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特表2024-516340SARS-COV-2感染の後遺症の予防と治療のためのルミノール
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  • 特表-SARS-COV-2感染の後遺症の予防と治療のためのルミノール 図1
  • 特表-SARS-COV-2感染の後遺症の予防と治療のためのルミノール 図2A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-15
(54)【発明の名称】SARS-COV-2感染の後遺症の予防と治療のためのルミノール
(51)【国際特許分類】
   C07D 237/32 20060101AFI20240408BHJP
   A61K 31/502 20060101ALI20240408BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240408BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240408BHJP
   A61P 11/04 20060101ALI20240408BHJP
   A61P 11/08 20060101ALI20240408BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240408BHJP
   A61P 25/06 20060101ALI20240408BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240408BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20240408BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240408BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20240408BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20240408BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240408BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20240408BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240408BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20240408BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240408BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240408BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20240408BHJP
   A61P 33/00 20060101ALI20240408BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20240408BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20240408BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20240408BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240408BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20240408BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20240408BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240408BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240408BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240408BHJP
   A61K 9/28 20060101ALI20240408BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240408BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20240408BHJP
   A61K 47/40 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
C07D237/32 CSP
A61K31/502
A61K45/00
A61P31/12
A61P11/04
A61P11/08
A61P11/00
A61P25/06
A61P25/28
A61P19/00
A61P21/00
A61P25/22
A61P25/24
A61P29/00
A61P17/14
A61P13/12
A61P1/02
A61P37/06
A61P37/02
A61P31/10
A61P33/00
A61P25/04
A61P7/02
A61P39/06
A61P43/00 105
A61P43/00 121
A61K9/127
A61K9/10
A61K9/20
A61K9/14
A61K9/48
A61K9/28
A61K9/08
A61K9/107
A61K47/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532561
(86)(22)【出願日】2021-12-01
(85)【翻訳文提出日】2023-07-27
(86)【国際出願番号】 EP2021000150
(87)【国際公開番号】W WO2022117221
(87)【国際公開日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】20000433.1
(32)【優先日】2020-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512205898
【氏名又は名称】メトリオファーム アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】ブリシュ ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】カイザー アストリッド
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ ペトラ
(72)【発明者】
【氏名】シューマン サラ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェゲラー イェルク
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA17
4C076AA19
4C076AA22
4C076AA25
4C076AA43
4C076AA54
4C076AA56
4C076BB01
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB25
4C076CC01
4C076CC04
4C076CC05
4C076CC07
4C076CC10
4C076CC14
4C076CC15
4C076CC17
4C076CC32
4C076CC34
4C076CC35
4C076EE39
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA17
4C084MA22
4C084MA23
4C084MA24
4C084MA35
4C084MA37
4C084MA41
4C084MA43
4C084MA44
4C084MA52
4C084MA56
4C084MA59
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA541
4C084ZA542
4C084ZA591
4C084ZA592
4C084ZA611
4C084ZA612
4C084ZB071
4C084ZB072
4C084ZB081
4C084ZB082
4C084ZB111
4C084ZB112
4C084ZB331
4C084ZB332
4C084ZB351
4C084ZB352
4C084ZB371
4C084ZB372
4C084ZC201
4C084ZC202
4C084ZC421
4C084ZC422
4C084ZC501
4C084ZC502
4C084ZC751
4C084ZC752
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC41
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA22
4C086MA23
4C086MA24
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA41
4C086MA43
4C086MA44
4C086MA52
4C086MA56
4C086MA59
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA12
4C086ZA15
4C086ZA59
4C086ZA62
4C086ZA67
4C086ZA81
4C086ZA92
4C086ZA94
4C086ZA96
4C086ZB11
4C086ZB33
4C086ZC75
(57)【要約】
本出願は、SARS-CoV-2感染の後遺症の予防または治療におけるフタラジンジオンの使用に関する。医薬組成物、組み合わせ、有利な製剤技術および治療方法が開示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SARS-CoV-2感染の後遺症の予防または治療に使用する5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つ。
【請求項2】
5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンの薬学的に許容される塩が5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩である、請求項1に記載の使用のための5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つ。
【請求項3】
5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩が、粉末X線回折を用いて決定される結晶学的値により特徴付けられる結晶無水物多形の結晶型I、IIまたはIIIとして供給され、
結晶型Iに対して
d値:13.5;6.9;5.2;4.6;3.9;3.5;3.4;3.3;3.1;3.0、および/または
2θ値:6.5;12.7;16.9;19.3;22.8;25.8;26.6;27.2;28.7;30.3
であり、
結晶型IIに対して
d値:12.9;7.9;7.1;6.5;5.3;4.0;3.7;3.6;3.3;3.2、および/または
2θ値:6.8;11.2;12.5;13.7;16.7;22.4;24.3;24.9;27.2;27.8
であり、
結晶型IIIに対して
d値:13.131;7.987;7.186;6.566;6.512;5.372;3.994;3.662;3.406;3.288;3.283;3.222;3.215;3.127;2.889、および/または
2θ値:6.73;11.07;12.31;13.48;13.59;16.49;22.24;24.29;26.14;27.10;27.14;27.67;27.72;28.52;30.93
である、請求項2に記載の使用のための5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つ。
【請求項4】
SARS-CoV-2感染の前記後遺症が、慢性疲労、呼吸困難、咳、頭痛、関節痛、胸痛、筋肉痛、筋力低下、思考力および集中力の低下、記憶障害、抑うつ、不安、気分変動、睡眠障害、不眠症、断続的な発熱、動悸、心筋の炎症、肺機能異常、急性腎障害、発疹、脱毛および歯の喪失を含む群から選択される、請求項2に記載の使用のための5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つ。
【請求項5】
SARS-CoV-2感染の後遺症の予防または治療に使用するための医薬組成物であって、前記組成物が、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つ、担体、および少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項6】
5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つと、ステロイド性および非ステロイド性抗炎症薬、免疫調節剤、免疫抑制剤、抗生物質、抗レトロウイルス剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤および抗寄生虫剤のような抗感染症剤、鎮痛剤、抗凝固剤、抗血小板剤、気管支拡張剤、肺血管拡張剤、粘液溶解剤、肺サ-ファクタント、抗酸化剤、ENaC活性化剤、HMG-CoA還元酵素阻害剤、カルシウム拮抗剤またはAT受容体拮抗剤を含む群から選択される少なくとも1つの有効成分との組合せ。
【請求項7】
前記物質、組成物、または組み合せは、錠剤、ソフトゼラチンカプセル、ハードゼラチンカプセル、糖衣錠、丸薬、粉末、顆粒、ジュース、シロップ、ドロップ、茶、水性または非水性液体中の溶液または懸濁液、食用フォーム、ムース、水中油型エマルジョンまたは油中水型エマルジョンとして経口投与される、SARS-CoV-2感染の後遺症の予防または治療に使用するための、請求項1乃至3の何れか1項に定義される5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つ、請求項5に定義される組成物または請求項6に定義される組合せ。
【請求項8】
吸入投与用の製剤である、SARS-CoV-2感染の後遺症の予防または治療に使用するための、請求項1乃至3の何れか1項に定義される5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つ、請求項5に定義される組成物または請求項6に定義される組合せ。
【請求項9】
前記吸入投与が振動メッシュネブライザーを用いて行われる、請求項8に記載の製剤に使用するための、請求項1乃至3の何れか1項に定義される5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つ、請求項5に定義される組成物または請求項6に定義される組合せ。
【請求項10】
前記物質、組成物、または組み合せが、リポソーム、ミセル、マルチラメラベシクルまたはシクロデキストリン複合体の形態で適用される、SARS-CoV-2感染の後遺症の予防または治療に使用するための、請求項1乃至3の何れか1項に定義される5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つ、請求項5に定義される組成物または請求項6に定義される組合せ。
【請求項11】
舌下錠用の製剤において、SARS-CoV-2感染の後遺症の予防または治療に使用するための、請求項1乃至3の何れか1項に定義される5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つ、請求項5に定義される組成物または請求項6に定義される組合せ。
【請求項12】
5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つ、本発明による前記組成物または本発明による組合せの前記投与は、咽喉スプレー、鼻スプレーまたは点鼻薬によって行われる、SARS-CoV-2感染の後遺症の予防または治療に使用するための、請求項1乃至3の何れか1項に定義される5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つ、請求項5に定義される組成物または請求項6に定義される組合せ。
【請求項13】
前記物質、組成物または組合せが凍結乾燥物として製剤化される、SARS-CoV-2感染の後遺症の予防または治療に使用するための、請求項1乃至3の何れか1項に定義される5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つ、請求項5に定義される組成物または請求項6に定義される組合せ。
【請求項14】
静脈内注射、動脈内注射または腹腔内注射の形態による、SARS-CoV-2感染の後遺症の予防または治療に使用するための、請求項1乃至3の何れか1項に定義される5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つ、請求項5に定義される組成物または請求項6に定義される組合せ。
【請求項15】
請求項5に定義される医薬組成物の有効量を、それを必要とする患者またはSARS-CoV-2感染の後遺症を発症する危険性のあるSARS-CoV-2感染からの回復者に投与する、SARS-CoV-2感染の後遺症の治療方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、SARS-CoV-2感染の後遺症の予防または治療における、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の使用に関する。特に、本発明は、前記目的のための5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩の使用に関する。医薬組成物、組合せ、有利な製剤技術および治療方法が開示される。
【背景技術】
【0002】
生態系、気候および人口統計学上の変化の結果、いわゆる「エマ-ジング」ウイルスが、動物の宿主からヒトに感染することが増えている。また、グロ-バル化の加速により、パンデミック(世界的大流行)を引き起こすリスクもある。エマ-ジングウイルスは、急性かつ生命を脅かすような病気を引き起こすことがある。コロナウイルス科は、このような感染症で悪名高い存在になっている。例えば、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV-1)や中東呼吸器症候群関連コロナウイルス(MERS-CoV)、最近では中国の武漢で発生した重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2;COVID-19)が挙げられる。ジョンズ・ホプキンス大学コロナウイルス・リソ-ス・センタ-により、2021年11月10日現在、世界中で合計2億5110万人以上のSARS-CoV-2患者、約509万人の死傷者が報告されている。SARS-CoV-2の潜伏期間は2日から2週間で、場合によっては1ヶ月に及ぶこともある。SARS-CoV-2感染による疾患は、COVID-19と呼ばれる。
【0003】
COVID-19の典型的な症状は、発熱、咳、息切れである。しかし、この感染症は重度の肺障害を引き起こすこともあり、特に酸素を取り込む能力に関して、肺の進行性の機能不全を急速に発症させる。これは通常、他の臓器の機能不全を伴う。この急性肺障害(ALI)の状態は、肺の炎症と肺胞への液体の蓄積を伴う。これはびまん性肺微小血管障害により透過性が亢進し、非心原性肺水腫になる特徴がある。その結果、肺の酸素濃度が病的に低くなる。ICUケアにおけるCOVID-19患者に関連するその他の一般的な症状は、肺塞栓症、血栓症、静脈血栓塞栓症、脳虚血である。
【0004】
コロナウイルスは、主に密接な接触、特に咳やくしゃみなどの呼吸器飛沫を介して感染する。SARS-CoV-1やMERS-CoVとは異なり、SARS-CoV-2は、感染者がまだ病気の症状を示していない潜伏期間中にヒトからヒトへ感染する可能性がある。さらに、SARS-CoV-2は、すでに喉で複製することができる。一方、SARS-CoVやMERS-CoVの受容体は、肺の奥深くにあります。そのため、SARS-CoV-2はSARS-CoV-1やMERS-CoVに比べてヒトからヒトへの感染が容易であり、感染率が非常に高くなる。
【0005】
一般的に、コロナウイルス(コロナウイルス科、コロナウイルス群)は、比較的多様な大型のエンベロ-プ型正鎖RNAウイルス群を形成し、ヒトや動物に様々な種類の下痢や呼吸器疾患を引き起こすことがある。これらのウイルスは、宿主範囲が非常に狭く、細胞培養による複製も非常に悪い。しかし、SARS-CoV-2の細胞培養系を確立することに成功した。
【0006】
SARS-CoV-2の塩基配列を決定したところ、14個のオ-プンリ-ディングフレ-ムからなる約29.8kbpのゲノムを発見した。さらに、このウイルスはSARS-CoV-1と系統的に近縁であった(ヌクレオチド類似度89.1%)(参照:Wu等、(2020年)Nature 579:265-269頁)。他のコロナウイルスと同様に、SARS-CoV-2はエンドサイト-シスと膜融合によって細胞内に侵入する。ウイルスは、分泌経路によって細胞から放出される。このウイルスの自然内における宿主は不明である。
【0007】
現在までのところ、SARS-CoV-2感染症、それぞれのCOVID-19の治療に対する特定の治療法は確立されていない。抗ウイルス剤のレムデシビル、アビファビル、ファビピラビルで一定の成果を得ることができた。SARS-CoV-2のスパイク蛋白質に対するナノ抗体を含む点鼻薬が有望である(AeroNabs)。重症のCOVID-19患者において、グルココルチコイドであるデキサメタゾンの投与が有効であることが示された。
【0008】
5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩結晶型Iは、Vero 84細胞培養においてSARS-CoV-2の複製をほぼ完全に阻止することができた(Schumann等、(2020年) Int J Mo/Sci 21:8803頁)。
【0009】
しかし、SARS-CoV-2感染を克服した、つまりCOVID-19の急性症状を示さなくなり、感染力もなくなった患者のかなりの数が、生活の質を著しく損なう長期にわたる疾患様作用を発症しているという証拠が増えている。明らかに、これらの長期にわたる疾患様作用は、以前のSARS-CoV-2感染症の後遺症である。
【0010】
報告されてから日が浅いため、その病因についてはあまり知られておらず、これらの後遺症に対処する確立された標準な治療法もまだ存在しない。
【0011】
したがって、SARS-CoV-2感染の後遺症に苦しむ患者に対する効果的な薬理学的治療に対する強い医療ニーズが存在する。理想的には、そのような薬理学的治療は、すでに後遺症の初期段階で役立ち、後遺症を対症的にのみ治療するのではなく、これらの後遺症の多くまたは全てに対して役立つものであるべきである。
【0012】
驚くべきことに、この課題は、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、水和物、結晶多形、互変異性体または同位体強化形態のいずれかの投与により解決する。
【0013】
したがって、本願は、SARS-CoV-2感染の後遺症の予防または治療に使用するための5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つを開示する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩投与後の4種類の炎症性サイトカイン分泌の減少率。LPS誘導のみを100%とした。 左から右へのブロック:TNF-α、IL-6、IL-12、IL-1-β バーはそれぞれ左から右へ: 白: 未処理のコントロール ブラック: LPSのみによる治療 ダークグレー: LPS+1mM 5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩 ライトグレー: LPS+0.5mM 5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩 * :優位:p<0.05
図2】A:実施例2の実験セットアップの概略図 1-タバコの煙 2-人工呼吸 3-気管 4-肺 5-心臓 6-リザーバ 7-5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩水溶液 8-ローラーポンプ B:実施例2の実験セットアップの写真
図3】実施例2の代表的サンプルの免疫組織化学的染色 左パネル: 倍率200倍 右パネル: 倍率400倍、左パネルからの拡大ディテール A: ールムエア B: タバコの煙+希釈液(緩衝液) C: タバコの煙+0.5mM 5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩 D: タバコの煙+1mM 5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩 E: タバコの煙+2mM 5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩 右のパネルでは、炎症を起こしている部分が強調表示されている。
図4】実施例2のサンプルの免疫組織化学的染色の統計的評価。染色された表面積のパーセンテージは炎症のグレードに対応する(n=5、平均±SEM)。アスタリスクの付いたバーは、2群間で非常に有意な差があることを示す(p<0.001)。 A: ールムエア B: タバコの煙+希釈液(緩衝液) C: タバコの煙+0.5mM 5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩 D: タバコの煙+1mM 5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩 E: タバコの煙+2mM 5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩
【発明を実施するための形態】
【0015】
5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン(ルミノール)は、フタラジンジオン類の医薬品類に属する。この類の化合物は、有益な抗炎症作用があることで知られている。5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンはールミノールという名前でも知られているールミノールは優れた化学発光特性を有している。これは検出手段として診断アッセイに広く応用され、法医学では血痕のトレ-スなどに利用されている。医薬では、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンが、ナトリウム塩の形で開発されている。一部の国では、細菌およびウイルス由来の急性感染症など、特に腸管、B型およびC型肝炎、胃腸炎、前立腺炎、子宮内膜症、喉の炎症、気管支喘息、肺炎、歯周炎、腎盂腎炎などの炎症、クロ-ン病、潰瘍性大腸炎、紅斑性狼狽症、強皮症などの自己免疫疾患を含む幅広い急性および慢性炎症疾患に承認されている。さらに、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩が試験され、または有益な使用が示唆されたとされる治療における科学文献および特許文献の長いリストが依然として存在する(国際公開第2004/041169号、国際公開第2007/018546号、国際公開第2012/127441号、国際公開第2017/202496号、国際公開第2018/082814号など)。
【0016】
従来の免疫調節剤の多くが重篤な副作用を示すか、少なくとも長期投与に問題があるのに対し、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンおよびその薬学的に許容される塩は忍容性が高く、投与量に関しても高い安全マ-ジンを有している。
【0017】
5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンの薬学的に許容される塩を使用することで、より良い溶解度とバイオアベイラビリティを確保することができる。ナトリウム塩、カリウム塩およびリチウム塩は、治療用途のために記載されている(国際公開第2010/082858号参照)。リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩ールビジウム塩およびセシウム塩の結晶構造は、Guzei等、(2013年)Journal of Coordination Chemistry 66、3722-3739頁に記載されている。したがって、本特許出願は、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンのすべての薬学的に許容される塩の使用にも言及する。
【0018】
したがって、本願は、SARS-CoV-2感染の後遺症の予防または治療に使用するための5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つを開示している。
【0019】
特に、本願は、コロナウイルス感染症の予防または治療に使用するための5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つを開示し、ここで5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンの薬学的に許容される塩は、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩である。
【0020】
5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンは、しばしば水和物として、例えばナトリウム塩二水和物として用いられる。したがって、本特許出願は、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンおよびその薬学的に許容される塩のすべての水和物および他の溶媒和物の使用にも言及する。5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つは、適切なリガンドと錯体を形成してもよい。したがって、本特許出願は、このような錯体にも言及する。本開示の範囲において、すべての水和物および溶媒和物は、用語「5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つ」に含まれるものとする。
【0021】
再現性のある標準化された医薬品有効成分の製造を保証し、活性剤の改善された安定性を提供するために、しばしば無水製剤が好まれる。5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩の無水形態は、国際公開第2011/107295号(結晶型I、結晶型II)および国際公開第2016/096143号(結晶型III)に結晶多形として記載されている。これらの結晶多形は相不純物をほとんど含まず、粉末X線回折によって特性評価が行われた。この方法では、面間隔[A]を示す特徴的なd値と、ブラッグ反射が起こる対応する2θ(20)角[°]のセットを得ることができる。これにより、それぞれの多形体のユニ-クで明確なフィンガ-プリントが得られる。
【0022】
結晶型Iに対して以下の値が得られた。
d値:13.5;6.9;5.2;4.6;3.9;3.5;3.4;3.3;3.1;3.0、および/または
2θ値:6.5;12.7;16.9;19.3;22.8;25.8;26.6;27.2;28.7;30.3。
【0023】
結晶型IIは以下の値により特徴付けられる。
d値:12.9;7.9;7.1;6.5;5.3;4.0;3.7;3.6;3.3;3.2、および/または
2θ値:6.8;11.2;12.5;13.7;16.7;22.4;24.3;24.9;27.2;27.8。
【0024】
結晶型IIIは以下の値を示した。
d値:13.131;7.987;7.186;6.566;6.512;5.372;3.994;3.662;3.406;3.288;3.283;3.222;3.215;3.127;2.889、および/または
2θ値:6.73;11.07;12.31;13.48;13.59;16.49;22.24;24.29;26.14;27.10;27.14;27.67;27.72;28.52;30.93。
【0025】
無水結晶型Iの5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩を使用することが好ましい。
【0026】
5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン自体も結晶多形を示す。結晶型Iの1つ(Paradies(1992年)Ber.Bunsen-Ges.Phys.Chem 96:1027-1031頁)と結晶型IIの1つ(国際公開第2017/140430号)が開示されている。
【0027】
したがって、本特許出願は、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンおよびその薬学的に許容される塩のすべての結晶形およびその多形体の本発明による使用にも言及する。5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンの結晶型IIの使用は好ましい。
【0028】
同様の治療効果は、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンの誘導体およびその薬学的に許容される塩をそれぞれ含む様々なフタラジンジオンについても知られている。例えば、6-アミノ-2,3-ジヒドロフタラジン-1,4-ジオン(イソルミノール)である。好適なフタラジンジオン類の概要は、国際公開第2007/018546号に記載されている。これらの化合物は、本発明による治療用途に使用される場合、同等の効果を示すと考えるのが妥当である。
【0029】
互変異性は、水素原子やプロトンが化合物内部を移動することで起こる有機化合物の急速な内部転換に関するものである。このとき、単結合と隣接する二重結合の入れ替わりを伴う。このような単体の化合物を互変異性体と呼ぶ。5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンでは、ケト-エノール互変異体が生じる(Proescher and Moody(1939年)J Lab Clin Med,1183-1189頁)。したがって、本特許出願は、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンおよびその薬学的に許容される塩のすべての互変異性体の使用にも言及する。
【0030】
異性体とは、化学式は同じだが化学構造が異なる分子の総称である。異性体は、構造異性体(原子または官能基の交換が行われる)と立体異性体に区別することができる。立体異性体は、エナンチオマ-(同一分子の重ならない鏡像)とジアステレオマ-(同一分子の1つ以上が立体中心で異なる配置を持つ)に細分化することができる。ジアステレオマ-は、シス/トランス異性体(分子内の官能基の相対的な配向を指す)と、他方でコンフォ-マ-(形式的な単結合に関する回転)とロ-タマ-(単結合に関する異なる回転位置)に細分化することができる。5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンの立体異性体の例として、6-アミノ-2,3-ジヒドロフタラジン-1,4-ジオン(イソルミノール)が挙げられる。フタラジンジオン誘導体には立体異性体が存在する場合がある。したがって、本特許出願は、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン、その誘導体および薬学的に許容される塩のすべての異性体の使用にも言及する。
【0031】
用途によっては、本発明の化合物の同位体を濃縮した態様が、例えば診断目的で使用されることが望ましい場合がある。したがって、本特許出願は、本発明の化合物のそのような同位体を濃縮した態様にも言及する。
【0032】
薬物動態の観点から、あるいは生産上の合理性から、プロドラッグを剤形として使用することが望ましい場合がある。プロドラッグは薬理学的に不活性な形で投与され、体内で代謝的に活性型に変換される。この変換は全身的または局所的に起こる。したがって、本特許出願は、本発明の化合物のプロドラッグにも言及する。
【0033】
本出願を通して使用される場合、用語「5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つ」は、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンのすべての前述の分子変異体、すなわち、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つまたはそれらの溶媒和物、水和物、結晶多形、互変異性体または同位体を濃縮した態様を包含する。
【0034】
特に断らない限り、本発明で使用される技術用語または科学用語は、関連する技術分野の当業者がそのように考える意味を有する。
【0035】
本出願によれば、用語「薬物」、「活性物質」、「活性剤」、「薬学的に活性な剤」、「活性成分」または「医薬品有効成分」(API)は、特に断りのない限り、または一般的な意味で使用される場合、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩を指す。
【0036】
「組成物」または「医薬組成物」という用語は、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含み任意の薬学的に許容される定義された用量および剤形における少なくとも1つの有効成分と、以下に概説するような成分から直接的または間接的に、組合せ、蓄積、錯体または結晶としてまたは他の反応もしくは相互作用の結果として生成されるすべての薬剤と、任意に以下に列挙するような少なくとも1つのさらなる医薬薬剤と、を含む。
【0037】
本出願において、「賦形剤」という用語は、薬学的な有効成分が除かれた医薬組成物の任意の成分を表すために使用される。適切な賦形剤の選択は、剤形、投与量、所望の溶解性および組成物の安定性などの様々な要因に依存する。
【0038】
本発明の物質または本明細書で言及される他の活性物質に関する「効果」、「治療効果」、「作用」、「治療作用」、「効能」および「有効性」という用語は、当該物質が以前投与された生物においてこれを原因として生じた有益な結果を意味する。
【0039】
本発明によれば、「有効量」および「治療上の有効量」という用語は、そのような治療を必要とする対象において所望の有益な効果を引き起こすために十分に多い量の、本発明の物質を意味する。
【0040】
「治療」および「療法」という用語は、投与の時系列とは無関係に、少なくとも本発明の物質を単独で、または少なくとも1つのさらなる医薬と組合せて投与することを含む。このような投与は、SARS-CoV-2感染の後遺症の疾病の経過を、疾病を完全に回復させるか、あるいは疾病の経過における障害の増加を停止または減速させることにより、実質的に改善することを意図している。
【0041】
「予防」または「予防的治療」という用語は、SARS-CoV-2感染の後遺症に起因する症状の発現を予防または抑制するために、少なくとも本発明の物質を単独で、または少なくとも1つのさらなる医薬と組合せて、投与の時系列とは無関係に投与することを含む。これは特にそのような症状の発現が遠い将来または近い将来に合理的な確率で予測される患者の病状を意味する。
【0042】
「対象」および「患者」という用語は、前記診断により確定または疑われている、コロナウイルス感染に関連する疾患症状または障害を患う個体を含む。個体は哺乳類、特にヒトである。
【0043】
本開示の範囲において、「後遺症」という用語は、SARS-CoV-2の感染後に患者に発現し、COVID-19の既知の症候および症状のスペクトラムとは異なり、患者がCOVID-19の症候または症状を発症したか、または発症せずに経過したかにかかわらず、おそらく以前のSARS-CoV-2感染と因果関係があると考えられる、あらゆる疾患、症候、症状または障害を意味する。COVID-19の症候または症状をこのような後遺症と適時に区別するために、この後遺症は、SARS-CoV-2感染が証明されたこの患者の最初のPCR検査陽性から28日以上経過して発現または持続したものでなければならない。28日間という期間は、英国政府の定義に沿ったものである(https://coronavirus.data.gov.uk、2020年11月30日現在)。しばしば「長期COVID」という用語が同義で用いられる。
【0044】
SARS-CoV-2感染に関連して、前述の定義を満たす多種多様な疾患、症候、症状および障害が報告されている。
【0045】
最もよく生じる後遺症は、疲労(慢性疲労症候群、CFS)、息切れ(呼吸困難)、(長く続く)咳、関節痛、胸痛、筋力低下などである。さらに頻繁に報告される後遺症は、思考力や集中力の低下(「ブレインフォグ」)、抑うつ、筋肉痛、頭痛、断続的な発熱、心臓の鼓動が速い(またはドキドキする)(「動悸」)などである。頻度は低いが、心筋の炎症、肺機能異常、急性腎障害、発疹、脱毛、歯の喪失、睡眠障害、不眠症、記憶障害、不安、気分変動などがある(概要は2020年11月30日現在のhttps://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/long-term-effects.html参照)。
【0046】
その他の後遺症としては、微熱、手足の針痛、下痢、嘔吐、咽頭痛、嚥下障害、糖尿病の新規発症および高血圧などが報告されている(参照:Yelin等、Infectious Diseases 20:1115-1117頁参照)。2型糖尿病はHayden(2020年)Cells 9:2475頁に長期的な後遺症として記載されている。
【0047】
さらに報告されている神経学的および精神医学的後遺症には、(虚血性)脳卒中、両側前頭側頭低灌流、頭蓋内出血、麻痺、片麻痺、運動失調、脳神経障害、脳症、急性壊死性脳炎、せん妄、髄膜炎、けいれん発作、強迫性障害、パ-キンソン病、アルツハイマ-病、老化促進、失語症、認知機能低下、意識レベル低下、ギラン・バレ-症候群が含まれる(Fotuhi等、(2020年)J Alzheimer Dis 76:3-19頁参照)。
【0048】
このような後遺症の危険因子としては、患者の年齢(50歳以上)、女性、体重過多、喘息およびCOVID-19の幅広い症状が含まれている(2020年11月30日現在のhttps://www.kcl.ac.uk/news/study-identifies-those-most-risk-long-covid)。
【0049】
したがって、本開示は、SARS-CoV-2感染の後遺症の予防および治療に使用するための5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つにも言及し、SARS-CoV-2感染の後遺症は、慢性疲労、呼吸困難、咳、頭痛、関節痛、胸痛、筋肉痛、筋力低下、思考・集中力低下、記憶障害、抑うつ、不安、気分変動、睡眠障害、不眠症、断続的な発熱、動悸、心筋の炎症、肺機能異常、急性腎障害、発疹、脱毛および歯の喪失を含む群から選択される。
【0050】
SARS-CoV-2感染によってこのような広範な後遺症が引き起こされるため、これらの後遺症の始まりには、ウイルス感染によって引き起こされた共通の原因や生化学的経路があると考えるのが妥当であろう。これらの後遺症を引き起こす可能性のある2つの条件が特定されている。
【0051】
(a)これらの後遺症の全てではないにせよ、多くに慢性的な低悪性度の炎症が存在するようだ。慢性疲労症候群では、炎症は症状と相関している(Komaroff(2017年)PNAS 114:8914-8916頁)。SARS-CoV-2感染に関連した多くの神経症状において、炎症マーカーが検出された(Fotuhi等(2020年)J Alzheimer Dis 76:3-19頁)。近年、一般的に、感染症が炎症状態を誘発することによって、特に神経変性疾患など、大規模な後遺症を引き起こすという証拠が増えつつあった(de Chiara等(2012年)、Mol Neurobiol 46:614-638頁参照)。
【0052】
(b)活性酸素種(ROS)と活性窒素種(RNS)の過剰産生は、SARS-CoV-2感染の多くの後遺症で観察される。これらの過剰なROSとRNSは、細胞内で酸化ストレスとニトロソ化ストレスを引き起こし、DNA、細胞膜、酵素制御、エネルギ-代謝など、多くの細胞障害を引き起こす。慢性疲労症候群では、α-トコフェロールなどの細胞内抗酸化物質のレベルが低下していることがわかった。誘導性一酸化窒素合成酵素(iNOS)が増加している(Fenouillet等(2016年)J Transl Med 14、251頁、Komaroff等(2017年)PNAS 114、8914-8916頁)。
【0053】
実施例1に示すように、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩は、炎症性サイトカインであるTNF-α、IL-6、IL-12およびIL-1-βの産生を有意に減少させることができる。前述のように、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩は、急性および慢性炎症疾患の治療において良好な結果を示す。
【0054】
5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン(またそのナトリウム塩)は強力な抗酸化剤として知られている。いわゆるルミノール反応では、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンが酸化剤(例えばROSやRNS)の存在下で3-アミノフタル酸に酸化され、同時に青色の光子を放出する。こうして、細胞の自然な抗酸化システムが大きく強化される(Bedouhene等(2017)Am J Blood Res 4、41-48頁、Shetty等(2020)Redox Biol 28、101389頁)参照。アストロサイトのレトロウイルス感染による酸化ストレス誘導に対する5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩の抗酸化作用。内因性抗酸化物質の発現は、転写因子Nrf-2の活性化を介して誘導される(Jiang 等(2006年)J Virof 80、4557-4569頁、Reddy等(2010年)Neurochem Int 56、780-788頁)。
【0055】
3-ニトロチロシン(3-NT)の形成は酸化ストレスのマーカーとして確立されている。SARS-CoV-2感染、それぞれのCOVID-19は、2型糖尿病の発症に多くの症例で関与していることが判明しており、これは急性および長期的な後遺症の1つであると疑われている。この状況を模倣した高血圧の前臨床モデルRen2ラットでは、3-NT染色の有意な増加が認められた(Hayden(2020年)Cells 9、2475頁)。したがって、3-NTは、SARS-CoV-2感染の後遺症の少なくとも一部の発症を予測するマーカーとみなすことができる。興味深いことに、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩がex vivoの肺モデルにおいて3-NT形成を有意に減少させることがわかった(実施例2)。これは、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩が長期COVID患者の予防および治療に有益であることを示すもう一つの強いヒントである。
【0056】
単一の患者のSARS-CoV-2感染の後遺症の治療における5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩の有望な効果は、実施例3-5に記載されている。これらの観察は、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩の記載された作用と一致している。
【0057】
したがって、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つは、SARS-CoV-2感染の予防およびすべての後遺症の治療に有益な効果を示すと合理的に仮定することができる。
【0058】
5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその許容できる塩の1つは、単剤療法として使用することができ、またはコロナウイルス感染症の疾患修飾療法、コロナウイルス感染症の対症療法および併存疾患の治療において使用される有効成分からなる群から選択される少なくとも1つのさらなる有効成分とさらに組合せることができる。
【0059】
SARS-CoV-2感染の後遺症の効果的な予防または治療には、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つと、少なくとも1つの抗ウイルス剤とを併用することにより、必要とする患者に併用療法を提供することが有利であろう。
【0060】
例えばHIVでは、それぞれ抗レトロウイルス療法として次のようなクラスが知られている。
【0061】
このような併用療法に適した逆転写酵素阻害剤は、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NRTI)および非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)である。NRTIの例としては、アバカビル、ジダノシン、エムトリシタビン、ラミブジン、スタブジン、テノホビル、ジドブジン、ザルシタビン、エンテカビル、アデホビル、エルブシタビン、フォサルブジン(-チドキシル)、フォジブジンチドキシル、ラギシクロビル、アラミホビル、クレブジン、プラデホビル、テルビブジンが挙げられるが、これらに限定されない。NNRTIの例としては、エファビレンツ、エトラビリン、ネビラピン、リルピビリン、デラビルジン、エミビリン、レルシビリンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
本発明による併用療法に適しているのは、ラルテグラビル、エルビテグラビル、ドルテグラビル、MK-2048などのインテグラーゼ阻害剤である。
【0063】
本発明による併用療法に適したHIVプロテアーゼ阻害剤の例は、サキナビル、インジナビル、リトナビル、ネルフィナビル、アンプレナビル、ロピナビル、アタザナビル、ホスアンプレナビル、ティプラナビル、ダルナビル、ブレカナビル、モゼナビル、ティプラナビルである。
【0064】
本発明による併用療法に適した侵入阻害剤の例は、エンフビルチドとマラビロクである。
【0065】
さらに、本発明による併用療法に適した一般的なウイルス静止剤は、アンシクリビロク、アプラビロク、セニクリビロク、エンフビルチド、マラビロク、ビクリビロク、アマンタジン、リマンタジン、プレコナリル、イドクスウリジン、アシクロビル、ブリブジン、ファムシクロビル、ペンシクロビル、ソリブジン、バラシクロビル、シドホビル、ガンシクロビル、バルガンシクロビル、ソホスブスビル、フォスカルネット、リバビリン、タリバビリン、フィリブビル、ネスブビル、テゴブビル、フォスデビリン、ファビピラビル、アビファビル、メリメポディブ、アスナプレビル、バラピラビル、ボセプリビル、シラプレビル、ダノプレビル、ダクラタスビル、ナールラプレビル、テラプレビル、シメプレビル、バニプレビルールピントリビル、レムデシビル、フォミビルセン、アメナメビル、アリスポリビル、ベビルマット、レテルモビル、ラニナマビル、オセルタミビル、ペラミビル、ザナミビルを含む群から選ぶことができる。
【0066】
本発明による併用療法に適した一般的な免疫刺激剤は、インターフェロン(α-、β-、γ-、τ-インターフェロン)、インタ-ロイキン、CSF、PDGF、EGF、IGF、THF、レバミゾール、ジメプラノール、イノシンを含む群から選択することができる。
【0067】
さらに、本発明による可能な組合せには、コビシスタットのようなアジュバントが含まれる。
【0068】
併存疾患は、コロナウイルス感染による障害から生じるか、またはそれとは無関係である。したがって、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つは、コロナウイルス感染症の予防または治療に使用する、ステロイド性および非ステロイド性抗炎症薬、免疫調節剤、免疫抑制剤、抗生物質、抗レトロウイルス剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤および抗寄生虫剤のような抗感染症剤、鎮痛剤、抗凝固剤、抗血小板剤、気管支拡張剤、肺血管拡張剤、粘液溶解剤、肺サ-ファクタント、抗酸化剤、ENaC活性化剤、HMG-CoA還元酵素阻害剤、カルシウム拮抗剤またはAT受容体拮抗剤を含む群から選択される少なくとも1つのさらなる有効成分と組合せることができる。
【0069】
このようなステロイド系抗炎症薬の好適な例としては、コルチコステロイド、グルココルチコイド、コルチゾン、酢酸コルチゾン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デルタゾン、トリアムシノロン、ピバル酸チキソコルトール、モメタゾン、アムシノニド、ブデソニド、デソニド、フルオシコニド、フルオシノロン、ハルシノニド、フルオコルトロン、ヒドロコルチゾン-17-バレレ-ト、ハロメタゾン、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、ベタメタゾンバレレ-ト、ベタメタゾンジピオネ-ト、プレドニカ-ボネ-ト、クロベタゾン-17-ブチレ-ト、クロベタゾール17-プロピオネ-ト、フルオコルトロンカプロエ-ト、フルオコルトロンピバレ-ト、フルプレドニデンアセテ-ト、ヒドロコルチゾン-17-ブチレ-ト、ヒドロコルチゾン-17-アセポネ-ト、ヒドロコルチゾン-17-ブテプレ-ト、シクレソニド、フルニソリド、フルチカゾンフロエ-ト、フルチカゾンプロピオン酸エステル、トリアムシノロンアセトニド、ベクロメタゾンジプロピオン酸エステルが含まれる。
【0070】
このような非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の好適な例としては、アセチルサリチル酸、サリチル酸およびサリチル酸塩、アセトアミノフェン(パラセタモール)、サルサレ-トジフルニサル、イブプロフェン、デキシブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、デキシケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、ロキソプロフェン、インドメタシン、トルメチン、スリンダク、エトドラク、ケトロラク、ジクロフェナク、アセクロフェナク、ナブメトン、ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、イソキシカム、フェニルブタゾン、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸トルフェナム酸、セレキソキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブルーミラコキシブ、エトリコキシブ、フィロコキシブ、ニメスリド、クロニキシン、リコフェロン、H-ハルパギド、フルニキシン、チアプロフェン酸が含まれる。
【0071】
このような免疫調節剤の好適な例としては、サリドマイド、レナリドマイド、ポマリドマイド、アプレミラストが含まれる。
【0072】
このような免疫抑制剤の好適な例としては、上述したようなグルココルチコイド、アルキル化剤(シクロホスファミドなど)、メトトレキサ-ト、アザチオプリン、メルカプトプリン、フルオロウラシル、レフルノミドなどの代謝拮抗剤、タンパク質合成阻害剤、およびダクチノマイシン、アントラサイクリン、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ミトラマイシンなどの特定の抗生物質、ミトキサントロンなどのインタ-カレ-ト剤などの細胞賦活剤、ムロモナブ-CD3、リツキシマブ、ウステキヌマブ、アレムツズマブ、ナタリズマブ、バシリキシマブ、トシリズマブ、ダクリズマブなどの抗体、シクロスポリン、タクロリムス、シロリムスなどのイムノフィリンに作用する薬剤、β-インターフェロン、γ-インターフェロンなどの非分類免疫抑制剤、オピオイド、インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブなどのTNF結合タンパク質、クルクミン、カテキン、ミコフェノール酸、フィンゴリモド、ミリオシン、およびフマル酸ジメチルエステルの群が含まれる。
【0073】
抗感染症剤には、細菌、ウイルス、真菌、寄生虫感染症(原虫やワムシなど)の治療に有用な化合物の総称で、抗生物質、抗マイコプラズマ剤、抗原虫薬、前述の抗ウイルス剤などが含まれる。
【0074】
抗生物質の好適な例としては、イミペネム、メロペネム、エルタペネム、セファロスポリン、アズトレオナム、ペニシリンGやペニシリンVなどのペニシリン、ピペラシリン、メズロシリン、アンピシリン、アモキシシリン、フルクロキサシリン、メチシリン、オキサシリン、クラブラン酸、スルバクタム、タゾバクタム、スルタミシリン、ホスホマイシン、テイコプラニン、バンコマイシン、バシトラシン、コリスチン、グラミシジン、ポリミキシンB、チロトリシン、テイキソバクチン、ホスミドマイシン、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、クロラムフェニコール、フシジン酸、セスロマイシン、ナルボマイシン、テリスロマイシン、クリンダマイシン、リンコマイシン、ダプトマイシン、ダルホプリスチン、キヌプリスチン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、リネゾリド、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、テトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、タイゲサイクリン、ノルフロキサシン、エノキサシン、シプロフロキサシン、オフロキサシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、メトロニダゾール、チニダゾール、アミノクマリン、スルファジアジン、スルファドキシン、スルファメトキサゾール、スルファサラジン、ピリメタミン、トリメトプリム、リファンピシンが含まれる。
【0075】
このような抗真菌(抗かび菌)薬の好適な例としては、アバファンギン、アムホテリシンB、カンディシジン、フィリピン、ハマイシン、ナタマイシン、ナイスタチン、リモシジン、ビホナゾール、ブトコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、フェンチコナゾール、イソコナゾール、ケトコナゾールールリコナゾール、ミコナゾール、オモコナゾール、オキシコナゾール、セルタコナゾール、スルコナゾール、チオコナゾール、アルバコナゾール、エフィナコナゾール、エポキシコナゾール、フルコナゾール、イサブコナゾール、イトラコナゾール、ポサコナゾール、プロピコナゾール、ラブコナゾール、テルコナゾール、ボリコナゾール、アモロルフィン、ブテナフィン、ナフィチフィン、テルビナフィン、アニデュラファンギン、カスポファンギン、ミカファンギン、安息香酸、シクロピロックス、フルシトシン、グリセオフルビン、ハロプロジン、トルナフテ-ト、ウンデシレン酸、クリスタルバイオレット、ペル-バルサムが含まれる。
【0076】
このような抗寄生虫剤の好適な例としては、メトロニダゾール、チニダゾール、オルニダゾール、アトバキオン、クリオキノール、クロルキナルドール、エメチン、ペンタミジンイセチオネ-ト、エフルニチン、ニトロフラール、ハロフギノン、ミルテフォシン、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、メパクリン、プリマキン、アモジアキン、パマキン、ピペラキン、プログアニル、シクロフナイルムボネ-ト、メグアニル、シクロフナイルムボネ-トヒドロキシクロロキン、メパクリン、プリマキン、アモジアキン、パマキン、ピペラキン、プログアニル、シクロフナイルボン酸塩、キニ-ネ、メフロキン、ピリメタミン、ア-トメス、アルテミシニン、アルテスネ-ト、ジヒドロアルテミシニン、ハロファントリンールメファントリン、スルファドキシンが含まれる。
【0077】
さらなる抗寄生虫剤の好適な例としては、メグルミンアンチモネート、ベンズニダゾール、スチボグルコン酸ナトリウム、フマジリン、ハロファントリン、メラルソプロール、ニフルチモックス、ニタゾキサニド、ペルメトリン、リンデン、マラチオン、カルバリル、除虫菊フェノトリン、バイオアレスリン、イミダクロプリド、モキシデクチン、ニテンピラム、フィプロニル、ピリプロール、セラメクチン、ジンピレ-ト、スピノサド、インドキサカルブ、メトプレーン、ピリプロキシフェンールフェヌロン、ニーム油、シトロネラ油、クローブ油、ペパーミント油、ユーカリ油が含まれる。
【0078】
鎮痛薬の好適な例としては、上述したNSAIDs、モルヒネ、フェンタニル、メタドン、オキシコドン、カルフェタニル、ジヒドロエトルフィン、オメフェンタニル、エトルフィン、スフェンタニル、レミフェンタニル、アルフェンタニル、ブプレノルフィン、ヒドロモルフォン、レボメタドンなどのオピオイド鎮痛薬、ヒドロコドン、ピントラミド、ナルブフィン、タペンタドール、ペンタゾシン、ジヒドロコデイン、コデイン、ペチジン、トラマドール、チリジン、メプタジノール、ナロキソン、ナルトレキソン、ジプレノルフィン、ロペラミド、アポモルヒネ、エピバチジン、スコポラミン、ジコニチド、テトラヒドロカンナビノール、カンナビジオール、マリノールなどのカンナビノイド、フルピルチン、ケタミンおよび上述した局所麻酔薬が含まれる。
【0079】
このような抗凝固剤の好適な例としては、ヘパリン、フェンプロクモン(マルクマール)やワルファリンなどのクマリン、アピキサバン、リバ-ロキサバン、エドキサバン、ダビガトラン、キシメラガトラン、ヒルジン、レピルジン、ビバリルジン、クエン酸塩、EDTA、フォンダパリヌクス、アルガトロバン、オタミキサバンが含まれる。
【0080】
このような抗血小板剤の好適な例としては、アブシキシマブ、アセチルサリチル酸、ジピリダモール、クロピドグレル、エプチフィバチド、イロメジン、プロスタサイクリン、プラスグレル、チカグレロル、チクロピジン、チロフィバンが含まれる。
【0081】
β-2アドレナリン受容体作動薬のような好適な気管支拡張剤としては、サルブタモール、アルブテロール、ビトルテロール、フェノテロール、イソプレナリン、レボサルブタモール、レバルブテロール、オルシプレナリン、ピルブテロール、プロカテロール、リトドリンおよびテルブタリンのような短時間作用性β-2アゴニスト(SABA)、アルホルモテロール、バンブテロール、クレンブテロール、ホルモテロール、サルメテロールなどの長時間作用性β-2アゴニスト(LABA)、単独または臭化ウメクリジニウムおよび/またはフルチカゾンフロエ-トと併用される、アベジテロール、カルモテロール、インダカテロール、オロダテロール、ビランテロールなどの超長時間作用性β-2アゴニスト、イソクスプリン、マブテロール、ジルパテロールなどの作用時間不明のβ-2アゴニストが含まれる。
【0082】
好適なムスカリン性抗コリン薬(気管支拡張性M3受容体拮抗薬)としては、イプラトロピウム臭化物、チオトロピウム臭化物、オキシトロピウム臭化物、グリコピロニウム臭化物、アクリジニウム臭化物、ウメクリジニウム臭化物、アトロピン、ヒヨスチアミン、アクリジニウム臭化物、4DAMP、ダリフェナシン、DAU-5884、HL-031、HL-120、J-104、J-129、プロサイクリジン、オキシブチニン、トルテロジンおよびザミフェナシンが含まれる。
【0083】
さらなる気管支拡張剤としては、エピネフリン、エフェドリン、テオフィリン、TSG12がある。
【0084】
強力な肺血管拡張剤は一酸化窒素である。さらに適切な肺血管拡張剤は、イロプロスト、エポプロステノール、トレプロスチニルなどのプロスタサイクリン(プロスタグランジンPGb)類似体である。
【0085】
好適な粘液溶解剤としては、N-アセチルシステイン(NAC)、アンブロキソール、ブロムヘキシン、カルボシステイン、エルドステイン、メシステインおよびドルナ-ゼアルファが含まれる。
【0086】
好適な肺サ-ファクタントには、パルミチン酸コルフォセリル、プマクタント、KL-4、ベンチキュ-トールシナクタントなどの合成組成物や、ベラクタント、カルファクタント、ポラクタントアルファなどの動物由来の界面活性剤が含まれる。
【0087】
強力な抗酸化物質は、吸入された一酸化炭素(CO)である。
【0088】
好適なENaC(上皮ナトリウムチャネル)活性化ペプチドはAP301とS3969である。
【0089】
好適なHMG-CoA還元酵素阻害剤(スタチン)には、アムロジピンおよび/またはペリンドプリルと単独または併用したアトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ナイアシンと単独または併用したロバスタチン、メバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、エゼチミブと単独または併用したロスバスタチン、エゼチミブまたはナイアシンと単独または併用したシンバスタチンが含まれる。
【0090】
好適なカルシウム拮抗剤としては、ベラパミル、ガロパミル、フェンジリン、ニモジピン、ニフェジピン、ニトレンジピン、アムロジピン、フェロジピン、レルカニジピン、ニカルジピン、ラシジピン、イズラジピン、ニソルジピン、ニバルジピン、マニジピン、クレビジピン、アラニジピン、アゼルニジピン、バルニジピン、ベニジピン、シルニジピン、エホニジピン、プラニジピン、ジルチアゼム、ミベフラジル、ベプリジル、フルナリジンおよびフルスピリリンが含まれる。
【0091】
好適なAT拮抗薬(アンジオテンシンII受容体拮抗薬、サルタン)としては、ロサルタン、バルサルタン、カンデサルタン、テルミサルタン、イルベサルタン、オルメサルタン、エプロサルタン、フィマサルタン、アジルサルタン、ミルファサルタン、ポミサルタン、プラトサルタン、リピサルタン、タソサルタン、サプロサルタンおよびEXP3174が含まれる。
【0092】
5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つとさらなる活性成分は、疾患症状を治療または予防するために、同時に、別々に、または順次使用することができる。2つの活性剤は、単一の剤形または別々の製剤として提供することができ、各製剤は2つの活性剤の少なくとも1つを含む。2つの活性剤の一方または両方を丸薬として製剤化することもできる。
【0093】
特に、本出願は、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つ、本発明による組成物または本発明による組合せを、少なくとも1つの他の薬学的に活性な薬剤による以前の治療が不応性であったSARS-CoV-2感染の後遺症の予防または治療に使用するために開示する。
【0094】
「医学」または「医療」という用語には、人間医学と獣医学が含まれる。
【0095】
「生物」という用語は、自己制御する免疫系を有する生物、特にヒトや動物を指す。
【0096】
本出願における「活性剤」という用語は、特に断りのない限り、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つを指す。さらに、この用語は、当技術分野で公知のさらなる医薬剤を含むことができる。
【0097】
「組成物」および「医薬組成物」という用語は、少なくとも1つの適切な賦形剤または担体物質、ならびに前述の成分の組合せ、蓄積、複合体形成または結晶として直接的または間接的に生成されるか、または他の反応または相互作用の結果として生じるすべての物質、ならびに任意に、当技術分野で公知の少なくとも1つのさらなる医薬剤を含む、任意の薬理学的に適切な定義された用量および剤形の5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つからなる。
【0098】
本出願において「賦形剤」という用語は、活性剤に加えて医薬組成物の各成分を表すために使用される。適切な賦形剤の選択は、賦形剤自体による組成物の溶解性および安定性への影響と同様に、剤形および用量のような要因に依存する。
【0099】
「作用」という用語は、本出願の範囲におけるそれぞれの薬剤の固有の具体的な作用様式を表す。
【0100】
本発明による少なくとも1つの活性剤に関する「効果」、「治療効果」、「作用」、「治療作用」という用語は、少なくとも1つの活性剤が投与された生物に原因的に生じる有益な結果を意味する。
【0101】
本出願において、「治療上有効な量」という用語は、十分な量の5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つが、生物またはそのような治療を必要とする患者に投与されることを意味する。
【0102】
本発明による少なくとも1つの医薬剤および/または当業界の技術水準からの少なくとも1つの医薬剤の「共同投与」、「併用投与」または「同時投与」という用語は、首尾一貫した実験内の異なる時間における前記薬剤の投与と同様に、同時又は互いに近接した事実上関連する時点における前記薬剤の投与を含む。前記薬剤の投与の時系列的順序は、これらの用語によって限定されない。当業者であれば、自分の知識と経験から、時系列的または局所的な順序に関して、記載された投与を推測することは困難ではない。
【0103】
「生物」という用語は、ヒトを含むあらゆる動物、特に脊椎動物を指す。本出願でいう「患者」とは、定義可能で診断可能な疾患に罹患しており、適切な活性薬剤を投与することができる生体のことである。
【0104】
「予防」、「治療」および「療法」という用語は、特定の疾患の発症を予防するため、阻害するため、および症状を緩和するため、またはそれぞれの疾患の治癒プロセスを開始するために、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つを、単独でまたは当該技術分野で公知の少なくとも1つのさらなる薬学的薬剤と組合せて、生物に投与することを含む。
【0105】
5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つ、本発明による組成物または本発明による薬剤の組合せは、コロナウイルス感染の予防または治療において、それを必要とする患者への任意の医学的に許容できる投与経路によって適用することができる。このような医学的に許容できる投与経路は、例えば、吸入、挿管、経口、非経口、腹腔内、静脈内、動脈内、筋肉内、局所、経皮、皮下、皮内、舌下、結膜、膣内、直腸または鼻腔内である。
【0106】
コロナウイルス感染症の予防または治療に使用するための好ましい経口製剤は、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つを50mg、100mg、150mg、200mg、300mg、400mg、500mgまたは600mg、好ましくは100mg、150mg、200mg、300mgまたは400mg、最も好ましくは300mgの量で含有するカプセルまたは錠剤である。
【0107】
本発明の別の態様において、SARS-CoV-2感染の後遺症の予防または治療に使用するための組成物が開示され、ここで、前記組成物は、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つ、担体および少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0108】
「薬学的に許容される賦形剤」という用語は、医薬製剤に医薬活性剤と一緒に添加される天然または合成化合物を指す。これらは、製剤の嵩上げ、所望の薬物動態学的特性の向上、製剤の安定性の向上に役立つだけでなく、製造工程においても有益である。本発明による賦形剤の有利なクラスには、担体、結合剤、着色剤、緩衝剤、保存剤、酸化防止剤、コーティング剤、甘味剤、増粘剤、pH調整剤、酸度調整剤、酸味料、溶媒、イソトニン化剤、崩壊剤、滑沢剤、乳化剤、可溶化剤、安定剤、希釈剤、固結防止剤(付着防止剤)、吸着剤、発泡剤、消泡剤、不透明化剤、脂溶化剤、粘度向上剤、ヒドロトロープ、芳香物質および香味物質が含まれる。
【0109】
一般に、1つ以上の薬学的に許容される担体が薬学的に活性な薬剤に添加される。適用可能な担体は、当該技術分野で知られているすべての担体およびそれらの組合せである。固体剤形は、例えば、植物および動物油脂、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、シリカ、タルカム、酸化亜鉛である。液体剤形および乳剤に適した担体は、例えば、水、エタノール、イソプロパノール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチルグリコール、綿実油、ピーナッツ油、オリーブ油、ヒマシ油、ゴマ油、グリセリン脂肪酸エステル、ポリエチルグリコール、ソルビタンの脂肪酸エステルなどの溶媒、可溶化剤、乳化剤である。本発明による懸濁液は、希釈剤(例えば、水、エタノールまたはプロピレングリコール)、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンおよびポリオキシエチレンソルビタンエステル、微結晶セルロース、ベントナイト、寒天、トラガカントなどの当該技術分野で公知の担体を使用することができる。
【0110】
結合剤という用語は、粉体を結合させたり、接着させたりする物質を指し、顆粒を形成して凝集性を持たせる。結合剤は製剤の「糊」の役割を果たす。結合剤は、供給される希釈剤または充填剤の凝集力を高める。
【0111】
適切な結合剤は、例えば小麦、トウモロコシ、米またはジャガイモ由来のデンプン、ゼラチン、グルコース、スクロースまたはβ-ラクトースなどの天然由来の糖類、トウモロコシ由来の甘味料、アカシア、トラガカントまたはアルギン酸カルシウムアンモニウムなどの天然および合成ガム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルカルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ワックスなどである。組成物中の結合剤の割合は、1~30重量%、好ましくは2~20重量%、より好ましくは3~10重量%、最も好ましくは3~6重量%の範囲であり得る。
【0112】
着色剤は、医薬製剤に着色を与える賦形剤である。これらの賦形剤は食用色素であり得る。これらは粘土や酸化アルミニウムのような適切な吸着手段に吸着させることができる。着色剤のさらなる利点は、ネブライザーおよび/またはマウスピース上にこぼれた水溶液を可視化して洗浄を容易にし得ることである。着色剤の量は、医薬組成物の重量当たり0.01~10%の間で変化し得、好ましくは0.05~6重量%、より好ましくは0.1~4重量%、最も好ましくは0.1~1重量%である。
【0113】
適切な医薬品着色料は、例えば、クルクミン、リボフラビン、リボフラビン-5’リン酸塩、タ-トラジン、アルカニン、キノリオンイエローWS、ファストイエローAB、リボフラビン-5’-リン酸ナトリウム、イエロー2G、サンセットイエローFCF、オレンジGGN、コチニール、カルミン酸、シトラスレッド2、カルモイシン、アマランス、ポンソー4R、ポンソーSX、ポンソー6R、エリスロシン、レッド2G、アリュラレッドAC、ランダスレンブルーRS、パテントブルーV、インジゴカルミン、ブリリアントブルーFCF、クロロフィルおよびクロロフィリン、クロロフィルおよびクロロフィリンの銅錯体、グリーンS、ファストグリーンFCF、プレーンキャラメル、苛性亜硫酸キャラメル、アンモニアキャラメル、亜硫酸アンモニアカラメル、ブラックPN、カーボンブラック、植物性カーボン、ブラウンFK、ブラウンHT、α-カロテン、β-カロテン、γ-カロテン、アナトー、ビキシン、ノルビキシン、パプリカオレオレジン、カプサンチン、カプソルビン、リコピン、β-アポ-8’-カロテナール、β-アポ-8’-カロテン酸エチルエステル、フラボキサンチン、ルテインクリプトキサンチン、ルビキサンチン、ビオラキサンチン、ロドキサンチン、カンタキサンチン、ゼアキサンチン、シトラナキサンチン、アスタキサンチン、ベタニン、アントシアニン、サフラン、炭酸カルシウム、二酸化チタン、酸化鉄、水酸化鉄、アルミニウム、銀、金-ルビン色素、タンニン、オルセイン、グルコン酸第一鉄、乳酸第一鉄である。
【0114】
さらに、緩衝液は液体製剤、特に医薬用液体製剤に好ましい。緩衝剤、緩衝系および緩衝液、特に水溶液の用語は、酸または塩基の添加、または溶媒による希釈によるpH変化に抵抗する系の能力を指す。好ましい緩衝系は、ギ酸塩、乳酸塩、安息香酸塩、シュウ酸塩、フマル酸塩、アニリン、酢酸塩緩衝液、クエン酸塩緩衝液、グルタミン酸塩緩衝液、リン酸塩緩衝液、コハク酸塩、ピリジン、フタル酸塩、ヒスチジン、M.フタル酸塩、ヒスチジン、MES(2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸)、マレイン酸、カコジル酸塩(ヒ酸ジメチル)、炭酸、ADA(N-(2-アセトアミド)イミノ二酢酸)、PIPES(4-ピペラジン-ビス-エタンスルホン酸)、BIS-TRISプロパン(1,3-ビス[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノール]プロパン)、エチレンジアミン、ACES(2-[(アミノ-2-オキソエチル)アミノ]エタンスルホン酸)、イミダゾール、MOPS(3-(N-モルフィノ)プロパンスルホン酸)、マロン酸ジエチル、TES(2-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アミノエタンスルホン酸)、HEPES(N-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N’-2-エタンスルホン酸)、その他のpKが3.8~7.7である緩衝剤である。
【0115】
好ましいのは、酢酸緩衝液のような炭酸緩衝液、フマル酸塩、酒石酸塩、フタル酸塩のようなジカルボン酸緩衝液、クエン酸塩のようなトリカルボン酸緩衝液である。
【0116】
好ましい緩衝剤のさらなるグル-プは、水酸化硫酸塩、水酸化ホウ酸塩、水酸化炭酸塩、水酸化シュウ酸塩、水酸化カルシウムおよびリン酸塩緩衝剤のような無機緩衝剤である。好ましい緩衝剤の別のグル-プは、イミダゾール、ジエチレンジアミンおよびピペラジンのような窒素含有緩衝剤である。さらに好ましいのは、TES、HEPES、ACES、PIPES、[(2-ヒドロキシ-1,1-ビス-(ヒドロキシメチル)アミノ)-1-プロパンスルホン酸(TAPS)、4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-プロパンスルホン酸(EEPS)、MOPSおよびN,N-ビス-(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸(BES)のようなスルホン酸緩衝液である。好ましい緩衝剤の別の群は、グリシン、グリシル-グリシン、グリシル-グリシル-グリシン、N,N-ビス-(2-ヒドロキシエチル)グリシンおよびN-[2-ヒドロキシ-1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル]グリシン(トリシン)である。好ましいのはまた、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩、アスパラギン、グルタミン、システイン、メチオニン、プロリン、4-ヒドロキシプロリン、N,N,N-トリメチルリジン、3-メチルヒスチジン、5-ヒドロキシリジン、o-ホスホセリン、γ-カルボキシグルタミン酸、[ε]-N-アセチルリジン、[ω]-N-メチルアルギニン、シトルリン、オミチンおよびそれらの誘導体などのアミノ酸緩衝剤である。特に好ましいのはKHPO緩衝剤である。
【0117】
液体および/または固体剤形の保存剤は、必要に応じて使用することができる。これらは、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸ナトリウム、ソルビン酸カルシウム、メチルパラベン、エチルパラベン、メチルエチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム安息香酸カルシウム、パラオキシ安息香酸ヘプチル、パラオキシ安息香酸メチルナトリウム、パラオキシ安息香酸エチルナトリウム、パラオキシ安息香酸プロピルナトリウム、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウム、フェニルエチルアルコール、クレゾール、塩化セチルピリジニウム、クロルブタノール、チオメルサール(2-(エチルメルクリチオ)安息香酸ナトリウム)、二酸化硫黄、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸水素カルシウム、亜硫酸水素カリウム、ビフェニル、オルトフェニルフェノール、オルソフェニルフェノールナトリウム、チアベンダゾール、ナイシン、ナタマイシン、ギ酸、ギ酸ナトリウム、ギ酸カルシウム、ヘキサミン、ホルムアルデヒド、ジメチルジカーボネート、亜硝酸カリウム、亜硝酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、酢酸、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、ナトリウムジアセテート、酢酸カルシウム、酢酸アンモニウム、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、乳酸、プロピオン酸、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カルシウム、プロピオン酸カリウム、ホウ酸、四ホウ酸ナトリウム、二酸化炭素、リンゴ酸、フマル酸、リゾチーム、硫酸銅(II)、塩素、二酸化塩素、および当業者に公知の他の適切な物質または組成物を含む群から選んでもよい。
【0118】
十分な量の酸化防止剤を添加することが、液剤および局所剤形では特に好ましい。酸化防止剤の好適な例としては、メタ重亜硫酸ナトリウム、α-トコフェロール、アスコルビン酸、マレイン酸、アスコルビン酸ナトリウム、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、フマル酸または没食子酸プロピルが含まれる。好ましいのはメタ重亜硫酸ナトリウム、α-トコフェロール、パルミチン酸アスコルビルである。
【0119】
錠剤は通常、コーティングされている。フィルムコーティング、糖類による糖衣、圧縮コーティングなどがある。薬学的に許容されるワニスまたはワックス、HPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、MC(メチルセルロース)またはHPC(ヒドロキシプロピルセルロース)を使用することができる。このようなコーティングは、味をごマーカーしたり、飲み込みやすくしたり、識別しやすくしたりするのに役立つ。多くの場合、コーティングには可塑剤や顔料が含まれる。カプセルは通常、活性物質を包むゲル状の包材を持つ。このゼラチン層の組成と厚さによって、カプセル摂取後の吸収速度が決まる。特に興味深いのは、当技術分野で知られているように、徐放性製剤である。
【0120】
適切な甘味料は、マンニトール、グリセロール、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、シクラメート、イソマルト、イソマルチトール、サッカリンおよびそのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、スクラロース、アリテーム、タウマチン、グリチルリチン、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、ステビオール配糖体、ネオテーム、アスパルテーム・アセスルファム塩、マルチトール、マルチトールシロップ、ラクチトール、キシリトール、エリスリトールを含む群から選択することができる。
【0121】
適切な増粘剤は、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デキストリン、ポリデキストロース、変性デンプン、アルカリ変性デンプン、漂白デンプン、酸化デンプン、酵素処理デンプン、リン酸モノスターチ、トリメタリン酸ナトリウムまたはオキシ塩化リンでエステル化されたリン酸ジスターチ、リン酸ジスターチ、アセチル化リン酸ジスターチ、無水酢酸でエステル化した酢酸デンプン、酢酸ビニルでエステル化した酢酸デンプン、アセチル化アジピン酸ジスターチ、アセチル化グリセリンジスターチ、ジスターチグリセリン、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシプロピルジスターチグリセリン、ヒドロキシプロピルジスターチホスフェート、ヒドロキシプロピルジスターチグリセロール、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、アセチル化酸化デンプン、ヒドロキシエチルセルロースを含む群から選択することができるが、これらに限定されない。
【0122】
液体製剤に適したpH調整剤は、例えば水酸化ナトリウム、塩酸、リン酸二水素ナトリウムやリン酸水素二ナトリウムなどの緩衝物質である。
【0123】
好適な酸度調整剤は、酢酸、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸二ナトリウム、酢酸カルシウム、二酸化炭素、リンゴ酸、フマル酸、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸カルシウム、乳酸アンモニウム、乳酸マグネシウム、クエン酸1、2、3ナトリウム、クエン酸1、2、3カリウム、クエン酸1、2、3カルシウム、酒石酸、酒石酸1、2ナトリウム、酒石酸ジカリウム、酒石酸ナトリウムカリウム、オルトリン酸、クエン酸レシチン、クエン酸マグネシウム、リンゴ酸アンモニウム、リンゴ酸ナトリウム、リンゴ酸水素ナトリウム、リンゴ酸カルシウム、リンゴ酸水素カルシウム、アジピン酸、アジピン酸ナトリウム、アジピン酸カリウム、アジピン酸アンモニウム、コハク酸、フマル酸ナトリウム、フマル酸カリウム、フマル酸カルシウム、フマル酸アンモニウム、1,4-ヘプトノラクトン、クエン酸トリアンモニウム、クエン酸第二鉄アンモニウム、グリセロリン酸カルシウム、クエン酸イソプロピル、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸第一鉄、硫酸アンモニウム、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸アルミニウムアンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化マグネシウム、グルコン酸を含む群から選択される。
【0124】
酸性化剤は、酸を生成するか、酸になる無機化学物質である。好適な例は、塩化アンモニウム、塩化カルシウムである。
【0125】
好適な溶媒は、水、炭酸水、注射用水、等張化剤入りの水、生理食塩水、等張食塩水、アルコール、特にエチルアルコールとn-ブチルアルコール、およびそれらの混合物を含む群から選択することができるが、これらに限定されない。
【0126】
好適なイソトニン化剤は、例えば薬学的に許容される塩、特に塩化ナトリウムや塩化カリウム、グルコースやラクトースなどの糖類、マンニトールやソルビトールなどの糖アルコール、クエン酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、およびそれらの混合物である。
【0127】
適切な崩壊剤は、デンプン、カルボキシメチルデンプンなどの冷水可溶性デンプン、メチルセルロースやカルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース誘導体、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウムなどの架橋微結晶セルロース、グアー、寒天、カラヤ(インドトラガカント)、ローカストビーンガム、トラガカントなどの天然および合成ガム、ベントナイトなどの粘土、キサンタンガム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウムなどのアルギン酸塩、発泡性組成物を含む群から選択することができる。水分の膨張は、例えばデンプン、セルロース誘導体、アルギン酸塩、多糖類、デキストラン、架橋ポリビニルピロリドンによってサポートされる。組成物中の崩壊剤の量は、1~40重量%、好ましくは3~20重量%、最も好ましくは5~10重量%である。
【0128】
滑沢剤は、それぞれのサプリメントの焼き付きを防止し、顆粒剤の流動特性を改善して、流動が滑らかで一定になるようにする材料である。適切な滑沢剤は、二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、デンプンおよびタルカムを含む。組成物中の滑沢剤の量は、重量当たり0.01~10%の間で変化し得、重量当たり0.1~7%の間が好ましく、重量当たり0.2~5%の間がより好ましく、重量当たり0.5~2%の間が最も好ましい。
【0129】
「潤滑剤」という用語は、錠剤、顆粒剤などがプレス金型または出口ノズルから放出されやすくするために剤形に添加される物質を指す。これらは摩擦または摩耗を減少させる。潤滑剤は通常、プレスの直前に添加される。潤滑剤は、顆粒の表面および顆粒とプレス金型の部品との間に存在すべきである。組成物中の潤滑剤の量は、重量当たり0.05~15%の間で変化してもよく、重量当たり0.2~5%の間が好ましく、重量当たり0.3~3%の間がより好ましく、重量当たり0.3~1.5%の間が最も好ましい。適切な潤滑剤は、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸マグネシウムなどの金属ステアリン酸塩、ステアリン酸、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ホウ酸、高融点を有するワックス、ポリエチレングリコールである。
【0130】
乳化剤は、例えば以下のアニオン性乳化剤および非イオン性乳化剤から選択することができる。アニオン性乳化剤ワックス、セチルアルコール、セチルステアリルアルコール、ステアリン酸、オレイン酸、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ヒマシ油および/または硬化ヒマシ油への2~60モルの酸化エチレンの添加生成物、ウールワックス油(ラノリン)、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリビニルアルコール、メタ酒石酸、酒石酸カルシウム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸カルシウム、アルギン酸プロパン-1,2-ジオール、カラギナン、加工ユーシュマ海藻、ローカストビーンガム、トラガカント、アカシアガム、カラヤガム、ジェランガム、ガティガム、グルコマンナン、ペクチン、アミド化ペクチン、アンモニウムホスファチド、臭素化植物油スクロースアセテートイソブチレート、木材ロジンのグリセリンエステル、リン酸二ナトリウム、二リン酸三ナトリウム、二リン酸四ナトリウム、二リン酸二カルシウム、二リン酸二水素カルシウム三リン酸ナトリウム、三リン酸五カリウム、ポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カルシウム、ポリリン酸カルシウム、ポリリン酸アンモニウム、β-シクロデキストリン、粉末セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルヒドロキシエチルセルロース、クロスカルメロース、酵素加水分解カルボキシメチルセルロース、脂肪酸のモノおよびジグリセリド、モノステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、脂肪酸のモノおよびジグリセリドの酢酸エステル、脂肪酸のモノおよびジグリセリドの乳酸エステル、脂肪酸のモノおよびジグリセリドのクエン酸エステル、脂肪酸のモノおよびジグリセリドの酒石酸エステル、脂肪酸のモノおよびジグリセリドのモノおよびジアセチル酒石酸エステル、脂肪酸のモノおよびジグリセリドの混合酢酸および酒石酸エステル、サクシニル化モノグリセリド、脂肪酸のショ糖エステル、スクログリセリド、脂肪酸のポリグリセロールエステル、ポリグリセロールポリリシノール酸エステル、脂肪酸のプロパン-1,2-ジオールエステル、脂肪酸のプロピレングリコールエステル、グリセロールとプロパン-1のラクチル化脂肪酸エステル、脂肪酸のモノおよびジグリセリドと相互作用した熱酸化大豆油、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、ステアロイル-2-ラクチル酸ナトリウム、ステアロイル-2-ラクチル酸カルシウム、酒石酸ステアリル、クエン酸ステアリル、フマル酸ステアロイルナトリウム、フマル酸ステアロイルカルシウム、酒石酸ステアリル、クエン酸ステアリル、フマル酸ステアロイルナトリウム、フマル酸ステアロイルカルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、エトキシル化モノおよびジグリセリド、メチルグルコシド-ココナッツ油エステル、モノステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、ポリリン酸カルシウムナトリウム、ポリリン酸カルシウム、ポリリン酸アンモニウム、コール酸、コリン塩、ジスターチグリセロール、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、アセチル化酸化デンプン。好ましいのは、モノオレイン酸グリセリン、ステアリン酸、レシチンのようなリン脂質。
【0131】
好適な表面活性可溶化剤(可溶化剤)は、例えばジエチレングリコールモノエチルエステル、ポリエチレンプロピレングリコール共重合体、α-およびβ-シクロデキストリンなどのシクロデキストリン、Solutol HS 15(BASFからのマクロゴール15-ヒドロキシステアレート、PEG660-15 ヒドロキシステアレート)などのグリセリルモノステアレート、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンオキシステアリン酸トリグリセリド、ポリビニルアルコール、ドデシル硫酸ナトリウム、(アニオン性)グリセリルモノオレエートである。
【0132】
安定剤は、望ましくない変化を防ぐために添加される物質である。安定剤は本物の乳化剤ではないが、エマルジョンの安定性に寄与することもある。安定剤の好適な例としては、オキシステアリン、キサンタンガム、寒天、オート麦ガム、グアーガム、タラガムが挙げられる、ステアリン酸ポリオキシエテン、アスパルテーム・アセスルファム塩、アミラーゼ、プロテアーゼ、パパイン、ブロメライン、フィシン、インベルターゼ、ポリデキストロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルポリピロリドン、クエン酸トリエチル、マルチトール、マルチトールシロップである。
【0133】
希釈剤または充填剤は、最小量の活性薬剤を取り扱うために薬剤に添加される不活性物質である。好適な希釈剤の例は、水、マンニトール、前ゼラチン化デンプン、デンプン、微結晶セルロース、粉末セルロース、珪化微結晶セルロース、二塩基性リン酸カルシウム二水和物、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール、キサンタンガム、アラビアガム、またはそれらの任意の組合せである。
【0134】
固結防止剤(付着防止剤)は、ダマの形成を防止し、少なくとも1つのチャンバーからの包装、輸送、分注キャップの放出および消費を容易にするために、サプリメントまたはサプリメントの組成物に添加することができる。好適な例としては、リン酸三カルシウム、粉末セルロース、ステアリン酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、フェロシアン化ナトリウム、フェロシアン化カリウム、フェロシアン化カルシウム、リン酸骨、ケイ酸ナトリウム、二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、三ケイ酸マグネシウム、タルカムパウダー、アルミノケイ酸ナトリウム、ケイ酸アルミニウムカリウム、アルミノケイ酸カルシウム、ベントナイト、ケイ酸アルミニウム、ステアリン酸、ポリジメチルシロキサンが含まれる。
【0135】
吸着剤は、水中の油を吸着する物質である。好適な例としては、ピートモス、おがくず、羽毛など、炭素を含む天然の吸着剤や、ポリエチレン、ナイロンなどの合成吸着剤が含まれる。吸着剤は、乾燥状態で限定的な流体収着(液体または気体を吸着により取り込むこと)により、錠剤/カプセルの防湿に使用される。
【0136】
一部のガレヌス製剤では、液体経口剤形が溶解時にいくらかの泡を生成することが望ましい場合がある。このような効果は、液体の表面張力を低下させ、気泡の形成を促進する発泡剤を添加することによって支持することができ、あるいは気泡の合体を阻害することによってコロイド安定性を高めることができる。あるいは、泡を安定化させることもできる。好適な例としては、ミネラルオイル、キラリアエキス、クエン酸トリエチル、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウムが含まれる。
【0137】
あるいは、液体経口剤形の中には、調製時にわずかに泡立って見えるものもある。これは所望の適用を妨げるものではないが、投薬の場合には患者のコンプライアンスに、栄養補助食品の場合には商業的成功に影響を及ぼす可能性がある。したがって、薬学的に許容される消泡剤(消泡剤)を添加することが望ましい場合がある。例えば、栄養補助食品ではポリジメチルシロキサンやシリコーンオイル、医薬品ではシメチコンがある。
【0138】
不透明化剤は、必要に応じて、液剤を不透明にする物質である。これらは、溶媒(多くの場合、水)とは実質的に異なる屈折率を持たなければならない。同時に、組成物の他の成分に対して不活性でなければならない。好適な例としては、二酸化チタン、タルク、炭酸カルシウム、ベヘン酸、セチルアルコール、またはそれらの混合物が含まれる。
【0139】
適切な脂溶性物質は、例えばオレイン酸デシルエステル、水和ヒマシ油、軽鉱油、鉱油、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムなどである。
【0140】
粘度向上剤は、例えばセチルアルコール、セチルエステルワックス、水和ヒマシ油、微結晶ワックス、非イオン性乳化剤ワックス、ミツロウ、パラフィンまたはステアリルアルコールである。
【0141】
好適なヒドロトロープは、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール、またはグリセリンなどのポリオールである。
【0142】
適切な芳香物質および香味物質は、特にこの目的に使用できるエッセンシャルオイルからなる。一般に、この用語は、それぞれの特徴的な匂いを持つ植物または植物の一部からの揮発性抽出物を指す。これらは、水蒸気蒸留によって植物または植物の一部から抽出することができる。
【0143】
好適な例は以下の通りである。アキレア、セージ、シダー、クローブ、カモミール、アニス、アニスシード、スターアニス、タイム、ティーツリー、ペパーミント、ミントオイル、メントール、シネオール、ボルネオール、ジンゲロール、ユーカリ、マンゴー、イチジク、ラベンダーオイル、カモミールの花、松葉、サイプレス、オレンジローズ、ローズウッド、プラム、カラント、チェリー、シラカバの葉、シナモン、ライム、グレープフルーツ、タンジェリン、ジュニパー、バレリアン、レモン、レモンバーム、レモングラス、パルマローザ、クランベリー、ザクロ、ローズマリー、ジンジャー、パイナップル、グアバ、エキナセア、ツタ葉エキス、ブルーベリー、カキ、メロン、α-またはβ-ピネン、α-ピネンオキシド、α-カンフォレニックアルデヒド、α-シトロネロール、α-イソアミル-桂皮、α-桂皮テルピネン、α-テルピネオール、α-テルピネン、アルデヒドC1e、α-フェランドレン、アミルシンナミックアルデヒド、アミルサリシレート、アニスアルデヒド、バジル、アネトール、ベイ、酢酸ベンジル、ベンジルアルコール、ベルガモン、ビターオレンジピール、ブラックペッパー、カラマス、樟脳、カナンガ油、カルダモン、カーネーション、カルバクロール、カルベオール、カッシア、ヒマシ、シダーウッド、シンナムアルデヒド、シンナミックアルコール、シス-ピナン、シトラール、シトロネラール、シトロネロールデキストロ、シトロネロール、酢酸シトロネリル、シトロネリルニトリル、柑橘類のウンシュウ、クラリセージ、クローブの芽、コリアンダー、トウモロコシ、綿の実、Dジヒドロカルボン、デシルアルデヒド、フタル酸ジエチル、ジヒドロアネトール、ジヒドロカルベオール、ジヒドロリナロール、ジヒドロミルセン、ジヒドロミルセノール、酢酸ジヒドロミルセニル;ジヒドロテルピネオール、ジメチルサリシレート、ジメチルオクタナール、ジメチルオクタノール、ジメチルオクタニルアセテート、ジフェニルオキシド、ジプロピレングリコール、d-リモネン、d-プルレゴン、エストラゴール、エチルバニリン、ユーカリプトールユーカリ・シトリオドラ、ユーカリ・グロブルース、オイゲノール、月見草、フェンチオール、フェンネル、フェルニオール、フィッシュ、フロラゾン、ガラクソリド、ゲラニオール、ゼラニウム、酢酸ゲラニル、ゲラニルニトリル、グアイアコール、グアイアックウッド、グルジュン・バルサム、ヘリオトロピンハーバネート、ヒバ、ヒドロキシシトロネラール、iカルボン、i-メチルアセテート、イオノン、イソブチルキノレイン、イソボルニルアセテート、イソボルニルメチルエーテル、イソオイゲノール、イソロンギフォレン、ジャスミン、ラベンダー、リモネン、リナロールオキシド、リナロール、リナロール、酢酸リナリル、亜麻仁、リトセア・クベバ、酢酸I-メチル、ロンギフォレン、マンダリン、メンタ、メンタンヒドロペルオキシド、メントール結晶、メントールラエボ、メントンラエボ、アントラニル酸メチル、メチルセドリルケトンメチルチャビコール、メチルヘキシルエーテル、メチルイオノン、サリチル酸メチル、ミネラル、ミント、ムスクアンブレット、ムスクケトン、ムスクキシロール、ミルセン、ネロール、酢酸ネリル、ノニルアルデヒド、ナツメグ、オリスルート、パラ-シメン、パラヒドロキシフェニルブタノン結晶、パチョリ、p-シメン、ペニーロイヤルオイル、ペッパー、ペリルアルデヒド、プチグレン、フェニルエチルアルコール、プロピオン酸フェニルエチル、フェニルエチル-2-メチルブチレート、ピメントベリー、ピメント葉、ピナンヒドロペルオキシド、ピナノール、パインエステル、パイン、ピネン、ピペロナール、ピペロニルアセテート、ピペロニルアルコール、プリノール、プリニルアセテート、プソイドイオノン、ロディノール、ロディニルアセテート、ロザリン、リュウ、サンダルウッド、サンデノール、サッサフラス、ゴマ、大豆、スペアミント、スパイス、スパイクラベンダー、スピラントール、スターフラワー、ティーシード、テルペノイド、テルピネオール、テルピノレン、酢酸テルピニル、酢酸tert-ブチルシクロヘキシル、テトラヒドロリナロール、テトラヒドロリナリルアセテート、テトラヒドロミルセノール、スラシ、チモール、トマト、トランス-2-ヘキセノール、トランス-アネトール、ウコン、ターペンタイン、バニリン、ベチバー、ビタリゼア、ホワイトシダー、ホワイトグレープフルーツ、ウィンターグリーンなど、またはそれらの混合物、またメントール、ペパーミントとスターアニスオイル、またはメントールとチェリーフレーバーの混合物。
【0144】
これらの芳香物質または香味物質は、組成物全体に関して、(特に組成物中)重量当たり0.0001~1O%、好ましくは0.001~6重量%、より好ましくは0.001~4重量%、最も好ましくは0.01~1重量%の範囲で含有させることができる。用途または単一のケースに関連して、異なる量を使用することが有利であり得る。
【0145】
本発明によれば、前述のすべての賦形剤および賦形剤のクラスは、本発明の使用が妨げられたり、毒性作用が生じたり、またはそれぞれの国内法に抵触したりしない限り、単独で、または考え得る任意の組合せで、制限なく使用することができる。
【0146】
本発明の別の態様において、本出願は、SARS-CoV-2感染の後遺症の予防または治療における経口投与のための製剤において使用するための、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つ、本発明による組成物または本発明による組合せに関する。
【0147】
5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つ、本発明による組成物または本発明による組合せの経口投与に適した医薬製剤は、錠剤、ソフトゼラチンカプセル、ハードゼラチンカプセル、糖衣錠または丸薬のような別個の単位、粉末または顆粒、水性または非水性液体中のジュース、シロップ、ドロップ、茶、溶液または懸濁液、食用フォームまたはムース、または水中油型または油中水型のエマルジョンとして投与することができる。
【0148】
錠剤やカプセルのような経口剤形では、活性薬剤をエタノール、グリセロール、水のような非毒性で薬学的に許容される不活性担体と組合せることができる。粉末は、化合物を適当な微粒子に粉砕し、同様の方法で医薬用担体、例えばデンプンやマンニトールのような食用炭水化物と混合することにより製造される。フレーバー、防腐剤、分散剤、着色剤などを添加することもできる。
【0149】
錠剤は、粉末混合物を製造、造粒または乾式圧縮し、滑沢剤および崩壊剤を添加し、混合物を錠剤にプレスすることにより製剤化される。粉末混合物は、適切に粉砕された化合物を、前述の希釈剤または基剤と、場合により、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチンまたはポリビニルピロリドンのような結合剤、例えばパラフィンのような溶解遅延剤、例えば第4級塩のような吸収促進剤、および/または例えばベントナイト、カオリンまたは第2リン酸カルシウムのような吸収剤と混合することにより製造される。粉末混合物は、例えばシロップ、デンプンペースト、アカシア粘液またはセルロースもしくはポリマー材料の溶液のような結合剤で湿らせ、篩を通して圧縮することにより造粒することができる。造粒の代替法として、粉末混合物を打錠機にかけて不均一な形状の塊を作り、それを砕いて顆粒を形成することもできる。顆粒は、錠剤鋳造用金型への付着を防止するために、ステアリン酸、ステアリン酸塩、タルクまたは鉱油を添加して潤滑させることができる。次いで、潤滑された混合物を圧縮して錠剤を得る。本発明による化合物は、流動性の不活性賦形剤と組合せることができ、造粒または乾式圧縮の工程を実施せずに直接圧縮して錠剤を得ることもできる。
【0150】
本発明の別の態様において、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つは、硬いゼラチンカプセルにより提供される。これらは、前述のように粉末混合物を製造し、それを成形ゼラチンカバーに充填することにより製造される。高分散シリカ、タルカム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムまたはポリエチレングリコールのような滑沢剤および潤滑剤を固体として粉末混合物に添加することができる。寒天、炭酸カルシウムまたは炭酸ナトリウムのような崩壊剤または可溶化剤も、カプセル摂取後の薬剤の利用可能性を改善するために添加することができる。さらに、望ましいか必要であれば、適切な結合剤および/または着色剤を混合物に加えることができる。
【0151】
本発明の別の態様において、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つは、ソフトゼラチンカプセル(SGC)に包含される。SGCは消化管を通過する際に溶解する。SGCは主にゼラチンで構成され、グリセロールやソルビタンなどの可塑剤が配合されている。放出速度はSGC担体材料の特定の配合に依存する。これらは活性剤の徐放にも適している。SGCは低水溶性の活性剤の投与に特に有用である。
【0152】
本発明の別の態様において、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つは、チュアブルー錠剤またはハードキャラメルに含まれる。ここで、物質は錠剤またはキャラメルのマトリックスに組み込まれる。
【0153】
本発明の別の態様において、本出願は、吸入投与用の製剤におけるSARS-CoV-2感染の後遺症の予防または治療に使用するための、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つ、本発明による組成物または本発明による組合せに関する。
【0154】
呼吸困難または肺機能異常を伴うSARS-CoV-2感染の後遺症の効果的な予防的または治療的処置のためには、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つ、本発明による組成物または本発明による組合せが、患者の下部気道、特に肺胞に到達することが有利である。したがって、粒子径は、肺組織の気道の最下部に到達するのに十分小さくなければならない。薬学的に活性な薬剤の吸入投与に最適な吸入装置のクラスは、上述したいわゆるメッシュネブライザーである。本出願の範囲では、咳や風邪のための、または嗜好的な目的のための単純な使い捨てのメッシュネブライザーから、下気道の重篤な疾患または状態の臨床的または家庭内治療のための洗練されたハイエンドのメッシュネブライザーまで、当技術分野で知られている実質的にすべてのメッシュネブライザーを使用することができる。
【0155】
好適な市販のメッシュネブライザー、ジェットネブライザー、超音波ネブライザー、ドライパウダー吸入器および(加圧式)定量吸入器は、限定するものではないが、PARI eFlow(登録商標)rapid、PARI LC STAR(登録商標)、PARI VeloxとPARI Velox Junior(PARI GmbH、ドイツ、シュタルンベルク)、Philips Respironics 1-nebとPhilips lnnoSpire Go(Koninklijke Philips N.V.、オランダ、エイントホーフェン)、VENTA-NEB(登録商標)-ir、OPTI-NEB(登録商標)M-neb(登録商標)dose mesh nebulizer inhalation MN-300/8、M-Neb FlowとM-neb(登録商標)mesh nebulizer MN-300/X(NEBU-TEC、ドイツ、アイセンフェルト)、Hcmed Deepro HCM―86CとHCM860(HCmed Innovations Co.,Ltd、台北、台湾)、OMRON MicroAir U22とU100(オムロン、日本、京都府)、Aerogen(登録商標)Solo、Aerogen(登録商標)UltraとAerogen(登録商標)PRO(Aerogen、アイルランド、ガルウェイ)、KTMED NePlus NE-SM1(KTMED Inc.、韓国、ソウル市)、Vectura Bayer Breelib(登録商標)(Bayer AG、ドイツ、レーバークーゼン)、Vectura Fox、MPV TrumaとMicroDrop(登録商標)Smarty(MPV MEDICAL GmbH、ドイツ、キルヒハイム)、MOBI MESH (APEX Medical、台湾、新北市)、B.Well WN-114、TH-134とTH-135(B.Well Swiss AG、スイス、ヴィナウ)、Babybelle Asia BBU01(Babybelle Asia Ltd.、香港)、CA-Ml Kiwiその他(CA-Ml sri、イタリア、ランギラーノ)、Diagnosis PRO MESH(Diagnosis S.A.、ポーランド、ビャウィストク)、DIGI 02(Digi02 International Co.、Ltd.、台湾、新北市)、feellife AIR PLUS、AEROCENTRE+、AIR 360+、AIR GARDEN、AIRICU、AIR MASK、AIRGEL BOY、AIR ANGEL、AIRGEL GIRLとAIR PRO 4(Feellife Health Inc.、中国、深セン市)、Hannox MA-02(Hannox International Corp.、台湾、台北市)、Health and Life HL100とHL100A(HEALTH & LIFE Co., Ltd.、台湾、新北市)、Honsun NB-810B(Honsun Co., Ltd.、中国、南通)、K-jump(登録商標)KN-9100(K-jump Health Co., Ltd.、台湾、新北市)、microlife NEB-800(Microlife AG、スイス、ヴィナウ)、OK Biotech Docspray(OK Biotech Co., Ltd.、台湾、新竹市)、Prodigy Mini-Mist(登録商標)(Prodigy Diabetes Care, LLC、米国、シャーロット)、Quatek NM211、NE203、NE320とNE403(Big Eagle Holding Ltd.、台湾、台北市)、Simzo NBM-1とNBM-2(Simzo Electronic Technology Ltd.、中国、東莞市)、Mexus(登録商標)BBU01とBBU02(Tai Yu International Manufactory Ltd.、中国、東莞市)、TaiDoc TD-7001(TaiDoc Technology Co.、台湾、新北市)、Vibralung(登録商標)とHIFLO Miniheart Circulaire II(Westmed Medical Group、米国、パーチェス)、KEJIAN(Xuzhou Kejian Hi-Tech Co., Ltd.、中国、徐州市)、YM- 252、P&S-T45とP&S-360(TEKCELEO、フランス、ヴァルボンヌ)、Maxwell YS-31(Maxwell India、インド、ジャイプール)、Kernmed(登録商標)JLN-MB001(Kernmed、ドイツ、ドゥルマースハイム)を含む。
【0156】
好ましいのは、ネブライゼーションプロセスを圧電的に活性化するメッシュネブライザーであり、それぞれ振動メッシュネブライザーである。
【0157】
したがって、本発明の別の態様において、本出願は、吸入投与用の製剤におけるSARS-CoV-2感染の後遺症の予防または治療に使用するための、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つ、本発明による組成物または本発明による組合せに関し、ここで、吸入投与は、振動メッシュネブライザーを用いて実施される。
【0158】
メッシュネブライザーは、患者との相互作用によって2つのグループに分類できる。連続モード装置とトリガー作動装置である。連続モードのメッシュネブライザーでは、ネブライズされたエアロゾルはマウスピースに連続的に放出され、患者は提供されたエアロゾルを吸入しなければならない。トリガー作動式装置では、定義された量のエアロゾルが、積極的で深い吸気時にのみ放出される。この方法では、連続モード装置よりもはるかに多量の活性剤含有エアロゾルが吸入され、気道の最深部に達する。後者では、エアロゾルの放出が呼吸サイクルと連動していないため、多量の活性剤含有エアロゾルが周囲に放出されるか、気道上部の通過時に失われる。
【0159】
したがって、トリガー作動式メッシュネブライザー、特に振動メッシュネブライザーが好ましい。
【0160】
特に好ましいのは、ネブライゼーションプロセスを圧電的に作動させるトリガー作動式メッシュネブライザーである。
【0161】
好ましいメッシュネブライザーは、PARI eFlow(登録商標)rapid、Philips Respironics 1-neb、Philips lnnoSpire Go、M-neb(登録商標)doseメッシュネブライザー吸入MN-300/8、Hcmed Deepro HCM-86CとHCM860、オムロンマイクロエアU100、Aerogen(登録商標)Solo、KTMED NePlus NE-SM1、Vectura Fox、Vectura Bayer Breelib(登録商標)である。
【0162】
最も好ましい振動メッシュネブライザーは、PARI eFlow(登録商標)rapid、PARI Velox、Philips Respironics 1-neb、M-neb(登録商標)dose mesh nebulizer inhalation MN-300/8、Aerogen(登録商標)Solo、Vectura Fox、Vectura Bayer Breelib(登録商標)などのハイエンドモデルである。
【0163】
平均液滴径は通常MMAD(中央質量空力直径)と呼ばれる。個々の液滴サイズはMAD(質量空気力学的直径)と呼ばれる。この値は、ネブライズされた粒子(液滴)の直径のうち、それぞれ50%が小さいか大きいかを示す。MMAD>10μmの粒子は通常、下気道に到達せず、しばしば喉に詰まる。MMADが5μm以上10μm未満の粒子は通常、気管支には到達するが肺胞には到達しない。MMADが100nmから1μmまでの微粒子は肺胞に沈着せず、すぐに吐き出される。したがって、最適な範囲はMMADが1μmから5μmの間である。最近の発表では、さらに狭い範囲である、3.0μmから4.0μmの間である(Amirav等(2010年)J Allergy Clin Immunol 25、1206-1211頁、Haidl等(2012年)Pneumologie 66、356-360頁参照)。
【0164】
さらに一般的に受け入れられている品質パラメータは、生成されたエアロゾルに含まれる粒子のうち、直径が1μm~5μmの範囲にある粒子の割合(FPM、微粒子質量)である。FPMは粒子分布の指標である。これは、生成されたエアロゾル中の直径が1μm未満の粒子の割合を、生成されたエアロゾル中の直径が5μm未満の粒子の割合(FPF、細粒分)から差し引くことによって計算される。
【0165】
本発明の別の態様において、本出願は、SARS-CoV-2感染の後遺症の予防または治療のための、本発明によるエアロゾルを製造するための方法であって、以下の工程を含む方法にも言及する。
【0166】
(a)5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つ、本発明による組成物または本発明による組合せ、および任意に少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む水溶液0.1ml~5mlをメッシュネブライザーのネブライゼーションチャンバーに充填する工程。
【0167】
(b)メッシュネブライザーのメッシュを80kHzから200kHzの周波数で振動させる工程。
【0168】
(c)メッシュネブライザーのメッシュ側に発生したエアロゾルをネブライゼーションチャンバーと反対側に排出する工程。
【0169】
振動メッシュネブライザーの振動周波数は、通常、80kHz~200kHz、好ましくは90kHz~180kHz、より好ましくは100kHz~160kHz、最も好ましくは105kHz~130kHzの範囲である(Chen等、The Aerosol Society、DDL2019、Gardenshire等(2017年)A Guide to Aerosol Delivery Devices for Respiratory Therapists,4th ed.参照)。
【0170】
従って、前述の方法は、前記振動周波数範囲でも開示されている。
【0171】
従って、本発明による方法は、前記水溶液中に含まれる少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも85重量%、最も好ましくは少なくとも90重量%の5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つ、本発明による組成物または本発明による組合せが、生成されたエアロゾル中でネブライジングされることを特徴とする。
【0172】
本発明の方法は、提供された水溶液から短時間に高い割合の薬学的に活性な薬剤をネブライジングするのに特に効果的である。これは患者の服薬遵守にとって重要な特徴である。患者集団のうちのかなりの割合が、吸入プロセスは不快で、疲れやすく、身体的に厳しいと感じる。一方、患者の積極的な協力は、効果的で的を絞った吸入投与に不可欠である。したがって、治療上十分な量をできるだけ短時間に吸入することが望まれる。驚くべきことに、3分間で水溶液中の物質の95%を吸入できることが示された。これは、患者の服薬遵守を高めるための理想的な時間である。
【0173】
したがって、本発明による方法は、生成されたエアロゾルの少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、最も好ましくは少なくとも90%が、メッシュネブライザーでネブライゼーションを開始してから3分の間に生成されることを特徴とする。
【0174】
薬学的に活性な薬剤は、通常、すべてのネブライゼーション手順のために1回分の投与量の容器で提供されるが、ネブライザーおよび/またはマウスピースは、一定の期間にわたって使用され、一定の間隔で交換する必要がある。ネブライザーとマウスピースは、ネブライゼーションのたびに洗浄することが推奨されている。しかし、ここで患者の服薬遵守を当然視することはできない。しかし、入念な洗浄の後でも、ネブライザー室、出口および/またはマウスピースには常にいくらかのエアロゾルが付着している。エアロゾルは水溶液から生成されるので、これらの残存物は、吸入されたエアロゾルを汚染するおそれのある、細菌のバイオバーデンを生成する危険性がある。残存物はまた、メッシュネブライザーのメッシュ膜の穴を塞ぐことがある。一般に、ネブライザーおよび/またはマウスピースは1~2週間毎に交換する必要がある。そのため、薬剤とネブライザーをセットで提供すると便利である。
【0175】
振動メッシュネブライザーは、抗生物質の投与において超音波ネブライザーやジェットネブライザーよりも良好な結果をもたらした。一定出力の振動メッシュネブライザーをYピースから10cmの吸気肢に設置し、特定の換気パラメータ(潮容積8ml/kg、呼吸数12c/min、デューティサイクル50%、30l/min以下の一定かつ低吸気流量、20%の吸気後の休止)を設定すると、投与された薬剤(セフタジジム、アミカシン)の63%が気管内チューブの入口に到達するのに対し、肺外沈着は37%であった(Lu et等(2011年)Am J Respir Grit Care Med 184:106-115頁)。ほとんどの場合、投与された薬剤は両肺に均等に分布する。ブタでは、吸入ガスに窒素(N/0)の代わりにヘリウム(He/0)を用いると、胸膜下肺標本中のセフタジジム濃度が上昇することが判明した(Tonnelier等(2005年)Anesthesiology 102:995-1000頁)。
【0176】
本発明のさらに別の態様では、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つ、本発明による組成物、またはSARS-CoV-2感染の後遺症の予防または治療に使用するための本発明による組合せであって、前記物質、組成物または組合せが、リポソーム、ミセル、マルチラメラベシクルまたはシクロデキストリン複合体の形態で適用される。5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはそのナトリウム塩のマルチラメラ小胞を製造する方法は、国際公開第2019/137825号に開示されている。
【0177】
本発明のさらに別の態様において、本出願は、舌下錠用の製剤におけるSARS-CoV-2感染の後遺症の予防または治療に使用するための、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つ、本発明による組成物または本発明による組合せに関する。
【0178】
本発明のさらに別の態様において、本出願は、液体剤形のSARS-CoV-2感染の後遺症の予防または治療に使用するための、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つ、本発明による組成物または本発明による組合せに関する。
【0179】
本出願は、静脈内注射、動脈内注射または腹腔内注射の形態によるSARS-CoV-2感染の後遺症の予防または治療における、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つ、本発明による組成物または本発明による組合せの非経口投与も開示する。
【0180】
これらの液体剤形は、溶液、懸濁液、乳剤を含む。例えば、非経口注射のための水溶液や水/プロピレングリコール溶液、あるいは経口溶液、懸濁液、乳剤のための甘味料や不透明化剤の添加等である。
【0181】
これらの液体剤形は、バイアル、輸液バッグ、アンプル、カートリッジ、プレフィルドシリンジなどに保存することができる。好適な賦形剤としては、可溶化剤、安定化剤、緩衝剤、張力調整剤、増量剤、粘度増強剤/低下剤、界面活性剤、キレート剤、アジュバントが含まれている。
【0182】
本発明のさらに別の態様では、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つ、本発明による組成物、またはSARS-CoV-2感染の後遺症の予防または治療に使用するための本発明による組合せであって、前記物質、組成物または組合せが凍結乾燥物として製剤化される。凍結乾燥物は、注射用水または生理食塩水または水/エタノール溶液で元に戻され、次いで注射により投与されることができる。
【0183】
静脈注射の代表的な適用形態には、輸液ポンプ、皮下注射針、点滴室、末梢カニューレ(末梢静脈カテーテル)、および加圧バッグが含まれる。
【0184】
一般に、水溶液または生理食塩水が好ましい。本発明による難溶性の医薬剤の場合には、エタノールまたはエタノール/水混合物を使用することもできる。
【0185】
さらに適切な液体剤形としては、点眼薬、点眼液、点耳薬がある。
【0186】
SARS-CoV-2はまず上気道、特に咽頭/喉頭部に感染する。後に肺に感染し肺炎を発症するのは、これらの患者のごく一部である。このような咽頭感染は通常、風邪のような軽い症状しか引き起こさないか、あるいはまったく症状を引き起こさないが、これらの患者はその環境に対して高い感染力を持つ。ほとんどの場合、患者は自分が感染を広げていることに気づいていない。したがって、コロナウイルス感染症がまだ咽頭の段階にあるときにすでに治療する医学的必要性があり、それは、そのような患者を治療するためだけでなく、疫学的な理由から、流行の拡大やこの感染症の後遺症の発生を防ぐためでもある。
【0187】
したがって、本発明のさらに別の態様において、本出願は、咽頭投与用の製剤におけるSARS-CoV-2感染の後遺症の予防または治療に使用するための、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つ、本発明による組成物または本発明による組合せに関する。
【0188】
咽頭への薬剤の投与は、滴下剤、ローション剤、チンキ剤などの適当な液体剤形、またはゲル剤、ヒドロゲル剤などの粘性剤形による咽頭/咽頭部のブラッシング、洗口剤によるうがい、舌下錠、トローチ、咽喉スプレー、または後咽頭壁注射などの局所投与によって行うことができる。
【0189】
ローションは、皮膚や粘膜に塗布することを目的とした粘度の低い外用剤である。ローションは、素手、ブラシ、清潔な布、綿毛などを使って皮膚や粘膜に塗布する。
【0190】
ローションの利点は、薄くのばすことができ、皮膚や粘膜の広い範囲をカバーできることである。ローションの形で投与できる代表的な薬物には、抗生物質、防腐剤、抗真菌剤、コルチコステロイド、抗アクネ剤、鎮静剤、平滑剤、保湿剤、保護剤、抗アレルギー剤などがある。
【0191】
ほとんどのローションは、セテアリルアルコールなどを用いて水中油型エマルジョンを形成しているが、油中水型ローションも処方されている。主な成分は、水相と油相、この2つの相の分離を防ぐための乳化剤、そして薬物である。ローションには、香料、グリセロール、ワセリン、色素、防腐剤、タンパク質、安定化剤など、さまざまな賦形剤が添加される。
【0192】
ローションの濃さ、コンシステンシー、粘度は、製造中に調整することができる。ローションの製造は、2つのサイクルにより行われる。(a)エモリエント剤と潤滑剤が、配合剤と増粘剤とともに油相に分散される。(b)香料、着色料、防腐剤が水相に分散される。薬学的な有効成分は、関係する原材料とローションに求められる特性に応じて、両方のサイクルで分解される。
【0193】
チンキ剤は通常、アルコール抽出物または製剤である。溶媒濃度25~60(あるいは90%)が一般的である。チンキを製造するための他の溶剤には酢、グリセリン、ジエチルエーテルおよびプロピレングリコールがある。エタノールは酸性とアルカリ性の両方の成分に対して優れた溶媒であるという利点がある。グリセリンを使用したチンキ剤はグリセライトと呼ばれる。グリセリンは一般的にエタノールよりも溶媒として劣る。酢は酸性であるため、アルカロイドを得るには良い溶媒であるが、酸性成分の溶媒としては劣る。
【0194】
ゲルとは、固体分散相が流体連続相と結合してネットワークを形成し、粘性の半剛体ゾルをもたらすコロイドである。ゲルの特性は、柔らかく弱いものから硬く丈夫なものまで様々である。ゲルは実質的に希薄な架橋系と定義され、定常状態では流動性を示さない。重量比では、ゲルの大部分は液体であるが、液体内の3次元架橋ネットワークにより固体のように振る舞う。ゲルに粘着性を与え、粘着性に寄与しているのは、液体内の架橋である。ゲルは、固体の媒体中に液体の分子が分散したものである。
【0195】
ハイドロゲルは親水性のポリマー鎖のネットワークで、水を分散媒体とするコロイドゲルとして見られることもある。親水性ポリマー鎖が架橋によってつなぎ合わされることで、3次元の固体となる。親水性ポリマー鎖は架橋によって結合しているため、ハイドロゲルネットワークの構造的完全性は高濃度の水によって溶解することはない。ハイドロゲルは高吸収性(90%以上水を含むこともある)の天然または合成高分子ネットワークである。ハイドロゲルはまた、かなりの水分を含んでいるため、天然組織と非常によく似た柔軟性を持っている。医療分野では、ハイドロゲルは化学系を内包することができ、pHの変化などの外的要因による刺激によって、ほとんどの場合ゲル-ゾルから液体状態への移行によって、特定の薬学的に活性な薬剤が環境中に放出される。
【0196】
適切なゲル形成剤は、寒天、アルギン、アルギン酸、ベントナイト、カルボマーカーラギナン、ヘクトライト、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボマーナトリウムからなる群から選択することができるが、これらに限定されない。
【0197】
洗口液は、口腔周囲筋の収縮および/または頭部の動きにより、受動的に口腔内に保持されるか、または口腔の周囲で飲み込まれる液体であり、頭を後ろに傾け、液体を口腔の奥で泡立て、うがいをすることができる。このようにして、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つ、本発明による組成物または本発明による組合せの水溶液またはアルコール溶液を製剤化し、咽頭に投与することができる。
【0198】
舌下薬物送達は、経口薬物送達と比較した場合、舌下投与された剤形が肝代謝をバイパスするため、代替となりうる。薬理学的効果の迅速な発現は、薬物、特に急性疾患の治療に使用される薬物に対してしばしば望まれる。舌下錠は速やかに崩壊し、通常、少量の唾液で十分であるため、より良好な溶解と生物学的利用能の向上と相まって剤形の崩壊を達成することができる。
【0199】
薬物は、脂質二重膜を通過できるほど親油性でなければならないが、一度脂質二重膜に入ると二度と移行しないほど親油性であってはならない。吸収の拡散モデルによると、脂質二重層を横切るフラックスは濃度勾配に正比例する。したがって、唾液溶解度が低いと吸収率は低くなり、逆もまた同様である。一般に、舌下用に製剤化された薬物は、拡散を促進するために分子量が500以下であることが理想的である。口腔内のpHは5.0~7.0と狭い。イオン化可能な薬物を製剤化する際に適切な緩衝剤を含めることで、水性唾液のpHをコントロールすることが可能になる。
【0200】
薬物の不快な味や匂いを避けるためには、味のマスキングが必要である。甘味料、香料、その他の味覚マスキング剤は不可欠な成分である。砂糖をベースとする賦形剤は唾液に速やかに溶解し、吸熱を生じる。
【0201】
これらは口の中で心地よい感覚を生み出し、他のフレーバーとともに舌下錠に最も適している。
【0202】
舌下錠を製造するための代表的な技術には、直接圧縮、圧縮成形、凍結乾燥、およびホットメルト押出成形が含まれる(Khan等(2017年)J Pharmaceut Res 16、257-267頁)。
【0203】
嚥下が避けられる場合、舌下錠による薬学的に活性な薬剤の投与は、局所的に咽頭/喉にも到達することができる。薬学的に活性な薬剤の吸収は、かなりの部分が咽頭粘膜を介して起こる。
【0204】
ロゼンジ(トローチ)は、収斂薬、消毒薬、消炎薬などを含むペーストを固めた小さな円盤状または菱形の物体で、口やのどの局所治療に使用される。ロゼンジの担持体またはベースは、通常、アカシアやトラガカント、黒または赤スグリから作られたフルーツペースト、バラのコンフェクション、トルーバルサムなどを混ぜて粘着性を高めた砂糖である。
【0205】
特に、本出願は、咽頭投与のための製剤におけるコロナウイルス感染の予防または治療に使用するための、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つ、本発明による組成物または本発明による組合せに関し、ここで、咽頭投与は、咽頭スプレーによって実施される。
【0206】
咽喉スプレーは、スプレーとしてのどに投与される薬用液体で、通常、のどの痛みや咳の治療のために使用される。
【0207】
咽喉スプレーには通常、局所麻酔薬(リドカイン、ベンゾカインなど)、消毒薬(クロルヘキシジン、塩化セチルピリジニウムなど)、ハーブエキス、またはそれらの組合せが含まれる。どのような製剤であれ、粘膜をさらに刺激する糖分やエタノールを多量に含んではならない。そして最後に、使用者が不快な後味を感じるべきではない。
【0208】
現在、標準的な咽喉スプレーは、1~30mlの液体製剤が入ったボトルに取り付けられた定量ポンプである。製剤はガラス製またはプラスチック製のボトルに充填され、ポンプはスクリュークロージャー、圧着式、または単にボトルネックにはめ込んで固定される。どのような固定方法を選んでも、使用者が持ち運んだり取り扱ったりする際に漏れがなく、密閉されていなければならない。通常、容器はガラス製かプラスチック製である。
【0209】
通常、咽喉スプレーポンプは、1回の作動で50~200μlの投与量を供給する。狙いを定めて投与する場合、ポンプにはノズルが長く伸びたアクチュエーターが装備される。ノズルの長さは30~70mmである。このような長い固定ノズルの方が患部を狙いやすいが、ユーザーが持ち運ぶにはかさばるため、折りたたみ式や旋回式のノズルを持つアクチュエーターが好まれる。
【0210】
あるいは、連続バルブを利用した装置もある。連続バルブは、アクチュエーターが押されている間、製剤がエアロゾル化されるため、的を絞った治療を提供するが、正確な投与はできない。一つの技術的解決策は、加圧されたヘッドスペースを持つ錫またはアルミ缶である。バルブを作動させると、バルブステムが押し下げられている限り、上昇した内圧によって製剤が缶から押し出される。
【0211】
関連するが、より洗練されたシステムとして、バッグ・オン・バルブ(BOV)システムがある。製品は袋の中に入れられ、袋と外缶の間の空間に推進剤(多くの場合、圧縮空気)が充填される。連続バルブが作動すると、製品は圧縮空気によって袋から絞り出される。BOVシステムは360°どの向きでも作動する。
【0212】
咽喉スプレー製剤には、非常に侵襲的で表面張力を低下させる成分が含まれている場合があるため、注意が必要である。スプレー性能の簡単なテストにより、製剤がシステムでエアロゾル化できること、送達されるスプレーパターンと粒子径が使用目的に適していることを確認することができる。
【0213】
スプレーパターンと液滴サイズ分布は、咽喉噴霧にとって最も重要なパラメータである。スプレーパターンとは、完全に拡散したスプレーの噴霧角度と噴煙の形状を表す用語である。液滴サイズは、レーザー回折法を使用してスプレーが完全に拡散した時点で特徴付けられる。下気道への液滴沈着を避けるため、微粒子(平均動径10μm未満の液滴)はできるだけ少なくする。
【0214】
最近、カラゲロースを主成分とする咽喉スプレーが登場し、ウイルスによる上気道感染症の予防が訴えられた。このプラットフォームの最初のポリマーはCarragelose(登録商標)で、呼吸器疾患を治療するための広範に活性のある抗ウイルス化合物である。この化合物は、湿潤効果に加えて、粘膜細胞上でのウイルスの結合を防ぐ。
【0215】
あるいは、出力速度が高く、上気道への沈着用に液滴サイズを調整した携帯用ネブライザーを使用することもできる。フェイスマスクを通して呼吸することで、上気道全体の粘膜に液滴を沈着させることができる(MarxとNadler(2018年)Drug Development & Delivery参照)。
【0216】
本発明のさらなる態様において、本出願は、鼻腔投与用製剤におけるSARS-CoV-2感染の後遺症の予防または治療に使用するための、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つ、本発明による組成物または本発明による組合せに関する。
【0217】
特に、経鼻投与は、点鼻スプレーまたは点鼻薬によって行われる。
【0218】
点鼻薬に使用される一般的な製剤タイプは、溶液、懸濁液、乳剤である。点鼻スプレー製剤は、水性、ヒドロアルコール性、または非水性のいずれであってもよい。システムのタイプに応じて、製剤には、溶媒および共溶媒、粘接着剤、pH緩衝剤、酸化防止剤、保存剤、浸透促進剤、懸濁化剤、界面活性剤などのさまざまな機能性賦形剤が含まれる。製剤タイプおよび選択される賦形剤の選択は、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つの溶解度および安定性、ならびに典型的な100μlスプレーで有効量を送達するのに必要な濃度によって決定される(KulkarniとShaw(2016年)Essential Chemistry for Formulators of Semisolid and Liquid Dosages,Elsevier内を参照)。前述のCarragelose(登録商標)技術は点鼻薬にも使用されている。
【0219】
点鼻薬も同様の処方で投与されるが、ディスペンサーを押すのではなく、滴下する。
【0220】
特に、本出願は、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つ、本発明による組成物または本発明による組合せであって、鼻腔投与用のSARS-CoV-2感染の後遺症の予防または治療における製剤において使用するためのものに関し、ここで、鼻腔投与は、点鼻スプレーまたは点鼻薬によって実施される。
【0221】
本発明のさらなる態様において、有効量の5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の1つ、本発明による組成物または本発明による組合せを、それを必要とする患者、またはSARS-CoV-2感染の後遺症を発症する危険性のあるSARS-CoV-2感染から回復した人に投与する、コロナウイルス感染の治療方法が開示される。
【0222】
(実施例1)
すべての実験および処理において、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩無水フォームIを使用する(MetrioPharm社提供、ChemCon社(ドイツ、フライブルーグ)で合成)。
【0223】
すべての実験および処理において、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩無水フォームIを使用する(MetrioPharm社提供、ChemCon社(ドイツ、フライブルーグ)で合成)。
(実施例1)
5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩はマウス腹膜マクロファージにおける炎症性サイトカイン分泌を減少させる。
【0224】
雌のC57B1/6マウス(6~8週齢)をEnvigo社(イタリア、ウディーネ、サン・ピエトロ・アル・ナティゾーネ)から購入し、標準的な実験室条件(特定病原体フリー)で飼育した。餌と水は自由摂取とした。動物の取り扱いおよび研究プロトコールは国際的ガイドラインに従った。
【0225】
3%チオグリコール酸培地(蒸留水中w/v、米国ミズーリ州セントルイス)をi.p.注射した4日後、Zhangらのプロトコール(Curr.Protoc.Immunol.2008年、第14章、14.1節)に従ってマウス腹膜マクロファージ(PM)を単離した。
【0226】
手短に言えば、19-Gの注射針に取り付けた30ccのシリンジを用い、完全培地(10%子牛胎児血清を含むDMEM/F12培地)10mlを腹腔内に注入し、その後洗浄液をゆっくり抜き取ることによって細胞を回収した。細胞をPBS(リン酸緩衝生理食塩水)で2回洗浄し、数を数えた。各マウスから合計3-4×10個のマクロファージを集めた。
【0227】
細胞の純度はフローサイトメトリー(CD14発現を使用)で確認し、単離したPMを一晩接着させた。LPS(リポ多糖)刺激(0.1μg/ml、Escherichia coli 055:B5、St Louis、米国、ミズーリ州)の1時間前に、細胞(総培地量1mlの24ウェルプレートでQ.Sx 106 cells/ウェル)を、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩のスカラー濃度(1mMから0.025mMの範囲)で前処理した。2回の独立した実験(それぞれ3匹のマウスからプールした細胞を使用)を行い、分泌サイトカインレベルをELISA法を用いてLPS刺激後24、48、72時間で測定した。
【0228】
5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩は非刺激マウスPMのサイトカイン分泌に影響を与えなかったが(データは示さず)、LPS誘導性炎症性サイトカイン濃度は5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩で前処理することにより減少した(図1)。詳細には、1mMの5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩は、TNF-α、IL-6、IL-12、IL-1-βの濃度をそれぞれ約40%、80%、60%、50%有意に低下させた。興味深いことに、すべてのサイトカインについて、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩の同様の効果が、48時間と72時間の培養後に観察された。さらに、これらの効果を2番目のマウス系統(Balb/c)のPMで検証したところ、1mMから0.25mMまでの6種類の濃度の5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩で明らかな用量依存性が観察された(データは示さず)。
【0229】
これらの実験は、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩による治療が、炎症性サイトカインの分泌を有意に減少させることを明確に示している。
【0230】
(実施例2)
5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩を、タバコの煙で刺激された、単離され、人工呼吸され、灌流されたマウスの肺系で試験した。
【0231】
単離・人工呼吸・灌流マウス肺系(ILU)は、肺実質と血管系に対する様々な条件や薬剤の急性影響を研究するための確立されたモデルである。主に低酸素の影響を調べたり、低酸素肺血管反応に対する潜在的薬剤の有効性を評価したりするのに用いられる(Weissmann等(2006年)Proc Natl Acad Sci USA 103、19093-19098頁参照)。この実験セットから得られた結果は、COPDの治療だけでなく、下気道のすべての炎症性疾患の治療に役立つと考えられる。
【0232】
C57BL/6Jマウス(n=25、各群5匹、雄/雌、3~6ヶ月、20~30g、Charles River GmbH、ズルツフェルト、ドイツ)を、ヘパリン(50I.E.ヘパリン/g体重、Ratiopharm GmbH、ドイツ、ウルム)を含むケタミン(100mg/kg体重)およびキシラジン(20mg/kg体重)腹腔内注射(Ceva Tiergesundheit GmbH、ドイツ、デュッセルドルフ)で麻酔した。肺と心臓を胸腔から取り出し、ILUシステムに設置した(図2Aおよび2B参照)。肺は、隔離チャンバー内で正常酸素ガス(21%0、5%CO、74%N、PEEP(呼気終末陽圧)3cmH0で毎分150回)を用いて換気し、修正Krebs-Henseleit緩衝液(120.0mMのNaCl、4.3mMのKCI、1.1mMのKHP0、2.4mMのCaCl、1.3mMのMgCl、13.14mMのグルコース、0.25mMのヒドロキシエチルデンプン200000/0.5、7.37~7.40の一定pH範囲に調整した25.0mMのNaHCO、800mMのL-アルギニン、Serag-Wissner GmbH&Co.KG、ドイツ、ナイラ)を37℃の温度で使用した。肺重量、右心室圧、左心室圧、および人工呼吸圧は、実験手順の全期間にわたってモニターされ、記録された。5-10分後、肺が適切に洗浄され、すべてのパラメータが安定した時点で、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩を150μlのストック溶液を添加して15mlの循環灌流バッファーに投与した。この物質は、タバコの煙を最初にかける10分前に塗布した。タバコの煙は、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩を含む緩衝液で肺を灌流しながら、気管から適用した。タバコの煙は、タバコ1本(米国ケンタッキー大学の研究用タバコ3R4F)を1l/分の流速で1分間燃焼させ、タバコの煙から水分を除去するために5gのシリカゲルを入れた1lガラス瓶に回収した。タバコの煙50mlを注射器で採取し、5分間かけて深呼吸(3~4秒の周期的膨張)で気管(図4A)を介して肺に導入した。肺の損傷を避けるため、吸気圧を注意深くモニターしながら手動で行った。タバコの煙の導入は、1時間の休憩を挟んで3回繰り返された。
【0233】
5つの治療グループ(それぞれn=5)が調査された。
【0234】
A:室内空気暴露
B:タバコの煙+希釈液(緩衝液)
C:タバコの煙+0.5mM 5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩
D:タバコの煙+1mM 5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩
E:タバコの煙+2mM 5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩
【0235】
5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩結晶型Iを、上記の必要濃度で注射用水(担体)に溶解した。ストック溶液を注射用水で調製した。修正Krebs Henseleit緩衝液(上記参照)でさらに1:100希釈を行った。ストック溶液は、適切な分量を-70℃で保存した。必要量のストック溶液を解凍し、すぐに使用できるように対応するワーキング溶液を調製した。
【0236】
3回目のタバコの煙を吸った1時間後に肺をシステムから取り出し、ホルマリン溶液を12~15cmHOの圧力で(気管から)室温で2時間膨張させて固定した。その後、固定した肺をPBS(リン酸緩衝生理食塩水、下記参照)中で4℃に保ち、さらに脱水してパラフィン包埋した。パラフィンブロックを厚さ3μmに切り出し、37℃で一晩乾燥させ、3-ニトロチロシン(3-NT)で染色した。
【0237】
タバコの煙に含まれる毒素や有害物質は、活性酸素種(ROS)と活性窒素種(RNS)を劇的に増加させた。酸化ストレスとニトロソ化ストレスは、炎症性肺疾患の重症度と相関している。酸化ストレスは炎症反応を高め、タンパク質分解活性と抗タンパク質分解活性のバランスを崩し、アポトーシス細胞の数を増やし、増殖を低下させる。これらのオキシダントは抗酸化防御を圧倒し、様々なメカニズムで炎症を引き起こすことができる(ForonjyとD‘Armiento(2006年)Clinical and Applied Immunology Reviews 6、53-72頁)。最も強力なRNSであるペルオキシナイトライト(ONOO)は、一酸化窒素(NO)とスーパーオキシドアニオンラジカル(0 )の反応によって形成される(Szabo等(2007年)Nat Rev Drug Discov 6、662-680頁)。ONOOは好ましくはタンパク質中のチロシン残基を攻撃し、安定な付加体3-ニトロチロシンを形成する(Ricciardolo等(2004年)Physiol Rev 84、731-765頁、Seimetz等(2011年)Cell 147、293-305頁、Tsoumakidou等(2005年)Chest 127、1911-1918頁)。喀痰タンパク質中の3-NTレベルは、COPD患者のFEV1と負の相関があることが見出されている(Ricciardolo等(2004年)Physiol Rev 84、731-765頁、Tsoumakidou等(2005年)Chest 127、1911-1918頁)。ニトロ化チロシン残基は細胞シグナル伝達を変化させることから、3-NTはニトロソ化ストレスのマーカーであるだけでなく、炎症性気道疾患の病態生理と機能的な関係がある可能性が示唆されている(Davis等(2002年)J Virol 76、8347-8359頁、MurataとKawanishi(2004年)Biochem Biophys Res Comm 316、123-128頁、Sugiura等(2004年)Free Radie Res 38:49-57頁)。3-NTは、気道の過敏性および上皮損傷に寄与し(Tsoumakidou等(2005年)Chest 127、1911-1918頁)、気道リモデリングの確立に主要な役割を果たすことが提案されている(Ichinose等(2000年)Am J Respir Grit Care Med 162、701-706頁)。
【0238】
3-ニトロチロシンの免疫組織化学的染色は、以下のプロトコールに従って行われた。
【0239】
培養時間 試薬/条件 プロセス
60分 59℃ デパラフィン
3×10分 キシロール
2×5分 エタノール 99.6%
5分 エタノール 96% 再水和
5分 エタノール 70%
20分 メタノール中6%過酸化水素
4×3分 アクアデスト
45分 Rodent decoakerバッファー(10×)でクッキング 抗原回収
30分 クーリングダウン
ウォッシュ アクアデスト
2×5分 PBS pH7.4
60分 10%BSA+1:1000 DR Feブロック
4×5分 PBS pH7.4 ブロッキング
30分 ネズミM
2×5分 PBS pH7.4
一晩+4℃ 1次抗体(nTyr Sigma)1:200 DR 染色
4×5分 TBS pH7.2
20分 プストブロックAP
2×5分 TBS pH7.2
30分 ポリマーAPキット(ウサギ/マウス)
3×5分 TBS pH7.2
1分 アクアデスト
5-10分 ワープレッド
ウォッシュ TBS pH7.2
2分 ヘマトキシリン 1:10 DR
ウォッシュ アクアデスト
1分 PBS pH7.4
5分 PBS 1:1000内DAPI
2×2分 PBS pH7.4
- Dako Fluorescent Mounting Medium カバー
【0240】
キシロールはCarl Roth GmbH+Co.KG、ドイツ、カールスルーエから購入した。エタノール(96%および99.6%)は、Otto Fischar GmbH % Co.KG、ドイツ、ザールブリュッケンから購入した。エタノール(70%)はSAV Liquid Production GmbH、ドイツ、フリンツバッハ・アム・インから購入した。過酸化水素はMerck KGaA、ドイツ、ダルムシュタットから購入した。メタノール、ウシ血清アルブミン(BSA)、DAPI(4’,6-ジアミジノ-2-フェニリドン)および抗ニトロチロシン抗体(N0409、バッチ、120M4825)は、Sigma-Aldrich Co.Rodent decloaker buffer(10×)とWarp Red Chromogen KitはBiocare Medical,Pacheco、米国、カリフォルニア州から購入した。Tris wash buffer (TBS)、CAT hematoxylin staining solution、AP Polymer System(マウス/ウサギ)はZytomed Systems GmbH、ドイツ、ベルリンから購入した。Dako Fluorescent Mounting MediumはDako North America Inc.、Via Real Carpinteria、米国カリフォルニア州、TruStain fcX(抗マウスCD16/32、DR Fcブロック)は、BioLegend Inc.、米国、カリフォルニア州、サンディエゴから購入した。PBS(リン酸緩衝生理食塩水)は、8g/lの塩化ナトリウム(Carl Roth GmbH + Co.KG、ドイツ、カールスルーエ)、0.2g/lの塩化カリウム(Carl Roth GmbH + Co.KG、ドイツ、カールスルーエ)、1.42g/lのリン酸水素二ナトリウム(Merck KGaA、ドイツ、ダルムシュタット)、および0.27g/lのリン酸二水素カリウム(Merck KGaA、ドイツ、ダルムシュタット)で調製した。
【0241】
染色された組織学的サンプルは盲検下で光学顕微鏡により分析された。肺実質中の3-ニトロチロシン濃度は、染色表面積に対するパーセンテージとして定量した。
【0242】
定量は、無作為に選んだ5~10フィールドにおいて、200倍の倍率で行い、太い気管支と血管は除外した。グループ間の比較は、Bonferroni補正を用いた一元配置分散分析(ANOVA)により行った。p<0.05の差を統計的に有意とみなした。
【0243】
タバコの煙を気管から曝露すると、曝露した肺の隔膜中の3-ニトロチロシン(図3B)が、対照である室内空気(図3A)と比較して有意に増加した。5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩は、タバコの煙の適用前に灌流バッファーに添加され、実験中ずっと保持された。タバコの煙による3-ニトロチロシンの生成は、1mMの5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩を含む緩衝液で灌流した肺ではほぼ完全に消失した(図3D)または2mMの5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩(図3E)を含む緩衝液で灌流した肺では、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩の濃度が最も低い場合(0.5mM、図3C)は中程度の効果しか得られなかった。
【0244】
染色の定量化
【0245】
結果を図4に棒グラフで示す。数値(平均±SEM)は、評価した組織標本(1群あたりマウス5匹、マウス1匹あたり5-6個の評価組織標本)における染色面の割合を示す。
【0246】
この実験から、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩による前処理は、ILUモデルの肺実質におけるタバコの煙誘発性3-ニトロチロシン形成を防ぐと結論づけることができる。
【0247】
このことから、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩には、タバコの煙による急性肺障害に対する保護作用があることが示唆された。したがって、これらの結果は5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンおよびその薬学的に許容される塩が、すべての炎症性肺疾患の吸入予防および/または治療において有益な効果を示すことを予測させるものとみなすことができる。
【0248】
(実施例3)
慢性疲労患者の治療
【0249】
SARS-CoV-2感染から回復した患者が慢性疲労を発症した。SARS-CoV-2感染から回復後、4週間以上にわたって、肉体的・精神的疲労の症状が続く。些細な身体的負荷の後、急激な疲労が起こる。
【0250】
この患者に5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩300mg/日を4週間にわたって投与された。10日後に症状の持続的な減弱が観察された。
【0251】
(実施例4)
呼吸困難患者の治療
【0252】
SARS-CoV-2感染からの回復後、患者が呼吸困難を発症した。感染から回復して3週間以上経過すると、軽い運動負荷で息切れの症状が持続する。長時間の歩行はもう不可能で、土手で回復休憩をするのみである。
【0253】
この患者に5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩300mg/日を4週間にわたって投与した。1O日後、身体能力の継続的な改善が観察された。
【0254】
(実施例5)関節痛患者の治療
SARS-CoV-2感染からの回復後、患者は呼吸困難を発症した。SARS-CoV-2感染から回復した後、4週間にわたって膝と手首に持続的な痛みがあった。標準的な鎮痛剤では、痛みは部分的にしか緩和されなかった。
【0255】
この患者に対して、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩300mg/日を4週間にわたって投与した。10日後に関節痛の持続的な軽減が観察された。

図1
図2A
図2B
図3
図4
【国際調査報告】