(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-16
(54)【発明の名称】電力半導体装置および電力半導体装置を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20240409BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20240409BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
H01L29/78 652J
H01L29/78 655A
H01L29/78 652T
H01L29/78 652D
H01L29/78 652F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558258
(86)(22)【出願日】2022-02-18
(85)【翻訳文提出日】2023-11-20
(86)【国際出願番号】 EP2022054110
(87)【国際公開番号】W WO2022199955
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523380173
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミハイラ,アンドレイ
(72)【発明者】
【氏名】ラヒモ,ムナフ
(72)【発明者】
【氏名】ノール,ラーズ
(72)【発明者】
【氏名】ベリーニ,マルコ
(57)【要約】
電力半導体装置(1)が提供され、- 第1の導電型のドリフト層(2)と、- 第1の導電型とは異なる第2の導電型の少なくとも2つのウェル領域(3)と、- 少なくとも1つの中間領域(4)とを備え、- 少なくとも2つのウェル領域(3)および少なくとも1つの中間領域(4)は、第1の側面でドリフト層(2)内に設けられ、- 少なくとも1つの中間領域(4)は、少なくとも2つのウェル領域(3)の間に設けられ、- 少なくとも1つの中間領域(4)は、第1の導電型の少なくとも1つの第1のドープ領域(5)と、第2の導電型の少なくとも1つの第2のドープ領域(6)とを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力半導体装置(1)であって、
- 第1の導電型のドリフト層(2)と、
- 前記第1の導電型とは異なる第2の導電型の少なくとも2つのウェル領域(3)と、
- 少なくとも1つの中間領域(4)と、
- 前記少なくとも1つの中間領域(4)に設けられたゲート(11)と、
- 前記電力半導体装置(1)の第1の側面とは反対側の第2の側面で前記ドリフト層(2)に設けられた裏面金属層(8)と、を備え、
- 前記少なくとも2つのウェル領域(3)および前記少なくとも1つの中間領域(4)は、前記電力半導体装置(1)の前記第1の側面に設けられ、
- 前記少なくとも1つの中間領域(4)は、前記少なくとも2つのウェル領域(3)のうちの2つの間に設けられ、
- 前記少なくとも1つの中間領域(4)は、前記第1の導電型の少なくとも1つの第1のドープ領域(5)と、前記第2の導電型の少なくとも1つの第2のドープ領域(6)とを備え、
- 前記少なくとも1つの第1のドープ領域(5)および前記少なくとも1つの第2のドープ領域(6)は、前記少なくとも2つのウェル領域(3)に対して横方向に離隔される、電力半導体装置(1)。
【請求項2】
- 前記少なくとも1つの中間領域(4)は、主延在方向に沿って延在し、
- 前記少なくとも1つの第1のドープ領域(5)および前記少なくとも1つの第2のドープ領域(6)は、前記主延在方向に沿って連続して設けられる、先行する請求項に記載の電力半導体装置(1)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの第1のドープ領域(5)または前記少なくとも1つの第2のドープ領域(6)のうちの少なくとも1つの最大ドーピング濃度は、前記ドリフト層(2)の最大ドーピング濃度よりも少なくとも2倍または少なくとも5倍高い、先行する請求項のいずれか1項に記載の電力半導体装置(1)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの第1のドープ領域(5)または前記少なくとも1つの第2のドープ領域(6)のうちの少なくとも1つの前記最大ドーピング濃度は、少なくとも1・10
14cm
-3、最大でも1・10
18cm
-3である、先行する請求項のいずれか1項に記載の電力半導体装置(1)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの第1のドープ領域(5)または前記少なくとも1つの第2のドープ領域(6)のうちの少なくとも1つの幅は、少なくとも0.5μm、最大でも5μmである、先行する請求項のいずれか1項に記載の電力半導体装置(1)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの第1のドープ領域(5)または前記少なくとも1つの第2のドープ領域(6)のうちの少なくとも1つの長さは、少なくとも0.5μm、最大でも1.5μmである、先行する請求項のいずれか1項に記載の電力半導体装置(1)。
【請求項7】
前記少なくとも2つのウェル領域(3)の第1の深さは、前記少なくとも1つの第1のドープ領域(5)の第2の深さと、および前記少なくとも1つの第2のドープ領域(6)の第3の深さと、最大でも同じである、先行する請求項のいずれか1項に記載の電力半導体装置(1)。
【請求項8】
前記第2の深さまたは前記第3の深さのうちの少なくとも1つは、少なくとも50nm、最大でも1.5μmである、請求項7に記載の電力半導体装置(1)。
【請求項9】
複数の第1のドープ領域(5)および複数の第2のドープ領域(6)は、前記主延在方向に沿って連続して交互に配置される、請求項2に記載の電力半導体装置(1)。
【請求項10】
- 前記第1の導電型の少なくとも2つのソース領域(7)をさらに備え、
- 前記少なくとも2つのソース領域(7)のうちの少なくとも1つは前記少なくとも2つのウェル領域(3)のそれぞれに設けられる、先行する請求項のいずれか1項に記載の電力半導体装置(1)。
【請求項11】
前記ゲート(11)は、少なくとも横方向の箇所において前記少なくとも2つのソース領域(7)と重なる、請求項10に記載の電力半導体装置(1)。
【請求項12】
- 第1の導電型のドリフト層(2)を設けることと、
- ドーピング工程によって、前記ドリフト層(2)の第1の側面で前記第1の導電型とは異なる第2の導電型の少なくとも2つのウェル領域(3)を生成することと、
- さらなるドーピング工程によって、前記ドリフト層(2)の前記第1の側面で少なくとも1つの中間領域(4)を生成することと、
- 前記少なくとも1つの中間領域(4)にゲート(11)を設けることと、
- 前記第1の側面とは反対側の前記ドリフト層の第2の側面で前記ドリフト層(2)に裏面金属層(8)を設けることとを含み、
- 前記少なくとも1つの中間領域(4)は、前記少なくとも2つのウェル領域(3)のうちの2つの間に生成され、
- 前記少なくとも1つの中間領域(4)は、前記第1の導電型の少なくとも1つの第1のドープ領域(5)および前記第2の導電型の少なくとも1つの第2のドープ領域(6)を備え、
- 前記少なくとも1つの第1のドープ領域(5)および前記少なくとも1つの第2のドープ領域(6)は、前記少なくとも2つのウェル領域(3)に対して横方向に離隔する、電力半導体装置(1)を製造するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力半導体装置および電力半導体装置を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的には、電力半導体装置、例えば、炭化ケイ素金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(SiC MOSFETs:silicon carbide metal oxide semiconductor field-effect transistors)は、同様に定格されたシリコン絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Si IGBTs:silicon insulated gate bipolar transistors)と比較して切替え損失を低減するように例示的に構成される。輸送またはeモビリティ用途を考慮すると、エンドユーザは、短絡能力、なだれ耐久性および電流過負荷状態など、障害状態動作に関してすべての必要な基準を装置が満たすことを例示的に要求する。
【0003】
文献US2020/219980A1は、半導体装置を開示している。文献CN107275393Aは、炭化ケイ素MOSFET装置およびその調製方法を開示している。文献US2014/183553A1は、ゲート酸化膜界面での電界が低減されたトランジスタ装置およびその作成方法を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の実施形態は、効率が改良された電力半導体装置に関する。本開示の他の実施形態は、このような電力半導体装置を製造するための方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
目的は、独立請求項の主題によって達成される。さらなる実施形態は、従属請求項および以下の説明から明らかである。
【0006】
本発明の第1の態様は、電力半導体装置に関する。本明細書および以下において「電力」という用語は、例えば、100Vを超え、かつ/または10Aを超える電圧および電流を処理するように適合された電力半導体装置を指す。
【0007】
電力半導体装置は、MOSベースの装置、例えば、電力金属絶縁半導体電界効果トランジスタ(電力MISFET:power metal insulating semiconductor field-effect transistor)である。MISFETという用語は、ゲートに絶縁材料として酸化膜を有する金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFETs)も含むものとする。電力半導体装置は、絶縁ゲート絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)であってもよい。
【0008】
例示的には、電力MISFETは、ワイドバンドギャップ材料を含み、この材料は炭化ケイ素であってもよい。このように、電力半導体装置は、電力SiC MISFETとして例示的に具体化される。
【0009】
第1の態様の実施形態によれば、電力半導体装置は、第1の導電型のドリフト層を含む。
【0010】
例えば、ドリフト層は、半導体材料を含むか、または半導体材料からなる。例示的には、半導体材料はSiCである。例えば、ドリフト層は第1のドーパントを含む。例示的には、第1のドーパントはn型ドーパントである。この場合、第1の導電型はn型導電性である。
【0011】
ドリフト層は、例えば、主延在面を有する。例えば、横方向は主延在面に平行に合わせ、鉛直方向は主延在面に垂直に合わせる。
【0012】
実施形態によれば、電力半導体は、第1の導電型とは異なる第2の導電型の少なくとも2つのウェル領域を含む。少なくとも2つのウェル領域は、例示的に、互いに横方向に分離される。例えば、ウェル領域のそれぞれは、主な延在方向に沿って延在する。ウェル領域の主な延在方向は、互いに平行に合わせてもよい。
【0013】
ウェル領域は、例えば、ドリフト層の半導体材料と同じ材料である半導体材料を含むか、または半導体材料からなる。例示的には、ウェル領域は、p型ドーパントなどの第2のドーパントを含む。この場合、第2の導電型はp型導電性である。
【0014】
ウェル領域がp型導電性である場合、第2の導電型は第1の導電型とは異なるため、ドリフト層はn型導電性であり、逆もまた同様である。
【0015】
例示的には、ウェル領域は、ドーピング工程によってドリフト層内に生成される。例えば、第2のドーパントがドリフト層内へ導入される。ドリフト層への第2のドーパントの導入により、ウェル領域は、例示的に生成する。
【0016】
実施形態によれば、電力半導体装置は、少なくとも1つの中間領域を含む。例示的には、中間領域は主延在方向に沿って延在する。中間領域の主延在方向は、ウェル領域の主延在方向に平行に合わせる。
【0017】
中間領域は、例えば、ドリフト層の半導体材料と同じ材料である半導体材料を含むか、または半導体材料からなる。例示的には、中間領域は、さらなるドーピング工程によってドリフト層内に生成する。例えば、中間領域は、第1のドーパントまたは第2のドーパントのうちの少なくとも1つをドリフト層内へ導入することによって生成する。「第1のドーパントまたは第2のドーパントのうちの少なくとも1つが導入される」という言い方は、第1のドーパントが導入されるか、第2のドーパントが導入されるか、または第1のドーパントおよび第2のドーパントが導入されるかのいずれかの場合を包含するものとする。このような表現は、開示全体を通して同じように理解されるものとする。
【0018】
例示的には、このような中間領域を備えた電力半導体装置、例えば、電力SiC MISFETは、中間領域を有しない電力SiC MISFETとは対照的に、比較的低減されたオン抵抗を有する。
【0019】
電力半導体装置の実施形態によれば、少なくとも2つのウェル領域および少なくとも1つの中間領域は、電力半導体装置の第1の側面に設けられる。
【0020】
ウェル領域は、第1の側面から第1の深さまで鉛直方向に延在する。ウェル領域は、接合電界効果トランジスタ(JFET:junction field effect transistor)領域として機能する中間領域の深さよりも浅い第1の深さを有することができる。あるいは、ウェル領域は、中間領域と同じ深さを有してもよく、または中間領域よりも深くてもよい。さらに、中間領域は、例示的には、第1の側面から、第2の深さまたは第3の深さのうちの少なくとも1つまで延在する。例えば、第2の深さまたは第3の深さのうちの少なくとも1つは、第1の深さと少なくとも同じ深さである。例示的には、第2の深さまたは第3の深さのうちの少なくとも1つは、第1の深さと同じ深さである。あるいは、第2の深さまたは第3の深さのうちの少なくとも1つは、例示的に、第1の深さよりも小さい。
【0021】
例えば、電力半導体装置の第1の側面での第1の主表面は平坦に形成される。第1の主表面は、横方向に平行に延在する。すなわち、ウェル領域の上面および中間領域の上面が、第1の主表面の一部である。
【0022】
電力半導体装置の実施形態によれば、少なくとも1つの中間領域は、少なくとも2つのウェル領域のうちの2つの間に設けられる。例示的には、中間領域は、2つのウェル領域の間に挟まれる。例えば、中間領域は、2つの隣接するウェル領域に直接接触している。この場合、ウェル領域の上面および中間領域の上面は、互いに面一に終端する。
【0023】
第1の深さ、第2の深さおよび第3の深さが等しい場合、例示的には、ウェル領域の底面および中間領域の底面が互いに面一に終端する。
【0024】
電力半導体装置の実施形態によれば、少なくとも1つの中間領域は、第1の導電型の少なくとも1つの第1のドープ領域および第2の導電型の少なくとも1つの第2のドープ領域を含む。例えば、第1のドープ領域は第1の側面から第2の深さまで延在し、第2のドープ領域は第1の側面から第3の深さまで延在する。
【0025】
例えば、中間領域は、さらなる第1のドーパントおよびさらなる第2のドーパントを含む。例示的には、第1のドープ領域は、さらなる第1のドーパントを含む。例えば、さらなる第1のドーパントはn型ドーパントである。さらに、第2のドープ領域は、例示的に、さらなる第2のドーパントを含む。例えば、さらなる第2のドーパントはp型ドーパントである。
【0026】
例示的には、さらなる第1のドーパントは、第1のドーパントと同じドーパントである。さらに、さらなる第2のドーパントは、例示的に、第2のドーパントと同じドーパントである。
【0027】
さらなる第1のドーパントおよびさらなる第2のドーパントは、例えば、イオン注入工程によってドリフト層内に組み込まれる。
【0028】
対照的に、n型ドーパントのみでドープされた中間領域のみを有する先行技術の電力SiC MOSFETは、ゲート-ドレイン容量(CGD:gate-drain capacitance)の増加に関連して短絡能力が低減する。さらに、n型ドーパントのみでドープされたそのような中間領域は、ゲート酸化膜が受ける電界の増加を起こし、例えば、中間領域の上方に配置される。
【0029】
電力半導体装置は、例えば、電力SiC MISFETであり、中間領域が第1のドープ領域および第2のドープ領域を有するとともに、とりわけ、以下の利点を有する。第1のドープ領域により、第1の導電型の中間領域のみを有する電力SiC MISFETとは対照的に、電力半導体装置のオン抵抗が低減される。さらに、第2のドープ領域により、以下に詳述するように、例示的に、ゲートが配置される中間領域の上方の電界が、効果的に低減される。したがって、例えば、中間領域の上方に配置されるゲート酸化膜は、高電界から保護される。
【0030】
電力半導体装置の少なくとも1つの実施形態によれば、少なくとも1つの中間領域は、主延在方向に沿って延在し、少なくとも1つの第1のドープ領域および少なくとも1つの第2のドープ領域は、主延在方向に沿って連続して設けられる。例えば、第1のドープ領域および第2のドープ領域は、主延在方向に沿って直接接触して互いに隣接して配置される。
【0031】
電力半導体装置の少なくとも1つの実施形態によれば、少なくとも1つの第1のドープ領域または少なくとも1つの第2のドープ領域のうちの少なくとも1つの最大ドーピング濃度が、ドリフト層の最大ドーピング濃度よりも少なくとも2倍または少なくとも5倍高い。例示的には、ドリフト層は、最大ドーピング濃度が平均ドーピング濃度に対応するように、均質的なドーピング濃度を有する。
【0032】
例示的には、少なくとも1つの第1のドープ領域または少なくとも1つの第2のドープ領域のうちの少なくとも1つの最大ドーピング濃度は、ドリフト層のドーピング最大濃度よりも少なくとも1桁または2桁高い大きさである。
【0033】
例えば、第1のドープ領域は、最大ドーピング濃度がドリフト層の最大ドーピング濃度よりも少なくとも2倍または少なくとも5倍高い。さらに、第2のドープ領域は、例示的に、最大ドーピング濃度がドリフト層の最大ドーピング濃度よりも少なくとも2倍または少なくとも5倍高い。
【0034】
電力半導体装置の少なくとも1つの実施形態によれば、少なくとも1つの第1のドープ領域または少なくとも1つの第2のドープ領域のうちの少なくとも1つの最大ドーピング濃度は、少なくとも1・1014cm-3、最大でも1・1018cm-3である。
【0035】
電力半導体装置の少なくとも1つの実施形態によれば、少なくとも1つの第1のドープ領域または少なくとも1つの第2のドープ領域のうちの少なくとも1つの幅は、少なくとも0.5μm、最大でも5μmである。幅は、中間領域の主延在方向に垂直である第1のドープ領域または第2のドープ領域のうちの少なくとも1つの広がりである。例示的には、横方向における少なくとも2つのウェル領域の間の距離は、少なくとも0.5μm、最大でも5μmである。
【0036】
例示的には、オン抵抗は、第1のドープ領域の幅に依存する。例えば、中間領域の幅は、第1のドープ領域および第2のドープ領域を有していない電力SiC MOSFETと比較して、比較的低減することができる。幅を低減しながら、第1のドープ領域内で電荷担体密度が増加し、したがってオン抵抗がさらに低減する。例示的には、増加した電荷担体密度はCGDも同様に増加させ、これは中間領域の上方の電界の増加につながることができる。第2のドープ領域により、以下でより詳細に説明するように、CGDは効果的に低減する。したがって、中間領域の上方の電界は、効果的に低減することができる。
【0037】
さらなる利点は、例えば、CGDの低減により、短絡挙動も、中間領域を有していない電力SiC MOSFETと比較して少なくとも維持されることである。例えば、本明細書で説明する電力半導体装置は、例えば、少なくとも10msの短絡能力を有する。
【0038】
電力半導体装置の少なくとも1つの実施形態によれば、少なくとも1つの第1のドープ領域または少なくとも1つの第2のドープ領域のうちの少なくとも1つの長さは、少なくとも0.5μm、最大でも1.5μmである。例えば、長さは、中間領域の主延在方向に沿った第1のドープ領域または第2のドープ領域のうちの少なくとも1つの広がりである。
【0039】
電力半導体装置の少なくとも1つの実施形態によれば、少なくとも2つのウェル領域の第1の深さは、少なくとも1つの第1のドープ領域の第2の深さ、および少なくとも1つの第2のドープ領域の第3の深さと、最大でも同じ大きさである。各深さは、鉛直方向において、第1のドープ領域または第2のドープ領域およびウェル領域のうちの少なくとも1つの広がりである。
【0040】
第1のドープ領域の第2の深さは、第2のドープ領域の第3の深さとは異なることが可能である。例えば、第1のドープ領域の第2の深さは、第2のドープ領域の第3の深さよりも深く、逆もまた同様である。
【0041】
電力半導体装置の少なくとも1つの実施形態によれば、第2の深さまたは第3の深さのうちの少なくとも1つは、少なくとも50nm、最大でも1.5μmである。
【0042】
電力半導体装置の少なくとも1つの実施形態によれば、少なくとも1つの第1のドープ領域のうちの少なくとも1つ、または少なくとも1つの第2のドープ領域のうちの少なくとも1つが、少なくとも2つのウェル領域に直接接触している。例示的には、第1のドープ領域および第2のドープ領域の両方が、中間領域の全幅にわたって延在し、ウェル領域に直接接触している。
【0043】
電力半導体装置の少なくとも1つの実施形態によれば、少なくとも1つの第1のドープ領域および少なくとも1つの第2のドープ領域のうちの少なくとも1つは、少なくとも2つのウェル領域に対して横方向に離隔される。例示的には、第1のドープ領域および第2のドープ領域の両方が、中間領域の全幅にわたって延在せず、したがって、ウェル領域に直接接触していない。
【0044】
電力半導体装置の少なくとも1つの実施形態によれば、少なくとも1つの第2のドープ領域は、少なくとも2つのウェル領域から横方向に離隔される。例示的には、第2のドープ領域は、中間領域の全幅にわたって延在していない。すなわち、第2のドープ領域は、例示的に、ウェル領域から横方向に離隔される。
【0045】
例えば、第1のドープ領域は、第2のドープ領域とウェル領域との間に横方向に延在する。例示的には、第1のドープ領域は、第2のドープ領域とウェル領域との間で横方向に配置される。別の実施形態では、ドリフト層は、第2のドープ領域とウェル領域との間を横方向に延在する。例示的には、ドリフト層は、第2のドープ領域とウェル領域との間に横方向に配置される。
【0046】
電力半導体装置の少なくとも1つの実施形態によれば、少なくとも1つの中間領域にゲートが設けられる。ゲートは、例示的に、ゲート接点およびゲート絶縁体を含む。ゲート接点は、金属を含むか、または金属からなる。ゲート絶縁体は、例えば、電気絶縁性酸化膜または高k誘電体などの電気絶縁材料を含む。SiO2の誘電率は3.9であり、「高k」誘電材料は誘電率k>3.9を有することが示される。
【0047】
例えば、ゲート接点は、少なくとも領域において、導電様式で外部接触可能である。さらに、ゲート接点は、ゲート絶縁体に例示的に埋め込まれる。すなわち、ゲート絶縁体は、外部接触領域を除くゲート接点のすべての外面を覆う。
【0048】
電力半導体装置の少なくとも1つの実施形態によれば、第1の側面とは反対側の第2の側面でのドリフト層に裏面金属層が設けられる。例えば、裏面金属層は、第2の側面でのドリフト層の第2の主表面に設けられる。例えば、裏面金属層は第2の主表面を完全に覆う。
【0049】
裏面金属層は、例えば、金属を含むか、または金属からなる。例えば、裏面金属層は、電極であり、導電様式で外部接触可能である。
【0050】
例示的には、ゲートおよび裏面金属層の平面視における重なりは、第2のドープ領域の幅および長さに依存する。
【0051】
さらなる利点は、とりわけ、第2のドープ領域により、ゲートおよび裏面金属層の平面視における重なりは、第2のドープ領域を有していない電力SiC MOSFETと比較して低減されることである。すなわち、第2のドープ領域CGDも効果的に低減し、したがってゲートにさらされる電界が低減する。これは、例えば、耐久性のある電力半導体装置につながる。
【0052】
少なくとも1つの実施形態によれば、電力半導体装置は、第1の導電型の少なくとも2つのソース領域をさらに含む。
【0053】
ソース領域は、例えば、ドリフト層の半導体材料と同じ材料である半導体材料を含むか、または半導体材料からなる。例示的には、ソース領域は、n型ドーパントなどの第1のドーパントを含む。この場合、第1の導電型はn型導電性である。模範的には、ソース領域の最大ドーピング濃度は、ドリフト層の最大ドーピング濃度よりも少なくとも2桁または3桁高い大きさである。
【0054】
電力半導体装置の少なくとも1つの実施形態によれば、少なくとも2つのソース領域のうちの少なくとも1つが、少なくとも2つのウェル領域のそれぞれに設けられる。例えば、各ソース領域は、ウェル領域のうちの1つに埋め込まれる。すなわち、ソース領域の外面は、ソース領域の上面を除いて、ウェル領域で覆われる。例示的には、ソース領域の上面およびウェル領域の上面は互いに面一に終端する。
【0055】
例えば、ソース領域、例示的には、ソース領域の上面は、少なくとも領域において、導電様式で外部接触可能である。
【0056】
電力半導体装置の少なくとも1つの実施形態によれば、ゲートは、少なくとも、横方向の箇所で、少なくとも2つのソース領域と重なる。例示的には、平面視では、ゲートは、横方向に、少なくとも、中間領域、ウェル領域およびソース領域を備えた領域に重なる。
【0057】
電力半導体装置の少なくとも1つの実施形態によれば、第1の導電型のドレイン層が、第2の側面でドリフト層に配置される。例示的には、ドレイン層は、ドリフト層と裏面金属層との間に配置される。例えば、ドレイン層の最大ドーピング濃度は、ドリフト層の最大ドーピング濃度よりも少なくとも2桁高く、例示的には5倍高い大きさである。
【0058】
本発明の第2の態様は、電力半導体装置を製造するための方法に関する。例えば、本明細書に説明される実施形態のいずれかによる電力半導体装置は、この方法で製造することができる。したがって、本方法について開示されたすべての特徴は、電力半導体装置についても開示され、逆もまた同様である。
【0059】
本方法の実施形態では、第1の導電型のドリフト層が設けられる。第1の導電型とは異なる第2の導電型の少なくとも2つのウェル領域は、ドーピング工程によってドリフト層の第1の側面に生成する。少なくとも1つの中間領域は、さらなるドーピング工程によってドリフト層の第1の側面に生成する。ゲートは、少なくとも1つの中間領域に設け、裏面金属層は第1の側面と反対側のドリフト層の第2の側面でドリフト層に設ける。少なくとも1つの中間領域は、少なくとも2つのウェル領域のうちの2つの間に生成される。少なくとも1つの中間領域は、第1の導電型の少なくとも1つの第1のドープ領域および第2の導電型の少なくとも1つの第2のドープ領域を含む。少なくとも1つの第1のドープ領域および少なくとも1つの第2のドープ領域は、少なくとも2つのウェル領域に対して横方向に離隔する。
【0060】
中間領域を生成することは、ウェル領域を生成することの後または前に行ってもよい。
本発明の主題は、添付の図面に図示される例示的な実施形態を参照して以下においてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1】例示的な実施形態による電力半導体装置の断面図を概略的に示す。
【
図2】例示的な実施形態による電力半導体装置の断面図を概略的に示す。
【
図3】先行技術によるSiC MISFETの例示的なドーピング濃度および例示的な実施形態によるSiC MISFETのドーピング濃度を概略的に示す。
【
図4】先行技術によるSiC MISFETおよび例示的な実施形態によるSiC MISFETの電流電圧図を概略的に示す。
【
図5】例示的な実施形態による電力半導体装置の断面図を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0062】
図面に使用した参照符号およびそれらの意味は、参照符号の一覧に要約形態で列挙する。原則として、図において、同一部品には同じ参照符号を付ける。
【0063】
図1の例示的な実施形態による電力半導体装置1は、示した順に積層される裏面金属層と、ドレイン層9と、ドリフト層2とを備える。隣接する層は互いに直接接触している。ドレイン層9およびドリフト層2は、第1の導電型である。例えば、第1の導電型はn型導電性である。例示的には、ドリフト層はエピタキシャルドリフト層である。すなわち、ドリフト層は、例えば、エピタキシャル工程によって生成する。
【0064】
ドレイン層9の最大ドーピング濃度は、ドリフト層2の最大ドーピング濃度よりも高い。
【0065】
すなわち、ドリフト層2は低ドープ層であり、ドレイン層9は高ドープ層である。ドリフト層2およびドレイン層9は、SiCで形成される半導体材料を含む。あるいは、半導体材料は、GaN、Al2O3またはダイヤモンドなどの任意の他のワイドバンドギャップ材料に基づく。
【0066】
例えば、nドープされるドレイン層9は、高くドープされたp型コレクタ層で置き換えることができる。この場合、電力半導体装置1はIGBTである。
【0067】
電力半導体装置1は、ドリフト層2の第1の側面で、第1の導電型とは異なる第2の導電型の2つのウェル領域3をさらに備える。第1の側面は、裏面金属層8から離れた方を向く。例えば、第2の導電型はp型導電性である。ウェル領域3は、例えば、ドーピング工程によってドリフト層2内に生成する。例えば、第2のドーパントがドリフト層2に導入され、それによってウェル領域3を第1の深さまで生成する。
【0068】
2つのウェル領域3は、横方向に互いから分離される。換言すれば、2つのウェル領域3は、横方向に互いに距離を有して、ドリフト層2に配置される。2つのウェル領域3のそれぞれは、主延在方向に沿って延在する。さらに、2つのウェル領域3の2つの主延在方向は、互いに平行に合わせる。
【0069】
中間領域4は、第1の側面で2つのウェル領域3の間に配置され、また主延在方向に沿って延在する。中間領域4の主延在方向は、2つのウェル領域3の2つの主延在方向に平行である。ウェル領域3は、さらなるドーピング工程によってドリフト層2内に例示的に生成する。これにより、中間領域4は、第2の深さおよび第3の深さまで生成される。
【0070】
第1の導電型の2つのソース領域7は、第2の導電型の各ウェル領域3に設けられる。模範的には、ソース領域の最大ドーピング濃度は、ドリフト層の最大ドーピング濃度よりも少なくとも2桁または3桁高い大きさである。
【0071】
電力半導体装置1は2つのウェル領域3を備えるので、電力半導体装置1は4つのソース領域7を備える。ウェル領域3の1つに設けられる2つのソース領域7は、横方向に互いに離隔して配置される。換言すれば、各ウェル領域3に配置された2つのソース領域7は、横方向に互いに距離を有する。さらに、2つのソース領域7のそれぞれは、主延在方向に沿って延在する。2つのソース領域7の2つの主延在方向は、互いに平行に合わせ、ウェル領域3の主延在方向に平行に合わせる。
【0072】
第2の導電型のプラグ10は、ウェル領域3sのそれぞれにおける2つのソース領域7の間に配置してもよく、プラグ10はまた、主延在方向に沿って延在する。プラグ10の主延在方向は、2つのソース領域7の2つの主延在方向と平行である。プラグ10は、最大ドーピング濃度が、ウェル領域3よりも少なくとも3倍高くてもよい。
【0073】
プラグ10は、さらなるドーピング工程によってウェル領域3内に、例示的に生成する。プラグ10は、ウェル領域3の第1の深さよりも小さい深さでウェル領域3に設けてもよい。プラグ10はまた、深さがウェル領域3の深さと同じでもよく、またはプラグ10は、ウェル領域3よりも大きい深さを有してもよい。
【0074】
ウェル領域3の上面、ソース領域7の上面、プラグ10の上面および中間領域4の上面が、共通の平面内に配置される。
【0075】
さらに、中間領域4は、第1の導電型の2つの第1のドープ領域5および第2の導電型の2つの第2のドープ領域6を含む。第1のドープ領域5は、第1の側面から第2の深さまで延在し、第2のドープ領域6は、第1の側面から第3の深さまで延在し、ここで、これらの深さの両方は、ウェル領域3の第1の深さよりも小さい。例えば、第1の側面は、ドレイン層9から離れた方を向く電力半導体装置の共通面から形成される。この例示的な実施形態では、第2の深さおよび第3の深さは互いに等しい。
【0076】
例えば、第2の深さおよび第3の深さは、第1の深さと等しいか、または、それより深い。
【0077】
第1のドープ領域5は、例えば、n型ドーパントである、さらなる第1のドーパントを含む。さらに、第2のドープ領域6は、例えば、p型ドーパントである、さらなる第2のドーパントを含む。さらなる第1のドーパントは、第1のドーパントと同じであってもよく、さらなる第2のドーパントは、第2のドーパントと同じであってもよい。また、第1のドープ領域5および第2のドープ領域6の最大ドーピング濃度は、ドリフト層2の最大ドーピング濃度よりも少なくとも2倍または少なくとも5倍、高い。
【0078】
2つの第1のドープ領域5および2つの第2のドープ領域6は、中間領域4の主延在方向に沿って連続して交互に配置される。第1のドープ領域5および第2のドープ領域6のそれぞれは、中間領域4の全幅にわたって延在する。すなわち、第1のドープ領域5および第2のドープ領域6のそれぞれがウェル領域3に直接接触している。
【0079】
第1のドープ領域5および第2のドープ領域6のこのような配置は、例示的に、より低いCGD値、したがって、より良好なゲート制御およびより速い切替えをもたらす。
【0080】
また、
図1による電力半導体装置1は、
図2に示されるようにゲート11をさらに備える。ゲート11は、ゲート接点13およびゲート絶縁体12を備える。さらに、ゲート11は、中間領域4、2つのウェル領域3、および異なるウェル領域3のソース領域7のうちの2つに設けられる。すなわち、ゲート11は、平面視において中間領域4、2つのウェル領域3、および異なるウェル領域3のソース領域7のうちの2つと重なる。
【0081】
図3の上部では、先行技術による対応するドーピング濃度を有するSiC MOSFETの3次元図が示される。
【0082】
図3の下部では、例示的な実施形態による対応するドーピング濃度を有するSiC MISFETである電力半導体装置の3次元図が示される。電力半導体装置1は、第1のドープ領域5および第2のドープ領域6を有する中間領域4を備える。
【0083】
ドリフト層2は、例えば、n型導電性の最大ドーピング濃度が約5・1012cm-3である。第1の領域は、n型導電性の最大ドーピング濃度が約6・1017cm-3であり、p型導電性の最大ドーピング濃度が、約6・1017cm-3である。ウェル領域3は、例えば、p型導電性の最大ドーピング濃度が約6・1017cm-3であり、これは約1・1014cm-3まで連続的に減少する。さらに、ソース領域7は、例えば、n型導電性の最大ドーピング濃度が約1・1020cm-3である。
【0084】
電流Iは、単位がアンペアAで、
図4により図のy軸に示される。さらに、電圧Vは、単位がボルトVで、x軸に示される。下のI-V曲線は、第1の領域および第2の領域を備える中間領域4を有していない先行技術によるSiC MOSFETに対応する。例示的には、下のI-V曲線は、
図3の上部の3次元構造に依存して計算される。
【0085】
上のI-V曲線は、例示的な実施形態によるSiC MISFETである電力半導体装置1に対応する。例示的には、上のI-V曲線は、
図3の下部の3次元構造に依存して計算される。
【0086】
異なる導電型の第1の領域および第2の領域を備える中間領域4は、電力半導体装置1のオン抵抗の低減につながる。
【0087】
図1の例示的な実施形態による電力半導体装置1とは対照的に、第1の導電型の第1のドープ領域5および第2の導電型の第2のドープ領域6は、横方向にウェル領域3まで延在しない。第1のドープ領域5および第2のドープ領域6は、同じ幅を有し、これは、2つの隣接するウェル領域の間の距離未満である。この場合、ドリフト層2は、ウェル領域3と第1のドープ領域5と第2のドープ領域6との間にある。
【0088】
参照符号
【符号の説明】
【0089】
1 電力半導体装置
2 ドリフト層
3 ウェル領域
4 中間領域
5 第1のドープ領域
6 第2のドープ領域
7 ソース領域
8 裏面金属層
9 ドレイン層
10 プラグ
11 ゲート
12 ゲート接点
13 ゲート絶縁体
【国際調査報告】