(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-16
(54)【発明の名称】エアロゲル粒子およびセラミック繊維を含む複合物品
(51)【国際特許分類】
F16L 59/02 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
F16L59/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555523
(86)(22)【出願日】2022-03-08
(85)【翻訳文提出日】2023-11-07
(86)【国際出願番号】 EP2022055895
(87)【国際公開番号】W WO2022189433
(87)【国際公開日】2022-09-15
(32)【優先日】2021-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513205477
【氏名又は名称】アーマセル エンタープライズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Armacell Enterprise GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【氏名又は名称】高岡 健
(72)【発明者】
【氏名】ゾンベルク,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ホループ,パヴェル
(72)【発明者】
【氏名】メラー,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ジェン,ジーチェン
【テーマコード(参考)】
3H036
【Fターム(参考)】
3H036AA09
3H036AB15
3H036AB18
3H036AB24
3H036AC03
3H036AD09
3H036AE01
(57)【要約】
本発明は、エアロゲル粒子およびセラミック繊維を含む複合物品の作製方法、ならびにこの方法によって得られる複合物品に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゲル粒子およびセラミック繊維を含む複合物品の作製方法であって、
セラミック繊維を含む繊維状物品を提供すること、
エアロゲル粉末および有機溶媒を含むエアロゲル組成物を提供すること、
繊維状物品とエアロゲル組成物とを組み合わせること、および
有機溶媒を部分的にまたは完全に除去して複合物品を得ること
を含む、複合物品の作製方法。
【請求項2】
前記セラミック繊維が80重量%以上のアルミナを含み、前記セラミック繊維が、セラミック繊維の総重量に基づき、シリカおよびアルミナ以外の成分を2重量%未満含む、請求項1に記載の複合物品の作製方法。
【請求項3】
前記セラミック繊維が、セラミック繊維の総重量に基づき、2重量%以上80重量%未満のアルミナと、10~98重量%のシリカとを含む、請求項1に記載の複合物品の作製方法。
【請求項4】
前記セラミック繊維が、2重量%未満のアルミナを含み、50~85重量%のシリカおよび15~50重量%のアルカリ土類金属酸化物を含む、請求項1に記載の複合物品の作製方法。
【請求項5】
前記有機溶媒が、炭化水素溶媒、アルコール溶媒、またはこれらの混合物である、請求項1~4のいずれかに記載の複合物品の作製方法。
【請求項6】
前記エアロゲルがシリカエアロゲルである、請求項1~5のいずれかに記載の複合物品の作製方法。
【請求項7】
前記エアロゲルは、等温吸脱着での測定により85%以上の気孔率を有する、請求項1~6のいずれかに記載の複合物品の作製方法。
【請求項8】
前記エアロゲルが、DIN ISO 9277 2003-05(BET法を使用したガス吸着による固体の比表面積の測定)での測定により、300m
2/g以上の比表面積を有する、請求項1~7のいずれかに記載の複合物品の作製方法。
【請求項9】
前記エアロゲル組成物が有機溶媒中におけるエアロゲル粉末の分散物であり、エアロゲル組成物の総重量に基づき、エアロゲル組成物中のエアロゲル粉末と有機溶媒の合計含有量が90重量%以上である、請求項1~8のいずれかに記載の複合物品の作製方法。
【請求項10】
前記エアロゲル組成物を前記繊維状物品に注入するまたは含浸することによって、前記繊維状物品と前記エアロゲル組成物とが組み合わせられる、請求項1~9のいずれかに記載の複合物品の作製方法。
【請求項11】
前記複合物品が、前記複合物品の総重量に基づき、15~70重量%のエアロゲルを含む、請求項1~10のいずれかに記載の複合物品の作製方法。
【請求項12】
前記複合物品中の繊維の少なくとも50%が10mm以上の長さを有する、請求項1~11のいずれかに記載の複合物品の作製方法。
【請求項13】
前記複合物品中の1つ以上のエアロゲルと1つ以上の繊維との重量比(エアロゲル/繊維)が1:4以上である、請求項1~12のいずれかに記載の複合物品の作製方法。
【請求項14】
エアロゲル粒子とセラミック繊維とを含む複合物品であって、以下の要件(i)~(vi)のうちの1つ以上が満たされる、複合物品:
(i)複合物品が15重量%未満の有機化合物を含む;
(ii)複合物品中の繊維の少なくとも50%が5mm以上の長さを有する;
(iii)複合物品が10重量%未満のバインダーを含む;
(iv)複合物品は、窒素雰囲気中で30℃~1100℃で10℃/分の温度上昇で加熱した際の熱重量分析(TGA)で35重量%未満の総重量損失を示す;
(v)複合物品中の1つ以上のエアロゲルと1つ以上の繊維の重量比(エアロゲル/繊維)は1:8以上である;
(vi)複合物品は60分以上のバーンスルー時間を有し、耐バーンスルー性は、厚さ1~3mmでDIN A4シートの形態の複合物品を使用して、半田付けトーチを使用して温度1400℃の火炎を用いて複合物品をその第1の主面の中心で処理することで測定され、バーンスルー時間は火炎処理の開始から第2の主面の中心が1000℃の温度に到達するまでの時間である。
【請求項15】
請求項1~13のいずれかに記載の方法により得られる複合物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアロゲル粒子およびセラミック繊維を含む複合物品(特に薄い複合物品)の作製方法、ならびにこの方法によって得られる複合物品に関する。
【背景技術】
【0002】
構造用鋼梁の受動的防火などの多くの産業および建設用途では、断熱能力と非常に高い温度での温度耐性が必要である。UL1709(構造用鋼の保護材料の急速上昇火災試験) では、1093℃の試験温度が必要で、IS0834(セルロース系火災曲線)では、180分の試験期間後に温度が1110℃に達することが必要である。断熱能力と1100℃を超える高温での温度耐性を備えた新しい断熱材を開発する必要がある。
【0003】
特に、断熱能力と耐火性を備え、多くの場合厚さが3mmを超えない非常に薄い断熱材を有することが望ましい。このような断熱材は、次のような多くの産業分野で必要とされる。
―オーブン、ストーブ、ヒーター、その他の電化製品用のガスケット
―非鉄インゴットモールドライナー
―溶融アルミニウム移送システム
―取鍋、ガラスタンク、高温炉での、ならびに熱シールド、EVバッテリー、バッテリーパックおよびモジュールの火災および熱保護のためのセル間熱暴走伝播バリア等の自動車および航空宇宙分野での、耐火性(または耐熱性;refractory)バックアップ断熱材。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、さまざまなグレードのセラミック繊維ペーパーが、1000℃を超える用途の断熱材として使用されている。一方で、セラミック繊維ペーパーの化学組成の変化により、温度耐性が異なる。したがって、アルカリ土類ケイ酸塩(AES)ベースのセラミック繊維ペーパーは1200℃までの動作温度に耐えることができるが、酸化アルミニウム(AO)ベースのセラミック繊維ペーパーは1600℃まで耐えることができる。一方、さまざまな化学組成により、セラミック繊維ペーパーの材料コストに大きな差が生じる。酸化アルミニウムをベースとするセラミック繊維ペーパーのコストは、通常、アルカリ土類ケイ酸塩をベースとするセラミック繊維ペーパーのコストの約20倍である。温度耐性要件の増加に伴い、材料コストの急激な増加が見られる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従来技術を考慮すると、本発明は、コストを削減しながら、改善された断熱能力および温度耐性を備えたセラミック繊維ペーパーを提供するのに役立つ。本発明者らは、驚くべきことに、繊維ペーパーが形成された後にエアロゲルをセラミック繊維ペーパーに組み込むことによってこの問題を解決できることを発見した。これは、エアロゲル粉末と有機溶媒を含むエアロゲル組成物を調製し、それを繊維ペーパーに注入するまたは含浸することによって達成できる。このアプローチにより、エアロゲル粉末を繊維ペーパーの繊維に良好に付着させながら、バインダーの使用を減らすか、完全に回避することができる。
【0006】
したがって、第1の態様では、本発明は、エアロゲル粒子およびセラミック繊維を含む複合物品の作製方法に関し、この方法は、
エアロゲル粒子およびセラミック繊維を含む複合物品の作製方法であって、
セラミック繊維を含む繊維状物品を提供すること、
エアロゲル粉末および有機溶媒を含むエアロゲル組成物を提供すること、
繊維状物品とエアロゲル組成物とを組み合わせること、および
有機溶媒を部分的にまたは完全に除去して複合物品を得ること
を含む。
【0007】
本発明はさらに、この方法によって得られる複合物品に関する。
【0008】
さらに、本発明は、エアロゲル粒子およびセラミック繊維を含む複合物品に関し、当該複合物品は、エアロゲル粉末および有機溶媒、ならびに場合により無機不透明剤および/または鉱物充填剤を含むエアロゲル組成物をセラミック繊維を含む繊維状物品中に注入または含浸し、複合物品を得るために有機溶媒を部分的または完全に除去することによって得ることができる。
【0009】
さらに別の態様では、本発明は、エアロゲル粒子およびセラミック繊維を含む複合物品に関し、以下の要件(i)~(vi)のうちの1つ以上が満たされる:
(i)複合物品は15重量%未満の有機化合物を含む;
(ii)複合物品中の繊維の少なくとも50%が5mm以上の長さを有する;
(iii)複合物品が10重量%未満のバインダーを含む;
(iv)複合物品は、窒素雰囲気中で30℃~1100℃で10℃/分の温度上昇で加熱した際の熱重量分析(TGA)で35重量%未満の総重量損失を示す;
(v)複合物品中の1つ以上のエアロゲルと1つ以上の繊維の重量比(エアロゲル/繊維)は1:8以上である;
(vi)複合物品は60分以上のバーンスルー時間(または焼付け時間または燃焼時間;burn-through time)を有し、耐バーンスルー性は、厚さ1~3mmでDIN A4シートの形態の複合物品を使用して、半田付けトーチを使用して温度1400℃の火炎を用いて複合物品をその第1の主面の中心で処理することで測定される。バーンスルー時間は火炎処理の開始から第2の主面の中心が1000℃の温度に到達するまでの時間である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】エアロゲルが組み込まれたセラミック繊維ペーパー(未加工のペーパー厚さ1mm)。(実施例1-1) a)上面図、b)側面図。
【
図2】エアロゲルが組み込まれたセラミック繊維ペーパー(未加工のペーパー厚さ3mm)。(実施例1-3)a)上面図、b)側面図。
【
図4】20秒の燃焼後のブランクのセラミック繊維ペーパー(未加工のペーパー厚さ2mm)。a)正面図、b)背面図。
【
図5】60分燃焼後のエアロゲルが組み込まれたセラミック繊維ペーパー(未加工のペーパー厚さ1mm)。a)正面図、b)背面図。
【
図6】60分燃焼後のエアロゲルが組み込まれたセラミック繊維ペーパー(未加工のペーパー厚さ3mm)。a)正面図、b)背面図。
【
図7】ブランクのセラミック繊維ペーパー(未加工のペーパー厚さ2mm)とエアロゲルが組み込まれたセラミック繊維ペーパー(未加工のペーパー厚さ1mmおよび3mm)間の背面側中央部分の温度上昇の比較
【
図8】10秒燃焼した後のブランクのセラミック繊維ペーパー(未加工のペーパー厚さ1mm)。a)正面図;b) バーンスルー(または燃え尽きた;burnt-through)火炎領域の拡大図(またはクローズアップ図;close-up view)。
【
図9】8秒燃焼した後のブランクのセラミック繊維ペーパー(未加工のペーパー厚さ3mm)。a)正面図;b)バーンスルー火炎部分の拡大図。
【
図10】60分燃焼した後のエアロゲルが組み込まれたセラミック繊維ペーパー(未加工のペーパー厚さ2mm)。a)正面図;b)火炎部分の拡大図。
【
図11】ブランクのセラミック繊維ペーパー(未加工のペーパー厚さ1mm)とエアロゲルが組み込まれたセラミック繊維ペーパー(未加工のペーパー厚さ1mm)との間の非露出側の温度上昇の比較。
【
図12】ブランクのセラミック繊維ペーパー(未加工のペーパー厚さ2mm)とエアロゲルが組み込まれたセラミック繊維ペーパー(未加工のペーパー厚さ2mm)との間の非露出側の温度上昇の比較。
【
図13】ブランクのセラミック繊維ペーパー(未加工のペーパー厚さ3mm)とエアロゲルが組み込まれたセラミック繊維ペーパー(未加工のペーパー厚さ3mm)との間の非露出側の温度上昇の比較。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書で用いられる用語の定義
本発明の文脈において、「複合物品」という用語は、1つ以上のエアロゲル粒子と1つ以上のセラミック繊維とを含む任意の物品を指すものとして理解されるべきである。したがって、「複合材料」という用語は、一体で物品を形成するエアロゲル粒子およびセラミック繊維の存在以外の制限を意味するものではない。エアロゲル粒子とセラミック繊維は空間的に離れていないことを理解されたい。むしろ、エアロゲル粒子は通常セラミック繊維の間およびその周囲に存在する。好ましくは、1つまたは複数の繊維は織物または不織構造を形成し、その中および周囲にエアロゲル粒子が存在する。
【0012】
複合物品は、典型的には、中綿、不織布、マット、フェルト、または針状(またはニードルド;needled)繊維ブランケットなどのブランケットの形態である。複合物品は、エアロゲル粒子が存在する不織布繊維ブランケットまたは針状繊維ブランケットであることが好ましい。「不織布」という用語は、針状繊維ブランケットも含むものとして理解されるべきである。複合物品は、好ましくは3mm未満の範囲、好ましくは0.001~3mm未満の範囲、より好ましくは0.01~2.5mmの範囲、さらにより好ましくは0.01~2mmの範囲の厚さを有する。他の2次元の延在部は、それぞれ厚さの少なくとも5倍であることが好ましい。本明細書で使用される「次元」という用語は、(「3次元」で理解されるような)互いに直交する3つの既知の空間次元を指すことが理解されるべきである。
【0013】
本明細書で使用される「中綿」という用語は、繊維状材料の層またはシートを指し、繊維状材料は典型的にはセラミック繊維を含む。
【0014】
「不織布」という用語は、織られても編まれてもいない繊維を含む任意の材料を指す。
【0015】
「不織繊維ブランケット」という用語は、織られても編まれてもいない繊維を含む任意の材料に関するものとして理解されるべきであり、その材料はブランケットの形態である。「針状繊維ブランケット」という用語は、繊維が針状に処理された(またはニードル処理された;needled)繊維を含む材料であって、ブランケットの形態である材料に関するものとして理解されるべきである。
【0016】
本明細書で使用される場合、用語「ブランケット」は、典型的には、他の2次元よりも小さく1次元に延在する物品を指す。好ましくは、ブランケットは、一次元においてのみ最大1000mm、好ましくは最大500mm、より好ましくは最大100mmまで延在するが、他の二次元のそれぞれにおいて少なくとも5倍延在する物品を指す。換言すれば、「ブランケット」という用語は、通常平らな物品、または長方形の物品を指す。好ましくは「ブランケット」という用語は、「ペーパー(または紙;paper)」とも時に呼ばれる、3mm未満の範囲の厚さを有する物品を指す。
【0017】
特に明記しない限り、単数形または複数形の使用は、単数形または複数形の名詞の「1つまたは複数」の存在を許容するものとして理解されるべきである。特に、「セラミック繊維を含む繊維状物品」という用語は、「1つ以上のセラミック繊維を含む繊維状物品」を指す。同様に、「エアロゲル粉末および有機溶媒を含むエアロゲル組成物」という用語は、2つ以上の(種類の)エアロゲル粉末および/または2つ以上の(種類の)有機溶媒がエアロゲル組成物に含まれる場合も含むものとして理解されるべきである。異なる種類のエアロゲル粉末の混合物および/または異なる種類の有機溶媒の混合物が使用されてもよい。
【0018】
本明細書で使用する「エアロゲル」という用語は、ゲルの液体成分が本質的にゲル構造を崩壊させることなく気体に置換されたゲル由来の多孔質材料を指す。好ましくは、「エアロゲル」はシリカエアロゲルである。このようなシリカエアロゲルは、典型的には0.1g/cm3以下、好ましくは0.05g/cm3以下の密度を有し、周知のStoberプロセスによって調製することができる。本発明において、「エアロゲル」は、好ましくは欧州特許第2722311A2に記載されている方法、好ましくはその請求項22に規定されている方法に従って得られるシリカエアロゲルである。
【0019】
本発明において、「エアロゲル粒子」という用語は、好ましくは欧州特許第2722311A2に記載の方法、好ましくはその請求項22に規定される方法に従って得られるシリカエアロゲル粒子を指す。本発明での使用に適したエアロゲル粒子は例えば「Jios AeroVa」として市販されており、「D20グレード」が好ましい。「Jios AeroVa D20グレード」は、D95粒子サイズ範囲が20μm未満であり、バルク密度が0.03~0.1g/cm3、熱伝導率が0.017~0.022W/m・k、表面積が600~800m2/g、および気孔率(または多孔率;porosity)が90%よりも大きいことが記載されている。
【0020】
「異相反応」という用語は、好ましくは、2つ以上の相を含む系内にて、例えば2つの非混合の相、すなわち、水相と、水相と混合できない相、好ましくは非極性溶媒相とから構成される系内にて行われる任意の反応を指す。反応、つまり最初の構造の生成は、異なる相間の界面ではじまる。したがって、異相反応は、すべての反応物が同じ溶媒に溶解する反応には関しない。「異相反応」の例は、乳化反応、懸濁反応または分散反応である。
【0021】
「セラミック」という用語は、好ましくは、無機、非金属、好ましくは非晶質である任意の材料を指す。これは、典型的には、酸化物、窒化物、および炭化物(それらの任意の混合物を含む)から選択される1つまたは複数の無機材料に関する。好ましくは、「セラミック」材料は、1つ以上のケイ素の酸化物、窒化物および/もしくは炭化物、アルミニウム、セリウム、ジルコニウムならびに/またはアルカリ土類金属の合計の少なくとも90重量%(好ましくは少なくとも95重量%、より好ましくは99重量%)を含む。
【0022】
本明細書で使用される「繊維」という用語は、好ましくは、第1次元において他の2つの次元のいずれよりも少なくとも10倍延在する物品を指す。第1次元は、好ましくは繊維の長さ方向に対応する。
【0023】
「繊維状物品」という用語は、1つ以上の繊維を含む任意の物品を指す。したがって、例としては、繊維シート、中綿、不織布、マット、フェルト、針状の(またはニードル状の;needled)繊維ブランケットが挙げられる。好ましい例は、不織布繊維ブランケットまたは針状繊維ブランケットである。繊維状物品は、好ましくは3mm未満の範囲、好ましくは0.001~3mm未満の範囲、より好ましくは0.01~2.5mmの範囲、さらにより好ましくは0.01~2mmの範囲の厚さを有し、他の2つの次元ではそれぞれ少なくとも5倍延在する。
【0024】
本明細書で使用する場合、「エアロゲル組成物」という用語は、エアロゲル粉末と有機溶媒を含む任意の混合物に関する。好ましくは、「エアロゲル組成物」は、エアロゲル粉末を有機溶媒に分散させたものを含む混合物である。換言すれば、「エアロゲル組成物」は、「エアロゲル分散物」であることが好ましい。
【0025】
本明細書で使用される「分散物」という用語は、好ましくは、ある材料の固体粒子が液体である別の材料の連続相中に分散している混合物に関する。本明細書で使用する固体および液体という用語は、温度25℃、圧力1アトムにおける材料の状態を指す。「分散」とは、好ましくは粒子が液体の連続相に容易に沈降しない状態を表す。
【0026】
本明細書で使用する「有機溶媒」という用語は、温度20℃、圧力1アトムで液体である任意の有機化合物を指す。有機溶媒の好ましい例としては、炭化水素溶媒およびアルコール(これらの任意の混合物を含む)が挙げられる。炭化水素は、炭素原子と水素原子からなる有機化合物であると理解されている。
【0027】
本明細書で使用される用語「有機化合物」は、少なくとも1つの炭素-水素結合を含む任意の化合物に関する。
【0028】
「AはBを含む」などの「含む(comprise」または「含む(contain)」などの用語は、本明細書では組成物などのオープンな規定を表現するために使用される。したがって、「AはBを含む」は、Aが少なくともBを含むが、任意の数および量の他の成分をさらに含み得ることを示すものとして理解されるべきである。対照的に、「AはBから成る」などの「からなる(consists of)」という用語は、通常、AがB以外の成分を含まないことを示す。
【0029】
「好ましくは」などの用語は、特定の特徴が満たされる場合と満たされない場合があることを示す。したがって、そのような用語は任意の特徴の前に置かれる。一般に、この特徴が満たされると、さらなる有益な効果が生じることが期待される。
【0030】
本明細書で使用される「注入する」という用語は、流体(エアロゲル組成物など)を固体材料(繊維含有物品など)に(通常は力を用いて)導入する行為を指す。「注入」のための適切なアプローチは、例えば欧州特許第3023528A1に記載されている。
【0031】
本明細書で使用される「含浸」または「浸漬」という用語は、流体(エアロゲル組成物など)を固体材料(特に繊維状物品などの固体多孔質材料)に(通常は力を加えずに)導入する行為を指す。「含浸」または「浸漬」は、例えば、含浸または浸漬される物品を、その物品が含浸される通常の液体材料を含む容器内に置くことによって、または含浸または浸漬される物品上に液体を注ぐ方法のいずれかによって達成することができる。
【0032】
本明細書で使用される「バインダー(または結合剤;binder)」という用語は、2つの固体材料間に接着を供することを目的とした任意の材料に関する。好ましくは、「バインダー」という用語は、エアロゲル粒子を互いに、および/またはセラミック繊維に結合するのに役立つ任意の材料に関する。バインダーは、有機または無機の性質のものであり得る。バインダーの特定の例としては、水ガラス、シリコーン系バインダー、およびフェノール樹脂系バインダーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
本発明の詳細な説明
本発明は、エアロゲル粒子およびセラミック繊維を含む複合物品の作製方法、ならびにこの方法によって得られる複合物品に関する。
【0034】
方法
本発明は、エアロゲル粒子およびセラミック繊維を含む複合物品の作製方法に関し、この方法は、
―セラミック繊維を含む繊維状物品を提供すること、
―エアロゲル粉末と有機溶媒を含むエアロゲル組成物を提供すること、
―繊維状物品とエアロゲル組成物とを組み合わせる(または混ぜ合わせるまたは混合する;combine)こと、および
―有機溶媒を部分的または完全に除去して、複合物品を得ること
を含む。
【0035】
この方法はこれらの工程に限定されず、これらの各工程の前、間、および後に任意の数の追加の工程を含んでよい。したがって、上記の工程は必ずしも連続した工程である必要はない。ただし、これらの工程は指定された順序で実施されることが好ましい。さらに、これらの工程は連続的であることが好ましい。
【0036】
本明細書に記載の方法の各工程には、追加のアクティビティが含まれる場合がある。例えば、エアロゲル粉末および有機溶媒を含むエアロゲル組成物を提供する工程は、エアロゲル粉末および有機溶媒以外の追加の成分を含むエアロゲル組成物を提供する工程を含み得る。さらに、繊維状物品とエアロゲル組成物とを組み合わせる工程は、繊維状物品とエアロゲル組成物だけでなく、さらなる物品、組成物なども組み合わせることを含み得る。
【0037】
繊維性物品とエアロゲル組成物は、好ましくはエアロゲル組成物を繊維状物品に注入、浸漬または含浸することによって、より好ましくは繊維状物品にエアロゲル組成物を含浸させることによって組み合わせる。このような組成物を注入するための適当な方法は当業者に知られており、例えば欧州特許第3023528A1に記載されている。
【0038】
好ましくは、乾燥により有機溶媒を部分的にまたは完全に除去して複合物品を得る工程は、50~170℃の温度で1~8時間乾燥すること、任意にはその後171℃~230℃で1~48時間乾燥することを含む。
【0039】
この方法により得られる複合物品
本発明の方法によって得られる複合物品は、好ましくは複合物品の総重量に基づき15~70重量%のエアロゲルを含む。複合物品の総重量に基づいて、25~60重量%のエアロゲルがより好ましく、35~50重量%のエアロゲルがさらにより好ましい。
【0040】
複合物品の厚さは、典型的には3mm未満の範囲、好ましくは0.001~3mm未満の範囲、より好ましくは0.01~2.5mmの範囲、さらにより好ましくは0.01~2mmの範囲である。
【0041】
複合物品の幅がWであり、複合物品の長さがLであり、複合物品の厚さがTである際に、複合物品は次の要件を満たすことが好ましい:
Rは100以上、好ましくは1000以上、より好ましくは10000以上であり、W/Lは好ましくは1000/1~1/1000の範囲であり、W/Tは好ましくは10以上であり、およびL/Tは好ましくは10以上である。
【0042】
優れた難燃性を達成するために、複合物品は、典型的には、複合物品の総重量に基づき、15重量%未満の有機化合物、好ましくは10重量%未満の有機化合物、より好ましくは5重量%未満の有機化合物、さらにより好ましくは2重量%未満の有機化合物、さらにより好ましくは1重量%未満の有機化合物、最も好ましくは0.5重量%未満の有機化合物を含む。有機化合物という用語は、通常、少なくとも1つの炭素-水素結合を含むあらゆる化合物に関する。
【0043】
本発明の方法により、複合物品中の繊維の少なくとも50%が5mm以上の長さを有することを保証することが可能である。好ましくは複合物品中の繊維の少なくとも50%が10mm以上の長さを有し、より好ましくは複合物品中の繊維の少なくとも75%が5mm以上の長さを有し、さらにより好ましくは複合物品中の繊維の75%は10mm以上の長さを有し、さらにより好ましくは複合物品中の繊維の少なくとも75%は15mm以上の長さを有し、最も好ましくは複合物品中の繊維の少なくとも75%は20mm以上の長さを有する。
【0044】
難燃性およびコストを改善するために、複合物品は、典型的には、10重量%未満のバインダー、好ましくは5重量%未満のバインダー、より好ましくは2重量%未満のバインダー、さらにより好ましくは1重量%未満のバインダー、さらに好ましくは0.5重量%未満のバインダー、最も好ましくは0.1重量%未満のバインダーを含む。さらに、バインダーの量の低減は、より多くの繊維および/またはエアロゲルを複合物品に組み込むことができるため、複合物品の耐燃性、凝集性および断熱特性にとって有益であり得る。従来技術で使用される方法は、一般に、繊維を互いに、かつ充填剤に結合させることによって複合物品の構造的完全性を確保するためにバインダーの使用を必要とする。本発明は、繊維と充填剤のスラリーの代わりに繊維状物品を出発材料として使用可能とするため、バインダーの量を大幅に減らすことができる。
【0045】
本発明の方法の使用により、熱重量分析前の複合物品の総重量に基づき、複合物品は、窒素雰囲気中で10℃/分の温度勾配で30℃~1100℃で加熱される際に、熱重量分析(TGA)にて、35重量%未満、好ましくは30重量%未満、より好ましくは25重量%未満、さらにより好ましくは20重量%未満、さらにより好ましくは15重量%未満、最も好ましくは10重量%未満の総重量損失を示し得る。
【0046】
さらに、複合物品中の1つ以上のエアロゲルと1つ以上の繊維との重量比(エアロゲル/繊維)が1:8以上、好ましくは1:4以上、より好ましくは1:2以上、より好ましくは1:1以上であることを達成可能である。典型的には繊維の分散液の乾燥に基づく従来技術の方法では、かなりの量のバインダーを使用する必要があるため、繊維ブランケットに安定して含めることができる繊維の量および長さは厳しく制限されている。
【0047】
複合物品は、無機不透明剤および/または鉱物(または無機;mineral)充填剤をさらに含んでよい。したがって、エアロゲル粉末および有機溶媒を含むエアロゲル組成物を提供する工程は、エアロゲル粉末および有機溶媒、ならびに無機不透明剤および/または鉱物充填剤を含むエアロゲル組成物を提供する工程であることが好ましい。
【0048】
繊維状物品
繊維状物品は、好ましくは、エアレイまたはカーディングプロセスを介して作製される中綿、不織布、マット、フェルトおよび針状繊維ブランケットから選択されることが好ましい。繊維状物品は好ましくは不織繊維ブランケットまたは針状繊維ブランケットである。繊維状物品は、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上、さらにより好ましくは98重量%以上のセラミック繊維を含む。
【0049】
繊維状物品は、特に3mm以上の厚さを有する場合、20~300kg/m3、好ましくは50~200kg/m3、より好ましくは80~150kg/m3の密度を有することがさらに好ましい。
【0050】
特に繊維状物品が3mm未満の厚さを有する場合、繊維状物品は50~350kg/m3、好ましくは80~300kg/m3、より好ましくは100~250kg/m3の密度を有することが好ましい。
【0051】
典型的には3mmをこえる厚さを有する繊維状物品の例は、重量%換算で以下のとおりである:
Unifrax社のFiberfrax Duraback:推奨動作温度が982℃であり、密度64kg/m3で利用可能(典型的には、31~35重量%のAl2O3、50~54重量%のSiO2、5重量%のZrO2、1.30重量%のFe2O3、1.70重量%のTiO2、0.50重量%のMgO、および7.5重量%以下のCaOを含む化学組成物を有する。)
【0052】
Unifrax社のFiberfrax Durablanket S:推奨動作温度が1177℃であり、密度64、96および128kg/m3で利用可能(典型的には、43~47重量%のAl2O3、53~57重量%のSiO2、1重量%未満のFe2O3、および1重量%未満のTiO2を含む化学組成物を有する。)
【0053】
Unifrax社のFiberfrax Durablanket HP-S:推奨動作温度が1204℃であり、密度64、96および128kg/m3で利用可能(典型的には、43~47重量%のAl2O3、および53~57重量%のSiO2を含む化学組成物を有する。)
【0054】
Unifrax社のFiberfrax Durablanket 2600:推奨動作温度が1343℃であり、密度96および128kg/m3で利用可能(典型的には、29~31重量%のAl2O3、53~55重量%のSiO2、および15~17重量%のZrO2を含む化学組成物を有する。)
【0055】
Unifrax社のFiberfrax PH blanket:推奨動作温度が1177℃であり、密度96kg/m3で利用可能(典型的には、43~47重量%のAl2O3、53~55重量%のSiO2、1重量%未満のFe2O3、および1重量%未満のTiO2を含む化学組成物を有する。)
【0056】
Unifrax社のFiberfrax Moist Pak-D:推奨動作温度が1010℃であり、密度190~290kg/m3で利用可能(典型的には、23~32重量%のAl2O3および68~77重量%のSiO2を含む化学組成物を有する。)
【0057】
Unifrax社のFiberfrax Fibermat Blanket:推奨動作温度が677℃であり、密度88kg/m3で利用可能(典型的には、29~47重量%のAl2O3、52~57重量%のSiO2、および18重量%未満のZrO2を含む化学組成物を有する。)
【0058】
Unifrax社のFibermax Mat:推奨動作温度が1566℃であり、密度24kg/m3で利用可能(典型的には、72重量%のAl2O3、27重量%のSiO2、0.02重量%のFe2O3、0.001重量%のTiO2、0.05重量%のMgO、および0.05重量%のCaOを含む化学組成物を有する。)
【0059】
Unifrax社のFibermax Needled Blanket:推奨動作温度が1600℃であり、密度100および130kg/m3で利用可能(典型的には、72重量%のAl2O3、27重量%のSiO2、0.02重量%のFe2O3、0.001重量%のTiO2、0.05重量%のMgO、および0.05重量%のCaOを含む化学組成物を有する。)
【0060】
Unifrax社のInsulfrax LTX Blanket:推奨動作温度が1100℃であり、密度64、96、128および160kg/m3で利用可能(典型的には、1重量%未満のAl2O3、61~67重量%のSiO2、0.6重量%未満のFe2O3、2.5~6.5重量%のMgO、および27~33重量%のCaOを含む化学組成物を有する。)
【0061】
Unifrax社のInsulfrax S Blanket:推奨動作温度が1100℃であり、密度64、96、および128kg/m3で利用可能(典型的には、61~67重量%のSiO2、2~7重量%のMgO、および27~33重量%のCaOを含む化学組成物を有する。)
【0062】
Unifrax社のIsofrax 1400 Blanket:推奨動作温度が1300℃であり、密度96、128、および160kg/m3で利用可能(典型的には、70~80重量%のSiO2および18~27重量%のMgOを含む化学組成物を有する。)
【0063】
KCC社のCERAKWOOL New-BiO:密度96、128、および160kg/m3で利用可能(典型的には、1重量%未満のAl2O3、58~67重量%のSiO2、2~8重量%のMgO、および26~34重量%のCaOを含む化学組成物を有する。)
【0064】
New Fire社のSuperwoo plus blanket SPB:推奨動作温度が1050℃であり、密度96および128kg/m3で利用可能(典型的には、62~68重量%のSiO2、3~7重量%のMgO、および26~32重量%のCaOを含む化学組成物を有する。)
【0065】
Unifrax社のSaffil Blanket&Mat:推奨動作温度が1600℃であり、密度35、96kg/m3で利用可能(典型的には、95~97重量%のAl2O3および3~5重量%のSiO2を含む化学組成物を有する。)
【0066】
Frenzelit社のisoTherm S Vlies:推奨動作温度が1100℃であり、密度35、96kg/m3で利用可能(典型的には、94重量%よりも高い重量%のSiO2を含む化学組成物を有する。)
【0067】
典型的には3mm未満の厚さを有する繊維状物品の例は、重量%換算で以下のとおりである:
Fiberfrax社のPaper FT:推奨動作温度は1250℃であり、密度200~240kg/m3で利用可能(典型的には、46~50重量%のAl2O3および50~54重量%のSiO2を含む化学組成物を有する。)
【0068】
Fiberfrax社のPaper DS:推奨動作温度は1250℃であり、密度160~200kg/m3で利用可能(典型的には、46~50重量%のAl2O3および50~54重量%のSiO2を含む化学組成物を有する。)
【0069】
Fiberfrax社のPaper H:推奨動作温度は1400℃であり、密度180~280kg/m3で利用可能(典型的には、48~58重量%のAl2O3および42~52重量%のSiO2を含む化学組成物を有する。)
【0070】
Fiberfrax社のDurafelt LD:推奨動作温度は1250℃であり、密度110~190kg/m3で利用可能(典型的には、46~52重量%のAl2O3および48~54重量%のSiO2を含む化学組成物を有する。)
【0071】
Fiberfrax社のDurafelt HD:推奨動作温度は1250℃であり、密度200~300kg/m3で利用可能(典型的には、42~50重量%のAl2O3および50~58重量%のSiO2を含む化学組成物を有する。)
【0072】
Fiberfrax社のDurafelt Z:推奨動作温度は1400℃であり、密度200~300kg/m3で利用可能(典型的には、28~32重量%のAl2O3、52~56重量%のSiO2および14~18重量%のZrO2を含む化学組成物を有する。)
【0073】
Morgan社のKaowool 1260 Paper:推奨動作温度は1260℃であり、密度190kg/m3で利用可能(典型的には、47重量%のAl2O3および52重量%のSiO2を含む化学組成物を有する。)
【0074】
Morgan社のKaowool 500 Paper:推奨動作温度は1176℃であり、密度192~224kg/m3で利用可能(典型的には、47重量%のAl2O3および53重量%のSiO2を含む化学組成物を有する。)
【0075】
Morgan社のKaowool 700 Paper:推奨動作温度は1176℃であり、密度176~208kg/m3で利用可能(典型的には、47重量%のAl2O3および53重量%のSiO2を含む化学組成物を有する。)
【0076】
Morgan社のKaowool 900 Paper:推奨動作温度は1176℃であり、密度160~192kg/m3で利用可能(典型的には、47重量%のAl2O3および53重量%のSiO2を含む化学組成物を有する。)
【0077】
Morgan社のKaowool 2000 Paper:推奨動作温度は1176℃であり、密度176~224kg/m3で利用可能(典型的には、47重量%のAl2O3および53重量%のSiO2を含む化学組成物を有する。)
【0078】
Morgan社のKaowool 2600 Paper:推奨動作温度は1343℃であり、密度160~208kg/m3で利用可能(典型的には、35重量%のAl2O3、51重量%のSiO2および14重量%のZrO2を含む化学組成物を有する。)
【0079】
Insulfrax Paper:推奨動作温度は1200℃であり、密度150kg/m3で利用可能(典型的には、1重量%のAl2O3、61~67重量%のSiO2、2.5~6.5重量%のMgO、および27~33重量%のCaOを含む化学組成物を有する。)
【0080】
Flexilite-MC Paper:推奨動作温度は1260℃であり、密度150kg/m3で利用可能(典型的には、70~80重量%のSiO2および18~27重量%のMgOを含む化学組成物を有する。)
【0081】
Isofrax 1260C Paper:推奨動作温度は1260℃であり、密度140~160kg/m3で利用可能(典型的には、70~80重量%のSiO2および18~27重量%のMgOを含む化学組成物を有する。)
【0082】
Morgan社のSuperwool Plus Paper:推奨動作温度は1000℃であり、密度180~250kg/m3で利用可能(典型的には、62~68重量%のSiO2、3~7重量%のMgOおよび26~32重量%のCaOを含む化学組成物を有する。)
【0083】
Morgan社のSuperwool HT Paper:推奨動作温度は1150℃であり、密度180~250kg/m3で利用可能(典型的には、70~80重量%のSiO2および18~26重量%のCaOを含む化学組成物を有する。)
【0084】
Saffil 1600 Paper:推奨動作温度は1600℃であり、密度140~200kg/m3で利用可能(典型的には、90重量%よりも多いAl2O3および8重量%未満のSiO2を含む化学組成物を有する。)
【0085】
Morgan社のKaowool 1600 Paper:推奨動作温度は1600℃であり、密度150kg/m3で利用可能(典型的には、88重量%のAl2O3および9重量%のSiO2を含む化学組成物を有する。)
【0086】
Morgan社のKaowool 3000 Paper:推奨動作温度は1538℃であり、密度112~160kg/m3で利用可能(典型的には、95重量%のAl2O3および5重量%のSiO2を含む化学組成物を有する。)
【0087】
Frenzelit社のisoTherm S Vlies:推奨動作温度は1100℃であり、密度112~160kg/m3で利用可能(典型的には、94重量%よりも多いSiO2を含む化学組成物を有する。)
【0088】
これらの中でも、以下のものが好ましい。
Fiberfrax社のPaper DS、Fiberfrax社のPaper H、Fiberfrax社のDurafelt LD、Kaowool 1260 Paper、Kaowool 900 Paper、Kaowool 2600 Paper、Insulfrax Paper、Isofrax 1260C Paper、Superwool Plus Paper、Superwool HT Paper、Saffil 1600 Paper、Kaowool 1600 Paper、Kaowool 3000 Paper、およびFrenzelit社のisoTherm S Vlies。
【0089】
セラミック繊維
セラミック繊維は一般に、a)80重量%以上のアルミナを含むセラミック繊維、b)2重量%~(または以上)80重量%未満のアルミナを含むセラミック繊維、およびc)2重量%未満のアルミナを含むセラミック繊維の3つの種類の繊維に構造化され得る。
【0090】
a)80重量%以上のアルミナを含むセラミック繊維:
この第1のタイプのセラミック繊維は、典型的には、セラミック繊維の総重量に基づいて、80重量%以上のアルミナ、好ましくは85重量%以上のアルミナ、好ましくは90重量%以上のアルミナ、または95重量%以上もアルミナを含む。アルミナの含有量は、セラミック繊維の総重量に基づいて、好ましくは99重量%以下、より好ましくは98重量%以下、さらにより好ましくは97重量%以下である。
【0091】
セラミック繊維は、セラミック繊維の総重量に基づいて、0~20重量%のシリカ、好ましくは1~20重量%のシリカ、より好ましくは1~15重量%のシリカ、さらにより好ましくは1~10重量%のシリカ、さらにより好ましくは2~9重量%のシリカをさらに含み得る。
【0092】
これらのセラミック繊維は、セラミック繊維の総重量に基づき、シリカおよびアルミナ以外の成分を3重量%未満、好ましくはシリカおよびアルミナ以外の成分を2重量%未満、またはシリカとアルミナ以外の成分を1または0.5重量%未満含むことが好ましい。
【0093】
b)2重量%以上80重量%未満のアルミナを含むセラミック繊維:
この第2のタイプのセラミック繊維は、典型的には、セラミック繊維の総重量に基づいて、2重量%以上80重量%未満のアルミナ、好ましくは15重量%以上80重量%未満のアルミナ、より好ましくは20~75重量%のアルミナを含む。
【0094】
セラミック繊維は、セラミック繊維の総重量に基づき、10~98重量%のシリカ、好ましくは15~90重量%のシリカ、より好ましくは20~85重量%のシリカ、さらにより好ましくは25~80重量%のシリカを更に含み得る。
【0095】
例えば、セラミック繊維は、セラミック繊維の総重量に基づき、30~35重量%のアルミナ、50~55重量%のシリカ、ならびに合計で4~20重量%のZrO2、Fe2O3、TiO2、MgOおよびCaOを含み得る。あるいは、セラミック繊維は、セラミック繊維の総重量に基づいて、42~48重量%のアルミナおよび52~58重量%のシリカ、またはセラミック繊維の総重量に基づいて、42~58重量%のアルミナおよび52~58重量%のシリカを含み得る。さらに、セラミック繊維は、セラミック繊維の総重量に基づき、28~32重量%のアルミナ、52~56重量%のシリカ、および14~18重量%のZrO2を含み得る。セラミック繊維は、セラミック繊維の総重量に基づいて、22~34重量%のアルミナおよび66~78重量%のシリカを含むことがさらに可能である。さらに別の例では、セラミック繊維は、セラミック繊維の総重量に基づいて、66~78重量%のアルミナ、22~34重量%のシリカを含む。
【0096】
これらのセラミック繊維は、セラミック繊維の総重量に基づき、上記に示したもの以外の成分を2重量%未満、上記に示したもの以外の成分を好ましくは1重量%未満、上記に示したもの以外の成分をさらにより好ましくは0.5重量%未満含むことが好ましい。
【0097】
c)2重量%未満のアルミナを含むセラミック繊維
このタイプのセラミック繊維は、典型的には、セラミック繊維の総重量に基づいて、2重量%未満のアルミナ、好ましくは1重量%未満のアルミナ、より好ましくは0.5重量%未満のアルミナを含む。これらのセラミック繊維にはアルミナが存在しない場合もある。
【0098】
これらのセラミック繊維は、セラミック繊維の総重量に基づいて、典型的には、50~85重量%のシリカおよび15~50重量%のアルカリ土類金属酸化物、好ましくは55~85重量%のシリカおよび15~45重量%のアルカリ土類金属酸化物、より好ましくは60~82重量%のシリカおよび18~40重量%のアルカリ土類金属酸化物を更に含む。あるいは、このタイプのセラミック繊維は、セラミック繊維の総重量に基づき、55~72重量%のシリカおよび28~45重量%のアルカリ土類金属酸化物、好ましくは60~70重量%のシリカおよび30~40重量%のアルカリ土類金属酸化物を含んでよい。これらのセラミック繊維の別のタイプは、セラミック繊維の総重量に基づき、65~85重量%のシリカおよび15~35重量%のアルカリ土類金属酸化物を、好ましくは70~80重量%のシリカおよび20~30重量%のアルカリ土類金属酸化物を含む。
【0099】
アルカリ土類金属酸化物はMgOおよびCaO、またはそれらの組合せから選択されることが好ましく、ある実施形態では、アルカリ土類金属酸化物中のCaOの割合は、アルカリ土類金属酸化物の総量に基づき、75重量%以上、またはさらには85重量%以上である。
【0100】
本明細書に記載されるセラミック繊維のいずれにおいても、示されたもの以外のセラミック繊維の任意の成分の含有量は、セラミック繊維の総重量に基づき、好ましくは
4重量%未満、より好ましくは3重量%未満、さらにより好ましくは2重量%、さらにより好ましくは1重量%未満または0.5重量%未満である。
【0101】
溶媒
本発明の方法で使用される有機溶媒は、典型的には炭化水素溶媒であり、好ましくはC3~16の飽和、不飽和もしくは部分飽和炭化水素またはそれらの混合物から選択され、より好ましくはC3~10の飽和直鎖、分岐鎖もしくは環状炭化水素またはそれらの混合物から選択され、さらに好ましくは、C3~10の直鎖状もしくは分枝状アルカンまたはそれらの混合物から選択され、さらにより好ましくは、C5~7の直鎖状もしくは分枝状アルカンまたはそれらの混合物から選択され、さらにより好ましくは、ヘキサンもしくはヘプタンまたはそれらの混合物から選択され、最も好ましくはn-ヘキサンである。
【0102】
あるいは、本発明で使用される有機溶媒はアルコール溶媒であり、好ましくはC2~12の飽和、不飽和もしくは部分飽和アルコールまたはそれらの混合物から選択され、より好ましくはC2~12の飽和直鎖、分岐鎖もしくは環状アルコールまたはそれらの混合物から選択され、さらに好ましくはC2~12の飽和直鎖、分枝鎖もしくは環状一価アルコールまたはそれらの混合物から選択され、さらにより好ましくは、C26の飽和直鎖、分枝鎖もしくは環状一価アルコール(例えば、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、ブタノール、ペンタノール(シクロペンタノールを含む)またはヘキサノール(シクロヘキサノールを含む))、またはこれらの混合物、さらにより好ましくはプロパノールまたはこれらの混合物から選択され、最も好ましくは2-プロパノールである。
【0103】
さらに、有機溶媒は、上記の1つ以上の炭化水素溶媒と1つ以上のアルコール溶媒との混合物であってよい。
【0104】
エアロゲル
エアロゲルは、任意の無機エアロゲルであり得る。好ましくは、エアロゲルは、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ハフニウム、および酸化イットリウムから選択される1種以上を含むか、またはその1種以上からなる。より好ましくは、エアロゲルは酸化ケイ素を含むか、酸化ケイ素からなる。さらにより好ましくは、エアロゲルはシリカエアロゲルである。
【0105】
エアロゲルは、等温吸着および等温脱着により測定して、典型的には85%以上の気孔率、より好ましくは90%以上の気孔率を有する。より具体的には、気孔率は、BJH(バレット・ジョイナー・ハレンダ)吸脱着等温法を用いてエアロゲルの細孔(または気孔;pore)容積および細孔径分布を測定することによって決定される。
【0106】
エアロゲルの比表面積は通常300m2/g以上である。DIN ISO 9277 2003-05(BET法を用いたガス吸着による固体の比表面積の測定)によって測定した際に、エアロゲルの比表面積は、好ましくは400m2/g以上、好ましくは500m2/g以上、好ましくは600m2/g以上、また好ましくは2000m2/g以下、より好ましくは1500m2/g以下、さらに好ましくは1000m2/g以下、さらにより好ましくは800m2/g以下である。
【0107】
本発明において、好ましくはMalvern Mastersizerを使用して、レーザー回折により測定した際に、エアロゲルの粉末は、1~50μm、好ましくは5~40μm、より好ましくは10~30μm、さらにより好ましくは15~25μmの範囲のメジアン粒径(d50)を有することが好ましい。
【0108】
エアロゲルの粉末は、例えば、異相反応から得ることができる。この場合、エアロゲルの粉末は、脱イオン水、水ガラス、有機シラン化合物、無機酸、および有機溶媒を混合して反応させて得られるシリカエアロゲル粉末であることが好ましく、有機溶媒はシリカヒドロゲル一次粒子を得るために非極性有機溶媒であることが好ましい。次いで、シリカヒドロゲル一次粒子を溶媒置換し、溶媒置換したゲル粒子を常圧下で乾燥させて、シリカエアロゲル粉末を得る。それ以上の粉砕または篩い分け処理は行わないことが好ましい。このような異相反応方法は当業者に知られており、例えばEP2722311に記載されている。
【0109】
エアロゲル粉末は、モノリスではなく粒子の形態で調製されることが好ましい。したがって、本発明で使用されるエアロゲル粉末は、好ましくはエアロゲル材料の粉砕を含まないプロセスによって得られる。より好ましくは、エアロゲル粉末は一次粒子(場合により二次粒子を含む)の形態である。したがって、エアロゲル粉末を生成するために、粉砕またはふるい分け処理は必要としない。さらに、エアロゲル粉末は、従来技術によるエアロゲルの製造で時々使用される超臨界乾燥プロセスを使用する代わりに、常圧下で、例えば1気圧で乾燥されることが好ましい。
【0110】
エアロゲル組成物
エアロゲル組成物は、エアロゲル粉末と有機溶媒とを含む。エアロゲル組成物はさらなる成分を含むことができることを理解されたい。繊維状物品内でのエアロゲル粉末の効率的な分布を達成するために、エアロゲル組成物は、好ましくは有機溶媒中でのエアロゲル粉末の分散物である。
【0111】
エアロゲル組成物は、典型的には、エアロゲル組成物の総重量に基づき、2~20重量%のエアロゲル、好ましくは4~18重量%のエアロゲル、より好ましくは6~18重量%のエアロゲル、さらにより好ましくは10~18重量%のエアロゲルを含む。残りは好ましくは有機溶媒である。
【0112】
エアロゲル組成物中のエアロゲル粉末と有機溶媒の合計含有量は、エアロゲル組成物の総重量に基づいて、90重量%以上、好ましくは95重量%以上、より好ましくは97重量%以上、さらにより好ましくは98重量%以上、さらにより好ましくは99重量%以上、最も好ましくは99.5重量%以上、さらには99.8重量%以上である。
【0113】
あるいは、方法が無機不透明剤および/または鉱物充填剤の使用を伴う場合、エアロゲル組成物は、好ましくは有機溶媒中におけるエアロゲル粉末、無機不透明剤および/または鉱物充填剤の分散物である。エアロゲル組成物には、他の成分が含まれていても含まれていない場合もある。
【0114】
無機不透明剤は、典型的には、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化チタン、炭化ケイ素およびグラファイトから選択される1つまたは複数を含むか、またはそれらからなる(グラファイトは、複合物品の総重量に基づいて、好ましくは複合物品中に5重量%未満、好ましくは2重量%未満、より好ましくは1重量%未満の量で含まれる)。これらの中でも、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化チタンおよび/または炭化ケイ素が好ましい。好ましくは、無機不透明剤は、酸化鉄、酸化ジルコニウムおよび炭化ケイ素から選択される1つ以上を含むか、またはそれらからなる。より好ましくは、無機不透明剤は酸化鉄または炭化ケイ素である。
【0115】
鉱物充填剤は、好ましくは金属水酸化物および水和炭酸塩から選択される1つまたは複数を含むか、またはそれらからなる。好ましくは、鉱物充填剤は、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ハイドロマグネサイト(または水苦土石;hydromagnesites)およびハイドロカルサイト(または水方解石;hydrocalcites)から選択される1つ以上を含むか、またはそれらからなる。より好ましくは、鉱物充填剤は、二水酸化マグネシウムおよび三水酸化アルミニウムから選択される一方または両方である。
【0116】
無機不透明剤および鉱物充填剤はエアロゲルの形態ではないことが好ましい。無機不透明剤のかさ密度、またより好ましくは鉱物充填剤のかさ密度が、DIN EN ISO 787-11に従って試験して少なくとも0.1g/cm3であること、および/または無機不透明剤の比表面積、より好ましくは無機充填剤の比表面積が、DIN ISO 9277 2003-05(BET法)に従って試験すると、300m2/g以下であることが特に好ましい。あるいは、またはさらに、無機不透明剤、より好ましくは鉱物充填剤もエアロゲルとして使用される材料と化学的に異なることがさらに好ましい。本明細書に記載の無機不透明剤および鉱物充填剤の任意の組合せを用いることができることを理解されたい。
【0117】
無機不透明剤および/または鉱物充填剤を含む場合、エアロゲル組成物は好ましくは、エアロゲル組成物の総重量に基づいて、2~20重量%のエアロゲル、好ましくは4~18重量%のエアロゲル、より好ましくは6~18重量%のエアロゲル、さらにより好ましくは10~18重量%のエアロゲルを含み、残りは、好ましくは有機溶媒、無機不透明剤および鉱物充填剤である。
【0118】
無機不透明剤および/または鉱物充填剤を含む場合、エアロゲル組成物中のエアロゲル粉末および有機溶媒の合計含有量は、典型的には50重量%以上、好ましくは75重量%以上、より好ましくは85重量%以上である。さらに、エアロゲル組成物中の無機不透明剤と鉱物充填剤の合計含有量は、エアロゲル組成物の総重量に基づいて、典型的には50重量%以下、好ましくは25重量%以下、より好ましくは15重量%以下である。
【0119】
この方法により得られる複合物品
本発明はさらに、本発明による方法によって得られる複合物品に関する。この複合物品は、本発明の方法から得られる特性を示すことが理解されるべきである。したがって、本発明の方法に関して本明細書に記載される特徴のいずれも、任意の好ましい範囲を含めて、本発明の複合物品にも適用される。
【0120】
例えば、複合物品は、好ましくは複合物品の総重量に基づいて15~70重量%のエアロゲルを含む。複合物品の厚さは、好ましくは0.01mm~3mm未満の範囲である。しかしながら、本発明はまた3mm~500mmの範囲の厚さを有する複合物品に適用可能である。
【0121】
なお、本発明の複合物品には、任意の既知の充填剤が特に制限なく含まれ得る。しかしながら、複合物品は、好ましくは15重量%未満の有機化合物、および好ましくは10重量%未満のバインダーを含む。複合物品は、窒素雰囲気中で30℃~1100℃で10℃/分の温度勾配で加熱したときの熱重量分析(TGA)において、好ましくは35重量%未満の総重量損失を示す。
【0122】
複合物品中の繊維の少なくとも50%は好ましくは5mm以上の長さを有する。複合物品中の1つ以上のエアロゲルと1つ以上の繊維との重量比(エアロゲル/繊維)が1:8以上であることがさらに好ましい。理解されるように、複合物品は、本明細書で特定される無機不透明剤および/または鉱物充填剤をさらに含み得る。
【0123】
複合物品は、その製造方法またはその特性を参照することによってさらなる手段で規定することができる。
【0124】
したがって、本発明の複合物品はエアロゲル粒子およびセラミック繊維を含むものとして規定することができ、複合物品はエアロゲル粉末および有機溶媒、ならびに場合により無機不透明剤および/または鉱物充填剤を含むエアロゲル組成物をセラミック繊維を含む繊維状物品に注入または含浸し、複合物品を得るために有機溶媒を部分的または完全に除去することによって得ることができる。
【0125】
加えて、または代わりに、複合物品は、エアロゲル粒子およびセラミック繊維を含むものとして規定することができ、以下の要件(i)~(vi)のうちの1つまたは複数が満たされる。
【0126】
(i)複合物品は、複合物品の総重量に基づいて15重量%未満の有機化合物を含む。有機化合物の含有量は、好ましくは10重量%未満であり、より好ましくは2重量%未満であり、さらにより好ましくは5重量%未満である。有機化合物という用語は、少なくとも1つの炭素-水素結合を含むあらゆる化合物に関する。
【0127】
(ii)複合物品中の繊維の少なくとも50%は5mm以上の長さを有する。好ましくは複合物品中の繊維の少なくとも50%は10mm以上の長さを有する。より好ましくは、複合物品中の繊維の少なくとも75%は5mm以上の長さを有する。さらにより好ましくは、複合物品中の繊維の少なくとも75%が10mm以上の長さを有する。さらにより好ましくは、複合物品中の繊維の少なくとも75%は15mm以上の長さを有する。最も好ましくは、複合物品中の繊維の少なくとも75%が20mm以上の長さを有する。
【0128】
(iii)複合物品は、複合物品の総重量に基づいて、10重量%未満のバインダーを含む。複合物品中のバインダーの含有量は、10重量%未満のバインダー、好ましくは5重量%未満のバインダー、より好ましくは2重量%未満のバインダー、さらにより好ましくは1重量%未満のバインダー、さらにより好ましくは0.5重量%未満のバインダー、最も好ましくは0.1重量%未満のバインダーを含む。
【0129】
(iv)複合物品は、窒素雰囲気中で30℃~1100℃で10℃/分の温度上昇で加熱した場合の熱重量分析(TGA)において、35重量%未満の総重量損失を示す。熱重量分析における総重量損失は、熱重量分析前の複合物品の重量に基づいて、好ましくは30重量%未満、より好ましくは25重量%未満、さらにより好ましくは20重量%未満、さらにより好ましくは15重量%未満、最も好ましくは10重量%未満である。
【0130】
(v)複合物品中の1つ以上のエアロゲルと1つ以上の繊維との重量比(エアロゲル/繊維)は1:8以上である。好ましくは、複合物品中の1つ以上のエアロゲルと1つ以上の繊維との重量比(エアロゲル/繊維)は、1:8より高く、好ましくは1:4以上、より好ましくは1:2以上、更により好ましくは1:1以上である。
【0131】
(vi)複合物品は60分以上のバーンスルー時間(または焼付け時間または燃焼時間;burn-through time)を有する。好ましくは、複合物品は、60分以上、好ましくは120分以上、さらにより好ましくは180分以上、さらにより好ましくは240分以上のバーンスルー時間を有する。耐バーンスルー性は、厚さ1~3mmでDIN A4のシート形態の複合物品を使用し、半田付けトーチを使用して複合物品の第1主面の中心を温度1400℃の火炎で処理して測定される。ここで、バーンスルー時間は、火炎処理の開始から第2主面の中心が1000℃の温度に達するまでの時間である。
【0132】
複合物品は、要件(i)~(vi)の1つまたは任意の数の可能な組合せを満たし得る。例えば、複合物品は、好ましくは、要件(i)、または要件(ii)、または要件 (iii)、または要件(iv)、または要件(v)、または要件(vi)を満たす。あるいは、次の2つの要件((i)および(ii)、(ii)および(iii)、(iii)および(iv)、(iv)および(v)、(v)および(vi)、(i)および(iii)、(ii)および(iv)、(iii)および(v)、(iv)および(vi)、(i)および(iv)、(ii)および(v)、(iii)および(vi)、(i)および(v)、(ii)および(vi)、または(i)および(vi)等)が満たされることが好ましい。あるいは、次の3つの要件((i)と(ii)と(iii)、(i)と(ii)と(iv)、(i)と(ii)と(v)、(i)と(ii)と(vi)、(i)と(iii)と(iv)、(i)と(iii)と(v)、(i)と(iii)と(vi)、(i)と(iv)と(v)、(i)と(iv)と(vi)、(i)と(v)と(vi)、(ii)と(iii)と(iv)、(ii)と(iii)と(v)、(ii)と(iii)と(vi)、(ii)と(iv)と(v)、(ii)と(iv)と(vi)、(ii)と(v)と(vi)、(iii)と(iv)と(v)、(iii)と(iv)と(vi)、(iii)と(v)と(vi)、または(iv)と(v)と(vi)等)が満たされることが好ましい。あるいは、これらの要件のうち4つ、5つ、または6つが満たされることが好ましい。
【0133】
これらの代替の規定による複合物品も無機不透明剤および/または鉱物充填剤をさらに含み得ることを理解されたい。複合物品は、複合物品の総重量に基づいて、好ましくは、15~70重量%、より好ましくは25~60重量%、さらにより好ましくは35~50重量%のエアロゲルを含む。好ましくは、複合物品は、3mm未満の範囲、好ましくは0.001~3mm未満の範囲、より好ましくは0.01~2.5mmの範囲、さらにより好ましくは0.01~2mmの範囲の厚さを有する。さらに、複合物品の幅がWであり、複合物品の長さがLであり、および複合物品の厚さがTである際、下記の要件が好ましくは満たされる。
Rは100以上、好ましくは1000以上、より好ましくは10000以上であり、
W/Lは好ましくは1000/1~1/1000の範囲であり、
W/Tは好ましくは10以上であり、および
L/Tは好ましくは10以上である。
【0134】
本発明の複合物品は、不活性充填剤または顔料、難燃剤、炎煙抑制剤、バインダーなどの更なる成分を含み得ることが理解されるべきである。これらは好ましくはエアロゲル組成物に含めることで追加される。
【0135】
本発明の複合物品はさらに、さらなる複合物を形成するために、様々な他の材料でコーティングされ、および/または織物またはラミネートなどの他の材料と組み合わせられ得る。
【0136】
本発明は、以下の項目1~60により要約され得る。
【0137】
1.エアロゲル粒子およびセラミック繊維を含む複合物品の作製方法であって、
セラミック繊維を含む繊維状物品を提供すること、
エアロゲル粉末および有機溶媒を含むエアロゲル組成物を提供すること、
繊維状物品とエアロゲル組成物とを組み合わせること、および
有機溶媒を部分的または完全に除去して複合物品を得ること
を含む、複合物品の作製方法。
【0138】
2.複合物品が無機不透明剤および/または無機充填剤をさらに含み、エアロゲル粉末および有機溶媒を含むエアロゲル組成物を提供する工程が、エアロゲル粉末、有機溶媒、無機不透明剤および/または鉱物充填剤を含むエアロゲル組成物を提供する工程である、項目1に記載の複合物品の作製方法。
【0139】
3.繊維状物品が中綿、不織布、マット、フェルト、および針状の繊維ブランケットから選択され、好ましくは繊維状物品が不織布繊維ブランケットまたは針状繊維ブランケットである、項目1または2に記載の複合物品の作製方法。
【0140】
4.繊維状物品が50~350kg/m3、好ましくは80~300kg/m3、より好ましくは100~250kg/m3の密度を有する、項目1~3のいずれかに記載の複合物品の作製方法。
【0141】
5.セラミック繊維が、セラミック繊維の総重量に基づいて、80重量%以上のアルミナ、好ましくは85重量%以上のアルミナ、好ましくは90重量%のアルミナ、好ましくは95重量%以上のアルミナを含み、アルミナの含有量は、セラミック繊維の総重量に基づいて、好ましくは99重量%以下、より好ましくは98重量%以下、さらにより好ましくは97重量%以上である、項目1~4のいずれかに記載の複合物品の作製方法。
【0142】
6.前記セラミック繊維がさらに、セラミック繊維の総重量に基づいて、0~20重量%のシリカ、好ましくは1~20重量%のシリカ、より好ましくは1~15重量%のシリカ、さらにより好ましくは1~10重量%のシリカ、さらにより好ましくは2~9重量%のシリカ、またはさらに2~6重量%のシリカを含む、項目5に記載の複合物品の作製方法。
【0143】
7.セラミック繊維が、セラミック繊維の総重量に基づいて、シリカおよびアルミナ以外の成分を3重量%未満、好ましくはシリカおよびアルミナ以外の成分を2重量%未満、さらにより好ましくはシリカおよびアルミナ以外の成分を1重量%未満含む、項目5に記載の複合物品の作製方法。
【0144】
8.セラミック繊維が、セラミック繊維の総重量に基づいて、2~80重量%未満のアルミナ、好ましくは15~80重量%未満のアルミナ、より好ましくは20~75重量%のアルミナを含む、項目1~4のいずれかに記載の複合物品の作製方法。
【0145】
9.セラミック繊維が、セラミック繊維の総重量に基づいて、10~98重量%のシリカ、好ましくは15~90重量%のシリカ、より好ましくは20~85重量%のシリカ、さらにより好ましくは25~80重量%のシリカをさらに含む、項目8に記載の複合物品の作製方法。
【0146】
10.セラミック繊維が、セラミック繊維の総重量に基づいて、30~35重量%のアルミナ、50~55重量%のシリカ、ならびに合計で4~20重量%のZrO2、Fe2O3、TiO2、MgOおよびCaOを含む、項目8または9に記載の複合物品の作製方法。
【0147】
11.セラミック繊維が、セラミック繊維の総重量に基づいて、42~58重量%のアルミナおよび52~58重量%のシリカを含む、項目8または9に記載の複合物品の作製方法。
【0148】
12.セラミック繊維が、セラミック繊維の総重量に基づいて、28~32重量%のアルミナ、52~56重量%のシリカ、および14~18重量%のZrO2を含む、項目8または9に記載の複合物品の作製方法。
【0149】
13.セラミック繊維が、セラミック繊維の総重量に基づいて、22~34重量%のアルミナ、66~78重量%のシリカを含む、項目8または9に記載の複合物品の作製方法。 。
【0150】
14.セラミック繊維が、セラミック繊維の総重量に基づいて、66~78重量%のアルミナ、22~34重量%のシリカを含む、項目8または9に記載の複合物品の作製方法。
【0151】
15.セラミック繊維が、セラミック繊維の総重量に基づいて、2重量%未満のアルミナ、好ましくは1重量%未満のアルミナ、より好ましくは0.5重量%未満のアルミナを含む、項目1~4のいずれかに記載の複合物品の作製方法。
【0152】
16.セラミック繊維が、セラミック繊維の総重量に基づいて、50~85重量%のシリカおよび15~50重量%のアルカリ土類金属酸化物を、好ましくは55~85重量%のシリカおよび15~45重量%のアルカリ土類金属酸化物を、より好ましくは60~82重量%のシリカおよび18~40重量%のアルカリ土類金属酸化物をさらに含む、項目15に記載の複合物品の作製方法。
【0153】
17.セラミック繊維が、セラミック繊維の総重量に基づき、55~72重量%のシリカおよび28~45重量%のアルカリ土類金属酸化物を、好ましくは60~70重量%のシリカおよび30~40重量%のアルカリ土類金属酸化物を更に含む、項目15に記載の複合物品の作製方法。
【0154】
18.セラミック繊維が、セラミック繊維の総重量に基づいて、65~85重量%のシリカおよび15~35重量%のアルカリ土類金属酸化物を、好ましくは70~80重量%のシリカおよび20~30重量%のアルカリ土類金属酸化物を含む、項目15に記載の複合物品の作製方法。
【0155】
19.アルカリ土類金属酸化物が、MgOおよびCaOまたはそれらの組合せから選択され、アルカリ土類金属酸化物中のCaOの含有量が、アルカリ土類金属酸化物の総量に基づいて、好ましくは75重量%以上、より好ましくは85重量%以上である、項目16~18のいずれかに記載の複合物品の作製方法。
【0156】
20.項目8~14、16~19の各項目に記載以外のセラミック繊維の成分の含有量が、セラミック繊維の総重量に基づいて、4重量%未満、好ましくは3重量%未満、さらにより好ましくは2重量%未満、さらにより好ましくは1重量%未満、またはさらには0.5重量%未満である、項目8~14、16~19のいずれかに記載の複合物品の作製方法。
【0157】
21.有機溶媒が、炭化水素溶媒であり、好ましくはC3~16の飽和、不飽和もしくは部分飽和炭化水素またはそれらの混合物から選択され、より好ましくはC3~10の飽和直鎖、分岐鎖もしくは環状炭化水素またはそれらの混合物から選択され、さらにより好ましくはC3~10の直鎖もしくは分岐鎖アルカンまたはそれらの混合物から選択され、さらにより好ましくはC5~7の直鎖もしくは分岐鎖アルカンまたはそれらの混合物から選択され、さらにより好ましくはヘキサンもしくはヘプタンまたはそれらの混合物から選択され、最も好ましくはn-ヘキサンである、項目1~20のいずれかに記載の複合物品の作製方法。
【0158】
22.有機溶媒がアルコール溶媒であり、好ましくはC2~12の飽和、不飽和もしくは部分飽和アルコールまたはそれらの混合物から選択され、より好ましくはC2~12の飽和直鎖、分岐鎖、もしくは環状アルコールまたはそれらの混合物から選択され、さらにより好ましくは、C2~12の飽和直鎖、分枝鎖もしくは環状一価アルコールまたはそれらの混合物から選択され、さらにより好ましくは、C2~6の飽和直鎖、分枝鎖もしくは環状一価アルコールまたはそれらの混合物から選択され、さらにより好ましくは、プロパノールまたはその混合物から選択され、最も好ましくは2-プロパノールである、項目1~20のいずれかに記載の複合物品の作製方法。
【0159】
23.エアロゲルが、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ハフニウムおよび酸化イットリウムから選択される1つまたは複数を含む、またはそれらからなり、好ましくは、エアロゲルは酸化ケイ素を含むか、酸化ケイ素からなり、より好ましくはエアロゲルがシリカエアロゲルである、項目1~22のいずれかに記載の複合物品の作製方法。
【0160】
24.等温吸脱着により測定した場合に、エアロゲルは、85%以上の気孔率、より好ましくは90%以上の気孔率を有する、項目1~23のいずれかに記載の複合物品の作製方法。
【0161】
25.DIN ISO 9277 2003-05(BET法を使用したガス吸着による固体の比表面積の測定)により測定して、エアロゲルが300m2/g以上、好ましくは400m2/g以上、好ましくは500m2/g以上、好ましくは600m2/g以上、および好ましくは2000m2/g以下、より好ましくは1500m2/g以下、さらにより好ましくは1000m2/g以下の比表面積を有する、項目1~24のいずれかに記載の複合物品の作製方法。
【0162】
26.好ましくはMalvern Mastersizerを使用したレーザー回折により測定した場合に、エアロゲルの粉末が、1~50μm、好ましくは5~40μm、より好ましくは10~30μm、さらにより好ましくは15~25μmの範囲の範囲のメジアン粒径(d50)を有する、項目1~25のいずれかに記載の複合物品の作製方法。
【0163】
27.エアロゲルの粉末が異相反応により得られる、項目1~26のいずれかに記載の複合物品の作製方法。
【0164】
28.エアロゲルの粉末が、シリカヒドロゲル一次粒子を得るために脱イオン水、水ガラス、有機シラン化合物、無機酸、および有機溶媒、好ましくは非極性有機溶媒を混合反応させること、シリカヒドロゲル一次粒子を溶媒置換すること、および好ましくはさらなる粉砕またはふるい分け処理をすることなく、シリカエアロゲル粉末を得るために溶媒置換が完了したゲル粒子を常圧下で乾燥することにより得られる、シリカエアロゲル粉末である、項目1~27のいずれかに記載の複合物品の作製方法。
【0165】
29.エアロゲル組成物が、有機溶媒中におけるエアロゲル粉末の分散物である、項目1または項目3~28のいずれかに記載の複合物品の作製方法。
【0166】
30.エアロゲル組成物が、エアロゲル組成物の総重量に基づいて、2~20重量%のエアロゲル、好ましくは4~18重量%のエアロゲル、より好ましくは6~18重量%のエアロゲル、さらにより好ましくは10~18重量%のエアロゲルを含み、残りは好ましくは有機溶媒である、項目1および項目3~29のいずれかに記載の複合物品の作製方法。
【0167】
31.エアロゲル組成物中のエアロゲル粉末および有機溶媒の合計含有量が90重量%以上、好ましくは95重量%以上、より好ましくは97重量%以上、さらにより好ましくは98重量%以上、さらにより好ましくは99重量%以上、最も好ましくは99.5重量%以上、またはさらには99.8重量%以上である、項目1および項目3~30のいずれかに記載の複合物品の作製方法。
【0168】
32.エアロゲル組成物が、有機溶媒中におけるエアロゲル粉末、無機不透明剤および/または鉱物充填剤の分散物である、項目2~28のいずれかに記載の複合物品の作製方法。
【0169】
33.無機不透明剤が、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化チタン、炭化ケイ素およびグラファイトから選択される1つもしくは複数を含むか、またはその1つもしくは複数からなり、好ましくは、無機不透明剤は、酸化鉄、酸化ジルコニウム、および炭化ケイ素から選択される1つもしくは複数を含むか、またはその1つもしくは複数からなり、より好ましくは、無機不透明剤は、酸化鉄または炭化ケイ素である、項目2~28および32のいずれかに記載の複合物品の作製方法。
【0170】
34.鉱物充填剤が、金属水酸化物および水和炭酸塩から選択される1つもしくは複数を含むか、またはその1つもしくは複数からなり、好ましくは、鉱物充填剤が、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ハイドロマグネサイト(または水苦土石;hydromagnesites)およびハイドロカルサイト(または水方解石;hydrocalcites)から選択される1つもしくは複数を含むか、またはその1つもしくは複数からなり、より好ましくは、鉱物充填剤は、二水酸化マグネシウムおよび三水酸化アルミニウムから選択される一方または両方である、項目2~28、32および33のいずれかに記載の複合物品の作製方法。
【0171】
35.エアロゲル組成物が、エアロゲル組成物の総重量に基づいて、2~20重量%のエアロゲル、好ましくは4~18重量%のエアロゲル、より好ましくは6~18重量%のエアロゲル、さらにより好ましくは10~18重量%のエアロゲルを含み、残りは好ましくは有機溶媒、無機不透明剤および鉱物充填剤である、項目2~28および32~34のいずれかに記載の複合物品の作製方法。
【0172】
36.エアロゲル組成物中のエアロゲル粉末と有機溶媒との合計含有量が50重量%以上、好ましくは75重量%以上、より好ましくは85重量%以上である、項目2~28および32~35のいずれかに記載の複合物品の作製方法。
【0173】
37.エアロゲル組成物中の無機不透明剤と鉱物充填剤の合計含有量が50重量%以下、好ましくは25重量%以下、より好ましくは15重量%以下である、項目2~28および32~36のいずれかに記載の複合物品の作製方法。
【0174】
38.繊維状物品とエアロゲル組成物とが、エアロゲル組成物を繊維状物品に注入するまたは含浸することにより組み合わせられる、項目1~37のいずれかに記載の複合物品の作製方法。
【0175】
39.乾燥により有機溶媒を部分的にまたは完全に除去して複合物品を得ることが、50~170℃の温度で1~8時間乾燥し、任意にはその後に171℃~230℃で1~48時間乾燥させることを含む、項目1~38のいずれかに記載の複合物品の作製方法。
【0176】
40.複合物品が、複合物品の総重量に基づき、15~70重量%、好ましくは25~60重量%、より好ましくは35~50重量%のエアロゲルを含む、項目1~39のいずれかに記載の複合物品の作製方法。
【0177】
41.複合物品が、3mm未満の範囲、好ましくは0.001~3mm未満の範囲、より好ましくは0.01~2.5mmの範囲、さらにより好ましくは0.01~2mmの範囲の厚さを有する、項目1~40のいずれかに記載の複合物品の作製方法。
【0178】
42.複合物品の幅がWであり、複合物品の長さがLであり、および複合物品の厚さがTである際、下記の要件が満たされる。
Rは100以上、好ましくは1000以上、より好ましくは10000以上であり、
W/Lは好ましくは1000/1~1/1000の範囲であり、
W/Tは好ましくは10以上であり、および
L/Tは好ましくは10以上である、
項目1~41のいずれかに記載の複合物品の作製方法。
【0179】
43.複合物品が、15重量%未満の有機化合物、好ましくは10重量%未満の有機化合物、より好ましくは5重量%未満の有機化合物を含み、有機化合物という用語は少なくとも1つの炭素-水素結合を含む任意の化合物に関する、項目1~42のいずれかに記載の複合物品の作製方法。
【0180】
44.複合物品中の繊維の少なくとも50%は5mm以上の長さを有し、好ましくは複合物品中の繊維の少なくとも50%は10mm以上の長さを有し、より好ましくは複合物品中の繊維の少なくとも75%は5mm以上の長さを有し、さらにより好ましくは複合物品中の繊維の少なくとも75%が10mm以上の長さを有し、さらにより好ましくは複合物品中の繊維の少なくとも75%は15mm以上の長さを有し、最も好ましくは複合物品中の繊維の少なくとも75%が20mm以上の長さを有する、項目1~43のいずれかに記載の複合物品の作製方法。
【0181】
45.複合物品は、10重量%未満のバインダー、好ましくは5重量%未満のバインダー、より好ましくは2重量%未満のバインダー、さらにより好ましくは1重量%未満のバインダー、さらにより好ましくは0.5重量%未満のバインダー、最も好ましくは0.1重量%未満のバインダーを含む、項目1~44のいずれかに記載の複合物品の作製方法。
【0182】
46.窒素雰囲気中で30℃~1100℃で10℃/分の温度上昇で加熱した場合の熱重量分析(TGA)において、複合物品は、35重量%未満、好ましくは30重量%未満、より好ましくは25重量%未満、さらにより好ましくは20重量%未満、さらにより好ましくは15重量%未満、最も好ましくは10重量%未満の総重量損失を示す、項目1~45のいずれかに記載の複合物品の作製方法。
【0183】
47.複合物品中の1つ以上のエアロゲルと1つ以上の繊維との重量比(エアロゲル/繊維)は、1:8以上、好ましくは1:4以上、より好ましくは1:2以上、更により好ましくは1:1以上である、項目1~46のいずれかに記載の複合物品の作製方法。
【0184】
48.項目1~47のいずれかに記載の方法により得られる複合物品。
【0185】
49.エアロゲル粒子およびセラミック繊維を含む複合物品であって、当該複合物品は、エアロゲル粉末および有機溶媒、ならびに場合により無機不透明剤および/または鉱物充填剤を含むエアロゲル組成物をセラミック繊維を含む繊維状物品中に注入しまたは含浸させ、複合物品を得るために有機溶媒を部分的または完全に除去することによって得ることができる、複合物品。
【0186】
50.エアロゲル粒子およびセラミック繊維を含む複合物品であって、以下の要件(i)~(vi)のうちの1つ以上が満たされる、複合物品:
(i)複合物品は15重量%未満の有機化合物を含む;
(ii)複合物品中の繊維の少なくとも50%が5mm以上の長さを有する;
(iii)複合物品が10重量%未満のバインダーを含む;
(iv)複合物品は、窒素雰囲気中で30℃~1100℃で10℃/分の温度上昇で加熱した際の熱重量分析(TGA)で35重量%未満の総重量損失を示す;
(v)複合物品中の1つ以上のエアロゲルと1つ以上の繊維の重量比(エアロゲル/繊維)は1:8以上である;
(vi)複合物品は60分以上のバーンスルー時間(または焼付け時間または燃焼時間;burn-through time)を有し、耐バーンスルー性は、厚さ1~3mmでDIN A4のシートの形態の複合物品を使用して、半田付けトーチを使用して温度1400℃の火炎を用いて複合物品をその第1の主面の中心で処理することで測定され、バーンスルー時間は火炎処理の開始から第2の主面の中心が1000℃の温度に到達するまでの時間である。
【0187】
51.無機不透明剤および/または鉱物充填剤をさらに含む、項目50に記載の複合物品。
【0188】
52.複合物品が、15重量%未満の有機化合物、好ましくは10重量%未満の有機化合物、より好ましくは5重量%未満の有機化合物を含み、用語有機化合物は少なくとも1つの炭素-水素結合を含む任意の化合物に関する、項目50または51に記載の複合物品。
【0189】
53.複合物品中の繊維の少なくとも50%が5mm以上の長さを有し、好ましくは複合物品中の繊維の少なくとも50%が10mm以上の長さを有し、より好ましくは複合物品中の繊維の少なくとも75%が5mm以上の長さを有し、さらにより好ましくは複合物品中の繊維の少なくとも75%が10mm以上の長さを有し、さらにより好ましくは、複合物品中の繊維の少なくとも75%が15mm以上の長さを有し、最も好ましくは、複合物品中の繊維の少なくとも75%が20mm以上の長さを有する、項目50~52のいずれかに記載の複合物品。
【0190】
54.複合物品が、10重量%未満のバインダー、好ましくは5重量%未満のバインダー、より好ましくは2重量%未満のバインダー、さらにより好ましくは1重量%未満のバインダー、さらにより好ましくは0.5重量%未満のバインダー、最も好ましくは0.1重量%未満のバインダーを含む、項目50~53のいずれかに記載の複合物品。
【0191】
55.窒素雰囲気下で30℃~1100℃で10℃/分の温度上昇で加熱した際の熱重量分析(TGA)で、複合物品は、35重量%未満、好ましくは30重量%未満、より好ましくは25重量%未満、さらにより好ましくは20重量%未満、さらにより好ましくは15重量%未満、最も好ましくは10重量%未満の総重量損失を示す、項目50~54のいずれかに記載の複合物品。
【0192】
56.複合物品中の1つ以上のエアロゲルと1つ以上の繊維の重量比(エアロゲル/繊維)が1:8より高く、好ましくは1:4以上、より好ましくは1:2以上、さらにより好ましくは1:1以上である、項目50~55のいずれかに記載の複合物品。
【0193】
57.複合物品が、複合物品の総重量に基づいて、15~70重量%、好ましくは25~60重量%、より好ましくは35~50重量%のエアロゲルを含む、項目50~56のいずれかに記載の複合物品。
【0194】
58.複合物品が、3mm未満の範囲、好ましくは0.001~3mm未満の範囲、より好ましくは0.01~2.5mmの範囲、さらにより好ましくは0.01~2mmの範囲の厚さを有する、項目50~57のいずれかに記載の複合物品。
【0195】
59.複合物品が、60分以上、好ましくは120分以上、より好ましくは180分以上、さらにより好ましくは240分以上のバーンスルー時間を有する、項目50~58のいずれかに記載の複合物品。
【0196】
60. 複合物品の幅がWであり、複合物品の長さがLであり、および複合物品の厚さがTである際、下記の要件が満たされる。
Rは100以上、好ましくは1000以上、より好ましくは10000以上であり、
W/Lは好ましくは1000/1~1/1000の範囲であり、
W/Tは好ましくは10以上であり、および
L/Tは好ましくは10以上である、
項目50~60のいずれかに記載の複合物品。
【0197】
本出願は、エアロゲル粒子とセラミック繊維を含む複合物品というタイトルで欧州特許庁に2021年3月9日に出願されたEP21161398の優先権を主張し、その内容(特に実験例の内容)は参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0198】
実施例1
材料
エアロゲル粉末 (JIOS AeroVa エアロゲル粉末、D20グレード)
2-プロパノール(テクニカルグレード)
セラミック繊維ペーパーA(Unifrax社により提供されたInsulfraxペーパーは、55~72重量%のシリカと28~45重量%のアルカリ土類金属酸化物を含み、ペーパー密度は150kg/m3であり、未加工(原料のペーパー厚さは1mmである。)
セラミック繊維ペーパーB(Unifrax社により提供されたInsulfraxペーパーは、55~72重量%のシリカと28~45重量%のアルカリ土類金属酸化物を含み、ペーパー密度は150kg/m3であり、未加工のペーパー厚さは2mmである。)
セラミック繊維ペーパーC(Unifrax社により提供されたInsulfraxペーパーは、55~72重量%のシリカと28~45重量%のアルカリ土類金属酸化物を含み、ペーパー密度は150kg/m3であり、未加工のペーパー厚さは3mmである。)
ガスカートリッジ(Rotenberger Industrial、30%プロパン/70%ブタン)を備えたはんだ付けトーチ (Rotenberger Industrial、タイプROFIRE Piezo1950、35429)
【0199】
実験
標準的な実験室用混合装置、より具体的にはプロペラミキサー(Heidolph オーバーヘッドスターラーRZR2020) を使用して、2-プロパノールにエアロゲルを分散させ、固形分の含量を11重量%に到達させた。
【0200】
エアロゲルを組み入れたセラミック繊維ペーパーの作製:
未加工のペーパーをエアロゲル分散液に浸すことで、1Lのエアロゲル分散液(上記で調製した2-プロパノール中11重量%のエアロゲル)を室温(20℃)で21×29.7cm(DIN A4サイズ)のセラミック繊維ペーパーに含浸させた。サンプルは含浸直後に熱風オーブン中に110℃で4時間乾燥させ、続いて200℃で16時間後乾燥させた。
【0201】
【0202】
例1-1、1-3、1-4、1-5、1-6、および1-7は本発明に係るものであり、例1-2、1-8、および1-9は参照例である。
【0203】
結果および評価
図1および
図2に示すように、均質なエアロゲルが組み込まれたセラミック繊維ペーパーが得られた。ペーパーは振っても粉塵の放出が少ないことがわかった。ペーパー内にポケットや層間剥離は観察されなかった。
【0204】
断熱能力と高温に対する耐性を調査するために、
図3に示すように、エアロゲルが組み込まれたセラミック繊維ペーパーとブランクのセラミック繊維ペーパーをはんだ付けトーチの炎にさらした。はんだ付けトーチは、約1400℃の炎の温度を有していた。ペーパーの裏側(燃えていない側)の温度上昇を熱電対によって記録した。
【0205】
例1-2、1-8、および1-9で用いられたブランクのセラミック繊維ペーパーは高温用途向けに設計されており、名目上1200℃までの温度に耐えるが、
図4、8および9に示すように、例1-8、1-2および1-9のブランクのセラミック繊維ペーパーでは、各セラミック繊維ペーパー上の炎上部分が急速に溶けてそれぞれ10秒、20秒、および8分後に完全に燃え尽きた。
【0206】
ブランクのセラミック繊維ペーパーとは対照的に、エアロゲルが組み込まれたセラミック繊維ペーパーはトーチフレームに対してはるかに優れた耐性を示した。
図5、6および10に示すように、エアロゲルが組み込まれたセラミック繊維ペーパー(例1-1、1-3および1-4)は、60分間燃やした後もほとんど損傷を受けないままであった。炎上部分の色の変化は、未加工のセラミック繊維ペーパーの製造プロセスに起因するサイジング剤の分解および蒸発に起因すると考えられた。
【0207】
火炎領域の断面分析により、セラミック繊維ペーパーの(0.5mmより薄い)最初の表面だけが硬くなったが、ペーパー全体は可撓性を有するままであることが分かった。火炎部分(または燃焼部分;flamed area)の裏側は試験前と同じ色を維持していた。
【0208】
ブランクのセラミック繊維ペーパー(例1-2、未加工のペーパー厚さ2mm)と2つのエアロゲルが組み込まれたセラミック繊維ペーパー(例1-1および1-3)の裏側中央部の温度上昇の比較を
図7に示す。
【0209】
ブランクのセラミック繊維ペーパー(未加工のペーパー厚さ2mm)は、わずか20秒の燃焼後に焼き切れたため、1350℃まで急激に温度上昇を示した。
【0210】
対照的に、エアロゲルが組み込まれたセラミック繊維ペーパー(例1-1および1-3)は、はるかに優れた断熱能力および高温耐性を示した。裏面中間部の温度は、未加工のペーパー厚さ1mm、3mmでエアロゲルが組み込まれたセラミック繊維ペーパーではそれぞれ820℃、540℃と測定された。エアロゲルが組み込まれたセラミック繊維ペーパーは、トーチの炎に長時間さらされても耐えた。
【0211】
ブランクのセラミック繊維ペーパーとエアロゲルが組み込まれたセラミック繊維ペーパーとの間の非露出側の温度上昇の比較を
図11、12、および13に示す(例1-8と例1-1の比較、例1-2と例1-4の比較、および例1-9と例1-3の比較に関する)。ブランクのセラミック繊維ペーパー(未加工のペーパー厚さ1および2mm)は、わずか10秒および20秒の燃焼後にそれぞれそのペーパーが焼き切れたため、1350℃まで急激な温度上昇を示した。ブランクのセラミック繊維ペーパー(未加工のペーパー厚さ3mm)は8分の燃焼後に焼き切れた。
【0212】
対照的に、エアロゲルが組み込まれたセラミック繊維ペーパーは、はるかに優れた断熱能力と高温耐性を示した。非露出側の温度は、未加工のペーパー厚さが1、2および3mmのエアロゲルが組み込まれたセラミック繊維ペーパーについて、それぞれ820℃、800℃、540℃と測定された。エアロゲルが組み込まれたセラミック繊維ペーパーは、トーチの炎に長時間さらされても耐えた。
【0213】
エアロゲルが組み込まれたセラミック繊維ペーパーとブランクのセラミック繊維ペーパーの試作品の比較は、セラミック繊維ペーパーにエアロゲル粉末を組み込むことで2つのコンポーネント間の相乗効果が誘発され、断熱能力と非常に高い温度に対する耐性が大幅に向上することを示唆している。
【0214】
耐火試験
耐火性能を調べるために、ブランクのセラミックペーパーとエアロゲルが組み込まれたセラミックペーパーの両方に対してはんだ付けトーチ試験を実施した。試料をA4の寸法に切断し、ガスカートリッジ (Rotenberger Industrial、30%プロパン/70%ブタン)を備えたはんだ付けトーチ (Rotenberger Industrial、タイプ ROFIRE Piezo1950、35429)にさらした。その火炎温度は1300~1400℃の範囲であった。試料の裏側(燃えていない側)において、その中央位置に熱電対(タイプ K)を設置し、温度上昇を記録した。
【国際調査報告】