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特表2024-516432高純度で緻密な焼結SiC材料の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-15
(54)【発明の名称】高純度で緻密な焼結SiC材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/575 20060101AFI20240408BHJP
【FI】
C04B35/575
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566866
(86)(22)【出願日】2022-04-29
(85)【翻訳文提出日】2023-12-18
(86)【国際出願番号】 FR2022050832
(87)【国際公開番号】W WO2022229578
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】2104578
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】310009890
【氏名又は名称】サン-ゴバン サントル ドゥ ルシェルシェ エ デトゥードゥ ユーロペン
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】ジョバンニ マッサッソ
(72)【発明者】
【氏名】コスタナ ブスケ
(57)【要約】
本発明は、1~10マイクロメ-トルの等価直径の中央値を有する炭化ケイ素粒からなる多結晶炭化ケイ素焼結材料に関し、上記材料は、上記材料のうち体積比で2%未満の全多孔度、及び遊離炭素を除いて、少なくとも99%の炭化ケイ素の質量含有量を有し、上記材料において、ベータ型(β)結晶形態を有するSiCの含有量の、アルファ型(α)結晶形態を有するSiCの含有量に対する質量比は、2未満である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1~10マイクロメ-トルの等価直径の中央値を有する炭化ケイ素粒からなる多結晶炭化ケイ素焼結材料であって、前記材料が、前記材料のうち体積比で2%未満の全多孔度、及び遊離炭素を除いて、少なくとも99%の炭化ケイ素(SiC)の質量含有量を有し、前記材料において、ベータ型(β)結晶形態を有する炭化ケイ素の含有量の、アルファ型(α)結晶形態を有する炭化ケイ素の含有量に対する質量比が、2未満であり、前記材料が、質量比で、以下の元素組成を有する、材料:
- 0.5%未満の、炭化ケイ素とは別の形態であるケイ素、
- 2.0%未満の、炭化ケイ素とは別の形態である炭素、好ましくは、1.5%未満の、炭化ケイ素とは別の形態である炭素、並びに、
- 合計で、0.1~0.7%の、Al、B、Fe、Ti、Cr、Mg、Hf、Zr、好ましくはZr、Ti、Hf、Bから選択される少なくとも1種の元素、
- 0.5%未満の酸素(O)、並びに、
- 合計で0.5%未満の、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuの元素、並びに、
- 0.5%未満のアルカリ元素、並びに、
- 0.5%未満のアルカリ土類、並びに、
- 0.05~1%の窒素(N)、
- 100%への補完を形成する、他の元素。
【請求項2】
前記材料が、前記材料中の結晶相の全質量に対して、1%超のベータ結晶形態であるSiCを含む、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
前記材料のうち、その多孔度を除いた体積比で、90%超の粒が、1~10マイクロメートルの等価直径を有する、請求項1又は請求項2に記載の材料。
【請求項4】
前記材料のうち質量比で、窒素(N)の元素質量含有量が、0.05~0.5%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の材料。
【請求項5】
ホウ素(B)の質量含有量が、前記材料のうち、0.1質量%超かつ0.7質量%未満である、請求項1~4のいずれか1項に記載の材料。
【請求項6】
前記材料中の、ベータ結晶形態(β)であるSiC含有量の、アルファ結晶形態(α)であるSiC含有量に対する質量比が、1未満である、請求項1~5のいずれか1項に記載の材料。
【請求項7】
炭化ケイ素粒が、前記材料のうち少なくとも98質量%、好ましくは99質量%であり、残りは、本質的にSi元素及びC元素を含む残留粒界相からなり、好ましくは本質的にSi元素及びC元素からなる残留粒界相からなる、請求項1~6のいずれか1項に記載の材料。
【請求項8】
アルファ結晶形態である炭化ケイ素粒のうち、90体積%超が、10マイクロメートル未満の等価直径を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の材料。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の多結晶炭化ケイ素焼結材料の製造方法であって、以下の工程を含む方法:
(a)質量比で、下記を含む、ミネラル供給原料を生成すること:
- 少なくとも95%、好ましくは少なくとも97%の、炭化ケイ素粒子であって、粉末の形態であり、そのメディアンサイズが、0.1~5マイクロメートルであり、その炭化ケイ素粒子が、95%超、好ましくは97%超のSiC質量含有量を有し、ベータ結晶形態が、炭化ケイ素の全質量のうち、90%超、好ましくは95%超である、炭化ケイ素粒子、
- 少なくとも1種の固相の焼結添加剤であって、好ましくは粉末の形態であり、アルミニウム、ホウ素、鉄、チタン、クロム、マグネシウム、ハフニウム、又はジルコニウムから選択される元素を含み、好ましくは98質量%超の純度のものを含み、前記元素の寄与が、前記炭化ケイ素粒子の全質量のうち0.1~0.8%となる量でこの元素を含む、焼結添加剤、
- 0.5~3%の、元素炭素含有量(C)が99質量%超である炭素源であって、好ましくは未結晶若しくは非晶質のグラファイトの形態、又は炭素粉末の形態であり、そのメディアン径が、1マイクロメートル未満である、炭素源、
(b)前記供給原料を、好ましくは鋳造によって、プリフォームの形態へと成形すること、
(c)前記プリフォームを、60MPa超の圧力下で、1800℃超かつ2100℃未満の温度で、窒素雰囲気中において、好ましくは二窒素雰囲気中において、固相焼結すること。
【請求項10】
炭化ケイ素粒子の粉末中の遊離炭素の質量含有量が、2%未満である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
炭化ケイ素粒子の粉末中の遊離シリカの質量含有量が、1%未満である、請求項9又は請求項10に記載の方法。
【請求項12】
炭化ケイ素粒子の粉末中の遊離ケイ素の質量含有量が、0.5%未満である、請求項9~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
アルミニウム(Al)、アルカリ、アルカリ土類、並びにSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuから選択される少なくとも1つの元素を含む希土類金属の、元素含有量の合計における、前記炭化ケイ素粒子の粉末の質量含有量が、0.5%未満である、請求項9~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記焼結添加剤中に含まれる前記元素が、ホウ素である、請求項9~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記プリフォームを固相焼結する工程を、SPS(「放電プラズマ焼結」)によって行う、請求項9~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1~9のいずれか1項に記載の材料を含む装置であって、前記装置は、以下から選択される、装置:タービン、ポンプ、バルブ又は流体ラインシステム、熱交換器;太陽熱吸収器、若しくは熱回収若しくは光反射用の装置、炉のリフラクトリーコーティング、調理表面、金属溶融用るつぼ、摩耗防止部品、切削工具、ブレーキパッド若しくはディスク、レドーム、熱化学処理用のコーティング若しくは支持体、又は光学産業及び/若しくは電子産業用の活性層堆積用基材;加熱要素又は抵抗器;温度又は圧力センサー;点火器;磁気サセプター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高純度の炭化ケイ素(SiC)に基づく焼結材料に関し、より詳細には、そのような材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化ケイ素材料は、それらの高い硬度、化学的慣性、耐熱性及び機械的耐性、並びに熱伝導性で古くから知られている。このことは、それらを、例えば下記などの用途に選ばれる候補にさせる:切削工具又は機械加工工具;高い摩耗を受けるタービン部品又はポンプ要素;腐食性製品を運ぶパイプバルブ;気体又は液体の濾過又は脱汚染のための支持体及びメンブレン;気体又は液体の濾過又は汚染除去のための支持体及びメンブレン;熱交換器及び太陽熱吸収器、反応器の熱化学処理用コーティング若しくは材料、特にはエッチング用のもの、又はエレクトロニクス産業用として意図される基材;温度センサー又は加熱抵抗器;高温若しくは高圧センサー又は非常に過酷な環境用のセンサー;グラファイトでできているものよりも耐酸化性の高い点火器又は磁気サセプター;さらには、特定の用途、例えばミラー又はその他の光学装置など。
【0003】
しかしながら、非常に高密度(すなわち、99%超の相対密度を有する)であり、かつ高純度(すなわち、98.5%超のSiCの質量含有量、又はさらには99.0%超のSiCの質量含有量)である多結晶炭化ケイ素の材料を焼結することは、依然として技術的な課題である。
【0004】
炭化ケイ素の緻密なセラミック体を、超高温(1500℃超)において機械的挙動に対して有害な液相を形成する焼結添加物に頼ることなく、得る方法は、以前から知られている。
【0005】
例えば米国特許第4004934号明細書は、ベータ結晶形態であるSiCの非常に純度の高い粉末を含み、フェノール樹脂の形態である炭素であって、SiCに対してこの元素が質量で0.1~1.0%である炭素、及びホウ素の化合物であって、SiCに対してこの元素が質量で0.3~3.0%である化合物を添加した、混合物を、冷間プレスすることによって得られるプリフォームを、1900~2100℃の温度で無圧固相焼結する方法を開示している。
【0006】
より最近の米国特許出願公開第2006/0019816号明細書では、炭化ケイ素粒子、SiCの質量のうち2~10質量%であり、水溶性樹脂の形態である炭素源、及び、SiCの質量のうち0.5~2質量%であるホウ素源、例えば炭化ホウ素、を含む泥漿(スリップ)から出発する製造方法が提案されている。
【0007】
より最近の国際公開第2019132667号では、水性媒体中において、94%のアルファSiC粒子、1%の炭化ホウ素粒子、及び5%の炭素源を共粉砕することによって、均一な混合物を生成する方法が提案されており、これによって、微粉化し(アトマイズし)、鋳造し、かつ無荷重で、アルゴン中かつ2100℃超で、焼結した後、96~98%の相対密度を有する焼結体を得うる。
【0008】
しかしながら、これらの解決策では、ホウ素含有量、及び出発粉末に関連する不可避的不純物、を考慮すると、SiC含有量が98.5%超、又はさらには99%超である最終材料を得ることは不可能である。
【0009】
Ana LaraらによるCeramic International 38(2012)45-53に掲載された論文「Densification of additive-free polycristalline β-SiC by spark-plasma sintering」は、非常に高純度かつ98%の相対密度の材料を、2100℃でのSPS焼結によって添加剤を用いずに、超高純度のベータ型SiC粉末から出発して、得うることを示しているが、そのサイズはナノメートルであり、粒子又は結晶子は、10ナノメートルのメディアンサイズを有する。このような粉末の使用は、多くの取り扱い上の問題を引き起こし、このような方法を工業的にスケールアップすることを困難にしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、98%超、好ましくは98.5%超、又はさらには99%超の相対密度を有し、遊離炭素を除いて、99%超のSiC質量含有量を有する、SiC焼結材料の、拡張可能な製造プロセスが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
後述する、出願会社の研究により、組成、混合物の配合、及び焼結技術の観点から、このような目的を達成することを可能にする組み合わせが実証された。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、より特には、以下の工程を含む多結晶炭化ケイ素焼結材料の製造方法の第1態様に関する:
(a)質量比で、以下を含む、好ましくは本質的に以下からなる、ミネラル供給原料を生成すること:
- 少なくとも95%、好ましくは少なくとも97%の、炭化ケイ素粒子であって、粉末の形態であり、そのメディアンサイズが、0.1~5マイクロメートルであり、その炭化ケイ素粒子が、95%超、好ましくは97%超のSiC質量含有量を有し、ベータ結晶形態の粉末が、炭化ケイ素の全質量のうち、90%超、好ましくは95%超を占める、炭化ケイ素粒子、及び、
- 少なくとも1種の固相の焼結添加剤であって、好ましくは粉末の形態であり、アルミニウム、ホウ素、鉄、チタン、クロム、マグネシウム、ハフニウム、又はジルコニウムから選択される元素を、好ましくはB、Ti、Hf、又はZrから選択される元素を、好ましくはB又はZrから選択される元素を、さらにより好ましくはBを含み、好ましくは98質量%超の純度のものを含み、上記元素の寄与が、上記炭化ケイ素粒子の全質量のうち、0.1~0.8%、好ましくは0.2~0.7%となる量で含む、固相の焼結添加剤、
- 0.5~3%の、元素炭素含有量(C)が99質量%超である炭素源であって、好ましくは未結晶若しくは非晶質のグラファイトの形態、又は炭素粉末の形態であり、そのメディアン径が、1マイクロメートル未満である、炭素源、
(b)供給原料を、好ましくは鋳造によって、プリフォームの形態へと成形すること、
(c)上記プリフォームを、60MPa超、好ましくは75MPa超、又はさらには80MPa超の圧力下で、1800℃超かつ2100℃未満の温度において、窒素雰囲気中において、好ましくは二窒素雰囲気下において、固相焼結すること。
【0013】
上記方法の、他の随意の、かつ有利な付加的特徴によれば、下記の通りである:
- 炭化ケイ素粒子の粉末中の遊離又は残留炭素の質量含有量が、3%未満、好ましくは2%未満、好ましくは1.5%未満である。好ましくは、遊離炭素は、不可避的不純物の形態でのみ、炭化ケイ素の粉末中に存在する。
- 炭化ケイ素粒子の粉末中の遊離又は残留シリカの質量含有量が、2%未満、好ましくは1.5%未満、好ましくは1%未満である。
- 炭化ケイ素粒子の粉末中の遊離又は残留ケイ素の質量含有量が、0.5%未満、好ましくは0.1%未満である。
- 好ましくは、遊離シリカが、不可避的不純物の形態でのみ存在する。
- 炭化ケイ素粒子の粉末中の、金属性かつ非金属性形態である、アルミニウム元素(Al)の質量含有量が、0.2%未満である。好ましくは、アルミニウムは、不可避的不純物の形態でのみ存在する。
- ナトリウム(Na)+カルシウム(Ca)+カリウム(K)+マグネシウム(Mg)の元素の合計に関する、炭化ケイ素粒子の粉末の質量含有量が、0.2%未満である。好ましくは、上記元素は、不可避的不純物の形態でのみ存在する。
- アルミニウム(Al)、アルカリ、アルカリ土類、及び希土類の元素含有量の合計における、炭化ケイ素粒子の粉末の質量含有量が、0.5%未満である。希土類元素は、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuである。好ましくは、全てのこれらの元素が、不可避的不純物の形でのみ存在する。
- 焼結添加剤中に含まれる元素が、好ましくはホウ素である。好ましくは、焼結添加剤は、炭化ホウ素粉末である。
- 焼結添加剤中に含まれる元素が、特定の実施形態によれば、ジルコニウムである。好ましくは、焼結添加剤は、炭化ジルコニウム粉末である。ありうる一態様によれば、焼結添加剤は、ホウ化ジルコニウムの粉末である。
- 焼結粉末のメディアン径が、2マイクロメートル未満、好ましくは1マイクロメートル未満である。
- ベータ結晶形態である炭化ケイ素粉末の比表面積が、5cm/g超、かつ/又は30cm/g未満である。
- ベータ結晶形態である炭化ケイ素粉末が、二峰性であり、2つのピークを有し、さらにより好ましくは、高さが0.2~0.4ミクロン(マイクロメートル)である、第1ピーク、及び高さが2~4ミクロン(マイクロメートル)である、第2ピークを有する。
【0014】
当業者に知られている任意の成形技術は、プリフォームの汚染を避けるために全ての予防措置がとられ次第、作られる部品の寸法に応じて適用されうる。したがって、プラスターモールド内における鋳造は、モールドとプリフォームとの間にグラファイト媒体を用いることによって、又は混合によるモールドの過度の接触及び摩耗、並びに最終的にはプリフォームの汚染を避ける油を用いることによって、適応されうる。当業者が用いるためのこれらの管理された予防措置は、本方法の他の工程に対しても適用されうる。したがって、焼結の際、プリフォームを含んで用いられるモールド又はマトリックスは、好ましくはグラファイトでできているであろう。
【0015】
熱間プレス、熱間静水圧プレス、又はSPS(放電プラズマ焼結)技術が、特に適している。好ましくは、圧力支援焼結が、SPSによって行われ、これは、プリフォームが置かれているグラファイトマトリックス内へと直流電流を流すことによって、誘導加熱を実施する焼結プロセスである。平均昇温速度は、好ましくは10℃/分超かつ100℃/分未満である。最高温度でのプラトー時間は、好ましくは10分超である。この時間は、プリフォームの形式及び炉の負荷に応じて比較的長くなりうる。
【0016】
工程(c)において焼結雰囲気に用いられる窒素は、99.99体積%超の純度、又はさらには99.999体積%超の純度である。
【0017】
ありうる一実施形態によれば、炭素の随意の添加を、供給原料中の上記炭化ケイ素粉末中の遊離シリカの質量含有量の、0.15~0.25倍の質量比に従って実行してよく、それによって、反応により炭化ケイ素を形成し、このようにして、この遊離シリカを除去する。
【0018】
好ましくは、炭素の添加は、ミネラル供給原料の炭化ケイ素の質量に対して、3質量%未満の炭素元素(C)である。
【0019】
別のありうる実施形態によれば、ケイ素(好ましくは、金属粉末の形態であって、そのケイ素(Si)の元素含有量が、99質量%超であり、そのメディアン径が、好ましくは1マイクロメートル未満である)を、随意に、出発ベータ結晶形態である上記炭化ケイ素粉末中の遊離炭素の質量含有量の、1.5~2.5倍の質量比で供給原料に添加してよく、それによって、反応により炭化ケイ素を形成し、このようにして、この遊離炭素を除去する。
【0020】
好ましくは、ケイ素の添加は、ミネラル供給原料の炭化ケイ素の質量に対して、2質量%未満のケイ素元素(Si)である。
【0021】
本発明はまた、上述した方法によって製造可能な炭化ケイ素焼結粒からなる多結晶材料に関し、その全多孔度は、上記材料の体積百分率で、2%未満、好ましくは1.4%未満、好ましくは1.2%未満、より好ましくは1%未満であり、その炭化ケイ素(SiC)の質量含有量は、遊離炭素を除いて、少なくとも99%であり、上記材料のうちアルファ結晶形態(α)であるSiC含有量に対する、ベータ結晶形態(β)であるSiC含有量の質量比は、2未満である。上記多結晶材料は、1~10マイクロメートルの等価直径の中央値を有する、炭化ケイ素の粒からなる。
【0022】
上記材料の他の随意の、かつ有利な付加的特徴によれば、以下の通りである:
- 上記材料の酸素(O)の質量含有量が、0.5%未満、好ましくは0.4%未満、又はさらには0.3%未満である。好ましくは、酸素は、材料中に不可避的不純物の形態でのみ存在する。
- ナトリウム(Na)+カリウム(K)+カルシウム(Ca)の合計元素含有量は、上記材料の質量のうち、累積で0.5%未満である。好ましくは、ナトリウム、カリウム、及びカルシウムは、材料中に不可避的不純物の形態でのみ存在する。
- 下記の元素質量含有量の合計が、上記材料の質量のうち、0.5%未満である:アルミニウム(Al);アルカリ;アルカリ土類金属;Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuから選択される少なくとも1種の元素を含む、希土類金属。好ましくは、上記元素は、材料中に不可避的不純物の形態でのみ存在する。
- 上記材料中のホウ素(B)の元素質量含有量が、上記材料のうち0.1質量%超、かつ/又は0.7%質量未満、好ましくは0.6質量%未満である。ありうる一態様によれば、ホウ素(B)の質量含有量は、上記材料のうち0.5質量%未満である。
- 上記材料中のジルコニウム(Zr)の元素質量含有量が、上記材料のうち0.1質量%超、かつ/又は0.7質量%未満、好ましくは0.6質量%未満である。ありうる一態様によれば、ジルコニウムの質量含有量は、上記材料のうち0.5質量%未満である。
- モリブデン(Mo)の元素含有量は、上記材料の質量のうち0.2%未満、好ましくは上記材料の質量のうち0.1%未満である。
- チタン(Ti)の元素含有量は、上記材料の質量のうち0.5%未満、好ましくは0.2%未満、好ましくは上記材料の質量のうち0.1%未満である。
- 上記材料中の窒素(N)の元素質量含有量は、0.05~0.5%、好ましくは0.1以上かつ/又は0.3%未満である。
- 鉄(Fe)の元素質量含有量は、上記材料の質量のうち0.5%未満である。好ましくは、鉄は、材料中に不可避的不純物の形態でのみ存在する。
- 炭化ケイ素SiCとは別の形態であるケイ素が、上記材料の質量のうち1%未満である。好ましくは、炭化ケイ素SiCとは別の形態であるケイ素は、材料中に不可避的不純物の形態でのみ存在する。
- 炭化ケイ素SiCとは別の形態である炭素が、上記材料の質量のうち2%未満である。
- 上記材料中の遊離又は残留炭素の質量含有量が、1.5%未満、好ましくは1.0%未満である。
- 好ましくは、炭化ケイ素SiCとは別の形態である炭素が、材料中に不可避的不純物の形態でのみ存在する。
- 上記材料中の遊離又は残留シリカの質量含有量は、1.5%未満、好ましくは1.0%未満、好ましくは0.5%未満である。
- 上記材料中の遊離又は残留ケイ素の質量含有量は、0.5%未満、好ましくは0.1%未満である。
- SiCは、遊離炭素を含んで、上記材料の質量のうち97%超、好ましくは98%超である。
- 上記材料のうちアルファ結晶形態(α)であるSiC含有量に対する、ベータ結晶形態(β)であるSiC含有量の質量比が、1.5未満、好ましくは1未満、又はさらには0.3未満、又はさらには0.2未満、又はさらには0.1未満である。
- 上記材料のうちアルファ結晶形態(α)であるSiC含有量に対する、ベータ結晶形態(β)であるSiC含有量の質量比が、0.01超であり、より好ましくは0.02超である。
- 上記材料は、材料中の結晶化相の合計質量に対して、1質量%超のベータ結晶形態であるSiC、好ましくは3質量%超のベータ結晶形態であるSiCを含む。
- ベータ結晶形態(β)であるSiCは、好ましくは、上記材料の結晶相の質量のうち50%未満である。
- 炭化ケイ素粒は、上記材料のうち少なくとも98質量%、好ましくは99質量%であり、残りは、本質的にSi元素及びC元素を含む残留粒界相からなり、好ましくは本質的にSi元素及びC元素からなる残留粒界相からなる。
- 本発明による材料において、窒素が、SiCの結晶格子内への挿入によって粒中に存在しうる。
- 上記材料のうち体積比で、その多孔度を除けば、上記材料の構成粒子のうち90%超、好ましくは95%超が、1~10ミクロン(マイクロメートル)、好ましくは1~8ミクロン(マイクロメートル)の、等価直径を有する。
- 90体積%超、好ましくは95体積%超、さらにより好ましくは全ての、アルファ結晶形態である炭化ケイ素粒が、10ミクロン(マイクロメートル)未満の等価直径を有する。
【0023】
ありうる一実施形態によれば、本発明は、1~10ミクロン(マイクロメートル)の等価直径の中央値を有する炭化ケイ素粒からなる多結晶炭化ケイ素焼結材料に関し、上記材料は、上記材料のうち体積比で2%未満の全多孔度、及び遊離炭素を除いて、少なくとも99%の炭化ケイ素(SiC)の質量含有量を有し、ここで、上記材料における、アルファ型結晶形態(α)を有するSiCの含有量に対する、ベータ型結晶形態(β)を有するSiCの含有量の質量比が、2未満であり、以下の元素組成(重量比)を有する:
- 0.5%未満の、SiCとは別の形態であるケイ素、
- 2.0%未満の、SiCとは別の形態である炭素、好ましくは1.5%未満の、SiCとは別の形態である炭素、特には0.5~1.5%の、SiCとは別の形態である炭素、並びに、
- 合計で、0.1~0.7%の、Al、B、Fe、Ti、Cr、Mg、Hf、又はZrから選択される少なくとも1種の元素、好ましくはB、Zr、Hf又はTiから選択される上記元素、さらにより好ましくはB、Zr、又はTiである上記元素、よりいっそう好ましくはBである上記元素、
- 0.5%未満の酸素(O)、並びに、
- 合計で0.5%未満のSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuの元素、並びに、
- 0.5%未満のアルカリ元素、並びに、
- 0.5%未満のアルカリ土類、並びに、
- 0.05~1%の窒素(N)、
- 100%への補完を形成する、他の元素。
ここで、上記材料のうちアルファ結晶形態(α)であるSiC含有量に対する、ベータ結晶形態(β)であるSiC含有量の質量比が、2未満である。
【0024】
本発明はまた、前述のような材料からなる少なくとも1つの部品を含む装置に関し、上記装置は、下記から選択される:タービン、ポンプ、バルブ、又は流体ラインシステム、熱交換器;太陽熱吸収器、若しくは熱回収若しくは光反射用の装置、炉のリフラクトリーコーティング、調理表面、金属溶融用るつぼ、摩耗防止部品、切削工具、ブレーキパッド若しくはディスク、レドーム、熱化学処理用、例えばエッチング用のコーティング若しくは支持体、又は光学産業及び/若しくは電子産業用の活性層堆積用基材;加熱要素又は抵抗器;温度又は圧力センサー;点火器;磁気サセプター。
【0025】
定義
【0026】
以下の表示及び定義は、本発明の前述の説明に関連して与えられる:
- 多結晶材料とは、複数の結晶方位又は様々な結晶方位の結晶を有する材料を意味すると理解される。
- 焼結セラミック材料では、粒が一体となって、上記材料の質量の本質的な部分を占めており、粒界相は、随意にセラミック相及び/若しくは金属相からなり、又は残留炭素は、有利には上記材料の質量のうち5%未満である。いわゆる液相焼結とは異なり、本発明による材料の焼成プロセスは、本質的に固相において行われ、すなわち、それは、焼結を可能にするために添加される添加剤又は随意に存在する不純物のレベルが、粒の再配列を可能にし、このようにして、それらを互いに接触させるのに十分であるような量で、液相を形成することを可能にしない、焼結である。固相焼結によって得られる材料は、一般に「固相焼結体」と呼ばれる。
- 焼結添加剤(しばしば単に「添加剤」と呼ばれる)は、本明細書において、焼結反応の反応速度論を容易にするために、かつ/又は促進するために、慣用的に知られている、化合物を意味すると理解される。
- 炭化ケイ素(又はSiC)とは、ケイ素元素と炭素元素とを化学量論的割合で混合したときの、ケイ素源Siと炭素源Cとの反応生成物を意味すると理解される。この反応生成物は、1600℃未満の温度かつ非酸化性雰囲気中で、本質的にベータ結晶形態である炭化ケイ素である。
【0027】
本質的にベータ結晶形態である炭化ケイ素粒子の粉末とは、3C又は立方の結晶形態が、炭化ケイ素のうち、90質量%超、好ましくは95質量%超である、粉末を意味すると理解される。炭化ケイ素のアルファ結晶形態は、主に六方晶又は菱面体晶:3H;4H;6H及び15Rである。
【0028】
「遊離炭素を除いて」という用語は、材料のうち遊離炭素以外の全ての成分を意味すると理解される。
【0029】
不純物とは、意図せず必然的に、原料とともに導入され、又は成分間の反応から生じる、不可避的な成分を意味すると理解される。不純物は、必要な成分ではなく、許容される成分に過ぎない。
【0030】
焼結材料の元素化学含有量、又は上記材料の製造方法の混合物において用いられる粉末の元素化学含有量は、当該技術分野で周知の技術に従って測定される。特に、例えばAl、B、Ti、Zr、Fe、Hf、Mo、希土類金属、アルカリ金属、及びアルカリ土類金属などの、元素のレベルは、蛍光X線によって、好ましくはICP(「誘導結合プラズマ」)によって、存在するレベルに応じて、特にはそのレベルが0.5%未満、又はさらには0.2%未満であればICPによって、特にはISO 21068-3:2008規格に従って、空気中750℃で、重量が減るまで焼成した製品について、測定されうる。遊離ケイ素、遊離シリカ、遊離炭素、及びSiCの質量比による含有量は、ISO 21068-2:2008規格に従って測定される。これらの酸素及び窒素は、特にはLECOによってISO 21068-3:2008規格に従って、決定される。
【0031】
SiCのポリタイプ組成、及び焼結材料の他の相の存在、又は上記材料の製造方法の混合物において用いられる粉末の他の相の存在は、通常、X線回折及びリートベルト分析によって得られる。特に、アルファSiC相及びベータSiC相のそれぞれのパーセントは、BRUKER社によって作られたD8 Endeavor装置を用いて、以下の構成を用いて決定されうる:
- 取得:d5f80:2θにおいて5°~80°、0.01°ステップ、0.34秒/ステップ、持続時間46分、
- 前面光学部(フロントオプティック):一次スリット0.3°、ソラースリット2.5°、
- サンプルホルダー:回転5rpm/minの自動カッター、
- 後面光学部(リアオプティック):ソラースリット:2.5°;ニッケルフィルター0.0125mm;PSD:4°。1D検出器(電流値)。
【0032】
回折図を、ソフトウェアEVA及びICDD2016データベースを用いて定性的に分析してよく、そして、それらを、HighScore Plusソフトウェアを用いてリートベルト精密化に従って定量的に分析してよい。
【0033】
アルファ形態又はベータ形態である焼結材料の粒の体積パーセント、及びそれらの直径を、電子後方散乱回折EBSDによる観察から得られる画像の分析によって決定しうる。その設備は、例えば、EBSD検出器を備えた走査型電子顕微鏡(SEM)、及びエネルギー分散型X線分光法(EDX)を備えた分光分析装置から構成されてよい。EBSD検出器及びEDX検出器は、ソフトウェアESPRIT(バージョン2.1)によって制御される。結晶学的コントラストの高い画像及び/又は密度コントラストの高い画像を、利用可能なソフトウェアを用いて収集しうる。
【0034】
粒の等価直径は、材料の切断平面に沿って観察される上記粒の表面積と同じ表面積の円板の直径に相当する。少なくとも2つの垂直な平面に沿って材料の様々な断面を用いることによって、粒の様々な等価直径の体積分布の非常に良好な表現を有しうるし、そこから体積によって上記粒の等価直径の中央値(又はD50パーセンタイル)を推測しうる。本願では、材料を構成する焼結粒の体積パーセントは、その多孔度を除いた材料の体積に対する相対値で表される。
【0035】
この粒の等価直径の中央値は、粒を第1及び第2の均等な集団へと分割する直径に対応し、これらの第1及び第2の集団は、それぞれ、メディアン径超の等価直径を有する粒のみを有し、又はメディアン径未満の等価直径を有する粒のみを有する。
【0036】
上述と同様に、随意に存在する粒界相の体積を計算してもよい。
【0037】
本発明による材料の全多孔度(又は全孔体積)は、閉鎖孔及び開放孔の体積の総和を、材料の体積で割ったものに相当する。これは、ISO 5018に従って測定された真密度に対する、ISO 18754に従って測定された仮比重のパーセントとして表される比率に従って計算される。
【0038】
粉末を構成する粒子のメディアン粒子径(又はメディアン「サイズ」)を、粒度分布の特性評価によって、特にはレーザー粒度分析器によって、得うる。粒度分布の特性評価は、従来、ISO 13320-1規格に準拠したレーザー粒度分析器を用いて行われる。レーザー粒度分析計は、例えば、堀場製作所(HORIBA)からのPartica LA-950でありうる。本明細書のために、特に言及しない限り、粒子のメディアン径はそれぞれ、集団の50質量%が見出される、以下の粒子の直径を示す。粒子の集合、特には粉末の集合の「メディアン径」又は「メディアンサイズ」は、D50パーセンタイル、すなわち、粒子を、体積の等しい第1及び第2の集団へと分割するサイズと呼ばれ、これらの第1及び第2の集団は、それぞれ、メディアンサイズ超の等価直径を有する粒のみを有するか、又はメディアンサイズ未満の等価直径を有する粒のみを有する。
【0039】
ベータ結晶形態である炭化ケイ素の粒子の粉末とは、3C又は立方晶形態が、炭化ケイ素の95質量%超である粉末を意味すると理解される。SiCのアルファ結晶形態は、主に六方晶相又は菱面体晶相;3H;4H;6H及び15Rである。
【0040】
比表面積は、例えばJournal of American Chemical Society 60(1938)の309~316ページに記載されている、B.E.T(Brunauer Emmet Teller)法によって測定される。
【0041】
特に断りのない限り、本明細書中のパーセントは、全て質量パーセントである。
【実施例
【0042】
例示的な実施形態
【0043】
以下に、本発明による材料を製造することを可能にする、非限定的な実施例を示すが、これは、もちろん、このような材料を得ることを可能にする方法及び本発明による方法、並びに本発明の利点を示す比較例についても、限定するものではない。
【0044】
以下の全ての実施例において、30mmの直径及び10mmの厚さを有する円柱の形態であるセラミック体を、最初に、以下の原料から下記の表1に報告されている様々な配合に従って、プラスターモールド内へと泥漿(スリップ)を鋳込むことによって、製造した:
(1)本質的にベータ結晶形態である炭化ケイ素粒子の粉末。これは、レーザー粒度分析計によって測定した非累積粒度分布によれば、数によって、0.3マイクロメートルに最高点が位置する第1ピーク、及び第1ピークの実質的に2倍の高さであり、3マイクロメートルに最高点が位置する第2ピークを有する、二峰性分布で存在する。二峰性粉末のメディアン径は、1.5マイクロメートルである。このSiC粉末は、以下の元素質量レベルを有する:
Sc+Y+La+Ce+Pr+Nd+Pm+Sm+Eu+Gd+Tb+Dy+Ho+Er+Tm+Yb+Lu<0.5%;
窒素(N)<0.2%;
Na+K+Ca+Mg<0.2%;
アルミニウム(Al)<0.1%;
鉄(Fe)<0.05%;
チタン(Ti)<0.05%;
モリブデン(Mo)<0.05%;
その炭素、シリカ、及び遊離ケイ素含有量は、それぞれ、2.0%未満、1.0%未満、及び0.1%未満である。ベータ-SiC相の、その質量含有量は、95%超である。
(2)本質的にアルファ結晶形態である炭化ケイ素粉末。これは、95質量%超のアルファSiCの含有量を有する。その炭素、シリカ、及び遊離ケイ素含有量は、それぞれ、0.2%未満、1.5%未満、及び0.1%未満である。
(3)TimcalによってグレードC65で提供され、62m/gのBET比表面積を有する、カーボンブラック粉末。
(4)H.C.スタルクによってグレードHD-15で提供され、0.8マイクロメートルのメディアン径を有する、炭化ホウ素BC粉末。
(5)Nanografiによってグレードで提供され、0.06マイクロメートルのメディアン径を有する、窒化アルミニウム粉末。
【0045】
このようにして製造されたペレットは、空気中50℃で乾燥される。例1及び例2(比較例)のペレットは、炉内において無加圧で、温度2150℃で2時間にわたって、それぞれアルゴン中かつN中で、焼結される。例3及び例4(本発明による)並びに例5(比較例)のペレットは、85Mpa(メガパスカル)の荷重下で、二窒素雰囲気中で、2000℃のSPS焼結用装置内に装入される。
【0046】
例4及び例5とは異なり、BC粉末は、窒化アルミニウム粉末に置き換えられ、焼結は、真空中で行われた。例1とは異なり、例7では出発粉末は、本質的にベータであり、焼結は、例6と同じ条件下で、真空中かつ加圧下で行われた。
【0047】
焼結後に得られた部品の全多孔度を、100と、ISO 5018に従って測定された真密度に対するISO 18754に従って測定された仮比重のパーセントとして表された比率との、差をとることによって計算する。
【0048】
遊離シリカ含有量(SiO)を、HFアタックによって測定する。遊離炭素、酸素及び窒素の含有量を、LECO法によって測定する。他の元素レベルを、蛍光X線及びICPによって測定する。
【0049】
遊離ケイ素含有量を、王水(アクアレギア)を用いて制御することによって、次いで滴定によって測定する。ベータ形態であるSiCのパーセント、及び結晶形態β/αのSiCの比を、上述の方法に従って、X線回折分析によって決定する。
【0050】
アルファ又はベータ形態である焼結材料の粒の体積パーセント及びそれらの直径を、EBSD観察から得られた画像の分析によって決定した。
【0051】
設備は、FSE/BSE Argusイメージングシステムを備えたBruker e-FlashHR+ EBSD検出器、及び10mmの活性表面積を有するBruker XFlash 4010 EDX検出器を備えた、走査型電子顕微鏡(SEM)で構成されている。EBSD検出器は、EBSD信号及びEDX信号の両方を増加させるために、水平に対して10.6°と等しい傾斜角度で電界放出銃を備えたFEI Nova NanoSEM 230走査型電子顕微鏡のリアポートの1つに取り付けられている。これらの条件下では、最適作動距離WD(すなわち、SEMのポールピースとサンプルの分析領域との距離)は、約13mmである。EBSD及びEDS検出器は、ソフトウェアESPRIT(バージョン2.1)によって制御される。FSE画像(高い結晶学的コントラストを有する)及び/又はBSE画像(高い濃度コントラストを有する)を、サンプルのトポグラフィーの影響を比較的受けにくくするため、EBSDカメラを23mmの距離DD(サンプル検出器距離)で配置することによって、Argusシステムを用いて収集した。EBSD測定を、ポイントスキャン及び/又はマッピングモードで行った。このため、EBSDカメラを、収集される信号を増加させるために、17mmの距離DDで配置した。
【0052】
粒の等価直径は、材料の切断平面に沿って観察される、上記粒の表面積と同じ表面積の円板の直径に対応する。少なくとも2つの垂直平面に沿って、材料の様々な断面を観察することによって、材料の体積において、粒の様々な等価直径の分布を決定することができ、そこから体積によって、上記粒の等価直径の中央値を推測することができた。
【0053】
例1~7に従って得られた特性及び性質を、以下の表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
N.D. = 検出不可能(Not detectable)
N.M = 測定していない(Not measured)
【0056】
本発明による実施例は、炭素の存在中で、焼結添加剤を適度に添加しながら、本質的にベータ形態である炭化ケイ素SiCを混合し、焼結を加圧下かつ純粋な窒素雰囲気中で行うことを含む、非常に特殊な方法に従って、高純度で非常に緻密な結晶化炭化ケイ素材料を得うることを示している。例6及び例7(比較例)は、真空焼結では、用いられる焼結添加剤が、窒素を提供するもの(例6)であろうと、提供しないもの(例7)であろうと、、本発明による方法とは異なり、緻密な、すなわち2%未満、又はさらには1%未満の多孔度を有し、1~10マイクロメートルの粒の等価直径の中央値を有する、SiCの材料を得ることは不可能であることを、示している。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0056
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0056】
本発明による実施例は、炭素の存在中で、焼結添加剤を適度に添加しながら、本質的にベータ形態である炭化ケイ素SiCを混合し、焼結を加圧下かつ純粋な窒素雰囲気中で行うことを含む、非常に特殊な方法に従って、高純度で非常に緻密な結晶化炭化ケイ素材料を得うることを示している。例6及び例7(比較例)は、真空焼結では、用いられる焼結添加剤が、窒素を提供するもの(例6)であろうと、提供しないもの(例7)であろうと、、本発明による方法とは異なり、緻密な、すなわち2%未満、又はさらには1%未満の多孔度を有し、1~10マイクロメートルの粒の等価直径の中央値を有する、SiCの材料を得ることは不可能であることを、示している。
本開示は、下記の態様を含む。
<態様1>
1~10マイクロメ-トルの等価直径の中央値を有する炭化ケイ素粒からなる多結晶炭化ケイ素焼結材料であって、前記材料が、前記材料のうち体積比で2%未満の全多孔度、及び遊離炭素を除いて、少なくとも99%の炭化ケイ素(SiC)の質量含有量を有し、前記材料において、ベータ型(β)結晶形態を有する炭化ケイ素の含有量の、アルファ型(α)結晶形態を有する炭化ケイ素の含有量に対する質量比が、2未満であり、前記材料が、質量比で、以下の元素組成を有する、材料:
- 0.5%未満の、炭化ケイ素とは別の形態であるケイ素、
- 2.0%未満の、炭化ケイ素とは別の形態である炭素、好ましくは、1.5%未満の、炭化ケイ素とは別の形態である炭素、並びに、
- 合計で、0.1~0.7%の、Al、B、Fe、Ti、Cr、Mg、Hf、Zr、好ましくはZr、Ti、Hf、Bから選択される少なくとも1種の元素、
- 0.5%未満の酸素(O)、並びに、
- 合計で0.5%未満の、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuの元素、並びに、
- 0.5%未満のアルカリ元素、並びに、
- 0.5%未満のアルカリ土類、並びに、
- 0.05~1%の窒素(N)、
- 100%への補完を形成する、他の元素。
<態様2>
前記材料が、前記材料中の結晶相の全質量に対して、1%超のベータ結晶形態であるSiCを含む、態様1に記載の材料。
<態様3>
前記材料のうち、その多孔度を除いた体積比で、90%超の粒が、1~10マイクロメートルの等価直径を有する、態様1又は態様2に記載の材料。
<態様4>
前記材料のうち質量比で、窒素(N)の元素質量含有量が、0.05~0.5%である、態様1~3のいずれかに記載の材料。
<態様5>
ホウ素(B)の質量含有量が、前記材料のうち、0.1質量%超かつ0.7質量%未満である、態様1~4のいずれかに記載の材料。
<態様6>
前記材料中の、ベータ結晶形態(β)であるSiC含有量の、アルファ結晶形態(α)であるSiC含有量に対する質量比が、1未満である、態様1~5のいずれかに記載の材料。
<態様7>
炭化ケイ素粒が、前記材料のうち少なくとも98質量%、好ましくは99質量%であり、残りは、本質的にSi元素及びC元素を含む残留粒界相からなり、好ましくは本質的にSi元素及びC元素からなる残留粒界相からなる、態様1~6のいずれかに記載の材料。
<態様8>
アルファ結晶形態である炭化ケイ素粒のうち、90体積%超が、10マイクロメートル未満の等価直径を有する、態様1~7のいずれかに記載の材料。
<態様9>
態様1~8のいずれかに記載の多結晶炭化ケイ素焼結材料の製造方法であって、以下の工程を含む方法:
(a)質量比で、下記を含む、ミネラル供給原料を生成すること:
- 少なくとも95%、好ましくは少なくとも97%の、炭化ケイ素粒子であって、粉末の形態であり、そのメディアンサイズが、0.1~5マイクロメートルであり、その炭化ケイ素粒子が、95%超、好ましくは97%超のSiC質量含有量を有し、ベータ結晶形態が、炭化ケイ素の全質量のうち、90%超、好ましくは95%超である、炭化ケイ素粒子、
- 少なくとも1種の固相の焼結添加剤であって、好ましくは粉末の形態であり、アルミニウム、ホウ素、鉄、チタン、クロム、マグネシウム、ハフニウム、又はジルコニウムから選択される元素を含み、好ましくは98質量%超の純度のものを含み、前記元素の寄与が、前記炭化ケイ素粒子の全質量のうち0.1~0.8%となる量でこの元素を含む、焼結添加剤、
- 0.5~3%の、元素炭素含有量(C)が99質量%超である炭素源であって、好ましくは未結晶若しくは非晶質のグラファイトの形態、又は炭素粉末の形態であり、そのメディアン径が、1マイクロメートル未満である、炭素源、
(b)前記供給原料を、好ましくは鋳造によって、プリフォームの形態へと成形すること、
(c)前記プリフォームを、60MPa超の圧力下で、1800℃超かつ2100℃未満の温度で、窒素雰囲気中において、好ましくは二窒素雰囲気中において、固相焼結すること。
<態様10>
炭化ケイ素粒子の粉末中の遊離炭素の質量含有量が、2%未満である、態様9に記載の方法。
<態様11>
炭化ケイ素粒子の粉末中の遊離シリカの質量含有量が、1%未満である、態様9又は態様10に記載の方法。
<態様12>
炭化ケイ素粒子の粉末中の遊離ケイ素の質量含有量が、0.5%未満である、態様9~11のいずれかに記載の方法。
<態様13>
アルミニウム(Al)、アルカリ、アルカリ土類、並びにSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuから選択される少なくとも1つの元素を含む希土類金属の、元素含有量の合計における、前記炭化ケイ素粒子の粉末の質量含有量が、0.5%未満である、態様9~12のいずれかに記載の方法。
<態様14>
前記焼結添加剤中に含まれる前記元素が、ホウ素である、態様9~13のいずれかに記載の方法。
<態様15>
前記プリフォームを固相焼結する工程を、SPS(「放電プラズマ焼結」)によって行う、態様9~14のいずれかに記載の方法。
<態様16>
態様1~9のいずれかに記載の材料を含む装置であって、前記装置は、以下から選択される、装置:タービン、ポンプ、バルブ又は流体ラインシステム、熱交換器;太陽熱吸収器、若しくは熱回収若しくは光反射用の装置、炉のリフラクトリーコーティング、調理表面、金属溶融用るつぼ、摩耗防止部品、切削工具、ブレーキパッド若しくはディスク、レドーム、熱化学処理用のコーティング若しくは支持体、又は光学産業及び/若しくは電子産業用の活性層堆積用基材;加熱要素又は抵抗器;温度又は圧力センサー;点火器;磁気サセプター。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1~10マイクロメ-トルの等価直径の中央値を有する炭化ケイ素粒からなる多結晶炭化ケイ素焼結材料であって、前記材料が、前記材料のうち体積比で2%未満の全多孔度、及び遊離炭素を除いて、少なくとも99%の炭化ケイ素(SiC)の質量含有量を有し、前記材料において、ベータ型(β)結晶形態を有する炭化ケイ素の含有量の、アルファ型(α)結晶形態を有する炭化ケイ素の含有量に対する質量比が、2未満であり、前記材料が、質量比で、以下の元素組成を有する、材料:
- 0.5%未満の、炭化ケイ素とは別の形態であるケイ素、
- 2.0%未満の、炭化ケイ素とは別の形態である炭素、好ましくは、1.5%未満の、炭化ケイ素とは別の形態である炭素、並びに、
- 合計で、0.1~0.7%の、Al、B、Fe、Ti、Cr、Mg、Hf、Zr、好ましくはZr、Ti、Hf、Bから選択される少なくとも1種の元素、
- 0.5%未満の酸素(O)、並びに、
- 合計で0.5%未満の、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuの元素、並びに、
- 0.5%未満のアルカリ元素、並びに、
- 0.5%未満のアルカリ土類、並びに、
- 0.05~1%の窒素(N)、
- 100%への補完を形成する、他の元素。
【請求項2】
前記材料が、前記材料中の結晶相の全質量に対して、1%超のベータ結晶形態であるSiCを含む、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
前記材料のうち、その多孔度を除いた体積比で、90%超の粒が、1~10マイクロメートルの等価直径を有する、請求項1又は請求項2に記載の材料。
【請求項4】
前記材料のうち質量比で、窒素(N)の元素質量含有量が、0.05~0.5%である、請求項1又は請求項2に記載の材料。
【請求項5】
ホウ素(B)の質量含有量が、前記材料のうち、0.1質量%超かつ0.7質量%未満である、請求項1又は請求項2に記載の材料。
【請求項6】
前記材料中の、ベータ結晶形態(β)であるSiC含有量の、アルファ結晶形態(α)であるSiC含有量に対する質量比が、1未満である、請求項1又は請求項2に記載の材料。
【請求項7】
炭化ケイ素粒が、前記材料のうち少なくとも98質量%、好ましくは99質量%であり、残りは、本質的にSi元素及びC元素を含む残留粒界相からなり、好ましくは本質的にSi元素及びC元素からなる残留粒界相からなる、請求項1又は請求項2に記載の材料。
【請求項8】
アルファ結晶形態である炭化ケイ素粒のうち、90体積%超が、10マイクロメートル未満の等価直径を有する、請求項1又は請求項2に記載の材料。
【請求項9】
請求項1又は請求項2に記載の多結晶炭化ケイ素焼結材料の製造方法であって、以下の工程を含む方法:
(a)質量比で、下記を含む、ミネラル供給原料を生成すること:
- 少なくとも95%、好ましくは少なくとも97%の、炭化ケイ素粒子であって、粉末の形態であり、そのメディアンサイズが、0.1~5マイクロメートルであり、その炭化ケイ素粒子が、95%超、好ましくは97%超のSiC質量含有量を有し、ベータ結晶形態が、炭化ケイ素の全質量のうち、90%超、好ましくは95%超である、炭化ケイ素粒子、
- 少なくとも1種の固相の焼結添加剤であって、好ましくは粉末の形態であり、アルミニウム、ホウ素、鉄、チタン、クロム、マグネシウム、ハフニウム、又はジルコニウムから選択される元素を含み、好ましくは98質量%超の純度のものを含み、前記元素の寄与が、前記炭化ケイ素粒子の全質量のうち0.1~0.8%となる量でこの元素を含む、焼結添加剤、
- 0.5~3%の、元素炭素含有量(C)が99質量%超である炭素源であって、好ましくは未結晶若しくは非晶質のグラファイトの形態、又は炭素粉末の形態であり、そのメディアン径が、1マイクロメートル未満である、炭素源、
(b)前記供給原料を、好ましくは鋳造によって、プリフォームの形態へと成形すること、
(c)前記プリフォームを、60MPa超の圧力下で、1800℃超かつ2100℃未満の温度で、窒素雰囲気中において、好ましくは二窒素雰囲気中において、固相焼結すること。
【請求項10】
炭化ケイ素粒子の粉末中の遊離炭素の質量含有量が、2%未満である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
炭化ケイ素粒子の粉末中の遊離シリカの質量含有量が、1%未満である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
炭化ケイ素粒子の粉末中の遊離ケイ素の質量含有量が、0.5%未満である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
アルミニウム(Al)、アルカリ、アルカリ土類、並びにSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuから選択される少なくとも1つの元素を含む希土類金属の、元素含有量の合計における、前記炭化ケイ素粒子の粉末の質量含有量が、0.5%未満である、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記焼結添加剤中に含まれる前記元素が、ホウ素である、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記プリフォームを固相焼結する工程を、SPS(「放電プラズマ焼結」)によって行う、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
請求項1又は請求項2に記載の材料を含む装置であって、前記装置は、以下から選択される、装置:タービン、ポンプ、バルブ又は流体ラインシステム、熱交換器;太陽熱吸収器、若しくは熱回収若しくは光反射用の装置、炉のリフラクトリーコーティング、調理表面、金属溶融用るつぼ、摩耗防止部品、切削工具、ブレーキパッド若しくはディスク、レドーム、熱化学処理用のコーティング若しくは支持体、又は光学産業及び/若しくは電子産業用の活性層堆積用基材;加熱要素又は抵抗器;温度又は圧力センサー;点火器;磁気サセプター。
【国際調査報告】