(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-12
(54)【発明の名称】萎縮性瘢痕を治療するためのキヌレニンおよびその誘導体
(51)【国際特許分類】
A61K 31/198 20060101AFI20240405BHJP
A61K 31/47 20060101ALI20240405BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240405BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20240405BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20240405BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20240405BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20240405BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
A61K31/198
A61K31/47
A61P17/00
A61K9/107
A61K9/06
A61K8/49
A61K8/44
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568440
(86)(22)【出願日】2022-05-09
(85)【翻訳文提出日】2023-12-28
(86)【国際出願番号】 CA2022050722
(87)【国際公開番号】W WO2022232950
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523416612
【氏名又は名称】バーチバイオメッド インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BirchBioMed Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100224775
【氏名又は名称】南 毅
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,マーク エス
(72)【発明者】
【氏名】ボーン,ジョナサン ダブリュー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA17
4C076BB31
4C076CC18
4C076FF70
4C083AC581
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4C086NA14
4C086ZA89
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4C206MA01
4C206MA04
4C206MA48
4C206MA83
4C206NA14
4C206ZA89
(57)【要約】
キヌレニンおよびその誘導体を含む組成物が開示される。組成物は萎縮性ざ瘡瘢痕の外観を軽減し、治療するために使用され、その方法である。これらの方法および組成物は、ざ瘡瘢痕の外観を軽減する化粧品用途用に考慮される。萎縮性瘢痕の外観を軽減するための、または萎縮性瘢痕を軽減するか、回復させるか、もしくは治療する潜在的な治療用途のためのこれらの化合物の使用も考慮される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
萎縮性ざ瘡瘢痕またはざ瘡後萎縮性瘢痕の外観を軽減する方法であって、低分子の化合物を投与または適用するステップを含み、前記化合物が、DL-キヌレニン、L-キヌレニン、D-キヌレニン、3-ヒドロキシ-DL-キヌレニン、3-ヒドロキシ-L-キヌレニン、3-ヒドロキシ-D-キヌレニン、5-ヒドロキシ-DL-キヌレニン、5-ヒドロキシ-L-キヌレニン、5-ヒドロキシ-D-キヌレニン、N’-ホルミル-キヌレニン、N-アセチル-3-OH-キヌレニン、4-クロロ-DL-キヌレニン、キサンツレン酸およびキヌレン酸からなる群から選択される、方法。
【請求項2】
前記低分子の化合物が、局所使用のために配合された組成物の構成成分として投与または適用される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記組成物がクリームとして配合される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記化合物がキヌレン酸であり、前記組成物が0.5質量%キヌレン酸として配合される、請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記化合物がキヌレニンであり、前記組成物が0.05質量%キヌレニンとして配合される、請求項2記載の方法。
【請求項6】
前記投与または適用するステップが1日1回または2回である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記投与または適用するステップが、萎縮性瘢痕を有する皮膚に対して局所的である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
萎縮性ざ瘡瘢痕またはざ瘡後萎縮性瘢痕を治療する方法であって、低分子の化合物を投与または適用するステップを含み、前記化合物が、DL-キヌレニン、L-キヌレニン、D-キヌレニン、3-ヒドロキシ-DL-キヌレニン、3-ヒドロキシ-L-キヌレニン、3-ヒドロキシ-D-キヌレニン、5-ヒドロキシ-DL-キヌレニン、5-ヒドロキシ-L-キヌレニン、5-ヒドロキシ-D-キヌレニン、N’-ホルミル-キヌレニン、N-アセチル-3-OH-キヌレニン、4-クロロ-DL-キヌレニン、キサンツレン酸およびキヌレン酸からなる群から選択される、方法。
【請求項9】
前記低分子の化合物が、局所使用のために配合された組成物の構成成分として投与または適用される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記組成物がクリームとして配合される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記化合物がキヌレン酸であり、前記組成物が0.5質量%キヌレン酸として配合される、請求項9記載の方法。
【請求項12】
前記化合物がキヌレニンであり、前記組成物が0.05質量%キヌレニンとして配合される、請求項9記載の方法。
【請求項13】
前記投与または適用するステップが1日1回または2回である、請求項8記載の方法。
【請求項14】
萎縮性瘢痕の治療への使用のための、キヌレニンおよびキヌレン酸からなる群から選択される化合物。
【請求項15】
前記萎縮性瘢痕が萎縮性ざ瘡瘢痕である、請求項14記載の使用のための化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低分子の化学化合物を適用または投与することにより、ヒトのざ瘡瘢痕の外観を軽減する方法に関する。ざ瘡瘢痕の外観を軽減することは、審美目的および美容目的で望ましく、ざ瘡瘢痕の外観を軽減する方法および組成物は、化粧品および医薬品産業、ならびに化学薬品の製造業者にとって商業的に望ましいはずである。
【背景技術】
【0002】
世界の化粧品産業は、数十億ドル規模の市場であり、一部の皮膚病態に対する医薬品の売上は、年間10億ドルを超える(例えば乾癬)。よく見られる皮膚疾患は、一般にざ瘡と称されることが多い尋常性ざ瘡であり、非特許文献1によると、「ほぼ全ての青年および20~49歳の成人の12~51%が罹患している」。Shuteによると、2013年の米国におけるざ瘡の有病率は、およそ5000万人であり、治療費および治療関連費用は10億ドル超に相当していた(2019年)。他の推定では、ざ瘡の世界的な有病率は9%超とされ(非特許文献2)、ざ瘡の世界市場が2025年までに70億を超えると予測している研究もある(非特許文献3)。
【0003】
尋常性ざ瘡は、局所的な不快感および瘢痕を引き起こす可能性があり、心理学的合併症(例えば、自尊心の低下、ボディーイメージの歪み)および精神医学的合併症(例えば、不安または抑鬱)をもたらす可能性がある、命に関わらない病態である(非特許文献3、非特許文献2)。尋常性ざ瘡は、顔(非特許文献3)または顔、胸部、上腕および背部(非特許文献4)の毛包脂腺毛包の詰まりを生じさせる、皮膚の皮脂腺の過剰分泌に起因すると一般に理解される多因子プロセスである。非特許文献2によると、患者は通例、面皰(毛包の詰まり)、丘疹(隆起した病変)または膿疱(膿で満たされた病変)を呈し、重症のざ瘡症例では、結節または嚢胞を呈することもある。ざ瘡の診断および治療に関する問題は、公式にざ瘡と診断するために必要な最小限の症状について皮膚科医の意見が食い違っていることであり、現在ではざ瘡の重症度を評価するために25を超える異なるシステムが使用されている(非特許文献2)。また、「ざ瘡を治療する方法が複数あるにもかかわらず、ざ瘡管理の最良のアプローチに関するコンセンサスは存在しない」(非特許文献3)。
【0004】
ざ瘡、特に尋常性ざ瘡のよく見られる後遺症は、ざ瘡瘢痕であり(非特許文献5、非特許文献1)、多くの患者が或る程度の瘢痕を有する(非特許文献4)。ざ瘡瘢痕の様々な治療法が様々な成功の度合いで知られている(非特許文献5、非特許文献1)。非特許文献5によると、「ざ瘡の治療の進歩にもかかわらず、ざ瘡後瘢痕は依然としてよく見られる問題である」。
【0005】
ざ瘡瘢痕は、肥厚性瘢痕および萎縮性瘢痕の2つの異なる瘢痕のタイプに分けられる(非特許文献4、非特許文献1)。ざ瘡瘢痕の最も一般的な形態は、真皮のコラーゲンが正味で破壊される萎縮性瘢痕であり、コラーゲンが正味で増加する肥厚性またはケロイドざ瘡瘢痕は、それほど一般的ではない(非特許文献4)。萎縮性瘢痕は、形態学的にボックスカー、アイスピックまたはローリング瘢痕タイプにさらに細分される(非特許文献4、非特許文献1)。
【0006】
非特許文献4によると、ボックスカー瘢痕は、萎縮性瘢痕の約20~30%を占め、より広範な「境界の明瞭な垂直端を有する円形ないし楕円形の陥凹」であり、アイスピック瘢痕は、最もよく見られ(60~70%)、真皮深層または皮下組織まで垂直に伸びる明瞭な縁を有する狭いV字形の上皮路であり、ローリング瘢痕は、萎縮性瘢痕の約15~25%を占め、表面の陰影および起伏のある皮膚の外観をもたらす不均一な皮膚表面を引き起こす。萎縮性瘢痕の治療には、皮膚の一部を切除するかもしくは損傷させること、例えば皮膚の表皮(外)層の一部を切除する皮膚剥削法、または皮膚線維芽細胞を刺激して、新たな物質を産生することにより、萎縮したコラーゲンおよびエラスチンを置き換えることを目的とする局所的な損傷を引き起こすレーザーの使用が含まれる。他の治療選択としては、新たなコラーゲンの沈着を誘導するマイクロニードリング、針または他の器具を用いて真皮下の線維層を傷つけ、新たなコラーゲンの形成を誘導するサブシジョン、および萎縮性瘢痕の局所領域を切除して移植片に置き換えるか、または皮膚表面の萎縮性瘢痕の陥凹を埋めるために切断して持ち上げ、空隙を新たに沈着したコラーゲンに置き換えるパンチ切除/隆起術が挙げられる。場合によっては、個々の萎縮性ざ瘡瘢痕をフィラーで治療することも可能であり、その場合、萎縮性瘢痕部位を埋めるのに役立つ材料を皮膚に注入する(非特許文献4)。
【0007】
ざ瘡の世界的な有病率の高さおよび結果として生じる一般的なその後のざ瘡瘢痕を考慮すると、ざ瘡瘢痕を軽減する、回復させるもしくは治療するか、またはざ瘡瘢痕の外観を軽減するための新たな組成物および方法が、医療目的および美容目的の両方で商業的かつ産業的な関心を集め続けている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Hession et al. (2015)
【非特許文献2】Heng & Chew, 2020
【非特許文献3】Duru & Orsal, 2021
【非特許文献4】Connolly et al., 2017
【非特許文献5】Eitta et al., 2019
【発明の概要】
【0009】
本発明は、低分子の化学化合物を適用または投与することにより、ヒトの萎縮性瘢痕の外観を軽減または低減する配合物および方法に関する。ざ瘡およびざ瘡瘢痕は、よく見られる問題であり、萎縮性瘢痕がざ瘡瘢痕の最も一般的な形態である。萎縮性ざ瘡瘢痕の外観を軽減すること、または萎縮性ざ瘡瘢痕を軽減する治療は、美容的、審美的かつ医学的な理由から望ましい。
【0010】
一実施形態では、本発明は、ざ瘡瘢痕、萎縮性ざ瘡瘢痕またはざ瘡後萎縮性瘢痕の外観を軽減する方法であって、低分子の化合物を投与または適用することを含み、化合物が、DL-キヌレニン、L-キヌレニン、D-キヌレニン、3-ヒドロキシ-DL-キヌレニン、3-ヒドロキシ-L-キヌレニン、3-ヒドロキシ-D-キヌレニン、5-ヒドロキシ-DL-キヌレニン、5-ヒドロキシ-L-キヌレニン、5-ヒドロキシ-D-キヌレニン、N’-ホルミル-キヌレニン、N-アセチル-3-OH-キヌレニン、4-クロロ-DL-キヌレニン、キサンツレン酸およびキヌレン酸からなる群から選択される、方法を考慮している。
【0011】
一実施形態では、本発明は、ざ瘡瘢痕、萎縮性ざ瘡瘢痕またはざ瘡後萎縮性瘢痕の外観を治療する方法であって、低分子の化合物を投与または適用することを含み、化合物が、DL-キヌレニン、L-キヌレニン、D-キヌレニン、3-ヒドロキシ-DL-キヌレニン、3-ヒドロキシ-L-キヌレニン、3-ヒドロキシ-D-キヌレニン、5-ヒドロキシ-DL-キヌレニン、5-ヒドロキシ-L-キヌレニン、5-ヒドロキシ-D-キヌレニン、N’-ホルミル-キヌレニン、N-アセチル-3-OH-キヌレニン、4-クロロ-DL-キヌレニン、キサンツレン酸およびキヌレン酸からなる群から選択される、方法を考慮している。
【0012】
一実施形態では、本発明は、ざ瘡瘢痕、萎縮性ざ瘡瘢痕またはざ瘡後萎縮性瘢痕を治療する方法であって、低分子の化合物を投与または適用することを含み、化合物が、DL-キヌレニン、L-キヌレニン、D-キヌレニン、3-ヒドロキシ-DL-キヌレニン、3-ヒドロキシ-L-キヌレニン、3-ヒドロキシ-D-キヌレニン、5-ヒドロキシ-DL-キヌレニン、5-ヒドロキシ-L-キヌレニン、5-ヒドロキシ-D-キヌレニン、N’-ホルミル-キヌレニン、N-アセチル-3-OH-キヌレニン、4-クロロ-DL-キヌレニン、キサンツレン酸およびキヌレン酸からなる群から選択される、方法を考慮している。
【0013】
一実施形態では、本発明は、ざ瘡瘢痕、萎縮性ざ瘡瘢痕またはざ瘡後萎縮性瘢痕を回復させる方法であって、低分子の化合物を投与または適用することを含み、化合物が、DL-キヌレニン、L-キヌレニン、D-キヌレニン、3-ヒドロキシ-DL-キヌレニン、3-ヒドロキシ-L-キヌレニン、3-ヒドロキシ-D-キヌレニン、5-ヒドロキシ-DL-キヌレニン、5-ヒドロキシ-L-キヌレニン、5-ヒドロキシ-D-キヌレニン、N’-ホルミル-キヌレニン、N-アセチル-3-OH-キヌレニン、4-クロロ-DL-キヌレニン、キサンツレン酸およびキヌレン酸からなる群から選択される、方法を考慮している。
【0014】
一実施形態では、本発明は、ざ瘡瘢痕、萎縮性ざ瘡瘢痕またはざ瘡後萎縮性瘢痕を予防する方法であって、低分子の化合物を投与または適用することを含み、化合物が、DL-キヌレニン、L-キヌレニン、D-キヌレニン、3-ヒドロキシ-DL-キヌレニン、3-ヒドロキシ-L-キヌレニン、3-ヒドロキシ-D-キヌレニン、5-ヒドロキシ-DL-キヌレニン、5-ヒドロキシ-L-キヌレニン、5-ヒドロキシ-D-キヌレニン、N’-ホルミル-キヌレニン、N-アセチル-3-OH-キヌレニン、4-クロロ-DL-キヌレニン、キサンツレン酸およびキヌレン酸からなる群から選択される、方法を考慮している。
【0015】
一実施形態では、本発明は、ざ瘡瘢痕、萎縮性ざ瘡瘢痕またはざ瘡後萎縮性瘢痕を隠す方法であって、低分子の化合物を投与または適用することを含み、化合物が、DL-キヌレニン、L-キヌレニン、D-キヌレニン、3-ヒドロキシ-DL-キヌレニン、3-ヒドロキシ-L-キヌレニン、3-ヒドロキシ-D-キヌレニン、5-ヒドロキシ-DL-キヌレニン、5-ヒドロキシ-L-キヌレニン、5-ヒドロキシ-D-キヌレニン、N’-ホルミル-キヌレニン、N-アセチル-3-OH-キヌレニン、4-クロロ-DL-キヌレニン、キサンツレン酸およびキヌレン酸からなる群から選択される、方法を考慮している。
【0016】
一実施形態では、本発明は、萎縮性瘢痕の外観を治療するか、回復させるか、隠すか、または軽減する方法であって、低分子の化合物を投与または適用することを含み、化合物が、DL-キヌレニン、L-キヌレニン、D-キヌレニン、3-ヒドロキシ-DL-キヌレニン、3-ヒドロキシ-L-キヌレニン、3-ヒドロキシ-D-キヌレニン、5-ヒドロキシ-DL-キヌレニン、5-ヒドロキシ-L-キヌレニン、5-ヒドロキシ-D-キヌレニン、N’-ホルミル-キヌレニン、N-アセチル-3-OH-キヌレニン、4-クロロ-DL-キヌレニン、キサンツレン酸およびキヌレン酸からなる群から選択される、方法を考慮している。一実施形態では、萎縮性瘢痕は、ざ瘡の後遺症と推定されるか、その可能性が高いか、またはそのように確認される。一実施形態では、萎縮性瘢痕は、尋常性ざ瘡の後遺症と推定されるか、またはその可能性が高い。一実施形態では、萎縮性瘢痕は尋常性ざ瘡の後遺症である。
【0017】
一実施形態では、本発明は、萎縮性瘢痕の治療への使用のための、DL-キヌレニン、L-キヌレニン、D-キヌレニン、3-ヒドロキシ-DL-キヌレニン、3-ヒドロキシ-L-キヌレニン、3-ヒドロキシ-D-キヌレニン、5-ヒドロキシ-DL-キヌレニン、5-ヒドロキシ-L-キヌレニン、5-ヒドロキシ-D-キヌレニン、N’-ホルミル-キヌレニン、N-アセチル-3-OH-キヌレニン、4-クロロ-DL-キヌレニン、キサンツレン酸およびキヌレン酸からなる群から選択される化合物を考慮している。一実施形態では、萎縮性瘢痕は萎縮性ざ瘡瘢痕である。一実施形態では、化合物は、萎縮性瘢痕の治療への使用のためのキヌレン酸である。一実施形態では、化合物は、萎縮性ざ瘡瘢痕の治療への使用のためのキヌレン酸である。一実施形態では、キヌレン酸は、萎縮性瘢痕または萎縮性ざ瘡瘢痕の治療への使用のための、局所投与用に配合された組成物の構成成分である。一実施形態では、化合物は、萎縮性瘢痕の治療への使用のためのキヌレニンである。一実施形態では、化合物は、萎縮性ざ瘡瘢痕の治療への使用のためのキヌレニンである。
【0018】
一実施形態では、化合物は、注射用に配合された組成物の構成成分であり、注射によって投与される。一実施形態では、注射は皮下、皮内または筋肉内注射として行われる。
【0019】
一実施形態では、化合物は、経口送達用に配合された組成物の構成成分である。一実施形態では、化合物は、経口摂取を意図した製品中の成分である。
【0020】
一実施形態では、化合物は、局所送達用に配合された組成物の構成成分である。一実施形態では、化合物は、局所適用用に配合された組成物の構成成分である。一実施形態では、化合物は、局所使用を意図したローション、クリーム、ゲル、溶液または懸濁液中の成分である。一実施形態では、化合物はローション、クリーム、ゲル、溶液または懸濁液の0.05~10質量%である。一実施形態では、化合物はローション、クリーム、ゲル、溶液または懸濁液の0.05~6質量%である。一実施形態では、化合物はローション、クリーム、ゲル、溶液または懸濁液の0.05~3質量%である。一実施形態では、化合物はローション、クリーム、ゲル、溶液または懸濁液の0.1~1質量%である。一実施形態では、化合物はローション、クリーム、ゲル、溶液または懸濁液の0.1~0.5質量%である。一実施形態では、化合物はローション、クリーム、ゲル、溶液または懸濁液の0.25~0.5質量%である。一実施形態では、化合物はキヌレン酸である。一実施形態では、化合物はキヌレニンである。一実施形態では、キヌレン酸はローション、クリーム、ゲル、溶液または懸濁液の0.1~1質量%である。一実施形態では、キヌレン酸はローション、クリーム、ゲル、溶液または懸濁液の0.1~0.5質量%である。一実施形態では、キヌレン酸はローション、クリーム、ゲル、溶液または懸濁液の0.5質量%である。一実施形態では、キヌレン酸はローション、クリーム、ゲル、溶液または懸濁液の0.25質量%である。一実施形態では、キヌレン酸はローション、クリーム、ゲル、溶液または懸濁液の0.1質量%である。
【0021】
幾つかの実施形態では、化合物の適用、投与または使用は1日1回、2回または3回として考慮される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1A】局所キヌレン酸(0.5質量%)クリームを適用する前のざ瘡による治療抵抗性の安定した萎縮性瘢痕を有する40代半ばの女性被験体の標的顔面皮膚領域の写真図である。
【
図1B】局所キヌレン酸(0.5質量%)を8週間にわたって1日2回使用した後の
図1Aの女性被験体の標的顔面皮膚領域の写真図である。
図1Bは、萎縮性瘢痕の外観の顕著な減少を示す。各画像の破線の黒枠は、両画像の右頬部の同様の標的領域を比較のために強調している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
I.定義
萎縮性ざ瘡瘢痕の治療への使用のための、または萎縮性ざ瘡瘢痕の外観の軽減のための多数の化合物を本明細書で提供する。本明細書の文脈において、「治療」という用語は、既存の萎縮性ざ瘡瘢痕の治療を指すことがあり、または代替的に、瘢痕の発生または進行を予防するために萎縮性ざ瘡瘢痕の前に行われる治療を指すこともある。本明細書に記載の化合物は、単独であってもよく、または当業者に明らかなように、トレーサー化合物、リポソーム、炭水化物担体、ポリマー担体、または他の作用物質もしくは添加剤と結合もしくは併用してもよい。代替的な実施形態では、かかる化合物は薬剤を構成してもよく、この場合、かかる化合物は、薬理学的に有効な量で存在し得る。化合物は、被験体が萎縮性ざ瘡瘢痕の予防または治療から利益を得る可能性があるという点から、それを必要とする被験体への投与に適している場合がある。化合物は、互変異性体または立体異性体を含んでいてもよい。
【0024】
本明細書で使用される場合、KAまたはKynAがキヌレン酸(CAS番号492-27-3)の略称として使用されることがあり、XAがキサンツレン酸(CAS番号59-00-7)の略称として使用されることがある。L-キヌレニン(CAS番号2922-83-0)は、本明細書でL-Kynとして表されることがあり、D-キヌレニン(CAS番号13441-51-5)は、本明細書でD-Kynとして表されることがある。特に明記しない限り、キヌレニンはL-Kyn、D-Kyn、およびこれらのラセミ混合物を含む(ここで、ラセミ混合物は、DL-KynまたはDL-キヌレニン、CAS番号343-65-7として表されることがある)。他のアミノ酸の立体化学も同様にD-、L-、またはそのラセミ混合物を指すためにDL-と示されることがある。
【0025】
「薬剤」という用語は、本明細書で使用される場合、患者または被験体に投与することができ、患者または被験体に効果をもたらすことができる組成物を指す。効果は化学的、生物学的または物理的であってもよく、患者または被験体は、ヒトまたは非ヒト動物、例えば齧歯類もしくはトランスジェニックマウス、またはイヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ウマ、ハムスター、モルモット、ウサギもしくはブタであり得る。薬剤は、有効な化学物質単独で構成されていても、または薬学的に許容可能な添加剤と組み合わせて構成されていてもよい。
【0026】
「薬学的に許容可能な添加剤」という用語は、生理学的に適合するあらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、抗細菌剤、抗微生物剤または抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤等を含み得る。添加剤は静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、髄腔内、局所または経口投与に適し得る。添加剤には、滅菌注射用溶液または分散液の即時調製のための滅菌水溶液または分散液が含まれることがある。薬剤の調製へのかかる媒体の使用は、当該技術分野で既知である。
【0027】
幾つかの実施形態による化合物または組成物は、様々な既知の経路のいずれかで投与するか、または投与に使用するために配合することができる。化合物の投与に適し得る方法の例としては、経口、静脈内、吸入、筋肉内、皮下、局所、腹腔内、直腸内または膣内坐剤、舌下等が挙げられる。本明細書に記載の化合物は、滅菌水溶液として投与してもよく、または脂溶性添加剤、または適切な別の溶液、懸濁液、貼付剤、錠剤もしくはペーストの様式で投与してもよい。配合物を作製するための当該技術分野で既知の他の方法は、例えば、“Remington’s Pharmaceutical Sciences”, (19th edition), ed. A. Gennaro, 1995, Mack Publishing Company, Easton, Paに見られる。
【0028】
本明細書に記載の幾つかの実施形態の組成物または化合物の投与量は、投与経路(経口、注射、局所等)および組成物または化合物を投与する形態(溶液、制御放出等)に応じて変化し得る。適切な投与量の決定は、当業者の能力の範囲内である。本明細書で使用される場合、薬剤の「有効量」、「治療有効量」または「薬理学的に有効な量」は、薬物を使用する期間にわたって送達される薬物の治療レベルをもたらすような濃度で存在する薬剤の量を指す。これは送達様式、投与期間、薬剤の投与を受ける被験体の年齢、体重、健康全般、性別および食生活に依存し得る。本明細書で使用される場合、「有効量」は、必要な結果をもたらすのに必要とされる量を意味する。例えば、治療薬の有効量は、治療剤が投与される疾患の治療、治癒または症状の緩和に有効なレベルである。有効量を決定する方法は、当該技術分野で既知である。
【0029】
本明細書で直接定義されていない任意の用語は、本発明の技術分野において理解されるように、それらに一般的に関連する意味を有すると理解されるものとする。本明細書全体を通して用いられる場合、以下の用語は、別段の指示がない限り、以下の意味を有すると理解されるものとする。
【0030】
II.生物学
瘢痕化は身体の修復機構の自然な一環であり、皮膚における瘢痕化は、萎縮性、肥厚性またはケロイド瘢痕を生じる(Patel et al., 2014、Sitohang et al., 2021)。肥厚性およびケロイド瘢痕は、コラーゲンの過剰な沈着をもたらし(Connolly, 2017)、肥厚性瘢痕は創傷部内に収まり、ケロイドは元の創傷部を超えて拡大する。対照的に、萎縮性瘢痕は、コラーゲンの正味の喪失および皮膚の陥凹を特徴とする(Connolly et al., 2017、Nassar et al., 2020、Patel et al., 2014、Sitohang et al., 2021)。Nassar et al. (2020)によると、「萎縮性瘢痕は、通常は外科手術または外傷後の組織修復時のコラーゲンの損傷に起因する皮膚の陥凹であり」(5頁)、「萎縮性瘢痕は、通常はコラーゲンの産生が不十分な創傷治癒時に生じる」(1頁)。Patel et al. (2014)は、「萎縮性瘢痕は、組織学的にはコラーゲンの喪失を示す瘢痕と定義される」と述べている(2頁)。
【0031】
ざ瘡に起因する萎縮性瘢痕の治療は、依然として皮膚科医にとって難題であり、治療法は標準化されていない(Sitohang et al., 2021)。一般的な治療は、組織への制御された損傷(例えばマイクロニードル、レーザー、化学的または機械的皮膚剥削法)、またはフィラー材料の添加( Connolly et al., 2017、Hession et al., 2015、Patel et al., 2014)等の手法によって新たなコラーゲンの沈着を刺激することを含む。
【0032】
発明の機構を理解する必要はなく、任意の特定の理論に束縛されるものではないが、キヌレニンおよびキヌレン酸を含む他のキヌレニン経路の代謝産物の使用は、線維増殖性障害、すなわち肥厚性瘢痕およびケロイドの治療のために以前に記載されている(米国特許第9737523号明細書)。線維増殖性障害は、細胞外マトリックスの過剰な蓄積を特徴とし、キヌレニン(キヌレン酸を含む)は、皮膚線維芽細胞におけるMMP-1およびMMP-3酵素の発現を増加させ(それぞれ米国特許第9737523号明細書の
図2および
図3)、皮膚線維芽細胞によるコラーゲン1およびフィブロネクチンの発現を下方調節することが示された(それぞれ米国特許第9737523号明細書の
図10および
図16)。ウサギ耳肥厚性瘢痕モデルを用いた皮膚組織への局所適用により、皮膚線維芽細胞の結果が確認され、キヌレニンが対照と比べてコラーゲンを減少させ、MMP-1を増加させることが示された(米国特許第9737523号明細書、
図13)。米国特許第9737523号明細書で示されているように、この既知のマトリックス分解酵素(すなわち、MMP-1およびMMP-3)の上方調節と同時のコラーゲン1の下方調節との組合せは、動物モデルにおいて肥厚性瘢痕を効果的に回復させ、ヒト被験体の皮膚において肥厚性ケロイド瘢痕を効果的に回復させる(BirchBioMed Inc., 2021)。しかしながら、これらのデータは、萎縮性瘢痕の治療におけるキヌレン酸を含むキヌレニンの使用から遠ざかることを教示している。萎縮性瘢痕は、コラーゲンおよび他のマトリックスタンパク質の正味の喪失(「萎縮」)を特徴とするが、対照的に、肥厚性またはケロイド瘢痕は、コラーゲンおよび他のマトリックスタンパク質の正味の増加、典型的には過剰(「肥厚」)を伴う反対の特徴を表す。米国特許第9737523号明細書で示されているように、既知のマトリックス分解酵素(すなわち、MMP-1およびMMP-3)を上方調節すると同時に皮膚のコラーゲン1を下方調節することは、皮膚マトリックスの正味の喪失を促進し、局所的な萎縮を増強することが予想される。簡潔に述べると、当業者であれば、異化酵素(すなわち、MMP-1およびMMP-3)の増加およびマトリックス同化タンパク質(コラーゲン1)の減少が萎縮性瘢痕を悪化させると合理的に予想するであろう。
【0033】
III.化合物の使用方法および配合物
一実施形態では、本発明は、ざ瘡瘢痕、萎縮性ざ瘡瘢痕またはざ瘡後萎縮性瘢痕の外観を軽減する方法であって、低分子の化合物を投与または適用することを含み、化合物が、DL-キヌレニン、L-キヌレニン、D-キヌレニン、3-ヒドロキシ-DL-キヌレニン、3-ヒドロキシ-L-キヌレニン、3-ヒドロキシ-D-キヌレニン、5-ヒドロキシ-DL-キヌレニン、5-ヒドロキシ-L-キヌレニン、5-ヒドロキシ-D-キヌレニン、N’-ホルミル-キヌレニン、N-アセチル-3-OH-キヌレニン、4-クロロ-DL-キヌレニン、キサンツレン酸およびキヌレン酸からなる群から選択される、方法を考慮している。
【0034】
一実施形態では、本発明は、ざ瘡瘢痕、萎縮性ざ瘡瘢痕またはざ瘡後萎縮性瘢痕の外観を治療する方法であって、低分子の化合物を投与または適用することを含み、化合物が、DL-キヌレニン、L-キヌレニン、D-キヌレニン、3-ヒドロキシ-DL-キヌレニン、3-ヒドロキシ-L-キヌレニン、3-ヒドロキシ-D-キヌレニン、5-ヒドロキシ-DL-キヌレニン、5-ヒドロキシ-L-キヌレニン、5-ヒドロキシ-D-キヌレニン、N’-ホルミル-キヌレニン、N-アセチル-3-OH-キヌレニン、4-クロロ-DL-キヌレニン、キサンツレン酸およびキヌレン酸からなる群から選択される、方法を考慮している。
【0035】
一実施形態では、本発明は、ざ瘡瘢痕、萎縮性ざ瘡瘢痕またはざ瘡後萎縮性瘢痕を治療する方法であって、低分子の化合物を投与または適用することを含み、化合物が、DL-キヌレニン、L-キヌレニン、D-キヌレニン、3-ヒドロキシ-DL-キヌレニン、3-ヒドロキシ-L-キヌレニン、3-ヒドロキシ-D-キヌレニン、5-ヒドロキシ-DL-キヌレニン、5-ヒドロキシ-L-キヌレニン、5-ヒドロキシ-D-キヌレニン、N’-ホルミル-キヌレニン、N-アセチル-3-OH-キヌレニン、4-クロロ-DL-キヌレニン、キサンツレン酸およびキヌレン酸からなる群から選択される、方法を考慮している。
【0036】
一実施形態では、本発明は、ざ瘡瘢痕、萎縮性ざ瘡瘢痕またはざ瘡後萎縮性瘢痕を回復させる方法であって、低分子の化合物を投与または適用することを含み、化合物が、DL-キヌレニン、L-キヌレニン、D-キヌレニン、3-ヒドロキシ-DL-キヌレニン、3-ヒドロキシ-L-キヌレニン、3-ヒドロキシ-D-キヌレニン、5-ヒドロキシ-DL-キヌレニン、5-ヒドロキシ-L-キヌレニン、5-ヒドロキシ-D-キヌレニン、N’-ホルミル-キヌレニン、N-アセチル-3-OH-キヌレニン、4-クロロ-DL-キヌレニン、キサンツレン酸およびキヌレン酸からなる群から選択される、方法を考慮している。
【0037】
一実施形態では、本発明は、ざ瘡瘢痕、萎縮性ざ瘡瘢痕またはざ瘡後萎縮性瘢痕を予防する方法であって、低分子の化合物を投与または適用することを含み、化合物が、DL-キヌレニン、L-キヌレニン、D-キヌレニン、3-ヒドロキシ-DL-キヌレニン、3-ヒドロキシ-L-キヌレニン、3-ヒドロキシ-D-キヌレニン、5-ヒドロキシ-DL-キヌレニン、5-ヒドロキシ-L-キヌレニン、5-ヒドロキシ-D-キヌレニン、N’-ホルミル-キヌレニン、N-アセチル-3-OH-キヌレニン、4-クロロ-DL-キヌレニン、キサンツレン酸およびキヌレン酸からなる群から選択される、方法を考慮している。
【0038】
一実施形態では、本発明は、ざ瘡瘢痕、萎縮性ざ瘡瘢痕またはざ瘡後萎縮性瘢痕を隠す方法であって、低分子の化合物を投与または適用することを含み、化合物が、DL-キヌレニン、L-キヌレニン、D-キヌレニン、3-ヒドロキシ-DL-キヌレニン、3-ヒドロキシ-L-キヌレニン、3-ヒドロキシ-D-キヌレニン、5-ヒドロキシ-DL-キヌレニン、5-ヒドロキシ-L-キヌレニン、5-ヒドロキシ-D-キヌレニン、N’-ホルミル-キヌレニン、N-アセチル-3-OH-キヌレニン、4-クロロ-DL-キヌレニン、キサンツレン酸およびキヌレン酸からなる群から選択される、方法を考慮している。
【0039】
一実施形態では、本発明は、ざ瘡瘢痕、萎縮性ざ瘡瘢痕またはざ瘡後萎縮性瘢痕を予防する方法であって、低分子の化合物を投与または適用することを含み、化合物が、DL-キヌレニン、L-キヌレニン、D-キヌレニン、3-ヒドロキシ-DL-キヌレニン、3-ヒドロキシ-L-キヌレニン、3-ヒドロキシ-D-キヌレニン、5-ヒドロキシ-DL-キヌレニン、5-ヒドロキシ-L-キヌレニン、5-ヒドロキシ-D-キヌレニン、N’-ホルミル-キヌレニン、N-アセチル-3-OH-キヌレニン、4-クロロ-DL-キヌレニン、キサンツレン酸およびキヌレン酸からなる群から選択される、方法を考慮している。
【0040】
一実施形態では、本発明は、萎縮性瘢痕の外観を治療するか、回復させるか、隠すか、または軽減する方法であって、低分子の化合物を投与または適用することを含み、化合物が、DL-キヌレニン、L-キヌレニン、D-キヌレニン、3-ヒドロキシ-DL-キヌレニン、3-ヒドロキシ-L-キヌレニン、3-ヒドロキシ-D-キヌレニン、5-ヒドロキシ-DL-キヌレニン、5-ヒドロキシ-L-キヌレニン、5-ヒドロキシ-D-キヌレニン、N’-ホルミル-キヌレニン、N-アセチル-3-OH-キヌレニン、4-クロロ-DL-キヌレニン、キサンツレン酸およびキヌレン酸からなる群から選択される、方法を考慮している。一実施形態では、萎縮性瘢痕は、ざ瘡の後遺症と推定されるか、その可能性が高いか、またはそのように確認される。一実施形態では、萎縮性瘢痕は、尋常性ざ瘡の後遺症と推定されるか、またはその可能性が高い。一実施形態では、萎縮性瘢痕は尋常性ざ瘡の後遺症である。
【0041】
一実施形態では、本発明は、萎縮性瘢痕、萎縮性ざ瘡瘢痕またはざ瘡後萎縮性瘢痕の治療のためのDL-キヌレニン、L-キヌレニン、D-キヌレニン、3-ヒドロキシ-DL-キヌレニン、3-ヒドロキシ-L-キヌレニン、3-ヒドロキシ-D-キヌレニン、5-ヒドロキシ-DL-キヌレニン、5-ヒドロキシ-L-キヌレニン、5-ヒドロキシ-D-キヌレニン、N’-ホルミル-キヌレニン、N-アセチル-3-OH-キヌレニン、4-クロロ-DL-キヌレニン、キサンツレン酸およびキヌレン酸からなる群から選択される低分子の化合物を考慮している。
【0042】
一実施形態では、本発明は、萎縮性瘢痕、萎縮性ざ瘡瘢痕またはざ瘡後萎縮性瘢痕の外観の軽減のためのDL-キヌレニン、L-キヌレニン、D-キヌレニン、3-ヒドロキシ-DL-キヌレニン、3-ヒドロキシ-L-キヌレニン、3-ヒドロキシ-D-キヌレニン、5-ヒドロキシ-DL-キヌレニン、5-ヒドロキシ-L-キヌレニン、5-ヒドロキシ-D-キヌレニン、N’-ホルミル-キヌレニン、N-アセチル-3-OH-キヌレニン、4-クロロ-DL-キヌレニン、キサンツレン酸およびキヌレン酸からなる群から選択される低分子の化合物を考慮している。
【0043】
一実施形態では、本発明は、萎縮性瘢痕の治療への使用のための、DL-キヌレニン、L-キヌレニン、D-キヌレニン、3-ヒドロキシ-DL-キヌレニン、3-ヒドロキシ-L-キヌレニン、3-ヒドロキシ-D-キヌレニン、5-ヒドロキシ-DL-キヌレニン、5-ヒドロキシ-L-キヌレニン、5-ヒドロキシ-D-キヌレニン、N’-ホルミル-キヌレニン、N-アセチル-3-OH-キヌレニン、4-クロロ-DL-キヌレニン、キサンツレン酸およびキヌレン酸からなる群から選択される化合物を考慮している。一実施形態では、萎縮性瘢痕は萎縮性ざ瘡瘢痕である。一実施形態では、萎縮性瘢痕の治療への使用のためのキヌレン酸。一実施形態では、化合物は、萎縮性ざ瘡瘢痕の治療への使用のためのキヌレン酸である。一実施形態では、キヌレン酸は、萎縮性瘢痕または萎縮性ざ瘡瘢痕の治療への使用のための、局所投与用に配合された組成物の構成成分である。一実施形態では、キヌレン酸は、萎縮性瘢痕または萎縮性ざ瘡瘢痕の隠蔽への使用のための、局所投与用に配合された組成物の構成成分である。一実施形態では、キヌレン酸は、萎縮性瘢痕または萎縮性ざ瘡瘢痕の美容的処置として使用される局所投与用に配合された組成物の構成成分である。一実施形態では、キヌレン酸は、萎縮性瘢痕または萎縮性ざ瘡瘢痕の外観を軽減するための化粧品として使用される局所投与用に配合された組成物の構成成分である。一実施形態では、化合物は、萎縮性瘢痕の治療への使用のためのキヌレニンである。一実施形態では、化合物は、萎縮性ざ瘡瘢痕の治療への使用のためのキヌレニンである。
【0044】
一実施形態では、化合物は、注射用に配合された組成物の構成成分であり、注射によって投与される。一実施形態では、注射は皮下、皮内または筋肉内注射として行われる。
【0045】
一実施形態では、化合物は、経口送達用に配合された組成物の構成成分である。一実施形態では、化合物は、経口摂取を意図した製品中の成分である。
【0046】
一実施形態では、化合物は、局所送達用に配合された組成物の構成成分である。一実施形態では、化合物は、局所適用用に配合された組成物の構成成分である。一実施形態では、化合物は、局所使用のためのローション、クリーム、ゲル、溶液または懸濁液中の成分である。
【0047】
幾つかの実施形態では、化合物の適用、投与または使用は、1日1~5回として考慮される。幾つかの実施形態では、化合物の適用、投与または使用は、1日1回、2回または3回として考慮される。幾つかの実施形態では、適用、投与または使用は局所として考慮される。
【0048】
一実施形態では、化合物はDL-キヌレニン、L-キヌレニン、D-キヌレニン、3-ヒドロキシ-DL-キヌレニン、3-ヒドロキシ-L-キヌレニン、3-ヒドロキシ-D-キヌレニン、5-ヒドロキシ-DL-キヌレニン、5-ヒドロキシ-L-キヌレニン、5-ヒドロキシ-D-キヌレニン、N’-ホルミル-キヌレニン、N-アセチル-3-OH-キヌレニン、4-クロロ-DL-キヌレニン、キサンツレン酸およびキヌレン酸からなる群から選択され、局所使用または局所適用のために配合された組成物の構成成分である。
【0049】
一実施形態では、化合物はDL-キヌレニン、L-キヌレニン、D-キヌレニン、3-ヒドロキシ-DL-キヌレニン、3-ヒドロキシ-L-キヌレニン、3-ヒドロキシ-D-キヌレニン、5-ヒドロキシ-DL-キヌレニン、5-ヒドロキシ-L-キヌレニン、5-ヒドロキシ-D-キヌレニン、N’-ホルミル-キヌレニン、N-アセチル-3-OH-キヌレニン、4-クロロ-DL-キヌレニン、キサンツレン酸およびキヌレン酸からなる群から選択され、クリーム、ゲル、ローション、フォーム、懸濁液または軟膏として配合される組成物の構成成分である。
【0050】
一実施形態では、化合物はDL-キヌレニン、L-キヌレニン、D-キヌレニン、3-ヒドロキシ-DL-キヌレニン、3-ヒドロキシ-L-キヌレニン、3-ヒドロキシ-D-キヌレニン、5-ヒドロキシ-DL-キヌレニン、5-ヒドロキシ-L-キヌレニン、5-ヒドロキシ-D-キヌレニン、N’-ホルミル-キヌレニン、N-アセチル-3-OH-キヌレニン、4-クロロ-DL-キヌレニン、キサンツレン酸およびキヌレン酸からなる群から選択され、付加的な1つ以上の医薬組成物と配合され、ここで、上記医薬組成物は、レチノイドまたはレチノイド様化合物(例えばトレチノイン、アダパレン、タザロテン)、抗生物質(例えば、クリンダマイシンまたはエリスロマイシン)を含み、抗生物質を過酸化ベンゾイル、アゼライン酸またはサリチル酸とさらに組み合わせてもよい。
【0051】
一実施形態では、化合物はDL-キヌレニン、L-キヌレニン、D-キヌレニン、3-ヒドロキシ-DL-キヌレニン、3-ヒドロキシ-L-キヌレニン、3-ヒドロキシ-D-キヌレニン、5-ヒドロキシ-DL-キヌレニン、5-ヒドロキシ-L-キヌレニン、5-ヒドロキシ-D-キヌレニン、N’-ホルミル-キヌレニン、N-アセチル-3-OH-キヌレニン、4-クロロ-DL-キヌレニン、キサンツレン酸およびキヌレン酸からなる群から選択され、付加的な1つ以上の非処方薬と配合され、ここで、上記非処方薬は、FDAのOTCモノグラフでカバーされる。上記非処方薬の非限定的な例としては、サリチル酸、過酸化ベンゾイル、アラントイン、ココアバター、ジメチコーン、グリセリン、ワセリン、生酵母細胞誘導体(LYCD)、ステアリン酸亜鉛、酢酸亜鉛、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、鉱油、レゾルシノール、ペルーバルサム、サメ肝油およびタンニン酸が挙げられる。
【0052】
一実施形態では、化合物はキヌレン酸であり、局所使用または局所適用のための組成物の0.1質量%~1質量%である。一実施形態では、化合物はキヌレン酸であり、局所使用または局所適用のための組成物の0.25質量%~0.5質量%である。一実施形態では、化合物は、局所使用または局所適用のための組成物の0.5質量%のキヌレン酸である。一実施形態では、化合物はキヌレン酸であり、ローションの0.5%である。一実施形態では、化合物はキヌレン酸であり、クリームの0.5%である。一実施形態では、化合物はキヌレン酸であり、萎縮性瘢痕、萎縮性ざ瘡瘢痕またはざ瘡後萎縮性瘢痕の外観の軽減に使用される局所適用または局所使用のための組成物の0.1質量%~2質量%である。一実施形態では、化合物はキヌレン酸であり、萎縮性瘢痕、萎縮性ざ瘡瘢痕またはざ瘡後萎縮性瘢痕の外観を軽減する化粧品として使用される組成物の0.1質量%~2質量%である。
【0053】
一実施形態では、本発明は、萎縮性瘢痕、萎縮性ざ瘡瘢痕またはざ瘡後萎縮性瘢痕の外観を軽減する化粧品または医薬品の製造におけるキヌレン酸の使用を考慮している。一実施形態では、本発明は、微量~2質量%のキヌレニン、キヌレン酸またはキサンツレン酸を含有する局所配合物、および萎縮性瘢痕、萎縮性ざ瘡瘢痕またはざ瘡後萎縮性瘢痕の外観を軽減するための上記配合物の使用を考慮している。一実施形態では、本発明は、微量~2質量%のキヌレニン、キヌレン酸またはキサンツレン酸を含有する局所配合物、および萎縮性瘢痕、萎縮性ざ瘡瘢痕またはざ瘡後萎縮性瘢痕の外観の軽減に使用される上記配合物を考慮している。一実施形態では、本発明は、0.1~0.75質量%のキヌレニン、キヌレン酸またはキサンツレン酸を含有する局所配合物、および萎縮性瘢痕、萎縮性ざ瘡瘢痕またはざ瘡後萎縮性瘢痕の外観の軽減に使用される上記配合物を考慮している。一実施形態では、本発明は、0.25~0.5質量%のキヌレニン、キヌレン酸またはキサンツレン酸を含有する局所配合物、および萎縮性瘢痕、萎縮性ざ瘡瘢痕またはざ瘡後萎縮性瘢痕の外観の軽減に使用される上記配合物を考慮している。一実施形態では、本発明は、0.1~0.75質量%のキヌレン酸を含有する局所配合物、および萎縮性瘢痕、萎縮性ざ瘡瘢痕またはざ瘡後萎縮性瘢痕の外観の軽減に使用される上記配合物を考慮している。
【実施例】
【0054】
IV.実施例
A.局所使用のための配合物
I.局所クリームを以下のように作製した。キヌレン酸を1M NaOHのリン酸緩衝溶液に可溶化した後、pHを室温で5.5に調整し、このKynA溶液を続いて絶えず混合しながら皮膚用配合ベース(Glaxal Base(商標)、WellSpring,Ont.,Canada)に添加し、ポリボトルに包装する前にpHを6に調整した。局所クリームを0.15質量%、0.25質量%、0.4質量%および0.5質量%のキヌレン酸で作製した(Papp et al., 2018)。
【0055】
II.他の配合クリームは当該技術分野で既知であり、一例がVersaPro(商標) Cream Base(製品番号2529、MEDISCA Pharmaceutique Inc.,Richmond,BC,Canada)である。VersaPro(商標) Cream Baseを使用して、乾燥キヌレン酸粉末を0.5%の最終質量となるまで乳鉢および乳棒を用いて手で混合してクリームにした。
【0056】
III.キヌレン酸を含む保湿クリーム
水、ワセリン、セテアリルアルコール、軽油、セテアレス-20、TroyCare(商標) EPP37、リン酸二水素ナトリウム二水和物、キヌレン酸、水酸化ナトリウム、塩酸、塩化ナトリウムおよびリン酸水素二ナトリウム二水和物を組み合わせて0.5質量%キヌレン酸保湿クリームを作製した。同じ成分(水、ワセリン、セテアリルアルコール、軽油、セテアレス-20、TroyCare(商標) EPP37、リン酸二水素ナトリウム二水和物、キヌレン酸、水酸化ナトリウム、塩酸、塩化ナトリウムおよびリン酸水素二ナトリウム二水和物)を組み合わせて0.25質量%キヌレン酸保湿クリームを作製したが、キヌレン酸の量は、製品の最終質量の0.25%に低減した。
【0057】
B.ざ瘡瘢痕の外観を軽減するための局所キヌレン酸(0.5質量%)の使用
40代半ばの女性が顔に著しい萎縮性ざ瘡瘢痕を呈し、そのざ瘡瘢痕が20年超にわたって治療抵抗性であると自己申告した。この女性の萎縮性ざ瘡瘢痕の部位に0.5質量%キヌレン酸を含有する局所クリームを3ヶ月にわたって1日2回適用し、1回の適用量は、皮膚1cm
2当たりおよそ17μgのキヌレン酸とした。初期の皮膚治癒は、部位の目視検査によって追跡することができる。被験体は、およそ2週間後には早くも萎縮性ざ瘡瘢痕の知覚される外観が顕著に軽減したと報告した。被験体はまた、被験体のざ瘡[萎縮性瘢痕]の外観が著しく目立たなくなったという他人からの一方的な反応を受けたと報告した。「使用前」および「使用中」の実例画像を
図1として示す。
【0058】
C.ざ瘡瘢痕の外観を軽減するための局所キヌレン酸(0.5質量%)の使用
顔に萎縮性ざ瘡瘢痕を有するおよそ70歳の男性が、瘢痕が「成熟し」、「安定し」、「3年超」持続していると自己申告した。この男性に、0.5質量%キヌレン酸を含有する局所クリームを、皮膚1cm2当たりおよそ2.5~5μgのキヌレン酸の1回の適用量で2ヶ月にわたって1日1回適用した。使用者は、2ヶ月の期間で萎縮性ざ瘡瘢痕の穴および窪みが見えにくく、目立たなくなり、埋まっていくようであったと報告した。被験体はまた、他人からも使用者の萎縮性ざ瘡瘢痕が見えにくく、目立たなくなったという意見があったと報告した。
【0059】
D.肥厚性瘢痕に対する局所キヌレニンの使用
0.05質量%の局所キヌレニンクリームは、in vivoで肥厚性瘢痕の治療に使用されることが文献に記載されており(Li et al., 2014、Poormasjedi-Meibod et al., 2014)、クリームの製造方法および局所適用を参照により援用する。
【0060】
【0061】
【0062】
本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、各々が個別に参照により援用されるのと同程度に、その全体が参照により明示的に援用される。矛盾する場合には、定義を含む本明細書が優先される。
【0063】
本発明を、或る特定の好ましい実施形態を参照して説明したが、本発明がその特別または本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態またはその変形形態で具体化され得ることが理解されるべきである。したがって、上記の実施形態は、あらゆる点で例示的なものであり、限定的なものではないとみなされ、本発明の範囲は、上述の説明ではなく添付の特許請求の範囲によって示される。
【国際調査報告】