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特表2024-516430肺がん治療のためのピリミジニルアミノベンゼン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-15
(54)【発明の名称】肺がん治療のためのピリミジニルアミノベンゼン
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/506 20060101AFI20240408BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240408BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
A61K31/506
A61P35/00
A61P35/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566849
(86)(22)【出願日】2022-05-02
(85)【翻訳文提出日】2023-12-22
(86)【国際出願番号】 CN2022090836
(87)【国際公開番号】W WO2022228578
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/091463
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523408329
【氏名又は名称】スゾウ プヘ バイオファーマ シーオー., エルティーディー
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】マオシェング デュアン
(72)【発明者】
【氏名】シュアイ ユアン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZB26
(57)【要約】
本明細書で提供されるのは、肺がんの1つ以上の症状を、ピリミジニルアミノベンゼン、例えば、式(I)の化合物で治療、予防、又は改善する方法である。
【化1】
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象においてEGFR変異を有する肺がんの1つ以上の症状を治療、予防、又は改善する方法であって、それを必要としている該対象に、治療有効量の式(I):
【化1】
(式中:
R1は、C1-6アルキル又はC3-10シクロアルキルであり;
R2は、水素又はC1-6アルキルであり;
R3は、アミノ、C1-6アルキルアミノ、ジ(C1-6アルキル)アミノ、もしくはヘテロシクリルでそれぞれが独立に置換されたC1-6アルキル又はヘテロシクリルであり;
R4は、C2-6アルケニル又はC2-6アルキニルであり;かつ
R5は、二環式ヘテロアリールであり;
ここで、各アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロアリール、及びヘテロシクリルは、1つ以上の、一実施態様においては、1、2、3、又は4つの、置換基Qで任意に置換されており、ここで、各Qは独立に:(a)重水素、シアノ、ハロ、イミノ、ニトロ、及びオキソ;(b)1つ以上の、一実施態様においては、1、2、3、又は4つの、置換基Qaでそれぞれがさらに任意に置換された、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-10シクロアルキル、C6-14アリール、C7-15アラルキル、ヘテロアリール、及びヘテロシクリル;並びに(c)-C(O)Ra、-C(O)ORa、-C(O)NRbRc、-C(O)SRa、-C(NRa)NRbRc、-C(S)Ra、-C(S)ORa、-C(S)NRbRc、-ORa、-OC(O)Ra、-OC(O)ORa、-OC(O)NRbRc、-OC(O)SRa、-OC(NRa)NRbRc、-OC(S)Ra、-OC(S)ORa、-OC(S)NRbRc、-OS(O)Ra、-OS(O)2Ra、-OS(O)NRbRc、-OS(O)2NRbRc、-NRbRc、-NRaC(O)Rd、-NRaC(O)ORd、-NRaC(O)NRbRc、-NRaC(O)SRd、-NRaC(NRd)NRbRc、-NRaC(S)Rd、-NRaC(S)ORd、-NRaC(S)NRbRc、-NRaS(O)Rd、-NRaS(O)2Rd、-NRaS(O)NRbRc、-NRaS(O)2NRbRc、-SRa、-S(O)Ra、-S(O)2Ra、-S(O)NRbRc、及び-S(O)2NRbRc(式中、各Ra、Rb、Rc、及びRdは独立に、(i)水素もしくは重水素であるか;(ii)1つ以上の、一実施態様においては、1、2、3、又は4つの、置換基Qaでそれぞれが任意に置換された、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-10シクロアルキル、C6-14アリール、C7-15アラルキル、ヘテロアリール、もしくはヘテロシクリルであるか;又は(iii)Rb及びRcは、それらが結合しているN原子と共に、1つ以上の、一実施態様においては、1、2、3、又は4つの、置換基Qaで任意に置換されたヘテロシクリルを形成する)から選択され;
ここで、各Qaは独立に:(a)重水素、シアノ、ハロ、ニトロ、イミノ、及びオキソ;(b)C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-10シクロアルキル、C6-14アリール、C7-15アラルキル、ヘテロアリール、及びヘテロシクリル;並びに(c)-C(O)Re、-C(O)ORe、-C(O)NRfRg、-C(O)SRe、-C(NRe)NRfRg、-C(S)Re、-C(S)ORe、-C(S)NRfRg、-ORe、-OC(O)Re、-OC(O)ORe、-OC(O)NRfRg、-OC(O)SRe、-OC(NRe)NRfRg、-OC(S)Re、-OC(S)ORe、-OC(S)NRfRg、-OS(O)Re、-OS(O)2Re、-OS(O)NRfRg、-OS(O)2NRfRg、-NRfRg、-NReC(O)Rh、-NReC(O)ORf、-NReC(O)NRfRg、-NReC(O)SRf、-NReC(NRh)NRfRg、-NReC(S)Rh、-NReC(S)ORf、-NReC(S)NRfRg、-NReS(O)Rh、-NReS(O)2Rh、-NReS(O)NRfRg、-NReS(O)2NRfRg、-SRe、-S(O)Re、-S(O)2Re、-S(O)NRfRg、及び-S(O)2NRfRg;(式中、各Re、Rf、Rg、及びRhは独立に、(i)水素もしくは重水素であるか;(ii)C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-10シクロアルキル、C6-14アリール、C7-15アラルキル、ヘテロアリール、もしくはヘテロシクリルであるか;又は(iii)Rf及びRgは、それらが結合しているN原子と共に、ヘテロシクリルを形成する)から選択される)
の化合物又はそのエナンチオマー、エナンチオマーの混合物、ジアステレオマー、2種以上のジアステレオマーの混合物、互変異性体、2種以上の互変異性体の混合物、もしくは同位体バリアント;又はそれらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、もしくはプロドラッグを投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
R5が、1つ以上の置換基Qでそれぞれが任意に置換された5,6-又は6,6-縮合ヘテロアリールである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
R5が、1つ以上の置換基Qで任意に置換された5,6-縮合ヘテロアリールである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記化合物が、式(II):
【化2】
の化合物又はそのエナンチオマー、エナンチオマーの混合物、ジアステレオマー、2種以上のジアステレオマーの混合物、互変異性体、2種以上の互変異性体の混合物、もしくは同位体バリアント;又はそれらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、もしくはプロドラッグである、請求項1~3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記化合物が、式(III):
【化3】
の化合物又はそのエナンチオマー、エナンチオマーの混合物、ジアステレオマー、2種以上のジアステレオマーの混合物、互変異性体、2種以上の互変異性体の混合物、もしくは同位体バリアント;又はそれらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、もしくはプロドラッグである、請求項1~3のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記化合物が、式(IV):
【化4】
の化合物又はそのエナンチオマー、エナンチオマーの混合物、ジアステレオマー、2種以上のジアステレオマーの混合物、互変異性体、2種以上の互変異性体の混合物、もしくは同位体バリアント;又はそれらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、もしくはプロドラッグである、請求項1~3のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記化合物が、式(V):
【化5】
の化合物又はそのエナンチオマー、エナンチオマーの混合物、ジアステレオマー、2種以上のジアステレオマーの混合物、互変異性体、2種以上の互変異性体の混合物、もしくは同位体バリアント;又はそれらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、もしくはプロドラッグである、請求項1~3のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記化合物が、式(VI):
【化6】
の化合物又はそのエナンチオマー、エナンチオマーの混合物、ジアステレオマー、2種以上のジアステレオマーの混合物、互変異性体、2種以上の互変異性体の混合物、もしくは同位体バリアント;又はそれらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、もしくはプロドラッグである、請求項1~3のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記化合物が、式(II):
【化7】
の化合物又はそのエナンチオマー、エナンチオマーの混合物、ジアステレオマー、2種以上のジアステレオマーの混合物、互変異性体、2種以上の互変異性体の混合物、もしくは同位体バリアント;又はそれらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、もしくはプロドラッグである、請求項1~3のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
R1が、1つ以上の置換基Qで任意に置換されたC1-6アルキルである、請求項1~9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
R1が、メチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、又はエチルである、請求項1~10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
R1が、1つ以上の置換基Qで任意に置換されたC3-10シクロアルキルである、請求項1~9のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
R1が、シクロプロピルである、請求項1~9及び12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
R2が、水素である、請求項1~13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
R2が、1つ以上の置換基Qで任意に置換されたC1-6アルキルである、請求項1~13のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
R2が、メチルである、請求項1~13及び15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
R3が、アミノ、C1-6アルキルアミノ、ジ(C1-6アルキル)アミノ、又はヘテロシクリルで置換されたC1-6アルキルであり;ここで、各アルキル及びヘテロシクリルが、1つ以上の置換基Qで任意に置換さている、請求項1~16のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
R3が、2-ジメチルアミノエチル又は2-モルホリン-4-イルエチルである、請求項1~17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
R3が、アミノ、C1-6アルキルアミノ、又はジ(C1-6アルキル)アミノで置換されたヘテロシクリルであり;ここで、各アルキル及びヘテロシクリルが、1つ以上の置換基Qで任意に置換さている、請求項1~16のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
R3が、3-ジメチルアミノアゼチジン-1-イル、3-ジメチルアミノピロリジン-1-イル、4-ジメチルアミノピペリジン-1-イル、又は1-メチルピペリジン-3-イルである、請求項1~16及び19のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
R4が、1つ以上の置換基Qで任意に置換されたC2-6アルケニルである、請求項1~20のいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
R4が、エテニル又は(3-ジメチルアミノ)プロペン-1-イルである、請求項1~21のいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
R4が、1つ以上の置換基Qで任意に置換されたC2-6アルキニルである、請求項1~20のいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
R4が、エチニル、プロピン-1-イル、又は(3-ジメチルアミノ)プロピン-1-イルである、請求項1~20及び23のいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
R6が、水素又はハロである、請求項4~24のいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
R6が、水素又はクロロである、請求項4~25のいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
R6が、1つ以上の置換基Qで任意に置換されたC1-6アルキルである、請求項4~24のいずれか1項記載の方法。
【請求項28】
R6が、メチルである、請求項4~24及び27のいずれか1項記載の方法。
【請求項29】
R6が、1つ以上の置換基Qで任意に置換されたC1-6アルコキシである、請求項4~24のいずれか1項記載の方法。
【請求項30】
R6が、メトキシである、請求項4~24及び29のいずれか1項記載の方法。
【請求項31】
前記化合物が:
N-(2-((2-(ジメチルアミノ)エチル)(メチル)アミノ)-4-メトキシ-5-((4-(1-メチルイミダゾ[1,5-a]-ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)アクリルアミドA1;
(E)-4-(ジメチルアミノ)-N-(2-((2-(ジメチルアミノ)エチル)(メチル)アミノ)-4-メトキシ-5-((4-(1-メチルイミダゾ[1,5-a]ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)ブタ-2-エナミドA2;
4-(ジメチルアミノ)-N-(4-メトキシ-2-(メチル(2-(メチルアミノ)エチル)アミノ)-5-((4-(1-メチル-イミダゾ[1,5-a]ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)ブタ-2-インアミドA3;
N-(4-メトキシ-2-(メチル(2-(メチルアミノ)エチル)アミノ)-5-((4-(1-メチルイミダゾ[1,5-a]-ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)ブタ-2-インアミドA4;
N-(2-((2-(ジメチルアミノ)エチル)(メチル)アミノ)-4-メトキシ-5-((4-(8-メチルイミダゾ[1,5-a]-ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)アクリルアミドA5;
(E)-4-(ジメチルアミノ)-N-(2-((2-(ジメチルアミノ)エチル)(メチル)アミノ)-4-メトキシ-5-((4-(8-メチルイミダゾ[1,5-a]ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)ブタ-2-エナミドA6;
4-(ジメチルアミノ)-N-(4-メトキシ-2-(メチル(2-(メチルアミノ)エチル)アミノ)-5-((4-(8-メチル-イミダゾ[1,5-a]ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)ブタ-2-インアミドA7;
N-(4-メトキシ-2-(メチル(2-(メチルアミノ)エチル)アミノ)-5-((4-(8-メチルイミダゾ[1,5-a]-ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)ブタ-2-インアミドA8;
N-(2-((2-(ジメチルアミノ)エチル)(メチル)アミノ)-4-メトキシ-5-((4-(5-メチルイミダゾ[1,5-a]-ピリジン-1-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)アクリルアミドA9;
(E)-4-(ジメチルアミノ)-N-(2-((2-(ジメチルアミノ)エチル)(メチル)アミノ)-4-メトキシ-5-((4-(5-メチルイミダゾ[1,5-a]ピリジン-1-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)ブタ-2-エナミドA10;
4-(ジメチルアミノ)-N-(4-メトキシ-2-(メチル(2-(メチルアミノ)エチル)アミノ)-5-((4-(5-メチル-イミダゾ[1,5-a]ピリジン-1-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)ブタ-2-インアミドA11;
N-(4-メトキシ-2-(メチル(2-(メチルアミノ)エチル)アミノ)-5-((4-(5-メチルイミダゾ[1,5-a]-ピリジン-1-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)ブタ-2-インアミドA12;
N-(2-((2-(ジメチルアミノ)エチル)(メチル)アミノ)-4-メトキシ-5-((4-(8-メチルイミダゾ[1,2-a]-ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)アクリルアミドA13;
(E)-4-(ジメチルアミノ)-N-(2-((2-(ジメチルアミノ)エチル)(メチル)アミノ)-4-メトキシ-5-((4-(8-メチルイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)ブタ-2-エナミドA14;
4-(ジメチルアミノ)-N-(4-メトキシ-2-(メチル(2-(メチルアミノ)エチル)アミノ)-5-((4-(8-メチルイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)ブタ-2-インアミドA15;
N-(4-メトキシ-2-(メチル(2-(メチルアミノ)エチル)アミノ)-5-((4-(8-メチルイミダゾ[1,2-a]-ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)ブタ-2-インアミドA16;
N-(2-((2-(ジメチルアミノ)エチル)(メチル)アミノ)-4-メトキシ-5-((4-(7-メチルピラゾロ[1,5-a]-ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)アクリルアミドA17;
(E)-4-(ジメチルアミノ)-N-(2-((2-(ジメチルアミノ)エチル)(メチル)アミノ)-4-メトキシ-5-((4-(7-メチルピラゾロ[1,5-a]ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)ブタ-2-エナミドA18;
4-(ジメチルアミノ)-N-(4-メトキシ-2-(メチル(2-(メチルアミノ)エチル)アミノ)-5-((4-(7-メチルピラゾロ[1,5-a]ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)ブタ-2-インアミドA19;
N-(4-メトキシ-2-(メチル(2-(メチルアミノ)エチル)アミノ)-5-((4-(7-メチルピラゾロ[1,5-a]-ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)ブタ-2-インアミドA20;
N-(2-((2-(ジメチルアミノ)エチル)(メチル)アミノ)-4-メトキシ-5-((4-(1-メチルピロロ[1,2-a]-ピラジン-6-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)アクリルアミドA21;
(E)-4-(ジメチルアミノ)-N-(2-((2-(ジメチルアミノ)エチル)(メチル)アミノ)-4-メトキシ-5-((4-(1-メチルピロロ[1,2-a]ピラジン-6-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)ブタ-2-エナミドA22;
4-(ジメチルアミノ)-N-(4-メトキシ-2-(メチル(2-(メチルアミノ)エチル)アミノ)-5-((4-(1-メチル-ピロロ[1,2-a]ピラジン-6-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)ブタ-2-インアミドA23;
N-(4-メトキシ-2-(メチル(2-(メチルアミノ)エチル)アミノ)-5-((4-(1-メチルピロロ[1,2-a]-ピラジン-6-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)ブタ-2-インアミドA24;
N-(5-((4-(イミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)-4-メトキシ-2-(メチル(2-モルホリノエチル)アミノ)フェニル)アクリルアミドA25;
N-(4-メトキシ-2-(メチル(1-メチルピペリジン-3-イル)アミノ)-5-((4-(8-メチルイミダゾ[1,2-a]-ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)アクリルアミドA26;
N-(5-((4-(8-クロロイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)-2-((2-(ジメチルアミノ)-エチル)(メチル)アミノ)-4-メトキシフェニル)アクリルアミドA27;
N-(2-((2-(ジメチルアミノ)エチル)(メチル)アミノ)-4-メトキシ-5-((4-(8-メトキシイミダゾ[1,2-a]-ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)アクリルアミドA28;もしくは
N-(4-メトキシ-2-(メチル(2-(メチルアミノ)エチル)アミノ)-5-((4-(8-メチルイミダゾ[1,2-a]-ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)アクリルアミドA29;
又はそれらの互変異性体、2種以上の互変異性体の混合物、もしくは同位体バリアント;又はそれらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、もしくはプロドラッグである、請求項1~30のいずれか1項記載の方法。
【請求項32】
前記化合物が、N-(2-((2-(ジメチルアミノ)エチル)-(メチル)アミノ)-4-メトキシ-5-((4-(8-メチルイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)アクリルアミドA13;又はその互変異性体、2種以上の互変異性体の混合物、もしくは同位体バリアント;又はそれらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、もしくはプロドラッグである、請求項1~30のいずれか1項記載の方法。
【請求項33】
前記化合物が、N-(2-((2-(ジメチルアミノ)エチル)-(メチル)アミノ)-4-メトキシ-5-((4-(8-メチルイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)アクリルアミドA13;又はその互変異性体、2種以上の互変異性体の混合物、もしくは同位体バリアント;又はそれらの医薬として許容し得る溶媒和物又は水和物である、請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記化合物が、結晶性である、請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記化合物が、N-(2-((2-(ジメチルアミノ)エチル)-(メチル)アミノ)-4-メトキシ-5-((4-(8-メチルイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)アクリルアミドA13の医薬として許容し得る塩、又はその互変異性体、2種以上の互変異性体の混合物、もしくは同位体バリアント;又はそれらの溶媒和物もしくは水和物である、請求項32記載の方法。
【請求項36】
前記医薬として許容し得る塩が、結晶性である、請求項33記載の方法。
【請求項37】
前記肺がんが、非小肺がんである、請求項1~36のいずれか1項記載の方法。
【請求項38】
前記肺がんが、局所進行性非小肺がんである、請求項1~37のいずれか1項記載の方法。
【請求項39】
前記肺がんが、転移性非小肺がんである、請求項1~37のいずれか1項記載の方法。
【請求項40】
前記肺がんが、ステージII、III、又はIVのものである、請求項1~39のいずれか1項記載の方法。
【請求項41】
前記肺がんが、切除不能なものである、請求項1~40のいずれか1項記載の方法。
【請求項42】
前記肺がんが、難治性のものである、請求項1~41のいずれか1項記載の方法。
【請求項43】
前記肺がんが、再発したものである、請求項1~42のいずれか1項記載の方法。
【請求項44】
前記肺がんが、薬剤抵抗性のものである、請求項1~43のいずれか1項記載の方法。
【請求項45】
前記肺がんが、EGFR阻害剤に抵抗性のものである、請求項1~44のいずれか1項記載の方法。
【請求項46】
前記肺がんが、エクソン20にEGFR変異を有している、請求項1~45のいずれか1項記載の方法。
【請求項47】
前記肺がんが、EGFRエクソン20挿入を有する、請求項1~46のいずれか1項記載の方法。
【請求項48】
前記肺がんが、A763_Y764insXのEGFRエクソン20挿入を有しており、かつXが、20種の天然アミノ酸からそれぞれが独立に選択される1、2、3、4、5、6、又は7個のアミノ酸の挿入である、請求項47記載の方法。
【請求項49】
前記肺がんが、A763_Y764insFQEAのEGFRエクソン20挿入を有する、請求項48記載の方法。
【請求項50】
前記肺がんが、V769_D770insXのEGFRエクソン20挿入を有しており、かつXが、20種の天然アミノ酸からそれぞれが独立に選択される1、2、3、4、5、6、又は7個のアミノ酸の挿入である、請求項47記載の方法。
【請求項51】
前記肺がんが、V769_D770insGE又はV769_D770insASVのEGFRエクソン20挿入を有する、請求項50記載の方法。
【請求項52】
前記肺がんが、D770_N771insXのEGFRエクソン20挿入を有しており、かつXが、20種の天然アミノ酸からそれぞれが独立に選択される1、2、3、4、5、6、又は7個のアミノ酸の挿入である、請求項47記載の方法。
【請求項53】
前記肺がんが、D770_N771insNPG又はD770_N771insSVDのEGFRエクソン20挿入を有する、請求項52記載の方法。
【請求項54】
前記肺がんが、H773_V774insXのEGFRエクソン20挿入を有しており、かつXが、20種の天然アミノ酸からそれぞれが独立に選択される1、2、3、4、5、6、又は7個のアミノ酸の挿入である、請求項47記載の方法。
【請求項55】
前記肺がんが、H773_V774insNPHのEGFRエクソン20挿入を有する、請求項54記載の方法。
【請求項56】
前記対象が、治療を受けたことがない、請求項1~55のいずれか1項記載の方法。
【請求項57】
前記対象が、治療を受けたことがある、請求項1~55のいずれか1項記載の方法。
【請求項58】
前記対象が、先の療法に失敗している、請求項1~57のいずれか1項記載の方法。
【請求項59】
前記対象が、ヒトである、請求項1~58のいずれか1項記載の方法。
【請求項60】
前記化合物が、経口投与される、請求項1~59のいずれか1項記載の方法。
【請求項61】
前記化合物が、錠剤又はカプセル剤として投与される、請求項1~60のいずれか1項記載の方法。
【請求項62】
前記治療有効量が、1日あたり約0.1~約100mg/kgの範囲である、請求項1~61のいずれか1項記載の方法。
【請求項63】
前記治療有効量が、1日あたり約10~約1,000mgの範囲である、請求項1~62のいずれか1項記載の方法。
【請求項64】
前記化合物が、周期的に投与される、請求項1~63のいずれか1項記載の方法。
【請求項65】
1周期が、28日である、請求項1~64のいずれか1項記載の方法。
【請求項66】
前記化合物が、3週間毎日に1週間の休薬が続く28日周期で投与される、請求項1~65のいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、米国特許法119(a)に基づき2021年4月30日に出願された国際出願第PCT/CN2021/091463号の優先権を主張し;その開示の全体は引用により本明細書に組み込まれている。
【0002】
(分野)
本明細書で提供されるのは、肺がんの1つ以上の症状をピリミジニルアミノベンゼンで治療、予防、又は改善する方法である。
【背景技術】
【0003】
(背景)
肺がんは、2020年において全世界で2番目によく診断されるがんであり、がん死の1番の原因である。Sungらの文献「全世界のがん統計2020年:185ヶ国で36種のがんについての全世界での発生率及び死亡率のGLOBOCAN推定(Global cancer statistics 2020: GLOBOCAN estimates of incidence and mortality worldwide for 36 cancers in 185 countries)」 CA Cancer J. Clin. 2021。非小細胞性肺がん(NSCLC)は、全ての肺がんのうちの約80~85%を占める。Osmaniらの文献、Semin. Cancer Biol. 2018, 52, 103-9。上皮成長因子受容体(EGFR)における変異が、NSCLCでよく見られる。Zhouらの文献、Hum. Genomics 2021, 15, 21; Burnett らの文献、PLoS One 2021, 16, e0247620。全てのEGFR変異のうちの90%近くが、まとめて古典的EGFR変異として知られるエクソン19欠失及びエクソン21でのL858R点変異であり、残りのEGFR変異としては、エクソン20挿入(EGFR ex20ins)(約4~12%)、G719X、S768I、及びL861Qが挙げられる。Fangらの文献、BMC Cancer 2019, 19, 595。EGFR ex20insは、NSCLCにおいて3番目によく見られるEGFR変異であり、標的化EGFR阻害剤に対する新規の抵抗性に関連している。Wangらの文献、Transl. Cancer Res. 2020, 9, 2982-91。EGFR ex20insを有するNSCLCは、予後不良であり、治療の選択肢が限られている。Vyse及びHuangの文献、Signal Transduct. Target Ther. 2019, 4, 5; Wangらの文献、Transl. Cancer Res. 2020, 9, 2982-91; Burnett らの文献、PLoS One 2021, 16, e0247620。現在のところ、臨床的に承認された標的化EGFR阻害剤は、EGFR ex20insによるNSCLCを効果的に治療することに失敗している。Vyse及びHuangの文献、Signal Transduct. Target Ther. 2019, 4, 5。従って、EGFR ex20ins変異を有するNSCLCを治療するための効果的な療法に対する未対処の強い要求が存在する。
【発明の概要】
【0004】
(開示の概要)
本明細書で提供されるのは、対象においてEGFR変異を有する肺がんの1つ以上の症状を治療、予防、又は改善する方法であって、それを必要としている該対象に、治療有効量の式(I):
【化1】
(式中:
R1は、C1-6アルキル又はC3-10シクロアルキルであり;
R2は、水素又はC1-6アルキルであり;
R3は、アミノ、C1-6アルキルアミノ、ジ(C1-6アルキル)アミノ、もしくはヘテロシクリルでそれぞれが独立に置換されたC1-6アルキル又はヘテロシクリルであり;
R4は、C2-6アルケニル又はC2-6アルキニルであり;かつ
R5は、二環式ヘテロアリールであり;
ここで、各アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロアリール、及びヘテロシクリルは、1つ以上の、一実施態様においては、1、2、3、又は4つの、置換基Qで任意に置換されており、ここで、各Qは独立に:(a)重水素、シアノ、ハロ、イミノ、ニトロ、及びオキソ;(b)1つ以上の、一実施態様においては、1、2、3、又は4つの、置換基Qaでそれぞれがさらに任意に置換された、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-10シクロアルキル、C6-14アリール、C7-15アラルキル、ヘテロアリール、及びヘテロシクリル;並びに(c)-C(O)Ra、-C(O)ORa、-C(O)NRbRc、-C(O)SRa、-C(NRa)NRbRc、-C(S)Ra、-C(S)ORa、-C(S)NRbRc、-ORa、-OC(O)Ra、-OC(O)ORa、-OC(O)NRbRc、-OC(O)SRa、-OC(NRa)NRbRc、-OC(S)Ra、-OC(S)ORa、-OC(S)NRbRc、-OS(O)Ra、-OS(O)2Ra、-OS(O)NRbRc、-OS(O)2NRbRc、-NRbRc、-NRaC(O)Rd、-NRaC(O)ORd、-NRaC(O)NRbRc、-NRaC(O)SRd、-NRaC(NRd)NRbRc、-NRaC(S)Rd、-NRaC(S)ORd、-NRaC(S)NRbRc、-NRaS(O)Rd、-NRaS(O)2Rd、-NRaS(O)NRbRc、-NRaS(O)2NRbRc、-SRa、-S(O)Ra、-S(O)2Ra、-S(O)NRbRc、及び-S(O)2NRbRc(式中、各Ra、Rb、Rc、及びRdは独立に、(i)水素もしくは重水素であるか;(ii)1つ以上の、一実施態様においては、1、2、3、又は4つの、置換基Qaでそれぞれが任意に置換された、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-10シクロアルキル、C6-14アリール、C7-15アラルキル、ヘテロアリール、もしくはヘテロシクリルであるか;又は(iii)Rb及びRcは、それらが結合しているN原子と共に、1つ以上の、一実施態様においては、1、2、3、又は4つの、置換基Qaで任意に置換されたヘテロシクリルを形成する)から選択され;
ここで、各Qaは独立に:(a)重水素、シアノ、ハロ、ニトロ、イミノ、及びオキソ;(b)C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-10シクロアルキル、C6-14アリール、C7-15アラルキル、ヘテロアリール、及びヘテロシクリル;並びに(c)-C(O)Re、-C(O)ORe、-C(O)NRfRg、-C(O)SRe、-C(NRe)NRfRg、-C(S)Re、-C(S)ORe、-C(S)NRfRg、-ORe、-OC(O)Re、-OC(O)ORe、-OC(O)NRfRg、-OC(O)SRe、-OC(NRe)NRfRg、-OC(S)Re、-OC(S)ORe、-OC(S)NRfRg、-OS(O)Re、-OS(O)2Re、-OS(O)NRfRg、-OS(O)2NRfRg、-NRfRg、-NReC(O)Rh、-NReC(O)ORf、-NReC(O)NRfRg、-NReC(O)SRf、-NReC(NRh)NRfRg、-NReC(S)Rh、-NReC(S)ORf、-NReC(S)NRfRg、-NReS(O)Rh、-NReS(O)2Rh、-NReS(O)NRfRg、-NReS(O)2NRfRg、-SRe、-S(O)Re、-S(O)2Re、-S(O)NRfRg、及び-S(O)2NRfRg;(式中、各Re、Rf、Rg、及びRhは独立に、(i)水素もしくは重水素であるか;(ii)C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-10シクロアルキル、C6-14アリール、C7-15アラルキル、ヘテロアリール、もしくはヘテロシクリルであるか;又は(iii)Rf及びRgは、それらが結合しているN原子と共に、ヘテロシクリルを形成する)から選択される)
の化合物又はそのエナンチオマー、エナンチオマーの混合物、ジアステレオマー、2種以上のジアステレオマーの混合物、互変異性体、2種以上の互変異性体の混合物、もしくは同位体バリアント;又はそれらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、もしくはプロドラッグを投与することを含む、前記方法である。
【0005】
更に、本明細書で提供されるのは、対象において肺がんの1つ以上の症状を治療、予防、又は改善する方法であって:
(a)該対象由来の試料中のEGFRエクソン20変異の存在を決定する工程;及び
(b)該試料が、EGFRエクソン20変異を有していると決定された場合に、該対象に、治療有効量の式(I)の化合物、又はそのエナンチオマー、エナンチオマーの混合物、ジアステレオマー、2種以上のジアステレオマーの混合物、互変異性体、2種以上の互変異性体の混合物、もしくは同位体バリアント;又はそれらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、もしくはプロドラッグ投与する工程
を含む、前記方法である。
【0006】
更に、本明細書で提供されるのは、肺がん細胞の増殖を阻害する方法であって、該細胞を、有効量の式(I)の化合物、又はそのエナンチオマー、エナンチオマーの混合物、ジアステレオマー、2種以上のジアステレオマーの混合物、互変異性体、2種以上の互変異性体の混合物、もしくは同位体バリアント;又はそれらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、もしくはプロドラッグと接触させることを含む、前記方法である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(詳細な説明)
本明細書に記載される開示の理解を容易にするために、いくつかの用語を以下に定義する。
【0008】
一般に、本明細書で使用される命名法及び本明細書に記載される有機化学、医薬品化学、生化学、生物学、及び薬理学における実験室的方法は、当該技術分野において周知かつ通常採用されるものである。別途定義されない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語は全て、一般に、本件開示が属する分野の通常の知識を有する者によって通常理解されるものと同じ意味を有する。
【0009】
「対象」という用語は、これらに限定されないが、霊長類(例えば、ヒト)、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、及びマウスなどの動物を意味する。「対象」及び「患者」という用語は、例えば、ヒト対象などの哺乳動物対象に関して本明細書において互換的に使用される。一実施態様において、対象は、ヒトである。
【0010】
「治療する」、「治療すること」、及び「治療」という用語は、障害、疾患、もしくは状態、もしくは当該障害、疾患、もしくは状態に関連する症状のうちの1つ以上を軽減もしくは抑止すること;又は当該障害、疾患、もしくは状態の原因(複数可)自体を軽減もしくは根絶することを含むことが意味される。
【0011】
「予防する」、「予防すること」、及び「予防」という用語は、障害、疾患、又は状態、及び/又はその付随する症状の発症を遅らせる及び/又は防止する;対象が障害、疾患、又は状態となるのを阻む;又は対象の障害、疾患、又は状態となるリスクを低下させる方法を含むことが意味される。
【0012】
「軽減する」及び「軽減すること」という用語は、障害、疾患、又は状態の1つ以上の症状(例えば、疼痛)を楽にする又は減少させることを意味する。また、当該用語は、活性成分に関連する有害作用を減少させることを意味することもある。時には、対象が予防又は治療薬剤から誘導する有益な作用は、当該障害、疾患、又は状態の治癒をもたらさない。
【0013】
「接触させること」又は「接触させる」という用語は、そのような接触の結果として生理学的及び/又は化学的作用が生じるように、治療薬剤及び生物学的分子(例えば、タンパク質、酵素、RNA、又はDNA)、細胞、又は組織を一緒にすることを言うものとする。接触させることは、インビトロ、エクスビボ、又はインビボで行うことができる。一実施態様において、治療薬剤を、生物学的分子とインビトロで接触させて、当該生物学的分子に対する当該治療薬剤の作用を決定する。別の実施態様において、治療薬剤を、細胞培養液中(インビトロ)の細胞と接触させて、当該細胞に対する当該治療薬剤の作用を決定する。さらに別の実施態様において、治療薬剤を生物学的分子、細胞、又は組織と接触させることは、接触させるべき当該生物学的分子、細胞、又は組織を有する対象への治療薬剤の投与を含む。
【0014】
「治療有効量」又は「有効量」という用語は、投与されたときに、治療中の障害、疾患、又は状態の症状のうちの1つ以上の発症を予防するか、又はある程度軽減するのに十分である化合物の量を含むことを意図している。また、「治療有効量」又は「有効量」という用語は、研究者、獣医師、医師、又は臨床医学者によって求められている生物学的分子(例えば、タンパク質、酵素、RNA、又はDNA)、細胞、組織、系、動物、又はヒトの生物学的又は医学的な反応を誘発するのに十分な化合物の量も意味する。
【0015】
「IC50」又は「EC50」という用語は、そのような反応を測定するアッセイにおける最大反応の50%阻害に必要とされる化合物の量、濃度、又は投薬量を意味する。
【0016】
「医薬として許容し得る担体」、「医薬として許容し得る賦形剤」、「生理学的に許容し得る担体」、又は「生理学的に許容し得る賦形剤」という用語は、液体もしくは固体充填剤、希釈剤、溶媒、又はカプセル化材料などの医薬として許容し得る材料、組成物、又はビヒクルを意味する。一実施態様において、各成分は、医薬製剤のその他の成分と適合性であり、かつ過度の毒性、刺激、アレルギー応答、免疫原性、又は他の問題もしくは合併症を伴わず、かつ妥当なベネフィット/リスク比と釣り合った、対象(例えば、ヒト)の組織又は器官と接触させる使用に適しているという意味で「医薬として許容し得る」。例えば、Adejare編集の文献「レミントン:薬学の科学と実践(Remington: The Science and Practice of Pharmacy)」、第23版; Academic Press, 2020; Sheskeyら編集の文献「医薬賦形剤のハンドブック(Handbook of Pharmaceutical Excipients)」、第9版; Pharmaceutical Press, 2020; Ash及びAsh編集の文献「医薬添加剤のハンドブック(Handbook of Pharmaceutical Additives)」、第3版; Synapse Information Resources, 2007; Gibson編集の文献「医薬予備処方及び処方(Pharmaceutical Preformulation and Formulation)」、第1版; CRC Press, 2015を参照されたい。
【0017】
「約(about)」又は「おおよそ/約(approximately)」という用語は、当業者によって決定される特定の値についての許容し得る誤差を意味し、これは、部分的には、当該値が、どの様に測定されるか又は決定されるかによって決まる。ある実施態様において、「約」又は「おおよそ」という用語は、1、2、又は3標準偏差以内を意味する。ある実施態様において、「約」又は「おおよそ」という用語は、所与の値又は範囲から25%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、又は0.05%以内を意味する。
【0018】
「アルキル」という用語は、直鎖状又は分岐状の飽和一価炭化水素ラジカルを意味し、ここで、該アルキルは、本明細書に記載される1つ以上の置換基Qで任意に置換されている。例えば、C1-6アルキルは、炭素原子が1~6個の直鎖状の飽和一価炭化水素ラジカル又は炭素原子が3~6個の分岐状の飽和一価炭化水素ラジカルを意味する。ある実施態様において、アルキルは、1~20個(C1-20)、1~15個(C1-15)、1~10個(C1-10)、もしくは1~6個(C1-6)の炭素原子を有する直鎖状の飽和一価炭化水素ラジカル、又は炭素原子が3~20個(C3-20)、3~15個(C3-15)、3~10個(C3-10)、もしくは3~6個(C3-6)の分岐状の飽和一価炭化水素ラジカルである。本明細書で使用される場合、直鎖状のC1-6及び分岐状のC3-6アルキル基は、「低級アルキル」とも称される。アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル(全ての異性体、例えば、n-プロピル及びイソプロピルを含む)、ブチル(全ての異性体、例えば、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、及びt-ブチルを含む)、ペンチル(全ての異性体、例えば、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチル、及びtert-ペンチルを含む)、並びにヘキシル(全ての異性体、例えば、n-ヘキシル、イソヘキシル、及びsec-ヘキシルを含む)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
「アルケニル」という用語は、1つ以上の、一実施態様においては、1、2、3、又は4つの、別の実施態様において、1つの、炭素-炭素二重結合を有する直鎖状又は分岐状の一価炭化水素ラジカルを意味する。当該アルケニルは、本明細書に記載される1つ以上の置換基Qで任意に置換されている。「アルケニル」という用語は、当業者によって認識されるように、「cis」もしくは「trans」立体配置又はそれらの混合物、あるいは、「Z」もしくは「E」立体配置又はそれらの混合物を有するラジカルを包含する。例えば、C2-6アルケニルは、炭素原子が2~6個の直鎖状の不飽和一価炭化水素ラジカル又は炭素原子が3~6個の分岐状の不飽和一価炭化水素ラジカルを意味する。ある実施態様において、アルケニルは、炭素原子が2~20個(C2-20)、2~15個(C2-15)、2~10個(C2-10)、又は2~6個(C2-6)の直鎖状の一価炭化水素ラジカル、又は炭素原子が3~20個(C3-20)、3~15個(C3-15)、3~10個(C3-10)、又は3~6個(C3-6)の分岐状の一価炭化水素ラジカルである。アルケニル基の例としては、エテニル、プロペニル(全ての異性体、例えば、プロペン-1-イル、プロペン-2-イル、及びアリルを含む)、並びにブテニル(全ての異性体、例えば、ブテン-1-イル、ブテン-2-イル、ブテン-3-イル、及び2-ブテン-1-イルを含む)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
「アルキニル」という用語は、1つ以上の、一実施態様においては、1、2、3、又は4つの、別の実施態様において、1つの、炭素-炭素三重結合を有する直鎖状又は分岐状の一価炭化水素ラジカルを意味する。当該アルキニルは、本明細書に記載される1つ以上の置換基Qで任意に置換されている。例えば、C2-6アルキニルは、炭素原子が2~6個の直鎖状の不飽和一価炭化水素ラジカル又は炭素原子が4~6個の分岐状の不飽和一価炭化水素ラジカルを意味する。ある実施態様において、アルキニルは、炭素原子が2~20個(C2-20)、2~15個(C2-15)、2~10個(C2-10)、もしくは2~6個(C2-6)の直鎖状の一価炭化水素ラジカル、又は炭素原子が4~20個(C4-20)、4~15個(C4-15)、4~10個(C4-10)、もしくは4~6個(C4-6)の分岐状の一価炭化水素ラジカルである。アルキニル基の例としては、エチニル(-C≡CH)、プロピニル(全ての異性体、例えば、1-プロピニル(-C≡CCH3)及びプロパルギル(-CH2C≡CH)を含む)、ブチニル(全ての異性体、例えば、1-ブチン-1-イル及び2-ブチン-1-イルを含む)、ペンチニル(全ての異性体、例えば、1-ペンチン-1-イル及び1-メチル-2-ブチン-1-イルを含む)、並びにヘキシニル(全ての異性体、例えば、1-ヘキシン-1-イル及び2-ヘキシン-1-イルを含む)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
「シクロアルキル」という用語は、本明細書に記載される1つ以上の置換基Qで任意に置換されている環状一価炭化水素ラジカルを意味する。一実施態様において、当該シクロアルキルは、飽和のもしくは不飽和であるが非芳香族の、かつ/又は架橋又は非架橋の、かつ/又は縮合二環式の基である。ある実施態様において、シクロアルキルは、3~20個(C3-20)、3~15個(C3-15)、3~10個(C3-10)、又は3~7個(C3-7)個の炭素原子を有する。一実施態様において、シクロアルキルは、単環式である。別の実施態様において、シクロアルキルは、二環式である。さらに別の実施態様において、シクロアルキルは、三環式である。さらに別の実施態様において、シクロアルキルは、多環式である。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプチル、シクロヘプテニル、ビシクロ[1.1.1]ペンチル、ビシクロ[2.1.1]ヘキシル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、デカリニル、及びアダマンチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
「アリール」という用語は、少なくとも1つの芳香族炭素環を有する一価単環式芳香族炭化水素ラジカル及び/又は一価多環式芳香族炭化水素ラジカルを意味する。ある実施態様において、アリールは、6~20個(C6-20)、6~15個(C6-15)、又は6~10個(C6-10)の環炭素原子を有する。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、フルオレニル、アズレニル、アントリル、フェナントリル、ピレニル、ビフェニル、及びテルフェニルが挙げられるが、これらに限定されない。また、アリールは、環のうちの1つが、芳香族であり、かつその残りが、飽和、部分不飽和、又は芳香族、例えば、ジヒドロナフチル、インデニル、インダニル、又はテトラヒドロナフチル(テトラリニル)であってもよい二環式又は三環式の炭素環も意味する。一実施態様において、アリールは、単環式である。別の実施態様において、アリールは、二環式である。さらに別の実施態様において、アリールは、三環式である。さらに別の実施態様において、アリールは、多環式である。ある実施態様において、アリールは、本明細書に記載される1つ以上の置換基Qで任意に置換されている。
【0023】
「アラルキル」又は「アリールアルキル」という用語は、1つ以上のアリール基で置換された一価アルキル基を意味する。ある実施態様において、アラルキルは、7~30個(C7-30)、7~20個(C7-20)、又は7~16個(C7-16)の炭素原子を有する。アラルキル基の例としては、ベンジル、フェニルエチル(全ての異性体、例えば、1-フェニルエチル及び2-フェニルエチルを含む)、並びにフェニルプロピル(全ての異性体、例えば、1-フェニルプロピル、2-フェニル-プロピル、及び3-フェニルプロピルを含む)が挙げられるが、これらに限定されない。ある実施態様において、アラルキルは、本明細書に記載される1つ以上の置換基Qで任意に置換されている。
【0024】
「ヘテロアリール」という用語は、少なくとも1つの芳香環が、当該環内に、それぞれがO、S、及びNから独立に選択される1つ以上のヘテロ原子を有する、少なくとも1つの芳香環を有する一価単環式芳香族基又は一価多環式芳香族基を意味する。ヘテロアリールは、当該芳香環を介して分子の残りの部分に結合している。ヘテロアリール基の各環は、1つもしくは2つのO原子、1つもしくは2つのS原子、及び/又は1~4つのN原子を有することができ;但し、各環におけるヘテロ原子の総数は、4以下であり、各環は、少なくとも1つの炭素原子を有する。ある実施態様において、ヘテロアリールは、5~20個、5~15個、又は5~10個の環原子を有する。一実施態様において、ヘテロアリールは、単環式である。単環式ヘテロアリール基の例としては、フラニル、イミダゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリル、チアジアゾリル、チアゾリル、チエニル、テトラゾリル、トリアジニル、及びトリアゾリルが挙げられるが、これらに限定されない。別の実施態様において、ヘテロアリールは、二環式である。二環式ヘテロアリール基の例としては、ベンゾフラニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾピラニル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチエニル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾオキサゾリル、フロピリンジル(furopyrindyl)(全ての異性体、例えば、フロ[2,3-b]ピリジニル、フロ[2,3-c]ピリジニル、フロ[3,2-b]-ピリジニル、フロ[3,2-c]ピリジニル、フロ[3,4-b]ピリジニル、及びフロ[3,4-c]ピリジニルを含む)、イミダゾピリジニル(全ての異性体、例えば、イミダゾ[1,2-a]ピリジニル、イミダゾ[4,5-b]ピリジニル、及びイミダゾ[4,5-c]ピリジニルを含む)、イミダゾチアゾリル(全ての異性体、例えば、イミダゾ[2,1-b]-チアゾリル及びイミダゾ[4,5-d]チアゾリルを含む)、インダゾリル、インドリジニル、インドリル、イソベンゾフラニル、イソベンゾチエニル(すなわち、ベンゾ[c]チエニル)、イソインドリル、イソキノリニル、ナフチリジニル(全ての異性体、例えば、1,5-ナフチリジニル、1,6-ナフチリジニル、1,7-ナフチリジニル、及び1,8-ナフチリジニルを含む)、オキサゾロピリジニル(全ての異性体、例えば、オキサゾロ[4,5-b]ピリジニル、オキサゾロ[4,5-c]-ピリジニル、オキサゾロ[5,4-b]ピリジニル、及びオキサゾロ[5,4-c]ピリジニルを含む)、フタラジニル、プテリジニル、プリニル、ピロロピリジル(全ての異性体、例えば、ピロロ[2,3-b]ピリジニル、ピロロ[2,3-c]ピリジニル、ピロロ[3,2-b]ピリジニル、及びピロロ[3,2-c]ピリジニルを含む)、キノリニル、キノキサリニル、キナゾリニル、チアジアゾロピリミジル(全ての異性体、例えば、[1,2,5]チアジアゾロ[3,4-d]-ピリミジニル及び[1,2,3]チアジアゾロ[4,5-d]ピリミジニルを含む)、並びにチエノピリジル(全ての異性体、例えば、チエノ[2,3-b]ピリジニル、チエノ[2,3-c]ピリジニル、チエノ[3,2-b]ピリジニル、及びチエノ-[3,2-c]ピリジニルを含む)が挙げられるが、これらに限定されない。さらに別の実施態様において、ヘテロアリールは、三環式である。三環式ヘテロアリール基の例としては、アクリジニル、ベンズインドリル、カルバゾリル、ジベンゾ-フラニル、ペリミジニル、フェナントロリニル、フェナントリジニル(全ての異性体、例えば、1,5-フェナントロリニル、1,6-フェナントロリニル、1,7-フェナントロリニル、1,9-フェナントロリニル、及び2,10-フェナントロリニルを含む)、フェナルサジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、及びキサンテニルが挙げられるが、これらに限定されない。ある実施態様において、ヘテロアリールは、本明細書に記載される1つ以上の置換基Qで任意に置換されている。
【0025】
「ヘテロシクリル」又は「ヘテロ環式」という用語は、非芳香環原子のうちの1つ以上が、それぞれがO、S、及びNから独立に選択されるヘテロ原子であり;かつ残りの環原子が、炭素原子である、一価単環式非芳香環系又は少なくとも1つの非芳香環を有する一価多環式環系を意味する。ある実施態様において、ヘテロシクリル又はヘテロ環式基は、3~20個、3~15個、3~10個、3~8個、4~7個、又は5~6個の環原子を有する。ヘテロシクリルは、非芳香環を介して分子の残りの部分に結合している。ある実施態様において、ヘテロシクリルは、縮合又は架橋されていてもよく、かつ窒素又は硫黄原子が、任意に酸化されていてもよく、窒素原子が、任意に四級化さていてもよく、かついくつかの環が、部分的に又は完全に飽和していてもよく、もしくは芳香族であってもよい、単環式、二環式、三環式、又は四環式の環系である。ヘテロシクリルは、安定な化合物の生成をもたらす任意のヘテロ原子又は炭素原子で主構造に取り付けられ得る。ヘテロシクリル及びヘテロ環式基の例としては、アゼピニル、ベンゾジオキサニル、ベンゾジオキソリル、ベンゾフラノニル、クロマニル、デカヒドロイソキノリニル、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロベンズイソチアゾリル、ジヒドロベンズイソオキサジニル(全ての異性体、例えば、1,4-ジヒドロベンゾ[d][1,3]オキサジニル、3,4-ジヒドロベンゾ[c][1,2]-オキサジニル、及び3,4-ジヒドロベンゾ[d][1,2]オキサジニルを含む)、ジヒドロベンゾチエニル、ジヒドロイソベンゾフラニル、ジヒドロベンゾ[c]チエニル、ジヒドロフリル、ジヒドロイソインドリル、ジヒドロピラニル、ジヒドロピラゾリル、ジヒドロピラジニル、ジヒドロピリジニル、ジヒドロピリミジニル、ジヒドロピロリル、ジオキソラニル、1,4-ジチアニル、フラノニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、インドリニル、イソクロマニル、イソインドリニル、イソチアゾリジニル、イソオキサゾリジニル、モルホリニル、オクタヒドロインドリル、オクタヒドロイソインドリル、オキサゾリジンオニル、オキサゾリジニル、オキシラニル、ピペラジニル、ピペリジニル、4-ピペリドニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピロリジニル、ピロリニル、キヌクリジニル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチエニル、チアモルホリニル、チアゾリジニル、チオクロマニル、テトラヒドロキノリニル、及び1,3,5-トリチアニルが挙げられるが、これらに限定されない。ある実施態様において、ヘテロシクリルは、本明細書に記載される1つ以上の置換基Qで任意に置換されている。
【0026】
「ハロゲン」、「ハロゲン化物」、又は「ハロ」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ、及び/又はヨードを意味する。
【0027】
「任意に置換された」という用語は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、又はヘテロシクリル基などの基又は置換基が、例えば、(a)重水素(-D)、シアノ(-CN)、ハロ、イミノ(=NH)、ニトロ(-NO2)、及びオキソ(=O);(b)1つ以上の、一実施態様においては、1、2、3、又は4つの、置換基Qaでそれぞれがさらに任意に置換された、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-10シクロアルキル、C6-14アリール、C7-15アラルキル、ヘテロアリール、及びヘテロシクリル;並びに(c)-C(O)Ra、-C(O)ORa、-C(O)NRbRc、-C(O)SRa、-C(NRa)NRbRc、-C(S)Ra、-C(S)ORa、-C(S)NRbRc、-ORa、-OC(O)Ra、-OC(O)ORa、-OC(O)NRbRc、-OC(O)SRa、-OC(NRa)NRbRc、-OC(S)Ra、-OC(S)ORa、-OC(S)NRbRc、-OS(O)Ra、-OS(O)2Ra、-OS(O)NRbRc、-OS(O)2NRbRc、-NRbRc、-NRaC(O)Rd、-NRaC(O)ORd、-NRaC(O)NRbRc、-NRaC(O)SRd、-NRaC(NRd)NRbRc、-NRaC(S)Rd、-NRaC(S)ORd、-NRaC(S)NRbRc、-NRaS(O)Rd、-NRaS(O)2Rd、-NRaS(O)NRbRc、-NRaS(O)2NRbRc、-SRa、-S(O)Ra、-S(O)2Ra、-S(O)NRbRc、及び-S(O)2NRbRc(式中、各Ra、Rb、Rc、及びRdは独立に、(i)水素もしくは重水素であるか;(ii)1つ以上の、一実施態様においては、1、2、3、又は4つの、置換基Qaでそれぞれが任意に置換された、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-10シクロアルキル、C6-14アリール、C7-15アラルキル、ヘテロアリール、もしくはヘテロシクリルであるか;又は(iii)Rb及びRcは、それらが結合しているN原子と共に、1つ以上の、一実施態様においては、1、2、3、又は4つの、置換基Qaで任意に置換されたヘテロシクリルを形成する)からそれぞれが独立に選択される1つ以上の、一実施態様においては、1、2、3、又は4つの、置換基Q、で置換されていてもよいことを意味することが意図される。本明細書で使用される場合、置換されることができる全ての基は、「任意に置換されている」。
【0028】
一実施態様において、各Qaは独立に:(a)重水素、シアノ、ハロ、イミノ、ニトロ、及びオキソ;(b)C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-10シクロアルキル、C6-14アリール、C7-15アラルキル、ヘテロアリール、及びヘテロシクリル;並びに(c)-C(O)Re、-C(O)ORe、-C(O)NRfRg、-C(O)SRe、-C(NRe)NRfRg、-C(S)Re、-C(S)ORe、-C(S)NRfRg、-ORe、-OC(O)Re、-OC(O)ORe、-OC(O)NRfRg、-OC(O)SRe、-OC(NRe)NRfRg、-OC(S)Re、-OC(S)ORe、-OC(S)NRfRg、-OS(O)Re、-OS(O)2Re、-OS(O)NRfRg、-OS(O)2NRfRg、-NRfRg、-NReC(O)Rh、-NReC(O)ORf、-NReC(O)NRfRg、-NReC(O)SRf、-NReC(NRh)NRfRg、-NReC(S)Rh、-NReC(S)ORf、-NReC(S)NRfRg、-NReS(O)Rh、-NReS(O)2Rh、-NReS(O)NRfRg、-NReS(O)2NRfRg、-SRe、-S(O)Re、-S(O)2Re、-S(O)NRfRg、及び-S(O)2NRfRg;(式中、各Re、Rf、Rg、及びRhは独立に、(i)水素もしくは重水素であるか;(ii)C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-10シクロアルキル、C6-14アリール、C7-15アラルキル、ヘテロアリール、もしくはヘテロシクリルであるか;又は(iii)Rf及びRgは、それらが結合しているN原子と共に、ヘテロシクリルを形成する)から選択される。
【0029】
ある実施態様において、「光学活性な」及び「鏡像異性的に活性な」は、約80%以上、約90%以上、約91%以上、約92%以上、約93%以上、約94%以上、約95%以上、約96%以上、約97%以上、約98%以上、約99%以上、約99.5%以上、又は以約99.8%上の鏡像体過剰率を有する分子の集合を意味する。ある実施態様において、光学活性な化合物は、当該のエナンチオマー混合物の総重量に基づいて約95%以上の一方のエナンチオマー及び約5%以下の他方のエナンチオマーを含む。ある実施態様において、光学活性な化合物は、当該のエナンチオマー混合物の総重量に基づいて約98%以上の一方のエナンチオマー及び約2%以下の他方のエナンチオマーを含む。ある実施態様において、光学活性な化合物は、当該のエナンチオマー混合物の総重量に基づいて約99%以上の一方のエナンチオマー及び約1%以下の他方のエナンチオマーを含む。
【0030】
光学活性な化合物を説明するにあたり、接頭辞R及びSが、該化合物のそのキラル中心まわりの絶対的な立体配置を意味するように用いられる。(+)及び(-)は、該化合物の旋光性、すなわち、偏光の平面が該光学活性な化合物によって回転される方向を意味するように用いられる。(-)の接頭辞は、該化合物が、左旋性である、すなわち、該化合物が、偏光の平面を左に、つまり、反時計回りに回転させることを示す。(+)の接頭辞は、該化合物が、右旋性である、すなわち、該化合物が、偏光の平面を右に、つまり時計回りに回転させることを示す。しかしながら、旋光の符号(+)及び(-)は、化合物の絶対的な立体配置R及びSとは関連していない。
【0031】
「同位体濃縮された」という用語は、そのような化合物を構成する原子のうちの1つ以上において非天然の比率の同位体を含有する化合物を意味する。ある実施態様において、同位体濃縮された化合物は、これらに限定されないが、水素(1H)、重水素(2H)、三重水素(3H)、炭素-11(11C)、炭素-12(12C)、炭素-13(13C)、炭素-14(14C)、窒素-13(13N)、窒素-14(14N)、窒素-15(15N)、酸素-14(14O)、酸素-15(15O)、酸素-16(16O)、酸素-17(17O)、酸素-18(18O)、フッ素-17(17F)、フッ素-18(18F)、リン-31(31P)、リン-32(32P)、リン-33(33P)、硫黄-32(32S)、硫黄-33(33S)、硫黄-34(34S)、硫黄-35(35S)、硫黄-36(36S)、塩素-35(35Cl)、塩素-36(36Cl)、塩素-37(37Cl)、臭素-79(79Br)、臭素-81(81Br)、ヨウ素-123(123I)、ヨウ素-125(125I)、ヨウ素-127(127I)、ヨウ素-129(129I)、及びヨウ素-131(131I)などの、非天然の比率の1種以上の同位体を含有する。ある実施態様において、同位体濃縮された化合物は、安定な形態にある、すなわち、非放射活性である。ある実施態様において、同位体濃縮された化合物は、非天然の比率のこれらに限定されないが、水素(1H)、重水素(2H)、炭素-12(12C)、炭素-13(13C)、窒素-14(14N)、窒素-15(15N)、酸素-16(16O)、酸素-17(17O)、酸素-18(18O)、フッ素-17(17F)、リン-31(31P)、硫黄-32(32S)、硫黄-33(33S)、硫黄-34(34S)、硫黄-36(36S)、塩素-35(35Cl)、塩素-37(37Cl)、臭素-79(79Br)、臭素-81(81Br)、及びヨウ素-127(127Iなどの、1種以上の同位体を含有する。ある実施態様において、同位体濃縮された化合物は、不安定な形態にある、すなわち、放射活性である。ある実施態様において、同位体濃縮された化合物は、これらに限定されないが、三重水素(3H)、炭素-11(11C)、炭素-14(14C)、窒素-13(13N)、酸素-14(14O)、酸素-15(15O)、フッ素-18(18F)、リン-32(32P)、リン-33(33P)、硫黄-35(35S)、塩素-36(36Cl)、ヨウ素-123(123I)、ヨウ素-125(125I)、ヨウ素-129(129I)、及びヨウ素-131(131I)などの、非天然の比率の1種以上の同位体を含有する。本明細書で提供されるような化合物において、当業者の判断により実現可能である場合には、任意の水素を、例として、2Hとすることができ、又は任意の炭素を、例えば、13Cとすることができ、又は任意の窒素を、例えば、15Nとすることができ、又任意の酸素を、例えば、18Oとすることができることが理解されるであろう。
【0032】
「同位体濃縮率(isotopic enrichment)」という用語は、分子内の所与の位置での元素のより一般的でない同位体(例えば、重水素又は水素-2を表すD)の、当該元素のより一般的な同位体(例えば、軽水素又は水素-1を表す1H)の代わりの組み入れの百分率を意味する。本明細書で使用される場合、分子内の特定の位置での原子が、特定のより一般的でない同位体であると指定される場合には、当該位置における当該同位体の存在比が、それの天然存在比よりも実質的に大きいことが理解される。
【0033】
「同位体濃縮係数」という用語は、同位体濃縮された化合物内の同位体の存在比と特定の同位体の天然存在比との間の比を意味する。
【0034】
「水素」という用語又は「H」記号は、軽水素(1H)、重水素(2H又はD)、及び三重水素(3H)をそれらの天然存在比で含む天然に存在する水素同位体の組成物を意味する。軽水素は、99.98%を超える天然存在比を有する最もよく見られる水素同位体である。重水素は、約0.0156%の天然存在比を有するより一般的でない水素同位体である。
【0035】
「重水素濃縮率」という用語は、分子内の所与の位置での重水素の水素の代わりの組み入れの百分率を意味する。例えば、所与の位置での1%の重水素濃縮率は、所与の試料中の分子の1%が、当該指定された位置に重水素を含有することを意味する。重水素の天然の分布は、平均で約0.0156%であるため、非濃縮出発材料を用いて合成された化合物内の任意の位置での重水素濃縮率は、平均で約0.0156%である。本明細書で使用される場合、同位体濃縮された化合物内の特定の位置が、重水素を有すると指定されている場合には、当該化合物内の当該位置での重水素の存在比が、それの天然存在比(0.0156%)よりも実質的に大きいことが理解される。
【0036】
「炭素」という用語又は記号「C」は、炭素-12(12C)及び炭素-13(13C)をそれらの天然存在比で含む天然に存在する炭素同位体の組成物を意味する。炭素-12は、98.89%を超える天然存在比を有する最もよく見られる炭素同位体である。炭素-13は、約1.11%の天然存在比を有するより一般的でない炭素同位体である。
【0037】
「炭素-13濃縮率」又は「13C濃縮率」という用語は、分子内の所与の位置での炭素の代わりの炭素-13の組み入れの百分率を意味する。例えば、所与の位置での10%の炭素-13濃縮率は、所与の試料内の分子の10%が、当該指定された位置に炭素-13を含有することを意味する。炭素-13の天然の分布は、平均で約1.11%であるため、非濃縮出発材料を用いて合成された化合物内の任意の位置での炭素-13濃縮率は、平均で約1.11%である。本明細書で使用される場合、同位体濃縮された化合物内の特定の位置が、炭素-13を有すると指定されている場合には、当該化合物内の当該位置での炭素-13の存在比が、それの天然存在比(1.11%)よりも実質的に大きいことが理解される。
【0038】
「実質的に純粋な」及び「実質的に均質な」という用語は、物質について言う場合、これらに限定されないが、薄層クロマトグラフィー(TLC)、ゲル電気泳動、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ガスクロマトグラフィー(GC)、核磁気共鳴(NMR)、及び質量分析(MS)などの、当業者によって用いられる標準的な分析方法によって決定した場合に容易に検出可能な不純物がないように見える程度に十分な均質なこと;又はさらなる精製が、該物質の物理的、化学的、生物学的、及び/又は薬理学的性質、例えば、酵素活性及び生物活性などを検出できるほどに変化させない程度に十分に純粋なことを意味する。ある実施態様において、「実質的に純粋な」又は「実質的に均質な」は、標準的な分析方法によって決定される場合に、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は少なくとも約99.5重量%の分子が、単一のエナンチオマー、ラセミ混合物、又はエナンチオマーの混合物などの単一の化合物である分子の集合であることを意味する。本明細書で使用される場合、同位体濃縮された分子内の特定の位置での原子が、特定のより一般的でない同位体であると指定されている場合には、当該指定された位置に当該指定された同位体以外を含有する分子は、当該同位体濃縮された化合物に関して不純物である。従って、重水素であると指定された特定の位置の原子を有する重水素化化合物にとって、同じ位置に軽水素を含有する化合物は、不純物である。
【0039】
「溶媒和物」という用語は、溶質、例えば、本明細書で提供される化合物の1つ以上の分子、及び化学量論又は非化学量論量で存在する溶媒の1つ以上の分子によって形成される複合体又は集合体を意味する。適当な溶媒としては、水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、及び酢酸が挙げられるが、これらに限定されない。ある実施態様において、溶媒は、医薬として許容し得るものである。一実施態様において、複合体又は集合体は、結晶形態である。別の実施態様において、複合体又は集合体は、非結晶形態である。溶媒が、水である場合、溶媒和物は、水和物である。水和物の例としては、半水和物、一水和物、二水和物、三水和物、四水和物、及び五水和物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
「そのエナンチオマー、エナンチオマーの混合物、ジアステレオマー、2種以上のジアステレオマーの混合物、互変異性体、2種以上の互変異性体の混合物、もしくは同位体バリアント;又はそれらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、もしくはプロドラッグ」という句は、「(i)そこで言及される化合物のエナンチオマー、エナンチオマーの混合物、ジアステレオマー、2種以上のジアステレオマーの混合物、互変異性体、2種以上の互変異性体の混合物、もしくは同位体バリアント;又は(ii)そこで言及される化合物の医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、もしくはプロドラッグ、又は(iii)そこで言及される化合物のエナンチオマー、エナンチオマーの混合物、ジアステレオマー、2種以上のジアステレオマーの混合物、互変異性体、2種以上の互変異性体の混合物、もしくは同位体バリアントの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、もしくはプロドラッグという句と同じ意味を有する。
【0041】
(化合物)
一実施態様において、本明細書に記載されるのは、式(I):
【化2】
(式中:
R1は、C1-6アルキル又はC3-10シクロアルキルであり;
R2は、水素又はC1-6アルキルであり;
R3は、アミノ、C1-6アルキルアミノ、ジ(C1-6アルキル)アミノ、もしくはヘテロシクリルでそれぞれが独立に置換されたC1-6アルキル又はヘテロシクリルであり;
R4は、C2-6アルケニル又はC2-6アルキニルであり;かつ
R5は、二環式ヘテロアリールであり;
ここで、各アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロアリール、及びヘテロシクリルは、1つ以上の、一実施態様においては、1、2、3、又は4つの、置換基Qで任意に置換されており、ここで、各Qは独立に:(a)重水素、シアノ、ハロ、イミノ、ニトロ、及びオキソ;(b)1つ以上の、一実施態様においては、1、2、3、又は4つの、置換基Qaでそれぞれがさらに任意に置換された、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-10シクロアルキル、C6-14アリール、C7-15アラルキル、ヘテロアリール、及びヘテロシクリル;並びに(c)-C(O)Ra、-C(O)ORa、-C(O)NRbRc、-C(O)SRa、-C(NRa)NRbRc、-C(S)Ra、-C(S)ORa、-C(S)NRbRc、-ORa、-OC(O)Ra、-OC(O)ORa、-OC(O)NRbRc、-OC(O)SRa、-OC(NRa)NRbRc、-OC(S)Ra、-OC(S)ORa、-OC(S)NRbRc、-OS(O)Ra、-OS(O)2Ra、-OS(O)NRbRc、-OS(O)2NRbRc、-NRbRc、-NRaC(O)Rd、-NRaC(O)ORd、-NRaC(O)NRbRc、-NRaC(O)SRd、-NRaC(NRd)NRbRc、-NRaC(S)Rd、-NRaC(S)ORd、-NRaC(S)NRbRc、-NRaS(O)Rd、-NRaS(O)2Rd、-NRaS(O)NRbRc、-NRaS(O)2NRbRc、-SRa、-S(O)Ra、-S(O)2Ra、-S(O)NRbRc、及び-S(O)2NRbRc(式中、各Ra、Rb、Rc、及びRdは独立に、(i)水素もしくは重水素であるか;(ii)1つ以上の、一実施態様においては、1、2、3、又は4つの、置換基Qaでそれぞれが任意に置換された、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-10シクロアルキル、C6-14アリール、C7-15アラルキル、ヘテロアリール、もしくはヘテロシクリルであるか;又は(iii)Rb及びRcは、それらが結合しているN原子と共に、1つ以上の、一実施態様においては、1、2、3、又は4つの、置換基Qaで任意に置換されたヘテロシクリルを形成する)から選択され;
ここで、各Qaは独立に:(a)重水素、シアノ、ハロ、ニトロ、イミノ、及びオキソ;(b)C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-10シクロアルキル、C6-14アリール、C7-15アラルキル、ヘテロアリール、及びヘテロシクリル;並びに(c)-C(O)Re、-C(O)ORe、-C(O)NRfRg、-C(O)SRe、-C(NRe)NRfRg、-C(S)Re、-C(S)ORe、-C(S)NRfRg、-ORe、-OC(O)Re、-OC(O)ORe、-OC(O)NRfRg、-OC(O)SRe、-OC(NRe)NRfRg、-OC(S)Re、-OC(S)ORe、-OC(S)NRfRg、-OS(O)Re、-OS(O)2Re、-OS(O)NRfRg、-OS(O)2NRfRg、-NRfRg、-NReC(O)Rh、-NReC(O)ORf、-NReC(O)NRfRg、-NReC(O)SRf、-NReC(NRh)NRfRg、-NReC(S)Rh、-NReC(S)ORf、-NReC(S)NRfRg、-NReS(O)Rh、-NReS(O)2Rh、-NReS(O)NRfRg、-NReS(O)2NRfRg、-SRe、-S(O)Re、-S(O)2Re、-S(O)NRfRg、及び-S(O)2NRfRg;(式中、各Re、Rf、Rg、及びRhは独立に、(i)水素もしくは重水素であるか;(ii)C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-10シクロアルキル、C6-14アリール、C7-15アラルキル、ヘテロアリール、もしくはヘテロシクリルであるか;又は(iii)Rf及びRgは、それらが結合しているN原子と共に、ヘテロシクリルを形成する)から選択される)
の化合物又はそのエナンチオマー、エナンチオマーの混合物、ジアステレオマー、2種以上のジアステレオマーの混合物、互変異性体、2種以上の互変異性体の混合物、もしくは同位体バリアント;又はそれらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、もしくはプロドラッグである。
【0042】
ある実施態様において、式(I)において、R5は、1つ以上の置換基Qでそれぞれが任意に置換された5,6-又は6,6-縮合ヘテロアリールである。ある実施態様において、式(I)において、R5は、1つ以上の置換基Qで任意に置換された5,6-縮合ヘテロアリールである。ある実施態様において、式(I)において、R5は、
【化3】
(式中、各R6は独立に、(i)水素もしくはハロ;又は(ii)1つ以上の置換基Qでそれぞれが任意に置換された、C1-6アルキルもしくはC1-6アルコキシである)
である。
【0043】
別の実施態様において、本明細書に記載されるのは、式(II):
【化4】
(式中、R1、R2、R3、R4、及びR6はそれぞれ、本明細書において定義されるとおりである)
の化合物又はそのエナンチオマー、エナンチオマーの混合物、ジアステレオマー、2種以上のジアステレオマーの混合物、互変異性体、2種以上の互変異性体の混合物、もしくは同位体バリアント;又はそれらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、もしくはプロドラッグである。
【0044】
さらに別の実施態様において、本明細書に記載されるのは、式(III):
【化5】
(式中、R1、R2、R3、R4、及びR6はそれぞれ、本明細書において定義されるとおりである)
の化合物又はそのエナンチオマー、エナンチオマーの混合物、ジアステレオマー、2種以上のジアステレオマーの混合物、互変異性体、2種以上の互変異性体の混合物、もしくは同位体バリアント;又はそれらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、もしくはプロドラッグである。
【0045】
さらに別の実施態様において、本明細書に記載されるのは、式(IV):
【化6】
(式中、R1、R2、R3、R4、及びR6はそれぞれ、本明細書において定義されるとおりである)
の化合物又はそのエナンチオマー、エナンチオマーの混合物、ジアステレオマー、2種以上のジアステレオマーの混合物、互変異性体、2種以上の互変異性体の混合物、もしくは同位体バリアント;又はそれらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、もしくはプロドラッグである。
【0046】
さらに別の実施態様において、本明細書に記載されるのは、式(V):
【化7】
(式中、R1、R2、R3、R4、及びR6はそれぞれ、本明細書において定義されるとおりである)
の化合物又はそのエナンチオマー、エナンチオマーの混合物、ジアステレオマー、2種以上のジアステレオマーの混合物、互変異性体、2種以上の互変異性体の混合物、もしくは同位体バリアント;又はそれらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、もしくはプロドラッグである。
【0047】
さらに別の実施態様において、本明細書に記載されるのは、式(VI):
【化8】
(式中、R1、R2、R3、R4、及びR6はそれぞれ、本明細書において定義されるとおりである)
の化合物又はそのエナンチオマー、エナンチオマーの混合物、ジアステレオマー、2種以上のジアステレオマーの混合物、互変異性体、2種以上の互変異性体の混合物、もしくは同位体バリアント;又はそれらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、もしくはプロドラッグである。
【0048】
さらに別の実施態様において、本明細書に記載されるのは、式(VII):
【化9】
(式中、R1、R2、R3、R4、及びR6はそれぞれ、本明細書において定義されるとおりである)
の化合物又はそのエナンチオマー、エナンチオマーの混合物、ジアステレオマー、2種以上のジアステレオマーの混合物、互変異性体、2種以上の互変異性体の混合物、もしくは同位体バリアント;又はそれらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、もしくはプロドラッグである。
【0049】
ある実施態様において、式(I)~式(VII)のいずれか1つにおいて、R1は、1つ以上の置換基Qで任意に置換されたC1-6アルキルである。ある実施態様において、式(I)~式(VII)のいずれか1つにおいて、R1は、1つ以上のハロで任意に置換されたC1-6アルキルである。ある実施態様において、式(I)~式(VII)のいずれか1つにおいて、R1は、1つ以上の置換基Qで任意に置換されたC3-10シクロアルキルである。ある実施態様において、式(I)~式(VII)のいずれか1つにおいて、R1は、メチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、エチル、又はシクロプロピルである。
【0050】
ある実施態様において、式(I)~式(VII)のいずれか1つにおいて、R2は、水素である。ある実施態様において、式(I)~式(VII)のいずれか1つにおいて、R2は、1つ以上の置換基Qで任意に置換されたC1-6アルキルである。ある実施態様において、式(I)~式(VII)のいずれか1つにおいて、R2は、メチルである。
【0051】
ある実施態様において、式(I)~式(VII)のいずれか1つにおいて、R3は、アミノ、C1-6アルキルアミノ、ジ(C1-6アルキル)アミノ、もしくはヘテロシクリル(ここで、各アルキル及びヘテロシクリルは、1つ以上の置換基Qで任意に置換されている)で置換されたC1-6アルキルである。ある実施態様において、式(I)~式(VII)のいずれか1つにおいて、R3は、アミノで置換されたC1-6アルキルである。ある実施態様において、式(I)~式(VII)のいずれか1つにおいて、R3は、1つ以上の置換基Qで任意に置換されたC1-6アルキルアミノで置換されたC1-6アルキルである。ある実施態様において、式(I)~式(VII)のいずれか1つにおいて、R3は、1つ以上の置換基Qで任意に置換されたジ(C1-6アルキル)アミノで置換されたC1-6アルキルである。ある実施態様において、式(I)~式(VII)のいずれか1つにおいて、R3は、1つ以上の置換基Qで任意に置換されたヘテロシクリルで置換されたC1-6アルキルである。ある実施態様において、式(I)~式(VII)のいずれか1つにおいて、R3は、メチルアミノ又はジメチルアミノで置換されたC1-6アルキルである。ある実施態様において、式(I)~式(VII)のいずれか1つにおいて、R3は、2-ジメチルアミノエチル又は2-モルホリン-4-イルエチルである。
【0052】
ある実施態様において、式(I)~式(VII)のいずれか1つにおいて、R3は、アミノ、C1-6アルキルアミノ、又はジ(C1-6アルキル)アミノ(ここで、各アルキルは、1つ以上の置換基Qで任意に置換されている)で置換されたヘテロシクリルである。ある実施態様において、式(I)~式(VII)のいずれか1つにおいて、R3は、それぞれがアミノ、C1-6アルキルアミノ、又はジ(C1-6アルキル)アミノ(ここで、各アルキルは、1つ以上の置換基Qで任意に置換されている)で置換された3員~8員のヘテロシクリルである。ある実施態様において、式(I)~式(VII)のいずれか1つにおいて、R3は、メチルアミノ又はジメチルアミノで置換されたヘテロシクリルである。ある実施態様において、式(I)~式(VII)のいずれか1つにおいて、R3は、メチルアミノ又はジメチルアミノでそれぞれが独立に置換された、4員、5員、又は6員のヘテロシクリルである。ある実施態様において、式(I)~式(VII)のいずれか1つにおいて、R3は、ジメチルアミノで置換されたヘテロシクリルである。ある実施態様において、式(I)~式(VII)のいずれか1つにおいて、R3は、ジメチルアミノでそれぞれが独立に置換された、4員、5員、又は6員のヘテロシクリルである。ある実施態様において、式(I)~式(VII)のいずれか1つにおいて、R3は、ジメチルアミノアゼチジニル、ジメチルアミノピロリジニル、ジメチルアミノピペリジニル、又はメチルピペリジニルである。ある実施態様において、式(I)~式(VII)のいずれか1つにおいて、R3は、3-ジメチルアミノアゼチジン-1-イル、3-ジメチルアミノピロリジン-1-イル、4-ジメチルアミノピペリジン-1-イル、又は1-メチルピペリジン-3-イルである。
【0053】
ある実施態様において、式(I)~式(VII)のいずれか1つにおいて、R4は、1つ以上の置換基Qで任意に置換されたC2-6アルケニルである。ある実施態様において、式(I)~式(VII)のいずれか1つにおいて、R4は、ジメチルアミノで任意に置換されたC2-6アルケニルである。ある実施態様において、式(I)~式(VII)のいずれか1つにおいて、R4は、それぞれがジメチルアミノで任意に置換されたエテニル又はプロペニルである。ある実施態様において、式(I)~式(VII)のいずれか1つにおいて、R4は、それぞれがジメチルアミノで任意に置換されたエテニル又は1-プロペニルである。ある実施態様において、式(I)~式(VII)のいずれか1つにおいて、R4は、エテニル又は(3-ジメチルアミノ)プロペン-1-イルである。
【0054】
ある実施態様において、式(I)~式(VII)のいずれか1つにおいて、R4は、1つ以上の置換基Qで任意に置換されたC2-6アルキニルである。ある実施態様において、式(I)~式(VII)のいずれか1つにおいて、R4は、ジメチルアミノで任意に置換されたC2-6アルキニルである。ある実施態様において、式(I)~式(VII)のいずれか1つにおいて、R4は、それぞれがジメチルアミノで任意に置換されたエチニル又はプロピニルである。ある実施態様において、式(I)~式(VII)のいずれか1つにおいて、R4は、エチニル、プロピン-1-イル、又は(3-ジメチルアミノ)プロピン-1-イルである。
【0055】
ある実施態様において、式(II)~式(VII)のいずれか1つにおいて、R6は、水素である。ある実施態様において、式(II)~式(VII)のいずれか1つにおいて、R6は、ハロである。ある実施態様において、式(II)~式(VII)のいずれか1つにおいて、R6は、フルオロ又はクロロである。ある実施態様において、式(II)~式(VII)のいずれか1つにおいて、R6は、1つ以上の置換基Qで任意に置換されたC1-6アルキルである。ある実施態様において、式(II)~式(VII)のいずれか1つにおいて、R6は、メチルである。ある実施態様において、式(II)~式(VII)のいずれか1つにおいて、R6は、1つ以上の置換基Qで任意に置換されたC1-6アルコキシである。ある実施態様において、式(II)~式(VII)のいずれか1つにおいて、R6は、メトキシである。ある実施態様において、式(II)~式(VII)のいずれか1つにおいて、R6は、クロロ、メチル、又はメトキシである。
【0056】
一実施態様において、本明細書に記載されるのは:
【化10】
N-(2-((2-(ジメチルアミノ)エチル)(メチル)アミノ)-4-メトキシ-5-((4-(1-メチルイミダゾ[1,5-a]-ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)アクリルアミドA1;
【化11】
(E)-4-(ジメチルアミノ)-N-(2-((2-(ジメチルアミノ)エチル)(メチル)アミノ)-4-メトキシ-5-((4-(1-メチルイミダゾ[1,5-a]ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)ブタ-2-エナミドA2;
【化12】
4-(ジメチルアミノ)-N-(4-メトキシ-2-(メチル(2-(メチルアミノ)エチル)アミノ)-5-((4-(1-メチル-イミダゾ[1,5-a]ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)ブタ-2-インアミドA3;
【化13】
N-(4-メトキシ-2-(メチル(2-(メチルアミノ)エチル)アミノ)-5-((4-(1-メチルイミダゾ[1,5-a]-ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)ブタ-2-インアミドA4;
【化14】
N-(2-((2-(ジメチルアミノ)エチル)(メチル)アミノ)-4-メトキシ-5-((4-(8-メチルイミダゾ[1,5-a]-ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)アクリルアミドA5;
【化15】
(E)-4-(ジメチルアミノ)-N-(2-((2-(ジメチルアミノ)エチル)(メチル)アミノ)-4-メトキシ-5-((4-(8-メチルイミダゾ[1,5-a]ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)ブタ-2-エナミドA6;
【化16】
4-(ジメチルアミノ)-N-(4-メトキシ-2-(メチル(2-(メチルアミノ)エチル)アミノ)-5-((4-(8-メチル-イミダゾ[1,5-a]ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)ブタ-2-インアミドA7;
【化17】
N-(4-メトキシ-2-(メチル(2-(メチルアミノ)エチル)アミノ)-5-((4-(8-メチルイミダゾ[1,5-a]-ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)ブタ-2-インアミドA8;
【化18】
N-(2-((2-(ジメチルアミノ)エチル)(メチル)アミノ)-4-メトキシ-5-((4-(5-メチルイミダゾ[1,5-a]-ピリジン-1-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)アクリルアミドA9;
【化19】
(E)-4-(ジメチルアミノ)-N-(2-((2-(ジメチルアミノ)エチル)(メチル)アミノ)-4-メトキシ-5-((4-(5-メチルイミダゾ[1,5-a]ピリジン-1-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)ブタ-2-エナミドA10;
【化20】
4-(ジメチルアミノ)-N-(4-メトキシ-2-(メチル(2-(メチルアミノ)エチル)アミノ)-5-((4-(5-メチル-イミダゾ[1,5-a]ピリジン-1-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)ブタ-2-インアミドA11;
【化21】
N-(4-メトキシ-2-(メチル(2-(メチルアミノ)エチル)アミノ)-5-((4-(5-メチルイミダゾ[1,5-a]-ピリジン-1-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)ブタ-2-インアミドA12;
【化22】
N-(2-((2-(ジメチルアミノ)エチル)(メチル)アミノ)-4-メトキシ-5-((4-(8-メチルイミダゾ[1,2-a]-ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)アクリルアミドA13;
【化23】
(E)-4-(ジメチルアミノ)-N-(2-((2-(ジメチルアミノ)エチル)(メチル)アミノ)-4-メトキシ-5-((4-(8-メチルイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)ブタ-2-エナミドA14;
【化24】
4-(ジメチルアミノ)-N-(4-メトキシ-2-(メチル(2-(メチルアミノ)エチル)アミノ)-5-((4-(8-メチルイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)ブタ-2-インアミドA15;
【化25】
N-(4-メトキシ-2-(メチル(2-(メチルアミノ)エチル)アミノ)-5-((4-(8-メチルイミダゾ[1,2-a]-ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)ブタ-2-インアミドA16;
【化26】
N-(2-((2-(ジメチルアミノ)エチル)(メチル)アミノ)-4-メトキシ-5-((4-(7-メチルピラゾロ[1,5-a]-ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)アクリルアミドA17;
【化27】
(E)-4-(ジメチルアミノ)-N-(2-((2-(ジメチルアミノ)エチル)(メチル)アミノ)-4-メトキシ-5-((4-(7-メチルピラゾロ[1,5-a]ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)ブタ-2-エナミドA18;
【化28】
4-(ジメチルアミノ)-N-(4-メトキシ-2-(メチル(2-(メチルアミノ)エチル)アミノ)-5-((4-(7-メチルピラゾロ[1,5-a]ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)ブタ-2-インアミドA19;
【化29】
N-(4-メトキシ-2-(メチル(2-(メチルアミノ)エチル)アミノ)-5-((4-(7-メチルピラゾロ[1,5-a]-ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)ブタ-2-インアミドA20;
【化30】
N-(2-((2-(ジメチルアミノ)エチル)(メチル)アミノ)-4-メトキシ-5-((4-(1-メチルピロロ[1,2-a]-ピラジン-6-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)アクリルアミドA21;
【化31】
(E)-4-(ジメチルアミノ)-N-(2-((2-(ジメチルアミノ)エチル)(メチル)アミノ)-4-メトキシ-5-((4-(1-メチルピロロ[1,2-a]ピラジン-6-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)ブタ-2-エナミドA22;
【化32】
4-(ジメチルアミノ)-N-(4-メトキシ-2-(メチル(2-(メチルアミノ)エチル)アミノ)-5-((4-(1-メチル-ピロロ[1,2-a]ピラジン-6-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)ブタ-2-インアミドA23;
【化33】
N-(4-メトキシ-2-(メチル(2-(メチルアミノ)エチル)アミノ)-5-((4-(1-メチルピロロ[1,2-a]-ピラジン-6-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)ブタ-2-インアミドA24;
【化34】
N-(5-((4-(イミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)-4-メトキシ-2-(メチル(2-モルホリノエチル)アミノ)フェニル)アクリルアミドA25;
【化35】
N-(4-メトキシ-2-(メチル(1-メチルピペリジン-3-イル)アミノ)-5-((4-(8-メチルイミダゾ[1,2-a]-ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)アクリルアミドA26;
【化36】
N-(5-((4-(8-クロロイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)-2-((2-(ジメチルアミノ)-エチル)(メチル)アミノ)-4-メトキシフェニル)アクリルアミドA27;
【化37】
N-(2-((2-(ジメチルアミノ)エチル)(メチル)アミノ)-4-メトキシ-5-((4-(8-メトキシイミダゾ[1,2-a]-ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)アクリルアミドA28;もしくは
【化38】
N-(4-メトキシ-2-(メチル(2-(メチルアミノ)エチル)アミノ)-5-((4-(8-メチルイミダゾ[1,2-a]-ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)アクリルアミドA29;
又はその互変異性体、2種以上の互変異性体の混合物、もしくは同位体バリアント;又はそれらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、もしくはプロドラッグである。
【0057】
別の実施態様において、本明細書に記載されるのは、N-(2-((2-(ジメチルアミノ)エチル)-(メチル)アミノ)-4-メトキシ-5-((4-(8-メチルイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)アクリルアミドA13(「化合物A13」);又はその互変異性体、2種以上の互変異性体の混合物、もしくは同位体バリアント;又はそれらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、もしくはプロドラッグである。ある実施態様において、本明細書に記載されるのは、化合物A13、又はその医薬として許容し得る溶媒和物もしくは水和物である。ある実施態様において、化合物A13は、結晶形態である。ある実施態様において、化合物A13は、約6.6、13.8、及び19.5の2θ角(°)にピークを含むX線粉末回折図を有する結晶形態にある。ある実施態様において、化合物A13は、約6.6、10.3、13.8、15.2、16.0、16.4、17.1、19.5、20.0、21.2、22.0、22.7、24.3、25.0、25.9、及び27.2の2θ角(°)にピークを含むX線粉末回折図を有する結晶形態にある。
【0058】
さらに別の実施態様において、本明細書に記載されるのは、化合物A13の医薬として許容し得る塩;又はその互変異性体、2種以上の互変異性体の混合物、もしくは同位体バリアント;又はそれらの医薬として許容し得る溶媒和物又は水和物である。ある実施態様において、化合物A13の医薬として許容し得る塩は、結晶性である。
【0059】
さらに別の実施態様において、本明細書に記載されるのは、化合物A13の安息香酸塩、フマル酸塩、塩酸塩、マレイン酸塩、メシル酸塩、コハク酸塩、もしくはL-酒石酸塩;又はそれらの医薬として許容し得る溶媒和物もしくは水和物である。
【0060】
さらに別の実施態様において、本明細書に記載されるのは、化合物A13の安息香酸塩;又はその医薬として許容し得る溶媒和物もしくは水和物である。ある実施態様において、化合物A13の安息香酸塩は、結晶性である。ある実施態様において、化合物A13の安息香酸塩は、約8.7、10.3、16.6、及び20.5の2θ角(°)にピークを含むX線粉末回折図を有する結晶形態にある。ある実施態様において、化合物A13の安息香酸塩は、約8.0、8.7、10.3、14.5、16.6、17.4、18.0、19.7、20.5、22.9、及び23.4の2θ角(°)にピークを含むX線粉末回折図を有する結晶形態にある。
【0061】
さらに別の実施態様において、本明細書に記載されるのは、化合物A13のフマル酸塩;又はその医薬として許容し得る溶媒和物もしくは水和物である。ある実施態様において、フマル酸塩は、結晶性である。ある実施態様において、化合物A13のフマル酸塩は、約6.3、14.8、及び16.1の2θ角(°)にピークを含むX線粉末回折図を有する結晶形態にある。ある実施態様において、化合物A13のフマル酸塩は、約6.3、6.9、9.8、11.6、13.6、14.8、16.1、19.0、19.7、20.9、22.3、23.7、及び26.0の2θ角(°)にピークを含むX線粉末回折図を有する結晶形態にある。
【0062】
さらに別の実施態様において、本明細書に記載されるのは、化合物A13の塩酸塩;又はその医薬として許容し得る溶媒和物もしくは水和物である。ある実施態様において、化合物A13の塩酸塩は、結晶性である。ある実施態様において、塩酸塩は、約3.6、22.1、及び25.9の2θ角(°)にピークを含むX線粉末回折図を有する結晶形態にある。ある実施態様において、化合物A13の塩酸塩は、約3.6、7.3、10.0、11.0、11.3、18.4、22.1、25.9、27.1、及び29.6の2θ角(°)にピークを含むX線粉末回折図を有する結晶形態にある。
【0063】
さらに別の実施態様において、本明細書に記載されるのは、化合物A13のマレイン酸塩;又はその医薬として許容し得る溶媒和物もしくは水和物である。ある実施態様において、化合物A13のマレイン酸塩は、結晶性である。ある実施態様において、化合物A13のマレイン酸塩は、約8.6、10.3、及び23.3の2θ角(°)にピークを含むX線粉末回折図を有する結晶形態にある。ある実施態様において、化合物A13のマレイン酸塩は、約5.4、8.0、8.6、10.3、13.0、13.6、13.8、14.4、14.8、15.9、16.7、17.2、17.9、19.0、19.9、20.7、23.3、26.1、及び27.1の2θ角(°)にピークを含むX線粉末回折図を有する結晶形態にある。
【0064】
さらに別の実施態様において、本明細書に記載されるのは、化合物A13のメシル酸塩;又はその医薬として許容し得る溶媒和物もしくは水和物である。ある実施態様において、化合物A13のメシル酸塩は、結晶性である。ある実施態様において、化合物A13のメシル酸塩は、約4.0、16.2、及び19.8の2θ角(°)にピークを含むX線粉末回折図を有する結晶形態にある。ある実施態様において、化合物A13のメシル酸塩は、約4.0、10.0、11.0、12.1、16.2、18.4、19.8、20.3、21.6、22.5、24.5、29.6、及び33.7の2θ角(°)にピークを含むX線粉末回折図を有する結晶形態にある。
【0065】
さらに別の実施態様において、本明細書に記載されるのは、化合物A13のコハク酸塩;又はその医薬として許容し得る溶媒和物もしくは水和物である。ある実施態様において、化合物A13のコハク酸塩は、結晶性である。ある実施態様において、化合物A13のコハク酸塩は、約9.8、22.1、及び24.6の2θ角(°)にピークを含むX線粉末回折図を有する結晶形態にある。ある実施態様において、化合物A13のコハク酸塩は、約6.9、9.3、9.8、12.1、12.7、14.7、15.6、16.7、17.7、20.1、20.8、22.1、23.5、24.6、26.0、28.2、及び29.6の2θ角(°)にピークを含むX線粉末回折図を有する結晶形態にある。
【0066】
さらに別の実施態様において、本明細書に記載されるのは、化合物A13のL-酒石酸塩;又はその医薬として許容し得る溶媒和物もしくは水和物である。ある実施態様において、化合物A13のL-酒石酸塩は、結晶性である。ある実施態様において、化合物A13のL-酒石酸塩は、約8.6、17.3、及び21.2の2θ角(°)にピークを含むX線粉末回折図を有する結晶形態にある。ある実施態様において、化合物A13のL-酒石酸塩は、約8.6、13.4、14.3、14.8、16.7、17.3、17.7、19.1、20.0、20.6、21.2、22.4、22.8、23.7、及び28.3の2θ角(°)にピークを含むX線粉末回折図を有する結晶形態にある。
【0067】
ある実施態様において、本明細書に記載される化合物は、重水素濃縮されている。ある実施態様において、本明細書に記載される化合物は、炭素-13濃縮されている。ある実施態様において、本明細書に記載される化合物は、炭素-14濃縮されている。ある実施態様において、本明細書に記載される化合物は、これらに限定されないが、窒素についての15N;酸素についての17O又は18O、及び硫黄についての33S、34S、又は36Sなどの、他の元素について1種以上のより一般的でない同位体を含有する。
【0068】
ある実施態様において、本明細書に記載される化合物は、約5以上、約10以上、約20以上、約30以上、約40以上、約50以上、約60以上、約70以上、約80以上、約90以上、約100以上、約200以上、約500以上、約1,000以上、約2,000以上、約5,000以上、又は約10,000以上の同位体濃縮係数を有する。しかしながら、いかなる場合でも、指定された同位体についての同位体濃縮係数は、所与の位置で化合物が、当該指定された同位体で100%濃縮されているときの同位体濃縮係数である当該指定された同位体についての最高同位体濃縮係数を超えることはない。従って、最高同位体濃縮係数は、同位体によって異なる。最高同位体濃縮係数は、重水素では6410であり、炭素-13では90である。
【0069】
ある実施態様において、本明細書に記載される化合物は、約64(約1%の重水素濃縮率)以上、約130(約2%の重水素濃縮率)以上、約320(約5%の重水素濃縮率)以上、約640(約10%の重水素濃縮率)以上、約1,300(約20%の重水素濃縮率)以上、約3,200(約50%の重水素濃縮率)以上、約4,800(約75%の重水素濃縮率)以上、約5,130(約80%の重水素濃縮率)以上、約5,450(約85%の重水素濃縮率)以上、約5,770(約90%の重水素濃縮率)以上、約6,090(約95%の重水素濃縮率)以上、約6,220(約97%の重水素濃縮率)以上、約6,280(約98%の重水素濃縮率)以上、約6,350(約99%の重水素濃縮率)以上、又は約6,380(約99.5%の重水素濃縮率)以上の重水素濃縮係数を有する。重水素濃縮率は、当業者に公知の、質量分析及び核磁気共鳴分光法などの慣用の分析方法を用いて決定することができる。
【0070】
ある実施態様において、本明細書に記載される化合物は、約1.8(約2%の炭素-13濃縮率)以上、約4.5(約5%の炭素-13濃縮率)以上、約9(約10%の炭素-13濃縮率)以上、約18(約20%の炭素-13濃縮率)以上、約45(約50%の炭素-13濃縮率)以上、約68(約75%の炭素-13濃縮率)以上、約72(約80%の炭素-13濃縮率)以上、約77(約85%の炭素-13濃縮率)以上、約81(約90%の炭素-13濃縮率)以上、約86(約95%の炭素-13濃縮率)以上、約87(約97%の炭素-13濃縮率)以上、約88(約98%の炭素-13濃縮率)以上、約89(約99%の炭素-13濃縮率)以上、又は約90(約99.5%の炭素-13濃縮率)以上の炭素-13濃縮係数を有する。炭素-13濃縮率は、質量分析及び核磁気共鳴分光法などの当業者に公知の慣用の分析方法を用いて決定することができる。
【0071】
ある実施態様において、同位体濃縮されていると明記されている本明細書に記載される化合物の原子の少なくとも1つは、約1%以上、約2%以上、約5%以上、約10%以上、約20%以上、約50%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、又は約98%以上の同位体濃縮率を有する。ある実施態様において、同位体濃縮されていると明記されている本明細書に記載される化合物の原子は、約1%以上、約2%以上、約5%以上、約10%以上、約20%以上、約50%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、又は約98%以上の同位体濃縮率を有する。いかなる場合でも、本明細書に記載される化合物の同位体濃縮された原子の同位体濃縮率は、指定された同位体の天然存在比に劣ることはない。
【0072】
ある実施態様において、重水素濃縮されていると明記されている本明細書に記載される化合物の原子の少なくとも1つは、約1%以上、約2%以上、約5%以上、約10%以上、約20%以上、約50%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、又は約98%以上の重水素濃縮率を有する。ある実施態様において、重水素濃縮されていると明記されている本明細書に記載される化合物の原子は、約1%以上、約2%以上、約5%以上、約10%以上、約20%以上、約50%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、又は約98%以上の重水素濃縮率を有する。
【0073】
ある実施態様において、13C濃縮されていると明記されている本明細書に記載される化合物の原子の少なくとも1つは、約2%以上、約5%以上、約10%以上、約20%以上、約50%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、又は約98%以上の炭素-13濃縮率を有する。ある実施態様において、13C濃縮されていると明記されている本明細書に記載される化合物の原子は、約1%以上、約2%以上、約5%以上、約10%以上、約20%以上、約50%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、又は約98%以上の炭素-13濃縮率を有する。
【0074】
ある実施態様において、本明細書に記載される化合物は、単離又は精製されている。ある実施態様において、本明細書に記載される化合物は、重量で、少なくとも約50%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は少なくとも約99.5%の純度を有する。
【0075】
本明細書に記載される化合物は、特定の立体化学が指定されている場合を除き、全ての可能な立体異性体を包含することが意図される。本明細書に記載される化合物が、アルケニル基を有する場合、当該化合物は、幾何的なcis/trans(又はZ/E)異性体の一方又は混合物として存在し得る。構造異性体が、相互変換可能である場合、化合物は、単一の互変異性体又は互変異性体の混合物として存在し得る。これは、例えば、イミノ、ケト、又はオキシム基を有する化合物内でプロトン互変異性;又は芳香族部位を有する化合物内でいわゆる原子価互変異性の形態をとることができる。単一の化合物が、2つ以上の種類の異性を示し得るということになる。
【0076】
本明細書に記載される化合物は、単一のエナンチオマー又は単一のジアステレオマーなどの鏡像異性的に純粋なものとすることができ、又はエナンチオマー混合物、例えば、2つのエナンチオマーのラセミ混合物;又は2種以上のジアステレオマーの混合物などの立体異性混合物とすることもできる。従って、当業者は、その(R)形態の化合物の投与は、インビボでエピマー化を受ける化合物にとって、その(S)形態での化合物の投与と同等であることを認識しているであろう。個々のエナンチオマーの調製/単離のための従来技術としては、適当な光学的に純粋な前駆体からの合成、アキラルな出発材料からの不斉合成、又はエナンチオマー混合物の分割、例えば、キラルクロマトグラフィー、再結晶化、分割、ジアステレオマー塩の形成、又はジアステレオマー付加物への誘導体化とその後の分離が挙げられる。
【0077】
本明細書に記載される化合物が、酸性又は塩基性の部位を有する場合、医薬として許容し得る塩として提供されることもできる。Bergeらの文献、J. Pharm. Sci. 1977, 66, 1-19; Stahl及びWermuth編集の文献「医薬品塩のハンドブック:性質、選択、及び利用(Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use)」、第2版; Wiley-VCH and VHCA, Zurich, 2011を参照されたい。
【0078】
医薬として許容し得る塩の調製における使用に適した酸としては、酢酸、2,2-ジクロロ酢酸、アシル化アミノ酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸、L-アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4-アセトアミド安息香酸、ホウ酸、(+)-樟脳酸、カンファースルホン酸、(+)-(1S)-カンファー-10-スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、桂皮酸、クエン酸、シクラミン酸、シクロヘキサンスルファミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチジン酸、グルコヘプトン酸、D-グルコン酸、D-グルクロン酸、L-グルタミン酸、α-オキソグルタル酸、グリコール酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸、(+)-L-乳酸、(±)-DL-乳酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、(-)-L-リンゴ酸、マロン酸、(±)-DL-マンデル酸、メタンスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ニコチン酸、硝酸、オレイン酸、オロト酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、過塩素酸、リン酸、L-ピログルタミン酸、サッカリン酸、サリチル酸、4-アミノ-サリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、タンニン酸、(+)-L-酒石酸、チオシアン酸、p-トルエンスルホン酸、ウンデシレン酸、及び吉草酸が挙げられるが、これらに限定されない。ある実施態様において、本明細書に記載される化合物は、塩酸塩である。ある実施態様において、本明細書に記載される化合物は、p-トルエンスルホン酸塩である。ある実施態様において、本明細書に記載される化合物は、ジ-p-トルエンスルホン酸塩である。
【0079】
医薬として許容し得る塩の調製における使用に適した塩基としては、これらに限定されないが、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、水酸化亜鉛、又は水酸化ナトリウムなどの無機塩基;並びにL-アルギニン、ベネタミン、ベンザチン、コリン、デアノール、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、ジメチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、2-(ジエチルアミノ)-エタノール、エタノールアミン、エチルアミン、エチレンジアミン、イソプロピルアミン、N-メチル-グルカミン、ヒドラバミン、1H-イミダゾール、L-リジン、モルホリン、4-(2-ヒドロキシエチル)-モルホリン、メチルアミン、ピペリジン、ピペラジン、プロピルアミン、ピロリジン、1-(2-ヒドロキシエチル)-ピロリジン、ピリジン、キヌクリジン、キノリン、イソキノリン、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N-メチル-D-グルカミン、2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール、及びトロメタミンを含む一級、二級、三級、及び四級脂肪族及び芳香族アミンなどの有機塩基が挙げられる。
【0080】
本明細書に記載される化合物は、化合物、例えば、式Iの化合物の機能的誘導体であり、かつインビボで親化合物に容易に変換可能なプロドラッグとしても提供され得る。プロドラッグは、状況によっては、該プロドラッグが、親化合物よりも投与するのが容易であり得るという理由で、多くの場合有用である。プロドラッグは、例えば、経口投与により生体利用可能であり得、一方で、親化合物は、生体利用可能ではない。また、プロドラッグは、親化合物よりも向上した医薬組成物における溶解性も有し得る。プロドラッグは、酵素的プロセス及び代謝的加水分解などのさまざまな機構によって、親の薬物に変換され得る。
【0081】
本明細書に記載される化合物及びその結晶形態は、当業者に公知の任意の方法によって、例えば、各々の開示の全体が引用により本明細書中に組み込まれているCN106279160及びUS10,906,901に記載されている手順に従うことによって調製、単離、又は取得することができる。
【0082】
(医薬組成物)
一実施態様において、本明細書で提供されるのは、式(I)の化合物、又はそのエナンチオマー、エナンチオマーの混合物、ジアステレオマー、2種以上のジアステレオマーの混合物、互変異性体、2種以上の互変異性体の混合物、もしくは同位体バリアント;又はそれらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、もしくはプロドラッグ;及び医薬として許容し得る賦形剤を含む医薬組成物である。
【0083】
本明細書で提供される医薬組成物は、これらに限定されないが、経口、非経口、及び局所投与用の剤形などのさまざまな剤形で製剤化することができる。医薬組成物は、遅延放出、延長放出、長期放出、持続放出、パルス放出、制御放出、加速放出、迅速放出、標的化放出、プログラム化放出、及び胃部保持剤形などの放出調節剤形として製剤化することもできる。これらの剤形は、当業者に公知の慣用の方法及び技術により調製することができる。例えば、上記の文献「レミントン:薬学の科学と実践(Remington: The Science and Practice of Pharmacy)」;Rathboneら編集の文献「放出調節薬物送達技術(Modified-Release Drug Delivery Technology)」、第2版; Drugs and the Pharmaceutical Sciences 184; CRC Press: Boca Raton, FL, 2008を参照されたい。
【0084】
一実施態様において、本明細書で提供される医薬組成物は、経口投与用の剤形で製剤化される。別の実施態様において、本明細書で提供される医薬組成物は、非経口投与用の剤形で製剤化される。さらに別の実施態様において、本明細書で提供される医薬組成物は、静脈内投与用の剤形で製剤化される。さらに別の実施態様において、本明細書で提供される医薬組成物は、筋肉内投与用の剤形で製剤化される。さらに別の実施態様において、本明細書で提供される医薬組成物は、皮下投与用の剤形で製剤化される。さらに別の実施態様において、本明細書で提供される医薬組成物は、局所投与用の剤形で製剤化される。
【0085】
本明細書で提供される医薬組成物は、単位剤形(unit-dosage form)又は複数回剤形(multiple-dosage form)で提供することができる。本明細書で使用される場合、単位剤形は、当技術分野において公知のように、対象への投与に適したておりかつ個々にパッケージングされた物理的に個々に分離した単位を意味する。各単位用量は、所望の治療効果を生じさせるのに十分な所定の量の活性成分(複数可)(例えば、本明細書で提供される化合物)を、必要とされる医薬賦形剤(複数可)と共に含有する。単位剤形の例としては、アンプル、シリンジ、及び個々にパッケージングされた錠剤及びカプセル剤が挙げられるが、これらに限定されない。単位剤形は、その何分の1又は何倍かで投与されてもよい。複数回剤形は、分離された単位剤形で投与される単一の容器内にパッケージングされた複数の同一の単位剤形である。複数回剤形の例としては、限定されないが、バイアル、錠剤又はカプセル剤の瓶、又はパイント瓶もしくはガロン瓶が挙げられる。
【0086】
本明細書で提供される医薬組成物は、1回で又は時間間隔を置いて複数回で投与することができる。治療の厳密な投薬量及び期間は、治療中の対象の年齢、体重、及び状態に応じて異なり得るものであり、かつ公知の試験プロトコールを用いて実験的に又はインビボもしくはインビトロ試験もしくは診断データからの推定によって決定され得ることが理解される。さらに、任意の特定の個体に対して、具体的な投薬計画が、対象の必要性及び医薬組成物の投与を行う者又は該投与を監督する者の専門的な判断に従って時間の経過とともに調整されるべきであることが理解される。
【0087】
一実施態様において、本明細書で提供されるのは、N-(2-((2-(ジメチルアミノ)エチル)-(メチル)アミノ)-4-メトキシ-5-((4-(8-メチルイミダゾ[1,2-a]-ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)アクリルアミドA13;又はその互変異性体、2種以上の互変異性体の混合物、もしくは同位体バリアント;又はそれらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、もしくはプロドラッグ;及び医薬として許容し得る賦形剤を含む医薬組成物である。
【0088】
別の実施態様において、本明細書で提供されるのは、結晶形態のN-(2-((2-(ジメチルアミノ)エチル)-(メチル)アミノ)-4-メトキシ-5-((4-(8-メチルイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)アクリルアミドA13;及び医薬として許容し得る賦形剤を含む医薬組成物である。
【0089】
さらに別の実施態様において、本明細書で提供されるのは、N-(2-((2-(ジメチルアミノ)エチル)-(メチル)アミノ)-4-メトキシ-5-((4-(8-メチルイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)アクリルアミドA13の医薬として許容し得る塩;又はその医薬として許容し得る溶媒和物もしくは水和物;及び医薬として許容し得る賦形剤を含む医薬組成物である。
【0090】
(A. 経口投与)
経口投与用に本明細書で提供される医薬組成物は、経口投与用の固体、半固体、又は液体の剤形で提供することができる。本明細書で使用される場合、経口投与は、頬側、舌、及び舌下投与も含む。好適な経口剤形としては、錠剤、ファストメルト(fastmelt)、チュワブル錠、カプセル剤、丸剤、ストリップ剤(strip)、トローチ剤、ロゼンジ錠、香錠、カシェ剤、ペレット剤、チューインガム、バルク粉末、発泡性もしくは非発泡性の散剤又は顆粒剤、経口ミスト、溶液、乳剤、懸濁剤、ウエハース剤、スプリンクル剤、エリキシル剤、及びシロップ剤が挙げられるが、これらに限定されない。活性成分(複数可)に加えて、医薬組成物は、これらに限定されないが、結合剤、充填剤、希釈剤、崩壊剤、湿潤剤、滑沢剤、流動化剤、着色料、色素移動阻害剤(dye-migration inhibitor)、甘味料、香味剤、乳化剤、懸濁・分散剤、防腐剤、溶媒、非水性液体、有機酸、及び二酸化炭素源などの1種以上の医薬として許容し得る担体又は賦形剤を含有することができる。
【0091】
結合剤又は造粒剤(granulator)は、錠剤に粘着性を付与して、圧縮後に錠剤がインタクトなままであることを確実なものとする。好適な結合剤又は造粒剤としては、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、及びα化デンプン(例えば、スターチ1500(登録商標))などのデンプン;ゼラチン;スクロース、グルコース、右旋糖、糖蜜、及びラクトースなどの糖類;アラビアゴム、アルギン酸、アルギン酸塩、アイリッシュモスエキス、パンワー(Panwar)ゴム、ガッチ(Ghatti)ゴム、イサブゴルハスク(isabgol husk)の粘液、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン(PVP)、ビーガム(登録商標)、カラマツアラビノガラクタン、粉末化トラガント、及びグアーガムなどの天然及び合成のゴム質;エチルセルロース、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロース・カルシウム、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)などのセルロース;並びにAVICEL(登録商標)PH-101、AVICEL(登録商標)PH-103、AVICEL(登録商標)PH-105、及びAVICEL(登録商標)RC-581などの微結晶性セルロースが挙げられるが、これらに限定されない。好適な充填剤としては、タルク、炭酸カルシウム、微結晶性セルロース、粉末化セルロース、デキストレート、カオリン、マンニトール、ケイ酸、ソルビトール、デンプン、及びα化デンプンが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で提供される医薬組成物中の結合剤又は充填剤の量は、製剤の種類に応じて変化するものであり、かつ当業者にとって容易に認識できるものである。結合剤又は充填剤は、本明細書で提供される医薬組成物中に約50~約99重量%で存在し得る。
【0092】
好適な希釈剤としては、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、ラクトース、ソルビトール、スクロース、イノシトール、セルロース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、及び粉糖が挙げられるが、これらに限定されない。マンニトール、ラクトース、ソルビトール、スクロース、及びイノシトールなどのある種の希釈剤は、十分な量で存在する場合には、一部の圧縮錠に咀嚼によって口内での崩壊を可能とする性質を付与することができる。そのような圧縮錠は、チュワブル錠として用いることができる。本明細書で提供される医薬組成物中の希釈剤の量は、製剤の種類に応じて変化するものであり、かつ当業者にとって容易に認識できるものである。
【0093】
好適な崩壊剤としては、寒天;ベントナイト;メチルセルロース及びカルボキシメチルセルロースなどのセルロース類;木材製品;天然海綿;カチオン交換樹脂;アルギン酸;グアーガム及びビーガム(登録商標)HVなどのゴム質;柑橘果肉;クロスカルメロースなどの架橋セルロース;クロスポビドンなどの架橋ポリマー;架橋デンプン;炭酸カルシウム;デンプングリコール酸ナトリウムなどの微結晶性セルロース;ポラクリリンカリウム;トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、タピオカデンプン、及びα化デンプンなどのデンプン;クレイ;並びにアルギンが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で提供される医薬組成物中の崩壊剤の量は、製剤の種類に応じて変化するものであり、かつ当業者にとって容易に認識できるものである。本明細書で提供される医薬組成物は、約0.5~約15重量%又は約1~約5重量%の崩壊剤を含有し得る。
【0094】
好適な滑沢剤としては、ステアリン酸カルシウム;ステアリン酸マグネシウム;鉱油;軽質鉱油;グリセリン;ソルビトール;マンニトール;ベヘン酸グリセロール及びポリエチレングリコール(PEG)などのグリコール類;ステアリン酸;ラウリル硫酸ナトリウム;タルク;ピーナッツ油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、及び大豆油などの水添植物油;ステアリン酸亜鉛;オレイン酸エチル;ラウリン酸エチル;寒天;デンプン;リコポジウム;並びにAEROSIL(登録商標)200及びCAB-O-SIL(登録商標)などのシリカ又はシリカゲルが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で提供される医薬組成物中の滑沢剤の量は、製剤の種類に応じて変化するものであり、かつ当業者にとって容易に認識できるものである。本明細書で提供される医薬組成物は、約0.1~約5重量%の滑沢剤を含有していてもよい。
【0095】
好適な流動化剤としては、コロイド状二酸化ケイ素、CAB-O-SIL(登録商標)、及びアスベスト不含タルクが挙げられるが、これらに限定されない。好適な着色料としては、アルミナ白上に懸濁された承認され認証された水溶性FD&C色素、及び非水溶性FD&C色素、並びにカラー・レーキのいずれかが挙げられるが、これらに限定されない。カラー・レーキは、重金属の水和酸化物への水溶性色素の吸着による組合せであり、当該色素の不溶性形態をもたらす。好適な香味剤としては、ペパーミント及びサリチル酸メチルなどの、心地良い味覚を生じさせる果実などの植物から抽出された天然香料及び合成の化合物の調合物が挙げられるが、これらに限定されない。好適な甘味料としては、スクロース、ラクトース、マンニトール、シロップ、グリセリン、及び人工甘味料(サッカリン及びアスパルテームなど)が挙げられるが、これらに限定されない。好適な乳化剤としては、ゼラチン、アラビアゴム、トラガント、ベントナイト、及び界面活性剤(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート(TWEEN(登録商標)20)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート80 (TWEEN(登録商標)80)、及びオレイン酸トリエタノールアミンなど)が挙げられるが、これらに限定されない。好適な懸濁・分散剤としては、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、ペクチン、トラガント、ビーガム(登録商標)、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びポリビニルピロリドンが挙げられるが、これらに限定されない。好適な防腐剤としては、グリセリン、メチル及びプロピルパラベン、安息香酸、並びに安息香酸ナトリウム並びにアルコールが挙げられるが、これらに限定されない。好適な湿潤剤としては、モノステアリン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸ソルビタン、モノラウリン酸ジエチレングリコール、及びポリオキシエチレンラウリルエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。好適な溶媒としては、グリセリン、ソルビトール、エチルアルコール、及びシロップ剤が挙げられるが、これらに限定されない。乳剤において利用される好適な非水性液体としては、鉱油及び綿実油が挙げられるが、これらに限定されない。好適な有機酸としては、クエン酸及び酒石酸が挙げられるが、これらに限定されない。好適な二酸化炭素源としては、重炭酸ナトリウム及び炭酸ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
多くの担体及び賦形剤が、同じ製剤中においても数種の機能を果たし得ることを理解すべきである。
【0097】
経口投与用に本明細書で提供される医薬組成物は、圧縮錠、湿製錠、チュワブルロゼンジ錠、速溶錠、多重圧縮錠、又は腸溶性コーティング錠、糖衣錠、もしくはフィルムコート錠として提供することができる。腸溶性コーティング錠は、胃酸の作用に抵抗するが、腸では溶解又は崩壊し、従って、活性成分(複数可)を胃の酸性環境から保護する物質でコーティングされた圧縮錠である。腸溶性コーティングとしては、脂肪酸、脂肪、サリチル酸フェニル、蝋、セラック、アンモニア処理セラック、及び酢酸フタル酸セルロースが挙げられるが、これらに限定されない。糖衣錠は、不快な味又はにおいを隠し及び錠剤を酸化から守るのに有益であり得る糖コーティングによって囲まれた圧縮錠である。フィルムコート錠は、水溶性材料の薄層又はフィルムで覆われた圧縮錠である。フィルムコーティングとしては、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、ポリエチレングリコール4000、及び酢酸フタル酸セルロースが挙げられるが、これらに限定されない。フィルムコーティングは、糖コーティングと同じ全般的特徴を付与する。多重圧縮錠は、多層錠、及び圧縮コーティング錠又はドライコーティング錠などの、2回以上の圧縮サイクルによって作られる圧縮錠である。
【0098】
錠剤の剤形は、粉末、結晶、又は顆粒形態の活性成分(複数可)から、単独で又は結合剤、崩壊剤、制御放出ポリマー、滑沢剤、希釈剤、及び/又は着色料などの、本明細書に記載される1種以上の担体又は賦形剤と組み合わせて調製することができる。香味料及び甘味料は、チュワブル錠及びロゼンジ錠の形成において特に有用である。
【0099】
経口投与用に本明細書で提供される医薬組成物は、ゼラチン、メチルセルロース、デンプン、又はアルギン酸カルシウムから作ることができる軟質又は硬質のカプセル剤として提供し得る。硬質ゼラチンカプセル剤は、乾式充填カプセル剤(DFC)としても知られ、一方が他方の上を滑る2つの部分からなり、従って、活性成分(複数可)を完全に囲む。軟弾性カプセル剤(SEC)は、グリセリン、ソルビトール、又は類似のポリオールの添加によって可塑化されたゼラチンシェルなどの軟質の球状シェルである。軟質ゼラチンシェルは、微生物の増殖を防ぐ防腐剤を含有していてもよい。好適な防腐剤は、メチル及びプロピルパラベン、並びにソルビン酸などの本明細書に記載されるようなものである。本明細書で提供される液体、半固体、及び固体剤形が、カプセル剤の内部に封入されていてもよい。好適な液体及び半固体剤形としては、炭酸プロピレン、植物油、又はトリグリセリド中の溶液及び懸濁液が挙げられる。そのような溶液が入ったカプセル剤は、米国特許第4,328,245号;同第4,409,239号;及び同4,410,545号に記載されているように調製することができる。また、カプセル剤は、活性成分(複数可)の溶解を変化させる又は維持するために、当業者によって知られているようにコーティングされていてもよい。
【0100】
経口投与用に本明細書で提供される医薬組成物は、乳剤、溶液、懸濁液、エリキシル剤、及びシロップ剤などの液体及び半固体剤形で提供することができる。乳剤は、一方の液体が、別の液体の全体にわたって小球の形態で分散されている二相系であり、水中油型である場合も油中水型である場合もある。乳剤は、医薬として許容し得る非水性液体又は溶媒、乳化剤、及び防腐剤を含み得る。懸濁剤は、医薬として許容し得る懸濁化剤及び防腐剤を含み得る。水性アルコール性溶液は、低級アルキルアルデヒドのジ(低級アルキル)アセタール、例えば、アセトアルデヒドジエチルアセタールなどの医薬として許容し得るアセタール;及びプロピレングリコール及びエタノールなどの1つ以上の水酸基を有する水混和性溶媒を含み得る。エリキシル剤は、清澄な甘味を付けた含水アルコール溶液である。シロップ剤は、糖、例えば、スクロースの濃縮水溶液であり、防腐剤も含有し得る。液体剤形の場合、投与のために便利に計量されるように、例えば、ポリエチレングリコール中の溶液を、十分な量の医薬として許容し得る液体担体、例えば、水で希釈され得る。
【0101】
他の有用な液体及び半固体剤形としては、活性成分(複数可)、及び1,2-ジメトキシメタン、ジグリム、トリグリム、テトラグリム、ポリエチレングリコール-350-ジメチルエーテル、ポリエチレングリコール-550-ジメチルエーテル、ポリエチレングリコール-750-ジメチルエーテル(ここで、350、550、及び750は、ポリエチレングリコールのおおよその平均分子量を意味する)などのジアルキル化されたモノ-又はポリ-アルキレングリコールを含有するものが挙げられるが、これらに限定されない。これらの剤形は、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、没食子酸プロピル、ビタミンE、ヒドロキノン、ヒドロキシクマリン、エタノールアミン、レシチン、セファリン、アスコルビン酸、リンゴ酸、ソルビトール、リン酸、亜硫酸水素塩、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオジプロピオン酸及びそのエステル、並びにジチオカルバメートなどの1種以上の抗酸化剤をさらに含み得る。
【0102】
また、経口投与用に本明細書で提供される医薬組成物は、リポソーム、ミセル、マイクロスフェア、又はナノシステムの形態でも提供することができる。ミセル剤形は、米国特許第6,350,458号に記載されているように調製することができる。
【0103】
経口投与用に本明細書で提供される医薬組成物は、液体剤形へと再構成される非発泡性又は発泡性顆粒剤及び散剤として提供し得る。非発泡性の顆粒剤又は散剤において用いられる医薬として許容し得る担体及び賦形剤は、希釈剤、甘味料、及び湿潤剤を含み得る。発泡性の顆粒剤又は散剤において用いられる医薬として許容し得る担体及び賦形剤は、有機酸及び二酸化炭素源を含み得る。
【0104】
着色料及び香味剤は、本明細書に記載される剤形の全てで使用することができる。
【0105】
経口投与用に本明細書で提供される医薬組成物は、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的化放出、及びプログラム化放出形態などの、即時放出又は制御放出剤形として製剤化することができる。
【0106】
(B. 非経口投与)
本明細書で提供される医薬組成物は、局所(local)又は全身投与のために、注射、輸液注入、又はインプラント術によって非経口投与することができる。本明細書で使用される場合、非経口投与は、静脈内、動脈内、腹腔内、髄腔内、脳室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内、滑膜内、膀胱内、及び皮下投与を含む。
【0107】
非経口投与用に本明細書で提供される医薬組成物は、これらに限定されないが、溶液、懸濁液、乳濁液、ミセル、リポソーム、マイクロスフェア、ナノシステム、及び注射前の液体中の溶液又は懸濁液に適した固体形態などの非経口投与に適した任意の剤形で製剤化することができる。そのような剤形は、薬科学の当業者に公知の慣用法により調製することができる。例えば、上記の文献「レミントン:薬学の科学と実践(Remington: The Science and Practice of Pharmacy)」を参照されたい。
【0108】
非経口投与用に本明細書で提供される医薬組成物は、これらに限定されないが、水性ビヒクル、水混和性ビヒクル、非水性ビヒクル、微生物の増殖に対する抗微生物剤又は防腐剤、安定化剤、溶解促進剤、等張化剤、緩衝剤、抗酸化剤、局所麻酔剤、懸濁・分散剤、湿潤又は乳化剤、錯化剤、封鎖又はキレート化剤、抗凍結剤、凍結乾燥保護剤、増粘剤、pH調整剤、及び不活性ガスなどの1種以上の医薬として許容し得る担体及び賦形剤を含むことができる。
【0109】
好適な水性ビヒクルとしては、水、食塩水、生理食塩水又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、等張ブドウ糖注射液、滅菌注射水、ブドウ糖加乳酸リンゲル注射液が挙げられるが、これらに限定されない。好適な非水性ビヒクルとしては、植物起源の固定油、ヒマシ油、トウモロコシ油、綿実油、オリーブ油、ピーナッツ油、ペパーミント油、ベニバナ油、ゴマ油、大豆油、水添植物油、水添大豆油、並びにヤシ油及びパーム核油の中鎖トリグリセリドが挙げられるが、これらに限定されない。好適な水混和性ビヒクルとしては、エタノール、1,3-ブタンジオール、液状ポリエチレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール300及びポリエチレングリコール400)、プロピレングリコール、グリセリン、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、及びジメチルスルホキシドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0110】
好適な抗微生物剤又は防腐剤としては、フェノール、クレゾール、水銀剤、ベンジルアルコール、クロロブタノール、p-ヒドロキシ安息香酸メチル及びプロピル、チメロサール、塩化ベンザルコニウム(例えば、塩化ベンゼトニウム)、メチル及びプロピルパラベン、並びにソルビン酸が挙げられるが、これらに限定されない。好適な等張化剤としては、塩化ナトリウム、グリセリン、及びブドウ糖が挙げられるが、これらに限定されない。好適な緩衝剤としては、リン酸塩及びクエン酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。好適な抗酸化剤としては、亜硫酸水素塩及びメタ重亜硫酸ナトリウムなどの本明細書に記載されるものが挙げられる。好適な局所麻酔剤としては、塩酸プロカインが挙げられるが、これらに限定されない。好適な懸濁・分散剤としては、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びポリビニルピロリドンなどの本明細書に記載されるものが挙げられる。好適な乳化剤としては、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート80、及びオレイン酸トリエタノールアミンなどの本明細書に記載されるものが挙げられる。好適な封鎖又はキレート化剤としては、EDTAが挙げられるが、これらに限定されない。好適なpH調整剤としては、水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸、及び乳酸が挙げられるが、これらに限定されない。好適な錯化剤としては、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン、及びスルホブチルエーテル 7-β-シクロデキストリン(CAPTISOL(登録商標))などのシクロデキストリンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0111】
本明細書で提供される医薬組成物が、複数回投薬量投与用に製剤化される場合、複数回投薬量非経口製剤は、静菌的又は静真菌的濃度で抗微生物剤を含有しなければならない。非経口製剤は全て、本技術分野において知られており実践されているように無菌でなければならない。
【0112】
一実施態様において、非経口投与用の医薬組成物は、そのまま使用できる無菌の溶液として提供される。別の実施態様において、医薬組成物は、使用前にビヒクルを用いて再構成される凍結乾燥された粉末及び皮下注射用錠剤などの無菌の乾燥可溶性製品として提供される。さらに別の実施態様において、医薬組成物は、そのまま使用できる無菌懸濁剤として提供される。さらに別の実施態様において、医薬組成物は、使用前にビヒクルを用いて再構成される無菌の乾燥不溶製品として提供される。さらに別の実施態様において、医薬組成物は、そのまま使用できる無菌の乳濁液として提供される。
【0113】
非経口投与用に本明細書で提供される医薬組成物は、遅延性放出、持続性放出、パルス化放出、制御放出、標的化放出、及びプログラム化放出形態などの即時放出又は制御放出剤形として製剤化することができる。
【0114】
非経口投与用に本明細書で提供される医薬組成物は、植込型のデポとしての投与のための懸濁液、固体、半固体、又はチキソトロピック液体として製剤化することができる。一実施態様において、本明細書で提供される医薬組成物は、体液中で不溶であるが、医薬組成物中の活性成分(複数可)がそれを通って拡散することは可能である高分子外膜によって囲まれた固体の内部マトリックスに分散される。
【0115】
好適な内部マトリックスとしては、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、可塑化又は非可塑化ポリ塩化ビニル、可塑化ナイロン、可塑化ポリエチレンテレフタレート、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、シリコーン-カーボネートコポリマー、親水性ポリマー(例えば、アクリル及びメタクリル酸のエステルのハイドロゲルなど)、コラーゲン、架橋ポリビニルアルコール、及び架橋部分加水分解ポリ酢酸ビニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0116】
好適な高分子外膜としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/アクリル酸エチルコポリマー、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、ネオプレンゴム、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、酢酸ビニルとの塩化ビニルコポリマー、塩化ビニリデン、エチレン及びプロピレン、イオノマーポリエチレンテレフタレート、ブチルゴムエピクロロヒドリンゴム、エチレン/ビニルアルコールコポリマー、エチレン/酢酸ビニル/ビニルアルコールターポリマー、及びエチレン/ビニルオキシエタノールコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0117】
(C. 局所投与)
本明細書で提供される医薬組成物は、皮膚、開口部、又は粘膜に局所投与することができる。本明細書で使用される場合、局所投与は、経皮(皮内)、結膜、角膜内、眼球内、点眼、耳介、経皮、経鼻、膣内、尿道、呼吸器、及び直腸内投与を含む。
【0118】
本明細書で提供される医薬組成物は、これらに限定されないが、乳剤、溶液、懸濁剤、クリーム剤、ゲル、ハイドロゲル、軟膏剤、撒布剤、ドレッシング剤、エリキシル剤、ローション剤、懸濁剤、チンキ剤、ペースト剤、フォーム剤、フィルム剤、エアロゾル剤、灌注剤、スプレー剤、坐剤、包帯剤、及び経皮パッチ剤などの、局所的又は全身的作用のための局所投与に適した任意の剤形で製剤化することができる。本明細書で提供される医薬組成物の局所用製剤は、リポソーム、ミセル、マイクロスフェア、及びナノシステムも含むことがある。
【0119】
局所用製剤中での使用に適した医薬として許容し得る担体及び賦形剤としては、水性ビヒクル、水混和性ビヒクル、非水性ビヒクル、微生物の増殖に対する抗微生物剤又は防腐剤、安定化剤、溶解促進剤、等張化剤、緩衝剤、抗酸化剤、局所麻酔剤、懸濁・分散剤、湿潤又は乳化剤、錯化剤、封鎖又はキレート化剤、浸透エンハンサー、抗凍結剤、凍結乾燥保護剤、増粘剤、及び不活性ガスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0120】
医薬組成物は、電気穿孔法、イオン泳動、フォノフォレシス、ソノフォレシス、又はマイクロ針もしくは無針注射(POWDERJECT(商標)及びBIOJECT(商標)など)によって局所投与することもできる。
【0121】
本明細書で提供される医薬組成物は、軟膏剤、クリーム剤、及びゲル剤の形態で提供することができる。好適な軟膏ビヒクルとしては、豚脂、安息香豚脂(benzoinated lard)、オリーブ油、綿実油、及び他のオイル、白色ワセリンなどの、油性又は炭化水素ビヒクル;親水ワセリン、硫酸ヒドロキシステアリン(hydroxystearin sulfate)、及び無水ラノリンなどの乳化可能又は吸収ビヒクル;親水性軟膏などの水除去可能なビヒクル;種々の分子量のポリエチレングリコールなどの水溶性軟膏ビヒクル;セチルアルコール、グリセリルモノステアレート、ラノリン、及びステアリン酸などの、油中水型(W/O)乳剤又は水中油型(O/W)乳剤いずれかの乳剤ビヒクルが挙げられる。例えば、上記の文献「レミントン:薬学の科学と実践(Remington: The Science and Practice of Pharmacy)」を参照されたい。これらのビヒクルは、皮膚軟化剤であるが、一般に、抗酸化剤及び防腐剤の添加を必要とする。
【0122】
好適なクリーム基剤は、水中油型又は油中水型であり得る。好適なクリーム剤ビヒクルは、水で洗浄可能であり、かつ油相、乳化剤、及び水相を含有するものであろう。また、油相は、「内部」相とも呼ばれ、一般に、ワセリン及び脂肪アルコール(セチル又はステアリルアルコールなど)で構成される。水相は、必ずではないものの、通常は、体積が油相よりも大きく、かつ、一般に、湿潤剤を含有する。クリーム製剤中の乳化剤は、非イオン性、アニオン性、カチオン性、又は両性界面活性剤であり得る。
【0123】
ゲルは、半固体の懸濁型の系である。単一相のゲルは、液体の担体の全体に実質的に均一に分布した有機巨大分子を含有する。好適なゲル化剤としては、カルボマー、カルボキシポリアルキレン、及びCARBOPOL(登録商標)などの架橋アクリル酸ポリマー;ポリエチレンオキシド、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー、及びポリビニルアルコールなどの親水性ポリマー;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びメチルセルロースなどのセルロース系ポリマー;トラガント及びキサンタンガムなどのゴム質;アルギン酸ナトリウム;並びにゼラチンが挙げられるが、これらに限定されない。均一なゲルを調製するために、アルコール又はグリセリンなどの分散剤を添加することができ、又はゲル化剤を、トリチュレーション、機械的混合、及び/又は撹拌によって分散させることができる。
【0124】
本明細書で提供される医薬組成物は、坐剤、ペッサリー、ブジー(bougie)、湿布もしくはパップ剤、ペースト剤、散剤、ドレッシング剤、クリーム剤、硬膏剤、避妊薬、軟膏剤、溶液、乳剤、懸濁剤、タンポン、ゲル、フォーム剤、スプレー剤、又は浣腸剤の形態で直腸内、尿道内、膣内、又は膣周囲に投与することができる。これらの剤形は、上記の文献「レミントン:薬学の科学と実践(Remington: The Science and Practice of Pharmacy)」に記載されているような慣用のプロセスを用いて生産することができる。
【0125】
直腸、尿道、及び膣坐剤は、人体の開口部内への挿入のための固体であり、常温では固体であるが、体温では融解又は軟化して、当該開口部の内部で活性成分(複数可)を放出する。直腸及び膣坐剤において利用される医薬として許容し得る担体としては、活性成分(複数可)と製剤化されたときに体温に近い融点をもたらす硬化剤などの基剤又はビヒクル;及び亜硫酸水素塩及びメタ重亜硫酸ナトリウムなどの本明細書に記載されるような抗酸化剤が挙げられる。好適なビヒクルとしては、カカオバター(カカオ脂)、グリセリン-ゼラチン、カルボワックス(ポリオキシエチレングリコール)、鯨蝋、パラフィン、白蝋及び黄蝋、及び脂肪酸のモノ、ジ及びトリグリセリドの適切な混合物、並びにポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルメタクリレート、及びポリアクリル酸などのハイドロゲルが挙げられるが、これらに限定されない。さまざまなビヒクルの組合せも、使用し得る。直腸及び膣坐剤は、圧縮又は成形によって調製され得る。直腸及び膣坐剤の典型的な重量は、約2~約3gである。
【0126】
本明細書で提供される医薬組成物は、溶液、懸濁剤、軟膏剤、乳剤、ゲル形成溶液、溶液用粉末、ゲル、眼部インサート、及びインプラントの形態で眼科的に投与することができる。
【0127】
本明細書で提供される医薬組成物は、鼻腔内投与又は気道への吸入によって投与することができる。該医薬組成物は、加圧容器、ポンプ、スプレー、噴霧器(電気流体力学を用いて微細なミストを生じさせる噴霧器など)、又はネブライザーを、単独で又は1,1,1,2-テトラフルオロエタン又は1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパンなどの好適なプロペラントと組み合わせて用いる送達用のエアロゾル又は溶液の形態で提供することができる。医薬組成物は、単独で又はラクトース又はリン脂質などの不活性担体と組み合わせて吹送法用のドライパウダーとして;及び点鼻液として提供することもできる。鼻腔内用途では、粉末は、キトサン又はシクロデキストリンなどの生体接着剤を含むことができる。
【0128】
加圧容器、ポンプ、スプレー、噴霧器、又はネブライザーでの使用のための溶液又は懸濁剤は、エタノール、水性エタノール、又は活性成分(複数可)を分散、可溶化、又はその放出を長期化させるための好適な別の薬剤;溶媒としてのプロペラント;及び/又は界面活性剤(トリオレイン酸ソルビタン、オレイン酸、又はオリゴ乳酸など)を含むように製剤化することができる。
【0129】
本明細書で提供される医薬組成物は、約50マイクロメートル以下、又は約10マイクロメートル以下などの吸入による送達に適したサイズまで微粒子化することができる。そのようなサイズの粒子は、スパイラルジェットミル法、流動床ジェットミル法、ナノ粒子を形成する超臨界流体加工法、高圧均質化法、又は噴霧乾燥法などの当業者に公知の細砕方法を用いて調製することができる。
【0130】
吸入器又は吹送器での使用のためのカプセル、ブリスター、及びカートリッジは、本明細書で提供される医薬組成物;ラクトース又はデンプンなどの好適な粉末基剤;及びl-ロイシン、マンニトール、又はステアリン酸マグネシウムなどの性能調整剤(performance modifier)の粉末混合物を含有するように製剤化することができる。ラクトースは、無水であっても一水和物の形態であってもよい。別の好適な賦形剤、又は担体としては、デキストラン、グルコース、マルトース、ソルビトール、キシリトール、フルクトース、スクロース、及びトレハロースが挙げられるが、これらに限定されない。吸入/鼻腔内投与用の本明細書で提供される医薬組成物は、メントール及びレボメントールなどの好適な香料;及び/又はサッカリン及びサッカリンナトリウムなどの甘味料をさらに含み得る。
【0131】
局所投与用に本明細書で提供される医薬組成物は、即時放出又は、遅延放出、持続放出、パルス化放出、制御放出、標的化放出、及びプログラム化放出などの放出調節であるように製剤化することができる。
【0132】
(D. 放出調節)
本明細書で提供される医薬組成物は、放出調節剤形として製剤化することができる。本明細書で使用される場合、「放出調節(modified release)」という用語は、同じ経路によって投与されたときに、活性成分(複数可)の放出の速度又は場所が、即時型剤形のものとは異なる剤形を意味する。放出調節剤形としては、遅延放出、延長放出、長期放出、持続放出、パルス放出、制御放出、加速及び迅速放出、標的化放出、プログラム化放出剤形、並びに胃部保持剤形が挙げられるが、これらに限定されない。放出調節剤形の医薬組成物は、これらに限定されないが、マトリックス制御放出デバイス、浸透圧制御放出デバイス、多粒子制御放出デバイス、イオン交換樹脂、腸溶性コーティング、多層コーティング、マイクロスフェア、リポソーム、及びこれらの組合せなどの当業者に公知の種々の放出調節デバイス及び方法を用いて調製することができる。該活性成分(複数可)の粒子サイズ及び多形を多様化することによって、活性成分(複数可)の放出速度を、調節することもできる。
【0133】
(1. マトリックス制御放出デバイス)
放出調節剤形の本明細書で提供される医薬組成物は、当業者に公知のマトリックス制御放出デバイスを用いて作製することができる。例えば、Mathiowitz編集の文献「制御薬物送達事典(Encyclopedia of Controlled Drug Delivery)」、 Wiley, 1999; 第2巻のTakadaらの文献を参照されたい。
【0134】
ある実施態様において、放出調節剤形の本明細書で提供される医薬組成物は、これらに限定されないが、合成ポリマー並びに多糖類及びタンパク質などの天然ポリマー及び誘導体などの、水膨潤性、浸食性、又は可溶性ポリマーである浸食性マトリックスデバイスを用いて製剤化される。
【0135】
浸食性マトリックスを形成させるのに有用な材料としては、キチン、キトサン、デキストラン、及びプルラン;アガーガム、アラビアゴム、カラヤガム、ローカストビーンガム、トラガカントガム、カラゲナン、ガティガム、グアーガム、キサンタンガム、及びスクレログルカン;デキストリン及びマルトデキストリンなどのデンプン類;ペクチンなどの親水性コロイド;レシチンなどのホスファチド;アルギン酸塩;アルギン酸プロピレングリコール;ゼラチン;コラーゲン;エチルセルロース(EC)、メチルエチルセルロース(MEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、CMEC、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、酢酸セルロース(CA)、プロピオン酸セルロース(CP)、酪酸セルロース(CB)、酪酸酢酸セルロース(CAB)、CAP、CAT、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、HPMCP、HPMCAS、トリメリット酸酢酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(hydroxypropyl methyl cellulose acetate trimellitate; HPMCAT)、及びエチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)などのセルロース類;ポリビニルピロリドン;ポリビニルアルコール;ポリ酢酸ビニル;グリセロール脂肪酸エステル;ポリアクリルアミド;ポリアクリル酸;エタクリル酸又はメタクリル酸のコポリマー(EUDRAGIT(登録商標));ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート);ポリ乳酸;L-グルタミン酸及びL-グルタミン酸エチルのコポリマー;分解性乳酸・グリコール酸コポリマー;ポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸;並びにブチルメタクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、(2-ジメチルアミノエチル)メタクリレート、及び(トリメチルアミノエチル)メタクリレートクロリドのホモポリマー及びコポリマーなどの他のアクリルの酸誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0136】
ある実施態様において、本明細書で提供される医薬組成物は、非浸食性マトリックスデバイスを用いて製剤化される。活性成分(複数可)を、不活性マトリックス中に溶解又は分散させ、投与されると、主に、不活性マトリックスを通した拡散によって放出される。非浸食性マトリックスデバイスとしての使用に適した材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、メチルアクリレート-メチルメタクリレートコポリマー、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/アクリル酸エチルコポリマー、酢酸ビニル、塩化ビニリデン、エチレン、及びプロピレンとの塩化ビニルコポリマー、イオノマーポリエチレンテレフタレート、ブチルゴム、エピクロロヒドリンゴム、エチレン/ビニルアルコールコポリマー、エチレン/酢酸ビニル/ビニルアルコールターポリマー、エチレン/ビニルオキシエタノールコポリマー、ポリ塩化ビニル、可塑化ナイロン、可塑化ポリエチレンテレフタレート、天然ゴム、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、及びシリコーン-カーボネートコポリマーなどの不溶性プラスチック;エチルセルロース、酢酸セルロース、クロスポビドン、及び架橋部分加水分解ポリ酢酸ビニルなどの親水性ポリマー;並びにカルナバ蝋、マイクロ結晶性蝋、及びトリグリセリドなどの脂肪化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0137】
マトリックス制御放出系において、所望の放出動態を、例えば、採用されるポリマーの種類、ポリマー粘度、ポリマー及び/又は活性成分(複数可)の粒子サイズ、活性成分(複数可)対ポリマーの比、並びに組成物中の他の賦形剤又は担体によって制御することができる。
【0138】
放出調節剤形の本明細書で提供される医薬組成物は、直接圧縮、乾式又は湿式造粒及びそれに続く圧縮、並びに溶融造粒及びそれに続く圧縮などの当業者に公知の方法によって調製することができる。
【0139】
(2. 浸透圧制御放出デバイス)
放出調節剤形の本明細書で提供される医薬組成物は、これらに限定されないが、1チャンバー系、2チャンバー系、非対称膜技術(AMT)、及び押出コア系(ECS)などの浸透圧制御放出デバイスを用いて作製することができる。一般に、そのようなデバイスは、少なくとも2つの構成要素:(a)活性成分が入ったコア;及び(b)該コアを内部に封入する、少なくとも1つの送達ポートを備える半透膜を有する。半透膜は、送達ポート(複数可)を通じた押出しによって薬物放出を引き起こすように、水性の使用環境からコアへの水の流入を制御する。
【0140】
活性成分(複数可)に加えて、浸透圧デバイスのコアは、使用環境からデバイスのコア内への水の輸送のための駆動力を生み出す浸透圧剤を任意に含む。浸透圧剤クラスの1つは、「オスモポリマー(osmopolymer)」及び「ハイドロゲル」とも称される水膨潤性親水性ポリマーである。浸透圧剤として好適な水膨潤性親水性ポリマーとしては、親水性のビニル及びアクリルポリマー、多糖類(アルギン酸カルシウムなど)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(アクリル)酸、ポリ(メタクリル)酸、ポリビニルピロリドン(PVP)、架橋PVP、ポリビニルアルコール(PVA)、PVA/PVPコポリマー、メチルメタクリレート及び酢酸ビニルなどの疎水性モノマーとのPVA/PVPコポリマー、大きなPEOブロックを含む親水性ポリウレタン、ナトリウムクロスカルメロース、カラゲナン、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)及びカルボキシエチル、セルロース(CEC)、アルギン酸ナトリウム、ポリカルボフィル、ゼラチン、キサンタンガム、及びデンプングリコール酸ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0141】
浸透圧剤の別のクラスは、水を吸収して周囲被膜の障壁の浸透圧グラジエントに影響を及ぼすことができるオスモゲン(osmogen)である。好適なオスモゲンとしては、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、硫酸カリウム、リン酸カリウム、炭酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、硫酸リチウム、塩化カリウム、及び硫酸ナトリウムなどの無機塩;右旋糖、フルクトース、グルコース、イノシトール、ラクトース、マルトース、マンニトール、ラフィノース、ソルビトール、スクロース、トレハロース、及びキシリトールなどの糖類;アスコルビン酸、安息香酸、フマル酸、クエン酸、マレイン酸、セバシン酸、ソルビン酸、アジピン酸、エデト酸、グルタミン酸、p-トルエンスルホン酸、コハク酸、及び酒石酸などの有機酸;尿素;並びにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0142】
異なる溶解速度の浸透圧剤を採用して、剤形から、活性成分(複数可)が、どのくらい急速に初期送達されるかに影響を与えることができる。例えば、MANNOGEM(商標)EZなどのアモルファス糖類を使用して、即座に所望の治療効果を生じさせる初めの2時間のより速い送達、及び長期間にわたって所望のレベルの治療又は予防の作用を維持する残りの量のゆるやかかつ継続的な放出を提供することができる。この場合、活性成分(複数可)は、代謝される及び排出される活性成分の量を置き換えるような速度で放出される。
【0143】
また、コアは、剤形の性能を向上させるか又は安定性もしくは加工を促進する本明細書に記載されるような多様な他の賦形剤及び担体を含むことができる。
【0144】
半透膜を形成させるのに有用な材料としては、生理学的に適切なpHで水透過性かつ水不溶性であり、かつ架橋などの化学的変化によって水不溶性とさせやすいさまざまなグレードのアクリル、ビニル、エーテル、ポリアミド、ポリエステル、及びセルロース系誘導体が挙げられる。被膜を形成させるのに有用な好適なポリマーの例としては、可塑化、非可塑化、及び強化酢酸セルロース(CA)、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸CA、硝酸セルロース、酪酸酢酸セルロース(CAB)、CAエチルカルバメート、CAP、CAメチルカルバメート、コハク酸CA、トリメリット酸酢酸セルロース(CAT)、ジメチルアミノ酢酸CA、CAエチルカーボネート、クロロ酢酸CA、CAエチルオキサレート、CAメチルスルホネート、CAブチルスルホネート、CA p-トルエンスルホネート、酢酸寒天(agar acetate)、アミローストリアセテート、ベータグルカンアセテート、ベータグルカントリアセテート、アセトアルデヒドジメチルアセテート、ローカストビーンガムのトリアセテート、ヒドロキシル化エチレン-酢酸ビニル、EC、PEG、PPG、PEG/PPGコポリマー、PVP、HEC、HPC、CMC、CMEC、HPMC、HPMCP、HPMCAS、HPMCAT、ポリ(アクリル)酸及びエステル及びポリ-(メタクリル)酸及びエステル及びそれらのコポリマー、デンプン、デキストラン、デキストリン、キトサン、コラーゲン、ゼラチン、ポリアルケン、ポリエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、ポリハロゲン化ビニル、ポリビニルエステル及びエーテル、天然の蝋、並びに合成の蝋が挙げられる。
【0145】
また、半透膜は、米国特許第5,798,119号に開示されているような細孔が、気体で実質的に満たされており、かつ水性媒体によって濡らされないが、水蒸気に対しては透過性である疎水性マイクロ多孔質膜であってもよい。そのような疎水性であるが水蒸気透過性の膜は、通常、ポリアルケン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリル酸誘導体、ポリエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、ポリハロゲン化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルエステル及びエーテル、天然の蝋、並びに合成の蝋などの疎水性ポリマーで構成される。
【0146】
半透膜上の送達ポート(複数可)は、被膜形成後に機械的な又はレーザーによる穴あけによって形成することができる。送達ポート(複数可)は、水溶性材料のプラグの侵食によって又はコアの窪みを覆う膜の薄い部分の破裂によってインサイチュで形成することもできる。加えて、送達ポートは、米国特許第5,612,059号及び同第5,698,220号に開示されているタイプの非対称膜の被覆の場合のように、被覆プロセスの間に形成することができる。
【0147】
放出される活性成分(複数可)の総量及び放出速度は、半透膜の厚さ及び空隙率、コアの組成、並びに送達ポートの数、サイズ、及び位置によって実質的に調節することができる。
【0148】
浸透圧制御放出剤形内の医薬組成物は、製剤の性能又は加工を促進する本明細書に記載されるような追加の慣用の賦形剤又は担体をさらに含み得る。
【0149】
浸透圧制御放出剤形は、当業者に公知の慣用の方法及び技術により調製することができる。例えば、上記の文献「レミントン:薬学の科学と実践(Remington: The Science and Practice of Pharmacy)」; Santus 及びBakerの文献、J. Controlled Release、1995, 35, 1-21; Vermaらの文献、Drug Dev. Ind. Pharm., 2000, 26, 695-708; Vermaらの文献、J. Controlled Release, 2002, 79, 7-27を参照されたい。
【0150】
ある実施態様において、本明細書で提供される医薬組成物は、活性成分(複数可)及び他の医薬として許容し得る賦形剤又は担体を含むコアを覆う非対称浸透圧膜を含むAMT制御放出剤形として製剤化される。例えば、米国特許第5,612,059号及びWO2002/17918を参照されたい。AMT制御放出剤形は、直接圧縮、乾式造粒、湿式造粒、及びディップコーティング法などの当業者に公知の慣用の方法及び技術により調製することができる。
【0151】
ある実施態様において、本明細書で提供される医薬組成物は、活性成分(複数可)、ヒドロキシエチルセルロース、及び他の医薬として許容し得る賦形剤又は担体を含むコアを覆う浸透圧膜を含むESC制御放出剤形として製剤化される。
【0152】
(3. 多粒子制御放出デバイス)
放出調節剤形の本明細書で提供される医薬組成物は、直径が約10μm~約3mm、約50μm~約2.5mm、又は約100μm~約1mmの範囲の多様な粒子、顆粒、又はペレットを含む多粒子制御放出デバイスとして作製することができる。そのような多粒子は、湿式及び乾式造粒、押出球形化、ローラー圧縮(roller-compaction)、溶融-凝固(melt-congealing)などの当業者に公知のプロセスによって、及びシードコアをスプレーコーティングすることによって作製することができる。例えば、Ghebre-Sellassie編集の文献「多粒子経口薬物送達(Multiparticulate Oral Drug Delivery)」; Drugs and the Pharmaceutical Sciences 65; CRC Press: 1994;及びGhebre-Sellassie編集の文献「製薬パレット化技術(Pharmaceutical Palletization Technology)」; Drugs and the Pharmaceutical Sciences 37; CRC Press: 1989を参照されたい。
【0153】
本明細書に記載されるような他の賦形剤又は担体を、医薬組成物と混合して、多粒子の加工及び形成を助けることができる。得られる粒子は、それら自体で多粒子デバイスを構成こともでき、腸溶性ポリマー、水膨潤性、及び水溶性ポリマーなどのさまざまなフィルム形成材料によってコーティングされることができる。多粒子を、カプセル剤又は錠剤としてさらに加工することができる。
【0154】
(4. 標的指向送達)
本明細書で提供される医薬組成物は、リポソーム、放出赤血球、及び抗体ベースの送達系など、特定の組織、受容体、又は治療される対象の体の他の領域に対して標的化されるように製剤化することもできる。例としては、米国特許第6,316,652号;同第6,274,552号;同第6,271,359号;同第6,253,872号;同第6,139,865号;同第6,131,570号;同第6,120,751号;同第6,071,495号;同第6,060,082号;同第6,048,736号;同第6,039,975号;同第6,004,534号;同第5,985,307号;同第5,972,366号;同第5,900,252号;同第5,840,674号;同第5,759,542号;及び同第5,709,874号に開示されているものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0155】
(治療の方法)
一実施態様において、本明細書で提供されるのは、対象においてEGFR変異を有する肺がんの1つ以上の症状を治療、予防、又は改善する方法であって、それを必要としている該対象に、治療有効量の本明細書に記載される化合物、例えば、式(I)の化合物、又はそのエナンチオマー、エナンチオマーの混合物、ジアステレオマー、2種以上のジアステレオマーの混合物、互変異性体、2種以上の互変異性体の混合物、もしくは同位体バリアント;又はそれらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、もしくはプロドラッグを投与することを含む、前記方法である。
【0156】
別の実施態様において、本明細書で提供されるのは、対象において肺がんの1つ以上の症状を治療、予防、又は改善する方法であって:
(c)該対象由来の試料中のEGFRエクソン20変異の存在を決定する工程;及び
(d)該試料が、EGFRエクソン20変異を有していると決定された場合に、該対象に、治療有効量の式(I)の化合物、又はそのエナンチオマー、エナンチオマーの混合物、ジアステレオマー、2種以上のジアステレオマーの混合物、互変異性体、2種以上の互変異性体の混合物、もしくは同位体バリアント;又はそれらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、もしくはプロドラッグ投与する工程
を含む、前記方法である。
【0157】
ある実施態様において、前記肺がんは、限局性の(localized)ものである。ある実施態様において、前記肺がんは、局所的な(regional)ものである。ある実施態様において、前記肺がんは、遠隔性のものである。ある実施態様において、前記肺がんは、進行したものである。ある実施態様において、前記肺がんは、局所進行性のものである。ある実施態様において、前記肺がんは、切除不能なものである。ある実施態様において、前記肺がんは、手術不能なものである。ある実施態様において、前記肺がんは、不治のものである。ある実施態様において、前記肺がんは、転移性のものである。ある実施態様において、前記肺がんは、再発性のものである。ある実施態様において、前記肺がんは、再発したものである。ある実施態様において、前記肺がんは、難治性のものである。ある実施態様において、前記肺がんは、標準的な療法で難治性のものである。ある実施態様において、前記肺がんは、標準的な療法を許さない(intolerant of a standard therapy)ものである。ある実施態様において、前記肺がんは、薬剤抵抗性のものである。ある実施態様において、前記肺がんは、化学療法に対して抵抗性のものである。ある実施態様において、前記肺がんは、標的化薬物療法に対して抵抗性のものである。ある実施態様において、前記肺がんは、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)に対して抵抗性のものである。ある実施態様において、前記肺がんは、EGFR阻害剤に抵抗性のものである。ある実施態様において、前記肺がんは、第1世代のEGFR阻害剤に対して抵抗性のものである。ある実施態様において、前記肺がんは、第2世代のEGFR阻害剤に対して抵抗性のものである。ある実施態様において、前記肺がんは、第3世代のEGFR阻害剤に対して抵抗性のものである。ある実施態様において、前記肺がんは、アファチニブ、ブリガチニブ、ダコミチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イコチニブ、又はオシメルチニブに対して抵抗性のものである。
【0158】
ある実施態様において、前記肺がんは、ステージIのものである。ある実施態様において、前記肺がんは、ステージIA1、IA2、IA3、又はIBのものである。ある実施態様において、前記肺がんは、ステージIIのものである。ある実施態様において、前記肺がんは、ステージIIA又はIIBのものである。ある実施態様において、前記肺がんは、ステージIIIのものである。ある実施態様において、前記肺がんは、ステージIIIA、IIB、又はIIICのものである。ある実施態様において、前記肺がんは、ステージIVのものである。ある実施態様において、前記肺がんは、ステージIVA又はIVBのものである。ある実施態様において、前記肺がんは、ステージII、III、又はIVであるのものである。ある実施態様において、前記肺がんは、ステージIII又はIVのものである。
【0159】
ある実施態様において、前記肺がんは、小細胞肺がんである。ある実施態様において、前記肺がんは、非小細胞性肺がん(NSCLC)である。ある実施態様において、前記肺がんは、扁平上皮細胞癌、腺癌、又は大細胞癌である。
【0160】
ある実施態様において、NSCLCは、限局性のものである。ある実施態様において、NSCLCは、局所的なものである。ある実施態様において、NSCLCは、遠隔性のものである。ある実施態様において、NSCLCは、進行したものである。ある実施態様において、NSCLCは、局所進行性のものである。ある実施態様において、NSCLCは、切除不能なものである。ある実施態様において、NSCLCは、手術不能のものである。ある実施態様において、NSCLCは、不治のものである。ある実施態様において、NSCLCは、転移性のものである。ある実施態様において、NSCLCは、再発性のものである。ある実施態様において、NSCLCは、再発したものである。ある実施態様において、NSCLCは、難治性のものである。ある実施態様において、NSCLCは、標準的な療法で難治性のものである。ある実施態様において、NSCLCは、標準的な療法を許さないものである。ある実施態様において、NSCLCは、薬剤抵抗性のものである。ある実施態様において、NSCLCは、化学療法に対して抵抗性のものである。ある実施態様において、NSCLCは、標的化薬物療法に対して抵抗性のものである。ある実施態様において、NSCLCは、TKIに対して抵抗性のものである。ある実施態様において、NSCLCは、EGFR阻害剤に抵抗性のものである。ある実施態様において、NSCLCは、第1世代のEGFR阻害剤に対して抵抗性のものである。ある実施態様において、NSCLCは、第2世代のEGFR阻害剤に対して抵抗性のものである。ある実施態様において、NSCLCは、第3世代のEGFR阻害剤に対して抵抗性のものである。ある実施態様において、NSCLCは、アファチニブ、ブリガチニブ、ダコミチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イコチニブ、又はオシメルチニブに対して抵抗性のものである。
【0161】
ある実施態様において、NSCLCは、ステージIのものである。ある実施態様において、NSCLCは、ステージIA1、IA2、IA3、又はIBのものである。ある実施態様において、NSCLCは、ステージIIのものである。ある実施態様において、NSCLCは、ステージIIA又はIIBのものである。ある実施態様において、NSCLCは、ステージIIIのものである。ある実施態様において、NSCLCは、ステージIIIA、IIB、又はIIICのものである。ある実施態様において、NSCLCは、ステージIVのものである。ある実施態様において、NSCLCは、ステージIVA又はIVBのものである。ある実施態様において、NSCLCは、ステージII、III、又はIVのものである。ある実施態様において、NSCLCは、ステージIII又はIVのものである。
【0162】
ある実施態様において、NSCLCは、EGFR変異を有する。ある実施態様において、NSCLCは、エクソン18にEGFR変異を有する。ある実施態様において、NSCLCは、エクソン18にEGFR点変異を有する。ある実施態様において、NSCLCは、エクソン18にG719Xを有する。ある実施態様において、NSCLCは、G719Sを有する。ある実施態様において、NSCLCは、EGFRエクソン18欠失を有する。ある実施態様において、NSCLCは、EGFRエクソン18挿入を有する。
【0163】
ある実施態様において、NSCLCは、エクソン19にEGFR変異を有する。ある実施態様において、NSCLCは、エクソン19にEGFR点変異を有する。ある実施態様において、NSCLCは、EGFRエクソン19欠失を有する。ある実施態様において、NSCLCは、EGFRエクソン19挿入を有する。
【0164】
ある実施態様において、NSCLCは、エクソン20にEGFR変異を有する。ある実施態様において、NSCLCは、エクソン20にEGFR点変異を有する。ある実施態様において、NSCLCは、S768Iを有する。ある実施態様において、NSCLCは、T790Mを有する。ある実施態様において、NSCLCは、S768I、V769L、H773Y、V774M、R776H、又はR776Cを有する。ある実施態様において、NSCLCは、EGFRエクソン20欠失を有する。
【0165】
ある実施態様において、NSCLCは、EGFRエクソン20挿入を有する。ある実施態様において、NSCLCは、D761とC775との間にEGFRエクソン20挿入を有する。ある実施態様において、NSCLCは、D761とC775との間に1、2、3、4、5、6、又は7個のアミノ酸のEGFRエクソン20挿入を有する。ある実施態様において、NSCLCは、D761とC775との間に1個のアミノ酸のEGFRエクソン20挿入を有する。ある実施態様において、NSCLCは、D761とC775との間に2個のアミノ酸のEGFRエクソン20挿入を有する。ある実施態様において、NSCLCは、D761とC775との間に3個のアミノ酸のEGFRエクソン20挿入を有する。ある実施態様において、NSCLCは、D761とC775との間に4個のアミノ酸のEGFRエクソン20挿入を有する。ある実施態様において、NSCLCは、D761とC775との間に5個のアミノ酸のEGFRエクソン20挿入を有する。ある実施態様において、NSCLCは、D761とC775との間に6個のアミノ酸のEGFRエクソン20挿入を有する。ある実施態様において、NSCLCは、D761とC775との間に7個のアミノ酸のEGFRエクソン20挿入を有する。
【0166】
ある実施態様において、NSCLCは、Xが、20種の天然アミノ酸からそれぞれが独立に選択される1、2、3、4、5、6、又は7個のアミノ酸の挿入である、D761_E762insXのEGFRエクソン20挿入を有する。ある実施態様において、NSCLCは、Xが、20種の天然アミノ酸からそれぞれが独立に選択される1、2、3、4、5、6、又は7個のアミノ酸の挿入である、A763_Y764insXのEGFRエクソン20挿入を有する。ある実施態様において、NSCLCは、Xが、20種の天然アミノ酸からそれぞれが独立に選択される1、2、3、4、5、6、又は7個のアミノ酸の挿入である、Y764_V765insXのEGFRエクソン20挿入を有する。ある実施態様において、NSCLCは、Xが、20種の天然アミノ酸からそれぞれが独立に選択される1、2、3、4、5、6、又は7個のアミノ酸の挿入である、V765_M766insXのEGFRエクソン20挿入を有する。ある実施態様において、NSCLCは、Xが、20種の天然アミノ酸からそれぞれが独立に選択される1、2、3、4、5、6、又は7個のアミノ酸の挿入である、A767_S768insXのEGFRエクソン20挿入を有する。ある実施態様において、NSCLCは、Xが、20種の天然アミノ酸からそれぞれが独立に選択される1、2、3、4、5、6、又は7個のアミノ酸の挿入である、S768_V769insXのEGFRエクソン20挿入を有する。ある実施態様において、NSCLCは、Xが、20種の天然アミノ酸からそれぞれが独立に選択される1、2、3、4、5、6、又は7個のアミノ酸の挿入である、V769_D770insXのEGFRエクソン20挿入を有する。ある実施態様において、NSCLCは、Xが、20種の天然アミノ酸からそれぞれが独立に選択される1、2、3、4、5、6、又は7個のアミノ酸の挿入である、D770_N771insXのEGFRエクソン20挿入を有する。ある実施態様において、NSCLCは、Xが、20種の天然アミノ酸からそれぞれが独立に選択される1、2、3、4、5、6、又は7個のアミノ酸の挿入である、N771_P772insXのEGFRエクソン20挿入を有する。ある実施態様において、NSCLCは、Xが、20種の天然アミノ酸からそれぞれが独立に選択される1、2、3、4、5、6、又は7個のアミノ酸の挿入である、P772_H773insXのEGFRエクソン20挿入を有する。ある実施態様において、NSCLCは、Xが、20種の天然アミノ酸からそれぞれが独立に選択される1、2、3、4、5、6、又は7個のアミノ酸の挿入である、H773_V774insXのEGFRエクソン20挿入を有する。ある実施態様において、NSCLCは、Xが、20種の天然アミノ酸からそれぞれが独立に選択される1、2、3、4、5、6、又は7個のアミノ酸の挿入である、V774_C775insXのEGFRエクソン20挿入を有する。
【0167】
ある実施態様において、NSCLCは、A763_Y764insFQEA、A763_Y764insLQEA、A767_S768insASV、A767_S768insTLA、S768_D770dup、V769_D770insGE、V769_D770insASV、V769_D770insGSV、V769_D770insGVV、V769_D770insMASVD、D770_N771insG、D770_N771insY、D770_N771insGV、D770_N771insGT、D770_N771insNPG、D770_N771insSVD、D770_N771delinsGY、N771dup、N771_P772insH、N771_P772insN、N771_P772insHH、N771_P772insSVDNR、N771delinsFH、N771delinsGY、N771_H773dup、P772_H773insNP、P772_H773insDNP、P772_H773insNPH、H773_V774insAH、H773_V774insH、H773_V774insY、H773_V774insAH、H773_V774insPH、H773_V774insNPH、又はV774_C775insHVのEGFRエクソン20挿入を有する。ある実施態様において、NSCLCは、A763_Y764insFQEA、A767_S768insASV、S768_D770dup、V769_D770insASV、D770_N771insNPG、D770_N771insSVD、D770_N771delinsGY、D770_N771delinsFH、N771_P772delinsFH、N771_H773dup、又はH773_V774insNPHを有する。ある実施態様において、NSCLCは、A763_Y764insFQEA、V769_D770insGE、V769_D770insASV、D770_N771insNPG、D770_N771insSVD、又はH773_V774insNPHを有する。ある実施態様において、NSCLCは、A763_Y764insFQEAを有する。ある実施態様において、NSCLCは、V769_D770insGEを有する。ある実施態様において、NSCLCは、V769_D770insASVを有する。ある実施態様において、NSCLCは、D770_N771insNPGを有する。ある実施態様において、NSCLCは、D770_N771insSVDを有する。ある実施態様において、NSCLCは、H773_V774insNPHを有する。
【0168】
本明細書で使用される場合、EGFR変異は、その開示の全体が引用により本明細書に組み込まれているDunnen及びAntonarakisの文献、 Hum. Mutat. 2000, 15, 7-12に従い名付けられる。例えば、S768_D770dupは、残基S768~D770由来のアミノ酸配列の倍化を表し;D770_N771delinsGYは、残基D770及びN771の欠失並びに同所でのGYの挿入を表し;A763_Y764insFQEAは、残基A763とY764との間のFQEAの挿入を表す。
【0169】
ある実施態様において、NSCLCは、エクソン21にEGFR変異を有する。ある実施態様において、NSCLCは、エクソン21にEGFR点変異を有する。ある実施態様において、NSCLCは、エクソン21にL858Rを有する。ある実施態様において、NSCLCは、エクソン21にL861Qを有する。ある実施態様において、NSCLCは、EGFRエクソン21欠失を有する。ある実施態様において、NSCLCは、EGFRエクソン21挿入を有する。
【0170】
ある実施態様において、NSCLCは、エクソン22にEGFR変異を有する。ある実施態様において、NSCLCは、エクソン22にEGFR点変異を有する。ある実施態様において、NSCLCは、EGFRエクソン22欠失を有する。ある実施態様において、NSCLCは、EGFRエクソン22挿入を有する。
【0171】
ある実施態様において、前記試料は、体液である。ある実施態様において、前記試料は、組織である。ある実施態様において、前記試料は、肺がん検体である。ある実施態様において、前記試料は、生検材料である。ある実施態様において、前記試料は、肺がん生検材料である。
【0172】
ある実施態様において、EGFR変異は、核酸シークエンシングによって決定される。ある実施態様において、EGFR変異は、断片分析を用いて決定される。ある実施態様において、EGFR変異は、サンガーシークエンシングによって決定される。ある実施態様において、EGFR変異は、その開示の全体が引用により本明細書に組み込まれているNaidooらの文献、Cancer 2015, 121, 3212-20に記載の方法を用いて検出される。
【0173】
ある実施態様において、前記対象は、未治療の者であり、すなわち、肺がんに対する療法を受けたことがない。ある実施態様において、対象は、肺がんの治療を受けている。ある実施態様において、対象は、先の療法に失敗している。ある実施態様において、対象は、2回以上の先の療法に失敗している。
【0174】
ある実施態様において、前記対象は、哺乳動物である。ある実施態様において、対象は、ヒトである。ある実施態様において、対象は、成人のヒトである。ある実施態様において、対象は、小児のヒトである。
【0175】
本明細書で提供される方法は、患者の年齢にかかわらず対象を治療することを包含するが、一部の疾患は、ある年齢群でより一般的である。
【0176】
ある実施態様において、本明細書に記載される化合物、例えば、化合物A13の治療有効量は、1日あたり約0.1~約100mg/kg、1日あたり約0.2~約50mg/kg、1日あたり約0.5~約20mg/kg、又は1日あたり約1~約10mg/kgの範囲である。一実施態様において、本明細書に記載される化合物、例えば、化合物A13の治療有効量は、1日あたり約0.1~約100mg/kgの範囲である。別の実施態様において、本明細書に記載される化合物、例えば、化合物A13の治療有効量は、1日あたり約0.2~約50mg/kgの範囲である。さらに別の実施態様において、本明細書に記載される化合物、例えば、化合物A13の治療有効量は、1日あたり約0.5~約20mg/kgの範囲である。さらに別の実施態様において、本明細書に記載される化合物、例えば、化合物A13の治療有効量は、1日あたり約1~約10mg/kgの範囲である。さらに別の実施態様において、本明細書に記載される化合物、例えば、化合物A22の治療有効量は、1日あたり約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1、約2、約3、約4、約5、約7、約8、約9、又は約10mg/kgである。
【0177】
ある実施態様において、本明細書に記載される化合物、例えば、化合物A13の治療有効量は、1日あたり約10~約1,000mg、1日あたり約20~約500mg、又は1日あたり約50~約200mgの範囲である。一実施態様において、本明細書に記載される化合物、例えば、化合物A13の治療有効量は、1日あたり約10~約1,000mgの範囲である。別の実施態様において、本明細書に記載される化合物、例えば、化合物A13の治療有効量は、1日あたり約20~約500mgの範囲である。さらに別の実施態様において、本明細書に記載される化合物、例えば、化合物A13の治療有効量は、1日あたり約50~約200mgの範囲である。さらに別の実施態様において、本明細書に記載される化合物、例えば、化合物A13の治療有効量は、1日あたり約50、約100、約150、約200、約250、約300、約350、約400、約450、又は約500mgである。
【0178】
本明細書に記載される化合物の投与される用量を、1日おきのmg/kg以外の単位で表すこともできることが理解される。例えば、非経口投与のための用量は、1日あたりのmg/m2として表すことができる。当業者は、与えられた対象の身長又は体重のいずれか又は双方に対する用量を1日あたりのmg/kgから1日あたりのmg/m2にどのように変換するかが容易に分かるであろう。例えば、65kgのヒトについての1日あたり1mg/m2の用量は、1日あたり58mg/kgとほぼ等しい。
【0179】
治療されるべき疾患及び対象の状態に応じて、本明細書に記載される化合物は、経口、非経口(例えば、筋肉内、腹腔内、静脈内、CIV、大槽内注射又は輸液注入、皮下注射、又はインプラント)、吸入、経鼻、膣内、直腸内、舌下、又は局所(topical)(例えば、経皮又は局所(local))の投与経路で投与され得る。
【0180】
一実施態様において、本明細書に記載される化合物、例えば、化合物A13は、経口投与される。別の実施態様において、本明細書に記載される化合物、例えば、化合物A13は、非経口投与される。さらに別の実施態様において、本明細書に記載される化合物、例えば、化合物A13は、静脈内投与される。さらに別の実施態様において、本明細書に記載される化合物、例えば、化合物A13は、筋肉内投与される。さらに別の実施態様において、本明細書に記載される化合物、例えば、化合物A13は、皮下投与される。さらに別の実施態様において、本明細書に記載される化合物、例えば、化合物A13は、局所投与される。
【0181】
本明細書に記載される化合物、例えば、化合物A13は、例えば、単回のボーラス注入、又は経口錠剤もしくは丸剤などの単回投与として;又は例えば、時間をかけた連続的な輸液注入もしくは時間をかけた分割されたボーラス用量など時間をかけて送達することができる。本明細書に記載される化合物、例えば、化合物A13は、必要であれば、例えば、対象に安定疾患又は退縮が現れるまで、又は対象に疾患増悪もしくは許容し得ない毒性が現れるまで繰り返し投与することができる。安定疾患又はその欠如は、対象の症状の評価、理学的検査、X線、CAT、PET、又はMRIスキャン及び他の一般に受け入れられている評価モダリティを用いて撮像されたがんの視覚化などの、当技術分野において公知の方法によって決定される。
【0182】
本明細書に記載される化合物、例えば、化合物A13は、1日1回(QD)投与することができ、又は1日2回(BID)、及び1日3回(TID)などの複数回の毎日の用量に分割することができる。加えて、投与は、連続的な、すなわち、毎日のもの又は断続的なものとすることができる。「断続的な」又は「断続的に」という用語は、本明細書で使用される場合、規則的又は不規則的な間隔のいずれかで停止及び開始することを意味することが意図される。例えば、本明細書に記載される化合物、例えば、化合物A13の断続的な投与は、1週間あたり1~6日の投与、周期的な投与(例えば、連続した2~8週間の毎日の投与、次いで、投与が行われない最長で1週間の休薬期間)、又は隔日投与である。
【0183】
しかしながら、任意の特定の対象に対する投薬の具体的な用量レベル及び頻度を、さまざまに変えることができ、それらが、採用される具体的な化合物、例えば、化合物A13の活性、該化合物の代謝安定性及び作用の期間、年齢、体重、全身健康状態、性別、食事、投与の様式及び時間、排泄の速度、薬物の組合せ、特定の状態の重症度、及び療法の受け手などの種々の因子次第であろうことが理解されるであろう。
【0184】
ある実施態様において、本明細書に記載される化合物、例えば、化合物A13は、治療されるべき対象に周期的に投与される。循環療法(cycling therapy)は、ある期間にわたる化合物の投与、及びそれに続くある期間にわたる休薬、並びにこの一連の投与を繰り返すことを含む。循環療法は、療法のうちの1つ以上に対する抵抗性の発生を減らし、療法のうちの1つの副作用を回避するか又は減少させ、かつ/又は治療の有効性を向上させることができる。
【0185】
結果として、一実施態様において、本明細書に記載される化合物、例えば、化合物A13は、約1日~約4週間の休薬期間を伴う約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約5週間、約6週間、約8週間、又は約10週間の周期の間投与される。一実施態様において、本明細書に記載される化合物、例えば、化合物A13は、1、3、5、7、9、12、又は14日間の休薬期間を伴う3週間、4週間、5週間、又は6週間の周期の間投与される。ある実施態様において、休薬期間は、7日間である。ある実施態様において、休薬期間は、14日間である。ある実施態様において、休薬期間は、骨髄の回復に十分な期間である。投薬周期の頻度、数、及び長さは、増加させることも減少させることもできる。
【0186】
一実施態様において、本明細書に記載される化合物、例えば、化合物A13は、7日の休薬期間を含む28日周期で3週間投与される。一実施態様において、7日の休薬期間を含む28日周期では、本明細書に記載される化合物、例えば、化合物A13は、1週間毎日投与される。
【0187】
ある実施態様において、対象は、本明細書に記載される化合物、例えば、化合物A13で約1~約50、約2~約20、約2~10、又は約4~約8周期治療される。ある実施態様において、対象は、本明細書に記載される化合物、例えば、化合物A13で約1~約50周期治療される。ある実施態様において、対象は、本明細書に記載される化合物、例えば、化合物A13で約2~約20周期治療される。ある実施態様において、対象は、本明細書に記載される化合物、例えば、化合物A13で約2~10周期治療される。ある実施態様において、対象は、本明細書に記載される化合物、例えば、化合物A13で約4~約8周期治療される。
【0188】
一実施態様において、本明細書で提供されるのは、肺がん細胞の増殖を阻害する方法であって、該細胞を、有効量の本明細書に記載される化合物、例えば、式(I)の化合物、又はそのエナンチオマー、エナンチオマーの混合物、ジアステレオマー、2種以上のジアステレオマーの混合物、互変異性体、2種以上の互変異性体の混合物、もしくは同位体バリアント;又はそれらの医薬として許容し得る塩、溶媒和物、水和物、もしくはプロドラッグと接触させることを含む、前記方法である。
【0189】
本開示は、以下の非限定的な実施例によりさらに理解されるであろう。
【実施例
【0190】
(実施例)
本明細書で使用される場合、プロセス、スキーム、及び実施例において用いられる記号及び規則(symbols and conventions)は、特定の略語が、具体的に定義されているか否かにかかわらず、現代の科学文献、例えば、the Journal of the American Chemical Society、the Journal of Medicinal Chemistry、又はthe Journal of Biological Chemistryで用いられるものと一致する。限定するものではないが、具体的には、以下の略語:mg(ミリグラム);mL (ミリリットル);μL(マイクロリットル);h(時間);及びmin(分)を実施例において及び明細書の全体で使用する場合がある。
【0191】
(実施例1)
(EGFR変異体に対する化合物A13の阻害活性)
化合物A13を、HTFR KINEASE-TKキット(Cisbio)を製造業者のプロトコールに従い用いて、EGFR変異体:(i)3種のエクソン20挿入:V769_D770insGE、D770_N771insNPG、及びA763_Y764insFQEA;並びに(ii)1種の点変異:L861Qに対して試験した。決定されたIC50値を、表1にまとめる。
(表1. EGFR変異体に対する阻害活性)
【表1】
【0192】
(実施例2)
(Ba/F3細胞におけるEGFR変異体に対する化合物A13の阻害活性)
化合物A13及びオシメルチニブを、CELLTITER-GLO発光細胞生存度アッセイ(Promega)を製造業者のプロトコールに従い用いてBa/F3細胞株においてEGFR変異体:(i)2つの点変異:G719S及びL861Q;並びに(ii)4種のエクソン20挿入:A763_Y764insFQEA、V769_D770insASV、D770_N771insSVD、及びH773_V774insNPHに対して試験した。決定されたIC50値を、表2にまとめる。
【0193】
(実施例3)
(肺がんの異種移植マウスモデルにおける化合物A13の抗腫瘍活性)
単一の薬剤としての化合物A13を、雌のBalb/cヌードマウスを用いる皮下LU0387肺がんPDXモデルにおいて肺がん治療に関して評価した。ストックマウス由来の腫瘍断片を、マウス内への腫瘍播種のために回収した。各マウスは、腫瘍発生のためにPDXモデルLU0387腫瘍断片(直径2~3mm)を右後側腹部(right rear flank)の皮下へ播種された。
(表2. EGFR変異体に対する阻害活性)
【表2】
【0194】
平均腫瘍サイズが、約517.37mm3に到達した時に無作為化が開始された。24頭のマウスが、1群あたりマウス3頭で8つの試験群に無作為に割り当てられた。無作為化の日を、第0日と名付けた。
【0195】
腫瘍播種の後、罹患率及び死亡率に関してマウスを毎日チェックした。該マウスは、移動能力、飼料及び水の消費、体重の増減、眼/毛髪の艶の消失(eye/hair matting)並びに何らかの異常などの、挙動に対する腫瘍増殖及び治療の作用に関してチェックされた。死亡率及び観察された臨床症状は、個々のマウスごとに詳細に記録された。
【0196】
腫瘍体積(TV)を、無作為化の後週2回ノギスを用いて測定し、体積を、
式: V=(L x W x W)/2
(式中、Vは、腫瘍体積であり、Lは、腫瘍長(最も長い腫瘍寸法)であり、かつWは、腫瘍幅(Lに対して直角な最も長い腫瘍寸法)である)
を用いて計算した。
【0197】
化合物A13を、pH4.0のクエン酸/リン酸バッファー中の安息香酸塩として、20、40、及び80mg/kgで1日1回21日間経口投与した。結果を、表3にまとめる。表3において、RTVは、相対腫瘍体積を表す。
【0198】
ビヒクル対照と比較して、40及び80mg/kgの化合物A13は、TGI(腫瘍成長阻害)値が、それぞれ、61%(P=0.016(対ビヒクル対照))及び107%(P<0.001(対ビヒクル対照))である著しい抗腫瘍活性を示した。80mg/kgの化合物A13で治療されたマウスの腫瘍体積は、第21日で36mm3であり、これは、第0日のそれの86mm3よりも少なかった。また、化合物A13は、良好な忍容性も示した。
(表3. 腫瘍体積に対する化合物A13の作用)
【表3】
【0199】
同じ異種移植マウスモデルを用いて、化合物A13の薬物動態学的(PK)パラメーターを、単回の経口用量を用いて80mg/kgで決定した。マウスごとに、血液試料を、投薬の0、1、2、4、8、16、及び24時間後に採取した。決定されたPKパラメーターを、表4にまとめる。
(表4. Balb/cマウスにおける化合物A13の薬物動態)
【表4】
【0200】
(実施例4)
(第I相. 局所進行性又は転移性非小肺がんの対象における化合物A13の安全性、認容性、薬物動態、及び有効性の評価)
これは、局所進行性又は転移性非小肺がん(NSCLC)のヒト対象における安息香酸塩としてのN-(2-((2-(ジメチルアミノ)エチル)(メチル)アミノ)-4-メトキシ-5-((4-(8-メチルイミダゾ[1,2-a]-ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)アクリルアミドA13の安全性、認容性、及び薬物動態(PK)、並びに有効性を評価する非盲検シングルアーム非無作為化、用量漸増/拡大試験である。本試験は、2つの相:第Ia相及び第Ib相で行われる。
【0201】
第Ia相は、用量漸増相であり、EGFR T790Mを有する局所進行性又は転移性NSCLCの対象において、経口投与される化合物A13の安全性及び認容性を評価し、かつ用量制限毒性 (DLTs)及び最大耐量(MTD)を決定する。用量漸増は、3+3デザインに従い進行する。15~30名の対象が、第Ia相に登録される。各治療周期は、28日(4週間)である。
【0202】
第Ia相において、各対象は、1日あたり50mgで開始し、1日あたり100、150、200、及び250mgまで徐々に増量する。1日あたり50mgの開始用量を摂取してから7日後に、対象に、DLTが認められていないことを確認した後に、該対象は、続きの用量を摂取して、28日の治療周期を完了する。同じ用量レベルでは、同じ用量レベルのすぐ前の対象が、第2の用量を摂取し始めるまでは、次の対象が化合物A13の服用を始めることはできない。次の用量レベルに増量する前に、少なくとも3名の対象が、現在の用量レベルを少なくとも1回摂取し、かつ安全性について評価される。3名の対象のうちの1名に、ある用量レベルでDLTが認められた場合、さらに3名の対象が、当該用量レベルに追加され、従って、当該用量レベルに対して合計で6名の対象となる。当該3名のさらなる対象に、DLTが認められなければ、用量漸増が継続される。当該3名のさらなる対象のうちの1名以上に、DLTが認められたた場合は、用量漸増は、中止される。3名の対象のうちの2名に、ある用量レベルでDLTが認められたた場合は、用量漸増は、中止される。
【0203】
第Ib相は、用量拡大相であり、EGFR T790M、ex20ins、又はまれな変異(G719X、S768I、又はL861Q)を有する局所進行性又は転移性NSLCの対象における化合物A13の有効性を評価する。第Ib相における用量レベルを、表5にまとめる。76~111名の対象が、登録される。各治療周期は、28日(4週間)である。各対象は、食事の前に1日あたりの用量を摂取する。
【0204】
本試験の適格対象は、≧18歳の年齢の、手術もしくは放射線療法に不適格な局所進行性NSCLCの対象、又は転移性NSCLCの対象である。用量漸増相については、適格対象は、18歳~65歳の年齢であり;0~1のECOGを有し;かつ第1又は第2世代EGFR-TKI(例えば、エルロチニブ又はゲフィチニブ)で治療された後でEGFR T790Mを有する対象である。用量拡大相については、適格対象は、18歳~75歳の年齢であり;0~2のECOGを有し;かつ第1又は第2世代EGFR-TKI(例えば、エルロチニブ又はゲフィチニブ)で治療された後のEGFR T790M、EGFR ex20ins(治療経験あり又は未治療)、又はまれなEGFR変異(G719X、S768I、もしくはL861Q)(治療経験あり又は未治療)を有する対象である。
【0205】
適格対象についての追加の選択基準には、(i)好中球絶対数(ANC)≧1500細胞/μL;(ii) 血小板数≧90,000/μL;(iii)ヘモグロビン(HGB)≧90g/L;(iv)国際標準比(INR)≦1.5×正常上限(ULN);(v)≦2.5×ULN) ≦2.5×ULNの血清AST及び血清ALT、及びTBIL≦1.5×ULN;(vi)血清クレアチニン≦1.5×ULN又は≧50mL/分のクレアチニンクリアランス(Cockcroft及びGaultによる);並びにLVEF≦50%が含まれる。
(表5. 第Ib相における投薬レベル)
【表5】
【0206】
化合物A13の安全性を、(i)DLT;(ii)治療下で発現した有害事象(TEAEs);(iii)臨床検査(ルーチンの血液検査、血液生化学、ルーチンの尿検査、及び血液凝固);(iv)理学的検査;(v)バイタルサイン(血圧、脈拍、呼吸数、体温、及び体重s);並びに(vi)心電図検査によって評価する。
【0207】
化合物A13の予備的有効性を、(i)奏効率(ORR;完全寛解(CR)+部分寛解(PR));(ii)病勢コントロール率(DCR;CR+PR+安定疾患);(iii)奏効期間(DOR);(iv)無増悪生存期間(PFS);及び(vi)全生存期間(overall survival; OS)によって評価する。
【0208】
Cmax、Tmax、AUC、及びt1/2を含む化合物A13のPKパラメーターが、決定される。
【0209】
上記実施例は、当業者に、特許請求される実施態様をどのように作製しどのように用いるかについての完全な開示及び説明を与えるために提供されるものである、本明細書で開示されるものの範囲を限定することは意図していない。当業者にとって自明な改変は、以下の特許請求の範囲に含まれることが意図される。本明細書で引用される刊行物、特許、及び特許出願は全て、あたかもそのような刊行物、特許、又は特許出願のそれぞれが、引用により本明細書に組み込まれていると具体的かつ個々に示されているかのように、引用により本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】