(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-12
(54)【発明の名称】走査プローブ顕微鏡システム、光学顕微鏡、校正構造体、および走査プローブ顕微鏡デバイスにおける校正の方法
(51)【国際特許分類】
G01Q 30/02 20100101AFI20240405BHJP
G02B 21/26 20060101ALI20240405BHJP
G02B 21/36 20060101ALI20240405BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20240405BHJP
G02B 7/28 20210101ALI20240405BHJP
G01Q 10/04 20100101ALI20240405BHJP
【FI】
G01Q30/02
G02B21/26
G02B21/36
G03B15/00 H
G03B15/00 T
G02B7/28 J
G01Q10/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566684
(86)(22)【出願日】2022-04-28
(85)【翻訳文提出日】2023-12-25
(86)【国際出願番号】 NL2022050228
(87)【国際公開番号】W WO2022231426
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522390087
【氏名又は名称】ニアフィールド・インストゥルメンツ・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】タラス・ピスクノフ
(72)【発明者】
【氏名】ハメド・サデギアン・マルナニ
(72)【発明者】
【氏名】エーリク・タバク
【テーマコード(参考)】
2H052
2H151
【Fターム(参考)】
2H052AD09
2H052AF11
2H052AF14
2H151AA11
(57)【要約】
本文書は、走査プローブ顕微鏡システム、光学顕微鏡における校正の方法に関する。光学顕微鏡は、基板の表面上にプローブ先端を位置決めするため、参照データを提供するように構成される。校正は、Z軸に対して異なるZレベルの特徴部を含む空間構造体である校正構造体を使用して実施され、Z軸は基板の表面に垂直である。方法は、光学顕微鏡を用いて、校正構造体の少なくとも一部の少なくとも2つの画像を得るステップを含む。少なくとも2つの画像が、Zレベルのうちの少なくとも2つの異なるレベルで合焦される。方法は、少なくとも2つの異なるレベルで合焦される少なくとも2つの画像に描かれるように、Z軸に垂直な方向で、校正構造体の横方向のずれを決定するステップをさらに含む。本発明は、校正構造体、基板キャリア、および走査プローブ顕微鏡デバイスにさらに向けられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査プローブ顕微鏡システムにおいて、基板の表面上のプローブ先端を位置決めするための参照データを提供するように構成される光学顕微鏡を校正する方法であって、前記校正が、Z軸に対して異なるZレベルの特徴部を含む空間構造体である校正構造体を使用して実施され、前記Z軸が前記基板の前記表面に垂直であり、
前記光学顕微鏡を用いて、前記校正構造体の少なくとも一部の少なくとも2つの画像を得るステップであって、前記少なくとも2つの画像が前記Zレベルのうちの少なくとも2つの異なるレベルで合焦される、ステップと、
前記少なくとも2つの異なるレベルで合焦される前記少なくとも2つの画像に描かれるように、前記Z軸に垂直な方向で、前記校正構造体の横方向のずれを決定するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
少なくとも2つの画像を得る前記ステップが、ある範囲のZレベルにわたる前記光学顕微鏡の再合焦中に前記校正構造体の一連の画像を得ることによって実施され、横方向のずれを決定する前記ステップが、前記一連の画像にわたる前記校正構造体の動きを検出することによって実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも2つの画像を得る前記ステップが、
第1のレベルで1つまたは複数の第1の特徴部の第1の画像を得るように、前記Zレベルの前記第1のレベル上で前記光学顕微鏡を合焦し、前記第1の画像から、前記第1の特徴部のうちの少なくとも1つの場所に基づいて第1の参照位置を得るステップと、
第2のレベルで1つまたは複数の第2の特徴部の第2の画像を得るように、前記Zレベルの前記第2のレベル上で前記光学顕微鏡を合焦し、前記第2の画像から、前記第2の特徴部のうちの少なくとも1つの場所に基づいて第2の参照位置を得るステップと
を含み、
前記横方向のずれを決定する前記ステップが、前記横方向のずれを示す偏差を決定するために、前記第1の参照位置を前記第2の参照位置と比較するステップを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記偏差を決定するステップが、前記第1および第2の参照位置から、前記横方向のずれの距離および方向を表す偏差データを決定するステップを含み、前記方法は、前記偏差データを前記第2のレベルに関連付けられた校正データとして記憶するステップをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記校正構造体が、同心のリング、正方形、三角形、または多角形などといった、異なるレベルにおける複数の同心構造体を備え、前記第1および第2の参照位置を決定するステップが、それぞれの前記第1または第2のレベルで、前記構造体の図心を決定するステップを含む、請求項3または4のいずれか一項または両方に記載の方法。
【請求項6】
前記横方向のずれを決定する前記ステップが、
データリポジトリ中の校正構造体データから、前記第1および第2の画像から得られた前記第1および第2の参照位置の対応する実際の位置を決定するステップと、
前記対応する実際の位置から、前記第1の参照位置の前記実際の位置と前記第2の参照位置の前記実際の位置との間の、実際の差異ベクトルデータを決定するステップと、
前記第1および第2の画像から得られたような前記第1および第2の参照位置から、前記第1の参照位置と前記第2の参照位置との間の撮像された差異ベクトルデータを決定するステップと、
前記実際の差異ベクトルデータを前記撮像された差異ベクトルデータと比較して前記横方向のずれを示す前記偏差を決定するステップと
をさらに含む、請求項3から5のいずれか一項または複数に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも2つの画像を得る前記ステップが、複数の異なるレベル上で前記光学顕微鏡を合焦し、各レベルで、前記それぞれのレベルにおける少なくとも1つの特徴部の場所に基づいて参照位置を得るステップを含み、
前記横方向のずれを決定する前記ステップが、
前記参照位置から、各それぞれのレベルについて、そのそれぞれのレベルにおける関連する横方向のずれを示す偏差データを計算するステップと、
各レベルと関連する前記偏差データを校正データとして前記走査プローブ顕微鏡システムがアクセス可能なデータリポジトリ中に記憶するステップと
を含む、請求項1から6のいずれか一項または複数に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも2つの画像を得るために、前記光学顕微鏡が合焦対物レンズと協働するカメラを備え、前記カメラおよび前記合焦対物レンズが、前記カメラによる視野を得るように設定され、前記視野が前記校正構造体の最も外側の周辺の少なくとも一部を含む、請求項1から7のいずれか一項または複数に記載の方法。
【請求項9】
前記校正構造体が、異なるZレベルに特徴部を設ける1つまたは複数の構造的特徴部を備え、前記構造的特徴部が前記それぞれのZレベルで前記構造的特徴部の高い面を支持するための1つまたは複数の側壁を含み、前記側壁のうちの少なくとも1つが、前記光学顕微鏡の視野から隠されるように、前記それぞれの高い面に対して横方向に引っ込む部分を含む、請求項1から8のいずれか一項または複数に記載の方法。
【請求項10】
前記校正構造体が、異なるZレベルに前記特徴部を設ける1つまたは複数の構造的特徴部を備え、前記構造的特徴部が前記それぞれのZレベルで1つまたは複数の高い面を含み、前記高い面が前記高い面の周辺を規定する縁部を含み、前記縁部のうちの少なくとも1つがコントラスト強調色を備える、請求項1から9のいずれか一項または複数に記載の方法。
【請求項11】
走査プローブ顕微鏡デバイスで使用するための基板キャリアであって、前記基板キャリアが、前記走査プローブ顕微鏡デバイスで試験される基板を支持するためのキャリア面を備え、前記基板キャリアが、走査プローブ顕微鏡システムの光学顕微鏡と協働するため、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法で使用する校正構造体を備え、前記校正構造体が、
前記光学顕微鏡を用いて、前記校正構造体の少なくとも一部の少なくとも2つの画像を得るステップであって、前記少なくとも2つの画像が前記Zレベルのうちの少なくとも2つの異なるレベルで合焦される、ステップと、
前記少なくとも2つの異なるレベルで合焦される前記少なくとも2つの画像に描かれるように、前記Z軸に垂直な方向で、前記校正構造体の横方向のずれを決定するステップと
を可能にするため、Z軸に対する異なるZレベルに構造的特徴部を含む空間構造体である、基板キャリア。
【請求項12】
試験される基板を支持するための基板キャリアを備える走査プローブ顕微鏡デバイスであって、前記走査プローブ顕微鏡デバイスが、カンチレバーおよびプローブ先端を備えるプローブを含むプローブヘッドを備え、前記プローブヘッドが、走査中に前記プローブ先端のたわみを監視するための光ビーム検出器装置をさらに含み、前記走査プローブ顕微鏡デバイスが、前記基板の表面上の所望の測定場所に、前記プローブ先端の位置決めを可能にするための参照データを提供するように構成される光学顕微鏡をさらに備え、前記光学顕微鏡が、Z軸に関して所望のZレベルで前記顕微鏡を用いて得られた画像を合焦するための合焦対物レンズを備え、前記Z軸が前記基板の前記表面に垂直であり、
前記基板キャリアが、前記光学顕微鏡を校正するために、走査プローブ顕微鏡システムの光学顕微鏡と協働するため、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法で使用する校正構造体を備え、前記校正構造体が、
前記光学顕微鏡を用いて、前記校正構造体の少なくとも一部の少なくとも2つの画像を得るステップであって、前記少なくとも2つの画像が前記Zレベルのうちの少なくとも2つの異なるレベルで合焦される、ステップと、
前記少なくとも2つの異なるレベルで合焦される前記少なくとも2つの画像に描かれるように、前記Z軸に垂直な方向で、前記校正構造体の横方向のずれを決定するステップと
を可能にするため、Z軸に対する異なるZレベルに構造的特徴部を含む空間構造体である、走査プローブ顕微鏡デバイス。
【請求項13】
前記光学顕微鏡を合焦するため、前記合焦対物レンズが、前記合焦対物レンズを光軸に沿って動かすための高精度アクチュエータと協働し、前記走査プローブ顕微鏡デバイスが、前記合焦を実施するための前記高精度アクチュエータを制御するためコントローラをさらに備え、前記コントローラが、前記光学顕微鏡を使用して得られた画像を受け取るためのカメラと協働し、コントローラが
前記光学顕微鏡を用いて、前記校正構造体の少なくとも一部の少なくとも2つの画像を得るステップであって、前記少なくとも2つの画像が前記Zレベルのうちの少なくとも2つの異なるレベルで合焦される、ステップと、
前記少なくとも2つの異なるレベルで合焦される前記少なくとも2つの画像に描かれるように、前記Z軸に垂直な方向で、前記校正構造体の横方向のずれを決定するステップと
を実施するように構成される、請求項12に記載の走査プローブ顕微鏡デバイス。
【請求項14】
前記コントローラが、
複数の異なるレベル上で前記光学顕微鏡を合焦し、各レベルで、前記それぞれのレベルにおける少なくとも1つの特徴部の場所に基づいて参照位置を得るステップ
を行うようにさらに構成され、
前記横方向のずれを決定するために、前記コントローラが、
前記参照位置から、各それぞれのレベルについて、そのそれぞれのレベルにおける関連する横方向のずれを示す偏差データを計算するステップと、
各レベルと関連する前記偏差データを校正データとして前記走査プローブ顕微鏡システムがアクセス可能なデータリポジトリ中に記憶するステップと
を行うように構成される、請求項13に記載の走査プローブ顕微鏡デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査プローブ顕微鏡システム、光学顕微鏡における校正の方法に向けられる。本発明は、校正構造体、基板キャリア、および走査プローブ顕微鏡デバイスにさらに向けられる。
【背景技術】
【0002】
走査プローブ顕微鏡法(SPM)は、表面に非常に小さい部分の高精度画像を得ることを可能にする。画像は、表面層または表面の下の異なる深さの層であってよい、複数の層を可視化する表面トポグラフィー画像、または表面下トポグラフィー画像、またはそれらの組合せでさえあってよい。本技術によって、0.001から100マイクロメートル(μm)の程度の典型的な断面を有する表面区域を撮像することが可能になる。このスケールと精度のために、本技術は、ウェハ検査を可能にするため、すなわち、半導体素子の製造中に、半導体素子の製造プロセスを監視するための好適な候補である。
【0003】
典型的なウェハのサイズに関して画像のスケールを仮定すれば、走査を実施するためにウェハの表面上の所望の位置にSPMのプローブ先端を正確に位置決めするのを可能にする、高精度位置決めシステムを有することが必須である。産業用途では、たとえば半導体製造プロセス中に、高レベルの精度が要求されることに加えて、最高歩留まりの製造プロセスがさらなる要件となる。したがって、理想的には、走査を開始して位置決めプロセスによってもたらされる遅延を最小化するために、できるだけ速く所望の場所にプローブ先端を正確に配置する。
【0004】
基板の表面上にプローブ先端を位置決めするための様々な技法が利用可能である。いくつかのこれらの技法は、そのために位置決めプロセスに寄与するため光学顕微鏡を使用する。位置決めとは別に、光学顕微鏡または光学系を必要とするセンサを、様々な理由で走査中に適用する場合もある。典型的には、SPMシステムは、システム中すなわち基板キャリアに対してプローブ先端の場所を非常に正確に知るため、格子プレートなどの、内部位置決め基準を備える。ウェハの場所における位置決めを可能にするため、光学顕微鏡を適用して、システム中のプローブ先端の位置を、ウェハ表面上の正確な場所に関係づけることができる。明らかに、顕微鏡画像から得られた任意の情報は、最大拡大係数と関連がある典型的なスケールで所望の場所に正確に配置することを可能にするために十分正確であることが要求される。このために、機器の正確な校正がしたがって非常に重要である。これは、所望の精度の観点では難しいプロセスである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特に、ウェハの表面上のXY位置の決定における不正確さを減らすことが可能になる、走査プローブ顕微鏡システムの光学顕微鏡のための正確な校正方法を提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため、走査プローブ顕微鏡システムにおいて、基板の表面上のプローブ先端を位置決めするための参照データを提供するように構成される光学顕微鏡を校正する方法がここで提供される。ここで、校正は、Z軸に関して異なるZレベルの特徴部を含む空間構造体である校正構造体を使用して実施され、Z軸は基板の表面に垂直である。ここで、方法は、光学顕微鏡を用いて、校正構造体の少なくとも一部の少なくとも2つの画像を得るステップであって、少なくとも2つの画像がZレベルのうちの少なくとも2つの異なるレベルで合焦される、ステップと、少なくとも2つの異なるレベルで合焦される少なくとも2つの画像に描かれるように、Z軸に垂直な方向で、校正構造体の横方向のずれを決定するステップとを含む。
【0007】
光学顕微鏡の対象の幾何学的スケール(数十マイクロメートル)では、基板(ウェハなど)は平面からかけ離れている。結果として、SPMシステム中で基板表面上のプローブ先端を正しく位置決めするために特に使用される光学顕微鏡は、基板表面の局所的な高さに依存して頻繁に再合焦しなければならない。合焦のため、顕微鏡中の合焦対物レンズは、顕微鏡の光軸に沿って正確に動かなくてはならない。典型的には、光軸に沿って合焦対物レンズを動かすために、高精度アクチュエータ素子が適用される。しかし、その正確さにかかわらず、光軸に沿ったその経路沿いに、高精度アクチュエータは、典型的には、光軸からいくらかの横方向変位をもたらす。そのような横方向変位は、たとえば撮像スクリーン上の画像のずれに起因して、ウェハ上で決定されたXY位置に不確実性をもたらすことになる。本発明の方法は、合焦のため異なるZレベルでこの横方向のずれの測定を可能にするためにマルチレベル校正構造体を適用する。レンズシステムにおいて、合焦は、レンズを撮像スクリーン(たとえば、カメラのCCDセル)に対して光軸の方向に動かすことによって達成される。典型的には、所望の精度を達成するため、この目的のためのレンズの運動は、アクチュエータによって達成される。達成可能な精度の量が限られるために、この動きは、ある程度の横方向変位なしには達成することができない。こうして、合焦に依存する画像中の横方向のずれが、ある程度生じることになる。
【0008】
本方法によれば、校正構造体またはその一部の少なくとも2つの画像が光学顕微鏡で得られる。これらの画像は、マルチレベル校正構造体の、Zレベルのうちの少なくとも2つの異なるレベルで合焦される。たとえば、異なるZレベルに配置された縁部を有する異なる特徴部または他の光学的に見ることができる要素上で合焦することによって異なる画像が得られ、ここで合焦対物レンズは高精度アクチュエータ素子で異なって合焦される。これらの画像から、少なくとも2つの異なるレベルで合焦された画像に描かれるような、Z軸に垂直な方向における校正構造体の横方向のずれが決定される。この横方向のずれは、SPMシステムが、異なる合焦レベルに関係する校正データとして使用することができる。それによって本発明は、光学素子の再合焦によって引き起こされる横方向変位について補正されるべき、光学顕微鏡で得られた画像を補正することが可能である。得られた画像にそのような横方向変位またはずれをもたらす可能性がある様々な発生源が存在する場合がある。これらの原因のうちの1つは、異なる合焦距離間で対物レンズを動かすため使用される高精度アクチュエータである。この再合焦のために、対物レンズはそれを通る光路に沿った方向に正確に並進することができるが、アクチュエータでの小さい不完全さによって、対物レンズの小さいオフアクシスのずれがもたらされ、これがカメラまたは光学センサのスクリーン上に形成される画像を変位させる。しかし、走査プローブ顕微鏡(SPM)に対し、そのような変位によって、試料の表面上の場所の決定において不正確さが加わる。わかるように、数十ナノメートルの程度である、SPMシステムの所望の精度を達成するために、可能な場合、不正確さの任意の発生源が取り除かれるべきである。とりわけSPMシステム中の光学顕微鏡は、基準マーカまたはある種の特徴部の正確な位置決めの決定などといった、システムの粗い位置決めおよび校正の役割を演じている。とりわけプローブ先端の位置決めでは、できるだけ正確な決定が誤差を防止する。
【0009】
いくつかの実施形態では、少なくとも2つの画像を得るステップは、ある範囲のZレベルわたる光学顕微鏡の再合焦中に校正構造体の一連の画像を得ることによって実施され、ここで、横方向のずれを決定するステップは、一連の画像にわたる校正構造体の動きを検出することによって実施される。一連の画像が得られる場合、横方向のずれの変動は、高精度アクチュエータに起因する、光路からの対物レンズの横への、すなわちオフアクシスの動きを表す。光路からのオフアクシスの動きは、横方向のずれの唯一の潜在的原因ではないことに留意されたい。レンズの不完全性、光学系の他の部分の不完全性、または温度変動が、同様にそのような横方向のずれをもたらす可能性がある。本発明によって、測定が実施される時間中に変動しない、多少静的または半静的発生源によってもたらされるそれらの横方向のずれを数量化することが可能になる。システムが発生源である誤差がこれの例であるが、同様に、制御された環境において、周囲温度が測定の全体にわたって多少不変となる場合がある。
【0010】
いくつかの実施形態では、少なくとも2つの画像を得るステップは、第1のレベルで1つまたは複数の第1の特徴部の第1の画像を得るように、Zレベルの第1のレベル上で光学顕微鏡を合焦し、第1の画像から、第1の特徴部のうちの少なくとも1つの場所に基づいて第1の参照位置を得るステップと、第2のレベルで1つまたは複数の第2の特徴部の第2の画像を得るように、Zレベルの第2のレベル上で光学顕微鏡を合焦し、第2の画像から、第2の特徴部のうちの少なくとも1つの場所に基づいて第2の参照位置を得るステップとを含む。横方向のずれを決定するステップが、横方向のずれを示す偏差を決定するために、第1の参照位置を第2の参照位置と比較するステップを含む。たとえば、横方向のずれの表示は、第2の参照位置が第1のものに対してどれだけずれているかを比較することによって、事前に得ることができる。たとえば、校正構造体を形成するため特徴部が同心形状によって設けられる場合、これらの形状の中点は一致しなければならない。ここで、中点のうちの1つが他に対して横方向にずれた偏差が発見される場合、このことは、撮像される第1の特徴部と第2の特徴部に関連して2つのZレベル間での相互の横方向のずれを示す。異なる例では、2つの特徴部の場所がわかっている場合、横方向のずれは、画像から直ちに決定することができる。さらに、2つのレベルで2つの特徴部が一致する(または、少なくとも一致する部分を有する)場合(たとえば、校正構造体が、Z方向に延びて立っているポールまたは棒によって形成される場合)、ずれは、やはり比較から直接決定することができる。
【0011】
これらの実施形態の一部では、偏差を決定するステップが、第1および第2の参照位置から、横方向のずれの距離および方向を表す偏差データを決定するステップを含み、方法は、偏差データを第2のレベルに関連付けられた校正データとして記憶するステップをさらに含む。データは、測定中にSPMシステムによって使用される、(ローカルでアクセス可能またはネットワークを介して遠隔でアクセス可能な)データベースのメモリの中、表、アルゴリズム、またはデータ点の組の中に記憶することができる。
【0012】
上の実施形態の一部では、校正構造体が、同心のリング、正方形、三角形、または多角形などといった、異なるレベルにおける複数の同心構造体を備え、第1および第2の参照位置を決定するステップが、第1のレベルまたは第2のレベルそれぞれで、構造体の図心を決定するステップを含む。上で既に言及したように、同心形状の図心が一致しなければならず、したがって、それらの間に差異が存在する場合、これらは、考えられるレベル間の、横方向のずれを示す。
【0013】
いくつかの実施形態では、横方向のずれを決定するステップは、データリポジトリ中の校正構造体データから、第1および第2の画像から得られた第1および第2の参照位置の対応する実際の位置を決定するステップと、対応する実際の位置から、第1の参照位置の実際の位置と第2の参照位置の実際の位置との間の、実際の差異ベクトルデータを決定するステップと、第1および第2の画像から得られたような第1および第2の参照位置から、第1の参照位置と第2の参照位置との間の撮像された差異ベクトルデータを決定するステップと、実際の差異ベクトルデータを撮像された差異ベクトルデータと比較して横方向のずれを示す偏差を決定するステップとをさらに含む。これらの実施形態では、得られた画像は、校正構造体の特徴部の実際の位置のデータを使用して比較される。この情報は、データベースまたはメモリ中に予め記憶することができる。たとえば、校正構造体は、計測フレーム上、または基板ホルダ上、またはSPMシステムの他の部分上に配置することができ、その結果、校正構造体およびその特徴部の正確な場所が固定されて知ることができる。これを、校正データとして利用可能にして、上の方法を可能にすることができる。これから、複数の特徴部の横方向のずれを迅速で正確に決定することができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、少なくとも2つの画像を得るステップが、複数の異なるレベル上で光学顕微鏡を合焦し、各レベルで、それぞれのレベルにおける少なくとも1つの特徴部の場所に基づいて参照位置を得るステップを含み、横方向のずれを決定するステップが、参照位置から、各それぞれのレベルについて、そのそれぞれのレベルにおける関連する横方向のずれを示す偏差データを計算するステップと、各レベルと関連する偏差データを校正データとして走査プローブ顕微鏡システムがアクセス可能なデータリポジトリ中に記憶するステップとを含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、少なくとも2つの画像を得るために、光学顕微鏡は合焦対物レンズと協働するカメラを備え、カメラおよび合焦対物レンズは、カメラによる視野を得るように設定され、視野は、校正構造体の最も外側の周辺の少なくとも一部を含む。これによって、最適で広いZ高範囲がもたらされる。校正構造体のさらなるzレベル要素が視野内にあり、さらに異なるzレベルを校正することができる。完全に周辺が視野内にある場合、参照XYの場所は、(たとえば、円の図心を決定するため)画像を分析することによって、最も正確に決定することができる。周辺の少なくとも一部が視野内にある場合、その周辺構造体の少なくとも対応するzレベルを校正に含めることができる。
【0016】
いくつかの実施形態では、校正構造体は、異なるZレベルに特徴部を設ける1つまたは複数の構造的特徴部を備え、構造的特徴部は、それぞれのZレベルで構造的特徴部の高い面を支持するための1つまたは複数の側壁を含み、側壁のうちの少なくとも1つは、光学顕微鏡の視野から隠されるように、それぞれの高い面に対して横方向に引っ込む部分を含む。横方向に引っ込む部分は、画像中に見ることができず、それによって、高い面の縁部で視界をぼかさない。横方向のずれを正確に決定するのを可能にするこの縁部の鋭い画像は、こうして得ることができる。
【0017】
いくつかの実施形態では、校正構造体は、異なるZレベルに特徴部を設ける1つまたは複数の構造的特徴部を備え、構造的特徴部は、それぞれのZレベルで1つまたは複数の高い面を含み、高い面は高い面の周辺を規定する縁部を含み、縁部のうちの少なくとも1つがコントラスト強調色を備える。上と同様に、異なるコントラスト強調色を使用することによって、合焦における縁部の鋭さが改善され、横方向のずれを正確に決定することができる。
【0018】
第2の態様によれば、走査プローブ顕微鏡システムの光学顕微鏡と協働するため、第1の態様にしたがった方法で使用するための校正構造体が提供され、校正構造体は、光学顕微鏡を用いて、校正構造体の少なくとも一部の少なくとも2つの画像を得るステップであって、前記少なくとも2つの画像がZレベルのうちの少なくとも2つの異なるレベルで合焦される、ステップと、少なくとも2つの異なるレベルで合焦された少なくとも2つの画像に描かれるように、校正構造体の横方向のずれを、Z軸に垂直な方向で決定するステップとを可能にするため、Z軸に対する異なるZレベルに構造的特徴部を含む空間構造体である。
【0019】
第2の態様によれば、走査プローブ顕微鏡デバイスで使用するための基板キャリアが提供され、基板キャリアは、走査プローブ顕微鏡デバイスで試験される基板を支持するためのキャリア面を備え、基板キャリアが第2の態様にしたがった校正構造体を備える。
【0020】
さらに、第2の態様によれば、試験される基板を支持するための基板キャリアを備える走査プローブ顕微鏡デバイスが提供され、走査プローブ顕微鏡デバイスがカンチレバーおよびプローブ先端を備えるプローブを含むプローブヘッドを備え、プローブヘッドが、走査中にプローブ先端のたわみを監視するための光ビーム検出器装置をさらに含み、走査プローブ顕微鏡デバイスが、基板の表面上の所望の測定場所に、プローブ先端の位置決めを可能にするための参照データを提供するように構成される光学顕微鏡をさらに備え、光学顕微鏡がZ軸に関して所望のZレベルで顕微鏡を用いて得られた画像を合焦するための合焦対物レンズを備え、Z軸が基板の表面に垂直であり、基板キャリアが光学顕微鏡を校正するための第2の態様にしたがった校正構造体を備える。
【0021】
本発明は、添付図面への参照を行う本発明のいくつかの特定の実施形態の記載によって、さらに明らかにされる。詳細な説明は、本発明の可能な実装形態の例を提供するが、範囲に入る唯一の実施形態を記載すると考えるべきではない。本発明の範囲は請求項に規定され、本記載は本発明を限定することのない説明であると考えるべきである。図面は下記である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施形態にしたがった走査プローブ顕微鏡システムの概略図である。
【
図2A】本発明の実施形態を使用して校正することができる、
図1のシステム中で使用するための光学顕微鏡の概略図である。
【
図2B】
図2Aに図示されたような光学顕微鏡における再合焦中の横方向のずれの問題を図示する図である。
【
図3】本発明にしたがった走査プローブ顕微鏡システムの光学顕微鏡の概略図である。
【
図4A】本発明の実施形態にしたがった方法の概略図である。
【
図4B】本発明の実施形態にしたがった方法の概略図である。
【
図5A】本発明の実施形態にしたがった校正構造体の概略図である。
【
図5B】本発明の実施形態にしたがった校正構造体の概略図である。
【
図6A】本発明の実施形態にしたがった校正構造体の概略図である。
【
図6B】本発明の実施形態にしたがった校正構造体の概略図である。
【
図7A】本発明の実施形態にしたがった方法の例の概略図である。
【
図7B】本発明の実施形態にしたがった方法の例の概略図である。
【
図8】本発明の実施形態にしたがった校正構造体の概略図である。
【
図9】本発明の実施形態にしたがった校正構造体の一部の側壁の概略図である。
【
図10】本発明の実施形態にしたがった校正構造体の概略図である。
【
図11】本発明の実施形態にしたがった方法の概略図である。
【
図12】本発明の実施形態にしたがった方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1では、走査プローブ顕微鏡(SPM)システム1は、基部5および基板キャリア3を備える。基板キャリア3は、その上に基板4を置くことができるベアラ面7を含む。基板4は、SPMシステムを使用して試験するべきその表面8が基部5に面するように置くことができる。基部5は、座標参照格子プレート6を備える。座標参照格子プレートは、プレート6および少なくとも1つのエンコーダ15からなる格子エンコーダの部分である。典型的には、本発明にしたがったシステム1では、複数のエンコーダが格子プレート6と協働する。たとえば、試料キャリア3と格子プレート6の間の作動空間2内で動いている各要素が、格子プレート6上のその位置を決定するために、格子プレート6と協働するエンコーダ15を備えることができる。エンコーダ15および座標参照格子プレート6と協働する各々の他のエンコーダは、格子6上のその現在の場所の座標データを得るために参照格子を読み取る。
図1では、エンコーダ15は、スキャンヘッド10を設ける支持体13上に取り付けられ、支持体13は位置決めユニットモジュールのアーム12に接続される。支持体13は、光学センサ14、エンコーダ15、ならびに、基板4の表面8を走査するためのカンチレバー27およびプローブ先端28を含むプローブ26を備える。
【0024】
基板4を試験するため、プローブ先端28は、所望の場所で基板表面8と接触され、基板表面8の区域がプローブ先端28を使用して走査される。それによってプローブ先端28は、表面8上で数ナノメートルまたは数十ナノメートルのサイズの特徴部に出くわし、このことによって、カンチレバー27のたわみが変化する。これは検知装置を使用して測定することができ、検知装置は、典型的には、光ビームたわみ(OBD)装置(図示せず)を含み、ここでプローブ先端28の位置は、プローブ先端28の後側に入射し、光学センサ(4象限光検出器)に向けて反射されるレーザビームによって監視される。わかるように、たとえば、圧電、ピエゾ抵抗、または容量性検知方法といった、他の好適なたわみ検出方法を、上記に対する代替として、または上記に追加して適用することができる。プローブ26は、接触モード、非接触モード、タップモード、または任意の他のモードでプローブ先端28を用いて走査することができる。さらに、SPMシステム1は、表面8の下の構造体を調査するために、音響または超音波測定技法を実施することができる。
【0025】
光学センサ14は、速く信頼性の高い方式で、表面上の、プローブ先端の正しい位置決めをサポートするために適用することができる。光学センサ14は、たとえば基準マーカ9を観測することによって(たとえば、
図4A)、または、(たとえば、その各々の交換後の)システムに対するプローブ先端28の正確な場所の決定によって、表面上にプローブ先端28を配置する接近方法およびシステムの校正で、表面8にわたるナビゲーションを補助するのを可能にする。好ましくは、すべてのこれらの目的のために、光学センサ14は、できるだけ正確である必要があり、また、システム1内の(たとえば、アーム12上の固定点に対して、または基部5もしくは基板キャリア3に関連して)その場所が知られている必要がある。本明細書で議論される実施形態では、光学センサ14は顕微鏡センサであるが、本発明は特定の設計に限定されない。
【0026】
図1、
図4a、および
図4bのシステムで使用することができる光学センサ14の例が、光学センサ14の透過印象をもたらす
図3で図示される。光学センサ14は、基板表面の画像を得るためのカメラ20、たとえばCMOSカメラからなる。あるいは、CCDカメラまたは異なるタイプの光学センサユニットを適用することができる。センサは、さらに、開口21および結像レンズ22からなる。結像レンズ22は、基板表面8またはカメラ20上で結像するべき表面の画像を合焦させ、鋭い画像を得るために、カメラ20と結像レンズ22の間の距離を調整することが可能なアクチュエータに接続する。
【0027】
レンズ系は無限遠補正される。前側で、光学センサ14は、さらに、センサ開口17からなり、基板の表面8の結像平面の視界をレンズ系に向け直すために、センサ14を通して長手軸とπ/4ラジアンの角度をなす方向転換ミラー25を含む。さらに、光学センサ14は、長い作動距離を有する無限遠補正した顕微鏡対物レンズ29を備え、これは、試料表面8に垂直なZレベルでの正しい合焦を得るために使用される。たとえば、この対物レンズ29の開口数は、0.28であってよい。対物レンズ29は、同様に、正確なZレベルで合焦を得るために、レンズ系を通る光軸23に沿って、光学センサ14の構造体から屈曲部33で吊り下げる高精度アクチュエータ24を使用して動かすことができる。アクチュエータ24は、圧電アクチュエータであってよく、屈曲部23は、非常に正確な合焦調整および安定性を可能にするため、要素または板ばねまたは板ばねのシステムを曲げることによって実現することができる。たとえば、(結像レンズ22と対物レンズ29の組合せの結果として)結果として得られる光学顕微鏡の倍率は、3倍から20倍になることができ、この例では、5倍の倍率を実現する。
【0028】
光学センサ14は、印刷回路板30をさらに備え、その上にたとえば複数の発光ダイオード31(LED)が、撮像のために基板表面の照明を実現する。また、容量性センサ32は、迅速に画像の正しい合焦を実施するために、基板表面への距離を決定するのを可能にする。容量性センサ32は、追加測定を実施するためにさらに適用することができ、それから、たとえば、格子プレート6に対する基板の傾きを決定することができる。
【0029】
上の
図3に関連して説明される光学顕微鏡システムからなる光学センサ14が
図2Aおよび
図2Bに概略的に図示される。
図2Aでは、対物レンズ29は、表面8上にシステムの焦点を調整するため、光軸23に沿った方向に正確に動かすことができる。図示される状況では、撮像される場所の区域35中の表面8は、認識可能な特徴部9を含む。この画像は、表面8上の正しいZレベル上にレンズ29を合焦させることによって得られ、その後、それがカメラ20上に結像レンズ22によって合焦される。画像36はカメラ20を用いて得られ、それから特徴部9の表面8上の場所(X,Y)ならびにサイズを得ることができる。
【0030】
図2Bは、異なるZレベルでレンズ29を再合焦することによって、典型的には何に直面する可能性があるかを示す。図の左側では、表面8が完全に平坦ではなく、異なるZレベルで特徴部が合焦する可能性があるのを見ることができる。示されるように、レンズ29が最初に特徴部9-2上に合焦され、その後、異なるZレベルで特徴部9-1上に再合焦されると仮定する。そうするため、図の右手側で、レンズ29が光軸23に沿って異なる位置へと動かされ、結局29’で示される場所となる。しかし、運動に起因して、アクチュエータ24が高精度であるにもかかわらず、わずかな横方向の変位がもたらされる可能性がある。この変位は、画像中で横方向のずれとして見ることができ、表面8は、位置8’にずれて見える。結果として、特徴部9-1の場所は、レンズ29の再合焦に起因して、カメラ20で得られた画像において、やはりずれる。
【0031】
図4Aは、一実施形態にしたがって、光学センサ14を使用するスキャンヘッド10を含む走査プローブ顕微鏡システム1の部分を示し、
図4Bには、一実施形態にしたがった、光学センサ14を校正する方法が示される。光学センサ14は、本発明の重要な態様を実現し、図示された実施形態では、そのセンサ開口17を通した視野19を有する小型カメラユニット20を含む。光学センサ14は、開口21、合焦レンズ22、およびアクチュエータ24をさらに備える。アクチュエータ24によって、基板8の表面上での画像の合焦を可能にするため、カメラ20と合焦光学系22の間の距離を調整することが可能になる。さらに、作動空間2の中の格子プレート6の表面に平行な利用可能な空間を使用するため、
図4aに図示されるように、ミラー25が、カメラ20の視野を水平から垂直方向へと向け直す。光学センサ14は、後で記載されるように、支持体13およびアーム12に機械的に固定される。さらに、システム1へのデータ送信のための電気接続が、電気接続インターフェース18を介して実現される。
【0032】
カメラ20は、ウェハ上の位置合わせマークを認識するのを可能とするのに十分正確である。そのようなマークのサイズは、典型的には、20*20マイクロメートルから最大で50*50マイクロメートルの範囲内であるが、もちろん、これらのマークのサイズが変わる場合があり、技術が発展するとより小さくなる可能性がある。本発明は、この点に関して制限されない。位置合わせマークの画像の特徴部の解像度は、典型的には、1マイクロメートルまで下がる可能性があり、これは時間の経過とともに変更される(すなわち、減る)可能性が同様にある。カメラ20は、したがって、位置合わせマークのサイズおよび/または解像度に依存して適用される場合があり、そのタスクを実行するために、必要な画像の特徴部を識別することが可能となるべきである。たとえば、物体面(たとえば、マークを担い、読み取るべき面)におけるカメラ20の画素解像度は、2マイクロメートル以下、好ましくは、1.0マイクロメートル以下、より好ましくは、0.5マイクロメートル以下であってよい。さらに、カメラは、低倍率および高倍率用に少なくとも2つの倍率係数で動作することが可能であってよい。カメラは、ウェハ表面上の位置合わせの特徴部を検出することが可能でなければならず、これは、ウェハの縁部から1ミリメートルほどの近さで配置される場合がある。カメラの電力消費は、好ましくは、熱の放散および精度に望ましくない影響を減らすため、可能な限り低い。カメラ20の視野19は、少なくとも0.5ミリメートル、好ましくは少なくとも0.9ミリメートルであってよい。
【0033】
図4Bでは、本発明の方法にしたがって、光学センサ14が校正構造体11上に合焦することができるように、アーム12は定位置に引っ込む。校正構造体11は、基板キャリア3上で、基板4の隣のその表面上に配置することができる。校正を実施するために、正しいレベルで対物レンズ29を再合焦させることによって、いくつかの異なるレベルの校正構造体11を撮像することができる。このことによって、撮像されるzレベルの各々で再合焦することによって引き起こされる誤差を示す、相互の横方向のずれを決定することができる複数の画像を得ることが可能になる。
【0034】
図5A、
図5B、
図6A、および
図6Bは、本発明にしたがった校正構造体の2つの異なる実施形態を図示する。本発明は、この特定のタイプの構造体に限定されず、同心形状の用途にも限定されないが、原理的に、少なくとも2つの異なるzレベルに特徴部が存在する限り、任意の所望の設計の校正構造体11を適用することができる。
図5Aおよび
図5Bの実施形態では、校正構造体11は、複数のスタックしたディスク形状の構造的特徴部40-1、40-2、…、40-8、40-9によって形成される。構造体40-1から40-9の各々は、その上に合焦すると顕微鏡の視野に見られるコントラスト強調縁部42を含む。縁部42がコントラスト強調色を有するのは本質的ではないが、いくつかの実施形態では、これらの縁部42は、周囲からコントラスト強調する色で製造することができる。このことによって、縁部における光学センサ14の鋭い合焦が可能になる。
図5Bに見ることができるように、光学センサ14の視野中で上から見たときに、構造体40-1から40-9の縁部42が一緒に複数の同心円を形成する。
【0035】
あるいは、または追加で、校正構造体11は、異なる形状を有する特徴部を含むことができる。
図6Aでは、代替の校正構造体11’は、異なるレベルで互いの上にスタックされる同心の正方形から形成される。同様に正方形40は縁部42を含み、
図6Bで上から見たときに、これらの縁部は、光学センサ14の視野の中で複数の同心の正方形を形成する。
【0036】
図7Aは、
図5Aの校正構造体11と同様の校正構造体11を示す。
図7Bでは、光学センサ14の視野の中の、同心円の拡大図が図示される。同心円の各々の縁部42は、42-1から42-9と番号付けされる。
図7Bの状況では、光学センサ14は、縁部42-7と一致するレベルで合焦される。
図7Bに見ることができるように、縁部42-7が鋭く合焦される一方で、他の縁部42-1から42-6および42-8および42-9はぼやける。この点に関し、図は概略であり、実際には、合焦から円が離れるほど、典型的には、それがよりぼやける。そのため、42-5および42-9は、42-6および42-8などよりもぼけがある(42-1が最もぼけている)。全部の縁部42-1から42-9の図心は、図の中心における点45で与えられる。しかし、縁部42-7と一致するレベルにおける再合焦に起因して、レンズ29は、オフアクシス23だけわずかに変位している。結果として、
図7Bに図示される画像全体が、同様に横方向にずれている。円42-7’は、横方向のずれが生じなかった場合に見いだされていたであろう縁部42-7の実際の場所を図示する。各zレベルにおける横方向のずれの大きさを決定するために、各画像について、撮像されるそれぞれのzレベルに常に再合焦することによって、レベル42-1から42-9の各々で撮像を行うことができる。各zレベルで、図心を計算することができる。図中のすべての同心円の図心は、任意のzレベルで、図の中心と一致するべきである。しかし、図心は、レンズ29のオフアクシス変位によってもたらされ、合焦したzレベルに依存して、XおよびY方向にわずかに変位することになる。たとえば、円42-7’の図心は中点46によって示され、たとえば、レベル42-1で合焦する際に見い出すことができる。偏差を計算することによって、各zレベルで、システムを校正し、異なるzレベルが合焦することによりもたらされる横方向のずれを補正するのに使用するのを可能にする、校正値を得ることができる。
【0037】
図8を参照すると、校正構造体11のさらなる実施形態が図示される。
図8の校正構造体11は、校正構造体11によって形成される円錐の基部を上昇させるステム50を含む。ステム50をウェハの典型的な厚さと一致させることができ、その結果、ステムが基板の隣に配置される場合、校正構造体11のzレベルは、SPMシステム1による使用でカバーされるべきzレベルの範囲にほぼ対応することになる。
【0038】
図9は、一緒に校正構造体11を形成する構造体の側壁55の引っ込みを図示する。各zレベルにおいて縁部42が存在し、縁部42の下で、側壁55が、校正構造体11の次に低いレベルに延びることになる。側壁55が縁部42と比べて引っ込むように側壁55を鋭くすることによって、縁部42のより良好な合焦を得ることができる。というのは、縁部42の下の校正構造体からの材料が視野の中で見えないためである。
【0039】
図10では、さらなる代替の校正構造体11’が示される。ここで、校正構造体11’は、基板キャリア3の材料中の孔によって実現される。基板キャリア3の表面54において、孔11’’が形成されて、複数の異なるレベルでテラス40を実現する。理解できるように、光学センサ14の視野では、これは、
図5Bおよび
図7Bに図示された画像と同様の画像を提供することになる。
【0040】
図11は、本発明の実施形態にしたがった方法を概略的に図示する。本発明の方法では、その第1のステップにおいて、校正構造体11の縁部42と一致するzレベルのうちの1つで合焦する、校正構造体11の第1の画像が得られる。次に、ステップ120において、ステップ110で得られた画像から、横方向のずれを決定するために使用できる第1の参照位置が計算される。たとえば、
図7Bの例では、同心円の図心が計算された。代替または追加で、構造体の固定された、知られている点を参照点として使用することができる。たとえば、
図6Aおよび
図6B中で校正構造体11’が合焦する、縁部42の1つまたは複数の隅の点の正確な場所を決定することがやはり可能である。当業者には理解されるように、代替の好適な参照位置を同様に計算することができる。ステップ130では、校正構造体の次のレベルを撮像する必要があるかないかを決定する。校正構造体11のさらなるzレベルが撮像される必要がある場合、ステップ130の後に、方法は、ステップ100に再び続く。そうでなければ、方法はステップ140に続く。ステップ140では、ステップ120中のzレベルの各々について得られた参照位置から、校正データとして使用される横方向のずれが各zレベルで決定される。次に、ステップ150で、校正データがSPMシステムのメモリ90に記憶される。あるいは、校正データを記憶するために、外部メモリまたはデータベースを使用することができ、この外部データベースは、データネットワークを通してアクセス可能であってよい。
【0041】
図12では、本発明にしたがった方法の代替実施形態が図示される。ここで、ステップ100、120、および130は、方法のステップ11と類似であり、校正構造体11の複数のzレベルでの画像をとること、ならびに、それらからの参照位置の計算を含む。それと平行して、ステップ200において、SPMシステム1は、考えられる校正構造体11についての情報を得るために、データベースまたはメモリなどといったデータリポジトリにアクセスすることができる。たとえば、校正構造体11は、SPMシステム1に一体化される固定校正構造体であってよく、校正構造体11の正確な場所および様々なzレベルにおけるその構造体40の各々を示す校正データをメモリの中に記憶することができる。同心円の場合では、たとえば、縁部42によって形成される円の正確な図心位置を、SPMシステム1のメモリの中に記憶することができる。したがって、ステップ200において、各参照位置について、メモリから実際の位置が得られる。ステップ210において、参照位置の次の実際の位置がメモリから得ることができるかが決定される。
【0042】
次いで、ステップ220において、ステップ200で得られた対応する実際の位置およびステップ120での参照位置から、第1の参照位置の実際の位置と第2の参照位置の実際の位置との間のベクトルの差分要因データが決定される。たとえば、
図6Bの縁部42の隅の点の使用を考える。
図6B中の構造体40の各々について考えると、縁部42の隅の点のうちの1つが参照位置として使用される。次いで、ステップ200において、これらの参照位置の各々に対応する実際の位置をメモリから得ることができる。SPMシステム1中の校正構造体11’の正確な位置が知られているためにこれが可能であり、したがってこれらの位置は、製造の際のシステム校正データとして記憶することができる。ステップ220において、これらの実際の位置をステップ120からの参照位置に対応させて、各2つの参照位置間でベクトルデータを決定することができる。たとえば、最も外側の正方形の第1の隅の点と、それに続く正方形の次の隅の点との間のベクトルが、これらの点間の真のベクトルであると決定することができる。次いで、ステップ235において、システム1は、ステップ120中で得られた参照位置から、ステップ100中で得られた画像からの各2つの参照位置間の撮像される差異ベクトルデータを決定する。次に、ステップ140において、各zレベルにおける横方向のずれを示す偏差を決定するために、システムは、ステップ220で得られた実際の差異ベクトルデータと、ステップ235で得られた撮像された差異ベクトルデータとの間の差異を計算した。この情報は、メモリまたは外部データベース90中に、ステップ150で校正データとして記憶される。
【0043】
本発明は、そのいくつかの特定の実施形態に関して記載されてきた。図面に示され本明細書に記載される実施形態は、説明目的のためだけに意図され、本発明についての制限であることは、全く意図していないことを理解されよう。本発明の動作および構築は、以前の記載およびそこに添付される図面から明らかとなることが信じられる。本発明が本明細書に記載されるいずれかの実施形態に限定されず、添付される請求項の範囲内であると考えるべきである修正形態が可能であることは、当業者には明らかであろう。また、運動学的反転が本質的に開示され、本発明の範囲内であると考えられる。さらに、開示される様々な実施形態の構成要素および要素のいずれかを組み合わせることができ、または、請求項で規定されるような本発明の範囲から逸脱することなく、必要、望ましい、または好ましいと考えられる、他の実施形態に組み込むことができる。
【0044】
請求項では、何らかの参照符号が請求項を限定すると解釈するべきでない。本記載または添付される請求項で使用する場合「備える(comprising)」および「含む(including)」という用語は、排他的または網羅的意味と解釈するべきでなく、むしろ包含的意味であると解釈するべきである。したがって、本明細書で使用する「備える」という表現は、いずれかの請求項にリスト化されるものに加えて、他の要素またはステップの存在を除外しない。さらに、「a」および「an」という言葉は、「ただ1つ」に限定されると解釈するべきでなく、代わりに、「少なくとも1つ」を意味するために使用され、複数形を除外しない。具体的または明示的に記載または特許請求されない特徴を、本発明の範囲内で本発明の構造体中に追加で含むことができる。「…ための手段」などの表現は、「…のために構成された構成要素」または「…するための構築された部材」と読むべきであり、開示される構造体についての等価物を含むと解釈するべきである。「重要な(critical)」、「好ましい」、「特に好ましい」などの表現の使用は、本発明を限定する意図はない。当業者の理解の範囲内の追加、削除、および変更は、一般的に、請求項によって決定されるような、本発明の精神および範囲から逸脱することなく行うことができる。本発明は、そうでなくてここで、本明細書に具体的に記載されるように実施することができ、添付される請求項によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0045】
1 走査プローブ顕微鏡(SPM)システム
2 作動空間
3 基板キャリア、試料キャリア
4 基板
5 基部
6 座標参照格子プレート
7 ベアラ面
8 基板表面
8’ 位置
9 基準マーカ、特徴部
9-1 特徴部
9-2 特徴部
10 スキャンヘッド
11 校正構造体
11’ 校正構造体
11’’ 孔
12 アーム
13 支持体
14 光学センサ
15 エンコーダ
17 センサ開口
18 電気接続インターフェース
19 視野
20 カメラ、小型カメラユニット
21 開口
22 結像レンズ、合焦レンズ、合焦光学系
23 光軸、屈曲部、オフアクシス
24 高精度アクチュエータ
25 方向転換ミラー
26 プローブ
27 カンチレバー
28 プローブ先端
29 顕微鏡対物レンズ
30 印刷回路板
31 発光ダイオード(LED)
32 容量性センサ
33 屈曲部
35 区域
36 画像
40 正方形、構造体
40-1 構造的特徴部
40-2 構造的特徴部
40-8 構造的特徴部
40-9 構造的特徴部
42 コントラスト強調縁部
42-1 縁部、レベル
42-9 縁部
42-7’ 円
46 中点
50 ステム
54 表面
55 側壁
90 メモリ、外部データベース
【国際調査報告】