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特表2024-516401温度の使用による非対称抗体の製品品質の調節
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-15
(54)【発明の名称】温度の使用による非対称抗体の製品品質の調節
(51)【国際特許分類】
   C12P 21/08 20060101AFI20240408BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240408BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240408BHJP
   C07K 14/54 20060101ALI20240408BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20240408BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240408BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20240408BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20240408BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240408BHJP
   C12N 15/24 20060101ALN20240408BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20240408BHJP
   A61P 37/04 20060101ALN20240408BHJP
   A61P 35/00 20060101ALN20240408BHJP
【FI】
C12P21/08 ZNA
C07K19/00
C07K16/28
C07K14/54
C12Q1/02
A61K39/395 N
A61K39/395 U
A61K38/20
A61K47/68
C12N15/13
C12N15/24
C12N15/62 Z
A61P37/04
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565519
(86)(22)【出願日】2022-04-26
(85)【翻訳文提出日】2023-12-13
(86)【国際出願番号】 US2022026261
(87)【国際公開番号】W WO2022232083
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】63/180,220
(32)【優先日】2021-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500049716
【氏名又は名称】アムジエン・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,リー
(72)【発明者】
【氏名】バークホーダリアン,ヘディエ
(72)【発明者】
【氏名】ザサジンスカ,イベリーナ
(72)【発明者】
【氏名】ディープ,ジョナサン
【テーマコード(参考)】
4B063
4B064
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ13
4B063QQ79
4B063QS17
4B063QX01
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC06
4B064CC24
4B064DA01
4C076CC07
4C076CC27
4C076EE59
4C076FF70
4C084AA02
4C084DA12
4C084NA05
4C084ZB09
4C084ZB26
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB31
4C085CC22
4C085CC23
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA02
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、バイオ医薬品製造の分野に関する。特に、本発明は、上流工程において製品品質を調整するための手段として温度を使用することに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞培養中に細胞によって発現される組換え非対称多重特異性抗体の製品品質を調節するための方法であって、
a)前記非対称多重特異性抗体を発現する同じ細胞株をそれぞれ接種した少なくとも2つの細胞培養物を確立する工程と、
b)単一の温度からなる第1の温度レジームで少なくとも1つの細胞培養物を培養し、第2の温度レジームで少なくとも1つの細胞培養物を培養する工程と、
c)各温度レジームにおける前記細胞培養物中の少なくとも1つの製品関連不純物を比較する工程と、
d)不対合又は誤対合長重鎖を含む少なくとも1つの製品関連不純物の発現を低下させる前記温度レジームを選択する工程と、
e)前記選択された温度レジームで前記細胞株を培養する工程と、
f)前記組換え非対称多重特異性抗体を回収する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
前記第1の温度レジームが、36℃~37℃から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の温度レジームが、第1の温度から前記第1の温度よりも高い又は低い第2の温度への温度シフトを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の温度が、28℃~35℃から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の温度が、前記第1の温度よりも約1℃~約9℃低い、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の温度レジームが、36℃~37℃の単一の温度であり、前記第2の温度レジームが、36℃~37℃の第1の温度から28℃~35℃の第2の温度への少なくとも1つの温度シフトを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記製品関連不純物が、長重鎖と短重鎖の比の不均衡に起因する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記製品関連不純物が、不対合又は誤対合長重鎖を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記製品関連不純物が、不対合又は誤対合長重鎖を含み、ホモ二量体、半抗体、タンパク質凝集体、抗体断片、抗体断片の組み合わせ、及び不対合抗体断片から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記細胞培養温度レジームが、前記非対称多重特異性抗体の発現量、生産性、増殖、収率、及び/又は他の所望の製品品質属性の調節のために更に選択され得る、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記非対称多重特異性抗体がムテインを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記非対称多重特異性抗体が、抗PD-1抗体の2つの抗体重鎖の一方に結合した単一のIL-21ムテインを含む非対称多重特異性抗PD-1抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記長重鎖が、IL-21ムテインが結合した抗PD-1抗体重鎖を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
細胞培養中に細胞によって発現されるムテインを含む組換え非対称多重特異性抗体の製品品質を調節するための方法であって、
a)前記非対称多重特異性抗体を発現する同じ細胞株をそれぞれ接種した少なくとも2つの細胞培養物を確立する工程と、
b)単一の温度からなる第1の温度レジームで少なくとも1つの細胞培養物を培養し、第2の温度レジームで少なくとも1つの細胞培養物を培養する工程と、
c)各温度レジームにおける細胞培養によって産生された、不対合又は誤対合長重鎖を含む少なくとも1つの製品関連不純物を比較する工程と、
d)不対合又は誤対合長重鎖を含む少なくとも1つの製品関連不純物の発現を低下させる温度レジームを選択する工程と
を含む、方法。
【請求項15】
前記ムテインがIL-21ムテインである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記IL-21ムテインが、配列番号1の5位、9位、73位及び76位のいずれか2つにアミノ酸置換を含み、前記アミノ酸置換が、5位におけるA、E又はQ、9位におけるE又はA、73位におけるA又はQ、及び76位におけるA、D又はE、から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記IL-21ムテインが、配列番号233~245のいずれかのアミノ酸配列を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記非対称多重特異性抗体が、抗PD-1抗体の前記2つの抗体重鎖の一方のC末端に結合したムテインを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記抗PD-1抗体が、
それぞれが配列番号385、386及び387のアミノ酸配列を含むLC CDR1、LC CDR2及びLC CDR3をそれぞれ含む2つの軽鎖と、
それぞれが配列番号382、383及び384のアミノ酸配列を含むHC CDR1、HC CDR2及びHC CDR3をそれぞれ含む2つの重鎖と
を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記抗PD-1抗体が、配列番号389のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖と、配列番号388のアミノ酸配列を含む2つの重鎖とを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記抗PD-1抗体が、
それぞれが配列番号365、366及び367のアミノ酸配列を含むLC CDR1、LC CDR2及びLC CDR3をそれぞれ含む2つの軽鎖と、
それぞれが配列番号362、363及び364のアミノ酸配列を含むHC CDR1、HC CDR2及びHC CDR3をそれぞれ含む2つの重鎖と
を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記抗PD-1抗体が、配列番号369のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖と、配列番号368のアミノ酸配列を含む2つの重鎖とを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記抗PD-1抗体が、
(i)それぞれが配列番号391のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖、配列番号501~506のいずれか1つのアミノ酸配列を含むIL-21ムテインに結合した重鎖、及び配列番号556~558のいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖、又は
(ii)それぞれが配列番号371のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖、配列番号513~518のいずれか1つのアミノ酸配列を含む単一のIL-21ムテインに結合した重鎖、及び配列番号559~561のいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記抗PD-1抗体が、
それぞれが配列番号391のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖と、
配列番号556のアミノ酸配列を含む1つの重鎖と、
配列番号501のアミノ酸配列を含むIL-21ムテインに結合した1つの重鎖と
を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記抗PD-1抗体が、
それぞれが配列番号371のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖と、
配列番号559のアミノ酸配列を含む1つの重鎖と、
配列番号513のアミノ酸配列を含むIL-21ムテインに結合した1つの重鎖と
を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
前記非対称多重特異性抗体が、抗PD-1抗体の前記2つの抗体重鎖の一方のC末端に結合したIL-21ムテインを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項27】
前記長重鎖が、IL-21ムテインが結合した抗PD-1抗体重鎖を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項28】
細胞培養中に細胞によって発現される抗PD-1抗体の2つの抗体重鎖の一方のC末端に連結されたIL-21ムテインのコンジュゲートの製品品質を調節するための方法であって、
a)抗体を発現する細胞株を接種した細胞培養物を確立する工程と、
b)培養期間中、36±1℃で前記細胞を培養する工程と、
c)前記抗体を回収する工程と
を含み、
前記培養中のある時点で32℃~34℃の温度に曝された細胞培養物からの回収物中の同じ製品関連不純物の量と比較して、回収した前記細胞培養物中の長重鎖と短重鎖の比の不均衡に起因する少なくとも1つの製品関連不純物の量が減少する、方法。
【請求項29】
ムテインを含む非対称多重特異性抗体を発現する細胞株を選択するための方法であって、
a)前記抗体を発現する少なくとも1つのクローン由来細胞株を確立する工程と、
b)前記クローン由来細胞株の1つ以上から少なくとも2つの細胞培養物を確立する工程であって、各細胞株からの少なくとも1つの細胞培養物を第1の温度レジームで培養し、各細胞株からの少なくとも1つの細胞培養物を第2の温度レジームで培養する、工程と、
c)各温度レジームで培養された細胞によって産生された、不対合又は誤対合長重鎖を含む少なくとも1つの製品関連不純物の発現を比較する工程と、
d)不対合又は誤対合長重鎖を含む少なくとも1つの製品関連不純物の発現の低下をもたらした細胞株を選択する工程と
を含む、方法。
【請求項30】
前記選択された前記細胞株を、次いで、不対合又は誤対合長重鎖を含む少なくとも1つの製品関連不純物の発現の低下をもたらした温度レジームで培養する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記第1の温度レジームが、約36℃~約37℃から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記第2の温度レジームが、第1の温度から前記第1の温度よりも高い又は低い第2の温度への温度シフトを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記第2の温度が、約28℃~約35℃から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記第2の温度が、前記第1の温度よりも約1℃~9℃低い、請求項29に記載の方法。
【請求項35】
前記第1の温度レジームが、36℃~37℃の単一の温度であり、前記第2の温度レジームが、36℃~37℃の第1の温度から28℃~35℃の第2の温度への少なくとも1つの温度シフトを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項36】
不対合又は誤対合長重鎖を含む前記製品関連不純物が、長重鎖と短重鎖の比の不均衡に起因する、請求項29に記載の方法。
【請求項37】
不対合又は誤対合長重鎖を含む前記製品関連不純物が、長重鎖と短重鎖の比の増加に起因する、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
不対合又は誤対合長重鎖を含む前記製品関連不純物が、ホモ二量体、半抗体、タンパク質凝集体、抗体断片、抗体断片の組み合わせ、及び不対合抗体断片から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項39】
前記細胞培養温度レジームが、前記非対称多重特異性抗体の発現量、生産性、増殖、及び/又は他の所望の製品品質属性も調節する温度レジームのために更に選択され得る、請求項29に記載の方法。
【請求項40】
前記非対称多重特異性抗体が、抗PD-1抗体の2つの抗体重鎖の一方に結合した単一のIL-21ムテインを含む非対称多重特異性抗PD-1抗体である、請求項29に記載の方法。
【請求項41】
前記長重鎖が、IL-21ムテインが結合した抗PD-1抗体重鎖を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項42】
細胞培養温度による細胞培養中に、IL-21ムテインが結合した抗体重鎖を含む少なくとも1つの組換え非対称多重特異性抗体製品関連不純物の産生を調節するための方法であって、
a)長重鎖を含む不対合又は誤対合長重鎖を含む少なくとも1つの製品関連不純物の発現を低下させる温度レジームを選択する工程と、
b)前記選択された温度レジームで前記細胞株を培養する工程と、
c)前記組換え非対称多重特異性抗体を回収する工程と
を含む、方法。
【請求項43】
前記非対称多重特異性抗体が、抗PD-1抗体の2つの抗体重鎖の一方に結合した単一のIL-21ムテインを含む非対称多重特異性抗PD-1抗体である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記長重鎖が、IL-21ムテインが結合した抗PD-1抗体重鎖を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
単離され、精製された組換え非対称多重特異性抗体を産生するための方法であって、
a)非対称多重特異性抗体を発現する少なくとも1つの単一の安定に形質転換された細胞を単離し、クローン由来培養物を確立する工程と、
b)1つ以上の前記クローン由来培養物から少なくとも2つの細胞培養物を確立する工程と、
c)各クローン由来培養物からの少なくとも1つの細胞培養物を単一の温度を含む第1の温度レジームで培養し、各クローン由来培養物からの少なくとも1つの細胞培養物を第2の温度レジームで培養する工程と、
d)各温度レジームで培養された細胞によって産生された、不対合又は誤対合長重鎖を含む少なくとも1つの製品関連不純物の量を比較する工程と、
e)前記製品関連不純物の産生を調節した前記細胞培養物を選択する工程と、
f)前記選択された細胞培養物から前記非対称多重特異性抗体を発現する細胞株を確立する工程と、
g)前記非対称多重特異性抗体を発現する前記細胞株をバイオリアクターに接種する工程と、
h)前記細胞を培養して、前記製品関連不純物の産生を調節した前記温度レジームで前記非対称多重特異性抗体を発現させる工程と、
i)前記細胞培養物から前記組換え非対称多重特異性抗体を回収する工程と、
j)1つ以上のクロマトグラフィー単位操作を介して前記組換え多重特異性抗体を処理する工程と、
k)単離され、精製された組換え非対称多重特異性抗体を得る工程と
を含む、方法。
【請求項46】
請求項45に記載の単離され、精製された組換え多重特異性抗体。
【請求項47】
請求項45に記載の単離され、精製された組換え多重特異性抗体を含む、医薬組成物。
【請求項48】
前記非対称多重特異性抗体が、抗PD-1抗体の2つの抗体重鎖の一方に結合した単一のIL-21ムテインを含む非対称多重特異性抗PD-1抗体である、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
前記長重鎖が、IL-21ムテインが結合した抗PD-1抗体重鎖を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
ナノ流体チップのナノ流体チャンバ内の細胞の増殖を制御するための方法であって、
(a)ナノ流体チップのナノ流体チャンバ内に単一細胞を単離する工程であって、前記細胞が組換えタンパク質を発現することができる発現構築物を含む、工程と、
(b)第1の温度で前記細胞を培養する工程と、
(c)所定の時点で、前記細胞を第2の温度で培養する工程と、
(d)前記細胞を前記ナノ流体チャンバから培養容器に搬出する工程と
を含む、方法。
【請求項51】
搬出時の1チャンバあたりの細胞数が、培養期間中、一定温度で同様の条件下で培養された単一細胞と比較して少ない、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記第1の温度が35℃~37℃から選択される、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記第2の温度が28℃~34℃から選択される、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
前記第2の温度が、前記第1の温度よりも約1℃~約9℃低い、請求項50に記載の方法。
【請求項55】
前記第1の温度が36℃であり、前記第2の温度が32℃~32℃である、請求項50に記載の方法。
【請求項56】
前記所定の時点が、前記培養の3日目~5日目である、請求項50に記載の方法。
【請求項57】
搬出が前記培養の4日目~8日目である、請求項50に記載の方法。
【請求項58】
前記ナノ流体チップが、1758個のチャンバ、3,500個のチャンバ、11,000個のチャンバ、14,000個のチャンバ、又は20,000個のチャンバを含む、請求項50に記載の方法。
【請求項59】
前記培養容器がマルチウェルプレートである、請求項50に記載の方法。
【請求項60】
ナノ流体チップのナノ流体チャンバ内で増殖させた細胞の搬出中の細胞二次汚染を最小限に抑えるための方法であって、
(a)ナノ流体チップのナノ流体チャンバ内に単一細胞を単離する工程であって、前記細胞が組換えタンパク質を発現することができる発現構築物を含む、工程と、
(b)第1の温度で前記細胞を培養する工程と、
(c)所定の時点で、前記細胞を第2の温度で培養する工程と、
(d)前記細胞を前記ナノ流体チャンバから培養容器に搬出する工程と
を含み、
搬出時の1チャンバあたりの細胞数が、培養期間中、一定温度で同様の条件下で培養された単一細胞と比較して少ない、方法。
【請求項61】
ナノ流体チップのナノ流体チャンバ内で増殖させた細胞のクローン選択を改善する方法であって、
(a)ナノ流体チップのナノ流体チャンバ内に単一細胞を単離する工程であって、前記細胞が組換えタンパク質を発現することができる発現構築物を含む、工程と、
(b)第1の温度で前記細胞を培養する工程と、
(c)前記培養の温度を前記培養の3日目以降に第2の温度まで低下させる工程と、
(d)前記温度シフトの少なくとも1日~4日後に前記ナノ流体チャンバから前記細胞を搬出する工程と
を含む、方法。
【請求項62】
前記温度シフトの前後に測定されたタンパク質分泌プロファイルを比較する、請求項61に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年4月27日に出願された米国仮特許出願第63/180,220号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に完全に記載されているかのようにあらゆる目的のために本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本明細書と同時に提出され、以下のように識別されるコンピュータ可読のヌクレオチド/アミノ酸配列表は、その全体が参照により組み込まれる:「A-2777-WO01-SEC_SeqListing.txt」という名前の792,009バイトのASCII(テキスト)ファイル、2022年3月8日作成。
【0003】
本発明は、バイオ医薬品製造の分野に関する。特に、本発明は、製造工程において、特に上流の細胞培養工程において、製品品質を調整するための手段として温度を使用することに関する。
【背景技術】
【0004】
モノクローナル抗体生物治療薬は、バイオ医薬品市場の最大の部門である。しかしながら、モノクローナル抗体は単一の標的にしか結合することができないため、多くの疾患が多因子性であることから、それらの有効性には限界がある。これらの課題をクリアするために、操作された多重特異性抗体が開発されている。これらの多重特異性抗体は、任意の数のユニークなペプチド配列を有することができ、多重標的親和性を有するように設計することができる。これらのタンパク質のユニークな特性は、従来のモノクローナル抗体治療薬を超える改善をもたらし、膨大な様々なフォーマットを利用して更に困難な治療適応症に対応することができる、効果的な次世代生物治療薬であることが証明されている。
【0005】
しかしながら、多重特異性抗体、特に構造が非対称である多重特異性抗体の製造に関する情報はあまりないため、モノクローナル抗体のために開発されたプラットフォーム及びプロセスがしばしば適用され、その成功の度合いは異なる。非対称多重特異性抗体は高度に操作されており、モノクローナル抗体に典型的な条件下でそのようなタンパク質を上流及び下流の製造プロセスに供することは、発現及び/又は精製されたタンパク質の製品品質に影響を及ぼし得る。例えば、細胞培養中の製品関連不純物の生成は、下流の精製工程を複雑にし、所望の非対称多重特異性製剤の製品品質を低下させる可能性がある。したがって、非対称多重特異性抗体の上流製造工程における条件を最適化して、製品品質に対するあらゆる悪影響を軽減することが有益であろう。
【0006】
本明細書に記載の本発明は、組換え非対称多重特異性抗体原薬の製品品質を改善するために、細胞株開発及び細胞培養工程において温度を手段として使用することによってこの必要性を満たす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、細胞培養中に細胞によって発現される組換え非対称多重特異性抗体の製品品質を調節するための方法であって、(a)非対称多重特異性抗体を発現する同じ細胞株をそれぞれ接種した少なくとも2つの細胞培養物を確立する工程と、(b)単一の温度からなる第1の温度レジームで少なくとも1つの細胞培養物を培養し、第2の温度レジームで少なくとも1つの細胞培養物を培養する工程と、(c)各温度レジームにおける細胞培養物中の少なくとも1つの製品関連不純物を比較する工程と、(d)不対合又は誤対合長重鎖を含む少なくとも1つの製品関連不純物の発現を低下させる温度レジームを選択する工程と、(e)細胞株を選択された温度レジームで培養する工程と、(f)組換え非対称多重特異性抗体を回収する工程と、を含む方法を提供する。一実施形態では、第1の温度レジームは、36℃~37℃から選択される。一実施形態では、第2の温度レジームは、第1の温度から第1の温度よりも高い又は低い第2の温度への温度シフトを含む。関連する実施形態では、第2の温度は、28℃~35℃から選択される。関連する実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約1℃~約9℃低い。一実施形態では、第1の温度レジームは、36℃~37℃の単一の温度であり、第2の温度レジームは、36℃~37℃の第1の温度から28℃~35℃の第2の温度への少なくとも1つの温度シフトを含む。一実施形態では、製品関連不純物は、長重鎖と短重鎖の比の不均衡から生じる。一実施形態では、製品関連不純物は、不対合又は誤対合長重鎖を含む。関連する実施形態では、製品関連不純物は、不対合又は誤対合長重鎖を含み、ホモ二量体、半抗体、タンパク質凝集体、抗体断片、抗体断片の組み合わせ、及び不対合抗体断片から選択される。一実施形態では、細胞培養温度レジームは、非対称多重特異性抗体の発現量、生産性、増殖、収率、及び/又は他の所望の製品品質属性の調節のために更に選択され得る。一実施形態では、非対称多重特異性抗体はムテインを含む。一実施形態では、非対称多重特異性抗体は、抗PD-1抗体の2つの抗体重鎖のうちの1つに結合した単一のIL-21ムテインを含む非対称多重特異性抗PD-1抗体である。関連する実施形態では、長重鎖は、IL-21ムテインが結合した抗PD-1抗体重鎖を含む。
【0008】
本発明は、細胞培養中に細胞によって発現されるムテインを含む組換え非対称多重特異性抗体の製品品質を調節するための方法であって、(a)非対称多重特異性抗体を発現する同じ細胞株をそれぞれ接種した少なくとも2つの細胞培養物を確立する工程と、(b)単一の温度からなる第1の温度レジームで少なくとも1つの細胞培養物を培養し、第2の温度レジームで少なくとも1つの細胞培養物を培養する工程と、(c)各温度レジームにおける細胞培養によって産生された、不対合又は誤対合長重鎖を含む少なくとも1つの製品関連不純物を比較する工程と、(d)不対合又は誤対合長重鎖を含む少なくとも1つの製品関連不純物の発現を低下させる温度レジームを選択する工程と、を含む方法を提供する。一実施形態では、ムテインはIL-21ムテインである。関連する実施形態では、IL-21ムテインは、配列番号1の5位、9位、73位及び76位のいずれか2つにアミノ酸置換を含み、ここで、前記アミノ酸置換は、5位におけるA、E又はQ、9位におけるE又はA、73位におけるA又はQ、及び76位におけるA、D又はE、から選択される。関連する実施形態では、IL-21ムテインが、配列番号233~245のいずれかのアミノ酸配列を含む。一実施形態では、非対称多重特異性抗体は、抗PD-1抗体の2つの抗体重鎖のうちの一方のC末端に結合したムテインを含む。関連する実施形態では、抗PD-1抗体は、それぞれが配列番号385、386及び387のアミノ酸配列を含むLC CDR1、LC CDR2及びLC CDR3を含む2つの軽鎖と、それぞれが配列番号382、383及び384のアミノ酸配列を含むHC CDR1、HC CDR2及びHC CDR3を含む2つの重鎖とを含む。関連する実施形態では、抗PD-1抗体は、配列番号389のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖と、配列番号388のアミノ酸配列を含む2つの重鎖とを含む。関連する実施形態では、抗PD-1抗体は、それぞれが配列番号365、366及び367のアミノ酸配列を含むLC CDR1、LC CDR2及びLC CDR3を含む2つの軽鎖と、それぞれが配列番号362、363及び364のアミノ酸配列を含むHC CDR1、HC CDR2及びHC CDR3を含む2つの重鎖とを含む。関連する実施形態では、抗PD-1抗体は、配列番号369のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖と、配列番号368のアミノ酸配列を含む2つの重鎖とを含む。関連する実施形態では、抗PD-1抗体は、(i)それぞれが配列番号391のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖、配列番号501~506のいずれか1つのアミノ酸配列を含むIL-21ムテインに結合した重鎖、及び配列番号556~558のいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖、又は(ii)それぞれが配列番号371のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖、配列番号513~518のいずれか1つのアミノ酸配列を含む単一のIL-21ムテインに結合した重鎖、及び配列番号559~561のいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖、を含む。関連する実施形態では、抗PD-1抗体は、それぞれが配列番号391のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖と、配列番号556のアミノ酸配列を含む1つの重鎖と、配列番号501のアミノ酸配列を含むIL-21ムテインに結合した1つの重鎖とを含む。関連する実施形態では、抗PD-1抗体は、それぞれが配列番号371のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖と、配列番号559のアミノ酸配列を含む1つの重鎖と、配列番号513のアミノ酸配列を含むIL-21ムテインに結合した1つの重鎖とを含む。一実施形態では、非対称多重特異性抗体は、抗PD-1抗体の2つの抗体重鎖のうちの一方のC末端に結合したIL-21ムテインを含む。一実施形態では、長重鎖は、IL-21ムテインが結合した抗PD-1抗体重鎖を含む。
【0009】
本発明は、細胞培養中に細胞によって発現される組換え非対称多重特異性抗体の製品品質を調節するための方法を提供する。本発明は、細胞培養中に細胞によって発現されるムテインを含む組換え非対称多重特異性抗体の製品品質を調節するための方法を提供する。特に、本発明は、細胞培養中に細胞によって発現される抗PD-1抗体の2つの抗体重鎖の一方のC末端に連結されたIL-21ムテインのコンジュゲートの製品品質を調節するための方法であって、(a)抗体を発現する細胞株を接種した細胞培養物を確立する工程と、(b)細胞を36±1℃で培養期間中培養する工程と、(c)抗体を回収する工程とを含み、培養中のある時点で、32℃~34℃の温度に曝された細胞培養物からの回収物中の同じ製品関連不純物の量と比較して、回収した細胞培養物中の長重鎖と短重鎖の比の不均衡に起因する少なくとも1つの製品関連不純物の量が減少する、方法を提供する。
【0010】
本発明は、非対称多重特異性抗体を発現する細胞株を選択するための方法を提供する。本発明は、ムテインを含む非対称多重特異性抗体を発現する細胞株を選択するための方法であって、a)抗体を発現する少なくとも1つのクローン由来細胞株を確立する工程と、b)1つ以上のクローン由来細胞株から少なくとも2つの細胞培養物を確立する工程であって、各細胞株からの少なくとも1つの細胞培養物が第1の温度レジームで培養され、各細胞株からの少なくとも1つの細胞培養物が第2の温度レジームで培養される、工程と、c)各温度レジームで培養された細胞によって産生された、不対合又は誤対合長重鎖を含む少なくとも1つの製品関連不純物の発現を比較する工程と、(d)不対合又は誤対合長重鎖を含む少なくとも1つの製品関連不純物の発現の低下をもたらした細胞株を選択する工程と、を含む方法を提供する。一実施形態では、次いで、選択された細胞株を、不対合又は誤対合長重鎖を含む少なくとも1つの製品関連不純物の発現の低下をもたらした温度レジームで培養する。一実施形態では、第1の温度レジームは、約36℃~約37℃から選択される。一実施形態では、第2の温度レジームは、第1の温度から、第1の温度よりも高い又は低い第2の温度への温度シフトを含む。関連する実施形態では、第2の温度は、約28℃~約35℃から選択される。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約1℃~9℃低い。一実施形態では、第1の温度レジームは、36℃~37℃の単一の温度であり、第2の温度レジームは、36℃~37℃の第1の温度から28℃~35℃の第2の温度への少なくとも1つの温度シフトを含む。一実施形態では、不対合又は誤対合長重鎖を含む製品関連不純物は、長重鎖と短重鎖の比の不均衡から生じる。関連する実施形態では、不対合又は誤対合長重鎖を含む製品関連不純物は、長重鎖と短重鎖の比の増加に起因する。一実施形態では、製品関連不純物は、不対合又は誤対合長重鎖を含み、ホモ二量体、半抗体、タンパク質凝集体、抗体断片、抗体断片の組み合わせ、及び不対合抗体断片から選択される。一実施形態では、細胞培養温度レジームは、非対称多重特異性抗体の発現量、生産性、増殖、及び/又は他の所望の製品品質属性も調節する温度レジームのために更に選択され得る。一実施形態では、非対称多重特異性抗体は、抗PD-1抗体の2つの抗体重鎖のうちの1つに結合した単一のIL-21ムテインを含む非対称多重特異性抗PD-1抗体である。一実施形態では、長重鎖は、IL-21ムテインが結合した抗PD-1抗体重鎖を含む。
【0011】
本発明は、抗体重鎖を含む少なくとも1つの組換え非対称多重特異性抗体製品関連不純物の産生を調節するための方法を提供する。本発明は、長重鎖を含む少なくとも1つの組換え非対称多重特異性抗体製品関連不純物の産生を調節するための方法を提供する。特に、本発明は、細胞培養温度による細胞培養中に、IL-21ムテインが結合した抗体重鎖を含む少なくとも1つの組換え非対称多重特異性抗体製品関連不純物の産生を調節するための方法であって、長重鎖を含む不対合又は誤対合長重鎖を含む少なくとも1つの製品関連不純物の発現を低下させる温度レジームを選択する工程と、(a)細胞株を選択された温度レジームで培養する工程と、(b)組換え非対称多重特異性抗体を回収する工程と、を含む方法を提供する。一実施形態では、非対称多重特異性抗体は、抗PD-1抗体の2つの抗体重鎖のうちの1つに結合した単一のIL-21ムテインを含む非対称多重特異性抗PD-1抗体である。一実施形態では、長重鎖は、IL-21ムテインが結合した抗PD-1抗体重鎖を含む。
【0012】
本発明は、単離され、精製された組換え非対称多重特異性抗体を産生するための方法であって、a)非対称多重特異性抗体を発現する少なくとも1つの単一の安定に形質転換された細胞を単離し、クローン由来培養物を確立する工程と、b)1つ以上のクローン由来培養物から少なくとも2つの細胞培養物を確立する工程と、c)各クローン由来培養物からの少なくとも1つの細胞培養物を単一の温度を含む第1の温度レジームで培養し、各クローン由来培養物からの少なくとも1つの細胞培養物を第2の温度レジームで培養する工程と、d)各温度レジームで培養された細胞によって産生された、不対合又は誤対合長重鎖を含む少なくとも1つの製品関連不純物の量を比較する工程と、e)製品関連不純物の産生を調節した細胞培養物を選択する工程と、f)選択された細胞培養物から非対称多重特異性抗体を発現する細胞株を確立する工程と、g)非対称多重特異性抗体を発現する細胞株をバイオリアクターに接種する工程と、h)細胞を培養して、製品関連不純物の産生を調節した温度レジームで非対称多重特異性抗体を発現させる工程と、i)細胞培養物から組換え非対称多重特異性抗体を回収する工程と、j)1つ以上のクロマトグラフィー単位操作によって組換え多重特異性抗体を処理する工程と、k)単離され、精製された組換え非対称多重特異性抗体を得る工程と、を含む方法を提供する。一実施形態では、上記の方法による単離され、精製された組換え多重特異性抗体が提供される。一実施形態では、上記の方法による単離され、精製された組換え多重特異性抗体を含む医薬組成物が提供される。一実施形態では、非対称多重特異性抗体は、抗PD-1抗体の2つの抗体重鎖のうちの1つに結合した単一のIL-21ムテインを含む非対称多重特異性抗PD-1抗体である。一実施形態では、長重鎖は、IL-21ムテインが結合した抗PD-1抗体重鎖を含む。
【0013】
本発明は、ナノ流体チップのナノ流体チャンバ内の細胞の増殖を制御するための方法であって、(a)ナノ流体チップのナノ流体チャンバ内に単一細胞を単離する工程であって、前記細胞が組換えタンパク質を発現することができる発現構築物を含む、工程と、(b)細胞を第1の温度で培養する工程と、(c)所定の時点で、細胞を第2の温度で培養する工程と、(d)細胞をナノ流体チャンバから培養容器に搬出することとを含む、方法を提供する。
【0014】
本発明はまた、ナノ流体チップのナノ流体チャンバ内で増殖させた細胞の搬出中の二次汚染を最小限に抑えるための方法であって、(a)ナノ流体チップのナノ流体チャンバ内に単一細胞を単離する工程であって、前記細胞が組換えタンパク質を発現することができる発現構築物を含む、工程と、(b)細胞を第1の温度で培養する工程と、(c)所定の時点で、細胞を第2の温度で培養する工程と、(d)細胞をナノ流体チャンバから培養容器に搬出する工程と、を含み、搬出時の1チャンバあたりの細胞数が、培養期間にわたって一定温度の同様の条件下で培養された単一細胞と比較して少ない、方法を提供する。
【0015】
本発明は更に、ナノ流体チップのナノ流体チャンバ内で増殖させた細胞のクローン選択を改善する方法であって、(a)ナノ流体チップのナノ流体チャンバ内に単一細胞を単離する工程であって、前記細胞が組換えタンパク質を発現することができる発現構築物を含む、工程と、(b)細胞を第1の温度で培養する工程と、(c)培養の温度を培養の3日目以降に第2の温度まで低下させる工程と、(d)温度シフトの少なくとも4日後にナノ流体チャンバから細胞を搬出する工程と、を含む方法を提供する。
【0016】
一実施形態では、搬出時の1チャンバあたりの細胞数は、培養期間中、一定温度で同様の条件下で培養された単一細胞と比較して少ない。一実施形態では、第1の温度は、35℃~37℃から選択される。一実施形態では、第2の温度は、28℃~34℃から選択される。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約1℃~約9℃低い。一実施形態では、第1の温度は36℃であり、第2の温度は32℃~32.5℃である。一実施形態では、所定点は培養の3日目~5日目である。一実施形態では、搬出は培養の6日目~8日目である。一実施形態では、ナノ流体チップは、1758個のチャンバ、3,500個のチャンバ、11,000個のチャンバ、14,000個のチャンバ、又は20,000個のチャンバを含む。一実施形態では、培養容器はマルチウェルプレートである。一実施形態では、温度シフトの前後のタンパク質分泌プロファイルを比較する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A】(A)は、IL-2-抗PD-1コンジュゲートを発現する細胞を32.5℃に温度シフトさせて灌流培養(P)に供した場合の長重鎖の%(LHCの%)の増加を、常時36℃でのフェドバッチ培養物(FB)(縞模様の棒)と比較して示す。(B)及び(C)は、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーのみに供された一定温度(36℃)フェドバッチ培養物(FB)中の細胞によって発現されるIL-2-抗PD-1コンジュゲートの産生(縞模様のバー)と比較して、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー(左の白抜きのバー)及び陽イオン交換クロマトグラフィー(右の白抜きのバー)による精製に供された36℃から32.5℃へ温度シフトさせた灌流培養物(P)中の細胞によって発現されるIL-2-抗PD-1コンジュゲートの産生の結果を示す。(B)nrCEによるプレピーク(Pre-Peak)の%。(C)SECによる低分子量不純物(LMW)の%。(D)は、CEXプールからのnrCE-SDSによる不純物の特性評価を示す。過剰な長重鎖はCEXによって分離することができなかった。
図1B】(A)は、IL-2-抗PD-1コンジュゲートを発現する細胞を32.5℃に温度シフトさせて灌流培養(P)に供した場合の長重鎖の%(LHCの%)の増加を、常時36℃でのフェドバッチ培養物(FB)(縞模様の棒)と比較して示す。(B)及び(C)は、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーのみに供された一定温度(36℃)フェドバッチ培養物(FB)中の細胞によって発現されるIL-2-抗PD-1コンジュゲートの産生(縞模様のバー)と比較して、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー(左の白抜きのバー)及び陽イオン交換クロマトグラフィー(右の白抜きのバー)による精製に供された36℃から32.5℃へ温度シフトさせた灌流培養物(P)中の細胞によって発現されるIL-2-抗PD-1コンジュゲートの産生の結果を示す。(B)nrCEによるプレピーク(Pre-Peak)の%。(C)SECによる低分子量不純物(LMW)の%。(D)は、CEXプールからのnrCE-SDSによる不純物の特性評価を示す。過剰な長重鎖はCEXによって分離することができなかった。
図1C】(A)は、IL-2-抗PD-1コンジュゲートを発現する細胞を32.5℃に温度シフトさせて灌流培養(P)に供した場合の長重鎖の%(LHCの%)の増加を、常時36℃でのフェドバッチ培養物(FB)(縞模様の棒)と比較して示す。(B)及び(C)は、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーのみに供された一定温度(36℃)フェドバッチ培養物(FB)中の細胞によって発現されるIL-2-抗PD-1コンジュゲートの産生(縞模様のバー)と比較して、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー(左の白抜きのバー)及び陽イオン交換クロマトグラフィー(右の白抜きのバー)による精製に供された36℃から32.5℃へ温度シフトさせた灌流培養物(P)中の細胞によって発現されるIL-2-抗PD-1コンジュゲートの産生の結果を示す。(B)nrCEによるプレピーク(Pre-Peak)の%。(C)SECによる低分子量不純物(LMW)の%。(D)は、CEXプールからのnrCE-SDSによる不純物の特性評価を示す。過剰な長重鎖はCEXによって分離することができなかった。
図1D】(A)は、IL-2-抗PD-1コンジュゲートを発現する細胞を32.5℃に温度シフトさせて灌流培養(P)に供した場合の長重鎖の%(LHCの%)の増加を、常時36℃でのフェドバッチ培養物(FB)(縞模様の棒)と比較して示す。(B)及び(C)は、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーのみに供された一定温度(36℃)フェドバッチ培養物(FB)中の細胞によって発現されるIL-2-抗PD-1コンジュゲートの産生(縞模様のバー)と比較して、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー(左の白抜きのバー)及び陽イオン交換クロマトグラフィー(右の白抜きのバー)による精製に供された36℃から32.5℃へ温度シフトさせた灌流培養物(P)中の細胞によって発現されるIL-2-抗PD-1コンジュゲートの産生の結果を示す。(B)nrCEによるプレピーク(Pre-Peak)の%。(C)SECによる低分子量不純物(LMW)の%。(D)は、CEXプールからのnrCE-SDSによる不純物の特性評価を示す。過剰な長重鎖はCEXによって分離することができなかった。
図2A図2は、rCEによって特定された長重鎖(LHC)と短重鎖(SHC)のモル比を比較して、同じ温度でスクリーニングした場合、フェドバッチ試料と灌流試料との間により良好な相関があったことを示す。(A)は、36℃から32.5℃への温度シフト(TS)で成長させた灌流試料と比較して、常時36℃で成長させたフェドバッチ培養物試料を示す。フェドバッチ(x、常時36℃)対して灌流(y、36℃から32.5℃)。(B)は、両方とも36℃から32.5℃の温度シフト(TS)で成長させた、灌流試料と比較したフェドバッチ培養物試料を示す。x軸はフェドバッチ培養物、対してy軸は灌流。常時36℃で増殖させた両方の培養方法のデータ点は限られていたので、比較には含めなかった。
図2B図2は、rCEによって特定された長重鎖(LHC)と短重鎖(SHC)のモル比を比較して、同じ温度でスクリーニングした場合、フェドバッチ試料と灌流試料との間により良好な相関があったことを示す。(A)は、36℃から32.5℃への温度シフト(TS)で成長させた灌流試料と比較して、常時36℃で成長させたフェドバッチ培養物試料を示す。フェドバッチ(x、常時36℃)対して灌流(y、36℃から32.5℃)。(B)は、両方とも36℃から32.5℃の温度シフト(TS)で成長させた、灌流試料と比較したフェドバッチ培養物試料を示す。x軸はフェドバッチ培養物、対してy軸は灌流。常時36℃で増殖させた両方の培養方法のデータ点は限られていたので、比較には含めなかった。
図3A図3は、SECによって測定された低分子量のパーセント(LMWの%)を比較して、同じ温度でスクリーニングした場合、フェドバッチ試料と灌流試料との間により良好な相関があったことを示す。(A)は、36℃から32.5℃への温度シフト(TS)で成長させた灌流試料と比較して、常時36℃で成長させたフェドバッチ培養物試料を示す。x軸はフェドバッチ培養物、対してy軸は灌流。(B)は、両方とも36℃から32.5℃の温度シフト(TS)で成長させた、灌流試料と比較したフェドバッチ培養物試料を示す。x軸はフェドバッチ培養物、対してy軸は灌流。常時36℃で増殖させた両方の培養方法のデータ点は限られていたので、比較には含めなかった。
図3B図3は、SECによって測定された低分子量のパーセント(LMWの%)を比較して、同じ温度でスクリーニングした場合、フェドバッチ試料と灌流試料との間により良好な相関があったことを示す。(A)は、36℃から32.5℃への温度シフト(TS)で成長させた灌流試料と比較して、常時36℃で成長させたフェドバッチ培養物試料を示す。x軸はフェドバッチ培養物、対してy軸は灌流。(B)は、両方とも36℃から32.5℃の温度シフト(TS)で成長させた、灌流試料と比較したフェドバッチ培養物試料を示す。x軸はフェドバッチ培養物、対してy軸は灌流。常時36℃で増殖させた両方の培養方法のデータ点は限られていたので、比較には含めなかった。
図4A図4は、36℃から32.5℃に温度シフトした灌流培養と比較した、36℃の一定温度の灌流培養において細胞によって発現されたIL-2-抗PD-1コンジュゲートの産生の結果を示す。(A)は、rCEによって決定された長重鎖(LHC)と短重鎖(SHC)のモル比を示す(常時36℃、黒色バー、36℃から32.5℃への温度シフト、灰色のバー)。(B)は、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー(黒色のバー)及び陽イオン交換クロマトグラフィー(灰色のバー)によって精製され、nrCEによって測定された、プレピーク(Pre-Peak)6(SHCによって形成された不純物)の%を示す。(C)プロテインAアフィニティークロマトグラフィー(黒色のバー)及び陽イオン交換クロマトグラフィー(灰色のバー)によって精製され、nrCEによって測定されたプレピーク(Pre-Peak)7(LHCに供して形成された不純物)の%を示す。
図4B図4は、36℃から32.5℃に温度シフトした灌流培養と比較した、36℃の一定温度の灌流培養において細胞によって発現されたIL-2-抗PD-1コンジュゲートの産生の結果を示す。(A)は、rCEによって決定された長重鎖(LHC)と短重鎖(SHC)のモル比を示す(常時36℃、黒色バー、36℃から32.5℃への温度シフト、灰色のバー)。(B)は、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー(黒色のバー)及び陽イオン交換クロマトグラフィー(灰色のバー)によって精製され、nrCEによって測定された、プレピーク(Pre-Peak)6(SHCによって形成された不純物)の%を示す。(C)プロテインAアフィニティークロマトグラフィー(黒色のバー)及び陽イオン交換クロマトグラフィー(灰色のバー)によって精製され、nrCEによって測定されたプレピーク(Pre-Peak)7(LHCに供して形成された不純物)の%を示す。
図4C図4は、36℃から32.5℃に温度シフトした灌流培養と比較した、36℃の一定温度の灌流培養において細胞によって発現されたIL-2-抗PD-1コンジュゲートの産生の結果を示す。(A)は、rCEによって決定された長重鎖(LHC)と短重鎖(SHC)のモル比を示す(常時36℃、黒色バー、36℃から32.5℃への温度シフト、灰色のバー)。(B)は、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー(黒色のバー)及び陽イオン交換クロマトグラフィー(灰色のバー)によって精製され、nrCEによって測定された、プレピーク(Pre-Peak)6(SHCによって形成された不純物)の%を示す。(C)プロテインAアフィニティークロマトグラフィー(黒色のバー)及び陽イオン交換クロマトグラフィー(灰色のバー)によって精製され、nrCEによって測定されたプレピーク(Pre-Peak)7(LHCに供して形成された不純物)の%を示す。
図5A図5は、温度を常時36℃に保持した場合(黒色のバー)と、36℃から32.5℃に温度シフトさせた場合(灰色のバー)の、フェドバッチ培養による二重特異性Aクローン1産生の結果を示す図である。(A)rCE-SDSによって特定される長重鎖(LHC)と短重鎖(SHC)のモル比。(B)SECによるHMWの%。(C)SECによるLMW(LHCによって形成された不純物)の%。
図5B図5は、温度を常時36℃に保持した場合(黒色のバー)と、36℃から32.5℃に温度シフトさせた場合(灰色のバー)の、フェドバッチ培養による二重特異性Aクローン1産生の結果を示す図である。(A)rCE-SDSによって特定される長重鎖(LHC)と短重鎖(SHC)のモル比。(B)SECによるHMWの%。(C)SECによるLMW(LHCによって形成された不純物)の%。
図5C図5は、温度を常時36℃に保持した場合(黒色のバー)と、36℃から32.5℃に温度シフトさせた場合(灰色のバー)の、フェドバッチ培養による二重特異性Aクローン1産生の結果を示す図である。(A)rCE-SDSによって特定される長重鎖(LHC)と短重鎖(SHC)のモル比。(B)SECによるHMWの%。(C)SECによるLMW(LHCによって形成された不純物)の%。
図6A図6は、温度を常時36℃に保持した場合(黒色のバー)と、温度を36℃から32.5℃にシフトさせた場合(灰色のバー)のい、擬似灌流培養による二重特異性Aクローン2及び3の産生の結果を示す図である。(A)rCE-SDSによって特定される長重鎖(LHC)と短重鎖(SHC)のモル比。(B)SECによって測定されたLMWの%。(C)ddPCRによって測定されたLHCとSHCの転写物比。
図6B図6は、温度を常時36℃に保持した場合(黒色のバー)と、温度を36℃から32.5℃にシフトさせた場合(灰色のバー)のい、擬似灌流培養による二重特異性Aクローン2及び3の産生の結果を示す図である。(A)rCE-SDSによって特定される長重鎖(LHC)と短重鎖(SHC)のモル比。(B)SECによって測定されたLMWの%。(C)ddPCRによって測定されたLHCとSHCの転写物比。
図6C図6は、温度を常時36℃に保持した場合(黒色のバー)と、温度を36℃から32.5℃にシフトさせた場合(灰色のバー)のい、擬似灌流培養による二重特異性Aクローン2及び3の産生の結果を示す図である。(A)rCE-SDSによって特定される長重鎖(LHC)と短重鎖(SHC)のモル比。(B)SECによって測定されたLMWの%。(C)ddPCRによって測定されたLHCとSHCの転写物比。
図7A図7は、温度を常時36℃に保持した場合(黒色のバー)と、36℃から32.5℃に温度シフトさせた場合(灰色のバー)の、フェドバッチ培養による二重特異性Bクローン1、2及び3の産生の結果を示す図である。(A)rCE-SDSによって特定される長重鎖(LHC)と短重鎖(SHC)のモル比。(B)SECによって測定されたHMW2の%。(C)SECによって測定されたLMW1の%。(D)ddPCRによって測定されたLHCとSHCの転写比。
図7B図7は、温度を常時36℃に保持した場合(黒色のバー)と、36℃から32.5℃に温度シフトさせた場合(灰色のバー)の、フェドバッチ培養による二重特異性Bクローン1、2及び3の産生の結果を示す図である。(A)rCE-SDSによって特定される長重鎖(LHC)と短重鎖(SHC)のモル比。(B)SECによって測定されたHMW2の%。(C)SECによって測定されたLMW1の%。(D)ddPCRによって測定されたLHCとSHCの転写比。
図7C図7は、温度を常時36℃に保持した場合(黒色のバー)と、36℃から32.5℃に温度シフトさせた場合(灰色のバー)の、フェドバッチ培養による二重特異性Bクローン1、2及び3の産生の結果を示す図である。(A)rCE-SDSによって特定される長重鎖(LHC)と短重鎖(SHC)のモル比。(B)SECによって測定されたHMW2の%。(C)SECによって測定されたLMW1の%。(D)ddPCRによって測定されたLHCとSHCの転写比。
図7D図7は、温度を常時36℃に保持した場合(黒色のバー)と、36℃から32.5℃に温度シフトさせた場合(灰色のバー)の、フェドバッチ培養による二重特異性Bクローン1、2及び3の産生の結果を示す図である。(A)rCE-SDSによって特定される長重鎖(LHC)と短重鎖(SHC)のモル比。(B)SECによって測定されたHMW2の%。(C)SECによって測定されたLMW1の%。(D)ddPCRによって測定されたLHCとSHCの転写比。
図8A図8は、36℃の一定温度での培養(黒色のバー)と、36℃から32.5℃への温度シフト(灰色のバー)での培養とを比較する擬似灌流による二重特異性Bクローン2及び3の産生の結果を示す。(A)rCE-SDSによって特定される長重鎖(LHC)と短重鎖(SHC)のモル比。(B)SECによって測定されたHMW2の%。(C)SECによって測定されたLMW1の%。
図8B図8は、36℃の一定温度での培養(黒色のバー)と、36℃から32.5℃への温度シフト(灰色のバー)での培養とを比較する擬似灌流による二重特異性Bクローン2及び3の産生の結果を示す。(A)rCE-SDSによって特定される長重鎖(LHC)と短重鎖(SHC)のモル比。(B)SECによって測定されたHMW2の%。(C)SECによって測定されたLMW1の%。
図8C図8は、36℃の一定温度での培養(黒色のバー)と、36℃から32.5℃への温度シフト(灰色のバー)での培養とを比較する擬似灌流による二重特異性Bクローン2及び3の産生の結果を示す。(A)rCE-SDSによって特定される長重鎖(LHC)と短重鎖(SHC)のモル比。(B)SECによって測定されたHMW2の%。(C)SECによって測定されたLMW1の%。
図9図9は、オンチップ培養中に実施された温度シフトが増殖阻害をもたらし、長期培養を可能にすることを示す図である。(A)モノクローナル抗体を発現する単一細胞をチップ上で個々のチャンバにロードし、チップを36℃で6日間培養したBerkeley Light Baconプラットフォームで実験期間を通して収集された代表的な明視野チャンバ画像。機器ソフトウェアによって生成された細胞数を各時点の下に表示する。6日目の細胞集団は、チャンバ内容物の大部分を占め、チャンバの首領域の近くまで増殖し、Spotlight(商標)Human Fc Assayによる信頼できる分泌評価を妨げ、想定される搬出手順における二次汚染の高いリスクを生じさせた。(B)モノクローナル抗体を発現する単一細胞をチップ上で個々のチャンバにロードし、チップを36℃で3日間培養し、その後、残りの実験期間の間は温度を32℃に下げたBerkeley Light Baconプラットフォームで実験期間を通して収集した代表的な明視野チャンバ画像。機器ソフトウェアによって生成された細胞数を各時点の下に表示する。4日目から実施した温度シフトは、増殖阻害をもたらし、細胞がチャンバの最大推奨高さを超えて増殖するのを防止した。(C)実験期間を通して毎日測定した平均倍加時間(上のパネル)及び1チャンバあたりの細胞の平均数(下のパネル)。4日目からの温度シフトの実施は、対照条件と比較した場合、平均倍加時間の増加及び平均細胞数の減少によって明らかにされる増殖阻害をもたらした。
図10図10は、Berkeley Light Beaconプラットフォーム上でCLDワークフロー中に温度シフトを実施すると、モノクローナル抗体産生プロファイルが変化することを示す。(A)Beaconプラットフォーム上の標準的な細胞株開発クローニングワークフロー(左パネル)及びB及びCで実施された温度シフトを伴う細胞株開発クローニングワークフロー(右パネル)の概略図。(B)4日目の温度シフト前(左パネル)及び6日目の温度シフト後(右パネル)に行われたSpotlight(商標)ヒトFcアッセイに対応する正規化分泌スコアデータ。温度シフト後に測定された細胞分泌プロファイルは、より多様な分布を示し、高度に生産性の高いクローンと、分泌の乏しい細胞株をより良く区別できるようになった。(C)温度シフトを伴うCLDワークフローを実施した、モノクローナル抗体を発現する2つのクローン由来細胞株に対応するBerkeley Light Baconプラットフォームで実験期間を通して収集したBrightfield及びSpotlight(商標)Human Fc Assay蛍光画像。機器ソフトウェアによって生成された細胞数及び正規化された分泌スコアを各時点の下に表示する。低温条件でのインキュベーションは、両方のクローンの増殖停止をもたらした。両方の細胞株は、ワークフローの4日目に同等の分泌プロファイルを示したが、クローン1は、温度シフトに応答して増加した分泌レベルを示し、クローン2は示さなかった。
図11図11は、Berkeley Light Beaconプラットフォーム上でCLDワークフロー中に温度シフトを実施すると、増殖阻害が達成され、IgG4モノクローナル抗体及び多重特異性抗体フォーマットを発現する細胞株の組換えタンパク質産生プロファイルが変化することを示す。(A)(D)IgG4モノクローナル抗体及び多重特異性抗体をそれぞれ発現するクローン由来細胞株について、実験期間を通して毎日測定した平均倍加時間(上のパネル)及び1チャンバあたりの細胞の平均数(下のパネル)。実験の各時点の温度設定をグラフの上部に概説する。4日目又は3日目から温度シフトを実施すると、それぞれ、IgG4及び多重特異性抗体発現細胞株の両方について、倍加時間の増加及び細胞数の減少によって測定される増殖阻害がもたらされた。(B)(E)モノクローナル抗体又は多重特異性抗体をそれぞれ発現するクローン由来細胞株のBerkeley Light Baconプラットフォームで実験期間を通して収集された代表的な明視野チャンバ画像。機器ソフトウェアによって生成された細胞数を各時点の下に表示する。(C)(F)それぞれ4日目及び8日目又は7日目の時点に対応するSpotlight(商標)Human Fc Assayのスコアデータ。低下した温度での長時間のインキュベーション後に達成された分泌プロファイルは、より多様な分布を示し、高度に生産性の高いクローンと、分泌の乏しい細胞株をより良く区別できるようになった。
図12図12は、標準的なCLDワークフローごとに36℃で実行された搬出と比較した場合、32℃の温度で実行された搬出手順が同様のクローン回復をもたらすことを示す。(A)(B)上のパネル:それぞれ、Beaconプラットフォーム上の標準的な細胞株開発クローニングワークフローと、搬出プロセス中に温度シフトが実施される細胞株開発クローニングワークフローの概略図。下のパネル:単一細胞クローニング段階で実施された搬出温度にかかわらず同等のクローン回収効率を示す、エクスポート手順の18日後に取得された96ウェルエクスポートプレートの代表的な画像。
【発明を実施するための形態】
【0018】
モノクローナル抗体は対称的であり、2つの同一のポリペプチド鎖を有し、各対は1つの「軽」鎖(LC)及び1つの「重」鎖(HC)を有し、1つの標的に特異的である。2つ以上の標的に結合し、中和し、且つ/又は相互作用する多重特異性抗体は、ますます困難な治療適応症を満たすために、ますます多様な組成物及び構成で、且つ、ますます多様なフォーマットで操作されており、モノクローナル抗体に勝る代替物及び改善を提供する。多くの多重特異性抗体は、1つの軽鎖及び1つの重鎖を有するなど、モノクローナル抗体と特徴を共有するが、モノクローナル抗体とは異なり、多重特異性抗体の重鎖は非対称であり得る。
【0019】
「非対称」多重特異性抗体は、長さが異なる重鎖を含む。重鎖は、典型的には、可変ドメイン(Vh)及び定常ドメイン(C1)を含むフラグメント抗原結合(FAB)領域と、2つの定常ドメイン(C2及び/又はC3)を含むフラグメント結晶化可能(Fc)領域と、Fab領域とFc領域とを連結するヒンジ領域とを含む。非対称多重特異性抗体の重鎖は、これらの成分の一部又は全部を含み得る。更に、重鎖はまた、重鎖の可変ドメイン及び/又は定常ドメインの任意の点に直接及び/又は間接的に結合した1つ以上の追加の成分を含み得る。重鎖の長さは、あらゆる可変ドメイン、定常ドメイン、ヒンジ領域、結合タンパク質及び/又はペプチド並びにあらゆるリンカー及び/又は他の結合機構を含む、重鎖を構成するすべての成分のアミノ酸配列を組み合わせたサイズに基づいて決定される。組み合わせたアミノ酸配列が最も長い重鎖を「長重鎖」と呼ぶ。組み合わせたアミノ酸配列がより短い重鎖を「短重鎖」と呼ぶ。非対称多重特異性抗体は、少なくとも1つの長重鎖及び少なくとも1つの短重鎖を有する。非対称多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原若しくは標的、及び/又は同じ抗原若しくは標的上の異なるエピトープと特異的に結合、中和、及び/又は相互作用する。
【0020】
一実施形態では、非対称抗体の長重鎖は、結合ムテインを含む。一実施形態では、非対称多重特異性抗体は、長重鎖及び短重鎖を含む抗PD1抗体である。長重鎖は、抗PD-1抗体の2つの抗体重鎖のうちの一方に結合した単一のIL-21ムテインを含み、短重鎖は他方の抗PD-1抗体重鎖を含む。一実施形態では、長重鎖は、抗PD-1抗体のFcに結合したIL-21ムテインを含む。一実施形態では、長重鎖は、リンカーなしで抗PD-1抗体のFcに直接結合したIL-21ムテインを含む。一実施形態では、長重鎖は、リンカーで又はリンカーなしで抗PD-1抗体の2つの抗体重鎖のうちの一方のC末端に直接結合したIL-21ムテインを含む。
【0021】
非対称多重特異性抗体の産生及び精製は、それ自体の製造上の課題をもたらす。これらの抗体の操作された起源及び非対称性は、製造プロセス全体を通して、特に細胞培養工程中に、製品関連不純物を形成しやすくする。不純物の種類及び/又は量は、これらの非対称多重特異性抗体の発現、精製、収率、活性及び/又は製品品質に影響を及ぼし得る。「製品関連不純物」は、1つ以上の構造成分を所望の製品、例えば、非対称多重特異性抗体と共有し得る変異体を指す。構造成分の一例は、非対称多重特異性抗体の長重鎖である。そのような不純物が細胞培養中に発現される場合、それらは下流の精製工程で除去されなければならない。これらの不純物を除去する課題は、組成、サイズ、疎水性、等電点(pI)、表面電荷などにおいて、不純物が目的のタンパク質にどの程度類似しているかに応じて増加する。
【0022】
組換え非対称多重特異性抗体を構成する固有の成分のバランスのとれた発現は、培養中にこれらのタンパク質を発現させる場合の課題である。1つ以上の成分の発現の不均衡は、不対合及び/又は誤対合タンパク質変異体などの製品関連不純物の形成をもたらし得る。製品関連不純物の除去の成功の程度は、不純物の特性に依存し得る。更に、除去工程は、ある程度の製品の損失をもたらす。本明細書に記載されるように、抗PD-1長重鎖を含む製品関連不純物は、精製工程中に除去することが予想外に困難であり、製品品質、収率、及び製造プロセス全体の堅牢性に悪影響を及ぼすことが分かった。
【0023】
細胞培養中に産生された非対称多重特異性抗体の長重鎖と短重鎖のモル比は、培養温度に影響されることが分かった。本明細書及び実施例においてより詳細に記載されるように、非対称多重特異性抗体を発現するクローン細胞が、温度シフト(例えば、36℃から34℃又は32.5℃)の結果として、細胞培養工程中に低温設定点に供されることが発見された。クローン細胞によって発現される長重鎖と短重鎖のモル比は、より低い培養温度で予想外に増加した。この場合、クローン細胞は、モノクローナル抗体及び対称多重特異性抗体などの他の種類のタンパク質を発現するクローン細胞に対して典型的に行われるように、単一細胞のクローニング、スケールアップ及び選択の間に固定した生理学的温度(例えば、36℃)を維持する典型的な細胞株開発プロセスを使用して増殖及び選択されてきた非対称多重特異性抗体を発現する。一実施形態では、製品関連不純物は、重鎖発現の不均衡に起因する。一実施形態では、製品関連不純物は、長重鎖と短重鎖の比の不均衡に起因する。一実施形態では、製品関連不純物は、長重鎖と短重鎖の比の増加に起因する。細胞培養物のpHによる影響は観察されなかった。
【0024】
温度シフトは、細胞増殖及び対称性タンパク質の組換えタンパク質産生に影響を及ぼすために細胞培養工程中に一般的に使用される。しかしながら、非対称多重特異性抗体を発現する細胞の場合、細胞培養中のそのような温度シフトは、培養中に発現される長重鎖と短重鎖の比を予想外に変化させ得る。長重鎖と短重鎖の比の増加は、製品関連不純物の形成及び種類に影響を及ぼすことが分かった。この長重鎖と短重鎖の比の変化は、精製、活性、製品品質、並びに製造プロセス全体の堅牢性に影響を及ぼす可能性がある。
【0025】
非対称多重特異性抗体の生成品質は、細胞培養温度によって調節され得ることが分かった。特に、本発明は、短重鎖に対する長重鎖のよりバランスのとれた発現を維持し、それにより、不対合及び/又は誤対合長重鎖を有する製品関連不純物の形成を減少させる温度条件を決定するための方法を提供する。一実施形態では、細胞培養温度レジームは、重鎖関連製品関連不純物を調節することに加えて、温度が非対称多重特異性抗体の発現、生産性、増殖、及び/又は他の所望の製品品質属性も調節するように更に選択され得る。
【0026】
本明細書に記載されるように、非対称多重特異性抗体の長重鎖の発現の予想外の温度誘発不均衡の影響は、そのようなタンパク質を含む製剤の製造にとって問題であった。モノクローナル抗体などの対称タンパク質は、鎖が同一であるため、重鎖のバランスのとれた発現はそれほど重要ではない可能性がある。しかしながら、少なくとも1つの長重鎖及び少なくとも1つの短重鎖を有する非対称多重特異性抗体については、重鎖の発現のバランスが、医薬品の堅牢な製造工程及び所望の収率及び製品品質属性を有する製造の重要な構成要素であることが分かった。長重鎖及び短重鎖の生成における不均衡は、不対合又は誤対合長重鎖から生じる製品関連不純物の形成の機会を増加させた。一実施形態では、製品関連不純物は、重鎖発現の不均衡に起因する。一実施形態では、製品関連不純物は、不対合又は誤対合重鎖を含む。一実施形態では、製品関連不純物は、不対合又は誤対合長重鎖を含む。
【0027】
製品関連不純物は、不対合及び/又は誤対合重鎖を含む。例示的な製品関連不純物としては、不対合長重鎖及び/又は誤対合長重鎖が挙げられる。製品関連不純物は、長重鎖を含むホモ二量体、半抗体、凝集体、不対合成分、抗体断片及び/又は抗体断片の様々な組み合わせなどの形態であり得る。「半抗体」は、例えば、2つの重鎖ポリペプチド間の不完全な会合又は相互作用の断絶に起因して形成し得る製品関連不純物を指す。半抗体は、単一の軽鎖ポリペプチド及び単一の重鎖ポリペプチドを含む。「ホモ二量体」とは、例えば、異なる標的に対して特異性を有する重鎖及び軽鎖と対合して所望の非対称多重特異性ヘテロ二量体を形成する代わりに、同じ標的に対して特異性を有する重鎖及び軽鎖が互いに再結合する場合に形成し得る製品関連不純物を指す。これは、典型的には宿主細胞中での発現中に発生する。ホモ二量体、半抗体、凝集体、抗体断片及び抗体断片の様々な組み合わせ、不対合成分などの形態の製品関連不純物には、少なくとも1つの長重鎖を有するものが含まれる。
【0028】
一実施形態では、製品関連不純物は、不対合長重鎖を含む。一実施形態では、製品関連不純物は、誤対合長重鎖を含む。一実施形態では、製品関連不純物は、ホモ二量体、半抗体、タンパク質凝集体、抗体断片、抗体断片の組み合わせ、及び不対合又は誤対合重鎖を有する不対合成分から選択される。一実施形態では、製品関連不純物は、ホモ二量体、半抗体、タンパク質凝集体、抗体断片、抗体断片の組み合わせ、又は不対合重鎖を有する不対合抗体断片から選択される。一実施形態では、製品関連不純物は、ホモ二量体、半抗体、タンパク質凝集体、抗体断片、又は誤対合重鎖を有する抗体断片の組み合わせから選択される。一実施形態では、製品関連不純物は、ホモ二量体、半抗体、タンパク質凝集体、抗体断片、抗体断片の組み合わせ、及び不対合又は誤対合長重鎖を有する不対合成分から選択される。一実施形態では、製品関連不純物は、長重鎖を含むホモ二量体を含む。一実施形態では、製品関連不純物は、長重鎖を含む半抗体を含む。一実施形態では、製品関連不純物は、長重鎖を含む凝集体を含む。一実施形態では、製品関連不純物は、長重鎖を含む抗体断片を含む。一実施形態では、製品関連不純物は、長重鎖を含む不対合抗体断片を含む。
【0029】
本発明は、少なくとも1つの非対称多重特異性抗体製品関連不純物の量を調節する細胞培養温度レジームを選択するための方法であって、a)非対称多重特異性抗体を発現する同じ細胞株をそれぞれ接種した少なくとも2つの細胞培養物を確立する工程と、b)単一の温度からなる第1の温度レジームで少なくとも1つの細胞培養物を培養し、第2の温度レジームで少なくとも1つの細胞培養物を培養する工程と、c)各温度レジームにおける細胞培養物中の少なくとも1つの製品関連不純物の量を比較する工程と、d)細胞培養物中の製品関連不純物の量を減少させる温度レジームを選択する工程とを含む、方法を提供する。
【0030】
本発明は、細胞培養中に細胞によって発現される組換え非対称多重特異性抗体の製品品質を調節するための方法であって、a)重鎖発現の不均衡に起因する少なくとも1つの製品関連不純物の発現を低下させる温度レジームを選択する工程であって、不純物が、不対合又は誤対合長重鎖を含む、工程と、選択された温度レジームで細胞株を培養する工程と、組換え非対称多重特異性抗体を回収する工程とを含む、方法を提供する。
【0031】
一実施形態では、温度レジームを選択する工程は、a)非対称多重特異性抗体を発現する同じ細胞株をそれぞれ接種した少なくとも2つの細胞培養物を確立する工程と、b)単一の温度からなる第1の温度レジームで少なくとも1つの細胞培養物を培養し、第2の温度レジームで少なくとも1つの細胞培養物を培養する工程と、c)各温度レジームにおける細胞培養物中の少なくとも1つの製品関連不純物を比較する工程と、d)不対合又は誤対合長重鎖を含む少なくとも1つの製品関連不純物の発現を低下させる温度レジームを選択する工程とを含む。
【0032】
本発明は、細胞培養中に細胞によって発現される組換え非対称多重特異性抗体の製品品質を調節するための方法であって、a)不対合又は誤対合長重鎖を含む少なくとも1つの製品関連不純物の発現を低下させる温度レジームを選択する工程と、b)細胞株を選択された温度レジームで培養する工程と、c)組換え非対称多重特異性抗体を回収する工程とを含む、方法を提供する。
【0033】
本発明は、細胞培養温度を介した細胞培養中の長重鎖を含む少なくとも1つの組換え非対称多重特異性抗体製品関連不純物の産生を調節するための方法であって、a)不対合又は誤対合長重鎖を含む少なくとも1つの製品関連不純物の発現を低下させる温度レジームを選択する工程と、b)細胞株を選択された温度レジームで培養する工程と、c)組換え非対称多重特異性抗体を回収する工程とを含む、方法を提供する。
【0034】
生物治療薬の開発は、哺乳動物細胞を操作して所望のタンパク質を分泌させることに依存している。生物治療薬の開発の成功は、生物治療薬を発現するクローン細胞株の開発を含む長期にわたる段階プロセスである。典型的な哺乳動物細胞株の発生プロセスは、一つには、選択の間の細胞の回収が遅いこと、単一細胞クローニング、及び適切な産生宿主を同定するために複数のスクリーニングアッセイを実施する必要があることに起因して、リソース集約的であり、長期にわたるタイムラインを必要とする。クローン選択は、様々なタンパク質産生研究において多数の候補をスクリーニングする必要があるため、細胞株開発における最も労働集約的な工程の1つである。このプロセスの所望の結果は、所望の製造プロセス及び操作に最小限の影響で適合しながら、所望の製品品質属性を有する治療用タンパク質を発現する哺乳動物クローン細胞株の同定及び単離である。
【0035】
クローン細胞株の選択には、発現された組換えタンパク質において所望される属性、例えば、力価、製品品質、及び/又は増殖特性が含まれ、これらは、重鎖のよりバランスのとれたモル比を含み得る。単一の一定温度条件下で選択されたクローン細胞株候補を、少なくとも1つの温度の変化又はシフトを組み込んだ条件下、バイオリアクター内で増殖させた場合、発現された組換えタンパク質の力価及び生存細胞密度はほとんど影響を受けなかったが、長重鎖と短重鎖のモル比が増加し、その結果、発現された製品関連不純物の量及び種類も変化し、これは、収率、所望のタンパク質の製品品質属性、タンパク質の下流精製、及び製造プロセス全体の堅牢性に影響を与えた。
【0036】
非対称重鎖の比率の不均衡は、形成された製品関連不純物の種類に影響を与えた。長重鎖の過剰な産生は、長重鎖を含むタンパク質関連不純物、例えば、長重鎖を含むホモ二量体及びモノマーの増加をもたらしたことが見出された。重鎖の不均衡な発現、及び発現の不均衡に起因して形成された不純物を除去する必要性(これは、不純物を含有する特定の長重鎖では予想外に困難であることが見出された)は、非対称多重特異性抗体の収率及び製品品質属性に影響を与えた。したがって、所望の及び/又は必要とされる製品品質属性を維持するためには、非対称重鎖のよりバランスのとれた発現を維持し、且つ望ましくない長重鎖不純物から製品を回収するための過剰な努力に起因する不必要な時間、資源、製品損失及び製造プロセスの堅牢性の低下を減らすことが望ましい。
【0037】
所望の原薬の産生を遅延させて、細胞株を切り替えるか、又はクローンを再スクリーニングして、所望の製品品質及び属性に適合し、温度シフトなどの確立された施設慣行及び/又はプロトコルに適した組換え非対称多重特異性抗体原薬を確実に発現することができる新しい細胞株を同定することは、時間、資源、労働力の点でコストがかかり、効率的且つ効果的な製造プロセスをサポートしない。そのため、非対称多重特異性抗体を発現するクローン細胞株の選択における因子としての温度の使用は、所望の品質を有する所望のタンパク質を発現する産生細胞株を得るために有益であり、それによって所望のタンパク質の産生に影響を及ぼす製品関連不純物の産生を低減及び/又は排除する。
【0038】
製造品質並びに製造可能性の要件を満たす組換え非対称多重特異性抗体を発現する望ましい細胞株候補を選択するために、細胞株の開発において温度を手段として使用することができることが見出された。細胞培養温度は、例えば、製品関連不純物の管理に影響を及ぼした長重鎖と短重鎖のモル比を変更することによって、非対称タンパク質の製品品質に影響を及ぼす可能性がある。細胞株の開発プロセスが、スクリーニングプロセス及び選択プロセスにおいて、薬物製品の属性だけでなく、所望の施設慣行及び/又はプロトコルの要件も満たす所望の設定点温度を組み込むことが有益であろう。温度を手段として使用するクローンスクリーニングはまた、温度に対する製品品質属性の応答が分子依存性及び/又は細胞株依存性であると思われるため有益である。スクリーニング及びクローン細胞株の選択中の温度を使用して製品品質を調節すると、製品関連不純物の発現の影響を受けやすいクローン細胞株の選択が減少し、製品品質が改善され、所望のプロセスの実施により適していた。
【0039】
本発明は、非対称多重特異性抗体を発現する細胞株を選択するための方法であって、非対称多重特異性抗体を発現する少なくとも1つのクローン由来細胞株を確立する工程と、1つ以上のクローン由来細胞株から少なくとも2つの細胞培養物を確立する工程であって、各細胞株からの少なくとも1つの細胞培養物が第1の温度レジームで培養され、各細胞株からの少なくとも1つの細胞培養物が第2の温度レジームで培養される、工程と、各温度レジームで培養された細胞によって産生された少なくとも1つの製品関連不純物の発現を比較する工程と、少なくとも1つの製品関連不純物の発現の低下をもたらした細胞株を選択する工程と、を含む方法を提供する。一実施形態では、次いで、選択された細胞株を、少なくとも1つの製品関連不純物の発現の低下をもたらした温度レジームで培養する。
【0040】
本発明は、非対称多重特異性抗体を発現するクローン由来培養物から細胞株を確立するための方法であって、非対称多重特異性抗体をコードする少なくとも1つの遺伝子で細胞を形質転換する工程と、非対称多重特異性抗体を発現する少なくとも1つの単一の安定に形質転換された細胞を単離し、クローン由来培養物を確立する工程と、1つ以上のクローン由来培養物から少なくとも2つの細胞培養物を確立する工程と、各クローン由来培養物からの少なくとも1つの細胞培養物を第1の温度レジームで培養し、各クローン由来培養物からの少なくとも1つの細胞培養物を第2の温度レジームで培養する工程と、各温度レジームで細胞によって産生された長重鎖と短重鎖のモル比を比較する工程と、より低い長重鎖と短重鎖のモル比を生じさせた少なくとも1つのクローン由来培養物を選択する工程と、そのクローン由来培養物から細胞株を確立する工程とを含む、方法を提供する。
【0041】
本発明は、単離され、精製された組換え非対称多重特異性抗体を産生するための方法であって、a)非対称多重特異性抗体を発現する少なくとも1つの単一の安定に形質転換された細胞を単離し、クローン由来培養物を確立する工程と、b)1つ以上のクローン由来培養物から少なくとも2つの細胞培養物を確立する工程と、c)各クローン由来培養物からの少なくとも1つの細胞培養物を単一の温度を含む第1の温度レジームで培養し、各クローン由来培養物からの少なくとも1つの細胞培養物を第2の温度レジームで培養する工程と、d)各温度レジームで培養された細胞によって産生された、不対合又は誤対合長重鎖を含む少なくとも1つの関連不純物を比較する工程と、e)製品関連不純物の産生を調節した細胞培養物を選択する工程と、f)選択された細胞培養物から非対称多重特異性抗体を発現する細胞株を確立する工程と、g)非対称多重特異性抗体を発現する細胞株をバイオリアクターに接種する工程と、h)細胞を培養して、製品関連不純物の産生を調節した温度で非対称多重特異性抗体を発現させる工程と、i)細胞培養物から組換え非対称多重特異性抗体を回収する工程と、j)1つ以上のクロマトグラフィー単位操作によって組換え非対称多重特異性抗体を処理する工程と、k)単離され、精製された組換え非対称多重特異性抗体を得る工程と、を含む方法を提供する。
【0042】
本発明は、本明細書に記載の方法による単離され、精製された組換え非対称多重特異性抗体を提供する。
【0043】
組換え非対称多重特異性抗体の産生に適した細胞株は、望ましくない製品関連不純物の発現若しくは産生、又は発現若しくは産生の増加なしに、製品品質及び生産性に関して安定である必要がある。これらの細胞株は、経時的に、毎回同じ品質及び属性で所望の非対称多重特異性抗体を産生することができなければならない。
【0044】
安定な細胞株の作製は、目的のタンパク質の組換え産生に適した又は望ましい宿主細胞の形質転換から始まる。典型的には、そのような細胞は、組換えタンパク質の産生のために作製、改変、及び/又は開発される。
【0045】
細胞は、多細胞動物に由来し得る。生物製剤製造のために一般的に使用される動物細胞株は哺乳動物細胞株である。培養での増殖に好適な多種多様な哺乳類細胞株が、American Type Culture Collection(マナッサス、バージニア州)及び販売業者から入手可能である。一般的に使用される細胞株としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胎児腎臓(HEK)細胞、マウス骨髄腫(NS0、Sp2/0)細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、ヒト胎児腎臓(293)細胞、線維肉腫(HT-1080)細胞、ヒト胎児網膜(PER.C6)細胞、ハイブリッド腎臓及びB細胞(HKB-11)、CEVECの羊膜細胞産生(CAP)細胞、ヒト肝臓(HuH-7)細胞、並びに臨床及び/又は商業製造で使用される又は使用に適した任意の他の細胞由来のものが挙げられる。
【0046】
最も一般的に使用される細胞株は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞に由来する。CHO細胞は、複雑な組換えタンパク質を産生するために広く使用されている。ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)欠失変異細胞株(Urlaub et al.(1980),Proc Natl Acad Sci USA 77:4216-4220)、DXB11及びDG-44は、効率的なDHFR選択性且つ増幅可能な遺伝子発現系により、これらの細胞での高レベルの組換えタンパク質発現が可能になるため(Kaufman R.J.(1990),Meth Enzymol 185:537-566)、望ましいCHO宿主細胞株である。また、グルタミンシンセターゼ(GS)系メチオニンスルホキシミン(MSX)選択を利用した、グルタミンシンセターゼ(GS)ノックアウトCHOK1SV細胞株も広く使用される。CHOK1細胞(ATCC CCL61)も含まれる。更に、これらの細胞は、接着又は懸濁培養物として操作しやすく、比較的良好な遺伝的安定性を示す。CHO細胞及びそれらによって組換え発現されるタンパク質は、広範に特性評価がなされており、規制当局による臨床的及び商業的製造における使用が承認されている。
【0047】
これらの細胞は、目的のタンパク質をコードする遺伝子を含むベクターなどの発現系で形質転換される。目的のタンパク質をコードする少なくとも1つの核酸分子を含むプラスミド、発現ベクター、転写又は発現カセットの形態の発現系及び構築物、並びにそのような発現系又は構築物を含む宿主細胞も本明細書で提供される。本明細書で使用される場合、「ベクター」は、情報をコードするタンパク質を宿主細胞及び/又は宿主細胞内の特定の位置及び/又は区画に移行させ且つ/又は輸送する使用に好適な任意の分子又は実体(例えば、核酸、プラスミド、バクテリオファージ、トランスポゾン、コスミド、染色体、ウイルス、ウイルスカプシド、ビリオン、裸のDNA、DNA複合体など)を意味する。ベクターとしては、ウイルスベクター及び非ウイルスベクター、並びに非エピソーム哺乳動物ベクターを挙げることができる。ベクターは、しばしば、発現ベクター、例えば、組換え発現ベクター又はクローニングベクターと呼ばれる。ベクターを宿主細胞に導入してベクター自体の複製を可能にし、それによってその中に含有されるポリヌクレオチドのコピーを増幅させることができる。クローニングベクターは、配列成分を含有し得、一般に、限定するものではないが、複製起点、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列及び選択マーカーを含み得る。これらのエレメントは、当業者により必要に応じて選択され得る。
【0048】
形質転換は、細胞の遺伝的特徴の変化を指す。細胞は、新しいDNA又はRNAを含有するように改変されている場合、形質転換されている。例えば、トランスフェクション、形質導入、又は他の技法によって新しい遺伝物質を導入することにより、細胞がその天然状態から遺伝子改変された場合、細胞は形質転換されている。「形質導入」は、ウイルスベクターによって外来DNAを細胞に導入するプロセスを指す。トランスフェクションは、細胞による外来DNA又は外因性DNAの取り込みを指す。1つ以上のベクターを、増幅及び/又はポリペプチド発現のために適切な細胞に挿入することができる。選択された細胞への発現ベクターの形質転換は、トランスフェクション、感染、リン酸カルシウムによる共沈、エレクトロポレーション、ヌクレオフェクション、マイクロインジェクション、DEAE-デキストラン媒介性トランスフェクション、カチオン性脂質媒介性送達、リポソーム媒介性トランスフェクション、微粒子銃、受容体-媒介性遺伝子送達、ポリリジン、ヒストン、キトサン、及びペプチドによって媒介される送達を含む周知の方法によって行うことができる。選択される方法は、ある程度、使用される宿主細胞の型の関数となる。これらの方法及び他の適切な方法は、当業者に周知である。
【0049】
トランスフェクション又は形質導入に続き、形質転換されたDNAは、細胞の染色体に物理的に組み込むことにより、その細胞のDNAに組換えられ得、又は複製されることなくエピソームエレメントとして一時的に維持され得、又はプラスミドとして独立して複製され得る。形質転換DNAが細胞分裂によって複製される場合、細胞は「安定的に形質転換」されているとみなされる。トランスフェクション後、細胞の生存率は通常は低下し、未増幅プールは通常は回収を可能にするために複数回継代される。プールは、一定温度の培養物、典型的には35℃~37℃、典型的には36℃などの生理学的温度に維持される。
【0050】
細胞を選択圧に供して、発現系を内在化した細胞を選択することができる。他の選択遺伝子を用いて、発現されることとなる遺伝子を増幅してもよい。増幅は、増殖又は細胞生存に重要なタンパク質の生成に必要とされる遺伝子が、組換え細胞の累代の染色体内でタンデムに反復されるプロセスである。哺乳類細胞に好適な選択マーカーの例としては、グルタミンシンセターゼ(GS)/メチオニンスルホキシミン(MSX)系、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)及びプロモーターレスチミジンキナーゼ遺伝子が挙げられる。哺乳動物細胞形質転換体は、その形質転換体のみが唯一、ベクター内に存在する選択遺伝子によって生存するように適合されている選択圧下に置かれる。培地中の選択薬剤濃度を連続的に増加させる条件下で形質転換細胞を培養することによって選択圧をかけ、それによって選択遺伝子と目的のタンパク質をコードするDNAとの両方が増幅される。その結果、増幅されたDNAから多量の目的のポリペプチドが合成される。
【0051】
CHO細胞とともに使用される2つの一般的な系は、DHFR欠損細胞(例としては、CHO-DXB11及びCHO-DG44が挙げられる)及びグルタミンシンセターゼ(GS)を欠くCHO細胞、例えば、CHOK1SV、又は他のGSノックアウト細胞である。チミジン及びヒポキサンチンを欠く選択培地のDHFR欠損細胞を使用すると、十分に外因的に細胞に組み込まれたDHFR遺伝子コピーを有する細胞が生き延びる。同様に、GSを欠く細胞では、L-グルタミンの代わりにL-グルタミン酸を補充した選択培地を使用すると、細胞ゲノムに十分なGSが組み込まれた細胞が生き延びる。
【0052】
組換えタンパク質原薬の商業規模生産のための細胞株は、単一細胞前駆体に由来する。これらのクローン由来培養物を個別に増殖させ、増殖、生産性及び分泌タンパク質産物の品質について評価しなければならない。安定なクローン細胞株を使用して、所望の組換えタンパク質を発現する単一細胞前駆体クローンを備蓄するためのマスターセルバンクを確立する。次いで、マスターセルバンクからの細胞を使用して、産生に使用される細胞を供給するワーキングセルバンクを作製する。単一細胞クローニングは、増幅された細胞又は増幅されていない細胞を、96ウェルプレートなどのマルチウェルベッセルにアリコートすることによって行われ、それらは一定温度、典型的には生理学的温度、例えば、35℃~37℃、典型的には36℃の培養に維持される。
【0053】
集団からの単一細胞単離を支援する技術が利用可能である。これらとしては、限定するものではないが、限界希釈めっき、マイクロ流体カプセル化、FACS支援細胞選別、半固体媒体中でのコロニー選別、単一セルプリンタ、マイクロ流体ウェル又はチップ、例えば、流体光学技術(Berkley Lights、エメリービル、カリフォルニア州)が挙げられる。単一の細胞から生じるコロニーのみが、更なる処理のために選択される。
【0054】
CLDワークフロー中に生成された安定なプールは、組み込まれた導入遺伝子の数及び局在が異なり、固有の遺伝的及び表現型的特徴を有し、且つ/又は細胞特異的生産性が異なる細胞の異種混合物を含む。これらの安定にトランスフェクトされたプールは、クローン由来培養物を作製するための単一細胞クローニングに使用され、その後、性能についてスクリーニングされて、所望の品質及び特性、例えば、発現、生産性、増殖、及び/又は製品関連不純物の産生を含む他の製品品質属性を有するものが同定される。導入遺伝子コピー数は、細胞が生存するために必要な選択マーカーに対する阻害剤を使用して増幅することもできる。これは、選択マーカー遺伝子並びに隣接遺伝子座に組み込まれた導入遺伝子のコピー数を増加させる。一実施形態では、クローン由来培養物は、発現された非対称多重特異性抗体の所望の発現、生産性、増殖及び/又は他の所望の製品品質特性について更に選択され得る。
【0055】
次いで、クローンは、サイズが増加する容器を使用してスケールアップされ、一定の生理学的温度、35℃~37℃、典型的には36℃の培養に更に維持される。これらの容器としては、マルチウェルプレート、例えば、96ウェルプレート、24ウェルプレート、6ウェルプレートを挙げることができる。
【0056】
細胞が所望の細胞数又は細胞密度に達したら、クローンを、産生条件を模倣する条件下で評価及びランク付けし、産生及び製品品質について初めて評価する。クローンをディープウェルプレート、スピンチューブ、及び/又は攪拌振盪フラスコなどの適切な容器に移し、フェドバッチ培養で懸濁液中で増殖させ、35℃~37℃、典型的には36℃の一定の生理学的温度でインキュベートする。これは、典型的には10日間のプロセスであり、2~3日ごとに培養条件(例えば、pH、オスモル濃度、乳酸塩/グルコースなど)を供給及びモニタリングする。典型的には、少なくとも100個以上のクローンをスクリーニングする。プール及びクローンのランキングは、力価、比生産性(qP)、増殖、生存率及び製品品質(PQ)プロファイルなどを考慮する。選択に使用される特定の製品品質は、通常、発現されるタンパク質のモダリティ、並びに最終製剤及び/又は原薬の製造中に所望され、且つ/又は必要とされる品質に依存する。これらには、凝集レベル、電荷分布、クリップ、部分種、及び翻訳後修飾が含まれ得る。上位の、典型的には10以下のクローンは、更なる開発のために選択される。
【0057】
上位のクローン候補は、典型的には、大規模生産中に使用されるいくつかの/すべての条件下で小規模バイオリアクター(典型的には3L又は7L)で培養される。例えば、大規模生産中に1つ以上の温度シフトを行う場合、これらの温度設定点は、小規模バイオリアクターの実行中に組み込まれる。このプロセスは、典型的には10~25日以上のプロセスである。いくつかの実施形態では、このプロセスは15~20日間である。いくつかの実施形態では、このプロセスは、少なくとも15日間である。クローンを再度評価し、生産性、増殖、製品品質属性などに基づいてランク付けする。
【0058】
このプロセスを使用して非対称多重特異性抗体を発現するクローン細胞をスクリーニング及び選択した場合、一定の生理学的温度(36℃)でスクリーニング及び選択したクローン細胞によって発現されるタンパク質の製品品質属性が、細胞を温度シフト(36℃から34℃、又は36℃から32.5℃)を含む細胞培養条件に供した場合に変化することが観察された。より低い培養温度への曝露は、長重鎖と短重鎖のモル比の増加をもたらした。長重鎖及び短重鎖の両方の転写は、より低い温度で、ただし異なる速度で継続し、観察される偏ったモル比をもたらす可能性がある。重鎖の比のシフトは、形成された製品関連不純物の種類に影響を与え、これらの不純物は、産生物の収率及び活性、並びに下流の精製工程の効率に影響を与えた。
【0059】
これらの非対称多重特異性抗体の製品品質は、細胞培養中の温度によって影響を受けた。この結果をよりよく理解するために、非対称多重特異性抗体を発現するクローンを、最初のスクリーニング及び製品品質属性に基づくクローンの選択の間に1つ以上の温度設定点に曝露した。クローンのスクリーニング及び選択の因子として温度を含めると、異なる温度設定点で長重鎖と短重鎖のよりバランスのとれたモル比を維持することができるクローンを同定することができた。このように、製品関連不純物の組成が変化し、これにより下流精製が改善され、所望の生成物の収率が改善され、より堅牢な製造プロセスにも寄与した。
【0060】
温度レジームは、細胞培養中に使用される温度又は温度設定点を指す。1つ以上の温度レジームが、細胞培養工程の過程にわたって使用され得る。ほとんどの組換え治療用タンパク質は、哺乳動物宿主細胞によって発現される。細胞の最適な増殖を促進するために、哺乳動物細胞培養物は、典型的には36℃~37℃の温度に維持される。所望の組換えタンパク質の産生効率を高めるために、産生の増強を促進する最適未満の細胞増殖条件が望まれ得る。より低い培養温度を使用して、細胞増殖を遅延又は停止させ、所望の組換え抗体の産生を促進することができる。増殖期の最適温度から産生期の最適温度への温度シフトの使用は、細胞培養戦略においてしばしば用いられる。増殖期は、約28℃~約37℃、典型的には36℃~37℃の第1の温度で行われてもよく、産生期は、約28℃~約37℃、典型的には約30℃~約35℃、又は約30℃~約34℃、好ましくは32.5℃の第2の温度で行われてもよい。
【0061】
温度のこの調節は、所望の生産目標を達成するために細胞培養の期間全体にわたって使用することができる。温度シフトの組み合わせを使用して、第1の増殖期から、第1の産生期、第2の増殖期、それに続く第2の産生期などへ移行することもできる。
【0062】
本発明は、2つ以上の温度レジームを提供する。本発明の一実施形態は、1つ以上の単一の温度レジームを含む。単一の温度レジームでは、培養物は、培養期間中、単一の温度に保持される。一実施形態では、温度は約37℃~約28℃である。一実施形態では、温度は約36℃~約28℃である。一実施形態では、温度は約37℃~約29℃である。一実施形態では、温度は約36℃~約29℃である。一実施形態では、温度は約37℃~約30℃である。一実施形態では、温度は約36℃~約30℃である。一実施形態では、温度は約37℃~約31℃である。一実施形態では、温度は約36℃~約31℃である。一実施形態では、温度は約36℃~約31℃である。一実施形態では、温度は約37℃~約32℃である。一実施形態では、温度は約37℃~約32.5℃である。一実施形態では、温度は約36℃~約32℃である。一実施形態では、温度は約36℃~約32.5℃である。一実施形態では、温度は約37℃~約33℃である。一実施形態では、温度は約36℃~約33℃である。一実施形態では、温度は約37℃~約34℃である。一実施形態では、温度は約36℃~約34℃である。一実施形態では、温度は約37℃~約35℃である。一実施形態では、温度は約36℃~約35℃である。一実施形態では、温度は約37℃~約36℃である。一実施形態では、温度は約35℃~約28℃である。一実施形態では、温度は約35℃~約29℃である。一実施形態では、温度は約35℃~約30℃である。一実施形態では、温度は約35℃~約31℃である。一実施形態では、温度は約35℃~約32℃である。一実施形態では、温度は約35℃~約33℃である。一実施形態では、温度は約35℃~約34℃である。一実施形態では、温度は約34℃~約28℃である。一実施形態では、温度は約34℃~約29℃である。一実施形態では、温度は約34℃~約30℃である。一実施形態では、温度は約34℃~約31℃である。一実施形態では、温度は約34℃~約33℃である。一実施形態では、温度は約34℃~約28℃である。一実施形態では、温度は約33℃~約28℃である。一実施形態では、温度は約33℃~約29℃である。一実施形態では、温度は約33℃~約30℃である。一実施形態では、温度は約33℃~約31℃である。一実施形態では、温度は約33℃~約32℃である。一実施形態では、温度は約32℃~約28℃である。一実施形態では、温度は約32℃~約29℃である。一実施形態では、温度は約32℃~約30℃である。一実施形態では、温度は約32℃~約31℃である。一実施形態では、温度は約31℃~約28℃である。一実施形態では、温度は約31℃~約29℃である。一実施形態では、温度は約31℃~約30℃である。一実施形態では、温度は約30℃~約28℃である。一実施形態では、温度は約30℃~約29℃である。一実施形態では、温度は28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、又は37℃である。一実施形態では、温度は32.5℃である。
【0063】
本発明の一実施形態は、少なくとも1つの温度シフトを含む1つ以上の温度レジームを含む。一実施形態では、温度シフトは、第1の温度から、第1の温度よりも高い又は低い第2の温度までである。一実施形態では、第1の温度は約37℃~約28℃である。一実施形態では、第1の温度は約36℃~約28℃である。一実施形態では、第1の温度は約37℃~約29℃である。一実施形態では、第1の温度は約36℃~約29℃である。一実施形態では、第1の温度は約37℃~約30℃である。一実施形態では、第1の温度は約36℃~約30℃である。一実施形態では、第1の温度は約37℃~約31℃である。一実施形態では、第1の温度は約36℃~約31℃である。一実施形態では、第1の温度は約36℃~約31℃である。一実施形態では、第1の温度は約37℃~約32℃である。一実施形態では、第1の温度は約37℃~約32.5℃である。一実施形態では、第1の温度は約36℃~約32℃である。一実施形態では、第1の温度は約36℃~約32.5℃である。一実施形態では、第1の温度は約37℃~約33℃である。一実施形態では、第1の温度は約36℃~約33℃である。一実施形態では、第1の温度は約37℃~約34℃である。一実施形態では、第1の温度は約36℃~約34℃である。一実施形態では、第1の温度は約37℃~約35℃である。一実施形態では、第1の温度は約36℃~約35℃である。一実施形態では、第1の温度は約35℃~約28℃である。一実施形態では、第1の温度は約35℃~約29℃である。一実施形態では、第1の温度は約35℃~約30℃である。一実施形態では、第1の温度は約35℃~約31℃である。一実施形態では、第1の温度は約35℃~約32℃である。一実施形態では、第1の温度は約35℃~約32.5℃である。一実施形態では、第1の温度は約35℃~約33℃である。一実施形態では、第1の温度は約35℃~約34℃である。一実施形態では、第1の温度は約34℃~約28℃である。一実施形態では、第1の温度は約34℃~約29℃である。一実施形態では、第1の温度は約34℃~約30℃である。一実施形態では、第1の温度は約34℃~約31℃である。一実施形態では、第1の温度は約34℃~約32℃である。一実施形態では、第1の温度は約34℃~約32.5℃である。一実施形態では、第1の温度は約34℃~約28℃である。一実施形態では、第1の温度は約33℃~約28℃である。一実施形態では、第1の温度は約33℃~約29℃である。一実施形態では、第1の温度は約33℃~約30℃である。一実施形態では、第1の温度は約33℃~約31℃である。一実施形態では、第1の温度は約33℃~約32℃である。一実施形態では、第1の温度は約33℃~約32.5℃である。一実施形態では、第1の温度は約32℃~約28℃である。一実施形態では、第1の温度は約32℃~約29℃である。一実施形態では、第1の温度は約32℃~約30℃である。一実施形態では、第1の温度は約32.5℃~約28℃である。一実施形態では、第1の温度は約32.5℃~約29℃である。一実施形態では、第1の温度は約32.5℃~約30℃である。一実施形態では、第1の温度は約32.5℃~約31℃である。一実施形態では、第1の温度は約32.5℃~約32℃である。一実施形態では、第1の温度は約32.5℃~約33℃である。一実施形態では、第1の温度は約32.5℃~約34℃である。一実施形態では、第1の温度は約32.5℃~約35℃である。一実施形態では、第1の温度は約31℃~約28℃である。一実施形態では、第1の温度は約31℃~約29℃である。一実施形態では、第1の温度は約31℃~約30℃である。一実施形態では、第1の温度は約30℃~約28℃である。一実施形態では、第1の温度は約30℃~約29℃である。一実施形態では、第1の温度は28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、又は37℃である。一実施形態では、第1の温度は32.5℃である。
【0064】
一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約1℃~9℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約2℃~9℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約3℃~9℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約4℃~9℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約5℃~9℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約6℃~9℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約7℃~9℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約8℃~9℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約1℃~8℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約2℃~8℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約3℃~8℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約4℃~8℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約5℃~8℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約6℃~8℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約7℃~8℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約1℃~7℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約2℃~7℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約3℃~7℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約4℃~7℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約5℃~7℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約6℃~7℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約1℃~6℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約2℃~6℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約3℃~6℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約4℃~6℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約5℃~6℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約1℃~5℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約2℃~5℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約3℃~5℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約4℃~5℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約1℃~4℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約2℃~4℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約3℃~4℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約1℃~3℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約2℃~3℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約2.5℃~3.5℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約1℃~2℃低い。
【0065】
一実施形態では、第2の温度は約37℃~約28℃である。一実施形態では、第2の温度は約36℃~約28℃である。一実施形態では、第2の温度は約37℃~約29℃である。一実施形態では、第2の温度は約36℃~約29℃である。一実施形態では、第2の温度は約37℃~約30℃である。一実施形態では、第2の温度は約36℃~約30℃である。一実施形態では、第2の温度は約37℃~約31℃である。一実施形態では、第2の温度は約36℃~約31℃である。一実施形態では、第2の温度は約36℃~約31℃である。一実施形態では、第2の温度は約37℃~約32℃である。一実施形態では、第2の温度は約37℃~約32.5℃である。一実施形態では、第2の温度は約36℃~約32℃である。一実施形態では、第2の温度は約36℃~約32.5℃である。一実施形態では、第2の温度は約37℃~約33℃である。一実施形態では、第2の温度は約36℃~約33℃である。一実施形態では、第2の温度は約37℃~約34℃である。一実施形態では、第2の温度は約36℃~約34℃である。一実施形態では、第2の温度は約37℃~約35℃である。一実施形態では、第2の温度は約36℃~約35℃である。一実施形態では、第2の温度は約35℃~約28℃である。一実施形態では、第2の温度は約35℃~約29℃である。一実施形態では、第2の温度は約35℃~約30℃である。一実施形態では、第2の温度は約35℃~約31℃である。一実施形態では、第2の温度は約35℃~約32℃である。一実施形態では、第2の温度は約35℃~約32.5℃である。一実施形態では、第2の温度は約35℃~約33℃である。一実施形態では、第2の温度は約35℃~約34℃である。一実施形態では、第2の温度は約34℃~約28℃である。一実施形態では、第2の温度は約34℃~約29℃である。一実施形態では、第2の温度は約34℃~約30℃である。一実施形態では、第2の温度は約34℃~約31℃である。一実施形態では、第2の温度は約34℃~約32℃である。一実施形態では、第2の温度は約34℃~約32.5℃である。一実施形態では、第2の温度は約34℃~約28℃である。一実施形態では、第2の温度は約33℃~約28℃である。一実施形態では、第2の温度は約33℃~約29℃である。一実施形態では、第2の温度は約33℃~約30℃である。一実施形態では、第2の温度は約33℃~約31℃である。一実施形態では、第2の温度は約33℃~約32℃である。一実施形態では、第2の温度は約33℃~約32.5℃である。一実施形態では、第2の温度は約32℃~約28℃である。一実施形態では、第2の温度は約32℃~約29℃である。一実施形態では、第2の温度は約32℃~約30℃である。一実施形態では、第2の温度は約32.5℃~約28℃である。一実施形態では、第2の温度は約32.5℃~約29℃である。一実施形態では、第2の温度は約32.5℃~約30℃である。一実施形態では、第2の温度は約32.5℃~約31℃である。一実施形態では、第2の温度は約31℃~約28℃である。一実施形態では、第2の温度は約31℃~約29℃である。一実施形態では、第2の温度は約31℃~約30℃である。一実施形態では、第2の温度は約30℃~約28℃である。一実施形態では、第2の温度は約30℃~約29℃である。一実施形態では、第2の温度は28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、又は37℃である。一実施形態では、第2の温度は32.5℃である。
【0066】
一実施形態では、第1の温度レジームは、36℃~37℃の単一の温度であり、第2の温度レジームは、36℃~37℃の第1の温度から28℃~35℃の第2の温度への少なくとも1つの温度シフトを含む。
【0067】
「非対称多重特異性抗体」としては、少なくとも2つの異なる抗原若しくは標的、又は同じ抗原若しくは標的上の少なくとも2つの異なるエピトープと結合し、それを中和し、且つ/又はそれに特異的に相互作用するように組換え操作された非対称タンパク質が挙げられる。一実施形態では、非対称多重特異性抗体は、免疫エフェクターを標的化し、免疫応答を刺激又は誘発し、細胞傷害剤を腫瘍又は感染因子に運ぶように操作することができる。これらの非対称多重特異性抗体は、様々な用途において、例えば、免疫エフェクター細胞を腫瘍細胞にリダイレクトし、シグナル伝達経路を遮断して細胞シグナル伝達を改変し、腫瘍血管新生を標的化し、サイトカインを遮断することによる癌免疫療法において、また、薬物のプレターゲティング送達、例えば、化学療法剤、(検出感度を向上させるための)放射性標識、及び(癌細胞などの特定の細胞/組織に誘導される)ナノ粒子の送達の媒体として、有用であることが見出されている。
【0068】
非対称多重特異性抗体は、科学的且つ/又は商業的に関心のあるものであり得る。非対称多重特異性抗体は、様々な方法で、最も一般的には細胞培養法を用いて組換え動物細胞株によって産生することができる。非対称多重特異性抗体は、細胞内で産生され得るか、又は培養培地に分泌され得、そこから回収及び/又は採取され得、「組換え非対称多重特異性抗体」と呼ばれる場合がある。「単離された組換え非対称多重特異性抗体」という用語は、その治療、診断、予防、研究、又は他の使用を妨げるタンパク質、ポリペプチド、DNA、及び/又は他の夾雑物若しくは不純物を取り除いて精製された非対称多重特異性抗体を指す。目的の非対称多重特異性抗体には、とりわけ、2つ以上の標的、特に、本明細書に列挙される標的の中でも、それに由来する標的、それに関連する標的、及びそれらの改変などの標的に結合することによって治療効果を発揮するものが含まれる。非対称多重特異性抗体は、互いに長さが異なる2つ以上の重鎖を有し得、例えば、長重鎖及び短重鎖を有し得る。関連する実施形態では、非対称多重特異性抗体は非対称二重特異性抗体である。非対称二重特異性抗体を含む様々な二重特異性抗体フォーマットがこの技術分野では公知である(Spiess et al.,Mol Immunol 67,95-106,2015、Sedykh et al.,Drug Design,Development and Therapy 18(12),195-208,2018、Fan et al.,J Hematol&Oncology 8:130-143,2015、)、Williams et al.,Chapter 41 Process Design for Bispecific Antibodies in Biopharmaceutical Processing Development,Design and Implementation of Manufacturing Processes,Jagschies et al.,eds.,2018,pages 837-855、Seimetz et al.,Cancer Treat Rev 36(6)458-67,2010、Shulka and Norman,Chapter 26 Downstream Processing of Fc Fusion Proteins,Bispecific Antibodies,and Antibody-Drug Conjugates,in Process Scale Purification of Antibodies Second Edition,Uwe Gottswchalk editor,p559-594,John Wiley&Sons,2017、Moore et al.,MAbs 3:6,546-557,2011。
【0069】
非対称多重特異性抗体には、2つ以上の標的に対する特異性を有する非対称多重特異性抗体を集合的にもたらす、固有のペプチド及び/又はタンパク質配列を有する奇数個の活性成分を有するものも含まれる。抗体は、ヒト、ヒト化、キメラ、多特異性、モノクローナル、ポリクローナル、二重特異性、及びそれらのオリゴマー又は抗原結合フラグメントを含む。抗体はまた、IgG1型、IgG2型、IgG3型又はIgG4型などの任意のアイソタイプ又はサブクラスのグリコシル化免疫グロブリン及び非グリコシル化免疫グロブリンの両方を含む。抗原結合フラグメント又は抗原結合領域を有する抗体、特に、特異的結合についてインタクトな抗体と競合する抗体抗原結合フラグメントも含まれる。また、ペプチド体、抗体誘導体、抗体類似体、融合タンパク質(及びXmab(登録商標)技術、半減期延長などの延長を有する二重特異性T細胞エンゲージャー、例えば、BiTE(登録商標)分子を使用して作製されたタンパク質)も含まれる。
【0070】
修飾された非対称多重特異性抗体、例えば、非共有結合、共有結合、又は共有結合と非共有結合の両方によって化学的に修飾された抗体も含まれる。また、細胞修飾系によってなされ得る1つ以上の翻訳後修飾、又は酵素及び/若しくは化学的方法によって生体外で導入されるか若しくは他の方法で導入される修飾を更に含む抗体も含まれる。特に、抗体は、そのような方法を使用して抗体に1つ以上の目的のタンパク質を付着させるように修飾される。
【0071】
いくつかの実施形態では、非対称多重特異性抗体は、1つ以上のCDタンパク質、HER受容体ファミリータンパク質、細胞接着分子、成長因子、神経成長因子、線維芽細胞増殖因子、トランスフォーム成長因子(TGF)、インスリン様成長因子、骨誘導性因子、インスリン及びインスリン関連タンパク質、凝固及び凝固関連タンパク質、コロニー刺激因子(CSF)、他の血液及び血清タンパク質血液型抗原、受容体、受容体関連タンパク質、成長ホルモン、成長ホルモン受容体、T細胞受容体、神経栄養因子、ニューロトロフィン、リラキシン、インターフェロン、インターロイキン、ウイルス抗原、リポタンパク質、インテグリン、リウマチ因子、免疫毒素、表面膜タンパク質、輸送タンパク質、ホーミング受容体、アドレシン、調節タンパク質及びイムノアドヘシンに特異的に結合し、それを中和し、且つ/又はそれと相互作用する。
【0072】
いくつかの実施形態では、非対称多重特異性抗体は、単独で又は任意の組み合わせで、CD3、CD4、CD5、CD7、CD8、CD19、CD20、CD22、CD25、CD30、CD33、CD34、CD38、CD40、CD70、CD123、CD133、CD138、CD171、CD174を含むがこれらに限定されないCDタンパク質、例えば、HER2、HER3、HER4を含むHER受容体ファミリータンパク質、EGF受容体であるEGFRvIII、細胞接着分子、例えば、LFA-1、Mol、p150,95、VLA-4、ICAM-1、VCAM及びαv/β3インテグリン、例えば、血管内皮成長因子(「VEGF」)を含むがこれらに限定されない成長因子;VEGFR2、成長ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、成長ホルモン放出因子、副甲状腺ホルモン、ミュラー抑制物質、ヒトマクロファージ炎症性タンパク質(MIP-1-α)、エリスロポエチン(EPO)、NGF-β等の神経成長因子、血小板由来成長因子(PDGF)、例えば、aFGF及びbFGFを含む線維芽細胞増殖因子、上皮成長因子(EGF)、クリプト、数ある中でもTGF-α及びTGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、TGF-β4又はTGF-β5を含むTGF-βを含むトランスフォーム成長因子(TGF)、インスリン様成長因子-I及び-II(IGF-I及びIGF-II)、des(1-3)-IGF-I(脳内IGF-I)及び骨形成促進因子、インスリン、インスリンA鎖、インスリンB鎖、プロインスリン及びインスリン様成長因子結合タンパク質を含むがこれらに限定されないインスリン及びインスリン関連タンパク質、数ある中でも、第VIII因子、組織因子、フォンウィルブランド因子等の凝固及び凝固関連タンパク質、プロテインC、α-1-アンチトリプシン、ウロキナーゼ及び組織プラスミノーゲン活性化因子(「t-PA」)等のプラスミノーゲン活性化因子、ボンバジン、トロンビン、トロンボポエチン、トロンボポエチン受容体、数ある中でも、M-CSF、GM-CSF、及びG-CSFを含むコロニー刺激因子(CSF)、アルブミン、IgE及び血液型抗原を含むがこれらに限定されない他の血液及び血清タンパク質、例えば、flk2/flt3受容体、肥満(OB)受容体、成長ホルモン受容体、及びT細胞受容体を含む受容体及び受容体関連タンパク質、骨由来神経栄養因子(BDNF)及びニューロトロフィン-3、-4、-5若しくは-6(NT-3、NT-4、NT-5若しくはNT-6)を含むがこれらに限定されない神経栄養因子;リラキシンA鎖、リラキシンB鎖及びプロレラキシン、例えば、インターフェロン-α、-β及び-γを含むインターフェロン、インターロイキン(IL)、例えば、IL-1からIL-10、IL-12、IL-15、IL-17、IL-23、IL-12/IL-23、IL-2Ra、IL1-R1、IL-6受容体、IL-4受容体及び/又はIL-13から受容体であるIL-13RA2、又はIL-17受容体であるIL-1RAP、エイズエンベロープウイルス抗原、リポタンパク質、カルシトニン、グルカゴン、心房性ナトリウム利尿因子、肺サーファクタント、腫瘍壊死因子-α及び-βを含むがこれらに限定されないウイルス抗原、エンケファリナーゼ、BCMA、IgKappa、ROR-1、ERBB2、メソセリン、RANTES(regulated on activation normally T-cell expressed and secreted)、マウスゴナドトロピン関連ペプチド、Dnase、FR-α、インヒビン及びアクチビン、インテグリン、プロテインA又はD、リウマチ因子、免疫毒素、骨形成タンパク質(BMP)、スーパーオキシドディスムターゼ、表面膜タンパク質、崩壊促進因子(DAF)、AIDSエンベロープ、輸送タンパク質、ホーミング受容体、MIC(MIC-a、MIC-B)、ULBP 1-6、EPCAM、アドレシン、制御タンパク質、イムノアドヘシン、抗原結合タンパク質、ソマトロピン、CTGF、CTLA4、エオタキシン-1、MUC1、CEA、c-MET、クローディン-18、GPC-3、EPHA2、FPA、LMP1、MG7、NY-ESO-1、PSCA、ガングリオシドGD2、グラングリオシドGM2、BAFF、OPGL(RANKL)、ミオスタチン、Dickkopf-1(DKK-1)、Ang2、NGF、IGF-1受容体、肝細胞増殖因子(HGF)、TRAIL-R2、c-Kit、B7RP-1、PSMA、NKG2D-1、プログラムされた細胞死タンパク質1及びリガンド、PD1及びPDL1、マンノース受容体/hCGβ、C型肝炎ウイルス、メソセリンdsFv[PE38コンジュゲート、レジオネラニューモフィラ(lly)、IFNガンマ、インターフェロンガンマ誘導タンパク質10(IP10)、IFNAR、TALL-1、胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)、幹細胞因子、Flt-3、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、OX40L、α4β7、血小板特異的(血小板糖タンパクIib/IIIb(PAC-1)、トランスフォーミング成長因子β(TFGβ)、STEAP1、透明帯精子結合タンパク質3(ZP-3)、TWEAK、血小板由来成長因子受容体α(PDGFRα)、スクレロスチン及び前述のいずれかの生物活性断片又は変異体のうちの1つ以上に結合し、それを中和し、且つ/又はそれと相互作用する。いくつかの実施形態では、非対称多重特異性抗体は、抗体又は免疫グロブリン、例えば、IL-2変異体免疫サイトカインに結合したムテインを含む。例は、CEA-IL-2v(セルグツズマブ・アムナロイキン)であり、IL-2v部分が抗体のFc部分の一方の重鎖に融合している、Schneider et al.,2019,Biotechnology Bioengineering 116:2503-2513;and Anti-FAP-IL-2(fibroblast activation protein(FAP)targeted interleukin-2 variant(IL-2v)、Soerensen MM,et al.Safety,PK/PD,and anti-tumor activity of RO6874281,an engineered variant of interleukin-2(IL-2v)targeted to tumor-associated fibroblasts via binding to fibroblast activation protein(FAP)、Nicolini V,et al.Combining CEA-IL2v and FAP-IL2v immunocytokines with PD-L1 checkpoint blockade.Annual Meeting of the American Association for Cancer Research;New Orleans:2016。
【0073】
いくつかの態様では、非対称多重特異性抗体は二機能性融合タンパク質である。いくつかの態様では、二機能性融合タンパク質はIL-21ムテインを含む。いくつかの態様では、二機能性融合タンパク質は、抗PD-1抗体の2つの抗体重鎖の一方のC末端に連結されたIL-21ムテインのコンジュゲートを含む。IL-21-抗PD-1コンジュゲートは、「短重鎖」(抗PD1重鎖)及び「長重鎖」(IL-21ムテインに連結された抗PD1重鎖)を含む。そのような抗体は、参照によりその全体が組み込まれる国際公開第2019/028316号パンフレットに記載されている。
【0074】
インターロイキン-21(IL-21)は、T細胞、B細胞、NK細胞及び骨髄系細胞によって発現されるサイトカインであり、自然免疫細胞及び適応免疫細胞の両方の活性を調節し、T細胞の生存及びエフェクター機能を改善する。IL-21は、4ヘリックスバンドル構造を有し、モノマーとして存在する。いくつかの実施形態では、非対称タンパク質は、本明細書において配列番号1として示される野生型IL-21アミノ酸配列と比較して、少なくとも1つのアミノ酸置換を含むIL-21ムテインを含む。例示的な態様では、IL-21ムテインは、配列番号2のアミノ酸配列を含み、配列中、Xは任意のアミノ酸であり、IL-21ムテインのアミノ酸配列はヒトIL-21のアミノ酸配列(配列番号1)と少なくとも1つのアミノ酸が異なる。様々な態様では、IL-21ムテインは、ヒトIL-21のアミノ酸配列(配列番号1)と3、4、5、6又は7個のアミノ酸が異なるアミノ酸配列を含む。様々な態様では、IL-21ムテインは、ヒトIL-21のアミノ酸配列(配列番号1)と1又は2つのアミノ酸だけ異なるアミノ酸配列を含む。例示的な態様では、IL-21ムテインは、表1による位置にアミノ酸によるアミノ酸置換を含む。
【0075】
【表1】
【0076】
様々な態様では、非対称多重特異性抗体は、配列番号1と比較して1つのアミノ酸置換を含むIL-21ムテインを含み、任意選択で、配列番号3~198、配列番号249~254及び配列番号283のうちの1つを含む。いくつかの実施形態では、非対称多重特異性抗体は、配列番号1と比較して2つのアミノ酸置換を含み、任意選択で、配列番号199~248及び配列番号255のうちの1つを含むIL-21ムテインを含む。いくつかの実施形態では、非対称多重特異性抗体は、配列番号1の5位、9位、73位及び76位のいずれか2つにアミノ酸置換を含むIL-21ムテインを含む。一実施形態では、アミノ酸置換は、5位におけるA、E又はQ、9位におけるE又はA、73位におけるA又はQ、及び76位におけるA、D又はE、から選択される。一実施形態では、アミノ酸置換は、配列番号1の5位及び73位にある。一実施形態では、アミノ酸置換は、配列番号1の5位及び76位にある。一実施形態では、アミノ酸置換は、配列番号1の9位及び73位にある。一実施形態では、アミノ酸置換は、配列番号1の9位及び76位にある。一実施形態では、IL-21ムテインは配列番号233~245のいずれかのアミノ酸配列を含む。一実施形態では、配列番号233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244又は245の単一のIL-21ムテインが抗PD-1抗体のFcに結合している。一実施形態では、配列番号233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244又は245の単一のIL-21ムテインが抗PD-1抗体のFcに結合している。一実施形態では、IL-21ムテインは配列番号233のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、IL-21ムテインは配列番号234のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、IL-21ムテインは配列番号235のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、IL-21ムテインは配列番号236のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、IL-21ムテインは配列番号237のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、IL-21ムテインは配列番号238のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、IL-21ムテインは配列番号239のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、IL-21ムテインは配列番号240のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、IL-21ムテインは配列番号241のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、IL-21ムテインは配列番号242のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、IL-21ムテインは配列番号243のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、IL-21ムテインは配列番号244のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、IL-21ムテインは配列番号245のアミノ酸配列を含む。
【0077】
いくつかの実施形態では、非対称多重特異性抗体は、ムテインと抗体又は免疫グロブリンとのコンジュゲートを含む。いくつかの実施形態では、コンジュゲートはIL-21ムテインを含む。いくつかの実施形態では、コンジュゲートは、抗体又は免疫グロブリンに結合したIL-21ムテインを含む。
【0078】
いくつかの実施形態では、非対称多重特異性抗体は、非共有結合若しくは共有結合、例えば、ペプチド結合、ジスルフィド結合などを介して、又は静電、水素、イオン、ファンデルワールス、又は疎水性若しくは親水性相互作用などの物理的力を介して抗体又は免疫グロブリンに結合したIL-21ムテインを含む。例えば、ビオチン-アビジン、リガンド/受容体、酵素/基質、核酸/核酸結合タンパク質、脂質/脂質結合タンパク質、細胞接着分子パートナー、又は互いに親和性を有する任意の結合パートナー若しくはその断片などの、様々な非共有結合系を使用することができる。いくつかの実施形態では、結合は、IL-21ムテインの標的アミノ酸残基を、これらの標的アミノ酸の選択された側鎖又はN末端若しくはC末端残基と反応することができる有機誘導体化剤と反応させることによる直接的な共有結合を介したものであり得る。
【0079】
いくつかの実施形態では、IL-21ムテインと抗体又は免疫グロブリンとの間の結合は、リンカーを介したものであり得る。いくつかの実施形態では、リンカーは、1から約60個、又は1から30個以上、2から5個、2から10個、5から10個、又は10から20個の原子の長さの原子鎖を含む。いくつかの実施形態では、原子鎖はすべて炭素原子である。いくつかの実施形態では、リンカーの骨格中の原子鎖は、炭素(C)、酸素(O)、窒素(N)及び硫黄(S)からなる群から選択される。原子鎖及びリンカーは、より可溶性のコンジュゲートをもたらすように、それらの予想される溶解度(親水性)に従って選択され得る。いくつかの実施形態では、リンカーは、標的の組織又は器官又は細胞において見出される酵素又は他の触媒又は加水分解条件による切断を受ける官能基を提供する。いくつかの実施形態では、リンカーの長さは、立体障害の可能性を低減するのに十分な長さである。リンカーが共有結合又はペプチジル結合であり、コンジュゲートがポリペプチドである場合、コンジュゲート全体は融合タンパク質であり得る。そのようなペプチジルリンカーは、任意の長さであってよい。例示的なペプチジルリンカーは、長さが約1から50アミノ酸、5から50アミノ酸、3から5アミノ酸、5から10アミノ酸、5から15アミノ酸、又は10から30アミノ酸長であり、可撓性又は剛性である。いくつかの実施形態では、リンカーは、約2から約20個のアミノ酸を含むペプチドである。いくつかの実施形態では、リンカーは、約2から約15個のアミノ酸、約2から約10個のアミノ酸、又は約2から約5個のアミノ酸を含むペプチドである。好適なペプチドリンカーは、当該技術分野で公知である。例えば、Chen et al.,Adv Drug Delivery Reviews 65(10):1357-1369(2013);Arai et al.,Protein Eng Des Sel 14(8):529-532(2001);及びWriggers et al.,Curr Trends in Peptide Science 80(6):736-746(2005)を参照されたい。一実施形態では、リンカーは、アミノ酸配列GGGGS(配列番号262)を含むペプチドである。
【0080】
非対称多重特異性抗体は、抗体のFcに直接結合したIL-21ムテインを含む。或いは、IL-21ムテインは、配列番号262のアミノ酸配列を含むペプチドなどのリンカーを介して抗体のFcに結合している。様々な例において、非対称多重特異性抗体は、単一のIL-21ムテインを含み、前記単一のIL-21ムテインは、2つの抗体重鎖のうちの1つのC末端に連結されている。
【0081】
様々な態様では、抗体重鎖は、半減期/安定性を改善するために、又は抗体を発現/製造可能性により適したものにするために、天然に存在する対応物と比較して1つ以上のアミノ酸修飾を含む(例えば、IL-21ムテインを含む非対称多重特異性抗体として)。
【0082】
典型的な例では、抗体重鎖は、抗体とFc受容体との間の相互作用を防止又は低減するように設計される。典型的な例では、抗体は、Fcγ受容体と相互作用する能力を欠く定常領域を含むStable Effector Functionless(SEFL)抗体である。SEFL抗体は当該技術分野で公知である。例えば、Liu et al.,J Biol Chem 292:1876-1883(2016);及びJacobsen et al.,J.Biol.Chem.292:1865-1875(2017)を参照されたい。例示的な態様では、SEFL抗体は、EUシステムにより番号付けされた、以下の変異の1つ以上を含む:L242C、A287C、R292C、N297G、V302C、L306C及び/又はK334C。例示的な態様では、SEFL抗体はN297Gを含む。例示的な態様では、SEFL抗体は、A287C、N297G、及びL306Cを含む。他の例示的な態様では、SEFL抗体は、R292C、N297G、及びV302C(すなわち、SEFL2-2)を含む。
【0083】
抗体は、他の半減期延長(HLE)修飾を含み得る。典型的な例では、HLE改変は重鎖定常領域で起こり、EUシステムに従って番号付けされた以下の変異の1つ以上を含む:M252Y、S254T、及びT256E。典型的な例では、抗体は、M252Y、S254T、及びT256Eのうちの1つ又は2つを含む。典型的な例では、抗体は、M252Y、S254T、及びT256Eの3つすべてを含む。例示的な態様では、重鎖定常領域は、配列番号545又は配列番号547又は配列番号549のアミノ酸配列を含む。典型的な例では、HLE改変は重鎖定常領域で起こり、EUシステムに従って番号付けされた以下の変異の1つ以上を含む:L309D、Q311H及びN434S。典型的な例では、抗体は、L309D、Q311H及びN434Sのうちの1つ、2つ又は3つすべてを含む。典型的な例では、抗体は、L309D、Q311H及びN434Sの3つすべてを含む。例示的な態様では、重鎖定常領域は、配列番号544又は配列番号546又は配列番号548のアミノ酸配列を含む。
【0084】
例示的な態様では、抗体はSEFL2-2修飾及びHLE修飾を含む。いくつかの例では、HLE改変は、M252Y、S254T、及びT256Eのうちの1つ又は2つ又は3つすべてを含む。例示的な態様では、重鎖定常領域は、配列番号551又は配列番号553又は配列番号555のアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、HLE修飾は、L309D、Q311H及びN434Sのうちの1つ又は2つ又は3つすべてを含む。例示的な態様では、重鎖定常領域は、配列番号550又は配列番号552又は配列番号554のアミノ酸配列を含む。例示的な態様では、重鎖は、以下に記載されるような電荷対変異を更に含む。
【0085】
一般に、抗体のC末端リジンは、発現中にカルボキシペプチダーゼによる切断を受ける。C末端Lysを欠く重鎖定常領域は、カルボキシペプチダーゼが抗体の重鎖に作用するのを有利に妨げる。例示的な態様では、抗体は、C末端Lysを欠く重鎖定常領域を含み、配列番号262のアミノ酸配列を含むペプチドなどのリンカーを更に含む。
【0086】
例示的な態様では、非対称多重特異性抗体が1つのIL-21ムテインのみを含む場合、抗体のFcは、2つの重鎖(IL-21ムテインに融合した1つの重鎖及びIL-21ムテインを欠く1つの重鎖)のヘテロ二量体化を駆動するように設計された修飾を含む。そのような修飾として、ノブ-イントゥ-ホール(knobs-into-holes)、DuoBody、Azymetric、電荷対、HA-TF、SEEDbody、及び異なるプロテインA親和性を有する修飾などのFc変異が挙げられる。例えば、Spiess et al.,Molecular Immunology,67(2,Part A),2015,pp.95-106を参照されたい。ノブ-イントゥ-ホール(knobs-into-holes)変異は、第1の重鎖にT366Wを含み、第2の重鎖にT366S、L368A及び/又はY407Vを含む。例えば、Ridgway et al.,Protein Eng.,9(1996),pp.617-621;及びAtwell et al.,J.Mol.Biol.,270 (1997),pp.26-35を参照されたい。DuoBody変異は、第1の重鎖にF405Lを含み、第2の重鎖にK409Rを含む。例えば、Labrijn et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,110(2013),pp.5145-5150を参照されたい。Azymetric変異は、第1の重鎖にT350V、L351Y、F405A、及び/又はY407Vを含み、第2の重鎖にT350V、T366L、K392L、及び/又はT394Wを含む。例えば、Von Kreudenstein et al.,mAbs,5(2013),pp.646-654を参照されたい。HA-TF変異は、第1の重鎖にS364H及び/又はF405Aを含み、第2の重鎖にY349T及び/又はT394Fを含む。例えば、Moore et al.,mAbs,3(2011),pp.546-557を参照されたい。SEEDbody変異は、第1の重鎖にIgG/Aキメラ変異を含み、第2の重鎖にIgG/Aキメラ変異を含む。例えば、Davis et al.,Protein Eng.Des.Sel.,23(2010),pp.195-202を参照されたい。プロテインA親和性が異なる変異は、一方の重鎖にH435Rを含み、他方の重鎖には変異がない。例えば、米国特許第8,586,713号明細書を参照されたい。
【0087】
特定の例では、変異は電荷対変異である。以下は、EUシステムに従って番号付けされたそのような電荷対変異の例である。電荷対変異としては、第1の重鎖におけるK409Dと第2の重鎖におけるD399K、第1の重鎖におけるK392Dと第2の重鎖におけるE356K、又は第1の重鎖におけるK409D及びK392Dの両方と第2の重鎖におけるD399K及びE356Kの両方(後者は本明細書では「V1」として示される)が挙げられる。例えば、Gunasekaran et al.,J Biol Chem 285:19637-19646(2010)を参照されたい。別の特定の例では、電荷対変異として、第1の重鎖におけるK439D、K392D及びK409Dと第2の重鎖におけるE356K及びD399K(本明細書では「V103」と表記する)が挙げられる。更に別の特定の例では、電荷対変異として、第1の重鎖におけるK360E、K370E、K392E及びK409Dと第2の重鎖におけるE357K及びD399K(本明細書では「V131」と表記する)が挙げられる。電荷対変異としては、また、第1の重鎖におけるK370Dと第2の重鎖におけるE357K、又は第1の重鎖におけるK409D、K392D、及びK370Dの3つすべてと第2の重鎖におけるD399K、E357K、及びE356Kの3つすべて(後者は本明細書では「V4」として示される)を挙げることができる。更なる電荷対変異としては、第1の重鎖におけるD221E、P228E及び/又はL368Eと第2の重鎖におけるD221R、P228R及び/又はK409Rも挙げられる。例えば、Strop et al.,J.Mol.Biol.,420(2012),pp.204-219を参照されたい。
【0088】
非対称多重特異性抗体がただ1つのIL-21ムテインを含み(すなわち、非対称多重特異性抗体はIL-21ムテインモノマーを含む)、重鎖がV1電荷対変異を含む実施形態では、IL-21ムテインは、K409D及びK392D変異を含む重鎖に結合し得(例えば、IL-21ムテインは、配列番号294、296又は298を含む重鎖に結合する)、又はD399K及びE356K変異を含む重鎖に結合し得る(例えば、IL-21ムテインは、配列番号295、297又は299を含む重鎖に結合する)。特定の実施形態では、IL-21ムテインは、D399K及びE356K変異を含有する重鎖に結合している。
【0089】
非対称多重特異性抗体がただ1つのIL-21ムテインを含み(すなわち、非対称多重特異性抗体はIL-21ムテインモノマーを含む)、重鎖がV4電荷対変異を含む実施形態では、IL-21ムテインは、K409D、K392D及びK370D変異を含む重鎖に結合し得(例えば、IL-21ムテインは、配列番号288、290又は292を含む重鎖に結合する)、又はD399K、E357K及びE356K変異を含む重鎖に結合し得る(例えば、IL-21ムテインは、配列番号289、291又は293を含む重鎖に結合する)。特定の実施形態では、IL-21ムテインは、D399K、E357K及びE356K変異を含有する重鎖に結合している。
【0090】
非対称多重特異性抗体がただ1つのIL-21ムテインを含み(すなわち、非対称多重特異性抗体はIL-21ムテインモノマーを含む)、重鎖がV103電荷対変異を含む実施形態では、IL-21ムテインは、K439D、K392D及びK409D変異を含む重鎖に結合し得(例えば、IL-21ムテインは、配列番号472、474又は476を含む重鎖に結合する)、又はE356K及びD399K変異を含む重鎖に結合し得る(例えば、IL-21ムテインは、配列番号473、475又は477を含む重鎖に結合する)。特定の実施形態では、IL-21ムテインは、E356K及びD399K変異を含有する重鎖に結合している。
【0091】
非対称多重特異性抗体がただ1つのIL-21ムテインを含み(すなわち、非対称多重特異性抗体はIL-21ムテインモノマーを含む)、重鎖がV131電荷対変異を含む実施形態では、IL-21ムテインは、K360E、K370E、K392E及びK409D変異を含む重鎖に結合し得(例えば、IL-21ムテインは、配列番号478、480又は482を含む重鎖に結合する)、又はE357K及びD399K変異を含む重鎖に結合し得る(例えば、IL-21ムテインは、配列番号479、481又は483を含む重鎖に結合する)。特定の実施形態では、IL-21ムテインは、E357K及びD399K変異を含有する重鎖に結合している。
【0092】
例示的な態様では、非対称多重特異性抗体の一方又は両方の重鎖は、ペプチドリンカー(例えば、配列番号262)、SEFL若しくはSEFL2-2変異、HLE修飾、クリップC末端Lys、電荷対変異、又はそれらの任意の組み合わせを含む定常領域を含む。典型的な例では、非対称多重特異性抗体の一方又は両方の重鎖は、配列番号265、266、267、282、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、296、297、298、299、300、301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、311及び472~495のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む定常領域を含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、非対称多重特異性抗体は、以下からなる群から選択される免疫チェックポイント経路のタンパク質に結合する抗体に結合した単一のIL-21ムテインを含む。CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、B7-H3、B7-H4、CEACAM-1、TIGIT、LAG3、CD112、CD112R、CD96、TEV13、BTLA、又は共刺激受容体:ICOS、OX40、41BB、CD27、GITR。
【0094】
関連する実施形態では、抗体は抗PD-1抗体である。適切なPD-1抗体は当技術分野で公知であり、ニボルマブ(BMS-936558)、ペンブロリズマブ(MK-3475)、BMS936558、BMS-936559、TSR-042(Tesaro)、ePDR001(Novartis)、及びピジリズマブ(CT-011)、並びに参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2019/140196号パンフレットに開示されている抗PD-1抗体のいずれかが挙げられるが、これらに限定されない。様々な例では、抗PD-1抗体は、(a)配列番号312、322、332、342、352、362、372及び382からなる群より選択される重鎖(HC)相補性決定領域(CDR)1アミノ酸配列、(b)配列番号313、323、333、343、353、363、373及び383からなる群から選択されるHC CDR2アミノ酸配列、(c)配列番号314、324、334、344、354、364、374及び384からなる群から選択されるHC CDR3アミノ酸配列、(d)配列番号315、325、335、345、355、365、375及び385からなる群から選択される軽鎖(LC)CDR1アミノ酸配列、(e)配列番号316、326、336、346、356、366、376及び386からなる群から選択されるLC CDR2アミノ酸配列、(f)配列番号317、327、337、347、357、367、377及び387からなる群から選択されるLC CDR3アミノ酸配列、又は(g)(a)~(f)のうちの任意の2つ、3つ、4つ、5つ又は6つの組み合わせ、を含む。いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体タンパク質産物は、表2によるHC CDR1、HC CDR2、HC CDR3、LC CDR1、LC CDR2、LC CDR3を含む。
【0095】
【表2】
【0096】
別の実施形態では、抗PD-1抗体は、それぞれが配列番号385、386及び387のアミノ酸配列を含むLC CDR1、LC CDR2及びLC CDR3をそれぞれ含む2つの軽鎖と、それぞれが配列番号382、383及び384のアミノ酸配列を含むHC CDR1、HC CDR2及びHC CDR3をそれぞれ含む2つの重鎖とを含む。関連する一実施形態では、各軽鎖可変領域は配列番号389のアミノ酸配列を含み、各重鎖可変領域は配列番号388のアミノ酸配列を含む。関連する一実施形態では、各軽鎖は配列番号391のアミノ酸配列を含み、各重鎖は配列番号390のアミノ酸配列を含む。
【0097】
いくつかの実施形態では、非対称多重特異性抗体は、抗PD-1抗体の2つの抗体重鎖の一方のC末端に結合したIL-21ムテインを含む抗PD1抗体である。いくつかの実施形態では、単一のIL-21ムテインは、抗PD-1抗体の2つの抗体重鎖のうちの一方のFcに結合している。いくつかの実施形態では、単一のIL-21ムテインは、抗PD-1抗体のFcに直接結合しており、例えば、単一のIL-21ムテインは、リンカーを伴わずに抗PD-1抗体のFcに結合している。いくつかの実施形態では、単一のIL-21ムテインは、リンカー(例えば、配列番号262を含むペプチドリンカー)により抗PD-1抗体のFcに結合しており、例えば、ペプチドリンカーは、単一のIL-21ムテインを抗PD-1抗体のFcに接続する。
【0098】
いくつかの実施形態では、非対称多重特異性抗体は、それぞれが配列番号391のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖と、配列番号501~506のいずれか1つのアミノ酸配列を含むIL-21ムテインに結合した単一重鎖と、配列番号556~558のいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖とを含む。いくつかの実施形態では、非対称多重特異性抗体は、それぞれが配列番号391のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖と、配列番号556のアミノ酸配列を含む1つの重鎖と、配列番号501のアミノ酸配列を含むIL-21ムテインに結合した1つの重鎖とを含む。いくつかの実施形態では、非対称多重特異性抗体は、それぞれが配列番号391のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖と、配列番号557のアミノ酸配列を含む1つの重鎖と、配列番号502のアミノ酸配列を含むIL-21ムテインに結合した1つの重鎖とを含む。いくつかの実施形態では、非対称多重特異性抗体は、それぞれが配列番号391のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖と、配列番号558のアミノ酸配列を含む1つの重鎖と、配列番号503のアミノ酸配列を含むIL-21ムテインに結合した1つの重鎖とを含む。いくつかの実施形態では、非対称多重特異性抗体は、それぞれが配列番号391のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖と、配列番号556のアミノ酸配列を含む1つの重鎖と、配列番号504のアミノ酸配列を含むIL-21ムテインに結合した1つの重鎖とを含む。いくつかの実施形態では、非対称多重特異性抗体は、それぞれが配列番号391のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖と、配列番号557のアミノ酸配列を含む1つの重鎖と、配列番号505のアミノ酸配列を含むIL-21ムテインに結合した1つの重鎖とを含む。いくつかの実施形態では、非対称多重特異性抗体は、それぞれが配列番号391のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖と、配列番号558のアミノ酸配列を含む1つ重鎖と、配列番号506のアミノ酸配列を含むIL-21ムテインに結合した1つの重鎖とを含む。
【0099】
別の実施形態では、抗PD-1抗体は、それぞれが配列番号365、366及び367のアミノ酸配列を含むLC CDR1、LC CDR2及びLC CDR3をそれぞれ含む2つの軽鎖と、それぞれが配列番号362、363及び364のアミノ酸配列を含むHC CDR1、HC CDR2及びHC CDR3をそれぞれ含む2つの重鎖とを含む。関連する一実施形態では、各軽鎖可変領域は配列番号369のアミノ酸配列を含み、各重鎖可変領域は配列番号368のアミノ酸配列を含む。関連する一実施形態では、各軽鎖は配列番号371のアミノ酸配列を含み、各重鎖は配列番号370のアミノ酸配列を含む。
【0100】
いくつかの実施形態では、非対称多重特異性抗体は、それぞれが配列番号371のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖と、配列番号513~518のいずれか1つのアミノ酸配列を含むIL-21ムテインに結合した単一重鎖と、配列番号559~561のいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖とを含む。いくつかの実施形態では、非対称多重特異性抗体は、それぞれが配列番号371のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖と、配列番号559のアミノ酸配列を含む1つ重鎖と、配列番号513のアミノ酸配列を含むIL-21ムテインに結合した1つの重鎖とを含む。いくつかの実施形態では、非対称多重特異性抗体は、それぞれが配列番号371のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖と、配列番号560のアミノ酸配列を含む1つ重鎖と、配列番号514のアミノ酸配列を含むIL-21ムテインに結合した1つの重鎖とを含む。いくつかの実施形態では、非対称多重特異性抗体は、それぞれが配列番号371のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖と、配列番号561のアミノ酸配列を含む1つ重鎖と、配列番号515のアミノ酸配列を含むIL-21ムテインに結合した1つの重鎖とを含む。いくつかの実施形態では、非対称多重特異性抗体は、それぞれが配列番号371のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖と、配列番号559のアミノ酸配列を含む1つ重鎖と、配列番号516のアミノ酸配列を含むIL-21ムテインに結合した1つの重鎖とを含む。いくつかの実施形態では、非対称多重特異性抗体は、それぞれが配列番号371のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖と、配列番号560のアミノ酸配列を含む1つ重鎖と、配列番号517のアミノ酸配列を含むIL-21ムテインに結合した1つの重鎖とを含む。いくつかの実施形態では、非対称多重特異性抗体は、それぞれが配列番号371のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖と、配列番号561のアミノ酸配列を含む1つ重鎖と、配列番号518のアミノ酸配列を含むIL-21ムテインに結合した1つの重鎖とを含む。
【0101】
本発明は、ムテインを含む組換え非対称多重特異性抗体の製品品質を調節するための方法であって、a)非対称多重特異性抗体を発現する同じ細胞株をそれぞれ接種した少なくとも2つの細胞培養物を確立する工程と、b)単一の温度からなる第1の温度レジームで少なくとも1つの細胞培養物を培養し、第2の温度レジームで少なくとも1つの細胞培養物を培養する工程と、c)各温度レジームにおける細胞培養物中の少なくとも1つの製品関連不純物を比較する工程と、d)不対合又は誤対合長重鎖を含む少なくとも1つの製品関連不純物の発現を低下させる温度レジームを選択する工程と、を含み、回収した細胞培養物中の長重鎖と短重鎖の比の不均衡に起因する少なくとも1つの製品関連不純物の量が、培養中のある時点で32℃~34℃の温度に曝された細胞培養物からの回収物中の同じ製品関連不純物の量と比較して減少する、方法を提供する。
【0102】
本発明は、細胞培養中に細胞によって発現される抗PD-1抗体の2つの抗体重鎖のうちの1つのC末端に結合したIL-21ムテインを含む非対称多重特異性抗PD-1抗体の製品品質を調節するための方法であって、a)抗体を発現する細胞株を接種した細胞培養物を確立する工程と、培養期間中、36±1℃で細胞を培養する工程と、抗体を回収する工程とを含み、培養中のある時点で32℃~34℃の温度に曝された細胞培養物からの回収物中の同じ製品関連不純物の量と比較して、回収した細胞培養物中の長重鎖と短重鎖の比の不均衡に起因する少なくとも1つの製品関連不純物の量が減少する、方法を提供する。
【0103】
本発明は、非対称多重特異性抗体を発現するクローン由来培養物から細胞株を確立するための方法であって、a)非対称多重特異性抗体をコードする遺伝子で細胞を形質転換する工程と、b)非対称多重特異性抗体を発現する少なくとも1つの単一の安定に形質転換された細胞を単離し、クローン由来培養物を確立する工程と、c)1つ以上のクローン由来培養物から少なくとも2つの細胞培養物を確立する工程と、d)各クローン由来培養物からの少なくとも1つの細胞培養物を第1の温度レジームで培養し、各クローン由来培養物からの少なくとも1つの細胞培養物を第2の温度レジームで培養する工程と、e)単一の温度からなる第1の温度レジームで少なくとも1つの細胞培養物を培養し、第2の温度レジームで少なくとも1つの細胞培養物を培養する工程と、f)各温度レジームで細胞によって産生される長重鎖と短重鎖のモル比を比較する工程と、g)バランスのとれた又はより低い長重鎖と短重鎖のモル比を生じさせた少なくとも1つのクローン由来培養物を選択する工程と、h)そのクローン由来培養物から細胞株を確立する工程とを含む、方法を提供する。
【0104】
本発明は、単離され、精製された組換え非対称多重特異性抗体を産生するための方法であって、a)非対称多重特異性抗体を発現する少なくとも1つの単一の安定にトランスフェクトされた細胞を単離し、クローン由来培養物を確立する工程と、b)1つ以上のクローン由来培養物から少なくとも2つの細胞培養物を確立する工程と、c)各クローン由来培養物からの少なくとも1つの細胞培養物を単一の温度を含む第1の温度レジームで培養し、各クローン由来培養物からの少なくとも1つの細胞培養物を第2の温度レジームで培養する工程と、d)各温度レジームで培養された細胞によって産生された、不対合又は誤対合長重鎖を含む少なくとも1つの製品関連不純物の量を比較する工程と、e)製品関連不純物の産生を調節した細胞培養物を選択する工程と、f)選択されたクローン由来培養物から非対称多重特異性抗体を発現する細胞株を確立する工程と、g)非対称多重特異性抗体を発現する細胞株をバイオリアクターに接種する工程と、h)製品関連不純物の産生を調節した温度レジームで非対称多重特異性抗体を発現するように宿主細胞を培養する工程と、i)細胞培養物から組換え非対称多重特異性抗体を回収する工程と、j)1つ以上のクロマトグラフィー単位操作によって組換え多重特異性抗体を処理する工程と、k)単離され、精製された組換え非対称多重特異性抗体を得る工程と、を含む方法を提供する。一実施形態では、上記の方法に従って作製された、単離され、精製された組換え非対称多重特異性抗体が提供される。一実施形態では、上記の方法に従って作製された、単離され、精製された組換え非対称多重特異性抗体を含む医薬組成物が提供される。
【0105】
本明細書では、細胞培養期間を延長し、タンパク質分泌レベルの追加の測定値を収集し、低温条件下で実行される搬出手順中の細胞二次汚染のリスクを最小限に抑えることを可能にするために、1つ以上の温度シフトを介してナノ流体チップのナノ流体チャンバ内の細胞増殖を制御するための方法も提供される。モノクローナル抗体、多重特異性抗体、非対称タンパク質などの組換えタンパク質を発現する単一細胞をナノ流体チップ上に置き、培養期間中一定温度を維持する定常温度培養、又は第1の温度条件での最初のインキュベーション後に1つ以上のより低い温度への温度シフトを適用する二相性培養に供する。温度低下は、増殖阻害をもたらし、細胞の過剰増殖を防止し、細胞二次汚染リスクを低減し、長期培養を可能にする一方で、組換えタンパク質産生プロファイルを変化させた。
【0106】
この方法は、所望の治療用生物製剤の分泌について増殖及び評価される数千のクローン由来細胞株をスクリーニングするためにナノ流体細胞培養物を利用する。一実施形態では、ナノ流体細胞培養システムは、数千のクローン細胞株の単離を可能にするナノ流体チップを利用する完全に統合されたナノ流体細胞培養システムであるBeacon(登録商標)Optofludicシステム(Berkeley Lights,Inc.、エメリービル、カリフォルニア州)である。Beacon(登録商標)Optofludicプラットフォームは、細胞株開発ワークフローに適しており、単一の細胞又は少数の細胞レベルでの増殖及び所望の分泌プロファイルの評価を可能にする。細胞をナノ流体チップのナノ流体チャンバにロードし、組換えタンパク質分泌について、培養とアッセイを同時に行うことができる。候補クローンは、所望の増殖及び分泌プロファイルに基づいて選択され、チップから搬出され、典型的なスケールアップワークフローに供される。本開示の方法と共に使用するための更なる単一細胞選別及び分析プラットフォームも企図される。一実施形態では、リソグラフィベースのマイクロアレイ又はナノウェル支援細胞パターニングプラットフォーム(Love et al,Nat.Biotechnol.,24(6)703(2006)、及びOzkumur et al.,Materials Views,11(36),4643-4650(2015))が企図される。
【0107】
本明細書で使用される場合、「ナノ流体チップのナノ流体チャンバ」は、単一の細胞を単離することができるナノ流体デバイスの一部又は一セクションを指す。例として、ナノ流体チャンバは、本明細書に記載のBerkeley LightのBeacon(登録商標)技術プラットフォームに関連するNanoPen(商標)チャンバであり得る。いくつかの実施形態では、ナノ流体チップ又はデバイスは、各々が単一の細胞を単離することができる数百又は数千の個々のチャンバを含む。いくつかの実施形態では、ナノ流体デバイス又はチップは、1758個のチャンバ、3,500個のチャンバ、11,000個のチャンバ、14,000個のチャンバ、又は20,000個のチャンバを含む。そのようなナノ流体チップは当技術分野で公知であり、市販されている、BLI OptoSelect(商標)チップ、BLI OptoSelect(商標)チップ1750b、BLI OptoSelect(商標)チップ3500、BLI OptoSelect(商標)チップ11k、BLI OptoSelect(商標)チップ14K、BLI OptoSelect(商標)チップ20k。
【0108】
本方法を使用して選択された生体分子を生成する方法も本開示によって企図される。例えば、一実施形態では、本方法の条件下で増殖させた生体分子を、96ウェルプレート、12ウェルプレート又は24ウェルプレートなどのマルチウェルプレートに搬出する。組換えタンパク質に対する定常温度及びシフト温度の影響を分析し、早期クローン選択を支援するために使用する。所望の特性及び製品品質特性を有する組換えタンパク質を分泌する細胞株を単離し、容器内での組換えタンパク質の産生を可能にする条件下及び本明細書に記載の条件下で培養するために容器に移す。
【0109】
本発明は、ナノ流体チップのナノ流体チャンバ内の細胞の増殖を制御するための方法であって、(a)ナノ流体チップのナノ流体チャンバ内に単一細胞を単離する工程であって、前記細胞が組換えタンパク質を発現することができる発現構築物を含む、工程と、(b)細胞を第1の温度で培養する工程と、(c)所定の時点で、細胞を第2の温度で培養する工程と、(d)細胞をナノ流体チャンバから培養容器に搬出することとを含む、方法を提供する。一実施形態では、搬出時の1チャンバあたりの細胞数は、培養期間中、一定温度で同様の条件下で培養した単一細胞由来の細胞株と比較して少ない。
【0110】
本発明はまた、ナノ流体チップのナノ流体チャンバ内で増殖させた細胞の搬出中の細胞二次汚染を最小限に抑えるための方法であって、(a)ナノ流体チップのナノ流体チャンバ内に単一細胞を単離する工程であって、前記細胞が組換えタンパク質を発現することができる発現構築物を含む、工程と、(b)細胞を第1の温度で培養する工程と、(c)所定の時点で、細胞を第2の温度で培養する工程と、(d)細胞をナノ流体チャンバから、搬出手順中に適用されるより低い温度設定で培養容器内に搬出する工程とを含む、方法を提供する。搬出時の1チャンバあたりの細胞数は、培養期間中、一定温度で同様の条件下で培養された単一細胞と比較して少ない。
【0111】
本発明は更に、ナノ流体チップのナノ流体チャンバ内で増殖させた細胞のクローン選択を改善する方法であって、(a)ナノ流体チップのナノ流体チャンバ内に単一細胞を単離する工程であって、前記細胞が組換えタンパク質を発現することができる発現構築物を含む、工程と、(b)細胞を第1の温度で培養する工程と、(c)培養の温度を培養の3日目以降に第2の温度まで低下させる工程と、(d)温度シフトの少なくとも1から4日後にナノ流体チャンバから細胞を搬出する工程と、を含む方法を提供する。
【0112】
一実施形態では、ナノ流体チャンバから細胞を搬出する工程は、温度シフトの少なくとも2~4日後である。一実施形態では、ナノ流体チャンバから細胞を搬出する工程は、温度シフトの少なくとも3~4日後である。一実施形態では、ナノ流体チャンバから細胞を搬出する工程は、温度シフトの少なくとも2~3日後である。一実施形態では、ナノ流体チャンバから細胞を搬出する工程は、温度シフトの少なくとも1~2日後である。一実施形態では、ナノ流体チャンバから細胞を搬出する工程は、温度シフトの少なくとも1、2、3、又は4日後である。一実施形態では、ナノ流体チャンバから細胞を搬出する工程は、温度シフトの少なくとも1日後である。一実施形態では、ナノ流体チャンバから細胞を搬出する工程は、温度シフトの少なくとも2日後である。一実施形態では、ナノ流体チャンバから細胞を搬出する工程は、温度シフトの少なくとも3日後である。一実施形態では、ナノ流体チャンバから細胞を搬出する工程は、温度シフトの少なくとも4日後である。
【0113】
一実施形態では、第1の温度は35℃~37℃から選択される。一実施形態では、第1の温度は35℃、36℃、又は37℃である。一実施形態では、第1の温度は35℃である。一実施形態では、第1の温度は36℃である。一実施形態では、第1の温度は37℃である。
【0114】
一実施形態では、第2の温度は、28℃~34℃から選択される。一実施形態では、第2の温度は、28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、又は34℃±0.5℃から選択される。一実施形態では、第2の温度は28℃から選択される。一実施形態では、第2の温度は29℃から選択される。一実施形態では、第2の温度は30℃から選択される。一実施形態では、第2の温度は31℃から選択される。一実施形態では、第2の温度は32℃から選択される。一実施形態では、第2の温度は33℃から選択される。一実施形態では、第2の温度は34℃から選択される。
【0115】
一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約1℃~約9℃低い。一実施形態では、第1の温度は36℃であり、第2の温度は32℃~32.5℃である。
【0116】
一実施形態では、所定の時点は、培養の3日目~5日目である。一実施形態では、所定の時点は、培養の3日目~4日目である。一実施形態では、所定の時点は、培養の4日目~5日目である。一実施形態では、所定の時点は、培養の3日目、4日目又は5日目である。一実施形態では、所定の時点は培養の3日目である。一実施形態では、所定の時点は培養の4日目である。一実施形態では、所定の時点は培養の5日目である。
【0117】
一実施形態では、搬出は培養の6日目~8日目である。一実施形態では、搬出は培養の6日目~7日目に行われる。一実施形態では、搬出は培養の7日目~8日目に行われる。一実施形態では、搬出は培養の6日目、7日目又は8日目に行われる。一実施形態では、搬出は培養の6日目に行われる。一実施形態では、搬出は培養の7日目に行われる。一実施形態では、搬出は培養の8日目に行われる。
【0118】
一実施形態では、ナノ流体チップは、1758個のチャンバ、3,500個のチャンバ、11,000個のチャンバ、14,000個のチャンバ、又は20,000個のチャンバを含む。
【0119】
一実施形態では、培養容器はマルチウェルプレートである。一実施形態では、温度シフトの前後のタンパク質分泌プロファイルを比較する。一実施形態では、ナノ流体チップは1758個のチャンバを含む。
【0120】
「培養する」又は「培養」とは、多細胞生物又は組織の外部で細胞を増殖及び繁殖させることを意味する。哺乳類細胞に好適な培養条件は、当該技術分野において公知である。細胞培養培地及び組織培養培地は、互換的に使用され、インビボでの細胞培養中の宿主細胞の増殖に好適な培地を指す。典型的に、細胞培地は、緩衝液、塩類、エネルギー源、アミノ酸、ビタミン及び微量必須元素を含む。培養における適切な宿主細胞の増殖を助けることができる任意の培地が使用され得る。特定の培養宿主細胞における細胞増殖、細胞生存率、及び/又は組換えタンパク質産生を最大化する他の成分が更に補充され得る細胞培養培地は、市販されており、とりわけ、RPMI-1640培地、RPMI-1641培地、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、最小必須培地イーグル、F-12K培地、ハムF12培地、イスコフ改変ダルベッコ培地、マッコイ5A培地、リーボビッツL-15培地、及びEX-CELL(商標)300シリーズなどの無血清培地を含み、これらは、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション又はSAFC Biosciences、STEMCELL Technologies Inc.、及び他のベンダーから得ることができる。細胞培養培地は、無血清、無タンパク質、無増殖因子、及び/又は無ペプトン培地であり得る。細胞培養物はまた、栄養分の添加によって富栄養化されてもよく、且つその通常の推奨濃度より高い濃度で使用されてもよい。
【0121】
様々な培地製剤を、クローン選択と細胞株の発生から大規模生産細胞培養までの細胞培養のすべての段階で使用することができる。ある段階(例えば、増殖段階又は増殖期)から別の段階(例えば、産生段階又は産生期)への移行を容易にするため、及び/又は細胞培養中の条件を最適化するために、選択中に異なる培地製剤を使用することができる(例えば、灌流培養中は濃縮培地を用意し、フェドバッチ培養中は供給培地を用意する)。選択培地は、新たに形質転換された細胞に選択圧を印加するように配合することができる。増殖培地配合物は、細胞増殖を促進し、且つタンパク質発現を最小化するために使用され得る。産生培地配合物は、細胞の新たな増殖を最小限に抑えながら、目的のタンパク質の産生及び細胞の維持を促進するために使用され得る。細胞培養の産生期の期間の間に消費される供給培地、通常、栄養分及びアミノ酸などのより濃縮された成分を含有する培地は、活性培養、特に、フェドバッチ、半灌流、又は灌流様式で操作された培養を補い且つ維持するために使用され得る。そのような濃縮された供給培地は、細胞培養培地の成分の大部分を、例えば、それらの通常の量の約5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、12倍、14倍、16倍、20倍、30倍、50倍、100倍、200倍、400倍、600倍、800倍、又は更に約1000倍で含有し得る。
【0122】
細胞培養物は、バッチ、フェドバッチ、連続、半連続、灌流モード又はその中の任意の組み合わせで操作することができる。
【0123】
温度シフトは、一般に、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞培養において、培養物の性能及びタンパク質の組換え発現に影響を及ぼすために使用される。CHO細胞は、典型的には、約36℃~37℃の生理学的温度で増殖させる。約30℃~34℃の低体温条件への温度シフトを使用して、細胞増殖などの培養物の態様を制御し、組換えタンパク質の産生を改善し、収率を改善し、且つ/又は細胞生存率を維持するといったことを行う。
【0124】
更に、タンパク質産生の化学的誘導物質、例えば、カフェイン、酪酸塩、及びヘキサメチレンビスアセトアミド(HMBA)を細胞培養物に添加することができる。温度シフトがある場合、誘導物質は、温度シフトと同時に、温度シフトの前に、及び/又は温度シフトの後に添加することができる。誘導物質が温度変化の後に添加する場合は、それらを温度変化の1時間から5日後に、任意選択で温度変化の1から2日後に添加することができる。pHもまた、それ独立で、又は他の方法と組み合わせるかのいずれかで、培養中にシフトすることができる。
【0125】
宿主細胞は、懸濁液中で、又は固体基材に付着した付着形態で培養することができる。細胞は、96、24、又は6ウェル及びディープウェルプレートなどのマルチウェルプレートで培養することができる。細胞培養物は、流動床バイオリアクター、ガス透過性培養バッグ、ガス透過性バイオリアクター、中空繊維バイオリアクター、ローラーボトル、スピンチューブ、振盪フラスコ、又は撹拌タンクバイオリアクタ内で、マイクロキャリアを用いて又はそれを用いずに確立することができる。CHO細胞等の哺乳動物細胞は、100ml未満から1000ml未満の小規模にてバイオリアクター内で培養することができる。或いは、1000mlから20,000リットル超の培地を含むより大規模なバイオリアクターを用いることができる。タンパク質治療薬の臨床及び/又は商業規模のバイオ製造等の大規模な細胞培養は、細胞が所望のタンパク質を製造する間、数週間、更には数ヶ月にわたり維持され得る。
【0126】
「単位操作」という用語は、目的の組換えタンパク質を精製するプロセスの一部として実行される機能工程を指す。例えば、単位操作は、限定されないが、目的の組換えタンパク質の回収、捕捉、精製、ポリッシング、ウイルス不活化、ウイルス濾過、濃縮及び/又は製剤化などの操作における工程を含み得る。単位操作は、捕捉及びウイルス不活化工程の組み合わせなど、単一の目的又は複数の目的を達成するように設計することができる。単位操作はまた、処理工程間の保持又は保管工程を含み得る。
【0127】
組換えタンパク質を細胞培養培地から回収する。浮遊細胞からタンパク質を回収するための方法は、当該技術分野で公知であり、酸沈殿、凝集などの加速沈降、重力を使用した分離、遠心分離、音波分離、限外濾過膜、マイクロ濾過膜、タンジェント流濾過膜、代替タンジェント流濾過膜、深層濾過膜、及び砂濾過膜(alluvial filter)を使用した膜濾過を含む濾過が挙げられるが、これらに限定されない。原核生物によって発現される組換えタンパク質は、当該技術分野で公知のレドックスフォールディングプロセスを組み込んだプロセスによって、細胞質内の封入体から回収される。
【0128】
次に、回収されたタンパク質は、1つ以上の単位操作を使用して、残留している細胞培養培地、細胞抽出物、望まれない成分、宿主細胞タンパク質、不適切に発現されたタンパク質などの任意の不純物を取り除いて精製され得、又は部分的に精製され得る。「精製する」とは、組成物から少なくとも1つの不純物又は夾雑物を(部分的又は完全に)除去することによって、組成物中の非対称多重特異性抗体の純度を増加させることを意味する。多重特異性抗体の回収及び精製は、下流の単位操作、具体的にはクロマトグラフィーを伴う操作によって達成され、収率及び製品品質の目標を満たすより「均一な」非対称多重特異性抗体組成物をもたらす。
【0129】
捕捉の単位操作は、少なくとも1つの所望のタンパク質、不純物又は夾雑物と結合及び/又は相互作用する薬剤を含有する樹脂及び/又は膜を利用する捕捉クロマトグラフィーを含み得る。捕捉クロマトグラフィーの例としては、アフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)などが挙げられる。このような材料は、当技術分野で公知であり、商業的に入手可能である。アフィニティークロマトグラフィーは、Fc成分を有する目的の組換えタンパク質を単離し濃縮する最初の捕捉工程として、バイオ製造プロセスで一般的に使用されている。このようなアフィニティークロマトグラフィー材料の例としては、プロテインA、プロテインG、プロテインA/G、プロテインLなどのブドウ球菌タンパク質、基質結合捕捉機構、抗体又は抗体断片結合捕捉機構、アプタマー結合捕捉機構、及び補因子結合捕捉機構などを利用したものが挙げられる。固定化金属アフィニティークロマトグラフィーは、金属イオンに親和性を持つ、又は持つように操作されたタンパク質を捕捉するために用いることができる。アフィニティークロマトグラフィー材料は多くの業者から市販されている。例えば、MABSELECT(商標)SURE Protein A、Protein A Sepharose FAST FLOW(商標)(Cytiva、マールボロ、マサチューセッツ州)、PROSEP-A(商標)(Merck Millipore、英国)、TOYOPEARL(商標)650M Protein A(TosoHass Co.、フィラデルフィア、ペンシルバニア州)。
【0130】
中間単位操作及び/又はポリッシング単位操作では、目的のタンパク質を継続的に精製し、DNA、宿主細胞タンパク質などの夾雑物や不純物を除去;生成物固有の不純物、バリアント生成物及び凝集体、ウイルス吸着などを除去するために、様々なクロマトグラフィー法を利用する。これらのクロマトグラフィー単位操作は、目的のタンパク質が溶出液に含まれ、夾雑物及び不純物がクロマトグラフィー媒体に結合するフロースルーモード、目的のタンパク質を含有する溶液は吸着部位が専有されるまでカラム上に負荷され、固定相(関心対象のタンパク質)に対する最小の親和性を備える種が溶出され始めるフロンタル若しくはオーバーロード・クロマトグラフィーモード、又は目的のタンパク質がクロマトグラフィー媒体に結合され、夾雑物及び不純物がクロマトグラフィー媒体に通過した後、又はクロマトグラフィー媒体から洗い流された後に溶出される結合及び溶出モード、又は他の方法のいずれかで使用することができる作用物質を含有する樹脂及び/又は膜を利用する。このようなクロマトグラフィー方法の例としては、とりわけ、陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)及び陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)などのイオン交換クロマトグラフィー(IEX)、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、混合様式又は多様式クロマトグラフィー(MM)、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー(HA)、逆相クロマトグラフィー及びゲル濾過が挙げられる。
【0131】
複数のクロマトグラフィー単位操作(通常は1つ、2つ、又は3つで、それぞれが異なる機能を実行する)が、製造プロセスの要件に応じて組み合わされる。イオン交換クロマトグラフィーは、帯電した表面間の静電相互作用に基づき、差分吸着と脱着に基づいて、目的のタンパク質と不純物を分離する。「カチオン交換クロマトグラフィー」は、負に荷電し、且つ固相の上又は中を通過した水溶液中でのカチオンとの交換のための遊離カチオンを有する固相媒体上で実施されるクロマトグラフィーを指す。電荷は、1つ以上の荷電リガンドを固相に、例えば、共有結合によって付着させることによってもたらされ得る。或いは、又はこれに加えて、電荷は、(例えば、全陰電荷を有するシリカの場合と同様に)固相の固有の特性であり得る。カチオン交換クロマトグラフィーは通常、結合・溶出モードで実行され、目的の多くのタンパク質のpIが高いことによりクロマトグラフィー材料への結合が可能となる。カチオン交換クロマトグラフィーはフロースルーモードで行うこともできる。CEXクロマトグラフィーは典型的には、高分子量(HMW)夾雑物の除去、プロセス関連の不純物の除去、及び/又はウイルスクリアランスに使用される。市販のカチオン交換媒体が利用可能であり、例としては、アガロースに固定化されたスルホプロピル(SP)(例えば、SP-SEPHAROSE FAST FLOW(商標)、SP-SEPHAROSE FAST FLOW XL(商標)又はSP-SEPHAROSE HIGH PERFORMANCE(商標)、CAPTO S(商標)、CAPTO SP ImpRes(商標)、CAPTO S ImpAct(商標)(Cytiva)、FRACTOGEL-SO3(商標)、FRACTOGEL-SE HICAP(商標)、及びFRACTOPREP(商標)(EMD Merck、ダルムシュタット、ドイツ)、TOYOPEARL(登録商標)XS、TOYOPEARL(登録商標)HS(Tosh Bioscience、キング・オブ・プラシャ、ペンシルバニア州)、UNOsphere(商標)(BioRad、ハーキュリーズ、カリフォルニア州)、S Ceramic Hyper D(商標)F(Pall、ポートワシントン、ニューヨーク州)、POROS(商標)(ThermoFisher、ウォルサム、マサチューセッツ州)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0132】
アニオン交換クロマトグラフィーは、正に荷電しており、固相の上又は中を通過した水溶液中でのアニオンとの交換のための遊離カチオンを有する固相媒体上で実施されるクロマトグラフィーをいう。アニオン交換クロマトグラフィーは、典型的にはフロースルーモードで行われる。多くのタンパク質はpIが高いため、AEXクロマトグラフィー材料に結合しない。AEXクロマトグラフィーは、例えば、ウイルスクリアランスや不純物の除去に使用される。市販のアニオン交換培地が利用可能であり、例としては、アガロースに固定化されたスルホプロピル(SP)(例えば、Source 15 Q、Capto(商標)Q、Q-SEPHAROSE FAST FLOW(商標)(Cytiva)、FRACTOGEL EDM TMAE(商標)、FRACTOGEL EDM DEAE(商標)(EMD Merck社製)、TOYOPEARL Super Q(登録商標)(Tosh Bioscience)、POROS HQ(商標)、POROS XQ(商標)、(ThermoFisher)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0133】
ミックスモード又はマルチモードクロマトグラフィー(MMC)とは、イオン交換(CEX又はAEX)や疎水性相互作用等の相互作用メカニズムを組み合わせて利用する、固相媒体上で実行されるクロマトグラフィーを指す。市販のマルチモーダルクロマトグラフィー媒体が入手可能であり、Capto(商標)Adhere(Cytiva)が挙げられる。
【0134】
疎水性相互作用クロマトグラフィーとは、疎水性リガンドと目的のタンパク質表面の疎水性残基との間の相互作用を利用した固相媒体上でのクロマトグラフィーを指す。市販の疎水性相互作用クロマトグラフィー媒体としては、Phenyl Sepharose(商標)(Cytiva)、Tosoh hexyl(Tosoh Bioscience)及びCapto(商標)フェニル(Cytiva)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0135】
ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィーとは、正電荷を帯びたカルシウムと負電荷を帯びたリン酸塩を利用し、タンパク質のpIと緩衝液のpHに応じて陽イオン又は陰イオンとして作用する固相媒体上で行うクロマトグラフィーを指す。
【0136】
ウイルス夾雑物を不活化、低減、及び/又は排除することを含む単位操作は、環境及び/又は濾過を操作するプロセスを含んでもよい。ウイルスの不活化には様々な方法を採用することができ、熱不活化/低温殺菌、UV及びガンマ線照射、高強度の広域スペクトル白色光の使用、化学不活化剤、界面活性剤の添加、溶媒/界面活性剤処理などが挙げられる。洗浄剤などの界面活性剤は、膜を可溶化するため、エンベロープウイルスを特異的に不活化するのに非常に効果的であり得る。ウイルス不活化を達成するための1つの方法は、低pH(例えば、pH<4)でのインキュベーションである。低pHのウイルス不活性化の後に、ウイルスが不活性化された溶液を、次の単位操作の要件により適合するpHに再調整する中和単位操作が続き得る。また、その後に、デプス濾過などの濾過にかけられて、結果として生じる濁り又は沈殿が除去され得る。ウイルス濾過は、マイクロ濾過膜又はナノ濾過膜、例えば、旭化成(Plavona(登録商標))及びEDMミリポア(VPro(登録商標))から入手可能なものを使用して実施することができる。
【0137】
単位操作はまた、産物の濃縮を含み得、目的のタンパク質の緩衝液を原薬のバルク貯蔵のための所望の製剤緩衝液へ交換することは、限外濾過及びダイアフィルトレーション(UF/DF)のための公知の方法を使用して達成することができる。薬物製品の充填/仕上げに関連する単位操作に従うことができる。
【0138】
精製された非対称多重特異性抗体の重要な属性及び性能パラメーターは、製造中の各工程の性能に関する決定をより適切に伝えるために測定され得る。これらの重要な属性及びパラメーターは、リアルタイムで、準リアルタイムで、及び/又は事後にモニタリングされ得る。消費された培地成分(グルコースなど)、蓄積している副生成物(乳酸塩及びアンモニアなど)の代謝レベル、並びに溶存酸素含量などの細胞維持及び生存に関連するものなどの重要なパラメーターは、細胞培養中に測定することができる。比生産性、生存細胞密度、pH、重量オスモル濃度、外観、色、凝集、収率及び力価などの重要な属性は、製造プロセスにおける適切な段階中にモニタリングされ得る。モニタリング及び測定は、既知の手法及び市販の装置を使用してなされ得る。
【0139】
医薬組成物(溶液、懸濁液など)は、中性緩衝食塩水、リン酸緩衝食塩水などの緩衝液、グルコース、マンノース、スクロース若しくはデキストラン、マンニトールなどの炭水化物、タンパク質、ポリペプチド又はグリシンなどのアミノ酸、抗酸化剤、EDTA若しくはグルタチオンなどのキレート剤、アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム)、及び保存料、注射用水、食塩液、好ましくは生理学的食塩水、リンゲル液、等張性塩化ナトリウム、溶媒若しくは懸濁媒として機能できる合成モノグリセリド若しくはジグリセリドなどの不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の溶媒などの無菌希釈液、ベンジルアルコール若しくはメチルパラベンなどの抗菌剤、アスコルビン酸若しくは亜硫酸ナトリウムなどの抗酸化剤、エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤、酢酸塩、クエン酸塩若しくはリン酸塩などの緩衝液及び塩化ナトリウム若しくはデキストロースなどの等張性を調製するための作用物質のうちの1つ以上を含み得る。非経口製剤は、ガラス又はプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器又は多人数用バイアルに封入することができる。
【0140】
本願で使用する専門用語は、当該技術分野では標準的であるが、特定の用語の定義は、特許請求の範囲の意味に対して明快さ及び明確さを保証するために本明細書において提供される。単位、接頭辞及び記号は、それらのSIで認められた形式で示され得る。本明細書に記載される数値範囲は、範囲を定義する数を含み、定義された範囲内の各整数を含み、且つそれらを支持する。別段の記載がない限り、本明細書に記載の方法及び手法は、一般に、当技術分野において周知の従来の方法に従って実施され、本明細書を通して引用され、論じられる様々な一般的な参考文献やより具体的な参考文献に記載されるものである。限定するものではないが、特許、特許出願、論文、書籍及び学術論文などの、本願で引用されるすべての文献又は文献の一部は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0141】
本発明は、本発明の個々の態様の一つの説明として意図されている本明細書に記載される特定の実施形態によって範囲が限定されるものではなく、機能的に均等な方法及び構成要素が本発明の範囲内にある。本発明の実施形態において記載されるものは、本発明の他の実施形態と組み合わせることができる。実際、本明細書に示され、記載されるものに加えて本発明の様々な変更形態は、前述の説明及び添付の図面から当業者に明らかになるであろう。そのような変更形態は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
【0142】
実施された実験及び達成された結果を含む以下の実施例は、例示の目的のためにのみ提供されるものであり、添付の特許請求の範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。
【実施例
【0143】
実施例1
CHO細胞を、抗PD-1抗体の2つの抗体重鎖の一方のC末端に連結されたIL-21ムテインのコンジュゲートを含む二機能性融合タンパク質をコードするプラスミドDNAでトランスフェクトした。IL-21-抗PD-1コンジュゲートは、「短重鎖」(抗PD1重鎖)及び「長重鎖」(IL-21ムテインに連結された抗PD1重鎖)を含んでいた。重量、長さ及びアミノ酸組成は、2つの重鎖間で異なっていた。トランスフェクション後、コンジュゲートを安定に発現するプール集団を、選択増殖培地中で反復継代を通して作製した。このプールが、Trypan Blue Exclusionで測定した場合に90%を超える生存率に達し、一貫した倍加時間を維持したとき、単一細胞クローンをプールから単離した。
【0144】
単一細胞クローンを増殖させ、36℃、5%CO、相対湿度85%に維持した96ウェルプレート(Corning、コーニング、ニューヨーク州)で培養した。細胞を、所望の細胞生存率密度に達するまで継代することによって維持した。
【0145】
次いで、クローンを、3.5mlの作業容量の既知組成無血清培養培地を含む24ウェルプレート(Axygen、ユニオンシティ、カリフォルニア州)に8×10細胞/mlで接種した。プレートを36℃、5%CO、相対湿度85%に維持し、225rpmで10日間振盪し、接種後の体積の7%で、3、6、及び8日目に栄養を供給した。培養物を10日目に回収した。インプロセス試料を採取して培養条件をモニタリングした。Vi-Cell XR Cell Viability Analyzer(Beckman Coulter、インディアナポリス、インディアナ州)を用いて、生細胞密度(VCD)及び生存率(%)を求めた。グルコース、乳酸及びNH4+の濃度を、BioProfile Flex Analyzer(Nova Biomedical、ウォルサム、マサチューセッツ州)を使用して求めた。
【0146】
各培養物からの試料を、力価測定及び製品品質分析のために採取した。力価は、アフィニティークロマトグラフィー(プロテインA、Waters、ミルフォード、マサチューセッツ州)による高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定した。積算生存細胞密度(IVCD)を、培養時間に対するVCDの台形公式によって計算した。細胞比生産性(q)を、力価をIVCDで割ることによって計算した。回収材料を製品品質評価に使用した。上位4つのクローンをバイオリアクター培養のために選択した。
【0147】
上位4つのクローン(クローン1~4)を、4.4Lの作業容量の既知組成無血清培養培地で、2×7Lバイオリアクターに10E5細胞/mlで接種した。バイオリアクターを36℃、5%CO、6.90pH、315rpmに維持した。灌流を3日目に開始し、30,000個のNMWCフィルター(GE Healthcare、ウエストボロ、マサチューセッツ州)を備えた交互接線流フィルタシステム(Repligen、ウォルサム、マサチューセッツ州)を、3~6日目は0.5反応器体積/日の速度で、7~8日目は0.75反応器体積/日の速度で、9~15日目は、14日目に停止したクローン2を除いて、1.0反応器体積/日の速度で使用した。毎日の試料を採取して、24ウェルプレートについて先に説明したように培養条件をモニタリングした(例えば、pH、オスモル濃度、乳酸塩/グルコースなど)。
【0148】
培養生細胞密度(VCD)が300E5細胞/mlを超えた時点で、温度を32.5℃にシフトし、培養物を回収までその温度で維持した。クローンを、750,000個のNMWCフィルター、GE Healthcareを使用して、12日目~14日目まで回収したクローン2以外は、12日目~15日目まで回収した。培養条件及び回収した培養上清を、24ウェルプレートについて先に説明したのと同じ方法を用いてモニタリングした。
【0149】
予想外にも、より低い培養温度(32.5℃)に曝露した試料は、試験したすべてのクローンについて、長重鎖(LHC)と短重鎖(SHC)のモル比の増加を示した。
【0150】
長重鎖と短重鎖とのモル比の増加の原因を調べるために、第2の実験を行った。常時36℃で培養したクローン4と、培養中に温度シフト(36℃から32.5℃)を組み込んだ条件下で培養したクローン4の応答を調べるために、10日間のフェドバッチ培養を行った。クローン4からの細胞を、3.5mlの作業容量の既知組成無血清培養培地を含む2つの24ディープウェルプレート(Axygen、ユニオンシティ、カリフォルニア州)に8×10細胞/mlで接種した。プレートを36℃、5%CO、相対湿度85%に維持し、225rpmで振盪した。1つのプレートを32.5℃、5%CO、225rpmに温度シフトした。両方の培養物に、接種後の体積の7%で、3、6、及び8日目に栄養を供給した。両方の培養物からの細胞を10日目に回収した。先に説明したように、10日間の培養を通して分析測定を行った。次いで、回収した材料をプロテインAアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製した。
【0151】
クローン1~3からの細胞もまた、7Lバイオリアクターにおける15日間の灌流培養において試験して、全体を通して36℃の一定温度を維持した灌流条件下でクローンのタンパク質応答を調べた。7Lバイオリアクターにおける15日間灌流培養においてクローン4を試験して、温度シフト(36℃~32.5℃)を伴う灌流条件下でクローンのタンパク質応答を調べた。
【0152】
試験クローン及び対照を、既知組成無血清培養培地4400mlの作業容量で、2×7Lバイオリアクターに10E5細胞/mlで接種した。バイオリアクターを36℃、5%CO、6.90pH、315rpmに維持した。灌流を3日目に開始し、30,000個のNMWCフィルター(GE Healthcare、ウエストボロ、マサチューセッツ州)を備えた交互接線流フィルタシステム(Repligen、ウォルサム、マサチューセッツ州)を、3~6日目は0.5反応器体積/日の速度で、7~8日目は0.75反応器体積/日の速度で、9~15日目は、14日目に停止したクローン2を除いて、1.0反応器体積/日の速度で使用した。毎日の試料を採取して、先に説明したように培養条件をモニタリングした。クローン1及び3を、750,000個のNMWCフィルター、GE Healthcareを使用して、12日目~14日目まで回収したクローン2以外は、12日目~15日目まで回収した。培養条件のモニタリングを全体を通して行った。先に説明したように培養物を通して分析測定を行った。回収した物質を、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーを使用し、引き続いて陽イオン交換クロマトグラフィーを結合及び溶出モードで使用して精製した。
【0153】
フェドバッチ試料及び灌流試料の両方について、長重鎖と短重鎖のモル比を、還元キャピラリー電気泳動ドデシル硫酸ナトリウム(rCE-SDS)により求めた。非還元キャピラリー電気泳動-ドデシル硫酸ナトリウム(nrCE-SDS)によって平均プレピーク(Pre-Peak)%を求めた。サイズ排除超高速液体クロマトグラフィー(SE-UHPLC)を使用して、平均LMWの%を求めた。フェドバッチ試料及び灌流試料の両方について、長重鎖と短重鎖のモル比を、還元キャピラリー電気泳動-ドデシル硫酸ナトリウム(rCE-SDS)により求めた。
【0154】
IL-2-抗PD-1コンジュゲートを発現する細胞を32.5℃に温度シフトさせて灌流培養(P)に供した場合の長重鎖の%(LHCの%)の増加を、常時36℃でのフェドバッチ培養物(FB)(縞模様の棒)と比較した(図1Aを参照されたい)。このデータは、比の変化が温度シフトによるものであり、培養方法の切り替えによるものではないことを裏付けている。36℃から32.5℃への温度シフトを伴う灌流培養中に産生された部分的に還元された種は、下流精製において除去することができないことが見出された。プロテインAアフィニティークロマトグラフィー(左の白抜きのバー)及び陽イオン交換クロマトグラフィー(右の白抜きのバー)による精製に供した温度シフト灌流培養物(P)及びプロテインAアフィニティークロマトグラフィー(縞模様のバー)に供した恒温フェドバッチ培養物物(FB)からのプレピーク(Pre-Peak)の比較を図1Bに示す。温度シフトに供した灌流培養試料は、一定温度に供したフェドバッチ培養物試料よりも高い割合のLMWを有した(図1Cを参照されたい)。特に、過剰な長重鎖はCEX精製によって分離することができなかった。CEXプールからのnrCEX-SDSによって特徴付けられるプレピーク(Pre-Peak)不純物のクロマトグラムを図1Dに示す。灌流試料からの過剰な長重鎖種は、CEXクロマトグラフィーによって分離することができなかった。
【0155】
rCEによって特定された長重鎖と短重鎖のモル比を比較すると、両方が同じ温度レジームに供された場合、供給されたバッチ試料と灌流試料との間により良好な相関があることが示された。図2Aは、36℃から32.5℃への温度シフトで成長させた灌流試料と比較して、常時36℃で成長させたフェドバッチ培養物試料を示す。図2Bは、両方とも36℃から32.5℃への温度シフトで増殖させた灌流試料と比較したフェドバッチ培養物試料を示す。常時36℃で増殖させた両方の培養方法のデータ点は限られていたので、比較には含めなかった。
【0156】
SECによって測定されたLMWの%を比較すると、同じ温度レジームに供された場合、フェドバッチ試料と灌流試料との間により良好な相関があることが示された。図3Aは、36℃から32.5℃への温度シフトで成長させた灌流試料と比較して、常時36℃で成長させたフェドバッチ培養物試料を示す。図3Bは、両方とも36℃から32.5℃への温度シフトで増殖させた灌流試料と比較したフェドバッチ培養物試料を示す。常時36℃で増殖させた両方の培養方法のデータ点は限られていたので、比較には含めなかった。
【0157】
培養物を36℃から32.5℃への温度シフトに供した場合、36℃の一定温度で増殖させた培養物と比較して、長重鎖(LHC)と短重鎖(SHC)のモル比の予想外のシフトが見られた(図4A、36℃の一定温度、黒色のバー、36℃から32.5℃への温度シフト、灰色のバー)。この不均衡は、下流精製(プロテインAアフィニティークロマトグラフィー及び陽イオン交換クロマトグラフィー)及び製品品質に影響を及ぼした。より低い温度(32.5℃)での培養は、nrCEによって測定されるように、短重鎖によって形成された不純物の減少(プレピーク(Pre-Peak)6)及び長重鎖によって形成された不純物の増加(プレピーク(Pre-Peak)7)をもたらした。短重鎖不純物はプロテインA及びCEXクロマトグラフィー精製によって除去することができたが(図4B)、長重鎖不純物は同じ精製システムによって除去することが困難であった(図4C)。プロテインAアフィニティークロマトグラフィー(黒色のバー)及び陽イオン交換クロマトグラフィー(灰色のバー)。
【0158】
この結果は、細胞培養温度が、精製プロセスによって除去された不純物に影響を及ぼした2つの重鎖の比に影響を及ぼすことによって、製品品質に影響を及ぼし得ることを示した。不純物の特性に応じて、異なるレベルの純度を達成することができた。この実施例では、より高い細胞培養温度でより高い純度が達成された。
【0159】
これらの結果は、クローンをスクリーニングし、得られた細胞株が遭遇すると予想される同じ温度レジームで選択した場合、IL-2-抗PD-1コンジュゲートの製品品質の間により良好な相関があることを示した。長重鎖と短重鎖のモル比は、培養物の温度に影響され、より低い温度では長重鎖の発現が増加することが分かった。長重鎖と短重鎖の比の増加は、製品関連不純物の形成及び種類に影響を与えた。長重鎖を含む不純物は、短重鎖を含む不純物と比較して、下流の精製工程で取り除くことが驚くほど困難であることが分かった。この長重鎖と短重鎖の比の変化は、精製、活性、製品品質、並びに製造プロセス全体の堅牢性に影響を及ぼした。
【0160】
実施例2:
この実験では、2つの重鎖、すなわち、より長いアミノ酸配列の対を有する「長重鎖」及びより短いアミノ酸配列を有する「短重鎖」を含む非対称二重特異性抗体である二重特異性Aについて、クローン選択中の温度の影響及び転写レベルでの製品品質への影響を調べた。
【0161】
フェドバッチ培養
二重特異性抗体(二重特異性A)を発現するクローンを、最初のクローン細胞スクリーニング(クローン1)からのクローンの群から選択した。振盪フラスコ内で10日間のフェドバッチクローンスクリーニングを実施して、一定温度(36℃)で培養した場合のクローンの性能を温度シフト(36℃から32.5℃)を伴う培養に対して比較するスクリーニングプロトコルでクローンの細胞培養中の転写物及びタンパク質応答を調べた。
【0162】
250mlの作業容量の既知組成無血清培養培地を含む1L振盪フラスコを開始した。フラスコに8×10細胞/mlで接種した。振盪フラスコを36℃、5%CO2、160rpmで7日間維持し、接種後の体積の7%で、3及び6日目に栄養を供給した。
【0163】
7日目に、培養物を、60mlの作業容量の既知組成無血清培養培地を含む2つの250ml振盪フラスコに分割した。一方のフラスコを36℃に維持し、もう一方のフラスコの培養温度を32.5℃に下げた。両方のフラスコを5%COで、160rpmで撹拌しながら10日目まで培養した。培養物に、接種後の体積の7%で8日目に栄養を供給した。先の実施例で説明したように、10日間の培養を通して分析測定を行った。Nova CDV(Nova Biomedical)を使用して、回収時に積算生細胞密度(IVCD)を測定した。HPLC分析を使用して回収時に力価を測定した。製造業者の推奨に従ってddPCRを用いて転写物比を求めた(DROPLET DIGITAL(商標)PCR(ddPCR(商標))システム(Bio Rad、ハーキュリーズ、カリフォルニア州))。長重鎖と短重鎖のモル比は、rCE-SDSによって求めた。
【0164】
長重鎖(LHC)と短重鎖(SHC)のモル比の増加は、32.5℃に温度シフトした試料で見られ、これは、低温では短重鎖と比較して長重鎖が優先的に発現することを示した(図5A、36℃(黒色のバー)、32.5℃(灰色のバー))。これは、36℃で培養した試料中のSECによって測定された高分子量(HMWの%)の減少(図5B)及び温度シフトした試料中のSECによって測定されたLMWの%の増加と相関していた(図5Cを参照されたい)。HMW不純物は短重鎖によって形成され、LMW不純物は長重鎖によって形成された。積算生細胞密度は比較的変化せず、力価は2つの培養条件間で同等であった。長重鎖と短重鎖の転写物比もまた、より低い温度で増加した。
【0165】
擬似灌流培養
二重特異性Aを発現する2つのクローン(クローン2及びクローン3)を最初のクローン細胞スクリーニングからのクローンの群から選択し、バイオリアクターにおける高細胞密度灌流培養を模倣する培養プロセスにおける温度変化に対する転写物及びタンパク質応答時間を調べるために小規模擬似灌流培養において試験した。クローンを一定温度(36℃)で培養し、また温度シフト(36℃から32.5℃)を用いて培養した。
【0166】
各クローンについて、2つの24ディープウェルプレートに200×10細胞/ml/ウェルを接種した。0日目に、プレートを36℃、5%COでインキュベートした。1日目に、各クローンからの一方のプレートについて温度を32.5℃に下げる一方で、各クローンのもう一方のプレートを36℃に維持した。プレートを3日目に回収した。既知組成無血清培地を使用して毎日培地交換を実施し、使用済み培地を除去して、新鮮な培地を添加して灌流培養を模倣した。分析測定を毎日行った。
【0167】
36℃から32.5℃への温度シフト24時間後の低温における長重鎖(LHC)と短重鎖(SHC)のモル比は、36℃の一定温度に保持した培養物と比較して、9%(クローン2)及び13%(クローン3)増加した(図6A、36℃は黒色バー、32.5℃は灰色のバー)。これは、より低い温度では、短重鎖と比較して長重鎖の優先的発現があることを示した。モル比の増加は、長重鎖ホモ二量体及びモノマー不純物を含む増加したLMWの%と一致した(図6B)。転写比を図11Cに示す。温度シフトに供されたクローンについては、細胞増殖及び力価がいずれもより低かった。
【0168】
実験1から分かるように、二重特異性1の長重鎖と短重鎖のモル比も培養温度の影響を受けることが分かった。長重鎖と短重鎖のモル比の増加は、低温での長重鎖を含む増加した不純物の形成と一致していた。
【0169】
実施例3
この実験では、非対称二重特異性抗体である二重特異性Cについての転写レベルでのクローン選択中の温度の影響及び製品品質への影響を調べた。二重特異性Cは、より長いアミノ酸配列を有する「長重鎖」及びより短いアミノ酸配列を有する「短重鎖」の2つの重鎖を有する。
【0170】
フェドバッチ振盪フラスコ培養
二重特異性Bの初期クローンスクリーニングから3つのクローン(クローン1、クローン2、クローン3)を選択した。先の実施例2で説明したように、振盪フラスコ内で10日間のフェドバッチ温度試験を実施して、36℃の一定温度でのプロセス及び36℃から32.5℃への温度シフトを含むプロセスにおけるクローン細胞の転写及びタンパク質応答を調べた。
【0171】
250mlの作業容量の既知組成無血清培養培地を含む1L振盪フラスコ(Corning、コーニング、ニューヨーク州)を各クローンについて1つ開始した。0日目に、各フラスコに8×10細胞/mlで接種した。振盪フラスコを36℃、5%CO、160rpmで7日間維持し、接種後の体積の7%で、3及び6日目に栄養を供給した。
【0172】
7日目に、各フラスコを、60mlの作業容量の既知組成無血清培養培地を含む2つのフラスコに分割した。一方のフラスコを36℃に維持し、もう一方のフラスコを32.5℃に維持した。両方とも、5%COで、160rpmで撹拌しながら10日目まで培養した。培養物に、接種後の体積の7%で8日目に栄養を供給した。10日間の培養を通して分析測定を行った。
【0173】
長重鎖と短重鎖のモル比は、より低い温度で増加し、これは、短重鎖に対する長重鎖の優先的発現を示唆するものであった(図7Aを参照されたい、36℃は黒色のバー、32.5℃は灰色のバー)。これは、長重鎖ホモ二量体不純物を含むHMW2の%の増加(図7B)及び短重鎖ホモ二量体不純物を含むLMW1の%の減少(図7C)と一致していた。転写比を図7Cに示す。2つの温度レジーム間で同様の力価が観察された。2つの温度レジーム間で、積算生細胞密度(IVCD)にわずかな差(10%)があった。
【0174】
擬似灌流培養
上記のように、バイオリアクターにおける高細胞密度灌流培養を模倣する培養プロセスにおける温度変化に対する転写物及びタンパク質応答時間を調べるために、小規模擬似灌流培養において二重特異性Bクローン2及び3も試験した。
【0175】
クローン2及び3のそれぞれについて、2つの24ウェルディープウェルプレートに200×10細胞/ml/ウェルを接種し、0日目に、36℃、5%COでインキュベートした。1日目に、各クローンの一方のプレートの温度を32.5℃に下げ、もう一方のプレートを36℃に維持した。3日目に、プレートを回収した。既知組成無血清培地を培養に使用した。培地交換を毎日行って、使用済み培地を除去し、新鮮な培地を添加した。先の実施例で説明したように、分析測定を毎日行った。
【0176】
長重鎖と短重鎖のモル比は、36℃の一定温度と比較して、36℃から32.5℃への温度シフト後24時間で、クローン2については17%、クローン3については25%増加した(図8Aを参照されたい、36℃は、黒色のバー、32.5℃は灰色のバー)。これは、より低い温度では、短重鎖と比較して長重鎖が優先的に発現することを示した。モル比の増加は、SECによって測定された増加したHMW2の%及びSECによって測定された減少したLMW1の%と一致した(図8B及び図8Cを参照されたい)。HMW2不純物は長重鎖ホモ二量体を含み、LMW1不純物は短重鎖ホモ二量体を含んでいた。2日目に両方のクローンについて32.5℃でわずかに低い力価が見られた。
【0177】
実験1及び実験2に見られるように、二重特異性2の長重鎖と短重鎖のモル比も培養温度の影響を受けることが分かった。長重鎖と短重鎖のモル比の増加は、低温での長重鎖を含む増加した不純物の形成と一致していた。
【0178】
実験で実証されたように、非対称多重特異性タンパク質の長重鎖の発現は、より低い温度での長重鎖と短重鎖の発現のモル比の増加によって示されるように、温度によって影響された。この比の変化は、製品関連不純物の形成に影響を及ぼし、所望の生成物からそれらを分離する困難性に影響を及ぼした。長重鎖を含む不純物は、短重鎖を含む不純物と比較して、下流の精製工程で取り除くことが驚くほど困難であることが分かった。長重鎖と短重鎖の発現のバランスをとるための手段として温度を使用することは、非対称タンパク質の精製、活性、及び製品品質にプラスの影響を与える。
【0179】
実施例4
これらの実験は、温度シフトによってナノ流体チップ上の細胞増殖を制御して、培養期間及びタンパク質分泌レベルの測定を延長し、低温設定下で実行される搬出手順中の細胞二次汚染のリスクを最小限に抑える方法を提供する。モノクローナル抗体又は多重特異性抗体のいずれかを発現する単一細胞をナノ流体チップ上に置き、培養期間中同じ温度を維持する定常温度培養モード又は第1の温度条件での最初のインキュベーション後に温度シフト(温度を下げる)を適用する二相性培養モードに供した。温度低下は、増殖阻害をもたらし、細胞の過剰増殖を防止し、その結果、細胞二次汚染リスクを低減し、長期培養を可能にする一方で、組換えタンパク質産生プロファイルを変化させた。組換えタンパク質の生産性に対する定常温度及びシフト温度の影響を分析し、早期クローン選択を支援するために使用する。
【0180】
CHO宿主にモノクローナル抗体又は多重特異性抗体をコードするプラスミドDNAをトランスフェクトすることによって、CHO細胞株を作製した。トランスフェクション後、細胞が90%を超える生存率に達し、一貫した倍加時間を維持するまで、MSX選択ストリンジェンシーも適用した選択培地での反復継代を通して、安定に発現するプール集団を作製した。
【0181】
このプロセスを通して、細胞を、36℃、5%CO及び85%湿度でMSX選択ストリンジェンシーを用いた選択的増殖培地中、T-175フラスコ(Corning、コーニング、ニューヨーク州)又は50mLスピンチューブ(TPP、トラザーディンゲン、スイス)のいずれかで培養した。細胞を、目標の播種密度で週に複数回継代することによって維持した。
【0182】
定常単一温度培養(対照)
CHO細胞株を、Beacon Instrument(Berkeley Light、エメリービル、カリフォルニア州)を使用してOptoSelect(商標)チップ(Design1750、Berkeley Light、エメリービル、カリフォルニア州)にロードした単一細胞とした。OptoElectroPositioning(OEP(商標))、局所的な電界勾配設定、並びに細胞のロード及び搬出のためのスクリプトは、製造業者によって提供された。細胞を、OptoSelect(商標)チップ上で、独自の増殖培地及び製造業者の推奨設定を使用して、36℃で最大6日間培養した。Beacon Instrumentの一体型4X顕微鏡及びカメラを使用して、反復イメージング及び細胞計数を行った。クローン由来の証拠は、NanoPen(商標)チャンバ(0.0481mm面積、1.70nL体積)内の単一細胞の画像によって得られた。分泌アッセイは、供給された方法のスクリプト及びアッセイ分析装置ソフトウェア(Cell Analysis Suite、ビルド30552)を用いて、Spotlight(商標)Human Fc Assay(Berkeley Light、エメリービル、カリフォルニア州)を使用して行った。選択されたペンを、OEP(商標)設定を使用して細胞をチャンバから搬出し、続いてチップを洗い流し、独自の単一細胞クローニング培地を予め充填した96ウェルマイクロタイタープレートに回収した。クローン由来細胞株を、36℃、5%CO、相対湿度85%に維持した96ウェルプレート(Corning、コーニング、ニューヨーク州)での培養を経た搬出後に回収した。細胞を、CellMetricイメージングシステムを使用した反復イメージングによって増殖についてモニタリングした。
【0183】
搬出手順中に温度シフトを実施した定常単一温度培養
CHO細胞株を、Beacon Instrument(Berkeley Light、エメリービル、カリフォルニア州)を使用してOptoSelect(商標)チップ(Design1750、Berkeley Light、エメリービル、カリフォルニア州)にロードした単一細胞とした。セルをロード及び搬出するためのOptoElectroPositioning設定及びスクリプトは、製造業者によって提供された。細胞を、OptoSelect(商標)チップ上で、独自の増殖培地及び製造業者の推奨設定を使用して36℃で4日目まで培養した。搬出手順中の4日目に、温度を32℃にシフトし、搬出手順の終了まで維持した。36℃の定常培養を4日間の培養期間全体にわたって維持した。搬出用のスクリプトは、製造業者によって提供され、搬出手順が32℃の温度シフト設定で実行されるように変更した。反復イメージング及び細胞計数は、Beacon Instrumentの一体型4X顕微鏡及びカメラを使用して実行した。クローン由来の証拠は、NanoPen(商標)チャンバ(0.0481mm面積、1.70nL体積)内の単一細胞の画像によって得られた。分泌アッセイは、供給された方法のスクリプト及びアッセイ分析装置ソフトウェア(Cell Analysis Suite、ビルド30552)を用いて、Spotlight(商標)Human Fc Assay(Berkeley Light、エメリービル、カリフォルニア州)を使用して行った。選択されたチャンバを、OEP(商標)設定を使用して細胞をペンから搬出し、続いてチップを洗い流し、細胞を、独自の単一細胞クローニング培地を予め充填した96ウェルマイクロタイタープレートに回収した。
【0184】
温度シフト培養
CHO細胞株を、Beacon Instrument(Berkeley Light、エメリービル、カリフォルニア州)を使用してOptoSelect(商標)チップ(Design1750、Berkeley Light、エメリービル、カリフォルニア州)にロードした単一細胞とした。OptoElectroPositioning設定及び細胞をロード及び搬出するためのスクリプトは、製造業者によって提供された。細胞は、独自の増殖培地及び製造業者の推奨設定を使用して、3、4又は5日目まで(示されるように)、36℃でOptoSelect(商標)チップ上で培養された。3、4又は5日目に32℃又は32.5℃への温度シフトを適用し、培養物を7又は8日目までより低い温度に維持した。搬出用のスクリプトは製造業者によって提供され、搬出手順は、製造業者の推奨設定又は32℃の温度シフト設定のいずれかで実行した。反復イメージング及び細胞計数は、Beacon Instrumentの一体型4X顕微鏡及びカメラを使用して実行された。クローン由来の証拠は、NanoPen(商標)チャンバ(0.0481mm面積、1.70nL体積)内の単一細胞の画像によって得られた。分泌アッセイは、供給された方法のスクリプト及びアッセイ分析装置ソフトウェア(Cell Analysis Suite、ビルド30552)を用いて、Spotlight(商標)Human Fc Assay(Berkeley Light、エメリービル、カリフォルニア州)を使用して行った。選択されたチャンバを、OEP(商標)を使用して細胞をチャンバから取り出し、続いてチップを洗い流し、細胞を、独自の単一細胞クローニング培地を予め充填した96ウェルマイクロタイタープレートに回収した。
【0185】
結果
図9は、オンチップ培養中に実施された温度シフトが増殖阻害をもたらし、長期培養を可能にすることを示す図である。(A)モノクローナル抗体を発現する単一細胞をチップ上で個々のチャンバにロードし、チップを36℃で6日間培養したBerkeley Light Baconプラットフォームで実験期間を通して収集された代表的な明視野NanoPen(商標)チャンバ画像。機器ソフトウェアによって生成された細胞数を各時点の下に表示する。6日目の細胞集団は、チャンバ内容物の大部分を占め、チャンバの首領域の近くまで増殖し、Spotlight(商標)Human Fc Assayによる信頼できる分泌評価を妨げ、想定される搬出手順における二次汚染の高いリスクを生じさせた。(B)モノクローナル抗体を発現する単一細胞をチップ上で個々のチャンバにロードし、チップを36℃で3日間培養し、その後、残りの実験期間の間は温度を32℃に下げたBerkeley Light Baconプラットフォームで実験期間を通して収集した代表的な明視野チャンバ画像。機器ソフトウェアによって生成された細胞数を各時点の下に表示する。4日目から実施した温度シフトは、増殖阻害をもたらし、細胞がチャンバの最大推奨高さを超えて増殖するのを防止した。(C)実験期間を通して毎日測定した平均倍加時間(上のパネル)及び1チャンバあたりの細胞の平均数(下のパネル)。4日目からの温度シフトの実施は、対照条件と比較した場合、平均倍加時間の増加及び平均細胞数の減少によって明らかにされる増殖阻害をもたらした。
【0186】
図10は、Berkeley Light Beaconプラットフォーム上で標準的な細胞株開発(CLD)ワークフロー中に温度シフトを実施すると、モノクローナル抗体産生プロファイルが変化することを示す。(A)Beaconプラットフォーム上の標準的な細胞株開発クローニングワークフロー(左パネル)及びB及びCで実施された温度シフトを伴う細胞株開発クローニングワークフロー(右パネル)の概略図。(B)4日目の温度シフト前(左パネル)及び6日目の温度シフト後(右パネル)に行われたSpotlight(商標)ヒトFcアッセイに対応する正規化分泌スコアデータ。温度シフト後に測定された細胞分泌プロファイルは、より多様な分布を示し、高度に生産性の高いクローンと、分泌の乏しい細胞株をより良く区別できるようになった。(C)温度シフトを伴うCLDワークフローを実施した、モノクローナル抗体を発現する2つのクローン由来細胞株に対応するBerkeley Light Baconプラットフォームで実験期間を通して収集したBrightfield及びSpotlight(商標)Human Fc Assay蛍光画像。機器ソフトウェアによって生成された細胞数及び正規化された分泌スコアを各時点の下に表示する。低温条件でのインキュベーションは、両方のクローンの増殖停止をもたらした。両方の細胞株は、ワークフローの4日目に同等の分泌プロファイルを示したが、クローン1は、温度シフトに応答して増加した分泌レベルを示し、クローン2は示さなかった。
【0187】
図11は、Berkeley Light Beaconプラットフォーム上でCLDワークフロー中に温度シフトを実施すると、増殖阻害が達成され、IgG4モノクローナル抗体及び多重特異性抗体フォーマットを発現する細胞株の組換えタンパク質産生プロファイルが変化することを示す。(A)(D)IgG4モノクローナル抗体及び多重特異性抗体をそれぞれ発現するクローン由来細胞株について、実験期間を通して毎日測定した平均倍加時間(上のパネル)及び1チャンバあたりの細胞の平均数(下のパネル)。実験の各時点の温度設定をグラフの上部に概説する。4日目又は3日目から温度シフトを実施すると、それぞれ、IgG4及び多重特異性抗体発現細胞株の両方について、倍加時間の増加及び細胞数の減少によって測定される増殖阻害がもたらされた。(B)(E)モノクローナル抗体又は多重特異性抗体をそれぞれ発現するクローン由来細胞株のBerkeley Light Baconプラットフォームで実験期間を通して収集された代表的な明視野チャンバ画像。機器ソフトウェアによって生成された細胞数を各時点の下に表示する。(C)(F)それぞれ4日目及び8日目又は7日目の時点に対応するSpotlight(商標)Human Fc Assayのスコアデータ。低下した温度での長時間のインキュベーション後に達成された分泌プロファイルは、より多様な分布を示し、高度に生産性の高いクローンと、分泌の乏しい細胞株をより良く区別できるようになった。
【0188】
図12は、標準的なCLDワークフローごとに36℃で実行された搬出と比較した場合、32℃の温度で実行された搬出手順が同様のクローン回復をもたらすことを示す。(A)(B)上のパネル:それぞれ、Beaconプラットフォーム上の標準的な細胞株開発クローニングワークフローと、搬出プロセス中に温度シフトが実施される細胞株開発クローニングワークフローの概略図。下のパネル:単一細胞クローニング段階で実施された搬出温度にかかわらず同等のクローン回収効率を示す、エクスポート手順の18日後に取得された96ウェルエクスポートプレートの代表的な画像。
【0189】
結論
本発明者らは、細胞増殖のより良好な制御、搬出手順中の細胞二次汚染に関連するリスクの最小化、より高い分泌レベルの達成、及び早期クローン選択の改善のために、Berkeley Light技術プラットフォーム上の代替の細胞株開発ワークフロー条件を調査した。本発明者らは、CLDワークフロー中の3日目の後に導入された温度シフトが、より低い増殖及び長期間の培養を可能にする細胞倍加時間の延長をもたらすことを実証した。チャンバの入口/出口付近に存在し得る分裂細胞がチャネル領域に漏れ出て、流体経路を二次汚染し、その結果、搬出純度を損なう可能性があるため、より低い温度での増殖阻害を搬出手順中に活用することができる。本発明者らは、搬出プロセス中に低温を実施しても、96ウェルプレート段階でのクローン増殖中のクローン回収に影響を及ぼさないという証拠を提供する。更に、温度シフトを実施することによって、より遅い時点で分泌アッセイを行い、高度に発現しているクローン間をより良好に識別し、性能の低い細胞株を排除することが可能になる。最後に、本発明者らのデータは、低温下での培養が、ユニークな表現型を有するクローンを同定するために活用できる可能性がある組換えタンパク質分泌プロファイルを変化させ得ることを示している。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11
図12
【配列表】
2024516401000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-12-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年4月27日に出願された米国仮特許出願第63/180,220号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に完全に記載されているかのようにあらゆる目的のために本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本明細書と同時に提出され、以下のように識別されるコンピュータ可読のヌクレオチド/アミノ酸配列表は、その全体が参照により組み込まれる:「A-2777-US-PSP_SeqListing.txt」という名前の791,966バイトのASCII(テキスト)ファイル、2021年4月27日作成
【0003】
本発明は、バイオ医薬品製造の分野に関する。特に、本発明は、製造工程において、特に上流の細胞培養工程において、製品品質を調整するための手段として温度を使用することに関する。
【背景技術】
【0004】
モノクローナル抗体生物治療薬は、バイオ医薬品市場の最大の部門である。しかしながら、モノクローナル抗体は単一の標的にしか結合することができないため、多くの疾患が多因子性であることから、それらの有効性には限界がある。これらの課題をクリアするために、操作された多重特異性抗体が開発されている。これらの多重特異性抗体は、任意の数のユニークなペプチド配列を有することができ、多重標的親和性を有するように設計することができる。これらのタンパク質のユニークな特性は、従来のモノクローナル抗体治療薬を超える改善をもたらし、膨大な様々なフォーマットを利用して更に困難な治療適応症に対応することができる、効果的な次世代生物治療薬であることが証明されている。
【0005】
しかしながら、多重特異性抗体、特に構造が非対称である多重特異性抗体の製造に関する情報はあまりないため、モノクローナル抗体のために開発されたプラットフォーム及びプロセスがしばしば適用され、その成功の度合いは異なる。非対称多重特異性抗体は高度に操作されており、モノクローナル抗体に典型的な条件下でそのようなタンパク質を上流及び下流の製造プロセスに供することは、発現及び/又は精製されたタンパク質の製品品質に影響を及ぼし得る。例えば、細胞培養中の製品関連不純物の生成は、下流の精製工程を複雑にし、所望の非対称多重特異性製剤の製品品質を低下させる可能性がある。したがって、非対称多重特異性抗体の上流製造工程における条件を最適化して、製品品質に対するあらゆる悪影響を軽減することが有益であろう。
【0006】
本明細書に記載の本発明は、組換え非対称多重特異性抗体原薬の製品品質を改善するために、細胞株開発及び細胞培養工程において温度を手段として使用することによってこの必要性を満たす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、細胞培養中に細胞によって発現される組換え非対称多重特異性抗体の製品品質を調節するための方法であって、(a)非対称多重特異性抗体を発現する同じ細胞株をそれぞれ接種した少なくとも2つの細胞培養物を確立する工程と、(b)単一の温度からなる第1の温度レジームで少なくとも1つの細胞培養物を培養し、第2の温度レジームで少なくとも1つの細胞培養物を培養する工程と、(c)各温度レジームにおける細胞培養物中の少なくとも1つの製品関連不純物を比較する工程と、(d)不対合又は誤対合長重鎖を含む少なくとも1つの製品関連不純物の発現を低下させる温度レジームを選択する工程と、(e)細胞株を選択された温度レジームで培養する工程と、(f)組換え非対称多重特異性抗体を回収する工程と、を含む方法を提供する。一実施形態では、第1の温度レジームは、36℃~37℃から選択される。一実施形態では、第2の温度レジームは、第1の温度から第1の温度よりも高い又は低い第2の温度への温度シフトを含む。関連する実施形態では、第2の温度は、28℃~35℃から選択される。関連する実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約1℃~約9℃低い。一実施形態では、第1の温度レジームは、36℃~37℃の単一の温度であり、第2の温度レジームは、36℃~37℃の第1の温度から28℃~35℃の第2の温度への少なくとも1つの温度シフトを含む。一実施形態では、製品関連不純物は、長重鎖と短重鎖の比の不均衡から生じる。一実施形態では、製品関連不純物は、不対合又は誤対合長重鎖を含む。関連する実施形態では、製品関連不純物は、不対合又は誤対合長重鎖を含み、ホモ二量体、半抗体、タンパク質凝集体、抗体断片、抗体断片の組み合わせ、及び不対合抗体断片から選択される。一実施形態では、細胞培養温度レジームは、非対称多重特異性抗体の発現量、生産性、増殖、収率、及び/又は他の所望の製品品質属性の調節のために更に選択され得る。一実施形態では、非対称多重特異性抗体はムテインを含む。一実施形態では、非対称多重特異性抗体は、抗PD-1抗体の2つの抗体重鎖のうちの1つに結合した単一のIL-21ムテインを含む非対称多重特異性抗PD-1抗体である。関連する実施形態では、長重鎖は、IL-21ムテインが結合した抗PD-1抗体重鎖を含む。
【0008】
本発明は、細胞培養中に細胞によって発現されるムテインを含む組換え非対称多重特異性抗体の製品品質を調節するための方法であって、(a)非対称多重特異性抗体を発現する同じ細胞株をそれぞれ接種した少なくとも2つの細胞培養物を確立する工程と、(b)単一の温度からなる第1の温度レジームで少なくとも1つの細胞培養物を培養し、第2の温度レジームで少なくとも1つの細胞培養物を培養する工程と、(c)各温度レジームにおける細胞培養によって産生された、不対合又は誤対合長重鎖を含む少なくとも1つの製品関連不純物を比較する工程と、(d)不対合又は誤対合長重鎖を含む少なくとも1つの製品関連不純物の発現を低下させる温度レジームを選択する工程と、を含む方法を提供する。一実施形態では、ムテインはIL-21ムテインである。関連する実施形態では、IL-21ムテインは、配列番号1の5位、9位、73位及び76位のいずれか2つにアミノ酸置換を含み、ここで、前記アミノ酸置換は、5位におけるA、E又はQ、9位におけるE又はA、73位におけるA又はQ、及び76位におけるA、D又はE、から選択される。関連する実施形態では、IL-21ムテインが、配列番号233~245のいずれかのアミノ酸配列を含む。一実施形態では、非対称多重特異性抗体は、抗PD-1抗体の2つの抗体重鎖のうちの一方のC末端に結合したムテインを含む。関連する実施形態では、抗PD-1抗体は、それぞれが配列番号385、386及び387のアミノ酸配列を含むLC CDR1、LC CDR2及びLC CDR3を含む2つの軽鎖と、それぞれが配列番号382、383及び384のアミノ酸配列を含むHC CDR1、HC CDR2及びHC CDR3を含む2つの重鎖とを含む。関連する実施形態では、抗PD-1抗体は、配列番号389のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖と、配列番号388のアミノ酸配列を含む2つの重鎖とを含む。関連する実施形態では、抗PD-1抗体は、それぞれが配列番号365、366及び367のアミノ酸配列を含むLC CDR1、LC CDR2及びLC CDR3を含む2つの軽鎖と、それぞれが配列番号362、363及び364のアミノ酸配列を含むHC CDR1、HC CDR2及びHC CDR3を含む2つの重鎖とを含む。関連する実施形態では、抗PD-1抗体は、配列番号369のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖と、配列番号368のアミノ酸配列を含む2つの重鎖とを含む。関連する実施形態では、抗PD-1抗体は、(i)それぞれが配列番号391のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖、配列番号501~506のいずれか1つのアミノ酸配列を含むIL-21ムテインに結合した重鎖、及び配列番号556~558のいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖、又は(ii)それぞれが配列番号371のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖、配列番号513~518のいずれか1つのアミノ酸配列を含む単一のIL-21ムテインに結合した重鎖、及び配列番号559~561のいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖、を含む。関連する実施形態では、抗PD-1抗体は、それぞれが配列番号391のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖と、配列番号556のアミノ酸配列を含む1つの重鎖と、配列番号501のアミノ酸配列を含むIL-21ムテインに結合した1つの重鎖とを含む。関連する実施形態では、抗PD-1抗体は、それぞれが配列番号371のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖と、配列番号559のアミノ酸配列を含む1つの重鎖と、配列番号513のアミノ酸配列を含むIL-21ムテインに結合した1つの重鎖とを含む。一実施形態では、非対称多重特異性抗体は、抗PD-1抗体の2つの抗体重鎖のうちの一方のC末端に結合したIL-21ムテインを含む。一実施形態では、長重鎖は、IL-21ムテインが結合した抗PD-1抗体重鎖を含む。
【0009】
本発明は、細胞培養中に細胞によって発現される組換え非対称多重特異性抗体の製品品質を調節するための方法を提供する。本発明は、細胞培養中に細胞によって発現されるムテインを含む組換え非対称多重特異性抗体の製品品質を調節するための方法を提供する。特に、本発明は、細胞培養中に細胞によって発現される抗PD-1抗体の2つの抗体重鎖の一方のC末端に連結されたIL-21ムテインのコンジュゲートの製品品質を調節するための方法であって、(a)抗体を発現する細胞株を接種した細胞培養物を確立する工程と、(b)細胞を36±1℃で培養期間中培養する工程と、(c)抗体を回収する工程とを含み、培養中のある時点で、32℃~34℃の温度に曝された細胞培養物からの回収物中の同じ製品関連不純物の量と比較して、回収した細胞培養物中の長重鎖と短重鎖の比の不均衡に起因する少なくとも1つの製品関連不純物の量が減少する、方法を提供する。
【0010】
本発明は、非対称多重特異性抗体を発現する細胞株を選択するための方法を提供する。本発明は、ムテインを含む非対称多重特異性抗体を発現する細胞株を選択するための方法であって、a)抗体を発現する少なくとも1つのクローン由来細胞株を確立する工程と、b)1つ以上のクローン由来細胞株から少なくとも2つの細胞培養物を確立する工程であって、各細胞株からの少なくとも1つの細胞培養物が第1の温度レジームで培養され、各細胞株からの少なくとも1つの細胞培養物が第2の温度レジームで培養される、工程と、c)各温度レジームで培養された細胞によって産生された、不対合又は誤対合長重鎖を含む少なくとも1つの製品関連不純物の発現を比較する工程と、(d)不対合又は誤対合長重鎖を含む少なくとも1つの製品関連不純物の発現の低下をもたらした細胞株を選択する工程と、を含む方法を提供する。一実施形態では、次いで、選択された細胞株を、不対合又は誤対合長重鎖を含む少なくとも1つの製品関連不純物の発現の低下をもたらした温度レジームで培養する。一実施形態では、第1の温度レジームは、約36℃~約37℃から選択される。一実施形態では、第2の温度レジームは、第1の温度から、第1の温度よりも高い又は低い第2の温度への温度シフトを含む。関連する実施形態では、第2の温度は、約28℃~約35℃から選択される。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約1℃~9℃低い。一実施形態では、第1の温度レジームは、36℃~37℃の単一の温度であり、第2の温度レジームは、36℃~37℃の第1の温度から28℃~35℃の第2の温度への少なくとも1つの温度シフトを含む。一実施形態では、不対合又は誤対合長重鎖を含む製品関連不純物は、長重鎖と短重鎖の比の不均衡から生じる。関連する実施形態では、不対合又は誤対合長重鎖を含む製品関連不純物は、長重鎖と短重鎖の比の増加に起因する。一実施形態では、製品関連不純物は、不対合又は誤対合長重鎖を含み、ホモ二量体、半抗体、タンパク質凝集体、抗体断片、抗体断片の組み合わせ、及び不対合抗体断片から選択される。一実施形態では、細胞培養温度レジームは、非対称多重特異性抗体の発現量、生産性、増殖、及び/又は他の所望の製品品質属性も調節する温度レジームのために更に選択され得る。一実施形態では、非対称多重特異性抗体は、抗PD-1抗体の2つの抗体重鎖のうちの1つに結合した単一のIL-21ムテインを含む非対称多重特異性抗PD-1抗体である。一実施形態では、長重鎖は、IL-21ムテインが結合した抗PD-1抗体重鎖を含む。
【0011】
本発明は、抗体重鎖を含む少なくとも1つの組換え非対称多重特異性抗体製品関連不純物の産生を調節するための方法を提供する。本発明は、長重鎖を含む少なくとも1つの組換え非対称多重特異性抗体製品関連不純物の産生を調節するための方法を提供する。特に、本発明は、細胞培養温度による細胞培養中に、IL-21ムテインが結合した抗体重鎖を含む少なくとも1つの組換え非対称多重特異性抗体製品関連不純物の産生を調節するための方法であって、長重鎖を含む不対合又は誤対合長重鎖を含む少なくとも1つの製品関連不純物の発現を低下させる温度レジームを選択する工程と、(a)細胞株を選択された温度レジームで培養する工程と、(b)組換え非対称多重特異性抗体を回収する工程と、を含む方法を提供する。一実施形態では、非対称多重特異性抗体は、抗PD-1抗体の2つの抗体重鎖のうちの1つに結合した単一のIL-21ムテインを含む非対称多重特異性抗PD-1抗体である。一実施形態では、長重鎖は、IL-21ムテインが結合した抗PD-1抗体重鎖を含む。
【0012】
本発明は、単離され、精製された組換え非対称多重特異性抗体を産生するための方法であって、a)非対称多重特異性抗体を発現する少なくとも1つの単一の安定に形質転換された細胞を単離し、クローン由来培養物を確立する工程と、b)1つ以上のクローン由来培養物から少なくとも2つの細胞培養物を確立する工程と、c)各クローン由来培養物からの少なくとも1つの細胞培養物を単一の温度を含む第1の温度レジームで培養し、各クローン由来培養物からの少なくとも1つの細胞培養物を第2の温度レジームで培養する工程と、d)各温度レジームで培養された細胞によって産生された、不対合又は誤対合長重鎖を含む少なくとも1つの製品関連不純物の量を比較する工程と、e)製品関連不純物の産生を調節した細胞培養物を選択する工程と、f)選択された細胞培養物から非対称多重特異性抗体を発現する細胞株を確立する工程と、g)非対称多重特異性抗体を発現する細胞株をバイオリアクターに接種する工程と、h)細胞を培養して、製品関連不純物の産生を調節した温度レジームで非対称多重特異性抗体を発現させる工程と、i)細胞培養物から組換え非対称多重特異性抗体を回収する工程と、j)1つ以上のクロマトグラフィー単位操作によって組換え多重特異性抗体を処理する工程と、k)単離され、精製された組換え非対称多重特異性抗体を得る工程と、を含む方法を提供する。一実施形態では、上記の方法による単離され、精製された組換え多重特異性抗体が提供される。一実施形態では、上記の方法による単離され、精製された組換え多重特異性抗体を含む医薬組成物が提供される。一実施形態では、非対称多重特異性抗体は、抗PD-1抗体の2つの抗体重鎖のうちの1つに結合した単一のIL-21ムテインを含む非対称多重特異性抗PD-1抗体である。一実施形態では、長重鎖は、IL-21ムテインが結合した抗PD-1抗体重鎖を含む。
【0013】
本発明は、ナノ流体チップのナノ流体チャンバ内の細胞の増殖を制御するための方法であって、(a)ナノ流体チップのナノ流体チャンバ内に単一細胞を単離する工程であって、前記細胞が組換えタンパク質を発現することができる発現構築物を含む、工程と、(b)細胞を第1の温度で培養する工程と、(c)所定の時点で、細胞を第2の温度で培養する工程と、(d)細胞をナノ流体チャンバから培養容器に搬出することとを含む、方法を提供する。
【0014】
本発明はまた、ナノ流体チップのナノ流体チャンバ内で増殖させた細胞の搬出中の二次汚染を最小限に抑えるための方法であって、(a)ナノ流体チップのナノ流体チャンバ内に単一細胞を単離する工程であって、前記細胞が組換えタンパク質を発現することができる発現構築物を含む、工程と、(b)細胞を第1の温度で培養する工程と、(c)所定の時点で、細胞を第2の温度で培養する工程と、(d)細胞をナノ流体チャンバから培養容器に搬出する工程と、を含み、搬出時の1チャンバあたりの細胞数が、培養期間にわたって一定温度の同様の条件下で培養された単一細胞と比較して少ない、方法を提供する。
【0015】
本発明は更に、ナノ流体チップのナノ流体チャンバ内で増殖させた細胞のクローン選択を改善する方法であって、(a)ナノ流体チップのナノ流体チャンバ内に単一細胞を単離する工程であって、前記細胞が組換えタンパク質を発現することができる発現構築物を含む、工程と、(b)細胞を第1の温度で培養する工程と、(c)培養の温度を培養の3日目以降に第2の温度まで低下させる工程と、(d)温度シフトの少なくとも4日後にナノ流体チャンバから細胞を搬出する工程と、を含む方法を提供する。
【0016】
一実施形態では、搬出時の1チャンバあたりの細胞数は、培養期間中、一定温度で同様の条件下で培養された単一細胞と比較して少ない。一実施形態では、第1の温度は、35℃~37℃から選択される。一実施形態では、第2の温度は、28℃~34℃から選択される。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約1℃~約9℃低い。一実施形態では、第1の温度は36℃であり、第2の温度は32℃~32.5℃である。一実施形態では、所定点は培養の3日目~5日目である。一実施形態では、搬出は培養の6日目~8日目である。一実施形態では、ナノ流体チップは、1758個のチャンバ、3,500個のチャンバ、11,000個のチャンバ、14,000個のチャンバ、又は20,000個のチャンバを含む。一実施形態では、培養容器はマルチウェルプレートである。一実施形態では、温度シフトの前後のタンパク質分泌プロファイルを比較する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A】(A)は、IL-2-抗PD-1コンジュゲートを発現する細胞を32.5℃に温度シフトさせて灌流培養(P)に供した場合の長重鎖の%(LHCの%)の増加を、常時36℃でのフェドバッチ培養物(FB)(縞模様の棒)と比較して示す。(B)及び(C)は、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーのみに供された一定温度(36℃)フェドバッチ培養物(FB)中の細胞によって発現されるIL-2-抗PD-1コンジュゲートの産生(縞模様のバー)と比較して、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー(左の白抜きのバー)及び陽イオン交換クロマトグラフィー(右の白抜きのバー)による精製に供された36℃から32.5℃へ温度シフトさせた灌流培養物(P)中の細胞によって発現されるIL-2-抗PD-1コンジュゲートの産生の結果を示す。(B)nrCEによるプレピーク(Pre-Peak)の%。(C)SECによる低分子量不純物(LMW)の%。(D)は、CEXプールからのnrCE-SDSによる不純物の特性評価を示す。過剰な長重鎖はCEXによって分離することができなかった。
図1B】(A)は、IL-2-抗PD-1コンジュゲートを発現する細胞を32.5℃に温度シフトさせて灌流培養(P)に供した場合の長重鎖の%(LHCの%)の増加を、常時36℃でのフェドバッチ培養物(FB)(縞模様の棒)と比較して示す。(B)及び(C)は、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーのみに供された一定温度(36℃)フェドバッチ培養物(FB)中の細胞によって発現されるIL-2-抗PD-1コンジュゲートの産生(縞模様のバー)と比較して、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー(左の白抜きのバー)及び陽イオン交換クロマトグラフィー(右の白抜きのバー)による精製に供された36℃から32.5℃へ温度シフトさせた灌流培養物(P)中の細胞によって発現されるIL-2-抗PD-1コンジュゲートの産生の結果を示す。(B)nrCEによるプレピーク(Pre-Peak)の%。(C)SECによる低分子量不純物(LMW)の%。(D)は、CEXプールからのnrCE-SDSによる不純物の特性評価を示す。過剰な長重鎖はCEXによって分離することができなかった。
図1C】(A)は、IL-2-抗PD-1コンジュゲートを発現する細胞を32.5℃に温度シフトさせて灌流培養(P)に供した場合の長重鎖の%(LHCの%)の増加を、常時36℃でのフェドバッチ培養物(FB)(縞模様の棒)と比較して示す。(B)及び(C)は、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーのみに供された一定温度(36℃)フェドバッチ培養物(FB)中の細胞によって発現されるIL-2-抗PD-1コンジュゲートの産生(縞模様のバー)と比較して、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー(左の白抜きのバー)及び陽イオン交換クロマトグラフィー(右の白抜きのバー)による精製に供された36℃から32.5℃へ温度シフトさせた灌流培養物(P)中の細胞によって発現されるIL-2-抗PD-1コンジュゲートの産生の結果を示す。(B)nrCEによるプレピーク(Pre-Peak)の%。(C)SECによる低分子量不純物(LMW)の%。(D)は、CEXプールからのnrCE-SDSによる不純物の特性評価を示す。過剰な長重鎖はCEXによって分離することができなかった。
図1D】(A)は、IL-2-抗PD-1コンジュゲートを発現する細胞を32.5℃に温度シフトさせて灌流培養(P)に供した場合の長重鎖の%(LHCの%)の増加を、常時36℃でのフェドバッチ培養物(FB)(縞模様の棒)と比較して示す。(B)及び(C)は、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーのみに供された一定温度(36℃)フェドバッチ培養物(FB)中の細胞によって発現されるIL-2-抗PD-1コンジュゲートの産生(縞模様のバー)と比較して、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー(左の白抜きのバー)及び陽イオン交換クロマトグラフィー(右の白抜きのバー)による精製に供された36℃から32.5℃へ温度シフトさせた灌流培養物(P)中の細胞によって発現されるIL-2-抗PD-1コンジュゲートの産生の結果を示す。(B)nrCEによるプレピーク(Pre-Peak)の%。(C)SECによる低分子量不純物(LMW)の%。(D)は、CEXプールからのnrCE-SDSによる不純物の特性評価を示す。過剰な長重鎖はCEXによって分離することができなかった。
図2A図2は、rCEによって特定された長重鎖(LHC)と短重鎖(SHC)のモル比を比較して、同じ温度でスクリーニングした場合、フェドバッチ試料と灌流試料との間により良好な相関があったことを示す。(A)は、36℃から32.5℃への温度シフト(TS)で成長させた灌流試料と比較して、常時36℃で成長させたフェドバッチ培養物試料を示す。フェドバッチ(x、常時36℃)対して灌流(y、36℃から32.5℃)。(B)は、両方とも36℃から32.5℃の温度シフト(TS)で成長させた、灌流試料と比較したフェドバッチ培養物試料を示す。x軸はフェドバッチ培養物、対してy軸は灌流。常時36℃で増殖させた両方の培養方法のデータ点は限られていたので、比較には含めなかった。
図2B図2は、rCEによって特定された長重鎖(LHC)と短重鎖(SHC)のモル比を比較して、同じ温度でスクリーニングした場合、フェドバッチ試料と灌流試料との間により良好な相関があったことを示す。(A)は、36℃から32.5℃への温度シフト(TS)で成長させた灌流試料と比較して、常時36℃で成長させたフェドバッチ培養物試料を示す。フェドバッチ(x、常時36℃)対して灌流(y、36℃から32.5℃)。(B)は、両方とも36℃から32.5℃の温度シフト(TS)で成長させた、灌流試料と比較したフェドバッチ培養物試料を示す。x軸はフェドバッチ培養物、対してy軸は灌流。常時36℃で増殖させた両方の培養方法のデータ点は限られていたので、比較には含めなかった。
図3A図3は、SECによって測定された低分子量のパーセント(LMWの%)を比較して、同じ温度でスクリーニングした場合、フェドバッチ試料と灌流試料との間により良好な相関があったことを示す。(A)は、36℃から32.5℃への温度シフト(TS)で成長させた灌流試料と比較して、常時36℃で成長させたフェドバッチ培養物試料を示す。x軸はフェドバッチ培養物、対してy軸は灌流。(B)は、両方とも36℃から32.5℃の温度シフト(TS)で成長させた、灌流試料と比較したフェドバッチ培養物試料を示す。x軸はフェドバッチ培養物、対してy軸は灌流。常時36℃で増殖させた両方の培養方法のデータ点は限られていたので、比較には含めなかった。
図3B図3は、SECによって測定された低分子量のパーセント(LMWの%)を比較して、同じ温度でスクリーニングした場合、フェドバッチ試料と灌流試料との間により良好な相関があったことを示す。(A)は、36℃から32.5℃への温度シフト(TS)で成長させた灌流試料と比較して、常時36℃で成長させたフェドバッチ培養物試料を示す。x軸はフェドバッチ培養物、対してy軸は灌流。(B)は、両方とも36℃から32.5℃の温度シフト(TS)で成長させた、灌流試料と比較したフェドバッチ培養物試料を示す。x軸はフェドバッチ培養物、対してy軸は灌流。常時36℃で増殖させた両方の培養方法のデータ点は限られていたので、比較には含めなかった。
図4A図4は、36℃から32.5℃に温度シフトした灌流培養と比較した、36℃の一定温度の灌流培養において細胞によって発現されたIL-2-抗PD-1コンジュゲートの産生の結果を示す。(A)は、rCEによって決定された長重鎖(LHC)と短重鎖(SHC)のモル比を示す(常時36℃、縞模様のバー、36℃から32.5℃への温度シフト、白色のバー)。(B)は、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー(縞模様のバー)及び陽イオン交換クロマトグラフィー(灰色のバー)によって精製され、nrCEによって測定された、プレピーク(Pre-Peak)6(SHCによって形成された不純物)の%を示す。(C)プロテインAアフィニティークロマトグラフィー(縞模様のバー)及び陽イオン交換クロマトグラフィー(白色のバー)によって精製され、nrCEによって測定されたプレピーク(Pre-Peak)7(LHCに供して形成された不純物)の%を示す。
図4B図4は、36℃から32.5℃に温度シフトした灌流培養と比較した、36℃の一定温度の灌流培養において細胞によって発現されたIL-2-抗PD-1コンジュゲートの産生の結果を示す。(A)は、rCEによって決定された長重鎖(LHC)と短重鎖(SHC)のモル比を示す(常時36℃、縞模様のバー、36℃から32.5℃への温度シフト、白色のバー)。(B)は、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー(縞模様のバー)及び陽イオン交換クロマトグラフィー(灰色のバー)によって精製され、nrCEによって測定された、プレピーク(Pre-Peak)6(SHCによって形成された不純物)の%を示す。(C)プロテインAアフィニティークロマトグラフィー(縞模様のバー)及び陽イオン交換クロマトグラフィー(白色のバー)によって精製され、nrCEによって測定されたプレピーク(Pre-Peak)7(LHCに供して形成された不純物)の%を示す。
図4C図4は、36℃から32.5℃に温度シフトした灌流培養と比較した、36℃の一定温度の灌流培養において細胞によって発現されたIL-2-抗PD-1コンジュゲートの産生の結果を示す。(A)は、rCEによって決定された長重鎖(LHC)と短重鎖(SHC)のモル比を示す(常時36℃、縞模様のバー、36℃から32.5℃への温度シフト、白色のバー)。(B)は、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー(縞模様のバー)及び陽イオン交換クロマトグラフィー(灰色のバー)によって精製され、nrCEによって測定された、プレピーク(Pre-Peak)6(SHCによって形成された不純物)の%を示す。(C)プロテインAアフィニティークロマトグラフィー(縞模様のバー)及び陽イオン交換クロマトグラフィー(白色のバー)によって精製され、nrCEによって測定されたプレピーク(Pre-Peak)7(LHCに供して形成された不純物)の%を示す。
図5A図5は、温度を常時36℃に保持した場合(縞模様のバー)と、36℃から32.5℃に温度シフトさせた場合(白色のバー)の、フェドバッチ培養による二重特異性Aクローン1産生の結果を示す図である。(A)rCE-SDSによって特定される長重鎖(LHC)と短重鎖(SHC)のモル比。(B)SECによるHMWの%。(C)SECによるLMW(LHCによって形成された不純物)の%。
図5B図5は、温度を常時36℃に保持した場合(縞模様のバー)と、36℃から32.5℃に温度シフトさせた場合(白色のバー)の、フェドバッチ培養による二重特異性Aクローン1産生の結果を示す図である。(A)rCE-SDSによって特定される長重鎖(LHC)と短重鎖(SHC)のモル比。(B)SECによるHMWの%。(C)SECによるLMW(LHCによって形成された不純物)の%。
図5C図5は、温度を常時36℃に保持した場合(縞模様のバー)と、36℃から32.5℃に温度シフトさせた場合(白色のバー)の、フェドバッチ培養による二重特異性Aクローン1産生の結果を示す図である。(A)rCE-SDSによって特定される長重鎖(LHC)と短重鎖(SHC)のモル比。(B)SECによるHMWの%。(C)SECによるLMW(LHCによって形成された不純物)の%。
図6A図6は、温度を常時36℃に保持した場合(縞模様のバー)と、温度を36℃から32.5℃にシフトさせた場合(白色のバー)のい、擬似灌流培養による二重特異性Aクローン2及び3の産生の結果を示す図である。(A)rCE-SDSによって特定される長重鎖(LHC)と短重鎖(SHC)のモル比。(B)SECによって測定されたLMWの%。(C)ddPCRによって測定されたLHCとSHCの転写物比。
図6B図6は、温度を常時36℃に保持した場合(縞模様のバー)と、温度を36℃から32.5℃にシフトさせた場合(白色のバー)のい、擬似灌流培養による二重特異性Aクローン2及び3の産生の結果を示す図である。(A)rCE-SDSによって特定される長重鎖(LHC)と短重鎖(SHC)のモル比。(B)SECによって測定されたLMWの%。(C)ddPCRによって測定されたLHCとSHCの転写物比。
図6C図6は、温度を常時36℃に保持した場合(縞模様のバー)と、温度を36℃から32.5℃にシフトさせた場合(白色のバー)のい、擬似灌流培養による二重特異性Aクローン2及び3の産生の結果を示す図である。(A)rCE-SDSによって特定される長重鎖(LHC)と短重鎖(SHC)のモル比。(B)SECによって測定されたLMWの%。(C)ddPCRによって測定されたLHCとSHCの転写物比。
図7A図7は、温度を常時36℃に保持した場合(縞模様のバー)と、36℃から32.5℃に温度シフトさせた場合(白色のバー)の、フェドバッチ培養による二重特異性Bクローン1、2及び3の産生の結果を示す図である。(A)rCE-SDSによって特定される長重鎖(LHC)と短重鎖(SHC)のモル比。(B)SECによって測定されたHMW2の%。(C)SECによって測定されたLMW1の%。(D)ddPCRによって測定されたLHCとSHCの転写比。
図7B図7は、温度を常時36℃に保持した場合(縞模様のバー)と、36℃から32.5℃に温度シフトさせた場合(白色のバー)の、フェドバッチ培養による二重特異性Bクローン1、2及び3の産生の結果を示す図である。(A)rCE-SDSによって特定される長重鎖(LHC)と短重鎖(SHC)のモル比。(B)SECによって測定されたHMW2の%。(C)SECによって測定されたLMW1の%。(D)ddPCRによって測定されたLHCとSHCの転写比。
図7C図7は、温度を常時36℃に保持した場合(縞模様のバー)と、36℃から32.5℃に温度シフトさせた場合(白色のバー)の、フェドバッチ培養による二重特異性Bクローン1、2及び3の産生の結果を示す図である。(A)rCE-SDSによって特定される長重鎖(LHC)と短重鎖(SHC)のモル比。(B)SECによって測定されたHMW2の%。(C)SECによって測定されたLMW1の%。(D)ddPCRによって測定されたLHCとSHCの転写比。
図7D図7は、温度を常時36℃に保持した場合(縞模様のバー)と、36℃から32.5℃に温度シフトさせた場合(白色のバー)の、フェドバッチ培養による二重特異性Bクローン1、2及び3の産生の結果を示す図である。(A)rCE-SDSによって特定される長重鎖(LHC)と短重鎖(SHC)のモル比。(B)SECによって測定されたHMW2の%。(C)SECによって測定されたLMW1の%。(D)ddPCRによって測定されたLHCとSHCの転写比。
図8A図8は、36℃の一定温度での培養(縞模様のバー)と、36℃から32.5℃への温度シフト(白色のバー)での培養とを比較する擬似灌流による二重特異性Bクローン2及び3の産生の結果を示す。(A)rCE-SDSによって特定される長重鎖(LHC)と短重鎖(SHC)のモル比。(B)SECによって測定されたHMW2の%。(C)SECによって測定されたLMW1の%。
図8B図8は、36℃の一定温度での培養(縞模様のバー)と、36℃から32.5℃への温度シフト(白色のバー)での培養とを比較する擬似灌流による二重特異性Bクローン2及び3の産生の結果を示す。(A)rCE-SDSによって特定される長重鎖(LHC)と短重鎖(SHC)のモル比。(B)SECによって測定されたHMW2の%。(C)SECによって測定されたLMW1の%。
図8C図8は、36℃の一定温度での培養(縞模様のバー)と、36℃から32.5℃への温度シフト(白色のバー)での培養とを比較する擬似灌流による二重特異性Bクローン2及び3の産生の結果を示す。(A)rCE-SDSによって特定される長重鎖(LHC)と短重鎖(SHC)のモル比。(B)SECによって測定されたHMW2の%。(C)SECによって測定されたLMW1の%。
図9A図9は、オンチップ培養中に実施された温度シフトが増殖阻害をもたらし、長期培養を可能にすることを示す図である。(A)モノクローナル抗体を発現する単一細胞をチップ上で個々のチャンバにロードし、チップを36℃で6日間培養したBerkeley Light Baconプラットフォームで実験期間を通して収集された代表的な明視野チャンバ画像。機器ソフトウェアによって生成された細胞数を各時点の下に表示する。6日目の細胞集団は、チャンバ内容物の大部分を占め、チャンバの首領域の近くまで増殖し、Spotlight(商標)Human Fc Assayによる信頼できる分泌評価を妨げ、想定される搬出手順における二次汚染の高いリスクを生じさせた。(B)モノクローナル抗体を発現する単一細胞をチップ上で個々のチャンバにロードし、チップを36℃で3日間培養し、その後、残りの実験期間の間は温度を32℃に下げたBerkeley Light Baconプラットフォームで実験期間を通して収集した代表的な明視野チャンバ画像。機器ソフトウェアによって生成された細胞数を各時点の下に表示する。4日目から実施した温度シフトは、増殖阻害をもたらし、細胞がチャンバの最大推奨高さを超えて増殖するのを防止した。(C)実験期間を通して毎日測定した平均倍加時間(上のパネル)及び1チャンバあたりの細胞の平均数(下のパネル)。4日目からの温度シフトの実施は、対照条件と比較した場合、平均倍加時間の増加及び平均細胞数の減少によって明らかにされる増殖阻害をもたらした。
図9B図9は、オンチップ培養中に実施された温度シフトが増殖阻害をもたらし、長期培養を可能にすることを示す図である。(A)モノクローナル抗体を発現する単一細胞をチップ上で個々のチャンバにロードし、チップを36℃で6日間培養したBerkeley Light Baconプラットフォームで実験期間を通して収集された代表的な明視野チャンバ画像。機器ソフトウェアによって生成された細胞数を各時点の下に表示する。6日目の細胞集団は、チャンバ内容物の大部分を占め、チャンバの首領域の近くまで増殖し、Spotlight(商標)Human Fc Assayによる信頼できる分泌評価を妨げ、想定される搬出手順における二次汚染の高いリスクを生じさせた。(B)モノクローナル抗体を発現する単一細胞をチップ上で個々のチャンバにロードし、チップを36℃で3日間培養し、その後、残りの実験期間の間は温度を32℃に下げたBerkeley Light Baconプラットフォームで実験期間を通して収集した代表的な明視野チャンバ画像。機器ソフトウェアによって生成された細胞数を各時点の下に表示する。4日目から実施した温度シフトは、増殖阻害をもたらし、細胞がチャンバの最大推奨高さを超えて増殖するのを防止した。(C)実験期間を通して毎日測定した平均倍加時間(上のパネル)及び1チャンバあたりの細胞の平均数(下のパネル)。4日目からの温度シフトの実施は、対照条件と比較した場合、平均倍加時間の増加及び平均細胞数の減少によって明らかにされる増殖阻害をもたらした。
図9C図9は、オンチップ培養中に実施された温度シフトが増殖阻害をもたらし、長期培養を可能にすることを示す図である。(A)モノクローナル抗体を発現する単一細胞をチップ上で個々のチャンバにロードし、チップを36℃で6日間培養したBerkeley Light Baconプラットフォームで実験期間を通して収集された代表的な明視野チャンバ画像。機器ソフトウェアによって生成された細胞数を各時点の下に表示する。6日目の細胞集団は、チャンバ内容物の大部分を占め、チャンバの首領域の近くまで増殖し、Spotlight(商標)Human Fc Assayによる信頼できる分泌評価を妨げ、想定される搬出手順における二次汚染の高いリスクを生じさせた。(B)モノクローナル抗体を発現する単一細胞をチップ上で個々のチャンバにロードし、チップを36℃で3日間培養し、その後、残りの実験期間の間は温度を32℃に下げたBerkeley Light Baconプラットフォームで実験期間を通して収集した代表的な明視野チャンバ画像。機器ソフトウェアによって生成された細胞数を各時点の下に表示する。4日目から実施した温度シフトは、増殖阻害をもたらし、細胞がチャンバの最大推奨高さを超えて増殖するのを防止した。(C)実験期間を通して毎日測定した平均倍加時間(上のパネル)及び1チャンバあたりの細胞の平均数(下のパネル)。4日目からの温度シフトの実施は、対照条件と比較した場合、平均倍加時間の増加及び平均細胞数の減少によって明らかにされる増殖阻害をもたらした。
図10A図10は、Berkeley Light Beaconプラットフォーム上でCLDワークフロー中に温度シフトを実施すると、モノクローナル抗体産生プロファイルが変化することを示す。(A)Beaconプラットフォーム上の標準的な細胞株開発クローニングワークフロー(左パネル)及びB及びCで実施された温度シフトを伴う細胞株開発クローニングワークフロー(右パネル)の概略図。(B)4日目の温度シフト前(左パネル)及び6日目の温度シフト後(右パネル)に行われたSpotlight(商標)ヒトFcアッセイに対応する正規化分泌スコアデータ。温度シフト後に測定された細胞分泌プロファイルは、より多様な分布を示し、高度に生産性の高いクローンと、分泌の乏しい細胞株をより良く区別できるようになった。(C)温度シフトを伴うCLDワークフローを実施した、モノクローナル抗体を発現する2つのクローン由来細胞株に対応するBerkeley Light Baconプラットフォームで実験期間を通して収集したBrightfield及びSpotlight(商標)Human Fc Assay蛍光画像。機器ソフトウェアによって生成された細胞数及び正規化された分泌スコアを各時点の下に表示する。低温条件でのインキュベーションは、両方のクローンの増殖停止をもたらした。両方の細胞株は、ワークフローの4日目に同等の分泌プロファイルを示したが、クローン1は、温度シフトに応答して増加した分泌レベルを示し、クローン2は示さなかった。
図10B図10は、Berkeley Light Beaconプラットフォーム上でCLDワークフロー中に温度シフトを実施すると、モノクローナル抗体産生プロファイルが変化することを示す。(A)Beaconプラットフォーム上の標準的な細胞株開発クローニングワークフロー(左パネル)及びB及びCで実施された温度シフトを伴う細胞株開発クローニングワークフロー(右パネル)の概略図。(B)4日目の温度シフト前(左パネル)及び6日目の温度シフト後(右パネル)に行われたSpotlight(商標)ヒトFcアッセイに対応する正規化分泌スコアデータ。温度シフト後に測定された細胞分泌プロファイルは、より多様な分布を示し、高度に生産性の高いクローンと、分泌の乏しい細胞株をより良く区別できるようになった。(C)温度シフトを伴うCLDワークフローを実施した、モノクローナル抗体を発現する2つのクローン由来細胞株に対応するBerkeley Light Baconプラットフォームで実験期間を通して収集したBrightfield及びSpotlight(商標)Human Fc Assay蛍光画像。機器ソフトウェアによって生成された細胞数及び正規化された分泌スコアを各時点の下に表示する。低温条件でのインキュベーションは、両方のクローンの増殖停止をもたらした。両方の細胞株は、ワークフローの4日目に同等の分泌プロファイルを示したが、クローン1は、温度シフトに応答して増加した分泌レベルを示し、クローン2は示さなかった。
図10C図10は、Berkeley Light Beaconプラットフォーム上でCLDワークフロー中に温度シフトを実施すると、モノクローナル抗体産生プロファイルが変化することを示す。(A)Beaconプラットフォーム上の標準的な細胞株開発クローニングワークフロー(左パネル)及びB及びCで実施された温度シフトを伴う細胞株開発クローニングワークフロー(右パネル)の概略図。(B)4日目の温度シフト前(左パネル)及び6日目の温度シフト後(右パネル)に行われたSpotlight(商標)ヒトFcアッセイに対応する正規化分泌スコアデータ。温度シフト後に測定された細胞分泌プロファイルは、より多様な分布を示し、高度に生産性の高いクローンと、分泌の乏しい細胞株をより良く区別できるようになった。(C)温度シフトを伴うCLDワークフローを実施した、モノクローナル抗体を発現する2つのクローン由来細胞株に対応するBerkeley Light Baconプラットフォームで実験期間を通して収集したBrightfield及びSpotlight(商標)Human Fc Assay蛍光画像。機器ソフトウェアによって生成された細胞数及び正規化された分泌スコアを各時点の下に表示する。低温条件でのインキュベーションは、両方のクローンの増殖停止をもたらした。両方の細胞株は、ワークフローの4日目に同等の分泌プロファイルを示したが、クローン1は、温度シフトに応答して増加した分泌レベルを示し、クローン2は示さなかった。
図11A図11は、Berkeley Light Beaconプラットフォーム上でCLDワークフロー中に温度シフトを実施すると、増殖阻害が達成され、IgG4モノクローナル抗体及び多重特異性抗体フォーマットを発現する細胞株の組換えタンパク質産生プロファイルが変化することを示す。(A)(D)IgG4モノクローナル抗体及び多重特異性抗体をそれぞれ発現するクローン由来細胞株について、実験期間を通して毎日測定した平均倍加時間(上のパネル)及び1チャンバあたりの細胞の平均数(下のパネル)。実験の各時点の温度設定をグラフの上部に概説する。4日目又は3日目から温度シフトを実施すると、それぞれ、IgG4及び多重特異性抗体発現細胞株の両方について、倍加時間の増加及び細胞数の減少によって測定される増殖阻害がもたらされた。(B)(E)モノクローナル抗体又は多重特異性抗体をそれぞれ発現するクローン由来細胞株のBerkeley Light Baconプラットフォームで実験期間を通して収集された代表的な明視野チャンバ画像。機器ソフトウェアによって生成された細胞数を各時点の下に表示する。(C)(F)それぞれ4日目及び8日目又は7日目の時点に対応するSpotlight(商標)Human Fc Assayのスコアデータ。低下した温度での長時間のインキュベーション後に達成された分泌プロファイルは、より多様な分布を示し、高度に生産性の高いクローンと、分泌の乏しい細胞株をより良く区別できるようになった。
図11B図11は、Berkeley Light Beaconプラットフォーム上でCLDワークフロー中に温度シフトを実施すると、増殖阻害が達成され、IgG4モノクローナル抗体及び多重特異性抗体フォーマットを発現する細胞株の組換えタンパク質産生プロファイルが変化することを示す。(A)(D)IgG4モノクローナル抗体及び多重特異性抗体をそれぞれ発現するクローン由来細胞株について、実験期間を通して毎日測定した平均倍加時間(上のパネル)及び1チャンバあたりの細胞の平均数(下のパネル)。実験の各時点の温度設定をグラフの上部に概説する。4日目又は3日目から温度シフトを実施すると、それぞれ、IgG4及び多重特異性抗体発現細胞株の両方について、倍加時間の増加及び細胞数の減少によって測定される増殖阻害がもたらされた。(B)(E)モノクローナル抗体又は多重特異性抗体をそれぞれ発現するクローン由来細胞株のBerkeley Light Baconプラットフォームで実験期間を通して収集された代表的な明視野チャンバ画像。機器ソフトウェアによって生成された細胞数を各時点の下に表示する。(C)(F)それぞれ4日目及び8日目又は7日目の時点に対応するSpotlight(商標)Human Fc Assayのスコアデータ。低下した温度での長時間のインキュベーション後に達成された分泌プロファイルは、より多様な分布を示し、高度に生産性の高いクローンと、分泌の乏しい細胞株をより良く区別できるようになった。
図11C図11は、Berkeley Light Beaconプラットフォーム上でCLDワークフロー中に温度シフトを実施すると、増殖阻害が達成され、IgG4モノクローナル抗体及び多重特異性抗体フォーマットを発現する細胞株の組換えタンパク質産生プロファイルが変化することを示す。(A)(D)IgG4モノクローナル抗体及び多重特異性抗体をそれぞれ発現するクローン由来細胞株について、実験期間を通して毎日測定した平均倍加時間(上のパネル)及び1チャンバあたりの細胞の平均数(下のパネル)。実験の各時点の温度設定をグラフの上部に概説する。4日目又は3日目から温度シフトを実施すると、それぞれ、IgG4及び多重特異性抗体発現細胞株の両方について、倍加時間の増加及び細胞数の減少によって測定される増殖阻害がもたらされた。(B)(E)モノクローナル抗体又は多重特異性抗体をそれぞれ発現するクローン由来細胞株のBerkeley Light Baconプラットフォームで実験期間を通して収集された代表的な明視野チャンバ画像。機器ソフトウェアによって生成された細胞数を各時点の下に表示する。(C)(F)それぞれ4日目及び8日目又は7日目の時点に対応するSpotlight(商標)Human Fc Assayのスコアデータ。低下した温度での長時間のインキュベーション後に達成された分泌プロファイルは、より多様な分布を示し、高度に生産性の高いクローンと、分泌の乏しい細胞株をより良く区別できるようになった。
図11D図11は、Berkeley Light Beaconプラットフォーム上でCLDワークフロー中に温度シフトを実施すると、増殖阻害が達成され、IgG4モノクローナル抗体及び多重特異性抗体フォーマットを発現する細胞株の組換えタンパク質産生プロファイルが変化することを示す。(A)(D)IgG4モノクローナル抗体及び多重特異性抗体をそれぞれ発現するクローン由来細胞株について、実験期間を通して毎日測定した平均倍加時間(上のパネル)及び1チャンバあたりの細胞の平均数(下のパネル)。実験の各時点の温度設定をグラフの上部に概説する。4日目又は3日目から温度シフトを実施すると、それぞれ、IgG4及び多重特異性抗体発現細胞株の両方について、倍加時間の増加及び細胞数の減少によって測定される増殖阻害がもたらされた。(B)(E)モノクローナル抗体又は多重特異性抗体をそれぞれ発現するクローン由来細胞株のBerkeley Light Baconプラットフォームで実験期間を通して収集された代表的な明視野チャンバ画像。機器ソフトウェアによって生成された細胞数を各時点の下に表示する。(C)(F)それぞれ4日目及び8日目又は7日目の時点に対応するSpotlight(商標)Human Fc Assayのスコアデータ。低下した温度での長時間のインキュベーション後に達成された分泌プロファイルは、より多様な分布を示し、高度に生産性の高いクローンと、分泌の乏しい細胞株をより良く区別できるようになった。
図11E図11は、Berkeley Light Beaconプラットフォーム上でCLDワークフロー中に温度シフトを実施すると、増殖阻害が達成され、IgG4モノクローナル抗体及び多重特異性抗体フォーマットを発現する細胞株の組換えタンパク質産生プロファイルが変化することを示す。(A)(D)IgG4モノクローナル抗体及び多重特異性抗体をそれぞれ発現するクローン由来細胞株について、実験期間を通して毎日測定した平均倍加時間(上のパネル)及び1チャンバあたりの細胞の平均数(下のパネル)。実験の各時点の温度設定をグラフの上部に概説する。4日目又は3日目から温度シフトを実施すると、それぞれ、IgG4及び多重特異性抗体発現細胞株の両方について、倍加時間の増加及び細胞数の減少によって測定される増殖阻害がもたらされた。(B)(E)モノクローナル抗体又は多重特異性抗体をそれぞれ発現するクローン由来細胞株のBerkeley Light Baconプラットフォームで実験期間を通して収集された代表的な明視野チャンバ画像。機器ソフトウェアによって生成された細胞数を各時点の下に表示する。(C)(F)それぞれ4日目及び8日目又は7日目の時点に対応するSpotlight(商標)Human Fc Assayのスコアデータ。低下した温度での長時間のインキュベーション後に達成された分泌プロファイルは、より多様な分布を示し、高度に生産性の高いクローンと、分泌の乏しい細胞株をより良く区別できるようになった。
図11F図11は、Berkeley Light Beaconプラットフォーム上でCLDワークフロー中に温度シフトを実施すると、増殖阻害が達成され、IgG4モノクローナル抗体及び多重特異性抗体フォーマットを発現する細胞株の組換えタンパク質産生プロファイルが変化することを示す。(A)(D)IgG4モノクローナル抗体及び多重特異性抗体をそれぞれ発現するクローン由来細胞株について、実験期間を通して毎日測定した平均倍加時間(上のパネル)及び1チャンバあたりの細胞の平均数(下のパネル)。実験の各時点の温度設定をグラフの上部に概説する。4日目又は3日目から温度シフトを実施すると、それぞれ、IgG4及び多重特異性抗体発現細胞株の両方について、倍加時間の増加及び細胞数の減少によって測定される増殖阻害がもたらされた。(B)(E)モノクローナル抗体又は多重特異性抗体をそれぞれ発現するクローン由来細胞株のBerkeley Light Baconプラットフォームで実験期間を通して収集された代表的な明視野チャンバ画像。機器ソフトウェアによって生成された細胞数を各時点の下に表示する。(C)(F)それぞれ4日目及び8日目又は7日目の時点に対応するSpotlight(商標)Human Fc Assayのスコアデータ。低下した温度での長時間のインキュベーション後に達成された分泌プロファイルは、より多様な分布を示し、高度に生産性の高いクローンと、分泌の乏しい細胞株をより良く区別できるようになった。
図12図12は、標準的なCLDワークフローごとに36℃で実行された搬出と比較した場合、32℃の温度で実行された搬出手順が同様のクローン回復をもたらすことを示す。(A)(B)上のパネル:それぞれ、Beaconプラットフォーム上の標準的な細胞株開発クローニングワークフローと、搬出プロセス中に温度シフトが実施される細胞株開発クローニングワークフローの概略図。下のパネル:単一細胞クローニング段階で実施された搬出温度にかかわらず同等のクローン回収効率を示す、エクスポート手順の18日後に取得された96ウェルエクスポートプレートの代表的な画像。
【発明を実施するための形態】
【0018】
モノクローナル抗体は対称的であり、2つの同一のポリペプチド鎖を有し、各対は1つの「軽」鎖(LC)及び1つの「重」鎖(HC)を有し、1つの標的に特異的である。2つ以上の標的に結合し、中和し、且つ/又は相互作用する多重特異性抗体は、ますます困難な治療適応症を満たすために、ますます多様な組成物及び構成で、且つ、ますます多様なフォーマットで操作されており、モノクローナル抗体に勝る代替物及び改善を提供する。多くの多重特異性抗体は、1つの軽鎖及び1つの重鎖を有するなど、モノクローナル抗体と特徴を共有するが、モノクローナル抗体とは異なり、多重特異性抗体の重鎖は非対称であり得る。
【0019】
「非対称」多重特異性抗体は、長さが異なる重鎖を含む。重鎖は、典型的には、可変ドメイン(Vh)及び定常ドメイン(C1)を含むフラグメント抗原結合(FAB)領域と、2つの定常ドメイン(C2及び/又はC3)を含むフラグメント結晶化可能(Fc)領域と、Fab領域とFc領域とを連結するヒンジ領域とを含む。非対称多重特異性抗体の重鎖は、これらの成分の一部又は全部を含み得る。更に、重鎖はまた、重鎖の可変ドメイン及び/又は定常ドメインの任意の点に直接及び/又は間接的に結合した1つ以上の追加の成分を含み得る。重鎖の長さは、あらゆる可変ドメイン、定常ドメイン、ヒンジ領域、結合タンパク質及び/又はペプチド並びにあらゆるリンカー及び/又は他の結合機構を含む、重鎖を構成するすべての成分のアミノ酸配列を組み合わせたサイズに基づいて決定される。組み合わせたアミノ酸配列が最も長い重鎖を「長重鎖」と呼ぶ。組み合わせたアミノ酸配列がより短い重鎖を「短重鎖」と呼ぶ。非対称多重特異性抗体は、少なくとも1つの長重鎖及び少なくとも1つの短重鎖を有する。非対称多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原若しくは標的、及び/又は同じ抗原若しくは標的上の異なるエピトープと特異的に結合、中和、及び/又は相互作用する。
【0020】
一実施形態では、非対称抗体の長重鎖は、結合ムテインを含む。一実施形態では、非対称多重特異性抗体は、長重鎖及び短重鎖を含む抗PD1抗体である。長重鎖は、抗PD-1抗体の2つの抗体重鎖のうちの一方に結合した単一のIL-21ムテインを含み、短重鎖は他方の抗PD-1抗体重鎖を含む。一実施形態では、長重鎖は、抗PD-1抗体のFcに結合したIL-21ムテインを含む。一実施形態では、長重鎖は、リンカーなしで抗PD-1抗体のFcに直接結合したIL-21ムテインを含む。一実施形態では、長重鎖は、リンカーで又はリンカーなしで抗PD-1抗体の2つの抗体重鎖のうちの一方のC末端に直接結合したIL-21ムテインを含む。
【0021】
非対称多重特異性抗体の産生及び精製は、それ自体の製造上の課題をもたらす。これらの抗体の操作された起源及び非対称性は、製造プロセス全体を通して、特に細胞培養工程中に、製品関連不純物を形成しやすくする。不純物の種類及び/又は量は、これらの非対称多重特異性抗体の発現、精製、収率、活性及び/又は製品品質に影響を及ぼし得る。「製品関連不純物」は、1つ以上の構造成分を所望の製品、例えば、非対称多重特異性抗体と共有し得る変異体を指す。構造成分の一例は、非対称多重特異性抗体の長重鎖である。そのような不純物が細胞培養中に発現される場合、それらは下流の精製工程で除去されなければならない。これらの不純物を除去する課題は、組成、サイズ、疎水性、等電点(pI)、表面電荷などにおいて、不純物が目的のタンパク質にどの程度類似しているかに応じて増加する。
【0022】
組換え非対称多重特異性抗体を構成する固有の成分のバランスのとれた発現は、培養中にこれらのタンパク質を発現させる場合の課題である。1つ以上の成分の発現の不均衡は、不対合及び/又は誤対合タンパク質変異体などの製品関連不純物の形成をもたらし得る。製品関連不純物の除去の成功の程度は、不純物の特性に依存し得る。更に、除去工程は、ある程度の製品の損失をもたらす。本明細書に記載されるように、抗PD-1長重鎖を含む製品関連不純物は、精製工程中に除去することが予想外に困難であり、製品品質、収率、及び製造プロセス全体の堅牢性に悪影響を及ぼすことが分かった。
【0023】
細胞培養中に産生された非対称多重特異性抗体の長重鎖と短重鎖のモル比は、培養温度に影響されることが分かった。本明細書及び実施例においてより詳細に記載されるように、非対称多重特異性抗体を発現するクローン細胞が、温度シフト(例えば、36℃から34℃又は32.5℃)の結果として、細胞培養工程中に低温設定点に供されることが発見された。クローン細胞によって発現される長重鎖と短重鎖のモル比は、より低い培養温度で予想外に増加した。この場合、クローン細胞は、モノクローナル抗体及び対称多重特異性抗体などの他の種類のタンパク質を発現するクローン細胞に対して典型的に行われるように、単一細胞のクローニング、スケールアップ及び選択の間に固定した生理学的温度(例えば、36℃)を維持する典型的な細胞株開発プロセスを使用して増殖及び選択されてきた非対称多重特異性抗体を発現する。一実施形態では、製品関連不純物は、重鎖発現の不均衡に起因する。一実施形態では、製品関連不純物は、長重鎖と短重鎖の比の不均衡に起因する。一実施形態では、製品関連不純物は、長重鎖と短重鎖の比の増加に起因する。細胞培養物のpHによる影響は観察されなかった。
【0024】
温度シフトは、細胞増殖及び対称性タンパク質の組換えタンパク質産生に影響を及ぼすために細胞培養工程中に一般的に使用される。しかしながら、非対称多重特異性抗体を発現する細胞の場合、細胞培養中のそのような温度シフトは、培養中に発現される長重鎖と短重鎖の比を予想外に変化させ得る。長重鎖と短重鎖の比の増加は、製品関連不純物の形成及び種類に影響を及ぼすことが分かった。この長重鎖と短重鎖の比の変化は、精製、活性、製品品質、並びに製造プロセス全体の堅牢性に影響を及ぼす可能性がある。
【0025】
非対称多重特異性抗体の生成品質は、細胞培養温度によって調節され得ることが分かった。特に、本発明は、短重鎖に対する長重鎖のよりバランスのとれた発現を維持し、それにより、不対合及び/又は誤対合長重鎖を有する製品関連不純物の形成を減少させる温度条件を決定するための方法を提供する。一実施形態では、細胞培養温度レジームは、重鎖関連製品関連不純物を調節することに加えて、温度が非対称多重特異性抗体の発現、生産性、増殖、及び/又は他の所望の製品品質属性も調節するように更に選択され得る。
【0026】
本明細書に記載されるように、非対称多重特異性抗体の長重鎖の発現の予想外の温度誘発不均衡の影響は、そのようなタンパク質を含む製剤の製造にとって問題であった。モノクローナル抗体などの対称タンパク質は、鎖が同一であるため、重鎖のバランスのとれた発現はそれほど重要ではない可能性がある。しかしながら、少なくとも1つの長重鎖及び少なくとも1つの短重鎖を有する非対称多重特異性抗体については、重鎖の発現のバランスが、医薬品の堅牢な製造工程及び所望の収率及び製品品質属性を有する製造の重要な構成要素であることが分かった。長重鎖及び短重鎖の生成における不均衡は、不対合又は誤対合長重鎖から生じる製品関連不純物の形成の機会を増加させた。一実施形態では、製品関連不純物は、重鎖発現の不均衡に起因する。一実施形態では、製品関連不純物は、不対合又は誤対合重鎖を含む。一実施形態では、製品関連不純物は、不対合又は誤対合長重鎖を含む。
【0027】
製品関連不純物は、不対合及び/又は誤対合重鎖を含む。例示的な製品関連不純物としては、不対合長重鎖及び/又は誤対合長重鎖が挙げられる。製品関連不純物は、長重鎖を含むホモ二量体、半抗体、凝集体、不対合成分、抗体断片及び/又は抗体断片の様々な組み合わせなどの形態であり得る。「半抗体」は、例えば、2つの重鎖ポリペプチド間の不完全な会合又は相互作用の断絶に起因して形成し得る製品関連不純物を指す。半抗体は、単一の軽鎖ポリペプチド及び単一の重鎖ポリペプチドを含む。「ホモ二量体」とは、例えば、異なる標的に対して特異性を有する重鎖及び軽鎖と対合して所望の非対称多重特異性ヘテロ二量体を形成する代わりに、同じ標的に対して特異性を有する重鎖及び軽鎖が互いに再結合する場合に形成し得る製品関連不純物を指す。これは、典型的には宿主細胞中での発現中に発生する。ホモ二量体、半抗体、凝集体、抗体断片及び抗体断片の様々な組み合わせ、不対合成分などの形態の製品関連不純物には、少なくとも1つの長重鎖を有するものが含まれる。
【0028】
一実施形態では、製品関連不純物は、不対合長重鎖を含む。一実施形態では、製品関連不純物は、誤対合長重鎖を含む。一実施形態では、製品関連不純物は、ホモ二量体、半抗体、タンパク質凝集体、抗体断片、抗体断片の組み合わせ、及び不対合又は誤対合重鎖を有する不対合成分から選択される。一実施形態では、製品関連不純物は、ホモ二量体、半抗体、タンパク質凝集体、抗体断片、抗体断片の組み合わせ、又は不対合重鎖を有する不対合抗体断片から選択される。一実施形態では、製品関連不純物は、ホモ二量体、半抗体、タンパク質凝集体、抗体断片、又は誤対合重鎖を有する抗体断片の組み合わせから選択される。一実施形態では、製品関連不純物は、ホモ二量体、半抗体、タンパク質凝集体、抗体断片、抗体断片の組み合わせ、及び不対合又は誤対合長重鎖を有する不対合成分から選択される。一実施形態では、製品関連不純物は、長重鎖を含むホモ二量体を含む。一実施形態では、製品関連不純物は、長重鎖を含む半抗体を含む。一実施形態では、製品関連不純物は、長重鎖を含む凝集体を含む。一実施形態では、製品関連不純物は、長重鎖を含む抗体断片を含む。一実施形態では、製品関連不純物は、長重鎖を含む不対合抗体断片を含む。
【0029】
本発明は、少なくとも1つの非対称多重特異性抗体製品関連不純物の量を調節する細胞培養温度レジームを選択するための方法であって、a)非対称多重特異性抗体を発現する同じ細胞株をそれぞれ接種した少なくとも2つの細胞培養物を確立する工程と、b)単一の温度からなる第1の温度レジームで少なくとも1つの細胞培養物を培養し、第2の温度レジームで少なくとも1つの細胞培養物を培養する工程と、c)各温度レジームにおける細胞培養物中の少なくとも1つの製品関連不純物の量を比較する工程と、d)細胞培養物中の製品関連不純物の量を減少させる温度レジームを選択する工程とを含む、方法を提供する。
【0030】
本発明は、細胞培養中に細胞によって発現される組換え非対称多重特異性抗体の製品品質を調節するための方法であって、a)重鎖発現の不均衡に起因する少なくとも1つの製品関連不純物の発現を低下させる温度レジームを選択する工程であって、不純物が、不対合又は誤対合長重鎖を含む、工程と、選択された温度レジームで細胞株を培養する工程と、組換え非対称多重特異性抗体を回収する工程とを含む、方法を提供する。
【0031】
一実施形態では、温度レジームを選択する工程は、a)非対称多重特異性抗体を発現する同じ細胞株をそれぞれ接種した少なくとも2つの細胞培養物を確立する工程と、b)単一の温度からなる第1の温度レジームで少なくとも1つの細胞培養物を培養し、第2の温度レジームで少なくとも1つの細胞培養物を培養する工程と、c)各温度レジームにおける細胞培養物中の少なくとも1つの製品関連不純物を比較する工程と、d)不対合又は誤対合長重鎖を含む少なくとも1つの製品関連不純物の発現を低下させる温度レジームを選択する工程とを含む。
【0032】
本発明は、細胞培養中に細胞によって発現される組換え非対称多重特異性抗体の製品品質を調節するための方法であって、a)不対合又は誤対合長重鎖を含む少なくとも1つの製品関連不純物の発現を低下させる温度レジームを選択する工程と、b)細胞株を選択された温度レジームで培養する工程と、c)組換え非対称多重特異性抗体を回収する工程とを含む、方法を提供する。
【0033】
本発明は、細胞培養温度を介した細胞培養中の長重鎖を含む少なくとも1つの組換え非対称多重特異性抗体製品関連不純物の産生を調節するための方法であって、a)不対合又は誤対合長重鎖を含む少なくとも1つの製品関連不純物の発現を低下させる温度レジームを選択する工程と、b)細胞株を選択された温度レジームで培養する工程と、c)組換え非対称多重特異性抗体を回収する工程とを含む、方法を提供する。
【0034】
生物治療薬の開発は、哺乳動物細胞を操作して所望のタンパク質を分泌させることに依存している。生物治療薬の開発の成功は、生物治療薬を発現するクローン細胞株の開発を含む長期にわたる段階プロセスである。典型的な哺乳動物細胞株の発生プロセスは、一つには、選択の間の細胞の回収が遅いこと、単一細胞クローニング、及び適切な産生宿主を同定するために複数のスクリーニングアッセイを実施する必要があることに起因して、リソース集約的であり、長期にわたるタイムラインを必要とする。クローン選択は、様々なタンパク質産生研究において多数の候補をスクリーニングする必要があるため、細胞株開発における最も労働集約的な工程の1つである。このプロセスの所望の結果は、所望の製造プロセス及び操作に最小限の影響で適合しながら、所望の製品品質属性を有する治療用タンパク質を発現する哺乳動物クローン細胞株の同定及び単離である。
【0035】
クローン細胞株の選択には、発現された組換えタンパク質において所望される属性、例えば、力価、製品品質、及び/又は増殖特性が含まれ、これらは、重鎖のよりバランスのとれたモル比を含み得る。単一の一定温度条件下で選択されたクローン細胞株候補を、少なくとも1つの温度の変化又はシフトを組み込んだ条件下、バイオリアクター内で増殖させた場合、発現された組換えタンパク質の力価及び生存細胞密度はほとんど影響を受けなかったが、長重鎖と短重鎖のモル比が増加し、その結果、発現された製品関連不純物の量及び種類も変化し、これは、収率、所望のタンパク質の製品品質属性、タンパク質の下流精製、及び製造プロセス全体の堅牢性に影響を与えた。
【0036】
非対称重鎖の比率の不均衡は、形成された製品関連不純物の種類に影響を与えた。長重鎖の過剰な産生は、長重鎖を含むタンパク質関連不純物、例えば、長重鎖を含むホモ二量体及びモノマーの増加をもたらしたことが見出された。重鎖の不均衡な発現、及び発現の不均衡に起因して形成された不純物を除去する必要性(これは、不純物を含有する特定の長重鎖では予想外に困難であることが見出された)は、非対称多重特異性抗体の収率及び製品品質属性に影響を与えた。したがって、所望の及び/又は必要とされる製品品質属性を維持するためには、非対称重鎖のよりバランスのとれた発現を維持し、且つ望ましくない長重鎖不純物から製品を回収するための過剰な努力に起因する不必要な時間、資源、製品損失及び製造プロセスの堅牢性の低下を減らすことが望ましい。
【0037】
所望の原薬の産生を遅延させて、細胞株を切り替えるか、又はクローンを再スクリーニングして、所望の製品品質及び属性に適合し、温度シフトなどの確立された施設慣行及び/又はプロトコルに適した組換え非対称多重特異性抗体原薬を確実に発現することができる新しい細胞株を同定することは、時間、資源、労働力の点でコストがかかり、効率的且つ効果的な製造プロセスをサポートしない。そのため、非対称多重特異性抗体を発現するクローン細胞株の選択における因子としての温度の使用は、所望の品質を有する所望のタンパク質を発現する産生細胞株を得るために有益であり、それによって所望のタンパク質の産生に影響を及ぼす製品関連不純物の産生を低減及び/又は排除する。
【0038】
製造品質並びに製造可能性の要件を満たす組換え非対称多重特異性抗体を発現する望ましい細胞株候補を選択するために、細胞株の開発において温度を手段として使用することができることが見出された。細胞培養温度は、例えば、製品関連不純物の管理に影響を及ぼした長重鎖と短重鎖のモル比を変更することによって、非対称タンパク質の製品品質に影響を及ぼす可能性がある。細胞株の開発プロセスが、スクリーニングプロセス及び選択プロセスにおいて、薬物製品の属性だけでなく、所望の施設慣行及び/又はプロトコルの要件も満たす所望の設定点温度を組み込むことが有益であろう。温度を手段として使用するクローンスクリーニングはまた、温度に対する製品品質属性の応答が分子依存性及び/又は細胞株依存性であると思われるため有益である。スクリーニング及びクローン細胞株の選択中の温度を使用して製品品質を調節すると、製品関連不純物の発現の影響を受けやすいクローン細胞株の選択が減少し、製品品質が改善され、所望のプロセスの実施により適していた。
【0039】
本発明は、非対称多重特異性抗体を発現する細胞株を選択するための方法であって、非対称多重特異性抗体を発現する少なくとも1つのクローン由来細胞株を確立する工程と、1つ以上のクローン由来細胞株から少なくとも2つの細胞培養物を確立する工程であって、各細胞株からの少なくとも1つの細胞培養物が第1の温度レジームで培養され、各細胞株からの少なくとも1つの細胞培養物が第2の温度レジームで培養される、工程と、各温度レジームで培養された細胞によって産生された少なくとも1つの製品関連不純物の発現を比較する工程と、少なくとも1つの製品関連不純物の発現の低下をもたらした細胞株を選択する工程と、を含む方法を提供する。一実施形態では、次いで、選択された細胞株を、少なくとも1つの製品関連不純物の発現の低下をもたらした温度レジームで培養する。
【0040】
本発明は、非対称多重特異性抗体を発現するクローン由来培養物から細胞株を確立するための方法であって、非対称多重特異性抗体をコードする少なくとも1つの遺伝子で細胞を形質転換する工程と、非対称多重特異性抗体を発現する少なくとも1つの単一の安定に形質転換された細胞を単離し、クローン由来培養物を確立する工程と、1つ以上のクローン由来培養物から少なくとも2つの細胞培養物を確立する工程と、各クローン由来培養物からの少なくとも1つの細胞培養物を第1の温度レジームで培養し、各クローン由来培養物からの少なくとも1つの細胞培養物を第2の温度レジームで培養する工程と、各温度レジームで細胞によって産生された長重鎖と短重鎖のモル比を比較する工程と、より低い長重鎖と短重鎖のモル比を生じさせた少なくとも1つのクローン由来培養物を選択する工程と、そのクローン由来培養物から細胞株を確立する工程とを含む、方法を提供する。
【0041】
本発明は、単離され、精製された組換え非対称多重特異性抗体を産生するための方法であって、a)非対称多重特異性抗体を発現する少なくとも1つの単一の安定に形質転換された細胞を単離し、クローン由来培養物を確立する工程と、b)1つ以上のクローン由来培養物から少なくとも2つの細胞培養物を確立する工程と、c)各クローン由来培養物からの少なくとも1つの細胞培養物を単一の温度を含む第1の温度レジームで培養し、各クローン由来培養物からの少なくとも1つの細胞培養物を第2の温度レジームで培養する工程と、d)各温度レジームで培養された細胞によって産生された、不対合又は誤対合長重鎖を含む少なくとも1つの関連不純物を比較する工程と、e)製品関連不純物の産生を調節した細胞培養物を選択する工程と、f)選択された細胞培養物から非対称多重特異性抗体を発現する細胞株を確立する工程と、g)非対称多重特異性抗体を発現する細胞株をバイオリアクターに接種する工程と、h)細胞を培養して、製品関連不純物の産生を調節した温度で非対称多重特異性抗体を発現させる工程と、i)細胞培養物から組換え非対称多重特異性抗体を回収する工程と、j)1つ以上のクロマトグラフィー単位操作によって組換え非対称多重特異性抗体を処理する工程と、k)単離され、精製された組換え非対称多重特異性抗体を得る工程と、を含む方法を提供する。
【0042】
本発明は、本明細書に記載の方法による単離され、精製された組換え非対称多重特異性抗体を提供する。
【0043】
組換え非対称多重特異性抗体の産生に適した細胞株は、望ましくない製品関連不純物の発現若しくは産生、又は発現若しくは産生の増加なしに、製品品質及び生産性に関して安定である必要がある。これらの細胞株は、経時的に、毎回同じ品質及び属性で所望の非対称多重特異性抗体を産生することができなければならない。
【0044】
安定な細胞株の作製は、目的のタンパク質の組換え産生に適した又は望ましい宿主細胞の形質転換から始まる。典型的には、そのような細胞は、組換えタンパク質の産生のために作製、改変、及び/又は開発される。
【0045】
細胞は、多細胞動物に由来し得る。生物製剤製造のために一般的に使用される動物細胞株は哺乳動物細胞株である。培養での増殖に好適な多種多様な哺乳類細胞株が、American Type Culture Collection(マナッサス、バージニア州)及び販売業者から入手可能である。一般的に使用される細胞株としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胎児腎臓(HEK)細胞、マウス骨髄腫(NS0、Sp2/0)細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、ヒト胎児腎臓(293)細胞、線維肉腫(HT-1080)細胞、ヒト胎児網膜(PER.C6)細胞、ハイブリッド腎臓及びB細胞(HKB-11)、CEVECの羊膜細胞産生(CAP)細胞、ヒト肝臓(HuH-7)細胞、並びに臨床及び/又は商業製造で使用される又は使用に適した任意の他の細胞由来のものが挙げられる。
【0046】
最も一般的に使用される細胞株は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞に由来する。CHO細胞は、複雑な組換えタンパク質を産生するために広く使用されている。ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)欠失変異細胞株(Urlaub et al.(1980),Proc Natl Acad Sci USA 77:4216-4220)、DXB11及びDG-44は、効率的なDHFR選択性且つ増幅可能な遺伝子発現系により、これらの細胞での高レベルの組換えタンパク質発現が可能になるため(Kaufman R.J.(1990),Meth Enzymol 185:537-566)、望ましいCHO宿主細胞株である。また、グルタミンシンセターゼ(GS)系メチオニンスルホキシミン(MSX)選択を利用した、グルタミンシンセターゼ(GS)ノックアウトCHOK1SV細胞株も広く使用される。CHOK1細胞(ATCC CCL61)も含まれる。更に、これらの細胞は、接着又は懸濁培養物として操作しやすく、比較的良好な遺伝的安定性を示す。CHO細胞及びそれらによって組換え発現されるタンパク質は、広範に特性評価がなされており、規制当局による臨床的及び商業的製造における使用が承認されている。
【0047】
これらの細胞は、目的のタンパク質をコードする遺伝子を含むベクターなどの発現系で形質転換される。目的のタンパク質をコードする少なくとも1つの核酸分子を含むプラスミド、発現ベクター、転写又は発現カセットの形態の発現系及び構築物、並びにそのような発現系又は構築物を含む宿主細胞も本明細書で提供される。本明細書で使用される場合、「ベクター」は、情報をコードするタンパク質を宿主細胞及び/又は宿主細胞内の特定の位置及び/又は区画に移行させ且つ/又は輸送する使用に好適な任意の分子又は実体(例えば、核酸、プラスミド、バクテリオファージ、トランスポゾン、コスミド、染色体、ウイルス、ウイルスカプシド、ビリオン、裸のDNA、DNA複合体など)を意味する。ベクターとしては、ウイルスベクター及び非ウイルスベクター、並びに非エピソーム哺乳動物ベクターを挙げることができる。ベクターは、しばしば、発現ベクター、例えば、組換え発現ベクター又はクローニングベクターと呼ばれる。ベクターを宿主細胞に導入してベクター自体の複製を可能にし、それによってその中に含有されるポリヌクレオチドのコピーを増幅させることができる。クローニングベクターは、配列成分を含有し得、一般に、限定するものではないが、複製起点、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列及び選択マーカーを含み得る。これらのエレメントは、当業者により必要に応じて選択され得る。
【0048】
形質転換は、細胞の遺伝的特徴の変化を指す。細胞は、新しいDNA又はRNAを含有するように改変されている場合、形質転換されている。例えば、トランスフェクション、形質導入、又は他の技法によって新しい遺伝物質を導入することにより、細胞がその天然状態から遺伝子改変された場合、細胞は形質転換されている。「形質導入」は、ウイルスベクターによって外来DNAを細胞に導入するプロセスを指す。トランスフェクションは、細胞による外来DNA又は外因性DNAの取り込みを指す。1つ以上のベクターを、増幅及び/又はポリペプチド発現のために適切な細胞に挿入することができる。選択された細胞への発現ベクターの形質転換は、トランスフェクション、感染、リン酸カルシウムによる共沈、エレクトロポレーション、ヌクレオフェクション、マイクロインジェクション、DEAE-デキストラン媒介性トランスフェクション、カチオン性脂質媒介性送達、リポソーム媒介性トランスフェクション、微粒子銃、受容体-媒介性遺伝子送達、ポリリジン、ヒストン、キトサン、及びペプチドによって媒介される送達を含む周知の方法によって行うことができる。選択される方法は、ある程度、使用される宿主細胞の型の関数となる。これらの方法及び他の適切な方法は、当業者に周知である。
【0049】
トランスフェクション又は形質導入に続き、形質転換されたDNAは、細胞の染色体に物理的に組み込むことにより、その細胞のDNAに組換えられ得、又は複製されることなくエピソームエレメントとして一時的に維持され得、又はプラスミドとして独立して複製され得る。形質転換DNAが細胞分裂によって複製される場合、細胞は「安定的に形質転換」されているとみなされる。トランスフェクション後、細胞の生存率は通常は低下し、未増幅プールは通常は回収を可能にするために複数回継代される。プールは、一定温度の培養物、典型的には35℃~37℃、典型的には36℃などの生理学的温度に維持される。
【0050】
細胞を選択圧に供して、発現系を内在化した細胞を選択することができる。他の選択遺伝子を用いて、発現されることとなる遺伝子を増幅してもよい。増幅は、増殖又は細胞生存に重要なタンパク質の生成に必要とされる遺伝子が、組換え細胞の累代の染色体内でタンデムに反復されるプロセスである。哺乳類細胞に好適な選択マーカーの例としては、グルタミンシンセターゼ(GS)/メチオニンスルホキシミン(MSX)系、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)及びプロモーターレスチミジンキナーゼ遺伝子が挙げられる。哺乳動物細胞形質転換体は、その形質転換体のみが唯一、ベクター内に存在する選択遺伝子によって生存するように適合されている選択圧下に置かれる。培地中の選択薬剤濃度を連続的に増加させる条件下で形質転換細胞を培養することによって選択圧をかけ、それによって選択遺伝子と目的のタンパク質をコードするDNAとの両方が増幅される。その結果、増幅されたDNAから多量の目的のポリペプチドが合成される。
【0051】
CHO細胞とともに使用される2つの一般的な系は、DHFR欠損細胞(例としては、CHO-DXB11及びCHO-DG44が挙げられる)及びグルタミンシンセターゼ(GS)を欠くCHO細胞、例えば、CHOK1SV、又は他のGSノックアウト細胞である。チミジン及びヒポキサンチンを欠く選択培地のDHFR欠損細胞を使用すると、十分に外因的に細胞に組み込まれたDHFR遺伝子コピーを有する細胞が生き延びる。同様に、GSを欠く細胞では、L-グルタミンの代わりにL-グルタミン酸を補充した選択培地を使用すると、細胞ゲノムに十分なGSが組み込まれた細胞が生き延びる。
【0052】
組換えタンパク質原薬の商業規模生産のための細胞株は、単一細胞前駆体に由来する。これらのクローン由来培養物を個別に増殖させ、増殖、生産性及び分泌タンパク質産物の品質について評価しなければならない。安定なクローン細胞株を使用して、所望の組換えタンパク質を発現する単一細胞前駆体クローンを備蓄するためのマスターセルバンクを確立する。次いで、マスターセルバンクからの細胞を使用して、産生に使用される細胞を供給するワーキングセルバンクを作製する。単一細胞クローニングは、増幅された細胞又は増幅されていない細胞を、96ウェルプレートなどのマルチウェルベッセルにアリコートすることによって行われ、それらは一定温度、典型的には生理学的温度、例えば、35℃~37℃、典型的には36℃の培養に維持される。
【0053】
集団からの単一細胞単離を支援する技術が利用可能である。これらとしては、限定するものではないが、限界希釈めっき、マイクロ流体カプセル化、FACS支援細胞選別、半固体媒体中でのコロニー選別、単一セルプリンタ、マイクロ流体ウェル又はチップ、例えば、流体光学技術(Berkley Lights、エメリービル、カリフォルニア州)が挙げられる。単一の細胞から生じるコロニーのみが、更なる処理のために選択される。
【0054】
CLDワークフロー中に生成された安定なプールは、組み込まれた導入遺伝子の数及び局在が異なり、固有の遺伝的及び表現型的特徴を有し、且つ/又は細胞特異的生産性が異なる細胞の異種混合物を含む。これらの安定にトランスフェクトされたプールは、クローン由来培養物を作製するための単一細胞クローニングに使用され、その後、性能についてスクリーニングされて、所望の品質及び特性、例えば、発現、生産性、増殖、及び/又は製品関連不純物の産生を含む他の製品品質属性を有するものが同定される。導入遺伝子コピー数は、細胞が生存するために必要な選択マーカーに対する阻害剤を使用して増幅することもできる。これは、選択マーカー遺伝子並びに隣接遺伝子座に組み込まれた導入遺伝子のコピー数を増加させる。一実施形態では、クローン由来培養物は、発現された非対称多重特異性抗体の所望の発現、生産性、増殖及び/又は他の所望の製品品質特性について更に選択され得る。
【0055】
次いで、クローンは、サイズが増加する容器を使用してスケールアップされ、一定の生理学的温度、35℃~37℃、典型的には36℃の培養に更に維持される。これらの容器としては、マルチウェルプレート、例えば、96ウェルプレート、24ウェルプレート、6ウェルプレートを挙げることができる。
【0056】
細胞が所望の細胞数又は細胞密度に達したら、クローンを、産生条件を模倣する条件下で評価及びランク付けし、産生及び製品品質について初めて評価する。クローンをディープウェルプレート、スピンチューブ、及び/又は攪拌振盪フラスコなどの適切な容器に移し、フェドバッチ培養で懸濁液中で増殖させ、35℃~37℃、典型的には36℃の一定の生理学的温度でインキュベートする。これは、典型的には10日間のプロセスであり、2~3日ごとに培養条件(例えば、pH、オスモル濃度、乳酸塩/グルコースなど)を供給及びモニタリングする。典型的には、少なくとも100個以上のクローンをスクリーニングする。プール及びクローンのランキングは、力価、比生産性(qP)、増殖、生存率及び製品品質(PQ)プロファイルなどを考慮する。選択に使用される特定の製品品質は、通常、発現されるタンパク質のモダリティ、並びに最終製剤及び/又は原薬の製造中に所望され、且つ/又は必要とされる品質に依存する。これらには、凝集レベル、電荷分布、クリップ、部分種、及び翻訳後修飾が含まれ得る。上位の、典型的には10以下のクローンは、更なる開発のために選択される。
【0057】
上位のクローン候補は、典型的には、大規模生産中に使用されるいくつかの/すべての条件下で小規模バイオリアクター(典型的には3L又は7L)で培養される。例えば、大規模生産中に1つ以上の温度シフトを行う場合、これらの温度設定点は、小規模バイオリアクターの実行中に組み込まれる。このプロセスは、典型的には10~25日以上のプロセスである。いくつかの実施形態では、このプロセスは15~20日間である。いくつかの実施形態では、このプロセスは、少なくとも15日間である。クローンを再度評価し、生産性、増殖、製品品質属性などに基づいてランク付けする。
【0058】
このプロセスを使用して非対称多重特異性抗体を発現するクローン細胞をスクリーニング及び選択した場合、一定の生理学的温度(36℃)でスクリーニング及び選択したクローン細胞によって発現されるタンパク質の製品品質属性が、細胞を温度シフト(36℃から34℃、又は36℃から32.5℃)を含む細胞培養条件に供した場合に変化することが観察された。より低い培養温度への曝露は、長重鎖と短重鎖のモル比の増加をもたらした。長重鎖及び短重鎖の両方の転写は、より低い温度で、ただし異なる速度で継続し、観察される偏ったモル比をもたらす可能性がある。重鎖の比のシフトは、形成された製品関連不純物の種類に影響を与え、これらの不純物は、産生物の収率及び活性、並びに下流の精製工程の効率に影響を与えた。
【0059】
これらの非対称多重特異性抗体の製品品質は、細胞培養中の温度によって影響を受けた。この結果をよりよく理解するために、非対称多重特異性抗体を発現するクローンを、最初のスクリーニング及び製品品質属性に基づくクローンの選択の間に1つ以上の温度設定点に曝露した。クローンのスクリーニング及び選択の因子として温度を含めると、異なる温度設定点で長重鎖と短重鎖のよりバランスのとれたモル比を維持することができるクローンを同定することができた。このように、製品関連不純物の組成が変化し、これにより下流精製が改善され、所望の生成物の収率が改善され、より堅牢な製造プロセスにも寄与した。
【0060】
温度レジームは、細胞培養中に使用される温度又は温度設定点を指す。1つ以上の温度レジームが、細胞培養工程の過程にわたって使用され得る。ほとんどの組換え治療用タンパク質は、哺乳動物宿主細胞によって発現される。細胞の最適な増殖を促進するために、哺乳動物細胞培養物は、典型的には36℃~37℃の温度に維持される。所望の組換えタンパク質の産生効率を高めるために、産生の増強を促進する最適未満の細胞増殖条件が望まれ得る。より低い培養温度を使用して、細胞増殖を遅延又は停止させ、所望の組換え抗体の産生を促進することができる。増殖期の最適温度から産生期の最適温度への温度シフトの使用は、細胞培養戦略においてしばしば用いられる。増殖期は、約28℃~約37℃、典型的には36℃~37℃の第1の温度で行われてもよく、産生期は、約28℃~約37℃、典型的には約30℃~約35℃、又は約30℃~約34℃、好ましくは32.5℃の第2の温度で行われてもよい。
【0061】
温度のこの調節は、所望の生産目標を達成するために細胞培養の期間全体にわたって使用することができる。温度シフトの組み合わせを使用して、第1の増殖期から、第1の産生期、第2の増殖期、それに続く第2の産生期などへ移行することもできる。
【0062】
本発明は、2つ以上の温度レジームを提供する。本発明の一実施形態は、1つ以上の単一の温度レジームを含む。単一の温度レジームでは、培養物は、培養期間中、単一の温度に保持される。一実施形態では、温度は約37℃~約28℃である。一実施形態では、温度は約36℃~約28℃である。一実施形態では、温度は約37℃~約29℃である。一実施形態では、温度は約36℃~約29℃である。一実施形態では、温度は約37℃~約30℃である。一実施形態では、温度は約36℃~約30℃である。一実施形態では、温度は約37℃~約31℃である。一実施形態では、温度は約36℃~約31℃である。一実施形態では、温度は約36℃~約31℃である。一実施形態では、温度は約37℃~約32℃である。一実施形態では、温度は約37℃~約32.5℃である。一実施形態では、温度は約36℃~約32℃である。一実施形態では、温度は約36℃~約32.5℃である。一実施形態では、温度は約37℃~約33℃である。一実施形態では、温度は約36℃~約33℃である。一実施形態では、温度は約37℃~約34℃である。一実施形態では、温度は約36℃~約34℃である。一実施形態では、温度は約37℃~約35℃である。一実施形態では、温度は約36℃~約35℃である。一実施形態では、温度は約37℃~約36℃である。一実施形態では、温度は約35℃~約28℃である。一実施形態では、温度は約35℃~約29℃である。一実施形態では、温度は約35℃~約30℃である。一実施形態では、温度は約35℃~約31℃である。一実施形態では、温度は約35℃~約32℃である。一実施形態では、温度は約35℃~約33℃である。一実施形態では、温度は約35℃~約34℃である。一実施形態では、温度は約34℃~約28℃である。一実施形態では、温度は約34℃~約29℃である。一実施形態では、温度は約34℃~約30℃である。一実施形態では、温度は約34℃~約31℃である。一実施形態では、温度は約34℃~約33℃である。一実施形態では、温度は約34℃~約28℃である。一実施形態では、温度は約33℃~約28℃である。一実施形態では、温度は約33℃~約29℃である。一実施形態では、温度は約33℃~約30℃である。一実施形態では、温度は約33℃~約31℃である。一実施形態では、温度は約33℃~約32℃である。一実施形態では、温度は約32℃~約28℃である。一実施形態では、温度は約32℃~約29℃である。一実施形態では、温度は約32℃~約30℃である。一実施形態では、温度は約32℃~約31℃である。一実施形態では、温度は約31℃~約28℃である。一実施形態では、温度は約31℃~約29℃である。一実施形態では、温度は約31℃~約30℃である。一実施形態では、温度は約30℃~約28℃である。一実施形態では、温度は約30℃~約29℃である。一実施形態では、温度は28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、又は37℃である。一実施形態では、温度は32.5℃である。
【0063】
本発明の一実施形態は、少なくとも1つの温度シフトを含む1つ以上の温度レジームを含む。一実施形態では、温度シフトは、第1の温度から、第1の温度よりも高い又は低い第2の温度までである。一実施形態では、第1の温度は約37℃~約28℃である。一実施形態では、第1の温度は約36℃~約28℃である。一実施形態では、第1の温度は約37℃~約29℃である。一実施形態では、第1の温度は約36℃~約29℃である。一実施形態では、第1の温度は約37℃~約30℃である。一実施形態では、第1の温度は約36℃~約30℃である。一実施形態では、第1の温度は約37℃~約31℃である。一実施形態では、第1の温度は約36℃~約31℃である。一実施形態では、第1の温度は約36℃~約31℃である。一実施形態では、第1の温度は約37℃~約32℃である。一実施形態では、第1の温度は約37℃~約32.5℃である。一実施形態では、第1の温度は約36℃~約32℃である。一実施形態では、第1の温度は約36℃~約32.5℃である。一実施形態では、第1の温度は約37℃~約33℃である。一実施形態では、第1の温度は約36℃~約33℃である。一実施形態では、第1の温度は約37℃~約34℃である。一実施形態では、第1の温度は約36℃~約34℃である。一実施形態では、第1の温度は約37℃~約35℃である。一実施形態では、第1の温度は約36℃~約35℃である。一実施形態では、第1の温度は約35℃~約28℃である。一実施形態では、第1の温度は約35℃~約29℃である。一実施形態では、第1の温度は約35℃~約30℃である。一実施形態では、第1の温度は約35℃~約31℃である。一実施形態では、第1の温度は約35℃~約32℃である。一実施形態では、第1の温度は約35℃~約32.5℃である。一実施形態では、第1の温度は約35℃~約33℃である。一実施形態では、第1の温度は約35℃~約34℃である。一実施形態では、第1の温度は約34℃~約28℃である。一実施形態では、第1の温度は約34℃~約29℃である。一実施形態では、第1の温度は約34℃~約30℃である。一実施形態では、第1の温度は約34℃~約31℃である。一実施形態では、第1の温度は約34℃~約32℃である。一実施形態では、第1の温度は約34℃~約32.5℃である。一実施形態では、第1の温度は約34℃~約28℃である。一実施形態では、第1の温度は約33℃~約28℃である。一実施形態では、第1の温度は約33℃~約29℃である。一実施形態では、第1の温度は約33℃~約30℃である。一実施形態では、第1の温度は約33℃~約31℃である。一実施形態では、第1の温度は約33℃~約32℃である。一実施形態では、第1の温度は約33℃~約32.5℃である。一実施形態では、第1の温度は約32℃~約28℃である。一実施形態では、第1の温度は約32℃~約29℃である。一実施形態では、第1の温度は約32℃~約30℃である。一実施形態では、第1の温度は約32.5℃~約28℃である。一実施形態では、第1の温度は約32.5℃~約29℃である。一実施形態では、第1の温度は約32.5℃~約30℃である。一実施形態では、第1の温度は約32.5℃~約31℃である。一実施形態では、第1の温度は約32.5℃~約32℃である。一実施形態では、第1の温度は約32.5℃~約33℃である。一実施形態では、第1の温度は約32.5℃~約34℃である。一実施形態では、第1の温度は約32.5℃~約35℃である。一実施形態では、第1の温度は約31℃~約28℃である。一実施形態では、第1の温度は約31℃~約29℃である。一実施形態では、第1の温度は約31℃~約30℃である。一実施形態では、第1の温度は約30℃~約28℃である。一実施形態では、第1の温度は約30℃~約29℃である。一実施形態では、第1の温度は28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、又は37℃である。一実施形態では、第1の温度は32.5℃である。
【0064】
一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約1℃~9℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約2℃~9℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約3℃~9℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約4℃~9℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約5℃~9℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約6℃~9℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約7℃~9℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約8℃~9℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約1℃~8℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約2℃~8℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約3℃~8℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約4℃~8℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約5℃~8℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約6℃~8℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約7℃~8℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約1℃~7℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約2℃~7℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約3℃~7℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約4℃~7℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約5℃~7℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約6℃~7℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約1℃~6℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約2℃~6℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約3℃~6℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約4℃~6℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約5℃~6℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約1℃~5℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約2℃~5℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約3℃~5℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約4℃~5℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約1℃~4℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約2℃~4℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約3℃~4℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約1℃~3℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約2℃~3℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約2.5℃~3.5℃低い。一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約1℃~2℃低い。
【0065】
一実施形態では、第2の温度は約37℃~約28℃である。一実施形態では、第2の温度は約36℃~約28℃である。一実施形態では、第2の温度は約37℃~約29℃である。一実施形態では、第2の温度は約36℃~約29℃である。一実施形態では、第2の温度は約37℃~約30℃である。一実施形態では、第2の温度は約36℃~約30℃である。一実施形態では、第2の温度は約37℃~約31℃である。一実施形態では、第2の温度は約36℃~約31℃である。一実施形態では、第2の温度は約36℃~約31℃である。一実施形態では、第2の温度は約37℃~約32℃である。一実施形態では、第2の温度は約37℃~約32.5℃である。一実施形態では、第2の温度は約36℃~約32℃である。一実施形態では、第2の温度は約36℃~約32.5℃である。一実施形態では、第2の温度は約37℃~約33℃である。一実施形態では、第2の温度は約36℃~約33℃である。一実施形態では、第2の温度は約37℃~約34℃である。一実施形態では、第2の温度は約36℃~約34℃である。一実施形態では、第2の温度は約37℃~約35℃である。一実施形態では、第2の温度は約36℃~約35℃である。一実施形態では、第2の温度は約35℃~約28℃である。一実施形態では、第2の温度は約35℃~約29℃である。一実施形態では、第2の温度は約35℃~約30℃である。一実施形態では、第2の温度は約35℃~約31℃である。一実施形態では、第2の温度は約35℃~約32℃である。一実施形態では、第2の温度は約35℃~約32.5℃である。一実施形態では、第2の温度は約35℃~約33℃である。一実施形態では、第2の温度は約35℃~約34℃である。一実施形態では、第2の温度は約34℃~約28℃である。一実施形態では、第2の温度は約34℃~約29℃である。一実施形態では、第2の温度は約34℃~約30℃である。一実施形態では、第2の温度は約34℃~約31℃である。一実施形態では、第2の温度は約34℃~約32℃である。一実施形態では、第2の温度は約34℃~約32.5℃である。一実施形態では、第2の温度は約34℃~約28℃である。一実施形態では、第2の温度は約33℃~約28℃である。一実施形態では、第2の温度は約33℃~約29℃である。一実施形態では、第2の温度は約33℃~約30℃である。一実施形態では、第2の温度は約33℃~約31℃である。一実施形態では、第2の温度は約33℃~約32℃である。一実施形態では、第2の温度は約33℃~約32.5℃である。一実施形態では、第2の温度は約32℃~約28℃である。一実施形態では、第2の温度は約32℃~約29℃である。一実施形態では、第2の温度は約32℃~約30℃である。一実施形態では、第2の温度は約32.5℃~約28℃である。一実施形態では、第2の温度は約32.5℃~約29℃である。一実施形態では、第2の温度は約32.5℃~約30℃である。一実施形態では、第2の温度は約32.5℃~約31℃である。一実施形態では、第2の温度は約31℃~約28℃である。一実施形態では、第2の温度は約31℃~約29℃である。一実施形態では、第2の温度は約31℃~約30℃である。一実施形態では、第2の温度は約30℃~約28℃である。一実施形態では、第2の温度は約30℃~約29℃である。一実施形態では、第2の温度は28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、又は37℃である。一実施形態では、第2の温度は32.5℃である。
【0066】
一実施形態では、第1の温度レジームは、36℃~37℃の単一の温度であり、第2の温度レジームは、36℃~37℃の第1の温度から28℃~35℃の第2の温度への少なくとも1つの温度シフトを含む。
【0067】
「非対称多重特異性抗体」としては、少なくとも2つの異なる抗原若しくは標的、又は同じ抗原若しくは標的上の少なくとも2つの異なるエピトープと結合し、それを中和し、且つ/又はそれに特異的に相互作用するように組換え操作された非対称タンパク質が挙げられる。一実施形態では、非対称多重特異性抗体は、免疫エフェクターを標的化し、免疫応答を刺激又は誘発し、細胞傷害剤を腫瘍又は感染因子に運ぶように操作することができる。これらの非対称多重特異性抗体は、様々な用途において、例えば、免疫エフェクター細胞を腫瘍細胞にリダイレクトし、シグナル伝達経路を遮断して細胞シグナル伝達を改変し、腫瘍血管新生を標的化し、サイトカインを遮断することによる癌免疫療法において、また、薬物のプレターゲティング送達、例えば、化学療法剤、(検出感度を向上させるための)放射性標識、及び(癌細胞などの特定の細胞/組織に誘導される)ナノ粒子の送達の媒体として、有用であることが見出されている。
【0068】
非対称多重特異性抗体は、科学的且つ/又は商業的に関心のあるものであり得る。非対称多重特異性抗体は、様々な方法で、最も一般的には細胞培養法を用いて組換え動物細胞株によって産生することができる。非対称多重特異性抗体は、細胞内で産生され得るか、又は培養培地に分泌され得、そこから回収及び/又は採取され得、「組換え非対称多重特異性抗体」と呼ばれる場合がある。「単離された組換え非対称多重特異性抗体」という用語は、その治療、診断、予防、研究、又は他の使用を妨げるタンパク質、ポリペプチド、DNA、及び/又は他の夾雑物若しくは不純物を取り除いて精製された非対称多重特異性抗体を指す。目的の非対称多重特異性抗体には、とりわけ、2つ以上の標的、特に、本明細書に列挙される標的の中でも、それに由来する標的、それに関連する標的、及びそれらの改変などの標的に結合することによって治療効果を発揮するものが含まれる。非対称多重特異性抗体は、互いに長さが異なる2つ以上の重鎖を有し得、例えば、長重鎖及び短重鎖を有し得る。関連する実施形態では、非対称多重特異性抗体は非対称二重特異性抗体である。非対称二重特異性抗体を含む様々な二重特異性抗体フォーマットがこの技術分野では公知である(Spiess et al.,Mol Immunol 67,95-106,2015、Sedykh et al.,Drug Design,Development and Therapy 18(12),195-208,2018、Fan et al.,J Hematol&Oncology 8:130-143,2015、)、Williams et al.,Chapter 41 Process Design for Bispecific Antibodies in Biopharmaceutical Processing Development,Design and Implementation of Manufacturing Processes,Jagschies et al.,eds.,2018,pages 837-855、Seimetz et al.,Cancer Treat Rev 36(6)458-67,2010、Shulka and Norman,Chapter 26 Downstream Processing of Fc Fusion Proteins,Bispecific Antibodies,and Antibody-Drug Conjugates,in Process Scale Purification of Antibodies Second Edition,Uwe Gottswchalk editor,p559-594,John Wiley&Sons,2017、Moore et al.,MAbs 3:6,546-557,2011。
【0069】
非対称多重特異性抗体には、2つ以上の標的に対する特異性を有する非対称多重特異性抗体を集合的にもたらす、固有のペプチド及び/又はタンパク質配列を有する奇数個の活性成分を有するものも含まれる。抗体は、ヒト、ヒト化、キメラ、多特異性、モノクローナル、ポリクローナル、二重特異性、及びそれらのオリゴマー又は抗原結合フラグメントを含む。抗体はまた、IgG1型、IgG2型、IgG3型又はIgG4型などの任意のアイソタイプ又はサブクラスのグリコシル化免疫グロブリン及び非グリコシル化免疫グロブリンの両方を含む。抗原結合フラグメント又は抗原結合領域を有する抗体、特に、特異的結合についてインタクトな抗体と競合する抗体抗原結合フラグメントも含まれる。また、ペプチド体、抗体誘導体、抗体類似体、融合タンパク質(及びXmab(登録商標)技術、半減期延長などの延長を有する二重特異性T細胞エンゲージャー、例えば、BiTE(登録商標)分子を使用して作製されたタンパク質)も含まれる。
【0070】
修飾された非対称多重特異性抗体、例えば、非共有結合、共有結合、又は共有結合と非共有結合の両方によって化学的に修飾された抗体も含まれる。また、細胞修飾系によってなされ得る1つ以上の翻訳後修飾、又は酵素及び/若しくは化学的方法によって生体外で導入されるか若しくは他の方法で導入される修飾を更に含む抗体も含まれる。特に、抗体は、そのような方法を使用して抗体に1つ以上の目的のタンパク質を付着させるように修飾される。
【0071】
いくつかの実施形態では、非対称多重特異性抗体は、1つ以上のCDタンパク質、HER受容体ファミリータンパク質、細胞接着分子、成長因子、神経成長因子、線維芽細胞増殖因子、トランスフォーム成長因子(TGF)、インスリン様成長因子、骨誘導性因子、インスリン及びインスリン関連タンパク質、凝固及び凝固関連タンパク質、コロニー刺激因子(CSF)、他の血液及び血清タンパク質血液型抗原、受容体、受容体関連タンパク質、成長ホルモン、成長ホルモン受容体、T細胞受容体、神経栄養因子、ニューロトロフィン、リラキシン、インターフェロン、インターロイキン、ウイルス抗原、リポタンパク質、インテグリン、リウマチ因子、免疫毒素、表面膜タンパク質、輸送タンパク質、ホーミング受容体、アドレシン、調節タンパク質及びイムノアドヘシンに特異的に結合し、それを中和し、且つ/又はそれと相互作用する。
【0072】
いくつかの実施形態では、非対称多重特異性抗体は、単独で又は任意の組み合わせで、CD3、CD4、CD5、CD7、CD8、CD19、CD20、CD22、CD25、CD30、CD33、CD34、CD38、CD40、CD70、CD123、CD133、CD138、CD171、CD174を含むがこれらに限定されないCDタンパク質、例えば、HER2、HER3、HER4を含むHER受容体ファミリータンパク質、EGF受容体であるEGFRvIII、細胞接着分子、例えば、LFA-1、Mol、p150,95、VLA-4、ICAM-1、VCAM及びαv/β3インテグリン、例えば、血管内皮成長因子(「VEGF」)を含むがこれらに限定されない成長因子;VEGFR2、成長ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、成長ホルモン放出因子、副甲状腺ホルモン、ミュラー抑制物質、ヒトマクロファージ炎症性タンパク質(MIP-1-α)、エリスロポエチン(EPO)、NGF-β等の神経成長因子、血小板由来成長因子(PDGF)、例えば、aFGF及びbFGFを含む線維芽細胞増殖因子、上皮成長因子(EGF)、クリプト、数ある中でもTGF-α及びTGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、TGF-β4又はTGF-β5を含むTGF-βを含むトランスフォーム成長因子(TGF)、インスリン様成長因子-I及び-II(IGF-I及びIGF-II)、des(1-3)-IGF-I(脳内IGF-I)及び骨形成促進因子、インスリン、インスリンA鎖、インスリンB鎖、プロインスリン及びインスリン様成長因子結合タンパク質を含むがこれらに限定されないインスリン及びインスリン関連タンパク質、数ある中でも、第VIII因子、組織因子、フォンウィルブランド因子等の凝固及び凝固関連タンパク質、プロテインC、α-1-アンチトリプシン、ウロキナーゼ及び組織プラスミノーゲン活性化因子(「t-PA」)等のプラスミノーゲン活性化因子、ボンバジン、トロンビン、トロンボポエチン、トロンボポエチン受容体、数ある中でも、M-CSF、GM-CSF、及びG-CSFを含むコロニー刺激因子(CSF)、アルブミン、IgE及び血液型抗原を含むがこれらに限定されない他の血液及び血清タンパク質、例えば、flk2/flt3受容体、肥満(OB)受容体、成長ホルモン受容体、及びT細胞受容体を含む受容体及び受容体関連タンパク質、骨由来神経栄養因子(BDNF)及びニューロトロフィン-3、-4、-5若しくは-6(NT-3、NT-4、NT-5若しくはNT-6)を含むがこれらに限定されない神経栄養因子;リラキシンA鎖、リラキシンB鎖及びプロレラキシン、例えば、インターフェロン-α、-β及び-γを含むインターフェロン、インターロイキン(IL)、例えば、IL-1からIL-10、IL-12、IL-15、IL-17、IL-23、IL-12/IL-23、IL-2Ra、IL1-R1、IL-6受容体、IL-4受容体及び/又はIL-13から受容体であるIL-13RA2、又はIL-17受容体であるIL-1RAP、エイズエンベロープウイルス抗原、リポタンパク質、カルシトニン、グルカゴン、心房性ナトリウム利尿因子、肺サーファクタント、腫瘍壊死因子-α及び-βを含むがこれらに限定されないウイルス抗原、エンケファリナーゼ、BCMA、IgKappa、ROR-1、ERBB2、メソセリン、RANTES(regulated on activation normally T-cell expressed and secreted)、マウスゴナドトロピン関連ペプチド、Dnase、FR-α、インヒビン及びアクチビン、インテグリン、プロテインA又はD、リウマチ因子、免疫毒素、骨形成タンパク質(BMP)、スーパーオキシドディスムターゼ、表面膜タンパク質、崩壊促進因子(DAF)、AIDSエンベロープ、輸送タンパク質、ホーミング受容体、MIC(MIC-a、MIC-B)、ULBP 1-6、EPCAM、アドレシン、制御タンパク質、イムノアドヘシン、抗原結合タンパク質、ソマトロピン、CTGF、CTLA4、エオタキシン-1、MUC1、CEA、c-MET、クローディン-18、GPC-3、EPHA2、FPA、LMP1、MG7、NY-ESO-1、PSCA、ガングリオシドGD2、グラングリオシドGM2、BAFF、OPGL(RANKL)、ミオスタチン、Dickkopf-1(DKK-1)、Ang2、NGF、IGF-1受容体、肝細胞増殖因子(HGF)、TRAIL-R2、c-Kit、B7RP-1、PSMA、NKG2D-1、プログラムされた細胞死タンパク質1及びリガンド、PD1及びPDL1、マンノース受容体/hCGβ、C型肝炎ウイルス、メソセリンdsFv[PE38コンジュゲート、レジオネラニューモフィラ(lly)、IFNガンマ、インターフェロンガンマ誘導タンパク質10(IP10)、IFNAR、TALL-1、胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)、幹細胞因子、Flt-3、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、OX40L、α4β7、血小板特異的(血小板糖タンパクIib/IIIb(PAC-1)、トランスフォーミング成長因子β(TFGβ)、STEAP1、透明帯精子結合タンパク質3(ZP-3)、TWEAK、血小板由来成長因子受容体α(PDGFRα)、スクレロスチン及び前述のいずれかの生物活性断片又は変異体のうちの1つ以上に結合し、それを中和し、且つ/又はそれと相互作用する。いくつかの実施形態では、非対称多重特異性抗体は、抗体又は免疫グロブリン、例えば、IL-2変異体免疫サイトカインに結合したムテインを含む。例は、CEA-IL-2v(セルグツズマブ・アムナロイキン)であり、IL-2v部分が抗体のFc部分の一方の重鎖に融合している、Schneider et al.,2019,Biotechnology Bioengineering 116:2503-2513;and Anti-FAP-IL-2(fibroblast activation protein(FAP)targeted interleukin-2 variant(IL-2v)、Soerensen MM,et al.Safety,PK/PD,and anti-tumor activity of RO6874281,an engineered variant of interleukin-2(IL-2v)targeted to tumor-associated fibroblasts via binding to fibroblast activation protein(FAP)、Nicolini V,et al.Combining CEA-IL2v and FAP-IL2v immunocytokines with PD-L1 checkpoint blockade.Annual Meeting of the American Association for Cancer Research;New Orleans:2016。
【0073】
いくつかの態様では、非対称多重特異性抗体は二機能性融合タンパク質である。いくつかの態様では、二機能性融合タンパク質はIL-21ムテインを含む。いくつかの態様では、二機能性融合タンパク質は、抗PD-1抗体の2つの抗体重鎖の一方のC末端に連結されたIL-21ムテインのコンジュゲートを含む。IL-21-抗PD-1コンジュゲートは、「短重鎖」(抗PD1重鎖)及び「長重鎖」(IL-21ムテインに連結された抗PD1重鎖)を含む。そのような抗体は、参照によりその全体が組み込まれる国際公開第2019/028316号パンフレットに記載されている。
【0074】
インターロイキン-21(IL-21)は、T細胞、B細胞、NK細胞及び骨髄系細胞によって発現されるサイトカインであり、自然免疫細胞及び適応免疫細胞の両方の活性を調節し、T細胞の生存及びエフェクター機能を改善する。IL-21は、4ヘリックスバンドル構造を有し、モノマーとして存在する。いくつかの実施形態では、非対称タンパク質は、本明細書において配列番号1として示される野生型IL-21アミノ酸配列と比較して、少なくとも1つのアミノ酸置換を含むIL-21ムテインを含む。例示的な態様では、IL-21ムテインは、配列番号2のアミノ酸配列を含み、配列中、Xは任意のアミノ酸であり、IL-21ムテインのアミノ酸配列はヒトIL-21のアミノ酸配列(配列番号1)と少なくとも1つのアミノ酸が異なる。様々な態様では、IL-21ムテインは、ヒトIL-21のアミノ酸配列(配列番号1)と3、4、5、6又は7個のアミノ酸が異なるアミノ酸配列を含む。様々な態様では、IL-21ムテインは、ヒトIL-21のアミノ酸配列(配列番号1)と1又は2つのアミノ酸だけ異なるアミノ酸配列を含む。例示的な態様では、IL-21ムテインは、表1による位置にアミノ酸によるアミノ酸置換を含む。
【0075】
【表1】
【0076】
様々な態様では、非対称多重特異性抗体は、配列番号1と比較して1つのアミノ酸置換を含むIL-21ムテインを含み、任意選択で、配列番号3~198、配列番号249~254及び配列番号283のうちの1つを含む。いくつかの実施形態では、非対称多重特異性抗体は、配列番号1と比較して2つのアミノ酸置換を含み、任意選択で、配列番号199~248及び配列番号255のうちの1つを含むIL-21ムテインを含む。いくつかの実施形態では、非対称多重特異性抗体は、配列番号1の5位、9位、73位及び76位のいずれか2つにアミノ酸置換を含むIL-21ムテインを含む。一実施形態では、アミノ酸置換は、5位におけるA、E又はQ、9位におけるE又はA、73位におけるA又はQ、及び76位におけるA、D又はE、から選択される。一実施形態では、アミノ酸置換は、配列番号1の5位及び73位にある。一実施形態では、アミノ酸置換は、配列番号1の5位及び76位にある。一実施形態では、アミノ酸置換は、配列番号1の9位及び73位にある。一実施形態では、アミノ酸置換は、配列番号1の9位及び76位にある。一実施形態では、IL-21ムテインは配列番号233~245のいずれかのアミノ酸配列を含む。一実施形態では、配列番号233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244又は245の単一のIL-21ムテインが抗PD-1抗体のFcに結合している。一実施形態では、配列番号233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244又は245の単一のIL-21ムテインが抗PD-1抗体のFcに結合している。一実施形態では、IL-21ムテインは配列番号233のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、IL-21ムテインは配列番号234のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、IL-21ムテインは配列番号235のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、IL-21ムテインは配列番号236のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、IL-21ムテインは配列番号237のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、IL-21ムテインは配列番号238のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、IL-21ムテインは配列番号239のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、IL-21ムテインは配列番号240のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、IL-21ムテインは配列番号241のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、IL-21ムテインは配列番号242のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、IL-21ムテインは配列番号243のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、IL-21ムテインは配列番号244のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、IL-21ムテインは配列番号245のアミノ酸配列を含む。
【0077】
いくつかの実施形態では、非対称多重特異性抗体は、ムテインと抗体又は免疫グロブリンとのコンジュゲートを含む。いくつかの実施形態では、コンジュゲートはIL-21ムテインを含む。いくつかの実施形態では、コンジュゲートは、抗体又は免疫グロブリンに結合したIL-21ムテインを含む。
【0078】
いくつかの実施形態では、非対称多重特異性抗体は、非共有結合若しくは共有結合、例えば、ペプチド結合、ジスルフィド結合などを介して、又は静電、水素、イオン、ファンデルワールス、又は疎水性若しくは親水性相互作用などの物理的力を介して抗体又は免疫グロブリンに結合したIL-21ムテインを含む。例えば、ビオチン-アビジン、リガンド/受容体、酵素/基質、核酸/核酸結合タンパク質、脂質/脂質結合タンパク質、細胞接着分子パートナー、又は互いに親和性を有する任意の結合パートナー若しくはその断片などの、様々な非共有結合系を使用することができる。いくつかの実施形態では、結合は、IL-21ムテインの標的アミノ酸残基を、これらの標的アミノ酸の選択された側鎖又はN末端若しくはC末端残基と反応することができる有機誘導体化剤と反応させることによる直接的な共有結合を介したものであり得る。
【0079】
いくつかの実施形態では、IL-21ムテインと抗体又は免疫グロブリンとの間の結合は、リンカーを介したものであり得る。いくつかの実施形態では、リンカーは、1から約60個、又は1から30個以上、2から5個、2から10個、5から10個、又は10から20個の原子の長さの原子鎖を含む。いくつかの実施形態では、原子鎖はすべて炭素原子である。いくつかの実施形態では、リンカーの骨格中の原子鎖は、炭素(C)、酸素(O)、窒素(N)及び硫黄(S)からなる群から選択される。原子鎖及びリンカーは、より可溶性のコンジュゲートをもたらすように、それらの予想される溶解度(親水性)に従って選択され得る。いくつかの実施形態では、リンカーは、標的の組織又は器官又は細胞において見出される酵素又は他の触媒又は加水分解条件による切断を受ける官能基を提供する。いくつかの実施形態では、リンカーの長さは、立体障害の可能性を低減するのに十分な長さである。リンカーが共有結合又はペプチジル結合であり、コンジュゲートがポリペプチドである場合、コンジュゲート全体は融合タンパク質であり得る。そのようなペプチジルリンカーは、任意の長さであってよい。例示的なペプチジルリンカーは、長さが約1から50アミノ酸、5から50アミノ酸、3から5アミノ酸、5から10アミノ酸、5から15アミノ酸、又は10から30アミノ酸長であり、可撓性又は剛性である。いくつかの実施形態では、リンカーは、約2から約20個のアミノ酸を含むペプチドである。いくつかの実施形態では、リンカーは、約2から約15個のアミノ酸、約2から約10個のアミノ酸、又は約2から約5個のアミノ酸を含むペプチドである。好適なペプチドリンカーは、当該技術分野で公知である。例えば、Chen et al.,Adv Drug Delivery Reviews 65(10):1357-1369(2013);Arai et al.,Protein Eng Des Sel 14(8):529-532(2001);及びWriggers et al.,Curr Trends in Peptide Science 80(6):736-746(2005)を参照されたい。一実施形態では、リンカーは、アミノ酸配列GGGGS(配列番号262)を含むペプチドである。
【0080】
非対称多重特異性抗体は、抗体のFcに直接結合したIL-21ムテインを含む。或いは、IL-21ムテインは、配列番号262のアミノ酸配列を含むペプチドなどのリンカーを介して抗体のFcに結合している。様々な例において、非対称多重特異性抗体は、単一のIL-21ムテインを含み、前記単一のIL-21ムテインは、2つの抗体重鎖のうちの1つのC末端に連結されている。
【0081】
様々な態様では、抗体重鎖は、半減期/安定性を改善するために、又は抗体を発現/製造可能性により適したものにするために、天然に存在する対応物と比較して1つ以上のアミノ酸修飾を含む(例えば、IL-21ムテインを含む非対称多重特異性抗体として)。
【0082】
典型的な例では、抗体重鎖は、抗体とFc受容体との間の相互作用を防止又は低減するように設計される。典型的な例では、抗体は、Fcγ受容体と相互作用する能力を欠く定常領域を含むStable Effector Functionless(SEFL)抗体である。SEFL抗体は当該技術分野で公知である。例えば、Liu et al.,J Biol Chem 292:1876-1883(2016);及びJacobsen et al.,J.Biol.Chem.292:1865-1875(2017)を参照されたい。例示的な態様では、SEFL抗体は、EUシステムにより番号付けされた、以下の変異の1つ以上を含む:L242C、A287C、R292C、N297G、V302C、L306C及び/又はK334C。例示的な態様では、SEFL抗体はN297Gを含む。例示的な態様では、SEFL抗体は、A287C、N297G、及びL306Cを含む。他の例示的な態様では、SEFL抗体は、R292C、N297G、及びV302C(すなわち、SEFL2-2)を含む。
【0083】
抗体は、他の半減期延長(HLE)修飾を含み得る。典型的な例では、HLE改変は重鎖定常領域で起こり、EUシステムに従って番号付けされた以下の変異の1つ以上を含む:M252Y、S254T、及びT256E。典型的な例では、抗体は、M252Y、S254T、及びT256Eのうちの1つ又は2つを含む。典型的な例では、抗体は、M252Y、S254T、及びT256Eの3つすべてを含む。例示的な態様では、重鎖定常領域は、配列番号545又は配列番号547又は配列番号549のアミノ酸配列を含む。典型的な例では、HLE改変は重鎖定常領域で起こり、EUシステムに従って番号付けされた以下の変異の1つ以上を含む:L309D、Q311H及びN434S。典型的な例では、抗体は、L309D、Q311H及びN434Sのうちの1つ、2つ又は3つすべてを含む。典型的な例では、抗体は、L309D、Q311H及びN434Sの3つすべてを含む。例示的な態様では、重鎖定常領域は、配列番号544又は配列番号546又は配列番号548のアミノ酸配列を含む。
【0084】
例示的な態様では、抗体はSEFL2-2修飾及びHLE修飾を含む。いくつかの例では、HLE改変は、M252Y、S254T、及びT256Eのうちの1つ又は2つ又は3つすべてを含む。例示的な態様では、重鎖定常領域は、配列番号551又は配列番号553又は配列番号555のアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、HLE修飾は、L309D、Q311H及びN434Sのうちの1つ又は2つ又は3つすべてを含む。例示的な態様では、重鎖定常領域は、配列番号550又は配列番号552又は配列番号554のアミノ酸配列を含む。例示的な態様では、重鎖は、以下に記載されるような電荷対変異を更に含む。
【0085】
一般に、抗体のC末端リジンは、発現中にカルボキシペプチダーゼによる切断を受ける。C末端Lysを欠く重鎖定常領域は、カルボキシペプチダーゼが抗体の重鎖に作用するのを有利に妨げる。例示的な態様では、抗体は、C末端Lysを欠く重鎖定常領域を含み、配列番号262のアミノ酸配列を含むペプチドなどのリンカーを更に含む。
【0086】
例示的な態様では、非対称多重特異性抗体が1つのIL-21ムテインのみを含む場合、抗体のFcは、2つの重鎖(IL-21ムテインに融合した1つの重鎖及びIL-21ムテインを欠く1つの重鎖)のヘテロ二量体化を駆動するように設計された修飾を含む。そのような修飾として、ノブ-イントゥ-ホール(knobs-into-holes)、DuoBody、Azymetric、電荷対、HA-TF、SEEDbody、及び異なるプロテインA親和性を有する修飾などのFc変異が挙げられる。例えば、Spiess et al.,Molecular Immunology,67(2,Part A),2015,pp.95-106を参照されたい。ノブ-イントゥ-ホール(knobs-into-holes)変異は、第1の重鎖にT366Wを含み、第2の重鎖にT366S、L368A及び/又はY407Vを含む。例えば、Ridgway et al.,Protein Eng.,9(1996),pp.617-621;及びAtwell et al.,J.Mol.Biol.,270 (1997),pp.26-35を参照されたい。DuoBody変異は、第1の重鎖にF405Lを含み、第2の重鎖にK409Rを含む。例えば、Labrijn et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,110(2013),pp.5145-5150を参照されたい。Azymetric変異は、第1の重鎖にT350V、L351Y、F405A、及び/又はY407Vを含み、第2の重鎖にT350V、T366L、K392L、及び/又はT394Wを含む。例えば、Von Kreudenstein et al.,mAbs,5(2013),pp.646-654を参照されたい。HA-TF変異は、第1の重鎖にS364H及び/又はF405Aを含み、第2の重鎖にY349T及び/又はT394Fを含む。例えば、Moore et al.,mAbs,3(2011),pp.546-557を参照されたい。SEEDbody変異は、第1の重鎖にIgG/Aキメラ変異を含み、第2の重鎖にIgG/Aキメラ変異を含む。例えば、Davis et al.,Protein Eng.Des.Sel.,23(2010),pp.195-202を参照されたい。プロテインA親和性が異なる変異は、一方の重鎖にH435Rを含み、他方の重鎖には変異がない。例えば、米国特許第8,586,713号明細書を参照されたい。
【0087】
特定の例では、変異は電荷対変異である。以下は、EUシステムに従って番号付けされたそのような電荷対変異の例である。電荷対変異としては、第1の重鎖におけるK409Dと第2の重鎖におけるD399K、第1の重鎖におけるK392Dと第2の重鎖におけるE356K、又は第1の重鎖におけるK409D及びK392Dの両方と第2の重鎖におけるD399K及びE356Kの両方(後者は本明細書では「V1」として示される)が挙げられる。例えば、Gunasekaran et al.,J Biol Chem 285:19637-19646(2010)を参照されたい。別の特定の例では、電荷対変異として、第1の重鎖におけるK439D、K392D及びK409Dと第2の重鎖におけるE356K及びD399K(本明細書では「V103」と表記する)が挙げられる。更に別の特定の例では、電荷対変異として、第1の重鎖におけるK360E、K370E、K392E及びK409Dと第2の重鎖におけるE357K及びD399K(本明細書では「V131」と表記する)が挙げられる。電荷対変異としては、また、第1の重鎖におけるK370Dと第2の重鎖におけるE357K、又は第1の重鎖におけるK409D、K392D、及びK370Dの3つすべてと第2の重鎖におけるD399K、E357K、及びE356Kの3つすべて(後者は本明細書では「V4」として示される)を挙げることができる。更なる電荷対変異としては、第1の重鎖におけるD221E、P228E及び/又はL368Eと第2の重鎖におけるD221R、P228R及び/又はK409Rも挙げられる。例えば、Strop et al.,J.Mol.Biol.,420(2012),pp.204-219を参照されたい。
【0088】
非対称多重特異性抗体がただ1つのIL-21ムテインを含み(すなわち、非対称多重特異性抗体はIL-21ムテインモノマーを含む)、重鎖がV1電荷対変異を含む実施形態では、IL-21ムテインは、K409D及びK392D変異を含む重鎖に結合し得(例えば、IL-21ムテインは、配列番号294、296又は298を含む重鎖に結合する)、又はD399K及びE356K変異を含む重鎖に結合し得る(例えば、IL-21ムテインは、配列番号295、297又は299を含む重鎖に結合する)。特定の実施形態では、IL-21ムテインは、D399K及びE356K変異を含有する重鎖に結合している。
【0089】
非対称多重特異性抗体がただ1つのIL-21ムテインを含み(すなわち、非対称多重特異性抗体はIL-21ムテインモノマーを含む)、重鎖がV4電荷対変異を含む実施形態では、IL-21ムテインは、K409D、K392D及びK370D変異を含む重鎖に結合し得(例えば、IL-21ムテインは、配列番号288、290又は292を含む重鎖に結合する)、又はD399K、E357K及びE356K変異を含む重鎖に結合し得る(例えば、IL-21ムテインは、配列番号289、291又は293を含む重鎖に結合する)。特定の実施形態では、IL-21ムテインは、D399K、E357K及びE356K変異を含有する重鎖に結合している。
【0090】
非対称多重特異性抗体がただ1つのIL-21ムテインを含み(すなわち、非対称多重特異性抗体はIL-21ムテインモノマーを含む)、重鎖がV103電荷対変異を含む実施形態では、IL-21ムテインは、K439D、K392D及びK409D変異を含む重鎖に結合し得(例えば、IL-21ムテインは、配列番号472、474又は476を含む重鎖に結合する)、又はE356K及びD399K変異を含む重鎖に結合し得る(例えば、IL-21ムテインは、配列番号473、475又は477を含む重鎖に結合する)。特定の実施形態では、IL-21ムテインは、E356K及びD399K変異を含有する重鎖に結合している。
【0091】
非対称多重特異性抗体がただ1つのIL-21ムテインを含み(すなわち、非対称多重特異性抗体はIL-21ムテインモノマーを含む)、重鎖がV131電荷対変異を含む実施形態では、IL-21ムテインは、K360E、K370E、K392E及びK409D変異を含む重鎖に結合し得(例えば、IL-21ムテインは、配列番号478、480又は482を含む重鎖に結合する)、又はE357K及びD399K変異を含む重鎖に結合し得る(例えば、IL-21ムテインは、配列番号479、481又は483を含む重鎖に結合する)。特定の実施形態では、IL-21ムテインは、E357K及びD399K変異を含有する重鎖に結合している。
【0092】
例示的な態様では、非対称多重特異性抗体の一方又は両方の重鎖は、ペプチドリンカー(例えば、配列番号262)、SEFL若しくはSEFL2-2変異、HLE修飾、クリップC末端Lys、電荷対変異、又はそれらの任意の組み合わせを含む定常領域を含む。典型的な例では、非対称多重特異性抗体の一方又は両方の重鎖は、配列番号265、266、267、282、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、296、297、298、299、300、301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、311及び472~495のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む定常領域を含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、非対称多重特異性抗体は、以下からなる群から選択される免疫チェックポイント経路のタンパク質に結合する抗体に結合した単一のIL-21ムテインを含む。CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、B7-H3、B7-H4、CEACAM-1、TIGIT、LAG3、CD112、CD112R、CD96、TEV13、BTLA、又は共刺激受容体:ICOS、OX40、41BB、CD27、GITR。
【0094】
関連する実施形態では、抗体は抗PD-1抗体である。適切なPD-1抗体は当技術分野で公知であり、ニボルマブ(BMS-936558)、ペンブロリズマブ(MK-3475)、BMS936558、BMS-936559、TSR-042(Tesaro)、ePDR001(Novartis)、及びピジリズマブ(CT-011)、並びに参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2019/140196号パンフレットに開示されている抗PD-1抗体のいずれかが挙げられるが、これらに限定されない。様々な例では、抗PD-1抗体は、(a)配列番号312、322、332、342、352、362、372及び382からなる群より選択される重鎖(HC)相補性決定領域(CDR)1アミノ酸配列、(b)配列番号313、323、333、343、353、363、373及び383からなる群から選択されるHC CDR2アミノ酸配列、(c)配列番号314、324、334、344、354、364、374及び384からなる群から選択されるHC CDR3アミノ酸配列、(d)配列番号315、325、335、345、355、365、375及び385からなる群から選択される軽鎖(LC)CDR1アミノ酸配列、(e)配列番号316、326、336、346、356、366、376及び386からなる群から選択されるLC CDR2アミノ酸配列、(f)配列番号317、327、337、347、357、367、377及び387からなる群から選択されるLC CDR3アミノ酸配列、又は(g)(a)~(f)のうちの任意の2つ、3つ、4つ、5つ又は6つの組み合わせ、を含む。いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体タンパク質産物は、表2によるHC CDR1、HC CDR2、HC CDR3、LC CDR1、LC CDR2、LC CDR3を含む。
【0095】
【表2】
【0096】
別の実施形態では、抗PD-1抗体は、それぞれが配列番号385、386及び387のアミノ酸配列を含むLC CDR1、LC CDR2及びLC CDR3をそれぞれ含む2つの軽鎖と、それぞれが配列番号382、383及び384のアミノ酸配列を含むHC CDR1、HC CDR2及びHC CDR3をそれぞれ含む2つの重鎖とを含む。関連する一実施形態では、各軽鎖可変領域は配列番号389のアミノ酸配列を含み、各重鎖可変領域は配列番号388のアミノ酸配列を含む。関連する一実施形態では、各軽鎖は配列番号391のアミノ酸配列を含み、各重鎖は配列番号390のアミノ酸配列を含む。
【0097】
いくつかの実施形態では、非対称多重特異性抗体は、抗PD-1抗体の2つの抗体重鎖の一方のC末端に結合したIL-21ムテインを含む抗PD1抗体である。いくつかの実施形態では、単一のIL-21ムテインは、抗PD-1抗体の2つの抗体重鎖のうちの一方のFcに結合している。いくつかの実施形態では、単一のIL-21ムテインは、抗PD-1抗体のFcに直接結合しており、例えば、単一のIL-21ムテインは、リンカーを伴わずに抗PD-1抗体のFcに結合している。いくつかの実施形態では、単一のIL-21ムテインは、リンカー(例えば、配列番号262を含むペプチドリンカー)により抗PD-1抗体のFcに結合しており、例えば、ペプチドリンカーは、単一のIL-21ムテインを抗PD-1抗体のFcに接続する。
【0098】
いくつかの実施形態では、非対称多重特異性抗体は、それぞれが配列番号391のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖と、配列番号501~506のいずれか1つのアミノ酸配列を含むIL-21ムテインに結合した単一重鎖と、配列番号556~558のいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖とを含む。いくつかの実施形態では、非対称多重特異性抗体は、それぞれが配列番号391のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖と、配列番号556のアミノ酸配列を含む1つの重鎖と、配列番号501のアミノ酸配列を含むIL-21ムテインに結合した1つの重鎖とを含む。いくつかの実施形態では、非対称多重特異性抗体は、それぞれが配列番号391のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖と、配列番号557のアミノ酸配列を含む1つの重鎖と、配列番号502のアミノ酸配列を含むIL-21ムテインに結合した1つの重鎖とを含む。いくつかの実施形態では、非対称多重特異性抗体は、それぞれが配列番号391のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖と、配列番号558のアミノ酸配列を含む1つの重鎖と、配列番号503のアミノ酸配列を含むIL-21ムテインに結合した1つの重鎖とを含む。いくつかの実施形態では、非対称多重特異性抗体は、それぞれが配列番号391のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖と、配列番号556のアミノ酸配列を含む1つの重鎖と、配列番号504のアミノ酸配列を含むIL-21ムテインに結合した1つの重鎖とを含む。いくつかの実施形態では、非対称多重特異性抗体は、それぞれが配列番号391のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖と、配列番号557のアミノ酸配列を含む1つの重鎖と、配列番号505のアミノ酸配列を含むIL-21ムテインに結合した1つの重鎖とを含む。いくつかの実施形態では、非対称多重特異性抗体は、それぞれが配列番号391のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖と、配列番号558のアミノ酸配列を含む1つ重鎖と、配列番号506のアミノ酸配列を含むIL-21ムテインに結合した1つの重鎖とを含む。
【0099】
別の実施形態では、抗PD-1抗体は、それぞれが配列番号365、366及び367のアミノ酸配列を含むLC CDR1、LC CDR2及びLC CDR3をそれぞれ含む2つの軽鎖と、それぞれが配列番号362、363及び364のアミノ酸配列を含むHC CDR1、HC CDR2及びHC CDR3をそれぞれ含む2つの重鎖とを含む。関連する一実施形態では、各軽鎖可変領域は配列番号369のアミノ酸配列を含み、各重鎖可変領域は配列番号368のアミノ酸配列を含む。関連する一実施形態では、各軽鎖は配列番号371のアミノ酸配列を含み、各重鎖は配列番号370のアミノ酸配列を含む。
【0100】
いくつかの実施形態では、非対称多重特異性抗体は、それぞれが配列番号371のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖と、配列番号513~518のいずれか1つのアミノ酸配列を含むIL-21ムテインに結合した単一重鎖と、配列番号559~561のいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖とを含む。いくつかの実施形態では、非対称多重特異性抗体は、それぞれが配列番号371のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖と、配列番号559のアミノ酸配列を含む1つ重鎖と、配列番号513のアミノ酸配列を含むIL-21ムテインに結合した1つの重鎖とを含む。いくつかの実施形態では、非対称多重特異性抗体は、それぞれが配列番号371のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖と、配列番号560のアミノ酸配列を含む1つ重鎖と、配列番号514のアミノ酸配列を含むIL-21ムテインに結合した1つの重鎖とを含む。いくつかの実施形態では、非対称多重特異性抗体は、それぞれが配列番号371のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖と、配列番号561のアミノ酸配列を含む1つ重鎖と、配列番号515のアミノ酸配列を含むIL-21ムテインに結合した1つの重鎖とを含む。いくつかの実施形態では、非対称多重特異性抗体は、それぞれが配列番号371のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖と、配列番号559のアミノ酸配列を含む1つ重鎖と、配列番号516のアミノ酸配列を含むIL-21ムテインに結合した1つの重鎖とを含む。いくつかの実施形態では、非対称多重特異性抗体は、それぞれが配列番号371のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖と、配列番号560のアミノ酸配列を含む1つ重鎖と、配列番号517のアミノ酸配列を含むIL-21ムテインに結合した1つの重鎖とを含む。いくつかの実施形態では、非対称多重特異性抗体は、それぞれが配列番号371のアミノ酸配列を含む2つの軽鎖と、配列番号561のアミノ酸配列を含む1つ重鎖と、配列番号518のアミノ酸配列を含むIL-21ムテインに結合した1つの重鎖とを含む。
【0101】
本発明は、ムテインを含む組換え非対称多重特異性抗体の製品品質を調節するための方法であって、a)非対称多重特異性抗体を発現する同じ細胞株をそれぞれ接種した少なくとも2つの細胞培養物を確立する工程と、b)単一の温度からなる第1の温度レジームで少なくとも1つの細胞培養物を培養し、第2の温度レジームで少なくとも1つの細胞培養物を培養する工程と、c)各温度レジームにおける細胞培養物中の少なくとも1つの製品関連不純物を比較する工程と、d)不対合又は誤対合長重鎖を含む少なくとも1つの製品関連不純物の発現を低下させる温度レジームを選択する工程と、を含み、回収した細胞培養物中の長重鎖と短重鎖の比の不均衡に起因する少なくとも1つの製品関連不純物の量が、培養中のある時点で32℃~34℃の温度に曝された細胞培養物からの回収物中の同じ製品関連不純物の量と比較して減少する、方法を提供する。
【0102】
本発明は、細胞培養中に細胞によって発現される抗PD-1抗体の2つの抗体重鎖のうちの1つのC末端に結合したIL-21ムテインを含む非対称多重特異性抗PD-1抗体の製品品質を調節するための方法であって、a)抗体を発現する細胞株を接種した細胞培養物を確立する工程と、培養期間中、36±1℃で細胞を培養する工程と、抗体を回収する工程とを含み、培養中のある時点で32℃~34℃の温度に曝された細胞培養物からの回収物中の同じ製品関連不純物の量と比較して、回収した細胞培養物中の長重鎖と短重鎖の比の不均衡に起因する少なくとも1つの製品関連不純物の量が減少する、方法を提供する。
【0103】
本発明は、非対称多重特異性抗体を発現するクローン由来培養物から細胞株を確立するための方法であって、a)非対称多重特異性抗体をコードする遺伝子で細胞を形質転換する工程と、b)非対称多重特異性抗体を発現する少なくとも1つの単一の安定に形質転換された細胞を単離し、クローン由来培養物を確立する工程と、c)1つ以上のクローン由来培養物から少なくとも2つの細胞培養物を確立する工程と、d)各クローン由来培養物からの少なくとも1つの細胞培養物を第1の温度レジームで培養し、各クローン由来培養物からの少なくとも1つの細胞培養物を第2の温度レジームで培養する工程と、e)単一の温度からなる第1の温度レジームで少なくとも1つの細胞培養物を培養し、第2の温度レジームで少なくとも1つの細胞培養物を培養する工程と、f)各温度レジームで細胞によって産生される長重鎖と短重鎖のモル比を比較する工程と、g)バランスのとれた又はより低い長重鎖と短重鎖のモル比を生じさせた少なくとも1つのクローン由来培養物を選択する工程と、h)そのクローン由来培養物から細胞株を確立する工程とを含む、方法を提供する。
【0104】
本発明は、単離され、精製された組換え非対称多重特異性抗体を産生するための方法であって、a)非対称多重特異性抗体を発現する少なくとも1つの単一の安定にトランスフェクトされた細胞を単離し、クローン由来培養物を確立する工程と、b)1つ以上のクローン由来培養物から少なくとも2つの細胞培養物を確立する工程と、c)各クローン由来培養物からの少なくとも1つの細胞培養物を単一の温度を含む第1の温度レジームで培養し、各クローン由来培養物からの少なくとも1つの細胞培養物を第2の温度レジームで培養する工程と、d)各温度レジームで培養された細胞によって産生された、不対合又は誤対合長重鎖を含む少なくとも1つの製品関連不純物の量を比較する工程と、e)製品関連不純物の産生を調節した細胞培養物を選択する工程と、f)選択されたクローン由来培養物から非対称多重特異性抗体を発現する細胞株を確立する工程と、g)非対称多重特異性抗体を発現する細胞株をバイオリアクターに接種する工程と、h)製品関連不純物の産生を調節した温度レジームで非対称多重特異性抗体を発現するように宿主細胞を培養する工程と、i)細胞培養物から組換え非対称多重特異性抗体を回収する工程と、j)1つ以上のクロマトグラフィー単位操作によって組換え多重特異性抗体を処理する工程と、k)単離され、精製された組換え非対称多重特異性抗体を得る工程と、を含む方法を提供する。一実施形態では、上記の方法に従って作製された、単離され、精製された組換え非対称多重特異性抗体が提供される。一実施形態では、上記の方法に従って作製された、単離され、精製された組換え非対称多重特異性抗体を含む医薬組成物が提供される。
【0105】
本明細書では、細胞培養期間を延長し、タンパク質分泌レベルの追加の測定値を収集し、低温条件下で実行される搬出手順中の細胞二次汚染のリスクを最小限に抑えることを可能にするために、1つ以上の温度シフトを介してナノ流体チップのナノ流体チャンバ内の細胞増殖を制御するための方法も提供される。モノクローナル抗体、多重特異性抗体、非対称タンパク質などの組換えタンパク質を発現する単一細胞をナノ流体チップ上に置き、培養期間中一定温度を維持する定常温度培養、又は第1の温度条件での最初のインキュベーション後に1つ以上のより低い温度への温度シフトを適用する二相性培養に供する。温度低下は、増殖阻害をもたらし、細胞の過剰増殖を防止し、細胞二次汚染リスクを低減し、長期培養を可能にする一方で、組換えタンパク質産生プロファイルを変化させた。
【0106】
この方法は、所望の治療用生物製剤の分泌について増殖及び評価される数千のクローン由来細胞株をスクリーニングするためにナノ流体細胞培養物を利用する。一実施形態では、ナノ流体細胞培養システムは、数千のクローン細胞株の単離を可能にするナノ流体チップを利用する完全に統合されたナノ流体細胞培養システムであるBeacon(登録商標)Optofludicシステム(Berkeley Lights,Inc.、エメリービル、カリフォルニア州)である。Beacon(登録商標)Optofludicプラットフォームは、細胞株開発ワークフローに適しており、単一の細胞又は少数の細胞レベルでの増殖及び所望の分泌プロファイルの評価を可能にする。細胞をナノ流体チップのナノ流体チャンバにロードし、組換えタンパク質分泌について、培養とアッセイを同時に行うことができる。候補クローンは、所望の増殖及び分泌プロファイルに基づいて選択され、チップから搬出され、典型的なスケールアップワークフローに供される。本開示の方法と共に使用するための更なる単一細胞選別及び分析プラットフォームも企図される。一実施形態では、リソグラフィベースのマイクロアレイ又はナノウェル支援細胞パターニングプラットフォーム(Love et al,Nat.Biotechnol.,24(6)703(2006)、及びOzkumur et al.,Materials Views,11(36),4643-4650(2015))が企図される。
【0107】
本明細書で使用される場合、「ナノ流体チップのナノ流体チャンバ」は、単一の細胞を単離することができるナノ流体デバイスの一部又は一セクションを指す。例として、ナノ流体チャンバは、本明細書に記載のBerkeley LightのBeacon(登録商標)技術プラットフォームに関連するNanoPen(商標)チャンバであり得る。いくつかの実施形態では、ナノ流体チップ又はデバイスは、各々が単一の細胞を単離することができる数百又は数千の個々のチャンバを含む。いくつかの実施形態では、ナノ流体デバイス又はチップは、1758個のチャンバ、3,500個のチャンバ、11,000個のチャンバ、14,000個のチャンバ、又は20,000個のチャンバを含む。そのようなナノ流体チップは当技術分野で公知であり、市販されている、BLI OptoSelect(商標)チップ、BLI OptoSelect(商標)チップ1750b、BLI OptoSelect(商標)チップ3500、BLI OptoSelect(商標)チップ11k、BLI OptoSelect(商標)チップ14K、BLI OptoSelect(商標)チップ20k。
【0108】
本方法を使用して選択された生体分子を生成する方法も本開示によって企図される。例えば、一実施形態では、本方法の条件下で増殖させた生体分子を、96ウェルプレート、12ウェルプレート又は24ウェルプレートなどのマルチウェルプレートに搬出する。組換えタンパク質に対する定常温度及びシフト温度の影響を分析し、早期クローン選択を支援するために使用する。所望の特性及び製品品質特性を有する組換えタンパク質を分泌する細胞株を単離し、容器内での組換えタンパク質の産生を可能にする条件下及び本明細書に記載の条件下で培養するために容器に移す。
【0109】
本発明は、ナノ流体チップのナノ流体チャンバ内の細胞の増殖を制御するための方法であって、(a)ナノ流体チップのナノ流体チャンバ内に単一細胞を単離する工程であって、前記細胞が組換えタンパク質を発現することができる発現構築物を含む、工程と、(b)細胞を第1の温度で培養する工程と、(c)所定の時点で、細胞を第2の温度で培養する工程と、(d)細胞をナノ流体チャンバから培養容器に搬出することとを含む、方法を提供する。一実施形態では、搬出時の1チャンバあたりの細胞数は、培養期間中、一定温度で同様の条件下で培養した単一細胞由来の細胞株と比較して少ない。
【0110】
本発明はまた、ナノ流体チップのナノ流体チャンバ内で増殖させた細胞の搬出中の細胞二次汚染を最小限に抑えるための方法であって、(a)ナノ流体チップのナノ流体チャンバ内に単一細胞を単離する工程であって、前記細胞が組換えタンパク質を発現することができる発現構築物を含む、工程と、(b)細胞を第1の温度で培養する工程と、(c)所定の時点で、細胞を第2の温度で培養する工程と、(d)細胞をナノ流体チャンバから、搬出手順中に適用されるより低い温度設定で培養容器内に搬出する工程とを含む、方法を提供する。搬出時の1チャンバあたりの細胞数は、培養期間中、一定温度で同様の条件下で培養された単一細胞と比較して少ない。
【0111】
本発明は更に、ナノ流体チップのナノ流体チャンバ内で増殖させた細胞のクローン選択を改善する方法であって、(a)ナノ流体チップのナノ流体チャンバ内に単一細胞を単離する工程であって、前記細胞が組換えタンパク質を発現することができる発現構築物を含む、工程と、(b)細胞を第1の温度で培養する工程と、(c)培養の温度を培養の3日目以降に第2の温度まで低下させる工程と、(d)温度シフトの少なくとも1から4日後にナノ流体チャンバから細胞を搬出する工程と、を含む方法を提供する。
【0112】
一実施形態では、ナノ流体チャンバから細胞を搬出する工程は、温度シフトの少なくとも2~4日後である。一実施形態では、ナノ流体チャンバから細胞を搬出する工程は、温度シフトの少なくとも3~4日後である。一実施形態では、ナノ流体チャンバから細胞を搬出する工程は、温度シフトの少なくとも2~3日後である。一実施形態では、ナノ流体チャンバから細胞を搬出する工程は、温度シフトの少なくとも1~2日後である。一実施形態では、ナノ流体チャンバから細胞を搬出する工程は、温度シフトの少なくとも1、2、3、又は4日後である。一実施形態では、ナノ流体チャンバから細胞を搬出する工程は、温度シフトの少なくとも1日後である。一実施形態では、ナノ流体チャンバから細胞を搬出する工程は、温度シフトの少なくとも2日後である。一実施形態では、ナノ流体チャンバから細胞を搬出する工程は、温度シフトの少なくとも3日後である。一実施形態では、ナノ流体チャンバから細胞を搬出する工程は、温度シフトの少なくとも4日後である。
【0113】
一実施形態では、第1の温度は35℃~37℃から選択される。一実施形態では、第1の温度は35℃、36℃、又は37℃である。一実施形態では、第1の温度は35℃である。一実施形態では、第1の温度は36℃である。一実施形態では、第1の温度は37℃である。
【0114】
一実施形態では、第2の温度は、28℃~34℃から選択される。一実施形態では、第2の温度は、28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、又は34℃±0.5℃から選択される。一実施形態では、第2の温度は28℃から選択される。一実施形態では、第2の温度は29℃から選択される。一実施形態では、第2の温度は30℃から選択される。一実施形態では、第2の温度は31℃から選択される。一実施形態では、第2の温度は32℃から選択される。一実施形態では、第2の温度は33℃から選択される。一実施形態では、第2の温度は34℃から選択される。
【0115】
一実施形態では、第2の温度は、第1の温度よりも約1℃~約9℃低い。一実施形態では、第1の温度は36℃であり、第2の温度は32℃~32.5℃である。
【0116】
一実施形態では、所定の時点は、培養の3日目~5日目である。一実施形態では、所定の時点は、培養の3日目~4日目である。一実施形態では、所定の時点は、培養の4日目~5日目である。一実施形態では、所定の時点は、培養の3日目、4日目又は5日目である。一実施形態では、所定の時点は培養の3日目である。一実施形態では、所定の時点は培養の4日目である。一実施形態では、所定の時点は培養の5日目である。
【0117】
一実施形態では、搬出は培養の6日目~8日目である。一実施形態では、搬出は培養の6日目~7日目に行われる。一実施形態では、搬出は培養の7日目~8日目に行われる。一実施形態では、搬出は培養の6日目、7日目又は8日目に行われる。一実施形態では、搬出は培養の6日目に行われる。一実施形態では、搬出は培養の7日目に行われる。一実施形態では、搬出は培養の8日目に行われる。
【0118】
一実施形態では、ナノ流体チップは、1758個のチャンバ、3,500個のチャンバ、11,000個のチャンバ、14,000個のチャンバ、又は20,000個のチャンバを含む。
【0119】
一実施形態では、培養容器はマルチウェルプレートである。一実施形態では、温度シフトの前後のタンパク質分泌プロファイルを比較する。一実施形態では、ナノ流体チップは1758個のチャンバを含む。
【0120】
「培養する」又は「培養」とは、多細胞生物又は組織の外部で細胞を増殖及び繁殖させることを意味する。哺乳類細胞に好適な培養条件は、当該技術分野において公知である。細胞培養培地及び組織培養培地は、互換的に使用され、インビボでの細胞培養中の宿主細胞の増殖に好適な培地を指す。典型的に、細胞培地は、緩衝液、塩類、エネルギー源、アミノ酸、ビタミン及び微量必須元素を含む。培養における適切な宿主細胞の増殖を助けることができる任意の培地が使用され得る。特定の培養宿主細胞における細胞増殖、細胞生存率、及び/又は組換えタンパク質産生を最大化する他の成分が更に補充され得る細胞培養培地は、市販されており、とりわけ、RPMI-1640培地、RPMI-1641培地、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、最小必須培地イーグル、F-12K培地、ハムF12培地、イスコフ改変ダルベッコ培地、マッコイ5A培地、リーボビッツL-15培地、及びEX-CELL(商標)300シリーズなどの無血清培地を含み、これらは、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション又はSAFC Biosciences、STEMCELL Technologies Inc.、及び他のベンダーから得ることができる。細胞培養培地は、無血清、無タンパク質、無増殖因子、及び/又は無ペプトン培地であり得る。細胞培養物はまた、栄養分の添加によって富栄養化されてもよく、且つその通常の推奨濃度より高い濃度で使用されてもよい。
【0121】
様々な培地製剤を、クローン選択と細胞株の発生から大規模生産細胞培養までの細胞培養のすべての段階で使用することができる。ある段階(例えば、増殖段階又は増殖期)から別の段階(例えば、産生段階又は産生期)への移行を容易にするため、及び/又は細胞培養中の条件を最適化するために、選択中に異なる培地製剤を使用することができる(例えば、灌流培養中は濃縮培地を用意し、フェドバッチ培養中は供給培地を用意する)。選択培地は、新たに形質転換された細胞に選択圧を印加するように配合することができる。増殖培地配合物は、細胞増殖を促進し、且つタンパク質発現を最小化するために使用され得る。産生培地配合物は、細胞の新たな増殖を最小限に抑えながら、目的のタンパク質の産生及び細胞の維持を促進するために使用され得る。細胞培養の産生期の期間の間に消費される供給培地、通常、栄養分及びアミノ酸などのより濃縮された成分を含有する培地は、活性培養、特に、フェドバッチ、半灌流、又は灌流様式で操作された培養を補い且つ維持するために使用され得る。そのような濃縮された供給培地は、細胞培養培地の成分の大部分を、例えば、それらの通常の量の約5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、12倍、14倍、16倍、20倍、30倍、50倍、100倍、200倍、400倍、600倍、800倍、又は更に約1000倍で含有し得る。
【0122】
細胞培養物は、バッチ、フェドバッチ、連続、半連続、灌流モード又はその中の任意の組み合わせで操作することができる。
【0123】
温度シフトは、一般に、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞培養において、培養物の性能及びタンパク質の組換え発現に影響を及ぼすために使用される。CHO細胞は、典型的には、約36℃~37℃の生理学的温度で増殖させる。約30℃~34℃の低体温条件への温度シフトを使用して、細胞増殖などの培養物の態様を制御し、組換えタンパク質の産生を改善し、収率を改善し、且つ/又は細胞生存率を維持するといったことを行う。
【0124】
更に、タンパク質産生の化学的誘導物質、例えば、カフェイン、酪酸塩、及びヘキサメチレンビスアセトアミド(HMBA)を細胞培養物に添加することができる。温度シフトがある場合、誘導物質は、温度シフトと同時に、温度シフトの前に、及び/又は温度シフトの後に添加することができる。誘導物質が温度変化の後に添加する場合は、それらを温度変化の1時間から5日後に、任意選択で温度変化の1から2日後に添加することができる。pHもまた、それ独立で、又は他の方法と組み合わせるかのいずれかで、培養中にシフトすることができる。
【0125】
宿主細胞は、懸濁液中で、又は固体基材に付着した付着形態で培養することができる。細胞は、96、24、又は6ウェル及びディープウェルプレートなどのマルチウェルプレートで培養することができる。細胞培養物は、流動床バイオリアクター、ガス透過性培養バッグ、ガス透過性バイオリアクター、中空繊維バイオリアクター、ローラーボトル、スピンチューブ、振盪フラスコ、又は撹拌タンクバイオリアクタ内で、マイクロキャリアを用いて又はそれを用いずに確立することができる。CHO細胞等の哺乳動物細胞は、100ml未満から1000ml未満の小規模にてバイオリアクター内で培養することができる。或いは、1000mlから20,000リットル超の培地を含むより大規模なバイオリアクターを用いることができる。タンパク質治療薬の臨床及び/又は商業規模のバイオ製造等の大規模な細胞培養は、細胞が所望のタンパク質を製造する間、数週間、更には数ヶ月にわたり維持され得る。
【0126】
「単位操作」という用語は、目的の組換えタンパク質を精製するプロセスの一部として実行される機能工程を指す。例えば、単位操作は、限定されないが、目的の組換えタンパク質の回収、捕捉、精製、ポリッシング、ウイルス不活化、ウイルス濾過、濃縮及び/又は製剤化などの操作における工程を含み得る。単位操作は、捕捉及びウイルス不活化工程の組み合わせなど、単一の目的又は複数の目的を達成するように設計することができる。単位操作はまた、処理工程間の保持又は保管工程を含み得る。
【0127】
組換えタンパク質を細胞培養培地から回収する。浮遊細胞からタンパク質を回収するための方法は、当該技術分野で公知であり、酸沈殿、凝集などの加速沈降、重力を使用した分離、遠心分離、音波分離、限外濾過膜、マイクロ濾過膜、タンジェント流濾過膜、代替タンジェント流濾過膜、深層濾過膜、及び砂濾過膜(alluvial filter)を使用した膜濾過を含む濾過が挙げられるが、これらに限定されない。原核生物によって発現される組換えタンパク質は、当該技術分野で公知のレドックスフォールディングプロセスを組み込んだプロセスによって、細胞質内の封入体から回収される。
【0128】
次に、回収されたタンパク質は、1つ以上の単位操作を使用して、残留している細胞培養培地、細胞抽出物、望まれない成分、宿主細胞タンパク質、不適切に発現されたタンパク質などの任意の不純物を取り除いて精製され得、又は部分的に精製され得る。「精製する」とは、組成物から少なくとも1つの不純物又は夾雑物を(部分的又は完全に)除去することによって、組成物中の非対称多重特異性抗体の純度を増加させることを意味する。多重特異性抗体の回収及び精製は、下流の単位操作、具体的にはクロマトグラフィーを伴う操作によって達成され、収率及び製品品質の目標を満たすより「均一な」非対称多重特異性抗体組成物をもたらす。
【0129】
捕捉の単位操作は、少なくとも1つの所望のタンパク質、不純物又は夾雑物と結合及び/又は相互作用する薬剤を含有する樹脂及び/又は膜を利用する捕捉クロマトグラフィーを含み得る。捕捉クロマトグラフィーの例としては、アフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)などが挙げられる。このような材料は、当技術分野で公知であり、商業的に入手可能である。アフィニティークロマトグラフィーは、Fc成分を有する目的の組換えタンパク質を単離し濃縮する最初の捕捉工程として、バイオ製造プロセスで一般的に使用されている。このようなアフィニティークロマトグラフィー材料の例としては、プロテインA、プロテインG、プロテインA/G、プロテインLなどのブドウ球菌タンパク質、基質結合捕捉機構、抗体又は抗体断片結合捕捉機構、アプタマー結合捕捉機構、及び補因子結合捕捉機構などを利用したものが挙げられる。固定化金属アフィニティークロマトグラフィーは、金属イオンに親和性を持つ、又は持つように操作されたタンパク質を捕捉するために用いることができる。アフィニティークロマトグラフィー材料は多くの業者から市販されている。例えば、MABSELECT(商標)SURE Protein A、Protein A Sepharose FAST FLOW(商標)(Cytiva、マールボロ、マサチューセッツ州)、PROSEP-A(商標)(Merck Millipore、英国)、TOYOPEARL(商標)650M Protein A(TosoHass Co.、フィラデルフィア、ペンシルバニア州)。
【0130】
中間単位操作及び/又はポリッシング単位操作では、目的のタンパク質を継続的に精製し、DNA、宿主細胞タンパク質などの夾雑物や不純物を除去;生成物固有の不純物、バリアント生成物及び凝集体、ウイルス吸着などを除去するために、様々なクロマトグラフィー法を利用する。これらのクロマトグラフィー単位操作は、目的のタンパク質が溶出液に含まれ、夾雑物及び不純物がクロマトグラフィー媒体に結合するフロースルーモード、目的のタンパク質を含有する溶液は吸着部位が専有されるまでカラム上に負荷され、固定相(関心対象のタンパク質)に対する最小の親和性を備える種が溶出され始めるフロンタル若しくはオーバーロード・クロマトグラフィーモード、又は目的のタンパク質がクロマトグラフィー媒体に結合され、夾雑物及び不純物がクロマトグラフィー媒体に通過した後、又はクロマトグラフィー媒体から洗い流された後に溶出される結合及び溶出モード、又は他の方法のいずれかで使用することができる作用物質を含有する樹脂及び/又は膜を利用する。このようなクロマトグラフィー方法の例としては、とりわけ、陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)及び陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)などのイオン交換クロマトグラフィー(IEX)、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、混合様式又は多様式クロマトグラフィー(MM)、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー(HA)、逆相クロマトグラフィー及びゲル濾過が挙げられる。
【0131】
複数のクロマトグラフィー単位操作(通常は1つ、2つ、又は3つで、それぞれが異なる機能を実行する)が、製造プロセスの要件に応じて組み合わされる。イオン交換クロマトグラフィーは、帯電した表面間の静電相互作用に基づき、差分吸着と脱着に基づいて、目的のタンパク質と不純物を分離する。「カチオン交換クロマトグラフィー」は、負に荷電し、且つ固相の上又は中を通過した水溶液中でのカチオンとの交換のための遊離カチオンを有する固相媒体上で実施されるクロマトグラフィーを指す。電荷は、1つ以上の荷電リガンドを固相に、例えば、共有結合によって付着させることによってもたらされ得る。或いは、又はこれに加えて、電荷は、(例えば、全陰電荷を有するシリカの場合と同様に)固相の固有の特性であり得る。カチオン交換クロマトグラフィーは通常、結合・溶出モードで実行され、目的の多くのタンパク質のpIが高いことによりクロマトグラフィー材料への結合が可能となる。カチオン交換クロマトグラフィーはフロースルーモードで行うこともできる。CEXクロマトグラフィーは典型的には、高分子量(HMW)夾雑物の除去、プロセス関連の不純物の除去、及び/又はウイルスクリアランスに使用される。市販のカチオン交換媒体が利用可能であり、例としては、アガロースに固定化されたスルホプロピル(SP)(例えば、SP-SEPHAROSE FAST FLOW(商標)、SP-SEPHAROSE FAST FLOW XL(商標)又はSP-SEPHAROSE HIGH PERFORMANCE(商標)、CAPTO S(商標)、CAPTO SP ImpRes(商標)、CAPTO S ImpAct(商標)(Cytiva)、FRACTOGEL-SO3(商標)、FRACTOGEL-SE HICAP(商標)、及びFRACTOPREP(商標)(EMD Merck、ダルムシュタット、ドイツ)、TOYOPEARL(登録商標)XS、TOYOPEARL(登録商標)HS(Tosh Bioscience、キング・オブ・プラシャ、ペンシルバニア州)、UNOsphere(商標)(BioRad、ハーキュリーズ、カリフォルニア州)、S Ceramic Hyper D(商標)F(Pall、ポートワシントン、ニューヨーク州)、POROS(商標)(ThermoFisher、ウォルサム、マサチューセッツ州)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0132】
アニオン交換クロマトグラフィーは、正に荷電しており、固相の上又は中を通過した水溶液中でのアニオンとの交換のための遊離カチオンを有する固相媒体上で実施されるクロマトグラフィーをいう。アニオン交換クロマトグラフィーは、典型的にはフロースルーモードで行われる。多くのタンパク質はpIが高いため、AEXクロマトグラフィー材料に結合しない。AEXクロマトグラフィーは、例えば、ウイルスクリアランスや不純物の除去に使用される。市販のアニオン交換培地が利用可能であり、例としては、アガロースに固定化されたスルホプロピル(SP)(例えば、Source 15 Q、Capto(商標)Q、Q-SEPHAROSE FAST FLOW(商標)(Cytiva)、FRACTOGEL EDM TMAE(商標)、FRACTOGEL EDM DEAE(商標)(EMD Merck社製)、TOYOPEARL Super Q(登録商標)(Tosh Bioscience)、POROS HQ(商標)、POROS XQ(商標)、(ThermoFisher)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0133】
ミックスモード又はマルチモードクロマトグラフィー(MMC)とは、イオン交換(CEX又はAEX)や疎水性相互作用等の相互作用メカニズムを組み合わせて利用する、固相媒体上で実行されるクロマトグラフィーを指す。市販のマルチモーダルクロマトグラフィー媒体が入手可能であり、Capto(商標)Adhere(Cytiva)が挙げられる。
【0134】
疎水性相互作用クロマトグラフィーとは、疎水性リガンドと目的のタンパク質表面の疎水性残基との間の相互作用を利用した固相媒体上でのクロマトグラフィーを指す。市販の疎水性相互作用クロマトグラフィー媒体としては、Phenyl Sepharose(商標)(Cytiva)、Tosoh hexyl(Tosoh Bioscience)及びCapto(商標)フェニル(Cytiva)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0135】
ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィーとは、正電荷を帯びたカルシウムと負電荷を帯びたリン酸塩を利用し、タンパク質のpIと緩衝液のpHに応じて陽イオン又は陰イオンとして作用する固相媒体上で行うクロマトグラフィーを指す。
【0136】
ウイルス夾雑物を不活化、低減、及び/又は排除することを含む単位操作は、環境及び/又は濾過を操作するプロセスを含んでもよい。ウイルスの不活化には様々な方法を採用することができ、熱不活化/低温殺菌、UV及びガンマ線照射、高強度の広域スペクトル白色光の使用、化学不活化剤、界面活性剤の添加、溶媒/界面活性剤処理などが挙げられる。洗浄剤などの界面活性剤は、膜を可溶化するため、エンベロープウイルスを特異的に不活化するのに非常に効果的であり得る。ウイルス不活化を達成するための1つの方法は、低pH(例えば、pH<4)でのインキュベーションである。低pHのウイルス不活性化の後に、ウイルスが不活性化された溶液を、次の単位操作の要件により適合するpHに再調整する中和単位操作が続き得る。また、その後に、デプス濾過などの濾過にかけられて、結果として生じる濁り又は沈殿が除去され得る。ウイルス濾過は、マイクロ濾過膜又はナノ濾過膜、例えば、旭化成(Plavona(登録商標))及びEDMミリポア(VPro(登録商標))から入手可能なものを使用して実施することができる。
【0137】
単位操作はまた、産物の濃縮を含み得、目的のタンパク質の緩衝液を原薬のバルク貯蔵のための所望の製剤緩衝液へ交換することは、限外濾過及びダイアフィルトレーション(UF/DF)のための公知の方法を使用して達成することができる。薬物製品の充填/仕上げに関連する単位操作に従うことができる。
【0138】
精製された非対称多重特異性抗体の重要な属性及び性能パラメーターは、製造中の各工程の性能に関する決定をより適切に伝えるために測定され得る。これらの重要な属性及びパラメーターは、リアルタイムで、準リアルタイムで、及び/又は事後にモニタリングされ得る。消費された培地成分(グルコースなど)、蓄積している副生成物(乳酸塩及びアンモニアなど)の代謝レベル、並びに溶存酸素含量などの細胞維持及び生存に関連するものなどの重要なパラメーターは、細胞培養中に測定することができる。比生産性、生存細胞密度、pH、重量オスモル濃度、外観、色、凝集、収率及び力価などの重要な属性は、製造プロセスにおける適切な段階中にモニタリングされ得る。モニタリング及び測定は、既知の手法及び市販の装置を使用してなされ得る。
【0139】
医薬組成物(溶液、懸濁液など)は、中性緩衝食塩水、リン酸緩衝食塩水などの緩衝液、グルコース、マンノース、スクロース若しくはデキストラン、マンニトールなどの炭水化物、タンパク質、ポリペプチド又はグリシンなどのアミノ酸、抗酸化剤、EDTA若しくはグルタチオンなどのキレート剤、アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム)、及び保存料、注射用水、食塩液、好ましくは生理学的食塩水、リンゲル液、等張性塩化ナトリウム、溶媒若しくは懸濁媒として機能できる合成モノグリセリド若しくはジグリセリドなどの不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の溶媒などの無菌希釈液、ベンジルアルコール若しくはメチルパラベンなどの抗菌剤、アスコルビン酸若しくは亜硫酸ナトリウムなどの抗酸化剤、エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤、酢酸塩、クエン酸塩若しくはリン酸塩などの緩衝液及び塩化ナトリウム若しくはデキストロースなどの等張性を調製するための作用物質のうちの1つ以上を含み得る。非経口製剤は、ガラス又はプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器又は多人数用バイアルに封入することができる。
【0140】
本願で使用する専門用語は、当該技術分野では標準的であるが、特定の用語の定義は、特許請求の範囲の意味に対して明快さ及び明確さを保証するために本明細書において提供される。単位、接頭辞及び記号は、それらのSIで認められた形式で示され得る。本明細書に記載される数値範囲は、範囲を定義する数を含み、定義された範囲内の各整数を含み、且つそれらを支持する。別段の記載がない限り、本明細書に記載の方法及び手法は、一般に、当技術分野において周知の従来の方法に従って実施され、本明細書を通して引用され、論じられる様々な一般的な参考文献やより具体的な参考文献に記載されるものである。限定するものではないが、特許、特許出願、論文、書籍及び学術論文などの、本願で引用されるすべての文献又は文献の一部は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0141】
本発明は、本発明の個々の態様の一つの説明として意図されている本明細書に記載される特定の実施形態によって範囲が限定されるものではなく、機能的に均等な方法及び構成要素が本発明の範囲内にある。本発明の実施形態において記載されるものは、本発明の他の実施形態と組み合わせることができる。実際、本明細書に示され、記載されるものに加えて本発明の様々な変更形態は、前述の説明及び添付の図面から当業者に明らかになるであろう。そのような変更形態は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
【0142】
実施された実験及び達成された結果を含む以下の実施例は、例示の目的のためにのみ提供されるものであり、添付の特許請求の範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。
【実施例
【0143】
実施例1
CHO細胞を、抗PD-1抗体の2つの抗体重鎖の一方のC末端に連結されたIL-21ムテインのコンジュゲートを含む二機能性融合タンパク質をコードするプラスミドDNAでトランスフェクトした。IL-21-抗PD-1コンジュゲートは、「短重鎖」(抗PD1重鎖)及び「長重鎖」(IL-21ムテインに連結された抗PD1重鎖)を含んでいた。重量、長さ及びアミノ酸組成は、2つの重鎖間で異なっていた。トランスフェクション後、コンジュゲートを安定に発現するプール集団を、選択増殖培地中で反復継代を通して作製した。このプールが、Trypan Blue Exclusionで測定した場合に90%を超える生存率に達し、一貫した倍加時間を維持したとき、単一細胞クローンをプールから単離した。
【0144】
単一細胞クローンを増殖させ、36℃、5%CO、相対湿度85%に維持した96ウェルプレート(Corning、コーニング、ニューヨーク州)で培養した。細胞を、所望の細胞生存率密度に達するまで継代することによって維持した。
【0145】
次いで、クローンを、3.5mlの作業容量の既知組成無血清培養培地を含む24ウェルプレート(Axygen、ユニオンシティ、カリフォルニア州)に8×10細胞/mlで接種した。プレートを36℃、5%CO、相対湿度85%に維持し、225rpmで10日間振盪し、接種後の体積の7%で、3、6、及び8日目に栄養を供給した。培養物を10日目に回収した。インプロセス試料を採取して培養条件をモニタリングした。Vi-Cell XR Cell Viability Analyzer(Beckman Coulter、インディアナポリス、インディアナ州)を用いて、生細胞密度(VCD)及び生存率(%)を求めた。グルコース、乳酸及びNH4+の濃度を、BioProfile Flex Analyzer(Nova Biomedical、ウォルサム、マサチューセッツ州)を使用して求めた。
【0146】
各培養物からの試料を、力価測定及び製品品質分析のために採取した。力価は、アフィニティークロマトグラフィー(プロテインA、Waters、ミルフォード、マサチューセッツ州)による高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定した。積算生存細胞密度(IVCD)を、培養時間に対するVCDの台形公式によって計算した。細胞比生産性(q)を、力価をIVCDで割ることによって計算した。回収材料を製品品質評価に使用した。上位4つのクローンをバイオリアクター培養のために選択した。
【0147】
上位4つのクローン(クローン1~4)を、4.4Lの作業容量の既知組成無血清培養培地で、2×7Lバイオリアクターに10E5細胞/mlで接種した。バイオリアクターを36℃、5%CO、6.90pH、315rpmに維持した。灌流を3日目に開始し、30,000個のNMWCフィルター(GE Healthcare、ウエストボロ、マサチューセッツ州)を備えた交互接線流フィルタシステム(Repligen、ウォルサム、マサチューセッツ州)を、3~6日目は0.5反応器体積/日の速度で、7~8日目は0.75反応器体積/日の速度で、9~15日目は、14日目に停止したクローン2を除いて、1.0反応器体積/日の速度で使用した。毎日の試料を採取して、24ウェルプレートについて先に説明したように培養条件をモニタリングした(例えば、pH、オスモル濃度、乳酸塩/グルコースなど)。
【0148】
培養生細胞密度(VCD)が300E5細胞/mlを超えた時点で、温度を32.5℃にシフトし、培養物を回収までその温度で維持した。クローンを、750,000個のNMWCフィルター、GE Healthcareを使用して、12日目~14日目まで回収したクローン2以外は、12日目~15日目まで回収した。培養条件及び回収した培養上清を、24ウェルプレートについて先に説明したのと同じ方法を用いてモニタリングした。
【0149】
予想外にも、より低い培養温度(32.5℃)に曝露した試料は、試験したすべてのクローンについて、長重鎖(LHC)と短重鎖(SHC)のモル比の増加を示した。
【0150】
長重鎖と短重鎖とのモル比の増加の原因を調べるために、第2の実験を行った。常時36℃で培養したクローン4と、培養中に温度シフト(36℃から32.5℃)を組み込んだ条件下で培養したクローン4の応答を調べるために、10日間のフェドバッチ培養を行った。クローン4からの細胞を、3.5mlの作業容量の既知組成無血清培養培地を含む2つの24ディープウェルプレート(Axygen、ユニオンシティ、カリフォルニア州)に8×10細胞/mlで接種した。プレートを36℃、5%CO、相対湿度85%に維持し、225rpmで振盪した。1つのプレートを32.5℃、5%CO、225rpmに温度シフトした。両方の培養物に、接種後の体積の7%で、3、6、及び8日目に栄養を供給した。両方の培養物からの細胞を10日目に回収した。先に説明したように、10日間の培養を通して分析測定を行った。次いで、回収した材料をプロテインAアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製した。
【0151】
クローン1~3からの細胞もまた、7Lバイオリアクターにおける15日間の灌流培養において試験して、全体を通して36℃の一定温度を維持した灌流条件下でクローンのタンパク質応答を調べた。7Lバイオリアクターにおける15日間灌流培養においてクローン4を試験して、温度シフト(36℃~32.5℃)を伴う灌流条件下でクローンのタンパク質応答を調べた。
【0152】
試験クローン及び対照を、既知組成無血清培養培地4400mlの作業容量で、2×7Lバイオリアクターに10E5細胞/mlで接種した。バイオリアクターを36℃、5%CO、6.90pH、315rpmに維持した。灌流を3日目に開始し、30,000個のNMWCフィルター(GE Healthcare、ウエストボロ、マサチューセッツ州)を備えた交互接線流フィルタシステム(Repligen、ウォルサム、マサチューセッツ州)を、3~6日目は0.5反応器体積/日の速度で、7~8日目は0.75反応器体積/日の速度で、9~15日目は、14日目に停止したクローン2を除いて、1.0反応器体積/日の速度で使用した。毎日の試料を採取して、先に説明したように培養条件をモニタリングした。クローン1及び3を、750,000個のNMWCフィルター、GE Healthcareを使用して、12日目~14日目まで回収したクローン2以外は、12日目~15日目まで回収した。培養条件のモニタリングを全体を通して行った。先に説明したように培養物を通して分析測定を行った。回収した物質を、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーを使用し、引き続いて陽イオン交換クロマトグラフィーを結合及び溶出モードで使用して精製した。
【0153】
フェドバッチ試料及び灌流試料の両方について、長重鎖と短重鎖のモル比を、還元キャピラリー電気泳動ドデシル硫酸ナトリウム(rCE-SDS)により求めた。非還元キャピラリー電気泳動-ドデシル硫酸ナトリウム(nrCE-SDS)によって平均プレピーク(Pre-Peak)%を求めた。サイズ排除超高速液体クロマトグラフィー(SE-UHPLC)を使用して、平均LMWの%を求めた。フェドバッチ試料及び灌流試料の両方について、長重鎖と短重鎖のモル比を、還元キャピラリー電気泳動-ドデシル硫酸ナトリウム(rCE-SDS)により求めた。
【0154】
IL-2-抗PD-1コンジュゲートを発現する細胞を32.5℃に温度シフトさせて灌流培養(P)に供した場合の長重鎖の%(LHCの%)の増加を、常時36℃でのフェドバッチ培養物(FB)(縞模様の棒)と比較した(図1Aを参照されたい)。このデータは、比の変化が温度シフトによるものであり、培養方法の切り替えによるものではないことを裏付けている。36℃から32.5℃への温度シフトを伴う灌流培養中に産生された部分的に還元された種は、下流精製において除去することができないことが見出された。プロテインAアフィニティークロマトグラフィー(左の白抜きのバー)及び陽イオン交換クロマトグラフィー(右の白抜きのバー)による精製に供した温度シフト灌流培養物(P)及びプロテインAアフィニティークロマトグラフィー(縞模様のバー)に供した恒温フェドバッチ培養物物(FB)からのプレピーク(Pre-Peak)の比較を図1Bに示す。温度シフトに供した灌流培養試料は、一定温度に供したフェドバッチ培養物試料よりも高い割合のLMWを有した(図1Cを参照されたい)。特に、過剰な長重鎖はCEX精製によって分離することができなかった。CEXプールからのnrCEX-SDSによって特徴付けられるプレピーク(Pre-Peak)不純物のクロマトグラムを図1Dに示す。灌流試料からの過剰な長重鎖種は、CEXクロマトグラフィーによって分離することができなかった。
【0155】
rCEによって特定された長重鎖と短重鎖のモル比を比較すると、両方が同じ温度レジームに供された場合、供給されたバッチ試料と灌流試料との間により良好な相関があることが示された。図2Aは、36℃から32.5℃への温度シフトで成長させた灌流試料と比較して、常時36℃で成長させたフェドバッチ培養物試料を示す。図2Bは、両方とも36℃から32.5℃への温度シフトで増殖させた灌流試料と比較したフェドバッチ培養物試料を示す。常時36℃で増殖させた両方の培養方法のデータ点は限られていたので、比較には含めなかった。
【0156】
SECによって測定されたLMWの%を比較すると、同じ温度レジームに供された場合、フェドバッチ試料と灌流試料との間により良好な相関があることが示された。図3Aは、36℃から32.5℃への温度シフトで成長させた灌流試料と比較して、常時36℃で成長させたフェドバッチ培養物試料を示す。図3Bは、両方とも36℃から32.5℃への温度シフトで増殖させた灌流試料と比較したフェドバッチ培養物試料を示す。常時36℃で増殖させた両方の培養方法のデータ点は限られていたので、比較には含めなかった。
【0157】
培養物を36℃から32.5℃への温度シフトに供した場合、36℃の一定温度で増殖させた培養物と比較して、長重鎖(LHC)と短重鎖(SHC)のモル比の予想外のシフトが見られた(図4A、36℃の一定温度、縞模様のバー、36℃から32.5℃への温度シフト、白色のバー)。この不均衡は、下流精製(プロテインAアフィニティークロマトグラフィー及び陽イオン交換クロマトグラフィー)及び製品品質に影響を及ぼした。より低い温度(32.5℃)での培養は、nrCEによって測定されるように、短重鎖によって形成された不純物の減少(プレピーク(Pre-Peak)6)及び長重鎖によって形成された不純物の増加(プレピーク(Pre-Peak)7)をもたらした。短重鎖不純物はプロテインA及びCEXクロマトグラフィー精製によって除去することができたが(図4B)、長重鎖不純物は同じ精製システムによって除去することが困難であった(図4C)。プロテインAアフィニティークロマトグラフィー(縞模様のバー)及び陽イオン交換クロマトグラフィー(白色のバー)。
【0158】
この結果は、細胞培養温度が、精製プロセスによって除去された不純物に影響を及ぼした2つの重鎖の比に影響を及ぼすことによって、製品品質に影響を及ぼし得ることを示した。不純物の特性に応じて、異なるレベルの純度を達成することができた。この実施例では、より高い細胞培養温度でより高い純度が達成された。
【0159】
これらの結果は、クローンをスクリーニングし、得られた細胞株が遭遇すると予想される同じ温度レジームで選択した場合、IL-2-抗PD-1コンジュゲートの製品品質の間により良好な相関があることを示した。長重鎖と短重鎖のモル比は、培養物の温度に影響され、より低い温度では長重鎖の発現が増加することが分かった。長重鎖と短重鎖の比の増加は、製品関連不純物の形成及び種類に影響を与えた。長重鎖を含む不純物は、短重鎖を含む不純物と比較して、下流の精製工程で取り除くことが驚くほど困難であることが分かった。この長重鎖と短重鎖の比の変化は、精製、活性、製品品質、並びに製造プロセス全体の堅牢性に影響を及ぼした。
【0160】
実施例2:
この実験では、2つの重鎖、すなわち、より長いアミノ酸配列の対を有する「長重鎖」及びより短いアミノ酸配列を有する「短重鎖」を含む非対称二重特異性抗体である二重特異性Aについて、クローン選択中の温度の影響及び転写レベルでの製品品質への影響を調べた。
【0161】
フェドバッチ培養
二重特異性抗体(二重特異性A)を発現するクローンを、最初のクローン細胞スクリーニング(クローン1)からのクローンの群から選択した。振盪フラスコ内で10日間のフェドバッチクローンスクリーニングを実施して、一定温度(36℃)で培養した場合のクローンの性能を温度シフト(36℃から32.5℃)を伴う培養に対して比較するスクリーニングプロトコルでクローンの細胞培養中の転写物及びタンパク質応答を調べた。
【0162】
250mlの作業容量の既知組成無血清培養培地を含む1L振盪フラスコを開始した。フラスコに8×10細胞/mlで接種した。振盪フラスコを36℃、5%CO2、160rpmで7日間維持し、接種後の体積の7%で、3及び6日目に栄養を供給した。
【0163】
7日目に、培養物を、60mlの作業容量の既知組成無血清培養培地を含む2つの250ml振盪フラスコに分割した。一方のフラスコを36℃に維持し、もう一方のフラスコの培養温度を32.5℃に下げた。両方のフラスコを5%COで、160rpmで撹拌しながら10日目まで培養した。培養物に、接種後の体積の7%で8日目に栄養を供給した。先の実施例で説明したように、10日間の培養を通して分析測定を行った。Nova CDV(Nova Biomedical)を使用して、回収時に積算生細胞密度(IVCD)を測定した。HPLC分析を使用して回収時に力価を測定した。製造業者の推奨に従ってddPCRを用いて転写物比を求めた(DROPLET DIGITAL(商標)PCR(ddPCR(商標))システム(Bio Rad、ハーキュリーズ、カリフォルニア州))。長重鎖と短重鎖のモル比は、rCE-SDSによって求めた。
【0164】
長重鎖(LHC)と短重鎖(SHC)のモル比の増加は、32.5℃に温度シフトした試料で見られ、これは、低温では短重鎖と比較して長重鎖が優先的に発現することを示した(図5A、36℃(縞模様のバー)、32.5℃(白色のバー))。これは、36℃で培養した試料中のSECによって測定された高分子量(HMWの%)の減少(図5B)及び温度シフトした試料中のSECによって測定されたLMWの%の増加と相関していた(図5Cを参照されたい)。HMW不純物は短重鎖によって形成され、LMW不純物は長重鎖によって形成された。積算生細胞密度は比較的変化せず、力価は2つの培養条件間で同等であった。長重鎖と短重鎖の転写物比もまた、より低い温度で増加した。
【0165】
擬似灌流培養
二重特異性Aを発現する2つのクローン(クローン2及びクローン3)を最初のクローン細胞スクリーニングからのクローンの群から選択し、バイオリアクターにおける高細胞密度灌流培養を模倣する培養プロセスにおける温度変化に対する転写物及びタンパク質応答時間を調べるために小規模擬似灌流培養において試験した。クローンを一定温度(36℃)で培養し、また温度シフト(36℃から32.5℃)を用いて培養した。
【0166】
各クローンについて、2つの24ディープウェルプレートに200×10細胞/ml/ウェルを接種した。0日目に、プレートを36℃、5%COでインキュベートした。1日目に、各クローンからの一方のプレートについて温度を32.5℃に下げる一方で、各クローンのもう一方のプレートを36℃に維持した。プレートを3日目に回収した。既知組成無血清培地を使用して毎日培地交換を実施し、使用済み培地を除去して、新鮮な培地を添加して灌流培養を模倣した。分析測定を毎日行った。
【0167】
36℃から32.5℃への温度シフト24時間後の低温における長重鎖(LHC)と短重鎖(SHC)のモル比は、36℃の一定温度に保持した培養物と比較して、9%(クローン2)及び13%(クローン3)増加した(図6A、36℃は縞模様バー、32.5℃は白色のバー)。これは、より低い温度では、短重鎖と比較して長重鎖の優先的発現があることを示した。モル比の増加は、長重鎖ホモ二量体及びモノマー不純物を含む増加したLMWの%と一致した(図6B)。転写比を図11Cに示す。温度シフトに供されたクローンについては、細胞増殖及び力価がいずれもより低かった。
【0168】
実験1から分かるように、二重特異性1の長重鎖と短重鎖のモル比も培養温度の影響を受けることが分かった。長重鎖と短重鎖のモル比の増加は、低温での長重鎖を含む増加した不純物の形成と一致していた。
【0169】
実施例3
この実験では、非対称二重特異性抗体である二重特異性Cについての転写レベルでのクローン選択中の温度の影響及び製品品質への影響を調べた。二重特異性Cは、より長いアミノ酸配列を有する「長重鎖」及びより短いアミノ酸配列を有する「短重鎖」の2つの重鎖を有する。
【0170】
フェドバッチ振盪フラスコ培養
二重特異性Bの初期クローンスクリーニングから3つのクローン(クローン1、クローン2、クローン3)を選択した。先の実施例2で説明したように、振盪フラスコ内で10日間のフェドバッチ温度試験を実施して、36℃の一定温度でのプロセス及び36℃から32.5℃への温度シフトを含むプロセスにおけるクローン細胞の転写及びタンパク質応答を調べた。
【0171】
250mlの作業容量の既知組成無血清培養培地を含む1L振盪フラスコ(Corning、コーニング、ニューヨーク州)を各クローンについて1つ開始した。0日目に、各フラスコに8×10細胞/mlで接種した。振盪フラスコを36℃、5%CO、160rpmで7日間維持し、接種後の体積の7%で、3及び6日目に栄養を供給した。
【0172】
7日目に、各フラスコを、60mlの作業容量の既知組成無血清培養培地を含む2つのフラスコに分割した。一方のフラスコを36℃に維持し、もう一方のフラスコを32.5℃に維持した。両方とも、5%COで、160rpmで撹拌しながら10日目まで培養した。培養物に、接種後の体積の7%で8日目に栄養を供給した。10日間の培養を通して分析測定を行った。
【0173】
長重鎖と短重鎖のモル比は、より低い温度で増加し、これは、短重鎖に対する長重鎖の優先的発現を示唆するものであった(図7Aを参照されたい、36℃は縞模様のバー、32.5℃は白色のバー)。これは、長重鎖ホモ二量体不純物を含むHMW2の%の増加(図7B)及び短重鎖ホモ二量体不純物を含むLMW1の%の減少(図7C)と一致していた。転写比を図7Cに示す。2つの温度レジーム間で同様の力価が観察された。2つの温度レジーム間で、積算生細胞密度(IVCD)にわずかな差(10%)があった。
【0174】
擬似灌流培養
上記のように、バイオリアクターにおける高細胞密度灌流培養を模倣する培養プロセスにおける温度変化に対する転写物及びタンパク質応答時間を調べるために、小規模擬似灌流培養において二重特異性Bクローン2及び3も試験した。
【0175】
クローン2及び3のそれぞれについて、2つの24ウェルディープウェルプレートに200×10細胞/ml/ウェルを接種し、0日目に、36℃、5%COでインキュベートした。1日目に、各クローンの一方のプレートの温度を32.5℃に下げ、もう一方のプレートを36℃に維持した。3日目に、プレートを回収した。既知組成無血清培地を培養に使用した。培地交換を毎日行って、使用済み培地を除去し、新鮮な培地を添加した。先の実施例で説明したように、分析測定を毎日行った。
【0176】
長重鎖と短重鎖のモル比は、36℃の一定温度と比較して、36℃から32.5℃への温度シフト後24時間で、クローン2については17%、クローン3については25%増加した(図8Aを参照されたい、36℃は、縞模様のバー、32.5℃は白色のバー)。これは、より低い温度では、短重鎖と比較して長重鎖が優先的に発現することを示した。モル比の増加は、SECによって測定された増加したHMW2の%及びSECによって測定された減少したLMW1の%と一致した(図8B及び図8Cを参照されたい)。HMW2不純物は長重鎖ホモ二量体を含み、LMW1不純物は短重鎖ホモ二量体を含んでいた。2日目に両方のクローンについて32.5℃でわずかに低い力価が見られた。
【0177】
実験1及び実験2に見られるように、二重特異性2の長重鎖と短重鎖のモル比も培養温度の影響を受けることが分かった。長重鎖と短重鎖のモル比の増加は、低温での長重鎖を含む増加した不純物の形成と一致していた。
【0178】
実験で実証されたように、非対称多重特異性タンパク質の長重鎖の発現は、より低い温度での長重鎖と短重鎖の発現のモル比の増加によって示されるように、温度によって影響された。この比の変化は、製品関連不純物の形成に影響を及ぼし、所望の生成物からそれらを分離する困難性に影響を及ぼした。長重鎖を含む不純物は、短重鎖を含む不純物と比較して、下流の精製工程で取り除くことが驚くほど困難であることが分かった。長重鎖と短重鎖の発現のバランスをとるための手段として温度を使用することは、非対称タンパク質の精製、活性、及び製品品質にプラスの影響を与える。
【0179】
実施例4
これらの実験は、温度シフトによってナノ流体チップ上の細胞増殖を制御して、培養期間及びタンパク質分泌レベルの測定を延長し、低温設定下で実行される搬出手順中の細胞二次汚染のリスクを最小限に抑える方法を提供する。モノクローナル抗体又は多重特異性抗体のいずれかを発現する単一細胞をナノ流体チップ上に置き、培養期間中同じ温度を維持する定常温度培養モード又は第1の温度条件での最初のインキュベーション後に温度シフト(温度を下げる)を適用する二相性培養モードに供した。温度低下は、増殖阻害をもたらし、細胞の過剰増殖を防止し、その結果、細胞二次汚染リスクを低減し、長期培養を可能にする一方で、組換えタンパク質産生プロファイルを変化させた。組換えタンパク質の生産性に対する定常温度及びシフト温度の影響を分析し、早期クローン選択を支援するために使用する。
【0180】
CHO宿主にモノクローナル抗体又は多重特異性抗体をコードするプラスミドDNAをトランスフェクトすることによって、CHO細胞株を作製した。トランスフェクション後、細胞が90%を超える生存率に達し、一貫した倍加時間を維持するまで、MSX選択ストリンジェンシーも適用した選択培地での反復継代を通して、安定に発現するプール集団を作製した。
【0181】
このプロセスを通して、細胞を、36℃、5%CO及び85%湿度でMSX選択ストリンジェンシーを用いた選択的増殖培地中、T-175フラスコ(Corning、コーニング、ニューヨーク州)又は50mLスピンチューブ(TPP、トラザーディンゲン、スイス)のいずれかで培養した。細胞を、目標の播種密度で週に複数回継代することによって維持した。
【0182】
定常単一温度培養(対照)
CHO細胞株を、Beacon Instrument(Berkeley Light、エメリービル、カリフォルニア州)を使用してOptoSelect(商標)チップ(Design1750、Berkeley Light、エメリービル、カリフォルニア州)にロードした単一細胞とした。OptoElectroPositioning(OEP(商標))、局所的な電界勾配設定、並びに細胞のロード及び搬出のためのスクリプトは、製造業者によって提供された。細胞を、OptoSelect(商標)チップ上で、独自の増殖培地及び製造業者の推奨設定を使用して、36℃で最大6日間培養した。Beacon Instrumentの一体型4X顕微鏡及びカメラを使用して、反復イメージング及び細胞計数を行った。クローン由来の証拠は、NanoPen(商標)チャンバ(0.0481mm面積、1.70nL体積)内の単一細胞の画像によって得られた。分泌アッセイは、供給された方法のスクリプト及びアッセイ分析装置ソフトウェア(Cell Analysis Suite、ビルド30552)を用いて、Spotlight(商標)Human Fc Assay(Berkeley Light、エメリービル、カリフォルニア州)を使用して行った。選択されたペンを、OEP(商標)設定を使用して細胞をチャンバから搬出し、続いてチップを洗い流し、独自の単一細胞クローニング培地を予め充填した96ウェルマイクロタイタープレートに回収した。クローン由来細胞株を、36℃、5%CO、相対湿度85%に維持した96ウェルプレート(Corning、コーニング、ニューヨーク州)での培養を経た搬出後に回収した。細胞を、CellMetricイメージングシステムを使用した反復イメージングによって増殖についてモニタリングした。
【0183】
搬出手順中に温度シフトを実施した定常単一温度培養
CHO細胞株を、Beacon Instrument(Berkeley Light、エメリービル、カリフォルニア州)を使用してOptoSelect(商標)チップ(Design1750、Berkeley Light、エメリービル、カリフォルニア州)にロードした単一細胞とした。セルをロード及び搬出するためのOptoElectroPositioning設定及びスクリプトは、製造業者によって提供された。細胞を、OptoSelect(商標)チップ上で、独自の増殖培地及び製造業者の推奨設定を使用して36℃で4日目まで培養した。搬出手順中の4日目に、温度を32℃にシフトし、搬出手順の終了まで維持した。36℃の定常培養を4日間の培養期間全体にわたって維持した。搬出用のスクリプトは、製造業者によって提供され、搬出手順が32℃の温度シフト設定で実行されるように変更した。反復イメージング及び細胞計数は、Beacon Instrumentの一体型4X顕微鏡及びカメラを使用して実行した。クローン由来の証拠は、NanoPen(商標)チャンバ(0.0481mm面積、1.70nL体積)内の単一細胞の画像によって得られた。分泌アッセイは、供給された方法のスクリプト及びアッセイ分析装置ソフトウェア(Cell Analysis Suite、ビルド30552)を用いて、Spotlight(商標)Human Fc Assay(Berkeley Light、エメリービル、カリフォルニア州)を使用して行った。選択されたチャンバを、OEP(商標)設定を使用して細胞をペンから搬出し、続いてチップを洗い流し、細胞を、独自の単一細胞クローニング培地を予め充填した96ウェルマイクロタイタープレートに回収した。
【0184】
温度シフト培養
CHO細胞株を、Beacon Instrument(Berkeley Light、エメリービル、カリフォルニア州)を使用してOptoSelect(商標)チップ(Design1750、Berkeley Light、エメリービル、カリフォルニア州)にロードした単一細胞とした。OptoElectroPositioning設定及び細胞をロード及び搬出するためのスクリプトは、製造業者によって提供された。細胞は、独自の増殖培地及び製造業者の推奨設定を使用して、3、4又は5日目まで(示されるように)、36℃でOptoSelect(商標)チップ上で培養された。3、4又は5日目に32℃又は32.5℃への温度シフトを適用し、培養物を7又は8日目までより低い温度に維持した。搬出用のスクリプトは製造業者によって提供され、搬出手順は、製造業者の推奨設定又は32℃の温度シフト設定のいずれかで実行した。反復イメージング及び細胞計数は、Beacon Instrumentの一体型4X顕微鏡及びカメラを使用して実行された。クローン由来の証拠は、NanoPen(商標)チャンバ(0.0481mm面積、1.70nL体積)内の単一細胞の画像によって得られた。分泌アッセイは、供給された方法のスクリプト及びアッセイ分析装置ソフトウェア(Cell Analysis Suite、ビルド30552)を用いて、Spotlight(商標)Human Fc Assay(Berkeley Light、エメリービル、カリフォルニア州)を使用して行った。選択されたチャンバを、OEP(商標)を使用して細胞をチャンバから取り出し、続いてチップを洗い流し、細胞を、独自の単一細胞クローニング培地を予め充填した96ウェルマイクロタイタープレートに回収した。
【0185】
結果
図9は、オンチップ培養中に実施された温度シフトが増殖阻害をもたらし、長期培養を可能にすることを示す図である。(A)モノクローナル抗体を発現する単一細胞をチップ上で個々のチャンバにロードし、チップを36℃で6日間培養したBerkeley Light Baconプラットフォームで実験期間を通して収集された代表的な明視野NanoPen(商標)チャンバ画像。機器ソフトウェアによって生成された細胞数を各時点の下に表示する。6日目の細胞集団は、チャンバ内容物の大部分を占め、チャンバの首領域の近くまで増殖し、Spotlight(商標)Human Fc Assayによる信頼できる分泌評価を妨げ、想定される搬出手順における二次汚染の高いリスクを生じさせた。(B)モノクローナル抗体を発現する単一細胞をチップ上で個々のチャンバにロードし、チップを36℃で3日間培養し、その後、残りの実験期間の間は温度を32℃に下げたBerkeley Light Baconプラットフォームで実験期間を通して収集した代表的な明視野チャンバ画像。機器ソフトウェアによって生成された細胞数を各時点の下に表示する。4日目から実施した温度シフトは、増殖阻害をもたらし、細胞がチャンバの最大推奨高さを超えて増殖するのを防止した。(C)実験期間を通して毎日測定した平均倍加時間(上のパネル)及び1チャンバあたりの細胞の平均数(下のパネル)。4日目からの温度シフトの実施は、対照条件と比較した場合、平均倍加時間の増加及び平均細胞数の減少によって明らかにされる増殖阻害をもたらした。
【0186】
図10は、Berkeley Light Beaconプラットフォーム上で標準的な細胞株開発(CLD)ワークフロー中に温度シフトを実施すると、モノクローナル抗体産生プロファイルが変化することを示す。(A)Beaconプラットフォーム上の標準的な細胞株開発クローニングワークフロー(左パネル)及びB及びCで実施された温度シフトを伴う細胞株開発クローニングワークフロー(右パネル)の概略図。(B)4日目の温度シフト前(左パネル)及び6日目の温度シフト後(右パネル)に行われたSpotlight(商標)ヒトFcアッセイに対応する正規化分泌スコアデータ。温度シフト後に測定された細胞分泌プロファイルは、より多様な分布を示し、高度に生産性の高いクローンと、分泌の乏しい細胞株をより良く区別できるようになった。(C)温度シフトを伴うCLDワークフローを実施した、モノクローナル抗体を発現する2つのクローン由来細胞株に対応するBerkeley Light Baconプラットフォームで実験期間を通して収集したBrightfield及びSpotlight(商標)Human Fc Assay蛍光画像。機器ソフトウェアによって生成された細胞数及び正規化された分泌スコアを各時点の下に表示する。低温条件でのインキュベーションは、両方のクローンの増殖停止をもたらした。両方の細胞株は、ワークフローの4日目に同等の分泌プロファイルを示したが、クローン1は、温度シフトに応答して増加した分泌レベルを示し、クローン2は示さなかった。
【0187】
図11は、Berkeley Light Beaconプラットフォーム上でCLDワークフロー中に温度シフトを実施すると、増殖阻害が達成され、IgG4モノクローナル抗体及び多重特異性抗体フォーマットを発現する細胞株の組換えタンパク質産生プロファイルが変化することを示す。(A)(D)IgG4モノクローナル抗体及び多重特異性抗体をそれぞれ発現するクローン由来細胞株について、実験期間を通して毎日測定した平均倍加時間(上のパネル)及び1チャンバあたりの細胞の平均数(下のパネル)。実験の各時点の温度設定をグラフの上部に概説する。4日目又は3日目から温度シフトを実施すると、それぞれ、IgG4及び多重特異性抗体発現細胞株の両方について、倍加時間の増加及び細胞数の減少によって測定される増殖阻害がもたらされた。(B)(E)モノクローナル抗体又は多重特異性抗体をそれぞれ発現するクローン由来細胞株のBerkeley Light Baconプラットフォームで実験期間を通して収集された代表的な明視野チャンバ画像。機器ソフトウェアによって生成された細胞数を各時点の下に表示する。(C)(F)それぞれ4日目及び8日目又は7日目の時点に対応するSpotlight(商標)Human Fc Assayのスコアデータ。低下した温度での長時間のインキュベーション後に達成された分泌プロファイルは、より多様な分布を示し、高度に生産性の高いクローンと、分泌の乏しい細胞株をより良く区別できるようになった。
【0188】
図12は、標準的なCLDワークフローごとに36℃で実行された搬出と比較した場合、32℃の温度で実行された搬出手順が同様のクローン回復をもたらすことを示す。(A)(B)上のパネル:それぞれ、Beaconプラットフォーム上の標準的な細胞株開発クローニングワークフローと、搬出プロセス中に温度シフトが実施される細胞株開発クローニングワークフローの概略図。下のパネル:単一細胞クローニング段階で実施された搬出温度にかかわらず同等のクローン回収効率を示す、エクスポート手順の18日後に取得された96ウェルエクスポートプレートの代表的な画像。
【0189】
結論
本発明者らは、細胞増殖のより良好な制御、搬出手順中の細胞二次汚染に関連するリスクの最小化、より高い分泌レベルの達成、及び早期クローン選択の改善のために、Berkeley Light技術プラットフォーム上の代替の細胞株開発ワークフロー条件を調査した。本発明者らは、CLDワークフロー中の3日目の後に導入された温度シフトが、より低い増殖及び長期間の培養を可能にする細胞倍加時間の延長をもたらすことを実証した。チャンバの入口/出口付近に存在し得る分裂細胞がチャネル領域に漏れ出て、流体経路を二次汚染し、その結果、搬出純度を損なう可能性があるため、より低い温度での増殖阻害を搬出手順中に活用することができる。本発明者らは、搬出プロセス中に低温を実施しても、96ウェルプレート段階でのクローン増殖中のクローン回収に影響を及ぼさないという証拠を提供する。更に、温度シフトを実施することによって、より遅い時点で分泌アッセイを行い、高度に発現しているクローン間をより良好に識別し、性能の低い細胞株を排除することが可能になる。最後に、本発明者らのデータは、低温下での培養が、ユニークな表現型を有するクローンを同定するために活用できる可能性がある組換えタンパク質分泌プロファイルを変化させ得ることを示している。
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図11F
図12
【国際調査報告】