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特表2024-516436窒化ケイ素基板の製造方法およびこれを用いて製造された窒化ケイ素基板
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  • 特表-窒化ケイ素基板の製造方法およびこれを用いて製造された窒化ケイ素基板 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-15
(54)【発明の名称】窒化ケイ素基板の製造方法およびこれを用いて製造された窒化ケイ素基板
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/591 20060101AFI20240408BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
C04B35/591
H01L23/12 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566929
(86)(22)【出願日】2022-05-03
(85)【翻訳文提出日】2023-12-12
(86)【国際出願番号】 KR2022006365
(87)【国際公開番号】W WO2022235067
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】10-2021-0058595
(32)【優先日】2021-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516131681
【氏名又は名称】アモテック シーオー,エルティーディー
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】パク キュ ファン
(72)【発明者】
【氏名】チョン フン
(57)【要約】
窒化ケイ素基板の製造方法を提供する。本発明の一実施形態による窒化ケイ素基板の製造方法は、金属シリコン粉末と、希土類元素含有化合物およびマグネシウム含有化合物を含有する結晶相制御粉末とを含むセラミック組成物を製造する段階と、前記セラミック組成物に溶媒および有機バインダーを混合し、準備したスラリーからシート状の成形体を製造する段階と、前記成形体に対して所定の圧力で窒素ガスを加えながら、1300~1500℃の範囲内第1温度で熱を処理する窒化区間および1700~1900℃範囲内の第2温度で熱処理する焼結区間を含む熱処理段階と、を含む。これによれば、従来に比べて、製造時間および工数を減少させることができ、大量生産に適している。また、具現された窒化ケイ素基板は、窒化過程でシリコンが溶融し、溶出することを最小化または防止するので、機械的強度に優れている。さらには、急激なベータ相への転移を抑制しつつ、焼結区間に進入した後、焼結を完了することにより、ベータ相へ転移、ベータ相の成長促進および均一な成長が可能で、さらに向上した熱伝導度を有する。また、基板の位置に関係なく、熱伝導度および機械的強度が均一であることにより、さらに高品質の基板を具現することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属シリコン粉末と、希土類元素含有化合物およびマグネシウム含有化合物を含有する結晶相制御粉末とを含むセラミック組成物を製造する段階と、
前記セラミック組成物に溶媒および有機バインダーを混合し、準備したスラリーからシート状の成形体を製造する段階と、
前記成形体に対して所定の圧力で窒素ガスを加えながら、1300~1500℃の範囲内第1温度で熱を処理する窒化区間および1700~1900℃の範囲内の第2温度で熱処理する焼結区間を含む熱処理段階と、を含む窒化ケイ素(Si)基板の製造方法。
【請求項2】
前記金属シリコン粉末は、粉砕中に金属不純物により汚染されることを最小化するために、多結晶金属シリコンスクラップ(scrap)または単結晶シリコンウェハースクラップを乾式粉砕させたものであることを特徴とする、請求項1に記載の窒化ケイ素基板の製造方法。
【請求項3】
前記金属シリコン粉末は、抵抗率が1~100Ω・cmである、請求項1に記載の窒化ケイ素基板の製造方法。
【請求項4】
前記多結晶金属シリコンスクラップまたは単結晶シリコンウェハースクラップは、純度が99%以上である、請求項2に記載の窒化ケイ素基板の製造方法。
【請求項5】
前記金属シリコン粉末は、平均粒径が0.5~4μm、希土類元素含有化合物粉末は、平均粒径が0.1~1μm、マグネシウム含有化合物粉末は、平均粒径が0.1~1μmである、請求項1に記載の窒化ケイ素基板の製造方法。
【請求項6】
前記希土類元素含有化合物は、酸化イットリウムであり、前記マグネシウム含有化合物は、酸化マグネシウムであり、
前記セラミック組成物に前記酸化イットリウムが2~5モル%、前記酸化マグネシウムが2~10モル%で含まれる、請求項1に記載の窒化ケイ素基板の製造方法。
【請求項7】
前記熱処理段階は、窒化区間から焼結区間まで連続的に行われることを特徴とする、請求項1に記載の窒化ケイ素基板の製造方法。
【請求項8】
前記熱処理段階は、1000±20℃から前記第1温度まで圧力0.1~0.2MPaで窒素ガスを加えながら、0.1~2℃/分の昇温速度で熱処理することを特徴とする、請求項1に記載の窒化ケイ素基板の製造方法。
【請求項9】
前記窒化区間で窒素ガスを0.1~0.2MPaの圧力で加え、窒化区間を2~10時間行う、請求項1に記載の窒化ケイ素基板の製造方法。
【請求項10】
前記1000±20℃から前記第1温度まで加える窒素ガスの圧力は、窒化区間で加える窒素ガスの圧力より低いことを特徴とする、請求項8に記載の窒化ケイ素基板の製造方法。
【請求項11】
前記窒化区間と前記焼結区間の間に第1温度から1700±20℃まで窒素ガス圧力0.15~0.30MPaの下で0.1~10.0℃/分の速度で昇温する第1収縮区間と、1700±20℃から第2温度まで窒素ガス圧力0.80~0.98MPaの下で1~10℃/分の速度で昇温する第2収縮区間と、をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の窒化ケイ素基板の製造方法。
【請求項12】
シート状の成形体は、複数枚積層された状態で前記熱処理段階を行うことを特徴とする、請求項1に記載の窒化ケイ素基板の製造方法。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の製造方法を用いて製造され、熱伝導度が75W/mK以上であり、3点曲げ強度が700MPa以上である窒化ケイ素基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化ケイ素基板の製造方法およびこれを用いて製造された窒化ケイ素基板に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ケイ素焼結体は、耐摩耗性、耐熱性、低熱膨張性、耐熱衝撃性、および金属に対する耐食性に優れ、従来からガスタービン用部材、エンジン用部材、製鋼用機械部材などの各種構造用部材に用いられている。また、高い絶縁特性と良好な放熱特性によってセラミック基板などの電気部品素材に用いられている。
【0003】
窒化ケイ素基板は、従来、窒化ケイ素粉末を製造した後、製造された窒化ケイ素粉末を焼結させて製造する2段階の工法で製造されてきた。このような工法が採用された理由は、基板形態で窒化および焼結時に位置に関係なく均一な物性を発現する基板の具現が難しいためであり、これを解決するために、粉末状態で均一な物性を有するように窒化ケイ素粉末をまず製造した後、これを用いて基板を製造する方式が広く用いられてきた。
【0004】
しかしながら、上記のような2段階工法は、窒化後、窒化体を冷却/粉砕させ、さらに所定の形状を有するように、成形後に焼結しなければならないので、製造時間が50時間以上かかり、工数が増加する恐れがある。
【0005】
これによって、製造時間を画期的に減少させると共に、工数をも減少させることができ、具現された窒化ケイ素基板の熱伝導性、機械的強度に優れていると同時に、基板の位置ごとにこれらの物性が均一に発現する窒化ケイ素基板の製造方法に関する研究が急務である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような点に鑑みてなされたものであって、その目的は、従来の窒化ケイ素基板の製造方法に比べて、製造時間と工数を減少させて、窒化ケイ素基板を製造することができ、具現された窒化ケイ素基板の平坦度、熱伝導性、機械的強度に優れていると同時に、基板の位置ごとにこれらの物性が均一に発現する窒化ケイ素基板の製造方法およびこれを用いて製造された窒化ケイ素基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記のような点に鑑みてなされたものであって、金属シリコン粉末と、希土類元素含有化合物およびマグネシウム含有化合物を含有する結晶相制御粉末とを含むセラミック組成物を製造する段階と、前記セラミック組成物に溶媒および有機バインダーを混合し、準備したスラリーからシート状の成形体を製造する段階と、前記成形体に対して所定の圧力で窒素ガスを加えながら、1300~1500℃の範囲内第1温度で熱を処理する窒化区間および1700~1900℃の範囲内の第2温度で熱処理する焼結区間を含む熱処理段階と、を含む窒化ケイ素(Si)基板の製造方法を提供する。
【0008】
本発明の一実施形態によれば、前記金属シリコン粉末は、粉砕中に金属不純物により汚染されることを最小化するために、多結晶金属シリコンスクラップ(scrap)または単結晶シリコンウェハースクラップを乾式粉砕させたものであってもよい。
【0009】
また、前記金属シリコン粉末は、抵抗率が1~100Ω・cmであってもよい。
【0010】
また、前記多結晶金属シリコンスクラップまたは単結晶シリコンウェハースクラップは、純度が99%以上であってもよい。
【0011】
また、前記希土類元素含有化合物は、酸化イットリウムであり、前記マグネシウム含有化合物は、酸化マグネシウムであり、セラミック組成物に前記酸化イットリウムが2~5モル%、前記酸化マグネシウムが2~10モル%で含まれ得る。
【0012】
また、前記金属シリコン粉末は、平均粒径が0.5~4μm、希土類元素含有化合物粉末は、平均粒径が0.1~1μm、マグネシウム含有化合物粉末は、平均粒径が0.1~1μmであってもよい。
【0013】
また、前記熱処理段階は、窒化区間から焼結区間まで連続的に行うことができる。
【0014】
また、前記窒化区間と焼結区間の間に第1温度より低い温度で熱処理したり、第1温度より低くなるように冷却させたりする区間を含まなくてもよい。
【0015】
また、前記熱処理段階は、1000±20℃から前記第1温度まで圧力0.1~0.2MPaで窒素ガスを加えながら、0.1~2℃/分の昇温速度で熱処理することができる。
【0016】
また、前記窒化区間で窒素ガスを0.1~0.2MPaの圧力で加え、窒化区間を2~10時間継続することができる。
【0017】
また、前記1000±20℃から前記第1温度まで加える窒素ガスの圧力は、窒化区間で加える窒素ガスの圧力より低くてもよい。
【0018】
また、前記窒化区間と焼結区間との間に第1温度から1700±20℃まで窒素ガス圧力0.15~0.3MPaの下で0.1~10.0℃/分の速度で昇温する第1収縮区間と、1700±20℃から第2温度まで窒素ガス圧力0.8~0.98MPaの下で1~10℃/分の速度で昇温する第2収縮区間とをさらに含んでもよい。
【0019】
また、本発明は、本発明による製造方法を用いて製造され、熱伝導度が75W/mK以上であり、3点曲げ強度が700MPa以上である窒化ケイ素基板を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明による窒化ケイ素基板の製造方法は、従来に比べて、製造時間および工数を減少させることができ、大量生産に適している。また、具現された窒化ケイ素基板は、窒化過程でシリコンが溶融し、溶出することを最小化または防止することにより、機械的強度に優れている。ひいては、急激なベータ相への転移を抑制し、焼結区間に進入した後、焼結を完了することにより、ベータ相への転移、ベータ相の成長促進および均一な成長が可能で、さらに向上した熱伝導度を有する。また、基板の位置に関係なく、熱伝導度および機械的強度が均一であり、平坦度に優れているので、より高品質の基板を具現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に含まれる熱処理段階時に経時的な温度条件の変動を示すグラフである。
図2】本発明の一実施形態によって熱処理前(a)と窒化工程後に移動または再真空によって複数枚の成形体の積層状態が変更された断面の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。本発明は、様々な異なる形態で具現することができ、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0023】
本発明の一実施形態による窒化ケイ素基板は、金属シリコン粉末と、希土類元素含有化合物およびマグネシウム含有化合物を含有する結晶相制御粉末とを含むセラミック組成物を製造する段階と、前記セラミック組成物に溶媒および有機バインダーを混合し、準備したスラリーからシート状の成形体を製造する段階と、前記成形体に対して所定の圧力で窒素ガスを加えながら、1300~1500℃の範囲内第1温度で熱を処理する窒化区間および1700~1900℃の範囲内の第2温度で熱処理する焼結区間を含む熱処理段階と、を含んで製造することができる。
【0024】
まず、セラミック組成物を製造する段階について説明する。
【0025】
前記セラミック組成物は、金属シリコン粉末と、希土類元素含有化合物およびマグネシウム含有化合物を含有する結晶相制御粉末とを含むセラミック組成物を混合して製造することができる。
【0026】
前記原料粉末として、主剤の金属シリコン粉末は、直接窒化法を用いて窒化ケイ素粉末または窒化ケイ素成形体の製造に用いられる金属シリコン粉末の場合、制限なく使用できる。一例として、前記金属シリコン粉末は、多結晶金属シリコンスクラップ(scrap)または単結晶シリコンウェハースクラップであってもよい。前記多結晶金属シリコンスクラップは、半導体工程用治具や太陽光パネル製造用に用いられる多結晶金属シリコンの副産物であってもよく、単結晶シリコンウェハースクラップも、シリコンウェハーの製造時に副産物であることから、副産物であるこれらのスクラップを原料粉末として用いることによって、製造コストを低減することができる。
【0027】
また、前記多結晶金属シリコンスクラップまたは単結晶シリコンウェハースクラップは、純度が99%以上であってもよく、これを通じて具現された窒化ケイ素基板の熱伝導度と機械的強度を保証するのに有利になり得る。
【0028】
また、前記金属シリコン粉末は、抵抗率が1~100Ω・cmであってもよく、これを通じて、本発明が目的とする物性を有する窒化ケイ素基板を製造するのに有利になり得る。
【0029】
なお、原料粉末に用いられる金属シリコン粉末は、好ましくは、多結晶金属シリコンスクラップ(scrap)または単結晶シリコンウェハースクラップを所定のサイズに粉砕させたものであってもよい。この際、粉砕による金属不純物のような汚染物質が原料粉末に混入するのを防止するために、前記粉砕は、乾式粉砕方式を用いることができ、具体的には、ディスクミル、ピンミル、ジェットミルなどの乾式粉砕方式を用いて粉末化することができる。もし、汚染物質が金属シリコン粉末に含有されると、汚染物質の除去のための酸洗浄のような洗浄工程をさらに経なければならない製造時間と費用増加の恐れがある。この際、粉砕された前記金属シリコン粉末の平均粒径は、0.5~4μm、より好ましくは、2~4μmであってもよく、もし、平均粒径が0.5μm未満の場合、乾式粉砕方式を用いて具現しにくく、微粉末化に起因して汚染物質の混入可能性が大きくなる恐れがあり、シートキャスト時に緻密化が難しい。また、もし、金属シリコン粉末の平均粒径が4μmを超える場合、窒化が容易でないので、窒化しない部分が存在する恐れがあり、最終具現された基板の緻密化が難しい。
【0030】
なお、具現しようとする基板の材質である窒化ケイ素は、自己拡散が難しく、高温で熱分解しうるので、焼結温度が制限されるなどの理由から、基板への焼結が容易でなく、ち密で、全体的に均一に窒化した基板を具現しにくいので、このような難点を解決し、酸素などの不純物を除去し、窒化ケイ素基板の物性を改善するために、金属シリコン粉末に結晶相制御粉末を混合したセラミック組成物を原料粉末として用いる。前記結晶相制御粉末は、一例として、希土類元素含有化合物、アルカリ土類金属酸化物およびこれらの組み合わせが使用でき、具体的には、酸化マグネシウム(MgO)、酸化イットリウム(Y)、酸化ガドリニウム(GdO)、酸化ホルミウム(Ho)、酸化エルビウム(Er)、酸化イッテルビウム(Yb)、および酸化ジスプロシウム(Dy)から成る群から選ばれる1種以上が使用できる。ただし、本発明は、窒化ケイ素基板の焼結および結晶相制御をより容易にするために、酸化マグネシウムおよび酸化イットリウムを結晶相制御粉末に必須的に含有し、前記酸化マグネシウムおよび酸化イットリウムは、製造された窒化ケイ素基板をより緻密化した高い密度を有し、焼結中に残留粒界相の量を低減させて、基板の熱伝導度をより改善させることができる利点がある。
【0031】
また、前記シリコンを含有するセラミック組成物は、過酷な半導体製造工程による熱応力や熱衝撃などによる機械的強度を向上させるために、酸化鉄(Fe)および酸化チタン(TiO)のうちいずれか一つ以上を含む強度向上粉末をさらに含有することができ、好ましくは、強度向上粉末は、酸化鉄および酸化チタンを全部含有することができる。
【0032】
特に後述する熱処理段階は、窒化および焼結を別途の炉で進行せず、一つの焼結炉で連続した熱処理を通じてワンステップで進行するが、酸化マグネシウムおよび酸化イットリウムの組み合わせ、または酸化マグネシウム、酸化イットリウム、酸化鉄および酸化チタンの組み合わせは、金属シリコン粉末を窒化ケイ素で窒化させ、焼結させるのに有用である。すなわち、窒化および焼結を別途の炉で進行する、または窒化後に冷却し、焼結を行う方式でなく、シリコン含有セラミック組成物を炉に装入させた後、窒化から焼結までワンステップで進行するワンステップ工程で成形体の内部まで均一に窒化しつつ、シリコンが溶出せず、緻密化した焼結体を具現することは容易ではないが、セラミック組成物に含有される上記のような結晶制御粉末や、結晶制御粉末と共に含まれる強度向上粉末は、均一に窒化し、緻密化した焼結体を具現させるのに有用である。このために、好ましくは、セラミック組成物に前記酸化イットリウムが2~5モル%、前記酸化マグネシウムが2~10モル%(好ましくは、4~8モル%)で含んでもよい。また、酸化鉄と酸化チタンをさらに含有する場合、セラミック組成物の全体モル数を基準として酸化鉄0.1~3モル%および酸化チタン1~5モル%をさらに含んでもよいし、これを通じて、窒化-焼結ワンステップ工程を行っているにもかかわらず、さらに改善された機械的強度を有することができる。もし、酸化イットリウムが2モル%未満の場合、基板への焼結時、緻密化した基板を具現しにくく、粒界相に酸素を捕捉しにくく、そのため、固溶酸素量が多くなり、焼結した基板の熱伝導度が低く、機械的強度も低下する。また、もし、酸化イットリウムが5モル%を超える場合、粒界相が多くなり、具現された窒化ケイ素基板の熱伝導度が低下し、破壊靭性が低下する恐れがある。また、酸化マグネシウムが2モル%未満の場合、具現された窒化ケイ素基板の熱伝導度および機械的強度がいずれも低く、窒化時にシリコンが溶出する恐れがあり、緻密化した基板を製造しにくい。また、もし、酸化マグネシウムが10モル%を超える場合、焼結時に粒界にマグネシウムの残留量が多くなり、そのため、具現された基板の熱伝導度が低く、焼結が容易でなく、破壊靭性が低下する。また、もし、酸化鉄が0.1モル%未満および/または酸化チタンが1モル%未満の場合、機械的強度の改善が不十分である。また、もし、酸化鉄が3モル%超および/または酸化チタンが5モル%超の場合にも、焼結体の機械的強度が低下する恐れがある。
【0033】
また、好ましくは、前記酸化イットリウムおよび酸化マグネシウムは、1:1.5~2.0モル比で組成物内含まれ得、これを通じて、本発明の目的を達成するのにさらに有利になり得る。
【0034】
また、前記希土類元素含有化合物粉末は、平均粒径が0.1~1μm、マグネシウム含有化合物粉末は、平均粒径が0.1~1μmのものが使用でき、これを通じて、本発明の目的を達成するのにさらに有利になり得る。
【0035】
次に、準備したセラミック組成物に溶媒および有機バインダーを混合し、スラリーを形成させた後、シート状の成形体を製造する段階を行う。
【0036】
前記溶媒および有機バインダーは、セラミック基板またはセラミックグリーンシートの製造時に用いられる公知の溶媒および有機バインダーの場合、制限なく使用できる。具体的には、前記溶媒は、有機バインダーを溶解させ、セラミック組成物を分散させて、粘度を調節する役割を行い、一例として、テルピネオール(Terpineol)、ジヒドロテルピネオール(Dihydro terpineol;DHT)、ジヒドロテルピネオールアセテート(Dihydro terpineol acetate;DHTA)、ブチルカルビトールアセテート(Butyl Carbitol Acetate;BCA)、エチレングリコール、エチレン、イソブチルアルコール、メチルエチルケトン、ブチルカビトール、テキサノール(texanol)(2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート)、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジメチルスルホキシド、ジエチルフタレート、トルエン、これらの混合物などが使用できる。この際、前記溶媒は、セラミック組成物100重量部に対して50~100重量部混合することが好ましい。前記溶媒の含有量が50重量部未満である場合、スラリーの粘度が高いため、成形体を製造することが難しく、特に成形体の厚さを調節しにくく、前記溶媒の含有量が100重量部を超える場合、スラリーの粘度が薄すぎるので、乾燥するのに時間がかかり、成形体の厚さを調節することも困難である。
【0037】
また、前記有機バインダーは、準備するスラリーにおいてセラミック組成物を所定の形状で結合させる機能をする。前記有機バインダーは、前記セラミック組成物100重量部に対して5~20重量部混合することが好ましい。前記有機バインダーとしては、エチルセルロース(ethyl cellulose)、メチルセルロース、ニトロセルロース、カルボキシセルロースなどのセルロース誘導体、またはポリビニルアルコール、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ポリビニルブチラルなどの高分子樹脂であってもよく、成形体をテープキャスト方法(Tape casting method)で製造する場合、前記有機バインダーとしてポリビニルブチラルが好適に使用できる。
【0038】
なお、前記スラリーには、分散剤、可塑剤などセラミックを用いて成形体を製造するためのスラリーに含有される公知の物質をさらに含んでもよいし、本発明は、これに特に限定されない。
【0039】
製造されたスラリーは、シート状に製造することができるが、この際、スラリーは、公知の成形方法による成形体で具現されることができる。一例として、スラリーは、テープキャストグ法のような公知の方法を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0040】
次に、準備した成形体に対する熱処理段階を行う。
【0041】
図1を参照して説明すると、成形体は、成形体を焼結炉に装着後、窒化ケイ素(Si)化させる窒化区間Sおよび窒化した成形体を焼結させる焼結区間Sを含む熱処理段階に施され、前記熱処理段階は、窒化区間S前の昇温区間S、Sおよび窒化区間Sと焼結区間Sの間の昇温区間Sおよび焼結区間S後の冷却区間Sをさらに含んでもよい。
【0042】
本発明による製造工程で熱処理段階は、成形体を窒化ケイ素成形体で窒化させる窒化工程と、窒化した成形体を焼結させて基板を製造する焼結工程が一つの熱処理段階で全部行われる。従来、窒化ケイ素基板は、シリコン粉末を窒化ケイ素粉末に製造した後、さらに、窒化ケイ素粉末を用いて窒化ケイ素基板を製造する2段階工法で具現されることが一般的であった。しかしながら、2段階の工法は、窒化ケイ素粉末を製造した後に焼結するまで、窒化ケイ素粉末の冷却工程、粉砕工程をさらに経なければならないので、製造時間が長く、これによって、製造コストが上昇し、大量生産に適していなかった。それにもかかわらず、このような2段階工法を用いた理由は、サイズが小さい粉末相で窒化させる場合、より均一な特性を有する窒化ケイ素粉末を容易に製造することができ、そのため、窒化ケイ素基板も、均一な特性を保証することが有利になるからである。
【0043】
本発明は、このような従来均一な特性を有する基板を具現するために不可避に採択した2段階工法から外れて、熱処理段階である1段階工法で窒化工程および焼結工程を全部行って、窒化ケイ素基板を製造することによって、製造時間を画期的に短縮させながらも、均一な特性を有する窒化ケイ素基板を具現し、本発明に至ることになった。
【0044】
前記熱処理段階は、窒化区間から焼結区間まで熱処理の中断なく連続的に行うことができ。また、粉末相で窒化させるものではなく、最初から基板の形状に成形された成形体を窒化させた後に焼結させるので、前記窒化区間と焼結区間との間に第1温度より低い温度で熱処理したり、第1温度より低くなるように冷却させたりする区間を含まなくてもよい。
【0045】
なお、前記シート状の成形体は、図2の(a)に示されたように、複数枚の成形体1、2が積層された積層体100の状態で熱処理段階を行うことができる。一例して、シート状の成形体は、2枚以上が積層された状態で熱処理段階を行うことができる。この際、積層体100は、BNプレート10の間に配置された状態で熱処理段階を行うことができる。また、積層された成形体1、2それぞれの間には、熱処理後に成形体1、2間にひっつくことを最小化または防止するために、離型剤、例えば、BNパウダーを介在してもよい。このように複数枚の成形体を積層状態で一度に熱処理段階を行うことは、生産性の観点から不可避である。しかしながら、もし、複数枚の成形体に対して熱処理段階を行いながら、窒化工程と焼結工程との間に熱処理中断、例えば、炉の変更による積層体の移動および/または炉内真空、解除および再真空などの理由に起因して二つの工程が連続的に行われない場合、積層体の移動中に発生した振動や再真空時の気圧の変化に起因して熱処理前に積層された状態を十分に維持せず、図2の(b)に示されたように、成形体の一部または全部がランダムに水平方向に移動して、積層体100の側端がでこぼこになり、そのため、成形体1、2の端部が曲がる反り現象が発生することがある。また、反り現象は、曲げ強度の低下および平坦度が低下するなどの不良率の増加につながる。したがって、熱処理段階が炉の変更による積層された成形体の移動を省略し、炉内真空後の解除および再真空なく連続的に行われることは、製造時間の短縮に加えて、熱処理段階後の窒化ケイ素基板の端部の反り現象や、曲げ強度の低下および平坦度の低下などの問題を最小化したり防止できたりする利点がある。
【0046】
熱処理段階について具体的に説明すると、準備した成形体は、炉に装着された後、窒化区間Sに到達する前まで所定の昇温速度または昇温速度を異ならせて熱処理することができる。この際、成形体内有機バインダーなど有機化合物を除去するための脱脂工程を行うことができる。ただし、有機バインダーの含有量が少ない場合、脱脂を省略することもできる。
【0047】
具体的には、脱脂工程は、準備した成形体を脱脂炉に装着させた後、所定の昇温速度または昇温速度を異ならせて熱処理開始温度から900℃まで加熱して脱脂させることができる。また、脱脂工程は、公知の雰囲気、例えば、大気雰囲気および/または窒素雰囲気の下で行うことができ、具体的な雰囲気は、使用される有機バインダーの種類、含有量などを考慮して適宜選択することができる。ただし、上記のような成形体の組成、有機バインダーの種類と含有量などを考慮して、前記脱脂工程は、好ましくは、熱処理開始温度から450℃温度区間では、大気雰囲気下で脱脂を行うことができ、450℃~900℃温度区間では、窒素雰囲気下で脱脂を行うことができ、これを通じて、脱脂工程後に成形体に残留する炭素成分を最小化したり完全に除去したりするのに有利になり得る。前記熱処理開始温度は、常温、例えば、20~25℃であってもよい。また、前記熱処理時に450℃までは、2~8℃/分の速度で昇温することができ、450℃から900℃までは、2~8℃/分の速度で昇温することができ、450℃までの昇温速度および450℃から900℃までの昇温速度は、互いに同じでも異なっていてもよい。
【0048】
また、前記脱脂工程を行った後、脱脂工程を行った成形体に900~1000℃で2次脱脂をさらに行ってもよい。この際、900~1000℃の区間では、1~10℃/分、より好ましくは、1~3℃/分の低い速度で昇温することが好ましく、圧力は、0.1~0.2MPa、より好ましくは、0.14~0.17MPaとすることが好ましい。
【0049】
その後、本発明の好ましい一実施形態によれば、所定の温度T、具体的には、1000±20℃の温度から第1温度Tまで所定の圧力で窒素ガスを加えながら、遅い速度で昇温することができ、具体的には、0.1~0.2MPaの圧力、より好ましくは、0.14~0.18MPaの圧力で窒素ガスを加えながら昇温することができる。また、温度は、0.1~2.0℃/分の速度、より好ましくは、0.5~1.0℃/分で昇温することができる。もし、窒素ガス圧力が0.1MPa未満の場合、窒化区間Sを経た後にも、成形体に窒化が完全に起こらないので、窒化しない部分が存在することがある。また、窒素ガス圧力が0.2MPaを超えると、シリコンが溶出する現象が発生することがあり、基板の熱伝導度と機械的強度が低下する。また、もし、1000±20℃から第1温度まで昇温速度が0.1℃/分未満の場合、熱処理段階の所要時間が過度に延びることができる。また、昇温速度が2.0℃/分を超える場合、シリコンが溶出し、完全に窒化ケイ素で窒化された基板を製造しにくい。
【0050】
なお、成形体が炉に装着された後、例えば、800℃以下の温度までは、昇温速度に制限がなく、一般的なシリコン基板またはシリコン粉末に対する窒化時に適用する昇温条件に従うことができ、例えば、4℃/分~30℃/分の速度で昇温を行うことができる。また、この区間では、昇温時に不活性ガスまたは窒素ガス雰囲気下で昇温を行うことができる。
【0051】
その後、熱を続いて加えて、第1温度Tまで昇温させた後、所定の圧力で窒素ガスを加えながら、第1温度Tで熱処理する窒化区間Sに該当する窒化工程が行われる。前記第1温度Tは、1300~1500℃の範囲、好ましくは、1400~1500℃の範囲内所定の温度であってもよい。もし、第1温度Tが1300℃未満の場合、窒化が均一に起こらないことがある。また、第1温度Tが1500℃を超える場合、β結晶相が急速に形成されることにより、基板の緻密化が難しい。
【0052】
また、窒化区間S3で加える窒素ガスの圧力は、0.1~0.2MPaの圧力、より好ましくは、0.14~0.18MPaの圧力で窒素ガスを加えてもよい。もし、窒素ガス圧力が0.1MPa未満の場合、窒化が完全に起こらないので、窒化していない部分が存在することがある。また、窒素ガス圧力が0.2MPaを超える場合、窒化過程でシリコンが溶出する現象が発生することがあり、基板の熱伝導度と機械的強度が低下することがある。また、窒化工程は、2~10時間とすることができ、より好ましくは、1~4時間とすることができる。なお、窒化工程の時間は、第1温度Tによって適宜調節することができる。
【0053】
また、本発明の一実施形態によれば、前記1000±20℃から前記第1温度まで加える窒素ガスの圧力は、窒化区間で加えられる窒素ガスの圧力より低くてもよく、これを通じて、より均一に窒化し、外観と機械的強度に優れた基板を具現するのに有利になり得る。
【0054】
また、窒化工程後、焼結工程が行われる第2温度Tまで所定の昇温速度で熱処理することができる。この際、本発明の好ましい一実施形態によれば、第1温度Tから第2温度Tまで所定の圧力で窒素ガスを加えながら、遅い速度で昇温することができ、具体的には、0.1MPa~1.0MPaの圧力で窒素ガス下で0.1~10.0℃/分の速度で昇温することができる。もし、窒素ガス圧力が0.1MPa未満の場合、窒化ケイ素の分解を抑制しにくい。また、もし、窒素ガス圧力が1.0MPaを超える場合、炉の耐圧性が問題になる。また、もし、第1温度Tから昇温速度が0.1℃/分未満の場合、熱処理段階の所要時間が過度に延びることができる。また、昇温速度が10.0℃/分を超える場合、ベータ相への急激な転移が発生し、そのため、ベータ相の結晶が不均一に成長するなど結晶制御が容易でなく、具現された基板は、目標とする物性を有することが難しい。
【0055】
本発明の一実施形態によれば、第1温度Tから第2温度Tまで昇温区間は、2つの区間に細分化して行ってもよく、これを通じて、より優れた物性を有する基板を製造することができる。
【0056】
具体的には、前記窒化区間と焼結区間の間は、第1温度Tから1700±20℃まで窒素ガス圧力0.15~0.3MPaの下で0.1~10.0℃/分の速度で昇温する第1収縮区間と、1700±20℃から第2温度Tまで窒素ガス圧力0.8~0.98MPaの下で1~10℃/分の速度で昇温する第2収縮区間と、をさらに含んでもよい。
【0057】
この際、第1収縮区間は、窒素ガス圧力を0.15~0.3MPaとすることができ、第2収縮区間は、窒素ガス圧力を0.8~0.9MPaとすることができる。また、第1収縮区間は、昇温速度を0.1~10℃/分、より好ましくは、0.1~2℃/分とすることができる。また、第2収縮区間は、 昇温速度を1~10℃/分、より好ましくは、1~5℃/分とすることができ、これを通じて、本発明の目的を達成することが容易になり得る。
【0058】
次に、第2温度Tに到達した後に行われる焼結工程について説明する。
【0059】
前記第2温度Tは、1700~1900℃の範囲内で選択することができる。もし、温度が1700℃未満の場合、成形体を十分に緻密化することができない。また、温度が1900℃を超える場合、粒子の過成長および/または不均一な成長が生じるおそれがあり、具現された基板の機械的強度が低下する。
【0060】
この際、焼結時間は、上記のような第2温度T範囲に依存して調節することができるが、第2温度Tが低い場合、焼結は、長時間行うことができ、反対に、第2温度Tが高い場合、相対的に焼結は、低い温度条件であるとき、焼結時間に比べて短時間行うことができる。前記焼結は、例えば、2~10時間、より好ましくは、4~8時間とすることができ、これを通じて、本発明の目的を達成するのに有利である。
【0061】
また、前記焼結工程も、窒素ガス雰囲気下で行うことができ、この際の窒素ガス圧力は、窒化ケイ素成形体の焼結時に用いられる雰囲気条件であってもよいが、例えば、0.1MPa以上の圧力で窒素ガスを加えることができ、より好ましくは、0.9~1.0MPa、より好ましくは、0.9~0.98MPaの窒素ガス圧力下で焼結することができ、これを通じて、高品位の窒化ケイ素基板を具現するのに有利になり得る。
【0062】
熱処理段階の焼結区間Sまで経た基板は、その後、冷却区間Sをさらに経ることができるが、前記冷却区間Sは、通常の窒化ケイ素基板の焼結後に冷却条件に従うことができ、本発明は、これに対して特に限定しない。
【0063】
なお、上記のような製造方法で具現された窒化ケイ素基板は、熱伝導度が75W/mK以上、好ましくは、80W/mK以上、より好ましくは、90W/mK以上であり、3点曲げ強度が650MPa以上、好ましくは、680MPa以上、より好ましくは、700MPa以上、さらに好ましくは、750MPa以上の窒化ケイ素基板を具現することができる。
【0064】
また、基板は、好ましくは、ケイ素を6重量%以下、より好ましくは、4重量%以下、より好ましくは、0重量%とすることにより、より改善された機械的強度および熱伝導度を有することができる。
【実施例
【0065】
下記の実施例に基づいて、本発明をより具体的に説明するが、下記実施例が本発明の範囲を制限するものではなく、これは、本発明の理解を助けるものと解釈すべきである。
【0066】
<実施例1>
半導体工程用治具由来の多結晶シリコンスクラップ(純度99.99%、抵抗率1Ω・cm)をジェットミルを用いて乾式粉砕させて、平均粒径が4μmの金属シリコン粉末を準備した。そこへ平均粒径が0.5μmの酸化イットリウム3モル%、平均粒径が0.5μmの酸化マグネシウム5モル%を混合し、セラミック組成物を準備した。準備したセラミック組成物100重量部を溶媒としてのエタノール80重量部、有機バインダーとしてポリビニルブチラル10重量部と混合し、基板製造用スラリーを製造し、これをテープキャスト法を用いてシート状の成形体に製造した。その後、製造された成形体を4枚積層させた後、炉に装着してから、窒素ガス雰囲気下で熱処理し、具体的には、0.15Mpaの圧力で900℃までは昇温速度を5℃/分、900℃から1000℃までは1.2℃/分速度で昇温させた。その後、1000℃から第1温度である1460℃まで窒素ガス圧力0.15MPaで昇温速度を0.5℃/分とした後、第1温度である1460℃で窒素ガス圧力0.17MPaで2時間熱処理し、窒化処理された基板を収得した。その後、1700℃まで0.2MPaの窒素ガス圧力下で1℃/分の速度でゆっくり昇温させた後、第2温度である1850℃まで0.9MPaの窒素ガス圧力下で4℃/分の昇温速度で昇温させ、1850℃で0.9MPaの窒素ガス圧力下で5時間焼結させて、最終厚さ170μmの窒化ケイ素基板を製造した。
【0067】
<実施例2~12および比較例1~4>
前記実施例1と同一に実施するものの、第1温度、第2温度、窒化区間圧力、酸化イットリウム含有量および酸化マグネシウム含有量などを変更して、下記表1~表3のような窒化ケイ素基板を製造した。
【0068】
<実験例>
実施例1~12および比較例1~4によって製造された窒化ケイ素基板に対して下記物性を評価し、下記表1~表3に示した。
【0069】
1.3点曲げ強度の評価
実施例および比較例によって製造された窒化ケイ素基板に対して、3点曲げ強度の測定は、国際標準であるASTM C 1161-02C(standard Test method for Flexural strength of Advanced ceramic at Ambient Temperature)法でUniversaltesting machineとしてAGS-1000D(Shimadzu,Japan)を用いて試験片20mm間隔の2個の支持点で支持し、それらの中間地点で1分当たり1mmの速度で移動するクロスヘッドで荷重を加える。試験片が破壊されるときの最大荷重が測定されると、曲げ強度は、下記のような計算式1で計算した。
【0070】
[計算式1]曲げ強度(σ)=3×P×L/2×w×t
【0071】
前記計算式1において、Pは、最大荷重、Lは、試験片の長さ、wは、試験片の幅、tは、試験片の厚さを示す。
【0072】
2.熱伝導度の測定
実施例および比較例によって製造された窒化ケイ素基板に対して、国際標準であるASTM E1461(standard Test Method for Thermal Diffusivity by the laser Flash Method)方法で熱伝導度を測定するために、厚さが約500μmの試験片を横×縦10mm×10mmのサイズで製作し、レーザー閃光法(Laser Flash apparatus,NETZCH,Germany)で熱拡散係数を測定し、下記のような計算式2で計算した。
【0073】
[計算式2]熱伝導度(k)=α・ρ・Cp
【0074】
前記計算式2において、αは、熱拡散係数(mm/S)、ρは、密度(g/cm)、Cpは、熱容量(J/(kg・K))を示す。
【0075】
3.焼結後の表面状態の評価
実施例および比較例によって製造された窒化ケイ素基板に対して、Siが完全に窒化せずにSiが溶けて溶出する現象であり、焼結体の反応程度を確認する方法を用いて焼結後の表面状態を評価した(ただし、溶出が起こった試験片では、熱伝導度と3点曲げ強度を測定できる試験片を製造できないので、物性を測定できない)。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
前記表1~表3から確認できるように、本発明による第1温度、第2温度、窒化区間圧力、酸化イットリウム含有量および酸化マグネシウム含有量などを全部満たす実施例1~3、実施例5、実施例7および実施例9が、これらのうち一つでも満足しない実施例4、実施例6、実施例8、実施例10~12および比較例1~4に比べて、機械的強度および熱伝導度に優れていると同時に、焼結後の表面状態が良好な効果を同時に発現できることが分かる。
【0080】
以上、本発明の一実施形態や実施例について説明したが、本発明の思想は、本明細書に提示される実施形態や実施例に制限されず、本発明の思想を理解する当業者は、同じ思想の範囲内で、構成要素の付加、変更、削除、追加などによって他の実施形態や実施例を容易に提案することができるが、これも、本発明の思想範囲内に入るといえる。
【符号の説明】
【0081】
1、2 成形体
10 BNプレート
100 積層体
図1
図2
【国際調査報告】