IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コディコート・リミテッドの特許一覧

特表2024-516527抗菌性及び/又は抗ウイルス性コーティング
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-16
(54)【発明の名称】抗菌性及び/又は抗ウイルス性コーティング
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/10 20060101AFI20240409BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20240409BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20240409BHJP
   A01N 31/02 20060101ALI20240409BHJP
   A01N 43/64 20060101ALI20240409BHJP
   A01N 59/08 20060101ALI20240409BHJP
   C09D 5/14 20060101ALI20240409BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20240409BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20240409BHJP
   C09D 129/04 20060101ALI20240409BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240409BHJP
   C09D 101/08 20060101ALI20240409BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20240409BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240409BHJP
   C08K 5/04 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
A01N25/10
A01P1/00
A01P3/00
A01N31/02
A01N43/64 105
A01N59/08 A
C09D5/14
C09D201/00
C09D7/40
C09D129/04
C09D7/63
C09D101/08
C09D7/61
C08L101/00
C08K5/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560682
(86)(22)【出願日】2022-03-28
(85)【翻訳文提出日】2023-11-29
(86)【国際出願番号】 EP2022058176
(87)【国際公開番号】W WO2022207576
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】2104679.2
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2118912.1
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】523349033
【氏名又は名称】コディコート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】モハマド・ジャバド・モフセニ
(72)【発明者】
【氏名】レザ・サベリ・モガッダム
(72)【発明者】
【氏名】アティフ・アジズ
(72)【発明者】
【氏名】パヤム・ナハバンディ
【テーマコード(参考)】
4H011
4J002
4J038
【Fターム(参考)】
4H011AA02
4H011AA03
4H011AA04
4H011BA01
4H011BB03
4H011BB09
4H011BB18
4H011BC03
4H011BC05
4H011BC08
4H011BC19
4H011DA08
4H011DA14
4H011DH02
4H011DH10
4H011DH14
4J002AA00W
4J002AB02W
4J002AB03W
4J002AB04W
4J002AB05W
4J002BD04W
4J002BD14W
4J002BE02W
4J002BG01W
4J002BG06W
4J002BG10W
4J002BG13W
4J002BJ00W
4J002CH01W
4J002CM01W
4J002CQ01W
4J002EC017
4J002EC046
4J002EC056
4J002EC066
4J002ED026
4J002EF036
4J002EF056
4J002EF066
4J002EN036
4J002FD026
4J002FD187
4J002GB01
4J002GB04
4J002GH01
4J002GH02
4J038BA021
4J038CE021
4J038CK031
4J038DF011
4J038EA011
4J038HA116
4J038HA286
4J038HA336
4J038JA21
4J038JA53
4J038KA08
4J038KA10
4J038MA08
4J038NA02
4J038PA01
4J038PA06
4J038PA18
4J038PA19
4J038PB01
4J038PB02
4J038PB04
4J038PB06
4J038PB09
4J038PB11
(57)【要約】
本発明は、抗微生物性及び/又は抗ウイルス性コーティング、具体的に抗微生物剤及び/又は抗ウイルス剤並びにポリマー担体を含むコーティングに関する。コーティングの製造方法、コーティングの方法、及びコーティングの使用もまた記載している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)少なくとも1つの非生物性の抗微生物剤及び/又は抗ウイルス剤;並びに
ii)ポリマー担体
を含む、抗微生物性及び/又は抗ウイルス性コーティング。
【請求項2】
少なくとも1つの非生物性の抗微生物剤及び/又は抗ウイルス剤が、約0.01%~約40%の量でコーティングに存在する、請求項1に記載のコーティング。
【請求項3】
少なくとも1つの非生物性の抗微生物剤及び/又は抗ウイルス剤が、約0.01%~約10%、好ましくは0.01%~5%の量でコーティングに存在する、請求項1又は請求項2に記載のコーティング。
【請求項4】
少なくとも1つの非生物性の抗微生物剤及び/又は抗ウイルス剤が、約5%~約15%の量でコーティングに存在する、請求項1又は請求項2に記載のコーティング。
【請求項5】
少なくとも1つの非生物性の抗微生物剤及び/又は抗ウイルス剤が、約25%~約40%の量でコーティングに存在する、請求項1から4のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項6】
少なくとも1つの非生物性の抗微生物剤及び/又は抗ウイルス剤が、消毒薬、洗浄剤及び/若しくは消毒剤、漂白剤、アルコール、酸化剤、弱酸、又は殺菌剤、並びにその組合せから選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項7】
少なくとも1つの非生物性の抗微生物剤及び/又は抗ウイルス剤が、アルコール、電解水、次亜塩素酸、金属酸化物、ポロキサマー、第四級アンモニウム塩、フッ化物イオン、キトサン、ポリ(ヘキサメチレングアニジン)(PHMG)、カルノソール、アルファ-トコフェロール、グルタルアルデヒド、ヒアルロン酸、クエン酸、酢酸、及びその組合せである、請求項1から6のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項8】
ポリマー担体が、約0.1%~約20%、場合により約8%~約20%の量で、又は約0.5%~約5%の量でコーティングに存在する、請求項1から7のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項9】
ポリマー担体が、水系水溶性ポリマー、場合により生分解性水系ポリマーである、請求項8に記載のコーティング。
【請求項10】
ポリマー担体が、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリルアミド、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(2-フェニル-2-オキサゾリン)(PPhOx)、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(1,2ブチレングリコール)(PBG)、ポリアクリロニトリル、ポリジビニルエーテル-無水マレイン酸、ポリオキサゾリン、ポリホスフェート、ポリホスファゼン、キサンタンガム、ペクチン、キトサン、デキストラン、カラギーナン、グアーガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(Na-CMC)、ヒアルロン酸(HA)、アルブミン、デンプン、アラビアガム、デキストリングルー、及びその組合せから選択される、請求項8又は請求項9に記載のコーティング。
【請求項11】
PVAが、約1kDa~200kDa、好ましくは約2kDa~130kDaの分子量を有する、請求項10に記載のコーティング。
【請求項12】
PVAが架橋される、請求項10又は請求項11に記載のコーティング。
【請求項13】
ポリマー担体が、水不溶性である、又は溶媒系ポリマーである、請求項8に記載のコーティング。
【請求項14】
ポリマー担体が、エチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、酢酸セルロース及び酪酸酢酸セルロースを含むセルロースの誘導体、並びにその組合せから選択される、請求項13に記載のコーティング。
【請求項15】
ポリマー担体が接着特性を有する、請求項1から14のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項16】
コーティングが可塑剤を更に含む、又はポリマー担体が可塑剤である若しくは可塑剤の特性を有する、請求項1から15のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項17】
可塑剤が、グリセロール、ソルビトール、スクロース、フタル酸ジブチル、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、オレイン酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、ダイズ油、ドデカノール、ラウリン酸、トリブチリン、トリラウリン、エポキシ化ダイズ油、マンニトール、ジエタノールアミン、脂肪酸、クエン酸トリエチル及び/又はスクロースエステル、並びにその組合せから選択される、請求項16に記載のコーティング。
【請求項18】
ナノ繊維として製剤化される、請求項1から17のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項19】
噴霧、浸漬、又は塗装として製剤化される、請求項1から18のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項20】
中立の、快適な、又は不快な芳香剤及び/若しくは着香料、並びに/又は着色剤を更に含む、請求項1から19のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項21】
ニトリル、炭酸カルシウム、硝酸カルシウム四水和物、塩化カルシウム、水、1つ又は複数の溶媒、並びにその組合せ及び混合物を更に含む、請求項1から20のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項22】
抗微生物性及び/又は抗ウイルス性の特性を表面に付与する、請求項1から21のいずれか一項に記載のコーティングの使用。
【請求項23】
表面が、フェイスマスク、医療織布、例えば外科用ガウン、フィルター、例えば加熱、換気及び空調(HVAC)のフィルター、(外科用、非外科用、再利用可能な、使い捨て可能な)手袋、創傷包帯、携帯電話又はデバイス、タッチスクリーン、キーパッド、キーボード、ボタン、ハンドル、スクリーンプロテクター、食品包装、家具の部分、例えばシート、トイレシート、カップ、ワークトップ、並びに器具、例えば台所器具、ドアプレート、水栓、紙幣、換気システム用の1つ又は複数の成分の一部、空気フィルター、例えば加熱、換気及び空調(HVAC)システム用のもの、並びに自動車のステアリングホイールから選択される、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
コーティングを1つ又は複数の層に適用し、各層が約1ミクロン~10mm、約1ミクロン~1mm、約1ミクロン~約500ミクロン、好ましくは約5ミクロン~約200ミクロン、好ましくは約15~約100ミクロン、より好ましくは約20~約50ミクロン又は約5~約20ミクロンの範囲の厚さを有する、請求項22又は請求項23に記載の使用。
【請求項25】
コーティングが連続している、請求項22から24のいずれか一項に記載の使用。
【請求項26】
コーティングを塗装、噴霧、浸漬、又はフローコーティングで適用する、請求項22から25のいずれか一項に記載の使用。
【請求項27】
病原菌、ウイルス、微生物、細菌、又は真菌を不活化するための、請求項22から26のいずれか一項に記載の使用。
【請求項28】
ウイルスがエンベロープウイルスである、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
ウイルスが、コロナウイルス、例えばSars-CoV-1、Sars-CoV-2、インフルエンザウイルス、HPV、HIV、又はノロウイルスである、請求項27又は請求項28に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗微生物性及び/又は抗ウイルス性コーティング、アルコールを含有する固体の抗微生物剤及び/若しくは抗ウイルス剤又はその中に収着したアルコールを有する収着剤を含む製品、製造品(層を製造の過程に製造品の少なくとも一面の少なくとも一部に適用する)、並びに本発明の抗微生物性及び/又は抗ウイルス性コーティング、並びにアルコールを含有する固体製品を製造する方法に関する。本発明は、本発明の抗微生物性及び/若しくは抗ウイルス性コーティング又はアルコールを含有する固体製品を表面に堆積する方法に更に関する。本発明はまた、本明細書に記載される抗微生物性及び/又は抗ウイルス性コーティング並びにアルコールを含有する固体製品の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
病原菌、例えばウイルス、細菌及び真菌は、1つの宿主から別の宿主に容易に伝播することができる。病原菌それ自体は移動しないが、人間、環境及び/又は医療器具に依存して移動する。伝播は、汚染された表面、噴霧及び飛散との接触、並びに病原菌を担持する液滴の吸入の結果として起こり得る。
【0003】
大部分の病原菌は無害であり、ヒト及び動物の助けとさえなる。しかし、それ以外は有害であり、感染を引き起こし得る。このような場合、病原菌の広がりの予防は、脆弱な対象を保護するのに重要な役割を担う。
【0004】
自己消毒面はウイルス又は細菌の変性(不活化)により作用することができる。アルコールの溶液及びゲルは表面を消毒するのに効果的であるが、これらの製品は、表面を経時的に自己消毒し続けることができない。一方、経時的に安定な保護をもたらす現在の抗微生物性コーティング溶液は非効率的であり、病原体を不活性化するために病原体に接触する時間が必要である。したがって、適時的に微生物及びウイルスを効果的に死滅することができ、長期的な保護をもたらすこともできる新しい抗ウイルス性及び抗微生物性コーティング溶液を得る必要性は依存として存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】表題「Synthesis and Characterization of Gamma Cyclodextrin Metal Organic Framework and Encapsulation of Ethanol」、An-Katrienin Pauwels、2019年:http://hdl.handle.net/1942/29463
【非特許文献2】Olewnik-Kruszkowska E.等(Polymers (2019)11、2093)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、広範囲の表面でウイルス、細菌及び真菌を不活性化し、長期間持続することができる速効性で持続性の溶液を生成する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここで、最初に提示されるのは、i)少なくとも1つの非生物性の抗微生物剤及び/又は抗ウイルス剤;並びにii)ポリマー担体を含む、抗微生物性及び/又は抗ウイルス性コーティングである。誤解を避けるために、用語「抗微生物性」は細菌及び真菌を包含する。
【0008】
一実施形態では、少なくとも1つの非生物性の抗微生物剤及び/又は抗ウイルス剤は、約0.01%~約40%の量で、約5%~約15%である特定の範囲の量で、特に好適な量である約10%の量でコーティングに存在し得る。特定の例では、少なくとも1つの非生物性の抗微生物剤及び/又は抗ウイルス剤は、約0.1%~約20%、又は最大で約35%の量でコーティングに存在し得る。例えば、0.01%~3%の濃度が活性剤としてHOClを含むコーティングに特に好適であることが分かっているが、最大で約0.7%の濃度が、グルタルアルデヒドが活性剤である場合に好適であることが分かっている。別の例では、薬剤は、約25%~約40%の量でコーティングに存在し得る。約10%又は約35%の量が活性剤としてアルコール末を含有するコーティングに特に好適であることが分かっている。
【0009】
一実施形態では、少なくとも1つの非生物性の抗微生物剤及び/又は抗ウイルス剤は、消毒薬、洗浄剤及び/若しくは消毒剤、漂白剤、アルコール、酸化剤、弱酸、又は殺菌剤、並びにその組合せから選択することができる。好適な薬剤の例は、アルコール、電解水、次亜塩素酸(HOCl)、金属酸化物、ポロキサマー、第四級アンモニウム塩、フッ化物イオン、キトサン、ポリ(ヘキサメチレングアニジン)(PHMG)、カルノソール、アルファ-トコフェロール、グルタルアルデヒド(GA)、ヒアルロン酸、クエン酸、酢酸、及びその組合せを含む。他の好適な薬剤は、ドデシルベンゼンスルホン酸、L-乳酸、過酸化水素、オクタン酸、ペルオキシ酢酸(過酢酸)、ペルオキシ一硫酸カリウム、塩化ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム二水和物、金属、例えば銀イオン、銅イオン、鉄イオン、金イオン、アルミニウムイオン、亜鉛イオン、チタンイオン、テトラアセチルエチレンジアミン、及び/又はチモールを含む。
【0010】
用語「非生物性」は、生物又は生体に関与しない又はこれらに由来せず、生命及び生存する過程に関与しない、これらでマーキングしない又はこれらに由来しない、その標準的な意味で使用される。
【0011】
アルコールが活性剤である場合、アルコールがあらゆる水を含有しない、すなわちアルコールが無水アルコールであることが好ましい。アルコールは、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、又はtert-ブタノールから選択することができる。一実施形態では、アルコールは、500g/mol未満、好ましくは200g/mol未満、より好ましくは100g/mol未満の分子量を有する。好ましくは、アルコールはエタノール又はブタノールである。好ましくは、アルコールは無水エタノールである、又は100%のアルコール濃度を有する。
【0012】
特定の実施形態では、アルコールが活性剤である場合、アルコールは、約1%~約10%のアルコールを含有する固体製剤として収着剤と合剤させ得る。好ましくは、製剤のアルコール含量は約6%~約8%である。製剤のアルコール含量はまた、合剤の少なくとも2%、少なくとも2.5%、又は少なくとも4%であり得る。別の方法で表現をすると、収着剤のアルコールに対する質量比は99:1~90:10の範囲であり得る。特定の好適な範囲は97.5:2.5~96:4及び94:6~92:8を含む。このような合剤は、そのアルコール含量を維持するという点で特に高い安定性を有することを示している。更に、この合剤は高いアルコール含量を有し、維持する。更に、本発明の方法は、固体製品の層の均一な堆積を可能にする。
【0013】
アルコール合剤の一実施形態では、収着剤は、炭水化物、変性炭水化物、ポリマー、環状オリゴ糖、金属-有機物構成体、ゼラチン、及び/又はデンプンから選択することができる。好適な収着剤の例は、炭水化物、好ましくは環状オリゴ糖、より好ましくはアルファ-シクロデキストリン、ベータ-シクロデキストリン、ガンマ-シクロデキストリン、及びCaptisol(登録商標)(Ligand社の修飾ベータ-シクロデキストリン技術)、又はその塩から選択されるデキストリンを含む。
【0014】
一実施形態では、アルコール合剤は流動可能であり、好ましくは粉末形態である。このような一実施形態では、アルコール合剤は、岩塩のような天然塩、CaCl2又はタルクを含む、1つ又は複数の添加物質を更に含み得る。
【0015】
特定の実施形態では、少なくとも1つの非生物性の抗微生物剤及び/又は抗ウイルス剤は、場合により電解水の形態での次亜塩素酸である。次亜塩素酸(HOCl又はHClO)は、塩素が水に溶解し、それ自体が部分的に分離する場合に形成する弱酸であり、次亜塩素酸イオンであるClO-を形成する。HClO及びClO-は酸化剤であり、塩素溶液の主要な消毒剤である。
【0016】
本発明のコーティングが、単一の抗微生物剤及び/若しくは抗ウイルス剤を含み得る、又は2つ以上の抗微生物剤及び/若しくは抗ウイルス剤を含み得ると理解されよう。例えば、コーティングは、抗微生物剤及び/又は抗ウイルス剤としてアルコール(アルコール末(PA)製剤の形態)及び次亜塩素酸の両方を含み得る。別の例では、コーティングは、抗微生物剤及び/又は抗ウイルス剤としてアルコール(アルコール末(PA)製剤の形態)、ヒアルロン酸(HA)、及び塩化セチルピリジニウム(CPC)を含み得る。また更なる例では、コーティングは、抗微生物剤及び/又は抗ウイルス剤としてグルタルアルデヒド(GA)及び/又はHOClを含み得る。
【0017】
本発明のコーティングはポリマー担体を含む。このような担体は、抗微生物剤及び/又は抗ウイルス剤を固定又は安定化する特に好適な基剤をもたらす。例えば、非常に水のようである薬剤は、コーティングとして適用することは難しい場合があるが、それは、この薬剤が容易かつ迅速に表面を流れる、又は吸収されるからである。アルコールが抗微生物剤及び/又は抗ウイルス剤として使用される場合、アルコールはコーティングが乾燥する際に蒸発するので、コーティングは最小限の抗微生物性及び/又は抗ウイルス性の特性を維持する。対照的に、ポリマー固定化剤又は安定化剤は、このような流出及び/又は吸収を軽減又は最小限にし、活性剤をコーティング内に「固定する」又は保持する。結果として、ポリマー担体はまた、抗微生物剤及び/若しくは抗ウイルス剤が活性のままである、並びに/又はその抗微生物性及び/若しくは抗ウイルス性の特性を維持する時間の長さに寄与する。
【0018】
一実施形態では、ポリマー担体は、約0.1%~約20%の量でコーティングに存在し得る。特定の好適な一範囲は約8%~約20%である。特定の好適な別の範囲は約0.5%~約10%又は0.5%~約5%である。
【0019】
特定の実施形態では、ポリマー担体は、水系水溶性ポリマー、場合により生分解性水系ポリマーであり得る。このような担体は、抗微生物性及び/又は抗ウイルス性コーティングを繰返し適用することが必要である表面、又は表面が単回使用であり得る場合の表面へのコーティングに対する特定の適用を有する。用語「表面」が内面並びに外面を包含すると理解されよう。
【0020】
このような担体の例は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリルアミド、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)、ポリジビニルエーテル-無水マレイン酸、ポリオキサゾリン、ポリホスフェート、ポリホスファゼン、キサンタンガム、ペクチン、キトサン、デキストラン、カラギーナン、グアーガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(Na-CMC)、ヒアルロン酸(HA)、アルブミン、デンプン、アラビアガム、デキストリングルー、グリセロール、及びその組合せを含む。
【0021】
担体は、可塑剤の特性を有し得る、又は可塑剤と組み合わせることができる。一部の適用に対して、いくつかの可塑性、可撓性及び/又は屈曲性を加えて、コーティングの固縮及び脆弱性を軽減又は最小限にすることが必要である、又はそれが望ましい。好適な可塑剤の例は、グリセロール、ソルビトール、スクロース、フタル酸ジブチル、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、オレイン酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、ダイズ油、ドデカノール、ラウリン酸、トリブチリン、トリラウリン、エポキシ化ダイズ油、マンニトール、ジエタノールアミン、脂肪酸、クエン酸トリエチル、スクロースエステル、及びその組合せを含む。
【0022】
使用時、コーティングは、コーティングを水のような外来因子から保護する保護層又は追加層を含まない。結果として、コーティングの高い安定性は、より強力であるコーティングを提供するのに望ましく、コーティングを(より迅速に)除去するより強く接触する力に耐えることが可能である。コーティングの寿命及び安定性を改善する1つの方法は、より高い分子量のポリマーを使用することができる。例えば、130kDaの分子量を有するPVAは、2kDaのPVAと比較して低い溶解性である。
【0023】
PVAにより形成されたもののようなマトリックスの水溶性と、それによる活性剤のコーティングから浸出する傾向を軽減する別の又は追加の方法は、ポリマーを架橋することである。
【0024】
別の実施形態では、ポリマー担体は、水不溶性であり得る、又は溶媒系ポリマーである。このような担体の例は、エチルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース及び酪酸酢酸セルロースを含むセルロースの誘導体、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(2-フェニル-2-オキサゾリン)(PPhOx)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(1,2ブチレングリコール)(PBG)、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン及びその組合せである。このような担体は、抗微生物性及び/若しくは抗ウイルス性コーティングを単回のみ適用することが必要である若しくは可能性がある表面、又は表面が最小限の消耗を有する及び/若しくは多回使用である場合の表面へのコーティングに対する特定の適用を有する。このようなコーティングはまた、水と接触する場合に活性剤の浸出又は溶解が望ましくない表面、例えば使い捨て可能な手袋に適切であり得る。用語「表面」が内面並びに外面を包含すると理解されよう。
【0025】
別の実施形態では、ポリマー担体は、接着特性を(付加的に)有し得る。用語「接着剤」とは、分離に抵抗する表面付着による機能的な手法に一緒に材料を保持することが可能である物質を指す。「接着剤」は、一般用語として、セメント、漿剤、グルー、及びペースト剤を含み、多くの場合、接着結合を形成する任意の有機材料と互換的に使用される用語である。「接着剤」に対する代替の定義は「粘着性」である。接着特性は、表面上の本発明のコーティングの保持を可能にする、又は増大する。
【0026】
また別の実施形態では、本明細書に定義されるコーティングは可塑剤を更に含み得る。代替的に又は加えて、ポリマー担体は可塑剤を有し得る、又は可塑剤の特性を有する。可塑剤が、可塑性及び屈曲性を生じる又は促進し、脆弱性を軽減する製剤に添加した物質であると理解されよう。好適な可塑剤の例はグリセロールである。
【0027】
特定の実施形態では、コーティングはナノ繊維として製剤化することができる。ナノ繊維を含むコーティングもまた考慮される。このような製剤は、フェイスマスク又はHVACシステムで使用されるもの等の空気フィルターのような繊維への特定の適用を有するが、これらは繊維の通気性を必要とする。このようなナノ繊維は、電界紡糸のようであり、電界紡糸を含む、任意の好適な方法により形成することができる。
【0028】
別の実施形態では、コーティングは噴霧、浸漬、又は塗装として製剤化され得る。例えば、繰返し適用するコーティングは、粘度が低い噴霧としてより適切に製剤化し得る。対照的に、家具の表面に対するコーティングは、粘度が高い塗装としてより適切に製剤化し得る。しかし、一部の適用に対して、コーティングが噴霧又は浸漬されることを可能にする粘度は、例えばニトリル手袋をコーティングするのに適切であり得る。
【0029】
コーティングが、噴霧、浸漬若しくは塗装として製剤化し得る、及び/又はナノ繊維を含み得ると理解されよう。
【0030】
使用時、コーティングは、好ましくは、表面に適用される形態で活性である。例えば、水のような追加的な薬剤は、活性剤を放出又は活性化する必要がない。
【0031】
更なる実施形態では、コーティングは、中立の、快適な、又は不快な芳香剤及び/又は着香料を更に含み得る。これは、製剤においてアルコール、ポリマー及び/又は有効成分を含む成分の匂いを隠し、製品の摂取又はコーティングを舐めることを妨げることである。コーティングは、付加的に又は代替的に、目視手段により容易に同定される本発明のコーティングを担持する物品を可能にする着色剤を更に含み得る。
【0032】
また更なる実施形態では、コーティングは、追加成分、有効成分、添加物質、可塑剤、担体、安定剤及び/又は充填剤を更に含み得、その例は、ニトリル、炭酸カルシウム、硝酸カルシウム四水和物、塩化カルシウム、グリセロール、水、1つ又は複数の溶媒、並びにその組合せ及び混合物を含む。
【0033】
特定の例では、コーティングは、約15%のエチルセルロース及び500~7000ppmのHOClを含み得、場合により、本明細書に定義され、記載される約10%のアルコール末を更に含む。別の特定の例では、コーティングは、約8%のPVA及び500~7000ppmのHOClを含み得、場合により、本明細書に定義され、記載される約10%のアルコール末を更に含む。更なる特定の例では、コーティングは、約1%のエチルセルロース、約0.1%のグリセロール、及び約10,000ppmのHOClを含み得る。ポリマーの範囲は約0.1%~約20%の範囲であり得、HOCl濃度は約200ppm~約100,000ppmの範囲であり得る。特定の例は約1%(10,000ppm)のHOClを有する。場合により、両方の又はいずれかの例では、製剤は、ナノ繊維を含み(include、comprise)得る、又はそれらからなり得る。
【0034】
別の特定の実施形態では、コーティングでの活性剤は、好ましくは約2%以下、例えば0.9%又は0.7%未満の濃度であるグルタルアルデヒド(GA)であり得る。
【0035】
別の態様では、本発明は、本発明に記載され、定義されるコーティングの使用に係わり、抗微生物性及び/又は抗ウイルス性の特性を表面に付与する。別の方法で表現をすると、本発明は、抗微生物性及び/又は抗ウイルス性の特性を表面に付与するための方法に係わり、方法は、本明細書に定義され、記載されるコーティングを表面に適用することを含む。
【0036】
コーティングが任意の表面に適用することができるが、特定の適用は、表面が、フェイスマスク、医療織布、例えば外科用ガウン、(外科用、非外科用、再利用可能な、使い捨て可能な)手袋、創傷包帯、携帯電話又はデバイス、タッチスクリーン、キーパッド、キーボード、ボタン、ハンドル、スクリーンプロテクター、食品包装、家具の部分、例えばシート、トイレシート、カップ、ワークトップ、並びに器具、例えば台所器具、ドアプレート、水栓、紙幣、フィルター、換気システム用の1つ又は複数の成分の一部、空気フィルター、例えば加熱、換気及び空調(HVAC)システム用のもの、並びに自動車のステアリングホイールのためである。表面が、織布、木材、ガラス、セラミック、プラスチック、エラスチック、ポリマー、天然、合成及び混合物、並びにその組合せを含む、任意の材料であり得るとも理解されよう。特定の例として、表面は、ゴム又は織布の手袋のような手袋であり得る。使い捨て可能な手袋及び/又はゴム手袋は、典型的に、ニトリル、ラテックス、ビニル、並びにそのブレンド及び混合物から作製される。特定の場合、ニトリル手袋は、ニトリルブタジエンゴム(NBR)から作製されるが、これはブタジエン及びアクリロニトリルのようなモノマーと合わせることにより作製される合成材料である。使い捨て不可能な手袋は、典型的に、綿、ナイロン又はゴム系のような織布から作製される。
【0037】
一実施形態では、コーティングは、1つ又は複数の層に適用し、各層は、約1ミクロン~約1000ミクロン、好ましくは約1ミクロン~約500ミクロン、好ましくは約5ミクロン~約200ミクロン、好ましくは約15~約100ミクロン、より好ましくは約20~約50ミクロン、若しくは約5~10ミクロンの範囲、又は最大で約200ミクロンの厚さを有する。特定の状況では、最大で10mmのコーティングもまた望ましく、適切である。コーティングの厚さが任意の別個の厚さであり得る、又は本明細書で提供される範囲内の範囲であり得ると理解されよう。例えば、層は、約7.8ミクロンの厚さであり得る、又は約8.6~10.1ミクロンの厚さであり得る。
【0038】
特定の実施形態では、層は、単一のコーティングと一緒に適用することができる、又は逐次的に単一で完全な層を構成する2つ以上の構成要素を含み得る。例えば、担体は抗微生物剤及び/又は抗ウイルス剤の前に表面に噴霧することができるが、2つの成分は一旦適用して単一の層を構成するとみなされる。次いで、更なる層を同様に適用することができる。
【0039】
特定の実施形態では、コーティングは連続することができる。代替的に、コーティングは、不連続することができる、又は連続と不連続との組合せであり得る。例えば、コーティングは、部分的にマイクロニードルで刺して、コーティングの全体又は一部に通気性を付与することができる。
【0040】
別の実施形態では、コーティングは塗装、噴霧、浸漬又はフローコーティングすることにより適用することができる。塗装は刷毛塗り及びロール塗りを包含する。
【0041】
更なる実施形態では、コーティングは、病原菌、ウイルス、微生物、細菌、又は真菌の不活化で使用される。別の方法で表現をすると、病原菌、ウイルス、微生物、細菌、又は真菌を不活化するための方法であって、本明細書に定義され、記載されるコーティングの適用を含む、方法が提供される。
【0042】
病原菌がウイルスである場合、ウイルスはエンベロープ又は非エンベロープであり得る。特定の実施形態では、ウイルスは、コロナウイルス、例えばSars-CoV-1、Sars-CoV-2、インフルエンザウイルス、HPV、HIV、又はノロウイルスであり得る。
【0043】
別の態様では、本発明は、その中に又はそこに収着したアルコールを有する収着する物質(収着剤)を含む、抗微生物性及び/又は抗ウイルス性のアルコールを含有する固体製品に関し、固体製品は、約2%~約10%のアルコール、例えば約6%~約8%のアルコールを含有する。別の例では、固体製品は、2%超のアルコール、好ましくは少なくとも2.5%のアルコール、より好ましくは少なくとも4%のアルコールを含有する。別の実施形態では、固体製品は、約6%~約8%のアルコールを含有する。一実施形態では、抗微生物性及び/又は抗ウイルス性のアルコールを含有する固体製品は、その中に収着したアルコールを有する収着剤からなり、固体製品は2%超のアルコールを含有する。一実施形態では、固体製品は、少なくとも2.5%のアルコール、より好ましくは少なくとも4%のアルコールを含有する。別の実施形態では、固体製品は、約6%~約8%のアルコールを含有する。一実施形態では、固体製品でのアルコール含量は、15~35℃の温度で7日間の貯蔵後、2%超を維持する。一実施形態では、固体製品でのアルコール含量は、15~35℃の温度で14日間の貯蔵後、2%超を維持する。一実施形態では、固体製品でのアルコール含量は、15~35℃の温度で30日間の貯蔵後、2%超を維持する。
【0044】
一実施形態では、収着剤は吸収する物質及び/又は吸着する物質であり得る。一実施形態では、収着剤は吸収する物質であり得る。一実施形態では、収着剤は吸着する物質であり得る。一実施形態では、収着剤は吸収し、吸着する物質であり得る。収着剤はアルコールと水素結合を形成することができる。収着剤はその構造にアルコール分子を封入することを可能にすることができる。シクロデキストリンは、その環状構造のため、アルコール分子を封入するのに特に適している。一実施形態では、収着剤は、炭水化物、変性炭水化物、ポリマー、金属-有機物構成体、ゼラチン、及び/又はデンプンから選択することができる。一実施形態では、収着剤は炭水化物であり得る。一実施形態では、炭水化物はデキストラン又はデキストリンである。一実施形態では、炭水化物はデキストランである。好ましくは、収着剤は、アルファ-シクロデキストリン、ベータ-シクロデキストリン、ガンマ-シクロデキストリン、及びCaptisol(登録商標)(Ligand社の修飾ベータ-シクロデキストリン技術)、又はその塩から選択されるデキストリンであり得る。より好ましくは、デキストリンはガンマ-シクロデキストリンである。Captisol(登録商標)(Ligand社の修飾ベータ-シクロデキストリン技術)は、アルコールの封入の向上をもたらし、より安定なアルコールを含有する固体製品を提供することができる。
【0045】
アルファ-シクロデキストリン、ベータ-シクロデキストリン、ガンマ-シクロデキストリンの構造は以下に示す:
【0046】
【化1】
【0047】
一実施形態では、収着剤は、金属-有機物構成体、好ましくはポルフィリン系の金属-有機物構成体又はポルフィリン誘導体系の金属-有機物構成体である。
【0048】
アルコールがあらゆる水を含有しないことが好ましい。一実施形態では、アルコールは無水アルコールである。一実施形態では、アルコールは100%のアルコールの濃度を有する。一実施形態では、アルコールは、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、又はtert-ブタノールから選択される。一実施形態では、アルコールは、500g/mol未満、好ましくは200g/mol未満、より好ましくは100g/mol未満の分子量を有する。好ましくは、アルコールはエタノールである。好ましくは、アルコールは無水エタノールである。
【0049】
一実施形態では、収着剤のアルコールに対する質量比は99:1~90:10の範囲であり得る。好ましくは、収着する物質のアルコールに対する質量比は97.5:2.5~94:6の範囲である。
【0050】
一実施形態では、抗微生物性及び/又は抗ウイルス性のアルコールを含有する固体製品は、添加物質、場合により岩塩のような天然塩、CaCl2又はタルクを更に含む。
【0051】
一実施形態では、アルコールを含有する固体製品は指触乾燥する。一実施形態では、アルコールを含有する固体製品は流動可能であり、例えば粉末形態である。別の方法で表現をすると、抗微生物性及び/又は抗ウイルス性のアルコールを含有する固体製品は、抗微生物性及び/又は抗ウイルス性のアルコールを含有する粉末である。
【0052】
本発明はまた、その中に収着したアルコールを有する収着する物質を含む又はそれらからなる抗菌性及び/又は抗ウイルス性のアルコールを含有する粉末に関し、収着する物質はガンマ-シクロデキストリンであり、アルコールはエタノールであり、収着する物質のアルコールに対する質量比は99:1~90:10、好ましくは97.5:2.5~94:6の範囲である。本発明はまた、その中に収着したアルコールを有する収着する物質からなる抗菌性及び/又は抗ウイルス性のアルコールを含有する粉末に関し、収着する物質はガンマ-シクロデキストリンであり、アルコールはエタノールであり、収着する物質のアルコールに対する質量比は99:1~90:10、好ましくは97.5:2.5~94:6の範囲である。
【0053】
本明細書に定義されるアルコールを含有する固体製品、又は本明細書に定義されるアルコールを含有する粉末は、広範囲な表面で使用して、そこに抗菌性及び/又は抗微生物性の特性をもたらすことができる。表面は、織布、プラスチック、ポリマー(天然若しくは合成)、又は金属から選択することができる。
【0054】
本発明はまた、製造品に関し、本明細書に定義されるアルコールを含有する固体製品、又は本明細書に定義されるアルコールを含有する粉末を含む層は、製造品の少なくとも一面の少なくとも一部に適用される。一実施形態では、層は接着剤に適用される。一実施形態では、層は本明細書に定義されるアルコールを含有する固体製品を含む。一実施形態では、層は本明細書に定義されるアルコールを含有する粉末を含む。一実施形態では、層は均一である。一実施形態では、本明細書に定義されるアルコールを含有する固体製品、又は本明細書に定義されるアルコールを含有する粉末を含む層の厚さは、1ミクロン~500ミクロンの範囲、好ましくは20~40ミクロンの範囲である。一実施形態では、接着剤層の厚さは100nm~500ミクロンの範囲である。接着剤層の厚さは、好ましくは1~50ミクロンの範囲、より好ましくは1~10ミクロンの範囲である。好ましくは、接着剤層の厚さは3~7ミクロンの範囲である。
【0055】
少なくとも1つのコーティングは製造品の外面にあり得る。代替的に、コーティングは、コーティングが製造品内に含まれるように製造品の内面にあり得る。一実施形態では、コーティングは、製造品の内面及び外面の両方にあり得る。一実施形態では、層は接着剤に適用される。
【0056】
一実施形態では、製造品は、フェイスマスク、医療織布、例えば外科用ガウン、(外科用、非外科用、再利用可能、使い捨て可能)手袋、ラテックス、携帯電話又はデバイス、タッチスクリーン、キーパッド、キーボード、ボタン、ハンドル、スクリーンプロテクター、食品包装、家具の部分、例えばシート、トイレシート、カップ、ワークトップ、並びに器具、例えば台所器具、ドアプレート、水栓、紙幣、フィルター、換気システム用の成分の一部、空気フィルター、例えば加熱、換気及び空調(HVAC)システム用のもの、並びに高性能微粒子収着(HEPA)フィルター及び高性能微粒子捕捉フィルター、並びに自動車のステアリングホイールから選択される。好ましくは、製造品は、フェイスマスク、外科用ガウン、手袋、又はフィルターから選択される。一実施形態では、製造品は、医学、健康管理、フィットネス若しくはレジャー産業、教育、及び/又は科学施設で使用される織物である。
【0057】
本発明はまた、織物に関し、本明細書に定義されるコーティング及び/若しくはアルコールを含有する固体製品、又はアルコールを含有する粉末を含む層は、織物の少なくとも一面の少なくとも一部に適用される。一実施形態では、層は、本明細書に定義されるコーティング及び/又はアルコールを含有する固体製品を含む。一実施形態では、層は、本明細書に定義されるアルコールを含有する粉末を含む。一実施形態では、層は均一である。一実施形態では、織物の両側は、本明細書に定義されるコーティング、アルコールを含有する固体製品、及び/又はアルコールを含有する粉末を含む層でコーティングされる。
【0058】
本発明はまた、抗微生物性及び/又は抗ウイルス性の紙又は金属に関し、本明細書に定義されるコーティング及び/若しくはアルコールを含有する固体製品、並びに/又はアルコールを含有する粉末を含む層は、紙又は金属の少なくとも一面の少なくとも一部に適用される。一実施形態では、層は、本明細書に定義されるコーティング及び/又はアルコールを含有する固体製品を含む。一実施形態では、層は、本明細書に定義されるコーティング及び/又はアルコールを含有する粉末を含む。一実施形態では、層は均一である。一実施形態では、紙は、接着紙、好ましくはミクロ細孔接着紙である。一実施形態では、層は紙の少なくとも1つの接着面の少なくとも一部に適用される。一実施形態では、接着紙の両側は、本明細書に定義されるコーティング、アルコールを含有する固体製品、及び/又はアルコールを含有する粉末でコーティングされる。
【0059】
本発明はまた、抗微生物性及び/又は抗ウイルス性のポリマー又はプラスチックに関し、本明細書に定義されるコーティング及び/若しくはアルコールを含有する固体製品、並びに/又はアルコールを含有する粉末を含む層は、ポリマー又はプラスチックの少なくとも一面の少なくとも一部に適用される。一実施形態では、層は、本明細書に定義されるコーティング及び/又はアルコールを含有する固体製品を含む。一実施形態では、層は、本明細書に定義されるアルコールを含有する粉末を含む。一実施形態では、層は均一である。ポリマーは、ラテックスのような天然ポリマー、又はネオプレンのような合成ポリマーであり得る。代替では、本明細書に定義されるコーティング及び/若しくはアルコールを含有する固体製品、並びに/又はアルコールを含有する粉末は、成型前にプラスチックと一体化して、プラスチックを異なる形状に成型することが可能にする。
【0060】
本発明はまた、本明細書に定義される製造品、本明細書に定義される織物、本明細書に定義される抗微生物性及び/若しくは抗ウイルス性の紙若しくは金属、又は本明細書に定義される抗微生物性及び/若しくは抗ウイルス性ポリマー又はプラスチックに関し、層は、本明細書に定義されるコーティング及び/若しくはアルコールを含有する固体製品の単一のコーティング、並びに/又は本明細書に定義されるアルコールを含有する粉末からなり、層の厚さは、1~500ミクロン、好ましくは5~200ミクロン、好ましくは15~100ミクロン、より好ましくは20~50ミクロン、場合により5~20ミクロンの範囲である。
【0061】
本発明はまた、本明細書に定義される製造品、本明細書に定義される織物、本明細書に定義される抗菌性及び/若しくは抗ウイルス性の紙若しくは金属、又は本明細書に定義される抗菌性及び/若しくは抗ウイルス性ポリマー又はプラスチックに関し、層は、本明細書に定義されるコーティング及び/若しくは本明細書に定義されるアルコールを含有する固体製品の1つ若しくは複数のコーティング、又は本明細書に定義されるアルコールを含有する粉末からなり、層の厚さは、1~500ミクロン、好ましくは5~200ミクロン、好ましくは10~200ミクロン、好ましくは15~100ミクロン、より好ましくは20~50ミクロン、場合により5~20ミクロンの範囲である。一実施形態では、層の厚さは20~50ミクロン又は5~20ミクロンの範囲である。特定の例では、層の厚さは最大で10mm又は約10mmであり得る。
【0062】
一実施形態では、各コーティングは、コーティングする面の平方センチメートル毎に、最大で10mgの本明細書に定義されるコーティング及び/若しくはアルコールを含有する固体製品、並びに/又はアルコールを含有する粉末からなる。一実施形態では、各コーティングは、コーティングする面の平方センチメートル毎に、最大で5mgの本明細書に定義されるコーティング及び/若しくはアルコールを含有する固体製品、並びに/又はアルコールを含有する粉末からなる。一実施形態では、各コーティングは、コーティングする面の平方センチメートル毎に、4.4mgの本明細書に定義されるコーティング及び/若しくはアルコールを含有する固体製品、並びに/又はアルコールを含有する粉末からなる。一実施形態では、各コーティングは、コーティングする面の平方センチメートル毎に、最大で3mgの本明細書に定義されるコーティング及び/若しくはアルコールを含有する固体製品、並びに/又はアルコールを含有する粉末からなる。一実施形態では、各コーティングは、コーティングする面の平方センチメートル毎に、最大で2mgの本明細書に定義されるコーティング及び/若しくはアルコールを含有する固体製品、並びに/又はアルコールを含有する粉末からなる。一実施形態では、層は、本明細書に定義されるコーティング及び/又はアルコールを含有する固体製品を含む。一実施形態では、層は、本明細書に定義されるアルコールを含有する粉末を含む。
【0063】
本発明はまた、織布、例えばフェイスマスク、(外科用、非外科用、使い捨て可能)手袋、創傷包帯、フィルター、例えば加熱、換気及び空調(HVAC)用の空気フィルター、プラスチック包装に関し、織布は、本明細書に定義される抗微生物性及び/又は抗ウイルス性の紙、織物又はプラスチックを含む。一実施形態では、織布は、飛散抵抗性不織布、本明細書に定義される抗微生物性及び/又は抗ウイルス性の紙、織物又はプラスチック、高密度フィルター層、並びに直接皮膚接触層を含む。一実施形態では、織布は、本明細書に定義される抗微生物性及び/又は抗ウイルス性の織物を更に含む、タイプ2R(IIR)フェイスマスクである。一実施形態では、フェイスマスクは、本明細書に定義される抗微生物性及び/又は抗ウイルス性の織物を更に含む、抗ウイルス性のN95フェイスマスクである。
【0064】
一実施形態では、フェイスマスクはタイプ3R(IIIR)フェイスマスクであり、本明細書に定義されるコーティング及び/若しくはアルコールを含有する固体製品、並びに/又はアルコールを含有する粉末の層は、タイプ2R(IIR)フェイスマスクの存在する3層に加える。IIRフェイスマスクは、以下の3層から構成される:
1. 飛散抵抗性不織布
2. 高密度フィルター層
3. 直接皮膚接触層
【0065】
コーティング及び/又はアルコールを含有する固体製品及び/又はアルコールを含有する粉末は、高密度フィルター層それ自体に噴霧することができる。
【0066】
代替的に、コーティング及び/又はアルコールを含有する固体製品及び/又はアルコールを含有する粉末をフェイスマスクに添加するために、追加の層は飛散抵抗性織布の後に加える。この層は紙から構成されるミクロ細孔織布である。ミクロ細孔織布は、フェイスマスクの通気性が損なわれないことを確実にする。現在のフェイスマスクは、0.1~0.3μm(N95)及び0.3~10μm(標準的な外科用マスク)の範囲で孔径を有する。アルコール末の層をタイプ2R(IIR)フェイスマスクに加えることは、以下の構造をもたらす:
1. 飛散抵抗性不織布
2. 抗微生物性及び/又は抗ウイルス性の接着紙(例えば、本明細書に定義されるアルコールを含有する固体製品、又は本明細書に定義されるアルコールを含有する粉末の層でコーティングした3Mミクロ細孔テープ)
3. 高密度フィルター層
4. 直接皮膚接触層
【0067】
一実施形態では、抗微生物性及び/又は抗ウイルス性の接着紙の端部は他の層に縫合している。一実施形態では、抗微生物性及び/又は抗ウイルス性の接着紙の内側は、本明細書に定義されるコーティング、アルコールを含有する固体製品、及び/又はアルコールを含有する粉末でコーティングされる。別の実施形態では、着用者が保護されるべきである場合(例えばIIRフェイスマスク)、抗微生物性及び/又は抗ウイルス性の接着紙の外側は、本明細書に定義されるコーティング、アルコールを含有する固体製品、及び/又はアルコールを含有する粉末でコーティングされる。一実施形態では、抗微生物性及び/又は抗ウイルス性の接着紙の両側は、本明細書に定義されるコーティング、アルコールを含有する固体製品、及び/又はアルコールを含有する粉末でコーティングされる。
【0068】
抗微生物性及び/又は抗ウイルス性の接着紙を有する利点は、紙の接着性の性質のため、本明細書に定義されるコーティング、アルコールを含有する固体製品、及び/又はアルコールを含有する粉末とより強く結合することである。
【0069】
最終製品の通気性が非常に重要であるフェイスマスク及びフィルターのような適用では、コーティングした表面は、適切なサイズのニードルアレイで穿孔して、通気性を改善するために表面に適切なサイズの穴を形成することができる。一実施形態では、1μm~500μmの範囲のマイクロニードルアレイを使用する。1μm~500μmの範囲のマイクロニードルアレイは、典型的なフェイスマスクの孔径が0.3μm~10μmであるIIRフェイスマスクのような標準的な外科用フェイスマスクを穿孔するのに好適である。穿孔は、コーティングを適用した後に実施することができる。代替的に、マイクロニードルアレイでの穿孔は、コーティングの過程、「マスク」又はテンプレートとして使用することができる。
【0070】
孔が典型的に0.1~0.3μmであるN95フェイスマスク及びフィルターのような、より小さい孔を必要とする製品に対して、ナノニードルアレイを使用することができる。代替的に、抗微生物性及び/又は抗ウイルス性の接着紙(例えばミクロ細孔テープ)のような追加の織布の層を使用することができる。ミクロ細孔テープを穿孔する場合でさえ、フェイスマスクの全体的な完全性は、存在する層が無傷であり、任意の方法に影響を受けないことから損なわれない。
【0071】
コーティング/固体製品が消費用に設計されていない、又は摂取されない場合に好ましいと理解されよう。この点に関して、製品は、摂取を制止することに対して中立又は不快のいずれかである香料及び/又は芳香剤を含み得る。コーティング/固体製品は、付加的に又は代替的に、目視手段により容易に同定される本発明のコーティングを担持する物品を可能にする着色剤を含み得る。
【0072】
本発明は、合成時間をかなり短縮するアルコールを含有する固体製品を生成する新しい方法を開発している。本方法は、収着する物質(例えばシクロデキストリン)にアルコールを拡散するのとは対照的に、アルコール及び収着する物質(例えばシクロデキストリン)を直接混合することを含む。次いで、得られた製品は、真空オーブンで乾燥して、所望のアルコールを含有する固体製品(例えばアルコール末)を生成する。本方法では、アルコールは収着する物質(例えばシクロデキストリン)に封入される。したがって、シクロデキストリンの場合、シクロデキストリン環の直径が大きくなれば、より多くのアルコールが封入される。本方法は収着する物質を溶解することに依存しないので、本方法は水なしで最も良好に実行される。この新しいより速い方法は、大きな規模でアップスケーリングし、製造するのに非常に有益である。驚くべきことに、この新しい方法は、著しく低体積のエタノールを必要としたので、より高い製造効率をもたらした。
【0073】
本発明は、以下のステップ:a)液体アルコールを収着する物質(収着剤)と直接混合するステップ、及びb)得られた混合物を乾燥させて、アルコールを含有する固体製品を形成するステップを含む抗微生物性及び/又は抗ウイルス性のアルコールを含有する固体製品を調製する方法に更に関する。本方法は水なしで実行されることが望ましい。一実施形態では、アルコールを含有する固体製品はアルコールを含有する粉末である。一実施形態では、アルコールを含有する粉末は指触乾燥する。一実施形態では、アルコールを含有する固体製品は流動可能である。
【0074】
一実施形態では、ステップa)は、10~50℃の範囲の温度で実行される。一実施形態では、ステップa)は、10~30℃の範囲の温度で実行される。一実施形態では、ステップa)は、16~18℃の範囲の温度で実行される。一実施形態では、ステップa)は、5~60分間実行される。一実施形態では、ステップa)は、5~20分間実行される。好ましくは、ステップa)は10分間実行される。
【0075】
一実施形態では、ステップb)は、真空オーブンで乾燥する、凍結乾燥する、又は周囲空気で乾燥することにより実行される。一実施形態では、ステップb)は、16~60℃の範囲の温度で、真空オーブンで乾燥することにより実行される。一実施形態では、ステップb)は、16~40℃の範囲の温度で、真空オーブンで乾燥することにより実行される。一実施形態では、ステップb)は、19~25℃の範囲の温度で、真空オーブンで乾燥することにより実行される。一実施形態では、ステップb)は、-0.1バール~-10バールの範囲の圧力で実行される。一実施形態では、ステップb)は、-0.5バール~-5バールの範囲の圧力で実行される。一実施形態では、ステップb)は、-1バール~-2バールの範囲の圧力で実行される。一実施形態では、ステップb)は、10分~30時間実行される。一実施形態では、ステップb)は、10分~1時間実行される。一実施形態では、ステップb)は、16~60℃の範囲の温度、-0.1バール~-10バールの範囲の圧力で、10分~30時間、真空オーブンで乾燥することにより実行される。一実施形態では、ステップb)は、20~50℃の範囲の温度、-0.5バール~-2バールの範囲の圧力で10分~24時間、真空オーブンで乾燥することにより実行される。ステップb)は、35~45℃の範囲の温度で15分~35分間、より好ましくは40℃の温度で25分間、真空オーブンで乾燥することにより実行することができる。ステップb)はまた、15~25℃の範囲の温度で4時間~24時間、より好ましくは20℃の温度で24時間、真空オーブンで乾燥することにより実行することができる。一実施形態では、ステップb)は、40℃の温度で25分間、実行される。別の実施形態では、ステップb)は、20℃の温度で24時間、実行される。
【0076】
一実施形態では、収着剤は吸収する物質及び/又は吸着する物質である。一実施形態では、収着剤は吸収する物質である。一実施形態では、収着剤は吸着する物質である。一実施形態では、収着剤は吸収し、吸着する物質である。一実施形態では、収着剤は、炭水化物、変性炭水化物、ポリマー、金属-有機物構成体、ゼラチン、及び/又はデンプンから選択される。一実施形態では、収着する物質は炭水化物である。一実施形態では、炭水化物はデキストラン又はデキストリンである。一実施形態では、炭水化物はデキストランである。好ましくは、炭水化物は、アルファ-シクロデキストリン、ベータ-シクロデキストリン、ガンマ-シクロデキストリン、及びCaptisol(登録商標)(Ligand社の修飾ベータ-シクロデキストリン技術)、又はその塩から選択されるデキストリンである。好ましくは、デキストリンはガンマ-シクロデキストリンである。一実施形態では、収着剤は、金属-有機物構成体、好ましくはポルフィリン系の金属-有機物構成体又はポルフィリン誘導体系の金属-有機物構成体である。
【0077】
好ましくは、アルコールはあらゆる水を含有しない。一実施形態では、アルコールは無水アルコールである。一実施形態では、アルコールは100%のアルコールの濃度を有する。一実施形態では、アルコールは、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、又はtert-ブタノールから選択される。一実施形態では、アルコールは、500g/mol未満、好ましくは200g/mol未満、より好ましくは100g/mol未満の分子量を有する。好ましくは、アルコールはエタノールである。好ましくは、アルコールは無水エタノールである。
【0078】
一実施形態では、ステップa)における収着剤のアルコールに対する質量比は1:0.5~1:10の範囲である。好ましくは、収着する物質のアルコールに対する質量比は1:1.5~1:2である。例えば、1gの収着する物質(例えばガンマ-シクロデキストリン)は、2mlの無水アルコール(例えば無水エタノール)と混合する。一実施形態では、1gの収着する物質(例えばシクロデキストリン)は、0.5ml~10mlの無水アルコール(例えば無水エタノール)と混合する。
【0079】
一実施形態では、本方法は、ステップa)の前に添加物質を収着する物質と混合することを更に含む。一実施形態では、添加物質を収着する物質と混合することは、30分~24時間実行される。一実施形態では、添加物質を収着する物質と混合することは6時間実行される。一実施形態では、添加物質を収着する物質と混合することは、200rpm~1000rpmで実行される。一実施形態では、添加物質を収着する物質と混合することは600rpmで実行される。一実施形態では、添加物質を収着する物質と混合することは、17~90℃の範囲の温度で実行される。一実施形態では、添加物質を収着する物質と混合することは、30分~24時間、200rpm~1000rpm、17~90℃の範囲の温度で実行される。一実施形態では、添加物質を収着する物質(例えばシクロデキストリン)と混合することは、水又は溶媒において実行される。一実施形態では、添加物質を収着する物質(例えばシクロデキストリン)と混合することは、脱イオン水において実行される。一実施形態では、添加物質を収着する物質(例えばシクロデキストリン)と混合することは、溶媒において実行される。一実施形態では、添加物質は、岩塩のような天然塩、又はCaCl2である。岩塩のような天然塩、CaCl2又はタルクをシクロデキストリンと混合することは、脱イオン水において実行することができる。
【0080】
本発明は、本明細書に定義され、記載されるコーティング又アルコールを含有する固体製品の層を表面に堆積する方法であって、コーティング又はアルコールを含有する固体製品のコーティングを表面に噴霧するステップを含む、方法に更に関する。一実施形態では、コーティング及びアルコールを含有する固体製品は、本明細書に定義され、記載される調製の方法に従って調製することができる。一実施形態では、アルコールを含有する固体製品はアルコールを含有する粉末である。
【0081】
一実施形態では、本明細書に定義され、記載されるコーティング製剤又はアルコールを含有する固体製品のコーティングを表面に噴霧するステップは、少なくとも1回実行される。好ましくは、コーティング製剤又はアルコールを含有する固体製品のコーティングを表面に噴霧するステップは、2回実行される。一実施形態では、コーティング製剤又はアルコールを含有する固体製品のコーティングを表面に噴霧するステップは、噴霧ノズル、好ましくはスプレーガン又はスプレーポンプを使用して実行される。一実施形態では、コーティング製剤又はアルコールを含有する固体製品のコーティングを表面に噴霧するステップは、静電スプレーガンを使用して実行される。静電スプレーガンは、コーティング製剤又はアルコールを含有する固体製品を充填し、噴霧した表面とより強く結合することが可能である。
【0082】
一実施形態では、上記の層又は各層の厚さは、1~500ミクロン、好ましくは5~200ミクロン、好ましくは15~100ミクロン、より好ましくは20~50ミクロン又は10~20ミクロンの範囲である。一実施形態では、上記の層又は各層の厚さはおよそ10mmである。
【0083】
本発明はまた、本明細書に定義され、記載されるようにコーティング製剤又アルコールを含有する固体製品の層を表面に堆積する方法であって、以下のステップ:a)場合により、接着剤溶液を調製するステップ、b)場合により、表面を接着剤溶液でコーティングして、接着剤層を形成するステップ、及びc)表面又は表面に適用した任意の接着剤層のいずれかを、コーティング製剤又はアルコールを含有する固体製品でコーティングするステップを含む、方法に関する。場合により、方法は、ステップc)の後に表面を穿孔すること、又はステップb)及びc)の期間にマスクとして使用されるマイクロニードルアレイで穿孔することを更に含む。一実施形態では、コーティング及びアルコールを含有する固体製品は、本明細書に定義される調製の方法に従って調製することができる。一実施形態では、アルコールを含有する固体製品はアルコールを含有する粉末である。
【0084】
一実施形態では、ステップb)は、パディング機を使用して、又は噴霧により実行される。代替的又は追加的な実施形態では、ステップb)は、浸漬及び/又はコーティングにより実行される。
【0085】
一実施形態では、コーティング又は接着剤溶液は、水並びに生分解性水系接着剤、好ましくはキサンタンガム、アラビアガム、デンプングルー、及びデキストリングルーから選択される接着剤を含む。
【0086】
一実施形態では、ステップc)は、(i)少なくとも1回実行して、1ミクロン~10mm、1ミクロン~1mm、1~500ミクロン、好ましくは5~200ミクロン、好ましくは15~100ミクロン、より好ましくは20~50ミクロン若しくは10~20ミクロン若しくはおよそ10mmの層の厚さを得る、又は(ii)少なくとも2回、少なくとも3回、若しくは少なくとも4回実行して、1ミクロン~10mm、1ミクロン~1mm、1~500ミクロン、好ましくは10~200ミクロン、好ましくは15~100ミクロン、より好ましくは20~50ミクロンの層の厚さを得る。一実施形態では、ステップc)は、少なくとも1回実行して、1ミクロン~10mm、1ミクロン~1mm、1~500ミクロン、好ましくは10~200ミクロン、好ましくは15~100ミクロン、より好ましくは20~50ミクロンの層の厚さを得る。一実施形態では、ステップc)は、少なくとも2回実行して、1ミクロン~10mm、1ミクロン~1mm、1~500ミクロン、好ましくは10~200ミクロン、好ましくは15~100ミクロン、より好ましくは20~50ミクロンの層の厚さを得る。一実施形態では、ステップc)は、1回、2回、又は複数回のいずれかで実行して、最大で10mmの全厚で層を得る。一実施形態では、ステップc)は、噴霧ノズル、好ましくはスプレーガン又はスプレーポンプを使用して実行される。一実施形態では、ステップc)は、静電スプレーガンを使用して実行される。また更なる実施形態では、ステップc)は、浸漬及び/又は塗装(例えば刷毛塗り、ロール塗り)を使用して実行される。
【0087】
一実施形態では、表面は、織布又は織物、プラスチック、ガラス、ポリマー、及び金属から選択される。表面が、例えば手袋で使用するためのポリマーである場合、ポリマーは、ニトリル、ラテックス、ビニル及び/又はその混合物であり得る。手袋はまた、他の織布の綿、ナイロン又はゴム系から作製され、成型する又は編むことができる。誤解を避けるために、用語「ニトリル」は、ニトリルブタジエンゴム(NBR)を包含するが、これはブタジエン及びアクリロニトリルのようなモノマーと合わせることにより作製される合成材料である。
【0088】
一実施形態では、コーティング又はアルコールを含有する固体製品は、表面の少なくとも片側の少なくとも一部に適用される。一実施形態では、コーティング又はアルコールを含有する固体製品は、表面の各側の少なくとも一部に適用される。更なる実施形態では、コーティング又はアルコールを含有する固体製品は、成型及び/又は成形する前に、表面を作製する材料に適用又は一体化させる。
【0089】
本発明は、アルコールを収着させて、表面の抗微生物性及び/又は抗ウイルス性の層としての堆積に好適となるようにする収着する物質(収着剤)の使用に更に関する。一実施形態では、収着剤は本明細書に定義される。一実施形態では、アルコールは本明細書に定義される。一実施形態では、収着剤のアルコールに対する質量比は、99:1~90:10の範囲、好ましくは97.5:2.5~94:6の範囲であり得る。
【0090】
最終製品の通気性が非常に重要であるフェイスマスク及び空気フィルターのような適用では、コーティングした表面は、適切なサイズのニードルアレイで穿孔して、通気性を改善するために表面に適切なサイズの穴を形成することができる。一実施形態では、1μm~500μmの範囲のマイクロニードルアレイを使用する。1μm~500μmの範囲のマイクロニードルアレイは、典型的なフェイスマスクの孔径が0.3~10μmであるIIRフェイスマスクのような標準的な外科用フェイスマスクを穿孔するのに好適である。穿孔は、コーティングを適用した後に実施することができる。代替的に、マイクロニードルアレイでの穿孔は、コーティングの過程、「マスク」又はテンプレートとして使用することができる。
【0091】
孔が典型的に0.1~0.3μmであるN95フェイスマスクのような、より小さい孔を必要とする製品に対して、ナノニードルアレイを使用することができる。代替的に、抗微生物性及び/又は抗ウイルス性の接着紙(例えばミクロ細孔テープ)のような追加の織布の層を使用しなければならない。ミクロ細孔テープを穿孔する場合でさえ、フェイスマスクの全体的な完全性は、存在する層が無傷であり、任意の方法に影響を受けないことから損なわれない。
【0092】
本発明はまた、本明細書に定義されるコーティング、本明細書に定義されるアルコールを含有する固体製品、本明細書に定義されるアルコールを含有する粉末、本明細書に定義される製造品、本明細書に定義される織物、本明細書に定義される抗菌性及び/若しくは抗ウイルス性の紙若しくはプラスチック、本明細書に定義されるフェイスマスク、本明細書に定義される手袋、又は本明細書に定義されるフィルターの、抗微生物剤として、抗ウイルス剤としての又は病原菌を不活化するための、使用に関する。
【0093】
一態様では、本発明は、本明細書に定義されるコーティング又はアルコールを含有する固体製品の層を表面に堆積させて、表面に抗微生物性及び/又は抗ウイルス性をもたらす、噴霧、浸漬又は塗装の技術の使用に関する。一実施形態では、噴霧技術は、静電スプレーガンの使用を含む。
【0094】
別の態様では、ゲルのようなアルコールの液体形態が既に抗微生物剤及び/又は抗ウイルス剤として使用されるが、このような液体形態は、経時的な抗微生物性及び/又は抗ウイルス性の保護をもたらさない。これは、有効成分(アルコール)が迅速に蒸発するからである。本発明は、数日又は数か月にわたって表面で病原菌を不活化する新しく独創的な方法を提供する。特定の態様では、本発明は、アルコールのような抗微生物性及び/又は抗ウイルス性活性剤を収着させることで、活性剤/アルコールは封入したまま、蒸発しないので、表面での抗微生物性及び/又は抗ウイルス性コーティングとしての堆積に好適となるようにする収着剤を使用する。
【0095】
したがって、別の態様では、本発明は、アルコールのような抗微生物性及び/又は抗ウイルス性活性剤を収着して、表面での抗微生物性及び/又は抗ウイルス性コーティングとしての堆積に好適となるようにする収着剤の使用に関する。一実施形態では、収着剤は本明細書に定義される。一実施形態では、活性剤及びアルコールは本明細書に定義される。一実施形態では、収着する物質のアルコールに対する質量比は、99:1~90:10の範囲、好ましくは97.5:2.5~94:6の範囲であり得る。
【0096】
別の態様では、本発明は、本明細書に定義されるコーティング、本明細書に定義されるアルコールを含有する固体製品、本明細書に定義されるアルコールを含有する粉末、本明細書に定義される製造品、本明細書に定義される織物、本明細書に定義される抗菌性及び/若しくは抗ウイルス性の紙、本明細書に定義される抗微生物性及び/若しくは抗ウイルス性ポリマー(天然若しくは合成)、本明細書に定義される抗微生物性及び/若しくは抗ウイルス性のプラスチック、本明細書に定義される手袋、本明細書に定義されるフィルター、又は本明細書に定義されるフェイスマスクの、抗微生物剤としての使用に関する。
【0097】
本発明はまた、本明細書に定義されるコーティング、本明細書に定義されるアルコールを含有する固体製品、本明細書に定義されるアルコールを含有する粉末、本明細書に定義される製造品、本明細書に定義される織物、本明細書に定義される抗菌性及び/若しくは抗ウイルス性の紙、本明細書に定義される抗微生物性及び/若しくは抗ウイルス性ポリマー(天然若しくは合成)、抗菌性及び/若しくは抗ウイルス性のプラスチック、本明細書に定義される手袋、本明細書に定義されるフィルター、又は本明細書に定義されるフェイスマスクの、抗ウイルス剤としての使用に関する。
【0098】
本発明はまた、本明細書に定義されるコーティング、本明細書に定義されるアルコールを含有する固体製品、本明細書に定義されるアルコールを含有する粉末、本明細書に定義される製造品、本明細書に定義される織物、本明細書に定義される抗微生物性及び/若しくは抗ウイルス性の紙、本明細書に定義される抗微生物性及び/若しくは抗ウイルス性ポリマー(天然若しくは合成)、本明細書に定義される抗微生物性及び/若しくは抗ウイルス性のプラスチック、本明細書に定義される手袋、本明細書に定義されるフィルター、又は本明細書に定義されるフェイスマスクの、病原菌を不活化するための使用に関する。
【0099】
本発明はまた、本明細書に定義されるコーティング又はアルコールを含有する固体製品の、病原菌を不活化するための使用であって、コーティング又はアルコールを含有する固体製品がアルコール及び炭水化物を含む、使用に関する。一実施形態では、アルコールはエタノールである。一実施形態では、炭水化物はデキストラン又はデキストリンである。一実施形態では、炭水化物はデキストランである。一実施形態では、炭水化物は、アルファ-シクロデキストリン、ベータ-シクロデキストリン、ガンマ-シクロデキストリン、及びCaptisol(登録商標)(Ligand社の修飾ベータ-シクロデキストリン技術)、又はその塩から場合により選択されるデキストリンである。より好ましくは、デキストリンはガンマ-シクロデキストリンである。一実施形態では、炭水化物はガンマ-シクロデキストリンである。一実施形態では、炭水化物はCaptisol(登録商標)(Ligand社の修飾ベータ-シクロデキストリン技術)である。一実施形態では、炭水化物のアルコールに対する質量比は、99:1~90:10の範囲、好ましくは97.5:2.5~94:6の範囲であり得る。
【0100】
本発明はまた、本明細書に定義されるコーティング又はアルコールを含有する固体製品の、病原菌を不活化するための使用であって、コーティング又はアルコールを含有する固体製品がアルコール及び炭水化物を含む、使用に関する。一実施形態では、アルコールはエタノールである。一実施形態では、炭水化物はガンマ-シクロデキストリンである。一実施形態では、炭水化物のアルコールに対する質量比は、99:1~90:10の範囲、好ましくは97.5:2.5~94:6の範囲であり得る。
【0101】
一実施形態では、アルコールを含有する固体製品は、添加物質、岩塩のような天然塩、CaCl2又はタルクを更に含む。
【0102】
一実施形態では、病原菌は、ウイルス、細菌、又は真菌である。一実施形態では、病原菌はウイルスである。一実施形態では、ウイルスはエンベロープウイルスである。一実施形態では、ウイルスは非エンベロープウイルスである。一実施形態では、ウイルスは、コロナウイルス、例えばSars-CoV-1、Sars-CoV-2、インフルエンザウイルス、HPV、HIV、又はノロウイルスである。
【0103】
一実施形態では、病原菌の不活化は1秒~60分以内に発生する。好ましくは、病原菌の不活化は1秒~5分以内に発生する。特定の例は、2秒以内に病原菌の生存率が90%低下することである。
【0104】
別の態様では、本発明は、抗微生物剤及び/又は抗ウイルス剤としてグルタルアルデヒド(GA)に係わり、GAは、コーティングとして表面(本発明で定義される)に製剤化し、適用されるので、抗微生物性及び/又は抗ウイルス性の特性を表面に付与する。GAに特に好適な使用は、抗微生物性及び/又は抗ウイルス性として、HVACフィルターのようなフィルターでの使用である。GAがコーティング製剤での唯一の活性剤であり得る、又はアルコール及び/若しくは次亜塩素酸のような活性剤、並びに本明細書での上記で定義される可塑剤及び担体のような成分のいずれかと合剤させ得ると理解されよう。コーティングにおける約5%未満、好ましくは約2%以下、又は約0.9%以下のGAの濃度範囲が好ましい。
【0105】
本発明は、以下の図面を参照してより詳細に以下に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0106】
図1】シクロデキストリンへのエタノールの封入。
図2】シクロデキストリン(CD)を使用するエタノールの封入。
図3】実験構成:(A)5mL、10mL又は15mLのエタノール中の0.25gのβ-CD。(B)5mL、10mL又は15mLのエタノール中の0.25gのγ-CD。
図4】細胞死及び細胞変性効果(CPE)の表現型は、3%のFAで固定したL929細胞を使用する20倍の倍率での光学顕微鏡で評価した。
図5】マウスコロナウイルスに対して測定した合成粉末の抗ウイルス効果。V=真空乾燥、F=凍結乾燥、なし=周囲空気乾燥。1=5mLのエタノールで作製した試料、2=10mLのエタノールで作製した試料、3=15mLのエタノールで作製した試料。
図6】エタノール末を封入したCDと比較した、ガンマCD単独の抗ウイルス挙動。W=乾燥なし、F=凍結乾燥、CM=Codikoatプロトコル法。
図7】対数減少は、log((初期力価TCID 50/mL)/(算出TCID 50/ml))により算出された。本発明者らの特定の真空調製は、貯蔵時のアルコール末に対して最良の安定性をもたらす。本発明者らの特定の真空調製は、貯蔵時のアルコール末に対して最良の安定性をもたらす。
図8】対数減少は、log((初期力価TCID 50/ml)/(算出TCID 50/ml))により算出された。アルコール末を含む織布への表面コーティングは、より希釈したウイルス試料を不活化するのにより効果的である。
図9】対数減少は、log((初期力価TCID 50/ml)/(算出TCID 50/ml))により算出された。織布へのアルコール末の多数のコーティングは、完全なウイルス阻害を達成する。
図10】1、2又は4層の接着剤及びCMアルコール末のいずれかでコーティングしたミクロ細孔テープ。4層コーティングした試料と類似して、優れた抗ウイルス挙動が5分以内に観察された。
図11】1、2又は4層の接着剤及びCMアルコール末のいずれかでコーティングし、7日間密閉容器で保存された、ミクロ細孔テープ。
図12】加速試験を行った1、2又は4層の接着剤及びCMアルコール末のいずれかでコーティングし、5分以内の優れた抗ウイルス挙動を依然として示す、ミクロ細孔テープ。
図13】4層のCMアルコール末でコーティングしたミクロ細孔テープ。
図14】接着剤としてキサンタンガム又はPVAグルーを使用してアルコール末コーティングした試料に対するウイルスの対数減少を示すグラフ。
図15】エタノールを封入したシクロデキストリン及びブタノールを封入したシクロデキストリンの抗ウイルス効果と比較したグラフ。
図16】ニトリル基質での8%のPVA及び0.7%のグルタルアルデヒドの組成物の抗ウイルス効果を示すグラフ。
図17】ニトリル基質での8%のPVA及び0.1%のグルタルアルデヒドの組成物の抗ウイルス効果を示すグラフ。
図18】ニトリル基質での8%のPVA(電解水で作製)+1%のヒアルロン酸(HA;電解水で作製)+35%のアルコール末(エタノール又はブタノールで作製)+0.07%のCPC(塩化セチルピリジニウム)の組成物の抗ウイルス効果を示すグラフ。
図19】ニトリル基質での電解水(EW)で作製した8%のPVAの組成物の抗ウイルス効果を示すグラフ。
図20】織布基質での電解水で作製した8%のPVAの電気紡糸したナノ繊維の組成物の抗ウイルス効果を示すグラフ。
図21】7000ppmのHOClを含むエタノールで作製した15%のエチルセルロースの組成物の抗ウイルス効果を示すグラフ。
図22】7000ppmの電解水中の5%のエチルセルロース(EC)の懸濁液(分解10×)。
図23】7000ppmの電解水中の5%のエチルセルロース、15%のCa(NO3)2、15%のCaCl2の懸濁液(分解4×)。
図24】表面積10cm2の手袋の表面にコーティングした異なる製剤の抗ウイルス活性。試料製剤は以下の通りである:5%のエチルセルロース3ml(対照)、10%のグリセロール3ml(対照)、30%のグリセロール3ml(対照)、5%のエチルセルロース+0.5%のグリセロール3ml(対照)、5%のエチルセルロース+1.5%のグリセロール3ml(対照)、1%のエチルセルロース+0.1%のグリセロール(0.5ml)+10kPPMのHOCl 20μl/cm2、1%のエチルセルロース+0.3%のグリセロール(0.5ml)+10kPPMのHOCl 20μl/cm2、1%のエチルセルロース+0.1%のグリセロール(3ml)+10kPPMのHOCl 20μl/cm2、1%のエチルセルロース+0.3%のグリセロール(3ml)+10kPPMのHOCl 20μl/cm2、5%のエチルセルロース+0.5%のグリセロール(3ml)+10KppmのHOCl 20μl/cm2、5%のエチルセルロース+1.5%のグリセロール(0.5ml)+10KppmのHOCl 20μl/cm2
図25】それぞれの抗ウイルス活性:cDMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)及びMHV(マウス肝炎ウイルス)対照、並びに明状態(wk3L)又は暗状態(wk3D)のいずれかで3週間貯蔵した後の1%のエチルセルロース+10%のグリセロール(0.5ml)+10kPPMのHOCl 20μl/cm2のコーティング試料の貯蔵の効果を示すグラフ。
図26】それぞれの抗ウイルス活性:cDMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)及びMHV(マウス肝炎ウイルス)対照、並びに30分間、それぞれ25℃(室温)、50℃、100℃及び130℃の温度に曝露した1%のHOCl溶液(試料に噴霧した200μl)(10cm2の表面積=20μl/cm2)のコーティング試料の温度の効果を示すグラフ。
図27】黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の細菌での1%のエチルセルロース+0.1%のグリセロール(0.5ml)+10kPPMのHOCl 20μl/cm2のコーティングの抗菌効果。細菌である黄色ブドウ球菌NCTC 10788は、ウマの血液寒天プレートに画線することにより極低温記憶装置から再生し、試験前に37℃で24時間インキュベートさせた。細菌接種材料は、緩衝溶液で5~10個の細菌コロニーを再懸濁することにより形成し、ミューラーヒントンブロス(MHB)で2に対して1で希釈された。この接種材料は、MHBに細菌細胞を含有する「MHB 10788」とも呼ばれるが、試験前にミューラーヒントン寒天(MHA)プレートに広げて、初期のコロニー数(コロニー形成単位/mL)を提供し、実験中に直接接種材料として使用した。緩衝液の細菌懸濁液もまた、中和緩衝液(NB)、「NB 10788」で2に対して1で別々に希釈し、NBが細胞の阻害効果を有していなかったことを確実にする対照測定として寒天プレートに広げ、これを試験中、中和/回収に使用した。全プレートを、コロニーを計数する前に、37℃で24時間インキュベートした。1/1000希釈は寒天にプレーティングするために対照試料で行われる希釈を示すが、全ての結果はCFU/mlの対数に対して推定される。細菌を0、1、2及び5分間試料と接触させた。次いで、1mlのニート及び各試料の1/10希釈を、寒天プレートに広げ、細菌コロニーの形成を計数した。
図28】異なるコーティング液体堆積の量(200μl(A)、100μl(B)、及び50μl(c))で、1.6wt.%のカルボキシメチルセルロースナトリウム(Na-CMC、MW=90kDa)+0.9wt.%のグルタルアルデヒド(GA)+2wt.%のメチルブルー(MB)で噴霧したHEPAフィルター材料(3cm×4cm)。
図29A図29。HEPAフィルターに噴霧コーティングした1.6wt.%のNa-CMC、0.9wt.%のGA、及び2wt.%のMBの製剤の抗ウイルス効果を示すグラフ。MHVB、MHVA、CFC(市販のフィルター対照)、CFMHV(市販のフィルター+MHV)、Fi1C/F1C(フィルター1対照)、Fi1T/F1T(フィルター1試験)、Fi2C/F2C(フィルター2対照)、Fi2T/F2T(フィルター2試験)。
図29B図29の続き。
図30A】液滴の抗ウイルス性試験でのフィルターのコーティングの効果。対照=MHV単独、1+MHV=HEPAフィルター単独、2+MHV=HEPA+2%のPEO、3+MHV=HEPA+2%のGA、4+MHV=HEPA+2%のPEO+2%のGA。
図30B】液滴の抗ウイルス性試験でのフィルターのコーティングの効果。陽性対照=cDMEM、陰性対照=MHV単独、1+MHV=HEPAフィルター単独、2+MHV=HEPA+2%のPEO、3+MHV=HEPA+2%のGA、4+MHV=HEPA+2%のPEO+2%のGA。
図31】HEPAフィルターでの水中の2wt%のPEO+2wt%のGAの異なる体積の製剤を噴霧コーティングした視覚効果。試料を上から下へ、左から右へ:1. 対照=HEPAフィルター単独、2. 50μlのPEO+GA、3. 50μlのPEO+GA+青色(メチレンブルー(MB))、4. 100μlのPEO+GA、5. 100μlのPEO+GA+MB、6. 200μlのPEO+GA、7. 200μlのPEO+GA+MB。
図32A】2%のPEO+2%のGAのコーティング製剤で噴霧コーティングしたHEPAフィルターにわたる流速の関数としての圧力低下を示すグラフ。流速はフィルターを外している。
図32B】コーティングの異なる堆積の量に対する面速度の関数としての圧力低下の百分率を示すグラフ。
図33】250μlの体積のコーティングを12cm2のフィルター基質(20.8μl/cm2)に噴霧した液滴試験を使用して試験したコーティングの抗ウイルス効果。陽性対照=cDMEM、陰性対照=MHV、1+MHV=コーティングしていないHEPAフィルター+MHV、2+MHV=2%のPEOでコーティングしたフィルター、3+MHV=2%のGAでコーティングしたフィルター、4+MHV=2%のGAでコーティングしたフィルター+2%のPEO。
図34】噴霧コーティングの5週間後の液滴試験を使用するPEO+GAコーティングの抗ウイルス効果。陽性対照=cDMEM、陰性対照=MHV、1+MHV=コーティングしていないHEPAフィルター+MHV、2+MHV=2%のPEOでコーティングしたフィルター、3+MHV=2%のGAでコーティングしたフィルター、4+MHV=2%のGAでコーティングしたフィルター+2%のPEO。
図35】以下の製剤でコーティングしたHEPAフィルターの抗細菌効果:2%のPEO+2%のGA。1)HEPAのみ、2)PEO 2%のみ、3)GA 2%のみ、4)PEO 2%+GA 2%。全体積250μl。
図36】以下の製剤でコーティングしたHEPAフィルターの抗細菌効果:CMC(90K)及び1.6%のCMC(90K)+2%のGA。
図37】抗ウイルス性の液滴試験を使用して、異なる分子量でのナトリウムカルボキシメチルセルロース(Na-CMC)、又はヒドロキシエチルセルロース(HEC)と混合する場合のGAの抗ウイルス効果。陽性対照=cDMEM、陰性対照=MHV単独、対照=HEPAフィルター+MHV、1+MHV=CMC(90K)、2+MHV=CMC(90K)+2%のGA、3+MHV=CMC(250K)、4+MHV=CMC(250K)+2%のGA、5+MHV=CMC(700K)、6+MHV=CMC(700K)+2%のGA、7+MHV=HEC、8+MHV=HEC+2%のGA。
図38】抗ウイルス性の液滴試験を使用して、HEPAフィルターにコーティングした製剤の抗ウイルス性の効能で、代替的ポリマーとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)と一緒に、CMCに対する異なる分子量及び置換数の効果を示すグラフ。陽性対照=cDMEM、陰性対照=MHV単独、対照=HEAPフィルター単独+MHV、1+MHV=2%のGAのみ、2+MHV=2%のメチレンブルー(MB)のみ、3+MHV=1.6%のNa-CMC(90K)+2%のGA+2%のMB、4+MHV=1.6%のNa-CMC(90K)のみ、5+MHV=1.6%のNa-CMC(90K)+2%のGA、6+MHV=1.3%のNa-CMC(250K)-置換数(SN)0.7のみ、7+MHV=1.3%のNa-CMC(250K)-SN 0.7+2%のGA、8+MHV=1.3%のNa-CMC(250K)-SN 1.2のみ、9+MHV=1.3%のNa-CMC(250K)-SN 1.2+2%のGA、10+MHV=0.6%のNa-CMC(750K)のみ、11+MHV=0.6%のNa-CMC(750K)+2%のGA、12+MHV=1%のHPMCのみ、13+MHV=1%のHMPC+2%のGA。
図39】12cm2のHEPAフィルター基質(4.16、8.3及び16.7μl/cm2)への様々な体積の噴霧した製剤(50、100及び200μl)での抗ウイルス性の液滴試験の結果を示すグラフ。陽性対照=cDMEM、陰性対照=MHV単独、試験対照=HEPAフィルター+MHV、1+MHV=200μlの1.6%のNa-CMC(90k)単独、2+MHV=50μlの0.9%のGA単独、3+MHV=100μlの0.9%のGA単独;4+MHV=200μlの0.9%のGA単独、5+MHV=50μlの1.6%のNa-CMC(90K)+0.9%のGA+2%のMB、6+MHV=100μlの1.6%のNa-CMC(90K)+0.9%のGA+2%のMB、7+MHV 200μlの1.6%のNa-CMC(90K0+0.9%のGA+2%のMB)。
図40A】1.6wt%のNa-CMC(MW 90K)+0.9wt%のGA+2wt%のMBの製剤で噴霧コーティングしたHEPAフィルターに対する流速(L/分)の関数としての圧力低下を示すグラフ。
図40B】1.6wt%のNa-CMC(MW 90K)+0.9wt%のGA+2wt%のMBの製剤で噴霧コーティングしたHEPAフィルターの異なる堆積の量(50、100及び200μl)に対する面速度の関数としての圧力低下の百分率を示すグラフ。
図41】HEPAフィルターに噴霧コーティングした50μl及び100μlの0.9%のGA製剤の体積での抗ウイルス性の液滴試験の結果を示すグラフ。陽性対照=cDMEM、陰性対照=MHVのみ、1+MHV=HEPA、2+MHV=50μlの20KppmのHOCl、3+MHV=100μlの20KppmのHOCl、4+MHV=50μlの1.6%のNa-CMC(90K)、5+MHV=100μlの1.6%のNa-CMC(90K)、6+MHV=50μlの0.9%のGA、7+MHV=100μlの0.9%のGA、8+MHV=50μlの0.9%のGA+20KppmのHOCl、9+MHV=100μlの0.9%のGA+20KppmのHOCl、10+MHV=50μlの1.6%のNa-CMC+0.9%のGA+20KppmのHOCl、11+MHV=100μlの1.6%のNa-CMC+0.9%のGA+20KppmのHOCl、12+MHV=50μlの1.6%のNa-CMC+0.9%のGA+20KppmのHOCl+2%のMB、13+MHV=100μlの1.6%のNa-CMC+0.9%のGA+20KppmのHOCl+2%のMB。
図42】HEPAフィルターに噴霧コーティングした図41の製剤の50μl(4.6μl/cm2)対100μl(8.3μl/cm2)での圧力低下試験。
図43】抗ウイルス性の液滴試験を使用して噴霧コーティングした3週間後、1.6%のCMC(90kDa)+2%のGAのコーティング製剤(250μl)の安定性を示すグラフ。対照=MHV、1+MHV=HEPAフィルターのみ、2+MHV=1.6%のNa-CMC(90K)、3+MHV=2%のGAのみ、4+MHV=1.6%のNa-CMC(90K)+2%のGA。
【発明を実施するための形態】
【0107】
本発明は、抗微生物性及び/又は抗ウイルス性の特性を、コーティングを塗布する表面に付与するためにコーティングとして使用するのに好適である、抗微生物性及び/又は抗ウイルス性製剤に関する。理論に束縛されることを望まないが、本明細書に記載される製剤又はコーティングは、以下に記載されるウイルス及び細菌を不活化する。
【0108】
ウイルス及び細菌はその表面にタンパク質を含有する。これらのタンパク質は、一部は「スパイクタンパク質」とも呼ばれるが、宿主に入り、可能であれば免疫監視を回避することを可能にする。ウイルス製品がその遺伝物質であるRNA及び/又はDNAに由来するとしても、病原体の最も重要な部分を構成するが、これらの表面へのタンパク質の標的化は、ヒトの使用で抗微生物性表面を設計するための第1の戦略でなければならない。
【0109】
タンパク質は、遺伝的材料からコードされ、可変領域Rを除く共通構造を共有する必須アミノ酸及び非必須アミノ酸の両方により形成される。アミノ酸の性質に依存して、R領域は、所与のタンパク質の全体の電荷及び立体配座、並びに他のタンパク質、脂質及び核酸のような他の分子とのその相互作用を形成する、中性、荷電(正若しくは負)、及び/又は疎水性の特性に適用する。
【0110】
タンパク質の変性は、それ自体、立体配座の崩壊並びに荷電アミノ酸及び疎水性アミノ酸の相互作用をもたらす。これはタンパク質の機能の喪失をもたらす。
【0111】
抗微生物剤として使用される最も一般的なタンパク質変性剤はエチルアルコール(EtOH)であり、70%の濃度で細菌の細胞膜を溶解する助けともなる。EtOHは、2つの方法:凝固すること、並びに水素結合及び塩橋を破壊するので、タンパク質の立体配座を破壊することにより、タンパク質を変性させる。
【0112】
凝固は、90%以上の濃度のEtOHを使用する場合に起こる。これは、消毒する最も効果的な方法とみなされない。これは、90%以上に濃縮したEtOHが、ウイルス又は細菌の表面で全てのタンパク質を凝固するので、ウイルス又は細菌の内部に侵入することはできないからである。したがって、70~75%の濃度のEtOH溶液は、消毒薬として使用することが奨励される。EtOHはまた、タンパク質において水素結合及び塩橋を崩壊し、最終的にこれらを変性させ得る。水素結合を完了させるために、EtOHは、H+基がタンパク質の水素結合を攻撃することができるように特定の立体配座でなければならない。抗微生物効果に対するEtOHの最良の立体配座は、70~75%の濃度で達成され、(Z)立体配座と対照的に(E)立体配座(以下に示す)を可能にする。
【0113】
【化2】
【0114】
本発明を考察されているのは、この背景に対するものである。特に、本発明は、i)少なくとも1つの非生物性の抗微生物剤及び/又は抗ウイルス剤;並びにii)ポリマー担体を含む、抗微生物性及び/又は抗ウイルス性コーティングに係わる。
【0115】
コーティングを設計する場合、製剤化中に活性剤において抗微生物性及び/又は抗ウイルス性の特性を少なくとも維持するだけでなく、目的に適する、すなわち容易に適用させるコーティングを形成することも、表面に接着し、通常消耗を通して、好適な長さの時間、活性であり、活性のままである、多くの考慮事項が存在する。このような考慮事項は、抗微生物性及び/又は抗ウイルス性(活性)薬剤としてアルコールを使用する場合に特に関係する。本発明はアルコールを含み得るコーティングを包含するが、他の活性剤もまた意図され、例示される。
【実施例
【0116】
実施例1及び2に記載される通り、アルコール末を、最初に既知のプロトコルに従って本発明者らは製造し、マウスコロナウイルスに対するその有効性について試験した。得られた結果では、ガンマ-シクロデキストリンに封入されたエタノールが、エタノールを封入したベータシクロデキストリンと比較して優れた抗ウイルス活性を示し、真空オーブン乾燥を使用して乾燥したアルコール末が、より効果的な抗ウイルス活性のアルコール末をもたらしたことが示唆された。抗ウイルス性及び抗微生物性の特性を測定する標準的な試験は、細胞変性効果(CPE)阻害アッセイ、プラークアッセイ、qPCRアッセイ、フローサイトメトリー、及びTCID50感染性アッセイを含む。
【0117】
(実施例1)
従来技術の方法に基づく拡散によるアルコール末の調製
アルコール末を開発するために、初期実験を、以前に記載される存在するシクロデキストリン(CD)封入手順に基づいて適応した(表題「Synthesis and Characterization of Gamma Cyclodextrin Metal Organic Framework and Encapsulation of Ethanol」、An-Katrienin Pauwels、2019年:http://hdl.handle.net/1942/29463)。
【0118】
2種類のシクロデキストリンは、エタノール(ベータ(β)、ガンマ(γ))を封入することを試みた。直径がより大きい糖においてより多くのアルコールを封入することが、直径がより小さい糖の場合とは対照的に期待されるので(エタノール封入用のより多い空間のため)、大きな直径のアルコール末と接触することで向上するウイルス阻害を示す(図1を参照のこと)。
【0119】
エタノールの封入は、0.25gのγ-CD及びβ-CDの2つの試料を別々に個々の50mlのビーカーに入れた後に実行した。小さいビーカーは、より大きなガラスジャーに設置し、異なる量のエタノールを、図2及び図3に示すガラスジャーに添加した。ジャーをパラフィルムで覆い、48時間静置した。封入は、この期間に拡散機構により行われた。
【0120】
48時間の拡散が完了した後、反応混合物を乾燥させてアルコール末を得るために、3つの乾燥技術を試験し、評価した。各ジャーを3つの部分に分け、第1の部分は凍結乾燥法により乾燥させ、第2の部分は真空オーブンにより乾燥させ、最後の部分はあらゆる特定の処置を行わずに室温に静置した(すなわち、約17℃の室温での周囲空気乾燥)。
【0121】
【表1】
【0122】
(実施例2)
マウスコロナウイルスでのその効果に対して実施例1で得られた粉末の試験
実施例1で得られた粉末を、L929細胞を使用して5分、マウスコロナウイルスを不活化するその有効性について試験した。96ウェルフォーマットにおける100μlの体積での5×105個の細胞/mlの濃度のL929細胞を使用した。最初に、ウイルスストックを、1×PBSにおいて10回希釈した。次いで、20μlのMHV(感染の多重度[MOI]3.0)を、繰返しのピペット操作で、室温で5分間、10mg及び20mgのアルコール末と混合して、ウイルス及びアルコール末の相互作用を最大限にした。L929細胞でのアルコール末の潜在的な副作用を軽減するために、粉末で処置した細胞培養媒体(cDMEM)を対照として調製した。混合物からウイルス及び対照媒体を回収した後、処置した試料(3重)を、20μlのcDMEMですぐに希釈し、それにより最終MOIを1.0にした。96ウェルフォーマットでは、8段階希釈(DF=5.0)を、それぞれ陽性及び陰性対照として処置しないウイルス及び細胞培養媒体(cDMEM)と一緒に試料毎に調製した。細胞死及び細胞変性効果(CPE)としての細胞感染の表現型を、感染24、48及び72時間後(hpi)の間隔で、ベンチトップ型光学顕微鏡(倍率20倍)で観察した(図4)。実験毎にTCID 50/ml値を、Reed&Muench Calculatorを使用して72hpiで算出した。
【0123】
図5を示す通り、ガンマ-シクロデキストリン全体に封入したエタノールは、エタノールを封入したベータシクロデキストリンと比較して優れた抗ウイルス活性を示した(陽性及び陰性対照と比較して完全なウイルス阻害)。試験した最も高いエタノール濃度で(15mL)、全ての乾燥技術で有効であった。真空乾燥技術は、異なるエタノール濃度で最適な方法であると思われる。他のCDと比較してγ-CDを使用する完全なウイルス阻害の観察は、より大きな直径のCDでのより多くのEtOH封入の考えと矛盾しない。
【0124】
実施例1で得られるγ-CDのアルコール末によるMHVの阻害は、異なる時間間隔で更に試験した。上記に記載されるのと同じプロトコルを使用する、室温で1分間、新鮮なγ-CD(15mlのEtOHの封入)での処置。γ-CD(15mlのEtOH)でのMHVの1分間の処置が、ウイルスを完全に不活化するほど十分に効果的であることを実証した(図6)。
【0125】
CDでエタノールを封入する場合の向上した抗ウイルス性の機構及びその合成効果を実証するために、前述した結果は、ガンマ-CD単独の調製と比較した。本実験(図6)では、エタノールを封入したCDが、CD単独と比較して著しく高い抗ウイルス挙動(6の対数減少対1の対数減少)を提示したので、ウイルス構造でのタンパク質のEtOH変性の重要な役割を示したことを実証した。
【0126】
(実施例3)
実施例1で得られるアルコール末の安定性
室温で5日間(暗室、密封容器で)保存したアルコール末の安定性を評価するために、MHVは、L929細胞感染アッセイのために1分間、粉末で処置した。興味深いことに、凍結乾燥(F)、周囲空気乾燥(W)又は真空乾燥(V)で調製したγ-CD(15mlのEtOH封入)は、それらの抗ウイルス活性が部分的に喪失している(図7)。それにもかかわらず、抗ウイルス活性は、CD単独の対照及び処置しない対照より高いままであった(3又は4のウイルス対数減少)。
【0127】
(実施例4)
アルコール及びシクロデキストリンを直接混合することによるアルコール末の調製
粉末の安定性を改善し、長期的な抗ウイルス性の特性を維持するために、新規なアプローチを使用して粉末を合成した。本アプローチでは、エタノールを48時間ジャー内に拡散させること(図2に説明)の代わりに、低体積のエタノール(1mL)をビーカーでCDと直接混合し、24時間だけ静置した。本調製では、0.3gのγ-CD又はβ-CDを10分間、1mLのエタノールと混合し、真空オーブン内で24時間乾燥させた。本発明者らの知る限りでは、これは、このような手順を、エタノールを封入したCDを開発するために使用している最初の場合である。重要なことに、本方法は粉末の合成時間を短縮し、大きな規模でアップスケーリングし、製造するのに非常に有益である。この新しい方法はまた、体積が著しく小さいエタノールを調製に使用した場合に、より高い製造効率を有する。
【0128】
(実施例5)
マウスコロナウイルスでのアルコール末の効果
実施例4で生成した粉末(CM粉末又はCodiKoat法の粉末と呼ぶ)では、実施例1(図6)で使用した最初の(以前に公表されている)プロトコルを使用して生成した粉末と類似して、優れた抗ウイルス挙動も実証された。本粉末の安定性は、以前に記載されるものと類似する条件で貯蔵する5日間に続いて試験した。本明細書に記載される方法論(CM)により調製したγ-CD(15mlのEtOH封入)は、全ての従来の調製方法(自然乾燥、凍結及び真空乾燥)と比較して、長期間(5日間)の貯蔵の際、その100%の抗ウイルス活性を保持した(図7)。
【0129】
CodiKoat法(CM)により生成された真空乾燥した3-ガンマCDが、他の試料と比較して優れた抗ウイルス効果だけでなく、非常に高い安定性も有したことが実証された。
【0130】
(実施例6)
織布フェイスマスクにコーティングしたアルコール末の抗ウイルス効果
アルコール末の技術的で化学的な調製を確立したので、100mgのCMのγ-CD(15mlのEtOH封入)は、5cm×5cmの表面を有する市販のフェイスマスクの織布に手動でコーティングした。リアルタイムのシナリオでは、アルコール末をコーティングしたフェイスマスクは、媒介物を介したSARS-COV-2の空中伝播から個々を保護することが期待された。以前の実験で使用した条件と比較して媒介物における比較的低い濃度のウイルス力価が与えられると、10、100及び1000の希釈因子(DF)を伴うMHV(MOI 3.0)を、これらの手動でコーティングした織布で試験した。このために、5μlの希釈したウイルスを、室温で5分間、織布の表面で静置した。次いで、含浸したウイルスを、広範囲なピペット操作により15μlの1×PBSで回収した。L929細胞及びウイルス滴定を上記に記載されるように実施した。DF 10と対照的に、より高い希釈系列は、アルコール末を使用してウイルスを不活化するのに比較的より効果的であることが証明された(図8)。しかし、このレベルの低下は、ウイルス及びアルコール末を直接混合する以前の実験で観察されたものより小さい。これにより、処置の際のウイルス回収及び織布コーティングにおけるアルコール末の多層化のような更なる最適化の必要性が明らかに実証された。
【0131】
希釈因子の最適化に続いて、織布又はフェイスマスクでのアルコール末の多数の層が、完全なウイルス阻害における高濃度のアルコール末を得られるより良好な抗ウイルス性の戦略をもたらすか否かを推測した。このために、アルコール末でコーティングしたミクロ細孔又はフェイスマスクの織布を、4層で調製した(各層に対して、コーティングする面の平方センチメートル毎に4.4mgのアルコール末を使用する)。次いで、1×PBSで希釈した5μlのMHV(MOI:3.0)を、5分間、固体表面上の10mm×10mmに切断した織布でインキュベートした。次いで、処置したウイルスを、室温で25分間、一貫してピペット操作し、ボルテックスしながら、cDMEM+0.7%のTween80を含有する緩衝液(試験する織布に対するISO基準と類似する条件)を使用して回収し、最終ウイルスのMOIを1.0にした。その後、回収したウイルスを、5に等しい希釈因子(DF)で段階希釈のために使用し、24、48及び72phiでの感染結果をモニタリングした。ミクロ細孔及びフェイスマスクの織布の両方でのアルコール末の多数の層が、織布及びCD対照と比較して、MHVを不活化するのに100%効果的であることが証明された(図9)。
【0132】
(実施例7)
Micropore(商標)テープでのアルコール末のコーティングの抗ウイルス効果
4層コーティングした試料からの有望な結果に続いて、コーティングの層の数を減らし、抗ウイルス挙動に対して1及び2層にコーティングしたミクロ細孔テープを更に試験する試みがなされた。4層コーティングと類似して、良好な結果が、1及び2層のコーティングでも得られた(図10)。
【0133】
1、2及び4層試料を、7日間の貯蔵後に更に試験し、良好な結果も得た(図11)。試料は、抗ウイルス効果は低下せずに、良好な安定性を依然として示した。
【0134】
加速試験を、PBS(×3)を5cmの距離から織布に鼻内噴霧ディスペンサーを使用して噴霧した、1、2及び4層試料でも実施した。本手順を30分後、更に60分後に繰り返した(すなわち、トータルで9回の噴霧)。これは、1日当たり平均で3回のくしゃみでの3日間の使用に似せた。良好な結果は、抗ウイルス効果が低下せずに全ての試料で得られた(図12)。
【0135】
(実施例8)
接着面でのアルコール末の堆積
テープの「粘着性」接着側を、工業的な(「静電」)コーティングスプレーガン(例えば、手動の噴霧用のNordson社製のEncore LT System若しくは大規模生産用の自動化ロボットの等価物)、又は任意の他の適切なコーティングスプレーガンを使用して、均一に噴霧した。スプレーガンは、ナノスケール/マイクロスケールフォーマットで均一なコーティングを提供するための信頼性が高く容易な粉末噴霧のために使用する。
【0136】
CM粉末層の数は適用により調節することができる。層の数が大きくなると、抗ウイルス性コーティングはより長期的に持続する。織布のその耐久性及び通気性の間のトレードオフが存在するので、フェイスマスクに対して使用される。
【0137】
抗ウイルス性の層(追加の紙又は高密度フィルター層のいずれか)でCM粉末のいくつかの層を堆積するために、天然の接着剤及びガムの使用が提案されている(例としてキサンタンガム、アラビアガム、デンプングルー又はデキストリングルーが挙げられる)。これはまた、粉末コーティングの安全性を改善するために理想的である。試験した試料では(図9)、キサンタンガムを接着のために使用した。キサンタンガム及び表面コーティングの調製は以下の通りである:
【0138】
2グラムのキサンタンガムを、200mlのビーカーにおいて磁気撹拌棒で撹拌しながら100mLの温水(50℃)に徐々に添加した。一旦溶解すると、粘性溶液を冷却した。
【0139】
次いで、この溶液の薄層(およそ0.05g)を、ブラシを使用することにより織布の表面(7.5×10cmの領域)に適用した。1分間の間隔の後、0.2グラムのCMアルコール末を、スプレーポンプを使用することによりキサンタンの第1の層の上部で均質に噴霧した。その後の層に対して、以前記載したようにブラシを使用して別の0.05gのキサンタン層を適用する前に、5分間の間隔を(ガム及び粉末層を乾燥/安定化のために)可能にした。1分後、0.2gのCM粉末を記載したように噴霧した。この手順を、所望の数のコーティング層に達するまで繰り返した。したがって、5層の試料は全体で1gのアルコール末を有する。図13は、4層の粉末層のミクロ細孔テープを示す。
【0140】
(実施例9)
代替的なポリマー担体
以前の例は、粉末を所定の箇所に固定するためにキサンタンガムのような水系接着剤を使用した。Olewnik-Kruszkowska E.等(Polymers (2019)11、2093)では、キトサンが、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)と合わせる場合に向上する抗真菌性及び抗菌性の特性を有することが示唆される。PVA及びキトサンの両方、並びにこれらに基づく材料は、食品に接触する薬、医薬品、及び材料において多くの適用が見出されている。これは、特に、それらの生体適合性、生物分解性、及び毒性の低い欠如又は完全な欠如によるものである。それらの良好な混和性は、それらの官能基間に形成される水素結合の結果である。したがって、PVA及びキトサンをブレンドすることは、抗微生物性の特性、及びキトサン単独より良好な機械的特性を伴う均質な材料に寄与する。Olewnik-Kruszkowska E.等(上述)では、純粋なPVAフィルム及びPVA-キトサンフィルムの両方が任意の抗菌性の特性を呈しないことを実証した。
【0141】
本発明の文脈で重要なことに、PVAは水系接着剤である。更に、PVAは、優れた安全性プロファイルを有し、子どもの学業のための接着剤として使用する。PVAはまた、ヒトにおいて臨床用途に対してFDAで承認されている。したがって、抗微生物剤/抗ウイルス剤として作用するその能力を調査し、PVAの溶液を織布の表面にコーティングするために使用して、接着層を形成した: 10gのPVAを、50mlの脱イオン水を含有する100mlのビーカーに設置し、混合物を3分間沸騰させ、次いで溶液を室温で終夜保持した。
【0142】
調製したグルーを、織布及び手袋の表面にアルコールを封入したCD(アルコール末)を保持するために接着剤として適用した。織布は、IIR基準のフェイスマスクのフィルター層で典型的に使用されるポリプロピレン溶融物-褐色の不織布であった。この溶液の層を使用して、織布試料(2cm×2cm)の表面を覆い、1分間静置した。グルーの層の厚さは約5mmであった。次いで、アルコールを封入したCDを、表面をコーティングしたグルーの上部に噴霧した。表面に噴霧した粉末を圧縮して、織布の表面での粉末の量を増加させる。表面でのアルコール末を封入したCDの総量は450mgであった。異なる接着剤溶液を含む粉末コーティングした織布の抗ウイルス活性を比較するために、上記に記載した細胞培養媒体(cDMEM)と共にマウスコロナウイルス(MHV)と比較する抗ウイルス性試験を実施した:
1)織布 - キサンタンガム+アルコール末×1、2×2cm
2)織布 - キサンタンガム+アルコール末×1、2×2cm
3)織布 - PVAグルー+アルコール末×1、2×2cm
4)織布 - PVAグルー+アルコール末×1、2×2cm
【0143】
PVA接着剤を含む製剤では、ウイルスのほぼ完全な阻害を伴う強力な抗ウイルス挙動が実証された。比較すると、キサンタンガムを含む製剤でコーティングした織布では、2~3のウイルス対数減少が実証された(図14)。
【0144】
本実験では、PVAが向上した抗ウイルス挙動を生じるアルコール末を補足することが実証された。
【0145】
(実施例10)
PVA特性の改変
本実施例では、PVAの特性を、電界紡糸を使用して改変して、PVAナノ繊維を形成して、フェイスマスクの目的において通気性を改善し、ウイルス及び抗ウイルス剤(アルコール末)の間の接触表面積も増加させた。
【0146】
電界紡糸する技術を使用してナノ繊維の形成は、2つの主な動機を有した。第1に、通気性が重要な因子であるフェイスマスクのような適用に対して、織布に噴霧した又はブラシをかけたコーティングを有することで、織布のミクロ細孔を遮断するので、通気性に大きな影響を及ぼすことができる。したがって、ナノ繊維の形成は、抗ウイルス保護を提供するが、同時に通気性を改善するために、抗ウイルス性コーティングに求められた。この考えの別の利点とは、ウイルス粒子の直径がナノメートル範囲(およそ50nm~100nm)であるコロナウイルスに対する改善した保護を提供するが、現在の広範囲に入手可能な青色の外科用フェイスマスクが、ウイルスより大きい孔(ミクロンサイズの孔)を有することである。故に、理論的には、ウイルスは、現在の外科用フェイスマスクに孔を侵入させることができる。本明細書で提案されている溶液は、ナノ繊維がナノサイズの孔を形成するミクロンサイズの孔を遮断しなければならないというこの懸念に対処する。
【0147】
この考えの後ろにある第2の動機は、ウイルス及び抗ウイルス剤の間の接触表面積を増加させることが、理論的には、コーティングの抗ウイルス挙動を改善する能力を有することであった。しかし、理論的には、この仮説に影響を及ぼす可能性がある他のパラメーターが存在する。例えば、抗ウイルス剤は、電界紡糸の過程で蒸発することができるので、コーティングの単位体積/グラム毎に低濃度の抗ウイルス剤を提供する。
【0148】
電界紡糸:
ナノ範囲での繊維直径は、体積質量比及び強度質量比において大きな利点を有する。従来の織物繊維が5~50μmの範囲の繊維直径を有するが、電界紡糸は、高い電界でポリマーの溶液又は溶融物から10-9mのオーダーの連続ナノ繊維の生成を可能にする技術である。電界紡糸は、電気力に依存して、マイクロメートル~ナノメートルの範囲において繊維を生成する繊維紡糸の技術である。電界の影響下、スピナレットでのポリマー溶液又は溶融物のペンダント状の液滴を、円錐形状(テイラーコーン)に変形する。電圧が、電気力が表面張力を圧倒する閾値を超える場合、微細に帯電したジェットが噴出する。これらの電気力が上昇するので、ジェットは、電気力により伸長し、加速する。ジェットは、様々な不安定性を受け、乾燥し、ランダムなナノ繊維マットとして基質に堆積する。典型的なポリマーは、1~200ポワズの範囲の粘度を伴う溶媒又は溶媒の組合せに溶解させる。
【0149】
繊維直径のような形態及び電気紡糸したポリマー繊維の均一性が、スピナレットでの体積供給速度、外部電界、ポリマー濃度、ポリマーの分子量、粘度、伝導率、誘電透磁率、表面張力、スピナレットからコレクターまでの距離、及び周期条件を含む、多くの加工パラメーターに依存することを見出している。結果として、これまでに得られた多くのナノ繊維は、ろ過、組織骨格、コーティングフィルム、及び創傷包帯のような異なる適用に有用であり得る不織布形態である。
【0150】
(実施例11)
PVAにおけるアルコール末(PA)のテクスチャー
本実施例は、抗ウイルス性/抗微生物性製品のテクスチャーを調査した。水系接着剤にアルコール末を堆積させることで、表面をコーティングした場合に感触が不快である粗く粒状のテクスチャーが生じた。加えて、このようなテクスチャーは、表面に接着する低い能力を示す。この1つの原因は、粉粒が表面に直立しているので、表面を使用する場合に容易に擦り取られる、又は叩き落されるからである。したがって、より滑らかでより微細なテクスチャー、理想的には均一なゴム状又はゲル様のコーティングを形成する必要があった。
【0151】
以前の実施例で使用したコーティングの過程は、次いで表面に噴霧したアルコール末を固定する接着剤の少なくとも1層の初期適用を含んだ。この過程は、粉末状/粒状のコーティングを生じた。均一で滑らかなゲル様(ゴム状)のコーティングを形成するために、アルコール末をPVA溶液に溶解し、粉末/接着剤混合物を基質に噴霧した。この状況では、溶液中のエタノール活性基は、理論的には、エタノールのOH基を封入しているシクロデキストリン環で保護されなければならないので安定し続ける必要がある。しかし、この仮説を試験する際、コーティングの抗ウイルス挙動が大幅に低減し(データは示さず)、溶液へのアルコール末(PA)の広がり及び希釈に起因し得ることが実証された。初期の実験(データは示さず)から、1:2w/v%(PA:ウイルス)の最小比が十分で好適な抗ウイルス活性に必要であると考えられている。
【0152】
(実施例12)
コーティングの向上した抗ウイルス効果
本実施例では、他の抗微生物性成分の使用及び添加を、コーティングの抗ウイルス挙動を改善する目的で調査した。
【0153】
より強力な抗ウイルス/抗微生物効果を伴う粉末を形成するために、より強力に作用するアルコールを調査した。炭素鎖の数に応じて強度が変化する様々なアルコールが存在する。エタノールは、食品及び飲料でも使用するので利用可能な最も安全なアルコールであるが、ブタノールもまた、ハンドゲルでの使用のような消毒目的で比較的許容される安全性プロファイルを有する。ブタノールは4個の炭素鎖を有し、エタノールは2個を有するので、理論的により強力なアルコールである。したがって、アルコール末製剤は、シクロデキストリンにより封入されたブタノールで調製した。ブタノールを封入したシクロデキストリンを合成するための手段は、エタノール-シクロデキストリン粉末の調製と同様であり、上記に記載される通りであった。
【0154】
図15に示す通り、エタノールを封入したシクロデキストリン粉末は、ウイルスが粉末に直接懸濁化した場合、約3の対数減少を提示した。対照的に、シクロデキストリンがブタノールで封入された場合、約6の対数減少が観察された。50%でもCD PAエタノールは挙動しなかったし、35%でCD+PAブタノールは挙動しなかった。全ての接触時間は等しかった(1分)。
【0155】
水の加水分解がウイルス及び微生物を死滅させるという本発明者らの知識からのインスピレーションを受けて、水の加水分解の一部として形成した活性剤の使用を調査した。電解水(EW)での主要な有効成分は、強力で安全な消毒薬である次亜塩素酸(HOCl)である。HOClの溶液に関する1つの課題は、酸が比較的迅速に低下するので安定性である。加えて、なぜEWが広く利用可能でない、又はスーパーの陳列棚で見出せない主要な理由の1つは、日光及び外気に曝露する場合、製品が迅速に劣化するので、その短い貯蔵寿命である。更に、HOCl溶液それ自体は非常に水のようであり、ラテックス及びネオプレン(例えば外科用又は使い捨て可能な手袋)のような基質でのコーティングとして使用することができない。したがって、本発明者らは、シクロデキストリンにおいて封入しているHOClが、化合物の化学特性を保ちながら、エタノールで見られるように、HOClを安定化する良好な方法であり得ると想定した。
【0156】
しかし、シクロデキストリンにおいて封入しているHOClは、シクロデキストリンが水に可溶であり、溶解したHOClを封入することができる前、水に迅速に分離/分解するので難しい。したがって、シクロデキストリン封入の前、又はシクロデキストリンを封入せずに、PVAにおけるHOClの安定化を調査した。
【0157】
水系接着剤に溶解させたアルコール末に対する懸念は、表面をコーティングした場合に感触が不快である粗く粒状のテクスチャー製品を生成することである。加えて、このようなテクスチャーは、表面に接着する低い能力を示す。この1つの原因は、粉粒が表面に直立しているので、表面を使用する場合に容易に擦り取られる、又は叩き落されるからである。したがって、より滑らかでより微細なテクスチャー、理想的には均一なゴム状又はゲル様のコーティングを形成する必要があり、封入せずにPVAにおいて安定化したHOClが、コーティング溶液としての使用により好適であり得るゴム状のゲル様溶液を形成し得ることが示唆された。
【0158】
他の既知の抗微生物剤もまた、製剤、例えば金属酸化物(例えばTio2、Zno、AgNO3)、ポロキサマー407を含むポロキサマー、第四級アンモニウム塩(QAS)塩、例えばCPC(塩化セチルピリジニウム)、フッ化物イオン、キトサン、ポリ(ヘキサメチレングアニジン)(PHMG)、カルノソール及びアルファ-トコフェロール、グルタルアルデヒド又はヒアルロン酸、クエン酸及び酢酸において調査した。異なる組合せ及び濃度の上記の添加物質をコーティング前に製剤に添加した。
【0159】
上記に列挙した全ての薬剤を試験し、最も有望な抗ウイルス挙動を実証したコーティングを以下に列挙する。実験では、ヒアルロン酸の抗微生物活性が、殺滅活性よりむしろウイルス侵入から細胞を保護するその作用からなるので、薬剤が本発明の文脈における使用が限定されることが示される。
【0160】
a)8%のPVA(2kda)+グルタルアルデヒド(0.7%~3%):
合成方法: (TCI社、Mw2000 Dalton)から購入した8.0gのポリビニルアルコール(PVA)を、100mlのMilli-Q水を含有する200mlのビーカーに入れた。溶液を700rpmで撹拌しながら3時間、40℃まで加温した。次いで、0.7%w/vのグルタルアルデヒド(GA)を溶解し、溶液を撹拌した。次に、手袋(ニトリル)の一部を切断(6×6cmの寸法)し、上記で調製した溶液でコーティングした。試料をブラシにかける及び/又は噴霧するかのいずれかを行い、オーブンに1時間設置し、60℃で乾燥した(以下の実施例15を参照)。
【0161】
このコーティングは、TCID50の実験において1分の接触時間で著しく抗ウイルス活性を実証した。しかし、細胞株での毒性を、0.7%より高いグルタルアルデヒド濃度を伴う試料に対して観察した。0.7%及び0.1%のGAを使用する製剤は、それぞれ図16及び図17に示すように1分の接触時間で、それぞれほぼ3及び2.5のウイルスの対数減少を提示した。
【0162】
b)8%のPVAの35%のアルコール末(電解水で作製)+1%のヒアルロン酸(HA;電解水で作製)+(エタノール又はブタノールで作製)+0.07%のCPC(塩化セチルピリジニウム):
合成方法: (TCI社、Mw2000 Dalton)から購入した8.0gのポリビニルアルコール(PVA)を、10000ppmの濃度で100mlの電解水を含有する200mlのビーカーに入れた。溶液を700rpmで撹拌しながら1時間、40℃まで加温した。
【0163】
10000ppmのHOClの濃度で電解水溶液を形成するために、Sanitab(商標)及び活性塩素の3.25gの錠剤(1.7gの有効成分のジクロロイソシアヌル酸ナトリウム(NaDCC))を、室温で5分間、150mlのビーカーで正常に撹拌しながら100mLのMilli-Q水に溶解した。
【0164】
HOCl溶液はまた、溶解塩(塩化ナトリウム)を含有する普通の電解水から得て、次亜塩素酸の溶液を生成することができる。
【0165】
本実施例では、HOClは、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム(NaDCC)及び不活性化合物を使用するSanitab(商標)錠剤を使用して形成しており、水に添加する場合、次亜塩素酸を生成するのみである。溶液は200ppm、最大で100,000ppmの強度で作製され、抗微生物活性は向上し、最大で100,000ppmに上昇した濃度として観察された。
【0166】
10mlの調製したPVA溶液を、200rpmで穏やかに混合物を撹拌しながら、磁気棒(PTFE 35mm×6mm)を伴う50mlのビーカーに入れた。次いで、0.3%のアスコルビン酸(Holland & Barrett社)を含む1%のヒアルロン酸(Aromantic社)と、続くエタノール又はブタノールで封入された35%のアルコール末、最終的に0.07%のCPCを、全ての混合物に添加した。次に、手袋(ニトリル)の一部を切断(6×6cmの寸法)し、上記で調製した溶液でコーティングした。試料をブラシにかける及び/又は噴霧するかのいずれかを行い、オーブンに1時間設置し、60℃で乾燥した。
【0167】
エタノール及びブタノールの両方の製剤では、2に近いウイルスの対数減少を伴う1分の接触時間で著しい抗ウイルス活性が実証された。エタノールで封入されたアルコール末の効果は図18に示す。
【0168】
c)電解水(EW)で作製した8%のPVA:
合成方法: 10000ppmのHOClの濃度で電解水溶液を形成するために、Sanitab(商標)及び活性塩素の3.25gの錠剤(1.7gの有効成分のジクロロイソシアヌル酸ナトリウム(NaDCC))を、室温で5分間、150mlのビーカーで正常に撹拌しながら100mLのMilli-Q水に溶解した。8.0gのPVAを、10000ppmの濃度で100mlの電解水を含有する200mlのビーカーに入れた。溶液を700rpmで撹拌しながら1時間、40℃まで加温した。手袋(ニトリル)の一部を切断(6×6cmの寸法)し、上記で調製した溶液でコーティングした。試料をブラシにかける及び/又は噴霧するかのいずれかを行い、オーブンに1時間設置し、60℃で乾燥した。
【0169】
このコーティングでは、図19に示すように、1分の接触時間で見られる6という意外なウイルスの対数減少を伴う最大の抗ウイルス活性が実証された。比較のために、図16及び図18では、それぞれ0.7%のグルタルアルデヒド(GA)及びアルコール末(PA)の抗ウイルス活性を示す。PA製剤を、抗ウイルス挙動及び安定性の間に適切な妥協点をもたらすより低いPA濃度(単独で使用する場合、約70%の通常濃度と比較して、1~10%)で最適化した。HAはその後の実験に含まれなかったが、これを含むことは、皮膚に栄養を与えることにより創傷包帯を容易にすることが知られていることから、創傷包帯のような適用に有益である。
【0170】
PVA/EW試料もまた電気紡糸して、フェイスマスクへの適用のためのナノ繊維を形成し、同様の一連の結果を得た。図20は、電解水で作製した8%のPVAの製剤から作製されたナノ繊維の抗ウイルス活性を示す。この試料では、1分の接触時間で2超のウイルスの対数減少が実証された。
【0171】
製剤及び合成方法は以下に記載される:
【0172】
5分間電気紡糸した20000ppmのHOClで作製した8%のPVA
(TCI社、Mw2000 Dalton)から購入した8.0gのポリビニルアルコール(PVA)を、10000ppmの濃度で100mlの電解水を含有する200mlのビーカーに入れた。溶液を700rpmで撹拌しながら1時間、40℃まで加温した。調製した溶液を、5mL用量のシリンジ(Fisher Co.社、Leicestershire、United Kingdom)から、テフロン(登録商標)チューブを介して垂直に配向した(25ゲージ)の平滑末端の金属針に供給した。流速は、容積式シリンジポンプ(M22 PHD 2000、Harvard Apparatus社)(Edenbridge Kent、United Kingdom)を用いてデジタルで制御した。針を、高圧直流電源(Genvolt Co.社、Shropshire、UK)の1つの電極に接続した。典型的な動作領域では、流速は0.2mL/hであり、印加電圧は20~30kVであり、作動距離は15~20cmであった。上記に記載される条件下での電界紡糸を、5分間実施し、スライドを抗ウイルス試験用に調製した。特に、ナノ繊維を、顕微鏡スライド又はポリプロピレンシート(フェイスマスクに使用される)のいずれかに堆積させた。
【0173】
(実施例13)
PVA/HOClコーティングの安定性の改善
上記の実施例で使用した製剤は、全て水溶性であった(すなわち、全ての個々の成分は水溶性であった)。これは、一旦水と接触させるとコーティングが溶解し始めることを意味する。フェイスマスクのような適用に対して、コーティングを、内外のフェイスマスクの層による接触及び他の外来因子(例えば水流)から保護する内部フィルター層に適用するので、これは主要な懸念ではない。これは、コーティングが水に溶解する場合でさえ、溶液を、フィルター層の織布の存在する周囲のミクロ構造/ミクロ繊維に堆積し、抗ウイルス挙動を維持することが予測されているからである。
【0174】
使い捨て可能な手袋のような適用に対して、水と接触させる場合にコーティングが浸出又は溶解する場合には望ましくない。また、水のような外来因子からコーティングを保護することがないので、コーティングをより迅速に除去することができるより強力でより大きいタッチ力が存在することから、更に高いコーティングの安定性が必要である。コーティングの寿命及び安定性を改善するために、2kDaのPVAと比較して可溶性がより小さい分子量がより高いPVA(130kDa)を調査した。加えて、更により小さい水溶性マトリックスを形成するために、PVAポリマーを、所望のHOCl濃度まで電解水に溶解し、130℃のオーブンで60分間インキュベートすることにより架橋させて、大きなPVAネットワークを形成した。これらの試料を、非架橋PVA試料と比較して著しく低下した水溶性に対してのみ試験した。可溶性(浸出)が低下したが、いくらかの可溶性は見られるので、水不溶性ポリマーの代替物を調査した。
【0175】
また更にコーティングの安定性を改善し、材料浸出の量を軽減するために、有効成分を担持し、安定化するのに使用されるバックボーンは、水不溶性ポリマー、例えばエチルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース及び酪酸酢酸セルロース、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(2-フェニル-2-オキサゾリン)(PPhOx)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(1,2ブチレングリコール)(PBG)、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、並びにその組合せと置き換えたが、その全ては、FDAで承認されており、水溶性ポリマー(例えばPVA)と比較して非常に良好な安全性プロファイルを有する。このアプローチは技術的により難しくないので、コスト効果はより大きい。
【0176】
図21では、バックボーンとしてPVAの代わりにエチルセルロースを使用して製剤の抗ウイルス活性が示される。この結果は、このコーティングが、1分の接触時間で見られる6のウイルスの対数減少を伴う著しい抗ウイルス活性を提示することを示す。更に、コーティング材料の可溶性が著しく低かったので、以前の水溶性(PVAバックボーン)試料と比較して浸出がより低かった。
【0177】
このコーティングの成分は以下に列挙する:
【0178】
7000ppmのHOClを含むエタノールで作製した15%のエチルセルロース
合成方法: 20gのエチルセルロース(Fluka社から供給)を、磁気撹拌器を使用して800rpmで1時間撹拌することにより100mLの無水エタノール(Fisher社)に溶解した。同時に、28000ppmのHOCl溶液(すなわち電解水)の原液を、以前記載したようにSanitab(商標)及び活性塩素を使用して調製した。コーティングに好適な溶液を形成するために、2.25mLの20%のエチルセルロース原液を、0.75mLの28000ppmの電解水と滑らかに混合した。これにより、15%のエチルセルロース及び7000ppmのHOClを含む溶液を得た。次いで、ニトリル手袋を、得られる混合物/懸濁液でコーティングした、又はコーティングしないままのいずれかであった。
【0179】
(実施例14)
抗ウイルス活性、安全性プロファイル及びコーティング安定性に対して試験した製剤
以下の製剤を試験した:
a)7000ppm、3500ppm、1750ppm、875ppm又は437.5ppmのHOClを含む15%のエチルセルロース;
b)7000ppm、3500ppm、1750ppm、875ppm、437.5ppmの10%のアルコール末(エタノール)を含むHOClを含む15%のエチルセルロース
【0180】
a)における製剤を、7000ppmのHOClを含むエタノールで作製したが、異なる濃度のHOClを使用する15%のエチルセルロースに対して実施例13で記載したように作製した。簡潔には、2.25mLの20%のエチルセルロース原液を、0.75mLの28000ppmの電解水と滑らかに混合した。これにより、15%のエチルセルロース及び7000ppmのHOClを含む溶液を得た。次の試料に対して、2.25mlの20%のエチルセルロースを、0.375mlの28000ppmのストックHOCl溶液と混合した。次いで、追加の0.375mlのエタノールを添加して、3mlの総体積並びに所望のエチルセルロース及びHOClの濃度に達した。次の試料を、28000ppmのストックHOClの0.1875mlを混合する以外は同じ方法で作製した。添加したエタノールの最終体積は0.5625mlであった。次の試料に対して、28000ppmのストックHOCl溶液の0.09375mlを混合した。エタノールの最終体積は0.65625mlであった。最終試料に対して、28000ppmのストックHOClの0.046875mlを混合し、エタノールの最終体積は0.703125mlであった。
【0181】
パートb)の試料は、一旦パートa)の溶液を作製し、10%w/vのアルコール末を溶液に添加し、最終混合物を、磁気撹拌器を使用して1000rpmで30分間撹拌したことを除いて、パートa)と同様に正確に作製した。
【0182】
エチルセルロースの15%の濃度が選択されたが、それは、20%がエタノールに溶解することができるエチルセルロースの最大濃度であったからである。
【0183】
水不溶性ポリマーを水溶性凝固剤混合物(硝酸カルシウム)と直接混合した場合、エチルセルロース(EC)の凝集が観察された。この問題は、以下のプロトコルに従ってエチルセルロースのミクロ/ナノ粒子のコロイド又は懸濁液を調製することにより克服した:
【0184】
電解水の7000ppmの溶液を、3個のSanitab(商標)錠剤を429mlの水に溶解することにより調製した。次いで、0.5gのECを10mlのエタノールに溶解し、1200rmpで撹拌しながら10mlの7000ppmの電解水に滴下添加した。ECの水中の白色の泡状懸濁液を形成し、高分解能顕微鏡で分析して(図22)、混合物が均質な懸濁液の形態であったことを確認した。その後、3gのCa(NO3)2及び3gのCaCl2を、上記の懸濁液に徐々に添加し、混合物に完全に溶解した。5%のEC、15%のCa(NO3)2、15%のCaCl2の7000ppmの電解水中の泡状懸濁液を形成し、再び高分解能顕微鏡で分析して(図23)、混合物が均質な懸濁液の形態であったことを確認した。
【0185】
(実施例15)
コーティング手順
噴霧は、デバイスがコーティング材料を空気を通して表面に噴霧するコーティング技術である。スプレーガンは、圧縮空気を利用して、コーティング材料の粒子を霧状にして導く。エアスプレーガン(エアブラシとも呼ぶ)は、自動化又は手持ちのいずれかであり得、典型的に液体の均一なコーティングで広い表面を覆うのに使用される。エアスプレーガンは、ノズル、液体容器、及びエアコンプレッサーを有する。トリガー(操作レバー)を押すと、コーティング液体が圧縮した気流と混合され、標的とする表面に微細な噴霧として放出される。コーティング液体は、エアブラシの上部に設置した液体容器から重力によりエアブラシに供給することができる。重力供給エアブラシは、重力が混合チャンバーへの液体の流入を補助する助けとなるので、操作するのに必要とする空気圧は通常小さい。
【0186】
A)噴霧コーティング:
以下に記載される噴霧手順を、上記に記載される全ての設計した製剤に対して同様に、一貫して使用した。
【0187】
10mlの各抗ウイルス性製剤を、ABESTコンプリートプロフェッショナルエアブラシコンプレッサーキットの7ccの流体カップ(重力供給)に入れ、試料の表面(各々、半径2cm及び面積12.56cm2の円形断片)に噴霧した。コーティングした試料の面積は、通常10cm2~20cm2であった。噴霧ノズル及び手袋表面の間の距離は約3cmで固定した。均一なコーティングを得るために、各試料を2回噴霧し、各噴霧サイクルは約10秒を要した。各試料の質量を噴霧の前後に測定した。例は以下に示す:
【0188】
【表2】
【0189】
B)ディープコーティング
試料のディープコーティングに対して、3mlの各製剤を、試料を含有する小さいペトリ皿(ペトリ皿として同じ寸法、半径2cmを有した)に注ぎ入れ、試料を製剤に含浸して、試料の全ての表面が覆われたことを確実にした。次いで、ペトリ皿を60℃のオーブンに30分間設置して、溶媒をゆっくりと蒸発させ、均質化した薄いフィルムを試料の表面に形成させることを可能にした。ディープコーティングの前後の試料の質量を測定した。例は以下に示す:
【0190】
【表3】
【0191】
C)逐次的噴霧
0.5ml又は3mlの1%のエチルセルロース+0.1%のグリセロール溶液(上記に詳述した通り)を、手袋の10cm2毎に噴霧して、それぞれ50μl/cm2及び300μl/cm2の被覆率を得た。次いで、200μlの1%のHOCl溶液を10cm2毎に噴霧して、20μl/cm2の被覆率を得た。これらは湿潤状態の量であり、一旦乾燥すると、質量は変化する。例えば、一旦水を蒸発させ、HOCl溶液は、溶液の初期質量の1%(又は錠剤が他の成分を有するので最大で3%)を含むHOCl塩が主に残留する。
【0192】
溶液の他の体積が考慮及び包含され、例えばポリマー/グリセロール担体溶液の0.05ml~10ml/10cm2の表面積は、0.1~10%のエチルセルロース及び0.01~5%のグリセロールを有する。その後、10μl~1000μlの量のHOCl溶液を、0.01%~10%w/vのHOCl(100~100,000PPMのHOClと等価)の濃度で10cm2の表面積毎に噴霧した。グリセロール又は可塑剤の添加は、このような成分を含まないと試料が乾燥後に非常に硬く、脆弱となることからいくつかの製剤の重要な部分である。
【0193】
(実施例16)
コーティングの抗微生物効果
製剤を、ABESTコンプリートプロフェッショナルエアブラシコンプレッサーキットの7ccの流体カップ(重力供給)に入れ、ニトリルの手袋材料の表面に噴霧した。エアブラシを、「MINIAIR」社の単筒シリンダーピストンコンプレッサーに接続し、調製した溶液で円形の手袋試料(10cm2の表面積)を噴霧するのに使用した。各噴霧の前に、エアブラシのパイプ及びノズルを、以前噴霧した溶液に応じて、エタノール又は二重蒸留水で洗浄し、清潔にした。ノズル及び手袋の表面の間の距離は約10cmであった。手袋の表面の噴霧は、わずかな角度をつけて水平方向に行った。
【0194】
製剤調製:
1)5%のEC対照 - 3ml: 6.67%のエチルセルロース(EC)のエタノール中の原液を、2時間撹拌しながら、6.67グラムのECを100mlのエタノールに、200mlのビーカーにおいて溶解することにより調製した。5%のEC対照試料の調製するために、原液をエタノールで希釈して5%のECに達した。3mlの各溶液を、上記に記載されるように手袋の表面に噴霧し、オーブンに静置し、乾燥した。
【0195】
2)及び3)10%及び30%のグリセロール対照 - 3ml: エタノール中の10%及び30%のグリセロール溶液を、1グラム及び3グラムのグリセロールをそれぞれ10mlのエタノールに溶解することにより調製した。3mlの各溶液を、上記に記載されるように手袋の表面に噴霧し、オーブンに静置し、乾燥した。
【0196】
4)及び5)5%のEC+0.5%のグリセロール対照 - 3ml/5%のEC+1.5%のグリセロール対照 - 3ml: 500mg又は1.5gのグリセロールを、上記1)に記載される5%のEC溶液に添加した。3mlの各溶液を、上記に記載されるように手袋の表面に噴霧し、オーブンに静置し、乾燥した。
【0197】
6)及び7)1%のEC+0.1%のグリセロール+10kPPMのHOCl - 0.5ml/1%のEC+0.3%のグリセロール+10kPPMのHOCl - 0.5ml: ECの6.67%の原液をエタノールで希釈して、1%のEC溶液に達した。100mg又は300mgのグリセロールをこの溶液に添加し、0.5mlの各溶液を、上記に記載されるように手袋の表面に噴霧した。次いで、200ulの10000ppmのHOCLを、ECの上層に噴霧し、次いで、コーティングした手袋を、50℃のオーブンに3時間設置し、乾燥した。
【0198】
8)及び9)1%のEC+0.1%のグリセロール+10kPPMのHOCl - 3ml/1%のEC+0.3%のグリセロール+10kPPMのHOCl - 3ml: 上記の製剤6)及び7)毎に、3mlのEC/グリセロール溶液を除いて、手袋の表面に噴霧した後、200ulの10kPPMのHOClを噴霧した。
【0199】
10)5%のEC+0.5%のグリセロール+10KppmのHOCl - 3ml: 500mgのグリセロールを、上記に記載される5%のEC溶液に添加し、3mlのこの溶液を上記に記載されるように噴霧した。次いで、200μlの10000ppmのHOClを、ECの上層に噴霧し、次いで、コーティングした手袋を、50℃のオーブンに3時間設置し、乾燥した。
【0200】
11)5%のEC+1.5%のグリセロール+10KppmのHOCl - 0.5ml: 1.5gのグリセロールを、上記に記載される5%のEC溶液に添加し、0.5mlのこの溶液を上記に記載されるように噴霧した。次いで、200μlの10000ppmのHOCLを、ECの上層に噴霧し、次いで、コーティングした手袋を、50℃のオーブンに3時間設置し、乾燥した。
【0201】
図24で分かることができる通り、製剤6及び8(1%のEC+0.1%のグリセロール+10kPPMのHOCl、それぞれ0.5ml及び3ml)では、1分の接触時間でおよそ5及び7のウイルスの対数減少を伴う優れた抗ウイルス作用が実証された。
【0202】
上記の製剤番号6を二連で作製し、室温(25℃)で3週間保持した。明状態の試料を任意の他のカバーをせずにペトリ皿内に保持した一方、暗状態の試料をペトリ皿に保持し、次いで、光が通過しない段ボール箱に入れた。
【0203】
図25に示す通り、これらの貯蔵安定性の実験では、明状態(L)又は暗状態(D)のいずれかで3週間貯蔵した後の試料の抗ウイルス活性が実証される。試料では、1分の接触時間で、それぞれ3及び4超のウイルスの対数減少が実証された。
【0204】
温度安定性の研究を実施して、高温で、特にニトリル手袋のような物品の製造に使用される温度でHOClの安定性を試験した。円形の手袋試料(10cm2の表面積)を、両面テープを使用してペトリ皿に固定した。次いで、200μlの10,000ppmのHOClを、4個のコーティングした試料の表面に直接噴霧し、試料を、30分間、室温(25℃;RT)及び50℃、100℃、130℃の温度に曝露させた。ホットプレートを使用して試料を昇温した。試料を、抗ウイルス性試験前に終夜アルミニウム箔で覆ったペトリ皿で保持した。
【0205】
抗ウイルス活性を以下の通り試験した:
試験を、L929細胞を使用して1分の接触時間でマウスコロナウイルス(MHV)を不活化するその有効性に対して試験した。L929細胞を、96ウェルフォーマットにおいて100ulの体積で、5×105個の細胞/mlの濃度で播種した。
【0206】
ニートのウイルスストックを使用した(10000個の細胞に対して10のMOI(感染の多重度))。20μlのMHVを、各試料に設置し、室温(25℃)での1分の接触時間でインキュベートした。
【0207】
次いで、処置したウイルスの連続希釈を実行した。20μlの処置したウイルスを、希釈の96ウェルプレートの底部から第2列に添加し、十分に混合した。次いで、20μlのこの第2列の希釈を、上記の次の列に添加した。混合し、次の列に移す過程は、8個の濃度に対して繰り返しながら、各時間でピペットチップを交換した。プレートからの20μlの連続希釈したMHV又は対照を、4連で細胞(「試験プレート」)に直接移し、穏やかにピペット操作することにより混合した。次いで、細胞を48時間インキュベートした。細胞死及び細胞変性効果(CPE)としての細胞感染の表現型を、感染及び48時間後(hpi)の間隔で、ベンチトップ型光学顕微鏡(倍率20倍)で観察した。
【0208】
図26に示す通り、全ての実験製剤は、活性が低下せずに優れた抗ウイルス活性を提示した。
【0209】
抗菌性の研究もまた実施して、ASTM D7907(医学的検査手袋の表面での殺菌の効能の決定のための標準試験法)に従って実行した黄色ブドウ球菌に対する1%のEC、10kppmのHOCl、0.1%のグリセロールの製剤の抗微生物効果を調査した。
【0210】
黄色ブドウ球菌NCTC 10788は、ウマの血液寒天プレートOxoid(Fisher scientific社 - PB0114A)に画線し、試験前に37℃で24時間インキュベートさせた。
【0211】
抗細菌試験に対して、細菌懸濁液をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で作製し、0.7%のアラビアガムを含むミューラーヒントンブロスOxoid(21g/L)(Fisher scientific社 - CM0405B)を含有する中和緩衝液(NB)で希釈した。細菌懸濁液をミューラーヒントン寒天(38g/L)に広げた。
【0212】
滅菌ループと共に、5~10個のコロニーを5mlの滅菌PBSに混合した。懸濁液の光学濃度を、625nmで測定し、0.5 McFarland標準(OD625は0.08~0.13を読むべきである)に調節した。懸濁液をミューラーヒントンブロス(MHB)で半分で希釈して、106個のCFUを含有する20μlの接種材料を得た。中和緩衝液(NB)での2に対して1での希釈もまた、対照測定のために作製した。繰返し(n=3)では、MHB及びNBの両方の細菌懸濁液の1/1000希釈の1mlを、ミューラーヒントン寒天(MHA)にプレーティングして、対照測定として希釈していないペニシリンの試料と共に、初期CFU/mlを確認した。MHB細菌懸濁液の20μlの試料を、対照及び試験試料に入れ、ガラスカバースリップを滅菌ピンセットで上部に置いた。試料を0、1、2及び5分(期間は最大で30分に改変することができる)に静置し、次いで、10mlの中和緩衝液に移し、15回上下逆さにして、配合物を中和し、任意の生存細菌細胞を再懸濁した。1mlの希釈していない、各試料の1/10希釈を、寒天プレートに繰返し(n=3)広げ、37℃で24時間インキュベートした。コロニーを手動で計数し、CFU/mlの平均Log10を算出した。対数減少を、試験試料由来のコロニーの対数値を、対照試料から引くことにより算出した。
【0213】
図27で分かることができる通り、優れた結果を、全ての接触時点で得たと共に、細菌の完全な阻害が見られた(細菌コロニーの数における6超の対数減少)。
【0214】
(実施例17)
抗ウイルス性の噴霧コーティングした空気フィルターの有効性
伝統的なHEPA(高性能微粒子エア)フィルターは、捕捉した病原体を死滅させる能力を有していないため、これらの病原体の環境への再分布の潜在的なリスクを有する。以下の実施例では、本明細書に記載される抗ウイルス性及び抗菌性製剤を使用して、HEPAフィルターへの適用に好適なコーティングを生成して、ウイルス及び細菌を死滅させる機能性を加えた。重要なことは、フィルターの空気抵抗に最小の影響を及ぼして、フィルターにわたって空気圧の低下を最小限にしたことである。本実施例で開発した抗微生物フィルターは、システムにおいて変化することなく広範囲の既存の空気清浄及び換気システムに改良することができる。
【0215】
噴霧コーティング
不織布基質で噴霧したコーティング材料:
ポリエチレンオキシド(PEO;MW:400K)、ナトリウムカルボキシメチルセルロース(Na-CMC;MW:90K、250K、及び750k)、ポリマーとしてのヒドロキシエチルセルロース(HEC)並びにヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、並びに活性剤としてのグルタルアルデヒド(GA)並びにHOClを、コーティング液の調製に使用した。
【0216】
噴霧技術を介するコーティングしたフィルターの製造:
手動の操作過程で、エアガン噴霧器を、熟練した操作者が持ち、不織布基質からの約3~5cmを、表面上を左右に移動させ、各ストロークを前のものと重複させ、連続コーティングを確実にした。コーティング液体の流速を、O-リングの流速調整装置で制御した。コーティングした物体を、平坦面に通常設置して、全ての側の全体で等しい被覆率を確実にした。
【0217】
図28は、200μl(図28A)、100μl(図28B)、及び50μl(図28c)のコーティング液体の堆積量で、HEPAフィルターに1.6wt.%のNa-CMC、0.9wt.%のGA、及び2wt.%のMBの製剤を噴霧する効果を示す。MBをコーティングしたフィルターの視覚的な識別子として添加した。
【0218】
抗ウイルス性試験法
本実施例で使用した抗ウイルス性試験法を2つの主要な部分から構成される: (i)ウイルス(マウス肝炎ウイルス(MHV))噴霧化及びVent-axia(登録商標)により提供されるH13 HEPAフィルターへの曝露、並びに(ii)ISO 18184に従った処置した試料の試験(織物製品の抗ウイルス活性の決定)。全ての実験を、生物学的レベル2安全性検査で実行した。
【0219】
i)抗ウイルス性の風媒試験: ウイルス噴霧化及びフィルター材料への曝露:
2層のフィルター材料を含有する試験チャンバーを、一端をネブライザーに、他端をアスピレーターに接続した。ネブライザーは、ウイルスエアロゾルを生成した(そして、これらを、空気圧の差をアスピレーターにより形成した試験チャンバーに供給し、空気がフィルターの層を通して流れることを可能にした)。
【0220】
2層のフィルター材料を、各フィルターの厚さと等しい隙間を有する垂直配向に逐次的に位置させた(材料の厚さの上に静置した)。各フィルターは、試験チャンバーを通した気流の方向に面したコーティングで、半分がコーティングされ、半分がコーティングされていなかった。コーティングした部分及びコーティングしていない部分の配列は、第1のフィルターのコーティングしていない部分を通して流れた空気がまた第2のフィルターのコーティングしていない部分を通しても流れるように行った。
【0221】
ii)抗ウイルス性の液滴試験: フィルター試料のウイルス感染性試験:
一旦ウイルス噴霧化が完了したら、フィルター試料を取り出し、ISO 18184に従った細胞可変性アッセイを使用して試験した。要するに、回収した試料を、5mlのcDMEM溶液(細胞培養媒体)を含有するファルコン管に入れた。霧状にしたウイルスに曝露していない未処置のフィルター材料及びウイルス液滴に直接曝露した未処置のフィルター材料を含んだ適切な陽性対照及び陰性対照を、実験で試験した。次いで、処置した試料の連続希釈を希釈プレートに実行し、試料を、L929哺乳動物細胞を含有する96ウェルプレートに移し、48時間インキュベートした。次いで、細胞でウイルスのウイルス感染性を顕微鏡で観察し、Reed-Muench-Lindenbach計算器を使用してTCID50/mlの測定を定量化した。
【0222】
細胞生存率アッセイプロトコルについての詳細な情報は以下の通りである。
【0223】
1日目 - 細胞プレーティング:
L929細胞を計数し、完全DMEM(cDMEM)において5×105個の細胞/mlで再懸濁化した。懸濁液での100μlの細胞を、96ウェルプレートにおいて各ウェル(ウェル当たり50,000個の細胞)に添加し、37℃で終夜(およそ18時間)インキュベートして、感染に対してウェル当たりおよそ100,000個の細胞を生成した。
【0224】
2日目 - 処置及び感染:
200μlのウイルスを各試料に添加し、必要とする接続時間(1分又は5分)の期間、インキュベートした。次いで、5mlのcDMEMを各管に添加し、管を5秒間ボルテックスした。cDMEMの添加を更に4回繰り返した。次いで、250μlの処置したウイルスを96ウェルプレートの第1の(底部の)列に添加した。次いで、段階希釈を、25μlの処置したウイルスを希釈の第2の底部の列に添加し、ウェルを混合し、次いで第2の底部の列の25μlを採取し、次の列に添加し、混合を繰り返し、8個の濃度に対して次の列に移し、各混合する工程間でピペットチップを交換することにより実行した。これにより5倍希釈をもたらした。
【0225】
次いで、20μlの媒体を細胞から除去し、各ウェルに添加した。プレートからの20μlの連続希釈したMHV又は対照を、4連で細胞+媒体(「試験プレート」)に直接添加し(終了時にウェル当たり40ulである)、穏やかにピペット操作することにより混合した。1時間後、50μlの媒体を各ウェルに添加し、プレートを48時間インキュベートした。
【0226】
4/5日目 - 細胞死のチェック:
倒立顕微鏡を使用して、プレートにおける任意の細胞が死滅していたか否かをチェックした。ウェルの細胞が全て死滅している場合、これは陽性ウェルとして計数した。全ての死滅した細胞を含有するウェル及び細胞単層が無傷であったウェルの間に明らかな境界が存在する場合、TCID50をReed-Muench計算器を使用して算出した。
【0227】
圧力低下の測定: フィルター抵抗の測定:
抗ウイルスコーティングを含む及び含まないHEPAフィルター媒体にわたる圧力低下を、0~12m/sの範囲での面速度で測定した。圧力低下は、面積12.6mm2のプローブを使用して測定した。参照のHEPAフィルターにわたる圧力低下は、それぞれ2.66m/s~12m/sの面速度で3.5~40mbarであった。測定は、異なる4か所で実施した。噴霧コーティング後、抗ウイルスフィルターを終夜乾燥させた。
【0228】
抗細菌性の液滴試験:
方法は、医学的検査手袋の表面での殺菌の効能の決定のためのASTM D7907標準試験法から調節した。
【0229】
細菌株:
黄色ブドウ球菌NCTC 10788(のちの10788)は、ウマの血液寒天プレートOxoid(Fisher scientific社 - PB0114A)に再画線し、試験前に37℃で24時間インキュベートさせた。
【0230】
試薬:
細菌に対して、再生細菌をウマの血液寒天プレートOxoid(Fisher scientific社 - PB0114A)に画線し、試験中の細菌コロニー成長をミューラーヒントン寒天 - Oxoid(38g/L)で培養する。
【0231】
リン酸緩衝生理食塩水(PBS)及びミューラーヒントンブロス(MHB)- Oxoid(21g/L)(Fisher scientific社 - CM0405B)を使用して、細菌接種材料を形成した。
【0232】
中和緩衝液(NB)は、0.7%のアラビアガムを含むミューラーヒントンブロス - Oxoid(21g/L)(Fisher scientific社 - CM0405B)を含有する。
【0233】
培養条件:
黄色ブドウ球菌NCTC 10788を極低温記憶装置の細菌から再生するために、細菌を、ウマの血液寒天プレートに再画線し、試験前に37℃で24時間インキュベートさせた。試験した後、全ての試料をミューラーヒントン寒天に広げ、コロニーを計数する前に、37℃で24時間インキュベートした。
【0234】
方法
滅菌ループと共に、5~10個のコロニーを5mlの滅菌PBSに混合した。懸濁液の光学密度を、625nmで測定し、0.5 McFarland標準(OD625は0.08~0.13を読むべきである)に調節して、108個のCFU/mLを得た。懸濁液をミューラーヒントンブロスで2に対して1で希釈して、試験用に106個のCFUを含有する20μLの接種材料を得た。中和緩衝液(NB)での2に対して1での希釈もまた、対照測定のために作製して、NBが細胞に対して阻害を示さなかったことを確実にした。繰返し(n=3)では、MHB+10788及びNB+10788の両方の細菌懸濁液の1/1000希釈の1mLを、ミューラーヒントン寒天(MHA)に広げて、抗生物質感受性を確認するための対照測定としてペニシリンを含むニート試料と共に、初期CFU/mLを確認した。
【0235】
MHB細菌懸濁液(MHB+10788)の20μlの試料を、対照(HEPAフィルターのみ)並びに試験試料(HEPAフィルター及び製剤)に置き、ガラスカバースリップを滅菌ピンセットで上部に置いた。試料を0、1、5及び15分(時点は最大で30分に改変することができる)に静置し、次いで、10mlの中和緩衝液に移し、15回上下逆さにして、製剤を中和し、任意の生存細菌細胞を再懸濁した。1mLのニート及び各試料の1/10希釈を、ミューラーヒントン寒天プレートに繰返し広げ、37℃で24時間インキュベートした。コロニーを手動で計数し、CFU/mLの平均Log10を算出した。対数減少を、試験試料由来のコロニーの対数値を、各時点からの対照試料から引くことにより算出した。
【0236】
結果
抗ウイルス性の風媒試験:
第1の実験では、図29Aに示す通り、7×104個のTCID50/mlのウイルス数を、直列の第1のフィルターの未処置側(フィルター1; Fi1C)で観察した。感染性ウイルスは、フィルター1の処置側(Fi1T)、フィルター2の未処置側(Fi2C)、又はフィルター2の処置側(Fi2T)では観察されなかった。これらの観察では、未処置の対照(MHVB(噴霧化する前のMHV)、MHVA(噴霧化した後のMHV))と比較して、処置した試料(CFC)において4超の対数(>99.99%)のウイルスが減少したことが実証される。期待される通り、感染性ウイルスはフィルター2で検出されなかったが、使用したHEPAフィルターの効果的なろ過効率を示す。
【0237】
これらの観察では、市販のHEPAフィルターにより捕捉されたウイルス粒子全てが、2%のPEO及び2%のGAの製剤で噴霧したコーティングにより不活化され、これによりGAが活性剤であり、PEOがポリマー担体であったことが示された。
【0238】
図29Bに示す繰返し実験では、フィルター1(すなわち噴霧コーティングした側; F1T)の試験側で見られたウイルスはなかったが、ウイルスは対照側(F1C、F2C)で検出された。第1の実験とは異なり、ウイルスはフィルター2の試験側(F2T)で観察され、ウイルスが第1のフィルター層を通して、又は第1のフィルターの側の周りのいずれかに何らかの方法で逃れることができたことを示唆した。
【0239】
抗ウイルス性の液滴試験:
図30Aに示す通り、試料での抗ウイルス性の液滴試験では、コーティングしていないHEPAフィルター(HEPA; 1+MHV)と比較して、全てのコーティングした試料が優れた抗ウイルス活性を示したことが示された。
【0240】
本実験の結果を実証するために、特にPEOのみのコーティングの抗ウイルス効果に関して、コーティングしたフィルターの同じバッチを、噴霧コーティングの後の2週目に試験した。新鮮な試料を確認した場合、第1の実験の結果とは対照的にPEOのみの試料では抗ウイルス性の効能は観察されなかった。結果として、実験1で観察された抗ウイルス性の効能が実験的な誤差であるに違いないことが結論付けられた。期待される通り、新鮮な試料3及び4では、その後の安定性実験(以下を参照)と矛盾しなかった優れた抗ウイルス性の効能(図30B)が示された。
【0241】
フィルター抵抗試験:
本実験の目的は、圧力低下及び抗ウイルス効果の間のトレードオフに基づくコーティング溶液の最適な量を見出すことであった。圧力低下は、噴霧コーティングしたPEO+GA製剤を測定した場合にHEPAフィルターに導入された。フィルターに噴霧した液体溶液の体積は、6cm2(8.3及び16.7μl/cm2)のフィルター面積に対して50μl又は100μlのいずれかであった。
【0242】
噴霧溶液:水中の2wt%のPEO+2wt%のGA
試料:以下の7個の噴霧コーティングした試料を図31に示すように調製した:
1.対照のHEPAフィルター。
2.50μlのPEO+GA
3.50μlのPEO+GA+青色(メチレンブルー(MB))
4.100μlのPEO+GA
5.100μlのPEO+GA+MB
6.200μlのPEO+GA
7.200μlのPEO+GA+MB
【0243】
圧力低下をフィルターにおいて4つの異なる点で測定し、以下のTable 2(表4)で与えられる値は、フィルターにわたる平均的な圧力低下を示す。図32に示す通り、圧力低下の最小値を、50μl及び100μl(8.3及び16.7μl/cm2)コーティングを使用する場合に観察された。対照フィルターと比較して、高い耐圧性は、実験構成の誤差以内であるこれらの2つの体積に対して10mBar以内であった。
【0244】
【表4】
【0245】
これらの研究では、抗ウイルス効果及び導入された圧力低下の両方の観点から霧状にしたウイルス粒子で本発明の製剤の有効性が実証される。これらの有望な結果から、製剤は、システムにおける化学溶液の安全性、抗ウイルス性の有効性及び寿命、並びに圧力低下であった4つの主要なパラメーターに基づいて最適化した。
【0246】
(実施例18)
ポリマー安定性
2%のPEO+2%のGA製剤の抗ウイルス作用の寿命を、1週目に10個のHEPAフィルターを以下のコーティングで噴霧コーティングすることにより調査した。
1.HEPAのみ
2.2%のPEOのみ
3.2%のGAのみ
4.2%のGA+2%のPEO
【0247】
各試料の1つは、250μlの体積を12cm2のフィルター基質(20.8μl/cm2)に噴霧した液滴試験(織布)プロトコルを使用して毎週試験した。結果は図30Bで示すことから全ての試料が2週目で優れた抗ウイルス効果を有することが明らかに分かることができ、4超の対数のウイルスの減少を伴って合成した後の2週目、製剤が依然として効果的であることを確認した。
【0248】
試料の同じバッチを、同じプロトコル(ISO 18184、5分の接触時間)を使用して3週目に抗ウイルス性の効能に対して試験した。驚くべきことに、試料4(PEO+GA)は、2週目の結果と比較して抗ウイルス効果が低下していることが分かるが、試料3(GAのみ)は、抗ウイルス性の効能(対照と比較して4超の対数)を維持した(図33)。
【0249】
PEO+GAの試料もまた、噴霧した5週間後に試験して、3週目に観察した結果を更に調査した。図34で分かる通り、GAのみの試料の抗ウイルス効果の低下が見られなかったが、GA+PEO製剤は2超の対数減少を示し、3週目に得られたのと同じ結果より大きく、試料の可変性のためであり得た。これらの結果はまた、GAのみの製剤が最大の安定性を有することを確認した。
【0250】
(実施例19)
製剤の抗菌効果
抗菌性試験(図35)では、2%のPEO+2%のGAの製剤でコーティングしたフィルターが、15分(3超の対数)の接触時間の後に細菌の成長を著しく阻害したことが示された。
【0251】
上記に記載される抗菌性試験もまた、2%のPEO+2%のGAのコーティング製剤でコーティングしたフィルターで黄色ブドウ球菌の細菌を使用して行った。
【0252】
図36に示す通り、細菌の4超の対数減少は、時点0(10秒未満)で対照フィルターと比較して、CMC(90k)+2%のGA(6%又はNa-CMC(90kDa)1.6%+GA 2%(図でCMC+GAとして示す))のコーティング製剤について分かった。類似した結果を5、10及び15分の時点で観察した。
【0253】
(実施例20)
PEOに代替的なポリマー
本実験では、異なる分子量でのナトリウムカルボキシメチルセルロース(Na-CMC)(PEOに代替的)、又はヒドロキシエチルセルロース(HEC)と混合する場合のGAの抗ウイルス効果は、抗ウイルス性の液滴試験で試験した。
1.1.6%のCMC(90kDa)
2.1.6%のCMC(90kDa)+2%のGA
3.1.6%のCMC(250kDa)
4.1.6%のCMC(250kDa)+2%のGA
5.1.6%のCMC(700kDa)
6.1.6%のCMC(700kDa)+2%のGA
7.HEC
8.HEC+2%のGA
【0254】
CMC+GAが全ての分子量で優れた抗ウイルス効果を生じたことが観察された(図37)。HECで効果は観察されなかったので、CMC+GA実験を、置換数に関してCMCの大きな変動を使用して繰り返して、最適な分子量及び置換数を見出した。
【0255】
以前の実験では、全てのNa-CMC製剤が最大の抗ウイルス活性(6超の対数)を生じたことが観察された。結果として、異なるCMC+GA製剤の範囲を試験して、代替的なポリマーとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)と一緒に、抗ウイルス活性でのCMCの置換数の効果を調査した。
1.2%のGAのみ
2.2%のメチレンブルー(MB)のみ
3.1.6%のNa-CMC(90kDa)+2%のGA+2%のMB
4.1.6%のNa-CMC(90kDa)
5.1.6%のNa-CMC(90kDa)+2%のGA
6.1.3%のNa-CMC(250kDa)-置換数(SN)0.7
7.1.3%のNa-CMC(250kDa)-SN 0.7+2%のGA
8.1.3%のNa-CMC(250kDa)-SN 1.2
9.1.3%のNa-CMC(250kDa)-SN 1.2+2%のGA
10.0.6%のNa-CMC(750kDa)
11.0.6%のNa-CMC(750kDa)+2%のGA
12.1%のHPMC
13.1%のHMPC+2%のGA
【0256】
本実験では、優れた抗ウイルス効果は、CMCが2%のGAと混合した場合、CMCの全ての置換数(SN)で観察された(図38)。これらの観察に基づいて、CMCのSNが抗ウイルス性の効能での任意の効果を有していなかったと結論付けられた。
【0257】
(実施例21)
0.9%の濃度、異なる噴霧した体積でGAの抗ウイルス性の有効性
理論的分析を実行して、コーティングした製剤のために安全性データシートを作成し、0.9%のGA濃度の安全制限を、全ての安全上の問題が4以上のカテゴリーであることに基づいて選択した。次いで、低下したGA濃度の抗ウイルス効果を調査した。特に、コーティングしたフィルターでの抗ウイルス活性、並びに圧力低下を、3つの異なるコーティング体積を使用して調査して、CMC+0.9%のGA溶液により導入された抗ウイルス活性及び耐圧性の観点から最良のトレードオフで決定した。これらの実験を、ウイルス及びフィルター基質の間の1分の接触時間で実施した。
【0258】
以下の製剤を、12cm2のHEPAフィルター基質(4.16、8.3及び16.7μl/cm2)で噴霧コーティングした:
1.200μlの1.6%のNa-CMC(90k)
2.50μlの0.9%のGA
3.100μlの0.9%のGA
4.200μlの0.9%のGA
5.50μlの1.6%のNa-CMC(90K)+0.9%のGA+2%のMB
6.100μlの1.6%のNa-CMC(90K)+0.9%のGA+2%のMB
7.200μlの1.6%のNa-CMC(90K)+0.9%のGA+2%のMB
【0259】
図39に示す抗ウイルス性の液滴試験の結果では、200μl(16.7μl/cm2)のGA 0.9%のみの溶液が、他の製剤と比較する場合、最も高い抗ウイルス活性を生じることが示される。全ての他の製剤は、コーティングしていないHEPAフィルターと比較して2未満の対数の減少が生じた。
【0260】
(実施例22)
0.9%のGAの50、100及び200μlの溶液を使用して導入した圧力低下
実施例21で使用した同じ製剤を更に調査して、これらの製剤で生じる圧力低下を試験した。噴霧した製剤の体積は、12cm2のフィルター基質での50、100及び200μlの溶液であった(4.16、8.3及び16.7μl/cm2)。図40A及び図40Bは、異なる堆積の量(50、100及び200μl)に対する面速度の関数としての圧力低下の百分率を示す。これらの結果では、50μl及び100μl(4.6及び8.3μl/cm2)(6m/s未満の面速度)の噴霧した体積が満足できる性能を示したことが示された。
【0261】
これらの結果では、GA濃度が0.9%であり、噴霧した溶液の体積が200μlである、すなわち最大量の導入された圧力低下である場合、GAのみの溶液が、最大量の抗ウイルス効果を生じることが可能であることが示される。
【0262】
(実施例23)
0.9%のGAの抗ウイルス活性を向上させるHOClの有効性
本実験では、HOClを添加し、50及び100μl(4.6及び8.3μl/cm2)の体積で0.9%のGA溶液と混合して、あらゆる相乗的な抗ウイルス効果を評価した。以下の製剤を試験した:
HEPAフィルターのみ
フィルター+20kppmのHOCL
フィルター+0.9%のGA
フィルター+0.9%のGA+20kppmのHOCL
フィルター+1.6%のNa-CMC(90kDa)
フィルター+20kppmのHOCL+0.9%のGA+1.6%のNa-CMC(90kDa)
フィルター+20kppmのHOCL+0.9%のGA+1.6%のNa-CMC(90kDa)+2%のMB
【0263】
全ての試料を、50μl及び100μlの体積で抗ウイルス性の液滴試験を試験した。
【0264】
図41に示す通り、HOClの添加により、0.9%のGA製剤の抗ウイルス活性を増加させた。より大きな活性が、適用されたより大きな体積のために期待された通り、50μlと比較して100μlの液体で観察された。
【0265】
(実施例24)
50μl(4.6μl/cm2)対100μl(8.3μl/cm2)での圧力低下試験
本実施例では、実施例23で試験した製剤により生じた圧力低下を試験して、50μl及び100μl体積の噴霧体積間の圧力低下の差を見出した。図42に示す結果では、従来の空気清浄機で使用した範囲である3~5の面速度の範囲で、試料における50μl及び100μl体積のコーティングにより導入された圧力低下で著しい差がないことが実証される。
【0266】
(実施例25)
3週間後の1.6%のCMC(90kDa)+2%のGA溶液の安定性
抗ウイルス性の液滴試験を使用して噴霧コーティングした3週間後、1.6%のCMC+GA 2%溶液の安定性。図43に示す通り、2%のGA及び1.6%のCMC+2%のGAのコーティング製剤は、コーティングしていないフィルターから回収したウイルスの力価と比較して6超の対数減少で、1週目におけるものと同様にコーティング後の3週目でも安定した。
【0267】
上記の実施例では、水溶性接着剤がアルコール末製剤を基質に安定化し、接着することで実行可能であることが実証される。キサンタンガムが実行可能であるが、PVAがより良好でより安定な結果をもたらす。得られるコーティングのテクスチャーもまた改変し、改善して、粒状のコーティングからゴム状のゲル様製剤に移動することができる。加えて、本実施例では、他の活性剤並びにアルコールが抗ウイルス性/抗微生物性コーティングで実行可能であることが示される。
【0268】
グルタルアルデヒド(GA)を使用する製剤では高い抗ウイルス挙動が実証されたが、毒性では0.7%より高い濃度で実証された。一般的に言うと、GAは、化学的消毒薬で無機であるので最も安全な成分ではない。より安全な代替物は、アルコール末及びHOClを使用する製剤であった。結果ではまた、高濃度のHOClで細胞死及び毒性を観察されたが、HOClがアルコール末より強い抗ウイルス活性を有する非常に効果的な抗微生物剤であることが示された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29A
図29B
図30A
図30B
図31
図32A
図32B
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40A
図40B
図41
図42
図43
【国際調査報告】