(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-15
(54)【発明の名称】エラストマー材料を機能化する方法及びゴム配合物におけるその使用
(51)【国際特許分類】
C08L 21/00 20060101AFI20240408BHJP
C08L 101/14 20060101ALI20240408BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20240408BHJP
C08K 3/06 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
C08L21/00
C08L101/14
C08K3/34
C08K3/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568458
(86)(22)【出願日】2022-05-03
(85)【翻訳文提出日】2024-01-05
(86)【国際出願番号】 IB2022054061
(87)【国際公開番号】W WO2022234443
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ZA
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517095881
【氏名又は名称】ラバー ナノ プロダクツ (プロプライエタリー) リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ボッシュ, ロバート マイケル
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AC00W
4J002AC00X
4J002AC01W
4J002CH022
4J002DA049
4J002DE109
4J002DJ006
4J002DJ018
4J002EV157
4J002GM01
4J002GN01
(57)【要約】
ゴム粒子等のエラストマー材料を機能化する方法が提供される。この方法は、水溶性ポリマー、カチオン性ケイ酸塩成分、及び加硫促進剤の塩を、亜鉛化合物、硫黄及び促進剤とともに含むイオン性液体ベースの組成物の使用を介してエラストマー材料を機能化することを含む。開示された方法に従って機能化されたゴム粒子、例えば、リサイクルゴム製品からの粒子は、これまで不可能であった濃度でバージンゴムマスターバッチにうまく利用することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加硫エラストマー材料を機能化する方法であって、
a)機能化される表面を有する加硫エラストマー材料を用意するステップ、
b)水溶性ポリマー、カチオン性ケイ酸塩成分、及び加硫促進剤の塩を含むイオン性液体ベースの組成物を用意するステップ、
c)亜鉛化合物、硫黄、及び促進剤を用意するステップ、
d)ステップb)のイオン性液体ベースの組成物及びステップc)の成分を加硫エラストマー材料表面と接触させることにより、機能化されたエラストマー材料を製造するステップ、
を含む、方法。
【請求項2】
前記加硫エラストマー材料が、加硫エラストマー粒子である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記加硫エラストマー粒子が、約10~約400メッシュの粒径範囲を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記加硫エラストマー材料が、粉砕ゴム、焦げたゴム、及び微粉化ゴム粉末からなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記加硫エラストマー材料が、再生タイヤゴムである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記イオン性液体ベースの組成物が、補強充填剤及び熱可塑性エラストマーの1種又は複数をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法が、ステップa)の前記加硫エラストマー材料を補強充填剤と混合するステップをさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記補強充填剤が、沈降シリカ、任意選択でシラン処理された非晶質沈降シリカに基づくものである、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
ステップb)のイオン性液体ベースの組成物中の前記加硫促進剤が、チアゾール、ジチオカルバメート、ジチオホスフェート、スルフェンアミド、硫化チウラム、キサンテート、グアニジン、及びアルデヒドアミンを含む促進剤クラスの群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップb)の前記イオン性液体ベースの組成物中の加硫促進剤の前記塩が、2-メルカプトベゾチアゾール(MBT)、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛(ZBEC)、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZBOP)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、ジ-イソプロピルキサントゲンジスルフィド(DIXD)若しくはポリスルフィド(AS100)の塩、又はそれらの組み合わせであり、前記加硫促進剤の前記塩が、そのナトリウム又はカリウム塩である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記カチオン性ケイ酸塩成分のカチオンが、ナトリウムカチオン又はカリウムカチオンである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記水溶性ポリマーが、エチレンオキシドポリマー又はポリビニルアルコールポリマーである、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記水溶性ポリマーが、ポリエチレングリコールである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記イオン性液体ベースの組成物が、ポリエチレングリコール、メタケイ酸ナトリウム、及び促進剤塩NaBECを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ステップc)の前記促進剤が、チアゾール、ジチオカルバメート、ジチオホスフェート、スルフェンアミド、硫化チウラム、キサンテート、グアニジン、及びアルデヒドアミンを含む促進剤クラスの群から選択される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
加硫エラストマー材料を機能化するためのイオン性液体ベースの組成物、並びに、亜鉛化合物、硫黄、及び促進剤の使用であって、前記イオン性液体ベースの組成物が、水溶性ポリマー、カチオン性ケイ酸塩成分、及び加硫促進剤の塩を含む、使用。
【請求項17】
前記イオン性液体ベースの組成物が、補強充填剤及び熱可塑性エラストマーの1種又は複数をさらに含む、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
ゴムをリサイクルする方法であって、
a)請求項4に記載の方法に従って機能化されたエラストマー材料を用意するステップ、
b)合成又は天然のバージンゴムのマスターバッチを用意するステップ、
c)ステップa)の前記機能化されたエラストマー材料をステップb)の前記マスターバッチと混合した混合物を加硫することにより、再生ゴム及びバージンゴムを含む最終ゴム製品を製造するステップ、
を含む、方法。
【請求項19】
前記最終ゴム製品が、前記最終ゴム製品の総質量に対して約1~約80質量%の濃度で再生ゴムを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記最終ゴム製品が、タイヤ、ホース、コンベアベルト、及び他の工業用ゴム製品からなる群から選択される製品である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項18~20のいずれか一項に記載の方法により得られるゴム製品であって、タイヤ、ホース、コンベアベルト、及びその他の工業用ゴム製品からなる群から選択される製品である、ゴム製品。
【請求項22】
前記製品が、タイヤトレッドであり、前記トレッドが、再生ゴムを含まないトレッドと比較して改善された性能を有し、この性能が、転がり抵抗、耐摩耗性、ウェットグリップ、又はそれらの組み合わせのうちの1種又は複数から選択される、請求項21に記載のゴム製品。
【発明の詳細な説明】
【序論】
【0001】
本発明は、エラストマー材料を機能化する方法に関する。特に、本発明は、イオン性液体ベースの組成物を亜鉛化合物、硫黄、及び促進剤とともに使用することを含む、エラストマー材料を機能化する方法に関する。
【背景】
【0002】
タイヤ、ホース、ベルト等の予め硬化又は加硫済みのゴム製品を含むエラストマー材料のリサイクルは、既に大きな注目を集めているにもかかわらず、依然として業界の課題となっている。
【0003】
予め硬化した材料を再加工又はリサイクルする際の重要な問題の1つが、加硫反応中に強力な炭素-硫黄結合及び硫黄-硫黄結合が形成され、これらの結合は極めて安定しているため、逆行させるのが困難であることは当業者にはよく知られている。したがって、現在まで、これらの予め硬化されたゴム製品は、例えば、充填剤として利用される場合等、材料の化学的再統合が必要とされない用途のみが見出されている。
【0004】
これらのリサイクルゴム材料の使用を増やす戦略の1つは、材料を脱硫して元の特性の一部を取り戻し、それによって新しいゴム(バージンゴム)に再配合できるようにすることである。脱硫プロセスを扱った出版物はいくつかあるが、現在までこれらのプロセスでは商業的に実行可能な材料、又は工業用ゴム用途で、高負荷で使用できる材料は生成されていない。
【0005】
本出願人自身の国際PCT特許出願、国際公開第2019/145808号は、カチオン性ケイ酸塩成分と、加硫促進剤の塩であるカチオン性添加剤成分とを含む水溶性ポリマーベースの溶液であるゴム加硫組成物を開示している。国際公開第2019/145808号の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0006】
本発明者は、驚くべきことに、水溶性ポリマー、カチオン性ケイ酸塩成分、及び加硫促進剤の塩を含むイオン性液体ベースの組成物が、亜鉛化合物、硫黄、及び促進剤とともに、ゴム粒子を含むエラストマー材料を機能化し、これにより、これらの機能化粒子をこれまで知られていなかったレベルでゴムマスターバッチに使用できるようになることを発見した。機能化ゴム粒子を組み込んだ新しいゴム製品は、これらの機能化ゴム粒子を含まない同様のゴム配合物と比較して予想外の性能を示すことがさらに判明した。
【発明の概要】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、エラストマー材料を機能化する方法であって、
a)機能化される表面を有するエラストマー材料を用意するステップ、
b)水溶性ポリマー、カチオン性ケイ酸塩成分、及び加硫促進剤の塩を含むイオン性液体ベースの組成物を用意するステップ、
c)亜鉛化合物、硫黄、及び加硫促進剤を用意するステップ、
d)ステップb)のイオン性液体ベースの組成物及びステップc)の成分をエラストマー材料表面に接触させることにより、機能化されたエラストマー材料を製造するステップ、
を含む、方法が提供される。
【0008】
一実施形態では、エラストマー材料はエラストマー粒子である。
【0009】
一実施形態では、エラストマー粒子は、約10~約400メッシュの範囲の粒径を有する。
【0010】
好ましい実施形態では、エラストマー材料は、再生エラストマー材料、粉砕ゴム、焦げたゴム、及び微粉化ゴム粉末からなる群から選択される。
【0011】
特に好ましい実施形態では、エラストマー材料は加硫エラストマー材料である。
【0012】
一実施形態では、エラストマー材料は再生タイヤゴムである。
【0013】
一実施形態では、イオン性液体ベースの組成物は、補強充填剤及び熱可塑性エラストマーの1種又は複数をさらに含む。
【0014】
別の実施形態では、この方法は、ステップa)のエラストマー材料を補強充填剤と混合するステップをさらに含む。
【0015】
一実施形態では、補強充填剤は、沈降シリカ、任意選択でシラン処理された非晶質沈降シリカに基づくものである。
【0016】
一実施形態では、ステップb)のイオン性液体ベースの組成物中の加硫促進剤は、チアゾール、ジチオカルバメート、ジチオホスフェート、スルフェンアミド、硫化チウラム、キサンテート、グアニジン、及びアルデヒドアミンを含む促進剤クラスの群から選択される。
【0017】
一実施形態では、ステップb)のイオン性液体ベースの組成物中の加硫促進剤の塩は、2-メルカプトベゾチアゾール(MBT)、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛(ZBEC)、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZBOP)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、ジ-イソプロピルキサントゲンジスルフィド(DIXD)若しくはポリスルフィド(AS100)の塩、又はそれらの組み合わせであり、加硫促進剤の塩は、そのナトリウム又はカリウム塩である。
【0018】
好ましい実施形態では、カチオン性ケイ酸塩成分のカチオンは、ナトリウム又はカリウムカチオンである。
【0019】
好ましい実施形態では、水溶性ポリマーは、エチレンオキシドポリマー又はポリビニルアルコールポリマーである。
【0020】
特に好ましい実施形態では、水溶性ポリマーは、ポリエチレングリコールである。
【0021】
一実施形態では、イオン性液体ベースの組成物は、ポリエチレングリコール、メタケイ酸ナトリウム、及び促進剤塩NaBECを含む。
【0022】
一実施形態では、ステップc)の促進剤は、チアゾール、ジチオカルバメート、ジチオホスフェート、スルフェンアミド、硫化チウラム、キサンテート、グアニジン、及びアルデヒドアミンを含む促進剤クラスの群から選択される。
【0023】
本発明の第2の態様によれば、エラストマー材料を機能化するための、イオン性液体ベースの組成物、並びに、亜鉛化合物、硫黄、及び促進剤の使用であり、イオン性液体ベースの組成物が、水溶性ポリマー、カチオン性ケイ酸塩成分、及び加硫促進剤の塩を含む、使用が提供される。
【0024】
一実施形態では、イオン性液体ベースの組成物は、補強充填剤及び熱可塑性エラストマーの1種又は複数をさらに含む。
【0025】
本発明の第3の態様によれば、ゴムをリサイクルする方法であって、
a)本発明の第1の態様の方法に従って機能化されたエラストマー材料を用意するステップ、
b)バージンゴムを含む合成ゴム又は天然ゴムマスターバッチを用意するステップ、
c)ステップa)の機能化されたエラストマー材料をステップb)のマスターバッチと混合した混合物を加硫することにより、再生ゴム及びバージンゴムを含む最終ゴム製品を製造するステップ、
を含む、方法が提供される。
【0026】
一実施形態では、最終ゴム製品は、最終ゴム製品の総質量に対して約1~約80質量%の濃度で再生ゴムを含む。
【0027】
一実施形態では、最終ゴム製品は、タイヤ、ホース、コンベアベルト、及びその他の工業用ゴム製品からなる群から選択される製品である。
【0028】
本発明のさらなる態様によれば、本発明の第3の態様による方法によって得られるゴム製品であり、タイヤ、ホース、コンベアベルト、及びその他の工業用ゴム製品からなる群から選択される製品である、ゴム製品が提供される。
【0029】
一実施形態では、製品はタイヤトレッドであり、このトレッドは、再生ゴムを含まないトレッドと比較して改善された性能を有し、その性能は、転がり抵抗、耐摩耗性、ウェットグリップ、又はそれらの組み合わせのうちの1種又は複数から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
次に、以下の非限定的な実施形態及び図を参照して、本発明をより詳細に説明する。
【
図1】本発明の機能化されたエラストマー材料を含む様々なゴム配合物の硬化速度及びトルク応答を示すグラフである。
【
図2】対照バッチ、並びに本発明の機能化されたエラストマー材料(コンパウンドA)を用いて調製されたゴム配合物の40%及び100%を含むゴム配合物の応力歪み応答を示すグラフである。
【
図3】機能化配合物S-を利用した、異なるコーティング比率でNRコーティングされたゴムクラムのレオメトリーを示すグラフである。
【
図4】機能化配合物S+を利用した、異なるコーティング比率でNRコーティングされたゴムクラムのレオメトリーを示すグラフである。
【
図5】標準硬化剤パッケージを含む対照NRマスターバッチ、非改質ゴムクラムを含む対照NRマスターバッチ、及び本発明の方法に従って調製された機能化ゴムクラム(PxActi8ベースの材料)を含むNRマスターバッチのレオメータートレースを示すグラフである。
【
図6】試験したNRマスターバッチのタンデルタ応答を示す。
【
図7】試験したNRsマスターバッチの貯蔵弾性率(G’)を示すグラフである。
【
図8】試験したNRマスターバッチの損失弾性率(G”)を示すグラフである。
【
図9】異なるゴムクラム材料を使用して調製された、様々なNRマスターバッチゴム配合物の応力対歪みデータを示すグラフである。
【
図10】標準硬化剤パッケージを含む対照SBRマスターバッチ、非改質ゴムクラムを含む対照SBRマスターバッチ、及び本発明の方法に従って調製された機能化ゴムクラム(PxActi8ベースの材料)を含むSBRマスターバッチのレオメータートレースを示すグラフである。
【
図11】試験したSBRマスターバッチのタンデルタ応答を示すグラフである。
【
図12】試験したSBRマスターバッチの損失弾性率(G”)を示すグラフである。
【
図13】試験したSBRマスターバッチの貯蔵弾性率(G’)を示すグラフである。
【
図14】試験したSBRマスターバッチの応力対歪みデータを示すグラフである。
【好ましい実施形態の詳細な説明】
【0031】
以下、本発明を、本発明の非限定的な実施形態のいくつかを示す添付の図面を参照して、より詳細に説明する。
【0032】
以下に説明する本発明は、開示された特定の実施形態に限定されるものと解釈されるべきではなく、わずかな修正及び他の実施形態も本発明の範囲内に含まれるものとする。
【0033】
本明細書では特定の用語が使用されているが、それらは一般的かつ説明的な意味でのみ使用されており、限定を目的とするものではない。
【0034】
本明細書で使用される場合、本明細書及び以下の特許請求の範囲全体にわたって、文脈上明らかに別段の指示がない限り、単数形「1つ(種)の(a)」、「1つ(種)の(an)」及び「その(the)」には複数形も含まれる。
【0035】
本明細書で使用される用語及び表現は説明を目的としたものであり、限定するものとして考えるべきではない。本明細書で使用される用語「含むこと(comprising)」、「含有すること(containing)」、「有すること(having)」、「含むこと(including)」、及びそれらの変形の使用は、その後に列挙される項目、及びその等価物、並びに追加の項目を包含することを意味する。
【0036】
本明細書で使用される場合、「水溶性ポリマー」という用語は、ヒドロキシル基を含むポリマー、例えば、エチレンオキシド型ポリマー又はポリビニルアルコールポリマーを含む、水に溶解、分散、又は膨潤するポリマーを意味すると理解されるべきである。
【0037】
本明細書で使用される場合、「エラストマー材料」という用語は、ゴムのような弾性を示すポリマーを意味すると理解されるべきである。エラストマー材料は、本明細書に開示される本発明の方法に従って、イオン性液体ベースの組成物及びさらなる成分に曝露されたときに、新たな硫黄架橋を受け入れることができる不飽和二重結合(以前に架橋に関与したかどうかに関係なく)を含む。
【0038】
本発明は、エラストマー材料を機能化する方法を提供する。機能化の方法は、a)機能化される表面を有するエラストマー材料を用意するステップ、b)水溶性ポリマー、カチオン性ケイ酸塩成分、及び加硫促進剤の塩を含むイオン性液体ベースの組成物を用意するステップ、c)亜鉛化合物、硫黄、及び促進剤を用意するステップ、並びにd)ステップb)のイオン性液体ベースの組成物及びステップc)の成分をエラストマー材料表面と接触させることにより、機能化されたエラストマー材料を製造するステップを含む。
【0039】
エラストマー材料の機能化は、亜鉛化合物、硫黄、及び促進剤を含む追加成分の組み合わせと併せてイオン性液体組成物の使用によって達成される。
【0040】
いかなる特定の理論にもこれにより束縛されることを望むものではないが、イオン性液体ベースの組成物は、ペンダント基(促進剤の組成に由来する硫黄促進剤種)の形成を可能にするものと考えられる。これらのペンダント基は、イオン性液体ベースの組成物中の亜鉛化合物(ZnO)の存在下で、硫黄及び促進剤の相互作用によって活性化される。驚くべきことに、上記の化学反応は、従来の加硫反応で使用される温度と比較して非常に低い温度で起こるようである。約80℃の穏やかな温度でわずか数分間接触させるだけで、これらのペンダント基が形成され、エラストマー材料表面の利用可能なジエン部位と反応することが期待される。これは、エラストマー材料が融点まで加熱されていない場合(未加硫ゴム)でも発生し、エラストマー材料の固体表面で発生する。
【0041】
本発明の一実施形態では、機能化されるエラストマー材料は、最初にイオン性液体ベースの組成物と接触させられる。或いは、本発明の別の実施形態では、イオン性液体ベースの組成物を亜鉛化合物、硫黄、及び促進剤と混合して機能化媒体を調製し、次いでこれをエラストマー材料と接触させて混合する。表面処理の条件は穏やかな温度であり、in situで混合中にも、ex situで機能化前の事前反応媒体の調製によっても、いずれでも機能できる。
【0042】
イオン性液体ベースの組成物中の加硫促進剤の塩は、チアゾール、ジチオカルバメート、ジチオホスフェート、スルフェンアミド、硫化チウラム、キサンテート、グアニジン、アルデヒドアミン、又はそれらの組み合わせを含む促進剤クラスの群から選択され得る。
【0043】
本発明の方法で使用されるイオン性液体組成物は、本出願人の先の国際特許出願である、国際公開第2019/145808号に開示された方法に従って調製され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0044】
機能化されたエラストマー材料を調製するために使用されるイオン性液体組成物は、油又は冷凍ワックス材料のどちらかにつながる非水性ポリマーベースの複合材料である。ゴム製造において、この組成物は、標準的なゴム製造環境における通常の混合装置でゴム状材料に直接添加するのに適している。ポリマーは、水溶性ポリマー、例えば、エチレンオキシド型ポリマー、ポリビニルアルコールポリマー、又はヒドロキシル基を含む任意の他のポリマーである。
【0045】
機能化されたエラストマー材料を調製する方法で使用されるイオン性液体組成物は、それ自体、塩基性溶液、例えば、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムにシリカ粉末を溶解することによって合成される、適切なカチオン性ケイ酸塩成分溶液を提供することによって調製される。
【0046】
得られたカチオン性ケイ酸塩成分を水溶性ポリマー、例えば、ポリエチレングリコールを含むエチレンオキシドポリマーに添加し、乾燥させて特定のカチオン性ケイ酸塩成分の安定なイオン性液体を生成する。
【0047】
カチオンケイ酸塩成分とポリマーとの特定の組み合わせ、例えば、水性環境の代替としてのポリエチレングリコールにより、適切に安定したイオン性液体ができる。
【0048】
これらのカチオン性ケイ酸塩溶液及び得られるカチオン性ケイ酸塩ポリマー組成物又は複合体は、選択されたカチオンとシリカとを異なる比率で反応させて調製することができ、それによって表面化学及びイオン性液体のイオン性を改変する。例えば、カチオン対シリカの化学量論比を使用することができる。或いは、この比率は、機能化される特定のシステムの要件に応じて変更することもできる。
【0049】
カチオン性ケイ酸塩ポリマーキャリア組成物は、ゴムの加硫に有用又は有益であることが知られているいくつかのイオン性材料、例えば、グラフェンオキサイド、酸化亜鉛等の様々な塩類又はナノ粉末、又はカチオン性ケイ酸塩ポリマー組成物に溶解若しくは分散できる任意の他の適切なイオン材料、の溶解及び安定化に適している。
【0050】
イオン性液体組成物は、加硫促進剤の塩をさらに含む。加硫促進剤の塩は、上述のカチオン性ケイ酸塩成分及び水溶性ポリマーキャリアに溶解される。促進剤塩錯体は、苛性水溶液、例えば、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの溶液中で調製され得る。促進剤塩錯体は、促進剤フラグメントとの反応前に水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを水に溶解することによって調製され得る。促進剤塩錯体は、水及びアルコールの適切な共沸混合物中で調製することもできる。本発明の好ましい方法では、促進剤塩錯体は、水及びイソプロピルアルコールの共沸混合物中で調製される。
【0051】
促進剤成分は、当技術分野で知られている促進剤のいずれか1種から選択することができる。特に、促進剤は、チアゾール、ジチオカルバメート、ジチオホスフェート、スルフェンアミド、硫化チウラム、キサンテート、グアニジン、アルデヒドアミン、又はそれらの組み合わせを含む促進剤クラスの群から選択され得る。
【0052】
促進剤は、チアゾール、ジチオカルバメート、ジチオホスフェート、硫化チウラム、又はそれらの組み合わせを含む促進剤クラスの群から選択され得る。好ましくは、加硫促進剤の塩は、2-メルカプトベゾチアゾール(MBT)、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛(ZBEC)、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZBOP)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、ジ-イソプロピルキサントゲンジスルフィド(DIXD)若しくはポリスルフィド(AS100)のナトリウム又はカリウム塩、又はそれらの組み合わせである。
【0053】
促進剤塩溶液をカチオン性ケイ酸塩溶液に添加して反応混合物を調製し、それに水系ポリマーを添加する。次いで、得られた反応混合物を乾燥させて溶液媒体を除去し、特に系からすべての水を除去する。一実施形態では、溶液媒体を除去するために、混合物を真空下、例えば、100ミリバール以下で乾燥させてもよい。得られる組成物は、水溶性ポリマー、例えば、ポリエチレングリコールをベースとする非水性組成物である。組成物は、分離層(有機又は水性)のない単一相を含む。
【0054】
一実施形態では、促進剤塩錯体及びカチオン性ケイ酸塩成分は、添加剤成分のカチオン部分と組成物のケイ酸塩成分とが同じになるように選択することができるが、異なる組み合わせを選択することもできる。
【0055】
促進剤塩錯体及びカチオン性ケイ酸塩成分は、ポリマーベースの組成物の総質量の約50%を含み得、水ベースのポリマー成分が組成物の残りを構成している。
【0056】
本発明に従って機能化されるエラストマー材料は、一実施形態ではエラストマー粒子であってもよい。本明細書に記載される機能化方法は、すべてのエラストマー表面及び粒子(硫黄加硫を可能にする適切なジエン基化学を有する)に等しく適用可能であることが想定されるが、機能化されるエラストマー粒子は、好ましくは約10~約400メッシュの範囲の粒径を有する。エラストマー粒子の平均粒径は、機能化される材料の供給源と、材料が処理された方法によって決まる。例えば、約10~約30メッシュの径範囲のエラストマー粒子は、典型的には粉砕されたタイヤゴムからのものであるが、約40~約300メッシュの範囲内のより小さな粒径を有する粒子は、一般に微粉化されたゴム粉末であると考えられる。
【0057】
本発明の好ましい実施形態では、さらなる処理のために機能化されるエラストマー材料は、再生エラストマー材料、粉砕ゴム、焦げたゴム、及び微粉化ゴム粉末からなる群から選択される。当業者には理解されるように、特に望ましい用途において、機能化される材料は、好ましくは、上記列挙されたものを含む、予め加硫されたエラストマー材料である。しかしながら、機能化されるエラストマー材料は、予め加硫された材料である必要はない。
【0058】
本発明の特に好ましい実施形態では、機能化される材料は、そのような粒子の調製方法に関係なく、以前に使用されたタイヤ又は耐用年数が終了したタイヤに由来する任意の形態のエラストマー材料又は粒子である。これらの粒子は一般に、調製方法及び得られる平均粒径に応じて、ゴムチップ、ゴムクラム、粉砕タイヤゴム(GTR)、又は微粉化ゴム粒子(MRP)に分類される。これらの粒子は、機械的切断及び粉砕、極低温凍結に基づく方法、及び熱分解に基づく方法を含む、当業者に知られている任意の方法に従って調製することができる。
【0059】
本発明のいくつかの実施形態では、イオン性液体ベースの組成物が熱可塑性エラストマーを含むことは、製品処理を容易にするために有益であり得る。熱可塑性エラストマーは、約50℃~約100℃の範囲の融点を有する任意のエラストマーであってもよい。好ましくは、熱可塑性エラストマーはジエン不飽和を含有しない。好ましくは、熱可塑性エラストマーは、ポリオレフィン系エラストマーからなる群から選択され、コーティングプロセス中の必要な混合条件でのコーティング及びブレンドを容易にする適切な軟化点及び硬度を有する。さらに、熱可塑性エラストマーは、最終ゴム組成物の加硫及び後処理条件のいずれの作業温度付近でも劣化しない十分な熱安定性も備えていなければならない。
【0060】
好ましくは、熱可塑性エラストマーは、イオン性液体ベースの組成物の質量に対して、約10~約60質量%、より好ましくは約15~約55質量%、より好ましくは約15~約50質量%、さらにより好ましくは約15~約45質量%、最も好ましくは約20~約40質量%の濃度で存在する。
【0061】
本発明のいくつかのさらなる実施形態では、特に熱可塑性エラストマーがイオン性液体ベースの組成物中に存在しない場合、方法が、補強充填剤を用意し、補強充填剤をイオン性液体ベースの組成物及びさらなる成分(亜鉛化合物、硫黄、及び促進剤)と、せん断条件下の加熱環境下で混合する、さらなるステップを含むのが望ましい。加硫開始反応が始まるのに十分な温度にさらしながら、混合物が、エラストマー材料を完全にコーティングする必要がある。本発明の一実施形態では、補強充填剤は沈降シリカをベースとし、好ましくはシラン処理された非晶質沈降シリカである。
【0062】
本発明の方法で使用されるイオン性液体ベースの組成物は、水溶性ポリマー、カチオン性ケイ酸塩成分、及び加硫促進剤の塩を含む。それに加えて、亜鉛化合物、硫黄、及びさらなる促進剤を含む成分又は成分の混合物が、本方法において使用される(本方法のステップ(c))。この方法のステップ(c)で使用される成分の混合物中の促進剤は、イオン性液体ベースの組成物中の促進剤塩の促進剤フラグメントと同じである必要はない。ステップc)の促進剤は、任意の既知の促進剤から選択することができるが、好ましくは、チアゾール、ジチオカルバメート、ジチオホスフェート、スルフェンアミド、硫化チウラム、キサンテート、グアニジン、及びアルデヒドアミンを含む促進剤クラスの群から選択される。
【0063】
好ましくは、イオン性液体ベースの組成物の量は、本発明の方法のステップ(a)~(c)の成分の総質量に対して、約0.5~約2質量%を含む。
【0064】
好ましくは、エラストマー材料の量は、本発明の方法のステップ(a)~(c)の成分の総質量に対して、約40~約95質量%を含む。
【0065】
好ましくは、亜鉛化合物の量は、本発明の方法のステップ(a)~(c)の成分の総質量に対して、約0.2~約1質量%を含む。
【0066】
好ましくは、硫黄の量は、本発明の方法のステップ(a)~(c)の成分の総質量に対して、約0.2~約1質量%を含む。
【0067】
好ましくは、ステップ(c)の促進剤の量は、本発明の方法のステップ(a)~(c)の成分の総質量に対して、約0.2~約1質量%を含む。
【0068】
好ましくは、補強充填剤の量は、本発明の方法のステップ(a)~(c)の成分の総質量に対して、約20~約50質量%を含む。
【0069】
本発明はさらに、a)本明細書に開示される方法に従って調製された機能化されたエラストマー材料を用意するステップ、b)バージンゴムを含む合成又は天然ゴムのマスターバッチを用意するステップ、c)上記ステップa)の機能化されたエラストマー材料を上記ステップb)のマスターバッチと混合した混合物を加硫することにより、再生ゴムとバージンゴムを含む最終ゴム製品を製造するステップを含む、ゴムをリサイクルする方法を提供する。
【0070】
本発明はさらに、本明細書に開示される方法に従って機能化された再生エラストマー材料を含むゴム製品を提供する。最終ゴム製品は、このような再生エラストマー材料を、最終ゴム製品の総質量に対して約1~約80質量%、好ましくは約3~約70質量%、好ましくは約5~約60質量%、最も好ましくは約10~約50質量%の濃度で含むことができる。
【0071】
本発明の方法に従って調製された、機能化されたエラストマー材料は、あらゆるゴム製品への応用を見出すことが当業者には理解されよう。しかしながら、本発明の機能化材料を組み込んだそのようなゴム製品の特に好ましい例としては、タイヤ、ホース、コンベアベルト、及び他の工業用ゴム製品が挙げられる。
【実施例】
【0072】
次に、以下の非限定的な実施例及び実験結果を参照して、本発明をより詳細に説明する。
【0073】
実施例1:MRP40メッシュ、PxActi8、硫黄、TBBS、及びZnOを使用したコンパウンドAの調製
表1に示すように、メッシュ40のゴムクラムエラストマー材料を南アフリカのSN Rubber社から入手した。ゴムクラム材料は従来の機械的粉砕によって調製され、50%±10%の天然ゴム(「NR」)を含有していた。ゴムクラム(241g)を、以下の表1で「PxActi8」と称する、(1)ポリエチレングリコール、(2)メタケイ酸ナトリウム、(3)ジベンジルジチオカルバミン酸ナトリウム(NaBEC)、(4)シリカ、及び(5)熱可塑性エラストマー(「TPE」)を(1+2+3):4:5の比率が50:30:20で含むイオン性液体ベースの組成物2.5g、硫黄2g、ZnO1g、並びにN-tert-ブチル-ベンゾチアゾールスルホンアミド(TBBS)促進剤、並びにその他の標準的なゴムコンパウンドと混合した。
【0074】
これらの成分を密閉式ミキサー内で、約80℃で10分間混合した。合わせた材料及び成分がゴムクラムの表面で溶けたように見えた。次に、材料が通常のゴムのように機能し、密閉式ミキサーから排出され、カレンダミルで問題なく圧延できるようになるまで、この混合物を、材料にバージンNRを加えることによってさらに処理した。したがって、この材料は、リサイクルされた機能化ゴムクラムとNRの組み合わせである。コンパウンドAの配合の詳細を以下の表1に示す。
【0075】
【0076】
コンパウンドAの再生含有率は再生ゴム61.8%である。コンパウンドAは、さらなる試験のためにリサイクル含有物(コンパウンドA)の濃度を増加させた配合物を製造するために、コンパウンドB(以下を参照)と配合されるように設計した。
【0077】
実施例2:コンパウンドBの調製(リサイクル含有物なし)
以下の表2に示すように、この実験では単に、様々なレベルのリサイクル含有物を含むゴム配合物の性能を決定するために、コンパウンドAとの混合物のさらなる試験に使用した標準的なNRゴム配合物を調製した。
【0078】
【0079】
コンパウンドBの配合は、リサイクル含有物を含有していない。
【0080】
この材料を、標準的な混合時間と標準的な操作手順を使用して密閉式ミキサーで混合した。この材料は、シリカ充填剤のさらなる添加(このコンパウンドの設計要件)を試験できるように、Si69を添加して調製した。これらの配合は示されていないが、この親コンパウンドの幅広い特性を達成するために、リサイクル含有物と充填剤含有物の添加を次に使用することが目的であると示唆される。
【0081】
実施例3:コンパウンドA/コンパウンドBを含む様々な配合物の試験
密閉混合後にコンパウンドA及びBが得られる。このコンパウンドA及びBは次にカレンダ処理され、NRゴムコンパウンドの厚いシートとして調製される。
【0082】
コンパウンドAには、リサイクル材料の表面に小さな硬化パッケージを含有するため、架橋する可能性がある。コンパウンドBには硬化パッケージがなく、加硫するには硬化パッケージが必要である。
【0083】
以下の表3からわかるように、コンパウンドA及びコンパウンドBを異なる質量比で一緒にミル混合した。これらの比率は、コンパウンドAを含有するリサイクル材料の0%から始まり、この傾向は、純粋なコンパウンドAの試験で終了した。
【0084】
【0085】
上記の表3は、配合及び、標準硬化パッケージ(コンパウンドA含有量0%、すなわち純粋なコンパウンドBで示されている)がこれらの各混合物の実際の純粋なゴム含有量に合わせてどのように調整されるかを示す。この理由は、硬化可能な実際のバージンゴムに関連する実際の硬化パッケージを保持するためである。
【0086】
【0087】
図1及び上記の表4に示した結果からわかるように、再生ゴムを添加すると硬化速度が向上し、コンパウンドの弾性率(S最大及びS最小)に影響を与える。このコンパウンドのスコーチ時間には若干の変化があり、これはコンパウンドAのリサイクル材料を安定させるために使用される未硬化ゴムに関連している。
図2は、それぞれ、0%コンパウンドA(S’対照)、40%コンパウンドA(40RA8)、及び100%コンパウンドA(S’100RA8)を含む配合物の応力歪み応答を示す。
【0088】
実施例4:イオン性液体ベースの機能化配合物の調製
本発明によるイオン性液体ベースの機能化添加剤の異なる配合物を製造した。これらの配合物は、硫黄又は促進剤の量が多いかどうかを示すために、本明細書では配合物S+及び配合物S-と称する(効率的加硫(EV)と従来の加硫(CV)との間の通常の加硫用語に関連しており、CVはより高い硫黄濃度を示す)。
【0089】
【0090】
【0091】
配合物S+及びS-は、得られる再活性化ゴム材料の加硫に対する影響を測定及び決定するために、異なる比率で機能化添加剤として使用した。
【0092】
これらの実験で従ったこの機能化手順は、実施例1で従ったものと同じであった。この前処理プロセスは、ゴム表面の前加硫反応で同じ速度論的結果を達成するために変更できる(すなわち、より短時間でより高温)。
【0093】
機能化傾向試験は、ゴムクラム100gあたり0.1、0.5、1、及び3gの配合物S+及び配合物S-で実施した。これらの実験では、ゴムクラム100gあたり3gを使用すると、機能化配合物が結合し、さらなる加工が容易になることがわかった。
【0094】
追加の硬化パッケージを含まない、マスターバッチ中の機能化配合物S-を含む機能化ゴムクラムのレオメトリーを
図3に示す。
図3からわかるように、ゴムクラムとNRバージン材料との間のいくらかの架橋がクラムのコーティングの3phrあたりで明確になるようである。3phrを超えるコーティング率は、最終加硫物にさらなる加硫特性を与えることが期待される。
【0095】
追加の硬化パッケージを含まない、マスターバッチ内の機能化配合物S+を含む機能化ゴムクラムのレオメトリーを
図4に示す。特に最終ゴム製品の加硫に非常に高いクラム比が必要な場合は、機能化配合物のより高いコーティング比も考慮し得る。
【0096】
図4からわかるように、コーティングがクラムの表面で一定の限界に達すると、混合物中にレオメトリー応答(トルクの上昇によって見られる)が生じる。明らかなように、レオメーターはコーティングの約1phrから水平になり始め、その後、残りのゴム(未加硫)が実際に加硫された証拠は、3%コーティングトレースでのトルク上昇から明らかである。これは、どのコーティング率でクラムと未加硫ゴムとの間の硬化相互作用を達成できるかを決定するために使用される。これは、最終的な加硫物の特性を調整し、長期保管が必要な場合に混合物の安定性を判断するために使用される。
【0097】
実施例5:NRマスターバッチを含有する機能化ゴムクラムの試験
機能化ゴムクラム対、対照ゴムクラムの違いを、バージンゴムマスターバッチの標準硬化パッケージを使用しながら、ベースラインNRマスターバッチ材料で評価した。
【0098】
【0099】
上記のゴムマスターバッチには、CBS1.2、ZnO2、及び硫黄1.6を含む標準硬化パッケージが含まれる。
【0100】
異なるゴムクラム材料を、対照ゴム70gあたり30gで導入した。
【0101】
3つのコンパウンドを調製した:1)標準硬化剤パッケージを含む対照マスターバッチ、2)非改質ゴムクラムを含む対照マスターバッチ、及び3)本発明の方法に従って調製された機能化ゴムクラムを含むマスターバッチ(PxActi8ベースの材料)。
図5からわかるように、またレオメーターのトレースによって実証されているように、このNRシステムでは、通常のクラムに対して機能化ゴムクラム材料に大きな違いが見られる。
【0102】
機能化ゴムクラムを含むNRマスターバッチの様々な動的及び物理的特性を検討した。
【0103】
図6からわかるように、ゴムクラムを含まないNRシステムのタンデルタ応答は、ゴムクラムを含有するシステムよりも低くなる。しかしながら、機能化ゴムクラムを含有する試料では、タンデルタによって測定される動的応答が改善されている。これは、クラムとバルクゴムとの間の硬化相互作用の兆候である。これの目的は、機能化クラムの動的応答を最大化し、他のクラム源を使用して現在達成されているものよりも優れた動的応答を備えたゴム加硫物を作成することである。
【0104】
図7及び
図8では、貯蔵弾性率はG’で表され、損失弾性率はG”で表される。log(G’)曲線で明らかなように、このゴムにクラムを導入すると貯蔵弾性率が増加することは明らかである。機能化ゴムクラムを含有する再活性化ゴムは、より高い伸長でわずかに高い貯蔵弾性率を有する。これは、この改質ゴムクラムと新しいゴム相との間の異なる相互作用の証拠である。同様に、log(G”)トレースの場合、損失弾性率はわずかに低くなり、再活性化ゴムクラムの損失弾性率がわずかに低いことを示す(これは望ましい特性変化である)。
【0105】
図9は、調製した実施例の応力対歪みデータを示す。
図9から、対照試料の応力歪み応答は、加硫物を含有する改質ゴムクラムよりも高いことがわかる。これは正常な結果である。機能化ゴムクラムを含有する再活性化ゴムの応力歪み応答は、より低い伸長部でより高く、これは、そのゴムクラムとバージンゴム相との間の加硫及び相互作用が改善された証拠である。これは望ましい結果であり、そのゴムの有効範囲での加工強度がより高いこと、すなわち、そのゴムの通常使用の伸び範囲での応力歪み応答がより高いことを意味する。
【0106】
実施例6:SBRマスターバッチを含有する機能化ゴムクラムの試験
機能化ゴムクラム対、対照ゴムクラムの違いを、バージンゴムマスターバッチで標準硬化パッケージを使用しながら、ベースラインSBRマスターバッチ材料で評価した。
【0107】
【0108】
標準硬化パッケージは、CBS1.2、ZnO2、及び硫黄1.6を含む上記ゴムマスターバッチに含まれる。
【0109】
やはり、異なるゴムクラム材料を、対照ゴム70gあたり30gで導入した。
【0110】
図10からわかるように、このSBR加硫物の場合、レオメーターの弾性率応答(トルク)が機能化ゴムクラムによって低下していることは明らかである。また、初期段階(スコーチ期間中)の加硫物のトルクもわずかに減少する。これは、溶融ゴムの粘性が低くなり、硬化する前に必要な形状に成形して押し出すことが容易になることを意味するため、望ましい特性である。
【0111】
機能化ゴムクラムを含むSBRマスターバッチの様々な動的及び物理的特性を検討した。
【0112】
図11からわかるように、SBR加硫物の場合、機能化ゴムクラムを含有する再活性化ゴムのタンデルタ応答は、1ラジアンまでの伸びで大幅に減少する。これは、このコンパウンドの転がり抵抗が低いことを意味するため、望ましい結果である(動的用途には重要である)。また明らかなことは、より高いゆがみ(ラジアン>1.5)では、再活性化ゴムは動的応答において通常のクラム充填材料と非常によく似た挙動を示すようであることである。これはおそらく、低ゆがみではより強い架橋相互作用が、高伸長では関係がなく、クラムの単純な物理的存在がその動力学に影響を与えているためであると考えられる。
【0113】
図12及び
図13からわかるように、これらの図は、機能化ゴムクラムを含有する再活性化ゴムの挙動が対照及びより低いゆがみ(望ましい特性)でのクラムを含む対照よりもどのようにより好ましいか、そして、より高いゆがみではクラムの通常の物理的存在に向かう傾向があることを示すタンデルタの結論を支持している。
【0114】
再活性化クラムの動的特性への影響は明らかである。低伸長(歪み)では通常のクラムのようには挙動しない。
【0115】
図14は、調製されたSBR実施例の応力対歪みデータを示す。
図14から、機能化ゴムクラムを含有するSBRマスターバッチの方がわずかに強いことがわかる。
【0116】
上で詳述した実験からわかるように、機能化ゴムクラムを含有するマスターバッチは、特に動的試験と物理試験の両方で、より低い範囲の伸長(歪み)での挙動に見られるように、より緊密に架橋されている。これは、ゴム加硫物の均質化が非常に良好であることを意味し、良好な加工特性につながることが期待される。
【0117】
本発明の例示的な実施形態のいくつかに関するこの上記の説明は、本発明がどのように作成され、実行され得るかを示すものである。当業者であれば、様々な詳細を改変してさらなる実施形態に到達することができるが、これらの実施形態の多くは本発明の範囲内にとどまることを理解するであろう。
【国際調査報告】