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特表2024-516332テレフタル酸のモノエステルおよびその誘導体を製造する方法
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  • 特表-テレフタル酸のモノエステルおよびその誘導体を製造する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-12
(54)【発明の名称】テレフタル酸のモノエステルおよびその誘導体を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 67/30 20060101AFI20240405BHJP
   C07C 69/82 20060101ALI20240405BHJP
   C07C 69/83 20060101ALI20240405BHJP
   C07C 67/52 20060101ALI20240405BHJP
   C08J 11/24 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
C07C67/30
C07C69/82 Z
C07C69/83
C07C67/52
C08J11/24 ZAB
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023570059
(86)(22)【出願日】2022-01-06
(85)【翻訳文提出日】2023-11-10
(86)【国際出願番号】 SG2022050006
(87)【国際公開番号】W WO2022150016
(87)【国際公開日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】10202100177W
(32)【優先日】2021-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503231882
【氏名又は名称】エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】ルオ、ヘ-カン
【テーマコード(参考)】
4F401
4H006
【Fターム(参考)】
4F401AA22
4F401AC10
4F401BA06
4F401CA67
4F401CA68
4F401EA58
4F401EA59
4F401EA60
4F401EA64
4F401EA68
4F401EA69
4F401EA76
4F401EA90
4H006AA02
4H006AC91
4H006BA69
4H006BB12
4H006BB14
4H006BB15
4H006BB20
4H006BB22
4H006BB40
4H006BB41
4H006BC10
4H006BC19
(57)【要約】
本発明は、第1の塩基および溶媒混合物の存在下で、ジカルボン酸のモノエステルのモノ塩に、ジカルボン酸のポリエステルを解重合する方法およびテレフタル酸のジエステルを加水分解する方法に関し、前記モノ塩生成物の他の有用な誘導体へのさらなる処理をさらに含み、ここで、該溶媒混合物は、少なくとも1つの非プロトン性溶媒および少なくとも1つのプロトン性溶媒を含み;並びに該非プロトン性溶媒および該プロトン性溶媒は、1:10から100:1の体積比で提供される。好ましい実施態様においては、非プロトン性溶媒は、ジクロロメタン(DCM)、アセトニトリル(ACN)、テトラヒドロフラン(THF)またはジエチルエーテルであり;プロトン性溶媒は、メタノール、エタノール、またはアリルアルコールであり;塩基は、水酸化カリウム(KOH)である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジカルボン酸のポリエステルを解重合する方法であって、該方法は:
ポリエステルを第1の塩基および溶媒混合物の存在下で解重合して、前記ジカルボン酸のモノエステルのモノ塩を含む生成物を生じることを含み;
ここで、前記溶媒混合物は、少なくとも1つの非プロトン性溶媒および少なくとも1つのプロトン性溶媒を含み;並びに
該非プロトン性溶媒および該プロトン性溶媒は、1:10から100:1の体積比で提供される、
方法。
【請求項2】
ポリエステルが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、前述のポリエステルのブロックコポリマー、置換された前述のポリエステル、分岐状の前述のポリエステルおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1の方法。
【請求項3】
非プロトン性溶媒およびプロトン性溶媒が、1:1から15:1の体積比で提供される、請求項1の方法。
【請求項4】
非プロトン性溶媒が、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、アセトン、ジメチルホルムアミド、およびジメチルスルホキシドからなる群から選択される少なくとも1つの極性非プロトン性溶媒;並びに/またはトルエン、ジクロロメタン、クロロベンゼン、キシレン、ジエチルエーテル、およびそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの非極性非プロトン性溶媒を含む、請求項1の方法。
【請求項5】
非プロトン性溶媒が、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1の方法。
【請求項6】
プロトン性溶媒が、メタノール、エタノール、2-フルオロエタノール、2-クロロエタノール、2,2,2-トリクロロエタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノール、アリルアルコール、プロパルギルアルコール、2-アミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1の方法。
【請求項7】
プロトン性溶媒が、メタノール、エタノール、アリルアルコールおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1の方法。
【請求項8】
第1の塩基の、ポリエステルの繰り返しモノマー単位に対するモル比が0.5から2である、請求項1の方法。
【請求項9】
第1の塩基の、ポリエステルの繰り返しモノマー単位に対するモル比が1から1.5である、請求項1の方法。
【請求項10】
第1の塩基が、少なくとも1つの無機塩基、少なくとも1つの有機塩基、またはそれらの混合物を含む、請求項1の方法。
【請求項11】
無機塩基が、水酸化アルカリ金属、水酸化アルカリ土類金属、水酸化アンモニウム、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項10の方法。
【請求項12】
無機塩基が、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項11の方法。
【請求項13】
有機塩基が、メトキシドの金属塩、エトキシドの金属塩、n-プロポキシドの金属塩、イソプロポキシドの金属塩、n-ブトキシドの金属塩、tert-ブトキシドの金属塩、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項10の方法。
【請求項14】
金属が、アルカリ金属またはアルカリ土類金属から選択される、請求項13の方法。
【請求項15】
有機塩基が、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムn-プロポキシド、カリウムイソプロポキシド、カリウムn-ブトキシド、カリウムtert-ブトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムn-プロポキシド、ナトリウムイソプロポキシド、ナトリウムn-ブトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド、およびそれらの混合物らなる群から選択される、請求項13の方法。
【請求項16】
前記解重合を10℃から90℃の範囲の温度で実施する、請求項1の方法。
【請求項17】
前記解重合を22℃から55℃の範囲の温度で実施する、請求項1の方法。
【請求項18】
前記解重合を、10分から10時間または30分から5時間の期間行う、請求項1の方法。
【請求項19】
モノ塩生成物を固体析出物として分離する工程をさらに含む、請求項1の方法。
【請求項20】
モノ塩生成物を酸溶液と反応させて、前記ジカルボン酸のモノエステルを産生することをさらに含み、ここで、該酸溶液は、塩酸(HCl)、硫酸(HSO)、リン酸(HPO)、酢酸、ギ酸、クエン酸およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項19の方法。
【請求項21】
モノ塩生成物を、0.1から3のpH値まで酸性化する、請求項20の方法。
【請求項22】
モノ塩生成物の酸溶液との前記反応工程を、18℃から40℃の範囲の温度で実施する、請求項20の方法。
【請求項23】
モノ塩生成物を第2の塩基と反応させて、ジカルボン酸塩を産生する工程をさらに含む、請求項19の方法。
【請求項24】
第2の塩基が、水酸化アルカリ金属、水酸化アルカリ土類金属、水酸化アンモニウム、およびそれらの混合物からなる群から選択される無機塩基である、請求項23の方法。
【請求項25】
第2の塩基が、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、およびそれらの混合物から選択される無機塩基である、請求項23の方法。
【請求項26】
前記ジカルボン酸塩を酸溶液と反応させて、ジカルボン酸を産生することをさらに含み、ここで、該酸溶液は、塩酸(HCl)、硫酸(HSO)、リン酸(HPO)、酢酸、ギ酸、クエン酸およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項23の方法。
【請求項27】
テレフタル酸のモノエステルのモノ塩を製造する方法であって、該方法は:
テレフタル酸のジエステルを第1の塩基および溶媒混合物の存在下で加水分解して、テレフタル酸のモノエステルのモノ塩を生じることを含み;
ここで、前記溶媒混合物は、少なくとも1つの非プロトン性溶媒および少なくとも1つのプロトン性溶媒を含み;並びに
該非プロトン性溶媒および該プロトン性溶媒は、1:10から100:1の体積比で提供される、
方法。
【請求項28】
第1の塩基が、テレフタル酸のジエステルに0.5から2.5のモル比で提供される、請求項27の方法。
【請求項29】
第1の塩基の、テレフタル酸のジエステルに対するモル比が1から1.5である、請求項28の方法。
【請求項30】
ジエステルが、0.1Mから2Mまたは好ましくは0.1から0.7Mの濃度で提供される、請求項27の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、2021年1月7日に出願したシンガポール特許出願第102021100177W号の優先権の利益を主張し、その内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、ジカルボン酸のモノエステルおよび他の有用な生成物を製造するための、ポリエステル廃棄物の解重合に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリエステルは、ポリマー主鎖での全ての繰り返し単位においてエステル官能基を含有するポリマーのクラスである。ポリエステルのファミリーの中でも、テレフタレートポリエステル、すなわちポリ(アルキレンテレフタレート)、特にポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリブチレンテレフタレート(PBT)は、最も一般的な熱可塑性樹脂であり、これらは、さまざまなボトル(飲料水、清涼飲料、ボディーソープおよびシャンプー用)、箱(食品および果物の包装用)、バリアフィルム、繊維および織物の製造において広く使用されている。従って、毎年大量のPETおよびPBT廃棄物が生成する。そのようなポリエステル廃棄物、特に廃棄PETスクラップは、環境保護のためにリサイクルしなければならない。
【0004】
PETは、高分子量(MW)ポリマーであり、PETの、そのモノマーへの逆変換は、通常、遅いプロセスであって、ときどき高温を必要とし、これは典型的には、複数の最終生成物の混合物をもたらす。PETのリサイクルまたはアップサイクルプロセスにおいては、重要な技術的課題の1つは、所望のモノマーまたは付加価値のある化学物質を産生するための、廃PETの選択的な解重合である。しかしながら、最先端の技術は現在、テレフタル酸(TPA)への加水分解、テレフタル酸ジメチル(DMT)へのメタノリシス、およびテレフタル酸ビス-(2-ヒドロキシエチル)(BHET)へのグリコリシスに限られている。これらの3つの生成物(TPA、DMT、BHET)は、フェニル環上に異なる官能基を有する。しかし、それらのそれぞれの1つについては、それは、フェニルの1,4位に同じアルコキシ基(RO)を有する。
【0005】
他の実施態様においては、廃PETをTPAの二カリウム塩に変換する解重合方法が開示されており、これは、PETの典型的な加水分解を含む。TPAの二カリウム塩の水溶液を硫酸水溶液で酸性化して、TPAモノマーを産生した。解重合は、主溶媒(95~97体積%)としてメタノール、および共溶媒(3~5体積%)として非極性溶媒のジクロロメタンを使用し、室温で水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムを用いて行った。非極性溶媒のアルコールに対する典型的な体積比は、約1:10から約1:50であり得る。
【0006】
最近、PETの低エネルギー触媒メタノリシスが、メタノールおよびジクロロメタンの溶媒混合物中、20~35℃の温和な温度範囲で、炭酸カリウムによって促進されるDMTを産生することが報告された。炭酸カリウムは、安価で無毒な塩基である。しかしながら、解重合速度は、遅く、最長24時間またはそれ以上かかり得る。
【0007】
別の既知の方法においては、PETは、最高190℃の高温で、1,8-ジアザビシクロウンデカ-7-エン(DBU)などのアミジン有機触媒を使用して促進されるグリコリシスによって解重合する。解重合反応は、テレフタル酸ビス(2-ヒドロキシエチル)(BHET)を含有する混合物をもたらした。しかしながら、この解重合方法は、穏やかな条件での加水分解またはメタノリシスと比較して、より多くのエネルギーを消費する。
【0008】
これまでのところ、廃PETを、フェニルの1,4位に異なる基を有する、テレフタル酸のモノエステルに変換する報告は何らない。
【0009】
テレフタル酸のモノエステルは、ポリマー合成および製薬産業を含むさまざまな適用において、有用なファインケミカルである。これらの適用は通常、化学物質が高度に純粋な形態(例えば、>99重量%)であることを必要とする。テレフタル酸のモノエステルは、パラキシレンからの酸化生成物の製造における共生成物として、またはテレフタレート誘導体の加水分解からの生成物として知られている。しかしながら、そのような反応生成物混合物からのモノエステルの分離は、困難であることが知られている。従って、その幅広い適用にもかかわらず、テレフタル酸のモノエステルを製造するコストは、他のテレフタル酸誘導体と比較して比較的高いままである。
【0010】
一般に、テレフタル酸のジエステルは、テレフタル酸のモノエステルの製造についての原材料として役立ち得る。従来、テレフタル酸のモノエステルを得るためには、テレフタル酸のジエステルを、選択的な酵素または金属塩触媒を使用して加水分解する。しかしながら、これらの既知の方法は、いくつかの不利な点を被っており、例えば、加水分解生成物は必然的に、テレフタル酸のモノエステルおよびテレフタル酸の混合物を含有する。さらに、反応は、典型的には遅く(例えば、最長24時間かかり得る)、高温を必要とする。さらに、これらの方法は通常、モノエステルの低い収率(<70%)をもたらす。
【0011】
1つの既知の方法においては、テレフタル酸モノメチルのカリウム塩を、ベンゼンおよびエタノールの溶媒混合物中55℃で、またはメタノール中還流温度で、DMTから調製した。テレフタル酸モノメチルのカリウム塩の水溶液を硫酸で酸性化して、テレフタル酸モノメチルを産生した。このモノ加水分解方法は、メタノール中55℃または還流温度で行った、そしてこれは、室温で行う反応と比較してより多くのエネルギーを消費する。この方法での別の不利な点は、芳香族発がん性溶媒であるベンゼンの使用である。
【0012】
他の方法においては、テレフタル酸が、テレフタル酸のモノエステルを製造するための原材料として使用されてきた。そのような方法については、典型的にはアルミナ触媒を、テレフタル酸の2つのカルボキシル基の1つをメチル化試薬と反応することから保護するために使用する。しかしながら、これらの方法はそれにもかかわらず、所望のモノエステル生成物の限られた収率および選択性を被っている。高い選択性は、反応物の濃度を調整することによって達成し得るが、そのような高い選択性は典型的には、非常に低い変換の生成物(例えば、0.1重量%)を有するというトレードオフをもたらす。
【0013】
それゆえ、ポリエステル廃棄物、特にPET廃棄物を処理して、改善された収率および選択性でテレフタル酸のモノエステルなどの有用な生成物を製造するための、新規な解決策を提供するニーズがある。
【発明の概要】
【0014】
ジカルボン酸のポリエステルを解重合する方法が提供され、該方法は、ポリエステルを第1の塩基および溶媒混合物の存在下で解重合して、ジカルボン酸のモノエステルのモノ塩を含む生成物を生じることを含み(例えば、図1);ここで、前記溶媒混合物は、少なくとも1つの非プロトン性溶媒および少なくとも1つのプロトン性溶媒を含み;並びに該非プロトン性溶媒および該プロトン性溶媒の体積比は、1:10から100:1である。
【0015】
有利なことに、少なくとも1つのプロトン性溶媒および少なくとも1つの非プロトン性溶媒の提供は、該方法についての選択性、収率、および効率を驚くほど改善することが見出されている。特に、本明細書において開示する方法は、最大84%の収率および最大99.3%の選択性を提供し得る。さらに、本明細書において開示する方法は、周囲条件下で0.5~5時間の時間間隔で行い得る。
【0016】
記載する溶媒混合物の使用が、ジカルボン酸のモノエステルのモノ塩の、ポリエステルからの優れた収率および選択性でのワンポット製造を可能にすることが予想外に見出された。特に、溶媒混合物は、反応混合物中のプロトン性溶媒および塩基の最適な濃度を提供するために調整し得る。プロトン性溶媒および塩基の最適濃度が、ジカルボン酸のジエステルのインサイチュ形成、およびジカルボン酸のモノ塩に変換するための、その即座の溶解を可能にする(例えば、図2)。さらに、溶媒混合物は、ジカルボン酸のモノエステルのモノ塩がいったん形成されるとそれを効果的に析出させ得、これが、解重合をモノ塩生成物に向けて優先的に推進し、それによって収率および選択性を改善する。さらに有利なことに、モノ塩生成物を生じる開示する方法は、ポリエステル廃棄物を、新しいポリマーを製造するための貴重なファインケミカルまたはモノマーにアップサイクルするために、容易に使用し得る。
【0017】
開示の別の態様においては、テレフタル酸のモノエステルのモノ塩を製造する方法も提供され、該方法は:テレフタル酸のジエステルを第1の塩基および溶媒混合物の存在下で加水分解して、最大99.9%の選択性でテレフタル酸のモノエステルのモノ塩を生じ;ここで、前記溶媒混合物は、少なくとも1つのプロトン性溶媒および少なくとも1つの非プロトン性溶媒を含み;並びに該非プロトン性溶媒および該プロトン性溶媒は、1:10から100:1の体積比で提供される。
【0018】
定義
本明細書において使用する以下の単語および用語は、示す意味を有するものとする:
【0019】
用語「ポリエステル」は、エステル官能基を含む任意のポリマーを含むと広く解釈されるべきである。
【0020】
用語「テレフタレートポリエステル」は、テレフタレートブロックを含む任意のポリマーを含むと広く解釈されるべきである。
【0021】
用語「テレフタルポリマー(terephthalic polymer)廃棄物」は、テレフタレートポリマーを含有する織物、包装、テープ、フレキシブル電子機器、ケーブルの任意の廃棄物を含むと広く解釈されるべきである。例は、廃クリーニングクロス、太陽電池基板の廃棄物、水の廃PET(ポリエチレンテレフタレート)ボトル、清涼飲料の廃PETボトル、シャンプーの着色した廃PETボトル、ボディソープの着色した廃PETボトル、果物の廃PET箱、産業用PET廃棄物、PETフィルム、PET/接着剤/PEの多層フィルム、またはそれらの組合せを含み得るが、これらに限定されない。
【0022】
用語「アルコーリシス」は、有機分子とアルコールとの間で起こる化学反応のプロセスを指す。例えばエステル交換反応は、アルコーリシスの一種であり、ここでは、エステルからのアルコールが別のアルコールによって置き換えられる。
【0023】
単語「実質的に」は、「完全に」を排除せず例えばYが「実質的にない」組成物は、Yが完全になくあり得る。必要に応じて、単語「実質的に」は、発明の定義から省略し得る。
【0024】
他に指定しない限り、用語「含むこと」および「含む」、並びにそれらの文法的変形は、それらが列挙した要素を含むだけでなく、追加の列挙していない要素の包含も許容するように、「オープンな」または「包括的な」言語を表すことを意図している。
【0025】
製剤の成分の濃度の文脈において、本明細書において使用する用語「約」は、典型的には述べる値の+/-5%、より典型的には述べる値の+/-4%、より典型的には述べる値の+/-3%、より典型的には述べる値の+/-2%、さらにより典型的には述べる値の+/-1%、およびさらにより典型的には述べる値の+/-0.5%を意味する。
【0026】
この開示を通して、特定の実施態様が、範囲形式で開示され得る。範囲形式での記載は、単に便宜および簡潔のためであり、開示範囲の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈されるべきではないことが理解されるべきである。従って、範囲の記載は、全ての可能なサブ範囲並びにその範囲内の個々の数値を具体的に開示したと考えられるべきである。例えば、1から6などの範囲の記載は、1から3、1から4、1から5、2から4、2から6、3から6等、並びにその範囲内の個々の数、例えば、1、2、3、4、5、および6などのサブ範囲を具体的に開示したと考えられるべきである。これは、範囲の広さにかかわらず適用される。
【0027】
特定の実施態様はまた、本明細書において広範におよび一般的に記載され得る。一般的な開示内に入るより狭い種および亜属のグループのそれぞれもまた、開示の一部を形成する。これは、削られた題材が本明細書において具体的に列挙されているか否かにかかわらず、属から任意の主題を取り除くただし書きまたは消極的限定を有する実施態様の一般的な記載を含む。
【0028】
略語のリスト:
PET:ポリエチレンテレフタレート
K-MMT:テレフタル酸モノメチルのカリウム塩
MMT:テレフタル酸モノメチル
K-MET:テレフタル酸モノエチルのカリウム塩
MET:テレフタル酸モノエチル
K-MALT:テレフタル酸モノアリルのカリウム塩
MALT:テレフタル酸モノアリル
DMT:テレフタル酸ジメチル
-TPA:テレフタル酸の二カリウム塩
TPA:テレフタル酸
DCM:ジクロロメタン
THF:テトラヒドロフラン
ACN:アセトニトリル
【発明を実施するための形態】
【0029】
実施態様の詳細な説明
ジカルボン酸のポリエステルを解重合する方法の例示的で非限定的な実施態様を、ここで開示する。
【0030】
1つの実施態様においては、ジカルボン酸のポリエステルを解重合する方法が、提供される。該方法は、ポリエステルを第1の塩基および溶媒混合物の存在下で解重合して、ジカルボン酸のモノエステルのモノ塩を含む生成物を生じることを含み得(例えば、図1);ここで、前記溶媒混合物は、少なくとも1つの非プロトン性溶媒および少なくとも1つのプロトン性溶媒を含み;並びに該非プロトン性溶媒および該プロトン性溶媒は、1:10から100:1の体積比で提供される。
【0031】
ポリエステルは、ジカルボン酸およびジオールを含むモノマーまたはジカルボン酸-ジオールオリゴマーから製造し得る。
【0032】
ポリエステルは、脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル、前述の(forgoing)ポリエステルのブロックコポリマー、分岐状の前述のポリエステル、置換された前述のポリエステルおよびそれらの混合物からなる群から選択し得る。
【0033】
脂肪族ポリエステルは、ポリエチレンアジペート(PEA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、置換された前述のポリエステル、前述のポリエステルのブロックコポリマー、分岐状の前述のポリエステルおよびそれらの混合物からなる群から選択し得る。
【0034】
芳香族ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、置換された前述のポリエステル、前述のポリエステルのブロックコポリマー、分岐状の前述のポリエステルおよびそれらの混合物からなる群から選択し得る。
【0035】
ポリエステルは、廃棄物の形態であり得る。
【0036】
解重合プロセスにおいては、ジカルボン酸のジエステルは、アルコーリシスを介する前記モノ塩の析出前の中間体であり得、ここで、プロトン性溶媒の有機基は、ジカルボン酸ブロックの2つの末端中に組み込まれて、ジカルボン酸のジエステルを形成するであろう。
【0037】
ポリエステルは、0.1Mから2M、または0.1Mから1.5M、または0.1Mから1Mの濃度で提供し得る。ポリエステル濃度は、溶液の体積で割った、モルでの、繰り返しモノマー単位(すなわち、ジカルボン酸またはジオール)によって計算する。
【0038】
第1の塩基は、少なくとも1つの無機塩基、少なくとも1つの有機塩基またはそれらの混合物を含み得る。無機塩基は、水酸化アルカリ金属、水酸化アルカリ土類金属、水酸化アンモニウム、およびそれらの混合物からなる群から選択し得る。より好ましくは、前記無機塩基は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、およびそれらの混合物であり得る。実施態様においては、塩基は、水酸化カリウム、または水酸化ナトリウムである。
【0039】
第1の塩基は:メトキシドの金属塩、エトキシドの金属塩、n-プロポキシドの金属塩、イソプロポキシドの金属塩、n-ブトキシドの金属塩、tert-ブトキシドの金属塩、およびそれらの混合物からなる群から選択し得、ここで、該金属は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属から選択し得る。
【0040】
第1の塩基はまた:カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムn-プロポキシド、カリウムイソプロポキシド、カリウムn-ブトキシド、カリウムtert-ブトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムn-プロポキシド、ナトリウムイソプロポキシド、ナトリウムn-ブトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド、およびそれらの混合物からなる群から選択し得る。
【0041】
プロトン性溶媒は、メタノール、エタノール、2-フルオロエタノール、2-クロロエタノール、2,2,2-トリクロロエタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノール、アリルアルコール、プロパルギルアルコール、2-アミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、およびそれらの混合物からなる群から選択し得る。実施態様においては、プロトン性溶媒は、メタノール、エタノールまたはアリルアルコールから選択する。
【0042】
開示する非プロトン性溶媒は、以下の要件に基づいて選択し得る:1)非プロトン性溶媒は、プロトン性溶媒よりポリエステルをよりよく膨張させ得る;2)アルコーリシスを介して対応するポリエステルからインサイチュで生じる、ジカルボン酸のジエステルは、プロトン性溶媒中より非プロトン性溶媒中でより良好な溶解性を有する;3)非プロトン性溶媒は、任意の体積比でプロトン性溶媒と混和性である;4)ジカルボン酸のモノエステルのモノ塩は、プロトン性溶媒中より非プロトン性溶媒中でより劣った溶解性を有する。
【0043】
非プロトン性溶媒は、極性非プロトン性溶媒、非極性非プロトン性溶媒およびそれらの組合せからなる群から選択し得る。
【0044】
極性非プロトン性溶媒は、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドおよびそれらの組合せからなる群から選択し得る。
【0045】
非極性非プロトン性溶媒は、トルエン、ジクロロメタン、クロロベンゼン、キシレン、ジエチルエーテルおよびそれらの組合せからなる群から選択し得る。
【0046】
実施態様において使用する好ましい非プロトン性溶媒は、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、またはジエチルエーテルである。
【0047】
純粋なプロトン性溶媒の使用と比較して、少なくとも1つの非プロトン性溶媒および少なくとも1つのプロトン性溶媒を含む溶媒混合物は、プロトン性溶媒とポリエステルのエステル基または中間体であるジカルボン酸のジエステルとの間の水素結合の形成の可能性を有利に低下させ得、そのようにして、解重合プロセスについての空間的障害を低下させ得る。
【0048】
有利なことに、溶媒混合物は、プロトン性溶媒分子の濃度を低下させ、プロトン性溶媒のみにおける塩基の溶解速度と比較して、より遅い速度で塩基を溶解し得る。一方で、純粋なプロトン性溶媒と比較して、プロトン性溶媒の減少する濃度は、塩基との副反応を低下させ、塩基がモノ塩の形成のためにインサイチュで形成されるジエステルのカルボニル基に接近するより多くの機会を提供する。他方で、塩基のより遅い溶解速度はまた、中間体であるジカルボン酸のジエステルと塩基との間のより大きなモル比につながり、これは、ジカルボン酸のモノエステルのモノ塩を形成するための、インサイチュで生じるジカルボン酸のジエステルのモノ加水分解に向けて予想外に速い変換および高い選択性を与えた。
【0049】
また有利なことに、PETなどのポリエステルは、有機溶媒混合物中で溶解しないが、ポリエステルのエステル基は、プロトン性溶媒のみを使用することと比較して有機溶媒混合物とより良好な相互作用を有する。すなわち、有機溶媒混合物は、ポリエステルをよりよく膨張させ得る。従って、ポリエステルは、溶媒混合物中の塩基とよく接触して、より高い濃度の反応物での解重合工程を促進し、これは、対応するジカルボン酸のジエステルを製造するための、アルコーリシスを介するより速い解重合反応に有益である。
【0050】
さらに、インサイチュで産生するジカルボン酸のジエステルは、プロトン性溶媒のみを使用することと比較して、有機溶媒混合物中でより良好な溶解性を有し、これは、ジカルボン酸のモノエステルのモノ塩を製造するための、より速いモノ加水分解のための、より高い濃度の反応物を提供する。
【0051】
さらに、形成したモノ塩は、反応溶液から直ちに析出する傾向があり、これは、モノ塩生成物のジカルボン酸塩へのさらなる加水分解を最小化することによって、優先的に所望のモノ塩生成物につながる。
【0052】
有利なことに、反応混合物中での中間体であるジカルボン酸のジエステルのモノ塩生成物への一定の変換は、ポリエステルの解重合を促進する。
【0053】
この解重合プロセスは、ワンポットでの、ポリエステルのアルコーリシスおよびインサイチュで生じるジカルボン酸のジエステルのモノ加水分解を含む、新規な同時の手順である(例えば、図2)。
【0054】
反応におけるプロトン性溶媒および塩基の濃度を最適化することによって、ポリエステルの解重合中にインサイチュで形成されるジカルボン酸のジエステルを直ちにモノ塩生成物に変換し得、そのようにしてポリエステル廃棄物をワンポット反応で選択的にかつ効率的にジカルボン酸モノエステルのモノ塩に変換する新規な同時のアルコーリシスおよびモノ加水分解手順(例えば、図2)を作り出すと考えられる。
【0055】
ポリエステルが着色している場合、開示する方法は、ポリエステルをその解重合の前に有機溶媒の存在下で脱色する工程をさらに含み得る。有機溶媒は、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシドおよびそれらの混合物からなる群から選択し得る。脱色プロセスは、約1時間から約24時間の範囲の期間で完了し得る。脱色プロセスは、約25℃から約60℃の範囲の温度で実施し得る。
【0056】
あるいは、ポリエステル廃棄物中の色素の除去(すなわち脱色)は、着色したポリエステルの解重合後に行い得る。実施態様においては、着色したポリエステルは、まず解重合する。次いで産生したモノ塩は、水中に溶解するであろう。有機色素は、水中で不溶であるため、そのようにしてそれらは、濾過によって、または遠心分離によって、またはカラムクロマトグラフィーによって除去し得る。
【0057】
解重合プロセスは、約10℃から約90℃、または約10℃から約80℃、または約10℃から約75℃、または約10℃から約65℃、または約15℃から約60℃、または約20℃から約60℃の温度で実施し得る。実施態様においては、解重合プロセスは、約22℃、約40℃、または約55℃で実施する。
【0058】
有利なことに、溶媒混合物は、解重合プロセスが室温または室温よりわずかに高い温度で完了することを可能にするが、一方で、既知の方法は、少なくとも180℃の温度で行い得る。低い温度は、モノエステル生成物を製造するときのエネルギー消費を低下させる。
【0059】
解重合プロセスにおいては、第1の塩基の、ポリエステルの繰り返しモノマー単位に対するモル比は、約0.5から約2.5、または約0.5から約2、または約0.5から約1.5、または約1から約1.5の範囲で提供し得る。実施態様においては、塩基の、ポリエステルの繰り返しモノマー単位に対するモル比は、約1、または約1.2または約1.5である。第1の塩基の、ポリエステルの繰り返しモノマー単位に対する、開示するモル比、特に、0.5~2または1~1.5は、収率(ポリエステルの総変換に基づく)とモノ塩生成物に向けての選択性との間の最適なバランスを得るのに有用であり得ることが見出された。
【0060】
有利なことに、モル基準での、塩基の、ポリエステルの繰り返しモノマー単位に対するわずかな過剰は、少なくとも98%の高い選択性をなお保持しながら反応を加速し得る。
【0061】
非プロトン性溶媒およびプロトン性溶媒の体積比は、最小限の不純物、例えば、ジカルボン酸塩を有するジカルボン酸のモノ塩に向けて最適な選択性および収率を実現するように、調整し得る。
【0062】
溶媒混合物中の非プロトン性溶媒のプロトン性溶媒に対する体積比は、約100:1から約1:10、約90:1から約1:10、または約80:1から約1:10、または約70:1から約1:10、または約60:1から約1:10、または約50:1から約1:10、または約40:1から約1:10、または約30:1から約1:10、または約20:1から約1:10、約15:1から約1:10、約10:1から約1:10、または約8:1から約1:10、または約6:1から約1:10、または約4:1から約1:10、または約2:1から約1:10、または約1:1から約1:10、または約1:1から約1:8、約1:1から約1:6、または約1:1から約1:4、または約1:1から約1:2の範囲であり得る。
【0063】
解重合プロセスは、約10分から約10時間、または約10分から約8時間、または約10分から約6時間、または約10分から約5時間、または約20分から約5時間、または約30分から約5時間の範囲の期間実施し得る。実施態様においては、解重合プロセスは、約0.5時間、約1時間、約2時間または約4時間以内に完了する。
【0064】
解重合プロセスの後、析出したモノ塩固体を、濾過し、プロトン性または非プロトン性溶媒によって少なくとも2回洗浄し得る。モノ塩固体を次いで、オーブン中で60℃の温度で乾燥し得る。乾燥したモノ塩固体は、水中で溶解させて、さらなる使用のために溶液を形成させ得る。前記モノ塩溶液の濃度は、2~10重量%の間、好ましくは3~5重量%の間であり得る。
【0065】
解重合プロセスは、モノ塩析出物を酸性化して、前記ジカルボン酸のモノエステルを産生することをさらに含み得る。
【0066】
酸性化工程は、酸を、pHが0.1から3および好ましくは1から2に達するまで溶液中に添加することによって、モノ塩溶液を酸性化してジカルボン酸のモノエステルを形成させることを含み得る。酸は、塩酸(HCl)、硫酸(HSO)、リン酸(HPO)、酢酸、ギ酸、臭化水素酸、クエン酸およびそれらの混合物から選択し得る。実施態様においては、酸は、HSOである。
【0067】
開示する酸性化工程は、約18℃から約40℃の範囲の温度で実施し得る。実施態様においては、酸性化工程は、約22℃の温度を有する周囲環境で実施する。
【0068】
モノエステル生成物は、いったん形成されると酸性化した溶液から析出し得、すなわち一般的な濾過を介して溶液から分離し得る。モノエステル固体は、オーブン中で60℃下で乾燥し得る。モノエステル生成物の収率は、94%と99%との間の純度で70%と99%との間であり得る。
【0069】
解重合プロセスは、モノ塩析出物を第2の塩基の存在下で加水分解して、ジカルボン酸塩を産生することを、さらに含み得る。
【0070】
モノ塩溶液の加水分解は、約20℃から約40℃の範囲の温度で実施し得る。モノ塩溶液の加水分解は、10分から1時間の期間行い得る。
【0071】
モノ塩の加水分解においては、第2の塩基は、水酸化アルカリ金属、水酸化アルカリ土類金属、水酸化アンモニウム、およびそれらの混合物からなる群から選択し得る。より好ましくは、第2の塩基は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、およびそれらの混合物であり得る。実施態様においては、塩基は、水酸化カリウム、または水酸化ナトリウムである。
【0072】
第2の塩基のモノ塩に対するモル比は、0.5から2.5、または約0.5から約2、または約0.5から約1.5、または約1から1.5の範囲で提供し得る。実施態様においては、第2の塩基のモノ塩に対するモル比は、約1.2である。
【0073】
加水分解プロセスから得られたジカルボン酸塩は、酸性化プロセスを受けて、ジカルボン酸を産生し得る。
【0074】
酸性化プロセスは、ジカルボン酸塩溶液を酸で酸性化して、ジカルボン酸を形成させることを含み得、それは、すなわちいったん形成されると析出する。酸は、塩酸(HCl)、硫酸(HSO)、リン酸(HPO)、酢酸、ギ酸、臭化水素酸、クエン酸およびそれらの混合物から選択し得る。開示する酸は、加水分解プロセス後のジカルボン酸塩溶液に、pHが0.1から3および好ましくは1から2に達するまで添加し得る。開示する酸性化工程は、約18℃から約40℃の範囲の温度で実施し得る。
【0075】
酸性化工程の後、析出したジカルボン酸は、一般的な濾過によって収集し、オーブン中で60℃でさらに乾燥し得る。
【0076】
別の実施態様においては、テレフタル酸のモノエステルのモノ塩を製造する方法もまた、提供される。該方法は、テレフタル酸のジエステルを第1の塩基および溶媒混合物の存在下で加水分解して、テレフタル酸のモノエステルのモノ塩を生じることを含み得;ここで、前記溶媒混合物は、少なくとも1つの非プロトン性溶媒および少なくとも1つのプロトン性溶媒を含み;並びに該非プロトン性溶媒および該プロトン性溶媒は、1:10から100:1の体積比で提供される。
【0077】
第1の塩基は、少なくとも1つの無機塩基、少なくとも1つの有機塩基またはそれらの混合物を含み得る。
【0078】
第1の塩基は、水酸化アルカリ金属、水酸化アルカリ土類金属、水酸化アンモニウム、およびそれらの混合物からなる無機塩基の群から選択し得る。より好ましくは、第1の塩基は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、およびそれらの混合物であり得る。実施態様においては、塩基は、水酸化カリウム、または水酸化ナトリウムである。
【0079】
第1の塩基はまた、メトキシドの金属塩、エトキシドの金属塩、n-プロポキシドの金属塩、イソプロポキシドの金属塩、n-ブトキシドの金属塩、tert-ブトキシドの金属塩、およびそれらの混合物からなる有機塩基の群から選択し得、ここで、該金属は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属から選択する。
【0080】
より好ましくは、第1の塩基は、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムn-プロポキシド、カリウムイソプロポキシド、カリウムn-ブトキシド、カリウムtert-ブトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムn-プロポキシド、ナトリウムイソプロポキシド、ナトリウムn-ブトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド、およびそれらの混合物からなる有機塩基の群から選択し得る。
【0081】
プロトン性溶媒は、メタノール、エタノール、2-フルオロエタノール、2-クロロエタノール、2,2,2-トリクロロエタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノール、アリルアルコール、プロパルギルアルコール、2-アミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、およびそれらの混合物からなる群から選択し得る。実施態様においては、プロトン性溶媒は、メタノール、エタノールまたはアリルアルコールである。
【0082】
非プロトン性溶媒は、以下の要件を満たすように選択し得る;1)テレフタル酸のジエステルは、プロトン性溶媒中より非プロトン性溶媒中でより良好な溶解性を有する;2)非プロトン性溶媒は、任意の体積比でプロトン性溶媒と混和性である;3)テレフタル酸のモノエステルのモノ塩は、プロトン性溶媒中より非プロトン性溶媒中でより劣った溶解性を有する。
【0083】
非プロトン性溶媒は、極性非プロトン性溶媒、非極性非プロトン性溶媒およびそれらの組合せからなる群から選択し得る。
【0084】
極性非プロトン性溶媒は、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドおよびそれらの組合せからなる群から選択し得る。
【0085】
非極性非プロトン性溶媒は、トルエン、ジクロロメタン、クロロベンゼン、キシレン、ジエチルエーテルおよびそれらの組合せからなる群から選択し得る。
【0086】
実施態様においては、非プロトン性溶媒は、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタンおよびジエチルエーテルから選択し得る。
【0087】
ジエステルは、0.1Mから2M、または0.1Mから1.5M、または0.1Mから1Mの濃度で提供し得る。
【0088】
ジエステルの加水分解は、約10℃から約90℃、または約10℃から約80℃、または約10℃から約75℃、または約10℃から約65℃、または約15℃から約60℃、または約20℃から約60℃の温度で実施し得る。実施態様においては、加水分解工程は、約22℃、約40℃、または約55℃で実施する。
【0089】
第1の塩基の、テレフタル酸のジエステルに対するモル比は、約0.5から約2.5、または約0.5から約2、または約0.5から約1.5、または約1から1.5の範囲であり得る。実施態様においては、塩基の、テレフタル酸のジエステルに対するモル比は、約1、または約1.2または約1.5である。
【0090】
有機溶媒混合物中の非プロトン性溶媒のプロトン性溶媒に対する体積比は、約100:1から約1:10、約90:1から約1:10、または約80:1から約1:10、または約70:1から約1:10、または約60:1から約1:10、または約50:1から約1:10、または約40:1から約1:10、または約30:1から約1:10、または約20:1から約1:10、約15:1から約1:10、約10:1から約1:10、または約8:1から約1:10、または約6:1から約1:10、または約4:1から約1:10、または約2:1から約1:10、または約1:1から約1:10、または約1:1から約1:8、約1:1から約1:6、または約1:1から約1:4、または約1:1から約1:2の範囲であり得る。
【0091】
ジエステルの加水分解は、約10分から約10時間、または約10分から約8時間、または約10分から約6時間、または約10分から約4時間、または約20分から約4時間、または約30分から約4時間の範囲の期間で完了し得る。実施態様においては、加水分解工程は、約0.5時間、約1時間、約2時間または約4時間以内に完了する。
【0092】
ジエステルの加水分解後、析出したモノ塩固体を、濾過し、プロトン性または非プロトン性溶媒によって少なくとも2回洗浄し得る。固体を次いで、オーブン中で60℃の温度で乾燥し得る。乾燥した固体を、水中で溶解させて、2~10重量%の間、好ましくは3~5重量%の間の濃度を有する水性モノ塩を取得し得る。
【図面の簡単な説明】
【0093】
添付の図面は、開示する実施態様を例示し、開示する実施態様の原理を説明するのに役立つ。しかしながら、図面は、例示のみの目的のために設計しており、発明の限定の定義としてではないことが理解されるべきである。
図1】[図1]は、廃PETの、テレフタル酸のモノエステルおよびTPAモノマーへの変換を示す。
図2】[図2]は、PETの同時のメタノリシスおよびモノ加水分解のメカニズムを示す。
図3】[図3]は、ポリエステル廃棄物からのジカルボン酸のモノエステルおよびその誘導体ジカルボン酸の大規模製造を示す化学フローチャートである。
【0094】
図面の詳細な説明
図1]の詳細な説明
図1を参照すると、PET廃棄物を、少なくとも第1の塩基並びに少なくとも1つの非プロトン性溶媒および少なくとも1つのプロトン性溶媒を含む溶媒混合物の存在下で解重合する方法が、示されている。メタノールをプロトン性溶媒として非プロトン性溶媒と一緒に使用するとき、PETは、K-MMT(B-1)に変換され、これを次いで、酸性化して、MMT(C-1)を産生する。K-MMTは、第2の塩基の存在下でK-TPA(D)にさらに加水分解し得、これを次いで、酸性化して、TPA(E)を産生する。エタノールをプロトン性溶媒として非プロトン性溶媒と一緒に使用するとき、PETは、K-MET(B-2)に変換され、これを次いで、酸性化して、MET(C-2)を産生する。アリルアルコールをプロトン性溶媒として非プロトン性溶媒と一緒に使用するとき、PETは、K-MALT(B-3)に変換され、これを次いで、酸性化して、MALT(C-3)を産生する。明細書において開示する第1の塩基、第2の塩基およびプロトン性溶媒を、図1に示すプロセスにおいて適用し得ることが理解されるべきである。
【0095】
図2]の詳細な説明
図2を参照すると、廃PETをK-MMT(B)に直接変換するためのワンポット手順における同時のメタノリシスおよびモノ加水分解のメカニズムが、示されている。ワンポット手順は、同時のアルコーリシス-モノ加水分解プロセスを指し、ここで、ポリエステルは、非プロトン性溶媒と一緒になったプロトン性溶媒(一般的にはアルコール)によるアルコーリシスプロセスを受け、その後、塩基による即座のモノ加水分解を受ける。ここで、図2においては、メタノールを、プロトン性溶媒として非プロトン性溶媒と一緒に使用している。KOHをこの溶媒混合物中に溶解させるとき、平衡が構築されて、メトキシドアニオン(CH)およびヒドロキシルアニオン(HO)の両方を含有する溶液を形成する。CHアニオンは、HOアニオンと比較してより強い塩基であるため、CHアニオンがまず、固体PETの表面上のC=Oの炭素を攻撃し、インサイチュでDMT(F)を生成するであろう。インサイチュで生成したDMTは、溶媒混合物中で非常に溶けやすく、すなわちDMTの2つのエステル基の1つは、HOアニオンによって加水分解されて、K-MMTを形成するであろう(これが、モノ加水分解反応である)。産生したK-MMTは、それが溶媒混合物中で劣った溶解性を有するため、溶液から直ちに析出するであろう。K-MMTを、HSOで酸性化して、水中で室温で容易にMMT(C-1)を産生することができる。
【0096】
図3]の詳細な説明
図3を参照すると、ポリエステル廃棄物中の存在する色を脱色するために、有機溶媒10およびポリエステル廃棄物20を受けるように構成されている脱色反応器ユニット30が、示されている。脱色は、室温(22℃)でメカニカルスターラーを用いて撹拌することによって行い、着色した溶媒および脱色したポリエステル廃棄物35の混合物を得る。混合物35を次いで、フィルター40に送る。脱色反応器ユニットはまた、25℃から60℃の範囲の温度で作動させ得る。
【0097】
フィルター40は、脱色したポリエステル廃棄物50を着色した溶媒60から分離するように構成されている。フィルター40を出る着色した溶媒60は次いで、蒸留塔140に届けて、きれいな有機溶媒160をリサイクルする。蒸留塔は、40から100℃の範囲の温度で実施し得る。
【0098】
脱色したポリエステル廃棄物50は、解重合反応器ユニット90に届け、ここで、該反応器は、溶媒混合物の種類および使用するポリエステルに依存して、20から50℃の温度で解重合のための塩基KOH80および溶媒混合物70を受けるように構成されている。非プロトン性溶媒のプロトン性溶媒に対する体積比は、1:10から100:1である。開示する他の第1の塩基、非プロトン性溶媒およびプロトン性溶媒もまた、該系に適用可能であり得ると考えるべきである。
【0099】
解重合ユニット90は、ジカルボン酸のモノ塩の固体析出物および溶媒混合物と混和性であるジオール共生成物を含む流出混合物95を排出する。共生成物は、使用するポリエステル廃棄物20の種類に依存して、エチレングリコール、1,4-ブタンジオールおよびそれらの混合物を含み得る。
【0100】
流出混合物95を次いでフィルタ110に搬送して、ジオールおよび溶媒混合物120を固体モノエステル塩析出物から分離し、これを蒸留塔140に輸送して、きれいな溶媒混合物160をリサイクルし、共生成物ジオール240を単離する。析出したジカルボン酸のモノエステルのモノ塩は、フィルター110中で保持する。
【0101】
水100を次いでフィルタ110に添加して、ジカルボン酸のモノエステルのモノ塩を溶解させて、モノ塩水溶液130を形成させる。モノエステル生成物を溶解させ得る他の適切な溶媒もまた、該系において適用可能であり得ることが理解されるべきである。フィルタ110は次いで、モノ塩水溶液130を不溶性ポリマー残渣から分離する。モノ塩水溶液130を次いでフィルタ150に搬送して、いかなる残りの固体不純物をも除去する。フィルター150は、微多孔膜を含有し、ここで、0.08~2μmより高い粒子を7~100kPaの範囲の圧力で除去する精密濾過プロセスが、完了する。透明なモノ塩溶液170を、そのようにして得る。
【0102】
モノ塩溶液170を次に、硫酸190を受けてモノ塩溶液のpHを0.1から3に調整して、ジカルボン酸のモノエステルを含む固体生成物を室温(22℃)で析出させるように構成されている酸性化反応器200に輸送する。酸性化反応器200は、モノエステル生成物230およびKSO溶液220を含む懸濁液205を排出し、これを順にフィルタ210に送って、最終のモノエステル生成物230およびKSO水溶液220を得る。分離したKSO溶液220は、肥料としての使用のために貯蔵しまたはリサイクルし得る。酸性化ユニットにおいて生成する塩は、解重合ユニット90において使用する塩基の種類および酸性化ユニット200に添加する酸に依存することが理解されるべきである。
【0103】
代替の実施態様においては、KOHまたはNaOH溶液180を、モノ塩のさらなる加水分解のために任意に反応器200に添加して、ジカルボン酸塩を形成させる。この場合において、硫酸190は次いで、ジカルボン酸塩を酸性化して、代わりに固体のジカルボン酸を析出させるのに役立つ。この実施態様においては、反応器200は、上記と実質的に同じ条件、例えば、18℃から40℃の温度で作動させ得る。この発明において開示する他の第2の塩基を酸性化反応器に適用し得ることが理解されるべきである。
【0104】
反応器ユニット30/90/200のそれぞれは、それぞれ、複数の反応器例えば、一連の反応器を含み得る。各反応器は、最大100Lの容積を有し得、メカニカルスターラー手段を装備し得る。
【0105】
有利なことに、開示する系は、ジカルボン酸のモノエステルまたはジカルボン酸の大規模生産を可能にする。より有利なことに、該方法において使用する溶媒および共生成物は、開示する系にわたってリサイクルすることができる。
【実施例
【0106】
一般的な考慮事項:
発明の非限定的な実施例および比較例を、特定の実施例を参照することによってより詳細にさらに説明するが、これらは、発明の範囲をいかなる方法でも限定するものとして解釈されるべきでない。
【0107】
製造方法に関する以下のセクションにおける収率、選択性および不純物を計算する方法を、以下に要約する。
【0108】
収率は、反応物が反応において所望の生成物に完全に変換された場合の生成物の理論的な重量に対する、結果として得られた生成物の重量を測定することによって得られる。
【0109】
反応における主な不純物は、ジカルボン酸のモノ塩の加水分解から結果として生じる、テレフタル酸の二カリウム塩(K-TPA)である。
【0110】
モノ塩生成物:K-TPAのモル比は、対応する生成物のH-NMRスペクトルにおける、K-MMT(7.92ppmおよび8.07ppm)、またはK-MMT(7.92ppmおよび8.08ppm)、またはK-MALT(7.87ppmおよび8.04ppm)などのモノ塩生成物のPh-Hピークの積分面積の、K-TPAのPh-Hのピーク(K-MMTおよびK-METの製造におけるサンプルについては7.88ppm、K-MALTの製造におけるサンプルについては7.84)に対する比によって計算する。
【0111】
脱イオン(DI)水は、DV25 Reservoirと、ELGA Purelab Option Water Purification Systemから得た。硫酸(25重量%)は、DI水およびAvantor Performance Materialsから購入した濃硫酸(95~98重量%)を用いて調製した。
【0112】
PETポリマー廃棄物の調製:
さまざまなブランドの廃PET水ボトルを、清涼飲料の廃PETボトル、ボディソープおよびシャンプーの着色したPETボトルと同様に、原料として使用する。ボトルを、1対のハサミを使用して約1.5×1.5cmの寸法を有するスクラップに切断した。これらのスクラップは、空気中で乾燥して、何らの洗浄または処理なしに使用した。原則として、全てのPET廃ボトル、アルミニウムコーティング、PVCコーティングの有無にかかわらないフィルム、またはPET層を含有する多層フィルム(PET/接着剤/PEなどの)が、この方法における原料として適用可能である。
【0113】
溶媒および化学物質:
全ての溶媒および化学物質は、以下に提供する供給元から購入し、全ての実施例および比較例において受けたまま使用した。
アセトニトリル(ACN):>99.5%、東京化成工業。
テトラヒドロフラン(THF):≧99.9%、VWR Chemicals。
無水エチルエーテル:≧99.0%、Tedia High Purity Solvents。
ジクロロメタン(DCM):≧99.5%、Avantor Performance Materials。
メタノール:≧99.9%、VWR Chemicals。
無水エタノール:≧99.98%、VWR Chemicals。
アリルアルコール:≧99%、Sigma-Aldrich。
テレフタル酸ジメチル(DMT):>99.0%、東京化成工業。
水酸化カリウム(KOH):≧85.0%、Merck KGaA。
水酸化(hydroxyl)ナトリウム(NaOH):≧99.9%、Merck KGaA。
重水(DO、99.96% D):Cambridge Isotope Laboratories
クロロホルム-D(重クロロホルム、CDCl、99.8% D):Cambridge Isotope Laboratories。
ジメチルスルホキシド-D(DMSO-D、99.9% D):Cambridge Isotope Laboratories。
【0114】
核磁気共鳴(NMR)測定:
H-NMR(400MHz)および13C-NMR(100MHz)スペクトルは、Bruker(ドイツ)400MHz NMR分光計を用いて記録した。H-NMR(500MHz)および13C-NMR(125MHz)スペクトルは、Jeol(日本)500MHz NMR分光計を用いて記録した。
【0115】
1.PETの、テレフタル酸のモノエステルへの変換
1.1.実施例1:共溶媒としてTHFを用いる(メタノール:THF=1:1体積)、廃PETボトルからのMMTの製造
5gのPETスクラップ(繰り返しエチレンテレフタレート単位26.02mmol)、15mLのTHF、15mLのメタノールおよび1.46gのKOH(26.02mmol)を、順番に空気中で100mLの丸底フラスコ中に添加した。得られた混合物を、反応器を撹拌下でシリコンオイル(silicon oil)浴中に浸漬することによって、55℃に加熱した。白色のスラリーを、1時間の運転後に得た。白色固体を、濾過により収集し、10mLのメタノールで洗浄した。サンプルを、採取し、オーブン中で60℃で乾燥し、H-NMRによって特徴付けしたところ、白色固体生成物がK-MMTであることを示した。粗K-MMTの純度は、99.0%である。
【0116】
濾液については、40℃でのロータリーエバポレーターを用いる濾液からの溶媒(メタノールおよびTHF)の除去は、粗DMTを生成し、これを、DI水(5mL)およびメタノール(2mL)で素早く洗浄した。得られたDMTは、オーブン中で60℃で乾燥し、0.64gの質量を有していた。
【0117】
得られたK-MMTを、50mLのDI水中に溶解させた。濾過を、ガラスフィルター漏斗(G4サンドコア)を用いて行い、未反応のPET(0.09g)、およびK-MMTの透明な溶液を単離した。K-MMTの水溶液を次いで、pHが2に達するまでHSO(25重量%)で酸性化した。酸性化プロセス中に、MMTが、直ちに形成され、白色固体として析出し、これを、濾過によって単離し、ガラスフィルター漏斗(G4サンドコア)を有する40mLのDI水で洗浄した。濾過した白色固体を、オーブン中で60℃で乾燥し、次いでH-NMRおよび13C-NMRで特徴付けした。3.38gの生成物を、72%の収率で得た(PETがMMTに完全に変換された場合の4.69gの理論的な生成物に基づく)。
【0118】
K-MMTのH-NMR(400MHz、DO、ppm):3.96(s、3H、-CH)、7.92(d、2H、ph-H、JC-H=8Hz)、8.07(d、2H、ph-H、JC-H=8Hz)。
MMTのH-NMR(400MHz、CDCl、ppm):3.96(s、3H、-CH)、8.13(d、2H、ph-H、JC-H=8Hz)、8.18(d、2H、ph-H)、JC-H=12Hz)。
MMTの13C-NMR(100MHz、DMSO-d、ppm):52.44、129.33、129.58、133.15、134.84、165.61、166.55。
【0119】
反応条件および結果を、表1において実施例1として要約する。
【0120】
1.2.実施例2:共溶媒としてACNを用いる(メタノール:ACN=1:1体積)、廃PETボトルからのMMTの製造
実験は、15mLのアセトニトリルを、THFを置き換えて使用したことを除いて、セクション1.1において記載したのと同じ手順で実施した。解重合を1時間行って、白色のスラリーを得た。K-MMTの純度は、98.5%である。MMTはまた、Hおよび13C-NMRで特徴付けした。3.51gのMMTを、75%の収率で得た(PETがMMTに完全に変換された場合の4.69gの理論的な生成物に基づく)。
【0121】
反応条件および結果を、表1において実施例2として要約する。
【0122】
1.3.実施例3:共溶媒としてDCMを用いる(メタノール:DCM=1:1体積)、廃PETボトルからのMMTの製造
実験は、15mLのDCMを、THFを置き換えて使用し、油浴を55℃ではなく40℃で設定したことを除いて、セクション1.1において記載したのと同じ手順で実施した。解重合を1時間行って、白色のスラリーを得た。K-MMTの純度は、99.3%である。MMTはまた、Hおよび13C-NMRで特徴付けした。3.09gのMMTを、66%の収率で得た(4.69gの理論的な生成物に基づく)。
【0123】
反応条件および結果を、表1において実施例3として要約する。
【0124】
1.4.実施例4:共溶媒としてDCMを用いる(エタノール:DCM=1:1体積)、廃PETボトルからのテレフタル酸モノエチル(MET)の製造
5gのPETスクラップ(エチレンテレフタレート繰り返し単位は、26.02mmolとして計算される)、15mLのDCM、15mLのエタノールおよび1.46gのKOH(26.02mmol)を、順番に空気中で100mLの丸底フラスコ中に添加した。得られた混合物を、撹拌しながらシリコンオイル浴中で40℃に加熱した。解重合を2時間行って、白色のスラリーを得た。白色固体を、濾過によって収集した。サンプルを、採取し、Hおよび13C-NMRによる特徴付けのためにオーブン中で60℃で乾燥したところ、白色固体生成物がK-MET(純度96.6%)であることを示した。
【0125】
得られたK-METを、20mLのDI水中に溶解させた。濾過後、50mgの未反応のPETを、単離した。濾液は、K-MET水溶液であり、これを、pH=2までHSO(25重量%)で酸性化した。METが、直ちに形成され、白色固体として析出し、これを、濾過によって単離し、40mLのDI水で洗浄し、オーブン中で60℃で乾燥した。3.68gのMETを、73%の収率で得た(PETがMETに完全に変換された場合の5.06gの理論的な生成物に基づく)。
【0126】
K-METのH-NMR(400MHz、DO、ppm):1.40(t、3H、CH、JC-H=8Hz)、4.42(q、2H、CH、JC-H=8Hz)、7.92(d、2H、ph-H、JC-H=8Hz)、8.08(d、2H、ph-H、JC-H=8Hz)。
K-METの13C-NMR(100MHz、DO、ppm):13.77、62.80、129.10、129.67、132.14、141.47、169.03、175.11。
【0127】
反応条件および結果を、表1において実施例4として要約する。
【0128】
1.5.実施例5:DCMを共溶媒として用いる(エタノール:DCM=1:4体積)、廃PETボトルからのMETの製造
実験は、エタノールおよびDCMの体積比を1:4(6mLのエタノールおよび24mLのDCM)に変更したことを除いて、セクション1.4において記載したのと同じ手順で実施した。解重合を2時間行って、白色のスラリーを得た。K-MET生成物の純度は、96.6%であった。3.66gのMETが、73%の収率で得られた(5.06gの理論的な生成物に基づく)。
【0129】
反応条件および結果を、表1において実施例5として要約する。
【0130】
1.6.実施例6:DCMを共溶媒として用いる(アリルアルコール:DCM=1:2体積)、廃PETボトルからのテレフタル酸モノアリル(MALT)の製造
実験は、10mLのアリルアルコールおよび20mLのDCM(1:2体積)を溶媒混合物として使用したことを除いて、セクション1.4において記載したのと同じ手順で実施した。解重合を4時間行って、白色のスラリーを得た。K-MALTの純度は、93.9%であった。HSOによる酸性化の後、MALT(3.3g)を、白色粉末として得た。収率は、62%であった(5.37gの理論的な生成物に基づく)。
【0131】
K-MALTのH-NMR(500MHz、DO、ppm):4.82-4.84(m、2H、CH)、5.30-5.32(m、1H、=CH)、5.40-5.43(m、1H、=CH)、6.02-6.10(m、1H、=CH)、7.87(d、2H、ph-H、JC-H=8.5Hz)、8.04(d、2H、ph-H、JC-H=8.5Hz)。
MALTのH-NMR(500MHz、CDCl、ppm):4.83-4.84(m、2H、CH)、5.28-5.31(m、1H、=CH)、5.39-5.43(m、1H、=CH)、5.99-6.06(m、1H、=CH)、8.12-8.16(m、ph-H)。
MALTの13C-NMR(125MHz、CDCl、ppm):66.17、118.86、129.81、130.27、131.91、133.07、134.78、165.44、170.27。
【0132】
反応条件および結果は、表1において実施例6として要約する。
【0133】
【表1】
【0134】
溶媒混合物は、DMTからモノエステルへの変換に匹敵する高い選択性および収率を維持しながら、PETをテレフタル酸の数種類のモノエステルに効率的に転換し得ることが実証されている。
【0135】
1.7.実施例7~11:K-MMTの製造における過剰のKOHの影響
5gのPETスクラップ(エチレンテレフタレート繰り返し単位26.02mmol)、15mLのDCM、15mLのメタノールおよび一定量の過剰のKOHを、順番に空気中で100mLの丸底フラスコ中に添加した。得られた混合物を、シリコンオイル浴中で40℃の温度で加熱撹拌した。白色のスラリーを、以下の表2に示す一定の時間間隔後に得た。白色固体を、濾過によって収集し、10mLのメタノールで洗浄した。サンプルを、採取し、オーブン中で60℃で乾燥し、H-NMRで特徴付けしたところ、白色固体生成物がK-MMTであることを示した。K-MMTの純度は、H-NMRスペクトルから計算する。
【0136】
粗K-MMTを、50mLのDI水中に溶解させた。次いで濾過を、ガラスフィルター漏斗(G4サンドコア)を用いて行って、未反応のPETおよびK-MMTの透明な溶液を単離した。K-MMT水溶液から、室温でロータリーエバポレーターを用いて水を除去し、白色粉末生成物K-MMTを得、これをオーブン中で60℃で一晩乾燥した。使用したKOHの量および結果を、表2において実施例7~11として要約する。
【0137】
【表2】
【0138】
反応における過剰のKOHの投入は、選択性をわずかに低下させながら、K-MMTの収率を上げる。
【0139】
2.テレフタル酸ジメチル(DMT)のテレフタル酸モノメチル(MMT)への変換
2.1.比較例1:純粋なメタノール中でのDMTのモノ加水分解
100mLの丸底フラスコに、20mmolのDMT、60mLのメタノール、および20mmolのKOHを添加した。混合物を、還流条件(65℃)下で3.5時間撹拌した。反応後、フラスコを水道水中で約3分間浸漬することによって冷却し、その後、析出した白色のスラリーをガラスフィルター漏斗(4~7ミクロンの寸法を有する微細析出物の濾過用のG4サンドコア)で濾過した。得られた白色固体を、20mLのジクロロメタン(DCM)で2回洗浄し、オーブン中で60℃で一晩乾燥した。白色粉末生成物(粗製のテレフタル酸モノメチルのカリウム塩(K-MMT))を、H-NMRによって特徴付けした。
【0140】
2.2.比較例2:純粋なメタノール中でのDMTのモノ加水分解
100mLの丸底フラスコに、20mmolのDMT、30mLのメタノール、および20mmolのKOHを添加した。混合物を、40℃で(水浴中で加熱することによって)1時間撹拌した。反応後、フラスコを水道水中で約3分間浸漬することによって冷却し、その後、析出した白色のスラリーを濾過した。得られた白色固体を、20mLのDCMで2回洗浄し、オーブン中で60℃で一晩乾燥した。白色粉末生成物(粗K-MMT)を、H-NMRで分析した。
【0141】
2.3.実施例12~24:DCMおよびメタノールの有機溶媒混合物中でのDMTのモノ加水分解
100mLの丸底フラスコに、20mmolのDMT、さまざまな体積比を有するDCMおよびメタノールの、30mLの溶媒混合物、並びに望ましい量のKOHを添加した。混合物を、40℃または22℃(室温)で30分間または1時間撹拌した。反応後、フラスコを、40℃の反応温度の場合においては水道水中で約3分間浸漬することによって冷却し、次いで白色のスラリーを濾過し、白色固体を、20mLのDCMで2回洗浄し、オーブン中で60℃で一晩乾燥した。白色粉末生成物を、H-NMRで分析した。DCMのメタノールに対する体積比、KOHの量、反応時間、温度並びに収率および不純物の分析を、実施例12~24として以下の表3において要約する。
【0142】
K-MMTのH-NMR(400MHz、DO、ppm):3.96(s、3H、-CH)、7.92(d、2H、ph-H、JC-H=8Hz)、8.07(d、2H、ph-H、JC-H=8Hz)。
【0143】
【表3】
【0144】
表3に示すように、DMTのモノ加水分解反応は、純粋なメタノール中では満足できない選択性で遅い(比較例)。還流温度で3.5時間行ったときでさえ、単離収率は、98.1:1.9のK-MMT/K-TPAモル比で、67%であった(比較例1)。より低い温度(40℃)で実施した比較例2は、98.2:1.8の同等のK-MMT/K-TPAモル比を与えた。従って、純粋なメタノール中で行うモノ加水分解反応の選択性は、温度によっては影響されないが、単離収率は、3.5時間から1時間への短縮された反応時間およびより低い温度のため、67%から28%に減少した。
【0145】
我々が驚いたことに、比較例2においてメタノールの半分をDCMで置き換えたとき、40℃で、収率が28%から75%に大幅に増加し、K-MMT/K-TPAのモル比が98.2:1.8から99.6:0.4に増加し、H-NMRスペクトルの8.12ppmに存在する不純物がはるかに弱くなった(実施例12)ことが見出される。
【0146】
より多くのメタノールを、K-MMTを得るためのプロセスについてDCMで置き換え、一方で、有機溶媒混合物の総量は、30mLのままである。2:1から60:1のDCM/メタノール体積比での結果を、表3に示した(実施例13~22)。
【0147】
実施例12と比較して、DCM/メタノール体積比を2:1(実施例13)または4:1(実施例14)で設定したとき、K-MMT/K-TPAモル比は、99.8:0.2に増加した。DCM/メタノール体積比を6:1、8:1または10:1で設定したとき(実施例15~17)、K-MMT/K-TPAモル比は、99.9:0.1に増加し、収率もまた、84%に増加した。特に、10:1のDCM/メタノール体積比を使用する反応は(実施例17および18)、30分の反応時間内でさえ、極めて高いK-MMT/K-TPAモル比(99.9:0.1)および84%の収率を示した。DCM/メタノールの体積比を14:1にさらに増加させたとき(実施例19)、K-MMT/K-TPAモル比は、99.4:0.6にわずかに減少した。DCM/メタノールの非常に高い体積比では(実施例20~22:20:1、30:1、60:1)、K-MMT/K-TPAモル比は、それぞれ、97.9%、93.7%および81.0%に減少した。収率もまた、それぞれ、83%、80%および71%に下がった。一方で、8.12ppmでの不純物は、DCM/メタノールの増加する体積比とともにより弱くなり、それは、DCM/メタノール体積比が10:1を超えるとき、消失しさえした。
【0148】
実施例12~18、特に実施例14~18については、純粋なメタノールを溶媒として使用することと比較して、DMTが、撹拌したとき有機溶媒混合物中で素早く溶解することが観察された。これは、高い反応速度を説明し得る。また、実験中に、DCM/メタノールの体積比の増加とともに、KOHの溶解がより遅くなり、加水分解中の反応混合物における高いDMT/KOHモル比につながることも観察された。これは、DCM/メタノール体積比が1:1から14:1の範囲であるときの高い選択性についての理由の1つであり得る。しかしながら、非常に高いDCM/メタノール体積比、例えば、20:1超では、溶媒混合物中のKOHの溶解性は、非常に限定的となり、これは、より遅い反応速度、より低い選択性および収率を説明し得る。
【0149】
驚くべきことに、DCM/メタノール体積比が10:1である実施例18によって実証されるように、反応時間が1時間から0.5時間に短縮された場合、それは、実施例17と同じ選択性および収率を示す。反応温度を室温、すなわち22℃に調整したとき(実施例23)、99.9%の高い選択性および84%の収率が保持される。さらに、DMT/KOHの体積比を、過剰のKOHを使用することによって1:1.2に減少させ、反応もまた22℃で実施したとき(実施例24)、選択性においては99.4%へのわずかな減少で、収率は、92%に増加した。
【0150】
2.4.実施例25~27:テトラヒドロフラン(THF)/アセトニトリル(ACN)/ジエチルエーテルおよびメタノールの有機溶媒混合物中でのDMTのモノ加水分解
反応は、DCMをTHF、またはACN、またはジエチルエーテルによって置き換えた、2.3において記載したのと同じ方法で実施した。実施例25~27の反応温度、溶媒の量、温度および収率を、表4において要約する。
【0151】
【表4】
【0152】
結果は、溶媒混合物中で3つの共溶媒を使用する反応が、不純物の小さなピークを有する、高いK-MMT/K-TPAモル比(99.9:0.1)を可能にすることを示す。
【0153】
3.実施例28:HSO(25重量%)でのK-MMTの酸性化。
メカニカルスターラーを装備した500mLの丸底フラスコに、5gのK-MMTおよび60mLの水を添加した。透明な溶液が、室温での撹拌後に形成された。次いでHSO(25重量%)を、溶液のpHが1~2に達するまで、撹拌しながら滴下した。白色のスラリーを、濾過し、水(40mL)で洗浄した。生成物を、オーブン中で60℃で一晩乾燥した。4.04gのMMTを、収率98%で得た。生成物を、Hおよび13C-NMRで分析した。
【0154】
MMTのH-NMR(400MHz、CDCl、ppm):3.96(s、3H、-CH)、8.13(d、2H、ph-H、JC-H=8Hz)、8.18(d、2H、ph-H)、JC-H=12Hz)。
MMTの13C-NMR(100MHz、DMSO-d、ppm):52.44、129.33、129.58、133.15、134.84、165.61、166.55。
【0155】
4.実施例29:K-MMTのTPAへの変換
100mLの丸底フラスコに、K-MMT(2.84g、13.01mmol)、KOH(0.875g、15.61mmol)(またはNaOH、0.624g、15.61mmol)および脱イオン水(40mL)を添加し、撹拌して、溶液を形成させた。テレフタル酸塩(terephthalic salt)(K-TPA)を、K-MMTをKOHまたはNaOHの存在下で加水分解することによって得た。室温で10分間撹拌した後、溶液を、pHが2に達するまでHSO(25重量%)によって酸性化した。形成した白色粉末生成物TPAを、濾過によって収集し、10mLのDI水で2回(2×10mL)洗浄し、オーブン中で60℃で乾燥した。2.10gのTPAを、収率97%で得た。
【0156】
5.実施例30:DCMを共溶媒として用いる(メタノール:DCM=1:1体積)、廃PETボトルからのMMTのスケールアップ製造
オーバーヘッドメカニカルスターラーを装備した5リットルのDURAN三口反応器に、PETスクラップ(150.15g、781.34mmol)、KOH(43.84g、781.34mmol)、DCM(450mL)およびメタノール(450mL)を添加した。混合物を、水浴(40℃)中で激しく撹拌しながら加熱した。1時間の反応後、混合物は、白色のスラリーに転換した。粗K-MMTを、濾過によって単離し、200mLのメタノールで2回(2×200mL)洗浄し、再び濾過して、白色の湿ったケーキのような形状の生成物を得た。生成物のサンプルを、採取して、H-NMR分析のために60℃で乾燥したところ、K-MMTの純度が98.5%であることを示した。
【0157】
透明な濾液については、40℃でのロータリーエバポレーターを用いた溶媒(DCMおよびメタノール)の除去は、淡黄色固体を与え、これを、40mLのDI水で洗浄し、濾過し、メタノール(10mL)で素早く洗浄した。得られた白色のDMTを60℃で乾燥し、これを次いで、H-NMRで特徴付けした。DMTの重量は、12.6gである。
【0158】
得られた白色ケーキ(粗K-MMT)を、2.0LのDI水中に溶解させた。濾過後、未反応のPET(7.0g)を、単離した。透明なK-MMT溶液を、溶液のpHが2に達するまで25重量%のHSOで酸性化し、白色スラリーとしてのMMTの即座の形成をもたらした。生成物MMTを、濾過によって単離し、DI水(400mL)で洗浄し、オーブン中で60℃で乾燥した。106.58gのMMTを、76%の収率で得た(PET廃棄物がMMTに完全に変換された場合の140.77gの理論的な生成物に基づく)。
【0159】
6.実施例31:溶媒混合物DCM/メタノール(10:1)を用いる、DMTのモノ加水分解のスケールアップ製造
オーバーヘッドメカニカルスターラーを装備した5リットルのDURAN三口反応器に、DMT(233.03g、1.2mol)、KOH(67.33g、1.2mol)、DCM(1.64L)およびメタノール(164mL)を添加した。混合物を、22℃で1時間激しく撹拌した。結果として得られた白色スラリーを次いで濾過して、白色ケーキを得て、これを、DCM(400mL)で洗浄した。得られた白色粉末生成物を、60℃で乾燥した。224.5gの白色粉末を、86%の収率で得た。H-NMRは、K-MMTの純度が99.9%であることを示した。
【産業上の利用可能性】
【0160】
開示する方法は、ジカルボン酸ポリエステル(dicarboxylate polyester)を解重合してジカルボン酸のモノ塩にするために使用し得る。開示する方法はまた、ジカルボン酸のモノエステルまたはジカルボン酸の製造のためにも使用し得る。両方の生成物とも、製薬産業およびポリマー産業などのさまざまな産業における適用について貴重な材料である。特に、開示する方法は、ジカルボン酸のジエステルの供給源、例えば、テレフタルポリマー廃棄物、テレフタル酸のエステル化からの生成物等に関係なく、前記ジエステルの変換のために使用し得る。さらに、開示する方法は、水ボトル、シャンプーボトル、織物などの消費者製品からのポリエステル廃棄物のアップサイクルのために使用し得る。周囲環境での反応条件および短い反応時間は、前記モノエステルのスケールアップ可能な製造を可能にする。
【0161】
前述の開示を読んだ後、発明の精神および範囲から逸脱することなく、発明のさまざまな他の修正および適応が、当業者には明らかであろうこと、および全てのそのような修正および適応が、添付の特許請求の範囲の範囲内にあることが意図されていることが、明らかであろう。
図1
図2
図3
【国際調査報告】