(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-15
(54)【発明の名称】ガス監視システムおよびそれぞれの方法
(51)【国際特許分類】
H02B 13/065 20060101AFI20240408BHJP
H01H 33/56 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
H02B13/065 E
H01H33/56 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566862
(86)(22)【出願日】2022-04-22
(85)【翻訳文提出日】2023-12-26
(86)【国際出願番号】 EP2022060777
(87)【国際公開番号】W WO2022229035
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523380173
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】メルケルト,レンナルト
(72)【発明者】
【氏名】シュルツェ-ケーニッヒ,ティム
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ,ホイリー-ユエン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ミンジョン
【テーマコード(参考)】
5G017
5G028
【Fターム(参考)】
5G017DD12
5G017EE01
5G028GG16
(57)【要約】
本発明はガス監視システムに関し、前記ガス監視システムは、
高電圧または中電圧部品(6)を囲う絶縁ガス(5)で満たされるチャンバ(4)を有するガス絶縁開閉装置(1)と、
前記チャンバ(4)に動作上接続されかつそれぞれの前記チャンバ(4)内で前記絶縁ガス(5)の物理的特性を経時的に測定するように適合されるセンサ(2)と、
ジャンプが発生したかを判定するための統計的なステップ検知、および/または変化が発生したかを判定するための統計的な変化検知を前記センサ測定値に対して実行するように適合されるコンピュータユニット(3)とを備え、
前記統計的なステップおよび/または変化の検知は、過去のセンサ測定値に基づく予想範囲を識別することと、現在のセンサ測定値が前記予想範囲外であるかを確認することとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス監視システムであって、
高電圧または中電圧部品(6)を囲う絶縁ガス(5)で満たされるチャンバ(4)を有するガス絶縁開閉装置(1)と、
前記チャンバ(4)に動作上接続されかつ前記チャンバ(4)内で前記絶縁ガス(5)の物理的特性を経時的に測定するように適合されるセンサ(2)と、
ジャンプが発生したかを判定するための統計的なステップ検知、および/または変化が発生したかを判定するための統計的な変化検知を前記センサ測定値に対して実行するように適合されるコンピュータユニット(3)とを備え、
前記統計的なステップおよび/または変化の検知は、過去のセンサ測定値に基づく予想範囲を識別することと、現在のセンサ測定値が前記予想範囲外であるかを確認することとを含む、ガス監視システム。
【請求項2】
前記コンピュータユニット(3)は、もしジャンプおよび/または変化が発生した場合、 a)前記チャンバ(4)における前記絶縁ガス(5)の漏出率計算をリセットする、または
b)前記センサ測定値に対してオフセットを適用することによって前記ジャンプおよび/または変化を取り除くように適合される、先行する請求項に記載のガス監視システム。
【請求項3】
前記コンピュータユニット(3)は、
c)ジャンプが判定された場合、前記ジャンプの高さおよび/または前記ジャンプの方向におよび/または前記ガス絶縁開閉装置の状態を示す追加の測定信号に応じてa)またはb)のいずれかを決定し、
および/または前記コンピュータユニット(3)は、
d)前記チャンバ(4)内の前記絶縁ガス(5)の漏出率を計算する
ように適合される、先行する請求項に記載のガス監視システム。
【請求項4】
ジャンプおよび/または変化は、直近1時間、直近2時間、直近1日または直近2日の測定値の標準偏差の1.5,2.0または2.5以上である測定値によって特徴づけられる、先行する請求項のいずれか1項に記載のガス監視システム。
【請求項5】
前記統計的な変化検知は、SDARモデリングを備える、先行する請求項のいずれか1項に記載のガス監視システム。
【請求項6】
前記絶縁ガス(5)の前記物理的特性は、前記チャンバ(4)内の前記絶縁ガス(5)の濃度を示す、先行する請求項のいずれか1項に記載のガス監視システム。
【請求項7】
前記ガス絶縁開閉装置は電圧変圧器を備える、先行する請求項のいずれか1項に記載のガス監視システム。
【請求項8】
前記絶縁ガス(5)はSF6である、先行する請求項のいずれか1項に記載のガス監視システム。
【請求項9】
高電圧または中電圧部品(6)を囲う絶縁ガス(5)で満たされるチャンバ(4)を備えるガス絶縁開閉装置(1)内のジャンプおよび/または変化を検知するための方法であって、前記方法は、
それぞれの前記チャンバ(4)内で前記絶縁ガス(5)の物理的特性を経時的に測定するステップと、
前記センサ測定値に対して発生する、ジャンプが発生したかを判定するための統計的なステップ検知、および/または変化が発生したかを判定するための統計的な変化検知を実行するステップとを備え、
前記統計的なステップおよび/または変化の検知は、過去のセンサ測定値に基づく予想範囲を識別することと、現在のセンサ測定値が前記期待される範囲外であるかを確認することとを含む、方法。
【請求項10】
a)前記チャンバ(4)における前記絶縁ガス(5)の漏出率計算をリセットするステップ、または
b)前記センサ測定値に対してオフセットを適用することによって前記ジャンプおよび/または変化を取り除くステップを備える、先行する請求項に記載の方法。
【請求項11】
c)ジャンプが決定された場合、前記ジャンプの高さおよび/または前記ジャンプの方向におよび/または前記ガス絶縁開閉装置の状態を示す追加の測定信号に応じてa)またはb)のいずれかを決定するステップを備える、先行する請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記チャンバ(4)内の前記絶縁ガス(5)の漏出率を計算するステップを備える、先行する請求項に記載の方法。
【請求項13】
ジャンプおよび/または変化は、直近1時間、直近2時間、直近1日または直近2日の測定値の標準偏差の1.5,2.0または2.5以上である測定値によって特徴づけられる、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記統計的な変化検知は、SDARモデリングを備える、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記絶縁ガス(5)の前記物理的特性は、前記チャンバ(4)内の前記絶縁ガス(5)の濃度を示す、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、高電圧または中電圧部品を囲う絶縁ガスで満たされるチャンバと、チャンバに動作上接続されかつそれぞれのチャンバ内で絶縁ガスの物理的特性を経時的に測定するように適合されるセンサとを有するガス絶縁開閉装置を備えるガス監視システムに関する。本発明はさらに、高電圧または中電圧部品を囲う絶縁ガスで満たされるチャンバを備えるガス絶縁開閉装置のためのそれぞれの方法であって、それぞれのチャンバ内で絶縁ガスの物理的特性を経時的に測定するステップを含む方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
ガス絶縁開閉装置(GIS)は、10kVから100kVの中電圧下においておよび/または100kVから1200kVの高電圧下において典型的に操作される。例えば断路器、ヒューズおよび/または回路遮断機などの高電圧または中電圧部品を絶縁するために、GISは空気またはSF6などの絶縁ガスなどで満たされる。他のガスなども使用され、現在、複数の製造者によって開発されている。しかし、SF6は伝統的に様々な利点によって高電圧用途に選択されるガスであった。分子の対称的な配置は極端な安定性および非常に高い絶縁能力をもたらす。SF6はそのため、大気圧における空気の約3倍の絶縁耐力を有する。結果として、SF6を絶縁ガスとして使用するGISは、絶縁媒体として空気を使用する機器より相当に小型化されることができる。さらに、SF6は、破壊によって大きく損傷されないという点において「自己回復」絶縁体である。このことがSF6を遮断媒体として非常に適したものにする。
【0003】
一方で、SF6は非常に強い温室効果ガスとしても認識されている。USEPAは、SF6が約3200年の大気寿命を有し、CO2の23,900倍の地球温暖化係数(100年値)を有することを報告している。それゆえSF6の使用は厳格に管理され、規制されている。GIS内での製造欠陥はSF6の漏出をもたらすことがあり、環境に影響を与え、同時にGISの絶縁性能を低下させる。多量の漏出した絶縁ガスは、制御されない電気放電によって潜在的に壊滅的な効果を有し得る。
【0004】
EP3790032A1は、以下のステップを含む数値を提供する少なくとも1つのガス特性を持つガスを含む回路遮断器を監視する方法であって、a)回路遮断器内の少なくとも1つのガス特性を参照するデータセットを収集することを備え、データセットはその日の特定の条件または特定の時間の間の少なくとも1つのガス特性の数値を含み、上記方法はさらに、b)直近10日のうち少なくとも3日のデータセットの少なくとも1つのガス特性の標準偏差を計算することと、c)ガス圧力の標準偏差を所定の閾値と比較することと、d)標準偏差が閾値を超える場合に初期動作を起こすことと、を備える、方法を記載している。
【0005】
このような問題を避けるために、ガス絶縁開閉装置のための技術的ガス監視システムが典型的にはシステムの濃度および/または圧力の監視のために開発されている。漏出率はこれらの測定値に基づいて計算される。この漏出率計算の精度を高めるために、システムは、例えば直近4週の測定値および/またはデータを考慮することができる。特に電圧変圧器におけるガス区画について、もしガスハンドリング操作が発生した場合またはもし負荷が変化した場合、当初測定されたガス圧力および/または濃度の急激な変化が結果として生じる。そのような圧力の急速な変化は、望ましくない警報および警告を起こす誤って計算された漏出率をもたらすことがあり、このことはGISの連続稼働にとって好都合ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それゆえ、本発明の目的は、そのような「誤警報」を防止するための改良されたガス監視システムおよびそれぞれの方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、独立請求項の特徴によって解決される。好ましい実施形態は、従属請求項において詳述される。
【0008】
そのため、目的はガス監視システムによって解決され、前記ガス監視システムは、
高電圧または中電圧部品を囲う絶縁ガスで満たされるチャンバを有するガス絶縁開閉装置と、
前記チャンバに動作上接続されかつそれぞれの前記チャンバ内で前記絶縁ガスの物理的特性を経時的に測定するように適合されるセンサと、
ジャンプが発生したかを判定するための統計的なステップ検知、および/または変化が発生したかを判定するための統計的な変化検知を前記センサ測定値に対して実行するように適合されるコンピュータユニットとを備える。
【0009】
それゆえ、前記提案される解決手段の重要な点は、ガスの取り扱い、または例えば前記絶縁ガスの圧力および/または濃度の値などの物理的特性の他の急激な変化を自動的に検知することである。そのような場合、以下に記載するように、漏出率計算が再開されるかということ、または前記ジャンプおよび/または変化が、例えば高電圧または中電圧部品として電圧変圧器の場合における測定データから取り除かれることができる「誤警報」を構成するかをということが順次決定されることができる。そのような方法で望ましくない警報および警告が有意に減少されるか、または排除されさえする。
【0010】
そのため、従来技術のシステムとは対照的に、例えば前記絶縁ガスの補充などのガス取り扱い操作の後、例えばHAPGおよび競合などの漏出率および/または傾向計算アルゴリズムを特に手動によって再開することは必ずしも求められない。同様の問題は、ガス圧力および/または濃度が前記電圧変圧器の負荷に強く依存する電圧変圧器のガス区画内で起こることがある。そのため、もし電圧変圧器を有するラインをオンまたはオフに切り替える場合、圧力および/または濃度は、大幅な増加および/または減少を伴って変化する、つまり、それぞれジャンプおよび変化である。そのようなジャンプは、補充と同様の効果を持ち、誤警報を起こす可能性があり、前記提案される解決手段によって非常に便利な方法で回避される。
【0011】
言い換えれば、前記提案される解決手段は基本的に、特に次に続く実際の前記漏出率および/または傾向計算の前に発生する、ジャンプおよび/または変化の検知を追加する。前記提案されるジャンプおよび/または変化の検知は、現在の測定値がジャンプおよび/または変化を構成するかを識別するために過去の測定値に着目し得る。前記ジャンプおよび/または変化の検知は過去の測定値に基づいて予想範囲を識別することがあり、現在の、特に直近の前記測定値が予想範囲外であるかを確認し得る。特に、統計的なステップおよび/または変化の検知は、過去のセンサ測定値に基づく予想範囲を識別することと、現在のセンサ測定値が前記予想範囲外であるかを確認することとを含み得る。もしそのような場合、前記ジャンプおよび/または変化は、以下に記載される通り、前記測定値にオフセットを追加することによって検知および排除されることが可能である。
【0012】
従来技術の実施形態において、漏出率計算についての問題は、ガス取り扱いによるジャンプの後の実世界において、および電圧変圧器のガス区画内において観察されており、ガス区画において圧力および/または濃度は前記ラインの負荷、特に通電に強く依存する。前記提案される解決手段においては、新しいデータ点の代わりに、複数の直近のデータ点がジャンプおよび/または変化を検知するために使用されることができる。このため、ジャンプおよび/またはステップの検知閾値は過去の計測値を使用して計算、または予め定義された構成によって付与されることができる。通常、電圧変圧器を除くすべての区画においてジャンプアップは補充を示す。ジャンプダウンは大規模なガスの漏出または排出を示す。そのため、ジャンプダウンは漏出警告を引き起こし得るべきである。電圧変圧器の場合、ジャンプアップは補充または通電事象である可能性がある。ジャンプダウンは大規模な漏出または非通電によって引き起こされ得る。非通電によるジャンプダウンは漏出警告を引き起こすべきではない。前記提案される解決手段は、誤警報を供与するために、これらの圧力低下事象の検知を提供する。
【0013】
前記ガス絶縁開閉装置(GIS)は、好ましくは、10kVから100kVの中電圧下および/または100kVから1200kVの高電圧下において稼働するように構成される。前記チャンバは、好ましくは気密で提供され、および/または前記中電圧または高電圧部品を封入する金属ハウジングを備える。前記中電圧または高電圧部品は、回路遮断機、ヒューズ、断路器などとして例示的に提供される。測定される物理的特性は、圧力、濃度、音速、回折などを含み得る。単一のセンサが存在する可能性がある一方で、複数のセンサが存在することも可能であり、同じまたは異なる物理的特性を測定し得る。経時的という単語は好ましくは前記センサが連続的、例えば1日、2日以上に渡って測定することを意味する。前記コンピュータユニットは、例えばマイクロプロセッサなどの任意のコンピュータ化手段として提供されることができる。
【0014】
ステップ平滑化、ステップフィルタリング、シフト検知、ジャンプまたはエッジ検知としても知られる前記統計的なステップ検知は、好ましくは前記測定値の平均レベルにおける急激な変化を発見するプロセスとして理解されるべきである。前記統計的なステップ検知は、好ましくはいわゆるオンラインアルゴリズムを使用することによって前記測定データが到達する時に、好ましくは実行される。前記統計的な変化検知は、好ましくは、確率的プロセスの確立分布または時系列が変化する時を識別することを含む。
【0015】
好ましい実施形態に従うと、前記コンピュータユニットは、もしジャンプおよび/または変化が発生した場合、
a)前記チャンバにおける前記絶縁ガスの漏出率計算をリセットする、または
b)前記センサ測定値に対してオフセットを適用することによって前記ジャンプおよび/または変化を取り除く
ように適合される。
【0016】
そのため、ジャンプおよび/または変化が検知された場合、前記漏出率および/または傾向計算が自動的にそれぞれリセットおよび再初期化されることができる。例えば補充は通常、例えばガス圧力などの前記物理的特性を減少させないため、そのような場合は前記物理的特性を増加させるジャンプおよび/または変化に限定され得る。代替的に、例えば圧力および/または濃度などの前記物理的特性が例えばライン負荷または他のパラメータ、例えば電圧変圧器内のガス区画に依存する場合では、前記ジャンプおよび/すべて変化は前記測定値から除去されることができる。そのような場合においてオフセットが適用されることができ、オフセットは、特に漏出率計算が適用される前に、前記ジャンプおよび/または前記変化を除去する。前記オフセットは好ましくは、前記測定値における前記ジャンプおよび/または前記変化を基本的に均等にする値に等しい。従って、前記漏出率計算は、前記漏出率計算アルゴリズムをそれぞれ再初期化および停止する必要なく継続させることができる。
【0017】
さらなる好ましい実施形態においては、前記コンピュータユニットは、
c)ジャンプが判定された場合、前記ジャンプの高さおよび/または前記ジャンプの方向におよび/または前記ガス絶縁開閉装置の状態を示す追加の測定信号に応じてa)またはb)のいずれかを決定する
ように適合される。
【0018】
特に例えば電圧変圧器などのb)が可能であるガス区画を備える実施形態にとって、選択肢a)またはb)を選択すべきかということを決定することは有利である。ジャンプの高さ、ジャンプの方向、例えば電圧変圧器における通電に基づいた圧力変化は繰り返し、ジャンプアップの後、次のジャンプはジャンプダウンであり、例えば電圧変圧器の電圧などの状態をアナログ値または二値で表す追加の測定信号などのパラメータの少なくとも1つに基づいて決定がなされることができる。
【0019】
他の好ましい実施形態においては、コンピュータユニットは、
d)前記チャンバ内の前記絶縁ガスの漏出率を計算する
ように適合される。
【0020】
そのような計算は好ましくはa)およびb)の決定の後に行われる。前記絶縁ガスの前記漏出率の前記計算は、将来の予想漏出率の計算を含み得る。そのような予想は、環境基準によって規制されるか、または非常に高価なガスの厳格な在庫を維持することを可能にする。さらに、前記のGISの前記操作が危険になる可能性があり、かつ前記GISが修理を必要とする将来の時刻を前記GISの前記オペレータは識別することができる。例えばSF6などの前記絶縁ガスの漏出は、環境に影響を与える可能性があり、同時に前記GISの前記絶縁性能を低下させる。そのため、前記絶縁ガスの大幅な損失は、制御されない放電に起因する潜在的に壊滅的な影響を生じ得る。
【0021】
さらなる好ましい実施形態に従うと、ジャンプおよび/または変化は、直近1時間、直近2時間、直近1日または直近2日の測定値の標準偏差の1.5,2.0,2.5,5.0または10.0以上である測定値によって特徴づけられる。代替的には、直近12時間、直近18時間、直近5日、直近10日の前記測定値の前記標準偏差が考慮されることができる。このように、ジャンプおよび/または変化が発生したかを決定する精確な測定ルールが規定される。
【0022】
別の好ましい実施形態において、前記統計的な変化検知は、SDARモデリング(sequentially discounting autoregression time series modelling)を備える。そのような自己回帰モデルは、同じ単変量時系列における過去の測定値から現在の測定値を予測するための時系列モデルを好ましくは構成することを意味する。そのほかに、当業者に知られている他の統計的な変化検知アルゴリズムが使用されることができる。
【0023】
さらなる好ましい実施形態に従うと、前記絶縁ガスの前記物理的特性は、前記チャンバ内の前記絶縁ガスの濃度を示す。このように、前記センサは好ましくは濃度測定センサとして提供される。
【0024】
さらなる好ましい実施形態において、前記ガス絶縁開閉装置は電圧変圧器を備える。電圧変圧器(VT)は、電位変圧器(PT)とも呼ばれ、並列接続タイプの計器用変圧器として通常理解されている。電圧変圧器は、通常、測定される電源に微弱な負荷をもたらし、正確な二次接続計量を可能にするために正確な電圧比および位相関係を有するように設計される。
【0025】
一般的に、前記絶縁ガスには様々な選択肢が存在する。しかし、好ましい実施形態に従うと、前記絶縁ガスはSF6である。六フッ化硫黄(SF6)は、伝統的に高電圧用途に選択される絶縁ガスである。分子の対称的な配置は極端な安定性および非常に高い絶縁能力をもたらす。SF6は、大気圧における空気の約3倍の絶縁耐力を有する。結果として、SF6を絶縁ガスとして使用するGISは、絶縁媒体として空気を使用する機器より相当に小型化されることができる。さらに、SF6は、破壊によって大きく損傷されないという点において「自己回復」絶縁体である。これは、SF6を遮断媒体として非常に適したものにする。SF6に加えて、他のガスがSF6よりも気候に優しい代替物として開発されており、これは前記提案された解決手段に等しく使用することができる。
【0026】
前記目的は、高電圧または中電圧部品を囲う絶縁ガスで満たされるチャンバを備えるガス絶縁開閉装置内のジャンプおよび/または変化を検知するための方法によって完全に解決され、前記方法は、
それぞれの前記チャンバ内で前記絶縁ガスの物理的特性を経時的に測定するステップと、
前記センサ測定値に対して発生する、ジャンプが発生したかを判定するための統計的なステップ検知、および/または変化が発生したかを判定するための統計的な変化検知を実行するステップと
を備える。
【0027】
好ましい実施形態に従うと、もしジャンプおよび/または変化が発生した場合、前記方法は、
a)前記チャンバにおける前記絶縁ガスの漏出率計算をリセットするステップ、
または
b)前記センサ測定値に対してオフセットを適用することによって前記ジャンプおよび/または変化を取り除くステップ
を備える。
【0028】
他の好ましい実施形態において、前記方法は、
c)ジャンプが判定された場合、前記ジャンプの高さおよび/または前記ジャンプの方向および/または前記ガス絶縁開閉装置の状態を示す追加の測定信号に応じてa)またはb)のいずれかを決定するステップ
を備える。
【0029】
さらなる好ましい実施形態に従うと、前記方法は
d)前記チャンバ内の前記絶縁ガスの漏出率を計算するステップ
を備える。
【0030】
他の好ましい実施形態において、ジャンプおよび/または変化は、直近1時間、直近2時間、直近1日または直近2日の測定値の標準偏差の1.5,2.0または2.5以上である測定値によって特徴づけられる。
【0031】
さらなる好ましい実施形態に従うと、前記統計的な変化検知は、SDARモデリング(sequentially discounting autoregression time series modelling)を備える。
【0032】
他の好ましい実施形態に従うと、前記絶縁ガスの前記物理的特性は、前記チャンバ内の前記絶縁ガスの濃度を示す。
【0033】
前記方法のさらなる実施および利点は、前述のようなシステムから、当業者によって直接的かつ明確に導出される。
【0034】
図面の簡単な説明
本発明のこれらおよび他の態様は、以下に記載される実施形態によって明らかになり、それらを参照して解明される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】例示的な実施形態によるガス監視システムを概略図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
実施の説明
図1は、例示的な実施形態によるガス監視システムを身体的図で示す。
【0037】
ガス監視システムは、ガス絶縁開閉装置1と、センサ2と、コンピュータユニット3とを備える。ガス絶縁開閉装置1は管状気密チャンバ4を備え、管状気密チャンバ4は高電圧または中電圧部品6を囲う絶縁ガス5で満たされる。絶縁ガス5は六フッ化硫黄(SF6)として提供される一方で、同様の絶縁能力を有する他の絶縁ガスも同様に使用され得る。
【0038】
高電圧または中電圧部品6は電圧変圧器として提供される。センサ2は圧力センサとして設けられ、チャンバ4に動作上接続されかつそれぞれのチャンバ4内で絶縁ガス5の物理的特性として圧力を経時的に測定する。
図1は1つのチャンバ4のみを示すが、ガス絶縁開閉装置1は各相に1つずつ、3つ以上のチャンバ4を備えてよく、各々は高電圧または中電圧部品6を各々囲う絶縁ガス5で満たされ、各々はそれぞれのセンサ2を取り付けられる。
【0039】
コンピュータユニット3は、マイクロプロセッサまたは同様の計算手段を備え、ジャンプが発生したかを判定するための統計的なステップ検知、および/または変化が発生したかを判定するための統計的な変化検知をセンサ測定値に対して実行するように構成される。これによって、直近の測定値が直近1時間、直近2時間、直近1日または直近2日の測定値の標準偏差の1.5、2.0または2.5以上の場合、コンピュータユニット3はジャンプおよび/または変化が発生していると判定する。
【0040】
そのような場合、コンピュータユニット3は、a)チャンバ4における絶縁ガス5の既に行われている漏出率計算がそれぞれリセットおよび再初期化されるか否か、またはb)検知されたジャンプおよび/または変化がセンサ測定値に対してそれぞれオフセットを適用し、続いて漏出率計算を継続することによって取り除かれるか否かを決定する。そのため、後者の場合では、ジャンプおよび/変化を無効化するために、漏出率計算が行われる前にオフセットが適用される。
【0041】
ステップb)は、電圧変圧器を備えるガス区画に対して可能であり、これにより、ジャンプおよび/または変化の高さ、ジャンプおよび/または変化の方向に基づいて決定がなされることができ、例えば、電圧変圧器における通電に基づく圧力変化は繰り返され、上昇後の次のジャンプは下降であり、また例えば電圧変圧器の電圧などの状態をアナログまたは二値として示す追加の測定信号に基づいて決定がなされることができる。
【0042】
一度オフセットが適用されると、チャンバ4における絶縁ガス5の漏出率は、連続して計算されることができる。オフセットのサイズは、測定データにおけるジャンプおよび/または変化を均等にするように選択される。ジャンプが発生しているかを判定するための統計的なステップ検知および/または変化が発生しているかを判定するための統計的な変化検知は、SDARモデリング(sequentially discounting autoregression time series modelling)を含んでもよい。
【0043】
本発明は、図面および前述の説明において詳細に図示および説明されているが、そのような図示および説明は、実例的または模範的であり、限定的ではないと見なされるべきである。本発明は、開示されていない実施形態に限定されない。開示される実施形態に対する他の変更された形態は、図面、本開示、および添付の特許請求の範囲の検討から、特許請求される発明を実施する際に当業者によって理解され、実施され得る。請求項において、「備える(comprising)」という用語は、他の要素またはステップを除外せず、不定冠詞「a」または「an」は、複数を除外しない。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを有利に使用することができないことを示すものではない。請求項におけるいかなる参照符号も、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【符号の説明】
【0044】
参照符号のリスト
1 ガス絶縁開閉装置
2 センサ
3 コンピュータユニット
4 チャンバ
5 絶縁ガス
6 中電圧部品
【国際調査報告】