(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-15
(54)【発明の名称】線虫抑制
(51)【国際特許分類】
A01G 13/00 20060101AFI20240408BHJP
A01G 22/22 20180101ALI20240408BHJP
A01G 22/50 20180101ALI20240408BHJP
【FI】
A01G13/00 Z
A01G22/22 Z
A01G22/50
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562673
(86)(22)【出願日】2022-04-08
(85)【翻訳文提出日】2023-12-07
(86)【国際出願番号】 US2022024113
(87)【国際公開番号】W WO2022221146
(87)【国際公開日】2022-10-20
(32)【優先日】2021-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519099058
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ アグリカルチュラル ソリューションズ シード ユーエス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マッカーヴィル,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ダウム,ジュリア
(72)【発明者】
【氏名】サライヴァ,ロドリゴ,モレイラ
【テーマコード(参考)】
2B022
2B024
【Fターム(参考)】
2B022AB20
2B024AA01
(57)【要約】
本開示は、線虫抑制方法に関する。また、線虫感受性植物の収量を増大させる方法が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所在場所において線虫集団を抑制する方法であって:
所在場所において線虫耐性植物を育てること
を含み、前記線虫耐性植物を育てることは、前記線虫耐性植物の育成の間の、及び/又はそれを超える期間、前記所在場所において線虫集団を抑制するか、又は前記所在場所における前記線虫集団の抑制を維持する、方法。
【請求項2】
前記期間は、前記線虫耐性植物が育った育成シーズン後の1つ以上の育成シーズンに及ぶ、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記線虫耐性植物を育てた後に、前記所在場所において二次植物を育てることをさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記所在場所において前記線虫耐性植物を育てる前に、前記所在場所において二次植物を育てることをさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
二次植物と同時に前記線虫耐性植物を育てることをさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記二次植物は線虫感受性植物である、請求項3~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記線虫集団は、検出限界以下で抑制又は維持される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記二次植物はブラキアリア(Brachiaria)属であり、前記線虫集団の前記抑制は、線虫の数が根1グラムあたり60匹、約60匹、又は約60匹未満である場合に達成される、請求項3~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記二次植物はトウモロコシであり、前記線虫集団の前記抑制は、線虫の数が根1グラムあたり300匹、約300匹、又は約300匹未満である場合に達成される、請求項3~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記二次植物はワタであり、前記線虫集団の前記抑制は、線虫の数が根1グラムあたり60匹、約60匹、又は約60匹未満である場合に達成される、請求項3~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記二次植物はモロコシであり、前記線虫集団の前記抑制は、線虫の数が根1グラムあたり250匹、約250匹、又は約250匹未満である場合に達成される、請求項3~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記二次植物が育てられる前記所在場所における前記線虫集団の前記抑制は、前記二次植物が育てられる前記所在場所と比較可能な所在場所における根1グラムあたりの線虫数とを比較して、根1グラムあたりの線虫数の5%の引下げ、約5%の引下げ、又は少なくとも約5%の引下げが存在する場合に達成される、請求項3~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
線虫損傷又は損害から線虫感受性植物を保護する方法であって:
前記線虫感受性植物を植え付ける前に少なくとも1つの育成シーズンにて所在場所において線虫耐性植物を育てることと;
前記線虫耐性植物を育てた後に少なくとも1つの育成シーズンにて前記所在場所において線虫感受性植物を育てることと
を含む方法。
【請求項14】
線虫感受性植物の収量を増大させる方法であって:
前記線虫感受性植物を植え付ける前に少なくとも1つの育成シーズンにて所在場所において線虫耐性植物を育てることと;
前記線虫耐性植物を育てた後に前記少なくとも1つの育成シーズンにて前記所在場所において線虫感受性植物を育てることと
を含む方法。
【請求項15】
前記線虫感受性植物の収量の増大は、最近の輪作サイクルの間に前記線虫耐性作物が育てられていなかった同じ又は比較可能な所在場所において育てられた前記線虫感受性植物の収量と比較される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記線虫感受性植物は、多年草又は一年草である、請求項3~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記線虫感受性植物は、ダイズ植物、トウモロコシ植物、ワタ植物、キャノーラ植物、サトウキビ植物、ジャガイモ植物、コムギ植物、野菜植物、イネ植物、アルファルファ植物、オオムギ植物、モロコシ植物、エンバク植物、ライムギ植物、キャッサバ植物、サツマイモ植物、ヒマワリ植物、果実植物、果樹園植物(例えば、果実又は堅果のなる木)、観賞植物、又はブドウの木である、請求項3~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記線虫耐性植物は、殺線虫Cryタンパク質を発現する、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記線虫耐性植物は、ダイズ植物、トウモロコシ植物、ワタ植物、キャノーラ植物、サトウキビ植物、テンサイ植物、ジャガイモ植物、コムギ植物、イネ植物、アルファルファ植物、オオムギ植物、モロコシ植物、エンバク植物、ライムギ植物、キャッサバ植物、サツマイモ植物、ヒマワリ植物、野菜植物、果実植物、観賞植物、果樹園植物(例えば、果実又は堅果のなる木)、又はブドウの木である、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記線虫は、ネグサレセンチュウ(Pratylenchus)属種線虫集団、例えば、プラティレンクス・ブラキウルス(Pratylenchus brachyurus)、ネコブセンチュウ(Meloidogyne)属種、シストセンチュウ(Heterodera)属種、例えばダイズシストセンチュウ(Heterodera glycines)、グロボデラ(Globodera)属種、ニセフクロセンチュウ(Rotylenchulus reniformis)、ヘリコチレンクス(Helicotylenchus)属種、例えばヘリコチレンクス・ディヒステラ(Helicotylenchus dihystera)、スクテロネマ・ブラキウルス(Scutellonema brachyurus)、ツビザバ・ツザウア(Tubixaba tuxaua)、又はイネシンガレセンチュウ(Aphelencoides besseyi)から選択される線虫種である、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記ネグサレセンチュウ(Pratylenchus)属種は、プラティレンクス・ブラキウルス(Pratylenchus brachyurus)である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
線虫集団密度が抑制された所在場所であって、前記線虫集団密度の抑制は、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法によって達成される、所在場所。
【請求項23】
以下の利益:
a.前記所在場所は、輪作サイクル毎の1つの育成シーズンで休閑の状態にある必要はない;
b.前記所在場所は、輪作サイクル毎に1育成シーズンで耕される必要はない;及び
c.前記所在場所は、被覆作物が植え付けられる必要はない
の1つ以上を提供する、請求項22に記載の所在場所。
【請求項24】
前記線虫集団密度の抑制は、根1グラム(g)あたり250、200、150、100、50、20、若しくは10匹、約250、200、150、100、50、20、若しくは10匹、又は約250、200、150、100、50、20、若しくは10匹未満である、請求項22又は23に記載の所在場所。
【請求項25】
請求項22~24のいずれか一項に記載の所在場所において育てられる線虫耐性植物。
【請求項26】
請求項25に記載の植物から収穫される植物素材。
【請求項27】
請求項25に記載の植物によって生産される種子。
【請求項28】
所在場所の使用の増大のための系であって:
第1の育成シーズンにおいて所在場所で線虫耐性植物を育てることと;
以降の育成シーズンにおいて前記所在場所で線虫感受性植物を育てることと
を含む系。
【請求項29】
前記所在場所は、以降の育成シーズンの間に休閑されない、請求項28に記載の系。
【請求項30】
被覆植物又は被覆作物が、前記以降の育成シーズンの間、育てられない、請求項28に記載の系。
【請求項31】
前記線虫耐性植物及び前記線虫感受性植物は、連続する育成シーズンにおいて育てられる、請求項28に記載の系。
【請求項32】
前記線虫耐性植物及び前記線虫感受性植物は各々、固有の価値作物植物である、請求項28に記載の系。
【請求項33】
輪作系を向上させる方法であって:
第1の育成シーズンの間に所在場所において線虫耐性植物を育てることと;
以降の育成シーズンの間に前記所在場所において線虫感受性植物を育てることと
を含み、前記第1の育成シーズンの間に前記所在場所において前記線虫耐性植物を育てることは、前記以降の育成シーズンにおいて前記線虫感受性植物の育成を可能にするか、又は向上させる、前記所在場所における前記線虫集団の抑制をもたらす、方法。
【請求項34】
前記輪作系の向上は、以下:
a.毎年の少なくとも1つの追加の育成シーズンのための前記所在場所の使用;
b.前記所在場所の耕作の減少;
c.線虫駆除剤による線虫感受性作物種子の処理の減少;
d.前記線虫感受性植物の前記育成シーズン前の、若しくはその間の線虫駆除剤による前記所在場所の処理領域の減少;
e.前記線虫感受性植物の前記育成シーズン前に、若しくはその間に線虫感受性植物及び/若しくは前記所在場所に散布される線虫駆除剤の割合の低下;
f.前記育成シーズンの間に前記線虫感受性植物及び/若しくは前記所在場所になされる線虫駆除剤の散布の回数の減少;
g.前記所在場所の有用性の増大;
h.前記所在場所の価値の増大;
i.持続可能な農業実践の向上;並びに/又は
j.前記線虫感受性作物の収量の増大
の1つ以上をさらに含み得る、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
所在場所についての線虫管理の方法であって:
第1の育成シーズンにおいて所在場所で線虫耐性植物を育てることであって、前記所在場所において線虫集団を抑制するか、又は前記所在場所における前記線虫集団の抑制を維持する、第1の育成シーズンにおいて線虫耐性植物を育てることと;
同じ、又は以降の育成シーズンにおいて前記所在場所で線虫感受性植物を育てることと;
前記線虫集団が抑制されなければ予想される健康状態及び/又は収量と比較して、前記線虫感受性植物の健康状態及び/又は収量の向上を達成することと
を含む方法。
【請求項36】
前記線虫感受性植物の前記健康状態の向上は、以下:根発育の向上(例えば、根又は根毛の成長の向上);収量の向上;より速い出芽;ストレス耐性の増大及び/若しくはストレスからの回復の向上が挙げられる植物ストレス管理の向上;機械的強度の増大;旱魃耐性の向上;真菌、細菌、及び/若しくはウイルス病感染の引下げ;又はそれらのあらゆる組合せの1つ以上を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
輪作系を市場に出す方法であって:
第1の育成シーズンの間の線虫耐性植物の使用を促進することと;
同じ、又は以降の育成シーズンの間の所在場所における線虫感受性植物の使用を促進することと
を含み、前記第1の育成シーズンの間に前記所在場所において前記線虫耐性植物を育てることは、以降の育成シーズンにおいて前記線虫感受性植物の育成を可能にするか、又は向上させる、前記所在場所における線虫集団の抑制をもたらす、方法。
【請求項38】
前記以降の育成シーズンは、前記第1の育成シーズンに直近である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
以降の育成シーズンの間に所在場所において線虫感受性植物を育てることと協働するか、又はそのことが続く、第1の育成シーズンの間に線虫耐性植物を育てる輪作系に関するマーケティング素材であって、前記第1の育成シーズンの間に前記所在場所において前記線虫耐性植物を育てることは、前記線虫感受性植物の育成を可能にするか、又は向上させる、前記所在場所における前記線虫集団の抑制をもたらす、マーケティング素材。
【請求項40】
前記マーケティング素材は、前記輪作系の促進に関する、請求項39に記載のマーケティング素材。
【請求項41】
所在場所についての線虫管理の方法であって:線虫耐性植物を所在場所において、二次作物を前記所在場所において育てる前に、それと同時に、又はその後に育てることを含む方法。
【請求項42】
前記線虫耐性植物は、配列番号1に対する配列同一性が少なくとも95、96、97、98、又は少なくとも99%である殺線虫Cryl4Abタンパク質を発現する、請求項1~21、33~38、又は41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記線虫耐性植物は、エリートイベントEE-GM5を含む、請求項1~21、33~38、又は40~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記線虫耐性植物は、エリートイベントEE-GM4を含む、請求項1~21、33~38、又は40~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記線虫耐性植物は、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)毒素Cry14Ab-1を発現する、請求項22~24のいずれか一項に記載の所在場所、請求項25に記載の線虫耐性植物、請求項26に記載の植物素材、請求項27に記載の種子、請求項28~32のいずれか一項に記載の系、又は請求項39若しくは40に記載のマーケティング素材。
【請求項46】
前記線虫耐性植物は、エリートイベントEE-GM5を含む、請求項22~24のいずれか一項に記載の所在場所、請求項25に記載の線虫耐性植物、請求項26に記載の植物素材、請求項27に記載の種子、請求項28~32のいずれか一項に記載の系、又は請求項39若しくは40に記載のマーケティング素材。
【請求項47】
前記線虫耐性植物は、エリートイベントEE-GM4を含む、請求項22~24のいずれか一項に記載の所在場所、請求項25に記載の線虫耐性植物、請求項26に記載の植物素材、請求項27に記載の種子、請求項28~32のいずれか一項に記載の系、又は請求項39若しくは40に記載のマーケティング素材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる2021年4月13日出願の米国仮特許出願第63/174,191号明細書の、35U.S.C§1.19(e)に従う優先権の利益を主張する。
【0002】
本開示は、線虫抑制方法に関する。また、線虫感受性植物の収量を増大させる方法が提供される。
【0003】
電子的に提出される素材の参照による組込み
本出願は、本開示の別個の部分として、その全体が参照によって組み込まれて、以下のように特定されるコンピュータ可読形態の配列表を含有する:ファイル名:202662_Seqlisting.txt;サイズ15,423バイト;作成日:2022年3月21日。
【背景技術】
【0004】
線虫は、土中の水の膜及び他の生物内の湿った組織が挙げられる、湿った表面上又は液体環境中で生きる、活発な、順応性のある、細長い生物である。線虫の多くの種が、植物及び動物の非常に成功した寄生虫であるように進化しており、農業及び家畜においてかなりの経済的損失を、及びヒトにおいて罹患率及び死亡率を担っている(Whitehead(1998)Plant Nematode Control.CAB International,New York)。
【0005】
寄生性の線虫は、全ての主要な作物に広がる推定平均12%の年間損失に基づいて、全世界で年780億ドルを超す園芸及び農業業界のコストを費やすと推定される。例えば、線虫が、毎年全世界のおよそ32億ドルのダイズ損失の原因となると推定されている(Barker et al.(1994)Plant and Soil Nematodes:Societal Impact and Focus for the Future.The Committee on National Needs and Priorities in Nematology.Cooperative State Research Service,US Department of Agriculture and Society of Nematologists)。植物寄生性線虫は、果物及び蔬菜、繊維作物(例えばワタ)、観賞植物、並びに芝草の重要な有害生物であることに加えて(Current Nematode Threats to World Agriculture.In:J.Jones et al.(eds.)Genomics and Molecular Genetics of Plant-Nematode Interactions,Springer Science+Business Media B.V.2011)、トウモロコシ、オオムギ、モロコシ、エンバク、ライムギ、イネ、ジャガイモ、キャッサバ、サツマイモ、コムギ、ダイズ、ナタネ、及びヒマワリが挙げられる、世界中で主要な全食品の有害生物である(Nicol et al.(2011))。
【0006】
線虫が、作物及び植物の収量、成長、及び健康に影響を及ぼすことが知られている。幼虫及び/又は成虫の線虫に起因する宿主植物の根の生理学的変化は、こぶの形成の原因となる虞があり、これは、植物の根の維管束系の破壊を引き起こす。根の伸長が完全に停止する虞があり、これがおそらく、根系の縮小によってもたらされる水及び栄養の不十分な供給に終わり、葉萎黄病及び/又は立枯れ病を引き起こし、且つ成長を妨げ、これらはいずれも、低い収量又は死に終わる虞がある。加えて、線虫は、植物が普通であれば抵抗する細菌及び/又は菌類が挙げられる細菌及び/又は菌類の攻撃に対する植物の根の感受性の増大の原因となる生理学的作用を引き起こす虞がある。そのような攻撃は、広範囲にわたる二次衰退及び腐敗の原因となる虞がある。
【0007】
根病変線虫プラティレンクス・ブラキウルス(Pratylenchus brachyurus)は、いよいよ重大なダイズの病原体となった。これは、宿主範囲が広く、熱帯及び亜熱帯地域、とりわけブラジル、アフリカ、及び米国南部において広く分布する。プラティレンクス・ブラキウルス(Pratylenchus brachyurus)は、ブラジルのCerrado地域におけるダイズ、トウモロコシ、及びワタ栽培者の間で懸念になっており、当該地域におけるダイズの主な線虫病原体と考えられている。ダイズにおいて、この線虫は、収量を30~50%引き下げ得、より大きな損害が、砂質の土壌で観察されている。
【0008】
栽培的、生物学的、及び化学的防除にまたがるいくつかの方法が、線虫管理のために展開され得る。宿主-植物耐性(栽培的防除の形態)が、一貫して最も有効且つ対費用効果の高い管理方法であった。しかしながら、宿主-植物耐性は、多くの線虫種、とりわけプラティレンクス・ブラキウルス(Pratylenchus brachyurus)のような移動性の寄生虫に利用できない。また、遺伝が複雑である(すなわち、同義遺伝子が包含される)か、望ましくない農学形質も与えられるか、又は耐性に打ち勝つことができる有害生物生物型が存在するならば、宿主-植物耐性は、その採択において制限され得る。他の栽培的防除戦術として、植物隔離、輪作、及び耕作が挙げられる。植物隔離は、侵入性有害生物種を保有する虞があるか、又はその増大を促進する虞がある植物部分のインポート及び移動を制限する。植物隔離は、線虫を国又は地域の中に入れないようにすることができるが、ブラジルにおけるP.ブラキウルス(P.brachyurus)のように、一旦線虫種が国又は地域内に広く分布すると、そのような隔離は適当でない。
【0009】
輪作は、単一の位置においてシーズン全体にわたって多数の作物の育成を変更する実践である。輪作は、宿主範囲が制限された線虫有害生物に対して有効な管理戦略である。線虫の宿主範囲は、線虫種の生存及び生殖を支持することができる植物と定義される。P.ブラキウルス(P.brachyurus)等の多くの移動性の有害生物は、とりわけ宿主範囲が広く、非宿主への輪作を非実用的なものにしている。ブラジルにおけるP.ブラキウルス(P.brachyurus)の場合、ダイズと輪作される主要な実用作物は全て、適切な宿主である。クロタラリア・スペクタビリス(Crotalaria spectabilis)及びクロタラリア・オクロレウカ(Crotalaria ochroleuca)等の限られた数の被覆作物だけが、非宿主である。しかしながら、これらの被覆作物は、市場性の高い穀物又は飼草の収量を提供しないので、経済的なリターンのない植物にかかるコストに相当する。畑を一シーズンの間休ませたままにすることが、非宿主被覆作物を植え付けることに類似する別の戦略である。畑を休ませたままにすることで、被覆作物を植え付けるコストが除外される一方、これは、土壌侵食等の潜在的に望ましくない生態学的結果の固有のリスクを示す。また、ほとんどの線虫は、適切な宿主が植え付けられるまで、休閑中の畑において長期生存を可能にする休止状態を経ることができる。P.ブラキウルス(P.brachyurus)の場合、寄主植物の不在下で、生存が90日超の間維持され得る(Ribeiro et al.,Heliyon 6:e05075,2020)。最後に、耕作は、潜在的な線虫防除戦術であるが、土壌健康の理由で無耕墾農法農業を実践している農家には利用可能でない。耕作は、物理的撹乱を介した、植え付けるための土壌の準備である。ブラジルのCerrado地域におけるほとんどのダイズ畑地は、無耕墾農法の実践下で耕作される(すなわち、機械的耕作が、育成シーズン中に、又は作付けシーズンの間に起こらない)。また、耕作は、様々な線虫種に逆の効果を及ぼし得る。ダイズシストセンチュウ(Heterodera glycines)及びP.ブラキウルス(P.brachyurus)が、Cerrado地域における多くの畑において同時に発生する。耕作は、ダイズシストセンチュウ(H.glycines)の発生(Workneh et al.,Phytopathology 89:844-850,1999)、蔓延(Gavassoni et al.,Phytopathology 91:534-545,2001)、及びそれ由来の損傷を増大させる虞がある一方、2~3ラウンドの深い耕作が、いくつかの生産系においてネグサレセンチュウ(Pratylenchus)属種集団を引き下げるのに必須である(Khan et al.,(2021)Emerging Important Nematode Problems in Field Crops and Their Management.In:Singh K.P.,Jahagirdar S.,Sarma B.K.(eds)Emerging Trends in Plant Pathology.Springer,Singapore)。
【0010】
線虫用の生物的防除は、容易にうまく扱われない。線虫抑制性の特徴がある真菌及び細菌の種子処理が、最近開発された。通常、これらの種子処理は、多くの場合育成シーズンの早期の部分に限られる、追加のコスト、中程度の有効性、環境にかかる可変的パフォーマンス、及び保護の短いウィンドウが挙げられるいくつかの限界がある(Dias-Arieira et al.,Journal of Phytopathology 166:722-728,2018)。
【0011】
植物寄生性線虫を防除する化学的手段が、十分な宿主植物耐性を欠いている多くの作物にとって不可欠であり続ける。しかしながら、化学剤の活性は多くの場合、選択的でなく、及び、有益な微生物集団の一時的崩壊が挙げられる、対象外の生物に悪影響が及ぶ虞がある。近年、多数の化学線虫駆除剤の登録は、撤回され、無効にされ、又はそれらの使用に制限がつき、畝内の線虫駆除剤の利用可能性を限定している(Fosu-Nyarko and Jones,In Advances in Botanical Research v73 doi:10.1016/bs.abr.2014.12.012,2015)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ゆえに、農業上重要な植物を損傷し、及び/又はこれに損害を与える線虫集団を防除する追加の手段が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
一態様において、本明細書中に記載されるのは、所在場所において線虫集団を抑制する方法であって、所在場所において線虫耐性植物を育てることを含み、線虫耐性植物を育てることは、線虫耐性植物の育成の間の、及び/又はそれを超える期間、所在場所において線虫集団を抑制するか、又は所在場所において線虫集団の抑制を維持する、方法である。一部の実施形態において、期間は、線虫耐性植物が育った育成シーズン後の1つ以上の育成シーズンに及ぶ。一部の実施形態において、方法はさらに、線虫耐性植物を育てた後の時点にて、所在場所において二次植物を育てることを含む。一部の実施形態において、方法はさらに、線虫耐性植物を育てる前の時点にて、所在場所において二次植物を育てることを含む。一部の実施形態において、方法はさらに、所在場所において二次植物と同時に線虫耐性植物を育てることを含む。
【0014】
一部の実施形態において、二次植物は、線虫感受性植物である。一部の実施形態において、線虫感受性植物は、多年草又は一年草である。一部の実施形態において、線虫感受植物は、ダイズ植物、トウモロコシ植物、ワタ植物、キャノーラ植物、サトウキビ植物、ジャガイモ植物、コムギ植物、野菜植物、イネ植物、アルファルファ植物、オオムギ植物、モロコシ植物、エンバク植物、ライムギ植物、キャッサバ植物、サツマイモ植物、ヒマワリ植物、果実植物、果樹園植物(例えば、果実又は堅果のなる木)、観賞植物、又はブドウの木である。一部の実施形態において、線虫集団は、検出限界以下で抑制又は維持される。更なる実施形態において、二次植物はブラキアリア(Brachiaria)属であり、線虫集団の抑制は、線虫の数が根1グラムあたり60匹、約60匹、又は約60匹未満である場合に達成される。一部の実施形態において、二次植物はトウモロコシであり、線虫集団の抑制は、線虫の数が根1グラムあたり300匹、約300匹、又は約300匹未満である場合に達成される。更なる実施形態において、二次植物はワタであり、線虫集団の抑制は、線虫の数が根1グラムあたり60匹、約60匹、又は約60匹未満である場合に達成される。一部の実施形態において、二次植物はモロコシであり、線虫集団の抑制は、線虫の数が根1グラムあたり250匹、約250匹、又は約250匹未満である場合に達成される。更なる実施形態において、二次植物が育てられる所在場所における線虫集団の抑制は、二次植物が育てられる所在場所と比較可能な所在場所における根1グラムあたりの線虫数と比較して、根1グラムあたりの線虫数の5%の引下げ、約5%の引下げ、又は少なくとも約5%の引下げが存在する場合に達成される。
【0015】
別の態様において、本明細書中に記載されるのは、所在場所についての線虫管理の方法であって、第1の育成シーズンにおいて所在場所で線虫耐性植物を育てることであって、所在場所において線虫集団を抑制するか、又は所在場所において線虫集団の抑制を維持する、第1の育成シーズンにおいて線虫耐性植物を育てることと;同じ、又は以降の育成シーズンにおいて所在場所で線虫感受性植物を育てることと;線虫集団が抑制されなければ予想される健康状態及び/又は収量と比較して、線虫感受性植物の健康状態及び/又は収量の向上を達成することとを含む方法である。
【0016】
一部の実施形態において、線虫耐性植物は、Cryタンパク質、例えば限定されないが殺線虫Cryタンパク質を発現する。一部の実施形態において、線虫耐性植物は、ダイズ植物、トウモロコシ植物、ワタ植物、キャノーラ植物、サトウキビ植物、テンサイ植物、ジャガイモ植物、コムギ植物、イネ植物、アルファルファ植物、オオムギ植物、モロコシ植物、エンバク植物、ライムギ植物、キャッサバ植物、サツマイモ植物、ヒマワリ植物、野菜植物、果実植物、観賞植物、果樹園植物(例えば、果実又は堅果のなる木)、又はブドウの木である。
【0017】
一部の実施形態において、線虫は、ネグサレセンチュウ(Pratylenchus)属種線虫集団、例えば、プラティレンクス・ブラキウルス(Pratylenchus brachyurus)、ネコブセンチュウ(Meloidogyne)属種、シストセンチュウ(Heterodera)属種、例えばダイズシストセンチュウ(Heterodera glycines)、グロボデラ(Globodera)属種、ニセフクロセンチュウ(Rotylenchulus reniformis)、ヘリコチレンクス(Helicotylenchus)属種、例えばヘリコチレンクス・ディヒステラ(Helicotylenchus dihystera)、スクテロネマ・ブラキウルス(Scutellonema brachyurus)、ツビザバ・ツザウア(Tubixaba tuxaua)、又はイネシンガレセンチュウ(Aphelencoides besseyi)から選択される線虫種である。一部の実施形態において、ネグサレセンチュウ(Pratylenchus)属種は、プラティレンクス・ブラキウルス(Pratylenchus brachyurus)である。
【0018】
一部の実施形態において、線虫感受性植物の健康状態の向上は、以下:根発育の向上(例えば、根又は根毛の成長の向上);収量の向上;より速い出芽;ストレス耐性の増大及び/若しくはストレスからの回復の向上が挙げられる植物ストレス管理の向上;機械的強度の増大;旱魃耐性の向上;真菌、細菌、及び/若しくはウイルス病感染の引下げ;又はそれらのあらゆる組合せの1つ以上を含む。
【0019】
また、提供されるのは、線虫損傷又は線虫損害から線虫感受性植物を保護する方法であって、線虫感受性植物を植え付ける前に少なくとも1つの育成シーズン、所在場所において線虫耐性植物を育てることと;線虫耐性植物の育成後に少なくとも1つの育成シーズン、所在場所において線虫感受性植物を育てることとを含む方法である。一部の実施形態において、線虫損害からの線虫感受性植物の保護は、収穫された線虫感受性植物素材の収量、又は収穫された線虫感受性植物素材のセールスから得る収益の増大を含む。
【0020】
また、提供されるのは、所在場所についての線虫管理の方法であって、所在場所において線虫耐性植物を育てることと;線虫耐性植物を育てた後の時点にて、所在場所において線虫感受性植物を育てることとを含む方法。一部の実施形態において、線虫感受性植物は多年草である。一部の実施形態において、線虫感受性植物は一年草である。
【0021】
別の態様において、本開示は、所在場所についての線虫管理の方法であって、線虫感受性植物と同時に所在場所において線虫耐性植物を育てることを含む方法を提供する。一部の実施形態において、線虫感受性植物は多年草である。一部の実施形態において、線虫感受性植物は一年草である。
【0022】
別の態様において、本開示は、所在場所についての線虫管理の方法であって、所在場所において、一年草又は多年草である線虫感受性植物を植え付けることと;線虫感受性植物を植えた後の時点にて、所在場所において線虫耐性植物を育てることとを含む方法を提供する。一部の実施形態において、線虫感受性植物は、野菜植物、果実植物、果樹園植物、観賞植物、又はブドウの木である。
【0023】
別の態様において、本開示は、線虫集団密度が抑制された所在場所であって、線虫集団密度の抑制は、本明細書中に記載される方法によって達成される、所在場所を提供する。また、所在場所において育てられる線虫耐性植物、当該植物から収穫される植物素材、及び当該植物によって生産される種子が提供され、所在場所は、(i)耕作を必要としない;(ii)被覆作物を必要としない;又は(iii)毎年、又は輪作サイクル毎の1つの育成シーズンで休閑の状態にある必要はない。一部の実施形態において、所在場所は、以下の利益:a.所在場所は、輪作サイクル毎の1つの育成シーズンで休閑の状態にある必要はない;b.所在場所は、輪作サイクル毎に1育成シーズンで耕される必要はない;及びc.所在場所は、被覆作物が植え付けられる必要はない、のうち1つ以上を提供する。一部の実施形態において、線虫集団密度の抑制は、根1グラム(g)あたり250、200、150、100、50、20、若しくは10匹、約250、200、150、100、50、20、若しくは10匹、又は約250、200、150、100、50、20、若しくは10匹未満である。
【0024】
本明細書中に記載される方法及び系は、(i)線虫を防除しようとして、輪作サイクルにおける少なくとも1つの育成シーズンの間、休閑中の状態にある必要も、耕される必要も、被覆作物を育てる必要もない、所在場所の使用の増大を可能にすること、且つ(ii)所在場所において線虫集団を抑制することによって所在場所の使用の成功をより高めるのを可能にすることによって、輪作系の利益及び価値を提供し、これらは、固有の価値のある線虫感受性植物の育成の成功及び収量の増大をもたらす。また、所在場所において育てられる線虫感受性植物、線虫感受性植物から収穫される植物素材(例えば、ワタ植物の場合、綿リント及び綿繊維)、及び線虫感受性植物によって生産される種子が提供される。
【0025】
別の態様において、本開示は、所在場所の使用の増大のための系であって、第1の育成シーズンにおいて所在場所で線虫耐性植物を育てることと;以降の育成シーズンにおいて所在場所で線虫感受性植物を育てることとを含む系を提供する。一部の実施形態において、線虫耐性植物及び第1の線虫感受性植物は各々、固有の価値作物植物である。一部の実施形態において、以降の育成シーズンにわたって、所在場所は、育成シーズンの間、休閑されない。一部の実施形態において、被覆植物又は被覆作物が、以降の育成シーズンの間に育てられない。一部の実施形態において、線虫耐性植物、第1の線虫感受性植物、及び第2の線虫感受性植物が、連続する3育成シーズンにおいて育てられる。一部の実施形態において、線虫耐性植物、第1の線虫感受性植物、及び第2の線虫感受性植物は各々、固有の価値作物植物である。
【0026】
さらに別の態様において、本開示は、輪作系を向上させる方法であって、第1の育成シーズンの間に、所在場所において線虫耐性植物を育てることと;以降の育成シーズンの間に、所在場所において線虫感受性植物を育てることとを含み、第1の育成シーズンの間に、所在場所において線虫耐性植物を育てることは、以降の育成シーズンにおいて線虫感受性植物の育成を可能にするか、又は向上させる、所在場所における線虫集団の抑制をもたらす、方法を提供する。一部の実施形態において、輪作系の向上は、以下:
a.毎年の少なくとも1つの追加の育成シーズンのための所在場所の使用;
b.所在場所の耕作の減少;
c.線虫駆除剤による線虫感受性作物種子の処理の減少;
d.線虫感受性植物の育成シーズン前の、若しくはその間の線虫駆除剤による所在場所の処理領域の減少;
e.線虫感受性植物の育成シーズン前に、若しくはその間に線虫感受性植物及び/若しくは所在場所に散布される線虫駆除剤の割合の低下;
f.育成シーズンの間に線虫感受性植物及び/若しくは所在場所になされる線虫駆除剤の散布の回数の減少;
g.所在場所の有用性の増大;
h.所在場所の価値の増大;
i.持続可能な農業実践の向上;並びに/又は
j.線虫感受性作物の収量の増大
の1つ以上をさらに含み得る。
【0027】
別の態様において、本開示は、所在場所についての線虫管理の方法であって:育成シーズンの間に所在場所において線虫耐性植物を育てることと;育成シーズンの前に、その間に、及び/又はその後に、所在場所において多年草を育てることとを含み、所在場所において線虫耐性植物を育てることは、多年草の育成を可能にするか、又は向上させる、所在場所における線虫集団の抑制をもたらす、方法を提供する。
【0028】
一部の態様において、本開示は、輪作系を市場に出す方法であって:第1の育成シーズンの間の線虫耐性植物の使用を促進することと;同じ、又は以降の育成シーズンの間の所在場所における線虫感受性植物の使用を促進することとを含み、第1の育成シーズンの間に所在場所において線虫耐性植物を育てることは、以降の育成シーズンにおいて線虫感受性植物の育成を可能にするか、又は向上させる、所在場所における線虫集団の抑制をもたらす、方法を提供する。一部の実施形態において、以降の育成シーズンは、第1の育成シーズンに直近である。
【0029】
更なる態様において、本開示は、以降の育成シーズンの間に所在場所において線虫感受性植物を育てることと協働するか、又はそのことが続く、第1の育成シーズンの間に線虫耐性植物を育てる輪作系に関するマーケティング素材であって、第1の育成シーズンの間に所在場所において線虫耐性植物を育てることは、線虫感受性植物の育成を可能にするか、又は向上させる、所在場所における線虫集団の抑制をもたらす、マーケティング素材を提供する。一部の実施形態において、マーケティング素材は、輪作系の促進に関する。
【0030】
一部の態様において、所在場所についての線虫管理の方法が提供され、方法は:線虫耐性植物を所在場所において、二次作物を所在場所において育てる前に、それと同時に、又はその後に育てることを含む。一部の実施形態において、線虫耐性植物は、配列番号 1に対する配列同一性が少なくとも95、96、97、98、又は少なくとも99%である殺線虫Cryl4Abタンパク質を発現する。一部の実施形態において、線虫耐性植物は、エリートイベントEE-GM5を含む。更なる実施形態において、線虫耐性植物は、エリートイベントEE-GM4を含む。本開示の態様又は実施形態のいずれかにおいて、線虫耐性植物は、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)毒素Cry14Ab-1を発現する。本開示の態様又は実施形態のいずれかにおいて、線虫耐性植物は、エリートイベントEE-GM5を含む。本開示の態様又は実施形態のいずれかにおいて、線虫耐性植物は、エリートイベントEE-GM4を含む。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】プラティレンクス・ブラキウルス(Pratylenchus brachyurus)集団密度に及ぼすGMB151ダイズの効果を示すグラフである。プラティレンクス・ブラキウルス(Pratylenchus brachyurus)の集団密度を、P.ブラキウルス(P.brachyurus)集団密度が予測されるよりも高い3つの予測される高圧サイト及びSinop2サイトにて、GMB151ホモ接合性及びヌル接合性のダイズ株について推定した。GMB151トランスジェニックダイズ形質は、P.ブラキウルス(P.brachyurus)集団を有意に引き下げた。95%信頼区間は、ホモ接合性とヌル接合性の株間の推定される差異についての誤差棒によって表される。
【
図2】各研究サイトでのGMB151ホモ接合性とヌル接合性の株間のダイズ収量差異を示すグラフである。研究サイトが、最も低い~最も高いプラティレンクス・ブラキウルス(Pratylenchus brachyurus)集団密度まで配置されている。推定される収量差異についての誤差棒は、95%信頼区間を表す。GMB151形質は、P.ブラキウルス(P.brachyurus)集団密度が最も低い3つの位置にて、収量に影響を与えなかった。P.ブラキウルス(P.brachyurus)集団密度が最も高い3つのサイトにて、GMB151は、ダイズ収量を平均7.0bu/エーカー又は21%、有意に向上させた。
【
図3】実施例3に記載される実地試験植付けのダイアグラムを示す。ダイズを、safra(夏又は第1の作物)ダイズシーズンに植え付けた。5反復を、ランダム化完全ブロック設計の処理単位で植え付けた。safrinha(冬又は第2の作物)ワタ及びトウモロコシ試験を、ダイズ収穫後に植え付けた。safrinha作物試験を、収穫したsafraダイズ畝に対して垂直にsafrinha作物畝を走らせてダイズ試験地面の上部に植え付けた。また、safrinha作物試験設計は、1作物あたり3反復のみであるが、ランダム化完全ブロック設計を構成した。
【
図4】Rio Verde、Goias畑サイトにて2019年/20ブラジル育成シーズンにおいてGMB151ダイズによって実現されるプラティレンクス・ブラキウルス(Pratylenchus brachyurus)防除の量を示すグラフである。アスタリスクは、P<0.05での有意差を表す。
【
図5】Rio Verde、Goias畑サイトでの2019年/20育成シーズンについてのsafraダイズ及びsafrinhaトウモロコシ収量、並びに粗収益を示すグラフである。
【
図6】全ての実地試験サイトにわたる2019年/20ブラジル育成シーズンにおいてGMB151ダイズによって実現されるプラティレンクス・ブラキウルス(Pratylenchus brachyurus)防除を(safrinha作物における根1グラムあたりのプラティレンクス・ブラキウルス(Pratylenchus brachyurus)の量として)示すグラフである。
【
図7】全ての実地試験サイトにわたる2019年/20育成シーズンについてのsafrinhaトウモロコシ及びワタ収量を示すグラフである。
【
図9】プラティレンクス・ブラキウルス(Pratylenchus brachyurus)集団密度に及ぼすGMB151ダイズの効果を示すグラフである。プラティレンクス・ブラキウルス(Pratylenchus brachyurus)の集団密度を、49試験サイトにてGMB151ホモ接合性及びヌル接合性のダイズ株について推定した。GMB151トランスジェニックダイズ形質は、P.ブラキウルス(P.brachyurus)集団を有意に引き下げた。ホモ接合性及びヌル接合性の株の平均値の標準誤差が、誤差棒によって表される。
【
図10】収量に対してとられる48試験サイトの全体にわたるGMB151ホモ接合性とヌル接合性の株間のダイズ収量差異を示すグラフである。誤差棒は、処理平均についての標準誤差を表す。GMB151形質は、ダイズ収量を平均4.2bu/エーカー又は9%、有意に向上させた。
【
図11】代替線虫管理ツール及びその、safraダイズ作物におけるプラティレンクス・ブラキウルス(Pratylenchus brachyurus)集団密度に及ぼす効果を示すグラフである。線虫駆除剤種子処理及び畝内線虫駆除剤を、GMB151及びヌルダイズの双方に施用した。有意に大きな防除が、種子処理又は畝内線虫駆除剤によるよりもGMB151ダイズによって実現された。
【
図12】GMB151ダイズイベントとの比較における、耕作の栽培的線虫防除戦術の有効性及びその、プラティレンクス・ブラキウルス(Pratylenchus brachyurus)集団密度に及ぼす効果を示すグラフである。GMB151ダイズイベントは、safraダイズ作物における従来の耕作よりも有意に大きなプラティレンクス・ブラキウルス(Pratylenchus brachyurus)の防除を実現した。
【
図13】safrinha作物実地試験においてGMB151ダイズによって実現されるプラティレンクス・ブラキウルス(Pratylenchus brachyurus)防除を(safrinha作物における根1グラムあたりのプラティレンクス・ブラキウルス(Pratylenchus brachyurus)の量として)示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
植物寄生性線虫は、輪作(farming rotation or crop rotation)系において栽培される植物(「作物」又は「農学作物」と本明細書中で定義される)の多数の種を攻撃することができ、大集団密度を経時的に構築し得る。経済的に利益をもたらす(「商品作物」)と農家によって見られているか、又はそうでなければ農家にとって価値があるか、若しくは有用である(家畜飼料等)(全て「内在性価値」作物である)栽培植物、及び侵食から畑を保護するか、又は他の土壌健康に及ぼす有益性を提供するために単独で栽培される利益のない植物又は作物(「被覆作物」)は、ほぼ全て、多かれ少なかれ、線虫損傷に感受性である。特定の植物が、用いられ方に応じて、固有の価値作物でもあり得るし、利益のない作物でもあり得る。そのような植物の1つが、シグナルグラスとしても知られているブラキアリア(Brachiaria)属である。シグナルグラスは、牧草地作物(ゆえに内在性価値作物)として、又は牧畜に用いられない場合には利益のない被覆作物として育てられ得る。顕著に、商品作物、例えば、非限定の例として、ダイズ、ワタ、トウモロコシ、コムギ、サトウキビ、ジャガイモ、テンサイ、イネ、アルファルファ、オオムギ、モロコシ、エンバク、ライムギ、キャッサバ、サツマイモ、ヒマワリ、野菜、果実植物、果樹、堅果のなる木、観賞植物、ブドウの木、及びキャノーラは、線虫に感受性であり、線虫に起因する損傷又は損害が、収量をかなり引き下げて、農家の収入の引下げの原因となり得る。農家は、線虫有害生物が増殖する各作物における損傷及び損害を制御するのに有効な管理オプションを特定しなければならない。
【0033】
加えて、農家は、輪作又は作物継承順を調整して、連続する育成シーズンにおいて多数の感受性作物を育てるのを回避する必要がある場合がある。この問題は、多くの農学作物上で繁殖することができる宿主範囲が広い線虫が農家に示された場合、困難となり得る。最悪のシナリオでは、農家は、ほとんどの被覆作物を含む一部の線虫の非常に広い宿主範囲に起因して、利益のない商品作物を植え付けることを選んで、又はさらに悪いことに、畑を休ませたままにすることを選んで、経済的に有益な換金作物を植え付けることを断念することを強いられる場合がある。畑を休ませたままにしても、農家に限られた救済しかもたらさない。というのも、ほとんどの線虫は、寄主植物なしで長期間(>9ヵ月)生き残ることができるからである。線虫有害生物は単純に、農家が感受性作物を植え付けるまで、休止状態で存在することができる。
【0034】
農家は、加えて、線虫によって示される農学的困難の管理に悩んでいる。農家は、そのような困難が、環境全体を保護して、土壌侵食等の生態学的問題に対処させるつもりの他の要求に各農家が固執する必要があるというより大きな状況下で満たされなければならないことを考慮している。現在、線虫-管理実践及び他の農学的実践並びに要件が両立せず、農家に困難な選択を任せる事例が存在する。例えば、ネグサレセンチュウ(Pratylenchus)属種が、毎年複数回実行される耕作を介して管理され得る。しかしながら、耕作は、土壌侵食、水損失、有機炭素損失を促進し得、及び一般に、作物収量にとってあまり有利となり得ない。加えて、農家が線虫管理のために利益のない被覆作物を植え付ける用意があり得る状況ですら、線虫繁殖を制限する被覆作物は、より大きな土壌健康に及ぼす有益性、例えば有機炭素の増大を実現する被覆作物と同じでない場合がある(Amorim et al.,Journal of Agricultural Science 11:333-340,2019)。所在場所における線虫集団の増大を抑制するか、又は妨げる一方、農学作物の成長に対する干渉を制限するアプローチを含む線虫管理の方法が、農家にとって最も有益である。
【0035】
本開示は、所在場所(例えば、畑又はプロット)において育つ線虫耐性植物の殺線虫活性の利益が、線虫耐性植物が育てられる期間を越えて延長するという発見に基づく。所在場所において線虫耐性植物を育てることにより、所在場所において線虫集団が抑制されるか、又は所在場所における線虫集団の抑制が維持され、線虫集団の抑制又は線虫集団の抑制の維持は、線虫耐性植物の育成を超える期間、続く。したがって、一部の態様において、本開示は、所在場所についての線虫管理の方法を提供し、当該方法は:線虫耐性植物を畑において、二次植物を所在場所において育てる前に、それと同時に、又はその後に育てることを含む。
【0036】
一部の実施形態において、第1の育成シーズンにおいて所在場所(例えば、畑又はプロット)において育つ線虫耐性植物の殺線虫活性の利益(そのような殺線虫活性は、線虫の損害及び損傷から線虫耐性植物を保護する)はまた、同じ育成シーズンにおいて、又は以降の育成シーズンにおいて同じ所在場所で他の植物を単純に育てることによって、他のあらゆる植物(例えば、線虫耐性植物を含むか、又は含まない商品作物)にまで線虫保護を広げる。線虫耐性植物は、定期的(例えば、連続する育成シーズン、他の育成シーズン毎、第3の育成シーズン毎、第4の育成シーズン毎、第5の育成シーズン毎、その他)に育てられて、特定の所在場所における線虫の集団密度全体を引き下げるか、又は制御することができる。一部の実施形態において、線虫耐性植物は、育成シーズン毎に育てられる。一部の実施形態において、線虫耐性植物は、二次植物(例えば、線虫感受性植物)の育成シーズンに直近の育成シーズンにおいて育てられる。ゆえに、線虫耐性植物は、それ自体を線虫損傷から保護するだけでなく、同時に、又は後日、同じ所在場所において育てられる、線虫感受性植物が挙げられるあらゆる植物を保護する。
【0037】
本明細書中で用いられる用語「所在場所」は、植物を育てるのに適した位置を指す。例示的な所在場所として、ポット若しくは他のコンテナ、グリーンハウス若しくは他の含まれる位置、畑、丘、陸地のあらゆるプロット、果樹園、ブドウ園、又は植物を育てるのに適した他の環境が挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
本明細書中で用いられる用語「線虫耐性植物」は、線虫が植物と接触しているならば、線虫の移動、摂食、発育、繁殖、又は他の機能の減退をもたらす核酸を発現する植物を指す。一部の実施形態において、線虫耐性植物は、そのような核酸を発現するように分子生物学技術を介して操作されているか、又は操作された植物に由来する。限定されないが、線虫減退の一例として、線虫が線虫耐性植物の一部の摂取によって死滅する場合がある。一部の実施形態において、線虫耐性植物として、ダイズ植物、トウモロコシ植物、ワタ植物、キャノーラ植物、サトウキビ植物、テンサイ植物、ジャガイモ植物、コムギ植物、イネ植物、アルファルファ植物、オオムギ植物、モロコシ植物、エンバク植物、ライムギ植物、キャッサバ植物、サツマイモ植物、ヒマワリ植物、野菜植物、果実植物、観賞植物、果樹園植物(例えば、果実又は堅果のなる木)、又はブドウの木が挙げられるが、これに限定されない。
【0039】
本明細書中で用いられる用語「線虫感受性植物」は、線虫が植物と接触しているならば、線虫の移動、摂食、発育、繁殖、又は他の機能の減退に終わる核酸を発現しない植物を指す。当業者であれば、線虫が植物と接触しているならば、線虫の移動、摂食、発育、繁殖、又は他の機能の減退に終わる核酸を植物が発現するかに応じて、あらゆる植物が線虫耐性植物であり得るか、又は線虫感受性植物であり得ることを理解する。一部の実施形態において、線虫耐性植物は、そのような核酸を発現するように分子生物学技術を介して操作されているか、又は操作された植物に由来する。一部の実施形態において、線虫感受性植物として、ダイズ植物、トウモロコシ植物、ワタ植物、キャノーラ植物、サトウキビ植物、ジャガイモ植物、コムギ植物、野菜植物、イネ植物、アルファルファ植物、オオムギ植物、モロコシ植物、エンバク植物、ライムギ植物、キャッサバ植物、サツマイモ植物、ヒマワリ植物、果実植物、果樹園植物(例えば、果実又は堅果のなる木)、観賞植物、又はブドウの木が挙げられるが、これに限定されない。
【0040】
また、本開示は、所在場所における線虫耐性植物の育成が、所在場所における線虫集団密度の永続的な抑制に終わるという発見に基づく。線虫抑制は、所在場所において、又は別の意味がある領域において成長する植物根において、所在場所における線虫集団密度を確認することが挙げられるがこれに限定されないいくつかの方法により測定され得る。
【0041】
方法
本開示は、所在場所において線虫集団を抑制する方法に関し、当該方法は:所在場所において線虫耐性植物を育てることを含み、線虫耐性植物を育てることは、線虫耐性植物の育成の間の、及びそれを超える期間、所在場所において線虫集団を抑制する。一部の実施形態において、期間は、線虫耐性植物が育った育成シーズン後の1つ以上の育成シーズンに及ぶ。
【0042】
一部の実施形態において、方法はさらに、線虫耐性植物を育てた後の時点にて、所在場所において二次植物(あらゆる植物であり得る)を育てることを含む。一部の実施形態において、方法はさらに、線虫耐性植物を育てる前の時点にて、所在場所において二次植物を育てることを含む。一部の実施形態において、方法はさらに、所在場所において二次植物と同時に線虫耐性植物を育てることを含む。一部の実施形態において、二次植物は線虫感受性植物である。一部の実施形態において、線虫耐性植物は、二次植物が育てられる畝に隣接する畝において育てられる。一部の実施形態において、線虫耐性植物は、二次植物が育てられる畝と同じ畝において育てられる。一部の実施形態において、線虫耐性植物は、二次植物が育てられる畝に隣接する畝、及び二次植物が育てられる畝と同じ畝の双方において育てられる。本開示は、線虫耐性植物及び二次植物を育てるための当該技術において知られているあらゆる構成(例えば、同じ畝又は隣接する畝において育てられる;狭い畝幅対広い畝幅で育てられる;畑の端対畑の中央で育てられる;異なる畝と混在せずに育てられる)を企図する。一部の実施形態において、二次植物は線虫感受性植物である。
【0043】
また、本開示は、所在場所において線虫集団を抑制する方法に関し、当該方法は:所在場所において線虫耐性植物を育てることを含み、線虫耐性植物を育てることは、線虫耐性植物の育成の間の、及びそれを超える期間、所在場所において既に抑制された線虫集団を抑制するか、又はその抑制を維持する。一部の実施形態において、期間は、線虫耐性植物が育った育成シーズン後の1つ以上の育成シーズンに及ぶ。例えば、線虫耐性植物は、線虫耐性植物が以前に育てられ、及び/又は線虫集団を抑制する一部の他の機構が以前に利用された所在場所において、育てられ得る。
【0044】
また、本開示は、線虫集団を抑制する方法に関し、当該方法は:第1の育成シーズンにおいて所在場所で線虫耐性植物を育てることを含み、線虫耐性植物を育てることは、所在場所における線虫集団の抑制をもたらし、同じ、又は以降の育成シーズン(例えば、第2、第3、第4、又は第5の育成シーズン)において同じ所在場所で二次植物(あらゆる植物であり得る)を育てることを含み、二次植物は、線虫耐性植物が第1の育成シーズンにおいて所在場所で育てられなかった場合にみられるよりも少ない線虫損傷を示す。一部の実施形態において、以降の育成シーズンは、直近の育成シーズンである。一部の実施形態において、線虫集団は、以降の育成シーズンの間、ほとんど再燃を示さない。第1の育成シーズンは、年の全体を通したいかなる育成シーズンであってもよい。線虫耐性植物は、連続する育成シーズンの間が挙げられる、毎年1つ以上の育成シーズンの間、育てられ得る。一部の実施形態において、所在場所の線虫集団は既に抑制されており、所在場所における線虫耐性植物の育成は、線虫集団の抑制を維持する。線虫耐性植物の育成は、所在場所において線虫集団が抑制されるか、又は所在場所における線虫集団の抑制が維持される限り、特定量の時間の間にあるか、又は発育の特定の段階にある必要はない。線虫集団の抑制は、線虫集団を抑制した線虫耐性植物を以前にホストした所在場所において線虫耐性植物を育てることによって維持され得、線虫集団の抑制の維持は、同じ又は比較可能な所在場所におけるよりも所在場所における少ない線虫の存在によって示され得る。線虫集団の抑制又は線虫集団の抑制の維持は、線虫耐性植物の育成が挙げられる線虫管理措置がとられなかった場合の同じ又は比較可能な所在場所におけるよりも所在場所における少ない線虫の存在によって示され得る。これ以外にも、又は加えて、線虫集団の抑制又は線虫集団の抑制の維持は、所在場所における線虫耐性植物の育成が、検出限界以下で所在場所での線虫のレベルを達成及び/又は維持することを意味し得る。
【0045】
一部の実施形態において、線虫集団の抑制又は線虫集団の抑制の維持は、線虫耐性植物の育成が挙げられる線虫管理措置がとられなかった場合の同じ又は比較可能な所在場所におけるよりも所在場所における少ない線虫の存在によって示される。一部の実施形態において、比較可能な所在場所は、線虫耐性植物がこれまで育てられていない所在場所である。一部の実施形態において、比較可能な所在場所は、線虫耐性植物が、現在の輪作サイクルの間ではなくその前に育てられていた所在場所である。
【0046】
一部の実施形態において、二次植物がブラキアリア(Brachiaria)属である場合の線虫集団の抑制又は線虫集団の抑制の維持は、線虫の数が根1グラムあたり60匹、約60匹、又は約60匹未満である場合に達成される。更なる実施形態において、二次植物がブラキアリア(Brachiaria)属である場合の線虫集団の抑制は、線虫の数が根1グラムあたり50、40、30、20、10、若しくは5匹、約50、40、30、20、10、若しくは5匹、又は約50、40、30、20、10、若しくは5匹未満である場合に達成される。更なる実施形態において、二次植物がブラキアリア(Brachiaria)属である場合の線虫集団の抑制は、線虫の数が根1グラムあたり5~60、10~60、20~60、5~50、10~50、20~50、5~40、5~30、5~20、10~40、10~30、10~20、20~40、若しくは20~30匹、又は約5~60、10~60、20~60、5~50、10~50、20~50、5~40、5~30、5~20、10~40、10~30、10~20、20~40、若しくは20~30匹である場合に達成される。
【0047】
一部の実施形態において、二次植物がトウモロコシである場合の線虫集団の抑制又は線虫集団の抑制の維持は、線虫の数が根1グラムあたり300匹、約300匹、又は約300匹未満である場合に達成される。更なる実施形態において、二次植物がトウモロコシである場合の線虫集団の抑制は、線虫の数が根1グラムあたり250、200、150、100、50、20、10、若しくは5匹、約250、200、150、100、50、20、10、若しくは5匹、又は約250、200、150、100、50、20、10、若しくは5匹未満である場合に達成される。更なる実施形態において、二次植物がトウモロコシである場合の線虫集団の抑制は、線虫の数が根1グラムあたり5~300、5~250、5~200、5~150、5~100、5~50、10~300、10~250、10~200、10~150、10~100、10~50、50~300、50~250、50~200、50~150、若しくは50~100匹、又は約5~300、5~250、5~200、5~150、5~100、5~50、10~300、10~250、10~200、10~150、10~100、10~50、50~300、50~250、50~200、50~150、若しくは50~100匹である場合に達成される。
【0048】
一部の実施形態において、二次植物がワタである場合の線虫集団の抑制又は線虫集団の抑制の維持は、線虫の数が根1グラムあたり60匹、約60匹、又は約60匹未満である場合に達成される。更なる実施形態において、二次植物がワタである場合の線虫集団の抑制は、線虫の数が根1グラムあたり50、40、30、20、10、若しくは5匹、約50、40、30、20、10、若しくは5匹、又は約50、40、30、20、10、若しくは5匹未満である場合に達成される。更なる実施形態において、二次植物がワタである場合の線虫集団の抑制は、線虫の数が根1グラムあたり5~60、10~60、20~60、5~50、10~50、20~50、5~40、5~30、5~20、10~40、10~30、10~20、20~40、若しくは20~30匹、又は約5~60、10~60、20~60、5~50、10~50、20~50、5~40、5~30、5~20、10~40、10~30、10~20、20~40、若しくは20~30匹である場合に達成される。
【0049】
一部の実施形態において、二次植物がモロコシである場合の線虫集団の抑制又は線虫集団の抑制の維持は、線虫の数が根1グラムあたり250匹、約250匹、又は約250匹未満である場合に達成される。更なる実施形態において、二次植物がモロコシである場合の線虫集団の抑制は、線虫の数が根1グラムあたり200、150、100、50、20、10、若しくは5匹、約200、150、100、50、20、10、若しくは5匹、又は約200、150、100、50、20、10、若しくは5匹未満である場合に達成される。更なる実施形態において、二次植物がモロコシである場合の線虫集団の抑制は、線虫の数が根1グラムあたり5~250、5~200、5~150、5~100、5~50、10~250、10~200、10~150、10~100、10~50、50~250、50~200、50~150、若しくは50~100匹、又は約5~250、5~200、5~150、5~100、5~50、10~250、10~200、10~150、10~100、10~50、50~250、50~200、50~150、若しくは50~100匹である場合に達成される。
【0050】
一部の実施形態において、二次植物が育てられる所在場所における線虫集団の抑制又は線虫集団の抑制の維持は、二次植物が育てられる所在場所と比較可能な所在場所における根1グラムあたりの線虫数と比較して、根1グラムあたりの線虫数の5%の引下げ、約5%の引下げ、又は少なくとも約5%の引下げが存在する場合に達成される。更なる実施形態において、所在場所(例えば、二次植物が育てられる所在場所)における線虫集団の抑制は、線虫耐性植物の育成が挙げられる線虫管理措置がとられなかった場合の比較可能な所在場所における根1グラムあたりの線虫数と比較して、根1グラムあたりの線虫数の5%、10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、若しくは80%の引下げ、約5%、10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、若しくは80%の引下げ、又は少なくとも約5%、10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、若しくは80%の引下げが存在する場合に達成される。一部の実施形態において、比較可能な所在場所は、線虫耐性植物がこれまで育てられていない所在場所である。一部の実施形態において、比較可能な所在場所は、線虫耐性植物が、現在の輪作サイクルの間ではなくその前に育てられていた所在場所である。本開示の態様又は実施形態のいずれにおいても、根1グラムあたりの線虫数の判定は、当業者によって実行される。
【0051】
本開示は、線虫集団を抑制する方法に関し、当該方法は:第1の育成シーズンにおいて所在場所で線虫耐性植物を育てることを含み、線虫耐性植物を育てることは、所在場所における線虫集団の抑制をもたらし、同じ、又は以降の育成シーズン(例えば、第2、第3、第4、又は第5の育成シーズン)において同じ所在場所で線虫感受性植物を育てることを含み、線虫感受性植物は、線虫耐性植物が第1の育成シーズンにおいて所在場所で育てられなかった場合にみられるよりも少ない線虫損傷を示す。一部の実施形態において、線虫集団は、以降の育成シーズンの間、ほとんど再燃を示さない。
【0052】
一部の実施形態において、方法は、第1の育成シーズンにおいて所在場所で線虫耐性植物を育てることと、所在場所で以降の育成シーズンにおいて(例えば、所在場所で線虫耐性植物の育成後の第2、第3、第4、又は他の育成シーズンにおいて)第1の線虫感受性植物を育てることと、第1の線虫感受性植物の育成後に所在場所において第2の線虫感受性植物を育てることとを含む。第3、第4、第5、その他の線虫感受性植物が、以降の育成シーズンにおいて所在場所で育てられ得る。
【0053】
一部の実施形態において、線虫耐性植物が、第1の線虫感受性植物を育てる前に、所在場所において育てられる。当業者であれば、一旦線虫抑制が所在場所において達成されると、植え付ける特定の順序は必要とされないことを理解する。
【0054】
一部の実施形態において、線虫耐性植物は単子葉植物である。一部の実施形態において、線虫耐性植物は双子葉植物である。一部の実施形態において、線虫耐性植物は一年草である。一部の実施形態において、線虫耐性植物は多年草である。
【0055】
一部の実施形態において、線虫耐性植物は、ダイズ植物、トウモロコシ植物、ワタ植物、キャノーラ植物、サトウキビ植物、テンサイ植物、ジャガイモ植物、コムギ植物、イネ植物、アルファルファ植物、オオムギ植物、モロコシ植物、エンバク植物、ライムギ植物、キャッサバ植物、サツマイモ植物、ヒマワリ植物、野菜植物、果実植物、観賞植物、果樹園植物(例えば、果実又は堅果のなる木)、又はブドウの木である。
【0056】
一部の実施形態において、線虫耐性植物はダイズ植物であり、当該ダイズ植物は、第1の育成シーズンにおいて所在場所で育てられ、線虫感受性植物は、第2のシーズンにおいて同じ畑又は他の所在場所で育てられるダイズ植物、トウモロコシ植物、ワタ植物、キャノーラ植物、サトウキビ植物、テンサイ植物、ジャガイモ植物、コムギ植物、イネ植物、アルファルファ植物、オオムギ植物、モロコシ植物、エンバク植物、ライムギ植物、キャッサバ植物、サツマイモ植物、ヒマワリ植物、野菜植物、果実植物、果樹園植物(例えば、果実又は堅果のなる木)、観賞植物、又はブドウの木であり、線虫耐性ダイズ植物は、第3の育成シーズンにおいて育てられる。
【0057】
一部の実施形態において、線虫耐性植物はダイズ植物であり、ダイズ植物は、第1の育成シーズンにおいて所在場所で育てられ、線虫感受性植物は、ダイズ植物、トウモロコシ植物、ワタ植物、キャノーラ植物、サトウキビ植物、テンサイ植物、ジャガイモ植物、コムギ植物、イネ植物、アルファルファ植物、オオムギ植物、モロコシ植物、エンバク植物、ライムギ植物、キャッサバ植物、サツマイモ植物、ヒマワリ植物、野菜植物、果実植物、果樹園植物(例えば、果実又は堅果のなる木)、観賞植物、又はブドウの木であり、且つ同じ、又は第2の育成シーズンにおいて同じ所在場所で育てられ、場合によっては、線虫感受性植物が、第3の育成シーズンにおいて同じ所在場所で育てられ、線虫感受性植物は、ダイズ植物、トウモロコシ植物、ワタ植物、キャノーラ植物、サトウキビ植物、テンサイ植物、ジャガイモ植物、コムギ植物、イネ植物、アルファルファ植物、オオムギ植物、モロコシ植物、エンバク植物、ライムギ植物、キャッサバ植物、サツマイモ植物、ヒマワリ植物、野菜植物、果実植物、果樹園植物(例えば、果実又は堅果のなる木)、観賞植物、又はブドウの木である。一年草について、植付けの季節的順序は、線虫耐性植物が一年草の植付けよりも時折前に、又はこれと同時に所在場所において育てられる限り、及び所在場所における線虫集団が、一年草に利益をもたらすほど十分抑制されているか、又は抑制されたままである限り、重要でない。
【0058】
一部の実施形態において、線虫感受性植物は、同じ育成シーズンの間に、又は同時に、所在場所において線虫耐性植物と所在場所において育てられる。一部の実施形態において、線虫感受性植物は、野菜植物、果実植物、果樹園植物(例えば、果樹又は堅果のなる木)、観賞植物、又はブドウの木が挙げられるがこれらに限定されない多年草であり得る。このように、線虫耐性植物が、多年生植物を線虫損傷から保護するのに用いられ得る。一部の実施形態において、線虫耐性植物が、多年草を植え付ける前に所在場所において線虫集団を抑制するために、多年草を植え付ける前に所在場所において育てられる。一部の実施形態において、線虫耐性植物は、多年生植物が植え付けられて、多年草と同時に育てられるか、又は多年草とともに育てられる前に、例えば、線虫耐性植物が一年草であるならば年一回のベースで、育てられる。一部の実施形態において、線虫耐性植物が、多年草を既に含有する所在場所において育てられ、多年草は、線虫耐性植物の、所在場所への追加から利益を得る。多年草について、植付けの季節的順序は、線虫耐性植物が多年草の植付けよりも前に、これと同時に、又はこの後に、所在場所において育てられる限り、及び所在場所における線虫集団が、多年草に利益をもたらすほど十分抑制されているか、又は抑制されたままである限り、重要でない。
【0059】
また、提供されるのは、線虫損害又は線虫損傷から線虫感受性植物を保護する方法であって、線虫感受性植物を育てる前の少なくとも1つの育成シーズン、所在場所において線虫耐性植物を育てることと;線虫耐性植物の育成シーズンと同じ又はその後の少なくとも1つの育成シーズンにおいて、所在場所で線虫感受性植物を育てることとを含む方法である。本明細書中で用いられる用語「線虫損傷」は、線虫によって植物に生じる物理的な被害又は破壊を指す。本明細書中で用いられる用語「線虫損害」は、線虫によって市場性の高い日用品に生じる金融損失を指す。
【0060】
また、線虫感受性植物の収量を増大させる方法が提供される。当該方法は、第1の育成シーズンの間に畑において線虫耐性植物を育てることと;同じ育成シーズン、又は以降の育成シーズンの間に畑において線虫感受性植物を育てることとを含む。線虫感受性植物の同じ育成シーズン又は育成後のシーズンにおいて線虫耐性植物を育てることにより、線虫耐性植物の育成が挙げられる線虫管理措置がとられなかった場合の同じ又は比較可能な所在場所において育てられる線虫感受性植物の収量と比較して、線虫感受性植物の収量が増大する。一部の実施形態において、線虫感受性植物の収量の増大は、最近の輪作サイクルの間に線虫耐性作物が育てられていなかった同じ又は比較可能な所在場所において育てられた線虫感受性植物の収量と比較される。一部の実施形態において、比較可能な所在場所は、線虫耐性植物がこれまで育てられていない所在場所である。一部の実施形態において、比較可能な所在場所は、線虫耐性植物が、現在の輪作サイクルの間ではなくその前に育てられていた所在場所である。
【0061】
本明細書中で用いられる、植物の用語「収量」は、植物によって生産されるバイオマスの品質及び/又は量を指す。「バイオマス」によって、測定されるあらゆる植物生産物が意図される。バイオマス生産物の増大は、測定された植物生産物の収量のあらゆる向上である。植物収量の増大は、いくつかの商業的応用がある。例えば、植物葉バイオマスの増大は、ヒト又は動物の消費用の葉野菜の収量を増大させ得る。加えて、葉バイオマスの増大は、植物由来の医薬又は産業的生産物の生産を増大させるのに用いられ得る。一部の実施形態において、線虫耐性植物の育成後に線虫感受性植物を育てることにより、線虫耐性植物の育成が挙げられる線虫管理措置がとられなかった場合の同じ又は比較可能な所在場所において育てられた線虫感受性植物と比較して、線虫感受性植物の収量が少なくとも1% (又は少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも100%)増大する。一部の実施形態において、比較可能な所在場所は、線虫耐性植物がこれまで育てられていない所在場所である。一部の実施形態において、比較可能な所在場所は、線虫耐性植物が、現在の輪作サイクルの間ではなくその前に育てられていた所在場所である。
【0062】
種々の実施形態において、線虫耐性植物の育成と同時の、又はその後の育成シーズンにおける線虫感受性植物の育成は、例えば、線虫感受性植物にとっての以下の利益をもたらす:線虫耐性植物の育成が挙げられる線虫管理措置がとられなかった場合の同じ又は比較可能な所在場所において育てられた線虫感受性植物と比較した、根発育の向上(例えば、根又は根毛の成長の向上);収量の向上;より速い出芽;ストレス耐性の増大及び/若しくはストレスからの回復の向上が挙げられる植物ストレス管理の向上;機械的強度の増大;旱魃耐性の向上;真菌、細菌、及び/若しくはウイルス病感染の引下げ;並びに/又は植物健康状態の向上。一部の実施形態において、比較可能な所在場所は、線虫耐性植物がこれまで育てられていない所在場所である。一部の実施形態において、比較可能な所在場所は、線虫耐性植物が、現在の輪作サイクルの間ではなくその前に育てられていた所在場所である。また、これらの利益のいずれの組合せも得ることができる。
【0063】
種々の実施形態において、特定の所在場所における線虫耐性植物の育成後であるか、又はこれと同時の育成シーズンにおいて植物を育てることにより、技術的理由、栽培上の理由、及び/又は規制上の理由に起因して線虫耐性植物になりにくい植物の育成を可能にすることができる。本発明に用いることができる植物の非限定的な例として、豪州において、果実若しくは堅果のなる木、観賞植物、ブドウの木、又はコムギが挙げられる。
【0064】
本発明は、移動性の線虫種及び定住性の線虫種の双方に使用可能である。さらに、移動性のカテゴリー及び定住性のカテゴリーの双方における線虫の種が明らかになっており、これらもまた本発明によって制御可能であり得る。一部の実施形態において、線虫は、線虫集団、特にネグサレセンチュウ(Pratylenchus)属種線虫集団、例えば、プラティレンクス・ブラキウルス(Pratylenchus brachyurus)、ネコブセンチュウ(Meloidogyne)属種、シストセンチュウ(Heterodera)属種、例えばダイズシストセンチュウ(Heterodera glycines)、グロボデラ(Globodera)属種、ニセフクロセンチュウ(Rotylenchulus reniformis)、ヘリコチレンクス(Helicotylenchus)属種、例えばヘリコチレンクス・ディヒステラ(Helicotylenchus dihystera)、スクテロネマ・ブラキウルス(Scutellonema brachyurus)、ツビザバ・ツザウア(Tubixaba tuxaua)、又はイネシンガレセンチュウ(Aphelencoides besseyi)由来である。
【0065】
また、線虫集団密度(例えば、土壌の容量あたりの線虫)が抑制されたか、又は線虫数(例えば、根1グラムあたりの線虫)が引き下げられた(線虫集団密度の抑制又は線虫数の引下げは、本明細書中に記載される方法によって達成される)所在場所、例えば畑又はプロットが企図される。所在場所における線虫集団密度の抑制又は線虫数の引下げの測定値が、実用的な意味において交換可能である。というのも、双方とも、所在場所における線虫存在の指標であるからであり、相違は、線虫存在を測定するのに用いられる方法でしかない。線虫集団の抑制は、いくつもの方法で測定することができ、それらはいずれも本発明にとっての制限でない。種々の実施形態において、線虫集団密度の抑制は、根1グラム(g)あたり250、200、150、100、50、20、若しくは10匹、約250、200、150、100、50、20、若しくは10匹、又は約250、200、150、100、50、20、若しくは10匹未満である。
【0066】
殺線虫核酸、殺線虫タンパク質、及び線虫耐性植物
本明細書中に記載される方法は、殺線虫核酸を発現する植物の使用を説明する。一部の実施形態において、本明細書中に記載される方法は、殺線虫タンパク質をコードする異種ヌクレオチド配列を含む生物の形質転換又は生物の使用を介して分子生物学技術によって操作された植物の使用を含む。植物が殺線虫核酸を発現するのを可能にするのに用いることができるいくつかの分子生物学技術が存在し、線虫耐性植物を得るのに用いられる技術的アプローチは、本明細書中の方法にとっての制限でない。
【0067】
本明細書中で用いられる用語「殺線虫核酸」及び「殺線虫タンパク質」は、ネコブセンチュウ(Meloidogyne)属種、ニセフクロセンチュウ(Rotylenchulus reniformis)、ヘリコチレンクス・ディヒステラ(Helicotylenchus dihystera)、スクテロネマ・ブラキウルス(Scutellonema brachyurus)、ツビザバ・ツザウア(Tubixaba tuxaua)、イネシンガレセンチュウ(Aphelencoides besseyi)、及びネグサレセンチュウ(Pratylenchus)属種(プラティレンクス・アレニ(Pratylenchus alleni)、プラティレンクス・ブラキウルス(Pratylenchus brachyurus)、ミナミネグサレセンチュウ(Pratylenchus coffeae)、ノコギリネグサレセンチュウ(Pratylenchus crenatus)、プラティレンクス・ドゥルスクス(Pratylenchus dulscus)、キクネグサレセンチュウ(Pratylenchus fallax)、プラティレンクス・フラッケンシス(Pratylenchus flakkensi)、プラティレンクス・ゴオデイイ(Pratylenchus goodeyi)、プラティレンクス・ヘキシンシスス(Pratylenchus hexincisus)、チャネグサレセンチュウ(Pratylenchus loosi)、プラティレンクス・ミヌツス(Pratylenchus minutus)、プラティレンクス・ムルチャンディ(Pratylenchus mulchandi)、プラティレンクス・ムシコラ(Pratylenchus musicola)、ムギネグサレセンチュウ(Pratylenchus neglectus)、キタネグサレセンチュウ(Pratylenchus penetrans)、プラティレンクス・プラテンシス(Pratylenchus pratensis)、プラティレンクス・レニフォルミア(Pratylenchus reniformia)、プラティレンクス・スクリブネリ(Pratylenchus scribneri)、プラティレンクス・ソルネイ(Pratylenchus thornei)、クルミネグサレセンチュウ(Pratylenchus vulnus)、及びモロコシネグサレセンチュウ(Pratylenchus zeae)が挙げられる)が挙げられるがこれらに限定されない1種以上の線虫有害生物に対して活性がある毒素を指す。
【0068】
一部の実施形態において、殺線虫タンパク質は、Cryタンパク質である。Cryタンパク質は、当業者に周知である。Cryタンパク質の殺線虫活性が、例えば、国際公開第2010/027805号パンフレット、国際公開第2010/027809号パンフレット、国際公開第2010/027804号パンフレット、国際公開第2010/027799号パンフレット、国際公開第2010/027808号パンフレット、及び国際公開第2007/147029号パンフレットに記載されている。一部の実施形態において、殺線虫タンパク質は、Cry14タンパク質を含む(例えば、国際公開第2018/119336号パンフレット及び米国仮特許出願第62/112,832号明細書(2020年11月12日出願)(各々、その全体が参照によって本明細書中に組み込まれる)参照)。種々の実施形態において、Cry14タンパク質は、Cry14Aa1(GENBANK受託番号AAA21516)又はCry14Ab1(Cry14Ab-1としても知られている;GENBANK受託番号KC156652)である。一部の実施形態において、Cry14Ab-1タンパク質(配列番号1(アミノ酸配列)及び配列番号2(ヌクレオチド配列))は、国際公開第2018/119361号パンフレット及び国際公開第2018/119364号パンフレットに記載されているもの、並びにそのバリアント及び断片である。種々の実施形態において、線虫耐性植物は、配列番号 1に対する配列同一性が95、96、97、98、若しくは99%、約95、96、97、98、若しくは99%、少なくとも95、96、97、98、若しくは99%、又は少なくとも約95、96、97、98、若しくは99%である殺線虫Cryl4Abタンパク質を発現する。
【0069】
殺線虫活性を有するいくつかの核酸が、当業者に周知であり、線虫耐性を有する植物を生じさせる分子生物学技術と同様である。一部の実施形態において、線虫耐性植物によって発現される核酸は、例えば、国際公開第2011/82217号パンフレット、国際公開第2013/078153号パンフレット、国際公開第2020/243365号パンフレット、国際公開第2018/005491号パンフレット、及び国際公開第2021/016098号パンフレットに記載される配列によって生成される。
【0070】
線虫耐性植物を生じさせるのに用いられる分子生物学技術として、非限定の例として、殺線虫活性をもたらす核酸を生じさせるためのゲノム編集;殺線虫活性をもたらすRNA分子の発現;及び/又は異種若しくはトランスジェニックの殺線虫タンパク質の発現が挙げられる。また、変異誘導等の他の技術を用いて、線虫耐性植物を生じさせることができる。一部の実施形態において、線虫耐性植物によって発現される殺線虫核酸は、Cry遺伝子によって生成される。一部の実施形態において、Cry遺伝子はCry14遺伝子である。一部の実施形態において、Cry14遺伝子は、Cry14Aa遺伝子又はCry14Ab遺伝子である。
【0071】
線虫耐性植物は、殺線虫活性をもたらす核酸に加えて、除草剤耐性、鞘翅目有害生物に対する耐性、鱗翅目有害生物に対する耐性、他の昆虫が挙げられる他の有害生物に対する耐性;及び/又は耐病性を付与する核酸が挙げられるがこれらに限定されない、分子生物学技術によって導入される1つ以上の追加の核酸を発現し得る。そのような他の核酸は、例えば、以下に限定されないが、ゲノム編集活性、RNAの発現、又は異種タンパク質の発現等の分子生物学技術から生じ得る。さらに、線虫耐性植物は、他の技術、例えば、変異の導入、育種を介した形質の遺伝子移入、及び/又は当業者に周知の他の技術に起因する他の外来核酸を発現し得る。そのような他の核酸及び/又は形質の存在は、本明細書中の方法にとっての制限でない。
【0072】
一部の実施形態において、線虫耐性植物は、殺線虫活性を提供する核酸に加えて、1つ以上の追加の外来核酸を発現する。一部の実施形態において、殺線虫活性を付与する核酸は、グリホサートベースの、グルフォシナートベースの、HPPDインヒビタベースの、スルホニル尿素若しくはイミダゾリノンベースの、AHAS若しくはALS阻害性の、及び/又はオーキシンタイプ(例えば、ジカンバ、2,4-D)の除草剤、例えばEvent EE-GM3(別名FG-072、MST-FG072-3、国際公開第2011/063411号パンフレット、USDA-APHIS Petition 09-328-01pに記載)、Event SYHT0H2(別名0H2、SYN-000H2-5、国際公開第2012/082548号パンフレット及び12-215-01pに記載)、Event DAS-68416-4(別名Enlist Soybean、国際公開第2011/066384号パンフレット及び国際公開第2011/066360号パンフレット、USDA-APHIS Petition 09-349-01pに記載)、Event DAS-44406-6(別名Enlist E3、DAS-44406-6、国際公開第2012/075426号パンフレット及びUSDA-APHIS 11-234-Olpに記載)、Event MON87708(Roundup Ready 2 Xtend Soybeansのジカンバ耐性イベント、国際公開第2011/034704号パンフレット及びUSDA-APHIS Petition 10-188-Olp、MON-87708-9に記載)、Event MON89788(別名Genuity Roundup Ready 2 Yield、国際公開第2006/130436号パンフレット及びUSDA-APHIS Petition 06-178-01pに記載)、Event 40-3-2(別名Roundup Ready、GTS 40-3-2、MON-04032-6、USDA-APHIS Petition 93-258-01に記載)、Event A2704-12(別名LL27、ACS-GM005-3、国際公開第2006/108674号パンフレット及びUSDA-APHIS Petition 96-068-Olpに記載)、Event 127(別名BPS-CV127-9、国際公開第2010/080829号パンフレットに記載)、Event A5547-127(別名LL55、ACS-GM006-4、国際公開第2006108675号パンフレット及びUSDA-APHIS Petition 96-068-01pに記載)、イベントMON87705(MON-87705-6、Vistive Gold、国際公開第2010/037016号パンフレット、USDA-APHIS Petition 09-201-01pに公開)、ダイズEvent HB4(OECD Unique Identifier IND-00410-05、USDA-APHIS Petition 17-223-01p)、又はイベントDP305423(別名DP-305423-1、国際公開第2008/054747号パンフレット、USDA-APHIS Petition 06-354-01pに公開)のいずれか1つ又は組合せに対する耐性を付与する1つ以上のダイズGMイベントと組み合わされ、或いは殺線虫活性をもたらす核酸は、以下のイベントの組合せと組み合わされる:Event MON98788×MON87708(別名Roundup Ready 2 Xtend Soybeans、MON-87708-9×MON-89788-1)、Event HOS×Event 40-3-2(別名Plenish High Oleic Soybeans×Roundup Ready Soybeans)、Event EE-GM3×EE-GM2(別名FG-072×LL55、国際公開第2011/063413号パンフレットに記載)、Event MON 87701×MON 89788(別名Intacta RR2 Pro Soybean、MON-87701-2×MON-89788-1)、DAS-81419-2×DAS-44406-6(別名Conkesta(商標)Enlist E3(商標)Soybean、DAS-81419-2×DAS-44406-6)、Event DAS-68416-4×Event MON 89788(別名Enlist(商標)RoundUp Ready(登録商標)2 Soybean、DAS-68416-4×MON-89788-1)、Event MON-87769-7×Event MON-89788-1(別名Omega-3×Genuity Roundup Ready 2 Yield Soybeans)、Event MON 87705×Event MON 89788(別名Vistive Gold、MON-87705-6×MON-89788-1)、又はEvent MON87769×Event MON89788(別名Omega-3×Genuity Roundup Ready 2 Yield Soybeans、MON-87769-7×MON-89788-1)。一部の実施形態において、上述の形質のいずれも、変異の導入、ゲノム編集、又は他の分子生物学技術を用いて修飾されて、単独で、又はあらゆる組合せで、線虫耐性形質と組み合わされる。
【0073】
一部の実施形態において、線虫耐性植物は、国際公開第2018/119361号パンフレットに記載されるEE-GM4イベントを含有するダイズ植物、又は国際公開第2018/119364号パンフレットに記載されるEE-GM5イベント(GMB151イベントとしても知られている)を含有するダイズ植物である。国際公開第2018/119361号パンフレット及び国際公開第2018/119364号パンフレットの開示は、それらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0074】
一部の実施形態において、線虫耐性植物は、線虫に耐性を付与する1つ以上の在来形質を含有する。そのような在来形質は、当業者に周知である(例えば、Fosu-Nyarko,J.及びM.G.K.Jones.2015.Application of biotechnology for nematode control in crop plants.Pages 339-376 in:Advances in Botanical Research Vol.73,Plant Nematode Interactions:A View on Compatible Interrelationships.Chapter 14.C.Escobar and C.Fenoll,eds.Elsevier,Oxford参照)。在来形質は、線虫耐性植物の線虫抑制性効果と補完的であり得、及び一部の実施形態において、1つ以上のそのような在来形質は、線虫耐性植物の生殖質内に存在する。
【0075】
ゆえに、本明細書中で提供されるのは、本明細書中に記載される線虫耐性植物によって発現される殺線虫核酸又はタンパク質を介して、線虫有害生物集団、例えば、ネグサレセンチュウ(Pratylenchus)属種線虫集団、例えばプラティレンクス・ブラキウルス(Pratylenchus brachyurus)、ネコブセンチュウ(Meloidogyne)属種、シストセンチュウ(Heterodera)属種、例えばダイズシストセンチュウ(Heterodera glycines)、グロボデラ(Globodera)属種、ニセフクロセンチュウ(Rotylenchulus reniformis)、ヘリコチレンクス(Helicotylenchus)属種、例えばヘリコチレンクス・ディヒステラ(Helicotylenchus dihystera)、スクテロネマ・ブラキウルス(Scutellonema brachyurus)、ツビザバ・ツザウア(Tubixaba tuxaua)、又はイネシンガレセンチュウ(Aphelencoides besseyi)を死滅させるか、抑制するか、又は防除する方法である。特定の実施形態において、殺線虫タンパク質は、国際公開第2018/119361号パンフレット、国際公開第2018/119364号パンフレット、及び米国仮特許出願第62/112,832号明細書に示されるCry14タンパク質、並びにそのバリアント及び断片を含む。
【0076】
系
別の態様において、本明細書中に記載されるのは、線虫感受性植物を育てる効率を上げる系であって:第1の育成シーズンの間に所在場所において線虫耐性植物を育てることと;同じ、又は以降の育成シーズンの間に所在場所において線虫感受性植物を育てることとを含む系である。一部の実施形態において、第2の線虫感受性植物が、第1の線虫感受性植物の育成後に、所在場所において育てられる。一部の実施形態において、線虫感受性植物を育てる効率の上昇は、以下の1つ以上によって示され得るか、又は測定され得る:a.毎年少なくとも1つの追加の育成シーズンのための所在場所の使用;b.所在場所の耕作の減少;c.線虫駆除剤による線虫感受性作物種子の処理の減少;d.線虫感受性植物の育成シーズン前の、若しくはその間の線虫駆除剤による所在場所の処理領域の減少;e.線虫感受性植物の育成シーズン前に、若しくはその間に線虫感受性植物及び/若しくは所在場所に散布される線虫駆除剤の割合の低下;f.育成シーズンの間に線虫感受性植物及び/若しくは所在場所になされる線虫駆除剤の散布の回数の減少;所在場所の有用性の増大;所在場所の価値の増大;持続可能な農業実践の向上;並びに/又はg.線虫感受性作物の収量の増大。
【0077】
別の態様において、本明細書中に記載されるのは、所在場所の使用の増大のための系であって:第1の育成シーズンにおいて所在場所で線虫耐性植物を育てることと;同じ、又は以降の育成シーズンにおいて所在場所で第1の線虫感受性植物を育てることとを含む系である。一部の実施形態において、線虫耐性植物及び第1の線虫感受性植物は、同じ、又は連続する育成シーズンにおいて育てられる。他の実施形態において、線虫耐性植物及び第1の線虫感受性植物は、連続しない育成シーズンにおいて育てられる。一部の実施形態において、所在場所は、以降の育成シーズンにわたって休閑されない。一部の実施形態において、被覆作物は、以降の育成シーズンにわたって植え付けられない。一部の実施形態において、所在場所は耕されない。
【0078】
別の態様において、本明細書中に記載されるのは、限定されないが畑又はプロット等の所在場所の使用の増大のための系であって:第1の育成シーズンにおいて所在場所で線虫耐性植物を育てることと;同じ、又は以降の育成シーズンにおいて所在場所で第1の線虫感受性植物を育てることと;所在場所における第1の線虫感受性作物の育成後に、所在場所において第2の線虫感受性作物を育てることとを含む系である。一部の実施形態において、線虫耐性植物、第1の線虫感受性植物、及び第2の線虫感受性植物は、連続する育成シーズンにおいて育てられる。他の実施形態において、線虫耐性植物、第1の線虫感受性植物、及び第2の線虫感受性植物は、連続しない育成シーズンにおいて育てられるか、又は3つのうちの2つのみが、連続するか、若しくは連続しない育成シーズンにおいて育てられる。一部の実施形態において、所在場所は、以降の育成シーズンにわたって休閑されない。一部の実施形態において、被覆作物は、以降の育成シーズンにわたって植え付けられない。一部の実施形態において、所在場所は耕されない。
【0079】
本明細書中で用いられる用語「輪作系」又は「作付け系」は、所在場所、例えば畑内に植え付けられる一農作物に、一定期間内に1つ以上の継続作物が後に続く輪作サイクルに従う実践を指す。単一の輪作サイクルによって包含される期間は、暦年と必ずしも一致するわけでもないし、必ずしも12ヵ月のサイクルでもない。ある場合には、単一の輪作サイクルは、2~3年、又はさらに長い期間にわたってもよい。一部の実施形態において、サトウキビは約5年のサイクル(例えば、4~5年のサトウキビに続く1シーズンの非サトウキビ)である。植付けの正確なタイミング、サイクルの期間、及び植え付けられるべき作物は、環境によって決定され、位置に固有である。輪作系は、各作物の栄養要求問題、病気及び/又は有害生物圧の引下げ、並びに事業の多角化等のいくつかの理由で用いられる。一例として、典型的なブラジルのダイズ作付け系は、暦年で継承して植え付けられる2つの作物を生産する。第一育成シーズン(「safra」と呼ばれている)は、9月~12月にダイズ等の第1の作物を植え付けることから始まる。safraシーズン作物の収穫は、1月~3月の間に起こる。safraシーズン作物の収穫直後に、「safrinha」と呼ばれる第二シーズン作物が植え付けられる。その後、safrinha作物は、5月~8月に収穫される。
図8参照。米国では、輪作サイクルは、環境及び農家の目的に応じて変わり、必ずしも暦年に結びつけられるわけではない。一例において、第一育成シーズンは、2月~5月に第一作物を植え付けることから始まり、収穫は8月~10月に起こる。その後、第2の作物が、9月~11月に植え付けられるか、又は翌年2月~5月に植え付けられる。他の位置又は地理学(geography)が、3つの育成シーズンの輪作サイクルの間の作物の育成を支援し、さらにその他が、4つ以上の育成シーズンの輪作サイクルの間の作物の育成を支援する。
【0080】
一態様において、本明細書中に記載されるのは、所在場所において線虫集団を抑制する方法であって、所在場所において線虫耐性植物を育てることを含み、線虫耐性植物を育てることは、線虫耐性植物の育成の間の、及びそれを超える期間、所在場所において線虫集団を抑制するか、又は所在場所において線虫集団の抑制を維持する、方法である。一部の実施形態において、線虫耐性植物は、safraシーズンの間に育てられる。一部の実施形態において、方法はさらに、safraシーズンの直後のsafrinhaシーズンの間に、所在場所において二次植物を育てることを含む。一部の実施形態において、二次植物は、線虫感受性植物である。一部の実施形態において、線虫耐性植物及び二次植物は双方とも、固有の価値作物植物である。一部の実施形態において、線虫耐性植物及び二次植物は双方とも、商品作物植物である。一部の実施形態において、線虫耐性植物はダイズ植物であり、二次植物は、トウモロコシ、ワタ、モロコシ、コムギ、及びサトウキビからなる群から選択される。
【0081】
一部の態様において、本明細書中に記載されるのは、輪作系を向上させる方法であって:第1の育成シーズンの間に、所在場所において線虫耐性植物を育てることと;同じ、又は以降の育成シーズンの間に、所在場所において線虫感受性植物を育てることとを含み、第1の育成シーズンの間に、所在場所において線虫耐性植物を育てることは、同じ、又は以降の育成シーズンにおいて線虫感受性植物の育成を可能にするか、又は向上させる、所在場所における線虫集団の抑制をもたらす、方法である。一部の実施形態において、第2の線虫感受性植物が、第1の線虫感受性植物の育成後に、所在場所において育てられる。
【0082】
一部の実施形態において、輪作系の向上は、以下の1つ以上によって示され得るか、又は測定され得る:a.毎年の少なくとも1つの追加の育成シーズンのための所在場所の使用;b.所在場所の耕作の減少;c.線虫駆除剤による線虫感受性作物種子の処理の減少;d.線虫感受性植物の育成シーズン前の、若しくはその間の線虫駆除剤による所在場所の処理領域の減少;e.線虫感受性植物の育成シーズン前に、若しくはその間に線虫感受性植物及び/若しくは所在場所に散布される線虫駆除剤の割合の低下;f.育成シーズンの間に線虫感受性植物及び/若しくは所在場所になされる線虫駆除剤の散布の回数の減少;所在場所の有用性の増大;所在場所の価値の増大;持続可能な農業実践の向上;並びに/又はg.線虫感受性作物の収量の増大。
【0083】
本発明は、それ自体が記載される特定の方法論、プロトコール、植物種又は属、構築体、及び試薬に限定されないことが理解されるべきである。また、本明細書中で用いられる専門用語は、特定の実施形態を説明することを目的とするのみであり、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることとなる本発明の範囲を限定することは意図されないことも理解されるべきである。本明細書中で、及び添付の特許請求の範囲に用いられる単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈がそうでないと明らかに記載しない限り、複数の言及を含むことに留意しなければならない。ゆえに、例えば、「ベクター」への言及は、1つ以上のベクターへの言及であり、及びその、当業者に知られている均等物その他を含む。
【0084】
マーケティング
本明細書中で用いられる「マーケティング」は、一般の/潜在的な顧客に商品を知らせる目的で、及びその容認及び/又は使用を促進するための実体による、又はそれに代わるあらゆるコミュニケーションである。プリントマーケティング/素材として、小冊子、パンフレット、フライヤー、カタログ、ビジネスカード、サイン、ポスター、ビルボード、業界文献、シードバッグ、シードバッグタグ、ラベル、又は他の広告が挙げられ得るが、これらに限定されない。他のタイプのマーケティング/素材として、ウェブサイト、Eメール、テキスト、製品を促進/開示する、会社がスポンサーのあらゆるコミュニケーション若しくはイベントに関する情報、又はあらゆるソーシャルメディアプラットフォームが挙げられる、あらゆる種類のデジタル情報が挙げられ得るが、これらに限定されない。また、マーケティングは、1つ以上の製品の購入に関する農家へのあらゆるリベート/インセンティブを含み、輪作サイクル中のその使用は、本明細書中で提供される方法に従う線虫抵抗植物の使用によって向上される。
【0085】
一部の態様において、本開示はまた、輪作系を市場に出す方法であって、第1の育成シーズンの間の所在場所における線虫耐性植物の使用を促進することと;同じ、又は以降の育成シーズンの間の所在場所における線虫感受性植物の使用を促進することとを含み、第1の育成シーズンの間に所在場所において線虫耐性植物を育てることは、以降の育成シーズンにおいて線虫感受性植物の育成を可能にするか、又は向上させる、所在場所における線虫集団の抑制をもたらす、方法を提供する。更なる態様において、所在場所において線虫集団を抑制するための輪作系を市場に出す方法であって、第1の育成シーズンの間の所在場所における線虫耐性植物の使用を促進することと;同じ、又は以降の育成シーズンの間の所在場所における線虫感受性植物の使用を促進することとを含み、第1の育成シーズンの間に所在場所において線虫耐性植物を育てることは、以降の育成シーズンにおいて線虫感受性植物の育成を可能にするか、又は向上させる、所在場所における線虫集団の抑制をもたらす、方法が提供される。
【0086】
更なる態様において、本開示は、以降の育成シーズンの間に所在場所において線虫感受性植物を育てることと協働するか、又はそのことが続く、第1の育成シーズンの間に所在場所において線虫耐性植物を育てる系に関するマーケティング素材であって、第1の育成シーズンの間に所在場所において線虫耐性植物を育てることは、以降の育成シーズンにおいて線虫感受性植物の育成を可能にするか、又は向上させる、所在場所における線虫集団の抑制をもたらす、マーケティング素材を提供する。一部の実施形態において、マーケティング素材は、以降の育成シーズンの間に所在場所において線虫感受性植物を育てることと協働するか、又はそのことが続く、第1の育成シーズンの間に所在場所において線虫耐性植物を育てる系の促進であって、第1の育成シーズンの間に所在場所において線虫耐性植物を育てることは、以降の育成シーズンにおいて線虫感受性植物の育成を可能にするか、又は向上させる、所在場所における線虫集団の抑制をもたらす、促進に関する。
【0087】
一部の態様において、本開示は、線虫集団を引き下げ、線虫由来の作物への損傷を引き下げ、及び/又は線虫集団の抑制を介して作物収量を増大させるための輪作系のマーケティングを向上させる方法であって、例えば、以下に限定されないが、リベートプログラム、マーケティングステートメント、コネクテッドオファー、若しくはインテグレーテッドソリューション、又は1つ以上の製品の購入に関するあらゆるセールスオファーの1つ以上の特徴を含み、輪作サイクル中のその使用は、本明細書中で提供される方法に従う線虫抵抗植物の使用によって向上する、方法を提供する。
【0088】
更なる態様において、本開示は、本明細書中に記載される(例えば、輪作系を市場に出すことに関する)マーケティング素材、及び/或いは本明細書中で各々記載される線虫耐性ダイズ植物、又はその細胞、一部、種子、若しくは後代を含むキットを提供する。一部の実施形態において、キットはさらに、二次植物、又はその細胞、一部、種子、若しくは後代を含む。一部の実施形態において、キットはさらに、以下に限定されないが、除草剤、殺真菌剤、殺虫剤、線虫駆除剤、生物製剤、肥料、種子処理、接種原、意思決定又はリモートセンシングツール、作物スカウティングサービス、作物診断ツール及び/又はサービスが挙げられる、植物、その細胞、一部、種子、又は後代を育てるのに有用なあらゆる製品を含む。本開示の態様又は実施形態のいずれにおいても、キットは、所在場所における結果として生じる線虫集団が、根1グラム(g)あたり約250匹以下であるように、所在場所において線虫集団を抑制又は維持する系又は方法のマーケティングを含むあらゆるパッケージ又は素材である。種々の実施形態において、キットは、所在場所において線虫集団を抑制又は維持する系又は方法のマーケティングを含むあらゆるパッケージ又は素材であり、所在場所における結果として生じる線虫集団は、根1グラム(g)あたり250、200、150、100、50、20、若しくは10匹、約250、200、150、100、50、20、若しくは10匹、又は約250、200、150、100、50、20、若しくは10匹未満である。
【0089】
本明細書中に記載される、本開示の製品、系、及び方法はまた、(例えば、カーボンクレジット機会を通して)農業実践の向上を可能にすることによって、価値及び持続性の向上を実現する。例えば、本開示の実施形態によって生じる持続性機会は、以下に限定されないが、(i)あまり耕作を必要としないように所在場所を向上させること;(ii)毎年少なくとも1つの育成シーズンの間に、被覆作物を育てるか、若しくは所在場所を休ませたままにする必要を除外すること;及び/又は(iii)線虫によって損害を受けた、根系若しくは根がより小さな植物よりも多くの炭素を捕捉することができる、より健康且つより大きな根系を有する植物の育成を可能にすることを含み得る。本開示によって実現される、関連する更なる利点は、窒素固定の向上に関する。線虫は、ダイズにおける窒素固定を引き下げることによって、次のシーズンに植え付けられる作物(例えばトウモロコシ作物)の化学窒素の必要性を増大させる。本開示の態様又は実施形態のいずれにおいても、本明細書中に記載される線虫耐性植物は、線虫集団を抑制して、ダイズにおける窒素固定の向上又は完全窒素固定を可能にし、これは続いて、次のシーズンでのトウモロコシ作物の化学窒素の必要性を低下させる。加えて、化学窒素は、環境問題を引き起こし、懸案事項である(例えば、Crews et al.,Agriculture,Ecosystems and Environment 102(2004)279-297参照)。
【0090】
実施形態:
1.所在場所において線虫集団を抑制する方法であって:
所在場所において線虫耐性植物を育てることを含み、線虫耐性植物を育てることは、線虫耐性植物の育成の間の、及びそれを超える期間、所在場所において線虫集団を抑制するか、又は所在場所における線虫集団の抑制を維持する、方法。
【0091】
2.期間は、線虫耐性植物が育った育成シーズン後の1つ以上の育成シーズンに及ぶ、実施形態1の方法。
【0092】
3.線虫耐性植物を育てた後に、所在場所において二次植物を育てることをさらに含む、実施形態1又は2の方法。
【0093】
4.線虫耐性植物を育てる前に、所在場所において二次植物を育てることをさらに含む、実施形態1又は2の方法。
【0094】
5.所在場所において二次植物と同時に線虫耐性植物を育てることをさらに含む、実施形態1又は2の方法。
【0095】
6.二次植物は線虫感受性植物である、実施形態3~5のいずれか1つの方法。
【0096】
7.線虫集団は、検出限界以下で抑制又は維持される、実施形態1~6のいずれか1つの方法。
【0097】
8.二次植物はブラキアリア(Brachiaria)属であり、線虫集団の抑制は、線虫の数が根1グラムあたり60匹、約60匹、又は約60匹未満である場合に達成される、実施形態3~6のいずれか1つの方法。
【0098】
9.二次植物はトウモロコシであり、線虫集団の抑制は、線虫の数が根1グラムあたり300匹、約300匹、又は約300匹未満である場合に達成される、実施形態3~6のいずれか1つの方法。
【0099】
10.二次植物はワタであり、線虫集団の抑制は、線虫の数が根1グラムあたり60匹、約60匹、又は約60匹未満である場合に達成される、実施形態3~6のいずれか1つの方法。
【0100】
11.二次植物はモロコシであり、線虫集団の抑制は、線虫の数が根1グラムあたり250匹、約250匹、又は約250匹未満である場合に達成される、実施形態3~6のいずれか1つの方法。
【0101】
12.二次植物が育てられる所在場所における線虫集団の抑制は、二次植物が育てられる所在場所と比較可能な所在場所における根1グラムあたりの線虫数と比較して、根1グラムあたりの線虫数の5%の引下げ、約5%の引下げ、又は少なくとも約5%の引下げが存在する場合に達成される、実施形態3~11のいずれか1つの方法。
【0102】
13.線虫損傷又は損害から植物を保護する方法であって:
線虫感受性植物を植え付ける前に少なくとも1つの育成シーズンにて所在場所において線虫耐性植物を育てることと;
線虫耐性植物を育てた後に少なくとも1つの育成シーズンにて所在場所において線虫感受性植物を育てることと
を含む方法。
【0103】
14.線虫損害からの線虫感受性植物の保護は、収穫された線虫感受性植物素材の収量及び/又はそのセールスから得る収益の増大を含む、実施形態13の方法。
【0104】
15.線虫感受性植物の収量を増大させる方法であって:
線虫感受性植物を植え付ける前に少なくとも1つの育成シーズンにて所在場所において線虫耐性植物を育てることと;
線虫耐性植物を育てた後に少なくとも1つの育成シーズンにて所在場所において線虫感受性植物を育てることと
を含む方法。
【0105】
16.線虫感受性植物の収量の増大は、線虫耐性作物を以前に育てなかった同じ若しくは比較可能な所在場所において育てられた線虫感受性植物の収量と比較された増大であるか、又は線虫感受性植物の収量の増大は、線虫耐性植物を育てる前の同じ所在場所若しくは比較可能な所在場所において育てられた線虫感受性植物の収量と比較された増大である、実施形態15の実施形態。
【0106】
17.所在場所についての線虫管理の方法であって:
所在場所において線虫耐性植物を育てることと;
線虫耐性植物を育てるのと同時に、又はその後の時点にて、所在場所において線虫感受性植物を育てることと
を含む方法。
【0107】
18.線虫感受性植物は、多年草又は一年草である、実施形態6~17の方法。
【0108】
19.線虫感受性植物は、ダイズ植物、トウモロコシ植物、ワタ植物、キャノーラ植物、サトウキビ植物、ジャガイモ植物、コムギ植物、野菜植物、イネ植物、アルファルファ植物、オオムギ植物、モロコシ植物、エンバク植物、ライムギ植物、キャッサバ植物、サツマイモ植物、ヒマワリ植物、果実植物、果樹園植物(例えば、果実又は堅果のなる木)、観賞植物、又はブドウの木である、実施形態6~18のいずれか1つの方法。
【0109】
20.線虫耐性植物は、Cryタンパク質、例えば限定されないが殺線虫Cryタンパク質を発現する、実施形態1~19のいずれか1つの方法。
【0110】
21.線虫耐性植物は、ダイズ植物、トウモロコシ植物、ワタ植物、キャノーラ植物、サトウキビ植物、テンサイ植物、ジャガイモ植物、コムギ植物、イネ植物、アルファルファ植物、オオムギ植物、モロコシ植物、エンバク植物、ライムギ植物、キャッサバ植物、サツマイモ植物、ヒマワリ植物、野菜植物、果実植物、観賞植物、果樹園植物(例えば、果実又は堅果のなる木)、又はブドウの木である、実施形態1~20のいずれか1つの方法。
【0111】
22.線虫は、ネグサレセンチュウ(Pratylenchus)属種線虫集団、例えば、プラティレンクス・ブラキウルス(Pratylenchus brachyurus)、ネコブセンチュウ(Meloidogyne)属種、シストセンチュウ(Heterodera)属種、例えばダイズシストセンチュウ(Heterodera glycines)、グロボデラ(Globodera)属種、ニセフクロセンチュウ(Rotylenchulus reniformis)、ヘリコチレンクス(Helicotylenchus)属種、例えばヘリコチレンクス・ディヒステラ(Helicotylenchus dihystera)、スクテロネマ・ブラキウルス(Scutellonema brachyurus)、ツビザバ・ツザウア(Tubixaba tuxaua)、又はイネシンガレセンチュウ(Aphelencoides besseyi)から選択される線虫種である、実施形態1~21のいずれか1つの方法。
【0112】
23.ネグサレセンチュウ(Pratylenchus)属種は、プラティレンクス・ブラキウルス(Pratylenchus brachyurus)である、実施形態22の方法。
【0113】
24.所在場所についての線虫管理の方法であって:
線虫感受性植物と同時に所在場所において線虫耐性植物を育てること
を含む方法。
【0114】
25.所在場所についての線虫管理の方法であって:
所在場所において線虫感受性植物を植え付けることと;
線虫感受性植物を植えた後の時点にて、所在場所において線虫耐性植物を育てることと
を含む方法。
【0115】
26.線虫集団密度が抑制された所在場所であって、線虫集団密度の抑制は、実施形態1~25のいずれか1つの方法によって達成される、所在場所。
【0116】
27.以下の利益の1つ以上を提供する実施形態26の所在場所:所在場所は、毎年、又は輪作サイクル毎の1つの育成シーズンで休閑の状態にある必要はない;b.所在場所は、輪作サイクル毎に1育成シーズンで耕される必要はない;及びc.所在場所は、被覆作物が植え付けられる必要はない。
【0117】
28.線虫集団密度の抑制は、根1グラム(g)あたり250、200、150、100、50、20、若しくは10匹、約250、200、150、100、50、20、若しくは10匹、又は約250、200、150、100、50、20、若しくは10匹未満である、実施形態26又は実施形態27の所在場所。
【0118】
29.輪作サイクル毎の1つの育成シーズンで休閑の状態にある必要はない、実施形態26の所在場所。
【0119】
30.実施形態26の所在場所において育てられる線虫耐性植物。
【0120】
31.実施形態30の植物から収穫される植物素材。
【0121】
32.実施形態31の植物によって生産される種子。
【0122】
33.所在場所の使用の増大のための系であって:
第1の育成シーズンにおいて所在場所で線虫耐性植物を育てることと;
以降の育成シーズンにおいて所在場所で線虫感受性植物を育てることと
を含む系。
【0123】
34.所在場所は、以降の育成シーズンの間に休閑されない、実施形態33の系。
【0124】
35.被覆植物又は被覆作物が、以降の育成シーズンの間、育てられない、実施形態33の系。
【0125】
36.線虫耐性植物及び線虫感受性植物は、連続する育成シーズンにおいて育てられる、実施形態33の系。
【0126】
37.線虫耐性植物及び線虫感受性植物は各々、固有の価値作物植物である、実施形態33~36のいずれか1つの系。
【0127】
38.輪作系を向上させる方法であって:
第1の育成シーズンの間に所在場所において線虫耐性植物を育てることと;
以降の育成シーズンの間に所在場所において線虫感受性植物を育てることと
を含み、第1の育成シーズンの間に所在場所において線虫耐性植物を育てることは、以降の育成シーズンにおいて線虫感受性植物の育成を可能にするか、又は向上させる、所在場所における線虫集団の抑制をもたらす、方法。
【0128】
39.輪作系の向上は、以下:
a.毎年の少なくとも1つの追加の育成シーズンのための所在場所の使用;
b.所在場所の耕作の減少;
c.線虫駆除剤による線虫感受性作物種子の処理の減少;
d.線虫感受性植物の育成シーズン前の、若しくはその間の線虫駆除剤による所在場所の処理領域の減少;
e.線虫感受性植物の育成シーズン前に、若しくはその間に線虫感受性植物及び/若しくは所在場所に散布される線虫駆除剤の割合の低下;
f.育成シーズンの間に線虫感受性植物及び/若しくは所在場所になされる線虫駆除剤の散布の回数の減少;
g.所在場所の有用性の増大;
h.所在場所の価値の増大;
i.持続可能な農業実践の向上;並びに/又は
j.線虫感受性作物の収量の増大
の1つ以上をさらに含み得る、実施形態38の方法。
【0129】
40.所在場所についての線虫管理の方法であって:
育成シーズンの間に所在場所において線虫耐性植物を育てることと;
育成シーズンの前に、その間に、及び/又はその後に、所在場所において多年草を育てることと
を含み、所在場所において線虫耐性植物を育てることは、多年草の育成を可能にするか、又は向上させる、所在場所における線虫集団の抑制をもたらす、方法。
【0130】
41.多年草は線虫感受性植物である、実施形態40の方法。
【0131】
42.多年草は、野菜植物、果実植物、果樹園植物、観賞植物、又はブドウの木である、実施形態40の方法。
【0132】
43.所在場所についての線虫管理の方法であって:
第1の育成シーズンにおいて所在場所で線虫耐性植物を育てることであって、所在場所において線虫集団を抑制するか、又は所在場所において線虫集団の抑制を維持する、第1の育成シーズンにおいて線虫耐性植物を育てることと;
同じ、又は以降の育成シーズンにおいて所在場所で線虫感受性植物を育てることと;
線虫集団が抑制されなければ予想される健康状態及び/又は収量と比較して、線虫感受性植物の健康状態及び/又は収量の向上を達成することと
を含む方法。
【0133】
44.線虫感受性植物の健康状態の向上は、以下:根発育の向上(例えば、根又は根毛の成長の向上);収量の向上;より速い出芽;ストレス耐性の増大及び/若しくはストレスからの回復の向上が挙げられる植物ストレス管理の向上;機械的強度の増大;旱魃耐性の向上;真菌、細菌、及び/若しくはウイルス病感染の引下げ;又はそれらのあらゆる組合せの1つ以上を含む、実施形態43の方法。
【0134】
45.線虫耐性植物は、配列番号 1に対する配列同一性が少なくとも95、96、97、98、又は少なくとも99%である殺線虫Cryl4Abタンパク質を発現する、実施形態1~44のいずれか。
【0135】
46.線虫耐性植物は、エリートイベントEE-GM5を含む、実施形態1~44のいずれか。
【0136】
47.線虫耐性植物は、エリートイベントEE-GM4を含む、実施形態1~44のいずれか。
【0137】
48.線虫耐性植物は、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)毒素Cry14Ab-1、又はその機能的トランケーション若しくはバリアントを発現する、実施形態1~44のいずれか。
【0138】
49.所在場所についての線虫管理の方法であって:
所在場所において線虫耐性植物を育てることであって、線虫耐性植物は、ブラジル又はパラグアイ等の南米の国においてsafraシーズンの間に育てられる、所在場所において線虫耐性植物を育てることと;
線虫耐性植物を育てた後に、所在場所において線虫感受性植物を育てることであって、線虫感受性植物は、ブラジル又はパラグアイ等の南米の国においてsafrinhaシーズンの間に育てられる、所在場所において線虫感受性植物を育てることと
を含む方法。
【0139】
50.線虫耐性植物は、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)毒素Cry14Ab-1、又はその機能的トランケーション又はバリアントを発現し、線虫感受性植物は、トウモロコシ、ワタ、モロコシ、コムギ、及びサトウキビからなる群から選択される、実施形態49の方法。
【0140】
以下の実施例は、限定するためにではなく実例として提供される。
【実施例】
【0141】
実施例1-線虫耐性植物の生成
GMB151トランスジェニックイベント(すなわち、国際公開第2018/119364号パンフレットに記載されるEE-GM5)を含有するダイズ株を、BC2:F2選択植物から生成した。ダイズ株は、GMB151イベントについて、その接合子性が異なった。GMB151イベントについてホモ接合性の一株を生成した一方、GMB151イベントについてヌル接合性の第2の株も選択した。これらの2つの株は、共通の戻し交雑親ダイズ株と、約87.5%の遺伝的同一性を共有した。したがって、株は、GMB151イベントの存在を除いて、農学的に類似していた。
【0142】
実施例2-バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)毒素Cry14Ab-1を発現するGMB151トランスジェニックダイズによる根病変線虫プラティレンクス・ブラキウルス(Pratylenchus brachyurus)(Godfrey)の防除
畑においてP.ブラキウルス(P.brachyurus)を防除するCry14Ab-1の能力を調査した。具体的には、Cry14Ab-1発現イベントGMB151が、ダイズの育つ畑においてP.ブラキウルス(P.brachyurus)繁殖を引き下げ得、P.ブラキウルス(P.brachyurus)繁殖のこの引下げが、重大な収量保護をもたらすと考えた。
【0143】
材料及び方法:
実地試験を、2018年/19ダイズ育成シーズンの間、ブラジルのParana、Goias、及びMato Grosso州で行った。実地試験位置を、表1に後述する:
【0144】
【0145】
GMB151イベントを、ダイズ成熟群IXバックグラウンド中に遺伝子移入した。これは、ブラジルにおける生産に適応している。成熟群IX株を反復親として利用することによって、遺伝子移入を達成した。BC2:F2世代にて、GMB151イベントについて植物ホモ接合性及びヌル接合性を選択して、GMB151イベントの有無が異なるが、それ以外では反復親とおよそ87.5%遺伝的に関連している2つのダイズ株を作出した。
【0146】
表1に示すように、P.ブラキウルス(P.brachyurus)の集団密度の勾配の全体にわたる6つの研究サイトにて、ダイズ試験を確立した。3つの研究サイトは、ダイズ収量を引き下げると予想される集団密度にてP.ブラキウルス(P.brachyurus)を含有した一方、3つのサイトは、ダイズ収量を有意に引き下げるほど十分に高い集団密度にてP.ブラキウルス(P.brachyurus)を有すると予測されなかった。P.ブラキウルス(P.brachyurus)有害生物圧の予想を、2017年/18ダイズ作物サンプル又は農場管理者とのコミュニケーションに基づいて行った。
【0147】
実験設計及び試験処理の差異は、予測される高圧サイトと低圧サイト間で異なった。予測される低圧試験サイトを、ランダム化完全ブロック設計試験として5反復で行った。各畑プロットは、0.5m間隔で離れた4つの5m長ダイズ畝からなった。GMB151ホモ接合性株(ホモ接合性)及びGMB151ヌル接合性株(ヌル接合性)の2処理を各試験に含めた。
【0148】
3つの高圧サイトにて、試験内に、低圧サイトと比較して2つの変化を加えた。第1に、GMB151イベントを、殺線虫種子処理と組み合わせて評価した。3つの種子処理を試験に含めた。種子処理の処理因子を、接合子性(すなわち、ホモ接合性又はヌル接合性)の処理因子と完全交差(fully crossed)して、6つの処理を作出した。接合子性を全プロット処理として、及び種子処理をサブプロット処理として、6つの処理を分割プロット設計で配置した。サブプロットは、他のサイトと同じサイズのままであり、76.2cm間隔で離れた4つの5m長ダイズ畝であった。高圧サイトにて試験に加えた第2の変化は、反復数を5から3まで引き下げることであった。種子処理サブプロットの包含及び実地試験が利用可能な空間の制限に起因して、反復数を引き下げた。
【0149】
データ収集:
植付け後90日(dap)にダイズ根系内のP.ブラキウルス(P.brachyurus)の集団密度を測定することによって、P.ブラキウルス(P.brachyurus)に対するGMB151の有効性を評価した。90dap時点は、以前のP.ブラキウルス(P.brachyurus)研究のサンプリング時間に近かったので、選択した(Lima et al.2015)。90dapにて、プロットあたり10植物体のダイズ根系を畑から取り出した。5つの根系を、各プロットの第1及び第4の畝からサンプリングした。これらの畝を選択したのは、収穫しなかったことで、P.ブラキウルス(P.brachyurus)サンプリングが、シーズンの終わりにとった収量推定値に影響を与えなかったからである。根サンプルをラボに運んで、そこで秤量してからブレンダにより均質化した。続いて、線虫を、Jenkins(1964)の方法を用いて根部分から抽出した。続いて、抽出した線虫を水中に浮遊させて、1mlのサブサンプル内のP.ブラキウルス(P.brachyurus)数を顕微鏡下で数え上げた。根1gあたりのP.ブラキウルス(P.brachyurus)数を、サンプル毎に算出した。
【0150】
ダイズ収量を、生理学的成熟期にてプロット毎に推定した。各4畝プロットの中央の2畝を収穫した。粒重及び水分をプロット毎に測定して、収量を13%水分に対して標準化した。
【0151】
データ分析:
プラティレンクス・ブラキウルス(Pratylenchus brachyurus)集団密度データを、3つの高圧位置及び3つの低圧位置について別々に分析した。根1グラム(g)あたりのP.ブラキウルス(P.brachyurus)数を、分散不均一性(heteroscadacity)を引き下げるために分析の前に自然対数変換した。研究試験位置の全体にわたって存在する多種多様なP.ブラキウルス(P.brachyurus)集団密度(P.ブラキウルス(P.brachyurus)によって引き起こされる損傷の量に影響を与える)に起因して、試験毎の収量データを別々に分析した。収量データを、1エーカーあたりのブッシェルとして分析した。
【0152】
データを分析して、P.ブラキウルス(P.brachyurus)集団密度及びダイズ収量に及ぼすGMB151接合子性の効果を推定した。データを混合効果モデルANOVAにフィットさせて、ホモ接合性とヌル接合性の株間の差異を、95%信頼区間で推定した。種子処理サブプロットを含まない試験は、ランダムな効果としての反復、及び固定効果としての接合子性を含むモデルを利用した。反復及び接合子性の相互作用を誤差項と考えた。種子処理サブプロットを含む試験は、固定効果としての接合子性、種子処理、及び種子処理による接合子性の相互作用を含んだ。反復、及び因子間の他の全ての相互作用を、ランダムな効果と考えた。反復及び接合子性の相互作用を、プロット誤差項全体と考えた一方、複製、接合子性、及び種子処理の相互作用を、サブプロット誤差項と考えた。P.ブラキウルス(P.brachyurus)、ダイズ収量、及びそれらの、GMB151形質との相互作用に及ぼす種子処理の効果は、ここで報告される研究の範囲を越えている。したがって、種子処理の全体にわたる接合子性によってのみのデータを要約した。
【0153】
結果:
2つの高圧(Rio Verde及びSinop1)及び1つの低圧位置(Sinop2)におけるプラティレンクス・ブラキウルス(Pratylenchus brachyurus)集団密度は、Lima et al.(2015)による地上の病気徴候を引き起こすことが観察される集団密度を超えていた。高圧Lupinopolis位置平均P.ブラキウルス(P.brachyurus)集団密度は、Lima et al.(2015)が症候的な畑領域の外側で観察した範囲内であったので、もしあれば、より少ない収量引下げに終わると予想した。最終の2つの低圧位置(Ibipora及びTrinidade)は、P.ブラキウルス(P.brachyurus)集団が検出限界にあったので、ダイズ収量に影響を与えるはずはなかった。
【0154】
ホモ接合性ダイズ株は、3つの高圧位置の全体にわたって、P.ブラキウルス(P.brachyurus)集団密度を96%引き下げた(P<0.0001)。また、ホモ接合性株は、予測される低圧位置、Sinop2にて、P.ブラキウルス(P.brachyurus)集団を90%、有意に引き下げた(P<0.01)。個々の試験位置にて、平均P.ブラキウルス(P.brachyurus)引下げは、90%~97%に及んだ(
図1)。
【0155】
ダイズ収量は、Lupinopolis及びIbiporaサイトの双方にて、地域にフィットした不十分な成熟群の悪影響を受けた。不十分なフィットは、全ての試験処理の全体にわたって低い絶対収量に終わった。処理収量は、これらの2つの試験サイトにて12.4bu/エーカーから16.9bu/エーカーに及んだ。他の4つの位置での処理収量は、28.0~57.1bu/エーカーに及んだ。
【0156】
ホモ接合性とヌル接合性の株間の収量差異は、試験場所でのP.ブラキウルス(P.brachyurus)の集団密度に依存していた(
図2)。P.ブラキウルス(P.brachyurus)集団密度が最も低い3つのいずれの位置でも、2つのダイズ株間に有意な収量差異はなかった。P.ブラキウルス(P.brachyurus)集団密度が最も高い3つのサイトは各々、ホモ接合性とヌル接合性の株間に有意な収量差異があった。各位置にてヌル接合性株と比較したホモ接合性株の平均収量の向上は、6.2~7.8bu/エーカー又は14~25%であった。
【0157】
考察:
選択した6つの研究サイトは、プラティレンクス・ブラキウルス(Pratylenchus brachyurus)集団密度が、根組織1グラムあたり検出限界未満からほぼ1,000匹に及んだ。6つのサイトにより、P.ブラキウルス(P.brachyurus)に対するGMB151トランスジェニックダイズイベントの有効性、及びその、ダイズ収量を保護する能力を評価することが可能となった。GMB151イベントは、P.ブラキウルス(P.brachyurus)に対して高度に有効であった。育成シーズンに入って3ヵ月、P.ブラキウルス(P.brachyurus)集団は、GMB151イベントについてホモ接合性のダイズ株において、ヌル接合性株と比較して、平均で>90%低かった。防除のこのレベルは、輪作、休閑、及び化学防除が挙げられる現在の管理実践によって実現されるものをはるかに超えている(Lima et al.2015,Ribeiro et al.2014,Rodrigues et al.2014)。
【0158】
ダイズ収量保護についてのGMB151イベントの利益は、P.ブラキウルス(P.brachyurus)の集団密度に依存していた。低いP.ブラキウルス(P.brachyurus)圧の下で、ダイズ収量は、GMB151形質の影響を受けなかった。この結果は、P.ブラキウルス(P.brachyurus)の不在下で、GMB151がダイズ収量にいかなる悪影響も及ぼさないことを示している。P.ブラキウルス(P.brachyurus)集団密度が最も高い3つの試験位置の各々において、ダイズ収量は、GMB151形質についてダイズ株ホモ接合性において、有意に大きかった。ダイズ収量向上は、これらのサイトにて14~25%に及んだ。したがって、発明者らの結果は、P.ブラキウルス(P.brachyurus)の収量損傷を10~30%と推定した以前の研究と一致している(Dias et al.2007,Franchini et al.2007)。
【0159】
ここで報告される実地試験の結果は、Cry14Ab1発現ダイズ形質GMB151が、ダイズ収量の向上をもたらす、P.ブラキウルス(P.brachyurus)に対する有意な有効性を付与したことを示す。これらの結果は、ブラジルにおける商業生産畑について報告された範囲内のP.ブラキウルス(P.brachyurus)集団密度の畑生産条件下で得られた(Franchini et al.2007,Lima et al.2015)。したがって、GMB151形質は、今日、実行可能な管理オプションにほとんどよらない、経済的に重要な作物有害生物を防除するための潜在的に固有の新しい管理ツールを表す。
【0160】
実施例2についての参考文献:
Barbosa,B.F.F.,J.M.dos Santos,J.C.Barbosa,P.L.M.Soares,A.R.Ruas,and R.B.de Carvalho.2013.Aggressiveness of Pratylenchus brachyurus to the sugarcane,compared with key nematode P.zeae.Nematropica 43:119-130.
Dias,W.P.,N.R.Ribeiro,I.O.N.Lopes,A.Garcia,G.E.S.Carneiro,and J.F.V.Silva.2007.Manejo de nematoides na cultura da soja.In:Congresso Brasileiro de Nematologia;12 August;Goiana,Brazil.Goiana:Sociedade Brasileira de Nematologia.p 26-30.
Franchini,J.C.,O.F.Saraiva,H.Debiase,and S.L.Goncalves.2007.Contribuicao de sistema de manejo do solo para producao sustentavel da soja.Circular Tecnica 46:1-4.
Inomoto,M.M.,A.M.C.Goulart,A.C.Z.Machado,and A.R.Monteiro.2001.Effect of population densities of Pratylenchus brachyurus on the growth of cotton plants.Fitopatologia Brasileira 26:192-196.
Jenkins,W.R.1964.A rapid centrifugal-flotation technique for separating nematodes from soil.Plant Disease Reporter 48:692.
Lima,F.S.D.O.,G.R.D.Santos,S.R.Nogueira,P.R.R.D.Santos,and V.R.Correa.2015.Population dynamics of the root lesion nematode,Pratylenchus brachyurus,in soybean fields in Tocantins State and its effect to soybean yield.Nematropica 45:170-177.
Lima,F.S.O.,V.R.Correa,S.R.Nogueira,and P.R.R.Santos.2017.Nematodes affecting soybean and sustainable practices for their management.Intech doi:10.5772/67030
Ribeiro,N.R.,W.P.Dias,and J.M.Santos.2010.Distribuicao de fitonematoides em regioes produtoras de soja no estado do Mato Grosso.Boletim de Pesquisa de Soja.Fundacao MT,Rondonopolis,MT,289-296.
Ribeiro,L.M,H.D.Campos,C.R.Dias-Arieira,D.L.Neves,and G.C.Ribeiro.2014.Effect of soybean seed treatment on the population dynamics of Pratylenchus brachyurus under water stress conditions.Bioscience Journal 30:616-622.
Rios,A.D.F.,M.R.Rocha,A.S.Machado,K.A.G.B.Avila,R.A.Teixeira,L.C.Santos,and L.R.S.Rabelo.2016.Host suitability of soybean and corn genotypes to the lesion caused by nematode under natural infestation conditions.Ciencia Rural.46:580-584.
Rodrigues,D.B.,C.R.Dias-Arieira,M.V.V.Vedoveto,M.Roldi,H.F.D.Molin,and V.H.F.Abe.2014.Crop rotation for Pratylenchus brachyurus control in soybean.Nematropica 44:146-151.
Wei,J.,K.Hale,L.Carta,E.Platzer,C.Wong,S.Fang,and F.V.Aroian.2003.Bacillus thuringiensis crystal proteins that target nematodes.Proceedings of the National Academy of Sciences 100:2760-2765.
【0161】
実施例3-バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)毒素Cry14Ab-1を発現するGMB151トランスジェニックダイズは、safrinha(「第2の収穫」)作物において殺線虫保護を提供する
ブラジルのダイズ作付け系は、暦年で2つの作物を生産することができる。「safra」と呼ばれる第1の育成シーズンは、9月~12月にダイズを植え付けることから始まる。safraシーズンダイズ作物の収穫は、1月~3月の間に行われる。ダイズ収穫の直後に、「safrinha」と称される第2のシーズン作物が植え付けられる。続いて、safrinha作物は、5月~8月に収穫される。ダイズ作付け系において、ブラジルにおいて最も共通のsafrinha作物は、トウモロコシ及びワタである。ブラジルにおいて、ダイズ、トウモロコシ、及びワタは全て、植物寄生性線虫プラティレンクス・ブラキウルス(Pratylenchus brachyurus)に感受性である。ゆえに、GMB151ダイズをsafraシーズンに植え付けることで、線虫抑制を、以降の線虫感受性safrinhaシーズン作物に付与することができるかの判定を試験した。
【0162】
2つのダイズ株(GMB151形質について、1つがホモ接合性、及び1つがヌル)を、P.ブラキウルス(P.brachyurus)がはびこる生産畑に植え付けた。P.ブラキウルス(P.brachyurus)がはびこる3つの畑を、2018及び2019年に研究のために利用した。ダイズ実地試験は、ランダム化完全ブロック設計で配置した3反復(2018年)又は5反復(2019年)からなり、個々のプロットが12のダイズ畝幅単位で6メートル長を測定した。2019年及び2020年4月/5月のダイズ試験収穫の直後に、safrinha作物を、同じ地面の上部に植え付けた。2019年に、シグナルグラスをsafrinha作物として植え付けた。シグナルグラスプロットを、各場所にて、収穫したダイズ畝と平行して植え付けた。3反復のシグナルグラスを、ダイズ実地試験地面の上部に植え付けた。したがって、プロットは、12の畝幅単位で6メートル長であった。2020年4月に、トウモロコシ及びワタを、ダイズ後のsafrinha作物として植え付けた。3反復のトウモロコシプロット及び3反復のワタプロットを、ダイズ試験地面の上部に植え付けた。トウモロコシ及びワタ畝を、収穫したダイズ畝に対して垂直に植え付けた。ワタプロットを、反復1、2、及び反復3の最初の3mの上部に植え付けた。トウモロコシプロットを、反復5、4、及び反復3の最後の3mの上部に植え付けた。したがって、ワタ及びトウモロコシプロットは9m長であり、2反復が8畝幅であり、各作物の第3の反復が4畝幅であった(
図3)。
【0163】
データを収集して、P.ブラキウルス(P.brachyurus)からの保護が、GMB151ダイズの後に植え付けたsafrinha作物に付与されるかを判定した。safrinha作物に対する保護を、P.ブラキウルス(P.brachyurus)集団密度及び作物収量を測定することによって評価した。プラティレンクス・ブラキウルス(Pratylenchus brachyurus)集団密度を、根組織の1gあたりの線虫数として測定した。P.ブラキウルス(P.brachyurus)の集団密度を、safrinha作物において、植付け後30日(dap)、60dap、及び90dapにて測定した。プロットあたり10植物体の根系を、P.ブラキウルス(P.brachyurus)測定毎に収集した。5つの根を、各プロットの最初の畝及び最後の畝から収集した。中央の畝はサンプリングしなかった。というのも、根サンプルが破壊的であり、及び各プロットの中央の畝からの収量データの収集に干渉するからである。粒収量を、2020年8月に、ワタ及びトウモロコシsafrinhaプロットの中央の畝から収集した。シグナルグラスを牧草地作物として育てるので、収量は、2019年にシグナルグラスプロットからとらなかった。
【0164】
データを分析して、P.ブラキウルス(P.brachyurus)集団の密度及び粒収量が、従来のダイズと比較して、GMB151ダイズ後のプロット間で異なるかを評価した。データを、safrinha作物;トウモロコシ、ワタ、及びシグナルグラス毎に別々に分析した。全てのデータを、混合効果ANOVAモデルを用いて分析した。モデルは、位置、GMB151接合子性、及びそれらの相互作用の固定効果を含んだ。実験反復は、ランダムな効果と考えた。
【0165】
考察:
プラティレンクス・ブラキウルス(Pratylenchus brachyurus)集団密度が、safraシーズンの間にGMB151ダイズを先に植え付けることによって、3つ全てのsafrinha作物において有意に引き下げられた。safrinha作物、試験場所、及びサンプリング時点に応じて、P.ブラキウルス(P.brachyurus)集団密度が、28~100%引き下げられ、平均引下げは87%であった。P.ブラキウルス(P.brachyurus)集団抑制が、3つの作物のいずれにおいても、safrinhaシーズンにわたって低下するか、又は線虫集団の再燃が存在するという明らかな指摘はなかった。したがって、GMB151ダイズを植え付けることで、safraダイズ作物から始まってsafrinha作物収穫に及ぶ作付け系の全体を通して、P.ブラキウルス(P.brachyurus)集団が引き下げられた(例えば、
図8参照)。GMB151ダイズは、ダイズシーズンの終わりにP.ブラキウルス(P.brachyurus)集団を99%引き下げ、これにより、植付けから、トウモロコシsafrinha作物(
図4及び
図7)及びワタsafrinha作物(
図7)の収穫までのsafrinha作物シーズンの全体を通して、有意なP.ブラキウルス(P.brachyurus)抑制に至った。
【0166】
safrinha作物保護は、Rio Verde、Mato Grossoにおいて、トウモロコシ生産の場合、実質的な収量向上をもたらした。例えば、
図5に示すように、GMB151ダイズによって実現されるP.ブラキウルス(P.brachyurus)防除が、数値的により高いダイズ収量を、及びsafrinha作付けシーズンにおいて有意に大きなトウモロコシ収量をもたらした。P.ブラキウルス(P.brachyurus)防除からGMB151によって実現される収量向上は、農家への粗収益のおよそ$90USD/エーカーの増収の価値があった。粗収益推定値は、ダイズの1ブッシェルあたり$9.00、及びトウモロコシの1ブッシェルあたり$6.30の平均ブラジル粒価格に基づく。
【0167】
この実施例で提供されるデータは、宿主作物中に高有効性トランスジェニック殺線虫タンパク質を組み込むことにより、形質転換作物にだけでなく、形質転換作物と輪作されるか、又はこれと同じ所在場所に後に植え付けられる感受性作物にも保護が提供され得ることを実証する。これにより、農場生産系の全体にわたって線虫防除を実現するのに有効な方法が提供される。作物を形質転換して生産系全体に保護を提供することにより、開発、並びにトランスジェニック作物の生産及び登録と関連する調節経費が制限される。また、在来耐性が利用可能でなく、とりわけ共通の問題が移動性の植物寄生性線虫、例えばネグサレセンチュウ(Pratylenchus)属種である作物に線虫耐性をもたらす、対費用効果の高い方法が提供される。また、このアプローチは、トランスジェニック粒のエンドユーザ容認が障壁である場合があるが、ネグサレセンチュウ(Pratylenchus)属種が、利用可能な有効な管理オプションがほとんどない重大な収量引下げ病原体であり得るコムギ等の作物にトランスジェニック線虫保護をもたらす機会を提供する。
【0168】
一実施形態において、トランスジェニックGMB151ダイズは、かなりの収量及び作付け系管理利益をブラジルの栽培者にもたらす。P.ブラキウルス(P.brachyurus)に対するGMB151の高い有効性は、safraダイズ保護、及び多数のsafrinha作物種への保護を栽培者に提供する。また、safrinha作物への利益は、P.ブラキウルス(P.brachyurus)に対する作物感受性に関係なく、最も有益且つ農学的に有利な輪作を選択するための生産系における自由及び柔軟性を栽培者に提供することである。
【0169】
実施例3についての参考文献:
Barker,K.R.,and S.R.Koenning.1998.Developing sustainable systems for nematode management.Annual Review of Phytopathology 36:165-205.
Cook,R.2004.Genetic resistance to nematodes:where is it useful? Australasian Plant Pathology 33:139-150.
Inagaki,H.,and M.Tsutsumi.1971.Survival of the soybean cyst nematode Heterodera glycines Ichinohe(Tylenchida:Heteroderidae)under certain storage conditions.Applied Entomology and Zoology 6:156-162.
IRAC.2018.Nematicide resistance risk statement.https://irac-online.org/teams/nematodes.
Nicol,J.M.,S.J.Turner,D.L.Coyne,L.den Nijs,S.Hockland,and Z.T.Maafi.2011.Current nematode threats to world agriculture,in:J.Jones,G.Gheysen,C.Fenoll(Eds.),Genomics and Molecular Genetics of Plant-Nematode Interaction,Springer,Germany,pp.21-43.
Wei,J.,K.Hale,L.Carta,E.Platzer,C.Wong,S.Fang,and F.V.Aroian.2003.Bacillus thuringiensis crystal proteins that target nematodes.Proceedings of the National Academy of Sciences 100:2760-2765.
【0170】
実施例4-バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)毒素Cry14Ab-1を発現するGMB151トランスジェニックダイズによる根病変線虫プラティレンクス・ブラキウルス(Pratylenchus brachyurus)(Godfrey)の防除
実施例2に記載する実験で増殖させて、畑においてP.ブラキウルス(P.brachyurus)を防除するCry14Ab-1の能力をさらに調査した。具体的には、Cry14Ab-1発現イベントGMB151が、ダイズの育つ畑においてP.ブラキウルス(P.brachyurus)繁殖を引き下げ得、及びP.ブラキウルス(P.brachyurus)繁殖のこの引下げが、重大な収量保護をもたらすと考えた。
【0171】
材料及び方法:
実地試験を、2018年/19、2019年/20、及び2020年/21ダイズ育成シーズンの間、ブラジルのBahia、Goias、Mato Gross、Parana、及びSao Paulo州で行った。合計で、49件のダイズ試験を、3つのsafraシーズンの全体にわたって植え付けた。
【0172】
GMB151イベントを、MG VIからIXに及ぶ多数のダイズバックグラウンド中に遺伝子移入した。これらは各々、ブラジルにおける生産に適応している。ブラジル適応バックグラウンドを反復親として利用することによって、遺伝子移入を達成した。バックグラウンド毎に、BC2:F2又はBC3:F2世代にて、GMB151イベントについて植物ホモ接合性及びヌル接合性を選択して、GMB151イベントの有無が異なるが、それ以外では反復親とおよそ87.5%(BC2:F2)又は93.75%(BC3:F2)遺伝的に関連している2つのダイズ株を作出した。
【0173】
P.ブラキウルス(P.brachyurus)の広範な集団密度ではびこった研究サイトにて、ダイズ試験を確立した。
【0174】
実験設計及び試験処理の差異は、試験サイト間で異なった。49の試験サイトは各々、ランダム化完全ブロック設計で反復される2つの主なプロット処理を5~6反復で含んだ。試験毎に含まれる2つの主なプロット処理は、(1)GMB151イベントについてBC2:F2又はBC3:F2株ホモ接合性、及び(2)GMB151形質についてBC2:F2又はBC3:F2株それぞれヌル接合性であった。追加の分割プロット処理を、位置のサブセットにて含めた。9つの場所が、化学線虫駆除剤処理の分割プロット処理を受けた。これらの9つの位置にて、各ダイズ株を、(1)基剤殺真菌剤/殺虫剤種子処理、(2)基剤殺真菌剤/殺虫剤種子処理及び線虫駆除剤種子処理、並びに(3)基剤殺真菌剤/殺虫剤種子処理、及び液体線虫駆除剤の畝内散布により処理した。他の3つの位置は、主なプロット処理が、耕作、従来の耕作、又は無耕墾農法生産のレベルである僅かに異なる試験設計を利用した。これらの3つのサイトでの分割プロット処理は、ダイズ株(GMB151形質についてホモ接合性、又はヌル接合性)であった。
【0175】
全ての位置にて、プロットは5m長及び4畝幅であった。
【0176】
データ収集:
植付け後90日(dap)にダイズ根系内のP.ブラキウルス(P.brachyurus)の集団密度を測定することによって、P.ブラキウルス(P.brachyurus)に対するGMB151、化学線虫駆除剤、及び耕作の有効性を評価した。90dap時点は、以前のP.ブラキウルス(P.brachyurus)研究のサンプリング時間に近かったので、選択した(Lima et al.2015)。90dapにて、プロットあたり10植物体のダイズ根系を畑から取り出した。3~5つの根系を、各プロットの第1及び第4の畝からサンプリングした。これらの畝を選択したのは、収穫しなかったことで、P.ブラキウルス(P.brachyurus)サンプリングが、シーズンの終わりにとった収量推定値に影響を与えなかったからである。根サンプルをラボに運んで、そこで秤量してからブレンダにより均質化した。続いて、線虫を、Jenkins(1964)の方法を用いて根部分から抽出した。続いて、抽出した線虫を水中に浮遊させて、1mlのサブサンプル内のP.ブラキウルス(P.brachyurus)数を顕微鏡下で数え上げた。根1gあたりのP.ブラキウルス(P.brachyurus)数を、サンプル毎に算出した。
【0177】
ダイズ収量を、生理学的成熟期にてプロット毎に推定した。各4畝プロットの中央の2畝を収穫した。粒重及び水分をプロット毎に測定して、収量を13%水分に対して標準化した。
【0178】
データ分析:
プラティレンクス・ブラキウルス(Pratylenchus brachyurus)集団密度及び収量データを、最初に、全ての位置にわたって分析して、P.ブラキウルス(P.brachyurus)集団密度に及ぼすGMB151の効果を推定した。根1グラム(g)あたりのP.ブラキウルス(P.brachyurus)数を、分散不均一性を引き下げるために分析の前に自然対数変換した。収量データを、1エーカーあたりのブッシェルとして分析した。
【0179】
続いて、プラティレンクス・ブラキウルス(Pratylenchus brachyurus)集団密度及び収量データを、化学線虫駆除剤をGMB151と組み合わせて評価する9件の試験のために別々に分析した。続いて、第3の分析を完了して、耕作実践、並びにプラティレンクス・ブラキウルス(Pratylenchus brachyurus)防除及びダイズ収量保護についてのGMB151形質を比較する3つの試験位置を評価した。
【0180】
結果:
49件の試験のうちの33件において、GMB151ヌル株上のプラティレンクス・ブラキウルス(Pratylenchus brachyurus)集団密度は、Lima et al.(2015)による地上の病気徴候を引き起こすことが観察される集団密度を超えていた。
【0181】
ホモ接合性ダイズ株は、49件の試験の全体にわたって、P.ブラキウルス(P.brachyurus)集団密度を91%引き下げた(P<0.0001)(
図9)。また、GMB151形質は、ダイズ収量を平均4.2bu/エーカー又は9%、有意に向上させた(
図10)。ホモ接合性株は、種子処理又は畝内線虫駆除剤散布よりも有意に良好なP.ブラキウルス(P.brachyurus)防除を実現した(
図11)。また、ホモ接合性株は、従来の耕作よりも有意に大きな防除を実現した(
図12)。
【0182】
ホモ接合性及びヌル接合性の株間の収量差異は、試験位置でのP.ブラキウルス(P.brachyurus)の集団密度に依存しており、P.ブラキウルス(P.brachyurus)集団密度が高い試験におけるほど、一般に観察される収量利益が大きかった。平均で、ホモ接合性株は、ダイズ収量が4.2bu/エーカーであったか、又はヌル株よりも9.4%大きかった(
図2)。
【0183】
考察:
行った49件の研究試験は、プラティレンクス・ブラキウルス(Pratylenchus brachyurus)集団密度が、根組織1グラムあたり検出限界の近くからほぼ1,000匹に及んだ。試験により、P.ブラキウルス(P.brachyurus)に対するGMB151トランスジェニックダイズイベントの有効性、及びその、ダイズ収量を保護する能力を評価することが可能となった。GMB151イベントは、P.ブラキウルス(P.brachyurus)に対して高度に有効であった。育成シーズンに入って3ヵ月、P.ブラキウルス(P.brachyurus)集団は、GMB151イベントについてホモ接合性のダイズ株において、ヌル接合性株と比較して、平均で>90%低かった。防除のこのレベルは、輪作、休閑、及び化学防除が挙げられる現在の管理実践によって実現されるものをはるかに超えている(Lima et al.2015,Ribeiro et al.2014,Rodrigues et al.2014)。
【0184】
ここで報告される実地試験の結果は、Cry14Ab1発現ダイズ形質GMB151が、ダイズ収量の向上をもたらす、P.ブラキウルス(P.brachyurus)に対する有意な有効性を付与したことを示す。これらの結果は、ブラジルにおける商業生産畑について報告された範囲内のP.ブラキウルス(P.brachyurus)集団密度の畑生産条件下で得られた(Franchini et al.2007,Lima et al.2015)。したがって、GMB151形質は、今日、実行可能な管理オプションにほとんどよらない、経済的に重要な作物有害生物を防除するための潜在的に固有の新しい管理ツールを表す。
【0185】
実施例4についての参考文献:
Barbosa,B.F.F.,J.M.dos Santos,J.C.Barbosa,P.L.M.Soares,A.R.Ruas,and R.B.de Carvalho.2013.Aggressiveness of Pratylenchus brachyurus to the sugarcane,compared with key nematode P.zeae.Nematropica 43:119-130.
Dias,W.P.,N.R.Ribeiro,I.O.N.Lopes,A.Garcia,G.E.S.Carneiro,and J.F.V.Silva.2007.Manejo de nematoides na cultura da soja.In:Congresso Brasileiro de Nematologia;12 August;Goiana,Brazil.Goiana:Sociedade Brasileira de Nematologia.p 26-30.
Franchini,J.C.,O.F.Saraiva,H.Debiase,and S.L.Goncalves.2007.Contribuicao de sistema de manejo do solo para producao sustentavel da soja.Circular Tecnica 46:1-4.
Inomoto,M.M.,A.M.C.Goulart,A.C.Z.Machado,and A.R.Monteiro.2001.Effect of population densities of Pratylenchus brachyurus on the growth of cotton plants.Fitopatologia Brasileira 26:192-196.
Jenkins,W.R.1964.A rapid centrifugal-flotation technique for separating nematodes from soil.Plant Disease Reporter 48:692.
Lima,F.S.D.O.,G.R.D.Santos,S.R.Nogueira,P.R.R.D.Santos,and V.R.Correa.2015.Population dynamics of the root lesion nematode,Pratylenchus brachyurus,in soybean fields in Tocantins State and its effect to soybean yield.Nematropica 45:170-177.
Lima,F.S.O.,V.R.Correa,S.R.Nogueira,and P.R.R.Santos.2017.Nematodes affecting soybean and sustainable practices for their management.Intech doi:10.5772/67030.
Ribeiro,N.R.,W.P.Dias,and J.M.Santos.2010.Distribuicao de fitonematoides em regioes produtoras de soja no estado do Mato Grosso.Boletim de Pesquisa de Soja.Fundacao MT,Rondonopolis,MT,289-296.
Ribeiro,L.M,H.D.Campos,C.R.Dias-Arieira,D.L.Neves,and G.C.Ribeiro.2014.Effect of soybean seed treatment on the population dynamics of Pratylenchus brachyurus under water stress conditions.Bioscience Journal 30:616-622.
Rios,A.D.F.,M.R.Rocha,A.S.Machado,K.A.G.B.Avila,R.A.Teixeira,L.C.Santos,and L.R.S.Rabelo.2016.Host suitability of soybean and corn genotypes to the lesion caused by nematode under natural infestation conditions.Ciencia Rural.46:580-584.
Rodrigues,D.B.,C.R.Dias-Arieira,M.V.V.Vedoveto,M.Roldi,H.F.D.Molin,and V.H.F.Abe.2014.Crop rotation for Pratylenchus brachyurus control in soybean.Nematropica 44:146-151.
Wei,J.,K.Hale,L.Carta,E.Platzer,C.Wong,S.Fang,and F.V.Aroian.2003.Bacillus thuringiensis crystal proteins that target nematodes.Proceedings of the National Academy of Sciences 100:2760-2765.
【0186】
実施例5-バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)毒素Cry14Ab-1を発現するGMB151トランスジェニックダイズは、safrinha(「第2の収穫」)作物において殺線虫保護を提供する
実施例3に記載される実験を基礎にして拡大して、この実施例は、GMB151ダイズをsafraシーズンに植え付けることが、以降の線虫感受性safrinhaシーズン作物に線虫抑制を付与することができるかをさらに判定しようと試みた。
【0187】
2つのダイズ株(GMB151形質について、1つがホモ接合性、及び1つがヌル)を、P.ブラキウルス(P.brachyurus)がはびこる畑において、safra生産シーズンの間、生産畑に植え付けた。2019年、2020年、及び2021年4月/5月のダイズ試験収穫の直後に、従来のsafrinha作物を、同じ地面の上部に植え付けた。各safrinha作物治試験は、ランダム化完全ブロック設計で配置した3反復からなった。2019年に、ブラキアリア(Brachiaria)属(シグナルグラス)をsafrinha作物として植え付けた。シグナルグラスプロットを、各場所にて、収穫したダイズ畝と平行して植え付けた。プロットは、12の畝幅単位で5メートル長であった。2020年及び2021年4月に、トウモロコシ及びワタを、ダイズ後のsafrinha作物として植え付けた。3反復のトウモロコシプロット及び3反復のワタプロットを、ダイズ試験地面の上部に植え付けた。トウモロコシ及びワタ畝を、収穫したダイズ畝に対して垂直に植え付けた。ワタプロットを、反復1、2、及び反復3の最初の3mの上部に植え付けた。トウモロコシプロットを、反復5、4、及び反復3の最後の3mの上部に植え付けた。したがって、ワタ及びトウモロコシプロットは9m長であり、2反復が8畝幅であり、各作物の第3の反復が4畝幅であった(
図3)。2021年に、3つの位置にて、ワタsafrinha試験を、モロコシのsafrinha試験と置き換えた。
【0188】
データを収集して、P.ブラキウルス(P.brachyurus)からの保護が、GMB151ダイズの後に植え付けた感受性safrinha作物に付与されるかを判定した。safrinha作物に対する保護を、P.ブラキウルス(P.brachyurus)集団密度及び作物収量を測定することによって評価した。プラティレンクス・ブラキウルス(Pratylenchus brachyurus)集団密度を、根組織の1gあたりの線虫数として測定した。P.ブラキウルス(P.brachyurus)の集団密度を、safrinha作物において、植付け後30日(dap)、60dap、及び90dapにて測定した。プロットあたり10植物体の根系を、P.ブラキウルス(P.brachyurus)測定毎に収集した。3~5つの根を、各プロットの最初の畝及び最後の畝から収集した。中央の畝はサンプリングしなかった。というのも、根サンプルが破壊的であり、及び各プロットの中央の畝からの収量データの収集に干渉するからである。粒収量を、2020年及び2021年8月に、ワタ、トウモロコシ、及びモロコシsafrinhaプロットの中央の畝から収集した。ブラキアリア(Brachiaria)属を牧草地作物として育てるので、収量は、2019年にシグナルグラスプロットからとらなかった。
【0189】
データを分析して、P.ブラキウルス(P.brachyurus)集団の密度及び粒収量が、従来のダイズと比較して、GMB151ダイズ後のプロット間で異なるかを評価した。データを、safrinha作物;トウモロコシ、ワタ、ソルガム、及びブラキアリア毎に別々に分析した。全てのデータを、混合効果ANOVAモデルを用いて分析した。モデルは、位置、GMB151接合子性、及びそれらの相互作用の固定効果を含んだ。実験反復は、ランダムな効果と考えた。
【0190】
考察:
プラティレンクス・ブラキウルス(Pratylenchus brachyurus)集団密度が、safraシーズンの間にGMB151ダイズを先に植え付けることによって、4つ全てのsafrinha作物において有意に引き下げられた(
図13)。safrinha作物に応じて、ブラキウルス集団密度が、植付けの90日後、平均66~93%引き下げられ、平均引下げは80%であった。P.ブラキウルス(P.brachyurus)集団抑制が、3つの作物のいずれにおいても、safrinhaシーズンにわたって低下するか、又は線虫集団の再燃が存在するという明らかな指摘はなかった。したがって、GMB151ダイズを植え付けることで、safraダイズ作物から始まってsafrinha作物収穫に及ぶ作付け系の全体を通して、P.ブラキウルス(P.brachyurus)集団が引き下げられた(例えば、
図8参照)。これにより、safraダイズ作物(
図10)及び以降のsafrinha作物(
図7)の双方の収量の向上に至った。この例となる位置にて、GMB151ダイズは、ダイズシーズンの終わりにP.ブラキウルス(P.brachyurus)集団を99%引き下げ、これにより、植付けから、トウモロコシsafrinha作物(
図4及び
図6)及びワタsafrinha作物(
図6)の収穫までのsafrinha作物シーズンの全体を通して、有意なP.ブラキウルス(P.brachyurus)抑制に至った。
【0191】
safrinha作物保護は、Rio Verde、Mato Grossoにおいて、トウモロコシ生産の場合、実質的な収量向上をもたらした。例えば、
図5に示すように、GMB151ダイズによって実現されるP.ブラキウルス(P.brachyurus)防除が、数値的により高いダイズ収量を、及びsafrinha作付けシーズンにおいて有意に大きなトウモロコシ収量をもたらした。P.ブラキウルス(P.brachyurus)防除からGMB151によって実現される収量向上は、農家への粗収益のおよそ$90USD/エーカーの増収の価値があった。粗収益推定値は、ダイズの1ブッシェルあたり9.00ドル、及びトウモロコシの1ブッシェルあたり6.30ドルの平均ブラジル粒価格に基づく。
【0192】
実施例3及び実施例5で提供されるデータは、宿主作物中に高有効性トランスジェニック殺線虫タンパク質を組み込むことにより、形質転換作物にだけでなく、形質転換作物と輪作されるか、又はこれと同じ所在場所に後に植え付けられる感受性作物にも保護が提供され得ることを実証する。これにより、農場生産系の全体にわたって線虫防除を実現するのに有効な方法が提供される。単一の作物を形質転換して生産系全体に保護を提供することにより、開発、並びにトランスジェニック作物の生産及び登録と関連する調節経費が制限される。また、在来耐性が利用可能でなく、とりわけ共通の問題が移動性の植物寄生性線虫、例えばネグサレセンチュウ(Pratylenchus)属種である作物に線虫耐性をもたらす、対費用効果の高い方法が提供される。また、このアプローチは、トランスジェニック粒のエンドユーザ容認が障壁である場合があるが、ネグサレセンチュウ(Pratylenchus)属種が、利用可能な有効な管理オプションがほとんどない重大な収量引下げ病原体であり得るコムギ等の作物にトランスジェニック線虫保護をもたらす機会を提供する。
【0193】
一実施形態において、トランスジェニックGMB151ダイズは、かなりの収量及び作付け系管理利益をブラジルの栽培者にもたらす。P.ブラキウルス(P.brachyurus)に対するGMB151の高い有効性は、safraダイズ保護、及び多数のsafrinha作物種への保護を栽培者に提供する。また、safrinha作物への利益は、P.ブラキウルス(P.brachyurus)に対する作物感受性に関係なく、最も有益且つ農学的に有利な輪作を選択するための生産系における自由及び柔軟性を栽培者に提供することである。
【0194】
また、1つの線虫感受性植物体に関して本明細書中で示される効果が、線虫に対する感染性が同じである宿主に及ぶと予想される。以下は、いくつかの共通の作物の感染性を示す表である:
【0195】
【0196】
作付けエーカー予想について、Camila Thaiana Rueda da Silva et al.,Agriculture 2020,10,13;doi:10.3390/agriculture10010013;Renato Lara De Assis et al.,Expl Agric.:page 1 of 20(著作権)Cambridge University Press 2017 doi:10.1017/S0014479717000333;及びU.S.Department of Agriculture,“World Agricultural Production”,Foreign Agriculture Service,Global Market Analysis,Circular Series WAP 2-22,February 2022も参照。
【0197】
実施例5についての参考文献:
Barker,K.R.,and S.R.Koenning.1998.Developing sustainable systems for nematode management.Annual Review of Phytopathology 36:165-205.
Cook,R.2004.Genetic resistance to nematodes:where is it useful? Australasian Plant Pathology 33:139-150.
Inagaki,H.,and M.Tsutsumi.1971.Survival of the soybean cyst nematode Heterodera glycines Ichinohe(Tylenchida:Heteroderidae)under certain storage conditions.Applied Entomology and Zoology 6:156-162.
IRAC.2018.Nematicide resistance risk statement.https://irac-online.org/teams/nematodes.
Nicol,J.M.,S.J.Turner,D.L.Coyne,L.den Nijs,S.Hockland,and Z.T.Maafi.2011.Current nematode threats to world agriculture,in:J.Jones,G.Gheysen,C.Fenoll(Eds.),Genomics and Molecular Genetics of Plant-Nematode Interaction,Springer,Germany,pp.21-43.
Wei,J.,K.Hale,L.Carta,E.Platzer,C.Wong,S.Fang,and F.V.Aroian.2003.Bacillus thuringiensis crystal proteins that target nematodes.Proceedings of the National Academy of Sciences 100:2760-2765.
【0198】
本明細書中で言及される全ての出版物及び特許出願は、本発明が属する技術の当業者の技術のレベルを示す。全ての出版物及び特許出願は、あたかも個々の出版物又は特許出願が参照によって組み込まれることが具体的且つ個々に示されている如く、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0199】
前述の発明を、理解を明確にするために図及び実施例によって幾分詳細に説明してきたが、特定の変更及び修飾が、添付の特許請求の範囲内で行うことができることは明らかであろう。
【配列表】
【国際調査報告】