(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-12
(54)【発明の名称】バルブ、バルブを製造する方法、そのようなバルブを備えた流体容器用のキャップ、そのようなキャップを備えた流体容器、および、そのようなキャップを製造する方法
(51)【国際特許分類】
A61M 39/26 20060101AFI20240405BHJP
【FI】
A61M39/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566900
(86)(22)【出願日】2022-04-28
(85)【翻訳文提出日】2023-11-29
(86)【国際出願番号】 EP2022061375
(87)【国際公開番号】W WO2022229338
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591002131
【氏名又は名称】ベー・ブラウン・メルズンゲン・アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】B.BRAUN MELSUNGEN AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100122286
【氏名又は名称】仲倉 幸典
(72)【発明者】
【氏名】ヴァロットン,ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】ミラン,マルコ
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA07
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD01
4C066EE01
4C066FF01
4C066NN20
4C066QQ01
(57)【要約】
バルブ(5)であって、バルブハウジング(51)と、バルブハウジング(51)内に収容され、バルブ(5)が閉動作状態にあるときにバルブ(5)を閉じるように構成された弾性バルブ部材(52)とを備える。バルブ部材(52)は、バルブ開口(522)を備えている。バルブ開口(522)は、バルブ(5)が閉動作状態にあるときに閉じられ、バルブ(5)が開動作状態にあるときにバルブ(5)を通る流体通路を提供するように構成されている。バルブ部材(52)はバルブハウジング(51)内にオーバーモールドされている。このバルブは、流体容器、特に医療用流体容器のキャップのポートのバルブ要素として有益に使用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブ(5)であって、
- バルブハウジング(51)と、
- 上記バルブハウジング(51)内に収容され、上記バルブ(5)が閉動作状態にあるときに上記バルブ(5)を閉じるように構成された弾性バルブ部材(52)と
を備え、
上記バルブ部材(52)はバルブ開口(522)を含み、
上記バルブ開口(522)は、上記バルブ(5)が閉動作状態にあるときに閉じられ、上記バルブ(5)が開動作状態にあるときに上記バルブ(5)を通る流体通路を提供するように構成され、
上記バルブ部材(52)は、上記バルブハウジング(51)内にオーバーモールドされている
ことを特徴とするバルブ。
【請求項2】
請求項1に記載のバルブにおいて、
上記バルブ部材(52)と上記バルブハウジング(51)との間の結合が液密であり、
好ましくは、上記バルブ部材(52)の少なくとも一部が、上記バルブハウジング(51)の全周に沿って上記バルブハウジング(51)に結合されている
ことを特徴とするバルブ。
【請求項3】
請求項1から2までのいずれか一つに記載のバルブ(5)において、
上記バルブ部材(52)は、少なくとも1種の熱可塑性エラストマを含み、より好ましくは、スチレン系ブロック共重合体、熱可塑性ポリオレフィンエラストマ、熱可塑性バルカニゼート、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性コポリエステル、および熱可塑性ポリアミドからなる群から選択された少なくとも1種の熱可塑性エラストマを含み、
上記バルブ部材(52)の材料は、25ショアAと55ショアAとの間の硬度、好ましくは35ショアAと45ショアAとの間の硬度を有する
ことを特徴とするバルブ。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一つに記載のバルブ(5)において、
上記バルブハウジング(51)が、少なくとも700MPaの引張弾性率および/若しくは曲げ弾性率を有する材料からなり、並びに/または、
上記バルブハウジング(51)の上記材料が、ポリオレフィン、好ましくはポリプロピレンおよび/若しくはポリエチレンを含み、並びに/または、
上記バルブハウジング(51)の上記材料が、エンジニアリングプラスチック、特にポリアミド、ポリカーボネートおよび/若しくはポリスチレンを含む
ことを特徴とするバルブ。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一つに記載のバルブ(5)において、
上記バルブ部材(52)は、液体操作装置との液密な接続を提供するように構成されており、
好ましくは、上記バルブ開口(522)が、自己シール性のバルブ開口(522)であり、
より好ましくは、雄コネクタ用の自己シール性のチャネル(522)、特に自己シール性のスリット(522)がバルブ部材(52)に形成され、
さらに好ましくは、上記バルブ部材(52)は、弾性変形によって予荷重を与えられ、および/若しくは、弾性構造(523)、特に弾性リブ(523)を備え、上記変形および/若しくは上記弾性構造(523)が、上記チャネル(522)内に挿入された雄コネクタが上記チャネル(522)から引き抜かれた後に上記チャネル(522)を閉鎖させるばね力を提供し、並びに/または、
上記バルブ開口(522)内に潤滑剤が供給されている
ことを特徴とするバルブ。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一つに記載のバルブ(5)において、
上記バルブ部材(52)は、雄コネクタに密に接続するように形成されており、
上記雄コネクタは、好ましくは、ISO 80369シリーズの規格のいずれかのサブパートに従って設計されており、特に、ISO 80369-7に従った雄ルアーコネクタまたはISO 80369-6に従った雄コネクタであり、および/または、
任意に、上記バルブハウジング(51)は、ねじ構造(53)を含み、好ましくはISO 80369シリーズの規格のサブパートの1つに従ったねじ構造(53)を含む
ことを特徴とするバルブ。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一つに記載のバルブにおいて、
上記バルブ部材(52)の外面(521)は、上記バルブハウジング(51)の縁面(512)と実質的に面一であるか、若しくは完全に面一であり、または、
上記バルブ部材(52)の外面(521)は、上記バルブハウジング(51)の上記縁面(512)を越えて突出している
ことを特徴とするバルブ。
【請求項8】
バルブ(5)、特に請求項1から7までのいずれか一つのバルブ(5)を製造する方法であって、
上記方法は、
A) バルブハウジング(51)を製造または提供するステップと、
B) 上記バルブハウジング(51)内に弾性バルブ部材(52)をオーバーモールドするステップと、
D) 任意に、上記バルブ部材(52)の頂部に剥離フォイル(54)を配置するステップと
を含み、
好ましくは、ステップAにおいて、上記バルブハウジング(51)は成形によって製造される
ことを特徴とする方法。
【請求項9】
流体容器(100)用、特に医療用流体(300)のための容器(100)用のキャップ(1)であって、
(i) 容器本体(200)の容器開口(201)に密に接続されるようになっている容器接続部分(3)を含む本体(2)と、
(ii) ポートハウジング(41)を含む第1のポート(4)を備え、
上記第1のポート(4)は、さらに弾性シール部材(42)を含み、
上記弾性シール部材(42)は、上記ポートハウジング(41)内に収容され、上記ポートハウジング(41)を密に閉じ、
好ましくは、上記シール部材(42)は、突き刺し可能な隔壁(42)として形成され、
(iii) 請求項1から7までのいずれか一つに記載のバルブを含む第2のポート(5)を備えた
ことを特徴とするキャップ。
【請求項10】
請求項9に記載のキャップ(1)において、
上記シール部材(42)は、上記ポートハウジング(41)内にオーバーモールドされ、
好ましくは、上記シール部材(42)と上記バルブ部材(52)とが、上記本体(2)にオーバーモールドされた単一の弾性部材を形成し、
より好ましくは、上記シール部材(42)と上記バルブ部材(52)とが、スプルー(6)を介して接続されている
ことを特徴とするキャップ。
【請求項11】
請求項9から10までのいずれか一つに記載のキャップ(1)において、
上記第1のポート(4)は、投与ポートであり、
好ましくは、上記シール部材(42)は、輸液セット、輸血セット、および移送装置からなる群から選択された投与装置のスパイクによって突き刺されるようになっており、それによって、上記流体容器(100)の内部と上記投与装置との間の流体接続が提供され、
より好ましくは、上記輸液セットがISO 8536-4に従った輸液セットであり、上記輸血セットがISO 1135-4に従った輸血セットであり、上記移送装置がISO 22413に従った移送装置であり、および/または、
上記第2のポート(5)は、無針ポートであり、
特に、上記第2のポート(5)は、上記流体容器(100)の内部と、流体操作装置、好ましくは雄コネクタを有するシリンジ、より好ましくはISO 80369シリーズの規格の任意のサブパートに従った雄コネクタ、最も好ましくはISO 80369-7に従った雄ルアーコネクタ若しくはISO 80369-6に従った雄コネクタとの間の流体接続を提供するようになっている投薬ポートであり、および/または、
上記バルブハウジング(51)は、上記本体(2)と一体的に形成され、および/または、
上記ポートハウジング(41)は、上記本体(2)と一体的に形成されている
ことを特徴とするキャップ。
【請求項12】
請求項9から11までのいずれか一つに記載のキャップ(1)において、
上記キャップ(1)は、
(i) 上記シール部材(42)の外面(421)は、上記ポートハウジング(41)の外縁面(412)と実質的に面一または全体的に面一であり、
(ii) 上記シール部材(42)の上記外面(421)は、穿刺点を示す凹状部分を有し、好ましくは、その凹状部分以外は実質的または全体的に平坦であり、
(iii) 上記シール部材(42)は、少なくとも1つの熱可塑性エラストマからなり、好ましくは、スチレン系ブロック共重合体、熱可塑性ポリオレフィンエラストマ、熱可塑性バルカニゼート、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性コポリエステル、および熱可塑性ポリアミドからなる群から選択される少なくとも1つの熱可塑性エラストマからなり、
(iv) 上記シール部材(42)は、25ショアAと55ショアAとの間の硬度を有する弾性材料からなり、
(v) 上記本体(2)は、少なくとも700MPaの引張弾性率および/または曲げ弾性率を有するポリマ材料を含み、
(vi) 上記第1のポート(4)および上記第2のポート(5)は、投与装置、流体操作装置がそれぞれ上記第1のポート(4)、上記第2のポート(5)に同時に接続可能であるように配置され、
(vii) 上記第1のポート(4)および上記第2のポート(5)は、角度をなして配置され、
好ましくは、上記第1のポート(4)および上記第2のポート(5)は、上記第1のポート(4)への上記投与装置の挿入方向と上記第2のポート(5)への上記流体操作装置の挿入方向との間の角度が15度と45度との間、特に25度と35度との間となるように配置され、
(viii) 上記第1のポート(4)への上記投与装置の挿入方向と、上記容器接続部分(3)によって形成された開口に対して垂直な方向との間の角度は、0度と30度との間、好ましくは0度と10度との間である
という構造的特徴(i)~(viii)のいずれかを、それぞれ単独でまたは組み合わせて規定されることを特徴とするキャップ。
【請求項13】
請求項9から12までのいずれか一つに記載のキャップ(1)において、
剥離フォイル(44)が、投与装置の挿入方向から見られて上記シール部材(42)の頂部に配置され、特に上記ポートハウジング(41)に溶着され、並びに/または、
剥離フォイル(44)が、液体操作装置の挿入方向から見られて上記バルブ部材(52)の頂部に配置され、特に上記バルブハウジング(51)に溶着され、
好ましくは、上記シール部材(42)の頂部および/若しくは上記バルブ部材(52)の頂部に配置された剥離フォイル(44、54)が、それぞれ上記第1のポート(4)および/若しくは上記第2のポート(5)をシールし、並びに/または、
好ましくは、上記シール部材(42)の頂部および/若しくは上記バルブ部材(52)の頂部に配置された剥離フォイル(44、54)が、タンパー証拠を提供し、
好ましくは、上記シール部材(42)の頂部および/若しくは上記バルブ部材(52)の頂部に配置された剥離フォイル(44、54)が、使用に先立って密閉性および一体性を提供する
ことを特徴とするキャップ。
【請求項14】
流体容器(100)、特に医療用流体(300)のための流体容器(100)であって、
- 容器本体開口部分(201)を有する中空の容器本体(200)と、
- 請求項9から13までのいずれか一つに記載のキャップ(1)であって、上記キャップ(1)の上記本体(2)が上記開口部分(201)と流体密に接続されている、キャップ(1)と
を備え、
上記容器本体(200)は、
(i) 上記容器本体(200)は、半剛性の容器本体(200)であり、
(ii) 上記容器本体(200)は、折り畳み可能であり、
(iii) 上記容器本体(200)は、ポリオレフィン材料を含み、より好ましくは、上記容器本体(200)の少なくとも壁が、ポリプロピレンおよび/またはポリエチレン、特にPE-LDからなり、
(iv) 上記容器本体(200)は、少なくとも部分的に流体(300)、特に医療用流体(300)で満たされており
(v) 上記容器本体(200)は、押出ブロー成形、射出延伸ブロー成形、またはブローフィルシール技術を用いて製造され、
(vi) 上記容器本体(200)は、好ましくは多層フィルムからなる折り畳み可能な可撓性バッグである
という構造的特徴(i)~(vi)のいずれかを、それぞれ単独でまたは組み合わせて規定されることを特徴とする流体容器。
【請求項15】
流体容器(100)用、特に医療用流体(300)のための容器(100)用のキャップ(1)を製造する方法であって、
上記キャップ(2)は、本体(2)と、ポートハウジング(41)および弾性シール部材(42)を有する第1の流体ポート(4)と、バルブハウジング(51)および弾性バルブ部材(52)を有するバルブ(5)を備えた第2の流体ポート(5)とを備え、
上記方法は、
A) 上記本体(2)、上記ポートハウジング(41)、および上記バルブハウジング(51)を製造または提供するステップであって、好ましくは、上記ポートハウジング(41)と上記バルブハウジング(51)の少なくとも一方が一体的に形成された上記本体(2)を製造または提供するステップと、
B) 上記シール部材(42)を上記ポートハウジング(41)内にオーバーモールドするステップと、
C) 上記バルブ部材(52)を上記バルブハウジング(51)内にオーバーモールドするステップと、
D) 任意に、上記シール部材(42)の頂部および/または上記バルブ部材(52)の頂部に、剥離フォイル(44,54)を配置するステップと
を含み、
好ましくは、ステップBおよびCは、少なくとも部分的に同時に行われ、および/または、
好ましくは、上記シール部材(42)と上記バルブ部材(52)は、任意に少なくとも1つのスプルー(6)によって接合された単一の体積として形成される
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブ、バルブを製造する方法、そのようなバルブを備えた流体容器用のキャップ、そのようなキャップを備えた流体容器、および、そのようなキャップを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バルブは、通常、ダクトや導管などを通る流体の流れを制御する機能を持つ。バルブは、医療機器をはじめ様々な装置に使用されている。ここで、医療機器や容器の接続点に配置されるバルブが大きな役割を果たしている。このような接続点は、一般に「ポート」とも呼ばれ、流体移送装置を接続するために使用され、それによって、装置または容器のそれぞれと流体移送装置との間に流体接続が確立され得る。このようなバルブは、とりわけ、流体移送装置がそのバルブに接続されていないときにポートを閉じ、流体が無制御に出入りしないようにする目的を有することができる。このようなバルブは、その他の機能の中で、装置または容器のそれぞれと流体移送装置との間の流体接続を確立し、装置または容器に接続されたときに流体移送装置を所定の位置に保持するためにも働くことができる。バルブは、医療分野やその他の分野の様々な装置に使用されている。したがって、本発明によるバルブは、医療機器や容器のバルブに限定されるものではない。医療用途の分野では、本発明によるバルブは、例えば、多種多様な容器、輸液または輸血用の点滴セット、移送装置などに使用され得る。医療分野およびその他の分野においても、他の多くの用途が可能である。本発明によるバルブの用途は、例えば、実験設備分野やその他の科学技術分野に見出すことができる。本発明によるバルブは、個人用の装置にも使用することができる。
【0003】
バルブは、例えば、輸液や輸血を行うための機器に使用される。また、輸液や輸血に使用されるべき液体を入れる容器のポートにバルブが設置されることもある。
【0004】
治療目的のために、輸液や輸血が人間医学や獣医学で用いられている。例えば、静脈内輸液は、液体(例えば、活性物質の溶液または他の液体医薬品)を患者の血流に投与するために使用される。この目的のために、投与されるべき液体は、液体容器から取り出され、輸液チューブを通って静脈内アクセスに流れる。静脈内アクセスは、例えば、患者の肘正中皮静脈に挿入された末梢カニューレによって提供される。その静脈アクセスを通して、輸液は患者の血流に入る。
【0005】
静脈内投与セット(「IV投与セット」、「I.V.投与セット」、「IVセット」、「静脈内セット」、「輸液セット」などとしても知られる。)は、容器から静脈内アクセスまで流体が流れることができる可撓性チューブを含む。静脈内投与セットは、投与装置、すなわち患者に治療用流体を投与するために使用される装置の典型的な例である。多くの場合、静脈内投与セットは上記チューブに接続された点滴チャンバを含み、それによって、上記流体が上記容器から上記点滴チャンバを通って上記チューブに流れるようになっている(必ずしもそうでなくてもよい)。静脈内投与セットは、任意でさらなる構成要素、例えば、液体の流量を制御するためのローラークランプのような流量レギュレータを含んでいてもよい。
【0006】
点滴チャンバが存在する場合、点滴チャンバは容器接続部を介して容器に接続され、それによって液体は容器から点滴チャンバに流入することができる。そうでない場合は、チューブに容器接続部が直接設けられる。
【0007】
容器コネクタは、中空マンドレルのようなピアス装置であり得る。そのピアス装置は、上記容器の隔壁を貫通することができ、そのピアス装置の内部に1つ以上の流体チャネルを有する。このようなピアス装置は、一般に「ピアススパイク」または「スパイク」と呼ばれる。
【0008】
「隔壁(septum)」とは、膜の形をした、または膜を含む、容器または装置の閉鎖部である。上記膜は、ゴム膜、他の適切な弾性材料で作られた膜、または、可能性として、容器若しくは装置に使用されるものと同様の硬質プラスチックで作られた薄い膜である。多くの場合、上記膜は、ハウジングの開口に挿入されたディスクの形を有する。上記膜は、上記容器から流体を除去するため、または、上記容器の内部に流体を導入するために、中空のピアス装置で穿孔される。上記ピアス装置は、上述のスパイク、注射針などであり得る。好ましくは、上記膜は、自己シール性を有する。すなわち、上記ピアス装置が上記膜から引き抜かれると、上記ピアス装置によって突き刺された開口、すなわち穿刺孔は、少なくとも部分的に、好ましくは完全に閉じる。隔壁の膜には、通常、上記ピアス装置が挿入される孔やスリットの形をした予め作られた開口はない。
【0009】
「流体(fluid)」とは、流動性のある物質、特に、液体または懸濁液であると理解される。
【0010】
容器または他の装置の流体アクセスは、医療流体技術の文脈では、一般に「ポート」と呼ばれる。したがって、ポートとは、上記容器または装置の内部と、流体抽出または流体添加のための外部装置(以下、「流体操作装置」と称する)との間の流体接続を確立するために、上記流体操作装置が接続され得る接続部位のことである。なお、輸液・輸血療法に使用される容器のうち、静脈投与セットが接続されるポートは、「投与ポート(administration port)」と呼ばれる。
【0011】
医療用流体容器は、医療用流体を収容することを目的とした容器であり、この目的に適した材料からなる。医療用流体には、治療用または診断用の液体医薬品、液体医薬品成分、栄養剤、輸血用血液などが含まれる。
【0012】
流体容器(そこから、投与される流体が取り出される)は、ガラスや硬質プラスチックのような硬質材料からなるボトルであってもよい。また、或る程度の柔軟性を持ったプラスチックボトルやプラスチックバッグも市場に定着してきている。プラスチックは、ガラスに比べて比重が小さく、壊れにくいという利点があるだけでない。十分に柔軟性のあるプラスチックが用いられれば、液体が除去されたときに上記容器が潰れるという利点もある。これは、上記容器の容積は、その容器内部の液体の容積の減少に連続的に適応するので、空気入口チャネルや空気入口開口といった形の追加の圧力均衡手段が必要とされない、ということを意味する。これにより、投与装置の設計が簡素化されるだけでなく、流入空気による容器内部の汚染リスクも回避される。
【0013】
静脈内投与用の液体が入った市販の容器の中には、他の薬剤の添加(いわゆる「薬剤混注」)が可能なものがある。例えば、薬剤の混注は、隔壁を含む容器のさらなるポート(いわゆる「投薬ポート」)を介してその薬剤を注入することによって行われる。すなわち、薬剤は中空の針が装着されたシリンジによって注入され、その針は隔壁を貫通する。フレキシブルバッグの場合、投薬ポートと投与ポートは、別々に設けられ、そのバッグの異なる位置に個別に取り付けられるか、または、投与ポートと投薬ポートの間の相対的な位置および距離が設計によって画定された一体型ポートに設けられる。ボトルの場合、通常、開口(いわゆるボトルネック)は1つだけであるため、投与ポートと投薬ポートは、通常、一体型ポートに設けられる。開口の大きさに制限があるため(通常、容器を成形するために使用されるプロセスによって制限される)、ポートの寸法はバッグ用に設計され得る寸法よりも小さくなり、投薬ポートが投与ポートの位置の近くに位置するようになる。このため、容器の製造は容易であるが、シリンジまたは他の流体操作装置を投薬ポートに接続し、同時に、ピアススパイクまたは他のピアス装置を投与ポートに接続することは、より困難であるか、あるいは不可能でさえある。
【0014】
ポリオレフィン材料からなる輸液用容器が市販されている。これらの容器は、その容器の頭部にキャップを有している。輸液中、上記容器は下方を向く。幾つかの実施形態によれば、キャップは、例えば国際規格ISO 15759に記載されているように、識別された穿刺点(複数)を有する単一の隔壁を有することができる。上記キャップは、互いに隣接する2つのポートを有することができる。上記2つのポートは同じデザインであってもよく、その場合、上記キャップは、一般に「ツインポートキャップ」と呼ばれる。各ポートは、静脈内投与セットのスパイクまたは注射器の針で突き刺され得る隔壁を備えている。ユーザは、2つの部分のうちいずれが投与ポートとして使用され、いずれが投薬ポートとして使用されるかを意図的に選択することができる。さらなる実施形態によれば、機能的に同一または機能的に等価な2つのポートの一方が投与ポートとして意図され、他方が投薬ポートとして意図されることも可能である。異なる意図された用途は、ラベル、記号、異なる色などを用いることによって示され得る。さらなる実施形態によれば、例えばUS 2009/0054865 A1に示されているように、キャップが、材料または設計に関して互いに異なる2つの隔壁を有することも可能である。この場合、投与ポートの機能性は、設計および/または材料がそのポートの特定の必要性に合わせて調整され得るという仕方で、投薬ポートの機能性とは異なっていてもよい。可能性として、投与装置および/または投薬装置との接続は、設計上、特定の用途(患者に薬液を投与するための薬液の抜き取り、または薬液の再構成および/または接続のための移送装置への接続)に対応する唯一のポートに意図的に制限されることがある。実用的な理由から、ボトル状の医療用容器に使用されるキャップは制限されたサイズを有し、このため、公知のキャップの場合、投薬および投与装置の同時接続が困難または不可能である。
【0015】
注射シリンジを使って容器に液体を注入する場合、適切な注射針を在庫しておき、使用前に開梱して注射シリンジに接続し、使用後は廃棄しなければならないため、煩わしい場合がある。さらに、注射針で容器のポートに突き刺すのは、誤った取り扱いをしがちである。特に、穿刺方向が隔壁に対して垂直でない場合、注射針が曲がって損傷する可能性があり、並びに/または、注射針が引き抜かれた後に隔壁が完全にはシールされない可能性があり、並びに/または、注射針がポートおよび/若しくは容器の側壁に突き刺さる可能性がある。さらに、注射針の取り扱いには、潜在的に傷害のリスクが伴う。薬剤の混注が点滴中に行われる場合、容器が上下逆さまに吊るされると、混注される薬剤を注入するためのポートにアクセスしにくくなる可能性がある。また、注射針は隔壁材料との接触を介して穿刺領域でのみ保持されるため、不用意に注射針やシリンジが引き抜かれたり、脱落したりする可能性がある。
【0016】
DE 10 2007 005 407 A1から、医療用液体のための容器用のキャップが知られている。取出し部分は、穿刺可能な膜を有し、その膜を通して、静脈内投与セットのスパイクが伝統的な態様で突き刺され得る。混注部分は、シリンジの雄コーンを受け入れるように設計されている。その混注部分は、隔壁を有さず、スリットバルブ、すなわち、挿入された雄シリンジコーンによって開かれるスリットを有する膜を有する。スリットバルブは、上記取出し部分に挿入された膜によって提供される。
【0017】
US 6,866,656 B2から、シリンジなどの雄ルアー継手と無針で接続するためのルアーコネクタを備えた医療装置が知られている。そのコネクタは、上側部分と下側部分とを有するハウジングを備え、上側部分と下側部分との間のキャビティに弾性部材が挿入されている。その弾性部材は、実質的に平坦な接合部分によって互いに連結された頂部ディスクと底部ディスクを含む。それらのディスクと接合部分は、上記雄ルアー継手が挿入されるスリットによって切断されている。上記弾性部材は、機械的構造または接着剤を用いることによって、所定の位置に固定されている。
【0018】
そのような混注部分またはルアーコネクタの製造は、第1の機械によるバルブシートを備えた装置本体の製造、別の機械による膜または弾性部材の製造、およびさらなる機械による上記膜または弾性部材の上記バルブシートへの挿入を含むため、時間とコストがかかる。さらに、上記膜または弾性部材の上記挿入には、必要な上記弾性材料の変形による損傷の危険性がある。さらに、上記膜または弾性部材を挿入する際に、その粒子が壊れたり砕けたりすることがある。そのような粒子は、追加のステップできれいに取り除かれなければならない。さもなければ、汚染を引き起こす可能性があり、および/または、患者の血流に入る可能性があるからである。さらに、上記ハウジングの壁と上記弾性部材とは互いに接しているだけなので、上記弾性部材と上記ハウジングの壁との間には隙間がある。隙間の存在は、漏れの可能性を引き起こすだけでなく、消毒が困難であり、使用中にさらなる不純物の侵入につながる可能性さえある。特に、上記シリンジのコーンが上記バルブのスリットに挿入され、次いで上記バルブから取り外された後、上記スリットバルブの一部が変形し、折り返されたり、それ自体に巻き込まれたりすると、このような状況が起こる。このような場合、上記隙間が広がり、例えば液体が中に入り易くなる。その結果、細菌、内毒素、消毒剤などが蓄積し、患者への投与に先立って液体を汚染する危険性が高まり、深刻な健康被害をもたらす可能性がある。さらに、前述したように、上記膜または弾性部材は凹部に挿入される、すなわち、形状嵌合接続があるだけである。しかし、上記膜や弾性部材はそれらの膜や弾性部材の機能を果たすために一定の弾性を持たなければならないため、上記シリンジのコーンが挿入されたときに上記膜や弾性部材が上記バルブシートから不用意に押し出される危険性がある。これは、上記バルブを使用不可能にする。
【0019】
したがって、US 6,866,656 B2 によるルアーコネクタと同様に、DE 10 2007 005 407 A1のキャップ、特に混注部分(スリットバルブ)は、洗浄および消毒が困難である。さらに、DE 10 2007 005 407 A1によるキャップの混注部分と取出し部分とは互いに近接し、同じ方向を向いているため、薬物の混注と液体の静脈内投与とを同時に行うことは、困難または不可能である。特に、その理由は、接続された装置(IVセットおよびシリンジ)は、ポートのそれぞれの硬い開口によって定められた方向に整列することになるからである。例えば、ユーザは、自身が混注部分を介してシリンジで液体を供給したいと望むそのシリンジを、斜めの角度(その角度用には、混注ポートの膜が設計されていない)に配置しなければならない場合がある。さらに、上記膜の周りの剛性のハウジングの形状は、上記シリンジの円錐形の先端をガイドするように意図されているため、上記シリンジは、上記投薬ポートおよび/または上記シリンジを損傷する危険を冒すこと無しには、上記投薬ポートの主軸の方向とは別の方向に接続され得ない。その結果、無菌製品の汚染につながる可能性のある漏れが生じる可能性がある。この場合、前述の問題はより深刻になる。さらに、DE 10 2007 005 407 A1によれば、投与部分および取出し部分の開口は、製造が複雑で取り扱いが煩わしい切離し部品(break-off parts)によってシールされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上述の状況に鑑み、本発明の目的は、改良されたバルブ、特に先行技術のバルブの上述の特性の少なくとも1つに関して改良されたバルブ、改良されたバルブを製造する方法、改良された流体容器用のキャップ、改良された流体容器、および、改良されたキャップを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
この目的は、請求項1に記載のバルブ、請求項8に記載のキャップを製造する方法、請求項9に記載のキャップ、請求項14に記載の流体容器、および、請求項15に記載のキャップを製造する方法によって達成される。本発明の改良点は、従属請求項で特定されている。任意の独立請求項に従属する請求項で規定された任意の特徴は、後述の本発明の例示的な実施形態の説明に規定された任意の特徴とともに、バルブ、キャップ、流体容器、および方法を改良するのに適した特徴として理解され得る。
【0022】
本発明によるバルブは、バルブハウジングと、上記バルブハウジング内に収容され、上記バルブが閉動作状態にあるときに上記バルブを閉じるように構成された弾性バルブ部材とを備える。上記バルブ部材はバルブ開口を含み、上記バルブ開口は、上記バルブが閉動作状態にあるときに閉じられ、上記バルブが開動作状態にあるとき、すなわち、対応する流体操作装置の先端部のような雄コネクタが上記バルブ開口(52)に挿入された後に上記バルブを通る流体通路を提供するように構成されている。
【0023】
上記バルブ部材は、上記バルブハウジング内にオーバーモールドされている。上記バルブ開口、例えば上記バルブ部材の材料を通るスリットは、射出成形プロセス中に形成されてもよいし、別のステップ、例えば潤滑されたブレードを用いた切断などで形成されてもよい。
【0024】
上記スリット内に潤滑剤が存在すると、滅菌、輸送、保管中の材料の自己治癒、すなわち切断面の意図しない結合が、低減または回避される、というさらなる利点があり得る。上記スリット内に潤滑剤が存在すると、雄コネクタの挿入が簡単化されるというさらなる利点があり得る。
【0025】
特に、上記バルブは、流体操作装置がこのバルブに対して接続されていなければ閉動作状態にあり、例えばシリンジのような適切な流体操作装置がこのバルブに対して接続されていれば開動作状態にある。
【0026】
好ましくは、上記弾性バルブ部材は、エラストマ材料を含み、または、エラストマ材料からなる。
【0027】
好ましくは、上記バルブ部材の遠位面は平坦または実質的に平坦であり、上記バルブハウジングの開口全体を満たし、円板状部分を形成している。さらに好ましくは、上記バルブ部材のさらなる部分は、上記バルブハウジングの主軸に沿って上記バルブハウジングの内側に延び、実質的に円形、楕円形、または実質的に矩形の断面を有することができる。その部分は、上記バルブハウジングの内壁の少なくとも一部に達して結合されるか、または、少なくとも上記バルブの閉動作状態において、上記バルブハウジングの上記内壁に対して一定の距離を有することができる。
【0028】
さらに好ましくは、上記スリットは、上記バルブが一旦開動作状態になると、流体通路を提供するために、遠位の円板状部分および上記内側に突起している部分を通して延びている。
【0029】
オーバーモールドによって上記バルブを製造するためには、上記バルブハウジングが最初に成形されることが好ましい。第2のステップでは、射出成形金型(上記バルブ部材を成形するために特別に設計されたインサートを備えていてもよい)に入れられた既に製造されたバルブハウジング中に、より柔軟な材料からなる上記バルブ部材が射出成形される。或る領域では、上記弾性バルブ部材を成形するために使用される材料は、高温の溶融状態で上記バルブハウジングの内壁に到達し、材料の融合によって上記バルブハウジングに結合されるため、当該領域では上記弾性バルブ部材と上記バルブハウジングとの間に隙間が残らない。そのような結合は、少なくとも上記バルブ部材の上記遠位の円板状部分の周りに形成されるため、流体操作装置が上記バルブに接続されたとしても、上記バルブ部材は上記ハウジングと流体密に接続されたままとなる。上記ハウジングが最初に成形される理由は、上記ハウジングの方がより硬い材料からなり、上記バルブ部材の射出成形中に発生する圧力や温度に耐えられるからである。逆に、上記バルブ部材が上記バルブハウジングよりも先に成形されると、上記バルブ部材が耐えられず変形してしまう可能性がある。それゆえ、異なる部品(複数)の成形順序は、堅牢なプロセスを達成し、正確で再現性のある機能的な部品を得るための重要な要素であり得る。
【0030】
上記バルブ部材と上記バルブハウジングとの間に遠位端で隙間が無いせいで、漏れの危険性が減少するか、または回避されることさえある。隙間がないため、汚染の危険性も低減されるか、または回避されることさえある。言い換えれば、本発明によるバルブは、流体操作装置を接続する際に上記バルブハウジングの内側に移動する弾性バルブ部材を備えた従来のバルブに比べて、洗浄や消毒が容易であり、汚染物質が蓄積しにくい。その結果、輸液等の投与に先立って、その輸液等を細菌、内毒素、消毒剤等が汚染することに起因する危険性が、低減または回避され得る。さらに、強固な接着のせいで、シリンジコーンなどが挿入されたときに上記バルブ部材が上記バルブハウジングから不用意に外れる危険性が、低減または回避され得る。
【0031】
上記バルブ部材と上記バルブハウジングとの間に隙間が無いせいで、バクテリアおよびその他の汚染物質が蓄積しにくい。放射線を使った滅菌の追加ステップ無しに、清潔で無菌のバルブを製造することさえ可能かもしれない。
【0032】
本発明によるバルブでは、従来のバルブに比べて、予め組み立てられた部品の数が減少される。これは、組立ステップと操作の数を減らすことになる。これは、一方では製造プロセスの効率を向上させる。これは、他方では、構成部品の欠陥および/または汚染のリスクを低減する可能性がある。
【0033】
さらに、熱可塑性エラストマからなるバルブ部材を使用することも可能である。熱可塑性エラストマは、優れた材料特性を持ち、多くの場合、リサイクル可能である。
【0034】
オーバーモールドシール部材は、上記オーバーモールドシール部材の材料と上記ハウジングの材料が接触領域で互いに結合され、隙間のない密な接続をもたらすという点で、例えば圧入または形状嵌合の態様で取り付けられたシール部材とは区別され得る。
【0035】
オーバーモールドシール部材は、上記オーバーモールドシール部材の材料と上記ハウジングの材料との間に接着剤が存在しないという点で、接着剤を用いて上記ハウジングに固定されたシール部材とは区別され得る。
【0036】
標準的な設計と比べて、本発明の好ましい実施形態によるバルブは、雄コネクタとの接続に際して、折り返されたり、それ自体に巻き込まれたりする部分を含んでいない。したがって、洗浄および消毒が容易な表面のみが流体通路と接触する。したがって、流体操作装置との接続に先立って、上記バルブを効率的に洗浄および/または消毒することが容易である。標準的な設計では、上記エラストマ部材全体が上記バルブハウジング内に下向きに圧縮されるため、隙間が生じることになる。そのような隙間は、洗浄や消毒が困難である。
【0037】
さらに、本発明によるバルブは、製造に時間があまりかからず、コストがあまり高くない。その理由は、バルブ部材を形成し、そのバルブ部材を適切な位置に配置することが、オーバーモールドによって1つのステップで達成され、それによって、予め製造されたバルブ部材を挿入するという煩わしいステップが回避され得るからである。その結果、予め製造された弾性バルブ部材をバルブシートに挿入するために生じる変形のせいで上記バルブ部材が損傷する危険性も、回避される。
【0038】
オーバーモールドプロセスのもう一つの利点は、上記バルブ部材と上記バルブハウジングとを接合するために糊などを必要としないことである。そこで、本発明によるバルブは、製品の全保存期間中、潜在的な抽出物や溶出物のレベルを非常に低くしなければならない医薬溶液用の容器に、容易に一体化され得る。医薬品は、一般的には数年間保存されることが意図されており、無菌要件を満たすために製造プロセスの最後に滅菌されることが多い。温度と時間の両方が溶出物の量を増加させ、バルブ部品の材料に存在する化学成分と充填された医薬品溶液との間の化学反応を引き起こす可能性がある。したがって、上記バルブの構成部品以外の追加材料を一切使用せずに上記バルブを組み立てるのが有利である。
【0039】
本発明によるバルブはまた、IVライン、移送装置、バイアル瓶アダプタのような医療機器にも実装され得る。特に、抽出物や溶出物は流体と接触する時間が非常に短く、通常は数分から数日程度であることから、これらの抽出物や溶出物に対する要件はそれほど厳しくないけれども、医薬用液剤への化学成分の溶出を低減することは、最終的に当該医薬用液剤を投与される可能性のある患者に対する毒性学的リスクを低減することにつながる。
【0040】
溶剤および/または接着剤を用いる代わりに、本発明によるバルブをオーバーモールドによって製造することは、取り扱われ、更に加工される部品が、より少なく、より高価でないという利点もある。これは、製造プロセス(構成部品の成形と構成部品の組立)におけるエラーのリスクを低減することにつながり、従って、本発明の対象の材料費とプロセス費を低減し、接着ステップを含む現在の製造プロセスに代わるコスト競争力のある選択肢となる。
【0041】
好ましくは、上記スリットの延長線に垂直でかつ接続方向に平行な面でのバルブ部材の断面は、上記スリットの一部が2つの比較的薄い壁、特に実質的に又は全体的に平坦な壁によることを保証する、T字形状または他の形状を有する。この場合、上記バルブの内側に加えられる圧力は、例えば2つの壁を互いに押し付け、そのことは機械的な嵌合と密閉性をさらに向上させる可能性がある。
【0042】
流体操作装置の接続は、次のようにして行われ得る:
流体操作装置の接続中、その装置の先端は、最初に上記バルブ部材の遠位部分(好ましくは、遠位の円板状部分)の外面に押し付けられ、それによって、この部分が椀状に上記バルブの内側に向かって変形する。
次のステップでは、加えられる力がより大きくなり、上記円板状部分の伸びが材料特性によって制限されると、スリット壁が互いに離れ始め、その装置先端に上記スリットを貫通するための空間を与える。
さらなるステップで、上記装置先端は、上記弾性バルブ部材全体を通して流体接続を確立する態様で、上記スリット(その内壁が上記装置先端の外形に対応する)を強制的に貫通する。
上記スリット内壁と上記装置先端との密な接触のおかげで、上記流体は上記装置先端に沿って漏れることはなく、上記装置先端のボアを通してのみ漏れる。
【0043】
上記流体操作装置の接続が解除されると、上記弾性バルブ部材は弛緩し、それによって、上記スリットの内壁が再び接触して上記流体通路を閉じ、漏れを防ぐ。しかし、後の流体移送に必要な場合には、さらなる接続を許容する。
【0044】
さらなる実施形態によれば、追加の弾性構造(複数)、特に、上記バルブ部材の内側に突起した部分と上記バルブハウジングの内壁との間に追加された半径方向に延びる弾性構造が提供される。これらの構造は、挿入された雄コネクタとの密な接続、および/または、上記雄コネクタの引き抜き後の密な閉鎖を支持し、特に、上記流体操作装置の引き抜き中に上記スリットがより速く閉じるのを助ける。これらの弾性構造は、例えば雄コネクタが存在しないときには上記開口を密に閉じた状態に保ち、かつ、雄コネクタが上記開口内にあるときには上記開口の内壁を上記雄コネクタに対して密に押し付ける、弾性力を及ぼすリブ(複数)によって形成され得る。
【0045】
好ましくは、上記バルブ部材の材料は、(1)雄コネクタとの容易な接続、(2)雄コネクタが取り外されたときに上記バルブ部材が初期形状に戻るような十分な力、(3)弾力性、すなわち、雄コネクタの接続が繰り返された後でも材料特性の変化が最小限であること、(4)雄コネクタの挿入時に破れないような高い引裂抵抗、を保証するように選択される。
【0046】
上記弾性バルブ部材はバルブハウジングにオーバーモールドされ、プロセス中にバルブハウジングに接着されるため、熱硬化性材料は適さず、熱可塑性材料が好まれる。好ましい実施形態では、上記バルブ部材は、少なくとも1種の熱可塑性エラストマを含み、より好ましくは、スチレン系ブロック共重合体、熱可塑性ポリオレフィンエラストマ、熱可塑性バルカニゼート、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性コポリエステル、および熱可塑性ポリアミドからなる群から選択された少なくとも1種のポリマを含む。
【0047】
追加的または代替的に、さらに好ましい実施形態では、上記バルブ部材は、25ショアAと55ショアAとの間の硬度を有する弾性材料を含む。
【0048】
追加的または代替的に、さらに好ましい実施形態では、上記バルブハウジングは、ポリオレフィン、好ましくはポリプロピレンおよびポリエチレンのうちの少なくとも1つ、並びに/または、エンジニアリングプラスチック、好ましくはポリアミド、ポリカーボネートおよびポリスチレンのうちの少なくとも1つを含む。ここで、上記バルブが、例えば輸液療法に使用されるべき医療用液体容器用のキャップの要素として使用される場合、ポリオレフィンが特に好ましい。その理由は、ポリオレフィンは、一般的に、より清浄な溶出物プロファイルを示し、通常消毒剤として使用される有機溶媒に対して比較的鈍感であり、非晶質材料よりも応力腐食割れに対する感受性が低いからである。
【0049】
追加的または代替的に、さらに好ましい実施形態では、上記本体は、少なくとも700MPaの引張弾性率および/または曲げ弾性率を有するポリマ材料を含む。
【0050】
好ましくは、上記バルブ部材は、液体操作装置、より正確には同装置の雄コネクタと流体密な接続を提供するように構成され、それによって、流体は、もっぱら液体操作装置のコネクタを介して上記バルブを通して流れることができる。言い換えれば、上記流体操作装置と上記バルブとの間の接続は、漏れがなければ流体密である。すなわち、上記バルブ開口の周りの材料が上記流体操作装置の上記コネクタの外面に対して密である。
【0051】
追加的または代替的に、上記バルブ開口は、好ましくは自己シールバルブ開口である。すなわち、上記流体操作装置の接続部分(雄コネクタ、例えばシリンジコーン)が取り外された後、上記バルブは自動的に閉じる。そのような自己シールバルブ開口は、「再シールバルブ開口」と呼ばれることもある。
【0052】
特に、上記バルブ開口は、シリンジコーンのような雄コネクタのための自己シールチャネルとして形成される。これは、好ましくは、上記バルブ部材に形成されたスリットによって達成される。ここで、上記スリットは、ISO 80369シリーズの規格の任意のサブパート、特にISO 80369-7に従った雄ルアーコネクタまたはISO 80369-6に従った雄コネクタに密に接続する態様に設計され得る。ISO 80369-6による接続システムは、NRFit(登録商標)とも呼ばれる。所定の規格に準拠した接続形状に従ってスリットを設計することは、安全な流体接続が確立されるように、上記バルブが上記規格で規定された寸法を有する雄コネクタを受け入れるように調整されることを意味する。これにより、一般的な医療機器との互換性が保証される。
【0053】
好ましくは、上記バルブ部材の外面は、上記バルブハウジングの縁面と実質的に面一であるか、完全に面一であるか、または、上記バルブハウジングを越えて突出している。
【0054】
上記バルブ部材の外面は、上記バルブが要素となり得る装置または容器の外側を向く面、すなわち、上記流体操作装置が上記バルブに接続される側の面である。上記外面は、バルブ部材の「遠位面」とも呼ばれることがある。
【0055】
「遠位」および「近位」という表現は、上記バルブが要素となり得る装置または容器の内部により近いまたはより遠いことを意味する。好ましい実施形態では、上記バルブは容器キャップの一部であり、上記キャップの本体はハット(hat)のような構造を有する。凹側は、「近位側」または「内側」(すなわち、キャップが容器本体に接続されている場合に、上記容器の内部を向く側)とも呼ばれる。凸側は、「遠位側」または「外側」とも呼ばれる。同様に、凹側にある本体表面は、「近位面」または「内面」などとも呼ばれる。
【0056】
上記縁面とは、上記バルブハウジングの表面のうち、オーバーモールドによって上記バルブ部材が形成されるキャビティの遠位開口を画定する部分のことである。
【0057】
好ましい実施形態では、上記弾性バルブ部材の上記遠位面は、上記バルブハウジングの遠位端と面一であるか、または、実質的に面一である。すなわち、上記弾性バルブ部材の遠位面は、上記バルブハウジングの縁面内へ完全に滑らかに、または、実質的に滑らかに移行する。
【0058】
上記バルブ部材の外面と上記バルブハウジングの縁面との2つの面が連続的に合わさり、それによって、上記バルブ部材の全周に沿って、上記バルブ部材の表面と上記バルブハウジングの表面とが出会う領域に段差が形成されない場合、上記バルブ部材の外面は、上記バルブハウジングの縁面と完全に面一である。これは、上記バルブ部材の外面と上記バルブハウジングの縁面とが整列していることを意味する。言い換えれば、これは、第1のシール部材の外面が第1のポートハウジングの縁面に滑らかに移行することを意味する。1mm以下、好ましくは0.5mm以下、より好ましくは0.25mm、最も好ましくは0.1mm以下の段差が形成されている場合、上記バルブ部材の外面は上記バルブハウジングの縁面と実質的に面一である。言い換えれば、上記バルブ部材の外面と上記バルブハウジングの縁面とのどちらの面も他方の面に対して突出または後退していない場合、上記バルブ部材の外面は、上記バルブハウジングの縁面と完全に面一である。問題となっている面(複数)の一方が他方の面に対して、僅かなオフセット(1mm以下)だけ突出または後退している場合、上記バルブ部材の外面は、上記バルブハウジングの縁面と実質的に面一である。また、上記面(複数)が互いに連続的に合わさるが、全周に沿ってではなく、第1のシール部材の周りの少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%に沿ってのみ合わさることも可能である。この状態も、「実質的に面一」と呼ばれ得る。
【0059】
好ましい実施形態によれば、上記バルブ部材の外面は、上記バルブハウジングの縁面と実質的に面一であるか、または完全に面一である。上記バルブ部材の外面と上記バルブハウジングの縁面とのそのような整列のせいで、上記バルブ部材の消毒プロセスがより容易かつ安全になる。消毒されるべき領域には、段差のような顕著な不連続な表面構造が存在しないため、すすぎ、噴霧、拭き取り、または他の応用技術による消毒剤の適用によって、効果的な消毒が達成され得る。消毒剤は、消毒されるべき領域全体に効率よく到達することができる。このため、表面の不連続部に病原体やその他の汚染物質が蓄積することがなく、したがって、消毒剤の適用によって効果的には除去できないか、全く除去できない汚染物質の蓄積を防ぐことができる。さらに、適用後に消毒液が溜まるキャビティを避けることができる。このような消毒液の蓄積(「消毒液溜まり」)は、バルブを使用する場合、消毒後、流体操作装置をバルブに接続する前に、消毒液の蒸発を待つ必要があるか、または、消毒液がピアス装置とともに隔壁を通って運ばれ、患者の血流に入る危険性があるため、好ましくない。さらに、他のデブリ(様々な粒子状物質、病原体、汚れ、死んだ生物など、特に蒸発できない物質)は、上記流体操作装置の上記雄コネクタと共に上記バルブを通って運ばれ、その結果、患者の血流に入る可能性がある。さらに、キャップまたはそのようなキャップを備えた容器の製造過程で実施される消毒は、上記バルブ部材の外面および上記縁面のこの整列のせいで、より容易またはより効率的になり得る。さらに、消毒剤の迅速な蒸発は、製造時間の観点から有益であり、それは、消毒後に消毒剤が上記バルブとその上に施されたシールフォイルとの間に閉じ込められるのを避け得る。消毒剤は、通常、エタノールやイソプロパノールのような有機溶剤である。そのような有機溶剤は、特に、上記バルブと上記フォイルとの間に挟まると、上記バルブを損傷する可能性がある。また、全体的または実質的に面一の整列のせいで、シャドウエリアが回避または最小化されることから、より迅速かつ効率的な放射線ベースの消毒が達成され得る。
【0060】
消毒効率に関しては、バルブ部材の外面とバルブハウジングの縁面とが完全に面一な態様で配置されていることが好ましい。しかし、例えば0.1mm~0.2mmの僅かなオフセットを有する実質的に面一の配置のみでも足り、またはオーバーモールドのプロセスの堅牢性に関して好ましい場合さえもある。そのような小さなオフセットは、存在するとしても、消毒効率に関しては寛容され得る。
【0061】
好ましくは、上記バルブ開口は再シール可能である。すなわち、上記流体操作装置を取り外した後、上記バルブ開口は自動的に閉じ、それによって、上記弾性バルブ部材が上記バルブ開口を再び流体密な態様でシールする。
【0062】
別の好ましい実施形態によれば、上記バルブ部材の外面は、上記バルブハウジングの縁面を越えて、より好ましくは0.1mm~1.0mmだけ突出している。面一の整列に関連して説明したように、そのような突出部を提供すると、上記バルブ開口の周りの凹部のような凸状構造が回避される。したがって、同等の消毒効率が実現される。
【0063】
本発明によるバルブを製造する方法は、次のステップを含む:
A) バルブハウジングを製造または提供するステップと、
B) 上記バルブハウジング内に弾性バルブ部材をオーバーモールドするステップと、
D) 任意に、上記バルブ部材の頂部に剥離フォイルを配置するステップ。
【0064】
好ましくは、ステップAにおいて、上記バルブハウジングは成形、特に射出成形によって製造される。
【0065】
好ましい実施形態によれば、上記方法は、上記バルブ部材に、好ましくは潤滑されたブレードを用いて、スリットを切る追加のステップを含む。
【0066】
特に、本発明によるバルブはこの方法で製造される。
【0067】
バルブ開口を持つ弾性部材を有するバルブを製造する従来の方法は、第1の機械によるバルブハウジングの製造、別の機械による弾性バルブ部材の製造、さらに別の機械による本体の凹部への上記バルブ部材の挿入を含む。これには時間とコストがかかる。さらに、上記バルブ部材の挿入には、その挿入に必要な変形のせいで、上記バルブ部材を損傷する危険性がある。
【0068】
従来の方法と比較して、本発明の方法は、上記バルブ部材がオーバーモールドによってその場(in situ)で形成されるので、その挿入のために別個のステップを必要としないことから、より時間効率がよく、よりコスト効率がよい。さらに、本発明による方法を用いることにより、上記バルブ部材を損傷するリスクが低減される。そのため、本発明により、欠陥の発生が減少し、製造物責任が強化される。
【0069】
本発明によるキャップは、流体容器用のキャップである。特に、上記キャップは、医療用流体のための容器用のキャップである。上記キャップは、(i)本体と、(ii)第1のポートと、(iii)第2のポートとを備える。上記本体は、容器本体の容器開口に密に接続されるようになっている容器接続部分を備える。上記第1のポートは、ポートハウジングを備える。上記第1のポートは、さらに弾性シール部材を含み、上記弾性シール部材は、上記ポートハウジング内に収容され、上記ポートハウジングを密に閉じる。上記キャップは、第2のポートをさらに備える。上記第2のポートは、本発明によるバルブを備える。
【0070】
好ましくは、上記弾性シール部材は、エラストマ材料を含み、またはエラストマ材料で作られている。
【0071】
上記キャップは、容器本体、すなわち、例えばボトルのような、開口を持つ中空の本体に接続されるようになっている。ボトルなどは容器と呼ばれることもあるが、本発明の文脈では、「容器」という表現がキャップ付き装置に使用されるため、本明細書では「容器本体」と呼ばれる。したがって、容器本体とその容器本体に接続されるキャップとの組立品が、「容器」または「流体容器」と呼ばれる。上記キャップを上記容器本体に接続するために、上記キャップの上記容器接続部分は、「口」と呼ばれる上記容器本体の開口に接続される。上記キャップと上記容器本体との接続は、例えば、上記キャップの上記接続部分を、ネック部分などの上記口を画定する上記容器本体の壁部分に固定することによって達成され得る。上記キャップを上記容器本体に接続するためには、例えば溶接、接着、および/または、ねじ止めなどの、様々な技術が使用され得る。上記口は、上記容器本体の内部へのアクセスを可能にする。上記口とは別に、上記容器本体はさらなるアクセス部位を含んでいてもよい。上記キャップの上記容器接続部分と上記容器本体の上記開口の部分の形状は相補的であり、それによって、上記容器と上記キャップとの間に流体密な接続が好ましく存在する。
【0072】
上記キャップの上記接続部分は、上記容器本体に接続された中間部分、特に成形された移行部に固定されてもよい。例えば、このような移行部は、その移行部の一方の側が可撓性バッグに接続され、他方の側が上記キャップに接続され得る。上記キャップは、一方の側に、マッチングする受取り遠位部分を有する、ベースポートに溶着されるように意図された実質的に楕円形の接続部分を有し、他方の側に、バッグのプラスチックフィルムの内側に溶着されるべき、アーモンド形の近位部分を有していてもよい。
【0073】
好ましくは、上記第1のポートの上記弾性シール部材は、穿刺可能な隔壁として形成される。隔壁は、典型的には、ゴムまたは他のエラストマ材料のような弾性材料を含む閉鎖体である。上記隔壁は、輸液セットの中空のスパイクのようなピアス装置によって突き刺され(すなわち、貫通され)得る。そのようなピアス装置は、「穿刺装置(puncture device)」とも呼ばれ得る。上記隔壁は第1の開口をシールする。すなわち、通常の使用条件下では、上記隔壁がピアス装置によって突き刺されていなければ、流体は上記第1の開口を通して流れない。上記隔壁が中空のピアス装置によって突き刺されている場合、流体は上記中空のピアス装置内のチャネルを通して流れることができる。ここで、ピアス部位における上記隔壁の材料は、上記ピアス装置の外面に対して密接するのが好ましい。それによって、流体は上記ピアス装置と並んで流れることはなく、専ら上記ピアス装置の上記チャネルを通して流れる。好ましくは、隔壁は自己シール性である。すなわち、少なくとも上記隔膜が或る最大径までのピアス装置によって突き刺された場合には、上記ピアス装置によって上記隔壁の材料に形成されたチャネルは、上記ピアス装置が上記隔壁から引き抜かれた後に自動的に閉じる。この自己シール機能は、例えば適切な弾性材料を選択することによって達成され得る。上記自己シール性は、「再シール性」とも呼ばれ得る。
【0074】
特に、上記第1のポートは投与ポートである。ここで、好ましくは、上記弾性シール部材は、流体容器の内部と投与装置との間の流体接続が提供されるように、輸液セット、輸血セット、および移送装置からなる群から選択された投与装置のスパイクによって突き刺されるようになっており、より好ましくは、上記輸液セットがISO 8536-4に従った輸液セットであり、上記輸血セットがISO 1135-4に従った輸血セットであり、上記移送装置がISO 22413に従った移送装置である。これは、キャップが、従来の輸液セットのような従来の装置を使用する輸液または輸血療法のための流体容器のキャップとして特に適していることを保証する。
【0075】
本発明によるバルブを構成する第2のポートは、無針ポートであり、好ましくは、流体容器の内部と、流体操作装置、好ましくは雄コネクタを有するシリンジ、より好ましくはISO 80369シリーズの規格の任意のサブパートに従った雄コネクタ、最も好ましくはISO 80369-7に従った雄ルアーコネクタ若しくはISO 80369-6に従った雄コネクタとの間の流体接続を提供するようになっている投薬ポートである。これは、上記キャップが、針のない従来のシリンジのような従来の流体操作装置を用いた薬剤混注の可能性を有する輸液または輸血療法のための流体容器のキャップとして特に適していることを保証する。
【0076】
代替的または追加的に、上記バルブハウジングは、上記本体と一体的に形成される。これは、製造を簡素化し、上記バルブハウジングが残りの本体から不用意に外れないように、上記バルブハウジングが確実に固定されることを保証する。
【0077】
代替的または追加的に、上記投与ポートハウジングは、上記本体と一体的に形成される。これは、製造を簡素化し、上記ポートハウジングが残りの本体から不用意に外れないように、上記ポートハウジングが確実に固定されることを保証する。
【0078】
キャップの好ましい実施形態によれば、上記第1のポートの上記弾性シール部材も、オーバーモールドによって形成される。これは、上述のバルブ部材のオーバーモールドと同じ利点を実現することを可能にする。オーバーモールドで形成されない場合、上記弾性シール部材は、例えば、上記第1のポートハウジングに挿入され、好ましくは、所定の位置に固定される。例えば、レーザ溶接が、上記弾性シール部材を所定の位置に固定するために使用され得る。
【0079】
上記第1のポートの上記弾性シール部材もオーバーモールドによって形成される場合、上記バルブ部材と上記弾性シール部材を単一の弾性部材として、すなわちオーバーモールドによって形成された単一の体積の弾性材料として形成することが可能である。これにより、上記バルブ部材と上記弾性シール部材との両方が1ステップで形成され得るので、上記キャップの製造が特に簡単になる。
【0080】
上記バルブ部材と上記弾性シール部材を単一の弾性部材として形成するために、例えば、或る体積の弾性材料をオーバーモールドによって形成し、上記体積の一部分がバルブ部材として働き、上記体積の別の部分がシール部材として働くようにすることが可能である。また、上記バルブ部材と上記シール部材がスプルーで連結された単一の体積として形成されることも可能である。上記スプルーは、上記バルブ部材を形成する部分と弾性シール部材の部分とを互いに接続する。そのようなスプルーは、単一の注入点を使用することを可能にし、金型の建設コストおよび運用コストを低減する。
【0081】
好ましくは、上記ポートハウジングの外径は、上記第1のポートの良好なオーバーモールド性と良好な使用性のために、20mm以下、より好ましくは15mm以下である。
【0082】
好ましくは、上記弾性シール部材または第1のポートは、上記ポートハウジングの遠位部分によって部分的に覆われている。これは、ピアス装置の接続および取り外し時の上記弾性シール部材の変形、すなわち接続および取り外しに必要な力、並びに、上記弾性シール部材の再シール能力を制御するのに役立つ。上記ポートハウジングの遠位部分によって覆われていない上記弾性シール部材の遠位の表面部分は、上記弾性シール部材の「遠位面」と呼ばれる。
【0083】
好ましくは、上記弾性シール部材の外面は、上記ポートハウジングの縁面と実質的に面一であるか、または完全に面一である。
【0084】
上記弾性シール部材(隔壁)の外面は、上記キャップが容器本体に接続されたときに外側を向く面、すなわち上記容器の内側を向かず、上記ハウジングにも接しない面である。上記外面は、上記弾性シール部材の「遠位面」とも呼ばれ得る。特に容器キャップ用の場合、「遠位」および「近位」という表現は、上記キャップが上記容器本体に接続された組立状態において、上記容器本体の内部に近い、または、上記容器本体の内部から遠いことを意味する。
【0085】
上記ポートハウジングの縁面は、特にオーバーモールドによって形成される弾性シール部材が収容される上記キャビティの遠位開口を画定する上記ポートハウジングの表面の部分である。したがって、上記縁面は上記開口の境界を画定する。好ましい実施形態では、上記ポートハウジングは、上記キャップの残りの本体から突起する中空の突起部として形成されている。上記弾性シール部材は、上記中空の突起部内に収容されている。遠位-近位方向に見られた上記ポートハウジングの縁面は、上記突起部の前面である。
【0086】
上記弾性シール部材の外面と上記ポートハウジングの縁面との2つの面が連続的に合わさり、それによって、上記弾性シール部材の全周に沿って、上記弾性シール部材の表面と上記ポートハウジングの表面とが出会う領域に段差が形成されない場合、上記弾性シール部材の外面は、上記ポートハウジングの縁面と完全に面一である。これは、上記弾性シール部材の外面と上記ポートハウジングの縁面とが整列していることを意味する。1mm以下、好ましくは0.5mm以下、より好ましくは0.25mm、最も好ましくは0.1mm以下の段差が形成されている場合、上記弾性シール部材の外面は上記ポートハウジングの縁面と実質的に面一である。言い換えれば、上記弾性シール部材の外面と上記ポートハウジングの縁面とのどちらの面も他方の面に対して突出または後退していない場合、上記弾性シール部材の外面は、上記ポートハウジングの縁面と完全に面一である。問題となっている面(複数)の一方が他方の面に対して、僅かなオフセット(1mm以下)だけ突出または後退している場合、上記弾性シール部材の外面は、上記ポートハウジングの縁面と実質的に面一である。
【0087】
上記弾性シール部材の外面と上記ポートハウジングの縁面とのそのような整列のせいで、上記弾性シール部材の消毒プロセスがより容易かつ安全になる。したがって、これは、上記バルブ部材の外面と上記バルブハウジングの縁面との面一の整列におけるのと同様の利点が実現されることを可能にする。
【0088】
消毒効率に関しては、上記弾性シール部材の外面と上記ポートハウジングの縁面とが完全に面一な態様で配置されていることが好ましい。しかし、例えば0.1mm~0.2mmの僅かなオフセットを有する実質的に面一の配置のみでも足り、またはオーバーモールドのプロセスの堅牢性に関して好ましい場合さえもある。そのような小さなオフセットは、存在するとしても、消毒効率に関しては寛容され得る。
【0089】
上記キャップの同じベース部(本体)に両方のポートが設けられているせいで、上記容器本体は1つの部分にのみ接続すればよいので、流体容器の効率的な製造が可能になる。さらに、上記本体は異なる容器の口の形状に適合され得る。特に、本発明によれば、上記キャップの効率的な製造が可能であるから、このことが言える。
【0090】
本発明によるキャップのバルブは、上記キャップに接続された容器本体の内部と流体操作装置との間の接続を提供する。この場合、流体操作装置は、液体などの流体を上記容器から取り出すことができる装置、または、流体を上記容器に加えることができる装置である。上記流体操作装置は、例えば、針が取り付けられていないシリンジであってもよい。上記バルブ開口は、上記流体操作装置の雄コネクタ部に接続されるように構成されている。それにより、上記キャップに接続された上記容器本体の内部と上記流体操作装置との間で流体の移動が可能となる。好ましくは、上記流体操作装置の上記雄コネクタ部と上記バルブ開口との間の接続は、流体密である。すなわち、流体は、上記流体操作装置の上記雄コネクタ部を介して専ら上記バルブを通して流れることができる。
【0091】
好ましくは、上記バルブ開口は再シール可能である。すなわち、上記流体操作装置の取り外し後、上記バルブ開口は自動的に閉じ、それによって、上記バルブ部材が上記バルブ開口を再び流体密にシールする。
【0092】
本発明によるキャップの好ましい実施形態では、上記第1のポートは、投与ポート、すなわち、上記キャップに接続された上記容器本体から患者に投与されるべき液体を引き出すためのポートである。例えば、弾性シール部材は、輸液セット、輸血セット、移送装置などの投与装置のスパイクによって突き刺されるようになっている。上記スパイクによって上記弾性シール部材を突き刺すことによって、上記キャップに接続された容器本体の内部と上記投与装置との間の流体接続が確立される。
【0093】
追加的または代替的に、上記キャップのさらに好ましい実施形態では、上記第2のポートは、無針ポート、すなわち、針または同様の装置を備えていないシリンジとの流体接続を行うことができるポートである。言い換えれば、上記第2のポートは、この第2のポートを介した流体接続を行うために、針または他の装置によって突き刺されることが意図されていない。上記キャップに接続された上記容器本体の内部と、上記シリンジまたは他の流体操作装置との間の流体接続は、双方向流体接続であること、すなわち、流体は、上記バルブ開口を通して上記容器本体内または容器本体外のいずれかに流れ得ることが好ましい。
【0094】
追加的または代替的に、さらに好ましい実施形態では、上記弾性シール部材の外面(遠位面)は、実質的に平坦であるか、または全体的に平坦である。ここで、上記外面は、その高さが上記外面の最大直径の10%未満である突起および/または凹部を有する場合、実質的に平坦であると考えられる。例えば、ユーザが上記弾性シール部材を突き刺すべき位置を示すために、上記外面がそのような凹部を有することが考えられる。
【0095】
好ましくは、上記弾性シール部材の直径(それが突き刺される方向に対して横方向に測られる)は、上記弾性シール部材に突き刺さされるスパイクなどのピアス装置とポートハウジングとの間の空間の弾性材料が、上記ピアス装置の挿入時に絞られる必要がないように、弾性シール部材の直径は十分に大きい。これにより、挿入されるピアス装置に対する高い摩擦を防止し、上記ピアス装置の挿入を容易にすることができる。
【0096】
好ましくは、上記弾性シール部材の直径(それが突き刺される方向に対して横方向に測られる)は、上記ピアス装置を保持するのに十分な力が確保されるように、十分に小さい。
【0097】
追加的または代替的に、さらに好ましい実施形態では、上記バルブ部材の直径は、このバルブ部材が突き刺される方向に対して横方向に測られて、少なくとも8mm、好ましくは少なくとも9mm、および/または、13mm以下、好ましくは11mm以下である。
【0098】
上記弾性シール部材は、非円形の形状を有してもよい。例えば、上記弾性シール部材は、楕円形であってもよい。その場合、上述の好ましい直径は、非円形形状のより小さい方の寸法、例えば楕円の短軸として理解される。
【0099】
好ましくは、上記弾性シール部材の厚さ(それが突き刺される方向に測られる)は、十分な再シール性および上記ピアス装置を保持するための十分な力を確保し、上記ピアス装置の挿入のための過剰な力を回避するように選択される。
【0100】
追加的または代替的に、さらに好ましい実施形態では、上記弾性シール部材の厚さは、この弾性シール部材が突き刺される方向に測られて、1.5mm以上、好ましくは2mm以上、および/または、5mm以下、好ましくは4mm以下である。
【0101】
好ましくは、上記弾性シール部材の材質は、十分な再シール性および上記ピアス装置を保持するための十分な力を確保し、上記ピアス装置の挿入のための過剰な力を回避するように選択される。
【0102】
好ましくは、上記バルブ部材はT字形の断面を有する。そのようなバルブ部材は、上記バルブハウジング内のキャビティ全体を満たしていない。その代わりに、遠位バルブ部分のみが上記バルブハウジング内の断面にわたって延在し、従ってこの遠位側でバルブハウジングを閉鎖し、それによって、(上記バルブが開動作状態にあることを条件として)流体が上記バルブ開口のみを通過できる。すなわち、例えばディスク状の形状を有する上記遠位部分は、上記ハウジングの内径を満たし、上記バルブハウジングに対して円周方向に途切れることなく接着されている。このようにして、上記バルブ部材の周りへの漏れが防止され、接続時のせん断に対する抵抗が改善される。上記バルブ部材の近位部分は上記遠位部分に接続されている。ここで、上記近位部分は上記バルブハウジングの直径方向に延びるリッジの形態を有することができる。上記リッジに対して垂直な平面での断面では、上記バルブ部材のT字形状が見える。とりわけ、そのようなT字形状は、優れた再シール性を有する長いスリットを提供し、同時に材料を節約することを可能にする。
【0103】
追加的または代替的に、さらに好ましい実施形態では、上記弾性シール部材は、少なくとも1種の熱可塑性エラストマを含み、より好ましくは、スチレン系ブロック共重合体、熱可塑性ポリオレフィンエラストマ、熱可塑性バルカニゼート、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性コポリエステル、および熱可塑性ポリアミドからなる群から選択された少なくとも1種の熱可塑性エラストマを含む。
【0104】
追加的または代替的に、さらに好ましい実施形態では、上記弾性シール部材は、25ショアAと55ショアAとの間の硬度を有する弾性材料を含む。
【0105】
追加的または代替的に、上記弾性シール部材は、電磁放射線を吸収可能な顔料および/または染料を含む弾性材料を含んでいる。電磁放射線を吸収する能力を有する物質の存在は、例えば、上記弾性シール部材を上記ポートハウジングに接続するためのレーザ溶接の使い勝手を向上させ得る。しかしながら、上記弾性シール部材を上記ポートハウジングに接続するための別個のステップを必要としないように、上記弾性シール部材もオーバーモールドによって形成されることが好ましい。
【0106】
追加的または代替的に、さらに好ましい実施形態では、上記バルブ部材の直径(上記流体操作装置が上記第2のポートに接続される方向に対して横方向に測られる)は、13mm以下、好ましくは11mm以下、および/または、8mm以上、好ましくは9mm以上である。上記バルブハウジングが雄ねじ構造を備える本発明の実施形態では、上記バルブハウジングの直径、ひいては上記バルブ部材の直径は、接続が意図される上記流体操作装置の対応する内ねじの直径によって制限される。
【0107】
上記バルブ部材は、非円形の形状を有してもよい。例えば、上記バルブ部材は、楕円形であってもよい。その場合、上述の好ましい直径は、非円形形状のより小さい方の寸法、例えば楕円の短軸として理解される。
【0108】
追加的または代替的に、さらに好ましい実施形態では、上記バルブ部材の長さ(上記流体操作装置が上記第2のポートに接続される方向で測られる)は、3mm~12mmであり、好ましくは5mm~10mmである。ここで、上記長さは、少なくとも上記流体操作装置の接続解除後の密閉性を確保する最小の長さとなるように選択され得る。最大長さは上記雄コネクタの長さに依存する。上記雄コネクタのルアー形状及び類似の設計では、通常、3mmと12mmとの間の長さが適切であろう。他の設計のコネクタでは、異なる長さがより適切かもしれない。
【0109】
追加的または代替的に、さらに好ましい実施形態では、上記本体は、ポリオレフィン、好ましくはポリプロピレンおよびポリエチレンのうちの少なくとも1つ、並びに/または、エンジニアリングプラスチック、好ましくはポリアミド、ポリカーボネートおよびポリスチレンのうちの少なくとも1つを含む。
【0110】
追加的または代替的に、さらに好ましい実施形態では、上記本体は、少なくとも700MPaの引張弾性率および/または曲げ弾性率を有するポリマ材料を含む。
【0111】
追加的または代替的に、さらに好ましい実施形態では、上記バルブ部材は、上記流体操作装置との流体密な接続を提供し、特に、上記流体操作装置の流体密な接続および接続解除が複数回可能であるような、解除可能な接続を提供する。
【0112】
上記第2のポートの上記バルブハウジングは、ねじ構造、好ましくは雄型ルアーロック構造との接続に適合したねじ構造を備えてもよい。
【0113】
好ましくは、上記バルブハウジングの、上記ねじ構造と適合する部分は、少なくとも3.5mmの長さ(軸方向、すなわち遠位-近位方向で測られる)を有し、それによって、上記ねじ構造は、上記ロック構造の安全な接続を確保するのに十分な長さを有し、使用性を高める意味で、上記ロック接続を閉じるのに便利な回転数のための十分な短さを有する。ねじ部分の長さは、接続が意図される流体操作装置の設計に応じて選択され得る。雄コネクタのルアーロック形状および類似の設計のためには、通常、3.5mmから5.5mmの間の長さが適切である。他の設計のコネクタでは、異なる長さがより適切かもしれない。
【0114】
好ましくは、上記バルブハウジングの上記遠位部分、すなわち、ねじ構造を備え得る部分は、18mm以下、より好ましくは13.5mm以下の直径を有する。
【0115】
好ましくは、上記キャップの高さは、上記キャップ1が接続される上記容器本体200の口に対して横方向に測られて、12mmと50mmとの間、より好ましくは14mmと30mmとの間である。このような高さは、ユーザーフレンドリな取り扱いと、上記キャップ1内の残留容積の低さと、輸送および保管時のスペース要件との妥協点として理解され得る。
【0116】
好ましくは、上記第1のポートの近位-遠位方向と上記第2のポートの近位-遠位方向とは、互いに平行ではなく、鋭角、より好ましくは15度と45度との間の角度、さらにより好ましくは25度と35度との間の角度を囲んでいる。言い換えれば、上記第1のポートと上記第2のポートとは、好ましくは角度をなして配置されている。上記第1のポートと上記第2のポートの角度が付けられた配置は、ピアス装置、流体操作装置がそれぞれ上記第1のポート、上記第2のポートに同時に接続されることを可能にするか、または少なくとも容易にする。上記バルブ部材を、および任意に上記弾性シール部材を、オーバーモールド技術によって形成することは、上記ポート(複数)の角度が付けられた配置が意図されている場合に有利である。その理由は、異なる方向(複数)に予め作られた弾性部材(複数)を挿入するのは特に煩わしいからである。
【0117】
本発明によるキャップを備えた容器が患者に液体を投与するために使用される場合、上記容器と上記キャップは、通常、上記キャップが底部に位置するように方向付けられる。その結果、上記第1のポートの近位-遠位方向は垂直であるのに対し、上記第2のポートの近位-遠位方向は傾斜している。後者の傾いた方向は、ユーザが、例えばシリンジを使用して上記第2のポートを通して物質を投与することを、より容易にし得る。
【0118】
任意選択で、剥離フォイルが、上記キャップの上記弾性シール部材の頂部および/または上記バルブ部材の頂部に、特にその剥離フォイルを上記ポートハウジングまたは上記バルブハウジングにそれぞれ溶接することによって、配置される。そのような剥離フォイルは、それぞれ上記弾性シール部材および上記バルブ部材の遠位端を覆う。
【0119】
上記剥離フォイルは、それぞれ、ピアス装置が上記弾性シール部材を通して突き刺される前、および、雄コネクタが上記バルブ開口内に挿入される前に、取り除かれる。上記剥離フォイルはそれぞれのポートを密封し、保護し、特に、タンパー証拠を提供する。その理由は、上記剥離フォイルは、それぞれの弾性部材が損傷しているか、または、ピアス装置もしくは雄コネクタにそれぞれ既に接続されたことがあるか否か、を容易に判断できるようにするからである。さらに、上記剥離フォイルは、それぞれのポートにさらなる密閉性を提供し、また、例えばキャップが機械的応力を受けた場合に、そのポートの機械的一体性を確保するのを助ける。切離し部品と比較して、剥離フォイルは損傷を受けにくい。これは、その剥離フォイルの平坦な構造によるものである。さらに、剥離フォイルに必要な材料は、より少ない。さらに、剥離フォイルの使用は、容器をより短くすることにつながる。これは、保管および輸送に有利である。
【0120】
本発明による流体容器は、特に医療用流体のための流体容器であって、
- 容器本体開口部分を有する中空の容器本体と、
- 本発明によるキャップと
を備える。
【0121】
上記キャップの本体は、上記開口部分と液密に接続されている。
【0122】
上記流体容器は、本発明の実施形態のいずれか1つのキャップを備えていてもよい。
【0123】
本発明による更なる方法は、流体容器用、特に医療用流体のための容器用のキャップを製造する方法である。製造されるべきキャップは、本体を備える。上記キャップは、さらに、ポートハウジングと弾性シール部材とを有する第1の流体ポートを備える。上記キャップは、さらに、バルブハウジングと弾性バルブ部材とを備えたバルブを有する第2の流体ポートを備える。上記方法は、
A) 上記本体、上記ポートハウジング、および上記バルブハウジングを製造または提供するステップであって、好ましくは、上記ポートハウジングと上記バルブハウジングの少なくとも一方が一体的に形成された上記本体を製造または提供するステップと、
B) 上記弾性シール部材を上記ポートハウジング内にオーバーモールドするステップと、
C) 上記バルブ部材を上記バルブハウジング内にオーバーモールドするステップと、
D) 任意に、上記シール部材の頂部および/または上記バルブ部材の頂部に、剥離フォイルを配置するステップと
を含む。
【0124】
好ましくは、ステップBおよびCは、少なくとも部分的に同時に行われる。これは、例えば時間効率を向上させ得る。さもなければ、ステップCをステップBの前に実施してもよいし、その逆でもよい。
【0125】
より好ましくは、上記シール部材と上記バルブ部材は、任意に少なくとも1つのスプルーによって接合された単一の体積として形成される。
【0126】
好ましい実施態様では、前述のさらなる方法は、上記バルブ部材に、好ましくは潤滑されたブレードを用いて、スリットを切る追加のステップを含む。
【図面の簡単な説明】
【0127】
本発明の他の特徴および好都合な点は、添付図面を援用した例示的な実施形態の説明の中に見出され得る。
【
図1】本発明の第1の実施形態によるバルブの概略側面図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態によるバルブの、
図1の見方に対して90°回転させた見方での概略側面図である。
【
図3】
図3(a)は、本発明の第1の実施形態によるバルブの概略上面図である。
図3(b)は、本発明の第1の実施形態によるバルブの概略底面図である。
【
図4】
図4(a)は、本発明の第1の実施形態によるバルブを斜め上方から見た斜視図である。
図4(b)は、本発明の第1の実施形態によるバルブを斜め下方から見た斜視図である。
図4(c)は、本発明の第1の実施形態によるバルブを斜め下方から見た更なる斜視図である。
【
図5】上記第1の実施形態によるバルブの、
図1に示された平面A-Aにおける概略断面図である。
【
図6】上記第1の実施形態によるバルブの、
図2に示された平面C-Cにおける概略断面図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態によるバルブの概略側面図である。
【
図8】本発明の第2の実施形態によるバルブの、
図7の見方に対して90°回転させた見方での概略側面図である。
【
図9】
図9(a)は、本発明の第2の実施形態によるバルブの概略上面図である。
図9(b)は、本発明の第2の実施形態によるバルブの概略底面図である。
【
図10】
図10(a)は、本発明の第2の実施形態によるバルブを斜め上方から見た斜視図である。
図10(b)は、本発明の第2の実施形態によるバルブを斜め下方から見た斜視図である。
図10(c)は、本発明の第2の実施形態によるバルブを斜め下方から見た更なる斜視図である。
【
図11】上記第2の実施形態によるバルブの、
図7に示された平面A-Aにおける概略断面図である。
【
図12】上記第2の実施形態によるバルブの、
図8に示された平面C-Cにおける概略断面図である。
【
図13】本発明のさらなる実施形態によるキャップの概略断面図である。
【
図14】切断面に沿って2つの部分に切断された、
図13に示された実施形態によるキャップの上部を、斜め下方から示す概略斜視図である。
【
図15】本発明のさらなる実施形態による流体容器の概略断面図である。その容器は、
図13および
図14に示された実施形態によるキャップを備える。
【
図16】
図16(a)は、さらなる実施形態によるキャップの第2ポートの概略斜視かつ部分的に半透明の図である。
図16(b)および
図16(c)は、そのキャップの第2シール部材を示す斜視図である。
【
図17】
図17(a)は、さらなる実施形態によるキャップの第2ポートの概略斜視かつ部分的に半透明の図である。
図17(b)および
図17(c)は、再シール挙動をさらに改善するための追加のリブ(523)が設けられた、そのキャップの第2シール部材を示す斜視図である。
【
図18】
図18(a)は、さらなる実施形態によるキャップの第2ポートの概略斜視かつ部分的に半透明の図である。
図18(b)および
図18(c)は、再シール挙動をさらに改善するための追加のリブ(523)が設けられた、そのキャップの第2シール部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0128】
図1~
図6は、本発明の第1の実施形態によるバルブ5を異なる図で示している。これらの図を参照した説明に関連して、「上(top)」、「下(bottom)」、「上方(above)」、および「下方(below)」といった表現は、一般性を損なうことなく、
図1、
図2、
図5、および
図6に示された向きを指す。また、上側は「遠位側(distal side)」、下側は「近位側(proximal side)」とも称される。
【0129】
バルブ5はバルブハウジング51を備えている。好ましくは、上記ハウジングは、ポリオレフィンおよび/またはエンジニアリングプラスチックのようなプラスチック材料を含み、特に、ポリオレフィンとしてポリエチレンおよび/またはポリプロピレンが使用される。
【0130】
図1~
図6に示す実施形態では、バルブハウジング51は、実質的に円筒状の下側部分と、実質的に円筒状の内壁を有する上側部分とを有している。上記上側部分は、上記下側部分よりも小さい直径を有している。上記下側部分と上記上側部分は、先細になった中間部分によって接続され、それによって、バルブハウジング51は閉じた側壁を有するが、頂部と底部で開いている。この形状は例示に過ぎない。図示されていない更なる実施形態では、上記バルブハウジングは例えば非円形の直径を有していてもよい。バルブハウジングの具体的な形状にかかわらず、バルブハウジング51が閉じた側壁を有し、頂部および底部の側で少なくとも部分的に開放され、それによって、バルブハウジング51は開放された側(複数)の間に通路を画定するようになっていることが好ましい。
【0131】
バルブハウジング51の底部は、バルブ5を介して装置への流体の出し入れが可能になるように、機器(apparatus)または容器の任意の装置に接続され得る。
【0132】
バルブ5は、バルブ部材52をさらに備えている。バルブ部材52はバルブ開口522を備えている。
図1~
図6において、バルブ5は閉動作状態で示されている。この状態において、バルブ開口522は、バルブ部材52がバルブを塞ぐように、すなわち、流体がバルブハウジング51によって画定された通路を通って流れるのを阻止するように、閉じられている。
【0133】
図示されていない更なる動作状態(「開動作状態」)では、バルブ開口522は開いており、バルブハウジング51によって画定された通路を流体が流れるようになっている。ここで、開いているバルブ開口522の断面積は、上記通路の断面積よりも小さくてもよい。
【0134】
第1の実施形態では、バルブ部材52はバルブハウジング51内のキャビティを満たしていない。その代わりに、遠位バルブ部分52aのみがバルブハウジング51内の断面領域にわたって延在し、したがって、(バルブ5が開動作状態にあることを条件として)流体がバルブ開口522のみを通過できるように、この側でバルブハウジング51を閉鎖する。すなわち、
図6に円板状部分として示されている遠位部分52aは、ハウジング内径を満たし、上記バルブハウジングに周方向に途切れることなく結合されている。これにより、バルブ部材周囲の漏れが防止され、接続時のせん断に対する抵抗が改善される。バルブ部材52の近位部分52bは遠位部分52aに接続されており、近位部分52bはバルブハウジング51の直径方向に延びるリッジの形態になっている。上記リッジに垂直な平面における断面において、バルブ部材52はT字形状を有する。そのようなT字形状は、特に、再シール性に優れた長いスリットを設けることを可能にし、同時に材料を節約することを可能にする。
【0135】
図示されていない更なる実施形態では、バルブ部材52は異なる形状を有する。バルブ部材52は、例えば、バルブハウジング51内のキャビティ全体を充填していてもよい。
【0136】
バルブ部材52は、バルブ開口522を備えている。第1の実施形態の場合、バルブ開口522は、バルブ部材に形成されたスリットである。上記スリットは、幅wを有する(
図5)。上記スリットは、バルブ部材の軸方向(
図1、
図2、
図5、
図6の上下方向)の全長にわたって延びている。上記スリットの遠位端または近位端は、
図3(a)~
図4(c)に見える。上記スリットは、
図5の断面図に示す平面A-A内にある。したがって、上記スリットは、
図6の断面図に示す平面C-Cに対して垂直である。
【0137】
好ましくは、バルブ開口522は、シリンジのコーン等の流体操作装置の雄コネクタを受容するようになっている。すなわち、上記雄コネクタは、軸方向、すなわち遠位側から近位側への方向(「遠位-近位方向」)にバルブ開口に挿入され得る。
【0138】
適切な雄コネクタを挿入することにより、バルブ5は閉動作状態から開動作状態に切り替わる。すなわち、上記雄部材が上記スリットの壁を広げる。上記スリットの壁は、閉動作状態では互いに接触している。
【0139】
バルブ部材52は、オーバーモールドによって形成されている。すなわち、バルブ部材52の材料は、成形技術を用いてバルブハウジング51内に注入されている。
【0140】
第1の実施形態によれば、バルブ部材52の遠位面521は、バルブハウジング51の遠位端よりも、すなわち上記バルブハウジングの縁面512よりも、さらに突出している。このようにして、遠位部分52aの上側部分は、バルブハウジング51の開放された遠位側の頂上に突出したキャップを形成する。特に
図5及び
図6から分かるように、そのカバーは、例えばバルブ部材52をバルブハウジング51内に追加的にアンカー固定し、そのバルブ部材を所定の位置に保持するために、バルブハウジング51の遠位縁面512上に重なってもよい。しかしながら、このような遠位縁面へのオーバーラップは任意である。
【0141】
図1~
図6に示すように、上記バルブハウジングは雄ねじ構造53を備えている。ねじ構造53は、雄コネクタに配置された対応するねじ構造と係合するようになっている。ねじ構造53と対応するねじ構造は、上記バルブと上記雄コネクタとの間の接続をロックする手段を提供する。ねじ構造53の設計は、バルブ5への接続が意図される流体操作装置または他の装置の対応するねじ構造の設計に依存する。好ましくは、ねじ構造53は、ISO 80369シリーズの規格のサブパートのいずれかに従って設計される。なぜなら、これらの規格に従った接続構造は、医療分野で頻繁に使用されるからである。
【0142】
図示されていない本発明のさらなる実施形態によれば、対応するロック構造を有する雄コネクタとの接続をロックするための異なる構造、例えばスナップ接続のための手段が提供される。図示されていない本発明のさらなる実施形態によれば、接続をロックするための構造が全く設けられておらず、その結果、上記雄コネクタは、上記バルブ部材によって及ぼされる力のみによって所定の位置に保持される。その力は、多くの用途に十分であり得る。
【0143】
バルブ部材52は、バルブ開口522を備え、好ましくは、上記バルブ部材およびバルブ開口522は、針が取り付けられていないシリンジなどの流体操作装置の対応する雄コネクタとの流体密な接続を提供するように構成される。
図1から
図6に示す実施形態のバルブ開口522は、軸方向に沿った切断面内の単一のスリット522によって形成されている。図示しない代替的な実施形態では、切断面が軸線に沿って互いに交差する複数のスリットが設けられてもよい。軸方向に直交する断面において、切り口(複数)は十字または星を形成する。さらに、例えばH形状断面または他の形状のバルブ開口も可能である。
【0144】
上記バルブ開口の構成および大きさは、接続が意図される装置の接続部、すなわち上記雄コネクタがどのように形成されるかに依存する。従来のシリンジとの接続が可能にされるならば、上記バルブ開口は、例えば、上記で説明したように、スリット522として形成され得る。
【0145】
好ましくは、バルブ開口522は再シール可能である。すなわち、流体操作装置が取り外された後、バルブ開口522は閉じ、それによって、弾性バルブ部材52がバルブ5を再び流体密に閉じることを保証する。より好ましくは、この再シール性は、流体操作装置が再び数回または何回も接続され、取り外されても保持される。
【0146】
上述した実施形態およびその可能な変更の具体例では、バルブ部材52は、少なくとも1つの熱可塑性ポリマを含み、好ましくは、スチレン系ブロック共重合体、熱可塑性ポリオレフィンエラストマ、熱可塑性バルカニゼート、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性コポリエステル、および熱可塑性ポリアミドからなる群から選択される少なくとも1つのポリマを含む。
【0147】
追加的または代替的に、バルブ部材52は、35ショアAと45ショアAとの間の硬度を有する弾性材料を含む。
【0148】
図7~
図12は、本発明の第2の実施形態によるバルブ5を異なる図で示している。これらの図を参照した説明に関連して、「上(top)」、「下(bottom)」、「上方(above)」、および「下方(below)」といった表現は、一般性を損なうことなく、
図7、
図8、
図11、および
図12に示された向きを指す。また、上側は「遠位側(distal side)」であり、下側は「近位側(proximal side)」である。
【0149】
第2の実施形態によるバルブ5の特徴の大部分は、第1の実施形態によるバルブ5の特徴と等しいので、上記の第1の実施形態の説明を参照されたい。したがって、両方の実施形態に対して同じ参照符号が使用される。さらに、第1の実施形態について説明した変更、例えば、ねじ構造53または可能性のあるその非存在に関する変更は、第2の実施形態の場合にも可能である。
【0150】
第2の実施形態が第1の実施形態と異なる点は、バルブ部材52の遠位面521がバルブハウジング51の遠位端よりも突出しておらず、それによって、遠位面521がバルブハウジング51の遠位縁面512と完全に面一であるか、または実質的に面一である点である。
【0151】
バルブ部材52の遠位面521とバルブハウジング51の縁面512とが連続的に互いに合わさっている場合、これら2つの面は完全に面一である。それによって、バルブ部材52の全周に沿って、バルブ部材52の表面とバルブハウジング51の表面とが互いに出会う領域に、段差が形成されていない。これは、バルブ部材52の外面がバルブハウジング51の縁面512と整列していることを意味する。バルブ部材52の遠位面521とバルブハウジング51の縁面512との間に1mm以下、好ましくは0.5mm以下、より好ましくは0.25mm、最も好ましくは0.1mm以下の段差が形成されている場合、これらの面は実質的に面一である。言い換えれば、どちらの面も他方の面に対して突出または後退していない場合、バルブ部材52の遠位面521は、バルブハウジング51の縁面512と完全に面一である。問題となっている面(複数)の一方が他方の面に対して、僅かなオフセット(1mm以下)だけ突出または後退している場合、バルブ部材52の遠位面521は、バルブハウジング51の縁面と実質的に面一である。
【0152】
バルブ部材52の遠位面521とバルブハウジング51の縁面512とのこのような整列のおかげで、バルブ部材52の消毒プロセスがより容易かつ安全になる。
【0153】
図7~
図12に示す具体的な実施形態では、バルブ部材52の遠位面521とバルブハウジング51の縁面512とは、0.5mm未満の僅かな段差しかないため、実質的に面一である。
【0154】
図13および
図14は、本発明のさらなる実施形態によるキャップの概略図である。キャップ1は、容器本体200の開口201に取り付けられることが意図されている。キャップ1と、キャップが容器閉鎖体として取り付けられる容器本体200とが一緒になって、本発明による容器100を形成する。
図13および
図14に示す実施形態によるキャップ1を含む容器100が、
図15に示されている。
図15に示す容器100は、容器100の一部ではない液体300を収容している。容器本体200の開口201は、容器のネック部として形成されており、そのネック部の軸方向の一部がキャップ1の接続部分3によって取り囲まれている。上記容器本体の開口構造および接続部分の他の構造も、可能である。例えば、接続部分3によって全体が取り囲まれたネック部であってもよいし、または、接続部分3として機能するキャップ1の前面へネックのない開口が、糊、溶着等によって取り付けられてもよい。
【0155】
好ましくは、流体300は、液体薬剤のような医療用流体である。言い換えれば、容器100は、医療用流体を収容するのに適し、医療環境で使用されるのに適していることが好ましい。
【0156】
好ましくは、容器100は、両方のポートが閉鎖状態にある場合、すなわち、投与装置も流体操作装置もそれぞれのポートに接続されていない場合、密に閉鎖される。使用中、例えば静脈内に輸液を投与している間、容器100は、通常、逆さまの向き、すなわち、上記液体300が容器本体200から第1のポート4に接続された投与装置内へ流れることができるように、キャップ1が最も低い位置に配置される。流体操作装置を用いて第2のポート5から容器100の内部に流体を加える場合、一般に、容器100の特定の向きは要求されない。
【0157】
キャップ1は、キャップ1の主要部を構成する本体2を備えている。図示の実施形態では、本体2は、中空の碗状構造体であって、
- 図示の向きで底部側の接続部分3にある開口、および
- ポート4,5(後述)が形成されている部分において、本体上側の高台部分(elevated section)に配置された突起部
を有するものとして示されている。
【0158】
上記高台部分および突起部は、任意である。
【0159】
図示の実施形態では、キャップ1の下部は円形であるが、これは、この実施形態によるキャップ1が、円形の開口201を有する容器本体200に取り付けられることを意図しているからである。キャップ1の下部の形状は、例えば楕円形または角が丸みを帯びた矩形のような、他の形状の開口であってもよい。
【0160】
図示の実施形態では、接続部分3は、キャップ1の内面の先細になった環状の部分であることが示されている。他の実施形態では、上記接続部分は、例えば、円筒状の内面部分、段差を有する内面部分、キャップ1の下縁における前面などを含むことができる。また、キャップ1を容器本体200に接続する際、特に溶接または他の熱を伴うプロセスを使用する場合、接続部分3が変形する可能性もある。
【0161】
キャップは、2つのポート4、5を備えている。第1のポート4は、例えば、投与ポートとして働くことができる。第2のポート5は、例えば、投薬ポートとして働くことができる。
【0162】
キャップ1が容器本体200に接続されている場合、両ポート4、5は、容器100への流体の出し入れのためのアクセスポイントを提供する。
【0163】
ピアス装置および流体操作装置は、本発明による容器の一部ではない。
【0164】
第2のポート5は、本発明によるバルブ5を含むか、またはバルブ5によって構成される。
【0165】
図13は断面図であり、その断面の平面は、スリットとして形成されたバルブ開口522が存在する平面と一致している。このため、そのスリットは、バルブ部材52内でハッチングされた矩形領域として描かれている。
【0166】
好ましくは、バルブハウジング51は、キャップ1の本体2と一体的に形成されている。なぜなら、これで、本体2とバルブハウジング51の両方が、例えば射出成形技術を使用することにより、単一の製造ステップで形成され得るからである。あるいは、バルブハウジング51は一体的に形成されず、その代わりに、上記バルブハウジングの少なくとも一部が、上記キャップの残りの本体に取り付けられる要素として、例えばレーザ溶接によって形成される。バルブ5がキャップ1の一部であることの好ましい特徴に関しては、上記バルブの好ましい特徴および実施形態に関する上記の説明が参照される。
【0167】
第1のポート4は、弾性シール部材42を備えている。この弾性シール部材42は、ポートハウジング41に収容され、ポートハウジング41をシール可能に閉鎖している。
【0168】
図13および
図14に示す実施形態では、ポートハウジング41は、本体2と一体に形成された中空の円筒状の突起部である。ポートハウジング41の上縁、すなわち円形の前面412は、開口411を画定している。
【0169】
さらなる実施形態では、上記円筒状の突起部は、非円形断面、例えば楕円形断面を有する。さらなる実施形態では、上記突起部は円錐形である。
【0170】
さらなる実施形態では、上記ポートハウジングは上記本体と一体的に形成されるのではなく、代わりに、上記ポートハウジングの少なくとも一部は、上記キャップの残りの本体に取り付けられる要素として、例えばレーザ溶接によって形成される。
【0171】
ポートハウジング41内には、弾性シール部材42が収容されている。この実施形態によれば、弾性シール部材42は、輸液セットのスパイクまたは他のピアス装置によって突き刺すことができる突き刺し可能な隔壁42として形成されている。すなわち、隔壁42にピアス装置が突き刺さっていなければ、隔壁42は第1のポート4の開口を閉鎖する。中空のピアス装置が隔壁42を貫通している場合、流体は上記ピアス装置を通って流れることができる。言い換えれば、キャップ1が容器本体200に接続されている場合、隔壁42を貫通したピアス装置は、容器100の流体入口または流体出口として働く。
【0172】
好ましくは、隔壁42は、自己シール性(self-sealing)である。すなわち、ピアス装置によって隔壁42の材料に形成されたチャネルは、上記ピアス装置が隔壁42から引き抜かれた後に自動的に閉じる。
【0173】
好ましくは、隔壁42の大きさは、隔壁42に突き通されるスパイクなどのピアス装置とポートハウジング41との間の空間内の弾性材料が、上記ピアス装置の挿入時にあまり圧迫される必要がないように、隔壁42が突き刺される方向に対して横方向に測られて、十分な大きさである。これにより、挿入される上記ピアス装置に対する摩擦が大きくならず、上記ピアス装置の挿入が容易となる。さらに好ましくは、隔壁42の大きさは、上記ピアス装置を保持するのに十分な力が確保されるように、隔壁42が突き刺される方向に対して横方向に測られて、十分に小さい。
【0174】
追加的または代替的に、さらに好ましい実施形態では、上記隔壁は、その隔壁が突き刺される方向に対して横方向に測られた直径が、少なくとも8mm、好ましくは少なくとも9mm、および/または、13mm以下、好ましくは11mm以下である。
【0175】
好ましくは、隔壁42の厚さ(隔壁42が突き刺される方向で測られた)は、十分な再シール性と上記ピアス装置を保持するための十分な力を確保し、上記ピアス装置の挿入のための過剰な力を回避するように、選択される。追加的または代替的に、さらに好ましい実施形態では、隔壁42の厚さ(隔壁42が突き刺される方向で測られた)は、1.5mm以上、好ましくは2mm以上、および/または、5mm以下、好ましくは4mm以下である。好ましくは、隔壁42の近位面は平坦であるか、丸くされたキャビティまたはパターンを有する。
【0176】
好ましくは、隔壁42は、特にバルブ部材52とともに、次のようにオーバーモールドによって形成される。つまり、一つのオーバーモールド体積として、すなわち、単一の注入点を介して要素42と52の材料を注入することによって、または、2つの独立した体積として、すなわち、少なくとも2つの注入点を介して要素42と52の材料を注入することによって、のいずれかで形成される。このような2つの独立した体積は、任意に、スプルー6によって接続され得る。
【0177】
これに代えて、隔壁42は、オーバーモールドによってその場(in situ)で形成されるのではなく、別個の部品としてポートハウジング41内に挿入され、例えば溶接技術、特にレーザ溶接を使用して所定の位置に固定されてもよい。特に、隔壁42が別個の部品として形成される場合、隔壁42は、この隔壁をポートハウジング41に接続するためのレーザ溶接の使い勝手を向上させるために、電磁放射線を吸収可能な顔料および/または染料を含む材料を含んでいてもよい。
【0178】
具体的な実施形態では、弾性シール部材42は、少なくとも1種の熱可塑性エラストマを含み、より好ましくは、スチレン系ブロック共重合体、熱可塑性ポリオレフィンエラストマ、熱可塑性バルカニゼート、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性コポリエステル、および熱可塑性ポリアミドからなる群から選択された少なくとも1種の熱可塑性エラストマを含む。隔壁42は、最も好ましくは、オーバーモールドによってその場で形成される。
【0179】
追加的または代替的に、さらに好ましい実施形態では、弾性シール部材42は、25ショアAと55ショアAとの間の硬度を有する弾性材料を含む。
【0180】
図13及び
図14に示す実施形態では、弾性シール部材42の外面421(遠位面)は、小さな突起部及び/又は凹部のみを有して実質的に平坦である。任意に、弾性シール部材42は、例えば、上記面421の中央部分に、ユーザが上記弾性シール部材を突き刺すべき位置を示す小さな凹部を有してもよい。
【0181】
図13および
図14に示す実施形態では、ポートハウジング41の開口は、ポートハウジング41の前面によって画定されている。すなわち、上記前面はポートハウジング41の縁面412である。
図13および
図14に示す実施形態では、縁面412は円環状の形状を有する。代替的な実施形態では、上記縁面は異なる形状、例えば楕円環状形状を有してもよい。
図13および14に示す実施形態では、上記縁面は平坦であり、遠位-近位方向、すなわちピアス装置が隔壁42を突き刺すべき方向に対して垂直である。代替的な実施形態では、縁面412は異なる形状および/または異なる向きを有することができる。例えば、丸くされている、および/または、先細になっている(すなわち、遠位-近位方向に対して傾斜している)ことがある。
【0182】
図13および
図14に示す実施形態では、隔壁42の外面421(遠位面)は縁面412と面一である。
【0183】
すなわち、隔壁42の縁面412と遠位面421とは、連続的に互いに合わさっている。それによって、隔壁42の円周に沿って、上記弾性シール部材と上記ポートハウジングとが互いに出会う領域に、段差が形成されていない。
【0184】
代替的な実施形態では、隔壁42は縁面412と完全に面一ではなく、実質的に面一であるだけである。これは、隔壁42の遠位面421と縁面412との間に、1mm以下、好ましくは0.5mm以下、より好ましくは0.25mm、最も好ましくは0.1mm以下の段差しか形成されないことを意味する。
【0185】
弾性シール部材42の頂部には、剥離フォイル44が配置されてもよい。剥離フォイル44は、アルミニウム-プラスチック複合フォイルのようなプラスチックおよび/または金属材料を含むフォイルであってもよい。剥離フォイル44は、ポートハウジング41の縁面412に溶着することによって、キャップ1に接続され得る。
【0186】
この「剥離フォイル(peel-off foil)」という用語は、好ましくは、上記フォイルが、道具の助けを借りずに、ユーザによって手で剥がされ得る、ということを示している。
【0187】
剥離フォイル44は、ピアス装置が弾性シール部材41を貫通する前に取り除かれる。剥離フォイル44は、弾性シール部材42をシールして保護し、特に、タンパー証拠を提供する。その理由は、上記剥離フォイルが、弾性シール部材42が損傷しているか又は既に穿孔されているかを判断容易にするからである。さらに、剥離フォイル44は、第1のポート4にさらなる密閉性を提供し、例えば、キャップ1が機械的応力を受けた場合に、その第1のポート4の機械的一体性を確保するのを助ける。
【0188】
第2のポート5は、同等の剥離フォイル54を有していてもよい。
【0189】
好ましくは、本体2はポリオレフィンを含み、より好ましくはポリオレフィンからなる。特に、本体2のポリオレフィンとして、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびエチレン-プロピレン共重合体からなる群から選択された材料、または、これらから選択された複数の材料の混合物が使用される。
【0190】
図13および
図14に示す実施形態では、第1のポート4についての近位-遠位方向と第2のポート5についての近位-遠位方向は、互いに平行ではなく、鋭角を囲んでいる。言い換えれば、第1のポート4と第2のポート5は、角度をなして配置されている。
【0191】
第1のポート4と第2のポート5が角度をなして配置されていることは、ピアス装置と流体操作装置がそれぞれ第1のポート4と第2のポート5に同時に接続されることを可能にするか、少なくともより容易にする。
【0192】
本発明によるキャップ1を備えた容器100が患者に液体300を投与するために使用される場合、容器100およびキャップ1は、通常、
図15に示す向きと比較して上下逆さまに向けられる。したがって、第1のポート4の近位-遠位方向は垂直であるのに対し、第2のポート5の近位-遠位方向は傾斜している。後者の傾斜の向きは、ユーザが、例えばシリンジを使用して、第2のポート5を通して物質を投与することをより容易にし得る。
【0193】
図16(a)には、さらなる実施形態のバルブ5の斜視図が示されている。バルブハウジング51内の弾性バルブ部材52の部分(複数)が見えるように、バルブハウジング51が半透明態様で示されている。スリット522の遠位端を有する弾性バルブ部材52の遠位端は、右を向いている。
【0194】
図16(b)には、弾性バルブ部材52のみが同じ視点で示されている。
【0195】
図16(c)では、弾性バルブ部材52は、スリット522の近位端が見えるように、別の視点で示されている。
【0196】
上記弾性バルブ部材の遠位部分は、バルブハウジング51の開口に嵌合するように構成されている。
図16(a)~
図16(c)において、上記遠位部分は、例として円板として示されている。
【0197】
弾性バルブ部材52の近位部分は、突起部によって形成され、この突起部は、スリット522を取り囲み、バルブハウジング51の横側面と嵌合するが、スリット522に対して横切っては第2ポートハウジング51を完全には充填しない。結果として生じるキャビティのために、弾性バルブ部材52は、雄コネクタを容易に挿入できるように十分に柔軟である。
【0198】
図17(a)から
図17(c)には、さらなる実施形態のバルブ5および弾性バルブ部材52の斜視図が示されている。これらの図は、
図16(a)から
図16(c)の図に対応する。
【0199】
図17(a)~
図17(c)による実施形態のバルブ5および弾性バルブ部材52は、
図17(a)~
図17(c)による実施形態の弾性バルブ部材52の近位部分に、スリット522を囲む突起部に対して垂直なストレートのリブ523が設けられていることを除いて、
図16(a)~
図16(c)による実施形態のバルブ5および弾性バルブ部材52にそれぞれ対応している。上記リブ(複数)は、バルブハウジング51に嵌め込まれ、雄コネクタが存在しないときには開口を密に閉じた状態に保ち、雄コネクタが開口に挿入されたときには上記開口の内壁を上記雄コネクタに対して密に押し付ける付加的な弾性力を提供する。
【0200】
図18(a)~
図18(c)による実施形態のバルブ5及び弾性バルブ部材52は、上記リブ(複数)がストレートではなく湾曲していることを除いて、
図17(a)~
図17(c)による実施形態のバルブ5及び弾性バルブ部材52にそれぞれ対応している。
【国際調査報告】