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特表2024-516301インピュテーションなしに時間系列トレンドを自動的に見つけるシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-12
(54)【発明の名称】インピュテーションなしに時間系列トレンドを自動的に見つけるシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G16H 10/00 20180101AFI20240405BHJP
   G16H 50/30 20180101ALI20240405BHJP
【FI】
G16H10/00
G16H50/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568028
(86)(22)【出願日】2022-05-04
(85)【翻訳文提出日】2023-11-02
(86)【国際出願番号】 EP2022062019
(87)【国際公開番号】W WO2022233958
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】63/184,893
(32)【優先日】2021-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ドン ジュンジ
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA21
(57)【要約】
臨床状態を自動的に予測する方法100であって、この方法は、臨床状態のパラメータ定義のセットを受信するステップ120であって、パラメータ定義のセットは、偏差値の定義、偏差時間の定義、値閾値の定義、及び値時間の定義を含む、受信するステップ120と、患者の少なくとも1つの特徴についての複数の測定値を受信するステップ130であって、複数の測定値は、一定の期間にわたって測定されたものである、受信するステップ130と、患者の少なくとも1つの特徴についての複数の測定値の、臨床状態を予測する偏差及び/又は異常を特定するステップ140と、偏差及び/又は異常の特定に基づいて、患者が臨床状態の影響を受けやすいか、又は臨床状態にあることを予測するステップ150と、イベントモニタリングシステムのユーザインターフェースを介して、患者が臨床状態の影響を受けやすいか、又は臨床状態にあることを示すアラートを提供するステップ160とを含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イベントモニタリングシステムを使用して臨床状態を自動的に予測する方法であって、前記方法は、
臨床状態のパラメータ定義のセットを受信するステップであって、前記パラメータ定義のセットは、偏差値の定義、偏差時間の定義、値閾値の定義、及び値時間の定義を含む、受信するステップと、
患者の少なくとも1つの特徴についての複数の測定値を受信するステップであって、前記複数の測定値は、一定の期間にわたって測定されたものである、受信するステップと、
患者の少なくとも1つの特徴についての前記複数の測定値の、前記臨床状態を予測する偏差及び/又は異常を特定するステップであって、
前記イベントモニタリングシステムのバッチ偏差検出モジュールを使用して、前記患者の受信した前記複数の測定値と定義した前記偏差値及び定義した前記偏差時間とを比較するステップ、及び
前記比較するステップに基づいて、前記患者について前記一定の期間にわたって測定された、受信した前記複数の測定値が、前記定義した偏差値を上回り、前記定義した偏差時間を下回る場合、偏差を特定するステップを含むか、並びに/又は、
前記イベントモニタリングシステムの前記バッチ偏差検出モジュールを使用して、前記患者の受信した前記複数の測定値と定義した前記値閾値及び定義した前記値時間とを比較するステップ、及び
前記比較するステップに基づいて、前記患者について前記一定の期間にわたって測定された、受信した前記複数の測定値が、前記定義した値閾値を上回り、前記定義した値時間を下回る場合、異常を特定するステップを含む、特定するステップと、
偏差及び/又は異常の特定に基づいて、前記患者が前記臨床状態の影響を受けやすいか、又は前記臨床状態にあることを予測するステップと、
前記イベントモニタリングシステムのユーザインターフェースを介して、前記患者が前記臨床状態の影響を受けやすいか、又は前記臨床状態にあることを示すアラートを提供するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記複数の測定値は、複数の患者の測定値を含み、前記方法は、前記複数の患者のうちの個々の患者で前記複数の測定値を整理するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
受信した前記複数の測定値から1つ以上の特徴を抽出するステップを更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記特徴は、バイタルサイン、検査結果、及び/又は臨床スコアである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
(i)複数の患者についての医療情報及び臨床状態情報を含むトレーニングデータを受信するステップと、(ii)受信した前記トレーニングデータから複数の特徴を抽出するステップと、(iii)前記バッチ偏差検出モジュールをトレーニングするステップと、
を更に含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記イベントモニタリングシステムは、患者の複数のライフサインをモニタリングする臨床ケアシステムを含み、前記イベントモニタリングシステムの前記ユーザインターフェースは、前記患者のモニタリングされた前記複数のライフサインのディスプレイを含み、前記患者が前記臨床状態の影響を受けやすいか、又は前記臨床状態にあることを示す前記アラートは、前記ディスプレイ上のテキストアラートを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記イベントモニタリングシステムは、前記イベントモニタリングシステムのトレーニング中に臨床状態のパラメータ定義のセットを決定するために使用される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
イベントモニタリングシステムであって、
偏差値の定義、偏差時間の定義、値閾値の定義、及び値時間の定義を含む、臨床状態のパラメータ定義のセットと、
一定の期間にわたって測定される、患者の少なくとも1つの特徴についての複数の測定値と、
トレーニングされたバッチ偏差検出モジュールと、
患者の少なくとも1つの特徴についての前記複数の測定値の、前記臨床状態を予測する偏差及び/又は異常を特定するプロセッサであって、(i)前記イベントモニタリングシステムのバッチ偏差検出モジュールを使用して、前記患者の受信した前記複数の測定値と定義した前記偏差値及び定義した前記偏差時間とを比較することと、(ii)前記比較することに基づいて、前記患者について前記一定の期間にわたって測定された、受信した前記複数の測定値が、前記定義した偏差値を上回り、前記定義した偏差時間を下回る場合、偏差を特定することと、(iii)前記イベントモニタリングシステムの前記バッチ偏差検出モジュールを使用して、前記患者の受信した前記複数の測定値と定義した前記値閾値及び定義した前記値時間とを比較することと、(iv)前記比較することに基づいて、前記患者について前記一定の期間にわたって測定された、受信した前記複数の測定値が、前記定義した値閾値を上回り、前記定義した値時間を下回る場合、異常を特定することと、を含み、更に、偏差及び/又は異常の特定に基づいて、前記患者が前記臨床状態の影響を受けやすいか、又は前記臨床状態にあることを予測する、プロセッサと、
前記患者が前記臨床状態の影響を受けやすい、又は前記臨床状態にあることを示すアラートを提供するユーザインターフェースと、
を含む、イベントモニタリングシステム。
【請求項9】
前記複数の測定値は、複数の患者の測定値を含み、前記プロセッサは更に、前記複数の患者のうちの個々の患者で前記複数の測定値を整理する、請求項8に記載のイベントモニタリングシステム。
【請求項10】
前記プロセッサは更に、受信した前記複数の測定値から1つ以上の特徴を抽出する、請求項8又は9に記載のイベントモニタリングシステム。
【請求項11】
前記特徴は、バイタルサイン、検査結果、及び/又は臨床スコアである、請求項8から10のいずれか一項に記載のイベントモニタリングシステム。
【請求項12】
前記プロセッサは更に、複数の患者についての医療情報及び臨床状態情報を含むトレーニングデータを受信し、受信した前記トレーニングデータから複数の特徴を抽出し、前記バッチ偏差検出モジュールをトレーニングする、請求項8から11のいずれか一項に記載のイベントモニタリングシステム。
【請求項13】
前記イベントモニタリングシステムは、患者の複数のライフサインをモニタリングする臨床ケアシステムであり、前記イベントモニタリングシステムの前記ユーザインターフェースは、前記患者のモニタリングされた前記複数のライフサインのディスプレイを含み、前記患者が前記臨床状態の影響を受けやすいか、又は前記臨床状態にあることを示す前記アラートは、前記ディスプレイ上のテキストアラートを含む、請求項8から12のいずれか一項に記載のイベントモニタリングシステム。
【請求項14】
前記イベントモニタリングシステムは、前記イベントモニタリングシステムのトレーニング中に臨床状態のパラメータ定義のセットを決定するために使用される、請求項8から13のいずれか一項に記載のイベントモニタリングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本開示は、概して、イベントモニタリングシステムを使用して臨床状態を自動的に予測するシステム及び方法を対象としている。
【背景技術】
【0002】
[0002] 臨床時系列データは、患者の状態に非常に有益であることが知られている。臨床医は、バイタルの時間トレンドを非公式に追跡して患者をモニタリングする。時間トレンドには、経時的な偏差と経時的な異常値との2種類のトレンドのうちのいずれか又は両方が含まれる。例えば、心拍数の急激な増加などの偏差は、痛みや興奮を示し、持続的な低血圧などの異常値は、ショック状態の兆候を示す。
【0003】
[0003] しかし、経時的トレンドの定量的な定義は、ほとんどの患者状態について十分に定義されていない。従来、トレンドの追跡は、1人の臨床医の経験とメンタルモデルとに基づいて行われている。例えば、臨床医は、最初の例での「心拍数の急激な増加」(例えば、10分間にわたる50BPMの増加は、心拍数の急激な増加であるか?)や、2番目の例での「持続的な低血圧」(例えば、20分間にわたって収縮期血圧が70mmHg未満であることは異常値であるか?)を定量化することが難しい場合がある。
【0004】
[0004] 更に、臨床時系列データを扱う際の課題の1つは、データが不規則にサンプリングされることである。多くの計算モデルや技法では規則的なサンプルが必要とされるる。これを克服するために、通常、データのインピュテーションが実行されて、サンプル時間の間を補間している。ただし、これによりデータが変更され、予測に不正確性をもたらすアーチファクトが生じる可能性がある。
【0005】
[0005] 臨床時系列におけるパターンマイニングのための既存の最先端の方法は、主に再帰型ニューラルネットワーク(RNN)である。しかし、RNNは解釈可能性の欠如で有名である。見つけられるパターンは、多数のニューラルネットワーク係数に隠され、臨床医が理解することが依然として難しい。更に、RNNは、時系列ごとに2~4つの閾値パラメータしか必要としない本発明の実装形態よりも計算コストが高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
[0006] そのため、臨床データから定量的な時間トレンドを自動的に定義し、患者の自動モニタリングを可能にするシステム及び方法が、当技術分野にて引き続き必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[0007] 本開示は、イベントモニタリングシステム及び複数の患者特徴を使用して臨床状態を自動的に予測する発明方法及びシステムを対象としている。本明細書における様々な実施形態及び実装形態は、インピュテーションなしにビッグデータ時系列から定量的トレンド自動的に特定するシステムを対象としている。このシステムは、臨床医の分析を支援する偏差及びカットオフを特定し、わかりやすいため、臨床医が理解し、信頼することができる。このシステムは、偏差値の定義、偏差時間の定義、値閾値の定義、及び値時間の定義が含まれる、臨床状態のパラメータ定義のセットがプログラムされている、又は別様に提供されている。このシステムは、1人以上の患者について、一定の期間にわたって測定された複数の測定値を受信する。このシステムは、次に、患者の少なくとも1つの特徴について、複数の測定値の、臨床状態を予測する偏差及び/又は異常を特定する。偏差を特定するためには、システムは、受信した患者の複数の測定値を、定義した偏差値及び定義した偏差時間と比較し、患者について一定の期間にわたって測定された受信した複数の測定値が、定義した偏差値を上回り、定義した偏差時間を下回る場合、偏差を特定する。異常を特定するためには、システムは、受信した患者の複数の測定値を、定義した値閾値及び定義した値時間と比較し、患者について一定の期間にわたって測定された受信した複数の測定値が、定義した値閾値を上回り、定義した値時間を下回る場合、異常を特定する。このシステムは、偏差及び/又は異常の特定に基づいて、患者が臨床状態の影響を受けやすいか、又は臨床状態にあることを予測する。このシステムは、ユーザインターフェースを介して、患者が臨床状態の影響を受けやすいか、又は臨床状態にあることを示すアラートを提供する。
【0008】
[0008] 概して、一態様では、イベントモニタリングシステムを使用して臨床状態を自動的に予測する方法が提供される。この方法は、臨床状態のパラメータ定義のセットを受信するステップであって、パラメータ定義のセットは、偏差値の定義、偏差時間の定義、値閾値の定義、及び値時間の定義を含む、受信するステップと、患者の少なくとも1つの特徴についての複数の測定値を受信するステップであって、複数の測定値は、一定の期間にわたって測定されたものである、受信するステップと、患者の少なくとも1つの特徴についての複数の測定値の、臨床状態を予測する偏差及び/又は異常を特定するステップであって、(i)イベントモニタリングシステムのバッチ偏差検出モジュールを使用して、患者の受信した複数の測定値と定義した偏差値及び定義した偏差時間とを比較するステップ、及び(ii)比較ステップに基づいて、患者について一定の期間にわたって測定された、受信した複数の測定値が、定義した偏差値を上回り、定義された偏差時間を下回る場合、偏差を特定するステップを含むか、並びに/又は、(iii)イベントモニタリングシステムのバッチ偏差検出モジュールを使用して、患者の受信した複数の測定値と定義した値閾値及び定義した値時間とを比較するステップ、及び(iv)比較ステップに基づいて、患者について一定の期間にわたって測定された、受信した複数の測定値が、定義した値閾値を上回り、定義した値時間を下回る場合、異常を特定するステップを含む、特定するステップと、偏差及び/又は異常の特定に基づいて、患者が臨床状態の影響を受けやすいか、又は臨床状態にあることを予測するステップと、イベントモニタリングシステムのユーザインターフェースを介して、患者が臨床状態の影響を受けやすいか、又は臨床状態にあることを示すアラートを提供するステップとを含む。
【0009】
[0009] 一実施形態によれば、複数の測定値は、複数の患者の測定値を含み、上記の方法は、複数の患者のうちの個々の患者で複数の測定値を整理するステップを更に含む。
【0010】
[0010] 一実施形態によれば、上記の方法は、受信した複数の測定値から1つ以上の特徴を抽出するステップを更に含む。
【0011】
[0011] 一実施形態によれば、特徴は、バイタルサイン、検査結果、及び/又は臨床スコアである。
【0012】
[0012] 一実施形態によれば、上記方法は、複数の患者についての医療情報及び臨床状態情報を含むトレーニングデータを受信するステップと、受信したトレーニングデータから複数の特徴を抽出するステップと、バッチ偏差検出モジュールをトレーニングするステップとを更に含む。
【0013】
[0013] 一実施形態によれば、イベントモニタリングシステムは、患者の複数のライフサインをモニタリングする臨床ケアシステムを含み、イベントモニタリングシステムのユーザインターフェースは、患者のモニタリングされた複数のライフサインのディスプレイを含み、患者が臨床状態の影響を受けやすいか、又は臨床状態にあることを示すアラートは、ディスプレイ上のテキストアラートを含む。
【0014】
[0014] 一実施形態によれば、イベントモニタリングシステムは、イベントモニタリングシステムのトレーニング中に臨床状態のパラメータ定義のセットを決定するために使用される。
【0015】
[0015] 一態様によれば、イベントモニタリングシステムが提供される。このシステムは、偏差値の定義、偏差時間の定義、値閾値の定義、及び値時間の定義を含む、臨床状態のパラメータ定義のセットと、一定の期間にわたって測定される、患者の少なくとも1つの特徴についての複数の測定値と、トレーニングされたバッチ偏差検出モジュールと、患者の少なくとも1つの特徴についての複数の測定値の、臨床状態を予測する偏差及び/又は異常を特定するプロセッサであって、(i)イベントモニタリングシステムのバッチ偏差検出モジュールを使用して、患者の受信した複数の測定値と定義した偏差値及び定義した偏差時間とを比較することと、(ii)比較することに基づいて、患者について一定の期間にわたって測定された、受信した複数の測定値が、定義した偏差値を上回り、定義した偏差時間を下回る場合、偏差を特定することと、(iii)イベントモニタリングシステムのバッチ偏差検出モジュールを使用して、患者の受信した複数の測定値と定義した値閾値及び定義した値時間とを比較することと、(iv)比較することに基づいて、患者について一定の期間にわたって測定された、受信した複数の測定値が、定義した値閾値を上回り、定義した値時間を下回る場合、異常を特定することとを含み、更に、偏差及び/又は異常の特定に基づいて、患者が臨床状態の影響を受けやすいか、又は臨床状態にあることを予測する、プロセッサと、患者が臨床状態の影響を受けやすい、又は臨床状態にあることを示すアラートを提供するユーザインターフェースとを含む。
【0016】
[0016] 様々な実装形態では、プロセッサ又はコントローラを、1つ以上のストレージ媒体(本明細書では、総称的に「メモリ」と呼び、例えば、RAM、PROM、EPROM、及びEEPROM(登録商標)、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク、光ディスク、磁気テープなどの揮発性及び不揮発性コンピュータメモリ)に関連付けることができる。いくつかの実装形態では、ストレージ媒体は、1つ以上のプロセッサ及び/又はコントローラ上で実行されると、本明細書に説明される機能のうちの少なくともいくつかを行う1つ以上のプログラムでエンコードされ得る。様々なストレージ媒体は、プロセッサ又はコントローラ内で固定されていても、そこに保存されている1つ以上のプログラムをプロセッサ又はコントローラにロードして、本明細書に説明される本発明の様々な態様を実装できるように輸送可能であってもよい。「プログラム」又は「コンピュータプログラム」という用語は、本明細書では、1つ以上のプロセッサ又はコントローラをプログラムするために使用できるあらゆる種類のコンピュータコード(ソフトウェア又はマイクロコードなど)を指す一般的な意味で使用される。
【0017】
[0017] 1つのネットワーク実装形態では、ネットワークに結合された1つ以上のデバイスが、そのネットワークに結合された1つ以上の他のデバイスのコントローラとして機能し得る(例えば、マスタ/スレーブ関係で)。別の実装形態では、ネットワーク環境には、ネットワークに結合されたデバイスのうちの1つ以上を制御する1つ以上の専用コントローラが含まれ得る。一般に、ネットワークに結合された複数のデバイスは、各々が1つ以上の通信媒体に存在するデータにアクセスできる。しかしながら、所与のデバイスは、例えばそれに割り当てられた1つ以上の特定の識別子(「アドレス」など)に基づいて、ネットワークと選択的にデータを交換する(つまり、ネットワークからデータを受信する及び/又はネットワークにデータを送信する)という点で、「アドレス可能」であり得る。
【0018】
[0018] 本明細書で使用される「ネットワーク」という用語は、任意の2つ以上のデバイス間及び/又はネットワークに結合された複数のデバイス間での(例えば、デバイス制御、データストレージ、データ交換の、ための)情報の輸送を容易にする2つ以上のデバイス(コントローラ又はプロセッサを含む)の任意の相互接続を指すものである。容易に理解できるように、複数のデバイスを相互接続するのに適したネットワークの様々な実装形態には、様々なネットワークトポロジのいずれかが含まれ、様々な通信プロトコルのいずれかが使用され得る。更に、本開示による様々なネットワークにおいて、2つのデバイス間の任意の1つの接続は、2つのシステム間の専用接続を表す場合もあれば、非専用接続を表す場合もある。このような非専用接続では、2つのデバイス用の情報を伝送することに加えて、2つのデバイスのいずれかのためというわけではない情報も伝送する場合がある(オープンネットワーク接続など)。更に、本明細書で説明するデバイスの様々なネットワークは、1つ以上のワイヤレス、有線/ケーブル、及び/又は光ファイバリンクを使用して、ネットワーク全体の情報の輸送を容易にできることが容易に理解されるべきである。
【0019】
[0019] 前述の概念と、後述する追加の概念との全ての組み合わせ(これらの概念が相互に矛盾していない場合)は、本明細書に開示されている発明の主題の一部と考えられることを理解しておく必要がある。特に、本開示の最後に記載されている背特許請求に係る主題の全ての組み合わせは、本明細書に開示されている発明の主題の一部であると考えられる。また、本明細書で明示的に使用されている用語のうち、参照によって組み込まれた開示にも含まれている用語は、本明細書に開示されている特定の概念と最も一致する意味を持つことを理解しておく必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
[0020] 図面では、同様の参照文字は、概して、異なる図全体を通して同じ部分を指す。また、図面は必ずしも縮尺通りではなく、概して、発明の原理を示すことに重点が置かれている。
【0021】
図1】[0021]図1は、一実施形態に従う、患者の経時的に測定された複数の測定値の偏差及び/又は異常を特定する方法のフローチャートである。
図2】[0022]図2は、一実施形態に従う、患者の経時的に測定された複数の測定値の偏差及び/又は異常を特定する方法のフローチャートである。
図3】[0023]図3は、一実施形態に従う、患者イベント検出方法のフローチャートである。
図4】[0024]図4は、一実施形態に従う、患者イベント検出方法のフローチャートである。
図5】[0025]図5は、一実施形態に従う、分類器をトレーニングする方法のフローチャートである。
図6】[0026]図6は、一実施形態に従う、患者の経時的に測定された複数の測定値の偏差及び/又は異常を特定するシステムの概略図である。
図7】[0027]図7は、一実施形態に従う、AKI患者例のグラフである。
図8】[0028]図8は、一実施形態に従う、非AKI患者例のグラフである。
図9】[0029]図9は、一実施形態に従うイベント検出システム例である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[0030] 本開示では、患者の経時的に測定された複数の測定値の偏差及び/又は異常を自動的に特定する患者モニタリングシステムの様々な実施形態について説明する。より一般的に、出願人は、患者の臨床状態を自動的に予測できる患者モニタリングシステムを提供することが有益であると認識している。上記の観点から、様々な実施形態及び実装形態は、偏差値の定義、偏差時間の定義、値閾値の定義、及び値時間の定義が含まれる、臨床状態のパラメータ定義のセットがプログラムされている、又は別様に提供されているモニタリングシステムを対象としている。システムは、1人以上の患者について、一定の期間にわたって測定された複数の測定値を受信する。システムは、次に、患者の少なくとも1つの特徴について、複数の測定値の、臨床状態を予測する偏差及び/又は異常を特定する。偏差を特定するためには、システムは、受信した患者の複数の測定値を、定義した偏差値及び定義した偏差時間と比較し、患者について一定の期間にわたって測定された受信した複数の測定値が、定義した偏差値を上回り、定義した偏差時間を下回る場合、偏差を特定する。異常を特定するためには、システムは、受信した患者の複数の測定値を、定義した値閾値及び定義した値時間と比較し、患者について一定の期間にわたって測定された受信した複数の測定値が、定義した値閾値を上回り、定義した値時間を下回る場合、異常を特定する。このシステムは、偏差及び/又は異常の特定に基づいて、患者が臨床状態の影響を受けやすいか、又は臨床状態にあることを予測する。システムは、ユーザインターフェースを介して、患者が臨床状態の影響を受けやすいか、又は臨床状態にあることを示すアラートを提供する。
【0023】
[0031] したがって、患者モニタリングシステムは、時間的なイベントを特定して、ショック状態、血行動態不安定などの関心の患者状態を検出する方法で構成されている。一実施形態によれば、時間的イベントは、患者時系列(例えば、1時間にわたって測定された血圧)が定量的に定義された経時的トレンドと一致するときに発生する。一実施形態によれば、臨床状態とは、患者の時系列トレンドをモニタリングすることで予測される患者状態である。例えば、臨床状態とは、患者がショック状態になっている状態、血行動態が不安定になっている状態、及び他の多くの状態である。
【0024】
[0032] 本明細書に開示又は想定されている実施形態及び実装形態は、医用モニタリングデバイス又はシステムを含むが、これらに限定されない、任意のモニタリングシステムで利用できる。例えば、本明細書における実施形態及び実装形態の1つの応用は、例えば、Philips Patient Monitoringシステム(コーニンクレッカフィリップス社製)などの医用モニタリングシステムの改良である。ただし、本開示は、医用モニタリングデバイス又はシステムに限定されず、したがって、本開示及び本明細書に開示される実施形態は、任意のモニタリングデバイス又はシステムを包含する。
【0025】
[0033] 図1を参照して、イベントモニタリングシステムを使用して臨床状態を自動的に予測する方法100のフローチャートを示す。この方法のステップ110では、イベントモニタリングシステムが提供される。イベントモニタリングシステムは、本明細書に説明又は想定されているシステムのいずれであってもよい。一実施形態によれば、イベントモニタリングシステムは、恒久的に設置されてもよいが、スマートフォン、タブレット、又は他のデバイスのようなパーソナルデバイスなどのハンドヘルド又は他のポータブルデバイスであり得る。或いは、イベントモニタリングシステムは、医用モニタリングデバイス若しくはシステム、又は医用モニタリングデバイス若しくはシステムの構成要素であってもよい。
【0026】
[0034] 方法のステップ120では、イベントモニタリングシステムは、臨床状態の又はそれに関連するパラメータセットを、受信する、アクセスする、プログラム若しくは設定される、又は他の方法で取得する。本明細書で説明又は想定されているように、イベントモニタリングシステムは、患者測定値などのデータを含む患者データを分析して、臨床状態の可能性又は確率を示す経時的な偏差及び/又は異常を特定する。患者データの偏差及び/又は異常を特定するために、イベントモニタリングシステムでは、患者データを分析するためのパラメータセットが必要である。一実施形態によれば、イベントモニタリングシステムは、1つ以上の臨床状態のパラメータセットを用いて製造又はプログラムされる。一実施形態によれば、イベントモニタリングシステムは、多数の異なる臨床状態のパラメータセットを含む。
【0027】
[0035] 一実施形態によれば、イベントモニタリングシステムによって受信又は取得されるパラメータセットは、次のパラメータのうちの1つ以上を含む:(i)偏差値の定義、(ii)偏差時間の定義、(iii)値閾値の定義(ここで使用される「値閾値」という用語は、「v_value」とも呼び、臨床状態パラメータの閾値である)、及び(iv)値時間の定義。一実施形態によれば、イベントモニタリングシステムによって受信又は取得されるパラメータセットは更に、次のパラメータのうちの1つ以上を含む:(i)偏差方向、及び(ii)値方向。偏差/値方向パラメータは、時系列データの変化の方向を左右する。これらのパラメータは、増加又は減少を示す+又は-のいずれかになる。これにより、モデルは、関心の生理学的状態を最もよく予測する方向を学習できる。これらのパラメータについては、本明細書で更に議論し、説明する。
【0028】
[0036] 臨床状態の例と関連パラメータの数は無制限である。本明細書では、いくつかの非限定的な実施例について説明する。例えば、臨床状態はショック状態である。ショック状態に使用できるパラメータには、観血血圧(動脈又は中心線)や血圧カフの測定値などの血圧、ECGで測定された心拍数、及び/又はヘモグロビン、ヘマトクリット、乳酸、カルシウムなどの検査値などがある。別の例として、臨床状態は急性呼吸窮迫(ARDS)である。ARDSに使用できるパラメータには、ECGで測定された心拍数、オキシメトリで測定されたSpO、及び/又はFiOやPEEPなどの換気パラメータなどがある。別の例として、臨床状態は感染症又は敗血症である。感染症又は敗血症に使用できるパラメータには、ECGで測定された心拍数、プローブやスポットチェックで測定された体温値、及び/又は白血球数などの検査値などがある。
【0029】
[0037] 一実施形態によれば、イベントモニタリングシステムが受信又は取得したパラメータセットは、イベントモニタリングシステムの動作中に取り出しするために、システムのメモリ又は他のデータストレージ構造に保存される。例えば、イベントモニタリングシステムは、1つ以上の臨床状態の新しい又は更新されたパラメータセットで定期的に更新される。或いは、パラメータをリモートロケーションに保存したり、ホストしたりしてもよい。したがって、イベントモニタリングシステムは、システムがある臨床状態をモニタリングするときに、その臨床状態の最新パラメータを要求できる。したがって、イベントモニタリングシステムは、パラメータセットを要求し、取り出すか、又は別様で取得するために、リモートサーバ、データベース、又は他のリモート要素と通信できる。例えば、イベントモニタリングシステムは様々な臨床状態をモニタリングするようにされるため、リモート要素にアクセスして、要求した臨床状態の最新パラメータを要求できる。
【0030】
[0038] 一実施形態によれば、イベントモニタリングシステムのトレーニング中にパラメータ定義のうちの1つ以上が決定又は定義される。イベントモニタリングシステムのトレーニングは、図2に関して以下のとおりである。
【0031】
[0039] 方法のステップ130では、イベントモニタリングシステムは、患者の複数の測定値を、受信する、アクセスする、プログラム若しくは設定される、又は他の方法で取得する。これらの複数の測定値は、一定の期間にわたって測定される。一実施形態によれば、複数の測定値はリアルタイム又は1つ以上のデータのバッチでイベントモニタリングシステムに提供される。イベントモニタリングシステムは、1人以上の患者の測定値を継続的又は定期的に要求する。したがって、測定値はリアルタイムで提供されたり、患者測定値のデータベースから取り出されたりする。例えば、イベントモニタリングシステムは、ローカル又はリモートの電子医療記録データベースと通信しており、患者の測定値や他の記録を、受信する、要求する、若しくは別様でアクセスするようにプログラム又は別様で設計され得る。
【0032】
[0040] 一実施形態によれば、患者の測定値は、臨床状態に関連し得る任意の測定値から構成される。いくつかの例として、測定値には、年齢、性別などの患者の人口統計、心臓病、精神疾患、慢性閉塞性肺疾患などの診断又は薬物治療状態、心拍数、血圧、呼吸数、酸素飽和度などの生理学的バイタルサイン、不整脈関連アラーム(心室頻拍、心室徐脈、心房細動、心停止など)などのテレメトリアラーム関連データ、心拍数、呼吸数、無呼吸、SpO、観血動脈圧、非観血血圧などの生理学的測定値、及び/又はアーチファクト、ECGリード故障、呼吸リード故障、血圧センサ故障などのテクニカルアラームが含まれる。多くの他のタイプの入力データが可能である。
【0033】
[0041] 一実施形態によれば、患者の複数の測定値は、期間中に不規則な間隔で行われる。例えば、患者の血圧は午後1時15分、午後1時58分、午後3時05分、及び午後4時30分に測定される。間隔(35分、67分、及び85分)は非常に不規則である。しかし、イベントモニタリングシステムは、不規則な間隔で測定された測定値を処理するようにトレーニングされているため、データを分析して偏差及び/又は異常を依然として特定できる。実際、イベントモニタリングシステムが、期間中に不規則な間隔で測定された患者の測定値を分析する能力は、新規のイベントモニタリングシステムがもたらす多くの利点の1つにすぎない。
【0034】
[0042] 方法のオプションのステップ132では、イベントモニタリングシステムは、ステップ130で受信したデータを分析し、データを整理して個々の患者に分けたり、個々の患者ごとにデータにラベルを付けたり特定したりする。受信した測定値のデータポイントは、患者識別子又は他の識別情報を使用して特定の患者に関連付けられる。したがって、患者識別子を使用して、複数の測定値を個人i、個人i+1などの測定値に整理できる。或いは、システムは、1人の患者のデータのみをモニタリングするように構成されていてもよい。したがって、システムは患者識別子を使用して、1人の患者に関連する測定値のみを特定する。この場合、システムは受信したデータから関連する測定値のみを引き出す。整理された測定値には、適切なラベルを付けたり、タグを付けたり、メモリ内に識別子と共に提供されたりする。又は、イベントモニタリングシステムでは、個々の患者ごとに整理された又は分けられた測定値をメモリに保存することもできる。
【0035】
[0043] 方法のオプションのステップ134では、イベントモニタリングシステムは、患者の複数の測定値から1つ以上の特徴を抽出する。これは、データセットから特徴を抽出する任意の方法を含む、特徴の特定、抽出、及び/又は処理の様々な実施形態によって達成される。イベントモニタリングシステムの特徴処理ステップ又はモジュールの結果は、患者の測定値に関連する特徴のセットである。
【0036】
[0044] 方法のステップ140では、イベントモニタリングシステムは、患者の少なくとも1つの特徴についての複数の測定値の、臨床状態を予測する又は潜在的に予測する偏差及び/又は異常を特定する。臨床状態の可能性又は確率を予測する偏差及び/又は異常は、多くの異なる態様で特定できる。一実施形態によれば、本明細書に記載又は想定されているイベントモニタリングシステムは、次のステップに説明されているように偏差及び/又は異常を特定するが、他の方法も可能である。
【0037】
[0045] 偏差及び/又は異常を特定するための図2のフローチャートを参照して、方法のステップ142において、イベントモニタリングシステムは、イベントモニタリングシステムのバッチ偏差検出モジュールを使用して、受信した患者の複数の測定値と、定義した偏差値及び定義した偏差時間とを比較する。例えば、図3を参照すると、複数の患者の大規模な時系列データのセットと、最初に患者ごとに整理された複数の特徴とを特徴とする方法のフローチャートがある。各患者の全ての特徴の元の時系列データが、特定の特徴が特徴イベント基準に一致するかどうかを計算する、システムのバッチ特徴イベント検出モジュールを通される。バッチ特徴イベント検出モジュールは、臨床状態のパラメータセットを使用して、経時的な偏差及び/又は経時的な異常値などの時間トレンドを探す。このステップでは、バッチ特徴イベント検出モジュールは、定義した偏差値、定義した偏差時間、及び/又は定義した偏差方向のうちの1つ以上を使用して、経時的な偏差を探す。
【0038】
[0046] 方法のステップ144では、イベントモニタリングシステムは、比較ステップに基づいて、患者について一定の期間にわたって測定された、受信した複数の測定値の一部又は全てが、定義した偏差値を上回り、定義した偏差時間を下回る場合、偏差を特定する。
【0039】
[0047] 方法のステップ146で、イベントモニタリングシステムは、イベントモニタリングシステムのバッチ偏差検出モジュールを使用して、受信した患者の複数の測定値と、定義した値閾値及び定義した値時間とを比較する。図3を参照すると、各患者の全ての特徴の元の時系列データが、特定の特徴が特徴イベント基準に一致するかどうかを計算する、システムのバッチ特徴イベント検出モジュールを通される。バッチ特徴イベント検出モジュールは、臨床状態のパラメータセットを使用して、経時的な偏差及び/又は経時的な異常値などの時間トレンドを探す。このステップでは、バッチ特徴イベント検出モジュールは、定義した値閾値の、定義した値時間、及び/又は値偏差方向のうちの1つ以上を使用して、経時的な異常値を探す。
【0040】
[0048] 方法のステップ148では、イベントモニタリングシステムは、比較ステップに基づいて、患者について一定の期間にわたって測定された、受信した複数の測定値が、定義した値閾値を上回り、定義した値時間を下回る場合、異常を特定する。
【0041】
[0049] 図4を参照すると、一実施形態では、イベントモニタリングシステムの一部300を示す。経時的(t、…、t)な患者の特徴(x、…、x)が、システムのバッチ特徴イベント検出モジュールに供給される。一実施形態によれば、バッチ特徴イベント検出モジュールは、バッチ偏差検出モジュールとバッチ異常値検出モジュールとを含む。バッチ偏差検出モジュールは、[dt_dev]未満の短時間に[v_dev]よりも大きな有意な偏差(増加又は減少)があるかどうかを計算し、バッチ異常値検出モジュールは、値が、かなりの時間[dt_value]の間、生理学的に重要な閾値[v_value]を上回るか下回って異常のままであるかどうかを計算する。
【0042】
[0050] バッチ偏差検出モジュール及びバッチ異常値検出モジュールの2つのモジュールの計算定式化の例を以下の擬似コードで示す。これは例示のためにのみ提供されているため、非限定的な例である。
【0043】
[0051] バッチ異常値検出疑似コード
Input:
Sequences: t_seq, v_seq
Parameters: direction, t_dev, v_dev
Output:
Boolean: feature_event

if direction== ‘less’, then
cross_thres = (v_seq <=v_dev) # Boolean sequence of when the threshold is crossed
if direction== ‘‘greater’, then
cross_thres = (v_seq >=v_dev) # Boolean sequence of when the threshold is crossed

seq_diff = diff(seq) # discrete different
mask_start = concatenate ([[v_seq[0]], seq_diff = = 1])
t_start = mask_start * t_seq
t_start = np.array([_for_in t_start if (not_ = =0)])# of segments where value begins to cross threshold
mask_end = concatenate([seq_diff = = -1,[v_seq[-1]])
t_end = mask_end * t_seq
t_end = np.array([_f_in t_end if (not_ = = 0)]) # time segements where value crosses normal where value crosses threshold back to normal value

dt = t_end - t_start
【0044】
[0052] バッチ偏差検出疑似コード
Input:
Sequences: t_seq, v_seq
Parameters: direction, t_dev, v_dev
Output:
Boolean: feature_event

idx_pairs = list(combinations(range(len(t_seq)),2)) # get all combinations of samples in sequence
n_pairs = len (idx pairs) # number of all combinations
dv = [v_seq[idx_pairs[_][1]] - v_seq[idx_pairs[_][0]]) for_in range(n_pairs)] # compute all value differences between samples
dv = [t_seq[idx_pairs[_][1]] - t_seq[idx_pairs[_][0]]) for_in range(n_pairs)] # compute all time differences between samples

if direction = = ‘decrease’, then
triggers = (dt>0 AND dt <= t_dev) AND dv <=v_dev #c check for decrease over v_dev in under t_dev
if direction = = ‘increase’, then
triggers = (dt>0 AND dt <= t_dev) AND dv >=v_dev #c check for increase over v_dev in under t_dev

feature_event = any(triggers)
【0045】
[0053] 一実施形態によれば、時間パラメータ(dir_value、t_value、v_value、dir_dev、t_dev、v_devを含むが、これに限定されない)は、勾配降下法やhyperoptを含むほとんどの最適化手法を使用して反復的に見つけることができる。患者イベントのバッチ処理により、時間パラメータを迅速に反復して最適化できる。
【0046】
[0054] 一実施形態によれば、時間パラメータ(dir_value、t_value、v_value、dir_dev、t_dev、v_devを含むが、これらに限定されない)は、臨床イベントの予測された可能性のある範囲内又は付近に、臨床医又は他のエンティティによって最初に設定される。その後、トレーニングデータが分析されるにつれて、パラメータが最適化される可能性がある。そして、決定されたパラメータを、イベントモニタリングシステムで使用できる。
【0047】
[0055] 方法のステップ150では、イベントモニタリングシステムは、偏差及び/又は異常の特定に基づいて、患者が臨床状態の影響を受けやすいか、又は臨床状態にあることを予測する。図3を参照して、全ての特徴イベントが満たされると、患者にはイエス又はYのラベルが付けられている。つまり、患者は臨床状態の影響を受けやすいか、又は臨床状態にある。臨床的には、特徴イベントが発生していること(Y)は、患者が、臨床医が求めている時間トレンドを満たしていることを示しており、その患者が関心の臨床状態になる可能性が高いと考えられる。特徴イベントは、1つ以上の特徴で構成され得る。
【0048】
[0056] 方法のステップ160では、イベントモニタリングシステムは、イベントモニタリングシステムのユーザインターフェースを介して、患者が臨床状態の影響を受けやすいか、又は臨床状態にあることを示すアラートを提供する。この情報を表示するには様々な態様があり、ローカル又はリモートで表示され得る。
【0049】
[0057] 図5を参照すると、一実施形態によれば、モニタリングシステムをトレーニングする方法500のフローチャートが示されている。一実施形態によれば、イベントモニタリングシステムは、[dt_dev]未満の短時間に[v_dev]よりも大きな有意な偏差(増加又は減少)があるかどうか、及び/又は、値が、かなりの時間[dt_value]の間、生理学的に重要な閾値[v_value]を上回るか下回って異常のままであるかどうかに基づいて、患者が臨床状態の影響を受けやすいか、又は臨床状態にあることを決定するようにトレーニングされている、分類器とも呼ばれる機械学習アルゴリズムを含む。例えば、バッチ偏差検出モジュール及びバッチ異常値検出モジュールを含み得るバッチ特徴イベント検出モジュールは、1つ以上の機械学習アルゴリズムを含み得る。イベントモニタリングシステムの機械学習アルゴリズムは、過去データのデータセットを使用してトレーニングされる。このデータセットは、複数の患者の各々について、臨床状態の発症又は非発症を含む、患者に関する医療情報を含む。患者の過去情報から特徴を抽出し、イベントモニタリングシステムの機械学習アルゴリズムをトレーニングするために使用する。
【0050】
[0058] 一実施形態によれば、イベントモニタリングシステムは、全体的に又は部分的にデバイス内で具現化できる。例えば、イベントモニタリングシステム全体を、ハンドヘルドデバイス、ラップトップ、コンピュータ、又は他の単一デバイスなどの単一デバイス内に具現化できる。或いは、イベントモニタリングシステムは、ハンドヘルドデバイス、携帯電話アプリケーション、コンピュータ、又は情報を受信するためのユーザインターフェースとして機能する他の輸送可能な要素など、輸送可能なユーザインターフェースを含んでいてもよい。デバイスは、分析のためにイベントモニタリングシステムの別のリモート構成要素に情報を通信する。イベントモニタリングシステムの結果は、輸送可能なユーザインターフェースに戻される。
【0051】
[0059] 方法のステップ510では、イベントモニタリングシステムは、複数の患者に関するトレーニングデータを含む入力データを受信する。トレーニングデータは、数ある多くの他のタイプの医療情報の中でも、人口統計、バイタルデータといった生理学的測定値、物理的観察、及び/又は診断を含むが、これらに限定されない、患者の各々に関する医療情報で構成される。一例として、医療情報には、年齢、性別などの患者の人口統計、心臓病、精神疾患、慢性閉塞性肺疾患などの診断又は薬物治療状態、心拍数、血圧、呼吸数、酸素飽和度などの生理学的バイタルサイン、及び/又は心拍数、呼吸数、無呼吸、SpO、観血動脈圧、非観血血圧などの生理学的データに関する詳細情報が含まれる。他の多くのタイプの医療情報が可能である。
【0052】
[0060] トレーニングデータにはまた、イベントモニタリングシステムがモニタリングする臨床状態に患者がなったかどうかに関する指標又は情報も含まれ得る。例えば、トレーニングデータは、患者pが時刻tにショック状態になったことや、時間の経過と共にpについて測定された測定値、検査データ、及び/又は他の情報を明らかにする。更に、トレーニングデータは、患者p+1は全くショック状態にならなかったことや、時間の経過と共にp+1について測定された測定値、検査データ、及び/又は他の情報を明らかにし得る。
【0053】
[0061] このトレーニングデータは、1つ以上のデータベースに保存されたり、1つ以上のデータベースから受信したりできる。データベースは、ローカルのデータベースでも、リモートのデータベースでもよい。例えば、イベントモニタリングシステムは、トレーニングデータのデータベースを含む。
【0054】
[0062] 一実施形態によれば、イベントモニタリングシステムは、受信したトレーニングデータを処理するデータプリプロセッサ若しくは類似の構成要素又はアルゴリズムを含む。例えば、データプリプロセッサは、トレーニングデータを分析して、ノイズ、バイアス、エラー、及び他の潜在的な問題を除去する。データプリプロセッサはまた、入力データを分析して低品質データを削除することもできる。データの前処理や、データポイントの特定及び/又は抽出の多くの他の形式が可能である。
【0055】
[0063] 方法のステップ520では、システムは、受信したトレーニングデータから患者の特徴を抽出する。これは、データセットから特徴を抽出する任意の方法を含む、特徴の特定、抽出、及び/又は処理の様々な実施形態によって達成される。イベントモニタリングシステムの特徴処理ステップ又はモジュールの結果は、患者に関する医療情報及び臨床状態に関連する患者特徴のセットであり、したがって、分類器のトレーニングに使用できるトレーニングデータセットを構成する。
【0056】
[0064] 方法のステップ530では、システムは機械学習アルゴリズムをトレーニングする。機械学習アルゴリズムは、本明細書に説明又は想定されているように、患者情報を分析するために使用される分類器である。機械学習アルゴリズムは、抽出された特徴を使用して、機械学習アルゴリズムをトレーニングするための既知の方法に従ってトレーニングされる。ステップ530の後、イベントモニタリングシステムは、トレーニングされた分類器で構成され、患者ステータスを分類し、患者が臨床状態にあるか又は臨床状態になる可能性を予測するために使用できる。トレーニングされた分類器は、一度トレーニングされて分類に利用される点で静的であり得る。別の実施形態によれば、トレーニングされた分類器は、その後利用可能なトレーニングデータを用いて更新又は再トレーニングされる点で、より動的であり得る。更新又は再トレーニングは、持続的に行われても、定期的に行われてもよい。
【0057】
[0065] 図6を参照すると、一実施形態では、イベントモニタリングシステム600の概略図を示す。システム600は、本明細書に説明又は想定されているシステムのいずれかであり、本明細書に説明又は想定されている構成要素のいずれかを含み得る。
【0058】
[0066] 一実施形態によれば、システム600は、1つ以上のシステムバス612を介して相互接続されている、プロセッサ620、メモリ630、ユーザインターフェース640、通信インターフェース650、及びストレージ660のうちの1つ以上を含む。図6は、いくつかの点で、抽象化を構成しており、システム600の構成要素の実際の組織化は、図示されるものとは異なり、より複雑であり得ることが理解されよう。
【0059】
[0067] 一実施形態によれば、システム600は、メモリ630又はストレージ660に保存された命令を実行するか、そうでなければ、データを処理して、例えば、方法の1つ以上のステップを行うことができるプロセッサ620を含む。プロセッサ620は、1つ以上のモジュールで構成され得る。プロセッサ620は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、複数のマイクロコントローラ、回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、単一プロセッサ、複数プロセッサを含むが、これらに限定されない任意の適切な形態をとり得る。
【0060】
[0068] メモリ630は、不揮発性メモリ及び/又はRAMを含む、任意の適切な形態をとり得る。メモリ630には、L1、L2、若しくはL3キャッシュ、又はシステムメモリなどの様々なメモリが含まれ得る。そのため、メモリ630は、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)、動的RAM(DRAM)、フラッシュメモリ、読み取り専用メモリ(ROM)、又は他の類似のメモリデバイスを含み得る。メモリには、特にオペレーティングシステムを保存できる。RAMは、データの一時保存のためにプロセッサによって使用される。一実施形態によれば、オペレーティングシステムは、プロセッサによって実行されると、システム600の1つ以上の構成要素の動作を制御するコードを含み得る。プロセッサがハードウェアで、本明細書で説明する機能のうちの1つ以上を実装する実施形態では、他の実施形態において、そのような機能に対応するものとして説明されるソフトウェアは省略されてもよいことが明らかであろう。
【0061】
[0069] ユーザインターフェース640は、ユーザとのやり取りを可能にするための1つ以上のデバイスを含む。ユーザインターフェースは、情報の送受信を可能にする任意のデバイス又はシステムであり、ユーザコマンドを受信するためのディスプレイ、マウス、及び/又はキーボードを含み得る。いくつかの実施形態では、ユーザインターフェース640は、通信インターフェース650を介してリモート端末に提示されるコマンドラインインターフェース又はグラフィカルユーザインターフェースを含む。ユーザインターフェースは、システムの1つ以上の他の構成要素と共に設置されていても、システムから離れて設置されて、有線及び/又は無線通信ネットワークを介して通信してもよい。
【0062】
[0070] 通信インターフェース650には、他のハードウェアデバイスとの通信を可能にするための1つ以上のデバイスが含まれ得る。例えば、通信インターフェース650は、イーサネット(登録商標)プロトコルに従って通信するネットワークインターフェースカード(NIC)を含み得る。更に、通信インターフェース650は、TCP/IPプロトコルに従って通信するためのTCP/IPスタックを実装していてもよい。通信インターフェース650の様々な代替又は追加のハードウェア若しくは構成は明らかであろう。
【0063】
[0071] ストレージ660は、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気ディスクストレージ媒体、光学ストレージ媒体、フラッシュメモリデバイス、又は同様のストレージ媒体など、1つ以上の機械可読ストレージ媒体を含み得る。様々な実施形態では、ストレージ660は、プロセッサ620による実行のための命令又はプロセッサ620が動作するデータが保存されている。例えば、ストレージ660には、システム600の様々な動作を制御するためのオペレーティングシステム661が保存されている。
【0064】
[0072] ストレージ660に保存されているものとして説明された様々な情報は、更に又は或いは、メモリ630に保存されてもよいことが明らかであろう。この点において、メモリ630はまた、ストレージデバイスを構成していると見なされ、ストレージ660は、メモリと見なされることがある。他の様々な配置が明らかであろう。更に、メモリ630及びストレージ660は共に、非一時的機械可読媒体と見なされ得る。本明細書で使用される場合、「非一時的」という用語は、一時的な信号は除外するが、揮発性及び不揮発性メモリを含む全ての形態のストレージを含めることを意味する。
【0065】
[0073] システム600は、説明した各構成要素の1つを含むものとして示されているが、様々な構成要素が様々な実施形態で重複していてもよい。例えば、プロセッサ620は、本明細書で説明する機能を達成するために複数のプロセッサが協働するように、本明細書で説明する方法を独立して実行する、又は、本明細書で説明する方法のステップ若しくはサブルーチンを行う複数のマイクロプロセッサを含んでいてもよい。更に、システム600の1つ以上の構成要素がクラウドコンピューティングシステムに実装されている場合、様々なハードウェア構成要素が別々の物理システムに属していてもよい。例えば、プロセッサ620は、第1のサーバにある第1のプロセッサ及び第2のサーバにある第2のプロセッサを含む。多くの他の変形例及び構成が可能である。
【0066】
[0074] 一実施形態によれば、システム600は、データベース又はデータソース615を含むか、それとリモート又はローカル通信している。データベース615は、単一又は複数のデータベース若しくはデータソースであり得る。データベース615は、本明細書に説明及び/又は想定されているように、分類器のトレーニングに使用できる入力データを含む。
【0067】
[0075] 一実施形態によれば、システム600のストレージ660には、本明細書に説明又は想定されている方法の1つ以上の機能又はステップを実行するための1つ以上のアルゴリズム及び/又は命令が保存されている。例えば、システムは、データ処理命令662、トレーニング命令663、偏差検出モジュール664、異常値検出モジュール665、及び/又は報告命令667のうちの1つ以上を含む。
【0068】
[0076] 一実施形態によれば、データ処理命令662は、次のいずれかに使用される入力データを取り出して処理するようにシステムに指示する。(i)トレーニング命令663を使用して分類器664/665をトレーニングする、又は(ii)トレーニングされた分類器664/665を使用して患者の分析を実行する。データ処理命令662は、他の多くの可能なソースのうち、データベース615などから、必要に応じてシステムによって使用される入力データ又は医用データを受信又は取り出すようにシステムに指示する。上記のように、入力データは、様々なソースからの様々な入力タイプを含み得る。
【0069】
[0077] 一実施形態によれば、データ処理命令662は、入力データを処理して、複数の患者の医療情報に関連する複数の特徴を生成するようにシステムに指示する。複数の特徴は、分類器をトレーニングするために使用される。これは、特徴の特定、抽出、及び/又は処理の様々な実施形態によって達成される。特徴処理の結果は、以前にモニタリングされた患者のコホートについてのテレメトリモニタリングに関連する特徴のセットであり、このセットは、分類器のトレーニングに使用できるトレーニングデータセットを含む。
【0070】
[0078] 一実施形態によれば、トレーニング命令663は、処理されたデータを使用して分類器664/665をトレーニングするようにシステムに指示する。分類器は、提供された入力データのタイプを使用するのに十分な任意の機械学習分類器であり得る。したがって、システムは、患者が臨床状態にあるか、又は臨床状態になる可能性の予測を決定するトレーニング済みの分類器を含む。
【0071】
[0079] 一実施形態によれば、報告命令667は、患者が臨床状態にあるか、又は臨床状態になる可能性の予測を示すレポートを生成して提供するようにシステムに指示する。また、報告命令667は、システムのディスプレイにレポートを表示するようにシステムに指示する。表示には、患者に関する情報、パラメータ、患者の入力データ、及び/又は患者が臨床状態にあるか、又は臨床状態になる可能性が含まれ得る。他の情報も可能である。或いは、レポートは、有線及び/又は無線通信によって別のデバイスに通信されてもよい。例えば、システムは、レポートを携帯電話、コンピュータ、ラップトップ、ウェアラブルデバイス、及び/又はレポートの表示や他の通信が可能にされた他のデバイスに通知できる。
【0072】
[0080] 実施例1
[0081] 以下に、イベントモニタリングシステムの利用方法の実施例を2つ示す。これらの実施例は非限定的であることを理解しておく必要がある。
【0073】
[0082] いくつかの患者モニタにはイベント監視機能があり、臨床医が偏差及び異常値の検出を設定して患者をリアルタイムでモニタリングできる。この機能は、様々な臨床状態に対する時間トレンドの定義がないことから、あまり普及していない。一般的には、定量的な時間トレンドを定義するためには、臨床オピニオンリーダーのグループを集めて、コンセンサス基準を考える必要がある。このプロセスにはコストと時間がかかり、コンセンサス定義には臨床データを使用した検証がない。本明細書に説明又は想定されているイベントモニタリングシステムでは、時間トレンド基準を自動的に見つけ、同時に検証できる。これにより、イベント監視モニタリング機能を使用して、様々な患者の状態に合わせて事前設定を簡単に追加できる。このシステムは、病院内で独自のデータから時間トレンド定義を見つけ、これらの病院固有の時間基準をモニタに適用するために使用できるツールでもある。
【0074】
[0083] 実証のために、本明細書に説明又は想定されているイベントモニタリングシステムを利用して、衝撃を予測するためのバイタルトレンドを見つけた。ショック状態の可能性を示す血行動態介入がラベル付けされたデータセットがあった。血行動態が不安定な患者は全患者のごく一部(約10%)であり、高いリコールを伴う不安定な患者の検出は困難である。イベントモニタリングシステムを利用して、血行動態の不安定性を注意深くモニタリングされる3つのバイタルサインの時間パターンが特定された。見つけられた時間トレンドパラメータは次のとおりである。

心拍数:
少なくとも17.0分の間、161.0を上回る
又は、15.0分で41.0の減少

SpO2:
少なくとも36.0分の間、85.0未満
又は、17.0分で22.0の減少

全身平均:
少なくとも6.0分の間、65.0未満
又は、1.0分で56.0の減少
【0075】
[0084] これらの時間トレンドは、イベントモニタリングプラットフォームの「ショック状態検出」機能に直接適用される。臨床医は、「ショック状態検出」の高度イベント監視機能をオンにするだけで、患者が時間イベントと一致するとアラートが出される。
【0076】
[0085] ここで見つけた時間トレンドを用いると、0.46のリコール及び0.60のPPVを有する血行動態が不安定な患者を検出できる。これは、46%の不安定な患者が見つかる一方で、40%の偽陽性率で偽陽性の予測が少なくなることを意味する。これは、PPV60%に相当し、このような不均衡なデータセットの場合、通常、より多くの偽陽性を返し、より少ない真のイベントケースを捉える機械学習方法と比較して、非常に高いPPVである。
【0077】
[0086] 実施例2
[0087] イベントモニタリングシステムは、ハードトリガではなく、臨床スコアの時間トレンドを使用することで、予測臨床スコアの信頼性を向上させ、偽陽性率を減少させるためにも使用できる。予測臨床スコアは、複数のデータソース(多くの場合、高頻度の時間データが含まれる)からの情報を統合する。これにより、スコアは不安定性(jumpiness)や変動性にさらされる。通常、臨床医には、1回でも十分に大きいリスクを示すスコア閾値を超過すると、アラートが出される。時間的にノイズの多いスコアは、誤った閾値の超過によって誤ったアラートにつながる可能性がある。
【0078】
[0088] 閾値を超過したときにすぐにアラートを出すのではなく、スコアが閾値領域に留まるまでしばらく待つことで、より良い予測力が得られることが示されている。問題は、アラートに必要な期間を設定する方法である。イベントモニタリングシステムにより、バッチ異常検出モジュールを使用して、最適なスコア閾値と共に最適な待ち時間を自動的に見つけることができる。
【0079】
[0089] 以下で、図7及び図8は、患者データを使用して急性肝傷害(AKI)を予測するためのAKIリスクスコアの実施例を示している。アラート閾値を0.22の厳しい値に設定すると、一部の非AKI(AKIを発症しない患者、2番目の図)が、1つの不安定な(jumpy)スコアにより高AKIリスクと予測される。動的アラート閾値基準を、追加の「閾値を超えた時間」の要件と共に使用すると、この患者例は偽陽性として排除される。一方、真AKI患者(上の例)は、「閾値を超えた時間」の基準を満たし、真陽性のままである。最適閾値及び「閾値を超えた時間」は、本発明に説明されているバッチ異常値検出モジュールを使用して、データから自動的に見つけることができる。この方法は、時間の経過と共に迅速に変化する任意の臨床スコアに適用できる。
【0080】
[0090] 実施例3
[0091] 一実施形態によれば、イベントモニタリングシステムは、フィリップス(商標)のIntelliVue(商標)モニタなどの患者モニタや他のモニタに組み込むことができる。例えば、図9を参照すると、患者モニタで使用されているイベントモニタリングシステムの非限定的な実施例が示されている。このシステムは、患者の他の多くの特徴もモニタリングする。イベントモニタリングシステムは、患者のデータの多くの時点を分析し、心拍数が17分以上にわたって161bmpを超えていることを判断し、これにより、患者に血行動態不安定が発生している又はその影響を受けやすい可能性があるという警告が出される。したがって、システムは、画面上に警報を提供しており、これは可聴又は他の警報又はアラートを伴うことがある。
【0081】
[0092] 一実施形態によれば、イベントモニタリングシステムは、分類器のトレーニングに使用される入力データと、複数の患者の決定に使用される受信した医療情報における数千又は数百万個のデータポイントを処理する。例えば、特徴の特定や抽出といった自動化プロセスと、その後のトレーニングとを使用して、機能的で熟練した分類子を生成するには、入力データ及び生成された特徴から数百万個のデータポイントを処理する必要がある。これには、数百万個のデータポイントと数百万又は数十億回の計算から新規のトレーニングされた分類器を生成するために、数百万又は数十億回の計算が必要になる可能性がある。その結果、トレーニングされた各分類器は、機械学習アルゴリズムの入力データ及びパラメータに基づいて新規で且つ独特である。したがって、機能的で熟練した分類器を生成するには、人間の脳が一生をかけても又は複数の生涯をかけても達成できない大量の計算及び分析を伴うプロセスが含まれる。
【0082】
[0093] 同様に、イベントモニタリングシステムは、患者に関するデータを継続的に受信し、分析を実行し、各患者のレポートを介して定期的又は継続的な更新を提供できる。そのためには、レポートを最適化するために継続的に数千又は数百万個のデータポイントを分析する必要があり、人間の脳が一生をかけても達成できない大量の計算及び分析が必要になる。
【0083】
[0094] 迅速且つ徹底的な患者分析を提供することにより、この新規のイベントモニタリングシステムは、先行技術のシステムに比べて非常に大きなプラスの効果をもたらす。一例として、患者が臨床状態にあるか又は臨床状態になる可能性を最大限に考慮できるシステムを提供することで、生存転帰を向上させ、命を救うことにつながる。
【0084】
[0095] 本明細書では、いくつかの発明実施形態について説明し、示しているが、当業者であれば、本明細書に説明する機能を行ったり、結果や1つ以上の利点を得たりするための様々な他の手段や構造を容易に想像できよう。また、これらの変形や変更の各々は、本明細書に説明する発明実施形態の範囲内であるとみなされる。より一般的には、当業者であれば、本明細書に説明する全てのパラメータ、寸法、材料、及び構成が模範的であること、また、実際のパラメータ、寸法、材料、及び/又は構成は、本発明の教示内容が使用されている特定の用途に依存することを容易に理解できよう。当業者であれば、本明細書に説明する特定の発明実施形態に相当する多くの均等物を、日常の実験以上のものを使用することなく認識するか、又は確認することができよう。したがって、前述の実施形態は、例としてのみ提示され、添付の特許請求の範囲及び均等物の範囲内で、発明実施形態を、特に説明され請求されているものとは別の方法で実践し得ることを理解されるべきである。本開示の発明実施形態は、本明細書で説明される個々の特徴、システム、品物、材料、キット、及び/又は方法の各々を対象としている。更に、2つ以上のそのような特徴、システム、品物、材料、キット、及び/又は方法の任意の組み合わせは、そのような特徴、システム、品物、材料、キット、及び/又は方法は、相互に矛盾していなければ、本開示の発明範囲に含まれる。
【0085】
[0096] 本明細書で定義及び使用される全ての定義は、辞書の定義、参照によって組み込まれる文書内の定義、及び/又は定義された用語の通常の意味に優先されることを理解されるべきである。
【0086】
[0097] 単数形の要素は、本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、「少なくとも1つ」を意味するものとして理解されるべきである。
【0087】
[0098] 本明細書及び特許請求の範囲で使用される語句「及び/又は」は、そのように等位接続されている要素(つまり、接続的に存在する場合もあれば、離接的に存在する場合もある要素)の「いずれか又は両方」を意味するものとして理解されるべきである。「及び/又は」を用いてリストされた複数の要素は、同じように、つまり、そのように等位接続されている要素のうちの「1つ以上」と解釈されるべきである。「及び/又は」句によって特に特定された要素以外の他の要素も、特に特定された要素に関連するかどうかにかかわらず、任意選択で存在していてもよい。したがって、非限定的な例として、「含む(comprising)」などのオープンエンド言語と組み合わせて使用する場合、「A及び/又はB」への参照は、1つの実施形態ではAのみ(任意選択でB以外の要素を含む)を指し、別の実施形態ではBのみ(任意選択でA以外の要素を含む)を指し、更に別の実施形態ではA及びBの両方(任意選択で他の要素を含む)を指すことなどが可能である。
【0088】
[0099] 本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、「又は」は、上記で定義されている「及び/又は」と同じ意味を有するとして理解されるべきである。例えば、リスト内のアイテムを分離するとき、「又は」又は「及び/又は」は、包含的であると解釈される。つまり、いくつかの要素又は要素のリストのうちの少なくとも1つの包含であるが、2つ以上の要素、また、任意選択で、追加のリストされていないアイテムも含まれている。その反対を明確に示す用語のみ(例えば、「~のうちの1つのみ」若しくは「~のうちのちょうど1つ」、又は、特許請求の範囲で使用されたときに、「~からなる」)が、いくつかの要素又は要素のリストのうちの厳密に1つの要素を含むことを意味する。一般に、本明細書で使用される場合、用語「又は」は、排他性の用語(例えば、「どちらか一方」、「~のうちの1つ」、「~のうちの1つのみ」、又は「~のうちのちょうど1つ」)が先行するときに、排他的な代替手段(すなわち、「~のどれか一方であるが両方ではない」)を示すものとしてのみ解釈されるべきである。「本質的に~からなる」は、特許請求の範囲で使用される場合、特許法の分野で使用される通常の意味を有する。
【0089】
[00100] 本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、1つ又は複数の要素のリストを参照しての語句「少なくとも1つ」は、要素リスト内の要素のいずれか1つ又は複数から選択された少なくとも1つの要素を意味するものとして理解されるべきである。ただし、要素のリスト内に具体的にリストされている各要素の少なくとも1つを含める必要はなく、また、要素のリスト内の要素の任意の組み合わせを除外しない。この定義では、語句「少なくとも1つ」が参照する要素のリスト内で特定された要素以外の要素が、特定された要素に関連するかどうかに関係なく、任意選択で存在していてもよい。したがって、非限定的な例として、「A及びBのうちの少なくとも1つ」(又は同等に「A又はBのうちの少なくとも1つ」、又は同等に「A及び/又はBのうちの少なくとも1つ」)は、1つの実施形態では、Bがない状態で、少なくとも1つのA(任意選択で2以上のAを含む)(任意選択でB以外の要素を含む)を指し、別の実施形態では、Aがない状態で、少なくとも1つのB(任意選択で2以上のBを含む)(任意選択でA以外の要素を含む)を指し、更に別の実施形態では、少なくとも1つのA(任意選択で2つ以上のAを含む)、及び少なくとも1つのB(任意選択で2つ以上のBを含む)(任意選択で他の要素を含む)を指すことなどが可能である。
【0090】
[00101] また、特に明記のない限り、2つ以上のステップ又は行為を含む、本明細書で特許請求されている任意の方法では、方法のステップ又は行為の順序は、方法のステップ又は行為が記載された順序に必ずしも限定されるわけではないことも理解されるべきである。
【0091】
[00102] 特許請求の範囲だけでなく、上記の明細書においても、「有する」、「含む」、「担持する」、「持つ」、「含有する」、「伴う」、「保持する」、「~で構成されている」などの全ての移行句は、オープンエンドであることを理解されるべきである。つまり、含むが限定されないことを意味する。米国特許局の特許審査手続便覧に記載されているように、移行句「~からなる」及び「本質的に~からなる」のみが、閉鎖型又は半閉鎖型の移行句である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】