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特表2024-516272エキソヌクレアーゼに対する増加した耐性を有する直鎖状DNA
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-12
(54)【発明の名称】エキソヌクレアーゼに対する増加した耐性を有する直鎖状DNA
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20240405BHJP
   C40B 40/06 20060101ALI20240405BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20240405BHJP
   C12P 19/34 20060101ALI20240405BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240405BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240405BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20240405BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20240405BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
C40B40/06
C12P21/02 C
C12P19/34
A61P37/04
A61K48/00
A61K31/713
A61K39/00 E
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023567068
(86)(22)【出願日】2022-04-29
(85)【翻訳文提出日】2023-12-18
(86)【国際出願番号】 EP2022061630
(87)【国際公開番号】W WO2022229460
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】21382377.6
(32)【優先日】2021-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523410366
【氏名又は名称】フォーベースバイオ・ソシエダッド・リミターダ・ウニペルソナル
【氏名又は名称原語表記】4basebio, S.L.U.
(71)【出願人】
【識別番号】523410377
【氏名又は名称】フォーベースバイオ・ユーケー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】4basebio UK Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】ランクリート,ヘイッキ
(72)【発明者】
【氏名】ピチェル,アンヘル
(72)【発明者】
【氏名】ウォーカー,エイミー
【テーマコード(参考)】
4B064
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4B064AF27
4B064CA21
4B064CB01
4B064CC01
4B064CD19
4C084AA13
4C084MA41
4C084MA52
4C084MA55
4C084NA03
4C084NA14
4C084ZB091
4C084ZB092
4C084ZC021
4C084ZC022
4C085AA03
4C085AA21
4C085EE01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG06
4C085GG08
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA41
4C086MA52
4C086MA55
4C086NA03
4C086NA14
4C086ZB09
(57)【要約】
本発明は、各鎖の内部位置にヌクレアーゼ耐性ヌクレオチドを含む直鎖状二本鎖DNA産物に関する。さらに、本発明は、直鎖状二本鎖DNA産物を含む複合体分子、ナノ粒子、組成物およびライブラリーに関する。また、直鎖状二本鎖DNA産物の製造方法および使用方法も提供する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センス鎖およびアンチセンス鎖を含む直鎖状二本鎖DNA産物であって、該直鎖状二本鎖DNA産物が単一カセットおよび各鎖の内部位置に少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドを含み、該各鎖の内部位置にある少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドが、
(a)カセットの5’末端ヌクレオチド;
(b)カセットの3’末端ヌクレオチド;および
(c)カセットの外側の1以上のヌクレオチド
から選択され、ここで、該カセットはコーディング配列を含み、かつ該センス鎖において、
i.少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、カセットの5’末端ヌクレオチドであり;および/または、少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、センス鎖の第1領域にあり、ここで、該センス鎖の第1領域は、カセットの5’であり;および、
ii.少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドの1つは、カセットの3’末端ヌクレオチドであり;および/または、少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドの1つは、センス鎖の第2領域にあり、ここで、該センス鎖の第2領域は、カセットの3’である、
直鎖状二本鎖DNA産物。
【請求項2】
(a)センス鎖において、少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、カセットの5’末端ヌクレオチドであり、および/または、少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、センス鎖の第1領域にあり、ここで、センス鎖の第1領域は、カセットの5’であり;
(b)センス鎖において、少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、カセットの3’末端ヌクレオチドであり、および/または、少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、センス鎖の第2領域にあり、ここで、センス鎖の第2領域は、カセットの3’であり;
(c)アンチセンス鎖において、少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、カセットの5’末端ヌクレオチドであり、および/または少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、アンチセンス鎖の第1領域にあり、ここで、アンチセンス鎖の第1領域は、カセットの5’であり;および、
(d)アンチセンス鎖において、少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、カセットの3’末端ヌクレオチドであり、および/または、少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、アンチセンス鎖の第2領域にあり、ここで、アンチセンス鎖の第2領域は、カセットの3’である、
請求項1に記載の直鎖状二本鎖DNA産物。
【請求項3】
直鎖状二本鎖DNA産物がオーバーハングを含み、要すれば、直鎖状二本鎖DNA産物が、
(a)5’オーバーハングおよび平滑末端;
(b)2つの5’オーバーハング;
(c)3’オーバーハングおよび平滑末端;
(d)2つの3’オーバーハング;および/または
(e)5’オーバーハングおよび3’オーバーハング
を含んでいてもよい、請求項1または2に記載の直鎖状二本鎖DNA産物。
【請求項4】
直鎖状二本鎖DNA産物が、全ヌクレオチドに対して少なくとも0.01の割合でホスホロチオエート化ヌクレオチドを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の直鎖状二本鎖DNA産物。
【請求項5】
直鎖状二本鎖DNA産物が、全ヌクレオチドに対して0.01~0.1の割合でホスホロチオエート化ヌクレオチドを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の直鎖状二本鎖DNA産物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の直鎖状二本鎖DNA産物および機能性部分を含む複合体分子であって、要すれば、機能性部分が結合分子またはプローブであってもよい、複合体分子。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか一項に記載の直鎖状二本鎖DNA産物、または請求項6に記載の複合体分子を含む、ナノ粒子。
【請求項8】
少なくとも2つの直鎖状二本鎖DNA産物を含むライブラリーであって、各二本鎖DNA産物が請求項1から5のいずれか一項に定義されるものである、ライブラリー。
【請求項9】
治療に使用するための、請求項1から5のいずれか一項に記載の直鎖状二本鎖DNA産物、請求項6に記載の複合体分子、請求項7に記載のナノ粒子、または請求項8に記載のライブラリー。
【請求項10】
RNAの産生における、請求項1から5のいずれか一項に記載の直鎖状二本鎖DNA産物、請求項6に記載の複合体分子、請求項7に記載のナノ粒子、または請求項8に記載のライブラリーの使用であって、要すれば、前記RNAはmRNAであってもよい、使用。
【請求項11】
ナノ粒子の製造における、請求項1から5のいずれか一項に記載の直鎖状二本鎖DNA産物、請求項6に記載の複合体分子、請求項7に記載のナノ粒子、または請求項8に記載のライブラリーの使用。
【請求項12】
インビトロ転写の方法であって、
(a)請求項1から5のいずれか一項に記載の直鎖状二本鎖DNA産物をポリメラーゼと接触させる工程;および
(b)転写産物を産生する工程
を含む、方法。
【請求項13】
請求項1から5のいずれか一項に記載の直鎖状二本鎖DNA産物を、原核細胞、真核細胞または無細胞タンパク質発現系に導入して、所望のRNAまたはタンパク質を生成することを含む、タンパク質の発現方法。
【請求項14】
請求項1から5のいずれか一項に記載の直鎖状二本鎖DNA産物の製造方法であって、
(a)少なくとも1種のホスホロチオエート化ヌクレオチドの存在下で、少なくとも1種のエンドヌクレアーゼ標的配列を含むDNA鋳型分子をローリングサークル増幅させて、二本鎖DNA産物を作製する工程、および
(b)二本鎖DNA産物を少なくとも1つのエンドヌクレアーゼと接触させて、請求項1から5のいずれか一項に記載の直鎖状二本鎖DNA産物を生成する工程、ここで、直鎖状二本鎖DNA産物がエンドヌクレアーゼに対して増加した耐性を有する、
を含む、製造方法。
【請求項15】
ワクチンの製造における、請求項1から5のいずれか一項に記載の直鎖状二本鎖DNA産物、請求項6に記載の複合体分子、または請求項8に記載のライブラリーの使用。
【請求項16】
請求項1から5のいずれか一項に記載の直鎖状二本鎖DNA産物、請求項6に記載の複合体分子、または請求項8に記載のライブラリーを含む、ワクチン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、各鎖の内部位置にヌクレアーゼ耐性ヌクレオチドを含む直鎖状二本鎖DNA産物に関する。さらに、本発明は、直鎖状二本鎖DNA産物を含む複合体分子、ナノ粒子、組成物およびライブラリーに関する。また、直鎖状二本鎖DNA産物の製造方法および使用方法も提供する。
【背景技術】
【0002】
背景
天然の核酸は、生物学的環境では酵素による分解を受けやすい。エキソヌクレアーゼは、ポリヌクレオチド鎖の3’末端または5’末端のいずれかでホスホジエステル結合を加水分解することにより、ポリヌクレオチド鎖末端からモノヌクレオチドを切断する。例えば、エキソヌクレアーゼIIIはポリヌクレオチド鎖の3’末端からモノヌクレオチドを除去し、エキソヌクレアーゼVIIIはポリヌクレオチド鎖を5’から3’方向に切断する。一方、ポリヌクレオチド鎖内のホスホジエステル結合は、エンドヌクレアーゼの作用によって切断される。
【0003】
細胞外および細胞内の両方のヌクレアーゼによる消化に耐え得る核酸類縁体を作製することにより核酸の有効分子寿命を延ばすために、かなりの努力が払われてきた。提案されている解決策のひとつに、ホスホロチオエート化ヌクレオチド(すなわち、2’-デオキシヌクレオチド-5’-(α-チオ)-三リン酸)の使用が挙げられる。
【0004】
ホスホロチオエート化ヌクレオチドは、非架橋酸素原子の代わりに硫黄原子を含む。これらの修飾ヌクレオチドは、対応する非修飾ヌクレオチドと同等の物理的および化学的特性を示すが、エキソヌクレアーゼ消化に対して耐性を有する。このように、ホスホロチオエート官能基を組み込むことで、核酸分子の半減期を延ばすことができる。
【0005】
ホスホロチオエート修飾は核酸医薬品開発プログラムで用いられている。治療用核酸では、ホスホロチオエート化ヌクレオチドは短い一本鎖ポリヌクレオチド鎖に組み込まれている。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドであるフォミビルセンは、サイトメガロウイルス網膜炎の処置に用いられる21マーのホスホロチオエートオリゴデオキシヌクレオチドである(Stein and Castanotto, “FDA-approved oligonucleotide therapies in 2017”. Molecular Therapy 25.5 (2017):1069-1075)。同様に、ペガプタニブ(商品名マキュゲン(Macugen))は、ホスホロチオエート3’-3’デオキシチミジンキャップを有する短い(27ヌクレオチド)アプタマーであり、網膜の加齢黄斑変性の処置に用いられている。
【0006】
ホスホロチオエート修飾はまた、エキソヌクレアーゼ消化に対する耐性を高めるためにポリヌクレオチド鎖の末端にキャップをするために、直鎖状二本鎖ポリヌクレオチド鎖(例えば二本鎖DNA)にて用いられている(Putney et al. “A DNA fragment with an alpha-phosphorothioate nucleotide at one end is asymmetrically blocked from digestion by exonuclease III and can be replicate in vivo.” Proceedings of the National Academy of Sciences 78.12 (1981):7350-7354)。ポリヌクレオチド鎖の末端をキャップするために、該末端を制限酵素で消化し、DNAポリメラーゼおよびデオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP)の混合物で処理する。前記dNTPの少なくとも1つは、オーバーハング鎖のヌクレオチドに相補的なホスホロチオエート化ヌクレオチドである。DNAポリメラーゼは5’から3’方向にヌクレオチドを付加するため、この処理の結果、各鎖の3’末端(すなわち、“キャップ”内)にホスホロチオエートヌクレオチドを有する平滑末端ポリヌクレオチドフラグメントが生じる。
【0007】
米国特許US10350307 B2は、ホスホロチオエート化ヌクレオチドを、複数のタンデムリピート配列を含む環状二本鎖連結型DNAに組み込むことを記載している。米国特許US10350307 B2の連結型DNA産物は、タンパク質発現のための改良されたシステムをもたらすために、単一の環状産物中に発現配列の複数のコピーを提供する。米国特許US10350307 B2の連結型DNA産物のサイズおよび多分散性の性質は、ナノ粒子の製造および/またはウイルスもしくは非ウイルスベクターのアセンブリーにおける使用にはあまり適していない。
【0008】
従って、ヌクレアーゼ消化(例えば、エキソヌクレアーゼ消化)に対する耐性が増強され、RNA産生およびタンパク質発現に適した直鎖状二本鎖DNA産物に対するニーズが存在する。さらに、ヌクレアーゼ消化に対する耐性が増強され、ナノ粒子の製造、および/またはウイルスもしくは非ウイルスベクターのアセンブリー、およびライブラリー作成に適した直鎖状二本鎖DNA産物に対するニーズも存在する。
【発明の概要】
【0009】
説明
本発明は、ヌクレアーゼ消化に対する増加した耐性を有する直鎖状二本鎖DNA産物を提供する。本発明は、DNA産物中のヌクレアーゼ耐性ヌクレオチド(すなわち、保護ヌクレオチド)の存在に基づいている。好ましくは、直鎖状二本鎖DNA産物は、エキソヌクレアーゼ(例えば、エキソヌクレアーゼIII)消化に対して耐性を有する1以上のヌクレオチドを含む。さらに好ましくは、直鎖状二本鎖DNA産物は、DNA産物の一方の鎖または各鎖の内部位置にエキソヌクレアーゼ(例えば、エキソヌクレアーゼIII)消化に対して耐性を有するヌクレオチドを含む。直鎖状二本鎖DNA産物は、カセットを含んでいてもよい。カセットは、コーディング配列を含んでいてもよい。一方の鎖または各鎖の内部位置における保護ヌクレオチドの位置は、カセットの外側であってもよい。この保護されたヌクレオチドの位置は、エキソヌクレアーゼ消化(例えば、エキソヌクレアーゼIII消化)でもカセットが無傷のまま(intact)であることを確実にする。エキソヌクレアーゼ耐性ヌクレオチド(すなわち、保護されたヌクレオチド)は、ホスホロチオエート化ヌクレオチドであり得る。
【0010】
本発明者らは、驚くべきことに、ヌクレアーゼ消化に対する増加した耐性を有する直鎖状二本鎖DNA産物の製造方法を発見した。具体的には、直鎖状二本鎖DNA産物はエキソヌクレアーゼ消化(例えば、エキソヌクレアーゼIII消化)に対する耐性が増強されている。エキソヌクレアーゼ消化に対する耐性が増強されたことにより、細胞内(すなわち、直鎖状二本鎖DNA産物は、細胞内エキソヌクレアーゼに対する増強された耐性を有する)および無細胞系(すなわち、直鎖状二本鎖DNA産物は、細胞外エキソヌクレアーゼに対する増強された耐性を有する)での直鎖状二本鎖DNA産物の寿命が延長された。さらに、本発明者らは、DNA鎖のそれぞれの3’末端および5’末端の両方に保護されたヌクレオチドを効率的に導入する方法を見出し、これにより、3’末端のヌクレオチドを切断するエキソヌクレアーゼ(例えば、エキソヌクレアーゼIII)および5’末端のヌクレオチドを切断するエキソヌクレアーゼ(例えば、エキソヌクレアーゼVIII)による消化から保護される。従って、本発明の直鎖状二本鎖DNA産物は、保護ヌクレオチドを含まない直鎖状二本鎖DNA産物と比較して、インビボ発現が延長される。
【0011】
本発明の直鎖状二本鎖DNA産物は、細菌骨格および/または抗生物質耐性遺伝子を実質的に含まないなど、さらに有利な特性を有する。これらの特徴を欠くことは、例えば細胞治療のためのウイルスベクターまたはナノ粒子などの細胞送達システムの製造において特に有益である。これらの特徴を欠くことにより、本発明の直鎖状二本鎖DNA産物は医薬組成物での使用に特に適している。
【0012】
予期せぬことに、本発明者らは、ヌクレアーゼ消化に対する耐性が増強された直鎖状二本鎖DNA産物を効率的に大量生産できる、ヌクレアーゼ消化に対する増強された耐性を有する直鎖状二本鎖DNA産物の生産方法を発見した。前記産物の大規模な製造は、無細胞系で行うことができ、その結果、細菌汚染物質(例えば、細胞溶解後の残渣物)を含まない直鎖状二本鎖DNA産物を含む純粋なサンプルを製造できる。
【0013】
重要なことは、本発明の直鎖状二本鎖DNA産物を用いて、ウイルスベクターまたはナノ粒子のような、改良された細胞送達システムを作製できることである。このことは、本発明者らが、分散性が低く、かつ目的の遺伝子の単一コピーを含む直鎖状二本鎖DNA産物を製造する方法を見出したためである。目的の遺伝子の1コピーを含む分散性の低い直鎖状二本鎖DNA産物(または目的の遺伝子コレクション)の使用は、ナノ粒子のような均一な細胞送達システム(すなわち、分散性の低い細胞送達システム)の製造を容易にし、これは細胞取り込みの改善およびトランスフェクション効率の向上の観点からとても有益である。
【0014】
1.直鎖状二本鎖DNA産物
本発明は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含む直鎖状二本鎖DNA産物を提供し、ここで、直鎖状二本鎖DNA産物は、各鎖の内部位置に1以上の保護ヌクレオチド(例えば、ホスホロチオエート化ヌクレオチド)を含んでいる。
【0015】
内部位置は、センス鎖およびアンチセンス鎖の3’末端および5’末端の最後のヌクレオチド以外の直鎖状二本鎖DNA産物中の何れかの位置であり得る。内部位置は、直鎖状二本鎖DNA産物の各鎖の3’末端および/または5’末端から少なくとも2ヌクレオチド、3ヌクレオチド、4ヌクレオチド、5ヌクレオチド、6ヌクレオチド、7ヌクレオチド、8ヌクレオチド、9ヌクレオチド、10ヌクレオチド、12ヌクレオチド、14ヌクレオチド、16ヌクレオチド、18ヌクレオチド、20ヌクレオチド、30ヌクレオチド、40ヌクレオチド、50ヌクレオチド、75ヌクレオチドまたは100ヌクレオチド離れた位置に位置し得る。内部位置は、直鎖状二本鎖DNA産物の各鎖の3’末端および/または5’末端から少なくとも7ヌクレオチド離れた位置に位置し得る。好ましくは、内部位置は、直鎖状二本鎖DNA産物の各鎖の3’末端および/または5’末端から少なくとも10ヌクレオチド離れた位置にある。直鎖状二本鎖DNA産物において、内部位置は、センス鎖の3’末端および5’末端から少なくとも7ヌクレオチド離れて位置し得る。好ましくは、直鎖状二本鎖DNA産物において、内部位置はセンス鎖の3’末端および5’末端から少なくとも10ヌクレオチド離れた位置にある。直鎖状二本鎖DNA産物において、内部位置は、アンチセンス鎖の3’末端および5’末端から少なくとも7ヌクレオチド離れた位置に位置し得る。好ましくは、直鎖状二本鎖DNA産物において、内部位置は、アンチセンス鎖の3’末端および5’末端から少なくとも10ヌクレオチド離れて位置し得る。直鎖状二本鎖DNA産物では、内部位置は各鎖の3’末端から少なくとも7ヌクレオチド離れて位置し得る。好ましくは、直鎖状二本鎖DNA産物において、内部位置は各鎖の3’末端から少なくとも10ヌクレオチド離れて位置し得る。直鎖状二本鎖DNA産物では、内部位置は各鎖の5’末端から少なくとも7ヌクレオチド離れて位置し得る。好ましくは、直鎖状二本鎖DNA産物において、内部位置は各鎖の5’末端から少なくとも10ヌクレオチド離れて位置し得る。
【0016】
直鎖状二本鎖DNA産物は、DNA産物の各鎖の末端に近い位置に保護された(例えば、ホスホロチオエート化された)ヌクレオチドを含んでいなくてもよい。保護された(例えば、ホスホロチオエート化された)ヌクレオチドは、3’末端および/または5’末端からセンス鎖および/またはアンチセンス鎖の1番目、2番目、3番目、4番目、5番目、6番目、7番目、8番目、9番目および/または10番目のヌクレオチドでなくてもよい。直鎖状二本鎖DNA産物は、3’末端および/または5’末端からセンス鎖および/またはアンチセンス鎖の1-3位、1-4位、1-5位、1-6位、1-7位、1-8位、1-9位、1-10位、1-12位、1-14位、1-16位、1-18位または1-20位のいずれか1つにおいて保護された(例えば、ホスホロチオエート化された)ヌクレオチドを含まなくてもよい。好ましくは、直鎖状二本鎖DNA産物は、3’-末端および/または5’-末端からセンス鎖および/またはアンチセンス鎖の1-9位に保護された(例えば、ホスホロチオエート化された)ヌクレオチドを含まない。直鎖状二本鎖DNA産物は、センス鎖の3’末端および/または5’末端から1-9位において保護された(例えば、ホスホロチオエート化された)ヌクレオチドを含んでいなくてもよい。直鎖状二本鎖DNA産物は、3’末端および/または5’末端からアンチセンス鎖の1-9位に保護された(例えば、ホスホロチオエート化された)ヌクレオチドを含んでいなくてもよい。例えば、センス鎖の最初の保護された(例えば、ホスホロチオエート化された)ヌクレオチドは、センス鎖の5’末端から数えて6番目のヌクレオチドであってもよい。例えば、アンチセンス鎖の最初の保護された(例えば、ホスホロチオエート化された)ヌクレオチドは、アンチセンス鎖の3’末端から数えて10番目のヌクレオチドであってもよい。各鎖における最初の保護された(例えば、ホスホロチオエート化された)ヌクレオチドの位置は異なっていてもよい。例えば、直鎖状二本鎖DNA産物は、センス鎖の3’末端から数えて8番目の位置、およびアンチセンス鎖の3’末端から数えて12番目の位置に、最初の保護された(例えば、ホスホロチオエート化された)ヌクレオチドを含んでいてもよい。同様に、直鎖状二本鎖DNA産物は、センス鎖の3’末端から数えて8番目の位置、センス鎖の5’末端から数えて6番目の位置、アンチセンス鎖の3’末端から数えて12番目の位置、およびアンチセンス鎖の5’末端から数えて7番目の位置に位置する保護された(例えば、ホスホロチオエート化された)ヌクレオチドを含んでいてもよい。各鎖における最初の保護された(例えば、ホスホロチオエート化された)ヌクレオチドの位置は同じであってもよい。例えば、直鎖状二本鎖DNA産物は、センス鎖の3’末端から数えて8番目の位置、およびアンチセンス鎖の3’末端から数えて8番目の位置に、最初の保護された(例えば、ホスホロチオエート化された)ヌクレオチドを含み得る。直鎖状二本鎖DNA産物は、センス鎖および/またはアンチセンス鎖の3’末端および/または5’末端から数えて6番目、8番目または10番目のヌクレオチドである最初の保護された(例えば、ホスホロチオエート化された)ヌクレオチドを含んでいてもよい。直鎖状二本鎖DNA産物は、センス鎖および/またはアンチセンス鎖の3’末端および/または5’末端から数えて1~6位において、最初の保護された(例えば、ホスホロチオエート化された)ヌクレオチドを含んでいなくてもよい。従って、内部位置は、センス鎖およびアンチセンス鎖の3’末端および5’末端の最後の6ヌクレオチド、8ヌクレオチドまたは10ヌクレオチド以外の直鎖状二本鎖DNA産物内の何れかの位置であり得る。直鎖状二本鎖DNA産物は、センス鎖および/またはアンチセンス鎖の3’末端および/または5’末端から数えて7番目のヌクレオチドである最初の保護された(例えば、ホスホロチオエート化された)ヌクレオチドを含んでいてもよい。好ましくは、直鎖状二本鎖DNA産物は、センス鎖および/またはアンチセンス鎖の3’末端および/または5’末端から数えて10番目のヌクレオチドである最初の保護された(例えば、ホスホロチオエート化された)ヌクレオチドを含んでいてもよい。
【0017】
本明細書に記載の直鎖状二本鎖DNA産物は、カセットを含んでいてもよい。従って、本発明はまた、センス鎖およびアンチセンス鎖を含む直鎖状二本鎖DNA産物を提供し、ここで、前記直鎖状二本鎖DNA産物は、単一カセットおよび各鎖の内部位置にある1以上の保護された(例えば、ホスホロチオエート化された)ヌクレオチドを含む。
【0018】
直鎖状二本鎖DNA産物において、本明細書で用いる用語“単一カセット”とは、複数のカセットを含んでいないか、または複数のカセットから構成されていない直鎖状二本鎖DNA産物を包含することを意図している。すなわち、直鎖状二本鎖DNA産物は、目的の遺伝子の単一コーディング配列を含み得る単一カセットのみを含む。単一カセットは、複数のタンデムリピート配列、および/または連結型DNAを含まなくてもよいか、またはそれらから構成されなくてもよい。例えば、本明細書に記載の直鎖状二本鎖DNA産物は、例えば米国特許US10350307 B2に記載のような公知の方法によって産生される連結型DNAを含んでいなくてもよいか、またはそれから構成されていなくてもよい。本明細書で用いる用語“単一カセット”とは、目的のDNA配列の単一コピー、例えば、コーディング配列の単一コピーを包含することを意図している。従って、“単一カセット”は、同じDNA配列の複数のコピーを順に含むか、またはそれから構成されるカセットを包含していなくてもよい。単一カセットは、目的とする遺伝子の集合体を含んでいてもよい。例えば、単一カセットは、少なくとも2つ、3つ、4つまたは5つの目的の遺伝子の配列を含んでいてもよい。目的の遺伝子が単一カセットで同じでなくてもよい。
【0019】
カセットは、コーディング配列を含んでいてもよい。コーディング配列は、例えばタンパク質をコードする遺伝子など、目的の遺伝子をコードしていてもよい。タンパク質発現のために、コーディング配列を含むカセットは、プロモーターの一部がコーディング配列に作動可能に連結されるように(例えば、プロモーターはコーディング配列の上流であり得る)、プロモーターの少なくとも一部を含むベクターまたはプラスミドにライゲーションされてもよい。ベクターまたはプラスミドは、Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats (CRISPR)システムのガイドRNA(gRNA)をさらに含んでいてもよい。カセットは、プロモーターおよびコーディング配列の少なくとも一部を含んでいてもよい。カセットはプロモーターおよびコーディング配列を含んでいてもよい。カセットは、プロモーター、コーディング配列、リボソーム結合部位および翻訳終結配列を含んでいてもよい。カセットはさらに、キャップ非依存性翻訳エレメントなど、タンパク質の発現を補助する配列を含んでいてもよい。カセットは、修復テンプレート(または、編集テンプレート)を含み得る(またはコードし得る)。修復テンプレート(または、編集テンプレート)は、CRISPR-Casを介した相同性指向性修復(HDR)に使用できる。カセットはCRISPRガイドRNAをコードしていてもよい。カセットは哺乳動物発現カセットであってもよい。プロモーターはCMVプロモーターであってもよい。カセットは、エンハンサーをさらに含んでいてもよい。カセットは、eGFPレポーター遺伝子またはルシフェラーゼレポーター遺伝子などのレポーター遺伝子をさらに含んでいてもよい。カセットは、ポリA配列、ポリC配列、ポリT配列またはポリG配列などのホモポリマー配列をさらに含んでいてもよい。ホモポリマー配列の長さは3~200ヌクレオチド長である。ホモポリマー配列は、カセットの精製を容易にするために用いてもよく、その場合、ホモポリマー配列の長さは4~12ヌクレオチド長の間、または5~10ヌクレオチド長の間であってもよい。ホモポリマー配列はmRNAの発現を改善するために用いてもよく、その場合、ホモポリマー配列の長さは10~200ヌクレオチド長の間、好ましくは80~150ヌクレオチド長の間であってもよい。ホモポリマー配列の長さは、少なくとも10ヌクレオチド長、20ヌクレオチド長、30ヌクレオチド長、40ヌクレオチド長、50ヌクレオチド長、60ヌクレオチド長、70ヌクレオチド長、80ヌクレオチド長、90ヌクレオチド長、100ヌクレオチド長、110ヌクレオチド長、120ヌクレオチド長、130ヌクレオチド長、140ヌクレオチド長、150ヌクレオチド長、160ヌクレオチド長、170ヌクレオチド長、180ヌクレオチド長、190ヌクレオチド長または200ヌクレオチド長であり得る。好ましくは、ホモポリマー配列の長さは少なくとも100ヌクレオチド長である。さらに好ましくは、ホモポリマー配列の長さは少なくとも120ヌクレオチド長である。例えば、ホモポリマー配列は、少なくとも120ヌクレオチド長のポリA配列を含んでいてもよい。
【0020】
直鎖状二本鎖DNA産物中の保護された(例えば、ホスホロチオエート化された)ヌクレオチドの位置は、カセットがヌクレアーゼ(例えば、エキソヌクレアーゼIII)消化から保護されるようなものであってもよい。従って、各鎖の内部位置にある1以上のホスホロチオエート化ヌクレオチドは、以下から選択され得る:
(a)カセットの5’末端ヌクレオチド;
(b)カセットの3’末端ヌクレオチド;および
(c)カセットの外側の1以上のヌクレオチド。
【0021】
本明細書で用いる用語“カセットの5’-末端ヌクレオチド”とは、カセットの各鎖の5’-末端ヌクレオチドを包含することを意図する。従って、直鎖状二本鎖DNA産物において、カセットは一般的にはセンス鎖の5’末端ヌクレオチドおよびアンチセンス鎖の5’末端ヌクレオチドを含む。
【0022】
本明細書で用いる用語“カセットの3’-末端ヌクレオチド”とは、カセットの各鎖の3’-末端ヌクレオチドを包含することを意図する。従って、直鎖状二本鎖DNA産物において、カセットは一般的にはセンス鎖の3’末端ヌクレオチドおよびアンチセンス鎖の3’末端ヌクレオチドを含む。
【0023】
本明細書で用いる用語“カセットの外側”とは、カセットの一部ではない何れかのヌクレオチドを包含することを意図する。これには、直鎖状二本鎖DNA産物に含まれ、かつカセットの一部を形成しないヌクレオチドも含まれる。用語“カセットの外側のNヌクレオチド”または“カセットから離れたNヌクレオチド”とは、カセットの末端から直鎖状二本鎖DNA産物の末端に向かってNヌクレオチドの位置に位置するヌクレオチドを示すことを意図する。例えば、ヌクレオチドの内部位置における用語“カセットの外側の2ヌクレオチド”とは、カセットの外側にあり、かつカセットの最後のヌクレオチドから2ヌクレオチド離れているヌクレオチドを示すことを意味する。例えば、配列において5’-AAAAAACATAAAA (配列番号1)では、カセットはヌクレオチド“T”(5’から3’方向)から始まり、用語“カセットの外側の2ヌクレオチド”は、“C”ヌクレオチドを意味する。従って、用語“カセットの外側に少なくとも2ヌクレオチド”または“カセットから少なくとも2ヌクレオチド離れている”とは、カセットの外側にあり、かつカセットの最後のヌクレオチドから少なくとも2ヌクレオチド離れているヌクレオチドを表すことを意味する。上記の例では、“カセットから少なくとも2ヌクレオチド離れている”ヌクレオチドは、5’-AAAAACから選択される何れかのヌクレオチドであり得る。同様に、用語“カセットの5’-末端から少なくとも2ヌクレオチド離れている”とは、カセットの外側にあり、かつカセットの5’-末端の最後のヌクレオチドから少なくとも2ヌクレオチド離れているヌクレオチドを表すことを意味する。上記の例では、カセットの5’末端の最後のヌクレオチドは“T”であり、“カセットの5’末端から少なくとも2ヌクレオチド離れた”ヌクレオチドは、5’-AAAAAAACから選択される何れかのヌクレオチドであり得る。
【0024】
内部位置は、カセットの2番目のヌクレオチドと最後のヌクレオチドとの間に位置していなくてもよい。内部位置は、センス鎖およびアンチセンス鎖の3’末端および5’末端の最後のヌクレオチド以外の、かつカセットの2番目のヌクレオチドと最後から2番目のヌクレオチドとの間に位置するヌクレオチド以外の、直鎖状二本鎖DNA産物の何れかの位置であり得る。内部位置は、カセットの外側に位置してもよく、直鎖状二本鎖DNA産物の各鎖の3’末端および/または5’末端から少なくとも2ヌクレオチド、3ヌクレオチド、4ヌクレオチド、5ヌクレオチド、6ヌクレオチド、7ヌクレオチド、8ヌクレオチド、9ヌクレオチド、10ヌクレオチド、12ヌクレオチド、14ヌクレオチド、16ヌクレオチド、18ヌクレオチド、20ヌクレオチド、30ヌクレオチド、40ヌクレオチド、50ヌクレオチド、75ヌクレオチドもしくは100ヌクレオチド、および/または直鎖状二本鎖DNA産物の各鎖の3’末端および/もしくは5’末端から少なくとも2ヌクレオチド、3ヌクレオチド、4ヌクレオチド、5ヌクレオチド、6ヌクレオチド、7ヌクレオチド、8ヌクレオチド、9ヌクレオチド、10ヌクレオチド、12ヌクレオチド、14ヌクレオチド、16ヌクレオチド、18ヌクレオチド、20ヌクレオチド、30ヌクレオチド、40ヌクレオチド、50ヌクレオチド、75ヌクレオチドもしくは100ヌクレオチド離れた位置(すなわち、カセットの外側)に位置していてもよい。好ましくは、内部位置は、カセットの外側に位置し、かつ直鎖状二本鎖DNA産物の各鎖の3’末端および/または5’末端から少なくとも6ヌクレオチド、少なくとも8ヌクレオチド、または少なくとも10ヌクレオチド離れており、および/またはカセットの各鎖の3’末端および/または5’末端から少なくとも6ヌクレオチド、少なくとも8ヌクレオチド、または少なくとも10ヌクレオチド(すなわち、カセットの外側の少なくとも6ヌクレオチド、少なくとも8ヌクレオチド、または少なくとも10ヌクレオチド)離れている。好ましくは、カセットは、カセットの3’末端および/または5’末端から離れたセンス鎖および/またはアンチセンス鎖の1-2、1-3、1-4、1-5、1-6、1-7、1-8、1-9、1-10、1-12、1-14、1-16、1-18または1-20のいずれかの位置(すなわち、カセットの外側)にホスホロチオエートヌクレオチドを含まない。好ましくは、各鎖の内部位置は、直鎖状二本鎖DNA産物の末端から少なくとも6ヌクレオチド離れた位置にあり、かつカセットの2番目のヌクレオチドと最後から2番目のヌクレオチドとの間には位置しない。好ましくは、各鎖の内部位置は、直鎖状二本鎖DNA産物の末端から少なくとも10ヌクレオチド離れた位置にあり、かつカセットの2番目のヌクレオチドと最後から2番目のヌクレオチドとの間には位置しない。好ましくは、各鎖の内部位置は、直鎖状二本鎖DNA産物の末端から少なくとも6ヌクレオチド離れており、かつカセットの末端から少なくとも6ヌクレオチド(すなわち、カセットの外側で少なくとも6ヌクレオチド)離れている。好ましくは、各鎖の内部位置は、直鎖状二本鎖DNA産物の末端から少なくとも10ヌクレオチド離れており、かつカセットの末端から少なくとも10ヌクレオチド(すなわち、カセットの外側に少なくとも10ヌクレオチド)離れている。直鎖状二本鎖DNA産物は、この位置がカセットの少なくとも2ヌクレオチド、3ヌクレオチド、4ヌクレオチド、5ヌクレオチド、6ヌクレオチド、7ヌクレオチド、8ヌクレオチド、9ヌクレオチド、10ヌクレオチド、12ヌクレオチド、14ヌクレオチド、16ヌクレオチド、18ヌクレオチド、20ヌクレオチド、30ヌクレオチド、40ヌクレオチドまたは50ヌクレオチド外側に位置する限り、センス鎖およびアンチセンス鎖の3’末端および5’末端の最後のヌクレオチド以外の位置である内部位置に最初のホスホロチオエートヌクレオチドを含んでいてもよい。例えば、直鎖状二本鎖DNA産物は、これらの位置がカセットの2番目のヌクレオチドと最後から2番目のヌクレオチドとの間に位置しない限り、かつセンス鎖および/またはアンチセンス鎖の3’末端および/または5’末端から数えて少なくとも6番目、8番目または10番目のヌクレオチドである最初のホスホロチオエートヌクレオチドを含み得る。好ましくは、直鎖状二本鎖DNA産物は、これらの位置がカセットの外側に位置する限り、センス鎖および/またはアンチセンス鎖の3’末端および/または5’末端から数えて少なくとも6番目、8番目または10番目のヌクレオチドである最初のホスホロチオエートヌクレオチドを含み得る。直鎖状二本鎖DNA産物は、これらの位置がカセットの少なくとも2ヌクレオチド、3ヌクレオチド、4ヌクレオチド、5ヌクレオチド、6ヌクレオチド、7ヌクレオチド、8ヌクレオチド、9ヌクレオチド、10ヌクレオチド、12ヌクレオチド、14ヌクレオチド、16ヌクレオチド、18ヌクレオチド、20ヌクレオチド、30ヌクレオチド、40ヌクレオチドまたは50ヌクレオチド外側に位置する限り、センス鎖および/またはアンチセンス鎖の3’末端および/または5’末端から数えて少なくとも6番目、8番目または10番目のヌクレオチドである最初のホスホロチオエートヌクレオチドを含んでいてもよい。好ましくは、直鎖状二本鎖DNA産物は、これらの位置がカセットの少なくとも6ヌクレオチド、8ヌクレオチドまたは10ヌクレオチド外側に位置する限り、センス鎖および/またはアンチセンス鎖の3’末端および/または5’末端から数えて少なくとも6番目、8番目または10番目のヌクレオチドである最初のホスホロチオエートヌクレオチドを含み得る。
【0025】
直鎖状二本鎖DNA産物は、各鎖の内部位置に少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個の保護された(例えば、ホスホロチオエート化された)ヌクレオチドを含んでいてもよい。好ましくは、直鎖状二本鎖DNA産物は、各鎖の内部位置に少なくとも2個の保護された(例えば、ホスホロチオエート化された)ヌクレオチドを含む。
【0026】
本発明は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含む直鎖状二本鎖DNA産物を提供し、ここで、直鎖状二本鎖DNA産物は、単一のカセットおよび各鎖の内部位置にある少なくとも2つのヌクレアーゼ耐性ヌクレオチド(すなわち、保護されたヌクレオチド)を含み、かつ各鎖の内部位置にある少なくとも2つのヌクレアーゼ耐性ヌクレオチドは、
(a)カセットの5’末端ヌクレオチド;
(b)カセットの3’末端ヌクレオチド;および
(c)カセットの外側の1以上のヌクレオチド
から選択され、ここで、前記カセットはコーディング配列を含む。
【0027】
本発明は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含む直鎖状二本鎖DNA産物を提供し、ここで、直鎖状二本鎖DNA産物は、単一カセットおよび各鎖の内部位置にある少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドを含み、かつ各鎖の内部位置にある少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドは、
(a)カセットの5’末端ヌクレオチド;
(b)カセットの3’末端ヌクレオチド;および
(c)カセットの外側の1以上のヌクレオチド
から選択され、ここで、前記カセットはコーディング配列を含む。
【0028】
直鎖状二本鎖DNA産物は、ヌクレアーゼ消化に耐性であるか、またはヌクレアーゼ消化に対する耐性が改善もしくは増強されていてもよい。直鎖状二本鎖DNA産物はエキソヌクレアーゼ消化に耐性であるか、またはエキソヌクレアーゼ消化に対する耐性が改善もしくは増強されていてもよい。直鎖状二本鎖DNA産物は、3’-末端ヌクレオチドを切断するエキソヌクレアーゼ(例えば、エキソヌクレアーゼIII)および/または5’-末端ヌクレオチドを切断するエキソヌクレアーゼ(例えば、エキソヌクレアーゼVIII)による消化に対して耐性であるか、または改善もしくは増強された耐性を有し得る。酵素消化に対する耐性についての用語“改善された”または“増強された”とは、本明細書に記載の方法によって製造されなかったDNA産物と比較したとき、酵素消化に対するより高い耐性を意味する。例えば、ホスホロチオエート化ヌクレオチドのような保護ヌクレオチドを含まない産物と比較したとき、酵素消化耐性が改善または増強されている。
【0029】
直鎖状二本鎖DNA産物のセンス鎖におけるホスホロチオエート化ヌクレオチドの位置は、1以上のホスホロチオエート化ヌクレオチドがカセットの上流に(すなわち、DNA産物のセンス鎖の5’末端方向に)位置するようなものであってもよい。
【0030】
直鎖状二本鎖DNA産物のセンス鎖において、
(a)少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、カセットの5’末端ヌクレオチドであり、および/または
(b)少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、センス鎖の第1領域に存在していてもよく、ここで、センス鎖の第1領域は、カセットの5’である。
【0031】
直鎖状二本鎖DNA産物のセンス鎖におけるホスホロチオエート化ヌクレオチドの位置は、1以上のホスホロチオエート化ヌクレオチドがカセットの下流に(すなわち、DNA産物のセンス鎖の3’末端方向に)位置するようなものであってもよい。
【0032】
直鎖状二本鎖DNA産物のセンス鎖において、
(a)少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、カセットの3’末端ヌクレオチドであり、および/または
(b)少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、センス鎖の第2領域に存在していてもよく、ここで、センス鎖の第2領域は、カセットの3’である。
【0033】
直鎖状二本鎖DNA産物のアンチセンス鎖におけるホスホロチオエート化ヌクレオチドの位置は、1以上のホスホロチオエート化ヌクレオチドがカセットの上流に位置するように(すなわち、DNA産物のアンチセンス鎖の5’末端方向に)位置するようなものであってもよい。
【0034】
直鎖状二本鎖DNA産物のアンチセンス鎖において、
(a)少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、カセットの5’末端ヌクレオチドであり、および/または
(b)少なくとも2つのホスホロチオエートヌクレオチドのうちの1つは、アンチセンス鎖の第1領域に存在していてもよく、ここで、アンチセンス鎖の第1領域は、カセットの5’である。
【0035】
直鎖状二本鎖DNA産物のアンチセンス鎖におけるホスホロチオエート化ヌクレオチドの位置は、1以上のホスホロチオエートヌクレオチドがカセットの下流に(すなわち、DNA産物のアンチセンス鎖の3’末端方向に)位置するようなものであってもよい。
【0036】
直鎖状二本鎖DNA産物のアンチセンス鎖において、
(a)少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、カセットの3’末端ヌクレオチドであり、および/または
(b)少なくとも2つのホスホロチオエートヌクレオチドのうちの1つは、アンチセンス鎖の第2領域に存在していてもよく、ここで、アンチセンス鎖の第2領域は、カセットの3’である。
【0037】
直鎖状二本鎖DNA産物のセンス鎖およびアンチセンス鎖の両方におけるホスホロチオエート化ヌクレオチドの位置は、各鎖において、少なくとも1つのホスホロチオエート化ヌクレオチドがカセットの下流に位置し、かつ少なくとも1つのホスホロチオエート化ヌクレオチドがカセットの上流に位置するようなものであってもよい。
【0038】
直鎖状二本鎖DNA産物において:
(a)センス鎖において、少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、カセットの5’末端ヌクレオチドであってもよく、および/または、少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、センス鎖の第1領域にあってもよく、ここで、センス鎖の第1領域は、カセットの5’であり;
(b)センス鎖において、少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、カセットの3’末端ヌクレオチドであってもよく、および/または、少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、センス鎖の第2領域にあってもよく、ここで、センス鎖の第2領域は、カセットの3’であり;
(c)アンチセンス鎖において、少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、カセットの5’末端ヌクレオチドであってもよく、および/または少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、アンチセンス鎖の第1領域にあってもよく、ここで、アンチセンス鎖の第1領域は、カセットの5’であり;および
(d)アンチセンス鎖において、少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、カセットの3’末端ヌクレオチドであってもよく、および/または、少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、アンチセンス鎖の第2領域にあってもよく、ここで、アンチセンス鎖の第2領域は、カセットの3’である。
【0039】
本明細書で用いる用語“センス鎖の第1領域”とは、直鎖状二本鎖DNA産物の5’末端とセンス鎖内のカセットの最初の5’ヌクレオチドとの間にある、該直鎖状二本鎖DNA産物のセンス鎖の一部を包含することを意図する。例えば、センス鎖の配列:5’-AAAAAACATAAAA-3’(配列番号1)において、カセットがヌクレオチド“T”から5’-3’方向に開始するとき、用語“センス鎖の第1領域”とは、5’-AAAAAACA-3’領域を意味する。
【0040】
用語“アンチセンス鎖の第1領域”とは、直鎖状二本鎖DNA産物の5’末端とアンチセンス鎖内のカセットの最初の5’ヌクレオチドとの間にある、該直鎖状二本鎖DNA産物のアンチセンス鎖の一部を包含することを意図する。例えば、アンチセンス鎖の配列:5’-AAAAAACATAAAA-3’(配列番号1)において、カセットがヌクレオチド“T”から5’-3’方向に開始するとき、用語“アンチセンス鎖の第1領域”とは、5’-AAAAAACA-3’領域を意味する。
【0041】
用語“センス鎖の第2領域”とは、直鎖状二本鎖DNA産物の3’末端とセンス鎖内のカセットの最初の3’ヌクレオチドとの間にある、該直鎖状二本鎖DNA産物のセンス鎖の一部を包含することを意図する。例えば、センス鎖の配列:5’-AAAAAACATAAAA-3’(配列番号1)において、カセットがヌクレオチド“T”から3’-5’方向に開始するとき、用語“センス鎖の第2領域”とは、5’-AAAA-3’領域を意味する。
【0042】
用語“アンチセンス鎖の第2領域”とは、直鎖状二本鎖DNA産物の3’末端とアンチセンス鎖内のカセットの最初の3’ヌクレオチドとの間にある、該直鎖状二本鎖DNA産物のアンチセンス鎖の一部を包含することを意図する。例えば、アンチセンス鎖の配列:5’-AAAAAACATAAAA-3’(配列番号1)において、カセットがヌクレオチド“T”から3’-5’方向に開始するとき、用語“アンチセンス鎖の第2領域”とは、5’-AAAA-3’領域を意味する。
【0043】
直鎖状二本鎖DNA産物は、カセットの上流側(すなわち、DNA産物のセンス鎖の5’末端側)に複数のホスホロチオエート化ヌクレオチドを含んでいてもよい。例えば、直鎖状二本鎖DNA産物は、カセットの上流に少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個のホスホロチオエート化ヌクレオチドを含んでいてもよい。好ましくは、カセットの上流に少なくとも2個のホスホロチオエート化ヌクレオチドを含んでいてもよい。従って、直鎖状二本鎖DNA産物のセンス鎖におけるホスホロチオエート化ヌクレオチドの位置は、少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドがカセットの上流に位置するような位置であり得る。
【0044】
直鎖状二本鎖DNA産物のセンス鎖において、
(a)少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、カセットの5’末端ヌクレオチドであってもよく、かつ少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、センス鎖の第1領域にあってもよく、ここで、センス鎖の第1領域は、カセットの5’であるか;または、
(b)少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドは、センス鎖の第1領域にあってもよく、ここで、センス鎖の第1領域は、カセットの5’である。
【0045】
直鎖状二本鎖DNA産物は、カセットの下流側(すなわち、DNA産物の3末端側)に複数のホスホロチオエート化ヌクレオチドを含んでいてもよい。例えば、直鎖状二本鎖DNA産物は、カセットの下流に少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個のホスホロチオエート化ヌクレオチドを含んでいてもよく、好ましくはカセットの下流に少なくとも2個のホスホロチオエートヌクレオチドを含んでいてもよい。従って、直鎖状二本鎖DNA産物のセンス鎖におけるホスホロチオエート化ヌクレオチドの位置は、少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドがカセットの下流に位置するような位置であり得る。
【0046】
直鎖状二本鎖DNA産物のセンス鎖において、
(a)少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、カセットの3’末端ヌクレオチドであってもよく、かつ少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、センス鎖の第2領域にあってもよく、ここで、センス鎖の第2領域は、カセットの3’であるか;または、
(b)少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドは、センス鎖の第1領域にあってもよく、ここで、センス鎖の第1領域は、カセットの3’である。
【0047】
直鎖状二本鎖DNA産物のアンチセンス鎖におけるホスホロチオエート化ヌクレオチドの位置は、少なくとも2つのホスホロチオエートヌクレオチドがカセットの上流(すなわち、DNA産物のアンチセンス鎖の5’末端に向かって)に位置するようなものであってもよい。
【0048】
直鎖状二本鎖DNA産物のアンチセンス鎖において、
(a)少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、カセットの5’末端ヌクレオチドであり、かつ少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、アンチセンス鎖の第1領域にあり、ここで、アンチセンス鎖の第1領域は、カセットの5’であるか;または、
(b)少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドが、アンチセンス鎖の第1領域に存在し、ここで、アンチセンス鎖の第1領域は、カセットの5’である。
【0049】
直鎖状二本鎖DNA産物のアンチセンス鎖におけるホスホロチオエート化ヌクレオチドの位置は、少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドがカセットの下流に(すなわち、DNA産物のアンチセンス鎖の3’末端に向かって)位置するようなものであってもよい。
【0050】
直鎖状二本鎖DNA産物のアンチセンス鎖において、
(a)少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、カセットの3’末端ヌクレオチドであってもよく、かつ少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、アンチセンス鎖の第2領域にあってもよく、ここで、アンチセンス鎖の第2領域は、カセットの3’であるか;または
(b)少なくとも2つのホスホロチオエートヌクレオチドは、アンチセンス鎖の第2領域にあってもよく、ここで、アンチセンス鎖の第2領域は、カセットの3’である。
【0051】
直鎖状二本鎖DNA産物の各鎖は、複数のホスホロチオエート化ヌクレオチドを含んでいてもよい。例えば、直鎖状二本鎖DNA産物は、カセットの上流および下流に少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個のホスホロチオエート化ヌクレオチドを含んでいてもよい。直鎖状二本鎖DNA産物のセンス鎖およびアンチセンス鎖の両方におけるホスホロチオエート化ヌクレオチドの位置は、各鎖において、少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドがカセットの下流に位置し、かつ少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドがカセットの上流に位置するようなものであってもよい。
【0052】
直鎖状二本鎖DNA産物において、
(a)センス鎖において、
i.少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、カセットの5’末端ヌクレオチドであってもよく、かつ少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、センス鎖の第1領域にあってもよく、ここで、センス鎖の第1領域は、カセットの5’であるか、または、
ii.少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドは、センス鎖の第1領域に存在してもよく、ここで、センス鎖の第1領域は、カセットの5’である;
(b)センス鎖において、
i.少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、カセットの3’末端ヌクレオチドであってもよく、かつ少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、センス鎖の第2領域にあってもよく、ここで、センス鎖の第2領域は、カセットの3’であるか、または、
ii.少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドは、センス鎖の第2領域に存在してもよく、ここで、センス鎖の第2領域は、カセットの3’である;
(c)アンチセンス鎖において、
i.少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、カセットの5’末端ヌクレオチドであってもよく、かつ少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、アンチセンス鎖の第1領域にあってもよく、ここで、アンチセンス鎖の第1領域は、カセットの5’であるか、または、
ii.少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドは、アンチセンス鎖の第1領域に存在してもよく、ここで、アンチセンス鎖の第1領域は、カセットの5’である;および
(d)アンチセンス鎖において、
i.少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、カセットの3’末端ヌクレオチドであってもよく、かつ少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、アンチセンス鎖の第2領域にあってもよく、ここで、アンチセンス鎖の第2領域は、カセットの3’であるか、または、
ii.少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドは、アンチセンス鎖の第2領域に存在してもよく、ここで、アンチセンス鎖の第2領域は、カセットの3’である。
【0053】
直鎖状二本鎖DNA産物は、ヌクレアーゼ消化に耐性であるか、またはヌクレアーゼ消化に対する耐性が改善もしくは増強されていてもよい。直鎖状二本鎖DNA産物は、3’末端エキソヌクレアーゼ消化(例えば、エキソヌクレアーゼIIIによる)および/または5’末端エキソヌクレアーゼ消化(例えば、エキソヌクレアーゼVIIIによる)に対して耐性であり得る。直鎖状二本鎖DNA産物は、5’末端または5’末端領域に保護されたヌクレオチド(例えば、ホスホロチオエート化ヌクレオチド)を含んでいてもよい。好ましくは、直鎖状二本鎖DNA産物は、要すれば、各鎖において、5’末端または5’末端領域にホスホロチオエート化ヌクレオチドを含んでいてもよい。直鎖状二本鎖DNA産物は、各鎖の5’末端または5’末端領域にホスホロチオエート化ヌクレオチドを含んでいてもよい。ほとんどのエキソヌクレアーゼ、例えばエキソヌクレアーゼIIIは、ポリヌクレオチド鎖の3’-末端からヌクレオチドを除去するため、直鎖状二本鎖DNA産物は、3’-末端または3’-末端領域に保護ヌクレオチドを含んでいてもよい。好ましくは、直鎖状二本鎖DNA産物は、各鎖において、要すれば、3’末端または3’末端領域にホスホロチオエート化ヌクレオチドを含んでいてもよい。直鎖状二本鎖DNA産物は、3’末端または3’末端領域に少なくとも1つのホスホロチオエート化ヌクレオチドを含み、かつ5’末端または5’末端領域に少なくとも1つのホスホロチオエート化ヌクレオチドを含んでいてもよい。直鎖状二本鎖DNA産物は、各鎖の3’末端または3’末端領域および5’末端または5’末端領域にホスホロチオエート化ヌクレオチドを含んでいてもよい。
【0054】
ホスホロチオエート化ヌクレオチドは別のタイプであってもよい。例えば、直鎖状二本鎖DNA産物は、3’末端または3’末端領域に1以上のα-S-dATP(すなわち、2’-デオキシアデノシン-5’-(α-チオ)-三リン酸)を含み、かつ5’末端または5’末端領域に1以上のα-S-dGTP(すなわち、2’-デオキシグアノシン-5’-(α-チオ)-三リン酸)を含み得る。あるいは、直鎖状二本鎖DNA産物内のすべてのホスホロチオエート化ヌクレオチドが、サンプルタイプのものであってもよい。例えば、直鎖状二本鎖DNA産物は、3’末端または3’末端領域に1以上のα-S-dATPを含み、かつ5’末端または5’末端領域に1以上のα-S-dATPを含み得る。
【0055】
直鎖状二本鎖DNA産物は、少なくとも100塩基対、200塩基対、300塩基対、400塩基対、500塩基対、600塩基対、700塩基対、800塩基対、900塩基対、1000塩基対、2000塩基対、3000塩基対、4000塩基対、5000塩基対、6000塩基対、7000塩基対、8000塩基対、9000塩基対、10000塩基対、11000塩基対、12000塩基対、13000塩基対、14000塩基対または15000塩基対の長さであってもよい。好ましくは、直鎖状二本鎖DNA産物は少なくとも500塩基対、または少なくとも1000塩基対の長さである。
【0056】
直鎖状二本鎖DNA産物は、各鎖の内部位置に複数のホスホロチオエート化ヌクレオチドを含んでいてもよい。例えば、直鎖状二本鎖DNA産物は、各鎖の内部位置に少なくとも2個、4個、6個、8個、10個、12個、14個、16個、18個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、100個、125個、150個、175個、200個、250個、300個、350個、400個、450個または500個のホスホロチオエート化ヌクレオチドを含んでいてもよい。好ましくは、直鎖状二本鎖DNA産物は、各鎖の内部位置に少なくとも2個のホスホロチオエート化ヌクレオチドを含む。
【0057】
各鎖の内部位置にあるホスホロチオエート化ヌクレオチドの量は、直鎖状二本鎖DNA産物の長さに依存して変わり得る。従って、直鎖状二本鎖DNA産物は、全ヌクレオチドに対するホスホロチオエート化ヌクレオチドの比率が少なくとも0.0001、少なくとも0.0025、少なくとも0.01、少なくとも0.025、少なくとも0.05、少なくとも0.075、少なくとも0.10、少なくとも0.12、少なくとも0.15、少なくとも0.25、少なくとも0.35、少なくとも0.5、または少なくとも0.75であるホスホロチオエート化ヌクレオチドを含んでいてもよい。直鎖状二本鎖DNA産物は、全ヌクレオチドに対するホスホロチオエート化ヌクレオチドの比率が1未満、0.9未満、0.8未満、0.65未満、0.5未満、0.4未満、0.3未満、0.2未満、0.1未満、0.075未満、または0.05未満のホスホロチオエート化ヌクレオチドを含んでいてもよい。直鎖状二本鎖DNA産物は、全ヌクレオチドに対するホスホロチオエート化ヌクレオチドの比率が0.0001~1、0.0025~0.75、0.025~0.65、0.025~0.15、または0.25~0.50であるホスホロチオエート化ヌクレオチドを含んでいてもよい。好ましくは、全ヌクレオチドに対するホスホロチオエート化ヌクレオチドの比率は0.025~0.15である。直鎖状二本鎖DNA産物は、全ヌクレオチドに対するホスホロチオエート化ヌクレオチドの比率が0.005~0.3、0.0075~0.2、0.01~0.15、0.01~0.10、0.02~0.08、0.03~0.07、0.04~0.06または0.05~0.075であるホスホロチオエート化ヌクレオチドを含んでいてもよい。好ましくは、全ヌクレオチドに対するホスホロチオエート化ヌクレオチドの比は0.01~0.10である。好ましくは、全ヌクレオチドに対するホスホロチオエート化ヌクレオチドの比は、約0.02、約0.025、約0.05、約0.075、約0.08、約0.10、約0.12、約0.15、または約0.25である。さらに好ましくは、全ヌクレオチドに対するホスホロチオエート化ヌクレオチドの比率は約0.025または約0.05である。実施例に示すように、全ヌクレオチドに対するホスホロチオエート化ヌクレオチドの比率は約0.025で十分であり、エキソヌクレアーゼ消化に対する耐性が増強される。実施例に示されるように、全ヌクレオチドに対するホスホロチオエート化ヌクレオチドの比が約0.05または約0.075であることは、エキソヌクレアーゼ消化に対する増強された耐性を提供するのに特に効果的である(発現レベルによって示される;実施例7および8を参照のこと)。さらに、実施例に示されるように、約0.05の比率は、目的遺伝子のインビボでの発現に特に適している(実施例10参照のこと)。
【0058】
各鎖の内部位置にあるホスホロチオエートヌクレオチドの量は異なり得る。例えば、直鎖状二本鎖DNA産物が合計1000個のヌクレオチドを含み、かつ全ヌクレオチドに対するホスホロチオエートヌクレオチドの比率が0.1であるとき、直鎖状二本鎖DNA産物は100個のホスホロチオエート化ヌクレオチドを含み、そのうち75個はDNA産物のセンス鎖に位置し、25個はアンチセンス鎖に位置し得る。例えば、直鎖状二本鎖DNA産物中のホスホロチオエート化ヌクレオチドの100%がセンス鎖に位置していてもよい。あるいは、直鎖状二本鎖DNA産物中のホスホロチオエート化ヌクレオチドの100%がアンチセンス鎖に位置していてもよい。センス鎖は、直鎖状二本鎖DNA産物中のホスホロチオエート化ヌクレオチドの総数の少なくとも90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、または10%を含んでいてもよい。アンチセンス鎖は、直鎖状二本鎖DNA産物中のホスホロチオエート化ヌクレオチドの総数の少なくとも90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、または10%を含んでいてもよい。センス鎖およびアンチセンス鎖は、同数のホスホロチオエート化ヌクレオチドを含んでいてもよい。好ましくは、センス鎖およびアンチセンス鎖の各々は、直鎖状二本鎖DNA産物中のホスホロチオエート化ヌクレオチドの総数の50%を含む。
【0059】
直鎖状二本鎖DNA産物はオーバーハングを含んでいてもよい。例えば、直鎖状二本鎖DNA産物は、5’オーバーハングまたは3’オーバーハングを含んでいてもよい。直鎖状二本鎖DNA産物は、1つまたは複数の平滑末端を含み得る。直鎖状二本鎖DNA産物は、1つの5’オーバーハングおよび1つの平滑末端、2つの5’オーバーハング、1つの3’オーバーハングおよび1つの平滑末端、2つの3’オーバーハング、または1つの5’オーバーハングおよび1つの3’オーバーハングを含み得る。
【0060】
オーバーハングは少なくとも3ヌクレオチド(好ましくは、4から8ヌクレオチド)を有し得る。オーバーハングは、直鎖状二本鎖DNA産物のセンス鎖またはアンチセンス鎖に存在し得る。
【0061】
センス鎖は、少なくとも1ヌクレオチド、少なくとも2ヌクレオチド、2~8ヌクレオチド、2~7ヌクレオチド、2~6ヌクレオチド、2~5ヌクレオチド、2~4ヌクレオチド、2~3ヌクレオチド、3~8ヌクレオチド、3~7ヌクレオチド、3~6ヌクレオチド、3~5ヌクレオチド、3~4ヌクレオチド、4~8ヌクレオチド、4~7ヌクレオチド、4~6ヌクレオチド、4~5ヌクレオチド、5~8ヌクレオチド、6~8ヌクレオチド、6~7ヌクレオチド、または7~8ヌクレオチドの3’-オーバーハングを有し得る。好ましくは、センス鎖は4~8ヌクレオチドの3’-オーバーハングを有する。
【0062】
センス鎖は、少なくとも1ヌクレオチド、少なくとも2ヌクレオチド、2~8ヌクレオチド、2~7ヌクレオチド、2~6ヌクレオチド、2~5ヌクレオチド、2~4ヌクレオチド、2~3ヌクレオチド、3~8ヌクレオチド、3~7ヌクレオチド、3~6ヌクレオチド、3~5ヌクレオチド、3~4ヌクレオチド、4~8ヌクレオチド、4~7ヌクレオチド、4~6ヌクレオチド、4~5ヌクレオチド、5~8ヌクレオチド、6~8ヌクレオチド、6~7ヌクレオチド、または7~8ヌクレオチドの5’-オーバーハングを有し得る。好ましくは、センス鎖は4~8ヌクレオチドの5’-オーバーハングを有する。
【0063】
アンチセンス鎖は、少なくとも1ヌクレオチド、少なくとも2ヌクレオチド、2~8ヌクレオチド、2~7ヌクレオチド、2~6ヌクレオチド、2~5ヌクレオチド、2~4ヌクレオチド、2~3ヌクレオチド、3~8ヌクレオチド、3~7ヌクレオチド、3~6ヌクレオチド、3~5ヌクレオチド、3~4ヌクレオチド、4~8ヌクレオチド、4~7ヌクレオチド、4~6ヌクレオチド、4~5ヌクレオチド、5~8ヌクレオチド、6~8ヌクレオチド、6~7ヌクレオチド、または7~8ヌクレオチドの3’-オーバーハングを有し得る。好ましくは、アンチセンス鎖は4~8ヌクレオチドの3’-オーバーハングを有する。
【0064】
アンチセンス鎖は、少なくとも1ヌクレオチド、少なくとも2ヌクレオチド、2~8ヌクレオチド、2~7ヌクレオチド、2~6ヌクレオチド、2~5ヌクレオチド、2~4ヌクレオチド、2~3ヌクレオチド、3~8ヌクレオチド、3~7ヌクレオチド、3~6ヌクレオチド、3~5ヌクレオチド、3~4ヌクレオチド、4~8ヌクレオチド、4~7ヌクレオチド、4~6ヌクレオチド、4~5ヌクレオチド、5~8ヌクレオチド、6~8ヌクレオチド、6~7ヌクレオチド、または7~8ヌクレオチドの5’-オーバーハングを有し得る。好ましくは、アンチセンス鎖は4~8ヌクレオチドの5’-オーバーハングを有する。
【0065】
当業者であれば、センス鎖およびアンチセンス鎖のオーバーハングは、上記のオーバーハングの長さの何れかの組合せであり得ることを理解し得る。直鎖状二本鎖DNA産物のオーバーハングは同じ長さである必要はない。直鎖状二本鎖DNA産物のオーバーハングは同じ長さであってもよい。
【0066】
直鎖状二本鎖DNA産物の各オーバーハングおよび/または平滑末端は、1以上の保護ヌクレオチド(例えば、ホスホロチオエート化ヌクレオチド)を含んでいてもよい。センス鎖のオーバーハングおよび/または平滑末端は、1以上の保護ヌクレオチドを含んでいてもよい。アンチセンス鎖のオーバーハングおよび/または平滑末端は、1以上の保護ヌクレオチドを含んでいてもよい。各鎖の5’オーバーハング、3’オーバーハングおよび/または平滑末端は、1以上の保護ヌクレオチドを含んでいてもよい。好ましくは、5’オーバーハングは1以上のホスホロチオエート化ヌクレオチドを含む。好ましくは、3’オーバーハングは1以上のホスホロチオエート化ヌクレオチドを含む。好ましくは、5’オーバーハング、3’オーバーハングおよび/または平滑末端は、1以上のホスホロチオエート化ヌクレオチドを含む。より好ましくは、直鎖状二本鎖DNA産物の各オーバーハングおよび/または平滑末端は、1以上のホスホロチオエート化ヌクレオチドを含む。直鎖状二本鎖DNA産物の各オーバーハングおよび/または平滑末端は、少なくとも2つの保護された(例えば、ホスホロチオエート化された)ヌクレオチドを含んでいてもよい。センス鎖のオーバーハングおよび/または平滑末端は、少なくとも2つの保護されたヌクレオチドを含んでいてもよい。アンチセンス鎖のオーバーハングおよび/または平滑末端は、少なくとも2つの保護されたヌクレオチドを含んでいてもよい。直鎖状二本鎖DNA産物の各オーバーハングおよび/または平滑末端は、少なくとも3個、4個または5個の保護された(例えば、ホスホロチオエート化された)ヌクレオチドを含んでいてもよい。センス鎖のオーバーハングおよび/または平滑末端は、少なくとも3個、4個、または5個の保護ヌクレオチドを含んでいてもよい。アンチセンス鎖のオーバーハングおよび/または平滑末端は、少なくとも3個、4個または5個の保護ヌクレオチドを含んでいてもよい。5’オーバーハング、および/または3’オーバーハングは、少なくとも2個、3個、4個または5個の保護ヌクレオチドを含み得る。好ましくは、5’オーバーハングおよび/または3’オーバーハングは、ホスホロチオエート化ヌクレオチドのような少なくとも2個の保護ヌクレオチドを含む。さらに好ましくは、各オーバーハングおよび/または平滑末端は、ホスホロチオエート化ヌクレオチドのような、少なくとも2個の保護ヌクレオチドを含む。
【0067】
本明細書で用いる用語“ホスホロチオエート化ヌクレオチド”とは、リン酸骨格が変化したヌクレオチドを意味し、ここで、糖部分はホスホロチオエート結合によって連結されている。オリゴヌクレオチド配列のリン酸骨格において、ホスホロチオエート結合は非架橋酸素原子の代わりに硫黄原子を含む。この修飾により、ヌクレオチド間の結合はヌクレアーゼによる分解を受けにくくなる。
【0068】
本明細書で用いる用語“保護ヌクレオチド”または“ヌクレアーゼ耐性ヌクレオチド”とは、ヌクレアーゼ消化(特に、エキソヌクレアーゼ消化)に対する耐性を提供するか、または増強する何れかのタイプの分子を包含することを意図する。直鎖状二本鎖DNA産物は、本明細書中、ホスホロチオエート化ヌクレオチドを含むものとして記載されることがほとんどであるが、当業者は、直鎖状二本鎖DNA産物が、代わりにヌクレアーゼ消化(例えば、エキソヌクレアーゼIII消化)に対する耐性を提供する何れかの分子を含み得ることを理解し得る。例えば、直鎖状二本鎖DNA産物は、ヌクレアーゼ耐性ヌクレオチド、すなわちヌクレアーゼ(例えば、エキソヌクレアーゼ)に対する耐性を提供するか、または増加させる修飾ヌクレオチドを含んでいてもよい。直鎖状二本鎖DNA産物は、ヌクレアーゼ(例えば、エキソヌクレアーゼ)消化に対する耐性を提供するか、または増加させるペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を含んでいてもよい。直鎖状二本鎖DNA産物は、2’-O-メチルヌクレオチドまたは2’-O-メトキシエチル(MOE)ヌクレオチドを含んでいてもよい。
【0069】
本発明は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含む直鎖状二本鎖DNA産物を提供し、ここで、直鎖状二本鎖DNA産物は、単一カセットおよび各鎖の内部位置に少なくとも2つのMOEヌクレオチドを含み、ここで、各鎖の内部位置にある少なくとも2つのMOEヌクレオチドは、
(a)カセットの5’末端ヌクレオチド;
(b)カセットの3’末端ヌクレオチド;および
(c)カセットの外側の1以上のヌクレオチド
から選択され、ここで、カセットはコーディング配列を含む。
【0070】
エキソヌクレアーゼ消化に耐性のあるヌクレオチド(すなわち、保護ヌクレオチド)は、少なくとも1種のホスホロチオエート化ヌクレオチドであり得る。例えば、少なくとも1種のホスホロチオエート化ヌクレオチドは、α-S-dATP(すなわち、2’-デオキシアデノシン-5’-(α-チオ)-三リン酸)、α-S-dCTP(すなわち、2’-デオキシシチジン-5’-(α-チオ)-三リン酸)、α-S-dGTP(すなわち、2’-デオキシグアノシン-5’-(α-チオ)-三リン酸)、α-S-dTTP(すなわち、2’-デオキシチミジン-5’-(α-チオ)-三リン酸)、α-S-dUTP(すなわち、2’-デオキシウリジン-5’-(α-チオ)-三リン酸)、および/またはウリジン2’、3’-シクロホスホロチオエート、好ましくはα-S-dATP、α-S-dGTPまたはα-S-dTTPである。
【0071】
直鎖状二本鎖DNA産物は、少なくとも2種のホスホロチオエート化ヌクレオチドを含んでいてもよい。例えば、少なくとも2種のホスホロチオエートヌクレオチドは、α-S-dATPおよびα-S-dCTP、α-S-dATPおよびα-S-dGTP、α-S-dATPおよびα-S-dTTP、α-S-dCTPおよびα-S-dGTP、α-S-dCTPおよびα-S-dTTP、またはα-S-dGTPおよびα-S-dTTPである。
【0072】
直鎖状二本鎖DNA産物は、少なくとも3種のホスホロチオエート化ヌクレオチドを含んでいてもよい。例えば、少なくとも3種のホスホロチオエート化ヌクレオチドは、
(a)α-S-dATP、α-S-dCTPおよびα-S-dGTP;
(b)α-S-dATP、α-S-dCTPおよびα-S-dTTP;
(c)α-S-dATP、α-S-dGTPおよびα-S-dTTP;または
(d)α-S-dCTP、α-S-dGTPおよびα-S-dTTP
である。
【0073】
直鎖状二本鎖DNA産物は、少なくとも4種のホスホロチオエート化ヌクレオチドを含んでいてもよい。例えば、少なくとも4種の保護ヌクレオチドは、α-S-dATP、α-S-dCTP、α-S-dGTPおよびα-S-dTTPである。
【0074】
ホスホロチオエート化ヌクレオチドは、Sp-異性体、Rp-異性体、またはSp-異性体およびRp-異性体の両方の混合物であってもよい。
【0075】
エキソヌクレアーゼ消化に耐性のあるヌクレオチド(すなわち、保護ヌクレオチド)は、少なくとも1種、または少なくとも2種、3種または4種のMOEヌクレオチドであってもよい。例えば、MOEヌクレオチドは、2’-O-メトキシ-エチルグアノシン、2’-O-メトキシ-エチルシチジン、2’-O-メトキシ-エチルアデノシン、および/または2’-O-メトキシ-エチルチミジンであってもよい。
【0076】
直鎖状二本鎖DNA産物中の保護ヌクレオチドの取込み量は、当技術分野で公知の方法に基づいて決定できる。例えば、プライマー伸長アッセイを行って、保護されたヌクレオチドと保護されていないヌクレオチドの導入率を評価できる。例えば、ポリメラーゼによるテンプレート/プライマー分子の一塩基伸長は、テンプレートの最初の塩基に対する保護された相補的ヌクレオチドおよび保護されていない相補的ヌクレオチドの濃度を増加させた存在下で評価できる。直鎖状(非飽和)条件下での取込効率は、天然の保護されていないヌクレオチドと比較して、保護されたヌクレオチドの取り込みの程度を決定するために使用できる。
【0077】
2.複合体分子
直鎖状二本鎖DNA産物は、機能性部分をさらに含んでいてもよい。
【0078】
本発明は、本明細書に記載の直鎖状二本鎖DNA産物および機能性部分を含む複合体分子を提供する。要すれば、機能性部分は結合分子またはプローブである。
【0079】
本発明は、以下を含む複合体分子を提供する:
(a)センス鎖およびアンチセンス鎖を含む直鎖状二本鎖DNA産物であって、該直鎖状二本鎖DNA産物が、単一カセットおよび各鎖の内部位置に1以上のホスホロチオエート化ヌクレオチドを含む、直鎖状二本鎖DNA産物;ならびに
(b)機能性部分。
【0080】
好ましくは、各鎖の内部位置にある1以上のホスホロチオエート化ヌクレオチドは、
i.カセットの5’末端ヌクレオチド;
ii.カセットの3’末端ヌクレオチド;および
iii.カセットの外側の1以上のヌクレオチド
から選択され得る。
【0081】
本発明はまた、
(a)センス鎖およびアンチセンス鎖を含む直鎖状二本鎖DNA産物であって、該直鎖状二本鎖DNA産物が、単一カセットおよび各鎖の内部位置にある少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドを含み、ここで、各鎖の内部位置にある少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドが、
i.カセットの5’末端ヌクレオチド;
ii.カセットの3’末端ヌクレオチド;および
iii.カセットの外側の1以上のヌクレオチド;
から選択され、ここで、該カセットはコーディング配列を含む、直鎖状二本鎖DNA産物;および
(b)機能性部分
を含む、複合体分子を提供する。
【0082】
機能性部分は、ポリヌクレオチド鎖の3’末端および/または5’末端(または末端領域)にあってもよい。機能性部分は、直鎖状二本鎖DNA産物の5’オーバーハング、3’オーバーハング、および/または平滑末端に接着または結合していてもよい。機能性部分は、共有結合もしくは非共有結合によって、または核酸ハイブリダイゼーションによって、直鎖状二本鎖DNA産物の5’オーバーハング、3’オーバーハングおよび/または平滑末端に結合または接着され得る。機能性部分は、直鎖状二本鎖DNA産物に直接的または間接的に(例えば、リンカー分子を介して)結合または接着させることができる。機能性部分は、直鎖状二本鎖DNA産物に結合することによって、および/または直鎖状二本鎖DNA産物に結合するリンカー分子に結合またはアニールされることによって、接着または結合され得る。リンカー分子は、バイオポリマー(例えば、核酸分子など)でも合成ポリマーでもよい。リンカー分子は、エチレングリコールおよび/またはポリ(エチレン)グリコール(例えば、ヘキサエチレングリコールまたはペンタエチレングリコール)の1つまたは複数の単位を含み得る。
【0083】
直鎖状二本鎖DNA産物は、2つの機能性部分;ポリヌクレオチド鎖の3’末端の第1の機能性部分、およびポリペプチド鎖の5’末端の第2の機能性部分、を含んでいてもよい。第1の機能性部分は、直鎖状二本鎖DNA産物の5’オーバーハング、3’オーバーハング、および/または3’末端の平滑末端に接着または結合され得る。第2の機能性部分は、直鎖状二本鎖DNA産物の5’オーバーハング、3’オーバーハング、および/または5’末端の平滑末端に接着または結合され得る。2つの機能性部分は同じでも異なっていてもよい。例えば、第1の機能性部分はDNA産物の検出および/または配列決定を容易にするためのバーコードであってもよく、第2の機能性部分は核標的配列であってもよい。
【0084】
機能性部分はプローブであってもよい。本明細書で用いる用語“プローブ”とは、プローブ中の配列に相補的な標的ヌクレオチド配列の存在を検出するために用いられる、可変長(例えば、3~1000塩基長)のDNA、RNAまたはDNA/RNAキメラのフラグメントを意味する。通常、プローブは、プローブと標的の間の相補性により、プローブ-標的の塩基対形成が可能な塩基配列の一本鎖核酸にハイブリダイズする。従って、機能性部分はDNA配列、RNA配列、またはDNA/RNAキメラ配列であってもよい。本明細書で用いる用語“相補的”とは、ワトソン/クリック対形成ルールに従ってヌクレオチド配列が対形成されることを意味する。例えば、配列5’-GCGGTCCCA-3’は、5’-TGGGACCGC-3’の相補配列を有する。相補配列は、DNA配列に相補的なRNA配列でもあり得る。
【0085】
機能性部分は結合分子であってもよい。用語“結合分子”とは、本明細書に記載の直鎖状二本鎖DNA産物に結合できる、および/またはさらなる分子もしくは標的に結合できる何れかの分子を意味する。結合分子はタンパク質、ポリペプチド、ペプチドであり得る。結合分子は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体などの抗体であってもよい。結合分子は抗体フラグメントであってもよい。
【0086】
機能性部分は、捕捉分子(例えば、タンパク質-タンパク質相互作用によって結合した捕捉抗体)と結合することによって、DNA産物の検出を促進できる。機能性部分は、細胞標的、例えば細胞受容体に結合し得る。
【0087】
機能性部分は標識であってもよい。従って、本発明の直鎖状二本鎖DNA産物のセンス鎖は、検出のために5’末端または3’末端に標識を含んでいてもよい。あるいは、またはさらに、本発明の直鎖状二本鎖DNA産物のアンチセンス鎖は、検出のために5’末端または3’末端に標識を含んでいてもよい。“標識”は、物理的、化学的および/または生物学的手段によって二本鎖核酸分子の検出を可能にする何れかの化学物質であり得る。標識は発色団、フルオロフォアおよび/または放射性分子であり得る。
【0088】
機能性部分はターゲティング配列であってもよい。ターゲティング配列は、DNAまたはRNAのフラグメントであり、その長さは様々であり、DNA産物を細胞内の特定の場所にターゲティングするために用いられる。ターゲティング配列は、DNA産物の核内取り込みを促進することによって、非ウイルス性遺伝子導入のトランスフェクション効率を高めるために使用できる。例えば、ターゲティング配列は、SV40エンハンサー配列(好ましくはカセットより下流側)のようなDNA核ターゲティング配列(すなわち、内在性DNA結合タンパク質の認識配列)であり得る。
【0089】
DNA産物の検出および/または定量を容易にするために、機能性部分は、フルオロフォア、放射性化合物またはバーコードを含んでいてもよい。
【0090】
直鎖状二本鎖DNA産物の存在、不存在および/またはレベルに対応するシグナルは、バーコードを用いて測定できる。バーコードは、バーコード部分に連結された少なくとも1つの結合部分を含んでいてもよく、ここで、バーコード部分は、少なくとも1つのヌクレオチドを含み(すなわち、前記バーコード部分は、少なくとも1つのヌクレオチド長のヌクレオチド配列を含む)、かつ、結合部分は、直鎖状二本鎖DNA産物の3’オーバーハング、5’オーバーハングまたは平滑末端に結合できる。結合部位は、直鎖状二本鎖DNA産物の3’末端および/または5’末端に結合できる。シグナルは、バーコード部分の有無および/またはレベルを決定することによって測定できる(例えば、配列決定またはPCRによって)。バーコード化部分は、少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個のヌクレオチドを含み得る。バーコードは、少なくとも2つの結合部分(例えば、第1の結合部分および第2の結合部分)を含んでいてもよい。例えば、第1のバーコード部分に連結された第1の結合部分は、直鎖状二本鎖DNA産物の3’末端に結合でき、第2のバーコード部分に連結された第2の結合部分は、直鎖状二本鎖DNA産物の5’末端に結合できる。3’末端および5’末端は、3’オーバーハング、5’オーバーハング、または平滑末端を含み得る。
【0091】
DNA産物の存在、不存在および/またはレベルに対応するシグナルは、直鎖状二本鎖DNA産物の3’オーバーハング、5’オーバーハング、または平滑末端に接着または結合したフルオロフォア(すなわち、蛍光標識分子)を用いて測定できる。シグナルは、フローサイトメトリーおよび/または蛍光活性化セルソーティングによって測定できる。
【0092】
機能性部分は、DNAの配列決定を容易にすることもできる。例えば、機能性部分は配列決定アダプターであってもよい。用語“配列決定アダプター”とは、Illumina(登録商標)(例えば、HiSeq(商標)、MiSeq(商標)よび/またはGenome Analyzer(商標)シーケンシングシステム)、Oxford Nanopore(商標)Technologies(例えば、MinIONシーケンシングシステム)、Ion Torrent(商標)(例えば、Ion PGM(商標)および/またはIon Proton(商標)シーケンシングシステムなど)、Pacific Biosciences(例えば、PACBIO RS IIシーケンシングシステム);Life Technologies(商標)(例えば、SOLiDシーケンシングシステム)、Roche(例えば、454 GS FLX+および/またはGS Juniorシーケンシングシステム)、またはその他の目的の配列決定プラットフォームによって提供される配列決定プラットフォームなど、目的の配列決定プラットフォームによって利用される核酸配列(またはその相補体)の少なくとも一部を含む1以上の核酸ドメインを包含することを意図する。
【0093】
3.送達粒子
直鎖状二本鎖DNA産物または複合体分子の何れかまたは全てを、ナノ粒子などの送達粒子を介して細胞に送達できる。
【0094】
本発明は、遺伝子治療での使用に特に適したナノ粒子(またはナノ粒子のライブラリー)を提供する。本発明は、遺伝子治療に用いる直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子、ナノ粒子、組成物またはライブラリーを提供する。
【0095】
ナノ粒子(またはナノ粒子のライブラリー)は、治療用タンパク質をコードするDNA産物を送達することによって、あるいは遺伝子編集(例えば、CRISPRシステムの遺伝子)に有用なDNA産物を送達することによって、疾患の処置に用いることができる。従って、ナノ粒子はさまざまな用途の送達システムとして機能し得る。投与はインビトロでもインビボでも可能である。
【0096】
治療用遺伝子の効果的な細胞内への取り込みは、遺伝子導入用ナノ粒子の臨床応用を成功させるために重要なプロセスである。従って、本発明は細胞内在化のためのナノ粒子(またはナノ粒子のライブラリー)を提供する。
【0097】
本発明は、本明細書に記載の直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子、またはライブラリーを含むナノ粒子を提供する。従って、本発明は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含む直鎖状二本鎖DNA産物を含むナノ粒子を提供し、ここで、直鎖状二本鎖DNA産物は、単一カセットおよび各鎖の内部位置にある1以上のホスホロチオエート化ヌクレオチドを含む。好ましくは、各鎖の内部位置にある1以上のホスホロチオエート化ヌクレオチドは、
(a)カセットの5’末端ヌクレオチド;
(b)カセットの3’末端ヌクレオチド;および
(c)カセットの外側の1以上のヌクレオチド
から選択され得る。
【0098】
本発明はまた、センス鎖およびアンチセンス鎖を含む直鎖状二本鎖DNA産物を含むナノ粒子を提供し、ここで、直鎖状二本鎖DNA産物は、単一カセットおよび各鎖の内部位置にある少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドを含み、ここで、各鎖の内部位置にある少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドは、
(a)カセットの5’末端ヌクレオチド;
(b)カセットの3’末端ヌクレオチド;および
(c)カセットの外側の1以上のヌクレオチド
から選択され、ここで、カセットはコーディング配列を含む。
【0099】
本発明はまた、ナノ粒子のライブラリーを提供し、ここで、各ナノ粒子は直鎖状二本鎖DNA産物を含み、かつ直鎖状二本鎖DNA産物は低分散性を有する。ナノ粒子(またはナノ粒子のライブラリー)について用語“低分散性”とは、実質的に同じサイズ(すなわち、ポリヌクレオチド鎖の塩基数)を有する直鎖状二本鎖DNA産物を包含することを意図する。すなわち、各直鎖状二本鎖DNA産物は、ナノ粒子のライブラリー中の他の直鎖状二本鎖DNA産物から、30%未満、20%未満または10%未満、好ましくは5%未満だけサイズ(すなわち、ポリヌクレオチド鎖中の塩基の数)が異なっていてもよい。これらのDNA産物は、均一なナノ粒子または均一なナノ粒子の集合体(すなわちライブラリー)を形成する。逆に、多分散DNA産物(例えば、米国特許US10350307B2に記載されている方法で製造されたもの)からなるナノ粒子は、サイズおよび形状が異なり得る(すなわち、分散性が高い)。ナノ粒子の均一性(および/または、低分散性)は、形質転換および/またはトランスフェクションに特に有益であり、内在化および薬物放出プロセスにおいて重要な役割を果たす。
【0100】
本発明はまた、本明細書に記載のような直鎖状二本鎖DNA産物のライブラリーを含むナノ粒子のライブラリーもまた提供する。
【0101】
ナノ粒子は、直鎖状二本鎖DNA産物の少なくとも1コピーを含んでいてもよい。ナノ粒子は、少なくとも2コピー、3コピー、4コピー、5コピー、6コピー、7コピー、8コピー、9コピー、10コピーの直鎖状二本鎖DNA産物を含んでいてもよい。ナノ粒子のライブラリー中の各ナノ粒子は、直鎖状二本鎖DNA産物の少なくとも1つのコピーを含んでいてもよい。ナノ粒子のライブラリーの各ナノ粒子は、直鎖状二本鎖DNA産物の少なくとも2コピー、3コピー、4コピー、5コピー、6コピー、7コピー、8コピー、9コピー、10コピーを含んでいてもよい。ナノ粒子のライブラリーの各ナノ粒子は、直鎖状二本鎖DNA産物の同量のコピーを含んでいてもよい。ナノ粒子のライブラリーの各ナノ粒子は、直鎖状二本鎖DNA産物の3コピーを含んでいてもよい。ナノ粒子のライブラリーの各ナノ粒子は、直鎖状二本鎖DNA産物の4つのコピーを含んでいてもよい。ナノ粒子のライブラリー中の各ナノ粒子は、10コピーを超える直鎖状二本鎖DNA産物を含んではならない。ナノ粒子ライブラリーの各ナノ粒子は、連結したDNA産物を含んではならない。ナノ粒子のライブラリーに含まれる各ナノ粒子は、複数のカセットを含む直鎖状二本鎖DNA産物を含んではならない。
【0102】
ナノ粒子は、少なくとも1コピーの複合体分子を含んでいてもよい。ナノ粒子は、少なくとも2コピー、3コピー、4コピー、5コピー、6コピー、7コピー、8コピー、9コピー、10コピーの複合体分子を含んでいてもよい。ナノ粒子のライブラリーの各ナノ粒子は、複合体分子の少なくとも1つのコピーを含んでいてもよい。ナノ粒子のライブラリーの各ナノ粒子は、複合体分子の少なくとも2コピー、3コピー、4コピー、5コピー、6コピー、7コピー、8コピー、9コピー、10コピーを含んでいてもよい。ナノ粒子のライブラリー中の各ナノ粒子は、複合体分子の同量のコピーを含んでいてもよい。ナノ粒子のライブラリーの各ナノ粒子は、複合体分子の3コピーを含んでいてもよい。ナノ粒子のライブラリーの各ナノ粒子は、複合体分子の4コピーを含んでいてもよい。ナノ粒子のライブラリーに含まれる各ナノ粒子は、10コピーを超える複合体分子を含んではならない。
【0103】
ライブラリーは、少なくとも2個、3個、4個、5個、10個、15個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、100個、10個、10個、10個、10個、10個、10個、10個、1010個、1011個、1012個、1013個、1014個、1015個、1016個、または1017個のナノ粒子を含んでいてもよい。例えば、ライブラリーは、1mL当たり、少なくとも2個、3個、4個、5個、10個、15個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、100個、10個、10個、10個、10個、10個、10個、10個、1010個、1011個、1012個、1013個、1014個、1015個、1016個、または1017個のナノ粒子を含んでいてもよい。
【0104】
ナノ粒子は自己組織化ナノ粒子であってもよい。好ましくは、ナノ粒子はマイクロ流体デバイス上で製造できる粒子である。好ましくは、ナノ粒子は、静電相互作用、例えば、負に荷電したDNA分子および正に荷電したカチオン性脂質またはペプチドとの間の静電相互作用に基づいて集合する。例えば、ナノ粒子は自己組織化生体接着性ポリマーをベースとでき、直鎖状二本鎖DNA産物の経口送達、静脈内送達、経鼻送達に適用できる。例えば、ナノ粒子はDNA産物を癌細胞に送達し、腫瘍増殖を止めることができる。
【0105】
ナノ粒子は、当技術分野で知られている方法で製造できる。例えば、ナノ粒子は、本明細書に記載の直鎖状二本鎖DNA産物または本明細書に記載の複合体分子を、二重エマルジョン溶媒蒸発法によってポリ(乳酸-コ-グリコール酸)ナノ粒子に封入することによって製造できる。ナノ粒子は、例えば生体適合性のキトサンまたはシクロデキストリンなどのカチオン性成分でさらに修飾できる。
【0106】
ナノ粒子は、エタノール負荷形成プロセスによって製造できる。この工程では、エタノールに溶解した脂質を、酸性pH(好ましくはpH=4)の水性緩衝液中で、本明細書に記載の直鎖状二本鎖DNA産物または本明細書に記載の複合体分子と共に迅速に混合する。この自己組織化プロセスでは、静電相互作用によって、DNA産物または複合体分子を含むか、あるいは本質的にDNA産物または複合体分子からなる逆ミセルの形成が促進される。
【0107】
ナノ粒子は、脂質ベースのナノ粒子、LNP(脂質ナノ粒子)、ポリマーナノ粒子、PEIベースのナノ粒子、リポポリプレックスナノ粒子(ポリマーおよび脂質の混合物)、または固体ナノ粒子(金ナノ粒子など)であってもよい。
【0108】
好ましくは、ナノ粒子(または、ナノ粒子のライブラリー)は、本明細書に記載のように細胞をトランスフェクションできる。好ましくは、細胞はヒト細胞である。
【0109】
本明細書に記載のナノ粒子(またはナノ粒子のライブラリー)は、遺伝子治療に用いるのに適している。例えば、ナノ粒子(またはナノ粒子のライブラリー)は、制御された遺伝子導入プロセスに使用できる。ナノ粒子は、金ナノ粒子、ナノダイヤモンド、または多孔性シリコンナノ粒子である。遺伝子治療に適したナノ粒子は、安定性がよく、表面機能化が容易で、サイズ制御が容易なものであれば、どのようなタイプのものでもよい。金ナノ粒子は無毒性であるため、特に適している。ナノ粒子は脂質ベースのナノ粒子であってもよい。
【0110】
脂質ベースのナノ粒子は、生体適合性が高く、脂質膜によく似ているため、遺伝子導入に特に適している。脂質ベースのナノ粒子は、他の既知のナノ粒子と比較して、一般的に細胞への浸透性が向上している。ナノ粒子は、大きな一枚膜小胞ナノ粒子であってもよい。例えば、LNPは、siRNAを肝臓に送達するのに高度に効果的であることが示されており(Tabernero et al., Cancer Discovery, April 2013, Vol. 3, No. 4, pages 363-470)、従って、本明細書に記載のDNA産物および複合体分子を肝臓に送達するために企図される。
【0111】
米国特許出願第20110293703号は、ポリヌクレオチドの投与に有用なリピドイド(lipidoid)化合物に関し、これは本発明のDNA産物および複合体分子の送達に適用できる。例えば、アミノアルコールリピドイド化合物は、細胞または対象に送達される薬剤と結合して、マイクロ粒子、ナノ粒子、リポソーム、またはミセルを形成する。微粒子、ナノ粒子、リポソームまたはミセルによって送達される薬剤は、気体、液体または固体の形態であってもよく、薬剤はポリヌクレオチド、タンパク質、ペプチドまたは低分子であってもよい。アミノアルコール脂質化合物は、ナノ粒子を形成するために、他のアミノアルコール脂質化合物、ポリマー、界面活性剤、コレステロール、タンパク質、脂質などと組み合わせることができる。これらのナノ粒子は、要すれば医薬賦形剤と組み合わせて医薬組成物を形成できる。
【0112】
球状核酸(SNA)構築物および他のナノ粒子(例えば、金ナノ粒子)もまた、DNA産物および/または複合体分子を意図した標的に送達する手段として適している。AuraSense Therapeuticsの球状核酸(SNA(商標))構築物は、核酸で機能化された金ナノ粒子をベースにしており、以下のような複数の重要な成功要因に基づいて、代替プラットフォームよりも優れていることが顕著なデータによって示されている:1)高いインビボ安定性(高密度充填のため、カーゴの大部分(DNA産物または複合体分子)は細胞内でコンストラクトに結合したままであり、核酸の安定性および酵素分解に対する抵抗性をもたらす);2)送達性(試験されたすべての細胞タイプ(例えば、神経細胞、腫瘍細胞株など)に対して)、構築物は、担体またはトランスフェクション剤を必要とせず、99%のトランスフェクション効率を示す;3)治療標的化(構築物のユニークな標的結合親和性および特異性により、一致した標的配列に対する高い特異性が得られる;4)優れた有効性;5)低毒性;6)有意な免疫反応がない;ならびに、7)化学的耐用性(chemical tailorability)。
【0113】
Arg-GIy-Asp(RGD)ペプチドでPEG化され、ポリエチレングリコール(PEG)の遠位端に結合したポリエチレンイミン(PEl)を用いて、DNA産物または複合体分子を有する自己組織化ナノ粒子を構築できる。ナノプレックスは、カチオン性ポリマーおよび核酸の等容量の水溶液を混合し、リン酸(核酸)に対するイオン化可能窒素(ポリマー)の正味モル過剰が2から6の範囲になるように調製できる。カチオン性ポリマーと核酸との間の静電的相互作用により、平均粒径分布が約100nmのポリプレックスが形成される可能性があるため、本明細書中はナノプレックスと呼ぶ。
【0114】
ナノ粒子は、生体適合性ナノ担体を含んでいてもよい。例えば、ナノ粒子は、ポリ(β-アミノエステル)、低分子量ポリエチレンイミン、ポリホスホエステル、ジスルフィド結合ポリマー、ポリアミドアミンを含み得る。これらのナノ担体は、従来の遺伝子導入機序よりもナノ粒子製剤の安定性および安全性が向上している。
【0115】
ナノ粒子は、さらに別の成分と結合していてもよい。例えば、遺伝子治療におけるナノ粒子の特異性および選択性を確保するために、追加的な成分が必要になり得る。例えば、ナノ粒子はペプチドと結合させることができる。ペプチドは、ナノ粒子の標的化能力を向上させ、生物学的毒性を軽減し、処置効果を向上させ得る。ナノ粒子はリポソーム、好ましくは融合性リポソームに結合させることができる。ナノ粒子は、追加的または代替的にホーミングペプチドの外側の鞘部分に接着させることができる。
【0116】
ナノ粒子は磁性ナノ粒子であってもよい。ナノ粒子はペプチドベースのナノ粒子であってもよい。ナノ粒子は、遺伝子治療に適したナノ材料の一部であってもよい。例えば、ナノ材料は低分子、ナノ粒子、ポリマーを含み得る。
【0117】
ナノ粒子は、本明細書に記載の直鎖状二本鎖DNA産物を含んでいてもよく、このDNA産物は機能性部分に接着または結合している。従って、ナノ粒子は、本明細書に記載の複合体分子を含み得る。複合体分子の機能性部分は、ナノ粒子の検出を容易にし得る。検出はインビボまたはインビトロで行うことができる。例えば、機能性部分は蛍光標識であってもよく、これはインビボで追跡されたり、インビトロで画像化されたりする。
【0118】
機能的部分はプローブまたはターゲティング配列であってもよい。ターゲティング配列は、DNAまたはRNAのフラグメントであってもよく、その長さは様々であり、DNA産物を細胞内の特定の場所に標的化するために用いられる。ターゲティング配列は、DNA産物の核内取り込みを促進することによって、非ウイルス性遺伝子導入のトランスフェクション効率を高めるために使用できる。
【0119】
機能性部分は結合分子であってもよい。機能性部分は、タンパク質またはペプチドであってもよい。機能性部分は抗体であっても酵素であってもよい。機能性部分は、捕捉分子(例えば、タンパク質-タンパク質相互作用によって結合した捕捉抗体)と結合することによって、ナノ粒子の検出を促進できる。機能性部分は、細胞標的、例えば細胞受容体に結合する。
【0120】
ナノ粒子の検出および/または定量を容易にするために、機能性部分は、蛍光体、放射性化合物、またはバーコードを含んでいてもよい。
【0121】
ナノ粒子中の直鎖状二本鎖DNA産物の存在、不存在および/またはレベルに対応するシグナルは、バーコードを用いて測定できる。バーコードは、バーコード部分に連結された少なくとも1つの結合部分を含んでいてもよく、ここで、バーコード部分は、少なくとも1つのヌクレオチドを含み(すなわち、ここで、バーコード部分は、少なくとも1ヌクレオチド長のヌクレオチド配列を含む)、かつ結合部分は、直鎖状二本鎖DNA産物の3’オーバーハング、5’オーバーハングまたは平滑末端に結合できる。結合部位は、直鎖状二本鎖DNA産物の3’末端および/または5’末端に結合できる。シグナルは、バーコード部分の存在、不存在および/またはレベルを決定することによって測定できる(例えば、配列決定またはPCRによって)。バーコード化部分は、少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個のヌクレオチドを含み得る。バーコードは、少なくとも2つの結合部分(例えば、第1の結合部分および第2の結合部分)を含んでいてもよい。例えば、第1のバーコード部分に連結された第1の結合部分は、直鎖状二本鎖DNA産物の3’末端に結合でき、第2のバーコード部分に連結された第2の結合部分は、直鎖状二本鎖DNA産物の5’末端に結合できる。3’末端および5’末端は、3’オーバーハング、5’オーバーハング、または平滑末端を含み得る。
【0122】
ナノ粒子中のDNA産物の存在、不存在および/またはレベルに対応するシグナルは、直鎖状二本鎖DNA産物の3’オーバーハング、5’オーバーハング、または平滑末端に接着または結合したフルオロフォア(すなわち、蛍光標識分子)を用いて測定できる。シグナルは、フローサイトメトリーおよび/または蛍光活性化セルソーティングによって測定できる。
【0123】
4.ライブラリー
本発明は、少なくとも2つの直鎖状二本鎖DNA産物、または本明細書に記載の少なくとも2つの複合体分子を含むライブラリーを提供する。従って、本発明は、少なくとも2本の直鎖状二本鎖DNA産物を含むライブラリーを提供し、その各々はセンス鎖およびアンチセンス鎖を含み、ここで、各直鎖状二本鎖DNA産物は、単一カセットおよび各鎖の内部位置にある1以上のホスホロチオエート化ヌクレオチドを含む。好ましくは、各鎖の内部位置にある1以上のホスホロチオエート化ヌクレオチドは、
(a)カセットの5’末端ヌクレオチド;
(b)カセットの3’末端ヌクレオチド;および
(c)カセットの外側の1以上のヌクレオチド
から選択され得る。
【0124】
本発明は、少なくとも2つの直鎖状二本鎖DNA産物を含むライブラリーを提供し、その各々はセンス鎖およびアンチセンス鎖を含み、ここで、各直鎖状二本鎖DNA産物は、単一カセットおよび各鎖の内部位置にある少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドを含み、各鎖の内部位置にある少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドは、
(a)カセットの5’末端ヌクレオチド;
(b)カセットの3’末端ヌクレオチド;および
(c)カセットの外側の1以上のヌクレオチド
から選択され、ここで、カセットはコーディング配列を含む。
【0125】
ライブラリーは、少なくとも2個、3個、4個、5個、10個、15個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、100個、10個、10個、10個、10個、10個、10個、10個、1010個、1011個、1012個、1013個、1014個、1015個、1016個、または1017個の直鎖状二本鎖DNA産物を含んでいてもよい。例えば、ライブラリーは、1mL当たり、少なくとも2個、3個、4個、5個、10個、15個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、100個、10個、10個、10個、10個、10個、10個、10個、1010個、1011個、1012個、1013個、1014個、1015個、1016個、または1017個の直鎖状二本鎖DNA産物を含んでいてもよい。好ましくは、ライブラリーは少なくとも1010個の直鎖状二本鎖DNA産物(または分子)を含む。例えば、ライブラリーは1mLあたり少なくとも1010個の直鎖状二本鎖DNA産物(または分子)を含む。ライブラリーは、10~1016の直鎖状二本鎖DNA産物、好ましくは1013~1016の直鎖状二本鎖DNA産物を含み得る。ライブラリーは、少なくとも2個、3個、4個、5個、10個、15個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、100個、10個、10個、10個、10個、10個、10個、10個、1010個、1011個、1012個、1013個、1014個、1015個、1016個、または1017個の複合体分子を含んでいてもよい。例えば、ライブラリーは、1mL当たり、少なくとも2個、3個、4個、5個、10個、15個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、100個、10個、10個、10個、10個、10個、10個、10個、1010個、1011個、1012個、1013個、1014個、1015個、1016個、または1017個の複合体分子を含んでいてもよい。好ましくは、ライブラリーは少なくとも1010個の複合体分子を含む。例えば、ライブラリーは1mLあたり少なくとも1010個の複合体分子を含む。ライブラリーは、10~1016個の複合体分子、好ましくは1013~1016個の複合体分子を含み得る。各直鎖状二本鎖DNA産物または複合体分子は、異なる目的の遺伝子または同じ目的の遺伝子(または、同じ目的の遺伝子の集合)をコードしていてもよい。
【0126】
直鎖状二本鎖DNA産物または複合体分子のライブラリーは、単分散であってもよい。直鎖状二本鎖DNA産物または複合体分子のライブラリーは分散性が低くてもよい。ライブラリーにおける用語“単分散”および用語“低分散性”とは、実質的に同じサイズ(すなわち、ポリヌクレオチド鎖の塩基数)を有する直鎖状二本鎖DNA産物または複合体分子を包含することを意図する。DNA産物または複合体分子の単分散ライブラリー(または分散性の低いライブラリー)は、例えば、ナノ粒子の形成に用いることができる。これは、出発物質(すなわち、直鎖状二本鎖DNA産物または複合体分子)の分散度が低いほど、生成されるナノ粒子の分散度も低くなる(均一性が高い)ためである。
【0127】
ライブラリーにおいて、各直鎖状二本鎖DNA産物は、ライブラリー中の他の直鎖状二本鎖DNA産物から、30%未満、20%未満または10%未満、好ましくは5%未満だけサイズ(すなわち、ポリヌクレオチド鎖中の塩基の数)が異なっていてもよい。ライブラリーにおいて、各直鎖状二本鎖DNA産物は、ライブラリー中の少なくとも1010個の他の直鎖状二本鎖DNA産物から、サイズ(すなわち、ポリヌクレオチド鎖中の塩基の数)が30%未満、20%未満または10%未満異なっていてもよい。好ましくは、ライブラリーにおいて、各直鎖状二本鎖DNA産物は、ライブラリー中の少なくとも1010個の他の直鎖状二本鎖DNA産物から、サイズ(すなわち、ポリヌクレオチド鎖中の塩基の数)が5%未満異なる。
【0128】
ライブラリーにおいて、各複合体分子のサイズ(すなわち、ポリヌクレオチド鎖の塩基数)は、ライブラリー中の他の複合体分子と30%未満、20%未満、または10%未満、好ましくは5%未満異なっていてもよい。ライブラリーにおいて、各複合体分子のサイズ(すなわち、ポリヌクレオチド鎖の塩基数)は、ライブラリー中の少なくとも1010個の他の複合体分子と30%未満、20%未満、または10%未満異なっていてもよい。好ましくは、ライブラリーにおいて、各複合体分子のサイズ(すなわち、ポリヌクレオチド鎖の塩基数)は、ライブラリー中の少なくとも1010個の他の複合体分子と5%未満異なる。
【0129】
ライブラリーにおいて、各直鎖状二本鎖DNA産物は、ライブラリー中の他の直鎖状二本鎖DNA産物から、1000ヌクレオチド未満、500ヌクレオチド未満、250ヌクレオチド未満、100ヌクレオチド未満、または50ヌクレオチド未満、好ましくは50ヌクレオチド未満だけ、サイズ(すなわち、ポリヌクレオチド鎖の塩基数)が異なっていてもよい。ライブラリーにおいて、各直鎖状二本鎖DNA産物は、ライブラリー中の少なくとも1010個の他の直鎖状二本鎖DNA産物から、500ヌクレオチド未満だけサイズ(すなわち、ポリヌクレオチド鎖中の塩基数)が異なっていてもよい。ライブラリーにおいて、各直鎖状二本鎖DNA産物は、ライブラリー中の少なくとも1010個の他の直鎖状二本鎖DNA産物から、250ヌクレオチド未満だけサイズ(すなわち、ポリヌクレオチド鎖中の塩基の数)が異なっていてもよい。ライブラリーにおいて、各直鎖状二本鎖DNA産物は、ライブラリー中の少なくとも1010個の他の直鎖状二本鎖DNA産物から、100ヌクレオチド未満だけサイズ(すなわち、ポリヌクレオチド鎖中の塩基数)が異なっていてもよい。好ましくは、ライブラリーにおいて、各直鎖状二本鎖DNA産物は、ライブラリー中の少なくとも1010個の他の直鎖状二本鎖DNA産物から、50ヌクレオチド未満だけサイズ(すなわち、ポリヌクレオチド鎖中の塩基の数)が異なる。
【0130】
ライブラリーにおいて、各複合体分子のサイズ(すなわち、ポリヌクレオチド鎖の塩基数)は、ライブラリー中の他の複合体分子と、1000ヌクレオチド未満、500ヌクレオチド未満、250ヌクレオチド未満、100ヌクレオチド未満または50ヌクレオチド未満、好ましくは50ヌクレオチド未満だけ異なっていてもよい。ライブラリーでは、各複合体分子のサイズ(すなわちポリヌクレオチド鎖の塩基数)は、ライブラリー中の少なくとも1010個の他の複合体分子と、500ヌクレオチド未満異なっていてもよい。ライブラリーにおいて、各複合体分子は、ライブラリー中の少なくとも1010個の他の複合体分子と、250ヌクレオチド未満だけサイズ(すなわち、ポリヌクレオチド鎖の塩基数)が異なっていてもよい。ライブラリーにおいて、各複合体分子は、ライブラリー中の少なくとも1010個の他の複合体分子と、100ヌクレオチド未満の差でサイズ(すなわち、ポリヌクレオチド鎖の塩基数)が異なっていてもよい。好ましくは、ライブラリーにおいて、各複合体分子は、ライブラリー中の少なくとも1010個の他の複合体分子と50ヌクレオチド未満だけサイズ(すなわち、ポリヌクレオチド鎖の塩基数)が異なる。
【0131】
ライブラリーに含まれる直鎖状二本鎖DNA産物または複合体分子のほとんどは、実質的に同じサイズ(すなわち、ポリヌクレオチド鎖の塩基数)を有する。すなわち、ライブラリーは、実質的に同じサイズ(すなわち、ポリヌクレオチド鎖の塩基数)の直鎖状二本鎖DNA産物を少なくとも80%、85%、90%、95%または100%含み得る。例えば、1010個の直鎖状二本鎖DNA産物のライブラリーにおいて、直鎖状二本鎖DNA産物の少なくとも90%(すなわち、少なくとも10個)は、実質的に同じサイズ(すなわち、ポリヌクレオチド鎖の塩基数)であってもよい。ライブラリーは、実質的に同じサイズ(すなわち、ポリヌクレオチド鎖の塩基数)の複合体分子を少なくとも80%、85%、90%、95%または100%含んでいてもよい。例えば、1010個の複合体分子のライブラリーでは、複合体分子の少なくとも90%(すなわち、少なくとも10個)が実質的に同じサイズ(すなわち、ポリヌクレオチド鎖の塩基数)である。
【0132】
ライブラリーにおいて、各直鎖状二本鎖DNA産物は、ライブラリー中の他の直鎖状二本鎖DNA産物の少なくとも80%、85%、90%、95%または100%が、30%未満、20%未満または10%未満、好ましくは5%未満だけ、サイズ(すなわち、ポリヌクレオチド鎖の塩基数)が異なっていてもよい。ライブラリーにおいて、各直鎖状二本鎖DNA産物は、ライブラリー中の他の直鎖状二本鎖DNA産物の少なくとも90%が、10%未満だけサイズ(すなわち、ポリヌクレオチド鎖の塩基数)が異なっていてもよい。好ましくは、ライブラリーにおいて、各直鎖状二本鎖DNA産物は、ライブラリー中の他の直鎖状二本鎖DNA産物の少なくとも90%が、サイズ(すなわち、ポリヌクレオチド鎖の塩基数)が5%未満異なる。
【0133】
ライブラリーにおいて、各複合体分子は、ライブラリー中の他の複合体分子の少なくとも80%、85%、90%、95%または100%が、30%未満、20%未満、または10%未満、好ましくは5%未満サイズ(すなわち、ポリヌクレオチド鎖の塩基数)が異なっていてもよい。ライブラリーにおいて、各複合体分子は、ライブラリー中の他の複合体分子の少なくとも90%が、10%未満だけサイズ(すなわち、ポリヌクレオチド鎖の塩基数)が異なっていてもよい。好ましくは、ライブラリーにおいて、各複合体分子は、ライブラリー中の他の複合体分子の少なくとも90%が、5%未満のみサイズ(すなわちポリヌクレオチド鎖の塩基数)が異なる。
【0134】
ライブラリーの直鎖状二本鎖DNA産物または複合体分子は、実質的に同一であってもよい。すなわち、ライブラリー中の各直鎖状二本鎖DNA産物または複合体分子は、実質的に同じであり、すなわち同じか、または実質的に同じポリヌクレオチド配列を含む。例えば、ライブラリーは、少なくとも80%、85%、90%、92%、94%、96%、97%、98%、99%または100%の配列類似性を有する直鎖状二本鎖DNA産物を含み得る。例えば、ライブラリーは、少なくとも80%、85%、90%、92%、94%、96%、97%、98%、99%または100%の配列類似性を有する複合体分子を含み得る。例えば、ライブラリーは、少なくとも80%、85%、90%、92%、94%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する直鎖状二本鎖DNA産物を含み得る。例えば、ライブラリーは、少なくとも80%、85%、90%、92%、94%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する複合体分子を含み得る。好ましくは、ライブラリーは少なくとも95%の配列類似性を有する直鎖状二本鎖DNA産物を含む。さらに好ましくは、ライブラリーは少なくとも95%の配列同一性を有する直鎖状二本鎖DNA産物を含む。好ましくは、ライブラリーは少なくとも95%の配列類似性を有する複合体分子を含む。さらに好ましくは、ライブラリーは少なくとも95%の配列同一性を有する複合体分子を含む。
【0135】
ライブラリー中の各直鎖状二本鎖DNA産物または複合体分子は実質的に同じ(すなわち、同じか、または実質的に同じポリヌクレオチド配列を含み得る)であってもよいが、ライブラリー中のいくつかの(または、全ての)直鎖状二本鎖DNA産物または複合体分子における保護ヌクレオチドの位置および/または分布(例えば、ホスホロチオエートヌクレオチド)は異なっていてもよい。
【0136】
直鎖状二本鎖DNA産物のライブラリーにおいて、直鎖状二本鎖DNA産物の少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%は、保護ヌクレオチド(例えば、ホスホロチオエート化ヌクレオチド)の分布が異なっていてもよい。好ましくは、ライブラリー中の直鎖状二本鎖DNA産物の少なくとも99%は、保護ヌクレオチド(例えば、ホスホロチオエート化ヌクレオチド)の分布が異なる。すなわち、ライブラリー中の直鎖状二本鎖DNA産物の少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%は、保護ヌクレオチド(例えば、ホスホロチオエート化ヌクレオチド)の分布が、ライブラリー中の他の直鎖状二本鎖DNA産物と同じでなくてもよい。好ましくは、ライブラリー中の直鎖状二本鎖DNA産物の少なくとも99%は、ライブラリー中の他のどの直鎖状二本鎖DNA産物とも同じ分布の保護ヌクレオチド(例えば、ホスホロチオエート化ヌクレオチド)を有さない。
【0137】
複合体分子のライブラリーにおいて、複合体分子の少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%は、保護ヌクレオチド(例えば、ホスホロチオエート化ヌクレオチド)の分布が異なっていてもよい。好ましくは、ライブラリー中の複合体分子の少なくとも99%は、保護ヌクレオチド(例えば、ホスホロチオエート化ヌクレオチド)の分布が異なる。すなわち、ライブラリー中の複合体分子の少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%は、ライブラリー中の他の複合体分子と同じ分布の保護ヌクレオチド(例えば、ホスホロチオエート化ヌクレオチド)を有していなくてもよい。好ましくは、ライブラリー中の少なくとも99%の複合体分子は、保護ヌクレオチド(例えば、ホスホロチオエート化ヌクレオチド)の分布が、ライブラリー中の他の複合体分子と同じではない。
【0138】
本明細書で用いる表現“保護ヌクレオチドの分布が異なる”とは、すべての保護ヌクレオチドの分布が同一でない直鎖状二本鎖DNA産物または複合体分子を包含することを意味する。例えば、2、3、7および8の位置で保護されたヌクレオチドを含む分子は、2、3、7および9の位置で保護されたヌクレオチドを含む分子とは保護ヌクレオチドの分布が異なる。
【0139】
ライブラリー中の各直鎖状二本鎖DNA産物は、少なくとも100塩基対、200塩基対、300塩基対、400塩基対、500塩基対、600塩基対、700塩基対、800塩基対、900塩基対、1000塩基対、2000塩基対、3000塩基対、4000塩基対、5000塩基対、6000塩基対、7000塩基対、8000塩基対、9000塩基対、10000塩基対、11000塩基対、12000塩基対、13000塩基対、14000塩基対または15000塩基対の長さであってもよい。好ましくは、ライブラリー中の各直鎖状二本鎖DNA産物は、少なくとも500塩基対、または少なくとも1000塩基対の長さである。
【0140】
ライブラリー中の各複合体分子の長さは、少なくとも100塩基対、200塩基対、300塩基対、400塩基対、500塩基対、600塩基対、700塩基対、800塩基対、900塩基対、1000塩基対、2000塩基対、3000塩基対、4000塩基対、5000塩基対、6000塩基対、7000塩基対、8000塩基対、9000塩基対、10000塩基対、11000塩基対、12000塩基対、13000塩基対、14000塩基対または15000塩基対の長さである。好ましくは、ライブラリー中の各複合体分子の長さは少なくとも500塩基対、または少なくとも1000塩基対の長さである。
【0141】
ライブラリー中の複合体分子の機能性部分は、同じでも異なっていてもよい。例えば、ライブラリーは、異なる機能性部分を有し、複合体分子の直鎖状二本鎖DNA産物部分の配列に関して少なくとも80%、85%、90%、92%、94%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性または類似性を有する複合体分子を含み得る。
【0142】
本発明のライブラリーは、疾患だけでなく、細胞プロセスにおける遺伝子機能のスクリーニングにも有用であり得る。このライブラリーは遺伝子配列決定に有用であり得る。
【0143】
本発明はまた、本明細書に記載の方法によって産生されたトランスフェクト細胞の集団を含むライブラリーも提供する。細胞は、直鎖状二本鎖DNA産物または本発明の複合体分子を含んでいてもよい。例えば、細胞は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含む直鎖状二本鎖DNA産物を含んでいてもよく、直鎖状二本鎖DNA産物は、単一カセットおよび各鎖の内部位置にある1以上のホスホロチオエートヌクレオチドを含む。
【0144】
細胞は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含む直鎖状二本鎖DNA産物を含んでいてもよく、ここで、直鎖状二本鎖DNA産物は、単一カセットおよび各鎖の内部位置にある少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドを含み、ここで、各鎖の内部位置にある少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドは、
(a)カセットの5’末端ヌクレオチド;
(b)カセットの3’末端ヌクレオチド;および
(c)カセットの外側の1以上のヌクレオチド
から選択され、ここで、カセットはコーディング配列を含む。
【0145】
5.組成物
本発明はさらに、本明細書に記載の直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子、ナノ粒子、またはライブラリーを含む組成物を提供する。組成物は医薬組成物であってもよい。組成物または医薬組成物は、薬学的に許容される希釈剤をさらに含んでもよい。
【0146】
本発明は、本明細書に記載の直鎖状二本鎖DNA産物を含む組成物を提供する。従って、本発明は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含む直鎖状二本鎖DNA産物を含む組成物を提供し、ここで、直鎖状二本鎖DNA産物は、単一カセットおよび各鎖の内部位置にある1以上のホスホロチオエート化ヌクレオチドを含む。好ましくは、各鎖の内部位置にある1以上のホスホロチオエート化ヌクレオチドは、
(a)カセットの5’末端ヌクレオチド;
(b)カセットの3’末端ヌクレオチド;および
(c)カセットの外側の1以上のヌクレオチド
から選択され得る。
【0147】
本発明はまた、センス鎖およびアンチセンス鎖を含む直鎖状二本鎖DNA産物を含む組成物を提供し、ここで、直鎖状二本鎖DNA産物は、単一カセットおよび各鎖の内部位置にある少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドを含み、ここで、各鎖の内部位置にある少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドは、
(a)カセットの5’末端ヌクレオチド;
(b)カセットの3’末端ヌクレオチド;および
(c)カセットの外側の1以上のヌクレオチド
から選択され、ここで、カセットはコーディング配列を含む。
【0148】
薬学的に許容される希釈剤は、生理食塩水、緩衝液(例えば、緩衝水溶液)または他の賦形剤であってもよい。
【0149】
例えば、組成物は、1以上の薬学的に許容される固形担体と組み合わせた錠剤、タブレット、またはカプセルとして、あるいは1以上の薬学的に許容される溶媒中の溶液として、あるいは1以上の薬学的に許容される溶媒または担体中の乳濁液、懸濁液または分散液として製剤化できる。製剤はまた、安定化剤、酸化防止剤、結合剤、着色剤、乳化剤または味覚調整剤(taste-modifying agent)、徐放製剤などの薬学的に許容される他の賦形剤を含んでいてもよい。
【0150】
組成物は、経口、局所、非経腸、経皮または吸入により投与できる。本組成物は、適切な滅菌溶液を用いて、注射または静脈内注入により投与できる。局所投与剤形は、クリーム、軟膏、パッチまたは経皮および局所投与剤形に適した同様のビークルであり得る。
【0151】
組成物は、液体ビークルに溶解または懸濁させるか、または顆粒(小さな粒子または粒)、ペレット(賦形剤の有無にかかわらず、顆粒の形成または圧縮成形により製造された高度に精製された組成物からなる小さな無菌固体塊)、またはペレットコーティング徐放剤(組成物自体が、様々な量のコーティングが施された顆粒の形態であり、従来の剤形として提示される組成物と比較して投与回数の減少を可能にするような方法で組成物を放出する固形剤形)として製剤され得る。
【0152】
他の形態としては、錠剤(経口投与を意図した、組成物を含有する小型で丸い固形剤形)、粉末(乾燥し、細かく分割された組成物と1種以上の薬学的に許容される添加物との緻密な(intimate)混合物であり、内用または外用を意図できる)、エリキシル(溶解した組成物を含む、透明で、風味のよい、甘味のあるヒドロアルコール液体であり、経口用である)、チューインガム(咀嚼すると組成物が口腔内に放出される、様々な形状の甘く風味のある不溶性プラスチック材料)、シロップ(組成物および高濃度のスクロースまたは他の糖類を含む経口溶液。この用語は、経口懸濁液を含む、甘く粘性のあるビークルで調製された他のあらゆる液体剤形を含むものとして使用されてきた)、錠剤(適切な希釈剤を含む、または含まない組成物を含む固形剤形)、錠剤チュアブル(適切な希釈剤を含むかまたは含まない、組成物を含む固形剤形であって、咀嚼することを意図し、口腔内に快い味の残留物を生じ、容易に嚥下され、苦味または不快な後味を残さない、固形剤形)、錠剤コーティングまたは錠剤遅延放出、錠剤分散性、錠剤発泡性、錠剤徐放性、錠剤フィルムコーティング、または錠剤フィルムコーティング徐放剤などが挙げられ、錠剤は、摂取後の長期間にわたって含有組成物を利用できるように製剤される。
【0153】
他の形態では、溶液用錠剤、懸濁用錠剤、錠剤多層、錠剤多層徐放が提供され得て、ここで、錠剤は、従来の剤形として提示される組成物と比較して、少なくとも投与回数の減少を可能にするような方法で製剤される。錠剤口腔内崩壊型、錠剤口腔内崩壊型遅延放出型、錠剤可溶型、錠剤糖衣型、浸透圧型なども好適である。
【0154】
経口剤形組成物は、組成物に加えて、希釈剤、可溶化剤、アルコール類、結合剤、放出制御ポリマー、腸溶性ポリマー、崩壊剤、賦形剤、着色剤、香味剤、甘味剤、酸化防止剤、保存剤、顔料、添加剤、充填剤、懸濁化剤、界面活性剤(例えば、陰イオン性、陽イオン性、両性および非イオン性)などの1以上の不活性医薬成分を含んでいてもよい。FDAが承認したさまざまな局所用不活性成分は、FDAの“The Inactive Ingredients Database”で見出すことができる。
【0155】
本明細書で用いる、注射剤および注入剤の剤形としては、リポソーム(通常、組成物をカプセル化するために用いられるリン脂質から構成される脂質二重層小胞)からなるか、またはリポソームを形成するリポソーム注射剤;非経腸使用を意図した無菌製剤を含む注射剤;非経腸投与を意図した無菌のパイロジェンフリーの製剤からなる乳剤を含む乳化注射剤;あるいは、脂質複合体注射剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0156】
例えば、本明細書に記載の直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子、ナノ粒子、またはライブラリーは、鼓膜内注射(例えば、中耳への注射)および/または外耳、中耳および/または内耳への注射によって投与できる。このような方法は、例えばヒトの耳にステロイドおよび抗生物質を投与する場合など、当技術分野で常套的に用いられている。例えば、耳の正円窓から、あるいは蝸牛嚢(cochiear capsule)から注入できる。
【0157】
他の形態としては、非経腸使用のための溶液を形成するための再構成を意図した無菌製剤である溶液注射用粉末;非経腸使用のための懸濁液を形成するための再構成を意図した無菌製剤である懸濁注射用粉末;リポソーム懸濁注射用凍結乾燥粉末であって、非経腸使用のための再構成を意図した無菌凍結乾燥製剤であり、再構成時にリポソーム(通常、リン脂質から構成され、脂質二重層内または水性空間内に組成物を封入するために用いられる脂質二重層小胞)が形成されるように製剤されたもの;または、溶液注射用に凍結乾燥された粉末(ここで、凍結乾燥(lyophilization (“freeze drying”))とは、凍結状態の製品から極めて低い圧力で水分を除去するプロセスである)が挙げられる。
【0158】
懸濁注射液は、粒子が溶解しない液相全体に分散した固体粒子からなる注射に適した液体製剤を含み、水相全体に分散した油相、またはその逆も可能である。懸濁リポソーム注射液は、注射に適した液体製剤であり、リポソーム(通常、リン脂質からなる脂質二重層小胞で、脂質二重層内または水性空間内に組成物を封入するために用いられる)が形成されるように水相全体に分散された油相からなる。超音波処理した懸濁注射剤(suspension sonicated injection)は、注射に適した液体製剤を含み、粒子が溶解しない液相全体に分散した固形粒子からなる。さらに、懸濁液にガスをバブリングしながら製品を超音波処理することで、固形粒子が微小球を形成する。
【0159】
別の投与方法では、組成物は、カテーテルまたはポンプを介して、インサイチュウで投与できる。カテーテルまたはポンプは、例えば、組成物を標的部位に導くことができる。
【0160】
非経腸担体システムは、溶媒および共溶媒、可溶化剤、湿潤剤、懸濁化剤、増粘剤、乳化剤、キレート剤、緩衝剤、pH調整剤、抗酸化剤、還元剤、抗菌保存剤、増量剤、保護剤、強壮調整剤、および特殊添加剤のような、1以上の薬学的に適切な賦形剤を含む。非経腸投与に適した製剤は、好ましくはレシピエントの血液と等張である組成物の無菌油性または水性製剤を含むのが便利であるが、これは必須ではない。
【0161】
本明細書で用いる、吸入剤形としては、エアロゾル(加圧下でパッケージされ、皮膚への局所適用ならびに鼻(鼻エアロゾル)、口(舌および舌下エアロゾル)または肺(吸入エアロゾル)への局所適用を意図した適切なバルブシステムの作動時に放出される組成物を含む製品)が挙げられるが、これらに限定されない。泡沫エアロゾルは、組成物、界面活性剤、水性または非水性液体、および推進剤(propellant)を含む剤形であり、これにより、推進剤が内相(不連続相)(すなわち、水中油型のもの)にある場合は、安定な泡が吐出され、推進剤が外相(連続相)(すなわち、油中水型のもの)にある場合は、噴霧または速破泡が吐出される。定量型エアロゾルは、作動のたびに均一な量の噴霧を可能にする定量バルブからなる加圧式剤形である。粉末型エアゾールは、加圧下でパッケージされ、適切なバルブシステムの作動により放出される粉末の形態で、組成物を含む製品である。エアゾールスプレーは、製品を湿潤スプレーとして排出するのに必要な力を提供するために、推進剤として圧縮ガスを利用するエアゾール製品であり、水性溶媒中の組成物の溶液に適用可能である。
【0162】
本明細書で用いる、経皮剤形としては、パッチ(通常、身体の外部部位に適用される粘着性バッキングを含むことが多い薬物送達システムであり、それによって成分(組成物を含む)がパッチの一部から受動的に拡散するか、または能動的に輸送され、それによってパッチによって成分(組成物を含む)が身体の外表面に送達されるか、または体内に送達される)が挙げられるが、これらに限定されない。マトリックス、リザーバーなど、さまざまなタイプの経皮パッチが当技術分野で知られている。
【0163】
本明細書で用いる、局所剤形としては、ローション(エマルジョン、液体剤形であって、この剤形は一般に皮膚への外用剤形であるもの)、ローション増強剤(組成物の送達を増強するローション剤形であって、増強は剤形中の組成物の強度を意味しないローション剤形)、ゲル(溶液またはコロイド分散液に剛性を与えるためのゲル化組成物を含む半固形剤形であって、ゲルが懸濁粒子を含み得る半固形剤形)および軟膏(ビークルとして通常20%未満の水および揮発性物質、および50%以上の炭化水素、ワックス、またはポリオールを含有する半固形剤形であって、この剤形は一般に皮膚または粘膜への外部適用用である、半固形剤形)などの、当技術分野で公知の種々の剤形が挙げられる。さらなる態様には、軟膏増強剤(組成物の送達を増強する軟膏剤形であって、増強は剤形中の組成物の強度を意味しない、軟膏剤形)、クリーム(通常20%以上の水および揮発性物質および/または50%未満の炭化水素、ワックスまたはポリオールを含むエマルジョン、半固形剤形もビークルとして使用でき、それによってこの剤形は一般に皮膚または粘膜に外用される)およびクリーム増強剤(組成物の送達を増強するクリーム剤形であって、増強は剤形中の組成物の強度を意味しない、クリーム剤形)が含まれる。本明細書において、“エマルジョン”とは、少なくとも2つの非混和性液体からなる二相系からなる剤形を意味し、その一方は、液滴、内相または分散相として、他方の液体、外相または連続相内に分散しており、一般に1以上の乳化剤で安定化されている。さらなる態様には、懸濁液(液体ビークル中に分散した固体粒子を含む液体剤形)、懸濁液徐放、ペースト(脂肪性ビークル中に微細に分散した固形分を20~50%と多く含む半固形剤形であり、この剤形は一般に皮膚または粘膜に外用される)、溶液(溶媒または互いに混和可能な溶媒の混合物に溶解した1以上の化学物質を含む、透明かつ均質な液体剤形)、および粉末が含まれる。
【0164】
局所剤形組成物は、組成物および、賦形剤、着色剤、顔料、添加剤、充填剤、エモリエント剤、界面活性剤(例えば、アニオン性、カチオン性、両性および非イオン性)、浸透促進剤(アルコール類、脂肪アルコール類、脂肪酸、脂肪酸エステル、ポリオールなど)等の1以上の不活性医薬成分を含有する。FDAが承認したさまざまな局所用不活性成分は、FDAの“The Inactive Ingredients Database”で見出すことができる。
【0165】
6.細胞トランスフェクション
本発明は、本発明の直鎖状二本鎖DNA産物または複合体分子を含む細胞トランスフェクション組成物を提供する。
【0166】
本発明は、本明細書に記載の直鎖状二本鎖DNA産物を含む細胞トランスフェクション組成物を提供する。従って、本発明は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含む直鎖状二本鎖DNA産物を含む細胞トランスフェクション組成物を提供し、ここで、直鎖状二本鎖DNA産物は、単一カセットおよび各鎖の内部位置にある1以上のホスホロチオエートヌクレオチドを含む。好ましくは、各鎖の内部位置にある1以上のホスホロチオエート化ヌクレオチドは、
(a)カセットの5’末端ヌクレオチド;
(b)カセットの3’末端ヌクレオチド;および
(c)カセットの外側の1以上のヌクレオチド
から選択され得る。
【0167】
本発明はまた、センス鎖およびアンチセンス鎖を含む直鎖状二本鎖DNA産物を含む細胞トランスフェクション組成物を提供し、ここで、直鎖状二本鎖DNA産物は、単一カセットおよび各鎖の内部位置にある少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドを含み、ここで、各鎖の内部位置にある少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドは、
(a)カセットの5’末端ヌクレオチド;
(b)カセットの3’末端ヌクレオチド;および
(c)カセットの外側の1以上のヌクレオチド
から選択され、ここで、カセットはコーディング配列を含む。
【0168】
細胞トランスフェクション組成物は、担体、例えば薬剤または製剤を含んでも含まなくてもよい。好ましくは、担体は、直鎖状二本鎖DNA産物または複合体分子の標的部位への蓄積を促進し、および/または直鎖状二本鎖DNA産物または複合体分子を生物学的環境成分との望ましくない相互作用から保護し、および/または直鎖状二本鎖DNA産物または複合体分子を代謝および/または分解から保護する。
【0169】
本発明はさらに、トランスフェクションされる細胞を、本発明の直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子、ナノ粒子、またはライブラリーと接触させること(インビトロで)を含む、細胞トランスフェクション方法を提供し、ここで、直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子、ナノ粒子またはライブラリーは、細胞の細胞質にトランスフェクションされる。
【0170】
細胞は、直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子、ナノ粒子またはライブラリーと、薬剤または製剤などの担体の存在下または不存在下で接触させることができる。好ましくは、担体は、標的部位における直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子、ナノ粒子またはライブラリーの蓄積を促進し、および/または直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子、ナノ粒子またはライブラリーを生物学的環境成分との望ましくない相互作用から保護し、および/または直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子、ナノ粒子またはライブラリーを代謝および/または分解から保護する。
【0171】
トランスフェクションされる細胞は、細胞培養培地(例えば、ペトリ皿、培養容器またはウェルなど)中で提供できる。直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子、ナノ粒子またはライブラリー分子は、細胞培養培地に直接添加されてもよいし、直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子、ナノ粒子またはライブラリーを含む生理食塩水、緩衝液、細胞培養培地などの溶液に細胞を添加してもよい。
【0172】
担体はウイルス性担体でも非ウイルス性担体でもよい。ウイルス担体には、直鎖状二本鎖DNA産物または複合体分子を送達するためのレンチウイルスベクターまたはアデノウイルスベクターが含まれる。非ウイルス性担体(またはベクター)には、直鎖状二本鎖DNA産物または複合体分子を、カチオン性細胞浸透ペプチド(CPP);カチオン性ポリマーまたはデンドリマー、例えばポリエチレンイミン(PEI)およびポリ-D,L-ラクチド-コ-グリコリド(PLGA);および/または、カチオン性脂質(例えば、リポフェクトアミン)などのカチオン性薬剤と複合化することが含まれる。
【0173】
担体は、直鎖状二本鎖DNA産物または複合体分子に結合する低分子(例えば、コレステロール、胆汁酸、および/または脂質)、ポリマー、タンパク質(例えば、抗体)、および/またはアプタマー(例えば、RNA)であってもよい。担体は、直鎖状二本鎖DNA産物または複合体分子をカプセル化するために用いられるナノ粒子製剤であってもよい。
【0174】
担体は、直鎖状二本鎖DNA産物を標的化リガンド(例えば、抗体)、ペプチド、低分子(例えば、葉酸および/またはビオチン)、または細胞外マトリックスに存在するポリマー(例えば、ヒアルロン酸および/またはコンドロイチン硫酸)で修飾したもの、または二本鎖核酸分子を(例えば、コレステロールおよび/またはα-トコフェロールを用いて)疎水性修飾したものであってもよい。
【0175】
細胞トランスフェクション組成物は、光増感剤および/またはラジカル開始剤、例えば光重合開始剤から選択される薬剤を含んでも含まなくてもよい。好ましくは、この薬剤は、標的部位における直鎖状二本鎖DNA産物または複合体分子の機能を改善し、および/または直鎖状二本鎖DNA産物または複合体分子を代謝および/または分解から保護する。
【0176】
本発明はさらに、本発明の方法によって得られる細胞を提供する。従って、細胞は、本発明の直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子、ナノ粒子またはライブラリーを含み得る。
【0177】
本発明はさらに、本発明の直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子、ナノ粒子またはライブラリーでトランスフェクトされた細胞を提供する。
【0178】
細胞は、哺乳動物細胞(例えば、ヒト細胞)、真菌細胞、微生物細胞(例えば、原核細胞または真核細胞)、植物細胞などの動物細胞であってもよい。好ましくは、細胞はヒト細胞である。
【0179】
細胞を直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子、ナノ粒子、またはライブラリーと接触させる工程は、インビボで行ってもよい。例えば、直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子、ナノ粒子、またはライブラリーは、それを必要とする生物(例えば、対象)に投与できる。生物(例えば、対象)は、哺乳動物(例えば、ヒト)などの動物、真菌、微生物または植物であってもよい。
【0180】
本明細書に記載の直鎖状二本鎖DNA産物または複合体分子の何れかまたは全てを、リポソーム、ナノ粒子、エクソソーム、マクロベシクル、ウイルス性または非ウイルス性ベクターなどの送達粒子を介して細胞に送達できる。本明細書に記載の直鎖状二本鎖DNA産物または複合体分子の何れかまたは全てを、遺伝子銃を用いて細胞に送達できる。本明細書に記載の直鎖状二本鎖DNA産物または複合体分子は、担体なしで細胞に送達できる。
【0181】
7.用途および適用
本発明の直鎖状二本鎖DNA産物は、当技術分野で知られている増幅産物と比較して多くの利点を有する。例えば、目的の遺伝子の転写に通常用いられるプラスミドDNAとは異なり、直鎖状二本鎖DNA産物には細菌骨格、抗生物質耐性遺伝子、細菌汚染物質が含まれていない。さらに、直鎖状二本鎖DNA産物は無細胞系で大量に生産でき、製造工程を大幅に迅速化できる。重要なことは、直鎖状二本鎖DNA産物は、コーディング配列を含み得る単一カセットを含んでいてもよい。これは、生成された生成物が低い分散性(または、実質的に単分散)で、すなわち実質的に同じ長さおよび大きさであることを意味し、ナノ粒子、ウイルスまたは非ウイルス送達システム、ワクチンの製造において顕著に有益である。直鎖状二本鎖DNA産物はまた、エキソヌクレアーゼ消化に対する耐性が向上し、産物の半減期が長くなり得る(および、インビボでの発現が長くなり得る)。上記の理由から、本明細書に記載の直鎖状二本鎖DNA産物は多くの用途に適しており、そのいくつかは本明細書で説明する。
【0182】
本明細書に記載の保護ヌクレオチドを含む生成物の使用は、インビボでの使用またはインビトロでの使用であり得る。
【0183】
RNAおよびタンパク質の産生
本発明は、RNA(例えば、mRNA)の生産における、直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子、ナノ粒子、またはライブラリーの使用を提供する。
【0184】
本発明は、
(a)本明細書に記載の直鎖状二本鎖DNA産物をポリメラーゼと接触させる工程;および、
(b)転写産物を産生する工程
を含む、インビトロ転写のための方法を提供する。
【0185】
本発明は、インビトロ転写のための方法であって、(a)本明細書に記載の複合体分子をポリメラーゼと接触させる工程;および、(b)転写産物を産生する工程、を含む方法を提供する。本発明は、インビトロ転写のための方法であって、(a)本明細書に記載のナノ粒子をポリメラーゼと接触させる工程;および、(b)転写産物を産生する工程、を含む方法を提供する。本発明はまた、インビトロ転写のための方法であって、(a)本明細書に記載のライブラリーをポリメラーゼと接触させる工程;および、(b)転写産物を産生する工程、を含む方法を提供する。
【0186】
本発明はまた、(a)本明細書に記載の直鎖状二本鎖DNA産物を細胞内でポリメラーゼと接触させる工程;および、(b)細胞内で転写産物を産生する工程、を含む、インビボ転写のための方法を提供する。
【0187】
細胞は動物細胞であってもよく、好ましくはヒト細胞などの哺乳動物細胞である。
【0188】
直鎖状二本鎖DNA産物は、単一カセットを含み得る。カセットは、コーディング配列を含んでいてもよい。カセットはプロモーターおよびコーディング配列を含み得る。コーディング配列は、所望のタンパク質をコードしていてもよい。従って、転写産物は所望のタンパク質のmRNA配列を含み得る。
【0189】
転写は、ポリメラーゼの使用を含み得る。好ましくは、RNAポリメラーゼである。RNAポリメラーゼはT7 RNAポリメラーゼ、T3 RNAポリメラーゼまたはSP6 RNAポリメラーゼであり得る。
【0190】
転写は、ホスホロチオエート化ヌクレオチドのような保護ヌクレオチドを組み込む工程を含み得る。
【0191】
インビトロ転写は、無細胞発現系で行うことができる。無細胞発現系は、原核細胞由来でも真核細胞由来でもよい。例えば、無細胞発現系はウサギ網状赤血球、小麦胚芽または大腸菌に由来していてもよい。
【0192】
この転写産物は、ウイルスRNA合成およびトランスフェクションに使用できる。例えば、転写産物は複製を開始するために使用され得る。転写産物はインビトロおよび/またはインビボのmRNA合成に使用できる。この転写産物はRNA構造研究に利用できる。この転写産物は、例えば、指数関数的濃縮によるリガンドの系統的進化(SELEX)のためのRNAアプタマー合成に使用できる。転写産物は、例えばRNAi技術のためのdsRNAまたはshRNA合成に使用できる。転写産物は、例えばRNPを介した遺伝子編集のためのCRISPR gRNA合成に使用できる。この転写産物は、リボプローブ合成、例えばノーザンブロッティングやインサイチュウハイブリダイゼーションに使用できる。転写産物はRNA増幅に使用できる。転写産物はmiRNA合成に使用され得る。転写産物はアンチセンスRNA合成に使用され得る。
【0193】
本発明は、タンパク質発現のための方法を提供し、この方法は、所望のRNAまたはタンパク質を生成するために、本明細書に記載の直鎖状二本鎖DNA産物を原核細胞または真核細胞または無細胞タンパク質発現系に導入することを含む。
【0194】
本発明はまた、
(a)センス鎖およびアンチセンス鎖を含む直鎖状二本鎖DNA産物を提供する工程であって、ここで、該直鎖状二本鎖DNA産物は、各鎖の内部位置に1以上のホスホロチオエート化ヌクレオチドを含む、工程;および
(b)直鎖状二本鎖DNA産物からタンパク質を無細胞発現系で発現させる工程
を含む、所望のタンパク質をインビトロで産生する方法を提供する。
【0195】
無細胞発現系は、原核細胞由来でも真核細胞由来でもよい。例えば、無細胞発現系はウサギ網状赤血球、小麦胚芽または大腸菌に由来する。
【0196】
本発明はまた、
(a)センス鎖およびアンチセンス鎖を含む直鎖状二本鎖DNA産物を提供する工程であって、ここで、該直鎖状二本鎖DNA産物は、各鎖の内部位置に1以上のホスホロチオエート化ヌクレオチドを含む、工程;および
(b)細胞内で直鎖状二本鎖DNA産物からタンパク質を発現させる工程
を含む、所望のタンパク質をインビボで産生する方法を提供する。
【0197】
細胞は動物細胞であってもよく、好ましくはヒト細胞などの哺乳動物細胞である。
【0198】
目的のタンパク質は単一カセットによってコードされている可能性がある。本発明はまた、
(a)センス鎖およびアンチセンス鎖を含む直鎖状二本鎖DNA産物を提供する工程であって、ここで、該直鎖状二本鎖DNA産物は、単一カセットおよび各鎖の内部位置に1以上のホスホロチオエート化ヌクレオチドを含む、工程;および
(b)カセットからタンパク質を無細胞発現系で発現させる工程
を含む、所望のタンパク質をインビトロで産生する方法を提供する。
【0199】
本発明はまた、
(a)センス鎖およびアンチセンス鎖を含む直鎖状二本鎖DNA産物を提供する工程であって、ここで、該直鎖状二本鎖DNA産物は、単一カセットおよび各鎖の内部位置に1以上のホスホロチオエート化ヌクレオチドを含む、工程;および
(b)細胞内でカセットからタンパク質を発現させる工程
を含む、所望のタンパク質をインビボで産生する方法を提供する。
【0200】
直鎖状二本鎖DNA産物は、各鎖の内部位置に少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個のホスホロチオエート化ヌクレオチドを含んでいてもよい。好ましくは、直鎖状二本鎖DNA産物は、各鎖の内部位置に少なくとも2個のホスホロチオエート化ヌクレオチドを含む。
【0201】
本発明はまた、
(a)センス鎖およびアンチセンス鎖を含む直鎖状二本鎖DNA産物を提供する工程であって、該直鎖状二本鎖DNA産物が、単一カセットおよび各鎖の内部位置にある少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドを含み、各鎖の内部位置にある少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドが、
(i)カセットの5’末端ヌクレオチド;
(ii)カセットの3’末端ヌクレオチド;および
(iii)カセットの外側の1以上のヌクレオチド
から選択され、ここで、該カセットは、コーディング配列を含む、工程;および
(b)カセットからタンパク質を無細胞発現系で発現させる工程
を含む、所望のタンパク質をインビトロで産生する方法を提供する。
【0202】
本発明はまた、
(a)センス鎖およびアンチセンス鎖を含む直鎖状二本鎖DNA産物を提供する工程であって、該直鎖状二本鎖DNA産物が、単一カセットおよび各鎖の内部位置にある少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドを含み、各鎖の内部位置にある少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドが、
(i)カセットの5’末端ヌクレオチド;
(ii)カセットの3’末端ヌクレオチド;および
(iii)カセットの外側の1以上のヌクレオチド
から選択され、ここで、該カセットはコーディング配列を含む、工程;および
(b)細胞内でカセットからタンパク質を発現させる工程
を含む、インビボで所望のタンパク質を生産する方法を提供する。
【0203】
本発明は、直鎖状二本鎖DNA産物のインビボ転写および翻訳方法を提供する。本発明はまた、直鎖状二本鎖DNA産物のインビトロ転写および翻訳の方法もまた提供する。直鎖状二本鎖DNA産物は、エキソヌクレアーゼ(例えば、エキソヌクレアーゼIII)消化に対する耐性が改善または増強されていてもよい。直鎖状二本鎖DNA産物は、エキソヌクレアーゼ(例えば、エキソヌクレアーゼIII)消化に対して耐性であってもよい。従って、エキソヌクレアーゼ消化に対する耐性が増強されたDNA産物を用いる、本明細書に記載の発現(すなわち、転写および/または翻訳)方法は、細胞内(または無細胞系)での目的遺伝子の長期発現を可能にする。
【0204】
ナノ粒子またはナノ粒子ライブラリーの製造
本発明は、ナノ粒子またはナノ粒子のライブラリーの製造における、直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子またはライブラリーの使用を提供する。
【0205】
ウイルスベクター
AVVベクターなどのウイルスベクターを製造する方法は、当技術分野で知られている。最も広く用いられている方法は、HEK293に3つの細菌プラスミドを共導入することである。第1のプラスミドは、RepおよびCapエレメントをコードし、第2のプラスミドはヘルパープラスミドであり、一方、第3のプラスミドは逆末端反復(ITR)を有する目的の遺伝子ペイロードをコードする。ウイルス調製(例えば、AVV)にプラスミドを用いるとき、いくつかの問題がある:すなわち、1)プラスミドの生産には時間を要し、コストがかかる;2)大腸菌におけるITR配列の増殖には困難が伴う;3)プラスミド骨格をウイルス・キャプシド(例えば、AVVキャプシド)に組み込むことは困難である(例えば、抗生物質耐性マーカーの問題がある)。これらがウイルスベクター生産(例えば、AVV生産など)の主なボトルネックとなっている。従って、本発明は、ウイルスベクターの製造に用いるのに適した直鎖状二本鎖DNA産物を提供する。本発明の直鎖状二本鎖DNA産物は、プラスミドベクターの上記の問題を克服する。
【0206】
本発明は、本明細書に記載の直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子またはライブラリーの、ウイルスベクターの製造における使用を提供する。
【0207】
本発明は、ウイルスベクターの産生における、本明細書に記載の直鎖状二本鎖DNA産物の使用を提供する。従って、本発明は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含む直鎖状二本鎖DNA産物の使用を提供し、ここで、直鎖状二本鎖DNA産物は、ウイルスベクターの製造において、単一カセットおよび各鎖の内部位置にある1以上のホスホロチオエート化ヌクレオチドを含む。好ましくは、各鎖の内部位置にある1以上のホスホロチオエート化ヌクレオチドは、
(a)カセットの5’末端ヌクレオチド;
(b)カセットの3’末端ヌクレオチド;および
(c)カセットの外側の1以上のヌクレオチド
から選択され得る。
【0208】
本発明はまた、センス鎖およびアンチセンス鎖を含む直鎖状二本鎖DNA産物の使用を提供し、ここで、直鎖状二本鎖DNA産物は、単一カセットおよび各鎖の内部位置にある少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドを含み、ここで、各鎖の内部位置にある少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドは、
(a)カセットの5’末端ヌクレオチド;
(b)カセットの3’末端ヌクレオチド;および
(c)カセットの外側の1以上のヌクレオチド
から選択され、ここで、カセットは、ウイルスベクターの製造において、コーディング配列を含む。
【0209】
本発明は、ウイルスベクターを産生する方法を提供し、この方法は、ウイルスベクターが産生されるような条件下で、本明細書に記載の直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子またはライブラリーを細胞に導入することを含む。直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子またはライブラリーは、ウイルスベクターの産生に必要な少なくとも1つのエレメントをコードしていてもよい。例えば、直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子、ライブラリーは、Repおよび/またはCapエレメントをコードしていてもよい。直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子またはライブラリーは、ヘルパープラスミドエレメントをコードしていてもよい。直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子またはライブラリーは、Rep、Capおよびヘルパープラスミドエレメントをコードできる。この方法は、インビボ法でもインビトロ法でもよい。細胞は動物細胞、好ましくは哺乳動物細胞、例えばヒト細胞(例えば、HEK293T、HEK293、CAP、CAP-T、CHO)であってもよい。細胞は、組織培養細胞株でインビトロで培養した細胞であってもよい。
【0210】
好ましくは、ベクターはAVVベクターまたはレンチウイルスベクターである。
【0211】
本発明はまた、本明細書に記載の方法によって産生されたウイルスベクターを細胞に接触させることを含む、ウイルスベクターを細胞に送達する方法を提供する。細胞は動物細胞であってもよく、好ましくはヒト細胞などの哺乳動物細胞である。
【0212】
本発明はまた、本明細書に記載の方法によって得られる細胞を提供する。
【0213】
非ウイルス性ベクター
非ウイルス性ベクターの製造方法は当技術分野で知られている。ウイルスベクターよりも非ウイルスベクターの方が、非免疫原性による反復投与の機会、無制限のパッケージング能、および関連毒性の低さなど、いくつかの利点がある。非ウイルス性ベクターを製造するほとんどの方法はプラスミドDNAを用いる。従って、本発明は、非ウイルス性ベクターの産生に用いるのに適した直鎖状二本鎖DNA産物を提供する。本発明の直鎖状二本鎖DNA産物は、非ウイルスベクター調製においてプラスミドベクターを使用する際の問題点を克服する。例えば、本発明の直鎖二本鎖DNAは、プラスミドDNAとは異なり、細菌骨格を構成しないので、DNA1mg当たりにより多くの導入遺伝子コピーを可能にする。さらに、本発明は抗生物質耐性遺伝子や細菌汚染物質を含まない。さらに、本発明の直鎖状二本鎖DNA産物は、(エキソヌクレアーゼ耐性ヌクレオチドの存在により)導入遺伝子の発現を延長し、かつ非ウイルスベクター産生のより費用効果の高いプロセスを提供する。
【0214】
本発明は、非ウイルス性ベクターの製造における、本明細書に記載の直鎖状二本鎖DNA産物の使用を提供する。本発明は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含む直鎖状二本鎖DNA産物の使用を提供し、ここで、直鎖状二本鎖DNA産物は、非ウイルスベクターの製造において、単一カセットおよび各鎖の内部位置にある1以上のホスホロチオエート化ヌクレオチドを含む。好ましくは、各鎖の内部位置にある1以上のホスホロチオエート化ヌクレオチドは、
(a)カセットの5’末端ヌクレオチド;
(b)カセットの3’末端ヌクレオチド;および
(c)カセットの外側の1以上のヌクレオチド
から選択され得る。
【0215】
本発明はまた、センス鎖およびアンチセンス鎖を含む直鎖状二本鎖DNA産物の使用を提供し、ここで、直鎖状二本鎖DNA産物は、単一カセットおよび各鎖の内部位置にある少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドを含み、ここで、各鎖の内部位置にある少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドは、
(a)カセットの5’末端ヌクレオチド;
(b)カセットの3’末端ヌクレオチド;および
(c)カセットの外側の1以上のヌクレオチド
から選択され、ここで、非ウイルス性ベクターの製造において、前記カセットはコーディング配列を含む。
【0216】
本発明はまた、非ウイルス性ベクターの産生における、本明細書に記載の複合体分子の使用もまた提供する。
【0217】
本発明は、非ウイルス性ベクターを細胞に送達する方法であって、直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子、ライブラリーまたは組成物を含む非ウイルス性ベクターを細胞に接触させることを含む方法を提供する。細胞は動物細胞であってもよく、好ましくはヒト細胞などの哺乳動物細胞であり得る。
【0218】
本発明はまた、本明細書に記載の方法によって得られる細胞を提供する。
【0219】
一般的な治療用途および診断用途
直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子、ナノ粒子、組成物またはライブラリーは、治療における使用に特に適している。これらの分子は、治療用タンパク質の配列、ワクチンの一部、あるいは対象の疾患または感染症の処置に用いられる遺伝子工学的メカニズムの要素をコードしていていてもよい。
【0220】
本発明は、治療における直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子、ナノ粒子、組成物またはライブラリーの使用を提供する。
【0221】
本発明は、治療における本明細書に記載の直鎖状二本鎖DNA産物の使用を提供する。従って、本発明は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含む直鎖状二本鎖DNA産物の使用を提供し、ここで、直鎖状二本鎖DNA産物は、治療において、単一カセットおよび各鎖の内部位置にある1以上のホスホロチオエート化ヌクレオチドを含む。好ましくは、各鎖の内部位置にある1以上のホスホロチオエート化ヌクレオチドは、
(a)カセットの5’末端ヌクレオチド;
(b)カセットの3’末端ヌクレオチド;および
(c)カセットの外側の1以上のヌクレオチド
から選択され得る。
【0222】
本発明は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含む直鎖状二本鎖DNA産物を提供し、ここで、直鎖状二本鎖DNA産物は、単一カセットおよび各鎖の内部位置にある少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドを含み、ここで、各鎖の内部位置にある少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドは、
(a)カセットの5’末端ヌクレオチド;
(b)カセットの3’末端ヌクレオチド;および
(c)カセットの外側の1以上のヌクレオチド
から選択され、ここで、カセットは治療に使用するためのコーディング配列を含む。
【0223】
本発明はさらに、医薬品として使用するための直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子、ナノ粒子、組成物またはライブラリーを提供する。本発明はまた、疾患を治療するための医薬の製造における、直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子、ナノ粒子、組成物またはライブラリーの使用も提供する。
【0224】
本発明はさらに、疾患の治療に使用するための直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子、ナノ粒子、組成物またはライブラリーを提供する。
【0225】
本発明はまた、本発明の直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子、ナノ粒子、組成物またはライブラリーを対象に投与することを含む、前記対象の疾患を治療する方法を提供する。好ましくは、対象に投与される直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子、ナノ粒子、組成物またはライブラリーの量は、治療有効量である。
【0226】
直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子、ナノ粒子、組成物またはライブラリーは、あらゆる疾患または障害の処置に用い得る。例えば、直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子、ナノ粒子、組成物またはライブラリーは、遺伝子疾患(例えば、単一遺伝子疾患)、癌、HIV、他のウイルス感染症(例えば、コロナウイルス(例えば、COVID-19)による感染症、A型肝炎、B型肝炎、単純ヘルペスウイルス2型、インフルエンザ、麻疹、および/または呼吸器合胞体から選択される疾患および/または障害の1つ以上を治療するために使用され得る。コロナウイルス(COVID-19など)、A型肝炎、B型肝炎、単純ヘルペスウイルス2型、インフルエンザ、麻疹および/またはRSウイルス(respiratory syncytial virus)による感染症)、神経変性疾患(例えば、パーキンソン病および/またはハンチントン病などのポリグルタミン病)、眼の疾患(例えば、黄斑変性症)および肝不全から選択される1以上の疾患および/または障害の処置に用いられ得る。好ましくは、直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子、ナノ粒子、組成物またはライブラリーは、遺伝性疾患の処置に用いられる。さらに好ましくは、直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子、ナノ粒子、組成物またはライブラリーは、単一遺伝子疾患の処置に用いられる。例えば、直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子、ナノ粒子、組成物またはライブラリーは、鎌状赤血球貧血、嚢胞性線維症、ハンチントン病およびデュシェンヌ型筋ジストロフィー、血友病A型、α1-アンチトリプシン欠損症、原発性毛様体ジスキネジア、または未熟児呼吸窮迫症候群の処置に用いられ得る。
【0227】
直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子、ナノ粒子、組成物またはライブラリーで処置される対象は、障害の処置に一般的に用いられる薬物による処置を含む、前記障害に対する他の処置形態と組み合わせて、直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子、ナノ粒子またはライブラリーを受容することができる。薬剤は1回または複数回に分けて投与される。当業者(例えば、医師)は、対象の特定の状況に応じて、対象のための適切な投与レジメンを決定することが十分に可能である。
【0228】
直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子、ナノ粒子、組成物またはライブラリーは、好ましくは、本明細書に記載の組成物または医薬組成物として対象に投与される。
【0229】
本明細書で用いる“投与する”とは、上記でより詳細に記載したように、直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子、ナノ粒子、組成物またはライブラリーを対象の体内に導入することを意味する(「組成物」欄参照)。例えば、経口剤、局所剤、経頬剤、舌下剤、経肺剤、経皮剤、経粘膜剤、ならびに皮下注射、腹腔内注射、静脈内注射および筋肉内注射、または消化管(alimentary canal)を介した液剤もしくは固形剤の形態が挙げられるが、これらに限定されない。
【0230】
本明細書で用いる用語“治療上有効な量”とは、疾患を処置するために対象に投与されたとき、該疾患のそのような処置を効果的に行うのに十分な、直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子、ナノ粒子、組成物またはライブラリーの量を意味する。“治療上有効な量”は、例えば、用いる特定の製品、対象の疾患の重症度、対象の年齢および相対的な健康状態、投与経路および投与形態などの要因によって異なる。このような因子に基づいて、特定の対象に対して適切な治療上有効な量を決定することは、当業者(例えば、担当医)にとって日常的なことである。本明細書に記載の疾患の処置とは、疾患の1以上の症状の改善を意味すると理解されるべきである。
【0231】
本発明はまた、疾患および/または障害を診断する方法における、直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子、ナノ粒子、組成物またはライブラリーの使用を提供する。
【0232】
本発明は、直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子、ナノ粒子、組成物またはライブラリーの、疾患の“インビトロ”診断における使用を提供する。
【0233】
本発明はまた、疾患の“インビボ”診断方法に使用するための直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子、ナノ粒子、組成物またはライブラリーを提供する。
【0234】
この方法は、何れかの疾患および/または障害の診断に用いることができる。例えば、疾患および/または障害は、遺伝性障害(例えば、単一遺伝子障害)、癌、HIV、他のウイルス感染(例えば、コロナウイルス(例えば、COVID-19)、A型肝炎、B型肝炎、単純ヘルペスウイルス2型、インフルエンザ、麻疹および/またはRSウイルスによる感染)、神経変性疾患(例えば、パーキンソン病および/またはハンチントン病などのポリグルタミン病)、眼疾患(例えば、黄斑変性症)および肝不全から選択され得る。好ましくは、直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子、ナノ粒子、組成物またはライブラリーは、遺伝子疾患の診断に用いられる。さらに好ましくは、直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子、ナノ粒子、組成物またはライブラリーは、単一遺伝子疾患の診断に用いられる。例えば、直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子、ナノ粒子、組成物またはライブラリーは、鎌状赤血球貧血、嚢胞性線維症、ハンチントン病、およびデュシェンヌ型筋ジストロフィー、血友病A、α1-アンチトリプシン欠損症、原発性毛様体ジスキネジアまたは未熟児呼吸窮迫症候群の診断に使用できる。
【0235】
本明細書に記載の診断法および処置方法は、インビトロ法であってもインビボ法であってもよい。
【0236】
診断方法は、直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子、ナノ粒子、組成物またはライブラリーの検出および/または定量に依存して変わり得る。
【0237】
直鎖状二本鎖DNA産物の検出および/または定量を容易にするために、直鎖状二本鎖DNA産物は、機能性部分に接着または結合させることができる。機能性部分は、本明細書に記載されている何れかの機能性部分であってもよい。例えば、機能性部分はプローブであってもよい。機能性部分は、蛍光体、放射性化合物、またはバーコードを含み得る。機能性部分はタンパク質、例えば抗体であってもよい。
【0238】
診断は、DNA産物の存在、不存在および/またはレベルに対応するシグナルの検出に依存して変わり得る。例えば、シグナルは、蛍光プローブに結合した直鎖状二本鎖DNA産物のフローサイトメトリーおよび/または蛍光活性化セルソーティングによって測定できる。
【0239】
直鎖状二本鎖DNA産物は、例えばラテラルフローアッセイにおいて、捕捉部位に結合させることによって検出できる。この例では、機能性部分はタンパク質、例えば捕捉部分に特異的な抗体である。直鎖状二本鎖DNA産物に結合した抗体が捕捉されると、視覚的シグナル(例えば、異なる色のバンド)が生じ得る。
【0240】
本発明はまた、疾患の診断と疾患の処置を組み合わせた方法を提供する。
【0241】
細胞療法
上記のように、本発明の産物はプラスミドDNAよりも実質的に汚染を少なくし得る。加えて、本発明の産物は本質的にとても単純であり(例えば、バクテリアの骨格を有さない)、これは一般的に作業が容易であることを意味する。少なくとも、本発明の産物は目的の遺伝子を含むため、反応体積あたり(または最終産物の質量あたり)より多くの目的の遺伝子のコピーを得ることができる。本明細書に記載された製品の純粋かつ単純な性質は、細胞治療に使用するのに特に適している。例えば、本明細書に記載の直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子、ナノ粒子、組成物およびライブラリーを含む細胞を、患者に注射またはその他の方法で移植し、所望の効果を引き起こすことができる。細胞(または複数の細胞)は、例えば免疫療法の過程で細胞媒介免疫を介して、癌細胞と闘うことができる。細胞(または複数の細胞)は、病変組織を再生するために移植され得る。
【0242】
本発明は、細胞治療に用いるための、直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子、ナノ粒子、組成物またはライブラリーを提供する。
【0243】
本発明は、細胞治療に使用するために、本明細書に記載の直鎖状二本鎖DNA産物を提供する。従って、本発明は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含む直鎖状二本鎖DNA産物を提供し、ここで、該直鎖状二本鎖DNA産物は、細胞治療に使用するために、単一カセットおよび各鎖の内部位置に1以上のホスホロチオエートヌクレオチドを含む。好ましくは、各鎖の内部位置にある1以上のホスホロチオエート化ヌクレオチドは、
(a)カセットの5’末端ヌクレオチド;
(b)カセットの3’末端ヌクレオチド;および
(c)カセットの外側の1以上のヌクレオチド
から選択され得る。
【0244】
本発明はまた、細胞治療に使用するために、センス鎖およびアンチセンス鎖を含む直鎖状二本鎖DNA産物を提供し、ここで、該直鎖状二本鎖DNA産物は、単一カセットおよび各鎖の内部位置にある少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドを含み、ここで、各鎖の内部位置にある少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドは、
(a)カセットの5’末端ヌクレオチド;
(b)カセットの3’末端ヌクレオチド;および
(c)カセットの外側の1以上のヌクレオチド
から選択され、ここで、カセットはコーディング配列を含む。
【0245】
本発明はまた、細胞治療の実施における直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子、ナノ粒子、組成物またはライブラリーの使用を提供する。本発明は、直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子、ナノ粒子、ライブラリー、ウイルスもしくは非ウイルスベクター、または組成物を細胞と接触させることを含む、細胞療法を提供する。好ましくは、細胞療法はエクスビボ細胞療法である。細胞は動物細胞であってもよく、好ましくはヒト細胞などの哺乳動物細胞である。
【0246】
本発明はまた、本明細書に記載の何れかの方法によって得られる細胞を提供する。例えば、細胞は細胞療法に使用するのに適している。
【0247】
ワクチン
本発明の製品は、ワクチン製造に特に適している。ワクチンは、本明細書に記載の直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子またはライブラリーを含み得る。あるいは、本明細書に記載の直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子またはライブラリーを用いて、ワクチン、好ましくはmRNAベースのワクチンを製造することもできる。例えば、COVID-19に対するBioNTechおよびModernaのmRNAワクチンなどである。
【0248】
従って、本発明は、ワクチンの製造における、本明細書に記載の直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子、ナノ粒子、組成物またはライブラリーの使用を提供する。
【0249】
本発明は、ワクチンの製造における、本明細書に記載の直鎖状二本鎖DNA産物の使用を提供する。本発明は、ワクチンの製造における、センス鎖およびアンチセンス鎖を含む直鎖状二本鎖DNA産物の使用を提供し、ここで、該直鎖状二本鎖DNA産物は、各鎖の内部位置に、単一カセットおよび1以上の保護されたヌクレオチド(例えば、ホスホロチオエート化ヌクレオチド)を含む。好ましくは、各鎖の内部位置にある1以上の保護されたヌクレオチド(例えば、ホスホロチオエート化ヌクレオチド)は、
(a)カセットの5’末端ヌクレオチド;
(b)カセットの3’末端ヌクレオチド;および
(c)カセットの外側の1以上のヌクレオチド
から選択され得る。
【0250】
本発明はまた、ワクチンの製造における、センス鎖およびアンチセンス鎖を含む直鎖状二本鎖DNA産物の使用を提供し、ここで、直鎖状二本鎖DNA産物は、単一カセットおよび各鎖の内部位置にある少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドを含み、ここで、各鎖の内部位置にある少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドは、
(a)カセットの5’末端ヌクレオチド;
(b)カセットの3’末端ヌクレオチド;および
(c)カセットの外側の1以上のヌクレオチド
から選択され、ここで、カセットはコーディング配列を含む。
【0251】
好ましくは、ワクチンはmRNAワクチンである。
【0252】
本発明はまた、センス鎖およびアンチセンス鎖を含む直鎖状二本鎖DNA産物を含むワクチンを提供し、ここで、直鎖状二本鎖DNA産物は、単一カセットおよび各鎖の内部位置にある1以上の保護ヌクレオチド(例えば、ホスホロチオエート化ヌクレオチド)を含む。好ましくは、各鎖の内部位置にある1以上の保護されたヌクレオチド(例えば、ホスホロチオエート化ヌクレオチド)は、
(a)カセットの5’末端ヌクレオチド;
(b)カセットの3’末端ヌクレオチド;および
(c)カセットの外側の1以上のヌクレオチド
から選択され得る。
【0253】
本発明は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含む直鎖状二本鎖DNA産物を含むワクチンであって、直鎖状二本鎖DNA産物が、単一カセットおよび各鎖の内部位置にある少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドを含み、各鎖の内部位置にある少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドが、
(d)カセットの5’末端ヌクレオチド;
(e)カセットの3’末端ヌクレオチド;および
(f)カセットの外側の1以上のヌクレオチド
から選択される、ここで、カセットはコーディング配列を含む、ワクチンを提供する。
【0254】
直鎖状二本鎖DNA産物は抗原をコードしていてもよく、この抗原は対象に免疫応答を引き起こし得る。対象はヒトであり得る。好ましくは、抗原はカセットにコードされている。
【0255】
CAR-T細胞
本発明は、CAR-T細胞の産生における、本明細書に記載の直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子、ナノ粒子、組成物またはライブラリーの使用を提供する。
【0256】
本発明は、CAR-T細胞の生産における、本明細書に記載の直鎖状二本鎖DNA産物の使用を提供する。本発明は、CAR-T細胞の産生における、センス鎖およびアンチセンス鎖を含む直鎖状二本鎖DNA産物の使用を提供し、ここで、直鎖状二本鎖DNA産物は、単一カセットおよび各鎖の内部位置にある1以上のホスホロチオエート化ヌクレオチドを含む。好ましくは、各鎖の内部位置にある1以上のホスホロチオエート化ヌクレオチドは、
(a)カセットの5’末端ヌクレオチド;
(b)カセットの3’末端ヌクレオチド;および
(c)カセットの外側の1以上のヌクレオチド
から選択され得る。
【0257】
本発明はまた、CAR-T細胞の産生における、センス鎖およびアンチセンス鎖を含む直鎖状二本鎖DNA産物の使用を提供し、ここで、直鎖状二本鎖DNA産物は、単一カセットおよび各鎖の内部位置にある少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドを含み、ここで、各鎖の内部位置にある少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドは、
(a)カセットの5’末端ヌクレオチド;
(b)カセットの3’末端ヌクレオチド;および
(c)カセットの外側の1以上のヌクレオチド
から選択され、ここで、カセットは、コーディング配列を含む。
【0258】
本発明は、(a)本明細書に記載の直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子、ナノ粒子、組成物またはライブラリーをT細胞に導入する工程;および、(b)目的の遺伝子を発現させる工程、を含む、遺伝子改変CAR-T細胞の製造方法を提供する。好ましくは、目的の遺伝子は腫瘍特異的CARである。
【0259】
本発明は、(a)センス鎖およびアンチセンス鎖を含む直鎖状二本鎖DNA産物であって、該直鎖状二本鎖DNA産物が単一カセットおよび各鎖の内部位置にある1以上のホスホロチオエートヌクレオチドを含む直鎖状二本鎖DNA産物をT細胞に導入する工程;および、(b)目的の遺伝子を発現させる工程、を含む、遺伝子改変CAR-T細胞の製造方法を提供する。好ましくは、目的の遺伝子は腫瘍特異的CARである。
【0260】
この方法は、工程(a)の前に、患者から単核球を除去する工程をさらに含んでいてもよい。好ましくは、除去する工程は、白血球療法を用いて行われる。好ましくは、単核球はT細胞である。本方法は、工程(b)の後、遺伝子改変された細胞を患者に戻す工程をさらに含み得る。
【0261】
本発明はまた、本明細書に記載の何れかの方法によって得られる改変されたT細胞も提供する。改変されたT細胞は、CAR T細胞療法に使用するのに適し得る。
【0262】
CRISPR送達
本発明の製品は、例えば細胞治療またはインビボ治療において、細胞への送達のためにCRISPRシステムを使用するのに特に適している。
【0263】
CRISPRシステムでは、物理的導入法(例えば、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション)、ウイルス導入法(例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV);全長アデノウイルスおよびレンチウイルス)、非ウイルス導入法(例えば、リポソーム;ポリプレックス;金粒子)など、様々な異なるカーゴおよび導入ビークルが一般的に使用されている。上記のように、本発明は分散性の低い直鎖状二本鎖DNA産物を提供する。従って、直鎖状二本鎖DNAを含むナノ粒子(またはナノ粒子のライブラリー)、またはウイルスもしくは非ウイルス送達ベクターは分散性が低く(すなわち均一性が高く)、細胞送達の効率が向上する。
【0264】
直鎖状二本鎖DNA産物は、CRIPSRシステムの任意の構成要素をコードする遺伝子配列を含んでいてもよい。直鎖の二本鎖DNA産物は、CRIPSRシステムのすべての構成要素をコードしている可能性がある。
【0265】
直鎖状二本鎖DNA産物は、修復テンプレート(または、編集テンプレート)を含んでいてもよい(またはコードしていてもよい)。修復テンプレート(または、編集テンプレート)は、例えばCRISPR-Casシステムを用いてゲノムを編集するためのものであり得る。修復テンプレート(または、編集テンプレート)は、所望のDNA領域(すなわち、標的分子)と相同性のある相同性領域(例えば、相同性アーム)を含むか、またはそれらからなる。修復テンプレート(または、編集テンプレート)は、CRISPR-Casを介した相同組換え修復(homology directed repair;HDR)に使用するためのものであり得る。修復テンプレート(または、編集テンプレート)は、鎖切断(一本鎖切断または二本鎖切断など)を有する標的分子を修復するために使用され得る。鎖切断は、CRISPRシステムのヌクレアーゼ(例えば、Cas9、Cpf1またはMAD7)によって生じ得る。修復テンプレート(または、編集テンプレート)は、所望のDNA領域(すなわち、標的分子)に少なくとも1つの変異(例えば、挿入、欠失および/または置換)を導入できる。修復テンプレート(または編集テンプレート)は、少なくとも10塩基対、20塩基対、30塩基対、40塩基対、50塩基対、100塩基対、200塩基対、300塩基対、400塩基対、500塩基対、600塩基対、700塩基対、800塩基対、900塩基対、1000塩基対、1500塩基対、2000塩基対、2500塩基対、3000塩基対、3500塩基対、4000塩基対、4500塩基対、5000塩基対、5500塩基対、6000塩基対、6500塩基対、7000塩基対、7500塩基対、8000塩基対、8500塩基対、9000塩基対、9500塩基対または10000塩基対の長さである。修復テンプレートをコードする直鎖状二本鎖DNA産物は、ナノ粒子、非ウイルス性ベクターまたはウイルス性ベクターによって、あるいは何れの担体も介さずに細胞に送達され得る。
【0266】
直鎖状二本鎖DNA産物は、CRISPRシステムのヌクレアーゼタンパク質(例えば、Cas9、Cpf1またはMAD7)をコードする遺伝子配列、および/またはガイドRNAを含み得る。直鎖状二本鎖DNA産物は、CRISPRシステムのヌクレアーゼタンパク質(例えば、Cas9、Cpf1、またはMAD7)をコードする遺伝子配列を含んでいてもよい。直鎖状二本鎖DNA産物は、ガイドRNAをコードする遺伝子配列を含んでいてもよい。直鎖状二本鎖DNA産物は、CRISPRシステムのヌクレアーゼタンパク質(例えば、Cas9、Cpf1、またはMAD7)をコードする遺伝子配列、およびガイドRNAを含み得る。直鎖状二本鎖DNA産物は、改変されるゲノム標的をコードする遺伝子配列(例えば、スペーサー)を含んでいてもよい。直鎖状二本鎖DNA産物をベクターにライゲーションすることもできる。ベクターは、CRIPSRシステムのいくつかの構成要素の配列を含んでいてもよい。ベクターは、ガイドRNAの配列またはガイドRNAの一部の配列を含んでいてもよい。ベクターがガイドRNAの一部の塩基配列を含むとき、直鎖状二本鎖DNA産物はガイドRNAの欠失した塩基配列部分を含んでいてもよい、ライゲーションにより、ライゲーションされたベクターはガイドRNAの全塩基配列を含む。CRISPRシステムのヌクレアーゼおよびガイドRNAは、単一ベクター上にコードされていてもよいか、または2つの異なるベクター上にコードされていてもよい。直鎖状二本鎖DNA産物は、CRISPRシステムのヌクレアーゼおよびガイドRNAをコードしていてもよい。一方の直鎖状二本鎖DNA産物はCRISPRシステムのヌクレアーゼをコードし、他方の直鎖状二本鎖DNA産物はガイドRNAをコードしていてもよい。
【0267】
直鎖状二本鎖DNA産物は、組換え、相同性指向性修復、または非相同末端結合によるCRISPR-Cas仲介修復に使用できる。
【0268】
CRISPRシステムのヌクレアーゼおよびガイドRNAが異なる直鎖状二本鎖DNA産物によってコードされているとき、それらは異なるまたは同じ送達機構の一部であってもよい。例えば、CRISPRシステムのヌクレアーゼをコードする直鎖状二本鎖DNA産物は、第1のナノ粒子、非ウイルス性ベクターまたはウイルス性ベクターによって細胞に送達され、一方、ガイドRNAをコードする直鎖状二本鎖DNA産物は、第2のナノ粒子、非ウイルス性ベクターまたはウイルス性ベクターによって細胞に送達され得る。例えば、CRISPRシステムのヌクレアーゼをコードする直鎖状二本鎖DNA産物およびガイドRNAをコードする直鎖状二本鎖DNA産物は、同じナノ粒子、非ウイルスベクターまたはウイルスベクターによって細胞に送達され得る。
【0269】
CRISPRシステムのヌクレアーゼおよびガイドRNAが同じ直鎖状二本鎖DNA産物(または、直鎖状二本鎖DNA産物を構成するベクター)によってコードされているとき、それらは同じ送達機構の一部であってもよい。例えば、CRISPRシステムのヌクレアーゼおよびガイドRNAをコードする直鎖状二本鎖DNA産物(または、ベクター)は、ナノ粒子、非ウイルスベクターまたはウイルスベクターによって細胞に送達され得る。
【0270】
従って、本発明は、CRISPRシステムの細胞への送達に使用するための直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子、組成物、ライブラリーまたはナノ粒子を提供する。本発明は、直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子、ナノ粒子、ライブラリーまたは組成物を細胞に接触させることを含む、CRISPRシステムを細胞に送達する方法を提供する。
【0271】
細胞は動物細胞であってもよく、好ましくはヒト細胞などの哺乳動物細胞である。
【0272】
本発明はまた、本明細書に記載の方法によって得られる細胞を提供する。この細胞は、特に細胞療法および/またはインビボ療法に適している。
【0273】
本発明の直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子、ナノ粒子またはライブラリーは、インビトロまたはインビボでRNA、好ましくはmRNAを産生するために転写に用いられ得る。
【0274】
8.直鎖状二本鎖DNA産物の製造方法およびそのライブラリー
直鎖状二本鎖DNA産物またはそのライブラリーは、何れの増幅プロセスの産物であってもよい。増幅プロセスは、インビトロまたはインビボ増幅プロセスであってもよい。好ましくは、増幅プロセスは、インビトロ増幅プロセスである。例えば、増幅プロセスは、ローリングサークル増幅(RCA)、MALBAC法、従来のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、核酸配列に基づく増幅(NASBA)、ループ媒介等温増幅(LAMP)、ヘリカーゼ依存性増幅(HDA)、多重置換増幅(MDA)およびリコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)によって実施され得る。好ましくは、増幅プロセスはローリングサークル増幅によって行われる。好ましくは、二本鎖DNA産物はローリングサークル増幅の産物である。二本鎖DNA産物は、直線的RCA(linear RCA)、指数関数的RCA(exponential RCA)、またはマルチプライマーRCAによって産生される。ローリングサークル増幅は、プライマーなしで行ってもよいし、プライマーまたは複数のプライマーの存在下で行ってもよい。例えば、プライマーは合成プライマーであってもよい。プライマーはランダムプライマーであってもよい。ローリングサークル増幅は、プライマーゼの存在下で行ってもよい。プリマーゼはTthPrimPolであってもよい。好ましくは、ローリングサークル増幅がプライマーなしで行われるとき、TthPrimPolのようなプライマーゼの存在下で行われる。同様に、増幅反応中にプライマーを用いるとき、プライマーゼは使用しない。二本鎖DNA産物は、Phi29 DNAポリメラーゼのような適切な核酸ポリメラーゼを用いて、等温条件下でローリングサークル増幅によりインビトロで生成される。ローリングサークル増幅は、ホスホロチオエート化ヌクレオチドのような保護されたヌクレオチドの存在下で行うことができる。
【0275】
本発明の発明者らは、驚くべきことに、ローリングサークル増幅の産物を切断して、単一の直鎖状二本鎖DNA産物中にカセット(目的の遺伝子を含んでいてもよい)の単一コピーのみが存在するようにする方法を見出した。単一のDNA産物につきカセットが1コピーであるため、既知の増幅産物に比べて多くの利点がある。例えば、1つのDNA産物につき1コピーのカセットを用いることで、DNA産物を可能な限り小さくでき、これは例えば細胞送達方法および/または細胞送達システムの有効性において重要な役割を果たす。
【0276】
本明細書に記載の直鎖状二本鎖DNA産物またはそのライブラリーは、増幅産物の切断によって作製できる。切断は酵素的切断、例えば、制限酵素消化のようなエンドヌクレアーゼ消化であってもよい。切断後、直鎖状二本鎖DNA産物は、単一のカセット(例えば、単一のコーディング配列を含むカセット)を含み得る。すなわち、切断後の直鎖状二本鎖DNA産物は、複数のタンデムリピート配列、すなわちコンカテメリックDNAを含まないか、または含んでいてもよい。切断後、直鎖状二本鎖DNA産物は、例えば米国特許US10350307 B2に記載のような公知の方法によって産生される連結型DNAを含むか、またはそれから構成され得る。切断後、直鎖状二本鎖DNA産物は、目的のDNA配列の単一コピー、例えば、コード配列の単一コピーを含み得る。
【0277】
従って、本発明は、
(a)少なくとも1つの切断可能な配列を含むDNAテンプレート分子を、少なくとも1種の保護ヌクレオチドの存在下で増幅させ、二本鎖DNA産物を生成する工程;および
(b)二本鎖DNA産物を少なくとも1つの酵素と接触させて、直鎖状二本鎖DNA産物またはそのライブラリーを生成する工程
を含む、本明細書に記載の直鎖状二本鎖DNA産物または直鎖状二本鎖DNA産物のライブラリーの製造方法を提供する。
【0278】
増幅法は、ローリングサークル増幅法を採用できる。従って、本明細書に記載の直鎖状二本鎖DNA産物または直鎖状二本鎖DNA産物のライブラリーの製造方法は、
(a)少なくとも1種の保護ヌクレオチドの存在下で、少なくとも1種の切断可能な配列を含むDNAテンプレート分子をローリングサークル増幅させて、二本鎖DNA産物を生成する工程;および
(b)二本鎖DNA産物を少なくとも1つの酵素と接触させ、直鎖状二本鎖DNA産物またはそのライブラリーを生成する工程
を含み得る。
【0279】
切断可能な配列は、酵素によって切断される配列であってもよい。好ましくは、切断可能な配列は、制限エンドヌクレアーゼなどのエンドヌクレアーゼによって切断される配列である。本明細書に記載の直鎖状二本鎖DNA産物または直鎖状二本鎖DNA産物のライブラリーの製造方法は、
(a)少なくとも1種の保護ヌクレオチドの存在下で、少なくとも1種のエンドヌクレアーゼ標的配列を含むDNAテンプレート分子をローリングサークル増幅して、二本鎖DNA産物を生成する工程;および
(b)二本鎖DNA産物を少なくとも1つの酵素と接触させて、直鎖状二本鎖DNA産物またはそのライブラリーを生成する工程
を含み得る。
【0280】
好ましくは、直鎖状二本鎖DNA産物はエキソヌクレアーゼ消化、例えばエキソヌクレアーゼIII消化に耐性である。従って、この方法は、ホスホロチオエート化ヌクレオチドまたはMOEヌクレオチドのような、エキソヌクレアーゼ消化に対する保護を提供するヌクレオチドを使用できる。従って、本発明は、本明細書に記載の直鎖状二本鎖DNA産物または直鎖状二本鎖DNA産物のライブラリーの製造方法であって、
(a)少なくとも1種のホスホロチオエート化ヌクレオチドの存在下で、少なくとも1種のエンドヌクレアーゼ標的配列を含むDNAテンプレート分子をローリングサークル増幅して二本鎖DNA産物を生成する工程;および
(b)二本鎖DNA産物を少なくとも1つのエンドヌクレアーゼと接触させて、直鎖状二本鎖DNA産物を生成する工程
を含む方法を提供する。
【0281】
本明細書に記載の通り、直鎖状二本鎖DNA産物はカセットを含んでいてもよい。従って、エキソヌクレアーゼに対する耐性を増大させた直鎖状二本鎖DNA産物、または直鎖状二本鎖DNA産物のライブラリーをインビトロで生産するための方法は、
(a)少なくとも1種のホスホロチオエート化ヌクレオチドの存在下で、少なくとも1種のエンドヌクレアーゼ標的配列を含むDNAテンプレート分子をローリングサークル増幅し、二本鎖DNA産物を生成する工程であって、ここで、該二本鎖DNA産物は、単一のカセットを含む、工程;および
(b)二本鎖DNA産物を少なくとも1つのエンドヌクレアーゼと接触させて、単一カセットを含む直鎖状二本鎖DNA産物、またはかかる二本鎖DNA産物のライブラリーを生成する工程
を含み得る。
【0282】
本明細書に記載の方法で用いられる全ヌクレオチドに対するホスホロチオエート化ヌクレオチドの比率は、少なくとも0.0001、少なくとも0.0025、少なくとも0.01、少なくとも0.025、少なくとも0.05、少なくとも0.075、少なくとも0.10、少なくとも0.12、少なくとも0.15、少なくとも0.25、少なくとも0.35、少なくとも0.5、または少なくとも0.75であり得る。本明細書に記載の方法で用いられる全ヌクレオチドに対するホスホロチオエート化ヌクレオチドの比は、1未満、0.9未満、0.8未満、0.65未満、0.5未満、0.4未満、0.3未満、0.2未満、0.1未満、0.075未満、または0.05未満であり得る。全ヌクレオチドに対するホスホロチオエート化ヌクレオチドの比率は、0.0001~1、0.0025~0.75、0.025~0.65、0.025~0.15、または0.25~0.50の間であってもよい。好ましくは、全ヌクレオチドに対するホスホロチオエート化ヌクレオチドの比率は、0.025~0.15である。直鎖状二本鎖DNA産物は、全ヌクレオチドに対するホスホロチオエート化ヌクレオチドの比率が、0.005~0.3、0.0075~0.2、0.01~0.15、0.01~0.10、0.02~0.08、0.03~0.07、0.04~0.06または0.05~0.075の間であるホスホロチオエート化ヌクレオチドを含んでいてもよい。好ましくは、全ヌクレオチドに対するホスホロチオエート化ヌクレオチドの比は、0.01~0.10の間である。好ましくは、全ヌクレオチドに対するホスホロチオエート化ヌクレオチドの比は、約0.025、約0.05、約0.075、約0.10、約0.12、約0.15または約0.25である。さらに好ましくは、全ヌクレオチドに対するホスホロチオエート化ヌクレオチドの比率は約0.025または約0.05である。実施例に示すように、全ヌクレオチドに対するホスホロチオエート化ヌクレオチドの比率は約0.025で十分であり、エキソヌクレアーゼ消化に対する耐性が増強される。実施例に示されるように、全ヌクレオチドに対するホスホロチオエート化ヌクレオチドの比が約0.05または約0.075であることは、エキソヌクレアーゼ消化に対する増強された耐性を提供するのに特に効果的である(発現レベルによって示される;実施例7および8を参照のこと)。さらに、実施例で示したとおり、約0.05の比率は、目的遺伝子のインビボ発現に特に適している(実施例10参照のこと)。
【0283】
本明細書に記載の直鎖状二本鎖DNA産物または二本鎖DNA産物のライブラリーの製造方法は、
(a)少なくとも1種のMOEヌクレオチドの存在下で、少なくとも1種のエンドヌクレアーゼ標的配列を含むDNAテンプレート分子をローリングサークル増幅して二本鎖DNA産物を生成する工程;および
(b)二本鎖DNA産物を少なくとも1つのエンドヌクレアーゼと接触させて、直鎖状二本鎖DNA産物がエキソヌクレアーゼに対して増強された耐性を有する直鎖状二本鎖DNA産物またはそのライブラリーを生成する工程
を含み得る。
【0284】
エキソヌクレアーゼ消化に対する保護を提供するには、少なくとも1種の保護ヌクレオチドで十分であるが、本明細書に記載の直鎖状二本鎖DNA産物の製造方法は、ホスホロチオエート化ヌクレオチドのような、少なくとも2種、少なくとも3種、または少なくとも4種の異なるホスホロチオエート化ヌクレオチドのような保護ヌクレオチドを用いてもよい。
【0285】
本明細書に記載の方法において、DNAテンプレート分子は少なくとも1つの切断可能な配列を含んでいてもよい。切断可能な配列は、エンドヌクレアーゼ標的配列であってもよい。従って、DNAテンプレート分子は少なくとも1つのエンドヌクレアーゼ標的配列を含んでいてもよい。好ましくは、DNAテンプレート分子は少なくとも2つのエンドヌクレアーゼ標的配列を含む。エンドヌクレアーゼの標的配列は同じであっても、異なっていてもよい。好ましくは、少なくとも1つのエンドヌクレアーゼ標的配列は制限エンドヌクレアーゼ標的配列である。異なる制限エンドヌクレアーゼ標的配列は当業者に公知であり得る。例えば、制限エンドヌクレアーゼ標的配列は、BsaI、NdeI、SmaI、NsiIおよび/またはXbaI標的配列であり得る。少なくとも1つの切断可能な配列(例えば、エンドヌクレアーゼ標的配列)は、天然の切断可能な配列(すなわち、テンプレート分子中に存在する切断可能な配列)であってもよい。あるいは、少なくとも1つの切断可能な配列(例えば、エンドヌクレアーゼ標的配列)は、直鎖状二本鎖DNA産物を産生する前にDNAテンプレート分子に導入されてもよい。
【0286】
従って、本明細書に記載の直鎖状二本鎖DNA産物または直鎖状二本鎖DNA産物のライブラリーの製造方法は、
(a)DNAテンプレート分子に少なくとも1つの切断可能な配列(例えば、制限エンドヌクレアーゼ標的配列)を導入する工程;
(b)少なくとも1つの切断可能な配列を含むDNAテンプレート分子を、少なくとも1種の保護ヌクレオチド(例えば、ホスホロチオエート化ヌクレオチド)の存在下で増幅(例えば、ローリングサークル増幅)させて、二本鎖DNA産物を生成する工程;および
(c)二本鎖DNA産物を少なくとも1つの酵素(例えば、制限エンドヌクレアーゼ)と接触させて、好ましくは直鎖状二本鎖DNA産物がヌクレアーゼ(例えば、エキソヌレアーゼIII)に対して増強された耐性を有する直鎖状二本鎖DNA産物またはそのライブラリーを生成する工程
を含み得る。
【0287】
本発明の発明者らは、驚くべきことに、切断可能な配列を切断できる酵素は、二本鎖DNA産物の切断可能な配列に少なくとも1つの保護されたヌクレオチドが組み込まれていると、切断効率が大幅に低下することを見出した。換言すれば、切断可能な配列の実質的に完全な消化(すなわち、実質的にすべての直鎖状二本鎖DNA産物の放出)を達成するために、少なくとも1種の保護されたヌクレオチドは、二本鎖DNA産物の切断可能な配列に組み込まれてはならない。従って、本発明の方法で用いる少なくとも1種の保護ヌクレオチド(例えば、ホスホロチオエート化ヌクレオチド)は、切断可能な配列の一部を形成しないように選択される。例えば、SmaI制限酵素は切断可能な配列:5’-CCCGGG-3’(および、相補配列3’-GGGCCC-5’)を認識する。従って、好ましくは、本発明の方法で用いられる少なくとも1種の保護ヌクレオチドは、例えば、α-S-dATPであり得る。この例では、保護ヌクレオチドとしてα-S-dATPのみを用いることにより、切断可能な配列が保護されたヌクレオチドを含まないことが保証される。しかしながら、切断可能な配列の種類によっては、少なくとも4種のヌクレオチドを含んでいてもよい。例えば、BsaI制限酵素は5’-GGTCTC(N)-3’および相補配列3’-CCAGAG(N)-5’を認識する。本発明の発明者らはさらに、全ヌクレオチドに対する保護ヌクレオチドの比率が0.5未満である限り、何れのタイプの保護ヌクレオチドも使用できることを見出した。好ましくは、用いられる全ヌクレオチドに対する保護された(例えば、ホスホロチオエート化)ヌクレオチドの比率は、0.5未満、0.4未満、0.3未満、0.2未満、または0.1未満であり、より好ましくは0.3未満である。
【0288】
直鎖状二本鎖DNA産物またはそのライブラリーを生成する工程は、直鎖状二本鎖DNA産物またはそのライブラリーの少なくとも80%、85%、90%、95%または100%を放出できる。好ましくは、直鎖状二本鎖DNA産物またはそのライブラリーを生成する工程は、直鎖状二本鎖DNA産物またはそのライブラリーの少なくとも90%を放出する。
【0289】
放出された直鎖状二本鎖DNA産物は、好ましくは、単一カセットおよび/または単一の目的の遺伝子を含む。従って、本方法は、
(a)DNAテンプレート分子に少なくとも1つの切断可能な配列(例えば、制限エンドヌクレアーゼ標的配列)を導入する工程;
(b)少なくとも1種のホスホロチオエート化ヌクレオチドの存在下で、少なくとも1種の切断可能な配列(例えば、制限エンドヌクレアーゼ標的配列)を含むDNAテンプレート分子をローリングサークル増幅させて、二本鎖DNA産物を生成する工程であって、ここで、該二本鎖DNA産物は、単一カセットを含む、工程;および
(c)二本鎖DNA産物を少なくとも1つの酵素(例えば、制限エンドヌクレアーゼ)と接触させて、単一カセットを含む直鎖二本鎖DNA産物またはかかる直鎖二本鎖DNA産物のライブラリーを生成する工程
を含み得る。
【0290】
単一カセットを含む直鎖状二本鎖DNA産物を生成する工程は、直鎖状二本鎖DNA産物の少なくとも80%、85%、90%、95%または100%を放出できる。好ましくは、直鎖状二本鎖DNA産物を生成するステップは、直鎖状二本鎖DNA産物の少なくとも90%を放出する。好ましくは、放出された直鎖二本鎖DNA産物は、単一カセット(または、目的の遺伝子)を含む。
【0291】
切断後、直鎖状二本鎖DNA産物のライブラリーは分散性が低くてもよい(すなわち、実質的に単分散であってもよい)。直鎖状二本鎖DNA産物について本明細書で用いる用語“低分散性”および“単分散性”とは、実質的に同じサイズ、すなわちポリヌクレオチド鎖の同じ長さの直鎖状二本鎖DNA産物のコピーの集合体を包含することを意図する。すなわち、ライブラリー中の各直鎖状二本鎖DNA産物は、ライブラリー中の他の直鎖状二本鎖DNA産物から、サイズ(すなわち、ポリヌクレオチド鎖中の塩基の数)が10%未満、好ましくは5%未満異なり得る。このことは、サイズが一定しない、すなわちポリヌクレオチド鎖の長さが一定しないDNA産物のコピーの集まりを意味する、多分散線状二本鎖DNA産物のライブラリーとは対照的である。
【0292】
本発明の発明者らは、好ましくはエキソヌクレアーゼ消化に耐性である直鎖状二本鎖DNA産物の実質的に単分散ライブラリーの製造方法を見出した。本明細書に記載の直鎖状二本鎖DNA産物のライブラリーは、実質的に単分散であるため、ナノ粒子およびウイルスまたは非ウイルスベクターの生産に適しているという点で、既知のDNA産物と比較して利点がある。製造されたナノ粒子、ウイルス性ベクターおよび/または非ウイルス性ベクターは、形質転換および/またはトランスフェクションを容易にする実質的に均一なサイズを有し、内在化および薬物放出プロセスにおいて重要な役割を果たす。
【0293】
本明細書に記載の方法で用いるDNAテンプレート分子は、一本鎖でも二本鎖でもよい。好ましくは、DNAテンプレート分子は二本鎖である。DNAテンプレート分子は天然の環状DNA分子であってもよい。例えば、DNAテンプレート分子は、(i)プラスミド、(ii)ミニサークル、(iii)コスミド、または(iv)細菌人工染色体(BAC)であり得る。DNAテンプレート分子は、酵素的に産生された環状DNA分子であってもよい。例えば、DNAテンプレート分子は、(i)リコンビナーゼ反応、好ましくはCreリコンビナーゼ反応から得られた環状DNA分子、または(ii)リガーゼ反応、好ましくはゴールデンゲートアセンブリーを用いて得られた環状DNA分子であり得る。DNAテンプレート分子は、酵素的に産生された共有結合で閉じた直鎖状DNA分子であってもよい。例えば、DNAテンプレート分子は、(i)TelNプロテロメラーゼで処理されたDNA分子、または(ii)DNA末端とアダプターとのライゲーションによって生成されたDNA分子であり得る。DNAテンプレート分子は、二本鎖のエレメントおよび一本鎖のエレメントを含んでいてもよい。例えば、テンプレートDNA分子は二本鎖DNAおよび一本鎖ヘアピンループを含んでいてもよい。
【0294】
DNAテンプレート分子は、直鎖状二本鎖DNA産物と少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%相補性である。好ましくは、DNAテンプレートは直鎖状二本鎖DNA産物と少なくとも99%相補性である。
【0295】
DNAテンプレート分子は直鎖状であってもよい。DNAテンプレート分子が直鎖状であるとき、増幅(例えば、ローリングサークル増幅)の前に、DNAテンプレート分子を環状化させて、本明細書に記載の方法での使用に適したDNAテンプレート分子を作製してもよい。
【0296】
テンプレートDNA分子は、カセットを含んでいてもよい。カセットは哺乳動物発現カセットであってもよい。カセットはさらにプロモーターを含んでいてもよい。プロモーターはCMVプロモーターであってもよい。カセットは、エンハンサーをさらに含んでいてもよい。カセットは、eGFPレポーター遺伝子またはルシフェラーゼレポーター遺伝子などのレポーター遺伝子をさらに含んでいてもよい。カセットは、ホモポリマー配列をさらに含んでいてもよい。カセットはさらにLoxP配列、好ましくは2つのLoxP配列を含んでいてもよい。
【0297】
DNAテンプレート分子は、5’末端もしくは3’末端、または5’末端および3’
末端の両方にホモポリマー配列を含んでいてもよい。ホモポリマー配列は、環状化の前にDNAテンプレート分子に付加できる。ホモポリマー配列は、polyA、polyC、polyG、またはpolyT配列であってもよい。ホモポリマー配列の長さは3~200ヌクレオチドである。ホモポリマー配列は、直鎖状二本鎖DNA産物の精製を容易にするために用いてもよく、その場合、ホモポリマー配列の長さは4-12ヌクレオチドの間、または5-10ヌクレオチドの間であってもよい。ホモポリマー配列はmRNAの発現を改善するために用いてもよく、その場合、ホモポリマー配列の長さは10-200ヌクレオチドの間、好ましくは80-150ヌクレオチドの間であってもよい。ホモポリマー配列の長さは、少なくとも10ヌクレオチド、20ヌクレオチド、30ヌクレオチド、40ヌクレオチド、50ヌクレオチド、60ヌクレオチド、70ヌクレオチド、80ヌクレオチド、90ヌクレオチド、100ヌクレオチド、110ヌクレオチド、120ヌクレオチド、130ヌクレオチド、140ヌクレオチド、150ヌクレオチド、160ヌクレオチド、170ヌクレオチド、180ヌクレオチド、190ヌクレオチドまたは200ヌクレオチドである。好ましくは、ホモポリマー配列の長さは少なくとも100ヌクレオチドである。さらに好ましくは、ホモポリマー配列の長さは少なくとも120ヌクレオチドである。例えば、ホモポリマー配列は、少なくとも120ヌクレオチドのポリA配列を含み得る。
【0298】
本明細書に記載の方法において、用いられる保護ヌクレオチドのタイプ(例えば、ホスホロチオエート化ヌクレオチド)は、DNAテンプレート分子のホモポリマー配列の少なくとも1つのヌクレオチドに相補的であっても、または同一であってもよい。好ましくは、保護されたヌクレオチドはホモポリマー配列のヌクレオチドと相補的である。例えば、ホモポリマー配列がpolyA配列であるとき、本方法で用いられ、好ましくは二本鎖DNA産物に組み込まれるホスホロチオエート化ヌクレオチドはα-S-dTTPであってもよい。ホモポリマー配列がポリC配列であるとき、本方法で用いられ、好ましくは二本鎖DNA産物に組み込まれるホスホロチオエート化ヌクレオチドはα-S-dGTPであり得る。ホモポリマー配列がポリG配列であるとき、本方法で用いられ、好ましくは二本鎖DNA産物に組み込まれるホスホロチオエート化ヌクレオチドは、α-S-dCTPであってもよい。ホモポリマー配列がポリT配列であるとき、本方法で用いられ、好ましくは二本鎖DNA産物に組み込まれるホスホロチオエート化ヌクレオチドは、α-S-dATPであってもよい。本明細書に記載の方法は、単一の反応において異なるタイプの保護されたヌクレオチドを使用できる。従って、例えば、ホモポリマー配列はpolyA配列であるが、少なくとも2つ、3つ、または4つの異なるタイプの保護されたヌクレオチドが本方法において用いられ得る。好ましくは、α-S-dATP、α-S-dCTP、α-S-dGTP、およびα-S-dTTPの4つすべてがこの方法で用いられる。
【0299】
DNAテンプレートは、2つの異なるホモポリマー配列を含み得る。例えば、DNAテンプレートを環状化する前に、DNAテンプレートは鎖の各末端に異なるホモポリマー配列を含んでいてもよい。例えば、DNAテンプレートの3’末端はポリA配列を含み、DNAテンプレートの5’末端はポリT配列を含んでいてもよい。
【0300】
本明細書に記載の通り、本明細書に記載の方法によって生成される直鎖状二本鎖DNA産物は、単一カセットおよび各鎖の内部位置にある少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドを含んでいてもよく、ここで、各鎖の内部位置にある少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドは、
(a)カセットの5’末端ヌクレオチド;
(b)カセットの3’末端ヌクレオチド;および
(c)カセットの外側の1つ以上のヌクレオチド
から選択される。
【0301】
直鎖状二本鎖DNA産物は、本明細書で提供される方法のいずれかによって得ることができる。
【0302】
本発明は、末端が保護された直鎖状二本鎖DNA産物、またはそのような直鎖状二本鎖DNA産物のライブラリーを製造する方法を提供する。この方法は、
(a)DNAテンプレート分子に少なくとも1つのホモポリマー配列を付加する工程、
(b)少なくとも1つのエンドヌクレアーゼ標的配列および少なくとも1つのホモポリマー配列を含むDNAテンプレート分子を、少なくとも1種の保護ヌクレオチドの存在下で増幅させて、二本鎖DNA産物を生成する工程、
(c)二本鎖DNA産物を少なくとも1つのエンドヌクレアーゼと接触させて、直鎖状二本鎖DNA産物を生成する工程、および
(d)直鎖状二本鎖DNA産物をエキソヌクレアーゼと接触させて、末端が保護された直鎖状二本鎖DNA産物、またはそのような直鎖状二本鎖DNA産物のライブラリーを生成する工程
を含む。
【0303】
本明細書に記載のDNAテンプレート分子はいずれも、末端が保護された直鎖状二本鎖DNA産物を製造する方法での使用に適している。
【0304】
DNAテンプレート分子への少なくとも1つのホモポリマー配列の付加は、DNAテンプレート分子が環状化される前に行われてもよい。好ましくは、2つのホモポリマー配列がDNAテンプレート分子に付加される。2つのホモポリマー配列は異なっていても同じでもよい。ホモポリマー配列は、DNAテンプレート分子の5’末端、3’末端、または5’末端および3’末端の両方に付加できる。ホモポリマー配列は、polyA、polyC、polyG、またはpolyT配列であってもよい。例えば、DNAテンプレートを環状化する前に、2つの異なるホモポリマー配列をDNAテンプレート分子に付加できる。例えば、DNAテンプレートの3’末端にポリC配列を付加し、DNAテンプレート分子の5’末端にポリG配列を付加できる。
【0305】
ホモポリマー配列の長さは3~200ヌクレオチドである。ホモポリマー配列は、直鎖状二本鎖DNA産物の精製を容易にするために用いてもよく、その場合、ホモポリマー配列の長さは4-12ヌクレオチドの間、または5-10ヌクレオチドの間であってもよい。ホモポリマー配列はmRNAの発現を改善するために用いてもよく、その場合、ホモポリマー配列の長さは10-200ヌクレオチドの間、好ましくは80-150ヌクレオチドの間であってもよい。ホモポリマー配列の長さは、少なくとも10ヌクレオチド、20ヌクレオチド、30ヌクレオチド、40ヌクレオチド、50ヌクレオチド、60ヌクレオチド、70ヌクレオチド、80ヌクレオチド、90ヌクレオチド、100ヌクレオチド、110ヌクレオチド、120ヌクレオチド、130ヌクレオチド、140ヌクレオチド、150ヌクレオチド、160ヌクレオチド、170ヌクレオチド、180ヌクレオチド、190ヌクレオチドまたは200ヌクレオチドであり得る。好ましくは、ホモポリマー配列の長さは少なくとも100ヌクレオチドである。さらに好ましくは、ホモポリマー配列の長さは少なくとも120ヌクレオチドである。例えば、ホモポリマー配列は、少なくとも120ヌクレオチドのポリA配列を含み得る。
【0306】
DNAテンプレート分子に少なくとも1つのホモポリマー配列を付加する工程は、当技術分野で知られている何れかの従来の方法によって行うことができる。例えば、DNAリガーゼ酵素を用いてホモポリマー配列をDNAテンプレート分子にライゲーションできる。ホモポリマー配列は、制限酵素を用いてDNAテンプレート分子に結合させることができる。ホモポリマー配列は、何れかの合成生物学的方法、例えば逐次ハイブリダイゼーションアセンブリング(SHA)を用いてDNAテンプレート分子に結合させることができる。
【0307】
好ましくは、増幅はローリングサークル増幅である。ローリングサークル増幅には通常、環状型のテンプレート分子が必要である。従って、DNAテンプレート分子に少なくとも1つのホモポリマー配列を付加する工程の後、この方法はDNAテンプレート分子を環状化する工程をさらに含んでいてもよい。環状化は、当技術分野で知られている何れかの方法で行うことができる。例えば、環状DNAテンプレート分子は、リコンビナーゼ反応、好ましくはCreリコンビナーゼ反応、またはリガーゼ反応、好ましくはゴールデンゲートアセンブリーを用いて得ることができる。環状DNAテンプレート分子は、直鎖状DNA分子を共有結合で閉じることによって得ることができる。例えば、DNAテンプレート分子は、TelNプロテロメラーゼで処理されたDNA分子、あるいはDNA末端とアダプターとのライゲーションによって生成されたDNA分子であってもよい。
【0308】
直鎖状二本鎖DNA産物をエキソヌクレアーゼと接触させて、末端が保護された直鎖状二本鎖DNA産物を生成する工程では、エキソヌクレアーゼIIIを使用できる。エキソヌクレアーゼは、ポリヌクレオチド鎖の5’末端または3’末端のいずれかから、保護されていないヌクレオチドを切断する。従って、エキソヌクレアーゼは、鎖中の保護されたヌクレオチド(例えば、ホスホロチオエート化ヌクレオチド)に遭遇する時点まで、直鎖状二本鎖DNA産物を消化できる。エキソヌクレアーゼは、直鎖状二本鎖DNA産物の末端がさらなるエキソヌクレアーゼ消化、好ましくはエキソヌクレアーゼIII消化から保護された時点で、反応から除去できる。従って、この方法は、エキソヌクレアーゼを除去するさらなる工程を含んでいてもよい。
【0309】
好ましくは、直鎖状二本鎖DNA産物は、少なくとも一方の鎖、好ましくは両方の鎖の内部位置に1以上の保護ヌクレオチドをさらに含む。
【0310】
用いられる少なくとも1種の保護ヌクレオチド(例えば、ホスホロチオエート化ヌクレオチド)は、DNAテンプレート分子のホモポリマー配列の少なくとも1種のヌクレオチドと相補性であっても、同一であってもよい。好ましくは、保護されたヌクレオチドはホモポリマー配列のヌクレオチドと相補性である。好ましくは、保護されたヌクレオチドはホスホロチオエート化ヌクレオチドである。例えば、ホモポリマー配列がpolyA配列である場合、本方法で用いられ、好ましくは二本鎖DNA産物に組み込まれるホスホロチオエート化ヌクレオチドはα-S-dTTPであり得る。ホモポリマー配列がポリC配列である場合、本方法で用いられ、好ましくは二本鎖DNA産物に組み込まれるホスホロチオエートヌクレオチドはα-S-dGTPであり得る。ホモポリマー配列がポリG配列である場合、本方法で用いられ、好ましくは二本鎖DNA産物に組み込まれるホスホロチオエートヌクレオチドは、α-S-dCTPであり得る。ホモポリマー配列がポリT配列である場合、本方法で用いられ、好ましくは二本鎖DNA産物に組み込まれるホスホロチオエートヌクレオチドは、α-S-dATPであり得る。この方法では、1回の反応で異なるタイプの保護されたヌクレオチドを使用できる。従って、例えば、ホモポリマー配列はpolyA配列であるが、少なくとも2つ、3つ、または4つの異なるタイプの保護されたヌクレオチドがこの方法において使用され得る。好ましくは、α-S-dATP、α-S-dCTP、α-S-dGTP、およびα-S-dTTPの4つすべてがこの方法で使用される。
【0311】
ホモポリマー配列をテンプレートDNA分子に付加することで、DNA産物の相補鎖に保護されたヌクレオチドが1つ付加されることになる。例えば、ポリT配列がテンプレートDNA分子に組み込まれ、すべてのdATPが保護されたα-S-dATPで置換され、増幅中に用いられるとき、得られる産物は保護されたポリ-α-S-dATP末端を含み得る。同様に、8ヌクレオチドのポリA配列がテンプレートDNA分子に組み込まれ、全dTTPの25%が保護されたα-S-dTTPで置換され、増幅中に用いられるとき、得られる産物は、DNA産物の末端領域に平均して2つのα-S-dTTPを含み得る。
【0312】
DNA産物の5’-末端の保護は、本明細書に記載の何れかの方法によって達成できる。同様に、DNA産物の3’-末端の保護は、本明細書に記載の方法によって達成できる。しかしながら、3’末端が保護された直鎖状二本鎖DNA産物を製造する方法は、テンプレートDNA分子にホモポリマー配列を組み込むことを必要としない。例えば、DNAテンプレート分子の増幅は、二本鎖DNA産物を生成するために、保護ヌクレオチドの不存在下で実施できる。二本鎖DNA産物を消化して、目的のDNAカセットの単一ユニットを作製することもできる。DNAカセットは、3’末端に保護ヌクレオチドを組み込むように酵素的に修飾できる。
【0313】
従って、一例において、本方法は、(1)3’劣性末端を生成する制限酵素による二本鎖DNA産物の消化、および(2)保護されたヌクレオチドをDNAポリメラーゼ(例えば、T4 DNAポリメラーゼ、またはDNAポリメラーゼIラージ(Klenow)フラグメント)によって3’陥凹末端(recessive end)に組み込み、保護された3’末端を有する二本鎖DNA産物を生成すること、を含み得る。
【0314】
別の例では、この方法は、(1)二本鎖DNA産物を制限酵素で消化し、平滑末端を生成すること、および(2)保護されたヌクレオチドを用いて、ターミナルトランスフェラーゼ(TdT)により3’平滑末端を伸長すること、を含み得る。
【0315】
末端が保護された直鎖状二本鎖DNA産物、または直鎖状二本鎖DNA産物のライブラリーを作製する方法は、本明細書に記載の方法の組み合わせに依拠し得る。例えば、5’末端の保護は、テンプレート分子中のホモポリマー配列を用いることにより達成され、一方、3’末端の保護は、DNAポリメラーゼにより(制限酵素消化後)保護されたヌクレオチドを3’陥凹末端に組み込むことにより達成され得る。
【0316】
直鎖状DNAを生産するための従来の細胞ベースの方法は、コストが高く、発酵槽で無菌条件下で培養された大量の細菌培養物を使用する必要があるため、かなりの生産拠点を有する。増幅されたDNAをバクテリアから得るには細胞溶解が必要であり、哺乳動物細胞にとって有毒なエンドトキシンを放出する。そのため、特に治療薬として用いるときには、DNA産物を精製してこれらの細菌汚染物質を除去しなければならない。宿主細菌細胞の複雑な生化学的環境は、DNAの収量および品質にばらつきがあるなど、バッチ間の再現性の問題につながり得る。従って、本発明は、ヌクレアーゼ消化(例えば、エキソヌクレアーゼ消化)に対する耐性が改善された直鎖状二本鎖DNA産物を製造する改善された方法を提供する。記載された製造工程は無細胞であってもよく、工程に時間がかからず、かつ経済的である。
【図面の簡単な説明】
【0317】
図面の簡単な説明
本発明は、そのさらなる目的および利点とともに、添付の図面を以下の説明とともに参照することにより最もよく理解され得る。
図1図1は、2’-デオキシヌクレオチド-5’-三リン酸(dNTP)およびホスホロチオ化ヌクレオチド(2’-デオキシヌクレオチド-5’-(α-チオ)-三リン酸;またはα-S-dNTP)の異なる組み合わせの存在下でのPhi29DNApol重合活性を示す。試験したPhi29DNApolの2つの型(野生型およびQualiPhiキメラ)は、提供されたテンプレート(配列番号3)に従って、デオキシヌクレオチドを重合することにより、プライマー分子(配列番号2)を異なる効率で伸長した。条件:2.5nM DNA、30nM Phi29DNApol、10mM MgCl、50nM dNTP、30℃で5分間。
図2図2は、ローリングサークル増幅を用いた直鎖状二本鎖DNA産物の例示的な製造方法を示す。目的のDNAを同じ方向に挟む2つのLoxP配列(配列番号4)を含む基質上のCre組換え酵素の作用により生成された環状DNAテンプレートのローリングサークル増幅(RCA)中に、2’-デオキシヌクレオチド-5’-(α-チオ)-三リン酸を付加することにより、保護された直鎖状DNA分子を得るワークフロー。Cre反応条件:反応量50μl、制限酵素消化後アガロースゲル電気泳動で精製した目的DNA(100ng)、Creリコンビナーゼ(NEB、4ユニット)、インキュベーション時間および温度:37℃で30分、80℃で20分。次いで、増幅工程の前に残存する非環状DNA分子を除去するため、大腸菌エキソヌクレアーゼI(NEB、20ユニット)およびIII(NEB、100ユニット)を添加し、37℃で30分、80℃で20分反応させた。増幅の前に、まず2.5μlの緩衝液D(400mM KOH、10mM EDTA)を加え、室温で3分間インキュベートすることにより、環状化DNAサンプルを変性させた。その後、2.5μlの緩衝液N(400mM HCl、600mM Tris-HCl pH7.5)を加えてサンプルを中和した。ローリングサークル増幅条件50μlの反応液、5μlのTruePrime WGA反応バッファー10x(4basebio)、7.5μlの変性DNAサンプル、5μlのTthPrimPol(1μM)または5μlのランダム合成ヘキサマー(500μM)、0.8μl QualiPhi Phi29DNApol(12,5μM)、2.5ユニットPPase(Thermo)、5μl dNTP(10mM)、2’-デオキシヌクレオチド-5’-(α-チオ)-三リン酸を各場合に指示した割合で添加。培養時間および温度:30℃で20時間、65℃で10分。
図3図3は、本明細書に記載の方法で用いられる例示的なテンプレートDNA分子を示す。哺乳動物発現カセットは、CMVプロモーター(配列番号5)およびエンハンサー(配列番号6)、eGFPレポーター遺伝子(配列番号7)およびSV40ポリAシグナル(配列番号8)によって形成される。発現カセットは、同じ向きを有する2つのLoxP配列(配列番号4)に隣接している。
図4図4は、ホスホロチオエート化ヌクレオチドの存在下および不存在下での増幅収率を示す。具体的には、この図は、保護されていない2’-デオキシヌクレオチド-5’-三リン酸(dNTP)を2’-デオキシヌクレオチド-5’-(α-チオ)-三リン酸(dNTPS)で置換したCre由来の環状DNA分子から得られた増幅収率のPicoGreen定量を示す。増幅条件:反応量50μl、変性DNAサンプル(7.5μl)、100nM TthPrimPolまたは50μMランダム合成ヘキサマー、200nM QualiPhi Phi29DNApol、2.5ユニットPPase(Thermo)、1mM dNTPまたはdNTPS、インキュベーション時間および温度:30℃で20時間、65℃で10分。
図5図5は、ホスホロチオエート化ヌクレオチドの存在下および不存在下での増幅収率を示す。具体的には、この図は、Cre由来の環状DNA分子から得られた増幅収率を、非相補的な対の天然の保護されていない2’-デオキシヌクレオチド-5’-三リン酸(dNTP)をホスホロチオエート化した対応物に置き換えたピコグリーンで定量したものである。増幅条件:反応量50μl、変性DNAサンプル(7.5μl)、100nM TthPrimPolまたは50μMランダム合成ヘキサマー、200nM QualiPhi Phi29DNApol、2.5ユニットPPase(Thermo)、1mM dNTPまたはdNTPS、インキュベーション時間および温度:30℃で20時間、65℃で10分。
図6図6は、ランダムプライマーで得られた増幅DNAのアガロースゲル電気泳動(0.8%)による消化分析を示す。増幅されたDNAを、発現カセットに1つの制限部位しかない幾つかの制限酵素(すなわち、BsaI、NdeI、SmaIおよびXbaI)で消化した。従って、カセットの長さ(約2kb)を反映した単一のバンドがゲル中に見られるはずである。消化条件:反応液量25μl、2.5μl反応バッファーCutSmart 10x(NEB)、400ng DNA、20ユニット BsaI-HFv2(NEB)、20ユニット NdeI(NEB)、20ユニット SmaI(NEB)、20ユニット XbaI(NEB)、インキュベーション時間および温度:25℃(SmaI)または37℃(BsaI、NdeI、XbaI)で60分(BsaI)または15分(NdeI、SmaI、XbaI)。
図7図7は、異なる割合の非修飾ヌクレオチドおよびホスホロチオエート化ヌクレオチドの存在下での増幅収率を示す。具体的には、この図は、4つのヌクレオチドのそれぞれについて、修飾されていない2’-デオキシヌクレオチド-5’-三リン酸(dNTP)および保護された2’-デオキシヌクレオチド-5’-(α-チオ)-三リン酸(dNTPS)の異なる割合を用いて、Cre由来の環状DNA分子から得られた増幅収率のピコグリーン定量を示す。増幅条件:反応量50μl、変性DNAサンプル(7.5μl)、100nM TthPrimPolまたは50μMランダム合成ヘキサマー、200nM QualiPhi Phi29DNApol、2.5ユニットPPase(Thermo)、1mM dNTP/dNTPS、インキュベーション時間および温度:30℃で20時間、65℃で10分。
【0318】
図8図8図8Aおよび8B)は、TthPrimPolと異なる割合の天然ヌクレオチドおよび保護ヌクレオチドを用いて得られた増幅DNAの、アガロースゲル電気泳動(0.8%)による消化分析を示す。増幅されたDNAを、発現カセットに1つの制限部位しかない幾つかの制限酵素(すなわち、BsaI、NdeI、SmaIおよびXbaI)で消化した。従って、カセットの長さ(約2kb)を反映した単一のバンドがゲル中に見られるはずである。消化条件:反応液量25μl、2.5μl反応バッファーCutSmart 10x(NEB)、400ng DNA、20ユニットBsaI-HFv2(NEB)、20ユニットNdeI(NEB)、20ユニットSmaI(NEB)、20ユニットXbaI(NEB)、インキュベーション時間および温度:25℃(SmaI)または37℃(BsaI、NdeI、XbaI)で60分(BsaI)または15分(NdeI、SmaI、XbaI)。
図9図9は、未修飾ヌクレオチドおよび保護ヌクレオチドの割合が異なる増幅および消化DNAからの大腸菌エキソヌクレアーゼIIIの作用に対する保護分析を示す。最初に、増幅したDNAをBsaIで消化した。消化条件:反応液量50μl、反応バッファー5μl CutSmart 10x(NEB)、DNA 2μg、BsaI-HFv2 40ユニット(NEB)、インキュベーション時間および温度:37℃で30分。次に、480ngのBsaI消化DNAをエキソヌクレアーゼIII(10ユニット、NEB)とさらにインキュベートし、保護されていないDNA対照で観察されたように、DNA分解を促進した。エキソヌクレアーゼのインキュベーション時間および温度:37℃で30分、80℃で20分。
図10図10図10A-D)は、高レベルのホスホロチオエート化ヌクレオチドの存在下での増幅収率を示している。具体的には、この図は、4つのヌクレオチドそれぞれについて50%から100%の範囲のdNTPS濃度を用いて、Cre由来の環状DNA分子から得られた増幅収率のPicogreen定量を示す。増幅条件:反応量50μl、変性DNAサンプル(7.5μl)、100nM TthPrimPolまたは50μMランダム合成ヘキサマー、200nM QualiPhi Phi29DNApol、2.5ユニットPPase(Thermo)、1mM dNTP/dNTPS、インキュベーション時間および温度:30℃で20時間、65℃で10分。
図11図11は、ホスホロチオエート化ヌクレオチド(dNTPS)濃度が50%から100%の範囲で得られた増幅DNAのアガロースゲル電気泳動による消化分析を示す。消化条件:反応液量50μl、反応バッファー5μl CutSmart 10x(NEB)、DNA2μg、BsaI-HFv2 40ユニット(NEB)、インキュベーション時間および温度:37℃で30分。
図12図12は、ホスホロチオエート化ヌクレオチド(dATPSおよびdCTPS)濃度が50%から100%の範囲で得られた増幅されたDNAおよび消化されたDNAからの大腸菌エキソヌクレアーゼIIIおよびウシDNAse Iの作用に対する保護分析を示す。最初に、増幅したDNAをBsaIで消化した。消化条件:反応液量50μl、反応バッファー5μl CutSmart 10x(NEB)、DNA2μg、BsaI-HFv2 40ユニット(NEB)、インキュベーション時間および温度:37℃で30分。次に、480ngのBsaI消化DNAを、5mM CaClを添加したエキソヌクレアーゼIII(10ユニット、NEB)またはウシDNAse I(0.0025ユニット、Ambion)とインキュベートした。培養時間と温度37℃で30分。
図13図13は、ホスホロチオエート化ヌクレオチド(dGTPSおよびdTTP*S)濃度が50%から100%の範囲で得られた増幅および消化DNAからの大腸菌エキソヌクレアーゼIIIおよびウシDNAse Iの作用に対する保護分析を示す。最初に、増幅したDNAをBsaIで消化した。消化条件:反応液量50μl、反応バッファー5μl CutSmart 10x(NEB)、DNA2μg、BsaI-HFv2 40ユニット(NEB)、インキュベーション時間および温度:37℃で30分。次に、480ngのBsaI消化DNAを、5mM CaClを添加したエキソヌクレアーゼIII(10ユニット、NEB)またはウシDNAse I(0.0025ユニット、Ambion)と共にインキュベートした。培養時間および温度:37℃で30分。
図14図14は、等モルレベルのホスホロチオエート化ヌクレオチドの存在下での増幅収率を示す。具体的には、この図は、2.5%から50%の範囲の濃度の4つのdNTPSの等モル混合物を用いた、Cre由来の環状DNA分子から得られた増幅収率のPicogreen定量を示す。増幅条件:反応量50μl、変性DNAサンプル(7.5μl)、100nM TthPrimPolまたは50μMランダム合成ヘキサマー、200nM QualiPhi Phi29DNApol、2.5ユニットPPase(Thermo)、1mM dNTP/dNTPS、インキュベーション時間および温度:30℃で20時間、65℃で10分。
図15図15は、2.5%から50%の範囲の濃度の4つのdNTPSの等モル混合物で得られた増幅および消化されたDNAからの大腸菌エキソヌクレアーゼIIIおよびウシDNAse Iの作用に対する保護分析を示す。最初に、増幅したDNAをBsaIで消化した。消化条件:反応液量50μl、反応バッファー5μl CutSmart 10x(NEB)、DNA2μg、BsaI-HFv2 40ユニット(NEB)、インキュベーション時間および温度:37℃で30分。次に、480ngのBsaI消化DNAを、5mM CaClを添加したエキソヌクレアーゼIII(10ユニット、NEB)またはウシDNAse I(0.0025ユニット、Ambion)と共にインキュベートした。培養時間および温度:37℃で30分。
図16図16は、本明細書に記載の方法で用いる例示的なテンプレートDNA分子を示す。プラスミドDNAを構成する要素を基質として用いて、保護された2’-デオキシヌクレオチド-5’-(α-チオ)-三リン酸を含むDNAがインビトロで転写されることを評価した。発現カセットは、T7プロモーター(配列番号9)およびルシフェラーゼレポーター遺伝子(配列番号10)によって形成される。発現カセットはNsiI制限部位に隣接している。
図17図17は、異なる割合のホスホロチオエート化ヌクレオチドの存在下での増幅収率を示す。具体的には、この図は、dATP、dCTPおよびdGTPについて、修飾されていない2’-デオキシヌクレオチド-5’-三リン酸(dNTP)および保護された2’-デオキシヌクレオチド-5’-(α-チオ)-三リン酸(dNTPS)の異なる割合を用いて、Cre由来の環状DNA分子から得られた増幅収率のピコグリーン定量を示す。増幅条件:反応量50μl、変性DNAサンプル(7.5μl)、100nM TthPrimPolまたは50μMランダム合成ヘキサマー、200nM QualiPhi Phi29DNApol、2.5ユニットPPase(Thermo)、1mM dNTP/dNTPS、インキュベーション時間および温度:30℃で20時間、65℃で10分。
【0319】
図18図18は、アガロースゲル電気泳動(0.8%)による増幅DNAの消化分析を示す。増幅されたDNAを、発現カセットに隣接する2つの制限部位を有するNsiIで消化した。目的のフラグメント(1.7kb)に対応する単一のバンドは、2回目の消化が必要な50%dATPS(パートB)を除けば、すべての場合(パートA)で観察された。消化条件:反応液量500μl、反応バッファー50μl CutSmart 10x(NEB)、DNA50μg、NsiI 312ユニット(NEB)、インキュベーション時間および温度:37℃で60分、80℃で20分。
図19図19は、T7 RNAポリメラーゼを用いたインビトロ転写で生成したmRNA、および生成したDNA産物のQubit定量を示す(図17および図18参照)。反応条件:反応液量20μl、2μl反応バッファー T7 RNA pol 反応緩衝液10x(NEB)、DNA1μg、T7 RNAポリメラーゼ100(NEB)、2mM NTP、インキュベーション時間および温度:37℃で120分間。その後、DNAse I(4U、Ambion)を加えてテンプレートDNAを除去し、37℃で15分間インキュベートした。
図20図20は、様々なレベルのホスホロチオエート化を有する直鎖状二本鎖DNAをカプセル化したLipofectamine 2000でトランスフェクトしたHEK293細胞におけるGFP発現および中央蛍光強度(MFI)を示す。GFP発現はトランスフェクション後48時間、72時間、96時間で測定した。すべての実験で、n=3、エラーバー=S.D.。
図21図21は、市販のトランスフェクション試薬PolyPlus-jetOPTIMUSでトランスフェクションしたHEK293細胞でのGFP発現を示しており、様々なレベルのホスホロチオエート化-2.5%、5%、7.5%、10%、12.5%のdNTPαSでDNAを封入している。GFP発現はトランスフェクション後48時間で測定した。すべての実験で、n=3、エラーバー=SD。
図22図22は、市販のトランスフェクション試薬Lipofectamine 2000でトランスフェクションしたHEK293細胞におけるルシフェラーゼ発現を示す。ルシフェラーゼ発現はトランスフェクション後48時間で測定した。すべての実験でn=3。
図23図23は、HEK293細胞にトランスフェクトした、様々なDNAテンプレート由来のmRNAサンプルのタンパク質mgあたりのルシフェラーゼ発現(RLU)を示す。具体的には、この図はホスホロチオエート化ヌクレオチドを0%から50%含むDNAテンプレートをインビトロ転写テンプレートとして用いた場合の影響を示す。
図24図24は、T7 RNAポリメラーゼと異なるDNAテンプレートを用いてインビトロで転写されたmRNAから生成された収量を示す。
図25図25は、ネイティブ0.8%アガロースゲル電気泳動によって画像化されたインビトロ転写mRNAサンプルを示す。mRNAサンプルは、dGTPS保護が0%から50%の範囲のDNAテンプレートから転写された。
図26図26は、変性0.8%アガロースゲル電気泳動で画像化したインビトロ転写mRNAサンプルである。mRNAサンプルは、dGTPS保護が0%から50%の範囲のDNAテンプレートから転写された。
図27図27は、ルシフェラーゼをコードする5ugのプラスミドDNA、または0%、5%、10%のdNTPαSを含む等モル量の直鎖二本鎖DNAをエレクトロポレーションしたマウスにおけるインビボルシフェラーゼ発現を示す。
【発明を実施するための形態】
【0320】
本明細書で定義される各局面または各態様は、明確に否定されない限り、他の局面(複数可)または態様(複数可)と組み合わせることができる。特に、好ましいまたは有利であると示された何れかの特徴は、好ましいまたは有利であると示された他の特徴(複数可)と組み合わせることができる。
【0321】
上記の詳細な説明は、説明および例示のために提供されたものであり、添付の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。本明細書に例示した現在好ましい態様における多くの変形は、当業者には明らかであり、添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内であり得る。
【0322】
本発明はさらに以下の項に記載される:
保護ヌクレオチドを含む製品
1.センス鎖およびアンチセンス鎖を含む直鎖状二本鎖DNA産物であって、該直鎖状二本鎖DNA産物が、各鎖の内部位置に1以上のホスホロチオエート化ヌクレオチドを含む、直鎖状二本鎖DNA産物。
2.単一カセットをさらに含む、項1に記載の直鎖状二本鎖DNA産物。
3.単一カセットがコーディング配列を含む、項1または2に記載の直鎖状二本鎖DNA産物。
4.カセットがプロモーターおよびコーディング配列を含む、項1から3のいずれか一項に記載の直鎖状二本鎖DNA産物。
5.カセットが、プロモーター、コーディング配列、リボソーム結合部位および翻訳終結配列を含む、項1から4のいずれか一項に記載の直鎖状二本鎖DNA産物。
6.カセットが哺乳動物発現カセットである、項1から5のいずれか一項に記載の直鎖状二本鎖DNA産物。
7.カセットが目的の遺伝子の単一コピーを含む、項1から6のいずれか一項に記載の直鎖状二本鎖DNA産物。
8.カセットが目的の遺伝子の単一コピーを含む、項1から7のいずれか一項に記載の直鎖状二本鎖DNA産物。
9.各鎖の内部位置にある1以上のホスホロチオエート化ヌクレオチドが、
(a)カセットの5’末端ヌクレオチド;
(b)カセットの3’末端ヌクレオチド;および
(c)カセットの外側のヌクレオチド
から選択され得る、項2から8のいずれか一項に記載の直鎖二本鎖DNA産物。
10.各鎖の内部位置に少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドを含む、項2から9のいずれか一項に記載の直鎖状二本鎖DNA産物であって、各鎖の内部位置の少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドが、
(a)カセットの5’末端ヌクレオチド;
(b)カセットの3’末端ヌクレオチド;および
(c)カセットの外側の1以上のヌクレオチド
から選択される、直鎖二本鎖DNA産物。
11.センス鎖において、
(a)少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、カセットの5’末端ヌクレオチドであり;そして/または、
(b)少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうち1つは、センス鎖の第1の領域にあり、ここで、センス鎖の第1の領域はカセットの5’である、
項10に記載の直鎖状二本鎖DNA産物。
12.センス鎖において、
(a)少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、カセットの3’末端ヌクレオチドであり;そして/または、
(b)少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、センス鎖の第2の領域にあり、ここで、センス鎖の第2の領域はカセットの3’である、
項10または11に記載の直鎖状二本鎖DNA産物。
13.(a)センス鎖において、少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、カセットの5’末端ヌクレオチドであり、および/または、少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、センス鎖の第1の領域にあり、ここで、センス鎖の第1の領域は、カセットの5’であり;
(b)センス鎖において、少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、カセットの3’末端ヌクレオチドであり、および/または、少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、センス鎖の第2の領域にあり、ここで、センス鎖の第2の領域は、カセットの3’であり;
(c)アンチセンス鎖において、少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、カセットの5’末端ヌクレオチドであり、および/または、少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、アンチセンス鎖の第1の領域にあり、ここで、アンチセンス鎖の第1の領域は、カセットの5’であり;ならびに、
(d)アンチセンス鎖において、少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、カセットの3’末端ヌクレオチドであり、および/または、少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、アンチセンス鎖の第2の領域にあり、ここで、アンチセンス鎖の第2の領域は、カセットの3’である
項10に記載の直鎖状二本鎖DNA産物。
【0323】
14.直鎖状二本鎖DNA産物がオーバーハングを含み、要すれば、直鎖状二本鎖DNA産物が、
(a)5’オーバーハングおよび平滑末端;
(b)2つの5’オーバーハング;
(c)3’オーバーハングおよび平滑末端;
(d)2つの3’オーバーハング;および/または
(e)5’オーバーハングおよび3’オーバーハング
を含んでいてもよい、項1から13のいずれか一項に記載の直鎖状二本鎖DNA産物。
15.項1から14のいずれか一項に記載の直鎖状二本鎖DNA産物および機能性部分を含む複合体分子であって、要すれば、該機能性部分が結合分子またはプローブである、複合体分子。
16.項1から14のいずれか一項に記載の直鎖状二本鎖DNA産物、または項15に記載の複合体分子を含む、ナノ粒子。
17.少なくとも2つの直鎖状二本鎖DNA産物を含むライブラリーであって、各二本鎖DNA産物が、項1から14のいずれか一項に定義される通りである、ライブラリー。
18.少なくとも2つの複合体分子を含むライブラリーであって、各複合体分子が項15項に定義される通りである、ライブラリー。
19.項1から14のいずれか一項に記載の直鎖状二本鎖DNA産物、項15に記載の複合体分子、項16に記載のナノ粒子または項17もしくは18に記載のライブラリーを含む、組成物。
20.項19に記載の組成物および薬学的に許容される希釈剤を含む、医薬組成物。
21.項1から14のいずれか一項に記載の直鎖状二本鎖DNA産物、項15に記載の複合体分子、項16に記載のナノ粒子または項17もしくは18に記載のライブラリー、項19に記載の組成物、または項20に記載の医薬組成物を含む、細胞。
【0324】
保護ヌクレオチドを含む生成物の使用
22.治療に用いるための、項1~14のいずれか一項に記載の直鎖状二本鎖DNA産物、項15に記載の複合体分子、項16に記載のナノ粒子、項17もしくは18に記載のライブラリー、項19に記載の組成物、または項20に記載の医薬組成物。
23.RNAの産生における、項1~14のいずれか一項に記載の直鎖状二本鎖DNA産物、項15に記載の複合体分子、項16に記載のナノ粒子、項17もしくは18に記載のライブラリー、項19に記載の組成物、または項20に記載の医薬組成物の使用。
24.RNAが、mRNA、miRNA、dsRNA、shRNA、gRNAまたはアンチセンスRNAである、項22に記載の使用。
25.ナノ粒子の製造における、項1から14のいずれか一項に記載の直鎖状二本鎖DNA産物、項15に記載の複合体分子、項17もしくは18に記載のライブラリー、項19に記載の組成物、または項20に記載の医薬組成物の使用。
26.ワクチンの製造における、項1から14のいずれか一項に記載の直鎖状二本鎖DNA産物、項15に記載の複合体分子、項16に記載のナノ粒子、項17もしくは18に記載のライブラリー、項19に記載の組成物、または項20に記載の医薬組成物の使用。
27.CAR-T細胞の産生における、項1から14のいずれか一項に記載の直鎖状二本鎖DNA産物、項15に記載の複合体分子、項16に記載のナノ粒子、項17もしくは18に記載のライブラリー、項19に記載の組成物、または項20に記載の医薬組成物の使用。
28.非ウイルス送達系の製造における、項1から14のいずれか一項に記載の直鎖状二本鎖DNA産物、項15に記載の複合体分子、項16に記載のナノ粒子、項17もしくは18に記載のライブラリー、項19に記載の組成物、または項20に記載の医薬組成物の使用。
29.ウイルス送達システムの製造における、項1から14のいずれか一項に記載の直鎖状二本鎖DNA産物、項15に記載の複合体分子、項16に記載のナノ粒子、項17もしくは18に記載のライブラリー、項19に記載の組成物、または項20に記載の医薬組成物の使用。
30.ウイルス送達系がウイルスベクター、要すればAVVベクターまたはレンチウイルスベクターである、項28の使用。
31.非ウイルス送達系の製造における、項1から14のいずれか一項に記載の直鎖状二本鎖DNA産物、項15に記載の複合体分子、項16に記載のナノ粒子、項17もしくは18に記載のライブラリー、項19に記載の組成物、または項20に記載の医薬組成物の使用。
32.CRISPR送達系の製造における、項1から14のいずれか一項に記載の直鎖状二本鎖DNA産物、項15に記載の複合体分子、項16に記載のナノ粒子、項17もしくは18に記載のライブラリー、項19に記載の組成物、または項20に記載の医薬組成物の使用。
33.細胞治療に用いるための、項1から14のいずれか一項に記載の直鎖状二本鎖DNA産物、項15に記載の複合体分子、項16に記載のナノ粒子、項17もしくは18に記載のライブラリー、項19に記載の組成物、または項20に記載の医薬組成物。
34.遺伝子治療に用いるための、項1から14のいずれか一項に記載の直鎖状二本鎖DNA産物、項15に記載の複合体分子、項16に記載のナノ粒子、項17もしくは18に記載のライブラリー、項19に記載の組成物、または項20に記載の医薬組成物。
【0325】
直鎖状二本鎖DNA産物の使用方法
35.(a)項1から14のいずれか一項に記載の直鎖状二本鎖DNA産物をポリメラーゼと接触させる工程;および、
(b)転写産物を生産する工程
を含む、インビトロ転写のための方法。
36.(a)項15に記載の複合体分子をポリメラーゼと接触させる工程;および、
(b)転写産物を生産する工程
を含む、インビトロ転写のための方法。
37.項1から14のいずれか一項に記載の直鎖状二本鎖DNA産物を、原核細胞、真核細胞または無細胞タンパク質発現系に導入して、所望のRNAまたはタンパク質を生成する工程を含む、タンパク質の発現方法。
38.項15に記載の複合体分子を、原核細胞、真核細胞または無細胞タンパク質発現系に導入し、所望のRNAまたはタンパク質を産生する工程を含む、タンパク質の発現方法。
39.トランスフェクションされる細胞を、項1から14のいずれか一項に記載の直鎖状二本鎖DNA産物、項15に記載の複合体分子、項16に記載のナノ粒子、項17もしくは18に記載のライブラリー、項19に記載の組成物、または項20に記載の医薬組成物と接触させることを含む、細胞トランスフェクション方法であって、該直鎖状二本鎖DNA産物、複合体分子、ナノ粒子、ライブラリー、組成物または医薬組成物が細胞の細胞質にトランスフェクトされる、細胞トランスフェクション方法。
【0326】
直鎖状二本鎖DNA産物の製造方法
40.(a)少なくとも1種のホスホロチオエート化ヌクレオチドの存在下で、少なくとも1種のエンドヌクレアーゼ標的配列を含むDNAテンプレート分子をローリングサークル増幅させて、二本鎖DNA産物を生成する工程、
(b)二本鎖DNA産物を少なくとも1つのエンドヌクレアーゼと接触させて、項1から14のいずれか一項に記載の直鎖状二本鎖DNA産物を生成する工程であって、ここで、直鎖状二本鎖DNA産物は、エキソヌクレアーゼに対して増大した耐性を有する、工程
を含む、項1から14のいずれか一項に記載の直鎖状二本鎖DNA産物の製造方法。
41.末端が保護された直鎖状二本鎖DNA産物を製造する方法であって、
(a)DNAテンプレート分子に少なくとも1つのホモポリマー配列を付加する工程、
(b)少なくとも1つのエンドヌクレアーゼ標的配列および少なくとも1つのホモポリマー配列を含むDNAテンプレート分子を、少なくとも1種の保護ヌクレオチドの存在下で増幅させて、二本鎖DNA産物を生成する工程、
(c)二本鎖DNA産物を少なくとも1つのエンドヌクレアーゼと接触させて、直鎖状二本鎖DNA産物を生成する工程、および
(d)直鎖状二本鎖DNA産物をエキソヌクレアーゼと接触させ、末端が保護された直鎖状二本鎖DNA産物を生成する工程
を含む、製造方法。
【0327】
さらなる製品、方法、用途
42.センス鎖およびアンチセンス鎖を含む直鎖状二本鎖DNA産物であって、該直鎖状二本鎖DNA産物が、単一カセットおよび各鎖の内部位置に少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドを含み、各鎖の内部位置にある少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドが、
(a)カセットの5’末端ヌクレオチド;
(b)カセットの3’末端ヌクレオチド;および
(c)カセットの外側の1以上のヌクレオチド
から選択され、ここで、カセットはコーディング配列を含む、直鎖状二本鎖DNA産物。
43.センス鎖において、
(a)少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、カセットの5’末端ヌクレオチドであり;そして/または
(b)少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドの1つは、センス鎖の第1の領域にあり、センス鎖の第1の領域はカセットの5’である、
項42に記載の直鎖状二本鎖DNA産物。
44.センス鎖において、
(a)少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、カセットの3’末端ヌクレオチドであり;そして/または
(b)少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドの1つは、センス鎖の第2の領域にあり、センス鎖の第2の領域はカセットの3’である、
項42または43に記載の直鎖状二本鎖DNA産物。
45.(a)センス鎖において、少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、カセットの5’末端ヌクレオチドであり、および/または、少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、センス鎖の第1の領域にあり、ここで、センス鎖の第1の領域は、カセットの5’である;
(b)センス鎖において、少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、カセットの3’末端ヌクレオチドであり、および/または、少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、センス鎖の第2の領域にあり、ここで、センス鎖の第2の領域は、カセットの3’である;
(c)アンチセンス鎖において、少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、カセットの5’末端ヌクレオチドであり、および/または少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、アンチセンス鎖の第1の領域にあり、ここで、アンチセンス鎖の第1の領域は、カセットの5’である;および、
(d)アンチセンス鎖において、少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、カセットの3’末端ヌクレオチドであり、および/または、少なくとも2つのホスホロチオエート化ヌクレオチドのうちの1つは、アンチセンス鎖の第2の領域にあり、ここで、アンチセンス鎖の第2の領域は、カセットの3’である、
項42に記載の直鎖状二本鎖DNA産物。
46.直鎖状二本鎖DNA産物がオーバーハングを含み、要すれば、直鎖状二本鎖DNA産物が、
(a)5’オーバーハングおよび平滑末端;
(b)2つの5’オーバーハング;
(c)3’オーバーハングおよび平滑末端;
(d)2つの3’オーバーハング;および/または
(e)5’オーバーハングおよび3’オーバーハング
を含んでいてもよい、項42から45のいずれか一項に記載の直鎖状二本鎖DNA産物。
47.項42から46のいずれか一項に記載の直鎖状二本鎖DNA産物および機能性部分を含む複合体分子であって、要すれば、機能性部分が結合分子またはプローブであってもよい、複合体分子。
48.項42から46のいずれか一項に記載の直鎖状二本鎖DNA産物、または項47に記載の複合体分子を含む、ナノ粒子。
49.少なくとも2つの直鎖状二本鎖DNA産物を含むライブラリーであって、各二本鎖DNA産物が項42から46のいずれか一項に定義されるものである、ライブラリー。
50.治療に使用するための、項42から46のいずれか一項に記載の直鎖状二本鎖DNA産物、項47に記載の複合体分子、項48に記載のナノ粒子または項49に記載のライブラリー。
51.RNAの産生における、項42から46のいずれか一項に記載の直鎖状二本鎖DNA産物、項47に記載の複合体分子、項48に記載のナノ粒子、または項49に記載のライブラリーの使用であって、要すれば、RNAがmRNAであってもよい、使用。
52.ナノ粒子の製造における、項42から46のいずれか一項に記載の直鎖状二本鎖DNA産物、項47に記載の複合体分子、項48に記載のナノ粒子、または項49に記載のライブラリーの使用。
53.インビトロ転写のための方法であって、
(a)項42から46のいずれか一項に記載の直鎖状二本鎖DNA産物をポリメラーゼと接触させる工程;および、
(b)転写産物を生産する工程
を含む、方法。
54.タンパク質の発現方法であって、
項42から46のいずれか一項に記載の直鎖状二本鎖DNA産物を、原核細胞、真核細胞または無細胞タンパク質発現系に導入し、所望のRNAまたはタンパク質を生成する工程を含む、方法。
55.(a)少なくとも1種のホスホロチオエート化ヌクレオチドの存在下で、少なくとも1種のエンドヌクレアーゼ標的配列を含むDNAテンプレート分子をローリングサークル増幅させて、二本鎖DNA産物を生成する工程、
(b)二本鎖DNA産物を少なくとも1つのエンドヌクレアーゼと接触させて、項42から46のいずれか一項に記載の直鎖状二本鎖DNA産物を生成し、ここで、前記直鎖状二本鎖DNA産物がエキソヌクレアーゼに対して増大した耐性を有する、工程
を含む、項42から46のいずれか一項に記載の直鎖状二本鎖DNA産物の製造方法。
【実施例
【0328】
実施例
以下の限定されない実施例は、本発明をさらに説明するものである。
【0329】
実施例1:Phi29 DNAポリメラーゼは2’-デオキシヌクレオチド-5’-(α-チオ)-三リン酸を効率的に使用する
図1に示すのは、2’-デオキシヌクレオチド-5’-三リン酸(dNTP)、およびαリン酸の酸素原子が硫黄原子に置換されたヌクレオチド(2’-デオキシヌクレオチド-5’-(α-チオ)-三リン酸:dNTPS)の異なる組み合わせの存在下での、野生型およびキメラPhi29 DNAポリメラーゼ(Phi29DNApol)によるテンプレート/プライマー分子の伸長である。この改変は、3’→5’または5’→3’核酸分解活性を有する酵素によるDNA分解を防ぐ。なぜなら、形成されたホスホジエステル結合は、dNTPSがDNAプライマーに組み込まれる際に酵素によって切断されなくなるからである。
【0330】
Phi29 DNAポリメラーゼキメラ(“QualiPhi”; de Vega et al. “Improvement of φ29 DNA polymerase amplification performance by fusion of DNA binding motifs.” Proceedings of the National Academy of Sciences 107.38 (2010): 16506-16511)は、dNTPとdNTPSの異なる組み合わせの存在下で、常に最大12個のデオキシヌクレオチドを重合して、テンプレート/プライマー分子を伸長することができた。野生型Phi29 DNAポリメラーゼは、例えば2’-デオキシグアノシン-5’-(α-チオ)-三リン酸(dGTPS)を用いたときにも、DNA基質の完全な伸長を示すことができた。Phi29 DNAポリメラーゼキメラは、対応する野生型DNAポリメラーゼよりも、テンプレート/プライマー分子を伸長するのにより有効であった。
反応条件2.5nM DNA、30nM Phi29DNApol、10mM MgCl、50nM dNTPs、30℃で5分間。反応を8M尿素存在下、20%ポリアクリルアミドゲル上で行った。
【0331】
実施例2:異なる2’-デオキシヌクレオチド-5’-(α-チオ)-トリホスフェートの存在下でのテンプレートDNA分子のローリングサークル増幅は、TthPrimPolまたはランダム合成プライマーによって誘発され得る
ローリングサークル増幅は、ランダム合成プライマー(Dean et al. “Rapid amplification of plasmid and phage DNA using phi29 DNA polymerase and multiply-primed rolling circle amplification.” Genome research 11.6 (2001): 1095-1099)または増幅反応中にPhi29 DNAポリメラーゼのプライマーを合成するTthPrimPolのようなDNAプライマーゼ(Picher et al. “TruePrime is a novel method for whole-genome amplification from single cells based on Tth PrimPol.” Nature communications 7.1 (2016): 1-16)によって開始できる。
【0332】
図4は、保護されていないヌクレオチドをdNTPSに置換したCre由来の環状DNA分子(テンプレートDNA分子)から得られた増幅率を示す。1つのdNTPをその保護された対応物に完全に置換すると、TthPrimPolまたはランダムプライマーを使用した場合の両方で、増幅率の有意な減少を引き起こした。この効果は、特にdATPおよびdTTPの場合、2つの相補的dNTPをホスホロチオエート化したものに置き換えると、さらに増強された。4つのdNTPSを同時に使用したとき、いずれの場合も増幅は観察されなかった。増幅条件:反応量50μl、変性DNAサンプル(7.5μl)、100nM TthPrimPolまたは50μMランダム合成ヘキサマー、200nM QualiPhi Phi29DNApol、2.5ユニットPPase(Thermo)、1mM dNTPまたはdNTPS、インキュベーション時間および温度:30℃で20時間、65℃で10分。
【0333】
図5は、TthPrimPolまたはランダムプライマーを用いて、非相補的なdNTPSペアの存在下で得られた増幅率を示す。ランダムプライマーの場合、観察された増幅率は、試験したすべての組み合わせで同様であった。一方、TthPrimPol反応は、dTTPSがペアに存在すると完全に阻害された(図4および5参照)。dTTPSなしで試験した他のペアも同様の増幅レベルを示した(図4および図5参照)。増幅条件:反応量50μl、変性DNAサンプル(7.5μl)、100nM TthPrimPolまたは50μMランダム合成ヘキサマー、200nM QualiPhi Phi29DNApol、2.5ユニットPPase(Thermo)、1mM dNTPまたはdNTPS、インキュベーション時間および温度:30℃で20時間、65℃で10分。
【0334】
増幅されたDNAは、発現カセットに1つの制限部位しかないいくつかの制限酵素(すなわちBsaI、NdeI、SmaIおよびXbaI)で消化した。従って、カセットの長さ(約2kb)を反映した単一のバンドがゲル中に見られるはずである。消化条件:反応液量25μl、2.5μlの反応バッファーCutSmart 10x(NEB)、400ng DNA、20ユニットのBsaI-HFv2(NEB)、20ユニットのNdeI(NEB)、20ユニットのSmaI(NEB)、20ユニットのXbaI(NEB)、インキュベーション時間および温度:25℃(SmaI)または37℃(BsaI、NdeI、XbaI)で60分(BsaI)または15分(NdeI、SmaI、XbaI)。図6は、ランダムプライマーで得られた増幅DNAを複数の制限酵素で消化し、1ユニットサイズの発現カセットを遊離させたアガロースゲル電気泳動分析を示す(図3参照)。1つのdNTPをその保護された対応物に完全に置換すると、増幅されたDNAの長さが著しく減少し、発現カセットに1つの制限部位しか有さないいくつかの酵素で消化した後、単一のDNAバンドを放出できなくなった。未修飾dNTPsで得られた対照DNAは、すべてのケースで期待通りの結果(2kbの単一DNAバンド)を示した。
【0335】
実施例3:異なる濃度の2’-デオキシヌクレオチド-5’-(α-チオ)-三リン酸の存在下でのテンプレートDNA分子のローリングサークル増幅は、制限エンドヌクレアーゼでの消化後の直鎖状二本鎖DNA産物の産生を可能にする
図7は、4つのヌクレオチドのそれぞれについて、未修飾dNTPおよび保護dNTPの異なる割合を用いて、Cre由来の環状DNA分子から得られた増幅率を示す。この4つのケースでは、保護ヌクレオチドの濃度が高いほど、増幅収率は低くなった。25%のdATPSおよび25%のdTTPSは、未修飾のdNTPsのみで行った対照と比較して減少を生じず、25%のdGTPSおよび25%のdCTPSは、対照と比較してわずかな減少しか生じなかった。従って、ヌクレオチドの25%をホスホロチオエート化ヌクレオチドに置換しても、増幅収率に支障はない。増幅条件:反応量50μl、変性DNAサンプル(7.5μl)、100nM TthPrimPolまたは50μMランダム合成ヘキサマー、200nM QualiPhi Phi29DNApol、2.5ユニットのPPase(Thermo)、1mM dNTP/dNTPS、インキュベーション時間および温度:30℃で20時間、65℃で10分。
【0336】
増幅されたDNAを、発現カセットに1つの制限部位しかないいくつかの制限酵素(すなわちBsaI、NdeI、SmaIおよびXbaI)で消化した。従って、カセットの長さ(約2kb)を反映した単一のバンドがゲル中に見られるはずである。消化条件:反応液量25μl、2.5μl反応バッファーCutSmart 10x(NEB)、400ng DNA、20ユニットのBsaI-HFv2(NEB)、20ユニットのNdeI(NEB)、20ユニットのSmaI(NEB)、20ユニットのXbaI(NEB)、インキュベーション時間および温度:25℃(SmaI)または37℃(BsaI、NdeI、XbaI)で60分(BsaI)または15分(NdeI、SmaI、XbaI)。図8は、TthPrimPolと異なる濃度のdNTPSを用いて得られた増幅DNAを、発現カセットを遊離させるためにいくつかの制限酵素で消化した後のアガロースゲル電気泳動分析である。ランダムプライマーで以前に観察されたように(図6を参照)、1つのdNTPをその保護された対応物に完全に置換すると、増幅されたDNAの長さが著しく減少し、いくつかの制限酵素で消化した後に単一のDNAバンドを効率的に放出できなくなった。逆に、濃度を25%または50%に下げると、ほとんどすべてのケースで目的のDNAが得られやすくなった。ある種の酵素によるDNAサンプルの非効率的な消化は、それらの酵素が、保護されたdNTPが組み込まれる可能性のある位置で核分解作用を行い、消化が起こらないという事実によって説明できる。
【0337】
実施例4:異なる濃度の2’-デオキシヌクレオチド-5’-(α-チオ)-三リン酸の存在下での鋳型DNA分子のローリングサークル増幅は、エキソヌクレアーゼからの保護を可能にする。
図9は、TthPrimPolと異なる濃度のdNTPSを用いて得られた増幅および消化DNAのアガロースゲル電気泳動分析を示す。増幅DNAをまずBsaIで消化し、次に大腸菌エキソヌクレアーゼIII(二本鎖DNA特異的エキソヌクレアーゼ)と共にインキュベートした。消化条件:反応液量50μl、反応バッファー5μl CutSmart 10x(NEB)、DNA 2μg、BsaI-HFv2 40ユニット(NEB)、インキュベーション時間および温度:37℃で30分。次に、480ngのBsaI消化DNAをエキソヌクレアーゼIII(10ユニット、NEB)と共にさらにインキュベートし、保護されていないDNA対照で観察されたように、DNA分解を促進した。エキソヌクレアーゼのインキュベーション時間および温度:37℃で30分、80℃で20分。
【0338】
25%または50%のdATPS、dGTPSまたはdTTPSの存在は、dNTPS(対照DNA)の不存在下で観察されたDNA分解を妨げた。dCTPSは50%でいくらかの保護をもたらした。
【0339】
図10は、50%から100%の範囲のdNTPS濃度を用いてCre由来の環状DNA分子から得られた増幅率を示す。増幅条件:反応量50μl、変性DNAサンプル(7.5μl)、100nM TthPrimPolまたは50μMランダム合成ヘキサマー、200nM QualiPhi Phi29DNApol、2.5ユニットPPase(Thermo)、1mM dNTP/dNTPS、インキュベーション時間および温度:30℃で20時間、65℃で10分。図7ですでに観察されたように、増幅率は4つの場合でdNTPSの量に反比例した。
【0340】
図11は、TthPrimPolおよびdNTPSの濃度が50%から100%の範囲で得られた増幅および消化DNAのアガロースゲル電気泳動分析を示す。消化条件:反応液量50μl、反応バッファー5μl CutSmart 10x(NEB)、DNA 2μg、BsaI-HFv2 40ユニット(NEB)、インキュベーション時間および温度:37℃で30分。dNTPS濃度が50%以上になると、目的の分子を得る能力が著しく低下した。GTPSおよびdTTPSは増幅されたDNAの長さの減少を引き起こし、標的分子の生成を妨げた。一方、dATPSおよびdCTPSは、発現カセットの単一ユニットを遊離するBsaIの能力を低下させた。こうして、標的DNA分子の二量体、三量体および四量体がアガロースゲルに現れた。したがって、dNTPSの濃度は50%以下が好ましい。
【0341】
図12および図13は、dNTPS濃度が50%から100%の範囲で得られたDNAの、大腸菌エキソヌクレアーゼIIIおよびウシDNAse Iによる分解に対する保護結果を示す。消化条件:反応液量50μl、反応バッファー5μl CutSmart 10x(NEB)、DNA 2μg、BsaI-HFv2 40ユニット(NEB)、インキュベーション時間および温度:37℃で30分。次に、480ngのBsaI消化DNAを、5mM CaClを添加したエキソヌクレアーゼIII(10ユニット、NEB)またはウシDNAse I(0.0025ユニット、Ambion)と共にインキュベートした。培養時間および温度:37℃で30分。dATPSおよびdCTPSを用いて産生された標的分子の単体、ならびに二量体、三量体および四量体は、エキソヌクレアーゼIIIの作用から完全に保護される(図12参照)。dGTPSおよびdTTPSで観察された単一ユニットもまた、エキソヌクレアーゼIIIから完全に保護される(図13参照)。しかしながら、どのサンプルもDNAse Iに対する保護作用を示さず、試験したdNTPSおよびその濃度とは無関係に、同じ分解パターンを示した。
【0342】
実施例5:4つの2’-デオキシヌクレオチド-5’-(α-チオ)-三リン酸の等モル混合物の存在下でのテンプレートDNA分子のローリングサークル増幅は、エキソヌクレアーゼからの保護も可能にする。
図14は、2.5%から50%の範囲の濃度の4つのdNTPSの等モル混合物(blend)を用いた、Cre由来の環状DNA分子から得られた増幅率を示す。増幅条件:反応量50μl、変性DNAサンプル(7.5μl)、100nM TthPrimPolまたは50μMランダム合成ヘキサマー、200nM QualiPhi Phi29DNApol、2.5ユニットPPase(Thermo)、1mM dNTP/dNTPS、インキュベーション時間および温度:30℃で20時間、65℃で10分。単一dNTPSの濃度が高くなるにつれて既に観察されたように、増幅率は用いた4つのdNTPSの総量に反比例した。
【0343】
図15は、2.5%から50%の範囲の濃度の4つのdNTPSの等モル混合物で得られたDNAの、大腸菌エキソヌクレアーゼIIIおよびウシDNAse Iによる分解に対する保護結果を示す。消化条件:反応液量50μl、反応バッファー5μl CutSmart 10x(NEB)、DNA 2μg、BsaI-HFv2 40ユニット(NEB)、インキュベーション時間および温度:37℃で30分。次に、480ngのBsaI消化DNAを、5mM CaClを添加したエキソヌクレアーゼIII(10ユニット、NEB)またはウシDNAse I(0.0025ユニット、Ambion)と共にインキュベートした。培養時間および温度:37℃で30分。試験した最低濃度(2.5%)でさえ、エキソヌクレアーゼIIIの作用に対して一定の保護効果を示した。高濃度でも完全な保護を示したが、二量体、三量体、四量体が出現し、dNTPSの濃度に比例して増加した。単一のdNTPSですでに観察されたように、どのサンプルもDNAse Iに対する保護作用を示さず、ブレンドの濃度とは無関係に同じ分解パターンを示した。
【0344】
実施例6:保護されたDNAはT7 RNAポリメラーゼによってインビトロで適切に転写される
図17は、異なる割合の非修飾およびホスホロチオエート化dNTP(dATP、dCTPおよびdGTP)を用いて、Cre由来の環状DNA分子から得られた増幅率を示す。増幅条件:反応量50μl、変性DNAサンプル(7.5μl)、100nM TthPrimPolまたは50μMランダム合成ヘキサマー、200nM QualiPhi Phi29DNApol、2.5ユニットPPase(Thermo)、1mM dNTP/dNTPS、インキュベーション時間および温度:30℃で20時間、65℃で10分。テンプレートDNAには、T7プロモーターおよびルシフェラーゼレポーター遺伝子で形成された発現カセットが含まれていた(図16参照)。異なる発現カセットを用いた図7で既に観察されたように、保護ヌクレオチドの濃度が高いほど、観察される増幅収率は低くなる。増幅収率の減少は、各濃度で試験した3つのdNTPsで同様であった。
【0345】
図18は、T7 RNAポリメラーゼを用いてインビトロで転写を行うのに適した分子を遊離させるために、NsiIで消化した後の増幅DNAのアガロースゲル電気泳動分析を示す。消化条件:反応液量500μl、反応バッファー50μl CutSmart 10x(NEB)、DNA 50μg、NsiI 312ユニット(NEB)、インキュベーション時間および温度:37℃で60分、80℃で20分。目的のフラグメント(1.7kb)に対応する単一のバンドは、50%dATPSを除いて、すべての場合で観察された(パートA)。消化されたDNAは精製され、T7 RNAポリメラーゼを用いたインビトロ転写反応のテンプレートとして用いた。
【0346】
図19は、各DNA分子で得られた転写率を示す。反応条件:反応液量20μl、反応バッファー2μl T7 RNA pol反応緩衝液 10x (NEB)、DNA 1μg、T7 RNA ポリメラーゼ100(NEB)、NTP 2mM、インキュベーション時間および温度:37℃で120分間。その後、DNAse I(4U、Ambion)を加えてテンプレートDNAを除去し、37℃で15分間インキュベートした。用いた保護dNTPおよびその濃度に関係なく、どのDNA分子も15~20μgの範囲で同程度のmRNAを産生した。従って、保護されたDNAは転写プロセスのテンプレートとして適している。
【0347】
実施例7:HEK293細胞へのトランスフェクション-GFP
HEK293細胞は、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)(Gibco、カタログ番号:11965084)に10%ウシ胎児血清(FBS)(Gibco、カタログ番号:16140-071)および1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco、カタログ番号:15070-063)を加えて培養した。
【0348】
HEK293細胞へのトランスフェクションは、リポフェクトアミン2000(ThermoFisherのカタログ番号:11668019)およびJetOPTIMUS(PolyPlusカタログ番号:101000006)などの市販のトランスフェクション試薬を用いて行った。
【0349】
トランスフェクションは96ウェルプレートで、トランスフェクションの1日前に播種したウェルあたり25x10細胞の密度で行った。
【0350】
リポフェクトアミンのトランスフェクションは以下のように行った:ウェルあたり200ngのDNAを50ulのOptiMEMで希釈し、0.5ulのリポフェクトアミン2000を50ulのOptiMEMで希釈した。各成分を別々に5分間インキュベートした後、十分に混合し、さらに25分間インキュベートした後、100ulのOptiMEMをウェルに添加した。
【0351】
JetOptimusによるトランスフェクションは以下のように行った:ウェルあたり0.13ugのDNAを0.13ulのJetOptimus試薬と混合し、12.5ulのJetOptimusバッファーに入れた。ウェルに添加する前に、混合液を室温で10分間インキュベートした。
【0352】
すべての条件はトリプリケートで行った。細胞を37℃、5% COで4時間培養した後、無血清培地から増殖培地に交換した。トランスフェクション後48時間、細胞をPBSで洗浄した後、0.05%トリプシン、0.53mM EDTA(Corning,カタログ番号:25-052-CV)でインキュベートし、細胞を剥離した。トランスフェクション後48時間、細胞をPBSに再懸濁し、Aligent Novocyteフローサイトメーターを用いたフローサイトメトリーで解析した。
【0353】
図20は、様々なレベルのdNTPαS 0%、12.5%のdATPαSおよびdTTPαS、25%のdATPαSを含む直鎖二本鎖DNA産物をカプセル化したリポフェクトアミン2000でトランスフェクトしたHEK293細胞におけるGFP発現および蛍光強度中央値(MFI)を示す。直鎖状二本鎖DNA産物は、先の実施例(例えば、実施例2参照)に記載した方法で製造した。25%dATPαSを用いたGFPコンストラクトは、最も高いGFP発現を示し、1日目に50.73%の細胞がGFPを発現し、3日目には78.26%まで増加し、MFIはそれぞれ1.8E+06および2.5E+06であった。dNTPαSを0%添加したコンストラクトはGFP発現が最も低く、1日目には33%の細胞がGFPを発現し、3日目には65%まで増加した。MFI値も低く、1日目は7E+05、3日目は1.5E+06であった。
【0354】
図21は、2.5%、5%、7.5%、10%および12.5%のホスホロチオエート化dNTPαSを添加したPolyPlus-JetOPTIMUSカプセル化DNAでトランスフェクトしたHEK293細胞におけるGFP発現を示す。最も高いGFP発現を示したのは、5%のdNTPαSを用いたGFPコンストラクトで35.34%の細胞がGFPを発現し、次いで7.5%のdNTPαSを用いたGFPコンストラクトで34.46%の細胞がGFPを発現した。12.5%のdNTPαSを含むDNAコンストラクトはGFP発現が最も低く、22.18%の細胞がGFPを発現した。
【0355】
実施例8:HEK細胞のトランスフェクション-ルシフェラーゼ
HEK293細胞を、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)(Gibco、カタログ番号:11965084)に10%ウシ胎児血清(FBS)(Gibco、カタログ番号:16140-071)と1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco、カタログ番号:15070-063)を加えて培養した。
【0356】
HEK293細胞へのトランスフェクションは、リポフェクトアミン2000(ThermoFisher、カタログ番号:11668019)およびJetOPTIMUS(PolyPlus カタログ番号:101000006)などの市販のトランスフェクション試薬を用いて行った。
【0357】
トランスフェクションは96ウェルプレートで、トランスフェクションの1日前に播種したウェルあたり25x10細胞の密度で行った。
【0358】
リポフェクトアミンのトランスフェクションは以下のように行った:ウェルあたり200ngのDNAを50ulのOptiMEMで希釈し、一方で0.5ulのリポフェクトアミン2000を50ulのOptiMEMで希釈した。各成分を別々に5分間インキュベートした後、十分に混合し、さらに25分間インキュベートした後、100ulのOptiMEMをウェルに添加した。
【0359】
JetOptimusによるトランスフェクションは以下のように行った:ウェルあたり0.13ugのDNAを0.13ulのJetOptimus試薬と混合し、12.5ulのJetOptimusバッファーに入れた。ウェルに添加する前に、混合液を室温で10分間インキュベートした。
【0360】
すべての条件はトリプリケートで行った。細胞を37℃、5% COで4時間培養した後、無血清培地から増殖培地に交換した。トランスフェクション後48時間、細胞をPBSで洗浄した後、Reporter細胞溶解バッファー(Promega)に再懸濁した。プレートは4℃で20分間インキュベートした後、-80℃で40分間インキュベートした。解凍後、ルシフェラーゼ活性をクラリオスタープラスプレートリーダー(BMG Labtech, Aylesbury, UK)でルシフェラーゼアッセイ基質を注入して測定した。ルシフェラーゼ発現は、Pierce BCA Protein Assayを用いてタンパク質含量で標準化し、吸光度は562nmで測定した。ルシフェラーゼ活性は、タンパク質1mgあたりの相対発光単位(RLU/mg)で表した。
【0361】
図22は、市販のトランスフェクション試薬であるリポフェクトアミン2000でトランスフェクションしたHEK293細胞におけるルシフェラーゼ発現を示しており、0%、7.5%および10%のdNTPαSで直鎖二本鎖DNA産物を封入している。直鎖状二本鎖DNA産物は、上記の実施例(例えば、実施例2参照)に記載した方法で製造した。ルシフェラーゼ発現はトランスフェクション後48時間で測定した。図22に示すように、最も高いルシフェラーゼ発現を示したサンプルは、7.5%のdNTPαSを添加したDNAで、3E+07 RLU/mgタンパク質であった。10%dNTPαSは、2.3E+07 RLU/mgタンパク質のルシフェラーゼ発現を記録した。0%のdNTPαSDNAは、4E+6 RLU/mgタンパク質という最も低いルシフェラーゼ発現を示した。
【0362】
図23は、HEK293細胞にトランスフェクトした、様々なDNAテンプレート由来のmRNAサンプルのタンパク質mgあたりのルシフェラーゼ発現(RLU)を示す。具体的には、この図は、ホスホロチオエート化ヌクレオチドを0%から50%含む直鎖二本鎖DNA産物をインビトロ転写テンプレートとして用いた場合の影響を示す。直鎖状二本鎖DNA産物は、上記の実施例(例えば。実施例2参照)に記載した方法で製造した。ルシフェラーゼ発現は、細胞処理4時間後に測定した。市販の試薬リポフェクトアミン2000を用いて、300ng/ウェルのサンプルを3回に分けてトランスフェクトした。表示されているルシフェラーゼ発現は、3連ウェルの平均結果である。エラーバーはトリプリケートでのウェル間の標準偏差である。この図は、ホスホロチオエート化ヌクレオチドを含む直鎖状二本鎖DNA産物と直鎖化プラスミド由来のmRNAサンプルの間でルシフェラーゼ発現が同等であることを示しており、ホスホロチオエート化DNAテンプレートがmRNAのインビトロでの使用に適していることを示す。
【0363】
実施例9:インビトロでの転写
サンプルあたり1μgの入力DNAテンプレートを用い、次に2μLの10XT7-FlashScribe(商標)転写緩衝液(CellScript)、9mM ATP、9mM CTP(CellScript)、9mM N1-メチルシュード-UTP(TriLink)、8mM ARCA キャップ構造類縁体(NEB)、9mM GTP、10mM DTT(CellScript)、0.2U 無機ピロホスファターゼ(Thermo Scientific)、20U ScriptGuard(商標) RNaseインヒビター、2μL T7-FlashScribe(商標)酵素溶液(CellScript)を用いた。培養時間および温度:37℃で1.5時間。以下のDNase I(CellScript)処理を1Uで行った:37℃で15分間。
【0364】
図24は、T7 RNAポリメラーゼおよび異なるDNAテンプレートを用いてインビトロで転写されたmRNAから生成された収量を示す。具体的には、この図は、ホスホロチオエート化ヌクレオチドの割合が異なる直鎖状二本鎖DNA産物をインビトロ転写テンプレートとして用いた場合のmRNA収量への影響を示す。直鎖状二本鎖DNA産物は、上記の実施例(例えば、実施例2参照)に記載した方法で製造した。比較のために、従来のDNA直鎖化プラスミドテンプレートを用いた。反応条件:最終反応容量20μL、2μL 10X T7-FlashScribe(商標)転写緩衝液(CellScript)、9mM NTPs(CellScript)、8mM ARCA キャップ構造類縁体(NEB)、10mM DTT(CellScript)、0.2U 無機ピロホスファターゼ(Thermo Scientific)、20U ScriptGuard(商標) RNaseインヒビター、2μL T7-FlashScribe(商標)酵素溶液(CellScript)。培養時間および温度:37℃で1.5時間。以下のDNase I処理を1Uで行った(CellScript):37℃で15分間。mRNA収量は、Qubit RNA Broad Range kit(Invitrogen)を用いたQubit定量(n=3)を用いて測定した。
【0365】
図24は、様々な割合のホスホロチオエート化ヌクレオチドを含む直鎖状二本鎖DNA産物をインビトロ転写テンプレートとして用いた場合の影響を示す。直鎖状二本鎖DNA産物は、上記の実施例(例えば、実施例2参照)に記載した方法で製造した。さまざまな割合のホスホロチオエート化ヌクレオチドを含む直鎖状二本鎖DNA産物から、最低180μgの収量が得られ、すべてのDNAテンプレートで平均209.1μgのmRNA収量が得られた。用いたdNTPの割合に関係なく、どのDNAテンプレートも同レベルのmRNAを産生した。したがって、保護された直鎖状二本鎖DNA産物は転写プロセスに適している。反応条件:最終反応容量20μL、2μLの10X T7-FlashScribe(商標) 転写緩衝液(CellScript)、9mM NTPs(CellScript)、8mM ARCA キャップ構造類縁体(NEB)、10mM DTT(CellScript)、0.2U 無機ピロホスファターゼ(Thermo Scientific)、20U ScriptGuard(商標)RNaseインヒビター、2μL T7-FlashScribe(商標)酵素溶液(CellScript)。培養時間および温度:37℃で1.5時間。以下のDNase I処理を1Uで行った(CellScript):37℃で15分間。
【0366】
図25は、ネイティブ0.8%アガロースゲル電気泳動によって画像化されたインビトロ転写mRNAサンプルを示す。mRNAサンプルは、dGTPS保護が0%から50%の範囲の直鎖状二本鎖DNA産物から転写された。直鎖状二本鎖DNA産物は、上記の実施例(例えば、実施例2参照)に記載した方法で製造した。サンプルは250ngの等質量になるように負荷(load)されている。同じ配列を有する従来の直鎖化プラスミド由来のmRNAを比較として負荷した。1.7kbまでの目的のバンドはすべてのサンプルで観察できる。用いたdNTPSの割合とは無関係に、テンプレートとして用いたすべての直鎖状二本鎖DNA産物は、同様のバンド強度および純度を示した。2つ目の高分子量バンドも観察され、これは天然条件下でのmRNAの自然な二次構造折り畳みに対応する。
【0367】
図26は、変性0.8%アガロースゲル電気泳動で画像化したインビトロ転写mRNAサンプルを示す。mRNAサンプルは、dGTPS保護が0%から50%の範囲の直鎖状二本鎖DNA産物から転写された。直鎖状二本鎖DNA産物は、上記の実施例(例えば、実施例2参照)に記載した方法で製造した。サンプルは250ngの等質量になるようにロードされている。比較として、同じ配列でホスホロチオエート化ヌクレオチドが0%の従来の直鎖化プラスミド由来のmRNAをロードした。すべてのサンプルを65℃で3分間熱変性させ、ゲルに加える前にホルムアルデヒドで処理した。ホルムアルデヒド変性アガロースゲル電気泳動は以下のように行った。0.8%アガロースゲルを0.7%ホルムアルデヒドで調製した。サンプルはホルムアルデヒドロード色素(Invitrogen)を用いて調製し、ウェルに添加する前に65℃で5分間熱変性させた。サンプルは、画像化前に80Vで70分間作動させた。図26では、全サンプルで~1.7kbの主バンドが観察され、ホスホロチオエート化ヌクレオチドを含む直鎖状二本鎖DNAが転写プロセスに適していることが実証された。
【0368】
実施例10-マウスにおける直鎖状二本鎖DNAからのインビボルシフェラーゼ発現
Balb/Cマウスに、ルシフェラーゼ導入遺伝子をコードする5μgのスーパーコイルドプラスミド、または0%、5%もしくは10%のdNTPαSを含む等モル量(3.2μg)の直鎖状二本鎖DNAをエレクトロポレーションした。対照として未処置マウスを用いた。N=5。EP条件は以下の通りである:110V、8パルス、20m秒の長さ、120ミリ秒の間隔。EPの1週間後、イソフルラン麻酔下でIVIS Spectrumシステムを用いて光学的生物発光を観察する10分前に、マウスにD-ルシフェリンを腹腔内注射した。対照として無処置のマウスを用いた。N=5。
【0369】
図27は、ルシフェラーゼをコードする5ugのプラスミドDNA、または0%、5%もしくは10%のdNTPαSを含む等モル量(3.2ug)の直鎖状二本鎖DNAをエレクトロポレーションしたマウスにおけるインビボルシフェラーゼ発現である。エレクトロポレーションから1週間後、イソフルラン麻酔下でIVIS Spectrumシステムを用いて光学的生物発光を観察する10分前に、マウスにD-ルシフェリンを腹腔内注射した。5%のdNTPαSを組み込んだ直鎖状二本鎖DNAで処理したマウスは、0%または10%のdNTPαSを組み込んだ直鎖状二本鎖DNA、あるいはプラスミドDNA対照で処理したマウスと比較して、ルシフェラーゼの発現が最も高かった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
【配列表】
2024516272000001.app
【国際調査報告】