(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-12
(54)【発明の名称】オレフィンプラントにおけるタール溶媒和のためのシステム内での溶媒の生成及び補填
(51)【国際特許分類】
C10G 7/00 20060101AFI20240405BHJP
【FI】
C10G7/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566707
(86)(22)【出願日】2022-04-27
(85)【翻訳文提出日】2023-12-27
(86)【国際出願番号】 US2022026535
(87)【国際公開番号】W WO2022232271
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508364749
【氏名又は名称】ケロッグ ブラウン アンド ルート エルエルシー
【住所又は居所原語表記】601 Jefferson Street Houston TX 77002(US)
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】セリンジャー デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】レイネキ ライアン
(72)【発明者】
【氏名】イェー クオ-チェン
(72)【発明者】
【氏名】スリヴァスタヴァ アロック
(72)【発明者】
【氏名】ハミルトン クリスティン イー.
(72)【発明者】
【氏名】ラジツキ マイケル エー.
(72)【発明者】
【氏名】シュリック ラリー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】アーノルド ジェームス アール.
【テーマコード(参考)】
4H129
【Fターム(参考)】
4H129CA04
4H129CA25
4H129DA02
4H129EA01
4H129NA01
4H129NA15
4H129NA45
(57)【要約】
タール溶媒和を行うための持続可能なC6+C7芳香族リッチ溶媒流を、クエンチ水分離ドラムから炭化水素供給原料を受け入れる2つの燃料油塔の系を採用しているオレフィンプラント内部においてシステム内で発生させるためのシステム及びプロセスであって、2つの燃料油塔の系は、C6+C7芳香族リッチ炭化水素を含有する、十分な量の溶媒流を生成するように構成され、この溶媒流は再循環されて、クエンチ水分離ドラムへ移動しているクエンチ水と混合され、クエンチ水からタール分子を除去することを促す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
C
6+C
7芳香族リッチ溶媒流をシステム内で発生させるためのシステムであって、
最後の区画を含む連続した区画を有するクエンチ水分離ドラムと、
一次燃料油分離塔と、
二次燃料油分離塔と、
を備え、
前記クエンチ水分離ドラムは、炭化水素流を前記クエンチ水分離ドラムの前記最後の区画から前記一次燃料油分離塔に導くラインによって、前記一次燃料油分離塔に接続され、
前記一次燃料油分離塔の塔頂流を前記クエンチ水分離ドラムの供給原料流に接続する再循環ラインが存在し、
前記一次燃料油分離塔の塔底流を前記二次燃料油分離塔に接続するラインが存在する、システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、さらに、
脱ブタン塔のC
6+C
7リッチ塔底流の一部を、炭化水素流を前記クエンチ水分離ドラムの前記最後の区画から前記一次燃料油分離塔に導く前記ラインに接続する補填流を備える、システム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムであって、
前記クエンチ水分離ドラムは、頂部軽質炭化水素相中にタールを有する二相分離器である、システム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムであって、
前記クエンチ水分離ドラムの前記供給原料流内に存在するタールは、前記クエンチ水分離ドラム内にある炭化水素相中に溶解されている、システム。
【請求項5】
C
6+C
7芳香族リッチ溶媒流をシステム内で発生させるためのプロセスであって、
炭化水素流をクエンチ水分離ドラムの最後の区画から一次燃料油分離塔に導くことと、
前記一次燃料油分離塔内のC
8+炭化水素からC
6+C
7芳香族炭化水素を分離してC
6+C
7芳香族リッチ溶媒塔頂流とC
8+炭化水素塔底流とを生成することと、
前記クエンチ水分離ドラム内の水相からタールを分離するのに効果的な量で、前記C
6+C
7芳香族リッチ溶媒塔頂流を前記クエンチ水分離ドラムの供給原料流へと再循環させて、前記タールを前記クエンチ水分離ドラムの炭化水素相中で溶解することと
を備える、プロセス。
【請求項6】
請求項5に記載のプロセスであって、さらに、
前記C
8+炭化水素塔底流を二次燃料油分離塔に導くことと、前記二次燃料油分離塔内でC
8-C
10スチームクラッキングされたナフサ(SCN)生成物と重油生成物とを生成することとを備える、プロセス。
【請求項7】
請求項6に記載のプロセスであって、
前記一次燃料油分離塔は、約12psia(83kPa)から約17psia(117kPa)の範囲の低圧力条件で運転される、プロセス。
【請求項8】
請求項6に記載のプロセスであって、
前記一次燃料油分離塔は、約180°F(82°C)から約320°F(160°C)の範囲の温度で運転される、プロセス。
【請求項9】
請求項6に記載のプロセスであって、
前記二次燃料分離塔は、約2psia(14kPa)から約7psia(48kPa)の範囲の真空条件下で運転される、プロセス。
【請求項10】
請求項6に記載のプロセスであって、
前記二次燃料分離塔は、約200°F(93°C)から約280°F(138°C)の範囲の温度で運転される、プロセス。
【請求項11】
請求項5に記載のプロセスであって、さらに、
前記クエンチ水分離ドラムの前記最後の区画からの前記炭化水素流を、前記一次燃料油分離塔に流入する前に脱ブタン塔からのC
6+C
7リッチ塔底流の一部と混合することによって、前記C
6+C
7芳香族リッチ溶媒塔頂流内のC
6+C
7芳香族炭化水素の量を増加させることを備える、プロセス。
【請求項12】
請求項11に記載のプロセスであって、
前記脱ブタン塔からの前記C
6+C
7リッチ塔底流には、C
5炭化水素が存在しない、プロセス。
【請求項13】
請求項5に記載のプロセスであって、
前記クエンチ水分離ドラムは、二相分離器であり、前記方法は、さらに、タールを頂部軽質炭化水素相内に溶解させることを備える、プロセス。
【請求項14】
エチレンプラントであって、
C
6+C
7芳香族リッチ溶媒流をシステム内で発生させるためのシステムを備え、
前記システムは、
最後の区画を含む連続した区画を有するクエンチ水分離ドラムと、
一次燃料油分離塔と、
二次燃料油分離塔と、
を備え、
前記クエンチ水分離ドラムは、炭化水素流を前記クエンチ水分離ドラムの前記最後の区画から前記一次燃料油分離塔に導くラインによって、前記一次燃料油分離塔に接続され、
前記一次燃料油分離塔の塔頂流を前記クエンチ水分離ドラムの供給原料流に接続する再循環ラインが存在し、
前記一次燃料油分離塔の塔底流を前記二次燃料油分離塔に接続するラインが存在する、エチレンプラント。
【請求項15】
請求項14に記載のエチレンプラントであって、さらに、
脱ブタン塔のC
6+C
7リッチ塔底流の一部を、炭化水素流を前記クエンチ水分離ドラムの前記最後の区画から前記一次燃料分離塔に導く前記ラインに接続する補填流を備える、エチレンプラント。
【請求項16】
請求項14に記載のエチレンプラントであって、
前記クエンチ水分離ドラムは、頂部軽質炭化水素相中にタールを有する二相分離器である、エチレンプラント。
【請求項17】
請求項14に記載のエチレンプラントであって、
前記クエンチ水分離ドラムの前記供給原料流内に存在するタールは、前記クエンチ水分離ドラム内にある炭化水素相中に溶解される、エチレンプラント。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、タール溶媒和のためのC6+C7芳香族リッチ溶媒流を、例えばエチレンプラント等のスチームクラッキングオレフィンプラント内で発生させるためのシステム及びプロセスに関し、より具体的には、システム及びプロセスに対して炭化水素供給原料流の乱れを許容できる、タール溶媒和のためのC6+C7芳香族リッチ溶媒流を発生させるためのシステム及びプロセスに関する。
[背景]
【0002】
スチームクラッキングは、熱分解とも称されており、ナフサ、液化石油ガス(LPG)、エタン、プロパン、及び/またはブタン供給原料から、オレフィンとして一般的に知られているより軽質なアルケン(例えばエチレン)を生成するのに使用される主要なプロセスである。
【0003】
従来のスチームクラッキングプロセスでは、ナフサ、LPG、またはエタンといった気体または液体の炭化水素供給原料は、水蒸気で希釈されて、無酸素状態の炉内で短時間加熱される。この反応で生成された、クラッキングされたガス生成物は、原料の組成と、炭化水素と水蒸気との比率と、クラッキング温度及び炉の滞留時間とに依存する。例えばエタン、LPG、または軽質ナフサ等の軽質炭化水素原料は、エチレン、プロピレン、及びブタジエンを含む軽質アルケンリッチのクラッキングされたガス流をもたらす。より重質な炭化水素(全域及び重質ナフサや他の精製生成物)はさらに、芳香族炭化水素と、例えばC5+熱分解ガソリン流(つまりパイガス)等のガソリンまたは燃料油への含有に適している炭化水素とに富んだ生成物を生成する。C5+熱分解ガソリン流は、C4炭化水素からクラッキングされたガス流内にあるより重質な炭化水素を分離するために、オレフィンプラント内で用いられる脱ブタン塔の塔底に残存している。この熱分解ガソリン流は、通常、高温で発火し得るC5ジオレフィン及びオレフィンを含有する。
【0004】
オレフィンプラントには、生成ガス及び種々の副生成物を生成するのに必要な複数の処理工程を行う多数の部分が存在する。例えば、クラッキングされたガスは、スチームクラッカユニットを出ると、水で冷却されたクエンチ系に送られる。具体的には、エタンスチームクラッキングシステムは、タールと称される重燃料油域の分子(C11+領域の分子)を少量含有する、クラッキングされたガスを生成する。クラッキングされた生成ガスを冷却するのに用いられるクエンチ塔に接続しているクエンチ水ドラム内のタールと水との密度差が非常に小さいため、クエンチ水の水相から非常に少量のタールを分離することは非常に難しい。この結果、タールを保持している水を循環することになり、クエンチ塔内部の交換器及びパッキンを汚染し得る。
【0005】
クエンチ水ドラムへの燃料油域の分子に対して重質なガソリンを含有する重質芳香族流を外部から導入することによって、タールを溶解して水相からの分離を促すのにタール溶媒和と称される方法が用いられてきた。この場合、エタンスチームクラッキングシステムにおけるタール溶媒和に用いられる溶媒は、好ましくは、外部で生成されて水素処理されたスチームクラッキング用熱分解ガソリンであり、この熱分解ガソリンは、クエンチ水ドラムとは別個のラインを通って導入される。
【0006】
例えば、エクソンモービル・ケミカル・パテンツ・インコーポレイテッドによる米国特許第7,560,019号明細書及び第8,025,773号は、気体状供給原料を熱クラッキングするためのシステムにおいて、そのシステムが、オレフィンを備える廃液を生成するためのガスクラッカと、廃液から処理エネルギーを回収するための少なくとも1つの移送ライン交換器と、水クエンチ塔系とを備える場合に、系の供給原料の範囲を拡大するために、タールを発生させる液状供給原料を含むプロセスを提供することを開示している。このプロセスは、第1クエンチ流体を少なくとも1つの移送ライン交換器の下流に注入して、オレフィンを含む処理廃液をクエンチする工程と、分離容器内で、クエンチされた廃液から、クラッキングされた生成物と、タールを含む第1副生成物流とを分離する工程と、分離された、クラッキングされた生成物を水クエンチ塔系に導く工程と、分離された、クラッキングされた生成物を第2クエンチ流体でクエンチして、回収のためのクラッキングされたガス廃液と、タールを含む第2副生成物流とを生成し、その中に芳香族リッチ流を外部から導入してタールを溶解和する工程とを含む。タールを発生させる液体状炭化水素原料をクラッキングするための装置も提供されている。
【0007】
しかしながら、タール溶媒和のために外部からの芳香族リッチ流を利用することは、システム内に熱分解ガソリンユニットの水素処理がない場合や、スチームクラッカがこのような流れを取り込むことが不可能か非常に高コストであるような位置にある場合には、難しくなる。
【0008】
よって、クラッキングされたガスの冷却のためにクエンチ水が循環されているために、クエンチ水中でタールを溶解してタールがオレフィンプラントのクエンチ系内にあるパイプ、パッキン、及び他の装備を汚染することを防ぐ、適切かつ持続可能な芳香族リッチ溶媒流をシステム内で生成する必要がある。
[概要]
【0009】
1つの非限定的な実施形態において、C6+C7芳香族リッチ溶媒流をシステム内で発生するためのシステムが提供されており、本システムは、最後の区画を含む連続した区画を有するクエンチ水分離ドラムと、一次燃料油塔と、二次燃料油塔とを備え、クエンチ水分離ドラムは、炭化水素流をクエンチ水分離ドラムの最後の区画から一次燃料油塔に導くラインによって一次燃料油塔に接続され、一次燃料油塔の頭上流をクエンチ水分離ドラムの供給原料流に接続する再循環ラインが存在し、一次燃料油塔の塔底流を二次燃料油塔に接続するラインが存在する。別の実施形態では、本システムは、さらに、脱ブタン塔のC6+C7リッチ塔底流の一部を、炭化水素流をクエンチ水分離ドラムの最後の区画から一次燃料油塔に導くラインに接続する補填流を備えてもよい。本発明の別の実施形態は、単一の燃料油塔を有するシステムを備える。
【0010】
また、異なる非限定的な形態において、C6+C7芳香族リッチ溶媒流をシステム内で発生させるためのプロセスが提供されており、本プロセスは、炭化水素流をクエンチ水分離ドラムの最後の区画から一次燃料油塔に導くことと、一次燃料油塔内のC8+炭化水素からC6+C7芳香族炭化水素を分離してC6+C7芳香族リッチ溶媒塔頂流とC8+炭化水素塔底流とを生成することと、クエンチ水分離ドラム内の水相からタールを分離するのに効果的な量で、C6+C7芳香族リッチ溶媒塔頂流をクエンチ水分離ドラムの供給原料流へと再循環させて、タールをクエンチ水分離ドラムの炭化水素相中で溶解することとを含む。
【0011】
さらに、別の非限定的な実施形態では、C6+C7芳香族リッチ溶媒流をシステム内で発生させるためのシステムを備えるエチレンプラントが提供されており、本システムはさらに、最後の区画を含む連続した区画を有するクエンチ水分離ドラムと、一次燃料油塔と、二次燃料油塔とを備え、クエンチ水分離ドラムは、炭化水素流をクエンチ水分離ドラムの最後の区画から一次燃料油塔に導くラインによって一次燃料油塔に接続され、一次燃料油塔の塔頂流をクエンチ水分離ドラムの供給原料流に接続する再循環ラインが存在し、一次燃料油塔の塔底流を二次燃料油塔に接続するラインが存在する。別の実施形態では、本システムは、さらに、脱ブタン塔のC6+C7リッチ塔底流の一部を、炭化水素流をクエンチ水分離ドラムの最後の区画から一次燃料油塔に導くラインに接続する補填流を備えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】C
6+C
7芳香族リッチ溶媒流を生成してクエンチ水分離ドラムへと再循環するための2つ燃料油塔の系の非限定的実施形態の概略図である。
【0013】
【
図2】クエンチ水分離ドラムのためのタール溶媒補填として使用されるための、C
5が存在せずC
6+C
7リッチ塔底流を生成するための、C
5リッチ側留がある脱ブタン塔系の非限定的実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[詳細な説明]
タール溶媒和のための外部からの芳香族リッチ流を利用することが困難または高コストである状況において、常在かつ持続可能なC6+C7芳香族リッチ溶媒流は、オレフィンプラント内で、2つの燃料油塔構成(1つの一次燃料油塔及び1つの二次燃料油塔)によって生成され得ることが発見され、この2つの燃料油塔構成は、仕様等級のスチームクラッキングされたナフサ(SCN)生成物(C5-C10領域の分子)、及び仕様等級の重油生成物(C11+領域の分子)も生成するように設計されているとともに、クエンチ水分離ドラムに移動しているクエンチ水と混合されたC6+C7芳香族リッチ炭化水素を含有する所望の溶媒流も発生させて、クエンチ水からのタール分子の除去を促す。この2つの塔構成では、一次燃料油分離塔及び二次燃料油分離塔の双方が非常に低い圧力で動作して運転温度を低温に保つので、水蒸気をストリッピング媒体として用いて、燃料油生成物における引火点を制御する。C6及びC7の芳香族分子を含有する所望の流れは意図的に分画且つ生成され、このC6+C7流は、クエンチ水分離ドラムに移動しているクエンチ水と混合されて、水からタール分子を除去することを促す。このようにしてタール溶媒和を達成する。タールの存在に直接対処することは、クエンチ系内の交換器や装備の汚染を管理するのに重要である。水から100重量%のタールを除去することが望ましい目標ではあるものの、水から少なくとも99.9重量%のタールが除去されれば、あるいは、少なくとも99.5重量%のタールが除去されて、別の非限定的な実施形態において99.0重量%のタールが除去されれば、そのプロセスは成功であると見なせるであろう。
【0015】
つまり、このプロセス及びシステムでは、C6及びC7芳香族分子の量は、エタン供給原料から得られる分は少量にして、C6+C7リッチ芳香族分子が閉ループ内で再循環される。しかしながら、時には設備保守や排水に起因してシステムからこれらの分子が失われることになる。これらの望ましい分子のインベントリの損失を避けるために、脱ブタン塔塔底の補填流が一次燃料油分離塔に供給される。
【0016】
また、C6+C7芳香族リッチ溶媒の補填流がオレフィンプラントの下流に位置する脱ブタン塔カラムの塔底流の一部を取り込むことによって生成され得ることが発見されており、この塔底流は、脱ブタン塔からC5リッチ側留が引き出された後では、C6+C7芳香族リッチ炭化水素からなり、本質的にC5炭化水素がなく、塔底流の一部を一次燃料油塔に供給することによって、クエンチ系内のC6+C7芳香族リッチタール溶媒和分子のインベントリを維持している。この補填流の一部または全てが使用されない場合、または余剰分がある場合には、分子は熱分解ガソリン生成物と混合される。
【0017】
図1の概略図は、オレフィンプラント内においてシステム10が存在する場所に、持続可能なC
6+C
7芳香族リッチ溶媒流をそのシステム内で発生させるためのシステム10及びプロセスの1つの非限定的実施形態を示す。
図1をより具体的に参照すると、熱分解炉(図示せず)からのプロセスガス12は、非限定的実施形態では約450°F(約232°C)であり、クエンチ塔14に供給され、そこでプロセスガス12はクエンチ水16との直接接触によってさらに冷却される。塔14へのプロセスガス供給において、タール溶媒和のない典型的なクエンチ塔タールの制限値は約1重量%であり、これはブタンクラッキングの典型的な値である。タール溶媒和は、エタンやプロパンのような1重量%未満のタールを形成する供給原料の場合にも、クエンチ水の品質を劇的に向上させる。クエンチ水16を熱交換器20内で冷却水18(CW)に当てて冷却してもよい。希釈水蒸気(図示せず)を再循環させる場所の場合、水を水蒸気発生器に送ってもよい。有利には、このような場合、タール溶媒和によって、水蒸気発生器の汚れが大幅に減少する。利点は水蒸気を再循環させないガスクラッカシステムに対しても実現され得る。タール溶媒和を用いることにより、クエンチ水分離ドラム26から出る水は透明で清浄であるはずであり、ひいては、典型的にはタールに起因して下流または後続でのクエンチ循環路が汚れるのを回避する。タール溶媒和により、クエンチ水分離ドラム26は、底部にタールを有する三相分離器から、頂部の軽質炭化水素相にタールを有する二相分離器となる。
【0018】
クエンチ塔塔頂蒸気22は、1つの非限定的実施形態では約100°F(約38°C)の温度でプロセスガス圧縮器(PGC;図示せず)に送られる一方、濃縮された炭化水素を含有するクエンチ塔塔底流24は、複数の区画を有するクエンチ水分離ドラム26に送られる。クエンチ水分離ドラム26の最後の区画からの炭化水素相流28は、一次燃料油分離塔30に送られる。プロセスガス圧縮器(PGC;図示せず)の第2段内で濃縮された炭化水素32はまた、クエンチ塔分離ドラム26からの炭化水素供給原料28と結合されてもよい。
【0019】
一次燃料油分離塔30は、分留を通じて、C8+炭化水素塔底流36から、塔頂流34内のC6+C7芳香族リッチ炭化水素を分離する。分離後、一次燃料油分離塔30の塔頂からの塔頂流34内のC6+C7芳香族リッチ炭化水素は、再循環されてクエンチ塔塔底供給原料24に戻り、その結果、クエンチ水分離ドラム26内でC6+C7芳香族の有効濃度をもたらして、炭化水素相においてタールを溶解し続ける。C6+C7芳香族リッチ溶媒塔頂流34の密度の低下が、クエンチ水分離ドラム26内のクエンチ水の水相を炭化水素相流28から分離することを促す。
【0020】
一次燃料油分離塔30が低圧で運転されることで運転温度を低く保ち、水蒸気が注入されることで塔底の沸点が下がることが理解されることになる。使用され得る圧力の非限定的例は、独立して約12psia(83kPa)から約17psia(117kPa)の範囲、あるいは、独立して約15psia(103kPa)から約17psia(117kPa)の範囲である。本明細書にて「独立して」という語を範囲に関して用いる場合、任意の閾値が適切な代替パラメータ範囲をもたらすために与えられた任意の他の閾値とともに使用され得ることを意味している。使用され得る運転温度の非限定的な例は、独立して約180°F(82°C)から約320°F(160°C)の範囲、あるいは、独立して約200°F(93°C)から約280°F(138°C)の範囲である。
【0021】
図1に示された非限定的な実施形態を再度参照すると、一次燃料油分離塔30のC
8+炭化水素塔底流36は、(上述の理由により極度の真空下で運転中の)二次燃料油分離塔38に送られ、C
8-C
10のスチームクラッキングされたナフサ(SCN)流40とC
11+重油生成物流42を生成する。より詳細には、二次燃料油分離塔38は、独立して約2psia(14kPa)から約7psia(48kPa)の範囲、あるいは、独立して約2psia(14kPa)から約4psia(28kPa)の範囲の圧力で、且つ、独立して約200°F(93°C)から約280°F(138°C)の範囲の使用され得る運転温度で運転されてもよい。
【0022】
さらに、
図1に示されるような閉ループ内で生成されて再循環されているにもかかわらず、C
6+C
7芳香族分子はプラント内のエタン流クラッカ炉から少量しか発生し得えないので、ポンプ排水や設備保守に起因する本明細書に記載のシステム10における乱れが、システム10内の物質のバランスやC
6+C
7分子の損失に関する問題につながりうることが理解される。これらの分子のシステム内での供給での損失を避けるために、C
6+C
7からなるC
6-C
7リッチタール溶媒補填流44が、オレフィンプラント内のクエンチ及び2つの燃料油塔の系のさらに下流にある脱ブタン塔カラム48から発生されてもよい。
【0023】
より具体的には、
図2に図示された実施形態では、C
6+C
7補填流44は、オレフィンプラントの下流に位置する、炭化水素供給原料58を受け入れる脱ブタン塔カラム48のC
6-C
7リッチ塔底流46の一部を取り込むことによって発生されてもよい。塔底流46は、脱ブタン塔カラム48からC
5リッチ側留50が引き出された後では、C
6+C
7芳香族リッチ炭化水素で構成されていて基本的にC
5炭化水素が存在しておらず(これは、クエンチ水分離ドラム26の運転温度でタールを溶解するのに有用であるとは考えられない)、C
6-C
7リッチ塔底流46の一部をC
6-C
7リッチタール溶媒補填流44として一次燃料油分離塔30に供給する。
【0024】
図2に示されたシステム及びプロセスの非限定的な実施形態を再度参照すると、脱ブタン塔カラム48は、C
5リッチ側留50を生成するように構成される。脱ブタン塔カラム48の運転条件は、濃縮用溶媒(つまり冷媒、冷却水)に応じて独立して約29psia(200kPa)から約130psia(896kPa)までの塔頂圧力、独立して約1°F(-17°C)から約113°F(45°C)の範囲の塔頂運転温度、及び独立して約180°F(82°C)から約280°F(138°C)までの塔底温度を含む。脱ブタン塔カラム48のC
6-C
7リッチ塔底流46内におけるC
5領域の炭化水素濃度の量を最少化するために、C
5リッチ側留50の位置は、C
5リッチ側留50がC
5領域の炭化水素の濃度が確実に最も高くなるような脱ブタン塔カラム48のシミュレーションによって慎重に評価されるべきであることが理解されよう。この非限定的な実施形態に従って、脱ブタン塔カラム48のC
6-C
7リッチ塔底流46は主にC
6+C
7領域の炭化水素からなり、その一部は、
図1に示された2つの燃料油塔の系及びプロセスが求めるC
6-C
7リッチタール溶媒補填流44の必要性に基づいて、適切なC
6-C
7リッチタール溶媒補填流44として抜き取られ、タール溶媒和が行われる。
【0025】
クエンチ系に必要なC6-C7リッチタール溶媒補填流44を抜き取った後、最終的な脱ブタン塔塔底流52は、熱分解ガソリンドラム54内でC5リッチ側留50と混合されて、最終的な熱分解ガソリン56とされてもよい。
【0026】
米国特許第7,560,019号及び第8,025,773号では必要とされるような芳香族リッチ溶媒の外部供給源がない場合に、上述のシステム及びプロセスは、タール溶媒和を行って熱交換器、クエンチ塔のパッキン、及び他の装備における潜在的な汚染を回避するために、過去の発明とは異なる利点をもたらす。
【0027】
上述の明細書では、本発明は、その特定の実施形態を参照して説明されてきた。しかしながら、本明細書は、制限的な意味よりはむしろ例示的な意味とみなされるべきである。例えば、燃料油分離塔の条件及び構成、クエンチ系の条件及び構成、脱ブタン塔の条件及び構成、並びに種々の炭化水素及び水の流れの組成及び量であって、特許請求された、または、開示されたパラメータの範囲内に入るものの、特定の例において具体的に特定も試行もされていないものは、本発明の範囲内であることが見込まれる。
【0028】
本発明は、開示されていない要素がない状態で実施されてもよい。加えて、本発明は、開示された要素を適切に備えていても、開示されている要素から適切になっていても、または本質的に開示されている要素から適切になっていてもよい。非限定的な実施形態では、C6+C7芳香族リッチ溶媒流をシステム内で発生させるためのシステムが提供され得るが、本システムは、最後の区画を含む連続した区画を有するクエンチ水分離ドラムと、一次燃料油分離塔と、二次燃料油分離塔とを備えるか、または本質的にこれらからなるか、またはこれらからなり、クエンチ水分離ドラムが、炭化水素流をクエンチ水分離ドラムの最後の区画から一次燃料油分離塔に導くラインによって一次燃料油分離塔に接続される場合には、一次燃料油分離塔の塔頂流をクエンチ水分離ドラムの供給原料流に接続する再循環ラインが存在し、一次燃料油分離塔の塔底流を二次燃料油分離塔に接続するラインが存在する。
【0029】
また、別の非限定的な変形例において、C6+C7芳香族リッチ溶媒流をシステム内で発生させるためのプロセスが提供され得るが、本プロセスは、炭化水素流をクエンチ水分離ドラムの最後の区画から一次燃料油分離塔に導くことと、一次燃料油分離塔内のC8+炭化水素からC6+C7芳香族炭化水素を分離してC6+C7芳香族リッチ溶媒塔頂流とC8+炭化水素塔底流とを生成することと、クエンチ水分離ドラム内の水相からタールを分離するのに効果的な量で、C6+C7芳香族リッチ溶媒塔頂流をクエンチ水分離ドラムの供給原料流へと再循環させて、そのタールをクエンチ水分離ドラムの炭化水素相中に溶解することと、を備えるか、または本質的にこれらからなるか、またはこれらからなる。
【0030】
さらに、異なる非限定的な実施形態において、C6+C7芳香族リッチ溶媒流をシステム内で発生させるためのシステムを備えるエチレンプラントが提供され得るが、本システムは、最後の区画を含む連続した区画を有するクエンチ水分離ドラムと、一次燃料油分離塔と、二次燃料油分離塔とを備えるか、または本質的にこれらからなるか、またはこれらからなり、クエンチ水分離ドラムが炭化水素流をクエンチ水分離ドラムの最後の区画から一次燃料油分離塔に導くラインによって一次燃料油分離塔に接続される場合には、一次燃料油分離塔の塔頂流をクエンチ水分離ドラムの供給原料流に接続する再循環ラインが存在し、一次燃料油分離塔の塔底流を二次燃料油分離塔に接続するラインが存在する。
【0031】
特許請求の範囲全体を通して使用されているような「備えている」及び「備える」という語句はそれぞれ、「含んでいるが限定されない」及び「含むが限定されない」を意味すると解釈される。
【0032】
本明細書にて使用されている範囲で、「実質的に」という語句は「指定されたものの大部分であるが、全てではない」ことを意味するものとする。
【0033】
本明細書にて使用されているように、「1つ」及び「その」といった単数形は、文脈が複数形を含まないことを明確に示している場合を除き、複数形を含むことが意図されている。
【0034】
本明細書にて使用されている範囲で、所与のパラメータに関する「約」という語は、記載された値を含み、その文脈が規定する意味を有する(例えば所与のパラメータの測定に関連する誤差の範囲を含む)。
【0035】
本明細書にて使用されているように、「及び/または」という語は、1つ以上の列挙された関連する項目のあらゆる及び全ての組合せを含む。
【国際調査報告】