(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-15
(54)【発明の名称】医薬製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4178 20060101AFI20240408BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240408BHJP
A61K 47/69 20170101ALI20240408BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240408BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240408BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20240408BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240408BHJP
A61P 21/02 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
A61K31/4178
A61K47/10
A61K47/69
A61K9/08
A61K9/14
A61K9/19
A61P29/00
A61P21/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568491
(86)(22)【出願日】2022-05-06
(85)【翻訳文提出日】2023-11-02
(86)【国際出願番号】 EP2022062307
(87)【国際公開番号】W WO2022234100
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2021-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523417527
【氏名又は名称】スペファーム アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】スミス サミュエル
(72)【発明者】
【氏名】エドワーズ ルーク
(72)【発明者】
【氏名】サンダース スザンナ
(72)【発明者】
【氏名】メンクッチーニ ロレンツォ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA30
4C076BB11
4C076CC01
4C076CC09
4C076CC47
4C076EE23
4C076EE39E
4C076FF15
4C076FF68
4C076GG06
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC38
4C086GA02
4C086GA07
4C086GA13
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA43
4C086MA44
4C086NA02
4C086NA10
4C086ZA07
4C086ZA94
(57)【要約】
ダントロレン又はその薬学的に許容される塩と、シクロデキストリンとを、1:3~1:12のモル比で含み、1500~6000の範囲の平均分子量を有するポリエチレングリコール(PEG)も含む、製剤。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダントロレン又はその薬学的に許容される塩と、シクロデキストリンとを、1:3~1:12のモル比で含み、1500~6000の範囲の平均分子量を有するポリエチレングリコール(PEG)も含む、製剤。
【請求項2】
ダントロレンの前記薬学的に許容される塩が、ナトリウム塩、任意選択的にヘミ七水和物ナトリウム塩又は無水ナトリウム塩である、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記シクロデキストリンが、5~10個のグルコースサブユニットを含有し、前記シクロデキストリンの前記グルコースサブユニットが、任意選択的にC
1~6アルキル基で置換されており、それ自体が任意選択的にヒドロキシル基又はスルホ基で置換されている、請求項1又は2に記載の製剤。
【請求項4】
前記シクロデキストリンの前記グルコースサブユニットが、C
2~4ヒドロキシアルキル基で置換されている、請求項3に記載の製剤。
【請求項5】
前記グルコースサブユニットが、2-ヒドロキシプロピル基で置換されている、請求項3又は4に記載の製剤。
【請求項6】
平均して、各シクロデキストリン分子が、4~8個の置換基、好ましくは5個の置換基を含有する、請求項3~5のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項7】
前記シクロデキストリンが、6個のグルコースサブユニット(α-シクロデキストリン)、7個のグルコースサブユニット(β-シクロデキストリン)又は8個のグルコースサブユニット(γ-シクロデキストリン)を含有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項8】
前記シクロデキストリンが、7個のグルコースサブユニット(β-シクロデキストリン)を含有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項9】
前記シクロデキストリンが、式Iのβ-シクロデキストリンであり、
【化1】
式中、各R置換基が、独立して、H、-CH
3、-CH
2CH(CH
3)OH、-(CH
2)
4SO
3Na及びヒドロキシエチルからなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項10】
各R置換基が、H及び-CH
2CH(CH
3)OHからなる群から独立して選択される、請求項9に記載の製剤。
【請求項11】
前記ダントロレン又はその薬学的に許容される塩と、前記シクロデキストリンとが、1:5~1:10のモル比で存在する、請求項1~10のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項12】
前記ダントロレン又はその薬学的に許容される塩と、前記シクロデキストリンとが、1:6~1:9.5のモル比で存在する、請求項1~11のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項13】
前記ダントロレン又はその薬学的に許容される塩と、前記シクロデキストリンとが、1:8.3~1:8.6のモル比で存在する、請求項1~12のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項14】
前記PEGが、3000~4000の範囲の平均分子量を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項15】
前記PEGが、PEG3000、PEG3350又はPEG4000である、請求項1~14のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項16】
前記PEGが、PEG3350である、請求項1~15のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項17】
前記PEGが、PEGのシクロデキストリンに対する重量/重量比が1:3~1:15であるような量で存在する、請求項1~16のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項18】
前記PEGが、PEGのシクロデキストリンに対する重量/重量比が1:5~1:12であるような量で存在する、請求項1~17のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項19】
前記PEGが、PEGのシクロデキストリンに対する重量/重量比が1:8~1:10、好ましくは1:8.5~1:9であるような量で存在する、請求項1~18のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項20】
ダントロレンナトリウムヘミ七水和物と、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンとを1:8.3~1:8.6のモル比で含み、PEG3350の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンに対する重量/重量比が1:8.5~1:9であるような量でPEG3350も含み、平均して、各2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン分子が、5個のヒドロキシプロピル基によって置換されている、請求項1~19のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項21】
液体製剤である、請求項1~20のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項22】
請求項21に記載の液体製剤を乾燥させることによって調製された、乾燥製剤。
【請求項23】
乾燥製剤である、請求項1~20のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項24】
凍結乾燥製剤である、請求項22又は23に記載の乾燥製剤。
【請求項25】
100~130mgのダントロレンナトリウムと、3000~4000mgの2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンと、350~450mgのPEG3350と、を含む、乾燥製剤。
【請求項26】
請求項22~25のいずれか一項に記載の乾燥製剤を薬学的に許容される溶媒に溶解することによって調製された、液体製剤。
【請求項27】
ダントロレン又はその薬学的に許容される塩と、シクロデキストリンとを、1:3~1:12のモル比で含み、1500~6000の範囲の平均分子量を有するPEGも含む、水溶液。
【請求項28】
ダントロレンの前記薬学的に許容される塩、前記シクロデキストリン及び前記PEGが、請求項1~20のいずれか一項に定義される通りである、請求項27に記載の水溶液。
【請求項29】
前記製剤又は前記溶液のpHが7.0より大きい、請求項21若しくは26に記載の液体製剤、又は請求項27若しくは28に記載の水溶液。
【請求項30】
前記製剤又は前記溶液のpHが8.0~10.0である、請求項21若しくは26に記載の液体製剤、又は請求項27若しくは28に記載の水溶液。
【請求項31】
水溶液であって、(i)6mg/mLのダントロレンナトリウムヘミ七水和物当量と、(ii)176.5mg/mLの2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンと、(iii)20mg/mlのPEG3350と、を含む、水溶液。
【請求項32】
水溶液であって、(i)5.3mg/mLのダントロレンナトリウムヘミ七水和物当量と、(ii)156.2mg/mLの2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンと、(iii)17.7mg/mlのPEG3350と、を含む、水溶液。
【請求項33】
バイアルであって、(i)101mgの無水ダントロレンナトリウム(120mgのダントロレンナトリウムヘミ七水和物に相当)と、(ii)3.530gの2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンと、(iii)400mgのPEG3350と、を含む、バイアル。
【請求項34】
医薬として使用するための、請求項1~26、29若しくは30のいずれか一項に記載の製剤、請求項27~32のいずれか一項に記載の水溶液、又は請求項33に記載のバイアル。
【請求項35】
悪性高熱症の治療に使用するための、請求項1~26、29若しくは30のいずれか一項に記載の製剤、請求項27~32のいずれか一項に記載の水溶液、又は請求項33に記載のバイアル。
【請求項36】
撹拌中の製剤における泡立ちを低減するための、1500~6000の範囲の平均分子量を有するPEGの使用であって、前記製剤が、(i)ダントロレン又はその薬学的に許容される塩と、(ii)シクロデキストリンと、を含み、前記ダントロレンと、前記シクロデキストリンとが、前記製剤中に1:3~1:12のモル比で存在し、前記PEGを更に含む前記製剤中の前記ダントロレンの溶解度が、PEGを含まない前記製剤中の前記ダントロレンの溶解度と比較して減少しない、使用。
【請求項37】
前記製剤が、請求項1~21、26、29又は30のいずれか一項に定義される通りである、請求項36に記載の使用。
【請求項38】
撹拌中の製剤における泡立ちを低減するための方法であって、前記製剤が、(i)ダントロレン又はその薬学的に許容される塩と、(ii)シクロデキストリンと、を含み、前記ダントロレンと、前記シクロデキストリンとが、前記製剤中に1:3~1:12のモル比で存在し、前記方法が、1500~6000の範囲の平均分子量を有するPEGを前記製剤に添加することを含み、前記PEGを更に含む前記製剤中の前記ダントロレンの溶解度が、前記PEGを含まない前記製剤中の前記ダントロレンの溶解度と比較して減少しない、方法。
【請求項39】
前記製剤が、請求項1~21、26、29又は30のいずれか一項に定義される通りである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
水性製剤を調製する方法であって、(i)乾燥製剤を提供するステップであって、(a)ダントロレン又はその薬学的に許容される塩と、(b)シクロデキストリンであって、前記ダントロレンと前記シクロデキストリンとが前記製剤中に1:3~1:12のモル比で存在する、シクロデキストリンと、(c)1500~6000の範囲の平均分子量を有するPEGと、を含む乾燥製剤を提供するステップと、(ii)前記乾燥製剤を水性溶媒と混合するステップと、(iii)前記混合物を撹拌して前記乾燥製剤を水性形態に変換するステップと、を含み、前記PEGの存在が、前記PEGを含有しない同等の製剤と比較して、前記混合物の撹拌中の泡立ちを減少させ、PEGを含む前記製剤中の前記ダントロレンの溶解度が、前記PEGを含有しない同等の製剤中のダントロレンの溶解度と比較して減少しない、方法。
【請求項41】
前記製剤が、請求項1~21、26、29又は30のいずれか一項に定義される通りである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
請求項1~20又は22~25のいずれか一項に記載の製剤を含有する第1の容器と、希釈剤を含有する第2の容器と、を含む、キット。
【請求項43】
悪性高熱症の治療に使用するための、請求項42に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダントロレンの改善された製剤に関する。より詳細には、排他的ではないが、本発明は、他の利点の中でも特に、改善された溶解度を有する改善されたダントロレン製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ダントロレン(1-({[5-(4-ニトロフェニル)フラン-2-イル]メチリデン}アミノ)イミダゾール-イジン-2,4-ジオン)は、一般にそのナトリウム塩形態のダントロレンナトリウムで使用され、慢性の重度の痙性及び悪性高熱症を緩和するために使用される骨格筋弛緩剤である。悪性高熱症は、揮発性麻酔薬及び全身麻酔に使用される脱分極神経筋遮断薬に対する骨格筋の遺伝的感受性である。罹患しやすい個体において、これらの薬物は、骨格の酸化代謝において劇的かつ制御されない増加を誘導する可能性があり、これにより、身体が酸素を供給し、二酸化炭素を除去し、体温を調節する能力を圧倒し、最終的に、迅速に治療されない場合には、循環虚脱及び死に至る。
【0003】
ダントロレンは、カルシウム流出に影響を与え、筋細胞における興奮収縮連関を減少させ、収縮プロセスの力の減少を引き起こすことによって、骨格筋に対してその効果を発揮する。
【0004】
ダントロレン(ダントロレンナトリウムとして)はまた、高線量の放射線に曝露された造血症候群患者における急性放射線症候群、精神刺激薬誘導性中毒(MDMA及びメタンフェタミン中毒)、労作性熱中症、脳震盪及び他の形態の外傷性脳損傷、神経剤誘導性脳障害、並びにコロナウイルス感染症(COVID-19)を含む他の状態の治療のために開発中である。
【0005】
ダントロレンは、良好な骨格筋弛緩剤であるが、水に難溶性であるため、その薬理学的効果は限られている。この乏しい溶解度により、静脈内投与に適した溶液の調製時の困難さ、及び有効な用量を送達するために短時間で多くの体積の溶液を投与する必要性が生じる。乏しい溶解度はまた、ダントロレンの薬学的に許容される塩に影響を与え、溶液中にある場合、遊離酸の形態で徐々に沈殿し、その溶液は、注射に対して許容できないものになる。
【0006】
シクロデキストリンは、α-1,4グリコシド結合によって結合されたグルコースサブユニットの環からなる環状オリゴ糖である。シクロデキストリンは、薬物送達及び安定化の観点を含め、食品産業及び製薬産業で様々な用途を有する。
【0007】
国際公開第2018/146187号には、ダントロレン又はその塩とシクロデキストリンとの複合体を含む医薬製剤が記載されている。しかしながら、国際公開第2018/146,187号の著者らは、製剤への更なる化合物の添加が、ダントロレンの溶解度を減少させることを見出した。
【0008】
したがって、水性溶媒中で改善された溶解度を有し、したがって、それを必要とする患者への薬物の投与を容易にする、ダントロレン及びその塩の製剤を提供することが依然として必要である。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、第1の態様によれば、ダントロレン又はその薬学的に許容される塩と、シクロデキストリンとを、1:3~1:12のモル比で含み、1500~6000の範囲の平均分子量を有するポリエチレングリコール(polyethylene glycol、PEG)も含む、製剤を提供する。
【0010】
本発明の第2の態様によれば、本明細書に記載の液体製剤を乾燥させることによって調製された、乾燥製剤が提供される。
【0011】
本発明の第3の態様によれば、100~130mgのダントロレンナトリウムと、3000~4000mgの2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンと、350~450mgのPEG3350と、を含む、乾燥製剤が提供される。
【0012】
本発明の第4の態様によれば、本明細書に記載の乾燥製剤を薬学的に許容される溶媒に溶解することによって調製された、液体製剤が提供される。
【0013】
本発明の第5の態様によれば、ダントロレン又はその薬学的に許容される塩と、シクロデキストリンとを、1:3~1:12のモル比で含み、1500~6000の範囲の平均分子量を有するPEGも含む、水溶液が提供される。
【0014】
本発明の第6の態様によれば、水溶液であって、(i)6mg/mLのダントロレンナトリウムヘミ七水和物当量と、(ii)176.5mg/mLの2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンと、(iii)20mg/mlのPEG3350と、を含む、水溶液が提供される。
【0015】
本発明の第7の態様によれば、水溶液であって、(i)5.3mg/mLのダントロレンナトリウムヘミ七水和物当量と、(ii)156.2mg/mLの2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンと、(iii)17.7mg/mlのPEG3350と、を含む、水溶液が提供される。
【0016】
本発明の第8の態様によれば、バイアルであって、(i)101mgの無水ダントロレンナトリウム(120mgのダントロレンナトリウムヘミ七水和物に相当)と、(ii)3.530gの2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンと、(iii)400mgのPEG3350と、を含む、バイアルが提供される。
【0017】
本発明の第9の態様によれば、医薬として使用するための、本明細書に記載の製剤、水溶液、又はバイアルが提供される。
【0018】
本発明の第10の態様によれば、悪性高熱症の治療に使用するための、本明細書に記載の製剤、水溶液、又はバイアルが提供される。
【0019】
当然のことながら、本発明の1つの態様に関係して説明された特徴が、本発明の他の態様に組み込まれてもよいことが理解されるであろう。例えば、本発明の製剤は、本発明の組成物及び方法を参照しつつ説明された特徴のいずれかを組み込んでもよく、逆もまた同様である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、ダントロレンの薬学的に許容される塩と、シクロデキストリンとを、1:3~1:12のモル比で含み、1500~6000の範囲の平均分子量を有するPEGも含む、製剤に関する。
【0021】
本発明は、ダントロレンの改善された製剤に関する。特に、本発明は、シクロデキストリン及び列挙された分子量範囲のポリエチレングリコール(PEG)を含むことにより、ダントロレンの良好な溶解度を有し、水溶液中で他の有益な特性も有する製剤をもたらすという驚くべき発見に基づく。これらの特性の両方の達成は、特に驚くべきことである。以前の開示は、シクロデキストリンが、ダントロレン又はその塩の溶解度を改善し得る一方で、更なる成分を含むことは強い悪影響を有し、改善された溶解度を打ち消してしまうことを報告している。本発明の製剤は、水溶液中で良好な溶解度及び他の有益な特性を同時に達成する。
【0022】
特に、本発明の製剤中に列挙された分子量範囲のPEGを含めることで、製剤の水溶液が撹拌されるときに泡立ちを減少させるか、又は防止する。このことは、本明細書に記載の溶液を「すぐに注射できる状態にする」のに必要な時間を短縮するという更なる利点を提供する。製剤(一般に乾燥製剤である)を水性溶媒と混合して、使用前に液体形態に変換する場合、一般に撹拌が必要である。このことは、ダントロレンが一般に使用される臨床状況(例えば、悪性高熱症の治療)において重要であり、薬物調製及び投与の迅速性が重要である。
【0023】
したがって、本発明の別の態様では、撹拌中の製剤における泡立ちを低減するためのPEGの使用であって、上述の製剤が、(i)ダントロレン又はその薬学的に許容される塩と、(ii)シクロデキストリンと、を含み、PEGを更に含む上述の製剤中のダントロレンの溶解度が、PEGを含まない上述の製剤中のダントロレンの溶解度と比較して減少しない、使用が提供される。更なる態様では、撹拌中の製剤における泡立ちを低減する際に使用するためのPEGであって、上述の製剤が、(i)ダントロレン又はその薬学的に許容される塩と、(ii)シクロデキストリンと、を含み、PEGを更に含む上述の製剤中のダントロレンの溶解度が、PEGを含まない上述の製剤中のダントロレンの溶解度と比較して減少しない、PEGが提供される。更なる態様では、撹拌中の製剤における泡立ちを低減するための方法であって、上述の製剤が、(i)ダントロレン又はその薬学的に許容される塩と、(ii)シクロデキストリンと、を含み、上述の方法が、PEGを上述の製剤に添加することを含み、PEGを更に含む上述の製剤中のダントロレンの溶解度が、PEGを含まない上述の製剤中のダントロレンの溶解度と比較して減少しない、方法が提供される。別の態様では、水性製剤を調製する方法であって、(i)ダントロレン又はその薬学的に許容される塩と、シクロデキストリンと、PEGとを含む乾燥製剤を提供するステップと、(ii)上述の乾燥製剤を水性溶媒と混合するステップと、(iii)上述の混合物を撹拌して乾燥製剤を水性形態に変換するステップと、を含み、PEGの存在が、PEGを含有しない同等の製剤と比較して、上述の混合物の撹拌中の泡立ちを減少させ、PEGを含む上述の製剤中のダントロレンの溶解度が、PEGを含有しない同等の製剤中のダントロレンの溶解度と比較して減少しない、方法が提供される。この段落に記載される本発明の態様では、ダントロレン、シクロデキストリン及びPEGは、本明細書の他の箇所に記載されるように定義され得る。したがって、本発明の別の態様では、撹拌中の製剤における泡立ちを低減するための、1500~6000の範囲の平均分子量を有するPEGの使用であって、上述の製剤が、(i)ダントロレン又はその薬学的に許容される塩と、(ii)シクロデキストリンと、を含み、上述のダントロレンと、上述のシクロデキストリンとが、上述の製剤中に1:3~1:12のモル比で存在し、PEGを更に含む上述の製剤中のダントロレンの溶解度が、PEGを含まない上述の製剤中のダントロレンの溶解度と比較して減少しない、使用が提供される。更なる態様では、撹拌中の製剤における泡立ちを低減する際に使用するための、1500~6000の範囲の平均分子量を有するPEGであって、上述の製剤が、(i)ダントロレン又はその薬学的に許容される塩と、(ii)シクロデキストリンと、を含み、上述のダントロレンと、上述のシクロデキストリンとが、上述の製剤中に1:3~1:12のモル比で存在し、上述のPEGを更に含む上述の製剤中のダントロレンの溶解度が、PEGを含まない上述の製剤中のダントロレンの溶解度と比較して減少しない、PEGが提供される。更なる態様では、撹拌中の製剤における泡立ちを低減するための方法であって、上述の製剤が、(i)ダントロレン又はその薬学的に許容される塩と、(ii)シクロデキストリンと、を含み、上述のダントロレンと、上述のシクロデキストリンとが、上述の製剤中に1:3~1:12のモル比で存在し、上述の方法が、1500~6000の範囲の平均分子量を有するPEGを上述の製剤に添加することを含み、上述のPEGを更に含む上述の製剤中のダントロレンの溶解度が、PEGを含まない上述の製剤中のダントロレンの溶解度と比較して減少しない、方法が提供される。別の態様では、水性製剤を調製する方法であって、(i)乾燥製剤を提供するステップであって、(a)ダントロレン又はその薬学的に許容される塩と、(b)シクロデキストリンであって、上述のダントロレンと上述のシクロデキストリンとが上述の製剤中に1:3~1:12のモル比で存在する、シクロデキストリンと、(c)1500~6000の範囲の平均分子量を有するPEGと、を含む乾燥製剤を提供するステップと、(ii)上述の乾燥製剤を水性溶媒と混合するステップと、(iii)上述の混合物を撹拌して乾燥製剤を水性形態に変換するステップと、を含み、PEGの存在が、PEGを含有しない同等の製剤と比較して、上述の混合物の撹拌中の泡立ちを減少させ、PEGを含む上述の製剤中のダントロレンの溶解度が、PEGを含有しない同等の製剤中のダントロレンの溶解度と比較して減少しない、方法が提供される。この段落に記載される本発明の態様では、製剤、ダントロレン、シクロデキストリン及び/又はPEGは、本明細書の他の箇所に記載されるように更に定義され得る。
【0024】
本発明の別の態様では、撹拌中の製剤における泡立ちを低減するためのPEGの使用であって、上述の製剤が、(i)ダントロレン又はその薬学的に許容される塩と、(ii)シクロデキストリンと、を含み、PEGを更に含む上述の製剤中のダントロレンの溶解度が、PEGを含むがシクロデキストリンを含まない同等の製剤中のダントロレンの溶解度と比較して向上する、使用が提供される。更なる態様では、撹拌中の製剤における泡立ちを低減する際に使用するためのPEGであって、上述の製剤が、(i)ダントロレン又はその薬学的に許容される塩と、(ii)シクロデキストリンと、を含み、PEGを更に含む上述の製剤中のダントロレンの溶解度が、PEGを含むがシクロデキストリンを含まない同等の製剤中のダントロレンの溶解度と比較して向上する、PEGが提供される。更なる態様では、撹拌中の製剤における泡立ちを低減するための方法であって、上述の製剤が、(i)ダントロレン又はその薬学的に許容される塩と、(ii)シクロデキストリンと、を含み、上述の方法が、PEGを上述の製剤に添加することを含み、PEGを更に含む上述の製剤中のダントロレンの溶解度が、PEGを含むがシクロデキストリンを含まない同等の製剤中のダントロレンの溶解度と比較して向上する、方法が提供される。別の態様では、水性製剤を調製する方法であって、(i)ダントロレン又はその薬学的に許容される塩と、シクロデキストリンと、PEGとを含む乾燥製剤を提供するステップと、(ii)上述の乾燥製剤を水性溶媒と混合するステップと、(iii)上述の混合物を撹拌して乾燥製剤を水性形態に変換するステップと、を含み、PEGの存在が、PEGを含有しない同等の製剤と比較して、上述の混合物の撹拌中の泡立ちを減少させ、PEGを含む上述の製剤中のダントロレンの溶解度が、PEGを含むがシクロデキストリンを含まない同等の製剤中のダントロレンの溶解度と比較して向上する、方法が提供される。この段落に記載される本発明の態様では、製剤、ダントロレン、シクロデキストリン及び/又はPEGは、本明細書の他の箇所に記載されるように定義され得る。したがって、本発明の別の態様では、撹拌中の製剤における泡立ちを低減するための、1500~6000の範囲の平均分子量を有するPEGの使用であって、上述の製剤が、(i)ダントロレン又はその薬学的に許容される塩と、(ii)シクロデキストリンと、を含み、上述のダントロレンと、上述のシクロデキストリンとが、上述の製剤中に1:3~1:12のモル比で存在し、上述のPEGを更に含む上述の製剤中のダントロレンの溶解度が、PEGを含むがシクロデキストリンを含まない同等の製剤中のダントロレンの溶解度と比較して向上する、使用が提供される。更なる態様では、撹拌中の製剤における泡立ちを低減する際に使用するための、1500~6000の範囲の平均分子量を有するPEGであって、上述の製剤が、(i)ダントロレン又はその薬学的に許容される塩と、(ii)シクロデキストリンと、を含み、上述のダントロレンと、上述のシクロデキストリンとが、上述の製剤中に1:3~1:12のモル比で存在し、上述のPEGを更に含む上述の製剤中のダントロレンの溶解度が、PEGを含むがシクロデキストリンを含まない同等の製剤中のダントロレンの溶解度と比較して向上する、PEGが提供される。更なる態様では、撹拌中の製剤における泡立ちを低減するための方法であって、上述の製剤が、(i)ダントロレン又はその薬学的に許容される塩と、(ii)シクロデキストリンと、を含み、上述のダントロレンと、上述のシクロデキストリンとが、上述の製剤中に1:3~1:12のモル比で存在し、上述の方法が、1500~6000の範囲の平均分子量を有するPEGを上述の製剤に添加することを含み、上述のPEGを更に含む上述の製剤中のダントロレンの溶解度が、PEGを含むがシクロデキストリンを含まない同等の製剤中のダントロレンの溶解度と比較して向上する、方法が提供される。別の態様では、水性製剤を調製する方法であって、(i)乾燥製剤を提供するステップであって、(a)ダントロレン又はその薬学的に許容される塩と、(b)シクロデキストリンであって、上述のダントロレンと上述のシクロデキストリンとが上述の製剤中に1:3~1:12のモル比で存在する、シクロデキストリンと、(c)1500~6000の範囲の平均分子量を有するPEGと、を含む乾燥製剤を提供するステップと、(ii)上述の乾燥製剤を水性溶媒と混合するステップと、(iii)上述の混合物を撹拌して乾燥製剤を水性形態に変換するステップと、を含み、PEGの存在が、PEGを含有しない同等の製剤と比較して、上述の混合物の撹拌中の泡立ちを減少させ、PEGを含む上述の製剤中のダントロレンの溶解度が、PEGを含むがシクロデキストリンを含まない同等の製剤中のダントロレンの溶解度と比較して向上する、方法が提供される。この段落に記載される本発明の態様では、製剤、ダントロレン、シクロデキストリン及び/又はPEGは、本明細書の他の箇所に記載されるように更に定義され得る。ダントロレンの溶解度の向上は、本明細書に記載の製剤(例えば、水性製剤)中、少なくとも0.3mg/ml、少なくとも0.33mg/ml、少なくとも0.5mg/ml、少なくとも1mg/ml、少なくとも1.5mg/ml、少なくとも2mg/ml、少なくとも2.5mg/ml、少なくとも3mg/ml、少なくとも3.5mg/ml、少なくとも4mg/ml、少なくとも4.5mg/ml、少なくとも5mg/ml、少なくとも5.3mg/ml又は少なくとも5.5mg/ml、例えば、約6mg/mlのヘミ七水和物当量のダントロレン溶解度として定義され得る。ダントロレンの溶解度の向上は、本明細書に記載の製剤(例えば、水性製剤)中、0.4mg/ml~10mg/ml、0.5mg/ml~10mg/ml、1mg/ml~10mg/ml、1.5mg/ml~10mg/ml、2mg/ml~10mg/ml、2.5mg/ml~10mg/ml、3mg/ml~10mg/ml、3.5mg/ml~10mg/ml、4mg/ml~10mg/ml、4.5mg/ml~10mg/ml、5mg/ml~10mg/ml、5.3~10mg/ml、5.5mg/ml~10mg/ml、0.5mg/ml~8mg/ml、0.5mg/ml~7mg/ml、0.5mg/ml~6mg/ml、1mg/ml~7mg/ml、1.5~7mg/ml、2mg/ml~7mg/ml、2.5mg/ml~7mg/ml、3mg/ml~7mg/ml、又は4mg/ml~6mg/mlのヘミ七水和物当量のダントロレン溶解度として定義され得る。
【0025】
更に、本発明の製剤はまた、より高濃度のダントロレン及び/又はより少ない再構成体積に達するダントロレンの液体製剤の調製を可能にし、したがって、患者への薬物の迅速な投与を更に容易にする。
【0026】
本発明者らはまた、pH調整成分又は緩衝成分を含む必要がないことを見出した。本明細書に記載の製剤は、pHに影響を及ぼす更なる成分を含む必要なく、所望の溶解度及び他の有益な効果を達成する。成分がより少なくてすむことで、必要とされ得る臨床的予防措置を減少させ、製品の規制上の考慮事項を単純化し、製剤の製造及び保管も単純化する。
【0027】
一般に、臨床使用のために、ダントロレン製品は、使用直前に溶媒を添加するための説明書と共に、バイアルで供給される。バイアルは、添加される溶媒の体積に適したサイズを有する。現在の製剤によって達成され得るよりも再構成体積が少なくなることは、より小さなバイアルを使用することができることを意味し、したがって、必要とされる病院での保管空間を更に減少させ、商品のコスト(cost of goods、CoG)も減少する。
【0028】
難溶性であるか、又はゆっくりとしか溶解しない活性成分の製剤では、活性成分を微粉化することが一般的である。本発明の製剤は、従来技術における一般的な場合よりも大きな粒径を有するダントロレンの使用を可能にする。これもまた、製剤のCoGを減少させる。
【0029】
ダントロレンは、以下の構造式によって表される遊離酸の形態で存在し得る。
【化1】
【0030】
より多くの場合に、ダントロレンは、薬学的に許容される塩(例えば、ナトリウム塩)の形態で使用される。ダントロレンナトリウムは、以下の構造式によって表され得る。
【化2】
【0031】
ダントロレンナトリウムの製剤は、当該技術分野において存在し、例えば、Norgine Pharmaceuticals Limited,Uxbridge,UKにおいて上市されているDANTRIUM(登録商標)IV 20mgである。
【0032】
ダントロレンの薬学的に許容される塩は、ダントロレン及びカチオン性対イオンの脱プロトン化形態を指す。本発明の一実施形態では、カチオン性対イオンは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アルキルアンモニウム、ポリアルキルアンモニウム、アリールアンモニウム、置換又は非置換キノリジニウム及び置換又は非置換ピリジニウムの群から選択される。
【0033】
本発明の一実施形態では、ダントロレンの薬学的に許容される塩は、ダントロレンアニオンに対するカチオン性対イオンが、好ましくは、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、生理学的に許容されるアミノ化合物のアンモニウム塩からなる群から選択され、特にアルギニン、リジン、メグルミン、トロメタミン、コリン、ベンジルトリメチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、N-メチルピリジニウム、テトラブチルアンモニウム、2-(2,3-ジヒドロキシ-1-プロイルアミノ(proylamino))-キノリジニウム、キノリジニウム、2-カルボニル-1-メチルピリジニウム、2,3-ジメチル-1-フェニル-4-トリメチル-アンモニウム-3-ピラゾリン-5-オン、ジメチルアンモニウム、1,3-ジメチルイミダゾリウム及び2-(1-ヒドロキシ-2-メチル)プロピルトリ-メチルアンモニウムからなる群から選択される、ダントロレンの塩類を指す。
【0034】
本発明の一実施形態では、ダントロレンの薬学的に許容される塩は、ダントロレンアニオンに対するカチオン性対イオンが、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム及びマグネシウムからなる群から選択される、ダントロレンの塩を指す。本発明の好ましい実施形態では、ダントロレンの薬学的に許容される塩は、ダントロレンアニオンに対するカチオン性対イオンがナトリウムであるダントロレンの塩、すなわち、ダントロレンのナトリウム塩(ダントロレンナトリウムとも呼ばれる)を指す。本発明の特に好ましい実施形態では、ダントロレンの薬学的に許容される塩は、ナトリウム塩のヘミ七水和物(すなわち、ダントロレンナトリウムヘミ七水和物)である。
【0035】
本発明の実施形態に含まれる、ダントロレン医薬品有効成分(active pharmaceutical ingredient、API)、例えば、ダントロレンナトリウム又はダントロレンナトリウムヘミ七水和物は、任意選択的に、特定の粒径に微粉化されてもよい。一実施形態では、本発明の製剤は、70μm以下、例えば、63μm以下、又は40μm以下の粒径で、ダントロレン(例えば、ダントロレンナトリウム)を含む。一実施形態では、本発明の製剤は、0.2~70μm、例えば、5~70μm、10~70μm、25~70μm、又は35~70μmの粒径で、ダントロレン(例えば、ダントロレンナトリウム)を含む。一実施形態では、本発明の製剤は、0.2~50μm、例えば、5~50μm、10~50μm、25~50μm、又は35~50μmの粒径で、ダントロレン(例えば、ダントロレンナトリウム)を含む。好ましくは、ダントロレン、例えば、ダントロレンナトリウムは、約5~約40μmの粒径で存在する。例えば、ダントロレン、例えば、ダントロレンナトリウムは、約40μmの粒径で存在する。
【0036】
シクロデキストリンは、(α-1,4)-結合グルコースサブユニットから形成される環状オリゴ糖である。シクロデキストリンは、疎水性の中心空洞及び親水性の外表面を有し、それらの円錐台又はトーラスに起因して、シクロデキストリンは、適切なサイズの分子と相互作用して、包接複合体を形成し得る。本発明の一実施形態では、本明細書に記載の製剤中のシクロデキストリンは、環状構造中に5~30個、5~20個、5~15個、5~10個、5~8個、又は6~8個のグルコースサブユニットを有し得る。環状構造中に6、7又は8個のグルコースサブユニットを有するシクロデキストリンは、それぞれα(アルファ)-シクロデキストリン、β(ベータ)-シクロデキストリン及びγ(ガンマ)-シクロデキストリンとして知られている。本発明の一実施形態では、本明細書に記載の製剤中のシクロデキストリンは、7個のグルコースサブユニットを有する(すなわちβ-シクロデキストリン)。
【0037】
本発明の一実施形態では、本明細書に記載の製剤中のシクロデキストリンのグルコースサブユニットは、置換されていてもよい。置換基は、アルキル、ヒドロキシアルキル、カルボキシアルキル、アルキルカルボニル、カルボキシアルコキシアルキル、スルホアルキル、アルキルカルボニルオキシアルキル及びアルコキシカルボニルアルキルからなる群から独立して選択される。例えば、上述のシクロデキストリンは、C1~8アルキル基、C1~6アルキル基、C1~4アルキル基、C1~8ヒドロキシアルキル基、C1~6ヒドロキシアルキル基、C1~4ヒドロキシアルキル基、C1~8スルホアルキル基、C1~6スルホアルキル基又はC1~4スルホアルキル基で置換されていてもよい。本発明の別の実施形態では、本明細書に記載の製剤中のシクロデキストリンは、C1~8アルキル基、C1~6アルキル基又はC1~4アルキル基で置換されていてもよく、上述のアルキル基は、それ自体がヒドロキシル基又はスルホ基で置換されている。上述において、「アルキル」という用語は、直鎖及び分枝鎖の炭化水素基を両方とも含むと理解されるべきである。スルホ基は、-SO3H部分又はその対応する薬学的に許容される塩を指す。好ましい対イオンは、ダントロレンの薬学的に許容される塩に対する対イオンとして本明細書中で定義されるものである。
【0038】
本発明の一実施形態による製剤は、5~10個のグルコースサブユニット、例えば6~8個のグルコースサブユニット、例えば7個のグルコースサブユニットを含有するシクロデキストリンを含み、上述のグルコースサブユニットは、任意選択的にC1~8アルキル基で置換されており、それ自体が任意選択的にヒドロキシル基又はスルホ基で置換されている。本発明の一実施形態による製剤は、5~10個のグルコースサブユニット、例えば6~8個のグルコースサブユニット、例えば7個のグルコースサブユニットを含有するシクロデキストリンを含み、上述のグルコースサブユニットは、任意選択的にC1~4アルキル基で置換されており、それ自体が任意選択的にヒドロキシル基又はスルホ基で置換されている。本発明の一実施形態による製剤は、5~10個のグルコースサブユニット、例えば6~8個のグルコースサブユニット、例えば7個のグルコースサブユニットを含有するシクロデキストリンを含み、上述のグルコースサブユニットは、任意選択的に、メチル基、C1~4ヒドロキシアルキル基、又はC1~4スルホアルキル基で置換されている。本発明の一実施形態による製剤は、5~10個のグルコースサブユニット、例えば6~8個のグルコースサブユニット、例えば7個のグルコースサブユニットを含有するシクロデキストリンを含み、上述のグルコースサブユニットは、任意選択的にC2~4ヒドロキシアルキル基で置換されている。C2~4ヒドロキシアルキル基の具体例としては、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、例えば2-ヒドロキシプロピル、及びヒドロキシブチルが挙げられる。したがって、本発明の一実施形態による製剤は、5~10個のグルコースサブユニット、例えば6~8個のグルコースサブユニット、例えば7個のグルコースサブユニットを含有するシクロデキストリンを含み、上述のグルコースサブユニットは、任意選択的に2-ヒドロキシプロピル基、例えば、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(2-hydroxypropyl-β-cyclodextrin、HP-β-CD又はHPBCD)で置換されている。本発明の実施形態の製剤に使用され得る2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの具体例は、Cavitron(商標)W7(Ashland,Inc.)又はKleptose(登録商標)HPB(Roquette)である。スルホアルキル基の具体例は、スルホブチル基である。本発明の実施形態の製剤に使用され得るスルホアルキル置換シクロデキストリンの具体例は、欧州特許第2583668号(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているようなスルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン(Captisol(登録商標),Ligand,San Diego,CA,USA)である。本発明の実施形態の製剤に使用され得るメチル置換シクロデキストリンの具体例は、ランダムメチル化β-シクロデキストリン(randomly methylated β-cyclodextrin、RM-β-CD又はRMBCD)(Cavasol(登録商標)W7 M,Wacker、又はKleptose(登録商標)Crysmeb,Roquette)である。
【0039】
本発明の一実施形態による製剤は、式Iによって表されるシクロデキストリンを含み、
【化3】
式中、置換基Rは、それぞれ独立して、H、アルキル、ヒドロキシアルキル、カルボキシアルキル、アルキルカルボニル、カルボキシアルコキシアルキル、-C
1~10-アルキル-SO
3H又はその対応する薬学的に許容される塩、アルキルカルボニルオキシアルキル及びアルコキシカルボニルアルキルからなる群から選択される。一実施形態では、各アルキル部分は、1~10個の炭素原子、例えば、1~6個の炭素原子、2~4個の炭素原子又は3~4個の炭素原子を含有する。一実施形態では、式I中の置換基Rは、それぞれ独立して、H、-CH
2CH(CH
3)OH、-(CH
2)
4SO
3Na、CH
3、グルコシル、ヒドロキシエチル及びマルトシルからなる群から選択される。一実施形態では、式I中の置換基Rは、それぞれ独立して、H、-CH
2CH(CH
3)OH、-(CH
2)
4SO
3Na及びヒドロキシエチルからなる群から選択される。特に有利な実施形態では、式I中の置換基Rは、それぞれ独立して、H及び-CH
2CH(CH
3)OHからなる群から選択される。
【0040】
シクロデキストリンの置換度は、平均モル置換の観点で、すなわちグルコースサブユニット1モル当たりの全ての置換基の平均モル数の尺度で表すことができる。本発明の一実施形態では、本明細書に記載の製剤のシクロデキストリンは、0.05~10、例えば0.2~2、0.25~1又は0.5~0.8の範囲、例えば約0.65のモル置換(molar substitution、MS)を有する。本発明の一実施形態では、シクロデキストリンは、0.4~1.5又は0.2~0.9、例えば0.3~0.8、0.5~0.7、又は0.58~0.68のMSを有する2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンである。あるいは、シクロデキストリンの置換度は、シクロデキストリン1分子当たりの置換基の平均数の観点で表すことができる。本発明の一実施形態では、本明細書に記載の製剤のシクロデキストリンは、シクロデキストリン1分子当たり平均して4~8個の置換基、例えば、シクロデキストリン1分子当たり平均して4~5個、4~6個、5~7個、又は6~8個の置換基を有する。
【0041】
本発明の製剤では、ダントロレンの薬学的に許容される塩及びシクロデキストリン(例えば、ダントロレンナトリウム及び2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン)は、1:3~1:12のモル比で存在する。好ましい製剤では、ダントロレン及びシクロデキストリンは、1:5~1:10のモル比、例えば1:6~1:9.5、1:6.7~1:9.1、又は1:7~1:9、例えば1:8~1:9又は1:8.3~1:8.6のモル比で存在する。
【0042】
本発明の製剤では、ポリエチレングリコール(PEG)は、室温(20℃)で固体のPEGである。例えば、本発明の実施形態の製剤では、PEGは、1500~6000の範囲の平均分子量を有する。室温(20℃)で、これらのPEGは固体である。例えば、PEGは、2000~5000、例えば3000~4000の範囲の平均分子量を有する。例えば、PEGは、国の薬局方で定義されているPEG3000、PEG3350又はPEG4000、例えばPEG3350であってもよい。いくつかの国の薬局方で認められている適切なPEGの更なる例としては、マクロゴール、例えばマクロゴール4000が挙げられる。任意選択的に、本発明の製剤に使用されるPEGは、2つ以上の異なるPEG化合物を含み得る。
【0043】
本発明の製剤の特定の実施形態では、PEGの量は、シクロデキストリンの量に対する重量/重量比として表されてもよい。例えば、PEGは、PEGのシクロデキストリンに対する重量/重量比が1:2~1:50、例えば1:2~1:20であるような量で存在し得る。一実施形態では、PEGは、PEGのシクロデキストリンに対する重量/重量比が1:3~1:15、例えば1:5~1:12であるような量で存在する。好ましくは、PEGのシクロデキストリンに対する重量/重量比は、1:8~1:10、より好ましくは1:8.5~1:9である。シクロデキストリンが、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、例えば0.3~0.8又は0.5~0.7のMSを有するHPBCDである場合、PEG(例えば、3000~4000の範囲の平均分子量を有するPEG)は、有利には、PEGのシクロデキストリンに対する重量/重量比が、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの量に対して1:5~1:12重量/重量、例えば1:8~1:10又は1:8.5~1:9であるような量で存在する。
【0044】
本発明の製剤の特定の実施形態では、PEGの量は、ダントロレンの量に対する重量/重量比として表されてもよい。例えば、PEG(例えば、3000~4000の範囲の平均分子量を有するPEG)は、PEGのダントロレンに対する重量/重量比が1:0.1~1:10、例えば、1:0.1~1:4又は1:0.2~1:5であるような量で存在し得る。一実施形態では、PEGは、PEGのシクロデキストリンに対する重量/重量比が1:0.2~1:4、例えば1:0.2~1:3.5であるような量で存在する。
【0045】
あるいは、本発明の製剤の特定の実施形態では、PEGの量は、mg/mL単位の濃度として表されてもよい。例えば、PEGは、0.5~50mg/mLの濃度で存在する。例えば、PEGは、2.5~50mg/mL、例えば5~50mg/mLの濃度で存在する。一実施形態では、PEGは、10~40mg/mL、例えば15~30mg/mL又は15~20mg/mLの濃度で存在する。シクロデキストリンが、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、例えば0.3~0.8又は0.5~0.7のMSを有するHPBCDである場合、PEG(例えば3000~4000の範囲の平均分子量を有するPEG)は、有利には10~40mg/mL、例えば15~30又は15~20mg/mLの濃度で存在する。
【0046】
本発明の製剤の特定の実施形態では、当該技術分野で周知の医薬賦形剤及び/又はアジュバントなどの特定の更なる成分を含むことが有益である。賦形剤及び/又はアジュバントは、例えば、2019 European Pharmacopeia(Ph.Eur.)に示される仕様を有するものが提供されてもよい。医薬賦形剤の更なる例は、Handbook of Pharmaceutical Excipients(9th edition,2020;Pharmaceutical Press(UK)及びAmerican Pharmaceutical Association(US))に記載されている。
【0047】
例えば、本発明の製剤は、抗酸化剤を更に含んでもよい。抗酸化剤は、酸化プロセスに起因する劣化を阻害することによって本発明の製剤の安定性を高めるために含まれてもよい。例示的な抗酸化剤としては、アスコルビン酸を挙げることができる。本発明の製剤は、可溶化剤又は結晶化阻害剤を更に含んでもよい。可溶化剤又は結晶化阻害剤は、薬物溶解度及び/又は生物学的利用能を維持するために含まれてもよい。例示的な可溶化剤又は結晶化阻害剤としては、低分子量ポビドン、例えばポリビニルピロリドンを挙げることができる。
【0048】
本発明の製剤は、浸透圧剤を更に含んでもよい。浸透圧剤は、本発明の製剤から調製された溶液が、必要な体積の溶媒と混合された場合に、所望の浸透圧を有することを確実にするために含まれてもよい。例えば、溶液が血液と等浸透圧であることが有益な場合がある。すなわち、270~300mOsm/kg、特に285~290mOsmol/kgの浸透圧を有する。例示的な浸透圧剤としては、2~10個の炭素原子を有するポリヒドロキシアルカノール、例えば、マンニトール、フルクトース、グルコース、グルコノラクトン、グルコネート、スクロース、ラクトース、トレハロース、デキストロース、デキストラン、ヒドロキシエチルデンプン、及びこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられる。更なる浸透圧剤は、グリシン、ゼラチン、グルコノグルコヘプトン酸カルシウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。浸透圧剤の組み合わせを利用して、本発明の製剤から調製された溶液が、必要な体積の溶媒と混合された場合に血液と等張性であることを確実にすることができる。
【0049】
本発明の製剤は、pH調整剤を更に含んでもよい。pH調整剤は、必要な体積の溶媒と混合した場合に本発明の製剤から調製される溶液が所望のpHを有することを確実にするために、例えば、安定性、溶解度、又は所望の投与経路への適合性を改善するために含まれ得る。例示的なpH調整剤としては、酸、塩基、又は緩衝剤、例えば、クエン酸、酒石酸、塩酸、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、又は炭酸カルシウムを挙げることができる。上述したように、本願発明者らは、ほとんどの目的のために、本発明の製剤にpH調整剤が必要とされないことを見出した。本明細書に記載の製剤は、pHに影響を及ぼす更なる成分を含む必要なく、所望の溶解度及び他の有益な効果を達成する。それにもかかわらず、特定の状況では、特定のpHを達成するためにpH調整剤を添加してもよい。
【0050】
好ましい実施形態では、本発明の製剤は、乾燥製剤である。乾燥していることは、本発明の製剤の長期安定性を確保するのに有益である。乾燥製剤はまた、軽量であり(したがって、輸送が容易である)、体積が小さいという利点を有する。
【0051】
乾燥製剤は、任意の適切な手段によって乾燥形態で得ることができる。例えば、乾燥製剤は、凍結乾燥製剤であってもよい。凍結乾燥製剤は、例えば、i)凍結するステップ、ii)任意選択的なアニーリングステップ、iii)排気のステップ、(iv)一次乾燥のステップ、(v)二次乾燥のステップ、(vi)N2による任意選択的な予備通気により閉栓するステップ、及び(vi)N2による大気圧への通気のステップを含む方法を使用して調製されてもよい。あるいは、乾燥製剤は、風乾製剤であってもよい。
【0052】
一実施形態では、本発明は、ダントロレンナトリウムと、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンとを1:6~1:9.5のモル比で含み、3000~4000の範囲の平均分子量を有するPEGも含み、平均して、各2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン分子が、平均して4~6個の2-ヒドロキシプロピル基によって置換されている、凍結乾燥製剤を提供する。例えば、そのような製剤は、ダントロレンナトリウムヘミ七水和物と、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンとを1:8.3~1:8.6のモル比で含み、PEG3350も含み、平均して、各2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン分子が、5個の2-ヒドロキシプロピル基によって置換されている。
【0053】
上述したように、本発明は、本発明の第1の請求された態様に示される製剤を薬学的に許容される溶媒に溶解することによって調製された液体製剤を提供する。液体製剤に使用するための薬学的に許容される溶媒は、例えばPh Eur.の注射用水であり得る。
【0054】
また上述したように、本発明は、ダントロレンの薬学的に許容される塩とシクロデキストリンとを1:3~1:12のモル比で含み、1500~6000の範囲の平均分子量を有するPEGも、0.5~50mg/mLの濃度で含む、水溶液を提供する。本発明はまた、適切な薬学的に許容される溶媒の添加を介して、本明細書中に開示される乾燥製剤のいずれかから調製され得る水溶液を提供する。
【0055】
一実施形態では、本発明による液体製剤、例えば水溶液は、ダントロレン、例えばダントロレンナトリウムを0.4~10mg/mLの濃度で含む。好ましくは、ダントロレン、例えばダントロレンナトリウムは、2~9mg/mL、例えば4~8.5mg/mL又は4~6.5mg/mLの濃度で存在する。例えば、本発明による液体製剤は、ダントロレン、例えば、ダントロレンナトリウムを、約4.5、5.05、5.4、又は6mg/mLの濃度で含有し得る。ダントロレン、例えば、ダントロレンナトリウムの前述の濃度は、無水塩当量として表される。
【0056】
しかしながら、上述の濃度は、同様に、ダントロレンナトリウム3.5モル水和物当量(すなわち、ヘミ七水和物当量)として表されてもよく、ここで、3.5モルの水和物は、ダントロレン1分子当たり3.5個の水分子(すなわち、ダントロレン又はダントロレンナトリウム1モル当たり3.5モルの水)の存在を示す。本明細書で使用される「ヘミ七水和物当量」及び「無水塩当量」という用語は、無水ダントロレンナトリウム塩又はダントロレンナトリウムヘミ七水和物塩が溶液中に溶解されたときに解離するという事実を考慮に入れている。したがって、例えば、溶媒が6mgのダントロレンナトリウムヘミ七水和物に添加されて1mLの総体積になる場合、これは、6mg/mLのダントロレンナトリウムヘミ七水和物の当量を含む溶液を生成する。
【0057】
2つの化合物のそれぞれの分子質量を利用することによって、無水ダントロレンナトリウムの濃度とダントロレンナトリウムヘミ七水和物の濃度との間で変換することが可能である。例えば、4.55mg/mLの濃度の無水ダントロレンナトリウム(分子質量336.24g/mol)は、5.4033mg/mLの3.5モル水和物(分子質量399.29g/mol)に変換され、5.0525mg/mLの濃度の無水ダントロレンナトリウムは、6mg/mLの3.5モル水和物に変換される。一実施形態では、本発明による液体製剤、例えば水溶液は、ダントロレン、例えばダントロレンナトリウムヘミ七水和物を0.4~10mg/mLの濃度で含む(ヘミ七水和物当量として表される)。好ましくは、ダントロレン、例えばダントロレンナトリウムヘミ七水和物は、3~10mg/mL、例えば4~8mg/mL又は5~7mg/mL、例えば6mg/mLの濃度で存在する(全ての濃度はヘミ七水和物当量として表される)。
【0058】
あるいは、ダントロレンの濃度は、mmol/mL(1mL当たりのミリモル数)として表されてもよい。したがって、一実施形態では、本発明による液体製剤、例えば水溶液は、0.001~0.05mmol/mL、例えば0.005~0.025mmol/mL又は0.01~0.020mmol/mLの濃度でダントロレンを含む。好ましくは、ダントロレンは、0.012~0.016mmol/mL、例えば0.013mmol/mL又は0.015mmol/mLの濃度で存在する。容易に計算することができるが、6mg/mLのヘミ七水和物当量(又は5.0525mg/mLの無水当量)の濃度でダントロレンナトリウムを含む本発明による液体製剤は、0.015mmol/mLのダントロレン濃度をもたらす。
【0059】
一実施形態では、本発明による液体製剤は、100~300mg/mLの濃度で存在する2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを含む。好ましくは、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンは、100~200mg/mL、例えば120~180mg/mL又は150~180mg/mLの濃度で存在する。より好ましくは、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの濃度は、176.5mg/mLである。最も好ましくは、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンは、140~170mg/mL又は150~160mg/mL、例えば156.2mg/mLの濃度で存在する。好ましくは、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンは、100~200mg/mL、例えば120~190mg/mL、例えば150~185mg/mL、例えば150~180mg/mL、又は例えば175~177mg/mLの濃度で存在する。好ましくは、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの濃度は、176.5mg/mLである。最も好ましくは、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンは、140~170mg/mL又は150~160mg/mL、例えば156.2mg/mLの濃度で存在する。本明細書に記載されるように、ダントロレンの薬学的に許容される塩及びシクロデキストリンは、本明細書に記載の製剤中に、特定のモル比範囲、例えば1:3~1:12、1:5~1:10、1:6~1:9.5、1:6.7~1:9.1、1:7~1:9、1:8~1:9又は1:8.3~1:8.6の範囲内で存在する。
【0060】
一実施形態では、本発明による液体製剤は、0.5~50mg/mL、例えば5~45mg/mL、例えば10~40mg/ml、又は例えば10、20、30、若しくは40mg/mLの濃度で存在するPEG、例えばPEG3350を含む。好ましくは、PEG、例えばPEG3350は、5~25mg/mL、例えば10~25mg/mL又は15~25mg/mL、適切には15~20mg/mlの濃度で存在する。好ましくは、PEG、例えばPEG3350は、17.7mg/mL又は20mg/mLの濃度で存在する。
【0061】
一実施形態では、本発明による液体製剤、例えば水溶液は、0.4~10mg/mL(ダントロレンナトリウムヘミ七水和物当量として表される)の濃度で存在する、ダントロレン、例えばダントロレンナトリウム、例えばダントロレンナトリウムヘミ七水和物と、シクロデキストリン、例えば、100~300mg/mLの濃度で存在する2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンと、0.5~50mg/mLの濃度で存在するPEG、例えば、PEG3350と、を含む。好ましくは、本発明による液体製剤、例えば水溶液は、2~9mg/mL(ダントロレンナトリウムヘミ七水和物当量)の濃度で存在する、ダントロレン、例えばダントロレンナトリウム、例えばダントロレンナトリウムヘミ七水和物と、シクロデキストリン、例えば、100~200mg/mLの濃度で存在する2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンと、5~25mg/mLの濃度で存在するPEG、例えば、PEG3350と、を含む。より好ましくは、本発明による液体製剤、例えば水溶液は、4~6.5mg/mL(ダントロレンナトリウムヘミ七水和物当量)の濃度で存在する、ダントロレン、例えばダントロレンナトリウム、例えばダントロレンナトリウムヘミ七水和物と、シクロデキストリン、例えば、120~190mg/mLの濃度で存在する2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンと、15~25mg/mLの濃度で存在するPEG、例えば、PEG3350と、を含む。例えば、本発明による液体製剤、例えば水溶液は、6mg/mL(ダントロレンナトリウムヘミ七水和物当量)の濃度で存在する、ダントロレン、例えばダントロレンナトリウム、例えばダントロレンナトリウムヘミ七水和物と、シクロデキストリン、例えば、176.5mg/mLの濃度で存在する2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンと、20mg/mLの濃度で存在するPEG、例えば、PEG3350と、を含み得る。例えば、本発明による液体製剤、例えば水溶液は、5.3mg/mL(ダントロレンナトリウムヘミ七水和物当量)の濃度で存在する、ダントロレン、例えばダントロレンナトリウムと、シクロデキストリン、例えば、156.2mg/mLの濃度で存在する2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンと、17.7mg/mLの濃度で存在するPEG、例えば、PEG3350と、を含み得る。
【0062】
本発明の実施形態による液体製剤は、有利には、7より大きいpH、例えば8~11のpH、例えば8.8~11のpH、例えば8.8~10のpH、又は例えば9~10のpHを有する。本発明による液体製剤のpHは、好ましくは8~9.5又は9~9.5であってもよく、より好ましくは9.2~9.5であってもよい。
【0063】
本発明はまた、本明細書に記載の本発明の実施形態の製剤を含有する第1の容器(例えば、本明細書に記載のバイアル)と、希釈剤、すなわち薬学的に許容される溶媒を含有する第2の容器と、を含むキットを提供する。好ましくは、本発明の製剤は、乾燥製剤、例えば凍結乾燥製剤である。薬学的に許容される溶媒の例としては、本発明における使用に適切であるとして本明細書に記載されるものが挙げられる。好ましくは、本発明のキットの第1の容器及び第2の容器は、本明細書に開示されるようなバイアルである。
【0064】
本発明のキットは、悪性高熱症の治療における用途が見出される。本発明のキットはまた、慢性の重度の痙性又は神経弛緩性の悪性症候群の治療における用途が見出され得る。あるいは、本発明のキットはまた、高線量の放射線に曝露された造血症候群患者における急性放射線症候群、精神刺激薬誘導性中毒(MDMA及びメタンフェタミン中毒)、労作性熱中症、脳震盪及び他の形態の外傷性脳損傷、神経剤誘導性脳障害、並びに/又はコロナウイルス感染症(COVID-19)を含む状態の治療における用途が見出され得る。
【0065】
本発明は更に、医薬として使用するための、本明細書に記載の製剤、液体製剤(例えば、本明細書に記載の凍結乾燥製剤などの乾燥製剤を薬学的に許容される溶媒に溶解することによって調製される液体製剤)、バイアル、キット又は水溶液を提供する。
【0066】
本発明はまた、悪性高熱症の治療のための医薬の製造のための、本明細書に記載の製剤、液体製剤(例えば、本明細書に記載の凍結乾燥製剤などの乾燥製剤を薬学的に許容される溶媒に溶解することによって調製される液体製剤)、バイアル、キット又は水溶液を提供する。
【0067】
本発明はまた、重度の痙性又は神経弛緩性の悪性症候群の治療において使用するための、本明細書に記載の製剤、液体製剤(例えば、本明細書に記載の凍結乾燥製剤などの乾燥製剤を薬学的に許容される溶媒に溶解することによって調製される液体製剤)、バイアル、キット又は水溶液を提供する。
【0068】
本発明は更に、高線量の放射線に曝露された造血症候群患者における急性放射線症候群、精神刺激薬誘導性中毒(MDMA及びメタンフェタミン中毒)、労作性熱中症、脳震盪及び他の形態の外傷性脳損傷、神経剤誘導性脳障害、又はコロナウイルス感染症(COVID-19)の治療に使用するための、本明細書に記載の製剤、液体製剤(例えば、本明細書に記載の凍結乾燥製剤などの乾燥製剤を薬学的に許容される溶媒に溶解することによって調製される液体製剤)、バイアル、キット又は水溶液を提供する。
【0069】
本発明はまた、悪性高熱症を治療することを必要とする対象においてそれを行うための方法であって、上述の対象に、薬学的有効量の本明細書に記載の製剤、液体製剤(例えば、本明細書に記載の凍結乾燥製剤などの乾燥製剤を薬学的に許容される溶媒に溶解することによって調製される液体製剤)、又は水溶液を投与することを含む、方法を提供する。
【0070】
本発明は更に、慢性の重度の痙性又は神経弛緩性の悪性症候群を治療することを必要とする対象においてそれを行うための方法であって、上述の対象に、薬学的有効量の本明細書に記載の製剤、液体製剤(例えば、本明細書に記載の凍結乾燥製剤などの乾燥製剤を薬学的に許容される溶媒に溶解することによって調製される液体製剤)、又は水溶液を投与することを含む、方法を提供する。
【0071】
本発明は更に、高線量の放射線に曝露された造血症候群患者における急性放射線症候群、精神刺激薬誘導性中毒(MDMA及びメタンフェタミン中毒)、労作性熱中症、脳震盪及び他の形態の外傷性脳損傷、神経剤誘導性脳障害、又はコロナウイルス感染症(COVID-19)を治療することを必要とする対象においてそれを行うための方法であって、上述の対象に、薬学的有効量の本明細書に記載の製剤、液体製剤(例えば、本明細書に記載の凍結乾燥製剤などの乾燥製剤を薬学的に許容される溶媒に溶解することによって調製される液体製剤)、又は水溶液を投与することを含む、方法を提供する。
【0072】
本発明はまた、本明細書に記載の製剤、液体製剤、キット又は水溶液を製造する方法を提供する。本明細書に記載の本発明の実施形態の製剤は、(i)薬学的に許容される溶媒中のシクロデキストリン(例えば2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン)ストック溶液を提供するステップと、(ii)PEG(例えば、PEG3000、PEG3350又はPEG4000)を添加し、ダントロレン(例えば、ダントロレンナトリウム)をシクロデキストリンストック溶液に添加するステップと、(iii)溶液を混合して、ダントロレンを溶解させるステップと、(iv)任意選択的に、最終重量を達成するために必要な場合には、更なるシクロデキストリンストック溶液を添加するステップと、を含む方法によって製造され得る。上述のステップ(ii)の文脈では、PEG及びダントロレンは、いずれかの順序で、又は同時に、ストック溶液に添加され得る。上述の方法は更に、(v)濾過するステップ、(vi)バイアルを充填するステップ、(Vii)製剤を乾燥するステップ(例えば、任意選択的にアニーリングステップを含む凍結乾燥による)、及び(viii)バイアルを閉じるステップを含み得る。上述の凍結乾燥のステップは、(a)凍結するステップ、(b)任意選択的なアニーリングステップ、(c)排気のステップ、(d)一次乾燥のステップ、(e)二次乾燥のステップ、(f)N2による任意選択的な予備通気により閉栓するステップ、及び(g)N2による大気圧への通気のステップを含み得る。
【0073】
本発明は更に、(i)薬学的に許容される溶媒中のシクロデキストリン(例えば2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン)ストック溶液を提供するステップと、(ii)PEG(例えば、PEG3000、PEG3350又はPEG4000)を添加し、ダントロレン(例えば、ダントロレンナトリウム)をシクロデキストリンストック溶液に添加するステップと、(iii)溶液を混合して、ダントロレンを溶解させるステップと、(iv)任意選択的に、最終重量を達成するために必要な場合には、更なるシクロデキストリンストック溶液を添加するステップと、を含むプロセスによって得ることができる、本明細書に記載の製剤、液体製剤、又は水溶液を提供する。上述のステップ(ii)の文脈では、PEG及びダントロレンは、いずれかの順序で、又は同時に、ストック溶液に添加され得る。
【0074】
本発明は更に、(i)薬学的に許容される溶媒中のシクロデキストリン(例えば2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン)ストック溶液を提供するステップと、(ii)PEG(例えば、PEG3000、PEG3350又はPEG4000)を添加し、ダントロレン(例えば、ダントロレンナトリウム)をシクロデキストリンストック溶液に添加するステップと、(iii)溶液を混合して、ダントロレンを溶解させるステップと、(iv)任意選択的に、最終重量を達成するために必要な場合には、更なるシクロデキストリンストック溶液を添加するステップと、(v)得られた溶液を、例えば凍結乾燥によって乾燥させて、上述の乾燥製剤を得るステップと、を含むプロセスによって得ることができる、本明細書に記載の乾燥製剤を提供する。上述のステップ(ii)の文脈では、PEG及びダントロレンは、いずれかの順序で、又は同時に、ストック溶液に添加され得る。
【0075】
本発明は更に、100~120mgのダントロレンナトリウムと、3000~4000mgの2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンと、350~450mgのPEG3350と、を含む、本明細書に記載の乾燥製剤を提供する。
【0076】
上述したように、本発明は更に、バイアルであって、(i)0.3mmolのダントロレンとしても表すことができる、101mgの無水ダントロレンナトリウム(120mgのダントロレンナトリウムヘミ七水和物に相当)と、(ii)3.53gの2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンと、(iii)400mgのPEG3350と、を含む、バイアルを提供する。
【0077】
本発明は更に、バイアルであって、(i)0.3mmolのダントロレンと、(ii)3.53gの2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンと、(iii)400mgのPEG3350と、を含む、バイアルを提供する。
【0078】
本発明の更なる目的は、本明細書に記載の液体製剤又は水性組成物の調製のための方法である。本方法は、本明細書に記載の乾燥製剤を水性希釈剤に溶解するステップを含む。
【0079】
治療効果を達成するために必要とされる本発明による製剤の量は、特定の投与経路及び治療中の対象の特徴(例えば、年齢、体重、性別、又は他の併発する病状)によって変化し、通常の熟練した医師によって容易に決定され、投与することができる。好ましくは、推奨される投薬計画は、体重1kg当たり1~10mgの範囲、例えば10mg/kgのダントロレンナトリウムである。別の実施形態では、投薬計画は、1.5mg/kg~3.5mg/kgの範囲、例えば2.5mg/kgである。通常の熟練した医師は、対象に投与される特定の投薬量を得るために必要なバイアルの数を計算することができる。
【0080】
本発明の製剤は、好ましくは非経口投与され、より好ましくは静脈内投与される。したがって、一実施形態では、本発明による液体製剤は、好ましくは非経口投与され、より好ましくは静脈内投与される。
【0081】
本発明は、特定の実施形態に関連して、説明され図示されたが、本発明が、本明細書に具体的に図示されていない多くの異なる変形形態に役立つことが、当業者には理解されるであろう。ほんの一例として、特定の可能な変形例をここで説明する。
【実施例】
【0082】
実施例1:ダントロレンナトリウム溶液への2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(2-hydroxypropyl-β-cyclodextrin、HPBCD)の添加の効果
この研究は、ダントロレンナトリウムの溶解度に対するHPBCDの影響を決定するために行われた。異なるHPBCDの最初の比較を、HP5及びHP7置換バリアント(Cavitron(商標)W7、Ashland,Inc.)を使用して実施し、HP5及びHP7置換バリアントはそれぞれ4.1~5.1及び6.0~8.0の典型的な置換度(シクロデキストリン1分子当たりのヒドロキシプロピル基の平均数)を有する。(低エンドトキシン負荷(10IU/g未満)であり、0.65(0.58~0.68の範囲)の典型的なモル置換(すなわち、無水グルコースサブユニット当たり)を有するHP5置換β-シクロデキストリンであるKleptose(登録商標)HPB(Roquette)などの同等の製品も、商業規模の製造に利用可能である。
【0083】
HP5及びHP7バリアントの両方について達成された溶解度は、溶媒として精製水を使用して、9モル当量のHPBCD中の8.5mg/mLダントロレンナトリウムヘミ七水和物当量であった。HP7バリアントの方が分子量が大きいことに起因して、HP5バリアントと比較して同じモル当量濃度を達成するために、より多くの重量の賦形剤が必要であった。全体として、HP5置換β-シクロデキストリンが好ましく、したがってそれをその後の試験製剤に使用した。
【0084】
1A:HPBCD溶液中のダントロレンナトリウム溶解度に対する粒径の影響
更なる分析を実施して、HP5置換β-シクロデキストリンの水のみの溶液において、異なる粒径でのダントロレンナトリウムの最大可能濃度を決定した。2μm未満及び63μm未満の粒径を有するダントロレンナトリウムの市販の試料を試験した。以下の実験条件を全ての試験製剤に使用した。HPBCD濃度、7モル当量(ダントロレンナトリウムヘミ七水和物塩に対して表される)。結果を以下の表1に示す。DNaは、ダントロレンナトリウムを示す。
【表1】
【0085】
2μm未満の粒径について、これらの条件下で溶解され得るダントロレンナトリウムの最大濃度は、無水塩当量として4.55mg/mL(ヘミ七水和物当量として5.36mg/mL)であった。63μm未満の粒径についての溶解度は、無水塩当量として4.5mg/mL(ヘミ七水和物当量として5.35mg/mL)であり、同様であった。
【0086】
これらの結果と、HP5バリアントとHP7バリアントとの間の最初の比較の結果の両方から、HPBCDを添加することで、既存の市販製剤と比較して、ダントロレンナトリウム溶解度が増加することを示す。例えば、DANTRIUM(登録商標)IV製剤(Norgine Pharmaceuticals,Uxbridge,UK)は、0.33mg/mLの溶解度(ダントロレンナトリウムヘミ七水和物当量として)を達成する。更に、十分な溶解度を可能にするために、ダントロレンナトリウムをDANTRIUM(登録商標)IVについて2μm以下の直径になるまで微粉化するための現在の要件を考慮すると、HPBCDと組み合わせた場合の小さい(2ミクロン)及び大きい(63ミクロン)粒径の両方にわたる溶解度の類似性は注目に値する。
【0087】
1B:HPBCD溶液中のダントロレン溶解度に対する非経口適合性共溶媒の影響
この実験は、7モル当量のHP5置換HPBCD溶液中のダントロレンナトリウム溶解度に対する、異なる非経口適合性のアルコール系及びケトン系共溶媒の効果を決定するために行った。結果を以下の表2に示す。DNaは、ダントロレンナトリウムを示す。
【表2】
【0088】
これらの結果は、非経口適合性アルコール系又はケトン系の溶媒の添加が、HPBCDの存在下でダントロレンナトリウム溶解度を改善しなかったことを示す。むしろ、PEG300及びPEG400を含め、試験した溶媒15種全てがダントロレン溶解度を減少させた。
【0089】
1C:ダントロレン-HPBCD製剤と既存の市販のダントロレン製剤との比較
以下の表3は、既存の市販のダントロレン製剤であるDANTRIUM IV(登録商標)を、ダントロレン/HP5置換HPBCD製剤と比較する。DNaは、ダントロレンナトリウムを示す。
【表3】
【0090】
表3に示されるように、HPBCDを有する製剤は、既存のダントロレン製剤と比較して以下の利点を与える。再構成されたときに、より高い濃度のダントロレン、より少ない再構成体積、再構成速度の増加、必要とされるバイアルサイズが小さい、2μmへの微粉化を必要とせずに、より大きなサイズのダントロレン粒子を使用する能力、及び緩衝の必要性の排除。
【0091】
実施例2-消泡剤の添加の効果
この実験は、ダントロレン-HPBCD製剤(6mg/mLのダントロレンナトリウムAPI+17.65%重量/体積(176.5mg/mL当量)HPBCD(0.58~0.68のモル置換範囲)、両方の成分は商業的供給源から得た)への消泡剤の添加の効果を評価するために行った。2%重量/体積(20mg/mL当量)でのジメチコンの初期試験は、不十分な結果をもたらした。ジメチコンは、完全に溶解せず、溶液の上に層化されたままであった。
【0092】
市販のPEG3350を、以下の調製プロセスを使用して、代替の消泡剤として試験した。
(i)注射用水中の17.65%重量/体積のHPBCDストック溶液の調製、
(ii)2%重量/体積のPEG3350を、17.65重量/体積のHPBCD溶液(最終体積の90%)へ添加、
(iii)得られたPEG3350/HPBCD溶液を30±5℃まで加熱(O2濃度は、N2-通気によって2ppm未満に減少した)、
(iv)ダントロレンナトリウムAPIを予熱したPEG3350/HPBCD溶液に分配する、
(v)溶液を30℃で少なくとも30分間(ダントロレンナトリウムAPIが完全に溶解するまで)混合する、
(vi)溶液を室温(15~25℃)まで冷却し、N2通気によって酸素濃度を減少させ、17.65%重量/体積のHPBCDストック溶液を用いて溶液を最終重量にした。
(vii)0.22μmのPVDFフィルターを用いた溶液の濾過、
(viii)バイアルの充填及び予め閉栓、
(ix)凍結乾燥(i)凍結するステップと、ii)任意選択的なアニーリングステップ、iii)排気のステップ、(iv)一次乾燥のステップ、(v)二次乾燥のステップ、(vi)N2による予備通気及び閉栓、並びに(vii)N2による大気圧への通気及びバイアルの最終閉栓のステップを含む)、
(x)バイアルの検査及びラベリング。
【0093】
PEG3350の添加により、透明で均質な溶液が得られた。振盪すると(注射用水で凍結乾燥製剤を再構成した後)、PEG3350製剤は、上記と同じ方法を使用するがステップ(ii)を省略して調製された、消泡剤を含まない製剤と比較して、(目視検査によって決定されるように)、より迅速に透明になり、生成する泡が少なかった。驚くべきことに、より低分子量のPEG(PEG300/400)を含む他の溶媒が、溶液に添加された場合(実施例1B)、ダントロレン溶解度が減少したことを考慮すると、PEG3350は、ダントロレンナトリウムの溶解度を低下させなかった。(より高濃度のPEG3350(4%w/v、40mg/mL当量)を用いても同様の結果が得られた。)これらの結果は、PEG3350が、APIの溶解度を減少させない、ダントロレン製剤のための驚くほど有効な消泡剤であることを特定する。
【0094】
実施例3-例示的なダントロレン製剤
臨床使用に適したダントロレン製剤の例を以下に記載する。
【0095】
製剤は、実施例2に詳述される方法に従って調製された、市販のダントロレンナトリウムヘミ七水和物(API粒径40μm)、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン及びPEG3350を含有する凍結乾燥調製物である。調製物を50mLバイアルに封入し、各バイアルは、101mgの無水ダントロレンナトリウム(120mgのダントロレンナトリウムヘミ七水和物に相当)(0.3mmolのダントロレンとして表すこともできる)と、3530mgの2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンと、400mgのPEG3350と、を含有する。20mLの注射用水中での調製物の再構成によって、22.6mLの総体積中で、ダントロレンナトリウムヘミ七水和物当量について5.3mg/mL、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンについて156.2mg/mL、及びPEG3350について17.7mg/mLの濃度が得られる。再構成時間は90秒以下である。再構成された溶液は、9.2~9.5の安定なpHを達成し、pH緩衝化を必要としない。
【0096】
実施例4-比較のダントロレン溶液中の泡立ちに対するPEGの効果
本発明の例示的な製剤(製剤5)をいくつかの従来技術の製剤(製剤1~4)と比較して、溶液に対するPEGの効果を決定した。
【0097】
製剤1~5を以下に詳述するように作製して、各溶液について20mLの総体積を得た。更に、PEGのダントロレンに対する重量比が1:3.333となるようにPEG3350(マクロゴール3350)を添加して、各溶液の総体積が20mLとなるように、製剤1~4の改変態様も以下に詳述するように作製した。全ての溶液を手で3分間振盪した。各溶液中の泡の高さを、泡が沈むのに要した時間として測定した。溶液の目視検査を行い、溶解度に関する問題を記録した。結果を以下の表4に示す。
【表4】
【0098】
これらの結果は、従来技術のダントロレン製剤1~4へのPEGの添加が、振盪後に泡立ちが静まるのにかかる時間を減少させたことを示す。加えて、PEGはまた、従来技術の製剤2、3、及び4についてバイアル中の泡の高さを減少させた。更に、製剤5と製剤1~4(PEGの非存在下)との比較は、製剤5において泡立ちが静まるのにかかる時間が、従来技術の製剤1~4(PEGを含有しない)と比較した場合に、はるかに短くなったこと、すなわち、製剤5によって注射に適切なダントロレンの溶液を調製するために必要とされる時間が、従来技術の製剤と比較した場合に短いことを示す。
【0099】
製剤1は、セクション2.2に記載されているように、但し凍結乾燥ステップを含まずに、Chen et al.(Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis 135(2017)153-159)に従って調製された。製剤2は、国際公開第2017/067980号の実施例4に従って調製された。製剤3は、国際公開第2017/067980号の溶液2に従って調製された。製剤4は、国際公開第2018/146187号の実施例2に従って調製された。製剤5は、実施例2のプロセスステップ(i)~(vii)に詳述される方法に従って調製された本発明の例示的な製剤である。
【0100】
上記の記載において、既知の、明白な、又は予見可能な同等物を有する一体の発明又は要素が述べられている場合、このような同等物は、個々に明示されているように本明細書に組み込まれる。本発明の真の範囲は、このようないずれの同等物も包含するように解釈されるべきであって、この真の範囲を決定するように、特許請求の範囲は参照されるべきである。好ましい、有利である、好都合であるなどとして述べられている本発明の全体又は特徴は、任意選択的であり、独立請求項の範囲を限定しないことも、読み手によって理解されるであろう。更に、そのような任意選択的な整数又は特徴は、本発明のいくつかの実施形態では、可能な利点である一方、望ましくないことがあり、したがって、他の実施形態では存在しないことがあることを理解されたい。
【国際調査報告】