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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-12
(54)【発明の名称】埋め込み型腎代替療法装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/34 20060101AFI20240405BHJP
   A61M 1/16 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
A61M1/34 121
A61M1/16
A61M1/34 125
A61M1/16 117
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023567122
(86)(22)【出願日】2022-04-05
(85)【翻訳文提出日】2023-12-22
(86)【国際出願番号】 IL2022050356
(87)【国際公開番号】W WO2022229945
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】17/242,464
(32)【優先日】2021-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518129938
【氏名又は名称】シャーレ・ゼデック・サイエンティフィック・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHAARE ZEDEK SCIENTIFIC LTD.
(71)【出願人】
【識別番号】523412094
【氏名又は名称】ベン-ハイム ヤニフ
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ベン-ハイム ヤニフ
(72)【発明者】
【氏名】ヤコブゾン エフド
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4C077BB01
4C077BB02
4C077CC03
4C077CC04
4C077CC05
4C077CC09
4C077DD08
4C077DD10
4C077DD21
4C077DD22
4C077EE01
4C077EE02
4C077EE04
4C077FF04
4C077GG02
4C077HH03
4C077HH15
4C077KK01
4C077KK23
4C077NN14
(57)【要約】
埋め込み型腎代替療法装置は、対象者の体内の血管内に挿入されるように構成される第1カテーテルと、前記第1カテーテルと流体連通し、前記対象者の血液を前記血管から送り出すように構成されるポンプと、前記ポンプと流体連通するフィルタであって、前記ポンプから前記対象者の血液を受け取り、前記受け取られた血液を濾過して、濾過された血液及び濾液を供給するように構成され、前記第1カテーテルと流体連通して、前記濾過された血液を前記フィルタから前記血管に流出させるフィルタと、前記フィルタと流体連通し、前記対象者の体内の膀胱に挿入されて、前記濾液を前記フィルタから前記膀胱に流出させるように構成される第2カテーテルとを含む。
【選択図】図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の体内の血管内に挿入されるように構成される第1カテーテルと、
前記第1カテーテルと流体連通し、前記対象者の血液を前記血管から送り出すように構成されるポンプと、
前記ポンプと流体連通するフィルタであって、
前記ポンプから前記対象者の血液を受け取り、
受け取られた前記血液を濾過して、濾過された血液及び濾液を供給するように構成され、
前記第1カテーテルと流体連通して、濾過された前記血液を前記フィルタから前記血管に流出させるフィルタと、
前記フィルタと流体連通し、前記対象者の体内の膀胱に挿入されて、前記濾液を前記フィルタから前記膀胱に流出させるように構成される第2カテーテルとを含む、埋め込み型腎代替療法装置。
【請求項2】
前記第1カテーテルは、
前記ポンプと流体連通する第1管腔と、
前記フィルタと流体連通する第2管腔とを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1カテーテルは、前記第1カテーテルを前記血管に接続し、前記血管に対する前記第1カテーテルの動きを防止するように構成される第1カテーテルコネクタを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記第1カテーテルコネクタは、
前記第1カテーテルの外表面に接続された第1膨張式部材と、
前記第1膨張式部材から所定の第1距離を隔てて、前記第1カテーテルの遠位尖端部から所定の第2距離を隔てて前記第1カテーテルの外表面に接続された第2膨張式部材とを含み、
前記第1膨張式部材及び前記第2膨張式部材は、前記血管に対する前記第1カテーテルの動きを防止するために、膨張した際に、前記血管の壁をそれらの間に受け入れるように構成される、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記ポンプは、軸流ポンプ又は遠心流ポンプである、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記フィルタは、実質的に平坦な可撓性構造を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記フィルタは、
前記第2カテーテルと流体連通する濾液収集バッグと、
前記濾液収集バッグ内に配置された濾過膜であって、前記ポンプと流体連通し、かつ前記ポンプから前記対象者の血液を受け取るように構成される濾過膜内部を有する濾過膜とを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記濾過膜は、シリコーンで製造され、選択された液体及び選択された電解質に対して透過性が高い複数の細孔を含む、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記濾過膜は、その断面が波状構造である、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
前記フィルタは、前記濾過膜を取り囲む第2膜を更に含み、前記第2膜は、前記濾過膜の透過性に比べて、選択された液体及び選択された電解質に対して透過性が低く、濾過された前記血液中の選択された前記液体の過剰液体及び選択された前記電解質の過剰電解質を再吸収させる、請求項7に記載の装置。
【請求項11】
前記フィルタは、液体を前記フィルタに注入する導管を含み、前記導管は、前記対象者の体の外部に延びるように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記第2カテーテルは、所望の血液濾過速度及び所望の濾液流出速度に基づいて前記第2カテーテルの直径を調整するように構成される調整可能なリングを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記第2カテーテルは、前記第2カテーテルを前記膀胱に接続し、前記膀胱に対する前記第2カテーテルの動きを防止するように構成される第2カテーテルコネクタを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記第2カテーテルコネクタは、
前記第2カテーテルの外表面に接続された第1膨張式部材と、
前記第1膨張式部材から所定の第1距離を隔てて、前記第2カテーテルの遠位尖端部から所定の第2距離を隔てて前記第2カテーテルの外表面に接続された第2膨張式部材とを含み、
前記第1膨張式部材及び前記第2膨張式部材は、前記膀胱に対する前記第2カテーテルの動きを防止するために、膨張した際に、前記膀胱の壁をそれらの間に受け入れるように構成される、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記対象者の体内に埋め込まれて、前記ポンプに電力を供給するように構成される電源を更に含む、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記電源は、充電可能である、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
(i)前記ポンプに電力を供給することと、(ii)前記ポンプに電力を供給する電源を充電することとのうちの少なくとも1つを行う外部非埋め込み型電源を更に含む、請求項1に記載の装置。
【請求項18】
前記対象者の体内に埋め込まれ、前記対象者の血液及び前記対象者の血液濾過作業産物の少なくとも一方の1つ以上の特性を測定するように構成される1つ以上のセンサを更に含む、請求項1に記載の装置。
【請求項19】
前記1つ以上のセンサから前記測定された1つ以上の特性を受信し、
測定された前記1つ以上の特性と、前記対象者の血液の所望の濾過速度とに基づいて、前記ポンプのポンプ流量又は速度を制御するように構成されるコントローラを更に含む、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記コントローラは、測定された前記1つ以上の特性に基づいて、1つ以上の通知を生成するように構成される、請求項18に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腎代替療法装置の分野に関し、より具体的には、完全埋め込み型腎代替療法装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、末期腎不全に罹患した対象者は、腎移植を待つ間に、血液透析、腹膜透析、持続的腎代替療法の少なくとも1つを受ける必要がある。しかしながら、これらの治療は、対象者に重大な不都合を生じさせる。例えば、血液透析治療を受けている対象者は、治療施設に1週間に少なくとも3回、毎回数時間通う必要がある。
【発明の概要】
【0003】
本発明のいくつかの実施形態に係る埋め込み型(implantable)腎代替療法装置は、対象者の体内の血管内に挿入されるように構成される第1カテーテルと、前記第1カテーテルと流体連通し、前記対象者の血液を前記血管から送り出すように構成されるポンプと、前記ポンプと流体連通するフィルタであって、前記ポンプから前記対象者の血液を受け取り、前記受け取られた血液を濾過して、濾過された血液及び濾液を供給するように構成され、前記第1カテーテルと流体連通して、前記濾過された血液を前記フィルタから前記血管に流出させるフィルタと、前記フィルタと流体連通し、前記対象者の体内の膀胱に挿入されて、前記濾液を前記フィルタから前記膀胱に流出させるように構成される第2カテーテルとを含んでもよい。
【0004】
いくつかの実施形態では、前記第1カテーテルは、前記ポンプと流体連通する第1管腔(lumen)と、前記フィルタと流体連通する第2管腔とを含んでもよい。
【0005】
いくつかの実施形態では、前記第1カテーテルは、前記第1カテーテルを前記血管に接続し、前記血管に対する前記第1カテーテルの動きを防止するように構成される第1カテーテルコネクタを含んでもよい。
【0006】
いくつかの実施形態では、前記第1カテーテルコネクタは、前記第1カテーテルの外表面(outer surface)に接続された第1膨張式(inflatable)部材と、前記第1膨張式部材から所定の第1距離を隔てて、前記第1カテーテルの遠位尖端部(sharp end)から所定の第2距離を隔てて前記第1カテーテルの外表面に接続された第2膨張式部材とを含んでもよく、前記第1膨張式部材及び前記第2膨張式部材は、前記血管に対する前記第1カテーテルの動きを防止するために、膨張した際に、前記血管の壁をそれらの間に受け入れるように構成される。
【0007】
いくつかの実施形態では、前記ポンプは、軸流ポンプ又は遠心流ポンプである。
【0008】
いくつかの実施形態では、前記フィルタは、実質的に平坦な可撓性構造を有する。
【0009】
いくつかの実施形態では、前記フィルタは、前記フィルタの幅又は長さより実質的に小さい均一な厚さを有する、実質的に平坦で薄い可撓性構造を有する。
【0010】
いくつかの実施形態では、前記フィルタは、前記第2カテーテルと流体連通する濾液収集バッグと、前記濾液収集バッグ内に配置された濾過膜であって、前記ポンプと流体連通し、かつ前記ポンプから前記対象者の血液を受け取るように構成される濾過膜内部(interior)を有する濾過膜とを含んでもよい。
【0011】
いくつかの実施形態では、前記濾過膜は、シリコーンで製造されてもよく、選択された液体及び選択された電解質に対して透過性が高い複数の細孔を含んでもよい。
【0012】
いくつかの実施形態では、前記濾過膜は、その断面が波状構造である。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記フィルタは、前記濾過膜を取り囲む第2膜を更に含んでもよく、前記第2膜は、前記濾過膜の透過性に比べて、前記選択された液体及び前記選択された電解質に対して透過性が低く、前記濾過された血液中の前記選択された液体の過剰液体及び前記選択された電解質の過剰電解質を再吸収させる。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記フィルタは、液体を前記フィルタに注入する導管を含んでもよく、前記導管は、前記対象者の体の外部に延びるように構成される。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記第2カテーテルは、所望の血液濾過速度及び所望の濾液流出速度に基づいて前記第2カテーテルの直径を調整するように構成される調整可能なリングを含んでもよい。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記第2カテーテルは、前記第2カテーテルを前記膀胱に接続し、前記膀胱に対する前記第2カテーテルの動きを防止するように構成される第2カテーテルコネクタを含んでもよい。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記第2カテーテルコネクタは、前記第2カテーテルの外表面に接続された第1膨張式部材と、前記第1膨張式部材から所定の第1距離を隔てて、前記第2カテーテルの遠位尖端部から所定の第2距離を隔てて前記第2カテーテルの外表面に接続された第2膨張式部材とを含んでもよく、前記第1膨張式部材及び前記第2膨張式部材は、前記膀胱に対する前記第2カテーテルの動きを防止するために、膨張した際に、前記膀胱の壁をそれらの間に受け入れるように構成される。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記装置は、前記対象者の体内に埋め込まれて、前記ポンプに電力を供給するように構成される電源を更に含んでもよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、前記電源は、充電可能である。
【0020】
いくつかの実施形態では、前記電源は、無線充電可能である。
【0021】
いくつかの実施形態では、前記装置は、(i)前記ポンプに電力を供給することと、(ii)前記ポンプに電力を供給する電源を充電することとのうちの少なくとも1つを行う外部非埋め込み型電源を更に含んでもよい。
【0022】
いくつかの実施形態では、前記装置は、前記対象者の体内に埋め込まれ、前記対象者の血液及び前記対象者の血液濾過作業産物の少なくとも一方の1つ以上の特性を測定するように構成される1つ以上のセンサを更に含んでもよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、前記装置は、前記1つ以上のセンサから前記測定された1つ以上の特性を受信し、前記測定された1つ以上の特性と、前記対象者の血液の所望の濾過速度とに基づいて、前記ポンプのポンプ流量又は速度を制御するように構成されるコントローラを更に含んでもよい。
【0024】
いくつかの実施形態では、前記コントローラは、前記測定された1つ以上の特性に基づいて、1つ以上の通知を生成するように構成される。
【0025】
本発明のこれらの付加的な及び/又は他の態様及び/又は利点は、以下に続く詳細な記載において示され、詳細な記載から推論可能であり、及び/又は本発明の実施により学ぶことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明の実施形態をよりよく理解し、それらがどのように実施できるかを示すために、単なる例示として同様の数字が全体を通して対応する要素又は部分を示す添付図面を参照する。
【0027】
添付の図面は以下の通りである。
【0028】
図1A】本発明のいくつかの実施形態に係る埋め込み型腎代替療法装置の概略図である。
図1B】本発明のいくつかの実施形態に係る、対象者の体内に埋め込まれた埋め込み型腎代替療法装置の概略図である。
図1C】本発明のいくつかの実施形態に係る、対象者の体内に埋め込まれた埋め込み型腎代替療法装置の概略図である。
図2A】本発明のいくつかの実施形態に係る埋め込み型腎代替療法装置の第1カテーテルの概略図である。
図2B】本発明のいくつかの実施形態に係る埋め込み型腎代替療法装置の第1カテーテルの概略図である。
図2C】本発明のいくつかの実施形態に係る、血管内に挿入された第1カテーテルの概略図である。
図3A】本発明のいくつかの実施形態に係る埋め込み型腎代替療法装置のフィルタの概略図である。
図3B】本発明のいくつかの実施形態に係る埋め込み型腎代替療法装置のフィルタの概略図である。
図4A】本発明のいくつかの実施形態に係る埋め込み型腎代替療法装置の第2カテーテルの概略図である。
図4B】本発明のいくつかの実施形態に係る埋め込み型腎代替療法装置の第2カテーテルの概略図である。
図4C】本発明のいくつかの実施形態に係る、膀胱内に挿入された埋め込み型腎代替療法装置の第2カテーテルの概略図である。
図5】本発明のいくつかの実施形態に係る、埋め込み型腎代替療法装置と、対象者の体と、埋め込み型腎代替療法装置を埋め込むために、対象者の体に施される切開部との概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図面を簡略かつ明確にするために、図面中の要素は必ずしも寸法通りに描かれていないことを理解されたい。例えば、いくつかの要素の寸法は、明確にするために他の要素に対して誇張されることがある。更に、適切と考えられる場合には、対応する要素又は類似の要素を示すために参照符号が図面間で繰り返し用いられていることがある。
【0030】
以下の説明では、本発明の様々な態様について説明する。説明の目的で、本発明の完全な理解を提供するために、特定の構成及び詳細が記載される。しかしながら、本明細書に提示された特定の詳細がなくても本発明を実施し得ることも、当業者にとって明らかであろう。また、本発明を不明瞭にしないように、周知の特徴を省略又は簡略化することができる。図面を特に参照して、示されている詳細は、例として、本発明の例示的な説明のみを目的とするものであり、本発明の原理及び概念的な態様の最も有用かつ容易に理解できる説明と考えられるものを提供するという理由で提示されることを強調する。これに関して、本発明の構造的な詳細を、本発明の基本的な理解のために必要以上に詳細に示そうとはしておらず、図面について行われた説明は、本発明のいくつかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者にとって明らかにする。
【0031】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、以下の明細書に記載されるか図面に図示された要素の構成及び配置の詳細に限定されないことを理解されたい。本発明は、開示された実施形態の組み合わせだけでなく、様々な方法で実施又は実行し得る他の実施形態にも適用可能である。また、本明細書に用いられる表現及び用語は、説明を目的とするものであり、限定的なものと見なすべきではないことを理解されたい。
【0032】
ここで、本発明のいくつかの実施形態に係る埋め込み型腎代替療法装置100の概略図である図1Aを参照する。
【0033】
また、本発明のいくつかの実施形態に係る、対象者の体90内に埋め込まれた埋め込み型腎代替療法装置100の概略図である図1B及び1Cを参照する。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態において、装置100は、第1カテーテル110、ポンプ120、フィルタ130及び第2カテーテル140を含んでもよい。装置100は、対象者の体90内に完全に埋め込まれるように構成されてもよい。装置100は、その要素(components)が対象者の体90から突出することがないように、対象者の体90内に完全に埋め込まれてもよい。例えば、装置100は、対象者の体90内に腹壁筋と横筋筋膜との間に埋め込まれるように構成されてもよい。
【0035】
第1カテーテル110は、血管92内に挿入されるように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、第1カテーテル110は、(例えば、図1B及び1Cに概略的に示すように)中心静脈に挿入されるように構成される静脈カテーテルであってもよい。以下、図2A、2B及び2Cを参照しながら、第1カテーテル110の一実施形態を説明する。しかしながら、第1カテーテル110の他の実施形態も可能である。
【0036】
ポンプ120は、第1カテーテル110と流体連通してもよい。ポンプ120は、対象者の血液を血管92から送り出すように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、ポンプ120は、軸流ポンプであってもよい。いくつかの実施形態では、ポンプ120は、遠心流ポンプであってもよい。いくつかの実施形態では、ポンプ120の押しのけ容積(displacement volume)は、15~25ml(例えば、20ml)であってもよい。いくつかの実施形態では、ポンプ120の重量は、60~100gr(例えば、80gr)であってもよい。いくつかの実施形態では、ポンプ120は、円筒内に回転可能に支持された単一のインペラを含んでもよい。いくつかの実施形態では、ポンプ120の長さは、4~6cm(例えば、5cm)であってもよい。いくつかの実施形態では、ポンプ120の外径は、1~2cm(例えば、1.5cm)であってもよい。いくつかの実施形態では、ポンプ120は、フィルタ130内に高い静水圧を発生させるように構成されてもよい。ポンプ120は、30~100ml/時間(例えば、50ml/時間)の生成速度で濾液を生成するように構成されてもよい。ポンプ120は、100~300ml/分間(例えば、150ml/分間)の血流を生成するように構成されてもよい。
【0037】
フィルタ130は、ポンプ120と流体連通してもよい。フィルタ130は、ポンプ120により送り出された対象者の血液を受け取るように構成されてもよい。フィルタ130は、受け取られた対象者の血液を濾過して、濾過された血液及び濾液を供給するように構成されてもよい。フィルタ130は、第1カテーテル110と流体連通して、濾過された血液をフィルタ130から血管92に流出させるように構成されてもよい。フィルタ130は、フィルタの幅又は長さより実質的に小さい均一な厚さを有し、薄く平坦であってもよい。例えば、フィルタ130の厚さは、フィルタ130の幅及び長さより3倍、5倍又は10倍以上小さくてもよい。例えば、フィルタ130は、長さが10~15cm(例えば、12cm)であってもよく、幅が5~15cm(例えば、10cm)であってもよく、厚さが1~3cm(例えば、2cm)であってもよい。いくつかの実施形態では、フィルタ130は、可撓性材料で製造されてもよい。以下、図3A及び3Bを参照しながら、フィルタ130の一実施形態を説明する。しかしながら、フィルタ130の他の実施形態も可能である。
【0038】
第2カテーテル140は、フィルタ130と流体連通してもよい。第2カテーテル140は、対象者の膀胱94に挿入されて、濾液をフィルタ130から膀胱94に流出させるように構成されてもよい。以下、図4A、4B及び4Cを参照しながら、第2カテーテル140の一実施形態を説明する。しかしながら、第2カテーテル140の他の実施形態も可能である。
【0039】
いくつかの実施形態では、装置100は、電源150を含んでもよい。電源150は、ポンプ120に電力を供給することができる。いくつかの実施形態では、電源150は、(例えば、図1B及び1Cに示すように)対象者の体90内に埋め込まれるように構成されてもよい。例えば、電源150は、(例えば、その要素が対象者の体90の外部に突出することがないように)対象者の体90内に完全に埋め込まれるように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、電源150は、充電可能であってもよい。例えば、電源150は、無線充電可能であってもよい。
【0040】
いくつかの実施形態では、装置100は、外部電源152を含んでもよい。いくつかの実施形態では、外部電源152は、埋め込み型ではない。いくつかの実施形態では、外部電源152は、(例えば、図1B及び1Cに概略的に示すように)対象者の体90に固定されるように構成されてもよい。例えば、外部電源152は、外部電源152を対象者の体に固定するように構成される1つ以上のファスナー(図示せず)を含んでもよい。いくつかの実施形態では、外部電源152は、ポンプ120に電力を供給するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、外部電源152は、電源150を充電するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、外部電源152は、(例えば、図1B及び1Cに示すように)対象者の体90の外部に延びるように構成される可撓性ドライブライン(driveline)152aを用いてポンプ120に接続されてもよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、装置100は、1つ以上のセンサ160を含んでもよい。1つ以上のセンサ160は、対象者の血液及び/又は対象者の血液濾過作業産物の1つ以上の特性を測定するように構成されてもよい。例えば、1つ以上のセンサ160は、対象者の血液中の電解質の濃度、対象者の血液中のイオンの濃度、対象者の血液の濾過速度、フィルタ130により生成される濾過された血液の量、フィルタ130により生成される濾過された液体の量、及び装置100を通る対象者の血液の流量などを測定することができる。いくつかの実施形態では、1つ以上のセンサ160は、対象者の体90内に埋め込まれるように構成されてもよい。例えば、1つ以上のセンサ160は、(例えば、その要素が対象者の体90の外部に突出することがないように)対象者の体90内に完全に埋め込まれるように構成されてもよい。1つ以上のセンサ160は、例えば、第1カテーテル110、フィルタ130、第2カテーテル140などの内部及び/又はそれらに配置されてもよい。1つ以上のセンサ160の可能な位置のいくつかの例は、図1に概略的に示される。しかしながら、1つ以上の第2のフィルタ160の他の位置も可能である。
【0042】
いくつかの実施形態では、装置100は、コントローラ170を含んでもよい。いくつかの実施形態では、コントローラ170は、(例えば、図1Bに概略的に示すように)対象者の体90内に埋め込まれるように構成されてもよい。例えば、コントローラ170は、(例えば、その要素が対象者の体90の外部に突出することがないように)対象者の体90内に完全に埋め込まれるように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、コントローラ170は、(例えば、図1Bに概略的に示すように)対象者の体90の外部に延びるように構成される可撓性ドライブライン170aを用いて外部電源152に接続されてもよい。
【0043】
いくつかの実施形態では、コントローラ170は、埋め込み型ではない。いくつかの実施形態では、コントローラ170は、(例えば、図1Cに概略的に示すように)対象者の体90に固定されるように構成されてもよい。例えば、コントローラ170は、コントローラ170を対象者の体に固定するように構成される1つ以上のファスナー(図示せず)を含んでもよい。いくつかの実施形態では、コントローラ170は、(例えば、図1Cに示すように)対象者の体90の外部に延びるように構成される可撓性ドライブライン170bを用いてポンプ120に接続されてもよい。
【0044】
コントローラ170は、1つ以上のセンサ160と(例えば、有線又は無線)通信してもよい。コントローラ170は、1つ以上のセンサ160から測定された1つ以上の特性を受信することができる。いくつかの実施形態では、コントローラ170は、測定された1つ以上の特性と、対象者の血液の事前設定/所望の濾過速度とに基づいて、ポンプ120のポンプ流量を制御することができる。例えば、コントローラ170は、測定された1つ以上の特性を入力として受信し、必要なポンプ流量を出力し、必要なポンプ流量に従ってポンプ120を制御するように構成される機械学習アルゴリズムを実装することができる。いくつかの実施形態では、コントローラ170は、測定された1つ以上の特性に基づいて1つ以上の通知を生成することができる。例えば、コントローラ170は、測定された1つ以上の特性のうちの少なくとも1つが所定の範囲内にない場合、通知アラートを生成することができる。コントローラ170は、1つ以上の通知を外部コンピューティング装置に送信することができる。前記外部コンピューティング装置は、(例えば、対象者に属する)スマートフォン、(例えば、医療従事者の)パーソナルコンピュータ、及び(例えば、医療機関の)サーバの少なくとも1つを含んでもよい。いくつかの実施形態では、コントローラ170は、更なる分析のために、測定された1つ以上の特性を外部コンピューティング装置に送信することができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、コントローラ170は、装置100の1つ以上の動作パラメータを監視することができる。例えば、コントローラ170は、ポンプ120のポンプ流量又は速度、電源150の充電レベルなどを監視することができる。いくつかの実施形態では、コントローラ170は、監視された1つ以上の動作パラメータに基づいて1つ以上の通知を生成することができる。例えば、コントローラ170は、測定された動作パラメータが、電源150の充電レベルが所定の充電レベル閾値未満であること、及び/又は、ポンプ120のポンプ流量が所定のポンプ流量閾値未満であることなどを示す場合、通知アラートを生成することができる。いくつかの実施形態では、コントローラ170は、1つ以上の通知を外部コンピューティング装置に送信することができる。
【0046】
ここで、本発明のいくつかの実施形態に係る埋め込み型腎代替療法装置100の第1カテーテル110の概略図である図2A及び2Bを参照する。
【0047】
また、本発明のいくつかの実施形態に係る、血管92内に挿入された第1カテーテル110の概略図である図2Cを参照する。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態において、第1カテーテル110は、二重管腔カテーテルであってもよく、第1管腔112及び第2管腔114を含んでもよい。第1カテーテル110の第1管腔112は、ポンプ120に接続されてもよい。第1カテーテル110の第2管腔114は、フィルタ130に接続されてもよい。
【0049】
いくつかの実施形態では、第1カテーテル110は、第1カテーテルコネクタ116を含んでもよい。第1カテーテルコネクタ116は、第1カテーテル110を血管92に接続するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、第1カテーテルコネクタ116は、第1カテーテル110を血管92に接続し、血管92に対する第1カテーテル110の動きを防止するように構成されてもよい。
【0050】
いくつかの実施形態では、第1カテーテルコネクタ116は、第1膨張式部材116a及び第2膨張式部材116bを含んでもよい。第1膨張式部材116a及び第2膨張式部材116bは、互いに対して所定の距離116cを隔てて第1カテーテル110の外表面117に接続されてもよい。第1膨張式部材116a及び第2膨張式部材116bは、第1カテーテル110の遠位尖端部118から所定の距離を隔てて第1カテーテル110に接続されてもよい。例えば、第2膨張式部材116bと第1カテーテル110の遠位尖端部118との間の距離は、0.5~1cmの範囲にあってもよい。いくつかの実施形態では、第1カテーテル110の外径は、0.5~0.8cmの範囲にあってもよい。いくつかの実施形態では、第1カテーテル110は、それぞれの膨張式部材を膨張させるか又は収縮させるために、それぞれが第1膨張式部材116a及び第2膨張式部材116bの一方に加圧流体を供給するための2つの流体導管を含んでもよい。第1膨張式部材116a及び第2膨張式部材116bは、(例えば、図2Cに示すように)血管92に対する第1カテーテル110の動きを防止するために、膨張した際に、血管92の壁92aをそれらの間に受け入れるように構成されてもよい。
【0051】
第1カテーテル110の遠位尖端部118に隣接して配置された第1膨張式部材116a及び第2膨張式部材116bにより、血管92内に挿入するために第1カテーテル110の短い部分だけを必要としながら、第1カテーテル110の血管92への安全かつ安定した接続を保証することができる。血管92内に第1カテーテル110の短い部分を有することにより、血管内に挿入するためにカテーテルの比較的長い部分を必要とするカテーテルに比べて、血管92内のカテーテル関連の合併症(例えば、血栓症及び感染症)を大幅に低減することができる。
【0052】
ここで、本発明のいくつかの実施形態に係る埋め込み型腎代替療法装置100のフィルタ130の概略図である図3A及び3Bを参照する。
【0053】
図3Aは、フィルタ130の概略断面図AAを示し、図3Bは、フィルタ130の概略断面図BBを示す。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態において、フィルタ130は、濾液収集バッグ132及び濾過膜134を含んでもよい。
【0055】
濾液収集バッグ132は、濾過された液体を受け取ることができる。濾液収集バッグ132は、第2カテーテル140と流体連通して、濾液を濾液収集バッグ132から第2カテーテル140を通って膀胱94に流出させることができる。
【0056】
濾過膜134は、濾液収集バッグ132内に配置されてもよい。濾過膜134は、ポンプ120と流体連通する濾過膜内部134aを有してもよい。濾過膜内部134aは、ポンプ120から対象者の血液を受け取るように適合されてもよい。
【0057】
いくつかの実施形態では、濾過膜134は、シリコーンで製造されてもよい。濾過膜134は、対象者の血液から濾過する必要がある選択された液体及び選択された電解質に対して透過性が高い複数の細孔を含んでもよい。例えば、対象者の血液から濾過する必要がある物質は、尿素、クレアチニン、カリウム、水素、尿酸などを含んでもよい。いくつかの実施形態では、濾過膜134の細孔は、ナノ細孔であってもよい。いくつかの実施形態では、濾過膜134の細孔のサイズは、均一(又は実質的に均一)であってもよい。濾過膜134の均一なナノ細孔は、例えば、濾過膜134の分子選択性を維持しながら、濾過膜134の水圧耐性を低減することができる。いくつかの実施形態では、濾過膜134の細孔は、スリットの形態の細長い形状を有してもよい。例えば、濾過膜134のスリット形状のナノ細孔は、濾過膜134の水圧耐性を低減することができる。いくつかの実施形態では、濾過膜134は、帯電してもよい。いくつかの実施形態では、濾過膜134の表面は、ポリエチレングリコール(PEG)を用いて修飾されてもよい。PEGを用いる濾過膜134の表面の修飾により、例えば、球状タンパク質による濾過膜134の汚染を低減することができる。
【0058】
いくつかの実施形態では、フィルタ130は、第2膜136を含んでもよい。第2膜136は、濾過膜134を取り囲んでもよい。いくつかの実施形態では、第2膜136は、濾過膜134に比べて、選択された液体及び選択された電解質に対して透過性が低くてもよい。したがって、第2膜136は、濾過膜134を通過した選択された液体の過剰液体及び選択された電解質の過剰電解質が第2膜136を通過することを防止するため、濾過された血液中の過剰液体及び過剰電解質を再吸収させることができる。例えば、濾過された血液中の再吸収される必要がある物質は、水(例えば、最大95%の水)、Na、K、Ca2+、Mg2+、HCO3-、Clなどを含んでもよい。いくつかの実施形態では、第2膜136は、複数の細孔を有してもよい。様々な実施形態では、第2膜136の細孔は、濾過膜134の細孔に比べて、異なる形状及び/又はサイズを有してもよい。いくつかの実施形態では、第2膜136は、帯電してもよい。いくつかの実施形態では、第2膜136の電荷は、濾過膜134の電荷に比べて、異なってもよい。
【0059】
いくつかの実施形態では、第2膜136は、尿細管細胞で覆われてもよい。例えば、対象者の大網組織のサンプルを取得し、次に多能性幹細胞になるように再プログラム化する。次に、多能性幹細胞は、尿細管細胞に分化する。尿細管細胞は、個別化された対象者固有のヒドロゲルに加工され、個別化された対象者固有のヒドロゲルは、細胞外マトリックス及び内皮細胞とともに用いられ、尿細管細胞の生きて機能するパッチを三次元印刷するためのバイオインクを形成する。次に、尿細管細胞を用いて、第2膜136を覆うために用いられる。
【0060】
様々な実施形態では、濾過膜134及び/又は第2膜136は、(例えば、図3Bに概略的に示すように)それぞれの断面が波状構造であってもよい。膜を波状構造に配置すると、非波状構造を有する膜に比べて、膜の濾過表面積を増加させることができる。
【0061】
フィルタ130の厚みは、フィルタ130の幅及び/又は長さより大幅に小さくてもよい。例えば、フィルタ130は、長さが10~15cm(例えば、12cm)であってもよく、幅が5~15cm(例えば、10cm)であってもよく、厚さが1~3cm(例えば、2cm)であってもよい。
【0062】
いくつかの実施形態では、フィルタ130は、導管138を含んでもよい。導管138は、対象者の体90の外部に延びるように構成されてもよい。導管138は、フィルタ130を洗浄するために液体及び薬剤をフィルタ130に直接的に注入するために用いられてもよい。例えば、血栓溶解薬を導管138によりフィルタ130に注入して、フィルタ130から血栓を洗浄することができる。いくつかの実施形態では、導管138は、フィルタ130の濾過膜134と第2膜136との間の間隙136aと流体連通してもよい。
【0063】
ここで、本発明のいくつかの実施形態に係る埋め込み型腎代替療法装置100の第2カテーテル140の概略図である図4A及び4Bを参照する。
【0064】
また、本発明のいくつかの実施形態に係る、膀胱94に挿入された埋め込み型腎代替療法装置100の第2カテーテル140の概略図である図4Cを参照する。
【0065】
本発明のいくつかの実施形態において、第2カテーテル140は、第2カテーテルコネクタ142を含んでもよい。第2カテーテルコネクタ142は、第2カテーテル140を膀胱94に接続するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、第2カテーテルコネクタ142は、第2カテーテル140を膀胱94に接続し、膀胱94に対する第2カテーテル140の動きを防止するように構成されてもよい。
【0066】
いくつかの実施形態では、第2カテーテルコネクタ142は、第1膨張式部材142a及び第2膨張式部材142bを含んでもよい。第1膨張式部材142a及び第2膨張式部材142bは、互いに対して所定の距離142cを隔てて第2カテーテル140の外表面143に接続されてもよい。第1膨張式部材142a及び第2膨張式部材142bは、第2カテーテル140の遠位尖端部144から所定の距離を隔てて第2カテーテル140に接続されてもよい。例えば、第2膨張式部材142bと第2カテーテル140の遠位尖端部144との間の距離は、1~2cmの範囲にあってもよい。いくつかの実施形態では、第2カテーテル140は、それぞれの膨張式部材を膨張させるか又は収縮させるために、それぞれが第1膨張式部材142a及び第2膨張式部材142bの一方に加圧流体を供給するための2つの流体導管を含んでもよい。第1膨張式部材142a及び第2膨張式部材142bは、(例えば、図4Cに示すように)膀胱に対する第2カテーテル140の動きを防止するために、膨張した際に、膀胱94の壁94aをそれらの間に受け入れるように構成されてもよい。
【0067】
いくつかの実施形態では、第2カテーテル140は、第2カテーテル140の直径を調整するための調整可能なリング146を含んでもよい。例えば、調整可能なリングは、第2カテーテル140の外表面143に、例えば、第2カテーテル140の近位端147に隣接して接続されてもよく、近位端147で第2カテーテル140がフィルタ130に接続される。第2カテーテル140の直径は、例えば、フィルタ130からの対象者の血液の所望の濾過速度及び/又は濾液の所望の流出に基づいて、例えば、装置100の埋込み中及び/又は埋込み後に、調整可能なリング146で調整されてもよい。いくつかの実施形態では、調整可能なリング146は、膨張式であってもよい。いくつかの実施形態では、調整可能なリング146は、調整可能なリング146を膨張させるか又は収縮させるために加圧流体を調整可能なリング146に供給するための流体導管(図示せず)を含んでもよい。
【0068】
ここで、本発明のいくつかの実施形態に係る、埋め込み型腎代替療法装置100と、対象者の体90と、埋め込み型腎代替療法装置100を埋め込むために、対象者の体90に施される切開部201~204との概略図である図5を参照する。
【0069】
埋め込み型腎代替療法装置100は、その要素が対象者の体90から突出することがないように、対象者の体90内に完全に埋め込まれてもよい。例えば、装置100は、対象者の体90内に腹壁筋と横筋筋膜との間に埋め込まれてもよい。装置100は、対象者の体90の腹腔内に侵入することなく、また対象者の体90内でいかなる動脈操作を行うことなく、安全な体表手術で埋め込まれてもよい。
【0070】
図5を参照しながら、対象者の体90への装置100の埋め込み手術の一例を本明細書に説明する。なお、埋め込み手術は、図5の図及び対応する説明に限定されない。例えば、埋め込み手術は、必ずしも説明した各ステップを含むか、又は説明した順序とまったく同じ順序で行う必要がない。なお、装置100の他の埋め込み手術も可能である。
【0071】
第1切開部201(例えば、2cmの切開部)は、対象者の体90の鼠径部で、大腿静脈の上に形成されてもよく、大腿静脈が露出してもよい。第2切開部202(例えば、1cmの切開部)は、対象者の体90の下腹部で鼠径靱帯の上に形成されてもよい。装置100の第1カテーテル110は、下腹部から鼠径部まで(例えば、皮下に)トンネルされてもよい。第1カテーテル110は、(例えば、ワイヤーを介してカテーテルを腹腔内に挿入することを含むセルディンガー(Seldinger)技術を用いて)大腿静脈に挿入され、(例えば、図2Cを参照しながら上述したように)第1カテーテルコネクタ116を用いて大腿静脈に固定されてもよい。場合によっては、第1カテーテル110を大腿静脈に更に固定するために、巾着縫合(例えば、ダイヤモンド形状を有する)を行ってもよい。次に、第1カテーテル110を血液で洗浄し、大腿静脈の上の第1切開部201を(例えば、層状に)閉じてもよい。
【0072】
第3切開部203(例えば、5cmの長手方向の切開部)は、側腹壁で対象者の体90に形成されてもよく、腹壁筋と横筋筋膜との間の平面が切開されてもよい。第1カテーテル110は、切開された平面(dissected plane)までトンネルされてもよく、第1管腔112は、ポンプ120の入口に接続されてもよい。ポンプ120の出口は、フィルタ130の入口に接続されてもよい。フィルタ130の出口は、第1カテーテル110の第2管腔114に接続されてもよい。下腹部での第2切開部202は、閉じられてもよい。
【0073】
対象者の体90における第4切開部204(例えば、2cmの恥骨上の切開部)は、膀胱94の真上に(例えば、超音波誘導下で)形成されてもよい。第2カテーテル140は、膀胱94に挿入され、第2カテーテルコネクタ142を用いて膀胱94に固定され、フィルタ130(例えば、収集バッグ132)にトンネルし接続されてもよい。実質的に円形の第5切開部205(例えば、0.5cmの切開部)は、対象者の体90の外部にドライブライン(例えば、上述したドライブライン152a/170a/170b)をトンネルするために、例えば、第3切開部203の側方に形成されてもよい。第4切開部204は、閉じられてもよい。第3切開部203は、閉じられてもよい。装置100に電源が入れられてもよい。
【0074】
開示された埋め込み型腎代替療法装置は、正常な排尿を含む通常の日常活動を行う対象者の能力を維持しながら、対象者に持続的腎代替療法を提供することができる。この装置は、対象者の体の腹腔内に侵入することなく、対象者の体内で動脈操作を行うことなく、簡単かつ安全な体表手術で対象者の体内に腹壁筋と横筋筋膜との間に埋め込まれてもよい。体表手術により、腹腔内埋め込みに伴う腹部合併症を回避(又は少なくとも大幅に軽減)することができる。体表埋め込みは、例えば、埋め込み後の機能不全及び/又は合併症の場合に、埋め込みられた装置への安全かつ低侵襲性のアクセスを提供することができる。装置の埋め込み中に動脈操作を行わないことにより、動脈操作手術に関連する可能性のある生命を脅かす動脈合併症を排除することができる。装置の可撓性で平坦なフィルタ(例えば、フィルタの幅又は長さより実質的に小さい均一な厚さを有する薄く平坦なフィルタ)は、その埋め込みの複雑さを大幅に低下させ、それによって引き起こされる可能性のある不都合及び生活習慣の制限を大幅に軽減することができる。
【0075】
上記説明において、実施形態は、本発明の例又は実施形態である。「一実施形態」、「実施形態」、「特定の実施形態」又は「いくつかの実施形態」という様々な表現は、必ずしも全てが同じ実施形態を指すわけではない。本発明の様々な特徴は、単一の実施形態の文脈で説明することができるが、特徴は、別個に、又は任意の適切な組み合わせで提供することもできる。逆に、本発明は、明確にするために本明細書の別個の実施形態の文脈で説明することができるが、本発明はまた、単一の実施形態で実施することができる。本発明の特定の実施形態は、前述した異なる実施形態からの特徴を含むことができ、特定の実施形態は、前の開示された他の実施形態からの要素を組み込むことができる。特定の実施形態の文脈における本発明の要素の開示は、特定の実施形態のみにおけるそれらの使用を制限するものと解釈されるべきではない。更に、本発明は、様々な方法で実行又は実施することができ、本発明は、上記の記述において概略を述べた実施形態以外の特定の実施形態に実施することができることを理解されたい。
【0076】
本発明は、これらの図又は対応する説明に限定されない。例えば、フローは、図示されている各ボックス又は状態を通して進む必要はないか、又は図示及び説明した順序とまったく同じ順序で進む必要はない。本明細書に用いられる技術的用語及び科学的用語の意味は、特に明記しない限り、当業者によって広く理解されるべきである。本発明は、限られた数の実施形態に関して説明されたが、これらは、本発明の範囲に対する制限として解釈されるべきではなく、むしろいくつかの好ましい実施形態の例示として解釈されるべきである。他の可能な変形、修正、及び用途も本発明の範囲内である。したがって、本発明の範囲は、これまでに説明されたものによって制限されるべきではなく、添付の特許請求の範囲及びそれらの法的同等物によって制限されるべきである。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5
【国際調査報告】