(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-15
(54)【発明の名称】ステッチャ、当該ステッチャを備えるタイヤ製造装置およびタイヤ構成部材の縫合方法
(51)【国際特許分類】
B29D 30/30 20060101AFI20240408BHJP
B29D 30/72 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
B29D30/30
B29D30/72
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566817
(86)(22)【出願日】2022-08-29
(85)【翻訳文提出日】2023-11-02
(86)【国際出願番号】 NL2022050491
(87)【国際公開番号】W WO2023048560
(87)【国際公開日】2023-03-30
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】595090635
【氏名又は名称】ヴェーエムイー ホーランド ベー. ヴェー.
【氏名又は名称原語表記】VMI HOLLAND B. V.
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマン セバスチャン スカーペンヒゼン
(72)【発明者】
【氏名】レネ スミット
(72)【発明者】
【氏名】マルティン デ グラーフ
【テーマコード(参考)】
4F215
【Fターム(参考)】
4F215AH20
4F215VA02
4F215VD09
4F215VD11
4F215VK02
4F215VK20
4F215VP10
(57)【要約】
本発明は、タイヤ製造装置およびタイヤ構成部材を縫合する方法に関し、タイヤ製造装置はタイヤ製造ドラムとステッチャを備え、タイヤ製造ドラムは、タイヤ製造ドラムの残りの部分に対して相対的に後退位置に後退可能なビードロックセグメントを備え、ステッチャは、縫合中にタイヤ構成部材を押圧するための第1面と、第1面の反対側の第2面とを有する円板状の縫合体とを備え、第2面は凹状であり、ステッチャは、凹状の第2面が、後退位置にあるビードロックセグメントとタイヤ製造ドラムの残りの部分との間の移行部に少なくとも部分的に嵌まるように、タイヤ製造ドラムに対して相対的に位置決め可能である。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ製造ドラムと、タイヤ構成部材を縫合するためのステッチャとを備えるタイヤ製造装置であって、前記タイヤ製造ドラムは、前記タイヤ製造ドラムの残りの部分に対して相対的に後退位置に後退可能なビードロックセグメントを備え、前記ステッチャは、縫合中に前記タイヤ構成部材を押圧するための第1面と、前記第1面の反対側の第2面とを有する円板状の縫合体とを備え、前記第2面は凹状であり、前記ステッチャは、前記凹状の第2面が、前記後退位置にある前記ビードロックセグメントと前記タイヤ製造ドラムの前記残りの部分との間の移行部に少なくとも部分的に嵌まるように、前記タイヤ製造ドラムに対して相対的に位置決め可能であるタイヤ製造装置。
【請求項2】
前記円板状の縫合体は、縫合軸と同心であり、前記第1面は、前記縫合軸から離れる径方向に、逃げ角で前記第2面から離れるように傾斜する傾斜部に配置される押圧面を画定する請求項1に記載のタイヤ製造装置。
【請求項3】
前記逃げ角は、0度から15度の範囲内である請求項2に記載のタイヤ製造装置。
【請求項4】
前記逃げ角は、2度から10度の範囲内である請求項2に記載のタイヤ製造装置。
【請求項5】
請求項1に係るタイヤ製造装置を用いてタイヤ構成部材を縫合する方法であって、
前記凹状の第2面が、前記後退位置にある前記ビードロックセグメントと前記タイヤ製造ドラムの前記残りの部分との間の前記移行部に少なくとも部分的に嵌まるように、前記ステッチャを前記タイヤ製造ドラムに対して相対的に位置決めする工程を含む方法。
【請求項6】
前記円板状の縫合体は、前記縫合軸と同心であり、前記第1面は、前記縫合軸から離れる径方向に、逃げ角で前記第2面から離れるように傾斜する傾斜部に配置される押圧面を画定し、前記方法は、
前記縫合軸が垂直面に対して斜めになるように、前記ステッチャを前記タイヤ製造ドラムに対して相対的に位置決めし、それにより前記押圧面の少なくとも一部を水平面に向かってまたは水平面内に傾斜する工程を含む請求項5に記載の方法。
【請求項7】
タイヤ構成部材を縫合するためのステッチャであって、前記ステッチャは、第1縫合軸を画定し、縫合経路の第1部分に沿って前記タイヤ構成部材を縫合するために、前記第1縫合軸と同心かつ前記第1縫合軸を中心として回転可能な第1縫合部材を備え、前記ステッチャは、第2操作部材と、前記第2操作部材を前記第2操作部材が前記第1縫合軸に垂直な径方向において前記第1縫合部材を部分的に越えて突出する動作位置へと前記第1縫合軸に対して相対的に移動させる位置決め部材と、をさらに備え、前記位置決め部材は、前記第1縫合軸を中心として回転可能であり、前記位置決め部材の回転が、前記位置決め部材と前記第1縫合部材との間に発生する渦電流によって駆動されるように配置されているステッチャ。
【請求項8】
請求項7に記載のステッチャであって、前記第2の操作部材は、ステッチ経路の第2の部分に沿ってタイヤ構成部材をステッチするための第2のステッチ部材であることを特徴とするステッチャ。
【請求項9】
請求項8に記載のステッチャであって、前記ステッチャは、2次ステッチ軸を画定し、前記2次ステッチ部材は、前記2次ステッチ軸と同心であり、前記2次ステッチ軸を中心として回転可能であることを特徴とするステッチャ。
【請求項10】
前記位置決め部材の前記1次縫い軸を中心とする回転が、前記1次縫い部材の回転によって駆動されるように配置されている、請求項7~9のいずれか一項に記載のステッチャ。
【請求項11】
位置決め部材が、縫合中に2次操作部材がタイヤ構成部材から離間している待機位置と活動位置との間で回転可能である、請求項7~10のいずれか一項に記載のステッチャ。
【請求項12】
前記ステッチャが、前記待機位置と前記作動位置との間における前記位置決め部材の回転を制限するための第1のリミッタおよび第2のリミッタを備える、請求項11に記載のステッチャ。
【請求項13】
前記第1のリミッタ及び前記第2のリミッタは、前記待機位置と前記作動位置との間における前記位置決め部材の回転を180度未満の範囲に制限する、請求項12に記載のステッチャ。
【請求項14】
請求項7~13のいずれか1項に記載の縫合器において、位置決め部材は、第1縫合部材と同様に第1縫合軸を中心として同じ方向に回転するように構成されていることを特徴とする縫合器。
【請求項15】
位置決め部材が複数の磁石を備えている、請求項7~14のいずれか一項に記載のステッチャ。
【請求項16】
位置決め部材が、前記1次縫い軸と同心の円板状体からなり、前記複数の磁石が、前記1次縫い軸を中心として前記円板状体の周方向に分布している、請求項15に記載の縫合器。
【請求項17】
前記複数の磁石が交互の極性を有する、請求項15または16に記載のステッチャ。
【請求項18】
前記1次縫い部材が強磁性体又は常磁性体からなる、請求項15~17のいずれか一項に記載のステッチャ。
【請求項19】
1次ステッチ部材がアルミニウムからなる、請求項15~18のいずれか一項に記載のステッチャ。
【請求項20】
請求項7~19のいずれか一項に記載のステッチャであって、1次ステッチ部材が、ステッチャをロボットマニピュレータに取り付けるための第1の側面を有し、2次操作部材が、第1の側面から離れる向きの1次ステッチ部材の第2の側面に配置されている、ステッチャ。
【請求項21】
請求項7~20のいずれか一項に記載のステッチャであって、前記1次縫い部材がキャビティを画定し、前記位置決め部材が前記キャビティ内に少なくとも部分的に収容される、ステッチャ。
【請求項22】
前記1次縫い軸と前記2次縫い軸とが互いに平行又は実質的に平行である、請求項9に記載のステッチャ。
【請求項23】
請求項7~22のいずれか一項に記載のステッチャと、タイヤ組み付けドラムとを備えるタイヤ組み付け機。
【請求項24】
請求項23に記載のタイヤ組み付け機であって、前記タイヤ組み付けドラムは、前記ドラム軸を中心として第1の回転方向および前記第1の回転方向とは反対の第2の回転方向に回転可能であり、前記1次ステッチ軸を中心とする前記1次ステッチ部材の回転は、前記タイヤ構築ドラムの回転によって駆動されるように配置され、前記位置決め部材は、前記1次ステッチ軸を中心として第3の回転方向および第4の回転方向に回転可能であり、前記位置決め部材は、第3の回転方向とは反対の第4の回転方向に回転可能であり、1次ステッチ軸を中心とする位置決め部材の回転は、1次ステッチ部材の回転によって駆動されるように配置され、第1の回転方向から第2の回転方向へのタイヤ組み付けドラムの回転の変化は、位置決め部材が回転される回転方向(R3、R4)を制御することを特徴とするタイヤ組み付け機。
【請求項25】
請求項7~22のいずれか一項に記載のステッチャを使用してタイヤ構成部材を縫合する方法であって、
縫合経路の第1の部分に沿ってタイヤ構成部品を縫合するために第1の縫合部材を使用する工程と、
位置決め部材を使用して、2次操作部材を1次縫合軸に対して相対的にアクティブ位置に移動させる工程と、と含む方法。
【請求項26】
請求項25に記載の方法であって、2次操作部材が2次縫合部材であり、
2次ステッチ部材を使用して、ステッチ経路の第2の部分に沿ってタイヤ構成部品をステッチする工程をさらに含む方法。
【請求項27】
請求項25または26に記載の方法であって、位置決め部材の1次縫合軸を中心とする回転が、1次縫合部材の回転によって駆動されることを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法であって、位置決め部材の回転が待機位置と作動位置との間で制限されることを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法であって、位置決め部材の回転が待機位置と作動位置との間で180度未満の範囲に制限されることを特徴とする方法。
【請求項30】
位置決め部材が、第1縫合部材と第1縫合軸を中心として同じ方向に回転される、請求項27~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
位置決め部材の回転が、前記位置決め部材と前記1次縫合部材との間に発生する渦電流によって駆動される、請求項27~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
タイヤ構成部材をステッチするためのステッチャであって、ステッチャが、ステッチャ軸を中心に回転可能なハブと、ハブに連結され、ハブの周囲に配され、ハブから半径方向に延びる複数のステッチセグメントとを備え、ステッチセグメントが、前記ハブに対して弾力的に可撓性である、ステッチャ。
【請求項33】
前記複数のステッチセグメントのうちの少なくとも2つの直接隣接するステッチセグメントが、前記ステッチャ軸を中心とする円周方向に相互に結合されている、請求項32に記載のステッチャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステッチャ、当該ステッチャを備えるタイヤ製造装置、およびタイヤ構成部材の縫合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2018/111091号は、2つのドラム半体を備えるタイヤ製造ドラム、特に単段式タイヤ製造用のクラウンドラムを備えるタイヤ製造装置を開示している。各ドラム半体は、クラウンアップセグメントと、ターンアップ部と、軸方向においてクラウンアップセグメントとターンアップ部との間に位置するビードロック部とを備える。ビードロック部は、中心軸を中心として円周方向に分布し、径方向において解除位置とビードロック位置との間で移動可能な複数のビードロック部材を備える。
【発明の概要】
【0003】
公知のタイヤ製造装置の欠点は、場合によっては、特にビードとドラムとの間において、ビードの径方向内側の周りに側壁を折り曲げることによって側壁を設ける必要があることである。側壁がビードの径方向内側に均一に折り返すことが困難なスカートを形成するため、側壁をビードの径方向内側に側壁を折り曲げることは特に困難である。これを手作業で行うことは不可能である。しかし、ビードと解除位置にあるビードロック部との間の利用可能なスペースは数ミリメートルしかなく、従来のステッチローラを収容するには不十分である。したがって、ビードの周囲で側壁を折り畳めるように、ドラム半体を少なくとも部分的に軸方向に移動させる必要がある。あるいは、側壁を直径が小さい第1のドラム上でビードの周囲で折り畳み、その後、従来の2段式タイヤ製造の場合のように、タイヤ構成部材を成形ドラムに移す必要がある。
【0004】
本発明の目的は、側壁の形成方法を改善したステッチャ、当該ステッチャを備えるタイヤ製造装置、およびタイヤ構成部材の縫合方法を提供することである。
【0005】
第1の態様によれば、本発明は、タイヤ製造ドラムと、タイヤ構成部材を縫合するためのステッチャとを備えるタイヤ製造装置を提供し、前記タイヤ製造ドラムは、前記タイヤ製造ドラムの残りの部分に対して後退位置に後退可能なビードロックセグメントを備え、前記ステッチャは、縫合中に前記タイヤ構成部材を押圧するための第1面と、前記第1面の反対側の第2面とを有する円板状の縫合体とを備え、前記第2面は凹状であり、前記ステッチャは、前記凹状の第2面が、前記後退位置にある前記ビードロックセグメントと前記タイヤ製造ドラムの前記残りの部分との間の移行部に少なくとも部分的に嵌まるように、前記タイヤ製造ドラムに対して相対的に位置決め可能である。
【0006】
凹状の第2面により、本発明の第1の態様によるステッチャは、特に移行部または移行端部において、衝突することなくタイヤ製造ドラムの周囲に近づくように移動することができ、これによりステッチャは、後退したビードロックセグメントとビードの径方向内側との間の比較的小さな空間に到達することができる。
【0007】
好ましくは、前記円板状の縫合体は、縫合軸と同心であり、前記第1面は、前記縫合軸から離れる径方向に、逃げ角で前記第2面から離れるように傾斜する傾斜部に配置される押圧面を画定する。より好ましくは、前記逃げ角は、0度から15度の範囲内であり、最も好ましくは2度から10度の範囲内である。この逃げ角により、ステッチャは、縫合軸を垂直面に対して斜めにした状態で、ビードの半径方向内側のすぐ下方において掬い取られることができ、それによって、押圧面の少なくとも一部を水平面に向かってまたは水平面内に傾斜することができる。このようにして、ステッチャがタイヤ製造ドラムに対して斜めに配置されている間、押圧面は、タイヤ構成部材の先端部をビードの径方向内側の周囲に効果的に折り曲げて押圧することができる。
【0008】
第2の態様によれば、本発明は、本発明の第1の態様に係るタイヤ製造装置を用いてタイヤ構成部材を縫合する方法を提供し、前記方法は、
前記凹状の第2面が、前記後退位置にある前記ビードロックセグメントと前記タイヤ製造ドラムの前記残りの部分との間の移行部に少なくとも部分的に嵌まるように、前記ステッチャを前記タイヤ製造ドラムに対して相対的に位置決めする工程を含む。
【0009】
本方法は、前述のタイヤ製造装置の実用化に関するものであり、したがって、以下では繰り返さないが、同じ技術的利点を有する。
【0010】
好ましくは、前記円板状の縫合体は、前記縫合軸と同心であり、前記第1面は、前記縫合軸から離れる径方向に、逃げ角で前記第2面から離れるように傾斜する傾斜部に配置される押圧面を画定し、前記方法は、
前記縫合軸が垂直面に対して斜めになるように、前記ステッチャを前記タイヤ製造ドラムに対して相対的に位置決めし、それにより前記押圧面の少なくとも一部を水平面に向かってまたは水平面内に傾斜する工程を含む。
【0011】
前記水平または実質的に水平な方向では、前記押圧面は、前記ビード内から前記タイヤ構成部材の先端に効果的に折り曲げて押圧することができる。
【0012】
第3の態様によれば、本発明は、タイヤ構成部材を縫合するためのステッチャを提供し、前記ステッチャは、第1縫合軸を画定し、縫合経路の第1部分に沿って前記タイヤ構成部材を縫合するために、前記第1縫合軸と同心かつ前記第1縫合軸を中心として回転可能な第1縫合部材を備え、前記ステッチャは、第2操作部材と、前記第2操作部材を前記第2操作部材が前記第1縫合軸に垂直な径方向において前記第1縫合部材を部分的に越えて突出する動作位置へと前記第1縫合軸に対して相対的に移動させる位置決め部材と、をさらに備え、前記位置決め部材は、前記第1縫合軸を中心として回転可能であり、前記位置決め部材の回転が、前記位置決め部材と前記第1縫合部材との間に発生する渦電流によって駆動されるように配置されている。
【0013】
第2操作部材は、第1縫合部材が嵌まることができないスペースに嵌まるような寸法にしたり、最適化したりすることができる。より詳細には、第2操作部材は、ビードロック部材とビードの径方向内側の面との間の比較的小さな空間に嵌まることができる。渦電流によって発生する力は、第1縫合部材が回転する際に、位置決め部材に沿って引っ張るために使用することができる。したがって、位置決め部材を駆動するための別個の駆動手段は必要ない。
【0014】
一実施形態では、前記第2操作部材は、前記縫合経路の第2部分に沿って前記タイヤ構成部材を縫合するための第2縫合部材である。第2縫合部材は、ビードロック部材とビードの径方向内側の面との間の比較的小さな空間に嵌まり、ビードの径方向内側の面に沿って側壁を縫合および/または折り曲げることができる。
【0015】
好ましくは、前記ステッチャは、第2縫合軸を画定し、前記第2縫合部材は、前記第2縫合軸と同心かつ前記第2縫合軸を中心として回転可能である。したがって、第2縫合部材は、側壁およびビードがその上に支持されたドラムが回転している間、最小限の摩擦で、側壁を縫合および/または折り曲げることができる。
【0016】
さらなる実施形態では、前記位置決め部材の第1縫合軸を中心とする回転は、第1縫合部材の回転によって駆動されるように配置される。したがって、位置決め部材を駆動するための別個の駆動手段は必要ない。
【0017】
さらなる実施形態では、前記位置決め部材は、縫合中に前記第2操作部材が前記タイヤ構成部材から離間している待機位置と、縫合位置との間で回転可能である。したがって、第2操作部材は、実行される縫合作業に応じて、各位置の間で切り替え、移動および/または回転することができる。
【0018】
さらなる実施形態では、前記ステッチャは、前記待機位置と前記動作位置との間で前記位置決め部材の回転を制限するための第1リミッタと第2リミッタとを備える。その結果、前記第2操作部材は、前記2つの位置の間で移動することができる。特に、前記位置決め部材が、前記第2操作部材が前記第1縫合部材の動作を潜在的に妨害し得る前記2つの位置を越えて移動することを防止することができる。
【0019】
さらなる実施形態では、前記位置決め部材の回転を180度未満の範囲に制限する前記第1リミッタと前記第2リミッタを備える。その結果、前記位置決め部材は、180度未満に離間した2つの位置の間を移動することができる。
【0020】
さらなる実施形態では、前記位置決め部材は、前記第1縫合部材と同様に、前記第1縫合軸を中心として同じ方向に回転するように構成されている。したがって、位置決め部材の回転方向を制御するために、前記第1縫合部材の前記回転方向を使用することができる。
【0021】
別の実施形態では、前記位置決め部材は複数の磁石を備える。前記第1縫合部材が前記位置決め部材に設けられた前記複数の磁石によって発生する磁界を通って回転することで、前述の渦電流を発生することができる。
【0022】
より好ましくは、前記位置決め部材は、前記第1縫合軸と同心の円板状の本体を備え、前記複数の磁石は、前記第1縫合軸を中心として前記円板状の本体上で円周方向に分布している。こうして、渦電流を円板状の本体全体に均等に発生させることができる。
【0023】
さらなる実施形態では、前記複数の磁石は交互の極性を持つ。交互の極性は、発生可能な渦電流を増加させる。
【0024】
さらなる実施形態では、前記第1縫合部材は強磁性材料または常磁性材料を備える。磁石と前記強磁性材料との間の磁気相互作用により、前記位置決め部材に沿い引っ張るために十分な渦電流を発生させることができる。
【0025】
さらなる実施形態では、前記第1縫合部材はアルミニウムを含む。アルミニウムは、それ自体は強力な磁性材料ではない。しかし、複数の磁石の磁場中を移動させると、位置決め部材に沿い引っ張るのに十分な渦電流を発生させることができる常磁性材料として働くことができる。
【0026】
さらなる実施形態では、前記第1縫合部材は、前記ステッチャをロボットマニピュレータに取り付けるための第1面を有し、前記第2操作部材は前記第1縫合部材の、前記第1面の反対側にある第2面に配置される。したがって、第2操作部材は、第1縫合部材の、他の構成部材がない側に配置することができ、これによりタイヤ製造ドラムと衝突することなく、タイヤ製造ドラムの周縁に可能な限り近接して移動させることができる。
【0027】
さらなる実施形態では、前記第1縫合部材はキャビティを画定し、前記位置決め部材は少なくとも部分的に前記キャビティ内に収容される。したがって、位置決め部材は、ステッチャの厚さまたは全体のサイズを増加させない。その結果、ステッチャは、衝突することなく、タイヤ製造ドラムの周面に近づくことができる。
【0028】
さらなる実施形態では、前記第1縫合軸と前記第2縫合軸は互いに平行または実質的に平行である。したがって、前記縫合部材は、平行な縫合軸を中心に回転させることができ、同じ向きまたは実質的に同じ向きで動作する。
【0029】
第4の態様によれば、本発明は、本発明の第3の態様のいずれか1つの実施形態に係る前記ステッチャと、タイヤ製造ドラムとを備えるタイヤ製造装置を提供する。
【0030】
タイヤ製造装置は前述のステッチャを含むので、以下では繰り返さないが、同じ技術的利点を有する。
【0031】
好ましくは、前記タイヤ製造ドラムは、ドラム軸を中心として第1回転方向および前記第1回転方向とは反対の第2回転方向に回転可能であり、前記第1縫合軸を中心とする前記第1縫合部材の回転は、前記タイヤ製造ドラムの回転によって駆動されるように配置され、前記位置決め部材は、前記第1縫合軸を中心として第3回転方向および前記第3回転方向とは反対の第4回転方向に回転可能であり、前記第1縫合軸を中心とする前記位置決め部材の回転は、前記第1縫合部材の回転によって駆動されるように配置され、前記第1回転方向から前記第2回転方向への前記タイヤ製造ドラムの回転の変化は、前記位置決め部材が回転する回転方向を制御する。したがって、タイヤ製造ドラムの回転方向は、位置決め部材の回転、ひいては第2操作部材の位置を間接的に制御することができる。特に、タイヤ製造ドラムの回転を逆転させて、2次操作部材を操作可能な縫合位置に移動させることができる。便利なことに、ステッチャでは、第2操作部材を移動させるための専用の制御手段や駆動手段を必要としない。
【0032】
第5の態様によれば、本発明は、本発明の第3の態様のいずれか1つの実施形態に係るステッチャを使用してタイヤ構成部材を縫合する方法を提供し、前記方法は、
前記第1縫合部材を使用して、前記縫合経路の前記第1部分に沿ってタイヤ構成部材を縫合する工程と、
前記位置決め部材を使用して、前記第2操作部材を前記第1縫合軸に対して相対的に前記動作位置に移動させる工程と、を含む。
【0033】
この方法は、前述したステッチャの実用化に関するものであり、したがって、以下では繰り返さないが、同じ技術的利点を有する。
【0034】
一実施形態では、前記第2操作部材は第2縫合部材であり、前記方法は、さらに
前記第2縫合部材を使用して、前記縫合経路の前記第2部分に沿ってタイヤ構成部材を縫合する工程を含む。
【0035】
前記方法のさらなる実施形態では、前記位置決め部材の前記第1縫合軸を中心とする回転は、前記第1縫合部材の回転によって駆動される。
【0036】
さらなる実施形態では、前記位置決め部材の回転は、待機位置と前記動作位置との間に制限される。
【0037】
さらなる実施形態では、前記位置決め部材の回転は、前記待機位置と前記動作位置との間で180度未満の範囲に制限される。
【0038】
さらなる実施形態では、前記位置決め部材は、前記第1縫合軸を中心として、前記第1縫合部材と同じ方向に回転する。
【0039】
さらなる実施形態では、前記位置決め部材の回転は、前記位置決め部材と前記第1縫合部材との間に発生する渦電流によって駆動される。
【0040】
第6の態様によれば、本発明は、タイヤ構成部材を縫合するためのステッチャを提供し、前記ステッチャは、縫合軸を中心として回転可能なハブと、前記ハブに接続され、前記ハブの周囲に配置され、前記ハブの半径方向に離れるように延びる複数の縫合セグメントとを備え、前記縫合セグメントは、前記ハブに対して弾性変形可能である。
【0041】
縫合セグメントは、縫合されるタイヤ構成部材の形状に効果的に適応できるセグメント化された周縁を提供することができる。
【0042】
好ましくは、複数の前記縫合セグメントのうち、少なくとも2つの直接隣接する縫合セグメントは、前記縫合軸を中心とする円周方向に相互に結合されている。縫合セグメントが互いの撓みにある程度影響し合うことにより、ステッチャの形状がより緩やかに、すなわち縫合セグメント間に急激な段差を生じることなく変形する。
【0043】
本明細書に記載され示されている様々な態様および特徴は、可能な限り個々に適用することができる。これらの個々の態様、特に添付の従属請求項に記載された態様および特徴は、分割特許出願の対象とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
本発明は、添付の概略図に示す例示的な実施形態に基づいて解明される。
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るステッチャを備えたタイヤ製造装置の、タイヤ構成部材を縫合する方法における工程の断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施形態に係るステッチャを備えたタイヤ製造装置の、タイヤ構成部材を縫合する方法における工程の断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施形態に係るステッチャを備えたタイヤ製造装置の、タイヤ構成部材を縫合する方法における工程の断面図である。
【
図4】
図4は、
図3によるステッチャのより詳細な断面図である。
【
図5】
図5は、
図4のステッチャの2つの動作モードを示す図である。
【
図6】
図6は、
図4のステッチャの2つの動作モードを示す図である。
【
図7】
図7は、本発明の第2の実施形態に係る別のステッチャを備えた別のタイヤ製造装置を示す断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の第3の実施形態に係るさらに別のステッチャを備えるさらに別のタイヤ製造装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1~3は、本発明の第1の例示的な実施形態に係る、グリーンタイヤまたは未加硫タイヤ9を製造するためのタイヤ製造装置1を示す。
【0046】
タイヤ製造装置1は、グリーンタイヤ9を成型するためのタイヤ製造ドラム2を備えている。グリーンタイヤ9は、1枚以上のプライ91、特にボディプライまたはブレーカープライをビード92の周りに成形してタイヤカーカスにすることによって形成される。ビード92は、環状または実質的に環状の部材であり、ビードの内径Bを規定する径方向内側面93を有する。グリーンタイヤ9は、この例では、ビード92の径方向内側面93の周りに少なくとも部分的に折り曲げることによってカーカスに適用される側壁94をさらに備える。特に、側壁94の内側端部または内側先端部95は、ビード92の径方向内側面93の周りに折り曲げられる。
【0047】
タイヤ製造ドラム2は、軸方向Aに延びるドラム軸Dを中心として回転可能であり、タイヤ製造ドラム2は、第1ドラム半体3と、第2ドラム半体4と、ドラム半体3、4間の軸方向Aにおける中央部5とを備える。
【0048】
各ドラム半体3、4は、ビード92を保持するためのビードロック部31、41を備える。ビードロック部31、41は、ドラム軸Dに垂直な径方向Rに伸縮可能な複数のビードロックセグメント32、42を備え、ビード92をビードの内径Bで係合保持する。複数のビードロックセグメント32は、1つ以上のプライ91およびビード92をタイヤ製造ドラム2に嵌め込み、ビード92の径方向内側93の周りに側壁94を折り畳むのに十分な空間を提供することができるように、タイヤ製造ドラム2の他の部分に対して面一また後退位置に後退または収縮可能である。
【0049】
各ドラム半体3、4は、ビード92の周囲で中央部5の外側に位置する1つ以上のプライ91の部分を、当該中央部5における1つ以上のプライ91の部分に折り畳むためのターンアップ部35、45をさらに備える。特に、ターンアップ部35、45は、ターンアップアーム(図示せず)を備える。
【0050】
中央部5は、中央部5における1つ以上のプライ91の部分をトロイダル形状または実質的にトロイダル形状にクラウンアップするために、径方向に拡張可能な複数のクラウンセグメント51を備える。
【0051】
図1に示すように、タイヤ製造装置1は、中央部5において1つ以上のプライ91のクラウンアップされた部分に側壁94を縫合するための、中央部5の第1側および第2側にそれぞれ設けられたステッチャ6およびさらなるステッチャ6’をさらに備える。各ステッチャ6、6’は、タイヤ製造ドラム1に対するそれぞれのステッチャ6、6’全体の向きを制御するロボットマニピュレータ100に取り付けられている。タイヤ製造ドラム1がドラム軸Dを中心に回転されて、1つ以上のプライ91およびその上に支持された側壁94と、ステッチャ6、6’との間の相対的な移動が生じる。ステッチャ6、6’は、中央部5に対して鏡面対称であること、および/または鏡面対称に動作することを除いて、同一または類似の構造である。ステッチャ6、6’は、それぞれの縫合経路Pに沿って中央部5の反対側で移動される。特に、ステッチャ6、6’は、
図1および
図2に示すように、縫合経路Pの第1部分P1、および、
図3に示すように、縫合経路Pの第2部分P2に沿って移動される。以下では、第2ドラム半体4側に示されたステッチャ6のみをより詳細に説明する。しかし、この説明は、さらなるステッチャ6’にも準用される。
【0052】
図4に最も良く見られるように、ステッチャ6は、第1縫合軸S1を画定する第1縫合軸部60を備える。ステッチャ6は、第1縫合軸部60に同心に取り付けられた第1縫合部材61を備える。言い換えれば、第1縫合部材61は第1縫合軸S1と同心である。第1縫合部材61は、側壁94を縫合するために、第1縫合軸部60および/または第1縫合軸S1を中心として回転可能である。ベアリング65は、第1縫合軸部60を中心とする第1縫合部材61の回転を容易にするために設けられる。あるいは、第1縫合軸部60を第1縫合部材61に固定してもよく、その場合、第1縫合軸部60はマニピュレータ100に対して相対的に回転することができる。
【0053】
第1縫合部材61は、側壁94に押し付けるための縫合面62を画定する第1面Mを有する縫合体を備える。縫合体は、好ましくは円板状、車輪状またはローラ状である。縫合面62は、第1縫合軸S1に垂直な径方向Rと、径方向Rに斜めの方向との両方を押圧するために、第1縫合部材61の円周方向端部または輪郭の近傍で角丸か、または凸状である。縫合体はさらに、第1面Mに第1縫合部材61を第1縫合軸部60に取り付けるための取付ヘッド64を有する。
【0054】
第1縫合部材61の縫合体は、アルミニウム等の強磁性材料または常磁性材料を含んでもよい。
【0055】
第1縫合部材6は、さらに、第1面Mから離れた向きの第2面Nを有している。第2面Nにおいて、第1縫合部材61は、キャビティ63を備える。第1縫合軸部60は、第1縫合部材61を通ってキャビティ63内に延びる。
【0056】
ステッチャ6は、第2操作部材71を備える。この例では、第2操作部材71は、ステッチャ6によって画定される第2縫合軸部70に同心に取り付けられる第2縫合部材71である。換言すれば、第2縫合部材71は、第2縫合軸S2と同心である。第2縫合部材71も、第1縫合部材61と同様に、円板状、車輪状またはローラ状の縫合体を備える。しかし、第2縫合部材71の縫合体は、第1縫合部材61の縫合体よりもかなり小さく、好ましくは少なくとも2~3倍小さい。第2縫合部材71は、ビード92の径方向内側面93に沿って側壁94を縫合するために、第2縫合軸部70および/または第2縫合軸S2を中心として回転可能である。第2縫合部材71は、第1縫合部材61の第2面N側に位置する。
【0057】
あるいは、第2操作部材71は、縫合とは異なる機能、例えば、切断、ブラッシング、引っ張り、タグ付けまたは検出等の機能を有していてもよい。第2操作部材71は、例えばブラシやセンサであってもよい。
【0058】
以下の説明は、第2縫合部材71に対するものであるが、同じ特徴は、上述した別の第2操作部材にも準用することができる。
【0059】
ステッチャ6は、
図4に示すように、第2縫合部材71が第1縫合部材61を部分的に越えて径方向Rに突出する縫合位置または動作位置に、第1縫合軸S2に対して第2縫合軸S2を相対的に移動させるための位置決め部材8をさらに備えている。特に、第2縫合部材71は、縫合位置において、第1縫合部材61の円周方向端部および/または輪郭を越えて突出している。そのため、第2縫合部材71は、ビード92の径方向内側面93とタイヤ製造ドラム2のビードロックセグメント32、42との間の比較的小さな隙間に達することができる。
【0060】
図6に最もよく見られるように、縫合位置にある第2縫合部材71は、ドラム軸Dに対して中心から僅かにずれた位置にある。特に、第2縫合部材71は、第2縫合軸S2がドラム軸Dと交差しないように、ドラム軸Dに対してオフセットされている。これにより、ビード92の径方向内側面93とタイヤ製造ドラム2のビードロックセグメント32、42との間の小さな隙間に向かっておよび/またはその中で回転する第2縫合部材71の円周の一部のみがビード92に接触し、一方、当該小さな隙間から離れておよび/または外れて回転する第2縫合部材71の円周の一部は、ビード92から自由である、および/または接触しない。これにより、ビード92と第2縫合部材71との間に、潜在的に互いに妨げ得る力が働くことを回避することができる。
【0061】
位置決め部材8は、第1縫合軸部60および/または第1縫合軸S1を中心として回転可能である。位置決め部材8は、例えば
図4に示すようにベアリング85を用いて直接第1縫合軸部60に取り付けられてもよいし、代わりに、第1縫合部材61のキャビティ63に設けられた適切な形状の縁部またはガイドによって、第1縫合軸S1を中心として回転可能に担持されてもよい。
【0062】
別の実施形態(図示せず)では、第2縫合部材71を直線的に、例えば径方向Rに変位させて、第2縫合部材71が完全に第1縫合部材61の円周の内側に位置する待機位置と、第1縫合部材61の円周を少なくとも部分的に越えて突出する縫合位置との間で移動させる別の位置決め部材を設けてもよい。
【0063】
第2縫合軸部70は、第1縫合軸部60から間隔を隔てた位置で、位置決め部材8に結合され、連結され、または担持されている。換言すれば、第1縫合軸S1と第2縫合軸S2とは互いに離間している。当該離間した位置において、第1縫合部材61よりはるかに小さい第2縫合部材71は、第1縫合部材61に対して惑星と衛星との関係を有する部材と考えることができ、ほとんど第1縫合部材61の端部によって画定される軌道に沿って移動しているかのようである。位置決め部材8は、第2縫合軸部70を第1縫合軸部60に対して平行または実質的に平行な向きに保持するように構成されている。換言すれば、第1縫合軸S1と第2縫合軸S2は互いに平行または実質的に平行である。
【0064】
図5および
図6に最もよく見られるように、位置決め部材8は円板状であるか、または円板状の本体80を有している。特に、位置決め部材8は、第1縫合軸S1を中心として円板状の本体80上に均等におよび/または円周方向に分布された複数の磁石81を備えている。この実施例では、複数の磁石81は交互の極性を有する。
【0065】
位置決め部材8は、第1縫合軸部60および/または第1縫合軸S1を中心とする位置決め部材8の回転を180度未満、好ましくは100度未満の範囲に制限するための第1リミッタ85および/または第2リミッタ86をさらに備える。この例示的な実施形態では、第1リミッタ85および第2リミッタ86は、第1縫合部材61のピンと相互作用する角溝の末端によって画定または形成される。あるいは、リミッタ85、86は、第1縫合部材61、第1縫合軸部60、位置決め部材8および/または第2縫合部材71のうちの1つに設けられ、第1縫合部材61、第1縫合軸部60、位置決め部材8および第2縫合部材71のうちの他の1つと相互作用する、適切に配置された障害物によって形成されてもよい。
【0066】
次に、前述のステッチャ6を使用して側壁94を縫合する方法を、
図1~6を参照して簡単に説明する。
【0067】
図1および
図5は、第2縫合部材71が側壁94から離間し、側壁94と相互作用せず、および/または側壁94を押圧しない待機位置にある、第1縫合動作の開始時の状況を示している。マニピュレータ100は、第1縫合部材61を、側壁94に対して、当該側壁94の径方向外側の部分を、その下の1つ以上のプライ91に押圧および/または縫合することができるような配置で、縫合経路Pの第1部分P1の開始位置に位置決めしている。
図2は、マニピュレータ100が第1縫合部材61を縫合経路Pの第1部分P1の端部に沿ってさらに移動させた後の状況を示している。第2縫合部材71は依然として待機位置に保持されている。
図3および
図6は、第2縫合部材71が待機位置から縫合位置に、第1縫合軸部60および/または第1縫合軸S1に対して相対的に移動される、第2縫合動作の開始時の状況を示している。
図3に最も良く見られるように、ステッチャ6は、第2縫合部材71が、ビード92の径方向内側面93の周囲で、下にあるビードロックセグメント32、42衝突することなく、側壁94に追従し、押圧し、折り畳むように、マニピュレータ100によって移動されることができる。
【0068】
この例示的な実施形態では、位置決め部材8は、専用の駆動手段によって直接駆動または制御されない。その代わりに、第1縫合部材61の回転が位置決め部材8に伝達される。特に、位置決め部材8は、第1縫合部材61と同様に、第1縫合軸S1を中心として同じ方向に回転するように構成されている。換言すれば、位置決め部材8は、第1縫合部材61の回転に受動的に追従するように構成されている。この例では、回転の伝達は、第1縫合部材61が位置決め部材8の複数の磁石81に対して相対的に回転される際に渦電流を発生させることによって達成される。位置決め部材8は自由に回転可能である。したがって、第1縫合部材61によって引っ張られるようになる。このように、位置決め部材8は、リミッタ85、86によって画定される範囲内で、第1縫合部材61の回転によって駆動され、第2縫合部材71を
図5に示す待機位置から
図6に示す縫合位置に移動させることができる。
【0069】
あるいは、第1縫合部材61の回転は、他の伝達手段、特に機械的伝達手段を介して位置決め部材8に伝達することができる。例えば、第1縫合軸部60と位置決め部材8との間に機械的摩擦を設けてもよい。別の例では、遠心クラッチまたはカップリングを作動させるために、第1縫合部材61の回転によって発生する遠心力を利用することができる。
【0070】
同様に、第1縫合部材61は、専用の駆動手段によって直接駆動または制御されない。その代わりに、第1縫合部材61がタイヤ製造ドラム2または当該タイヤ製造ドラム2に支持された1つ以上のプライ91および/または側壁94に接触したときに、タイヤ製造ドラム2の回転が第1縫合部材61に伝達される。換言すれば、第1縫合部材61は、タイヤ製造ドラム2によって受動的に駆動されるように構成されている。特に、タイヤ製造ドラム2の回転方向が、第1縫合部材61の回転方向を決定する。そして、位置決め部材8は、第1縫合部材61の回転に受動的に追従するため、タイヤ製造ドラム2は、第1縫合軸部60および/または第1縫合軸S1を中心とする位置決め部材8の回転を間接的に駆動および/または制御すると言える。
【0071】
この原理を利用して、位置決め部材8を
図5の待機位置と
図6の縫合位置との間で移動させることができる。特に、
図5に示すように、タイヤ製造ドラム2がドラム軸Dを中心として第1回転方向R1に回転されると、ステッチャ6の第1縫合部材61が第3回転方向R3に回転し、これにより位置決め部材8が同じ第3回転方向R3に回転され、第2縫合部材71が縫合位置から離れて待機位置に移動される。また、第2縫合部材71を縫合位置に移動させる場合には、
図6に示すように、タイヤ製造ドラム2の回転方向を第1回転方向R1とは逆の第2回転方向R2に反転させ、これにより、第1縫合部材61の回転方向を第3回転方向R3とは逆の第4回転方向R4に反転させる。これにより、位置決め部材8が同じ第4回転方向R4に移動し、第2縫合部材71を縫合位置に移動させる。
【0072】
停止してタイヤ製造ドラム2の回転方向を逆転させる短い瞬間は、縫合経路Pの第1部分P1に沿った第1縫合部材61の第1縫合動作を終了させ、必要に応じてステッチャ6を再配置して、ビード92の径方向内側面93の周囲に側壁94を折り返すことを含む第2縫合動作に最適な位置にするために都合よく使用することができる。
【0073】
第1縫合部材61および/または第2縫合部材71は、サーボモータ等の適切な駆動手段によって直接および/または個別に駆動できることは、当業者には明らかであろう。加えてまたは代替的に、第1縫合部材61と位置決め部材8との間で回転を伝達する他の手段、例えばギア等の機械的伝達手段を設けてもよい。
【0074】
図7は、ステッチャ106が第1面161と、第1面161とは反対側の第2面162とを有する円板状の縫合体160を備えている点で前述のタイヤ製造装置1とは異なる代替的なタイヤ製造装置101を示している。第2面162は凹状である。凹面であるため、ステッチャ106は、衝突することなく、タイヤ製造ドラム2の周面に近づけることができる。
【0075】
円板状の縫合体161は、縫合軸Sを中心として同心である。第1面161は、縫合軸Sから離れる径方向Rに逃げ角Hで第2面162から離れるように傾斜した斜面または傾斜で配置される押圧面163を画定している。逃げ角Hは、0度から15度の範囲内であり、好ましくは1度から15度の範囲内であり、より好ましくは2度から10度の範囲内であり、さらに好ましくは4度から6度の範囲内であり、最も好ましくは約5度である。
【0076】
図7に示すように、ビードロックセグメント42は、タイヤ製造ドラム2の残りの部分に対して後退位置に退避している。ビードロックセグメント42の凹部は、退避したビードロックセグメント42とタイヤ製造ドラム2の残りの部分との間の移行部Tまたは移行端部を画定する。ステッチャ106は、例えば
図1~4に示すマニピュレータ100を使用して、凹状の第2面162が移行部Tの上に少なくとも部分的に嵌まるように、タイヤ製造ドラム2に対して位置決め可能である。換言すれば、移行部Tは、第2面162によって画定されたキャビティ内に少なくとも部分的に受容される。より詳細には、ステッチャ106は、縫合軸Sが垂直面に対して斜めの角度をなすように、タイヤ製造ドラム2に対して配置される。この向きでは、ステッチャ106は、ビード92の径方向内側面93の下をくぐらせたりすくったりして、当該径方向内側面93と凹状のビードロックセグメント42との間の限られた空間に到達することができる。また、ステッチャ106の斜めの向きは、側壁94の内側先端部95に確実に押し付けるために、押圧面163の少なくとも一部を水平面に対してまたは水平面内に傾くものである。
【0077】
代替的なタイヤ製造装置101のステッチャ106は、その縫合位置において、その縫合軸Sがドラム軸Dと交差しないように、
図6の第2縫合部材71と同様に、ドラム軸Dに対して中心からわずかにずれた位置に配置またはオフセットされてもよい。このようにして、その円周の一部分はビード92と接触した状態に保たれるが、他の部分はビード92から自由なままであり、および/またはビード92と接触しない。
【0078】
図8~
図11は、本発明の第3の実施形態に係る更なる代替的なタイヤ製造装置201を示す。代替的なタイヤ製造装置201は、代替的な縫合体260を有する代替的なステッチャ206を備えるという点で、先に説明したタイヤ製造装置1、101とは異なる。代替的な縫合体260は、縫合軸Sを中心として回転可能である。
図9および
図10で最もよく見られるように、代替的な縫合体260は、ハブ261と、縫合軸Sを中心として周方向に分布する複数の縫合セグメント262とを備える。縫合セグメントは、ハブ261に連結され、ハブ261から径方向のステッチャの方向P2に延びている。縫合セグメント262は、軸方向のステッチャの方向A2においてハブ261に対して弾性変形可能である。換言すれば、各縫合セグメント262の末端は、軸方向のステッチャの方向A2に弾力的に前後に移動可能である。代替的な縫合体260は、平坦または実質的に平坦であり、および/または円板状である。ハブ261は、先に説明した縫合体60と比較して、軸方向のステッチャの方向A2の高さが比較的低い。したがって、代替的な縫合体60は、ビード92とビードロックセグメント32、42との間に、より容易に介在させることができる。この例示的な実施形態では、縫合セグメント262はそれぞれ、ビード92の径方向内側面93に対して側壁94を押圧するための押圧部265をそれぞれの末端部に備える。押圧部265は、縫合セグメント262から軸方向のステッチャの方向A2に膨出している。
【0079】
任意選択で、
図11に最もよく示されているように、縫合セグメント262は、縫合軸Sを中心とする周方向のステッチャの方向に相互に結合されている。相互結合のために、縫合セグメントのうちの1つの終端の軸方向のステッチャの方向A2への変位は、隣接および/または近接する縫合セグメント262の変位に影響を及ぼす。換言すれば、縫合セグメント262のうちの1つが軸方向のステッチャの方向A2に変位すると、隣接および/または近接する縫合セグメントも変位する。各縫合セグメント262は、第1プロファイル部263と、第1プロファイル部263と相補的な第2プロファイル部264とを備える。好ましくは、代替的な縫合体260は、3Dプリントによって製造される。
【0080】
上記の説明は、好ましい実施形態の動作を説明するために含まれるものであり、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。上記の議論から、本発明の範囲に包含されるであろう多くの変形例が当業者には明らかであろう。
【符号の説明】
【0081】
1:タイヤ製造装置
2:タイヤ製造ドラム
3:第1ドラム半体
31:ビードロック部
32:ビードロックセグメント
35:ターンアップ部
4:第2ドラム半体
41:ビードロック部
42:ビードロックセグメント
45:ターンアップ部
5:中央部
51:クラウンセグメント
6:ステッチャ
6’:更なるステッチャ
60:第1縫合軸部
61:第1縫合部材
62:縫合面
63:キャビティ
64:取付ヘッド
65:第1ベアリング
70:第2縫合軸部
71:第2縫合部材
8:位置決め部材
80:円板状の本体
81:磁石
85:第2ベアリング
9:グリーンタイヤ
91:プライ
92:ビード
93:径方向内側面
94:側壁
95:内側先端部
100:ロボットマニピュレータ
101:代替的なタイヤ製造装置
106:代替的なステッチャ
160:円板状の縫合体
161:第1面
162:第2面
163:押圧面
201:さらに代替的なタイヤ製造装置
206:代替的なステッチャ
260:縫合体
261:ハブ
262:縫合セグメント
263:第1プロファイル部
264:第2プロファイル部
265:押圧部
A:軸方向
C:周方向
D:ドラム軸
H:逃げ角
M:第1面
N:第2面
P:縫合経路
P1:縫合経路の第1部分
P2:縫合経路の第2部分
R:径方向
R1:第1回転方向
R2:第2回転方向
R3:第3回転方向
R4:第4回転方向
S:縫合軸
S1:第1縫合軸
S2:第2縫合軸
T:移行部
【手続補正書】
【提出日】2023-11-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ製造ドラムと、タイヤ構成部材を縫合するためのステッチャとを備えるタイヤ製造装置であって、前記タイヤ製造ドラムは、前記タイヤ製造ドラムの残りの部分に対して相対的に後退位置に後退可能なビードロックセグメントを備え、前記ステッチャは、縫合中に前記タイヤ構成部材を押圧するための第1面と、前記第1面の反対側の第2面とを有する円板状の縫合体とを備え、前記第2面は凹状であり、前記ステッチャは、前記凹状の第2面が、前記後退位置にある前記ビードロックセグメントと前記タイヤ製造ドラムの前記残りの部分との間の移行部に少なくとも部分的に嵌まるように、前記タイヤ製造ドラムに対して相対的に位置決め可能であるタイヤ製造装置。
【請求項2】
前記円板状の縫合体は、縫合軸と同心であり、前記第1面は、前記縫合軸から離れる径方向に、逃げ角で前記第2面から離れるように傾斜する傾斜部に配置される押圧面を画定する請求項1に記載のタイヤ製造装置。
【請求項3】
前記逃げ角は、0度から15度の範囲内である請求項2に記載のタイヤ製造装置。
【請求項4】
前記逃げ角は、2度から10度の範囲内である請求項2に記載のタイヤ製造装置。
【請求項5】
請求項1に係るタイヤ製造装置を用いてタイヤ構成部材を縫合する方法であって、
前記凹状の第2面が、前記後退位置にある前記ビードロックセグメントと前記タイヤ製造ドラムの前記残りの部分との間の前記移行部に少なくとも部分的に嵌まるように、前記ステッチャを前記タイヤ製造ドラムに対して相対的に位置決めする工程を含む方法。
【請求項6】
前記円板状の縫合体は、前記縫合軸と同心であり、前記第1面は、前記縫合軸から離れる径方向に、逃げ角で前記第2面から離れるように傾斜する傾斜部に配置される押圧面を画定し、前記方法は、
前記縫合軸が垂直面に対して斜めになるように、前記ステッチャを前記タイヤ製造ドラムに対して相対的に位置決めし、それにより前記押圧面の少なくとも一部を水平面に向かってまたは水平面内に傾斜する工程を含む請求項5に記載の方法。
【国際調査報告】