(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-15
(54)【発明の名称】高周波数動作を伴う心臓補助デバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 60/17 20210101AFI20240408BHJP
A61M 60/295 20210101ALI20240408BHJP
A61M 60/497 20210101ALI20240408BHJP
A61M 60/841 20210101ALI20240408BHJP
【FI】
A61M60/17
A61M60/295
A61M60/497
A61M60/841
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023567175
(86)(22)【出願日】2022-04-07
(85)【翻訳文提出日】2023-12-28
(86)【国際出願番号】 NL2022050193
(87)【国際公開番号】W WO2022235152
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523138378
【氏名又は名称】カーディアックブースター ベー.フェー.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ファン ドート, ダニエル イマヌエル ミハエル
(72)【発明者】
【氏名】ファン デル ブルフト, レネ コルネリス ヘンリクス
(72)【発明者】
【氏名】ルートヴィヒ, フロアリアン ニクラス
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA04
4C077DD09
4C077EE01
4C077FF04
(57)【要約】
輸送状態と、動作状態とを有する、拡張可能カップ(4)を伴う心臓補助デバイスであって、拡張可能カップは、複数の流入開口(5)と、流出ノズル(6)と、拡張可能カップ(4)の内側に位置付けられる、膨張可能バルーン(8)とを備える。カテーテルアセンブリ(3)が、動作の間に膨張可能バルーン(8)に接続され、制御ユニット(2)が、カテーテルアセンブリ(3)に接続される。制御ユニット(2)は、1分あたり100回を上回る拍動の周波数を伴って膨張可能バルーン(8)を動作させるように配列される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓補助システムであって、
輸送状態と、動作状態とを有する拡張可能カップ(4)であって、前記拡張可能カップは、少なくとも1つの流入開口(5)と、流出ノズル(6)とを備える、拡張可能カップ(4)と、
前記拡張可能カップ(4)の内側に位置付けられ、低体積状態と高体積状態との間で移動可能である体積変位部材(8)と、
動作の間に前記体積変位部材(8)に接続されるカテーテルアセンブリ(3)と、
前記カテーテルアセンブリ(3)に接続される制御ユニット(2)と
を備え、
前記制御ユニット(2)は、1分あたり100回を上回る拍動の周波数において前記低体積状態と高体積状態との間で前記体積変位部材(8)を周期的に移動させるように配列される、心臓補助システム。
【請求項2】
前記動作状態における前記拡張可能カップ(4)の内部体積は、0.3~20mlである、請求項1に記載の心臓補助システム。
【請求項3】
前記動作状態における前記拡張可能カップ(4)の内部体積は、1~20mlであり、前記制御ユニット(2)は、1分あたり100~5,000回の拍動の周波数を伴って前記体積変位部材を動作させるように配列される、請求項2に記載の心臓補助システム。
【請求項4】
前記動作状態における前記拡張可能カップ(4)の内部体積は、5~10mlであり、前記制御ユニット(2)は、1分あたり200~1,000回の拍動の周波数を伴って前記体積変位部材を動作させるように配列される、請求項2に記載の心臓補助システム。
【請求項5】
前記体積変位部材は、膨張可能バルーンを備え、前記制御システムは、前記膨張可能バルーン(8)を膨張および収縮させるために、前記カテーテルアセンブリ(3)を通して前記体積変位部材(8)に不活性流体を送達するように構成される、請求項1-4のいずれか1項に記載の心臓補助システム。
【請求項6】
前記不活性流体は、低粘度流体である、請求項5に記載の心臓補助システム。
【請求項7】
前記制御システムは、少なくとも100mmHgの膨張圧力および-50mmHg未満の収縮圧力において前記カテーテルアセンブリを通して前記不活性流体を送達するように構成される、請求項5または6に記載の心臓補助システム。
【請求項8】
前記制御システムは、少なくとも200mmHgの膨張圧力および-200mmHg未満の収縮圧力において前記カテーテルアセンブリを通して前記不活性流体を送達するように構成される、請求項7に記載の心臓補助システム。
【請求項9】
前記制御ユニット(2)は、高圧源(21)と、低圧源(22)と、前記高圧源(21)、前記低圧源(22)、および前記カテーテルアセンブリ(3)に接続される切替配列(23)とを備え、前記切替配列(23)は、前記高圧源(21)および前記低圧源(22)を前記カテーテルアセンブリ(3)に交互に接続するように配列される、請求項5-8のいずれか1項に記載の心臓補助システム。
【請求項10】
前記制御ユニット(2)は、膨張期間の間に前記高圧源(21)を前記カテーテルアセンブリ(3)に接続し、収縮期間の間に前記低圧源(22)を前記カテーテルアセンブリ(3)に接続するように配列され、前記膨張期間は、前記収縮期間よりも短い、請求項9に記載の心臓補助システム。
【請求項11】
前記膨張期間および前記収縮周期のデューティサイクルは、30%~80%である、請求項10に記載の心臓補助システム。
【請求項12】
前記制御ユニット(2)はさらに、安全ダイヤフラム(27)によって分離される源側チャンバ(25)と、カテーテル側チャンバ(26)とを有する駆動装置(24)を備える、請求項7、8、または9に記載の心臓補助システム。
【請求項13】
前記高圧源(21)は、少なくとも300ミリバールの最大空気圧を提供するように配列される、請求項9に記載の心臓補助システム。
【請求項14】
前記カテーテルアセンブリ(3)は、膨張流体を前記体積変位部材に送達するための膨張管腔を有し、前記膨張管腔は、1~20mm
2の断面流動面積を有する、請求項5-13のいずれか1項に記載の心臓補助システム。
【請求項15】
前記断面流動面積は、2~7mm
2である、請求項14に記載の心臓補助システム。
【請求項16】
前記膨張管腔は、少なくとも1mmの直径を有する、請求項14に記載の心臓補助システム。
【請求項17】
前記カテーテルアセンブリ(3)の第1の部分は、前記カテーテルアセンブリの第2の部分よりも大きい直径を有し、前記第2の部分は、前記第1の部分よりも前記体積変位部材(8)に近接する、請求項1-16のいずれか1項に記載の心臓補助システム。
【請求項18】
前記カテーテルアセンブリ(3)は、剛性材料を含む、請求項1-17のいずれか1項に記載の心臓補助システム。
【請求項19】
前記カテーテルアセンブリ(3)は、0.1~0.3mmの壁厚を有する、請求項1-18のいずれか1項に記載の心臓補助システム。
【請求項20】
前記カテーテルアセンブリ(3)は、その外部上に熱隔離コーティングを備える、請求項1-19のいずれか1項に記載の心臓補助システム。
【請求項21】
前記拡張可能カップ(4)は、前記動作状態において非膨張性である材料の支持構造(4a)を備える、請求項1-20のいずれか1項に記載の心臓補助システム。
【請求項22】
前記拡張可能カップはさらに、前記支持構造(4a)の少なくとも一部を被覆するセミリジッド材料の外壁(4b)を備える、請求項21のいずれか1項に記載の心臓補助システム。
【請求項23】
前記支持構造は、弾力性金属を含む、請求項21または22に記載の心臓補助システム。
【請求項24】
前記弾力性金属は、ニッケル-チタン合金、コバルトクロム、またはステンレス鋼から選択される、請求項23に記載の心臓補助システム。
【請求項25】
前記支持構造は、織成ワイヤ、メッシュ、バスケット、またはステント様構造を備える、請求項23または24に記載の心臓補助システム。
【請求項26】
前記セミリジッド材料は、ポリマー膜を含む、請求項22-25のいずれか1項に記載の心臓補助システム。
【請求項27】
前記体積変位部材(8)は、前記低体積状態に移動するとき、前記流入開口を通して前記拡張可能カップ(4)の中への血液の流入を可能にし、前記高体積状態に移動するとき、前記流出ノズル(6)を通して前記血液の流出を指向するように構成される、請求項1-26のいずれか1項に記載の心臓補助システム。
【請求項28】
前記体積変位部材(8)は、前記流出ノズル(6)から遠隔の前記拡張可能カップ(4)の端部において前記拡張可能カップ(4)に取り付けられる、請求項27に記載の心臓補助システム。
【請求項29】
前記拡張可能カップは、前記流出ノズルと連通する流出開口部を有し、前記膨張可能バルーンは、前記バルーンが完全に膨張されるとき、前記膨張可能バルーンと前記流出開口部との間に空間を提供するようにサイズ決めされ、前記拡張可能カップ内に位置付けられる、請求項5に記載の心臓補助システム。
【請求項30】
前記拡張可能カップ(4)、前記流出ノズル(6)、および前記体積変位部材(8)のうちの1つまたは組み合わせは、前記拡張可能カップから前記流出ノズルの中に流動する流体において、または前記流出ノズルから退出する流体において、ベンチュリ効果を生成するように構成される、請求項1-29のいずれか1項に記載の心臓補助システム。
【請求項31】
前記膨張可能バルーンは、完全に膨張されるとき、少なくとも0.1mmの間隔だけ前記拡張可能カップの内壁から離間される、請求項5に記載の心臓補助システム。
【請求項32】
前記拡張可能カップ(4)は、0.3~20mlの内部体積を有し、前記制御ユニットは、1分あたり100~10,000回の拍動の周波数において前記体積変位部材を動作させるように構成される、請求項1-31のいずれか1項に記載の心臓補助システム。
【請求項33】
前記拡張可能カップ(4)は、5~10mlの内部体積を有し、前記制御ユニットは、1分あたり200~1,000回の拍動の周波数において前記体積変位部材を動作させるように構成される、請求項1-31のいずれか1項に記載の心臓補助システム。
【請求項34】
前記拡張可能カップ(4)は、0.3~5mlの内部体積を有し、前記制御ユニットは、1分あたり600~10,000回の拍動の周波数において前記体積変位部材を動作させるように構成される、請求項1-31のいずれか1項に記載の心臓補助システム。
【請求項35】
前記拡張可能カップ(4)は、5~20mlの内部体積を有し、前記制御ユニットは、1分あたり200~600回の拍動の周波数において前記体積変位部材を動作させるように構成される、請求項1-31のいずれか1項に記載の心臓補助システム。
【請求項36】
前記拡張可能カップ(4)は、前記動作状態において25mm未満の最大直径を有する、請求項1-35のいずれか1項に記載の心臓補助システム。
【請求項37】
前記最大直径は、18mm以下である、請求項36に記載の心臓補助システム。
【請求項38】
前記最大直径は、0.3~10mmである、請求項36に記載の心臓補助システム。
【請求項39】
前記拡張可能カップは、18Fr以下の送達プロファイルを有する輸送状態に圧潰可能である、請求項1-38のいずれか1項に記載の心臓補助システム。
【請求項40】
前記体積変位部材を周期的に移動させることは、前記流出ノズルを通して少なくとも5L/分の流量を生産する、請求項1-39のいずれか1項に記載の心臓補助システム。
【請求項41】
前記拡張可能カップは、前記心臓の左心室内での位置付けのために構成される、請求項1-40のいずれか1項に記載の心臓補助システム。
【請求項42】
流出ノズルは、前記左心室から大動脈弁を通して大動脈管腔の中に延在するように構成される、請求項41に記載の心臓補助システム。
【請求項43】
心臓補助デバイスであって、
拡張可能カップ(4)であって、前記拡張可能カップ(4)は、末梢血管を通した血管内送達のために適合される輸送状態を有し、心血管管腔内で動作状態に拡張可能であり、前記拡張可能カップは、圧送チャンバと、複数の流入開口(5)と、流出ノズル(6)とを備える、拡張可能カップ(4)と、
体積変位部材(8)であって、前記体積変位部材(8)は、前記圧送チャンバの内側に位置付けられ、低体積状態と高体積状態との間で移動可能である、体積変位部材(8)と、
動作の間に前記体積変位部材(8)に接続されるカテーテルアセンブリ(3)と
を備え、
前記体積変位部材(8)は、1分あたり100~10,000回の拍動の周波数において前記低体積状態と前記高体積状態との間で周期的に移動可能である、心臓補助デバイス。
【請求項44】
心臓補助デバイスであって、
拡張可能カップ(4)であって、前記拡張可能カップ(4)は、末梢血管を通した血管内送達のために適合される輸送状態を有し、心血管管腔内で動作状態に拡張可能であり、前記拡張可能カップは、複数の流入開口(5)と、流出ノズル(6)と、圧送チャンバとを備える、拡張可能カップ(4)と、
体積変位部材(8)であって、前記体積変位部材(8)は、前記圧送チャンバの内側に位置付けられ、低体積状態と高体積状態との間で移動可能である、体積変位部材(8)と、
動作の間に前記体積変位部材(8)に接続されるカテーテルアセンブリ(3)と
を備え、
前記体積変位部材の動作は、前記流出ノズルを通して少なくとも3L/分の血流を生産し、前記拡張可能カップは、前記輸送状態において14Fr以下の送達プロファイルを有する、心臓補助デバイス。
【請求項45】
心臓補助デバイスであって、
拡張可能カップ(4)であって、前記拡張可能カップ(4)は、末梢血管を通した血管内送達のために適合される輸送状態を有し、心血管管腔内で動作状態に拡張可能であり、前記拡張可能カップは、複数の流入開口(5)と、流出ノズル(6)と、圧送チャンバとを備える、拡張可能カップ(4)と、
前記圧送チャンバの内側に位置付けられる体積変位部材(8)であって、前記体積変位部材は、低体積状態と高体積状態との間で移動可能である、体積変位部材(8)と、
動作の間に前記体積変位部材(8)に接続されるカテーテルアセンブリ(3)と
を備え、
前記体積変位部材は、前記流出ノズルを通して少なくとも5L/分の血流を生産するように周期的に移動可能であり、前記拡張可能カップは、前記輸送状態において18Fr以下の送達プロファイルを有する、心臓補助デバイス。
【請求項46】
心臓補助デバイスであって、
拡張可能カップ(4)であって、前記拡張可能カップ(4)は、末梢血管を通した血管内送達のために適合される輸送状態を有し、心血管管腔内で動作状態に拡張可能であり、前記拡張可能カップは、複数の流入開口(5)と、流出ノズル(6)と、圧送チャンバとを備える、拡張可能カップ(4)と、
体積変位部材(8)であって、前記体積変位部材(8)は、前記圧送チャンバの内側に位置付けられ、低体積状態と高体積状態との間で移動可能である、体積変位部材(8)と、
動作の間に前記体積変位部材(8)に接続されるカテーテルアセンブリ(3)と
を備え、
前記動作状態において、前記圧送チャンバは、20ml未満の体積を有し、前記体積変位部材は、前記流出ノズルを通して少なくとも5L/分の血流を生産するように周期的に移動可能である、心臓補助デバイス。
【請求項47】
心臓補助デバイスであって、
拡張可能カップ(4)であって、前記拡張可能カップ(4)は、末梢血管を通した血管内送達のために適合される輸送状態を有し、心血管管腔内で動作状態に拡張可能であり、前記拡張可能カップは、圧送チャンバと、複数の流入開口(5)と、流出ノズル(6)とを備える、拡張可能カップ(4)と、
前記圧送チャンバの内側に位置付けられる体積変位部材(8)であって、前記体積変位部材は、低体積状態と高体積状態との間で移動可能であり、前記圧送チャンバから前記流出ノズルの中に血液の体積V
dを変位させる、体積変位部材(8)と、
動作の間に前記体積変位部材(8)に接続されるカテーテルアセンブリ(3)と
を備え、
前記体積変位部材は、周波数Fにおいて前記低体積状態と前記高体積状態との間で周期的に移動可能であり、
前記圧送チャンバおよび流出ノズルは、退出流量Rにおいて前記流出ノズルを通して血液を流動させるように構成され、R>F×V
dである、
心臓補助デバイス。
【請求項48】
前記動作状態における前記拡張可能カップ(4)の内部体積は、0.3~20mlである、請求項43-47のいずれかに記載の心臓補助デバイス。
【請求項49】
前記動作状態における前記拡張可能カップ(4)の内部体積は、1~20mlであり、前記体積変位部材は、1分あたり100~5,000回の拍動の周波数において周期的に移動可能である、請求項48に記載の心臓補助デバイス。
【請求項50】
前記動作状態における前記拡張可能カップ(4)の内部体積は、5~10mlであり、前記体積変位部材は、1分あたり200~1,000回の拍動の周波数において周期的に移動可能である、請求項2に記載の心臓補助デバイス。
【請求項51】
前記体積変位部材は、前記高体積状態に膨張され、前記低体積状態に収縮されるように構成される膨張可能バルーンを備える、請求項43-50のいずれか1項に記載の心臓補助デバイス。
【請求項52】
前記カテーテルアセンブリ(3)は、膨張流体を前記体積変位部材に送達するための膨張管腔を有し、前記膨張管腔は、1~20mm
2の断面流動面積を有する、請求項51に記載の心臓補助デバイス。
【請求項53】
前記カテーテルアセンブリ(3)の第1の部分は、前記カテーテルアセンブリの第2の部分よりも大きい直径を有し、前記第1の部分は、前記第2の部分よりも前記体積変位部材(8)に近接する、請求項43-52のいずれか1項に記載の心臓補助デバイス。
【請求項54】
前記拡張可能カップ(4)は、前記動作状態において非膨張性である材料の支持構造(4a)を備える、請求項43-53のいずれか1項に記載の心臓補助デバイス。
【請求項55】
前記拡張可能カップはさらに、前記支持構造(4a)の少なくとも一部を被覆するセミリジッド材料の外壁(4b)を備える、請求項54に記載の心臓補助デバイス。
【請求項56】
前記支持構造は、弾力性金属を含む、請求項54または55に記載の心臓補助デバイス。
【請求項57】
前記弾力性金属は、ニッケル-チタン合金、コバルトクロム、またはステンレス鋼から選択される、請求項56に記載の心臓補助デバイス。
【請求項58】
前記支持構造は、織成ワイヤ、メッシュ、バスケット、またはステント様構造を備える、請求項56または57に記載の心臓補助デバイス。
【請求項59】
前記セミリジッド材料は、ポリマー膜を含む、請求項54-58のいずれか1項に記載の心臓補助デバイス。
【請求項60】
前記体積変位部材(8)は、前記低体積状態に移動するとき、前記流入開口を通して前記拡張可能カップ(4)の中への血液の流入を可能にし、前記高体積状態に移動するとき、前記流出ノズル(6)を通して前記血液の流出を指向するように構成される、請求項43-59のいずれか1項に記載の心臓補助デバイス。
【請求項61】
前記体積変位部材(8)は、前記流出ノズル(6)から遠隔の前記拡張可能カップ(4)の端部において前記拡張可能カップ(4)に取り付けられる、請求項43-60のいずれか1項に記載の心臓補助デバイス。
【請求項62】
前記圧送チャンバは、前記流出ノズルと連通する流出開口部を有し、前記膨張可能バルーン(8)は、前記バルーンが完全に膨張されるとき、前記バルーンと前記流出開口部との間に空間を提供するようにサイズ決めされ、前記チャンバ内に位置付けられる、請求項51に記載の心臓補助デバイス。
【請求項63】
前記拡張可能カップ(4)、前記流出ノズル(6)、および前記体積変位部材(8)のうちの1つまたは組み合わせは、前記拡張可能カップから前記流出ノズルの中に流動する流体において、または前記流出ノズルから退出する流体において、ベンチュリ効果を生成するように構成される、請求項43-62のいずれか1項に記載の心臓補助デバイス。
【請求項64】
前記膨張可能バルーンは、完全に膨張されるとき、少なくとも0.1mmの間隔だけ前記拡張可能カップの内壁から離間される、請求項51に記載の心臓補助デバイス。
【請求項65】
前記拡張可能カップ(4)は、前記動作状態において25mm未満の最大直径を有する、請求項43-64のいずれか1項に記載の心臓補助デバイス。
【請求項66】
前記最大直径は、18mm以下である、請求項65に記載の心臓補助デバイス。
【請求項67】
前記最大直径は、0.3~10mmである、請求項66に記載の心臓補助デバイス。
【請求項68】
前記支持構造は、-50mmHgまでの前記圧送チャンバ内の負圧下で前記動作状態からの縮小を制限するように構成される、請求項54-59のいずれか1項に記載の心臓補助デバイス。
【請求項69】
前記拡張可能カップは、前記心臓の左心室内での位置付けのために構成される、請求項43-68のいずれか1項に記載の心臓補助デバイス。
【請求項70】
前記流出ノズルは、前記左心室から前記大動脈弁を通して大動脈管腔の中に延在するように構成される、請求項69に記載の心臓補助デバイス。
【請求項71】
ノズル支持体をさらに備え、前記流出ノズルは、前記ノズル支持体に結合され、それによって支持される、請求項54-59のいずれか1項に記載の心臓補助デバイス。
【請求項72】
前記ノズル支持体は、前記拡張可能カップの支持構造に接続される、請求項71に記載の心臓補助デバイス。
【請求項73】
前記支持構造は、前記拡張可能カップから前記流出ノズルの少なくとも一部に沿って延在し、前記ノズル支持体を形成する、請求項72に記載の心臓補助デバイス。
【請求項74】
前記ノズル支持体の下流端は、前記拡張可能カップの回収を促進するように構成される、請求項71-73のいずれか1項に記載の心臓補助デバイス。
【請求項75】
前記ノズル支持体の下流端は、回収デバイスに結合するための回収結合具を含む、請求項74に記載の心臓補助デバイス。
【請求項76】
前記ノズル支持体の下流端は、シースの中に前記拡張可能カップを後退させることを促進するために、テーパ状である、請求項74または75のいずれか1項に記載の心臓補助デバイス。
【請求項77】
前記拡張可能カップは、前記体積変位部材が前記高体積状態に移動しているときに閉鎖するように構成される前記流入開口のそれぞれにおける一方向弁を備える、請求項43-76のいずれか1項に記載の心臓補助デバイス。
【請求項78】
前記流出ノズルは、前記体積変位部材が前記低体積状態に移動しているときに閉鎖するように構成される一方向弁を含む、請求項43-77のいずれか1項に記載の心臓補助デバイス。
【請求項79】
患者の心臓に心臓補助を提供する方法であって、
輸送状態における圧送デバイスを末梢血管を通して心血管管腔の中に送達することと、
前記圧送デバイスの拡張可能カップを前記心血管管腔内で動作状態に拡張させることであって、前記拡張可能カップは、その内部における圧送チャンバと、前記圧送チャンバと連通する少なくとも1つの流入開口と、流出ノズルとを有する、ことと、
血液が前記流入開口を通して前記圧送チャンバの中に流動することを可能にし、前記流出ノズルを通して前記圧送チャンバから外に血液を指向するように、前記圧送チャンバ内に配置される体積変位部材を低体積状態と高体積状態との間で周期的に移動させることと
を含み、
前記体積変位部材は、1分あたり100~10,000回の拍動の周波数において周期的に移動される、方法。
【請求項80】
前記体積変位部材は、1分あたり少なくとも200回の拍動の周波数において周期的に移動される、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記体積変位部材は、前記高体積状態に膨張され、前記低体積状態に収縮される膨張可能バルーンを備える、請求項79に記載の方法。
【請求項82】
前記体積変位部材を周期的に移動させることは、前記流出ノズルを通して少なくとも5L/分の血流を生産する、請求項79に記載の方法。
【請求項83】
前記拡張可能カップは、前記輸送状態において18Fr以下の送達プロファイルを有する、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記体積変位部材を周期的に移動させることは、前記流出ノズルを通して少なくとも3L/分の血流を生産する、請求項79に記載の方法。
【請求項85】
前記拡張可能カップは、前記輸送状態において14Fr以下の送達プロファイルを有する、請求項79に記載の方法。
【請求項86】
前記圧送チャンバおよび流出ノズルを通して流動する前記血液中の赤血球は、400Pa未満の最大剪断応力に曝される、請求項79に記載の方法。
【請求項87】
前記圧送チャンバから前記流出ノズルの中に、または前記流出ノズルから外に流動する血液に対してベンチュリ効果を生成することをさらに含む、請求項79に記載の方法。
【請求項88】
前記体積変位部材は、周波数Fにおいて周期的に移動され、
前記体積変位部材は、前記低体積状態から前記高体積状態への各移動の間に前記圧送チャンバから血液の体積V
dを変位させ、
血液は、退出流量Rにおいて前記流出ノズルから退出し、R>F×V
dである、
請求項79および87に記載の方法。
【請求項89】
前記心血管管腔は、左心室を備える、請求項79に記載の方法。
【請求項90】
患者の心臓に心臓補助を提供する方法であって、
輸送状態における圧送デバイスを末梢血管を通して心血管管腔の中に送達することであって、前記圧送デバイスは、前記輸送状態において18Fr以下の送達プロファイルを有する、ことと、
前記圧送デバイスの少なくとも一部を前記心血管管腔内で動作状態に拡張させることであって、前記圧送デバイスは、圧送機構と、入口と、出口とを有する、ことと、
前記圧送機構を動作させ、血液が前記入口の中に流動することを可能にし、少なくとも5L/分の流量において前記出口から外に血液を指向することと
を含む、方法。
【請求項91】
前記圧送デバイスは、低体積状態と高体積状態との間で周期的に移動可能な体積変位部材を備える、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記体積変位部材は、1分あたり100~10,000回の拍動の周波数において周期的に移動される、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記体積変位部材は、前記高体積状態に膨張され、前記低体積状態に収縮される膨張可能バルーンを備える、請求項91に記載の方法。
【請求項94】
前記拡張可能カップは、前記輸送状態において14Fr以下の送達プロファイルを有する、請求項90に記載の方法。
【請求項95】
前記圧送デバイスを通して流動する前記血液中の赤血球は、400Pa未満の最大剪断応力に曝される、請求項90に記載の方法。
【請求項96】
前記圧送デバイスは、拡張可能カップを備え、前記拡張可能カップは、圧送チャンバであって、前記体積変位部材は、前記圧送チャンバ内に配置される、圧送チャンバと、前記圧送チャンバと連通する流出ノズルとを有する、請求項91に記載の方法。
【請求項97】
前記圧送チャンバから前記流出ノズルの中に、または前記流出ノズルから退出する指向される流路に沿って流動する血液に対してベンチュリ効果を生成することをさらに含む、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
前記体積変位部材は、周波数Fにおいて周期的に移動され、
前記体積変位部材は、前記低体積状態から前記高体積状態への各移動の間に前記圧送チャンバから血液の体積V
dを変位させ、
血液は、退出流量Rにおいて前記流出ノズルから退出し、R>F×V
dである、
請求項91-97のいずれかに記載の方法。
【請求項99】
前記圧送デバイスは、前記動作状態において25mm以下の最大直径を伴う展開プロファイルを有する、請求項90に記載の方法。
【請求項100】
前記動作状態における前記最大直径は、18mm以下である、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
前記動作状態における前記最大直径は、3~10mmである、請求項99に記載の方法。
【請求項102】
前記心血管管腔は、左心室を備える、請求項90に記載の方法。
【請求項103】
患者の心臓に心臓補助を提供する方法であって、
輸送状態における圧送デバイスを末梢血管を通して心血管管腔の中に送達することと、
前記圧送デバイスの少なくとも一部を前記心血管管腔内で動作状態に拡張させることであって、前記圧送デバイスは、圧送機構と、入口と、出口とを有する、ことと、
血液が、少なくとも5L/分の流量において前記入口の中に流動し、前記出口から外に流動するように、前記圧送機構を動作させることと
を含み、
前記血液中の赤血球は、前記入口と前記出口との間で400Pa未満の最大剪断応力に曝される、方法。
【請求項104】
前記圧送デバイスは、低体積状態と高体積状態との間で周期的に移動可能な体積変位部材を備える、請求項103に記載の方法。
【請求項105】
前記体積変位部材は、1分あたり100~10,000回の拍動の周波数において周期的に移動される、請求項104に記載の方法。
【請求項106】
前記体積変位部材は、前記高体積状態に膨張され、前記低体積状態に収縮される膨張可能バルーンを備える、請求項104に記載の方法。
【請求項107】
前記圧送デバイスは、前記輸送状態において18Fr以下の送達プロファイルを有する、請求項103に記載の方法。
【請求項108】
前記圧送デバイスは、拡張可能カップを備え、前記拡張可能カップは、圧送チャンバであって、前記体積変位部材は、前記圧送チャンバ内に配置される圧送チャンバと、前記圧送チャンバと連通する流出ノズルとを有する、請求項104に記載の方法。
【請求項109】
前記圧送チャンバから前記流出ノズルの中に、または前記流出ノズルから退出する指向される流路に沿って流動する血液に対してベンチュリ効果を生成することをさらに含む、請求項108に記載の方法。
【請求項110】
前記体積変位部材は、周波数Fにおいて周期的に移動され、
前記体積変位部材は、前記低体積状態から前記高体積状態への各移動の間に前記圧送チャンバから血液の体積V
dを変位させ、
血液は、退出流量Rにおいて前記流出ノズルから退出し、R>F×V
dである、
請求項103および109に記載の方法。
【請求項111】
前記心血管管腔は、左心室を備える、請求項103に記載の方法。
【請求項112】
患者の心臓に心臓補助を提供する方法であって、
輸送状態における圧送デバイスを末梢血管を通して心血管管腔の中に送達することと、
前記圧送デバイスの少なくとも一部を前記心血管管腔内で動作状態に拡張させることであって、前記圧送デバイスは、圧送機構と、入口と、流出ノズルとを有する、ことと、
前記圧送チャンバの内側に配置される体積変位部材を周波数Fにおいて低体積状態と高体積状態との間で周期的に移動させることであって、前記体積変位部材は、各サイクルの間に前記圧送チャンバからの血液の体積V
dを変位させる、ことと
を含み、
血液は、退出流量Rにおいて前記流出ノズルから退出し、R>F×V
dである、方法。
【請求項113】
前記体積変位部材は、1分あたり100~10,000回の拍動の周波数において周期的に移動される、請求項112に記載の方法。
【請求項114】
前記体積変位部材は、前記高体積状態に膨張され、前記低体積状態に収縮される膨張可能バルーンを備える、請求項112に記載の方法。
【請求項115】
前記退出流量は、少なくとも5L/分である、請求項112に記載の方法。
【請求項116】
前記圧送デバイスは、前記輸送状態において18Fr以下の送達プロファイルを有する、請求項115に記載の方法。
【請求項117】
前記圧送デバイスは、圧送チャンバを有する拡張可能カップを備え、前記体積変位部材は、前記圧送チャンバ内に配置され、前記流出ノズルは、前記圧送チャンバと連通する、請求項112に記載の方法。
【請求項118】
前記圧送チャンバから前記流出ノズルの中に流動する血液に対してベンチュリ効果を生成することをさらに含む、請求項117に記載の方法。
【請求項119】
前記圧送デバイスおよび流出ノズルを通して流動する前記血液中の赤血球は、400Pa未満の最大剪断応力に曝される、請求項112に記載の方法。
【請求項120】
前記心血管管腔は、左心室を備える、請求項112に記載の方法。
【請求項121】
患者の心臓に心臓補助を提供する方法であって、
輸送状態における圧送デバイスを末梢血管を通して心血管管腔の中に送達することであって、前記圧送デバイスは、前記輸送状態において18Fr以下の送達プロファイルを有する、ことと、
前記心血管管腔内に前記圧送デバイスの少なくとも一部を位置付けることであって、前記圧送デバイスは、圧送機構と、入口と、出口とを有する、ことと、
血液が、少なくとも5L/分の流量において前記入口の中に流動し、前記出口から外に流動するように、前記圧送機構を動作させることと
を含む、方法。
【請求項122】
前記送達プロファイルは、14Fr以下である、請求項121に記載の方法。
【請求項123】
心臓補助デバイスであって、
圧送デバイスであって、前記圧送デバイスは、末梢血管を通した血管内送達のために適合される輸送状態を有し、心血管管腔内で動作状態に拡張可能であり、圧送デバイスは、圧送機構と、入口と、出口とを有する、圧送デバイスと、
動作の間に前記圧送機構(8)に接続されるカテーテルアセンブリ(3)と
を備え、
前記圧送機構は、前記出口を通して少なくとも5L/分の血流を生産するように動作可能であり、前記圧送デバイスは、前記輸送状態において18Fr以下の送達プロファイルを有する、心臓補助デバイス。
【請求項124】
前記送達プロファイルは、14Fr以下である、請求項123に記載の心臓補助デバイス。
【請求項125】
前記圧送機構は、低体積状態と高体積状態との間で周期的に移動可能な体積変位部材を備える、請求項123に記載の心臓補助デバイス。
【請求項126】
前記体積変位部材は、前記高体積状態に膨張可能であり、前記低体積状態に収縮可能である膨張可能バルーンを備える、請求項125に記載の心臓補助デバイス。
【請求項127】
前記体積変位部材は、1分あたり100~10,000回の拍動の周波数において前記低体積状態と前記高体積状態との間で移動する、請求項125または126に記載の心臓補助デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、循環支援デバイスおよびシステムに関し、より具体的には、心血管管腔の中に経皮的に送達され得、心原性ショック、急性心筋梗塞、急性心不全における、または高リスクの経皮的冠動脈介入、または低減された溶血レベルを伴う血行力学的支援を要求する他の状況の間に患者を支援するために十分に高い流動において血液を圧送することが可能である、心臓補助デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
心原性ショックを患う患者または高リスクの経皮的冠動脈介入(PCI)を受ける患者に関して、患者の心臓機能は、損なわれている場合があり、したがって、循環補助デバイスの使用が、循環系を通して適正な血流を維持するために要求され得る。患者の体格および条件に応じて、ある程度の変動が、存在するが、高リスクのPCIを受ける患者のための循環補助デバイスは、典型的には、適正な循環を維持するために少なくとも3L/分の血流を生産しなければならない一方、心原性ショックにおける患者に関して、最低5L/分が、概して、必要と見なされる。
【0003】
最も一般的なタイプの循環補助デバイスは、大動脈内バルーンポンプ(IABP)、体外式膜型人工肺(ECMO)システム、およびインペラベースの血液ポンプである。IABPは、下行大動脈内に設置され、血液を変位させるように周期的に膨張され得る、膨張可能バルーンを有するカテーテルである。ECMOシステムは、静脈系から脱酸素化血液を除去するための静脈カテーテルと、体外式人工肺およびポンプと、血液を動脈系に戻し、したがって、心臓を迂回させるための動脈カテーテルとを含む。インペラポンプシステムは、心臓の心室内または主要血管内に設置され、循環系を通して血液を推進させるように比較的に高速で回転され得る、回転インペラを有する。
【0004】
血流を増加させ、心臓に対する負荷を低減させる際にある程度の利益をもたらすが、現在利用可能な循環補助デバイスは、ある欠点に悩まされる。IABPは、心原性ショック等の間、心臓が有意に損なわれているとき、患者を支援するために適正に流動を改良し得ない。ECMOシステムは、出血、血栓、および感染症を含む、複数のカテーテル処置と関連付けられるより高い罹患率、および認知障害および脳卒中を含む、膜型酸素化と関連付けられる問題を有し得る。加えて、それらは、概して、逆効果と見なされる、後負荷を増加させる。インペラポンプシステムは、より高い流動を生産するためにより高速で動作される場合、過剰な溶血をもたらし得、さらに、インペラポンプが、より高い流動を生産するためにより大きく作製される場合、そのようなデバイスのプロファイルは、望ましくないほど大きくなり、経皮的送達を阻害し、心血管構造に対する損傷のリスクを増加させ、および/または四肢虚血を引き起こし得る。結果として、心原性ショックにおける患者のために必要な高い流動を提供することが可能である、現在のインペラタイプポンプは、多くの場合、血管内送達のためには大きすぎ、したがって、外科的設置を要求し、さらに、望ましくないレベルの溶血を生産する。
【0005】
必要とされるものは、したがって、高リスクのPCI手技のための少なくとも3L/分および心原性ショックにおける患者を支援するための少なくとも5L/分の血流を生産することが可能であり、また、経皮的導入および血管内設置を可能にするためのコンパクトな送達プロファイルを有し、空間要件および心血管構造に対する外傷を低減させるために動作時に小さいサイズを有し、溶血および他の合併症を最小限にする、循環支援デバイスである。
【0006】
背景技術
米国特許公開第US-B-5,169,378号(特許文献1)は、拡張可能外部チャンバと、圧送作用を発生させるために順次膨張および収縮され得る、内部バルーンとを有する、心室内補助ポンプを説明している。
【0007】
国際特許公開第WO2008/113785号(特許文献2)は、第1の場所において体液を受容するための少なくとも1つの入口区分と、第1の場所からある距離だけ離れて配置される第2の場所において体液を排出するための入口区分からある距離だけ離れて配置される出口区分と、カテーテルデバイスの入口区分と出口区分との間の体液の指向される輸送のためのポンプデバイスとを有する、カテーテルデバイスを含む、体液を循環させるためのデバイスを開示している。
【0008】
国際特許公開第WO2015/131879号(特許文献3)は、指向される様式において体液を導くためのカテーテルデバイスを開示している。カテーテルデバイスは、内部空間を有するスリーブと、フレームと、少なくとも3つの開口部とを備え、スリーブは、第1および第2の開口部の間の流体のための導管として構成される。バルーンカテーテルのバルーンが、スリーブ内の第3の開口部を通して設置され、スリーブを通して体液を輸送するために膨張および収縮され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,169,378号明細書
【特許文献2】国際公開第2008/113785号
【特許文献3】国際公開第2015/131879号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、動作位置に容易に挿入され得、効率的かつ信頼性のある様式において心臓補助機能を提供することが可能である、心臓補助デバイスを提供しようとする。
【0011】
本発明によると、改良された血管内送達性、より少ない溶血、および心血管構造に対する低減された外傷のための低デバイスプロファイルを有しながら、高血流を生産する、心臓補助デバイス、システム、および方法が、提供される。心臓補助デバイスは、心血管管腔内に位置付け可能であり、圧送機構と、入口と、出口とを備える、圧送デバイスを備えてもよい。圧送デバイスは、末梢血管を通した挿入のために好適な送達プロファイルを伴う輸送状態を有してもよく、心血管管腔内で動作状態に拡張可能であってもよく、これは、送達および動作の間に心血管組織との係合を最小限にする。動作状態では、圧送デバイスは、少なくとも3L/分、好ましくは、少なくとも5L/分の血流を生産するように構成される。同時に、圧送デバイスは、18Fr以下、いくつかの実施形態では、14Fr以下の送達プロファイルに圧潰可能である。また、いくつかの実施形態では、圧送デバイスは、1つまたはそれを上回る短いバーストにおいて、または持続周期にわたってのいずれかで、6~10L/分またはそれを上回る血流を生産することが可能であり、これは、その器官が深刻な苦痛状態にある心原性ショック患者にとって非常に有益であり得る。
【0012】
好ましい実施形態では、圧送デバイスは、圧送チャンバを有する、拡張可能カップを備え、圧送機構は、圧送チャンバ内に体積変位部材を備える。体積変位部材は、患者の自然な心拍よりも有意に高い、好ましくは、自然な心拍よりも2~10倍高い、いくつかの実施形態では、最大100倍高い周波数において低体積状態と高体積状態との間で周期的に移動するように構成される。
【0013】
本明細書に使用されるような用語「心臓補助デバイス」または「圧送デバイス」は、任意の特定の実施形態に関して別様に記載され得る場合を除いて、限定ではないが、経皮的心室補助デバイス(pVAD)、経弁的pVAD、および血管内および心室内バルーンポンプを含む、種々の心血管管腔内での使用のための種々のタイプの体内ポンプを含むことを意図している。心臓の左側および動脈系内、および心臓の右側および静脈系内での使用が、想定される。
【0014】
本発明による体積変位部材は、周期性の繰り返し様式において流体の体積を変位させることが可能な種々のタイプの機構のうちのいずれかを備えてもよい。好ましい実施形態では、体積変位部材は、流体で高体積状態に膨張され、低体積状態に部分的または完全に収縮され得る、膨張可能バルーンを備える。他の実施形態では、ピストン、ベローズ、アコーディオン式拡張可能本体、または他のタイプの体積変位部材が、使用されてもよい。体積変位部材は、これが圧送チャンバのより少ない部分を占有する低体積状態と、これが圧送チャンバの実質的により大きい部分を占有する高体積状態との間で、本明細書に開示される周波数において周期的に移動し、したがって、そこから血液を変位させることが可能であろう。
【0015】
いくつかの実施形態では、圧送デバイスは、圧送チャンバを画定する、拡張可能カップと、圧送チャンバ内に配置される、圧送機構とを備える。拡張可能カップは、血液が圧送チャンバの中に流動することを可能にする、その壁内の少なくとも1つ、好ましくは、複数の流入開口を有してもよい。加えて、圧送チャンバと連通する流出ノズルが、拡張可能カップに結合されてもよい。ある実施形態では、流入開口および流出ノズルの一方または両方は、一方向弁を含んでもよい。
【0016】
好ましい実施形態では、圧送機構は、バルーン等の膨張可能部材であり得る、体積変位部材を備える。バルーンは、好ましくは、患者の自然な心拍よりも実質的に高い周波数において周期的に膨張および収縮されるように構成される。いくつかの実施形態では、バルーンは、圧潰構成から膨張構成に膨張可能であり、膨張構成を越えて実質的に非膨張性である。拡張可能カップは、輸送状態における低プロファイル送達構成から動作状態における展開構成に拡張可能であるように構成され、好ましくは、展開構成を越えて実質的に非膨張性である。
【0017】
好ましい実施形態では、拡張可能カップは、動作状態において25mm未満、より好ましくは、18mm未満、ある場合には、3~12mmの最大直径を有するであろう。いくつかの実施形態では、動作状態における拡張可能カップの内部体積(すなわち、圧送チャンバ体積)は、0.3~20mlであり、体積変位部材は、1分あたり100~10,000回の拍動の周波数において低体積状態と高体積状態との間で周期的に交互されてもよい。他の実施形態では、動作状態における拡張可能カップの内部体積は、1~20mlであり、体積変位部材は、1分あたり100~5,000回の拍動の周波数において低体積状態と高体積状態との間で交互されることができる。なおも他の実施形態では、動作状態における拡張可能カップの内部体積は、5~10mlであり、体積変位部材は、1分あたり200~2,000回の拍動の周波数において低体積状態と高体積状態との間で交互されることができる。
【0018】
本明細書に使用されるような用語「拍動」が、低体積状態から高体積状態への、および再び戻るような体積変位部材の移動のサイクル、例えば、バルーン膨張および収縮のサイクルを指すことを理解されたい。したがって、例えば、1分あたり1,000回の拍動の周波数において心臓補助デバイスを動作させることは、体積変位部材が、1分あたり1,000回低体積状態と高体積状態との間で周期的に移動されることを意味する。これらの「拍動」または「サイクル」は、患者の心臓の自然な拍動と同期的にタイミング調整される場合とそうではない場合がある。
【0019】
好ましい実施形態では、管状流出ノズルが、圧送チャンバと連通する拡張可能カップに結合され、血液は、圧送チャンバ内の流出開口部を通して流出ノズルの中に流動する。流出ノズルは、血液を圧送チャンバから離れてその下流の心血管場所に導くように伸長であってもよい。流出ノズルはまた、血液が圧送チャンバおよびノズルから外に流動することを可能にし、ノズルを通した圧送チャンバの中への血液の逆流を防止する、一方向弁を含む、または成してもよい。本明細書に使用されるような用語「ノズル」は、拡張可能カップの圧送チャンバに対する低減された直径または狭窄を有する管状構造を含み得る、またはある場合には、圧送チャンバよりも直径が実質的に小さくない導管を指し得る。
【0020】
ある実施形態では、拡張可能カップ、流出ノズル、体積変位部材、またはそれらの組み合わせは、動作の間に血液中でベンチュリ効果を生成するように構成される。ある場合には、これは、圧送チャンバに対する流出ノズルの低減された直径に起因する。圧力勾配が、圧送チャンバと流出ノズルとの間に生成され、これは、血液を圧送チャンバから外により高いレートにおいて流動させ、これは、ひいては、流入開口を通して圧送チャンバの中により多くの血液を引き込む。これは、本デバイスから退出する実際の流動が、体積変位部材による血液の変位のみによって達成されるであろうものを超えるように、体積変位部材によって生成された流動を補足する。したがって、体積変位部材が、周波数Fにおいて動作しており、各サイクル(例えば、バルーンの各膨張)において血液の体積Vdを変位させる場合、血液は、退出流量Rにおいて流出ノズルから外に流動し、R>F×Vdである。
【0021】
いくつかの実施形態では、カップ要素は、左心室(LV)内での設置のために構成され、流出ノズルは、血液がカップから外へ、大動脈管腔の中に流動するように、大動脈弁を通して大動脈の中に延在するように構成される。流出ノズルは、その近位(下流)端における出口ポートが、上行大動脈内、大動脈弓内、または下行大動脈内に配置されるように選択される長さを有してもよい。左心室に対する大動脈弓の角度からもたらされるいかなる流動制限も回避するために、流出ノズルは、流出ノズルを大動脈管腔と整合させるように、拡張可能カップの縦方向軸に対して非ゼロ角度または曲線において位置付け可能である、または事前成形されてもよい。好ましくは、流出ノズルの構成は、圧送チャンバから退出する血液の流動の擾乱を最小限にし、乱流を最小限にし、層流を維持するように選択される。流出ノズルは、大動脈弁を通して通過し、組織に対する外傷を殆ど伴わずに大動脈の形状に共形化し、血流を大動脈の縦方向軸と整合された状態で直接下流に指向するように、可撓性であってもよい。流出ノズルの外部は、それに対して大動脈弁尖が、少なくとも拡張期の間に、ある場合には、収縮期の間も同様に閉鎖およびシールし得る、非外傷性表面を提供するように構成されてもよい。大動脈弁を通した流出ノズルの通過以外に、カップ要素は、好ましくは、心臓の大動脈弁および僧帽弁を動作状態において妨害されないままにするように構成される。
【0022】
好ましい実施形態では、カップ要素は、自己拡張弾力性支持部材を含んでもよい。支持部材は、好ましくは、圧送チャンバが血液で充填され、バルーンが膨張され、圧送チャンバ内に増加された圧力を生産するとき、展開構成を越える直径の拡張に抵抗するように選択される材料、幾何学形状、および他の構造性質を備える。そのような非膨張性は、カップ要素と心室壁との間の間隔が維持されることを可能にし、心臓組織に対する外傷を最小限にし、また、ポンプ効率を増加させる。加えて、支持部材は、圧送チャンバがバルーン収縮の間に負圧下にあるとき、圧潰に抵抗するように構成されてもよい。同時に、支持部材は、血管内送達および回収を可能にするために十分な外力に曝されるとき、より低プロファイルの輸送状態に圧潰可能または圧着可能であるように構成されるべきである。好ましい実施形態では、支持部材は、ニッケル-チタン合金等の弾力性金属の骨格を備えてもよく、これは、輸送状態から送達状態への少なくとも1つの寸法における拡張を可能にする、開口部、スリット、またはセルの配列を有する、拡張可能織成ワイヤ、メッシュ、バスケット、またはモノリシック管の形態であってもよい。
【0023】
左心室内での設置のために構成される実施形態では、支持部材は、好ましくは、流出ノズルを支持するように、心室内から上行大動脈内の場所まで延在するように構成される。代替として、カップのものとは別個のノズル支持部材が、流出ノズルに結合され、それへの支持を提供してもよい。ノズル支持部材は、カップ支持部材に直接または間接的に結合されてもよい、またはこれは、それに取り付けられなくてもよい。ノズル支持部材は、流出ノズルを完全に囲繞するように、管状であってもよい、またはこれは、大動脈管腔の片側上で流出ノズルの側方側に沿って延在するように、部分的に円筒形または略平坦であってもよく、その縦方向軸に沿って、1つの形状から他のものに、すなわち、略円周方向から部分的に円筒形に、略平坦に遷移してもよい。支持部材の近位(下流)端は、本デバイスの回収を促進するように成形および構成され、例えば、テーパ状または丸みを帯びた端部を有してもよい。ノズル支持部材および/またはカップ支持部材は、ワイヤ、スネア、シース、またはカテーテル等の回収デバイスに結合される、またはそれによって捕捉可能であり得る、ループ、ノブ、またはフック等の回収結合具を含んでもよい。代替として、1つまたはそれを上回る回収ワイヤが、支持部材の端部に結合され、手技全体を通してそれに結合されたままであるように構成されてもよく、したがって、手技に続いて、ワイヤは、カップおよびバルーンとともに、支持部材をシースまたは他の捕捉手段の中に後退させ、これを輸送状態に圧潰させ、患者からこれを抜去するように引動されてもよい。
【0024】
血液不透過性膜が、好ましくは、支持部材の内面および/または外面の少なくとも一部にわたって延在する。いくつかの実施形態では、支持部材は、膜内に埋設される、または内側膜と外側膜との間に挟装される。好ましくは、支持部材/膜の組み合わせは、圧送チャンバ内で最大400mmHg、より好ましくは、最大800mmHgまたはそれを上回る圧力下で動作状態において実質的に非膨張性である。支持部材および/または膜は、それを通して血液がバルーン収縮の間に心室からチャンバの中に流動する、圧送チャンバと連通する少なくとも1つの流入開口と、それを通して血液がバルーン膨張の間にチャンバから指向される、流出ノズルとを含んでもよい。流入開口は、それぞれ、血液が圧送チャンバの中に流動することを可能にし、流入開口を通したチャンバから外への血流を防止するための一方向弁を含んでもよく、これは、膜と同一の材料から形成されてもよい、または溶接、接合、接着剤、または機械的締結具によって膜に結合される異なる材料であってもよい。流出ノズルは、膜と同一のポリマーまたは異なるポリマーの高分子管を備えてもよく、これは、膜とモノリシックに形成される、または溶接、糊着、または他の手段によってそれに継合されてもよい。
【0025】
心臓補助デバイスはさらに、体積変位部材および/または拡張可能カップに結合され、これが低体積状態と高体積状態との間で交互するように体積変位部材を動作させるように構成される、カテーテルアセンブリを備えてもよい。カテーテルアセンブリおよび体積変位部材は、拡張可能カップに恒久的に取り付けられてもよい、またはカップから可撤性であり、カップがそれ自体で心血管管腔内に設置されることを可能にし、次いで、カテーテルアセンブリを使用してカップの中に体積変位部材を挿入する、別個のサブシステムを備えてもよい。カテーテルアセンブリは、患者の外側の場所から血管系を通して圧送デバイスの場所まで、例えば、患者の鼠径部エリアにおける大腿動脈から大動脈を介して左心室まで延在するように構成されるであろう。カテーテルアセンブリは、患者の外側に位置する制御ユニット(下記に説明される)に結合されるように構成される。
【0026】
膨張可能バルーン実施形態では、カテーテルアセンブリは、膨張可能バルーンに流体的に結合され、膨張流体をバルーンに送達するための膨張管腔を有する。カテーテルアセンブリは、膨張流体の送達を最適化し、バルーンの高周波数膨張を可能にするように構成されてもよい。好ましくは、膨張管腔は、少なくとも1mmの直径を有する。具体的実施形態では、膨張管腔は、1~20mm2、ある場合には、2~7mm2の断面流動面積を有する。加えて、カテーテルアセンブリおよび/または膨張管腔の第1の部分は、カテーテルアセンブリ/膨張管腔の第2の部分よりも大きい直径を有し、第2の部分は、第1の部分よりも膨張可能バルーンに近接してもよい。カテーテルアセンブリはまた、部分的または完全に、比較的に剛性の材料または材料の組み合わせから成り、および/または膨張流体の圧力下で膨張管腔の拡張、圧潰、または歪みを最小限にするように選択される、例えば、0.1~0.3mmの壁厚を有してもよい。膨張流体はまた、制御ユニットによって冷却されてもよく、いくつかの実施形態では、カテーテルアセンブリは、膨張管腔を通した高速流動を向上させるためのレベルにおいて膨張管腔の温度を維持するために、その外部上に熱隔離コーティングを有してもよい。随意に、カテーテルアセンブリはさらに、カテーテルアセンブリが、カップおよびバルーンとともに、ガイドワイヤにわたって心血管系内の所望の場所まで摺動可能に前進されることを可能にするために、それを通して遠位端におけるガイドワイヤポートまで軸方向に延在する、ガイドワイヤ管腔を含んでもよい。カテーテルアセンブリはさらに、カップ内またはその周囲の血圧が手技の間に測定されることを可能にするために、遠位端またはその近傍に開口部を有する、圧力管腔を含んでもよい。代替として、カテーテルアセンブリは、そのような圧力測定のために、その遠位端またはその近傍に結合される、圧力トランスデューサまたは他のセンサを含んでもよい。他のセンサもまた、カップ内またはその周囲の心血管または圧送パラメータを感知するために、カテーテルアセンブリ上に提供されてもよい。
【0027】
本発明の心臓補助デバイスは、心臓および血管との潜在的な負の相互作用を減少させるが、高圧送能力を維持しながら、送達性を改良するために、輸送状態および動作状態の両方においてコンパクトな構造の一意の組み合わせを提供する。有利なこととして、心臓補助デバイスは、過度の溶血を引き起こすことなく、少なくとも3L/分、好ましくは、5L/分またはそれを上回る流量において血液を圧送し、より多種多様な心血管手技との併用のためにこれを好適にし、公知の心臓補助デバイスよりも広い範囲の患者条件に対処することが可能である。具体的実施形態では、カップ体積、体積変位部材の周波数および正味体積変化、および他のパラメータを調節することによって、少なくとも3L/分の流量が、高リスクのPCI支援のために可能性として考えられる一方、心原性ショックを治療するために、少なくとも5L/分、好ましくは、少なくとも6L/分、いくつかの実施形態では、最大10L/分またはそれを上回る流動が、可能性として考えられる。
【0028】
本発明による心臓補助システムは、本明細書に説明されるような心臓補助デバイスと、それに結合され、患者の自然な心拍の最大10倍、いくつかの実施形態では、最大100倍の周波数、すなわち、1分あたり最大1,000回の拍動、ある場合には、1分あたり1,000~10,000回の拍動の周波数において体積変位部材を作動させるように構成される、制御ユニットとを備えてもよい。
【0029】
膨張可能バルーンを採用する実施形態では、制御ユニットは、膨張流体を送達し、圧送パラメータを調整し、非常にコンパクトなポンプから所望の高血流量を提供するように構成される。制御ユニットは、患者の自然な心拍の最大10倍、いくつかの実施形態では、最大100倍の周波数、すなわち、1分あたり最大1,000回の拍動、ある場合には、1分あたり1,000~10,000回の拍動の周波数において、体積変位部材、例えば、膨張可能バルーンの周期性拡張を可能にするように選択される圧力および温度において、非常に低粘度の流体、例えば、ヘリウム等の不活性ガスを含む、選択された膨張流体を送達するように構成されてもよい。
【0030】
好ましくは、制御ユニットは、適切な周波数が、特定の患者および手技に関してユーザによって選択され得る、または周波数が、患者の必要性に従って手技の間に変更され得るように、体積変位部材の周波数のユーザ調節または調整を可能にする。加えて、制御ユニットは、体積変位部材によって変位される体積、すなわち、低体積状態における、高体積状態における、または両方におけるその体積の調節を可能にし得る。
【0031】
別の実施形態では、体積変位部材の体積変化は、体積変位部材、例えば、膨張可能バルーンによって封入される体積の圧力を変化させることによって発生される。これは、カテーテルシャフトの接続内側管腔を通して封入体積を加圧および減圧することによって達成され得る。
【0032】
体積変位部材として膨張可能バルーンを使用する実施形態では、制御ユニットはさらに、そのような周波数におけるバルーン膨張を可能にするように選択される、全体的システム構成、構成要素レイアウト、流体回路設計、システム体積、およびデューティサイクルを有してもよい。例示的実施形態では、制御ユニットは、カテーテルアセンブリに接続される膨張流体を含有するリザーバを圧縮する。本実施形態では、リザーバの圧縮または加圧は、膨張流体がカテーテルの遠位端における体積変位部材に送達される結果をもたらす。
【0033】
安全ダイヤフラムを備える例示的実施形態は、高圧源と、低圧源と、高圧源、低圧源、およびカテーテルアセンブリに接続される、切替配列とを備え、切替配列は、高圧源および低圧源をカテーテルアセンブリに接続される流体リザーバに交互に接続するように配列される。具体的実施形態では、制御ユニットは、膨張期間の間に高圧源をカテーテルアセンブリに接続し、収縮期間の間に低圧源をカテーテルアセンブリに接続するように配列され、膨張期間は、収縮期間よりも短い。好ましい構成では、膨張期間および収縮周期のデューティサイクルは、30%~80%である。例示的実施形態では、高圧源は、気圧に対して少なくとも300ミリバールの最大空気圧および-100ミリバール未満の排気圧を提供するように配列される。いくつかの実施形態では、制御ユニットは、リザーバ内の流体を、気圧に対して少なくとも100mmHgの最大圧力および-50mmHg未満の最小圧力、好ましくは、少なくとも200mmHgの最大圧力および-200mmHg未満の最小圧力まで加圧するように構成される。
【0034】
本発明はさらに、
より低プロファイルの輸送状態における圧送デバイスを末梢血管を通して心血管管腔の中に送達することと、
圧送デバイスの拡張可能カップを心血管管腔内で動作状態に拡張させることであって、拡張可能カップは、その内部における圧送チャンバと、圧送チャンバと連通する、少なくとも1つの流入開口と、少なくとも1つの流出ノズルとを有する、ことと、
血液が流入開口を通して圧送チャンバの中に流動することを可能にし、流出ノズルを通して圧送チャンバから外に血液を指向するために、圧送チャンバ内に配置される体積変位部材を低体積状態と高体積状態との間で周期的に交互させることと、
を含み、
体積変位部材は、1分あたり100~10,000回の拍動の周波数において低体積状態と高体積状態との間で周期的に交互される、患者に心臓補助を提供する方法を提供する。
【0035】
別の実施形態では、患者の心臓に心臓補助を提供するための方法は、
輸送状態における圧送デバイスを末梢血管を通して心血管管腔の中に送達することと、
圧送デバイスの拡張可能カップを心血管管腔内で動作状態に拡張させることであって、拡張可能カップは、その内部における圧送チャンバと、圧送チャンバと連通する、少なくとも1つの流入開口と、少なくとも1つの流出ノズルとを有する、ことと、
血液が流入開口を通して圧送チャンバの中に流動することを可能にし、少なくとも5L/分の血流を生産するように、流出ノズルを通して圧送チャンバから外に血液を指向するために、圧送チャンバ内に配置される体積変位部材を低体積状態と高体積状態との間で周期的に交互させることと、
を含み、
拡張可能カップは、動作状態において20ml未満の最大体積を有する。
【0036】
具体的実施形態では、拡張可能カップは、10ml未満、より好ましくは、5ml未満の最大体積を有する。
【0037】
なおも別の実施形態では、患者に心臓補助を提供する方法は、
輸送状態における圧送デバイスを末梢血管を通して心血管管腔の中に送達することと、
圧送デバイスの拡張可能カップを心血管管腔内で動作状態に拡張させることであって、拡張可能カップは、その内部における圧送チャンバと、圧送チャンバと連通する、少なくとも1つの流入開口と、流出ノズルとを有する、ことと、
血液が流入開口を通して圧送チャンバの中に流動することを可能にし、少なくとも5L/分の血流を生産するように、流出ノズルを通して圧送チャンバから外に血液を指向するために、圧送チャンバ内に配置される体積変位部材を低体積状態と高体積状態との間で周期的に交互させることと、
を含み、
拡張可能カップは、輸送状態において18Fr未満の送達プロファイルを有する。
【0038】
好ましくは、拡張可能カップは、輸送状態において14Frまたはそれ未満、より好ましくは、12Frまたはそれ未満の送達プロファイルを有する。
【0039】
また別の実施形態では、本発明による、心臓補助を提供する方法は、
輸送状態における圧送デバイスを末梢血管を通して心臓の左心室の中に送達することであって、圧送デバイスは、輸送状態において14Fr以下の送達プロファイルを有する、ことと、
圧送デバイスの少なくとも一部を左心室内で動作状態に拡張させることであって、圧送デバイスは、圧送機構と、入口と、出口とを有し、出口は、左心室の下流の大動脈の管腔内に位置付けられる、ことと、
圧送機構を動作させ、血液が入口の中に流動することを可能にし、少なくとも5L/分の流量において出口から外に血液を指向することとを含む。
【0040】
他の実施形態では、より低い流動が、より低プロファイルのデバイスを用いて達成され得る。いくつかの実施形態では、圧送デバイスは、少なくとも3L/分を生産し、輸送状態における圧送デバイスの送達プロファイルは、12Fr以下、より好ましくは、10Fr以下、望ましくは、8Fr以下である。
【0041】
別の実施形態では、患者の心臓に心臓補助を提供する方法は、
輸送状態における圧送デバイスを末梢血管を通して心血管管腔の中に送達することと、
圧送デバイスの少なくとも一部を心血管管腔内で動作状態に拡張させることであって、圧送デバイスは、圧送機構と、入口と、出口とを有する、ことと、
血液が、少なくとも5L/分の流量において入口の中に流動し、出口から外に流動するように、圧送機構を動作させることと、
を含み、
該血液中の赤血球は、入口と出口との間で400Pa未満の最大剪断応力に曝される。
【0042】
また別の実施形態では、患者の心臓に心臓補助を提供する方法は、
輸送状態における圧送デバイスを末梢血管を通して心血管管腔の中に送達することと、
圧送デバイスの少なくとも一部を心血管管腔内で動作状態に拡張させることであって、圧送デバイスは、圧送機構と、入口と、流出ノズルとを有する、ことと、
圧送チャンバの内側に配置される体積変位部材を周波数Fにおいて低体積状態と高体積状態との間で周期的に移動させることであって、体積変位部材は、各サイクルの間に圧送チャンバからの血液の体積Vdを変位させる、ことと、
を含み、
血液は、退出流量Rにおいて流出ノズルから退出し、R>F×Vdである。
【0043】
本発明の方法のうちのいずれかでは、圧送デバイスは、本明細書に説明される実施形態のうちのいずれかによる、心臓補助デバイスを備えてもよい。好ましい実施形態では、体積変位部材は、部分的または全体的のいずれかで、バルーンを周期的に膨張および収縮させることによって、低体積状態と高体積状態との間で周期的に交互される、膨張可能バルーンを備える。加えて、圧送デバイスは、本明細書の別の場所に説明されるような制御ユニットを含む、心臓補助システムの一部であってもよい。
【0044】
本発明の性質および利点の他の側面が、図面と併せて検討される以下の詳細な説明から明白となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0045】
本発明は、添付される図面を参照して、下記により詳細に議論されるであろう。
【0046】
【
図1A】
図1Aおよび1Bは、それぞれ、心臓補助デバイスの膨張可能バルーンが膨張および収縮される、本発明による、心臓補助デバイスのある実施形態の部分的側面図を示す。
【
図1B】
図1Aおよび1Bは、それぞれ、心臓補助デバイスの膨張可能バルーンが膨張および収縮される、本発明による、心臓補助デバイスのある実施形態の部分的側面図を示す。
【0047】
【
図2】
図2は、本発明のある実施形態による、心臓補助デバイスの概略図を示す。
【0048】
【
図3A】
図3Aは、患者の心臓の左心室内に位置付けられる、
図3の心臓補助デバイスを図示する。
【0049】
【
図3B】
図3は、本発明のさらなる実施形態による、心臓補助デバイスの斜視図を示す。
【0050】
【
図4】
図4は、本発明のある実施形態による、心臓補助デバイスの制御ユニットの概略図を示す。
【0051】
【
図5A】
図5Aおよび6Aは、それぞれ、閉位置および開位置におけるその流出弁を示す、本発明による、心臓補助デバイスの遠位部分の側面立面図である。
【
図5B】
図5Bおよび6Bは、それぞれ、
図5Aおよび6Aの心臓補助デバイスの横断面である。
【0052】
【
図6A】
図5Aおよび6Aは、それぞれ、閉位置および開位置におけるその流出弁を示す、本発明による、心臓補助デバイスの遠位部分の側面立面図である。
【
図6B】
図5Bおよび6Bは、それぞれ、
図5Aおよび6Aの心臓補助デバイスの横断面である。
【0053】
【
図7A】
図7Aおよび8Aは、それぞれ、膨張および収縮構成における膨張可能バルーンを伴う、本発明による、心臓補助デバイスの拡張可能カップの横断面である。
【
図7B】
図7Bおよび8Bは、それぞれ、
図7Aおよび8Aに示される拡張可能カップの壁の一部および入口弁の断面図である。
【0054】
【
図7C】
図7Cおよび8Cは、それぞれ、
図7A-Bおよび8A-Bに示される心臓補助デバイスの拡張可能カップの側面立面図である。
【0055】
【
図7D】
図7Dおよび8Dは、それぞれ、
図7A-Cおよび
図8A-Cの心臓補助デバイスの流出ノズルおよび流出弁の横断面である。
【0056】
【
図8A】
図7Aおよび8Aは、それぞれ、膨張および収縮構成における膨張可能バルーンを伴う、本発明による、心臓補助デバイスの拡張可能カップの横断面である。
【
図8B】
図7Bおよび8Bは、それぞれ、
図7Aおよび8Aに示される拡張可能カップの壁の一部および入口弁の断面図である。
【0057】
【
図8C】
図7Cおよび8Cは、それぞれ、
図7A-Bおよび8A-Bに示される心臓補助デバイスの拡張可能カップの側面立面図である。
【0058】
【
図8D】
図7Dおよび8Dは、それぞれ、
図7A-Cおよび
図8A-Cの心臓補助デバイスの流出ノズルおよび流出弁の横断面である。
【0059】
【
図9】
図9A-Cは、それぞれ、輸送状態、部分的展開状態、および動作状態において送達シース内に設置される、本発明による、心臓補助デバイスを示す、側面立面図である。
【0060】
【
図10A】
図10Aは、そのさらなる実施形態における、本発明による、心臓補助デバイスにおける拡張可能カップの側面立面図である。
【0061】
【
図10B】
図10Bおよび10Cは、その2つの異なる実施形態における、
図10aの心臓補助デバイスの流出ノズルの近位端の接近図である。
【
図10C】
図10Bおよび10Cは、その2つの異なる実施形態における、
図10aの心臓補助デバイスの流出ノズルの近位端の接近図である。
【0062】
【
図11A】
図11Aは、その拡張可能カップ内の血液の流動を示す、本発明の心臓補助デバイスの側面立面図である。
【0063】
【0064】
【0065】
【
図12A】
図12Aは、送達シースを通して設置される、本発明による、心臓補助デバイスの側面立面概略図である。
【0066】
【発明を実施するための形態】
【0067】
実施形態の説明
本発明は、患者における血液循環を支援する際に効果的である管腔内心臓補助デバイス、システム、および方法を提供する。本発明の実施形態による心臓補助デバイスは、公知のデバイスと比較して、より高い流量、低減された溶血、および改良された送達性において心血管管腔から血液を圧送することによって、患者における循環補助を提供するように機能することができる。本明細書に使用されるような「心血管管腔」は、動脈系または静脈系のいずれかにおける血管管腔、左または右心室または心房室等の心室、または心血管系における任意の他の器官または血管の内部を含む。
【0068】
図1Aおよび1Bの側面図および
図2の概略図に示されるように、本発明による心臓補助システム100は、心臓補助デバイス(または圧送デバイス)1と、制御ユニット2とを含む。心臓補助デバイス1は、内部圧送チャンバ30を有する、拡張可能カップ4と、圧送チャンバ30と連通する、複数の流入開口5および流出ノズル6と、拡張可能カップ4の内側の圧送チャンバ30内に位置付けられる、体積変位部材8と、動作の間に体積変位部材8に接続される、カテーテルアセンブリ3とを備える。体積変位部材8は、低体積状態と高体積状態との間で周期的に移動可能である。本実施形態では、体積変位部材8は、高体積状態に膨張可能であり、低体積状態に収縮可能である、膨張可能バルーンを備える。制御ユニット2は、カテーテルアセンブリ3に接続され、バルーン8の膨張のためにそれに膨張流体を供給する。
【0069】
体積変位部材8が、本明細書に開示される種々の例示的実施形態において膨張可能バルーンとして示され、説明され得るが、他のタイプの体積変位部材が、本発明の範囲から逸脱することなく、そのようなバルーンに関して代用され得ることを理解されたい。
【0070】
拡張可能カップ4が、血管内送達のために構成される低プロファイル輸送状態と、より大きいプロファイルの動作状態とを有し、動作状態が、
図1Aおよび1Bに示されることに留意されたい。流入開口5は、例えば、一方向流入弁を具備し、流出ノズル6は、下記にさらに説明される、一方向流出弁7を具備してもよい。
【0071】
本発明の実施形態では、制御ユニット2は、1分あたり100回を上回る拍動(bpm)の周波数を伴って膨張可能バルーン8を動作させるように配列される。膨張可能バルーン8は、カテーテルアセンブリ3を介して収縮され、血液が、流入開口5を介して拡張可能カップの圧送チャンバ30に進入することを可能にし(
図1Bの点線において示される完全収縮状態8B)、続けて、膨張可能バルーン8は、膨張され、それによって、流出ノズル6から外に血液を排出する(
図1Aの点線において示される完全膨張状態8A)。収縮および膨張の高い周波数(>100bpm)を有することは、従来技術の心臓補助デバイスと比較して、より小さい圧送体積(拡張可能カップ4の内部体積)、したがって、心臓補助デバイスのより小さい寸法および改良された送達性を有するが、心臓補助デバイスとして効果的に動作するために十分に高い処理能力を維持することを可能にする。
【0072】
実施形態の群では、動作状態における拡張可能カップ4の内部体積は、0.3~20mlである。これは、最小寸法を伴う心臓補助デバイス1を設計することを可能にし、例えば、患者の心臓の左心室内に心臓補助デバイス1を位置付けることをより容易にする。また、患者の動脈を通した輸送状態(拡張可能カップ4全体が膨張可能バルーン8およびカテーテルアセンブリ3の端部にわたって折畳される)における心臓補助デバイスの輸送が、したがって、非常に良好に可能になる。
【0073】
制御ユニット2は、示される体積のより高い範囲(20ml)を使用するとき、心臓補助デバイス1を通した血液の十分な流動を取得するために、100bpmを上回る所定の周波数を伴って、または示される体積のより低い範囲(0.3ml)を使用するとき、最大10,000bpmより高い周波数を伴って膨張可能バルーン8を動作させるように配列されることができる。
【0074】
例示的実施形態では、動作状態における拡張可能カップ4の内部体積は、1~20mlであり、制御ユニット2は、1分あたり100~5,000回の拍動の周波数を伴って膨張可能バルーンを動作させるように配列される。比較的に低い圧送体積と組み合わせた動作の本十分に高い周波数は、心臓補助デバイスが十分な血流量を維持することを可能にする。
【0075】
さらなる例示的実施形態では、動作状態における拡張可能カップ4の内部体積は、5~10mlであり、制御ユニット2は、1分あたり200~1,000回の拍動の周波数を伴って膨張可能バルーンを動作させるように配列される。より小さいサイズおよび関連付けられる動作周波数の範囲は、心臓補助デバイス1の適切な機能を提供するために十分な血液の補助された流動を可能にする。
【0076】
心臓補助デバイス1の寸法、主に、拡張可能カップ4の内部体積は、膨張可能バルーン8のサイズおよび位置と相まって(膨張可能バルーン8が制御ユニット2によって膨張される範囲と組み合わせて)、(最大)心拍出量を決定する。周波数と組み合わせられると、これは、心臓補助デバイス1を通した血流を決定する。
【0077】
20mlの内部体積が、例えば、25mmの心臓補助デバイス1の最大外径を用いて取得されることができる。より低い体積が、直径を、例えば、12mm、より好ましくは、10mmの値まで低減させることによって取得されてもよく、これは、心臓補助デバイス1を通して十分に高い血流を取得するために、例えば、600bpmのより高い圧送周波数によってオフセットされることができる。例えば、1mlまたはさらには0.3mlの内部体積を有する、さらにより小さい心臓補助デバイス1が、取得されてもよく、血液の十分な流動が、圧送周波数を2,000bpmまたはさらには5,000または10,000bpmまで増加させることによって維持される。心臓補助デバイス1の直径は、したがって、0.3~10mmであってもよい。
【0078】
より低い圧送周波数が、特に、内部バルーン8の長い動作寿命の観点から有利であり得る。本群における例示的実施形態は、200~600bpmの圧送周波数および5~20mlの内部体積を有する。より高い圧送周波数、例えば、0.3~5mlの内部体積の範囲と組み合わせた、600~5,000またはさらには10,000bpmの範囲内の圧送周波数が、(輸送状態および動作状態の両方における)心臓補助デバイス1の外部寸法に関して有利であり得る。
【0079】
制御ユニット2はまた、例えば、オペレータ入力/調節によって、またはセンサデータおよび制御アルゴリズムを使用する自動的制御によって、圧送周波数を変更するように配列されてもよい。心臓補助デバイス1を通した実際の血流は、したがって(また)、制御パラメータとして圧送周波数のみを使用して制御されることができる。
【0080】
図3は、拡張可能カップ4、膨張可能バルーン8、およびカテーテルアセンブリ3の一部の詳細を示す、本発明のさらなる例示的実施形態による、心臓補助デバイス1の斜視図を示す。
図3Aは、患者の心臓の左心室LV内に位置付けられる、心臓補助デバイス1を示す。実施形態の本群では、拡張可能カップ4は、低プロファイル輸送状態から拡張動作状態に拡張可能であり、好ましくは、動作状態においてそのサイズを超えて非膨張性であり、抜去のために圧潰可能なままである材料の支持構造(または骨格)4aを備える。拡張可能カップ4はさらに、支持構造4aの外面に接続される、それを包囲する、またはそれにわたって延在する、セミリジッドまたは可撓性材料の外壁4bを備える。外壁4bに加えて、またはその代わりに、内壁(図示せず)が、支持構造4aの内側側面上に提供されてもよく、これは、外壁4bと類似する性質を有し、同一または異なる材料から成ってもよい。支持構造4aは、例えば、メッシュにおいて織成または形成される弾力性金属ワイヤ、レーザカットされた管、管状バスケットまたはステント様構造、ナイロン等の非膨張性高分子材料から作製されるメッシュまたは一連の肋材または繊維、またはナイロンまたは他のポリマーの膨張可能管類を使用して具現化されることができる。好ましい実施形態では、支持構造4aは、半径方向に拡張可能な幾何学形状において配列される複数の支柱またはセルから成る、弾力性金属、例えば、ニッケル-チタン合金(ニチノール)、コバルト-クロム、クロモリ、またはステンレス鋼のモノリシック管またはバスケット様構造である。好ましくは、支持構造4aは、低プロファイル動作状態に圧潰可能であり、拡張動作状態に弾力的に付勢される。支持構造4aはさらに、外壁4bまたは内壁のいずれかの中に埋設される、または内壁と外壁との間に挟装されてもよい。
【0081】
拡張可能カップ4は、好ましくは、膨張可能バルーン8が拡張可能カップ4の内側で間断なく膨張および収縮され、その中の流体圧力を増加させるときの動作の間であっても、支持構造4aおよび外壁4b(および/または提供される場合、内壁)またはそれらの要素のうちのいずれかの組み合わせのいずれかに起因して、動作状態においてセミリジッドである。「セミリジッド」とは、バルーン8が膨張され、圧送チャンバ30内の圧力を増加させるとき、拡張可能カップ4が、これが動作状態において拡張する直径を越えて、実質的に非膨張性または既知または予測可能な量だけ膨張性であることを意味する。これは、心室壁に対する過剰な係合または力を限定するように、拡張可能カップ4が適切にサイズ決めされることを可能にする。さらに、拡張可能カップ4は、動作状態において、圧送チャンバ30内の負圧下で縮小または圧潰に抵抗するように構成される。好ましくは、拡張可能カップ4は、最大500mmHgの内部流体圧力下で直径において約3%または0.5mmを上回って拡張しないであろう一方、直径におけるいかなる減少も、収縮の間に2%または0.3mm以下となるべきである。拡張可能カップは、非円形形状に変形する、または心血管管腔(例えば、左心室および大動脈)に共形化するように屈曲するための可撓性を依然として有し得、半径方向に内向きに指向される十分な力に曝される場合、除去のために輸送状態に圧潰可能であろう。
【0082】
動作状態では、拡張可能カップ4は、膨張可能バルーン8によって血液に提供される運動エネルギーを指向する。膨張可能バルーン8は、心臓補助デバイス1の能動的構成要素であり、周期的に膨張および収縮される。膨張の間、膨張可能バルーン8は、拡張し、体積を変位させ、それによって、また、変位された血液の速度を増加させ、結果として、その粘度を減少させる、運動エネルギーを生成する。大動脈系に向かって加速された血液を指向するために、拡張可能カップ4(膜/外壁4bと、流入開口5内に提供される流入弁と、流出ノズル6内に提供される流出弁7と、支持構造4aとを備える)は、半径方向に、および/または下流方向に、すなわち、流出ノズル6に向かって体積変位を指向し、これは、例えば、大動脈弁を通して設置される、または代替として、心室内に設置され、大動脈弁に指向される。収縮の間、流出弁7は、閉鎖し、逆流を防止する一方、流入弁は、開放し、周辺管腔から拡張可能カップ4の内部体積の中への新鮮な血液の流入を可能にする。
【0083】
拡張可能カップが、
図3Aに示されるように、LV内に設置されると、流出ノズル6は、心臓から外に流体を指向するであろう。好ましい実施形態では、流出ノズル6は、カップ4から大動脈弁を横断して上行大動脈の中に延在する。流出ノズル6は、種々の実施形態では、上行大動脈AA内、大動脈弓内、または下行大動脈内に位置付けられるように構成される、流出弁7を伴うその近位(下流)端における出口31を有する。右心実施形態では、流出ノズル6は、右心房または右心室内に位置付けられる拡張可能カップ4から肺動脈弁を通して肺動脈の中に延在するように構成されてもよい。流出弁7が性能において最適であるために、流出抵抗は、可能な限り低い一方、開閉が速く、閉位置において良好なシール能力を伴う。このために、ノズル6および流出弁7の内径は、本デバイスから外に出る流動(速度)に依存し、これは、好ましくは、拍動性方式において約5L/分を圧送するデバイスに関して4m/秒を下回る。そのような実施形態では、流出弁7を含む流出ノズル6は、約5~17mm、好ましくは、約12mmまたはそれ未満の内径を有する。
【0084】
図5A-5Bおよび6A-6Bに示されるように、流出ノズル6は、支持的構造32と、動的構造34とを備える。支持的構造32は、カップの支持構造(骨格)4aのモノリシック延在部またはカップの支持構造4aに直接または間接的に結合され得る別個の構造であってもよい。動的構造34は、少なくとも遠位領域(心室により近い)において、または複数の場所において、例えば、遠位領域において、1つまたは複数の線上で背骨を横断して支持的構造32に接続されるべきである。いくつかの実施形態では、その流出端に至るまでの動的構造34の全長が、支持的構造32に取り付けられる。支持的構造32は、その長さの全てまたは一部にわたって動的構造34を囲繞するように管状であってもよい、またはこれは、例えば、心室により近接するより遠位の領域において部分的にのみ管状であり、残りの部分は、大動脈管腔の片側上にのみ位置付けられるように構成される、部分的円筒または伸長平坦構造であってもよい。いくつかの実施形態では、支持的構造32は、円筒形から平坦へ漸進的に遷移する。動的構造34は、可撓性ポリマーであってもよく、いくつかの実施形態では、カップの膜と同一である。動的構造34は、血液が流出ノズル6から外に流出し得る、開放構成(
図6A-Bに示される)と、バルーン8が収縮し、圧送チャンバ30内に負圧を生成しているとき、血液が流出ノズル6の中に逆流しないように遮断される、閉鎖構成(
図5A-Bに示される)との間で移動可能である。動的構造34自体は、漸進的剛性または半径方向強度を有してもよい。例えば、これは、構造の流出または弁端31よりも剛性の流入端を伴う管から作製され得る。漸進的剛性は、動的構造の長さに沿って壁厚、材料タイプ、または材料デュロメータ硬さを変更することによって提供されてもよい。動的構造の長さは、直径に関連し、好ましくは、0.5~3.5cm、より好ましくは、2cmの長さであり、直径において8~14mm、好ましくは、12mmであり、壁厚は、20~120mu、好ましくは、80muである。
図5A-Bおよび6A-Bに図示されるように、流出弁7は、その中の圧力がその外側のものによって超えられるときに圧潰およびシールするように構成される、出口端31の近傍の管状流出ノズル6の一部を構成してもよい。代替として、流出弁7は、流出ノズル6の出口端31に搭載される、ウィンドソック弁、ダックビル弁、フラップ弁、またはマルチリーフレット弁であり得る。
【0085】
ある実施形態では、拡張可能カップ4、流出ノズル6、体積変位部材8、またはそれらの組み合わせは、動作の間に血液中でベンチュリ効果を生成するように構成されてもよい。変位部材の増加する体積(例えば、膨張可能バルーン等の膨張可能体積変位部材の場合では、膨張による)は、変位された血液に対して運動エネルギーおよび速度を付与する。移動する血液は、その伴流において周辺の血液を引きずり、体積変位部材の体積増加による圧送チャンバからの血液の変位に加えて、ベンチュリ効果を生成するであろう。さらに、いくつかの実施形態では、流出ノズル6は、圧送チャンバ30から外に流動する血液が、加速し、圧力降下を引き起こすように、圧送チャンバ30のものに対して低減された直径を有する。例示的実施形態では、圧送チャンバ30の直径は、A~Bmmに及び得る一方、ノズル6の内径は、C~Dmmに及び得、X~Yの流出ノズル6の内径と圧送チャンバ30のものとの比をもたらす。圧送チャンバと流出ノズルとの間の圧力勾配が、血液を圧送チャンバから外により高いレートにおいて流動させ、これは、ひいては、入口を通して圧送チャンバの中により多くの血液を引き込む。これは、本デバイスから退出する実際の流動が、体積変位部材による血液の変位のみによって達成されるであろうものを超えるように、体積変位部材によって生成された流動を補足する。したがって、体積変位部材が、周波数Fにおいて動作しており、各サイクル(例えば、バルーンの各膨張)において血液の体積Vdを変位させる場合、血液は、退出流量Rにおいて流出ノズルから外に流動し、R>F×Vdである。そのような退出流量は、体積変位のみによって生産される流量よりも40~80%大きい、またはそれを上回る高さであり得る。
【0086】
図7A-Dおよび8A-Dは、それぞれ、閉鎖および開放構成における拡張可能カップ4の流入弁5を図示する。弁5は、カップ4の内壁または外壁に結合され、カップ壁内の伸長入口開口部にわたって延在する、伸長弁尖を備えてもよい。いくつかの実施形態では、弁尖は、カップ4の内壁または外壁の膜と同一の材料から形成される。
図7A-Dに示されるように、バルーン8が膨張するにつれて、流入弁5は、閉鎖構成になり、これは、圧送チャンバ30内の圧力が増加するにつれて、圧送チャンバ30から外に流動しないように血液を遮断する。
図7C-Dに示される流出弁7は、開放し、血液が退出することを可能にする。
図8A-Dに示されるように、バルーン8が収縮するとき、圧送チャンバ30内の圧力は、減少し、流出弁7を閉鎖させる。圧送チャンバ30内の圧力が、周辺圧力に対して十分に低い状態になると、流入弁5は、開放し、血液が圧送チャンバ30の中に流動することを可能にする。流入弁5は、射出の間に高いシール能力を有しながら、本デバイスの流入の間に低い抵抗を有するように設計される。高い作動周波数を可能にするために、流入弁5は、開放および閉鎖の両方に関して速い応答時間を有することが可能であるべきである。これを達成するために、弁5の総流入面積は、少なくとも50mm
2、好ましくは、200~500mm
2であるべきであり、これは、単一の弁内にある、または2~500個の弁、好ましくは、10~50個の弁にわたって分散され得る。好ましくは、弁の幾何学形状、サイズ、数、および構成は、圧送チャンバ30の中への血流に対する抵抗を最小限にするように選択されるであろう。弁は、可撓性、不透過性のポリマー、織物、または組織から形成されてもよい。高い可撓性のために、弁尖のデュロメータ硬さは、カップと比較してより低くてもよい。弁尖は、血液の流入が可能な限り層状であるように編成されるであろう。これは、弁を1つの方向、例えば、水平、垂直、または斜角平面、またはそれらの組み合わせにおいて設置することによって達成されることができる。
【0087】
支持構造4aは、送達のための小さいプロファイルを有する輸送状態に折畳または圧潰され、高い内部圧力に耐性があり、好ましくは、最大400mmHg(200~600mmHgの範囲)の内部圧力において実質的に非膨張性である、一貫した形状を伴うより大きい動作状態に拡張され得る材料から構築される。支持構造4aは、例えば、所望の血管管腔の中への導入のために、送達シースの2~8mm、より好ましくは、3~5mmの管腔内に適合するように折畳されることができる。定位置に来ると、支持構造4aは、例えば、18mm(5~24mmの好ましい範囲内)の直径を伴うその動作状態に拡張される。拡張されると、支持構造4aは、-50mmHg(-10~-100mmHgの好ましい範囲)と同程度に低い負圧において膜/外壁4bの圧潰を防止するであろう一方、膨張の間、例えば、+250mmHg(100~600mmHgの好ましい範囲)の圧力増加は、拡張可能カップ4の直径の増加をもたらさない。膨張および収縮段階を含む、輸送可能および動作状態が、下記に議論されるであろう。
【0088】
輸送状態では、支持構造4aは、材料の変形のための最大延伸が、圧着の間の材料上の最終的な延伸よりも高くなるように構成される。小さいカップサイズおよび体積、カップ膜(好ましくは、0.01~0.15mm)および支持構造4a(好ましくは、0.05~0.3mm)の低い厚さ、および膨張可能バルーンの低プロファイルシャフト(好ましくは、2.0~3.5mm)の組み合わせは、高ポンプ容量(好ましくは、2L/分~9L/分)を維持しながら、輸送状態において低圧着プロファイル(好ましくは、8Fr~18Fr)を有することを可能にする。これらのパラメータを変動させることによって、本デバイスは、特定の臨床的必要性に適合されることができる。心原性ショックの設定に関する好ましい構成は、18Frまたはそれ未満、より好ましくは、14Frまたはそれ未満の送達プロファイルを有し、少なくとも6L/分の血流を生産する。高リスクのPCIにおける使用のために、9Frまたはそれ未満の送達プロファイルおよび少なくとも4L/分の血流の生産が、好ましい。
【0089】
輸送状態では、本デバイスは、脈管における困難な解剖学的変動を通過するために十分に可撓性なままである必要がある。このために、支持構造4aは、例えば、低い壁厚、例えば、好ましい構成では、0.15~0.25mmを有することによって、可撓性であるべきである。さらに、支持構造4aの設計は、支持構造4aを弱化または破壊し得る損傷を伴わずに、輸送状態に圧潰または圧着されるように構成される必要がある。これは、微小破壊の影響をあまり受けないニッケル-チタン合金等の材料を選択することによって、および微小破壊を最小限にするように支持構造4aを設計することによって達成されることができる。重要なこととして、膜選択は、骨格材料および幾何学形状を決定する際に重要であり、例えば、骨格は、塑性変形に関する降伏点を超えて膜材料を延伸させるべきではなく、これは、膜の有効性を損なうであろう。骨格4aは、織成ワイヤメッシュを含んでもよい、または閉鎖または開放セル構成における複数の支柱へのモノリシック管から形成されてもよい。支持構造4aの構築は、摂氏35度までの熱硬化を伴う超弾性ニチノールを使用して遂行されてもよい。代替として、カップは、外壁4bへの形状一貫性を提供するために(例えば、流体を使用して)加圧され得る、例えば、ナイロン材料からの膨張可能支柱から作製されることができる。一実施例では、支持部材/骨格4aは、4.2mmの支柱を伴う菱形セル設計を有し、これは、拡張状態では、約6mmの長さであり、圧潰(輸送)状態では、8mmの長さであり、100%の延伸をもたらす。一実施例では、膜は、塑性変形を伴わずにこれらの応力を許容する、約72Dのデュロメータ硬さにおけるテクノタン、ペラタン、またはテコタンのようなTPUを含む。
【0090】
カップの動作または拡張状態は、これが位置付けられる心血管管腔内の本来の血流を妨害しないように設計される。
図3Aに示されるように、左心室LV内で使用されるとき、動作状態(拡張)におけるカップ4のサイズおよび形状は、これが左心室の内外への本来の血流のための最大の余裕を残すようなものである。僧帽弁MVを介した流入の間、いかなる妨害も、存在するべきではなく、流出の間、大動脈弁の妨害は、血液が流出ノズル6の周囲で心室から外に流動し得るように、最小限にされる。好ましくは、流出ノズル6は、大動脈弁AVを通して延在し、大動脈弁尖が拡張期の間にその外面に対してシールすることを可能にするように構成される。僧帽弁MV、腱索CT、乳頭筋、または心室の他の構造の途絶もまた、最小限にされる。さらに、カップ4は、心臓の内側の流動の区画化を防止する、流体力学的弾丸/楕円体または葉巻様形状を有してもよい。本来の血流を維持することによって、いかなる停滞した流動のエリアも、存在しないであろう。したがって、その拡張形状において、60mm未満の長さ(ノズル6を含まない)を伴う、18mm未満、好ましくは、15mm未満のカップ直径を用いることで、カップの流体力学的形状および流入弁の分布は、心室内血栓症形成の可能性を低減させることに役立つであろう。加えて、左心室管腔の軸に対する大動脈弁の角度を前提として、心臓補助デバイス1は、血液の流出における層流を維持しながら、抵抗を減少させるために、カップ4の主要本体への流出ノズル6の可撓性の、湾曲した、または角張った取付部を有してもよい。
【0091】
動作状態では、カップ4の表面は、好ましくは、これを損傷させることなく組織との接触を可能にし、血栓形成のエリアを防止するために、平滑である。全体的平滑度は、外壁4b内のポリマーの2つの膜または層の間に支持構造4a/骨格を捕捉することによって達成される。これらの層は、骨格が埋設される1つの層を形成するように接続されてもよい。最終効果は、好ましくは、カップ4およびノズル6の内部および外部の両方において完全に被覆された支持構造4aである。通常、ポリマー層は、十分に平滑であるが、付加的親水性コーティングが、付加的平滑度のために追加されてもよい。抗血栓性コーティングもまた、凝血塊形成を低減させるために採用されてもよい。流出ノズル6はさらに、大動脈弁尖が外傷を伴わずにノズル表面に対してシールすることを可能にするように構成される、平滑な外面を有してもよい。
【0092】
バルーンの収縮の間、カップは、好ましくは、限定された変形を伴うものからいかなる変形も伴わない状態でそのサイズおよび形状を維持する。支持構造4a、例えば、ニチノール骨格は、膜と組み合わせて、そのような変形に抵抗するために、カップに半径方向強度を付与する。カップの、すなわち、組み合わせられた支持構造4aおよび外壁膜4bの半径方向強度は、血液の流入の間に心室と圧送チャンバ30との間の圧力勾配に耐える必要がある。本勾配の大きさは、流入弁の流入エリア(抵抗)およびバルーン収縮の速度および体積に依存する。一実施形態では、半径方向強度は、0.2mmの壁厚を有するニチノール骨格の菱形または六角形形状のセル設計と組み合わせられる、60muの層における膜、例えば、テコタン72Dの材料性質によって提供される。支持構造4aへの膜の接着によって、より高い半径方向剛性が、達成され得る。
【0093】
バルーンの膨張の間、外壁および/または内壁膜と組み合わせられる支持構造4aは、好ましくは、その内部内のより高い流体圧力下で直径のいかなる増加も有さない、または非常に限定された増加を有するであろう。カップは、直径における約1~5%またはそれ未満の直径における限定された増加を伴って、最大1,000mmHgの圧力増加に耐えることが可能であるべきである。膨張の間の可能性として考えられる外向き拡張を防止するために、膜/外壁4bは、好ましくは、限定された応従性または非応従性の材料から作製される。膜/外壁4bは、血液との限定された相互作用を有するものからいかなる相互作用も有していない材料から構築される、またはそれをコーティングされる。材料は、高いデュロメータ硬さの値を伴うナイロンまたはポリウレタン等、可撓性および耐久性であるように選択される。これは、高引張弾性率を伴うポリマー、例えば、テコタン72Dを使用することによって達成されることができる。膜/外壁4bは、支持構造4aに取り付けられる、またはそれを封入する。膜/外壁4b自体は、例えば、単一の層に関して10~100μmの壁厚を有する。支持構造4aへの膜/外壁4bの接続は、拡張可能カップ4が、輸送状態において、例えば、6mm未満、好ましくは、約3mmの直径まで折畳され、動作状態において、10~25mm、例えば、約18mmの直径まで拡張され得るように行われる。カップ4はまた、支持構造4aおよび/または外壁4bに取り付けられる、その中に埋設される、またはそれに織成される、ケブラ、スペクトラ、または他のそのような材料等の高引張強度を伴う材料の円周方向繊維を含んでもよく、これは、その所望のサイズを超える支持構造4aの膨張性をさらに限定する一方、依然として、挿入および除去のためにこれが輸送状態に圧潰されることを可能にする。
【0094】
カップは、好ましくは、高弾性反跳を有し、これは、膨張および収縮の両方の間により高い形状一貫性を生成し、弾性変形は、好ましくは、約0.1%および-3%、および0.5~+1%の好ましい範囲を伴う+0.1~10%に限定される。圧送の間のより高い形状一貫性は、複数の正の効果を有する。第1に、これは、エネルギー輸送を改良し、血液を輸送する際に本デバイスをより効率的にする。第2に、より高い剛性は、バルーンがより高い膨張-収縮周波数において動作されることを可能にする。第3に、本効果は、心血管環境(すなわち、心臓および脈管等の組織)に対する圧力波の影響を減少させる。第4に、より小さいパルスを有することによって、(ヘリウムに起因する)デバイス浮力は、低減され、本デバイスの安定性は、改良される。さらに、より高い周波数の膨張を伴うより小さいバルーンは、低減された反力およびより少ない発振をもたらし、これがより連続ポンプのように作用することを可能にし得る。
【0095】
図9A-Cに図示されるように、血管内送達および除去を促進するために、補助デバイス1は、輸送状態において、好ましくは、シース36(
図9Aに示される)の内側管腔内に位置付け可能である。拡張可能カップ4は、圧着ツールを用いて輸送状態に圧着されてもよい、またはいくつかの実施形態では、シース36の近位端の中に前進される、またはシース36の遠位端の中に近位に引き込まれることによって圧潰してもよい。ガイドワイヤGWが、拡張可能カップ4内のカテーテルアセンブリ3の少なくとも遠位部分内のガイドワイヤ管腔を通して摺動可能に延在してもよく、それにわたって、シース36内に含有される心臓補助デバイス1は、血管系を通して動作のための所望の場所まで前進されてもよい。いったん心血管系内の所望の場所に位置付けられると、シース36は、カップ4が、
図9Cに示される動作状態に拡張するように、デバイス1に対して後退されてもよい。使用後、心臓補助デバイス1は、身体から安全に除去される必要がある。これは、身体内で輸送状態に戻るようにカップ4を圧潰させることによって行われてもよい。デバイス1は、シース36が輸送状態に戻るようにカップ4を圧縮するように、シース36の中に後退されてもよい。カップ4が、これがシース36の中に引き込まれるにつれて平滑に圧潰することを可能にするために、流出ノズル6の近位(下流)端38は、好ましくは、
図10A-Bに示されるように、形状においてテーパ状である、丸みを帯びる、または楕円体である。テーパ状端部38の下流先端40は、
図10Bに示されるように、患者の外側の点から送達シースを通して延在し得る、回収ワイヤまたはシャフト42に接続されてもよい。代替として、下流先端40は、
図10Cに示されるように、心臓補助デバイスが除去されるべきであるとき、それに回収デバイス、ワイヤ、またはスネア46が接続され得る、アイレット44、またはノブ、ループ、フック、または他の手段を含んでもよい。
【0096】
さらなる実施形態では、心臓補助デバイスは、膨張可能バルーン8を膨張および収縮させるために、カテーテルアセンブリ3および膨張可能バルーン8内の不活性流体を用いて動作するように構成される。これは、比較的に高い周波数において心臓補助デバイスを動作させることを補助する。不活性流体は、カテーテルアセンブリの内側壁との摩擦を最小限にするために、例えば、ヘリウムまたは二酸化炭素等の低粘度流体である。ヘリウムは、低密度、したがって、より低い質量慣性を有し、より高い膨張周波数を可能にする付加的利点を有する。大きい体積変位を達成するために、膨張可能バルーン8は、調整可能または所定の周波数において低粘度媒体(例えば、ヘリウム)を用いて膨張および収縮される。膨張可能バルーン8は、下記に説明されるように、高流動のために最適化される、カテーテルアセンブリ3に接続される。不活性流体と接触する部分は、カテーテルアセンブリ、制御ユニット2の駆動装置部分、および膨張可能バルーン8である。不活性流体の総体積は、例えば、約16ml(例えば、2ml~35mlの範囲を伴う)であり、これは、高周波数動作を可能にするために十分に低い。
【0097】
膨張可能バルーン8は、さらなる実施形態では、収縮するときに拡張可能カップ4の中への流体の流入を可能にし、流出ノズル6を通した流体の(指向される)流出を可能にするように配列される、指向性動作バルーンである。バルーンは、最初に、その遠位部分(流出ノズルから最も遠く離れる)において膨張し、順次、近位部分(流出ノズルに最近接する)が最後に膨張するように、下流方向に膨張するように構成されてもよい。指向性膨張は、形状、(例えば)円錐形バルーン、種々の壁厚(最後に膨張するべきエリアにおいてより高い壁厚)、またはバルーンの種々のデュロメータ硬さ(最後に膨張するべきエリアにおいてより高いデュロメータ硬さの材料)によって達成されることができる。例示的実施形態では、膨張可能バルーン8は、例えば、拡張可能カップ4の遠位端において開始し、流出ノズル6に向かう方向に上向きに移動する、所定の膨張パターンを取得するために、心臓補助デバイス1の縦方向軸に沿った様々な壁厚から作製されることができる。
【0098】
膨張可能バルーン8は、例えば、流出ノズル6のエリアにおいて拡張可能カップ4の内径よりも小さい直径を有することによって、圧送チャンバ30からのいかなる種類の流出遮断も防止するように設計される。
図11A-Dに示されるように、圧送チャンバ30は、それを通して血液が圧送チャンバ30から外に流動する、流出開口部50を有してもよく、カップ4およびバルーン8の形状およびサイズは、膨張されたバルーン8と流出開口部50との間の空間を維持し、チャンバから外への血液の流動(矢印Bによって示される)に対する抵抗を最小限にするように選択される。いくつかの実施形態では、膨張可能バルーンは、流出開口部50から遠隔の拡張可能カップの遠位端51において拡張可能カップに取り付けられてもよく、これは、カップに対して固定位置にバルーンを係留し、(膨張からのもの以外の)カップに対するバルーンの移動を最小限にし、振動を低減させることに役立つ。膨張可能バルーン8は、例えば、膨張されるとき、約8ml(好ましくは、0.3~20mlの範囲内)の体積を有する。膨張可能バルーン8の材料は、例えば、ポリウレタンまたはナイロン等の耐久性があり、薄く、理想的には、20μm(10~60μm)の単一壁材料である。例示的実施形態では、バルーン8は、ペレタン55Dまたは類似する機械的性質を伴う材料から作製され、10~60ミクロン、理想的には、約20ミクロンの単一壁厚を有する。
【0099】
具体的実施形態では、心臓補助デバイス1は、許容可能な閾値を下回って溶血を限定しながら、特定の手技および患者条件に関して所望の血流量を提供するように構成される。溶血は、過剰に長い期間にわたる赤血球に対する過剰な剪断応力の付与によって引き起こされ得る。本発明の心臓補助デバイス1は、それに赤血球が曝される剪断応力の大きさを限定し、それらが心臓補助デバイス1を通して通過する際に赤血球がそのような剪断応力に曝される時間を最小限にするように構成される。高リスクのPCI手技の間の支援のために、心臓補助デバイス1は、剪断応力を100Pa以下に限定しながら、少なくとも3L/分の流動を生産してもよい。心原性ショックを治療するために、心臓補助デバイス1は、剪断応力を400Pa以下に限定しながら、少なくとも5L/分の流動を生産してもよい。特に高流動の実施形態では、心臓補助デバイス1は、剪断応力を3,000Pa以下に限定しながら、少なくとも6L/分の流動を生産してもよい。
【0100】
好ましくは、拡張可能カップ4および膨張可能バルーン8は、流動を最大限にし、溶血を最小限にするように構成される。
図11A-Dに示されるように、バルーン8が、その膨張構成にあり、カップ4が、動作状態にあるとき、少なくとも約0.05~1.5mmの間隔52が、好ましくは、バルーン8とカップ4の内壁との間に維持され、これは、高周波数バルーン膨張の間に溶血を限定することに役立つ。バルーン8は、バルーン8の内側の圧力が、少なくとも約600mmHgであるとき、その最大膨張直径が、カップの内径を下回る、例えば、直径において約0.1~3mm下回るように構成される。本サイズ差は、バルーン8がカップ4の内壁または膜と直接接触するときに生じ得る、キャビテーションを回避する。さらに、バルーン8とカップ4との間の間隔は、潜在的に血液を圧送チャンバ30内に閉じ込めること(区画化)を回避する。最後に、バルーン8とカップ4との間の余裕は、バルーン8がカップ壁に近接するとき、射出段階の最後の部分の間に赤血球に対する剪断応力を最小限にし、それによって、溶血を低減させる。約0.1mmの間隔52が、剪断応力を十分に低く(3L/分において100Pa未満または5L/分において400Pa未満)保つために十分である。また、本剪断率への暴露時間は、溶血に関する閾値に到達しないように低い(5ミリ秒未満)。
【0101】
種々の本発明の実施形態のカテーテルアセンブリ3はまた、心臓補助デバイスの高周波数動作を可能にする、または強化する、および/または不活性流体(ヘリウム)の流動を最適化するための具体的特徴を具備する。カテーテルアセンブリ3が、送達シース36を通して延在して示される、
図12A-Fに示される、第1の例示的実施形態では、カテーテルアセンブリ3は、1~20mm
2の断面流動面積を伴う膨張管腔56を有する、バルーンシャフト54を備える。これは、概して、0.5~5mmの内径に対応し、これは、不活性流体に関する流動抵抗と、曲げ半径、耐キンク性等のカテーテル部分のさらなる特性との間の適切な平衡を可能にする。好ましい実施形態では、断面積が、異なるチャネルにわたって分散されるとき、抵抗は、上昇するであろうため、膨張管腔56は、細分化されないであろう。膨張管腔56の形状は、潜在的ガイドワイヤ、デバイス回収のための引動ワイヤ、および潜在的センサのためにカテーテルアセンブリ内に余裕を残しながら、可能な限り最も低い抵抗を有するように構成されるべきである。
【0102】
図12B-Eに示される、好ましい実施形態では、バルーンシャフト54は、好ましくは、通常、直径において最大であろう膨張管腔56と、ガイドワイヤ管腔58と、回収のための引動ワイヤのための1つまたは複数のワイヤ管腔60とを含む、3つまたはそれを上回る管腔を備える。カテーテルアセンブリ3はさらに、その遠位端またはその近傍における1つまたはそれを上回るセンサ、例えば、カップ4の圧送チャンバ30内またはカップ4の外側の心臓内の圧力を測定するための圧力トランスデューサ、心拍数センサ、または他のセンサを備えてもよく、バルーンシャフト54は、そのようなセンサへのワイヤのための管腔を含んでもよい。
【0103】
さらなる実施形態では、カテーテルアセンブリ3の遠位区分は、カテーテルアセンブリの近位区分よりも幅広い直径を有し、近位区分は、遠位区分よりも膨張可能バルーン8から遠い。これは、カテーテルアセンブリ3の遠位区分における膨張管腔が、近位区分におけるものよりも大きくなることを可能にし、それによって、より大きい遠位区分における不活性膨張流体への摩擦を低下させる。遠位区分は、大動脈内等、導入点からさらに心臓に向かうより大きい血管内に位置付けられるように構成されてもよい。ある実施例として、カテーテルアセンブリ1の遠位区分における直径は、2.2mmの直径を伴う60mmの長さであってもよく、近位区分(大動脈内、大腿エリア、および患者の外側)は、1,200mmの長さおよび2.5mmの直径であってもよい。
【0104】
カテーテルアセンブリ3はさらに、異なる直径を伴う複数のカテーテル区分を備えてもよい。より幅広い直径区分は、例えば、血流が妨害されないエリア(例えば、末梢動脈)またはそれらが動作の間に患者の外側に留まるエリアにおける使用のために構成される。ある実施例では、第1の区分(拡張可能カップ4内)は、2.2mmの直径を伴う60mmの長さであり、第2の区分(大動脈エリア内)は、3mmの直径を伴う800mmの長さであり、第3の区分(大腿エリア内)は、400mmの長さおよび2.5mmの直径であり、第4の区分(患者の外側)は、750mmの長さおよび4mmの直径を有する。
【0105】
なおもさらなる実施形態では、カテーテルアセンブリ3は、低い流動抵抗(すなわち、動作の間の膨張および収縮圧力に対する低いインピーダンス)および耐キンク性を提供するように選択される、剛性材料を含む。さらなる実施形態では、カテーテルアセンブリ3は、0.1~0.3mm、例えば、0.2mmの壁厚を伴うナイロン材料を含む。専用カテーテル材料および寸法の選定は、縦方向において十分に可撓性でありながら、半径方向形状の保全を可能にする。シャフトは、ワイヤまたはリボンの編組またはコイルを用いて補強される、高デュロメータ硬さの材料、例えば、72Dまたはより高い壁厚のナイロン12ぺバックスまたはポリイミドによって達成される、高い半径方向剛性を有するであろう。高デュロメータ硬さは、ヘリウムの迅速な輸送に役立つ。デュロメータ硬さは、脈管または上行大動脈の曲率に適応するために、シャフト長にわたって変動してもよい。
【0106】
さらなる実施形態におけるカテーテルアセンブリ3は、その外部にわたって熱隔離コーティング層、例えば、Alを備える。これは、ヘリウム等の不活性流体の(相対的)低温を維持し、それによって、これにより高い密度を与え、より高い流速を可能にすることに役立つであろう。加えて、または代替として、制御システム2は、動作の間にカテーテルアセンブリ3に送達される不活性流体の温度を制御するための能動的冷却サブシステムを具備してもよい。例示的実施形態では、膨張流体は、冷却され、-20℃~20℃の温度に維持されてもよい。
【0107】
カテーテルアセンブリ3は、拡張可能カップ4とともに、高周波数において動作されるとき、振動または発振を最小限にするように構成される。血液が、バルーン8の膨張によってカップ4の圧送チャンバ30から射出されると、結果として生じる推力は、反対方向への力につながる。圧送チャンバから流出ノズル6を通して大動脈の中に出る血液によって引き起こされる推力は、反力につながり、これは、拡張可能カップ4をその平衡位置から左心室のより深い位置に移動させることができる。いったんポンプストロークが完了されると、拡張可能カップ4は、カテーテルアセンブリ3からの引動および本デバイスの遠位先端からの押動によって駆動されて、その平衡位置に戻ろうとするであろう。バルーンシャフト54のサイズ、幾何学形状、および剛性は、これが拡張可能カップ4の本運動を減衰させるように作用するように選択されてもよい。さらに、十分に高い周波数において体積変位部材、例えば、バルーン8を動作させることによって、次のポンプストロークは、本デバイスが弛緩し、その平衡位置に戻るための時間を有する前に起こるであろう。この場合では、本デバイスは、その平衡位置から離れた位置に「閉じ込められる」であろう。周波数が高くなるほど、本デバイスがその平衡位置に向かって戻るように移動するために有する時間は、短くなり、デバイス先端は、より安定するであろう。
【0108】
図4は、本発明のある実施形態による、心臓補助システム100の例示的制御ユニット2の詳細の概略図を示す。一実施形態では、制御ユニット2は、高圧源21と、低圧源22と、高圧源21、低圧源22、およびカテーテルアセンブリ3に接続される、切替配列23とを備え、切替配列23は、高圧源21および低圧源22をカテーテルアセンブリ3に交互に接続するように配列される。これは、制御ユニット2が、信頼性のある堅牢な(ベッドサイド)動作を伴って、商業的に入手可能な液圧/空気圧制御構成要素を使用することを可能にする。
図4の例示的実施形態では、高圧源21は、高圧バッファ21、高圧圧縮機21a、および調整器21c(および随意に、高圧センサ21b)の組み合わせとして実装される。低圧源22は、真空バッファ22、真空ポンプ22a、および低圧センサ22bの組み合わせとして実装される。切替配列23は、例えば、関数発生器23cを使用して切替弁23aを介して制御される、3方向弁ユニット23の組み合わせとして実装される。関数発生器23cは、切替弁23aを適切に駆動するために、高圧センサ21b、高圧センサ22b、および切替圧力センサ23bから信号を受信する。カテーテルアセンブリ3への接続は、安全駆動装置24を介して実装される。
【0109】
3方向弁ユニット23の高周波数動作を可能にするために、弁設計は、最小の乱流、高切替速度、および低漏出率を伴って、弁を通した最適な流動を有するように選択される。個別の高圧および低圧源21、22は、例えば、乱流が最小限にされ、安全駆動装置24に向かう流動が最適化されるように、45度未満の角度および管類と弁との間の直径における小さい差異を伴って接続される。
【0110】
なおもさらなる実施形態における制御ユニット2はさらに、安全ダイヤフラム27によって分離される、源側チャンバ25と、カテーテル側チャンバ26とを有する、安全駆動装置24を備える。これは、制御ユニット2の不活性ガス側部分から分離され、カテーテルアセンブリ3に接続されるべき制御ユニット2の空気圧/液圧部分の使用を可能にし、心臓補助システム100において必要とされる不活性ガスの体積を最小限にする。安全駆動装置24は、安全駆動装置24のカテーテル側チャンバ26における不活性ガス回路を圧縮および拡張させることによって、不活性ガス回路の作動に適応する。安全駆動装置の作動速度は、例えば、5~200ミリ秒以内に、例えば、20ml(典型的な範囲は、5~70mlである)の体積において、+800~-800mmHgの圧力差を提供するために十分である。
【0111】
実施形態の群では、制御ユニット2は、膨張期間の間に高圧源21をカテーテルアセンブリ3に接続し、収縮期間の間に低圧源22に接続するように配列され、膨張期間は、収縮期間よりも短い。一般に、膨張(高圧)は、動的システムにおいて収縮(低圧)よりも迅速に印加され、本実施形態に関してより効率的な動作を提供することができる。膨張期間および収縮期間はともに、1つの動作サイクルを形成し、したがって、デューティサイクルは、好ましくは、50%未満である、完全なサイクルの膨張期間のパーセンテージとして定義されることができる。さらなる例示的実施形態では、デューティサイクルは、40%未満またはさらには30~50%である。例示的実施形態では、約40%のデューティサイクルが、本発明の心臓補助デバイス1に関して最も効率的であることが証明されている。
【0112】
本デューティサイクルは、可変抵抗圧に伴って改変され得る。抵抗圧が高くなるほど、より多くの膨張時間に関する必要性が、存在し得る一方、環境圧力もまたバルーン体積を低減させるとき、収縮は、より速くなり得る。
【0113】
制御ユニット2はさらに、センサデータまたはユーザ入力に応答するように配列されてもよい。例えば、制御ユニット2は、膨張の速度を改変することによって、ある感知された抵抗圧に応答する、または単純に付加的拍動性流動を生成してもよい。実装は、限定ではないが、より低い周波数(例えば、200bpm)とより高い周波数(例えば、700bpm)との間で切り替えるためにECGトリガ適合に応答すること、例えば、それぞれ1秒の周期にわたる心臓補助デバイス1の動作、または、例えば、拡張期の間のみまたは収縮期の間のみの動作を含むことができる。または、膨張または収縮における(短い)一時停止が、心周期における具体的瞬間にトリガされることができる。
【0114】
図4に示される例示的実施形態では、駆動装置24(または安全駆動装置)は、不活性ガス(ヘリウム)回路の総体積に対してサイズ決めされる。安全ダイヤフラム27は、不活性ガス回路の体積を改変するように移動可能であってもよい。安全ダイヤフラム27を源側チャンバ25の中に移動させることによって、不活性ガス回路の総体積は、拡大され、したがって、不活性ガス回路を減圧することができる。または、これを反対方向に移動させることによって、不活性ガス回路の総体積は、低減され、それによって、加圧されてもよい。本作動を用いることで、10ミリ秒以内に膨張可能バルーン8を膨張および収縮させるために、例えば、3mm
2の断面積を伴う130cmの長さのカテーテルアセンブリ3において、例えば、600mmHg~-600mmHgのヘリウム圧力が、不活性ガス回路において取得されることができる。
【0115】
安全ダイヤフラム27から膨張可能バルーン8への圧力の変換をさらに最適化するために、カテーテルアセンブリ3の長さは、最小限にされるべきである。したがって、安全ダイヤフラム27および制御ユニット2の他の構成要素は、例えば、高圧源21および低圧源22の外部バージョンを使用することによって、ベッドサイド制御ユニット2内に含まれるように適合される。ベッドサイド制御ユニット2は、次いで、患者上の血管アクセス部位から20~100cm離れた、ある場合には、30cm未満離れた距離でベッドに搭載されることができる。
【0116】
図4に示される実施形態では、安全ダイヤフラム27と膨張可能バルーン8との間の不活性ガス回路は、不活性ガス圧力センサ26bを具備し、その信号は、ユーザ情報、駆動装置制御、および/または故障検出機能のために、関数発生器23cに提供されることができる。例えば、制御ユニット2において、圧力および波形に関する連続的チェックが、適用され、カテーテルアセンブリ3のガス漏出またはキンク/妨害を検出する。通常の予期されるべき不活性ガス圧力信号からの逸脱は、以下の情報を提供する。圧力が、降下すると、これは、不活性ガス漏出の兆候であり、心臓補助デバイス1は、停止される、または真空/低圧制御モードに切り替えられる。過圧が、カテーテルアセンブリのキンクによって引き起こされ得る。より高度なソフトウェアが、不活性ガス(バルーン)圧力から心室圧を推論するために、制御ユニット2において使用されてもよい。
【0117】
なおもさらなる実施形態では、安全駆動装置24は、材料性質、安全性、および不活性ガス流速を保全するために、例えば、摂氏10度に冷却/加熱される。動作の間のカテーテルアセンブリ3内の不活性流体の本間接的温度制御の代替として、不活性流体の温度は、能動的流体冷却サブシステムを使用して制御されてもよい。さらに、不活性ガス回路はさらに、自動的充填システムを具備してもよい。例えば、安定したヘリウム濃度を確実にするために、2時間毎に(または30分~4時間の間隔で周期的に)、ヘリウムシステムは、空にされ、新しいヘリウムカプセルの自動的注入が、存在する。そのようなカプセルは、必要とされるとき、ベッドサイド安全駆動装置24内で交換されることができる。
【0118】
本発明の方法によると、本発明の心臓補助デバイスおよびシステムは、様々な手技において心臓補助を提供し、様々な患者条件に対処するために使用されてもよい。例えば、心臓補助デバイスおよびシステムは、血管形成術およびステント留置を含む、高リスクの経皮的冠動脈介入(PCI)の間の心臓補助のために使用されてもよい。さらに、心臓補助デバイスおよびシステムは、心原性ショックを被る患者のための心臓支援を提供するために使用されてもよい。さらに、心臓補助デバイスおよびシステムは、急性心筋梗塞を被る患者のための心臓支援を提供するために使用されてもよい。概して、そのような手技のために、心臓補助デバイスは、左心室内での設置のために構成されるであろうが、しかしながら、上行または下行大動脈、右心房、右心室、または肺動脈内を含む、種々の他の心血管管腔部位における設置もまた、可能性として考えられる。
【0119】
本発明による方法の例示的実施形態では、心臓補助デバイス1は、血管内送達のために好適な低プロファイルを有する輸送状態に圧着される。通常、心臓補助デバイス1は、本明細書の別の場所に説明されるように、約18Fr未満、より好ましくは、14Fr未満、ある場合には、10Fr未満の外径を有する管状送達シースの管腔内に設置されるであろう。ガイドワイヤが、カテーテルアセンブリ3のガイドワイヤ管腔を通して挿入され、好ましくは、経皮的技法を使用して、大腿動脈等の末梢動脈の中に(典型的には、導入器シースを通して)前進されてもよい。ガイドワイヤは、大腿および腸骨動脈、大動脈、および大動脈弁を通して左心室の中に前進されてもよい。心臓補助デバイス1を含有するシースは、次いで、ガイドワイヤにわたって大腿動脈の中に、かつ脈管および大動脈弁を通して左心室の中に前進される。シースは、次いで、心臓補助デバイス1に対して後退され、拡張可能カップ4が左心室内で動作状態に自己拡張することを可能にし得る。シースは、流出ノズル6が上行大動脈内にその流出端を伴って展開されるまで、さらに後退される。随意に、シースは、患者から抜去される、またはこれは、流出ノズル6の下流の定位置に残されてもよい。
【0120】
カテーテルアセンブリ3の近位端は、患者の外側の制御ユニット2に結合される。制御ユニット2は、次いで、カップ4内のバルーン8の周期性膨張および収縮を開始するためにアクティブ化されてもよい。好ましくは、制御ユニット2は、ユーザが膨張周波数、速度を変動させ、所望の膨張周波数設定を選択することを可能にする、周波数コントローラを含む。好ましい実施形態では、上記に説明されるように、バルーン8は、心臓モニタ、心拍数センサ、ECG、または他の手段を使用して感知され得る、患者の自然な心拍の少なくとも2倍、ある場合には、最大10倍、他の場合では、自然な心拍の最大100倍の周波数において周期的に膨張および収縮される。いくつかの実施形態では、自然な心拍を感知するための手段は、ワイヤまたは無線のいずれかによって、制御ユニット2に電子的に接続され、これは、心拍数の変化に従って膨張周波数を自動的に変動させるように適合される。他の実施形態では、膨張周波数は、本明細書の別の場所に説明されるように、1分あたり200~最大10,000サイクルに及び得る、1分あたり所望の回数の拍動(膨張/収縮サイクル)に設定されてもよい。膨張周波数は、自然な心拍の周波数と同期するように、自然な心拍の周波数の所望の倍数または分数となるように、または自然な心拍から完全に独立するように設定されてもよい。
【0121】
心臓補助デバイスによって生産される血流量は、バルーン8の膨張周波数を変動させることによって変動されてもよい。高リスクのPCI手技では、3~4L/分の流量が、典型的には、必要とされる。心原性ショックにおける患者に関して、通常、少なくとも5L/分、好ましくは、少なくとも6L/分、ある場合には、8L/分またはそれを上回る、より高い流量が、望ましい。有利なこととして、本発明の心臓補助デバイスおよびシステムは、経皮的送達のための低送達プロファイル、心臓組織に対する外傷を最小限にするためのコンパクトな動作プロファイル、および溶血を最小限にする圧送機構を有しながら、そのような高流量を生産することができる。
【0122】
手技または治療の完了に応じて、制御ユニット2は、バルーン膨張が停止するように非アクティブ化されてもよい。送達シースは、通常、流出ノズル6の下流の上行大動脈内の所望の場所まで、心臓補助デバイス1に対して遠位に前進されてもよい。心臓補助デバイス1は、次いで、カップ4がシースの内部管腔の中に引き込まれるまで、回収ワイヤ62に対して牽引力を付与することによって後退されてもよい。有利なこととして、流出ノズル6のテーパ状近位端は、シース内にカップ4を捕捉し、これがシースの中に引き込まれるにつれてカップ4を輸送状態に圧潰させることを促進する。心臓補助デバイス1を含有するシースは、次いで、患者から抜去され、大腿部の穿刺または切開は、閉鎖されてもよい。
【0123】
本発明は、図面に示されるようないくつかの例示的実施形態を参照して上記に説明されている。いくつかの部分または要素の修正および代替実装が、可能性として考えられ、添付される請求項に定義されるような保護の範囲内に含まれる。
【国際調査報告】