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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-12
(54)【発明の名称】水上艇を駆動する為のプロペラ
(51)【国際特許分類】
   B63B 73/20 20200101AFI20240405BHJP
   B63H 1/26 20060101ALI20240405BHJP
   B63H 1/14 20060101ALI20240405BHJP
   B29C 70/68 20060101ALI20240405BHJP
   B29C 70/42 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
B63B73/20
B63H1/26 D
B63H1/14
B29C70/68
B29C70/42
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568436
(86)(22)【出願日】2021-05-05
(85)【翻訳文提出日】2023-12-13
(86)【国際出願番号】 EP2021061844
(87)【国際公開番号】W WO2022233407
(87)【国際公開日】2022-11-10
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523416519
【氏名又は名称】アルベルト ハントマン エルテカ ゲーエムベーハー ウント ツェーオー.カーゲー
【氏名又は名称原語表記】ALBERT HANDTMANN ELTEKA GMBH & CO.KG
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ケトウ, ルッツ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥース, イェンス
(72)【発明者】
【氏名】レシュマン, スベン
(72)【発明者】
【氏名】ホップ, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】シュルツェ, ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】ペッツィンガー, ゲオルク
(72)【発明者】
【氏名】エゴ, フランツ
【テーマコード(参考)】
4F205
【Fターム(参考)】
4F205AA29
4F205AB25
4F205AC05
4F205AD03
4F205AD16
4F205AH04
4F205HA12
4F205HA27
4F205HA34
4F205HA35
4F205HB01
4F205HB11
4F205HF05
4F205HK04
(57)【要約】
プロペラブレード(2、6、9、15)と、船舶の軸に接続する金属ハブ(1、7、8、14、31)とを有する水上艇を駆動する為のプロペラ及びその製造方法を提供する。プロペラブレードは、ポリアミド12Cから製造されるか、または長繊維コアおよび/または短繊維コアを有するポリアミド12Cから作られる複合材料から製造される。プロペラブレード若しくはプロペラブレードの構成部品がハブに装着されているか、又はプロペラ全体がポリアミド12C、若しくはポリアミド12Cからなる長繊維コア及び/若しくは短繊維コアとPA12Cでカプセル化されたハブとの複合材料で構成されている。これにより、金属プロペラに比べて、スラスト性能の向上と音響特性の低減を図ることができる。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水上艇を駆動する為のプロペラであって、プロペラブレード(2、6、9、15)及び船舶の軸に接続するための金属製のハブ(1、7、8、14、31)を有し、
前記プロペラブレードがポリアミド12C若しくはポリアミド12Cからなる長繊維及び/若しくは短繊維のコアを有する複合材料から製造され、前記プロペラブレード若しくは前記プロペラブレードの構成部品が前記ハブに装着されており、または、前記プロペラ全体がポリアミド12C若しくはポリアミド12Cからなる長繊維及び/若しくは短繊維のコアを有する複合材料から製造され、前記ハブがPA12Cで封入されていることを特徴とするプロペラ。
【請求項2】
個々のプロペラブレード又はそれから形成されたブレードの対は、前記プロペラに埋め込まれた金属製タイアンカー(3)によって固定され、それらは前記ハブの前記カラー及び前記ハブに装着されたボッチャーリング(16)にクランプされる、請求項1に記載のプロペラ。
【請求項3】
前記ボッチャーリングには前記金属製タイアンカー(3)の開口部が形成され、前記タイアンカーはナット(5)を介して前記ボッチャーリング(4,16,32)にクランプされる、請求項2に記載のプロペラ。
【請求項4】
前記プロペラブレードは、前記タイアンカー(3)のためのボアを備え、前記ボアの長さにわたって一つ又は複数のそれぞれのポケットが形成されて材料応力を低減する、請求項3に記載のプロペラ。
【請求項5】
前記ナット/ネジ接続部を覆い、特に船舶のシャフトおよび/またはハブの後流の流れを最適化するために、前記ハブの端部に付けられたカバーを更に備える、請求項3又は4に記載のプロペラ。
【請求項6】
さらに、前記ハブから前記プロペラブレードに力およびトルクを伝達するための構造要素を有し、前記構造要素、特に、ロッド(10)、プロファイル(11)、金属構造体(12)またはインサート(13)の形状の前記構造要素が、力嵌め接続、正嵌合接続および/またはサブスタンスフィット接続によって前記ハブ(8)に付けられ、ポリアミド12Cで完全に封入される、請求項1に記載のプロペラ。
【請求項7】
前記ハブ(7,8)は、PA12Cで封入するためのエッチング、サンドブラスト、ローレット加工(knurling)、および/または、仕上げを適用することにより調製された表面を有する、請求項6に記載のプロペラ。
【請求項8】
一つ又は複数のプロペラブレードは、鮫肌に類似した表面構造を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロペラ。
【請求項9】
プロペラブレード(2、6、9、15)と船舶の軸に接続する金属ハブ(1、7、8、14、31)とを有する、水上艇を駆動する為のプロペラの製造方法において、
前記プロペラブレードがポリアミド12C若しくはポリアミド12Cからなる長繊維及び/又は短繊維のコアを有する複合材料から製造され、前記プロペラブレード若しくは前記プロペラブレードの構成部品が前記ハブに装着され、または、前記プロペラ全体がポリアミド12C若しくはポリアミド12Cからなる長繊維及び/又は短繊維のコアを有する複合材料から製造され、一回の鋳造処理で全てのプロペラブレードを成形し、同時に前記プロペラの前記金属ハブを包囲することを特徴とする、方法。
【請求項10】
前記ポリアミド12Cを加熱して前記タイアンカーを室温で加圧することにより、および/または、前記タイアンカーを冷却して室温で加圧することにより、前記プロペラブレード2に金属製タイアンカー3を挿入して力およびトルクを伝達する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
この目的のために調製された前記ハブ(7,8)を同時に包囲しながら、1つの鋳造処理において全てのプロペラブレードを成形しつつ、前記ハブから前記個々のプロペラブレードに力を導入する構造要素は、前記ハブに固定され、前記鋳造処理中にPA12Cによって完全に包囲される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記ハブ(7,8)は、封入される為に、エッチング、サンドブラスト、ローレット加工、および/または仕上げを適用することによって、PA12Cに向かう表面に調製される、請求項11に記載のプロペラ。
【請求項13】
鋳造して硬化させた前記プロペラを機械加工して最終輪郭を得る、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
1つまたは全てのプロペラまたは表面の一部の前記表面(20)を設計する為に、鮫肌の表面構造に類似した表面構造が、鋳型を成形することによって、および/または、鋳造処理の一部として表面に粒状材料を組み込むことによって鋳造される、請求項9~13のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載の水上艇を駆動する為のプロペラ及び請求項9の前文に記載の水上艇を駆動する為のプロペラの製造方法に関するものである。
【0002】
従来技術によれば、大きなサイズおよび推進力を有する水上艇用のプロペラは、プロペラブロンズ、真鍮、スチール、またはステンレススチールなどの金属材料から製造される。これらのプロペラでは、個々のブレードと、船舶のシャフトに装着するためのハブとトルク伝達のためのハブの両方が金属で作られている。サイズに応じて、プロペラは単一の鋳造物で製造されるか、または個々のブレードが互いに圧力嵌め、物質嵌め(substance-fit)、または正嵌合(positive-fit)方式で接続される。よく知られているように、大型水上艇用プロペラは主に金属材料で製造されている。
【0003】
しかしながら、欠点は、金属プロペラの回転が水中に重大な電気的、磁気的および音響的痕跡(signatures)を発生させることである。これらの痕跡は、民間および軍事輸送の双方において望ましくない。商業海運の分野において、プロペラからの音響放射は水中の生物に影響を与え、例えばクジラやイルカのコミュニケーションや方向付けがこれらの騒音によって著しく乱されると想定されるので、特に生態学的観点から批判的に評価されている。軍事輸送の分野において、これらの電気的、磁気的、音響的な放射が船舶の位置を特定する役割を果たしている。同様に、たとえば、潜水艦を見つけることをより困難にするために、痕跡をできるだけ低く保つことが目的である。
【0004】
プラスチック材料で作られた炭素繊維強化ブレードを有するより大きなプロペラも知られている。しかしながら、使用されるマトリクスおよび長い繊維の特性のために、これらのプロペラは、層間剥離に対して非常に敏感であり、したがって、いかなる重要な方法においても使用されない。異なるプラスチック材料で作られたプロペラは、推進力の低い小型の水上艇にのみ使用される。これらのプロペラは、典型的には完全にプラスチック材料から製造されるか、または金属製ハブがプラスチック材料に鋳造される。
【0005】
使用される材料のキャビテーション浸食を避けるために、従来技術のプロペラのためにブレードの全ての所望の形状を製造することができるわけではないことが更に知られている。キャビテーションの結果として金属材料が浸食されるため、特定の形状を使用する場合、ブレードの使用寿命は短すぎる。これは、ブレードの形状および表面設計によってキャビテーションの影響を最小限に抑え、船舶のエンジン、船体およびプロペラの所定の配置から最大の性能を得る試みにもかかわらず、プロペラ形状の最適化を妨げる。
【0006】
従来技術のプロペラの一つ又は複数のプロペラブレードが損傷した場合には、プロペラ全体を乾ドックで在室日に交換しなければならない。プロペラおよびプロペラブレードは、その高い比重量のために、それぞれの揚力装置を用いて組み立てることが非常に困難である。修理は時間がかかり、直接的および間接的に高いコストを伴う。もう一つの欠点は、この時期には水上艇が使えないことである。水中での迅速な修理は事実上不可能である。
【0007】
従来技術のプロペラは、典型的には、フジツボ、ムール貝、およびその他の生物の付着を受けやすく、これらの生物は、短い時間内に連続的かつ著しく駆動の性能を低下させ、それによって燃料消費量を増大させる。この成長を遅くするために、従来のプロペラは特殊な防汚塗料でコーティングされている。しかしながら、そのような塗料に含まれる殺生物剤は一般に毒性があり、従って生態学的な理由から望ましくない。コーティング自体は、乾ドックでの時間、使用される材料、およびそれぞれの作業負荷のためにコストを生じる。非毒性で洗浄可能な塗料または水中洗浄などの他のコーティング方法もまた、費用対効果の理由から広く使用されていない。
【0008】
最後に、電気腐食はまた、プロペラの寿命に望ましくない影響を及ぼす可能性がある。
【0009】
本発明の目的は、あらゆる種類の水上艇の電気的、磁気的および音響的痕跡を有意に減少させること、および/または、プロペラの推力性能を改善し、従って痕跡の更なる減少を達成すること、および/または、水中でのプロペラの交換または個々のプロペラブレードの交換を可能にすること、および/または、フジツボまたはムラサキガイの付着を減速させること、したがって殺生物剤の使用を減少させること、および/または、電気腐食を回避することである。
【0010】
この目的は、請求項1に記載のプロペラおよび請求項9に記載の方法によって満たされる。
【0011】
本発明に係るプロペラは、実質的には、ポリアミド12プラスチックの注型材材料、又はポリアミド12プラスチックの注型材材料と適当な長繊維コア及び/又は短繊維コアとの複合材料からなる。
【0012】
長繊維は、平均繊維長が50mmを超えるものを意味すると理解される。対照的に、短繊維は、平均長が0.1mmから最大50mmまで、特に1mmから15mmまでである。
【0013】
プロペラは、好ましくは構造化された表面を有する一つ又は複数のブレードを備える。
【0014】
ブレードは、たとえば、船舶のシャフト上に装着して力を伝達するために、以下に説明する方法で金属製ハブに固定されるか、または全てのブレードが1つのブロックに鋳造され、次いでハブも鋳造される。この目的のために、全てのブレード及びハブは、好ましくは同時に鋳造される。
【0015】
目的に応じた解決策は、プロペラブレードの材料として、いわゆるPA12C(キャスト)又は適切な長繊維及び/又は短繊維とPA12Cマトリックスとからなる繊維複合材料の選択に基づいている。
【0016】
このポリアミドの機械的、物理的および化学的特性は、低い吸湿性のためにプロペラが水中で永続的に使用されることを可能にし、使用される材料の靭性のためにキャビテーション浸食が低減されることによるプロペラの最適設計のために、および、比較的低い比重量のためにプロペラブレードの交換を容易にするために、および、フジツボ付着を低減するために設計された表面のために、プロペラが水中で使用されることを可能にする。記載された技術を使用して、プロペラブレードは、たとえば、金属製ハブに固定することができ、この金属製ハブは、次に、船舶のシャフト上に滑り込ませられ、それに固定される。
【0017】
新しいプロペラ材料を使用することによって、全てのタイプの水上艇の電気的、磁気的および音響的痕跡を大幅に低減することができ、また、この方法で痕跡の更なる低減を達成するために選択された材料の特定の構造に基づいて最適化された形状を作成することによって、プロペラの効率を改善することができる。さらに、プロペラを水中で交換したり、個々のプロペラブレードを交換したりすることも可能である。フジツボまたはムラサキイガイの付着を遅らせることができ、したがって殺生物剤の使用を減らすことができる。第一に、これは、プロペラ材料ポリアミド12C自体の特性によって達成され、第二に、この材料の構造が、最適化されたプロペラ形状の形成を可能にする。
【0018】
さらに、ポリアミド12C、特にLauramid(登録商標)で作られたプロペラベーン/プロペラブレードは、完全なプロペラ回転(360°)にわたって船の航跡場の負荷ピークを偏向させることを可能にする金属材料で作られたものよりも著しく高い弾性を示す。
【0019】
したがって、本発明は、個々のプロペラブレードまたは完全なプロペラをそれぞれ製造するために、ポリアミド12Cプラスチック材料またはキャストポリアミド12プラスチック材料と、適切な長繊維コアおよび/または短繊維コアとの複合材料の使用に基づいている。
【0020】
ポリアミド12C(またPA12C)は、加工直前にモノマーと添加剤の適切な混合物から溶融され、低粘度溶融物として金型に注入されるポリマー材料である。繊維強化構成部品の製造中、長繊維または短繊維は、プラスチック材料で充填される前に金型内に導入され、次に溶融樹脂によって封入される。金型の充填およびその後の重合および硬化は、圧力なしで行われ、したがって、押出加工物、噴霧加工物または深絞り加工物と比較して特定の特性を有する。これにより、次のことが可能になる。PA12Cの使用および回転する金属部品(プロペラブレード)の回避により、電気的および磁気的痕跡が大幅に改善された。キャビテーション浸食に対するプロペラブレードの増大した抵抗鋳造マトリックスの優れた内部減衰を利用しながら、プロペラブレードの構造設計により音響痕跡を著しく改善した。キャビテーション浸食の最小化による技術設計の最適化により、プロペラ効率が大幅に向上した。
【0021】
PA12C材料は、機械的、物理的および化学的特性の点で他のプラスチック材料とは異なり、従って、水上艇用プロペラの設計および構造に特に適している。この材料は、水中に貯蔵されたときに僅か1.4重量%の最小の吸湿性を有し、したがって水中での使用に理想的である。PA12Cは、全てのポリアミドの中で最も優れたノッチ衝撃最良のノッチ衝撃強さを有し、従って、侵食キャビテーションおよび外部衝撃に対するマトリックス(複合バリアント)の抵抗性の点で、特別な利点を提供する。水中でプロペラブレードを交換するためには、部品の低い比重量、したがって浮力の中立性が前提条件である。PA12CまたはPA12Cのマトリックスを有する複合材料で作られた加工物の内部減衰は、構成要素の音響痕跡を低減する。材料が技術的に意味のある方法で使用可能な広い温度範囲、耐薬品性、耐クリープ性、および/または電気特性は、水上艇用プロペラ材料としての他の材料に対するPA12Cの特定の適合性を正当化する以上のものである。
【0022】
PA12Cならびに長繊維および/または短繊維からなる複合材料において、溶融物の低粘度により、65%を超える繊維体積含有量、従って、適切な機械的特性を有する各成分の非常に良好な剛性対重量比が得られる。わずか数分という短い硬化時間のために、この材料はまた、従来の繊維複合材料よりも著しいコスト上の利点を有する。これらの材料の利点により、PA12Cから製造された水上艇用プロペラは、従来技術のプロペラよりも優れている。
【0023】
本発明の更なる部品は、金属材料で作られたハブへのプロペラブレードの特別な接続である。船舶のシャフトからプロペラへの力及びトルクの伝達は、典型的には、油圧嵌め、フェザーキー、若しくはジベルピンのような2つの金属材料間の正嵌合若しくは圧力嵌め接続によって、又はクランプセットによって行われる。PA12Cのある種の材料特性、例えば、低い弾性係数又は高い局所表面圧力でのクリープ挙動は、プロペラがそれぞれの船舶の軸に直接接続されることに反対しているので、この原理は本発明において基本的に支持される。したがって、本発明は、所望の力およびトルク伝達ならびにプロペラのサイズに応じて、プロペラブレードをハブに接続するタイプからも生じることができる。
【0024】
本発明の更なる構成要素は、防汚コーティングの使用を回避するために、プロペラブレードの表面の設計でもよい。表面は、好ましくは、金型を適切に設計し、表面付近のプラスチック材料に特殊な粒状材料を組み込むことによって、鮫肌のようにモデル化される。これは、フジツボやムラサキガイの成長を遅らせ、水から水上艇を引き上げなくても、表面の機械的な洗浄を容易にする。
【0025】
本発明の実施は、技術的および商業的に意味のある方法で、たとえば、以下に説明する実施形態によって可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図面を用いて、本発明の好ましい実施形態を説明する。
図1図1は、プロペラブレード/プロペラベーンを金属製ハブに装着することに基づく第1の好ましい実施形態におけるプロペラを通る断面を示す。
図2図2は、第2の実施形態におけるプロペラを金属製ハブを鋳造したプロペラブレードの輪郭を正面から見た図である。
図3図3は、第2の実施形態の変形例であるプロペラを用いた図2に基づく図である。
図4図4は、第1の実施形態の変形例に係るプロペラを通る断面を示す。
図5図5は、第3の実施形態におけるプロペラをプロペラブレードの輪郭と共に正面から見た図であり、表面特性を概略的に示している。
図6図6は、第1の実施形態に係る装着されたプロペラの斜視図である。
【0027】
【詳細な説明】
【0028】
図1は、金属製ハブ1を備えたプロペラを示す。プロペラのプロペラベーン/プロペラブレード2は、(いわゆる)ボッチャー(Bottcher)リング4およびナット5を用いてプロペラブレード2に導入されたタイアンカー3によって上部に装着される。
【0029】
図2は、プロペラの輪郭を示しており、全てのプロペラブレード6が1つの鋳造処理で製造され、関連する金属製ハブ7がこの鋳造処理で封入されて、一体に形成されたプロペラを生み出す。
【0030】
図3は、同様に、プロペラの輪郭を示しており、ここで、全てのプロペラブレード9が1つの鋳造処理で製造され、この目的のために、たとえば、エッチング、サンドブラスト、ローレット、洗浄、および/または、仕上げを適用することによって調製された金属製ハブ8が封入されて、一体的に形成されたプロペラを生み出す。
【0031】
構造要素は、金属製ハブ8から個々のプロペラブレード9への力のより良い導入のために存在することができ、ロッド10、プロファイル11、バー構造のような金属構造12、および/またはコア13のような異なる形状で実施例として示されている。これらの構造要素を材料嵌合接続(実施例としてバー10および金属構造12)および/または正嵌合接続(実施例としてプロファイル11)によって固定することは、同様に実施例として概略的に示されている。
【0032】
図4は、2本のネジ付きロッド18をそれぞれ有する少なくとも1つのインサート19が鋳造されるプロペラブレード15へのプロペラの断面を示す。それぞれのプロペラブレード15は、金属製ハブ14のカラーと、ハブ14にねじ込まれた(いわゆる)ボッチャーリング16との間でネジ17を介してネジ付きロッド18によって装着されている。
【0033】
図5は、一つ又は複数のプロペラブレードの表面20が、流れ技術に関して鮫肌に類似するように設計されているプロペラの好ましい実施形態を示す。これは一般的に、表面に乱流が存在する場合、平滑な表面と比較して摩擦抵抗を低減するいわゆるリブレットを表面が有することを意味する。知られているように、このような表面ジオメトリは多数の鋭いエッジのリブを含み、その長手方向軸は実質的にそれぞれそこで意図された流れ方向に設けられる。
【0034】
図6は、プロペラベーン/プロペラブレード30を備えたプロペラの実施形態を示し、これらは、PA12C(たとえば、商標名Lauramid(登録商標))から製造され、金属製ハブ31を有し、(いわゆる)ボッチャーリング32と、ボッチャーリング32のための固定ネジ34と、プロペラベーン/プロペラブレード30を固定するためのタイアンカー及び関連ナット33とを有する。
【0035】
以下、前述され、図1図6において使用されたた参照番号を参照する。
【0036】
たとえば、以下の実施形態は、PA12Cまたは長繊維および/または短繊維で強化されたPA12Cで作られたプロペラの設計および製造に可能である。
【0037】
1.1 低粘度のPA-12溶融物を使用して圧力を加えることなく、個々のブレードまたは複数のブレードのそれぞれの外輪郭にほぼ対応する適当な適切に強化された型に、個々にまたはグループで鋳造され、次いで、適切な温度制御によって重合および硬化される一つ又は複数のプロペラブレード2を有する実施形態。
【0038】
1.2 油圧入、フェザーキー、ジベルピン、及び/又は、クランプセットのような、正嵌合又は力嵌合接続によって船舶のシャフト上に滑り込ませることができ、力及びトルクを伝達するためにそれらに固定される金属ハブ1を有する実施形態。
【0039】
1.3 プラスチック製ブレードを金属製ハブに接続する実施形態であって、この金属製ハブは、船舶のシャフト上に滑り込ませられ、一つ又は複数の金属製タイアンカー3が個々のプロペラブレード2内に埋め込まれ、力およびトルクを伝達するために使用されるように接続される実施形態。これらのタイアンカーは、対応するナット5によって金属製ハブ1のカラーの一方の側に固定される。このようにして全ての個々のブレードがメタルハブ1上に事前に組み立てられた後、いわゆるボッチャーリング4が、カラーに対向して設けられたハブ1の端部に適切なネジを介して装着される。このリングには、金属製タイアンカー3用の適切な開口部が加えられている。タイアンカー3は、ナット5を介して適切なトルクでボッチャーリング4にクランプされる。好ましくは、ハブ1の端部の適切なカバーがネジ接続部をカバーし、同時にその構成がシャフトの後流における最適な流れを確実にする。
【0040】
1.4 プロペラベース上の個々のプロペラブレードの構造設計を有する実施形態であって、室温でのプロペラ厚さの温度依存性の変動がプロペラ厚さの選択によって影響されるようなものは、ハブカラー、タイアンカー及びボッチャーリングを介して影響され、高温での応力がPA12Cのクリープ挙動があまり刺激されないほど十分に低く、他方、予荷重が低温で依然として十分に高く、プロペラブレードがしっかりとクランプされるような実施形態。
【0041】
1.5 材料の応力ピークを低減し、クリープ挙動を改善するために、一つ又は複数のポケットがボア全体の長さにわたって導入されるように、タイアンカー3のボアの構成を有する実施形態。
【0042】
1.6 プラスチック材料を加熱してタイアンカーを室温で加圧すること、タイアンカーを冷却してそれを室温でプラスチック製ブレードに加圧すること、または両方の取り付け方法の組み合わせのいずれかを介して、タイアンカー3をプロペラブレード2に接続する実施形態。
【0043】
たとえば、以下の実施形態は、PA12C又は長繊維若しくは短繊維で強化されたPA12Cで作られたプロペラの設計及び製造のために可能である。
【0044】
2.1 金属製ハブ7を備えた実施形態であって、この金属製ハブ7は、油圧入、フェザーキー、ジベルピン、および/またはクランプセットなどの正嵌合または力嵌合接続によって船舶のシャフト上に滑り込ませることができ、力およびトルクを伝達するためにこれらに固定される実施形態。
【0045】
2.2 (たとえば、図2に示すように)金属製ハブ7を有する実施形態であって、これは、PA12Cで封入するためのエッチング、サンドブラスト、ローレット加工、特殊な洗浄剤による洗浄、仕上げを適用することによって、プラスチック材料に向けてハブの表面に調製される実施形態。
【0046】
2.3 (例えば、図3に示すように)ハブ8からプロペラブレード9へ力およびトルクを伝達するために、ロッド10、プロファイル11、金属構造12またはインサート13などの構造要素を有する金属ハブ8を有する実施形態であって、圧入、正嵌合および/または物質嵌合接続によってハブに付けられ、鋳造処理においてプラスチック材料で完全に封入される実施形態。
【0047】
2.4 実施形態2.2および/または実施形態2.3による金属製ハブ7,8を備えた実施形態であって、低粘度のPA12溶融物を用いて製造されるように一体に形成されたプロペラの外輪郭に対応する適切に強化された適切な金型内に加圧することなく完全に封入され、その後、適切な温度制御によって重合および硬化する実施形態。
【0048】
2.5 実施形態2.4に従って製造されたプロペラを有する実施形態であって、正確な最終輪郭を得るために硬化および金型からの除去の後に機械加工される実施形態。材料内の任意の張力を低減するために、個々の機械加工シーケンス間で一つ又は複数の熱処置を実行することができる。
【0049】
たとえば、以下の実施形態は、PA12C又は長繊維若しくは短繊維で強化されたPA12Cで作られたプロペラの設計及び製造のために可能である。
【0050】
3.1 一つ又は複数のプロペラブレード15を有する実施形態であって、これらのブレード15は、低粘度のPA-12溶融物によって圧力を加えることなく、個々のブレードまたは複数のブレードのそれぞれの外輪郭にほぼ対応する強化金型内で、個別にまたはグループで鋳造され、次いで、適切な温度制御によって重合および硬化される実施形態。
【0051】
3.2 各プロペラブレードに鋳造されたインサート19を有し、鋳造前にネジ付きロッド18が付けられた実施形態。
【0052】
3.3 金属製ハブ14を備えた実施形態であって、この金属製ハブ14は、油圧入、フェザーキー、ジベルピン、および/またはクランプセットのような正嵌合または力嵌合接続によって船舶のシャフト上に滑り込ませることができ、力およびトルクを伝達するためにこれに固定される実施形態。
【0053】
3.4 プラスチック製ブレード15を金属製ハブ14に接続する実施形態であって、金属製ハブ14は、船舶のシャフト上に滑り込ませられ、個々のプロペラブレード15に鋳造されたインサート19およびネジ付きロッド18がハブ14の開口部を通して押され、次にネジ17を用いてハブに固定されるように接続される実施形態。金属製ハブ上の全ての個々のブレードの事前組立の後、(いわゆる)ボッチャーリング16は、カラーに対向して装着されたハブ14の端部に適切なネジによって装着される。ネジ付きロッド18用のボッチャーリング16に開口部が形成されている。適切なナット17を介して、タイアンカーは次にボッチャーリング16に対して適切なトルクでクランプされる。ハブ4の端部の適当なカバーは、ネジ接続部を覆い、同時に、その構成により、シャフトの後流における最適な流れを確保する。
【0054】
3.5 プロペラ厚の温度依存的変化がハブカラー、タイアンカー及びボッチャーリングを介して室温でのプロペラ厚の選択によって影響されるように、プロペラベース上の個々のプロペラブレードの構造設計を有する実施形態であって、高温での応力がPA12Cのクリープ挙動があまり刺激されないほど十分に低く、他方、予荷重が低温で依然として十分に高く、プロペラブレードがしっかりとクランプされるようにする実施形態。
【0055】
たとえば、以下の実施形態は、PA12C又は長繊維若しくは短繊維で強化されたPA12Cで作られたプロペラの設計及び製造のために可能である。
【0056】
4.1 一つ又は複数のプロペラブレード2を有する実施形態であって、これらのブレード2は、低粘度のPA-12溶融物を使用して圧力を加えることなく、個々のブレードまたは複数のブレードのそれぞれの外輪郭にほぼ対応する適切な適切に強化された金型内で個々にまたはグループで鋳造され、次いで、適切な温度制御によって重合および硬化される実施形態。
【0057】
4.2 実施形態4.1による一つ又は全てのプロペラベーン/プロペラブレードの表面20の設計を有する実施形態であって、鋳型を成形することおよび/または適切な粒状材料を組み込むことによって、鋳造処理の一部として、鮫肌に類似した表面構造を表面に鋳造することができるようにする実施形態。表面構造体は、表面構造体上に乱流が存在する場合、滑らかな表面と比較して摩擦抵抗を減少させ、それによってフジツボおよび他の生物の成長を遅らせ、機械的洗浄を容易にする、いわゆるリブレットを有する。これにより、規定されたプロペラ性能を長期間維持することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】