(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-12
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池用アノードインク配合物
(51)【国際特許分類】
H01M 4/139 20100101AFI20240405BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240405BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240405BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20240405BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20240405BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20240405BHJP
H01M 4/1393 20100101ALI20240405BHJP
H01M 4/1395 20100101ALI20240405BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240405BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/62 Z
H01M4/36 E
H01M4/48
H01M4/587
H01M4/38 Z
H01M4/1393
H01M4/1395
H01M4/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023567108
(86)(22)【出願日】2022-04-28
(85)【翻訳文提出日】2023-12-20
(86)【国際出願番号】 SG2022050264
(87)【国際公開番号】W WO2022231524
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523410920
【氏名又は名称】ボルト14 ソリューションズ プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】グプタ プニート
(72)【発明者】
【氏名】フォン デ チェン
(72)【発明者】
【氏名】ハリロヴィック ゼネタ
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB29
5H050DA03
5H050DA10
5H050DA11
5H050EA08
5H050EA10
5H050EA11
5H050EA22
5H050EA23
5H050FA16
5H050GA10
5H050GA12
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA07
(57)【要約】
本発明により、負極、及び負極を含む電池を製造するのに有用なアノードインク配合物、及びその調製方法が提供される。前記アノードインク配合物はバインダー組成物、少なくとも1種の活物質、及び少なくとも1種の導電性材料を含み、バインダー組成物はキトサン、少なくとも1種のリン酸塩又はその共役酸、及び水を含み、少なくとも1種のリン酸塩はオルトリン酸金属塩、ピロリン酸金属塩、及びポリリン酸金属塩からなる群から選択され;バインダー組成物、少なくとも1種の活物質、及び少なくとも1種の導電性材料はそれぞれ10~30質量/質量%;50~80質量/質量%;及び10~20質量/質量%の濃度で存在し;バインダー組成物はキトサン及び少なくとも1種のリン酸塩又はその共役酸を1.5~5質量/質量%の濃度で含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー組成物、少なくとも1種の活物質、及び少なくとも1種の導電性材料を含むアノードインク配合物であって、バインダー組成物はキトサン、少なくとも1種のリン酸塩又はその共役酸、及び水を含み、少なくとも1種のリン酸塩はオルトリン酸金属塩、ピロリン酸金属塩、及びポリリン酸金属塩からなる群から選択され;バインダー組成物、少なくとも1種の活物質、及び少なくとも1種の導電性材料はそれぞれ10~30質量/質量%;50~80質量/質量%;及び10~20質量/質量%の濃度で存在し;バインダー組成物はキトサン及び少なくとも1種のリン酸塩又はその共役酸を1.5~5質量/質量%の濃度で含む、アノードインク配合物。
【請求項2】
少なくとも1種の活物質がケイ素、SiO
x、グラファイト、スズ、アンチモン、ガリウム、硬質炭素、及びこれらの組合せからなる群から選択され、xは0<x<2である、請求項1に記載のアノードインク配合物。
【請求項3】
少なくとも1種の活物質がケイ素及びグラファイト又はグラファイトである、請求項1に記載のアノードインク配合物。
【請求項4】
少なくとも1種の導電性材料がカーボンブラック、ケッチェンブラック、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)、炭素ナノ繊維(CNF)、グラフェン、硬質炭素、酸化グラフェン、導電性ポリマー、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載のアノードインク配合物。
【請求項5】
少なくとも1種の導電性材料がカーボンブラック、CNF、又はこれらの混合物である、請求項1に記載のアノードインク配合物。
【請求項6】
バインダー組成物がキトサン及び少なくとも1種のリン酸塩又はその共役酸を1.5~2.5質量/質量%の濃度で含む、請求項1に記載のアノードインク配合物。
【請求項7】
バインダー組成物が有機酸又は無機酸を0.5%~3%v/vの濃度で更に含む、請求項1に記載のアノードインク配合物。
【請求項8】
バインダー組成物がキトサン及びトリポリリン酸ナトリウムを質量比5:1~20:1の質量比で含む、請求項1に記載のアノードインク配合物。
【請求項9】
少なくとも1種の活物質が50~300nmのD50粒度分布を有する、請求項1に記載のアノードインク配合物。
【請求項10】
バインダー組成物、少なくとも1種の活物質、及び少なくとも1種の導電性材料がそれぞれ15~25質量/質量%;60~70質量/質量%;及び12~17質量/質量%の濃度で存在する、請求項1に記載のアノードインク配合物。
【請求項11】
アノードインク配合物を調製する方法が、活物質を一部ずつバインダー組成物と合わせること;導電性材料を一部ずつバインダー組成物と合わせること;活物質をバインダー組成物と合わせる前に導電性材料をバインダー組成物と合わせること;並びに少なくとも1種の活物質及び少なくとも1種の導電性材料を予混合することにより予混合物を形成し、その予混合物をバインダー組成物と合わせることからなる群から選択される少なくとも1つの添加方法を含む、請求項1に記載のアノードインク配合物。
【請求項12】
アノードインク配合物を調製する方法が活物質をバインダー組成物と合わせる前に導電性材料をバインダー組成物と合わせること;又は少なくとも1種の活物質及び少なくとも1種の導電性材料を予混合することにより予混合物を形成し、その予混合物をバインダー組成物と合わせることを含む、請求項11に記載のアノードインク配合物。
【請求項13】
バインダー組成物、少なくとも1種の活物質、及び少なくとも1種の導電剤を含み、バインダー組成物がキトサン、少なくとも1種のリン酸塩又はその共役酸、及び水を含み、少なくとも1種のリン酸塩がオルトリン酸金属塩、ピロリン酸金属塩、及びポリリン酸金属塩からなる群から選択され;
少なくとも1種の活物質がケイ素、SiO
x、グラファイト、スズ、アンチモン、ガリウム、及びこれらの組合せからなる群から選択され、xは0<x<2であり;
少なくとも1種の導電性材料がカーボンブラック、ケッチェンブラック、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)、炭素ナノ繊維(CNF)、酸化グラフェン、導電性ポリマー、及びこれらの組合せからなる群から選択され;
バインダー組成物、少なくとも1種の活物質、及び少なくとも1種の導電性材料がそれぞれ10~30質量/質量%;50~80質量/質量%;及び10~20質量/質量%の濃度で存在し;
バインダー組成物がキトサン及び少なくとも1種のリン酸塩又はその共役酸を1.5~2.5質量/質量%の濃度で含む、請求項1に記載のアノードインク配合物。
【請求項14】
バインダー組成物、少なくとも1種の活物質、及び少なくとも1種の導電剤を含み、バインダー組成物がキトサン、少なくとも1種のリン酸塩又はその共役酸、及び水を含み、少なくとも1種のリン酸塩がオルトリン酸金属塩、ピロリン酸金属塩、及びポリリン酸金属塩からなる群から選択され;
少なくとも1種の活物質がケイ素及びグラファイト又はグラファイトであり;
少なくとも1種の導電性材料がカーボンブラック、CNF、又はこれらの混合物であり;
バインダー組成物、少なくとも1種の活物質、及び少なくとも1種の導電性材料がそれぞれ15~25質量/質量%;60~70質量/質量%;及び12~17質量/質量%の濃度で存在し;
バインダー組成物がキトサン及び少なくとも1種のリン酸塩又はその共役酸を1.75~2.25質量/質量%の濃度で含む、請求項1に記載のアノードインク配合物。
【請求項15】
少なくとも1種の活物質が50~200nmのD50粒度分布を有する、請求項14に記載のアノードインク配合物。
【請求項16】
アノードインク配合物を調製する方法が活物質の前に導電性材料を添加する;又は導電性材料を少なくとも2つの部分に添加する前に活物質を少なくとも2つの部分に添加することを含む、請求項14に記載のアノードインク配合物。
【請求項17】
請求項1に記載のアノードインク配合物を調製する方法であって:
酸を含む水溶液、キトサン、及び少なくとも1種のリン酸塩又はその共役酸を合わせることによりバインダー組成物を形成し;
バインダー組成物、少なくとも1種の活物質、少なくとも1種の導電性材料を合わせることによりアノードインク配合物を形成することを含む、方法。
【請求項18】
少なくとも1種の活物質、少なくとも1種の導電性材料、及びバインダーを合わせるステップが:
バインダー組成物及び少なくとも1種の導電性材料を合わせることにより導電性材料を含むバインダー組成物を形成するステップ;
少なくとも1種の活物質及び導電性材料を含むバインダー組成物を合わせることによりアノードインク配合物を形成するステップ;又は
少なくとも1種の活物質及び少なくとも1種の導電性材料を合わせることにより予混合物を形成するステップ;予混合物をバインダー組成物と合わせることによりアノードインク配合物を形成するステップを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
負極アノードを調製する方法であって、請求項1に記載のアノードインク配合物から少なくとも幾らかの水を除去することを含む、方法。
【請求項20】
アノードインク配合物を集電器の表面に適用し、アノードインク配合物から少なくとも一部の水を除去することにより被覆された集電器を形成するステップを更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項19に従って調製された負極アノード。
【請求項22】
正極;正極に対向して配置された請求項21に記載の負極;及び正極と負極との間に配置された電解質を含む電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は2021年4月28日に出願された米国特許仮出願第63/201,401号の優先権の利益を主張し、その内容は参照によりその全体があらゆる目的で本明細書に組み込まれる。
本開示は広くエネルギー貯蔵の分野に関する。より特定的には、本開示は電池用アノードインク配合物、電池用アノードインク配合物を含む電極及びエネルギー貯蔵デバイス並びにそれらの調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池(LIB)は鉛酸、Ni-Cd及びNi-MH電池のような他の電気化学的エネルギー貯蔵技術と比較してそのより高い質量及び容積エネルギー密度のために携帯用電子機器の電源として広く使用されている。携帯用電子機器(例えば携帯電話、ラップトップコンピューター等)の使用量はこの十年で大幅に増大したので、増え続ける性能要件を満たすためにより高い容積並びに質量エネルギー密度の電源が必要とされる。商業化されている電気化学的エネルギー貯蔵技術のうち、LIBは最も高いエネルギー密度を提供する。従来の再充電可能なLIBはカソード及びアノード電極並びにLi-イオン伝導性電解質及びセパレーターから構成されている。充電中カソード材料は酸化される。Li-イオンが抽出され、アノードに向かって移動する。放電中反応は逆転し、Li-イオンはアノードから電解質を通過してカソードの方に動く。
一般に使用されるカソード材料にはコバルト酸リチウム(LCO)、酸化リチウム(litihium)ニッケルマンガンコバルト(NMC)、リン酸鉄リチウム(LFP)、等がある。金属ベースのカソード材料の理論容量は300mAh/g以下であり、一方イオウは約1,675mAh/gを示すがまだ研究段階である。グラファイトベースのアノード、及びリチウム金属酸化物又はリン酸リチウムベースのカソードを有する現存のLIBはエネルギー及び電力密度に対するその理論的限界に達しつつある。従って、より高い容量のアノード材料の開発は進歩したLIBの実現成功の絶好の機会を提供する。
【0003】
異なるリチウム化/脱リチウム化機構に基づいて、3種類のアノード材料、即ち、インターカレーション、アロイング、及び転換(conversion)材料が再充電可能なLIBに対して識別することができる。グラファイトは今日商業化されているLIBに最も多く使用されているアノード材料である。インターカレーション材料であるグラファイトはグラフェンシート間へのリチウムの挿入及び除去が可能である。グラファイトは372mAh/gの理論容量を有し、これは完全にリチウム化された状態のLiC6の組成に対応する。転換材料として知られている他の種類のアノード材料はまだ研究段階である。転換材料は通常アニオンと結合した遷移金属、例えばFe2O3、Co3O4、等である。純粋なSi、Sn、Al、Mg、及びそれらの合金のような様々なアロイング材料はグラファイトと比較してより高いその容量のためにLIBの次世代のアノード材料の可能性のある候補として広く研究されている。これら全ての材料のうち、ケイ素ベースの材料はその傑出したエネルギー密度のために最も有望な候補と考えられる。研究で観察された完全にリチウム化された相はLi22Si5であり、これは400℃で約4,200mAh/gの理論容量に対応し、一方Li15Si4相ではRTで約3,579mAh/gである。
【0004】
然しながら、ケイ素実際の応用は主として、電導損及び極端な容量低下を引き起こす電池作動中の大きい体積変化により妨げられている。
サイクリング(cycling)中のケイ素粒子の大きい体積変化はケイ素粒子、集電器並びに導電性添加物間の電気的接触の破壊を引き起こすことができる。その上、ケイ素電極上に形成される固体電解質界面(SEI)層は不安定であり、連続的な電解質分解を充分に防ぐことができない。両方の問題はケイ素電極の電気化学的性能に対するバインダーの重要性を目立たせる。実際、従来使用されているポリフッ化ビニリデン(PVDF)バインダーは不充分な接着及びサイクル性のためケイ素ベースの材料に適していないことが証明されている。
近年様々な種類のバインダー、殊に水ベースのバインダーが広く探索されている。今までのところCMC、ポリ(アクリル酸)(PAA)、キトサン、及びアルギン酸塩が最も有望な候補であり、これらは天然の材料から調製されるという追加の利点をもち、かつ水又はややイオン性の溶媒に可溶性である。それ故毒性が低下しているか又はなく、従ってグリーンマテリアルと考えることができ、これはLIBのための持続性材料を生産するという点で重要である。
それにもかかわらず、上に記載した欠点の少なくとも幾つかに対処するか又は克服する改良されたアノードインク配合物に対するニーズが未だに存在する。
【発明の概要】
【0005】
本開示はアノードインク配合物、それを用いて調製される電極及びエネルギー貯蔵デバイス並びにそれらの調製方法を提供する。本明細書に記載されているアノードインク配合物は集電器に対する強力な接着結合、秀でた凝集特性、及び優れた電気化学的安定性を示すことができる。また本明細書に記載されているアノードインク配合物を製造する簡単なスケーラブルな方法も提供される。該アノードインク配合物はリチウムの挿入及び抽出に起因するケイ素アノードの大きい体積変化により良好に適応することができる。該アノードインク配合物は秀でた容量、良好なサイクリング性能及び優れたクーロン効率を示す。
第1の態様において、バインダー組成物、少なくとも1種の活物質、及び少なくとも1種の導電性材料を含むアノードインク配合物が本発明により提供され、バインダー組成物はキトサン、少なくとも1種のリン酸塩又はその共役酸、及び水を含み、少なくとも1種のリン酸塩はオルトリン酸金属塩、ピロリン酸金属塩、及びポリリン酸金属塩からなる群から選択され;バインダー組成物、少なくとも1種の活物質、及び少なくとも1種の導電性材料はそれぞれ10~30質量/質量%;50~80質量/質量%;及び10~20質量/質量%の濃度で存在し;バインダー組成物はキトサン及び少なくとも1種のリン酸塩又はその共役酸を1.5~5質量/質量%の濃度で含む。
【0006】
ある特定の実施形態において、少なくとも1種の活物質はケイ素、SiOx、グラファイト、スズ、アンチモン、ガリウム、硬質炭素、及びこれらの組合せからなる群から選択され、xは0<x<2である。
ある特定の実施形態において、少なくとも1種の活物質はケイ素及びグラファイト又はグラファイトである。
ある特定の実施形態において、少なくとも1種の導電性材料はカーボンブラック、ケッチェンブラック、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)、炭素ナノ繊維(CNF)、グラフェン、硬質炭素、酸化グラフェン、導電性ポリマー、及びこれらの組合せからなる群から選択される。
ある特定の実施形態において、少なくとも1種の導電性材料はカーボンブラック、CNF、又はこれらの混合物である。
【0007】
ある特定の実施形態において、バインダー組成物はキトサン及び少なくとも1種のリン酸塩又はその共役酸を1.5~2.5質量/質量%の濃度で含む。
ある特定の実施形態において、バインダー組成物は有機酸又は無機酸を0.5%~3%v/vの濃度で更に含む。
ある特定の実施形態において、バインダー組成物はキトサン及びトリポリリン酸ナトリウムを質量比5:1~20:1の質量比で含む。
ある特定の実施形態において、少なくとも1種の活物質は50~300nmのD50粒度分布を有する。
ある特定の実施形態において、バインダー組成物、少なくとも1種の活物質、及び少なくとも1種の導電性材料はそれぞれ15~25質量/質量%;60~70質量/質量%;及び12~17質量/質量%の濃度で存在する。
【0008】
ある特定の実施形態において、アノードインク配合物を調製する方法は活物質を一部ずつ(portion-wise)バインダー組成物と合わせる(combining)こと;導電性材料を一部ずつバインダー組成物と合わせること;活物質をバインダー組成物と合わせる前に導電性材料をバインダー組成物と合わせること;並びに少なくとも1種の活物質及び少なくとも1種の導電性材料を予混合する(premixing)ことにより予混合物(premixture)を形成し、その予混合物をバインダー組成物と合わせることからなる群から選択される少なくとも1つの添加方法を含む。
ある特定の実施形態において、アノードインク配合物を調製する方法は活物質をバインダー組成物と合わせる前に導電性材料をバインダー組成物と合わせること;又は少なくとも1種の活物質及び少なくとも1種の導電性材料を予混合することにより予混合物を形成し、その予混合物をバインダー組成物と合わせることを含む。
【0009】
ある特定の実施形態において、アノードインク配合物は:バインダー組成物、少なくとも1種の活物質、及び少なくとも1種の導電剤(conductive agent)を含み、
バインダー組成物はキトサン、少なくとも1種のリン酸塩又はその共役酸、及び水を含み、少なくとも1種のリン酸塩はオルトリン酸金属塩、ピロリン酸金属塩、及びポリリン酸金属塩からなる群から選択され;
少なくとも1種の活物質はケイ素、SiOx、グラファイト、スズ、アンチモン、ガリウム、及びこれらの組合せからなる群から選択され、xは0<x<2であり;
少なくとも1種の導電性材料はカーボンブラック、ケッチェンブラック、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)、炭素ナノ繊維(CNF)、酸化グラフェン、導電性ポリマー、及びこれらの組合せからなる群から選択され;
バインダー組成物、少なくとも1種の活物質、及び少なくとも1種の導電性材料はそれぞれ10~30質量/質量%;50~80質量/質量%;及び10~20質量/質量%の濃度で存在し;
バインダー組成物はキトサン及び少なくとも1種のリン酸塩又はその共役酸を1.5~2.5質量/質量%の濃度で含む。
【0010】
ある特定の実施形態において、アノードインク配合物は:バインダー組成物、少なくとも1種の活物質、及び少なくとも1種の導電剤を含み、
バインダー組成物はキトサン、少なくとも1種のリン酸塩又はその共役酸、及び水を含み、少なくとも1種のリン酸塩はオルトリン酸金属塩、ピロリン酸金属塩、及びポリリン酸金属塩からなる群から選択され;
少なくとも1種の活物質はケイ素及びグラファイト又はグラファイトであり;
少なくとも1種の導電性材料はカーボンブラック、CNF、又はこれらの混合物であり;
バインダー組成物、少なくとも1種の活物質、及び少なくとも1種の導電性材料はそれぞれ15~25質量/質量%;60~70質量/質量%;及び12~17質量/質量%の濃度で存在し;
バインダー組成物はキトサン及び少なくとも1種のリン酸塩又はその共役酸を1.75~2.25質量/質量%の濃度で含む。
ある特定の実施形態において、少なくとも1種の(the least one)活物質は50~200nmのD50粒度分布を有する。
ある特定の実施形態において、アノードインク配合物を調製する方法は活物質の前に導電性材料を添加する;又は導電性材料を少なくとも2つの部分に添加する前に活物質を少なくとも2つの部分に添加することを含む。
【0011】
第2の態様において、第1の態様のアノードインク配合物を調製する方法であって:
酸を含む水溶液、キトサン、及び少なくとも1種のリン酸塩又はその共役酸を合わせることによりバインダー組成物を形成し;
バインダー組成物、少なくとも1種の活物質、少なくとも1種の導電性材料を合わせることによりアノードインク配合物を形成する
ことを含む、方法が本発明により提供される。
ある特定の実施形態において、少なくとも1種の活物質、少なくとも1種の導電性材料、及びバインダーを合わせるステップは:
バインダー組成物及び少なくとも1種の導電性材料を合わせることにより導電性材料を含むバインダー組成物を形成するステップ;
少なくとも1種の活物質及び導電性材料を含むバインダー組成物を合わせることによりアノードインク配合物を形成するステップ;又は
少なくとも1種の活物質及び少なくとも1種の導電性材料を合わせることにより予混合物を形成するステップ;予混合物をバインダー組成物と合わせることによりアノードインク配合物を形成するステップ
を含む。
【0012】
第3の態様において、負極アノード(negative anode)を調製する方法であって、第1の態様のアノードインク配合物から少なくとも幾らかの水を除去することを含む、方法が本発明により提供される。
ある特定の実施形態において、方法は、アノードインク配合物を集電器の表面に適用し、アノードインク配合物から少なくとも一部の水を除去することにより被覆された集電器を形成するステップを更に含む。
第4の態様において、第3の態様に従って調製された負極アノードが本発明により提供される。
第5の態様において、正極;正極に対向して配置された第4の態様の負極;及び正極と負極との間に配置された電解質を含む電池が本発明により提供される。
本開示の上記及び他の目的及び特徴は本開示に関する以下の記載を添付の図面と共に参照することで明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本明細書に記載されているある特定の実施形態に従ってアノードインク配合物を調製する代表的な模式図である。
【
図2】ポリマー及び架橋したポリマーのフーリエ変換赤外(FTIR)スペクトルを示す図である。
【
図3】は本明細書に記載されているある特定の実施形態に従った架橋したポリマーのG’、G”対剪断応力を示す図である。
【
図4A】本明細書に記載されているある特定の実施形態に従った性能の再現性を示す図である。
【
図4B】本明細書に記載されているある特定の実施形態に従った容量に及ぼす異なる質量負荷の影響を示す図である。
【
図4C】本明細書に記載されているある特定の実施形態に従った異なる導電性材料の影響を示す図である。
【
図4D】本明細書に記載されているある特定の実施形態に従った活物質及び導電性材料の添加のオーダー(order)/シーケンス(sequence)の影響を示す図である。
【
図4E】本明細書に記載されているある特定の実施形態に従った活物質及び導電性材料の添加のオーダー/シーケンスの影響を示す図である。
【
図4F】本明細書に記載されているある特定の実施形態に従った活物質粒度の影響を示す図である。
【
図5A】本明細書に記載されているある特定の実施形態に従った代表的な電池構造を示す図である。
【
図5B】本明細書に記載されているある特定の実施形態に従った代表的な電池構造を示す図である。
【
図5C】本明細書に記載されているある特定の実施形態に従った代表的な電池構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
定義
本明細書で使用されている用語の定義はバイオテクノロジーの分野で各々の用語に対して認識される現在の最先端の定義を包含することを意味する。適当であれば例示が提供される。定義は、他に具体的な場合に限定されない限り、個別に又はより大きい群の一部としてこの明細書を通じて使用される用語に適用される。
本明細書で商品名が使用されるとき、出願人はその商品名製品の商品名製品成分を独立して含ませることを意図している。
本明細書で単数形の使用は特に他に断らない限り複数を含む(逆も同様)。加えて、用語「約」が定量値の前に使用されている場合、特に他に断らない限り、本教示はその具体的な定量値自体も含む。本明細書で使用されるとき、用語「約」は他に示されるか又は暗示されない限り公称の値から±10%、±7%、±5%、±3%、±1%、又は±0%等の変動を指す。
【0015】
この明細書を通じて、状況から他が要されない限り、語「含む(comprise)」又は「含む(comprises)」若しくは「含む(comprising)」のような変化形は述べられたもの(integer)又は1群のもの(group of integers)の包含を含むが他のあらゆるもの(integer)又は1群のもの(group of integers)の除外を暗示しないということと理解される。また、この開示において、並びに特に特許請求の範囲及び/又はパラグラフにおいて、「含む(comprises)」、「含まれる(comprised)」、「含む(comprising)」等のような用語は米国特許法においてそれに帰せられる意味を有することができ;例えば、それらは「含む(includes)」、「含まれる(included)」、「含む(including)」、等を意味することができること;及び「から本質的になる(consisting essentially of)」及び「から本質的になる(consists essentially of)」のような用語は米国特許法においてそれらに帰せられる意味を有し、例えば、それらは明白に列挙されていない要素を許容するが先行技術に見られるか又は本発明の基本的若しくは新規な特徴に影響を及ぼす要素を排除することも知られている。
【0016】
また、本明細書及び特許請求の範囲を通じて、状況から他が要されない限り、語「含む(include)」又は「含む(includes)」若しくは「含む(including)」のような変化形は述べられているもの(integer)又は1群のもの(group of integers)の包含を含むが他のあらゆるもの(integer)又は1群のもの(group of integers)の排除を暗示しないと理解される。
本開示は、少なくとも1種の活物質、少なくとも1種の導電性材料、水溶性のポリマー性バインダー、及び任意選択の改質剤(modifier)を含むリチウムイオン電池用の水ベースの適用可能なアノードインク配合物に関する。また配合方法及び前記配合物を含む電池を調製する方法も本発明により提供される。本明細書に記載されているアノードインク配合物は集電器に対する電極材料の強力な接着結合、秀でた凝集特性、及びその秀でた電子及びイオン伝導性の結果としての優れた電気化学的安定性を特徴とする。
【0017】
アノードインク配合物のためのプラットフォームである追加の物質と組み合わせてキトサンを含むアノードインク配合物。これは多才性(versatility)、このポリマーの生分解性並びに高い正電荷密度に起因する。キトサンは主として、自然界でセルロースに次いで2番目に豊富な多糖であるキチンのアルカリ性の脱N-アセチル化によって生産される。キチンは主に甲殻類及び昆虫の殻に由来し、ランダムに分布したβ-1-4結合D-グルコサミン(GlcN)及びN-アセチル-D-グルコサミン(GlcNAc)構造を有する。キトサンの溶解度及びそのプロトン化のような物理化学特性の多くに影響する2つの重要な構造パラメーターは脱アセチル化の程度及び分子量である。架橋は、1つのポリマー鎖を1つ又は複数の他のポリマー性の鎖につないで相互に連結した3Dタイプの網状組織を形成する結合/橋架けである。架橋は共有結合又はイオン結合のいずれかであることができる。アルデヒドはキトサンのアミノ基と反応させて共有結合を形成するのに使用することができる。正又は負に帯電したポリマーと反対に帯電した架橋剤との間にイオン性の架橋を形成して、ポリマー性の鎖の間のイオン性の橋架けを通して網状組織を形成することができる。
【0018】
キトサンの特性はその分子量(10,000~1,000,000Da)及び脱アセチル化の程度(キトサン中の2-アミノ-2-デオキシ-d-グルコピラノースと2-アセトアミド-2-デオキシd-グルコピラノース構造単位の比を表す)のような幾つかのパラメーターにより影響される。本明細書に記載されているバインダーに使用されるキトサンの脱アセチル化の程度は0%~100%の範囲であることができる。ある特定の実施形態において、本明細書に記載されているバインダーに使用されるキトサンの脱アセチル化の程度は1%より大きい、5%より大きい、10%より大きい、20%より大きい、30%より大きい、40%より大きい、50%より大きい、60%より大きい、70%より大きい、80%より大きい、90%より大きい、95%より大きい、97%より大きい、98%より大きい、99%より大きい、又は99.9%より大きい。ある特定の実施形態において、本明細書に記載されているバインダーに使用されるキトサンの脱アセチル化の程度は50~100%、60~99%、65~99%、65~99%、65~99%、70~99%、75~99%、又は75~95%である。ある特定の実施形態において、本明細書に記載されているバインダーに使用されるキトサンの脱アセチル化の程度は75~95%である。
【0019】
キトサンは10,000~1,000,000Daの分子量を有することができる。ある特定の実施形態において、キトサンは10,000~500,000;20,000~500,000;30,000~500,000;40,000~500,000;40,000~450,000;又は40,000~400,000Daの分子量を有することができる。ある特定の実施形態において、キトサンは低分子量(分子量50,000~190,000Da)、中間分子量キトサン(分子量190,000~310,000Da);又は高分子量キトサン(分子量約310,000~>375,000Da)であることができる。
グルコサミンとN-アセチルグルコサミンとのカチオン性コポリマーであるキトサンは、自然界で最も豊富な炭水化物の1つであり、殆どが甲殻類の外骨格に由来する天然の多糖-キチンの部分的に脱アセチル化された誘導体である。キトサンはバイオ再生可能性、生分解性、生体適合性、生体接着性及び非毒性のような有用な特徴の独特な一組を有する。キトサン及びその誘導体は製薬、生物医学、水処理、化粧品、農業、及び食品産業のような様々な分野で使用される。
【0020】
キトサンは、キレート特性が周知であるポリカチオン性のポリマーとして存在することができる。従って、リン酸金属塩のような負に帯電した成分との相互作用は網状組織イオン的にリン酸塩架橋したキトサン鎖の形成を引き起こすことができる。リン酸塩の負の電荷とキトサンの正に帯電した基とのイオン性相互作用は架橋した網状組織内の主要な分子相互作用であると考えられる。網状組織イオン的にリン酸塩架橋したキトサン鎖の形成は、カチオン性のキトサン及び少なくとも1種のリン酸塩を合わせることにより;又は別の方法では中性のキトサンを少なくとも1種のリン酸塩の共役酸と合わせることにより調製することができる。結果として、本発明で考えられるバインダー組成物はキトサン及び少なくとも1種のリン酸塩又はその共役酸を含むバインダー組成物を包含する。
本発明により提供されるバインダーはキトサン並びにオルトリン酸金属塩、ピロリン酸金属塩、及びポリリン酸金属塩からなる群から選択される少なくとも1種のリン酸塩を含むことができる。ある特定の実施形態において、バインダーは1、2、3、4、又はそれ以上の異なるタイプのリン酸塩を有する。
【0021】
本明細書に記載されているバインダーに使用するのに適したポリリン酸金属塩には、限定されることはないが、線状のポリリン酸金属塩、メタリン酸金属塩、及び分岐ポリリン酸金属塩がある。代表的なポリリン酸金属塩には、限定されることはないが、トリリン酸塩、テトラリン酸塩、ペンタリン酸塩、トリメタリン酸塩、テトラメタリン酸塩、等がある。
少なくとも1種のリン酸塩はあらゆる金属カチオンを含むことができる。代表的な金属カチオンには元素の周期表の1族及びII族から選択される1種又は複数のカチオンがある。ある特定の実施形態において、少なくとも1種のリン酸塩はLi+、Na+、K+、Mg2+、及びCa2+からなる群から選択される1種又は複数の金属カチオンを含むことができる。ある特定の実施形態において、少なくとも1種のリン酸塩はオルトリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、又はポリリン酸ナトリウムである。ある特定の実施形態において、少なくとも1種のリン酸塩はトリポリリン酸ナトリウムである。バインダーはまたキトサン及びオルトリン酸塩、ピロリン酸塩、及びポリリン酸塩の共役酸からなる群から選択される少なくとも1種のリン酸塩共役酸を含むこともできる。
本明細書に記載されているバインダーに使用するのに適したオルトリン酸塩、ピロリン酸塩、及びポリリン酸塩の共役酸には、限定されることはないが、線状ポリリン酸、メタリン酸、及び分岐ポリリン酸がある。代表的なポリリン酸には、限定されることはないが、トリリン酸、テトラリン酸、ペンタリン酸、トリメタリン酸、テトラメタリン酸、等がある。ある特定の実施形態において、リン酸塩の共役酸はポリリン酸(CAS Number:8017-16-1)である。
【0022】
オルトリン酸塩、ピロリン酸塩、及びポリリン酸塩の共役酸は1又は複数のイオン化可能なプロトンを含むことができ、それ故1又は複数の共役酸プロトン化状態で存在することができる。バインダー組成物がオルトリン酸塩、ピロリン酸塩、又はポリリン酸塩の共役酸を含む場合、共役酸は本明細書に記載されているリン酸塩の可能なプロトン化状態のいずれか又はその組合せであることができる。例えば、PO4
3-(オルトリン酸塩)の共役酸はHPO4
2-、H2PO4
-、及びH3PO4を含み;P3O10
5-(トリポリリン酸塩)の共役酸はHP3O10
4-、H2P3O10
3-、H3P3O10
2-、H4P3O10
1-、及びH5P3O10を含む。リン酸塩のアニオン性の共役酸は本明細書に記載されている金属カチオンのいずれか1種又は複数を含むことができる。
バインダーは少なくとも1種のリン酸塩又はその共役酸及びキトサンを1:1~1:10,000の質量比で含み得る。ある特定の実施形態において、バインダーは少なくとも1種のリン酸塩及びキトサンを1:1~1:10,000;1:1~1:5,000;1:1~1:1,000;1:1~1:500;1:1~1:250;1:1~1:100;1:1~1:20;1:1~1:10;1:5~1:10;1:6~1:10;1:7~1:10;1:7~1:9;又は1:8~1:9の質量比で含む。ある特定の実施形態において、バインダーは1質量部未満の少なくとも1種のリン酸塩と4質量部のキトサンとを含む。ある特定の実施形態において、バインダーは少なくとも1種のリン酸塩を1質量部未満の少なくとも1種のリン酸塩と5質量部のキトサン;1質量部未満の少なくとも1種のリン酸塩と6質量部のキトサン;1質量部未満の少なくとも1種のリン酸塩と7質量部のキトサン;1質量部未満の少なくとも1種のリン酸塩と8質量部のキトサン;又は1質量部未満の少なくとも1種のリン酸塩と9質量部のキトサンの質量比で含む。以下の実施例で、バインダーはトリポリリン酸ナトリウムとキトサンとを約1:8.3の質量比で含む。
【0023】
キトサンは水並びに殆どの有機及びアルカリ溶媒に比較的不溶性である。然しながら、キトサンは薄い有機酸、例えば酢酸、ギ酸、乳酸、シュウ酸、安息香酸、及び乳酸を含む溶媒に可溶性である。本発明により、本明細書に記載されているバインダー及び有機酸を含んでいてもよい溶媒を含むバインダー組成物が提供される。溶媒は水性の溶媒、極性の有機溶媒、又はこれらの混合物であり得る。適した極性の有機溶媒には、限定されることはないが、アルコール、アルキルハライド、ジアルキルホルムアミド、ジアルキルケトン、ジアルキルスルホキシド、第三アミド、及びこれらの組合せがある。代表的な極性の有機溶媒には、限定されることはないが、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアセトアミド(DMA)、アセトン、メチルエチルケトン、及びN-メチル-2-ピロリドンがある。有機酸は酢酸、プロピオン酸、ギ酸、乳酸、シュウ酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、安息香酸、メチルスルホン酸、フェニルスルホン酸、トルエンスルホン酸、又はこれらの組合せであり得る。有機酸は溶媒中に約0.1~5%v/v、0.1~4%v/v、0.1~3%v/v、0.5~3%v/v、0.5~2.5%v/v、1.0~2.5%v/v、1.0~2.5%v/v、1.5~2.5%v/v、0.5~1.5%v/v、約1%v/v、又は約2%v/vの濃度で存在し得る。ある特定の実施形態において、有機酸は酢酸である。リン酸塩の共役酸を使用する場合は、水のような溶媒に対してキトサンを可溶性にするために有機酸の代わりに使用することができる。
【0024】
バインダー組成物はキトサン及び少なくとも1種のリン酸塩を0.1質量/質量%又はそれ以上の濃度で含み得、濃度は式:(少なくとも1種のリン酸塩の質量+キトサンの質量)/(溶媒の質量+少なくとも1種のリン酸塩の質量+キトサンの質量)に従って決定される。ある特定の実施形態において、バインダーは0.5質量/質量%、1.0質量/質量%、1.5質量/質量%、2.0質量/質量%又はそれ以上の固形分を有する。ある特定の実施形態において、バインダー組成物はキトサン及び少なくとも1種のリン酸塩を0.1~20質量/質量%、1.5~20質量/質量%、0.1~15質量/質量%、1.5~15質量/質量%、1.5~10質量/質量%、1.5~9質量/質量%、1.5~8質量/質量%、1.5~7質量/質量%、1.5~6質量/質量%、1.5~5質量/質量%、1.5~4質量/質量%、1.5~3質量/質量%、1.5~2.5質量/質量%、1.6~2.4質量/質量%、1.7~2.3質量/質量%、1.75~2.5質量/質量%、1.8~2.2質量/質量%、1.9~2.1質量/質量%、又は約2質量/質量%の濃度で含む。
【0025】
ある特定の実施形態において、バインダー組成物は酢酸を含む水溶液中にトリポリリン酸ナトリウム及びキトサンを含む。
少なくとも1種の活物質は両方の機構インターカレーション/デインターカレーション(deintercalation)及び/又はアロイング/デアロイング(dealloying)により可逆的にリチウムイオンのホストとなる(hosting)ことができる物質を含むことができる。例えば、リチウムイオンのホストとなることができる活物質には、限定されることはないが、天然グラファイト、人造グラファイト、スズ、アンチモン、及び/又はケイ素をベースとする材料及びそれらの誘導体がある。ケイ素を活物質として使用する場合は、結晶質若しくは非晶質の相、又は両方の混合物であることができる。その相に加えて、ナノワイヤ、ナノチューブ、フレーク、プレート、繊維、及びSiOx(0<x<2)を含む他の種類/形態のケイ素を使用することができる。ある特定の実施形態において、ケイ素の平均粒度は1nm~20μmの範囲であることができる。
【0026】
ある特定の実施形態において、少なくとも1種の活物質はケイ素ナノ粒子、単結晶ケイ素ナノ粒子、単結晶ケイ素ナノフレーク、ケイ素粉末、酸化ケイ素、酸化ケイ素ナノ粒子、SiOx粒子(0<x<2)、ケイ素ナノチューブ、ケイ素ナノワイヤ、スズナノ粉末、酸化スズナノ粉末、及びこれらの組合せである。
少なくとも1種の導電性材料は電池の電極の電気伝導性を改良する。一般的な導電性材料には、限定されることはないが、カーボンブラック、グラフェン、アセチレンブラック、super Pカーボンブラック、グラファイト、硬質炭素、カーボンナノチューブ及びそれらの組合せがある。ある特定の実施形態において、少なくとも1種の導電性材料は炭素導電性添加物、ポリマー導電性添加物、金属導電性添加物、又はこれらの組合せであることができる。適した炭素導電性添加物には、限定されることはないが、天然グラファイト、人造グラファイト、炭素繊維、炭素ナノ繊維、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン(例えば、0D、1D、2D、及び3D)、酸化グラフェン、及びこれらの組合せがある。ある特定の実施形態において、導電性添加物はSuper P、カーボンブラックナノ粉末、炭素ナノ粒子、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、3Dグラフェンフォーム、グラフェン単層、グラフェン多層、グラフェンナノプレートレット、酸化グラフェン単層、酸化グラフェンペーパー、酸化グラフェン薄膜、グラファイトナノ繊維、グラファイト粉末、グラファイトロッド、及びこれらの組合せからなる群から選択される炭素導電性物質;ポリアセチレン、ポリピロール、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン):ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)、ポリアニリン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリイソチアナフタレン、ポリパラフェニレンスルフィド、ポリパラフェニレン、及びこれらの組合せからなる群から選択される導電性ポリマー添加物;又は銅、ニッケル、アルミニウム、銀、等からなる群から選択される導電性金属添加物である。
【0027】
ある特定の実施形態において、少なくとも1種の導電性材料はカーボンブラック、ケッチェンブラック、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)、炭素ナノ繊維(CNF)、酸化グラフェン、導電性ポリマー、及びこれらの組合せからなる群から選択される。
活物質、導電性材料及び改質剤と共に水溶性のポリマー性バインダーを含むLIB用途の水性の適用可能なアノードインク配合物が開発された。本明細書に記載されているアノードインク配合物は電極材料の集電器への強力な接着結合、秀でた凝集特性、並びに秀でた電子及びイオン性伝導性の結果としての優れた電気化学的安定性を特徴とする。より特定的には、本開示は少なくとも1種の活物質、少なくとも1種の導電性材料、及び少なくとも1種のバインダー組成物を含むLIB用の水性の適用可能なアノードインク配合物の調製に関する。
【0028】
バインダー組成物はキトサン及びその誘導体を含む任意の成分を脱イオン(DI)水又は0.1~10v/v%の酢酸溶液に溶かして0.1~10質量%の濃度範囲の溶液を得ることにより形成され得る。このように形成されたキトサン溶液は少なくとも1種のリン酸塩で架橋することができる。リン酸塩溶液は水中で調製することができる。例えば、0.1~20mg/mLのトリポリリン酸塩(TPP)を水溶液に溶かすことができる。リン酸塩溶液は機械的又は磁気により撹拌しながらキトサン溶液に添加することができる。リン酸塩とキトサンの質量比は1:1~1:100の範囲であり得る。添加するキトサンの量は負極活物質の100質量部に対して約1~約20質量部の範囲であり得る。バインダー材料が欠如すると活物質と集電器との接触の喪失が起こり得、結果として容量損失を生じ得る。キトサンの分子量、置換の程度及び脱アセチル化の程度のような幾つかの特性はバインダー性能に影響する可能性がある。ある特定の実施形態において、キトサンの分子量は1kDa~10,000kDa、及び脱アセチル化の程度は50~100%の範囲である。
【0029】
バインダー組成物は更にLiPAA、PAA、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アルギン酸塩、タンニン酸、クエン酸、フィチン酸、トリトンX-100、塩化スズのようなバインダー添加物を含み得、又はポリピロール、ポリアセチレン、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリアニリン、ポリチオフェン、PEDOT:PSS、又はポリフェニレン誘導体のような導電性ポリマー材料はポリマー鎖間のイオン性の橋架けによって網状組織の形成に寄与することができる。バインダー組成物は活物質粒子間の接続を形成することができる物質を含むことができ、また電解質から活物質へのリチウム-イオン輸送を改良しながら、更に集電器に対する強力な接着を提供する。いろいろな化学成分が存在するバインダー組成物はイオン輸送と機械的結合能との両方に寄与することができる。
ある特定の実施形態において、アノードインク配合物は10~90質量%又は30~80質量%の活物質;0~40質量%又は5~30質量%の導電性材料;0~30質量%又は2~20質量%のバインダー;及び任意に0.1~15質量%又は0.1~10質量%の添加物を含み;質量%の正確な数はアノードインク配合物の総質量に基づき、アノードインク配合物の全ての成分の割合は合計100質量%になる。
【0030】
本開示はまたアノードインク配合物を調製する方法も提供する。ある特定の実施形態において、アノードインク配合物を調製する方法は酸を含む水溶液、キトサン、及び少なくとも1種のリン酸塩又はその共役酸を合わせることによりバインダー組成物を形成し;バインダー組成物、少なくとも1種の活物質、少なくとも1種の導電性材料を合わせることによりアノードインク配合物を形成することを含む。酸を含む水溶液、キトサン、及び少なくとも1種のリン酸塩又は共役酸、バインダー組成物、少なくとも1種の活物質、及び少なくとも1種の(at least on)導電性材料は本明細書に記載されている質量、質量/質量、質量/容積、及び/又は容積/容積化学量論に従って合わせることができる。
実施例5及び6で示されるように、本明細書に記載されているアノードインク配合物から調製される負極の性能の改良は少なくとも1種の活物質及び/又は少なくとも1種の導電性材料をバインダー組成物に一部ずつ添加することにより有利に実現することができる。
【0031】
ある特定の実施形態において、少なくとも1種の活物質、少なくとも1種の導電性材料、及びバインダーを合わせるステップは少なくとも1種の活物質及び/又は少なくとも1種の導電性材料を一部ずつ及び/又はゆっくりした添加によりバインダー組成物と合わせることを含む。一部ずつの添加は2以上の部分の材料をバインダー(biner)組成物と合わせることを含むことができる。ある特定の実施形態において、一部ずつの添加は2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれ以上の部分の少なくとも1種の活物質及び/又は少なくとも1種の導電性材料の総量をバインダー組成物と合わせることを含むことができる。ある特定の実施形態において、一部ずつの添加は2~10、2~9、2~8、2~7、2~6、2~5、2~4、2~3、又は2つの部分の少なくとも1種の活物質及び/又は少なくとも1種の導電性材料の総量をバインダー組成物と合わせることを含むことができる。各々の部分の少なくとも1種の活物質及び/又は少なくとも1種の導電性材料の量は特に制限されない。従って、各々の部分は独立して実質的に同じ質量の少なくとも1種の活物質及び/又は少なくとも1種の導電性材料を含むことができ;又は少なくとも1種の活物質及び/又は少なくとも1種の導電性材料の各々の部分は独立して質量が異なることができる(例えば、バインダー組成物に添加される各々の部分の質量は増大しても、減少してもよいし、又は変化しなくてもよい)。
【0032】
少なくとも1種の活物質及び/又は少なくとも1種の導電性材料のバインダー組成物へのゆっくりした添加は30秒~72時間の期間にわたる材料のバインダー組成物への添加を含むことができる。ある特定の実施形態において、少なくとも1種の活物質及び/又は少なくとも1種の導電性材料のゆっくりした添加は30秒~48時間、30秒~24時間、30秒~12時間、30秒~10時間、30秒~8時間、30秒~6時間、30秒~4時間、30秒~4時間、30秒~3時間、30秒~2時間、30秒~1時間、10分~3時間、30分~3時間、1時間~3時間、又は1時間~2時間の期間にわたる材料のバインダー組成物への添加を含むことができる。
少なくとも1種の活物質及び少なくとも1種の導電性材料及びバインダー組成物の添加のオーダーも驚くべきことにアノードインク配合物から調製された負極の性能を改良することができる。少なくとも1種の活物質、少なくとも1種の導電性材料、及びバインダー組成物を合わせるステップはバインダー組成物を少なくとも1種の活物質と合わせることにより活物質を含むバインダー組成物を形成し、活物質を含むバインダー組成物を少なくとも1種の導電性材料と合わせることによりアノードインク配合物を形成することを含むことができ;又は少なくとも1種の活物質、少なくとも1種の導電性材料、及びバインダー組成物を合わせるステップはバインダー組成物を少なくとも1種の導電性材料と合わせることにより導電性材料を含むバインダー組成物を形成し、導電性材料を含むバインダー組成物を少なくとも1種の活物質と合わせることによりアノードインク配合物を形成することを含むことができる。実施例5で提示される結果は、導電性材料を活物質の前にバインダー組成物に添加すると、得られる負極が驚くべきことに改良された性能を有することを示す。
【0033】
ある特定の実施形態において、少なくとも1種の活物質、少なくとも1種の導電性材料、及びバインダーを合わせるステップはバインダー組成物及び少なくとも1種の導電性材料を合わせることにより導電性材料を含むバインダー組成物を形成し;少なくとも1種の活物質及び導電性材料を含むバインダー組成物を合わせることによりアノードインク配合物を形成することを含む。
ある特定の実施形態において、少なくとも1種の活物質、少なくとも1種の導電性材料、及びバインダーを合わせるステップはバインダー組成物及び少なくとも1種の導電性材料を一部ずつ合わせることにより導電性材料を含むバインダー組成物を形成し;少なくとも1種の活物質を一部ずつ導電性材料を含むバインダー組成物と合わせることによりアノードインク配合物を形成することを含む。
【0034】
ある特定の実施形態において、少なくとも1種の活物質及び少なくとも1種の導電性材料の添加のオーダー並びに一部ずつの添加は両方ともアノードインク配合物から調製される負極の性能の更なる改良のために変更することができる。
少なくとも1種の活物質、少なくとも1種の導電性材料、及びバインダーを合わせるステップはバインダー組成物及び少なくとも1種の活物質を一部ずつ合わせることにより活物質を含むバインダー組成物を形成し;少なくとも1種の活物質を一部ずつ導電性材料を含むバインダー組成物と合わせることによりアノードインク配合物を形成することを含むことができる。少なくとも1種の活物質及び/又は少なくとも1種の導電性材料の添加のオーダー及び一部ずつの添加の様々な組合せも考えられる。かかる実施形態の例を以下に記載する。
最初に導電性材料を添加し、活物質を一部ずつ添加する。少なくとも1種の活物質、少なくとも1種の導電性材料、及びバインダーを合わせるステップはバインダー組成物及び少なくとも1種の導電性材料を合わせることにより導電性材料を含むバインダー組成物を形成し;少なくとも1種の活物質を一部ずつ導電性材料を含むバインダー組成物と合わせることによりアノードインク配合物を形成することを含むことができる。
【0035】
最初に導電性材料を添加し、導電性材料を一部ずつ添加する。少なくとも1種の活物質、少なくとも1種の導電性材料、及びバインダーを合わせるステップはバインダー組成物及び少なくとも1種の導電性材料を一部ずつ合わせることにより導電性材料を含むバインダー組成物を形成し;少なくとも1種の活物質並びに導電性材料を含むバインダー組成物を合わせることによりアノードインク配合物を形成することを含む。
最初に導電性材料を添加し、活物質及び導電性材料を一部ずつ添加する。少なくとも1種の活物質、少なくとも1種の導電性材料、及びバインダーを合わせるステップはバインダー組成物及び少なくとも1種の導電性材料を一部ずつ合わせることにより導電性材料を含むバインダー組成物を形成し;少なくとも1種の活物質を一部ずつ導電性材料を含むバインダー組成物と合わせることによりアノードインク配合物を形成することを含むことができる。
最初に活物質を添加し、導電性材料を一部ずつ添加する。少なくとも1種の活物質、少なくとも1種の導電性材料、及びバインダーを合わせるステップはバインダー組成物及び少なくとも1種の活物質を合わせることにより活物質を含むバインダー組成物を形成し;少なくとも1種の導電性材料を一部ずつ導電性材料を含むバインダー組成物と合わせることによりアノードインク配合物を形成することを含むことができる。
【0036】
最初に活物質を添加し、活物質を一部ずつ添加する。少なくとも1種の活物質、少なくとも1種の導電性材料、及びバインダーを合わせるステップはバインダー組成物及び少なくとも1種の活物質を一部ずつ合わせることにより活物質を含むバインダー組成物を形成し;少なくとも1種の導電性材料及び活物質を含むバインダー組成物を合わせることによりアノードインク配合物を形成することを含むことができる。
最初に活物質を添加し、活物質及び導電性材料を一部ずつ添加する。少なくとも1種の活物質、少なくとも1種の導電性材料、及びバインダーを合わせるステップはバインダー組成物及び少なくとも1種の活物質を一部ずつ合わせることにより活物質を含むバインダー組成物を形成し;少なくとも1種の導電性材料を一部ずつ活物質を含むバインダー組成物と合わせることによりアノードインク配合物を形成することを含むことができる。実施例6に示される結果は、2つの部分での活物質のバインダー組成物への添加前に活物質を2つの部分で添加すると、得られる負極が驚くべきことに改良された性能を有することを示している。
【0037】
少なくとも1種の活物質及び少なくとも1種の導電性材料の幾つか又は全てをバインダー組成物と合わせる前に予混合することもまた驚くべきことにアノードインク配合物から調製される負極の性能を改良することができる。例えば、2つの活物質がある場合、その2つの活物質をバインダー組成物と合わせる前に予混合することができる。同様に、2つの導電性材料がある場合、その2つの導電性材料をバインダー組成物と合わせる前に予混合することができる。ある特定の実施形態において、少なくとも1種の活物質及び少なくとも1種の導電性材料を予混合することにより、後にバインダー組成物と合わせることができる予混合物を形成することができる。実施例6に提示される結果は、活物質及び導電性材料をバインダー組成物と合わせる前に予混合すると得られる負極が驚くべきことに改良された性能を有することを示している。
活物質及び導電性材料のより複雑な添加順(addition sequence)も本開示により考えられる。例えば、少なくとも1種の活物質の1つの部分をバインダー組成物に添加し、続いて少なくとも1種の導電性材料の2つの部分を、その後少なくとも1種の活物質の1つの部分を添加することができる。実施例6の結果により示されるように、かかる添加順もまた本明細書に記載されているアノードインク配合物から調製される負極の性能を改良することができる。
【0038】
本明細書に記載されているアノードインク配合物を調製する代表的な混合順を描いた模式図を
図1に示す。
本開示はまた負極アノードを調製する方法も提供し、この方法は本明細書に記載されているアノードインク配合物中の水の少なくとも一部を除去することにより負極アノードを形成することを含む。ある特定の実施形態において、アノードインク配合物中の全て又は実質的に全ての水を除去する。当技術分野で公知のあらゆる方法を用いてアノードインク配合物から水を除去することができる。適当な方法の選択は当業者の通常の知識の範囲内である。代表的な方法には、限定されることはないが、アノードインク配合物を減圧(例えば、真空)及び熱の少なくとも1つに付すことがある。ある特定の実施形態において、負極アノードを調製する方法は更にアノードインク配合物を集電器の表面に適用し、少なくとも一部の水をアノードインク配合物から除去することにより被覆された集電器を形成することを含む。
【0039】
アノードインク配合物を調製し、アノードインク配合物を基材に適用する代表的な方法は以下のステップを含む:
・ ポリマーを脱イオン水又は0.1~10v/v%酢酸溶液に溶解して0.1~10質量%の濃度範囲の溶液を得る(機械的撹拌);
・ 誘導体選択に応じて磁気撹拌しながら架橋剤を脱イオン水又は有機溶媒に溶解する;
・ 磁気撹拌し酸性のpHを維持しながらポリマー溶液を架橋剤溶液と混合して架橋したポリマー(バインダー溶液)を得る;
・ 活物質を混合して予混合物を得る。活物質はケイ素及び/又はグラファイトからなる群から選択される;
・ 導電性材料を混合して予混合物を得る。導電性材料はカーボンブラック、super P、炭素ナノ繊維(CNF)、カーボンナノチューブ(CNT)、及びその他の導電性添加物からなる群から選択される;
・ 活物質及び導電性材料の予混合した粒子を架橋したポリマーと合わせて、ボールミルで及び/又は続いて剪断混合により均一に混合された適用可能なアノードインク(固形分範囲5~50質量%)を得る;
・ 粘稠なインクを異なる厚さの銅箔上に自動フィルムコーターを用いてドクターブレードで適用する。然し、適用はまた、アノードインクの粘度に応じて浸漬コーティング、スクリーン印刷、スプレーコーティングにより、又はスロットダイを用いて適用することにより行うこともできる。水性の適用可能なアノードインクの適切な粘度範囲は5~80Pa・秒である;
・ 被覆されたアノードインクを含有する電極を異なる温度で乾燥し、続いて真空乾燥する;
・ リチウム電池セルに使用される電極が調製されるように被覆されたアノードインク表面を処理する;ステップは被覆された電極の圧延/カレンダー掛け、及びコイン電池調製前の真空乾燥を含む。
【0040】
本開示はまた正極;正極に対向して配置された負極;及び正極と負極との間に配置された電解質を含むリチウム電池も提供され、負極は本明細書に記載されているアノードインク配合物を用いて調製される。
図5Aは、正極103;正極に対向して配置された負極101;及び正極と負極との間に配置された電解質102を含む本明細書に記載されているある特定の実施形態による代表的な電池構造を示し、負極101は本明細書に記載されているアノードインク配合物を用いて調製される。
リチウムイオン電池は当技術分野で公知のいかなるタイプであることもできる。代表的な電池には、限定されることはないが、コイン電池、円筒型電池(18650電池を含む)、ポーチセル、及びプリズムセルがある。
【0041】
当技術分野で公知のあらゆる電解質を本明細書に記載されているリチウム電池に使用することができる。ある特定の実施形態において、電解質はリチウム塩を含有する非水性の電解質である。例えば、非水性の電解質は非水性の液体電解質、有機の固体電解質、又は無機の固体電解質であり得る。
非水性の液体電解質はプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸ジエチル、炭酸メチルエチル(MEC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、γ-ブチロラクトン、ギ酸メチル、酢酸メチル、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3-ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキサン、アセトニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、3-メチル-2-オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エチルエーテル、1,3-プロパンスルトン、N-メチルアセトアミド、アセトニトリル、アセタール、ケタール、スルホン、スルホラン、脂肪族エーテル、環式エーテル、グライム、ポリエーテル、リン酸エステル、シロキサン、ジオキソラン、及びN-アルキルピロリドンから選択される少なくとも1種の電解質溶媒を含むことができる。ある特定の実施形態において、非水性の液体電解質はEC、DMC、DEC、EMC、FEC、及びこれらの組合せを含む。
【0042】
有機の固体電解質の非限定例はポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリプロピレンオキシド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリアジテーションリシン(poly agitation lysine)、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、及びイオン性解離基を含有するポリマーである。
無機の固体電解質の非限定例はリチウムの窒化物、ハロゲン化物、硫酸塩、及びケイ酸塩、例えばLi3N、LiI、Li5NI2、Li3N-LiI-LiOH、LiSiO4、LiSiO4-LiI-LiOH、Li2SiS3、Li4SiO4、Li4SiO4-LiI-LiOH、及びLi3PO4-Li2S-SiS2である。
リチウム塩はリチウム電池に一般的に使用されるあらゆるリチウム塩、例えば上述の非水性電解質に可溶性のあらゆるリチウム塩であり得る。例えば、リチウム塩はLiCl、LiBr、LiI、LiClO4、LiBF4、LiB10Cl10、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、CH3SO3Li、CF3SO3Li、(CF3SO2)2NLi、クロロホウ酸リチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、テトラフェニルホウ酸リチウム、LiNO3、ビスオキサラトホウ酸リチウム、オキサリルジフルオロホウ酸リチウム(lithium oxalyldifluoroborate)、及びビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムの少なくとも1種であり得る。
【0043】
代表的な電解質には、限定されることはないが、EC:DMC=1:1質量%;EC:DEC:EMC=1:1:1Vol%;5.0%FECを含むEC:DEC=1:1Vol%;EC:DMC:DEC=1:1:1Vol%;EC:DMC:EMC=1:1:1質量%;EC:DEC=1:1Vol%;5.0%FECを含むEC:DMC=1:1Vol%;10.0%FECを含むEC:DMC=1:1Vol%;EC:DEC=1:1質量%;EC:EMC=3:7Vol%;5.0%FECを含むEC:EMC=3:7Vol%;10.0%FECを含むEC:EMC=3:7Vol%;EC:EMC=3:7質量%;5.0%FECを含むEC:EMC=3:7質量%;10.0%FECを含むEC:EMC=3:7質量%;EC:DMC:EMC=1:1:1Vol%;及びEC:DMC=1:1Vol%中のLiPF6がある。
ある特定の実施形態において、正極;正極に対向して配置された負極;正極と負極との間に配置されたセパレーター基材;並びにセパレーター基材と正極との間及びセパレーター基材と負極との間に配置された電解質を含むリチウム電池が本発明により提供され、負極は本明細書に記載されているアノードインク配合物から調製される。
【0044】
図5Bは、正極103;正極に対向して配置された負極101;正極103と負極101との間に配置されたセパレーター基材105;並びにセパレーター基材105と正極103との間及びセパレーター基材105と負極101との間に配置された電解質102を含む、本明細書に記載されているある特定の実施形態による代表的な電池構造を示し、負極は本明細書に記載されているアノードインク配合物から調製される。
ある特定の実施形態において、セパレーター基材105はポリオレフィン、フッ素を含有するポリマー、セルロースポリマー、ポリイミド、ナイロン、ガラス繊維、アルミナ繊維、多孔質金属箔、及びこれらの組合せから選択される。
セパレーター基材105はポリオレフィン製であることができる。代表的なポリオレフィンには、限定されることはないが、ポリエチレン(PE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリブチレン、以上のものの任意のコポリマー、及びこれらの混合物がある。ある特定の実施形態において、セパレーター基材105はポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、又はこれらの組合せのようなポリオレフィンである(例えば、Celgard(登録商標)セパレーター、Celgard LLC、Charlotte, N.C.、US)。セパレーター基材105は乾燥延伸プロセス(dry stretch process)(CELGARD(登録商標)プロセスとしても知られている)又は溶媒プロセス(ゲル押出又は相分離プロセスとしても知られている)により作成することができる。
【0045】
ある特定の実施形態において、正極集電器;正極;負極集電器;正極に対向して配置された負極;正極と負極との間に配置されたセパレーター基材;並びにセパレーター基材と正極との間及びセパレーター基材と負極との間に配置された電解質を含むリチウム電池が本発明により提供され、負極は本明細書に記載されているアノードインク配合物から調製される。
図5Cは、正極集電器106;正極103;負極集電器107;正極に対向して配置された負極101;正極103と負極101との間に配置されたセパレーター基材105;並びにセパレーター基材105と正極103との間及びセパレーター基材105と負極101との間に配置された電解質102を含む本明細書に記載されているある特定の実施形態による代表的な電池構造を示し、正極103及び負極101の少なくとも1つは本明細書に記載されているバインダー又はバインダー組成物を含む。
【0046】
負極集電器107はリチウム電池で化学変化を起こすことがなく伝導性を有するあらゆる材料、例えば、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼結炭素、又は表面が炭素、ニッケル、チタン、銀、等で処理された銅若しくはステンレス鋼、又はアルミニウム-カドミウム合金であり得る。追加の代表的な負極集電器107には、限定されることはないが銅箔、銅メッシュ箔、銅フォームシート、ニッケルフォームシート、ニッケルメッシュ箔、及びニッケル箔がある。幾つかの実施形態において、負極集電器107はフィルム、シート、箔、網、多孔質構造体、フォーム、及び不織布を始めとする様々な形態のいずれでもよい。
負極は、本明細書に記載されているアノードインク配合物を負極集電器の表面に適用し、水の少なくとも一部をアノードインク配合物から除去することにより負極の表面に適用された負極を形成することにより調製することができる。水は、加熱、減圧、又は室温での蒸発の少なくとも1つを適用することによりアノードインク配合物から除去することができる。
正極集電器106はリチウム電池で化学変化を起こすことがなく高い伝導性を有するあらゆる材料、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼結炭素、又は表面が炭素、ニッケル、チタン、銀、等で処理されたアルミニウム若しくはステンレス鋼であり得る。幾つかの実施形態において、正極集電器106は、正の活物質に対して高まった接着強度を有するようにその表面上に微細な凹凸を有し得る。正極集電器106はフィルム、シート、箔、網、多孔質構造体、フォーム、及び不織布を始めとする様々な形態のいずれかであり得る。
【0047】
下記実施例において、コイン型半電池を、穴を開けてアルゴンを満たしたグローブボックスでCR2032コイン電池に組み立てられた直径14mmの水性の被覆されたアノードインクからなる電極と共に組み立てた。リチウム金属箔を対電極として、そしてCelgard 2325(又はH2512)をセパレーターとして使用した。電解質はリチウムイオン電池に使用されるあらゆる適切な電解質であり得る。例えば、単一の溶媒又は異なる容積比、例えば、1:1又は3:7又は1:1:1で混合された2種以上の溶媒を含有する溶媒混合物に溶解した、異なるリチウム塩濃度、例えば、1M/1.2M/1.5M/2M等のリチウム電解質塩。例えば、電解質溶液はエチレンカーボネート(EC)、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸エチルメチル(EMC)及びジエチレンカーボネート(DEC)の溶媒混合物に均一に溶解したヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)を含有し得る。即ち、10%フルオロエチレンカーボネート(FEC)及び/又は2%ビニレンカーボネート(VC)を添加物として含むエチレンカーボネート/炭酸エチルメチル(EC/EMC、質量で3:7)中1.2MのLiPF6。例えば、電解質溶液は1%(VC)及び/又は5%又は10%FECを添加物として含むEC/EMC/DMC/DEC中にリチウム4,5-ジシアノ-2-(トリフルオロメチル)イミダゾール(LiTDI)/ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiTFSi)を含有し得る。
【0048】
FTIR分光法を使用して架橋反応に関する情報を得た。ポリマー及び架橋したポリマーのFTIRスペクトルを
図2に示す。ポリマー及び架橋したポリマーの両方で観察された-OH、-NH、-CH及び-CNのような重要な官能基に対応する主ピークはポリマーの架橋反応を裏付けた。ポリマーに存在する-COOH、-NH
2及び-OHのような極性の基は水ベースのアノードインク(活物質及び導電性材料を含む架橋したポリマーで構成された)の本明細書の場合における活物質との相互作用の十分な吸着部位を提供した。
剪断速度の関数としての架橋したポリマー及び適用可能なアノードインクの粘度は剪断粘度低下チキソトロピック特性及び非ニュートン特徴を示し、即ち、剪断速度が増大すると共に粘度が低下する。低い剪断速度での粘度は固体の沈殿挙動の尺度であり、高い剪断速度での粘度は加工性の尺度である。アノードインクで観察された低い剪断速度での高い粘度は、固体成分の沈殿が著しくないので好ましい。アノードインクで観察された高い剪断速度での低い粘度もより粘稠でないアノードインクではより均一なコーティングが期待されるので有利な特徴である。
【0049】
図3は0.1~100Paで変化するかかった剪断応力に対する架橋したポリマー及びアノードインクの貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G”)を示す。それらはG’及びG”の異なる値にも関わらず類似の動的挙動を示す。線状の粘弾性(LVE)領域が低い剪断応力で観察され、その値は架橋したポリマー及びアノードインクに対してそれぞれ1.2及び2.7Paである。LVE領域はアノードインクがその分子構造を損傷することなく機械的な変形に耐えることができる領域と定義される。LVE領域において、殆どの入力機械的エネルギーは、かかる試料がかかった応力を回復すると弾力的に回復するので変形したがまだ壊れてないポリマー鎖に貯蔵される。G’=G”での剪断応力の値は試料の凝集性を示し、架橋したポリマー及びアノードインクに対してそれぞれ5.3及び12.3Paであることが分かる。交差点の後、G”がG’より高くなり、試料が固体様から液体様になる。アノードインクは交差点で限界応力のより高い値を示し、ミックスが加工処理中に粘着性及び凝集性を示すように遷移を強要するにはより大きい剪断応力入力の必要性を示唆する。
【0050】
電池を、その速度及びサイクル性能のために電池試験システム機械で反復充放電サイクルに付す(
図4)。0.1C、0.5C、1C、及び10Cのいろいろな充放電速度を設定すると共に20~200サイクルのサイクルにかけることによりアノードの速度性能を試験した。これにより、速い充放電速度に対するアノード材料の適合性及びその商業用途の考察を決定することができる。電池を0.1Cで0.01~1Vのサイクルにかけた。これらのアノードは500~2,500mAh/gの範囲の高い容量及び1~5mAh/cm
2の面積容量範囲を、それぞれ示す。更にそれらは、一例として
図4A~Eに示すように1Cで50サイクル又はそれ以上の非常に安定なサイクリング性能を示す。これは、本発明の水性の適用可能なアノードインクが脱リチウム化中高い電流密度(例えば、1C)で調べたとき容量を機械的且つ電気的に支持するのに十分なほど頑強であることを裏付けている。
図4Aはアノードインク配合物(例えば:65%AM 15%CM 20%バインダー)の電気化学的性能の再現性を示す。電極における質量負荷の変動による面積容量の細かい調整は
図4Bに示されている。アノードインク配合物の電気化学的性能に対する導電性材料及びその変形(例えば:カーボンブラック(CB)/CNF/CNT等)の相乗効果は
図4Cに見ることができる。アノードインクの配合物における混合順のステップ(iv)及び(v)(実施例方法に挙げられる)は互いに置き換えることができ、得られた電極性能は
図4D及び4Eに示す。適用可能なアノードインクにおける活物質粒度変動(1&2 Si D50粒度分布<100nm、3&4 Si D50粒度分布<200nm)は
図4Fに示す電極性能を生じた。
【実施例】
【0051】
(実施例1)
アノードインク配合物の性能変化
キトサンを機械的に撹拌しながら1%v/v酢酸水溶液に溶かして2質量%キトサン溶液を得た。架橋剤としてのトリポリリン酸塩をイオン水に溶かし[Chit/TPP質量比8.3]、磁気撹拌下でキトサン溶液に滴下して添加してバインダー組成物(バインダー組成物中のキトサン及びTPPの濃度は約2質量/質量%)を得たが、その間pH<5を維持した。次に、予混合した活物質(Si+グラファイト;65質量/質量%)をバインダー溶液(20質量/質量%)と遠心ミキサーで10分間混合し、続いて予混合した導電性材料(カーボンブラック10質量/質量%及びCNT5質量/質量%)を添加し、更に遠心ミキサーで5分間混合した。そうして得られた粘稠なアノードインクを次いで1時間オーバーヘッド分散機ブレードで混合し、ドクターブレードコーターにより銅箔に適用した。次いで被覆された電極を表面が乾燥するまで空気中80℃で乾燥し、続いて30分間110℃で真空乾燥する。
【0052】
次いで、穴を開け、アルゴンを満たしたグローブボックスで組み立てた直径14mmの得られた電極を用いてコイン型半電池(CR2032)を調製した。リチウム金属箔を対電極として、Celgard 2325をセパレーターとして、10%FECを含むEC:EMC(3:7)中1.2MのLiPF
6を電解質として使用した。
次に電池を電池試験システム機械で反復充放電サイクルに付し、0.01~1.00Vで、1生成サイクル0.1C及び結果のエージングサイクル1Cとしてサイクルにかけた。3つの別々のバッチのアノードインク配合物から調製した3つのコイン型半電池に対する3つのかかる試験の結果を
図4Aに示す。
【0053】
(実施例2)
アノードインク配合物性能に対するいろいろな質量負荷の効果
キトサンを機械的に撹拌しながら1%v/v酢酸水溶液に溶かして2質量%キトサン溶液を得た。架橋剤としてのトリポリリン酸塩をイオン水に溶かし[Chit/TPP質量比8.3]、キトサン溶液に磁気撹拌下で滴下して添加してバインダー組成物(バインダー組成物中のキトサン及びTPPの濃度は約2質量/質量%)を得たが、その間pH<5を維持した。次に、予混合した活物質(Si+グラファイト;65質量/質量%)をバインダー溶液(20質量/質量%)と遠心ミキサーで10分混合し、続いて予混合した導電性材料(カーボンブラック10質量/質量%及びCNT5質量/質量%)を添加し、更に遠心ミキサーで5分間混合した。そうして得られた粘稠なアノードインクを次いで1時間オーバーヘッド分散機ブレードで混合し、ドクターブレードコーターにより銅箔に適用した。いろいろな質量負荷のアノードインク(
図4B、1-1(2.80mg/cm
2);1-2(2.62mg/cm
2);1-3(2.35mg/cm
2);1-4(2.04mg/cm
2);1-5(1.07mg/cm
2))を銅箔に適用した。次に被覆された電極を空気中80℃で表面が乾燥するまで乾燥し、続いて30分間110℃で真空乾燥する。
【0054】
次いで、穴を開け、アルゴンを満たしたグローブボックスで組み立てた直径14mmの得られた電極を用いてコイン型半電池(CR2032)を調製した。リチウム金属箔を対電極として、Celgard 2325をセパレーターとして、10%FECを含むEC:EMC(3:7)中1.2MのLiPF
6を電解質として使用した。
次に電池を電池試験システム機械で反復充放電サイクルに付し、0.01~1.00Vで、1生成サイクル0.1C及び結果のエージングサイクル1Cとしてサイクルにかけた。いろいろな質量負荷のアノードインク配合物(1-1(2.80mg/cm
2);1-2(2.62mg/cm
2);1-3(2.35mg/cm
2);1-4(2.04mg/cm
2);1-5(1.07mg/cm
2))の試験結果を
図4Bに示す。
【0055】
(実施例4)
アノードインク配合物性能に対するいろいろな導電性材料の効果
キトサンを機械的に撹拌しながら1%v/v酢酸水溶液に溶かして2質量%キトサン溶液を得た。架橋剤としてのトリポリリン酸塩をイオン水に溶かし[Chit/TPP質量比8.3]、キトサン溶液に磁気撹拌下で滴下して添加してバインダー組成物(バインダー組成物中のキトサン及びTPPの濃度は約2質量/質量%)を得たが、その間pH<5を維持した。次いで、予混合した活物質(Si+グラファイト;65質量/質量%)をバインダー溶液(20質量/質量%)と遠心ミキサーで10分間混合し、続いて予混合した導電性材料[CM-1(10質量/質量%炭素super P-Li+5質量/質量%CNF);CM-2(10質量/質量%カーボンブラックC65+5質量/質量%CNF);CM-3(10質量/質量%カーボンブラックC65+5質量/質量%CNF);CM-4(10質量/質量%カーボンブラックC65+5質量/質量%Sn);CM-5(10質量/質量%カーボンブラックC65+5質量/質量%Sn+5質量/質量%CNT)]を添加し、更に遠心ミキサーで5分間混合した。そうして得られた粘稠なアノードインクを次に1時間オーバーヘッド分散機ブレードで混合し、ドクターブレードコーターで銅箔に適用した。次いで被覆された電極を80℃空気中で表面が乾燥するまで乾燥し、続いて30分間110℃で真空乾燥する。
【0056】
次いで、穴を開け、アルゴンを満たしたグローブボックスで組み立てた直径14mmの得られた電極を用いてコイン型半電池(CR2032)を調製した。リチウム金属箔を対電極として、Celgard 2325をセパレーターとして、10%FECを含むEC:EMC(3:7)中1.2MのLiPF
6を電解質として使用した。
次に電池を電池試験システム機械で反復充放電サイクルに付し、0.01~1.00Vで、1生成サイクル0.1C及び結果のエージングサイクル1Cとしてサイクルにかけた。いろいろな導電性材料[CM-1(10質量/質量%炭素super P-Li+5質量/質量%CNF);CM-2(10質量/質量%カーボンブラックC65+5質量/質量%CNF);CM-3(10質量/質量%カーボンブラックC65+5質量/質量%CNF);CM-4(10質量/質量%カーボンブラックC65+5質量/質量%Sn);CM-5(10質量/質量%カーボンブラックC65+5質量/質量%Sn+5質量/質量%CNT)]を用いて調製したコイン型半電池の試験結果を
図4Cに示す。
【0057】
(実施例5)
導電性材料及び活物質の添加のオーダー/シーケンスのアノードインク配合物性能に対する効果
キトサンを機械的に撹拌しながら1%v/v酢酸水溶液に溶かした。架橋剤としてのトリポリリン酸塩をイオン水に溶かし[Chit/TPP質量比8.3]、ポリマー溶液に磁気撹拌下で滴下して添加してバインダー組成物(バインダー組成物中のキトサン及びTPPの濃度は約2質量/質量%)を得たが、その間pH<5を維持した。活物質(Si;60質量/質量%)及び導電性材料(カーボンブラック;20質量/質量%)をいろいろな添加のオーダー/シーケンスでバインダー溶液(20質量/質量%)材料(シーケンス1-Siの添加後カーボンブラック;シーケンス2-カーボンブラックの後にSi;シーケンス3-Siの後にカーボンブラック;シーケンス4-予混合したSi(30質量/質量%)及びカーボンブラック(20%)の後にSi(30質量/質量%))と遠心ミキサーで10分間混合した。そうして得られた粘稠なアノードインクを次に1時間オーバーヘッド分散機ブレードで混合し、ドクターブレードコーターにより銅箔に適用した。次いで被覆された電極を80℃空気中で表面が乾燥するまで乾燥し、続いて30分間110℃で真空乾燥する。
【0058】
次に、穴を開け、アルゴンを満たしたグローブボックスで組み立てた直径14mmの得られた電極を用いてコイン型半電池(CR2032)を調製した。リチウム金属箔を対電極として、Celgard 2325をセパレーターとして、10%FECを含むEC:EMC(3:7)中1.2MのLiPF
6を電解質として使用した。
次いで、電池を電池試験システム機械で反復充放電サイクルに付し、0.01~1.00Vで、1生成サイクル0.1C及び結果のエージングサイクル1Cとしてサイクルにかけた。活物質及び導電性材料のいろいろな添加のオーダー/シーケンスを用いて(シーケンス1-Siの添加後カーボンブラック;シーケンス2-カーボンブラックの後にSi;シーケンス3-Siの後にカーボンブラック;シーケンス4-予混合したSi(30質量/質量%)及びカーボンブラック(20%)の後にSi(30質量/質量%))調製したアノードインク配合物から調製したコイン型半電池の結果を
図4Dに示す。
【0059】
(実施例6)
導電性材料及び活物質の添加のオーダー/シーケンスのアノードインク配合物性能に対する効果
キトサンを機械的に撹拌しながら1%v/v酢酸水溶液に溶かして2質量%キトサン溶液を得た。架橋剤としてのトリポリリン酸塩をイオン水に溶かし[Chit/TPP質量比8.3]、キトサン溶液に磁気撹拌下で滴下して添加してバインダー組成物(バインダー組成物の固形分は約2質量/質量%)を得たが、その間pH<5を維持した。予混合した活物質(Si+グラファイト;65質量/質量%)及び導電性材料(カーボンブラック10質量/質量%及びCNT5質量/質量%)をいろいろな添加のオーダー/シーケンスでバインダー組成物(20質量/質量%)と混合した(シーケンス5-予混合したSi、グラファイト、及びカーボンブラックの添加後CNTの添加;シーケンス6-予混合したSi及びグラファイトの添加後予混合したカーボンブラック及びCNTの添加;シーケンス7-予混合したSi、グラファイト、カーボンブラック、及びCNTの添加;シーケンス8-Siの添加後予混合したカーボンブラック及びCNTの添加、続いてグラファイトを添加し、更に遠心ミキサーで5分間混合した)。そうして得られた粘稠なアノードインクを次に1時間オーバーヘッド分散機ブレードで混合し、ドクターブレードコーターにより銅箔に適用した。次いで被覆された電極を80℃空気中で表面が乾燥するまで乾燥し、続いて30分間110℃で真空乾燥する。
【0060】
次いで、穴を開け、アルゴンを満たしたグローブボックスで組み立てた直径14mmの得られた電極を用いてコイン型半電池(CR2032)を調製した。リチウム金属箔を対電極として、Celgard 2325をセパレーターとして、10%FECを含むEC:EMC(3:7)中1.2MのLiPF
6を電解質として使用した。
次に、電池を電池試験システム機械で反復充放電サイクルに付し、0.01~1.00Vで、1生成サイクル0.1C及び結果のエージングサイクル1Cとしてサイクルにかけた。いろいろな添加のオーダー/シーケンスの活物質及び導電性(カーボンブラック10質量/質量%及びCNT5質量/質量%)を用いていろいろな添加のオーダー/シーケンス(シーケンス5-予混合したSi、グラファイト、及びカーボンブラックの添加後CNTの添加;シーケンス6-予混合したSi及びグラファイトの添加後予混合したカーボンブラック及びCNTの添加;シーケンス7-予混合したSi、グラファイト、カーボンブラック、及びCNTの添加;シーケンス8-Siの添加後予混合したカーボンブラック及びCNTの添加、続いてグラファイトを添加し、更に遠心ミキサーで5分間混合した)により調製したアノードインク配合物から調製したコイン型半電池の結果を
図4Eに示す。
【0061】
(実施例7)
アノードインク配合物性能に対する活物質平均粒度の効果
キトサンを機械的に撹拌しながら1%v/v酢酸水溶液に溶かして2質量%キトサン溶液を得た。架橋剤としてのトリポリリン酸塩をイオン水に溶かし[Chit/TPP質量比8.3]、キトサン溶液に磁気撹拌下で滴下して添加してバインダー組成物(バインダー組成物中のキトサン及びTPPの濃度は約2質量/質量%)を得たが、その間pH<5を維持した。次いで、いろいろな平均粒度(1&2 Si D50粒度分布=100nm;3&4 Si D50粒度分布=D90は200nm)の予混合した活物質(Si+グラファイト;65質量/質量%)をバインダー溶液(20質量/質量%)と遠心ミキサーで10分間混合し、続いて予混合した導電性材料(カーボンブラック10質量/質量%及びCNT5質量/質量%)を添加し、更に遠心ミキサーで5分間混合した。次いで、そうして得られた粘稠なアノードインクを1時間オーバーヘッド分散機ブレードで混合し、ドクターブレードコーターにより銅箔に適用した。次に、被覆された電極を80℃空気中で表面が乾くまで乾燥し、続いて30分間110℃で真空乾燥する。
【0062】
次いで、穴を開け、アルゴンを満たしたグローブボックスで組み立てた直径14mmの得られた電極を用いてコイン型半電池(CR2032)を調製した。リチウム金属箔を対電極として、Celgard 2325をセパレーターとして、10%FECを含むEC:EMC(3:7)中1.2MのLiPF
6を電解質として使用した。
次いで、電池を電池試験システム機械で反復充放電サイクルに付し、0.01~1.00Vで、1生成サイクル0.1C及び結果のエージングサイクル1Cとしてサイクルにかけた。いろいろな平均粒度(1&2 Si D50粒度分布=100nm;3&4 Si D50粒度分布=200nm)を有する活物質(Si+グラファイト;65質量/質量%)を用いて調製したアノードインク配合物から調製したコイン型半電池の結果を
図4Fに示す。
【国際調査報告】