(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-12
(54)【発明の名称】うつ病の治療のための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/40 20060101AFI20240405BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20240405BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240405BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
A61K31/40
A61P25/24
A61K45/00
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023567994
(86)(22)【出願日】2022-05-03
(85)【翻訳文提出日】2023-12-18
(86)【国際出願番号】 IB2022054085
(87)【国際公開番号】W WO2022234457
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514010601
【氏名又は名称】ヤンセン ファーマシューティカルズ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149010
【氏名又は名称】星川 亮
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,マーク
(72)【発明者】
【氏名】ポポワ,ヴァニナ
(72)【発明者】
【氏名】サヴィッツ,アダム
(72)【発明者】
【氏名】メルコテ,ラマ
(72)【発明者】
【氏名】ドレヴェツ,ワイン シー.
(72)【発明者】
【氏名】ゴパール,シュリハリ
(72)【発明者】
【氏名】ペンバートン,ダレル
(72)【発明者】
【氏名】ラジシェティ,チャクラダール
(72)【発明者】
【氏名】ケジック,イヴァ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA52
4C084NA06
4C084NA14
4C084ZA12
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC07
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA06
4C086NA14
4C086ZA12
4C086ZC75
(57)【要約】
本開示は、中程度又は重度のアンヘドニアを有するヒト患者における大うつ病性障害を治療するための方法を提供する。方法は、大うつ病性障害の治療を必要とする患者に、有効量のアチカプラント又はその医薬的に許容される塩を投与することを含む。いくつかの実施形態では、患者は、アチカプラントによる治療の前に他の抗うつ剤療法に対して不十分な応答を有していた。他の実施形態では、他の抗うつ剤療法は、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、セロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)、又はそれらの組み合わせを含んでいた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンヘドニアを有するヒト患者における大うつ病性障害を治療するための方法であって、それを必要とする前記患者に、有効量のアチカプラント又はその医薬的に許容される塩を投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記患者が、アチカプラントによる治療の前に他の抗うつ剤療法に対して不十分な応答を有していた、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記他の抗うつ剤療法が、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、セロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)、又はそれらの組み合わせを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
有効量の1つ以上の抗うつ剤による補助的治療を更に含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記1つ以上の抗うつ剤が、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、セロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)、又はそれらの組み合わせである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記アチカプラントが、S-アチカプラント又はその医薬的に許容される塩である、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
アチカプラントの前記有効量が、約2~約35mgである、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
アチカプラントの前記有効量が、約10mgである、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記アチカプラントが、経口投与される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記アチカプラントが、1日1回投与される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記患者が、20以上のスナイス・ハミルトン喜びスケール(SHAPS)スコアを有する、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記患者が、22以上、24以上、26以上、28以上、30以上、32以上、34以上、36以上、又は38以上のSHAPSスコアを有する、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記患者が、38以上のSHAPSスコアを有する、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記患者が、中等度から重度のアンヘドニアを有する、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記患者が、中等度のアンヘドニアを有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記患者が、重度のアンヘドニアを有する、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記患者が、前記アチカプラントによる治療の間に体重増加を経験しない、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
患者の体重が、前記アチカプラントの初回投与時に評価される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記患者が、前記アチカプラントによる治療の間に性機能の低下を経験しない、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記患者の前記性機能が、前記アチカプラントの初回投与時に評価される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記性機能が、性的衝動、性的覚醒、膣潤滑、勃起、オルガスム達成、又はオルガスム満足を含む、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
性機能が、アリゾナ性的経験スケール(ASEX)によって評価される、請求項19~21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記患者の前記アンヘドニアが、前記アチカプラントによる治療の6週間後のアンヘドニアスケールにおける総スコアのベースラインからの変化によって測定される場合、少なくとも40%低減される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記患者の前記アンヘドニアが、アンヘドニアスケールにおける総スコアのベースラインからの変化によって測定される場合、約3週間~約6週間以内に低減される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記アンヘドニアスケールが、スナイス・ハミルトン喜びスケール(SHAPS)である、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
前記アチカプラントの前記投与が、約20~約45ng/mLのアチカプラントの最大血漿中濃度(C
max)を達成する、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記アチカプラントの前記投与が、約25~約35ng/mLのアチカプラントの最大血漿中濃度(C
max)を達成する、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記アチカプラントの前記投与が、約30~約35ng/mLのアチカプラントの最大血漿中濃度(C
max)を達成する、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
請求項1~28のいずれかに記載の方法において使用するためのアチカプラント又はその医薬的に許容される塩。
【請求項30】
請求項1~28のいずれかに記載の治療方法において使用するための医薬の製造における、アチカプラント又はその医薬的に許容される塩の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アチカプラント(aticaprant)を用いてうつ病を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カッパオピオイド受容体(Kappa opioid receptors、KOR)及びそれらの天然リガンドであるダイノルフィンは、報酬及びストレスをもたらす脳の領域に局在しており、気分、ストレス、及び嗜癖障害において重要な役割を果たし得る。慢性ストレス、物質乱用、及び急性離脱は、ダイノルフィン発現の増加をもたらし、KOR及びその後の下流シグナル伝達経路を活性化して中脳辺縁系ドーパミンサージを阻害し、負の情動状態に寄与する。KORアンタゴニズムの行動薬理は、アンヘドニア(anhedonia)、うつ病、及び不安のモデルにおいて試験されており、ヒトにおける治療利益に翻訳され得る意味のある効果を有することが見出されている。KORアンタゴニストは、おそらくストレス応答に関連する負の情動状態を調節することによって、気分障害を有する患者の治療に有効であり得る。
【0003】
アンヘドニアは、うつ病の中核症状の1つである。少なくともアンヘドニアの症状軽快は、大うつ病性障害(major depressive disorder、MDD)に罹患している患者の約90%に存在する。MDDを有する患者の約50%のみが有意な応答(第一選択抗うつ剤療法に対して>50%の改善)を示し、多くの患者に実質的な持続性障害が残る。抗うつ剤の切り替え及びアジュバント薬物治療の使用などの治療戦略は、応答を改善することができるが、患者のほぼ40%が症候性のままであり、完全な寛解を達成することができない。
【0004】
必要とされているのは、うつ病及びアンヘドニアを有する患者のための治療である。
【0005】
米国特許第7,709,522(B2)号は、選択的カッパオピオイド受容体アンタゴニスト、3-フルオロ-4-[4-[2-(3,5-ジメチルフェニル)ピロリジン-1-イル-メチル]フェノキシ]ベンズアミドを記載している。
【0006】
Krystal et al.,(2020)「A randomized proof-of-mechanism trial applying the’fast-fail’ approach to evaluating κ-opioid antagonism as a treatment for anhedonia」Nature Medicine,Vol.26,No.5,pages 760-768は、選択的κ-オピオイド受容体アンタゴニストJNJ-67953964を用いた、アンヘドニア及び気分障害又は不安障害を有する患者における多施設、8週間、二重盲検、プラセボ対照、無作為化試験の結果を報告している。
【0007】
Urbano et al.,(2014)「Antagonists of the kappa opioid receptor」,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,Vol.24,No.9,pages 2021-2032は、OPRKアンタゴニスト、LY2456302を記載しており、これは治療抵抗性うつ病における抗うつ剤療法の増強のための第II相臨床試験を受けていた。
【0008】
Undurraga et al.,(2012)「Randomized,Placebo-Controlled Trials of Antidepressants for Acute Major Depression:Thirty-Year Meta-Analytic Review」,Neuropsychopharmacology,Vol.37,No.4,pages 851-864は、個々の抗うつ剤及びクラスの有効性(薬物-プラセボRD)を比較し、二変量及び多変量回帰モデリングによって報告年に関連する因子を考慮するための、過去30年にわたって報告された急性、単極性、大うつ病エピソードにおけるプラセボ対照試験のメタ分析的レビューを記載している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
いくつかの態様では、本開示は、アンヘドニアを有するヒト患者における大うつ病性障害を治療するための方法であって、それを必要とする患者に、有効量のアチカプラント又はその医薬的に許容される塩を投与することを含む方法に関する。別の態様では、ヒト患者における大うつ病性障害(MDD)を治療するための方法であって、それを必要とする患者に、有効量のアチカプラント又はその医薬的に許容される塩を投与することを含むか、それからなるか、又はそれから本質的になり、患者がアンヘドニアを有する、方法が提供される。特定の実施形態では、患者は、アチカプラント又はその医薬的に許容される塩による治療の前に、他の抗うつ剤療法に対して不十分な応答を有していた。特定の実施形態では、他の抗うつ剤療法は、1つ以上の抗うつ剤を含んでいた。特定の実施形態では、患者は、アチカプラント又はその医薬的に許容される塩による治療の前に、例えば、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(selective serotonin reuptake inhibitor、SSRI)、セロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(serotonin-norepinephrine reuptake inhibitor、SNRI)、又はそれらの組み合わせに対する不十分な応答などの、他の抗うつ剤療法に対する不十分な応答を有していた。特定の実施形態では、1つ以上の抗うつ剤は、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)を含んでいた。特定の実施形態では、1つ以上の抗うつ剤は、セロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)治療を含んでいた。特定の実施形態では、ヒト患者における大うつ病性障害(MDD)を治療するための方法であって、それを必要とする患者に、有効量のアチカプラント又はその医薬的に許容される塩を投与することを含むか、それからなるか、又はそれから本質的になり、患者が、アンヘドニアを有し、患者が、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、セロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)治療、又はそれらの組み合わせに対する不十分な応答を有する、方法が提供される。本明細書には更に、ヒト患者における大うつ病性障害(MDD)の治療であって、それを必要とする患者に、有効量のアチカプラント又はその医薬的に許容される塩を投与することを含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる、治療に使用するためのアチカプラント又はその医薬的に許容される塩であって、患者は、アンヘドニアを有し、患者は、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、セロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)治療、又はそれらの組み合わせに対する不十分な応答を有する、アチカプラント又はその医薬的に許容される塩が記載される。特定の実施形態では、患者は、20以上のスナイス・ハミルトン喜びスケール(Snaith Hamilton Pleasure Scale、SHAPS)スコアを有する。特定の実施形態では、患者は、中等度又は重度のアンヘドニアを有する。特定の実施形態では、患者は、38以上のSHAPSスコアを有する。
【0010】
他の態様では、本方法は、有効量の1つ以上の抗うつ剤による補助的治療を含む。1つ以上の抗うつ剤は、例えば、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、セロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)、又はそれらの組み合わせを含むことができる。
【0011】
更なる態様では、本開示は、アンヘドニアを有するヒト患者における大うつ病性障害を治療する方法あって、特に、それを必要とするヒト患者に、有効量のアチカプラント又はその医薬的に許容される塩を投与することを含む、方法において使用するための、アチカプラント又はその医薬的に許容される塩に関する。特定の実施形態では、患者は、20以上のスナイス・ハミルトン喜びスケール(SHAPS)スコアを有する。特定の実施形態では、患者は、中等度又は重度のアンヘドニアを有する。特定の実施形態では、患者は、32以上の総SHAPSスコアを有する。特定の実施形態では、患者は、38以上のSHAPSスコアを有する。
【0012】
更に他の態様では、本開示はまた、特に、有効量のアチカプラント又はその医薬的に許容される塩の投与を含む、アンヘドニアを有するヒト患者における大うつ病性障害の治療に使用するためのアチカプラント又はその医薬的に許容される塩に関する。更に、ヒト患者における大うつ病性障害(MDD)の治療であって、それを必要とする患者に有効量のアチカプラント又はその医薬的に許容される塩を投与することを含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる、治療において使用するためのアチカプラント又はその医薬的に許容される塩であって、患者がアンヘドニアを有する、アチカプラント又はその医薬的に許容される塩が記載される。特定の実施形態では、患者は、ベースラインにおいて20以上のスナイス・ハミルトン喜びスケール(SHAPS)スコアを有する。特定の実施形態では、患者は、中等度又は重度のアンヘドニアを有する。特定の実施形態では、患者は、32以上の総SHAPSスコアを有する。特定の実施形態では、患者は、ベースラインにおいて38以上のSHAPSスコアを有する。
【0013】
更に別の態様では、本開示はまた、アンヘドニアを有するヒト患者における大うつ病性障害の治療のための薬剤の製造における、アチカプラント又はその医薬的に許容される塩の使用であって、特に、治療が有効量のアチカプラント又はその医薬的に許容される塩の投与を含む、使用に関する。特定の実施形態では、患者は、20以上のスナイス・ハミルトン喜びスケール(SHAPS)スコアを有する。特定の実施形態では、患者は、中等度又は重度のアンヘドニアを有する。特定の実施形態では、患者は、32以上の総SHAPSスコアを有する。特定の実施形態では、患者は、38以上のSHAPSスコアを有する。
【0014】
他の態様では、本開示は更に、アチカプラント又はその医薬的に許容される塩を、アンヘドニアを有するヒト患者における大うつ病性障害の治療のための説明書とともに含むパッケージ又は医薬製品であって、特に、治療が有効量の塩又はその医薬的に許容される塩の投与を含む、パッケージ又は医薬製品に関する。特定の実施形態では、患者は、20以上のスナイス・ハミルトン喜びスケール(SHAPS)スコアを有する。特定の実施形態では、患者は、総SHAPSによって測定したとき32以上のスコアを有する。特定の実施形態では、患者は、中等度又は重度のアンヘドニアを有する。特定の実施形態では、患者は、38以上のSHAPSスコアを有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】強化治療意図(enriched intent-to-treat、eITT)分析セットについての、治療期間中のベースラインからのMADRS(モントゴメリー-アスベルグうつ病評価スケール、Montgomerysis-Ausberg Depression Rating Scale)総スコア:最小二乗平均変化(±SE)を示す線グラフである。
【
図3】強化集団及び完全な集団についての治療6週目におけるMADRS総スコア変化:MMRM結果-推定LS平均及びプラセボに対する比較を示すプロットである。
【
図4】eITT分析セットについての、ベースラインからのSHAPS(スナイス・ハミルトン喜びスケール)総スコア:最小二乗平均変化(±SE)を示す線グラフである。
【
図5】強化集団及び完全な集団についての治療6週目でのSHAPS総スコア変化:MMRM(Mixed-effects Model for Repeated Measures)(反復測定のための混合効果モデル)結果-推定LS平均及びプラセボに対する比較を示すプロットである。
【
図6】eITT分析セットについての経時的なMADRS総スコア:平均値(±SE)を示す線グラフである。
【
図7A】完全な治療意図(full intent-to-treat、fITT)分析セットについての経時的なMADRS総スコア:平均値(±SE)を示す線グラフである。
【
図7B】0~6週目の治療についての
図7Aからの抜粋である。
【
図8】eITT分析セットについての治療期間中のMADRS総スコア:うつ病症状の寛解(総スコア≦10)を有する対象のパーセンテージを示す線グラフである。
【
図9】fITT分析セットについての治療期間中のMADRS総スコア:うつ病症状の寛解(総スコア≦10)を有する対象のパーセンテージを示す線グラフである。
【
図10】eITT分析セットについての治療期間中のMADRS総スコア:応答者のパーセンテージ(ベースラインから≧30%改善)を示す線グラフである。
【
図11】fITT分析セットについての治療期間中のMADRS総スコア:応答者のパーセンテージ(ベースラインから≧30%改善)を示す線グラフである。
【
図12】eITT分析セットについての治療期間中のMADRS総スコア:応答者のパーセンテージ(ベースラインから≧50%改善)を示す線グラフである。
【
図13】fITT分析セットについての治療期間中のMADRS総スコア:応答者のパーセンテージ(ベースラインから≧50%改善)を示す線グラフである。
【
図14】eITT分析セットについての経時的なSHAPS総スコア:平均値(±SE)を示す線グラフである。
【
図15】fITT分析セットについての経時的なSHAPS総スコア:平均値(±SE)を示す線グラフである。
【
図16】アンヘドニアの重症度によるベースラインからのMADRS変化を示す。
【
図17A】高いアンヘドニア、すなわち、SHAPS≧38を有する患者についてのベースラインからのMADRS変化を示す線グラフである。
【
図17B】低アンヘドニア、すなわち、SHAPS<38の患者のベースラインからのMADRS変化を示す線グラフである。
【
図18】低及び高アンヘドニアを有する患者におけるMADRSの比較を示す棒グラフである。
【
図19】ベースラインからのASEX合計スコア平均の変化を示す線グラフである。
【
図20】ベースラインからのASEX項目レベル変化合計スコア平均の変化を示す棒グラフである。
【
図21】実施例2の試験スキームである。全ての患者は、試験期間全体において、経口抗うつ剤SSRI/SNRIを継続する。更に約34人の高齢参加者を無作為化する。
【
図22】実施例3の試験スキームである。全ての患者は、試験期間全体において、経口抗うつ剤SSRI/SNRIを継続する。更に約68人の高齢参加者を無作為化する。
【
図23】fITT分析セットについてのベースラインSHAPS総スコアによる6週目におけるベースラインからのSHAPS項目:LS平均の変化を示す棒グラフである。この図では、上から下に向かって、バーはプラセボ又はアチカプラントを交互に指す。例えば、第1のバーはアチカプラントを指し、第2のバーはプラセボを指し、第3のバーはアチカプラントを指す、などである。
【
図24】fITT分析セットについての異なるサブグループによる6週目におけるMADRS総スコア:LS平均の差(60%を示すプロットである。このプロットにおいて、<17は軽度の重症度を示し、18~24は軽度から中程度の重症度を示し、25~30は中程度から重度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書で言及される全ての個々の特徴、例えば、特定の実施形態又は特定の好ましい特徴は、単独で、又は本明細書で言及される任意の他の特徴(特定の実施形態又は好ましい特徴を含む)と組み合わせて解釈され得る。したがって、好ましい特徴は、他の好ましい特徴と併せて、又はそれらから独立して(及び同様に特定の実施形態と)解釈され得る。
【0017】
本発明の一態様では、ヒト患者における大うつ病性障害(MDD)を治療するための方法であって、それを必要とする患者に、有効量のアチカプラント又はその医薬的に許容される塩を投与することを含むか、それからなるか、又はそれから本質的になり、患者がアンヘドニアを有する、方法が提供される。本発明の更なる態様では、ヒト患者における大うつ病性障害(MDD)を治療するための方法であって、それを必要とする患者に、有効量のアチカプラント又はその医薬的に許容される塩を投与することを含むか、それからなるか、又はそれから本質的になり、患者が、アンヘドニアを有し、患者が、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、セロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)治療、又はそれらの組み合わせに対する不十分な応答を有する、方法が提供される。
【0018】
本明細書では更に、ヒト患者における大うつ病性障害(MDD)の治療であって、それを必要とする患者に有効量のアチカプラント又はその医薬的に許容される塩を投与することを含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる、治療において使用するためのアチカプラント又はその医薬的に許容される塩であって、患者がアンヘドニアを有する、アチカプラント又はその医薬的に許容される塩が記載される。本明細書には更に、ヒト患者における大うつ病性障害(MDD)の治療であって、それを必要とする患者に有効量のアチカプラント又はその医薬的に許容される塩を投与することを含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる、治療において使用するためのアチカプラント又はその医薬的に許容される塩であってり、患者がアンヘドニアを有し、患者が、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、セロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)治療、又はそれらの組み合わせに対する不十分な応答を有する、アチカプラント又はその医薬的に許容される塩が記載される。
【0019】
本発明の一態様では、より重度のタイプのうつ病、すなわち、大うつ病性障害を有し、アンヘドニア、特に中等度から重度のアンヘドニアを経験している患者を治療するための方法が提供される。
【0020】
前述の治療方法のいずれかの実施形態では、患者は、アチカプラント又はその医薬的に許容される塩による治療の前に、他の抗うつ剤療法に対して不十分な応答を有していた。特定の実施形態では、他の抗うつ剤療法は、1つ以上の抗うつ剤を含んでいた。特定の実施形態では、1つ以上の抗うつ剤は、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、セロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)治療、又はそれらの組み合わせを含んでいた。特定の実施形態では、1つ以上の抗うつ剤は、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)を含んでいた。特定の実施形態では、1つ以上の抗うつ剤は、セロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)治療を含んでいた。特定の実施形態では、1つ以上の抗うつ剤は、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)及びセロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)治療を含んでいた。
【0021】
本明細書に記載される治療方法のそれぞれについて、治療方法はまた、記載される適応症の治療のための医薬を製造する方法として、又は記載される適応症の治療における使用のためのアチカプラントとして、構成され得ることが理解されるであろう。
【0022】
MDD単独では治療が困難であるため、アンヘドニアを有する治療患者は、喜びを測定する能力が損なわれているため、更に問題が多い。したがって、かかる患者は、とりわけ、無効な投薬、繰り返される不必要な医療予約、患者のコンプライアンスの欠如、全体的な患者のフラストレーションのために、不十分な治療を受けることが多い。更に、抗うつ剤は、とりわけ、体重増加、代謝副作用、錐体外路症状、アカシジア、認識障害などの様々な副作用を有することが知られている。したがって、患者は、任意の副作用を回避又は予防するために、抗うつ剤の服用を控えるか又は中止することを選択し得る。
【0023】
本明細書に記載される方法は、アチカプラントを使用して対象のうつ病及びアンヘドニアを管理するのに有効である。望ましくは、本方法は、患者が彼らのうつ病をうまく管理し、同時にアンヘドニアを軽減することを可能にする。特定の実施形態では、記載された方法に従って治療される患者は、中等度から重度のアンヘドニアを有する。本明細書で使用される「アンヘドニア」という用語は、日常活動において喜びを経験する能力の欠如又は低下を指す。アンヘドニアという用語は、感覚的経験(すなわち、触覚、味覚、嗅覚)、並びに社会的相互作用における喜びの喪失を含む。いくつかの実施形態では、アンヘドニア及び抑うつ気分は、MDDの一部としての大うつ病エピソードの診断基準である。アンヘドニアはまた、喜びサイクルとしても知られる報酬関連行動の1つ以上の構成要素(例えば、欲望、好み、及び学習)における欠損を記載する。喜びサイクルは、3つの段階、すなわち欲求段階(欲求によって支配される)、コンサマトリーな段階(好みによって支配される)、及び満足段階(学習によって支配される)に分けることができる。食欲段階は、報酬を得るための初期エネルギー消費によって特徴付けられる。コンサマトリーな段階は、報酬の享受であり、満足段階は、学習及びフィードバック統合によって特徴付けられる。
【0024】
アンヘドニアに対する潜在的な効果を評価するために、アンヘドニアスケールを使用することができる。例えば、スナイス・ハミルトン喜びスケール(SHAPS)分析は、アンヘドニアの測定のための有効なスケールである。SHAPSは、対象が活動又は経験のリストを実行する際に喜びを経験するか否かを採点する対象完了スケールである。SHAPSは、快楽能力の評価のために開発された自己報告型の14項目の設定である。対象は、活動又は経験のリストを実行する際に喜びを経験するかどうかをスコア付けする。対象は、回答を1~4として評価することができ、ここで、1は「明確に同意」を示し、2は「同意」を示し、3は「同意しない」を示し、4は「明確に同意しない」を示す。対象の項目回答を合計して、14~56の範囲の総スコアを得る。より高い総SHAPSスコアは、より高いレベルの現在のアンヘドニアを示す。医師/臨床判断を使用して、アンヘドニアを別個に、又はアンヘドニアスケールと併せて評価することができる。アンヘドニアの測定のための別のスケールは、次元アンヘドニア評価スケール(DARS)である。
【0025】
いくつかの実施形態では、患者はアンヘドニアを有する。いくつかの実施形態では、患者は中等度のアンヘドニアを有する。他の実施形態では、患者は重度のアンヘドニアを有する。中等度又は重度のアンヘドニアの評価は、典型的には、医師/臨床判断及び/又は患者がアンヘドニアを有するかどうかの洞察を提供する1つ以上の試験によって決定される。例えば、アンヘドニアの重症度は、SHAPS法を使用して決定され得る。いくつかの実施形態では、中程度又は重度のアンヘドニアを有する患者は、高レベルのアンヘドニアを有すると考えられる。例えば、38以上のSHAPSスコアを有する患者は、高レベルのアンヘドニア(「顕著な」アンヘドニアとも記載され得る)とみなすことができる、中程度から重度のアンヘドニアを有すると考えられる。いくつかの実施形態では、高レベルのアンヘドニアは、少なくとも約40、約42、約44、約46、約48、約50、約52、約54、約56、約58、又はそれ以上のSHAPSスコアを反映する。軽度又はアンヘドニアの患者は、医師/臨床判断及び/又は1つ以上の試験によって評価される低レベルのアンヘドニアを有すると考えられる。例えば、38未満のSHAPSスコアを有する患者は、低アンヘドニアを有すると考えられる。特定の実施形態では、軽度のアンヘドニアを有する患者は、20~38未満のSHAPSスコア、例えば、20~約36、約22~約36、約24~約36、約26~約36、約26~約34、約26~約32、約26~約30、約26~約28、約28~約36、約30~約36、約32~約36、約34~約36、約20~約34、約22~約34、約24~約34、約28~約34、約28~約32、約28~約30、約30~約34、約30~約32、又は約32~約34のSHAPSスコアを有し得る。典型的には、20未満のSHAPSスコアは、正常な快楽機能に対応すると考えることができ(例えば、実施例に示されるように、「アンヘドニア」は、20未満のSHAPSスコアを有する患者として特徴付けることができ)、本開示の目的のために、例えば38未満のSHAPSスコアである低カテゴリーのアンヘドニアに分類される。
【0026】
本開示の全ての態様では、大うつ病性障害(MDD)を有する患者は、20以上のSHAPSスコアを有し得る。いくつかの実施形態では、MDDを有する患者は、ベースラインにおいて22以上、24以上、26以上、28以上、30以上、32以上、34以上、36以上、又は38以上のSHAPSスコアを有し得る。いくつかの実施形態では、患者のSHAPSスコアは、ベースライン(例えば、アチカプラントの投与の1日前)で評価される。
【0027】
いくつかの実施形態では、患者のアンヘドニアは、高レベルのアンヘドニアから低レベルのアンヘドニアに低減される。更に他の実施形態では、患者のアンヘドニアは、アチカプラントによる治療後のアンヘドニアスケールにおける、総スコアのベースラインからの変化によって測定したとき、少なくとも約40%減少する。更に他の実施形態では、患者のアンヘドニアは、アチカプラントによる治療後のアンヘドニアスケールにおける、総スコアのベースラインからの変化によって測定したとき、少なくとも約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、又は約95%低減される。より更なる実施形態では、更に他の実施形態では、患者のアンヘドニアは、アチカプラントによる治療後のアンヘドニアスケールにおける、総スコアのベースラインからの変化によって測定したとき、約40~約90%、約50~約90%、約60~約90%、約70~約90%、約80~約90%、約40~約80%、約50~約80%、約60~約80%、約70~約80%、約40~約70%、約50~約70%、約60~約70%、約40~約60%、約50~約60%、又は約50~約60%低減される。他の実施形態では、患者のアンヘドニアは、アチカプラントによる治療後のアンヘドニアスケールにおける、総スコアのベースラインからの変化によって測定したとき、アンヘドニアが改善されるすなわち、100%低減される。
【0028】
アチカプラントによる治療を開始した後のアンヘドニアの減少は、アチカプラントによる治療の前に測定された患者のアンヘドニア、すなわち、ベースラインアンヘドニア測定、と比較して測定され得る。そうすることで、治療臨床医は、アチカプラントによる治療後の任意の時点で、ベースラインからリアルタイムのアンヘドニア測定値へのアンヘドニアの変化を計算することができる。したがって、アンヘドニアスケール、例えば、SHAPSなどの、アンヘドニアを測定するための標準的な方法を使用することができる。
【0029】
望ましくは、ベースラインのアンヘドニア測定値は、アチカプラントによる治療を開始する約1週間以内に得られる。いくつかの実施形態では、ベースラインのアンヘドニア測定値は、アチカプラントによる治療の約7日前、約6日前、約5日前、約4日前、約3日前、約2日前、又は約1日前に得られる。更なる実施形態では、ベースラインのアンヘドニア測定値は、アチカプラントによる治療を開始する約24時間、約18時間、約12時間、約8時間、約4時間、約2時間、約1時間、約30分、又は約15分前に取得される。
【0030】
患者のアンヘドニアの変化は、特に、アンヘドニアの重篤度、アチカプラントに対する患者の感受性、投与されている他の薬剤を含むがこれらに限定されないいくつかの因子に依存する。いくつかの実施形態では、アチカプラント治療の約3週間後に患者のアンヘドニアが減少する。他の実施形態では、アチカプラント治療の約3週間後に患者のアンヘドニアが減少する。更なる実施形態では、アチカプラント治療の約3週間~約6週間後に、特定の実施形態では6週目までに、患者のアンヘドニアが軽減される。特定の実施形態では、患者のアンヘドニアは、約6週間のアチカプラントによる治療の後に、アンヘドニアスケールにおける総スコアの、ベースラインからの変化によって測定したとき、少なくとも約40%減少する。更なる実施形態では、患者のアンヘドニアは、アンヘドニアスケールにおける総スコアのベースラインからの変化によって、及び/又は医師/臨床判断によって測定したとき、約3週間以内に、いくつかの実施形態では約3週間~約6週間以内に低減される。
【0031】
本明細書に記載される方法は、患者のうつ病及びアンヘドニア症状を改善するだけでなく、より少ない抗うつ副作用をもたらすことが見出された。そうすることにより、とりわけ、欠勤の減少(すなわち、より多くの医師への訪問又は交流)、認知機能の向上、健康関連の生活の質の改善、日常活動における関心及び関与の増加、家族及び個人間の関係の改善、職場で機能する能力、入院の減少がもたらされた。
【0032】
本明細書で使用するとき、特に断りがない限り、「対象」及び「患者」という用語は、治療、観察又は実験の対象となったヒトを指す。好ましくは、患者は、治療すべき、かつ/又は予防すべき疾病又は障害の少なくとも1つの症状を経験している、かつ/又は示している。いくつかの実施形態では、患者は、成人である。本明細書で使用するとき、「成人」は、本明細書で使用するとき、約18歳以上であるヒトを指す。ある特定の態様では、患者は、65歳以上の年齢、すなわち高齢者である。
【0033】
本明細書で使用するとき、別途記載のない限り、用語「治療する」、「治療」などは、疾患、病状、又は障害と戦うことを目的とする、対象又は患者(好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒト)の管理及びケアを含み、また、症状若しくは合併症の発生の予防、1つ以上の症状若しくは合併症の緩和、又は疾患、病状、若しくは障害の排除のために本明細書に記載される化合物を投与することを含むものとする。
【0034】
本明細書で使用するとき、「うつ病」(うつ病性障害とも言われる)という用語には、大うつ病性障害、持続性うつ病障害、季節性情動障害、産後うつ病、月経前不快気分障害、状況的うつ病、アンヘドニア、憂うつ、中年期うつ、晩年期うつ、双極性うつ、特定可能ストレス要因によるうつ、治療抵抗性うつ病、又はこれらの組み合わせが含まれる。特定の実施形態では、うつ病は、大うつ病性障害である。他の実施形態では、大うつ病性障害は、憂うつの特徴又は不安による苦悩を伴う。更なる実施形態では、うつ病は、治療抵抗性うつ病である。他の実施形態では、うつ病は、自殺念慮を伴う大うつ病性障害である。
【0035】
当該技術分野で知られているように、患者は、以前の機能からの変化である5つ以上の症状を同じ2週間の期間中に示し、抑うつ気分及び/又は興味/喜びの喪失が存在する必要があり、別の身体疾患に明らかに起因する症状を除く場合、患者は大うつ病性障害を有すると考えられる。例えば、表Aを参照されたい。
【0036】
【0037】
いくつかの実施形態では、MDDと診断されるために、以下の基準も満たされる:
【0038】
【0039】
大うつ病性障害は、軽度、中程度、又は重度に分類され得る。いくつかの実施形態では、MDDは、軽度である。他の実施形態では、MDDは、中程度である。更なる実施形態では、MDDは、重度である。本明細書で使用するとき、「軽度MDD」は、診断を行うために必要な症状を超える症状があったとしてもほとんどなく、症状の強さが苦痛であるが、管理可能であり、症状が社会的又は職業的機能において軽度の障害をもたらす場合に、患者に適用される。軽度MDDは、単一のエピソード(ICD-10F32.0)又は反復性エピソード(ICD-10F33.0)であり得る。「中程度MDD」は、「軽度」に指定されたものと「重度」に指定されたものとの間にある、症状の数、症状の強度、及び/又は機能的障害を有する患者に適用される。中程度のMDDは、単一のエピソード(ICD-10F32.1)又は反復性エピソード(ICD-10F33.1)であり得る。「重度MDD」は、症状の数が診断を行うために必要とされるものを大幅に超える患者に適用され、症状の強度は重篤な苦痛であり、症状は社会的及び職業的機能を著しく妨害し、緊急症状管理が必要である。いくつかの実施形態では、重度MDDは、単一のエピソード(ICD-10F32.2)又は反復性エピソード(ICD-10F33.2)であり得る。他の実施形態では、MDDは、表BのDSM-5定義に従って分類される。
【0040】
【0041】
MDDを有する患者を診断又はモニタリングするために利用され得るいくつかのスケールが当技術分野において公知である。これらのスケールの例としては、限定されるものではないが、モントゴメリー-アスベルグうつ病評価スケール(MADRS)、臨床全般印象重篤度(Clinical Global Impression-Severity、CGI-S)スケール、大うつ病性障害の症状スケール(Symptoms of Major Depressive Disorder Scale、SMDDS)、治療経験の自己評価(Self-Assessment of Treatment Experience、SATE)スケール、及びマサチューセッツ総合病院(Massachusetts General Hospital、MGH)の抗うつ剤療法応答アンケート(Antidepressant Treatment Response Questionnaire、ATRQ)、すなわちMGH-ATRQが挙げられる。
【0042】
いくつかの実施形態では、MADRSは、患者を診断及び/又はモニターするために利用される。MADRSは、抗うつ剤の試験において使用される10項目の評価スケールである。これは臨床医によって投与され、うつ病性症状の全体的な重症度を測定するためにMDDを有する対象において使用されるように設計される。MADRSスケールは、大うつ病における有効性を決定するための一次スケールとして、認可され、信頼でき、規制保健機関に許容される。いくつかの実施形態では、MADRSは、MADRSのための構造化面接ガイド(SIGMA)を使用して施行される。スケールは10項目からなり、各々が0(存在しない又は正常な項目)~6(重度又は症状の継続的な存在)で採点され、最大の合計スコアは60である。スコアが高いほど、より重度の状態であることを示す。MADRSは、見かけの悲しみ、報告された悲しみ、内面的緊張、睡眠、食欲、集中、倦怠、無関心(関心レベル)、悲観的思考、及び自殺についての思考を評価する。
【0043】
他の実施形態では、CGI-Sは、患者のうつ病を診断及び/又はモニターするために利用される。CGI-Sは、同じ診断及び治療による改善を有する対象についての臨床医の過去の経験と比較して、評価時における対象の疾患の重症度を評価するスケールである。CGI-Sは、対象の病歴、心理社会的状況、症状、行動、及び対象の機能能力に対する症状の影響を含む、全ての入手可能な情報を考慮した、対象の病気の重症度に関する全体的な臨床医決定サマリースケールを提供する。CGI-Sは、0~7のスケールで精神病理の重症度を評価する。全臨床経験を考慮して、対象は、評定時の精神疾患の重症度について以下に従って評価される:0=評価せず、1=正常である(全く病気ではない)、2=境界線上の精神病である、3=軽度に病気である、4=中程度に病気である、5=顕著に病気である、6=重度に病気である、7=最も重症の患者である。
【0044】
更なる態様では、SMDDSは、患者のうつ病を診断及び/又はモニターするために利用される。SMDDSは、患者の主観的評価である。SMDDSは、16項目のPROスケールである。各項目は、5点のLikertスケールに従って対象によって評価される。対象は、0(「全くない」又は「決してない」)~4(「極度に」又は「常に」)の間の評価スケールを使用して各質問に回答する。合計スコアは、0~60の範囲である。SMDDSは、7日間の想起期間及び言語評価スケールを使用する。より高いスコアは、より重度のうつ病総体症状を示す。
【0045】
更に他の実施形態では、SATEは、患者のうつ病を診断及び/又はモニターするために利用される。SATEは、対象が自宅などの臨床設定から離れてすなわち他の評価を完了することができない場合に実施される1~3回のアンケートである。SATEは、短期間にわたる対象のうつ病性症状の改善又は悪化を評価するのに有用である。全体的なうつ病を評価するために、対象は、改善された、変化していない、又は悪化した、のうちの1つの選択肢を選択し、うつ病の改善については、対象は、わずかに改善された、大いに改善された、非常に大いに改善されたから1つの選択肢を選択し、うつ病の悪化については、対象は、わずかに悪化、大いに悪化、非常に大いに悪化を選択する。表Cを参照されたい。
【0046】
【0047】
MGH-ATRQは、MDDを有する患者における治療抵抗性を決定するために使用される自己評価スケールである。このアンケートは、各抗うつ剤試験の用量及び期間の両方の妥当性、並びに症状改善の程度を定義するために特定のアンカーポイントを使用して、抗うつ剤療法歴を調べる。MGH-ATRQは、うつ病における治療抵抗性を決定することを可能にし、当業者に公知である。
【0048】
特定の実施形態では、患者は、他の抗うつ剤療法(すなわち、アチカプラント以外のうつ病を治療するために使用される抗うつ剤投薬又は治療)に対して不十分な応答を有していた。本明細書で使用される「不十分な応答」とは、治療開始からうつ病性症状の重篤度が約50%未満減少した患者を指す。典型的には、不十分な応答は、うつ病が現在の/活動的なエピソード中であることである。いくつかの実施形態では、不十分な応答とは、患者が、治療の開始からうつ病性症状の重篤度の約26~約50%未満の減少を経験することを指す。他の実施形態では、不十分な応答は、治療開始からうつ病性症状の重篤度が約26~約49、約26~約45、約26~約40、約26~約35、約26~約30、約30~約49、約30~約45、約30~約40、約30~約35、約35~約49、約35~約45、約35~約40、約40~約49、又は約40~約45%減少した患者を指す。患者の応答は、本明細書に記載される1つ以上のスケールによって、及び/又は医師/臨床判断によって測定され得る。いくつかの実施形態では、不十分な応答は、MGH-ATRQ、MADRS、又はSHAPSによって測定される。更なる実施形態では、不十分な応答は、MGH-ATRQによって測定される。
【0049】
患者が治療に対して部分的な応答を有すると言われる限りにおいて、これは、治療の開始からのいくらかの軽度から中等度の症状の改善を指すが、初期症状のいくつかは依然として存在し、患者にとって厄介であり、これらの症状持続は依然として行動及び機能に影響を及ぼす。例えば、患者の動機付け、生産性、及び彼又は彼女の通常の活動への関心は、依然として損なわれ得る。
【0050】
抗うつ剤療法は、うつ病を治療するために使用することができる任意の医薬品を指す。適切な例としては、モノアミンオキシダーゼ阻害剤、三環系、四環系、非環状化合物、トリアゾロピリジン、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、セロトニン受容体アンタゴニスト、セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)、ノルアドレナリン及び特異的セロトニンアゴニスト、ノルアドレナリン再取り込み阻害剤、又は抗精神病薬(定型又は非定型抗精神病薬)が挙げられるが、これらに限定されない。モノアミンオキシダーゼ阻害剤の例としては、フェネルジン、トラニルシプロミン、モクロベミドなどが挙げられる。三環系抗うつ剤の例としては、イミプラミン、アミトリプチリン、デシプラミン、ノルトリプチリン、ドキセピン、プロトリプチリン、トリミプラミン、クロミプラミン、アモキサピンなどが挙げられる。四環の例としては、マプロチリンなどが挙げられる。非環式系の例としては、ノミフェンシンなどが挙げられる。トリアゾロピリジンの例としては、トラゾドンなどが挙げられる。SSRIの例としては、フルオキセチン、セルトラリン、パロキセチン、シタロプラム、エスシタロプラム、フルボキサミンなどが挙げられる。セロトニン受容体アンタゴニストとしては、ネファザドン等が挙げられる。SNRIの例としては、ベンラファキシン、ミルナシプラン、デスベンラファキシン、デュロキセチン、レボミルナシプランなどが挙げられる。ノルアドレナリン作動性及び特異的セロトニンアゴニストの例としては、ミルタザピンなどが挙げられる。ノルアドレナリン再取り込み阻害剤の例としては、レボキセチン、エジボキセチンなどが挙げられる。典型的な抗精神病薬の例としては、フェノチアジン類(例えば、クロルプロマジン、チオリダジン、フルフェナジン、ペルフェナジン、トリフロペラジン、レボメプロマジン(levomepromazin))、チオキサンテン類(例えば、チオチキセン、フルペンチキソール)、ブチロフェノン類(例えば、ハロペリドール)、ジベンゾキサゼピン類(例えば、ロキサピン)、ジヒドロインドロン類(例えば、モリンドン)、置換ベンズアミド類(例えば、スルピリド(sulpride)、アミスルプリド)などが挙げられる。非典型的な抗精神病薬の例としては、パリペリドン、クロザピン、リスペリドン、オランザピン、ケチアピン、ゾテピン、ジプラシドン、イロペリドン、ペロスピロン、ブロナンセリン、セルチンドール、ORG-5222、ソネピプラゾール、アリピプラゾール、ネモナプリド、SR-31742、CX-516、SC-111、NE-100、ジバルプロエート(気分安定薬)などが挙げられる。更なる実施形態では、抗うつ剤療法は、カバ-カバ、セントジョンズワートなどの天然物、又はs-アデノシルメチオニンなどの栄養補助食品を含む。更に他の実施形態では、抗うつ剤療法は、チロトロピン放出ホルモンなどの神経ペプチド、又はニューロキニン受容体アンタゴニストなどの神経ペプチド受容体を標的とする化合物を含む。より更なる実施形態では、抗うつ剤療法は、トリヨードチロニンなどのホルモンである。他の実施形態では、抗うつ剤療法は、SSRI、SNRI、又はそれらの組み合わせである。好ましくは、抗うつ剤は、エスシタロプラム、セルトラリン、パロキセチン、フルオキセチン又はシタロプラムであるSSRIである。他の実施形態では、抗うつ剤は、ベンラファキシン、デュロキセチン、ボルチオキセイン(vortioxeine)又はデスベンラファキシンであるSNRIである。また、精神療法及び経頭蓋磁気刺激などの非薬理学的治療もあり、これらも利用可能であり、補助的療法の選択肢である。
【0051】
他の抗うつ剤療法についての治療的に有効な量/投薬レベルは、当業者が容易に決定できる。例えば、販売が承認されている医薬品の治療的投与量及びレジメンは、一般的に利用可能であり、例えば包装ラベル、標準的な投薬ガイドライン、Physician’s Desk Reference(Medical Economics Company若しくはhttp:///www.pdrel.comにてオンラインで)のような標準的な投薬参考文献、又は他の出典に列挙されている。
【0052】
いくつかの実施形態では、他の抗うつ剤療法は、1つの抗うつ剤薬剤を含み得る。他の実施形態では、他の抗うつ剤療法は、2つ以上の抗うつ剤を含む。更なる実施形態では、他の抗うつ剤療法は、2つの抗うつ剤を含む。更に他の実施形態では、他の抗うつ剤療法は、3つの抗うつ剤を含む。主治医は、本明細書中に記載されるような使用のための適切な抗うつ剤療法を選択し得る。
【0053】
特定の実施形態では、患者は、アチカプラント又はその医薬的に許容される塩を投与される前に、他の抗うつ剤療法による治療を受けていた。いくつかの実施形態では、患者は、SSRI、SNRI、又はそれらの組み合わせを含む他の抗うつ剤療法による治療を受けていた。他の実施形態では、患者は、アチカプラントによる治療を開始する前に、他の抗うつ剤療法を停止していた。
【0054】
また、本明細書に記載の方法は、治療有効量の1つ以上の抗うつ剤による補助的治療を含む。本明細書中で使用される場合、用語「補助的治療」及び「補助的療法」は、アチカプラント又はその医薬的に許容される塩、特にアチカプラントを、1つ以上の抗うつ剤と組み合わせて投与することによる、それを必要とする患者の治療を意味し、ここで、アチカプラント及び抗うつ剤は、任意の適切な手段によって、同時に、連続して、別々に、又は単一の医薬製剤で投与される。
【0055】
いくつかの態様では、アチカプラントは、患者に現在投与されている他の抗うつ剤(患者が不十分な応答を有していた現在の抗うつ剤を含む)と一緒に補助的に投与される。他の実施形態では、アチカプラントは、以前に患者に投与されていない抗うつ剤と一緒に補助的に投与される。更に他の実施形態では、アチカプラントは、以前に患者に投与された抗うつ剤を用いたレジメンで投与される。
【0056】
アチカプラント及び他の抗うつ剤が個別の剤形で投与されるとき、各活性化合物について1日に投与される投薬回数は、同じでも異なっていてもよく、より典型的には、異なる。抗うつ剤は、主治医によって、及び/又はそのラベルによって処方されるように投与されてもよく、アチカプラントは、本明細書に記載されるように投与される。典型的には、患者は、抗うつ剤及びアチカプラントの両方を併用した同時治療下にあり、その両方は、それらの所定の投与レジメンによって投与される。アチカプラント及び抗うつ剤は、同時又は交互に行うレジメンに従って、療法の過程中の同じ時点又は異なる時点で、分割された形態又は単一の形態で同時に投与され得る。
【0057】
アチカプラント及び抗うつ剤は、同一又は異なる投与経路を介して投与され得る。投与の好適な方法の例としては、経口、静脈内(iv)、鼻腔内(in)、筋肉内(im)、皮下(sc)、経皮、口腔内、又は直腸が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、アチカプラントは、経口投与される。
【0058】
本明細書に記載されるアチカプラントによる治療は、当該技術分野における治療を上回るいくつかの利点を有する。いくつかの実施形態では、患者は、他の抗うつ剤(すなわち、アチカプラント以外の抗うつ剤)に関連する副作用の多くを経験しない。特定の態様では、患者は、アチカプラントによる治療の間に体重増加を経験しない。本明細書で使用される場合、「体重増加」という用語は、アチカプラント摂取前の対象の体重又はアチカプラントの最初の投与時に評価される患者の体重と比較した患者の体重の増加を指す。特定の実施形態では、患者は、アチカプラントを受ける前の患者の体重と比較して、全体の体重の減少を実際に見ることができる。更なる実施形態では、患者の体重は安定し、すなわち、増加も減少もしない。特定の実施形態では、患者は、≧7%の体重増加として特徴付けられる臨床的に関連する体重増加を経験しない。
【0059】
これは、臨床的に関連する体重増加を含む体重増加が一般的であるが残念な副作用である多くの他の抗うつ剤とは対照的である。
【0060】
特定の実施形態では、アチカプラントの投与は、約20~約45ng/mLのアチカプラントの最大血漿中濃度(Cmax)を達成する。更なる実施形態では、アチカプラントの投与は、約25~約35ng/mLのアチカプラントの最大血漿中濃度(Cmax)を達成する。より更なる実施形態では、アチカプラントの投与は、約30~約35ng/mLのアチカプラントの最大血漿中濃度(Cmax)を達成する。
【0061】
更なる態様では、患者は、アチカプラントによる治療の間に性機能の低下を経験しない。本明細書中で使用される場合、用語「性機能の減少」とは、ヒトの性行為(すなわち、性機能)の1つ以上の成分を減少又は減少させることをいう。いくつかの実施形態では、性機能は、性的衝動、性的覚醒、膣潤滑、勃起、オルガスム達成、又はオルガスム満足のうちの1つ以上を含む。他の実施形態では、性機能は性的衝動を含む。更なる実施形態では、性機能は、膣潤滑の満足を含む。更なる実施形態では、性機能はオルガスム達成を含む。更に他の実施形態では、性機能はオルガスム満足を含む。望ましくは、本患者の性機能は、アチカプラントの最初の投与時に評価される。したがって、アチカプラント摂取中の対象の性機能を、アチカプラント投与前の対象の性機能と比較することができる。性機能は、アリゾナ性的経験スケール(Arizona Sexual Experience Scale、ASEX)などの標準的なスケール及び技術を使用することによって評価され得る。ASEXを使用して、アチカプラントが性機能に対して更なる正又は負の効果を有するかどうかを調査する。ASEXは、性的衝動、性的覚醒、膣の潤滑又は勃起、オルガスム到達能及び満足度を定量化する、患者に適用される、5項目評価スケールである。スコアは5~30の範囲であり、スケールの2つの異なるバージョン(男性及び女性)が利用可能である。
【0062】
他のスケールを利用して、患者を治療するために本明細書で使用される方法の有効性を決定することができる。例としては、認知及び身体機能アンケート(CPFQ)、Karolinska眠気スケール(KSS)、及び一時的喜び経験スケール(TEPS)が挙げられる。CPFQは、注意、記憶及び精神的鋭敏さを含む認知及び実行機能の態様に対する補助的治療の影響に関する追加情報を提供する、簡単な自己報告スケールである。MDDを有する対象は、多くの場合、この領域における機能に困難を有することが報告されている。KSSは、「極度に機敏」(1)から「非常に眠く、覚醒を維持するための大きな努力、睡眠と戦う」(9)までの範囲の1~9のスケールで眠気を評価するために使用される、対象による報告型の評価である。TEPSは、18項目を含み、2つのサブスケールは、予期的な喜びとコンサマトリーな喜びとを区別するように設計されている。
【0063】
本明細書で使用される場合、別段の記載がない限り、「アチカプラント」という用語は、3-フルオロ-4-4-2-(3,5-ジメチルフェニル)ピロリジン-1-イル-メチルフェノキシベンズアミド、すなわち、以下の化合物を指し:
【0064】
【化1】
JNJ-67953964、CERC-501、及びLY-2456302としても知られている。いくつかの実施形態では、「アチカプラント」は、アチカプラントの(S)-エナンチオマー、すなわち、以下の化合物を指す:
【0065】
【化2】
(S)-アチカプラント又は(S)-3-フルオロ-4-4-2-(3,5-ジメチルフェニル)ピロリジン-1-イル-メチルフェノキシベンズアミドとしても知られている。他の実施形態では、本明細書に記載の方法で使用されるアチカプラントは、以下の構造を有する(R)-エナンチオマー、すなわち、(R)-アチカプラント又は(R)-3-フルオロ-4-4-2-(3,5-ジメチルフェニル)ピロリジン-1-イル-メチルフェノキシベンズアミドを実質的に含まない。
【0066】
【0067】
他の実施形態では、アチカプラントは、アチカプラントサンプルの重量に基づいて、約10重量%未満のアチカプラントの(R)-エナンチオマーを含有する。更なる実施形態では、アチカプラントは、アチカプラントサンプルの重量に基づいて、約10重量%未満、約9重量%未満、約8重量%未満、約7重量%未満、約6重量%未満、約5重量%未満、約4重量%未満、約3重量%未満、約2重量%未満、約1重量%未満、約0.5重量%未満、約0.1重量%未満、約0.005重量%未満、又は約0.001重量%未満のアチカプラントの(R)-エナンチオマーを含有する。更に他の実施形態では、アチカプラントは、アチカプラントサンプルの重量に基づいて、約0.001~約10重量%のアチカプラントの(R)-エナンチオマーを含有する。より更なる実施形態では、アチカプラントは、アチカプラントサンプルの重量に基づいて、約0.001~約10%、約0.001~約5%、約0.001~約1、約0.001~約0.5、約0.001~約0.1、約0.1~約5、約0.1~約1、約0.1~約5、又は約0.5~約5重量%のアチカプラントの(R)-エナンチオマーを含有する。
【0068】
また本発明によって意図されるアチカプラントの医薬的に許容される塩は、当業者によって容易に選択され得る。「医薬的に許容される塩」とは、無毒性であり、生物学的に耐容性であり、かつ別の方法で対象への投与に生物学的に適している、アチカプラントの塩である。一般に、G.S.Paulekuhn,「Trends in Active Pharmaceutical Ingredient Salt Selection based on Analysis of the Orange Book Database」,J.Med.Chem.,2007,50:6665-72、S.M.Berge,「Pharmaceutical Salts」,J.Pharm.Sci.,1977,66:1-19、及びHandbook of Pharmaceutical Salts,Properties,Selection,and Use,Stahl and Wermuth,Eds.,Wiley-VCH and VHCA,Zurich,2002を参照されたい。医薬的に許容される塩の例は、薬理学的に有効であり、かつ過度の毒性、刺激、又はアレルギー反応を伴わずに患者に投与するのに好適な塩である。
【0069】
医薬的に許容される塩の例としては、硫酸塩、ピロ硫酸塩、硫酸水素塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、リン酸塩、一水素-リン酸塩、二水素-リン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、臭化物(臭化水素酸塩など)、ヨウ化物(ヨウ化水素酸塩など)、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオール酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン-1,4-ジオ酸塩、ヘキシン-1,6-ジオ酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、γ-ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、及びマンデル酸塩が挙げられる。
【0070】
本明細書に記載される方法は、有効量のアチカプラント又はその医薬的に許容される塩を対象に投与することを含む。用語「有効量」とは、本明細書で使用するとき、治療される疾患又は障害の症状のうちの1つ以上の緩和を含む、研究者、医師又は他の臨床家により求められているヒト組織系における生物学的又は医薬的応答を誘発する活性化合物又は医薬品の量を意味する。いくつかの実施形態では、アチカプラントは、主治医によって決定される有効量で利用される。他の実施形態では、他の抗うつ剤が、有効量で、別々に、又はアチカプラントと組み合わせて利用される。
【0071】
本明細書に記載される方法による投与のためのアチカプラントの量は、当業者によって決定されてもよく、別段の記載がない限り、アチカプラントの遊離塩基基準で示される。すなわち、量は、例えば溶媒(溶媒和物などの状態)又は対イオン(医薬的に許容される塩などの状態)を除いた、投与されたアチカプラント分子の量を示す。いくつかの実施形態では、アチカプラントの有効量は、約60mg未満である。他の実施形態では、アチカプラントの有効量は、約0.5mg、約1mg、約2mg、約4mg、約5mg、約10mg、約15mg、約20mg、25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、又は約60mgである。更なる実施形態では、アチカプラントの有効量は、約1~約50mg、約5~約50mg、約10~約50mg、約20~約50mg、約30~約50mg、約40~約50mg、約1~約45mg、約2~約45mg、約5~約45mg、約10~約45mg、約20~約45mg、約30~約45mg、約30~約40mg、約30~約35mg、約1~約40mg、約5~約40mg、約10~約40mg、約20~~約40mg、約30~約40mg、約1~約35mg、約2~約35mg、約5~約35mg、約10~約35mg、約20~約35mg、約25~約35mg、約30~約35mg、約1~約30、約2~約30mg、約5~約30mg、約10~約30mg、約20~約30mg、約25~約30mg、約1~約20mg、約2~約20mg、約5~約20mg、約10~約20mg、約15~約20mg、約1~約15mg、約2~約15mg、約5~約15mg、約10~約15mg、約1~約10mg、約2~約10mg、又は約5~約10mgである。更に他の実施形態では、アチカプラントの有効量は約5~約15mgである。より更なる実施形態では、アチカプラントの有効量は、約10mgである。より更なる実施形態では、アチカプラントの有効量は、約5mgである。
【0072】
本明細書で使用するとき、用語「組成物」は、特定の成分を特定の量で含む生成物、並びに、直接的又は間接的に特定の成分の特定の量の組み合わせから生じる任意の生成物を包含するものとする。好ましい医薬組成物では、有効成分としてのアチカプラントを含み、従来の医薬配合技法に従って、医薬担体とともに十分に混合され、この担体は、投与に望まれる調剤の形態に応じて多種多様な形態をとることができる。医薬的に許容される好適な担体は、当該技術分野において周知である。これらの医薬的に許容される担体のいくつかの説明は、米国薬剤師会及び英国薬剤師会によって出版されたThe Handbook of Pharmaceutical Excipientsに見出すことができる。
【0073】
医薬組成物を製剤化する方法は、Marcel Dekker,Inc.によって発行されたLiebermanら編のPharmaceutical Dosage Forms:Tablets,Second Edition,Revised and Expanded,Volumes 1-3;Avisら編のPharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications,Volumes 1-2;及びLiebermanら編のPharmaceutical Dosage Forms:Disperse Systems,Volumes 1-2などの多くの刊行物に記載されている。
【0074】
特定の実施形態では、本明細書における使用のための医薬組成物は、1つ以上の緩衝剤、保存剤、浸透剤、湿潤剤、界面活性剤、可溶化剤、増粘剤、着色剤、抗酸化剤、乳化剤、等張化剤、懸濁化剤、及び/又は増粘剤を更に含む。
【0075】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1つ以上の緩衝剤及び/又は緩衝系、すなわち、共役酸塩基対を含む。本明細書で使用するとき、用語「緩衝剤」は、水性製剤に添加されるとき、当該製剤のpHを調整する任意の固体又は液体組成物(好ましくは水性液体組成物)を意味するものとする。当業者であれば、緩衝剤が、水性製剤のpHを任意の方向(より酸性、より塩基性、又はより中性のpHに向かって)調整し得ることを認識するであろう。好ましくは、緩衝剤は医薬的に許容されるものである。本明細書に記載の水性製剤に使用され得る緩衝剤の好適な例としては、クエン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、酢酸、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
任意選択的に、本明細書の医薬組成物は、防腐剤を含有し得る。本明細書で使用するとき、特に明記しない限り、用語「抗菌防腐剤」及び「防腐剤」は、微生物の分解又は微生物の増殖に対して医薬組成物を保護するために医薬組成物に添加される任意の物質を指す。この点に関して、微生物の増殖は、典型的には必須の役割を果たす。すなわち、防腐剤は、微生物の汚染を回避するという主目的に役立つ。それぞれ有効成分及び賦形剤に対する微生物のいかなる影響も回避すること、すなわち微生物による分解を回避することが望ましい場合もある。防腐剤の代表的な例としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ベンジルアルコール、ブロノポール、セトリミド、セチルピリジニウムクロリド、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クロロキシレノール、クレゾール、エチルアルコール、グリセリン、ヘキセチジン、イミド尿素、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、プロピレングリコール、プロピオン酸ナトリウム、チメロサール、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、イソブチルパラベン、ベンジルパラベン、ソルビン酸、及びソルビン酸カリウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
本明細書で使用するとき、用語「浸透剤(penetration agent)」、「浸透促進剤」、及び「浸透剤(penetrant)」は、アチカプラントの吸収及び/又は生物学的利用能を増加又は促進する任意の物質を指す。好ましくは、浸透剤は、投与後にアチカプラントの吸収及び/又は生物学的利用能を増加又は促進する。好適な例としては、テトラデシルマルトシド、グリコルコール酸ナトリウム、タウロウルソデオキシコール酸(tauroursodeoxycholic acid)、レシチンなど;及びキトサン(及び塩)、並びに塩化ベンザルコニウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシル酸ナトリウム、ポリソルベート、ラウレス-9、オキシトキシノール、デオキシコール酸ナトリウム、ポリアルギニンなどの界面活性成分が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、浸透剤は、以下の一般的な要件のうちの1つ以上、より好ましくは全てを満たすように選択される。
【0078】
【0079】
本明細書で使用するための医薬組成物は、1つ以上の追加の賦形剤、例えば、湿潤剤、界面活性剤成分、可溶化剤、増粘剤、着色剤、酸化防止剤成分などを更に含有していてもよい。
【0080】
好適な酸化防止剤成分の例としては、使用される場合、以下のもの、すなわち、亜硫酸塩;アスコルビン酸;アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カルシウム、又はアスコルビン酸カリウムなどのアスコルビン酸塩;パルミチン酸アスコルビル;フマル酸;エチレンジアミン四酢酸又はそのナトリウム若しくはカルシウム塩;トコフェロール;没食子酸プロピル、没食子酸オクチル、又は没食子酸ドデシルなどの没食子酸塩;ビタミンE;及びそれらの混合物のうちの1つ以上が挙げられるが、これらに限定されない。酸化防止剤成分は、液体組成物に長期安定性を提供する。
【0081】
可溶化剤及び乳化剤は、液体担体に概ね可溶性ではない有効成分又は他の賦形剤のより均一な分散を促進するために含まれ得る。好適な乳化剤の例としては、使用される場合、例えば、ゼラチン、コレステロール、アカシア、トラガカント、ペクチン、メチルセルロース、カルボマー、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。好適な可溶化剤の例としては、ポリエチレングリコール、グリセリン、D-マンニトール、トレハロース、安息香酸ベンジル、エタノール、トリサミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、及びそれらの混合物が挙げられる。可溶化剤又は乳化剤は、一般に、担体中の有効成分、すなわちアチカプラントを溶解又は分散させるのに十分な量で存在し得る。
【0082】
好適な等張化剤としては、使用される場合、塩化ナトリウム、グリセリン、D-マンニトール、D-ソルビトール、グルコース、及びそれらの混合物が挙げられ得る。
【0083】
懸濁化剤又は増粘剤もまた、医薬組成物に添加され得る。好適な例としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルメロースナトリウム、微結晶セルロース、カルボマー、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、キトサン塩、ジェランガム、ポロキサマー、ポリビニルピロリドン、キサンタンガムなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
有利には、アチカプラントは、1日1回の用量を投与してもよく、又は1日の総用量を1日2回、3回若しくは4回に分割して投与してもよい。
【0085】
本明細書中に記載されるように、特に、この患者は、アチカプラントによる治療の前に他の抗うつ剤療法に対して不十分な応答を有していた。したがって、特定の実施形態では、本開示は、本明細書に記載されるように使用するためのアチカプラント又はその医薬的に許容される塩であって、患者が、アチカプラントによる治療の前に他の抗うつ剤療法に対して不十分な応答を有していた、アチカプラント又はその医薬的に許容される塩に関する。更なる特定の実施形態では、本開示はまた、本明細書に記載の医薬の製造におけるアチカプラント又はその医薬的に許容される塩の使用であって、アチカプラントによる治療の前に他の抗うつ剤療法に対して不十分な応答を有していた、使用に関する。更なる特定の実施形態では、本開示は更に、本明細書に記載のパッケージ又は医薬製品であって、アチカプラントによる治療の前に他の抗うつ剤療法に対して不十分な応答を有していた、パッケージ又は医薬製品に関する。かかる抗うつ剤療法は、特に、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、セロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)、又はそれらの組み合わせから選択することができる。
【0086】
本明細書に記載されるように、アチカプラントは、補助的治療として、又は換言すれば、1つ以上の抗うつ剤と併せて、アドオンとして、又は組み合わせて使用されてもよく、例えば、患者は、1つ以上の抗うつ剤を既に、又は併せて、投与されてもよい。したがって、更なる特定の実施形態では、本開示は、有効量の1つ以上の抗うつ剤による補助的治療としてのアチカプラント又はその医薬的に許容される塩の投与を含む、本明細書に記載の使用のための、アチカプラント又はその医薬的に許容される塩に関する。更なる特定の実施形態では、本開示は、有効量の1つ以上の抗うつ剤と併用した、アチカプラント又はその医薬的に許容される塩の投与を含む、本明細書に記載の使用のための、アチカプラント又はその医薬的に許容される塩に関する。更なる特定の実施形態では、本開示は、有効量の1つ以上の抗うつ剤と併用した、アチカプラント又はその医薬的に許容される塩の投与を含む、本明細書に記載の使用のための、アチカプラント又はその医薬的に許容される塩に関する。更なる特定の実施形態では、本開示はまた、本明細書に記載の医薬の製造におけるアチカプラント又はその医薬的に許容される塩の使用であって、治療が、有効量の1つ以上の抗うつ剤による補助的治療としての有効量のアチカプラント又はその医薬的に許容される塩の投与を含む、使用に関する。更なる特定の実施形態では、本開示はまた、本明細書に記載のアチカプラント又はその医薬的に許容される塩の使用であって、治療が、有効量のアチカプラント又はその医薬的に許容される塩を、有効量の1つ以上の抗うつ剤と併用して投与することを含む、使用に関する。更なる特定の実施形態では、本開示はまた、本明細書に記載のアチカプラント又はその医薬的に許容される塩の使用であって、治療が、有効量のアチカプラント又はその医薬的に許容される塩を、有効量の1つ以上の抗うつ剤と組み合わせて投与することを含む、使用に関する。更なる特定の実施形態では、本開示は更に、本明細書に記載のパッケージ又は医薬製品であって、治療のための指示書が、有効量のアチカプラント又はその医薬的に許容される塩の投与を、有効量の1つ以上の抗うつ剤との補助的治療として指示する、パッケージ又は医薬製品に関する。更なる特定の実施形態では、本開示は更に、本明細書に記載のパッケージ又は医薬製品であって、治療のための指示書が、有効量のアチカプラント又はその医薬的に許容される塩の投与を、有効量の1つ以上の抗うつ剤との併用として指示する、パッケージ又は医薬製品に関する。更なる特定の実施形態では、本開示は更に、本明細書に記載のパッケージ又は医薬製品であって、治療のための指示書が、有効量のアチカプラント又はその医薬的に許容される塩の投与を、有効量の1つ以上の抗うつ剤との組み合わせとして指示する、パッケージ又は医薬製品に関する。かかる1つ以上の抗うつ剤は、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、セロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)、又はそれらの組み合わせから選択され得る。
【0087】
既に記載したように、本開示は、本明細書に記載の使用のためのアチカプラント又はその医薬的に許容される塩に関する。特定の実施形態では、アチカプラントは、S-アチカプラント、又はその医薬的に許容される塩である。本開示の更なる実施形態では、本明細書に記載の使用のためのアチカプラント、特にS-アチカプラント、又はその医薬的に許容される塩は、約2~約35mg、より具体的には約10mg、より具体的には約5mgの量で投与される。また更なる実施形態では、本明細書に記載の使用のためのアチカプラント、特にS-アチカプラント、又はその医薬的に許容される塩は、経口投与される。更に、更なる特定の実施形態では、本開示は、1日1回投与される、本明細書に記載の使用のためのアチカプラント、特にS-アチカプラント、又はその医薬的に許容される塩に関する。本開示はまた、本明細書に記載されるような医薬の製造におけるアチカプラントの使用に関する。特定の実施形態では、アチカプラントは、S-アチカプラント、又はその医薬的に許容される塩である。本明細書に記載の使用の更なる実施形態では、約2~約35mg、より具体的には約10mg、より具体的には約5mgのアチカプラントが投与される。使用のなお更なる実施形態では、アチカプラントは経口投与される。更に、使用の更なる特定の実施形態では、アチカプラント、特にS-アチカプラント、又はその医薬的に許容される塩は、1日1回投与される。更なる特定の実施形態では、本開示は更に、アチカプラントが、特にS-アチカプラント、又はその医薬的に許容される塩である、本明細書に記載のパッケージ又は医薬製品に関する。本明細書に記載のパッケージ又は医薬製品の更なる実施形態では、治療のための指示書は、約2~約35mgのアチカプラント、より具体的には約10mg、より具体的には約5mgの投与を指示する。本明細書に記載のパッケージ又は医薬品の更なる実施形態では、直接アチカプラント、特にS-アチカプラント、又はその医薬的に許容される塩の治療のための指示は、経口投与のためのものである。更に、本明細書に記載のパッケージ又は医薬製品の更なる特定の実施形態では、直接のアチカプラント、特にS-アチカプラント、又はその医薬的に許容される塩の治療のための指示は、1日1回投与のためのものである。
【0088】
有利なことに、アチカプラントの投与は、臨床的に関連する体重増加を含む、治療の間の体重増加をもたらさない。したがって、更なる特定の実施形態では、本開示は、患者がアチカプラントによる治療の間に体重増加を経験しない、本明細書に記載の使用のためのアチカプラント又はその医薬的に許容される塩に関する。更なる特定の実施形態では、本開示は、患者がアチカプラントによる治療の間に体重増加を経験しない、本明細書で定義される使用に関する。更なる特定の実施形態では、本開示は更に、患者がアチカプラントによる治療の間に体重増加を経験しない、本明細書に記載のパッケージ又は医薬製品に関する。患者の体重は、特に、アチカプラントの最初の投与時に評価することができる。
【0089】
また、予期せぬことに、最初の投与時の評価に基づいて、アチカプラントによる治療の間に患者が性機能の低下を経験しないことが観察された。したがって、更なる特定の実施形態では、本開示は、患者がアチカプラントによる治療の間に性機能の低下を経験しない、本明細書に記載の使用のためのアチカプラント又はその医薬的に許容される塩に関する。更なる特定の実施形態では、本開示は、患者がアチカプラントによる治療の間に性機能の低下を経験しない、本明細書に記載される使用に関する。更なる特定の実施形態では、本開示は、患者がアチカプラントによる治療の間に性機能の低下を経験しない、本明細書に記載のパッケージ又は医薬製品に関する。このような用語「性機能」は、性的衝動、性的覚醒、膣潤滑、勃起、オルガスム達成、又はオルガスム満足を含む。性的満足は、当業者に公知の方法によって、例えばアリゾナ性的経験スケール(ASEX)を適用することによって評価することができる。
【0090】
既に記載したように、患者は、アンヘドニア、特に中程度又は重度のアンヘドニアを有する。アンヘドニアは、アンヘドニアスケール、例えば、スナイス・ハミルトン喜びスケール(SHAPS)によって測定することができる。したがって、特定の実施形態では、本開示は、本明細書に記載されるように使用するためのアチカプラント又はその医薬的に許容される塩に関し、ここで、対象のアンヘドニアは、アチカプラントによる治療の6週間後のアンヘドニアスケールにおける総スコアのベースラインからの変化によって測定したとき、少なくとも40%低減され、より詳細には、対象のアンヘドニアは、アンヘドニアスケールにおける総スコアのベースラインからの変化によって測定したとき、約3週間~約6週間以内に低減される。更なる特定の実施形態では、アンヘドニアスケールは、スナイス・ハミルトン喜びスケール(SHAPS)である。したがって、特定の実施態様では、本開示は、本明細書に記載されるような使用であって、アチカプラントによる治療の6週間後に、患者のアンヘドニアが、アンヘドニアスケールにおける総スコアのベースラインからの変化によって測定したとき、少なくとも40%低減され、より具体的には、患者のアンヘドニアが、アンヘドニアスケールにおける総スコアのベースラインからの変化によって測定したとき、約3週間~約6週間以内に低減される、使用に関する。更なる特定の実施形態では、本開示は、本明細書に記載されるパッケージ又は医薬製品に関し、ここで、対象のアンヘドニアは、アチカプラントによる治療の6週間後のアンヘドニアスケールにおける総スコアのベースラインからの変化によって測定したとき、少なくとも40%低減され、より具体的には、対象のアンヘドニアは、アンヘドニアスケールにおける総スコアのベースラインからの変化によって測定したとき、約3週間~約6週間以内に低減される。
【0091】
態様
態様1:アンヘドニアを有するヒト患者における大うつ病性障害を治療するための方法であって、それを必要とする患者に、有効量のアチカプラント又はその医薬的に許容される塩を投与することを含む、方法。
【0092】
態様2:患者が、アチカプラントによる治療の前に他の抗うつ剤療法に対して不十分な応答を有していた、態様1に記載の方法。
【0093】
態様3:他の抗うつ剤療法が、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、セロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)、又はそれらの組み合わせを含む、態様2に記載の方法。
【0094】
態様4:有効量の1つ以上の抗うつ剤による補助的治療を更に含む、先行態様のいずれか1つに記載の方法。
【0095】
態様5:1つ以上の抗うつ剤が、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、セロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)、又はそれらの組み合わせである、態様4に記載の方法。
【0096】
態様6:抗うつ剤が、S-アチカプラント又はその医薬的に許容される塩である、先行態様のいずれか1つに記載の方法。
【0097】
態様7:アチカプラントの有効量が、約2~約35mgである、先行態様のいずれか1つに記載の方法。
【0098】
態様8:有効量のアチカプラントが、約10mgである、態様7に記載の方法。
【0099】
態様9:有効量のアチカプラントが、約5mgである、態様7に記載の方法。
【0100】
態様10:アチカプラントが、経口投与される、先行態様のいずれか1つに記載の方法。
【0101】
態様11:アチカプラントが、1日1回投与される、先行態様のいずれか1つに記載の方法。
【0102】
態様12:患者が、20以上のスナイス・ハミルトン喜びスケール(SHAPS)スコアを有する、先行態様のいずれか1つに記載の方法。
【0103】
態様13:患者が、22以上、24以上、26以上、28以上、30以上、32以上、34以上、36以上、又は38以上のSHAPSスコアを有する、先行態様のいずれか1つに記載の方法。
【0104】
態様14:患者が、38以上のSHAPSスコアを有する、先行態様のいずれか1つに記載の方法。
【0105】
態様15:患者が、中等度のアンヘドニアを有する、態様1~11のいずれか1つに記載の方法。
【0106】
態様16:患者が、重度のアンヘドニアを有する、態様1~11のいずれか1つに記載の方法。
【0107】
治療が患者のうつ病及びアンヘドニアの症状を改善する、先行態様のいずれか1つに記載の方法。
【0108】
態様17:患者が、アチカプラントによる治療の間に体重増加を経験しない、先行態様のいずれか1つに記載の方法。
【0109】
態様18:患者の体重が、アチカプラントの最初の投与時に評価される、態様17の方法。
【0110】
態様19:患者が、アチカプラントによる治療の間に性機能の低下を経験しない、先行態様のいずれか1つに記載の方法。
【0111】
態様20:患者の性機能が、アチカプラントの最初の投与時に評価される、態様19の方法。
【0112】
態様21:性機能が、性的衝動、性的覚醒、膣潤滑、勃起、オルガスム達成、又はオルガスム満足を含む、態様19又は20に記載の方法。
【0113】
態様22:性機能が、アリゾナ性的経験スケール(ASEX)によって評価される、態様19~21のいずれか1つに記載の方法。
【0114】
態様23:先行態様のいずれか1つに記載の方法であって、患者のアンヘドニアが、アチカプラントによる6週間の治療後のアンヘドニアスケールにおける、総スコアのベースラインからの変化によって測定したとき、少なくとも40%低減される、方法。
【0115】
態様24:患者のアンヘドニアが、アンヘドニアスケールにおける総スコアのベースラインからの変化によって測定して、約3週間~約6週間以内に低減される、先行態様のいずれか1つに記載の方法。
【0116】
態様25:アンヘドニアスケールが、スナイス・ハミルトン喜びスケール(SHAPS)である、態様23又は24に記載の方法。
【0117】
態様26:アチカプラントの投与が、約20~約45ng/mLのアチカプラントの最大血漿中濃度(Cmax)を達成する、先行態様のいずれか1つに記載の方法。
【0118】
態様27:アチカプラントの投与が、約25~約35ng/mLのアチカプラントの最大血漿中濃度(Cmax)を達成する、先行態様のいずれか1つに記載の方法。
【0119】
態様28:アチカプラントの投与が、約30~約35ng/mLのアチカプラントの最大血漿中濃度(Cmax)を達成する、先行態様のいずれか1つに記載の方法。
【0120】
態様29:アンヘドニアを有するヒト患者における大うつ病性障害の治療に使用するための、アチカプラント又はその医薬的に許容される塩。
【0121】
態様30:治療が、有効量のアチカプラントの投与を含む、態様29に記載の使用のためのアチカプラント又はその医薬的に許容される塩。
【0122】
態様31:アチカプラントによる治療前に他の抗うつ剤療法に対して不十分な応答を有していた、態様29又は30に記載の使用のためのアチカプラント又はその医薬的に許容される塩。
【0123】
態様32:他の抗うつ剤療法が、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、セロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)、又はそれらの組み合わせを含む、態様29~31のいずれか1つに記載の使用のためのアチカプラント又はその医薬的に許容される塩。
【0124】
態様33:有効量の1つ以上の抗うつ剤による補助的治療を更に含む、態様29~32のいずれか1つに記載の使用のためのアチカプラント又はその医薬的に許容される塩。
【0125】
態様34:1つ以上の抗うつ剤が、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、セロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)、又はそれらの組み合わせである、態様29~33のいずれか1つに記載の使用のためのアチカプラント又はその医薬的に許容される塩。
【0126】
態様35:アチカプラントが、S-アチカプラントである、態様29~34のいずれか1つに記載の使用のためのアチカプラント又はその医薬的に許容される塩。
【0127】
態様36:アチカプラントの有効量が、約2~約35mgである、態様29~35のいずれか1つに記載の使用のためのアチカプラント又はその医薬的に許容される塩。
【0128】
態様37:アチカプラントの有効量が、約10mgである、態様36に記載の使用のためのアチカプラント又はその医薬的に許容される塩。
【0129】
態様38:アチカプラントの有効量が、約5mgである、態様36に記載の使用のためのアチカプラント又はその医薬的に許容される塩。
【0130】
態様39:アチカプラントが、経口投与される、態様29~38のいずれか1つに記載の使用のためのアチカプラント又はその医薬的に許容される塩。
【0131】
態様40:アチカプラントが、1日1回投与される、態様29~39のいずれか1つに記載の使用のためのアチカプラント又はその医薬的に許容される塩。
【0132】
態様41:患者が、20以上のスナイス・ハミルトン喜びスケール(SHAPS)スコアを有する、態様29~40のいずれか1つに記載の使用のためのアチカプラント又はその医薬的に許容される塩。
【0133】
態様42:患者が、22以上、24以上、26以上、28以上、30以上、32以上、34以上、36以上、又は38以上のSHAPSスコアを有する、態様29~40のいずれか1つに記載の使用のためのアチカプラント又はその医薬的に許容される塩。
【0134】
態様43:患者が、38以上のSHAPSスコアを有する、態様29~40のいずれか1つに記載の使用のためのアチカプラント又はその医薬的に許容される塩。
【0135】
態様44:患者が、中等度のアンヘドニアを有する、態様29~43のいずれか1つに記載の使用のためのアチカプラント又はその医薬的に許容される塩。
【0136】
態様45:患者が、重度のアンヘドニアを有する、態様29~43のいずれか1つに記載の使用のためのアチカプラント又はその医薬的に許容される塩。
【0137】
治療が、患者のうつ病及びアンヘドニアの症状を改善する、態様29~45のいずれか1つに記載の使用のためのアチカプラント又はその医薬的に許容される塩。
【0138】
態様46:患者が、アチカプラントによる治療の間に体重増加を経験しない、態様29~45のいずれか1つに記載の使用のためのアチカプラント又はその医薬的に許容される塩。
【0139】
態様47:患者の体重が、アチカプラントの最初の投与時に評価される、態様46に記載の使用のためのアチカプラント又はその医薬的に許容される塩。
【0140】
態様48:患者が、アチカプラントによる治療の間に性機能の低下を経験しない、態様29~47のいずれか1つに記載の使用のためのアチカプラント又はその医薬的に許容される塩。
【0141】
態様49:患者の性機能が、アチカプラントの最初の投与時に評価される、態様48に記載の使用のためのアチカプラント又はその医薬的に許容される塩。
【0142】
態様50:性機能が、性的衝動、性的覚醒、膣潤滑、勃起、オルガスム達成、又はオルガスム満足を含む、態様48又は49に記載の使用のためのアチカプラント又はその医薬的に許容される塩。
【0143】
態様51:性機能が、アリゾナ性的経験スケール(ASEX)によって評価される、態様48~50のいずれか1つに記載の使用のためのアチカプラント又はその医薬的に許容される塩。
【0144】
態様52:6週間のアチカプラントによる治療の後に、アンヘドニアスケールにおける総スコアのベースラインからの変化によって測定したとき、患者のアンヘドニアが、少なくとも40%低減される、態様29~51のいずれか1つに記載の使用のためのアチカプラント又はその医薬的に許容される塩。
【0145】
態様53:患者のアンヘドニアが、アンヘドニアスケールにおける総スコアのベースラインからの変化によって測定したとき、約3週間~約6週間以内に低減される、態様29~52のいずれか1つに記載の使用のためのアチカプラント又はその医薬的に許容される塩。
【0146】
態様54:アンヘドニアスケールが、スナイス・ハミルトン喜びスケール(SHAPS)である、態様52又は53に記載の使用のためのアチカプラント又はその医薬的に許容される塩。
【0147】
態様55:アチカプラントが、約20~約45ng/mLのアチカプラントの最大血漿中濃度(Cmax)を達成する、態様29~54のいずれか1つに記載の使用のためのアチカプラント又はその医薬的に許容される塩。
【0148】
態様56:アチカプラントが、約25~約35ng/mLのアチカプラントの最大血漿中濃度(Cmax)を達成する、態様29~55のいずれか1つに記載の使用のためのアチカプラント又はその医薬的に許容される塩。
【0149】
態様57:アチカプラントが、約30~約35ng/mLのアチカプラントの最大血漿中濃度(Cmax)を達成する、態様29~56のいずれか1つに記載の使用のためのアチカプラント又はその医薬的に許容される塩。
【0150】
態様58:アンヘドニアを有するヒト患者における大うつ病性障害の治療のための医薬の製造における、アチカプラントの使用。
【0151】
態様59:治療が、有効量のアチカプラント又はその医薬的に許容される塩の投与を含む、態様58に記載の使用。
【0152】
態様60:患者が、アチカプラントによる治療の前に他の抗うつ剤療法に対して不十分な応答を有していた、態様58又は59に記載の使用。
【0153】
態様61:他の抗うつ剤療法が、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、セロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)、又はそれらの組み合わせを含む、態様58~60のいずれか1つに記載の使用。
【0154】
態様62:有効量の1つ以上の抗うつ剤による補助的治療を更に含む、態様58~61のいずれか1つに記載の使用。
【0155】
態様63:1つ以上の抗うつ剤が、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、セロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)、又はそれらの組み合わせである、態様58~62のいずれか1つに記載の使用。
【0156】
態様64:アチカプラントが、S-アチカプラント、又はその医薬的に許容される塩である、態様58~63のいずれか1つに記載の使用。
【0157】
態様65:アチカプラントの量が、約2~約35mgである、態様58~64のいずれかに記載の使用。
【0158】
態様66:アチカプラントの量が、約10mgである、態様65に記載の使用。
【0159】
態様67:アチカプラントの量が、約5mgである、態様65に記載の使用。
【0160】
態様68:アチカプラントが、経口投与される、態様58~67のいずれか1つに記載の使用。
【0161】
態様69:アチカプラントが、1日1回投与される、態様58~68のいずれか1つに記載の使用。
【0162】
態様70:患者が、20以上のスナイス・ハミルトン喜びスケール(SHAPS)スコアを有する、態様58~69のいずれか1つに記載の使用。
【0163】
態様71:患者が、22以上、24以上、26以上、28以上、30以上、32以上、34以上、36以上、又は38以上のSHAPSスコアを有する、態様58~69のいずれか1つに記載の使用。
【0164】
態様72:患者が、38以上のSHAPSスコアを有する、態様58~69のいずれか1つに記載の使用。
【0165】
態様73:患者が、中等度のアンヘドニアを有する、態様58~72のいずれか1つに記載の使用。
【0166】
態様74:患者が、重度のアンヘドニアを有する、態様58~72のいずれか1つに記載の使用。
【0167】
治療が、患者のうつ病及びアンヘドニア症状を改善する、態様58~72のいずれか1つに記載の使用。態様75:患者が、アチカプラントによる治療の間に体重増加を経験しない、態様58~74のいずれか1つに記載の使用。
【0168】
態様76:患者の体重が、アチカプラントの最初の投与時に評価される、態様75に記載の使用。
【0169】
態様77:患者が、アチカプラントによる治療の間に性機能の低下を経験しない、態様58~76のいずれか1つに記載の使用。
【0170】
態様78:患者の性機能が、アチカプラントの最初の投与時に評価される、態様77に記載の使用。
【0171】
態様79:性機能が、性的衝動、性的覚醒、膣潤滑、勃起、オルガスム達成、又はオルガスム満足を含む、態様77又は78に記載の使用。
【0172】
態様80:性機能が、アリゾナ性的経験スケール(ASEX)によって評価される、態様77~79のいずれか1つに記載の使用。
【0173】
態様81:6週間のアチカプラントによる治療の後に、アンヘドニアスケールにおける総スコアのベースラインからの変化によって測定したとき、患者のアンヘドニアが、少なくとも40%低減される、態様58~80のいずれか1つに記載の使用。
【0174】
態様82:患者のアンヘドニアが、アンヘドニアスケールにおける総スコアのベースラインからの変化によって測定したとき、約3週間~約6週間以内に低減される、態様58~81のいずれか1つに記載の使用。
【0175】
態様83:アンヘドニアスケールが、スナイス・ハミルトン喜びスケール(SHAPS)である、態様81又は82に記載の使用。
【0176】
態様84:アチカプラントが、約20~約45ng/mLのアチカプラントの最大血漿中濃度(Cmax)を達成する、態様58~83のいずれか1つに記載の使用。
【0177】
態様85:アチカプラントが、約25~約35ng/mLのアチカプラントの最大血漿中濃度(Cmax)を達成する、態様58~84のいずれか1つに記載の使用。
【0178】
態様86:アチカプラントが、約30~約35ng/mLのアチカプラントの最大血漿中濃度(Cmax)を達成する、態様58~85のいずれか1つに記載の使用。
【0179】
以下の実施例は、本発明の理解を助けるために記載するものであり、本明細書に付属する「特許請求の範囲」に記載される発明をいかなる意味においても限定することを目的としたものではなく、またそのように解釈されるべきではない。
【0180】
【0181】
【0182】
実施例1
これは、SSRI/SNRI治療に対して不十分な応答を有したMDDを有する対象における多施設プラセボ対照無作為化二重盲検試験であった。アチカプラントを補助的療法として評価した。したがって、適格な対象は、試験全体を通して変更することなく、SSRI/SNRI治療を維持した。募集された対象の少なくとも50%は、アンヘドニア(SHAPS総スコア≧20によって測定される)でなければならなかった。
【0183】
A.目的
主な目的は、プラセボ導入期間中の非応答者におけるMADRSのベースラインからの変化によって評価したときの、うつの症状の軽減に関して、SSRI/SNRI治療に部分的に応答するMDDを有する対象において補助的治療として投与された場合のプラセボと比較したアチカプラントの効力を評価することであった。
【0184】
二次的な目的は以下のとおりである:
i.プラセボ導入期間中の応答者及び非応答者の両方におけるMADRSのベースラインからの変化によって評価したときの、うつ病の症状の軽減に関して、SSRI/SNRI治療に部分的に応答するMDDを有する対象において補助的治療として投与された場合のプラセボと比較したアチカプラントの効力を評価すること。
ii.SSRI又はSNRIと組み合わせて使用したときの、MDDを有する対象における補助的なアチカプラントによる治療の全体的な安全及び忍容性を調査すること。
iii.SHAPSによって評価したときの、うつ関連のアンヘドニアに対するアチカプラント対プラセボの効果を調査すること。
iv.Clinical Global Impression-Severity(CGI-S)を使用して、うつの症状に対するアチカプラントの効果を調査するために、患者は、大うつ病性障害の症状スケール(SMDDS)及び治療経験の自己評価(SATE)を報告した。
v.HAM-Aを使用して不安の症状に対する、及びHAM-A6サブスケールを使用して不安の中核症状に対する、アチカプラントの効果を調査すること。
vi.MDDを有する対象におけるアチカプラントの血漿中PKを評価し、効力及び安全パラメータとのその関係を調査すること。
【0185】
二次的な探索目的は、以下のとおりである:
i.CPFQを使用して、認知及び実行機能の態様に対するアチカプラントの効果を調査すること。
ii.気分に関連するバイオマーカー(成長因子、HPA系マーカー、免疫系活性化、代謝マーカーを含むが、これらに限定されない)、並びにアチカプラントの臨床応答、非応答、又は安全及び忍容性パラメータに関連し得る遺伝的/後成的変動を探索すること。
【0186】
B.試験デザイン
各対象について、試験は2つの段階、すなわち5週間までのスクリーニング段階及び11週間続く二重盲検治療段階からなった。
図1を参照されたい。
【0187】
許可されたSSRI/SNRIを用いて治療を開始し、この治療に対して不十分な応答又は部分的な応答しか示さなかったMDDを有する対象をスクリーニングした。評価には、MINI、抗うつ剤療法歴アンケート(TRQ)、及びMADRSが含まれる。
【0188】
治療段階は3つの期間からなった。隠された期間のプラセボ導入期間、その後、対象は無作為に二重盲検治療期間に入り、その際、6週間継続して、10mgのアチカプラント(2つの5mgカプセル)又はプラセボに割り当てられた。各カプセルは、硬質ゼラチンカプセル中にアチカプラント(5mg)、微結晶性セルロース(94.95mg)及びマグネシウムステアレート(0.05mg)を含有していた。治療期間を完了した対象は、離脱期間に入り、治療段階の残りの時間にわたってプラセボで治療された。各対象の全継続期間は、およそ16週間であった。スクリーニングを含む11回の予定された来院があった。全体のフローを
図1に示す。
【0189】
対象を、1日目の前の35~2日以内にスクリーニングして、組み入れ基準及び除外基準により適格性を確認した。うつ病の症状は、MADRSのための構造化されたインタビューガイドを用いて評価した。
【0190】
二重盲検治療段階
二重盲検治療段階の期間は、3つの期間に分割された11週間であった。対象は、1日目の来診の完了後に投薬を受けた。最初の投与は、2日目に自宅で行った。全ての薬物を絶食状態で摂取した。来診3、4及び5において、対象をプラセボ導入期間の間、盲検対象に再無作為化した。二重盲検期の間、対象は1~2週間毎に外来患者訪問のためにセンターを訪れた。表1を参照されたい。
【0191】
【0192】
導入期間:臨床現場/ユニットにおけるベースライン検査訪問を成功裏に完了した対象は、導入期間の全期間にわたってプラセボで治療された。
【0193】
治療期間:導入期間の終わりに、プラセボ導入応答者及びプラセボ導入非応答者の両方を無作為化して、プラセボ又は10mgアチカプラントのいずれかを1:1の比で6週間投与した。対象は、無作為化の正確なタイミング、応答基準及び各対象についての薬物治療割り当てについて盲検化されたままであった。
【0194】
離脱期間:11週目の終了前に二重盲検治療期間を完了した対象は、離脱期間に入り、治療段階の残りの時間にわたってプラセボで治療された。
【0195】
C.用量及び投与
アチカプラントは5mgカプセルとして供給された。プラセボはマッチングカプセルとして供給された。全ての対象は、2カプセルQDを服用した。カプセルは、2日目から78日目まで、いくらかの水を含む絶食条件(投与前少なくとも4時間の絶食)で毎日摂取した。薬物は朝食前に服用した。対象が朝食前に薬物を服用することを忘れた場合、これは次の食事の前、遅くとも同じ日の夕食に行われた。対象が夕食よりも後に記憶した場合、その日の用量省略し、対象は翌日の朝食前に用量を摂取した。
【0196】
来院11が3日後まで計画された場合、対象は来院11まで投薬を継続した。
【0197】
カプセルを、噛んだり、割ったり、溶解したり、又は砕いたりせずに、丸ごと嚥下させた。薬剤を摂取した後、対象は少なくとも30分間飲食しなかった。
【0198】
最初の用量は、二重盲検期の2日目に絶食状態で摂取した。薬剤の用量は以下のとおりであった。
●10mgアチカプラント:5mgアチカプラントの2カプセル
●プラセボ:2つのプラセボカプセル。
【0199】
投与用量は、安全データの盲検審査の結果に基づいて、必要に応じて5mg QDに調整した。用量減少が決定されたとき、これは新しい対象にのみ適用され、薬剤の用量は以下のとおりであった。
●5mgアチカプラント:5mgアチカプラントの1カプセル
●プラセボ:1つのプラセボカプセル。
【0200】
本明細書で使用される場合、強化ITT分析セット(eITT)は、治療期間に無作為化され、治療期間中に少なくとも1用量の試験薬剤を受け、治療期間中に少なくとも1回のベースライン後MADRS評価を有する全ての登録された導入プラセボ非応答者として定義される。同様に、完全なITT分析セット(fITT)は、治療期間に無作為化され、治療期間中に少なくとも1用量の試験薬剤を受け、治療期間中に少なくとも1回のMADRSの治療後ベースライン評価を有する全ての登録対象として定義される。
【0201】
D.臨床評価
(i)うつ病:モントゴメリー-アスベルグうつ病評価スケール(MADRS)、臨床全般印象-重症度(CGI-S)、大うつ病性障害の症状スケール(SMDDS)、及び治療経験の自己評価(SATE)
(ii)アンヘドニア:スナイス・ハミルトン喜びスケール(SHAPS)
(iii)不安:ハミルトン不安スケール(SIGH-A)及びHAM-A6のための構造化面接ガイド
(iv)認知に対する効果:認知及び身体機能アンケート(CPFQ)
(v)安全性評価
身体検査及び神経学的検査、バイタルサイン、12誘導ECG、臨床化学、血液学、並びに尿検査を含む標準的な安全性評価を行った。以前の研究におけるGI愁訴の観察に基づいて、PGI、PGII、G17及びHp IgGを含むパネルを、胃粘膜状態について試験するための臨床検査パネルに加えた。
(vi)希死念慮:C-SSRS
(vii)探索的(Exploratory):CPFQ
(viii)中枢性鎮静効果:カロリンスカ眠気スケール
(ix)性機能障害:ASEX
【0202】
E.患者集団
184人の対象のうち、169人を治療期間に無作為化し、安全性集団に含め、一方、166人の対象を完全なITT集団について検討した。完全なITT集団における166人の対象のうち、121人(73%)が導入プラセボ非応答者(強化ITT集団)であり、残りの45人(27%)が導入プラセボ応答者であった。強化集団における121人の対象のうち、112人(92.6%)が白人であり、84人(69.4%)が女性であった。平均年齢は41.6歳であり、19~64歳の範囲であった。全ての対象は、治療ベースラインにおいてアンヘドニア(SHAPS総スコア≧20として定義される)を有していた。高いアンヘドニアレベル(SHAPS合計スコア≧38として定義される)が、対象の43.8%において観察された。一般に、治療群は、ベースライン特性に関して同様であった。eITT及び安全性分析のための対象人口統計を表2及び3に示す。
【0203】
【0204】
【0205】
【0206】
【0207】
E.有効性の評価
導入期間の終わりに、対象の応答状態を、導入ベースラインに対するMADRSの減少に基づく二重盲検応答基準に従って評価した。導入プラセボ応答者及び導入プラセボ非応答者の両方を、治療期間においてアチカプラント又はプラセボのいずれかに1:1の比で無作為に割り当てた。無作為化は、導入応答状態(非応答者:導入期間の終了時におけるMADRS総スコアのベースラインからの<30%の減少対応答者:導入期間の終了時におけるベースラインからの≧30%の減少)及びアンヘドニアの存在/非存在(存在はSHAPS総スコア≧20として定義される)。
【0208】
治療期間:試験は2つの期間、すなわち5週間までのスクリーニング段階及び11週間の二重盲検治療段階からなっていた。試験の二重盲検治療段階は、3つの期間からなっていた。第1の期間は、3週間のプラセボ導入であり、その後、対象は、アチカプラントに無作為に割り当てられた治療期間、又は6週間のプラセボ継続期間に入った。治療期間を成功裏に完了した対象は、2週間の中止期間すなわち、第3の期間にプラセボで治療された。各対象の全継続期間は、およそ16週間であった。
【0209】
有効性についての一次分析セット:有効性分析は、治療期間に無作為化され、少なくとも1回の投薬を受け、治療期間中に少なくとも1回のベースライン後MADRS評価を有する全ての登録された導入プラセボ非応答者として定義されるeITTセットに基づく。一次分析セットを、全ての有効性エンドポイントに使用する。
【0210】
有効性についての二次分析セット:二次分析セットは、治療期間に無作為化され、少なくとも1回の投薬を受け、治療期間中に少なくとも1つのベースライン後MADRS評価を有する全ての登録対象として定義されるfITTセットである。二次分析セットは、開発プログラムにおけるその後の研究を設計するのに有用であり得る一般集団における効果を調べるために、全ての有効性エンドポイントに使用される。
【0211】
安全性のための分析セット:安全性分析は、治療期間中に少なくとも1回の投薬を受けた全ての登録対象として定義される完全な安全性分析セットに基づく。
【0212】
有効性エンドポイントは、eITT及びfITTの両方について示された。
【0213】
有意水準:主要有効性エンドポイントの分析は、0.20(片側)の有意水準で行った。有効性エンドポイントの分析を、有意水準0.20(両側)で実施した。多重比較のための調整は行わなかった。
【0214】
F.結果
(i)主要評価項目:プラセボ導入期間中の非応答者における治療6週目でのMADRS総スコアにおける治療ベースラインからの変化
強化ITT分析対象集団
平均(SD)MADRS合計スコアは、29.0(4.61)であり、19~41の範囲であった。
図2を参照されたい。治療6週目におけるMADRS総スコアの治療ベースライン(SD)からの平均変化は、アチカプラントについては-10.2(8.44)であり、プラセボについては-8.2(8.53)であった。観察された効果サイズは0.23であった。表4~6及び
図6を参照されたい。
【0215】
【0216】
【0217】
【0218】
対象をランダム効果として用いたMMRMモデルの結果に基づく;因子としての国、治療、時間、及び治療による時間の相互作用;並びに連続共変量としてのベースラインMADRS総スコアアチカプラント対プラセボに関して、片側0.20有意水準で有意な正の効力シグナルが検出された。アチカプラントとプラセボとの間の治療6週目での推定LS平均差は-2.1であり、80%片側Cl上限は-1.09であった。対応するp値は0.044であった。治療効果は、fITT集団においてeITT集団よりも大きかった:-3.1、80%片側CI上限-2.2(p=0.002)。効果サイズはそれぞれ0.36及び0.23であった。
図2及び3を参照されたい。
【0219】
完全なITT分析セット
平均(SD)ベースラインMADRS総スコアは、25.3(7.86)であり、0~41の範囲であった。
図7A及び7Bを参照されたい。fITTについての治療6週目でのMADRS総スコアにおける治療ベースラインからの平均変化は、eITTよりも小さかった:アチカプラントについて-9.7(8.02)、及びプラセボについて-6.6(8.57)。観察された効果サイズは0.36であった。これらの結果は、6週目に見られる最大の差を有する効果の持続性を有するプラセボに対する統計的優位性を示す。表7を参照されたい。
【0220】
【0221】
fITT集団におけるアチカプラント対プラセボについての有意な効果も検出された。アチカプラントとプラセボとの間の治療6週目での推定LS平均差は-3.1であり、80%片側Cl上限は-2.21であった。対応するp値は0.002であった。表8~9及び表3を参照されたい。
【0222】
【0223】
【0224】
一次効力評価に対するCOVID-19の影響
2020年3月15日(試験に参加しているほとんどの国におけるCOVID-19ロックダウンの推定日)より前に収集された全てのデータに対して、一次分析について記載したものと同じMMRMモデルを使用して、補足分析を行った。fITTにおける対象の17%及びeITT集団における19%は、COVID-19影響のためにモデルから除外されたMADRS評価の少なくとも1つを有していた。分析の結果は、eITT及びfITT集団の両方における一次有効性分析の知見を裏付けるものであった。LS平均差推定値は、eITTについては-3.0(80%片側CI上限-1.88)であり、fITTについては-3.4(80%片側CI上限-2.51)であった。
【0225】
(ii)副次的エンドポイント
治療期間にわたるMADRS寛解率
治療6週目に、eITT集団におけるMADRS寛解(MADRS総スコア≦10)を有する対象のパーセンテージは、アチカプラントで16.9%、プラセボで16.9%であった。fITT集団における治療6週目の寛解率は、アチカプラントで31.2%、プラセボで22.2%であった。両方の集団(eITT及びfITT)について、カイ二乗検定(それぞれ両側p=0.999及びp=0.203)を使用して、治療6週目に有意な治療差は検出されなかった。
図8及び9を参照されたい。
【0226】
治療期間にわたるMADRS応答率(少なくとも30%の改善)
eITT集団において治療6週目にMADRS総スコアが≧30%改善した対象の割合は、アチカプラントで57.6%、プラセボで45.8%であった。fITT集団における治療6週目の応答率は、アチカプラントについて61.8%、プラセボについて44.4%であった。両方の集団について、治療6週目における治療の差は、20%の両側有意水準で有意であった(カイ二乗検定:eITTについてp=0.197及びfITTについてp=0.029)。
【0227】
治療期間にわたるMADRS応答率(少なくとも50%の改善)
eITT集団において治療6週目にMADRS総スコアが≧50%改善した対象の割合は、アチカプラントで35.6%、プラセボで22.0%であった。fITT集団における治療6週目の応答率は、アチカプラントで38.2%、プラセボで23.5%であった。両方の集団について、治療6週目における治療の差は、20%の両側有意水準で有意であった(カイ二乗検定:eITTについてp=0.104及びfITTについてp=0.046)。表10、及び
図10~13を参照されたい。
【0228】
【0229】
治療ベースラインから治療6週目までのSHAPS総スコアの変化
強化ITT分析対象集団
eITT集団では、高アンヘドニアレベル(ベースラインSHAPS総スコア≧38)を有する対象のサブグループにおいて、治療6週目のアチカプラントプラセボ間で、低アンヘドニアレベル(20≦ベースラインSHAPS総スコア<38)を有する対象よりも大きな差が観察された。効果サイズはそれぞれ0.38及び0.11であった。
【0230】
平均(SD)SHAPS合計スコアは、36.6(5.45)であり、20~50の範囲であった。治療6週目におけるSHAPS総スコアの治療ベースライン(SD)からの平均変化は、アチカプラントについては-4.6(6.23)であり、プラセボについては-4.2(5.04)であった。観察された効果サイズは0.07であった。表11並びに
図14及び23を参照されたい。
【0231】
【0232】
SHAPS総スコアの変化を、MADRS総スコアに使用した同じMMRMモデルを用いて分析した。アチカプラントとプラセボとの間の治療6週目における80%両側CI値を有する推定LS平均差は、-0.7[-1.81、0.41]であった。
図4並びに表12及び13並びに
図15を参照されたい。対応するp値は0.419であった。
【0233】
【0234】
【0235】
アチカプラントとプラセボとの間の治療6週目における80%両側CI値を有する推定LS平均差は、-0.8[-1.79、0.10]であった。対応するp値は0.250であった。
図4及び5を参照されたい。
【0236】
完全なITT分析セット
同様の傾向がfITT集団で観察され、差はeITT集団で観察されたものよりも大きかった。効果サイズはそれぞれ0.51及び0.29であった。平均(SD)ベースラインSHAPS合計スコアは、35.6(5.67)であり、14~50の範囲であった。fITT集団についての治療6週目におけるSHAPS総スコアにおける治療ベースラインからの平均変化は、eITTにおける変化と同様であった:アチカプラントについて-4.7(5.91)及びプラセボについて-4.2(4.98)。観察された効果サイズは0.08であった。表14を参照されたい。
【0237】
【0238】
ベースラインでのアンヘドニアレベルによる、治療ベースラインから治療6週目までのMADRS総スコアの変化
強化ITT分析対象集団
治療ベースラインで高アンヘドニアレベル(SHAPS総スコア≧38)を有する対象のサブグループ、n=53では、治療6週目でのアチカプラントとプラセボとの間のより大きな差が、低アンヘドニアレベル(20≦ベースラインSHAPS総スコア<38)を有する対象、n=65よりも観察された:それぞれ、[-7.5、0.7]の90%両側CI値を有する-3.4及び[-4.2、2.5]の90%両側CI値を有する-0.9(表15)。観察された効果サイズは、それぞれ0.38及び0.11であった。
【0239】
【0240】
完全なITT分析セット
同様の傾向がfITT集団において観察された。この差は、eITT集団と比較して大きさが大きかった:高アンヘドニアレベルを有する対象(n=63)について[-8.4、-0.8]の90%両側CIを有する-4.6、及び低アンヘドニアレベルを有する対象(n=94)について[-5.0、0.4]の90%両側CIを有する-2.3。表16を参照されたい。観察された効果サイズは、それぞれ0.51及び0.29であった。
【0241】
【0242】
このデータは、高アンヘドニア対低アンヘドニアへのセグメント化が、MDDを治療するのに有益であったこと、すなわちアチカプラントに対する治療効果がより高かったことを示す。更に、プラセボ応答は、低アンヘドニアと比較して、高アンヘドニアを有する患者においてより低かった。
【0243】
治療時のCGI-S総スコアにおける治療ベースラインからの変化
【0244】
【0245】
治療6週目におけるSMDDS総スコアの治療ベースラインからの変化
【0246】
【0247】
治療6週目におけるSATEスコアを有する対象の数
【0248】
【0249】
治療6週目におけるHAM-A6総スコアのベースラインからの変化
【0250】
【0251】
これらのデータは、アチカプラント治療患者対プラセボにおけるHAMA6スコアのより大きな改善を示す。
【0252】
治療6週目におけるSIGH-Aスコアについての構造化面接ガイドにおける治療ベースラインからの変化
【0253】
【0254】
アチカプラントの最大血漿中濃度(Cmax)
Cmaxは、アチカプラントの最大血漿中濃度として定義される。eITT集団は、治療期間に無作為化され、少なくとも1用量の治験薬を受け、治療期間中に少なくとも1つのベースライン後MADRS評価を受けた全ての登録された導入プラセボ非応答者を含んでいた。ここで、「N」(分析された対象の数)は、このエンドポイントについて評価可能な対象の数を含む。ここで、「n」(分析された数)は、特定の時点カテゴリーについて評価可能な全ての対象を含む。
【0255】
【0256】
(iii)安全性エンドポイント
全体として、アチカプラント群の40人/85人(47.1%)の対象及びプラセボ群の30人/84人(35.7%)の完全な安全性分析セットが、治療期間中に少なくとも1つのTEAEを経験した。表23を参照されたい。
【0257】
【0258】
治療期間中の最も一般的なTEAEは、頭痛(アチカプラント群では10/85人の対象-11.8%、プラセボ群では6/84人の対象-7.1%が経験)及び下痢(アチカプラント群では7/85人の対象-8.2%、プラセボ群では2/84人の対象-2.4%が経験)であった。表24を参照されたい。
【0259】
【0260】
治療の間に発生した有害事象のために治療期間中に中断した対象は合計2人であった:アチカプラント10群の1人の対象は下痢、吐気、嘔吐及び頭痛のためであり、プラセボ群のもう1人の対象は急性胆石性胆のう炎のためであった。
【0261】
全体として、169人中17人の対象が、治療期間中に特に興味深いTEAEを経験した:アチカプラント群では85人中13人(15.3%)、プラセボ群では84人中4人(4.8%)。治療段階中の最も一般的な治療下で発生した有害事象は、頭痛及び下痢であった。治療期間中の特に興味深い最も一般的なTEAEは、下痢及び掻痒であった(アチカプラント群では5/85対象-5.9%、プラセボ群では0/84対象が経験した)。更に、アチカプラントを受けた0人の患者と比較して、プラセボ群の1人の患者(1.19%)が急性胆のう炎を経験した。表25を参照されたい。
【0262】
【0263】
2つの重篤な有害事象が生じた。プラセボ群の1人の対象は、治療期間中に急性胆石性胆のう炎を経験し、他の対象は導入期間中に希死念慮を経験した。両方の対象は、これらのAEのために中断した。
【0264】
死亡は報告されなかった。
【0265】
(iv)アンヘドニア分析
より大きなfITT群の患者は、eITT群と一致するうつ病及びアンヘドニア重症度のベースラインレベルを維持した。表26~28を参照されたい。
【0266】
【0267】
結果は、治療効果が、ベースラインでより多くのアンヘドニアを有する患者においてより大きいことを示す。
図16を参照されたい。
【0268】
【0269】
【0270】
結果は、治療効果が、ベースラインでより多くのアンヘドニアを有する患者においてより大きいことを示す。
図17A及び17Bを参照されたい。
図17A、すなわち、高アンヘドニア群において、プラセボ+経口抗うつ剤群は、
図17Bにおける低アンヘドニア群と比較して、より少ないプラセボ応答を示す。同様に、アチカプラント+経口抗うつ剤群の治療効果は、低アンヘドニア群と比較して高アンヘドニア群においてより高い。全体として、効果の大きさは、高アンヘドニア群において、全ての単一時点(1週目以降)でより大きい。高アンヘドニア群におけるLSMDは、6週目で低アンヘドニア群の2倍以上である。更に、症状レベルを見ると、高アンヘドニア対低アンヘドニアを有するサブグループにおけるアンヘドニア及び不快に関連する項目のより大きな改善。
図18を参照されたい。
【0271】
(v)体重変化
導入ベースライン時点で、プラセボ群における対象の平均体重は、アチカプラント群における78.66kgと比較して76.17kgであった。二重盲検治療段階における6週間後、プラセボ群における平均体重は、アチカプラント群における78.57kgと比較して75.75kgであった。これは、両群の体重が6週間の二重盲検治療期間にわたって比較的安定したままであったことを示す。MDDに対する他の補助的治療は平均体重増加をもたらすため、これは予想外である。Thase M,et al.J Clin Psych.2015:76(9),1224-1231、Thase,J Clin Psych.2015,76(9):1232-1240、El Khalili,Int J Neuropsychopharmacol.2010,13,917-932、Marcus,J.Clin.Psychopharmacol.2008,28:156-165、Berman,J.Clin.Psychiatry 2007;68:843-853、Berman,American College of Neuropsychopharmacology,2008,Annual Meeting Abstracts (Scottsdale,Ariz,Dec 7-11,2008).Nashville,Tenn,ACNP,2008、Earley,American College of Neuropsychopharmacology,2007,Annual Meeting Abstracts (Boca Raton,Fla,Dec 9-13,2007).Nashville,TN,ACNP,2007)を参照されたい。表29を参照されたい。
【0272】
【0273】
(vi)完了率
スクリーニング段階を通過した患者は、導入段階に入り、続いて二重盲検段階に入った。導入期の間にプラセボに応答した患者は、非応答者として分類された。プラセボに応答しなかった患者は、非応答者として分類した。次いで、二重盲検治療段階を更に6週間継続し、その後、患者は離脱期間に入った。
【0274】
強化集団における121人の対象(アチカプラントにおいて60人、プラセボ群において61人)のうち、117人(96.7%)が試験を完了した。完全なITT分析セットの全体的な完了率は95%である。これは、補助的なアリピプラゾールの研究についての約85%の完了率(Pae,CNS Drugs,2011;25,109-127)及び補助的なクエチアピンについての45~62%(El Khalili、上記で引用)と対照的である。合計4人の対象(3.3%)が試験を中止した:プラセボの2人の対象及びアチカプラント治療群の2人の対象。表30及び表31を参照されたい。
【0275】
【0276】
【0277】
(vii)性機能
性機能の障害は、抗うつ剤療法の一般的な副作用であり、患者及びその性的パートナーを非常に混乱させ得る。大うつ病自体は性機能障害の増加に関連しており、薬理学的治療の多くは性機能を更に悪化させることが知られている。フランスにおけるほぼ5000人の患者の大規模な調査において、MDDを有する未治療患者において、性機能不全の有病率は65%であると推定されている。性機能不全の有病率は、抗うつ剤療法で治療された患者について71%に増加した。
【0278】
性的喜びは、快楽傾向の重要な要素である。脳報酬回路は、いくつかの領域:側坐核、腹側被蓋野及び扁桃体によって制御される。κオピオイド受容体による治療は、過剰活性化を有する患者において正常な恒常性バランスを回復させ得ると仮定される。アチカプラントによる治療は、アンヘドニアの症状を改善する可能性がある。報酬回路に関連する他の症状には、性的喜び、興味の欠如及び楽しみの欠如が含まれる。
【0279】
患者は、標準的な馴染みやすい評価スケールであるASEXを用いて測定された性機能を有していた。表32を参照されたい。
【0280】
【0281】
6週目までのASEX総スコアにおける治療ベースライン(SD)からの平均変化は、プラセボについての-0.7(2.98)ポイントと比較して、アチカプラントについては-1.5(4.02)ポイントであった。ASEXにおけるより低いスコアは、改善を示す。6週目のスコア減少は、プラセボと比較してアチカプラント群においてより大きかった。他の薬剤による補助的治療は、性機能を悪化させる、すなわち、経時的にASEXスコアを増加させることが予想されるため、これは予想外である。
図19を参照されたい。
【0282】
アチカプラントを受けた患者は、性機能において顕著な改善を有していた。個々の項目レベル変化の検査も実施され、最大の変化が、コンサマトリーな喜び:オルガスム満足、到達オルガスム及び膣潤滑/勃起に関連する項目において見られることが明らかになった。ほとんどの改善は、
図20の項目3、4及び5に見られる。
【0283】
(viii)効果の発現
アチカプラントに対する効果の発現は、試験から推定することができる。
図7Bは、ベースラインからの最小二乗平均変化を示す。アチカプラントに有利な有意な治療効果は、早くも3週目に見られた。この時点で、アチカプラントはプラセボと比較して統計的に優れた効果を示した。
【0284】
実施例2:補助的な抗うつ剤療法としての単回用量アチカプラント
試験デザイン:顕著なアンヘドニアを伴うMDD(MDD ANH+)を有し、現在のうつ病エピソードにおいてSSRI又はセロトニン及びSNRIに対する不十分な応答を有していた成人及び高齢の対象(18~74歳)におけるアチカプラントの効力、安全、及び忍容性を評価するための6週間の多施設二重盲検無作為化プラセボ対照試験。
図21を参照されたい。
【0285】
全ての対象について、この試験は、3つの段階、すなわち適格性スクリーニング段階(最初の用量投与の4週間前まで)、6週間の二重盲検治療段階、及び1~2週間のフォローアップからなる。二重盲検段階を完了した対象は、非盲検長期安全性試験に参加し得る。
【0286】
サンプルサイズ及び無作為化:顕著なアンヘドニアを伴うMDD(MDD ANH+)及び顕著なアンヘドニアを伴わないMDD(MDD ANH-)を有する約544人の対象を、補助的なプラセボ又はアチカプラントに対して1:1の比で無作為化して、一次分析に含めるのに適格なMDD ANH+についての所定の基準を満たす最低314人の成人対象を達成する。無作為化は、研究施設、年齢群(成人[<65歳]、高齢者[≧65歳])、ベースラインアンヘドニア、及びベースラインMADRS総スコアによって階層化される。全ての対象は、研究全体の間、それらのベースライン抗うつ剤(SSRI/SNRI)を継続する。
【0287】
用量及び投与全ての適格な対象は、それらのベースラインSSRI/SNRIに加えて、アチカプラント又はプラセボを受ける。治験薬は毎日服用する。
【0288】
組み入れ基準:
【0289】
【0290】
除外基準:
【0291】
【0292】
【0293】
A.有効性の目的及びエンドポイント
一次及び二次(主要及び他の)エンドポイントの評価は、少なくとも1用量の試験薬を服用したMDD ANH+を有する成人(高齢者ではない)対象を含むFASに対して行われる。
【0294】
一次:1日目(無作為化前)から6週間の二重盲検治療段階の終了(43日目)までのMADRS合計スコアにおけるベースラインからの変化によって評価される、MDD ANH+及び現在の抗うつ剤に対する不十分な応答を有する成人対象におけるうつ病性症状の改善における抗うつ剤(SSRI又はSNRI)に対する補助的療法としてのプラセボと比較したアチカプラントの効力を評価すること:
●MADRSの総スコアのベースラインから43週目までの変化。
【0295】
主要二次:アンヘドニア転帰の患者報告評価に対する抗うつ剤への補助的療法として、MDD ANH+を有する成人対象におけるプラセボと比較したアチカプラントの効力を評価すること:
●次元アンヘドニア評価スケール(DARS)総スコアにおけるベースラインから43日目までの変化。
【0296】
他の二次:補助的療法としてMDD ANH+を有する成人対象におけるプラセボと比較したアチカプラントの効力を以下に関して評価すること:
●43日目における応答者の割合(MADRS総スコアにおける≧50%の減少)。
●43日目におけるMADRS合計スコア≦12として定義される、うつ病性症状の寛解を有する対象の割合。
●ベースラインから43日目までのMADRS 6変化。
●ベースラインから43週目までのPHQ-9スコアの変化。
●ベースラインから43週目までのSHAPSスコアの変化。
●ベースラインから43日目までのGAD-7を用いた不安の症状における変化。
【0297】
探索的:補助的療法として、MDD ANH+を有する成人対象、並びに全てのMDD対象(MDD ANH+及びMDD ANH-を有する成人及び高齢対象)においてプラセボと比較したアチカプラントの効力を以下に関して評価すること:
●MADRS合計スコアにおける経時的なベースラインからの変化。
●MADRSアンヘドニア項目因子スコアにおける経時的なベースラインからの変化。
●アンヘドニアSHAPS、DARS)の患者報告アウトカムにおけるベースラインからの経時的変化。
●PHQ-9総スコアにおける経時的なベースラインからの変化。
●EQ-5D-5Lアンケートによって評価される健康関連の生活の質及び健康状態におけるベースラインから43日目までの変化。
●SDSの総スコアのベースラインから43週目までの変化。
●CGI-Sスコアにおける経時的なベースラインからの変化。
●GAD-7を用いた不安の症状におけるベースラインからの経時的な変化。
●PGI-Sを用いたうつ病性症状におけるベースラインからの経時的な変化。
●ASEXを使用した患者報告性機能におけるベースラインから43日目までの変化。
【0298】
補助的療法としてMDD ANH-を有する成人対象におけるプラセボと比較したアチカプラントの効力を以下に関して評価すること:
●MADRS合計スコアにおけるベースラインからの経時的な変化。
●DARS合計スコアにおけるベースラインからの経時的な変化。
【0299】
安全目的(全て):以下の安全性エンドポイントは、成人及び高齢者対象について別々に評価される。各年齢群についての安全性分析セットは、少なくとも1用量の治験薬を受けた全ての無作為化された対象を含む。
●AEはAESIを含む。AEとは、医薬品(治験用又は非治験用医薬品)の使用と時間的に関連のある、あらゆる好ましくない、意図しない徴候(例えば、臨床検査値の異常)、症状又は疾患のことであってもよく、医薬品(治験用又は非治験用医薬品)との因果関係の有無は問わない。TEAEは、ベースラインから悪化した治療段階中に発症したAEであった。完全な安全性分析セットは、治療期間中に少なくとも1用量の治験薬を受けた全ての登録対象を含んでいた。
●バイタルサイン
●ECG、検査値
●体重/BMI
●C-SSRSを用いた自殺傾向評価
●PWC-20を用いた禁断症状の評価
【0300】
B.併用療法及び禁止療法
背景療法:全対象は、全試験期間、彼らのベースライン抗うつ剤(SSRI/SNRI)を継続する。以下の抗うつ剤が許容される:シタロプラム、デュロキセチン、エスシタロプラム、フルボキサミン、フルオキセチン、ミルナシプラン、レボミルナシプラン、パロキセチン、セルトラリン、ベンラファキシン、及びデスベンラファキシン。対象は、試験の間、これらの許容された抗うつ剤のうちの1つのみ(すなわち、単剤療法)を、適切かつ耐容される用量で継続する。抗うつ剤又は用量の変更は、スクリーニングから試験終了まで許容されない。
【0301】
禁止療法:対象は、好ましくはEOT来診後に、AE又はブレークスルー症状を治療することを除いて、示されるように、試験前又は試験中に以下の薬剤又は栄養補助食品を使用してはならない:
●スクリーニング前4週間以内に最初の追跡訪問までのMAOI。
●1日目の少なくとも14日前から最初のフォローアップ来院までの抗精神病薬。
●ベンゾジアゼピン、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬(例えば、ゾルピデム、ゾピクロン、ザレプロン、エスゾピクロン、スボレキサント及びラメルテオンを含むが、これらに限定されない催眠薬)又は栄養補助食品(1日目の少なくとも7日前から最初のフォローアップ訪問まで)、一般用睡眠薬(例えば、ジフェンヒドラミン、ドキシルアミン及びヒドロキシジン)を含む鎮静抗ヒスタミン薬、並びにメラトニン/アゴメラチン。
スクリーニング段階中にベンゾジアゼピン及び/又は非ベンゾジアゼピン睡眠薬を服用していた対象は、二重盲検治療段階中にこれらの薬剤(ロラゼパム6mg/日の当量以下の用量で)を継続することができる。6mg/日のロラゼパムの当量を超える用量増加、又は新しいベンゾジアゼピン投薬は、二重盲検治療段階の間に許可されない。
●1日目の少なくとも7日前から最初のフォローアップ訪問までの非SSRI/SNRI抗うつ剤(例えば、ドキセピン、トラゾドン、ミルタザピン、ブプロピオン、三環系抗うつ剤、アゴメラチン、及びSAMe)。
●任意の形態の新たな精神療法又は現在の精神療法の変更は、スクリーニング及び二重盲検段階中に禁止される。
●1日目の少なくとも7日前から最初のフォローアップ訪問までのオピエート及び気分安定薬(例えば、リチウム及び抗痙攣薬)。
●1日目の少なくとも7日前からEOTまでの刺激薬(例えば、デキサンフェタミン、メチルフェニデート、デクスメチルフェニデート)、経口全身ステロイド、及び食欲抑制剤(エフェドリン)、及びイソクスプリン。
●磁気及び電気的刺激療法:スクリーニングから試験終了来院までの、電撃性ショック、迷走神経刺激、脳深部刺激、任意のタイプのTMS、又はDCS若しくは電気的刺激。スクリーニング前のTMS又はDCS又は電気刺激の使用は、排他的ではない。
●うつ病のために処方されるT3、チロイドホルモン又は他の甲状腺機能補充。
これらの薬剤は、既存の甲状腺疾患/障害を制御するために与えられる場合に許可される。
●試験前5年以内及び試験中のケタミン又はエスケタミン(スクリーニング前の生涯において最大2回の投与が許容される)。
●サイケデリックス(例えば、シロシビン)。
●メマンチン。
●試験前30日以内及び試験中の他の治験薬。
【0302】
実施例3:顕著なアンヘドニア及び現在の抗うつ剤療法に対する不十分な応答を有するMDDを有する成人及び高齢者対象における補助的療法としての固定用量のアチカプラント5mg及び10mgの効力、安全、及び忍容性を評価するための無作為化、二重盲検、多施設、プラセボ対照試験
試験デザイン:顕著なアンヘドニアを伴うMDDを有し、現在のうつ病エピソードにおいてSSRI又はSNRIに対する不十分な応答を有した成人及び高齢の対象(18~74歳)におけるアチカプラントの効力、安全、及び忍容性を評価するための、8週間の多施設二重盲検無作為化プラセボ対照試験。
図22を参照されたい。
【0303】
全ての対象について、この試験は3つの段階からなる:
●適格性スクリーニング段階(最初の用量投与の4週間前まで)
●8週間の二重盲検治療段階
●及び1~2週間のフォローアップ段階。
【0304】
およそ624人の対象(プラセボ、アチカプラント5mg、及びアチカプラント10mgに対して2:1:1の比で無作為化された)が試験に登録される。この登録は、顕著なアンヘドニアを伴うMDDを有する最低556人の成人対象及び顕著なアンヘドニアを伴うMDDを有する約68人の高齢対象(≧65歳)を達成することを目標とする。
【0305】
二重盲検治療段階を完了した対象は、非盲検長期安全性試験に参加し得る。
【0306】
サンプルサイズ及び無作為化:顕著なアンヘドニアを有するMDDを有する約624人の成人(<65歳)及び高齢者(≧65歳)の対象を、補助的なプラセボ、5mgアチカプラント、又は10mgアチカプラントに対して2:1:1の比で無作為化して、主要効力分析セットに含めるのに適格な顕著なアンヘドニアを有するMDDの所定の基準を満たす最低556人の成人対象を達成する。無作為化は、試験施設、年齢群(成人、高齢者)及びベースラインMADRS総スコアによって層別化される。全ての対象は、研究全体の間、それらのベースライン抗うつ剤(SSRI/SNRI)を継続する。
【0307】
用量及び投与:全ての適格な対象は、それらのベースラインSSRI/SNRIに加えて、アチカプラント5mg、アチカプラント10mg又はプラセボを投与され、これは全試験の間継続される。治験薬は毎日服用する。
【0308】
組み入れ基準:
【0309】
【0310】
除外基準:
【0311】
【0312】
【0313】
A.有効性の目的及びエンドポイント
一次及び二次(主要及び他の)エンドポイントの評価は、少なくとも1用量の試験薬を服用した、顕著なアンヘドニアを伴うMDDを有する成人(高齢者ではない)対象を含む完全な分析セット(FAS)に対して行われる。
【0314】
一次:顕著なアンヘドニア及び現在の抗うつ剤に対する不十分な応答を伴うMDDを有する成人対象(18~64歳)におけるうつ病性症状の改善において、抗うつ剤(SSRI又はSNRI)に対する補助的療法としてプラセボと比較して、2つの固定用量のアチカプラント(5mg及び10mg)の効力を評価する。
●MADRSの総スコアのベースラインから43週目までの変化。
【0315】
主要二次:顕著なアンヘドニアを有するMDDを有する成人対象において、アンヘドニア転帰の患者報告評価に対する抗うつ剤への補助的療法として、プラセボと比較したアチカプラント10mgの効力を評価すること:
●次元アンヘドニア評価スケール(DARS)総スコアにおけるベースラインから43日目までの変化。
【0316】
他の二次:顕著なアンヘドニアを伴うMDDを有する成人対象における抗うつ剤(SSRI又はSNRI)に対する補助的療法として、プラセボと比較したアチカプラントの効力を評価する。
●43日目及び57日目における応答者の割合(MADRS総スコアの≧50%減少)。
●43日目及び57日目におけるMADRS合計スコア≦12として定義される、うつ病性症状の寛解を有する対象の割合。
●MADRS-6におけるベースラインから43日目及び57日目までの変化
●患者健康アンケートにおけるベースラインから43日目及び57日目までの変化、9項目(PHQ-9)合計スコア。
【0317】
探索的:補助的療法として顕著なアンヘドニアを有するMDDを有する成人対象において、プラセボと比較したアチカプラントの効力を評価すること:
●MADRS合計スコアにおける経時的なベースラインからの変化。
●MADRSアンヘドニア項目因子スコアにおける経時的なベースラインからの変化。
●アンヘドニアSHAPS、DARS)の患者報告結果におけるベースラインからの経時的変化。
●PHQ-9総スコアにおける経時的なベースラインからの変化。
●EQ-5D-5Lアンケートによって評価される健康関連の生活の質及び健康状態におけるベースラインから43日目までの変化。
●シーハン障害スケール(SDS)総スコアにおけるベースラインから43日目までの変化。
●CGI-Sスコアにおける経時的なベースラインからの変化。
●GAD-7を用いた不安の症状におけるベースラインからの経時的な変化。
●PGI-Sを用いたうつ病性症状におけるベースラインからの経時的な変化。
●ASEXを使用した患者報告性機能におけるベースラインから43日目までの変化。
【0318】
安全目的(全て):以下の安全性エンドポイントは、成人及び高齢者対象について別々に評価される。各年齢群についての安全性分析セットは、少なくとも1用量の治験薬を受けた全ての無作為化された対象を含む。
●AEはAESIを含む
●バイタルサイン
●ECG
●検査値
●体重/BMI
●C-SSRSを用いた自殺傾向評価
●PWC-20を用いた禁断症状の評価
【0319】
他の目的(探索的):
●診断バイオマーカーを同定し、アチカプラントによる単独療法時のうつ症状及びアンヘドニアに対する臨床応答に関してMDD関連のバイオマーカーの変化を調査すること。
●アチカプラントの薬物動態(PK)、安全、又は忍容性に影響を及ぼし得る遺伝因子及び他の因子を同定すること。
【0320】
B.併用療法及び禁止療法
背景療法:全対象は、全試験期間、彼らのベースライン抗うつ剤(SSRI/SNRI)を継続する。以下の抗うつ剤が許容される:シタロプラム、デュロキセチン、エスシタロプラム、フルボキサミン、フルオキセチン、ミルナシプラン、レボミルナシプラン、パロキセチン、セルトラリン、ベンラファキシン、及びデスベンラファキシン。対象は、試験の間、これらの許容された抗うつ剤のうちの1つのみ(すなわち、単剤療法)を、適切かつ耐容される用量で継続する。抗うつ剤又は用量の変更は、スクリーニングから試験終了まで許容されない。
【0321】
禁止療法:
対象は、好ましくはEOT来診後に、AE又はブレークスルー症状を治療することを除いて、示されるように、試験の前又は間に以下の薬剤又は栄養補助食品を使用してはならない:
●スクリーニング前4週間以内に最初の追跡訪問までのMAOI。
●1日目の少なくとも14日前から最初のフォローアップ来院までの抗精神病薬。
●ベンゾジアゼピン、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬(例えば、ゾルピデム、ゾピクロン、ザレプロン、エスゾピクロン、スボレキサント及びラメルテオンを含むが、これらに限定されない催眠薬)又は栄養補助食品(1日目の少なくとも7日前から最初のフォローアップ訪問まで)、一般用睡眠薬(例えば、ジフェンヒドラミン、ドキシルアミン及びヒドロキシジン)を含む鎮静抗ヒスタミン薬、並びにメラトニン。スクリーニング段階中にベンゾジアゼピン及び/又は非ベンゾジアゼピン睡眠薬を服用していた対象は、二重盲検治療段階中にこれらの薬剤(ロラゼパム6mg/日の当量以下の用量で)を継続することができる。6mg/日のロラゼパムの当量を超える用量増加、又は新しいベンゾジアゼピン投薬は、二重盲検治療段階の間に許可されない。
●1日目の少なくとも7日前から最初のフォローアップ訪問までの非SSRI/SNRI抗うつ剤(例えば、ドキセピン、トラゾドン、ミルタザピン、ブプロピオン、三環系抗うつ剤、アゴメラチン、及びSAMe)。
●本試験のスクリーニング及び二重盲検段階の間、新しい精神療法又は現在の精神療法の変更の任意の形態は禁止される。
●1日目の少なくとも7日前から最初のフォローアップ訪問までのオピエート及び気分安定薬(例えば、リチウム及び抗痙攣薬)。
●1日目の少なくとも7日前からEOTまでの刺激薬(例えば、デキサンフェタミン、メチルフェニデート、デクスメチルフェニデート)、経口全身ステロイド、及び食欲抑制剤(エフェドリン)、及びイソクスプリン。
●磁気及び電気的刺激療法:スクリーニングから試験終了来院までの、電撃性ショック、迷走神経刺激、脳深部刺激、任意のタイプのTMS、又はDCS若しくは電気的刺激。スクリーニング前のTMS又はDCS又は電気刺激の使用は、排他的ではない。
●うつ病のために処方されるT3、チロイドホルモン又は他の甲状腺機能補充。これらの薬剤は、既存の甲状腺疾患/障害を制御するために与えられる場合に許可される。
●試験前5年以内及び試験中のケタミン又はエスケタミン(スクリーニング前の生涯において最大2回の投与が許容される)。
●サイケデリックス(例えば、シロシビン)。
●メマンチン。
●試験前30日以内及び試験中の他の治験薬。
【国際調査報告】