(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-12
(54)【発明の名称】結節性痒疹の治療のためのルキソリチニブ
(51)【国際特許分類】
A61K 31/519 20060101AFI20240405BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20240405BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
A61K31/519
A61P17/04
A61K9/107
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568020
(86)(22)【出願日】2022-05-03
(85)【翻訳文提出日】2023-11-24
(86)【国際出願番号】 US2022027393
(87)【国際公開番号】W WO2022235617
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505193450
【氏名又は名称】インサイト・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】INCYTE CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンツェル,イェルク
(72)【発明者】
【氏名】スミス、ポール
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA07
4C076BB31
4C076CC18
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086GA13
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA89
4C086ZC51
4C086ZC75
(57)【要約】
本開示は、ルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩、及び結節性痒疹の治療におけるその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における結節性痒疹を治療するための方法であって、治療上有効な量のルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記ルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩が、ルキソリチニブリン酸塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩が、患部の皮膚領域に局所的に投与される、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記ルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩が、局所製剤で投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記局所製剤が、遊離塩基ベースで、約0.1%~約3%の前記ルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む局所製剤として投与される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記局所製剤が、遊離塩基ベースで、約0.5%~約1.5%の前記ルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む局所製剤として投与される、請求項4~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記局所製剤が、遊離塩基ベースで、約0.75%~約1.5%の前記ルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む局所製剤として投与される、請求項4~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記局所製剤が、遊離塩基ベースで、約0.75%の前記ルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む局所製剤として投与される、請求項4~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記局所製剤が、遊離塩基ベースで、約1%の前記ルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む局所製剤として投与される、請求項4~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記局所製剤が、遊離塩基ベースで、約1.5%の前記ルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む局所製剤として投与される、請求項4~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記局所製剤が1日2回(BID)投与される、請求項4~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記局所製剤が1日1回(QD)投与される、請求項4~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記局所製剤が少なくとも12週間投与される、請求項4~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記局所製剤が、クリーム製剤である、請求項4~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記対象が、ベースラインから2グレード以上の改善を伴う0または1のIGAスコアを達成する、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記対象が、ベースラインからのかゆみNRSに対する対象の応答の改善を達成する、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記対象が、ベースラインからのかゆみNRSに対する対象の応答において、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約95%の改善を達成する、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記対象が、ベースラインからの痒疹活性スコア(PAS)における対象の応答において、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約95%の改善を達成する、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記対象が、ベースラインからのかゆみの生活の質(かゆみQoL)における対象の応答において、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約95%の改善を達成する、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記対象が、ベースラインからの動的掻痒スコア(DPS)における対象の応答において、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約95%の改善を達成する、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記対象が、ベースラインからのDLQIに対する対象の応答において、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約95%の改善を達成する、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記対象が、ベースラインでのかゆみ数値評価尺度が4以上である、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記対象が、18歳以上である、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記ルキソリチニブ、またはその薬学的に許容される塩が、さらなる治療薬と組み合わせて投与される、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2021年5月3日に出願された米国仮出願第63/183,225号の権益を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、結節性痒疹の治療に使用されるルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩に関する。
【背景技術】
【0003】
結節性痒疹(PN)は、数ミリメートルから数センチメートルの範囲のサイズの硬いドーム状の強い掻痒性結節を特徴とする慢性皮膚障害である。結節は、多くの場合、腕及び脚の伸展面ならびに体幹に対称的に分布している。PNの有病率は、健康保険加入者に基づいて、米国では100,000人当たり72人と推定されている。男性よりも女性に多いのか、それとも男性と女性で同等に発生するのかについては報告が異なる。皮膚の色素沈着が比較的濃い、または程度が比較的大きい人は、皮膚の色素沈着が比較的軽いまたは比較的少ない患者よりも、PNを患う可能性が大幅に高い。特に、ある研究では、アフリカ系アメリカ人の患者は白人の患者よりもPNを有する可能性が3.4倍高いことが分かった。
【0004】
生活の質は、PNによって実質的に悪影響を受ける可能性がある。特に、生活の質の問題には、睡眠障害、業務実績への影響、及び社会活動の回避が含まれる。さらに、結節性痒疹における全身性併存症の負担は、他の炎症性皮膚疾患(例えば、アトピー性皮膚炎または乾癬)の負担を超えることが多い。結節性痒疹は、HIV及び悪性腫瘍だけでなく、精神衛生状態(特に不安及びうつ病)、内分泌疾患、心血管疾患、及び腎疾患の発生率の増加と関連している。PN患者のほぼ半数が、アトピー性皮膚炎の病歴を報告している。
【0005】
就寝時に投与される第1世代鎮静性抗ヒスタミン薬(例えば、ヒドロキシジン、ジフェンヒドラミン)による薬物療法は、夜間掻痒の制御に有用でありうる。選択的セロトニン再取り込み阻害薬も三環系抗うつ薬も、特にうつ病の要素が存在する場合、慢性掻痒にも使用される。
【0006】
超強力な局所コルチコステロイドは第1選択の治療法とみなされる。広範な疾患を有する患者には光療法を行ってもよい。難分解性PNの患者には、全身性免疫抑制薬、サリドマイド、レナリドマイド、及び抗痙攣薬を含む全身治療を行うことができる。これらの治療は、有意な毒性を伴う可能性があり、難治性PN患者におけるその有効性は立証されていない。したがって、結節性痒疹を治療するための新規治療法を開発する必要がある。本出願は、このニーズ及び他のニーズに対応するものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】PN病態生理のJAK1/JAK2媒介性薬理学的阻害に使用される皮膚パンチ生検の代表例を示す図である。
【
図2】JAK1/JAK2阻害剤ルキソリチニブを用いたPN病態生理学のJAK1/JAK2媒介性薬理学的阻害のグラフ表示を示す図である。
【発明の概要】
【0008】
本明細書では、治療が必要な対象における結節性痒疹を治療する方法を提供し、その方法には、その対象に治療上有効な量のルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩を投与することが含まれる。
【0009】
本明細書では、治療が必要な対象における結節性痒疹を治療するためのルキソリチニブ、またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0010】
本明細書では、治療が必要な対象における結節性痒疹を治療する際に用いる薬物を製造するためのルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明では、とりわけ、治療が必要な対象における結節性痒疹を治療する方法を提供し、その方法には、その対象に治療上有効な量のルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩を投与することが含まれる。ルキソリチニブは、JAK3に対してJAK1及びJAK2に選択的なJAK1/JAK2阻害剤である。
【0012】
いくつかの実施形態において、ルキソリチニブは、リン酸ルキソリチニブの形態で存在する。
【0013】
いくつかの実施形態において、ルキソリチニブは、リン酸ルキソリチニブ(1:1塩)の形態で存在する。
【0014】
いくつかの実施形態において、ルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩は、患部の皮膚領域に局所的に投与される。
【0015】
いくつかの実施形態では、ルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩は、局所製剤として投与される。
【0016】
いくつかの実施形態では、局所製剤は、遊離塩基ベースで、約0.1%~約3%のルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む局所製剤として投与される。
【0017】
いくつかの実施形態では、局所製剤は、遊離塩基ベースで、約0.5%~約2%のルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む局所製剤として投与される。
【0018】
いくつかの実施形態では、局所製剤は、遊離塩基ベースで、約0.5%~約1.5%のルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む局所製剤として投与される。
【0019】
いくつかの実施形態では、局所製剤は、遊離塩基ベースで、約0.75%~約1.5%のルキソリチニブまたはその薬学的に許容可能な塩を含む局所製剤として投与される。
【0020】
いくつかの実施形態では、局所製剤は、遊離塩基ベースで、約0.5%のルキソリチニブまたはその薬学的に許容可能な塩を含む局所製剤として投与される。いくつかの実施形態では、局所製剤は、遊離塩基ベースで、約0.75%のルキソリチニブまたはその薬学的に許容可能な塩を含む局所製剤として投与される。いくつかの実施形態では、局所製剤は、遊離塩基ベースで、約1%のルキソリチニブまたはその薬学的に許容可能な塩を含む局所製剤として投与される。いくつかの実施形態では、局所製剤は、遊離塩基ベースで、約1.5%のルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む局所製剤として投与される。
【0021】
いくつかの実施形態では、局所製剤は、1日2回(BID)投与される。いくつかの実施形態では、局所製剤は、1日1回(QD)投与される。
【0022】
いくつかの実施形態において、投与を12週間継続する。
【0023】
いくつかの実施形態において、投与を12週間毎日継続する。
【0024】
いくつかの実施形態において、ルキソリチニブ、またはその薬学的に許容される塩は、さらなる治療薬と組み合わせて投与される。
【0025】
いくつかの実施形態において、投与は、ルキソリチニブ、またはその薬学的に許容される塩を、少なくとも1つの薬学的に許容される担体または賦形剤と共に投与することを含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される治療方法の有効性は、治験責任医師のグローバル評価(IGA)に基づいて確立することができる。いくつかの実施形態では、IGA-TS(治験責任医師のグローバル評価-治療の成功)は、ベースラインから2グレード以上の改善を伴う0または1のIGAスコアとして定義される。有効性は、指定された時点(例えば、2週目、4週目、8週目、または16週目)でIGA-TS(2点減少を伴う0または1のIGA)を達成した対象の割合を評価することによって確立することができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される治療方法の有効性は、かゆみ数値評価尺度(かゆみNRS)に基づいて確立することができる。いくつかの実施形態では、有効性は、かゆみNRSにおいて少なくとも2ポイントまたは4ポイントの改善を達成する対象の予め設定された割合を(例えば、16週目に)達成することによって実証することができる。いくつかの実施形態では、かゆみNRSにおけるベースラインから2ポイント以上または4ポイント以上の改善までの時間を観察することによって有効性を実証することができる。いくつかの実施形態において、ルキソリチニブ、もしくはその薬学的に許容される塩、及び/または本明細書に記載の使用方法は、ベースラインからのかゆみNRSに対する対象の応答の改善をもたらす。いくつかの実施形態において、ルキソリチニブ、もしくはその薬学的に許容される塩、及び/または本明細書に記載の使用方法は、ベースラインからのかゆみNRSに対する対象の応答において、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約95%の改善をもたらす。かゆみNRSは、かゆみ強度の毎日の患者報告尺度(24時間の想起)である。対象は、過去24時間のかゆみの最悪のレベルを最もよく表す0(かゆみなし)から10(考えられる最悪のかゆみ)までの数値を選択することにより、ADによるかゆみの重症度を評価するよう求められる。非限定的な例では、かゆみの重症度を記録するためのハンドヘルドデバイス(eDiary)を患者に発行することができる。患者に毎晩eDiaryを完了するように指示することができる。
【0028】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される治療方法の有効性は、痒疹活性スコア(PAS)に基づいて確立することができる。いくつかの実施形態において、ルキソリチニブ、もしくはその薬学的に許容される塩、及び/または本明細書に記載の使用方法は、ベースラインからの痒疹活性スコア(PAS)における対象の応答の改善をもたらす。いくつかの実施形態において、ルキソリチニブ、もしくはその薬学的に許容される塩、及び/または本明細書に記載の使用方法は、ベースラインからの痒疹活性スコア(PAS)における対象の応答において、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約95%の改善をもたらす。PN皮膚病変の変化を定量化するために、上部に擦過傷/痂皮があるPN病変のパーセンテージ(活発な引っかきを反映する)及び治癒した痒疹病変のパーセンテージに関する活性を、PASのサブ項目「活性」により測定する。
【0029】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される治療方法の有効性は、かゆみの生活の質(かゆみQoL)に基づいて確立され得る。いくつかの実施形態において、ルキソリチニブ、もしくはその薬学的に許容される塩、及び/または本明細書に記載の使用方法は、ベースラインからのかゆみQoLにおける対象の応答の改善をもたらす。いくつかの実施形態において、ルキソリチニブ、もしくはその薬学的に許容される塩、及び/または本明細書に記載の使用方法は、ベースラインからのかゆみQoLにおける対象の応答において、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約95%の改善をもたらす。かゆみQoLは、Chen et al.,Arch Dermatol,147(10):1153-6(2011)により開発及び検証された、掻痒症に特化した手段である。22問答アンケートは、根本的な原因に依存せずに、掻痒症患者に適用することができる。かゆみQoLは、ドメインの症状、機能及び感情を含む3次元ツールである。
【0030】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される治療方法の有効性は、動的掻痒スコア(DPS)に基づいて確立することができる。いくつかの実施形態において、ルキソリチニブ、もしくはその薬学的に許容される塩、及び/または本明細書に記載の使用方法は、ベースラインからの動的掻痒スコア(DPS)における対象の応答の改善をもたらす。いくつかの実施形態において、ルキソリチニブ、もしくはその薬学的に許容される塩、及び/または本明細書に記載の使用方法は、ベースラインからの動的掻痒スコア(DPS)における対象の応答において、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約95%の改善をもたらす。DPSは、定義された初期の時点と比較して掻痒強度の変化を評価し、それぞれが数値と言語の両方の説明でラベル付けされた、スケール上の11個のマークを介してかゆみ改善を測定する水平線から構成される。
【0031】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される治療方法の有効性は、患者報告アウトカム(PRO)に基づいて確立することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される治療方法の有効性は、皮膚科生活の質指数(DLQI)に基づいて確立され得る。いくつかの実施形態において、ルキソリチニブ、もしくはその薬学的に許容される塩、及び/または本明細書に記載の使用方法は、ベースラインからのDLQIに対する対象の応答の改善をもたらす。いくつかの実施形態において、ルキソリチニブ、もしくはその薬学的に許容される塩、及び/または本明細書に記載の使用方法は、ベースラインからのDLQIに対する対象の応答において、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約95%の改善をもたらす。皮膚科特有の生活の質を測定するツール。これは、80か国以上で40を超える異なる皮膚症状に使用されており、90を超える言語で利用可能である検証済みの10問のアンケートである。
【0032】
いくつかの実施形態では、有効性は、対象者のPROMIS睡眠尺度の改善に基づいて評価することができる。いくつかの実施形態において、ルキソリチニブ、もしくはその薬学的に許容される塩、及び/または本明細書に記載の使用方法は、ベースラインからのPROMIS睡眠尺度に対する対象の応答の改善をもたらす。いくつかの実施形態において、ルキソリチニブ、もしくはその薬学的に許容される塩、及び/または本明細書に記載の使用方法は、ベースラインからのPROMIS睡眠尺度に対する対象の応答において、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約95%の改善をもたらす。
【0033】
いくつかの実施形態では、患者は、ベースラインでのかゆみ数値評価尺度が4以上である。
【0034】
一部の実施形態において、患者は18歳以上である。
【0035】
「約」という用語は、「およそ」(例えば、示された値のプラスまたはマイナス約10%)を意味する。
【0036】
いくつかの実施形態では、ルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩は、それぞれルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む1つ以上の徐放性剤形として投与される。
【0037】
本明細書に記載の実施形態は、その実施形態が多項従属クレームであるかのように、任意の好適な組み合わせで合わせられることが意図される(例えば、ルキソリチニブ及びその用量に関する実施形態、本明細書で開示される化合物の任意の塩形態に関する実施形態、サイトカイン関連疾患または障害の個々の種類に関する実施形態及び任意の組み合わせで合わされ得る組成物及び/または投与に関する実施形態)。
【0038】
全ての可能な組み合わせは、単に簡潔にするために、本明細書において別々に示されていない。
【0039】
本明細書に記載される化合物はまた、本開示の同位体標識化合物を含み得る。「同位体標識された」または「放射標識された」化合物は、1個以上の原子が、通常は天然に見られる(すなわち、天然に存在する)原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量数を有する原子によって置き換えられているか、または置換されている本開示の化合物である。本開示の化合物に組み込むことができる適切な放射性核種としては、2H(重水素としてDとも表記される)、3H(三重水素としてTとも表記される)、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、18F、35S、36Cl、82Br、75Br、76Br、77Br、123I、124I、125I、及び131Iが挙げられるが、これらに限定されるものではない。例えば、本開示の化合物中の1つ以上の水素原子を、重水素原子に置き換えることができる(例えば、-CD3を-CD3で置き換えるなど、式(I)、(II)、または(III)のC1-6アルキル基の1つ以上の水素原子を、必要に応じて重水素原子で置き換えることができる)。本明細書で使用される「化合物」という用語は、名前が特定の立体異性体を示していない限り、示された構造のすべての立体異性体、幾何異性体、互変異性体、及び同位体を含むことを意味する。1つの特定の互変異性型として名称または構造によって特定される本明細書の化合物は、別段の指定がない限り、他の互変異性型を含むことを意図する。
【0040】
すべての化合物及びその薬学的に許容される塩は、水及び溶媒などの他の物質と一緒に確認され得る(例えば、水和物及び溶媒和物)または、単離され得る。
【0041】
いくつかの実施形態において、本明細書において記載される化合物またはその塩は、実質的に単離されている。「実質的に単離されている」とは、化合物が形成または検出された環境から化合物が少なくとも部分的に、または実質的に分離されていることを意味する。部分的な分離は、例えば、本明細書に記載の化合物が濃縮された組成物を含むことができる。実質的な分離には、本明細書において記載される化合物またはその塩の少なくとも約50重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約90重量%、少なくとも約95重量%、少なくとも約97重量%、または少なくとも約99重量%を含む組成物が含まれ得る。化合物及びそれらの塩を単離する方法は、当該技術分野において日常的なものである。
【0042】
「薬学的に許容される」という語句は、適切な医学的判断の範囲内でヒト及び動物の組織と接触させて使用するのに好適であり、過度の毒性、刺激、アレルギー応答、または他の問題もしくは合併症を伴うことなく、妥当な利益/リスク比に見合うような化合物、物質、組成物、及び/または剤形を指すために本明細書で用いられる。
【0043】
本明細書で使用する「周囲温度」及び「室温」または「rt」という表現は、当技術分野で理解されており、概して、反応が行われる部屋の温度、例えば、約20℃~約30℃の温度に近い温度、例えば反応温度を指す。
【0044】
本発明には、本明細書に記載の化合物の薬学的に許容される塩も含まれる。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」は、既存の酸または塩基部分をその塩形態に変換することによって親化合物が改変されている、開示される化合物の誘導体を指す。薬学的に許容される塩の例としては、アミンなどの塩基性残基の無機酸塩または有機酸塩、カルボン酸などの酸性残基のアルカリ塩または有機塩などが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の薬学的に許容される塩には、例えば、非毒性の無機酸または有機酸から形成される親化合物の従来の非毒性塩が含まれる。本発明の薬学的に許容される塩は、従来の化学的方法により、塩基性部分または酸性部分を含有する親化合物から合成することができる。一般に、そのような塩は、水中もしくは有機溶媒中、またはその2つの混合物中で、化学量論的量の適切な塩基または酸と、これらの化合物の遊離酸または塩基形態を反応させることにより調製することができ、一般に、エーテル、酢酸エチル、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、もしくはブタノール)またはアセトニトリル(ACN)のような非水性培地が好ましい。好適な塩のリストは、Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pa.,1985,p.1418及びJournal of Pharmaceutical Science,66,2(1977)に見出され、その各々の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0045】
本明細書で用いられる場合、交換可能に使用される「対象」、「個体」または「患者」という用語は、哺乳動物、好ましくはマウス、ラット、他の齧歯類、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマまたは霊長類を含む任意の動物、最も好ましくはヒトとを指す。いくつかの実施形態では、「対象」、「個体」、または「患者」は、該治療を必要とする。
【0046】
いくつかの実施形態において、ルキソリチニブ、またはその薬学的に許容される塩は、治療上有効な量で投与される。本明細書で使用される場合、「治療上有効な量」という語句は、研究者、獣医師、医師、または他の臨床医によって組織、系、動物、個体、またはヒトにおいて求められている生物学的または薬物的応答を引き出す、活性化合物または医薬品の量を指す。
【0047】
本明細書で使用されるとき、「治療すること」または「治療」という用語は、(1)疾患を阻害すること、例えば、疾患、状態、または障害の病状または総体症状を経験しているかまたはそれを示している個体において疾患、状態、または障害を阻害すること(すなわち、病状及び/または総体症状のさらなる進展を停止させること)、(2)疾患を改善させること、例えば、疾患の重症度を低下させる等、疾患、状態、または障害の病状または総体症状を経験しているかまたはそれを示している個体において疾患、状態、または障害を改善させること(すなわち、病状及び/または総体症状を好転させること)、のうちの1つ以上を指す。
【0048】
いくつかの実施形態において、ルキソリチニブ、またはその薬学的に許容される塩は、結節性痒疹の素因を有し得る個体において結節性痒疹を予防することができる。「予防する」という用語は、疾患の素因となる可能性があるが、疾患の病理または症状をまだ経験または表示していない患者における疾患の発生を阻止することを指す。
【0049】
併用療法
本明細書に記載される方法は、1つ以上の追加の治療剤を投与することを更に含むことができる。1つ以上の追加の治療剤は、患者に同時に、または順次に投与され得る。1つ以上の追加の治療剤は、異なる方法を使用して(例えば、局所的に)投与することができる。
【0050】
いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、JAK阻害剤から選択される。追加のJAK阻害剤には、ATI-50002(JAK1/3選択的)が含まれ得る。追加のJAK阻害剤には、PF-06651600(JAK3選択的)が含まれ得る。追加のJAK阻害剤には、PF06700841(JAK1/TYK2選択的)が含まれ得る。追加のJAK阻害剤には、バリシチニブ(JAK1/JAK2選択的)が含まれ得る。追加のJAK阻害剤には、TYK2選択的阻害剤が含まれ得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、抗酸化剤から選択される。抗酸化剤は、シュードカタラーゼ、ビタミンE、ビタミンC、ユビキノン、リポ酸、ポリポディウム・ロイコトモース、カタラーゼ/スーパーオキシドジスムターゼの組み合わせ、及びイチョウから選択され得る。いくつかの実施形態では、抗酸化剤は、光療法と組み合わせてさらに投与され得る。光療法中または光療法の前の抗酸化剤の投与は、UV放射線自体によって誘発される酸化ストレスを打ち消し、光療法の有効性を高めることを目的とする。
【0052】
いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、抗ヒスタミン薬を含む。
【0053】
いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、代謝拮抗剤である。代謝拮抗剤には5-フルオロウラシルが含まれ得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、局所コルチコステロイド、免疫調節剤、カルシニューリン阻害剤、及び光療法から選択される。いくつかの実施形態では、追加の治療法は、全身性ステロイドまたは免疫抑制剤である。
【0055】
いくつかの実施形態において、追加の治療剤は、全身性ステロイドを含むステロイド(例えば、経口投与ステロイド)を含む。ステロイド治療は、経口ステロイドミニパルス療法(例えば、ベタメタゾン及び/またはデキサメタゾンを使用する)を含み得る。
【0056】
いくつかの実施形態では、局所コルチコステロイドは、強化されたジプロピオン酸ベタメタゾン、プロピオン酸クロベタゾール、二酢酸ジフロラゾン、プロピオン酸ハロベタゾールアムシノニド、吉草酸ベタメタゾン、デソキシメタゾン、二酢酸ジフロラゾン、フルオシノロンアセトニド、ハルシノニド、及びトリアムシノロンアセトニドから選択される。
【0057】
いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、免疫調節剤を含む。免疫調節剤には、抗IL15療法(例えば、AMG714モノクローナル抗体)が含まれ得る。免疫調節剤には、抗IL36療法(例えば、イムシドリマブ及びスペソリマブ)が含まれ得る。免疫調節剤には、抗TNFα療法(例えば、エタネルセプト及びインフリキシマブ)が含まれ得る。
【0058】
いくつかの実施形態において、免疫調節剤は、アプレミラスト、クリサボロール、アファメラノチド、ミノサイクリン、亜鉛、トファシチニブ、AMG714モノクローナル抗体、イムシドリマブ、スペゼオリマブシクロスポリン、エタネルセプト、インフリキシマブ、シクロホスファミド、シクロスポリン、メトトレキサート、及びオキソジヒドロアクリジニル酢酸ナトリウム(ODHAA)から選択される。
【0059】
いくつかの実施形態では、カルシニューリン阻害剤は、タクロリムス(FK-506)及びピメクロリムスから選択される。
【0060】
いくつかの実施形態では、光療法は、紫外線(例えば、エキシマランプまたはレーザー)への曝露を含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、ヤヌスキナーゼ阻害剤である。いくつかの実施形態において、ヤヌスキナーゼ阻害剤は局所的に投与される。
【0062】
いくつかの実施形態において、追加の治療剤は、ニューロキニン1受容体アンタゴニスト(例えば、アプレピタント)である。
【0063】
いくつかの実施形態において、追加の治療剤は、抗IL-4/IL-13抗体を含む。いくつかの実施形態において、抗IL-4/IL-13抗体は、デュピルマブ、レブリキズマブ、及びトラロキヌマブから選択される。
【0064】
いくつかの実施形態において、追加の治療剤は、抗IL-5抗体を含む。いくつかの実施形態において、抗IL-5抗体は、ベンラリズマブ、メポリズマブ、及びレスリズマブから選択される。
【0065】
いくつかの実施形態において、追加の治療剤は、抗IL-31抗体を含む。いくつかの実施形態において、抗IL-31抗体には、ネモリズマブが含まれる。
【0066】
いくつかの実施形態において、追加の治療剤は、IL-6アンタゴニストまたは受容体アンタゴニストである。いくつかの実施形態において、IL-6受容体アンタゴニストはトシリズマブである。
【0067】
医薬製剤及び剤形
ルキソリチニブ、またはその薬学的に許容される塩は、医薬品として使用される場合、医薬組成物の形態で投与することができる。これらの組成物は、医薬分野で周知の様式で調製することができ、局所処置が所望されるか、または全身処置が所望されるか、及び処置対象となる領域に応じて、様々な経路によって投与することができる。投与は、局所(経皮、表皮、眼、ならびに鼻腔内、膣、及び直腸送達を含む粘膜への送達を含む)、肺(例えば、ネブライザーによるものを含む粉末またはエアロゾルの吸入または吹送による;気管内または鼻腔内)、経口または非経口であり得る。非経口投与には、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内、もしくは筋肉内注射もしくは注入、または頭蓋内、例えば、髄腔内もしくは脳室内の投与が含まれる。非経口投与は、単回ボーラス用量の形態であり得るか、または、例えば、連続灌流ポンプによるものであってもよい。局所投与のための薬学的組成物及び製剤としては、経皮パッチ、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、ドロップ、坐薬、スプレー、フォーム、液体、及び粉末が挙げられ得る。従来の薬学的担体、水性基剤、粉末基剤、または油性基剤、増粘剤などは、必須であるか、または望ましいことがある。
【0068】
本発明には、活性成分として、本明細書に記載のルキソリチニブもしくはその薬学的に許容される塩、またはその薬学的に許容される塩を、1つ以上の薬学的に許容される担体(賦形剤)と組み合わせて含有する医薬組成物も含まれる。いくつかの実施形態では、組成物は、局所的投与に好適である。組成物を作製する際に、典型的には活性成分は賦形剤と混合され、賦形剤によって希釈されるか、または例えば、カプセル、小袋、紙もしくは他の容器の形態のそのような担体に封入される。賦形剤が希釈剤として機能する場合、それは、活性成分のためのビヒクル、担体、または媒体として作用する固体、半固体、または液体の材料であり得る。したがって、組成物は、錠剤、丸剤、粉末、ロゼンジ、サシェ、カシェ、エリキシル、懸濁剤、エマルション、溶液、シロップ、エアロゾル(固体または液体媒体として)、例えば、10重量%までの活性化合物を含む軟膏、軟質及び硬質ゼラチンカプセル、坐剤、無菌注射用溶液、及び無菌包装粉末の形態であり得る。
【0069】
製剤を調製する際は、活性化合物は、他の成分と組み合わせる前に、適切な粒径を提供するために粉砕することができる。活性化合物が実質的に不溶性である場合、200メッシュ未満の粒径まで粉砕され得る。活性化合物が実質的に水溶性である場合、粒径を粉砕によって例えば、約40メッシュに調整して、製剤中の実質的に均一な分布を提供することができる。
【0070】
ルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩は、湿式粉砕などの既知の粉砕手順を使用して粉砕され、錠剤形成及び他の製剤型に適切な粒径を得ることができる。微細に分割された(ナノ粒子)調製物は、当該技術分野で知られているプロセスによって調製することができ、例えば、国際出願第WO2002/000196号を参照されたい。
【0071】
組成物は、単位剤形で製剤化することができ、各剤形は、設定された量の活性成分を遊離形または塩形として含有する。「単位剤形」という用語は、ヒト対象及び他の哺乳動物のための単位投薬量として好適な物理的に個別の単位を指し、各単位には、好適な薬学的賦形剤に関連して、所望の治療効果を生み出すために算出された、既定量の活性物質が含まれる。
【0072】
本発明の方法及び使用において、本明細書に記載の化合物の同様の投与量を用いることが可能である。
【0073】
活性化合物は、広範な投与量範囲にわたって有効であり得るので、概ね、薬学的に有効な量で投与される。しかしながら、実際に投与される化合物の量は、通常、治療される症状、選択した投与経路、実際に投与される化合物、個々の患者の年齢、体重、及び応答、患者の症状の重症度などを含む関連状況に従って、医師によって決定されることが理解されよう。
【0074】
錠剤などの固体組成物を調製するために、主要な活性成分を薬学的賦形剤と混合して、本発明の化合物の均質な混合物を含有する固体の前製剤組成物を形成する。これらの前製剤組成物が均質物として言及される場合、活性成分は、典型的には、組成物全体に均一に分散され、それにより、組成物は、錠剤、丸剤、及びカプセル剤などの等しく有効な単位剤形に容易に細分化することができる。さらに、この固体予備処方組成物は、例えば約0.1~約1000mgの本発明の活性成分を含む、上述した種類の単位剤形に分割される。
【0075】
本発明の錠剤またはピルをコーティングまたは他の方法で化合して、長期作用の利点をもたらす剤形を提供する。例えば、錠剤または丸剤は、内部用量及び外部用量の成分を含み得、後者は前者上のエンベロープの形態である。2つの成分は、胃における崩壊に抵抗し、かつその内部成分を無傷で十二指腸内まで通過させる、または放出を遅延させることができる、腸溶性の層によって分離することができる。多数のポリマー酸、ならびにシェラック、セチルアルコール、及び酢酸セルロースなどの物質とのポリマー酸の混合物を含む様々な物質は、そのような腸溶性層またはコーティングとして利用することができる。
【0076】
本発明の化合物及び組成物が経口または注射による投与のために組み込まれ得る液体形態には、水溶液、好適に風味付けされたシロップ、水性または油性懸濁液、及び綿実油、ゴマ油、ココナッツ油、またはピーナッツ油などの食用油で風味付けされた乳剤、ならびにエリキシル剤及び類似の薬学的ビヒクルが含まれる。
【0077】
吸入または吹送のための組成物には、薬学的に許容される水性もしくは有機溶媒、またはそれらの混合物中の液体及び懸濁液、ならびに粉末が含まれる。液体または固体の組成物は、上記のような好適な薬学的に許容される賦形剤を含有し得る。いくつかの実施形態では、組成物は、局所または全身効果のために口または鼻呼吸経路により投与される。組成物は、不活性ガスの使用により噴霧され得る。噴霧された溶液は、噴霧デバイスから直接的に吸入され得るか、または噴霧デバイスが、顔面マスク、テント、もしくは断続的陽圧呼吸機器に装着され得る。溶液、懸濁液、または粉末の組成物は、適切な様式で製剤を送達するデバイスから経口的または鼻腔に投与され得る。
【0078】
局所製剤は、1つ以上の従来の担体を含有し得る。いくつかの実施形態では、軟膏は、水、及び例えば、流動パラフィン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、プロピレングリコール、白色ワセリン等から選択される1つ以上の疎水性担体を含有し得る。クリームの担体組成物は、水と、グリセロール及び1つ以上の他の構成成分、例えば、グリセリンモノステアリン酸塩、PEG-グリセリンモノステアリン酸塩、及びセチルステアリルアルコールとの組み合わせに基づき得る。ゲルは、イソプロピルアルコール及び水を使用して、好適には、例えばグリセロール、ヒドロキシエチルセルロースなどの他の構成成分と組み合わせて製剤化され得る。
【0079】
患者に投与される化合物または組成物の量は、投与されるもの、予防または治療などの投与の目的、患者の状態、投与の方法などに応じて変化するであろう。治療的用途では、組成物は、疾患の症状及びその合併症を治癒または少なくとも部分的に阻止するのに十分な量で、すでに疾患に罹患している患者に投与することができる。有効用量は、治療される疾患病態、ならびに疾患の重症度、患者の年齢、体重、及び一般状態などの因子に基づく担当医師の判断に依存する。
【0080】
患者に投与される組成物は、上記の薬学的組成物の形態であり得る。これらの組成物は、従来の殺菌技法によって殺菌され得るか、または無菌濾過されてもよい。水溶液は、そのままで使用するために包装するか、または凍結乾燥することができ、凍結乾燥調製物は、投与前に無菌水性担体と組み合わされる。化合物調製物のpHは、典型的には、3~11、より好ましくは5~9、最も好ましくは7~8であろう。ある特定の前述の賦形剤、担体、または安定剤の使用によって、薬学的塩の製剤が得られることは理解されよう。
【0081】
本発明の化合物の治療量は、例えば、治療を行う特定の用途、化合物の投与方法、患者の健康及び症状ならびに処方する医師の判断に従って変動し得る。医薬組成物における本明細書に記載される化合物の比率または濃度は、投与量、化学的性質(例えば、疎水性)及び投与経路を含む多くの因子に応じて変化し得る。投与量は、疾患または障害の種類及び進行の程度、特定の患者の全体健康状態、選択された化合物の相対生体効能、賦形剤の製剤化、及びその投与経路などの変数に依存する可能性がある。有効用量は、インビトロまたは動物モデルの試験システムに由来する用量応答曲線から外挿することができる。
【0082】
本発明の組成物は、化学療法薬、ステロイド、抗炎症性化合物または免疫抑制剤などの1種または複数種の追加の医薬品をさらに含むことが可能であり、その例は本明細書に収載している。
【0083】
いくつかの実施形態では、局所製剤は、クリーム製剤である。いくつかの実施形態では、クリーム製剤は、水中油型乳剤である。いくつかの実施形態において、クリームは可溶化クリームである。いくつかの実施形態では、クリームのpHは、約2.8~約3.6である。pHの文脈において、「約」は、±0.3(好ましくは±0.2以上、より好ましくは±0.1)を指す。
【0084】
いくつかの実施形態では、クリームは、遊離塩基ベースで1.5%(w/w)のルキソリチニブリン酸塩を含む、水中油型乳剤を含む。
【0085】
いくつかの実施形態では、クリームは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、US2015/0250790に記載の水中油型乳剤である。特に、US2015/0250790の実施例3~6(特に、表3~5及び添付のテキスト)は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0086】
いくつかの実施形態では、油成分は、乳剤の約10重量%~約40重量%の量で存在する。
【0087】
いくつかの実施形態では、油成分は、乳剤の約10重量%~約24重量%の量で存在する。
【0088】
いくつかの実施形態では、油成分は、乳剤の約15重量%~約24重量%の量で存在する。
【0089】
いくつかの実施形態では、油成分は、乳剤の約18重量%~約24重量%の量で存在する。
【0090】
いくつかの実施形態では、油成分は、ペトロラタム、脂肪アルコール、鉱物油、トリグリセリド、及びシリコーン油から独立して選択される、1つ以上の物質を含む。
【0091】
いくつかの実施形態では、油成分は、白色ペトロラタム、セチルアルコール、ステアリルアルコール、軽鉱物油、中鎖トリグリセリド、及びジメチコンから独立して選択される、1つ以上の物質を含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、油成分は、閉塞剤成分を含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、閉塞剤成分は、乳剤の約2重量%~約15重量%の量で存在する。
【0094】
いくつかの実施形態では、閉塞剤成分は、乳剤の約5重量%~約10重量%の量で存在する。
【0095】
いくつかの実施形態では、閉塞剤成分は、脂肪酸(例えば、ラノリン酸)、脂肪アルコール(例えば、ラノリンアルコール)、炭化水素油及びワックス(例えば、ペトロラタム)、多価アルコール(例えば、プロピレングリコール)、シリコーン(例えば、ジメチコン)、ステロール(例えば、コレステロール)、植物性または動物性脂肪(例えば、ココアバター)、植物性ワックス(例えば、カルナウバワックス)、及びワックスエステル(例えば、ミツバチワックス)から選択される1つ以上の物質を含む。
【0096】
いくつかの実施形態では、閉塞剤成分は、ラノリン酸脂肪アルコール、ラノリンアルコール、ペトロラタム、プロピレングリコール、ジメチコン、コレステロール、ココアバター、カルナウバワックス、及びミツバチワックスから選択される1つ以上の物質を含む。
【0097】
いくつかの実施形態では、閉塞剤成分は、ペトロラタムを含む。
【0098】
いくつかの実施形態では、閉塞剤成分は、白色ペトロラタムを含む。
【0099】
いくつかの実施形態では、油成分は、硬化剤成分を含む。
【0100】
いくつかの実施形態では、硬化剤成分は、乳剤の約2重量%~約8重量%の量で存在する。
【0101】
いくつかの実施形態では、硬化剤成分は、乳剤の約3重量%~約6重量%の量で存在する。
【0102】
いくつかの実施形態では、硬化剤成分は、乳剤の約4重量%~約7重量%の量で存在する。
【0103】
いくつかの実施形態では、硬化剤成分は、脂肪アルコールから独立して選択される、1つ以上の物質を含む。
【0104】
いくつかの実施形態では、硬化剤成分は、C12~20脂肪アルコールから独立して選択される、1つ以上の物質を含む。
【0105】
いくつかの実施形態では、硬化剤成分は、C16~18脂肪アルコールから独立して選択される、1つ以上の物質を含む。
【0106】
いくつかの実施形態では、硬化剤成分は、セチルアルコール及びステアリルアルコールから独立して選択される、1つ以上の物質を含む。
【0107】
いくつかの実施形態では、油成分は、軟化成分を含む。
【0108】
いくつかの実施形態では、軟化成分は、乳剤の約5重量%~約15重量%の量で存在する。
【0109】
いくつかの実施形態では、軟化成分は、乳剤の約7重量%~約13重量%の量で存在する。
【0110】
いくつかの実施形態では、軟化成分は、鉱物油及びトリグリセリドから独立して選択される、1つ以上の物質を含む。
【0111】
いくつかの実施形態では、軟化成分は、軽鉱物油及び中鎖トリグリセリドから独立して選択される、1つ以上の物質を含む。
【0112】
いくつかの実施形態では、軟化成分は、軽鉱物油、中鎖トリグリセリド、及びジメチコンから独立して選択される、1つ以上の物質を含む。
【0113】
いくつかの実施形態では、水は、乳剤の約35重量%~約65重量%の量で存在する。
【0114】
いくつかの実施形態では、水は、乳剤の約40重量%~約60重量%の量で存在する。
【0115】
いくつかの実施形態では、水は、乳剤の約45重量%~約55重量%の量で存在する。
【0116】
いくつかの実施形態では、乳化剤成分は、乳剤の約1重量%~約9重量%の量で存在する。
【0117】
いくつかの実施形態では、乳化剤成分は、乳剤の約2重量%~約6重量%の量で存在する。
【0118】
いくつかの実施形態では、乳化剤成分は、乳剤の約3重量%~約5重量%の量で存在する。
【0119】
いくつかの実施形態では、乳化剤成分は、乳剤の約4重量%~約7重量%の量で存在する。
【0120】
いくつかの実施形態では、乳剤は乳化剤成分及び硬化剤成分を含み、乳化剤成分及び硬化剤成分の合計量は、乳剤の少なくとも約8重量%である。
【0121】
いくつかの実施形態では、乳化剤成分は、グリセリル脂肪酸エステル及びソルビタン脂肪酸エステルから独立して選択される、1つ以上の物質を含む。
【0122】
いくつかの実施形態では、乳化剤成分は、ステアリン酸グリセリル、及びポリソルベート20から独立して選択される1つ以上の物質を含む。
【0123】
いくつかの実施形態では、乳剤は、安定化剤成分を更に含む。
【0124】
いくつかの実施形態では、安定化剤成分は、乳剤の約0.05重量%~約5重量%の量で存在する。
【0125】
いくつかの実施形態では、安定化剤成分は、乳剤の約0.1重量%~約2重量%の量で存在する。
【0126】
いくつかの実施形態では、安定化剤成分は、乳剤の約0.3重量%~約0.5重量%の量で存在する。
【0127】
いくつかの実施形態では、安定化剤成分は、多糖類から独立して選択される、1つ以上の物質を含む。
【0128】
いくつかの実施形態では、安定化剤成分は、キサンタンガムを含む。
【0129】
いくつかの実施形態では、乳剤は、溶媒成分を更に含む。
【0130】
いくつかの実施形態では、溶媒成分は、乳剤の約10重量%~約35重量%の量で存在する。
【0131】
いくつかの実施形態では、溶媒成分は、乳剤の約15重量%~約30重量%の量で存在する。
【0132】
いくつかの実施形態では、溶媒成分は、乳剤の約20重量%~約25重量%の量で存在する。
【0133】
いくつかの実施形態では、溶媒成分は、アルキレングリコール及びポリアルキレングリコールから独立して選択される、1つ以上の物質を含む。
【0134】
いくつかの実施形態では、溶媒成分は、プロピレングリコール及びポリエチレングリコールから独立して選択される、1つ以上の物質を含む。
【0135】
いくつかの実施形態では、乳剤は、
乳剤の約35重量%~約65重量%の水、
乳剤の約10重量%~約40重量%の油成分、
乳剤の約1重量%~約9重量%の乳化剤成分、
乳剤の約10重量%~約35重量%の溶媒成分、
乳剤の約0.05重量%~約5重量%の安定化剤成分、及び
遊離塩基ベースで、乳剤の0.5重量%~1.5重量%のルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む。
【0136】
いくつかの実施形態では、乳剤は、
乳剤の約35重量%~約65重量%の水、
乳剤の約10重量%~約24重量%の油性成分、
乳剤の約1重量%~約9重量%の乳化剤成分、
乳剤の約10重量%~約35重量%の溶媒成分、
乳剤の約0.05重量%~約5重量%の安定化剤成分、及び
遊離塩基ベースで、乳剤の0.5重量%~1.5重量%のルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む。
【0137】
いくつかの実施形態では、乳剤は、
乳剤の約40重量%~約60重量%の水、
乳剤の約15重量%~約30重量%の油成分、
乳剤の約2重量%~約6重量%の乳化剤成分、
乳剤の約15重量%~約30重量%の溶媒成分、
乳剤の約0.1重量%~約2重量%の安定化剤成分、及び
遊離塩基ベースで、乳剤の0.5重量%~1.5重量%のルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む。
【0138】
いくつかの実施形態では、乳剤は、
乳剤の約40重量%~約60重量%の水、
乳剤の約15重量%~約30重量%の油成分、
乳剤の約2重量%~約6重量%の乳化剤成分、
乳剤の約15重量%~約24重量%の溶媒成分、
乳剤の約0.1重量%~約2重量%の安定化剤成分、及び
遊離塩基ベースで、乳剤の0.5重量%~1.5重量%のルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む。
【0139】
いくつかの実施形態では、乳剤は、
乳剤の約45重量%~約55重量%の水、
乳剤の約15重量%~約24重量%の油成分、
乳剤の約3重量%~約5重量%の乳化剤成分、
乳剤の約20重量%~約25重量%の溶媒成分、
乳剤の約0.3重量%~約0.5重量%の安定化剤成分、及び
遊離塩基ベースで、乳剤の0.5重量%~1.5重量%のルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む。
【0140】
いくつかの実施形態では、乳剤は、
乳剤の約45重量%~約55重量%の水、
乳剤の約15重量%~約24重量%の油成分、
乳剤の約4重量%~約7重量%の乳化剤成分、
乳剤の約20重量%~約25重量%の溶媒成分、
乳剤の約0.3重量%~約0.5重量%の安定化剤成分、及び
遊離塩基ベースで、乳剤の0.5重量%~1.5重量%のルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む。
【0141】
いくつかの実施形態では、
油成分は、ペトロラタム、脂肪アルコール、鉱物油、トリグリセリド、及びジメチコンから独立して選択される、1つ以上の物質を含み、
乳化剤成分は、グリセリル脂肪酸エステル及びソルビタン脂肪酸エステルから独立して選択される、1つ以上の物質を含み、
溶媒成分は、アルキレングリコール及びポリアルキレングリコールから独立して選択される、1つ以上の物質を含み、
安定化剤成分が、多糖類から独立して選択される、1つ以上の物質を含む。
【0142】
いくつかの実施形態では、
油成分は、白色ペトロラタム、セチルアルコール、ステアリルアルコール、軽鉱物油、中鎖トリグリセリド、及びジメチコンから独立して選択される、1つ以上の物質を含み、
乳化剤成分は、ステアリン酸グリセリル及びポリソルベート20から独立して選択される、1つ以上の物質を含み、
溶媒成分は、プロピレングリコール及びポリエチレングリコールから独立して選択される、1つ以上の物質を含み、
安定化剤成分は、キサンタンガムを含む。
【0143】
いくつかの実施形態では、乳剤は、
乳剤の約35重量%~約65重量%の水、
乳剤の約2重量%~約15重量%の閉塞剤成分、
乳剤の約2重量%~約8重量%の硬化剤成分、
乳剤の約5重量%~約15重量%の軟化成分、
乳剤の約1重量%~約9重量%の乳化剤成分、
乳剤の約0.05重量%~約5重量%の安定化剤成分、
乳剤の約10重量%~約35重量%の溶媒成分、及び、
遊離塩基ベースで、乳剤の0.5重量%~1.5重量%のルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む。
【0144】
いくつかの実施形態では、乳剤は、
乳剤の約40重量%~約60重量%の水、
乳剤の約5重量%~約10重量%の閉塞剤成分、
乳剤の約2重量%~約8重量%の硬化剤成分、
乳剤の約7重量%~約12重量%の軟化成分、
乳剤の約2重量%~約6重量%の乳化剤成分、
乳剤の約0.1重量%~約2重量%の安定化剤、
乳剤の約15重量%~約30重量%の溶媒成分、及び
遊離塩基ベースで、乳剤の0.5重量%~1.5重量%のルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む。
【0145】
いくつかの実施形態では、乳剤は、
乳剤の約45重量%~約55重量%の水、
乳剤の約5重量%~約10重量%の閉塞剤成分、
乳剤の約3重量%~約6重量%の硬化剤成分、
乳剤の約7重量%~約13重量%の軟化成分、
乳剤の約3重量%~約5重量%の乳化剤成分、
乳剤の約0.3重量%~約0.5重量%の安定化剤成分、
乳剤の約20重量%~約25重量%の溶媒成分、及び
遊離塩基ベースで、乳剤の0.5重量%~1.5重量%のルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む。
【0146】
いくつかの実施形態では、乳剤は、
乳剤の約45重量%~約55重量%の水、
乳剤の約5重量%~約10重量%の閉塞剤成分、
乳剤の約4重量%~約7重量%の硬化剤成分、
乳剤の約7重量%~約13重量%の軟化成分、
乳剤の約4重量%~約7重量%の乳化剤成分、
乳剤の約0.3重量%~約0.5重量%の安定化剤成分、
乳剤の約20重量%~約25重量%の溶媒成分、及び
遊離塩基ベースで、乳剤の0.5重量%~1.5重量%のルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む。
【0147】
いくつかの実施形態では、乳剤は、
乳剤の約45重量%~約55重量%の水、
乳剤の約7重量%の閉塞剤成分、
乳剤の約4.5重量%~約5重量%の硬化剤成分、
乳剤の約10重量%の軟化成分、
乳剤の約4重量%~約4.5重量%の乳化剤成分、
乳剤の約0.4重量%の安定化剤成分、
乳剤の約22重量%の溶媒成分、及び
遊離塩基ベースで、乳剤の0.5重量%~1.5重量%のルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む。
【0148】
いくつかの実施形態では、ルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩は、ルキソリチニブリン酸塩として存在する。
【0149】
いくつかの実施形態では、乳剤は、乳剤の1.5重量%のルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む。
【0150】
いくつかの実施形態では、乳剤は、乳剤の1.5重量%のルキソリチニブリン酸塩を含む。
【0151】
いくつかの実施形態では、乳剤は、乳剤の0.75重量%のルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む。
【0152】
いくつかの実施形態では、乳剤は、乳剤の0.75重量%のルキソリチニブリン酸塩を含む。
【0153】
いくつかの実施形態では、硬化剤成分及び乳化剤成分の合計量は、乳剤の少なくとも約8重量%である。
【0154】
いくつかの実施形態では、
閉塞剤成分は、ペトロラタムを含み、
硬化剤成分は、1つ以上の脂肪アルコールから独立して選択される、1つ以上の物質を含み、
軟化成分は、鉱物油及びトリグリセリドから独立して選択される、1つ以上の物質を含み、
乳化剤成分は、グリセリル脂肪酸エステル及びソルビタン脂肪酸エステルから独立して選択される、1つ以上の物質を含み、
安定化剤成分は、多糖類から独立して選択される、1つ以上の物質を含み、
溶媒成分は、アルキレングリコール及びポリアルキレングリコールから独立して選択される、1つ以上の物質を含む。
【0155】
いくつかの実施形態では、
閉塞剤成分は、白色ペトロラタムを含み、
硬化剤成分は、セチルアルコール及びステアリルアルコールから独立して選択される、1つ以上の物質を含み、
軟化成分は、軽鉱物油、中鎖トリグリセリド、及びジメチコンから独立して選択される、1つ以上の物質を含み、
乳化剤成分は、ステアリン酸グリセリル及びポリソルベート20から独立して選択される、1つ以上の物質を含み、
安定化剤成分はキサンタンガムを含み、
溶媒成分は、プロピレングリコール及びポリエチレングリコールから独立して選択される、1つ以上の物質を含む。
【0156】
いくつかの実施形態では、乳剤は、抗菌防腐剤成分をさらに含む。
【0157】
いくつかの実施形態では、抗菌防腐剤成分は、乳剤の約0.05重量%~約3重量%の量で存在する。
【0158】
いくつかの実施形態では、抗菌防腐剤成分は、乳剤の約0.1重量%~約1重量%の量で存在する。
【0159】
いくつかの実施形態では、抗菌防腐剤成分は、アルキルパラベン及びフェノキシエタノールから独立して選択される、1つ以上の物質を含む。
【0160】
いくつかの実施形態では、抗菌防腐剤成分は、メチルパラベン、プロピルパラベン、及びフェノキシエタノールから独立して選択される、1つ以上の物質を含む。
【0161】
いくつかの実施形態では、乳剤は、キレート剤成分をさらに含む。
【0162】
いくつかの実施形態では、キレート剤成分は、エデト酸二ナトリウムを含む。
【0163】
本明細書で使用される場合、「乳化剤成分」という用語は、一態様では、流体媒体内で懸濁液中に要素または粒子を維持する物質、または物質の混合物を指す。いくつかの実施形態では、乳化剤成分は、水と組み合わせたときに、油相が乳剤を形成することを可能にする。いくつかの実施形態では、乳化剤成分は、1つ以上の非イオン性界面活性剤を指す。
【0164】
本明細書で使用される場合、「閉塞剤成分」という用語は、角質層からの水の蒸発を防止することによって経表皮水分喪失(TEWL)を減少させる皮膚上の閉塞性フィルムを形成する疎水性薬剤または疎水性薬剤の混合物を指す。
【0165】
本明細書で使用される場合、「硬化剤成分」という用語は、クリームの粘度及び/または一貫性を増加させるか、またはクリームのレオロジーを改善する物質または物質の混合物を指す。
【0166】
本明細書で使用される場合、「軟化成分」という用語は、皮膚を軟化または鎮静させ、または刺激された内面を鎮静させる薬剤を指す。
【0167】
本明細書で使用される場合、「安定化剤成分」という用語は、クリームの安定性及び/またはクリーム中の成分の適合性を改善する物質または物質の混合物を指す。いくつかの実施形態では、安定化剤成分は、乳剤の凝集を防止し、水中油型乳剤中の液滴を安定化する。
【0168】
本明細書で使用される場合、「溶媒成分」という用語は、クリーム中のルキソリチニブ(もしくはその塩)または他の物質を溶解させることができる液体物質または液体物質の混合物である。いくつかの実施形態では、溶媒成分は、ルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩が、合理的な溶解度を有する、液体物質または液体物質の混合物である。例えば、ルキソリチニブ(遊離塩基)またはそのリン酸塩(1:1塩)の溶解度は表1に報告されている。いくつかの実施形態では、実施例2に記載のように測定した場合、溶媒は、ルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩(いずれかが使用される)が、少なくとも約10mg/mL以上、少なくとも約15mg/mL以上、または少なくとも約20mg/mL以上の溶解度を有する、物質またはその混合物である。
【0169】
本明細書で使用される場合、「抗菌防腐剤成分」という語句は、クリーム中の微生物増殖を阻害する物質または物質の混合物である。
【0170】
本明細書で使用される場合、「キレート剤成分」という語句は、金属イオンと強く結合する能力を有する化合物または化合物の混合物を指す。
【0171】
本明細書で使用される場合、「乳剤の重量%」は、乳剤中の成分の濃度のパーセントが重量/重量ベースであることを意味する。例えば、成分Aの1%w/w=[(成分Aの質量)/(乳剤の総質量)]×100である。
【0172】
本明細書で使用される場合、ルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩の「遊離塩基ベースで、乳剤の重量%」は、総乳剤中のルキソリチニブの重量に基づいて%w/wが計算されることを意味する。例えば、「遊離塩基ベースで、1.5%w/w」のルキソリチニブリン酸塩は、100グラムの総製剤に対して、乳剤中に1.98グラムのルキソリチニブリン酸塩が存在することを意味する(これは、1.5グラムの遊離塩基、ルキソリチニブに相当する)。
【0173】
本明細書で使用される場合、「成分」という用語は、1つの物質または物質の混合物を意味することができる。
【0174】
本明細書で使用される場合、「脂肪酸」という用語は、飽和または不飽和の脂肪酸を指す。いくつかの実施形態では、脂肪酸は、異なる脂肪酸の混合物中にある。いくつかの実施形態では、脂肪酸は、平均で約8~約30個の炭素を有する。いくつかの実施形態では、脂肪酸は、平均して約12~20個、14~20個、または16~18個の炭素を有する。好適な脂肪酸としては、セチル酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、エルカ酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、カプリン酸、カプリル酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ヒドロキシステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、セトステアリン酸、イソステアリン酸、セスキオレイン酸、セスキ-9-オクタデカン酸、セスキイソオクタデカン酸、ベヘン酸、イソベへン酸、及びアラキドン酸、またはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0175】
本明細書で使用される場合、「脂肪アルコール」という用語は、飽和または不飽和の脂肪族アルコールを指す。いくつかの実施形態では、脂肪アルコールは、異なる脂肪アルコールの混合物中にある。いくつかの実施形態では、脂肪アルコールは、平均して約12~約20、約14~約20、または約16~約18個の炭素を有する。好適な脂肪アルコールとしては、ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、パルミチルアルコール、セチルアルコール、カプリルアルコール、カプリリルアルコール、オレイルアルコール、リノレニルアルコール、アラキドンアルコール、ベヘニルアルコール、イソベヘニルアルコール、セラチルアルコール、キミルアルコール、及びリノレイルアルコール、またはこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0176】
本明細書で使用される場合、単独でまたは他の用語と組み合わせて用いられる「ポリアルキレングリコール」という用語は、オキシアルキレンモノマー単位を含むポリマー、または異なるオキシアルキレンモノマー単位のコポリマーを指し、アルキレン基は、2~6、2~4、または2~3個の炭素原子を有する。本明細書で使用される場合、単独でまたは他の用語と組み合わせて用いられる「オキシアルキレン」という用語は、式-O-オキシアルキレン-の基を指す。いくつかの実施形態では、ポリアルキレングリコールは、ポリエチレングリコールである。
【0177】
本明細書で使用される場合、「ソルビタン脂肪酸エステル」という用語には、ソルビタンまたはソルビトール及び脂肪酸、ならびに任意選択でポリ(エチレングリコール)単位に由来する生成物が含まれ、ソルビタンエステル及びポリエトキシル化ソルビタンエステルを含む。いくつかの実施形態では、ソルビタン脂肪酸エステルは、ポリエトキシル化ソルビタンエステルである。
【0178】
本明細書で使用される場合、「ソルビタンエステル」という用語は、ソルビトール及び少なくとも1つの脂肪酸のエステル化に由来する化合物、または化合物の混合物を指す。ソルビタンエステルを誘導するのに有用な脂肪酸としては、本明細書に記載されるものが挙げられるが、これらに限定されない。好適なソルビタンエステルとしては、Span(商標)シリーズ(Uniqemaから入手可能)が挙げられるが、これらに限定されず、Span(商標)シリーズとしては、Span20(ソルビタンモノラウレート)、40(ソルビタンモノパルミテート)、60(モノステアリン酸ソルビタン)、65(トリステアリン酸ソルビタン)、80(モノオレイン酸ソルビタン)、及び85(トリオレイン酸ソルビタン)が挙げられる。他の好適なソルビタンエステルとしては、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、R.C.Rowe and P.J.Shesky,Handbook of pharmaceutical excipients(2006),5th ed.に列挙されるものが挙げられる。
【0179】
本明細書で使用される場合、「ポリエトキシル化ソルビタンエステル」という用語は、ソルビタンエステルのエトキシル化に由来する化合物またはその混合物を指す。化合物のポリオキシエチレン部分は、脂肪酸エステルとソルビタン部分との間に存在し得る。本明細書で使用される場合、「ソルビタンエステル」という用語は、ソルビトール及び少なくとも1つの脂肪酸のエステル化に由来する化合物、または化合物の混合物を指す。ポリエトキシル化ソルビタンエステルの誘導に有用な脂肪酸としては、本明細書に記載されるものが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、化合物または混合物のポリオキシエチレン部分は、約2~約200個のオキシエチレン単位を有する。いくつかの実施形態では、化合物または混合物のポリオキシエチレン部分は、約2~約100個のオキシエチレン単位を有する。いくつかの実施形態では、化合物または混合物のポリオキシエチレン部分は、約4~約80個のオキシエチレン単位を有する。いくつかの実施形態では、化合物または混合物のポリオキシエチレン部分は、約4~約40個のオキシエチレン単位を有する。いくつかの実施形態では、化合物または混合物のポリオキシエチレン部分は、約4~約20個のオキシエチレン単位を有する。好適なポリエトキシル化ソルビタンエステルには、Tween(商標)シリーズ(Uniqemaから入手可能)が挙げられるがこれに限定されず、Tween(商標)シリーズには、Tween20(POE(20)ソルビタンモノラウレート)、21(POE(4)ソルビタンモノラウレート)、40(POE(20)ソルビタンモノパルミテート)、60(POE(20)ソルビタンモノステアレート)、60K(POE(20)ソルビタンモノステアレート)、61(POE(4)ソルビタンモノステアレート)、65(POE(20)ソルビタントリステアレート)、80(POE(20)ソルビタンモノオレエート)、80K(POE(20)ソルビタンモノオレエート)、81(POE(5)ソルビタンモノオレエート)、及び85(POE(20)ソルビタントリオレエート)が挙げられる。本明細書で使用される場合、「POE」という略語は、ポリオキシエチレンを指す。POE略語の後に続く数字は、化合物中のオキシエチレン反復単位の数を指す。他の好適なポリエトキシル化ソルビタンエステルとしては、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、R.C.Rowe and P.J.Shesky,Handbook of pharmaceutical excipients(2006),5th ed.に列挙されるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが挙げられる。いくつかの実施形態では、ポリエトキシル化ソルビタンエステルは、ポリソルベートである。いくつかの実施形態では、ポリエトキシル化ソルビタンエステルは、ポリソルベート20である。
【0180】
本明細書で使用される場合、「グリセリル脂肪酸エステル」という用語は、脂肪酸のモノ、ジ、またはトリグリセリドを指す。グリセリル脂肪酸エステルは、任意選択でスルホン酸基またはその薬学的に許容される塩で置換されてもよい。脂肪酸のグリセリドを誘導するための好適な脂肪酸としては、本明細書に記載されるものが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、グリセリル脂肪酸エステルは、12~18個の炭素原子を有する脂肪酸のモノグリセリドである。いくつかの実施形態では、グリセリル脂肪酸エステルは、ステアリン酸グリセリルである。
【0181】
本明細書で使用される場合、「トリグリセリド」という用語は、脂肪酸のトリグリセリドを指す。いくつかの実施形態では、トリグリセリドは、中鎖トリグリセリドである。
【0182】
本明細書で使用される場合、「アルキレングリコール」という用語は、式-O-アルキレン-の基を指し、アルキレン基は2~6、2~4、または2~3個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アルキレングリコールは、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)である。
【0183】
本明細書で使用される場合、「ポリエチレングリコール」という用語は、式-O-CH2-CH2-のエチレングリコールモノマー単位を含有するポリマーを指す。好適なポリエチレングリコールは、ポリマー分子の各末端に遊離ヒドロキシル基を有してもよく、または低級アルキル、例えばメチル基でエーテル化された1つ以上のヒドロキシル基を有してもよい。また、エステル化可能なカルボキシ基を有するポリエチレングリコールの誘導体も好適である。本開示で有用なポリエチレングリコールは、任意の鎖長または分子量のポリマーであり得、分岐を含むことができる。いくつかの実施形態では、ポリエチレングリコールの平均分子量は、約200~約9000である。いくつかの実施形態では、ポリエチレングリコールの平均分子量は、約200~約5000である。いくつかの実施形態では、ポリエチレングリコールの平均分子量は、約200~約900である。いくつかの実施形態では、ポリエチレングリコールの平均分子量は、約400である。好適なポリエチレングリコールとしては、ポリエチレングリコール-200、ポリエチレングリコール-300、ポリエチレングリコール-400、ポリエチレングリコール-600、及びポリエチレングリコール-900が挙げられるが、これらに限定されない。名称中のダッシュの後の数字は、ポリマーの平均分子量を指す。
【0184】
キット
本発明には、例えば、結節性痒疹を治療及び/または予防をする際に有用な医薬キットも含まれ、そのキットには、本明細書に記載される治療上有効な量の化合物を含む医薬組成物を含有する1種または複数種の容器も含まれる。当業者には明らかなように、そのようなキットは、必要に応じて、例えば、1つ以上の薬学的に許容される担体を有する容器、追加の容器等の様々な従来の医薬キット構成要素のうちの1つ以上をさらに含むことができる。挿入物またはラベルのいずれかとして、投与される成分の量、投与のガイドライン、及び/または成分を混合するためのガイドラインを示す指示書も、キットに含めることができる。
【実施例】
【0185】
本発明は、特定の例により、より詳細に説明されるであろう。以下の実施例は例示の目的のために提供され、いかなる様式でも本発明を限定するようには意図されない。当業者は、本質的に同じ結果をもたらすように変更または修正され得る、様々な重要でないパラメータを容易に認識するであろう。実施例の化合物は、本明細書に記載される少なくとも1つのアッセイにより、JAK阻害薬であることが判明している。
【0186】
実施例1.アップレギュレートされたJAK-STAT経路発現
RNAは、活動性疾患の未治療の結節性痒症患者のホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)皮膚生検から単離される。RNAは、製造業者のプロトコルに従って、nCounter自己免疫プロファイリングコードセット(770遺伝子)または神経病理プロファイリングコードセット(770遺伝子)(Nanostring,USA)を使用して処理される。18時間のハイブリダイゼーションの後、試料をnCounter SPRINT Profiller(Nanostring,USA)で実行した。データは、nSolver 4.0 Advanced Analysis software(Nanostring,USA)を用いて分析した。P値を、Benjamini-Yekutieliの偽発見率法を使用して調整した。
【0187】
PN病態生理のルキソリチニブ媒介性薬理学的阻害
全層皮膚生検を、活動性疾患の未治療の結節性痒疹患者から得た。各患者について同じ病変から単一の4mmパンチ生検を得て、長手方向に2つの部分に分けた(
図1を参照)。
図1は、PN病態生理のJAK1/JAK2媒介性薬理学的阻害に使用される皮膚パンチ生検の代表例を示す。生検をKBM培地+CaCl
2中で8日間培養し、2~3日ごとにリフレッシュした。ルキソリチニブリン酸塩またはDMSO(対照)を細胞培養培地に添加した。培地リフレッシュ中/前に収集した状態調節された上清は、後続の分析のために-80℃で貯蔵した。8日目に、培養を終了し、後続の分析のために組織RNAを単離した。
【0188】
収集した上清を分析して、培養中の皮膚外植片により分泌され、炎症に関与しているケモカイン、サイトカイン、及び成長因子を定量した。Procarta Multiplex Immunoassay(Thermo Fisher,Waltham,MA)により、培養上清中で合計51個のタンパク質を検出及び定量した。上清及び標準を4°Cで一晩インキュベートした。アッセイプレートを、Luminex 200 Instrument(Luminex Corporation,Austin,TX)で読み取った。濃度は各分析物の抗原標準曲線から外挿した。各分析物の阻害率は、DMSO(C
D)を含む培養物とルキソリチニブ(C
J)を含む培養物におけるタンパク質濃度の差、(C
D-C
J)/C
Dとして決定した(
図2を参照)。
【0189】
結果
ルキソリチニブは、重要な疾患経路に関与する重要なケモカイン、サイトカイン、及び成長因子を阻害することが示された(表1及び
図2を参照)。さらに、同じアッセイをJAK1阻害剤4-[3-(シアノメチル)-3-(3’,5’-ジメチル-1H,1’H-4,4’-ビピラゾール-1-イル)アゼチジン-1-イル]-2,5-ジフルオロ-N-[(1S)-2,2,2-トリフルオロ-1-メチルエチル]ベンズアミドに対して行った場合、IL-5及びIL-22も48時間で阻害される(阻害率はそれぞれ20.25%及11.16%)ことが示された。これらの重要なケモカイン、サイトカイン、及び成長因子は、PNに関連する可能性がある炎症、掻痒(かゆみ)、または病変発生に関与している。例えば、PN病変皮膚は、非病変対照皮膚と比較して、CXCL8、CXCL10、及びインターフェロンγのレベルが増加していることが示されている(Tsoi et al.,J Allergy Clin Immunol 149,1329-39(2022))。
【0190】
さらに、IL-31及びIL-17のような他のサイトカインも、PNに役割を果たすことが示されている。例えば、CD4+T細胞は、非病変対照皮膚と比較して、病変PN皮膚に有意に浸潤することが示されている(Wong,et al.,J Investigative Dermatology,140(3),702-706.e2(2020))。CD4+T細胞は、インターロイキン31(IL-31)を発現することができ、これはPNの重要な症状である掻痒のメディエーターであることが示されている(Stander,et al.,N Engl J Med,382:706-716(2020))。発現したIL-31は、ネモリズマブによるIL-31の阻害によりPNの発症に役割を果たし、PN患者における掻痒及び皮膚病変の改善をもたらすことも示されている(Stander、上記参照)。PN皮膚をネモリズマブ(IL-31阻害剤)で培養した場合、病変皮膚のIL-17レベルの低下が観察され、IL-31Rシグナル伝達を阻害すると、IL-17発現に影響を与える可能性があることが示唆された(Tsoi、上記参照)。さらに、IL-17を発現する細胞は、対照皮膚と比較してPN病変皮膚の真皮で増加していることが示されている(Wong、上記参照)。活性化されたT細胞はまた、健常対照と比較してPN患者においてIL-22サイトカイン発現の増加を示している(Belzberg,et al.,J Invest Dermatol,141(9):2208-2218.e14(2021))。さらに、IL-2は、浸潤性CD4+T細胞の発生、維持及び機能に重要であり(Furtado,J Exp Med,196(6):851-7(2002))、強いかゆみメディエーターである(Xie,et al.,J Dermatol,46(3),177-185 2019))。さらに、PN皮膚の表皮は、IL-5やIL-31などのTh2サイトカインのマーカーであるSTAT6に対して陽性であることが示されている(Mullins,et al.,NLM,StatPearls Publishing,https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK459204),Sep.14,2021))。最後に、ケラチノサイトは、特に掻痒の周囲のPNの発生機序に関与している(Zhong et al,Acta Dermato-Venereologicavolume 99,579-5861 May(2019))。皮膚では、ケラチノサイトがIL-34を産生する。
【0191】
したがって、ルキソリチニブは、PN及び/またはPNに関連する基礎となる炎症及び掻痒症に関与する複数の重要なケモカイン、サイトカイン、及び成長因子を阻害することが示されている。
【表1】
【0192】
実施例2:ルキソリチニブリン酸塩の水中油型クリーム製剤の調製
まず、ルキソリチニブ(遊離塩基)またはその1:1リン酸塩の溶解度を測定するために、潜在的な溶媒約5mLを、室温で約50mgのAPIまたはその塩に添加した。混合物を懸濁し、ホイールで回転させた。混合物が透明な溶液になった場合、さらに固体の材料を添加した。その後、懸濁液を24時間にわたって懸濁した。試料を0.2μmのフィルターでろ過した。液体部分を収集し、50/50の水メタノール/水で希釈した。希釈した試料の濃度をHPLCで分析した。遊離塩基または塩が相当に不溶性であった場合、結果は近似のみである。
【表2】
【0193】
1:1ルキソリチニブリン酸塩について、水中油型クリーム製剤を、該製剤の0.5重量%、1.0重量%、及び1.5重量%(遊離塩基当量)で調製した。15グラムのチューブのための組成を以下の表2に示す。3つの強度の製剤は、活性成分の量に基づく精製水の量の調整を除いて、同じであった。製剤に使用したすべての賦形剤は、公定グレード(すなわち、USP/NFまたはBP)であるか、または局所用製品での使用が承認されている。
【0194】
0.5%、1.0%、及び1.5%のクリーム製剤の代表的な400kgバッチの定量的処方も、それぞれ表3、4、及び5に示されている。
【0195】
水中油型クリーム製剤を、以下の手順に従って、3.5kgまたは400kgのスケールで合成した(3.5kgのバッチサイズで製造した場合には、表3~5の量を適切にスケーリングした)。いくつかのバッチには、混合容器及びミキサーのサイズなど、スケールアップに伴うわずかな変化があった。一般的に、高せん断混合ブレード及び低せん断混合ブレードを有するオーバーヘッドミキサーが、このプロセスに適している。
【0196】
手順
1.メチルパラベン及びプロピルパラベンをプロピレングリコールの一部と混合することによりパラベン相を調製した(表2~5の%を参照)。
【0197】
2.次に、キサンタンガムをプロピレングリコールと混合することによりキサンタンガム相を調製した(第2~5表の%を参照)。
【0198】
3.次いで、軽質鉱油、ステアリン酸グリセリル、ポリソルベート20、白色ペトロラタム、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ジメチコン、及び中鎖トリグリセリドを混合することにより、油相を調製した。この相を70~80℃に加熱して溶融させ、均一な混合物を形成させる。
【0199】
4.次に、精製水、ポリエチレングリコール、及びEDTA二ナトリウムを混合することにより水相を調製した。この相を70~80℃に加熱する。
【0200】
5.ステップ4の水相、ステップ1のパラベン相、及び実施例2(APIのリン酸塩)を合わせて混合物を形成させた。
【0201】
6.次いで、ステップ2からのキサンタンガム相をステップ5からの混合物に加えた。
【0202】
7.次いで、ステップ3からの油相を高せん断混合下でステップ6からの混合物と合わせて、乳剤を形成した。
【0203】
8.次いで、フェノキシエタノールをステップ7からの乳剤に添加した。混合を続け、次いで生成物を低せん断混合下で冷却した。
【表3-1】
【表3-2】
【表4】
【表5】
【表6】
【0204】
これらのバッチを25℃で安定性について試験したところ、上記のpH範囲に一致するpHで24か月まで安定であることが判明した(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許公開第2015/0250790号の表7、9、11、12、13、15、17、及び19を参照)。
【0205】
本明細書で説明されるものに加えて、本発明の様々な修正は、前述の説明から当業者には明らかとなろう。そのような修正は、添付の特許請求の範囲の範囲内にあることが意図される。2021年5月3日に出願された米国仮特許出願第63/183,249号、及び2022年5月2日に出願された「JAK1 Pathway Inhibitor for Treatment Of Prurigo Nodularis」と題するその米国仮特許出願は、その内容全体を参照により本明細書に援用するものとする。本出願で引用されたすべての特許、特許出願、及び刊行物を含む各参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】