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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-15
(54)【発明の名称】環状ペプチド免疫調節剤
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/00 20060101AFI20240408BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20240408BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240408BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20240408BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240408BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240408BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
C07K7/00
A61K47/60
A61P35/00
A61P31/00
A61P31/12
A61P31/04
A61P37/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562679
(86)(22)【出願日】2022-04-12
(85)【翻訳文提出日】2023-12-11
(86)【国際出願番号】 US2022024430
(87)【国際公開番号】W WO2022221284
(87)【国際公開日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】63/173,767
(32)【優先日】2021-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/208,071
(32)【優先日】2021-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.SPAN
(71)【出願人】
【識別番号】391015708
【氏名又は名称】ブリストル-マイヤーズ スクイブ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL-MYERS SQUIBB COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162695
【弁理士】
【氏名又は名称】釜平 双美
(74)【代理人】
【識別番号】100156155
【弁理士】
【氏名又は名称】水原 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(72)【発明者】
【氏名】ワン,タオ
【テーマコード(参考)】
4C076
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC07
4C076CC27
4C076CC31
4C076CC32
4C076CC35
4C076EE23
4C076EE59
4C076FF70
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA17
4H045BA32
4H045BA50
4H045EA20
4H045FA10
4H045GA21
(57)【要約】
本開示により、PD-1/PD-L1およびPD-L1/CD80タンパク質/タンパク質の相互作用を阻害し、よって癌および感染症などの様々な疾患の治療に有用である新規の大環状ペプチドを提供するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、
およびRは、独立して、-H、-(C=O)R、-(C=O)OR、R
【化2】
から選択され;
は、-OHまたは-OC-Cアルキルであり;
、CおよびCは、各々-ORであり;
は、-H、-OC-Cアルキル、C-Cアルキル、-CH-Cアルケニルまたは-CH-Cアルキニルであり;
およびRは、独立して、H、C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、-CH-Cアルケニル、-CH-Cアルキニルおよび
【化3】
から選択され;および
は、-H、C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、-CH-Cアルケニル、-CH-Cアルキニルおよび
【化4】
から選択される]
の化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項2】
およびRが、独立して、-Hおよび-(C=O)ORから選択され、RがC-Cアルキルである、請求項1記載の化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項3】
およびRが、独立して、-Hおよび-(C=O)ORから選択され、RがC-Cアルキルである、請求項1記載の化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項4】
およびRが、独立して、-Hおよび-(C=O)ORから選択され、Rが、
【化5】
である、請求項1記載の化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項5】
およびRが、独立して、-HおよびRから選択され、Rが、
【化6】
である、請求項1記載の化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項6】
、CおよびCが、独立して、-OHおよび-OC-Cアルキルから選択される、請求項1記載の化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項7】
、CおよびCが、独立して、-OHおよび-OC-Cアルキルから選択される、請求項1記載の化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項8】
、CおよびCが、各々-ORであり、Rが、-Hまたは
【化7】
である、請求項1記載の化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項9】
が、-OHまたは-OC-Cアルキルである、請求項1記載の化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項10】
治療上有効な量の請求項1記載の化合物またはその医薬的に許容される塩を対象に投与することを特徴とする、治療の必要がある対象において免疫応答を増強、刺激および/または増加させる方法。
【請求項11】
治療上有効な量の請求項1記載の化合物またはその医薬的に許容される塩を対象に投与することを特徴とする、治療の必要がある対象において癌細胞の成長、増殖または転移を阻害する方法。
【請求項12】
癌が、黒色腫、腎細胞癌、扁平非小細胞性肺癌(NSCLC)、非扁平NSCLC、結腸直腸癌、去勢抵抗性前立腺癌、卵巣癌、胃癌、肝細胞癌、膵臓癌、頭頸部の扁平上皮細胞癌、食道癌、消化管癌、乳癌および造血器悪性腫瘍から選択される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
治療上有効な量の請求項1記載の化合物またはその医薬的に許容される塩を対象に投与することを特徴とする、治療の必要がある対象における感染症を治療する方法。
【請求項14】
感染症がウイルスを原因とする、請求項13記載の方法。
【請求項15】
治療上有効な量の請求項1記載の化合物またはその医薬的に許容される塩を対象に投与することを特徴とする、治療の必要がある対象における敗血症ショックを治療する方法。
【請求項16】
治療上有効な量の請求項1記載の化合物またはその医薬的に許容される塩を対象に投与することを特徴とする、PD-L1とPD-1および/またはCD80の相互作用を阻害する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願に対する相互参照)
本出願は、2021年4月12日に提出した米国仮出願番号第63/173,767および2021年6月8日に提出した米国仮出願番号第63/208,071に対する優先権を主張するものであって、その全てを参照により本明細書に組み込むものである。
【0002】
本発明は、PD-L1に結合して、PD-L1と、PD-1およびCD80の相互作用を阻害することができる大環状化合物を提供する。これらの大環状化合物は、インビトロの免疫調節効果を示すため、癌および感染症を含む種々の疾患を治療するための治療候補物質となる。
【背景技術】
【0003】
タンパク質のプログラム細胞死1(PD-1)は、CD28、CTLA-4、ICOSおよびBTLAも含めた受容体のCD28ファミリーの阻害メンバーである。PD-1は、活性化B細胞、T細胞および骨髄球性細胞上に発現する。
【0004】
PD-1タンパク質は、Ig遺伝子スーパーファミリーの一部である55kDa I型膜貫通型タンパク質である。PD-1は、膜近位免疫受容体チロシン阻害モチーフ(ITIM)および膜遠位チロシンベーススイッチモチーフ(ITSM)を含む。PD-1は、CTLA-4と構造は類似するが、CD80 CD86(B7-2)結合に重要なMYPPYモチーフを欠失している。PD-1に対する2つのリガンドであるPD-L1(B7-H1)およびPD-L2(b7-DC)が同定されている。PD-1を発現するT細胞の活性化は、PD-L1またはPD-L2を発現する細胞との相互作用により下方制御されることが示されている。PD-L1およびPD-L2のいずれも、PD-1に結合するB7タンパク質ファミリーメンバーであるが、他のCD28ファミリーメンバーとは結合しない。PD-L1リガンドは、様々なヒトの癌において多く存在する。PD-1とPD-L1の相互作用は、腫瘍浸潤リンパ球の減少、T細胞受容体仲介増殖の減少および癌細胞による免疫回避の減少をもたらす。免疫抑制は、PD-1とPD-L1の局所相互作用の阻害により逆転でき、PD-1とPD-L2の相互作用が同様に阻害されたとき、この効果は相加的である。
【0005】
PD-L1は、CD80と相互作用することも示されている。発現する免疫細胞上でのPD-L1/CD80相互作用は、阻害性の相互作用であることが示されている。この相互作用の阻止は、この阻害的相互作用を抑止することが示されている。
【0006】
PD-1発現T細胞が、そのリガンドを発現する細胞と接触したとき、増殖、サイトカイン分泌および細胞毒性を含む抗原性刺激に対する応答における機能活性が減少する。PD-1/PD-L1またはPD-L2相互作用は、感染または腫瘍の回復期または自己の発達期の免疫応答を下方制御する。腫瘍疾患または慢性感染の間に起こるような慢性抗原刺激は、高レベルのPD-1を発現し、慢性抗原に対する活性に関して機能障害性のT細胞を生じる。これは、“T細胞疲弊”と呼ばれる。B細胞もPD-1/PD-リガンド抑制および“疲弊(exhaustion)”を示す。
【0007】
PD-L1に対する抗体を使用したPD-1/PD-L1結合の阻害は、多くの系におけるT細胞活性化を回復させ、増強させることが示されている。進行型癌を有する患者は、PD-L1に対するモノクローナル抗体での処置により利益を受ける。腫瘍および慢性感染の前臨床的動物モデルは、モノクローナル抗体によるPD-1/PD-L1経路の阻害が免疫応答を増強し、腫瘍拒絶または感染の抑制をもたらし得ることを示している。PD-1/PD-L1の阻害による抗腫瘍免疫治療は、多くの組織学的に異なる腫瘍に対する治療的免疫応答を増強させることができる。
【0008】
PD-1/PD-L1相互作用の妨害は、慢性感染を有する系におけるT細胞活性を増強できる。PD-L1の阻害は、慢性リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス感染マウスにおけるウイルスクリアランスの改善および免疫回復をもたらす。HIV-1に感染したヒト化マウスは、ウイルス血症およびウイルスによるCD4+T細胞の枯渇に対する防御の増強を示す。PD-L1に対するモノクローナル抗体によるPD-1/PD-L1の阻害は、HIV患者由来のT細胞に対するインビトロ抗原特異的機能性を回復できる。
【0009】
PD-L1/CD80相互作用の阻害は、免疫を刺激することも示されている。PD-L1/CD80相互作用の阻害により生じる免疫刺激は、別のPD-1/PD-L1またはPD-1/PD-L2相互作用の阻害を組み合わせることにより増強することが示されている。
【0010】
免疫細胞表現型の変化は、敗血症性ショックにおける重要な因子であるとの仮説がある。これらは、PD-1およびPD-L1のレベル増加を含む。PD-1およびPD-L1レベルが上昇した敗血症性ショック患者からの細胞は、T細胞アポトーシスのレベル増加を示す。PD-L1に対する抗体は、免疫細胞アポトーシスのレベルを低減することができる。さらに、PD-1を発現しないマウスは、野生型マウスよりも敗血症性ショック症状に対する耐性が高い。抗体を使用したPD-L1の相互作用の阻害が、不適切な免疫応答を抑制できること、および疾患徴候を回復できることが研究により示されている。
【0011】
慢性抗原に対する免疫学的応答の増強に加えて、PD-1/PD-L1経路の遮断は、慢性感染症の状況における治療的ワクチン接種を含むワクチン接種に対する応答を増強させることも示されている。
【0012】
PD-1経路は、慢性感染性疾患および腫瘍疾患の間に慢性的な抗原刺激から生じるT細胞疲弊に重要な阻害剤分子である。PD-L1タンパク質の標的化によるPD-1/PD-L1相互作用の阻害は、インビトロおよびインビボでの抗原-特異的T細胞免疫機能を修復すること(例えば、腫瘍または慢性感染発症における予防接種に対する応答増強)が判っている。そのため、PD-L1と、PD-1またはCD80いずれかとの相互作用を阻害する薬剤が望まれている。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、PD-1/PD-L1およびCD80/PD-L1タンパク質/タンパク質相互作用を阻害し、それゆえ癌および感染症を含む種々の疾患の改善に有用である大環状化合物を提供する。
【0014】
第一局面においては、本発明は、式(I):
【化1】

[式中、
およびRは、独立して、-H、-(C=O)R、-(C=O)OR、R
【化2】

から選択され;
は、-OHまたは-OC-Cアルキルであり;
、CおよびCは、各々-ORであり;
は、-H、-OC-Cアルキル、C-Cアルキル、-CH-Cアルケニルまたは-CH-Cアルキニルであり;
およびRは、独立して、H、C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、-CH-Cアルケニル、-CH-Cアルキニルおよび
【化3】
から選択され;および
は、-H、C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、-CH-Cアルケニル、-CH-Cアルキニルおよび
【化4】

から選択される]
の化合物またはその医薬的に許容される塩を提供する。
【0015】
第一局面の第一実施形態において、本発明は、RおよびRが、独立して、-Hおよび-(C=O)ORから選択され、RがC-Cアルキルである、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を提供する。
【0016】
第一局面の第二実施形態において、本発明は、RおよびRが、独立して、-Hおよび-(C=O)ORから選択され、RがC-Cアルキルである、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を提供する。
【0017】
第一局面の第三実施形態において、本発明は、RおよびRが、独立して、-Hおよび-(C=O)ORから選択され、Rが、
【化5】
である、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を提供する。
【0018】
第一局面の第四実施形態において、本発明は、RおよびRが、独立して、-HおよびRから選択され、Rが、
【化6】
である、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を提供する。
【0019】
第一局面の第五実施形態において、本発明は、C、CおよびCが、独立して、-OHおよび-OC-Cアルキルから選択される、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を提供する。
【0020】
第一局面の第六実施形態において、本発明は、C、CおよびCが、独立して、-OHおよび-OC-Cアルキルから選択される、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を提供する。
【0021】
第一局面の第七実施形態において、本発明は、C、CおよびCが、各々-ORであり、Rが、-Hまたは
【化7】
である、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を提供する。
【0022】
第一局面の第八実施形態において、本発明は、Cが、-OHまたは-OC-Cアルキルである、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を提供する。
【0023】
別の実施形態において、本発明は、第一局面の範囲内に例示した実施例化合物から選択される化合物、あるいはその医薬的に許容される塩、互変異性体または立体異性体を提供するものである。
【0024】
別の実施形態において、本発明は、第一局面の範囲内の化合物の任意のサブセットリストから選択される化合物を提供するものである。
【0025】
別の局面において、本発明は、治療上有効量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を対象に投与することを特徴とする、その必要のある対象における免疫応答を、増強、刺激および/または増加させる方法を提供する。
【0026】
別の局面において、本発明は、治療上有効量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を対象に投与することを特徴とする、対象においてPD-L1とPD-1および/またはCD80の相互作用を阻害する方法を提供するものである。
【0027】
別の局面において、本発明は、対象において免疫応答を増強、刺激および/または増加させる方法を提供するものであり、前記方法は、治療上有効量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を、その必要のある対象に投与することを特徴とする。第二局面の第一実施形態において、本方法は、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を投与する前、後または同時に別の薬剤をさらに投与することを特徴とする。第二実施形態において、別の薬剤は、殺菌剤、抗ウイルス剤、細胞毒性剤、TLR7アゴニスト、TLR8アゴニスト、HDAC阻害剤および免疫応答修飾剤から選択される。
【0028】
別の局面において、本発明は、対象において癌細胞の成長、増殖または転移を阻害する方法を提供するものであり、前記方法は、治療上有効量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を、その必要のある対象に投与することを特徴とする。第三局面の第一実施形態において、癌は、黒色腫、腎臓細胞癌、扁平上皮非小細胞肺癌(NSCLC)、非扁平上皮NSCLC、結腸直腸癌、性腺摘除-耐性前立腺癌、卵巣癌、胃癌、肝細胞癌、膵臓癌、頭頸部の扁平上皮癌、食道癌、胃腸管癌および乳癌、ならびに造血器悪性腫瘍から選択される。
【0029】
別の局面において、本発明は、対象において感染症を治療する方法を提供するものであり、前記方法は、治療上有効量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を、その必要のある対象に投与することを特徴とする。第四局面の第一実施形態において、感染症は、ウイルスを原因とする。第二実施形態において、ウイルスは、HIV、肝炎A、肝炎B、肝炎C、ヘルペスウイルスおよびインフルエンザから選択される。
【0030】
別の局面において、本発明は、対象において敗血症ショックを治療する方法を提供するものであり、前記方法は、治療上有効量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を、その必要のある対象に投与することを特徴とする。
【0031】
別の局面において、本発明は、治療上有効量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を対象に投与することを特徴とする、対象においてPD-L1とPD-1および/またはCD80との相互作用を阻害する方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【0032】
別段の記載が無い限り、満たされない原子価を有するあらゆる原子は、原子価を満たすために十分な水素原子を有すると考えられる。
【0033】
単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上別の場合を示さない限り、複数形も含む。
【0034】
本明細書で使用されるように、用語「または」は、論理的な選言(即ち、および/または)であり、用語「いずれか」、「限り」、「代わりに」および同様の効果を持つ言葉などで明示的に示されない限り、排他的な選言を示さない。
【0035】
本明細書にて使用されるような用語「アルキル」は、例えば、1~12個の炭素原子、1~6個の炭素原子および1~4個の炭素原子を含む分枝および直鎖の両方の飽和脂肪族炭化水素基を指す。アルキル基の例としては、メチル(Me)、エチル(Et)、プロピル(例えば、n-プロピルおよびi-プロピル)、ブチル(例えば、n-ブチル、i-ブチル、sec-ブチルおよびt-ブチルなど)およびペンチル(例えば、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル)、n-ヘキシル、2-メチルペンチル、2-エチルブチル、3-メチルペンチルおよび4-メチルペンチルなどを挙げることができる。記号「C」の後に下付き文字で数字が表される場合、その下付き文字は、特定の基が含有する炭素原子数をより具体的に定義している。例えば、「C1-4アルキル」は、1~4個の炭素原子を有する直鎖および分枝鎖アルキル基を示す。
【0036】
本明細書にて使用されるような用語「シクロアルキル」は、飽和環状炭素原子から1個の水素原子を除去することによって非芳香族の単環式または多環式炭化水素分子から得られる基を指す。シクロアルキル基の代表例としては、シクロプロピル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。記号「C」の後の下付き文字に数字が表される場合、その下付き文字は、特定のシクロアルキル基が含有することができる炭素原子の数をより具体的に規定している。例えば、「C3-6シクロアルキル」は、3~6個の炭素原子を含有するシクロアルキル基を示す。
【0037】
用語「ヒドロキシアルキル」は、1つ以上のヒドロキシル基で置換された分岐および直鎖飽和アルキル基の両方を含む。例えば、「ヒドロキシアルキル」には、-CHOH、-CHCHOHおよびC1-4ヒドロキシアルキルが挙げられる。
【0038】
本明細書で使用される用語「アリール」は、芳香環に結合している1個の水素を除去することによって、その芳香環を含む分子から得られる原子の基を指す。アリール基の代表例としては、フェニルおよびナフチルが挙げられるが、これらに限定されない。アリール環は、無置換であってもよいし、原子価が許す限り1つ以上の置換基を含んでいてもよい。
【0039】
本明細書にて使用されるような用語「ハロ」および「ハロゲン」なる語は、F、Cl、BrまたはIをいう。
【0040】
本発明の芳香族環は、-N-、-S-および-O-から選択される0~3個のヘテロ原子を含む。また、以下に定義するヘテロアリール基も含む。
【0041】
用語「ヘテロアリール」は、環の少なくとも1つに、少なくとも1つのヘテロ原子(O、SまたはN)を有する置換および非置換の芳香族5員または6員単環式基および9員または10員二環式基を指し、前記ヘテロ原子含有環は、好ましくは、O、Sおよび/またはNから独立して選択される1、2または3個のヘテロ原子を有する。ヘテロ原子を含有するヘテロアリール基の各環は、各環中のヘテロ原子の総数が4個以下であり、各環が少なくとも1個の炭素原子を有することを条件として、1個または2個の酸素原子または硫黄原子、および/または1個~4個の窒素原子を含有することができる。二環式基を完成する縮合環は芳香族であり、炭素原子のみを含んでもよい。窒素原子および硫黄原子は、所望により酸化されていてもよく、窒素原子は、所望により4級化されていてもよい。二環式ヘテロアリール基は、芳香環のみを含むべきである。ヘテロアリール基は、任意の環の任意の利用可能な窒素原子または炭素原子に結合していてもよい。ヘテロアリール環系は、無置換であってもよいし、1つ以上の置換基を含んでもよい。
【0042】
例示的な単環式ヘテロアリール基としては、ピロリル、ピラゾリル、ピラゾリニル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、イソチアゾリル、フラニル、チオフェニル、オキサジアゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニルおよびトリアジニルが挙げられる。
【0043】
例示的な二環式ヘテロアリール基には、インドリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチエニル、キノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、イソキノリニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾピラニル、インドリジニル、ベンゾフラニル、クロモニル、クマリニル、ベンゾピラニル、シンノリニル、キノキサリニル、インダゾリルおよびピロロピリジルが挙げられる。
【0044】
本明細書にて使用されるような用語「またはその医薬的に許容される塩」は、少なくとも1つの化合物、少なくとも1つの化合物の塩またはその組み合わせをいう。例えば、「式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩」には、式(I)の化合物、2つの式(I)の化合物、式(I)の医薬的に許容される塩、式(I)の化合物および1以上の式(I)の化合物の医薬的に許容される塩および2つ以上の式(I)の化合物の医薬的に許容される塩が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0045】
本明細書にて使用されるような「有害事象」または「AE」とは、好ましくない、一般には意図しない、非常に望ましくない、医学的治療の実施に付随する兆候(実験室での異常な知見を含む)、症状または疾患である。例えば、有害事象は、治療に応答して、免疫系が活性化すること、または免疫系細胞(例えば、T細胞)が増殖することと関連付けることができる。薬剤治療は、1または複数のAEを伴う可能性があり、AEは、各々、同じまたは異なるレベルの重篤度を有する場合がある。「有害事象を改変しうる」方法についての言及は、異なる治療レジメンを用いることに関連した1または複数のAEの発生率および/または重篤度を減少させる治療レジメンを意味する。
【0046】
本明細書にて使用されるような、「過剰増殖性疾患」は、細胞増殖が正常なレベルよりも高い症状をいう。例えば、過剰増殖性疾患または障害として、悪性疾患(例えば、食道がん、大腸がん、胆がん)および非悪性疾患(例えば、アテローム性動脈硬化症、良性過形成および良性前立腺肥大)が挙げられる。
【0047】
「免疫応答」なる語は、例えば、リンパ球、抗原提示細胞、食細胞、顆粒球および可溶性巨大分子の作用であって、侵入病原体、病原体に感染した細胞または組織、がん細胞、あるいは自己免疫性または病理学的炎症の場合には正常なヒト細胞または組織の、選択的損傷、破壊または人体からの除去をもたらす作用をいう。
【0048】
「プログラム死リガンド1(Programmed Death Ligand 1)」、「プログラム細胞死リガンド1」、「PD-L1」、「PDL1」、「hPD-L1」、「hPD-LI」および「B7-H1」は互換的に使用され、ヒトPD-L1のバリアント、アイソフォーム、種相同体、およびPD-L1と共通する少なくとも1つのエピトープを有するアナログを包含する。完全なPD-L1配列は、GENBANK(登録商標)Accession No. NP_054862の下で知ることができる。
【0049】
「プログラム死1」、「プログラム細胞死1」、「タンパク質PD-1」、「PD-1」、「PD1」、「hPD-1」および「hPD-I」は、互換的に用いられ、ヒトPD-1のバリアント、アイソフォーム、種相同体、およびPD-1と共通する少なくとも1つのエピトープを有するアナログを包含する。PD-1の完全な配列は、GENBANK(登録商標)Accession No.NP U64863の下で知ることができる。
【0050】
「治療する」なる語は、疾患、障害または症状を阻害すること、すなわちその進行を阻むこと;および(iii)疾患、障害、または症状を緩和すること、すなわち、該疾患、障害および/または症状、ならびに/あるいは該疾患、障害および/または症状に付随する徴候を退行させることをいう。
【0051】
本開示は本化合物に存在する原子のあらゆる同位体を包含するものとする。同位体は原子番号が同じであるが、質量数の異なるそれらの原子を包含する。一般例であって、限定されるものではないが、水素の同位体は、重水素および三重水素を包含する。炭素の同位体は、13Cおよび14Cを包含する。本発明の同位体で標識された化合物は、一般に、当業者に公知の慣用的技法により、または別の手法で利用される非標識の試薬の代わりに同位体で適切に標識された試薬を用い、本明細書に記載の方法と類似する方法により調製され得る。かかる化合物は、例えば、生物学的活性を測定する際の標準物質および試薬として、様々な用途に関する可能性を示す。安定同位体の場合には、かかる化合物は、生物学的、薬理学的または薬物動態学的特性を改変することが望ましい場合もある。
【0052】
本明細書に記載の事項のさらなる態様は、本願化合物を、リガンド結合アッセイの開発のために、あるいはインビボにおける吸着、代謝作用、分布、受容体の結合または占有、または化合物の配置をモニタリングするために放射性標識されたリガンドとして用いることである。例えば、本明細書に記載の大環状化合物は、放射活性な同位体を用いて製造し、得られる放射性標識された化合物を用いて結合アッセイを開発してもよく、あるいは代謝作用の研究のために使用されてもよい。あるいはまた、同じ目的のために、本明細書に記載の大環状化合物は、当業者に公知の方法を用いて、触媒性トリチウム化により放射性標識された形態に変換されてもよい。
【0053】
本開示の大環状化合物はまた、当業者に知られた方法を用いて、放射性トレーサーを加えることによりPET造影剤としても使用され得る。
【0054】
当業者であれば、アミノ酸は、一般構造式:
【化8】

[式中、RおよびR’は本明細書中に記載されるとおりである]
で示される化合物を含むことがわかる。別段の指示のない限り、本明細書において、単独で、または他の基の一部として用いられる「アミノ酸」なる語は、限定されないが、「α」炭素と称される同じ炭素に連結する、アミノ基とカルボキシル基を含み、ここでRおよび/またはR’は、水素を含む、天然または非天然の側鎖とすることができる。「α」炭素での「S」絶対配置は、通常、「L」または「天然」配置と称される。「R」および「R’」の両方の(プライム)置換基が水素である場合には、該アミノ酸はグリシンであり、キラルではない。
【0055】
具体的に指定されない場合、本明細書に記載のアミノ酸は、D-またはL-立体配置であり得、本開示の別の部分で記載されるように置換され得る。立体配置が指定されていない場合、本開示は、PD-1とPD-L1および/またはCD80とPD-L1との間の相互作用を阻害する能力を有するすべての立体異性体形態、またはその混合物を包含すると理解されるべきである。化合物の個々の立体異性体は、キラル中心を含む市販品として入手可能な出発物質から合成的に製造されるか、あるいはエナンチオマー生成物の混合物の製造に続いて、ジアステレオマーの混合物への変換のような分離を行い、その後分離もしくは再結晶、クロマトグラフ法、またはキラルクロマトグラフィーカラム上でのエナンチオマーの直接分離によって製造されうる。特定の立体化学の出発化合物は、市販品として入手可能か、または当該技術分野で公知の技術によって製造および分割されうる。
【0056】
本開示のある化合物はまた、分離可能で異なる安定なコンフォメーション型でも存在しうる。非対称単結合についての制限された回転、例えば立体障害または環ひずみが原因のねじれの非対称(Torsional asymmetry)によって、異なった配座異性体の分離が可能となりうる。本開示には、これらの化合物の各配座異性体およびその混合物が含まれる。
【0057】
本開示の特定の化合物は、分子のプロトンがその分子内の異なる原子にシフトする現象によって生成される化合物である互変異性体として存在し得る。「互変異性体」という用語はまた、平衡状態で存在し、1つの異性体とは別の異性体に容易に変換される2つ以上の構造異性体のうちの1つを指す。本明細書に記載される化合物の全ての互変異性体は、本開示の範囲に含まれる。
【0058】
本開示の医薬としての化合物は、1または複数の医薬的に許容される塩を包含しうる。「医薬的に許容される塩」は、親化合物の所望の生物学的活性を保持し、いずれの望ましく無い毒性効果も与えない塩をいう(例えば、Berge, S.M. et al., J. Pharm. Sci., 66:1-19(1977)を参照のこと)。かかる塩は、本明細書に記載の化合物の最終的な単離および精製の間に製造されるか、あるいは別途、適切な窒素原子を適切な酸に反応させること、または化合物の酸性基と適切な塩基を反応させることによって製造されうる。酸付加塩には、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜リン酸等などの非毒性の無機酸、ならびに脂肪族モノおよびジカルボン酸、フェニル置換のアルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、脂肪族酸および芳香族スルホン酸等などの非毒性の有機酸から得られる塩が挙げられる。塩基付加塩は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等などのアルカリまたはアルカリ土類金属より、ならびにN,N'-ジベンジルエチレンジアミン、N-メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカイン等より得られる塩を包含する。
【0059】
本明細書に記載の治療剤の投与は、限定されることなく、治療上有効な量の治療剤の投与を包含する。本明細書にて使用されるような用語「治療上有効な量」とは、限定するものではないが、本明細書に記載のPD-1/PD-L1結合阻害剤を含む組成物を投与することで治療できる症状を治療するための治療剤の量をいう。その量は検出できる治療または改善効果を示すのに十分な量である。その効果は、例えば、限定されるものではなく、本明細書に列挙した症状の治療を包含しうる。対象に対する正確な有効量は、その対象の大きさおよび健康状態、治療される症状の特性および程度、治療する医師の助言、投与するのに選択される治療剤または治療剤の組み合わせに依存するであろう。そのため、正確な有効量を前もって特定することは有用ではない。
【0060】
もう一つ別の態様において、本開示は、本発明の大環状化合物を用いて対象における腫瘍細胞の増殖を阻害する方法に関する。本明細書において実証されるように、本開示の化合物は、PD-L1と結合し、PD-L1とPD-1との相互作用に干渉し、PD-L1の、PD-1との相互作用を阻害することが分かっている抗PD-1モノクローナル抗体との結合と競合し、CMV特異性のT細胞IFNγ分泌を増強させ、HIV特異的T細胞IFNγ分泌を増強させる能力を有する。結果として、本開示の化合物は、免疫応答を改変して、がんまたは感染病などの疾患を治療し、保護的自己免疫応答を刺激するか、あるいは(例えば、PD-L1阻害化合物と目的とする抗原を共投与することにより)抗原特異的免疫応答を刺激するのに有用である。
【0061】
医薬組成物
別の態様において、本開示は、組成物、例えば、本発明の範囲内において記載された化合物を1つ含むか、または医薬的に許容される担体と一緒に製剤される医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物は、治療と組み合わせて、すなわち、別の薬剤と組み合わせても投与され得る。例えば、組み合わせ治療とは、少なくとも1種の別の抗炎症剤または免疫抑制剤と組み合わせた大環状化合物を含み得る。組み合わせ治療で使用できる治療剤の例は、本発明の大環状化合物の使用についての章にさらに詳述する。
【0062】
本明細書で使用する「医薬的に許容される担体」とは、生理学的に適合性である任意かつ全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤などを含む。ある実施態様において、担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経腸、脊髄または上皮投与に適する(例えば、注射または点滴による)。投与経路によって、活性な化合物は、この化合物を不活性化する可能性がある酸およびその他の自然条件の作用から化合物を保護するための物質を用いてコーティングされ得る。
【0063】
本開示の医薬組成物はまた、医薬的に許容される抗酸化剤を含んでもよい。医薬的に許容される抗酸化剤の例として:(1)アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等などの水溶性抗酸化剤;(2)パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ-トコフェロール等などの油溶性抗酸化剤;および(3)クエン酸、エチレンジアミン四作酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸等などの金属キレート化剤が挙げられる。
【0064】
本開示の医薬組成物は、当該分野にて既知の1または複数の種々の方法を用い、1または複数の投与経路を介して投与され得る。当業者にとって明らかであるように、投与経路および/または方法は、所望する結果に応じて変化するであろう。本開示の大環状化合物についての投与経路は、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、皮下、脊髄または他の非経口投与経路、例えば、注射または点滴による投与を包含する。本明細書にて使用されるような「非経口投与」なる用語は、腸内および局所投与以外の、通常は注射による投与方法を意味し、以下に限定されるものではないが、静脈内、筋肉内、動脈内、鞘内、嚢内、眼窩内、心内膜、皮内、腹腔内、経皮、皮下、表皮下、関節内、皮膜下、くも膜下、髄腔内、硬膜外および胸骨下の注射および点滴を包含する。
【0065】
滅菌注射液は、必要量で活性な化合物を適切な溶媒中で、必要に応じて、上記の1の成分またはその組み合わせと共に配合した後、精密濾過の滅菌処理に付すことにより調製され得る。一般に、分散液は、基剤となる分散媒および上記したそれらの成分から必要な他の成分を含有する滅菌ビヒクルに、活性な化合物を組み込むことにより調製される。滅菌注射液を調製するための滅菌粉末の場合には、その好ましい製造方法は、真空乾燥およびフリーズドライ(凍結乾燥)があり、前記方法は、予め滅菌ろ過したその溶液から、前記活性成分と任意の所望の添加成分との粉末をもたらす。
【0066】
本開示の医薬組成物に利用され得る適切な水性および非水性担体の例として、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等など)、および適切なその混合液、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料を用いることにより、分散液の場合には必要な粒度を維持すること、および界面活性剤を用いることにより維持され得る。
【0067】
これらの組成物は、保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤などのアジュバントを含有してもよい。微生物の存在を防止するためには、上記の滅菌操作に供すること、および種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等を配合することの両方を行うことにより確実に行うことができる。糖類、塩化ナトリウム等などの等張剤を組成物に含めることも望ましい場合がある。さらに、注射用医薬品形態の持続的吸収は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収遅延剤を配合することによりもたらされ得る。
【0068】
医薬的に許容される担体は、滅菌水溶液または分散液、および滅菌注射液または分散溶液をその場で調製するための滅菌粉末を包含する。そのような媒体および薬剤を医薬的に活性な物質に用いることは、当技術分野で既知である。任意の従来の媒体または薬剤は、活性な化合物と不適合である場合を除き、本開示の医薬組成物にそれらを用いることが考慮される。補助的な活性な化合物も該組成物に配合され得る。
【0069】
治療用組成物は、通常は、製造および貯蔵の条件下で、滅菌性を保持し、かつ安定でなければならない。前記組成物は、溶液、ミクロエマルジョン、リポソーム、または高い薬剤濃度に適する別の規則的な構造体として処方され得る。前記担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール等)、およびそれらの適切な混合物を含む、溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤を用いることで、分散液の場合には必要とされる粒度を維持することで、および界面活性剤を用いることで維持され得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖類、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコール、または塩化ナトリウムを組成物に配合することが好ましい。前記注射用組成物の持続的吸収は、前記組成物に、吸収遅延剤、例えば、モノステアリン酸塩およびゼラチンを配合することによりもたらされ得る。
【0070】
あるいは、本開示の化合物は、非経口経路、例えば、局所的、表皮または粘膜による投与経路、例えば、鼻腔内、経口的、経腟、腸内、舌下または局所的に投与され得る。
【0071】
本明細書で検討される医薬組成物はいずれも、例えば、許容され、かつ適切な任意の経口製剤を介して経口的に送達され得る。例示的な経口製剤には、以下に限らないが、例えば、錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性および油性懸濁液、分散性粉末または顆粒、エマルジョン、ハードおよびソフトカプセル、液体カプセル、シロップおよびエリキシルが挙げられる。経口投与用の医薬組成物は、当技術分野で既知である、経口投与用の医薬組成物を製造する任意の方法に従って製造され得る。医薬的に飲みやすい製剤を提供するために、本発明に記載の医薬組成物は、甘味剤、香料、着色剤、粘滑剤、抗酸化剤および保存剤から選択される少なくとも1つの物質を包含し得る。
【0072】
錠剤は、例えば、少なくとも1つの式(I)の化合物および/またはその少なくとも1つの医薬的に許容される塩と、少なくとも1つの無毒で医薬的に許容される錠剤の製造に適切な添加剤を混合することで製造され得る。例示的な添加剤には、以下に限らないが、例えば、不活性希釈剤(例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムおよびリン酸ナトリウム)、造粒剤および崩壊剤(例えば、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、コーンスターチおよびアルギン酸)、結合剤(例えば、デンプン、ゼラチン、ポリビニルピロリドンおよびアラビアガム)ならびに滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸およびタルク)が挙げられる。さらに、錠剤は、コーティングされていなくても、または不快な薬物の嫌な味をマスキングするため、またはその消化管での活性成分の崩壊および吸収を遅延させ、より長期間にわたって活性成分の効果を持続させるために、公知の技術でコーティングされていてもよい。例示的な水可溶性味マスキング材料として、以下に限らないが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。例示的な時間遅延材料としては、以下に限らないが、エチルセルロースおよび酢酸酪酸セルロースが挙げられる。
【0073】
ハードゼラチンカプセルは、例えば、少なくとも1つの式(I)の化合物および/またはその少なくとも1つの医薬的に許容される塩を、少なくとも1つの不活性固体希釈剤(例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムおよびカオリン)と混合することにより製造され得る。
【0074】
ソフトゼラチンカプセルは、例えば、少なくとも1つの式(I)の化合物および/またはその少なくとも1つの医薬的に許容される塩を、少なくとも1つの水可溶性担体(例えば、ポリエチレングリコール)、および少なくとも1つの油性媒体(例えば、ピーナツ油、液体パラフィンおよびオリーブ油)と混合することで製造され得る。
【0075】
水性懸濁液は、例えば、少なくとも1つの式(I)の化合物および/またはその少なくとも1つの医薬的に許容される塩を、少なくとも1つの水性懸濁液の製造に適切な添加剤を混合することにより製造され得る。水性懸濁液の製造に適切な添加剤としては、以下に限らないが、例えば、懸濁化剤(例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、ポリビニルピロリドン、トラガカントガムおよびアラビアガム)、分散剤または湿潤剤(例えば、天然に存在するリン脂質(例えば、レシチン)、アルキレンオキシドと脂肪酸の縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンステアレート)、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールの縮合生成物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、エチレンオキシドと、脂肪酸およびヘキシトールから得られる部分エステルとの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート)、およびエチレンオキシドと、脂肪酸およびヘキシトール無水物から得られる部分エステルとの縮合生成物(例えば、ポリエチレンソルビタンモノオレエート)が挙げられる。また、水性懸濁液は、少なくとも1つの保存剤(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸エチルおよびn-プロピルp-ヒドロキシ安息香酸)、少なくとも1つの着色剤、少なくとも1つの香料および/または少なくとも1つの甘味剤(以下に限らないが、例えば、スクロース、サッカリンおよびアスパルテーム)が挙げられる。
【0076】
油性懸濁液は、例えば、少なくとも1つの式(I)の化合物および/またはその少なくとも1つの医薬的に許容される塩を、植物油(例えば、落花生油、オリーブ油、ゴマ油およびココナッツ油)、または鉱油(例えば、液体パラフィン))のいずれかに懸濁することにより製造され得る。また油性懸濁液は、少なくとも1つの増粘剤(例えば、蜜蝋、固形パラフィンおよびセチルアルコール)を含有することもできる。飲みやすい油性懸濁液を提供するために、少なくとも1つの既に上記した甘味剤、および/または少なくとも1つの香料を油性懸濁液に添加してもよい。油性懸濁液は、さらに少なくとも1つの保存剤(以下に限らないが、例えば、抗酸化剤(例えば、ブチルヒドロキシアニソールおよびα-トコフェロール))を含有することもできる。
【0077】
分散性粉末および顆粒は、例えば、少なくとも1つの式(I)の化合物および/またはその少なくとも1つの医薬的に許容される塩を、少なくとも1つの分散剤および/または湿潤剤、少なくとも1つの懸濁化剤、および/または少なくとも1つの保存剤を混合することにより製造され得る。適切な分散剤、湿潤剤および懸濁化剤は、既に上記に記載されている。例示的な保存剤には、以下に限らないが、例えば、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸)が挙げられる。さらに、分散性粉末および顆粒はまた、少なくとも1つの賦形剤(以下に限らないが、例えば、甘味剤、香料および着色剤)を包含し得る。
【0078】
式(I)の少なくとも1つの化合物および/またはその少なくとも1つの医薬的に許容される塩のエマルジョンは、例えば、水中油型エマルジョンとして製造され得る。式(I)の化合物を含むエマルジョンの油相は、既知の方法で、既知の成分から構成されてもよい。前記油相は、以下に限らないが、例えば、植物油(例えば、オリーブ油および落花生油)、鉱油(例えば、液体パラフィン)、およびその混合物により提供され得る。油相は、乳化剤のみを包含するものであってもよいが、少なくとも1つの乳化剤と脂肪または油、または脂肪および油の両方の混合物を包含することができる。適切な乳化剤には、以下に限らないが、例えば、天然に存在するリン脂質(例えば、大豆レシチン)、脂肪酸およびヘキシトール無水物から誘導されるエステルまたは部分エステル(例えば、ソルビタンモノオレエート)、および部分エステルとエチレンオキシドの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)が挙げられる。ある実施態様において、親水性乳化剤が、安定化剤として作用する親油性乳化剤と共に含まれる。また、油および脂肪の両方を包含することも好ましい。併せて、乳化剤は、安定化剤含有または安定化剤不含にていわゆる乳化ワックスを形成し、このワックスが油および脂肪と一緒になってクリーム製剤の油性分散相を形成している、いわゆる乳化軟膏基剤を形成する。エマルジョンはまた、甘味剤、香料、保存剤および/または抗酸化剤を包含し得る。本発明の製剤に使用するのに適切な乳化剤およびエマルジョン安定化剤には、単体またはワックスと共にTween 60、Span 80、セトステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、モノステアリン酸グリセリル、ラウリル硫酸ナトリウム、ジステアリン酸グリセリル;または当該分野に公知の他の物質が挙げられる。
【0079】
活性な化合物は、インプラント、経皮パッチおよびマイクロカプセル化送達系を含む、放出制御製剤のような、急速な放出から化合物を保護する担体と製剤できる。エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸のような生分解性の生体適合性ポリマーを使用できる。このような製剤を製造するための多くの方法が、特許となっており、また一般に当業者に知られている。例えば、Robinson, J.R., ed., Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, Marcel Dekker, Inc., New York(1978)を参照のこと。
【0080】
治療用組成物を、当技術分野で既知の医療機器で投与し得る。例えば、一態様において、本発明の治療用組成物を、無針皮下注射器、例えば、米国特許番号5,399,163、5,383,851、5,312,335、5,064,413、4,941,880、4,790,824または4,596,556に開示されているデバイスで投与できる。本発明に有用な周知のインプラントおよびモジュールは、制御された速度で薬剤を送出するための埋め込み型の微量注入ポンプを開示する米国特許番号4,487,603;皮膚を介する薬物の投与のための治療的デバイスを開示する米国特許番号4,486,194;正確な注入速度で薬剤を送達するための薬剤注入ポンプを開示する米国特許番号4,447,233;連続的に薬物を送達するための可変流速埋め込み型注入装置を開示する米国特許番号4,447,224;複数のチャンバー部分を有する浸透性薬剤送達系を開示する米国特許番号4,439,196;および浸透性薬剤送達系を開示する米国特許番号4,475,196を含む。これらの特許は、引用により本明細書に包含させる。多くの他のこのようなインプラント、送達系およびモジュールは当業者に知られている。
【0081】
ある態様において、本発明の化合物は、インビボでの適切な分布を確実にするために製剤できる。例えば、血液脳関門(BBB)は、多くの高親水性化合物を排除する。本発明の治療的化合物は、BBBを通過することを確実にするために(必要に応じて)、例えば、リポソームに製剤できる。リポソームの製造方法に関しては、例えば、米国特許番号4,522,811、5,374,548および5,399,331を参照のこと。リポソームは、特異的細胞または臓器へ選択的に輸送される1個以上の部分を含むことができ、それにより標的化薬剤送達を増強する(例えば、Ranade, V.V., J. Clin. Pharmacol., 29:685(1989)参照)。標的化部分の例は、葉酸またはビオチン(例えば、Low et al.の米国特許番号5,416,016参照);マンノシド(Umezawa et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 153:1038(1988));大環状化合物(Bloeman, P.G. et al., FEBS Lett., 357:140(1995); Owais, M. et al., Antimicrob. Agents Chemother., 39:180(1995));界面活性剤タンパク質A受容体(Briscoe et al., Am. J. Physiol., 1233:134(1995));p120(Schreier et al., J. Biol. Chem., 269:9090(1994))を含み、Keinanen, K. et al., FEBS Lett., 346:123(1994); Killion, J.J. et al., Immunomethods 4:273(1994)も参照されたい。
【0082】
(合成方法)
化合物は、当技術分野では公知の方法によって、例えば以下に記載された方法または当技術分野の技術の範囲内の変法によって製造することができる。いくつかの試薬および中間体は、当技術分野では既知である。その他の試薬および中間体は、容易に入手可能な材料を用いて、当技術分野で公知の方法によって製造することができる。化合物の合成を説明するために使用される任意の変数(例えば、番号が付いた「R」置換基)は、化合物の製造方法を説明するためにのみ意図されており、請求項または明細書の別のセクションで使用される変数と混同しないようにされたい。以下の方法は説明のためのものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0083】
スキームで使用される略語は、一般的に、当該技術分野で使用される慣例に従う。本明細書および実施例で使用する化学物質の略号は、次のように定義される:「THF」はテトラヒドロフラン;「DMF」はN,N-ジメチルホルムアミド;「MeOH」はメタノール;「EtOH」はエタノール;「n-PrOH」は1-プロピルアルコールまたはプロパン-1-オール;「i-PrOH」は2-プロピルアルコールまたはプロパン-2-オール;「Ar」はアリール;「TFA」はトリフルオロ酢酸;「DMSO」はジメチルスルホキシド;「EtOAc」は酢酸エチル;「EtO」はジエチルエーテル;「DMAP」は4-ジメチルアミノピリジン;「DCE」は1,2-ジクロロエタン;「ACN」はアセトニトリル;「DME」は1,2-ジメトキシエタン;「h」は時間;「rt」は室温または保持時間(文脈によって決まる);「min」は分;「HOBt」は1-ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物;「HCTU」は1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-5-クロロベンゾトリアゾリウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェートまたはN,N,N',N'-テトラメチル-O-(6-クロロ-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)ウロニウムヘキサフルオロホスフェート;「HATU」は1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェートまたはN-[(ジメチルアミノ)-1H-1,2,3-トリアゾロ-[4,5-b]ピリジン-1-イルメチレン]-N-メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェートN-オキシド;「DIEA」および「iPrNEt」はジイソプロピルエチルアミン;「EtN」はトリエチルアミン。
【0084】
本明細書中で用いられる略語は以下である:「1x」:1回、「2x」:2回、「3x」:3回、「℃」:摂氏、「eq」:当量、「g」:グラム、「mg」:ミリグラム、「L」:リットル、「mL」:ミリリットル、「μL」:マイクロリットル、「N」:規定濃度、「M」:モル濃度、「mmol」:ミリモル、「min」:分、「h」:時間、「rt」:室温、「RT」:保持時間、「atm」:気圧、「psi」:ポンド毎平方インチ、「conc.」:濃縮、「sat」または「sat’d:飽和、「MW」:分子量、「mp」:融点、「ee」:エナンチオマー過剰、「MS」または「Mass Spec」:質量分析、「ESI」:エレクトロスプレーイオン化質量分析、「HR」:高解像度、「HRMS」:高解像度質量分析、「LC」:液体クロマトグラフィー、「LCMS」:液体クロマトグラフィー質量分析、「HPLC」:高速液体クロマトグラフィー、「RP HPLC」:逆相HPLC、「TLC」または「tlc」:薄層クロマトグラフィー、「NMR」:核磁気共鳴スペクトル分析、「H」:プロトン、「δ」:デルタ、「s」:一重線、「d」:二重線、「t」:三重線、「q」:四重線、「m」:多重線、「br」:ブロード、「Hz」:ヘルツ、「α」、「β」、「R」、「S」、「E」および「Z」:当業者に周知の立体化学の記号。
【実施例
【0085】
BMT-001の構造は、
【化9】

である。
【0086】
この構造体を製造するための一般方法:
DMFまたはTHFまたはジオキサンまたはDMEまたはMeOHまたはEtOHまたはnPrOHまたはiPrOHまたはDMSOまたはCHClまたは水あるいはこれらの溶媒の混合物中で、EtNまたはiPrNEt(0~200eq.)を含めて、または含めないBMT-001および試薬(1~20eq.)の混合物を、室温~100OCで、0.5~48時間撹拌した後、反応をメタノールまたは水でクエンチした。全ての溶媒を、真空下で除去した後、残留物を、分取HPLCで精製して、本発明の化合物を得た。
【0087】
あるいは、DMFまたはTHFまたはジオキサンまたはDMEまたはMeOHまたはEtOHまたはnPrOHまたはiPrOHまたはDMSOまたは水あるいは前記溶媒の混合溶液中のBMT-001(1eq)および試薬(1~20eq)の溶液に、NaHまたはLiOHまたはNaOHまたはKOHまたはLiCOまたはNaCOまたはKCO(1~200eq)を加えた。反応混合物を、室温~100℃で、0.5~48時間撹拌した。全ての溶媒を、真空下で除去した後、残留物を、分取HPLCで精製して本発明の化合物を得た。
【0088】
あるいは、EtNまたはiPrNEt(1~200eq)を、DMFまたはTHFまたはジオキサンまたはDME中の酸(1~20eq)、HCTUまたはHATUまたはHOBt(1~20eq)の溶液に添加した。混合物を室温で24時間撹拌した後、BMT-001(1eq)を加えた。その後、室温~100℃で、0.5~48時間撹拌した後、反応をメタノールまたは水でクエンチした。全ての溶媒を、真空除去した後、残留物を分取HPLCで精製して本発明の化合物を得た。
【0089】
【表1】

【表2】

【表3】
【表4】

【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】

【表13】
【表14】
【表15】
【表16】
【表17】
【表18】
【表19】
【表20】

【表21】
【表22】
【表23】
【表24】
【表25】
【表26】
【表27】
【表28】

【表29】
【表30】
【表31】
【表32】

【表33】
【表34】
【表35】
【表36】

【表37】
【表38】
【表39】
【表40】
【表41-1】
【0090】
2001の製造:
BMT-1002(30mg, 0.009mmol)/CHCl(8mL)およびMeOH(2mL)の溶液に、(トリメチルシリル)ジアゾメタン(0.157mL, 0.094mmol)を加えた。混合物を、室温で16時間撹拌した。全ての溶媒を真空除去した後、残留物を分取HPLCで精製した。
【表41-2】
【表42】
【0091】
3001、3002、3003、3004の製造:
アセトン(4mL)/水(1mL)中の化合物1001(100mg)の溶液に、炭酸カリウム(5.01mg)を加えた。室温で4時間撹拌した後、反応を、1N塩酸水溶液でクエンチした。全ての溶媒を真空除去した後、残留物を分取HPLCで精製した。
【表43】

【表44】

【表45】

【表46】

【表47】

【表48】
【0092】
4001、4002、4003、4004の製造:
化合物1016(60mg)/DCM(4mL)およびMeOH(1mL)の溶液に、(トリメチルシリル)ジアゾメタン(0.033mL, ヘキサン中で0.6M)を加えた。混合物を、室温で2時間撹拌した。全ての溶媒を真空除去した後、残留物を分取HPLCで精製した。
【表49】

【表50】

【表51】

【表52】
【0093】
【表53】

【0094】
5001の製造:
BMT-001(100mg)および9-フルオレニルメチルクロロホルメート(8.68mg)のDMF(2mL)溶液に、iPrNEt(0.023mL)を加えた。室温で2時間撹拌した後、クロロギ酸メチル(3.17mg)を加えた。混合物を室温で16時間撹拌した。その後、混合物にピペリジン(0.326mL, DMF中で25%)を加えた。混合物を室温で3時間撹拌した。全ての溶媒を真空除去した後、残留物を分取HPLCで精製した。
【表54】
【表55】
【0095】
6001の製造:
BMT-001(50mg)/THF(4mL)の懸濁液に、9-BBN(0.037mL, THF中で0.5M)を加えた。混合物を室温で4時間撹拌した。その後、(ジアゾメチル)トリメチルシラン(0.087mL,ヘキサン中で0.6M)を混合物に加え、2時間撹拌した。全ての溶媒を真空除去した後、残留物を分取HPLCで精製した。
【表56】

【0096】
6002、6003の製造:
BMT-001(50mg)/THF(4mL)の懸濁液に、9-BBN(0.067mL, THF中で0.5M)を加えた。混合物を室温で4時間撹拌した。その後、混合物に(ジアゾメチル)トリメチルシラン(0.022mL, ヘキサン中で0.6M)を加え、2時間撹拌した。全ての溶媒を真空除去した後、残留物を分取HPLCで精製した。
【0097】
【表57】
【表58】
【表59】
【表60】
【0098】
1007または1009または1016または1021または3001から、請求項1の化合物を製造するための一般方法:
DMFまたはTHFまたはジオキサンまたはDMEまたはMeOHまたはEtOHまたはnPrOHまたはiPrOHまたはDMSOまたはCHClまたは水、あるいはこれらの溶媒の混合物中で、EtNまたはiPrNEt(0~200eq)を含めるか、またはそれらを含めずに、1007または1009または1016または1021または3001および試薬(1~20eq)の混合物を、室温~100℃で、0.5~48時間撹拌した後、反応をメタノールまたは水でクエンチした。全ての溶媒を真空除去した後、残留物を分取HPLCで精製して化合物を得た。
【0099】
あるいは、NaHまたはLiOHまたはNaOHまたはKOHまたはLiCOまたはNaCOまたはKCO(1~200eq.)を、DMFまたはTHFまたはジオキサンまたはDMEまたはMeOHまたはEtOHまたはnPrOHまたはiPrOHまたはDMSOまたは水あるいは前記混合溶液中の、1007または1009または1016または1021または3001(1eq.)および試薬(1~20eq.)の溶液に加えた。反応混合溶液を、室温~100℃で、0.5~48時間撹拌した。全ての溶媒を真空除去した後、残留物を分取HPLCで精製して化合物を得た。
【0100】
あるいは、EtNまたはiPrNEt(1~200eq)を、DMFまたはTHFまたはジオキサンまたはDME中の、酸(1~20eq)、HCTUまたはHATUまたはHOBt(1~20eq)の溶液に加えた。混合物を室温で24時間撹拌した後、1007または1009または1016または1021または3001(1eq)を加えた。その後、反応混合物を、室温~100℃で0.5~48時間撹拌した後、反応をメタノールまたは水でクエンチした。全ての溶媒を真空除去した後、残留物を分取HPLCで精製して化合物を得た。
【0101】
【表61】

【表62】

【表63】

【表64】

【表65】

【表66】
【0102】
【表67】
【表68】
【表69】
【0103】
【表70】
【表71】
【表72】
【表73】
【表74】
【表75】
【表76】
【表77】

【表78】
【表79】
【表80】
【表81】

【表82】

【表83】

【表84】
【0104】
8001の製造:
DMF(1mL)/エタノール(0.250mL)中のBMT-001(50mg, 0.017mmol)、β-D-ガラクトヘプトース(5.29mg)および酢酸(5.76μL)の混合物を、室温で2時間撹拌した。混合物にNaCNBH(0.034mL,THF中で1M)を、1時間以内で少量ずつゆっくりと加えた。その後、混合物を室温で16時間撹拌した。全ての溶媒を真空除去した後、残留物を分取HPLCで精製して8001を得た。
【表85】

【表86】
【0105】
均一時間分解蛍光(HTRF)結合アッセイを用いたPD-1のPD-L1への結合に対する大環状ペプチドの競合能を試験するための方法
式(I)の化合物のPD-L1への結合能力を、PD-1/PD-L1均一時間分解蛍光(HTRF)結合アッセイを用いて調べた。
【0106】
均一時間分解蛍光(HTRF)結合アッセイ
PD-1とPD-L1の相互作用は、2つのタンパク質の細胞外ドメインの可溶性の精製済調製物を用いて評価することができる。PD-1およびPD-L1タンパク質の細胞外ドメインは、検出タグを含む融合タンパク質として発現され、このタグは、PD-1では、免疫グロブリン(PD-1-Ig)のFc部分であり、PD-L1では、6ヒスチジンモチーフ(PD-L1-His)である。全ての結合試験を、0.1%(w/v)ウシ血清アルブミンおよび0.05%(v/v)Tween-20を加えたdPBSからなるHTRFアッセイ緩衝液中で行った。h/PD-L1-His結合アッセイの場合、アッセイ緩衝液(4μl)中でPD-L1-His(最終10nM)と一緒に15分間予めインキュベートし、その後PD-1-Ig(終濃度20nM)/アッセイ緩衝液(1μl)を加えて、さらに15分間インキュベートした。HTRF検出を、ユーロピウムクリプタート標識抗Ig(最終1nM)およびアロフィコシアニン(APC)標識抗His(最終20nM)を用いて行った。抗体を、HTRF検出緩衝液に希釈し、結合混合物の上に5μl分注した。反応混合物を30分間平衡化させ、得られるシグナル(665nm/620nmの比)を、EnVision蛍光光度計を用いて得た。追加の結合アッセイを、ヒトタンパク質PD-1-Ig/PD-L2-His(各々20および5nM)およびCD80-His/PD-L1-Ig(各々100および10nM)間で行った。
【0107】
組換えタンパク質:C末端にヒトイムノグロブリンG(Ig)エピトープタグ[hPD-1(25~67)-3S-IG]を含むヒトPD-1(25~167)およびC末端にHisエピトープタグ[hPD-L1(18~239)-TVMV-His]を含むヒトPD-L1(18~239)を、HEK293T細胞にて発現させて、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィーで順に精製した。ヒトPD-L2-HisおよびCD80-Hisは、市販品を購入して得た。
【0108】
表1は、PD-1/PD-L1均一時間分解蛍光(HTRF)結合アッセイで測定された本発明の代表的な実施例化合物のIC50値を列挙したものである。
【表87-1】

【表87-2】
【0109】
当業者には、本願発明が前述に例示した実施例に限定されず、その本質的特性から逸脱することなく他の特定の形に具現化できることは明らかである。それゆえに、実施例は、あらゆる点で限定的ではなく説明的と見なすことが望まれ、前記実施例ではなく添付する特許請求の範囲を参照すべきであり、請求の範囲と等価の意味および範囲に入る全ての変更は本発明に包含されると意図される。
【0110】
式(I)の化合物は、PD-1/PD-L1相互作用の阻害剤としての活性を有するので、PD-1/PD-L1相互作用に関連する疾患または欠損の治療に使用することができる。PD-1/PD-L1相互作用の阻害により、本開示の化合物は、HIV、敗血症ショック、肝炎A、B、CまたはDおよび癌などの感染症を治療するために用いることができる。
【0111】
本発明の詳細な説明は、要約および要旨の項目ではなく、特許請求の範囲を解釈するために使用されることを意図していると理解されたい。要約および要旨の項目は、本願の発明者らによって意図された本開示に関する全ての例示的な実施形態を示すわけではなく、1以上の例示的な実施形態を示し得るものであるため、いずれにしても本開示および添付の特許請求の範囲を制限することを意図するものではない。
【0112】
本開示は、特定の機能とその関係性に関する実施を説明する機能的な構成要素を用いて説明されている。これらの機能的な構成要素の範囲は、説明のために、便宜上本明細書で任意に定義されている。特定の機能およびその関係が適切に実行される限り、別の範囲を定義することができる。
【0113】
特定の実施形態の前述の説明により、本開示の一般的な性質が十分に理解されるので、当技術分野の通常の知識を用いることにより、当業者は過度の実験をせずとも、本開示の一般的概念から逸脱することなく、かかる特定の実施形態を容易に改変および/または様々な用途に適合させることができる。従って、そのような適応および改変は、本明細書に提示された教示およびガイダンスに基づいて、開示された実施形態の意味および等価物の範囲内にあることが意図される。本明細書の用語または語句は、教示およびガイダンスに照らして当業者によって解釈されるような説明を目的とするものであり、限定することを目的とするものではないことが理解されるであろう。
【0114】
本開示の範囲は、上述した例示的な実施形態のいずれかによって限定されるべきではなく、以下の請求項およびその等価物によってのみ定義されるべきものである。
【国際調査報告】