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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-12
(54)【発明の名称】案内要素を備えたポンプ装置
(51)【国際特許分類】
   F04B 53/14 20060101AFI20240405BHJP
【FI】
F04B53/14 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023567010
(86)(22)【出願日】2022-02-24
(85)【翻訳文提出日】2023-10-31
(86)【国際出願番号】 EP2022054631
(87)【国際公開番号】W WO2022238027
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】102021204709.2
(32)【優先日】2021-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ワグナー,ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】トゥーレン,カルロ
(72)【発明者】
【氏名】マイ,ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマン,ハラルド
(72)【発明者】
【氏名】レーヴ,コルネリアス
【テーマコード(参考)】
3H071
【Fターム(参考)】
3H071AA01
3H071BB01
3H071CC12
3H071CC28
3H071DD02
3H071DD53
(57)【要約】
【課題】 本発明は、ポンプハウジング(16)と、前記ポンプハウジング(16)内で軸線方向に変位可能に案内されているピストン(22)と、前記ピストン(22)を案内するための案内要素(70)と、流体を受容するための流体室(54)とを備える、特に車両ブレーキシステムの液圧アッセンブリ(14)のための、ピストンポンプ(12)のポンプ装置(68)に関する。
【解決手段】 前記案内要素(70)は前記流体室(54)の内部に配置されている。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプハウジング(16)と、前記ポンプハウジング(16)内で軸線方向に変位可能に案内されているピストン(22)と、前記ピストン(22)を案内するための案内要素(70)と、流体を受容するための流体室(54)とを備える、特に車両ブレーキシステムの液圧アッセンブリ(14)のための、ピストンポンプ(12)のポンプ装置(68)において、
前記案内要素(70)が前記流体室(54)の内部に配置されていることを特徴とするポンプ装置。
【請求項2】
前記流体室(54)内部の前記案内要素(70)と前記ピストン(22)の間に隙間(66)が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項3】
前記隙間(66)が流体で充填されていることを特徴とする、請求項2に記載のポンプ装置。
【請求項4】
前記流体が、温度の低下とともに増大する粘性を有していることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のポンプ装置。
【請求項5】
前記流体が液体で構成されていることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のポンプ装置。
【請求項6】
前記案内要素(70)がガイドリングで構成されていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のポンプ装置。
【請求項7】
前記流体室(54)が、ポンプ外側空間(56)に対し、前記ポンプ外側空間(56)と前記案内要素(70)との間に配置される密封要素(72)により密封されていることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のポンプ装置。
【請求項8】
前記密封要素(72)がシールリングで構成されていることを特徴とする、請求項7に記載のポンプ装置。
【請求項9】
前記密封要素(72)が、前記ポンプ外側空間(56)と前記密封要素(72)との間に配置される支持要素(74)により支持されていることを特徴とする、請求項7または8に記載のポンプ装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のポンプ装置(68)を車両ブレーキシステムの液圧アッセンブリ(14)内で使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプハウジングと、前記ポンプハウジング内で軸線方向に変位可能に案内されているピストンと、前記ピストンを案内するための案内要素と、流体を受容するための流体室とを備える、特に車両ブレーキシステムの液圧アッセンブリのための、ピストンポンプのポンプ装置に関するものである。さらに、本発明は車両ブレーキシステムの液圧アッセンブリ内でこのようなポンプ装置を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両ブレーキシステムは、たとえば乗用車、トラックのような車両の走行速度を落とすために用いられる。このため、ABS液圧式ブレーキシステムおよびESP液圧式ブレーキシステムが使用されることが多く、ABS液圧式ブレーキシステムおよびESP液圧式ブレーキシステムにおいては、液圧アッセンブリおよび作動液を用いて付属のブレーキ回路内に調整されたブレーキ圧が提供される。ブレーキ圧を調整するため、液圧アッセンブリは、とりわけ、ピストンを備えた少なくとも1つのポンプ装置またはポンプ要素を有するピストンポンプを含み、ピストンは付属のシリンダ内で軸線方向に変位可能である。ピストンは、シリンダ内への流体の供給領域においてさらにポンプハウジング内で案内され、ポンプハウジング内にはピストンのための偏心駆動装置も配置されている。その際、偏心駆動装置は流体がない偏心体室内にあり、他方供給領域は流体を受容するための流体室である。
【0003】
供給領域と偏心体室との間には、従来パッキン装置が設けられており、パッキン装置はシールリングと、支持リングと、ガイドリングとで形成されている。その際、供給領域を起点として軸線方向にまずシールリングがピストンのまわりに半径方向に配置されている。したがってシールリングは、圧力の作用を受けやすい領域としての供給領域と、十分に無圧の領域としての偏心体室との間で、流体を十分に密封する密封部を形成している。軸線方向においてシールリングの後方に、シールリングを支持する支持リングある。公知のように軸線方向において支持リングの後方にはガイドリングが配置され、ガイドリングはピストンをポンプハウジングに対して、よってシリンダに対しても相対的に案内するために用いられる。この案内は、偏心駆動装置によってピストンに対し横方向の力が作用してガイドリングによって吸収される、ピストンの端部領域で行われる。しかも、ガイドリングはシールリングおよび支持リングのための構成空間を軸線方向において制限しているため、ピストンの往復運動に必要な遊びをもって密封作用が達成されている。このようなパッキン装置は、たとえば特許文献1から知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第102005017131A1号明細書
【発明の概要】
【0005】
本発明によれば、ポンプハウジングと、前記ポンプハウジング内で軸線方向に変位可能に案内されているピストンと、前記ピストンを案内するための案内要素と、流体を受容するための流体室とを備える、特に車両ブレーキシステムの液圧アッセンブリのための、ピストンポンプのポンプ装置またはポンプ要素が提供されている。その際、案内要素は流体室の内部に配置されている。
【0006】
流体室は、ポンプ要素内では、実質的にピストンとポンプハウジングとで形成されて流体が受容されているポンプ内側空間である。したがって、ポンプ内側空間または流体室は、特に流体がない偏心体室であってその中にピストンの偏心駆動装置が設けられているポンプ外側空間とは区別される。
【0007】
本発明によれば、この流体室の内部に案内要素が位置決めされており、このため案内要素は特に半径方向においてピストンとポンプハウジングとの間に配置されている。したがって、ピストンはピストンポンプの作動中のその軸線方向往復運動または並進的往復運動の際に案内要素によって案内されている。
【0008】
流体室内に配置される案内要素により、流体室内に受容されている、または、流体室内にある流体と協働して、ピストンの運動に対する特に優れた緩衝作用が達成されている。これに伴い、とりわけ半径方向におけるピストンの望ましくない運動が回避されていることが明らかになった。半径方向におけるピストンのこのような運動は、主に、偏心駆動装置により偏心体室内に配置されているピストン端部領域に作用する横方向の力によって引き起こされる。そこでは、ピストンは、半径方向において偏心体軸受によって取り囲まれている軸に対し垂直に偏心体軸受で支持されている。軸は駆動モータによって回転運動せしめられ、これによってピストンは偏心体軸受によりそのピストン軸線に沿って、または、軸線方向に往復運動を行う。その際、作動中に偏心体軸受に振動が発生し、ピストンにも伝達する。ピストンは、自らに提供されている案内遊びの範囲内でぶれおよび付属の振幅またはずれを伴ってそのピストン軸線に対し横方向に、特に半径方向に運動しようとする。これに伴って、運動はピストンに配置されている案内要素にも伝達される。案内要素が流体領域の内部に配置されていることにより、この運動は流体領域内に受容されている流体と協働してその振動数およびずれの点で特に強く緩衝される。したがって、ピストンの確実な緩衝が簡単に達成されている。この種の緩衝は低温時にも保証されていることが明らかになった。
【0009】
このように本発明に従って案内要素を流体室内に配置することは、案内要素を流体室の外側に配置する従来のものとは逆である。その際、ピストンには軸線方向において流体室と案内要素との間に密封要素が配置され、密封要素を用いて流体室は偏心体室から密封されている。したがって、従来では案内要素は流体がない偏心体室内で密封要素の外側にある。
【0010】
加えて、ピストンは特にポンプハウジング内に配置されているシリンダ内で軸線方向に変位可能に案内されている。その際、有利にはシリンダはシリンダカップを備えた複数の部分から成るシリンダとして構成され、シリンダ内でピストンが並進的に往復変位可能に案内されている。その際シリンダカップは、そのピストン側カップ開口部に設けたその内側カップ壁でもって、ピストンの運動のための補助的な案内要素を形成している。これにより、ピストンは流体室内に配置されている案内要素とともに安定に、確実に緩衝されて案内されている。
【0011】
通常、両案内要素は、ピストンとともに、温度に依存して異なる材料膨張を持つプラスチック/金属パートナーである。これにより、特に低温時には、これら案内要素とピストンとの間に対応的に大きな案内隙間が生じる。本発明に従って流体室の内部に配置される案内要素(そうでなければ流体室の外側にある)により、低温時のピストンの確実な緩衝が達成されている。
【0012】
その際、ピストンは有利には複数の部分から成る、ピストン棒を備えたピストンとして構成され、ピストン棒に案内要素が半径方向においてピストン棒とポンプハウジングとの間に配置されている。さらに、ピストン棒は、その1つの端面でもって偏心体で支持され、他の端面において有利にはピストンスリーブと連結されている。ピストンスリーブを通って流体は供給領域としての流体室内へ半径方向内側へ流動することができる。
【0013】
さらに、有利には、ピストンポンプは車両ブレーキシステムの液圧アッセンブリの構成部材であり、この場合流体はブレーキ液である。このように創作された液圧アッセンブリにより、すべての温度範囲にわたって確実な制動作用が保証されている。
【0014】
本発明によれば、有利には、流体室内部の案内要素とピストンとの間に案内隙間が設けられ、案内隙間は特に半径方向において案内要素とピストンとの間に配置されている。その際、案内隙間はピストンポンプの作動中に特にピストンの半径方向の運動により形成されている。案内隙間または隙間により、案内要素とピストンとの間に半径方向の案内遊びが可能になり、この案内遊びにより作動中に案内要素とピストンとの間の摩擦が減少されている。したがって、ピストンは可能な限り少ない材料摩耗で軸線方向に変位可能に案内されている。
【0015】
加えて、その際、案内隙間は本発明によれば有利には流体で充填されている。流体により、ピストンは特に低摩擦で案内要素により案内され、他方これと同時にピストンの半径方向の案内遊びは減少している。ピストンまたはピストン棒の半径方向の運動中における流体の排除により、流体は隙間から排除される。これにより、ピストンはその半径方向の運動の点で緩衝される。流体の緩衝作用が大きければ大きいほど、それだけピストンおよびとりわけピストン棒の半径方向の速度または半径方向の運動は小さい。
【0016】
その際、流体は有利には温度の低下とともに増大する粘性を有している。温度が低ければ低いほど、それだけ流体の粘性は大きく、したがってその緩衝作用は大きい。すなわち、流体の緩衝特性に加えてその粘性特性が利用される。したがって、低温範囲で格別な利点が達成されている。温度が非常に低ければこそ、案内要素とピストンとの異なる温度膨張によって特に大きな案内隙間が生じる。それにもかかわらず、流体が低温で最大粘性を有し、したがってより優れた緩衝を有していることにより、従来のポンプ装置とは異なり、大きな案内隙間であるにもかかわらず、半径方向でのピストンのより大きな運動は回避される。
【0017】
加えて、流体は有利には液体で構成されている。液体であれば、低温時に粘性が特に強く増大し、これに伴ってピストンに対する緩衝作用は特に大きい。その際、液体は有利には作動液、特にブレーキ液である。
【0018】
さらに、案内要素は、本発明によれば、有利には半径方向においてピストンのまわりに配置されている、特にピストン棒のまわりに配置されているガイドリングで構成されている。これにより、ピストンはその側面においてその周方向に完全にガイドリングによって半径方向から取り囲まれ、その結果ピストンは特に安定に、均等に力を伝達するように案内されている。
【0019】
その際、有利には、案内要素とピストンとの間の隙間は対応的に完全にピストンの周囲に延在している。したがって、隙間内にある流体により、半径方向におけるピストンの運動に対する特に均等な緩衝作用が達成されている。
【0020】
さらに、本発明によれば、有利には、流体室は、ポンプ外側空間に対し、ポンプ外側空間と案内要素との間に配置される密封要素により密封されている。その際、密封要素は軸線方向においてポンプ外側空間と案内要素との間に配置されている。このように配置され、密封されていることで、特に流体がない偏心体室によって形成されているポンプ外側空間内へ流体室内にある流体が流出する不具合が阻止されている。すなわち、ピストンの運動を緩衝させる流体は確実に流体室内で保持され、その緩衝作用を全作動時間中ピストンに対し行使する。したがって、補助的に、半径方向においてシールリングとピストンとの間に隙間ができてもこれは可能な限り小さく且つ均等に保持されている。これにより、密封要素の特に優れた密封作用が達成されている。
【0021】
有利には、密封要素はピストンに対し半径方向に配置され、特に有利には、密封要素はピストンを半径方向に取り囲むように構成されている。ピストンに対し半径方向に配置される密封要素により、ピストンの半径方向の運動に対し緩衝作用を及ぼす流体との組み合わせで、案内要素において特に優れた密封作用が達成されている。ピストンに対する流体の緩衝作用が強ければ強いほど、それだけピストンの半径方向の運動は小さい。対応的により好適に、ピストンに対する案内要素の隙間が密封要素によって閉じられ、密封されている。緩衝作用が流体の粘性を増大させるために利用されていることにより、低温時でも密封要素の極めて優れた密封作用が達成されている。したがって、隙間または案内隙間が特に均等に維持され、その結果隙間は密封要素によって確実に密封されている。
【0022】
製造技術的に簡単に密封要素が有利にはシールリングで構成され、シールリングによりピストンは半径方向において完全に取り囲まれている。これにより、特に優れた密封作用が達成されている。
【0023】
さらに、本発明によれば、密封要素は、ポンプ外側空間と密封要素との間に配置される支持要素により支持されている。その際、支持要素はピストンに対し半径方向に且つ密封要素に対し軸線方向に配置され、密封要素をその位置で安定に保持している。加えて、支持要素が有利には密封要素とは逆の側でポンプハウジングの段部に対し軸線方向に支持されていれば、特に安定である。これにより、発生する軸線方向の力および半径方向の力がポンプハウジング全体に逃がされ、合目的な密封作用をさらに改善することができる。
【0024】
本発明は、さらに、このようなポンプ装置を車両ブレーキシステムの、特にESP車両ブレーキシステムの液圧アッセンブリ内で使用する方法に向けられている。ピストンの上述した緩衝により、密封要素の確実な密封作用が達成されている。したがって、対応的に、付属の車両に対する特に信頼性のある制動作用が実現され、これは特に低温時でも保証されている。
【0025】
次に、本発明による解決手段の1実施形態を、添付の概略図を用いてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】技術水準によるポンプ装置の縦断面図である。
図2】作動中において図1の図をかなり概略的に示した図である。
図3】本発明によるポンプ装置の1実施形態の図2に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1および図2には、車両ブレーキ装置の一部を図示した液圧アッセンブリ14の内部に設けた、一部だけを図示しているピストンポンプ12としてのラジアルピストンポンプのポンプ要素またはポンプ装置10が示されている。ポンプ装置10は、穿孔部18を用いて液圧ブロック20内に形成されているポンプハウジング16を含んでいる。さらに、ポンプ装置10にはポンプピストンまたはピストン22が属しており、ポンプピストンまたはピストンは、偏心体24を用いてポンプハウジング16の内部を並進的に往復運動または往復変位することができる。偏心体24は、偏心駆動装置として、図示していない駆動軸と偏心体軸受26とを含み、偏心体軸受にはピストン22がほぼ垂直方向および半径方向に支持されている。
【0028】
ピストン22は、本実施形態では、複数の部分から成るポンプピストンである。このため、ピストン22は、偏心体軸受26で支持されているピストン棒28と、ピストン棒28に境を接し、吸込口32を備えているピストンスリーブ30とを含んでいる。吸込口32を通じて、作動液としてブレーキ液が半径方向内側へ向かってピストンスリーブ30内へ流入することができる。ピストンスリーブ30から吸込弁34が作動液または流体を、ピストンスリーブ30を包み込んでいるシリンダカップ38によって取り囲まれた圧力室または高圧領域36内へ案内する。半径方向においてシリンダカップ38とピストンスリーブ30との間にはリング状のピストン密封要素40が配置され、ピストン密封要素により、ピストンスリーブ30および吸込口32に属している低圧領域42に対し高圧領域36が密封されている。
【0029】
このような密封状態において、ピストン22はそのピストン軸線44に沿って軸線方向に偏心体24により往復変位可能であるようにシリンダカップ38内で案内されている。シリンダカップ38は、複数の部分から成るポンプシリンダまたはシリンダ46の一部を形成し、ポンプシリンダまたはシリンダにはさらに、ピストンスリーブ30のまわりに配置されているリング状のフィルタ48が属している。フィルタ48は、吸込口32を通じて流入してくる流体を濾過する。
【0030】
同時に、フィルタ48は、パッキン装置50を軸線方向においてポンプハウジング16のハウジング段部52に対し支持している。加えて、パッキン装置50は半径方向外側においてポンプハウジング16に当接して、そして半径方向内側においてはピストン22に当接して密封を行っている。これにより、パッキン装置50は、密封すべきポンプ内側空間または流体室54を、偏心体24のための偏心体空間を含んでいるポンプ外側空間56から切り離している。偏心体空間またはポンプ外側空間56内には周囲圧が支配し、他方流体室54内にはポンプ装置10の作動時にポンプ圧が生じる。流体室54は、ピストン22がポンプハウジング16から走出するときに吸込口32を貫流する流体で充填されている。したがって、流体室54は、低圧領域42として圧力の作用を受けやすい吸込領域である。
【0031】
パッキン装置50は、案内要素58と、支持要素60と、密封要素62とを含んでいる。案内要素58はガイドリングとして構成され、パッキン装置50のポンプ外側空間56側にあり、よって流体室54の外側に配置されている。加えて案内要素58は、半径方向外側においてポンプハウジング16で支持され、そして半径方向内側ではピストン22の筒状のピストン外面64に当接している。したがって、ピストン22はその運動時に合目的に案内されて、ピストン軸線44に対し横方向で支持されている。さらに、支持要素60が支持リングとして構成され、軸線方向において案内要素58と密封要素62との間に配置されて、密封要素62を支持するために用いられる。密封要素62は、パッキン装置50の流体室54側にあり、作動液で充填される流体室54とポンプ外側空間56との間で事実上の流体密封部を形成している。このため、密封要素62はブレーキ液に対し抵抗力がある材料で構成されている。
【0032】
図2は、ピストンポンプ12の作動中にピストン22にいかに振動が生じるかを説明する図である。ピストン22に対しては、特にピストン棒28に対しては、作動中に偏心回転する偏心体軸受26からそこで発生する振動が伝達する。その際、振動に付属する振幅は、図2によればピストン22上の二重矢印で図示したように、とりわけピストン軸線44に対し半径方向に延在する。これにより、ピストン22に比較的大きな運動が半径方向に(二重矢印を参照)生じることがある。これに伴って、密封要素62はその密封作用の点で制限を受けることがある。最終的に、ピストン22から生じた振動および半径方向の運動は特に密封要素62へ伝達し、密封要素は特に高振動数の振動に常に追従できるとは限らない。したがって、ピストン22が密封要素62から離間し、その際に密封要素62とピストン22との間に増大または拡大した密封隙間が生じる。密封要素62は、もはや流体室54をポンプ外側空間56に対して確実に密封することができない。しかも、ピストン22の第1の案内要素としての案内要素58と、ピストン22の第2の案内要素としてのシリンダカップ38の内壁を備えているシリンダ46とは、それぞれプラスチック/金属パートナーである。したがって、とりわけ低温時の異なる材料膨張により、それぞれの案内要素58と38の間に対応する複数の案内隙間が生じることがある。そのうち、案内要素58とピストン22との間の案内隙間66が図示されている。案内隙間66により、同様にピストン22の比較的大きな運動が半径方向に発生することがある。これにより、特に低温時に密封要素62の密封作用が付加的に制限される。
【0033】
図3は、作動中の本発明によるポンプ装置68を示している。ポンプ装置68が図1ないし図2と相違するのは、案内要素58とは異なって、流体室54の内部に配置されている案内要素70が設けられていることである。このため、案内要素70は、半径方向外側においてはポンプハウジング16で支持され、半径方向内側においてはピストン22のピストン外面64に当接しているガイドリングとして構成されている。したがって、ピストン22はピストン軸線44に沿ったその運動時に、または、軸線方向に延びるその運動時に、合目的に案内され、ピストン軸線44に対し横方向で支持されている。
【0034】
このような案内要素70に接続して、軸線方向においてポンプ外側空間56方向に、シールリングとして構成される密封要素72が配置されている。さらに、密封要素72は支持要素74を用いて軸線方向においてポンプハウジング16のハウジング段部52に対し支持され、他方半径方向外側においてポンプハウジング16に当接し、半径方向内側においてはピストン22に当接している。これにより、密封要素72は、内部に流体を含んでいる流体室54を、流体がポンプ外側空間56内へ流出しないように密封する。さらに、これにより、案内要素70は流体室54の内部に位置決めされている。
【0035】
このような位置決め状態において、作動中に発生するピストン22またはピストン棒28の半径方向の運動は次のように緩衝され、すなわち作動中に発生する案内要素70とピストン22との間の案内隙間66が案内要素70の位置に応じてすぐに流体で充填されるように緩衝される。流体はピストン22の振動および半径方向の運動を緩衝し、したがってそうでなければ発生する案内遊びを抑制する。加えて、流体の排除によってピストン22の、特にピストン棒28の半径方向の運動が緩衝され、このことは図2に比べて短い二重矢印によって完全に図式的に示されている。
【0036】
とりわけ低温時には、案内隙間66内の流体には格別な利点がある。まさに低温時には、案内要素70とピストン22の材料膨張が異なっているために、比較的大きな案内隙間66が発生する。しかしながら、温度が下がるに伴って流体の粘性が増し、したがって流体は案内隙間66内でピストン22の半径方向の運動に特に優れた緩衝作用を及ぼす。その効果は、ブレーキ液として構成された流体の場合特に大きい。
【0037】
このような緩衝作用により、半径方向における密封要素72とピストン22との間の密封隙間は可能な限り不変に維持される。したがって、密封要素72はポンプ装置68の作動全体にわたって且つ全温度範囲にわたって確実に密封作用を及ぼす。
【符号の説明】
【0038】
12 ピストンポンプ
14 液圧アッセンブリ
16 ポンプハウジング
22 ピストン
54 流体室
56 ポンプ外側区間
66 案内隙間
68 ポンプ装置
70 案内要素
72 密封要素
74 支持要素
図1
図2
図3
【国際調査報告】