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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-15
(54)【発明の名称】神経外科用装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 90/11 20160101AFI20240408BHJP
【FI】
A61B90/11
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566842
(86)(22)【出願日】2022-04-29
(85)【翻訳文提出日】2023-12-25
(86)【国際出願番号】 GB2022051101
(87)【国際公開番号】W WO2022229659
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】2106203.9
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2106210.4
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2106224.5
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523408204
【氏名又は名称】ニューロチェイス テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】ギル,スティーヴン ストレトフィールド
(72)【発明者】
【氏名】ギル,トーマス
(57)【要約】
脳実質上への注入液の対流増強送達のための神経外科用装置であって、脳内に挿入するためのガイドチューブであって、基端と、先端と、カニューレの通路のための貫通孔とを備えたガイドチューブを有する。ガイドチューブの少なくとも外層(24)は、弾性変形可能であって空気の通過を許容する多孔質である疎水性材料で形成されている。また、脳実質上への注入液の対流増強送達のためのキットや、脳実質上への注入液の対流増強送達のための外科的方法を提供する
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脳実質上への注入液の対流増強送達のための神経外科用装置であって、
脳内に挿入するためのガイドチューブであって、基端と、先端と、カニューレの通路のための貫通孔とを備えたガイドチューブを有し、
前記ガイドチューブの少なくとも外層は、弾性変形可能であって空気の通過を許容する多孔質である疎水性材料で形成されている神経外科用装置。
【請求項2】
前記ガイドチューブの少なくとも外層が超疎水性を有する請求項1に記載の神経外科用装置。
【請求項3】
前記ガイドチューブの少なくとも外層は、ePTFE、シリコーンフォーム、ポリウレタンフォーム、形状記憶ポリマー、多孔中空繊維として押出されたポリマー、エレクトロスピニングされたポリマーのうちの少なくとも1つを含む請求項1又は2に記載の神経外科用装置。
【請求項4】
前記ガイドチューブの少なくとも外層は、多孔中空繊維として押出されたポリマー及びエレクトロスピニングされたポリマーのうちの少なくとも一方であり、
多孔中空繊維として押出されたポリマー及びエレクトロスピニングされたポリマーは、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PU(ポリウレタン)、ポリプロピレン、又はそれらの混合物及び/又は共重合体からなる群から選択される請求項3に記載の神経外科用装置。
【請求項5】
前記ガイドチューブは、前記外層の軸方向外側にある最外層をさらに備え、
前記最外層は親水性材料を有する請求項1~4のいずれか1つに記載の神経外科用装置。
【請求項6】
前記最外層は親水性材料及び疎水性材料の混合物を有する請求項5に記載の神経外科用装置。
【請求項7】
前記外層又は前記最外層は、潤滑性の向上及び/又は組織の一体化の促進を図るように構成されたコーティング及び/又は表面処理を含み、
前記コーティングは任意に親水性材料を含む請求項1~6のいずれか1つに記載の神経外科用装置。
【請求項8】
前記ガイドチューブの少なくとも外層がゼロ以下のポアソン比を有する請求項1~7のいずれか1つに記載の神経外科用装置。
【請求項9】
前記ガイドチューブは不均質材料及び/又は異なる剛性を有する複数の材料から構成されている請求項1~8のいずれか1つに記載の神経外科用装置。
【請求項10】
前記ガイドチューブは、外側から貫通孔に向かって径方向内側に密度が増加する発泡体、又は前記貫通孔又はその近傍における密度が増加する領域で構成されている請求項9に記載の神経外科用装置。
【請求項11】
前記ガイドチューブは、前記貫通孔又はその近傍に硬い単層又は複層を有する積層構造を有する請求項9に記載の神経外科用装置。
【請求項12】
前記硬い単層又は複層は空気に対して多孔質である請求項11に記載の神経外科用装置。
【請求項13】
硬い層は前記貫通孔の表面を形成する請求項11に記載の神経外科用装置。
【請求項14】
前記硬い単層及び複層の少なくとも一方は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ナイロン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含むフルオロポリマー、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)を含むパーフルオロポリエーテル、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、液晶ポリマー(LCP)及び、これらの混合物又は共重合体からなる群から選択されるポリマーを含む請求項11~13のいずれか1つに記載の神経外科用装置。
【請求項15】
前記硬い単層及び複層の少なくとも一方は、ドリル又はレーザを用いてポリマーフィルムのシート材料にマイクロ穿孔を行うこと、多孔質ポリマーシート材料のチューブを形成するために円筒形態の周りでポリマーを織る、編み込む又はエレクトロスピニングすること、ポリマーを多孔質形態とする3Dプリンティングを行うことの少なくとも1つを含む処理によって形成されている請求項11~14のいずれか1つに記載の神経外科用装置。
【請求項16】
前記ガイドチューブは0.75mm~2.5mmの外径を有する請求項1~15のいずれか1つに記載の神経外科用装置。
【請求項17】
前記ガイドチューブの前記貫通孔は0.4mm~0.7mmの直径を有する請求項1~16のいずれか1つに記載の神経外科用装置。
【請求項18】
前記ガイドチューブの挿入前に患者の頭蓋骨に固定され、前記ガイドチューブの貫通孔のための通路を有するガイドハブをさらに備える請求項1~17のいずれか1つに記載の神経外科用装置。
【請求項19】
前記ガイドチューブは、前記ガイドハブの通路内において対応する形状の座部に配置される拡径開放基端を有する請求項18に記載の神経外科用装置。
【請求項20】
前記ガイドチューブは、基端において、頭蓋骨の冠状鋸穴内に固定されるような大きさ及び形状の拡大部を有する請求項1~17のいずれか1つに記載の神経外科用装置。
【請求項21】
前記ガイドチューブは、少なくとも基端部において、軸方向に弾性的に伸縮可能及び圧縮可能である請求項1~20のいずれか1つに記載の神経外科用装置。
【請求項22】
前記ガイドチューブの前記基端部はゼロ以下のポアソン比を有する請求項21に記載の神経外科用装置。
【請求項23】
前記ガイドチューブは、積層構造を有しているとともに、多孔質の弾性変形可能な材料の外層と重ね合わされた剛性材料の内側チューブを備えており、
前記基端部には、前記内側チューブが設けられていない請求項21又は22に記載の神経外科用装置。
【請求項24】
注入液を標的の脳体積に送達するためにガイドチューブを通して脳内に挿入するためのカニューレをさらに含む請求項1~23のいずれか1つに記載の神経外科用装置。
【請求項25】
前記カニューレは、気体及び/又は微生物が前記カニューレに進入することを防止するように構成された気泡ベントを有する請求項24に記載の神経外科用装置。
【請求項26】
前記気泡ベントは、エアギャップによって分離された第1膜及び第2膜を有しており、
前記第1膜は疎水性であり、前記第2膜は親水性である請求項25に記載の神経外科用装置。
【請求項27】
組織に挿入するためのプローブをさらに備え、前記プローブは、軸方向に延在する円形又は円錐状の先端を有するロッドと、組織を切開するための最端を有する細径スパイクとを有する請求項1~26のいずれか1つに記載の神経外科用装置。
【請求項28】
ガイドチューブを介して脳内に挿入され、注入液を標的の脳体積に送達するためのカニューレであって、
気体及び/又は微生物が前記カニューレに進入することを防止するように構成された気泡ベントを有するカニューレ。
【請求項29】
前記気泡ベントは、前記カニューレに恒久的に接続されている、及び/又は一体的に形成されている請求項25、26又は28に記載のカニューレ。
【請求項30】
脳内に挿入するためのガイドチューブであって、
基端と、先端と、カニューレの通路のための貫通孔とを備え、
前記ガイドチューブの少なくとも外層は、弾性変形可能であって、空気の通過を許容する多孔質を有する疎水性材料で形成されているガイドチューブ。
【請求項31】
請求項30に記載のガイドチューブと、包装チューブと、を備え、
前記ガイドチューブは、前記包装チューブ内に設けられており、前記包装チューブは、前記ガイドチューブの前記外層を圧縮するように構成されているパッケージ。
【請求項32】
前記ガイドチューブの前記貫通孔内においてスタイレットをさらに備える請求項31に記載のパッケージ。
【請求項33】
組織に挿入するためのプローブであって、
軸方向に延在する円形又は円錐状の先端を有するロッドと、組織を切開するための最端を有する細径スパイクとを有するプローブ。
【請求項34】
前記プローブの径が1.3mm以下である請求項33に記載のプローブ。
【請求項35】
前記スパイクは4mm~5mmの長さを有しており、この最先端において0.5mm~0.3mmのテーパを有する請求項33又は34に記載のプローブ。
【請求項36】
脳実質に対する注入液の対流増強送達のためのキットであって、
a)脳内に挿入するためのガイドチューブであって、基端と、先端と、カニューレの通過のための貫通孔とを有するガイドチューブと、
b)脳内へのガイドチューブの挿入を補助するためにガイドチューブの貫通孔を通過するガイドチューブプローブと、
c)脳内においてカニューレのための軌道を形成するためのプローブと、
d)ガイドチューブを介して脳に注入液を送達するためのカニューレと、を有し、
前記ガイドチューブの少なくとも外層は、弾性変形可能であり、空気の通過を許容する多孔質を有する疎水性材料で形成されているキット。
【請求項37】
前記プローブは、前記脳内においてガイドチューブ及びカニューレのための軌道を形成し、軸方向に延在する円形又は円錐状の先端を有するロッドと、組織を切開するための最端を有する細径スパイクとを有する請求項36に記載のキット。
【請求項38】
前記頭蓋骨の冠状鋸穴に嵌合し、前記ガイドチューブの前記基端に接続されるガイドハブをさらに有する請求項36又は37に記載のキット。
【請求項39】
脳実質上への注入液の対流増強送達のための外科的方法であって、
a)ガイドチューブを脳実質内に通過させる工程であって、前記ガイドチューブは、基端と、先端と、カニューレの通路のための貫通孔とを有しており、前記ガイドチューブの少なくとも外層は、弾性変形可能であって、空気の通過を許容する多孔質を有する疎水性材料で形成されており、前記ガイドチューブは、前記貫通孔を通過するガイドチューブプローブを用いて脳内に進入されて、ガイドチューブプローブの先端が前記ガイドチューブの先端又はこの先端を超えて位置しており、
b)前記ガイドチューブの前記先端が計画位置にあるとき、前記ガイドチューブプローブをさらに軌道に沿って前進させることにより、前記脳組織を介して前記カニューレを収容する軌道を形成する工程と、
c)前記ガイドチューブプローブを取り除く工程と、
d)前記貫通孔を介してカニューレを通過させ、前記軌道に沿って前記脳内に進入させる工程と、
e)前記カニューレを介して注入液を脳内に通過させる工程と、を有する外科的方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経外科で使用される装置に関する。特に、本発明は、脳実質内への直接注入により治療薬を送達させるために使用する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
神経疾患の治療は、血液脳関門の存在によって阻害され得る。体循環から脳実質内に送達できる治療薬を開発することは困難である。治療薬を脳の特定の領域(「脳体積」又は「標的体積」)に送達させることが望ましい場合がある。望ましくない副作用を軽減するには、脳の特定の領域外への治療薬の曝露を最小限に抑えながら、標的体積内で治療薬の適切な濃度を得ることが望ましい。
【0003】
対流強化送達法(CED)は、非常に小さなカニューレ又はチューブ(当技術分野ではマイクロカテーテルと呼ばれることが多い)を使用して、流体中の脳実質内に送達される治療薬の注入制御により、特定の脳体積に治療薬を標的送達させる方法である。マイクロカテーテルは、この先端に1つ又は複数のポートを備えており、治療薬を含む注入液がカテーテルから出て標的脳体積に入ることが可能になる。ポートでの連続的な圧力勾配の達成により、標的脳体積の周囲圧力を克服し、注入液が標的脳体積内に効果的に流れることが可能になる。
【0004】
カニューレのポートから流れる流体は最も抵抗の少ない経路をたどるため、CED技術の使用には課題がある。通常、最も抵抗の少ない経路は、所望のように流体を組織内に送り込むのではなく、カニューレと組織の境界面に沿って戻る、いわゆる逆流を引き起こす。逆流を制御し流体が標的体積の組織内に送り込まれるようにするために、CEDカニューレは通常、先端に向かって直径の急激な変化(「段差」)を有する。例えば、カニューレの先端は、先端での短い長さでは径1mm未満であり、カニューレの残りの部分については径が1.5~2.5mmまで段階的に増加する。小径の先端は、非外傷的に挿入された場合、カニューレの周囲に組織シールを形成し、界面に沿った逆流を最小限に抑える。段差での径の変化により、脳への挿入時に組織が圧縮され、逆流がさらに防止される。
【0005】
通常、毎分3~5マイクロリットルの範囲で流量を慎重に制御すると、逆流よりも組織への注入液の流れが促進される。高流量になると逆流の程度が増加する傾向があり、カニューレの径が広い部分であっても、逆流注入液が段差を越えてカニューレと脳組織の界面に沿って逆流する可能性がある。このように段差を越えると、注入液は、カニューレの大径部分の周囲のより大きな周囲空間を通って低抵抗経路に入り、その結果、標的体積内における注入液の意図する分布が減少する。
【0006】
逆流防止段差の設計はCEDのカニューレごとに異なる。欧州特許第1482851号及び米国特許出願公開第2010/0217228号に記載のカニューレは、単一の段差を有し、国際公開第2007024841号は複数の段差を備えたカニューレを開示し、国際公開第2014-016591号では凹んだ段差を有する。
【0007】
段差の設計に加えて、カニューレが段差を越えてその最先端まで延びる長さも、脳組織への注入液の分布における量及び形状の両方について重要な決定要因となる。短い段差のあるカニューレ(つまり、長さが短く、直径が小さいカニューレ)は、ほぼ球形の小さな分布体積(Vd)を有する。小経部分の長さが増加するにつれて、Vdはより大きく、より卵形になり、そして円筒形になり、そして球根状の先端を有する洋ナシ形になる。
【0008】
脳内に対流される流体の分布半径が、その段差で圧縮された組織の領域の分布半径を超えると、注入液はカニューレの大径部に沿って低抵抗経路に入り、標的体積から逆流する傾向がある。これにより、標的でのVdに制限が生じる。
【0009】
したがって、固定の段差長さの配置を用いて臨床的に重要な組織体積に治療を送達させるには問題が生じる可能性がある。固定の段差の長さが短いカニューレを使用すると、細長い組織体積を充填するために、脳への軌道に沿った異なる点で連続注入を行う必要がある。同様に、脳内のより大きなより球状の構造を充填するためには、複数の経路が必要となる。逆に、段差長さが比較的長いカテーテルを使用して、より小さな標的を充填すると、標的内に治療薬を封じ込めることが困難になる可能性がある。したがって、標的ごとに段差の長さを調整できることは、大きな利点をもたらす。
【0010】
CEDによるCNS(中枢神経系)疾患の治療対象の大半は、脳組織への注入液を所望の範囲に到達させるために、いくつかのカニューレを埋め込む必要がある。MRI画像から所望の標的の体積及び形状が明確になっている場合、その体積を満たすために必要なカニューレの数と向きは、配置したカニューレで達成可能な分布形状と体積を把握することによって決定される。注入中又は注入直後のMRI画像を用いて、注入された治療液が規定の治療量をカバーしていることを確認することも重要である。剛性のカニューレを使用する場合、注入が行われている間、カニューレは定位フレームに固定される。このような配置では、定位フレームはMRIと互換性があり、イメージングコイルに適合する薄型である必要がある。通常、最初の作業が完了した後、追加のカニューレの挿入と注入が必要になる。したがって、このような処置は比較的時間がかかり、長時間の麻酔と固定化によって患者を危険にさらす可能性がある。
【0011】
複数のカニューレの軌道を使用する代替処置では、頭蓋骨に埋め込まれて固定されるフレキシブルカニューレが使用される。頭蓋骨の外側に伸びるフレキシブルカニューレチューブは、薄型の頭蓋骨固定具に取り付けることができる。これにより、MRIスキャナへの安全な移動が容易になり、神経学的評価のために患者が起きている状態で同時注入を行うことができる。フレキシブルカニューレが使用される場合、注入中に定位フレームは必要ない。フレキシブルカニューレは、注入が完了した後に除去することもできるし、場合によっては、数日、数週間、又は数か月後に繰り返し注入するためにその場に放置しておくこともできる。
【0012】
フレキシブルカニューレの使用は、欧州特許第1482851号、欧州特許出願公報第13001067.1号、欧州特許第2819739号及び国際公開第2014-016591号に記載されている。これらの配置では、カニューレの先端と逆流抵抗段差との間の距離を調整することができる。いずれの場合も、フレキシブルカニューレは基端ハブを有し、脳内の標的点に挿入するために所望の長さに切断される。同様に所望の長さに切断され、埋め込まれたガイドチューブに挿入されると、カニューレのハブは、頭蓋骨に固定されたガイドチューブの基端ヘッドと係合するときにストッパとして機能する。カニューレはガイドチューブを越えて延びており、カニューレからガイドチューブへの径の変化によって生じる段差が注入液の逆流に対する抵抗となる。
【0013】
欧州特許第1482851号、欧州特許出願公開第13001067.1号及び欧州特許第2819739号に記載されているフレキシブルカニューレを埋め込むための典型的な手順では、ステレオガイド又は画像誘導ロボットのガイドにより、選択した軌道に沿って頭蓋骨にプロファイル穴が形成される。次に、プローブが穴を通ってガイドチューブの予定先端まで通過し、引き抜かれて脳組織に痕跡が残る。適切な長さに切断されたガイドチューブは、プローブの丸い先端がその先端をわずかに越えて伸びるように送達プローブ上に配置される。ガイドチューブは、その基端の頭部が頭蓋骨に形成された穴に嵌合するまで予め形成された軌道に挿入される。プローブは、カニューレターゲットの予定位置まで前進し、その後、ガイドチューブの穴に隣接する組織を通る軌道を残して引き戻される。
【0014】
注入ポンプに接続され、注入液を低流量で送達するカニューレは、組織内に予め形成された軌道を通ってガイドチューブに挿入される。カニューレを介した低速注入は、組織の通過中に組織に穴が開くのを防止する。治療液がカニューレの先端ポートを通して送達されると、治療液は最も抵抗の少ない経路をたどり、ガイドチューブの先端によって圧縮された組織領域に到達する前に、カニューレと組織の境界面に沿って逆流する。界面にかかる局所的な圧力は逆流を抑制するように作用し、注入液は組織内に優先的に放射状に押し込まれる。
【0015】
上述の装置は潜在的な欠点を有している。挿入方法により組織に微小な外傷が生じる可能性があり、注入液の低抵抗経路が形成され、ガイドチューブと組織の境界面での逆流制御が損なわれる。ガイドチューブが脳内の予め形成された軌道に挿入されると、その先端の切断端が組織を剪断し、断片化した組織の円周柱を形成する傾向がある。ガイドチューブの頭部を頭蓋骨に予め形成された穴に押し込むのに必要な力は、ガイドチューブの先端にも伝達され、段差の領域における局所的な組織の外傷を増大させる可能性がある。
【0016】
さらに、カニューレがガイドチューブに挿入されると、カニューレはピストンとして機能し、カニューレの前方に空気柱を押し出す傾向がある。ガイドチューブの基端で吸引を行ったとしても、カニューレとガイドチューブの間の狭い空間から空気を排出することは困難である。空気が脳内に送り込まれると、組織が引き裂かれ、逆流制御段差に近接して占拠性病変が形成される。
【0017】
短期的には、これは注入液の意図する分布パターンを混乱させる可能性があるが、空気が吸収されると、残された空洞が段差で低抵抗経路を形成し、望ましくない逆流が増大する可能性がある。
【0018】
欧州特許第3119310号には、カテーテルの挿入中にガイドチューブ内から排出された流体を搬送するための流体還流経路を形成する内部輪郭を備えたガイドチューブが記載されている。このような経路は、カテーテル挿入中に空気を伝導したり通気したりすることもできる。しかしながら、空気抜きを容易にするのに十分なサイズの内部経路を備えた輪郭を形成するためには、ガイドチューブの全体的な寸法が大きくなる。ガイドチューブの径が大きいと、挿入時の外傷が大きくなる可能性がある。ガイドチューブとカニューレの間の狭い経路は、流体の存在による表面張力によって空気の流れが妨げられやすい可能性がある。
【0019】
国際公開第2014/016591では、ガイドチューブが内部の組織を圧縮する内部凹部を備える凹状段差配置が開示されている。内部凹部は、組織をより効果的に圧縮してカニューレと組織の界面に沿った注入液の流れを制限することを目的とした段差機能を有する。しかし、そのような配置では、ガイドチューブは挿入時に脳組織の一部を削りとる。局所的な組織の外傷は、脳の雄弁な部分に神経障害を引き起こす可能性、又は出血を引き起こす可能性がある。
【0020】
既知のCED装置、特に慢性的に埋め込まれる装置に関するさらなる潜在的な問題は、脳の動きである。脳は頭蓋骨内で動くため、カニューレ及び/又は関連するガイドチューブを頭蓋骨に固定すると、脳組織に対してチューブ又はカニューレが動く可能性がある。これは、特に逆流抵抗性段差で局所的な組織外傷を引き起こす可能性があり、局所的な空胞化及び逆流に抵抗するのではなく、逆流を増大させる傾向のある低抵抗経路を形成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の目的は、上述した課題の少なくとも一部を解決することにあり、特に、逆流抵抗を改善し、使用時の外傷を軽減するCED装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
第1態様によれば、本発明は、脳実質への注入液の対流増強送達のための神経外科用装置を提供する。神経外科用装置は、脳内に挿入するためのガイドチューブであって、基端と、先端と、カニューレの通過のための貫通孔とを有するガイドチューブを備える。ガイドチューブの少なくとも外層は、弾性変形可能かつ多孔質である疎水性材料であり、空気の通過を許容する。
【0023】
第2態様によれば、本発明は、第1の態様に係る神経外科用装置で使用されるガイドチューブを提供する。ガイドチューブは、脳に挿入するためのものであり、基端と、先端と、カニューレの通過のための貫通孔とを有する。ガイドチューブの少なくとも外側層は、弾性変形可能かつ多孔質である疎水性材料であり、空気の通過を許容する。
【0024】
疎水性とは、ガイドチューブを形成するために使用される材料の表面上の水滴の液体蒸気界面における静的接触角θが90°より大きいことを意味する。有利には、本明細書に開示されるガイドチューブの材料の少なくとも外層は、超疎水性であり、θ>150°である。
【0025】
神経外科用装置、特に本発明のガイドチューブの使用について、脳への注入液の対流増強送達の方法を参照して詳細に説明する。しかしながら、ガイドチューブは、小さい器具又は道具の脳への送達(例えば、カニューレ、特に「マイクロカテーテル」)が想定される任意の外科処置において使用することができる。
【0026】
ガイドチューブにおける多孔質及び疎水性又は超疎水性の外層は、以下でより詳細に説明するように、空気のための通気経路を提供する。疎水性又は超疎水性は、外層の材料との界面において、脳脊髄液(CSF)及び患者の細胞外流体又は水性注入液から気泡を分離することを可能にする。水性流体は、ガイドチューブの材料の濡れを防止する疎水性外層から効果的にはじかれる。ガイドチューブ及び組織の界面から流体をはじき、還流を制限することにおいて、空気に対する多孔性を維持するだけでなく、ガイドチューブの有効性を増加させる。また、このように空気を通過させるために多孔質材料を使用することにより、上述した従来の幾つかの装置で使用されるように、空気を通気させるためにガイドチューブの壁内に特別な経路又は同様の構造を設ける必要性が無くなる。これにより、ガイドチューブの断面領域を、従来の幾つかの装置と比較して50%以上だけ大幅に減少させることができる。これは、脳組織への外傷及び望ましくない合併症の可能性を大幅に低減する。
【0027】
ガイドチューブの少なくとも外層は弾性変形可能である。ガイドチューブを使用するときには、その貫通孔を通過するガイドチューブのプローブの周りに取り付けられ、脳内に予め作られた軌道に挿入することができる。予め作られた軌道は、ガイドチューブよりも狭い径を有する。弾性変形可能な材料は利点を有する。ガイドチューブの最先端、一般的には正方形の切断端は、弾丸形状に変形しやすいか、弾丸形状に向かって変形する傾向がある。弾丸形状は、正方形に切断されたチューブの端が脳組織を切断することによる外傷を引き起こす傾向がある従来の装置よりも、予め作られた軌道をより容易に通過することができる。
【0028】
弾丸形状の最先端が挿入されていない場合には、元の形態(例えば、正方形の切断)に又はこれに向かって戻る傾向がある。この最端は、既知の方法において還流に対する物理的な障壁として作用することができる。しかしながら、還流に対する有効性は、疎水性材料の使用や、弾性変形可能な材料によって得られる弾性によって強化される。
【0029】
脳組織に挿入されると、ガイドチューブは、軌道を通過するときに、この長さに沿って脳組織から内径方向に圧縮される。したがって、適切な位置にあるとき、ガイドチューブは、元の径に向かって径方向外側に拡張しやすくなって脳組織に押し付けられる。これにより、脳組織との良好なシール界面を得ることができる。ガイドチューブは、以下により詳細に説明されるように、脳内において、その長さに沿った逆流を防止するように作用する。
【0030】
脳組織への望ましくない外傷を防止するために、ガイドチューブの移植によって脳組織に与えられる圧縮が脳組織に対して一般に予想される弾性限界よりも大幅に大きくなることは回避すべきである。これは、予め作られた軌道及びガイドチューブについて、材料及び径の適切な選択によって達成することができる。適切な材料のヤング弾性率は、例えば、10kPa~1MPaの範囲内とすることができる。
【0031】
ガイドチューブの少なくとも外層のために構成される適切な材料としては、ePTFE、シリコーンフォーム、ポリウレタンフォーム、形状記憶ポリマー、微多孔性中空繊維として押出されたポリマー又はエレクトロスピニングされたポリマーがある。エレクトロスピニングされたポリマーや、微多孔性中空繊維として押し出されるポリマーは、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PU(ポリウレタン)、ポリプロピレン、又はそれらの混合物及び/又は共重合体を含むが、これらに限定されない。形状記憶ポリマーを使用することができる。発泡体を使用する場合、発泡体の気泡の少なくとも一部は、バルク材料を介して空気の通過を許容する連続気泡である。発泡構造の外層又はガイドチューブの全て又は実質的に全てが連続気泡発泡体であってもよい。
【0032】
ガイドチューブの少なくとも外層のための多孔質材料を使用することの更なる利点は、経時的に脳組織と一体化する機会があることであり、すなわち、脳組織は、ガイドチューブの多孔質構造に進入することができる。これは、脳組織及びガイドチューブの間の圧縮力が経時的に減少しても、ガイドチューブを所望の位置に固定することを補助できる。ガイドチューブ及び脳組織の一体化により、はっきりと規定されたカニューレ及び組織の界面を除去することができ、それにより、逆流の可能性を低減することができる。
【0033】
ガイドチューブの少なくとも外層は、その一体化能力又は他の望ましい特性を改善するために後処理された材料で形成されていてもよい。例えば、外層は、潤滑性を向上させ、及び/又は組織の一体化を促進するように構成されたコーティング及び/又は表面処理を含むことができる。表面処理は、プラズマ表面処理を含んでもよい。コーティングは、その潤滑性を向上させるか、その疎水性を高めることができる。コーティングは、親水性材料を含んでいてもよい。
【0034】
ガイドチューブは、外層の軸方向外側にある最外層を更に備えていてもよく、最外層は親水性材料を有する。親水性材料の最外層は、ガイドチューブの潤滑性の向上に寄与し得る。最外層は、親水性材料及び疎水性材料の混合物を含んでいてもよい。脳内の異なる細胞タイプは、疎水性又は親水性の材料とより容易に一体化する。例えば、神経細胞は、より容易に疎水性材料に結合し、一方、グリア細胞は、より容易に親水性材料に結合する。これらの材料の混合物を含む最外層は、複数の細胞型との組織統合を改善し得る。
【0035】
ガイドチューブの少なくとも外層は、弾性変形可能であり、脳組織への挿入において外傷を最小限にする。ガイドチューブが十分に硬くならない場合には、貫通孔内におけるガイドチューブのプローブの補助があったとしても、脳組織に挿入されるときに、特に長さが短くなるように歪んでいてもよい。脳組織は、比較的追従しやすい(変形しやすい)材料である。脳組織の追従性に近づく材料のみから形成されたガイドチューブは、良好に挿入することが困難である。
【0036】
したがって、ガイドチューブは、非均質材料及び/又は異なる特性を有する複数の材料によって構成することができる。これにより、軸方向の剛性と径方向の追従性(弾性的に変形可能な挙動)との所望の組み合わせを提供することができる。
【0037】
ガイドチューブが非均質材料及び/又は異なる特性(特に剛性)を有する複数の材料で構成されている場合、提供される剛性の程度は、ガイドチューブの全長又は実質的に全長に沿っていてもよい。本発明の幾つかの実施形態では、剛性はガイドチューブの長さに沿って変化していてもよい。例えば、以下でさらに説明するように、ガイドチューブの基端に設けられた剛性を低減したり、剛性を追加しなかったりしていてもよい。
【0038】
例えば、ガイドチューブは、外側から貫通孔に向かって径方向内側に密度が増加する発泡体、又は貫通孔又はその近傍の密度が増加した領域から構成されていてもよい。密度を増加させることにより、剛性を増加させ、それにより、より追従性を有する外側領域を支持する。
【0039】
代替的に又は追加的に、ガイドチューブは、貫通孔又はその近傍に、より硬い単層又は複層を有する積層構造を有していてもよい。これにより、より柔軟な外側の単層又は複層に対する支持となる。ガイドチューブが貫通孔又は貫通孔の近くに剛性の単層(複層)で積層されている場合、剛性の単層又は複層は空気の通過のために多孔性であることが好ましい。これにより、貫通孔内に現れる空気が、ガイドチューブの多孔質材料を介して通過することができる。硬い内側層が多孔質ではない場合には、貫通孔を通過する空気は、多孔質の外層の最先端に接触したときに、ガイドチューブの先端から除去されてもよい。硬い単層(複層)は、ガイドチューブ構造を介した液体浸透を回避するのを助けるために、疎水性又は超疎水性の材料であってもよい。ただし、1つ又はこれ以上の層は、疎水性又は超疎水性を有していなくてもよい。
【0040】
したがって、内層、例えば、貫通孔の表面を提供する層は、硬い材料で形成されていてもよい。このような剛性材料の例としては、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)又はこの共重合体のようなポリマーの内層とすることができる。より一般的には、内層は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ナイロン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフルオロポリマー、ポリパーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)及びフッ素化エチレンプロピレン(FEP)といったパーフルオロエーテル重合体、液晶ポリマー(LCP)、及び、これらの混合物又は共重合体からなる群から選択することができる。ポリマー層は、天然の非多孔質材料であってもよいが、様々な方法で多孔質を製造することができる。例えば、ドリルやレーザによってポリマー材料を微細穿孔することによって、内層が形成される。さらなる例では、円筒状形態の周りにおいて、ポリマー繊維を織ったり、編組したり、エレクトロスピニングしたりすることにより、多孔性高分子シート材料のチューブを形成する。多孔質構造を形成するための3Dプリンティングも使用できる。
【0041】
例えば、ePTFEの外層は、(マイクロ穿孔された)PEEKチューブの一部として形成された比較的硬い内層に結合されていてもよい。外層に比較的硬い内層を結合することは、外層を取り付ける前に、例えば接着剤で内層をコーティングすることによって達成することができる。有利には、外層は、結合前に内層上において引っ張られていてもよい。このようなチューブをこの径を横切って切断すると、延伸された外層は、切断された端部で収縮する傾向がある。これによって、脳への挿入のための先端として使用することができ、比較的非外傷性の先端形状を有する「弾丸形状」が得られる。
【0042】
可能な限り脳への外傷を最小限にするために、ガイドチューブは、少なくとも圧縮されて脳組織内の場所にあるときに、実用的な外径と同じくらいに小さくすべきである。例えば、ガイドチューブは、0.75mm~2.5mmの外径を有してもよく、好ましくは、1.2mm~1.7mmである。したがって、例えば、ガイドチューブは、脳への挿入における圧縮前で1.2mmの径を有していてもよく、内部にあるときに約1mmの径を有していてもよい。
【0043】
対流強化送達技術において脳組織内に注入液を送達するために使用されるタイプのカニューレ(マイクロカテーテル)を用いるために、ガイドチューブの貫通孔は、0.4mm~0.7mm、好ましくは0.5mm~0.6mmの径を有することができる。有利には、ガイドチューブの貫通孔は、使用されるカニューレの外面に密接する大きさである。密接により、脳の外部に注入液が還流する経路が形成されてしまうことを回避する。カニューレ自体は0.5mm~0.6mmの径を有することができ、貫通孔は0.1mm~0.4mmの径を有することができる。
【0044】
使用中、ガイドチューブは先端を有しており、先端は、脳に入らないが、脳内のチューブの位置を固定するために、患者の頭蓋骨又は頭蓋骨の近くに固定される。したがって、本発明のガイドチューブは、従来の構成と同様に、頭蓋骨の冠状鋸穴内に固定するための大きさ及び形状を有する基端において拡大することができる。一般的に、拡大された基端は、ガイドチューブの弾性変形可能な外層とは異なる材料で形成されている。異なる材料の2つの部分は、例えば、溶融又は接着によって一体的に結合することができる。
【0045】
有利には、ガイドチューブは、ガイドハブに既に取り付けられている頭蓋骨の冠状鋸穴を介して挿入することができる。別体のガイドハブは、本発明の第1態様の神経外科用装置の一部を構成するとともに、本発明の第3態様である。ガイドハブはガイドチューブを通過させる通路を有する。ガイドハブは別の手順で頭蓋骨に固定することができ、そして、ガイドチューブが通路を介して挿入される。
【0046】
ガイドハブは、頭蓋骨に固定基準点を提供し、そこからプローブ、ガイドチューブ及びカニューレの方向及び長さを向けることができる。都合よく別のガイドハブを使用する場合には、ガイドチューブは、使用時にガイドハブ内に固定するために、拡径した基端を有していてもよい。ガイドチューブにおける拡径の基端は、ガイドハブの通路内において、対応する形状の座部に配置することができる。拡径の基端は、例えば、円筒形、部分球形又は円錐形(「フレア」)であってもよい。そして、ガイドチューブの基端は、例えば、貫通孔を備えたネジなどの嵌合によってガイドハブに固定することができ、このネジは、ガイドチューブの拡径の基端に締結され、ガイドハブにおいて対応する形状の座部上で圧縮する。拡径の基端は、ガイドチューブの他の部分の材料とは異なる材料で形成されていてもよい。例えば、基端の拡大された径は、異なるポリマーをガイドチューブの端部に塗布するオーバーモールド処理によって形成してもよい。
【0047】
有利には、ガイドチューブの広がった基端を圧縮することにより、ガイドチューブ及びハブの間やガイドチューブ及びネジ継手の間において、流体及び気体のシールを形成することができる。中心穴を有するネジ継手の先端とガイドチューブの広がった基端との間に、シリコンワッシャなどの変形可能なワッシャを配置することにより、ハブに対して、ネジ継手の穴及びガイドチューブを通過するカニューレを径方向に圧縮して固定することができる。圧縮時において、カニューレは、ワッシャのように、カニューレ及びガイドチューブの間において、流体及び気体のシールを形成することができる。カニューレが雄ネジを備えた基端ネジ止めを有する場合には、液体及び気体のシールは、カニューレ及びガイドチューブの間に形成することができる。基端ネジ止めは、この穴内に相補的な雌ネジを有するハブに螺合されるとともに、ガイドチューブの広がった基端の穴内で係合するカニューレと同軸であるネジ止めの先端の円錐形の間に円錐形シールを形成する。
【0048】
また、ガイドチューブの広がった基端を圧縮することにより、ガイドチューブ及びハブの間や、ガイドチューブと、ガイドチューブの弾性変形可能な外層によって取り付けられるカニューレ/ネジ継手との間において、流体及び気体のシールを形成することができる。ガイドチューブの拡大した基端は、ガイドチューブの弾性変形可能な外層とは異なる材料で形成することができるが、外層は、広がった基端上で延びて基端を覆うことができる。これは、例えば、エレクトロスピニングの外層を用いる場合に、外層がエレクトロスピニングされる領域を拡張することによって達成することができる。これにより、アセンブリの複雑さやシールのサイズを増加させる1つ又は複数の別個のワッシャを用いる必要性を回避できる。外層は、ガイドチューブの広がった基端上で延在させることができる。ガイドチューブは、ガイドチューブをガイドハブに固定する上で、広がった基端の周りの外層がガイドハブの内面に対して圧縮されるように構成することができる。
【0049】
対流強化送達技術は、脳組織への治療における急性(短時間)及び慢性(長期間又は反復)の送達の両方に使用することができる。例えば、遺伝子治療は、単一の処理セッションで実行されるのに対して、化学療法のような他の理由に対する治療は、脳内への反復注入を必要とする場合がある(慢性治療計画)。いずれの場合であっても、特に慢性治療計画が採用される場合、ガイドチューブの先端が脳組織内に位置したままであることが非常に望ましい。ガイドチューブの先端は、一般的に、カニューレの軌道の基端に位置しており、標的の体積を横断するとともに、ガイドチューブ及びカニューレにおける各径の間で形成された段差において、還流に抵抗することによって、標的内に注入液を保持する働きをする。頭蓋骨又は頭蓋骨に固定されたガイドハブにガイドチューブの基端を固定することにより、比較的安全な構成が得られる。しかし、脳が頭蓋骨に対して移動可能となる。したがって、使用時において、脳が動くときには、ガイドチューブは、軸方向又は横方向の力を受けることになる。このような力は、ガイドチューブの先端が脳組織を反復的に損傷させてしまうことがある。これは、組織を空胞化させたり、上記段差において、還流に抵抗するというよりは還流を増加させる低抵抗の経路を形成させたりし、標的からの治療の喪失を引き起こしてしまう。
【0050】
有利には、ガイドチューブは、少なくとも基端部において、軸方向に弾性的に伸長可能及び圧縮可能である。最も有利には、ガイドチューブの基部を形成する材料は、軸方向に伸張又は圧縮されるときにゼロに近い又は負であるポアソン比を有する。ePTFE又はポリウレタンフォームで形成されたチューブは、例えば、この特性を示すことができ、すなわち、これらの壁の厚さは、圧縮時又は伸長時(小さい歪みの下)に実質的に変化しない。より一般的には、多くのポリマー発泡体は、泡が圧縮されるときに空気が逃げる傾向があるため、ゼロに近いポアソン比を有する。
【0051】
例えば、基端部は使用時に脳の外側に位置する。このような基端部は、脳の外側から、ガイドチューブの最基端まで、又は最基端に向かって延びていてもよい。基部において弾性的に伸長可能及び圧縮可能なガイドチューブは、脳と、頭蓋骨で固定されるガイドチューブの基端との間の距離が変化することに応じて、伸長及び短縮することができる。
【0052】
ガイドチューブが貫通孔又はその近傍において硬い単層又は複層を有する積層構造を含む場合、基端部において硬化が低減されるか存在しなくてもよい。例えば、ガイドチューブは、多孔質で弾性変形可能な材料(例えば、エレクトロスピニングされたPTFE又はポリウレタン)の外層で覆われる剛性材料(例えば、穿孔されたPEEK)の内側チューブを有することができる。内側チューブは、この基端にオーバーモールドを有しており、フレア又はストッパを形成することにより、挿入深さを制限して、頭蓋骨内のガイドハブにおける固定を容易にしてもよい。
【0053】
ガイドチューブの基部は、軸方向に変形可能に構成されていてもよい。これは、例えば、長軸に沿って内側チューブの壁を介して螺旋状の切り欠きを形成してバネとして形成することにより、軸方向に変形可能に構成された内側チューブの変形可能な部分を用いて達成することができる。内側チューブの変形可能な部分は、5~30mm、好ましくは10~20mmの長さを有することができる。ガイドチューブの基端が頭蓋骨に対して固定されることにより、例えば、ガイドハブ内に固定されることにより、ガイドチューブの内層の変形可能な部分は、頭蓋骨に対する脳の動きに対応することができる。一方、ガイドチューブの先端を脳内の位置に固定したままとすることができる。
【0054】
ガイドチューブの外層は、より弾性変形可能な材料で形成されており、この区間にわたって所望範囲の移動に対応するように構成することができる。例えば、外層は、軸方向の追従を強化するために、エレクトロスピニングされた低硬度のポリウレタンであってもよい。このポリウレタンでは、横方向に配向された繊維の割合が高い。外層は、ガイドチューブの変形可能な部分の追従を強化するために、ガイドチューブの内層の変形可能な部分に接着しにくくするか、接着しないようにすることができる。例えば、エレクトロスピニングされたポリウレタンは、滑らかなPEEKの表面に対して付着性が低く、PEEKをポリウレタン溶液に浸漬することによって克服することができる。PEEKの内側チューブ及びこのオーバーモールドが変形可能部分を除いてポリウレタン溶液に浸漬される場合、外層が内層の変形可能な部分に付着することはほとんどないか、全くない。
【0055】
上述した変形可能な部分を有するガイドチューブがガイドチューブプローブを介して脳内に送達されるとき、ガイドチューブに加えられる軸力は変形可能な部分を圧縮することができるため、ガイドチューブの円柱の強度が所望の標的に送達する上で十分となる。本来の場所において、ガイドチューブプローブが取り外されてカニューレに交換されると、ガイドチューブの先端は、カニューレが相対的に移動する可能性があるにもかかわらず、脳標的内の位置に固定されたままとなる。カニューレを相対的に移動させると、カニューレの周囲における還流が増大するかもしれない。しかし、ガイドチューブの先端によって形成され、還流の一次制御となる段差が脳の標的において相対的に固定されるため、還流は標的の体積に限定されるであろう。
【0056】
変形可能な基部を有するガイドチューブを構成する代替手段は、ガイドチューブの先端から延びて最基端までには延びない内側チューブを提供することである。ガイドチューブの基部は、内側チューブが無くても、ガイドチューブの最基端から内側チューブの始点まで延びている。ガイドチューブが拡径の基端を有する場合、内側チューブを有しないガイドチューブの部分は、拡径の基端の先端から内側チューブの始点まで延ばすことができる。したがって、拡径の基端は依然として内側チューブを含んでいる。基部は、使用時に、患者の頭蓋骨から脳の外層まで、又は脳の外層に向かって延びるようなサイズにすることができる。相対的に硬い内側チューブが基部から存在しなくなるため、ガイドチューブの先端が脳組織内の場所に留まることを許容するように、基部を長くしたり短くしたりすることができる。
【0057】
使用時、ガイドチューブは、貫通孔を通過するガイドチューブプローブに装着されたとき、脳内に挿入される。ガイドチューブプローブがガイドチューブを駆動することを可能にするために、例えば、ガイドチューブの最基端に係合するガイドチューブプローブの外面において、径を増加させて「段差」を形成することにより、ガイドチューブプローブがガイドチューブの基端に係合するような形状とすることができる。ガイドチューブは、摩擦での嵌合を用いてガイドチューブプローブに取り付けることができる。ガイドチューブプローブは、ガイドチューブがガイドハブに固定されたとき、ガイドチューブプローブ及びガイドチューブの間の摩擦が、ガイドチューブ及びガイドハブの間の摩擦よりも小さくなるように構成することができる。これにより、ガイドチューブが意図した位置に挿入されてガイドハブに固定されると、ガイドチューブプローブをガイドチューブの貫通孔から容易に引き抜くことができる。
【0058】
上述したように、ガイドチューブが内側チューブを有しない基部を有する場合、採用されるガイドチューブプローブは、2つの段差を有していてもよい。一方は、挿入力を加えるために内側チューブの頂部に係合し、他方は、基部の最端に係合して位置決めすることにより、一般的にわずかだけ、例えば、基部が約1~1.5cmの長さを有する場合に1~3mmだけ基部を圧縮することができる。挿入時の圧縮によって基部にわずかな負荷を与えることにより、頭蓋骨から脳までの距離が長くったときに容易に長くすることができる。
【0059】
上述したように、ガイドチューブを脳内に埋め込む前に、ガイドチューブを所望の長さに切断する必要があることがある。弾性変形可能な外層は、切断力が加えられたときにガイドチューブの外面が変形しやすいため、ガイドチューブの切断がより困難となることがある。これに対処するために、ガイドチューブは、パッケージの一部として提供されていてもよい。パッケージは、ガイドチューブ及び包装チューブを備えていてもよく、ガイドチューブは、包装チューブ内に設けられている。包装チューブは、ガイドチューブの外層の剛性よりも大きい剛性を有することができる。包装チューブは、ガイドチューブを所定位置に保持し、切断力が加えられたときに、変形しやすさを低下させて、ガイドチューブの先端を清潔に軸方向に切断させる。ガイドチューブがある長さに切断されると、脳への挿入の直前にパッケージから取り外すことができる。また、包装チューブは、埋め込み前にガイドチューブの外面が直接的に取り扱われることを低減させることにより、例えば病原体によるガイドチューブの汚染の機会を減らすことができる。パッケージは、ガイドチューブの貫通孔内に配置されるスタイレットをさらに備えていてもよい。スタイレットは、切断時におけるガイドチューブの変形をさらに低減する。
【0060】
包装チューブは、ガイドチューブが包装チューブ内にある間、ガイドチューブの外層を圧縮するように構成することができる。これは、切断中にガイドチューブの横方向の変形を防止するのに役立つが、ガイドチューブに対する包装チューブの先端のずれによって、ガイドチューブの外層に軸方向剪断力が加えられる。ガイドチューブを切断する前に、包装チューブをガイドチューブの軸に沿って先端に移動させて、それらを先端方向に動かす外層に剪断力を加えれば、ガイドチューブの軸方向切断によって、ガイドチューブの先端を弾丸形状とすることができる。包装チューブがガイドチューブから取り外されると、剪断力が除去された後では、外層の基端収縮によって、弾丸形状を有する先端形状が得られる。
【0061】
上述したように、ガイドチューブは、予め作られた軌道で脳内に挿入される。予め作られた軌道は、従来、先端を丸くした相対的に剛性があるプローブを用いて作られている。しかしながら、このようなプローブの使用は実用上、困難である。脳内に挿入されたプローブは、最初に、軟膜、皮質を覆う強靭な外側膜を通過しなければならない。これは、実質的に皮質表面を破壊する前に脳を変位させる傾向がある丸い先端を用いることでは容易には達成されない。丸いプローブがその標的に移動するとき、脳は、プローブが通過する組織の追従に依存してプローブの周りで変形する傾向がある。これは、灰白質であるか白質であるかや、個々の脳の白質路の向きに依存する。プローブの挿入中における脳変形の結果、プローブは、計画軌道から逸脱して標的ミスを引き起こす。
【0062】
第4態様によれば、本発明は組織に挿入するためのプローブを提供し、このプローブは、丸い又は円錐状の先端を有し、軸方向に延びるロッドと、組織を切開するための最端を有する細径スパイクを備えている。軸方向に突出する細径スパイクは、丸い最端を備えることができる。軸方向に突出した細径スパイクは、ロッドの丸い先端からスパイクの最端までテーパを有していてもよい。プローブは、脳組織へのカニューレの挿入のために使用することができるが、他の用途や他の組織タイプでの使用も企図される。例えば、DBS(Deep Brain Stimulation、脳深部刺激療法)や記録電極を挿入する場合がある。各外科的指示に関して、挿入されるデバイスの径と同じ径又はそれよりも小さい径のサイズを有する軌道を形成するために、プローブの径を選択することができる。DBS電極は、一般的には1.3mmの外径(OD)を有しており、この例では、ODが1.3mm以下、例えば1.2mmのプローブを使用することができる。後者の場合、DBS電極リードの丸い端部は、挿入されるときに1.2mmの径を有するプローブによって生成される軌道を拡張するであろう。プローブは、生体適合性潤滑性材料(例えば、パリレン又はPTFE)でコーティングされていてもよい。これにより、プローブが挿入されたときに、周囲の組織に対する剪断力を低減し、脳組織への微小な外傷を低減する。
【0063】
プローブは、本発明の第1態様のガイドチューブのための軌道(脳組織)を準備するときに使用することができる。プローブ上のスパイクは、一般的には、使用されるカニューレと比べて同じかわずかに小さい径を有していてもよい。したがって、プローブは、本発明の第5態様を構成する脳実質への注入液の対流増強送達のためのキットの一部として提供することができる。キットは、組織に挿入してカニューレのための軌道を形成するためのプローブ、例えば、直前で説明したように、ガイドチューブ、対応するガイドチューブプローブ及びガイドハブを含むことができる。ここで、ガイドチューブは、冠状鋸穴に嵌合するための拡大された基端に取り付けられていない。
【0064】
さらなる態様によれば、本発明は、ガイドチューブを介して脳内に挿入し、注入液を標的の脳体積に送達するためのカニューレを提供する。カニューレは、脳実質への注入液の対流増強送達のための上記キットの一部として提供してもよい。カニューレがガイドチューブを介して取り付けられると、脳への注入液の送達のために使用することができる。カニューレを介して空気が脳内に送達されないことが重要であり、このリスクを低減するために、カニューレは気泡ベントを有していてもよい。気泡ベントは、好ましくは、カニューレの基端に設けられる。気泡ベントは、気体がカニューレに進入することを防止するように構成される。気泡ベントは、注入液中の溶液から出るか、伝達システムの接続及び/又は非接続中において注入液中に混入された場合に、脳に入る気泡のリスクを緩和する。伝達システムは、ディスペンサ、注入ライン及び/又はポンプなどのように、カニューレに注入液を送達するために使用される。脳組織に注入された気泡は、組織を引き裂くことができ、治療の流体/注入液の分配を妨げる。気泡ベントは、カニューレと恒久的に結合されていてもよいし、カニューレと一体的に形成されていてもよい。これにより、カニューレを送達システムに接続するときに、気泡が混入する可能性をさらに低減する。気泡ベントは、追加的に又は代替的に、病原体(例えば、細菌などの微生物)がカニューレに進入することを防止するように構成されていてもよい。これにより、治療によって発生する頭蓋内感染のリスクを低減する。
【0065】
気泡ベントは、例えば、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)から作られた低体積気泡フィルタを有していてもよい。気泡フィルタは、疎水性(任意に超疎水性)、気体透過性、流れる治療液/注入液から気泡を除去するように構成された微多孔性構造を有していてもよい。気泡フィルタは、30μl/min以下の流量で気泡を除去するのに有効である。気泡ベントは、フィルタガードをさらに備えていてもよい。フィルタガードは、気泡ベントを通ってカニューレに流れるときに、流体/注入液を脱気することを容易にする複数の穿孔(小孔)の分布を有していてもよい。また、フィルタガードは、損傷に対して気泡フィルタをガード/保護することができる。気泡フィルタ及びフィルタガードの組み合わせにより、流体がカニューレに入る前に、流体の流れから、含有する空気/気泡の分散を促進する。
【0066】
気泡ベントは、保持キャップを備えていてもよい。保持キャップは、フィルタガードに接続されることにより、気泡ベントのアッセンブリを完成させ、気泡ベント内に気泡フィルタを収容させる。保持キャップは、隔壁ストッパを備えていてもよい。隔壁ストッパは、カニューレに対する流体接続を行うために隔壁が中空針によって穿孔されるまでシールユニットを提供する。隔壁ストッパは、隔壁キャップによって圧縮された状態で保持することができる。保持キャップ及びフィルタガードは、スナップフィット接続によって接続されていてもよい。しかしながら、これらの接続において、代替の構成、例えば、ネジ接続、溶接接続、接着接続などを用いることができる。
【0067】
気泡フィルタが組み込まれた気泡ベントは、治療薬/注入剤を含有する流体を用いて、空気が例えば脳に送達されるリスクを低減する。空気/気泡を含む流体は、空間を占めているため、治療薬/注入剤の送達/分布を阻害しながら、脳組織を伸張したり引き裂いたりすることがある。また、気泡ベントは、流体から細菌及び他の微生物を含む病原体をフィルタ除去するように作用することができる。
【0068】
使用時には、プローブのスパイク端部は、挿入されるときに外傷を低減しながら組織を切開することができ、ロッドの大径まで組織を拡張する、丸い又は円錐形の端部のための低減された抵抗経路を形成することができる。本発明のガイドチューブを用いて使用される軌道を形成するために、プローブは、1.2mm以下の径を有することができる。スパイクは4~5mmの長さを有していてもよく、この最先端において、0.6又は0.5mm~0.3mm又は0.2mmのテーパを有していてもよい。例えば、スパイクは、この最先端において、0.5mm~0.3mmのテーパを有していてもよい。プローブが1.2mmの外径を有する場合、脳組織内で形成される軌道は、僅かに小さい径、例えば、プローブを取り除いた後で1.1mmを有する傾向がある。プローブは、硬化したステンレス鋼又は炭化タングステンから形成することができる。また、本発明のガイドチューブのための軌道を提供するための手段を提供することに加えて、プローブのスパイクは、通常の方法でガイドチューブの端を越えて組織に挿入されるカニューレのための基端軌道を提供することができる。
【0069】
また、本発明は、本明細書に記載の装置を使用する外科手術の方法を提供する。
【0070】
したがって、第6態様によれば、本発明は、脳実質への注入液の対流増強送達のための外科的方法を提供する。この方法は、以下を含む。
a)ガイドチューブを脳実質内に通過させる。ここで、ガイドチューブは、
基端と、
先端と、
カニューレの通路のための貫通孔を有する。
ここで、ガイドチューブの少なくとも外層は、弾性変形可能である疎水性材料と、
空気の通過を許容する孔を有する。
ガイドチューブは、先端がガイドチューブの先端にあるか又は先端を超えるように、貫通孔を通過するガイドチューブプローブの補助によって脳内に通される。
b)ガイドチューブの先端が計画位置にあるとき、ガイドチューブプローブをさらに軌道に沿って前進させて、脳組織を介してカニューレを収容する軌道を形成する。
c)ガイドチューブプローブを取り外す。
d)貫通孔を介してカニューレを軌道に沿って脳内に通過させる。
e)カニューレを介して注入液を脳内に通す。
【0071】
上述した方法における工程b)及びc)の代わりに、カニューレ用の軌道を以下のように形成してもよい。
b1)ガイドチューブの先端が計画位置にあるとき、ガイドチューブプローブを取り外す。
b2)軌道形成プローブを軌道に沿ってガイドチューブに挿入して、脳組織を介してカニューレを収容する軌道を形成する。
c1)軌道形成プローブを取り外す。
その後、工程d)及び工程e)を行う。
【0072】
工程b2)で使用される軌道形成プローブは、本明細書に記載されているように、本発明の第4態様である、組織への挿入のためのプローブであってもよい。
【0073】
より一般的には、ガイドチューブ、ガイドチューブプローブ、カニューレ用の軌道を形成するためのプローブ及びカニューレのそれぞれは、本発明の他の態様に関して本明細書に記載された特徴のいずれかを含むことができる。
【0074】
注入液は、適切な生物学的不活性流体を介して、脳組織内に送達することができる任意の適切な治療剤、造影剤又は診断剤を搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
本発明の実施形態について、以下の概略図を参照して説明する。
【0076】
図1】還流を伴う従来の神経外科用アセンブリを示す図である。
図1a図1の一部の拡大図である。
図2a】本発明による神経外科アセンブリの一部の拡大図である。
図2b図2aに示すガイドチューブの断面を示す図である。
図3a】本発明による神経外科アセンブリの一部を示す断面図である。
図3b】本発明による神経外科アセンブリの一部を示す断面図である。
図3c】使用中の神経外科アセンブリを示す図である。
図4a】脳組織内の軌道を形成するためのプローブの端部を示す図である。
図4b】脳組織内の軌道を形成するためのプローブの端部を示す図である。
図5】カニューレの基端に取り付けられた気泡ベントを示す図である。
図6】気泡ベントの分解図である。
図7】気泡ベントの代替的な設計を示す図である。
図8図7の気泡ベントの分解図である。
図9図7及び図8の気泡ベントの断面を示す図である。
図10】使用中における図9の気泡ベントの拡大図である。
図11】最外層を有するガイドチューブの断面を示す図である。
図12】注入液の対流増強送達のためのキットの構成を示す図である。
図13】組み立てられた神経外科用装置を示す図である。
図14】ほぼ全長にわたって延びる有孔内側チューブを有するガイドチューブを示す図である。
図15】組み立てられた神経外科用装置の基端の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0077】
図1は、従来の神経外科アセンブリ1を示し、ガイドチューブ4の基端にある拡大ヘッド2と、注入液8の供給源からガイドチューブ4を介して先端10まで延びるカニューレ6とを備える。拡大ヘッド2は、患者の頭蓋骨の冠状鋸穴(図示せず)内に固定され、カニューレ10の先端は、破線の楕円16に示すように、カニューレ6の最先端14から脳組織の目標体積内に注入液を送達するように脳組織12内に配置される。
【0078】
しかし、図1に示すように、注入液は還流してもよく、カニューレ6の最先端14から先端の外側まで延びる軸流20(拡大図1a)において、カニューレ6及びガイドチューブ4の外壁に沿って低抵抗の通路がある。拡大図1aは、カニューレ6及びガイドチューブ4の先端10,18に沿った軸流20を示し、結果として、標的体積16の領域から注入液が失われる。カニューレ6からガイドチューブ4のスクエアカットされた最先端22までの径の変化に起因する段差(径の急激な変化)は、矢印Rによって示される方向で連続する還流に対して作用することができる。しかし、段差は、流体体積によって対応不能となり、ガイドチューブ4の外面に沿った還流の防止は、ガイドチューブ4及び脳組織12の間のシール相互作用の程度に依存する。このシール相互作用は、ガイドチューブ4の先端22において流体が段差を通過することを阻止するのに十分ではない場合がある。
【0079】
図2aは、ガイドチューブ4及びカニューレ6の先端18,14を拡大した図であり、ガイドチューブ4は本発明に沿ったものである。注入液の意図する結果は、脳組織12の標的体積16に注入液を送達することである。実際には、注入液の成功する送達は、「涙の滴」の形状24によって示されるものに似ている。
【0080】
図2aの例では、ガイドチューブ4は弾性変形可能であり、疎水性又は超疎水性であり、空気に対して多孔質である。脳組織12内に予め作られた軌道に挿入すると、ガイドチューブ4は径方向内側に圧縮される。図示のように、ガイドチューブ4は、自然(非圧縮)状態に戻ろうとするときに径方向外側に圧力を及ぼす。この圧力(矢印Pによって示される)は、脳組織12と共に少なくとも初期のシール相互作用を与える。したがって、本発明のガイドチューブは、逆流の防止を補助するために、この長さに沿って圧力を加える。
【0081】
また、ガイドチューブ4の少なくとも外層の多孔質は、経時的に脳組織12との一体化を可能にし、還流経路を遮断することができる。
【0082】
図2bは、概略的な断面(正確な縮尺ではない)における図2aのガイドチューブの全長を示す。この例では、ガイドチューブは、ePTFEの外層24と、多孔質(マイクロ穿孔)を有するPEEKの内層26とを有する。ガイドチューブ4は、後述するようにガイドハブに着座するためのフレア状の基端28を有する。貫通孔30は、注入液を送達するためにカニューレの通路となる。ガイドチューブが脳内に挿入されているとき、図示のように貫通孔30はプローブ32に嵌合する。プローブ32は、径が変化する段差34を有しており、段差34は、ガイドチューブ4のフレア状端28に対応して係合する。
【0083】
外層24は、多孔質であって超疎水性である。したがって、外層は、水性流体ではなく、空気に対して多孔質である。マイクロ穿孔されたPEEKの内層26は、70°~90°の水接触角を有し、相対的に疎水性である。脳組織12内で配置又は動作されるとき、内層4の外側又は貫通孔30の内部に存在する空気は、矢印Vで示すようにガイドチューブの本体に入り、大気中に放出される傾向がある。
【0084】
図3aは、概略断面における図2bの代替的なガイドチューブを示し、同様の部品については同一の番号を付している。この例では、先端18を含む外層24の下部は、(ePTFE)材料を延伸させた後、穿孔されたPEEK26の内層に結合されている。結果として、外層24の最先端36は、張力を受けた状態にあり、丸みを帯びた弾丸状に変形する。これは、脳組織への挿入における外傷を回避するのを助けることができる。また、上述したように、パッケージの内部においてガイドチューブの端部を切断することにより、弾丸状の形状を設けてもよい。
【0085】
この例では、内側で穿孔されたPEEK層は、ガイドチューブ4の全長に延びていない。ガイドチューブ4の上部(基部38)はライニングされていない。ガイドチューブのこの部分は、弾性的に伸張可能であり、軸方向に圧縮可能である。ライニングされていない基部は長さLを有する。この長さは、比較的短くてもよく、例えば、1~1.5cmのサイズであり、患者の頭蓋骨から脳の表面までの距離を稼いで使用されるように設計されている。
【0086】
図3b及び図3cを参照して以下に説明するように使用される場合、基部38は、患者への挿入時に圧縮されて衝撃吸収部材として作用し、脳及び頭蓋骨の間の相対的な移動に対応することができる。この例では、基部38がePTFEで形成されているため、密度は変化し得るが、伸張時又は圧縮時の径の変化は小さい。代わりに、穿孔された内層26は、図14に示すように、ガイドチューブ4の実質的な全長で延びていてもよい。
【0087】
また、図3aには、ePTFEのワッシャ40及びPEEKのワッシャ42を示しており、ガイドハブ(この図では示していない)内の座部に対するシーリングを補助する。また、ワッシャ40,42は、ガイドハブ及びガイドチューブ4の間に流体及び気体のシーリングを形成するのに役立つことができる。
【0088】
図15は、ガイドハブ50、カニューレ6及びキャップ100と係合したときにおいて、使用中のガイドチューブ4の基端の拡大図を示す。この例では、ワッシャは存在しない。ガイドチューブ4及びガイドハブ50の間や、ガイドチューブ4及びカニューレ6の間における流体及び気体のシーリングは、ガイドチューブ4のフレア状基端28における弾性変形可能な外層が圧縮されることによって形成される。ガイドチューブ4の外層の圧縮により、カニューレ6に設けられたストッパ104を有する基端シール102が形成される。また、ガイドチューブ4の外層の圧縮により、ガイドハブ50を備えた先端シール108が形成される。
【0089】
図3bは、図3aの配置を示しているが、矢印Iに示すように脳内に挿入される。2つの同軸に配置されたプローブによって、挿入が実行される。中央プローブ44は、貫通孔30を通過して、ガイドチューブ4の先端部18の下方まで延びる。外側プローブ46は、中央プローブ44の周りに嵌合し、ガイドチューブのフレア状の端部28と係合するための段差34を有する。また、外側プローブ46は、ライナーチューブ26の上端部と係合するための段差48を有する。ガイドチューブ4を挿入するとき、矢印Iで示すように、ガイドチューブ4におけるライニングされていない基端部の長さLは短縮(圧縮)され、段差34及び段差48の間の距離が非圧縮の長さLよりも短くなる。2つのプローブを配置する代わりに、この外側輪郭内に段差34,48の両方を含み、貫通孔30の全長を下方に通過する単一のプローブを採用することができる。
【0090】
図3cは、使用中における図3a及び図3bのガイドチューブ4を示す。ガイドチューブ4は、患者の頭蓋骨54の穿頭孔52に嵌合されたガイドハブ50における所定位置に配置されている。ガイドチューブは、患者の脳組織12の軟膜56に挿通されている。供給源8からの注入液の流体が供給されたカニューレ6は、ガイドチューブの貫通孔を下方に通過し、先端10がガイドチューブ4を越えて延びている。ガイドチューブ4のライニングされていない基部38は、図3bに関して上述したように圧縮される。脳組織12が頭蓋骨54に対して移動すると、基部38は、変位に追従するために弾性的に移動することができ、脳組織12の内部にあるガイドチューブ4との干渉を避けることができる。例えば、非ライニングの基部38が非圧縮であるときの長さLは1.3cmとすることができ、所定位置での嵌合において、長さIが1cmに圧縮される。
【0091】
図4aは、硬化したステンレス鋼のプローブ60の端部58を示す。端部58は、丸まった形状(「弾丸形状」)を有しているとともに、球状端部58からスパイク62の最先端64までテーパ状に形成されたロッド形状の突出スパイク62を有する。円錐形状を有する代替の端部58を図4bに示す。両方の例では、スパイクの最先端64は、それ自体が丸みを帯びている。プローブは、組織を切開して軌道を形成するために使用され、例えば、図1図3に示して上述したようにガイドチューブを挿入する前に脳組織を通して軌道を形成することができる。
【0092】
図5は、カニューレ6の基端に設けられた気泡ベント74を備えるカニューレ6の基端を示す。気泡ベント74の構造及び構成部分は、図6に示しており、以下で説明する。概要としては、注入液中の溶液から気泡が放出されるか、送達システムの接続及び/又は非接続中に注入液に気泡が混入された場合において、気泡ベント74は気泡が脳に入るリスクを緩和する。送達システムは、ディスペンサ、注入ライン及び/又はポンプなどのように、カニューレ6に注入液を送達するために使用される。気泡ベント74は、図5に示すように、カニューレ6と一体的に設けられていることが好ましい。これにより、カニューレ6が送達システムに接続されている間に気泡が混入する可能性をさらに低減する。また、気泡ベント74は、病原体(例えば、細菌などの微生物)がカニューレ6に進入することを防止するように構成されていてもよい。
【0093】
図6は、カニューレ6や伝達システムの流体コネクタに取り付けられるように構成された気泡ベント74の分解図を示す。気泡ベント74は、穿孔されたフィルタガード80と、気泡フィルタ82と、保持リング83A,83Bと、保持キャップ84と、隔壁ストッパ86と、隔壁キャップ88とを有する。
【0094】
図示の例では、気泡フィルタ82は、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)から製造された低体積気泡フィルタであり、超疎水性や気体透過性を有し、流動する治療薬から気泡を除去するように構成された微孔構造を有する。図示の例では、気泡フィルタ82は、30μl/min以下の流量で気泡を除去するのに有効である。フィルタ82は、穿孔されたフィルタガード80に収容されており、図示された例では、気泡フィルタ82は、中空ポスト85上に受け入れられており、保持リング83Aによって中空ポスト85に保持される。これにより、フィルタガード80と同心上に配置される。
【0095】
図示の例では、フィルタガード80は、シェル壁の周囲に複数の穿孔(小孔)87が分布された中空シェルである。穿孔87は、送達システムからカニューレ6に気泡フィルタ82を通って流れるときに、流体を脱気することを容易にする。また、名称から推察できるように、フィルタガード80はフィルタ82を損傷からガード/保護する。気泡フィルタ82及びフィルタガード80の組み合わせは、流体がカニューレ6に入る前に、ディスペンサの流体の流れから、含有する空気/気泡の分散を容易にする。
【0096】
また、気泡ベント74は保持キャップ84を有する。保持キャップ84は、フィルタガード80と接続されることにより、気泡ベント74のアセンブリが完成し、気泡ベント74内に気泡フィルタ82を収容する。保持キャップ84は、中空保持ポスト89及び保持リング83Bを有しており、気泡フィルタ82と係合することにより、気泡フィルタ82を正確な位置に配置してフィルタガード80内で保持するとともに、使用中に気泡フィルタ82の効率的な機能を確保する。
【0097】
図示の例では、保持キャップ84は隔壁ストッパ86を有しており、カニューレ6への流体接続を行うために中空針によって隔壁86が穿孔されるまでシールユニットを提供する。隔壁ストッパ86は、隔壁キャップ88によって圧縮された状態で保持される。
【0098】
図示の例では、保持キャップ84及びフィルタガード80は、スナップフィット接続によって接続されている。しかし、これらを接続するための代替的な構成、例えば、ネジ接続、溶接接続、接着接続などを用いることができる。
【0099】
低体積気泡フィルタ82を組み込んだ気泡ベント74は、治療剤/注入剤を含む流体によって例えば脳に送達される空気のリスクを低減する。空気/気泡を含む流体は、空間を占めているため、治療剤/注入剤の送達/分布を阻害しながら、脳組織を伸張したり、引き裂いたりすることがある。また、気泡ベント74は、細菌及び他の微生物を含む病原体を流体からフィルタ除去するように作用することができる。
【0100】
図7図10は、気泡ベント174の代替設計を示す。図7は、使用可能な組立状態にある気泡ベント174を示す。気泡ベント74と同様に、気泡ベント174は、保持キャップ84を備える。保持キャップ84は、送達システムの流体コネクタに接続するための基端コネクタ176、例えば、ネジ付きコネクタを備える。
【0101】
図8は気泡ベント174の分解図を示し、図9は断面図を示す。基端コネクタ176は、隔壁86が例えば中空針によって穿孔されるまで、基端コネクタ176をシールするために隔壁86を有していてもよい。気泡ベント174は、基端コネクタ176及びカニューレ6を流体的に接続する流体通路140を有する。この設計では、気泡ベントは、第1膜150及び第2膜152を有する。第1膜150及び第2膜152は、流体通路140の先端とカニューレ6の基端との間に配置される。第1膜150及び第2膜152は、互いに実質的に平行であってもよく、流体通路140の軸に対して実質的に垂直であってもよい。第1膜150は、隔壁86を通って気泡ベント174に入る流体が第2膜152の前に第1膜150に到達するように、第2膜152よりも流体通路140の先端の近くに配置されている。環状ワッシャ153は、第1膜150及び第2膜152の間に配置してもよく、これにより、膜とコネクタ174のハウジングとの間に周辺流体シールを形成し、これらの間に円筒状の隙間を形成するために膜を中心的に分離する。円筒状の隙間は2mm~6mmの径を有することができ、最も好ましい径は4mmである。隙間は、0.05mm~0.2mmだけ、最も好ましくは0.1mmだけ、膜150,152を分離することができる。第1膜150及び第2膜152は、互いに接続されていてもよく、接続面180を介して気泡ベント174の他の構成要素に接続されていてもよい。接続面180は、例えば超音波溶接又は接着剤層の使用といった任意の好適な方法によって接続することができる。気泡ベント174は、第2膜152の先端を支持するとともに、第2膜152を通過した液体がより容易にカニューレ70に到達するように、支持部材184を有していてもよい。
【0102】
第1膜150は疎水性及び気体透過性を有する。第1膜150において、流体通路140が第1膜150に面する場所には孔154が設けられており、流体通路140からの流体が孔154を介して第1膜150を通過することができる。隔壁シールコネクタ174は支持部材を有していてもよく、支持部材により、第1膜150の基端面や、膜をその周囲及びその中心孔154(図8に不図示)の周りに取り付けるための環状接続面を支持する。第2膜152は、液体透過性を有し、好ましくは親水性を有する。第2膜152が親水性である必要は無いが、疎水性膜及び親水性膜の組み合わせを用いることにより、ガス抜きが最も効率的に働くことになる。疎水性の第1膜150を単独で使用すると、ライン内の圧力が大気圧を下回った場合に、空気が第1膜150を通って大気中から注入液中に引き込まれる可能性がある。これは、コネクタが頭の上方に10~25cm(頭蓋内圧に依存する)だけ上昇した場合に起こり得る。このような状況であっても、第2膜152が親水性を有することにより、脳内への空気の侵入を防止することができる。第2膜152は、気体及び細菌に対して不透過性を有する。流体通路140からの流体が第2膜152の材料を通過してカニューレ6に到達しなければならないように、第2膜152には孔が設けられていない。1つ以上の通気孔160(例えば、図7の実施例における2つの通気孔)は、第1膜150の基端側の気泡ベント174に設けられている。第1膜150において、通気孔160が第1膜150に面する場所には、孔が設けられていない。このため、流体通路140からの流体は、第1膜150の材料を通過して通気孔160に到達しなければならなくなる。
【0103】
気泡ベント174の動作は、図10の拡大図に示される。液体と気体の混合物(例えば、カニューレ6を介して患者の脳に送達される注入液であって、気泡が含まれたもの)は、隔壁86及び流体通路140を介して気泡ベント174に浸入する。混合物は、孔154を介して第1膜150を通過する。液体は、親水性の第2膜152に引き込まれ、第2膜152(液体透過性を有する)を介してカニューレ内に浸漬される。液体の層及び第2膜152は、気体がカニューレ6中で通過することを防止するバリアを形成する。気体は、第1膜150及び第2膜152の間の空隙に沿って通過し、通気孔160のうちの1つの位置において、ガス透過性の第1膜150を通して逃げることができる。第1膜150の疎水性は、液体をはじき、液体が第2膜152と同様のバリアを形成することを防止し、これによって、気体が通気孔160を介して気泡ベント174の外部に移動することを許容にする。
【0104】
図11は、ガイドチューブ4が外層24の軸方向外側にある最外層27を備えるとともに、最外層27が親水性材料を含む例において、長軸に垂直な断面図を示す。親水性材料の最外層27は、上述したように、ガイドチューブ4の潤滑性及び/又は組織一体性の向上に寄与することができる。この例では、内層は孔25を有するPEEKで形成されており、外層24は、エレクトロスピニングされた疎水性ポリウレタンで形成されており、最外層27は、親水性ポリウレタンで形成されている。
【0105】
図12は、脳実質への注入液の対流増強送達のためのキットの構成を示す。これらの構成は、ガイドハブ50と、ガイドチューブ4と、カニューレ6と、ガイドハブ50と締結されるネジストッパ70とを含む。
【0106】
図13は、ガイドチューブ4の貫通孔に通されたカニューレ6と、ガイドハブ50に締結されたネジストッパ70とを備え、組み立てられた神経外科用装置を示す。
図1
図1a
図2a
図2b
図3a
図3b
図3c
図4a
図4b
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【国際調査報告】