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特表2024-516487複合コーティング、製造方法及びデバイス
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  • 特表-複合コーティング、製造方法及びデバイス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-16
(54)【発明の名称】複合コーティング、製造方法及びデバイス
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/22 20060101AFI20240409BHJP
   C08F 2/00 20060101ALI20240409BHJP
   C08F 220/28 20060101ALI20240409BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20240409BHJP
   C08G 83/00 20060101ALI20240409BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20240409BHJP
   C09D 4/00 20060101ALI20240409BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20240409BHJP
   C08F 220/16 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
C23C16/22
C08F2/00 C
C08F220/28
H05K3/28 C
C08G83/00
C09D5/00 D
C09D4/00
C09D4/02
C08F220/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553237
(86)(22)【出願日】2022-02-25
(85)【翻訳文提出日】2023-09-11
(86)【国際出願番号】 CN2022077853
(87)【国際公開番号】W WO2022183975
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】202110242082.0
(32)【優先日】2021-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522241907
【氏名又は名称】江蘇菲沃泰納米科技股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU FAVORED NANOTECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.182 East Loop, Yuqi Industry Park, Huishan District, Wuxi, Jiangsu 214000, China
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】宗 堅
(72)【発明者】
【氏名】李 思越
【テーマコード(参考)】
4J011
4J031
4J038
4J100
4K030
5E314
【Fターム(参考)】
4J011AA05
4J011AC04
4J011CA02
4J011CA08
4J011CB04
4J011CC04
4J011CC10
4J031BA28
4J031BC07
4J031BD12
4J031CA87
4J031CE02
4J038FA111
4J038GA07
4J038PA07
4J038PA17
4J038PB08
4J038PB09
4J038PC02
4J038PC03
4J038PC08
4J038PC10
4J100AL08Q
4J100AL08R
4J100AL08S
4J100AL61P
4J100BA03S
4J100BB18S
4J100BC43R
4J100BC53Q
4J100CA03
4J100JA01
4J100JA44
4K030AA09
4K030BB13
4K030FA01
5E314AA24
5E314BB02
5E314CC20
5E314EE01
5E314FF01
5E314GG11
(57)【要約】
本発明の具体的な実施形態は、複合コーティングを供給し、前記複合コーティングは、エポキシ構造を有する多官能基エステルとエステル系カップリング剤のモノマーのプラズマにより形成されたコーティングを下地層とし、芳香環を有する不飽和エステル系モノマーとエステル系カップリング剤のプラズマにより形成されたコーティングを防食層とし、前記コーティングは基材との高い結合力、強い耐食性を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に堆積されたコーティングI及びコーティングIIを含む複合コーティングであって、
前記コーティングIは、モノマーα及びモノマーβを含むプラズマにより形成されたプラズマ重合コーティングであり、
前記コーティングIIは、前記コーティングIを、モノマーγ及びモノマーδを含むプラズマに接触させることによりコーティングIに形成されたプラズマ重合コーティングであり、
前記モノマーαの構造は式(1-1)に示され、
【化1】
(ここで、RはCH又はC~Cのシクロアルキル基から選択され、R、R及びRはそれぞれ独立して結合手又はC~Cのアルキレン基から選択され、かつ、R及びRはともに結合手である場合に同一の炭素原子に結合しておらず、Aは連結部位であり、Bは炭素-炭素不飽和結合又はエポキシ構造を含む。)
前記モノマーβの構造は式(2-1)に示され、
【化2】
(ここで、Sは1つ以上の-O-C(O)-又は-C(O)-O-を含み、R、R、R、R、R及びR10はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C~C10のアルキル基又はC~C10のハロゲン原子置換アルキル基から選択される。)
前記モノマーγの構造は式(3-1)に示され、
【化3】
(ここで、Arは芳香環を有する構造であり、Tは-O-C(O)-又は-C(O)-O-であり、Xは連結部位であり、Yは連結部位であり、R11、R12及びR13はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C~C10のアルキル基又はC~C10のハロゲン原子置換アルキル基から選択される。)
前記モノマーδの構造は式(4-1)に示される、ことを特徴とする、複合コーティング。
【化4】
(ここで、Sは1つ以上の-O-C(O)-又は-C(O)-O-を含み、R14、R15、R16、R17、R18及びR19はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C~C10のアルキル基又はC~C10のハロゲン原子置換アルキル基から選択される。)
【請求項2】
前記Aは-O-C(O)-又は-C(O)-O-であることを特徴とする、請求項1に記載の複合コーティング。
【請求項3】
前記モノマーαの構造は式(1-2)に示されることを特徴とする、請求項2に記載の複合コーティング。
【化5】
(ここで、R20、R21及びR22はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C~C10のアルキル基又はC~C10のハロゲン原子置換アルキル基から選択される。)
【請求項4】
前記R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18及びR19はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の複合コーティング。
【請求項5】
前記R20、R21及びR22はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基から選択されることを特徴とする、請求項3に記載の複合コーティング。
【請求項6】
前記モノマーαは、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロへキサンカルボキシレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン、ビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテル、2,3-エポキシシクロペンチルシクロペンチルエーテル、ビニルシクロヘキセンジオキシド、ジイソプレンジオキシド又はビス((3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル)アジペートの一種又は複数種から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の複合コーティング。
【請求項7】
前記S及び/又はSは2つの-O-C(O)-又は-C(O)-O-を含むことを特徴とする、請求項1に記載の複合コーティング。
【請求項8】
前記S構造は式(2-2)に示されることを特徴とする、請求項7に記載の複合コーティング。
【化6】
(ここで、R23はC~C10のアルキレン基又はC~C10のハロゲン原子置換アルキレン基であり、yは0~10の整数である。)
【請求項9】
前記モノマーβは、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、無水メタクリル酸、2-メチレンコハク酸ジプロプ-2-エニル、2-ベンジリデンマロン酸ジプロプ-2-エニル又はジアリルマロン酸ジエチルの少なくとも1つから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の複合コーティング。
【請求項10】
前記X構造は式(3-2)に示されることを特徴とする、請求項1に記載の複合コーティング。
【化7】
(ここで、X11は結合手、-O-又は-C(O)-であり、X12は結合手、C~C10のアルキレン基又はC~C10のハロゲン原子置換アルキレン基であり、
前記Yは結合手、C~C10のアルキレン基又はC~C10のハロゲン原子置換アルキレン基である。)
【請求項11】
前記Arはベンゼン環構造又は置換基を有するベンゼン環構造であることを特徴とする、請求項1に記載の複合コーティング。
【請求項12】
前記モノマーγ構造は式(3-3)に示されることを特徴とする、請求項11に記載の複合コーティング。
【化8】
(ここで、Tは-O-C(O)-又は-C(O)-O-であり、Xは連結部位であり、Yは連結部位であり、
24、R25及びR26はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C~C10のアルキル基又はC~C10のハロゲン原子置換アルキル基から選択される。)
【請求項13】
前記Xの構造は式(3-4)に示されることを特徴とする、請求項12に記載の複合コーティング。
【化9】
(ここで、X21は結合手、-O-又は-C(O)-であり、X22は結合手、C~C10のアルキレン基又はC~C10のハロゲン原子置換アルキレン基であり、
前記Yは結合手、C~C10のアルキレン基D又はC~C10のハロゲン原子置換アルキレン基である。)
【請求項14】
前記R24、R25及びR26はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基から選択されることを特徴とする、請求項12に記載の複合コーティング。
【請求項15】
前記モノマーγは、2-フェノキシエチルアクリレート、フェニルアクリレート、ジアリルテレフタレート又はフェニルメタクリレートの少なくとも1つから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の複合コーティング。
【請求項16】
前記S構造は式(4-2)に示されることを特徴とする、請求項7に記載の複合コーティング。
【化10】
(ここで、R27はC~C10のアルキレン基又はC~C10のハロゲン原子置換アルキレン基であり、zは0~10の整数である。)
【請求項17】
前記モノマーδは、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、無水メタクリル酸、2-メチレンコハク酸ジプロプ-2-エニル、2-ベンジリデンマロン酸ジプロプ-2-エニル又はジアリルマロン酸ジエチルの少なくとも1つから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の複合コーティング。
【請求項18】
前記複合コーティングは、前記コーティングIIとモノマーεを含むプラズマとを接触させることによりコーティングII上に形成されたプラズマ重合コーティングであるコーティングIIIをさらに含み、
前記モノマーεの構造は式(5-1)に示されることを特徴とする、請求項1に記載の複合コーティング。
【化11】
(ここで、Zは連結部位であり、R28、R29及びR30はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C~C10の炭化水素基又はC~C10のハロゲン原子置換炭化水素基から選択され、xは1~20の整数である。)
【請求項19】
前記Zは結合手、C~Cのアルキレン基又は置換基を有するC~Cのアルキレン基であり、xは5以上であることを特徴とする、請求項18に記載の複合コーティング。
【請求項20】
前記R28、R29及びR30はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基から選択されることを特徴とする、請求項18に記載の複合コーティング。
【請求項21】
前記モノマーεは、3-(パーフルオロ-5-メチルヘキシル)-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2-(パーフルオロデシル)エチルメタクリレート、2-(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート、2-(パーフルオロドデシル)エチルアクリレート、2-(パーフルオロオクチル)エチルアクリレート、1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチルアクリレート、2-(パーフルオロブチル)エチルアクリレート、(2H-パーフルオロプロピル)-2-アクリレート又は(パーフルオロシクロヘキシル)メチルアクリレートの一種又は複数種から選択されることを特徴とする、請求項18に記載の複合コーティング。
【請求項22】
前記複合コーティングの厚さは50~300nmであることを特徴とする、請求項1に記載の複合コーティング。
【請求項23】
前記モノマーαとモノマーβのモル比は1:5~5:1の間であることを特徴とする、請求項1に記載の複合コーティング。
【請求項24】
前記モノマーγとモノマーδのモル比は3:10~10:3の間であることを特徴とする、請求項1に記載の複合コーティング。
【請求項25】
前記基材は、金属、プラスチック、布地、ガラス、電気部材、光学機器又は電気部品であることを特徴とする、請求項1に記載の複合コーティング。
【請求項26】
基材を供給し、基材をプラズマ反応チャンバ内に置き、20~200ミリトールまで真空引きし、不活性ガスHe、Ar、O又はいくつかの混合ガスを導入すること;
モノマーαとモノマーβの混合モノマー蒸気を反応チャンバ内に導入し、プラズマ放電を開始して、プラズマ重合コーティングIを形成すること;及び
モノマーγとモノマーδの混合モノマー蒸気を反応チャンバ内に導入し、プラズマ放電を開始して、コーティングI上にプラズマ重合コーティングIIを形成すること、
を含むことを特徴とする、請求項1~25のいずれか1項に記載の複合コーティングの製造方法。
【請求項27】
モノマーε蒸気を反応チャンバ内に導入し、プラズマ放電を開始して、コーティングII上にプラズマ重合コーティングIIIを形成することを特徴とする、請求項26に記載の複合コーティングの製造方法。
【請求項28】
前記プラズマはパルスプラズマであることを特徴とする、請求項26に記載の複合コーティングの製造方法。
【請求項29】
前記パルスプラズマは、パルス電圧放電を印加することにより生成され、パルス電力は50W~500W、パルス周波数は25Hz~85kHz、パルスデューティ比は5%~85%、プラズマ放電時間は100s~36000sであることを特徴とする、請求項28に記載の複合コーティングの製造方法。
【請求項30】
前記デバイスの表面の少なくとも一部は、請求項1~25のいずれか一項に記載の複合コーティングを有することを特徴とする、デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
この出願は、2021年3月4日中国国家知識産権局に提出された出願番号202110242082.0、発明の名称「複合コーティング、製造方法及デバイス」である中国特許出願に基づく優先権を主張し、その全内容を援用により本出願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、プラズマ化学分野に属し、具体的には、プラズマ重合複合コーティングおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
電子又は電気デバイスや部品、金属製品などの様々な製品は、液体、特に水の汚染による損害に非常に敏感である。例えば、電子又は電気デバイスが通常に使用されている場合、又は誤って液体に曝された場合、電子素子間の短絡が発生し、回路基板や電子チップなどに修復不可能な損害を与える可能性がある。有機ポリマーコーティングは、様々な材料の表面を効果的に保護することができ、有機ポリマーコーティングの方法の中でも、基材の表面にポリマー保護コーティングを作製するための気相成長法は主流の方法であり、この方法は経済的で適用可能であり、操作しやすいなどの特徴があり、特にプラズマ化学気相成長は、プラズマを利用して反応性モノマーガスを活性化し、基材の表面に堆積させる。この方法は、様々な基材に適しており、堆積されたポリマー保護コーティングは均一になり、極薄で透明で絶縁性の老化防止プラズマ重合コーティングを効果的に堆積でき、電子部品、特にプリント回路基板を選択的に保護できる。現在、プラズマ保護層は基材との結合力が悪く、剥離しやすく、耐食性が不安定などの欠点を抱えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の具体的な実施形態は、高い結合力、強い耐食性の複合コーティング、製造方法及びデバイスを提供するためのものであり、具体的なスキームは次の通りである。
【0005】
基材上に堆積されたコーティングI及びコーティングIIを含む複合コーティングであって、
前記コーティングIは、モノマーα及びモノマーβを含むプラズマにより形成されたプラズマ重合コーティングであり、
前記コーティングIIは、前記コーティングIを、モノマーγ及びモノマーδを含むプラズマに接触させることによりコーティングI上に形成されたプラズマ重合コーティングであり、
前記モノマーαの構造は式(1-1)に示され、
【化1】
(ここで、RはCH又はC~Cのシクロアルキル基から選択され、R、R及びRはそれぞれ独立して、結合手又はC~Cのアルキレン基から選択され、かつ、R及びRはともに結合手である場合に同一の炭素原子に結合しておらず、Aは連結部位であり、Bは炭素-炭素不飽和結合又はエポキシ構造を含む。)
前記モノマーβの構造は式(2-1)に示され、
【化2】
(ここで、Sは1つ以上の-O-C(O)-又は-C(O)-O-を含み、R、R、R、R、R及びR10はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C~C10のアルキル基又はC~C10のハロゲン原子置換アルキル基から選択される。)
前記モノマーγの構造は式(3-1)に示され、
【化3】
(ここで、Arは芳香環を有する構造であり、Tは-O-C(O)-又は-C(O)-O-であり、Xは連結部位であり、Yは連結部位であり、R11、R12及びR13はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C~C10のアルキル基又はC~C10のハロゲン原子置換アルキル基から選択される。)
前記モノマーδの構造は式(4-1)に示される、複合コーティング。
【化4】
(ここで、Sは1つ以上の-O-C(O)-又は-C(O)-O-を含み、R14、R15、R16、R17、R18及びR19はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C~C10のアルキル基又はC~C10のハロゲン原子置換アルキル基から選択される。)
【0006】
任意選択的に、前記Aは-O-C(O)-又は-C(O)-O-である。
【0007】
任意選択的に、前記モノマーαの構造は式(1-2)に示される。
【化5】
(ここで、R20、R21及びR22はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C~C10のアルキル基又はC~C10のハロゲン原子置換アルキル基から選択される。)
【0008】
任意選択的に、前記R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18及びR19はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基から選択される。
【0009】
任意選択的に、前記R20、R21及びR22はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基から選択される。
【0010】
任意選択的に、前記モノマーαは、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロへキサンカルボキシレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン、ビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテル、2,3-エポキシシクロペンチルシクロペンチルエーテル、ビニルシクロヘキセンジオキシド、ジイソプレンジオキシド又はビス((3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル)アジペートの一種又は複数種から選択される。
【0011】
任意選択的に、前記S及び/又はSは2つの-O-C(O)-又は-C(O)-O-を含む。
【0012】
任意選択的に、前記S構造は式(2-2)に示される。
【化6】
(ここで、R23はC~C10のアルキレン基又はC~C10のハロゲン原子置換アルキレン基であり、yは0~10の整数である。)
【0013】
任意選択的に、前記モノマーβは、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、無水メタクリル酸、2-メチレンコハク酸ジプロプ-2-エニル、2-ベンジリデンマロン酸ジプロプ-2-エニル又はジアリルマロン酸ジエチルの少なくとも1つから選択される。
【0014】
任意選択的に、前記X構造は式(3-2)に示される。
【化7】
(ここで、X11は結合手、-O-又は-C(O)-であり、X12は結合手、C~C10のアルキレン基又はC~C10のハロゲン原子置換アルキレン基であり、
前記Yは結合手、C~C10のアルキレン基又はC~C10のハロゲン原子置換アルキレン基である。)
【0015】
任意選択的に、前記Arはベンゼン環構造又は置換基を有するベンゼン環構造である。
【0016】
任意選択的に、前記モノマーγ構造は式(3-3)に示される。
【化8】
(ここで、Tは-O-C(O)-又は-C(O)-O-であり、Xは連結部位であり、Yは連結部位であり、
24、R25及びR26はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C~C10のアルキル基又はC~C10のハロゲン原子置換アルキル基から選択される。)
【0017】
任意選択的に、前記Xの構造は式(3-4)に示される。
【化9】
(ここで、X21は結合手、-O-又は-C(O)-であり、X22は結合手、C~C10のアルキレン基又はC~C10のハロゲン原子置換アルキレン基であり、
前記Yは結合手、C~C10のアルキレン基又はC~C10のハロゲン原子置換アルキレン基である。)
【0018】
任意選択的に、前記R24、R25及びR26はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基から選択される。
【0019】
任意選択的に、前記モノマーγは、2-フェノキシエチルアクリレート、フェニルアクリレート、ジアリルテレフタレート又はフェニルメタクリレートの少なくとも1つから選択される。
【0020】
任意選択的に、前記S構造は式(4-2)に示される。
【化10】
(ここで、R27はC~C10のアルキレン基又はC~C10のハロゲン原子置換アルキレン基であり、zは0~10の整数である。)
【0021】
任意選択的に、前記モノマーδは、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、無水メタクリル酸、2-メチレンコハク酸ジプロプ-2-エニル、2-ベンジリデンマロン酸ジプロプ-2-エニル又はジアリルマロン酸ジエチルの少なくとも1つから選択される。
【0022】
任意選択的に、前記複合コーティングは、前記コーティングIIとモノマーεを含むプラズマとを接触させることによりコーティングII上に形成されたプラズマ重合コーティングであるコーティングIIIをさらに含み、
前記モノマーεの構造は式(5-1)に示される。
【化11】
(ここで、Zは連結部位であり、R28、R29及びR30はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C~C10の炭化水素基又はC~C10のハロゲン原子置換炭化水素基から選択され、xは1~20の整数である。)
【0023】
任意選択的に、前記Zは結合手、C~Cのアルキレン基又は置換基を有するC~Cのアルキレン基であり、xは5以上である。
【0024】
任意選択的に、前記R28、R29及びR30はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基から選択される。
【0025】
任意選択的に、前記モノマーεは、3-(パーフルオロ-5-メチルヘキシル)-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2-(パーフルオロデシル)エチルメタクリレート、2-(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート、2-(パーフルオロドデシル)エチルアクリレート、2-(パーフルオロオクチル)エチルアクリレート、1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチルアクリレート、2-(パーフルオロブチル)エチルアクリレート、(2H-パーフルオロプロピル)-2-アクリレート又は(パーフルオロシクロヘキシル)メチルアクリレートの一種又は複数種から選択される。
【0026】
任意選択的に、前記複合コーティングの厚さは50~300nmである。
【0027】
任意選択的に、前記モノマーαとモノマーβのモル比は1:5~5:1の間である。
【0028】
任意選択的に、前記モノマーγとモノマーδのモル比は3:10~10:3の間である。
【0029】
任意選択的に、前記基材は、金属、プラスチック、布地、ガラス、電気部材、光学機器又は電気部品である。
【0030】
上記のいずれか1項に記載の複合コーティングの製造方法であって、
基材を提供し、基材をプラズマ反応チャンバ内に置き、20~200ミリトールまで真空引きし、不活性ガスHe、Ar、O又はいくつかの混合ガスを導入すること;
モノマーαとモノマーβの混合モノマー蒸気を反応チャンバ内に導入し、プラズマ放電を開始して、プラズマ重合コーティングIを形成すること;及び
モノマーγとモノマーδの混合モノマー蒸気を反応チャンバ内に導入し、プラズマ放電を開始して、コーティングI上にプラズマ重合コーティングIIを形成すること、を含む、複合コーティングの製造方法。
【0031】
任意選択的に、モノマーε蒸気を反応チャンバ内に導入し、プラズマ放電を開始して、コーティングII上にプラズマ重合コーティングIIIを形成する。
【0032】
任意選択的に、前記プラズマはパルスプラズマである。
【0033】
任意選択的に、前記パルスプラズマは、パルス電圧放電を印加することにより生成され、パルス電力は50W~500W、パルス周波数は25Hz~85kHz、パルスデューティ比は5%~85%、プラズマ放電時間は100s~36000sである。
【0034】
表面の少なくとも一部は、上記のいずれか1項に記載の複合コーティングを有する、デバイスであって、前記デバイス。
【0035】
本発明の具体的な実施形態の複合コーティングは、エポキシ構造を有する多官能基モノマーとエステル系カップリング剤のモノマーのプラズマにより形成されたコーティングを下地層とし、芳香環を有する不飽和エステル系モノマーとエステル系カップリング剤のプラズマにより形成されたコーティングを防食層とする。前記下地層は、基材と防食層との緊密な結合及び複合コーティングの緻密性の向上に有益であり、前記防食層は、芳香環の安定性が良いため、ポリマーに比較的に良い硬度と耐熱耐温性能を持たせることができるとともに、疎水性が向上し、水溶解性が低下し、そしてエステル基を含むため、水素結合作用力を形成することができ、付着力がより良く、前記複合コーティングは非常に薄いコーティングの場合に優れた保護性能を有することができる。さらに、エポキシ構造を有する多官能基モノマーは、エポキシ構造を有する多官能基エステル、特にエポキシ構造のアクリレートを採用し、複合コーティング全体がより優れた保護性能を有し、さらに、防食層の上にフッ素含有疎水性層を形成することにより、複合コーティングの保護性能をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1は、実施例3におけるコーティング後のMgシート及びコーティングされていないMgシートに対して電気化学試験を行って得られたターフェルプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の具体的な実施形態の複合コーティングにおいて、前記複合コーティングは、基材上に堆積されたコーティングI及びコーティングIIを含み、
前記コーティングIは、モノマーα及びモノマーβを含むプラズマにより形成されたプラズマ重合コーティングであり、
前記コーティングIIは、前記コーティングIを、モノマーγ及びモノマーδを含むプラズマに接触させることによりコーティングI上に形成されたプラズマ重合コーティングであり、
前記モノマーαの構造は式(1-1)に示され、
【化12】
(ここで、RはCH又はC~Cのシクロアルキル基から選択され、R、R及びRはそれぞれ独立して、結合手又はC~Cのアルキレン基から選択され、かつ、R及びRはともに結合手である場合に同一の炭素原子に結合しておらず、Aは連結部位であり、Bは炭素-炭素不飽和結合又はエポキシ構造を含む。)
前記モノマーβの構造は式(2-1)に示され、
【化13】
(ここで、Sは1つ以上の-O-C(O)-又は-C(O)-O-を含み、R、R、R、R、R及びR10はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C~C10のアルキル基又はC~C10のハロゲン原子置換アルキル基から選択される。)
前記モノマーγの構造は式(3-1)に示され、
【化14】
(ここで、Arは芳香環を有する構造であり、Tは-O-C(O)-又は-C(O)-O-であり、Xは連結部位であり、Yは連結部位であり、R11、R12及びR13はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C~C10のアルキル基又はC~C10のハロゲン原子置換アルキル基から選択される。)
前記モノマーδの構造は式(4-1)に示され、
【化15】
(ここで、Sは1つ以上の-O-C(O)-又は-C(O)-O-を含み、R14、R15、R16、R17、R18及びR19はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C~C10のアルキル基又はC~C10のハロゲン原子置換アルキル基から選択される。)
【0038】
本発明の具体的な実施形態の複合コーティングにおいて、R及びRはともに結合手である場合に同一の炭素原子に結合しておらず、具体的には、RがCHから選択される場合、R及びRは同時に結合手ではなく、Rがシクロアルキル基から選択される場合、前記R及びRはRと2つの炭素原子を共有するか、或いは、前記R及びRはRと1つの炭素原子を共有し、R及びRは同時に結合手ではない。
【0039】
本発明の具体的な実施形態の複合コーティングにおいて、コーティングIは、式(1-1)に示されるエポキシ構造を有する多官能基モノマーαと式(1-2)に示されるエステル系カップリング剤モノマーβとからプラズマ化学気相成長法により基材上に堆積され、複合コーティングの基材と防食層を緊密に結合することができ、コーティングIIは、式(1-3)に示される芳香環を有する不飽和エステル系モノマーγと式(1-4)に示されるエステル系カップリング剤モノマーδとからプラズマ化学気相成長法によりコーティングI上に堆積され、それに含まれる芳香環は安定性が良く、ポリマーコーティングに比較的に良い硬度と耐熱耐温性能を持たせることができるとともに、疎水性が向上し、水溶解性が低下し、そしてエステル基を含むため、コーティングIのエステル結合と配合して水素結合を形成し、付着力が良いことにより、前記複合コーティングは非常に薄いコーティングの場合に優れた保護性能を有することができる。
【0040】
本発明の具体的な実施形態の複合コーティングにおいて、いくつかの具体的な実施形態では、前記R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18及びR19はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基から選択される。
【0041】
本発明の具体的な実施形態の複合コーティングにおいて、いくつかの具体的な実施形態では、Rはシクロペンチル又はシクロヘキシルなどのC~Cのシクロアルキル基から選択され、前記R及びRはRと2つの炭素原子を共有する。前記R、R及びRはそれぞれ独立して、結合手又はC~Cのアルキレン基から選択され、前記アルキレン基は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基又はブチレン基などの直鎖アルキレン基、或いはイソプロピレン基又はイソブチレン基などの分岐鎖含有アルキレン基を含む。
【0042】
本発明の具体的な実施形態の複合コーティングにおいて、いくつかの具体的な実施形態では、式(1-1)中、Bは炭素-炭素不飽和二重結合又は炭素-炭素不飽和三重結合又はエポキシ構造であり、これにより、その構造中のエポキシ構造に合わせてコーティングの緻密性を形成することができる。いくつかの具体的な実施形態では、前記Aは-O-C(O)-又は-C(O)-O-であり、さらに、前記モノマーαの構造は式(1-2)に示され、
【化16】
ここで、R20、R21及びR22はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C~C10のアルキル基又はC~C10のハロゲン原子置換アルキル基から選択される。この構造のモノマーαを用いて得られる複合コーティングは、より良い保護性能を有する。いくつかの具体的な実施形態では、前記R20、R21及びR22はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基から選択される。前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基などの直鎖アルキル基、或いはイソプロピル基又はイソブチル基などの分岐鎖含有アルキル基が挙げられる。
【0043】
本発明の具体的な実施形態の複合コーティングにおいて、前記モノマーαは、メタクリル酸グリシジル(CAS番号:106-91-2)、アクリル酸テトラヒドロフルフリル(CAS番号:2399-48-6)、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロへキサンカルボキシレート(CAS番号:2386-87-0)、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート(CAS番号:64630-63-3)、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート(CAS番号:82428-30-6)、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン(CAS番号:106-86-5)、ビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテル(CAS番号:2386-90-5)、2,3-エポキシシクロペンチルシクロペンチルエーテル、ビニルシクロヘキセンジオキシド(CAS番号:106-87-6)、ジイソプレンジオキシド又はビス((3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル)アジペート(CAS番号:3130-19-6)の一種又は複数種から選択される。
【0044】
本発明の具体的な実施形態の複合コーティングにおいて、いくつかの具体的な実施形態では、前記Sは2つの-O-C(O)-又は-C(O)-O-を含み、即ち、Sには2つの-O-C(O)-、2つの-C(O)-O-、或いは-O-C(O)-又は-C(O)-O-が1つずつ含まれる。
【0045】
本発明の具体的な実施形態の複合コーティングにおいて、いくつかの具体的な実施形態では、前記Sは式(2-2)に示される構造を有する。
【化17】
ここで、R23はC~C10のアルキレン基又はC~C10のハロゲン原子置換アルキレン基であり、前記アルキレン基は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基又はブチレン基などの直鎖アルキレン基、或いはイソプロピレン基又はイソブチレン基などの分岐鎖含有アルキレン基を含み、yは0~10の整数である。具体的には、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10である。
【0046】
本発明の具体的な実施形態の複合コーティングにおいて、特定の非限定的な例として、前記モノマーβは、1,4-ブタンジオールジメタクリレート(CAS番号:2082-81-7)、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート(CAS番号:6606-59-3)、エチレングリコールジメタクリレート(CAS番号:97-90-5)、ジエチレングリコールジメタクリレート(CAS番号:2358-84-1)、トリエチレングリコールジメタクリレート(CAS番号:109-16-0)、テトラエチレングリコールジメタクリレート(CAS番号:109-17-1)、1,3-ブタンジオールジメタクリレート(CAS番号:1189-08-8)、ネオペンチルグリコールジメタクリレート(CAS番号:1985-51-9)、無水メタクリル酸(CAS番号:760-93-0)、2-メチレンコハク酸ジプロプ-2-エニル、2-ベンジリデンマロン酸ジプロプ-2-エニル(CAS番号:52505-39-2)又はジアリルマロン酸ジエチル(CAS番号:3195-24-2)中の少なくとも1つから選択される。
【0047】
本発明の具体的な実施形態の複合コーティングにおいて、いくつかの具体的な実施形態では、前記Arは芳香環上に置換基を有するベンゼン環又はヘテロ芳香環であり、他の具体的な実施形態では、前記Arは芳香環上に置換基を有さないベンゼン環又はヘテロ芳香環である。
【0048】
本発明の具体的な実施形態の複合コーティングにおいて、前記X及びYは連結部位であり、Xは芳香環を有する構造Arとエステル結合Tとを連結するために使用され、Yはエステル結合Tと飽和炭素-炭素二重結合とを連結するために使用され、いくつかの具体的な実施形態では、前記Xは下記式(3-2)に示される構造である。
【化18】
ここで、X11は結合手、-O-又は-C(O)-であり、X12は結合手、C~C10のアルキレン基又はC~C10のハロゲン原子置換アルキレン基であり、前記Yは結合手、C~C10のアルキレン基又はC~C10のハロゲン原子置換アルキレン基である。前記アルキレン基は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基又はブチレン基などの直鎖アルキレン基、或いはイソプロピレン基又はイソブチレン基などの分岐鎖含有アルキレン基を含む。
【0049】
本発明の具体的な実施形態の複合コーティングにおいて、いくつかの具体的な実施形態では、前記モノマーγは式(3-3)に示される構造を有する。
【化19】
【0050】
ここで、Tは-O-C(O)-又は-C(O)-O-であり、Xはベンゼン環とエステル結合Tとを結合するための連結部位であり、Yはエステル結合Tと炭素-炭素二重結合とを結合するための連結部位であり、
24、R25及びR26はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C~C10のアルキル基又はC~C10のハロゲン原子置換アルキル基から選択される。前記アルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基などの直鎖アルキル基、或いはイソプロピル基又はイソブチル基などの分岐鎖含有アルキル基を含む。
【0051】
本発明の具体的な実施形態の複合コーティングにおいて、いくつかの具体的な実施形態では、式(3-3)に示される構造中、ベンゼン環上の2つの置換基はパラ置換であり、他の実施形態では、オルト置換又はメタ置換であってもよい。
【0052】
本発明の具体的な実施形態の複合コーティングにおいて、いくつかの具体的な実施形態では、前記Xは下記式(3-4)に示される構造である。
【化20】
ここで、X21は結合手、-O-又は-C(O)-であり、X22は結合手、C~C10のアルキレン基又はC~C10のハロゲン原子置換アルキレン基であり、前記Yは結合手、C~C10のアルキレン基又はC~C10のハロゲン原子置換アルキレン基である。前記アルキレン基は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基又はブチレン基などの直鎖アルキレン基、或いはイソプロピレン基又はイソブチレン基などの分岐鎖含有アルキレン基を含む。
【0053】
本発明の具体的な実施形態の複合コーティングにおいて、いくつかの具体的な実施形態では、前記R24、R25及びR26はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基から選択される。
【0054】
本発明の具体的な実施形態の複合コーティングにおいて、特定の非限定的な例として、前記モノマーγは、2-フェノキシエチルアクリレート(CAS番号:48145-04-6)、フェニルアクリレート(CAS番号:937-41-7)、ジアリルテレフタレート(CAS番号:1026-92-2)又はフェニルメタクリレート(CAS番号:2177-70-0)の少なくとも1つから選択される。
【0055】
本発明の具体的な実施形態の複合コーティングにおいて、いくつかの具体的な実施形態では、前記Sは2つの-O-C(O)-又は-C(O)-O-を含み、即ち、Sには2つの-O-C(O)-、2つの-C(O)-O-、或いは-O-C(O)-又は-C(O)-O-が1つずつが含まれる。
【0056】
本発明の具体的な実施形態の複合コーティングにおいて、いくつかの具体的な実施形態では、前記Sは式(4-2)に示される構造を有する。
【化21】
ここで、R27はC~C10のアルキレン基又はC~C10のハロゲン原子置換アルキレン基であり、前記アルキレン基は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基又はブチレン基などの直鎖アルキレン基、或いはイソプロピレン基又はイソブチレン基などの分岐鎖含有アルキレン基を含み、zは0~10の整数である。具体的には、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10である。
【0057】
本発明の具体的な実施形態の複合コーティングにおいて、特定の非限定的な例として、前記モノマーδは、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、無水メタクリル酸、2-メチレンコハク酸ジプロプ-2-エニル、2-ベンジリデンマロン酸ジプロプ-2-エニル又はジアリルマロン酸ジエチルの少なくとも1つから選択される。
【0058】
本発明の具体的な実施形態の複合コーティングにおいて、いくつかの具体的な実施形態では、前記複合コーティングは、前記コーティングIIとモノマーεを含むプラズマと接触させることによりコーティングII上に形成されたプラズマ重合コーティングであるコーティングIIIをさらに含み、前記モノマーεの構造は式(5-1)に示される。
【化22】
ここで、Zは連結部位であり、R28、R29及びR30はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C~C10の炭化水素基又はC~C10のハロゲン原子置換炭化水素基から選択され、xは1~20の整数である。
【0059】
本発明の具体的な実施形態の複合コーティングにおいて、前記Zはエステル結合とパーフルオロカーボンアルキル基とを結合するための連結部位であり、いくつかの具体的な実施形態では、前記Zは結合手、C~Cのアルキレン基又は置換基を有するC~Cのアルキレン基である。前記アルキレン基は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基又はブチレン基などの直鎖アルキレン基、或いはイソプロピレン基又はイソブチレン基などの分岐鎖含有アルキレン基が挙げられ、前記置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基又はエステル基などを含む。
【0060】
本発明の具体的な実施形態の複合コーティングにおいて、いくつかの具体的な実施形態では、前記xは4以上、さらに6以上であり、前記xは、具体的に例えば6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20であり、コーティングの疎水性を向上するのに有益である。
【0061】
本発明の具体的な実施形態の複合コーティングにおいて、特定の非限定的な例として、前記モノマーεは、3-(パーフルオロ-5-メチルヘキシル)-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート(CAS番号:16083-81-1)、2-(パーフルオロデシル)エチルメタクリレート(CAS番号:2144-54-9)、2-(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート(CAS番号:2144-53-8)、2-(パーフルオロドデシル)エチルアクリレート(CAS番号:34395-24-9)、2-(パーフルオロオクチル)エチルアクリレート(CAS番号:27905-45-9)、1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチルアクリレート(CAS番号:17527-29-6)、2-(パーフルオロブチル)エチルアクリレート(CAS番号:52591-27-2)、(2H-パーフルオロプロピル)-2-アクリレート(CAS番号:59158-81-5)又は(パーフルオロシクロヘキシル)メチルアクリレート(CAS番号:40677-94-9)の一種又は複数種から選択される。
【0062】
本発明の具体的な実施形態の複合コーティングにおいて、いくつかの具体的な実施形態では、前記コーティングIは、モノマーα及びモノマーβを含むプラズマにより形成されたプラズマ重合コーティングであり、前記コーティングIIは、前記コーティングIを、モノマーγ及びモノマーδを含むプラズマに接触させることによりコーティングI上に形成されたプラズマ重合コーティングであり、前記コーティングIIIは、前記コーティングIIとモノマーεを含むプラズマとを接触させることによりコーティングII上に形成されたプラズマ重合コーティングである。他の具体的な実施形態では、コーティングI、コーティングII又はコーティングIIIの全体的なコーティング性能に影響を与えることなく、前記コーティングIは、モノマーα及びモノマーβに適切な他のモノマーを加えたプラズマにより形成されたプラズマ重合コーティングであってもよく、前記コーティングIIは、前記コーティングIを、モノマーγ及びモノマーδに適切な他のモノマーを加えたプラズマに接触させることによりコーティングI上に形成されたプラズマ重合コーティングであってもよく、前記コーティングIIIは、前記モノマーεと適切な他のモノマーとの混合モノマープラズマによりコーティングII上に形成されたプラズマ重合コーティングであってもよい。
【0063】
本発明の具体的な実施形態の複合コーティングにおいて、いくつかの具体的な実施形態では、前記複合コーティングの厚さは50~500nmであり、本発明の具体的な実施形態の複合コーティングにおいて、このような極薄の厚さの下でも、依然として非常に優れた保護性能を維持することができる。いくつかの具体的な実施形態では、前記基材は金属であり、前記複合コーティングの厚さは80~150nmであり、具体的には、例えば、80nm、90nm、100nm、110nm、120nm、130nm、140nm又は150nmなどであってもよい。いくつかの具体的な実施形態では、前記基材は回路基板であり、前記複合コーティングの厚さは200~300nmであり、具体的には、例えば、200nm、210nm、220nm、230nm、240nm、250nm、260nm、270nm、280nm、290nm又は300nmなどであってもよい。
【0064】
本発明の具体的な実施形態の複合コーティングにおいて、いくつかの具体的な実施形態では、前記モノマーαとモノマーβのモル比は1:5~5:1の間であり、具体的には、例えば、1:5、1:4、1:3、1:2.5、1:2、1:1.5、1:1、1.5:1、2:1、2.5:1、3:1、4:1又は5:1などであってもよく、他の具体的な実施形態では、具体的なモノマーの状況及び具体的な製品保護要求に応じて、他の割合の間で調整することもできる。
【0065】
本発明の具体的な実施形態の複合コーティングにおいて、いくつかの具体的な実施形態では、前記モノマーγとモノマーδのモル比は3:10~10:3の間であり、具体的には、例えば、3:10、4:10、5:10、6:10、7:10、8:10、9:10、10:10、10:9、10:8、10:7、10:6、10:5、10:4又は10:3などであってもよく、他の具体的な実施形態では、具体的なモノマーの状況及び具体的な製品保護要求に応じて、他の割合の間で調整することもできる。
【0066】
本発明の具体的な実施形態の複合コーティングにおいて、いくつかの具体的な実施形態では、前記基材は金属、具体的には、例えば、鉄、マグネシウム、アルミニウム、銅又はそれらの合金であり、他の具体的な実施形態では、前記基材は様々なプラスチック、布地、ガラス、電気部材又は光学機器などである。具体的には、電気部材は、プリント回路基板(PCB)、電子製品又は電子組立半製品などであってもよい。前記基材が電子製品である場合、携帯電話、タブレット、キーボード、電子書籍リーダー、ウェアラブルデバイス、ディスプレイなどが挙げられるが、これらに限定されない。前記基材は、電気部材の任意の適切な電気部品であってもよく、具体的には、前記電気部品は、抵抗器、コンデンサ、トランジスタ、ダイオード、増幅器、リレー、変圧器、電池、ヒューズ、集積回路、スイッチ、LED、LEDディスプレイ、圧電素子、光電子部品又はアンテナ又は発振器などであってもよい。
【0067】
本発明の具体的な実施形態は、さらに、上記のいずれか1項に記載の複合コーティングの製造方法も提供し、前記製造方法は、
基材を提供し、基材をプラズマ反応チャンバ内に置き、20~200ミリトールまで真空引きし、不活性ガスHe、Ar、O又はいくつかの混合ガスを導入すること;
モノマーαとモノマーβの混合モノマー蒸気を反応チャンバ内に導入し、プラズマ放電を開始して、プラズマ重合コーティングIを形成すること;及び
モノマーγとモノマーδの混合モノマー蒸気を反応チャンバ内に導入し、プラズマ放電を開始して、コーティングI上にプラズマ重合コーティングIIを形成すること、を含む。
【0068】
本発明の具体的な実施形態の複合コーティングの製造方法は、さらに、モノマーε蒸気を反応チャンバ内に導入し、プラズマ放電を開始して、コーティングII上にプラズマ重合コーティングIIIを形成することを含む。
【0069】
本発明の具体的な実施形態の複合コーティングの製造方法において、前記モノマーα、モノマーβ、モノマーγ、モノマーδ、モノマーε、コーティングI、コーティングII、コーティングIIIの説明は、上述した通りである。
【0070】
本発明の具体的な実施形態の複合コーティングは、プラズマコーティングと基材との結合力をより高めるために、いくつかの具体的な実施形態では、前記基材は連続波プラズマによって前処理された基材であり、具体的な条件は、例えば、不活性ガス雰囲気下において、プラズマ放電電力は50~500Wであり、例えば、50W、100W、150W、200w、250w、300w、350w、400w、450w、500wなどであってもよい。連続放電時間は30~600sであり、具体的には、例えば、30s、50s、100s、200s、300s、400s、500s、または600sなどであってもよい。いくつかの具体的な実施形態では、前記基材は、熱、酸素、または高エネルギー放射線によって前処理されたものである。
【0071】
本発明の具体的な実施形態の複合コーティングの製造方法は、いくつかの具体的な実施形態では、前記プラズマはパルスプラズマであり、前記モノマーの流量は50~500μl/minであり、例えば、100μl/min、200μl/min、300μl/min、または400μl/minなどであってもよい。モノマーの気化温度は50℃~120℃、具体的には50℃、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃などであってもよく、且つ真空条件下で気化が起こる。前記パルスプラズマは、パルス電圧放電を印加することにより生成され、パルス電力は50W~500Wであり、例えば、50W、100W、150W、200w、250w、300w、350w、400w、450wまたは500wなどであってもよい。パルス周波数は25Hz~85kHzであり、例えば、25Hz、30Hz、35Hz、40Hz、45Hz、50Hz、55Hz、60Hz、65Hz、70Hz、75Hz、80Hz、または85Hzなどであってもよい。パルスデューティ比は5%~85%であり、例えば、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%などであってもよい。プラズマ放電時間は100s~36000sであり、例えば、100s、200s、500s、1000s、2000s、3000s、4000s、5000s、6000s、7000s、8000s、9000s、10000s、15000s、20000s、25000s、30000s、36000sであってもよい。
【0072】
本発明の具体的な実施形態の複合コーティングの製造方法において、いくつかの特定の実施形態では、プラズマ放電方法は、既存の様々な放電方法、例えば、無電極放電(例えば、無線周波数誘導結合放電、マイクロ波放電など)、単電極放電(例えば、コロナ放電、単極放電によって形成されるプラズマジェットなど)、二重電極放電(例えば、誘電体バリア放電、露出電極無線周波数グロー放電など)、及び多電極放電(例えば、第3の電極として浮遊電極を使用する放電など)であってもよい。
【0073】
本発明の具体的な実施形態は、さらにデバイスを提供し、前記デバイスの表面の少なくとも一部は、上記のいずれか1項の複合コーティングを有し、いくつかの具体的な実施形態では、デバイスの表面の一部または全部は、上述の保護コーティングでのみコーティングされる。
【0074】
以下、具体的な実施例により本発明をさらに説明する。
実施例
試験方法の説明
【0075】
20.5V水中通電試験:試験過程は次の通りである:1、電源は回路基板に20.5V電圧を供給した。2、回路基板を水中に浸した。3、コンピュータで電流を検出した。4、故障時間(電流>0.6mA)を記録した。
【0076】
塩水噴霧試験:GB/T2423.18-2000電工電子製品の環境試験方法に従って検出した。コーティング厚さ試験:米国Filmetrics F20-UV-薄膜厚さ測定器を使用して測定した。
【0077】
電気化学試験:上海辰華CHI660E C20704電気化学分析器で、3.6%NaCl中性溶液中の分極曲線を試験し、試験条件:腐食電位はマイナス600mv~プラス600mv、スキャンス速度0.00033mv/s、スキャン時間600sであった。
【実施例1】
【0078】
回路基板、Mgシート、Feシートをプラズマチャンバ内に置き、チャンバを40ミリトールまで真空引きし、ヘリウムガスを60sccmの流量で導入し、無線周波数プラズマ放電を開始して、基材を前処理し、この前処理段階では、放電電力は150W、放電は600s連続した。
【0079】
次に、1,4-ブタンジオールジアクリレートとアクリル酸テトラヒドロフルフリル(質量比2:1)の混合モノマーを導入し、気化温度100℃で気化した後にチャンバ内に導入してプラズマ化学気相成長を行い、混合モノマー流量は150ul/minであり、チャンバ内のプラズマは無線周波数放電方式によって生成され、出力方式はパルス、放電電力50W、周波数45Hz、パルスデューティ比25%、放電時間3600sとした。
【0080】
次に、1,6-ヘキサンジオールジアクリレートとフェニルメタクリレート(質量比1:1)の混合モノマーを導入し、気化温度120℃で気化した後にチャンバ内に導入してプラズマ化学気相成長を行い、混合モノマー流量は100ul/minであり、チャンバ内のプラズマは無線周波数放電方式によって生成され、出力方式はパルス、放電電力20w、周波数25Hz、パルスデューティ比65%、放電時間7200sとした。
【0081】
次に、3-(パーフルオロ-5-メチルヘキシル)-2-ヒドロキシプロピルメタクリレートモノマーを導入し、気化温度120℃で気化した後にチャンバ内に導入してプラズマ化学気相成長を行い、モノマー流量は100ul/minであり、チャンバ内のプラズマは無線周波数放電方式によって生成され、出力方式はパルス、放電電力180w、周波数35Hz、パルスデューティ比45%、放電時間7200sとした。
【0082】
コーティング完了後、圧縮空気を導入してチャンバを常圧に戻した。回路基板を取り出して20.5V水中通電試験を行い、Mgシート、Feシートのサンプルに対して塩水噴霧試験を行い、その試験結果を表1に示す。
【実施例2】
【0083】
回路基板、Mgシート、Feシートをプラズマチャンバ内に置き、チャンバを8ミリトールまで真空引きし、ヘリウムガスを80sccmの流量で導入し、無線周波数プラズマ放電を開始して、基材を前処理し、この前処理段階では、放電電力は180W、放電は300s連続した。
【0084】
次に、トリエチレングリコールジメタクリレートとメタクリル酸グリシジル(質量比2:1)の混合モノマーを導入し、気化温度180℃で気化した後にチャンバ内に導入してプラズマ化学気相成長を行い、混合モノマー流量は110ul/minであり、チャンバ内のプラズマは無線周波数放電方式によって生成され、出力方式はパルス、放電電力50W、周波数45Hz、パルスデューティ比45%、放電時間3000sとした。
【0085】
次に、1,3-ブタンジオールジメタクリレートと2-フェノキシエチルアクリレート(質量比1:2)の混合モノマーを導入し、気化温度180℃で気化した後にチャンバ内に導入してプラズマ化学気相成長を行い、混合モノマー流量は250ul/min、チャンバ内のプラズマは無線周波数放電方式によって生成され、出力方式はパルス、放電電力26w、周波数85Hz、パルスデューティ比25%、放電時間7200sとした。
【0086】
次に、2-(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレートモノマーを導入し、気化温度120℃で気化した後にチャンバ内に導入してプラズマ化学気相成長を行い、モノマー流量は100ul/minであり、チャンバ内のプラズマは無線周波数放電方式によって生成され、出力方式はパルス、放電電力90w、周波数65Hz、パルスデューティ比65%、放電時間1800sとした。
【0087】
コーティング完了後、圧縮空気を導入してチャンバを常圧に戻した。回路基板を取り出して20.5V水中通電試験を行い、Mgシート、Feシートのサンプルに対して塩水噴霧試験を行い、その試験結果を表1に示す。
【実施例3】
【0088】
回路基板、Mgシート、Feシートをプラズマチャンバ内に置き、チャンバを80ミリトールまで真空引きし、ヘリウムガスを160sccmの流量で導入し、無線周波数プラズマ放電を開始して、基材を前処理し、この前処理段階では、放電電力は180W、放電は300s連続した。
【0089】
次に、1,6-ヘキサンジオールジアクリレートと3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート(質量比2:1)の混合モノマーを導入し、気化温度180℃で気化した後にチャンバ内に導入してプラズマ化学気相成長を行い、混合モノマー流量は200ul/minであり、チャンバ内のプラズマは無線周波数放電方式によって生成され、出力方式はパルス、放電電力50W、周波数50Hz、パルスデューティ比45%、放電時間2400sとした。
【0090】
次に、1,6-ヘキサンジオールジアクリレートとフェニルアクリレート(質量比3:2)の混合モノマーを導入し、気化温度180℃で気化した後にチャンバ内に導入してプラズマ化学気相成長を行い、混合モノマー流量は280ul/minであり、チャンバ内のプラズマは無線周波数放電方式によって生成され、出力方式はパルス、放電電力20w、周波数50Hz、パルスデューティ比15%、放電時間3000sとした。
【0091】
次に、2-(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレートモノマーを導入し、気化温度120℃で気化した後にチャンバ内に導入してプラズマ化学気相成長を行い、モノマー流量は160ul/minであり、チャンバ内のプラズマは無線周波数放電方式によって生成され、出力方式はパルス、放電電力180w、周波数50Hz、パルスデューティ比15%、放電時間2600sとした。
【0092】
コーティング完了後、圧縮空気を導入してチャンバを常圧に戻した。回路基板を取り出して20.5V水中通電試験を行い、Mgシート、Feシートのサンプルに対して塩水噴霧試験を行い、その試験結果を表1に示す。コーティング後のMgシート及びコーティングされていないMgシートに電気化学試験を行い、図1のようなターフェルプロットを得、この曲線をフィッティングして得られたその電気化学パラメータの結果を表2に示す。
【実施例4】
【0093】
回路基板、Mgシート、Feシートをプラズマチャンバ内に置き、チャンバを80ミリトールまで真空引きし、ヘリウムガスを120sccmの流量で導入し、無線周波数プラズマ放電を開始して、基材を前処理し、この前処理段階では、放電電力は500W、放電は300s連続した。
【0094】
次に、ネオペンチルグリコールジメタクリレートと3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロへキサンカルボキシレート(質量比2:1)の混合モノマーを導入し、気化温度160℃で気化した後にチャンバ内に導入してプラズマ化学気相成長を行い、混合モノマー流量は300ul/minであり、チャンバ内のプラズマは無線周波数放電方式によって生成され、出力方式はパルス、放電電力80W、周波数25Hz、パルスデューティ比50%、放電時間3600sとした。
【0095】
次に、ネオペンチルグリコールジメタクリレートとジアリルテレフタレート(質量比2:1)の混合モノマーを導入し、気化温度180℃で気化した後にチャンバ内に導入してプラズマ化学気相成長を行い、混合モノマー流量は400ul/minであり、チャンバ内のプラズマは無線周波数放電方式によって生成され、出力方式はパルス、放電電力100w、周波数45Hz、パルスデューティ比45%、放電時間3600sとした。
【0096】
次に、2-(パーフルオロドデシル)エチルアクリレートモノマーを導入し、気化温度130℃で気化した後にチャンバ内に導入してプラズマ化学気相成長を行い、モノマー流量は150ul/minであり、チャンバ内のプラズマは無線周波数放電方式によって生成され、出力方式はパルス、放電電力150w、周波数35Hz、パルスデューティ比50%、放電時間5400sとした。
【0097】
コーティング完了後、圧縮空気を導入してチャンバを常圧に戻した。回路基板を取り出して20.5V水中通電試験を行い、Mgシート、Feシートのサンプルに対して塩水噴霧試験を行い、その試験結果を表1に示す。
比較例1
【0098】
回路基板、Mgシート、Feシートをプラズマチャンバ内に置き、チャンバを80ミリトールまで真空引きし、ヘリウムガスを160sccmの流量で導入し、無線周波数プラズマ放電を開始して、基材を前処理し、この前処理段階では、放電電力は180W、放電は300s連続した。
【0099】
次に、1,6-ヘキサンジオールジアクリレートとフェニルアクリレート(質量比3:2)の混合モノマーを導入し、気化温度180℃で気化した後にチャンバ内に導入してプラズマ化学気相成長を行い、混合モノマー流量は280ul/minであり、チャンバ内のプラズマは無線周波数放電方式によって生成され、出力方式はパルス、放電電力20w、周波数50Hz、パルスデューティ比15%、放電時間5400sとした。
【0100】
次に、2-(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレートモノマーを導入し、気化温度120℃で気化した後にチャンバ内に導入してプラズマ化学気相成長を行い、モノマー流量は160ul/minであり、チャンバ内のプラズマは無線周波数放電方式によって生成され、出力方式はパルス、放電電力180w、周波数50Hz、パルスデューティ比15%、放電時間2600sとした。
【0101】
コーティング完了後、圧縮空気を導入してチャンバを常圧に戻した。回路基板を取り出して20.5V水中通電試験を行い、Mgシート、Feシートのサンプルに対して塩水噴霧試験を行い、その試験結果を表1に示す。
比較例2
【0102】
回路基板、Mgシート、Feシートをプラズマチャンバ内に置き、チャンバを40ミリトールまで真空引きし、ヘリウムガスを60sccmの流量で導入し、プラズマ放電を開始して、基材を前処理し、この前処理段階では、放電電力は150W、放電は600s連続した。
【0103】
次に、1,4-ブタンジオールジアクリレートとアクリル酸テトラヒドロフルフリル(質量比2:1)の混合モノマーを導入し、気化温度100℃で気化した後にチャンバ内に導入してプラズマ化学気相成長を行い、混合モノマー流量は150ul/minであり、チャンバ内のプラズマは無線周波数放電方式によって生成され、出力方式はパルス、放電電力50W、周波数45Hz、パルスデューティ比25%、放電時間3600sとした。
【0104】
次に、1,6-ヘキサンジオールジアクリレートモノマーを導入し、気化温度120℃で気化した後にチャンバ内に導入してプラズマ化学気相成長を行い、モノマー流量は100ul/minであり、チャンバ内のプラズマは無線周波数放電方式によって生成され、出力方式はパルス、放電電力20w、周波数25Hz、パルスデューティ比65%、放電時間7200sとした。
【0105】
次に、3-(パーフルオロ-5-メチルヘキシル)-2-ヒドロキシプロピルメタクリレートモノマーを導入し、気化温度120℃で気化した後にチャンバ内に導入してプラズマ化学気相成長を行い、モノマー流量は100ul/minであり、チャンバ内のプラズマは無線周波数放電方式によって生成され、出力方式はパルス、放電電力180w、周波数35Hz、パルスデューティ比45%、放電時間7200sとした。
【0106】
コーティング完了後、圧縮空気を導入してチャンバを常圧に戻した。回路基板を取り出して20.5V水中通電試験を行い、Mgシート、Feシートのサンプルに対して塩水噴霧試験を行い、その試験結果を表1に示す。
【0107】
実施例1~4及び比較例1~2の性能試験結果
【表1】
【0108】
実施例3の電気化学パラメータ結果
【表2】
【0109】
上記表1実施例1~4及び比較例1~2の性能試験結果から、実施例1~4は比較例1~2よりも20.5V水中通電試験時間及び塩水噴霧試験時間が著しく優れており、本発明の具体的な実施形態におけるエポキシ構造を有する多官能基エステルとエステル系カップリング剤のモノマープラズマにより形成されたコーティングを下地層とし、芳香環を有する不飽和エステル系モノマーとエステル系カップリング剤のプラズマにより形成されたコーティングを防食層とした複合コーティングは、極薄コーティングの下で優れた保護性能を有することが示されており、同時に、実施例1~3は実施例4よりも20.5V水中通電試験時間及び塩水噴霧試験時間が長く、下地層中のエポキシ構造を有する多官能基エステルがエノアート構造である場合、得られた複合コーティングの保護性能がより優れたことが示されている。
【0110】
上記表2実施例3の電気化学パラメータ結果から、3.6%NaCl中性溶液でのコーティングされていないマグネシウムシートの耐食性は非常に悪く、電気化学的腐食が発生し、陽極反応はマグネシウムが電子を失って溶解する過程であり、陰極反応は水が電子を獲得して水素が発生する過程であることが分かる。実験により、コーティングされていないマグネシウムシートの自己腐食電位は-1.385V、コーティングのマグネシウムシートの自己腐食電位は-1.128Vであり、腐食電位は23%低下し、耐食性は向上し、同時に、コーティングのマグネシウムシートの電流密度は1.876e-9A/cmであり、コーティングされていないマグネシウムシートの電流密度よりも4桁低下し、コーティングされたマグネシウムシートの保護性能が優れたことを示している。
【0111】
本発明は以上のように開示されたが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者であれば、本発明の思想および範囲から逸脱することなく、様々な変更及び修正を行うことができる。従って、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲によって定義された範囲に基づくべきである。
図1
【国際調査報告】