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特表2024-516504miRNA、組成物およびその使用方法
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  • 特表-miRNA、組成物およびその使用方法 図1
  • 特表-miRNA、組成物およびその使用方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-16
(54)【発明の名称】miRNA、組成物およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/68 20180101AFI20240409BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20240409BHJP
   C12Q 1/6837 20180101ALI20240409BHJP
   C12Q 1/6806 20180101ALI20240409BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20240409BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20240409BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20240409BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240409BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240409BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240409BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
C12Q1/68 ZNA
C12Q1/686 Z
C12Q1/6837 Z
C12Q1/6806 Z
C12M1/00 A
C12N15/09 200
C12N15/09 Z
C12N15/113 Z
A61K45/00
A61P29/00
A61P37/02
G01N33/50 P
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557766
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(85)【翻訳文提出日】2023-09-20
(86)【国際出願番号】 JP2022013311
(87)【国際公開番号】W WO2022202854
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】63/165,508
(32)【優先日】2021-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.MySQL
3.PYTHON
(71)【出願人】
【識別番号】519035643
【氏名又は名称】Craif株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174252
【弁理士】
【氏名又は名称】赤津 豪
(72)【発明者】
【氏名】山口 裕樹
【テーマコード(参考)】
2G045
4B029
4B063
4C084
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CA25
2G045CA26
2G045CB03
2G045CB07
2G045CB30
2G045FB02
4B029AA23
4B029BB11
4B029FA05
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR55
4B063QR62
4B063QX01
4C084AA17
4C084NA14
4C084ZB071
4C084ZB111
4C084ZB151
(57)【要約】
患者を全身性ループスエリテマトーデス(SLE)と相関するマーカーを有するものとして同定するための方法は、SLEを有すると疑われる患者から体液サンプルを得るステップと、得られた体液サンプル中のmiRNA発現を分析するステップと、患者サンプルにおいて健常個体から得られた体液サンプルと比較して配列番号1~160および243~402より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の増加、ならびに/または配列番号161~242および403~484より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の減少が検出される場合にはSLEと相関するマーカーを有するものとして、または健常個体から得られた体液サンプルと比較して配列番号1~160および243~402より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の増加、ならびに/または配列番号161~242および403~484より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の減少が検出できない場合にはSLEと相関するマーカーを有しないものとして、患者を同定するステップとを含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
miRNAを検出するための方法であって、
(a)サンプルを得るステップと、
(b)前記サンプルから細胞外小胞を捕捉または単離するステップと、
(c)前記細胞外小胞を破砕するステップと、
(d)前記サンプル中に存在する前記miRNAを検出するステップと
を備える方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記miRNAは、配列番号1~484またはそれらの組み合わせからなる群より選択されるリボヌクレオチド配列である、方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、前記細胞外小胞の前記単離は、前記細胞外小胞をナノワイヤ上に捕捉するステップを含む、方法。
【請求項4】
患者を全身性ループスエリテマトーデス(SLE)と相関するマーカーを有するものとして同定するための方法であって、
(a)SLEを有すると疑われる患者からサンプルを得るステップと、
(b)前記得られたサンプル中のmiRNA発現を分析するステップと、
(c)
(i)前記患者サンプルにおいて健常個体から得られた体液サンプルと比較して配列番号1~160および243~402より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の増加、ならびに/もしくは配列番号161~242および403~484より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の減少が検出される場合にはSLEと相関する前記マーカーを有するものとして、または
(ii)健常個体から得られた体液サンプルと比較して配列番号1~160および243~402より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の増加、ならびに/もしくは配列番号161~242および403~484より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の減少が検出できない場合にはSLEと相関する前記マーカーを有しないものとして、
前記患者を同定するステップと
を備える方法。
【請求項5】
患者をSLE重症度と相関するマーカーを有するものとして同定するための方法であって、
(a)SLEを有すると疑われる患者からサンプルを得るステップと、
(b)前記得られた体液サンプル中のmiRNA発現を分析するステップと、
(c)
(i)前記患者サンプルにおいて健常個体から得られた体液サンプルと比較して配列番号161~242および403~484より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の減少が検出される場合には中等度SLEと相関する前記マーカーを有するものとして、または
(ii)健常個体から得られた体液サンプルと比較して配列番号161~242および403~484より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の減少が検出できない場合には中等度SLEと相関する前記マーカーを有しないものとして、
前記患者を同定するステップと
を備える方法。
【請求項6】
患者をSLEの併存症と相関するマーカーを有するものとして同定するための方法であって、
(a)SLEを有すると疑われる患者からサンプルを得るステップと、
(b)前記得られたサンプル中のmiRNA発現を分析するステップと、
(c)
(i)前記患者サンプルにおいて健常個体から得られた体液サンプルと比較して配列番号1~160および243~402より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の増加、ならびに/もしくは配列番号161~242および403~484より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の減少が検出される場合にはSLEの併存症と相関する前記マーカーを有するものとして、または
(ii)健常個体から得られた体液サンプルと比較して配列番号1~160および243~402より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の増加、ならびに/もしくは配列番号161~242および403~484より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の減少が検出できない場合にはSLEの併存症と相関する前記マーカーを有しないものとして、
前記患者を同定するステップと
を備える方法。
【請求項7】
請求項4~6のいずれか1項に記載の方法であって、前記分析するステップは、
(a)前記サンプルをナノワイヤを含む流体デバイスに導入するステップと、
(b)前記サンプル中の細胞外小胞を前記ナノワイヤ上に捕捉するステップと、
(c)前記捕捉された細胞外小胞を破砕するステップと、
(d)前記破砕された細胞外小胞から少なくとも1つのmiRNAを抽出するステップと、
(e)前記抽出されたmiRNAを検出するステップと、
(f)前記検出されたmiRNAを分析するステップと
を含む前記サンプルからmiRNAプロファイルを作成するステップを備える、方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の方法であって、前記サンプルは体液である、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、前記体液は、血液、尿、血漿、唾液、腹水、気管支肺胞洗浄液、脳脊髄液、またはそれらの組み合わせである、方法。
【請求項10】
請求項4~7のいずれか1項に記載の方法であって、前記方法は、前記サンプルから前記細胞外小胞を単離するステップをさらに含む、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、前記細胞外小胞は、分画超遠心分離、密度勾配遠心分離、免疫親和性、限外ろ過、ポリマーベース沈殿、サイズ排除クロマトグラフィ、またはこれらの組み合わせにより単離される、方法。
【請求項12】
請求項4~11のいずれか1項に記載の方法であって、前記患者サンプルにおいて健常個体から得られたサンプルと比較して配列番号1~160および243~402より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の増加、ならびに/または配列番号161~242および403~484より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の減少が検出されることは、前記患者が全身性ループスエリテマトーデス(SLE)を有することを示す、方法。
【請求項13】
請求項4~12のいずれか1項に記載の方法であって、健常個体から得られた体液サンプルと比較して配列番号1~160および243~402より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の増加、ならびに/または配列番号161~242および403~484より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の減少が検出できない場合にはSLEと相関する前記マーカーを有しないものとして、方法。
【請求項14】
請求項4~13のいずれか1項に記載の方法であって、前記ナノワイヤは、ZnO、SiO、LiO、MgO、Al、CaO、TiO、Mn、Fe、CoO、NiO、CuO、Ga、SrO、ln、SnO、Sm、EuO、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの正に帯電した表面を備える、方法。
【請求項15】
請求項4~14のいずれか1項に記載の方法であって、前記ナノワイヤは、多孔性、磁性、または多孔性および磁性の両方である、方法。
【請求項16】
請求項4~15のいずれか1項に記載の方法であって、前記ナノワイヤの長さは、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、または500ナノメートル(nm)でありうる、方法。
【請求項17】
請求項4~16のいずれか1項に記載の方法であって、前記ナノワイヤの長さは、約1~500nm、100~500nm、200~400nm、250~500nm、50~250nm、10~100nm、2~200nm、300~500nm、400~500nm、150~450nm、250~300nm、10~50nm、100~350nm、350~500nm、または200~300nmの間である、方法。
【請求項18】
請求項4~17のいずれか1項に記載の方法であって、前記ナノワイヤの断面は、実質的に円形、楕円形、正多角形、多角形、中空体である、方法。
【請求項19】
請求項4~18のいずれか1項に記載の方法であって、前記ナノワイヤの外形は、実質的に円筒形、楕円形または多角形でありうる、方法。
【請求項20】
請求項4~19のいずれか1項に記載の方法であって、前記ナノワイヤは、中空もしくは中空体であり、または実質的に材料が詰まった構造体であってもよい、方法。
【請求項21】
請求項4~20のいずれか1項に記載の方法であって、前記ナノワイヤは1つの材料または複数の材料で作製される、方法。
【請求項22】
請求項4~21のいずれか1項に記載の方法であって、前記ナノワイヤはその表面が被覆材料で被覆される、方法。
【請求項23】
請求項4~22のいずれか1項に記載の方法であって、前記細胞外小胞は、細胞溶解バッファーによって破砕される、方法。
【請求項24】
請求項4~23のいずれか1項に記載の方法であって、前記miRNAを抽出するステップは、in situで行われる、方法。
【請求項25】
請求項4~24のいずれか1項に記載の方法であって、前記細胞外小胞は、エクソソーム、マイクロベシクル、アポトーシス小体、またはそれらの組み合わせである、方法。
【請求項26】
請求項4~25のいずれか1項に記載の方法であって、前記サンプルは、
(a)(b)と流体連通するサンプル入力部
(b)(c)または(d)と流体連通する分離手段、任意に膜、フィルタ、少なくとも1つのナノワイヤ、またはそれらの組み合わせ、
(c)廃棄物チャンバまたは
(d)廃棄物出力部
を含むデバイス、任意にマイクロ流体デバイスに導入される、方法。
【請求項27】
請求項4~26のいずれか1項に記載の方法であって、前記サンプルは、複数のウェルを含む固体基材であって、各ウェルは少なくとも1つのナノワイヤを含む、固体基材を含むデバイスに導入される、方法。
【請求項28】
請求項4~27のいずれか1項に記載の方法であって、前記サンプルは、任意に互いに流体連通する複数のチャンバを含む固体基材であって、各チャンバは少なくとも1つのナノワイヤを含む、固体基材を備えるデバイスに導入される、方法。
【請求項29】
請求項4~28のいずれか1項に記載の方法であって、前記デバイスは、カバー、任意に取り外し可能なカバーを備える、方法。
【請求項30】
請求項4~29のいずれか1項に記載の方法であって、前記SLEは、がん、がんのより高いリスク、心血管疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、リウマチ性疾患、神経疾患、甲状腺機能低下症、精神病、貧血、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される併存症に関連する、方法。
【請求項31】
請求項30に記載の方法であって、配列番号1~160および243~402より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の増加、ならびに/または配列番号161~242および403~484より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の減少がある場合には、前記併存症は、がん、がんのより高いリスク、心血管疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、リウマチ性疾患、神経疾患、甲状腺機能低下症、精神病、貧血、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、方法。
【請求項32】
SLEを治療する方法であって、
請求項4~31のいずれか1項に記載の患者をSLEと相関するマーカーを有するものとして同定する前記ステップと、
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、免疫抑制剤、および抗BLyS抗体からなる群より選択される有効量の化合物を患者に投与するステップとを備える、
方法。
【請求項33】
配列番号1~484またはそれらの組み合わせからなる群より選択されるリボヌクレオチド配列を備える、単離されたmiRNA配列。
【請求項34】
配列番号1~484のリボヌクレオチド配列またはそれらの組み合わせを備える単離されたmiRNA配列を含む組成物。
【請求項35】
配列番号1~484またはそれらの組み合わせからなる群より選択されるmiRNAリボヌクレオチド配列にハイブリダイズする複数のヌクレオチドを含むアレイ。
【請求項36】
請求項7に記載の方法であって、前記検出するステップは、定量ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、miRNAマイクロアレイ、次世代RNAシーケンシング(NGS)、および/またはマルチプレックスmiRNAプロファイリングによって行われる、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、全身性ループスエリテマトーデス(SLE:systemic lupus erythematosus)を診断するための方法およびSLEに関連するmiRNAを検出するための系を提供する。
【背景技術】
【0002】
全身性ループスエリテマトーデス(SLE)は、複数の臓器が関与し、多様な臨床兆候をもつ慢性自己免疫障害である。これはリウマチ性疾患の中で最も死亡率が高いものの1つであり、ループスの最も一般的な形態である。SLEの臨床的特徴は、皮膚および関節の軽度の病変から、感染症ならびに腎臓、心血管および中枢神経系の問題など、より後のステージでの重度の衰弱性合併症までにわたり、これらがかなりの罹患率および死亡率の原因となる。自己免疫疾患であるSLEは、自己抗原に対する抗体の存在により特徴付けられる。組織における自己抗体および免疫複合体の沈着が、身体の様々な臓器系の炎症性損傷をもたらす。CDCウェブサイト「全身性ループスエリテマトーデス(SLE)(Systemic lupus erythematosus(SLE))」(2020年)。SLEを診断するための迅速かつ効率的な方法が当技術分野において必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
一態様では、本開示は、
(a)SLEを有すると疑われる患者から体液サンプルを得るステップと、
(b)得られた体液サンプル中のmiRNA発現を分析するステップと、
(c)(i)患者サンプルにおいて健常個体から得られた体液サンプルと比較して配列番号1~160および243~402より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の増加、ならびに/もしくは配列番号161~242および403~484より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の減少が検出される場合にはSLEと相関するマーカーを有するものとして、または(ii)健常個体から得られた体液サンプルと比較して配列番号1~160および243~402より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の増加、ならびに/もしくは配列番号161~242および403~484より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の減少が検出できない場合にはSLEと相関するマーカーを有しないものとして、患者を同定するステップとを含む、患者を全身性ループスエリテマトーデス(SLE)と相関するマーカーを有するものとして同定するための方法に関する。
【0004】
別の態様では、分析するステップは、
(a)得られた体液サンプルを、ナノワイヤを含む流体デバイスに導入するステップと、
(b)体液サンプル中の細胞外小胞をナノワイヤ上に捕捉するステップと、
(c)捕捉された細胞外小胞を破砕するステップと、
(d)破砕された細胞外小胞からmiRNAを抽出するステップと、
(e)抽出されたmiRNAをmiRNAアレイにハイブリダイズさせるステップと、
(f)アレイへのmiRNAハイブリダイゼーションを測定するステップとを含む、体液サンプルからmiRNAプロファイルを作成するステップを含んでいてもよい。
【0005】
別の態様では、本開示の方法は、SLEを有すると疑われる患者から得られた体液サンプル中のmiRNA発現を、健常個体から得られた体液サンプル中のmiRNA発現と比較するステップを更に含んでいてもよい。
【0006】
別の態様では、体液は、血液、尿、唾液、腹水、気管支肺胞洗浄液、血漿、脳脊髄液、またはそれらの組み合わせであってもよい。
【0007】
別の態様では、ナノワイヤは、ZnO、SiO、LiO、MgO、Al、CaO、TiO、Mn、Fe、CoO、NiO、CuO、Ga、SrO、ln、SnO、Sm、EuO、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの正に帯電した表面であってもよい。
【0008】
別の態様では、ナノワイヤは、多孔性および/または磁性であってもよい。
【0009】
別の態様では、捕捉された細胞外小胞は、細胞溶解バッファーの使用によって破砕されてもよい。細胞外小胞は、アルカリ/デタージェントの前処理、約1~10日、任意に約7日間の、約-25℃での保存、またはそれらの組み合わせによって破砕されてもよい。
【0010】
別の態様では、miRNAを抽出するステップを、in situで行ってもよい。
【0011】
一態様では、本開示は、
a)SLEを有すると疑われる患者から体液サンプルを得るステップと、
b)得られた体液サンプル中のmiRNA発現を分析するステップと、
c)i)患者サンプルにおいて健常個体から得られた体液サンプルと比較して配列番号161~242および403~484より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の減少が検出される場合には中等度SLEと相関するマーカーを有するものとして、または
ii)健常個体から得られた体液サンプルと比較して配列番号161~242および403~484より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の減少が検出できない場合には中等度SLEと相関するマーカーを有しないものとして、患者を同定するステップとを含む、患者をSLE重症度と相関するマーカーを有するものとして同定するための方法に関する。
【0012】
一態様では、本開示は、
a)SLEを有すると疑われる患者から体液サンプルを得るステップと、
b)得られた体液サンプル中のmiRNA発現を分析するステップと、
b)i)患者サンプルにおいて健常個体から得られた体液サンプルと比較して配列番号1~160および243~402より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の増加、ならびに/もしくは配列番号161~242および403~484より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の減少が検出される場合にはSLEの併存症と相関するマーカーを有するものとして、またはii)健常個体から得られた体液サンプルと比較して配列番号1~160および243~402より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の増加、ならびに/もしくは配列番号161~242および403~484より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の減少が検出できない場合にはSLEの併存症と相関するマーカーを有しないものとして、患者を同定するステップとを含む、患者をSLEの併存症と相関するマーカーを有するものとして同定するための方法に関する。
【0013】
別の態様では、配列番号1~160および243~402より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の増加、ならびに/または配列番号161~242および403~484より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の減少がある場合には、併存症はAであってもよい。
【0014】
別の態様では、配列番号1~160および243~402より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の増加、ならびに/または配列番号161~242および403~484より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の減少がある場合には、併存症はBであってもよい。
【0015】
別の態様では、配列番号1~160および243~402より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の増加、ならびに/または配列番号161~242および403~484より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の減少がある場合には、併存症はCであってもよい。
【0016】
別の態様では、配列番号1~160および243~402より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の増加、ならびに/または配列番号161~242および403~484より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の減少がある場合には、併存症はDでありうる。
【0017】
一態様では、本開示は、患者をSLEと相関するマーカーを有するものとして同定するステップと、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs:nonsteroidal anti‐inflammatory drugs)、免疫抑制剤、および抗BLyS抗体からなる群より選択される有効量の化合物を患者に投与するステップとを含む、SLEを治療する方法に関する。
【0018】
一態様では、本開示は、患者を中等度SLEと相関するマーカーを有するものとして同定するステップと、ヒステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、免疫抑制剤、および抗BLyS抗体からなる群より選択される有効量の化合物を患者に投与するステップとを含む、SLEを治療する方法に関する。
【0019】
一態様では、本開示は、患者をSLE併存症Aと相関するマーカーを有するものとして同定するステップと、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、免疫抑制剤、および抗BLyS抗体からなる群より選択される有効量の化合物を患者に投与するステップとを含む、SLEを治療する方法に関する。
【0020】
一態様では、本開示は、患者をSLE併存症Bと相関するマーカーを有するものとして同定するステップと、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、免疫抑制剤、および抗BLyS抗体からなる群より選択される有効量の化合物を患者に投与するステップとを含む、SLEを治療する方法に関する。
【0021】
一態様では、本開示は、患者をSLE併存症Cと相関するマーカーを有するものとして同定するステップと、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、免疫抑制剤、および抗BLyS抗体からなる群より選択される有効量の化合物を患者に投与するステップとを含む、SLEを治療する方法に関する。
【0022】
一態様では、本開示は、患者をSLE併存症Dと相関するマーカーを有するものとして同定するステップと、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、免疫抑制剤、および抗BLyS抗体からなる群より選択される有効量の化合物を患者に投与するステップとを含む、SLEを治療する方法に関する。
【0023】
本特許または出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。
カラーの図面を含む本特許または特許出願公開の複写は、要請および必要な料金の支払いに応じて事務局により提供されるであろう。
【0024】
本発明の利点および特徴は、添付の図面と併せて解釈される以下のより詳細な説明を参照してよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】miRNA分析の例示的な手順を示す。
【0026】
図2】本開示の一実施形態によるSLE患者および健常なドナーからの各miRNAシグナルを比較することによって行われる差次的発現分析を示す。miRNAごとにコホート間のFold change(倍率変化)をt検定のp値に対してプロットし、統計的に有意なmiRNA(p値<0.05)をバイオマーカー候補として選択した。
【0027】
図3A図2に示された上位10個のアップレギュレーションされたmiRNAの発現レベルを示す。
【0028】
図3B図2に示された上位10個のダウンレギュレーションされたmiRNAの発現レベルを示す。
【0029】
図4】本開示の一実施形態による各miRNAの発現レベルのSLE重症度との相関を示す。各miRNAのfold changeの散布図は、x軸:SLE対非SLE、およびy軸:中等度SLE対軽度SLEを示す)。
【0030】
図5A】軽度SLE患者(軽度)、中等度SLE患者(中等度)、および健常個体(なし)における上位10個のアップレギュレーションされたmiRNAの発現レベルの箱ひげ図を描く。
【0031】
図5B】軽度SLE患者(軽度)、中等度SLE患者(中等度)、および健常個体(なし)における上位10個のダウンレギュレーションされたmiRNAの発現レベルの箱ひげ図を示す。
【0032】
図6】本開示の一実施形態による併存症AがあるまたはないSLE患者におけるmiRNAの発現レベルの比較を示す。t検定でp<0.05のmiRNAがバイオマーカーとして選択された。
【0033】
図7】本開示の一実施形態による併存症BがあるまたはないSLE患者におけるmiRNAの発現レベルの比較を示す。t検定でp<0.05のmiRNAがバイオマーカーとして選択された。
【0034】
図8】本開示の一実施形態による併存症CがあるまたはないSLE患者におけるmiRNAの発現レベルの比較を示す。t検定でp<0.05のmiRNAがバイオマーカーとして選択された。
【0035】
図9】本開示の一実施形態による併存症DがあるまたはないSLE患者におけるmiRNAの発現レベルの比較を示す。t検定でp<0.05のmiRNAがバイオマーカーとして選択された。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本開示がさらに説明される前に、本開示は以下に記載される本開示の特定の実施形態に限定されず、特定の実施形態が変化させられ、なお添付の特許請求の範囲内でありうることが理解されねばならない。また、採用される用語は特定の実施形態を説明するためのものであり、限定することを意図しないことも理解されねばならない。代わりに、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲によって確立される。
定義
【0037】
別段の指示がない限り、本明細書で使用される全ての用語は、当業者にとっての場合と同じ意味を有する。
【0038】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、単数形「a(1つの)」、「an(1つの)」および「the(その)」は、文脈による別段の明示がない限り複数の参照物を含む。別段の定めがない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術の通常の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0039】
本明細書で使用される「約」は、所与の数値の最大5%の変動を広く指す。
【0040】
本明細書で使用される「アレイ」は、空間的に判別可能な様式で表面に付着されうるmiRNAなどの標的の集団を広く指す。アレイの個々の特徴部は、miRNAなどの標的の単一のコピー、または複数のmiRNAなどの標的の集団をアレイの個々の特徴部に含むことができる。各特徴部のmiRNAの集団は通常は同種であり、特定の標的の単一の種を有する。しかし、いくつかの実施形態では、異種のmiRNAの集団が特徴部に存在しうる。したがって、特徴部は単一のmiRNAのみを含む必要はなく、代わりに複数の異なるmiRNAを含むことができる。
【0041】
本明細書で使用される「体液」は、動物の体内に見られる様々なタイプの流体のいずれかを広く指す。体液は、液体状態または固体状態、例えば凍結状態であってもよい。溶液は、生体分子などの収集対象物質を含んでもよく、または収集対象物質を含まなくてもよく、収集対象物質を測定するための物質を含む。体液は、動物の体液であってもよい。動物は爬虫類、哺乳類、両生類であってもよい。哺乳類は、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ハムスター、マウス、リス、およびサル、ゴリラ、チンパンジー、ヒトであってもよい。体液は、リンパ液、間質液、細胞間液、間質液などの組織液であってもよく、体腔液、漿膜液、胸水、腹水、嚢液、脳脊髄液(脳脊髄液)、関節液(滑液)、眼房水(房水)であってもよい。体液は、唾液、胃液、胆汁、膵液、腸液などの消化液であってもよく、汗、涙、鼻水、尿、精液、膣液、羊水、乳汁などであってもよい。体液は、侵襲的に収集、抽出、収集など(以下では単に収集という)されてもよく、または非侵襲的に収集されてもよい。
【0042】
本明細書で使用される「分類器」は、サポートベクトルマシン(単数または複数)、AdaBoost分類器(単数または複数)、ペナルティ付きロジスティック回帰、エラスティックネット、回帰木系(単数または複数)、勾配木ブースティング系(単数または複数)、ロジスティック回帰、単純ベイズ分類器(単数または複数)、ニューラルネット、ベイジアンニューラルネット、k近傍法分類器(単数または複数)、深層学習系、およびランダムフォレストなどの機械学習アルゴリズムを広く指す。本発明は、列挙された分類器のいずれかを使用する方法、ならびに複数の分類器を組み合わせた使用を企図する。
【0043】
本明細書で使用される「分類および回帰木(CART:Classification and Regression Trees)」は、何らかの指標、通常はモデル性能を最適化するためにデータ空間を再帰的に分割することに基づいて決定木を作成する方法を広く指す。
【0044】
本明細書で使用される「分類系」は、少なくとも1つの分類器を実行する機械学習系を広く指す。
【0045】
本明細書で使用される「デバイス」は、溶液から溶質を分離および収集するために使用されるデバイスを広く指す。いくつかの実施形態では、「デバイス」は、溶液中の物質を分析するために使用されるデバイスであってもよい。いくつかの実施形態では、「デバイス」は、溶液から有機分子を分離するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、「デバイス」は、溶液から生体分子を分離するために使用されてもよい。「デバイス」は、流体デバイス、流路デバイス、それらの組み合わせ、またはそれらのいずれかを含むデバイスであってもよい。
【0046】
本明細書で使用される「エラスティックネット」は、回帰係数のベクトルのL1ノルムおよびL2ノルムの線形結合を含む制約付きの線形回帰を行うための方法を広く指す。
【0047】
本明細書で使用される「細胞外小胞(EV:Extracellular vesicles)」は、アポトーシスの間に細胞から放出されるもの、および健常細胞から放出されるものを含む、細胞から放出される小胞を広く指す。ファン・ニール・G(van Niel G)ら、「細胞外小胞の細胞生物学の解明(Shedding light on the cell biology of extracellular vesicles)」ネイチャーレビューズモルキュラーセルバイオロジー(Nat Rev Mol Cell Biol)(2018年)19(4):213~228。細胞外小胞は、サイズおよび表面マーカーに応じてエクソソーム(exosome)、マイクロベシクル(micro vesicle;MV)、およびアポトティック小体(アポトーシス小体)に広く分けられてもよい。エクソソームは通常、40~120ナノメートルの直径を有し、Alix、Tsg101、CD9、CD63、CD81およびflotillinからなる群より選択される1つ以上または全ての分子を発現することが可能であってもよい。エクソソームは、タンパク質およびmRNA、miRNA、ncRNAなどの核酸を含みうる。マイクロベシクルは通常、50~1,000ナノメートルの直径を有し、インテグリン、セレクチン、およびCD40からなる群より選択される1つ以上または全ての分子を発現してもよい。マイクロベシクルは、タンパク質およびmRNA、miRNA、ncRNAなどの核酸を含みうる。アポトティック小体は通常、500~2,000nmの直径を有し、アネキシンVおよびホスファチジルセリンからなる群より選択される1つ以上の分子を発現することが可能であってもよい。アポトティック小体は断片化された核および細胞小器官を含んでいてもよい。
【0048】
本明細書で使用される「有効量」は、治療効果でありうる所望の効果を生じるのに十分な本明細書に記載される組成物の量を指す。有効量に必要な組成物の正確な量は、対象の種、年齢、体重および全身状態、治療される状態の重症度、使用される特定の組成物、その投与様式、治療の期間、任意の同時治療の性質、使用される薬学的に許容される担体、ならびに当業者の知識および専門性の中の同様のファクターに応じて対象ごとに変動する。したがって、本発明の組成物ごとの正確な量を特定することはできない。しかし、有効量は、本明細書の教示を前提にルーチンの実験のみを用いて、関連のテキストおよび文献を参照しておよび/またはルーチンの実験を用いて、個々の場合に通常の当業者により決定されうる。(例えばレミントン(Remington):薬学の科学と実践(Science and Practice of Pharmacy)、第21版sup.st(2005年)、リッピンコット・ウィリアムズ・アンド・ウィルキンス(Lippincott Williams &Wilkins)、ペンシルベニア州フィラデルフィアを参照)。
【0049】
本明細書で使用される「偽陽性(FP:False Positive)」および「偽陽性同定」は、ある疾患が実際には不存在であるときにアルゴリズムのテスト結果がその疾患の存在を示すエラーを広く指す。
【0050】
本明細書で使用される「偽陰性(FN:False Negative)」は、ある疾患が実際には存在するときにアルゴリズムのテスト結果がその疾患の不存在を示すエラーを広く指す。
【0051】
本明細書で使用される「遊離」は、細胞外小胞に封入されておらず、細胞外小胞と関連しない状態で存在する、体液中に存在する生体分子を広く指す。例えば、細胞外小胞に封入されておらず、細胞外小胞と関連しない状態で存在する尿または尿抽出物中のmiRNA。
【0052】
本明細書で使用される「相同」は、2つのアミノ酸配列すなわちペプチドまたはポリペプチド配列の配列間の同一性の程度(上記の一致度を参照)を広く指す。前述の「相同性」は、比較される配列にわたり最適条件下でアライメントされた2つの配列を比較することによって決定される。このような配列相同性は、例えばClustalWアルゴリズムを用いてアライメントを作成することによって計算されうる。一般に入手可能な配列分析ソフトウェア、特にVector NTI、GENETYXまたは他のツールが公開データベースによって提供される。
【0053】
使用される「配列相同性」および「配列同一性」は、互換可能に使用されてもよく、アミノ酸配列またはヌクレオチド配列の配列相同性または配列同一性のパーセンテージを広く指す。配列は、最適な比較目的のために当技術分野で知られるコンピュータを用いた方法でアライメントされてもよい。2つの配列間のアライメントを最適化するために、比較される2つの配列のいずれかにギャップが導入されてもよい。このようなアライメントは、比較される配列の全長にわたって行われうる。あるいは、アライメントは、より短い長さにわたって、例えば約5、約10、約20、約50、約100またはそれ以上のヌクレオチドまたはアミノ酸にわたって行われてもよい。配列同一性は、報告されたアライメント領域にわたる2つの配列間の同一マッチのパーセンテージである。
【0054】
2つの配列間の配列の比較および配列間の配列同一性のパーセンテージの決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成されうる。技術者は、2つの配列をアライメントし、2つの配列間の同一性を決定するためにいくつかの異なるコンピュータプログラムが利用可能であることを認識するであろう(クラスカル(Kruskal)J.B.(1983年)配列比較の概要(An overview of sequence comparison)、D.サンコフ(Sankoff)およびJ.B.クラスカル(Kruskal)(編)、タイムワープ、列編集と高分子:配列比較の理論と実際(Time warps,string edits and macromolecules:the theory and practice of sequence comparison)、アディソンウェスリー(Addison Wesley))。2つのアミノ酸配列間または2つのヌクレオチド配列間の配列一致度は、2つの配列のアライメントのためのニードルマン‐ブンシュアルゴリズムを使用して決定されてもよい。(ニードルマン(Needleman)S.B.およびブンシュ(Wunsch)C.D.(1970年)ジャーナルオブモレキュラーバイオロジー(J.Mal.Biol.)48、443‐453)。このアルゴリズムによってアミノ酸配列およびヌクレオチド配列の両方がアライメントされうる。ニードルマン‐ブンシュアルゴリズムは、コンピュータプログラムNEEDLEに実装されている。本発明の目的のために、EMBOSSパッケージのNEEDLEプログラムが使用された(バージョン2.8.0以降、EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite(欧州分子生物学オープンソフトウェアスイート)(2000年)ライス(Rice)、ロンジェン(Longden)およびブリーズビー(Bleasby)、遺伝学のトレンド(Trends in Genetics)16、(6)276‐277、emboss.bioinformatics.nl/)。アミノ酸配列の場合には、置換マトリックスにEBLOSUM62が使用される。ヌクレオチド配列の場合には、EDNAFULLが使用される。使用される任意のパラメータは、10のギャップ開始ペナルティおよび0.5のギャップ伸長ペナルティである。技術者は、これら全ての異なるパラメータによりわずかに異なる結果がもたらされるが、2つの配列の全体的な一致度は異なるアルゴリズムを使用しても大きく変わらないことを認識するであろう。
【0055】
上述のようなプログラムNEEDLEによるアライメントの後、クエリ配列と本発明の配列との間の配列同一性のパーセンテージが以下のように計算される:両配列で同一のアミノ酸または同一のヌクレオチドを示すアライメントにおける対応する位置の数を、アライメントにおけるギャップの総数を減算した後のアライメントの全長で除算する。本明細書で定義される同一性は、NEEDLEからNOBRIEFオプションを使用して得られ、プログラムの出力において「最長同一性」としてラベル付けされる。本発明のヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、例えば他のファミリーメンバーまたは関連配列を同定するために配列データベースに対して検索を行うための「クエリ配列」としてさらに使用されうる。このような検索は、アルトシュル(Altschul)ら(1990年)ジャーナルオブモレキュラーバイオロジー(J.Mal.Biol.)215:403‐10のNBLASTおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)を使用して行われうる。本発明のポリヌクレオチドに相同なヌクレオチド配列を得るために、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12によりBLASTヌクレオチド検索が行われうる。本発明のポリペプチドに相同なアミノ酸配列を得るために、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3によりBLASTタンパク質検索が行われうる。比較目的のためにギャップ付きアライメントを得るために、アルトシュル(Altschul)ら(1997年)ヌクレイックアシッドリサーチ(Nucleic Acids Res.)25(17):3389‐3402に記載されるようにギャップ付きBLASTが利用されうる。BLASTおよびギャップ付きBLASTプログラムを利用するときには、それぞれのプログラム(例えばXBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメータが使用されうる。
【0056】
本明細書で使用される「内包物」は、細胞外小胞に取り込まれた生体分子の形態を広く指す。例えば、細胞外小胞に取り込まれたマイクロRNA(完全または部分的内包のいずれか)。
【0057】
本明細書で使用される「in situ抽出」は、ナノワイヤが組み込まれたマイクロ流体デバイスを使用してナノワイヤ上に捕捉されたEVを破砕して低分子RNA(例えばマイクロRNA)をin situで抽出すること、またはナノワイヤ上に捕捉された低分子RNA(例えばマイクロRNA)をナノワイヤから溶液に抽出することを広く指す。
【0058】
本明細書で使用される「LASSO」は、回帰係数のベクトルのL1ノルムに制約を付けて線形回帰を行うための方法を広く指す。
【0059】
本明細書で使用される「L1ノルム」は、ベクトルの要素の絶対値の和である。
【0060】
本明細書で使用される「L2ノルム」は、ベクトルの要素の二乗和の平方根である。
【0061】
本明細書で使用される「陰性的中率(NPV:Negative Predictive Value)」は、真陰性(TN)の数を、真陰性(TN)の数と偽陰性(FP)の数との合計で除算したもの、TP/(TN+FN)である。
【0062】
本明細書で使用される「ニューラルネット」は、パーセプトロン様オブジェクトを連鎖させて分類器を作成する分類方法を広く指す。
【0063】
本明細書で使用される「パフォーマンススコア」は、訓練データの予測値と実際の値との間の距離を広く指す。これは0~100%の間の数で表され、値が高いほど予測値が実際の値に近いことを示す。通常は、スコアが高いほどモデルの性能がより良好であることを意味する。
【0064】
「陽性的中率(PPV:Positive Predictive Value)」は、真陽性(TP)の数を、真陽性(TP)の数と偽陽性(FP)の数との合計で除算したもの、TP/(TP+FP)である。
【0065】
本明細書で使用される「ランダムフォレスト」は、モデルが訓練されるデータセットからのサンプルに基づいてCARTを適合させるバギング方法を広く指す。
【0066】
本明細書で使用される「標識」は、検出可能な(好ましくは定量可能な)シグナルを提供するために使用されうる任意の原子または分子を広く指す。標識は、二次試薬などの目的の分子に取り付けられうる。標識は、蛍光、放射能、比色、重量測定、X線回折または吸収、磁気、酵素活性、およびそれらの組み合わせなどの非限定的な技法によって検出可能なシグナルを提供してもよい。
【0067】
本明細書で使用される「ナノワイヤ」は、ナノメートルオーダーの断面形状または直径(例えば1~数百ナノメートルの直径)などのサイズを有する棒状、ワイヤ状の構造体を広く指す。
【0068】
本明細書で使用される「自己免疫疾患」は、自己の免疫系が自己の健常細胞および組織と反応して発症する疾患を指す。自己免疫疾患の例は、SLE、多発性硬化症、関節リウマチ、乾癬、クローン病、尋常性白斑、ベーチェット病、膠原病、I型糖尿病、ブドウ膜炎、シェーグレン症候群、自己免疫性心筋炎、自己免疫性肝臓疾患(例えば自己免疫性肝炎)、自己免疫性胃炎、自己免疫性甲状腺疾患、天疱瘡、ギランバレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、およびHTLV‐1関連脊髄症などの疾患が含んでいてもよい。
【0069】
本明細書で使用される「軽度SLE」は、発疹、口腔潰瘍、および関節炎として一般的に存在する軽度から中等度のフレアを広く指す。これらのフレアは、多くの場合皮膚および関節に限定されてもよく、発熱および倦怠感も伴うことがあってもよい。軽度のフレア(例えば頬部発疹、倦怠感および関節痛)のための治療オプションは、抗マラリア薬(ヒドロキシクロロキン200~400mgなど)、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)および低用量ステロイドを含んでいてもよい。
【0070】
本明細書で使用される「中等度SLE」は、中等度のフレア(例えばより重度の皮膚、発疹、脱毛症)を広く指し、中程度の用量のステロイドが使用されてもよい。症状を制御するためにプレドニゾン>10mg/日を要した患者の「ステロイド節約」効果のために、メトトレキサートまたはアザチオプリンなどの免疫抑制剤が加えられてもよい。中等度のフレアのための抗マラリア薬調整オプションは、ヒドロキシクロロキンの最大化、キナクリンの追加もしくは代用、またはクロロキンへの切り替えを含んでいてもよい。これらの薬は症状を軽減し、疾患の兆候を改善し、時には寛解を誘発するのに役立ちうるが、これらは重大なマイナスの副作用も有しうる。特にステロイドは、一般に不眠症、骨粗鬆症、筋力低下、他にも多くのものを引き起こす。可溶型Bリンパ球生存因子に対するモノクローナル抗体のベリムマブ(ベンリスタ)、例えばベリムマブが、このカテゴリーの患者のために近年承認されている。
【0071】
本明細書で使用される「マイクロRNA」(「miRNA」とも呼ばれる)は、タンパク質をコードしないと考えられるノンコーディングRNA(ncRNA)の一種を広く指す。マイクロRNAは、それらの前駆体から成熟体にプロセシングされる。成熟マイクロRNAは、20~25塩基オーダーの長さを有することが知られている。ヒトのマイクロRNAは、hsaと名付けられる。前駆体にはmirが付され、成熟体にはmiRが付される。同定される配列は、同定される順に番号付けされ、類似の配列では番号の後に小文字のアルファベットが続く。5’末端由来の前駆体と3’末端由来の前駆体がある場合には、5’末端由来のマイクロRNAは5pで標識され、3’末端由来のマイクロRNAは3pで標識される。これらの記号および数字はハイフンで結ばれる。成熟マイクロRNAは2本鎖であってもよい。miRNAは、細胞の増殖、分化、およびアポトーシスの重要な調節因子であってもよく、したがって正常な発生および生理機能に重要であってもよい。
【0072】
本明細書で使用される「リッジ回帰」は、回帰係数のベクトルのL2ノルムに制約を付けて線形回帰を行うための方法を広く指す。
【0073】
本明細書で使用される「重度のSLE」は、重大な腎臓疾患、脳疾患、非常に低い血小板もしくは赤血球数、血管炎などの生命または臓器を脅かす疾患を指す重度のフレアを広く指す。このようなSLEの重度の兆候では、治療は通常、ソルメドロールパルス(1グラム/日IVで3日間)から始まり、その後1日あたり1~2mg/kgの高用量プレドニゾンが続く。IVシクロホスファミド(シトキサン)、ミコフェノール酸モフェチル(セルセプト)、アザチオプリン(イムラン)、またはベンリスタおよびリツキシマブ(RTX)(商品名リツキサン)のような最近開発された生物療法などのより強力な免疫抑制剤が加えられてもよい。
【0074】
本明細書で使用される「SLE併存症」は、SLEに関連する併存症を広く指す。SLEは、がんのより高いリスク、心血管疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、リウマチ性疾患および神経疾患、ならびに甲状腺機能低下症、精神病、および貧血に関連してもよい。併存症の発症は、SLE診断から最初の2年間で最も高頻度であってもよい。血管疾患は、SLEに関連する多数の併存症の中で最も一般的なものの1つであってもよい。心血管疾患に加えて、SLEの患者は、骨粗鬆症、シェーグレン症候群、抗リン脂質症候群、自己免疫性甲状腺疾患、悪性病変、関節リウマチ、全身性硬化症、筋炎、血管炎、自己免疫性肝炎、および感染症を含むいくつかの他の併存症を有していてもよい。
【0075】
本明細書で使用される「対象」は、SLEにかかりやすい任意の動物を広く指す。そのような対象は一般に、ヒト、霊長類、イヌ、ネコ、ブタ、ウサギ、モルモット、ヤギ、乳牛、畜牛、ウマなどを含むがこれらに限定されない哺乳類の対象である。したがっていくつかの実施形態では、対象はSLEの動物モデルを含む任意の家畜、商業的または臨床的に価値のある動物でありうる。対象は雄または雌であってもよく、新生期、幼体期、幼若期、青年期、成体期、および老年期のオブジェクトを含む任意の年齢であってもよい。特定の実施形態では、対象はヒトである。「対象」および「患者」という用語は、互換可能に使用される。
【0076】
本明細書で使用される「偏差標準(SD:Standard of Deviation)」は、単一の測定の不確実性を反映する個々のデータポイントの(すなわちレプリケート群の)広がりである。
【0077】
本明細書で使用される「部分集合」は、真部分集合を広く指し、「上位集合」は真上位集合である。
【0078】
本明細書で使用される「それを必要とする対象」は、SLEを有することが知られているかもしくは疑われる、または発症するリスクが高い対象を広く指す。本発明の対象は、以前にはSLEを有することが知られていなかったかもしくは疑われていなかった、またはSLEの治療を必要としなかった対象も含みうる。本開示の対象は、SLEを有することが知られているかまたは発症するリスクがあると考えられる対象でもある。SLEを発症するリスクがあるものとして本明細書に記載される対象は、家族歴、遺伝分析、環境曝露および/または本明細書に記載される疾患もしくは障害に関連する初期症状の発現によって同定される。
【0079】
本明細書で使用される「分離」および「濃縮」は、細胞培養培地または体液からのEVの高い純度および品質での分離のための方法を広く指す。分離は、材料(条件培地、生物流体、組織)の他の非EV成分からのEVのおよび異なるタイプのEVの互いからの精製または単離を指してもよい。濃縮は、分離の有無にかかわらず単位体積あたりのEVの数を増やすための手段であってもよい。EVの分離および濃縮は、EVのサイズまたは表面マーカーの発現に基づく複数の技術によって達成されうる。これらの技法は、分画超遠心分離、密度勾配遠心分離、免疫親和性(immunoaffnity)、限外ろ過、ポリマーベース沈殿、およびサイズ排除クロマトグラフィが含んでいてもよい。
【0080】
本明細書で使用される「実質的に含まない」は、1%未満、好ましくは0.1%または0.01%未満の量での特定の成分の存在を広く指す。より好ましくは、「実質的に含まない」という用語は、0.001%未満の量での特定の成分の存在を広く指す。量は、組成物に応じてw/wまたはw/vとして表されてもよい。
【0081】
本明細書で使用される「固体支持体」、「支持体」、および「基材」は、滑らかな支持体(例えば金属、ガラス、プラスチック、シリコン、およびセラミック表面)ならびに凹凸および多孔性材料を含むがこれらに限定されない、別の材料を取り付けることができる固体または半固体構造体を提供する任意の材料を広く指す。基材材料には、アクリル、カーボン(例えばグラファイト、カーボンファイバー、ナノチューブ)、セラミック、制御細孔ガラス、架橋多糖類(例えばアガロースまたはSEPHAROSE(登録商標))、ゲル、ガラス(例えば改質または機能化ガラス)、グラファイト、無機ガラス、無機ポリマー、金属酸化物(例えばSiO、TiO、ステンレス鋼)、ナノ材料(例えば高配向性熱分解グラファイト(HOPG:highly oriented pyrolitic graphite)ナノシート)、有機ポリマー、プラスチック、ポリアクリロイルモルホリド(polacryloylmorpholide)、ポリ(4‐メチルルブテン)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ビニルブチレート)、ポリブチレン、ポリジメチルシロキサン(PDMS:polydimethylsiloxane)、ポリエチレン、ポリホルムアルデヒド、ポリメタクリレート、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF:polyvinylidene difluoride)、樹脂、シリカ、シリコン(例えば表面酸化シリコン)、またはこれらの組み合わせが含まれるがこれらに限定されない。
【0082】
本明細書で使用される「表面」は、試薬、ビーズまたは分析物と接触するためにアクセス可能である支持構造体(例えば基材)の一部を広く指す。表面は、実質的に平坦または平面でありうる。あるいは、表面は丸みまたは輪郭が付けられうる。表面上に含めることができる例示的な輪郭は、ウェル、窪み、ピラー、リッジ、チャネルである。「表面」および「基材」という用語は、本明細書において互換可能に使用される。
【0083】
本明細書で使用される「訓練セット」は、本明細書に記載される方法および系で使用されるアルゴリズムなどの機械学習系を訓練および開発するために使用されるサンプルのセットである。
【0084】
本明細書で使用される「治療」は、疾患または傷害状態の徴候および/または症状を和らげることを広く指す。治療は、疾患もしくは傷害状態の徴候および/もしくは症状の発症を少なくするために治療組成物が徴候および/もしくは症状の発症または疾患もしくは傷害状態への曝露の前に投与される、予防措置を包含してもよい。
【0085】
本明細書で使用される「真陰性(TN:True Negative)」は、あるmiRNAが実際にはSLEと関連するときにアルゴリズムのテスト結果がそのmiRNAがSLEと関連しないことを示すことである。
【0086】
本明細書で使用される「真陽性(TP:True Positive)」は、SLEが実際にはSLEと関連するときにアルゴリズムのテスト結果がmiRNAがSLEと関連することを示すことである。
【0087】
本明細書で使用される「切断」は、ポリヌクレオチドのときは5’末端および/または3’末端が短縮された、ポリペプチドのときはN‐および/またはC‐末端が短縮された配列を広く指す。
【0088】
本明細書で使用される「尿抽出物」は、ある成分、特にマイクロRNAの濃度が抽出前の尿よりも高い、尿から抽出される生成物を広く指す。
【0089】
本明細書で使用される「検証セット」は、盲検化され、本明細書に記載される方法および系において使用されるアルゴリズムの機能を確認するために使用されるサンプルのセットを広く指す。これは盲検セットとしても知られる。
全身性ループスエリテマトーデス(SLE)
【0090】
全身性ループスエリテマトーデス(SLE)は、複数の臓器に原因不明に影響する原型の慢性自己免疫疾患である。SLEに関するかなりの研究にもかかわらず、SLEにおける有効な標的療法はほとんどない。症状を緩和し、疾患の進行を制御するための既存の治療オプションには、疾患を制御下に保つために非特異的免疫抑制を提供する薬物、例えば非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)およびヒドロキシクロロキン、コルチコステロイド、メトトレキサート、アザチオプリン、シクロホスファミド、およびミコフェノール酸モフェチルなどの免疫抑制剤が含まれる。ベリムマブは、既に標準治療を受けている活性な自己抗体陽性疾患のSLE患者の治療のための史上初の標的生物製剤である。ベリムマブは、Bリンパ球刺激因子(BLyS)に対する完全ヒトIgG1λ組換えモノクローナル抗体である。ベリムマブと可溶型BLySとの特異的結合がBLysとその3つの受容体との相互作用を妨げ、B細胞の生存および自己抗体の産生を間接的に減少させる。
【0091】
SLEの症状には、関節の痛み/関節痛、100°F/38℃を超える発熱、関節炎/関節の腫れ、長期または極度の倦怠感、皮膚の発疹、貧血、腎臓の病変、深呼吸時の胸痛/胸膜炎、頬および鼻の蝶形の発疹、日光または光過敏症/光線過敏症、脱毛、血液凝固の問題、レイノー現象/寒さで指が白および/または青くなる、発作、口または鼻の潰瘍、ならびにこれらの任意の組み合わせが含まれるがこれらに限定されない。
【0092】
SLEの状態は、患者が発疹、口腔潰瘍、および関節炎として一般的に存在する軽度から中等度のフレアを患う軽度SLEであってもよい。これらのフレアは、多くは皮膚および関節に限定されてもよく、発熱および倦怠感も伴うことがあってもよい。軽度のフレア(例えば頬部発疹、倦怠感および関節痛)のための治療オプションは、抗マラリア薬(ヒドロキシクロロキン200~400mgなど)、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)および低用量ステロイドを含んでいてもよい。
【0093】
SLEの状態は、患者が中等度のフレア(例えばより重度の皮膚、発疹、脱毛症)を患う中等度SLEであってもよく、中程度の用量のステロイドが使用されてもよい。症状を制御するためにプレドニゾン>10mg/日を要した患者の「ステロイド節約」効果のために、メトトレキサートまたはアザチオプリンなどの免疫抑制剤が加えられうる。中等度のフレアのための抗マラリア薬調整オプションには、ヒドロキシクロロキンの最大化、キナクリンの追加もしくは代用、またはクロロキンへの切り替えが含まれてもよい。これらの薬は症状を軽減し、疾患の兆候を改善し、時には寛解を誘発するのに役立ちうるが、これらは重大なマイナスの副作用も有しうる。特にステロイドは、一般に不眠症、骨粗鬆症、筋力低下、他にも多くのものを引き起こす。可溶型Bリンパ球生存因子に対するモノクローナル抗体のベリムマブ(ベンリスタ)、例えばベリムマブが、このカテゴリーの患者のために近年承認されている。
【0094】
SLEの状態は、患者が重大な腎臓疾患、脳疾患、非常に低い血小板または赤血球数、血管炎などの生命または臓器を脅かす疾患を指す重度のフレアを患う重度のSLEであってもよい。このようなSLEの重度の兆候では、治療は通常、ソルメドロールパルス(1グラム/日IVで3日間)から始まり、その後1日あたり1~2mg/kgの高用量プレドニゾンが続く。IVシクロホスファミド(シトキサン)、ミコフェノール酸モフェチル(セルセプト)、アザチオプリン(イムラン)、またはベンリスタおよびリツキシマブ(RTX)(商品名リツキサン)のような最近開発された生物療法などのより強力な免疫抑制剤が加えられてもよい。
【0095】
SLEは、「SLE併存症」と呼ばれる他の状態に関連していてもよい。SLEは、がん、がんのより高いリスク、心血管疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、リウマチ性疾患および神経疾患、ならびに甲状腺機能低下症、精神病、および貧血に関連していてもよい。併存症の発症は、SLE診断から最初の2年間で最も高頻度であってもよい。血管疾患は、SLEに関連する多数の併存症の中で最も一般的なものの1つであってもよい。心血管疾患に加えて、SLEの患者は、骨粗鬆症、シェーグレン症候群、抗リン脂質症候群、自己免疫性甲状腺疾患、悪性病変、関節リウマチ、全身性硬化症、筋炎、血管炎、自己免疫性肝炎、および感染症を含むいくつかの他の併存症を有していてもよい。
【0096】
本明細書に記載されるように、およそ22,000個のタンパク質コード転写産物mRNA(およびその部分集合)を使用して、SLE患者が健常対照から区別されてもよい。マイクロRNAは、mRNAの発現を微調整する、構造プロセスとは対照に純粋な調節プロセスを表す。ヌクレオチドの相補性のコンビナトリアルな性質により、個々のmiRNAがそのコグネイトメッセンジャーRNAの転写後修飾によって数百の遺伝子の発現を調節することができる。
【0097】
成熟マイクロRNAは2本鎖であってもよい。miRNAは、細胞の増殖、分化、およびアポトーシスの重要な調節因子であってもよく、したがって正常な発生および生理機能に重要であってもよい。その結果、miRNA機能の調節不全は、がん、免疫疾患、およびウイルス感染症などのヒト疾患につながる場合がある。miRNAの差次的発現は、SLEの診断/治療において有用であってもよい。
【0098】
miRNAの発現は、メッセンジャーRNAのプロファイリングよりも疾患の病因の豊富な情報源であってもよく、したがって予防、予測、個別化および参加型医療(「P4医療」)のための機序に基づく分子バイオマーカーとして実用化されることが期待できる。例えばフローレス(Flores)ら、「P4医療:システム医学がいかに医療部門と社会を変革するか(P4 medicine:how systems medicine will transform the healthcare sector and society)」パーソナライズドメディシン(Per Med.)(2013年)10(6):565‐576を参照されたい。
【0099】
本開示の実施形態は、バイオマーカーを使用したSLE患者の同定、およびそのような同定に基づくSLE患者の治療を含む。例えば、本明細書に記載される方法は、miRNAおよび発現レベルのデータセットからmiRNAを同定、例えばSLEに関連するmiRNAおよび/またはそれらの発現レベルを同定するために分類器を利用してもよい。一実施形態では、本明細書に記載されるかまたは当技術分野において記載されたmiRNAの発現レベルを検出する方法から入手されたmiRNAデータがデータベースに集められ、SLEを示すものまたは示さないものとしてのmiRNAおよびそれらの発現レベルの分類に分類器によって処理される。例えば米国特許出願公開第2020/0255906号を参照されたい。
miRNAの検出方法
【0100】
本明細書に記載される方法は、サンプルを得るステップと、サンプル中のmiRNA含有量を分析するステップとを含んでいてもよい。
【0101】
サンプルは体液であってもよい。体液は、血液、尿、血漿、唾液、腹水、気管支肺胞洗浄液、脳脊髄液、またはそれらの組み合わせであってもよい。体液を含むサンプルは、当技術分野で知られる任意の手段によって収集されてもよい。対象から溶液を抽出、収集、および収集するために、シリンジなどの抽出器が使用されてもよい。
【0102】
体液を含むサンプルは、特定の疾患をもつ対象を含む対象から採取されてもよく、または特定の疾患を患っていると疑われる対象もしくは特定の疾患を患っていることを検査予定の対象の体液であってもよい。いくつかの実施形態では、疾患はSLEなどの免疫疾患であってもよい。
【0103】
サンプルは、尿抽出物であってもよく、水溶液(溶液または懸濁物)であってもよく、または尿サンプルを乾燥することにより得られる固体であってもよい。尿抽出物では、尿中の細胞外小胞および核酸以外の成分が実質的に除去されている抽出物は尿精製物と呼ばれてもよい。尿抽出物は、界面活性剤、好ましくは非イオン性界面活性剤を含んでいてもよい。尿抽出物は、デタージェントおよび細胞外小胞の破片(例えばエクソソームおよび/またはマイクロベシクル)を含んでいてもよい。尿抽出物は、デタージェントおよび細胞外小胞の破片(例えばエクソソームおよび/またはマイクロベシクル)からなる群より選択される1つ以上を含まないかまたは実質的に含まなくてもよい。尿抽出物は、安定化剤(例えば核酸安定化剤)および/またはpH調整剤(例えば緩衝剤)をさらに含んでいてもよい。尿抽出物は、塩を含んでいてもよい。尿抽出物は、尿成分、例えば尿素、クレアチニン、尿酸、アンモニア、ウロビリン、リボフラビン、尿タンパク質、糖および尿中ホルモン(例えば絨毛性ゴナドトロピン)からなる群より選択される1つ以上の尿成分を含んでいてもよい。尿抽出物のpHは、2、3、4、または5などの値以上であるかまたはそれらの値より大きくてもよい。尿抽出物のpHは、10、9、8、7、6、または5などの値以下であるかまたはそれらの値より小さくてもよい。尿抽出物はマイクロRNAを含む。本開示において、尿抽出物は、富化/濃縮されたマイクロRNAまたはその群を含んでいてもよい。本開示において、尿抽出物は、本明細書に記載される抽出方法によって抽出されたマイクロRNAを含んでいてもよい。
【0104】
本明細書に記載される方法は、
(a)SLEを有すると疑われる患者から体液サンプルを得るステップと、
(b)得られたサンプル中のmiRNA発現を分析するステップと、
(c)患者を
(i)患者サンプルにおいて健常個体から得られた体液サンプルと比較して配列番号1~160および243~402より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の増加、ならびに/もしくは配列番号161~242および403~484より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の減少が検出される場合にはSLEの併存症と相関するマーカーを有するものとして、または
(ii)健常個体から得られた体液サンプルと比較して配列番号1~160および243~402より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の増加、ならびに/もしくは配列番号161~242および403~484より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の減少が検出できない場合にはSLEの併存症と相関するマーカーを有しないものとして
同定するステップと
を含んでいてもよい。
【0105】
本明細書に記載される方法は、
(a)得られた体液サンプルを、ナノワイヤを含む流体デバイスに導入するステップと、
(b)体液サンプル中の細胞外小胞をナノワイヤ上に捕捉するステップと、
(c)捕捉された細胞外小胞を破砕するステップと、
(d)破砕された細胞外小胞から少なくとも1つのmiRNAを抽出するステップと、
(e)抽出されたmiRNAをmiRNAアレイにハイブリダイズさせるステップと、
(f)アレイへのmiRNAハイブリダイゼーションを測定するステップと
を含む、サンプルからmiRNAプロファイルを作成するステップを含む、分析するステップを含みうる。
【0106】
細胞外小胞は、サイズおよび表面マーカーに応じてエクソソーム(exosome)、マイクロベシクル(micro vesicle;MV)、およびアポトティック小体(アポトーシス小体)に広く分類されてもよい。エクソソームは通常、40~120ナノメートルの直径を有し、Alix、Tsg101、CD9、CD63、CD81およびflotillinからなる群より選択される1つ以上または全ての分子を発現することが可能であってもよい。エクソソームは、タンパク質およびmRNA、miRNA、ncRNAなどの核酸を含みうる。マイクロベシクルは通常、50~1,000ナノメートルの直径を有し、インテグリン、セレクチン、およびCD40からなる群より選択される1つ以上または全ての分子を発現することが可能であってもよい。マイクロベシクルは、タンパク質およびmRNA、miRNA、ncRNAなどの核酸を含みうる。アポトティック小体は通常、500~2,000nmの直径を有し、アネキシンVおよびホスファチジルセリンからなる群より選択される1つ以上の分子を発現することが可能であってもよい。アポトティック小体は断片化された核および細胞小器官を含んでいてもよい。
【0107】
細胞外小胞(EV)の分離および濃縮は、EVのサイズまたは表面マーカーの発現に基づく複数の技術によって達成されうる。これらの技法には、分画超遠心分離、密度勾配遠心分離、免疫親和性、限外ろ過、ポリマーベース沈殿、およびサイズ排除クロマトグラフィが含まれていてもよい。分画遠心分離は、EV分離のための一般的なアプローチであってもよい。簡潔にいうと、サンプルが最初に低速で遠心分離されて細胞が除去されてもよい(500×g)。その後、2500×gでの遠心分離後に細胞片が除去されてもよい。上清が収集されてもよく、それから10,000×gで遠心分離が行われて、マイクロベシクルなどの大きなEVがペレット化されてもよい。
それから最終的な上清が100,000×gで超遠心分離されて、エクソソームに対応しうる小さなEVがペレット化されてもよい。それから最終的なペレットが大量のリン酸緩衝溶液(PBS:phosphate buffered solution)で洗浄されて混在タンパク質が除去され、それから最後に1回100,000×gで遠心分離されてもよい。EVまたはEVサブタイプ分離のより良好な特異性を達成するために、1つ以上の追加の技法が使用されてもよい。密度勾配遠心分離(速度または浮上)によって、EVの純度がさらに向上しうる。エクソソームは、スクロース溶液またはイオジキサノールクッションの不連続な勾配を用いて浮遊密度において精製されてもよい。免疫親和性によってもさらなる精製が達成されうる。抗体(CD63、CD81、CD9)は、磁気ビーズとコンジュゲートされ、EV含有サンプルとインキュベートされてもよい。限外ろ過によってEVがそのサイズに基づいて分離されうる。一般的なフィルタ孔径は0.8μmおよび0.22μmであってもよい。一部の商用製品は、EVを分離するための沈殿のためにポリエチレングリコール(PEG:polyethylene glycol)を使用することもできる。サイズ排除クロマトグラフィは、EV粒子をそのサイズによって分離しうる。分離されたEVの純度を確認するために、電子顕微鏡法、ナノ粒子トレーシング分析法(NTA:nanoparticle tracing analysis)、およびウェスタンブロッティングが行われて、EVの形状、サイズ、およびバイオマーカー発現が特徴付けされされてもよい。EVを定義するために、少なくとも3つの陽性タンパク質マーカー(CD63、CD9、CD81、TSG101など)および陰性タンパク質マーカー(カルネキシンなど)が必要であされてもよい。単一のEVが2つの異なる補完的な技法:顕微鏡法(走査型プローブ顕微鏡法、原子間力顕微鏡法、または超解像顕微鏡法など)または単一粒子分析器(NTA:single particle analyzer、高精度フローサイトメトリ、および動的光散乱)によって特徴付けされうる。EVの分離および分析のためのマイクロ流体チップ
【0108】
マイクロ流体デバイス上のEVの捕捉効率を高めるために、ナノ構造体、例えばナノワイヤがチップ上に設計されて、捕捉抗体の直接取り込みを可能にしうる、より大きな表面積が提供されてもよい。ナノワイヤは、直径または特徴的サイズが定義されない限り、セクションの最大、最小、平均、または他の特徴的サイズがナノメートル、サブナノメートル、10ナノメートル、100ナノメートル、またはサブマイクロメートルレベルでありうる構造体であってもよい。
【0109】
ナノワイヤの長さは、縦方向に定義されたサイズであってもよく、ナノメートルレベル~10ナノメートルレベル、100ナノメートルレベル、またはサブマイクロメートルレベルであってもよい。一態様では、本明細書に記載されるナノワイヤの長さは、約0.1ナノメートル~約500ナノメートル、約1ナノメートル~約250ナノメートル、約1ナノメートル~約100ナノメートル、または約5ナノメートル~約50ナノメートルであってもよい。ナノワイヤの長さは、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、324、325、326、327、328、329、330、331、332、333、334、335、336、337、338、339、440、441、442、443、444、445、446、447、448、449、450、451、452、453、454、455、456、457、458、459、460、461、462、463、464、465、466、467、468、469、470、471、472、473、474、475、476、477、478、479、480、481、482、483、484、485、486、487、488、489、490、491、492、493、494、495、496、497、498、499、または500ナノメートル(nm)であってもよい。ナノワイヤの長さは、約1~500nm、100~500nm、200~400nm、250~500nm、50~250nm、10~100nm、2~200nm、300~500nm、400~500nm、150~450nm、250~300nm、10~50nm、100~350nm、350~500nm、または200~300nmの間であってもよい。
【0110】
ナノワイヤの長さは、例えば500nm、1μm、1.5μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μm、11μm、12μm、13μm、14μm、15μm、17μm、20μmなどの値より大きくてもよいがこれらに限定されない。ナノワイヤの長さは、例えば1μm、1.5μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μm、11μm、12μm、13μm、14μm、15μm、17μm、20μm、50μm、100μm、または200μm以下であってもよいがこれらに限定されない。
【0111】
ナノワイヤの長さは、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、または200μmであってもよい。ナノワイヤの長さは、約1~100μm、100~200μm、120~140μm、150~175μm、5~25μm、10~10μm、2~20μm、30~100μm、15~125μm、10~45μm、25~180μm、60~75μm、1~150μm、35~200μm、または2~180μmの間であってもよい。
【0112】
ナノワイヤの直径(または厚み方向のサイズ)は、例えば5nm、10nm、15nm、20nm、25nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、150nm、200nm、250nm、300nm、400nm、500nmなど以上でああってもよい。ナノワイヤの直径(または厚み方向のサイズ)は、例えば10nm、15nm、20nm、25nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、150nm、200nm、250nm、300nm、400nm、500nm、1μm以下でああってもよい。
【0113】
ナノワイヤの直径は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、324、325、326、327、328、329、330、331、332、333、334、335、336、337、338、339、440、441、442、443、444、445、446、447、448、449、450、451、452、453、454、455、456、457、458、459、460、461、462、463、464、465、466、467、468、469、470、471、472、473、474、475、476、477、478、479、480、481、482、483、484、485、486、487、488、489、490、491、492、493、494、495、496、497、498、499、または500ナノメートル(nm)でああってもよい。ナノワイヤの長さは、約1~500nm、100~500nm、200~400nm、250~500nm、50~250nm、10~100nm、2~200nm、300~500nm、400~500nm、150~450nm、250~300nm、10~50nm、100~350nm、350~500nm、または200~300nmの間でああってもよい。
【0114】
ナノワイヤの断面は、実質的に円形、楕円形、正多角形、多角形、中空体であってもよい。ナノワイヤの外形は、実質的に円筒形、楕円形または多角形であってもよい。ナノワイヤは、中空もしくは中空体であってもよく、または実質的に材料が詰まった構造体であってもよい。ナノワイヤは1つの材料または複数の材料で作製されてもよい。ナノワイヤはその表面が被覆材料で被覆されてもよい。
【0115】
ナノワイヤの材料は、無機材料または有機材料であってもよい。ナノワイヤは、金属、非金属、半導体、それらの混合物もしくは合金、またはそれらの酸化物もしくは窒化物であってもよく、またはこれらを含んでいてもよい。ナノワイヤの材料は、ポリマー材料であってもよく、またはポリマー材料を含んでいてもよい。ナノワイヤは、ワイヤ、ウィスカ、繊維、それらの混合物または複合材であってもよい。ナノワイヤの材料に使用される金属は、典型金属(アルカリ金属:Li、Na、K、Rb、Cs、アルカリ土類金属:Ca、Sr、Ba、Ra)、マグネシウム族元素:Be、Mg、Zn、Cd、Hg、アルミニウム族元素:Al、Ga、In、希土類元素:Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、スズ族元素:Ti、Zr、Sn、Hf、Pb、Th、鉄族元素:Fe、Co、Ni、土酸元素:V Nb、Ta、クロム族元素:Cr、Mo、W、Au、Cu、銅族元素.Rh、Pd、Os、Ir、Pt、天然放射性元素:UおよびThを母体とする放射能壊変産物:U、Th、Ra、Rn、アクチノイド、超ウラン元素:Np、Pu、Am、Cm、Bk、Cf、Es、Fm、Md、Noなど、ウラン以降の元素、またはそれらの合金を含んでいてもよいがこれらに限定されない。ナノワイヤは、上記の金属もしくは合金のいずれか1つ、または合金もしくは混合物の酸化物であってもよく、酸化物を含んでもよい。ナノワイヤの材料、または少なくともナノワイヤの表面、例えばクラッディングは、限定はされないが例えばZnO、SiO、LiO、MgO、Al、CaO、TiO、Mn、Fe、CoO、NiO、CuO、Ga、SrO、In、SnO、Sm、およびEuOであってもよい。ナノワイヤは帯電していてもよい。ナノワイヤは、収集または抽出される材料のものとは反対の電荷を有してもよい。それにより、非限定的な例として、細胞外小胞、核酸などの荷電をもつ生体分子が効率的に引き付けられ吸着されうる。
【0116】
基材は、半導体、金属、絶縁体、有機材料、ポリマー材料などを例示的に含んでいてもよいがこれらに限定されない。一態様では、基材は、任意の形状の構造、例えば主表面が互いに平行でありうる平面構造、主表面が互いに平行でなくてもよい湾曲構造、またはそれらの組み合わせを有していてもよい。基材は、三次元構造を有していてもよい。基材は、触媒層が上に積層されうる材料、例えばシリコンなどの半導体材料、石英ガラス、Pyrex(登録商標)ガラスなどのガラス材料、セラミックス、プラスチックを含むポリマー材料などで形成されてもよく、そのようなものが用いられてもよい。いくつかの実施形態では、基材は実質的に可撓性であってもよく、伸長可能であってもよい。いくつかの実施形態では、基材は実質的に非可撓性であってもよい。基材の材料は、特にこれらに限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ABS(acrylonitrile butadiene styrene、アクリロニトリルブタジエンスチレン)樹脂、AS(acrylonitrile styrene、アクリロニトリルスチレン)樹脂、アクリル樹脂(PMMA)などの熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、シリコーンゴム、ポリメチルメタクリレート(PMMA:polymethylmethacrylate)、およびポリカーボネート(PC:polycarbonate)より選択される材料であってもよい。
【0117】
基材(ナノワイヤ基材とも呼ばれる)上にナノワイヤが配置されてもよく、「カバー」または「カバー部材」は、ナノワイヤが上に配置された基材とは異なる基材であって、ナノワイヤ基材に結合され、流体チャンバまたは流路を形成するために使用される部材を意味するために使用されてもよい。
【0118】
ナノワイヤは、基材に取り付けられてもよい。ナノワイヤは、チャンバまたはウェル内に置かれてもよい。
【0119】
本明細書に記載される系および方法で使用されるアレイのための基材は、滑らかな支持体(例えば金属、ガラス、プラスチック、シリコン、およびセラミック表面)ならびに凹凸および多孔性材料を含むがこれらに限定されない、別の材料を取り付けることができる固体または半固体構造体を提供する任意の材料でありうる。基材材料には、アクリル、カーボン(例えばグラファイト、カーボンファイバー、ナノチューブ)、セラミック、制御細孔ガラス、架橋多糖類(例えばアガロースまたはSEPHAROSE(登録商標))、ゲル、ガラス(例えば改質または機能化ガラス)、グラファイト、無機ガラス、無機ポリマー、金属酸化物(例えばSiO、TiO、ステンレス鋼)、ナノ材料(例えば高配向性熱分解グラファイト(HOPG)ナノシート)、有機ポリマー、プラスチック、ポリアクリロイルモルホリド(polacryloylmorpholide)、ポリ(4‐メチルルブテン)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ビニルブチレート)、ポリブチレン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリエチレン、ポリホルムアルデヒド、ポリメタクリレート、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、樹脂、シリカ、シリコン(例えば表面酸化シリコン)が含まれるがこれらに限定されない。
【0120】
基材は平坦である必要はなく、球形状(例えばビーズ)または円筒形状(例えば繊維)を含む任意のタイプの形状を含みうる。固体支持体に取り付けられるナノワイヤは、固体支持体の任意の部分に取り付けられてもよい(例えば多孔性固体支持体の内部部分に取り付けられてもよい)。
【0121】
基材は、基材に取り付けられたナノワイヤがパターンで設けられるようにパターン化されうる。ナノワイヤが基材上にパターンで設けられことができるように、パターン、例えばストライプ、渦、線、三角形、長方形、円、円弧、チェック、格子縞、斜線、矢印、正方形、またはクロスハッチが、基材上にエッチング、印刷、処理、スケッチ、切断、彫刻、刻印、インプリント、固定、スタンプ、被覆、エンボス、埋め込み、または層状化されてもよい。
【0122】
ナノワイヤの表面は、正に帯電していてもよい。したがって、例えば負に帯電した細胞外小胞は、効率的に収集されうる。例えばナノワイヤは、ZnO、酸化ニッケルなどの正帯電材料で形成されていてもよく、またはナノワイヤはそのような材料で被覆されてもよい。
デバイス
【0123】
サンプル、例えば血液、血漿、または尿から細胞外小胞を分離するためにデバイスが使用されうる。
【0124】
本明細書に記載される方法とともに使用されうる本明細書に記載されたデバイスは、
(a)(b)と流体連通するサンプル入力部
(b)(c)または(d)と流体連通する分離手段、任意に膜、フィルタ、少なくとも1つのナノワイヤ、またはそれらの組み合わせ、
(c)廃棄物チャンバ、または
(d)廃棄物出力部
を含むマイクロ流体デバイスであってもよい。
【0125】
本明細書に記載される方法とともに使用されうる本明細書に記載されたデバイスは、複数のウェルを含む固体基材であって、各ウェルは少なくとも1つのナノワイヤ、任意にナノワイヤを含むアレイを含む、固体基材であってもよい。
【0126】
本明細書に記載される方法とともに使用されうる本明細書に記載されたデバイスは、任意に互いに流体連通する複数のチャンバを含む固体基材であって、各チャンバは少なくとも1つのナノワイヤ、任意にナノワイヤを含むアレイを含む、固体基材であってもよい。
【0127】
本明細書に記載されるデバイスは、ウェルまたはチャンバの上のカバー、任意に、取り外し可能でありうるカバーを含んでいてもよい。
【0128】
サンプルは、例えばシリンジ、シリンジポンプによってサンプル入力部に導入されてもよい。サンプル入力部は、細胞外小胞の捕捉を可能にする膜、フィルタ、少なくともナノワイヤ、またはそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない分離手段に流体連結される。サンプルを分離手段に通過させた後、細胞外小胞が膜、フィルタ、ナノワイヤ、またはそれらの組み合わせと接触し、膜、フィルタ、ナノワイヤ、またはそれらの組み合わせ上に細胞外小胞が捕捉される。捕捉された細胞外小胞は、顕微鏡法および/または画像化手段などによって調べられてもよい。
【0129】
サンプルが導入された後、ナノワイヤをバッファーで洗浄して、未反応の細胞外小胞および他の物質を除去してもよい。ナノワイヤに吸着された細胞外小胞は分析されうる。
【0130】
デバイスのナノワイヤ上に吸着されたサンプルを光学顕微鏡または電子顕微鏡で観察するときに、カバーは、基材から剥がされてもよい。基材とカバー部材とが接着剤で密着しているときには、カバー部材は、例えばブレードで切断することによって除去されてもよい。顕微鏡観察により、例えば捕捉されたサンプルのサイズおよび数が決定されうる。また、例えば蛍光標識などの光標識をサンプルに結合することにより、捕捉されたサンプルの表面タンパク質の定量分析が行われうる。
【0131】
例えば、尿を、正帯電表面を有するナノワイヤ(例えばZnO、SiO、LiO、MgO、Al、CaO、TiO、Mn、Fe、CoO、NiO、CuO、Ga、SrO、In、SnO、Sm、EuO、またはこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの表面を有するナノワイヤ)と尿のpH環境で接触させ、それから非イオン性界面活性剤を含むバッファーで(任意に)洗浄し、尿抽出物を抽出して尿抽出物を産出することにより、尿抽出物が得られてもよい。尿は、ナノワイヤの尿との接触時、接触前、接触後、または接触中にナノワイヤの表面電荷が正になるようにpH調整されてもよい。
細胞外小胞(EV)の検出
【0132】
ナノワイヤを含むデバイスにEVを導入した後、細胞外小胞を含むナノワイヤをバッファーで洗浄して、ナノワイヤによって捕捉されていない細胞外小胞および他の任意の異物(単数または複数)を除去してもよい。
【0133】
バッファーは、任意の等張液であってもよく、例えば正常塩溶液、緩衝塩溶液、乳酸リンゲル溶液、5%ぶどう糖液(D5W)、リンゲル溶液、または0.9%塩溶液であってもよい。バッファーは、ミネラルバッファー、平衡塩溶液(BSS:balanced saline solution)、トリスバッファー溶液(TBS:TRIS buffer solution)、リン酸緩衝塩溶液(PBS:phosphate buffered saline)、有機バッファー、ホウ酸塩バッファー溶液、炭酸塩バッファー溶液、炭酸塩緩衝溶液、クエン酸塩バッファー溶液、グリシンバッファー溶液、トリス緩衝塩溶液、ダルベッコリン酸塩バッファー(DPBS:Dulbecco’s Phosphate saline buffer)、ダルベッコイーグル培地(DMEM:Dulbecco’s Eagle Media)、ハンクス平衡塩類溶液(HBSS:Hank’s Balanced Salts and Saline Solution)、タイロード平衡塩類溶液(TBSS:Tyrode’s Balanced Salts and Saline Solutions)、最小必須培地、イーグル基礎培地(EBM:Eagle Basal Medium)、アール平衡塩溶液(EBSS:Earle’s Balanced Salts and Solutions)、パク塩溶液、クレブス‐リンゲル重炭酸塩バッファー、クレブス‐ヘンゼライトバッファー、ゲイ平衡塩溶液(GBSS:Gey’s Balanced Salt Solution)、グッドバッファー、ACESバッファー、BESバッファー、ビシンバッファー、ビス‐トリスバッファー、CAPSバッファー、CAPSOバッファー、CHESバッファー、グリシル‐グリシルバッファー、MESバッファー、HEPESバッファー、MOPSバッファー、イミダゾールバッファー、コハク酸バッファー、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0134】
バッファーで洗浄した後、ブロッキング剤を含むバッファー(本明細書に記載されるものを含む)を導入し、約1~60分間インキュベートさせてもよい。ブロッキング剤は、ウシ血清アルブミン(BSA:bovine serum albumin)、脱脂粉乳(NFDM:non‐fat dry milk)、魚ゼラチン、全血清、または、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA:polyvinyl alcohol)、およびポリビニルピロリドン(PVP:polyvinylpyrrolidone)を含むがこれらに限定されないポリマーであってもよい。ブロッキング剤は、約0.1%~10%、例えば1%または4%の濃度で使用されてもよい。
【0135】
例えば、1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含むバッファーを含むブロッキング溶液が導入され、約15分間インキュベートされあってもよい。デバイスを、ブロッキング剤を含むバッファーを用いて、約-20℃~25℃の間の温度でインキュベートしてもよい。ブロッキング剤を含むバッファーでのインキュベーションに続いて、デバイスをバッファーで洗浄し、細胞外小胞に結合する抗体を用いてインキュベートしあってもよい。この一次抗体は、当技術分野で知られる方法を使用して二次抗体を用いて可視化されてもよい。
【0136】
例えば、デバイスをPBSで洗浄し、Alexa Fluor488標識マウス抗ヒトCD63モノクローナル抗体(10μmg/ml)またはマウス抗ヒトCD81モノクローナル抗体(10μmg/ml)をデバイスに導入し、15分間静置してもよい。CD81を検出するために、デバイスを洗浄し、それからAlexa Fluor488標識ヤギ抗マウスIgGポリクローナル抗体を二次抗体としてデバイスに導入し、それから15分間静置してもよい。最後に、デバイスをPBSで洗浄してもよく、蛍光顕微鏡下で蛍光強度を観察してもよい。EVサンプルの代わりにPBSを使用して、バックグラウンド値を得てもよい。96ウェルプレートを使用した検出では、EVサンプルをプレートの穴に注入し、6時間静置してもよく、その後、穴をPBSで洗浄してもよい。1%BSA溶液をプレートの穴に導入し、90分間静置してもよい。それからウェルをPBSで洗浄してもよく、Alexa Fluor488標識マウス抗ヒトCD63モノクローナル抗体(10μg/ml)またはマウス抗ヒトCD81抗体(10μg/ml)をプレートのウェルに導入し、45分間静置してもよい。CD81検出のために、これに加えてプレートの穴をPBSで洗浄してもよく、それからAlexa Fluor488で標識されたヤギ抗マウスIgGポリクローナル抗体(5μg/ml)を二次抗体としてプレートの穴に導入し、それから45分間静置してもよい。最後に、プレートの穴をPBSで洗浄してもよく、プレートリーダーを使用して蛍光強度を観察してもよい。EVサンプルの代わりにPBSを使用して、バックグラウンド値を得てもよい。
miRNA検出
【0137】
マイクロRNAの検出は、定量ポリメラーゼ連鎖反応(PCR:quantitative polymerase chain reaction)、miRNA検出用マイクロアレイ、RNA‐Seq(例えば次世代シーケンシング(NGS:next generation sequencing))、およびマルチプレックスmiRNAプロファイリングなどの当業者に知られるmiRNA検出方法を用いて行われうる。尿または尿抽出物を含むサンプルは、例えば500種以上のmiRNAを含んでいてもよい。したがって、これら全てのmiRNAの発現を確認するために、例えばmiRNA検出用マイクロアレイ、RNA‐Seq法、マルチプレックスmiRNAプロファイリング法が用いられうる。定量PCRに基づく方法、マルチプレックスmiRNAプロファイリング法は、尿または尿抽出物中の1つ以上の特定のmiRNAを検出するためにも使用されうる。
【0138】
本明細書に記載される方法では、対象における本開示のmiRNAマーカーの検出および定量は、当技術分野で周知の方法にしたがって行われうる。例えば、RNAを含みうる対象からの任意の適切なサンプルからRNAを得てもよく、それから本開示の方法にしたがってmiRNA(単数または複数)の存在および/または同定のために十分に確立されたプロトコルにしたがってRNAを調製および分析してもよい。
【0139】
精製されたmiRNAは、当技術分野で知られる方法を用いて標識されてもよい。
したがって例えば、mirVana(商標)miRNA標識キット(アンビオン(Ambion))およびアミン反応性色素を製造者が推奨するように使用して標識が行われうる。アミン修飾されたmiRNAをクリーンアップし、NHSエステル修飾Cy5またはCy3色素に結合しうる(アマルシャムバイオサイエンス(Amersham Bioscience))。SLEサンプルをCy5で標識してもよく、健常対照をCy3で標識する。取り込まれていない色素を除去し、当業者に知られる方法にしたがってサンプルをデュプリケートでハイブリダイズさせてもよい。したがって例えば、mirVana(商標)miRNAバイオアレイ(アンビオン(Ambion))キットが製造者の指示にしたがって使用されうる。
【0140】
ストリンジェントな条件下で、例えば約45℃での6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)におけるフィルタに結合したDNAへのハイブリダイゼーション、続いて約50~65℃での0.2×SSC/0.1%SDSにおける1回以上の洗浄、例えば約45℃での6×SSCにおけるフィルタに結合した核酸へのハイブリダイゼーション、続いて約68℃での0.1×SSC/0.2%SDSにおける1回以上の洗浄、または当業者に知られる他のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、本明細書に開示されるmiRNA配列(配列番号1~484)の1つをコードするものに相補的なヌクレオチド配列にハイブリダイズするヌクレオチド配列。例えば、アウスベル(Ausubel)F.M.ら編、1989年、分子生物学における現在のプロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)、Vol.I、グリーンパブリッシングアソシエイツ社(Green Publishing Associates,Inc.)およびジョンワイリーアンドサンズ社(John Wiley & Sons,Inc.)、ニューヨーク、ページ6.3.1‐6.3.6および2.10.3を参照されたい。
【0141】
マイクロアレイによるmiRNAの検出および分析は、miRNAを(例えば蛍光標識を標識として使用して)標識するステップと、ハイブリダイゼーションのための溶液を調製するステップと、サンプル中のmiRNAをマイクロアレイ上の核酸などのmiRNA検出試薬とハイブリダイズさせるステップと、マイクロアレイを洗浄するステップと、それから標識の量(例えば蛍光の量)を測定するステップとを含みうる。抽出されたRNAサンプルの品質は、例えば当業者に周知の方法または市販の機器およびキット(例えばアジレントテクノロジーズ社(Agilent Technologies, Inc.)のAgilent2100バイオアナライザおよびRNALabChip)を使用して、20~30ヌクレオチドの間のサイズのピークの出現を指標として確認されうる。miRNAの標識は、例えば当業者に周知の方法および市販のキット(例えば3D‐Gene(商標)miRNA標識キット(東レ株式会社(Toray Corporation)を用いて行われうる。また、例えばマイクロアレイによるmiRNA分析は、東レ株式会社(Toray Corporation)製の3D‐Gene(商標)Human/Mouse/Rat/4animal miRNA Olico chip‐4plexを使用して、製品の製造者の指示にしたがって行われうる。
【0142】
マイクロRNAを検出するためのマイクロアレイは、SLEを有することが疑われる1人、2人、または3人の患者において、1人、2人、または3人の健常個体のいずれよりも高い発現を示すマイクロRNAの群より選択される1つ以上に対するプローブを含むマイクロアレイでありうる。マイクロアレイは、SLE患者において健常個体においてよりも高い発現を示す(例えば1.01倍以上、1.02倍以上、1.03倍以上、1.04倍以上、1.05倍以上、1.06倍以上、1.07倍以上、1.08倍以上、1.09倍以上、1.1倍以上、1.2倍以上、1.3倍以上、1.4倍以上、1.5倍以上、1.6倍以上、1.7倍以上、1.8倍以上、1.9倍以上、2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、6倍以上、7倍以上、8倍以上、9倍以上、または10倍以上)マイクロRNAの群のうちの1つ以上に対するプローブを含んでいてもよい。マイクロアレイは、SLE患者において健常個体においてよりも低い発現を示す(例えば0.99倍以下、0.98倍以下、0.97倍以下、0.96倍以下、0.95倍以下、0.94倍以下、0.93倍以下、0.92倍以下、0.91倍以下、0.9倍以下、0.8倍以下、0.7倍以下、0.6倍以下、0.5倍以下、0.4倍以下、0.3倍以下、0.2倍以下、0.1倍以下、0.09倍以下、0.08倍以下、0.07倍以下、0.06倍以下、0.05倍以下、0.04倍以下、0.03倍以下、0.02倍以下、または0.01倍以下)マイクロRNAの群のうちの1つ以上に対するプローブを含んでいてもよい。
【0143】
一態様では、検出されるマイクロRNAの種(すなわちマイクロアレイに搭載されるプローブの種類)は、例えば1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、20以上、30以上、40以上、50以上、60以上、70以上、80以上、90以上、100以上、200以上、300以上、400以上、500以上、600以上、700以上、800以上、900以上、1000以上、1500以上、2000以上、2500以上、または3000以上でありうる。
【0144】
別の態様では、検出されるマイクロRNAの種(すなわちマイクロアレイに搭載されるプローブの種類)は、例えば3000以下、2500以下、2000以下、1900以下、1800以下、1700以下、1600以下、1500以下、1400以下、1300以下、1200以下、1100以下、1000以下、900以下、800以下、700以下、600以下、500以下、400以下、300以下、200以下、100以下、90以下、80以下、70以下、60以下、50以下、40以下、30以下、20以下、または10以下でありうる。
【0145】
マイクロアレイ中のマイクロRNAに対するプローブは、マイクロRNAにハイブリダイズすることができる核酸およびその誘導体であり得、当業者によって適切に設計されうる。例えばSLEを示すmiRNAに対するプローブは、配列番号1~484のリボヌクレオチド配列のmiRNAにハイブリダイズするリボヌクレオチド配列およびそれらの組み合わせを含んでいてもよい。
【0146】
細胞外小胞に含まれるmiRNAの検出の前に、細胞外小胞は細胞溶解バッファーでのインキュベーション、アルカリ/デタージェントの前処理、1~10日間、好ましくは約7日間の、約-25℃での保存、またはそれらの組み合わせによって破砕されてもよい。さらに細胞外小胞は、ワン(Wang)らメソッズインモレキュラーバイオロジー(Methods Mol Biol.)(2017年)1660:367‐376に記載される電界誘起破砕を用いて破砕されてもよい。
【0147】
例えば、アルカリ/デタージェントの前処理は、サンプルを0.4N NaOHで0.5%Triton X‐305と一緒に約20分間処理すること、0.01%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS:sodium dodecyl sulfate)で10分間インキュベートしてEV膜を破砕することを含んでいてもよい。
分類系
【0148】
医学的状態の発生を診断および予測する際に使用される例示的な分類系は、米国特許第7,321,881号;7,467,119号;7,505,948号;7,617,163号;7,676,442号;7,702,598号;7,707,134号;7,747,547号;および9,952,220号に記載されるものを含んでいてもよく、これらはそれぞれ参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0149】
本発明は、とりわけ、SLEの様々な重症度を含む健常者およびSLE患者からの実験miRNA発現データセットを含むデータに基づくmiRNAの特徴付けに関する。miRNA発現データセットは、専有のもの(propriety)であってもよく、または公開利用可能なデータベースからアクセスされてもよい。
【0150】
本明細書で使用される分類系は、コンピュータ実行可能ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、またはそれらの組み合わせを含んでいてもよい。例えば分類系は、プロセッサおよびサポートデータストレージへの言及を含んでいてもよい。さらに、分類系は、互いにローカルまたはリモートの複数のデバイスまたは他のコンポーネントにわたって実装されてもよい。分類系は、集中系において、または追加のスケーラビリティのための分散系として実装されてもよい。さらに、ソフトウェアへの言及には、コンピュータ上で実行されたときにコンピュータに一連のステップを行わせる非一時的コンピュータ可読媒体が含まれてもよい。
【0151】
本明細書に記載される分類系は、ネットワークアクセス可能ストレージ、ローカルストレージ、リモートストレージ、またはそれらの組み合わせなどのデータストレージを含んでいてもよい。データストレージは、リダンダントアレイオブインエクスペンシブディスクズ(「RAID:redundant array of inexpensive disks」)、テープ、ディスク、ストレージエリアネットワーク(「SAN:storage area network」)、インターネットスモールコンピュータシステムインターフェイス(「iSCSI:internet small computer systems interface」)SAN、ファイバチャネルSAN、共通インターネットファイルシステム(「CIFS:common Internet File System」)、ネットワークアタッチドストレージ(「NAS:network attached storage」)、ネットワークファイルシステム(「NFS:network file system」)、または他のコンピュータアクセス可能ストレージを利用してもよい。データストレージは、Oracleデータベース、Microsoft SQL Serverデータベース、DB2データベース、MySQLデータベース、Sybaseデータベース、オブジェクト指向データベース、階層型データベース、クラウドベースのデータベース、公開データベース、または他のデータベースなどのデータベースであってもよい。データストレージは、データの記憶のためにフラットファイル構造を利用してもよい。例示的な実施形態は、深層学習アルゴリズムを訓練するために、4992個のCUDAコアおよび大量のGBのメモリ(例えば11GB超)をそれぞれ備えた2つのTesla K80 NVIDIA GPUを使用した。
【0152】
第1ステップで、分類器を使用して既定のデータのセットが記述される。これが「学習ステップ」であり、「訓練」データに対して実施される。
【0153】
訓練データベースは、それぞれのmiRNAがSLEおよび/またはSLE重症度に関して分類された複数のmiRNAについての複数のmiRNA発現データを反映するコンピュータ実装データストアである。miRNA発現データは、miRNA発現データ、予測miRNA発現データ、またはそれらの組み合わせを含んでいてもよい。記憶されたデータのフォーマットは、フラットファイル、データベース、テーブル、または当技術分野で知られる他の任意の検索可能なデータストレージフォーマットであってもよい。テストデータは複数のベクトルとして記憶されてもよく、各ベクトルは個々のmiRNAに対応し、各ベクトルは複数のmiRNA発現データについての複数のmiRNA発現データ尺度をmiRNAのSLEおよび/またはSLE重症度特徴付けに関する分類と一緒に含む。ベクトルは、複数の実験miRNA発現データについてのmiRNA発現データ尺度を、miRNAのSLEおよび/またはSLE重症度特徴付けに関する分類と一緒にさらに含んでいてもよい。通常、各ベクトルは、複数のmiRNA発現データ尺度の中の各miRNA発現データ尺度のエントリを含む。エントリは、異なる体液データにおけるmiRNAの存在または不存在をさらに含んでいてもよい。訓練データベースは、その内容が権限ある主体(例えば人間のユーザまたはコンピュータプログラム)によってリモートで検索されうるように、インターネットなどのネットワークにリンクされてもよい。あるいは、訓練データベースは、ネットワーク隔離されたコンピュータに位置してもよい。さらに、訓練データベースは、SLEの診断において有用なmiRNAについてのmiRNA発現データ(例えば実験、予測、およびそれらの組み合わせ)を含む専有データベースおよび公開データベースを含むクラウドベースであってもよい。
【0154】
任意の第2ステップで、分類器が「検証」データベースにおいて適用され、感度および特異度を含む様々な精度の尺度が観察される。例示的実施形態では、訓練データベースの一部のみが学習ステップのために使用され、訓練データベースの残りの部分が検証データベースとして使用される。第3ステップで、対象からのmiRNA発現データ尺度が分類系に送られ、分類系は、対象についての計算された分類(例えばSLEおよび/またはSLE重症度に関連するものとしてのmiRNAの特徴付け)を出力する。加えて、異なる体液データにおけるmiRNAの存在または不存在も使用されてもよい。
【0155】
データに使用されうる多数の考えられる分類器がある。AdaBoost、人工ニューラルネットワーク(ANN:Artificial Neural Network)学習アルゴリズム、ベイジアン信念ネットワーク、ベイジアン分類器、ベイジアンニューラルネットワーク、ブースト木、事例ベース推論、分類木、畳み込みニューラルネットワーク、決定木、深層学習、エラスティックネット、全層畳み込みネットワーク(FCN:Fully Convolutional Networks)、遺伝的アルゴリズム、勾配ブースティング木、k近傍法分類器、LASSO、線形分類器、単純ベイズ分類器、ニューラルネット、ペナルティ付きロジスティック回帰、ロジスティック回帰モデル、ランダムフォレスト、リッジ回帰、サポートベクトルマシン、またはそれらのアンサンブルを含むがこれらに限定されない機械および深層学習分類器が、データを分類するために使用されうる。例えばハン(Han)&カンバー(Kamber)(2006年)第6章、データマイニング、構想と技術(Data Mining、Concepts and Techniques)、第2版、エルゼビア(Elsevier)、アムステルダムを参照されたい。本明細書に記載されるように、任意の分類器または分類器の組み合わせ(例えばアンサンブル)が分類系において使用されてもよい。本明細書で論じられるように、データは、分類器を訓練するためにデータが使用されてもよい。当技術分野で知られる他の分類器および機械学習系も使用されてもよい。例えば、Pythonコンピュータ言語の機械学習系であるscikit‐leamが使用されてもよい。
【0156】
Scikit‐learn(sklearnとしても知られる)は、Pythonプログラミング言語のための機械学習ライブラリである。
【0157】
Scikit‐learnは、サポートベクトルマシン、ランダムフォレスト、勾配ブースティング、k平均法およびノイズあり適用の密度準拠空間クラスタリング(DBSCAN:Density‐based spatial clustering of applications with noise)を含む分類、回帰、およびクラスタリングアルゴリズムを使用し、Pythonの数値および科学ライブラリNumPyおよびSciPyと相互運用するように設計される。
【0158】
好ましい分類器は、以下の式を用いるロジスティック回帰モデルである。
【0159】
(真陽性+真陰性)/真陽性+真陰性+偽陽性+偽陰性)。
【0160】
本明細書に記載される分類器は、以下のようにロジスティック回帰モデルによる分類器を用いて構築されてもよい。
Yは予測目的変数、xは各miRNA種の蛍光強度、bは各miRNA種の重み係数、aは切片であった。このモデルにおいて、bおよびaは、教師あり機械学習によってナノワイヤで抽出された尿中miRNA種の各蛍光強度から推定された。Yの値は、0.5未満が非がん対象として、0.5以上のYの値ががん対象として定義された。分類器は、ロジスティック回帰分類器をフィッティングする際に最小二乗誤差項およびL1正則化項の最適化問題を同時に解き、lが2項間のアジャスターとして作用した。l=1を用いたとき、より高いAUC、感度、および特異度の値が示された。
訓練データ
【0161】
別の態様では、本明細書に記載される方法は、ライブラリまたはデータベース内のデータの合計100%のデータのうち約75%、約80%、約85%、約90%、または約95%の訓練と、残りのパーセンテージのテストとを含む。一態様では、データの約70%~約90%が訓練され、残りの約10%~約30%のデータがテストされ、データの約80%~約95%が訓練され、残りの約5%~約20%のデータがテストされ、またはデータの約90%~が訓練され、残りの約10%のデータがテストされる。一態様では、データベースまたはライブラリは、約20超、約50、約100超、約150超、約200超、または約300超のmiRNAの分析からのデータを含む。さらなる態様では、ライブラリまたはデータベースは、例えばmiRNA発現法からの検証済み実験データのみを含む。さらに別の態様では、ライブラリまたはデータベースは、患者サンプルを分析することによりmiRNAの存在または出現率を決定することなく理論的に調製されたmiRNA発現データを含まない。訓練データは、miRNA発現レベル、体液中のmiRNAの存在もしくは不存在、またはそれらの組み合わせを含んでいてもよい。
分類系(単数または複数)を使用したデータの分類方法
【0162】
本発明は、個体から得られたデータ(テストデータ、例えばmiRNA発現レベル、体液中のmiRNAの存在もしくは不存在、またはそれらの組み合わせ)を分類する方法を提供する。これらの方法は、訓練データを準備するかまたは得るステップ、ならびに本明細書に記載される少なくとも1つの分類器を含む分類系の1つを使用して個体から得られたテストデータを(訓練データと比較して)評価するステップを含む。好ましい分類系は、サポートベクトルマシン(SVM:support vector machines)、AdaBoost、ペナルティ付きロジスティック回帰、ロジスティック回帰、単純ベイズ分類器、分類木、k近傍法分類器、深層学習分類器、ニューラルネット、ランダムフォレスト、全層畳み込みネットワーク(FCN)、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)、および/またはそれらのアンサンブルなどであるがこれらに限定されない分類器を使用する。Scikit‐learnは、サポートベクトルマシン、ランダムフォレスト、勾配ブースティング、k平均法およびノイズあり適用の密度準拠空間クラスタリング(DBSCAN)を含む分類、回帰、およびクラスタアルゴリズムのアンサンブルを含む好ましい機械学習ライブラリである。分類系は、テストデータ、例えばmiRNA発現レベル、体液中の存在、またはそれらの組み合わせに基づいて、miRNAの分類を出力する。
【0163】
本発明に特に好ましいのは、複数の分級器を組み合わせる、分類系に対して用いられるアンサンブル法である。例えば、アンサンブル法は、miRNA発現のSLEおよび/またはSLE重症度との相関に関する予測を行うために、SVM、AdaBoost、ペナルティ付きロジスティック回帰、ロジスティック回帰、単純ベイズ分類器、分類木、k近傍法分分類器、ニューラルネット、全層畳み込みネットワーク(FCN)、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)、ランダムフォレスト、深層学習、またはそれらの任意のアンサンブルを含んでいてもよい。アンサンブル法は、各分類器、および各miRNA発現データのレプリケート測定によって提供される利点を活用するために開発された。
【0164】
テストデータを分類する方法であって、テストデータはmiRNAの発現データを含み、
(a)電子的に記憶された訓練データベクトルのセットにアクセスするステップであって、各訓練データベクトルまたはkタプルは個々のmiRNAを表し、各レプリケートでのそれぞれのmiRNAについてのmiRNA発現データを含み、訓練データベクトルは、それぞれのmiRNAのmiRNA特徴付けに関する分類をさらに含む、ステップと、
(b)本明細書に記載される分類器または分類器のアンサンブルの電子表現を電子的に記憶された訓練データベクトルのセットを使用して訓練するステップと、
(c)複数のmiRNA発現データを含むテストデータを受け取るステップと、
(d)本明細書に記載される分類器および/または分類器のアンサンブルの電子表現を使用してテストデータを評価するステップと、
(e)評価するステップに基づいてmiRNAの分類を出力するステップとを含む、方法。
テストデータは、体液中のmiRNAの存在または不存在に関するデータをさらに含んでいてもよい。
【0165】
別の実施形態では、本発明は、テストデータを分類する方法であって、テストデータはmiRNA発現データを含み、
(a)電子的に記憶された訓練データベクトルのセットにアクセスするステップであって、各訓練データベクトルまたはkタプルは個々のヒトを表し、各レプリケートでのそれぞれのヒトについてのmiRNA発現データを含み、訓練データは、それぞれのmiRNAのSLEとの相関に関する分類をさらに含む、ステップと、
(b)電子的に記憶された訓練データベクトルのセットを使用して、分類器および/または分類器のアンサンブルを構築するステップと、
(c)ヒトテスト対象について複数のmiRNA発現データを含むテストデータを受け取るステップと、
(d)分類器(単数または複数)を使用してテストデータを評価するステップと、
(e)評価するステップに基づいてヒトテスト対象の分類を出力するステップとを含む、方法を提供する。
あるいは、全てのレプリケート(または任意の組み合わせ)が平均化されて、各対象の各miRNA発現データの単一の値が生成されてもよい。本発明による出力するステップは、ヒトテスト対象の分類に関する情報を電子ディスプレイに人間が読める形式で表示するステップを含む。miRNAデータは、miRNA発現データ、体液中のmiRNAの存在もしくは不存在、またはそれらの組み合わせを含んでいてもよい。
【0166】
訓練ベクトルのセットは、少なくとも20、25、30、35、50、75、100、125、150、またはそれ以上のベクトルを含んでいてもよい。
【0167】
テストデータは、体液中のmiRNAの存在もしくは不存在、miRNA発現データ、またはそれらの組み合わせなどの任意の情報尺度であってもよい。
【0168】
機械学習系を訓練するために使用されるデータは、少なくとも5、10、15、20、または25の異なる症状を含むSLE患者からのデータ、少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、もしくは45の正常組織を含む正常組織からのデータ、またはそれらの組み合わせを含んでいてもよい。加えて、機械学習系を訓練するために使用されるデータ、例えばScikit‐learn。
【0169】
データを分類する方法は、本明細書に記載される方法のいずれにおいて使用されてもよいことが理解されよう。特に、本明細書に記載されるデータを分類する方法は、診断および治療方法で用いるためのSLEおよび/またはSLEの重症度に関連するmiRNAを同定するための方法において使用されてもよい。
【0170】
本発明に特に好ましいのは、複数の分級器を組み合わせる、分類系に対して用いられるアンサンブル法である。例えば、アンサンブル法は、miRNAのSLEおよび/またはSLEの重症度との関連に関する予測を行うために、サポートベクトルマシン(SVM)、AdaBoost、ペナルティ付きロジスティック回帰、ロジスティック回帰、単純ベイズ分類器、分類木、k近傍法分類器、ニューラルネット、深層学習系、ランダムフォレスト、またはそれらの任意の組み合わせを含んでいてもよい。加えて、アンサンブルは、miRNAとSLEのタイプとの関連に関する予測を行うために使用されてもよい。アンサンブルアプローチは、各分類器、および各miRNAのレプリケート測定によって提供される利点を活用する。
【0171】
一態様では、本開示は、テストデータを分類する方法であって、テストデータはmiRNA発現データを含み、
(a)少なくとも1つのプロセッサで、miRNA発現データを含むテストデータを受け取るステップと、
(b)少なくとも1つのプロセッサを使用して、分類系の電子表現である分類器を使用してテストデータを評価するステップであって、各前記分類器は電子的に記憶された訓練データベクトルのセットを使用して訓練され、各訓練データベクトルは個々のmiRNAを表し、miRNAについてのmiRNA発現データを含み、各訓練データベクトルは、miRNAがSLEを示すか否かに関する分類をさらに含む、ステップと、
(c)少なくとも1つのプロセッサを使用して、評価するステップに基づいてmiRNAがSLEを示すか否かの尤度に関してmiRNA発現データからのサンプルの分類を出力するステップとを含む方法を含んでいてもよい。
【0172】
別の態様では、本開示は、テストデータを分類する方法であって、テストデータはmiRNA発現データを含み、
(a)少なくとも1つのプロセッサを使用して、電子的に記憶された訓練データベクトルのセットにアクセスするステップであって、各訓練データベクトルは個々の患者を表し、それぞれの患者についてのmiRNA発現データを含み、各訓練データベクトルはmiRNA発現がSLEと関連するか否かに関する分類をさらに含む、ステップと、
(b)電子的に記憶された訓練データベクトルのセットを使用して、分類系の電子表現を訓練するステップと、
(c)少なくとも1つのプロセッサで、miRNA発現データを含むテストデータを受け取るステップと、
(d)少なくとも1つのプロセッサを使用して、分類系の電子表現を使用してテストデータを評価するステップと、
(e)評価するステップに基づいて、miRNA発現がSLEと関連するか否かに関してテストデータの分類を出力するステップとを含む方法を含んでいてもよい。
【0173】
別の態様では、本開示は、テストデータを分類する方法であって、テストデータはmiRNA発現データを含み、
(a)少なくとも1つのプロセッサを使用して、電子的に記憶された訓練データベクトルのセットにアクセスするステップであって、各訓練データベクトルはSLEの重症度を表し、SLEのそれぞれの重症度についてのmiRNA発現データを含み、各訓練データベクトルはmiRNAがSLEの重症度と関連するか否かに関する分類をさらに含む、ステップと、
(b)電子的に記憶された訓練データベクトルのセットを使用して、分類系の電子表現を訓練するステップと、
(c)少なくとも1つのプロセッサで、miRNAの発現データを含むテストデータを受け取るステップと、
(d)少なくとも1つのプロセッサを使用して、分類系の電子表現を使用してテストデータを評価するステップと、
(e)評価するステップに基づいて、miRNAがSLEの重症度に関連するか否かに関してテストデータの分類を出力するステップとを含む方法を含んでいてもよい。
【0174】
別の態様では、本開示は、テストデータを分類する方法であって、
(a)個体からサンプルを得るステップと、
(b)サンプル中のmiRNAの発現データを入手するステップと、
(c)実験miRNA発現データをデータベース内に位置するmiRNA発現データと比較するステップと、
(d)実験miRNA発現データとデータベース内に位置するmiRNA発現データとの間のマッチを作成するステップと、
(e)ステップ(a)、(b)、(c)、(d)、またはそれらの組み合わせに基づいてマッチしたmiRNAのデータセットを産出するステップと、
(g)分類系を使用してmiRNAのデータセットを評価して、SLEを示すmiRNA発現プロファイルを作成するステップとを含む方法を含んでいてもよい。
【0175】
別の態様では、本開示は、テストデータを分類する方法であって、
(a)患者からの少なくとも1つのサンプルと健常個体から対応するサンプルとを得るステップと、
(b)サンプル中の少なくとも1つのmiRNAを同定するステップと、
(c)サンプルから実験miRNA発現データを作成するステップと、
(e)実験miRNA発現データをデータベース内のmiRNA発現データ(expression date)と比較するステップと、
(f)実験miRNA発現データとデータベース内に位置するmiRNA発現データとの間のマッチを作成するステップと、
(g)miRNA発現データのスペクトルライブラリを産出するステップと、
(h)分類系を使用してmiRNA発現のスペクトルライブラリを評価して、miRNA発現予測モデルを作成するステップと、
(i)予測モデルを使用して、SLEに関連する予測miRNA発現パターンを作成するステップとを含む方法を含んでいてもよい。
【0176】
別の態様では、本開示は、SLEに関連するmiRNAを同定するためにテストデータを分類する方法であって、
(a)患者からの少なくとも1つのサンプルと健常個体からの対応するサンプルとを得るステップと、
(b)サンプル中の少なくとも1つのmiRNAを同定して、実験miRNA発現データを産出するステップと、
(c)実験miRNA発現データをデータベース内のmiRNA発現データと比較するステップと、
(d)偽発見率(FDR:false discovery rate)の推定と、
(e)実験miRNA発現データとデータベース内のmiRNA発現データとのマッチの作成と、
(f)比較により作成されたデータを分類系に入力して、miRNA発現予測モデルを訓練するステップと、
(g)予測miRNA発現パターンを開発するステップと、
(h)miRNA発現パターンを、SLEを示すものとして同定するステップとを含む方法を含んでいてもよい。
【0177】
別の態様では、データベースは、公開データベース、非公開データベース、またはそれらの組み合わせであってもよい。別の態様では、miRNA発現データは、実験miRNA発現データ、予測miRNA発現データ、またはそれらの組み合わせであってもよい。別の態様では、miRNA発現データは実験miRNA発現データである。別の態様では、テストデータは、体液中のmiRNAの存在または不存在に関するデータをさらに含んでいてもよい。別の態様では、miRNA発現は、マイクロアレイ分析、またはその組み合わせを使用して同定されてもよい。
【0178】
別の態様では、分類系は、AdaBoost、人工ニューラルネットワーク(ANN)学習アルゴリズム、ベイジアン信念ネットワーク、ベイジアン分類器、ベイジアンニューラルネットワーク、ブースト木、事例ベース推論、分類木、畳み込みニューラルネットワーク、決定木、ロジスティック回帰モデル、深層学習、エラスティックネット、全層畳み込みネットワーク(FCN)、遺伝的アルゴリズム、勾配ブースティング木、k近傍法分類器、LASSO、線形分類器、単純ベイズ、ニューラルネット、ペナルティ付きロジスティック回帰、ランダムフォレスト、リッジ回帰、サポートベクトルマシン、またはそれらのアンサンブルであってもよい。別の態様では、分類系は、分類系のアンサンブルであってもよい。
【0179】
別の態様では、ライブラリまたはデータベースは、約70%超、約80%超、約85%超、約90%超、約95%超、または100%のmiRNA発現データを含んでいてもよい。別の態様では、miRNAは、実験的に決定されたmiRNA発現データの実際の技術的変動に対して約2%~約15%以内の同定相関を有する予測miRNA発現データによって同定されてもよい。別の態様では、本方法は、SLEを有すると疑われる患者から得られたサンプル中のmiRNA発現を、健常個体から得られた体液サンプル中のmiRNA発現と比較するステップをさらに含んでいてもよい。
SLEの診断
【0180】
対象は、当技術分野で周知の診断パラメータにしたがってSLEを有するものとして同定されてもよく、当技術分野でやはり知られる診断および/または臨床パラメータにしたがって予後が良好または不良でありうる。予後は、全生存期間の予測、スコア(SLEDAI、SLAM、BILAGなど)の改善または維持、免疫抑制剤などの薬物の減少、変形性関節症などの併存症の減少または改善、および/またはクオリティオブライフの改善を含んでいてもよい。例えば、予後が良好であるものとして同定されると考えられるSLEの対象は、症状が軽度もしくは中等度である、および/または標準治療プロトコルに反応する(すなわち改善が見られる)などの対象であってもよい。予後が不良であるものとして同定されると考えられるSLEの対象は、症状が重度である、および/または標準治療プロトコルにわずかしか反応しないかもしくは無反応である(すなわち改善がわずかしか見られない、もしくは見られない)対象であってもよい。本開示の方法にしたがって、予後良好および不良と対象のmiRNAマーカーとの間の相関付けがなされることができ、これにより臨床医は対象に最も有効な治療計画を決定することができる。したがって、SLEの予後不良または予後良好は、通常の当業者によって同定されるであろう。
【0181】
したがって、SLEを有し予後不良である対象、すなわち症状が重度である、および/または標準治療プロトコルにわずかしか反応しないかもしくは無反応である(すなわち改善がわずかしか見られない、もしくは見られない)対象の集団における1つ以上のmiRNAの量の増加または減少を検出するステップと、検出された1つ以上のmiRNAの量の増加または減少を、SLEを有し予後不良である対象の集団の予後不良と関連付けるステップとによって、予後不良の尤度と1つ以上のmiRNAの量の増加または減少との間の関連付けがなされてもよい。
【0182】
同様に、SLEを有し予後不良である対象、すなわち症状が重度である、および/または標準治療プロトコルにわずかしか反応しないかもしくは無反応である(すなわち改善がわずかしか見られない、もしくは見られない)対象の集団における1つ以上のmiRNAの量の増加または減少を検出するステップと、1つ以上のmiRNAの量の増加または減少の検出からmiRNAプロファイルを作成するステップと、miRNAプロファイルをSLEを有し予後不良である対象の集団の予後不良と関連付けるステップとによって、予後不良の尤度と特定のmiRNAプロファイルとの間の関連付けがなされてもよい。
【0183】
あるいは、SLEを有し予後良好である患者、すなわち症状が軽度もしくは中等度である、および/または標準治療プロトコルに反応する(すなわち改善が見られる)対象の集団における1つ以上のmiRNAの量の増加または減少を検出するステップと、検出された1つ以上のmiRNAの量の増加または減少を、SLEを有し予後良好である対象の集団の予後良好と関連付けるステップとによって、予後良好の尤度と1つ以上のmiRNAの量の増加または減少との間の関連付けがなされてもよい。
【0184】
さらに、SLEを有し予後良好である対象、すなわち症状が軽度もしくは中等度である、および/または標準治療プロトコルに反応する(すなわち改善が見られる)対象の集団における1つ以上のmiRNAの量の増加または減少を検出するステップと、1つ以上のmiRNAの量の増加または減少の検出からmiRNAプロファイルを作成するステップと、miRNAプロファイルを、SLEを有し予後良好である対象の集団の予後良好と関連付けるステップとによって、予後良好の尤度と特定のmiRNAプロファイルとの間の関連付けがなされてもよい。
【0185】
本開示の一態様は、患者サンプルにおいて健常個体から得られた体液サンプルと比較して配列番号1~160および243~402より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の増加、ならびに/もしくは配列番号161~242および403~484より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の減少を検出した場合にはSLEと相関するマーカーを有するものとして患者を同定するステップ、または、
健常個体から得られた体液サンプルと比較して配列番号1~160および243~402より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の増加、ならびに/もしくは配列番号161~242および403~484より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の減少が検出できない場合にはSLEと相関するマーカーを有しないものとして患者を同定するステップを含む、対象から得られた体液サンプルを使用してSLEを診断する方法を提供する。
【0186】
別の態様では、患者サンプルにおいて健常個体から得られた体液サンプルと比較して配列番号1~160および243~402より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の増加、ならびに/もしくは配列番号161~242および403~484より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の減少を検出した場合にはSLEと相関するマーカーを有するものとして患者を同定するステップ、または、健常個体から得られた体液サンプルと比較して配列番号1~160および243~402より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の増加、ならびに/もしくは配列番号161~242および403~484より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の減少が検出できない場合にはSLEと相関するマーカーを有しないものとして患者を同定するステップを含む、対象から得られた体液サンプルを使用してSLEを診断する方法を提供する。
【0187】
別の態様では、患者サンプルにおいて健常個体から得られた体液サンプルと比較して配列番号161~242および403~484より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の減少を検出した場合には中等度SLEと相関するマーカーを有するものとして患者を同定するステップ、または、健常個体から得られた体液サンプルと比較して配列番号161~242および403~484より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の減少が検出できない場合にはSLEと相関するマーカーを有しないものとして患者を同定するステップを含む、対象から得られた体液サンプルを使用してSLEを診断する方法を提供する。
【0188】
別の態様では、患者サンプルにおいて健常個体から得られた体液サンプルと比較して配列番号1~160および243~402より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の増加、ならびに/もしくは配列番号161~242および403~484より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の減少を検出した場合にはSLE併存症Aと相関するマーカーを有するものとして患者を同定するステップ、または、健常個体から得られた体液サンプルと比較して配列番号1~160および243~402より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の増加、ならびに/もしくは配列番号161~242および403~484より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の減少が検出できない場合にはSLE併存症Aと相関するマーカーを有しないものとして患者を同定するステップを含む、対象から得られた体液サンプルを使用してSLEを診断する方法を提供する。
【0189】
別の態様では、患者サンプルにおいて健常個体から得られた体液サンプルと比較して配列番号1~160および243~402より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の増加、ならびに/もしくは配列番号161~242および403~484より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の減少を検出した場合にはSLE併存症Bと相関するマーカーを有するものとして患者を同定するステップ、または、健常個体から得られた体液サンプルと比較して配列番号1~160および243~402より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の増加、ならびに/もしくは配列番号161~242および403~484より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の減少が検出できない場合にはSLE併存症Bと相関するマーカーを有しないものとして患者を同定するステップを含む、対象から得られた体液サンプルを使用してSLEを診断する方法を提供する。
【0190】
別の態様では、患者サンプルにおいて健常個体から得られた体液サンプルと比較して配列番号1~160および243~402より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の増加、ならびに/もしくは配列番号161~242および403~484より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の減少を検出した場合にはSLE併存症Cと相関するマーカーを有するものとして患者を同定するステップ、または、健常個体から得られた体液サンプルと比較して配列番号1~160および243~402より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の増加、ならびに/もしくは配列番号161~242および403~484より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の減少が検出できない場合にはSLE併存症Cと相関するマーカーを有しないものとして患者を同定するステップを含む、対象から得られた体液サンプルを使用してSLEを診断する方法を提供する。
【0191】
別の態様では、患者サンプルにおいて健常個体から得られた体液サンプルと比較して配列番号1~160および243~402より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の増加、ならびに/もしくは配列番号161~242および403~484より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の減少を検出した場合にはSLE併存症Dと相関するマーカーを有するものとして患者を同定するステップ、または、健常個体から得られた体液サンプルと比較して配列番号1~160および243~402より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の増加、ならびに/もしくは配列番号161~242および403~484より選択される少なくとも1つのmiRNAの発現の減少が検出できない場合にはSLE併存症Dと相関するマーカーを有しないものとして患者を同定するステップを含む、対象から得られた体液サンプルを使用してSLEを診断する方法を提供する。
【0192】
他の実施形態では、miRNAの5’および/または3’末端は切断されてもよい。例えば、miRNAの5’および/または3’末端のいずれかから約1~約10個のリボヌクレオチドが欠失してもよい。
医薬組成物
【0193】
本開示のmiRNAおよび/またはそれらのアゴニストもしくはアンタゴニストは、直接、または疾患、例えばSLEを治療するための他の薬剤と組み合わせて使用されてもよい。本開示は、安全な有効量の本開示のmiRNAおよび/またはそれらのアゴニストもしくはアンタゴニストならびに薬学的に許容される担体または賦形剤を含有しうる医薬組成物も提供してもよい。このような担体は、塩溶液、緩衝塩溶液、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、およびこれらの組み合わせを含んでいてもよい(がこれらに限定されない)。医薬製剤は、投与様式に合わせられうる。本開示の医薬組成物は、従来の方法によって調製されたグルコースおよび他の補助剤を含む生理塩溶液または水溶液などの注入可能な形態として生産されうる。注入可能組成物および溶液などの医薬組成物は、滅菌条件下で製造されてもよい。医薬組成物の治療有効量は、例えば体重1kgあたり約0.1μg~約10mgの、投与される医薬組成物の有効成分の有効量であってもよい。
【0194】
医薬組成物中の本開示のmiRNAおよび/またはそれらのアゴニストもしくはアンタゴニストは、少なくとも体重1kgあたり約0.1μg、大抵の場合には体重1kgあたり約10mg以下、好ましくは体重1kgあたり約0.1μg~約100μgの安全な有効量で対象、例えばSLE患者に投与されてもよい。特定の投与量は、投与経路および患者の状態に基づいて決定されてもよいが、これらは全て技術のある医師の熟練の範囲内である。
治療
【0195】
SLEのための治療計画の例は、当技術分野で知られており、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、ヒドロキシクロロキン、コルチコステロイド、アザチオプリン、メトトレキサート、シクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチル、シクロホスファミド、およびタクロリムスなどの免疫抑制薬、ならびにベリムマブ、リツキシマブ、TNFアルファ阻害剤、およびインターフェロン阻害剤などの生物剤の投与を含んでいてもよいがこれらに限定されない。
【0196】
本明細書に提供される方法にしたがって、特定の治療プロトコルに良好に反応する患者を、特有のmiRNAプロファイル(例えばSLEに関連する1つ以上のmiRNAの量の増加または減少)について分析することができ、相関を確立することができる。あるいは、特定の治療計画に対する反応が不良である患者を、特有のmiRNAプロファイル(例えばSLEに関連する1つ以上のmiRNAの量の増加または減少)を分析することもでき、その反応不良と相関づけてもよい。それから、SLEの治療の候補である対象者を、適切なmiRNAプロファイルの存在について評価することができ、最も適切な治療計画を提供することができる。
【0197】
したがって、SLEを有する、SLEのための有効な治療計画が特定されている対象の集団における1つ以上のmiRNAの量の増加または減少を検出するステップと、検出された1つ以上のmiRNAの量の増加または減少をSLEのための有効な治療計画と関連付けるステップとによって、有効な治療計画と1つ以上のmiRNAの量の増加または減少との間の関連付けがなされる。
【0198】
同様に、SLEを有する、SLEのための有効な治療計画が特定されている対象の集団における1つ以上のmiRNAの量の増加または減少を検出するステップと、1つ以上のmiRNAの量の増加または減少の検出からmiRNAプロファイルを作成するステップと、作成されたmiRNAプロファイルをSLEのための有効な治療計画と関連付けるステップとによって、有効な治療計画と特定のmiRNAプロファイルとの間の関連付けがなされてもよい。
【0199】
いくつかの実施形態では、miRNAプロファイルを治療計画と相関付ける方法は、コンピュータデータベースを使用して実施されうる。したがって本開示は、SLEのための提案される治療を特定するコンピュータ支援方法を提供してもよい。この方法は、
(a)複数の患者についての生物学的データのデータベースを記憶するステップであって、記憶される生物学的データは、前記複数の患者の各々についての(i)治療タイプ、(ii)量の増加または減少がSLEに関連する少なくとも1つのmiRNA、(iii)治効を判断できるSLEの少なくとも1つの疾患進行尺度を含む、ステップと、それから
(b)データベースをクエリして、少なくとも1つのmiRNAの量の前記増加または減少に対するSLEを治療する際の治療タイプの有効性の依存性を判断し、それによってSLEと相関するmiRNAプロファイルを有する対象のための有効な治療として提案される治療を特定するステップとを含んでいてもよい。
【0200】
一実施形態では、患者の治療情報が(ウィンドウまたはテキストインタフェースなどの任意の適切な手段を通じて)データベースに入力されてもよく、その患者のmiRNA情報(例えばmiRNAプロファイル)がデータベースに入力され、疾患進行情報がデータベースに入力される。そして、これらのステップは、所望の数の患者がデータベースに入力されるまで繰り返されうる。それからデータベースがクエリされて、特定の治療が特定のmiRNAプロファイルを有する患者に有効であるか、特定のmiRNAプロファイルを有する患者に有効でないかなどが判断されうる。このようなクエリは、任意の適切な手段によってデータベース上で予めまたは遡及的に実施することができるが、通常は本明細書に記載されるように既知の技法にしたがって統計分析によって行われる。
【0201】
小さなリボ核酸、例えばmiRNA、またはそれらのアゴニストもしくはアンタゴニストは、非毒性の不活性な薬学的に許容される水性担体媒体中に処方されることができ、そのpHは約5~8、好ましくは約6~8のpHでありうるが、pHは小さなリボ核酸、例えばmiRNA、またはそれらのアゴニストもしくはアンタゴニストの特性に応じて変動してもよく、また治療される疾患状態の変化によっても変動ししてもよい。医薬組成物は、筋肉内、静脈内、または皮下投与を含む(がこれらに限定されない)従来の経路を通じて投与されてもよい。
【0202】
対象、例えばSLE患者への本開示のmiRNAおよび/またはそれらのアゴニストもしくはアンタゴニストの投与の結果、miRNAの量の増加および/または発現の増加がもたらされてもよく、それにより、SLEの病因において重要な役割を果たしうるそのようなmiRNAの量の減少および/または発現の減少に関連する疾患、例えばインターフェロン経路の異常活性化に関係する疾患が予防または治療される。
【0203】
一態様では、本開示は、配列番号1~160および243~402からなる群より選択されるヌクレオチド配列からなる1つ以上のmiRNAのアンタゴニスト、例えば1つ以上の配列番号1~160および243~402のアンチセンス分子を含む組成物をSLE患者に投与するステップ、または配列番号161~242および403~484からなる群より選択されるヌクレオチド配列からなる1つ以上のmiRNAのアゴニスト、例えば1つ以上の配列番号161~242および403~484の分子を含む組成物をSLE患者に投与するステップを含む、SLEを治療する方法を提供する。
【0204】
別の態様では、本開示は、配列番号1~160および243~402からなる群より選択されるヌクレオチド配列からなる1つ以上のmiRNAのアンチセンス分子を含む組成物ならびに/または配列番号161~242および403~484からなる群より選択されるヌクレオチド配列からなる1つ以上のmiRNAを含む組成物をSLE患者に投与するステップを含む、中等度SLEを治療する方法を提供する。
キット
【0205】
本開示は、SLEの対象のスクリーニング、診断および同定において使用するためのキットを提供しうることがさらに企図される。キットは、本開示の医薬組成物、例えばmiRNA(配列番号1~484)を含んでいてもよい。当技術分野で周知のように、本開示のキットは、キットの試薬(例えば核酸など)を保持するための1つ以上の容器および/またはレセプタクルを、適切なバッファーおよび/または希釈剤および/または他の溶液ならびにキットを使用するための指示とともに含みうることは、通常の当業者に十分に理解されよう。このようなキットは、当技術分野で周知のアジュバントおよび/または他の免疫刺激剤または免疫調節剤をさらに含みうる。
実施例
実施例1:ナノワイヤが組み込まれたマイクロ流体デバイスを使用した尿中EVに含まれるmiRNAのIn Situ抽出
【0206】
本明細書に記載されるmiRNAのマイクロアレイ分析を用いて、年齢および性別がマッチした健常正常対照と比較してSLE末梢血単核細胞(PBMC:peripheral blood mononuclear cell)において特定のmiRNAが差次的に発現されることが実証された。SLEと健常サンプルとの間で3倍の差次的miRNA発現レベルの厳格な基準を使用して、変化したmiRNA発現の固有のパターンを特定した。このようなパターンは、SLEの診断、予後、および/または治療反応の予測のための分子バイオマーカーとして役立ちうる複雑なフィンガープリントを提供する。
【0207】
表1
【0208】
表1に示すSLE患者および健常個体から得られた尿サンプルを、使用前に遠心分離(15mm、4℃、3000g)してアポトティック小体を除去した。その後、シリンジポンプ(KDS‐200、KDサイエンティフィック社(KD Scientific Inc.))を流速50μl/分で使用して、1mlの尿サンプルをナノワイヤが組み込まれたデバイスに導入した。シリンジポンプを流速50μl/分で使用して細胞溶解バッファーM[20mM トリス‐HCl(pH7.4)、200mM塩化ナトリウム、2.5mM塩化マグネシウム、および0.05w/v%NP‐40;(和光純薬工業株式会社(Wako Pure Chemical Industries Ltd.))をナノワイヤが組み込まれたデバイスに導入することによって、ナノワイヤ上に収集されたEVからのmiRNAの抽出を行った(図1)。
miRNA発現のマイクロアレイ分析
【0209】
Toray 3D‐Gene(東レ(Toray Industries))のヒトmiRNAチップを使用してmiRNA発現プロファイルを得た。SeraMir Exosome RNA Purification Column Kit(システムバイオサイエンス社(System Biosciences Inc.))を製造者の指示にしたがって使用して、溶解バッファーで抽出されたmiRNAを精製した。3D‐Gene Human miRNA Oligo chip ver.21(東レ(Toray Industries))を使用して、15μlの精製されたmiRNAを2,632個のmiRNAプロファイリングのために分析した。
miRNA発現のマイクロアレイ分析では、各シグナル強度が1種のmiRNAに対応する。各miRNAの発現レベルは、バックグラウンドを差し引いた各マイクロアレイ中の全miRNAのシグナル強度として表される。全体で標準化された強度について散布図を作成し、強度10以上につき示す。したがって、散布図上の各点は標準化された強度である。シグナル強度をlog2変換した。SLE患者と健常ドナーの尿サンプルとの間でのmiRNAの比較のために、サンプル全体で正規化された強度をlog2変換した。(図1
SLEのバイオマーカーとしての尿中miRNAの同定
【0210】
Zスコア1.96(95%信頼水準および5%有意水準)および東レにより提供されたlog2(強度)に対するばらつき(CV)(特定の値をもたない)との関係にしたがって、(平均)士1.96×(平均×CV/100)を用いて95%信頼区間を計算した。log2(強度)=3との関係でCVにX%を使用すると、信頼区間の上限は8+0.16Xであった。log2(強度)=5または6でのCV値は、その関係にしたがって0.7X%および0.5X%であった。5%有意水準を考慮すると、各ケースのCVは40および71%未満であった。
【0211】
図2は、SLE患者において健常個体と比較して160個のmiRNA(表2)が有意にアップレギュレーションされ、82個のmiRNA(表3)が有意にダウンレギュレーションされた242個のmiRNAが差次的に発現されたことを示すボルケーノプロットである。(t検定でp<0.05)。コホート間の82個のダウンレギュレーションされたmiRNAは、160個のアップレギュレーションされたmiRNAよりもfold changeが大きいようである。これらの242個のmiRNAは、SLEのバイオマーカー候補を表す。
【0212】
表2.SLEに関連する160個のアップレギュレーションされたmiRNA
【0213】
表3.SLEに関連する82個のダウンレギュレーションされたmiRNA
【0214】
図3Aは、健常ドナー(明色箱)のものと比較したSLE患者(暗色箱)における(表2に示した160個のmiRNAの中から)上位10個のアップレギュレーションされたmiRNAの発現レベルを示す。これらの結果は、これら10個のmiRNAのアップレギュレーションがSLEと相関しうること、したがってSLEのバイオマーカーとして役立ちうることを示唆する。
【0215】
図3Bは、健常ドナー(明色箱)のものと比較したSLE患者(暗色箱)における(表3に示した82個のmiRNAの中から)上位10個のダウンレギュレーションされたmiRNAの発現レベルを示す。これらの結果は、これら10個のmiRNAのダウンレギュレーションがSLEと相関しうること、したがってこれらもSLEのバイオマーカーとして役立ちうることを示唆する。SLE重症度のバイオマーカーとしての尿中miRNAの同定
【0216】
図4は、各miRNAの発現レベルとSLE重症度、例えば中等度SLE対軽度SLEとの相関を示す。結果は、上位のダウンレギュレーションされたmiRNA(円で示す)が中等度SLE(Q4)と相関すると思われることを示す。これに対し、上位のアップレギュレーションされたmiRNA(円で示す)は、中等度SLE(Q1)および軽度SLE(Q2)の両方に関連するように見えるため、SLE重症度と無関係であると思われる。
【0217】
図5Aは、中等度SLE患者(暗色箱)、軽度SLE患者(薄暗色箱)、および健常ドナー(明色箱)に関連する上位10個のアップレギュレーションされたmiRNAの発現レベルを示す。上位10個のアップレギュレーションされたmiRNAの発現レベルは、中等度SLE患者において軽度SLE患者のものよりも有意に高いようである。したがって、これらのmiRNAのアップレギュレーションは、特に中等度SLEでのSLE重症度のバイオマーカーとして役立つ場合がある。
【0218】
図5Bは、中等度SLE患者(暗色箱)、軽度SLE患者(薄暗色箱)、および健常ドナー(明色箱)における上位10個のダウンレギュレーションされたmiRNAの発現レベルを示す。上位10個のダウンレギュレーションされたmiRNAの発現レベルは、中等度SLE患者において軽度SLE患者のものよりも有意に低いようである。したがって、これらのmiRNAのダウンレギュレーションは、特に中等度SLEでのSLE重症度のバイオマーカーとして役立つ場合がある。
SLE併存症のバイオマーカーとしての尿中miRNAの同定
【0219】
図6は、4個のmiRNAのアップレギュレーションおよび3個のmiRNAのダウンレギュレーションが、併存症AがないSLE患者(桃色箱)と比較して併存症AがあるSLE患者(赤色箱)と相関することを示す。(n=6)
【0220】
図7は、10個のmiRNAのアップレギュレーションおよび10個のmiRNAのダウンレギュレーションが、併存症BがないSLE患者(桃色箱)と比較して併存症BがあるSLE患者(赤色箱)と相関することを示す。(n=4)
【0221】
図8は、10個のmiRNAのアップレギュレーションおよび10個のmiRNAのダウンレギュレーションが、併存症CがないSLE患者(桃色箱)と比較して併存症CがあるSLE患者(赤色箱)と相関することを示す。(n=8)
【0222】
図9は、6個のmiRNAのアップレギュレーションおよび10個のmiRNAのダウンレギュレーションが、併存症DがないSLE患者(桃色箱)と比較して併存症DがあるSLE患者(赤色箱)と相関することを示す。(n=4)
【0223】
本開示の利点には、SLE、SLE重症度、およびSLE併存症の診断のために分析されるmiRNAの単離のための非侵襲サンプル、例えば体液の収集が含まれてもよい。SLEを有することが疑われる個体において、その個体のmiRNA発現プロファイルに基づいてSLEの存在または不存在が判断されてもよい。SLE陽性の個体では、その個体のmiRNA発現プロファイルによりSLE重症度およびSLE関連併存症を確認してもよい。本発明者らが驚いたことに、SLEの診断のための体液の使用およびmiRNAの検出は、当技術分野で既知の方法と比較して異例であることが分かった。それから、これらの分析に基づいて治療プランをパーソナライズ化してもよい。
実施例2:分類器の開発
【0224】
本発明者らは、個々のmiRNAの値、例えば発現レベルを比較することによって、サンプルを、SLEを示すものまたはSLEがないものとして分類するための分類器を開発した。本発明者らは、484個のmiRNA配列、配列番号1~484を同定した。発明者らは、60個のサンプルのmiRNA発現レベルの中央値を「カットオフ」として使用し、値がカットオフよりも高い/低い場合に、患者を、SLEを有するものまたは有しないものとして分類した。精度、感度、特異度、AUC(area under the curve、曲線下面積)を一般的指標から採用して、単純なカットオフに基づく分類器を評価する。
【0225】
242個のmiRNAが有意に差次的に発現された(アップレギュレーション160個、ダウンレギュレーション82個)[p<0.05 T検定]。ダウンレギュレーションされたmiRNAは、コホート間でfold changeがより大きい傾向が見られた。図2を参照されたい。242個のうち160個のmiRNAで、有意に差次的に発現されたmiRNAが見られた。2つの群からの各miRNAシグナルを比較することによって差次的発現分析を行った。miRNAごとにコホート間のFold changeをt検定のp値に対してプロットし、統計的に有意なmiRNA(p値<0.05)をバイオマーカー候補として選択した。
【0226】
各miRNAの発現レベルをSLE疾患重症度と比較した。図4で、各miRNAの発現レベルをSLE重症度と比較した。各miRNAのfold changeの散布図(x軸:SLE対非SLE、y軸 中等度SLE対軽度)。無疾患、軽度SLE、および中等度SLEにより比較して、図5Aは上位10個のアップレギュレーションされたmiRNAを示し、図5Bは上位10個のダウンレギュレーションされたmiRNAを示す。
【0227】
併存症があるSLE患者と併存症がないSLE患者との間で発現レベルを比較した。t検定でp<0.05のmiRNAをバイオマーカーとして選択した。
SLE発現
【0228】
ロジスティック回帰モデルの分類に基づいて以下の式(真陽性+真陰性)/(真陽性+真陰性+偽陽性+偽陰性)により精度を計算した。サンプルがSLEからのものであるか否かを推定するロジスティック回帰モデル。miRNAごとに独立してモデルを開発し、各サンプルのmiRNAの発現レベルを特徴量として使用した。python sklearn(l1正則化、c=1、1つ抜き交差検証)に基づいてモデルを開発した。分類器を開発するために、本発明者らは242個のmiRNAのセットから5~20個のランダムなmiRNAを選択し、分類器を複数回開発し、スコアを評価した。miRNAは、発現中の242個のmiRNAからランダムに選択する。選択されたmiRNAの発現レベルを使用して、ロジスティック回帰モデルを開発した。miRNAの選択ごとに、分類を20回繰り返した。精度、感度および特異度、AUCが、選択された5~20個のmiRNAを使用してロジスティック回帰モデルを開発することによって達成されるそれぞれの結果である。miRNA発現レベルの生の値に基づいて受信者動作特性(ROC:Receiver Operating Characteristic)曲線をプロットし、これが分類器の性能を表す。
【0229】
本明細書において引用された全ての参考文献は、各参考文献が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されたかのように、参照により本明細書に組み込まれる。任意の参考文献の引用は、出願日より前のその開示についてのものであり、先行発明により本開示がそのような参照に先行する権利がないことを認めるものと解釈されてはならない。
【0230】
上述の要素の各々、または2つ以上が一緒になったものは、上述のタイプとは異なる他のタイプの方法においても有用な用途を見出しうることが理解されよう。さらなる分析をせずとも、以上は本開示の要旨を非常に完全に明らかにするであろうことから、他者は現在の知識を応用することによって、添付の特許請求の範囲に記載される、先行技術から見て本開示の一般的態様または特定の態様の本質的特性を適正に構成する特徴を省かずに、これを様々な用途に容易に適合させることができる。前述の実施形態は、例として提示されるにすぎず、本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲によってのみ限定されるものとする。

図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】