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特表2024-516326去勢抵抗性前立腺がんの治療薬の調製におけるポラプレジンクの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-12
(54)【発明の名称】去勢抵抗性前立腺がんの治療薬の調製におけるポラプレジンクの使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/30 20060101AFI20240405BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240405BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240405BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240405BHJP
   A61K 31/58 20060101ALI20240405BHJP
   A61K 31/4164 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
A61K33/30
A61P35/00
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K31/58
A61K31/4164
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568658
(86)(22)【出願日】2021-07-26
(85)【翻訳文提出日】2023-12-28
(86)【国際出願番号】 CN2021108355
(87)【国際公開番号】W WO2022236963
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】202110501971.4
(32)【優先日】2021-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514262886
【氏名又は名称】江南大学
【氏名又は名称原語表記】JIANGNAN UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No. 1800 Lihu Avenue, Bin Hu District, Wuxi, Jiangsu, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】王栄
(72)【発明者】
【氏名】陳永泉
(72)【発明者】
【氏名】朱升龍
(72)【発明者】
【氏名】王小英
(72)【発明者】
【氏名】糜遠源
(72)【発明者】
【氏名】呉升
(72)【発明者】
【氏名】孫健
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC422
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC38
4C086DA12
4C086HA03
4C086HA28
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA16
4C086MA23
4C086MA24
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA41
4C086MA44
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は去勢抵抗性前立腺がんの治療薬の調製におけるポラプレジンクの使用を開示し、生物医学の技術分野に属する。本発明は、Polaとアンドロゲン受容体拮抗薬を組み合わせCRPCの治療薬を調製するための新たな戦略を初めて提案し、多角的且つ多段階の検証研究を行うものである。本発明のポラプレジンクとアンドロゲン受容体を組み合わせた医薬組成物は去勢抵抗性前立腺がんの治療に使用でき、去勢抵抗性前立腺がんに対するエンザルタミドの阻害効果を顕著に向上させることができ、古い薬剤の新たな使用が実現され、創薬から臨床転換までの時間を大幅に短縮することができ、臨床治療上に重要な意義がある。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
去勢抵抗性前立腺がんの治療薬の調製におけるポラプレジンクの使用。
【請求項2】
前記使用は、ポラプレジンクとアンドロゲン受容体拮抗薬を組み合わせて去勢抵抗性前立腺がんの治療薬を調製することを含むことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記組成物はポラプレジンクとアンドロゲン受容体拮抗薬を含むことを特徴とする去勢抵抗性前立腺がんを治療するための医薬組成物。
【請求項4】
アンドロゲン受容体拮抗薬とポラプレジンクとの質量比は(1~5):1であることを特徴とする請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
アンドロゲン受容体拮抗薬は、エンザルタミド、EPI、アビラテロン、オラパリブのいずれか1種以上を含むことを特徴とする請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記医薬組成物は医薬賦形剤をさらに含むことを特徴とする請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記医薬賦形剤は、溶剤、噴射剤、可溶化剤、助溶剤、乳化剤、着色剤、接着剤、崩壊剤、充填剤、潤滑剤、湿潤剤、浸透圧調整剤、安定剤、流動助剤、矯味剤、防腐剤、懸濁助剤、コーティング材、香味剤、接着防止剤、統合剤、浸透促進剤、pH値調整剤、緩衝剤、可塑剤、界面活性剤、発泡剤、消泡剤、増粘剤、包接剤、保湿剤、吸収剤、希釈剤、凝集剤及び解膠剤、濾過助剤及び放出阻害剤を含むことを特徴とする請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記医薬組成物は医薬担体をさらに含んでもよいことを特徴とする請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記医薬担体はマイクロカプセル、マイクロスフェア、ナノ粒子及びリポソームを含むことを特徴とする請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記医薬組成物の剤型は、注射液、注射用凍結乾燥粉末剤、徐放性注射剤、リポソーム注射剤、懸濁剤、植込剤、塞栓剤、カプセル剤、錠剤、丸剤及び経口液剤を含むことを特徴とする請求項3~9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生物医学の技術分野に属し、具体的には、去勢抵抗性前立腺がんの治療薬の調製におけるポラプレジンクの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アンドロゲン除去療法が進行前立腺がんの標準治療方法であるが、患者は平均1~3年の治療後に最終的に去勢抵抗性前立腺がん(Castration-resistant prostate cancer、CRPC)を発症する。2014年、CUAマニュアルによれば、CRPCとは、最初の連続的なアンドロゲン除去療法(ADT)の後に疾患が依然として進行する前立腺がんを指す。(1)血清テストステロンが去勢レベル(<50ng/dL又は1.7nmol/L)に維持されている条件と、(2)生化学的進行について、1週間おきに3回連続して検出されたPSA値が最低値の50%以上超え、増加の絶対値が>2ng/mlであり、又はX線撮影による進行について、骨シンチグラフィで2つ以上の新たな病巣が発見し、又はRECISTで評価すると軟組織の病巣が大きくなるという条件と、を同時に満たす必要がる。現在、症状の進行だけで、CRPCを診断するのに十分ではないと考えられている。
【0003】
以前では、CRPC患者に効果的な治療方法がなく、いくつかの緩和治療のみを受けることができ、2004年に、ドセタキセルが転移性去勢抵抗前立腺がん(metastatic castration-resistant prostate cancer、 mCRPC)患者の全生存期間を延長できることが証明されて以来、アビラテロン酢酸エステル、エンザルタミド、カバジタキセル等のmCRPC疾患段階に対する薬剤が出現し、これらの患者の治療状況を変えたが、CRPCを完全に回復させることは困難である。従って、効果的な併用治療戦略を見つけることはCRPC治療における別の研究のホットスポットとなる。
【0004】
最近、多くの学者は新たな腫瘍細胞薬剤耐性機序-持続細胞(persister cell)、つまり腫瘍細胞可塑性(tumor cell plasticity)、微小残存病変(minimal residual disease)、又は薬剤耐性持続(drug-tolerant persisters、 DTP)等を提案している。この機序の特徴は、薬剤耐性状態で腫瘍細胞が薬剤標的経路に依存せずに、他の経路で生存するが、標的遺伝子に任意の突然変異が発生せず、一定の時間退薬した後に薬剤感受性が回復することである。現在、この機序を作成する3つの仮説が提案されている。(1)少数の薬剤耐性細胞(drug-tolerant cells)が元々存在し、薬剤処置後にダーウィンの進化論によって増加し、(2)少数の薬剤抵抗性細胞が小さい部分のがん細胞によってエピジェネティックに改変されて薬剤耐性細胞を生成し、残存病巣と共存し、(3)腫瘍細胞は様々な薬剤耐性遺伝子を動的に発現し、薬剤処置時にこれらの薬剤耐性遺伝子を高発現させて、薬剤耐性発現系をさらに再構築し、薬剤耐性細胞を生成する。近年、細胞可塑性は標的診断回避モデルとして出現しており、多くのがん症薬剤耐性の共通性である。新たな薬剤耐性経路をブロックするとpersister cellを効果的に阻害でき、例えば、GPX4脂質過酸化経路は、多くのpersister cell状態で高度に発現する効果的な標的である。これまでのところ、CRPC腫瘍にpersister cellがあるか否か、及び新たな効果的な標的を見つけることができるか否かは分かっていない。従って、この研究は、EPI-001及びEnzalutamideによって生成された前立腺がんLNCaP-persister cellから出発して、CRPCを治療するための効果的な併用薬剤を見つけることに焦点を当てている。
【0005】
EPI-001(EPI)は、臨床開発が待たれている、CRPCの治療に用いられる可能性があるAR及びAR-スプライス変異体(AR-Vs)の阻害剤である。CRPCに対するEPIの標的は主にN-末端ドメイン(NTD)である。エンザルタミド(Enzalutamide、Enza)は最初の承認された第2世代ARアンタゴニストであり、従来の抗アンドロゲンに比べてARに対する親和性が5~8倍高い。2012年に、米国FDAはこれに基づきCRPC患者向けたEnzaを承認した。しかし、EPIであれEnzaであれ、CRPCの治療に対する薬剤耐性は通常18カ月前後に出現する。従って薬剤耐性を克服し、CRPCを遅らせるための他の方法は緊急に必要とされている。
【0006】
ポラプレジンク(Polaprezinc、Pola)は亜鉛とL-カルノシンのキレート化形態である。これは日本で初めて承認された亜鉛関連薬剤であり、胃潰瘍の治療に臨床使用されている。この結果は、Polaは圧迫性潰瘍の治療に有効である可能性があることを示している。2013年の研究は、Polaを併用すると、アスピリンの長期使用による小腸粘膜損傷に有効である可能性があることを示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする技術的課題は、上記従来の薬剤に存在する薬剤耐性を克服し、EnzaとPolaを併用することによりCRPCの治療効果を顕著に向上させ、優れた相乗効果を発揮する効果的なCRPC治療薬を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の目的は去勢抵抗性前立腺がんの治療薬の調製におけるポラプレジンク(Polaprezinc)の使用を提供することである。
【0009】
本発明の一実施形態では、前記使用は、ポラプレジンクとアンドロゲン受容体拮抗薬を組み合わせて去勢抵抗性前立腺がんの治療薬を調製することを含む。
【0010】
本発明の第2の目的は、ポラプレジンクとアンドロゲン受容体拮抗薬を含む、去勢抵抗性前立腺がんを治療するための医薬組成物を提供することである。
【0011】
本発明の一実施形態では、アンドロゲン受容体拮抗薬とポラプレジンクとの質量比は(1~5):1である。好ましくは、EnzaとPolaの質量比は1~2:1である。
【0012】
本発明の一実施形態では、アンドロゲン受容体拮抗薬は、エンザルタミド(Enza)、EPI-001(EPI)、アビラテロン、オラパリブのいずれか1種以上を含む。
【0013】
本発明の一実施形態では、前記医薬組成物は医薬賦形剤をさらに含む。
【0014】
本発明の一実施形態では、前記医薬賦形剤は、溶剤、噴射剤、可溶化剤、助溶剤、乳化剤、着色剤、接着剤、崩壊剤、充填剤、潤滑剤、湿潤剤、浸透圧調整剤、安定剤、流動助剤、矯味剤、防腐剤、懸濁助剤、コーティング材、香味剤、接着防止剤、統合剤、浸透促進剤、pH値調整剤、緩衝剤、可塑剤、界面活性剤、発泡剤、消泡剤、増粘剤、包接剤、保湿剤、吸収剤、希釈剤、凝集剤及び解膠剤、濾過助剤及び放出阻害剤を含む。
【0015】
本発明の一実施形態では、前記製剤の剤型は、注射液、注射用凍結乾燥粉末剤、徐放性注射剤、リポソーム注射剤、懸濁剤、植込剤、塞栓剤、カプセル剤、錠剤、丸剤及び経口液剤を含む。
【0016】
本発明の一実施形態では、前記医薬組成物は医薬担体をさらに含んでもよい。
【0017】
本発明の一実施形態では、前記医薬担体はマイクロカプセル、マイクロスフェア、ナノ粒子及びリポソームを含む。
【0018】
本発明の一実施形態では、大量の研究と探索を行ったところ、本発明は、CRPC治療薬、すなわちEnzaとPolaの併用を見出した。研究結果から分かるように、EPI、Enzaに対して耐性のある前立腺がんLNCaP-drug-tolerant persisters(L-DTP)細胞株を作成することにより、LNCaP細胞はEPI、Enzaに対して回復可能な薬剤耐性を獲得し、EnzaとPolaを併用すると細胞成長を顕著に阻害でき、薬剤併用効果がCCK8細胞増殖解析により検証され、その相乗作用がCI値により判定される。同時に、C-MYC過剰発現前立腺がんマウスモデルを構築し、動物でのCRPCの治療に対するEnzaとPolaの単独使用と併用の効果の差を比較し、薬剤の併用による相乗作用はCRPCに対する単独のEnza薬剤の阻害効果を大幅に向上させ、両者の相乗作用はin vivo及びin vitroで検証されている。
【0019】
本発明の一実施形態では、本発明は、L-DTP回復可能な薬剤耐性細胞株を作成し、CCK8方法及びCalcusynソフトウェアでCI値を計算した結果、この細胞株では、Enza又はPolaの単独使用に比べて、EnzaとPolaのin vitro併用がCRPCに対して相乗効果を有することが示された。C-MYC過剰発現前立腺がんマウスモデルを確立することにより、Enzaを長期間投与し薬剤耐性が発生するモデルで、動物におけるEnzaとPolaの併用群は、単剤群に比べて、in vivoでより顕著な抗CRPCモデル効果を有することは判明した。
【発明の効果】
【0020】
本発明は以下の有益な効果を有する。
【0021】
本発明は、Polaを利用したCRPC治療薬の調製、及びEnzaとPolaの薬剤併用に基づく新たな戦略を初めて提案し、且つその作用機序を記述しており、前立腺がんの臨床治療におけるEnzaとPolaの使用を促進するものであり、重要な意義がある。薬剤研究は、化合物分子から臨床使用まで平均8~10年かかり、且つ多くの人的及び物的支援が必要となり、時間コスト及び経済的コストが非常に大きい。本発明の解決手段は、「古い薬剤の新たな使用」を実現し、創薬から臨床転換までの時間を大幅に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、退薬後のDTP(drug-tolerant persisters)の回復可能特性の説明図であり、図1AはDTP及び退薬後の細胞回復のプロセスを示し、図1BはDTP-EPIを3世代、DTP-Enzaを3世代退薬した後の、対応する薬剤に対する感受性の回復特性を示す。
図2図2はDTP及び退薬(Recovery Cell)細胞におけるAR関連遺伝子の発現変化の特徴を示し、図2AはWBによって検出されたタンパク質発現の変化を示し、図2Bはq-PCRによって検出された転写産物発現の変化を示す。
図3図3はL-DTP細胞における、EPI、EnzaのそれぞれとPolaとの併用によるin vitro薬効図であり、図3AはL-DTP-EPI、L-DTP-Enza細胞における薬剤併用細胞の相対生存率の棒グラフであり、図3BはEPI、EnzaのそれぞれとPolaとの併用による、L-DTP-EPI、L-DTP-Enza細胞のそれぞれにおけるCI値の棒グラフである。
図4図4はC-MYC過剰発現前立腺がんマウスモデルにおける、Enzaを連続的に投与し薬剤耐性が発生した後のEnza、Pola及びその併用による前立腺の重量の変化の効果図であり、図4Aは薬物投与の進行に伴う各群のマウスの前立腺の重量の変化図であり、図4Bは各群のマウスの前立腺を摘出し写真を撮影した比較写真であり、図4Cは薬物投与の進行に伴う各群のマウスの体重の変化図である。
図5図5はC-MYC過剰発現前立腺がんマウスモデルにおける、Enzaを連続的に投与し薬剤耐性が発生した後のEnza、Pola及びその併用による効果図であり、図5Aは各群のマウスの前立腺組織切片のHE染色写真であり、図5Bは各群のマウスの前立腺組織切片のPRDX5、AR免疫組織化学写真及び陽性細胞の定量化の棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、明細書の図面及び具体的な実施例を組み合わせて本発明をさらに説明したが、実施例はいかなる形式で本発明を限定するものではない。特に説明しない限り、本発明に用いられる試薬、方法及び装置は本技術分野の従来の試薬、方法及び装置である。
【0024】
特に説明しない限り、以下の実施例で用いられる試薬及び材料は全て市販されている。
【0025】
実施例1 EPI、Enzaを使用して前立腺がんLNCaP細胞でDTPを生成するプロセス
EPI、Enzaに耐性がある前立腺がんL-DTP細胞株L-DTP-EPI、L-DTP-Enzaは回復可能特性を有する。
【0026】
1、実験方法:
1×106個のLNCaP細胞を10cm細胞培養皿に播種し、翌日接着後、EPI、Enzaをそれぞれ添加して9日間処置し、この期間、薬剤を含む新鮮な培地を3日ごとに交換し、9日後に退薬し、新鮮な培地に交換してインキュベータで細胞を通常通り培養し、6日目、12日目、17日目にそれぞれ継代し、DTP(9日目)、R5(退薬の5日目)、R10、R20の細胞形態の写真を倒立顕微鏡で撮影した。DTP及びクローン化DTP細胞を生成した後、細胞を消化して計数し、L-parent細胞全体におけるDTP細胞の割合を算出した。L-parent細胞及び退薬後の3世代(R20)の細胞をそれぞれ96ウェルプレートに分けて播種し、一晩接着させた後、高濃度から低濃度まで一連のEPI、Enzaを調製し、対照群をウェルに添加し、各濃度で3つの重複ウェルを設置し、細胞インキュベータで48hインキュベートした後にCCK8を添加し、4h後に全波長多機能マイクロプレートリーダーで450nm波長の細胞OD値を検出し、生存率を計数して生存曲線を描いた。
【0027】
2、その結果は図1及び表1に示される。図1において、図1AはDTP及び退薬後の細胞回復のプロセスを示し、図1BはDTP-EPIを3世代、DTP-Enzaを3世代退薬した後の、対応する薬剤の感受性の回復特性を示す。
その結果は、EPI、Enzaによって生成されるLNCaP-DTP細胞の数が非常に少なく、これらの薬剤耐性細胞が全てEPI、Enzaに対して薬剤耐性を有するが、3世代退薬した後に細胞形態が回復でき、薬剤に対する感受性も回復することを示している。
【0028】
実施例2 DTP及び退薬(Recovery Cell)細胞におけるAR関連遺伝子の発現変化の特徴の確立
DTP細胞の3世代退薬した後の細胞形態は回復し、このときの細胞のAR関連遺伝子の発現変化も回復できる。
【0029】
1、実験方法:
LNCaP細胞を10cmディッシュに播種し、一晩接着させた後、EPI、Enzaをそれぞれ添加し9日間細胞を処置した後に細胞を回収し、この期間、薬剤を添加した新鮮な培地を3日ごとに交換し、残りのDTP細胞に対して、退薬してから20日後に同様に細胞を回収した。DMSOで9日間処置したLNCaP細胞をNC対照群とし、EPI、Enzaを添加して9日間処置しL-DTP-EPI、L-DTP-Enzaを生成した薬剤耐性細胞を処置群とし、退薬してから20日後のこの処置群の細胞を回復群とし、この3群の細胞に対して、細胞分解、タンパク質の抽出と定量、SDS-PAGEゲル電気泳動、膜転写、ブロッキング、一次抗体のインキュベーション、二次抗体のインキュベーション、造影を行った後にAR-FL及びその関連する標的タンパク質、AR-Vs及びその関連する標的タンパク質の発現変化を観察した。同時に、この3群の細胞に対してq-RTPCR測定を行い、AR-FL及びその関連する標的遺伝子、AR-Vs及びその関連する標的遺伝子の発現変化を検出した。
【0030】
2、結果は図2に示された。図2において、図2AはWBによって検出されたタンパク質発現の変化を示し、図2Bはq-RTPCRによって検出された転写産物発現の変化を示す。
【0031】
その結果は、AR及びその関連する標的タンパク質PSA、TMPRSS2、AR-Vs及びその関連する標的タンパク質UBE2C、CDC20の発現は全てDTP段階で異なる程度で減少したが、退薬R20後に発現が回復し、同様に、AR-Vs及びその関連する標的遺伝子、AR-Vs及びその関連する標的遺伝子、及び成長marker:AKT1、C-MYCの発現もDTP段階で減少し、R20の発現が異なる程度で回復することを示している。
【0032】
実施例3 EPI、EnzaのそれぞれとPola薬剤との併用。
【0033】
さらにCCK8を用いて、薬剤耐性L-DTP細胞にそれぞれ単独使用したり、併用したりすることによる、薬剤耐性L-DTP(EPI)及びL-DTP(Enza)細胞におけるPola薬剤のin vitro抗腫瘍効果を説明した。
【0034】
1、実験方法
薬剤耐性細胞L-DTP(L-DTP(EPI)及びL-DTP(Enza)を含む)を96ウェルプレートに播種し、接着させた後に、高濃度から低濃度まで一連のPola薬剤を調製することにより、最適なPola薬剤濃度を見つけ、続いて、この濃度で、単独使用(L-DTP(EPI)-Pola)、併用[L-DTP(EPI)-combination(EPI+Pola)]、[L-DTP(Enza)-combination(Enza+Pola)]のそれぞれによる、薬剤耐性細胞L-DTPにおける生存率を測定した。最終的に、Calcusynソフトウェアを利用して、L-DTP細胞でCI値を計算した。
【0035】
2、結果は図3に示された。図3において、図3AはL-DTP(EPI)、L-DTP(Enza)薬剤耐性細胞における薬剤併用細胞の相対生存率の棒グラフであり、図3BはEPI、EnzaのそれぞれとPolaとの併用による、L-DTP(EPI)、L-DTP(Enz)薬剤耐性細胞のそれぞれにおけるCI値の棒グラフである。
【0036】
その結果は以下を示している。EPIを9日間連続的に投与し薬剤耐性が発生したL-DTP(EPI)細胞において、EPIを継続投与しても有意な阻害効果が見つけられておらず、Polaを単独で投与しても有意な阻害率もないが、併用(EPI+Pola)の場合に55.74%の阻害率に達することができる。同様に、Enzaを9日間連続的に投与し薬剤耐性が発生したL-DTP(Enza)細胞において、Enzaを継続投与しても有意な阻害効果が見つけられておらず、Polaを単独で投与しても有意な阻害率もないが、併用(Enza+Pola)の場合に、60.765%の阻害率に達することができる。CI値を計算したところ、PolaはL-DTP-EPI細胞において0.525の高い相乗作用に達することができ、L-DTP(Enza)細胞において0.695の高い相乗作用に達することができる。
【0037】
実施例4 C-MYC過剰発現前立腺がんマウスモデルにおける、Enzaを連続的に投与し薬剤耐性が発生した後のEnzaとPolaの併用による効果
さらに、前立腺がんマウスモデルにおいて、化学的去勢(すなわち、Enzaを連続的に投与した)後に再発したマウスに対するEnzaとPolaの併用の効果を説明した。
【0038】
1、実験方法
C-MYC(Hi-Myc)を過剰発現する自然発生前立腺がんマウスモデルを構築し、4ヵ月で、マウスはmPIN/Cancer transitionに発症し、このとき、NC対照群(溶媒の胃内投与)、Enza投与群にランダムに分け、その後、3日ごとに1回胃内投与し、Enzaが10mg/Kgであり、合計30日間投与し、その後、数匹のマウスの首を切断し、前立腺がんの写真を撮影して、重量を測定し、Enzaが症状を有意に軽減でき、NC対照群に対して前立腺の重量が半分に減少したことが分かり、その後、上記方法で残りのマウスに30日間継続投与し、Enza群に再発があることが分かり、その後(すなわち、ラットが生後6ヶ月の時)、NC対照群(常に溶媒を胃内投与)、Enza単剤群、Pola単剤群、及びEnzaとPola併用群にランダムに分け、対応する投与処置を行い、全て、3日ごとに1回胃内投与し、毎回Enzaが10mg/Kgであり、Polaが20mg/Kgであり、合計30日間投与した。その後、マウスの首を切断し、その前立腺がんに対して写真撮影、重量測定、及び免疫組織化学等の実験を行った。
【0039】
2、結果は図4及び図5に示された。図4において、図4Aは薬物投与の進行に伴う各群のマウスの前立腺の重量の変化図であり、図4Bは各群のマウスの前立腺を摘出し写真を撮影した比較写真であり、図4Cは薬物投与の進行に伴う各群のマウスの体重の変化図である。図5において、図5Aは各群のマウスの前立腺組織切片のHE染色写真であり、図5Bは各群のマウスの前立腺組織切片のAR、PRDX5免疫組織化学写真及び陽性細胞の定量化の棒グラフである。
【0040】
Enzaを30日間連続的に投与したマウスの前立腺の重量の平均値は41.2mgであり、このときNC対照群の平均値は85.3mgであり、60日間継続投与したところ、Enza群のマウスの前立腺の重量の平均値は78.4mgになり、このときNC対照群の平均値は95.6mgであり、薬剤耐性再発が発生し、CRPCが引き起こされたのを示し、このとき、すぐに群別に投与し薬剤併用の効果を説明した。
【0041】
群別併用及び単独使用の結果は表2に示され。
図4及び表2を組み合わせて分かるように、Enzaの単独使用及びPolaの単独使用に比べてEnzaとPolaの併用は非常に顕著な効果があり、前立腺の重量は約53.14mgに減少することができ、それと同時に、Polaの単独使用の効果はEnzaの単独使用の効果とほぼ同等であり、Polaの単独使用は薬剤耐性のあるCRPCに対して顕著な効果がないことを示している。
【0042】
組織切片のHE染色結果(図5)から、併用治療後に、CRPCの前立腺腫瘍は有意な変形及び線維化が見られることが分かる。免疫組織化学から、EnzaとPolaの併用は、Enzaの単独使用及びPolaの単独使用に比べて、AR及びPRDX5の発現が顕著に減少したことが分かる。併用の効果が顕著であることを証明する。
【0043】
群別併用及び単独使用の結果は表3に示された。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】