(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-12
(54)【発明の名称】液浸液を用いた顕微鏡システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G02B 21/00 20060101AFI20240405BHJP
【FI】
G02B21/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566966
(86)(22)【出願日】2022-04-28
(85)【翻訳文提出日】2024-01-04
(86)【国際出願番号】 IB2022053972
(87)【国際公開番号】W WO2022229906
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516145747
【氏名又は名称】アイディア マシーン デベロップメント デザイン アンド プロダクション エルティーディー
【氏名又は名称原語表記】IDEA MACHINE DEVELOPMENT DESIGN & PRODUCTION LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】トゥルゲマン, シュロモ
(72)【発明者】
【氏名】シーファー, エイタン
(72)【発明者】
【氏名】プラン, イェール
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイツハンドラー, シモン
(72)【発明者】
【氏名】シュワルツ, エフラム
(72)【発明者】
【氏名】アツェイ-プリ, アロン
【テーマコード(参考)】
2H052
【Fターム(参考)】
2H052AA09
2H052AB02
2H052AB03
2H052AC04
2H052AC05
2H052AC33
2H052AC34
2H052AD09
2H052AD20
2H052AD27
2H052AD33
2H052AF14
2H052AF25
(57)【要約】
(i)液浸対物レンズを、オイルや水などの液体を液浸対物レンズに塗布できる場所まで移動させ、(ii)液体が塗布された液浸対物レンズを試料ホルダまで移動させ、試料の画像を取得するために使用することができる顕微鏡デバイスが提供される。対物レンズ上の液体が必要に応じて補充されるように、液体塗布プロセスを自動化することができる。デバイスは、走査を容易にするために自動的にレンズの焦点を合わせることができ、対物レンズを交換するように構成することができる。ハイコンテント/ハイスループット走査におけるこのようなデバイスの使用を含む他の実施形態も記載されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料ホルダ上に配置される試料を観察または撮像するための顕微鏡デバイスであって、
三次元配向を有する第1液浸対物レンズと、
前記試料ホルダを配置することができない第1の液体塗布場所、および前記試料ホルダを配置し得る前記第1の場所とは異なる第2の場所と、
前記第1液浸対物レンズから切り離され、前記第1の液体塗布場所に配置される装置と、
前記第1液浸対物レンズの前記三次元配向を変えることなく、前記第1液浸対物レンズを、第1液体塗布位置から、前記第1液体塗布位置とは異なるX座標およびY座標を有する第2走査位置まで、XYZ座標空間内で移動させるように構成された機構と、を備え、
前記装置は、前記第1液浸対物レンズが前記装置の下の前記第1液体塗布位置に配置されるときに、前記第1液浸対物レンズに液体を塗布するように構成され、
前記試料ホルダが前記第2の場所に配置されるときに、前記第1対物レンズ上の前記第2走査位置の液体が前記試料ホルダと接触する、顕微鏡デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の顕微鏡デバイスであって、コントローラを更に備え、
前記コントローラは、前記第1液浸対物レンズに液体を装填し、前記第2走査位置に配置した後、前記Z軸に沿って前記試料ホルダに向かって移動させると、合焦Z軸位置の決定を可能にする、顕微鏡デバイス。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の顕微鏡デバイスであって、
前記デバイスは、第1液浸対物レンズとは異なる第2液浸対物レンズを備え、
前記機構は、前記第1液浸対物レンズを第1保管場所に配置し、前記第2液浸対物レンズを第2保管場所から取り出し、前記第2液浸対物レンズを前記第1液体塗布位置および前記第2走査位置の少なくとも一方に移動させるようにさらに構成される、顕微鏡デバイス。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか1つに記載の顕微鏡デバイスを提供するステップと、
前記第1液体塗布位置に配置された前記第1液浸対物レンズに液体を塗布するために前記装置を使用するステップと、
前記液体がその上に配置された前記第1液浸対物レンズを前記第2走査位置に移動させるステップと、を備える方法であって、
前記顕微鏡デバイスは、前記第2の走査場所において、試料を含む試料ホルダが前記顕微鏡デバイス内に配置される、方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、
前記第2走査位置において、前記液体をその上に配置した前記第1液浸対物レンズと前記試料ホルダの表面との間の距離が、前記試料ホルダの表面から所定の距離である、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、
前記液体がその上に配置された前記第1液浸対物レンズを前記第2走査位置に移動させる前に、前記表面のZ座標を、前記液体を塗布するために前記装置を使用する前に前記第1液浸対物レンズと交換される空気対物レンズを使用して決定する、方法。
【請求項7】
請求項5に記載の方法であって、
前記液体がその上に配置された第1液浸対物レンズを前記第2走査位置に移動させる前に、前記表面のZ座標が、前記試料を走査するために使用される前記第1液浸対物レンズよりも低い倍率を有する第2液浸対物レンズを使用して決定され、
前記第2液浸対物レンズは、前記装置を使用して前記第1液浸対物レンズに液体を塗布するステップの前に、前記第1液浸対物レンズと交換される、方法。
【請求項8】
請求項5に記載の方法であって、
前記試料ホルダは、特定の型番の市販の試料プレートであり、
前記表面のZ座標は、前記第1液浸対物レンズを前記第2走査位置に移動させる前に、顕微鏡デバイスの寸法と組み合わせて、プレートの下端からの前記特定の型番のプレートの底部の平均距離に基づいて決定される、方法。
【請求項9】
請求項4~請求項8の何れか1つに記載の方法であって、
前記液体がその上に配置された前記第1液浸対物レンズを前記第2走査位置に移動させた後、前記第1液浸対物レンズの合焦位置を決定するステップをさらに備える、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、
前記第1液浸対物レンズの前記合焦位置を決定した後、前記第1液浸対物レンズを前記第1液体塗布位置に戻すステップと、そこに液体を塗布するステップとをさらに備える、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、
前記第1液浸対物レンズの前記合焦位置を決定した後に、前記試料を走査するステップをさらに備え、
前記戻すステップは、前記走査が、以下の(a)~(d)のうち1つ以上を含む閾値に達することに応答して実行される、方法。
(a)前記第1液浸対物レンズが走査中にXY平面内を移動した距離の関数として、前記第1液浸対物レンズから失われた液体
(b)前記第1液浸対物レンズを試料ホルダから離れるようにZ軸に沿って移動させた結果、前記第1液浸対物レンズから失われた液体
(c)前記流体軸受の第1液浸対物レンズの測定された重量減少
(d)前記第1液浸対物レンズ上の液体の測定された厚さ
【請求項12】
請求項10または請求項11に記載の方法であって、
前記第1液浸対物レンズを前記第1液体塗布位置に戻し、それに液体を塗布した後、前記第1液浸対物レンズを、(a)前記第2走査位置、または(b)前記第1液体塗布位置とは異なるX座標およびY座標を有し、かつ前記第2走査位置とは異なる少なくとも1つのX座標またはY座標を有する第3位置の何れかに移動させるステップをさらに備え、
当該ステップでは、前記第1液浸対物レンズ上の前記第3位置の液体を、前記第2の場所に配置された試料ホルダと接触させることができる、方法。
【請求項13】
請求項4~請求項12の何れか1つに記載の方法であって、前記第1液浸対物レンズを介して前記試料の複数の画像を取得するステップをさらに備える、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、前記複数の画像を処理するステップをさらに備える、方法。
【請求項15】
請求項4~請求項14の何れか1つに記載の方法であって、前記液体がオイルである、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、前記オイルは炭化水素ベースのオイルである、方法。
【請求項17】
請求項15に記載の方法であって、前記液体がシリコンオイルである、方法。
【請求項18】
請求項4~請求項14の何れか1つに記載の方法であって、前記液体が水である、方法。
【請求項19】
請求項1~請求項3の何れか1つに記載の顕微鏡デバイスであって、前記液体がオイルである、顕微鏡デバイス。
【請求項20】
請求項19に記載の顕微鏡デバイスであって、前記オイルが炭化水素ベースのオイルである、顕微鏡デバイス。
【請求項21】
請求項19に記載の顕微鏡デバイスであって、前記液体がシリコンオイルである、顕微鏡デバイス。
【請求項22】
請求項1~請求項3の何れか1つに記載の顕微鏡デバイスであって、前記液体が水である、顕微鏡デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年4月28日に出願された米国仮出願第63/180693号および第63/180694号のパリ条約優先権およびその米国の利益を主張する。当該両仮出願の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、試料の正確な光学走査および撮像の分野に関し、より詳細には、対物レンズと試料の間の媒体として安定したオイルなどの適切な液浸液を使用する生物学的顕微鏡法に関する。
【背景技術】
【0003】
生物学的試料の観察に使用されるハイコンテント顕微鏡システムが当該技術分野において知られている。このような顕微鏡システムは、通常、静的で巨大な顕微鏡本体に基づいており、対物ターレット、照明ユニット、フィルターホイール、シャッター、カメラ、内部光学系などの光学ユニットへの複雑な接続を含む。任意の試料の走査を可能にするために、試料ホルダのX、Y、Z方向の移動を可能にするデバイスが顕微鏡本体に追加されている。これらの顕微鏡システムの撮像プロセスでは、光学系ユニットは静止したまま、試料を動かして、試料に沿った様々な場所で画像を撮影する。
【0004】
種々の自動走査システムが開発されており、試料と対物レンズが互いに相対的に移動し、対物レンズの焦点が自動的に合わされ、人間の介入なしに走査が行われるようになっている。そのようなシステムの中には、複数の異なる対物レンズ間で自動的に変更することもできるものもあり、例えば、その内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9170412号には、そのようなシステムの1つが記載されている。
【0005】
このような自動走査システムは、空気環境で動作する対物レンズを用いた生物学的材料の走査には有用であるが、液浸顕微鏡法には不向きである。これは、特に、対物レンズと試料が互いに相対的に移動する際に液浸液が試料プレートに沿って広がり、液浸液を定期的に補充する必要があるという事実に起因する。液体を補充しようとするシステムが開発されているが(例えば、EP 1717628 B1、DE 202017000475 U1、US 7304793 B2、https://www.leica-microsystems.com/products/light-microscopes/p/leica-water-immersion-micro-dispenser/、及びhttps://www.marzhauser.com/en/products/liquid-immersion.htmlを参照)、このようなシステムには、例えば、デザインにより対物レンズの重量が増加し、走査面積が減少し、顕微鏡システムのスループットが低下する等の種々の欠点が存在している。
【0006】
したがって、当該技術分野においては、液浸液を使用する自動ハイコンテント顕微鏡法のためのシステムおよび方法が必要とされている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本発明の実施形態は、以下の詳細な説明および図を参照することにより、より良く理解されるであろう。
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に従って使用するために適合させることができる顕微鏡システムの一実施形態の概略図である。
【0009】
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に従った使用に適合するように構成され動作する装置の等角図である。
【0010】
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に従って使用可能な、対物レンズホルダに取り付けられ、キネマティックベースに取り付けられた対物レンズの断面図である。
【0011】
【
図4】
図4は、
図3の構成要素を上から見た分解等角図である。
【0012】
【
図5】
図5は、
図3の構成要素を下から見た分解等角図である。
【0013】
【0014】
【
図7】
図7は、
図3~
図5の対物レンズユニットの下部が、
図6のキネマティックベースのV字型溝にどのようにフィットするかを示す。
【0015】
【
図8】
図8は上方から見た等角図であり、対物レンズホルダに取り付けられた対物レンズと、それに取り付けられた磁石とを有するキネマティックベースを示している。
【
図9】
図9は下方から見た等角図であり、対物レンズホルダに取り付けられた対物レンズと、それに取り付けられた磁石とを有するキネマティックベースを示している。
【0016】
【
図10-11】
図10および
図11は、本発明の実施形態に従って、対物レンズがどのように保管および交換され得るかを示す。
【0017】
【
図12】
図12は、本発明の実施形態に係る、レンズ交換サブアセンブリの上方に配置された、液浸オイルカートリッジを有するオイル装填サブアセンブリの部分分解斜視図である。
【0018】
【
図13】
図13は、本発明の実施形態に係るオイル装填サブアセンブリの分解図である。
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
【
図17】
図17は、レンズ交換サブアセンブリの液浸オイル装填位置にある対物レンズを含む、
図1~11のレンズ交換アセンブリおよび
図12、13、14A、14B、14Cおよび14Dのオイル装填サブアセンブリの斜視図である。
【0023】
【0024】
【
図19A】
図19Aは、対物レンズが観察面に対して相対的に移動する際の液浸オイルの広がりを示す。
【
図19B】
図19Bは、対物レンズが観察面に対して相対的に移動する際の液浸オイルの広がりを示す。
【
図19C】
図19Cは、対物レンズが観察面に対して相対的に移動する際の液浸オイルの広がりを示す。
【0025】
【
図20】
図20は、本発明の実施形態に係る、オイル液浸レンズを用いて試料を走査し、オイル液浸レンズ上に液浸オイルを再装填する方法の概要を示すフローチャートである
【0026】
【
図21A】
図21Aは、本発明の実施形態に係る、オイルを装填したオイル液浸レンズの焦点を生物学的試料に自動的に合わせる方法の概要を示すフローチャートである。
【
図21B】
図21Bは、本発明の実施形態に係る、オイルを装填したオイル液浸レンズの焦点を生物学的試料に自動的に合わせる方法の概要を示すフローチャートである。
【0027】
【
図22A】
図22Aは、本発明の実施形態に係る、試料を走査する方法の概要を示すフローチャートである。
【
図22B】
図22Bは、本発明の実施形態に係る、試料を走査する方法の概要を示すフローチャートである。
【
図23】
図23は、本発明の実施形態に係る試料を走査する方法の概要を示すフローチャートである。
【0028】
【
図24】
図24は、本発明の別の実施形態に係るオイル装填サブアセンブリの斜視図である。
【0029】
【
図25】
図25は、本発明の別の実施形態に係る液浸オイルカートリッジの断面図である
【0030】
【
図26A-26B】
図26Aおよび26Bは、
図25の液浸オイルカートリッジを
図24のオイル装填サブアセンブリに挿入するステップの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態に従った使用に適合するように構成され動作する装置10を概略的に示すブロック図である
図1を参照する。装置10にはホルダ12が含まれており、これは試料プレート13、例えば、生物学的試料を保持するために一般的に使用され、下面13Aと上面13Bを有する6、24、96、384、または1536ウェルプレートを保持するように構成され得る。このプレートは、当該技術分野で知られているように、観察される1つまたは複数の試料を含む。ホルダ12はまた、顕微鏡スライド、ペトリ皿、または、目的の1つまたは複数の波長の電磁放射に対して透明な底部を有する他の基材を保持するように構成され得る。参考までに、それ自体は装置の一部ではない試料プレート13はXY平面内に存在しており、その下面13Aを介して、そこに含まれる試料が、以下に説明される装置10の構成要素に対向するようになる。
【0032】
リニアXYZスキャナ16の一部であるターレットレス対物レンズ、すなわち単一の対物レンズ14は、レンズが試料ホルダに対向するように(また、試料プレート13が存在する場合には、試料プレート13の下面13Aに対向するように)配置され、対物レンズ14の光軸は、試料ホルダに対してZ軸に沿っている。「リニアXYZスキャナ」とは、対物レンズ14を互いに直交する3方向に移動させるように構成され動作する機構を意味し、「Z」方向は光軸に沿った移動を示すために使用される。このようなスキャナ自体は、例えば、2001年6月19日に出願された「コンパクト・リニア・スキャナ・システム」と題されたイスラエル特許第143836号または米国特許第6850362号から、当該技術分野において公知であり、これらの両方の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。簡単のため、XYZスキャナ16の構成要素の一部のみが
図1に示されているが、この構成要素のより詳細な説明は後述されることが理解されよう。
図1に示されているXYZスキャナの構成要素の中には、ミラー18およびミラー20があり、これらは、XYZスキャナが逆の顕微鏡構成で動作するように配置されている場合などに、対物レンズ14の光軸に沿って光を方向転換させ、照明ユニット22からの光および自動焦点合わせユニット24からの光を対物レンズ14を通して反射するように協働する。ミラー18は、対物レンズ14と共にX方向及びY方向に移動するように構成され動作し、ミラー20は、光が対物レンズ14の光軸に沿って移動できるようにするために、対物レンズ14およびミラー18と共にX方向に移動するように構成され動作する。ミラー18およびミラー20はまた、照明ユニット22または自動焦点合わせユニット24からの反射入射光、または試料の蛍光から生じる光を含む試料から受けた光を、対物レンズ14の光軸に沿って、試料から離れるように反射する。
【0033】
図1に示すように、装置10は自動焦点合わせユニット24も備える。非液浸対物レンズ、すなわちオイルや水を使用しない対物レンズの焦点合わせのための自動焦点合わせユニット自体は、当該技術分野で知られている。
図1に示すように使用する場合、自動焦点合わせユニットは、好ましくは、高分解能、高スループットの顕微鏡の用途で使用可能な自動焦点合わせユニットであり、例えば、「自動焦点合わせ方法およびデバイス」と題され、2003年3月13日に出願されたPCT特許公開WO 03/077008、または同題の米国特許第7109459号に記載されている自動焦点合わせユニットおよび方法であり、これらの両方の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0034】
図1において、自動焦点合わせユニット24は、1つまたは複数の試料を運ぶ媒介物が透過する波長、例えば635nmのレーザー光ビームを照射し、レーザー光ビームはビーム分割デバイス(ダイクロイックフィルタ26)によって対物レンズ14の光軸上に反射され、対物レンズ14を通ってミラー18および20を反射し、試料ホルダ内の媒介物に照射される。その後、同じ経路で反射され、ダイクロイックフィルタ26で反射されて自動焦点合わせユニットに戻り、そこでセンサ(図示せず)により感知され、必要に応じてZ軸に沿って対物レンズの焦点を調整するようにプログラムされたコントローラ(図示せず)が動作する。自動焦点合わせユニット24が蛍光ラベルを含む試料と共に使用される場合、自動焦点合わせ光の波長は、試料の蛍光応答を誘発しないように選択され得るが、これは、典型的には画像キャプチャプロセスが開始する前に自動焦点合わせプロセスが完了するため、一般に重要ではない。例えばオイル液浸レンズなどを使用する場合、同様のプロセスを採用することができるが、以下に詳述するように、オイルの使用を考慮して一定の変更を伴う。
【0035】
図1には、照明ユニット22も示されている。照明ユニット22は、水銀ランプ、LEDランプ、レーザー、または他の適切な放射源のような照明源(図示せず)を含む。必要に応じて、照明ユニット22はコリメート光学系を含む。試料が1つ以上の蛍光プローブなどを含む場合には、対物レンズ14の光軸上に励起光を反射するように、適当なビーム分割デバイスが配置される。このビーム分割デバイスは、照明ユニットによって生成された励起波長の光を反射するが、他の波長の光、特に試料中の蛍光プローブの蛍光によって生成された光を通過させるクワッドフィルタ28とし得る。照明ユニット22は、複数の波長の電磁放射線を発生するように構成されてもよく、または、例えば観察される試料に複数の蛍光プローブが採用される場合、対物レンズ14の光軸上への励起光の反射と、試料中の蛍光プローブによって発生する波長の光、例えば対象とする波長の光の通過を確実にするために適切なビーム分割デバイスも採用されるのであれば、複数の波長の電磁放射線を発生させるために複数の照明ユニットが採用されてもよいことが理解されよう。また、
図1では自動焦点合わせユニット24が照明ユニット24と対物レンズ14の間に配置されているが、対象の波長の光のみが画像キャプチャデバイス30を通過することを確実にするために光学系が設けられるならば、原理的には照明ユニット22と自動焦点合わせユニット24の位置を逆にし得ることが理解されよう。
【0036】
図1に示すように、試料から反射された光もしくは試料から(蛍光により)発生した光、または試料が上面13b側から照明されている場合は試料を透過した光は、対物レンズ14の光軸に沿って進み、ダイクロイックフィルタ26およびクワッドフィルタ28を通過した後、1つまたは複数の画像キャプチャデバイス30によって検出される。
図1は、このような3つの画像キャプチャデバイス、すなわち3つのCCDカメラ30、30'および30"が存在し、ビーム分割デバイス26および28を通過した後、CCDカメラに入射する前に光がチューブレンズ32を通過し、折り返しミラー34で反射し、RGBプリズム36で分割された後、試料中の蛍光プローブの発光帯域以外のすべての光をフィルタで除去する発光フィルタ38、38'および38"を通過する配置を示している。
図1では、発光フィルタ38は赤色光を、発光フィルタ38'は緑色光を、発光フィルタ38"は青色光を通過させる。プリズム36はRGBプリズム以外のものであってもよく、フィルタ38、38'、38"は結果として異なる波長範囲でフィルタをかけ得ることが理解されよう。
【0037】
図1に示すシステムの動作は、自動焦点合わせユニット、照明ユニット、およびXYZスキャナの動作を制御するように集合的にプログラムされた1つまたは複数のコントローラ(図示せず)によって制御される。画像キャプチャデバイスによって得られた画像を分析するための分析ユニット(図示せず)も提供されてもよく、これは、1つまたは複数のコントローラの一部であってもよく、または別々のユニットであってもよく、また、1つまたは複数のコントローラへのフィードバックを提供するように構成されてもよい。さらに、当業者には理解されるであろうが、キーボード、光学式または磁気式ストレージリーダおよび/またはライタ、プリンタ、およびプラズマディスプレイまたはLCDディスプレイなどのディスプレイデバイスなどの入力デバイスおよび/または出力デバイス、ならびにストレージデバイスも提供され得る。
【0038】
本発明の実施形態に従って、
図1に示す配置の変形を採用し得ることは、当業者には理解されよう。オイル液浸レンズを使用する際に自動焦点合わせ方法を実施するための、そのような変形例の少なくとも1つを以下に説明する。
【0039】
図1に示すようなXYZスキャナは、本発明の実施形態に係る装置に組み込むことができる。例えば、本発明の実施形態に従った使用に適合させることができるように構成され動作する装置810の一部を等角図で示す
図2を参照されたい。装置810は、96ウェル試料プレート813を保持する試料ホルダ812を含む。試料プレート813は、対物レンズ814の光軸に垂直な平面内にあり、対物レンズ814はスキャナ816の一部であり、3つの互いに直交する方向、すなわちX、YおよびZ方向に移動可能である。スキャナ816は、X方向およびY方向に移動可能なミラーマウント819に取り付けられたミラー818と、X方向に移動可能なミラーマウント821に取り付けられたミラー820とを含む。
【0040】
図2はまた、自動焦点合わせユニット824と、自動焦点合わせユニットからの光をダイクロイックフィルタ826に、またはその逆に導くミラー827を示す。ダイクロイックフィルタ826は、自動焦点合わせユニット824からの光を対物レンズ814の光軸に導く。また、光ファイバケーブル822aとコリメーション光学系822bの束と、照明ユニットからの光を対物レンズ814の光軸に反射するように配置されたクワッドフィルタ828とを含む、照明ユニット822の一部も示されている。試料から反射した光、または試料プレート内の蛍光(例えば蛍光プローブの蛍光)によって発生し、クワッドフィルタ828によってフィルタリングされなかった光は、チューブレンズ832によって焦点合わせされ、折り返しミラー834によってカメラ830に反射される。フィルターホイール837は、カメラ830に入る光をフィルタリングするために選択できるフィルタ838、838'、および838"を含む。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態によれば、装置は、対物レンズの交換を容易にするカップリング機構を備えているが、この機構は他の光学機器にも採用できることが理解されよう。次に、このような機構の一実施形態を示す
図3~
図9を参照する。
図3、
図8および
図9に示すように、対物レンズ1010が対物レンズベース1020に恒久的に取り付けられている。対物レンズ1010と対物レンズベース1020は、ともに対物レンズユニット1060を形成する。対物レンズユニット1060は、キネマティックベース1040に取り付けられている。本発明のいくつかの実施形態によれば、キネマティックベース1040は、これから説明するように、レンズ338のような対物レンズを含む対物ユニット1060がその上に静止し得るように、XYZスキャナのZ軸構成要素の上部に恒久的に取り付けられてもよく、代わりに、キネマティックベースがXYZスキャナのZ軸構成要素の上部の一部として形成されてもよい。
【0042】
これから説明するように、図に示す対物レンズベース1020とキネマティックベース1040との間の取り付けは、50ナノメートル以上の範囲の位置決め精度を提供する特定のキネマティックマウント構成を使用する。対物レンズベース1020は、複数のカップリングボール1030(
図3~9には、そのようなボールが3つ示されている)を含み、所定の位置にセットされた後、対物レンズ1010の光軸に対するカップリングボール1030の空間位置が高精度となるように機械加工される。カップリングボール1030は、高い剛性(例えば53~58 RC SS以上の硬度)及び適切な直径、例えば3~3.5mmを有する。カップリングボール1030の各々は、ボールの直径の30~40%が対物レンズベース1020の下面から下方に突出するように、対物レンズベース1020の下面に形成された穴1020aのうちの1つの所定の位置に保持される。穴1020aは、対物レンズベース1020に部分的にのみ貫通し、それにより一端が閉じた円柱を形成してもよく、対物レンズベース1020の底部を完全に貫通してもよい。穴1020aの各々は、そこに配置されたカップリングボール1030との干渉直径公差を有し、それによりボールを所定の位置にしっかりと保持する。対物レンズベース1020は17-4PHのような強磁性鋼で作られている。
【0043】
図に示されているように、キネマティックベース1040は一般に環状のリング形状であり、その上側にはV字形の溝1040aの形態のいくつかの窪みを有する。カップリングボール1030と溝1040aの間隔は、
図7に簡略化して示すように、カップリングボールが溝のうちの3つに収まるような間隔である。キネマティックベース1040は、キネマティックベース1040がレンズユニット1060の脱着の動作を繰り返す間に取り付け精度を維持するように、表面硬度が39RC以上になるように熱処理された17-4PH等の高性能の強磁性鋼で構築されてもよい。キネマティックベース1040が必要な表面硬度を有することを確実にするために、以下の製造プロセスが観察される:(a)最終的な溝1040aの研削プロセスのために50ミクロンを残して最終寸法に部品を製造する、(b)熱硬化処理を行う、(c)V字形の溝1040aを最終寸法まで研削する。
【0044】
図に示すように、キネマティックベース1040には、その周囲に略等間隔に3つの穴1040bが貫通して形成されている。各穴1040bには磁石1050が挿入され、接着されている。磁石1050は、部品が近接している場合に、対物レンズユニット1060との間に磁気付着力を生じさせる。この付着力は、キネマティックカップリングに印加される付着力のバランスをとることによって、対物レンズを所定の位置に配置するとともに、光学系が高加速度で移動する間、対物レンズユニット1060を所定の位置に維持する。磁石は必ずしも対物レンズベース1060と接触する必要はなく、また、例えば
図9に見られるように、穴1040bを通って突出する必要さえないことが理解されよう。したがって、本願において、このような磁石が強磁性表面と対向する表面内に「設置される」と記載されている場合、磁石は、直接物理的に接触する必要なく磁気引力が働くので、「設置される」表面から突出していてもよく、「設置される」表面内に埋め込まれていてもよく、「設置される」表面より下であってもよい。
【0045】
カップリング機構の特定の実施形態が
図3~
図9に示されているが、そこに示されているものに対する変形が可能であることが理解されよう。これは、ボール1030および溝1040aの集合的な効果は、対物ユニット1060をXY平面内に正確に位置決めすることと、対物ユニット1060のXY平面内および負のZ方向への運動を制限することとの両方であり、磁力の付加は対物ユニットの正のZ方向への運動を制限し、これらの効果は、原理的には他の配置で実現可能だからである。したがって、例えば、より多くのまたはより少ない穴1040b、およびそれに応じて、より多くのまたはより少ない磁石を用いることができ、磁石をレンズ対物ユニットの底部およびキネマティックベース内に設置することができ、または、磁石をレンズ対物ユニットの底部内にのみ設置することができる。同様に、窪みとボールの位置を逆にし、対物ユニット1060の底面に溝などの窪みを設け、キネマティックベースの上面にそこから突出するボールを設けることがき、対物ユニットとキネマティックベースの両方に窪みとボールを設けることもでき、または、キネマティックベースに2つの溝と突出部を設け、対物ユニット1060の底部に2つの対応する突出部と対応する溝を設けることもできる。
【0046】
さらに、窪みはV字形の溝以外の形状であってもよく、例えば、1つ以上の窪みは、その中で静止しているボール1030に対して、V字形の溝のような2つの接触点ではなく、3つの接触点を提供するウェルの形状であってもよい。このような1つのウェルを、単一のV字形の溝とキネマティックベースの表面、および十分な強度を持つ適切に配置された磁石を組み合わせることで、3つのV字型の溝と同じ効果を得ることができる。さらに、それらの窪みに収まるボール形状以外の突起を用いてもよい。したがって、当業者であれば、例えば、図では複数のボール1030が穴に保持されることが示されているが、他の構造配置が可能であり、例えば、丸頭釘が使用されてもよいことを理解するであろう。
【0047】
窪みの相対的な位置も、
図3~
図9に示したものとは異なっていてもよい。窪みは、対向ピースからの突起がそこに嵌合するための方法が1つのみ存在するように配置されてもよく、したがって、対物ユニットがキネマティックベース上の所定の位置にセットされる唯一の方法を提供する。あるいは、例えば対物レンズユニットに関して上述したように、(突起を有するピースが平面上に確実に収まるようにするため)3つの突起を使用してもよい。しかし、(例えばキネマティックベースに関して上述したように)反対側に3つまたは6つのV字形の溝が存在する代わりに、例えば後述するレンズ交換器のような対物レンズ交換器で使用する場合に、レンズユニットの配置を容易にするために、より多数の等間隔で放射状に配向されたV字形の溝(例えば9個または12個)を用いてもよい。
【0048】
さらに、
図3~
図9は、対物レンズ1010と対物レンズベース1020とから形成される対物ユニット1060を示しているが、対物レンズ1010は、例えば、対物レンズ1010の底部が強磁性材料から作られ、そこから突出するカップリングボール1030を有するように機械加工される場合、対物レンズベース1020の必要性をなくす方法で形成されてもよいことが理解されよう。本明細書または特許請求の範囲において、対物レンズが「それに関連する」表面を有すると記載されている場合、そのような表面は、対物レンズアセンブリ自体の表面であってもよく、
図3~
図9に示されているような、対物レンズが取り付けられているレンズホルダまたはベースの表面であってもよいことが理解されよう。
【0049】
上記のカップリング機構により、対物レンズの光学デバイスへの挿抜を繰り返し行うことが可能となり、対物レンズを用いて高精度な観察を行うのに十分な精度が得られる。したがって、本明細書に記載の機構は、レンズの交換が可能であるため、光学デバイス内での多数の対物レンズの使用を容易にする。図に示されているデバイスの場合、これは、対物レンズ全体の重量でXYZスキャナに負担をかけることなく達成することができるため、XYZスキャナに対物レンズの完全なセットの重さを負担させる場合に使用できるよりも高い加速が容易になり、XYZスキャナに対物レンズの完全なセットの重さを負担させる場合に達成できるよりも短いセトリング時間が可能になる。代わりに、対物レンズは装置内の別の場所に保管し、倍率を変えたいときに必要に応じて交換してもよい。さらに、複数の対物レンズを搭載したターレットが知られているが、そのようなターレット内の対物レンズは、使用する対物レンズはZ軸に沿って焦点経路と整列するが、使用しない対物レンズはZ軸に対して確度をなすように配置されるため、1つのオイル液浸レンズを別のオイル液浸レンズに交換すると、ターレットが回転してレンズが垂直から離れた角度に移動する際に、オイルが失われることになる。したがって、
図10および
図11に示すように、レンズ交換サブアセンブリ1000は、複数のステーション1070に複数の対物ユニット1060を保持するマガジン1080を含む。マガジン1080内の各対物ユニット1060は、XYZスキャナ1090のZ軸と略整列し、XYZスキャナ1090の上部に取り付けられているキネマティックベース1040の平面と略垂直であり、さらに、各対物ユニット1060の底部から突出しているボールカップリング1030は、後述するように、XYZスキャナを上昇させて対物ユニットに接触させたときに、キネマティックベースのV字形の溝1040aに係合するように配置されている。各ステーション1070は一対のアーム1072を含み、隣接するアームの各対が対物ユニット1060を保持できるようになっている。
図10及び
図11に示すように、マガジン1080は3つの対物ユニット1060を保持するが、原理的には、光学デバイスは、より多くのこのような対物ユニットを保持するように設計されてもよい。
【0050】
対物レンズを交換するためにカップリング機構がどのように使用され得るかを説明するために、
図10に示されているように、スキャナ1090には当初対物ユニットが取り付けられておらず、少なくとも1つの対物ユニット1060がマガジン1080の1つのステーション1070に装填されていると仮定する。スキャナ1090は、まず、選択された対物ユニット1060の下を移動できるように十分に低いZ位置に移動される。次に、XYZステージは、ステーション1070に静止している選択された対物レンズの光軸が、XYZスキャナ1090上で使用するために配置された対物レンズに要求される光軸と略一致する位置までXY平面内で移動される。次に、Zステージは、選択された対物レンズユニット1060の下部に接触するように上方に移動される。この結果、カップリングボール1030は溝1040aに静止する。磁石1050が、強磁性体でできており、そのため磁石に引き寄せられる対物ユニット1060の底部に近接する結果、カップリングボール1030は溝内に落ち着き、そこに保持される。
図3~
図11に示されているように、カップリングボールとV字形の溝が十分な精度(例えば公差50nm以内)で機械加工される場合、約120°の間隔の3つのカップリングボールと、キネマティックベースの中心から半径方向に配向され、カップリングボールが収まるV字形の溝を使用すると、対物レンズの光軸が十分な精度で設定され、さらに校正することなく対物レンズを使用することが可能になる。Zステージはさらに上方に移動され、対物ユニット1060をアーム1072から十分に持ち上げる。その後、XYステージをステーション1070から移動させてもよい。これで、光学系は、選択された対物レンズを使用して動作する準備が整った。
【0051】
同様のプロセスは、第1対物レンズから第2対物レンズに変更する際にも繰り返される。スキャナは、オープンステーション1070に移動され、上述と逆の順序で動作して、第1対物レンズユニット1060をステーション1070に配置する。次に、XYZステージはマガジン1080の別のステーションに移動し、第1対物レンズについて上述した方法と類似の方法で第2対物レンズを装填する。
【0052】
XYZスキャナの動きは自動化され得、適切なモータ及びそのような目的のためにプログラムされたマイクロプロセッサによる制御によって自動化が行われ得ることが理解されよう。
【0053】
また、
図10および
図11では、対物レンズの光学系内外への移動を容易にするデバイスとしてXYZ光学スキャナ1090が示されているが、記載されている方法は、XYZ光学スキャナでの使用に限定されるものではなく、モータ、エンコーダ、センサ、サーボコントローラまたは他の自動化要素の組み合わせによって制御される移動光学要素を有する任意のシステムで使用できることが理解されよう。さらに、移動光学系がすべての対物ユニットに到達できない場合には、問題の特定のレンズが光学系に到達可能な位置に存在するようにマガジン1080を移動させるために、二次運動システム(図示せず)を使用してもよい。
【0054】
図3~
図11に関して本明細書で説明するレンズ交換サブアセンブリ1000は、液浸対物レンズを使用して生物学的試料の自動化されたハイコンテントまたはハイスループットスクリーニングを実行するのに特に有利である。しかしながら、本発明のいくつかの実施形態において、装置またはデバイスはレンズ交換サブアセンブリを有さず、単一の対物レンズのみを使用し、装置またはデバイスはX方向および/またはY方向に十分に大きいことが理解されるであろう。(a)対物レンズは、その3次元方向(ピッチ、ロール、ヨーなどの観点、3次元配向)を維持しながらZ軸に沿って試料ホルダから離れるように移動でき、XY平面内でオイル補充位置まで移動でき、次に、オイルを補充した後、XY平面内の同じ場所に戻すことができ、Z方向に再び焦点を合わせた後、中断された場所から走査を継続することができる、(b)XYZ座標空間での方向を維持しながら、試料ホルダは、オイルの補充を容易にするために、走査のためにその静止位置から移動でき、その後走査が中断された場所と同じところに戻すことができるため、Z方向で対物レンズの焦点を再調整した後、走査を中断されたところから継続することができる、または、(c)(a)と(b)の両方を組み合わせることもできる。
【0055】
生物学的試料の液浸走査の課題の1つは、対物レンズ上の液体を定期的に補充する必要があることである。これは、対物レンズと試料ホルダの間の相対的な動きによって、液浸液の層が試料を適切に観察するには不十分なところまで液浸液が広がってしまうので、対物レンズが試料ホルダ(マルチウェルプレート、シャーレ、試料軸受スライドなど)の表面に近接または接触しながら、対物レンズが試料に対して相対的に移動する環境で走査する場合に特に重要である。そのため、走査は、液浸液を絶対に補充する必要がある前に対物レンズが移動できる距離に制限される。
【0056】
上述の背景の議論で述べたように、オイルを補充するための従来技術のシステムは、様々な欠点を抱えている。例えば、それらは対物レンズ自体に追加のアイテムを配置する必要があり、それにより対物レンズアセンブリの重量及び有効サイズが増加する。これにより、走査可能な試料の領域が減少し、レンズ自体が試料ホルダに近づけられる程度が制限される可能性がある。さらに、これが手動で行われる場合、人間のユーザはシステムの動作を停止し、対物レンズに液浸液を手動で補充しなければならない。どちらも、手動で、または特別に設計された装置の支援を伴って行われる。これは、システムの動作を大幅に遅らせ、人間のオペレータの定期的な注意を必要とする。そのため、エラーも起こりやすい。さらに、液浸液を手動で補充する必要があるため、互いに長距離に配置された多くの場所を走査する大規模なスクリーニングセッションの実施が制限されるか、または妨げられる。
【0057】
対物レンズへの液浸オイルを手動で塗布する場合の別の課題は、人間のオペレータが塗布するオイルの量が少なすぎて、その結果、顕微鏡システムが頻繁に停止することである。あるいは、人間のオペレータがオイルを塗布しすぎて、対物レンズの動作中に、例えば人間のオペレータが走査場所に液浸液を塗布する場所など、対物ユニットからオイルがこぼれてしまう可能性がある。さらなる問題は、合焦位置からレンズを移動させないようにするために、これまでは、対物レンズを試料ホルダの表面に隣接した場所(例えば、マルチウェルプレートの底部に近い位置)に置いたままオイルを補充する必要があり、レンズにオイルを補充するために操作する余地がほとんどなかったことである。
【0058】
本発明の実施形態によれば、
図12~
図19Bに関して後述するように、顕微鏡システムの一部を形成するレンズ交換サブアセンブリは、対物レンズを自動的に移動させることができ、対物レンズが試料の下に配置されない固定位置が存在することを確実にする。このような固定位置の存在により、レンズ交換アセンブリのマガジンの所定の位置の真上に、本明細書で後述する本発明の液浸液装填サブアセンブリを構築することが容易になる。後述するように、本発明の実施例によれば、使用時には、液浸対物レンズは定期的にレンズ交換アセンブリのマガジンの所定の位置に移動し、オイルが液体装填サブアセンブリから自動的に対物レンズに塗布された後、走査プロセスを継続するために、システムによって対物レンズは自動的に走査位置に戻る。
【0059】
以下に説明する液浸液サブアセンブリおよびその使用プロセスは、合成炭化水素ベースのオイル、水、グリセロール、シリコンオイルなどの任意の適切な液浸液と共に使用するのに適しており、本明細書の開示の範囲は、顕微鏡法、特に生物学的試料の顕微鏡法に適したすべてのタイプの液浸液を含むように解釈されるべきであることが理解される。しかしながら、簡潔かつ明確にするために、以下の開示は、専ら合成炭化水素ベースの液浸オイル、すなわち、オイル対物レンズ、液浸オイルの装填などに関する。
【0060】
次に、本発明の実施形態に係る、レンズ交換サブアセンブリ400の上方に配置された液浸オイルカートリッジ300を有するオイル装填サブアセンブリ200の部分分解図である
図12を参照する。レンズ交換サブアセンブリ400は、構造および動作において、本明細書で上述したレンズ交換サブアセンブリ1000と実質的に類似している。図示のように、レンズ交換サブアセンブリ400は、対物レンズを保持するための複数の位置を有するレンズ保持マガジン410を含み、ここでは3つの位置として示されている。マガジン410の最も左の位置412は、
図3~
図9に関して本明細書で説明した対物レンズユニットと同様のオイル液浸対物レンズユニット500を一時的に収容するものとして図示されている。最も左の位置412は、オイル装填サブアセンブリ200のオイル出口が、オイル装填位置412の上方、対物ユニット500の対物レンズ上にオイルを滴下する位置に配置されるように、オイル装填位置となるように予め定められる。本明細書でさらに詳細に説明する液浸オイルカートリッジ300は、本明細書で説明するように、オイル装填サブアセンブリ200の対応するウェルの上方に配置され、そこに挿入されるように適合される。位置412がオイル装填のために確保されているため、図示のようなレンズ交換サブアセンブリ400は、位置412の右側の他の2つの位置に格納され得る2つのレンズ間の交換を実行し得ることが理解されよう。また、レンズ交換サブアセンブリ400は、より多くのレンズ間の交換を容易にするために、追加の位置で形成されてもよいことが理解されよう。あるいは、前述したように、原理的には、レンズ交換サブアセンブリはなくてもよい。例えば、走査を試料の一部のみに制限しないように、試料から十分に離れたオイル装填位置を提供するための十分なスペースが装置内にある場合などである。
【0061】
オイル装填位置412は、試料を走査するレンズの走査経路の外側に常に位置するように選択される。
【0062】
いくつかの実施形態では、レンズ交換サブアセンブリ400のオイル装填位置412は、対物ユニット500がその位置に配置されたときに対物ユニット500の重量を決定するための秤量機構を含んでもよい。例えば、秤量機構は、対物ユニット500がオイル装填位置412に配置されたときに、ベースライン重量を得るか、または、風袋引きを行うことができる。このように、秤量機構は、例えば、液浸オイル塗布後の対物ユニットの重量変化を特定することができる。秤量機構に関連するコントローラは、液浸オイルの特性に基づいて、対物ユニット500にどれだけの液浸オイルが塗布されたか、およびオイルの追加塗布が必要かどうかを決定することができる。
【0063】
秤量機構は、対物ユニット500を秤量するための任意の適切な機構であってよい。いくつかの実施形態では、秤量機構は、レンズ交換サブアセンブリ400のフレーム構造402に取り付けられる可撓性リーフ420を含んでもよい。一対の可撓性アーム422がリーフ420から延在し、これらのアームは、対物レンズユニットが位置412にあるとき、対物レンズユニット500がアーム422に寄りかかるように対物レンズユニット500の周りに配置されている。各アーム422の1つまたは複数の表面、例えばアームの自由領域に取り付けられるが、いくつかの実施形態では、リーフ420の近くおよび/またはフレーム構造402の近くに、薄い平らなひずみゲージ(明示的に示されていない)が存在する。ひずみゲージの各々は、アーム422の下方に位置する薄くて平坦な電子カード(明示的に図示せず)に(例えば、図示しない細いワイヤによって)電気的に接続される。(1つまたは複数の)電子カードは、ひずみゲージと(1つまたは複数の)カード間の接続の長さを最小にするように配置され得る。(1つまたは複数の)電子カードはプロセッサ(図示せず)に電気的に結合される。ひずみゲージと電子カードを使用することで、アーム422のたわみと、例えば電子カードにも配置されているホイートストンブリッジを使用して測定される回路の電気抵抗の変化との相関付けが可能になり、対物ユニット500の重量、すなわち対物レンズに塗布される液浸オイルの質量の変化を計算できることが理解されよう。したがって、アーム422は、ひずみゲージとともに、対物レンズユニットに塗布される液浸オイルの量を示す信号を提供するための信号提供器を形成する。液浸オイルの密度が既知であれば、添加される浸液浸オイルの量の計算が容易になる。例えば、対物レンズに液浸オイルを塗布するたびに、対物レンズに塗布される液浸オイルの量を繰り返し計算することができ、したがって、十分な量の液浸オイルが塗布されたか否かをリアルタイムで識別することができる。したがって、秤量機構に関連するコントローラは、対物ユニットの重量に関連する情報に基づいて、液浸オイルを塗布するためのポンプの動作が開始および停止されるように、本明細書で後述するオイル装填サブアセンブリ200のオイルポンプと機能的に関連付けられ得る。
【0064】
いくつかの実施形態では、オイル装填サブアセンブリ200から対物レンズユニット500上に滴下した液浸オイル、または対物レンズがオイル装填位置に配置されていない間に流出する可能性のある液浸オイルのオーバーフローを回収するために、オーバーフロートレイ(明示的に図示せず)がマガジン410の下、または、少なくともオイル装填位置412の下に配置されてもよい。また、
図5の対物レンズベース1020のようなレンズ用ホルダの存在は、対物レンズからオイルが流出した場合に、オイル用のトラップを提供し得ることも理解されよう。
【0065】
あるいは、オイル装填サブアセンブリから放出される一滴のオイルの平均量を校正することによって、添加されるオイルの量を計算することができ、レンズに塗布される滴下数は、例えば、滴がビームを遮るたびに信号を提供するセンサに接続された光ビームによって、または落下するオイルの滴を検出しカウントする自動画像解析プログラムに結合されたカメラによって、添加されるオイルの量を計算するためにカウントすることができる。あるいは、対物レンズ上のオイルが補充されるたびに、オイルリザーバから除去されたオイルの量を計算し、例えばリザーバ内の重量の変化を測定することによって、レンズに塗布されるオイルの量を計算することができる。
【0066】
添加されたオイルの量が、重量の直接測定によって決定されるか、または滴の数をカウントすることによって決定されるかにかかわらず、添加されたオイルの総量、したがってレンズにさらに塗布するためにアセンブリに残っているオイルの総量は、計算され、任意でスクリーンまたは他の出力デバイスに表示することができる。
【0067】
次に、本発明の実施形態に係るオイル装填サブアセンブリ200の分解図である
図13、並びに、構築され、その中に配置された液浸オイルカートリッジ300を有するときのオイル装填アセンブリ200の、それぞれ斜視図、平面正面図、平面側面図、および断面図である
図14A、14B、14C、および14Dを参照する。このようなカートリッジは、その中に含まれるオイルまたは他の液体と著しく相互作用しないか、またはその劣化につながらない任意の適切な材料で作られ得る。
図13~
図18Bに示す実施形態において、カートリッジは、好ましくは、アルミニウムなどの金属製である。
図24~
図26Bに示す実施形態では、カートリッジはプラスチック製であることが好ましい。
【0068】
図示されるように、オイル装填サブアセンブリ200は、オイル観察開口部214と流体連通する中央オイル溜め212、およびポンプ入口導管217(
図14D参照)で終端するポンプシート穴216を有する本体部210を含む。
図14Dに見られるように、オイル流導管218が、オイル溜め212のベースおよび隣接するポンプ入口導管217から延在し、本体部210の端部で終端しており、オイル流導管はストッパ220によって封止されている。観察窓222がオイル観察開口部214内に配置され、オイル観察開口部214を封止する。
図14Bに明瞭に見られるように、観察窓222は、略円形の透明部224を含み、オペレータがオイル装填サブアセンブリ200のオイルレベルを観察することを可能にし、本明細書でさらに詳細に説明されるように、液浸オイルカートリッジ300がいつ交換されなければならないかを決定することを可能にする。これの変形において、窓は、使用者がオイル面を直接観察していないときに窓から光が入らないようにするためのカバーを備えてもよく、または、オイル装填サブアセンブリ200が、観察開口部214も窓222も備えないことが可能である。
【0069】
カートリッジ穿刺要素230は、中央オイル溜め212内に設置され、ネジやボルトなどの締結具232によってそこに取り付けられる。しかし、締結具232は、はんだ付け、接着などの任意の他の適切な取り付け機構に置き換えてもよい。カートリッジ穿刺要素230は、ベース234および穿刺ピン236を含み、そこを通って長手方向に延在する中空チャネル238を有し、チャネルは、穴239(
図15B~
図15C参照)を含み、鋭い先端で終端する。
図14A~
図14Dに示すように、液浸オイルカートリッジ300が中央オイル溜め212に設置されると、中空チャネル238は、中央オイル溜め212と流体連通するとともに、オイル流導管218とも流体連通する(
図14Dおよび
図16A参照)。
【0070】
ダイアフラムポンプ250は、その入口252がポンプ入口導管217内に収まり、その出口導管254が本体部210から下方に延在するように、ポンプシート穴216内に配置される。ダイアフラムポンプ250は、オイル流導管218から、出口導管254を通って出口導管の下に配置された物品(使用時は液浸オイル対物レンズ)上にオイルを吸引するように適合される。
【0071】
オイル装填サブアセンブリ200は、レンズ交換サブアセンブリ400の上方に、本体部210の底部側に取り付けられ、顕微鏡システムの他の構成要素にオイル装填サブアセンブリ200を取り付けるために適合されたベースマウント260をさらに含む。バックマウント265は、中央オイル溜め212の後方で、本体部210に取り付けられる。ベースマウント260およびバックマウント265の両方は、ネジ、ボルトなどの締結具268によって本体部210に接続されてもよい。しかし、接着、はんだ付けなど、他の任意の適切な接続方法が本発明の範囲内にあるとみなされる。
【0072】
次に、オイル装填サブアセンブリ200への液浸オイルカートリッジ300の挿入ステップの断面図である
図15A、
図15Bおよび
図15Cを参照する。
図15Aに見られるように、液浸オイルカートリッジ300は、第1内径を有する中空304を定義し、リップ306で終端する略円筒形の壁部302で形成されたハウジング301を含む。その一端において、リップ306から遠位で、壁部302は略横方向の肩部310まで延在し、この肩部310は、壁部の内径を狭めて第2内径を有する略円筒形の中空のネック部312を形成する。ネック部312の第2内径は、壁部302の第1内径よりも小さくてもよい。ネック部312の端部において、肩部310より遠位では、ネック部312の壁の厚さが減少し、第2内径より大きい第3内径を有する第1チャンバを定義している。第1チャンバは環状の肩部316を含み、リップ318で終端している。その外面に、ネック部は、中央オイル溜め212の内周の対応する溝および/または突起219とスナップフィット係合するように適合された、スナップフィット係合用の突起および/または溝319を含む。
【0073】
略環状の横壁320は、リップ306とネック部312との間に配置され、ネック部312よりもリップ306にかなり近い場所で、壁部302から半径方向内向きに延在する。環状の横壁320は、壁部302と実質的に同心であるカウル部322において半径方向内側で終端する。環状の横壁320とリップ306との間の容積は、第2チャンバを定義する。ネック部312によって定義された中空、壁部302によって定義された中空、およびカウル部322の中空を介して、第1チャンバと第2チャンバとの間に流体流路が存在する。
【0074】
穿刺ピストン330がハウジング301内に配置される。穿刺ピストン330は、略円形のベース332を含み、そこから中央シャフト334が延在し、このシャフトは、1つまたは複数の点を含み得る尖ったエッジ336で終端する。エッジ336に近いシャフト334の上部では、シャフト334は中空338を定義し、中空338をシャフト334を取り囲む環境と接続する1つ以上の穴340を含む。シャフト334の残りは非中空である。
【0075】
図15Aに図示される、液浸オイルカートリッジ300の初期の閉じた動作方向では、ナイロンまたはアルミニウム箔などの、オイルに対して不活性な材料であり得る第1シール350が、第1チャンバ内に配置され、環状の肩部316に係合する。穿刺ピストン330のベース332は、シャフト334がネック部312、壁部302、およびカウル部322によって定義された中空を通って延在するように、ネック部312の中空内に配置され、第1シール350に係合する。尖ったエッジ336は、環状の横壁320の端部を越えて延在せず、それと面一であってもよい。第2シール352は、ナイロンやアルミ箔などのオイルに対して不活性な材料であってもよく、第2チャンバ内に配置され、横壁320に係合する。したがって、液浸オイルカートリッジ300の閉じた動作方向において、カートリッジは密封され、オイルがその中に配置される(明瞭化のために、オイルは
図15Aには示されていない)。
【0076】
カートリッジ300内の液浸オイルを使用するために、使用者は、第1シール350が中央オイル溜め212およびその中に配置された穿刺要素230の方を向くように、カートリッジを矢印360の方向に動かす。
【0077】
図15Bを参照すると、使用者がオイル液浸カートリッジ300を中央オイル溜め212に押し込むと、その穿刺要素230、特に穿刺ピン236が第1シール350を貫通して穿刺し、穿刺ピストン330のベース332を第2シール352に向かって押すことがわかる。その結果、穿刺ピストン330の全体が壁部320に向かって矢印362の方向に移動し、シャフト334の尖ったエッジ336が第2シール352を貫通して穿刺する。オイル液浸カートリッジ300のスナップフィット係合用の突起および/または溝319は、中央オイル溜め212の内周の対応する溝および/または突起219と係合し、カートリッジがオイルウェル内にスナップフィットされることを確実にする。この向きでは、
図15Cに示されるように、シール350および352が穿孔され、空気がオイル液浸カートリッジ300に流入し、オイルがカートリッジから流出することができる。したがって、オイルは、カートリッジから、穿刺ピストン330のベース332の周囲に流れ出し、穿刺要素230のチャネル238および穴239を通って、中央オイル溜め212に流れ込む。
【0078】
次に、オイル装填サブアセンブリ200内のオイル流路を示す断面図である
図16Aおよび
図16Bをさらに参照する。図示されるように、
図15A~
図15Cに示される液浸オイルカートリッジ300の封止解除後、オイルは、中央オイル溜め212から、オイル流導管218を経由して、ポンプ入口導管217に流れる。ほこりや他の物質がオイルを汚染する可能性を低減するために、オイルカートリッジ300は、オイルをオイル溜め212に放出するように配置され、穿刺された後、そのままにされてもよく、あるいは、装置は、オイルカートリッジ300が取り外されたときにオイル溜め212を覆うカバー(図示せず)を備えてもよいことが理解されるであろう。
【0079】
例えばコントローラから受信した入力または信号に応じたダイアフラムポンプ250の動作により、
図16Aに示すように、ポンプは、ポンプ入口導管217に設置された入口252を介してオイルをポンプに引き込む。その後、ダイアフラムポンプ250に引き込まれたオイルは、
図16Bに示すように、ポンプの出口導管254を介してポンプから滴下される。動作中、本明細書でさらに詳しく後述するように、オイルが対物レンズ上に滴下するように、オイル液浸対物レンズユニットが出口導管254の下に配置される。
【0080】
次に、対物レンズユニット500が液浸オイル装填位置412に配置されたレンズ交換サブアセンブリ400およびオイル装填サブアセンブリ200の斜視図である
図17を参照する。さらに、ぞれぞれ、
図17の構造における対物レンズへの液浸オイルの装填の正面図および側面図である
図18Aおよび
図18Bを参照する。
【0081】
図示のように、液浸オイルカートリッジ300は、レンズ交換サブアセンブリ400の上方に取り付けられるオイル装填サブアセンブリ200に設置される。オイル液浸レンズ502を含む対物レンズユニット500は、ダイアフラムポンプの出口導管254がオイル液浸レンズ502の真上にあるように、レンズ交換サブアセンブリのオイル装填位置412に配置される。
図18Aに見られるように、ダイアフラムポンプ250の動作をトリガする適切な制御信号を受信すると、液浸オイルの滴504が出口導管254から液浸レンズ502上に放出される。いくつかの実施形態では、オイルの滴は20~30μlのオイルを含む。滴は、液浸オイルの表面張力により、レンズ上にマウンド506として残る。いくつかの実施形態では、レンズユニット500は、例えばレンズ交換サブアセンブリ200の動きによって、レンズ502が出口導管254の出口開口部に近接するように、上昇させ得る。これにより、放出されたオイルがレンズに直接滴下され、無駄にならないことを確実にし得る。
【0082】
いくつかの実施形態では、各オイル装填の際に、レンズユニット500に複数のオイルの滴を塗布してもよい。十分な量のオイルがレンズユニット500に塗布されると、レンズユニットは、例えば
図10及び
図11に関して本明細書で上述したように、その走査場所に戻されてもよい。本明細書でさらに詳細に後述するように、レンズ上に滴下されるオイルの量は、例えば、レンズによって既に実行された動きを考慮して予想されるオイルの広がりに基づいて推定されてもよく、または、例えば、本明細書で上述したような秤量機構によって推定されてもよい。
【0083】
次に、顕微鏡システムの使用中、対物レンズユニットが観察面に対して相対的に移動する際の液浸オイルの広がりを示す
図19A、
図19B、および
図19Cを参照する。
【0084】
図19Aおよび
図19Bに見られるように、マルチウェルプレート600はプレートホルダ602内に配置される。マルチウェルプレートは、下面604と、各々が生物学的試料を含む複数のウェル606を有する。オイル液浸レンズユニット500が下面604の下に配置され、最初はウェル606a内の第1試料を走査するように位置決めされる。図の拡大部分に見られるように、レンズユニット500に液浸オイルを装填した後の初期段階であるこの段階では、レンズユニット500のレンズ上に配置されたオイルの滴は、レンズユニットが下面604に近接することによって広がり、オイル層610を形成する。余分なオイルは、対物レンズユニットの傾斜したエッジ510に流れ、対物レンズユニットの上部の円周溝512に引っかかる可能性がある。液浸オイルの表面張力は、オイルおよび余分なオイルが、片側では対物ユニットと、反対側ではプレートと係合したままとなることを確実にする。後述するように、オイルは通常、マルチウェルプレートまたは他の試料保持容器の底部と同じ屈折率を有するように調合される。多くの場合、底部はガラス製である。
【0085】
図19Bは、レンズユニット500がプレート600に沿って移動し、ウェル606bおよび606cを走査し、ウェル606dに到達した後を示す。この段階で、オイル層610の厚さは、
図19Aに図示された厚さに対して減少している。これは、対物レンズの動きによって、プレートの下面604に沿って液浸オイルが広がったためである。本明細書でさらに詳細に後述するように、顕微鏡システムまたは本明細書で上述したXYZ運動のコントローラのような対物ユニットに関連するコントローラは、対物ユニットの運動距離が閾値に達し、その時点で液浸オイルが薄く広がりすぎると予想されることを判断し、対物ユニットをオイル装填位置に戻してそこに追加のオイルを塗布するように対物ユニットの動作を制御するように構成され得る。
【0086】
図19Cは、レンズユニット500の上部に配置されたオイルの滴の5つの異なる状態を示す。図示されるように、通常、レンズユニットにオイルを塗布した直後に生じる初期段階(i)では、オイルの表面張力に基づいて、オイルの滴はドームを形成する。実際のところ、この時、オイルの滴は実際に滴の形をしている。
【0087】
(ii)では、レンズユニットはプレートの表面604に近づくが、まだ表面に沿って広がっていない。この時、滴はプレートの下面とレンズユニットの上面の間に垂直に伸びている。この構成は、プレートからオイルの滴を除去する間に、プレートに近づくとき、またはレンズユニットがプレートに対して下降するときに生じる可能性がある。
【0088】
(iii)では、レンズユニットは表面604に近づき、オイルの滴はレンズユニットの領域を囲むプレートの一部に沿って広がっている。しかし、オイルは依然としてレンズユニットの領域にのみ含まれている。いくつかの実施形態では、(iii)に示すようなオイルの滴の構成は、
図21A及び
図21Bに関して後述するように、初期走査高さに相当する高さであってもよい。
【0089】
画像(iv)は、本明細書で詳しく後述するように、対物レンズの焦点を合わせた後の、プレートの初期領域またはウェルの走査中のオイルの構成を示す。図示されるように、オイルは(iii)に対してより広がっているが、依然として対物レンズの上方にのみ位置し、実質的に対物レンズと同心である。レンズユニットが移動した後、例えば、ウェルの別のフィールド、または別のウェルを走査するために、いくつかのオイルは対物レンズによって以前に走査されたプレートの一部に残り、いくつかのオイルは対物レンズとともに新しい領域に移動し、その結果、対物レンズの真上に配置されていない領域にもオイルが広がり、(v)に示すように、対物レンズはプレートに対して右に移動し、オイルは対物レンズの上方および左側に広がる。
【0090】
図20は、本発明の実施形態に係る、オイル液浸レンズを使用して試料を走査し、オイル液浸レンズ上に液浸オイルを再装填する方法の概要を示すフローチャートである。以下の説明は、下面604を有し、各ウェルが生物学的試料が配置される上面を有する、
図19Aおよび
図19Bに示されるプレート600に関して提供される。しかしながら、本開示は、下面および上面を有する任意の他の試料運搬構造にも同様に関連する。
【0091】
図20に見られるように、最初のセットアップステップ700で、プレート600の下面604のZ軸の場所が近似される。近似値は保存され、プレート全体の走査のためのプレート高さの近似値として使用される。このような近似ステップは、チェックされた各々の個々のプレートに対して実行されてもよく、複数のプレートまたは試料のキャリアに対して1回実行されてもよい。
【0092】
いくつかの実施形態では、プレートの下面のZ軸の場所の近似は、迅速なレーザー走査を使用して実行されてもよく、計画された走査のいくつかの場所でプレートの下面を特定する。いくつかの他の実施形態では、複数の焦点、例えば3または4つの焦点が、レーザー走査を用いて、プレート又はプレートの領域について決定されてもよく、プレートの下面の近似平面が、複数の焦点に基づいて決定される。
【0093】
以下に説明するように、プレートの下面の近似高さは、その後のプレートの焦点合わせ動作の基礎として使用され、この動作は、本明細書で説明するように、レーザービーム反射の最大信号の探索を使用して行われる。この初期近似が行われ得る方法には、いくつかの方法がある。選択肢の1つは、空気対物レンズを使用してプレート下面の近似高さを決定し、その後、実際の焦点合わせと走査のためにオイル液浸対物レンズに切り替えるという方法である。別の選択肢は、特定の製造業者の特定の型番のプレートの底部の平均距離がプレートの下端から所定の距離だけ上になること、および、装置の寸法を知りながら、プレートおよび装置の構造に基づいて高さを決定するという方法である。いくつかの実施形態では、プレートの下面の高さの初期近似は、試料の走査に使用するオイル液浸対物レンズよりも低い倍率を有するオイル液浸対物レンズによって実行されてもよく、その後、実際の走査のために高い倍率のオイル液浸対物レンズに切り替えてもよい。
【0094】
第2セットアップステップ702では、プレートまたはスライドの1つまたは複数の走査領域が、例えばユーザーインターフェースを使用して定義され、本明細書に記載されるように、対物レンズのXYZ運動を制御するコントローラに提供される。第3セットアップステップ704において、オイル液浸対物レンズによって、その上にオイルを補充する前に失われ得るオイルの最大閾値量が決定される。この量は、以下に記載されるように、対物レンズの総移動に従って、重量損失によって、またはオイルの厚さによって追跡することができる。いくつかの実施形態では、レンズに塗布されたオイルの量に従って、オイル補給の各例の後にこの閾値を動的に調整するようにシステムをプログラムすることができる。
【0095】
セットアップステップ700、702および704は、
図20において特定の順序で記載されているが、生物学的試料の走査が開始される前に実行されるのであれば、異なる順序で実行してもよい。
【0096】
走査の開始前にも実行されるステップ706では、対物ユニットがレンズ交換アセンブリのオイル装填位置に置かれ、本明細書で説明するように、初期量のオイルがオイル装填サブアセンブリから対物レンズ上に滴下される。例えば、ダイアフラムポンプに関連するコントローラは、対物レンズが正しい位置にあるとき、対物レンズ上に液浸オイルを滴下するようにポンプに信号を提供する。
【0097】
いくつかの実施形態では、初期オイル量は、本明細書に記載されるように後の段階で装填される後続オイル量よりも多い。
【0098】
いくつかの実施形態では、対物レンズに装填されるオイルの正確な量は、本明細書に記載されるような秤量システムを用いて決定される。いくつかの他の実施形態では、対物レンズ上に装填されるオイルの量は、対物レンズに塗布されるオイルの滴の数、既知の値であるポンプによって吸引される液浸オイルの各滴の体積、および吸引されるオイルの所望の体積に基づいて近似される。
【0099】
ステップ708では、コントローラは、ステップ702で決定されたように、走査のための適切なXY位置にレンズを移動させるために、オイルを装填した対物レンズのXYZ運動を制御する。走査を開始するとき、XY位置は走査を開始すべき位置である。本明細書で後述するように、後の対物レンズ上でのオイルの補充の繰り返しの後、XY位置は、液浸オイルを補充するために走査を停止したXY位置、または次のXY位置である。ステップ710では、コントローラは、ステップ700で確立されたプレートの下面の近似的なZ軸の場所から典型的には数ミクロンである所定の初期走査高さまで、対物レンズを上昇させる。所定の高さは、
図19Aに示されるように、対物レンズ上のオイルの滴がプレートの底面に広がるように、プレートの下面に十分に近くなるように選択される。
【0100】
対物レンズが試料に対して焦点を結ぶプレートからの距離は、ステップ712で、例えば
図21に関して後述する方法を用いて自動的に計算され、対物レンズは焦点距離に移動される。対物レンズが確立された焦点距離に到達すると、ステップ714で試料の走査が開始される。
【0101】
走査中、対物レンズは、
図19Aおよび
図19Bに関して本明細書で上述したように、異なる位置の間で試料またはプレート600に対して相対的に移動される。対物レンズによって横断される距離は、例えば、それに関連するコントローラによって、オイルが塗布された対物レンズがプレートの表面と接触しているときの移動と、対物レンズがプレートと接触していないときの移動の両方を含めて、追跡される。コントローラは、そのような動きの結果として対物レンズから失われるオイルの量、および対物レンズがプレートと接触しないようにZ軸に沿って下げられるときに失われるオイルの量を計算するように構成することができる。いくつかの実施形態では、コントローラはまた、対物レンズがプレートに沿って移動されるか、またはプレートとの接触が取り除かれるときに失われるオイルの量に対するプレート材料の違いの影響を考慮する。その代わりに、またはそれに加えて、失われたオイルの量は、オイルを塗布された対物レンズのオイルを塗布された時からの重量変化を監視することによって、および/または、対物レンズ上のオイルの厚さを検査することによって、例えばカメラを用いて、またはレーザーを用いて測定することによって、追跡され得る。
【0102】
連続的または周期的に発生する可能性のあるステップ716において、コントローラは、対物レンズの移動の結果として失われたオイルの量が、ステップ704で確立された最大閾値量よりも大きいかどうかを確認する。横断距離が最大閾値オイル損失より小さい場合、走査はステップ714で継続される。
【0103】
そうでなければ、失われたオイルの計算された量が、最大閾値量に等しいかまたはそれよりも大きい場合、ステップ718において、対物レンズはプレート600に対して下降させられ、XY平面において、オイル装填位置まで移動させられる。次いで、補充量のオイルがオイルの初期量よりも少なくてもよいことを除いて、実質的にステップ706に関して上述したように、ステップ720では、対物レンズ上に補充量のオイルが装填される。本明細書で上述したように、対物レンズ上のオイルの滴を補充するために必要なオイルの量は、例えば、秤量機構に基づいて計算されてもよく、対物レンズによって横断される距離に基づいて、または任意の他の関連するパラメータに基づいて近似されてもよい。その後、フローはステップ708に戻り、対物レンズを走査位置に戻し、試料の走査を継続する。
【0104】
次に、本発明の実施形態に係る、生物学的試料にオイル液浸レンズの焦点を自動的に合わせる方法の実施形態の概要を示すフローチャートである
図21A、
図21Bおよび
図21Cを参照する。
図21A~
図21Cの方法は、プレートの下面の近似的なZ軸の場所から、典型的には数ミクロンの初期走査高さが既知であることを前提としている。初期走査高さは、典型的には、例えば
図20のステップ700で確立されたプレート下面の高さに基づく。この自動焦点合わせは、オイル補充後を含め、レンズが異なるXY位置に再配置されるたびに実行される。
【0105】
初期走査高さは、オイル対物レンズ上に配置されたオイルの滴が、オイル対物レンズとプレートの下面に係合し、その間に広がることが知られている高さである。上述したように、典型的には、オイルは、プレートの下面が構成されている材料と同じ屈折率を有するように調合されており、この材料はガラスであることが多い。このようにして、光がオイルとマルチウェルプレートの材料の間を通過するときに不要な反射や屈折がないように、すなわち、オイルがレンズとプレートの底部の両方に接触するように、液浸オイルおよび初期走査高さが選択される。したがって、対物レンズからオイルおよびプレート材料を介して試料に光ビームが通過する際、光はプレート材料と試料の材料の間の移行部で一度だけ屈折する。これは、ウェルの上面で発生する。
【0106】
図21Aに目を向けると、焦点合わせプロセスの初期ステップ750において、対物レンズは、オイルがプレートの下面に接触するように、すでに知られている所定の初期高さまで運ばれることが分かる。これは
図20のステップ710に相当する。オイルと表面の相互作用を安定させるため、方法の次のステップに進む前に、所定の時間、例えば500ミリ秒から2000ミリ秒の遅延を待つ。ステップ752では、対物レンズから照射されたレーザー信号の反射を測定する。
【0107】
ステップ754で、対物レンズはZ軸に沿って、プレートの下面に近い別の高さに移動され、ステップ756で、新しい位置でのレーザー信号の反射が測定される。新しいZ軸の高さでの反射値が記録される。このプロセスは、基本的に連続的に繰り返される。測定値は、焦点距離に達するまで増加し、その後減少し始めると予想される。
【0108】
ステップ758では、コントローラは、収集された反射データを評価し、過去数回の反復にわたって測定された信号の反射に減少があったかどうかを評価する。減少していない場合、新しいZ軸位置で信号を測定するすために、フローはステップ754に戻る。しかし、測定された反射が減少した場合は、ステップ760では、信号が最大であったZ軸位置に対物レンズを移動させる。Z軸に沿ったこの位置は、試料に対する対物レンズの焦点距離とみなされる。
【0109】
いくつかの実施形態では、減衰は、レーザー信号の0.1Vの連続的な減衰であれば、十分に有意であるとみなされる。
【0110】
図21の方法は、新しい試料またはプレートを走査するたびに、また液浸オイルを補充後に、試料の焦点距離を求めるために使用される。
【0111】
いくつかの実施形態では、例えば、プレートの新しいフィールドに移動するとき、または対物レンズが単一の位置に静止し続け、(例えば、所定の位置からのドリフトの問題を回避するために)同じ位置で長時間撮像するとき、対物レンズの焦点を確実に合わせるために同様のプロセスが使用される。しかし、新しいフィールドに移動する場合や、対物レンズが長い間単一の位置に静止し続けるときに再計算する場合は、以前の焦点距離は既知である。したがって、この状況では、ステップ752において、対物レンズは「既知の焦点距離±所定の探索範囲」の範囲内の高さの間で移動される。ここでも、焦点距離は、最大信号が得られる点に決定される。
【0112】
図21Bに目を向けると、焦点合わせプロセスの初期ステップ770において、対物レンズは、オイルがプレートの下面に接触するように、既知の所定の初期高さまで運ばれることが分かる。これは
図20のステップ710に相当する。オイルと表面の相互作用が安定するように、方法の次のステップに進む前に、所定の時間、例えば500ミリ秒から2000ミリ秒の遅延を待つ。ステップ772では、対物レンズをZ軸に沿って予め決められた距離だけ移動させながら、対物レンズを介して放射されたレーザー信号の反射を繰り返し測定する。Z軸に沿った予め決められた距離は、測定された信号の反射が、対物レンズのZ軸の運動の間にピークに達し、その後減少すると予想されるように選択される。
【0113】
ステップ774では、ステップ772で取得された、全測定にわたって収集された信号ピークの最も良くフィッティングされたガウス(または多項式)曲線が、ピーク最大値を決定するために計算され、対物レンズは、ガウス(または多項式)曲線が最大であったZ軸位置に移動される。Z軸に沿ったこの位置は、試料に対する対物レンズの焦点距離とみなされる。
【0114】
ステップ776では、対物レンズがステップ774で決定された焦点距離に移動され、走査が開始される。走査の一部として、領域の走査が完了するまで、または最大走査時間が経過するまで、焦点位置で試料の画像が撮影される。
【0115】
ステップ778では、コントローラは、領域の走査が完了したかどうかを評価する。領域の走査が完了した場合、対物レンズは下降し、ステップ780で新しいXY位置に移動する。その後、フローは、新しい場所での対物レンズの再焦点合わせのために、ステップ770に戻る。
【0116】
そうでない場合、領域の走査が完了していないと、ステップ782では、コントローラは、最大走査時間が経過したかどうかを評価する。最大走査時間が経過していない場合、フローはステップ776に戻り、走査が継続される。最大走査時間が経過した場合、フローは、対物レンズの焦点を再度合わせ、走査プロセス中に対物レンズまたは試料のドリフトがなかったことを確実にするために、ステップ772に戻る。しかし、新しいフィールドに移動する場合や、長時間同じ位置に留まったりする場合には、以前の焦点距離は既知である。したがって、この状況では、ステップ772において、対物レンズは「既知の焦点距離±所定の探索範囲」の範囲内の高さの間で移動される。ここでも、焦点距離は、最大信号が得られる点に決定される。
【0117】
いくつかの実施形態では、減衰は、レーザー信号における0.1Vの連続的な減衰であれば、十分に有意であるとみなされる。
【0118】
図21Bの方法は、新しい試料またはプレートを走査するたびに、また液浸オイルの補充後に、試料の焦点距離を求めるために使用される。
【0119】
次に、本発明の実施形態に係る走査方法並びに画像の処理および解析の概要を示すフローチャートである
図22A、
図22Bおよび
図23を参照する。
図22Aのフローチャートは、本発明のいくつかの実施形態による走査プロセスの概要を示す。最初に、サイズ(例えば、特定のサイズより大きいおよび/または小さい物体を無視する)、形状(非円形物体または非半円形物体を無視する)、強度等のユーザ定義パラメータに従って、対象物の第1走査動作が実行される。このようにして得られた走査画像は、関心のある対象物やその特徴を特定するために処理される。この処理は、当該技術分野で現在知られている、または将来開発される可能性のある画像処理アルゴリズムを使用して実行され得る。次に、画像処理結果は、同じ領域の更なる走査動作を実行するための最適なパラメータを決定するために、予め定義された規則に従って分析される。この分析結果に基づいて、同じ対象物の新たな画像を取得するための走査のために、新たなパラメータが定義される。その後、新しい走査パラメータを使用して、少なくとも1つの第2走査動作が実行される。したがって、例えば、システムは、それぞれ直径6mmの96個のウェルを有する生物学的試料プレートを走査し得る。走査中、画像処理アルゴリズムは、プレートに存在する各生細胞を認識する。2つ以上の細胞が一緒に付着している場合、または、あるサイズより大きい個々の細胞が存在する場合、システムはこれを、より高倍率の光学系を使用してさらに観察すべき異常な事象として記録してもよい。上述したような対物レンズ交換器があれば、そのような観察を容易にするためにレンズを交換することができる。次に、システムは、高倍率スキャンの適切な画質を定義するパラメータを決定する。いくつかの実施形態では、画像処理は、第1走査動作がまだ実行されている間に実行され、この場合、解析結果は、新たに定義されたパラメータに従って、走査の動作にリアルタイムで影響を与えることができる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの第2走査動作は、第1走査動作よりも高倍率で行われる。本方法が上述のような対物レンズ交換器を備える装置と共に利用されるいくつかの実施形態において、より高倍率での第2走査動作は、対物レンズ交換器を用いてより高倍率の対物レンズに交換し、その後、より高倍率で関心のある領域を走査することによって行われる。
【0120】
図22Bは、本発明のいくつかの実施形態に係る走査プロセスのフローチャートである。走査の最初の段階では、定義された場所の低倍率画像が取得される。このプロセスは、複数の定義された場所の画像が取得されるまで繰り返される。取得直後、走査画像の各々は画像処理・解析モジュールに転送され、画像処理・解析モジュールは最初の画像を受け取ると画像の処理および解析を開始する。このモジュールは、光学デバイスの全体的な動作を制御するソフトウェアに組み込まれてもよく、別のソフトウェアアプリケーションまたはコンピュータに置かれてもよい。処理・解析モジュールは、処理および解析の結果を使用して、初期走査によって特定された対象物およびその特性に従って、関心のある領域に関する情報を含む場所マトリックスの生成を開始する。このようにして、低倍率走査の完了後すぐに、場所マトリックスを完成させ得る。あるいは、全ての処理と解析が完了した後に、場所マトリックスを生成してもよい。この場所マトリックスに基づき、第2段階の走査が実行され、その間に特定の関心のある場所の高倍率画像が取得される。
【0121】
図23は、本発明のいくつかの実施形態に係る画像処理および解析プロセスのフローチャートである。画像処理の初期段階では、以下のステップが実行される。低倍率画像を取得し、得られたデータにローパスフィルタを適用し、得られたデータにハイパスフィルタを適用し、Watershed変換を実行する。これらの画像処理ステップに基づき、オブジェクトおよびオブジェクトの属性/特性が検出され、抽出される。次に、ユーザパラメータ/属性/特性を用いて関連するオブジェクトが選択され、オブジェクト中心(L[Cx,Cy])が抽出される。次に、選択されたオブジェクトの高倍率画像が得られ、そこからオブジェクト間の3D変換マトリックス(M)が作成され、利用される。
【0122】
図24は、本発明の別の実施形態に係る、オイル装填サブアセンブリ1200を示す斜視図である。オイル装填サブアセンブリ1200は、
図13~
図14Dのオイル装填サブアセンブリ200と実質的に類似しており、同様の番号は同様の要素を表す。簡潔にするために、以下の説明では、オイル装填サブアセンブリ1200とオイル装填サブアセンブリ200との区別に焦点を当てる。
【0123】
図示されるように、オイル装填サブアセンブリ1200は、本体部1210を含み、この本体部1210は、
図14Dに関して本明細書で上述したように、オイル観察開口部と流体連通し得る中央オイル溜め1212、およびポンプ入口導管で終端するポンプシート穴を含む。
図14Dに示されるものと同様に、オイル流導管は、ポンプ入口導管に隣接するオイル溜め1212のベースから延在し、本体部1210のエッジで終端し、ここで、オイル流導管はストッパによって封止される。
図14Bに関して本明細書で上述したような観察窓は、上述のようにこのような窓は必須ではないものの、オイル観察開口部内に配置されてもよく、オイル観察開口部を封止してもよい。
【0124】
カートリッジ穿刺要素1230は中央オイル溜め1212内に着座しており、締結具、はんだ付け、接着などの任意の適切な取り付け機構によってそれに取り付けられてもよい。カートリッジ穿刺要素1230は、ベース1234と中央穿刺ピン1236を含み、この中央穿刺ピンは、それを通って長手方向に延在する中空チャネル1238を有し、このチャネルは鋭利な先端で終端し、カートリッジ穿刺要素1230の側面に形成された穴1239と流体連通している。一対の周辺穿刺ピン1240は、ベース1234のエッジから延在し、互いに実質的に平行であってもよい。各穿刺ピン1240は、実質的に平面であり、その長手方向の長さの大部分について第1厚さを有する。各穿刺ピン1240のベース1234から遠位の端部は、穿刺ピンの端部付近に肩部1242が形成されるように、第1厚さよりも小さい第2厚さを有する。各穿刺ピン1240は、鋭い先端1244で終端する。
【0125】
図26Aおよび
図26Bに関して後述するように、液浸オイルカートリッジ1300が中央オイル溜め1212に設置される場合、中央穿刺ピン1236の中空チャネル1238は、
図14Dおよび
図16Aに示されるのと同様の方法で、オイル流導管と同様に中央オイル溜め1212と流体連通している。
【0126】
ダイアフラムポンプ1250は、ポンプ1250の入口がポンプ入口導管内に着座するように、ポンプシート穴内に配置され、ポンプの出口導管1254(
図26Aおよび
図26Bを参照)は、
図13~
図14Dに示されるものと実質的に類似して、本体部1210から下方に延在する。ダイアフラムポンプ250を参照して本明細書で上述したように、ダイアフラムポンプ1250は、オイル流導管からポンプ出口導管を通って、ポンプ出口導管の下に配置された物品にオイルを吸引するように適合され、この物品は、使用時には、液浸オイル対物レンズである。
【0127】
オイル装填サブアセンブリ1200はさらに、本体部1210の底部側に取り付けられ、レンズ交換サブアセンブリ400の上方で顕微鏡システムの他の構成要素にオイル装填サブアセンブリ1200を取り付けるために適合された、ベースマウント1260を含む。バックマウント1265は、中央オイル溜め1212の後方で、本体部1210に取り付けられる。ベースマウント1260およびバックマウント1265の両方は、締結具、接着、はんだ付けなどの任意の適切な接続方法によって本体部1210に接続され得る。
【0128】
次に、本発明の別の実施形態に係る液浸オイルカートリッジ1300の断面図である
図25をさらに参照する。
【0129】
図25に見られるように、液浸オイルカートリッジ1300は、略円筒形のハウジング1301を含む。ハウジング1301は、ベース1302を含み、そこから、第1の幅を有し、第1内径d1を有する第1チャンバ1305を定義する第1円筒壁部1304が延在する。第2円筒壁部1306は、第1円筒壁部1304から延在する。第2壁部分1306は、第1の幅よりも小さい第2の幅を有する。第2壁部1306の外面は、第1壁部1304の外面と面一であり、内部肩部1308は、壁部1304および1306の内面間に形成される。第3円筒壁部1310は、第2円筒壁部1306から延在する。第3壁部1310は、第2の幅よりも小さい第3の幅を有し、カートリッジ1300のネック部を形成する。第3壁部1310の内部表面は、第2壁部1306の内部表面と面一であり、外部肩部1312は壁部1310および1306の外部表面の間に形成される。第3円筒壁部1310は、ベース1302から遠位のリップ1314で終端する。第2壁部1306および第3壁部1310は、一緒になって、第2内径d2を有する第2チャンバ1315を定義する。第2チャンバ1315は、第1チャンバ1305と流体連通している。
【0130】
いくつかの実施形態では、第3壁部1310の、外部肩部1312の遠位側の外面は、中央オイル溜め1212の内周の対応する溝および/または突起とスナップフィット係合するように適合された、スナップフィット係合用の突起および/または溝を含み得る。
【0131】
略円筒形のオイル容器1320はハウジング1301内に配置され、中空1321を定義する。オイル容器1320の第1端部1322は第1チャンバ1305内に配置され、ベース1302の内面に係合する。オイル容器1320の第2端部1324は、オイル容器1320の大部分が第2チャンバ1315内に配置されるように、リップ1314と実質的に面一である。オイル容器1320は、第2チャンバ1315と流体連通している一方で、第2端部1324よりも第1端部1322に近い複数の穴1326を含む。円筒形の隙間1330が、第2チャンバ1315内で、ハウジング1301とオイル容器1320の間に形成される。
【0132】
略円筒形の押し付け要素1340は、隙間1330内でオイル容器1320に配置され、オイル容器に対して長手方向に移動可能である。押し付け要素1340の第1端部1342は、オイル容器1320の第1端部1322により近く配置されるように適合され、押し付け要素の第2端部1344は、オイル容器の第2端部1324により近く配置されるように適合される。円筒形の押し付け要素1340は、オイル容器1320の穴1326と半径方向に整列するように適合された複数の穴1346を含む。穴1346と穴1326の長手方向の整列は、本明細書でさらに詳細に後述するように、オイル容器1320に対する押し要素1340の位置に依存する。
【0133】
押し付け要素1340の第1端部1342は、隙間1330内に配置された環状のOリング1350を押し付けるように適合される。
図26Aおよび
図26Bに関してさらに詳細に説明されるように、Oリング1350は、穴1326の下に配置されるとき、中空1321と隙間1330との間に流体経路が存在しないように隙間1330を封止する。対照的に、
図25に示されるように、Oリング1350が肩1308に対して横たわるように押され、穴1326および1346が互いに整列されると、流体経路が、穴1326および1346を介して、隙間1330と中空1321の間に形成される。
【0134】
カートリッジ1300の保管動作方向では、封止ホイル1360(
図26Aを参照)、または他のシールが、ハウジング1301のリップ1314およびオイル容器1320の第2端部1324に対して配置され、カートリッジ内のオイルを封止する。保管方向では、Oリング1350は、穴1326の下に配置され、中空1321と隙間1330の間に流体経路が存在しないように隙間1330を封止する。
【0135】
次に、
図25の液浸オイルカートリッジ1300を
図24のオイル装填サブアセンブリ1200に挿入するステップの断面図である
図26Aおよび
図26Bをさらに参照する。
【0136】
図26Aに見られるように、カートリッジ1300は保管方向にあり、ハウジング1301のリップ1314、オイル容器1320の第2端部1324、および押し付け要素1340の第2端部1344はすべて互いに面一であり、封止ホイル1360に対して配置される。保管方向では、Oリング1350は、穴1326の下方で、押し付け要素1340の第1端部1342に対して配置される。Oリングは、中空1321と隙間1330の間に流体経路が存在しないように隙間1330を封止する。オイル1365は、オイルの高さが穴1326より上に延在しないように、中空1321内に配置される。
【0137】
カートリッジ1300をオイル装填サブアセンブリ1200に装填するために、カートリッジ1300は、中央ピン1236が封止ホイル1360を穿刺して中空1321に入るまで、矢印1370の方向に、中央オイル溜め1212に向かって動かされる。この初期取り付けステップでは、Oリング1350は穴1326の下に残っており、中空1321と隙間1330の間の流体経路は遮断されたままである。
【0138】
カートリッジ1300が矢印1370の方向に移動され続けると、周辺穿刺ピン1240の先端1244が、隙間1330の近傍で、ホイル1360の周辺を穿刺する。周辺穿刺ピン1240の肩部1242は、押し付け要素1340の第2端部1344に係合し、カートリッジが下げ続けられるにつれて、肩部1242によって第2端部1344に加えられる圧力は、押し付け要素1340をハウジング1301のベース1302に向けて動かし、今度はOリング1350を肩部1308に向けて押し付ける。
【0139】
図26Bに見られるように、カートリッジ1300の設置動作方向では、周辺穿刺ピン1240および押し付け要素1340の肩部1242は、Oリング1350を押し付け、肩部1308に対して静止する。この配置では、押し付け要素1340の穴1346は、中央オイル溜め1212、隙間1330、オイル容器1320の中空1321、および中央穿刺要素1236のチャネル1238の間に流体経路が存在するように、オイル容器1320の穴1326と整列している。この配置では、オイルは容器1320から中央オイル溜め1212に流出することができ、システムの動作は実質的に本明細書で上述したように継続する。
【0140】
本明細書に記載されているようなオイルまたは他の液体の吐出装置も、共焦点顕微鏡と組み合わせて利用できることが理解されよう。さらに、照明光源は必ずしも従来のレーザーである必要はなく、発光ダイオード(LED)またはLEDの組み合わせもしくはアレイであってもよい。その結果、本明細書に記載されるようなオイルまたは他の液体の吐出装置を備える顕微鏡またはスキャナは、光活性化局在化顕微鏡法(PALM)(例えば、Betzig, E. et al.,「Imaging intracellular fluorescent proteins at nanometer resolution」, Science 313, 1642-1645 (2006)を参照)、または確率的光学再構築顕微鏡法(STORM)(例えば、Rust, M. J., Bates, M. & Zhuang, X., 「Sub-diffraction-limit imaging by stochastic optical reconstruction microscopy (STORM)」, Nature Methods 3, 793-795 (2006))を参照)などの既知の技術に従って処理できる画像を得るために、ハイコンテントイメージング(HCI、ハイコンテントスクリーニングとも呼ばれる)において使用され得る。一実施形態では、本明細書に記載されるようなオイル吐出装置を備える取得デバイスを使用して得られる画像は、Gustafsson et al.,「Fast live-cell conventional fluorophore nanoscopy with ImageJ through super-resolution radial fluctuations」、Nature Communications 7:12471(2016年8月12日公開)に記載されるように、超解像動径ゆらぎ(SRRF)に従って処理することができる。このような処理は、https://henriqueslab.github.io/resources/NanoJ-SRRF/で自由に利用できるImageJソフトウェアプラグインを使用して実行され得る。本明細書に記載の装置および方法が、対物レンズへのオイル(または他の液体)の自動吐出を容易にするという事実は、この装置は、自動走査、自動焦点合わせ、自動対物レンズ交換、レンズ液浸媒体の自動吐出、および関心のある対象物の自動検出という、完全に自動化された画像取得において組み合わせることができるということを意味する。
【0141】
特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野における通常の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載の方法と類似または同等の方法を本発明の実施または試験に使用することができるが、好適な方法が本明細書に記載されている。
【0142】
本明細書で言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、およびその他の文献は、参照によりその全体が組み込まれる。矛盾が生じた場合は、定義を含む特許明細書が優先する。さらに、材料、方法、および実施例は例示に過ぎず、限定を意図するものではない。
【0143】
本発明は本明細書において特に示され上述されたものに限定されないことが、当業者には理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、実施形態で例示したような同じ機能を果たす部品の一般的な組み合わせによって定義され、本明細書で上述した種々の特徴の組み合わせおよび部分的な組み合わせの両方、並びに前述の記載を読んだ後の当業者に思い浮かぶであろうそれらの変形および修正を含む。
【国際調査報告】