(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-15
(54)【発明の名称】抗CNTN4特異的抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20240408BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240408BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240408BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240408BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240408BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240408BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240408BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C12N15/63 Z
A61K39/395 U
A61K39/395 D
A61K45/00
A61K47/68
A61P35/00
G01N33/574 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023563837
(86)(22)【出願日】2021-04-29
(85)【翻訳文提出日】2023-12-15
(86)【国際出願番号】 KR2021005449
(87)【国際公開番号】W WO2022231032
(87)【国際公開日】2022-11-03
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520077986
【氏名又は名称】ゲノム アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】チョン, ブ ナム
(72)【発明者】
【氏名】ハウ, ユン キョン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ユン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】チャ, ミ ヤング
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZB26
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB11
4C085BB36
4C085BB41
4C085BB43
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE03
4H045AA11
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント、及び細胞性免疫応答を上方制御するT細胞を活性化するための、例えばがんを治療するための、その使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、及び
配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域
を含む、抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
ヒト又はマウスCNTN4タンパク質に特異的に結合する、請求項1に記載の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項3】
解離定数(Kd)1×10
-7M以下でヒトCNTN4タンパク質に結合する、請求項1に記載の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項4】
T細胞活性を増大させる、請求項1に記載の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項5】
前記T細胞がCD4+T細胞又はCD8+T細胞である、請求項4に記載の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項6】
サイトカインの分泌を増大させる、請求項1に記載の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項7】
前記サイトカインが、IL-2、TNFα、IFNγ、又はそれらの組合せである、請求項6に記載の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項8】
前記抗原結合フラグメントが、Fab、Fab’、Fab’-SH、Fv、単鎖抗体scFv、(Fab’)2フラグメント、単一ドメイン抗体、二重特異性抗体(dAb)、及び線状抗体からなる群から選択される、請求項1に記載の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項9】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項1に記載の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項10】
前記抗体がキメラ抗体又はヒト化抗体である、請求項1に記載の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項11】
前記抗体が多特異性抗体である、請求項1に記載の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項12】
前記抗体が薬物と結合している、請求項1に記載の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項13】
前記抗体がIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4である、請求項1に記載の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメントをコードする、核酸分子。
【請求項15】
請求項14に記載の核酸分子を含む、組換え発現ベクター。
【請求項16】
活性成分として請求項1~13のいずれか一項に記載の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントを含む、がんを予防又は治療するための医薬組成物。
【請求項17】
前記がんがCNTN4を発現するがんである、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
請求項1~13のいずれか一項に記載の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント、及びさらなる抗がん剤を含む、がんを予防又は治療するための医薬組成物。
【請求項19】
前記さらなる抗がん剤が、免疫チェックポイント阻害剤又は化学療法剤である、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、抗CTLA-4抗体、抗PD-1抗体、及び抗PD-L1抗体からなる群から選択される1つ又は複数である、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント、及び前記さらなる抗がん剤が、単一の製剤として同時に投与されるか、又は別個の製剤として同時に若しくは順次投与される、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項22】
請求項1~13のいずれか一項に記載の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントを含み、さらなる抗がん療法と組み合わせて使用される、がんを予防又は治療するための医薬組成物。
【請求項23】
前記さらなる抗がん療法が、免疫チェックポイント阻害剤、化学療法剤、及び放射線療法からなる群から選択される1つ又は複数である、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
請求項1~13のいずれか一項に記載の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントを含む、がんを診断するための組成物。
【請求項25】
活性成分として請求項1~13のいずれか一項に記載の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントを使用することによって、試料中のCNTN4タンパク質を検出する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗CNTN4特異的抗体又はその抗原結合フラグメント、それを含有する治療組成物、及びT細胞を活性化するための、例えば、がんを治療するための、その使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの体は、外部侵入物(ウイルス、毒素等)及び内部の有害な変化(がん細胞突然変異)から自身を保護する防御機構を有する。正常細胞とは異なり、がん細胞は、その表面に特定の抗原を有し、がん発生の初期段階で免疫機構により破壊される。すると、無限に増殖したいがん細胞と、がん細胞を攻撃したい免疫細胞との力のバランスが崩れると、がん細胞が実質的に増殖し始める。がん細胞がさらに成長すると、がん細胞は体内の免疫機構を妨害し、一部のがん細胞は、免疫細胞の免疫チェックポイントを使用することにより免疫を回避し、免疫チェックポイント阻害剤が免疫チェックポイントを抑制すると、免疫細胞の力が増大し、それによりがん細胞を死滅させる。
【0003】
免疫チェックポイント阻害剤は、T細胞阻害に関与する免疫チェックポイントタンパク質の活性化を遮断することによってT細胞を活性化することにより、がん細胞を攻撃する薬物であり、CTLA-4、PD-1、PD-L1阻害剤などを含む。現在市販されている代表的な薬物は、CTLA-4モノクローナル抗体としてのイピリムマブ(製品名:ヤーボイ(YERVOY)(登録商標))、PD-1モノクローナル抗体としてのニボルマブ(製品名:オプジーボ(OPDIVO)(登録商標))及びペムブロリズマブ(製品名:キイトルーダ(KEYTRUDA)(登録商標))、並びにPD-L1モノクローナル抗体としてのアテゾリズマブ(製品名:テセントリク(TECENTRIQ)(登録商標))及びデュルバルマブ(製品名:イミフィンジ(IMFINZI)(登録商標))を含む。
【0004】
しかし、既存の免疫チェックポイント阻害剤では治療されない癌が未だ存在し、ゆえに新規の抗がん治療の開発が必要である。
【0005】
韓国特許出願公開番号第10-2019-0116930号は、ヒト免疫系を使用したがん治療の新たな標的としてCNTN4を使用できることを開示する。上記の韓国特許出願は、CNTN4がT細胞活性を阻害することを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国特許出願公開番号第10-2019-0116930号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、CNTN4タンパク質に特異的に結合する抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントを提供することである、特に、本発明は、CNTN4タンパク質に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントを提供して、CNTN4の免疫逃避機序を中和することを意図する。
【0008】
本発明はまた、抗体又はその抗原結合フラグメントを使用することにより、T細胞活性の減少により引き起こされるがんなどの疾患を予防又は治療するための組成物を提供して、CNTN4の免疫逃避機序を遮断し、T細胞を活性化することを意図する。
【0009】
本発明はまた、抗体又はその抗原結合フラグメントを使用して、CNTN4タンパク質を分析又は検出するための組成物を提供することも意図する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、CNTN4タンパク質に特異的に結合する抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントを提供する。抗体又は抗原結合フラグメントは、CNTN4タンパク質、例えば、ヒト又はマウスCNTN4タンパク質に特異的に結合して、CNTN4の免疫逃避機序を中和する。したがって、本発明の抗体又は抗原結合フラグメントは、CNTN4により阻害された、CD4+T細胞又はCD8+T細胞などのT細胞の活性を増大させうる。
【0011】
一実施形態において、本発明は、
配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、及び
配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域
を含む、抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントを提供する。
【0012】
一実施形態において、本発明の抗体は、モノクローナル抗体であってもよい。
【0013】
別の実施形態において、本発明は、抗体又はその抗原結合フラグメントをコードする核酸分子、及び核酸分子を含む組換え発現ベクターを提供する。
【0014】
本発明はまた、がんを予防又は治療するための組成物であって、活性成分として、抗体又はその抗原結合フラグメントを含む、組成物も提供する。医薬組成物は、免疫チェックポイント阻害剤又は化学療法剤などのさらなる抗がん剤と組み合わせて使用されてもよく、放射線療法と組み合わせて使用されてもよい。
【0015】
本発明は、CNTN4タンパク質を分析又は検出するための組成物であって、抗体又はその抗原結合フラグメントを含む、組成物も提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の発明者らは、CNTN4タンパク質が免疫チェックポイントタンパク質であり、T細胞活性の阻害による免疫回避の程度が従来の免疫チェックポイントタンパク質として知られているPD-L1よりも強いことを確認した。
【0017】
さらに、本発明の新規の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントは、CNTN4の免疫逃避機序を遮断することによりT細胞を活性化し、ゆえにT細胞活性の減少により引き起こされる疾患、特にがんを予防又は治療するのに有効に使用可能である。したがって、本発明の抗CNTN4抗体が使用されると、既存の免疫療法では治療効果が達成されないがんに関して、優れた抗がん効果が発揮される可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】PD-L1と比較してCNTN4がヒトT細胞の活性を阻害する程度を示すグラフである。
【
図2】実施例2によって生成されたモノクローナル抗体の軽鎖及び重鎖可変領域のアミノ酸配列を示す図である。
【
図3】抗原タンパク質であるヒトCNTN4及びマウスCNTN4に対するモノクローナル抗体hAb-1の結合能を示す図である。
【
図4】モノクローナル抗体hAb-1がCNTN4のためのCNTN4受容体と競合的に結合するかどうかを示す図である。
【
図5】モノクローナル抗体hAb-1がCNTN4タンパク質を有効に中和してT細胞を増殖させることを示す図である。
【
図6】実施例6による結腸直腸がんのCT26同系マウスモデルにおけるモノクローナル抗体hAb-1の抗腫瘍効果を示す図である。点線は、各実験群において0日目、3日目、6日目、及び9日目に薬物で処理したことを示す。統計的有意性は、二元配置分散分析試験を使用した多重比較試験で決定された(
*P<0.05、
**P<0.01、
***P<0.001、
****P<0.0001対群1(hIgG4)))。
【
図7】実施例7による結腸直腸がんのCT26同系マウスモデルにおける脾臓のT細胞活性を増大させるためのモノクローナル抗体hAb-1の有効性を示す図である。
図7は、CD45+細胞に対するCD4+T細胞のパーセンテージ(すなわち、CD3+CD4+/CD45+)を示す。
【
図8】実施例7による結腸直腸がんのCT26同系マウスモデルにおける脾臓のT細胞活性を増大させるためのモノクローナル抗体hAb-1の有効性を示す図である。
図8は、CD45+細胞に対するCD8+T細胞のパーセンテージ(すなわち、CD3+CD8+/CD45+)を示す。
【
図9】実施例7による結腸直腸がんのCT26同系マウスモデルにおける脾臓のT細胞活性を増大させるためのモノクローナル抗体hAb-1の有効性を示す図である。
図9は、CD8+T細胞のうちのIFNγを分泌する細胞のパーセンテージ(すなわち、IFNγ/CD8+)を示す。
【
図10】実施例7による結腸直腸がんのCT26同系マウスモデルにおける脾臓のT細胞活性を増大させるためのモノクローナル抗体hAb-1の有効性を示す図である。
図10は、分析に使用した各マウスにおける腫瘍体積の縮小の程度を示す。
【
図11】実施例8による乳がんのEMT6同系マウスモデルにおけるモノクローナル抗体hAb-1の抗腫瘍効率を示す図である。点線は、各実験群において0日目、3日目、6日目、及び9日目に薬物で処理したことを示す。統計的有意性は、二元配置分散分析試験を使用した多重比較試験で決定された(
*P<0.05、
**P<0.01、
***P<0.001、
****P<0.0001対群1(hIgG4)))。
【
図12】実施例9による乳がんのEMT6同系マウスモデルにおける脾臓のT細胞活性を増大させるためのモノクローナル抗体hAb-1の有効性を示す図である。
図12は、CD4+T細胞のうちのIFNγを分泌する細胞のパーセンテージ(すなわち、IFNγ/CD4+)を示す。
【
図13】実施例9による乳がんのEMT6同系マウスモデルにおける脾臓のT細胞活性を増大させるためのモノクローナル抗体hAb-1の有効性を示す図である。
図13は、CD8+T細胞のうちのIFNγを分泌する細胞のパーセンテージ(すなわち、IFNγ/CD8+)を示す。
【
図14】実施例10による肺がんのLLC-1同系マウスモデルにおける脾臓のT細胞活性を増大させるためのモノクローナル抗体hAb-1の有効性を示す図である。
図14は、CD3+T細胞のうちのIFNγを分泌する細胞のパーセンテージ(すなわち、IFNγ/CD3+)を示す。
【
図15】実施例10による肺がんのLLC-1同系マウスモデルにおける脾臓のT細胞活性を増大させるためのモノクローナル抗体hAb-1の有効性を示す図である。
図15は、分析に使用した各マウスにおける腫瘍体積の縮小の程度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント
本発明は、CNTN4タンパク質に特異的に結合する抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントを提供する。
【0020】
一実施形態において、本発明の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域及び配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0021】
本明細書で使用される場合、軽鎖又は重鎖可変領域が特定のアミノ酸配列を含むということは、軽鎖又は重鎖可変領域が、アミノ酸配列全体を含むか、アミノ酸配列全体を有するか、又はアミノ酸配列からなることを意味する。
【0022】
一例において、抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号1のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域、及び配列番号2のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む。別の例では、抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号1のアミノ酸配列から本質的になる軽鎖可変領域、及び配列番号2のアミノ酸配列から本質的になる重鎖可変領域を含む。
【0023】
別の例として、抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号1のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、及び配列番号2のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む。
【0024】
本明細書で使用される場合、用語「含む(comprising)」、「含む(comprise)」又はこれを改変した語は、オープンな意味を指す。一例として、列挙されるアミノ酸配列を含む抗体又はその抗原結合フラグメントは、必須であってもなくても、列挙されていないさらなるアミノ酸配列を含んでいてもよい。
【0025】
本明細書で使用される場合、用語「から本質的になる」又はこれを改変した句は、言及された要素のうちのいずれかを含み、実施形態の基本的な、新規の、又は機能的な特徴に実質的に影響を及ぼさない要素の存在を認める。一例として、列挙されるアミノ酸配列から本質的になる抗体又はその抗原結合フラグメントは、抗体又はそのフラグメントの特徴に実質的に影響を及ぼさない1つ又は複数のアミノ酸残基の置換を含んでいてもよい。
【0026】
本明細書で使用される場合、用語「からなる」又はこれを改変した句は、本明細書で記載される各成分が、実施形態についてのその記載において記載又は列挙されていない任意の要素を認めない場合を指す。
【0027】
用語「抗体」は、本明細書で使用される場合、免疫グロブリン分子の可変領域に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を介して、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチド、タンパク質などの標的に、特異的に結合することが可能な免疫グロブリン分子を指す。用語「抗体」は、本明細書では、完全なポリクローナル又はモノクローナル抗体だけでなく、その抗原結合フラグメント、及び抗体フラグメントを含む融合タンパク質、及び抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の改変された形状も包含する。
【0028】
抗体は、重鎖定常領域遺伝子μ、δ、γ、α、及びεからそれぞれ作られる重鎖を含む、5つのクラスの免疫グロブリン(Ig)M、IgD、IgG、IgA、及びIgEを含む。
【0029】
抗体の軽鎖及び重鎖は、各抗体について異なるアミノ酸配列を有する可変領域、及び同じアミノ酸配列を有する定常領域に分けられ、重鎖定常領域は、CH1、H(ヒンジ)、CH2、及びCH3ドメインを含む。各ドメインは2つのβ-シートからなり、その間で分子内ジスルフィド結合が連結されている。
【0030】
配列番号1のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、及び配列番号2のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗体は、本明細書では「抗体hAb-1」と呼ばれる。
【0031】
一実施形態において、本発明の抗体はモノクローナル抗体であってもよい。別の実施形態において、本発明の抗体はキメラ抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体であってもよい。
【0032】
本明細書で使用される場合、用語「キメラ抗体」は、可変領域配列がある1つの種由来であり、定常領域配列が別の種由来である抗体、例えば可変領域配列がマウス抗体由来であり、定常領域配列がヒト抗体由来である抗体を指す。
【0033】
本明細書で使用される場合、用語「ヒト化抗体」は、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖細胞系由来のCDR配列が、ヒトフレームワーク配列に移植された抗体を指す。フレームワーク配列は、例えば復帰突然変異によりさらに再改変されていてもよい。
【0034】
本明細書で使用される場合、用語「ヒト抗体」は、フレームワーク及びCDR領域の両方が、ヒト免疫グロブリン配列由来の可変領域を含む抗体を指す。抗体の定常領域も、ヒト免疫グロブリン配列由来である。
【0035】
本明細書で使用される場合、用語「抗原結合フラグメント」又は「抗体フラグメント」は、親抗体の抗原結合又は可変領域(例えば1つ又は複数のCDR)の少なくとも一部を通常含む、抗原結合フラグメント及び抗体のアナログを指す。抗体フラグメントは、親抗体の結合特異性の少なくとも一部を維持する。抗体フラグメントの例は、Fab、Fab’、Fab’-SH、Fv、F(ab’)2フラグメント、単鎖抗体scFv、単一ドメイン抗体、二重特異性抗体(dAb)、又は線状抗体を含むがこれらに限定されない。
【0036】
特に、Fabフラグメントは、VL、VH、CL、及びCH1ドメインから構成される一価のフラグメントを指す。
【0037】
Fab’フラグメントは、いくつかの残基が、抗体ヒンジ領域から、少なくとも1つのシステインを含むCH1ドメインのカルボキシル末端に付加されているという点で、Fabフラグメントとは異なる。
【0038】
Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を有するFab’を指す。
【0039】
F(ab’)2抗体フラグメントは、Fab’フラグメント間のヒンジシステインを介する、Fab’フラグメントの対として産生される。
【0040】
Fvは、完全な抗原-認識部位及び-結合部位を含有する最小の抗体フラグメントである。このフラグメントは、緊密な非共有結合性会合での、1つの重鎖可変領域及び1つの軽鎖可変領域の二量体からなる。これら2つの領域のフォールディングから、抗体に、抗原結合のためのアミノ酸残基をもたらし、抗原結合特異性を付与する6つの超可変ループ(それぞれ重鎖及び軽鎖由来の3つのループ)が生じる。しかし、単一の可変領域でも、抗原を認識し抗原と結合する能力を有するが、結合部位全体よりも親和性は小さい。
【0041】
単鎖抗体scFvは、単一のポリペプチド鎖に連結されたVH及びVL抗体ドメインを含む抗体フラグメントである。好ましくは、scFvポリペプチドは、scFvが抗原結合のための所望の構造を形成することを可能にする、VH及びVLドメインの間のポリペプチドリンカーをさらに含む。本明細書でのscFvポリペプチドは、scFv抗体フラグメント、抗原結合フラグメントscFv、scFv抗体、抗体scFv、又は単にscFvとも呼ばれる。
【0042】
二重特異性抗体は、Vドメインの、鎖内ではなく鎖間の対形成が達成されるように、VH及びVLドメインの間の短いリンカー(約5~10残基)を使用してscFvフラグメントを構築することにより調製され、二価のフラグメント、すなわち、2つの抗原結合部位を有するフラグメントをもたらす、低分子の抗体フラグメントを指す。二重特異性の二重特異性抗体は、2種の抗体のVH及びVLドメインが異なるポリペプチド鎖に存在する、2つの「クロスオーバー」scFvフラグメントからなるヘテロ二量体である。
【0043】
本発明の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントは、CNTN4タンパク質、好ましくはヒト又はマウスCNTN4タンパク質に特異的に結合することができる。
【0044】
本明細書で使用される場合、用語「に特異的に結合する」又は「に特異的な」は、生物分子を含む分子の不均一集団の存在下における標的の存在を決定する、標的及び抗体の間の結合などの、測定可能で再現性のある相互作用を指す。例えば、特定の標的(例えば、エピトープ)に特異的に結合する抗体は、それが他の標的に結合するよりも、より高い親和性、結合能で、より容易に、及び/又はより長い期間、この標的に結合する抗体である。
【0045】
本明細書で使用される場合、用語「ヒトCNTN4タンパク質に特異的に結合する」は、解離定数(Kd)1×10-7M以下、又は好ましくは5×10-8M以下でヒトCNTN4タンパク質に結合する抗体を指しうる。したがって、本発明の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントは、解離定数(Kd)1×10-7M以下、好ましくは5×10-8M以下でヒトCNTN4タンパク質に結合しうる。
【0046】
本明細書で使用される場合、用語「Kd」は、特定の抗体-抗原相互作用の平衡解離定数を指し、定数は単位Mを有する。抗体のKd値は、当技術分野で広く確立された方法を使用して決定可能である。抗体のKd値を決定するための好ましい方法は、表面プラズモン共鳴(SPR)を使用すること、好ましくはビアコア(Biacore)(登録商標)システムなどのバイオセンサーシステムを使用することによる。
【0047】
一実施形態において、本発明の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントは、単一特異性であり、単一のエピトープ、すなわちCNTN4タンパク質に特異的に結合する。
【0048】
別の実施形態において、本発明の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントは、二重特異性又は三重特異性抗体分子などの多特異性抗体分子である。多特異性抗体分子は複数の可変領域を含み、各可変領域は、異なるエピトープに対する結合特異性を有する。一実施形態において、二重特異性抗体分子の第1の可変領域は、第1のエピトープ、例えばCNTN4タンパク質に対する第1の結合特異性を有し、第2の可変領域は、第2のエピトープ、例えばCNTN4タンパク質以外の標的タンパク質(例えば、CTLA-4、PD-1、又はPD-L1を含むがこれらに限定されない)に対する第2の結合特異性を有する。特定の一実施形態において、二重特異性抗体分子は、CNTN4、及びCTLA-4、PD-1又はPD-L1のうちのいずれか1つに特異的に結合する。別の実施形態において、上記分子の任意の組合せが、多特異性抗体分子、例えばCNTN4に対する第1の結合特異性、並びにCTLA-4、PD-1又はPD-L1のうちの少なくとも2つに対する第2及び第3の結合特異性を含む三重特異性抗体により調製されてもよい。本発明の多特異性抗体分子は、当業者に公知の標準的な分子生物学的技法(例えば、組換えDNA及びタンパク質発現技術)を使用して調製されてもよい。
【0049】
別の実施形態において、本発明の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントは、抗体薬物複合体(ADC)を形成していてもよい。本明細書で使用される場合、用語「抗体薬物複合体」又は「ADC」は、式M-[L-D]nにより表すことができ、Mは抗体分子、すなわち本発明の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントを表し、Lは任意のリンカー又はリンカーユニットであり、Dは好適な薬物又はプロドラッグであり、nは約1~約20の整数である。ADCに含まれる薬物は、薬物が本発明の抗体の特異的結合を妨害しない限り、治療又は診断用途に従って適切に選択されうる。一実施形態において、薬物は、細胞毒性薬剤(例えば、化学療法剤)、プロドラッグ変換酵素、放射性同位体若しくは化合物、又は毒素を含むがこれらに限定されない。ADC及びADCの調製方法に含まれうる薬物及びリンカーは、当技術分野で公知の方法に従ってもよい。
【0050】
本発明の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントは、CNTN-4受容体の存在下でもCNTN-4タンパク質に対して優れた競合結合能を示す。したがって、本発明の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントは、体内にCNTN-4受容体が存在する場合でも、CNTN-4タンパク質に対して実質的に同程度に特異的に結合することができる。
【0051】
別の実施形態において、本発明の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントは、ELISAアッセイにより決定される、5nM以下、好ましくは3nM以下、より好ましくは2nM、さらにより好ましくは1nM以下のEC50で、CNTN4タンパク質(例えば、ヒト又はマウスCNTN4タンパク質)に結合する。
【0052】
本明細書で使用される場合、用語「EC50」は、抗体を使用するin vitro又はin vivoアッセイに関連する用語であり、最大応答の50%、すなわち、最大応答及びベースラインの間の中間応答を誘導する抗体の濃度を指す。
【0053】
核酸分子及びベクター
本発明の別の態様は、本発明の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントをコードする核酸分子に関する。
【0054】
核酸は、細胞全体中に、細胞ライセート中に、又は特に精製されたか若しくは実質的に純粋な形態として存在しうる。核酸は、アルカリ/SDS処理、CsClバンド形成、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動及び当技術分野で周知の他の技法を含む標準的な技法により、他の細胞成分又は他の混入物、例えば他の細胞核酸又はタンパク質から分離して精製されると、「単離されている」か又は「実質的に純粋となる」。
【0055】
本発明の核酸は、例えばDNA又はRNAであってもよく、イントロン配列を含有していても含有していなくてもよい。好ましい一実施形態において、核酸はcDNA分子である。
【0056】
一実施形態において、本発明の核酸分子は、本発明の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントの、軽鎖領域、重鎖領域、又は軽鎖及び重鎖領域の両方をコードし、好ましくは、軽鎖可変領域、重鎖可変領域、又は軽鎖及び重鎖可変領域の両方をコードする。一実施形態において、本発明の核酸分子は、配列番号1を含む軽鎖可変領域をコードし、及び/又は配列番号2を含む重鎖可変領域をコードするか、又は抗体hAb-1をコードする。
【0057】
VL及び/又はVH領域をコードするDNAフラグメントが得られると、そのようなDNAフラグメントは、標準的な組換えDNA技法によりさらに操作されて、例えば、可変領域遺伝子を、全長抗体鎖遺伝子、Fabフラグメント遺伝子又はscFv遺伝子に変換されてもよい。これらの操作において、VL又はVHをコードするDNAフラグメントは、別のタンパク質、例えば、抗体定常領域、又は可動性リンカーをコードする別のDNAフラグメントに作動可能に連結される。本明細書で使用される場合、用語「作動可能に連結される」は、2つのDNAフラグメントによりコードされるアミノ酸配列がインフレームに留まるように、2つのDNAフラグメントが連結されることを意味する。
【0058】
VH領域をコードする単離されたDNAは、VHをコードするDNAを、重鎖定常領域(CH1、CH2及びCH3)をコードする別のDNA分子に作動可能に結合させることにより、全長重鎖遺伝子に変換されうる。重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgM、又はIgD定常領域であってもよい。
【0059】
Fabフラグメント重鎖遺伝子については、VHをコードするDNAが、重鎖CH1定常領域のみをコードする別のDNA分子に作動可能に連結されてもよい。
【0060】
scFv遺伝子を作製するには、VL及びVH配列が、VL及びVH領域が可動性リンカーにより連結された隣接する単鎖タンパク質として発現されうるように、VL及びVHをコードするDNAフラグメントが、可動性リンカーをコードする、例えばアミノ酸配列(Gly4-Ser)3をコードする別のフラグメントに作動可能に連結される。
【0061】
RNA又はDNAなどの本発明の核酸配列は、各種供給源から単離されてもよく、遺伝子改変されてもよく、増幅されてもよく、及び/又は組換えで発現されてもよい。細菌機構に加えて、例えば、酵母、昆虫又は哺乳動物機構を含む、任意の組換え発現機構が使用可能である。例えば、発現ベクターへのサブクローニング、標識プローブ、配列決定、及びハイブリダイゼーションなどの核酸の操作が、当技術分野で公知であるように実施されてもよい。
【0062】
したがって、本発明は、核酸分子を含む組換え発現ベクターを提供する。
【0063】
本明細書で使用される場合、用語「ベクター」は、原核及び/又は真核細胞において自己複製が可能なDNA分子を指し、細胞等に遺伝子又はDNAフラグメントを送達するための担体として一般的に使用される、組換えベクター、クローニングベクター、又は発現ベクターと互換可能に使用される。ベクターは、原核及び/又は真核細胞において複製可能な複製開始点、抗菌性分解酵素などの特定の条件/物質に対する耐性を付与することが可能な選択マーカー遺伝子、真核又は原核細胞における遺伝子の転写が可能なプロモーター、及び翻訳可能な配列を一般的に含むがこれらに限定されない。
【0064】
ベクターの1種は「プラスミド」であり、プラスミドは、さらなるDNAセグメントがライゲーションされうる環状二本鎖DNAループを指す。別種のベクターはウイルスベクターであり、さらなるDNAセグメントがウイルスゲノムにライゲーションされうる。ある特定のベクターは、ベクターが導入される宿主細胞において自律複製が可能である(例えば、細菌複製開始点を有する細菌ベクター、及びエピソーマル哺乳動物ベクター)。
【0065】
抗体又はその抗原結合フラグメントの調製
本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントは、従来公知の方法に従って調製されてもよい。
【0066】
一実施形態では、抗体又はその抗原結合フラグメントを発現させるために、部分的又は完全長の軽鎖及び重鎖をコードする核酸分子を含む組換え発現ベクターを宿主細胞にトランスフェクトする。トランスフェクションの方法として、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE-デキストラントランスフェクション等が含まれるが、これらだけに限定されない、原核又は真核生物の宿主細胞への外因性DNAの導入のために一般的に使用される技術が使用されてもよい。
【0067】
本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントの発現のための宿主細胞は、原核細胞であっても真核細胞であってもよく、好ましくは真核細胞、特に哺乳類細胞であってもよい。
【0068】
哺乳類宿主細胞の例は、ヒト胎児由来腎臓細胞(例えば、懸濁培養での増殖のためにサブクローニングされた293細胞又は293細胞)、Expi293F(商標)細胞、CHO細胞、ベビーハムスター腎臓細胞(例えば、BHK、ATCC CCL 10)、マウスセルトリ細胞(例えば、TM4細胞)、サル腎臓細胞(例えば、CV1 ATCC CCL 70)、アフリカミドリザル腎臓細胞(例えば、VERO-76、ATCC CRL-1587)、ヒト子宮頸癌細胞(例えば、HELA、ATCC CCL 2)、イヌ腎臓細胞(例えば、MDCK、ATCC CCL 34)、バッファローラット肝臓細胞(例えば、BRL 3A、ATCC CRL 1442)、ヒト肺細胞(例えば、W138、ATCC CCL 75)、ヒト肝臓細胞(例えば、Hep G2、HB 8065)、マウス乳房腫瘍細胞(例えば、MMT 060562、ATCC CCL51)、TRI細胞、MRC5細胞、FS4細胞、ヒト肝細胞癌細胞株(例えば、Hep G2)、及び骨髄腫細胞(例えば、NS0及びSp2/0細胞)を含むが、これらだけに限定されない。
【0069】
形質転換された宿主細胞を適切な培地で培養して、宿主細胞に導入された組換え発現ベクターから本発明による抗体の重鎖、軽鎖、又はその抗原結合フラグメントのポリペプチドを生成することができる。宿主細胞を培養するための培地の組成、培養条件、培養時間等は、当業界で通常使用される方法に従って適切に選択されうる。例えば、Ham’s F10(Sigma-Aldrich Co.、St.Louis、M0)、最小必須培地(MEM、Sigma-Aldrich Co.)、RPMI-1640(Sigma-Aldrich Co.)、及びダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、Sigma-Aldrich Co.)などの市販の培地が使用されうるが、これらだけに限定されない。必要に応じて、ホルモン、成長因子、塩、緩衝液、ヌクレオチド、抗生物質、微量元素等が培地にさらに添加されてもよい。
【0070】
宿主細胞において生成された抗体又はそれらの抗原結合フラグメントは、精製などの過程によって取得されうる。取得する方法は、宿主細胞で生成された抗体又はそれらの抗原結合フラグメントのポリペプチドの特徴、宿主細胞の特徴、発現方法、又はポリペプチドを標的とするかどうかを考慮して適切に選択されうる。例えば、培養培地に分泌された抗体又はそれらの抗原結合フラグメントは、宿主細胞を培養した培地を入手し、培地を遠心分離して不純物を除去する方法によって回収されうる。さらに、得られた抗体は、クロマトグラフィー、フィルター等による濾過、又は透析などの方法によるさらなる不純物の除去、及び抗体の濃縮の工程をさらに受け、2ステップの精製方法、例えば、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーによる1回目精製、次いで陽イオン交換クロマトグラフィーによる2回目精製の方法が使用されうる。
【0071】
使用及び方法
本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントは、CNTN4タンパク質の結合により阻害される免疫応答を回復させる。CNTN4タンパク質が、T細胞、特にCD4+T細胞及びCD8+T細胞の増殖を阻害する。本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントは、CNTN4タンパク質に特異的に結合して、それによりT細胞活性、特にCD4+T細胞又はCD8+T細胞の活性を増大させることにより、免疫抑制に関連する疾患を治療するのに使用されてもよい。
【0072】
一実施形態において、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントは、T細胞活性を増大させる。
【0073】
本明細書で使用したように、「T細胞」という用語は、細胞表面上のT細胞受容体の存在によって他の白血球と区別されうる白血球の一種を意味する。ヘルパーT細胞(TH細胞又はCD4+T細胞とも呼ばれる)及びサブタイプ(TH1、TH2、TH3、TH17、TH9、及びTFH細胞を含む)、細胞傷害性T細胞(TC細胞、CD8+T細胞、細胞傷害性Tリンパ球、Tキラー細胞、キラーT細胞とも呼ばれる)、メモリーT細胞及びサブタイプ(セントラルメモリーT細胞(TCM細胞)、エフェクターメモリーT細胞(TEM及びTEMRA細胞)、及びレジデントメモリーT細胞(TRM細胞))、制御性T細胞(Treg細胞又はサプレッサーT細胞とも呼ばれる)及びサブタイプ(CD4+FOXP3+Treg細胞、CD4+FOXP3-Treg細胞、Tr1細胞、Th3細胞、及びTreg17細胞を含む)、ナチュラルキラーT細胞(NKT細胞としても知られている)、粘膜関連インバリアントT細胞(MAIT)、並びにガンマデルタT細胞(γδT細胞)(Vγ9/Vδ2T細胞を含む)が含まれるが、これらだけに限定されない、いくつかのT細胞のサブセットが存在する。本発明では、好ましくは、T細胞はCD4+T細胞又はCD8+T細胞である。
【0074】
本明細書で使用したように、「T細胞活性化」という用語は、表面上に抗原特異的T細胞受容体を発現する成熟T細胞が、それらの同族抗原を認識し、その反応として成熟T細胞が細胞周期に入り、サイトカイン又は溶解酵素を分泌し、T細胞のエフェクター機能の実施を開始する、細胞プロセスを意味する。
【0075】
したがって、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントは、T細胞、特にCD4+T細胞又はCD8+T細胞を活性化しうる。一実施形態において、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントは、CNTN4により阻害されたT細胞の増殖を増大させうる。本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントは、CNTN4を中和する優れた能力を有する。
【0076】
したがって、本発明は、抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントを使用することによる、T細胞活性化の誘導に関する。一実施形態において、本発明は、T細胞活性化を誘導又は増強するための方法を提供し、方法は、有効量の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントを対象に投与するステップを含む。別の実施形態において、本発明は、T細胞活性化を誘導又は増強するための、抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントの使用を提供する。
【0077】
別の実施形態において、本発明は、T細胞活性化を誘導又は増強するための医薬組成物を提供し、組成物は抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントを含む。
【0078】
別の実施形態において、本発明は、抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントを使用することによる、免疫抑制関連疾患の予防、寛解、又は治療に関する。
【0079】
一実施形態において、本発明は、免疫抑制関連疾患を予防するか、寛解させるか又は治療するための方法を提供し、方法は、有効量の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントを対象に投与するステップを含む。
【0080】
別の実施形態において、本発明は、免疫抑制関連疾患を予防するか、寛解させるか又は治療するための、抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントの使用を提供する。
【0081】
別の実施形態では、本発明は、免疫抑制関連疾患の予防、改善、又は治療のための医薬組成物であって、抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントを含む医薬組成物を提供する。
【0082】
本明細書で使用される場合、用語「対象」は、ヒト及び非ヒト動物の両方を含むことを意図される。非ヒト動物は、全ての脊椎動物、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ニワトリ、両生類及び爬虫類を含む哺乳動物及び非哺乳動物を含むが、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ、及びウマが好ましい。好ましい対象は、免疫応答活性化又は増強を必要とするヒトである。
【0083】
好ましくは、本発明の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントは、CNTN4タンパク質の結合を遮断し、それにより、がん患者においてT細胞を活性化し、及び/又はがん細胞に対する免疫応答を増強し、ゆえにin vivoでのがん細胞の成長を阻害することができ、したがって、がんを予防するか、寛解させるか、又は治療するのに有効に使用されうる。
【0084】
本発明の抗体が使用されると成長が阻害されうる好ましいがんは、免疫療法に対し通常応答性であるがんを含む。例えば、本発明におけるがんは、胃がん、膵臓がん、子宮内膜がん、肝臓がん、胆嚢がん、前立腺がん(例えば、ホルモン不応性前立腺腺癌)、黒色腫(例えば、転移性悪性黒色腫又は皮膚及び目の悪性黒色腫)、腎臓がん(例えば、明細胞癌)、乳がん(例えば、浸潤性乳がん、非浸潤性乳がん)、結腸直腸がん、直腸がん、結腸がん、及び肺がん(例えば、非小細胞肺がん)を含むが、これらだけに限定されない。がんの具体例は、胃がん、膵臓がん、子宮内膜がん、肝臓がん、胆嚢がん、前立腺がん、又は黒色腫を含んでいてもよい。さらに、本発明の治療されるべき対象は、本発明の抗体が使用されると成長が阻害されうる、難治性又は再発性悪性腫瘍を含む。
【0085】
本発明の方法を使用して治療されうる他のがんの例は、骨がん、皮膚がん、頭部及び頸部のがん、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肛門領域のがん、精巣がん、子宮がん、ファロピウス管の癌、子宮頸癌、膣癌、外陰部の癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、食道のがん、小腸のがん、内分泌系のがん、甲状腺のがん、副甲状腺のがん、副腎のがん、軟部組織の肉腫、尿道のがん、陰茎のがん、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病を含む慢性又は急性白血病、小児期の固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、膀胱がん、腎がん、尿管がん、腎盂の癌、中枢神経系(CNS)の新生物、原発CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮がん、扁平細胞がん、T細胞リンパ腫、又はこれらのがんの組合せを含む。
【0086】
本発明の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントの抗腫瘍活性は、インビボにおいて試験されうる。この目的のために、当技術分野で公知の同系腫瘍モデル、例えば、結腸直腸がんのCT26腫瘍モデル、乳がんのEMT6腫瘍モデル、又は肺がんのLLC-1腫瘍モデルが使用されうる。
【0087】
別の実施形態において、がんは、CNTN4を発現するがんであってもよい。
【0088】
別の実施形態において、がんは、従来の免疫チェックポイント阻害剤に対して難治性又は耐性(例えば、PD-1経路阻害剤、PD-1経路阻害剤、又はCTLA-4経路阻害剤に対して耐性)であってもよい。
【0089】
本発明の抗体又は抗原結合フラグメントは、単独で又は他の抗がん療法と組み合わせて使用されてもよい。他の抗がん療法は、例えば、標準的ながん療法(例えば、化学療法、放射線療法、又は外科手術)、又は他の抗がん剤、例えば、細胞毒性、細胞分裂阻害性、抗血管新生性又は代謝拮抗性薬剤、腫瘍指向性薬剤、免疫刺激若しくは免疫調節剤、又は細胞毒性、細胞分裂阻害性、又は他の毒性薬剤に結合した抗体、免疫チェックポイント阻害剤等を含んでいてもよい。
【0090】
好ましくは、本発明の抗体又は抗原結合フラグメントは、免疫チェックポイント阻害剤、化学療法剤、又は放射線療法などの他の抗がん剤と組み合わせて使用されてもよい。免疫チェックポイント阻害剤は、例えば、抗CTLA-4抗体(例えば、イピリムマブ)、抗PD-1抗体(例えば、ペムブロリズマブ、ニボルマブ)、又は抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ)であってもよい。化学療法剤は、アルキル化剤、代謝拮抗剤、キナーゼ阻害剤、紡錘体毒植物アルカロイド、細胞毒性/抗腫瘍抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤、光増感剤、抗エストロゲン薬及び選択的エストロゲン受容体調節薬(SERM)、抗プロゲステロン薬、エストロゲン受容体下方制御因子(ERD)、エストロゲン受容体アンタゴニスト、黄体ホルモン放出ホルモンアゴニスト、抗アンドロゲン薬、アロマターゼ阻害剤、EGFR阻害剤、VEGF阻害剤、異常な細胞増殖又は腫瘍成長に関連する遺伝子の発現を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチドを含むがこれらに限定されない。本発明の化学療法剤の特定の例は、ゲムシタビン、ビノレルビン、エトポシド(VP-16)、白金アナログ、例えばシスプラチン又はカルボプラチン、タキソイド、例えばパクリタキセル、アルブミン結合パクリタキセル、及びドキセタキセル等を含む。他のがん治療剤は、抗がん効果を呈するプロバイオティクス、例えばラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)GEN3013株(KCTC13426BP)、ラクトコッカス・ラクティスGEN3033株(KCTC13684BP)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)MG731株(KCTC13452BP)等を含む。
【0091】
本発明の抗体又は抗原結合フラグメントが、他の抗がん剤と組み合わせて使用される場合、これらは別々に投与されてもよく、複数の活性成分が単一の医薬製剤中に存在する組み合わせ生成物の形態で投与されてもよい。これらが別個の製剤として投与される場合、2つの製剤は順次又は同時に投与されてもよい。同時投与では、これらは一緒に患者に投与される。順次投与では、これらは長くはない時間間隔で投与されてもよく、例えば、これらの製剤は、12時間以下、又は6時間以下の期間内に患者に投与されてもよい。
【0092】
一実施形態において、本発明は、免疫抑制関連疾患、例えばがんを予防するか、寛解させるか又は治療する方法を提供し、方法は、さらなる抗がん剤と組み合わせた、有効量の抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントを対象に投与するステップを含む。
【0093】
実施形態は、さらなる抗がん剤とともに抗CNTN4抗体又は抗原結合フラグメントを含有する単一の組成物を、それを必要とする患者に同時に投与することだけでなく、抗CNTN4抗体又は抗原結合フラグメント、及びさらなる抗がん剤をそれぞれ別々に含有する組成物を、それを必要とする患者に同時に又は順次投与するステップも含む。
【0094】
別の実施形態において、本発明は、免疫抑制関連疾患、例えばがんを予防するか、寛解させるか、又は治療するため、さらなる抗がん剤と組み合わせて使用するための、抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントの使用を提供する。
【0095】
別の実施形態において、本発明は、免疫抑制関連疾患、例えばがんを予防するか、寛解させるか、又は治療するための医薬組成物又は組合せを提供し、組成物又は組合せは、抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント、及びさらなる抗がん剤を含む。抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント、及びさらなる抗がん剤を含む本明細書での医薬組成物又は組合せは、2つの成分が単一の製剤の形態で物理的に一緒に存在する場合だけでなく、2つの成分が別個の製剤として同時に又は順次投与され、2つの薬物が別々に又は単一のキットとして一緒に供給されうる場合も含む。したがって、本発明は、免疫抑制関連疾患、例えばがんを予防するか、寛解させるか、又は治療するためのキットを提供し、キットは、抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメント及びさらなる抗がん剤を含む。
【0096】
さらなる抗がん剤は、好ましくは免疫チェックポイント阻害剤、より好ましくは、抗CTLA-4抗体(例えば、イピリムマブ)、抗PD-1抗体(例えば、ペムブロリズマブ及びニボルマブ)、又は抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ、アベルマブ、及びデュルバルマブ)であってもよい。
【0097】
別の好ましいさらなる抗がん剤は、化学療法剤、例えばゲムシタビン、ビノレルビン、エトポシド(VP-16)、白金アナログ、例えばシスプラチン又はカルボプラチン、タキソイド、例えばパクリタキセル、アルブミン結合パクリタキセル、又はドキセタキセルを含んでいてもよい。
【0098】
本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントとともに使用される別の好ましいさらなる抗がん療法は、放射線療法を含んでいてもよい。
【0099】
本発明は、抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントを活性成分として使用することにより、試料中のCNTN4タンパク質の存在を検出するか、又は抗CNTN4抗体の量を測定するための方法も提供する。方法は、抗体又はその抗原結合フラグメントが、CNTN4タンパク質に結合して複合体を形成しうる条件下で、抗体又はその抗原結合フラグメントを、試料及び対照試料と接触させることを含む。次いで、複合体が形成されたか否かが検出され、対照試料と比較された試料間の複合体形成の度合の差が、ヒト血中抗原が試料(例えば、血液)中に存在する証拠である。
【0100】
したがって、本発明は、がんを診断するための組成物を提供し、組成物は、抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントを含む。
【0101】
医薬組成物
本発明は、抗CNTN4抗体又はその抗原結合フラグメントを含む医薬組成物を提供する。組成物は、不活性成分、すなわち、薬学的に許容できる賦形剤(Handbook of Pharmaceutical Excipients、などを参照のこと)を含有していてもよい。治療用及び診断用製剤の組成物は、生理的に許容できる担体、賦形剤、又は安定剤と製剤を混合することにより、例えば、凍結乾燥粉末、スラリー、水溶液又は懸濁液の形態で調製されてもよい。
【0102】
好適な投与経路は、非経口投与、例えば筋肉内、静脈内、又は皮下投与を含む。本発明の医薬組成物に使用されるか、又は本発明の方法を実行するのに使用される抗体の投与は、各種従来の方法、例えば局所適用、又は皮内、皮下、腹腔内、非経口、動脈内、若しくは静脈内注射により実施されてもよい。一実施形態において、本発明の抗体は、静脈内又は皮下投与される。
【0103】
以下では、本発明が、実施例に関連してより詳細に記載される。これらの実施例が、本発明についてより詳細に記載することのみ意図され、本発明の範囲が、本発明の主題に従ってこれらの実施例により限定されないことが、当業者にとって明らかであるはずである。
【実施例】
【0104】
実施例1:CNTN4のヒトT細胞活性を阻害する能力の確認
この実施例では、免疫チェックポイントタンパク質として知られているPD-L1と比較して、CNTN4がヒトT細胞の活性を阻害する程度が確認された。
【0105】
濃度4μg/mLのα-CD3抗体並びにそれぞれ濃度50、100、150、及び200nMのヒトPD-L1及びヒトCNTN4組換えタンパク質を最終50μLに調製し、96ウェルプレートに入れた。96ウェルプレートの底で気泡が生じないように注意しながら、96ウェルプレートを37℃で約16時間インキュベートした。
【0106】
ドナー1人あたり血液(ヘパリンナトリウムで処理された血液採取チューブ中に含有)50mL及びPBSを1:1の比で混合し、フィコール15mLを50-mLチューブに予め含有させ、希釈された血液30mLを、フィコール層及び血液層が分離するように、フィコールの上に慎重に配置し、積み重ねた。遠心処理(加速及び減速速度は0に設定)を1,800rpmで25分間、20℃で実施し、白色のバフィー層が上昇しないように上清を取り除いた。バフィー層を新たな50-mLチューブに移し、チューブをPBSで50mLまで満たし、1,800rpmで5分間、4℃で遠心処理した。1X RBC溶解緩衝液10mLを添加し、十分に溶解させ、室温で5分間放置した。PBSで50mLまで満たした後、遠心処理を1,800rpmで5分間、4℃で実施し、上清を取り除き、ペレットをPBSで溶解させ、次いで細胞(PBMC)を顕微鏡で観察し、細胞数を算出した。
【0107】
上記実験で得られたPBMC細胞2×108個あたりにMACS緩衝液1,000μLを添加し、その後再懸濁させた。溶液を2等分し、一方をCD4チューブに入れ、一方をCD8チューブに入れた。各群のPBMC1×108個あたりに抗体カクテル50μLを再懸濁させ、室温で10分間保存した。PBMC1×108個あたりに抗ビオチンマイクロビーズ100μLを再懸濁させ、室温で10分間保存した。その一方で、MACS磁場を消毒し、クリーンベンチ内に配置し、2つのLSカラム(CD4及びCD8用)を設置した。MACS緩衝液3mLを各カラムに流した後、各カラムを通った緩衝液を捨てた。反応が完了した後の各群の細胞を、磁場に載せた2つのLSカラムにそれぞれローディングした。細胞溶液が落ちてこなくなると、MACS緩衝液3mLを各カラムに流した。その後、各カラムから落ちた溶液中の細胞を顕微鏡で観察し、細胞数を算出した。
【0108】
DMSO18μLをCFSE50μgに添加し、ピペットで量って濃度5mMを作製し細胞を使用した。MTM培地1mLを、上記実験で得られたCD4細胞及びCD8細胞に添加し、CFSEを添加して最終濃度5μMに到達し、懸濁させ、次いで37℃のウォーターバス中で10分間保存した。溶液を1,800rpm、4℃で5分間遠心処理し、上清を取り除いた。次いで、MTM培地1mLをそこに添加し、再懸濁させ、次いで1,800rpm、4℃で5分間再度遠心処理し、上清を取り除いた。最後に、細胞をMTM培地で再懸濁させて、1ウェルあたり2×105細胞/200μLに到達して、実験に使用した。
【0109】
インキュベートされたプレートはPBS200μLで2回洗浄され、ウェルあたりT細胞200μLが添加され、その後5%CO
2インキュベーター内で37℃で3日間保存された。3日後、T細胞を得、FACSチューブに移し、CFSEで染色された、分化した細胞の度合を、FACS機器を使用して観察した。結果が
図1に示される。
【0110】
図1で示したように、PD-L1及びCNTN4組換えタンパク質がCD4
+T細胞及びCD8
+T細胞の増殖を阻害することが確認された。この結果は2人のドナーに共通して観察され、特にCNTN4 200nMの処理とPD-L1 200nMの処理とを比較すると、CNTN4処理群におけるT細胞の増殖が著しく阻害されており、CNTN4がT細胞活性を阻害する能力は従来の免疫チェックポイントタンパク質として知られているPD-L1よりも強いことが分かる可能性がある。
【0111】
この結果は、CNTN4タンパク質の機能が抑制されると、その免疫逃避機序が遮断されるため、CNTN4組換えタンパク質が疾患治療薬として使用されうることを示唆している。
【0112】
実施例2:CNTN4に対するモノクローナル抗体の生成
図2及び表1の軽鎖及び重鎖領域は、発現ベクターにクローニングされた。DNAはExpi293F(商標)細胞に一過性トランスフェクトし、生存率の50%まで、又は6日目まで培養してIgG発現を行わせ、培養培地をプロテインAアフィニティーカラム(MabSelect SuRe LX、Cytiva)に結合させて溶出させ、IgGを1回目精製した。次に、凝集体及び分子量の大きな不純物を除去するために、1回目精製したIgGは陽イオン交換カラム(Capto SP ImpRes、Cytiva)に結合させて、酢酸緩衝溶液(pH5.0)及び塩化ナトリウムの濃度勾配を使用してIgGを溶出させ、2回目精製した。これによって、SEC-HPLCで純度95.9%の抗CNTN4 IgG4-S228P(以下、「hAb-1」と称する)が調製された。
【0113】
【0114】
実施例3:モノクローナル抗体hAb-1の結合能の確認
3.1 ELISAによるモノクローナル抗体hAb-1の抗原タンパク質への結合能の確認
実施例2で調製されたモノクローナル抗体hAb-1に対し、ELISA試験を実施した。ELISAプレートを、抗原(ヒトCNTN4-10xHis又はマウスCNTN4-10xHis)20nMによりコーティングした。抗体結合については、抗体hAb-1を、最大1μM~0.0001nMまで段階希釈し、それにより抗原に結合させた。HRP結合抗ヒトカッパ抗体を、抗体検出用の二次抗体として使用した。発色試薬であるABTSを使用して発色を行い、405nmでの吸光度を測定した。生じた結合能の結果が
図3及び表2に示される。
【0115】
【0116】
3.2 表面プラズモン共鳴法(SPR)によるhAb-1の抗原タンパク質への結合能の確認
SPR試験は、実施例2で調製したモノクローナル抗体hAb-1で実施した。より具体的には、アミンカップリングを使用して抗ヒトIgG Fc(捕捉抗体)を結合させるため、CM5チップを載せ、泳動緩衝液を流し、チップを活性化させ、次いで捕捉抗体をチップに結合させた。捕捉抗体が結合しなかったデキストリンを、エタノールアミンを使用して不活性化させ、次いで3M塩化マグネシウムを使用して再生を実施して、捕捉抗体を除く分析物を除去した。濃度0.05μg/mLで調製されたhAb-1を、結合のため速度10μL/分で30秒間流した。その後、抗原として、連続希釈により調製されたヒトCNTN4(400nM~0.78nM)を速度30μL/分で3分間流して結合させ、5分間解離を実施した。
【0117】
次いで、捕捉抗体に結合した全ての分析物を除去するため、再生溶液(3M塩化マグネシウム)を速度20μL/分で30秒間流し、再生を実施した。各抗原濃度について、hAb-1の結合、抗原の結合、解離、及び再生を順に繰り返した。結果が表3に示される。
【0118】
【0119】
このことから、本発明の抗体が高い親和性でヒトCNTN4タンパク質に結合することが確認された。
【0120】
実施例4:モノクローナル抗体hAb-1がCNTN4のためのCNTN4受容体と競合的に結合するかどうかの確認
ELISAプレートを抗原ヒトCNTN4-10xHis 20nMでコーティングした。抗体結合のため、最終濃度0~1,000nMに希釈した抗体hAb-1及び0又は500nMに希釈したヒトCNTN4受容体(アミロイド前駆体タンパク質、APP)の混合物を抗原に結合させた。HRP結合抗ヒトカッパ抗体を、抗体検出用の二次抗体として使用した。発色試薬であるABTSを使用して発色を行い、405nmでの吸光度を測定した。
【0121】
結果が
図4及び表4に示される。本発明の抗体がCNTN-4受容体とインキュベートされても、CNTN-4タンパク質への結合の程度はほとんど変化しなかった。
【0122】
これは、本発明の抗体がCNTN-4受容体の存在下でCNTN-4タンパク質と競合的に結合し、優れた結合能を有することを示す。
【0123】
【0124】
したがって、本発明の抗体は、体内にCNTN-4受容体が存在する場合でも、CNTN-4タンパク質に特異的に結合し、ゆえにCNTN-4タンパク質の免疫抑制能を有効に阻害することができる。
【0125】
実施例5:ヒトT細胞を使用したhAb-1抗体のCNTN4中和能力に関する試験
実施例1でのCNTN4のT細胞活性を阻害する能力に関する実験と同様に、4μg/mLの濃度のα-CD3抗体及び150nMの濃度のCNTN4組換えタンパク質を最終50μLに調製し、96μLウェルプレートに入れ、37℃で約16時間インキュベートした。次に、インキュベートしたプレートをPBS200μLで2回洗浄し、0.375、0.75、1.5、3、及び6μMのhAb-1抗体をそれぞれCNTN4処理されたウェル内で最終50μLに調製し、96ウェルプレートに入れた。インキュベーションを37℃で約4時間実施した。その後の過程は、実施例1でのCNTN4のT細胞活性を阻害する能力に関する実験と同様に実施された。
【0126】
図5に示されるように、CNTN4組換えタンパク質が、CD4
+T細胞及びCD8
+T細胞の増殖を阻害することが確認された。CNTN4により阻害されていたT細胞の増殖が、処理したhAb-1の濃度に依存して増大することが観察された。これは、本発明の抗体hAb-1は、CNTN4を中和する極めて優れた能力を示すことを示している。
【0127】
このことから、本発明のCNTN4抗体が、CNTN4を有効に中和し、CNTN4のT細胞阻害機能を阻害することが確認された。
【0128】
実施例6:結腸直腸がんのCT26同系マウスモデルにおける(in vivo)抗腫瘍効率の確認
この実施例では、本発明の抗CNTN4抗体の抗腫瘍効率を腫瘍担持マウス、具体的には結腸直腸がんのCT26同系マウスモデルで確認することを意図した。
【0129】
BALB/cマウスの右脇腹に1×106個のCT26細胞を接種した。細胞移植後、腫瘍サイズが75mm3≦腫瘍体積≦150mm3のマウスを選択し、1群8匹ずつの4群に無作為に分け(0日目)、10、20、及び40mg/kgの抗体hAb-1及び対照として20.4mg/kgのhIgG4をそれぞれ0日目、3日目、6日目、及び9日目に群に腹腔内(i.p.)投与した。投与開始後、週に2回腫瘍の大きさを測定し、12日目の腫瘍の大きさに基づいて対照との大きさの差をTGI(%)として表した。データの統計分析はGraphpad PRISM 8.0を使用して実施され、二元配置分散分析を使用して統計処理が実施され、統計的両側スチューデントt検定によって分析が実施された(*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001対群1(hIgG4))。
【0130】
各実験群の8匹のマウスのデータ値の平均値が計算され、結果が表5及び
図6に示される。10mg/kgの抗体hAb-1の投与は、優れた腫瘍縮小効果を示した。用量が20mg/kg及び40mg/kgに増加するにつれて、腫瘍縮小効果も増大した。
【0131】
【0132】
このことから、本発明の抗CNTN4抗体は、結腸直腸がんの腫瘍細胞の増殖を阻害する効果を示すことが確認された。
【0133】
実施例7:結腸直腸がんのCT26同系マウスモデルにおける(インビボにおける)T細胞活性増大の有効性の確認
この実施例では、本発明の抗CNTN4抗体のT細胞レベルに対する効果を腫瘍担持マウス、具体的には結腸直腸がんのCT26同系マウスモデルで確認することを意図した。
【0134】
実施例6で記載した方法に従ってCT26結腸直腸がん細胞を接種したマウスを、1群あたり5匹のマウスの4群に分け、10、20、及び40mg/kgの抗体hAb-1、及び対照として20.4mg/kgのhIgG4をそれぞれ、0日目、3日目、及び6日目に群に腹腔内投与した(3日毎に計3回投与;Q3DX3)。7日目に脾臓を採取して、脾細胞を得た。脾臓を粉砕し、遠心分離した後、赤血球が除去された細胞を使用した。細胞内の免疫因子に関する指標を検出するため、単離した細胞を2つの群に分け、1群は免疫細胞活性化物質で処理することによって指標物質の検出を可能にした。単離された細胞を、CD3+、CD4+、CD45+、及びIFNγに対する抗体、抗CD3-PerCP/Cy5.5、抗CD4-PE/Cy7、抗CD45-APC/Cy7、及び抗IFNγ-FITCとそれぞれインキュベートし、細胞を緩衝液で洗浄し、蛍光強度を測定した。CD3、CD4、及びCD45の場合は、細胞表面に発現しているマーカーについて表面染色を実施し、IFNγの場合は、細胞内に発現しているマーカーについて細胞内染色法を使用して染色を実施した。染色のときには、誤った解釈を防ぐために各蛍光物質のアイソタイプが使用された。染色が完了した後、細胞を緩衝液で洗浄して残留している蛍光物質を除去し、次いでフローサイトメーター(FACS CantoII)を用いて細胞内及び細胞外マーカーの発現が分析された。データの統計分析はGraphpad PRISM 8.0プログラムによって確認され、一元配置分散分析を使用して統計処理が実施され、ダネットの多重比較検定によって統計的有意性が検証された。(*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001)。
【0135】
【0136】
図7~9はそれぞれ、脾臓内で見出されたCD45+細胞に対するCD4+T細胞のパーセンテージ(すなわち、CD3+CD4+/CD45+)、CD45+細胞に対するCD8+T細胞のパーセンテージ(すなわち、CD3+CD8+/CD45+)、及びCD8+T細胞のうちのIFNγを分泌する細胞のパーセンテージ(すなわち、IFNγ/CD8+)を示す。このことから、抗体hAb-1を使用した場合、CD4+T細胞及びCD8+T細胞のレベルが対照(hlgG4)と比較してほぼ同等であるか、又は増大しており、特に、CD8+T細胞によるサイトカインの分泌が対照と比較して著しく増大していることが確認された。
【0137】
図10は、分析に使用した腫瘍体積の縮小の程度を示しており、抗体hAb-1を使用した場合は全て、腫瘍体積は対照と比較して縮小した。
【0138】
このことから、本発明の抗CNTN4抗体は、T細胞活性、特に、CD8+T細胞活性を増大させ、サイトカイン分泌を増大させることによって、腫瘍細胞の増殖を阻害する効果を示すことが確認された。
【0139】
実施例8:乳がんのEMT6同系マウスモデルにおける(インビボにおける)抗腫瘍効率の確認
この実施例では、本発明の抗CNTN4抗体の抗腫瘍効率を腫瘍担持マウス、具体的には、免疫学的に冷たい腫瘍(cold tumor)として知られている、乳がんのEMT6同系マウスモデルで確認することを意図した。
【0140】
実験は、BALB/cマウスの右脇腹に1×106個のEMT6乳がん細胞を接種したことを除いて、実施例6と同様の方法で実施した。
【0141】
各実験群の8匹のマウスのデータ値の平均値が計算され、結果が表6及び
図11に示される。抗体hAb-1 10mg/kgの投与は優れた腫瘍縮小効果を示し、用量が20mg/kg及び40mg/kgと増加するにつれて、腫瘍縮小効果も増大した。
【0142】
【0143】
このことから、本発明の抗CNTN4抗体は、乳がんの腫瘍細胞の増殖を阻害する効果を示すことが確認された。
【0144】
実施例9:乳がんのEMT6同系マウスモデルにおける(インビボにおける)T細胞活性増大の有効性の確認
この実施例では、本発明の抗CNTN4抗体のT細胞レベルに対する効果を腫瘍担持マウス、具体的には乳がんのEMT6同系マウスモデルで確認することを意図した。
【0145】
実験は、マウスに1×106個のEMT6乳がん細胞を接種したこと及び実験群あたり4匹のマウスを使用したことを除いて、実施例7と同様の方法で実施した。検出に使用したマーカーCD4+、CD8+、及びIFNγ+には、それぞれ抗CD4-APC/Cy7、抗CD8-PerCP/Cy5.5、及び抗IFNγ-FITC抗体を使用した。
【0146】
【0147】
図12及び13はそれぞれ、脾臓内で見出されたCD4+T細胞及びCD8+T細胞のうちのIFNγを分泌する細胞のパーセンテージ(すなわち、IFNγ/CD4+及びIFNγ/CD8+)を示す。このことから、抗体hAb-1を使用した場合、CD4+T細胞及びCD8+T細胞によるサイトカインの分泌が対照(hlgG4)と比較して著しく増大したことが確認された。
【0148】
このことから、本発明の抗CNTN4抗体は、T細胞活性を増大させ、サイトカイン分泌を増大させることによって、腫瘍細胞の増殖を阻害する効果を示すことが確認された。
【0149】
実施例10:肺がんのLLC-1同系マウスモデルにおける(インビボにおける)T細胞活性増大の有効性の確認
この実施例では、本発明の抗CNTN4抗体のT細胞レベルに対する効果を腫瘍担持マウス、具体的には肺がんのLLC-1同系マウスモデルで確認することを意図した。
【0150】
実験は、マウスに1×106個のLLC-1肺がん細胞を接種したこと及び実験群あたり3~4匹のマウスを使用したことを除いて、実施例7と同様の方法で実施した。
【0151】
検出可能なマーカーとして使用したCD3+及びIFNγ+には、それぞれ抗CD3-PerCP/Cy5及び抗IFNγ-FITC抗体を使用した。
【0152】
【0153】
図14は、脾臓内に分散しているT細胞のうちのIFNγを分泌する細胞のパーセンテージ(すなわち、IFNγ/CD3+)を示す。このことから、抗体hAb-1を使用した場合、T細胞によるサイトカインの分泌が対照(hlgG4)と比較して著しく増大したことが確認された。
【0154】
図15は、分析に使用した腫瘍体積の縮小の程度を示しており、抗体hAb-1を使用した場合は全て、腫瘍体積は対照と比較して縮小した。
【0155】
このことから、本発明の抗CNTN4抗体は、T細胞活性、特に、CD8+T細胞活性を増大させ、サイトカイン分泌を増大させることによって、腫瘍細胞の増殖を阻害する効果を示すことが確認された。
【配列表】
【国際調査報告】