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特表2024-516286逆導通型横型絶縁ゲートバイポーラトランジスタ
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  • 特表-逆導通型横型絶縁ゲートバイポーラトランジスタ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-12
(54)【発明の名称】逆導通型横型絶縁ゲートバイポーラトランジスタ
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/786 20060101AFI20240405BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
H01L29/78 626Z
H01L29/78 655Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023567960
(86)(22)【出願日】2022-01-24
(85)【翻訳文提出日】2023-11-02
(86)【国際出願番号】 CN2022073350
(87)【国際公開番号】W WO2022252654
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】202110600489.6
(32)【優先日】2021-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512154998
【氏名又は名称】無錫華潤上華科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】CSMC TECHNOLOGIES FAB2 CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.8 Xinzhou Road Wuxi New District,Jiangsu 214028 China
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャン セン
(72)【発明者】
【氏名】グ ヤン
(72)【発明者】
【氏名】チェン シュ
【テーマコード(参考)】
5F110
【Fターム(参考)】
5F110AA01
5F110BB12
5F110CC02
5F110DD01
5F110DD05
5F110DD13
5F110EE09
5F110GG02
5F110GG03
5F110GG04
5F110GG32
5F110HJ01
5F110NN02
5F110NN23
5F110NN37
5F110NN71
(57)【要約】
本発明の実施例によって提供される逆導通型横型絶縁ゲートバイポーラトランジスタは、基板に形成されたドリフト領域と、前記ドリフト領域に位置するゲートと、ドリフト領域に位置するとともにゲートに近い側に位置するエミッタ領域と、ドリフト領域に位置するとともにゲートから遠い側に位置するコレクタ領域と、を含み、ドリフト領域のコレクタ領域が位置する一方側には、間隔をあけて配置された2つ以上のNウェル領域が設けられ、間隔をあけて配置された2つ以上のNウェル領域同士の間には、Pウェル領域が設けられ、Nウェル領域には、P+接触領域が設けられ、Pウェル領域には、N+接触領域が設けられ、P+接触領域及びN+接触領域は、いずれもコレクタ引出端子に電気的に接続される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に形成されたドリフト領域と、前記ドリフト領域に位置するゲートと、前記ドリフト領域に位置するとともに前記ゲートに近い側に位置するエミッタ領域と、前記ドリフト領域に位置するとともに前記ゲートから遠い側に位置するコレクタ領域と、を含む逆導通型横型絶縁ゲートバイポーラトランジスタであって、
前記ドリフト領域の前記コレクタ領域が位置する一方側には、間隔をあけて配置された2つ以上のNウェル領域が設けられ、
間隔をあけて配置された2つ以上の前記Nウェル領域同士の間には、Pウェル領域が設けられ、
前記Nウェル領域には、P+接触領域が設けられ、
前記Pウェル領域には、N+接触領域が設けられ、
前記P+接触領域及び前記N+接触領域は、いずれもコレクタ引出端子に電気的に接続される
ことを特徴とする逆導通型横型絶縁ゲートバイポーラトランジスタ。
【請求項2】
間隔をあけて設けられた2つ以上の前記Nウェル領域は、少なくとも、第1のNウェル領域と第2のNウェル領域とを含み、前記Pウェル領域は、少なくとも、前記第1のNウェル領域と前記第2のNウェル領域との間に設けられた第1のPウェル領域を含み、前記第1のNウェル領域と前記第2のNウェル領域とは面積が等しく、前記第1のNウェル領域と前記第2のNウェル領域は、前記第1のPウェル領域に対して対称的に分布する
ことを特徴とする請求項1に記載の逆導通型横型絶縁ゲートバイポーラトランジスタ。
【請求項3】
前記エミッタ領域から前記コレクタ領域への方向に沿って、前記第1のNウェル領域、前記第1のPウェル領域、及び前記第2のNウェル領域は、順に配置される
ことを特徴とする請求項2に記載の逆導通型横型絶縁ゲートバイポーラトランジスタ。
【請求項4】
前記基板が位置する平面と平行な方向に沿って、前記N+接触領域の周囲は、前記Pウェル領域によって被覆される
ことを特徴とする請求項1に記載の逆導通型横型絶縁ゲートバイポーラトランジスタ。
【請求項5】
前記N+接触領域は、第1の部分と第2の部分とを含み、前記第1の部分は、側壁部及び底部を含み、前記側壁部は、前記基板が位置する平面に垂直な方向に沿って延在し、前記底部の前記基板に近い面は、前記側壁部に接続され、前記第2の部分の前記基板から遠い面は、前記側壁部に接続され、前記側壁部の深さは、前記第2の部分の深さよりも大きい
ことを特徴とする請求項1に記載の逆導通型横型絶縁ゲートバイポーラトランジスタ。
【請求項6】
前記側壁部の深さは、前記P+接触領域の深さよりも大きい
ことを特徴とする請求項5に記載の逆導通型横型絶縁ゲートバイポーラトランジスタ。
【請求項7】
前記Pウェル領域内には、溝が形成され、前記第1の部分の前記側壁部及び前記底部は、それぞれ、前記溝の側面及び底面をドーピングすることにより形成される
ことを特徴とする請求項5に記載の逆導通型横型絶縁ゲートバイポーラトランジスタ。
【請求項8】
前記溝内には、充填構造が形成され、前記第2の部分は、前記充填構造上に位置する
ことを特徴とする請求項7に記載の逆導通型横型絶縁ゲートバイポーラトランジスタ。
【請求項9】
前記充填構造の材料は、絶縁材料及び/又は多結晶シリコンを含む
ことを特徴とする請求項8に記載の逆導通型横型絶縁ゲートバイポーラトランジスタ。
【請求項10】
前記Pウェル領域の数は、複数であり、複数のN+接触領域は、それぞれ、複数の前記Pウェル領域内に位置し、複数のN+接触領域と前記P+接触領域とは、前記基板と平行な平面上で交互に分布する
ことを特徴とする請求項1に記載の逆導通型横型絶縁ゲートバイポーラトランジスタ。
【請求項11】
間隔をあけて設けられた2つ以上の前記Nウェル領域と複数の前記Pウェル領域とは、前記基板と平行な平面上で交互に分布する
ことを特徴とする請求項10に記載の逆導通型横型絶縁ゲートバイポーラトランジスタ。
【請求項12】
前記Pウェル領域と前記ドリフト領域との間の電位障壁は、前記Pウェル領域と前記Nウェル領域との間の電位障壁よりも低い
ことを特徴とする請求項1に記載の逆導通型横型絶縁ゲートバイポーラトランジスタ。
【請求項13】
前記ドリフト領域に位置するとともに前記ゲートが位置する一方側に近いチャネル領域を更に含み、前記チャネル領域は、導電性チャネルを形成し、前記Nウェル領域は、前記逆導通型横型絶縁ゲートバイポーラトランジスタのN型バッファ層として、前記チャネル領域に対して間隔をあけて設けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の逆導通型横型絶縁ゲートバイポーラトランジスタ。
【請求項14】
前記チャネル領域内には、第1導電型の基板オーミック接触領域と第2導電型のソースオーミック接触領域とが設けられ、前記ソースオーミック接触領域は、前記チャネル領域内にチャネルを誘導させるように、前記ゲートに向かう側で前記チャネル領域に接触する
ことを特徴とする請求項13に記載の逆導通型横型絶縁ゲートバイポーラトランジスタ。
【請求項15】
前記ドリフト領域と前記ゲートとの間に形成されたフィールド酸化層を更に含み、前記フィールド酸化層は、前記ドリフト領域と前記ゲートとの間の分離フィールド領域として機能する
ことを特徴とする請求項1に記載の逆導通型横型絶縁ゲートバイポーラトランジスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスの技術分野に関し、特に、逆導通型横型絶縁ゲートバイポーラトランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、2021年5月31に中国特許庁に提出された、出願番号2021106004896、発明名称が「逆導通型横型絶縁ゲートバイポーラトランジスタ」である中国特許出願に基づき優先権を主張し、その内容全体を参照により本出願に組み込む。
【0003】
ここでの説明は、本発明に関連する背景情報を提供するものに過ぎず、必ずしも例示的な技術を構成するものではない。
【0004】
横型絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Lateral Insulated-Gate Bipolar Transistor,LIGBT)は、MOS管とバイポーラトランジスタの長所を併せ持つトランジスタである。絶縁基板上シリコン(Silicon on Insulator,SOI)技術は、その理想的な誘電体分離性能で、パワー集積回路の製造に広く応用されている。SOI-LIGBTデバイスは、SOI技術に基づいて製造されたLIGBTデバイスである。
【0005】
インテリジェントパワーモジュール(IPM)は、現在、電動機の駆動とモータの駆動に広く用いられており、中程度の電力の条件ではそのパワースイッチング素子として完全に集積されたSOI-LIGBTを使用する場合が多く、LIGBTを高電圧還流ダイオード(FWD:Free Wheeling Diode)と並列に接続したものが最も典型的なスイッチング素子構造である。LIGBTが順方向にターンオンすると、正孔が注入されて大電流のターンオンが形成されて、誘導性負荷を駆動して正常に動作させる。LIGBTがターンオフすると、誘導性負荷は、その電流が急激に変化することができないため、還流するための回路が必要であり、この時、並列に接続されたFWDは還流の役割を果たし、次の段階でLIGBTのゲートが開くと、FWDは逆方向に回復した後、再びオフ状態に戻り、これで1つの動作周期が終了する。
【0006】
集積パワーモジュールの設計では、LIGBTとFWDとが異なる種類の2つのデバイスであるため、動作時にスイッチングの特性を正常に保証するためには高度なマッチングが必要である。そのため、デバイスの設計では、LIGBTがターンオフした時のEoffとFWDが逆方向に回復する時のtrrとの関係を考慮する必要があり、さもなければ過大な損失及びより長い遅延をもたらしやすく、LIGBTモジュールの信頼性に影響を与える。
【0007】
ターンオフ損失を低減するために、特許文献CN111816699Aは、主にツェナーダイオードの集積による自己適応性を有するSOI LIGBTデバイスを提案した。ツェナーダイオードはコレクタ電圧の上昇にしたがって自己適応的に逆方向ブレークダウンによってターンオンするため、ターンオフ過程にもドリフト領域内に記憶された正孔を迅速に抽出するために追加の経路を提供する。当該特許文献では、コレクタ構造がコレクタNMOS構造であり、N型バッファ層には第2のP型ウェル領域とP+ウェル電位領域とN+コレクタ領域とコレクタトレンチゲートとをさらに有し、P+電位領域はP+ウェル電位領域に短絡されて、コレクタとP+ウェル電位領域との電位差もより小さくなり、第2のPウェル領域に反転層を形成することができず、N+コレクタ領域とN型バッファ層との間の導電経路が遮断され、デバイスが単極導電モードに入ってデバイスが順方向にターンオンする時のsnap-back効果を除去することができない。しかしながら、当該特許文献の構造ではツェナーダイオードが導入され、ツェナーダイオードは、一般的にツェナー型のトンネルブレークダウンであるため、逆導通型LIGBTにおける還流ダイオードとして使用される場合、逆方向ブレークダウン時に高電圧又は超高電圧の条件で使用されると限界がある。また、当該特許文献のツェナーダイオードは、順方向ターンオンのsnap-back効果を抑制するにはある程度の効果があるが、より速く回復する特性が得られず、そのコレクタ構造の設計により、LIGBTの逆方向回復段階のスイッチングのターンオフ速度を依然として改善する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明のいくつかの実施例によると、逆導通型横型絶縁ゲートバイポーラトランジスタを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
基板に形成されたドリフト領域と、前記ドリフト領域に位置するゲートと、前記ドリフト領域に位置するとともに前記ゲートに近い側に位置するエミッタ領域と、前記ドリフト領域に位置するとともに前記ゲートから遠い側に位置するコレクタ領域と、を含む逆導通型横型絶縁ゲートバイポーラトランジスタであって、前記ドリフト領域の前記コレクタ領域が位置する一方側には、間隔をあけて配置された2つ以上のNウェル領域が設けられ、 間隔をあけて配置された2つ以上の前記Nウェル領域同士の間には、Pウェル領域が設けられ、前記Nウェル領域には、P+接触領域が設けられ、前記Pウェル領域には、N+接触領域が設けられ、前記P+接触領域及び前記N+接触領域は、いずれもコレクタ引出端子に電気的に接続される。
【0010】
選択的な一実施例において、間隔をあけて設けられた2つ以上の前記Nウェル領域は、少なくとも、第1のNウェル領域と第2のNウェル領域とを含み、前記Pウェル領域は、少なくとも、前記第1のNウェル領域と前記第2のNウェル領域との間に設けられた第1のPウェル領域を含み、前記第1のNウェル領域と前記第2のNウェル領域とは面積が等しく、前記第1のNウェル領域と前記第2のNウェル領域は、前記第1のPウェル領域に対して対称的に分布する。
【0011】
選択的な一実施例において、前記基板が位置する平面と平行な方向に沿って、前記N+接触領域の周囲は、前記Pウェル領域によって被覆される。
【0012】
選択的な一実施例において、前記N+接触領域は、第1の部分と第2の部分とを含み、前記第1の部分は、側壁部及び底部を含み、前記側壁部は、前記基板が位置する平面に垂直な方向に沿って延在し、前記底部の前記基板に近い面は、前記側壁部に接続され、前記第2の部分の前記基板から遠い面は、前記側壁部に接続され、前記側壁部の深さは、前記第2の部分の深さよりも大きい。
【0013】
選択的な一実施例において、前記側壁部の深さは、前記P+接触領域の深さよりも大きい。
【0014】
選択的な一実施例において、前記Pウェル領域内には、溝が形成され、前記第1の部分の前記側壁部及び前記底部は、それぞれ、前記溝の側面及び底面をドーピングすることにより形成される。
【0015】
選択的な一実施例において、前記溝内には、充填構造が形成され、前記第2の部分は、前記充填構造上に位置する。
【0016】
選択的な一実施例において、前記充填構造の材料は、絶縁材料及び/又は多結晶シリコンを含む。
【0017】
選択的な一実施例において、前記Pウェル領域の数は、複数であり、複数のN+接触領域は、それぞれ、複数の前記Pウェル領域内に位置し、複数のN+接触領域と前記P+接触領域とは、前記基板と平行な平面上で交互に分布する。
【0018】
選択的な一実施例において、間隔をあけて設けられた2つ以上の前記Nウェル領域と複数の前記Pウェル領域とは、前記基板と平行な平面上で交互に分布する。
【0019】
本発明の1つ又は複数の実施例の詳細は、以下の図面及び説明で示される。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、明細書、図面、及び特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
以下、本発明の実施例又は例示的な技術における技術的解決策をより明確に説明するために、実施例又は例示的な技術の説明に必要な図面について簡単に説明する。以下の説明における図面は、本発明のいくつかの実施例にすぎず、当業者であれば、創造的な努力を払わずにこれらの図面に基づいて他の図面を得ることができることが明らかであろう。
図1】従来の横型絶縁ゲートバイポーラトランジスタの断面模式図である。
図2】一関連実施例によって提供される逆導通型横型絶縁ゲートバイポーラトランジスタの断面模式図である。
図3】第1の実施例によって提供される逆導通型横型絶縁ゲートバイポーラトランジスタの断面模式図である。
図4】第2の実施例によって提供される逆導通型横型絶縁ゲートバイポーラトランジスタの断面模式図である。
図5a】選択的な一実施例における逆導通型横型絶縁ゲートバイポーラトランジスタのコレクタ領域の平面模式図である。
図5b】選択的な一実施例における逆導通型横型絶縁ゲートバイポーラトランジスタのコレクタ領域の平面模式図である。
図5c】選択的な一実施例における逆導通型横型絶縁ゲートバイポーラトランジスタのコレクタ領域の平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明への理解を容易にするために、関連図面を参照して本発明をより完全に説明する。本発明の好適な実施例を図面に示す。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で実施することができ、本明細書に記載の実施例に限定されない。逆に、これらの実施例は、本発明の開示内容をより徹底的かつ完全的にすることを目的として提供される。
【0022】
特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般的に理解されるような意味を有する。本明細書において、本発明の明細書で使用される用語は、具体的な実施例を説明する目的のみで使用され、本発明を限定することを意図するものではない。
【0023】
理解すべきものとして、要素又は層が他の要素又は層「...上にある」、「...に隣接する」、「に接続される」、又は「に結合される」と呼ばれる場合、直接他の要素又は層上にあるか、直接他の要素又は層に隣接するか、直接他の要素又は層に接続又は結合されてもよいし、或は、介在する要素又は層が存在してもよい。逆に、要素が他の要素又は層に対して「直接...上にある」、「直接...に接触する」、「に直接接続される」、又は「に直接結合される」と呼ばれる場合には、介在する要素又は層が存在しない。理解すべきものとして、第1、第2、第3などの用語を使用して様々な要素、部品、領域、層、ドーピング種類及び/又は部分を説明するが、これらの要素、部品、領域、層、ドーピング種類及び/又は部分は、これらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は、1つの要素、部品、領域、層、ドーピング種類又は部分と、他の要素、部品、領域、層、ドーピング種類又は部分とを区分するために用いられる。したがって、本明細書の教示から逸脱することなく、後述する第1の要素、部品、領域、層、ドーピング種類又は部分は、第2の要素、部品、領域、層、ドーピング種類又は部分として表すことができる。
【0024】
「...下にある」、「...下方にある」、「の下の」、「...の下にある」、「...の上にある」、「の上の」等の空間関係用語は、ここでは、図面に示された1つの要素又は特徴と他の要素又は特徴との関係を説明するために用いられる。理解すべきものとして、図面に示された方位に加えて、空間関係用語は、使用及び動作中のデバイスの異なる方位を更に含む。例えば、図面のデバイスが反転する場合、「他の要素の下にある」、「その下にある」、又は「その下方にある」要素又は特徴の方位が他の要素又は特徴の「上にある」に変えることとして説明される。したがって、例示的な用語である「...下方にある」及び「...下にある」は、上及び下のような2つの方位を含むことができる。なお、デバイスは、他の方位(例えば、90度回転又は他の方位)を含んでもよく、ここで使用される空間用語もそれに応じて解釈される。
【0025】
本明細書で使用される場合、単数形の「一」、「1つ」、及び「前記/当該」は、文脈で明らかにそうでないことを示していない限り、複数形も含むことができる。更に理解すべきものとしては、「含む/含有する」又は「有する」などの用語は、説明される特徴、全体、ステップ、操作、部品、部分、又はそれらの組み合わせの存在を指定するが、1つ又は複数の別の特徴、全体、ステップ、操作、部品、部分、又はそれらの組み合わせの存在又は付加の可能性を排除しない。それと同時に、本明細書において、用語「及び/又は」は、関連する列挙された項目の任意の及び全ての組み合わせを含む。
【0026】
まず、図1を参照する。図1は、従来の横型絶縁ゲートバイポーラトランジスタの断面模式図である。図面に示されたように、当該横型絶縁ゲートバイポーラトランジスタは、(底部シリコン層100、埋め込み酸化膜層110、及び上部シリコン層120を含む)SOI基板と、上部シリコン層120に位置するドリフト領域121と、フィールド酸化層130と、ゲート140と、コレクタにおける多結晶シリコンフィールド板150と、ドリフト領域121上に位置するとともにゲートに近い側に位置するエミッタ領域と、ドリフト領域121上に位置するとともにゲートから遠い側に位置するコレクタ領域と、を含む。ここで、エミッタ領域には、チャネル領域161が設けられ、当該チャネル領域161は、LIGBTにおいて横型MOSの導電性チャネルとして機能し、具体的にはPウェル領域である。チャネル領域161上には、基板オーミック接触領域171及びソースオーミック接触領域172が設けられ、且つ、基板オーミック接触領域171及びソースオーミック接触領域172は、いずれもエミッタ引出端子に電気的に接続される。コレクタ領域には、N型バッファ領域(以下、Nウェル領域162と呼ぶ)が設けられ、Nウェル領域162には、P+接触領域173が設けられ、P+接触領域173及び多結晶シリコンフィールド板150は、いずれもコレクタ引出端子に電気的に接続される。
【0027】
上記構造では、LIGBTはFWDに並列に接続される必要がある。LIGBTが順方向にターンオンすると、正孔が注入されて大電流のターンオンが形成され、誘導性負荷を駆動して正常に動作させる。LIGBTがターンオフすると、誘導性負荷は、その電流が急激に変化することができないため、還流するための回路が必要であり、この時、並列に接続されたFWDは還流の役割を果たし、次の段階でLIGBTのゲートが開くと、FWDは逆方向に回復した後、再びターンオフ状態に戻り、これで1つの動作周期が終了する。しかしながら、LIGBTとFWDとが異なる種類の2つのデバイスであるため、スイッチング特性を正常に保証するためには動作時に高度なマッチングが必要である。そのため、独立するFWDとLIGBTとを集積するのは、当該分野の重要な研究方向となっている。
【0028】
上記の構造では、コレクタがP+(図1のP+接触領域173を参照)であるため、LIGBTには電流を放出する経路がなく、並列に接続されたダイオード(即ちFWD)からしか流れ出ないことを考慮したうえで、本発明は、まず、逆導通型横型絶縁ゲートバイポーラトランジスタを提供する関連実施例を提案する。LIGBTのコレクタ構造を改良することにより、LIGBTのスイッチング時の特性が改善される。具体的には、図2を参照すると、図面に示されたように、当該関連実施例において、Nウェル領域162内には、P+接触領域173に加えて、N+接触領域174が設けられ、即ち、コレクタ領域にはN+接触領域が追加される。また、N+接触領域174の下端は、Pウェル領域163によって囲まれている。したがって、LIGBTが正常にターンオンすると、P+接触領域173の正孔がNウェル領域162及びドリフト領域121に注入されてコンダクタンス変調効果が発生し、PNP三極管がトリガーされた後に電流が急激に上昇し、LIGBTは順方向のターンオン動作に入る。この時、N+接触領域174及びPウェル領域163は、逆バイアス状態であり、電子は空乏層を超えてLDMOSを形成できないので、LIGBTが順方向にターンオンする時に、正常な起動動作に影響を与えない。LIGBTが逆方向にターンオフすると、LIGBTのコレクタは電圧を失いゼロ電位となり、この時、駆動される誘導性負荷の電流は急激に変化できないため、エミッタのP+(図2の基板オーミック接触領域171を参照)を通って流入する。従来技術の通常構造と比較すると、当該関連実施例によって提供される構造では、N+接触領域174の存在により、還流時にコイルに戻る電流経路を有するので、還流するための追加のFWDが並列に接続される必要がなく、モジュール動作時のレイアウト面積を大幅に節約し、LIGBTの信頼性を向上させる。
【0029】
しかしながら、図2に示された関連実施例において、P+接触領域173、N+接触領域174、及びPウェル領域163は、いずれも同じNウェル領域162に設けられ、LIGBTが逆方向に回復する時に、少数キャリアである正孔が超える電位障壁がより高く、LIGBTの逆方向の回復段階でのスイッチングのターンオフ速度を改善する必要がある。
【0030】
これに鑑み、本発明は、以下の実施例を提供する。即ち、逆導通型横型絶縁ゲートバイポーラトランジスタは、基板上に形成されたドリフト領域と、ドリフト領域に位置するゲートと、ドリフト領域に位置するとともにゲートに近い側に位置するエミッタ領域と、ドリフト領域に位置するとともにゲートから遠い側に位置するコレクタ領域と、を含む。ここで、ドリフト領域のコレクタ領域が位置する一方側には、間隔をあけて配置された2つ以上のNウェル領域が設けられ、間隔をあけて配置された2つ以上のNウェル領域同士の間には、Pウェル領域が設けられ、Nウェル領域には、P+接触領域が設けられ、Pウェル領域には、N+接触領域が設けられ、P+接触領域及びN+接触領域は、いずれもコレクタ引出端子に電気的に接続される。
【0031】
理解されるように、従来技術と比較すると、本発明の実施例は、LIGBTのコレクタ領域の構造を改良することによって、改良後のデバイス構造では、還流するための追加のFWDが並列に接続される必要がなくなり、モジュールの動作時にレイアウト面積を大幅に節約し、LIGBTの信頼性を向上させることができるだけでなく、間隔をあけて配置されたNウェル領域の構造を有し、Pウェル領域が間隔をあけて配置されたNウェル領域同士の間に設けられるため、LIGBTの逆方向の回復段階でのスイッチングのターンオフ速度を更に向上させ、デバイス全体のスイッチング特性を向上させる。
【0032】
まず、図3を参照して本発明の実施例を更に解釈して説明する。図3は、本発明の第1の実施例によって提供される逆導通型横型絶縁ゲートバイポーラトランジスタの断面模式図である。図面に示されたように、当該逆導通型横型絶縁ゲートバイポーラトランジスタは、SOI基板を含み、即ち、底部シリコン層100と、埋め込み酸化膜層110と、上部シリコン層120と、を含む。
【0033】
底部シリコン層100は、第1導電型、具体的には、例えばP型であり、即ち、底部シリコン層100は、P型基板(Psub)である。その材料は、シリコンである。当然ながら、本発明の実施例は、これに限定されなく、本発明の実施例におけるSOI基板の底部基板の材料として、炭化ケイ素、砒化ガリウム、リン化インジウム、又はゲルマニウムシリコン等の当該分野で一般的に用いられる材料を使用することも可能である。
【0034】
埋め込み酸化膜層110は、底部シリコン層100上に位置し、その材料は、一般的に二酸化ケイ素等のシリコンの酸化物である。埋め込み酸化膜層110は、一般に機能上の名称(BOX)であり、具体的には1層の絶縁層であり、その材料は二酸化ケイ素に限らず他の絶縁材料であってもよい。
【0035】
上部シリコン層120は、埋め込み酸化膜層110上に位置し、具体的には、第2導電型のエピタキシャル層であってもよく、デバイスを製造する層として機能する。上部シリコン層120は、LIGBTデバイスにおいてドリフト領域(図面ではドリフト領域121で示される)として機能する。第2導電型は、具体的にN型であってもよく、ドリフト領域として、その導電型は底部シリコン層100とは逆の導電型である。ドリフト領域121は、具体的にはN-領域である。上部シリコン層120の材料は、シリコンである。当然ながら、本発明の実施例はこれに限定されなく、本発明の実施例におけるSOI基板の上部基板の材料として、炭化ケイ素、砒化ガリウム、リン化インジウム、又はゲルマニウムシリコン等の当該分野で一般的に用いられる材料を使用することも可能である。
【0036】
フィールド酸化層130は、ドリフト領域121上に形成され、フィールド酸化層130の材料は、二酸化ケイ素などのシリコンの酸化物であってもよい。フィールド酸化層130は、LIGBTのフィールド領域であり、デバイスの横方向の分離部材として機能する。
【0037】
フィールド酸化層130上には、ゲート140が形成され、ゲート140の材料は、例えば多結晶シリコンであり、LIGBTのゲートとして機能する。
【0038】
フィールド酸化層130上には、LIGBTのコレクタにおける多結晶シリコンフィールド板として機能する、コレクタにおける多結晶シリコンフィールド板150が更に形成される。
【0039】
チャネル領域161及びNウェル領域162は、いずれも、ドリフト領域121に位置するとともに、図面の第1の方向に沿って間隔をあけて設けられる。チャネル領域161は、ゲート140に近い側に位置し、チャネル領域161は、第1導電型、具体的には例えばPウェルである。チャネル領域161は、横型MOSの導電性チャネルを形成する。Nウェル領域162は、ゲート140から遠い側に位置する。Nウェル領域162は、LIGBTのコレクタ領域においてLIGBTのN型バッファ層として機能して、パンチスルーを防止する。
【0040】
チャネル領域161内には、第1導電型の基板オーミック接触領域171及び第2導電型のソースオーミック接触領域172が設けられる。基板オーミック接触領域171は、具体的にはP+型領域であり、基板の引出端子として機能する。ソースオーミック接触領域172は、具体的にはN+型領域であり、MOSのソースオーミック接触として機能する。ソースオーミック接触領域172は、チャネル領域161内にチャネルを誘導させるように、ゲート140に向かう側でチャネル領域161に接触する。
【0041】
ドリフト領域121のコレクタ領域(例えば図面では破線で示される)が位置する側には、間隔をあけて配置された2つ以上のNウェル領域(図3では、第1のNウェル領域1621及び第2のNウェル領域1622を例として示される)が設けられ、当該Nウェル領域はLIGBTのバッファ領域として機能する。本実施例によって提供される逆導通型LIGBTにおいて、バッファ領域が分離されて、間隔をあけて配置された2つ以上のNウェル領域に分けられることにより、独立したLIGBTユニットとなる。
【0042】
Nウェル領域には、P+接触領域173が設けられ、P+接触領域173は、コレクタオーミック接触領域とも呼ばれてもよく、LIGBTのコレクタオーミック接触として、電極の引出端子を提供する。具体的には、各Nウェル領域には、それぞれ独立したP+接触領域が設けられてもよい。各P+接触領域は、図3に示されたように、それぞれ対応する各Nウェル領域内に位置してもよい。P+接触領域の側面及び底部は、いずれもNウェル領域によって被覆される。各P+接触領域は、それぞれ対応する各Nウェル領域に位置し、底部のみがNウェル領域によって被覆されてもよい。
【0043】
間隔をあけて配置された2つ以上のNウェル領域同士の間(例えば、第1のNウェル領域1621と第2のNウェル領域1622との間)には、Pウェル領域163が設けられ、当該Pウェル領域163は、順方向のターンオンカットオフPウェルである。
【0044】
当該Pウェル領域163には、N+接触領域174が設けられ、当該N+接触領域174は、LIGBTのコレクタ端のN+引出端子として機能し、逆方向のターンオン時に発生したダイオードのカソードである。
【0045】
図面に示されたように、P+接触領域173及びN+接触領域174は、いずれもコレクタ引出端子に電気的に接続される。
【0046】
このように、LIGBTのエミッタ(Emit)、コレクタ(Collector)、及びゲート(Gate)は、図面に示されている。
【0047】
ここで、基板が位置する平面に垂直な方向を、第3の方向、即ち各層構造の積層方向と定義し、基板と平行な平面において互いに垂直な2つの第1の方向及び第2の方向を定義する。
【0048】
本発明の実施例において、関連実施例におけるNウェル領域162全体を分割して、いくつかの独立した領域に変更し(図3には模式的に2つのNウェル領域のみを示すが、実際の応用では少なくとも間隔をあけている2つのNウェル領域であってもよい)、このようにすると、還流するための追加のFWDを並列に接続する必要がなくなるだけでなく、LIGBTの逆方向の回復段階でのスイッチングのターンオフ速度を向上させることができる。
【0049】
ここで、理解すべきものとして、N+接触領域174の少なくとも一部(具体的には、例えば上面以外の部分)は、Pウェル領域163の少なくとも一部と直接接触し、両者の間には、PN接合、具体的にはP/N+が形成される。Pウェル領域163の少なくとも一部(少なくとも下面が位置する部分を含む)は、ドリフト領域121と直接接触し、両者の間には、PN接合、具体的にはP/N-が形成される。Pウェル領域163とドリフト領域121との間の電位障壁は、関連実施例におけるPウェル領域163とNウェル領域162との間の電位障壁より明らかに低い。
【0050】
引き続き図3を参照すると、間隔をあけて設けられた2つ以上のNウェル領域は、少なくとも、第1のNウェル領域1621及び第2のNウェル領域1622を含み、Pウェル領域163は、少なくとも、第1のNウェル領域1621と第2のNウェル領域1622との間に設けられた第1のPウェル領域(図3に示された断面には1つのPウェル領域しか存在しないため、図面のPウェル領域163を参考すればよい)を含み、第1のNウェル領域1621と第2のNウェル領域1622とは面積が等しく、第1のNウェル領域1621と第2のNウェル領域1622は、第1のPウェル領域に対して対称的に分布する。
【0051】
理解されるように、第1のNウェル領域と第2のNウェル領域とは面積が等しく、第1のNウェル領域と第2のNウェル領域は第1のPウェル領域に対して対称的に分布するため、デバイスが順方向にターンオンすると、電流はコレクタ領域の各P+接触領域により均一に流れることができ、デバイスのターンオン特性がより安定になり、逆に、非対称且つ不均一に分布すると、デバイスがPNP段階を経てる前に早期に起動され、デバイス全体がコンダクタンス変調効果を失ってLDMOSになりやすい。逆方向の還流時にも同様の問題が生じ、不均一に分布すると、逆導通型のダイオードの還流特性が低下し、抵抗が大きくなって迅速に回復しにくくなるが、第1のNウェル領域と第2のNウェル領域とは面積が等しくて対称的に分布すると、還流特性がより良く、回復がより速い。
【0052】
第1のNウェル領域1621、第1のPウェル領域、及び第2のNウェル領域1622は、例えば第1の方向に沿って順に配置される。当該第1の方向は、エミッタ領域からコレクタ領域への方向でもある。第1のNウェル領域1621、第1のPウェル領域、及び第2のNウェル領域1622は、面積を節約するように順に隣接してもよい。
【0053】
基板が位置する平面と平行な方向に沿って、N+接触領域174の周囲は、Pウェル領域163によって被覆される。理解されるように、Pウェル領域163はN+接触領域174を被覆した後、LIGBTの起動初期には、一般的なLIGBTのようにsnap-back現象(即ち、順方向の電圧がある程度になると、電流が大きくなるが電圧が下がる現象)が発生することはない。これは、N+接触領域174は、LIGBTの順方向の起動時の動作に参加しなく、この時、パンチスルーされたLIGBTのように動作し、順方向のターンオンの電圧降下が小さいので、より小さいVcesat特性を有するためである。それと同時に、ターンオフ時に、一部の少数キャリアがN+接触領域174とPウェル領域163によって形成されたPN接合の電位障壁を超えて、N+接触領域174と再結合したため、LIGBTの尾引き現象を低減し、ターンオフの損失を低減する。
【0054】
図4は、第2の実施例によって提供される逆導通型横型絶縁ゲートバイポーラトランジスタの断面模式図である。図面に示されたように、当該実施例において、N+接触領域174は、第1の部分1742及び第2の部分1744を含み、第1の部分1742は、側壁部及び底部を含み、側壁部は、基板が位置する平面に垂直な方向に沿って延在し、底部の基板に近い面は、側壁部に接続され、第2の部分1744の基板から遠い面は、側壁部に接続され、側壁部の深さは、第2の部分1744の深さよりも大きい。
【0055】
ここで、第2の部分1744及び第1の部分1742の底部は、LIGBTのコレクタ端の横方向のN+引出端子として機能してもよく、第1の部分1742の側壁部は、LIGBTのコレクタ端の縦方向のN+引出端子として機能してもよく、以上はいずれも逆方向のターンオン時に発生したダイオードのカソードである。
【0056】
当該第2の実施例は、更に以下の有益な効果を実現する。一方では、コレクタ領域においてN+の接触面積、即ち横方向のN+及び縦方向のN+を増加し、そして、N+接触領域の上面において導電接触を行う。N+の接触面積が大きいため、逆方向のダイオードとしてのN+の役割を大きく生かすことができ、逆方向のターンオンのLIGBTの逆方向の還流能力を大幅に向上させる。それと同時に、ダイオードとしての逆方向の回復時には、側壁部に沿って移動する少数キャリアである正孔の数が上面に沿って移動する数よりも多いため、少数キャリアの移動経路が短く、正孔の再結合の効率を更に向上させ、逆方向の回復時間trrを長くし、逆方向の回復時のピーク電流Irrを小さくする。もう一方では、LIGBTのコレクタ領域の面積を大きく削減することができる。第1の部分1742を形成する構造(具体的には溝構造)のピッチ (pitch、即ち間隔)を非常に小さく設計することができ、同じ深さの場合にN+注入面積を減らさないため、コレクタ領域の面積を削減することでLIGBT全体の面積を削減することができる。
【0057】
実際の製造過程において、まず、Pウェル領域163内で溝を形成し、溝の側面及び底面をドーピングして上記の第1の部分1742を形成し、次に、当該溝を充填し、溝の頂部に上記の第2の部分1744を形成することができる。ここで、ドーピングは、例えばイオン注入等のプロセスによって実施することができる。
【0058】
デバイス構造では、Pウェル領域163内に溝が形成され、第1の部分1742の側壁部及び底部はそれぞれ溝の側面及び底面をドーピングすることにより形成される。このようにすると、第1の部分1742の断面形状は、形成された溝の形状に類似した形状、例えばU字型にすることができる。
【0059】
溝内には、充填構造180が形成され、第2の部分1744は、充填構造180上に位置する。
【0060】
上記充填構造180の材料は、絶縁材料及び/又は多結晶シリコンを含む。選択的な一実施例において、充填構造180の材料は、絶縁材料、具体的には、例えば酸化シリコンを含む。また、絶縁材料上に、多結晶シリコンを更に充填し、更に多結晶シリコン中に第2の部分1744を形成することができる。選択的なもう一実施例において、溝内に直接多結晶シリコンを充填し、多結晶シリコンの上面に第2の部分1744を形成してもよい。
【0061】
このようにすると、第1の部分1742と第2の部分1744との間、即ちN+接触領域174内部は、少なくとも充填材料を含む。
【0062】
本実施例において、第1の部分1742の上記の側壁部の深さは、例えばP+接触領域173の深さよりも大きい。
【0063】
図5a~図5cは、選択的な一実施例における逆導通型横型絶縁ゲートバイポーラトランジスタのコレクタ領域の平面模式図である。
【0064】
まず、図5aを参照する。図面に示されたように、上記Pウェル領域の数は、複数であってもよく、複数のN+接触領域は、それぞれ、複数のPウェル領域内に位置し、複数のN+接触領域とP+接触領域とは、基板と平行な平面上で交互に分布する。
【0065】
ここで、P+接触領域を明確に示していないが、理解されるように、第1の方向においても第2の方向においても、隣接する2つのN+接触領域同士の間には、P+接触領域が存在する。更に、隣接する2つのN+接触領域同士の間には、P+接触領域が存在し、且つ、隣接する2つのP+接触領域同士の間には、N+接触領域が存在する。
【0066】
これに対して、図5bは、ある可能な場合即ち、P+接触領域は、各N+接触領域同士の間に位置し、具体的には各Pウェル領域同士の間に位置する場合を示す。P+接触領域は、全体として接続され、各Pウェル領域及び対応するPウェル領域内に位置するN+接触領域は、P+接触領域内に島状に分布する。
【0067】
理解されるように、正方形の格子状のレイアウト(或はマトリクスアレイ配置)と比較すると、交互に分布した構造は、高電流密度の場合により適しており、大電流のLIGBTはエミッタ領域でsnap-back現象が発生しやすいが、N+とP+の交互の分布により、デバイスのsnap-backが発生する条件を大きく排除することができ、PN接合がターンオンしにくくなるため、LIGBTの安全動作領域を向上させる。
【0068】
図5a及び図5bではデバイスの内部(上部シリコン層120の内部)が示されていないため、図5cの破線で上部シリコン層120の内部に位置するNウェル領域を示す。図5cに示されたように、間隔をあけて設けられた2つ以上のNウェル領域と複数のPウェル領域とは基板と平行な平面上で交互に分布することができる。
【0069】
具体的な一実施例において、第1の方向に沿って、複数のNウェル領域と複数のPウェル領域は、「Nウェル領域-Pウェル領域-Nウェル領域……」という方式に従って配置され、第2の方向に沿って、複数のNウェル領域と複数のPウェル領域は、同様に「Nウェル領域-Pウェル領域-Nウェル領域……」という方式に従って配置される。
【0070】
理解されるように、図5bに示された、P+接触領域は上部シリコン層120の上面で全体として接続されている構造でも、各Nウェル領域はP+接触領域の下方に間隔をあけて設けられるべきである。
【0071】
Nウェル領域は、Pウェル領域に隣接してもよく、当然ながら、本発明は、両者の間に隙間がある場合を排除しない。上部シリコン層120の上面において、Pウェル領域は露出する部分があるはずであり、Nウェル領域は露出しなくてもよい。
【0072】
本発明の各実施例で言及された上面は、対応する構造の基板から離れた表面として理解されるものとし、これに対応して、下面は対応する構造の基板に近い表面として理解されるものとする。
【0073】
説明すべきものとして、本発明の実施例は、ここで示された領域の特定の形状に限定されるべきではなく、例えば製造技術による形状偏差を含むものである。例えば、矩形として示される注入領域は、通常、注入領域から非注入領域への二次元変化ではなく、そのエッジに丸みを帯びた又は湾曲した特徴及び/又は注入濃度勾配を有する。同様に、注入によって形成される埋込領域は、当該埋込領域と注入時に通過する表面との間の領域のうちのいくつかの注入をもたらすことができる。したがって、図面に示された領域は、基本的には模式的であり、それらの形状はデバイスの領域の実際の形状を示すものではなく、本発明の範囲を限定するものではない。
【0074】
本明細書の記載において、「一実施例において」、「選択的な一実施例において」、「他の実施例において」等の表現による記載は、当該実施例又は例示を組み合わせて説明する具体的な特徴、構造、材料は本発明の少なくとも1つの実施例又は例に含まれることを意図している。本明細書において、上記の用語に対する模式的な記載は、必ずしも同一の実施例又は例を意味するものではない。
【0075】
以上説明した実施例の各技術的特徴は、任意に組み合わせることが可能であり、説明を簡潔にするために、上記実施例における各技術的特徴の全ての可能な組み合わせについては説明していないが、これらの技術的特徴の組み合わせに矛盾がない限り、本明細書に記載される範囲内であると考えられるべきである。
【0076】
上記の実施例は、本願のいくつかの実施形態を示しているに過ぎず、その叙述は具体的かつ詳細であるが、本願の発明の範囲を限定するものとして理解されるべきではない。当業者であれば、本願の思想から逸脱することなく、本願の範囲に含まれるいくつかの変形および改善を行うことができることに留意されたい。したがって、本願の特許の範囲は、添付の特許請求の範囲に従うものとする。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図5c
【国際調査報告】