(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-16
(54)【発明の名称】コーティング層と前記コーティング層を含む基材の特性を予測するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
G16C 60/00 20190101AFI20240409BHJP
G01S 7/03 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
G16C60/00
G01S7/03 246
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557233
(86)(22)【出願日】2022-03-01
(85)【翻訳文提出日】2023-10-24
(86)【国際出願番号】 EP2022055125
(87)【国際公開番号】W WO2022194539
(87)【国際公開日】2022-09-22
(32)【優先日】2021-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D-48165 Muenster,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】トマス,マルク
(72)【発明者】
【氏名】カンギーサー,クラウス-ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ムンドゥス,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】リーゼ,ミヒャエラ
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AF03
(57)【要約】
本発明は、コーティング層CLの特性、又はコーティング層CL及び任意に少なくとも1つのさらなるコーティング層でコーティングされた基材の透過特性及び/又は反射特性を予測するためのコンピュータ実装方法、システム及びコンピュータプログラム製品に関する。本発明はまた、少なくとも1つの基準に従って、少なくとも1つのコーティング層CL及び任意で少なくとも1つのさらなるコーティング層を含むコーティング層CL又はコーティングされた基材をスクリーニングするための本発明のコンピュータ実装方法の使用にも関する。さらに、本発明は、コーティング層CL及び少なくとも1つのさらなるコーティング層でコーティングされる基材に関し、ここで、基材の透過特性及び/又は反射特性は、本発明のコンピュータ実装方法を用いて導出された。最後に、本発明は、コーティング層CLの少なくとも1つの特性、又はコーティング層CLでコーティングされた基材の少なくとも1つの透過特性及び/又は反射特性、及び任意で少なくとも1つさらなるコーティング層の予測を開始する要求をサーバ装置で生成するためのクライアント装置に関する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング層CLの特性、又はコーティング層CL及び任意で少なくとも1つのさらなるコーティング層CL-xでコーティングされた基材の透過特性及び/又は反射特性を予測するためのコンピュータ実装方法であって、前記方法は、以下のステップ:
(i) 通信インターフェースを介して、前記コーティング層CLのデジタル表現D
1、任意で前記コーティングされた基材のデジタル表現D
2、及び任意で前記コーティング層CLに加えて前記基材上に存在する各さらなるコーティング層CL-xのデジタル表現D
3-xを、コンピュータプロセッサに提供するステップと;
(ii) 前記通信インターフェースを介して、
- 過去のコーティング層のデジタル表現D
h、及び
- 前記コーティング層の誘電率を示す過去の指標値;
でパラメータ化されたデータ駆動モデルを、前記コンピュータプロセッサに提供するステップと;、
(iii)
- ステップ(ii)で提供された前記データ駆動モデル、及び
- 前記コーティング層CLのデジタル表現D
1;
に基づいて、前記コーティング層CLの誘電率を示す指標値を前記コンピュータプロセッサで決定するステップと;
(iv)
- ステップ(ii)で提供された前記データ駆動モデル、及び
- 前記さらなるコーティング層CL-xのデジタル表現D
3-x;
に基づいて、前記コーティング層CLに加えて前記基材上に存在する少なくとも1つのさらなるコーティングCL-x層の誘電率を示す指標値を前記コンピュータプロセッサで任意で決定するステップと;
(v)
- ステップ(iii)で提供された前記コーティング層CLの誘電率を示す指標値、
- 任意で前記コーティング層CLに加えて前記基材上に存在する各さらなるコーティング層CL-xの前記デジタル表現D
3-x、又はステップ(iv)で前記誘電率を示す指標値が提供されなかったさらなるコーティング層CL-xのデジタル表現D
3-xと任意で組み合わせてステップ(iv)で提供された前記少なくとも1つのさらなるコーティング層CL-xの誘電率を示す指標値、及び
- 前記コーティングされた基材の前記デジタル表現D
2;
に基づいて、前記コーティングされた基材の少なくとも1つの透過特性及び/又は反射特性を前記コンピュータプロセッサで任意に決定するステップと;
(vi) 前記通信インターフェースを介して、前記コーティング層CLの前記誘電率を示す決定された指標値、及び/又は、前記コーティングされた基材の決定された少なくとも1つの透過特性及び/又は反射特性を提供するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記コーティング層CLは、顔料コーティング層、好ましくはベースコート層から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(i)において、前記コーティング層CLのデジタル表現D
1、及び/又は前記コーティングされた基材のデジタル表現D
2、及び/又は各さらなるコーティング層CL-xのデジタル表現D
3-xを提供することは、車両識別データを提供すること、前記提供された車両識別データに基づいて前記デジタル表現D
1、及び/又はD
2、及び/又はD
3-xを取得すること、及び前記取得されたデジタル表現D
1、及び/又はD
2、及び/又はD
3-xを提供することを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記コーティング層CLのデジタル表現D
1を提供することは:
- 前記コーティング層CLを調製するために使用されたコーティング材料の化学組成に由来するデータを提供することと、
- 任意で、前記コーティング層CLを調製するために使用されたコーティング材料の少なくとも1つの物理的特性に関するデータを提供することと、
- 任意で、前記コーティング層CLの少なくとも1つの物理的特性に関するデータを提供することと、
を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記コーティングされた基材のデジタル表現D
2を提供することが、前記基材の厚さ、前記基材の誘電率を示す指標値、前記コーティング層CLの層の厚さ、及び任意で、前記コーティング層CLに加えて前記基材上に存在する各さらなるコーティング層CL-xの層の厚さを提供することを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記コーティング層CLに加えて前記基材に存在する各さらなるコーティング層CL-xのそれぞれの前記デジタル表現D
3-xを提供するステップは:
- 存在する前記さらなるコーティング層CL-xの誘電率を示す指標値を提供すること、又は、
- 前記さらなる層CL-xを調製するために使用されたコーティング材料の化学組成に由来するデータを提供すること、及び/又は、前記さらなる層CL-xを調製するために使用されたコーティング材料の少なくとも1つの物理的特性に関するデータを提供すること、及び/又は、前記さらなるコーティング層CL-xの少なくとも1つの物理的特性に関するデータを提供すること、
を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記データ駆動モデルは、厳密モデル、経験的モデル、又はそれらの組み合わせであり、好ましくは厳密モデルである、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記データ駆動モデルは、関係、特に少なくとも1つの記述子Dと誘電率を示す指標値との間の線形関係を提供し、前記記述子Dは、前記誘電率を示す指標値に対する、コーティング材料の固形分含量に関連する顔料、好ましくは効果顔料の量及び種類の影響、及び任意で前記誘電率を示す指標値に対する、前記コーティング材料のさらなる成分の影響、及び/又は前記コーティング層CLもしくは前記さらなるコーティング層CL-xの特性の影響を記述する、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記記述子Dは、顔料含有量記述子D
PIG、及び任意で、成分記述子D
R及び/又は特性記述子D
PROP、から計算される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
以下のステップ:
(vii) ステップ(vi)で提供された少なくとも1つの透過特性及び/又は反射特性が、少なくとも1つの予め定義された透過許容範囲及び/又は反射許容範囲内にあるかどうかを任意で決定するステップと;
(viii) 通信インターフェースを介して、ステップ(vii)で実行された決定の結果を任意で提供するステップと;
(ix) ステップ(vi)で提供された少なくとも1つの透過特性及び/又は反射特性が、予め定義された透過許容範囲及び/又は反射許容範囲の範囲外であるかどうかについて、通信インターフェースを介して勧告を任意で提供するステップと;
(x) ステップ(i)で提供された前記デジタル表現D
1、及び/又は前記デジタル表現D
2、及び/又は前記デジタル表現D
3-xを、前記予め定義された透過許容範囲及び/又は反射許容範囲に達するまで修正することによって、ステップ(vi)で提供された前記少なくとも1つの透過特性及び/又は反射特性を最適化するステップと;
(xi) 前記通信インターフェースを介して、前記最適化されたデジタル表現D
1、及び/又はデジタル表現D
2、及び/又はデジタル表現D
3-x、ならびに前記コーティングされた基材の前記最適化された少なくとも1つの透過特性及び/又は反射特性を提供するステップと、
をさらに含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
- 通信インターフェースと;
- 少なくとも1つのコンピュータプロセッサを含む処理モジュールと;
- 処理モジュールによって実行されるときに、請求項1~10のいずれか1項に記載のコンピュータ実装方法のステップを実行するようにシステムを構成する命令を記憶するメモリと、
を備えるコンピューティング装置。
【請求項12】
非一過性のコンピュータ可読記憶媒体であって、前記コンピュータ可読記憶媒体は、コンピュータによって実行されるときに、コンピュータに請求項1~10のいずれか1項に記載のステップを実行させる命令を含む、非一過性のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項13】
少なくとも1つの基準に従って、コーティング層CL、又は少なくとも1つのコーティング層CL及び任意で少なくとも1つのさらなるコーティング層CL-xを含むコーティングされた基材をスクリーニングするための、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法の使用。
【請求項14】
コーティング層CL及び少なくとも1つのさらなるコーティング層CL-xでコーティングされた基材であって、前記基材の透過特性及び/又は反射特性が、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法に従って導出される、基材。
【請求項15】
コーティング層CLの少なくとも1つの特性、又はコーティング層CL及び任意で少なくとも1つのさらなるコーティング層CL-xでコーティングされた基材の少なくとも1つの透過特性及び/又は反射特性の予測を開始する要求を生成するための、サーバ装置におけるクライアント装置であって、前記クライアント装置は、前記コーティング層CLのデジタル表現D
1、任意で前記コーティングされた基材のデジタル表現D
2、任意で前記コーティング層CLに加えて前記基材上に存在する各さらなるコーティング層CL-xのデジタル表現D
3-x、及び任意で許容範囲をサーバ装置に提供するように構成される、クライアント装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載される態様は、一般に、コーティング層の特性、又はコーティングされた基材の透過率及び/もしくは反射特性を予測するための方法及びシステムに関する。より具体的には、本明細書に記載される態様は、コーティング層CLの誘電率を示す指標値を決定することによる、コーティング層CLの特性、又はコーティング層CL及び任意に少なくとも1つのさらなるコーティング層でコーティングされる基材の透過特性及び/もしくは反射特性の予測に関する。次いで、決定された指標値は、そのようなコーティングされた基材の透過特性及び/又は反射特性を予測するために、任意に、基材上に存在するさらなるコーティング層の誘電率を示す測定と組み合わせて使用されることができる。
【背景技術】
【0002】
自動車の安全性を向上させるために、距離を測定し、自動車が物体に接近した場合にドライバーに警告を発するレーダ装置が新たな標準となっている。このようなレーダ装置は、例えばラジエーターグリル、バンパの裏側など、自動車の様々な部分に設けることができる。自動運転車の開発により、様々なレーダ感応センサを搭載する必要性がさらに高まる。将来の自動車では、周囲の物体の全方向の距離と速度を測定する約80個のセンサが自動車に搭載される可能性がある。
【0003】
レーダセンサなどのセンサを、トリムパーツ、例えば自動車のバンパの裏側に見えないように隠すことは、そのようなセンサが車の全体的な視覚的外観に与える悪影響を低減するために望ましいことがよくある。このようなトリムパーツは通常、観察者に均一で高級な光学的外観を与えるために、車体の塗装(paint)に使用されるのと本質的に同じ顔料コーティング組成物(すなわちベースコート組成物)でコーティングされる。今日では、ほとんどの自動車用ベースコート組成物は、メタリック顔料又は真珠光沢顔料などの効果顔料を含むのが一般的な標準である。これらのプレートレット状顔料は、コーティングされた基材に対して平行に配向する。メタリックプレートレットの場合、それらは小さな鏡として機能し、それによって、卓越した隠蔽力と組み合わされて、高い金属光沢とフロップ効果(異なる入射角度で観察したときの明るさの変化)をもたらす。ほとんどの場合、メタリック顔料は、銀色のメタリックコーティングを生じるアルミニウム顔料である。真珠光沢顔料の場合、干渉色が生成され、コーティングは光学的深みを示す。
【0004】
レーダセンサはトリムパーツの裏側に隠されているため、放出されたレーダ波と周囲の物体から反射されたレーダ波はトリムパーツを通って放射されなければならない。しかし、放出されたレーダ波の一部はトリムパーツで反射される。この反射は、一方ではレーダセンサの範囲の減少につながり、他方では反射レーダ波から形成される干渉信号による角度分解レーダセンサの性能の低下につながる。さらに、トリムパーツ基材上に塗布されたコーティング層は、放出されたレーダ波を吸収する可能性があり、その結果、さらにレーダセンサの範囲を狭くする。この点に関して、アルミニウム顔料などの金属効果顔料を含有するコーティングは、放出されたレーダ波の高い反射及び吸収をもたらす可能性があり、その結果、放出されたレーダ信号の許容できない減衰をもたらす可能性があることがよく知られている。
【0005】
センサに使用されるレーダ波は、通常65~85GHzの周波数範囲にあり、これは約4~5mmの波長範囲に対応する。これらの波長は、効果顔料のサイズ又はコーティングの厚さよりもはるかに大きいが、観測される減衰は、このようなアルミニウム顔料の内部の非常に高い電気伝導率(逆電磁波の誘導につながる)によるもので、それはレーダ波の観測される減衰を生じる。コーティングされた基材の裏側に搭載されたレーダセンサの十分な性能を確保するためには、コーティングされた基材によって観測される減衰効果は、垂直入射角の下で測定されるときの放出レーダ強度の3dB未満、好ましくは2dB未満でなければならない。
【0006】
このような悪影響を克服するために、放出されるレーダ強度を著しく減衰させない特別な顔料を含有するペイント層と組み合わせて、トリムパーツの正確に定義された形状、及び非常に正確に定義された誘電特性を使用することが知られている。
【0007】
しかしながら、特別なペイント層、正確に定義された塗布プロセス、及び正確に定義されたトリムパーツの形状を使用することは、そのようなコーティングされた基材を製造するための著しく高いコストを招く。さらに、そのようなコーティングされた基材は、そのようなオーバーコートが放出されるレーダ強度の減衰に関して、トリムパーツとペイント層の最適化されたシステムを大幅に変更することになるため、再仕上げプロセス中で日常的に行われるように単に損傷部分を単にオーバーコートすることによっては修復されることができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、レーダ強度などの放出された電磁放射の減衰を低減するために非常に特定の条件下で塗布されなければならない特別な効果顔料を含む高価なペイント層の使用を回避するために、コーティング層、特にベースコート層、及び少なくとも1つのコーティング層、特に少なくとも1つのベースコート層を含むコーティングされた物体の減衰効果を計算することができる効率的なコンピュータベースの方法及びシステムを使用することが望ましく、これにより、電磁放射を放出し反射した電磁放射を検出する装置、例えばレーダセンサなどの前に取り付けられたトリムパーツのコーティングの適合性に関して、既存のコーティング配合物、特にベースコート配合物をスクリーニングすることができる。このような方法及びシステムは、一般的な再仕上げプロセスによって、このようなトリムパーツを修理することを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
定義
「データ駆動モデル」とは、少なくとも部分的にデータから導出されるモデルを指す。データ駆動モデルの使用は、物理化学法則ではモデル化できない関係を記述することを可能にする。データ駆動モデルの使用は、物理化学法則からの方程式を解くことなく関係を記述することを可能にする。このことは、計算能力を削減し、速度を向上させることができる。データ駆動モデルは、統計学(統計第4版、デービッド フリードマンら、W.W.ノートン&カンパニー株式会社、2004年(Statistics 4th edition, David Freedman et al., W. W. Norton & Company Inc.,2004))から導出され得る。データ駆動モデルは、機械学習(大規模データマイニングのための機械学習と深層学習フレームワークとライブラリ: 調査、人工知能レビュー52、77~124 (2019)、シュスプリンガー(Machine Learning and Deep Learning frameworks and libraries for large-scale data mining: a survey, Artificial Intelligence Review 52, 77-124(2019),Springer))から導出され得る。データ駆動モデルは、経験的モデル又はいわゆる「ブラックボックスモデル」を含み得る。経験的モデル又は「ブラックボックス」モデルは、機械学習、ディープラーニング、ニューラルネットワーク、又は他の形態の人工知能のうちの1つ以上を使用することによって構築されるモデルを指し得る。経験的モデル又は「ブラックボックス」モデルは、トレーニングデータとテストデータとの間の良好な適合をもたらす任意のモデルであってよい。あるいは、データ駆動モデルは、厳密モデル又は「ホワイトボックス」モデルを含んでよい。厳密モデル又は「ホワイトボックス」モデルとは、物理化学法則に基づくモデルを指す。物理化学法則は、第一原理から導出され得る。物理化学的法則は、化学反応速度論、質量保存則、運動量及びエネルギー保存則、任意の次元の粒子集団、物理的関係及び/又は化学的関係の1つ以上を含む。厳密モデル又は「ホワイトボックス」モデルは、それぞれの問題を支配する物理化学法則に従って選択されることができる。データ駆動モデルは、ハイブリッドモデルを含むこともできる。「ハイブリッドモデル」とは、ホワイトボックスモデルとブラックボックスモデルを含むモデルを指し、例えば、Von Stochらのレビュー論文、2014、コンピュータと化学工学、60、86~101頁(review paper of Von Stoch et al.,2014,Computers & Chemical Engineering,60,Pages 86 to 101)を参照されたい。
【0010】
「デジタル表現」は、コンピュータ可読形式でのコーティング層CL、コーティングされた基材、コーティング層CLに加えて存在するすべてのさらなるコーティング層CL-x、及び過去のコーティング層の表現を指し得る。特に、コーティング層CL及び過去のコーティング層のデジタル表現は、例えば、それぞれのコーティング層を調製するために使用されるコーティング材料の組成、それぞれのコーティング層を調製するために使用されるコーティング材料の少なくとも1つの特性に関するデータ、それぞれのコーティング層の少なくとも1つの特性に関するデータ、又はそれらの任意の組み合わせであってよい。コーティングされた基材のデジタル表現は、例えば、基材の層の厚さ、コーティング層CL及び存在するさらなるコーティング層CL-xの層の厚さ、基材の誘電率を示す指標値、又はそれらの任意の組み合わせであってよい。さらなるコーティング層CL-xのデジタル表現は、例えば、各さらなるコーティング層CL-xを調製するために使用されたコーティング材料の組成、さらなるコーティング層CL-xを調製するために使用された各コーティング材料の少なくとも1つの特性に関するデータ、さらなるコーティング層CL-xの少なくとも1つの特性に関するデータ、さらなるコーティング層CL-xの誘電率を示す指標値、又はそれらの任意の組み合わせであってよい。
【0011】
「機械学習」は、経験を通じて改善されるコンピュータアルゴリズム、しばしばトレーニングデータと表現されるサンプルデータに基づくモデル上に構築される機械学習アルゴリズムを指し得る。
【0012】
「通信インターフェース」は、信号又はデータの転送又は交換などの通信を確立するためのソフトウェア及び/又はハードウェアインターフェースを指し得る。ソフトウェアインターフェースは、例えばアプリケーションプログラミングインターフェース(API)と呼ばれるものである。通信インターフェースは、トランシーバ及び/又はレシーバを備えることができる。通信は有線でも無線でもよい。通信インターフェースは、1つ以上の通信プロトコルに基づくか、又はそれをサポートしていてよい。通信プロトコルは、無線プロトコル、例えば、Bluetooth(登録商標)もしくはWIFIなどの近距離通信プロトコル、又は、例えば、第2世代セルラーネットワーク(「2G」)、3G、4G、Long-Term Evolution(「LTE」)、又は5Gなどのセルラー又はモバイルネットワークなどの長距離通信プロトコルであってよい。代替的に、又は追加的に、通信インターフェースは、専用の短距離又は長距離プロトコルに基づいていてよい。通信インターフェースは、任意の1つ以上の標準プロトコル及び/又は専用プロトコルをサポートすることができる。
【0013】
「コンピュータロセッサ」とは、コンピュータ又はシステムの基本動作を実行するように構成された任意の論理回路、及び/又は、一般に、計算又は論理演算を実行するように構成された装置を指す。特に、処理手段又はコンピュータプロセッサは、コンピュータ又はシステムを駆動する基本命令を処理するように構成されることができる。一例として、処理手段又はコンピュータプロセッサは、少なくとも1つの算術論理コンピューティング装置(「ALU」)、数学コプロセッサ又は数値コプロセッサなどの少なくとも1つの浮動小数点コンピューティング装置(「FPU」)、複数のレジスタ、特に、オペランドをALUに供給し、演算結果を記憶するように構成されたレジスタ、及びL1キャッシュメモリ及びL2キャッシュメモリなどのメモリを備えることができる。特に、処理手段、又はコンピュータプロセッサは、マルチコアプロセッサであってよい。具体的には、処理手段、又はコンピュータプロセッサは、中央処理装置(「CPU」)であってよく、又は中央処理装置を備えていてよい。処理手段又はコンピュータプロセッサは、(「CISC」)複雑命令セットコンピュータマイクロプロセッサ、縮小命令セットコンピュータ(「RISC」)マイクロプロセッサ、超長命令語(「VLIW」)マイクロプロセッサ、又は他の命令セットを実装するプロセッサ、又は命令セットの組み合わせを実装するプロセッサであってよい。処理手段はまた、特定用途向け集積回路(「ASIC」)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(「FPGA」)、複合プログラマブルロジックデバイス(「CPLD」)、デジタル信号プロセッサ(「DSP」)、ネットワークプロセッサ又はその類似物などの1つ以上の特殊用途処理装置であってよい。本明細書で説明される方法、システム、及び装置は、DSP、マイクロコントローラ、又はその他のサイドプロセッサ内のソフトウェアとして、あるいはASIC、CPLD、又はFPGA内のハードウェア回路として実装されることができる。処理手段又はプロセッサという用語は、複数のコンピュータシステム(例えばクラウドコンピューティング)にまたがって配置された処理装置の分散システムなど、1つ以上の処理装置を指し得、特に指定がない限り、単一の装置に限定されないことを理解されたい。
【0014】
「コーティング層CL及び任意で少なくとも1つのさらなるコーティング層CL-xでコーティングされている基材」とは、コーティング層CL及び任意で少なくとも1つのさらなるコーティング層CL-xを含む基材を指す。コーティング層CLは、必ずしも基材と直接接触している必要はない、すなわち、少なくとも1つのさらなるコーティング層CL-xは、基材とコーティング層CLとの間に存在することができる。さらに、少なくとも1つのさらなるコーティング層は、コーティング層CLの上、すなわち、基材とは反対側のコーティング層CLの側に存在し得る。コーティング層CL、及びコーティング層CLに加えて基材の上に存在するすべてのさらなるコーティング層CL-xは、好ましくは硬化される。コーティング膜の「硬化」とは、そのような膜をすぐに使用できる状態、すなわち、それぞれのコーティング膜を与えられた基材が意図した通りに輸送、保管、及び使用できる状態、に変換することを意味すると理解される。より具体的には、硬化したコーティング膜は、もはや軟質でも粘着性でもなく、以下に説明される硬化条件にさらに曝されても、基材の硬度又は接着性などの特性にそれ以上の大きな変化を生じない固体コーティング膜として、状態が整えられている。
【0015】
本発明の文脈における「22~300GHzの周波数を有する電磁放射に対して透過性の基材」とは、22~300GHzの周波数範囲、好ましくは22~144GHzの周波数範囲の電磁放射に対して少なくとも70%の透過率を示す基材を指す。透過率%は、例えば、基材を電磁放射の送信アンテナと受信アンテナの間に設け、受信機で検出されなかった送信信号の量(次式でILと表記)を測定し、次式に従って透過率%を計算することにより決定されることができる:
透過率%=100×10IL/10
【0016】
「車両識別データ」とは、当該データに基づいて車両を識別するために使用され得るデータを指す。このようなデータには、車両識別番号(VIN)、VINの一部、車両の製造者、車両の製造工場所在地、車両のメーカー、モデル又は年式、塗装カラーコード、車両の生産順序、又はそれらの組み合わせが含まれる。
【0017】
本発明の文脈における「顔料コーティング層」は、少なくとも1つの顔料及び/又は染料を含む硬化コーティング層を示す。顔料は、着色顔料及び/又は効果顔料から選択されることができる。「ベースコート層」は、自動車塗装及び一般工業塗装において一般的に使用される、硬化した色付与中間コーティング層を指し得る。ベースコート層を調製するために使用されるベースコート材料は、ソリッドカラー(ストレートシェード)又は効果カラーコーティングとして配合され得る。「効果カラーコーティング」は一般に、少なくとも1つの効果顔料と、所望の色と効果を与える任意での他の着色顔料又は粒子(sphere)を含む。「ストレートシェード」又は「ソリッドカラーコーティング」は主に着色顔料を含み、目に見えるフロップ又はツートーンメタリック効果を示さない。ベースコート層は、フィラー層、プライマーサーフェーサー層、又はプライマー層により任意で前処理された金属又はプラスチック基材にベースコート材料を塗布し、形成されたベースコート膜を乾燥させ、乾燥した膜を硬化させることによって形成される。「フィラー層」(プライマーサーフェーサー層)とは、基材の凹凸を埋めるため、及び耐食性と接着性をサポートするため、及び石のチッピングなどの機械的露出から保護するために使用される中間層を表す。「プライマー層」とは、基材上に塗布され、多層コーティングの接着性を向上させるために使用される多層塗膜の最初の層を表す。さらに、プライマー層は、例えば金属基材に対して、改善された耐食性を提供することができる。「ベースコート膜の乾燥」は、塗布後にコーティング材料中に存在する有機溶剤及び/又は水を気化させ、その結果、コーティング材料よりも溶剤量が少ないコーティング膜を得ることを指す。当該膜は、もはや自由流動性はないが、依然として柔らかく、及び/又は粘着性があり、場合によっては部分的にしか乾燥していない。ベースコート層は、硬化したクリアコート層でオーバーコートされていてよく、このクリアコート層は、ベースコート層を風化、ならびに機械的及び化学的攻撃から保護する。ベースコート層がクリアコート層でオーバーコートされている場合、ベースコート層とクリアコート層は、クリアコート材の塗布と任意の乾燥の後に、共同硬化させることもできる。
【0018】
本明細書で使用される「外観」とは、表面のスペクトル的及び幾何学的態様が、その照射環境及び視聴環境と統合されている、知覚を指す。一般に、外観は、特に、様々な視野角から見たとき、及び/又は、様々な照射角度で見たときの、効果顔料、輝き、又は他の表面の視覚効果により生じる粗さなどの視覚的な質感が含む。
【0019】
「コーティング材料の化学組成に由来するデータ」とは、コーティング材料の化学組成から明らかなデータを指し得る。特に、これは、例えば、コーティング材料中に存在する各成分の種類及び量であってよい。
【0020】
「コンピュータ可読媒体」とは、コンピュータ実行可能命令及び/又はデータ構造を担持又は記憶するための物理的及びその他のコンピュータ可読媒体を指し得る。このようなコンピュータ可読媒体は、汎用又は特殊目的のコンピュータシステムによってアクセス可能な任意の利用可能な媒体であり得る。コンピュータ可読媒体には、コンピュータ実行可能命令及び/又はデータ構造を記憶する物理的記憶媒体を含めることができる。物理的記憶媒体は、RAM、ROM、EEPROM、ソリッドステートドライブ(「SSD」)、フラッシュメモリ、相変化メモリ(「PCM」)、光ディスクストレージ、磁気ディスク記憶装置又は他の磁気記憶装置などのコンピュータハードウェア、又はコンピュータ実行可能命令又はデータ構造の形態でプログラムコードを記憶するために使用され得る任意の他のハードウェア記憶装置を含み、これらは、本発明の開示された機能を実装するために汎用又は特殊目的のコンピュータシステムによってアクセス及び実行され得る。
【0021】
「データベース」は、検索及び取得が可能な関連情報の集合体を指し得る。データベースは、検索可能な電子数値、英数字、又はテキスト文書;検索可能なPDF文書;マイクロソフト(Microsoft Excel)(登録商標)スプレッドシート、又は最新技術において一般的に知られているデータベースであり得る。データベースは、検索及び取得が可能なコンピュータ可読記憶媒体に存在する電子文書、写真、画像、図、データ、又は図面のセットであり得る。データベースは、単一のデータベース、関連するデータベースのセット、又は関連しないデータベースの集合であってよい。「関連するデータベース」とは、そのようなデータベースを関連付けるために使用され得る関連するデータベースに少なくとも1つの共通の情報要素が存在することを意味する。
【0022】
「調整ツール」は、本発明の方法のステップ(i)で提供されるデジタル表現D1、D2、及び任意にD3-xを修正することを可能にするグラフィカルユーザインターフェースの一部を指し得る。調整ツールは、ステップ(i)で提供されるデジタル表現D1、D2、任意にD3-xごとに少なくとも1つの変調器を備えることができる。
【0023】
「クライアント装置」とは、その動作の一部として、別のプログラムへリクエストを送信することに依存するコンピュータ又はプログラム、あるいはサーバによって提供されるサービスにアクセスするコンピュータのハードウェア又はソフトウェアを指し得る。サーバは、別のコンピュータ上にある場合もあれば、ない場合もある。
【0024】
概要
以上のような観点の問題を解決するために、次の提案をする:
コーティング層CLの特性、又はコーティング層CL及び任意で少なくとも1つのさらなるコーティング層CL-xでコーティングされた基材の透過特性及び/又は反射特性を予測するためのコンピュータ実装方法であって、前記方法は、以下のステップ:
(i) 通信インターフェースを介して、コーティング層CLのデジタル表現D1、任意でコーティングされた基材のデジタル表現D2、及び任意でコーティング層CLに加えて基材上に存在する各さらなるコーティング層CL-xのデジタル表現D3-xをコンピュータプロセッサに提供するステップと;
(ii) 通信インターフェースを介して、
- 過去のコーティング層のデジタル表現Dh、及び
- 前記コーティング層の誘電率を示す過去の指標値;
に基づいてパラメータ化されたデータ駆動モデルを、コンピュータプロセッサに提供するステップと;、
(iii)
- ステップ(ii)で提供されたデータ駆動モデル、及び
- コーティング層CLのデジタル表現D1;
に基づいて、コーティング層CLの誘電率を示す指標値をコンピュータプロセッサによって決定するステップと;
(iv)
- ステップ(ii)で提供されたデータ駆動モデル、及び
- さらなるコーティング層CL-xのデジタル表現D3-x;
に基づいて、コーティング層CLに加えて基材上に存在する少なくとも1つのさらなるコーティングCL-x層の誘電率を示す指標値をコンピュータプロセッサによって任意で決定するステップと;
(v)
- ステップ(iii)で提供されたコーティング層CLの誘電率を示す指標値、
- 任意でコーティング層CLに加えて基材上に存在する各さらなるコーティング層のデジタル表現D3-x、又は任意でステップ(iv)で誘電率を示す指標値が提供されなかったさらなるコーティング層のデジタル表現D3-xと組み合わせてステップ(iv)で提供された少なくとも1つのさらなるコーティング層CL-xの誘電率を示す指標値、及び
- コーティングされた基材のデジタル表現D2;
に基づいて、コーティングされた基材の少なくとも1つの透過特性及び/又は反射特性をコンピュータプロセッサで任意に決定するステップと;
(vi) 通信インターフェースを介して、決定されたコーティング層CLの誘電率を示す指標値、及び/又は、決定されたコーティングされた基材の少なくとも1つの透過特性及び/又は反射特性を提供するステップと、
を含む。
【0025】
提案された方法は、各コーティング層又はコーティングされた基材について前記特性を測定する必要性を低減することにより、コーティング層CLの特性、又はコーティングされた基材の透過特性及び/又は反射特性を得るための時間を大幅に短縮する。さらに、提案された方法は、少なくとも1つの予め定義された基準、例えば、自動車産業におけるレーダ感知装置に関連して一般的に使用される周波数における、透過及び/又は反射の減衰に従って、既存のコーティング配合物及び多層コーティングをスクリーニングするために使用されることができ、これにより、基準が満たされるかどうかを決定するために必要とされる大規模な実験を行うことなく、適切なコーティング配合物を選択することを可能にする。
【0026】
さらに開示されているのは
コンピューティング装置であって:
- 通信インターフェースと;
- 少なくとも1つのコンピュータプロセッサを備える処理モジュールと;
- 処理モジュールによって実行されると、そこに開示されている本発明のコンピュータ実装方法のステップを実行するようにシステムを構成する命令を記憶するメモリと、
を備える、コンピューティング装置である。
【0027】
さらに開示されているのは
非一過性のコンピュータ可読記憶媒体であって、コンピュータによって実行されると、そこに開示されている本発明のコンピュータ実装方法のステップをコンピュータに実行させる命令を含む、コンピュータ可読記憶媒体である。
【0028】
本開示は、同様に、本明細書に開示される、方法、コンピュータ装置、コンピュータプログラム、コンピュータ可読非一時的メディア、コンピュータプログラム製品に適用される。したがって、方法、コンピュータ装置、コンピュータプログラム、コンピュータ可読非一時的メディア、又はコンピュータプログラム製品を区別するものではない。本発明のコンピュータ実装方法に関連して開示されるすべての特徴は、本明細書に開示されるコンピュータ装置、コンピュータプログラム、コンピュータ可読非一時的記憶メディア、及びコンピュータプログラム製品にも同様に適用可能である。
【0029】
さらに開示されるのは、少なくとも1つのコーティング層CLと、前記少なくとも1つのコーティング層CLの誘電率を示す少なくとも1つの指標値とを含むシステムであって、誘電率を示す前記指標値が、そこに開示される方法に従って決定される、システムである。
【0030】
さらに開示されるのは、少なくとも1つの基準に従って、コーティング層CL、又は少なくとも1つのコーティング層CL及び任意の少なくとも1つのさらなるコーティング層CL-xを含むコーティングされた基材をスクリーニングするための、本発明のコンピュータ実装方法の使用である。一例では、少なくとも1つの基準は、誘電率を示す指標値の予め定義された範囲又は値、特に予め定義された誘電率範囲又は誘電率値である。別の例では、少なくとも1つの基準は、前述したような予め定義された透過及び/又は反射の許容範囲である。これにより、既存のコーティング配合物、及び基材、特にプラスチック基材上の多層コーティングを、レーダ感知装置との組み合わせた使用に関して、スクリーニングすることができる。したがって、特殊な顔料、特殊な基材形状、又は定義された多層コーティングの使用のために、視覚的に魅力的な印象を有しレーダ感知装置と組み合わせて使用するのに適したコーティングされた基材を調製する必要はもはやない。
【0031】
さらに開示されるのは、コーティング層CL及び少なくとも1つのさらなるコーティング層CL-xでコーティングされる基材であり、基材の透過特性及び/又は反射特性は、そこに開示される本発明のコンピュータ実装方法に従って導出された。
【0032】
さらに開示されるのは、コーティング層CLの少なくとも1つの特性、又はコーティング層CL及び任意の少なくとも1つのさらなるコーティング層CL-xでコーティングされた基材の少なくとも1つの透過特性及び/又は反射特性の予測を開始する要求をサーバデバイスで生成するためのクライアント装置であり、ここで、クライアント装置は、コーティング層CLのデジタル表現D1、任意で、コーティングされた基材のデジタル表現D2、任意で、コーティング層CLに加えて基材上に存在する各さらなるコーティング層CL-xのデジタル表現D3-x、及び任意で、特性許容範囲を、サーバデバイスに提供するように構成されている。
【0033】
実施形態
本発明の方法の実施形態:
透過特性及び/又は反射特性は、自動車産業でレーダ感知装置に関連して一般的に使用される周波数で予測され得る(以下、レーダ透過特性及び/又は反射特性と呼ぶ)。好ましいレーダ透過特性及び/又は反射特性は、レーダ透過及び/又は反射の減衰である。レーダ透過特性及び/又は反射特性は、コーティングされた基材が自動車産業で一般的に使用されるレーダ感知装置の前に取り付けられる場合に、レーダ感知装置の性能への悪影響を防ぐため、このようなコーティングされた基材が予め定義された透過及び/又は反射基準を満たす必要があるため、特に関心をもたれることがある。
【0034】
透過特性及び/又は反射特性は、「適切」又は「不適切」のような分類子であり得る。これは、予め定義された閾値、特にレーダ透過及び/又は反射の予め定義された最大減衰から導出され得る。
【0035】
一態様において、基材は、22~300GHzの周波、好ましくは22~144GHzの周波数を有する電磁放射に対して透明であってよい。適切な基材は、ポリカーボネート、ポリカーボネートとポリブチレンテレフタレートの混合物、エラストマー変性ポリプロピレン、ポリプロピレンとエチレン-プロピレン-ジエンゴムの混合物、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体とポリカーボネートの混合物、アクリルエステル-スチレン-アクリロニトリル共重合体、ポリアミド及びその混合物、ポリウレタン、ポリカーボネートとポリエチレンテレフタレートの混合物、ポリブチレンテレフタレート及びそれらの混合物を含むか、又はそれらからなり得る。このような透過性基材を使用することは、基材を通って伝播する電磁放射への悪影響を軽減することができる。
【0036】
一態様においては、コーティング層CLは、顔料コーティング層、好ましくはベースコート層から選択され得る。顔料コーティング層、特にベースコート層の使用は、視覚的に魅力的な印象を有するコーティングされた基材を提供する。
【0037】
基材は、正確に1つのコーティング層、すなわちコーティング層CLでコーティングされてよく、又は基材は、少なくとも2つのコーティング層、すなわちコーティング層CLと少なくとも1つのさらなるコーティング層CL-xでコーティングされてよい。一態様において、基材は、特に記載の順序で、以下の層:任意の少なくとも1つのプライマー層PL、コーティング層CL、特にベースコート層であり、任意でコーティング層CLとは異なる少なくとも1つのさらなるベースコート層、及び少なくとも1つのクリアコート層CL、を含む多層コーティングでコーティングされてよい。このような多層コーティングは、コーティングされた基材に高品質で視覚的に魅力的な印象を与えるために、自動車産業で一般的に使用されている。
【0038】
ステップ(i):
ステップ(i)では、デジタル表現D1、任意でD2とD3-xが、通信インターフェースを介して少なくとも1つのプロセッサに提供される。ステップ(i)におけるデジタル表現は、それぞれのデータを手動で入力することによって、ファイル、データベース又はクラウドなどのコンピュータ可読媒体からそれぞれのデータをインポートすることによって、又は分光光度計などの測定装置からそれぞれのデータを取得し、取得したデータを、通信インターフェースを介して提供することによって、提供されることができる。通信インターフェースは、ディスプレイ、好ましくはグラフィカルユーザインターフェースを有するディスプレイを備えることができる。GUIは、例えば、それぞれのデータを入力するために使用され得る調整ツールを提供することによって、又はデータインポート用のボタンを提供することによって、データ入力を容易にすることができる。
【0039】
一態様では、ステップ(i)において、コーティング層CLのデジタル表現D1、及び/又はコーティングされた基材のデジタル表現D2、及び/又は各さらなるコーティング層CL-xのデジタル表現D3-xを提供するステップは、車両識別データを提供すること、提供された車両識別データに基づいてデジタル表現D1、及び/又はD2、及び/又はD3-xを取得すること、及び前記取得されたデジタル表現D1、及び/又はD2、及び/又はD3-xを提供することを含む。車両識別データは、ユーザによって手動で入力されてよく、又は利用可能な車両識別データのリストから選択されてよく、又はそれぞれのタグ、例えばバーコードもしくはQRコード(登録商標)をスキャンすることによって提供されてよい。デジタル表現D1、及び/又は、D2、及び/又は、D3-xを取得することは、さらに、入力された車両識別データに基づいて、データベースを検索して前記デジタル表現を検索することと定義されることができる。車両識別データを使用するは、ステップ(i)において、必要なデジタル表現D1、D2、及び任意のD3-xを提供することに関して、ユーザの快適性を向上させることができる。
【0040】
一態様では、コーティング層CLのデジタル表現D1を提供するステップは:
- コーティング層CLを調製するために使用されたコーティング材料の化学組成に由来するデータを提供するステップと、
- 任意で、コーティング層CLを調製するために使用されたコーティング材料の少なくとも1つの物理的特性に関するデータを提供するステップと、
- 任意で、コーティング層CLの少なくとも1つの物理的特性に関するデータを提供するステップと、
を含む。
【0041】
ステップ(i)における前記データの提供は、前記データの手動入力、コンピュータ可読媒体からの前記データへのインポート、又は通信インターフェースを介してユーザに表示される調整ツールの操作を含むことができる。コーティング材料の化学組成に由来するデータは、コーティング材料中に存在する各顔料、特に効果顔料の種類及び量を含むことができる。このようなデータは、データベース、コンピュータファイルなどのコンピュータ可読媒体から前記コーティング材料の配合をインポートすることによって提供されることができる。特に好ましくは、配合は、通信インターフェースを介して少なくとも1つのプロセッサに接続された少なくとも1つのデータベースからインポートされる。少なくとも1つの物理的特性に関するデータは、当該特性の決定中に得られるデータを指し得る。コーティング材料のそのような物理的特性データは、例えば、固形含有量を含むことができる。コーティング層CLのそのような物理的特性データは、例えば、フロップインデックスデータなどの外観データ、色値、コーティング層CL内の効果顔料、好ましくはアルミニウム顔料の配向を記述するデータ、コーティング層CLを調製するために使用されるコーティング材料の塗布中に取得されるデータ、及びそれらの組み合わせを含み得る。特に好ましくは、コーティング層CLの少なくとも1つの物理的特性に関するデータは、フロップインデックスデータを含む。コーティング材料の少なくとも1つの物理的特性に関するデータ及びコーティング層CLの少なくとも1つの物理的特性に関するデータは、コーティング材料の化学組成に由来するデータと組み合わせて提供されるのが好ましい場合がある、なぜなら、このことは、コーティング層CLの誘電率を示す指標値の決定の精度を向上させ、したがって提案される方法の精度も向上することができるからである。
【0042】
一態様では、コーティングされた基材のデジタル表現D2を提供するステップは、基材の厚さ、基材の誘電率を示す指標値、コーティング層CLの層の厚さ、及び任意でコーティング層CLに加えて基材上に存在する各さらなるコーティング層CL-xの層の厚さを提供することを含み得る。「層の厚さ」という用語は、コーティング層CL及び存在する場合にはさらなるコーティング層CL-xの乾燥膜厚を指す。基材の厚さ、ならびにコーティング層CL及び任意でコーティング層CLに加えて存在する各さらなるコーティング層CL-xの層の厚さは、手動で入力されてよく、又は、ファイルもしくはデータベースなどのコンピュータ可読媒体からインポートされてよい。このようなデータは、前述したように、車両識別番号を介してデータベースから取得されることもできる。基材の誘電率を示す指標値は、測定によって決定されてよく、又は基材の誘電率を示す標準指標値が使用されてもよい。「基材の誘電率を示す標準的な指標値」という用語は、自動車産業など、それぞれの用途で一般的に使用される基材を代表する誘電率を示す指標値を指す。
【0043】
一態様において、コーティング層CLに加えて基材に存在する各さらなるコーティング層CL-xのそれぞれのデジタル表現D3-xを提供するステップは:
- 存在するさらなるコーティング層CL-xの誘電率を示す指標値を提供すること、又は、
- さらなる層CL-xを調製するために使用されたコーティング材料の化学組成に由来するデータを提供すること、及び/又は、さらなる層CL-xを調製するために使用されるコーティング材料の少なくとも1つの物理的特性に関するデータを提供すること、及び/又は、さらなるコーティング層CL-xの少なくとも1つの物理的特性に関するデータを提供すること、
を含む。
【0044】
コーティング層CLに加えて存在するさらなるコーティング層及びそれらのそれぞれのデジタル表現は、一般にCL-x及びD3-xによって指定され、ここで、xは、特定の個別のコーティング層及びデジタルのネーミングで、他の適切な文字に置き換えられる。例えば、クリアコート層などの正確に1つのさらなるコーティング層が存在する場合、それはCL-1と表記される。対応するデジタル表現はD3-1として表される。プライマー層及びクリアコート層などの2つのさらなるコーティング層が存在する場合、それぞれCL-1及びCL-2と表記される。対応するデジタル表現は、それぞれD3-1及びD3-2として表される。ステップ(i)における前述のデータを提供することは、前記データを手動で入力すること、又はデータベースもしくはコンピュータファイルなどのコンピュータ可読媒体から前記データをインポートすることを含み得る。コーティング材料の化学組成に由来するデータは、コーティング材料中に存在する成分の種類及び量を含み得る。さらなるコーティング層を調製するために使用されたコーティング材料の特性に関するデータは、例えば、当該コーティング材料の固形分含量を含み得る。さらなるコーティング層CL-xに関するデータは、例えば、フロップインデックスデータなどの外観データ;色値;コーティング層CL-x内の効果顔料、好ましくはアルミニウム顔料の配向を記述するデータ;コーティング層CL-xを調製するために使用されたコーティング材料の塗布中に取得されたデータ;コーティング層CL-xの導電率、及びそれらの組み合わせを含み得る。さらなるコーティング層CL-xが、電磁放射の透過及び/又は反射に影響を及ぼすことが知られている任意の顔料を含まない場合には、誘電率を示す標準的な指標値をデジタル表現D3-xとして提供することで十分であろう。「誘電率を示す標準的な指標値」という用語は、例えばプライマー層又はクリアコート層などの、それぞれのさらなるコーティング層CL-xについて代表的な誘電率を示す指標値を指す。さらなるコーティング層CL-xがアルミニウム顔料のような効果顔料を含む場合、デジタル表現D3-xは、好ましくは、さらなるコーティング層CL-xを調製するために使用されるコーティング材料の化学組成に由来する少なくとも1つのデータを含む。この点に関して、コーティング材料及びコーティング層CL-xの少なくとも1つの物理的特性に関するデータが、コーティング材料の化学組成に由来するデータと組み合わせて提供されることがさらに好ましい、なぜなら、これは、コーティング層CL-xの誘電率を示す指標値の決定の精度を向上させ、したがって、提案される方法の精度も向上させ得るからである。
【0045】
ステップ(ii):
ステップ(ii)では、過去のコーティング層のデジタル表現Dh、及び前記コーティング層の誘電率を示す過去の指標値に基づいてパラメータ化されたデータ駆動モデルが提供される。データ駆動モデルは、誘電率を示す指標値とコーティング層の特性との間の関係を提供し、過去のコーティング層のデジタル表現Dh、及び前記コーティング層の誘電率を示す過去の指標値から導出される。コーティング層の特性は、化学的特性及び/又は物理的特性であってよい。化学的特性は、コーティング層を調製するために使用されるコーティング材料中に存在する成分の種類及び量を含むことができる。物理的特性は、コーティング層の少なくとも1つの物理的特性に関するデータだけでなく、コーティング層の少なくとも1つの物理的特性に関するデータを含むことができる。特に、デジタル表現Dhは、過去のコーティング層を調製するために使用されたコーティング材料の配合、固形含有量などのコーティング材料の物理的特性データ、及びフロップインデックスデータ、色値、過去のコーティング層内の効果顔料、好ましくはアルミニウム顔料の配向を記述するデータ、過去のコーティング層を調製するために使用されたコーティング材料の塗布中に取得されたデータ、及びそれらの組み合わせなどのコーティング材料の物理的特性データを含む。
【0046】
ある態様では、データ駆動モデルは、厳密モデル、経験的モデル、又はそれらの組み合わせであってよく、好ましくは厳密モデルである。厳密モデルは、誘電率を示す指標値と、過去のコーティング材料及びこれらの材料から調製されたコーティング層の特性に関するデータとの間の関係を決定することによって開発されることができる。経験的モデルは、これらの関係を決定するために後述されるような人工知能モデルを使用することによって開発されることができる。このモデルは、過去のコーティング層のデジタル表現Dh、及び前記コーティング層の誘電率を示す過去の指標値を前記モデルに提供することによってトレーニングされることができる。
【0047】
ステップ(iii):
提案された方法のステップ(iii)では、コーティング層CLの誘電率を示す指標値は、データ駆動モデル及びコーティング層CLのデジタル表現D1に基づいて決定される。一態様では、データ駆動モデルは、少なくとも1つの記述子Dと誘電率を示す指標値との間の関係を提供する。好ましい例では、該関係は線形関係である。別の例では、該関係は、多項式関係などの非線形関係である。前記記述子Dは、誘電率を示す指標値に対する、コーティング材料の固形分含量に関連する顔料、好ましくは効果顔料の量及び種類の影響を記述する。記述子Dはさらに、誘電率を示す指標値に対する、コーティング材料中に存在する顔料を除くさらなる成分の影響、及び/又はコーティング層CL又はさらなるコーティング層CL-xの特性の影響を記述することができる。コーティング層CL及びCL-xの特性は、化学的特性及び/又は物理的特性、例えば、フロップインデックス、色値、それぞれのコーティング層内の効果顔料の配向、それぞれのコーティング層を調製するために使用されたコーティング材料の塗布中に取得されたデータ、導電率及びそれらの組み合わせなどの外観を含み得る。誘電率を示す指標値に対する顔料を除くさらなる成分の影響、及び/又はコーティング層CL又はさらなるコーティング層CL-xの特性の影響を考慮することは、関係の精度を改善し、したがって、コーティングされた基材の少なくとも1つの透過特性及び/又は反射特性のより良好な予測が提供することができる。
【0048】
記述子Dは、顔料含有量記述子DPIG、及び任意で成分記述子DR及び/又は特性記述子DPROP、から計算される。一例では、記述子Dは、DPIGとDR及び/又はDPROPとの乗算によって、DPIGとDR及び/又はDPROPから、計算される。別の例では、記述子Dは、DPIGとDR及び/又はDPROPとの加算によって、DPIGとDR及び/又はDPROPから、計算される。
【0049】
顔料含有量記述子D
PIGは、式(I)によって
【数1】
得られることができ、ここで、
Aは コーティング材料中に存在する顔料、好ましくはアルミニウム顔料の質量%(コーティング材料の総質量に基づく)を表し、
Sは コーティング材料の固形含有量を質量%で表し、
W
PIGは 顔料の重み付け係数を表す。
【0050】
コーティング層CLを調製するために使用されるコーティング材料が、アルミニウム顔料と、コーティングされた基材の透過特性及び/又は反射特性に有意な影響を与えないことが知られているさらなる顔料とを組み合わせて含む場合、顔料記述子D
PIGは、式(Ia)によって
【数2】
得られることができ、ここで、
Aは、コーティング材料中に存在するアルミニウム顔料の質量%(コーティング材料の総質量に基づく)を表し、W
PIG及びSは、式(I)と同じ意味を有する。
【0051】
顔料の重み付け係数WPIGは、誘電率を示す指標値に対する各顔料の影響を記述し、例えば、顔料のBET表面から及び/又は顔料の粒径から導出されることができる。この係数は、コーティング層の誘電率を示す指標値を決定すること、及びこの指標値を、このコーティング層を調製するために使用されたコーティング材料中に存在する顔料の特性と相関させること、によって導出されることができる。
【0052】
成分記述子D
Rは、式(II)によって
【数3】
得られることができ、ここで
A
Rは コーティング材料中に存在する顔料を除く各成分の質量%(コーティング材料の総質量に基づく)を表し、
nは コーティング材料中に存在する成分の数を表し、
W
Rは 成分の重み付け係数を表す。
【0053】
成分重み付け係数WRは、誘電率を示す指標値に対する、コーティング材料中に存在する各成分(顔料を除く)の影響を表す。コーティング材料中にポリマーが存在する場合、前記因子は、前記ポリマーの誘電率を示す指標値から導出されることができる。前記ポリマーの誘電率を示す指標値は、例えば、ポリマーの構造から導出されることができる。この目的のために、結晶性及び/又は官能基の存在を考慮することができる。
【0054】
特性記述子D
PROPは、式(III)によって
【数4】
得られることができ、ここで
Pは コーティング層CLの特性を表し、
nは D
PROPを計算するために使用されるプロパティの数を表し、
W
PROPは プロパティの重み係数を表す。
【0055】
特性重み付け係数WPROPは、誘電率を示す指標値に対する、コーティング層の各特性の影響を表す。この係数は、コーティング層の誘電率を示す指標値を決定すること、及び、この指標値をそれぞれの特性と相関させることによって導出されることができる。考慮され得る特性には、フロップインデックス又はスパークル強度などの外観、色空間データなどの色データ、コーティング層CL中の効果顔料の配向、又はコーティング層CLを調製するために使用されたコーティング材料の塗布の種類が含まれる。色空間データの一例は、L*a*b*によって定義され、ここで、L*は光度を表し、a*は赤色/緑色の外観を表し、b*は黄色/青色の外観を表す。色空間データの別の例は、L*、C*、hによって定義され、ここで、L*は明度を表し、C*は彩度を表し、hは色相を表す。
【0056】
任意のステップ(iv):
任意のステップ(iv)では、少なくとも1つのさらなるコーティング層CL-xの誘電率を示す指標値は、データ駆動モデル及びコーティング層のデジタル表現D3-xに基づいて決定され得る。2つ以上のさらなるコーティング層CL-xが存在する場合、任意のステップ(iv)は、存在する各さらなるコーティング層CL-xに対して実行されてよい。別の例では、任意のステップ(iv)は、存在するすべてのさらなるコーティング層CL-xの一部について行われてよい。任意のステップ(iv)は、好ましくは、誘電率を示す指標値に大きな影響を及ぼすことが最新の技術で知られている顔料及び/又はさらなる成分を含む、さらなるコーティング層CL-xに対して実行される。これは、誘電率を示す標準的な指標値の使用は、そのような顔料及び/又はさらなる成分の存在を十分に考慮しない可能性があるため、提案された方法の精度を向上させる。ステップ(iv)は、好ましくは、デジタル表現D1の代わりにそれぞれのデジタル表現D3-xを使用することにより、ステップ(iii)に関連して前述したように実行される。
【0057】
一態様では、誘電率を示す指標値は、比誘電率εrから選択されることができる。
【0058】
任意のステップ(v):
提案された方法の任意のステップ(v)では、コーティング層CL又はコーティングされた基材の少なくとも1つの透過特性及び/又は反射特性が、前述のように提供されたコーティング層CLの誘電率を示す指標値及びコーティングされた基材のデジタル表現D2に基づいて決定される。ステップ(v)は、以下に非限定的に列挙される様々な代替案に従って実行されることができる。
【0059】
第1の代替案によれば、コーティング層CLの少なくとも1つの透過特性及び/又は反射特性は、ステップ(iii)で提供された誘電率を示す指標値と、コーティングされた基材のデジタル表現D2とに基づいて決定される。これにより、得られるコーティング層CLの必要な透過特性及び/又は反射特性などの特定の要件を満たすことに関して、様々なコーティング配合をスクリーニングすることができる。この目的のために、同じ基準基材、すなわち基材の同じ誘電率が、それぞれのコーティング層CLの透過特性及び/又は反射特性を決定中に使用される。
【0060】
第2の代替案によれば、少なくとも2つのコーティング層、すなわちコーティング層CL及び少なくとも1つのさらなるコーティング層CL-xを含むコーティングされた基材の少なくとも1つの透過特性及び/又は反射特性は、ステップ(iii)で提供された誘電率を示す指標値、コーティングされた基材のデジタル表現D2、及び各さらなるコーティング層CL-xの誘電率を示す指標値に基づいて決定される。基材上に存在する各さらなるコーティング層CL-xの誘電率を示す指標値は、多数の方法で得ることができる。
【0061】
一例では、誘電率を示す指標値は、ステップ(i)で提供されたそれぞれのデジタル表現D3-xから、各さらなるコーティング層CL-xについて取得される。これは、すべてのさらなるコーティング層CL-xの誘電率を示す指標値が、実験によって事前に決定されている場合、又は誘電率を示す標準的な指標値を使用することができ、当該指標値が、各それぞれの提供されたデジタル表現D3-xに含まれている場合に好ましい。
【0062】
別の例では、ステップ(iv)で決定された誘電率を示す指標値は、ステップ(v)において、すべてのさらなるコーティング層CL-xに使用される。このオプションは、提供されたデジタル表現D3-xのいずれもステップ(v)で必要とされる誘電率を示す指標値を含まない場合に使用されることができる。
【0063】
さらに別の例では、ステップ(iv)で決定された誘電率を示す指標値は、さらなるコーティング層CL-xの一部に使用され、一方、当該指標値は、残りのさらなるコーティング層CL-xについて、提供されたそれぞれのデジタル表現D3-xから取得される。これは、誘電率を示す指標値が、さらなるコーティング層CL-xの一部のみについて実験的に決定されている場合、又は標準的な指標値が前記一部について使用され、前記指標値が不明であるため、残りのさらなるコーティング層CL-xについてステップ(iv)で決定する必要がある場合、に有益であり得る。
【0064】
任意のステップ(v)の一態様では、コーティングされた基材の少なくとも1つの透過特性及び/又は反射特性は、(i)透過スペクトル、(ii)透過における減衰、好ましくは透過における一方向及び/又は双方向の減衰、(iii)反射スペクトル、(iv)反射における減衰、及び(v)それらの組み合わせから選択され得る。一例では、透過スペクトル及び反射スペクトルはそれぞれ、伝達行列法を用いて計算されることができる。この方法は最新技術においてよく知られており、及び、マクスウェルの方程式によれば、ある媒質から次の媒質へ境界を越える電場には単純な連続条件があるという事実に基づいている。層の始めの電場が既知であれば、層の終わりの電場は単純な行列演算から導出されることができる。層のスタックは、次いで、個々のレイヤーマトリックスの積であるシステムマトリックスとして表されることがでる。この方法の最後のステップは、システムマトリックスを反射係数と透過係数に変換することを含む。
【0065】
透過スペクトルと反射スペクトルはそれぞれ、コーティングされた基材と組み合わせて一般的に使用される周波数範囲で計算されることができる。周波数範囲は自由に選択できるため、提案された方法は、電磁放射を放出し、反射された電磁放射を検出する装置と組み合わせて使用されるすべてのコーティングされた基材に普遍的に適用され得る。コーティングされた基材が自動車分野でレーダ感知装置と組み合わせて使用される場合、15~300GHzの周波数範囲が使用され得る。一例では、透過スペクトル及び反射スペクトルは、したがって、それぞれ15~300GHzの周波数範囲、好ましくは15~150GHzの周波数範囲、非常に好ましくは15~40GHzの周波数範囲、及び/又は60~90GHzの周波数範囲、及び/又は125~155GHzの周波数範囲で計算されることができる。透過における減衰、好ましくは透過における一方向及び/又は双方向の減衰、ならびに反射における減衰は、それぞれ、24GHzの周波数、及び/又は76.5GHzの周波数、及び/又は137GHzの周波数での透過スペクトル及び反射スペクトルから得られ得る。
【0066】
ステップ(vi):
ステップ(vi)では、前述のように決定されたコーティング層CLの誘電率を示す指標値、及び/又は前述のように決定された少なくとも1つの透過特性及び/又は反射特性が、通信インターフェースを介して提供される。前記指標値又は少なくとも1つの特性を提供することは、ディスプレイを介して前記指標値又は少なくとも1つの特性をユーザに表示することを含み得る。ディスプレイは、ユーザの快適性を高めるためにGUIを備えてよい。決定された指標値又は特性は、保存のためにデータベースなどのコンピュータ可読媒体に転送され得る。決定された指標値又は特性は、当該プロセッサ上で実行されるさらなるステップで使用されるように、コンピュータプロセッサに提供されてよい。これは、提案される方法が、任意のステップ(v)又は以下に記載されるようなさらなるステップを含む場合に、特に好ましい。
【0067】
さらなるステップ:
一態様では、提案された方法は、以下のステップ:
(vii) ステップ(vi)で提供された少なくとも1つの透過特性及び/又は反射特性が、少なくとも1つの予め定義された透過許容範囲及び/又は反射許容範囲内にあるかどうかを任意で決定するステップと;
(viii) 通信インターフェースを介して、ステップ(vii)で実行された決定の結果を任意で提供するステップと;
(ix) 通信インターフェースを介して、ステップ(vi)で提供された少なくとも1つの透過特性及び/又は反射特性が、予め定義された透過許容範囲及び/又は反射許容範囲の範囲外であるかどうかについて、勧告を任意で提供するステップと;
(x) ステップ(i)で提供されたデジタル表現D1、及び/又はデジタル表現D2、及び/又はデジタル表現D3-xを、予め定義された透過許容範囲及び/又は反射許容範囲に達するまで修正することによって、ステップ(vi)で提供された少なくとも1つの透過特性及び/又は反射特性を最適化するステップと;
(xi) 通信インターフェースを介して、最適化されたデジタル表現D1、及び/又はデジタル表現D2、及び/又はデジタル表現D3-x、ならびに、コーティングされた基材の最適化された少なくとも1つの透過特性及び/又は反射特性を提供するステップと、
をさらに含んでよい。
【0068】
任意のステップ(vii)は、ステップ(vi)で提供された少なくとも1つの透過特性及び/又は反射特性を、少なくとも1つの予め定義された透過許容範囲及び/又は反射許容範囲と比較することを含むことができる。許容範囲は、数値であってよく、又は数値範囲であってもよく、ステップ(vii)を実行する前にユーザによって手動で定義されてよく、又はデータベースなどのコンピュータ可読媒体に記憶されてもよい。一例では、予め定義された透過及び/又は反射の許容範囲は、コーティングされた基材の裏側に取り付けられたレーダ感知装置の許容可能な性能を提供するために超えてはならない透過及び/又は反射における減衰の値を記述することができる。比較は、手動又は自動で行うことができる。手動による比較は、人によって行われてよく、ステップ(vi)で提供された特性をユーザが知っている許容範囲と比較することを含んでよい。自動比較は、少なくとも1つのプロセッサによって実行されてよく、また、少なくとも1つの透過特性及び/又は反射特性が通信インターフェースを介してユーザに提供された後にユーザによって開始されてよく、又は、コーティングされた基材の少なくとも1つの透過特性及び/又は反射特性が決定された後に自動的に開始されてもよく、例えば、通信インターフェースを介して前記特性を少なくとも1つのプロセッサに自動的に提供し、比較を実行することによって開始されてもよい。
【0069】
任意のステップ(viii)では、任意のステップ(vii)で実行された決定の結果は、通信インターフェースを介して提供されてよい。これは、ステップ(vi)で提供された少なくとも1つの透過特性及び/又は反射特性が、予め定義された透過許容範囲及び/又は反射許容範囲と自動的に比較される場合に好ましい場合がある。決定の結果は、通信インターフェースを介してユーザに表示されてよい。別の例では、決定の結果は、通信インターフェースを介して、少なくとも1つのプロセッサ又はデータベースなどのコンピュータ可読媒体に提供されてよい。これは、ステップ(vi)で提供された少なくとも1つの特性が、予め定義された透過及び/又は反射の許容範囲外であるかどうかについて勧告が提供される場合に好ましくあり得る。
【0070】
任意のステップ(ix)では、ステップ(vi)で提供された少なくとも1つの透過特性及び/又は反射特性が、予め定義された透過及び/又は反射の許容範囲外である場合に、通信インターフェースを介して勧告が提供されてよい。勧告は、データベースなどのコンピュータ可読媒体に保存されてよい。一例では、少なくとも1つのプロセッサが、勧告を含むデータベースにアクセスすることができ、通信インターフェースを介してプロセッサに提供されたステップ(vii)における決定の結果に基づいて、それぞれの勧告を取得することができる。前記取得された勧告は、次いで、ディスプレイ、特にGUIを含むディスプレイを備える通信インターフェースを介してユーザに表示され得る。勧告の例としては、「レーダ要件が満たされていません。基材の厚さ及び/又は基材上に存在するコーティング層の少なくとも1つの層厚さを修正してください」であってよい。別の例の勧告としては、「レーダ要件が満たされていません。コーティング組成を修正してください」であってよい。
【0071】
ステップ(x)では、ステップ(vi)で提供された少なくとも1つの透過特性及び/又は反射特性が、ステップ(i)で提供されたデジタル表現D1、及び/又はデジタル表現D2、及び/又はデジタル表現D3-xを、予め定義された透過許容範囲及び/又は反射許容範囲に達するまで、修正することによって、最適化される。
【0072】
一例では、ステップ(x)におけるデジタル表現D1及び/又はデジタル表現D2及び/又はデジタル表現D3-xを修正することは、グラフィカルユーザインターフェースを有するディスプレイを備えた通信インターフェース上に表示された複数の調整ツールのうちの少なくとも1つの調整ツールを操作することを含み得、調整ツールのそれぞれは、ステップ(i)において提供された特定のデジタル表現D1、D2及び任意のD3-xに対応する。ステップ(i)で提供されたデジタル表現D1、及び/又は、デジタル表現D2、及び/又は、デジタル表現D3-xは、前記デジタル表現に対応する位置にレギュレータを設定することによって、調整ツールを介して表示されることができる。修正は、その後、ユーザが少なくとも1つの調整ツールの少なくとも1つのレギュレータを、例えばコンピュータのマウス又は指(ディスプレイがタッチスクリーンを含む場合)を介して動かすことによって、修正が実行され得る。少なくとも1つの調整ツールを表示することに加えて、数値が、ステップ(i)で提供された各デジタル表現に対して表示されてよい。この数値は、レギュレータの移動に応じて自動的に更新され、最適化プロセスの対話型ガイダンスをユーザに提供することができる。
【0073】
ステップ(x)におけるデジタル表現D1及び/又はD3-xの修正は、ステップ(i)において提供されたデジタル表現D1及び/又はD2及び/又はD3-xとは異なるデジタル表現D1m及び/又はD2m及び/又はD3-xmを提供することと、提供されたデジタル表現D1m及び/又はD2m及び/又はD3-xmに応答して、グラフィカルユーザインターフェースを有するディスプレイを備える通信インターフェース上に表示された調整ツールを任意で自動的に動かすこととを含むことができる。修正されたデジタル表現D1m及び/又はD2m及び/又はD3-xmは、データベースなどのコンピュータ可読媒体から前記デジタル表現をインポートすることによって提供されてよい。前記修正されたデジタル表現を提供した後、ユーザは、前述のように、更新された調整ツールをさらに操作することができる。
【0074】
別の例では、ステップ(x)におけるデジタル表現D1、及び/又はデジタル表現D2、及び/又はデジタル表現D3-xの修正は、少なくとも1つの透過特性及び/又は反射特性に関連して、過去のコーティング層のデジタル表現D1h及びD3h-x、及び/又は過去のコーティングされた基材のデジタル表現D2hを含む少なくとも1つのデータベースにおいて検索を行うことを含み得る。検索結果は、ディスプレイを備える通信インターフェース上にユーザに対して表示され、ユーザは適切な結果を選択することができる。表示された結果は、その関連性に従って並べ替えられてよい。関連性は、予め定義された基準を用いて計算されることができ、ユーザにガイダンスを提供することができる。あるいは、最も近いマッチングが自動的に選択され、それぞれのデジタル表現を修正するために使用されることができる。最も近いマッチングは、予め定義された基準に従って決定されてよい。
【0075】
さらに別の例では、ステップ(x)におけるデジタル表現D1及び/又はD3-xの修正は、ステップ(i)で提供されたデジタル表現D1及び/又はD3-xmから許容可能な色偏差を有するデジタル表現D1m及び/又はD3-xmを得ることを含む。これは、コーティング層CL及び/又はさらなるコーティング層CL-xが、基材に特定の視覚的印象、例えば特定の色及び/又は外観を与えるために使用される場合、例えばコーティング層CL及び任意の少なくとも1つのさらなるコーティング層CL-xがベースコート層として使用される場合に、特に好ましい。
【0076】
一例では、許容可能な色偏差を有するデジタル表現D1m及び/又はD3-xmを得ることは、提案されたコーティング配合及び関連する提案された色値を決定することと、差分色値を定義するために、ステップ(i)で提供されたデジタル表現D1及び/又はD3-xの色値と提案された色値との間の差を計算することと、ステップ(i)で提供されたデジタル表現D1及び/又はD3-xの色値と差分色値とを人工知能モデルに入力することと、人工知能モデルを利用して提案されたカラーソリューションが許容可能であるかどうかを決定することとを含み得る。色値は、色空間値、反射値、又は他の適切な色属性を含むことができる。色空間値の一例は、L*a*b*によって定義され、L*は光度を表し、a*は赤/緑の外観を表し、b*は黄/青の外観を表す。色空間値の別の例は、L*、C*、hによって定義され、L*は明度を表し、C*は彩度を表し、hは色相を表す。デジタル表現D1、及び/又はD3-x、及び提案されるコーティング配合の色値は、多角度又は球面形状の色測定装置、分光光度計、デジタルカメラ、又は他の適切な装置を用いて得られ得る。
【0077】
提案されたコーティング配合物及び関連する提案された色値を決定するステップは、ステップ(i)で提供されたデジタル表現D1及び/又はD3-xの色値に基づいて、提案されたカラーソリューションをデータベースから検索することとしてさらに定義されることができる。この目的のために、デジタル表現D1及び/又はD3-xの色値は、例えば、ユーザによってこの色値を入力することによって、又はファイルもしくはデータベースなどのコンピュータ可読媒体からこれらの色値をインポートすることによって、GUIを有するディスプレイを備える通信インターフェースを介して、提供されてよい。
【0078】
ステップ(i)で提供されたデジタル表現D1及び/又はD3-xの色値と、提案された色値との間の差分は、差分色値を定義するためにコンピュータを利用して計算される。差分色値は、通常、ΔL*、ΔC*、Δh*又はΔL*、Δa*、Δb*と表される。差分色値を決定する計算は、当該技術分野で知られている任意の適切な数学的計算を用いて達成され得る。
【0079】
次に、差分色値は人工知能モデルに入力される。これらの値の入力は、人工知能モデルに、提案されたコーティング配合物の最も正確な許容性評価を決定させるようにフォーカス及びアシストする。
【0080】
本実施例は、許容性を決定するために人工知能モデルをトレーニングするステップをさらに含むことができる。人工知能モデルをトレーニングする方法は、ステップ(i)で提供されたデジタル表現D1及び/又はD3-xの色値及び差分色値を、ニューラルネットワークの入力層に入力する初期ステップを含んでよい。ステップ(i)で提供されたデジタル表現D1及び/又はD3-xの入力された色値及び入力された差分色値に関連するコーティング配合もまた、人工知能モデルに入力される。これで人工知能モデルは必要な情報をすべて有し、提案されたコーティング配合の許容性を示す数値出力が生成される。色値に対する重み付け係数が、数値出力の許容性を決定するために、使用される。人工知能モデルをトレーニングするステップは、出力を、提案されたカラーソリューションの既知の許容性と比較するステップを含むことができる。この目的のために、数値出力がコンパレータに入力される。提案されたコーティング配合の既知の許容性が、まず既知の数値出力に変換され、次に既知の許容性もコンパレータに入力される。既知の許容性は、人工知能モデルに入力された、提案されたコーティング配合についての事前に決定されている既知の許容性評価である。コンパレータは、人工知能モデルの出力を、提案されたコーティング配合の既知の許容性と比較し、エラー値を生成する。人工知能モデルが完全にトレーニングされ、適切に動作している場合、エラー値は無視できる程度であり、それ以上のアクションは実行されない。しかし、人工知能モデルがトレーニング中であれば、エラー値は比較的大きくなる。エラー値はエラー限界値と比較され、エラー変動が決定される。エラー値がエラー限界値を超えた場合、次に、エラー変動に対応する人工知能モデルにエラーフィードバックが提供される。そして、重み付け係数が、エラーフィードバックに従って調整される。通常、このトレーニング手順は、人工知能モデルを適切にトレーニングさせるために、数百又は数千さえもの異なる入力に対して開始される。
【0081】
人工知能モデルは、ニューラルネットワークで具現化されることができる。より具体的には、人工知能モデルは、フィードバックが出力からニューラルネットワークに提供される逆伝播ニューラルネットワークであってよい。ニューラルネットワーク技術は、人工知能の傘下にある一群の手法の一メンバーである。人工知能は一般的に、使用されるルール階層が人間の知識から理由付けされる論理ルールベースのエキスパートシステムと関連している。対照的に、ニューラルネットワークは、データの蓄積と計算を通じて得られた経験に基づいて自己学習される。ニューラルネットワークは入力層と出力層を含むことができる。入力層は入力ノードを有し、出力層は出力ノードを有する。各出力ノードは入力ノードに対応する。入力層と出力層の間には、1つ以上の隠れ層があり、それぞれが入力ノードと出力ノードのペアに対応する1つ以上の隠れノードを有する。各入力変数は入力ノードに関連付けられ、各出力変数は出力ノードに関連付けられる。より具体的には、ノードは入力を受信し、この入力を処理し、出力を提供する。処理ステップは、入力を合計すること、バイアス値を加えること、この合計入力を出力の大きさを制限する活性化関数(activation function)に送信することを含む。様々なノード間の接続は重み付けされる。あるノードから別のノードに送信された出力は、それら2つの特定のノード間に関連する重み付け係数で乗算される。重み付け係数はシステムの知識を表し、好ましくは出力から入力層へフィードバックを提供することによって、トレーニング中に調整される。適切なニューラルネットワークは、例えばUS7,536,231B2に開示されている。
【0082】
提案されたコーティング配合の許容性を示す人工知能モデルの出力、特にニューラルネットワークの出力は、任意の所望の形式に変換されることができる。例えば、出力は、出力の許容性を示す数値変数に変換され得る。数値変数は、2つの端点間の任意の値を取り得る単一の連続変数であり得る。例としては、0と1の間の実数のセットがある。さらなる例として、数値変数は、データ例えば色測定データ及びニューラルネットワークの出力の固有の不確実性を考慮することができる。例として、0から1の範囲であり、1は結果に不確実性がないことを示す。出力はまた、出力の許容性を示す記述的出力に変換されることもできる。特に、記述的出力は、許容可能/中程度に許容可能/許容不可能の形式、許容係数形式、又は任意の他の適切な形式を含み得る。出力は、GUIを有するディスプレイを備える通信インターフェースを介してユーザに提供され得る。
【0083】
この例は、ステップ(i)で提供されたデジタル表現D1及び/又はD3-xからの許容可能な色偏差を有するデジタル表現D1m及び/又はD3-xmを通信インターフェースを介して提供するステップをさらに含むことができる。特に、修正されたコーティング配合は、GUIを有するディスプレイ上に提供されてよい。
【0084】
提案されたコーティング配合が許容範囲外であると決定された場合、1つ以上の追加ステップが発生し得る。例えば、診断タイプ又はエラータイプのメッセージが決定され、ステップ(i)又は(x)で提供された入力の修正に関してユーザを支援するように、ユーザに送信される。次いで、上述したステップ(x)が繰り返される。
【0085】
別の例では、ステップ(i)で提供されたデジタル表現D1及び/又はD3-xmから許容可能な色偏差を有するデジタル表現D1m及び/又はD3-xmを得ることは、コーティング層CL及び/又はコーティング層CL-xを調製するために使用されたコーティング材料の配合を修正することと、修正されたコーティング材料を調製することと、前記修正されたコーティング材料を塗布及び硬化させることと、前記硬化されたコーティング層の色値を取得することと、前記色値がデジタル表現D1及び/又はD3-xの色値から予め定義された許容範囲内にあるかどうかを決定することと、を含むことができる。コーティング材料の配合の修正は、少なくとも1つの調整ツールを操作することによって、又は前述のようにデータベースで検索を実行することによって行われることができる。得られた色値がΔE>1のような予め定義された閾値の範囲外にある場合、コーティングの配合は、例えば、予め定義された閾値を満たすように顔料の濃度を変更することによって適合される。その後、それぞれのデジタル表現は、適合されたコーティング配合に対応するように修正され、透過特性及び/又は反射特性が、予め定義された透過許容範囲及び/又は反射許容範囲が適合されたコーティング配合に対して満たされることを保証するために、前述のように計算される。予め定義された許容範囲が満たされない場合は、このプロセスは繰り返される。
【0086】
ステップ(xi)では、コーティングされた基材の少なくとも1つの最適化された透過特性及び/又は反射特性が提供される。これは、ステップ(x)おける少なくとも1つの透過特性及び/又は反射特性の最適化に応答して、ステップ(vi)で提供された少なくとも1つの透過特性及び/又は反射特性を自動更新することを含み得る。最適化された透過特性及び/又は反射特性を提供することは、GUIを含むディスプレイ上に前記特性を表示することを含み得る。これは、特に、ステップ(x)が、少なくとも1つの調整ツールを操作することによって実行される場合、又はコンピュータ可読媒体から少なくとも1つの修正されたデジタル表現D1、及び/又はD2、及び/又はD3-xをインポートすることによって実行される場合、ユーザの対話型ガイダンスを可能にし得る。
【0087】
少なくともステップ(x)及び(xi)をさらに含む提案される方法は、デジタル表現D1、D2及び任意でD3-xを修正して、予め定義された透過及び/又は反射の許容範囲に達するまで、透過特性及び/又は反射特性、特にレーダの透過及び/又は反射における減衰を最適化することを可能にする。修正されたデジタル表現D1、任意にD3-x、特に化学組成は、ステップ(i)で提供されたデジタル表現D1、任意のD3-xについて許容可能な色許容範囲に関してチェックされ得、これにより、ステップ(i)で提供されたデジタル表現D1及び任意にD3-xと同じ視覚的外観を提供するが、予め定義された許容範囲内にある透過特性及び/又は反射特性を有するコーティング材料を選択することを可能にする。これは、選択されたコーティング材料が予め定義された透過及び/又は反射の許容範囲を満たさず、結果として得られる色に視覚的な影響を与えることなく適合させられる必要がある場合に特に有用である。これはさらに、コーティング材料を、許容できない目に見える外観をもたらすことなく、修復プロセス後に形成される多層コーティングで許容できないレーダ強度の減衰をもたらすことなく、欠陥部位を有する多層コーティングを含むトリムパーツを補修するために使用され得るものから選択する必要がある場合に特に有用である。
【0088】
本発明の装置の実施形態:
一態様では、コンピューティング装置は、通信インターフェースを介して処理モジュールに接続された少なくとも1つの測定装置をさらに備えることができる。適切な測定装置は、多角度又は球面形状の色測定装置、分光光度計、デジタルカメラ、及び/又はコーティング材料の特性に関するデータを決定するための装置を含み得る。これにより、それぞれのデータを処理モジュールに直接提供することができ、したがって、ユーザが必要とする入力量を減らすことができる。
【0089】
一態様では、コンピューティング装置は、通信インターフェースを介して処理モジュールに接続された少なくとも1つのデータベースDB1をさらに備えてよく、前記データベースDB1は、コーティング層CLのデジタル表現D1、及び/又はコーティングされた基材のデジタル表現D2、及び/又はコーティング層CLに加えて、基材上に存在する各さらなるコーティング層のデジタル表現D3-x、及び/又は車両識別データを含む。これにより、車両識別に基づいて必要なデータを容易に選択することができ、エラーの発生しやすい手動入力を減らすことができる。車両識別番号がタグからスキャンされる場合、システムは、バーコードリーダー又はQRコードリーダーなどの少なくとも1つのリーダーをさらに含むことができる。
【0090】
一態様では、通信インターフェースは、ディスプレイ、特に、グラフィカルユーザインターフェースを有するディスプレイ、特に、少なくとも1つの調整ツールを含むグラフィカルユーザインターフェースを有するディスプレイを備えることができる。これにより、データ入力中にユーザの対話型ガイダンスが可能になり、また、コーティング層CLの誘電率を示す予測指標値、又はコーティングされた基材の予測透過スペクトル及び/又は反射スペクトルを表示することもできる。
【0091】
一態様では、コンピューティング装置は、通信インターフェースを介して処理モジュールに接続された少なくとも1つのデータベースDB2をさらに備えてよく、前記データベースDB2は、少なくとも1つの透過特性及び/又は反射特性に関連するコーティング層CLのデジタル表現D1、及び/又はコーティングされた基材のデジタル表現D2、及び/又は、コーティング層CLに加えて、基材上に存在する各さらなるコーティング層のデジタル表現D3-xを含む。これは、提案される方法のステップ(x)が、前述のデータを含む少なくとも1つのデータベースにおける検索を実施することによって実施される場合に好ましくあり得る。
【0092】
一態様では、コンピューティング装置は、通信インターフェースを介して処理モジュールに接続された少なくとも1つのデータベースDB3をさらに備えることができ、前記データベースDB3は、コーティング配合及び関連する色値を含む。これは、提案される方法のステップ(x)が、ステップ(i)で提供されるデジタル表現D1及び/又はD3-xから許容可能な色偏差を有するデジタル表現D1m及び/又はD3-xmを取得することによって実施される場合に好ましくあり得る。
【0093】
一態様では、コンピューティング装置は、通信インターフェースを介して処理モジュールに接続された少なくとも1つのデータベースDB4をさらに備えることができ、前記データベースDB4は、データ駆動モデルを含む。これは、データ駆動モデルが厳密モデルである場合に好ましくあり得る。
【0094】
代替的な態様では、処理モジュールは、少なくとも1つの人工知能モジュールを備えてよい。これは、提案された方法のステップ(x)が、ステップ(i)で提供されたデジタル表現D1及び/又はD3-xから許容可能な色偏差を有するデジタル表現D1m及び/又はD3-xmを得ることによって実行される場合に好ましくあり得る。
【0095】
本発明のクライアント装置の実施形態:
本発明のクライアント装置の一態様では、サーバ装置が、前述した本発明の装置に対応する。
【0096】
さらなる実施形態又は態様は、以下の番号付きの項に記載されている:
1. コーティング層CLの特性、又はコーティング層CL及び任意で少なくとも1つのさらなるコーティング層CL-xでコーティングされた基材の透過特性及び/又は反射特性を予測するためのコンピュータ実装方法であって、前記方法は、以下のステップ:
(i) 通信インターフェースを介して、コーティング層CLのデジタル表現D1、任意でコーティングされた基材のデジタル表現D2、及び任意でコーティング層CLに加えて基材上に存在する各さらなるコーティング層CL-xのデジタル表現D3-xをコンピュータプロセッサに提供するステップと;
(ii) 通信インターフェースを介して、
- 過去のコーティング層のデジタル表現Dh、及び
- 前記コーティング層の誘電率を示す過去の指標値;
に基づいてパラメータ化されたデータ駆動モデルを、コンピュータプロセッサに提供するステップと;、
(iii)
- ステップ(ii)で提供されたデータ駆動モデル、及び
- コーティング層CLのデジタル表現D1;
に基づいて、コーティング層CLの誘電率を示す指標値をコンピュータプロセッサで決定するステップと;
(iv)
- ステップ(ii)で提供されたデータ駆動モデル、及び
- さらなるコーティング層CL-xのデジタル表現D3-x;
に基づいて、コーティング層CLに加えて基材上に存在する少なくとも1つのさらなるコーティングCL-x層の誘電率を示す指標値をコンピュータプロセッサで任意で決定するステップと;
(v)
- ステップ(iii)で提供されたコーティング層CLの誘電率を示す指標値、
- 任意でコーティング層CLに加えて基材上に存在するさらなる各コーティング層のデジタル表現D3-x、又は任意でステップ(iv)で誘電率を示す指標値が提供されなかったさらなるコーティング層のデジタル表現D3-xと組み合わせてステップ(iv)で提供された少なくとも1つのさらなりコーティング層CL-xの誘電率を示す指標値、及び
- コーティングされた基材のデジタル表現D2;
に基づいて、コーティングされた基材の少なくとも1つの透過特性及び/又は反射特性をコンピュータプロセッサで任意で決定するステップと;
(vi) 通信インターフェースを介して、コーティング層CLの誘電率を示す決定された指標値、及び/又は、コーティングされた基材の決定された少なくとも1つの透過特性及び/又は反射特性を提供するステップと、
を含む、方法。
【0097】
2. 基材は、22~300GHzの周波、好ましくは22~144GHzの周波数を有する電磁放射に対して透過性である、項1に記載の方法。
【0098】
3. 基材は、ポリカーボネート、ポリカーボネートとポリブチレンテレフタレートの混合物、エラストマー変性ポリプロピレン、ポリプロピレンとエチレン-プロピレン-ジエンゴムの混合物、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体とポリカーボネートの混合物、アクリルエステル-スチレン-アクリロニトリル共重合体、ポリアミド及びその混合物、ポリウレタン、ポリカーボネートとポリエチレンテレフタレートの混合物、ポリブチレンテレフタレート、及びそれらの混合物を含むか、又はそれらからなる、項1又は2に記載の方法。
【0099】
4. コーティング層CLは、顔料コーティング層、好ましくはベースコート層から選択される、先行する項のいずれか1つに記載の方法。
【0100】
5. 基材は、以下の層:任意で少なくとも1つのプライマー層PL、コーティング層CL、特にベースコート層であるコーティング層CL、任意でコーティング層CLとは異なる少なくとも1つのさらなるベースコート層、及び少なくとも1つのクリアコート層CL、を含む多層コーティングで、特に記載の順序でコーティングされる、先行する項のいずれか1つに記載の方法。
【0101】
6. 通信インターフェースは、ディスプレイ、好ましくはグラフィカルユーザインターフェースを有するディスプレイを備える、先行する項のいずれか1つに記載の方法。
【0102】
7. ステップ(i)において、コーティング層CLのデジタル表現D1、及び/又はコーティングされた基材のデジタル表現D2、及び/又は各さらなるコーティング層CL-xのデジタル表現D3-xを提供することは、車両識別データを提供すること、提供された車両識別データに基づいてデジタル表現D1、及び/又はD2、及び/又はD3-xを取得すること、及び前記取得されたデジタル表現D1、及び/又はD2、及び/又はD3-xを提供することを含む、先行する項のいずれか1つに記載の方法。
【0103】
8. デジタル表現D1、及び/又は、D2、及び/又は、D3-xを取得することは、入力された車両識別データに基づいて、前記デジタル表現についてデータベースを検索することとさらに定義される、項7に記載の方法。
【0104】
9. コーティング層CLのデジタル表現D1を提供することは:
- コーティング層CLを調製するために使用されたコーティング材料の化学組成に由来するデータを提供することと、
- 任意で、コーティング層CLを調製するために使用されたコーティング材料の少なくとも1つの物理的特性に関するデータを提供することと、
- 任意で、コーティング層CLの少なくとも1つの物理的特性に関するデータを提供することと、
を含む、先行する項のいずれか1つに記載の方法。
【0105】
10. コーティング材料の化学組成に由来するデータは、コーティング材料中に存在する各顔料、特に効果顔料の種類及び量を含む、項9に記載の方法。
【0106】
11. コーティング材料の化学組成に由来するデータを提供することは、コンピュータ可読媒体、特に少なくとも1つのデータベースから前記コーティング材料の配合をインポートすることを含む、項9又は10に記載の方法。
【0107】
12. コーティング材料の少なくとも1つの物理的特性に関するデータは、前記コーティング材料の固形含有量から選択される、項9から11のいずれか1つに記載の方法。
【0108】
13. コーティング層CLの少なくとも1つの物理的特性に関するデータが、(i)フロップインデックスデータなどの外観データ;(ii)色値;(iii)コーティング層CL内の効果顔料、好ましくはアルミニウム顔料の配向を記述するデータ;(iv)コーティング材料の塗布中に取得されるデータ;及び(v)それらの組み合わせから選択され、好ましくはフロップインデックスデータである、項9から11のいずれか1つに記載の方法。
【0109】
14. コーティングされた基材のデジタル表現D2を提供することが、基材の厚さ、基材の誘電率を示す指標値、コーティング層CLの層、及び任意でコーティング層CLに加えて基材上に存在する各さらなるコーティング層CL-xの層の厚さを提供することを含む、先行する項のいずれか1つに記載の方法。
【0110】
15. コーティング層CLに加えて基材に存在する各さらなるコーティング層CL-xのデジタル表現D3-xを提供するステップは:
- 存在するさらなるコーティング層CL-xの誘電率を示す指標値を提供すること、又は、
- さらなる層CL-xを調製するために使用されたコーティング材料の化学組成に由来するデータを提供すること、及び/又は、さらなる層CL-xを調製するために使用されたコーティング材料の少なくとも1つの物理的特性に関するデータを提供すること、及び/又は、さらなるコーティング層CL-xの少なくとも1つの物理的特性に関するデータを提供すること、
を含む、先行する項のいずれか1つに記載の方法。
【0111】
16. データ駆動モデルは、厳密モデル、経験的モデル、又はそれらの組み合わせであり、好ましくは厳密モデルである、先行する項のいずれか1つに記載の方法。
【0112】
17. データ駆動モデルは、少なくとも1つの記述子Dと誘電率を示す指標値との間の関係、特に線形関係を提供し、前記記述子Dは、コーティング材料の固形分含量に関連して、誘電率を示す指標値に対する、顔料、好ましくは効果顔料の量及び種類の影響を記述し、及び任意で、誘電率を示す指標値に対する、コーティング材料のさらなる成分の影響及び/又はコーティング層CLもしくはさらなるコーティング層CL-xの特性の影響を記述する、先行する項のいずれか1つに記載の方法。
【0113】
18. 記述子Dは、顔料含有量記述子DPIG、及び任意で成分記述子DR、及び/又は特性記述子DPROP、から計算される、項17に記載の方法。
【0114】
19. 顔料含有量記述子D
PIGは、式(I)によって
【数5】
得られ、ここで、
Aは コーティング材料の総質量に基づいて、コーティング材料中に存在する顔料、好ましくはアルミニウム顔料の質量%を示し、
Sは コーティング材料の固形含有量を質量%で表し、
W
PIGは 顔料の重み付け係数を表す、
項18に記載の方法。
【0115】
20. 成分記述子D
Rは、式(II)によって
【数6】
得られ、ここで、
A
Rは コーティング材料の総質量に基づいて、コーティング材料中に存在する顔料を除く各成分の質量%を表し、
nは コーティング材料中に存在する成分の数を表し、
W
Rは 成分の重み付け係数を表す、
項18又は19に記載の方法。
【0116】
21. 特性記述子D
PROPは、式(III)によって
【数7】
得られ、ここで、
Pは コーティング層CLの特性を表し、
nは D
PROPを計算するために使用される特性の数を表し、
W
PROPは 特性の重み係数を表す、
項18から20のいずれか1つに記載の方法。
【0117】
22. 誘電率を示す指標値が、比誘電率εrから選択される、先行する項のいずれか1つに記載の方法。
【0118】
23. コーティングされた基材の少なくとも1つの透過特性及び/又は反射特性は、(i)透過スペクトル、(ii)透過における減衰、好ましくは透過における一方向及び/又は双方向の減衰、(iii)反射スペクトル、(iv)反射における減衰、及び(v)それらの組み合わせから選択される、先行する項のいずれか1つに記載の方法。
【0119】
24. 透過スペクトル及び反射スペクトルはそれぞれ、伝達行列法を用いて計算される、項23に記載の方法。
【0120】
25. 透過スペクトル及び反射スペクトルはそれぞれ、15~300GHzの周波数範囲、好ましくは15~150GHzの周波数範囲、非常に好ましくは15~40GHzの周波数範囲、及び/又は60~90GHzの周波数範囲、及び/又は125~155GHzの周波数範囲で計算される、項23又は24に記載の方法。
【0121】
26. 透過における減衰、好ましくは透過における一方向及び/又は双方向の減衰、ならびに反射における減衰は、それぞれ、24GHzの周波数、及び/又は76.5GHzの周波数、及び/又は137GHzの周波数で計算される、項23から25のいずれか1つに記載の方法。
【0122】
27. 決定されたコーティング層CLの誘電率を示す指標値、及び/又は決定された少なくとも1つの透過特性及び/又は反射特性を提供するステップが、前記決定された指標値又は少なくとも1つの特性をディスプレイ上に表示すること、及び/又は前記決定された指標値又は少なくとも1つの特性をコンピュータ可読媒体に記憶すること、及び/又は前記決定された指標値又は少なくとも1つの特性をコンピュータプロセッサに提供することを含む、先行する項のいずれか1つに記載の方法。
【0123】
28. 以下のステップ:
(vii) ステップ(vi)で提供された少なくとも1つの透過特性及び/又は反射特性が、少なくとも1つの予め定義された透過許容範囲及び/又は反射許容範囲内にあるかどうかを任意で決定するステップと;
(viii) 通信インターフェースを介して、ステップ(vii)で実行された決定の結果を任意で提供するステップと;
(ix) 通信インターフェースを介して、ステップ(vi)で提供された少なくとも1つの透過特性及び/又は反射特性が、予め定義された透過許容範囲及び/又は反射許容範囲の範囲外であるかどうかについて、勧告を任意で提供するステップと;
(x) ステップ(i)で提供されたデジタル表現D1、及び/又はデジタル表現D2、及び/又はデジタル表現D3-xを、予め定義された透過許容範囲及び/又は反射許容範囲に達するまで修正することによって、ステップ(vi)で提供された少なくとも1つの透過特性及び/又は反射特性を最適化するステップと;
(xi) 通信インターフェースを介して、最適化されたデジタル表現D1、及び/又はデジタル表現D2、及び/又はデジタル表現D3-x、ならびに最適化されたコーティングされた基材の少なくとも1つの透過特性及び/又は反射特性を提供するステップと、
をさらに含む、先行する項のいずれか1つに記載の方法。
【0124】
29. ステップ(x)におけるデジタル表現D1及び/又はデジタル表現D2及び/又はデジタル表現D3-xの修正は、グラフィカルユーザインターフェースを有するディスプレイを備えた通信インターフェース上に表示された複数の調整ツールのうちの少なくとも1つの調整ツールを操作することを含み、調整ツールのそれぞれは、ステップ(i)で提供された特定のデジタル表現D1、D2及び任意のD3-xに対応する、項28に記載の方法。
【0125】
30. ステップ(x)におけるデジタル表現D1及び/又はD2及び/又はD3-xを修正することは、ステップ(i)において提供された、デジタル表現D1及び/又はD2及び/又はD3-xとは異なるデジタル表現D1m及び/又はD2m及び/又はD3-xmを提供することと、提供されたデジタル表現D1m及び/又はD2m及び/又はD3-xmに応答して、グラフィカルユーザインターフェースを有するディスプレイを備える通信インターフェース上に表示された調整ツールを任意で自動的に動かすこととを含む、項28又は29に記載の方法。
【0126】
31. ステップ(x)においてデジタル表現D1、及び/又はデジタル表現D2、及び/又はデジタル表現D3-xを修正することは、少なくとも1つの透過特性及び/又は反射特性に関連して、過去のコーティング層のデジタル表現D1h及びD3h-x、及び/又は過去のコーティングされた基材のデジタル表現D2hを含む少なくとも1つのデータベースにおいて検索を行うことを含む、項28に記載の方法。
【0127】
32. ステップ(x)におけるデジタル表現D1及び/又はD3-xを修正することは、ステップ(i)で提供されたデジタル表現D1及び/又はD3-xmからの許容可能な色偏差を有するデジタル表現D1m及び/又はD3-xmを得ることを含む、項28に記載の方法。
【0128】
33. 許容可能な色偏差を有するデジタル表現D1m及び/又はD3-xmを得ることは、提案されたコーティング配合及び関連する提案された色値を決定することと、差分色値を定義するために、ステップ(i)で提供されたデジタル表現D1及び/又はD3-xの色値と提案された色値との間の差を計算することと、ステップ(i)で提供されたデジタル表現D1及び/又はD3-xの色値と差分色値とを人工知能モデルに入力することと、人工知能モデルを利用して提案されたコーティング配合が許容可能であるかどうかを決定することとを含む、項32に記載の方法。
【0129】
34. 提案されたコーティング配合及び関連する提案された色値を決定するステップは、ステップ(i)で提供されたデジタル表現D1及び/又はD3-xの色値に基づいて、提案されたカラーソリューションについてデータベースを検索することとしてさらに定義される、項33に記載の方法。
【0130】
35. 許容性を決定するために人工知能モデルをトレーニングするステップをさらに含む、項33又は34に記載の方法。
【0131】
36. 人工知能モデルをトレーニングするステップは、出力を、提案されたカラーソリューションの既知の許容性と比較するステップを含む、項35に記載の方法。
【0132】
37. 人工知能モデルは、出力からニューラルネットワークであり、出力からニューラルネットワークにフィードバックを提供するステップをさらに含む、項35又は36に記載の方法。
【0133】
38. ニューラルネットワークは入力層と出力層を含み、出力から入力層へフィードバックを提供するステップをさらに含む、項37に記載の方法。
【0134】
39. 通信インターフェースを介して、ステップ(i)で提供されたデジタル表現D1及び/又はD3-xからの許容可能な色偏差を有するデジタル表現D1m及び/又はD3-xmを提供するステップをさらに含む、項33から38のいずれか1つに記載の方法。
【0135】
40. ステップ(xi)でコーティングされた基材の少なくとも1つの最適化された透過特性及び/又は反射特性を提供することは、ステップ(x)における少なくとも1つの透過特性及び/又は反射特性の最適化に応答して、ステップ(vi)で提供された少なくとも1つの透過特性及び/又は反射特性の自動更新を含む、項28から39のいずれか1つに記載の方法。
【0136】
41.
- 通信インターフェースと;
- 少なくとも1つのコンピュータプロセッサを含む処理モジュールと;
- 処理モジュールによって実行されたときに、項1から40のいずれか1つによるコンピュータ実装方法のステップを実行するようにシステムを構成する命令を記憶するメモリと、
を備えるコンピューティング装置。
【0137】
42. 通信インターフェースを介して処理モジュールに接続された少なくとも1つの測定装置をさらに備える、項41に記載のコンピューティング装置。
【0138】
43. 通信インターフェースを介して処理モジュールに接続された少なくとも1つのデータベースDB1をさらに備え、前記データベースDB1は、コーティング層CLのデジタル表現D1、及び/又はコーティングされた基材のデジタル表現D2、及び/又はコーティング層CLに加えて、基材上に存在する各さらなるコーティング層のデジタル表現D3-x、及び/又は車両識別データを含む、項41又は42に記載のコンピューティング装置。
【0139】
44. 通信インターフェースは、ディスプレイ、特に、グラフィカルユーザインターフェースを有するディスプレイ、特に、少なくとも1つの調整ツールを含むグラフィカルユーザインターフェースを有するディスプレイを備える、項41から43のいずれか1つに記載のコンピューティング装置。
【0140】
45. 通信インターフェースを介して処理モジュールに接続された少なくとも1つのデータベースDB2をさらに備え、前記データベースDB2は、少なくとも1つの透過特性及び/又は反射特性に関連するコーティング層CLのデジタル表現D1、及び/又はコーティングされた基材のデジタル表現D2、及び/又は、コーティング層CLに加えて、基材上に存在する各さらなるコーティング層のデジタル表現D3-xを含む、項41から44のいずれか1つに記載のコンピューティング装置。
【0141】
46. 通信インターフェースを介して処理モジュールに接続された少なくとも1つのデータベースDB3をさらに備え、前記データベースDB3は、コーティング配合及び関連する色値を含む、項41から45のいずれか1つに記載のコンピューティング装置。
【0142】
47. 通信インターフェースを介して処理モジュールに接続された少なくとも1つのデータベースDB4をさらに備え、前記データベースDB3は、データ駆動モデルを含む、項41から46のいずれか1つに記載のコンピューティング装置。
【0143】
48. 処理モジュールは、少なくとも1つの人工知能モジュールを備える、項41から47のいずれか1つに記載のコンピューティング装置。
【0144】
49. 非一過性のコンピュータ可読記憶媒体であって、前記コンピュータ可読記憶媒体は、コンピュータによって実行されると、コンピュータに項1から40のいずれか1つによるステップを実行させる命令を含む、非一過性のコンピュータ可読記憶媒体。
【0145】
50.
- 少なくとも1つのコーティング層CLと;
- 前記少なくとも1つのコーティング層CLの誘電率を示す少なくとも1つの指標値であって、前記誘電率を示す指標値が、項1から40のいずれか1つの方法に従って決定される、少なくとも1つの指標値と、
を含むシステム。
【0146】
51. 少なくとも1つの基準に従って、コーティング層CL、又は、少なくとも1つのコーティング層CLと任意の少なくとも1つのさらなるコーティング層CL-xを含むコーティングされた基材をスクリーニングするための、項1から40のいずれか1つに記載の方法の使用。
【0147】
52. コーティング層CL及び少なくとも1つのさらなるコーティング層CL-xでコーティングされた基材であって、前記基材の透過特性及び/又は反射特性が、項1から40のいずれか1つに記載の方法に従って導出される、基材。
【0148】
53. コーティング層CLの少なくとも1つの特性、又はコーティング層CL及び任意で少なくとも1つのさらなるコーティング層CL-xでコーティングされた基材の少なくとも1つの透過特性及び/又は反射特性の予測を開始する要求を生成するための、サーバ装置におけるクライアント装置であって、前記クライアント装置は、前記コーティング層CLのデジタル表現D1、任意で前記コーティングされた基材のデジタル表現D2、任意で前記コーティング層CLに加えて前記基材上に存在する各さらなるコーティング層CL-xのデジタル表現D3-x、及び任意で許容範囲を、サーバ装置に提供するように構成される、クライアント装置。
【0149】
54. 前記サーバ装置は、項41から48のいずれか1つによる装置である、項53に記載のクライアント装置。
【図面の簡単な説明】
【0150】
本発明のこれらの特徴及び他の特徴は、本発明の例示的な実施形態に関する以下の説明においてより十分に明らかにされる。任意の特定の要素又は動作の議論を容易に識別するために、参照番号の最上位桁は、その要素が最初に導入される図番号を指す。説明は、添付図面を参照しながら提示される:
【
図1】コーティング層CL及び任意で少なくとも1つのさらなるコーティング層CL-xでコーティングされている基材の透過特性及び反射特性を予測するための方法のブロック図である。
【
図2】本発明の方法の好ましい実施形態のブロック図である。
【
図3】本発明によるコンピュータ装置を示す図である。
【
図4】提案された方法のクライアントサーバ構成を示す図である。
【
図5】部分的にデータが入力された入力画面の平面図である。
【
図6】調整ツールを示す出力画面の平面図であって、データが入力され、透過スペクトルと反射スペクトル、透過及び反射の減衰を表示する出力画面の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0151】
図面の詳細な説明
以下に記載する詳細な説明は、本主題の様々な態様の説明を意図したものであり、本主題が実施され得る唯一の構成を表すことを意図したものではない。添付の図面は、本明細書に組み込まれ、詳細な説明の一部を構成する。詳細な説明は、本主題の完全な理解を提供するための具体的な詳細を含む。しかしながら、当業者にはこれらの具体的な詳細がなくても本主題を実施できることは明らかであろう。
【0152】
図1は、コーティング層CL及び任意で少なくとも1つのさらなるコーティング層CL-xでコーティングされた基材の透過特性及び反射特性を予測するコンピュータ実装方法の非限定的な実施形態を示す。この例では、コーティング層CLはアルミニウム効果顔料を含むベースコート層であり、基材はクリアコート層をさらに含む。
【0153】
ブロック102では、ルーチン100は、ベースコート層CLのデジタル表現D1、及びコーティングされた基材のデジタル表現D2を、通信インターフェースを介して少なくとも1つのコンピュータプロセッサに提供する。この例では、ベースコート層に加えて存在するクリアコート層のデジタル表現D3-1が、通信インターフェースを介して少なくとも1つのプロセッサに提供されるが、このステップは一般に任意である。この例では、ベースコート層CLのデジタル表現D1を提供することは、以下のデータ:ベースコート層CLを調製するために使用されたコーティング材料中のアルミニウム顔料の量(コーティング材料の総質量に基づく質量パーセント)、ベースコート層CLを調製するために使用されたコーティング材料の固形含有量、及びベースコート層CLのフロップインデックス、を提供することを含む。この例では、コーティングされた基材のデジタル表現D2を提供することは、以下のデータ:標準基材の誘電率εr、基材の厚さ、ベースコート層CLの層の厚さ、クリアコート層CL-1の層の厚さ、を提供することを含む。別の例では、ベースコート層CLと組み合わせて使用された又は使用される基材の誘電率εrを提供する。この例では、クリアコート層CL-1のデジタル表現D3-1を提供することは、標準的なクリアコート層の誘電率εrを提供することを含む。本発明によれば、特定の基材又は特定のクリアコート層の誘電率εrが提供され得る。代替案によれば、クリアコート層のデジタル表現D3-1は、デジタル表現D1ではなく、同様のデータを含むことができる。これは、クリアコート層が、クリアコート層の誘電率εrに影響を及ぼすことが知られている顔料を含む場合に好ましくあり得る。
【0154】
ブロック104では、ルーチン100は、通信インターフェースを介して少なくとも1つのコンピュータプロセッサに、過去のベースコート層のデジタル表現D
h、及び前記ベースコート層の誘電率の過去の指標値εrでパラメータ化されたデータ駆動モデルを提供する。この例では、過去のベースコート層のデジタル表現D
hは、配合、例えば、過去のベースコート層を調製するために使用されたコーティング材料の成分及び成分量、固形含有量及び固形分密度、ならびに過去のベースコート層のフロップインデックス、膜の厚さ及び導電率を含む。この例では、データ駆動モデルは、過去のベースコート層のデジタル表現D
hと、それぞれの誘電率εrとの比較から得られる厳密モデルであり、少なくとも1つの記述子Dとベースコート層の誘電率εrとの間の線形関係を提供する。記述子Dは、この例では、式(I)に従って、顔料含有量記述子D
PIGから計算され、
【数8】
ここで
Aは コーティング材料の総質量に基づく、コーティング材料中に存在するアルミニウム顔料の質量%を示し、
Sは コーティング材料の固形含有量を質量%で表し、そして
W
PIGは 顔料の質量係数を表す。
【0155】
ブロック106では、ルーチン100は、ブロック104で提供されたデータ駆動モデル及びブロック102で提供されたベースコート層CLのデジタル表現D1に基づいて、ベースコート層CLの誘電率εrを少なくとも1つのコンピュータプロセッサで決定する。この目的のために、記述子Dは、前述したように、ベースコート層CLのデジタル表現D1から決定され、ベースコート層CLの誘電率εrを得るためにデータ駆動モデルで使用される。
【0156】
ブロック108では、ルーチン100は、少なくとも1つのコンピュータプロセッサを用いて、ブロック106において決定されたベースコート層CLの誘電率εr、デジタル表現D3-1を介して提供されるクリアコート層CL-1の誘電率εrならびに標準基材の誘電率εr、基材の厚さ、ベースコート層CLの層の厚さ、及びコーティングされた基材のデジタル表現D2を介して提供されるクリアコート層CL-1の層の厚さに基づいて、透過スペクトル及び反射スペクトル、ならびにコーティングされた基材の透過及び反射における減衰を決定する。
【0157】
ブロック110では、ルーチン100は、通信インターフェースを介して、ブロック108で決定された透過及び反射スペクトル、ならびに透過及び反射の減衰を提供する。
【0158】
図2は、コーティング層CL及び任意で少なくとも1つのさらなるコーティング層CL-xでコーティングされた基材の透過特性及び反射特性を予測するコンピュータ実装方法のさらなる非限定的な実施形態を示す。この実施形態では、ブロック202で提供された少なくとも1つのデジタル表現は、予め定義された透過及び反射の許容範囲が満たされるまで修正される。この例では、コーティング層CLは、アルミニウム効果顔料を含むベースコート層である。ブロック202から210で実行されるステップは、
図1に関連して説明したブロック102から110で実行されるステップに対応する。
【0159】
ブロック202では、ルーチン200は、通信インターフェースを介して、少なくとも1つのコンピュータプロセッサに、
図1のブロック102に関連して説明したように、ベースコート層CLのデジタル表現D
1、コーティングされた基材のデジタル表現D
2、及びベースコート層に加えて存在するクリアコート層のデジタル表現D
3-1を提供する。
【0160】
ブロック204では、ルーチン200は、
図1のブロック104に関連して説明したように、通信インターフェースを介して少なくとも1つのコンピュータプロセッサに過去のベースコート層のデジタル表現D
h及び前記ベースコート層の誘電率εrの過去の指標値でパラメータ化されたデータ駆動モデルを提供する。
【0161】
ブロック206では、ルーチン200は、少なくとも1つのコンピュータプロセッサで、
図1のブロック106に関連して説明したように、ブロック204で提供されたデータ駆動モデル及びブロック202で提供されたベースコート層CLのデジタル表現D
1に基づいて、ベースコート層CLの誘電率εrを決定する。
【0162】
ブロック208では、ルーチン200は、少なくとも1つのコンピュータプロセッサで、ブロック206で決定されたベースコート層CLの誘電率εr、デジタル表現D3-1を介して提供されるクリアコート層CL-1の誘電率εr、ならびに標準基材の誘電率εr、基材の厚さ、ベースコート層CLの層の厚さ、及びコーティングされた基材のデジタル表現D2を介して提供されるクリアコート層CL-1の層の厚さに基づいて、透過スペクトル及び反射スペクトル、ならびにコーティングされた基材の透過及び反射における減衰を決定する。
【0163】
ブロック210では、ルーチン200は、通信インターフェースを介して、ブロック208で決定された透過スペクトル及び反射スペクトル、ならびに透過及び反射における減衰を提供する。
【0164】
ブロック212では、ルーチン200は、ブロック210で提供された透過及び反射における減衰が、予め定義された透過及び反射における減衰の許容範囲内にあるかどうかを決定する。この例では、これは、ユーザによって提供された透過及び反射における減衰を予め定義された許容範囲と比較することによって決定される。予め定義された許容範囲は、例えば、-2dBの透過における最大減衰であり得る。別の例では、前記比較は、少なくとも1つのコンピュータプロセッサ上でルーチン200によって自動的に実行されることができる。この場合、予め定義された許容範囲は、データベースなどのコンピュータ可読媒体に記憶され得、及び、比較を実行するためにコンピュータプロセッサによってアクセスされ得る。
【0165】
ブロック214では、ルーチン200は、予め定義された透過及び反射における減衰の許容範囲に達するまで、ブロック202で提供されたデジタル表現D1、及び/又はデジタル表現D2、及び/又はデジタル表現D3-1を修正することによって、ブロック210で提供された透過及び反射における減衰を最適化する。この例では、コーティングされた基材のデジタル表現D2は、基材の厚さ、及びベースコート層CLとクリアコート層CL-1の層の厚さのための異なるレギュレータを含む仮想調整ツールを操作することによって修正される。この目的のために、基材の現在の厚さを表示するレギュレータは、ユーザがレギュレータをクリックして該レギュレータを、透過における減衰がブロック212で与えられた許容範囲又は閾値を下回るまで動かすことによって、動かされる。別の例では、デジタル表現D1及び/又はD3-xを修正させることができる。これは、仮想調整ツールを操作することによって、データベースを検索することによって、又はブロック202で提供されたデジタル表現D1及び/又はD3-xから許容可能な色偏差を有する修正されたデジタル表現D1m及び/又はD3-xmを取得することによって実行されてよい。
【0166】
ブロック216では、ルーチン200は、通信インターフェースを介して、最適化されたデジタル表現D1m及び/又はデジタル表現D2m及び/又はデジタル表現D3-xm、及び最適化された少なくとも1つの透過特性及び/又は反射特性を提供する。通信インターフェースは、GUIを含むディスプレイを備えてよい。この例では、最適化された基材の厚さ、及び透過及び反射における最適化された減衰は、ディスプレイを備える通信インターフェースを介してユーザに提供される。別の実施例では、最適化されたデジタル表現D1m及び/又はD3-xmと、最適化された少なくとも1つの透過特性及び/又は反射特性が、通信インターフェースを介して提供される。
【0167】
図3は、コンピューティング装置300の一例を示し、該コンピューティング装置300は:
コンピュータプロセッサ306と、通信インターフェース308、310、312と、プロセッサによって実行されると、以下のステップ
- 通信インターフェースを介してコンピュータプロセッサに、ベースコート層CLのデジタル表現D
1、コーティングされた基材のデジタル表現D
2、及びベースコート層CLに加えて基材上に存在するさらなるクリアコート層CL-1のデジタル表現D
3-1を提供するステップと;
- 通信インターフェースを介してコンピュータプロセッサに、過去のコーティング層のデジタル表現D
hと、前記過去のコーティング層の誘電率εrを示す過去の指標値に基づいてパラメータ化されたデータ駆動モデルを提供するステップと;
- コンピュータプロセッサで、ステップで提供されたデータ駆動モデルと、ベースコート層CLのデジタル表現D
1とに基づいて、ベースコート層CLの誘電率εrを決定するステップと;
- コンピュータプロセッサで、ベースコート層CLの誘電率εr、クリアコート層CL-1の標準誘電率εr、及びコーティングされた基材のデジタル表現D
2に基づいて、コーティングされた基材の透過特性及び反射特性を決定するステップと;
- 通信インターフェースを介して、コーティングされた基材の決定された透過特性及び反射特性を提供するステップと、
を実行するように装置を構成する命令を記憶するメモリ316と、を備える。
【0168】
この例では、コンピュータ装置はさらに入力/出力装置304を備える。この例では、データ駆動モデルはデータベース302に保存されている。データベース302は、通信インターフェース308を介してコンピュータプロセッサに接続されている。この例では、入力/出力装置304は、コーティング層CL及びCL-1のデジタル表現D1及びD3-1を、通信インターフェース310を介してコンピュータプロセッサ306に提供するために使用される。この例では、デジタル表現D1は、ベースコート層CLを調製するために使用されたコーティング材料の化学組成、コーティング材料の固形分、及びベースコート層CLのフロップインデックスの形で提供される。この例では、デジタル表現D2は、標準基材のεr、基材の厚さ、ベースコート層CLの層の厚さ、及びクリアコート層CL-1の層の厚さの形で提供される。データ駆動モデルは、通信インターフェース308を介してコンピュータプロセッサ306に提供される。コンピュータプロセッサ306により、透過特性及び反射特性が決定される。この例では、透過特性と反射特性は通信インターフェース312を介して入力/出力装置304に提供される。別の例では、透過特性と反射特性は、通信インターフェース308を介してデータベース302に提供され得る。
【0169】
図4に目を向けると、コーティング層CL及び任意で少なくとも1つのさらなるコーティング層CL-xでコーティングされた基材の少なくとも1つの透過特性及び/又は反射特性を予測するためのインターネットベースのシステムが示されている。システム400は、インターネットなどのネットワーク404を介して、1つ以上のクライアント406.1~406.nによってアクセス可能なサーバ402を備える。好ましくは、サーバはHTTPサーバであり得、従来のインターネットウェブベースの技術を介してアクセスされる。クライアント406は、ユーザによってアクセス可能なコンピュータ端末であり、データ入力キオスクのようなカスタマイズされた装置であってもよく、又はパーソナルコンピュータのような汎用装置であってよい。プリンタ408をクライアント端末406に接続することができる。インターネットベースのシステムは、サービスが顧客に提供される場合、又は大規模な企業で提供される場合、特に有用である。クライアントは、デジタル表現D
1、D
2、任意でD
3-xをサーバのコンピュータプロセッサに提供するために使用されることができる。
【0170】
図5は、方法の開始時、例えば
図1及び
図2のルーチン100又は200の開始時に、ユーザに表示されるグラフィカルユーザインターフェース500を示す。このグラフィカルユーザインターフェース500は、ディスプレイを備える携帯型及び固定型装置などの任意の装置上に表示されることができる。この例では、GUIはコンピュータのディスプレイ上に表示される。グラフィカルユーザインターフェース500は、コーティングされた基材の透過特性及び/又は反射特性を予測するために使用され得る様々なデータを入力するための多数の調整ツール502、504及びボタン506、508と、コーティングされた基材の予測された透過特性及び/又は反射特性を表示するための多数のエリア510、512、518とを含む。
【0171】
この例では、コーティングされた基材及びコーティング層CLに関するデータを提供するために、コンピュータのマウス又は指(ディスプレイがタッチスクリーンを備える場合)によって動かすことができる様々なレギュレータをそれぞれ有する様々な調整ツール502、504がGUI500上に表示される。調整ツール502、504の使用中のユーザガイダンスを増やすために、レギュレータの実際の位置に対応する値がそれぞれレギュレータ上に表示され、ユーザによるレギュレータの移動中に自動的に更新される。調整ツール502、504に表示される値はプレースホルダであり、必要に応じてユーザによって調整される必要がある。別の実施例では、ファイル又はデータ入力フィールドからデータをインポートするためのボタンが、調整ツール502の代わりに、又は調整ツール502と組み合わせて使用されることができる。この例では、デジタル表現D2の一部は、調整ツール502を使用することによって提供される。この例では、標準基材の固定誘電率εrが使用され、調整ツール502を介して提供されることはできない。別の実施例では、誘電率εrは、ユーザが調整ツール502を使用して、それぞれのレギュレータを修正することにより、入力されることができる。この例では、調整ツール504を使用して、コーティング材料の配合に関するデータ及び結果として得られるコーティング層CLの特性に関するデータを提供することができる。この例では、コーティング層CLはベースコート層である。別の実施例では、GUI500は、504.1~504.nのような複数の調整ツール504を備え、コーティング材料の配合に関するデータ及び得られるコーティング層CL-xの特性に関するデータを提供できるようにすることができる。調整ツール504.1~504.nで提供されるデータは、デジタル表現D3-xとして使用されることができる。これは、例えば、2つの異なるベースコート層が使用され、各ベースコート層の誘電率εrが提供されたデータから決定される必要がある場合に好ましい。
【0172】
この例では、エリア506は3つの異なるボタンを備え、ユーザはそれぞれのボタンを押すことによって、調整ツール504のデータの異なる入力モード間を切り替えることができる。「レシピモード」(すなわち、ボタン「レシピ」がアクティブになっているとき)において、ユーザは以下のアクションを実行することができる:
- エリア508のボタン「ファイルを選択」をクリックすることによって、コーティング層CLの調製に使用されるコーティング材料の配合と、さらなる特性データ(すなわち、コーティング材料の固形分とコーティング層CLのフロップインデックス)をインポートすることにより、アルミニウム含有量、固形分及びフロップインデックスの値を自動的に設定すること。レシピのインポート後、レギュレータはインポートされたデータの値に自動的に移動する。レギュレータ「Al[%]」はレシピのインポート後に固定され(すなわち、このレギュレータを使用して量を調整することはできない)、一方、固形分とフロップインデックスのレギュレータは、レシピのインポート後も必要に応じて移動できる、又は
- 前述のようにデータインポートによって、アルミニウム含有量又は固形含有量又はフロップインデックスについては自動的に値が設定され、それぞれのレギュレータを動かすことによって残りの値は調整されること。
【0173】
コーティング層CLの誘電率εrは、入力されたデータに基づいて「レシピモード」で決定され、レギュレータ「eps計算」は、決定された値を表示するために自動的に移動する。
【0174】
「誘電率モード」(すなわち、エリア506のボタン「誘電率」がアクティブになっている場合)、ユーザは、エリア504のレギュレータ「eps計算」を動かすことによってコーティング層CLの所望の誘電率εrを入力することができるだけであり、このエリアの他のレギュレータはブロックされ、透過特性及び反射特性は、単に入力された誘電率に基づいて予測される。
【0175】
「フリーモード」(すなわち、エリア506のボタン「フリー」がアクティブになっている場合)では、ユーザはエリア504に表示されているすべての調整ツールを動かしてそれぞれの値を入力することができる。レシピがインポートされていない場合、たとえ誘電率が入力されたとしても、調整ツール504に示されているアルミニウム含有量、固形含有量、及びフロップインデックスの値のみが、透過特性及び反射特性を予測するために使用される。ユーザは、前述のようにレシピをインポートすることもできるが、「フリーモード」では、レシピのインポート後も、ユーザによってアルミニウム含有量を調整することができる。
【0176】
この例では、エリア508と510は、60~90GHzの周波数範囲におけるコーティングされた基材の透過スペクトル及び反射スペクトルを含む。エリア510及び512に表示されるデータはプレースホルダであり、ユーザがエリア502及び/又は504にデータを入力し始めると自動的に調整される。エリア514において、ユーザは、エリア510及び512に表示されるグラフが固定された周波数及び透過範囲(ボタン「固定スケール」)を有するか、又は表示されるグラフがユーザの快適性を高めるために自動的にスケーリングされる透過範囲(ボタン「自動スケール」)を有するかを選択することができる。この例では、ボタン「固定スケール」がアクティブになっているため、エリア510及び512に表示されるグラフは、固定された周波数及び透過範囲を有する。
【0177】
この例では、エリア518は、76.5GHzの周波数における透過及び反射の減衰と、エリア510及び512の透過及び反射スペクトルから得られるレーダ反射を含む。このエリアに表示されるデータはプレースホルダデータであり、ユーザがエリア502及び/又は504へのデータ入力を開始すると自動的に更新される。エリア516では、ユーザは、透過と反射における減衰及びレーダ反射を表示するか(タブ「シンプル」)、又は、記述子Dの計算に値を使用するか、最高量で存在する効果顔料の種類などのさらなる情報を表示するか(タブ「拡張」)を選択することができる。この例では、タブ「シンプル」がアクティブになっている。
【0178】
図6は、レシピがアップロードされた後にユーザに表示されるグラフィカルユーザインターフェース600を示す。このグラフィカルユーザインターフェース600は、ディスプレイを有する任意の適切な携帯型及び固定型装置上に表示され得る。グラフィカルユーザインターフェース600は、提供されたデータを表示する多数の調整ツール602、604、及び提供されたデータに基づいてコーティングされた基材の予測された透過特性及び/又は反射特性を表示する多数のエリア610、612、618を含む。
【0179】
この例では、基材、ベースコート層、及びクリアコート層の厚さは、調整ツール602のレギュレータをそれぞれの位置に移動させることによって調整される。
【0180】
この例では、エリア608のボタン「ファイルを選択」をクリックすることによってレシピがアップロードされ、調整ツール604のレギュレータ「Al[%]」が、インポートされたレシピに記載された量に移動されている。この量に基づいて、ベースコート層CLの誘電率εrが決定され、調整ツール604のレギュレータ「eps計算」が自動的に移動され、15.55の決定された値が表示される。
【0181】
この例では、
図5のプレースホルダ透過スペクトル及び反射スペクトルが、調整ツール602及び604を介して入力されたデータに基づいて更新され、それぞれエリア610及び612に表示される。さらに、プレースホルダ「76.5GHzにおける透過及び反射の減衰」ならびに「76.5GHzにおけるレーダ反射」も更新され、更新された値がエリア618に表示される。
【国際調査報告】