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特表2024-516424ポリウレタン水性分散液における固体ベースの発泡助剤の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-15
(54)【発明の名称】ポリウレタン水性分散液における固体ベースの発泡助剤の使用
(51)【国際特許分類】
   C08L 75/04 20060101AFI20240408BHJP
【FI】
C08L75/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566832
(86)(22)【出願日】2022-04-28
(85)【翻訳文提出日】2023-10-30
(86)【国際出願番号】 EP2022061317
(87)【国際公開番号】W WO2022229311
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】21171461.3
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル クロスターマン
(72)【発明者】
【氏名】カイ-オリヴァー フェルトマン
(72)【発明者】
【氏名】マーフィン ヤンゼン
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CK031
4J002DJ036
4J002EN137
4J002EV237
4J002FB256
4J002FD326
4J002GC00
4J002GN00
4J002GQ00
4J002HA06
(57)【要約】
多孔質ポリマーコーティングを製造するための、好ましくは多孔質ポリウレタンコーティングを製造するためのポリマー水性分散液中の添加剤としての固体ベースの発泡助剤の使用について記載する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質ポリマーコーティング、好ましくは多孔質ポリウレタンコーティングの製造のためのポリマー水性分散液、有利にポリウレタン水性分散液中の添加剤としての、固体ベースの発泡助剤の使用。
【請求項2】
前記固体ベースの発泡助剤が、ポリマー水性分散液、好ましくはポリウレタン水性分散液に不溶の粒子からなり、有機および/または無機の粒子が好ましく、好ましい有機粒子は、セルロース、セルロース誘導体、パルプ、リグニン、多糖類、木質繊維、木粉、粉砕プラスチック、テキスタイル繊維および/または合成ポリマー粒子、例えばラテックス粒子またはポリウレタン粒子から選択され、好ましい無機粒子は、例えば酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素アルミニウム、ケイ酸、水酸化アルミニウム/水酸化マグネシウムもしくは石英粉のような(混合)酸化物/水酸化物の群、例えば炭酸カルシウムもしくはチョークのような炭酸塩の群、リン酸塩の群、例えば硫酸カルシウムもしくは硫酸バリウムのような硫酸塩の群、ならびに例えばタルク、雲母もしくは特にカオリンのようなケイ酸塩の群および/またはシリコーンベースの粒子、特にシリコーン樹脂もしくはMQ樹脂ベースの粒子の群から選択され、酸化ケイ素および/もしくは酸化アルミニウムをベースとする酸化物ならびに/またはケイ酸塩、特にカオリンが非常に特に好ましい、請求項1記載の使用。
【請求項3】
前記固体ベースの発泡助剤として使用される粒子が、レーザー回折法または動的光散乱法で測定された0.01~100μmの範囲、好ましくは0.05~50μmの範囲、より好ましくは0.1~35μmの範囲の平均一次粒子径を有する、請求項1または2記載の使用。
【請求項4】
前記固体ベースの発泡助剤として使用される粒子が、疎水化または部分的に疎水化されており、前記疎水化が、有利に粒子表面への適切な疎水化剤の吸着および/または共有結合によって行われる、請求項1から3までのいずれか1項記載の使用。
【請求項5】
前記固体ベースの発泡助剤として使用される粒子の疎水化に使用される疎水化剤が、カチオン性ポリマーの群、アミンの群、好ましくはアルキルアミンまたはそのカチオンの群、第四級アンモニウム化合物の群であって、ここで、有機およびシリコーンベースのアミンおよびアンモニウム化合物が好ましいものとする群、カルボキシレート、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、アルキルホスホン酸塩、アルキルおよびジアルキルスルホコハク酸塩、それぞれ対応する遊離酸の群、シリコーンの群、シランの群、エポキシドおよび/またはイソシアネートの群から選択され、適切な疎水化剤の選択は好ましくは、疎水化される粒子の表面特性に依存し、表面に負の(部分)電荷を有する粒子は好ましくは、カチオン性または部分的にカチオン性のアンカー基を有する疎水化剤で修飾され、表面に正の(部分)電荷を有する粒子は好ましくは、アニオン性または部分的にアニオン性のアンカー基を有する疎水化剤で修飾され、表面に反応性OH、NHまたはNH基を有する粒子は好ましくは、前記基に対して反応性である疎水化剤、例えば有利にシラン、シラザン、エポキシド、イソシアネート、カルボン酸の無水物または塩化物および/またはアルキルクロリドで修飾され、これに関連して、特にシランおよび/またはシラザンが好ましい、請求項1から4までのいずれか1項記載の使用。
【請求項6】
前記疎水化剤が、粒子および疎水化剤の総量に対して0.01~50重量%、好ましくは0.02~25重量%、好ましくは0.03~20重量%の範囲、なおもより好ましくは0.04~15重量%の範囲、なおもより好ましくは0.05~10重量%の範囲の濃度で使用される、請求項1から5までのいずれか1項記載の使用。
【請求項7】
前記固体ベースの発泡助剤の疎水化が、前記ポリマー水性分散液への添加前に行われ、かつ/または前記固体ベースの発泡助剤の疎水化が、その場で、すなわち前記ポリマー水性分散液中でようやく行われる、請求項4から6までのいずれか1項記載の使用。
【請求項8】
前記ポリマー水性分散液が、ポリスチレン水性分散液、ポリブタジエン水性分散液、ポリ(メタ)アクリレート水性分散液、ポリビニルエステル水性分散液およびポリウレタン水性分散液、前記分散液の混合物または前記ポリマーのコポリマーを含む分散液、特にポリウレタン水性分散液の群から選択され、前記分散液の固形分は、前記分散液全体に対して好ましくは20~70重量%の範囲であり、より好ましくは25~65重量%の範囲である、請求項1から7までのいずれか1項記載の使用。
【請求項9】
前記ポリマー水性分散液の総重量に対する前記固体ベースの発泡助剤の濃度が、0.1~50重量%の範囲、特に好ましくは0.5~40重量%の範囲、殊に好ましくは1.0~35重量%の範囲である、請求項1から8までのいずれか1項記載の使用。
【請求項10】
固体ベースの発泡助剤として、酸化ケイ素、酸化アルミニウムおよび/またはケイ酸塩、好ましくは層状ケイ酸塩、特にカオリンが使用され、疎水化剤として、アミンまたはそのカチオン、第四級アンモニウム化合物、例えばパルミタミドプロピルトリモニウムクロリド、アルキル硫酸塩またはシランが使用され、前記固体ベースの発泡助剤の疎水化を、予め行うこともその場で行うこともできる、請求項1から8までのいずれか1項記載の使用。
【請求項11】
固体ベースの発泡助剤、有利に疎水化または部分的に疎水化された固体ベースの発泡助剤を含む、特に請求項1から10に記載されるポリマー水性分散液、有利にポリウレタン水性分散液であって、前記固体ベースの発泡助剤の好ましい疎水化を、前記ポリマー水性分散液への前記固体ベースの発泡助剤の添加前に、および/またはその場で、すなわち前記ポリマー水性分散液中でようやく行うことができ、前記分散液の固形分は、前記分散液全体に対して好ましくは20~70重量%の範囲であり、より好ましくは25~65重量%の範囲であり、前記ポリマー水性分散液の総重量に対する固体ベースの発泡助剤の濃度は、有利に0.1~50重量%の範囲、特に好ましくは0.5~40重量%の範囲、殊に好ましくは1.0~35重量%の範囲である、ポリマー水性分散液。
【請求項12】
有利に請求項1から10に記載されるポリマー水性分散液、有利にポリウレタン水性分散液中の添加剤として有利に疎水化または部分的に疎水化された固体ベースの発泡助剤を用いて多孔質ポリマーコーティング、有利に多孔質ポリウレタンコーティングを製造する方法であって、
a)少なくとも1種のポリマー水性分散液と、本発明による有利に疎水化または部分的に疎水化された少なくとも1種の固体ベースの発泡助剤と、任意にさらなる添加剤とを含む混合物を提供する工程、
b)前記混合物を発泡させて発泡体を形成する工程、
c)任意に少なくとも1種の増粘剤を添加して、湿潤した発泡体の粘度を調整する工程、
d)前記発泡したポリマー分散液、有利にポリウレタン分散液のコーティングを適切な支持体に施与する工程、
e)前記コーティングを乾燥させる工程
を含む、方法。
【請求項13】
前記工程a)で使用される固体ベースの発泡助剤が、疎水化または部分的に疎水化されており、前記固体ベースの発泡助剤の疎水化を、予め行うことも、その場でポリマー水性分散液中にて行うこともできる、請求項12記載の方法。
【請求項14】
多孔質ポリマーコーティング、有利に多孔質ポリウレタンコーティングであって、ポリマーコーティングの製造において、ポリマー水性分散液、有利にポリウレタン水性分散液中の添加剤として、有利に疎水化または部分的に疎水化された固体ベースの発泡助剤を使用することにより得ることができ、好ましくは請求項12または13記載の方法により得ることができる、多孔質ポリマーコーティング、有利に多孔質ポリウレタンコーティング。
【請求項15】
請求項14記載の多孔質ポリマーコーティングを含む日用品であって、前記日用品は好ましくは、靴、インソール、バッグ、スーツケース、ケース、衣類、自動車部品、好ましくはシートカバー、ドア部品のカバー、ダッシュボード部品、ステアリングホイールならびに/もしくはハンドルおよびギヤシフトカバー、調度品、例えばデスクパッド、クッションもしくは座席家具、電子機器の隙間充填材、医療用途のクッション材および緩衝材ならびに/または接着テープである、日用品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックコーティングおよび人工皮革の分野におけるものである。
【0002】
本発明は特に、有利に疎水化された固体ベースの発泡助剤を使用した多孔質ポリマーコーティング、好ましくは多孔質ポリウレタンコーティングの製造に関する。
【0003】
プラスチックでコーティングされたテキスタイル、例えば人工皮革は通常、テキスタイル支持体上に多孔質ポリマー層を積層し、これをさらにトップ層またはトップコートで覆ったものからなる。
【0004】
ここで、多孔質ポリマー層は、有利にマイクロメートル範囲の細孔を有し、空気透過性、したがって通気性、すなわち水蒸気に対して透過性を示すが、耐水性である。多孔質ポリマー層は多くの場合、多孔質ポリウレタンである。PUベースの人工皮革を環境に負荷をかけずに製造するために、ポリウレタン水性分散液、いわゆるPUDをベースとするプロセスがしばらく前に開発された。これは通常、ポリウレタン微粒子を水に分散させたものからなり、固形分は通常、30~60重量%の範囲である。多孔質ポリウレタン層を製造するには、これらのPUDを機械的に発泡させ、これを支持体にコーティングし(通常、300~2000μmの層厚)、その後、高温で乾燥させる。この乾燥工程で、PUD系に含まれる水分が蒸発し、それによりポリウレタン粒子の皮膜形成が生じる。皮膜の機械的強度をさらに高めるために、製造プロセスでさらにPUD系に特定の親水性イソシアネートまたはカルボジイミドを添加することができ、これらが、乾燥工程でポリウレタン粒子の表面に存在する遊離OH基と反応し、そのようにしてポリウレタン皮膜のさらなる架橋をもたらすことができる。
【0005】
そのようにして製造されたPUDコーティングの機械的特性および触感特性は、多孔質ポリウレタン皮膜のセル構造によって大きく左右される。さらに、多孔質ポリウレタン皮膜のセル構造は、材料の空気透過性または通気性に影響を及ぼす。ここで、特に良好な特性は、可能な限り微細で均一に分布したセルによって達成される。上記の製造方法でセル構造に影響を及ぼすためには、機械的発泡の前または間にPUD系に泡安定剤を添加するのが一般的である。一方では、対応する安定剤により、発泡過程で十分な量の空気をPUD系に送り込むことができる。他方では、泡安定剤は、生成される気泡のモルホロジーに直接的な影響を及ぼす。気泡の安定性も、安定剤の種類に大きく影響を受ける。このことは特に、発泡PUDコーティングの乾燥時に重要であり、それというのも、これにより、セルの粗大化や乾燥亀裂などの乾燥不良を防ぐことができるためである。
【0006】
上述したPUDプロセスでは、過去にすでに様々な泡安定剤が使用されてきた。例えば、米国特許出願公開第2015/0284902号明細書または米国特許出願公開第20060079635号明細書には、ステアリン酸アンモニウム系泡安定剤の使用が記載されている。しかし、対応するステアリン酸アンモニウム系安定剤の使用は、多くの欠点を伴う。ここで、重大な欠点の1つは、ステアリン酸アンモニウムが、完成した人工皮革において非常に高い移行性を示すことである。このため、時間の経過とともに人工皮革の表面に界面活性剤分子が蓄積し、それにより皮革の表面が白く変色することがある。さらに、この界面活性剤の移行によって、特に対応する材料が水と接触すると、人工皮革の表面に、不快に感じられる潤滑膜が生じる場合がある。
【0007】
ステアリン酸アンモニウムのさらに1つの欠点は、石灰含有水と接触すると不溶性の石灰石鹸を形成することである。ステアリン酸アンモニウムをベースとして製造された人工皮革が石灰含有水と接触すると、人工皮革の表面に白色のブルーミングが生じることがあり、これは特に、濃色に着色された皮革の場合には望ましくない。
【0008】
ステアリン酸アンモニウム系泡安定剤のもう1つの欠点は、該安定剤が、確かにポリウレタン水性分散液の効率的な発泡を可能にはするものの、この場合、しばしばかなり粗く不規則な発泡体構造になることである。これは、完成した人工皮革の視覚的および触感特性に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0009】
ステアリン酸アンモニウムのもう1つの欠点は、製造されたPUD発泡体が、しばしば不十分な安定性を有することであり、このことは、特にPUD発泡体を高温で乾燥させる場合に、その加工に欠点をもたらす可能性がある。この結果の1つとして、例えば、対応する発泡体を比較的穏やかにゆっくりと乾燥させなければならないことが挙げられるであろう。このことにより、ひいては人工皮革製造のプロセス時間がより長くなる。
【0010】
ステアリン酸アンモニウム系泡安定剤に代わるものとして、ポリオールエステルおよびポリオールエーテルが、ポリウレタン水性分散液用の効果的な発泡添加剤として過去に特定されている。これらの構造は、例えば欧州特許出願公開第3487945号明細書および国際公開第2019042696号に記載されている。ステアリン酸アンモニウムと比較して、ポリオールエステルまたはポリオールエーテルは、完成した人工皮革に移行しないかまたはわずかにしか移行しないため、望ましくない表面変色を引き起こさないという大きな利点を有する。さらに、ポリオールエステルまたはポリオールエーテルは、石灰含有水に対する弱さを示さない。
【0011】
さらに、ステアリン酸アンモニウム系泡安定剤に対するポリオールエステルおよびポリオールエーテルのさらに1つの利点は、これらが、明らかにより微細で均一な発泡体構造をしばしばもたらすことであり、このことは、これらの物質で製造された人工皮革材の特性に有利に作用する。また、ポリオールエステルおよびポリオールエーテルは、明らかにより安定したPUD発泡体をもたらすことが多く、このことは、ひいては人工皮革の製造時にプロセス技術的な利点をもたらす。
【0012】
このような利点があるにもかかわらず、ポリオールエステルおよびポリオールエーテルにも潜在的な欠点が全くないわけではない。ここでの潜在的な欠点の1つは、PUD系に含まれるさらなる補助界面活性剤の存在により、これらのクラスの化合物の泡安定化効果が特定の状況下で損なわれる可能性があることである。しかし、補助界面活性剤の使用は、特にポリウレタン水性分散液の製造において珍しいことではない。これに関連して、補助界面活性剤は、水へのポリウレタンプレポリマーの分散性を向上させるために使用され、通常は最終生成物に残留する。ポリオールエステルまたはポリオールエーテルを発泡添加剤として含むポリウレタン水性分散液の機械的発泡の際、対応する補助界面活性剤は、特定の状況下で系の発泡挙動に悪影響を及ぼすことがある。これは、特定の状況下で系に空気をわずかにしかあるいは全く注入できなくなることを意味し、これにより、得られる発泡体構造が損なわれる場合がある。さらに、補助界面活性剤は、製造される発泡体の安定性に悪影響を及ぼす可能性があり、これにより、発泡PUD系の加工時に発泡体の老化が生じる可能性があり、このことが、ひいては製造される発泡体コーティングに不完全性や欠陥を生じさせる。
【0013】
さらに1つの潜在的な欠点は、発泡添加剤としてポリオールエステルまたはポリオールエーテルを含むPUD系が、効率的な発泡のためにしばしば非常に高いせん断エネルギーを必要とすることである。このことは、ひいては特定の状況下で制限やプロセス技術的な欠点を伴う可能性がある。
【0014】
したがって、本発明の課題は、PUD系の効率的な発泡を可能にし、かつ先行技術に挙げられている欠点を有しないPUD系発泡体系および発泡体コーティングを製造するための添加剤を提供することであった。驚くべきことに、固体ベースの発泡助剤が前述の課題の解決を可能にすることが見出された。
【0015】
したがって、本発明の主題は、多孔質ポリマーコーティング、好ましくは多孔質ポリウレタンコーティングの製造のためのポリマー水性分散液、有利にポリウレタン水性分散液中の添加剤としての固体ベースの発泡助剤の使用である。
【0016】
ここで、本発明により製造可能な多孔質ポリマー層(すなわち、多孔質ポリマーコーティング;これらの用語は同義で用いられる)は、有利にマイクロメートル範囲の細孔を有し、平均セルサイズは、有利に350μm未満、好ましくは200μm未満、特に好ましくは150μm未満、非常に特に好ましくは100μm未満である。好ましい層厚は、10~10000μm、有利に50~5000μm、さらに好ましくは75~3000μm、特に100~2500μmの範囲である。平均セルサイズは、後述のように、有利に顕微鏡法で、有利に電子顕微鏡により求めることができる。
【0017】
ここで、本発明による固体ベースの発泡剤の使用には、驚くべきことに多くの利点がある。
【0018】
利点の1つは、固体ベースの発泡助剤によって、水性PUD系の特に効率的な発泡が可能となることである。ここで、このようにして製造された発泡体は、特に均一なセル分布を有する非常に微細な細孔構造を特徴とし、このことはひいては、これらの発泡体をベースとして製造される多孔質ポリマーコーティングの機械的特性および触感特性に非常に有益な効果をもたらす。さらに、これによりコーティングの空気透過性または通気性を向上させることができる。
【0019】
さらに1つの利点は、固体ベースの発泡助剤によって、せん断速度が比較的低くてもPUD系の効率的な発泡が可能となり、その結果、人工皮革の製造時の制限が少なくなり、加工性が広がることである。
【0020】
もう1つの利点は、固体ベースの発泡助剤によって、特に安定した発泡体の製造が可能となることである。一方では、これは加工性に有利な効果をもたらす。他方では、泡安定性の向上は、対応する発泡体の乾燥時に、セルの粗大化や乾燥亀裂などの乾燥不良を防ぐことができるという利点を有する。さらに、泡安定性が向上することにより、発泡体をより迅速に乾燥させることができ、このことは、生態学的観点および経済的観点の双方からプロセス技術的な利点をもたらす。
【0021】
もう1つの利点は、固体ベースの発泡助剤の有効性が、PUD系に任意に含まれる補助界面活性剤によって影響されないか、またはほとんど影響されないことである。したがって、PUD系が補助界面活性剤を含有する場合であっても、本発明による固体ベースの発泡助剤によって、系の効率的な発泡、および微細かつ均一で、同時に極めて安定な発泡体の形成が可能となる。
【0022】
もう1つの利点は、本発明による固体ベースの発泡助剤が、完成した人工皮革において移行性を示さず、したがって望ましくない表面の変色やブルーミングを引き起こさないことである。さらに、本発明による界面活性剤は、石灰含有水に弱くないか、またはほとんど弱くない。
【0023】
本発明全体の趣意において、固体ベースの発泡助剤という用語には特に、ポリマー水性分散液に不溶の粒子からなる発泡剤が包含され、その際、有機粒子および無機粒子の双方が好ましい。これは、粒状発泡助剤という用語と同義である。粒子という用語には、剛直な非膨潤性粒子と変形可能な膨潤性粒子との双方が包含され、どちらの場合も、粒子は、帯電していても帯電していなくてもよい。これに関連して、不溶とは、0~100℃の温度範囲で60分間の期間にわたってポリマー分散液に溶解する粒子が5重量%未満、好ましくは2.5重量%未満、なおもより好ましくは1重量%未満であることを意味する。本発明の範囲において、表面が疎水化または部分的に疎水化された粒子が特に好ましい。これは、本発明の非常に特に好ましい一実施形態に相当する。
【0024】
疎水化という用語自体は、当業者に知られている。これは、本発明の趣意においても、水濡れ性を低下させるために、いわゆる疎水化剤で材料を処理することと理解される。ここで、対応する疎水化剤は、被処理材料の表面に付着することができる。材料が完全に疎水化されている場合には、表面全体が疎水化剤で覆われているが、材料が部分的に疎水化されている場合には、表面の一部のみが疎水化剤で修飾されている。疎水化という用語には、本発明の趣意においては部分的な疎水化も包含される。したがって、以下で「疎水化」または「疎水化された」と記載される場合には、たとえ明示的に言及されなくても、「部分的な疎水化」または「部分的に疎水化された」もこれに包含される。
【0025】
本発明の範囲において、疎水化は、有利に粒子表面への適切な疎水化剤の(可逆的な)吸着および/または(永続的な)共有結合によって行うことができる。ここで、表面が均一に疎水化されており、かつヤヌス粒子ではない疎水化粒子が特に好ましい。ヤヌス粒子という用語は、当業者に知られている。
【0026】
本発明全体の趣意において、補助界面活性剤という用語には、本発明による固体ベースの発泡助剤の他に任意にポリマー分散液中に含まれ得る界面活性剤が包含される。特に、これには、ポリマー分散液の製造時に使用することができる界面活性剤が包含される。例えば、ポリウレタン分散液の製造は多くの場合、PUプレポリマーを合成し、これを第2の工程で水に分散させ、次いで鎖延長剤と反応させることによって行われる。ここで、水へのプレポリマーの分散性を向上させるために、補助界面活性剤を使用することができる。本発明の範囲において、補助界面活性剤は有利に、アニオン性補助界面活性剤である。
【0027】
以下に、本発明につきさらに例示的に説明するが、本発明は、これらの例示的な実施形態に限定されるものではない。範囲、一般式または化合物のクラスが以下に示される場合、これらには、明示的に言及される対応する化合物の範囲または群だけでなく、個々の値(範囲)または化合物を選び出すことにより得ることができる化合物のすべての部分範囲および部分群も包含されるものとする。本明細書の範囲で文書が引用されている場合、その内容、特にその文書が引用されている文脈における事項に関する内容は、完全に本発明の開示内容に属するものとする。パーセンテージは、特に断りのない限り、重量%で示されるデータである。測定によって求められたパラメータが以下に示されている場合、特に断りのない限り、測定は、温度25℃、圧力101325Paで行われたものである。本発明において化学(分子)式が使用される場合、示された添え字は、絶対数だけでなく平均値を表す場合もある。高分子化合物の場合、添え字は有利に、平均値を表す。本発明で示される構造および分子式は、繰り返し単位の異なる配置によって考えられるすべての異性体を代表するものである。
【0028】
本発明の範囲において、有機および無機の粒子を固体ベースの発泡助剤として使用することができ、2種以上の粒子の混合物を使用することもできる。発泡助剤として使用される粒子は、天然由来であっても合成由来であってもよい。ここで、好ましい有機粒子は、セルロース、セルロース誘導体、パルプ、リグニン、多糖類、木質繊維、木粉、粉砕プラスチック、テキスタイル繊維および/または合成ポリマー粒子、例えばラテックス粒子またはポリウレタン粒子である。好ましい無機粒子は、例えば酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素アルミニウム、ケイ酸、水酸化アルミニウム/水酸化マグネシウムもしくは石英粉のような(混合)酸化物/水酸化物の群、例えば炭酸カルシウムもしくはチョークのような炭酸塩の群、リン酸塩の群、例えば硫酸カルシウムもしくは硫酸バリウムのような硫酸塩の群、例えばタルク、雲母もしくはカオリンのようなケイ酸塩の群および/またはシリコーンベースの粒子、特にシリコーン樹脂もしくはMQ樹脂ベースの粒子の群から選択され、酸化ケイ素および/または酸化アルミニウムをベースとする酸化物ならびにケイ酸塩、特にカオリンが特に好ましい。
【0029】
有利に、本発明の範囲において、0.01~100μmの範囲、好ましくは0.05~50μmの範囲、より好ましくは0.1~35μmの範囲の体積加重平均一次粒子径を有する粒子が固体ベースの発泡助剤として使用される。ここで、一次粒子径という用語は、個々の、凝結または凝集していない粒子の大きさを表す。この用語は、当業者に知られている。ここで、平均一次粒子径は、当業者に慣用されている方法で求めることができる。ここで、好ましい方法は、レーザー回折法または動的光散乱法である。レーザー回折法による測定は、例えば、Malvern社のMasterSizer 3000を用いて行うことができ、動的光散乱法による測定は、例えば、同じくMalvern社のZetaSizer Nano ZSPを用いて行うことができる。
【0030】
前述したように、本発明の範囲において、発泡助剤として使用される粒子が疎水化または部分的に疎水化されていると特に好ましく、その際、(部分的)疎水化は、適切な疎水化剤の(可逆的な)吸着および/または(永続的な)共有結合によって行うことができる。ここで、適切な疎水化剤の選択は、特に疎水化される粒子の表面特性に依存する。
【0031】
粒子が表面に負の(部分)電荷を有する場合、カチオン性または部分的にカチオン性のアンカー基を有する疎水化剤が特に好ましい。粒子が表面に正の(部分)電荷を有する場合、アニオン性または部分的にアニオン性のアンカー基を有する疎水化剤が特に好ましい。
【0032】
粒子の表面電荷は、例えばゼータ電位の測定により決定することができる。対応する測定は当業者に知られており、例えば、Malvern社のZetaSizer Nano ZSPで可能である。静電相互作用に加えて、適切な疎水化剤の結合は、水素橋かけ結合、双極子-双極子相互作用、ファンデルワールス相互作用および配位結合または共有結合によっても可能である。
【0033】
疎水化される粒子の表面特性に応じて、好ましい疎水化剤は、カチオン性ポリマーの群、アミンの群、好ましくはアルキルアミンまたはそのカチオンの群、第四級アンモニウム化合物の群であって、ここで、有機およびシリコーンベースのアミンおよびアンモニウム化合物が好ましいものとする群、カルボキシレート、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、アルキルホスホン酸塩、アルキルおよびジアルキルスルホコハク酸塩ならびにそれぞれ対応する遊離酸の群、シリコーンの群、シランの群、エポキシドおよび/またはイソシアネートの群から選択される。
【0034】
表面に反応性OH、NHまたはNH基を有する粒子は好ましくは、これらの基に対して反応性である疎水化剤、例えば有利にシラン、シラザン、エポキシド、イソシアネート、カルボン酸の無水物または塩化物および/またはアルキルクロリドで修飾することができ、これに関連して、特にシランおよび/またはシラザンが好ましい。
【0035】
本発明の特に好ましい一実施形態では、固体ベースの発泡助剤として、酸化ケイ素、酸化アルミニウムおよび/またはケイ酸塩、好ましくは層状ケイ酸塩、特にカオリンが使用され、疎水化剤として、アミンまたはそのカチオン、第四級アンモニウム化合物、例えばパルミタミドプロピルトリモニウムクロリド、アルキル硫酸塩またはシランが使用され、固体ベースの発泡助剤の疎水化は、以下に説明するように、予め行うこともその場で行うこともできる。その際、予め疎水化された固体ベースの発泡助剤の使用が非常に特に好ましい。その場で疎水化された固体ベースの発泡助剤の使用も特に好ましい。
【0036】
ここで、発泡助剤として使用される粒子の任意の、有利に必須の疎水化を、別個に行うことができ、すなわち、発泡助剤として使用される粒子をポリマー水性分散液に添加する前にすでに行うことも、その場で、すなわちポリマー水性分散液中で直接行うこともできる。別個に疎水化する場合、粒子および疎水化剤をポリマー分散液への添加前に配合して単一成分系とし、次いでこれをポリマー分散液に添加する。これを、純粋なまま行うことも、適切な溶媒または分散剤中で行うこともでき、その際、溶媒または分散剤としては、水が特に好ましい。その場で疎水化する場合、粒子および疎水化剤を、個々の成分としてポリマー分散液に添加する。ここでも、粒子および疎水化剤を、それぞれ純粋なままポリマー分散液に添加することも、それぞれ溶液または分散液としてポリマー分散液に添加することもでき、その際、水溶液および水性分散液が特に好ましい。
【0037】
粒子と疎水化剤との十分な相互作用を達成するために、任意の疎水化の前に粒子表面を前処理することが必要な場合がある。例えば、粒子の水性分散液において、粒子の表面電荷をpH値の変化によって調整することができる。さらに、粒子が共有結合により永続的に修飾される場合、粒子の十分な疎水化を達成するために、適切な反応パラメータを選択することによって、例えば加熱することによって、揮発性反応副生成物を留去することによって、または適切な触媒を使用することによって、粒子と疎水化剤との反応を促進することも必要となる場合がある。
【0038】
疎水化または部分的に疎水化された粒子において、本発明の範囲において、疎水化剤が、粒子および疎水化剤の総量に対して0.01~50重量%、好ましくは0.02~25重量%、より好ましくは0.03~20重量%の範囲、なおもより好ましくは0.04~15重量%の範囲、なおもより好ましくは0.05~10重量%の範囲の濃度で使用されると好ましい。
【0039】
すでに記載したように、本発明は、ポリマー水性分散液、好ましくはポリウレタン水性分散液における前述の固体ベースの発泡助剤の使用を提供する。ここで、ポリマー分散液は好ましくは、ポリスチレン水性分散液、ポリブタジエン水性分散液、ポリ(メタ)アクリレート水性分散液、ポリビニルエステル水性分散液および/またはポリウレタン水性分散液、ならびに前記ポリマーの組み合わせの分散液または混合分散液の群から選択される。該分散液の固形分は、分散液全体に対して好ましくは20~70重量%の範囲であり、より好ましくは25~65重量%の範囲である。本発明によれば、ポリウレタン水性分散液における固体ベースの発泡助剤の使用が特に好ましい。ここで、ポリエステル-、ポリエステルアミド-、ポリカーボネート-、ポリアセタール-および/またはポリエーテル-ポリオールをベースとするポリウレタン分散液が特に好ましい。
【0040】
本発明の範囲において、ポリマー水性分散液の総重量に対する固体ベースの発泡助剤の濃度が0.1~50重量%の範囲、特に好ましくは0.5~40重量%の範囲、殊に好ましくは1.0~35重量%の範囲であると好ましい。
【0041】
前述したように、本発明は、ポリマー水性分散液における固体ベースの発泡助剤の使用を提供する。ここで、固体ベースの発泡助剤によって、一方では、ポリマー分散液の効率的な発泡を可能にすることができ、他方では、安定していると同時に微細なセルでかつ均一な発泡体の形成を可能にすることができる。したがって、固体ベースの発泡助剤は、泡形成剤または泡安定剤として作用することができる。これらの用語は、発泡助剤という用語と同義で用いることができる。当業者であれば、自身の通常の経験値に基づいて、単純に直接外観検査することにより、肉眼で、または光学的補助具、例えば拡大鏡、顕微鏡を用いて、通常の方法で、発泡体のセル微細性について調べることができる。「セル微細性」とは、セルサイズに関連するものである。平均セルサイズが小さいほど、泡のセル微細性が高い。必要に応じて、例えば、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡を用いてセル微細性を測定することができる。「均一」とは、セルサイズ分布に関するものである。均一な発泡体は、セルサイズ分布が可能な限り狭いため、すべてのセルがほぼ同じ大きさである。これもまた、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡で定量化することができる。特に発泡体を高温で乾燥させた場合、発泡体のセル微細性や均一性の経時変化が少ないほど、発泡体はより安定する。この目的に加えて、固体ベースの発泡助剤はさらに、乾燥助剤、レオロジー添加剤または充填剤としての役割を果たすことができ、これも本発明の好ましい実施形態に相当する。多孔質ポリマーコーティングを製造するための分散液中の充填剤の使用は、知られている。本発明による固体ベースの発泡助剤は特に、より疎水性であるかまたは必要に応じてその場でより疎水性となるように調整され、したがって、先に述べたパラメータの意味での泡品質の向上を可能にし、系の発泡性に非常にプラスに寄与するという点で、単なる充填剤とは異なる。
【0042】
本発明による固体ベースの発泡助剤に加えて、ポリマー水性分散液は、なおもさらなる添加物質/配合成分、例えば、着色顔料、さらなる充填剤、艶消し剤、安定剤、例えば加水分解安定剤もしくはUV安定剤、酸化防止剤、吸収剤、架橋剤、流動添加剤、増粘剤またはさらなる界面活性物質を含むことができる。ポリマー水性分散液が、本発明による固体ベースの発泡助剤に加えて、さらなる発泡助剤、泡安定剤、泡形成剤または発泡添加剤を2重量%未満、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満、なおもより好ましくは0.1重量%未満含み、なおもより好ましくはこれを含まず、特にステアリン酸アンモニウムをベースとするものを含まない場合、これは本発明の特に好ましい一実施形態である。
【0043】
すでに述べたように、固体ベースの発泡助剤および任意に使用される疎水化剤を、ポリマー水性分散液に、純粋なまま予め分散させた状態で添加することも、適切な分散媒または溶媒に予め溶解させた状態で添加することもできる。発泡助剤として使用する粒子をその場で修飾する場合にはさらに、2つの成分のうちの一方を適切な分散媒または溶媒に分散または溶解させ、他方の成分を純粋なままポリマー水性分散液に添加することも可能である。これに関連して、好ましい分散媒または溶媒は、水、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチルジグリコール、ブチルトリグリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、EO、PO、BOおよび/またはSOをベースとするポリアルキレングリコール、EO、PO、BOおよび/またはSOをベースとするアルコールアルコキシレート、ならびにこれらの物質の混合物から選択され、水性分散液および溶液が非常に特に好ましい。
【0044】
本発明による固体ベースの発泡助剤が純粋なままではなく分散液としてポリマー水性分散液に添加される場合、対応する分散液が、例えば分散添加剤やレオロジー添加剤のようなさらなる配合助剤を含むとさらに有利であり得る。これも本発明の好ましい一実施形態に相当する。
【0045】
上述したように、本発明による固体ベースの発泡助剤の使用は、ポリマー水性分散液から製造される多孔質ポリマーコーティングの著しい改善につながるため、上記で詳細に記載した本発明による少なくとも1種の固体ベースの発泡助剤を含むポリマー水性分散液も本発明の主題である。
【0046】
本発明のもう1つの主題は、上記で詳細に記載した本発明による固体ベースの発泡助剤を使用して得られたポリマー水性分散液から製造される多孔質ポリマー層であり、該分散液の固形分は、該分散液全体に対して好ましくは20~70重量%の範囲であり、より好ましくは25~65重量%の範囲であり、ポリマー水性分散液の総重量に対する固体ベースの発泡助剤の濃度は、有利に0.1~50重量%の範囲、特に好ましくは0.5~40重量%の範囲、殊に好ましくは1.0~35重量%の範囲である。
【0047】
好ましくは、本発明による多孔質ポリマーコーティングは、有利に前述したポリマー水性分散液中の添加剤として有利に疎水化または部分的に疎水化された固体ベースの発泡助剤を用いて、
a)少なくとも1種のポリマー水性分散液と、少なくとも1種の固体ベースの発泡助剤と、任意にさらなる添加剤とを含む混合物を提供する工程、
b)混合物を発泡させて発泡体を形成する工程、
c)任意に少なくとも1種の増粘剤を添加して、湿潤した発泡体の粘度を調整する工程、
d)発泡したポリマー分散液のコーティングを適切な支持体に施与する工程、
e)コーティングを乾燥させる工程
を含む方法によって製造することができる。
【0048】
有利に前述したポリマー水性分散液、有利にポリウレタン水性分散液中の添加剤として有利に疎水化または部分的に疎水化された固体ベースの発泡助剤を用いた多孔質ポリマーコーティング、有利に多孔質ポリウレタンコーティングのこの製造方法は、本発明のさらに1つの主題である。工程a)で使用される固体ベースの発泡助剤は、有利に疎水化または部分的に疎水化されており、ここで、固体ベースの発泡助剤の疎水化は、上記のように予め行うこともその場で行うこともできる。
【0049】
好ましい実施形態に関して、特に、本方法において好ましく使用することができる固体ベースの発泡助剤およびポリマー分散液に関して、先行する説明、および特に特許請求の範囲に示される上述の好ましい実施形態も参照されたい。
【0050】
上記の本発明による方法のプロセス工程は、固定された時系列順序に従うものではないことが明らかにされる。例えば、プロセス工程c)は、すでにプロセス工程a)と同時に行うことができる。
【0051】
プロセス工程b)において、高いせん断力を加えることによってポリマー水性分散液を発泡させる場合、本発明の好ましい一実施形態に相当する。ここで、発泡は、例えば、分散機、溶解機、HansaミキサーまたはOakesミキサーのような、当業者に慣用されているせん断装置を用いて行うことができる。好ましくは、工程b)では、可能な限り高いセル微細性でかつ可能な限り均一な発泡体を得ることが目標とされる。
【0052】
さらに、プロセス工程c)の最後に生成される湿潤した発泡体が、少なくとも5、好ましくは少なくとも10、より好ましくは少なくとも15、なおもより好ましくは少なくとも20Pa・s、ただし最大で500Pa・s、好ましくは最大で300Pa・s、より好ましくは最大で200Pa・s、なおもより好ましくは最大で100Pa・sの粘度を有すると好ましい。ここで、発泡体の粘度は有利に、Brookfield社製のスピンドルLV-4を備えたLVTD型粘度計を用いて測定することができる。湿潤した発泡体の粘度を求めるための対応する測定方法は、当業者に知られている。
【0053】
すでに上述したように、湿潤した発泡体の粘度を調整するために、任意に追加の増粘剤を系に添加することができる。
【0054】
ここで、好ましくは、本発明の範囲において有利に使用できる任意の増粘剤は、会合型増粘剤のクラスから選択される。ここで、会合型増粘剤とは、ポリマー分散液中に含まれる粒子の表面での会合によって、またはネットワークへの会合によって増粘効果をもたらす物質である。この用語は、当業者に知られている。ここで、好ましい会合型増粘剤は、ポリウレタン増粘剤、疎水修飾ポリアクリレート増粘剤、疎水修飾ポリエーテル増粘剤および疎水修飾セルロースエーテルから選択される。ポリウレタン増粘剤が非常に特に好ましい。さらに、本発明の範囲において、分散液の全組成に対する任意に使用可能な増粘剤の濃度が0.01~10重量%の範囲、より好ましくは0.05~5重量%の範囲、非常に特に好ましくは0.1~3重量%の範囲であると好ましい。
【0055】
さらに、本発明の範囲において、プロセス工程d)において発泡したポリマー分散液のコーティングを10~10000μm、好ましくは50~5000μm、より好ましくは75~3000μm、なおもより好ましくは100~2500μmの層厚で製造する場合も好ましい。発泡したポリマー分散液のコーティングは、当業者に慣用されている方法、例えば、スキージ塗布によって製造することができる。ここで、直接的なコーティング法および間接的なコーティング法(いわゆる転写コーティング)の双方を使用することができる。
【0056】
さらに、本発明の範囲において、プロセス工程e)において、発泡させてコーティングしたポリマー分散液の乾燥を高温で行うと好ましい。ここで、本発明によれば、少なくとも50℃、好ましくは60℃、より好ましくは少なくとも70℃の乾燥温度が好ましい。さらに、乾燥不良の発生を避けるために、発泡させてコーティングしたポリマー分散液を異なる温度で数段階に分けて乾燥することも可能である。対応する乾燥技術は当業界では一般的であり、当業者に知られている。
【0057】
すでに述べたように、プロセス工程c)~e)は、当業者に知られている一般的な方法を用いて行うことができる。これらに関する概要は、“Coated and laminated Textiles”(Walter Fung, CR-Press, 2002)に記載されている。
【0058】
本発明の範囲において、固体ベースの発泡助剤を含む多孔質ポリマーコーティングは、350μm未満、好ましくは200μm未満、特に好ましくは150μm未満、非常に特に好ましくは100μm未満の平均セルサイズを有するものが特に好ましい。平均セルサイズは、有利に顕微鏡法で、有利に電子顕微鏡により求めることができる。この目的のために、多孔質ポリマーコーティングの断面を十分な倍率の顕微鏡で観察し、少なくとも25個のセルのサイズを求める。この評価方法から十分な統計量を得るためには、顕微鏡の倍率を有利に、少なくとも10×10個のセルが観察視野に入るように選択することが好ましい。平均セルサイズは、観察されたセルまたはセルサイズの算術平均として得られる。このような顕微鏡によるセルサイズの測定は、当業者に慣用されている。
【0059】
したがって、本発明のさらに1つの主題は、多孔質ポリマーコーティング、有利に多孔質ポリウレタンコーティングであって、該ポリマーコーティングの製造において、ポリマー水性分散液、有利にポリウレタン水性分散液中の添加剤として、有利に疎水化または部分的に疎水化された固体ベースの発泡助剤を使用することにより得ることができ、好ましくは前述した方法により得ることができる、多孔質ポリマーコーティング、有利に多孔質ポリウレタンコーティングである。
【0060】
本発明による有利に疎水化された少なくとも1種の固体ベースの発泡助剤と、任意にさらなる添加剤とを含む本発明による多孔質ポリマー層(またはポリマーコーティング)は、例えば、テキスタイル産業において、例えば人工皮革材料に、建設産業において、エレクトロニクス産業において、スポーツ産業において、または自動車産業において使用することができる。したがって、本発明による多孔質ポリマーコーティングをベースとして、例えば靴のような日用品を製造することができる。
【0061】
したがって、本発明のさらに1つの主題は、上記の多孔質ポリマーコーティングを含む日用品であり、該日用品は好ましくは、靴、インソール、バッグ、スーツケース、ケース、衣類、自動車部品、好ましくはシートカバー、ドア部品のカバー、ダッシュボード部品、ステアリングホイールならびに/もしくはハンドルおよびギヤシフトカバー、調度品、例えばデスクパッド、クッションもしくは座席家具、電子機器の隙間充填材、医療用途のクッション材および緩衝材ならびに/または接着テープである。
【0062】
実施例:
物質:
IMPRANIL(登録商標)DLU:Covestro社製の脂肪族ポリカーボネートエステル-ポリエーテルポリウレタン水性分散液
REGEL(登録商標)WX 151:Cromogenia社製のポリウレタン水性分散液
CROMELASTIC(登録商標)PC 287 PRG:Cromogenia社製のポリウレタン水性分散液
CROMELASTIC(登録商標)PS 075:Cromogenia社製の脂肪族ポリエステル-ポリオールポリウレタン水性分散液
KT 736:Scisky社製の脂肪族ポリウレタン水性分散液
KT 650:Scisky社製の脂肪族ポリウレタン水性分散液
カオリン:Sigma Aldrich社から購入した粒子径1~20μm(Malvern社製のMastersizer 3000で測定)の粉末カオリン
VARIFSOFT(登録商標)PATC:Evonik Industries AG社製のパルミタミドプロピルトリモニウムクロリド
STOKAL(登録商標)STA:Bozetto社製のステアリン酸アンモニウム(HO中約30%)
STOKAL(登録商標)SR:Bozetto社製の獣脂系スルホコハク酸ナトリウム(HO中約35%)
ECO Pigment Black:Cromogenia社製の顔料水性分散液(黒色)
TEGOWET(登録商標)250:Evonik Industries AG社製のポリエーテルシロキサン系流動添加剤
ORTEGOL(登録商標)PV 301:Evonik Industries AG社製のポリウレタン系会合型増粘剤
REGEL(登録商標)TH 27:Cromogenia社製のイソシアネート系架橋添加剤
LUDOX(登録商標)HS 40:Grace社製の非修飾シリカ粒子(平均粒子径12nm、固形分40重量%)のコロイド分散液
AEROSIL(登録商標)R 812 S:Evonik社製のヘキサメチルジシラザン(CAS:68909-20-6)で表面修飾したフュームドシリカ。
【0063】
粘度測定:
すべての粘度測定を、Brookfield社製のスピンドルLV-4を備えたLVTD型粘度計を用い、一定の回転速度12rpmで行った。粘度測定のために、100mlのガラスに試料を充填し、このガラスに測定スピンドルを浸した。粘度計が一定の値を示すまで、常に待機した。
【0064】
実施例1:疎水化カオリンを用いた発泡試験:
この一連の試験では、パルミタミドプロピルトリモニウムクロリドで疎水化されたカオリンを固体ベースの発泡助剤として使用した。この場合、疎水化をその場で行い、すなわち、カオリンおよびパルミタミドプロピルトリモニウムクロリド(VARISOFT(登録商標)PATC)を別個の成分としてポリウレタン水性分散液に添加した。
【0065】
この固体ベースの発泡助剤の効果を試験するため、一連の発泡実験を行った。このために、第1の工程で、Covestro社製のポリウレタン分散液IMPRANIL(登録商標)DLUを使用した。これを、パルミタミドプロピルトリモニウムクロリドで疎水化されたカオリンを用いて発泡させた(試験No.3)。さらに、2つの比較試験を行い、これらの比較試験ではそれぞれ、2つの単一成分のうち一方のみを使用し、すなわちパルミタミドプロピルトリモニウムクロリド(試験No.1)のみおよびカオリン(試験No.2)のみを使用した。さらに、ステアリン酸アンモニウム系発泡助剤を用いてさらに2つの比較試験を行い、同時に、カオリンを含まないポリウレタン分散液(試験No.4)と、カオリンを含むポリウレタン分散液とを用いた。これらの試験は、先行技術と比較して、本発明による固体ベースの発泡助剤の有効性が向上していることを実証している。表1に、それぞれの試験の組成の概要を示す。
【0066】
すべての発泡実験を、手動試験で行った。このために、レオロジー添加剤ORTEGOL(登録商標)PV 301以外の全成分をまず500mlのプラスチック製ビーカーに装入し、分散ディスク(直径=6cm)を備えた溶解機で1000rpmにて3分間ホモジナイズした。次いで、混合物を発泡させるために撹拌速度を2000rpmまで上げ、その際、適切な渦が形成されるまで分散ディスクが常に分散液中に浸されるように留意した。この速度で、混合物を約425mlの体積になるまで発泡させた。次に、混合物にシリンジでORTEGOL(登録商標)PV 301を添加し、1000rpmでさらに15分間撹拌した。この工程では、分散ディスクが混合物に深く浸っており、それ以上空気が系内に導入されることはなかったが、全体積はまだ動いていた。
【0067】
【表1】
【0068】
混合物を発泡させたところ、カオリンのみを含むポリウレタン分散液(試験No.1)がほとんど発泡できないことが顕著であった。目標の体積425mlには達しなかった。パルミタミドプロピルトリモニウムクロリドのみを含む分散液(試験No.2)は、確かに良好に発泡したが、発泡過程の最後に、粗く不規則で水っぽい発泡体が得られた。本発明によりパルミタミドプロピルトリモニウムクロリドで疎水化されたカオリンを含むポリウレタン分散液(試験No.3)の場合、発泡過程の最後に、高粘度の非常に微細で均一な発泡体が得られた。この発泡体は、発泡助剤としてステアリン酸アンモニウムを含む2つの発泡体(試験No.4およびNo.5)と比較して、明らかにより微細でより均一であった。
【0069】
次いで、すべての発泡体を、ボックススキージ(スキージ厚=800μm)を備えたフィルムアプリケーター(TQC社製のAB3220型)を用いて、シリコーン処理されたポリエステル膜に施与し、コーティングを60℃で5分間、さらに120℃で5分間乾燥させた。
【0070】
カオリンのみを含む系(試験No.1)の場合、乾燥後に、大きな空気包含物をわずかにしか含まない緻密なコーティングが得られた。その結果、コーティングは非常に硬く、あまり柔軟でない触感的印象を与えた。パルミタミドプロピルトリモニウムクロリドのみを含む系(試験No.2)では、コーティングおよび乾燥の後に、セルが粗く不均一な発泡体が得られ、これはさらに明らかな乾燥亀裂を示した。この試料の触感的印象は、劣っていた。これとは対照的に、本発明による試験No.3では、欠陥のない、光学的に均一で微細なセルの発泡体コーティングが得られた。このコーティングは、極めてベルベットのようなしなやかな感触を有していた。本発明によるコーティングNo.3は、発泡助剤としてステアリン酸アンモニウムを含む2つの比較試料No.4およびNo.5と比較して、より均一な外観を有し、さらにその触感はより良好であった。さらに、電子顕微鏡検査ですべての試料を比較したところ、本発明による試料No.3が最も微細な細孔構造を有することが確認された。
【0071】
このように、これらの試験は、ポリウレタン水性分散液における固体ベースの発泡助剤としての疎水化粒子の優れた効果を印象的に実証している。例えば、疎水化粒子(試験No.3)の場合には、2つの単一成分(純粋なカオリン、純粋な疎水化剤)により可能であった結果よりも明らかに良好な結果を達成することができた。さらに、先行技術と比較して改善された効果を示すことができた。
【0072】
実施例2:移行試験:
固体ベースの発泡助剤の表面移行性を評価するために、以下の方法にしたがって人工皮革材を製造した。まず、シリコーン処理されたポリエステル膜にトップコートコーティングを施与した(層厚100μm)。次いで、これを100℃で3分間乾燥させた。次いで、乾燥させたトップコート層に発泡体層をコーティングし(層厚800μm)、60℃で5分間、120℃で5分間乾燥させた。乾燥発泡体層を、最終工程において接着剤水性層(層厚100μm)で覆い、次いで、まだ湿っている接着剤層上にテキスタイル支持体を積層した。完成した積層体を再び120℃で5分間乾燥させ、次いでポリエステル膜から剥がした。
【0073】
すべてのコーティング過程および乾燥過程を、Mathis AG社製のLabcoater LTE-Sを用いて行った。ここで、トップコート層および接着剤層を、表2に列挙した組成にしたがって配合し、発泡体層として、表1に記載した発泡配合物No.3、No.4およびNo.5を使用し、これらを実施例2に記載した方法にしたがって発泡させた。
【0074】
表面移行を評価するために、人工皮革試料を、その製造後に100℃の熱水中に30分間入れ、次いで室温で一晩乾燥させた。この処理の後、界面活性剤Stokal STA/SRから製造した比較試料(発泡配合物No.4およびNo.5、表1)は、人工皮革の表面にはっきりと視認可能な白斑を示したが、本発明による固体ベースの発泡助剤を用いて製造した試料(配合物No.3、表1)では、これらの表面変色は観察されなかった。
【0075】
【表2】
【0076】
実施例3:疎水化フュームドシリカ粒子を用いた発泡試験
さらなる一連の試験では、AEROSIL(登録商標)R 812 S(疎水化フュームドシリカ粒子)を、様々なPUD系で固体ベースの発泡助剤として使用した。表3に、この目的で使用した発泡配合物の概要を示す:
【表3】
【0077】
これらの配合物を、実施例1に記載の方法にしたがって約300mlの体積まで発泡させ、次いで、ボックススキージ(スキージ厚=800μm)を備えたフィルムアプリケーター(TQC社製のAB3220型)を用いて、シリコーン処理されたポリエステル膜に施与し、コーティングを60℃で5分間、さらに120℃で5分間乾燥させた。
【0078】
これらの試験すべてにおいて、Aerosil(登録商標)R 812を使用することにより、配合物を迅速かつ効率的に発泡させることができることが観察された。発泡後、均一で安定した発泡体がすべてのケースで得られ、これらを次いで乾燥させて、欠陥のないコーティングを得ることができた。したがって、これらの試験も、ポリウレタン水性分散液中の泡安定剤としての疎水化粒子の優れた効果を実証している。
【0079】
実施例4:疎水化コロイダルシリカ粒子を用いた発泡試験
この一連の実験では、パルミタミドプロピルトリモニウムクロリドで疎水化されたコロイド状シリカ粒子を固体ベースの発泡助剤として使用した。ここでは、疎水化をその場で行い、つまり、シリカ粒子およびパルミタミドプロピルトリモニウムクロリド(VARISOFT(登録商標)PATC)を別個の成分としてポリウレタン水性分散液に加えた。ここで、シリカ粒子として、シリカ分散液LUDOX(登録商標)HS 40を使用した。
【0080】
【表4】
【0081】
これらの配合物を、実施例1に記載の方法にしたがって約300mlの体積まで発泡させ、次いで、ボックススキージ(スキージ厚=800μm)を備えたフィルムアプリケーター(TQC社製のAB3220型)を用いて、シリコーン処理されたポリエステル膜に施与し、コーティングを60℃で5分間、さらに120℃で5分間乾燥させた。
【0082】
これらの試験でも、疎水化シリカ粒子を使用することでPU分散液の効率的な発泡が可能となることが観察された。この一連の試験でも、均一で安定した発泡体が得られ、これらを次いで乾燥させて、欠陥のないコーティングを得ることができた。したがって、これらの結果は、本発明の利点を強調するものである。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質ポリマーコーティング、好ましくは多孔質ポリウレタンコーティングの製造のためのポリマー水性分散液、有利にポリウレタン水性分散液中の添加剤としての、固体ベースの発泡助剤の使用。
【請求項2】
前記固体ベースの発泡助剤が、ポリマー水性分散液、好ましくはポリウレタン水性分散液に不溶の粒子からなり、有機および/または無機の粒子が好ましく、好ましい有機粒子は、セルロース、セルロース誘導体、パルプ、リグニン、多糖類、木質繊維、木粉、粉砕プラスチック、テキスタイル繊維および/または合成ポリマー粒子、例えばラテックス粒子またはポリウレタン粒子から選択され、好ましい無機粒子は、例えば酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素アルミニウム、ケイ酸、水酸化アルミニウム/水酸化マグネシウムもしくは石英粉のような(混合)酸化物/水酸化物の群、例えば炭酸カルシウムもしくはチョークのような炭酸塩の群、リン酸塩の群、例えば硫酸カルシウムもしくは硫酸バリウムのような硫酸塩の群、ならびに例えばタルク、雲母もしくは特にカオリンのようなケイ酸塩の群および/またはシリコーンベースの粒子、特にシリコーン樹脂もしくはMQ樹脂ベースの粒子の群から選択され、酸化ケイ素および/もしくは酸化アルミニウムをベースとする酸化物ならびに/またはケイ酸塩、特にカオリンが非常に特に好ましい、請求項1記載の使用。
【請求項3】
前記固体ベースの発泡助剤として使用される粒子が、レーザー回折法または動的光散乱法で測定された0.01~100μmの範囲、好ましくは0.05~50μmの範囲、より好ましくは0.1~35μmの範囲の平均一次粒子径を有する、請求項1または2記載の使用。
【請求項4】
前記固体ベースの発泡助剤として使用される粒子が、疎水化または部分的に疎水化されており、前記疎水化が、有利に粒子表面への適切な疎水化剤の吸着および/または共有結合によって行われる、請求項1または2記載の使用。
【請求項5】
前記固体ベースの発泡助剤として使用される粒子の疎水化に使用される疎水化剤が、カチオン性ポリマーの群、アミンの群、好ましくはアルキルアミンまたはそのカチオンの群、第四級アンモニウム化合物の群であって、ここで、有機およびシリコーンベースのアミンおよびアンモニウム化合物が好ましいものとする群、カルボキシレート、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、アルキルホスホン酸塩、アルキルおよびジアルキルスルホコハク酸塩、それぞれ対応する遊離酸の群、シリコーンの群、シランの群、エポキシドおよび/またはイソシアネートの群から選択され、適切な疎水化剤の選択は好ましくは、疎水化される粒子の表面特性に依存し、表面に負の(部分)電荷を有する粒子は好ましくは、カチオン性または部分的にカチオン性のアンカー基を有する疎水化剤で修飾され、表面に正の(部分)電荷を有する粒子は好ましくは、アニオン性または部分的にアニオン性のアンカー基を有する疎水化剤で修飾され、表面に反応性OH、NHまたはNH基を有する粒子は好ましくは、前記基に対して反応性である疎水化剤、例えば有利にシラン、シラザン、エポキシド、イソシアネート、カルボン酸の無水物または塩化物および/またはアルキルクロリドで修飾され、これに関連して、特にシランおよび/またはシラザンが好ましい、請求項1または2記載の使用。
【請求項6】
前記疎水化剤が、粒子および疎水化剤の総量に対して0.01~50重量%、好ましくは0.02~25重量%、好ましくは0.03~20重量%の範囲、なおもより好ましくは0.04~15重量%の範囲、なおもより好ましくは0.05~10重量%の範囲の濃度で使用される、請求項1または2記載の使用。
【請求項7】
前記固体ベースの発泡助剤の疎水化が、前記ポリマー水性分散液への添加前に行われ、かつ/または前記固体ベースの発泡助剤の疎水化が、その場で、すなわち前記ポリマー水性分散液中でようやく行われる、請求項記載の使用。
【請求項8】
前記ポリマー水性分散液が、ポリスチレン水性分散液、ポリブタジエン水性分散液、ポリ(メタ)アクリレート水性分散液、ポリビニルエステル水性分散液およびポリウレタン水性分散液、前記分散液の混合物または前記ポリマーのコポリマーを含む分散液、特にポリウレタン水性分散液の群から選択され、前記分散液の固形分は、前記分散液全体に対して好ましくは20~70重量%の範囲であり、より好ましくは25~65重量%の範囲である、請求項1または2記載の使用。
【請求項9】
前記ポリマー水性分散液の総重量に対する前記固体ベースの発泡助剤の濃度が、0.1~50重量%の範囲、特に好ましくは0.5~40重量%の範囲、殊に好ましくは1.0~35重量%の範囲である、請求項1または2記載の使用。
【請求項10】
固体ベースの発泡助剤として、酸化ケイ素、酸化アルミニウムおよび/またはケイ酸塩、好ましくは層状ケイ酸塩、特にカオリンが使用され、疎水化剤として、アミンまたはそのカチオン、第四級アンモニウム化合物、例えばパルミタミドプロピルトリモニウムクロリド、アルキル硫酸塩またはシランが使用され、前記固体ベースの発泡助剤の疎水化を、予め行うこともその場で行うこともできる、請求項1または2記載の使用。
【請求項11】
固体ベースの発泡助剤、有利に疎水化または部分的に疎水化された固体ベースの発泡助剤を含む、特に請求項1または2に記載されるポリマー水性分散液、有利にポリウレタン水性分散液であって、前記固体ベースの発泡助剤の好ましい疎水化を、前記ポリマー水性分散液への前記固体ベースの発泡助剤の添加前に、および/またはその場で、すなわち前記ポリマー水性分散液中でようやく行うことができ、前記分散液の固形分は、前記分散液全体に対して好ましくは20~70重量%の範囲であり、より好ましくは25~65重量%の範囲であり、前記ポリマー水性分散液の総重量に対する固体ベースの発泡助剤の濃度は、有利に0.1~50重量%の範囲、特に好ましくは0.5~40重量%の範囲、殊に好ましくは1.0~35重量%の範囲である、ポリマー水性分散液。
【請求項12】
有利に請求項1または2に記載されるポリマー水性分散液、有利にポリウレタン水性分散液中の添加剤として有利に疎水化または部分的に疎水化された固体ベースの発泡助剤を用いて多孔質ポリマーコーティング、有利に多孔質ポリウレタンコーティングを製造する方法であって、
a)少なくとも1種のポリマー水性分散液と、本発明による有利に疎水化または部分的に疎水化された少なくとも1種の固体ベースの発泡助剤と、任意にさらなる添加剤とを含む混合物を提供する工程、
b)前記混合物を発泡させて発泡体を形成する工程、
c)任意に少なくとも1種の増粘剤を添加して、湿潤した発泡体の粘度を調整する工程、
d)前記発泡したポリマー分散液、有利にポリウレタン分散液のコーティングを適切な支持体に施与する工程、
e)前記コーティングを乾燥させる工程
を含む、方法。
【請求項13】
前記工程a)で使用される固体ベースの発泡助剤が、疎水化または部分的に疎水化されており、前記固体ベースの発泡助剤の疎水化を、予め行うことも、その場でポリマー水性分散液中にて行うこともできる、請求項12記載の方法。
【請求項14】
多孔質ポリマーコーティング、有利に多孔質ポリウレタンコーティングであって、ポリマーコーティングの製造において、ポリマー水性分散液、有利にポリウレタン水性分散液中の添加剤として、有利に疎水化または部分的に疎水化された固体ベースの発泡助剤を使用することにより得ることができ、好ましくは請求項12記載の方法により得ることができる、多孔質ポリマーコーティング、有利に多孔質ポリウレタンコーティング。
【請求項15】
請求項14記載の多孔質ポリマーコーティングを含む日用品であって、前記日用品は好ましくは、靴、インソール、バッグ、スーツケース、ケース、衣類、自動車部品、好ましくはシートカバー、ドア部品のカバー、ダッシュボード部品、ステアリングホイールならびに/もしくはハンドルおよびギヤシフトカバー、調度品、例えばデスクパッド、クッションもしくは座席家具、電子機器の隙間充填材、医療用途のクッション材および緩衝材ならびに/または接着テープである、日用品。
【国際調査報告】