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特表2024-516462PPARモジュレーター及びウロリチン誘導体を含む組成物並びにその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-15
(54)【発明の名称】PPARモジュレーター及びウロリチン誘導体を含む組成物並びにその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20240408BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240408BHJP
   A61K 31/37 20060101ALI20240408BHJP
   A61K 31/195 20060101ALI20240408BHJP
   A61K 31/216 20060101ALI20240408BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K31/37
A61P43/00 111
A61K31/195
A61K31/216
A61P9/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568464
(86)(22)【出願日】2022-01-21
(85)【翻訳文提出日】2023-11-06
(86)【国際出願番号】 EP2022051382
(87)【国際公開番号】W WO2022233460
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】21305586.6
(32)【優先日】2021-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506424209
【氏名又は名称】ユニベルシテ ドゥ ボルドー
(71)【出願人】
【識別番号】516324917
【氏名又は名称】サントル・オスピタリエ・ユニベルシテール・ドゥ・ボルドー
(71)【出願人】
【識別番号】505386960
【氏名又は名称】アンスティテュト ナショナル ド ラ サンテ エ ド ラ ルシェルシュ メディカル (アンセルム)
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロシニョール,ロドリク
(72)【発明者】
【氏名】ダール,レティシア
(72)【発明者】
【氏名】ラコンブ,ディディエ
(72)【発明者】
【氏名】ディアス アモエド,ニベア
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA14
4C084ZA36
4C084ZC41
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA36
4C086ZC41
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206DB25
4C206DB43
4C206GA07
4C206GA28
4C206MA02
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZA36
4C206ZC41
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、医学の分野に属し、より正確には、原因となるミトコンドリア機能不全を伴う心疾患の治療に有用な医学の分野に属する。本発明は、PPARモジュレーターと、式(I)のウロリチン誘導体と、を含む、医薬組成物であって、式中、R、R、及びRが、独立して、H又はOHを表す、組成物、及び原因となるミトコンドリア機能不全を伴う心疾患に関係する様々な心疾患の治療におけるその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PPARモジュレーターと、式Iの化合物と、を含む、医薬組成物であって、
【化1】

式中、R、R及びRが、独立して、H又はOHを表す、医薬組成物。
【請求項2】
前記式Iの化合物が、ウロリチンA、B、及び/又はC、好ましくは、ウロリチンAである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記PPARモジュレーターが、PPARαアゴニスト、PPARγアゴニスト、PPARδアゴニスト、PPARデュアルアゴニスト(α/γ又はα/δ)、及びPPARパンアゴニスト(α/γ/δ)を含む群において選択される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記PPARモジュレーターが、ベザフィブラート又はフェノフィブラート、好ましくは、ベザフィブラートである、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
薬学的に許容される賦形剤を更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
12~1200mgのPPARモジュレーターを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
20~2000mgの式Iの化合物を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
薬剤として使用するための、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
原因となるミトコンドリア機能不全を伴う心疾患の治療又は予防に使用するための、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記心疾患が、一次遺伝的起源の原因となるミトコンドリア機能不全を伴う心疾患、二次遺伝的起源の原因となるミトコンドリア機能不全を伴う心疾患、及び薬剤のミトコンドリア毒性医原性効果によって引き起こされる心血管合併症から選択される、請求項9に記載の使用のための組成物。
【請求項11】
一次遺伝的起源の原因となるミトコンドリア機能不全を伴う前記心疾患が、バース症候群である、請求項10に記載の使用のための組成物。
【請求項12】
二次遺伝的起源の原因となるミトコンドリア機能不全を伴う前記心疾患が、コステロ症候群である、請求項10に記載の使用のための組成物。
【請求項13】
前記心疾患が、一次遺伝的起源の原因となるミトコンドリア機能不全を伴う心疾患であり、前記組成物が、12~1200mg/日のPPARモジュレーター、好ましくは、PPARαアゴニスト、より好ましくは、フィブラート、最も好ましくは、ベザフィブラート又はフェノフィブラート、及び20~2000mg/日の式Iの化合物、好ましくは、ウロリチンAの投与量範囲/レジメンで投与可能である、請求項10又は11に記載の使用のための組成物。
【請求項14】
前記心疾患が、二次遺伝的起源の原因となるミトコンドリア機能不全を伴う心疾患であり、前記組成物が、12~1200mg/日のPPARモジュレーター、好ましくは、PPARαアゴニスト、より好ましくは、フィブラート、最も好ましくは、ベザフィブラート又はフェノフィブラート、及び20~2000mg/日の式Iの化合物、好ましくは、ウロリチンAの投与量範囲/レジメンで投与可能である、請求項10又は12に記載の使用のための組成物。
【請求項15】
前記心疾患が、引き起こされる心疾患であり、薬剤のミトコンドリア毒性医原性効果によって引き起こされる心血管合併症であり、前記組成物が、12~1200mg/日のPPARモジュレーター、好ましくは、PPARαアゴニスト、より好ましくは、フィブラート、最も好ましくは、ベザフィブラート又はフェノフィブラート、及び20~2000mg/日の式Iの化合物、好ましくは、ウロリチンAの投与量範囲/レジメンで投与可能である、請求項10に記載の使用のための組成物。
【請求項16】
心臓にエネルギーを供給するための異化作用の活性化に使用するため、心臓機能を支持するための解糖、ピルビン酸酸化及び輸送、TCA回路、脂肪酸酸化、並びに酸化的リン酸化を通したエネルギー基質の変換に関与する分子機構の刺激に使用するため、かつ/又は心臓機能の刺激に関与するホルモン系の活性化に使用するための、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医学の分野に属し、より正確には、エネルギー代謝機能不全によって引き起こされる心疾患の治療に有用な医学の分野に属する。
【0002】
本発明は、PPARモジュレーター及びウロリチン誘導体を含む医薬組成物、並びに例えば、コステロ症候群及びバース症候群などの原因となるミトコンドリア機能不全を伴う心疾患に関係する様々な心疾患の治療におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
米国疾病対策予防センター(American Center for Diseases Control and Prevention
)によれば、心疾患は、米国における男性、女性、並びにほとんどの人種及び民族群の人々の主要な死因である。米国では36秒毎に1人が心血管疾患で死亡し、毎年約655,000人のアメリカ人が心疾患で死亡しており、これは4人に1人の死亡である。米国では、心疾患に2014年から2015年まで毎年約2190億ドルがかかっている。これには、医療サービスの費用、薬剤、及び死亡による生産性の損失が含まれる。
【0004】
ミトコンドリアは、心不全及び同様に他の心血管疾患の病因及び進行における中心的因子として浮上しているが、ミトコンドリア機能不全を予防、軽減、又は治療するために利用可能な治療法はない。米国国立心肺血液研究所(National Heart,Lung,and Blood Institute)は、2018年8月に、心不全、心血管疾患、及びミトコンドリア研究における主要な専門家のグループを招集した[非特許文献1]。これらの専門家らは、ミトコンドリア機能不全及びエネルギー欠乏が、肥大型心筋症(hypertrophic cardiomyopathy、HCM)及び心不全の発症に強く関与していると
結論付けた[非特許文献2]。HCMを有する患者に実施されたオミクス研究は、撹乱された代謝シグナル伝達及びミトコンドリア機能不全が、多様な遺伝的起源のHCMを有する患者における一般的な病原性機構であることを示唆し、代謝機能の改善及びミトコンドリア損傷の低減を通して臨床疾患を減弱させる可能性を強調した[非特許文献3]。
【0005】
ガイドラインに準じた治療法の使用にもかかわらず、心不全の罹患率及び死亡率は、許容できないほど高いままである。したがって、新規の治療アプローチが大いに必要とされている。これに関連して、心疾患におけるミトコンドリア機能不全及びエネルギー代謝を標的とすることは、心疾患の予防及び治療のための新規のアプローチを提供し得る。更に、不完全な脂肪酸酸化、異常なミトコンドリア構造、呼吸器機能不全、及びマイトファジークリアランスを上方調節できないことを含む、ミトコンドリア機能不全が、多様な遺伝的起源のHCMの進行の初期段階で検出されたため[非特許文献3]、これらの代謝変化及びミトコンドリア機能不全を標的とするHCM治療法が、疾患の初期段階で提案され得る。心不全の原因は、多数であり、例えば、冠状動脈疾患(アテローム性動脈硬化症)、過去の心臓発作(心筋梗塞)、高血圧(高血圧症又はHBP(high blood pressure))
、異常な心臓弁、心筋疾患(拡張型心筋症、肥大型心筋症)又は炎症(心筋炎)、重症肺疾患、糖尿病、肥満、睡眠時無呼吸、及び出生時に存在する心臓欠陥(先天性心疾患)が挙げられる。多数の稀な遺伝的欠陥が、いくつかある症状の中でも特に心疾患及び心不全の原因となる。そのような病状は、例えば、ミトコンドリア病、又はRASopathy(ラソパシー)である。
【0006】
RAS/MAPKシグナル伝達を活性化する生殖系列変異は、米国だけで400,000人を超える個人に影響を及ぼす稀なヒト発達疾患の群である、「RASopathy」
の原因となる[非特許文献4]。コステロ症候群(Costello syndrome、CS)は、19
71年に発見された最初のRASopathyであり[非特許文献5]、HRASにおけるヘテロ接合型活性化生殖系列変異によって引き起こされる多発性先天性異常症候群として説明された。CSに罹患したほとんどの個人は、G12位においてHRASの変異を持ち、CS個人の80%超は、p.G12S置換を有する。第2の最も一般的な置換は、p.G12Aである[非特許文献6~7]。これらの変異は、HRASを構造的に(過)活性な状態で維持する[非特許文献8]。RAS/MAPK経路活性化により、発達が変化し、CSを有するほとんどの小児は、出生時体重の増加、異形頭蓋顔面特徴、発育障害、及び特に新生児期の間の経口摂取嫌悪を伴う胃食道逆流を示す。Csはまた、深い足底及び手掌のしわとともに、手及び足の背側にわたって過剰なしわ及び冗長性を有する皮膚[非特許文献9]、並びに良性又は悪性腫瘍を発症するリスクの増加[非特許文献9~11]を伴い得る。
【0007】
CS及び他のRASopathyの中心的特徴は、肥大型心筋症(HCM)である[非特許文献12~13]。筋緊張低下などの筋骨格異常もCSにおいて報告された。更に、HCMは、トランスジェニック変異HRASマウスモデル又はHRASの構成的に活性な形態を発現する患者で観察されたが[非特許文献14~19]、HRAS活性化を心筋又は骨格筋機能不全と結びつける分子機構は、未知のままである[非特許文献20~21]。しかしながら、心臓の関与は、CSの予後の主要な決定因子のままであり[非特許文献22]、これらの患者の生活の質を改善し、合併症を軽減することが可能な適応した治療方略を提案する必要性をもたらしている。いくつかの証拠は、HCMが、典型的には、心臓の生体エネルギー変化によって引き起こされるエネルギー不足に関連することを示している[非特許文献23~24]。特に、酸化的リン酸化(oxidative phosphorylation、
OXPHOS)及び脂肪酸化(fatty oxidation、FAO)機構における遺伝的、環境的
、又は加齢関連の欠陥は、HCMにつながり得る[非特許文献25]。統合オミクス研究はまた、不完全な脂肪酸酸化、異常なミトコンドリア構造、呼吸器機能不全、及びマイトファジークリアランスを上方調節できないことを含む、ミトコンドリア機能不全が、多様な遺伝的起源のHCMの進行中の初期段階で検出されたことも示した[非特許文献3]。肥大型心筋症(HCM)は、多様な臨床症状及び経過を伴う不均一な心疾患である。HCMは、世界的に1/500の有病率を有する遺伝的障害であり、1年当たり0.5~1%の突然心臓死(sudden cardiac death、SCD)又は突然心停止(sudden cardiac arrest、SCA)の発生率を有する。それはまた、心不全、不整脈、及び突然心臓死を含む、
重篤な有害転帰を伴う一般的な遺伝性心疾患である。
【0008】
米国心臓協会(American Heart Association)によれば、「ミトコンドリア機能の変化は、心筋梗塞及び心筋症を呈する患者における寄与因子としてますます認識されている」[非特許文献26]。したがって、CSは、HCMの発症に関与する心臓生体エネルギー及びミトコンドリア生理の初期変化を含み得ることが仮定された。この仮説はまた、乱れたOXPHOSの生化学的徴候を検出した様々なRas-MAPK経路欠陥を有する18人の患者の前向きスクリーニング[非特許文献27]、及びミトコンドリア病とRASopathyとの間の臨床症状の部分的重複[非特許文献28]に基づいていた。
【0009】
心臓生体エネルギーは、OXPHOSに強く依拠し、心拍機能は、ミトコンドリアATP合成の流束に線形従属する[非特許文献29~30]。更に、細胞小器官生合成及び分解を含むミトコンドリア代謝回転の調節は、心臓生理学における生体エネルギー制御の主要な部位である[非特許文献31~32]。ミトコンドリア生合成は、主要調節因子5’AMP活性化タンパク質キナーゼ(AMP-activated protein kinase、AMPK)によって大部分が制御される、1,136個の遺伝子のセットの協調的発現を必要とする[非特許文献33]。簡潔には、AMPK刺激は、特異的転写因子と協働してミトコンドリア生合成を促進する転写コアクチベーターである、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γコ
アクチベーター1-α(peroxisome proliferator-activated receptor gamma coactivator 1-alpha、PGC1α)の活性化を誘導する[非特許文献34]。AMPK活性化はまた、細胞小器官生合成と併せてミトコンドリア分解を促進し、ミトコンドリアの質及び機能の正味の増加をもたらす[非特許文献35~36]。HCM病態生理学におけるAMPK及びミトコンドリア代謝回転の中心的役割は、AMPKα2[非特許文献37]、PGC1α[非特許文献31~32]、NRF2[非特許文献38]、ERRα[非特許文献39]、又はPPARα[非特許文献40]に対するトランスジェニックマウスノックアウトを使用してインビボで実証された。全てのマウスモデルは、不完全なミトコンドリア代謝回転、品質管理、及び生体エネルギーによって引き起こされるHCMを(安静時に、又はストレス下で)発症した。最後に、ミトコンドリア生合成は、創薬可能なプロセスであり、AMPK又はPGC1αの薬理学的活性化因子は、前臨床研究においてHCM発症を予防する[非特許文献41~44]。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Circulation.2019;140:1205-1216
【非特許文献2】10.1016/j.bbamcr.2010.09.006/doi:10.1056/NEJMra063052/doi:10.1172/JCI12084。
【非特許文献3】Circulation.2021;144:1714-1731.DOI:10.1161/CIRCULATIONAHA.121.053575。
【非特許文献4】Simanshu DK,Nissley D V.,McCormick F.RAS Proteins and Their Regulators in Human Disease.Cell 2017;170(1):17-33。
【非特許文献5】Costello J.A new syndrome.N Z Med J 1971;74:397。
【非特許文献6】Aoki Y et al.Germline mutations in HRAS proto-oncogene cause Costello syndrome.[Internet].Nat.Genet.2005;37(10):1038-40。
【非特許文献7】Tidyman WE,Rauen KA.Noonan,Costello and cardio-facio-cutaneous syndromes:dysregulation of the Ras-MAPK pathway.Expert Rev.Mol.Med.2008;10。
【非特許文献8】Gibbs JB,Sigal IS,Poe M,Scolnick EM.Intrinsic GTPase activity distinguishes normal and oncogenic ras p21 molecules..Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.1984;81(18):5704-5708。
【非特許文献9】Siegel DH,Mann JA,Krol AL,Rauen KA.Dermatological phenotype in Costello syndrome:consequences of Ras dysregulation in development:Dermatological phenotype and Ras dysregulation in Costello syndrome.Br.J.Dermatol.2012;166(3):601-607。
【非特許文献10】Gripp KW.Tumor predisposition in Costello syndrome.Am.J.Med.Genet.Part C Semin.Med.Genet.2005;137C(1):72-77。
【非特許文献11】Estep AL,Tidyman WE,Teitell MA,Cotter PD,Rauen KA.HRAS mutations in Costello syndrome:detection of constitutional activating mutations in codon 12 and 13 and loss of wild-type allele in malignancy.Am.J.Med.Genet.A 2006;140(1):8-16。
【非特許文献12】Lin AE et al.Clinical,pathological,and molecular analyses of cardiovascular abnormalities in Costello syndrome:A Ras/MAPK pathway syndrome.Am.J.Med.Genet.Part A 2011;155(3):486-507。
【非特許文献13】Siwik ES,Zahka KG,Wiesner GL,Limwongse C.Cardiac disease in Costello syndrome.[Internet].Pediatrics 1998;101(4 Pt 1):706-9。
【非特許文献14】Wei B-R et al.Capacity for resolution of Ras-MAPK-initiated early pathogenic myocardial hypertrophy modeled in mice.[Internet].Comp.Med.2011;61(2):109-18。
【非特許文献15】Hunter JJ,Tanaka N,Rockman HA,Ross J,Chien KR.Ventricular expression of a MLC-2v-ras fusion gene induces cardiac hypertrophy and selective diastolic dysfunction in transgenic mice.[Internet].J.Biol.Chem.1995;270(39):23173-8。
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【非特許文献40】Luptak I et al.Decreased contractile and metabolic reserve in peroxisome proliferator-activated receptor-alpha-null hearts can be rescued by increasing glucose transport and utilization.[Internet].Circulation 2005;112(15):2339-46。
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【非特許文献42】Meng R-S et al.Adenosine monophosphate-activated protein kinase inhibits cardiac hypertrophy through reactivating peroxisome proliferator-activated receptor-α signaling pathway[Internet].Eur.J.Pharmacol.2009;620(1-3):63-70。
【非特許文献43】Thandapilly SJ et al.Resveratrol Prevents the Development of Pathological Cardiac Hypertrophy and Contractile Dysfunction in the SHR Without Lowering Blood Pressure[Internet].Am.J.Hypertens.2010;23(2):192-196。
【非特許文献44】Huang Y et al.The PPAR pan-agonist bezafibrate ameliorates cardiomyopathy in a mouse model of Barth syndrome[Internet].Orphanet J.Rare Dis.2017;12(1):49。
【非特許文献45】Takada & Makoto Makishima (2020),a patent review (2014-present),Expert Opinion on Therapeutic Patents,30:1,1-13,DOI:10.1080/13543776.2020.1703952;
【非特許文献46】Kimmel CB,Ballard WW,Kimmel SR,Ullmann B,Schilling TF.Stages of embryonic development of the zebrafish.[Internet].Dev.Dyn.1995;203(3):253-310。
【非特許文献47】Santoriello C et al.Expression of H-RASV12 in a zebrafish model of Costello syndrome causes cellular senescence in adult proliferating cells[Internet].Dis Model..Mech.2009;2(1-2):56-67。
【非特許文献48】Zaza Khuchua,Zou Yue,Lorene Batts,Arnold W Strauss A zebrafish model of human Barth syndrome reveals the essential role of tafazzin in cardiac development and function.Circ Res.2006 Jul 21;99(2):201-8.doi:10.1161/01.RES.0000233378.95325.ce。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
それでも、心臓におけるミトコンドリア及び細胞質エネルギー代謝を刺激するため、かつミトコンドリア含量の低減及び/又は不完全な細胞小器官の代謝回転並びに品質管理を救済するために診療所で利用可能な治療は存在しない。RASopathy及び遺伝的又は化学的起源のミトコンドリア病における心疾患の予防及び治療のために、ミトコンドリア機能不全を予防及び救済するという主要な満たされていない必要性が存在する[非特許文献1]。したがって、上記に列挙された問題を解決する組成物の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本出願人は、心臓及び同様に他の組織におけるミトコンドリア代謝回転及びエネルギー代謝を刺激するため、かつミトコンドリア有効性の低減及び/又は不完全な細胞小器官生体エネルギー、生合成、代謝回転、動態、タンパク質恒常性、並びに品質管理を救済するために治療として使用され得る化合物の組み合せを含む、新しい医薬組成物を開発した。
【発明の効果】
【0013】
したがって、本発明による組成物は、RASopathy及びミトコンドリア病だけでなく、細胞小器官組成、代謝回転、品質管理、タンパク質恒常性、シグナル伝達、動態、燃料供給及び有効性、並びにREDOX恒常性におけるミトコンドリア変化に起因する、原因となる生体エネルギー欠乏を伴う心疾患においても、心疾患の予防及び治療のためにミトコンドリア機能不全を予防及び救済する必要性を満たす。したがって、本発明による組成物は、上記に列挙された問題を部分的又は完全に解決する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】コステロゼブラフィッシュにおいて正常な表現型を回復させることが可能なベザフィブラート及びウロリチンAの組み合わせを表す。(A).対照(control、CTRL)ゼブラフィッシュ(i)、又はDMSO(ii)、ベザフィブラート(iii)、ウロリチンA(iv)、若しくは組み合わせたベザフィブラート(bezafibrate、BZ)及びウロリチンA(urolithin A、UA)(v-vi)を用いた治療の4日後(days of treatment、dpt)の5dpfにHRASV12プラスミドを注射したコステロ(Costello、CS)ゼブラフィッシュ(ii-vi)の表現型分析。コステロゼブラフィッシュは、心臓浮腫(ii、iii、iv矢印)、出血及び血管新生欠陥(ii、iv星印)を発症した。10μMのBZ及び5μMのUAの組み合せを用いた治療は、異常な胚の割合を有意に低減した(vi)。(B)HRASV12プラスミドの発現後の5dpfにコステロゼブラフィッシュで観察された表現型の説明。(C)DMSO、ベザフィブラート、又はウロリチンAを単独で、又は組み合わせて用いた治療の4日後のコステロゼブラフィッシュの生存率。データは、治療の1日目に対して正規化された。(D)DMSO、ベザフィブラート、又はウロリチンAを単独で、又は組み合わせて用いた治療の4日後のコステロゼブラフィッシュにおける外観の欠陥の割合。(E)対照又はHRASG12V胚におけるミトコンドリアタンパク質TOM20の発現レベル。ウェスタンブロットによって決定されたTOM20タンパク質含量は、総タンパク質含量に対して正規化された。
図2】CSゼブラフィッシュモデルの分子特性評価を表す。A)受精期後5日目及び治療の4日後の胚におけるHRASV12プラスミドの発現の観察。心臓浮腫を示すコステロゼブラフィッシュ動物由来の胚(A~C)。それぞれ、20μM(D~F)又は10μM及び5μM(G~I)におけるベザフィブラート及びウロリチンAを用いた併用治療後に欠陥を示さないコステロゼブラフィッシュ動物由来の胚は、DMSOで治療された胚と同じレベルでプラスミドHRASV12:GFPを発現する。B)TOM20(細胞小器官含量のミトコンドリアタンパク質マーカー)の測定が、全ゼブラフィッシュでウェスタンブロットによって実施された。注射された対照又はコステロ動物が使用され、それぞれ、CTRL又はHRASG12Vと命名された。ゼブラフィッシュは、単独で、又は組み合わせて、ベザフィブラート(BZ)又はウロリチンA(UA)で治療された。TOM20発現は、異なる試料中の総タンパク質含量に対して正規化された。
図3】非標的無標識プロテオミクスによるベザフィブラート+ウロリチンA(BZ+UA)の作用機序分析を表す。BZ 10μM+UA 5μMで治療された全CSゼブラフィッシュが、タンパク質溶解物を取得するため、かつ非標的無標識プロテオミクス分析を実施するために使用された。示差的プロテオームのデータは、ボルケーノプロットとして示された。各タンパク質のlog2倍率変化が、横座標(治療/未治療)に示され、-log10p値が、Y軸上に示される。有意性閾値は、-logp値>1.3に設定された。データは、表2でも要約される。
図4】示差的プロテオミクス研究(治療対未治療コステロゼブラフィッシュ)から取得された未加工データの経路分析を表す。示差的プロテオミクスデータは、ミトコンドリア変化並びに心臓及び発達欠陥の観察された救済に関与する代謝経路及びシグナル伝達経路を同定するために、IPa(Qiagen)を使用して分析された。検出された経路は、活性化Zスコア及び治療動物と未治療動物との間の差の有意性(-log(p値))を使用してランク付けされた。
図5】バース症候群のゼブラフィッシュモデルにおけるベザフィブラート+ウロリチンA(BZ+UA)治療の有効性を表す。このモデルは、モルホリノ標的化タファジン(Taffazin、TAZ)を使用して生成され、対照ゼブラフィッシュ(CTL)と比較された。(A)生存率が、受精後5日目に測定され、毒性表現型が、以下の欠陥のうちの1つ:心膜浮腫、血液循環欠陥、低血流束、心出血、脳出血、壊死、運動性欠陥、及び大域的奇形を持つ胚の%として決定された。(B)心拍数が、3dpfに対照又はバース症候群動物でカイモグラフを使用して測定された。(C)心拍数は、1分当たりの拍動(beat per minute、BPM)として表され、TAZ動物における2回用量でのBZ+UAの組み合わせを用いた治療の3日後に測定された。破線は、対照(CTL)動物において測定された心拍数の値を示す。(D)駆出率(ejection fraction、FE)が、式:FE=(VTD-VTS)/VTDに従って、拡張期(VTD)又は収縮期(VTS)において決定された心室面積から計算された。各測定について、19>N>30である。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明による組成物は、PPARモジュレーター及びウロリチン誘導体を含む。
【0016】
本発明による組成物は、薬剤として、特に、原因となるミトコンドリア機能不全を伴う心疾患の治療において有用であることが証明されている。
【0017】
したがって、本発明の目的は、PPARモジュレーターと、式Iのウロリチン誘導体と、を含む、医薬組成物であり、
【0018】
【化1】
【0019】
式中、R、R及びRは、独立して、H又はOHを表す。
【0020】
本明細書では、「式Iのウロリチン誘導体」とは、「式Iの化合物」を意味する。
【0021】
有利には、式Iのウロリチン誘導体は、ウロリチンA(R及びR=OH、かつR=H)、B(R=OH、かつR及びR=H)、及び/又はC(R、R及びR=OH):
【0022】
【化2】
【0023】
であり得る。式Iのウロリチン誘導体は、好ましくは、ウロリチンAであり得る。
【0024】
本発明に関連して、「PPARモジュレーター」とは、異なるPPAR受容体のいずれか又は全てのアゴニストを意味する。
【0025】
有利には、PPARモジュレーターは、PPARαアゴニスト、PPARγアゴニスト、PPARδアゴニスト、PPARデュアルアゴニスト(α/γ又はα/δ)、及びPPARパンアゴニスト(α/γ/δ)を含む群において選択され得る。PPARモジュレーターは、PPARαアゴニスト、PPARγアゴニスト、PPARδアゴニスト、PPARデュアルアゴニスト(α/γ又はα/δ)、及びPPARパンアゴニスト(α/γ/δ)から選択され得る。
【0026】
「PPARαアゴニスト」とは、PPARα受容体媒介性シグナル伝達経路の刺激剤を意味する。
【0027】
「PPARγアゴニスト」とは、PPARγ受容体媒介性シグナル伝達経路の刺激剤を意味する。
【0028】
「PPARδアゴニスト」とは、PPARδ受容体媒介性シグナル伝達経路の刺激剤を意味する。
【0029】
有利には、PPARモジュレーターは、表1からのいずれか1つ以上から選択され得る。
【0030】
【表1】
【0031】
有利には、PPARモジュレーターは、その内容が参照により含まれる、Ichiro
Takada & Makoto Makishima(2020)[非特許文献45]からの論説に記載されているPPARモジュレーターのうちのいずれかであり得る。したがって、PPARモジュレーターは、フェノフィブラート、ベザフィブラート、L165041、GW0742、GW501516、ピオグリタゾン、ロジグリタゾン、MRL24、9-ヒドロキシ-10(E)、12(E)-オクタデカジエン酸、4-ヒドロキシ-3,3-メチル吉草酸エチル、LY518674、ヘキサデカンアミド、パルミトイルエタノールアミド、9-オクタデセンアミド、GW7647、DY121、TZD塩、5-ヒドロキシ-4-フェニルブテノリド、安息香酸塩、フェニル酢酸塩、MTTB、INT131、LDT477、サログリタザール、エラフィブラノール、ラニフィブラノールを含む群から選択され得、Ichiro Takada & Makoto Makishima(2020)[非特許文献44]の上述の論文からの図3の化合物のうちのいずれかから選択され得る。
【0032】
有利には、PPARモジュレーターは、好ましくは、PPARαアゴニスト、より好ましくは、フィブラートから選択され得る。PPARモジュレーターは、好ましくは、ベザフィブラート又はフェノフィブラート、より好ましくは、ベザフィブラートであり得る。
【0033】
ベザフィブラートはまた、2-(4-{2-[(4-クロロベンゾイル)アミノ]エチル}フェノキシ)-2-メチルプロパン酸(CAS 41859-67-0)としても知られている。ベザフィブラートは、Bezalip(登録商標)という商標名で市販されている。ベザフィブラートは、成人及び小児における高脂血症を治療するために脂質低下剤として使用され得るフィブラート薬である。それはまた、血中のLDLコレステロール及びトリグリセリドを低下させ、HDLを増加させることに役立つことも知られている。
【0034】
フェノフィブラートは、プロパン-2-イル2-[4-(4-クロロベンゾイル)フェノキシ]-2-メチルプロパノエート(49562-28-9)としても知られている。フェノフィブラートは、例えば、Tricor、Fenoglide、又はLipofenなどの様々な商標名で市販されている。フェノフィブラートは、異常な血中脂質レベルを治療するために使用されるフィブラートクラスの薬剤である。
【0035】
L165041は、4-[3-(4-アセチル-3-ヒドロキシ-2-プロピルフェノキシ)プロポキシ]フェノキシ酢酸(CAS 79558-09-1)としても知られている。
【0036】
GW0742は、4-[2-(3-フルオロ-4-トリフルオロメチル-フェニル)-4-メチル-チアゾール-5-イルメチルスルファニル]-2-メチル-フェノキシ}-酢酸(CAS 317318-84-6)としても知られている。
【0037】
GW501516は、{4-[({4-メチル-2-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,3-チアゾール-5-イル}メチル)スルファニル]-2-メチルフェノキシ}酢酸(CAS 317318-70-0)としても知られている。
【0038】
ピオグリタゾンは、5-[[4-[2-(5-エチルピリジン-2-イル)エトキシ]フェニル]メチル]-1,3-チアゾリジン-2,4-ジオン(CAS 111025-46-8)としても知られている。
【0039】
ロシグリタゾンは、5-[[4-[2-[メチル(ピリジン-2-イル)アミノ]エトキシ]フェニル]メチル]-1,3-チアゾリジン-2,4-ジオン(CAS 155141-29-0)としても知られている。
【0040】
MRL24は、(S)-2-(3-((1-(4-メトキシベンゾイル)-2-メチル-5-(トリフルオロメトキシ)-1H-インドール-3-イル)メチル)フェノキシ)プロパン酸(CAS 393794-17-7)としても知られている。
【0041】
9-ヒドロキシ-10(E),12(E)-オクタデカジエン酸は、(10E,12Z)-9-ヒドロキシオクタデカ-10,12-ジエン酸(CAS 98524-19-7)としても知られている。
【0042】
LY518674は、2-メチル-2-[4-[3-[1-[(4-メチルフェニル)メチル]-5-オキソ-4H-1,2,4-トリアゾール-3-イル]プロピル]フェノキシ]プロパン酸(CAS 425671-29-0)としても知られている。
【0043】
ヘキサデカンアミド、そのCAS番号は、629-54-9である。
【0044】
パルミトイルエタノールアミドは、N-(2-ヒドロキシエチル)ヘキサデカンアミド(CAS 544-31-0)としても知られている。
【0045】
9-オクタデセンアミド、そのCAS番号は、3322-62-1である。
【0046】
GW7647は、2-[4-[2-[4-シクロヘキシルブチル(シクロヘキシルカルバモイル)アミノ]エチル]フェニル]スルファニル-2-メチルプロパン酸(CAS 265129-71-3)としても知られている。
【0047】
TZDは、チアゾリジンジオン又は1,3-チアゾリジン-2,4-ジオン(CAS 2295-31-0)としても知られている。
【0048】
5-ヒドロキシ-4-フェニルブテノリドに関して、「ブテノリド」は、そのIUPAC名フラン-2(5H)-オンでも知られている。
【0049】
MTTBは、(E)-2-(5-((4-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)キノリン-6-イル)メトキシ)-2-((4-(トリフルオロメチル)ベンジル)オキシ)-ベンジリデン)-ヘキサン酸としても知られている。
【0050】
サログリタザール、そのCAS番号は、495399-09-2である。
【0051】
エラフィブラノールは、GFT505としても知られている。
【0052】
ラニフィブラノールは、IVA-337としても知られている。
【0053】
有利には、本発明による組成物は、薬学的に許容される賦形剤を更に含み得る。薬学的に許容される賦形剤は、組成物の投与経路に応じて選択され得る。
【0054】
本発明による組成物は、任意の投与経路によって投与され得る。投与経路は、一般に、物質/薬剤/組成物が適用される場所によって分類される。有利には、本発明による組成物は、非経口又は経腸投与に好適であり得る。一般的な例としては、経口投与、静脈内注射、筋肉内注射、皮下注射、局所投与が挙げられる。好ましくは、投与経路は、経口投与であるか、又は胃腸プローブ(経鼻胃又は胃瘻造設手技)を介したものである。
【0055】
有利には、本発明による組成物は、溶液(好ましくは水溶液若しくは脂質軟質ゲル溶液)の形態、又は粉末(顆粒若しくは錠剤など)の形態であり得る。
【0056】
有利には、本発明による組成物が溶液であるとき、組成物は、溶媒を含み得る。溶媒は、例えば、水及び/又は有機溶媒であり得る。溶液は、水及び/又は有機溶媒の混合物を含み得る。溶液は、粉末、並びに水及び/又は有機溶媒を含む溶媒混合物から再構成され得る。
【0057】
有利には、薬学的に許容される賦形剤は、溶液又は粉末の形態である医薬組成物に好適な任意の賦形剤であり得る。薬学的に許容される賦形剤は、例えば、結合剤、崩壊剤、充填剤、分散剤、コーティング剤を含む群から選択され得る。有利には、本発明による組成物は、12~1200mgのPPARモジュレーター、好ましくは、PPARαアゴニスト、より好ましくは、フィブラートを含み得る。PPARモジュレーターは、より好ましくは、ベザフィブラート又はフェノフィブラートであり得る。
【0058】
有利には、本発明による組成物は、20~2000mgの式Iのウロリチン誘導体、好ましくは、ウロリチンAを含み得る。
【0059】
有利には、本発明による組成物は、12~1200mgのPPARモジュレーター、好ましくは、PPARαアゴニスト、より好ましくは、フィブラート、及び20~2000mgの式Iのウロリチン誘導体、好ましくは、ウロリチンAを含み得る。
【0060】
有利には、本発明による組成物は、20~2000mgの式Iのウロリチン誘導体、好ましくは、ウロリチンA、及び12~1200mgのPPARモジュレーター、好ましくは、PPARαアゴニスト、より好ましくは、フィブラートを含み得る。好ましくは、本発明による組成物は、20~2000mgのウロリチンA、及び12~1200mgのベザフィブラート又はフェノフィブラート、より好ましくは、ベザフィブラートを含み得る。
【0061】
本発明の組成物はまた、薬剤としても使用され得る。したがって、本発明はまた、薬剤として使用するための本発明による組成物も包含する。本発明は、本発明による組成物を
投与するステップを含む、治療の治療的又は予防的方法を包含する。
【0062】
有利には、本発明による組成物は、原因となるミトコンドリア機能不全を伴う心疾患の治療又は予防に使用され得る。したがって、本発明は、原因となるミトコンドリア機能不全を伴う心疾患の治療又は予防に使用するための本発明による組成物に関する。本発明は、本発明による組成物を投与するステップを含む、原因となるミトコンドリア機能不全を伴う心疾患の治療又は予防の治療的方法を包含する。
【0063】
「原因となるミトコンドリア機能不全を伴う心疾患」とは、部分的に、不完全な生体エネルギー並びに変化したミトコンドリア構造及び動態、タンパク質恒常性、並びにREDOX及びカルシウムシグナル伝達に起因する心臓障害を意味する。心疾患は、一次遺伝的起源の原因となるミトコンドリア機能不全を伴う心疾患、二次遺伝的起源の原因となるミトコンドリア機能不全を伴う心疾患、及び薬剤のミトコンドリア毒性医原性効果によって引き起こされる心血管合併症から選択され得る。
【0064】
有利には、一次遺伝的起源の原因となるミトコンドリア機能不全を伴う心疾患は、MELAS(Mitochondrial Encephalomyopathy Lactic Acidosis and Stroke-like Episodes、ミトコンドリア脳筋症乳酸アシドーシス及び卒中様発作)、リー症候群MERRF(Myoclonic Epilepsy and Ragged-Red Fiber Disease、ミオクローヌスてんかん及び赤色ぼ
ろ線維病)、MIDD(Maternally inherited diabetes-deafness syndrome、母性遺伝
性糖尿病性難聴症候群)、NARP(Neuropathy, Ataxia, and Retinitis Pigmentosa、神経障害、運動失調、及び網膜色素変性症)、GRACILE(胎児発育遅延(fetal growth restriction、GR)、アミノ酸尿症(aminoaciduria、A)、胆汁うっ滞(cholestasis、C)、鉄過剰負荷(iron overload、I)、乳酸アシドーシス(lactacidosis、L
)、及び早期死亡(early death、E))、MNGIE(Myoneurogastointestinal Disorder and Encephalopathy、筋神経胃腸管障害及び脳症)、バース症候群、LHON(Leber Hereditary Optic Neuropathy、レーバー遺伝性視神経症)、ピアソン症候群、カーン
ズ・セイヤー症候群、CPEO(Chronic Progressive External Ophthalmoplegia Syndrome、慢性進行性外眼筋麻痺症候群)、フリードライヒ運動失調症、CoQ10欠乏症、
3-メチルグルタコン酸尿症、センジャーズ症候群、ウォルフ・パーキンソン・ホワイト(Wolff-Parkinson White、WPW)症候群、先天性白内障・肥大型心筋症・ミトコンド
リアミオパチー症候群、β酸化欠損(LCAD、LCHAD、MAD、MCAD、SCAD、SCHAD、VLCAD)、カルニチン-アシル-カルニチン欠乏症、クレアチニン欠乏症候群、大脳白質萎縮症、アルパース病、ポリメラーゼγ(Polymerase Gamma、POLG)関連障害から選択され得る。好ましくは、一次遺伝的起源の原因となるミトコンドリア機能不全を伴う心疾患は、バース症候群及びβ酸化欠損から選択され得る。
【0065】
有利には、一次遺伝的起源の原因となるミトコンドリア機能不全を伴う心疾患の治療又は予防に使用するための組成物は、12~1200mg/日のPPARモジュレーター、好ましくは、PPARαアゴニスト、より好ましくは、フィブラート、最も好ましくは、ベザフィブラート又はフェノフィブラート、及び20~2000mg/日の式Iのウロリチン誘導体、好ましくは、ウロリチンAの投与量範囲/レジメンで投与され得る。
【0066】
有利には、一次遺伝的起源の原因となるミトコンドリア機能不全を伴う心疾患の治療又は予防に使用するための組成物は、12~1200mg/日のベザフィブラート又はフェノフィブラート、好ましくは、ベザフィブラート、及び20~2000mg/日のウロリチンAの用量範囲/レジメンで投与され得る。
【0067】
有利には、二次遺伝的起源の原因となるミトコンドリア機能不全を伴う心疾患は、コステロ症候群、心臓・顔・皮膚症候群、神経線維腫症1型、レジウス症候群、ヌーナン症候
群、多発性黒子を伴うヌーナン症候群、及び毛細血管奇形・動静脈奇形症候群から選択され得る。二次遺伝的起源の原因となるミトコンドリア機能不全を伴う心疾患は、好ましくは、コステロ症候群であり得る。
【0068】
有利には、二次遺伝的起源の原因となるミトコンドリア機能不全を伴う心疾患の治療又は予防に使用するための組成物は、12~1200mg/日のPPARモジュレーター、好ましくは、PPARαアゴニスト、より好ましくは、フィブラート、最も好ましくは、ベザフィブラート又はフェノフィブラート、及び20~2000mg/日の式Iのウロリチン誘導体、好ましくは、ウロリチンAの投与量範囲/レジメンで投与され得る。
【0069】
有利には、二次遺伝的起源の原因となるミトコンドリア機能不全を伴う心疾患の治療又は予防に使用するための組成物は、12~1200mg/日のベザフィブラート又はフェノフィブラート、好ましくは、ベザフィブラート、及び20~2000mg/日のウロリチンAの用量範囲/レジメンで投与され得る。
【0070】
有利には、薬剤のミトコンドリア毒性医原性効果によって引き起こされる心臓血管合併症は、アルコール中毒薬(ジスルフィラムなど)、鎮痛薬及び抗炎症薬(アスピリン、アセトアミノフェンなど)、ジクロフェナック、フェノプロフェン、インドメタシン、ナプロセン、麻酔薬(ブピバカイン、リドカイン、プロポフォールなど)、狭心症薬(ペルヘキシリンなど)、アミオダロン、ジエチルアミノエトキシヘキセストロール(diethylaminoethoxyhexesterol、DEAEH)、抗不整脈薬(アミオダロンなど)、抗生物質(テトラサイクリン、アンチマイシンAなど)、抗鬱薬(アミトリプチリン、アモキサピン、シタロプラムなど)、フルオキセチン、抗精神病薬(クロルプロマジン、フルフェナジン、ハロペリドールなど)、不安症薬(アルプラゾラムなど)、ジアゼパム、バルビツール酸塩(アモバルビタールアプロバルビタール、ブタバルビタール、ブタルビタールヘキソバルビタール、メチルフェノバルビタール、ペントバルビタール、フェノバルビタール、プリミドン、プロポフォール、セコバルビタール、チオバルビタールなど)、コレステロール薬、スタチン(アトルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、シムバスタチンなど)、胆汁酸-コレスチルアミン、クロフィブラート、シプロフィブラート、コレスチポール、コレセベラム、がん(化学療法)の薬剤(マイトマイシンC、プロフィロマイシン、アドリアマイシン(ドキソルビシン及びヒドロキシダウノルビシンとも呼ばれ、以下の化学療法レジメン、ABVD、CHOP、及びFACに含まれる)など)、認知症薬(タクリン、ガランタミンなど)、及び糖尿病薬(メトフォルミン、トログリタゾン、ロシグリタゾン、ブホルミンなど)、HIV/AIDS薬(アトリプラなど)から選択される薬物によって引き起こされ得る。心血管合併症は、好ましくは、ドキソルビシン又はスタチンから選択される薬剤のミトコンドリア毒性医原性効果によって引き起こされ得る。
【0071】
有利には、薬剤のミトコンドリア毒性医原性効果によって引き起こされる心血管合併症の治療又は予防に使用するための組成物は、12~1200mg/日のPPARモジュレーター、好ましくは、PPARαアゴニスト、より好ましくは、フィブラート、最も好ましくは、ベザフィブラート又はフェノフィブラート、及び20~2000mg/日の式Iのウロリチン誘導体、好ましくは、ウロリチンAの投与量範囲/レジメンで投与され得る。
【0072】
有利には、薬剤のミトコンドリア毒性医原性効果によって引き起こされる心血管合併症の治療又は予防に使用するための組成物は、12~1200mg/日のベザフィブラート又はフェノフィブラート、好ましくは、ベザフィブラート、及び20~2000mg/日のウロリチンAの投与量範囲/レジメンで投与され得る。
【0073】
本発明の組成物はまた、心臓にエネルギーを供給するための異化作用の活性化に、心臓機能を支持するための解糖、ピルビン酸酸化及び輸送、TCA回路、脂肪酸酸化、並びに酸化的リン酸化を通したエネルギー基質の変換に関与する分子機構の刺激に、かつ/又は心臓機能の刺激に関与するホルモン系の活性化に使用され得る。したがって、本発明はまた、心臓にエネルギーを供給するための異化作用の活性化に、心臓機能を支持するための解糖、ピルビン酸酸化及び輸送、TCA回路、脂肪酸酸化、並びに酸化的リン酸化を通したエネルギー基質の変換に関与する分子機構の刺激に、かつ/又は心臓機能の刺激に関与するホルモン系の活性化に使用するための本発明による組成物も包含する。本発明は、心臓にエネルギーを供給するための異化作用の活性化、心臓機能を支持するための解糖、ピルビン酸酸化及び輸送、TCA回路、脂肪酸酸化、並びに酸化的リン酸化を通したエネルギー基質の変換に関与する分子機構の刺激、かつ/又は心臓機能の刺激に関与するホルモン系の活性化のステップを含む、治療の治療的又は予防的方法を包含する。
【実施例
【0074】
コステロ症候群のゼブラフィッシュモデルの生成、治療、及び分析。
ゼブラフィッシュ(Danio rerio)胚を自然産卵から取得し、胚培地(E3)(97)
中で28.5℃で育てた。胚を以前に記載されたように段階分けした[非特許文献46]。受精後5日(days post-fertilisation、dpf)から開始して、胚に毎日給餌した。
行われた全ての研究は、精査及び承認されている(F341725/21063-2019061317218694)。1nlの12.5ng/μlのGFP-H-RASV12プラスミド及び12.5ng/μlのT2トランスポザーゼmRNAを、ゼブラフィッシュの卵の最初の細胞に同時注射した。対照胚に、同量のPBSを注射した。H-RASV12を、受精後1日目(dpf)に37℃で30分の熱ショック下でゼブラフィッシュ胚において発現させ、2dpfにGFPを発現する胚を研究のために選択した。
【0075】
HRASV12プラスミドを注射した胚を、1dpfから5dpfまで毎日、それぞれ、20μMのベザフィブラート、20μMのウロリチンA、20μMのベザフィブラート+20μMのウロリチンA、10μMのベザフィブラート+5μMのウロリチンA、5μMのベザフィブラート+5μMのウロリチンAに浴することによって治療した。対照胚を、0.2%のDMSOに対応する同量のDMSOで治療した。プラスミド注射後の死亡率及び外観の欠陥の撮像及び表現型分析を、ZEISS axiocam立体顕微鏡(ZEISS,Germany)を使用して、受精後2日目、3dpf、4dpf、及び5dpfに、200mg/Lにおける3-アミノ安息香酸エチルメタンスルホン酸塩、MS-222(Sigma、カタログ番号A-5040)を使用して麻酔された生存胚に実施した。
【0076】
実施例1:ミトコンドリアタンパク質恒常性及び生体エネルギーモジュレーターが、コステロ症候群細胞及び動物モデルにおいてミトコンドリア恒常性を回復させる。
コステロ症候群は、HRAS/MAPK経路における生殖系列機能獲得型変異によって引き起こされる発達障害である。したがって、ミトコンドリア刺激の前臨床方略を疾患の初期段階で試験した。
【0077】
この目的のために、以前に記載されたように[非特許文献47]、CSのGFP-HRASV12ゼブラフィッシュモデル(図1)を生成した。HRASV12プラスミドを注射した胚を、そのGFP+/+発現に続いて受精後2日目(dpf)に選択した。HRASV12プラスミドを、37℃で30分間の胚の熱ショック下で活性化した。胚の生理的発達に対するHRASV12過剰発現の影響を分析するために、胚を2dpfから5dpfまで毎日観察した(図1A、B)。2dpfでは、HRASG12V胚の22%が死亡し、この割合は、増加して5dpfで60%の死亡率に達した。5dpfでは、生存胚のうち、60%が、以前に記載されたように[非特許文献47]、ヒト及びマウスで観察さ
れたものと同様の発達欠陥を示した(図1C)。心肥大(12%)、心臓の発達不良に関連する心臓及び心膜浮腫(12%)、並びに血流の低減(12%)によって特徴付けられる心臓表現型が観察された。脳出血(6%)、及びキュビエ管における浮腫、又は尿生殖器の開口部の周囲の尾部領域内の大動脈若しくは静脈の奇形につながる血管新生欠陥(12%)を含む、追加の表現型が観察された(図1A、B)。
【0078】
観察されたHRASG12V胚発達表現型の潜在的救済に対するミトコンドリアタンパク質恒常性モジュレーターの影響を分析するために、ベザフィブラート及び/又はウロリチンAをゼブラフィッシュ培地に添加した。動物表現型検査は、ベザフィブラート(BZ)又はウロリチンA(UA)治療が、それぞれ、ビヒクル治療(DMSO)HRASG12V胚(欠陥のある個体の60%)と比較して、生存率を最大70%及び65%増加させ、生存胚のうちで欠陥のある個体の数を減少させる(45%、43%)ことを明らかにした。興味深いことに、10μMのBZ及び5μMのUAの組み合わせは、ビヒクル治療胚と比較して、胚生存を最大+30%改善することによって治療の効率を有意に増加させ(図1C)、遺伝的発達欠陥を提示する動物の数を大幅に(3倍)削減した(図1D)。GFP蛍光発光のレベルを測定することによって、HRASV12プラスミドの発現を検証し、これにより、実験中の導入遺伝子の安定した発現、及びプラスミド発現に対する異なる治療の影響の不在が確認された(図2A)。治療後1日目(pt)から4dptまで、GFP強度は、対照胚並びに治療胚において一定のままであった。最後に、全胚に実施されたウェスタンブロットを使用したCSゼブラフィッシュモデルの分子的研究は、ミトコンドリアマーカーTOM20の2倍低減発現を明らかにした(図1E)。
【0079】
10μMのベザフィブラート+5μMのウロリチンAを含む組成物から構成された併用治療は、全胚におけるTOM20の発現レベルを回復させ、欠陥のある表現型を補正した(図1D、E)。
【0080】
これらの前臨床所見は、ミトコンドリアタンパク質恒常性を回復させ、コステロ症候群のゼブラフィッシュモデルで観察される遺伝的発達欠陥を低減するためにウロリチンA及びベザフィブラートを組み合わせることの有効性を実証する。これらの最初の所見は、ウロリチンA及びベザフィブラートの組み合せを使用したミトコンドリアタンパク質恒常性刺激が、ミトコンドリア機能不全を伴う稀な疾患及び一般的な疾患の治療に使用され得ることを示唆する。
【0081】
実施例2:CSゼブラフィッシュモデルの分子特性評価
GFP蛍光発光のレベルを測定することによって、HRASV12プラスミドの発現を検証し、これにより、実験中の導入遺伝子の安定した発現、及びプラスミド発現に対する異なる治療の影響の不在が確認された(図2A)。10μMのベザフィブラート+5μMのウロリチンAから構成された併用治療は、全胚におけるTOM20の発現レベルを回復させ、欠陥のある表現型を補正した(図2B)。
【0082】
これらの最初の所見は、ウロリチンA及びベザフィブラートの組み合せを使用したミトコンドリアタンパク質恒常性刺激が、ミトコンドリア代謝回転の変化を伴う稀な疾患及び一般的な疾患の治療に使用され得ることを示唆する。
【0083】
実施例3:コステロ症候群のモデルである全ゼブラフィッシュ動物でのプロテオミクス研究
インビボでのベザフィブラート+ウロリチンA(BZ+UA)の組み合せの作用機序において更なる洞察を得るために、低用量(BZ 10μM+UA 5μM)で治療されたコステロ症候群のモデルである、全ゼブラフィッシュ動物での非標的プロテオミクス研究を実施した。プロテオーム変化の未加工データが、ボルケーノプロットとして示される(
図3、表2)。各タンパク質について、倍率変化及びその有意性が、それぞれ、log2倍率変化及び-log10(p値)として示される。次いで、有意な変化(p<0.05)があるタンパク質を、Ingenuity経路分析(Qiagen)データベース及びソフトウェアを使用して分析し、BZ+UA治療によって変化したシグナル伝達経路及び代謝経路を同定した(図4)。
【0084】
この非標的分析は、以下の3つの主要な機構から構成されるBZ+UA治療の作用様式を同定した:
(1)心臓にエネルギーを供給するための異化作用の活性化、
(2)心臓機能を支持するための酸化的リン酸化を通したエネルギー基質の変換に関与する分子機構の刺激、及び
(3)心臓機能の刺激に関与するホルモン系の活性化。
【0085】
これらの3つの構成要素が、以下で更に記載される。
(1)心臓にエネルギーを供給するための異化作用の活性化:プロテオーム変化は、自食作用、Hif1αシグナル伝達、NRF2媒介性酸化ストレス応答、AMPKシグナル伝達、及びLXR/RXRシグナル伝達の刺激を明らかにした(図3及び図4)。これらの経路が組み合わさって、エネルギー基質及びATPを心臓に提供する。結果として、心臓の主なエネルギー変換経路である、脂肪酸酸化及びグルコース異化作用に関与する重要なタンパク質が、BZ-UA治療によって上方調節された(図3)。これらのタンパク質には、超長鎖3-オキソアシル-CoAレダクターゼ-A、短鎖脂肪酸デヒドロゲナーゼ、カルチニンO-パルミトイルトランスフェラーゼ、電子移動フラボタンパク質サブユニットα及びβ、ピルビン酸担体(MCT)、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、ヘキソキナーゼ、及びグリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼが含まれる。
【0086】
BZ+UAの組み合わせの作用機序についてのこの最初の所見は、BZ+UA治療が、原因となるミトコンドリア機能不全を伴う心疾患(上記に列挙される)の治療のために使用され得ることを示唆する。
【0087】
(2)解糖、ピルビン酸酸化及び輸送、TCA回路、脂肪酸酸化、並びに酸化的リン酸化を通したエネルギー基質の変換に関与する分子機構の刺激:BZ+UA治療は、Hsp70、Clpx、YME1様1b、Cox7a2、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ複合体集合因子1、及びDNAJ(Hsp40コシャペロン)としてのミトコンドリア品質管理の特異的成分、並びに選択されたプロテアソーム成分を刺激した。
【0088】
BZ+UAの組み合わせの作用機序のこの第2の構成要素は、BZ+UA治療が、原因となるミトコンドリア機能不全を伴う心疾患(上記に列挙される)の治療のために使用され得ることを更に示唆する。
【0089】
(3)心臓機能の刺激に関与するホルモン系の活性化:コステロゼブラフィッシュモデルにおいてインビボでBZ+UA治療によって誘導されたプロテオームの変化は、急性期応答シグナル伝達の活性化を明らかにした。この経路は、組織恒常性の回復を目的とする全身性応答を説明する。特に、全てのアンジオテンシンペプチドの唯一の前駆体であるアンジオテンシノーゲン(angiotensinogen、AGT)のレベルは、治療によってlog
倍率=4倍増加した。アンジオテンシンI(1-10)(AGTから産生される)も、log倍率=2.55倍増加した。アンジオテンシンI(1-10)は、Gタンパク質共役型受容体MAS1のリガンドであり、血管拡張効果、抗利尿効果、抗血栓効果、及び心臓保護効果を有する。
【0090】
これらの分子的所見は、原因となるミトコンドリア機能不全を伴う心疾患(上記に列挙される)の治療のためにBZ+UAの組み合わせを使用することを示唆する。
【0091】
要するに、BZ+UA作用機序の3つの構成要素の特異性及び相加性は、原因となるミトコンドリア機能不全を伴う心疾患(上記に列挙される)に、この治療を使用する理論的根拠を提供する。
【0092】
要するに、BZ+UA作用機序の3つの構成要素の特異性は、原因となるミトコンドリア機能不全を伴う心疾患(上記に列挙される)の治療において、PPARモジュレーター及び本発明による式Iの化合物を含む医薬組成物を使用する理論的根拠を提供する。
【0093】
【表2-1】
【0094】
【表2-2】
【0095】
【表2-3】
【0096】
【表2-4】
【0097】
実施例4:CSゼブラフィッシュモデル及びバース症候群
第2の例として、バース症候群のゼブラフィッシュモデルにおけるベザフィブラート+ウロリチンA(BZ+UA)治療の有効性が調査され、これは、最初にKhuchua et al,2006によって開発された[非特許文献48]。このモデルは、タファジンタンパク質(TAZ)を標的とするモルホリノを使用することによって取得された。TAZゼブラフィッシュは、心拍数の低減(braddychardy)及び心室の増大を特徴とする心臓欠陥を有する。TAZ動物は、より高い死亡率、並びに心膜浮腫、血液循環欠陥、低血流束、心出血、脳出血、壊死、運動性欠陥、並びに大域的奇形を含む、「毒性表現型率」と称される、より高い割合の表現型遺伝的異常を有する(図5A)。2つの異なる投与量におけるBZ+UAを用いた治療は、バース症候群ゼブラフィッシュにおける死亡率及び
毒性表現型の浸透度の両方を低減した。対照(CTL)と比較したバース症候群ゼブラフィッシュ(TAZ)で測定された心拍数の低減が、図5Bに示される。BZ+UAの組み合わせ(20μM+20μM)を用いた治療は、TAZゼブラフィッシュにおける心拍数を正規化した(図5C)。駆出率もまた、この治療によって増加した(図5D)。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】