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特表2024-516281熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルム
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  • 特表-熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルム 図1
  • 特表-熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-12
(54)【発明の名称】熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20240405BHJP
【FI】
C08J5/18 CES
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023567905
(86)(22)【出願日】2022-04-29
(85)【翻訳文提出日】2023-12-28
(86)【国際出願番号】 EP2022061527
(87)【国際公開番号】W WO2022233733
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】21171757.4
(32)【優先日】2021-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513276905
【氏名又は名称】ボレアリス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】BOREALIS AG
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】ポリティディス,クリストス
(72)【発明者】
【氏名】フルーダス,ゲオルギオス
(72)【発明者】
【氏名】ギトサス,アントニオス
【テーマコード(参考)】
4F071
【Fターム(参考)】
4F071AA20
4F071AA88
4F071AA89
4F071AC09
4F071AC11
4F071AC19
4F071AE05
4F071AE22
4F071AF40Y
4F071AG28
4F071AH12
4F071BA01
4F071BB06
4F071BB08
4F071BC01
4F071BC12
(57)【要約】
本発明は、熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルムの製造方法および該製造方法により得られる熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルムに関する。本発明はさらに、本発明の熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルムの層を含む絶縁フィルムを含むキャパシタに関する。本発明はさらに、本発明の熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルムの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルムを製造するための方法であって、該方法は、以下の工程:
(A)ポリプロピレン組成物を提供する工程であって、該ポリプロピレン組成物は、
(A1)NMR分光法で測定される93~98%のアイソタクチックペンタッド画分の含有率、およびISO1133に準拠して測定される0.4~10g/10分のメルトフローレートMFR2を有するプロピレンのホモポリマー、ポリプロピレン組成物の総重量に基づき90~99.99重量%、および
(A2)ポリマー状α-核形成剤、ポリプロピレン組成物の総重量に基づき0.0000001~1重量%、
および/または
(A3)β-核形成剤、ポリプロピレン組成物の総重量に基づき0.0000001~0.0002重量%、
を含む、工程
(B)ポリプロピレン組成物をフィルムへと押出す工程、
(C)フィルムを同時または逐次配向させて、二軸配向ポリプロピレンフィルムを得る工程、
(D)二軸配向ポリプロピレンフィルムを以下によって熱処理する工程
(D1)二軸配向ポリプロピレンフィルムをアニール温度Tannに加熱すること、ここで、Tannは80~150℃である、
(D2)二軸配向ポリプロピレンフィルムをアニール温度Tannでアニール時間tannの間アニールして、熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルムを得ること、ここで、tannは10~140分である、
(D3)熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルムを冷却すること、
(E)熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルムを回収する工程
を含む、方法。
【請求項2】
ポリプロピレン組成物は、
(A4)プロピレンのホモポリマー(A1)以外のプロピレンのホモポリマーまたはコポリマー、ポリプロピレン組成物の総重量に基づき最大9.99重量%、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ポリプロピレン組成物は、
(A5)本明細書に記載されるように測定された0.9以下の分岐指数g’を有する分岐プロピレンポリマー、ポリプロピレン組成物の総重量に基づき0.1~9.99重量%
を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ポリプロピレン組成物は、
(A6)添加剤、ポリプロピレン組成物の総重量に基づき、0.01~1重量%
をさらに含む、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
工程(C)において、フィルムが逐次配向され、逐次配向は、最初に機械方向(MD)、続いて横方向(TD)に、または最初に横方向(TD)、続いて機械方向(MD)のいずれかで行われる、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
機械方向(MD)における延伸比は少なくとも8.0~20.0である、および/または横方向(TD)における延伸比は少なくとも8.0~20.0である、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
ポリマー状α-核形成剤(A2)は、式CH=CH-CHRで示されるビニル化合物のポリマーであり、式中、RおよびRは、一緒になって5員もしくは6員の、飽和環、不飽和環もしくは芳香環を形成するか、または、独立して1~4個の炭素原子を含むアルキル基を表す、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
ポリマー状α-核形成剤(A2)は、ポリビニルシクロヘキサン、ポリ(3-メチル-1-ブテン)およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
β-核形成剤は、5,12-ジヒドロ-キノ[2,3-b]アクリジン-7,14-ジオン、キノ[2,3-b]アクリジン-6,7,13,14(5H,12H)-テトロン、5,6,12,13-テトラヒドロ-キノ[2,3-b]アクリジン-7,14-ジオン、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
フィルムは0.5~10μmの厚さを有する、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルムまたは二軸配向ポリプロピレンフィルムは、金属層をさらに含む、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載の方法によって得られる熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルム。
【請求項13】
絶縁フィルムを含むキャパシタであって、該絶縁フィルムは、請求項12に記載の熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルムの層を含む、キャパシタ。
【請求項14】
キャパシタの絶縁フィルムの誘電率を増加させる、および/または絶縁破壊電界強度を向上させるための、請求項12に記載の熱処理二軸延伸フィルムの使用。
【請求項15】
キャパシタの絶縁フィルムの層としての請求項12に記載の熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルムの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルムの製造方法およびこの製造方法により得られる熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルムに関する。本発明はさらに、本発明の熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルムの層を含む絶縁フィルムを含むキャパシタに関する。本発明はさらに、本発明の熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルムの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンは多くの用途に使用されており、例えば、その鎖は電界応力下で配向するいかなる種類の極性基も持たないことから、フィルムキャパシタの分野で選択される材料である。様々な種類の電気装置にインバーターが搭載されており、この傾向に伴い、キャパシタの小型化および高容量化の要求が高まっている。このような市場からの需要のため、より薄く、且つ機械的特性および電気的特性の両方を向上させた二軸配向ポリプロピレンフィルムが、キャパシタ用途分野において好ましくは使用されている。
【0003】
キャパシタフィルムは、高温のような極限状態に耐える必要があり、高い絶縁破壊電界強度を有する必要がある。加えて、キャパシタフィルムは高い剛性といった良好な機械的特性、および高い操作温度も有することが好まれる。キャパシタフィルムの多くのグレード、つまり溶接、電気自動車、列車、オーブン、風車、ソーラーパネルなどといった電力用途は、高アイソタクチックポリプロピレン樹脂を使用している。バランスのとれた収縮率と最適化された表面粗さとは別に、高アイソタクチシティに関連する主な利点は、高い結晶性、高い融解開始温度、および高い融解ピーク温度に関連する、最終フィルムの高い耐熱性である。また、高アイソタクチックポリプロピレン樹脂に基づくキャパシタフィルムグレードもあり、この場合、下層ポリオレフィン組成物はさらに長鎖分岐ポリプロピレンを含む。
【0004】
絶縁破壊は、絶縁体に印加される電界が絶縁体の絶縁破壊電界強度を超え、電流スパークが材料を突き破り、短絡を引き起こすときに発生する。一般に、物理的プロセスとしての絶縁破壊現象は完全には理解されておらず、絶縁体の構造(モルフォロジー)と絶縁耐力との相関関係も確立されていない。その主な理由は、絶縁破壊現象がナノスケールおよびミクロスケールの複数の分解プロセスの最終的な結果であり、その結果、確率的な挙動が生じるという事実に関連していると思われる。温度、湿度、電極金属、電極ジオメトリー(形状、面積)、電圧上昇率、直流(DC)または交流(AC)電圧、表面粗さ、および試料の厚さなどの、数多くの要因が最終的な絶縁破壊電界強度に影響する。特に操作温度が高いと、絶縁破壊およびキャパシタの故障をもたらす。
【0005】
WO 2020/127862 A1は、改善した表面特性を有する二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)フィルムおよび、該二軸配向ポリプロピレンフィルムの層を含む絶縁フィルムを含むキャパシタを開示している。WO 2020/127862 A1は、得られたBOPPフィルムの熱処理について沈黙している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際出願公開第2020/127862号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、改善された誘電率および/または改善された絶縁破壊電界強度を有する二軸配向ポリプロピレンフィルムを、特に、より高い操作温度でキャパシタにおける絶縁層として使用するために提供することである。
【0008】
さらなる目的は、改善された誘電率および/または改善された絶縁破壊電界強度を有する、そのような二軸配向ポリプロピレンフィルムを得るための方法、特に、より高い操作温度でキャパシタにおける絶縁層として使用するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、本発明による二軸配向ポリプロピレンフィルムを熱処理することにより、上記課題を解決できるという知見に基づく。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施例IE1およびIE2および比較例CEにおけるBDS(広帯域誘電分光法)測定を示す。
図2図2は、IE1におけるSAXS測定の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
したがって、本発明は、熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルムを製造するための方法であって、該方法は、以下:
(A)ポリプロピレン組成物を提供する工程であって、該ポリプロピレン組成物は、
(A1)93~98%のアイソタクチックペンタッド画分の含有率および0.4~10g/10分のメルトフローレートMFR2を有するプロピレンのホモポリマー、ポリプロピレン組成物の総重量に基づき90~99.99重量%、および
(A2)ポリマー状α-核形成剤、ポリプロピレン組成物の総重量に基づき0.0000001~1重量%、
および/または
(A3)β-核形成剤、ポリプロピレン組成物の総重量に基づき0.0000001~0.0002重量%、
を含む、好ましくはからなる、工程、
(B)ポリプロピレン組成物をフィルムへと押出す工程、
(C)フィルムを同時または逐次配向させて、二軸配向ポリプロピレンフィルムを得る工程
(C1)該二軸配向ポリプロピレンフィルムを任意に金属化し、金属化二軸配向ポリプロピレンフィルムを得る工程
(D)金属化または非金属化二軸配向ポリプロピレンフィルムを以下によって熱処理する工程
(D1)該二軸配向ポリプロピレンフィルムを第1アニール温度T1に加熱すること、ここで、T1は80~150℃である、
(D2)二軸配向ポリプロピレンフィルムを第1アニール温度T1で第1アニール時間t1の間アニールして、熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルムを得ること、ここで、t1は、10~120分である、
(D3)熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルムを冷却すること、好ましくは室温まで冷却すること
(E)熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルムを回収する工程
を含む、方法を提供する。
【0012】
本発明には多くの利点がある。二軸配向ポリプロピレンフィルムの熱処理は、特に100℃を超える操作温度において、フィルムの誘電率の改善につながる。これは、後述するように、処理中に起こる恒久的な構造変化と関連づけられる。誘電率の改善は、ひいては、熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルムを絶縁フィルムとして含むキャパシタのより高い静電容量をもたらす。
【0013】
本発明のさらなる利点は、約115℃の操作温度を有する従来技術(art)の二軸配向ポリプロピレンフィルムと比較して、本発明による熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルムの構造変化が約130℃のような高温でのみ生じることである。したがって、本発明による熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルムは、誘電破壊または他のキャパシタの故障を引き起こすことなく、有利には約130℃のような高温で操作できる。
【0014】
したがって、本発明による熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルムは、キャパシタ、特にキャパシタの絶縁フィルムの誘電率の改善および/または絶縁破壊電界強度の改善に使用され得る。本発明による熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルムは、特に、100℃超、好ましくは115℃超の高温で操作するキャパシタに使用され得る。
【0015】
本明細書で使用されるプロピレンのホモポリマーという表現は、実質的に、すなわち少なくとも99.5重量%、より好ましくは少なくとも99.8重量%のプロピレン単位からなるポリプロピレンに関する。好ましい実施形態では、プロピレンのホモポリマーにおいてプロピレン単位のみが検出可能である。コモノマー含有量は、以下に記載するように、13C NMR分光法を用いて測定することができる。さらに、プロピレンのホモポリマーは直鎖状ポリプロピレンであることが理解される。
【0016】
本発明による方法の工程(A)では、ポリプロピレン組成物が提供される。
【0017】
ポリプロピレン組成物は、好ましくは0.5~10g/10分、より好ましくは1~7g/10分のメルトフローレートMFR2を有する。
【0018】
ポリプロピレン組成物は、プロピレンの高アイソタクチックホモポリマー(A1)、ポリマー状α-核形成剤(A2)および/またはβ-核形成剤(A3)を含む。以下では、プロピレンのホモポリマー(A1)を、プロピレンの高アイソタクチックホモポリマー(A1)とも称する。
【0019】
プロピレンの高アイソタクチックホモポリマー(A1)は、ポリプロピレン組成物の主成分である。ポリプロピレン組成物は、90~99.9重量%、好ましくは95~99.9重量%、より好ましくは98~99.9重量%、特に99~99.9重量%のプロピレンの高アイソタクチックホモポリマー(A1)を含む。
【0020】
プロピレン(A1)の高アイソタクチックホモポリマーは、0.4~10g/10分、好ましくは1~7g/10分、より好ましくは2~6g/10分のメルトフローレートMFR2を有する。MFRが低すぎると加工性が悪くなる。一方、MFRが高すぎると、二軸配向ポリプロピレンフィルムの製造方法において使用される高温でたるみが生じる。
【0021】
プロピレンの高アイソタクチックホモポリマー(A1)は、93~98%、好ましくは94~98%、例えば95~98%のアイソタクチックペンタッド画分(mmmm-画分)の含有率を有する。アイソタクチックペンタッド画分の含有率は、全てのペンタッドからのmmmm-ペンタッドの割合として計算される。アイソタクチックペンタッド画分の含有率が低すぎると、フィルムの最終的な結晶化度がかなり低くなり、フィルムの引張特性および弾性率が低下するという結果をもたらす。一方、アイソタクチックペンタッド画分が高すぎると、機械方向および/または横方向へのフィルム配向時に、フィルムの破断が頻発する可能性がある。
【0022】
プロピレンの高アイソタクチックホモポリマー(A1)は、好ましくは30ppm以下、より好ましくは20ppm以下、特に15ppm以下、例えば10ppm以下の灰分量を有する。灰分量が高すぎると、特に灰分量に金属残渣が含まれる場合、フィルムの誘電特性に悪影響を及ぼす可能性がある。このようなフィルムはキャパシタの製造には使用できない。プロピレンの高アイソタクチックホモポリマー(A1)の灰分量は、通常少なくとも1ppmである。
【0023】
本発明のフィルムの製造に適当なプロピレンホモポリマー、例えばプロピレンの高アイソタクチックホモポリマー(A1)を製造するのに特に有効な方法は、EP-A-2543684に開示されており、ここで、三塩化チタンを含む固体成分に基づく触媒が、アルミニウムアルキル、有機エーテルおよびアルキルメタクリレートと組み合わせて使用される。
【0024】
該重合は都合よくはスラリー中で行われる。このような方法において、触媒、水素およびプロピレンモノマーは、4~15個の炭素原子、好ましくは10~14個の炭素原子を有する1以上のアルカンを本質的に含む希釈剤中で接触される。
【0025】
本明細書において「本質的に含む」とは、希釈剤が少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、より好ましくは少なくとも99重量%のこのようなアルカンのうちの1以上を含むことを意味する。
【0026】
重合は、典型的には、50~100℃、好ましくは60~80℃の温度、および1~50bar、好ましくは3~15barの圧力で実施される。
【0027】
好ましくは、本方法は1以上の洗浄工程を含む。洗浄は、通常、ポリマースラリーと炭化水素希釈剤とを1以上の工程で接触させることによって実施される。接触工程の後、過剰の希釈剤は、典型的には、例えば遠心分離によって除去される。好ましくは、ポリマースラリーと炭化水素希釈剤とを少なくとも2工程で接触させる。洗浄が複数の工程を含む場合、少なくとも1つの工程において、炭化水素希釈剤に加えてアルコールまたはエーテルが存在することが好ましい。これにより、ポリマーからの触媒成分の除去が容易になり、それにより非常に低い灰分量を有するポリマーを得ることができる。
【0028】
本発明による工程(A)で提供されるポリプロピレン組成物は、ポリマー状α-核形成剤(A2)および/またはβ-核形成剤(A3)をさらに含む。
【0029】
ポリプロピレン組成物は、-1つの選択肢において-ポリマー状α-核形成剤(A2)を含む。ポリマー状α-核形成剤(A2)は、好ましくは、式CH=CH-CHRで示されるビニル化合物のポリマーであり、式中、RおよびRは、一緒になって5員もしくは6員の、飽和環、不飽和環もしくは芳香環を形成するか、または独立して1~4個の炭素原子を含むアルキル基を表す。好ましくは、ポリマー状α-核形成剤(A2)は、式CH=CH-CHRで示されるビニル化合物のホモポリマーである。ポリプロピレン組成物は、0.0000001~1重量%(または、0.001ppm~10,000ppm)のポリマー状α-核形成剤、好ましくは0.000001~0.01重量%(または、0.01ppm~100ppm)、特に好ましくは0.000001~0.005重量%(または、0.01ppm~50ppm)のポリマー状α-核形成剤(A2)を含む。好ましくは、ポリプロピレン組成物は、ポリプロピレン組成物の総重量に基づき、0.000001~0.001重量%(または、0.01ppm~10ppm)、さらに好ましくは、0.000001~0.0005重量%(または、0.01ppm~5ppm)のポリマー状α-核形成剤(A2)を含む。
【0030】
ポリマー状α-核形成剤(A2)をポリプロピレン組成物に組み込むための1つの方法は、重合触媒を式CH=CH-CHRで示されるビニル化合物(式中、RおよびRは一緒になって5員もしくは6員の、飽和環、不飽和環、好ましくは非芳香族不飽和環、または芳香環を形成するか、または独立して1~4個の炭素原子を含むアルキル基を表す)と接触させることによって重合触媒を予備重合(プレポリマー化)することを含む。次いで、このような予備重合触媒の存在下でプロピレンが重合される。
【0031】
予備重合では、触媒は固体触媒成分1グラム当たり最大5グラムのプレポリマー、好ましくは固体触媒成分1グラム当たり0.1~4グラムのプレポリマーを含むように予備重合される。次に、該触媒を重合条件で式CH=CH-CHRで示されるビニル化合物(式中、RおよびRは上記で定義した通り)と接触させる。
【0032】
特に好ましくは、RおよびRは共にメチル基であり、ビニル化合物は従って3-メチル-1-ブテンである。特に好ましくは、RおよびRは飽和の5員環または6員環を形成する。特に好ましくは、ビニル化合物はビニルシクロヘキサンである。
【0033】
好ましくは、ポリマー状α-核形成剤(A2)は、ポリビニルシクロヘキサン、ポリ(3-メチル-1-ブテン)およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0034】
特に好ましくは、触媒は、固体触媒成分1グラム当たり0.5~2グラムの重合されたビニル化合物、例えばポリ(ビニルシクロヘキサン)を含む。特に好ましくは、ポリマー状α-核形成剤は、ポリビニルシクロヘキサン、ポリ(3-メチル-1-ブテン)およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0035】
このアプローチは、EP-A-607703、EP-A-1028984、EP-A-1028985およびEP-A-1030878に開示されているような有核のポリプロピレンの調製を可能にする。
【0036】
本発明によるポリマー状α-核形成剤は、プロピレンのポリマーではない。
【0037】
好ましくは、予備重合は、不活性希釈剤中のスラリー中で、20~80℃、好ましくは35~65℃の範囲内の温度で行われる。圧力は重要ではなく、大気圧~50barから選択され得る。反応時間は、未反応ビニル化合物の量が反応混合物の所定の限界値未満、例えば2000ppm未満、または1000ppm未満となるように選択される。
【0038】
上記のように、重合触媒を予備重合した後、このような予備重合された触媒の存在下でプロピレンを重合させるアプローチにより、有核ポリプロピレンを調製することができる。
【0039】
したがって、1つの可能な方法によれば、ポリプロピレン組成物は、このような予備重合触媒の存在下でプロピレンをホモポリマー化することによって製造される。プロピレンホモポリマーは、それによってポリマー状α-核形成剤(A2)によって核形成される。その際、ポリプロピレン組成物は、好ましくは、ポリプロピレン組成物の総重量に基づき、0.1~200ppmのポリマー状α-核形成剤(A2)、好ましくはポリ(ビニルシクロヘキサン)を含む。その場合、重合方法および触媒は、好適には上述の通りである。これにより、プロピレンの高アイソタクチックホモポリマー(A1)は、ポリマー状α-核形成剤(A2)を含む触媒上に形成される。
【0040】
あるいは、より好ましくは、ポリプロピレン組成物は、上記で開示したようなビニル化合物と予備重合していない重合触媒の存在下でプロピレンをホモポリマー化することによって製造され、それによってプロピレンの高アイソタクチックホモポリマー(A1)が生成される。このような場合、プロピレンの高アイソタクチックホモポリマー(A1)は、押出工程の前または押出工程時に、さらなるポリマー、すなわち、上述のようにビニル化合物と予備重合された触媒の存在下で、プロピレンをホモポリマー化、またはプロピレンとコモノマーとをコポリマー化することによって製造されたプロピレンホモポリマーまたはコポリマー(A3)と組み合わされる。
【0041】
ポリプロピレン組成物は、-1つの選択肢では-プロピレンのホモポリマー(A1)に加えて、ポリプロピレン組成物の総重量に基づき、最大0.0002重量%のβ-核形成剤(A3)を含む。β-核形成剤(A3)の量は、通常、ポリプロピレン組成物の総重量に基づき、少なくとも0.0000001重量%である。好ましくは、β-核形成剤(A3)の量は、ポリプロピレン組成物の総重量に基づき、0.0000001重量%~0.00015重量%、より好ましくは0.0000001重量%~0.000125重量%である。
【0042】
用語「β-核形成剤」は、プロピレンポリマーの六方晶変態または擬似六方晶変態の結晶化を誘導するのに適した任意の核形成剤を指す。このような核形成剤の混合物を使用してもよい。
【0043】
β-核形成剤の適当な種類は以下である:
-C-シクロアルキルモノアミンまたはC-C12-芳香族モノアミンと、C-C-脂肪族ジカルボン酸、C-C-脂環式ジカルボン酸またはC-C12-芳香族ジカルボン酸とからのジカルボン酸誘導体型ジアミド化合物、例えば
N,N’-ジ-C-C-シクロアルキル-2,6-ナフタレンジカルボキサミド化合物、例えば
N,N’-ジシクロヘキシル-2,6-ナフタレンジカルボキサミドおよび
N,N’-ジシクロオクチル-2,6-ナフタレンジカルボキサミドなど、
N,N’-ジ-C-C-シクロアルキル-4,4-ビフェニルジカルボキサミド化合物、例えば
N,N’-ジシクロヘキシル-4,4-ビフェニルジカルボキサミド、および
N,N’-ジシクロペンチル-4,4-ビフェニルジカルボキサミドなど、
N,N’-ジ-C-C-シクロアルキル-テレフタルアミド化合物、例えば
N,N’-ジシクロヘキシルテレフタルアミド、およびN,N’-ジシクロペンチルテレフタルアミドなど、
N,N’-ジ-C-C-シクロアルキル-1,4-シクロヘキサンジカルボキサミド化合物、例えば
N,N’-ジシクロヘキシル-1,4-シクロヘキサンジカルボキサミド、および
N,N’-ジシクロヘキシル-1,4-シクロペンタンジカルボキサミドなど、
-C-シクロアルキルモノカルボン酸またはC-C12-芳香族モノカルボン酸と、C-C-脂環式ジアミンまたはC-C12-芳香族ジアミンとからのジアミン誘導体型ジアミド化合物、例えば
N,N’-C-C12-アリレン-ビス-ベンズアミド化合物、例えば
N,N’-p-フェニレン-ビス-ベンズアミドおよびN,N’-1,5-ナフタレン-ビス-ベンズアミドなど、
N,N’-C-C-シクロアルキル-ビス-ベンズアミド化合物、例えば
N,N’-1,4-シクロペンタン-ビス-ベンズアミドおよびN,N’-1,4-シクロヘキサン-ビス-ベンズアミドなど、
N,N’-p-C-C12-アリレン-ビス-C-C-シクロアルキルカルボキサミド化合物、例えば
N,N’-1,5-ナフタレン-ビス-シクロヘキサンカルボキシアミドおよび
N,N’-1,4-フェニレン-ビス-シクロヘキサンカルボキシアミドなど、並びに
N,N’-C-C-シクロアルキル-ビス-シクロヘキサンカルボキシアミド化合物、例えば
N,N’-1,4-シクロペンタン-ビス-シクロヘキサンカルボキシアミドおよび
N,N’-1,4-シクロヘキサン-ビス-シクロヘキサンカルボキシアミドなど、
-C-アルキルアミノ酸、C-C-シクロアルキルアミノ酸またはC-C12-アリールアミノ酸、C-C-アルキルモノカルボン酸クロリド、C-C-シクロアルキルモノカルボン酸クロリドまたはC-C12-芳香族モノカルボン酸クロリドと、C-C-アルキルモノアミン、C-C-シクロアルキルモノアミンまたはC-C12-芳香族モノアミンとのアミド化反応からのアミノ酸誘導体型ジアミド化合物、例えば
N-フェニル-5-(N-ベンゾイルアミノ)ペンタンアミド、および
N-シクロヘキシル-4-(N-シクロヘキシル-カルボニルアミノ)ベンズアミドなど。
【0044】
さらに適当なβ-核形成剤は、キナクリドンタイプの化合物、例えば5,12-ジヒドロ-キノ[2,3-b]アクリジン-7,14-ジオン(すなわちキナクリドン)、ジメチルキナクリドンおよびジメトキシキナクリドンなど、キナクリドンキノンタイプの化合物、例えば、キノ[2,3-b]アクリジン-6,7,13,14(5H,12H)-テトロン(すなわちキナクリドンキノン)およびジメトキシキナクリドンキノンなど、並びにジヒドロキナクリドンタイプの化合物、例えば5,6,12,13-テトラヒドロキノ[2,3-b]アクリジン-7,14-ジオン(すなわちジヒドロキナクリドン)、ジメトキシジヒドロキナクリドンおよびジベンゾジヒドロキナクリドンである。
【0045】
さらに適当なβ-核形成剤は、周期表第11a族からの金属のジカルボン酸塩、例えばピメリン酸カルシウム塩およびスベリン酸カルシウム塩;ならびにジカルボン酸と周期表第11a族からの金属の塩との混合物である。
【0046】
さらに適当なβ-核形成剤は、周期表第11a族からの金属の塩と、式
【化1】
[式中、
xは0~4である;RはH、-COOH、C-C12-アルキル、C-C-シクロアルキルまたはC-C12-アリール、および、Y=C-C12-アルキル、C-C-シクロアルキルまたはC-C12-アリール-置換された二価のC-C12-芳香族残基である]
で示されるイミド酸との塩であり、例えば、フタロイルグリシン、ヘキサヒドロフタロイルグリシン、N-フタロイルアラニン、フタルイミドアセテートおよび/またはN-4-メチルフタロイルグリシンのカルシウム塩である。
【0047】
好ましいβ-核形成剤は、N,N’-ジシクロヘキシル-2,6-ナフタレンジカルボキサミド、EP 177961のβ-核形成剤およびEP 682066のβ-核形成剤のいずれか1つまたは混合物である。
【0048】
特に好ましいβ-核形成剤は、5,12-ジヒドロ-キノ[2,3-b]アクリジン-7,14-ジオン(CAS 1047-16-1)(すなわち キナクリドン)、キノ[2,3-b]アクリジン-6,7,13,14(5H,12H)-テトロン(CAS 1503-48-6)(すなわち、キナクリドンキノン)、5,6,12,13-テトラヒドロキノ[2,3-b]アクリジン-7,14-ジオン(CAS 5862- 38-4)(すなわち、ジヒドロキナクリドン)、N,N-ジシクロヘキシル-2,6-ナフタレンジカルボキサミド(CAS 153250-52-3)、および少なくとも7個の炭素原子を有するジカルボン酸と周期表11a族の金属との塩、好ましくはピメリン酸カルシウム塩(CAS 19455-79-9)のいずれか1つまたは混合物である。
【0049】
好ましくは、β-核形成剤は、5,12-ジヒドロ-キノ[2,3-b]アクリジン-7,14-ジオン、キノ[2,3-b]アクリジン-6,7,13,14(5H,12H)-テトロン、5,6,12,13-テトラヒドロキノ[2,3-b]アクリジン-7,14-ジオン、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0050】
なおより好ましいβ-核形成剤は、5,12-ジヒドロ-キノ[2,3-b]アクリジン-7,14-ジオン(CAS 1047-16-1)、キノ[2,3-b]アクリジン-6,7,13,14(5H,12H)-テトロン(CAS 1503-48-6)および5,6,12,13-テトラヒドロキノ[2,3-b]アクリジン-7,14-ジオン(CAS 5862-38-4)であり、これらはBASF社からCinquasia Gold YT-923-Dとして市販されている。
【0051】
このβ核形成剤は非常に高い活性を特徴とする。Cinquasia Gold YT-923-Dは、非常に高い活性を有し、非常に安価であるため、β-核形成剤として好ましい。
【0052】
本発明の方法による工程(B)では、工程(A)で提供されたポリプロピレン組成物をフィルム、好ましくはフラットフィルムへと押出成形する。原理的には、工程(B)には、フィルムを押出すために適した任意の押出機が使用され得る。押出機のダイは、好ましくはフィルムを押出すためのスロットダイまたはフラットダイである。
【0053】
本発明の方法による工程(C)では、工程(B)で押出されたフィルムを同時にまたは逐次、好ましくは連続方法で配向して、二軸配向ポリプロピレンフィルムを得る。配向はフィルムを延伸(drawing)または延伸(stretching)することによって行われる。
【0054】
好ましくは、工程(C)において、フィルムは逐次的に配向され、逐次配向は、最初に機械方向(MD)、続いて横方向(TD)に行われるか、または最初に横方向(TD)、続いて機械方向(MD)に行われ、より好ましくは、最初に機械方向(MD)、続いて横方向(TD)で行われる。
【0055】
好ましくは、機械方向(MD)の延伸比(draw ratio)は少なくとも8.0~20.0、より好ましくは9.0~15.0であり、および/または、横方向(TD)の延伸比は少なくとも8.0~20.0、より好ましくは9.0~15.0である。
【0056】
好ましくは、工程(C)で得られるフィルムは、0.5~10μm、好ましくは1~6μm、最も好ましくは2~5μmの厚さを有する。
【0057】
好ましくは、工程(C)における配向は、連続方法で、好ましくは20kg/h~900kg/h、さらに好ましくは>25kg/h~500kg/hの処理量で行われる。連続方法とは、適当に実行されている場合に中断することなく製品を生産する方法、および/またはバッチで製品を生産しないいかなる方法であってよい。
【0058】
好ましくは、工程(B)および(C)はテンター法として実行される。
【0059】
例示的なテンター法は次のとおりである。フィルムは、フラットダイを通してポリプロピレン組成物を押出すことによって得られ、押出物は回収され、回転冷却ロールで冷却され、フィルムが固化する。
【0060】
冷却ロールは、無配向フィルムをオーブン内に設置されたテンターフレームに連続的に搬送する。テンターフレームは、リニアモーターシステムによって駆動される、クリップが機械方向に移動する2本のレールによって実現されている。オーブンの入口から出口までの2本のレールは、平行、発散(diverging)、わずかに収束するように相互配置され、予熱、延伸、弛緩ゾーンを形成する。無配向キャストフィルムの二軸延伸は、無配向キャストフィルムをテンターの予熱ゾーンへ供給し、その予熱ゾーンでは入口でクランプが無配向キャストフィルムの両側を掴むことによって実現される。クランプの移動方向は押出方向、すなわち機械方向(MD)であり、MD方向におけるクリップ間距離は予熱ゾーンでは一定である。フィルムを二軸延伸または延伸(biaxial drawing or stretching)する場合、延伸ゾーンのレール間距離は、フィルムの横方向(TD)延伸を達成するために、予熱ゾーンに比べて増加する一方、フィルムをMD延伸するためにMDにおいてクリップ間距離が増加する。延伸は、上記のように同時または逐次のいずれでもあり得る。
【0061】
例えば、溶融ポリプロピレン組成物は、まずダイを通って冷却ロールに押し出される。冷却ロール表面温度は10~100℃、好ましくは20~98℃に保持される。フィルムの厚みは50~1000μm、好ましくは100~500μmである。次にフィルムはテンターフレームに送られ、上記のように延伸される。テンターオーブン温度は160~175℃に設定される。二軸配向フィルムがマンドレルに集められる前に、該二軸配向フィルムは両側でトリミングされ、クリップがフィルムを固定していた場所である無配向のエッジが取り除かれる。
【0062】
好ましくは、二軸配向ポリプロピレンフィルムは、上記のすべての実施形態で記載されたポリプロピレン組成物を含む少なくとも1つの層を含む。好ましくは、ポリプロピレン組成物を含む層は、フィルム層の総重量に基づき、90~100重量%のポリプロピレン組成物を含む。より好ましくは、層は95~100重量%のポリプロピレン組成物、さらにより好ましくは98~100重量%、例えば99~100重量%のポリプロピレン組成物を含む。特に好ましくは、層はポリプロピレン組成物からなる。
【0063】
好ましくは、二軸配向ポリプロピレンフィルムは、ポリマー層などの追加の層を含んでよい。最終的な追加のポリマー層は、当技術分野で知られている任意の手段によって製造されてよい。したがって、それらは、本発明によるフィルム層と共押出されてもよく、好ましくは共押出される。あるいは、それらを積層してフィルム構造を形成してもよい。
【0064】
任意に、本発明による方法は、二軸配向ポリプロピレンフィルムを金属化して、金属層をさらに含む二軸配向ポリプロピレンフィルムを得る工程(C1)をさらに含む。特に二軸配向ポリプロピレンフィルムがキャパシタの製造に使用される場合には、金属層が存在する。
【0065】
金属化、すなわち二軸配向ポリプロピレンフィルム上に金属層を堆積することは、電気溶解真空蒸着、イオンビーム真空蒸着、スパッタリングまたはイオンプレーティングなどの当技術分野で知られる任意の方法で行われ得る。このような金属層の厚さは、典型的には100Å(0.01pm)から5000Å(0.5pm)である。
【0066】
工程(C1)は、好ましくは、工程(C)に続いて行われる。
【0067】
任意の工程(C1)が実施されない場合、工程(C)において得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムは金属化されず、従って非金属化二軸配向ポリプロピレンフィルムとも称され得る。
【0068】
本発明による方法は、以下によって二軸配向ポリプロピレンフィルムを熱処理する工程(D)をさらに含む:
(D1) 二軸配向ポリプロピレンフィルムをアニール温度Tannまで加熱すること、ここでTannは80℃~150℃である、
(D2) 二軸配向ポリプロピレンフィルムをアニール温度Tannでアニール時間tannの間アニールして、熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルムを得ること、ここでtannは10~140分である、
(D3) 熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルムを冷却し、好ましくは室温まで冷却すること、
好ましくは、アニール温度Tannは90℃~140℃、より好ましくは100℃~120℃である。
好ましくは、tannは30~130分、より好ましくは50~120分である。
【0069】
好ましくは、工程(D1)におけるアニール温度Tannへの加熱は、1℃/分~10℃/分の加熱速度で行われ、より好ましくは3℃/分~7℃/分、最も好ましくは5℃/分で行われる。通常、工程(D1)における二軸配向ポリプロピレンフィルムの加熱は、室温からアニール温度Tannまでで行われる。
【0070】
好ましくは、工程(D3)における冷却は、1℃/分~10℃/分、より好ましくは3℃/分~7℃/分、最も好ましくは5℃/分の冷却速度で行われる。
【0071】
好ましくは、加熱工程(D)は、N雰囲気などの不活性雰囲気中で行われる。
【0072】
加熱工程(D)は、二軸配向ポリプロピレンフィルムを加熱、アニールおよび冷却するために適当な任意の装置、好ましくはオーブンなどの本明細書に記載の不活性雰囲気中で行われ得る。
【0073】
本発明による方法の工程(E)において、熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルムが回収される。
【0074】
好ましくは、熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルムまたは二軸配向ポリプロピレンフィルムは、金属層をさらに含む。
【0075】
二軸配向ポリプロピレンフィルムがさらに金属層を含む場合、金属層は、好ましくは、本明細書に記載される任意の金属化工程(C1)によって形成される。
【0076】
熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルムがさらに金属層を含む場合、金属層は、好ましくは、熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルムを金属化することによって形成される。金属化は、好ましくは、本明細書の工程(C1)に記載されたように行われる。
【0077】
好ましくは、ポリプロピレン組成物は、ポリプロピレン組成物の総重量に基づき最大9.99重量%の、プロピレンのホモポリマー(A1)以外の、すなわちプロピレンの高アイソタクチックホモポリマー(A1)以外のプロピレンホモポリマーまたはコポリマー(A4)をさらに含む。
【0078】
プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(A4)の量は、通常、ポリプロピレン組成物の総重量に基づき少なくとも0.01重量%である。
【0079】
プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(A4)は、典型的には、ポリマー状α-核形成剤(A2)のためのキャリアポリマーとして存在する。プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(A4)は、好ましくは、プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(A4)の重量に基づき、0.5~200ppm、好ましくは0.5~100ppm、より好ましくは1~200ppm、例えば1~100ppmのポリマー状α-核形成剤(A2)、好ましくはポリ(ビニルシクロヘキサン)を含む。
【0080】
プロピレンのホモポリマーまたはコポリマー(A4)の量は、好ましくは、ポリプロピレン組成物に基づき、0.1~9.99重量%、好ましくは0.1~5重量%、より好ましくは0.2~4.99重量%、さらにより好ましいくは、ポリプロピレン組成物に基づき、0.2~1.99重量%、特に0.2~0.99重量%である。
【0081】
プロピレンのホモポリマーまたはコポリマー(A4)は、プロピレンの任意のホモポリマーまたはコポリマーであってよい。好ましくは、ホモポリマーまたはコポリマー(A4)は、プロピレンの高アイソタクチックホモポリマー(A1)と比較的類似する。したがって、ホモポリマーまたはコポリマー(A4)はプロピレンのホモポリマーであることが好ましい。さらに、ホモポリマーまたはコポリマー(A4)の特性がプロピレンの高アイソタクチックホモポリマー(A1)の特性と実質的に異なる場合、ホモポリマーまたはコポリマー(A4)の量はポリプロピレン組成物の総重量に基づき2重量%を超えないことが好ましい。
【0082】
プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(A4)は、好ましくは少なくとも0.9の分岐指数gを有する。それにより、プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(A4)は、好ましくは長鎖分岐を実質的に含まない。特に、プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(A4)は、検出可能な量の長鎖分岐を含まない。
【0083】
プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(A4)は、当技術分野で知られる方法に従って製造され得る。上述したように、1つの方法によれば、プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(A4)は、式CH=CH-CHR[式中、RおよびRは、上記で定義される]で示されるビニル化合物で予備重合される触媒の存在下でプロピレンをホモポリマー化することによって製造される。ビニル化合物がビニルシクロヘキサンであることが特に好ましい。それにより、プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(A4)は、ポリマー状α-核形成剤(A2)によって核形成される。プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(A4)は、好ましくは、プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(A4)の総重量に基づき、0.1~200ppmのポリマー状α-核形成剤(A2)、好ましくはポリ(ビニルシクロヘキサン)を含む。
【0084】
本発明の1つの適当な実施形態によれば、プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(A4)を製造するための重合方法および触媒は、プロピレンの高アイソタクチックホモポリマー(A1)について上述されたものと同様である。それにより、プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(A4)が、ポリマー状α-核形成剤(A2)を含む触媒上に形成される。
【0085】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(A4)は、マグネシウム、チタン、塩素を含む固体成分を含むチーグラー・ナッタ触媒の存在下、および、フタル酸塩、マレイン酸塩またはシトラコン酸塩などの内部供与体の存在下、およびトリエチルアルミニウムなどのアルミニウムアルキルの存在下、および、シリコンエーテル、例えばジシクロペンチルジメトキシシランなどの外部供与体の存在下、プロピレンをホモポリマー化する、またはプロピレンとエチレンおよび炭素数4~8のアルファ-オレフィンからなる群から選択される1以上のコモノマーとをコポリマー化することによって、製造され、この触媒は、ビニルシクロヘキサンなどの式CH=CH-CHRで示される少量のビニル化合物と予備重合されたものである。
【0086】
次に、プロピレンは、1以上の重合工程において、予備重合触媒の存在下でホモポリマー化またはコポリマー化される。プロピレンのホモポリマー化またはコポリマー化は、スラリー重合または気相重合またはそれらの組み合わせなど、当技術分野で公知の任意の適当な重合方法で実施され得る。
【0087】
ポリマー状α-核形成剤(A2)を含むプロピレンホモポリマーまたはコポリマー(A4)を製造するための適当な方法は、とりわけ、WO-A-99/24479、WO-A-00/68315、EP-A-1801157、EP-A-1801155、およびEP-A-1818365に開示されている。
【0088】
典型的には、プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(A4)は、0.1~200ppmのポリマー状α-核形成剤(A2)、好ましくは1~100ppm、より好ましくは5~50ppmのポリマー状α-核形成剤(A2)を含む。また、この実施形態では、プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(A4)がプロピレンホモポリマーであることが好ましく、プロピレンホモポリマーが、例えば少なくとも96重量%、または少なくとも97重量%、または少なくとも98重量%のような冷キシレン不溶性材料の高い割合によって、示されるように、比較的高いアイソタクチック材料の含有量を有することがさらに好ましい。
【0089】
ポリプロピレン組成物は、好ましくは、ポリプロピレン組成物の総重量に基づき、0.9以下の分岐指数g’を有する分岐プロピレンポリマー(A5)を0.1~9.99重量%さらに含む。分岐プロピレンポリマーの分岐指数は、通常、少なくとも0.1である。
【0090】
本発明で用いられる「分岐プロピレンポリマー」という用語は、ポリプロピレン主鎖が側鎖を有するのに対し、非分岐ポリプロピレン、すなわち直鎖状ポリプロピレンは側鎖を有さないという点で、直鎖ポリプロピレンとは異なる分岐ポリプロピレンを指す。側鎖はポリプロピレンのレオロジーに大きな影響を与える。したがって、直鎖ポリプロピレンおよび分岐ポリプロピレンは、応力下での流動挙動によって明確に区別され得る。
【0091】
分岐指数g’は分岐度を定義し、ポリマーの分岐量と相関する。分岐指数g’は
g’=[IV]br/[IV]lin
[式中、g’は分岐プロピレンポリマーの分岐指数であり、[IV]brは分岐プロピレンポリマーの固有粘度であり、[IV]linは分岐プロピレンポリマーと同一の重量平均分子量(±10%の範囲内)を有する直鎖状ポリプロピレンの固有粘度である]として定義される。したがって、低いg’値は高度に分岐したポリマーの指標である。言い換えれば、g’値が低下すると、ポリプロピレンの分岐が増大する。これに関して、B.H. Zimm and W.H. Stockmeyer, J. Chem. Phys. 17,1301 (1949)を参照されたい。分岐指数g’を決定するために必要な固有粘度は、DIN ISO 1628/1、1999年10月(デカリン中135℃)に従って測定される。
【0092】
分岐は、特定の触媒、すなわち特定のシングルサイト触媒を使用することによって、または化学変性によって達成され得る。特定の触媒の使用によって得られる分岐プロピレンポリマーの製造に関しては、EP 1 892 264を参照されたい。化学変性によって得られる分岐プロピレンポリマーに関しては、EP 0 879 830 A1が参照される。このような場合、分岐プロピレンポリマーは高溶融強度ポリプロピレンとも呼ばれる。本発明による分岐プロピレンポリマーは、以下により詳細に説明するように化学変性によって得られ、したがって高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)である。したがって、本発明において、用語「分岐プロピレンポリマー」および「高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)」は同義語としてみなされ得る。このようにして調製された分岐プロピレンポリマーは、長鎖分岐プロピレンポリマーとしても知られている。それゆえ、本発明の分岐プロピレンポリマー、すなわち高溶融強度ポリプロピレン(HMS-PP)は、得られるポリプロピレン組成物に良好なひずみ硬化効果を与えるために、15.0cN超のF30溶融強度および200mm/秒超のv30溶融伸展性を有し、好ましくは15.0~50.0cN、より好ましくは20.0~45.0cN、例えば25.0~40.0cNの範囲のF30溶融強度、および200~300mm/秒、好ましくは215~285mm/秒、より好ましくは235~275mm/秒の範囲のv30溶融伸展性を有する。F30溶融強度およびv30溶融伸展性は、ISO 16790:2005に従って測定される。
【0093】
分岐プロピレンポリマーは、任意の数の方法によって、例えば、熱分解性ラジカル形成剤による未変性プロピレンポリマーの処理によって、および/または電離放射線による処理によって製造することができ、この両方の処理は任意に、二官能性または多官能性のエチレン性不飽和モノマー、例えばブタジエン、イソプレン、ジメチルブタジエン、ジビニルベンゼンまたはトリビニルベンゼンでの処理を伴ってよく、またはそれに続いてよい。
【0094】
本明細書で使用される「二官能性エチレン性不飽和」とは、例えばジビニルベンゼンまたはシクロペンタジエンのように、2つの非芳香族二重結合が存在することを意味する。フリーラジカルの助けを借りて重合できるこのような二官能性エチレン性不飽和化合物のみが使用される。二官能性不飽和モノマーは、2つの二重結合がそれぞれ直鎖状ポリプロピレンのポリマー鎖への共有結合に使用されるため、実際には「不飽和」ではなく化学結合状態にある。
【0095】
分岐プロピレンポリマーの例は、特に:
溶融状態でのビスマレイミド化合物との反応により変性されたポリプロピレン(EP-A-0 574 801およびEP-A-0 574 804)、
電離放射線を用いた処理により変性されたポリプロピレン(EP 0 190 889 A2)
固相での過酸化物による処理により変性されたポリプロピレン(EP 0 384 431 A2)または溶融状態での過酸化物を用いた処理により変性されたポリプロピレン(EP 0 142 724 A2)、
電離放射線の作用の下での二官能性エチレン性不飽和モノマーによる処理により変性されたポリプロピレン(EP A 0 678 527)、
溶融状態での過酸化物の存在下、二官能性エチレン性不飽和モノマーによる処理により変性されたポリプロピレン(EP A 0 688 817およびEP A 0 450 342)。
【0096】
上記のリストからは、特に二官能性エチレン性不飽和モノマーによる処理の後に、過酸化物による処理によって得られる分岐プロピレンポリマーが好ましい。
【0097】
好ましい分岐プロピレン系ポリマーは、直鎖状ポリプロピレンと、ポリプロピレンの溶融条件下で熱分解可能な有機過酸化物0.01~3重量%とを混合し、その混合物を加熱溶融することによって得られる。
【0098】
さらにより好ましい分岐プロピレンポリマーは、直鎖状ポリプロピレンと、ポリプロピレンの溶融条件下で熱分解可能な有機過酸化物0.01~3重量%および0.2~3重量%の二官能性エチレン性不飽和モノマーとを混合し、その混合物を加熱溶融することによって得られる。
【0099】
二官能性エチレン性不飽和モノマーは、直鎖状ポリプロピレン/過酸化物混合物を加熱溶融する前または加熱溶融中の任意のタイミングで添加してよい。二官能性モノマーは、過酸化物と混合する前に、直鎖状ポリプロピレンに添加されてもよい。
【0100】
好ましい実施形態によれば、二官能性モノマーは、ポリプロピレン(なお固体である)に吸収された気体または液体の状態にある。
【0101】
好ましい方法によれば、分岐プロピレンポリマーは、粒子状の直鎖状プロピレンポリマーと、直鎖状プロピレンポリマーに基づき、ポリプロピレンの溶融条件下で熱分解可能な有機過酸化物(アシル過酸化物、アルキル過酸化物、ペルエステルおよび/またはペルオキシカーボネート)0.05~3重量%とを混合することによって調製される。過酸化物は、任意に不活性溶媒中で溶媒和されてよい。混合は30~100℃、好ましくは60~90℃の温度で行われる。
【0102】
過酸化物と混合した後、ポリプロピレン/過酸化物混合物を二官能性エチレン性不飽和モノマーと接触させる。二官能性モノマーは、気体状態または液体状態であってよく、純粋または希釈された状態、例えば、不活性ガスで希釈された、または有機溶媒に溶媒和された状態で適用されてよい。二官能性モノマーは、20~120℃、好ましくは60~100℃の温度で粒子状ポリプロピレンに吸収されることを可能にする。実際の収着時間は10~1000秒であり、60~600秒が好ましい。これにより、典型的には、直鎖状プロピレンポリマーに基づき、それぞれ0.01~10重量%、0.05~2重量%の二官能性モノマーの吸収量が得られる。
【0103】
次いで、ポリプロピレン/過酸化物/モノマー混合物を、不活性ガス、例えばNおよび/または二官能性モノマーを含む雰囲気中で、吸着温度から210℃へ加熱し、溶融する。これにより、過酸化物が分解し、プロピレンポリマー鎖にフリーラジカルが生成し、これが二官能性モノマーと反応する。
【0104】
未反応モノマーおよび分解生成物を除去するために、この溶融物を280℃に加熱し、最終的に該溶融物をペレット化する。
【0105】
直鎖状ポリプロピレンは、プロピレンホモポリマー、プロピレンとエチレンおよび/または4~18個の炭素原子を有するα-オレフィンとのコポリマー、およびそのようなホモポリマーおよびコポリマーの混合物を含む。本発明の好ましい実施形態によれば、分岐プロピレンポリマーは、低灰分量、好ましくは<60ppmの灰分量を有するプロピレンホモポリマーに基づき調製される。
【0106】
本発明のさらに好ましい実施態様によれば、分岐プロピレン重合体(A5)は、プロピレンの高アイソタクチックホモポリマー(A1)のような直鎖状であるプロピレンの高アイソタクチックホモポリマーに基づき調製される。
【0107】
粒子状の直鎖状プロピレンポリマーは、粉末、顆粒またはグリットの形状を有してよい。
【0108】
上記方法は、好ましくは、連続的な反応器、ミキサー、ニーダーおよび押出機で行われる連続方法である。しかしながら、変性プロピレンポリマーのバッチ式製造も同様に可能である。
【0109】
好ましくは、二官能性モノマーは気相から直鎖状プロピレンポリマーに吸収される。
【0110】
二官能性エチレン性不飽和モノマーは、好ましくは、C4-C10ジエンおよび/またはC7-C10のジビニル化合物である。特に好ましいのは、ブタジエン、イソプレン、ジメチルブタジエンまたはジビニルベンゼンである。
【0111】
以下の過酸化物が上記方法に適当である:
アシル過酸化物、例えばジベンゾイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、4-クロロベンゾイルペルオキシド、3-メトキシベンゾイルペルオキシドおよびメチルベンゾイルペルオキシド、
アルキル過酸化物、例えばアリルtert-ブチルペルオキシド、2,2-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ブタン、ジ-tert-アミルペルオキシド、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルペルオキシ)バレレート、ジイソプロピルアミノメチル tert-アミルペルオキシド、ジメチルアミノメチル tert-アミルペルオキシド、ジエチルアミノメチル tert-ブチルペルオキシド、ジメチルアミノメチル tert-ブチルペルオキシド、1,1-ジ(tert-アミルペルオキシ)シクロヘキサン、tert-アミルペルオキシド、tert-ブチルクミルペルオキシド、メチルイソブチルケトンペルオキシド、2,2-ジ(4,4-ジ(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキシル)プロパン、tert-ブチルペルオキシドおよび1-ヒドロキシブチル n-ブチルペルオキシド;
ペルエステルおよびペルオキシカーボネート、例えば、ペルオキシ酢酸tert-ブチル、ペルオキシジエチル酢酸tert-ブチル、過酢酸クミル、過プロピオン酸クミル、過酢酸シクロヘキシル、過アジピン酸ジ-tert-ブチル、過アゼライン酸ジ-tert-ブチル、過グルタル酸ジ-tert-ブチル、過フタル酸ジ-tert-ブチル、過セバシン酸ジ-tert-ブチル、過プロピオン酸4-ニトロクミル、過安息香酸1-フェニルエチル、ニトロ過安息香酸フェニルエチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン過カルボン酸tert-ブチル、過4-カルボメトキシ酪酸tert-ブチル、tert-アミルペルオキシ2-エチルヘキシルカーボネート、ペルオキシ-2-エチルヘキサン酸tert-アミル、シクロブタン過カルボン酸tert-ブチル、1,4-ジ(tert-ブチルペルオキシカルボ)シクロヘキサン、1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチル-シクロヘキサン、1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、シクロヘキシルペルオキシカルボン酸tert-ブチル、シクロペンチル過カルボン酸tert-ブチル、シクロプロパン過カルボン酸tert-ブチル、過ジメチルケイ皮酸tert-ブチル、2-(2,2-ジフェニルビニル)過安息香酸tert-ブチル、ペルオキシ-2-エチルヘキサン酸tert-ブチル、ペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサン酸tert-ブチル、4-メトキシ過安息香酸tert-ブチル、ペルオキシ安息香酸tert-ブチル、過ナフトエ酸tert-ブチル、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、tert-ブチルペルオキシ2-エチルヘキシルカーボネート、過トルイル酸tert-ブチル、1-フェニルシクロプロピル過カルボン酸tert-ブチル、2-プロピルパーペンテン-2-酸tert-ブチル、1-メチルシクロプロピル過カルボン酸tert-ブチル、4-ニトロフェニル過酢酸tert-ブチル、tert-ブチルニトロフェニルペルオキシカルバメート、A-スクシンイミド過カルボン酸tert-ブチル、過クロトン酸tert-ブチル、過マレイン酸tert-ブチル、過メタクリル酸tert-ブチル、過オクタン酸tert-ブチル、ペルオキシイソ酪酸tert-ブチル、過アクリル酸tert-ブチル、過プロピオン酸tert-ブチル;並びに
これらの過酸化物の混合物。
【0112】
特に好ましいのは、ジベンゾイルペルオキシド、ペルオキシ-2-エチルヘキサン酸tert-ブチル、ペルオキシ-2-エチルヘキサン酸tert-アミル、ペルオキシジエチル酢酸tert-ブチル、1,4-ジ(tert-ブチルペルオキシカルボ)シクロヘキサン、ペルオキシイソ酪酸tert-ブチル、1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチル-シクロヘキサン、メチルイソブチルケトンペルオキシド、2,2-ジ(4,4-ジ(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキシル)プロパン、1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、ペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサン酸tert-ブチル、tert-アミルペルオキシ2-エチルヘキシルカーボネート、2,2-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ブタン、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、tert-ブチルペルオキシ2-エチルヘキシルカーボネート、過酢酸tert-ブチル、ペルオキシ安息香酸tert-ブチル、ジ-tert-アミルペルオキシドおよびこれらの混合物である。
【0113】
これらの過酸化物は、その作用機序が、この場合望ましくないポリマー鎖長の低下性の分解と、望ましい長鎖分岐との間の妥協点であることが認められたため、好ましい。
【0114】
好ましくは、ポリプロピレン組成物は、ポリプロピレン組成物の総重量に基づき、0.01~1重量%、好ましくは0.05~0.8重量%の添加剤(A6)をさらに含む。
【0115】
本発明に従って使用される添加剤(A6)は、好ましくは、酸化防止剤、安定剤、酸捕捉剤、およびそれらの混合物からなる群から選択される。本出願では、本明細書に開示される核形成剤は添加剤とはみなされない。
【0116】
本発明によるプロピレンの高アイソタクチックホモポリマー(A1)は、93~98%のアイソタクチシティを有する。特に、95~98%のアイソタクチシティを有するプロピレンのホモポリマーがフィルムの製造に使用される場合、ポリマーは、90~94%のアイソタクチシティを有する従来のプロピレンのホモポリマーよりも分解されやすいことが判明した。したがって、プロピレンの高アイソタクチックホモポリマー(A1)については、より効果的な安定化が好ましい。
【0117】
本発明で使用される酸化防止剤および安定剤は、好ましくはヒンダードフェノールの群から選択され、より好ましくはリンまたは硫黄を含まないヒンダードフェノールの群から選択される。
【0118】
本発明で使用される酸化防止剤および安定剤は、特に好ましくは、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン(商品名Irganox 1330、Anox 330、Ethanox 330およびKinox-30で販売されている)、ペンタエリスリチル-テトラキス(3-(3<,>,5’-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート(商品名Irganox 1010、Anox 20、Ethanox 310TFおよびKinox-10で販売されている)、オクタデシル3-(3’,5’-ジ-tertブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(商品名Irganox 1076、Anox PP 18およびKinox-16で販売されている)、ブチルヒドロキシトルエン(商品名Ionol CPおよびVulkanox BHTで販売されている)、1,3,5-トリス(3’,5’-ジ-tertブチル-4’-ヒドロキシベンジル)-イソシアヌレート(商品名Irganox 3114、Anox IC-14、Ethanox 314、およびKinox-34で販売されている)、および2,5,7,8-テトラメチル-2(4<,>,8<,>,12’-トリメチルトリデシル)クロマン-6-オール(商品名Irganox E 210およびアルファ-トコフェロールで販売されている)からなる群から選択される1以上の化合物である。
【0119】
酸化防止剤および安定剤は、ポリプロピレン組成物の総重量に基づき、500~8000ppmの総量で存在することが好ましい。より好ましくは、酸化防止剤および安定剤は、ポリプロピレン組成物の総重量に基づき、800~7000ppm、さらにより好ましくは1000~6000ppm、特に1500~6000ppmの総量で存在する。特に、酸化防止剤および安定剤は、好ましくは、トリス(2,4-ジtert-ブチルフェニル)ホスファイトなどのリン含有二次酸化防止剤を含まない、なぜなら、そのような化合物は最終的なキャパシタにおける損失を増大させるためである。
【0120】
酸捕捉剤は通常、ステアリン酸塩などの有機酸の塩である。これらはポリマー中の酸を中和する機能を有する。このような化合物の例は、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛および酸化亜鉛である。酸捕捉剤は、典型的には50ppm~2000ppm、より好ましくは50ppm~1000ppmの量で使用される。
【0121】
本発明はさらに、本発明による方法によって得られる熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルムを提供する。
【0122】
本発明による方法の全ての好ましい実施形態は、該当する場合には、本発明による方法によって得られる熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルムの好ましい実施形態でもある。
【0123】
好ましくは、本発明による熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルムは、上記のすべての実施形態に記載されるようなポリプロピレン組成物を含む少なくとも1つの層を含む。好ましくは、ポリプロピレン組成物を含む該層は、フィルム層の総重量に基づき、90~100重量%のポリプロピレン組成物を含む。より好ましくは、該層は95~100重量%のポリプロピレン組成物を含み、さらにより好ましくは98~100重量%、例えば99~100重量%のポリプロピレン組成物を含む。特に好ましくは、該層はポリプロピレン組成物からなる。
【0124】
本発明はさらに、本発明による熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルムの層を含む絶縁フィルムを含むキャパシタを提供する。
【0125】
本発明はさらに、キャパシタの絶縁フィルムの誘電率を増加させる、および/または絶縁破壊電界強度を改善するための、本発明による熱処理二軸延伸フィルムの使用を提供する。
【0126】
最後に、本発明はさらに、本発明による熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルムの、キャパシタの絶縁フィルムの層としての使用を提供する。
【0127】
上述した本発明による方法の好ましい全ての実施形態は、本発明によるキャパシタおよび本発明による熱処理二軸延伸フィルムの使用の好ましい実施形態でもある。
【0128】
以下、実施例により本発明をさらに説明する。
【0129】
<1.定義/測定方法>
以下の用語の定義および測定方法は、別段の定義がない限り、本発明の上記の一般的な記載、並びに以下の実施例に適用される。
【0130】
[a)メルトフローレート]
メルトフローレートMFR2は、ISO 1133に従って230℃、2.16kgの荷重下で測定した。
【0131】
[b)NMR分光法による微細構造の定量化]
定量的核磁気共鳴(NMR)分光法を使用して、プロピレンホモポリマーのアイソタクチシティおよび位置規則性(regio-regularity)を定量した。
【0132】
定量的13C{H}NMRスペクトルは、Hおよび13Cについてそれぞれ400.15および100.62MHzで作動させたBruker Advance III 400 NMR spectrometerを用いて、溶液状態で記録した。全てのスペクトルを、125℃の13Cに最適化した10mm拡張温度プローブヘッドを用い、全ての空気圧に窒素ガスを用いて記録した。
【0133】
約200mgの材料(プロピレンホモポリマー)を1,2-テトラクロロエタン-d(TCE-d2)に溶解した。均質な溶液を確保するために、ヒートブロック中での最初のサンプル調製の後、NMRチューブを回転式オーブン中で少なくとも1時間さらに加熱した。磁石内への挿入後、該チューブを10Hzで回転させた。この設定は、主にタクチシティ分布の定量に必要である高分解能のために選択された(Busico,V.,Cipullo,R.,Prog.Polym.Sci.26(2001)443;Busico,V.;Cipullo,R.,Monaco,G.,Vacatello,M.,Segre,A.L.,Macromoleucles30(1997)6251)。NOEおよび2レベルWALTZ16デカップリングスキーム(Zhou,Z.,Kuemmerle,R.,Qiu,X.,Redwine,D.,Cong,R.,Taha,A.,Baugh,D.Winniford,15B.,J.Mag.Reson.187(2007)225;Busico,V.,Carbonniere,P.,Cipullo,R.,Pellecchia,R.,Severn,J.,Talarico,G.,Macromol.Rapid Commun.2007,28,11289)を利用して、標準的なシングルパルス励起を採用した。1スペクトルあたり合計8192(8k)のトランジェントを取得した。
【0134】
定量的な13C{H}NMRスペクトルは、処理、積分し、その積分値から関連する定量的特性を独自のコンピュータプログラムを用いて決定した。
【0135】
プロピレンホモポリマーでは、全ての化学シフトは21.85ppmでのメチルアイソタクチックペンタッド(mmmm)を内部標準とする。
【0136】
レジオ欠陥(Resconi,L.,Cavallo,L.,Fait,A.,Piemontesi,F.,Chem.Rev.2000,100,1253;Wang,W-J.,Zhu,S.,Macromolecules 33(2000),1157;Cheng,H.N.,Macromolecules 17(1984),1950)またはコモノマーに対応する特徴的なシグナルを観察した。
【0137】
23.6-19.7ppmの間のメチル領域を積分し、目的の立体配列に関連しない任意の部位を補正して、タクチシティ分布を定量した(Busico,V.,Cipullo,R.,Prog.Polym.Sci.26(2001)443;Busico,V.,Cipullo,R.,Monaco,G.,Vacatello,M.,Segre,A.L.,Macromoleucles 30(1997)6251)。
【0138】
ペンタッドアイソタクティシティとは、アイソタクチックペンタッド(mmmm)の分率を意味する。
【0139】
[c)灰分含有量]
ポリマーの灰分量は、秤量した白金るつぼ中でポリマーを燃焼させることによって測定した。約100グラムのポリマーをるつぼに内に秤量する。次いで、るつぼをブンゼンバーナーの炎で加熱し、ポリマーをゆっくりと燃焼させる。ポリマーを完全に燃焼した後、るつぼを冷却し、乾燥させ、秤量する。灰分量は、ポリマーサンプルの重量で割った残分の重量である。少なくとも2回の測定が行われ、測定値間の差が7ppmを超える場合は、3回目の測定を行う。
【0140】
[d)溶融強度および溶融伸展性]
本明細書に記載される試験はISO 16790:2005に準拠する。
ひずみ硬化挙動は、論文「Rheotens-Mastercurves and Drawability of Polymer Melts」、M.H.Wagner、Polymer Engineering and Sience、第36巻、第925~935頁に記載されている方法によって測定する。ポリマーのひずみ硬化挙動は、Rheotens装置(Gottfert製、Siemensstr.2、74711 Buchen、Germany)によって分析され、この装置では、規定の加速度で引き下げることによって溶融ストランドが伸長される。
【0141】
Rheotensの実験は、工業用の紡糸および押出方法をシミュレートする。原則として、溶融物を丸いダイを通してプレスするかまたは押し出して、得られたストランドを引き出す。押出物にかかる応力を、溶融特性および測定パラメータ(特に、出力および引き出し速度の比、実際には伸張率の尺度)の関数として記録する。材料は、実験用押出機FLAAKE Polylabシステムおよび円筒形ダイ(L/D=6.0/2.0mm)を有するギアポンプを使用して押出成形した。F30溶融強度およびv30溶融伸展性を測定するために、押出機出口(=ギアポンプ入口)での圧力を、押出されたポリマーの一部をバイパスさせることにより30barに設定した。F200溶融強度およびv200溶融伸展性を測定するために、押出機出口(=ギアポンプ入口)の圧力を、押出されたポリマーの一部をバイパスさせることにより200barに設定した。ギアポンプを5mm/sのストランド押出速度にあらかじめ調整し、溶融温度は200℃に設定した。ダイとRheotensホイールとの間のスピンライン長は80mmであった。実験開始時に、Rheotensホイールの巻き取り速度を、押し出されたポリマーストランドの速度(張力ゼロ)に調整した:その後、ポリマーフィラメントが破断するまで、Rheotensホイールの巻き取り速度をゆっくりと上げて実験を開始した。ホイールの加速度は十分に小さいため、引張力は準定常状態で測定された。引き下げられた溶融ストランド(2)の加速度は120mm/秒である。RheotensはPCプログラムEXTENSと組み合わせて操作した。これは、引張力と引き下げ(ドローダウン)速度の測定データを表示および保存する、リアルタイムデータ取得プログラムである。ポリマーストランドが破断するRheotens曲線(力対プーリー回転速度)の終点を、それぞれF30溶融強度およびv30溶融伸展性の値、またはF200溶融強度およびv200溶融伸展性の値として取得する。
【0142】
[e)固有粘度]
分岐指数g’を決定するために必要な固有粘度は、DIN ISO 1628/1、1999年10月(デカリン中、135℃)に従い測定する。
【0143】
[f)広帯域誘電分光法(BDS)]
BDS測定は、Novocontrol Alpha周波数アナライザーを使用し、10-1~10Hzの周波数範囲で、±0.1℃の誤差内である20~130℃の範囲の異なる温度で、大気圧および窒素雰囲気下で実行された。フィルムサンプルは金属層(50nmAu、圧力2×10-2mbar、マグネトロンスパッタリングを使用)でコーティングされ、フィルム表面と電極とのよりよい接触を得て、接触を良くするために上部電極としてピンを使用して測定された。一方、底面には4mmの直径を有する円形電極を使用した。ピン電極は、曲率κ=0.002μm-1(曲率半径Rκ=500μm)を特徴とする丸い先端を有する。これにより、Au層と直径d~50μmを有するピン電極との間の接触面積が小さくなる。また、丸い先端は非常に小さな粗さ(<1μm)を示し、制御可能な圧力を備えているため、その使用がBDS測定中にAuコーティングのいかなる破壊ももたらさないことを保証する。誘電率ε’および損失ε’’の各測定を6回行い、平均値を記録した。損失正接は、tanδ=ε’’/ε’として計算された。
【0144】
BOPPフィルムの誘電特性に対する熱処理の影響を、以下の熱プロトコルを使用して調べた:フィルムを5℃/分の速度で室温から110℃へ加熱した。加熱後、サンプルをBDSセル内において110℃で、アニーリング時間tann=120分間保持した。アニール後、サンプルを5℃/分で室温へ冷却した。誘電特性は、サイクルの開始時に100℃、加熱中に110℃、およびサイクル完了後の室温で測定された。
【0145】
[e)小角X線散乱(SAXS)]
SAXS測定は、CuKα放射線(Rigaku MicroMax 007 X線generator;Osmic Confocal Max-Flux曲面多層光学)を使用して実施された。2D回折パターンは、2060mmのサンプル検出器距離でMar345イメージプレート検出器に記録された。全散乱ベクトルの係数の関数としての強度分布、q=(4π/λ)sin(2θ/2)、[式中、2θは散乱角]は、2Dデータセットの動径平均(radial averaging)によって得られた。約0.3mmの厚さBOPPフィルムのいくつかのスタックがX線ビームに使用された。アニールの効果を調査するために、加熱および冷却時のSAXS測定をBOPPフィルムに採用した。サンプルを30℃から150℃へ加熱し、その後30℃へ冷却した。BOPPフィルムにおけるキャビティサイズは、ローレンツ補正曲線(Lorentz-corrected curves)を使用して抽出された。
【実施例
【0146】
<2.実施例>
[a)材料]
以下の材料および化合物が実施例で使用される。
iHPP:WO 2017/064224の参考実施例1に従って製造した、プロピレンの高アイソタクチックホモポリマー、
nPP:WO 2017/064224の参考実施例3に従って製造した、有核プロピレンホモポリマー、
HMS:WO2017/064224の参考実施例4に従って製造した、高溶融強度ポリプロピレン、分岐プロピレンポリマー、
実施例で使用したβ核形成剤は、BASFから市販されているβ核形成剤キナクリドンキノンCGNA-7588、
ペンタエリスリチル-テトラキス(3-(3’,5’-ジ-tert.ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、BASFからIrganox 1010として市販されている。
【0147】
[b)ポリプロピレン組成物]
本発明の実施例IE1は、99.5重量%のiHPPおよび0.5重量%のnPP、1000ppmのブチルヒドロキシトルエンの溶融ブレンド、75ppmのステアリン酸カルシウムおよび4500ppmのIrganox 1010であるポリプロピレン組成物である。IE1は、3.3g/10分のMFR2、97.1%のアイソタクチックペンタッド画分、および17%の灰分量を有する。
【0148】
本発明の実施例IE2は、98.9重量%のiHPP、1.0重量%のHMS、および0.0001重量%(1ppm)のβ核形成剤の溶融ブレンド、1000ppmのブチルヒドロキシトルエン、75ppmのステアリン酸カルシウムおよび4500ppmのIrganox 1010であるポリプロピレン組成物である。
IE2は、3.3g/10分のMFR2、97.4%のアイソタクチックペンタッド画分、および13%の灰分量を有する。
【0149】
比較例CEは、99.5重量%のiHPP、1000ppmのブチルヒドロキシトルエン、75ppmのステアリン酸カルシウムおよび4500ppmのIrganox 1010の溶融ブレンドである非核ポリプロピレン組成物である。
CEは、3.3g/10分のMFR2、97.1%のアイソタクチックペンタッド画分、および17%の灰分量を有する。
【0150】
上記ポリプロピレン組成物を二軸押出機で235℃の溶融温度で溶融ブレンドした。
【0151】
Bruckner Maschinenbau GmbHが所有し運営する、キャストフィルム押出品とテンターフレームとの間に設置されたMDO(機械方向延伸)ユニットを含むパイロットスケールの二軸配向ラインを用いて加工した。フィルムを90℃に保持された冷却ロール上に、35kg/hの速度で、10m/分の冷却ロール/フィルム速度で240μmの厚さのシートに押し出した。このキャストフィルムを12本のロールからなるMDOユニットに連続的に供給し、そのうち最初の6本はフィルムを予熱するために95~130℃に加熱し、後続の2本は延伸のために140℃に保持し、最後の4本はアニールするために110~124℃に保持した。MD延伸工程を、8番目と9番目のロールの間で行い、第9ロール~第12ロールを50m/分で運転し、それによりMDOまたはMD延伸フィルムを製造した。MDOフィルムを、予熱のために180~175℃、延伸のために175~165℃、弛緩のために165~170℃を用いてテンターフレーム内に連続的に供給した。テンター操作では、MDクリップ間距離は一定とし、テンターの発散する延伸ゾーンでは、MDOフィルムをTDにのみ延伸した。MDとTDの工学的延伸比は5.0×9.0であった。
【0152】
得られたBOPPフィルムは、以下において、逐次配向を表す「SEQ」と称する。例えば、機械方向の延伸比が6.5、横方向の延伸比が9.0である場合は「SEQ6.5×9.0」と称する(下記表1参照)。
【0153】
試験した全てのBOPPフィルムは約4.8μmの厚みを有した。この厚みは、異なる厚みの(無配向)フラットフィルムを提供し、それに応じて、約4.8μmの所望の厚みを有するBOPPフィルムを得るために、機械方向(MD)と横方向(TD)も変えて異なる延伸比を適用することによって得られる。
【0154】
【表1】
【0155】
続いて、本発明の実施例IE1およびIE2ならびに比較例CEのBOPPフィルムを以下のように熱処理した。BOPPフィルムを上記のようにBDS装置に導入した。フィルムを5℃/分の速度で室温から110℃のアニール温度Tannへ加熱した。加熱後、サンプルをBDSセル内で110℃、アニール時間、tann=120分間保持した。アニール後、サンプルを5℃/分で室温へ冷却した。誘電特性は、サイクルの開始時、加熱中100℃、110℃、およびサイクル終了後室温で測定された(以下図1参照)。熱処理の結果を以下の表2に示す。
【0156】
【表2】
【0157】
相互作用が弱い双極子の場合、以下の関係に従って加熱するとε’が減少することが予想される:
【数1】

[式中、Nはシステム内の双極子の数であり、μは双極子モーメントであり、ε=8.854・10-12F/mは真空誘電率であり、εs、εはそれぞれ低周波数および高周波数での誘電率の限界である]。Fは、双極子の周囲の偏光環境の影響を導入するOnsager補正係数に対応する。積T・ε’を比較パラメータとして定義する。この方程式によれば、T・ε’≒一定(constant)となる。
【0158】
積Δ(Τ・ε’)を比較パラメータとして定義する。理論的には、このパラメータΤ・ε’、つまり温度と誘電率の積は一定であるはずである。しかし、表2に示すように、IE1とIE2では、CEと比較してこのパラメータが大幅に増加する。これは、周波数範囲10-1~10Hzに当てはまる;10Hzでの実施例を表に示す。この誘電率の変化は、高温(T>110℃)で生成されたフィルムの内部応力、並びに、後述するキャビティサイズの不可逆的な増加に起因する。
【0159】
IE1でのSAXS測定の結果を図2に示す。見てわかるように、室温での初期キャビティ厚さは約47nmである。温度を150℃に上げると、キャビティ厚さは約54nmに増加し、該増加は約130℃で起こる。室温に冷却しても、キャビティ厚さはより高いレベルに留まり、したがって、非可逆的な構造変化が起こったことを証明する。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2023-12-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルムを製造するための方法であって、該方法は、以下の工程:
(A)ポリプロピレン組成物を提供する工程であって、該ポリプロピレン組成物は、
(A1)NMR分光法で測定される93~98%のアイソタクチックペンタッド画分の含有率、およびISO1133に準拠して測定される0.4~10g/10分のメルトフローレートMFR2を有するプロピレンのホモポリマー、ポリプロピレン組成物の総重量に基づき90~99.99重量%、および
(A2)ポリマー状α-核形成剤、ポリプロピレン組成物の総重量に基づき0.0000001~1重量%、
および/または
(A3)β-核形成剤、ポリプロピレン組成物の総重量に基づき0.0000001~0.0002重量%、
を含む、工程
(B)ポリプロピレン組成物をフィルムへと押出す工程、
(C)フィルムを同時または逐次配向させて、二軸配向ポリプロピレンフィルムを得る工程、
(D)二軸配向ポリプロピレンフィルムを以下によって熱処理する工程
(D1)二軸配向ポリプロピレンフィルムをアニール温度Tannに加熱すること、ここで、Tannは80~150℃である、
(D2)二軸配向ポリプロピレンフィルムをアニール温度Tannでアニール時間tannの間アニールして、熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルムを得ること、ここで、tannは10~140分である、
(D3)熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルムを冷却すること、
(E)熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルムを回収する工程
を含む、方法。
【請求項2】
ポリプロピレン組成物は、
(A4)プロピレンのホモポリマー(A1)以外のプロピレンのホモポリマーまたはコポリマー、ポリプロピレン組成物の総重量に基づき最大9.99重量%、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ポリプロピレン組成物は、
(A5)本明細書に記載されるように測定された0.9以下の分岐指数g’を有する分岐プロピレンポリマー、ポリプロピレン組成物の総重量に基づき0.1~9.99重量%
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ポリプロピレン組成物は、
(A6)添加剤、ポリプロピレン組成物の総重量に基づき、0.01~1重量%
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
工程(C)において、フィルムが逐次配向され、逐次配向は、最初に機械方向(MD)、続いて横方向(TD)に、または最初に横方向(TD)、続いて機械方向(MD)のいずれかで行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
機械方向(MD)における延伸比は少なくとも8.0~20.0である、および/または横方向(TD)における延伸比は少なくとも8.0~20.0である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ポリマー状α-核形成剤(A2)は、式CH=CH-CHRで示されるビニル化合物のポリマーであり、式中、RおよびRは、一緒になって5員もしくは6員の、飽和環、不飽和環もしくは芳香環を形成するか、または、独立して1~4個の炭素原子を含むアルキル基を表す、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ポリマー状α-核形成剤(A2)は、ポリビニルシクロヘキサン、ポリ(3-メチル-1-ブテン)およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
β-核形成剤は、5,12-ジヒドロ-キノ[2,3-b]アクリジン-7,14-ジオン、キノ[2,3-b]アクリジン-6,7,13,14(5H,12H)-テトロン、5,6,12,13-テトラヒドロ-キノ[2,3-b]アクリジン-7,14-ジオン、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
フィルムは0.5~10μmの厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルムまたは二軸配向ポリプロピレンフィルムは、金属層をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法によって得られる熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルム。
【請求項13】
絶縁フィルムを含むキャパシタであって、該絶縁フィルムは、請求項12に記載の熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルムの層を含む、キャパシタ。
【請求項14】
キャパシタの絶縁フィルムの誘電率を増加させる、および/または絶縁破壊電界強度を向上させるための、請求項12に記載の熱処理二軸延伸フィルムの使用。
【請求項15】
キャパシタの絶縁フィルムの層としての請求項12に記載の熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルムの使用。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0159
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0159】
IE1でのSAXS測定の結果を図2に示す。見てわかるように、室温での初期キャビティ厚さは約47nmである。温度を150℃に上げると、キャビティ厚さは約54nmに増加し、該増加は約130℃で起こる。室温に冷却しても、キャビティ厚さはより高いレベルに留まり、したがって、非可逆的な構造変化が起こったことを証明する。
本明細書の好ましい態様は、少なくとも下記を包含する。
[1]熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルムを製造するための方法であって、該方法は、以下の工程:
(A)ポリプロピレン組成物を提供する工程であって、該ポリプロピレン組成物は、
(A1)NMR分光法で測定される93~98%のアイソタクチックペンタッド画分の含有率、およびISO1133に準拠して測定される0.4~10g/10分のメルトフローレートMFR2を有するプロピレンのホモポリマー、ポリプロピレン組成物の総重量に基づき90~99.99重量%、および
(A2)ポリマー状α-核形成剤、ポリプロピレン組成物の総重量に基づき0.0000001~1重量%、
および/または
(A3)β-核形成剤、ポリプロピレン組成物の総重量に基づき0.0000001~0.0002重量%、
を含む、工程
(B)ポリプロピレン組成物をフィルムへと押出す工程、
(C)フィルムを同時または逐次配向させて、二軸配向ポリプロピレンフィルムを得る工程、
(D)二軸配向ポリプロピレンフィルムを以下によって熱処理する工程
(D1)二軸配向ポリプロピレンフィルムをアニール温度T ann に加熱すること、ここで、T ann は80~150℃である、
(D2)二軸配向ポリプロピレンフィルムをアニール温度T ann でアニール時間t ann の間アニールして、熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルムを得ること、ここで、t ann は10~140分である、
(D3)熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルムを冷却すること、
(E)熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルムを回収する工程
を含む、方法。
[2]ポリプロピレン組成物は、
(A4)プロピレンのホモポリマー(A1)以外のプロピレンのホモポリマーまたはコポリマー、ポリプロピレン組成物の総重量に基づき最大9.99重量%、
をさらに含む、[1]に記載の方法。
[3]ポリプロピレン組成物は、
(A5)本明細書に記載されるように測定された0.9以下の分岐指数g’を有する分岐プロピレンポリマー、ポリプロピレン組成物の総重量に基づき0.1~9.99重量%
を含む、[1]または[2]に記載の方法。
[4]ポリプロピレン組成物は、
(A6)添加剤、ポリプロピレン組成物の総重量に基づき、0.01~1重量%
をさらに含む、[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5]工程(C)において、フィルムが逐次配向され、逐次配向は、最初に機械方向(MD)、続いて横方向(TD)に、または最初に横方向(TD)、続いて機械方向(MD)のいずれかで行われる、[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
[6]機械方向(MD)における延伸比は少なくとも8.0~20.0である、および/または横方向(TD)における延伸比は少なくとも8.0~20.0である、[1]~[5]のいずれかに記載の方法。
[7]ポリマー状α-核形成剤(A2)は、式CH =CH-CHR で示されるビニル化合物のポリマーであり、式中、R およびR は、一緒になって5員もしくは6員の、飽和環、不飽和環もしくは芳香環を形成するか、または、独立して1~4個の炭素原子を含むアルキル基を表す、[1]~[6]のいずれかに記載の方法。
[8]ポリマー状α-核形成剤(A2)は、ポリビニルシクロヘキサン、ポリ(3-メチル-1-ブテン)およびそれらの混合物からなる群から選択される、[7]に記載の方法。
[9] β-核形成剤は、5,12-ジヒドロ-キノ[2,3-b]アクリジン-7,14-ジオン、キノ[2,3-b]アクリジン-6,7,13,14(5H,12H)-テトロン、5,6,12,13-テトラヒドロ-キノ[2,3-b]アクリジン-7,14-ジオン、およびそれらの混合物からなる群から選択される、[1]~[8]のいずれかに記載の方法。
[10]フィルムは0.5~10μmの厚さを有する、[1]~[9]のいずれかに記載の方法。
[11]熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルムまたは二軸配向ポリプロピレンフィルムは、金属層をさらに含む、[1]~[9]のいずれかに記載の方法。
[12][1]~[11]のいずれかに記載の方法によって得られる熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルム。
[13]絶縁フィルムを含むキャパシタであって、該絶縁フィルムは、[12]に記載の熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルムの層を含む、キャパシタ。
[14]キャパシタの絶縁フィルムの誘電率を増加させる、および/または絶縁破壊電界強度を向上させるための、[12]に記載の熱処理二軸延伸フィルムの使用。
[15]キャパシタの絶縁フィルムの層としての[12]に記載の熱処理二軸配向ポリプロピレンフィルムの使用。

【国際調査報告】