(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-12
(54)【発明の名称】レーザーレーダーを用いて目標物の反射率を測定する方法及びレーザーレーダー
(51)【国際特許分類】
G01S 7/487 20060101AFI20240405BHJP
【FI】
G01S7/487
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566976
(86)(22)【出願日】2021-12-15
(85)【翻訳文提出日】2023-11-07
(86)【国際出願番号】 CN2021138322
(87)【国際公開番号】W WO2022227608
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】202110474761.0
(32)【優先日】2021-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519434972
【氏名又は名称】上海禾賽科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Hesai Technology Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.2 Building,No.468 XinLai Road,Jiading District,Shanghai,China
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】胡 天健
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 杰
(72)【発明者】
【氏名】▲クアン▼ 杰
(72)【発明者】
【氏名】李 力
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲艷▼芳
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲軼▼尊
(72)【発明者】
【氏名】向 少▲卿▼
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AA05
5J084AA20
5J084AD01
5J084BA03
5J084BA35
5J084CA03
5J084CA44
(57)【要約】
レーザーレーダー(100)の探知器は探知ビームが目標物で反射されたエコーを受信して電気信号に変換し、エコー光電流積分を取得するステップS101と、予め設定された反射率校正曲線と前記エコー光電流積分に基づいて、目標物の反射率を決定するステップS102と、を含む、レーザーレーダー(100)を用いて目標物の反射率を測定する方法(10)である。本発明は、光電流積分によって目標物の反射を測定する方法を提供し、光子に対するシリコン光電子増倍管の応答電流の長時間蓄積に基づくものであり、提供される方法は、パルス幅、前縁の傾き等の短時間エコー信号を測定することで反射率を測定する方法と比較して、正確率が高く、測定精度が高く、ダイナミックレンジが大きい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザーレーダーを用いて目標物の反射率を測定する方法であって、
前記レーザーレーダーの探知器によって、探知ビームが目標物で反射されたエコーを受信して電気信号に変換し、エコー光電流積分を取得するステップS101と、
予め設定された反射率校正曲線と前記エコー光電流積分に基づいて、前記目標物の反射率を決定するステップS102と、を含む、方法。
【請求項2】
前記ステップS101は、
前記電気信号を第1所定時間内で積分して、前記電気信号に対応する第1光電流積分を取得するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップS101は、
周囲光に対応する第2光電流積分を取得し、前記第1光電流積分と前記第2光電流積分との差を前記エコー光電流積分とするステップをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップS101は、
前記探知器によって、周囲光を受光して電気信号に変換するステップと、
前記周囲光によって生成された電気信号を第2所定時間内で積分して、前記第2光電流積分を取得するステップと、をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1所定時間は、前記探知器が一回の測定を行う合計時間以上である、請求項2から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記探知器はシリコン光電子増倍管であり、前記電気信号は前記シリコン光電子増倍管のアノードから出力された電気信号である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記レーザーレーダーは、前記探知ビームの送信時間及び前記エコーの受信時間に基づいて、目標物からの距離を決定し、
前記ステップS102は、予め設定された反射率、光電流積分と目標物距離の校正曲線、及び前記エコー光電流積分に基づいて、前記目標物の反射率を決定するステップをさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ステップS102は、
予め設定された、複数の所定の反射率にそれぞれ対応する光電流積分と目標物からの距離の校正曲線に基づいて、前記エコー光電流積分に対応する目標物の反射率を補間法で計算するステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記エコーは複数の光パルスを含み、前記探知器は前記複数の光パルスを複数の電気パルスに変換し、前記エコー光電流積分は前記複数の電気パルスの累積積分である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記レーザーレーダーの探知器の温度を取得し、前記エコー光電流積分を等価校正温度におけるエコー光電流積分に変換するステップをさらに含む、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項11】
前記第2光電流積分が予め設定された閾値よりも大きい場合に、前記エコー光電流積分を等価校正PDEにおけるエコー光電流積分に変換するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記レーザーレーダーは複数の探知器を含み、
各探知器に対応する反射率と、光電流積分と、目標物距離との校正曲線をそれぞれ設定するステップをさらに含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
目標物を探知するために探知ビームを送信するように構成される送信ユニットと、
少なくとも1つの探知器を含み、光信号を受信し、前記光信号を電気信号に変換するように構成される受信ユニットと、
前記探知ビームが目標物で反射されたエコーに対応するエコー光電流積分を取得し、予め設定された反射率校正曲線と前記エコー光電流積分に基づいて、前記目標物の反射率を決定するように構成される処理ユニットと、を含む、レーザーレーダー。
【請求項14】
前記探知器に結合され、前記電気信号を所定時間内で積分するように構成される積分ユニットをさらに含む、請求項13に記載のレーザーレーダー。
【請求項15】
前記探知器はシリコン光電子増倍管であり、前記積分ユニットは前記探知器のアノードに結合される、請求項14に記載のレーザーレーダー。
【請求項16】
前記積分ユニットはRC積分回路を含む、請求項14又は15に記載のレーザーレーダー。
【請求項17】
前記積分ユニットは演算増幅器をさらに含み、前記RC積分回路は前記演算増幅器の第1入力端子に結合され、前記演算増幅器の出力端子は抵抗を介して前記演算増幅器の第2入力端子に結合される、請求項16に記載のレーザーレーダー。
【請求項18】
前記積分ユニットに結合され、前記積分ユニットの出力をサンプリングするように構成されるサンプリングユニットをさらに含む、請求項14又は15に記載のレーザーレーダー。
【請求項19】
前記探知器の温度を検出するための温度検出ユニットをさらに含む、請求項13から15のいずれか一項に記載のレーザーレーダー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー探知の技術分野に関し、特に、レーザーレーダーを用いて目標物の反射率を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザーレーダーは、レーザー機器によって探知光パルスを送信し、光探知器によって目標物で反射されたエコー光パルスをエコー電気パルスに変換し、探知光パルスの送信時間とエコー光パルスの受信時間に基づいて光の飛行時間(Time of Flight,ToF)を計算し、光速と組み合わせて目標物距離を取得する。且つ、エコー電気パルスの信号特徴に基づいてエコー光強度を特徴付け、エコー光強度と距離で減衰した等価出射光強度に基づいて、目標物の反射率を計算する。
【0003】
従来の光探知器はアバランシェフォトダイオード(Avalanche Photon Diode,APD)であり、APDは光電利得が低く、レーダーの遠距離探知に不利である。探知距離を長くするために、受光レンズの口径を大きくする必要があり、レーザーレーダーの体積が増大し、また、システムにおいて探知器毎に高帯域幅の増幅回路を配置して電気パルス信号を増幅する必要があり、その結果、レーザーレーダーの体積、消費電力及びコストは全て増加する。
【0004】
ガイガーモードで動作するフォトダイオードは、アバランシェ放電メカニズムを用いて高利得を得るものであり、単一光子アバランシェダイオード(Single Photon Avalanche Diode,SPAD)と呼ばれる。逆バイアスがその定格降伏電圧を超えると、PN接合において必要な高電場勾配が生成され、光子がSPAD内に入射すると、光子によって励起されたキャリアは電場の作用でアバランシェ効果を引き起こす。しかしながら、このような電流がアクティブ化したり、流れたりすると、停止したり、「消し」たりすべきである。クエンチング抵抗によってダイオード両端の電圧を降伏電圧以下まで低下させ、それによりアバランシェを停止させる。その後、SPADは降伏電圧を超える逆バイアスに再充電されて、後続の光子を検出するために用いられる。SPADにアバランシェが発生してから降伏電圧を超える逆バイアスに再回復するまでの期間内には、SPADは後続の光子に応答しない。
【0005】
単一SPADでは複数の光子を同時に測定できないという欠点を克服するために、シリコン光電子増倍管(SiPM)には高密度且つ小型の独立したSPADセンサアレイが集積されており、各センサはいずれも独自のクエンチング抵抗を有し、それぞれ独立して動作するSPADとクエンチング抵抗はマイクロユニットと呼ばれる。SiPMにおける1つのマイクロユニットが吸収された光子に応答する場合、他のマイクロユニットは依然として光子探知能力を持っている。
【0006】
SiPMは極めて高い光電利得(106レベル)を有し、nWレベルのエコーエネルギー探知を実現できるが、APDは効果的な探知を行うためにmWレベルのエコーエネルギーを必要とする。APDに比べて、SiPMを光探知器として用いると、レーザーレーダーの消費電力を効果的に低下させることができる。且つ、SiPMはCMOSプロセスで製造することができ、チップ化、集積化に有利であり、レーダーの体積を低減させるとともに、組立及びデバックの効率を向上させることができ、大規模な量産に適している。
【0007】
SiPMを探知器として用いるレーザーレーダーは通常、エコー電気パルスの前縁の傾きとパルス幅を信号特徴として用いて、反射率測定を行う。しかしながら、SiPMの光子流に対する応答信号は高い統計的変動性及び非線形特性を有し、その信号特徴は、同じ強度のエコーエネルギーに対してランダムにジッタする可能性があり、反射率の測定精度が低くなる。また、SiPMのマイクロユニットの数が限られており、強い光の下では、SiPMのほぼ全てのマイクロユニットが回復時間(十数ナノ秒)内にトリガーされることにより、探知器が飽和してしまうことが極めて発生しやすく、この際に、エコー電気信号特徴はほとんど目標物の反射率につれて変化しなくなり、反射率の測定ダイナミックレンジが非常に小さくなる。したがって、SiPMによるデバイスは、反射率測定の課題で精度が低く、ダイナミックレンジが小さいという難題に直面し、これはレーザーレーダー製品へのSiPMの応用の主な障害の1つとなっている。
【0008】
背景技術部分の内容は、開示者が知っている技術に過ぎず、必ずしも当該分野の従来技術を表すものではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
従来技術の少なくとも1つの欠点に鑑みて、本発明は、
前記レーザーレーダーの探知器は、探知ビームが目標物で反射されたエコーを受信して電気信号に変換し、エコー光電流積分を取得するステップS101と、
予め設定された反射率校正曲線と前記エコー光電流積分に基づいて、前記目標物の反射率を決定するステップS102と、を含む、レーザーレーダーを用いて目標物の反射率を測定する方法を提供する。
【0010】
本発明の一態様によれば、ステップS101は、
前記電気信号を第1所定時間内で積分して、前記電気信号に対応する第1光電流積分を取得するステップをさらに含む。
【0011】
本発明の一態様によれば、ステップS101は、
周囲光に対応する第2光電流積分を取得し、前記第1光電流積分と前記第2光電流積分との差を前記エコー光電流積分とするステップをさらに含む。
【0012】
本発明の一態様によれば、ステップS101は、
前記探知器は、周囲光を受光して電気信号に変換するステップと、
前記周囲光によって生成された電気信号を第2所定時間内で積分して、前記第2光電流積分を取得するステップと、をさらに含む。
【0013】
本発明の一態様によれば、前記第1所定時間は、前記探知器が一回の測定を行う合計時間以上である。
【0014】
本発明の一態様によれば、前記探知器はシリコン光電子増倍管であり、前記電気信号は前記シリコン光電子増倍管のアノードから出力された電気信号である。
【0015】
本発明の一態様によれば、前記レーザーレーダーは、前記探知ビームの送信時間及び前記エコーの受信時間に基づいて、目標物距離を決定し、ステップS102は、
予め設定された反射率、光電流積分と目標物距離の校正曲線、及び前記エコー光電流積分に基づいて、前記目標物の反射率を決定するステップをさらに含む。
【0016】
本発明の一態様によれば、ステップS102は、
予め設定された、複数の所定の反射率にそれぞれ対応する光電流積分と目標物距離の校正曲線に基づいて、前記エコー光電流積分に対応する目標物の反射率を補間法で計算するステップをさらに含む。
【0017】
本発明の一態様によれば、前記エコーは複数の光パルスを含み、前記探知器は前記複数の光パルスを複数の電気パルスに変換し、前記エコー光電流積分は前記複数の電気パルスの累積積分である。
【0018】
本発明の一態様によれば、前記方法は、
前記レーザーレーダー探知器の温度を取得し、前記エコー光電流積分を等価校正温度におけるエコー光電流積分に変換するステップをさらに含む。
【0019】
本発明の一態様によれば、前記方法は、
前記第2光電流積分が予め設定された閾値よりも大きい場合に、前記エコー光電流積分を等価校正PDEにおけるエコー光電流積分に変換するステップをさらに含む。
【0020】
本発明の一態様によれば、前記レーザーレーダーは複数の探知器を含み、前記方法は、
各探知器に対応する反射率、光電流積分と目標物距離の校正曲線をそれぞれ設定するステップをさらに含む。
【0021】
本発明は、
目標物を探知するために探知ビームを送信するように構成される送信ユニットと、
少なくとも1つの探知器を含み、光信号を受信し、光信号を電気信号に変換するように構成される受信ユニットと、
前記探知ビームが目標物で反射されたエコーに対応するエコー光電流積分を取得し、予め設定された反射率校正曲線と前記エコー光電流積分に基づいて、前記目標物の反射率を決定するように構成される処理ユニットと、を含む、レーザーレーダーをさらに提供する。
【0022】
本発明の一態様によれば、前記レーザーレーダーは、
前記探知器に結合され、前記電気信号を所定時間内で積分するように構成される積分ユニットをさらに含む。
【0023】
本発明の一態様によれば、前記探知器はシリコン光電子増倍管であり、前記積分ユニットは前記探知器のアノードに結合される。
【0024】
本発明の一態様によれば、前記積分ユニットはRC積分回路を含む。
【0025】
本発明の一態様によれば、前記積分ユニットは演算増幅器をさらに含み、前記RC積分回路は前記演算増幅器の第1入力端子に結合され、前記演算増幅器の出力端子は抵抗を介して前記演算増幅器の第2入力端子に結合される。
【0026】
本発明の一態様によれば、前記レーザーレーダーは、
前記積分ユニットに結合され、前記積分ユニットの出力をサンプリングするように構成されるサンプリングユニットをさらに含む。
【0027】
本発明の一態様によれば、前記レーザーレーダーは、
前記探知器の温度を検出するための温度検出ユニットをさらに含む。
【0028】
本発明の好ましい実施例は、光電流積分によって目標物の反射を測定する方法を提供し、光子に対する光探知器の応答電流の長時間蓄積に基づくものであり、本発明で提供される方法は、従来技術においてエコー電気パルスのピーク強度、パルス幅、前縁の傾き等の信号特徴を測定することで反射率を測定する方法と比較して、消費電力が低く、正確率が高く、測定精度が高く、ダイナミックレンジが大きい。特に、エコー電気パルス信号特徴のランダムジッタ、非線形、飽和しやすさ、小さなダイナミックレンジ等の欠陥による反射率測定への悪影響を克服することができ、レーザーレーダーの分野におけるシリコン光電子増倍管デバイスの幅広い適用に良好な促進作用を果たす。
【0029】
図面は本発明を更に理解させ、明細書の一部を構成するためのものであり、本発明の実施例とともに本発明を解釈するためのものであるが、本発明を限定するものにならない。図面の説明を次に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】シリコン光電子増倍管の内部構造を模式的に示す。
【
図2】シリコン光電子増倍管の高速出力ポートの出力信号波形を模式的に示す。
【
図3】本発明の好ましい一実施例に係る、レーザーレーダーを用いて目標物の反射率を測定する方法を示す。
【
図4】本発明の好ましい一実施例に係る予め設定された反射率の校正曲線を模式的に示す。
【
図5】強い周囲光におけるシリコン光電子増倍管の探知効率の低下状況を模式的に示す。
【
図6A】本発明の好ましい一実施例に係る予め設定された反射率の校正方法を示す。
【
図6B】
図6Aの校正方法で使用される関連機器を模式的に示す。
【
図7】本発明の好ましい一実施例に係るレーザーレーダーを模式的に示す。
【
図8A】本発明の好ましい一実施例に係る積分回路を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下において、いくつかの例示的な実施例のみを簡単に説明する。当業者であれば理解できるように、本発明の趣旨又は範囲を逸脱することなく、説明される実施例を様々な方法で修正することができる。従って、図面及び説明は、実質的に例示的なものであり、限定的なものではないと理解される。
【0032】
本発明の説明では、理解すべきところとして、用語の「中心」、「縦方向」、「横方向」、「長さ」、「幅」、「厚さ」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「鉛直」、「水平」、「頂」、「底」、「内」、「外」、「時計回り」、「逆時計回り」等で示す方位又は位置関係は図面に基づくものであり、本発明を容易に説明し記述を簡略化するためのものに過ぎず、記載される装置又は素子は必ず特定の方位を有したり、特定の方位で構成、操作されたりすることを指示又は暗示することがないので、本発明を制限するものと理解してはならない。また、用語の「第1」、「第2」は、説明するためのものに過ぎず、相対的重要性を指示又は暗示したり、指示される技術的特徴の数を暗示したりするものと理解してはならない。従って、「第1」、「第2」と制限される特徴は1つ又は複数の前記特徴を明示的又は暗示的に含むことができる。本発明の説明では、明確且つ具体的に限定しない限り、「複数」は2つ又は2つ以上を意味する。
【0033】
本発明の説明では、説明すべきところとして、別に明確に規定、制限しない限り、用語の「取り付ける」、「連結する」、「接続する」を広義的に理解すべきであり、例えば、固定的に接続してもよく、取り外し可能に接続してもよく、又は、一体的に接続してもよく、機械的に接続してもよく、電気的に接続してもよく、又は相互に通信してもよく、直接接続してもよく、更に中間媒介を介して間接的に接続してもよく、2つの素子の内部を連通させてもよく、又は2つの素子の相互作用の関係であってもよい。当業者であれば、具体的な状況に応じて本発明での上記用語の具体的な意味を理解してもよい。
【0034】
本発明では、別に明確に規定、制限しない限り、第1特徴が第2特徴の「上」又は「下」にあるというのは、第1と第2特徴が直接接触する場合を含んでもよいし、第1と第2特徴が直接接触せず、それらの間の別の特徴を介して接触する場合を含んでもよい。また、第1特徴が第2特徴の「上」、「上方」及び「上面」にあるというのは、第1特徴が第2特徴の真上及び斜め上方にある場合を含み、又はただ第1特徴の水平高さが第2特徴より高いことを意味する。第1特徴が第2特徴の「下」、「下方」及び「下面」にあるというのは、第1特徴が第2特徴の真下及び斜め下方にある場合を含み、又はただ第1特徴の水平高さが第2特徴より小さいことを意味する。
【0035】
以下の開示では、本発明の異なる構造を実現するために多くの異なる実施形態又は例を提供する。本発明の開示を簡略化するために、以下では特定の例の部材及び設定について説明する。当然ながら、それらは例に過ぎず、本発明を限定することを目的とするものではない。また、本発明では、異なる例において参照数字及び/又は参照アルファベットを重複することができ、そのような重複は、簡略化及び明瞭化のためのものであり、それ自体は、説明される各種の実施形態及び/又は設定間の関係を示すものではない。また、本発明は様々な特定のプロセス及び材料の例を提供するが、当業者であれば、他のプロセスの応用及び/又は他の材料の使用を想到できる。
【0036】
以下では、図面を参照しながら本発明の実施例を説明し、ここで説明される実施例は本発明を説明、解釈するためのものに過ぎず、本発明を制限する意図がないことを理解すべきである。
【0037】
図1に示すように、SiPMは複数のアバランシェフォトダイオード及びアバランシェフォトダイオードに一対一で対応して結合されるクエンチング回路(クエンチング抵抗として図示している)を含み、1つのアバランシェフォトダイオードとクエンチング回路を1つのマイクロユニットとして、複数のマイクロユニットが並列に接続されてSiPMを構成する。
【0038】
一部のSiPMデバイスは、カソードとアノードに加えて、第3出力端子(高速出力、Fast Output、図示せず)を有し、各マイクロユニットは容量結合出力を有し、1つのSiPMの全てのマイクロユニットの容量結合出力端子はFast Outputに並列に接続されている。パルスを高速出力することで超高速の時間測定を行うことができる。
【0039】
図2は、SiPMが光パルスを受信した後、光パルスを電気パルス信号に変換し、高速出力(Fast Output)端子で測定された電気パルス信号の典型的な波形であり、同じターゲットを同じ距離で複数回測定し、毎回の測定は異なるエコーエネルギー強度に対応し、SiPMから高速出力される対応する信号波形分布は
図2に示すとおりである。エコーエネルギー強度の増加につれて、高速出力されるパルス強度が向上し、前縁の傾きが増大する。縦座標20をノイズ閾値とすると、異なるエネルギー強度のエコーによって生成された電気パルスでは、前縁がノイズ閾値に達する時間差は350psである。
【0040】
しかしながら、同じ強度の信号を複数回測定し、データ計算と統計を行ったところ、電気パルスの前縁の傾きには数ピコ秒から1ナノ秒余りのランダムジッタが存在することを発見し、これは、光子流がポアソン分布に従うとともに、SiPMのマイクロユニットの間に光学的クロストークが存在するからである。エコー信号のボトム幅(信号振幅がゼロよりも大きい時間幅)は僅か数ナノ秒であるため、このようなランダムジッタは無視できず、反射率測定の精度が低くなる。
【0041】
一方で、信号強度の変化に伴い、エコー電気パルス特徴は単調に変化するものではない。エコーエネルギー強度が低い場合に、電気パルスの前縁の傾きはエコーエネルギー強度の増加につれて増大するが、エコーエネルギー強度が非常に高い場合に、シリコン光電子増倍管の圧倒的多数のマイクロユニットは短時間でいずれもトリガーされ、且つパルス時間内に復帰できないため、エコー電気パルスの前縁の傾きがエコーエネルギー強度によって変化しなくなり、さらに前縁の傾きが減らす現象が現れる。この際に、エコー電気パルス特徴はアンビギュイティ(1つのエコー電気パルス特徴は2つ以上のエコーエネルギー強度に対応する)を有し、エコーエネルギーの変化を特徴づけることができなくなり、シリコン光電子増倍管はダイナミックレンジの限界に達する。シリコン光電子増倍管のマイクロユニットの数が限られている(数百個)ため、受信飽和が極めて発生しやすいため、エコーパルス特徴でエネルギーを特徴づけるダイナミックレンジが非常に小さく、反射率測定のダイナミックレンジが非常に小さくなる。
【0042】
シリコン光電子増倍管に基づくレーザーレーダーによる反射率の測定が直面する電気パルス信号特徴のランダムジッタが大きく、ダイナミックレンジが小さいという技術的課題を解決するために、本発明はシリコン光電子増倍管の光電流積分に基づいて反射率校正及び測定を行う方法を提供する。
【0043】
図3に示すように、本発明の好ましい一実施例によれば、本発明は、ステップS101とステップS102を含む、レーザーレーダーを用いて目標物の反射率を測定する方法10を提供する。
【0044】
ステップS101では、レーザーレーダーの探知器は、探知ビームが目標物で反射されたエコー光信号を受信して電気信号に変換し、エコー光電流積分を取得する。
【0045】
ToF測定に基づくレーザーレーダーの応用では、探知ビームは1つの又は複数の光パルスを含んでもよく、それに応じて、エコー光信号は探知ビームに対応する1つの又は複数の光パルスであり、光探知器は光パルスに応答し、それを電気信号に変換し、それに対応する1つの又は複数の電気パルスを生成する。電気パルスは電気信号振幅の経時変化曲線として表されてもよく、前記エコー光電流積分は、上記電気パルス信号曲線で覆われた面積で表されてもよく、エコーエネルギー強度を特徴づけるために用いることができる。
【0046】
ステップS102では、予め設定された反射率校正曲線とエコー光電流積分に基づいて、目標物の反射率を決定する。
【0047】
本発明の好ましい一実施例によれば、ある反射率の目標物に対して、目標物距離とエコー光電流積分との対応関係を取得するように予め設定し、さらに、異なる反射率の目標物に対して、目標物距離とエコー光電流積分との対応関係をそれぞれ取得し、上記対応関係をレーザーレーダーの処理ユニットに保存し、処理ユニットは、実際の探知によって得られたエコー光電流積分及び予め設定された反射率校正曲線に基づいて、目標物の反射率を決定することができる。
【0048】
好ましい一実施例では、目標物距離とエコー光電流積分との対応関係は校正曲線としてフィッティングされ得る。
図4に示すように、異なる反射率の3つの目標物にそれぞれ対応する目標物距離とエコー光電流積分との校正曲線を予め設定する。
【0049】
レーザーレーダーを用いて目標物の反射率を測定する方法10はエコー光電流積分を取得することで目標物の反射率を測定し、エコー光電流積分にはランダムジッタが存在せず、エコーエネルギー強度を正確に反映できるため、反射率測定の精度を向上させ、且つエコー光電流積分は一価性を有し、エコーエネルギー強度によって単調に変化し、反射率測定のダイナミックレンジを増大させる。
【0050】
本発明の好ましい一実施例によれば、レーザーレーダーを用いて目標物の反射率を測定する方法10では、ステップS101は、
レーザーレーダーの探知器から出力された電気信号を第1所定時間内で積分して、該電気信号に対応する第1光電流積分を取得するステップをさらに含む。
【0051】
探知器から出力された電気信号を第1所定時間内で積分することにより、探知器から出力された電気信号振幅の経時変化曲線で覆われた面積を取得でき、探知器から出力された電気信号のエネルギー強度を特徴づけるために用いることができる。
【0052】
本発明の好ましい一実施例によれば、レーザーレーダーを用いて目標物の反射率を測定する方法10では、ステップS101は、周囲光に対応する第2光電流積分を取得し、第1光電流積分と第2光電流積分との差をエコー光電流積分とするステップをさらに含む。
【0053】
レーザーレーダーの探知器は、受信した光信号を電気信号に変換し、積分することで、実際にエコー光信号と、周囲光信号との和に対応する光電流積分(第1光電流積分と記す)が得られる。エコー光信号に対応する光電流積分は直接測定することが困難であり、周囲光は短時間内で強度が安定するため、周囲光信号に対応する光電流積分は単位時間内で基本的に一定に維持され、したがって、さらなる測定によって、周囲光信号に対応する光電流積分(第2光電流積分と記す)を得て、差を求めることでエコー光信号に対応するエコー光電流積分を得る。
【0054】
本発明の好ましい一実施例によれば、レーザーレーダーを用いて目標物の反射率を測定する方法10では、ステップS101は、
探知器は、周囲光を受光して周囲光の電気信号に変換するステップと、
周囲光の電気信号を第2所定時間内で積分して、第2光電流積分を取得するステップと、をさらに含む。
【0055】
さらに、第1光電流積分には、探知ビームが目標物で反射されたエコーによって光探知器上で生成された電気信号情報、及び周囲光によって光探知器上で生成された電気信号情報が含まれる。第2光電流積分は、周囲光によって光探知器上で生成された電気信号のみから得られる。したがって、第1光電流積分と第2光電流積分との差を求めることで、エコー光信号による電気信号強度を正確に特徴付け、周囲光の影響を除去することができる。
【0056】
一実施形態としては、第1所定時間の時間間隔は、探知器が一回の測定を行う合計時間以上である。又は、レーザーレーダーの少なくとも1つのレーザー機器は探知のための探知光を出射し、少なくとも1つの探知器は該探知光が目標物で反射されたエコーを受信するように構成され、上記少なくとも1つのレーザー機器と少なくとも1つの探知器はレーザーレーダーの1つの探知チャネルを構成する。前記第1所定時間の時間間隔は1つの探知チャネルの合計測定時間以上である。
【0057】
具体的には、レーザーレーダーの1つの探知チャネルの合計測定時間内で、探知器は光信号を受信して電気信号に変換し、上記光信号はエコー光信号及び周囲光信号を含み、積分回路は電気信号の合計時間内の積分、即ち第1光電流積分を出力する。合計測定時間は、該探知チャネルの予約ToF時間、複数の光パルスの総パルス幅及び複数の光パルスの間の時間間隔の合計を含んでもよい。予約ToF時間とは、該探知チャネルのレーザー機器から探知光が出射された後、レーダーの最遠目標探知距離に対応する飛行時間である。例えば、1つの探知チャネルから出射された探知光は3つの光パルスを含み、各パルス幅は4nsであり、隣接する2つの光パルスの間の時間間隔は100nsであり、予約ToF時間は400nsであると、第1所定時間間隔≧(400+3*4+2*100)nsとなる。
【0058】
1つの探知チャネルの合計測定時間以外に、SiPMは依然として周囲光の作用で弱い光電流を生成し、この際に、積分回路は周囲光の電気信号を第2所定時間内で積分し、第2光電流積分を取得する。
【0059】
好ましくは、第1所定時間と第2所定時間の時間間隔は大体同じである。より好ましくは、第1所定時間と第2所定時間の時間間隔はいずれも100nsレベルである。
【0060】
SiPMを探知器として用いる実施形態では、光電流積分はSiPMのアノードから出力された光電流の時間的積分である。Fast Outputによって超高速の時間測定を行うことができるが、多くの情報がフィルタリングされたため、エコーエネルギー強度の測定に適していない。SiPMのアノードから出力された光電流の時間的積分は、エコーエネルギー強度の増大につれて増加し、エコーエネルギー強度の大きさを正確に反映でき、高精度の反射率測定結果を得るのに役立つ。
【0061】
別の実施形態としては、レーザーレーダーの信号処理によって、あるエコー信号を目標物で反射されたエコーとして判定し、これにより目標物距離情報を取得する際に(例えば該エコー信号強度がノイズ閾値を超える)、該エコー信号の受信時間に対応する第1所定時間内の積分を第1光電流積分とする。該エコー信号の受信時間以外の時間範囲で、第2所定時間内での積分回路の積分を取得し、第2光電流積分を得る。
【0062】
本発明の好ましい一実施例によれば、レーザーレーダーは、探知ビームの送信時間及びエコーの受信時間に基づいて、目標物距離を決定し、レーザーレーダーを用いて目標物の反射率を測定する方法10では、ステップS102は、
予め設定された反射率、光電流積分と目標物距離の校正曲線、及びエコー光電流積分に基づいて、目標物の反射率を決定するステップをさらに含む。
【0063】
図4に示すように、レーザーレーダーの処理ユニットに予め保存された反射率校正曲線には、異なる反射率において光電流積分の値が距離に応じて変化する曲線が含まれる。
【0064】
本発明の好ましい一実施例によれば、該反射率校正曲線は、複数の異なる所定の反射率の光電流積分-距離曲線を含む。本発明の好ましい一実施例によれば、
図4には、校正された所定の反射板1の反射率値R1、所定の反射板2の反射率値R2、所定の反射板3の反射率値R3が含まれ、エコー光電流積分V
d0及び目標物距離dから、線形補間法によって、目標物の反射率Rを決定することができる。
【0065】
以下の線形補間公式(数1)から
【0066】
【0067】
【数2】
本発明の好ましい一実施例によれば、レーザーレーダーを用いて目標物の反射率を測定する方法10は、
レーザーレーダー探知器の温度を取得し、エコー光電流積分を等価校正温度におけるエコー光電流積分に変換するステップをさらに含む。
【0068】
予め設定されたエコー光電流積分曲線は一定の校正温度で行われたものであるが、異なる温度で光探知器の利得が変化し、同じ強度の光信号を受信する際に生成する光電流積分が異なるため、実際に測定された反射率値にドリフト現象が発生する。したがって、実際に測定して得られたエコー光電流積分に対して温度補償を行い、等価校正温度におけるエコー光電流積分を得る必要があり、それにより校正温度における校正曲線に基づいて、目標物の反射率を正確に計算する。
【0069】
シリコン光電子増倍管については、光電流積分と温度とは以下の関係(数3)を有する。
【0070】
【数3】
式中、V
d,T0は、距離がd、周囲温度がT0の場合に校正して得られた光電流積分であり、V
dは、レーザーレーダーの実際の動作において、距離がdである物体に対して反射率を測定して得られたエコー光電流積分であり、k及びbは通常の係数であり、あるシリコン光電子増倍管にとっては固定値であり、Tはレーザーレーダーが実際の動作において反射率を測定する際の周囲温度である。
【0071】
上記関係式を用いて、シリコン光電子増倍管の光電流積分に対して温度補償を行うことができ、レーザーレーダーの動作温度範囲内で、リアルタイムで測定されたエコー光電流積分Vdを等価校正温度T0におけるエコー光電流積分Vd,T0に変換することができる。
【0072】
本発明の好ましい実施例で提供される温度補償の方法によって、実際に測定された反射率の温度ドリフトが80%減少する。
【0073】
本発明の好ましい一実施例によれば、レーザーレーダーを用いて目標物の反射率を測定する方法10は、
第2光電流積分が予め設定された閾値よりも大きい場合に、エコー光電流積分を等価PDEにおけるエコー光電流積分に変換するステップをさらに含む。
【0074】
周囲光が弱い場合に、エコー光信号に対応する光電流積分と周囲光信号に対応する光電流積分とを線形に重畳することができる。しかしながら、周囲光が強い場合に、
図5に示すように、周囲光信号により、シリコン光電子増倍管における一部のSPADが飽和するようになり、この一部のSPADが回復時間内でトリガーされることがないため、エコー光信号によってトリガーされるSPADの数が減少し、エコー光信号に対する探知器の応答能力が低下し、これは光子探知効率(Photon Detection Efficiency、PDE)の低下と等価であるといえる。したがって、周囲光が強い場合に、等価校正PDEにおけるエコー光電流積分を取得するように、エコー光電流積分に対して周囲光に影響される等価PDEを補償する必要がある。
【0075】
あるシリコン光電子増倍管については、等価PDEはシリコン光電子増倍管の出力電気信号に対応する第1光電流積分、周囲光に対応する第2光電流積分にのみ関連し、目標物の反射率、距離には関係がないが、温度の影響を受ける。
【0076】
本発明の好ましい一実施例によれば、また、等価PDE=エコー光電流積分/第2光電流積分である。一定の温度環境で、レーザーレーダーの複数のシリコン光電子増倍管に対してそれぞれ等価PDEの校正を行い、等価PDEと第1光電流積分、第2光電流積分との校正関係、又は等価PDEとエコー光電流積分(第1光電流積分と第2光電流積分との差)、第1光電流積分との校正関係を決定して、エコー光電流積分に対して周囲光補償を行い、等価校正PDEにおけるエコー光電流積分を得ることができる。
【0077】
具体的には、異なる周囲光強度で、第1光電流積分及び第2光電流積分をそれぞれ測定し、等価PDEを計算する。又は、エコー光電流積分、第2光電流積分に基づいて、等価PDEを計算する。それにより、等価PDEと第1光電流積分及び第2光電流積分との校正関係、又は等価PDEとエコー光電流積分及び第2光電流積分との校正関係を得る。
【0078】
ここで、前期校正によって、周囲光電流積分の臨界値VB0に対応する周囲光強度の臨界値を設定することができる。一実施形態としては、校正条件で、該臨界値VB0は校正環境の第2光電流積分に対応する。周囲光信号に対応する第2光電流積分VBが臨界値VB0より高い場合に、周囲光信号が校正条件での周囲光強度を超え、シリコン光電子増倍管の等価PDEが校正値より低いと考えられる。この際に、周囲光補償を行う必要がある。
【0079】
本発明の好ましい一実施例によれば、上記校正関係に基づいて、実際に測定された光電流積分に対応する等価PDEを決定し、校正PDEと該等価PDEとの比を補償係数とし、エコー光電流積分に補償係数を乗算して、等価校正PDEにおけるエコー光電流積分を取得する。例えば、校正条件での等価PDE=1であり、実際に測定された第1光電流積分及び第2光電流積分に対応する等価PDE=0.9であり、補償係数が1/0.9である場合、補償後の等価校正PDEにおけるエコー光電流積分=(第1光電流積分-第2光電流積分)/0.9である。
【0080】
周囲光信号に対応する第2光電流積分VBが閾値VB0より低い場合に、周囲光信号はシリコン光電子増倍管の探知効率に基本的に影響を与えないと考えられている。
【0081】
本発明の好ましい一実施例によれば、レーザーレーダーは複数の探知器を含み、レーザーレーダーを用いて目標物の反射率を測定する方法10は、
各探知器に対応する反射率、光電流積分と目標物距離の校正曲線をそれぞれ設定するステップをさらに含む。
【0082】
図6A、
図6Bに示すように、本発明は、以下のステップS201からステップS207を含む、レーザーレーダーが探知チャネルごとに反射率校正を行う方法20を提供する。
【0083】
ステップS201で、レーザーレーダーと所定の反射率板を取り付ける。
【0084】
ステップS202で、レーザーレーダーが所定の反射率板に直角入射する。
【0085】
ステップS203で、弱い周囲光(曇天又は室内の光線)の下で、反射率板を移動し、第1光電流積分曲線と第2光電流積分曲線を測定し、それらの差を求めて所定の反射率板の反射率に対応するエコー光電流積分の距離に従って変化する曲線を取得する。
【0086】
ステップS204で、強い周囲光の下で、第1光電流積分と第2光電流積分を測定し、それらの差を求めてエコー光電流積分を取得する。
【0087】
ステップS205で、等価PDEとエコー光電流積分及び第2光電流積分との関係を校正する。
【0088】
ステップS206で、所定の反射率板を交換し、ステップS201からS205を繰り返す。
【0089】
ステップS207で、キャリブレーションテーブルを生成してレーザーレーダーに保存する。
【0090】
ここで、ステップS205で、等価PDEはエコー光電流積分と第2光電流積分との比に等しい。
【0091】
本発明の好ましい一実施例によれば、
図7に示すように、本発明は、送信ユニット110、受信ユニット120及び処理ユニット130を含む、レーザーレーダー100を提供する。
【0092】
送信ユニット110は、目標物を探知するために探知ビームを送信するように構成される。
【0093】
受信ユニット120は、少なくとも1つの探知器を含み、光信号を受信し、光信号を電気信号に変換するように構成される。
【0094】
処理ユニット130は、探知ビームが目標物で反射されたエコーに対応するエコー光電流積分を取得し、予め設定された反射率校正曲線及びエコー光電流積分に基づいて、目標物の反射率を決定するように構成される。
【0095】
本発明の好ましい一実施例によれば、
図7に示すように、レーザーレーダー100は、
受信ユニット120の探知器に結合され、電気信号を所定時間内で積分するように構成される積分ユニット140をさらに含む。
【0096】
好ましくは、積分ユニット140の入力端子は、探知器から出力された電気信号の積分を取得するためにレーザーレーダーの探知器のアノード又はカソードに結合される。
【0097】
本発明の好ましい一実施例によれば、前記探知器はシリコン光電子増倍管であり、前記積分ユニット140はシリコン光電子増倍管のアノードに結合される。
【0098】
本発明の好ましい一実施例によれば、前記積分ユニット140はRC積分回路を含む。
【0099】
本発明の別の好ましい実施例によれば、前記積分ユニット140は演算増幅器をさらに含み、前記RC積分回路は前記演算増幅器の第1入力端子に結合される。
【0100】
好ましくは、前記演算増幅器の出力端子は抵抗を介して前記演算増幅器の第2入力端子に結合される。
【0101】
本発明の好ましい一実施例によれば、
図7に示すように、レーザーレーダー100は、
積分ユニット140の出力端子に結合され、光電流積分を取得するように、積分ユニット140の出力をサンプリングするように構成されるサンプリングユニット150をさらに含む。
【0102】
図8Aは本発明の1つの実施例に係る積分ユニット140を示す。
【0103】
図8Aは本発明の積分ユニット140で用いられる積分回路の概略図であり、
図8Bは該積分回路の出力信号図である。
図8A及び
図8Bを参照すると、レーザーレーダーの探知器(図において、シリコン光電子増倍管SiPMが好ましい)は逆バイアスVsで光子によってアバランシェがトリガーされ、シリコン光電子増倍管SiPMのアノードは電気パルスを出力して抵抗r1及びキャパシタCからなるRC回路を介して積分し、演算増幅器によって電圧信号Vに変換する。
【0104】
図8Aに示す実施例では、サンプリングユニット150はアナログディジタルコンバータ(analog digital converter,ADC)であり、より好ましくは低速ADCである。ADCは、演算増幅器から出力された電圧信号をサンプリングし、電圧信号ピークを光電流積分として取得することができる。
【0105】
一方で、高速出力電気信号を用いて目標物距離を計算するSiPMについては、本発明の積分回路はSiPMのアノードに接続され、Fast Outputのタイミング測定に何の影響も与えない。本発明の好ましい実施例によれば、目標物距離を迅速に測定するとともに、積分回路から出力された光電流積分に基づいて正確な反射率情報を取得することができる。
【0106】
好ましくは、該積分回路の積分周期はシリコン光電子増倍管SiPMの探知周期と同じであり、百ナノ秒レベルに達することができ、従来技術においてエコーパルスの前縁の傾き又はパルス幅をナノ秒レベルで測定することで目標物の反射率を決定することと比較して、測定精度が大幅に向上する。エコー電気パルス信号にランダムジッタがある場合に、エコー光電流積分を測定して反射率を測定することで、上記デバイスの電気パルス信号の影響を排除し、反射率測定の精度をさらに向上させることができる。また、エコー光電流積分は、エコーエネルギー強度に応じて単調に変化し、アンビギュイティが存在せず、デバイスの飽和による影響を受けず、反射率測定のダイナミックレンジが向上する。
【0107】
SPADの特性によれば、アバランシェが発生すると、アバランシェ増倍領域におけるいかなる欠陥もキャリアのキャプチャ領域となる可能性がある。光子がSPADに入射すると、光電効果に基づいて生成された電荷は探知器のアバランシェ増倍領域を通過し、一部のキャリアはこれらの欠陥によりキャプチャされ、光電変換プロセスが終了すると、これらの欠陥から放出されたキャリアは電場によって加速され、再びアバランシェを引き起こし、前回のアバランシェパルスに関連するリアパルスが生成される。リアパルスは、探知器から出力された電気パルス波形のジッタを引き起こし、前縁の傾きとパルス幅を用いた反射率の計算に大きな誤差を生じさせる。
【0108】
しかしながら、リアパルスの強度は入射光の強度の増大につれて増大する。本発明は電気信号を巧みに時間的に積分し、リアパルスによって生成された波形ジッタによる影響を排除できるだけでなく、さらにリアパルスはエコーエネルギーの増強につれて強度が増大するという法則を利用でき、エコー光の強度をより正確に反映し、目標物の反射率の計算精度を向上させることができる。
【0109】
一実施形態としては、レーザーレーダーのレーザー機器は探知器(SiPM)に一対一で対応し、1つのレーザー機器がストローブされて発光すると、それに対応するSiPMはエコー信号を受信するようにアクティブ化される。次のシリコン光電子増倍管に切り替える前に、積分回路のスイッチKが1回オンされ、キャパシタCの積分電荷をクリアする。
【0110】
当業者が理解できるように、
図8Aは本発明の積分ユニットで採用される一種の積分回路のみを示し、レーザーレーダーの探知器の出力光電流を積分することを実現する他の回路形態も、本発明の保護範囲内である。
【0111】
本発明の好ましい一実施例によれば、探知ビームの反射エコーは複数の光パルスを含み、エコー光電流積分は該複数の光パルスが対応する複数の電気パルスの累積積分である。
【0112】
図8Bに示すように、1つの探知周期内で、送信ユニット110は複数のレーザーパルス信号(2から4個であってもよい)を送信し、対応する受信ユニット120の少なくとも1つの探知器は探知を行っても複数のエコー光パルス信号を受信し、1つの探知周期内の全てのエコー電気パルスを積分する。即ち、毎回のToF測定時に、送信ユニット110は2から4個のレーザーパルス信号を送信し、受信ユニット120はこの2から4個のパルス信号の反射エコーを受信し、累計積分する。本発明の好ましい実施例では累積積分の方式を用いて、シングルパルスジッタによる測定誤差を顕著に低減させ、反射率の測定精度をさらに向上させる。
【0113】
好ましくは、レーザーレーダー100は、受信ユニット120の複数の探知器にそれぞれ結合され、対応する探知器が探知時に出力した光電流を積分して積分結果を出力する複数の積分ユニット140を含む。又は、積分ユニット140は、受信ユニット120の複数の探知器にそれぞれ結合され、ストローブされた探知器が探知時に出力した光電流を積分して積分結果を出力する。
【0114】
本発明の好ましい一実施例によれば、レーザーレーダー100の積分ユニット140はさらに、
周囲光によって生成された電気信号を第2所定時間内で積分して、周囲光に対応する第2光電流積分を取得し、
レーザーレーダーの探知器がエコーを受信する時の電気信号を第1所定時間内で積分して、第1光電流積分を取得するように構成される。
【0115】
本発明の好ましい一実施例によれば、処理ユニット130はさらに、
第1光電流積分、第2光電流積分を取得し、第1光電流積分と第2光電流積分との差をエコー光電流積分とするように構成される。
【0116】
好ましくは、前記第1所定時間と前記第2所定時間の時間間隔は大体同じである。より好ましくは、第1所定時間及び第2所定時間は百nsレベルである。
【0117】
本発明の好ましい一実施例によれば、処理ユニット130はさらに、
探知ビームの送信時間及びエコーの受信時間に基づいて、目標物距離を決定し、
予め設定された反射率、光電流積分と目標物距離の校正曲線、及びエコー光電流積分に基づいて、目標物の反射率を決定するように構成される。
【0118】
本発明の好ましい一実施例によれば、処理ユニット130はさらに、
予め設定された、複数の所定の反射率にそれぞれ対応する光電流積分と目標物距離の校正曲線に基づいて、エコー光電流積分に対応する目標物の反射率を補間法で計算するように構成される。
【0119】
本発明の好ましい一実施例によれば、レーザーレーダーは、探知器の温度を取得するための探知ユニットをさらに含む。
【0120】
処理ユニット130はさらに、
レーザーレーダー探知器の温度に基づいて、エコー光電流積分を等価校正温度におけるエコー光電流積分に変換するように構成される。
【0121】
本発明の好ましい一実施例によれば、処理ユニット130はさらに、
第2光電流積分が予め設定された閾値よりも大きい場合に、エコー光電流積分を等価校正PDEにおけるエコー光電流積分に変換するように構成される。
【0122】
本発明の好ましい一実施例によれば、処理ユニット130はさらに、
各探知器に対応するエコー光電流積分に基づいて、目標物の反射率をそれぞれ計算するように構成される。
【0123】
本発明の好ましい実施例は、光電流積分によって目標物の反射を測定する方法を提供し、光子に対する光探知器の応答電流の長時間蓄積に基づくものであり、本発明で提供される方法は、従来技術においてエコー電気パルスのピーク強度、パルス幅、前縁の傾き等の信号特徴を測定することで反射率を測定する方法と比較して、消費電力が低く、正確率が高く、測定精度が高く、ダイナミックレンジが大きい。特に、エコー電気パルス信号特徴のランダムジッタ、非線形、飽和しやすさ、小さなダイナミックレンジ等の欠陥による反射率測定への悪影響を克服することができ、レーザーレーダーの分野におけるシリコン光電子増倍管デバイスの幅広い適用に良好な促進作用を果たす。
【0124】
最後に、説明すべきこととして、以上は本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を限定するためのものではなく、上記実施例を参照して本発明を詳細に説明したが、当業者であれば、依然として上述した各実施例に記載の技術的解決手段を修正するか、又はその中の一部の技術的特徴に対して同等な置換を行うことができる。本発明の趣旨及び原則内に行った修正、同等な置換、改良等は、全て本発明の保護範囲に含まれるものとする。
【国際調査報告】