塩素アルカリ電気分解に送る。
【0047】
ストリッピング又は抽出による溶媒及び触媒部分の除去の後、洗浄相を任意に合成に戻してもよい。
【0048】
ハロゲン化カルボニル、特にホスゲンは、液体若しくは気体の形態で、又は有機溶媒に溶解して使用することができる。
【0049】
一酸化炭素及び塩素からのホスゲンの生成は、例えば欧州特許出願公開第0881986号、欧州特許出願公開第1640341号、独国特許出願公開第3327274号、英国特許出願公開第583477号、国際公開第97/30932号、国際公開第96/16898号又は米国特許第6,713,035号から知られている。
【0050】
ホスゲンの導入後、有機相及び水相を或る特定の時間にわたって撹拌してから、任意に分岐剤(ビスフェノレートとともに添加しない場合)、連鎖停止剤及び触媒を添加するのが有利な場合がある。かかる後反応時間は、いずれの添加後にも有利であり得る。これらの更なる撹拌時間は、導入される限りにおいて、10秒~60分、好ましくは30秒~40分、特に好ましくは1分~15分である。
【0051】
ここで、ポリカーボネートを含有する有機相は、アルカリ型、イオン型又は触媒型のあらゆる汚染から精製する必要がある。
【0052】
任意に沈降タンク、撹拌タンク、コアレッサー若しくはセパレーター、及び/又はこれらの手段の組合せを通過させることにより補助される1回以上の沈降プロセス(ここで、場合によっては能動的又は受動的混合装置を用いて、各分離工程又は一部の分離工程に任意に水を添加してもよい)の後であっても、有機相は触媒、一般に第三級アミンだけでなく、微細液滴の水性アルカリ相の一部を依然として含有する。
【0053】
このアルカリ性水相の粗分離の後、有機相を希酸、鉱酸、カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸及び/又はスルホン酸で1回以上洗浄する。水性鉱酸、特に塩酸、亜リン酸及びリン酸、又はこれらの酸の混合物が好ましい。これらの酸の濃度は、0.001重量%~50重量%、好ましくは0.01重量%~5重量%の範囲とするのが望ましい。
【0054】
有機相を更に脱塩水又は蒸留水で繰り返し洗浄する。個々の洗浄工程後の、任意に水相の一部と分散させた有機相の分離は、沈降タンク、撹拌タンク、コアレッサー若しくはセパレーター、及び/又はこれらの手段の組合せを用いて行い、任意に能動的又は受動的混合装置を用いて、洗浄工程間に洗浄水を添加してもよい。
【0055】
これらの洗浄工程間、或いは洗浄後に、好ましくはポリカーボネート溶液に使用する溶媒に溶解した酸を任意に添加してもよい。ここでは塩化水素ガス及びリン酸又は亜リン酸を使用するのが好ましく、これらを任意に混合物として用いてもよい。
【0056】
最後の分離操作後に、このようにして得られた精製ポリカーボネート溶液は、5重量%以下、好ましくは1重量%未満、非常に特に好ましくは0.5重量%未満の水を含有するのが望ましい。
【0057】
ポリカーボネートを単離するために、低沸点溶媒、例えば塩化メチレンを最初の工程で高沸点溶媒、例えばクロロベンゼンに交換する。これは交換塔を用いて達成される。
【0058】
高沸点溶媒、例えばクロロベンゼンによる溶液からのポリカーボネートの単離は、温度、真空又は加熱同伴ガスを用いた溶媒の蒸発によって達成することができる。
【0059】
ポリカーボネート溶液の濃縮、更には任意にポリカーボネートの単離が、任意に過熱及び減圧による溶媒の留去によって達成される場合、これは「フラッシュ法」と称され、"Thermische Trennverfahren", VCH Verlagsanstalt 1988, page 114も参照されたい。一方、例えばVauck, "Grundoperationen chemischer Verfahrenstechnik", Deutscher Verlag fuer Grundstoffindustrie 2000, 11th edition, page 690に記載されているように、濃縮する溶液とともに加熱キャリアガスを噴霧する場合、これは「噴霧蒸発/噴霧乾燥」と称される。これらの方法は全て、特許文献及び教科書に記載されており、当業者によく知られている。
【0060】
温度による溶媒の除去(留去)又は技術的により効果的なフラッシュ法では、高濃度のポリカーボネート溶融物が得られる。既知のフラッシュ法においては、ポリカーボネート溶液を大気圧下での沸点を超える温度まで僅かな陽圧下で繰り返し加熱した後、大気圧に対して過熱されたこれらの溶液をより低圧、例えば大気圧の容器内に減圧する。濃縮段階、又は言い換えると過熱温度段階を大きくしすぎず、むしろ2段階~4段階のプロセスを選ぶのが有利な場合がある。
【0061】
溶媒の残渣は、このようにして得られた高濃度のポリカーボネート溶融物から、ベント式押出機(ベルギー国特許発明第866991号、欧州特許出願公開第0411510号、米国特許第4980105号、独国特許出願公開第3332065号)、薄膜蒸発装置(欧州特許出願公開第0267025号)、流下膜式蒸発装置、ストランド蒸発器若しくは摩擦圧縮(欧州特許出願公開第0460450号)によって、更には任意に窒素若しくは二酸化炭素等の同伴剤(entraining agent)を添加して、又は真空を用いて(欧州特許出願公開第003996号、欧州特許出願公開第0256003号、米国特許第4423207号)、代替的にはその後の結晶化(独国特許出願公開第3429960号)及び固相中の溶媒の残渣のベークアウト(米国特許第3986269号、独国特許出願公開第2053876号)によって直接溶融物から除去することができる。
【0062】
粒状物は、可能であれば、溶融物の直接スピニング及びその後の造粒により、或いは空気中又は液体、通常は水の下でスピニングが達成される吐出押出機を使用して得ることができる。押出機を使用する場合、任意に静的ミキサーを用いて、又は上記押出機内のサイド押出機によって押出機の上流で溶融物を添加剤と混合してもよい。
【0063】
ポリカーボネート/ポリカーボネート化合物への添加剤の添加は、使用可能寿命若しくは色の延長(安定剤)、加工の簡略化(例えば離型剤、流動助剤、帯電防止剤)、又は特定の応力に対する得られるポリカーボネート材料の特性の適合(ゴム等の衝撃改質剤、難燃剤、着色剤、ガラス繊維)を助長する。
【0064】
これらの添加剤は、個別に、又は任意の所望の混合物若しくは複数の異なる混合物中で、ポリカーボネート又はポリカーボネート化合物単離時に直接、或いはポリカーボネート材料を得るための、いわゆる配合工程でペレットを溶融した後にポリカーボネート溶融物に添加することができる。これらの添加剤又はその混合物は、ポリカーボネート溶融物に固体、すなわち粉末として、又は溶融物として添加することができる。計量添加の別の様式は、添加剤又は添加剤混合物のマスターバッチ又はマスターバッチの混合物の使用である。
【0065】
好適な添加剤の例は、「Additives for Plastics Handbook, John Murphy, Elsevier, Oxford 1999」及び「Plastics Additives Handbook, Hans Zweifel, Hanser, Munich 2001」に記載されている。
【0066】
好適な酸化防止剤/熱安定剤の例としては、
アルキル化モノフェノール、
アルキルチオメチルフェノール、
ハイドロキノン及びアルキル化ハイドロキノン、
トコフェロール、
ヒドロキシル化チオジフェニルエーテル、
アルキリデンビスフェノール、
O-、N-及びS-ベンジル化合物、
ヒドロキシベンジル化マロネート、
芳香族ヒドロキシベンジル化合物、
トリアジン化合物、
アシルアミノフェノール、
β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のエステル、
β-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロピオン酸のエステル、
β-(3,5-ジシクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のエステル、
3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル酢酸のエステル、
β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のアミド、
好適なチオ相乗剤(thiosynergists)、
二次酸化防止剤、ホスファイト及びホスホニト、
ベンゾフラノン及びインドリノンが挙げられる。
【0067】
有機ホスファイト、ホスホネート及びホスファン、主に有機ラジカルが、任意に置換された芳香族ラジカルから完全又は部分的になるものが好ましい。
【0068】
重金属及び微量のアルカリの中和に適した錯化剤は、オルトリン酸及びメタリン酸、完全に又は部分的にエステル化されたホスフェート又はホスファイトである。
【0069】
好適な光吸収剤(UV吸収剤)としては、例えば、
2-(2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、
2-ヒドロキシベンゾフェノン、
置換及び非置換の安息香酸のエステル、
アクリレート、
立体障害アミン、
オキサミド、
2-(2-ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジンが挙げられ、
置換ベンゾトリアゾールが好ましい。
【0070】
ポリプロピレングリコールを単独で、又は例えば安定剤としてスルホン若しくはスルホンアミドと組み合わせて、ガンマ線による損傷に対抗するために使用することができる。
【0071】
これら及び他の安定剤は、個別に又は組み合わせて使用することができ、記載した形でポリカーボネートに添加することができる。
【0072】
離型剤等の加工助剤、主に長鎖脂肪酸の誘導体を添加することも可能である。例えばテトラステアリン酸ペンタエリスリトール及びモノステアリン酸グリセロールが好ましい。これらは単独又は混合物中で、好ましくは組成物の質量を基準として0.02重量%~1重量%の量で使用される。
【0073】
好適な難燃添加剤はリン酸エステル、すなわちトリフェニルホスフェート、レゾルシノールジホスフェート、臭素化化合物、例えば臭素化リン酸エステル、臭素化オリゴカーボネート及びポリカーボネート、好ましくはフッ化有機スルホン酸の塩である。
【0074】
好適な衝撃改質剤は、スチレン-アクリロニトリル又はメチルメタクリレートがグラフトされたブタジエンゴム、無水マレイン酸がグラフトされたエチレン-プロピレンゴム、メチルメタクリレート又はスチレン-アクリロニトリルがグラフトされたエチルアクリレートゴム及びブチルアクリレートゴム、メチルメタクリレート又はスチレン-アクリロニトリルがグラフトされた相互貫入シロキサン及びアクリレートネットワークである。
【0075】
有機染料若しくは顔料、又は無機顔料、赤外吸収体等の着色剤を個別に、混合物として、或いは安定剤、ガラス繊維、(中空)ガラス球、無機充填剤と組み合わせて添加することが更に可能である。
【0076】
上述のポリカーボネート/上述のポリカーボネート化合物により、上記の添加剤を更に添加することで、多種多様な市販製品の製造に用いることができるポリカーボネート材料を提供することが可能となる。ポリカーボネート材料を含む製品は、使用段階の終了後に、通常は廃棄され、すなわち埋立地に貯蔵されるか、又は廃棄物焼却プラントにおいて焼却される。粉砕及び再溶融による材料回収は、一部の場合でしか行うことができず、すなわち、ポリカーボネート材料から用いられたポリカーボネートを経済的な純度で回収することは、これまで必ずしも可能ではなかった。
【0077】
RWGS合成については、本発明によると、精製COガス流を供給することが必要であり、これは分離時に分離され、RWGS反応において反応しない二酸化炭素とは異なり、少なくとも、
COガス流を供給する工程と、
COガス流を、任意に吸着、ガススクラビング又は触媒処理によって二次成分(特に窒素酸化物、硫黄化合物、リン化合物、ダスト、水、酸素及びHCl)から精製して、精製二酸化炭素のガス流を得る工程と、
を含む方法の方法生成物である。
【0078】
したがって、精製COガス流を供給する場合、精製COガス流が上述の方法の方法生成物であれば適切である。すなわち、本発明による方法を行う場合、精製COガス流を供給する工程を行う際に、単に送出との関連において該精製COガス流を貯蔵容器又は供給導管から原料として引き出すだけで十分である。この場合、本発明による方法の実行者としてのポリカーボネート製造業者は、上記COを生成する上述の方法を自ら行うのではなく、むしろ供給されるCOが供給業者により該方法で生成されたことを保証するだけである。
【0079】
本発明によると、精製COガス流を供給するために、精製COガス流の生成方法の上述の工程が、ポリカーボネートを製造する本発明による方法の不可欠な工程としてポリカーボネート製造業者によって行われ、得られる精製COガス流が反応のためにRWGS反応ゾーンに直接供給されることも同様に可能である。
【0080】
ポリカーボネート製造業者による供給、すなわち送出又は自社製造のこれらの可能性は、精製COガス流を供給する以下の実施の形態にも当てはまる。
【0081】
本発明の方法の好ましい実施の形態は、RWGS合成に、ポリカーボネート材料廃棄物の回収から焼却及び/又は熱分解によって二酸化炭素として供給され、精製時に精製された二酸化炭素を用いることを特徴とする。この場合、水電解から得られた酸素ガスを焼却に利用することが好ましい。
【0082】
ポリカーボネート材料廃棄物は、ポリカーボネート材料の商業的利用によって形成されたものであってもよく、この場合、ポリカーボネート材料は、ポリカーボネート化合物としてポリカーボネートを用いて製造され、本発明による方法に従ってポリカーボネートとして提供されたものである。本発明によるRWGS合成において、かかるポリカーボネート材料廃棄物を回収する場合、この方法は、いわゆる「クローズドループ」方法と称される。しかしながら、本発明のRWGS合成では、本発明による方法に従ってポリカーボネートとして製造されなかったポリカーボネート化合物を含むポリカーボネート材料廃棄物の焼却からCOを回収することも当然可能である。
【0083】
酸素ガス含有量(O)を有するガスの存在下での焼却によるポリカーボネート材料廃棄物の回収から形成された二酸化炭素をRWGS合成に用いる方法が非常に特に好ましく、ここで、上記ガスは、少なくとも30体積%、好ましくは少なくとも50体積%、特に好ましくは少なくとも95体積%、非常に特に好ましくは少なくとも99体積%、最も好ましくは少なくとも99.5体積%の酸素ガス含有量(O)を有する。
【0084】
この場合、焼却に使用する酸素ガスは、好ましくは水電解から得ることができる。
【0085】
ポリカーボネート材料廃棄物の回収は、COガス流の供給との関連において、例えば該ポリカーボネート材料廃棄物を高温にて、任意に触媒の存在下で熱分解して、二酸化炭素、任意に一酸化炭素、任意に水素、任意に脂肪族及び芳香族の低分子量炭化水素と窒素含有炭化水素との混合物、並びに任意に9個以上の炭素原子を有する、より高分子量の炭化水素の残渣を得ることによって行われる。次いで、熱分解において得られた混合物を好ましくは精製に供給して、二酸化炭素、一酸化炭素、水素ガス、及び標準条件下で気体の更なる低分子量炭化水素化合物のガス混合物を得る。
【0086】
熱分解において得られた残渣及び任意に更なるポリカーボネート材料廃棄物の焼却を、特に酸素含有ガス、特に純酸素を用いて行い、二酸化炭素含有ガスを得ることができる。
【0087】
新規の方法の好ましい実施の形態においては、RWGS合成に、水電解から得られた酸素を用いたポリカーボネート材料廃棄物の焼却から形成された二酸化炭素を用いる。
【0088】
新規の方法の更なる好ましい実施の形態において、水電解及び/又は塩素アルカリ電気分解は、再生可能エネルギー、特に風力、ソーラーパワー又は水力の形態の再生可能エネルギーから生成された電気を用いて行う。
【0089】
新規の方法の別の好ましい実施の形態において、水電解及び/又は塩素アルカリ電気分解を、ポリカーボネート材料廃棄物の焼却及び/又はRWGS反応の実行中に得られたフィードバックエネルギーからの電気を用いて行う。
【0090】
新規の方法の更なる代替的な実施の形態において、RWGS反応6に、再生可能エネルギーから生成された電気28、特に所望により風力、ソーラーパワー又は水力を用いて得られた電気によって生成された熱エネルギーを供給することを特徴とする。
【0091】
新規の方法の更なる代替的な実施の形態において、RWGS反応への熱エネルギーの供給を、ポリカーボネート材料廃棄物の焼却から得られたフィードバックエネルギーを用いて行う。「フィードバックエネルギー」という用語は、本発明による方法の方法工程から引き出され(任意に別のエネルギー形態、例えば電気に変換され)、本発明による方法の別の方法工程に再導入されたエネルギー、特に熱エネルギーを意味することが当業者には理解される。
【0092】
新規の方法の好ましい変形例において、RWGS反応は、再生可能炭化水素製造からの炭化水素の燃焼、特にバイオメタンの燃焼によって加熱される。ここで、バイオメタンは、バイオマスの発酵によって生じるバイオガスから得られたメタンを意味すると理解される。新規の方法の更なる特に好ましい変形例は、ポリカーボネート材料を使用後にポリカーボネート材料廃棄物として再循環させ、ポリカーボネート材料廃棄物を焼却して二酸化炭素を得て、二酸化炭素を精製における投入材料として用いることを特徴とする。
【0093】
焼却のための酸素は、水電解から得るのが好ましい。
【0094】
好ましくは、再生可能エネルギー(好ましくは風力、水力又はソーラーパワー)からの電気を使用することで、方法全体におけるCO排出量が更に削減される。
【0095】
本発明による方法の特に好ましい実施の形態においては、COガス流を供給するために、ポリカーボネート材料を使用後にポリカーボネート材料廃棄物として再循環させ、ポリカーボネート材料廃棄物を焼却して二酸化炭素を得て、二酸化炭素を精製における投入材料として用いるという点で物質循環が更に閉じられる。
【0096】
使用可能寿命の終了後のポリカーボネート材料の上述の再循環において、廃棄物中の複合材料を分離する慣例の分離法が用いられる。ポリカーボネート材料は例えば、自動又は手動の粗分離を経た後、機械的に微粉砕され、任意に更に分離される。得られたポリカーボネート材料は、焼却又は熱分解の供給原料であるポリカーボネート材料廃棄物となる。
【0097】
焼却の場合、ポリカーボネート材料廃棄物は、例えば水電解の生成物としてアノードで発生する純酸素Oと反応する。焼却時に発生する反応熱は、蒸気及び/又は電気を生み出すためのフィードバックエネルギーとして利用できる。特に、熱は熱分解を行うために用いることができ、生成した電気は電気分解、特に塩素アルカリ電気分解又は水電解に用いることができる。これにより新規の方法の全体効率が更に改善する。
【0098】
焼却中に得られる熱は、RWGS反応を加熱するためのフィードバックエネルギーとしても用いることができ、これにより新規の方法の全体的なエネルギー効率が従来技術と比べて更に改善する。
【0099】
ポリカーボネート材料廃棄物の焼却又は熱分解から生じるCOは、高濃度の形態で得られ、更に使用する前に精製に供給され、それにより精製COガス流が形成される。これにより、焼却の副生成物、例えばSO等の硫黄化合物、NO等の窒素化合物、及び残留有機物、並びにポリカーボネート材料中に存在する成分から形成されるダスト及び他の化合物が分離される。
【0100】
純酸素によるポリカーボネート材料廃棄物の焼却は例えば、純酸素及びCO(再循環煙道ガス)の雰囲気中での酸素燃焼法として知られるプロセスに従って行うことができる。得られる煙道ガスは、空気中に存在する窒素で希釈されず、CO及び水蒸気から本質的になる。水蒸気は容易に凝結することができ、その結果、高濃度のCO流(濃度は理想的な場合、100%に近い)が形成される。次いで、COを精製し、更に処理し、更には任意に圧縮し、貯蔵することができる。
【0101】
加えて、ポリカーボネート材料の熱分解又は焼却中に得られるエネルギーの一部を蒸気又は電気に変換してもよい。上述のように、得られる電気は、電気分解又はRWGSの加熱を行うために用いることができ、それにより電気エネルギーの消費が少ない、更により効率的な方法がもたらされる。
【0102】
燃焼ガスからのCOの精製は、従来技術から一般に知られている方法を用いて行うことができる。これを以下に例として説明する。
【0103】
ここでの最初の工程は、例えば主成分がCOである燃焼ガスの精製である。燃焼ガス精製の構成は、種々の段階に細分される。精製の特別な課題は、その後のRWGS反応に干渉二次成分を含まないCOを供給することである。
【0104】
最初の段階においては、燃焼ガスからダストを除去する。これは織布フィルター又は静電フィルターを用いて行うことができる。次いで、存在するあらゆる酸性ガス、例えば廃棄物中に存在する塩素化合物から形成される塩化水素を除去することができる。これは、例えばオフガススクラブ塔を用いて行われる。また、それにより燃焼ガスは冷却され、更なるダスト及び存在するあらゆる重金属が除かれる。加えて、形成された二酸化硫黄ガスもスクラブ回路において除去され、例えば消石灰と反応して、硫酸カルシウムが形成される。燃焼ガスからの窒素化合物の除去は、例えば触媒含有ゼオライト上で行うか、又は尿素若しくはアンモニアを添加して、窒素酸化物を再び窒素及び水に変換することによって行うことができる。触媒細孔を詰まらせるアンモニウム塩の形成を防ぐために、触媒を通常は320℃を超える温度で作用させる。窒素化合物を硝酸によるスクラビング又は触媒によるスクラビングによって除去することもできる。
【0105】
COの乾燥及び更なる精製は、既知の従来の方法、例えば濃硫酸での処理による乾燥によって達成することができる。
【0106】
最終精製段階においては、活性炭フィルターを使用して、燃焼ガス中に依然として存在する残留有機物及び最終金属残渣を全て活性炭によって除去する。これは例えば、燃焼ガス流又は煙道ガス流に計量添加された後、蓄積した汚染物質とともに再び織布フィルター上に堆積するダスト形態の活性炭を用いて行うことができる。使用済みの炭素は、排出され、エネルギー回収のために送られる(https://www.ava-augsburg.de/umwelt/rauchgasreinigung/に原理が記載されている)。
【0107】
燃焼ガスに対して行われる精製プロセスにより、RWGS反応の供給原料として使用され得るCOがもたらされる。
【0108】
より低濃度のCOを有するガス流においては、COを任意にアミンスクラビングによって分離することもできる。
【0109】
熱分解の場合、熱分解反応空間への付加的な酸素ガスの供給は好ましくない。使用済みのポリカーボネート材料廃棄物の熱分解は、好ましくは以下のように行うことができる:
ポリカーボネート材料の熱分解を高温にて、任意に触媒の存在下で行い、場合により二酸化炭素、場合により一酸化炭素、場合により水素、脂肪族及び芳香族の低分子量炭化水素と窒素含有炭化水素との混合物、並びにより高分子量の炭化水素化合物の残渣を得て、
任意に、得られた低分子量炭化水素の混合物を精製し、気体及び液体の炭化水素の混合物、並びに二酸化炭素と一酸化炭素、水素及び他の気体炭化水素化合物との混合物を得て、得られた混合物をガス分離において分離し、
得られた残渣及び任意に更なるポリカーボネート材料廃棄物を酸素含有ガス、特に純酸素を用いて焼却し、二酸化炭素含有ガスを得る。
【0110】
上記のように再循環させ、微粉砕したポリカーボネート材料廃棄物は、熱分解に供給してもよく、熱分解は、所望により触媒を用いて又は用いずに行うことができる。
【0111】
熱分解中に形成される画分は気体、液体及び固体であり、固相は通常、主に熱分解炭素からなる。トルエン、ベンゼン及びキシレン等の芳香族物質を含有する液体の長鎖炭素化合物は、精製プロセスに供給するのが好ましい。
【0112】
加えて、熱分解は任意に、特により多量の一酸化炭素及び場合により水素が生成するように行うことができる。これらのガスは、例えば精製工程において短鎖炭化水素化合物とともに分離することができ、又は別個に分離し、一酸化炭素-水素分離に供給し、使用することもできる。
【0113】
熱分解中に得られる固体物質は、主に炭素からなる。この固相を水電解からの純酸素と反応させることができる。これにより高濃度のCO流も生じ、これを精製工程に供給する。
【0114】
高純度のCOを生成する別の選択肢は、COをアルカリ溶液、例えば水酸化カリウム水溶液に吸収させることである。これにより炭酸水素カリウムが形成され、これを続いて再びCO及び水酸化カリウムへと熱分解することができる。熱分解又は焼却から生成された熱をここで使用することができる。
【0115】
精製COは精製COガス流として得られ、RWGS反応に供給される。
【0116】
RWGS反応の生成物ガス混合物を生成物ガス混合物中に存在する気体水の分離に供する。RWGS反応から引き出された生成物ガス混合物は、この目的で冷却するのが好ましい。これにより反応水が分離される。分離された水は、水電解又は塩素アルカリ電気分解に原料として再循環させることができる。水分離の後、ガスをCO分離に供給する。
【0117】
CO分離は、例えばアミンスクラビング工程によって行われ、COを除去し、CO及びHの残留ガスをH-COガス分離ユニットに供給する。次いで、得られるCOをホスゲン合成に供給し、ここでClと反応させてホスゲンを形成する。生じたホスゲンをポリカーボネート製造に送る。ポリカーボネート製造においては、ホスゲンを少なくとも1つのジオールと反応させて、ポリカーボネート化合物及び任意に塩化ナトリウムを得る。
【0118】
したがって、H-CO分離からの一酸化炭素及び/又は水素の少なくとも部分流がRWGS反応に供給される新規の方法の実施の形態が好ましい。
【0119】
新規の方法は、好ましくはポリカーボネート材料廃棄物の一部が熱分解の代わりに焼却に直接供給されるように行うことができる。
【0120】
アルカリ金属塩化物、特に塩化ナトリウムがポリカーボネート製造中に生成する場合、これを塩素アルカリ電気分解に送ることができる。好ましい実施の形態において、本発明による方法は、この目的で、ポリカーボネート製造において形成された塩化ナトリウム溶液を分離及び精製することと、続いて該塩化ナトリウムを水溶液中に存在する塩化ナトリウムの電気化学反応に供給し、塩素及び任意に水酸化ナトリウム溶液を得ることとを含む。ポリカーボネート製造において形成された塩化ナトリウム溶液の分離及び精製後に得られる塩化ナトリウムは、処理済み塩化ナトリウムとも称される。この好ましい工程において形成された塩素は、この場合、ホスゲン合成に供給するのが好ましい。形成された水酸化ナトリウム溶液は例えば、少なくともホスゲンと少なくとも1つのジオールとを反応させて、少なくとも1つのポリカーボネートを得る工程に送ることができる。上記電気化学反応の好適な例は特に、本発明による方法の文脈において既に行われた塩素アルカリ電気分解である。
【0121】
特に好ましい実施の形態の文脈において、上記電気化学反応は、再生可能エネルギーから生成された電気を用い、特に所望により風力、ソーラーパワー又は水力を用いて得られた電気を用いて行われる。
【0122】
本発明による方法の文脈において、塩素アルカリ電気分解は、塩素及び水素を供給するために行われる。
【0123】
塩素アルカリ電気分解プロセスを以下により詳細に説明する。上記の方法においては、例えば原則として任意のアルカリ金属塩化物を用いることができるが(特にLiCl、NaCl、KCl)、先の工程における塩化ナトリウム/水酸化ナトリウム溶液の使用が方法の好ましい実施の形態であるため、以下の説明は塩化ナトリウムの電気分解に関して例示的なものとみなされる。
【0124】
例えば、塩化ナトリウム含有溶液の電気分解には膜電解プロセスを用いるのが通例である。これには例えば、アノードを備えるアノード空間とカソードを備えるカソード空間とを少なくとも含む、2つに分けられる電解セルを用いる。アノード空間とカソード空間とは、イオン交換体膜によって隔てられている。通例300g/lを超える塩化ナトリウム濃度を有する塩化ナトリウム含有溶液をアノード空間に導入する。アノードでは、塩化物イオンが酸化され塩素になり、これが消耗された塩化ナトリウム含有溶液(約200g/l)とともにセルから排出される。ナトリウムイオンは、電場の影響下でイオン交換体膜を通ってカソード空間へと移動する。この移動の間に、ナトリウムは1モル当たり、膜によって3.5mol~4.5molの水を同伴する。その結果、アノード液の水が消耗される。アノード液とは対照的に、カソード側では水の電気分解によって水が消費され、水酸化物イオン及び水素が生じる。ナトリウムイオンとともにカソード液に移行する水は、流入濃度30%及び電流密度4kA/mで、流出液中の水酸化ナトリウム溶液濃度を31重量%~32重量%に維持するのに十分である。カソード空間においては、水が電気化学的に還元され、水酸化物イオン及び水素が形成する。
【0125】
塩化ナトリウム電気分解においては、塩化ナトリウム含有溶液を介してアノード液に付加的な水が導入されるが、水は単に膜を介してカソード液に排出される。カソード液に輸送され得るよりも多くの水を、塩化ナトリウム含有溶液を介して導入すると、アノード液の塩化ナトリウムが消耗され、電気分解を連続的に行うことができない。非常に低い塩化ナトリウム濃度では、酸素形成の副反応が起こる。
【0126】
最大量の塩化ナトリウム含有溶液を塩化ナトリウム電気分解に経済的に供給するためには、膜を介した水輸送を増加させるのが有利な場合がある。これは、米国特許第4025405号に記載されているように好適な膜の選択によって行うことができる。水輸送を高めることの効果は、水性水酸化物濃度を維持するための、そうでなければ通常の水添加が不要となり得ることである。
【0127】
米国特許第3773634号においては、31重量%~43重量%の水性水酸化物濃度及び120g/l~250g/lの塩化ナトリウム濃度を用いる場合、膜を介した水輸送を高くして電気分解を行うことができる。
【0128】
ポリカーボネート製造からの2つ以上の塩化ナトリウム含有溶液を使用する更なる選択肢は、この溶液を、例えば逆浸透圧蒸留等の膜プロセス又は熱濃縮によって濃縮することである。飽和限界を超えて蒸発を行う場合、塩化ナトリウム全体を再循環させることで、バリューサイクルを閉じることができる。
【0129】
塩素ガスの生成に関連して引用した上述の文献の内容を明示的かつ完全に参照する。
【0130】
特に好ましい実施の形態の文脈において、塩素アルカリ電気分解は、再生可能エネルギーから生成された電気を用い、特に所望により風力、ソーラーパワー又は水力を用いて得られた電気を用いて行われる。
【0131】
ポリカーボネートは様々な商業的用途に使用される。有用寿命の終了後、材料は再循環ユニットに供給され、ここでPC含有材料が分離される。次いで、分離された材料は、ポリカーボネート材料廃棄物として再供給され、熱分解及び/又は焼却の形で回収される。
【0132】
これによりポリカーボネート製造への更なる化石供給原料の必要性が排除され、より持続可能な方法でポリカーボネート材料を製造することが可能となる。
【0133】
本発明による方法は、好ましくは本発明の更なる対象としての本発明による装置を用いて実施することができ、この装置は本発明による方法の実行に適合されている。
【0134】
したがって、ポリカーボネートを製造するための好適な装置システムの好ましい実施の形態は、少なくとも以下の装置部材を以下の構成で備える:
アルカリ金属塩化物、特に塩化ナトリウムの水溶液の少なくとも1つの入口と、塩素の少なくとも1つの出口と、水素の少なくとも1つの出口とを備える、塩素アルカリ電気分解のための少なくとも1つの電気分解装置;
少なくとも1つのRWGS反応ゾーンと、該RWGS反応ゾーンに熱エネルギーを供給するための装置としての少なくとも1つの加熱要素と、該RWGS反応ゾーンにCO及び水素を導入するための少なくとも1つの入口と、RWGS反応器からの一酸化炭素含有生成物ガスの少なくとも1つの出口とを備えるが、但し、
(i)RWGS反応ゾーンに水素を導入するための少なくとも1つの入口が、塩素アルカリ電気分解のための少なくとも1つの電解槽の水素の少なくとも1つの出口と流体接続し、
(ii)RWGS反応ゾーンにCOを導入するための少なくとも1つの入口が、少なくとも、
a)COガス流を供給する工程、
b)COガス流を任意に吸着、ガススクラビング又は触媒処理によって二次成分(特に窒素酸化物、硫黄化合物、リン化合物、ダスト、水、酸素及びHCl)から精製する工程、
によって生成された精製COガス流の少なくとも1つの供給源と流体接続し、
(iii)RWGS反応器からの一酸化炭素含有生成物ガスの少なくとも1つの出口が、水分離と流体接続する、
少なくとも1つのRWGS反応器;
改質装置からの一酸化炭素含有生成物ガスの出口と流体接続する少なくとも1つの入口と、分離水の少なくとも1つの出口と、乾燥一酸化炭素含有生成物ガスの少なくとも1つの出口とを備える、水を分離するための少なくとも1つの装置;
水を分離するための装置からの乾燥一酸化炭素含有生成物ガスの出口と流体接続する少なくとも1つの入口と、RWGS反応器のCOの入口と流体接続する分離COの少なくとも1つの出口と、予め精製された一酸化炭素含有生成物ガスの少なくとも1つの出口とを備える、COを分離するための少なくとも1つの装置;
COを分離するための装置からの予め精製された一酸化炭素含有生成物ガスの出口と流体接続する少なくとも1つの入口と、一酸化炭素の少なくとも1つの出口と、H-CO分離からの残留ガスの少なくとも1つの出口とを備える、H-COを分離するための少なくとも1つの装置;
一酸化炭素のために設けられたH-COを分離するための装置の出口と流体接続する一酸化炭素の少なくとも1つの入口を備え、ホスゲンの少なくとも1つの出口及び塩素の少なくとも1つの入口を備える、ホスゲンを生成するための少なくとも1つの装置であって、塩素の少なくとも1つの入口が、上記電解槽の塩素の少なくとも1つの出口と流体接続する、装置;
ジオールの少なくとも1つの入口と、ポリカーボネートの少なくとも1つの出口と、ホスゲンを生成するための装置のホスゲンの少なくとも1つの出口と流体接続するホスゲンの少なくとも1つの入口とを備える、ポリカーボネートを製造するための少なくとも1つの装置。
【0135】
本発明によると、「流体接続」は、装置システムの装置を互いに接続し、それによって任意の物理的状態の物質が物質流、例えば更なる装置によって中断されていてもよいパイプの形態の供給導管によって装置システムの或る装置から別の装置へと輸送され得る装置部材を意味すると理解される。
【0136】
上記の方法と同様に、装置システムの好ましい実施の形態の文脈において、H-CO分離用の装置の残留ガスの出口が、RWGS反応器の水素の少なくとも1つの入口と流体接続していることも好ましい。H-CO分離用の装置の残留ガスからの水素ガスを合成目的で利用するためには、H-CO分離用の装置の残留ガスの出口が残留ガス処理用の装置の入口と流体接続することが好ましく、該残留ガス処理用の装置は、水素ガスの少なくとも1つの出口と、残留ガス処理の残留ガスの少なくとも1つの出口を有する。この場合、残留ガス処理用の装置の残留ガスの出口がRWGS反応器の加熱要素、特に加熱要素の燃焼室と流体接続することが好ましい。
【0137】
ポリカーボネートの合成については、装置システムの好ましい実施の形態の文脈において、ポリカーボネートを製造する装置のポリカーボネートの少なくとも1つの出口が配合用の装置の少なくとも1つの入口と流体接続することが有利である。配合用の装置が、ポリカーボネートの少なくとも1つの入口だけでなく、染料の少なくとも1つの入口、ブレンドパートナーとしてのポリマーの少なくとも1つの入口及びポリカーボネート材料の少なくとも1つの出口を備えることが特に好ましい。本発明による好適なポリマー(ブレンドパートナー)は、上述の衝撃改質剤の少なくとも1つを含むのが好ましい。
【0138】
精製COガス流の供給源は、RWGS反応器の好ましい実施の形態の文脈において、
二酸化炭素含有生成物ガスの少なくとも1つの出口を備える、COを生成する少なくとも1つの反応器と、
(i)COを生成する反応器の二酸化炭素含有生成物ガスの少なくとも1つの出口と流体接続する、二酸化炭素含有生成物ガスの少なくとも1つの入口、及び(ii)RWGS反応器の精製COガス流の少なくとも1つの入口と流体接続する、精製COガス流の少なくとも1つの出口を備える、少なくとも1つの精製装置と、
を備えるCO供給装置である。
【0139】
より好ましい実施の形態において、COを生成する反応器は、ポリカーボネート材料廃棄物の導入用の少なくとも1つの入口及び酸素含有ガスの導入用の少なくとも1つの入口を有する。この場合、装置システムは、酸素ガスの出口が、COを生成する反応器の酸素含有ガスの導入用の少なくとも1つの入口と流体接続する、水電解用の少なくとも1つの電解槽を付加的に備えることが好ましい。
【0140】
本発明は、少なくとも、
水溶液中のアルカリ金属塩化物、好ましくは塩化ナトリウムの塩素アルカリ電気分解によって少なくとも塩素及び水素を生成する工程、
供給された一酸化炭素をホスゲン合成に導入する工程、
先に形成された塩素をホスゲン合成に供給する工程、
一酸化炭素及び塩素からホスゲンを合成する工程、
少なくともホスゲンと少なくとも1つのジオールとを反応させて、少なくとも1つのポリカーボネートを得る工程、
によってポリカーボネートを製造するための、少なくとも、
COガス流を供給する工程、
COガス流を任意に吸着、ガススクラビング又は触媒処理によって二次成分(特に窒素酸化物、硫黄化合物、ダスト、水、酸素及びHCl)から精製して、精製二酸化炭素のガス流を得る工程、
を含む方法によって生成した精製COガス流を供給する工程と、
水素を精製COガス流とともにRWGS反応ゾーンに導入し、RWGSの原理に従って反応物を反応させて、未変換の反応物だけでなく、蒸気、CO及び任意に副生成物、特に低級炭化水素、特に好ましくはメタンも含有する生成物ガス混合物を得る工程と、
生成物ガス混合物から蒸気の水を分離する工程と、
分離から得られたRWGS反応のガス混合物から、特にアミンスクラビングによって、未反応の二酸化炭素を分離し、該未反応の二酸化炭素をRWGS反応に再循環させる工程と、
分離後に得られた一酸化炭素及び水素のガス混合物から、特にコールドボックスを使用して、RWGS反応において未変換の水素を分離し、分離された水素を該RWGS反応に再循環させる工程と、
を含む方法によって得られる供給一酸化炭素の使用を更に提供する。
【0141】
本発明の方法の主題について先に説明した好ましい実施の形態は、本発明の使用の主題及びそれに含まれる特徴についても変更すべき点を変更して同様に適用される。
【0142】
本発明を、例として図面を参照して以下でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0143】
図1】RWGS反応、塩素生成、PC生成、使用、及びRWGS反応用のCOを得るための、そこからのポリカーボネート材料廃棄物の回収を含む方法全体の概略図である。
図2】RWGS反応、PC生成を含む塩素アルカリ電気分解、ポリカーボネート材料の使用、及びRWGS反応用のCOを得るための、そこからのポリカーボネート材料廃棄物の回収を含む実施例1に記載の方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0144】
図1は、ポリカーボネートを製造する方法であって、少なくとも、
水溶液中のアルカリ金属塩化物、好ましくは塩化ナトリウムの塩素アルカリ電気分解14によって少なくとも塩素22及び水素29bを生成する工程と、
少なくとも、
COガス流31を供給する工程、
COガス流31を任意に吸着、ガススクラビング又は触媒処理によって二次成分(特に窒素酸化物、硫黄化合物、ダスト、水、酸素及びHCl)から精製して(4)、精製二酸化炭素のガス流33を得る工程、
を含む方法によって生成した精製COガス流33を供給する工程と、
水素29aを精製COガス流33とともにRWGS反応ゾーンに導入し、RWGSの原理に従って反応物を反応させて(6)、未変換の反応物だけでなく、蒸気26b、CO 21及び任意に副生成物32、特に低級炭化水素、特に好ましくはメタンも含有する生成物ガス混合物39を得る工程と、
生成物ガス混合物39から蒸気26bの水を分離する工程7と、
分離7から得られたRWGS反応6のガス混合物39aから、特にアミンスクラビングによって、未変換の二酸化炭素31bを分離し(8)、該未変換の二酸化炭素31bをRWGS反応6に再循環させる工程と、
分離8後に得られた一酸化炭素及び水素のガス混合物39bから、特にコールドボックスを使用して、RWGS反応6において未変換の水素を分離し(9)、分離された水素29cを該RWGS反応6に再循環させる工程と、
分離9からの残りの一酸化炭素21をホスゲン合成1に導入する工程と、
先に形成された塩素22をホスゲン合成1に供給する工程と、
一酸化炭素21及び塩素22からホスゲン20を合成する工程1と、
少なくともホスゲン20と少なくとも1つのジオール23とを反応させて(2)、少なくとも1つのポリカーボネート24を得る工程と、
を含む、方法を示す。
【0145】
図1の方法によると、RWGS合成6が、焼却10b及び/又は熱分解10aによるポリカーボネート材料廃棄物38の回収10から二酸化炭素31aとして供給され、精製4において精製される精製二酸化炭素33を用いることが好ましい。
【0146】
この場合、図1の方法によると、回収10として、少なくとも30体積%の酸素ガス含有量(O)を有するガスを用いる焼却10bが、特に水電解5から得られる酸素ガス27aを用いて行われ得ることが好ましい。好ましい実施形態において、水電解5は再生可能エネルギー、特に風力、ソーラーパワー又は水力の形態の再生可能エネルギーから生成された電気28aを用いて行われる。エネルギー及び蒸気の生成13のための熱エネルギー19は、回収10及びRWGS反応6から流用することができ、水電解5は、エネルギー生成13において生成した電気15を用いて付加的に行うことができる。
【0147】
図1によれば、RWGS反応6に、再生可能エネルギーから生成された電気28、特に所望により風力、ソーラーパワー又は水力を用いて得られた電気によって生成された熱エネルギーを供給する。RWGS反応6の加熱を、再生可能資源からの炭化水素の燃焼、特にバイオメタンの燃焼によって更に達成する。
【0148】
図1に示す方法によると、COガス流31の好ましい供給は、好ましくはポリカーボネート材料37をその使用80後に用いて、ポリカーボネート材料37を含む使用済み製品を得ることと、続いて使用済み製品の再循環90から得られるポリカーボネート材料廃棄物38を再循環させることと、該材料を焼却して二酸化炭素31cを得ることとを含み、二酸化炭素31cは、投入材料31として精製4に送られる(クローズドループ再循環)。図10によると、本発明による方法によって製造されていないポリカーボネート材料37から得られるポリカーボネート材料廃棄物38を回収10に用いることも同様に可能である。
【0149】
さらに、図1に示す方法において、少なくともホスゲン20と少なくとも1つのジオール23との反応2において、少なくとも1つのポリカーボネートだけでなく、アルカリ金属塩化物の溶液25も形成され、該溶液を分離及び精製11に供し、水溶液中に存在する分離及び精製されたアルカリ金属塩化物25aを塩素アルカリ電気分解14に供給することが好ましい。
【0150】
図1の方法において、塩素アルカリ電気分解14を、再生可能エネルギーから生成された電気28a、特に所望により風力、ソーラーパワー又は水力を用いて得られた電気28aを用いて行うことが好ましい。
【0151】
図1はまた、少なくとも1つのポリカーボネート24を得るための少なくともホスゲン20と少なくとも1つのジオール23との反応2に、塩素アルカリ電気分解14から得られるアルカリ金属水酸化物溶液30を付加的に供給する方法の実施形態を示す。
【0152】
図1の方法によると、反応2から得られるポリカーボネート24は、好ましくは配合3において、着色剤又は更なる添加剤35a及びブレンドパートナーとしての少なくとも1つの更なるポリマー35b(例えばポリスチレンコポリマー)の添加により、ポリカーボネート材料37に変換することができる。
【0153】
図1において、以下の参照符号を以下のように右側に定義する:
1 ホスゲン合成
2 ポリカーボネート製造
3 ポリカーボネート材料37の製造のための配合
4 COガス精製
5 水電解
6 RWGS反応(逆水性ガスシフト反応)
7 水分離
8 CO分離
9 H-CO分離
10 熱分解10a及び/又は焼却10bによるポリカーボネート材料廃棄物38の回収
10a 熱分解
10b 焼却
11 廃水25からのNaClの後処理
13 エネルギー及び蒸気の生成
14 Cl及びH、並びに好ましくはアルカリ金属水酸化物溶液を生成する塩素アルカリ電気分解
15 エネルギー/蒸気13からの電気
19 熱
20 ホスゲン合成1からのホスゲン
21 H-CO分離9から分離された一酸化炭素
22 塩素ガス
23 ジオール(例えばビスフェノールA)
24 ポリカーボネート
25 アルカリ金属塩化物含有廃水、特にNaCl含有廃水
25a 後処理されたアルカリ金属塩化物含有廃水、特に後処理された塩化ナトリウム含有廃水
26 水
26a RWGS反応の生成物ガス混合物39から分離された水
27 水電解からの酸素
27a 他の用途のための水電解からの酸素
28 加熱のためだけのバイオ天然ガス及び/又は再生可能エネルギー
28a 再生可能エネルギーからの電気
29 水電解からの水素
29a RWGS反応のための水素
29b 塩素アルカリ電気分解14からの水素
29c H-CO分離から分離された水素
30 アルカリ金属水酸化物、好ましくは水酸化ナトリウムの水溶液
31 COガス精製4に供給するためのCO
31a 再生可能資源からのCO
31b CO分離からの未変換のCO
31c 10からのCO
32 RWGS反応から分離された副生成物
33 精製CO
35a 着色剤又は他の添加剤
35b ブレンドパートナーとしてのポリマー(例えばポリスチレンコポリマー)
37 ポリカーボネート材料
38 10のためのポリカーボネート材料含有廃棄物(ポリカーボネート材料廃棄物)
39 一酸化炭素、水、CO、水素及び副生成物からなるRWGS反応からの生成物ガス混合物
39a 水の含有量が減少した39
39b COの含有量が減少した39a
80 37の商業的使用
90 ポリカーボネート系材料-使用済み再循環
【0154】
図中の矢印は、方法工程間の/対応する方法工程が行われる装置部材間にこの目的で設けられる流体接続を介した物質、エネルギー又は熱の流れを表す。図中の破線は、方法の個々の上記の特徴の好ましい実施形態の一部を示す。黒丸は物質の流れの分岐点を表す。
【0155】
図2に使用する参照符号の割当ては、図1について定義したとおりである。
【実施例
【0156】
実施例1
低排出ポリカーボネートの本発明による製造、RWGSを用いたCO生成、バイオ天然ガスを用いて行われるその加熱、NaClの再循環及び塩素アルカリ電気分解における使用
17.84t/hのCO及び0.81t/hのHを、802℃の温度で行われるRWGS反応空間6に導入する。CO、HO、未変換のCO、更には未変換のH及び副生成物、主に少量のメタンからなる、得られた生成物ガス混合物39をRWGS反応から引き出し、水分離7に送り、そこで7.29t/hの水26bを分離する。この水26bは、少なくとも部分的に塩素アルカリ電気分解に戻すことができる。合計0.81t/hの水素29bが塩素アルカリ電気分解14から除去される。HO分離7からの残りのガス混合物39aをCO分離8に送る。CO分離はアミンスクラビングによって達成され、分離されたCO 31bをRWGS反応に再循環させる。形成されたCO-アミン複合体からのCO分離のためのエネルギーは、RWGS反応ガス39が冷却される水分離7から得られる。COが除かれたガス39bをH-CO分離9に送る。H-CO分離のために、いわゆるコールドボックスを用い、その中でH-COガス混合物を冷却し、水素及びCOを分離する。分離された水素29cをRWGS反応6に戻す。11.35t/hのCOがH-CO分離9からホスゲン合成1に供給される。COは、塩素アルカリ電気分解14によるCl生成から取り出した28.8t/hの塩素と反応した。40.15t/hのホスゲンがホスゲン合成1から引き出され、これをポリカーボネート製造2において塩素化溶媒(例えば435t/hの塩化メチレン及びクロロベンゼンの1:1混合物)中の溶液として、ジオール23としてのアルカリ水(755.7kmolのNaOHに相当するビスフェノールA 1mol当たり2.13molのNaOHを含む=32重量%水酸化ナトリウム溶液としての30.2t/hのNaOH及び64.17tのHO)中の540t/hの15重量%ビスフェノールA溶液(354.8kmolに相当する81t/hのBPA)と、少なくとも1つの連鎖停止剤(例えば2.3t/hのtert-ブチルフェノール)、29t/hの更なる22重量%NaOH溶液(32%水酸化ナトリウム溶液としての6.38t/hのNaOH及び17.84t/hのHO)及び少なくとも1つの触媒(例えば0.45t/hのN-エチルピペリジン)を用いて反応させ、92.72t/hのポリカーボネート24が得られる。32.45t/hのNaOHと68.95t/hの水とが、塩素アルカリ電気分解14から32重量%水酸化ナトリウム溶液30として得られる。更に4.13t/hの量のNaOHと17.84t/hのHOとが外部源から得られ、供給される。
【0157】
814.76t/hの水をポリカーボネート合成2に供給し、洗浄水として用いる。
【0158】
得られるNaCl含有廃水25は、47.45t/hの量のNaCl及び901.55t/hの量の水を含み、NaCl含有廃水として得られる。0.77t/hの量のNaCl及び14.6t/hの量の水を含むその部分流を、同伴ガスを用いたストリッピングプラントによる精製及び活性炭精製の後、塩素アルカリ電気分解14によるCl生成に供給する。これにより電気分解の水需要を賄うことで、水を塩素アルカリ電気分解に添加する必要がなくなる。これにより水資源が節約される。得られたポリカーボネート24は、ポリカーボネート材料37の調製に使用される。
【0159】
ポリカーボネート材料の様々な商業的用途への使用80の後、該材料を回収し、再循環させて(90)、得られたポリカーボネート材料廃棄物38を焼却10bに供給することができる。焼却は、好ましくは水電解5からの酸素27を用いて行われ、これにより高濃度のCOオフガス流31が形成される。このCO流31をCO精製4に供給し、そこで焼却によって生じる水を除去し、窒素酸化物及び硫黄酸化物を分離する。17.84t/hのCOが続いて得られ、RWGS 6に供給される。
【0160】
RWGS反応は802℃で行われ、反応温度を維持するためにバイオ天然ガス28を導入し、燃焼させる。
【0161】
本発明による方法により、PC中に存在する炭素の6.25%を非化石炭素源から代替することが可能となる。塩素アルカリ電気分解における再生可能エネルギーの使用は、CO及びClから生成するホスゲンのCOフットプリントを更に削減し、これによりPCの持続可能な製造が可能となる。
図1
図2
【国際調査報告】