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特表2024-516528ZIF-8有機金属フレーム触媒複合体、およびこれを利用した二酸化炭素変換方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-16
(54)【発明の名称】ZIF-8有機金属フレーム触媒複合体、およびこれを利用した二酸化炭素変換方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 31/22 20060101AFI20240409BHJP
   C07D 317/38 20060101ALI20240409BHJP
   C07D 317/36 20060101ALI20240409BHJP
   C07F 3/06 20060101ALN20240409BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240409BHJP
【FI】
B01J31/22 Z
C07D317/38
C07D317/36
C07F3/06
C07B61/00 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560704
(86)(22)【出願日】2022-10-31
(85)【翻訳文提出日】2023-09-29
(86)【国際出願番号】 KR2022016802
(87)【国際公開番号】W WO2023075540
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】10-2021-0147657
(32)【優先日】2021-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0141432
(32)【優先日】2022-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518107501
【氏名又は名称】コリア ユニバーシティ リサーチ アンド ビジネス ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】KOREA UNIVERSITY RESEARCH AND BUSINESS FOUNDATION
【住所又は居所原語表記】145,Anam-ro,Seongbuk-gu,Seoul,Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ジュン-ギュ
(72)【発明者】
【氏名】リ,クァン-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ギ-フン
【テーマコード(参考)】
4G169
4H039
4H048
【Fターム(参考)】
4G169AA06
4G169BA28A
4G169BA28B
4G169BC35A
4G169BC35B
4G169BE16A
4G169BE16B
4G169CB25
4G169CB38
4G169EC05Y
4G169EC25
4G169EC27
4H039CA42
4H048AA03
4H048AB40
4H048VA66
4H048VB10
(57)【要約】
本発明は、有機金属フレームにおいて、ZIF-8有機金属フレーム;および前記ZIF-8有機金属フレームの内部に備えられる水分子;を含む、ZIF-8有機金属フレーム触媒複合体関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機金属フレームにおいて、
ZIF-8有機金属フレーム;および
前記ZIF-8有機金属フレームの内部に備えられる水分子;
を含む、ZIF-8有機金属フレーム触媒複合体。
【請求項2】
前記水分子は、前記ZIF-8有機金属フレームの結合の少なくとも一部を解離させて反応サイトを形成し、
反応サイトが形成されたZIF-8有機金属フレームおよび反応サイトが形成されていないZIF-8有機金属フレームを含む、請求項1に記載のZIF-8有機金属フレーム触媒複合体。
【請求項3】
前記反応サイトは、
Zn-OH結合を含む第1反応サイト;および
N-H結合を含む第2反応サイト;
を含む、請求項2に記載のZIF-8有機金属フレーム触媒複合体。
【請求項4】
前記反応サイトが形成されたZIF-8有機金属フレームの形成比率は、
反応サイトが形成されたZIF-8有機金属フレーム/反応サイトが形成されていないZIF-8有機金属フレームが0.05~1.0の重量比で形成される、請求項2に記載のZIF-8有機金属フレーム触媒複合体。
【請求項5】
前記第1反応サイトおよび第2反応サイトの少なくともいずれか一つは、二酸化炭素とエポキシド系化合物の環化付加反応を促進して炭酸塩を形成する、請求項3に記載のZIF-8有機金属フレーム触媒複合体。
【請求項6】
前記エポキシド系化合物は、エピクロロヒドリン(epichlorohydrin)、エチレンオキシド(ethylene oxide)、スチレンオキシド(styrene oxide)、およびプロピレンオキシド(propylene oxide)の少なくともいずれか一つである、請求項5に記載のZIF-8有機金属フレーム触媒複合体。
【請求項7】
前記水分子の含量が高いほど、炭酸塩の収率が増加する、請求項5に記載のZIF-8有機金属フレーム触媒複合体。
【請求項8】
前記炭酸塩は、環状炭酸塩であり、
クロロプロペンカボネート(chloropropene carbonate)、エチレンカボネート(ethylene carbonate)、スチレンカボネート(styrene carbonate)、およびプロピレンカボネート(propylene carbonate)の少なくともいずれか一つである、請求項5に記載のZIF-8有機金属フレーム触媒複合体。
【請求項9】
前記炭酸塩の収率は、下記式1;
【数1】
によって計算される、請求項5に記載のZIF-8有機金属フレーム触媒複合体。
【請求項10】
前記環化付加反応による炭酸塩の収率は、20%~99%である、請求項9に記載のZIF-8有機金属フレーム触媒複合体。
【請求項11】
前記水分子は、前記ZIF系有機金属フレーム触媒複合体に対して0.005~0.35の重量比で含まれる、請求項1に記載のZIF-8有機金属フレーム触媒複合体。
【請求項12】
BET表面積が1300m/g~1600m/gである、請求項1に記載のZIF-8有機金属フレーム触媒複合体。
【請求項13】
前記反応サイトが形成されたZIF-8有機金属フレームは、X線光電子分光(XPS)分析で、Zn-OHの形成を示す結合エネルギーに対するピークが1022.3eV~1022.5eVで第1ピーク、531.8eV~520eVで第2ピークを示す、請求項3に記載のZIF-8有機金属フレーム触媒複合体。
【請求項14】
X線光電子分光(XPS)分析において、
Zn-Nの結合エネルギーを示す前記ZIF-8有機金属フレームのXPSピーク面積に対して、前記反応サイトが形成されたZIF-8有機金属フレームのXPSピーク面積の比は0.4~0.8である、請求項3に記載のZIF-8有機金属フレーム触媒複合体。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項によるZIF-8有機金属フレーム触媒複合体を利用した二酸化炭素変換方法であって、
前記ZIF-8有機金属フレーム触媒複合体を含む物質およびエポキシド系化合物をオートクレーブに入れるステップ;
前記オートクレーブ内に二酸化炭素を供給するステップ;
前記オートクレーブの内部を加熱して、前記ZIF-8有機金属フレーム触媒複合体、エポキシド系化合物、および二酸化炭素を反応させて炭酸塩を収得するステップ;および
前記生成物を急冷するステップ;
を含む、
ZIF-8有機金属フレーム触媒複合体を利用した二酸化炭素変換方法。
【請求項16】
前記オートクレーブの内部は、40℃~200℃に加熱される、請求項15に記載のZIF-8有機金属フレーム触媒複合体を利用した二酸化炭素変換方法。
【請求項17】
前記二酸化炭素は、1bar~30barの圧力になるまで供給される、請求項15に記載のZIF-8有機金属フレーム触媒複合体を利用した二酸化炭素変換方法。
【請求項18】
前記炭酸塩の収率は、下記式2;
【数2】
によって計算される、請求項15に記載のZIF-8有機金属フレーム触媒複合体を利用した二酸化炭素変換方法。
【請求項19】
前記炭酸塩の収率は、20%~99%である、請求項18に記載のZIF-8有機金属フレーム触媒複合体を利用した二酸化炭素変換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ZIF-8有機金属フレーム触媒複合体、およびこれを利用した二酸化炭素変換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素は、地球温暖化の主犯の一つで、二酸化炭素を減らす方法だけでなく、これを産業に利用する方法に関する研究も活発に行われている。そのうち、二酸化炭素を利用する方法としては、脂質貯蔵、鉱物貯蔵、化学的変換など多様な方法で貯蔵または変換する方法がある。
【0003】
多様な化学的変換方法の一つである二酸化炭素環化付加反応は、二酸化炭素をエポキシ化合物内に添加して、環状炭酸塩を製造することができる反応である。この時、用いられるエポキシ化合物のアルキル基種類(クロロメチル基、メチル基、フェニル基)によって多様な形態の環状炭酸塩(クロロプロペンカボネート、プロピレンカボネート、スチレンカボネート)を製造することができ、製造された環状炭酸塩は、極性溶媒、燃料添加剤、バッテリー電解液など多様な産業分野で使用価値が高い。
【0004】
【化1】
二酸化炭素の環化付加反応(式1)は、ルイス酸-塩基が共存する触媒上で高い反応活性を示し、この反応の効率を高めるために、多様な種類の触媒開発に対する研究が行われている。
【0005】
また、金属陽イオンと有機リガンドとの結合からなるMOFは、高い孔隙率と、構造的柔軟性および多様な機能性を有することから、センシング、薬物伝達、触媒など多様な分野で高い潜在力を有している。MOFの一つであるZIF-8は、亜鉛(Zn)と2-メチルイミダゾレート(2-methylimidazolate)からなり、外部表面に存在する欠陷により、ルイス酸-塩基を同時に示すことができる。したがって、ZIF-8を利用して多様なエポキシ化合物と二酸化炭素の環化付加反応を促進させることができる
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、水分子を含むZIF-8有機金属フレーム触媒複合体提供することにある。
【0007】
また、本発明の他の目的は、ZIF-8有機金属フレーム触媒複合体を利用して、二酸化炭素の変換を促進させるための方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面によれば、本発明の実施形態は、有機金属フレームにおいて、ZIF-8有機金属フレーム;および前記ZIF-8有機金属フレームの内部に備えられる水分子;を含む、ZIF-8有機金属フレーム触媒複合体であってもよい。
【0009】
一実施形態において、前記水分子は、前記ZIF-8有機金属フレームの結合の少なくとも一部を解離させ反応サイトを形成し、反応サイトが形成されたZIF-8有機金属フレームおよび反応サイトが形成されていないZIF-8有機金属フレームを含んでもよい。
【0010】
一実施形態において、前記反応サイトは、Zn-OH結合を含む第1反応サイト;およびN-H結合を含む第2反応サイト;を含んでもよい。
【0011】
一実施形態において、前記反応サイトが形成されたZIF-8有機金属フレームの形成比率は、反応サイトが形成されたZIF-8有機金属フレーム/反応サイトが形成されていないZIF-8有機金属フレームが0.05~1.0の重量比で形成されてもよい。
【0012】
一実施形態において、前記第1反応サイトおよび第2反応サイトの少なくともいずれか一つは、二酸化炭素とエポキシド系化合物の環化付加反応を促進して、炭酸塩を形成してもよい。
【0013】
一実施形態において、前記エポキシド系化合物は、エピクロロヒドリン(epichlorohydrin)、エチレンオキシド(ethylene oxide)、スチレンオキシド(styrene oxide)およびプロピレンオキシド(propylene oxide)の少なくともいずれか一つであってもよい。
【0014】
一実施形態において、前記水分子の含量が高いほど、炭酸塩の収率が増加し得る。
【0015】
一実施形態において、前記炭酸塩は、環状炭酸塩であり、クロロプロペンカボネート(chloropropene carbonate)、エチレンカボネート(ethylene carbonate)、スチレンカボネート(styrene carbonate)およびプロピレンカボネート(propylene carbonate)の少なくともいずれか一つであってもよい。
【0016】
一実施形態において、前記炭酸塩の収率は、下記式1によって計算され得る。
【0017】
【数1】
一実施形態において、前記環化付加反応による炭酸塩の収率は、20%~99%であってもよい。
【0018】
一実施形態において、前記水分子は、前記ZIF系有機金属フレーム触媒複合体に対して、0.005~0.35の重量比で含まれてもよい。
【0019】
一実施形態において、BET表面積が1300m/g~1600m/gであってもよい。
【0020】
一実施形態において、前記反応サイトが形成されたZIF-8有機金属フレームは、X線光電子分光(XPS)分析において、Zn-OHの形成を示す結合エネルギーに対するピークが1022.3eV~1022.5eVで第1ピーク、531.8eV~520eVで第2ピークを示してもよい。
【0021】
一実施形態において、X線光電子分光(XPS)分析において、Zn-Nの結合エネルギーを示す前記ZIF-8有機金属フレームのXPSピーク面積に対して、前記反応サイトが形成されたZIF-8有機金属フレームのXPSピーク面積の比は、0.4~0.8であってもよい。
【0022】
また、本発明の一側面によれば、本発明の実施形態は、前記特徴の少なくともいずれか一つを有するZIF-8有機金属フレーム触媒複合体を利用した二酸化炭素変換方法であって、前記ZIF-8有機金属フレーム触媒複合体を含む物質およびエポキシド系化合物をオートクレーブに入れるステップ;前記オートクレーブ内に二酸化炭素を供給するステップ;前記オートクレーブの内部を加熱して、前記ZIF-8有機金属フレーム触媒複合体、エポキシド系化合物および二酸化炭素を反応させて、炭酸塩を収得するステップ;および前記生成物を急冷するステップ;を含む、ZIF-8有機金属フレーム触媒複合体を利用した二酸化炭素変換方法に関する。
【0023】
一実施形態において、前記オートクレーブの内部は、40℃~200℃で加熱されてもよい。
【0024】
一実施形態において、前記二酸化炭素は、1bar~30barの圧力になるまで供給されてもよい。
【0025】
一実施形態において、前記炭酸塩の収率は、下記式2によって計算され得る。
【0026】
【数2】
一実施形態において、前記炭酸塩の収率は、20%~99%であってもよい。
【発明の効果】
【0027】
上記したような本発明に係ると、二酸化炭素の変換反応を促進させるZIF-8有機金属フレーム触媒複合体を提供し、これを利用して二酸化炭素変換を促進させる方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明に係る一実施形態において、二酸化炭素の環化付加反応が行われる間にZIF-8有機金属フレーム触媒複合体でZn-N結合が解離(加水分解)される過程を示した模式図である。
図2】(a)はZIF-8WおよびZIF-8W_T24_ImのTGAプロファイルを示し、(b)は70℃で、ZIF-8W-T24およびZIF-8x(x=MおよびC)の水蒸気吸着等温線を示す。
図3】(a)および(b)は、それぞれ80℃および200℃で、4時間脱気されたZIF-8WおよびZIF-8MのN2物理吸着等温線を示す。
図4】ZIF-8W、ZIF-8W-SおよびDPに対するXPS分析結果を示す。
図5】ZIF-8xおよびZIF-x_S(x=W、MおよびC)のN 1sおよびZn 2pでのXPSスペクトルを示す。
図6】新鮮なZIF-8xおよび使用済みZIF-8x_S(x=W、MおよびC)に対して、Zn LMMのXAES分光を示す。
図7】ZIF-8W、MおよびCに対する収率、外部表面組成、電子顕微鏡イメージおよびXRDパターンを示す。
図8】ZIF-8W、MおよびCに対する収率、外部表面組成、電子顕微鏡イメージおよびXRDパターンを示す。
図9】ZIF-8W、MおよびCに対する収率、外部表面組成、電子顕微鏡イメージおよびXRDパターンを示す。
図10】それぞれの触媒粒子の粒径分布を示す。
図11】ZIF-8WおよびZIF-8W_Sに対するSEMイメージを示す。
図12】ZIF-8のシミュレーションXRDパターンによるZIF-8W、ZIF-8W_SおよびDPのXRDパターンを示す。
図13】ZIF-8W、ZIF-8MおよびZIF-8Cに対してTGAおよびFT-IR分析を実行した結果である。
図14】ZIF-8Wの触媒的特性を確認するために、ZIF-8Wを熱処理して水分子を除去したりDPと混合して実験した結果を示す。
図15】二酸化炭素環化付加反応に対して触媒活性のあるZIF-8Wの状態を調べるために、ZIF-8WまたはDPをα-アルミナと多様な比率で混合して測定したXRDパターンを示す。
図16】反応後触媒内のZIF-8およびDPの重量比からZIF-8中間誘導体の重量比を推定したグラフおよび反応時間によるZIF-8中間誘導体の重量比とCC収率を示す。
図17】熱処理されたZIF-8WのTGA結果を示す。
図18】ZIF-8Wで触媒として作用するサイトを調べるために、各サンプルのN吸脱着等温線、気孔分布およびFT-IRを測定した結果である。
図19】ZIF-8サンプルに対して対数X-軸(logarithmic x-axis)でN吸-脱着等温線およびマイクロ細孔の大きさ分布を示す。
図20】ZIF-8サンプルに対してメソ細孔の大きさ分布を示す。
図21】ZIF-8サンプルに対してFT-IRスペクトルを示す。
図22】ZIF-8サンプルに対するO 1sに対するXPS結果である。
図23】ZIF-8サンプルの表面にある元素の組成を調査したのである。
図24】ZIF-8WサンプルのXRDパターン、O 1sXPSスペクトル、N吸-脱着等温線、マイクロ細孔の大きさ分布およびNHのTPDプロファイルを示す。
図25】ZIF-8サンプルに対してN 1sおよびZn 2pでのXPSスペクトルと外部表面の組成を示す。
図26】ZIF-8サンプルに対してCOおよびNHのTPD(temperature programmed desorption)プロファイルを示す。
図27a】ZIF-8サンプルのTPDプロファイル、ZIF-8サンプルのNH吸着実験後のFT-IRスペクトル、およびNH吸着実験後に互いに異なる温度で熱処理した後のサンプルのFT-IRスペクトルを示す。
図27b】ZIF-8サンプルのTPDプロファイル、ZIF-8サンプルのNH吸着実験後のFT-IRスペクトル、およびNH吸着実験後に互いに異なる温度で熱処理した後のサンプルのFT-IRスペクトルを示す。
図27c】ZIF-8サンプルのTPDプロファイル、ZIF-8サンプルのNH吸着実験後のFT-IRスペクトル、およびNH吸着実験後に互いに異なる温度で熱処理した後のサンプルのFT-IRスペクトルを示す。
図27d】ZIF-8サンプルのTPDプロファイル、ZIF-8サンプルのNH吸着実験後のFT-IRスペクトル、およびNH吸着実験後に互いに異なる温度で熱処理した後のサンプルのFT-IRスペクトルを示す。
図28】ZIF-8サンプルのNH吸着実験前後のFT-IRスペクトルを示す。
図29】ZIF-8サンプルのデコンボリューション曲線に対する情報を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
その他実施形態の具体的な事項は、詳細な説明および図面に含まれている。
【0030】
本発明の利点および特徴、そしてそれらを達する方法は、添付図面と共に詳細に後述されている実施形態を参照すると明確になり得るはずである。しかしながら、本発明は、以下で開示される実施形態に限定されるのではなく、互いに異なる多様な形態に具現されてもよく、以下の説明で他に明示されない限り、本発明に成分、反応条件、成分の含量を表現する全ての数字、値および/または表現は、このような数字が本質的に異なるものの中でこのような値を得る際に発生する測定の多様な不確実性が反映された近似値であるので、全ての場合「約」という用語によって修飾されることに理解すべきである。また、本記載で数値範囲が開示される場合、このような範囲は連続的で、他に指摘されない限りこのような範囲の最小値から最大値が含まれた前記最大値までの全ての値を含む。さらに、このような範囲が定数を指称する場合、他に指摘されない限り、最小値から最大値が含まれた前記最大値までを含む全ての定数が含まれる。
【0031】
また、本発明で範囲が変数に対して記載される場合、前記変数は前記範囲の記載された終了点を含む記載された範囲内の全ての値を含むことに理解すべきである。例えば、「5~10」の範囲は、5、6、7、8、9、および10の値だけでなく、6~10、7~10、6~9、7~9などの任意の下位範囲を含み、5.5、6.5、7.5、5.5~8.5および6.5~9などのような記載された範囲の範疇に妥当な定数の間の任意の値も含むことに理解すべきである。例えば、「10%~30%」の範囲は、10%、11%、12%、13%などの値と30%までを含む全ての定数だけでなく、10%~15%、12%~18%、20%~30%などの任意の下位範囲を含み、10.5%、15.5%、25.5%などのように記載された範囲の範疇内の妥当な定数の間の任意の値も含むことに理解すべきである。
【0032】
図1は、本発明に係る一実施形態において、二酸化炭素の環化付加反応が行われる間にZIF-8有機金属フレーム触媒複合体でZn-N結合が解離(加水分解)される過程を示した模式図である。ZIF-8有機金属フレームの外部表面にあるZn-N結合が解離されて、ピロール系N(pyrrolicN)、ピリジン系N(pyridinicN)およびN-Zn-OH構造に変換されることができることを示す。二重Zn-OH構造は、二酸化炭素の環化付加反応でルイス酸/塩基部分を提供して、触媒として利用されることができる。
【0033】
本発明の一実施形態によるZIF-8有機金属フレーム触媒複合体は、有機金属フレームにおいて、ZIF-8有機金属フレーム;および前記ZIF-8有機金属フレームの内部に備えられる水分子;を含むことができる。
【0034】
本発明の一実施形態による触媒複合体は、ZIF-8有機金属フレームの外部表面に反応サイトを含むことができ、この反応サイトによって、COとエポキシド化合物の反応を促進する触媒活性を有することができる。
【0035】
前記ZIF-8有機金属フレームの内部に存在する前記水分子は、前記ZIF-8有機金属フレームの結合の少なくとも一部を解離させて反応サイトを形成するものであってもよい。ここで、前記水分子は、前記ZIF-8有機金属フレームの内部に閉塞された(occlude)で表現され得る。
【0036】
前記水分子は、前記ZIF-8有機金属フレームの構造に存在するN-Zn-N結合のうち、Zn-N結合を加水分解(解離)させながら前記ZIF-8有機金属フレーム構造を抜け出ることができる。この過程で、Zn-N結合がZn-OH結合とN-H結合に分けられて、反応サイトを形成することができる。したがって、前記反応サイトは、Zn-OH結合を含む第1反応サイトおよびN-H結合を含む第2反応サイトの少なくともいずれか一つを含み得る。
【0037】
前記水分子は、前記ZIF-8有機金属フレームに存在するN-Zn-Nの少なくとも一部を加水分解させることができる。その結果により生成される前記反応サイトが形成されたZIF-8有機金属フレームの形成比率は、反応サイトが形成されたZIF-8有機金属フレーム/反応サイトが形成されていないZIF-8有機金属フレームが0.05~1.0の重量比で形成されてもよい。または、反応サイトが形成されたZIF-8有機金属フレーム/反応サイトが形成されていないZIF-8有機金属フレームが0.05~0.9の重量比で形成されてもよい。または、反応サイトが形成されたZIF-8有機金属フレーム/反応サイトが形成されていないZIF-8有機金属フレームが0.05~0.69の重量比で形成されてもよい。反応サイトが形成されたZIF-8有機金属フレーム/反応サイトが形成されていないZIF-8有機金属フレームの比率が0.05未満である場合、環化付加反応に対する触媒活性が十分でない場合がある。
【0038】
前記第1反応サイトおよび第2反応サイトの少なくともいずれか一つは、二酸化炭素とエポキシド系化合物の環化付加反応を促進して、炭酸塩を効率的に形成させるものであってもよい。前記第1反応サイトは、前記環化付加反応でルイス酸およびルイス塩基として同時に作用することができる。具体的には、前記第1反応サイトで、Zn部分はルイス酸として作用することができ、OH部分はルイス塩基として作用することができる。
【0039】
前記水分子は、前記ZIF系有機金属フレーム触媒複合体に対して、0.005~0.35の重量比で含まれてもよい。前記水分子は、前記ZIF系有機金属フレームの気孔構造内に存在してもよい。したがって、前記範囲は、前記水分子が前記ZIF系有機金属フレームにあるN-Zn-N結合の解離を引き起こすことができる最小量で存在するか、前記ZIF系有機金属フレームの内部に存在することができる最大量で存在してもよい。
【0040】
この時、前記ZIF-8有機金属フレーム内に存在する前記水分子の含量が高いほど、炭酸塩の収率が増加することができる。前記水分子の含量が高いほど、前記ZIF-8有機金属フレームのN-Zn-N結合をたくさん解離させることができて、触媒活性が高くなることができる。例えば、前記水分子の含量が8wt%、4.2wt%、2.1wt%、0.5wt%および0.1wt%に減少するほど、それぞれに対する前記炭酸塩の収率は20.5%、9.9%、4.5%、2.6%および1.38%に減少することができる。
【0041】
前記ZIF-8有機金属フレームによって促進される環化付加反応の結果として、前記炭酸塩の収率は、下記式3によって計算され得る。
【0042】
【数3】
前記式3による炭酸塩の収率は、20%~99%であってもよい。また前記式3による炭酸塩の収率は、40%~60%であってもよい。
【0043】
前記環化付加反応で、前記エポキシド系化合物は、エポキシド構造を含むものであれば、制限されることなく使用可能である。例えば、前記エポキシド系化合物は、エピクロロヒドリン(epichlorohydrin)、エチレンオキシド(ethylene oxide)、スチレンオキシド(styrene oxide)およびプロピレンオキシド(propylene oxide)の少なくともいずれか一つであってもよい。
【0044】
また、前記環化付加反応において、前記炭酸塩は用いられるエポキシド系化合物の種類によって形成されることができる。例えば、前記炭酸塩は、環状炭酸塩であってもよい。また、例えば前記環状炭酸塩は、クロロプロペンカボネート(chloropropene carbonate)、エチレンカボネート(ethylene carbonate)、スチレンカボネート(styrene carbonate)およびプロピレンカボネート(propylene carbonate)の少なくともいずれか一つであってもよい。
【0045】
前記ZIF-8有機金属フレームは、BET表面積が1300m/g~1600m/gであってもよい。
【0046】
前記ZIF-8有機金属フレーム触媒複合体の少なくとも一部は、X線光電子分光(XPS)分析において、Zn-OHの形成を示す結合エネルギーに対するピークが1022.3eV~1022.5eVで第1ピーク、531.8eV~520eVで第2ピークを示すものであってもよい。
【0047】
また、前記ZIF-8有機金属フレーム触媒複合体は、X線光電子分光(XPS)分析において、Zn-Nの結合エネルギーを示す前記ZIF-8有機金属フレームのXPSピーク面積に対して、前記反応サイトを含むZIF-8有機金属フレームのXPSピーク面積の比は、0.4~0.8であってもよい。
【0048】
本発明の他の側面によれば、本発明の実施形態は、上述した特徴の少なくともいずれか一つを含むZIF-8有機金属フレーム触媒複合体を利用した二酸化炭素変換方法であって、前記ZIF-8有機金属フレーム触媒複合体を含む物質およびエポキシド系化合物をオートクレーブに入れるステップ;前記オートクレーブ内に二酸化炭素を供給するステップ;前記オートクレーブの内部を加熱して、前記ZIF-8有機金属フレーム触媒複合体を含む物質、エポキシド系化合物、および二酸化炭素を反応させて生成物を収得するステップ;および前記生成物を急冷して炭酸塩を収得するステップ;を含む、ZIF-8有機金属フレーム触媒複合体を利用した二酸化炭素変換方法を含むことができる。
【0049】
前記オートクレーブの内部は40℃~200℃に加熱されてもよい。または、前記オートクレーブの内部は、60℃~80℃に加熱されてもよい。前記オートクレーブの内部の加熱温度が40℃未満の場合、温度が低すぎて、二酸化炭素とエポキシド系化合物の反応が適切に発生しないことがある。また、前記オートクレーブの内部の加熱温度が200℃を超える場合、化合物が熱分解されて、所望の反応が発生しないことがある。
【0050】
前記オートクレーブに供給される二酸化炭素は、前記エポキシド系化合物と反応して、炭酸塩を形成するのに利用されることができる。前記二酸化炭素は、1bar~30barの圧力になるまで供給されてもよい。また、前記二酸化炭素は、7bar~9barの圧力になるまで供給されてもよい。前記オートクレーブ内で、前記二酸化炭素の圧力は反応が行われる間に保持されてもよい。前記二酸化炭素の圧力が1bar未満の場合、二酸化炭素の量が少なくて、環化付加反応が適切に発生しないことがある。また、前記二酸化炭素の圧力が30barを超える場合、副反応が発生して、炭酸塩の収率が低下する可能性がある。
【0051】
前記炭酸塩の収率は、下記式4によって計算され得る。
【0052】
【数4】
また、前記炭酸塩の収率は、エポキシド系化合物の変換率で炭酸塩の選択性を掛けて計算することができる。ここで、前記炭酸塩の選択性は、副反応産物なしに100%に計算されることができる。この時、エポキシド系化合物の変換率(%)は、式5によって計算され得る。
【0053】
【数5】
前記式4によって計算される炭酸塩の収率は、反応物である二酸化炭素およびエポキシド系化合物の少なくともいずれか一つが全部消耗されるまで反応して得られる炭酸塩の比率であり得る。したがって、前記炭酸塩の収率は、二酸化炭素およびエポキシド系化合物が全部充分に存在する場合、100%になり得る。前記式4によって計算される炭酸塩の収率は、20%~99%であってもよい。また、前記式4によって計算される炭酸塩を収率は、40%~60%であってもよい。
【0054】
以下、本発明の実施例および比較例を記載する。しかしながら、下記実施例は本発明の好ましい一実施例に過ぎず、本発明の権利範囲が下記実施例によって制限されるのではない。
【0055】
本明細書および図面における用語は次の通りである。ZIF-8は、通常ZIF-8およびここで用いられた全てのZIF-8の種類を含む概念であり得る。ZIF-8Wは、ZIF-8の合成時に、水を溶媒として用いて合成されたものを意味し得る。ZIF-8W_Sは、ZIF-8Wを触媒として利用した後の状態を意味し得る。新鮮なZIF-8Wは、合成された直後の状態で水によるZn-Nの分解反応が行われる前の状態を意味し得る。ZIF-8Mは、合成時にメタノールを溶媒として用いて合成されたものを意味し得る。ZIF-8Cは、常用製品を意味してもよい。DPは、ZIF-8で生成される新しい濃密構造(dense phase)を意味し得る。ZIF-8W_Txは、新鮮なZIF-8Wで水を除去したものを意味し得る。xは、水を除去するために熱処理した時間を意味し得る。この他にも下記説明で図面に用いられた用語が定義され得る。
【0056】
下記の実施例および実験例で用いられた全ての化学物質は、追加精製なしにそのまま用いた。
【0057】
[製造例]
ZIF-8の構造内部に水を含むZIF-8を合成するために、亜鉛前駆体(zinc precursor)と2-メチルイミダゾール(2-methylimidazole)水溶液をそれぞれ用意した。亜鉛前駆体溶液は、窒酸亜鉛(Zn(NO・6HO、98%、シグマアルドリッチ(Sigma-Aldrich);製品番号:228737)1.7gを18mLのDI水に溶解して用意した。2-メチルイミダゾール溶液は、2-メチルイミダゾール(22.7g、99%、シグマアルドリッチ(Sigma-Aldrich);製品番号:m50850)を70mLのDI水に溶解して製造した。その次、亜鉛前駆体溶液を2-メチルイミダゾール溶液に添加した。この混合物を室温で約20分の間撹拌しながら反応させた。その後、遠心分離、傾斜分離およびDI水で3回洗浄するサイクルを実行し、最後に、70℃で、少なくとも12時間乾燥させて、固体生成物を回収した。
【0058】
[実施例]
製造例の合成方法で水分子を含むZIF-8であるZIF-8Wを合成した。
【0059】
[比較例]
1.熱処理されたZIF-8Wの製造
新鮮なZIF-8W以外にも合成されたZIF-8Wを多様な時間(6、12、18、24時間)で、100℃で熱処理して、熱処理されたZIF-8Wを得た。便宜上、熱処理されたZIF-8Wは、ZIF-W_Tyで表示され、ここで、yは熱処理持続時間(h)を示す。
【0060】
【表1】
2.ZIF-8M合成
ZIF-8の構造内部にメタノールが含まれたZIF-8Mを合成するために、亜鉛前駆体および2-メチルイミダゾール溶液をそれぞれ用意した。窒酸亜鉛(2.93g、9.87mmol)および2-メチルイミダゾール(6.49g、79.0mmol)をそれぞれメタノール(99.8%、シグマアルドリッチ(Sigma-Aldrich);製品番号:322415)200mLに溶解させた。この2つの溶液を混合し、室温で約2時間撹拌しながら反応されるようにした。その後、遠心分離、傾斜分離およびメタノールで3回洗浄し、最後に、70℃で、少なくとも12時間乾燥させて固体生成物を回収した。
【0061】
3.ZIF-8Cは商業的に販売するZIF-8を購入して用いた。
【0062】
4.DP(濃密構造)合成
ZIF-8相以外に、ZIF-8Wの反応を比較するために、DP(濃密構造)が合成された。このために、窒酸亜鉛(2.1g、7.06mmol)および2-メチルイミダゾール(0.6g、7.21mmol)をジメチルホルムアミド(DMF、99%、シグマアルドリッチ(Sigma-Aldrich);製品番号:227056)180mLに溶解させた。この混合物に、100mLのDI水を添加した。この混合物はほぼ室温に到逹するまで撹拌した後、テフロン(登録商標)ライナー(Teflon liner)に移した。密封されたテフロン(登録商標)ラインされたオートクレーブ(Teflon-lined autoclave)を回転しながら(約60rpm)、140℃で、約一日中反応させた。その後、水道水を用いて反応を急冷(クエンチング
、quenching)した。遠心分離、傾斜分離およびDMFで3回洗浄するサイクルを経て生成物を回収し、最後に、70℃で、少なくとも12時間乾燥させて、生成された固体生成物を回収した。便宜上、回収された生成物をDPと命名し、これは濃密構造(dense phase)を有するものを指す。
【0063】
[実験方法]
1.CO環化付加反応実行
ZIF-8触媒に対するCO環化付加反応は、特別に製作されたテフロン(登録商標)-ラインされたステンレス-スチールオートクレーブ(Teflon-lined stainless-steel autoclave、Teflon-linerの内部体積:250mL)で実行された。ZIF-8(0.72g)およびエピクロロヒドリン(ECH、epichlorohydrin、10mL、99%、シグマアルドリッチ(Sigma-Aldrich);製品番号:45340)をテフロン(登録商標)ライナーに入れた。その後、反応物と触媒を含むテフロン(登録商標)ライナーをオートクレーブの中に位置させた。その次に、COガスを7barの圧力に到逹するまでオートクレーブに満たし、反応器を電気加熱ジャケット(electric heating jacket)を利用して所望の反応温度(70℃)まで加熱した。一貫性のために、反応時間は、反応器の温度が反応温度に到逹した後に測定され、反応は約4時間行われた。指定した時間が経つと、反応を水道水で急冷(quenching)した。その後、残留ガスを放出させ、用いられた触媒と液体生成物をそれぞれ遠心分離した。用いられたZIF-8触媒は、遠心分離、傾斜分離およびDI水で3回洗浄するサイクルを実行し、70℃で、少なくとも12時間乾燥して回収された。便宜のために、用いられた(spent)触媒は、ZIF-8x_Sで表示し、ここで、xは、新鮮な触媒(ZIF-8x)に対応することから、M、WまたはCを示し、Sは用いられた(spent)触媒を示す。得られた液体生成物は、火炎イオン化検出器(flame ionization detector)およびキャピラリーカラム(capillary column、DB-5、30×0.25mm、Agilent)が装備されたガスクロマトグラフ(YL6500、Young In Chromass、South Korea)を利用して分析した。トルエンは、触媒活性の正確な測定を保障するために、内部標準として用いられた。クロロプロペンカボネート(CC、chloropropene carbonate)は、ECHの変換率にCCの選択性を掛けて測定された。CCの選択性は液相-および気体相-生成物で全部クロロ-1,2-プロパンジオール(ジオール、chloro-1,2-propanediol)および2,5-ビス(クロロメチル)-1,4-ジオキサン(二量体、2,5-bis(chloromethyl)-1,4-dioxane)を含んで、他の生成物がないので、100%に仮定された。下記式6は、クロロプロペンカボネートの収率を計算するのに用いられた式で、他の炭酸塩にも同様に適用されることができる。また、式7は、エピクロロヒドリンの変換率を計算するのに利用され、他のエポキシド系化合物にも同様に適用されることができる。
【0064】
【数6】
【数7】
【0065】
上記のCO環化付加反応条件(標準条件)以外にもZIF-8W場合には、反応時間と触媒の重量を異ならせた実験が追加的に行われた。具体的には、0.72gのZIF-8Wで実行した反応は、反応持続時間を1、2、3、6、10および16時間にそれぞれ設定して実行し、ZIF-8Wの重量は、反応時間を4時間にして、1gから0.54gまで0.18gずつ増加させながら多様にした。また、標準条件で触媒の総質量が0.72であるZIF-8WおよびDPの混合物は、ZIF-8/DP混合物の重量(g)比率が0/0.72、0.18/0.54、0.36/0.36、0.54/0.18に設定して実行された。最後に、完全に乾燥されたZIF-8W(すなわち、ZIF-8W_T24)の反応は、水を含む反応条件で実行され、ここで、ZIF-8W_T24(0.72g)に添加された水の比率は、触媒の8wt%(合成されたZIF-8Wに吸収された水と同一)、20wt%、および40wt%であった。また、便宜上、水を含む反応条件(8wt%)で用いられたZIF-8W_T24は、ZIF-8W_T24_S_Hに示し、ここで、文字Hは、高湿度反応条件(humid reaction condition)を示すために付けたのである。
【0066】
2.特性分析
ZIF-8の構造を確認するために、RINT2000垂直角度計(40kV、100mAおよびλ=1.54Å)が装着されたリガクモデル(Rigaku model)D/MAX-2500V/PC(日本)を利用して、ZIF-8サンプルのX-線回折パターンを得た。ZIF-8に対する結晶学的情報ファイル(CIF、crystallographic information file)は、ケンブリッジ結晶学データセンターウェブサイト(Cambridge Crystallographic Data Centre website、CCDC、www.ccdc.cam.ac.uk:受託番号602542)でダウンロードし、シミュレーションされたZIF-8のXRDパターンを生成するためのmercuryソフトウェア(CCDCウェブサイトでも利用可能)を利用した。信頼できるXRD分析のために、α-アルミナパウダーとZIF-8xまたはZIF-8x_S(x=W、MおよびC)を同一重量比(w/w=1)で物理的に混合した内部標準として利用した。また、XRD分析は、反応時間関数として可能な活性成分の比率を評価するのに利用された。まず、α-アルミナパウダーと多様な重量比(0.1、0.5および1)で混合された純粋なZIF-8またはDP粒子のXRDパターンが得られた。その次に、サンプルの重量比とピーク面積比率との間の良い線形相関関係が校正曲線で提供されて、ZIF-8およびDPの両方で得られた。その後、中間誘導体の比率または相(ZIF-8、DPの2つともない)は、100%のZIF-8およびDPの比率を追跡して間接的に測定することができた。
【0067】
日立(Hitachi)S-4800電界放出走査電子顕微鏡(SEM、日本)およびFEI Tecnai G F30ST電界-放出透過電子顕微鏡(TEM、USA)は、ZIF-8xおよびZIF-8x_S(x=W、MおよびC)のSEMおよびTEMイメージをそれぞれ得るのに用いられた。ZIF-8x、ZIF-8x_S(x=W、MおよびC)および例のN吸脱着等温線は、ASAP 2020(Micromeritics Inc.,USA)を利用して、77Kで得られ、測定に先立って全てのサンプルは真空下で約4時間80℃で脱気された。その後、このような等温線は、ブルナウアー‐エメット‐テラー(Brunauer-Emmett-Teller、BET)等式によって特定表面積を計算し、Horvαth-Kawazoe(H-K)およびBarrett-Joyner-Halenda(BJH)方法を利用して、マイクロ細孔およびメソ細孔の大きさ分布を計算するのにそれぞれ利用された。熱重量分析(TGA)は、Q50機器(TA Instruments、USA)を利用して、ZIF-8Wで水の含量を測定するために実行された。TGAで、パウダーサンプルは、100mL・min-1の流れを有する窒素下で、5℃・min-1のランプ速度で室温から加熱された。ZIF-8相の水吸収過程が可逆的であるのか非可逆的であるのかを確認するために、我々は、完全に乾燥されたZIF-8W(ZIF-8W_T24)を利用して、2種類の実験(液体および気体状態の水に対する実験)を行った。まず、液体状態の水吸収に対して、我々は、水に対するZIF-8の重量比を0.1に保持しながら、1日中、25℃で、ZIF-8W_T24を水に浸漬させた。水に浸漬されたZIF-8W_T24(ZIF-8W_T24_Imで表示し、ここで、Imは、水に浸った(water immersion)ことを示す)は、遠心分離して、少なくとも12時間、70℃で乾燥されて収集され、合成されたZIF-8x(x=Wおよびm)に適用された過程を同一に実行した。TGAは、この浸漬されたZIF-8W-T24に対して実行された。また、我々は、70℃で、ZIF-8W_T24(またZIF-8MおよびZIF-8C)の水分吸着等温線を測定し、これは、蒸着吸着分析機(DVS Vacuum、Surfacemeasurement System、UK)を利用して、反応温度を同一にしたのである。
【0068】
また、ZIF-8x、ZIF-8x_S(x=W、MおよびC)およびDP酸-塩基度(acido-basicity)を評価するために、多様なプローブ分子(塩基性COおよび酸性NH)に対するTPD分析(temperature-programmed desorption analysis)は、BELCAT II(MicrotracBEL Corp.,日本)を利用して実行された。TPD測定に先立って、ZIF-8x、ZIF-8x_S(x=W、MおよびC)、および例えば吸収された分子を除去するために、ヘリウム気流下で1時間300℃で加熱され、その次、0℃で、COまたはNHの気流に1時間露出された。十分な吸着が行われた後、サンプルは、30mL・min-1のヘリウム気流下で10℃・min-1のランピング速度で0℃から300℃まで加熱された。加熱される間に脱着された分子は、熱伝導度検出器(TCD、thermal conductivity detector)を利用してオンラインで検出された。
【0069】
ZIF-8x、ZIF-8x_S(x=W、MおよびC)およびDPの化学的組成は、フーリエ変換赤外線(FT-IR、Fourier transform infrared)分光法を実行し、これは、NicoletTM iS50 FT-IR spectrometer (Thermo ScientificTM、USA)を利用して実行した。特に、KBrとともに、サンプル混合物を圧着して製造されたZIF-8W、ZIF-8W_S、DPおよび2-メチルイミダゾール(2-methylimidazole)ペレットを両面にKBr窓が具備された特殊製作されたin-situセルに入れた。ZIF-8が蒸着されたKBrペレットは、真空下で、約120分間、150℃で熱的に処理され、続いて室温まで冷却された。最後に、ZIF-8x、ZIF-8x-S(x=W、MおよびC)およびDPだけでなく、NHが吸着されたZIF-8x、ZIF-8x-S(x=W、MおよびC)およびDPに対する化学的組成も減衰全反射(ATR、attenuated total reflection)モードを利用して照射された。NH吸着されたサンプルのFT-IR分析のために、サンプルは、BELCATIIを利用して用意した。サンプルは、吸着された分子を除去するために、ヘリウム気流下で、1時間、150℃で加熱され、続いて、30℃で、NH気流に1時間露出された。十分な吸着後に、NH吸着されたサンプルは、30mL・min-1のヘリウム気流下で10℃・min-1のランピング速度で、30℃からx℃まで加熱された((1)ZIF-8W、ZIF-8W_S、およびDPに対して、x=50、100、および150℃、(2)ZIF-8M_SおよびZIF-8C_Sに対して、x=50℃)。このような吸着過程は、NHの量を多様にして実行された。最後に、X-線光電子分光法(XPS、X-ray photoelectron spectroscopy)およびオージェ電子分光法(XAES、X-ray excited Auger electron spectroscopy)は、ZIF-8x、ZIF-8x-S(x=W、MおよびC)およびDPにあるZn、NおよびOの種を検出するために、単色Al Kα X-線ソース(hν=1486.6eV、15kV、および24.1W)が装着されたX-tool(Ulvac-PHI、日本)を利用して実行された。測定された全ての結合エネルギーは、284.5eVで、C 1sピークに対して参照された。FT-IRおよびXPXスペクトルの安定的なデコンボリューション(deconvolution)のために、Magic Plots Student2.5.1のソフトウェアが用いられた。
【0070】
[実験結果]
1.ZIF-8の特性分析
(1)ZIF-8の水吸着特性
図2で、(a)は、ZIF-8WおよびZIF-8W_T24_ImのTGAプロファイルを示し、(b)は、70℃で、ZIF-8W_T24およびZIF-8x(x=MおよびC)の水蒸気吸着等温線を示す。図2(b)で点線箱の中の領域は拡大して挿入されて表示され、比較のために、ZIF-8Wに閉塞された水の量は、y軸の5の下で点線で表示された。1日中水に浸漬されたZIF-8W_T24(ZIF-8W_T2_Im)のTGAプロファイルは、無視できる水吸着特性を見せた(図2(a))。また、70℃で、ZIF-8W_T24の水吸着等温線は、非常に低いHO吸着容量を示し(図2(b))、これは、従来報告された内容と一致する。このような結果は、追後説明されるように、合成されたZIF-8Wに閉塞された水分子がCO環化付加反応のための活性サイトを生成させるにあたって重要であり、完全に乾燥されたZIF-8には、中間圧力で水分子が吸着されることができないからであるというCO環化付加反応のための活性サイトを形成できないということを力強く裏付ける。
【0071】
(2)ZIF-8の機械的組職特性(textural properties)
図3の(a)および(b)は、それぞれ80℃および200℃で4時間脱気されたZIF-8WおよびZIF-8MのN物理吸着等温線を示す。表2はN物理吸着量およびこれに相応するBET表面積を示す。表2で、物理吸着等温線データは、ブルナウアー‐エメット‐テラーの式(Brunauer-Emmett-Teller equation)を利用して計算された。3種類のZFI-8がN物理吸着のために、80℃で脱気され、ZIF-8W内部に閉塞された水分子は、脱気された後にもある程度残っていた。それにもかかわらず、ZIF-8Wの固有の変化段階が観察された。環化付加反応における反応温度(70℃)と類似する脱気温度は、従来のより高い脱気温度のため組職特性の好ましくない多様化を避ける一方、反応の前と後にZIF-8の組職特性の変化(特に、固有の段階変化)を調査するのに適用された。ZIF-8WおよびZIF-8Mが全部より高い温度(80℃ではない200℃で)で脱気された時、これらのN物理吸着量およびこれに相応するBET表面積は互いに類似し、これは、ZIF-8Wで水分子が完全に除去されたことを指す。
【0072】
【表2】
(3)ZIF-8およびDPの外部表面での化学種分析図4は、ZIF-8W、ZIF-8W-SおよびDPに対するXPS分析結果を示したのである。図4で、各化合物に対して、(a1)-(a3)はN 1s、(b1)-(b3)はZn 2p3/2、および(c1)-(c3)はO 1sのXPSスペクトルを示す。これに対して、(a1)-(c1)はZIF-8W、(a2)-(c2)はZIF-8W_S、および(a3)-(c3)はそれぞれデコンボリューションされた曲線を有するDPに対することを示す。比較のために、デコンボリューションされた曲線を合算した曲線は、「SUM」で表示された。適切なフィッティングを見せるために、当該残留プロットは実験的に得られたXPSスペクトルの下に表示された。残留プロットに対して、正規化された残差(R)はデコンボリューションされた曲線から合算した強度で実験的に測定されたXPSスペクトルを引き、実験的に測定したXPSスペクトルの値でさらに割って計算した。図5は、ZIF-8xおよびZIF-8x_S(x=W、MおよびC)の(a)N 1sおよび(b)Zn 2p XPSスペクトルを示す。比較のために、DPに対する結果を下に追加した。図6は、(a)新鮮なZIF-8xおよび(b)使用済みZIF-8x_S(x=W、MおよびC)に対して、Zn LMMのXAES分光を示す。図6で、比較のために、DPに対するZn LMMのオージェ電子分光法(Auger electron spectra)は、下に追加され、ZnおよびZn2+に対応するピークは点線で表示された。
【0073】
図4(b1)-(b3)および図5(b)には、ZIF-8x(x=W、MおよびC)およびDPの3種類でのXPS結果を示し、図6で、Zn金属の存在を当該XAESによってさらに裏付けた。
【0074】
また、Zn金属は、以前の研究でintact ZIF-8に対するXPSおよびXAES分析によって非常に少ない含量で存在することが明かされた。合成過程で若干の金属Zn種(Zn species)が2-メチルイミダゾール(2-methylimidazole)によって供給される正電荷の助けで形成されることができても、ZnOの存在は手軽い酸化を暗示する。次に、ZnO単結晶(純度99.99%)がある程度のZn金属を示すことを考慮して、我々は、周辺条件に不可避的に露出されて表面に形成され得るZnO部分がXPS測定を準備する間にZn金属を減少させる可能性があると仮定した。それにもかかわらず、4つの全てのサンプルで金属Zn種およびZnOの比率は、新鮮および使用済み形態にかかわらず、ほぼ同じであった。したがって、金属ZnとZnOともCO環化付加反応の触媒的な活性に寄与するのではないと考えられる。
【0075】
2.環化付加反応の前/後のZIF-8の特性
図7~9は、ZIF-8の特性を分析したことを示す図面である。
【0076】
図7で、(a)は多様な反応時間(挿入図面)でZIF-8WのCC収率によって二酸化炭素環化付加反応を4時間実行した場合に、ZIF-8x(x=W、MおよびC)のCC収率を示す。(b)はZIF-8xで窒素の外部表面組成を示す。(c1)-(c2)はZIF-8WのSEMイメージを示し、(c1)は低倍率、(c2)は高倍率イメージである。(c3)はZIF-8WのTEMイメージである。(d1)-(d2)はZIF-8W_SのSEMイメージを示し、(d1)は低倍率、(d2)は高倍率イメージである。(d3)はZIF-8W_SのTEMイメージである。(e)はZIF-8W、ZIF-8W_Sおよび濃密相(DP)粒子によってシミュレーションされたZIF-8のXRDパターンを示し、比較のために、ZIF-8またはDPで最も高いピークは、XRDパターンを正規化した後に利用した。(a)の挿入図面で、点線はこの反応条件下で最大収率(55.6%)を示す。理解のために、2-メチルイミダゾール(2-methylimidazole)の模式図を(b)の上側角に追加した。明確性のために、(c1)-(c3)および(d1)-(d3)でイメージに対する説明が提供された。(c1)-(d1)で、点線四角形は、それぞれ(c2)-(d2)で高倍率SEMイメージ領域を指す。(d1)-(d2)で尻尾の長い矢印は、ZIF-8W_Sで新しく現われる粒子を指す。(c3)-(d3)のTEMイメージの中の点線四角形は、反応後形態的変化を強調する。(e)で尻尾付き矢印は、新しく形成されたXRDピークを示し、逆三角形の表示は、内部標準として利用されたα-アルミナのXRDピークを指す。(e)で、ZIF-8WおよびZIF-8W_Sの場合、α-アルミナに対する相対的なZIF-8(A/Aαで示す)の比率は、それぞれZIF-8とα-アルミナに対応する7.3゜および35.1゜のXRDピーク領域を利用して得られた。
【0077】
図8で、(a1)-(b1)はZIF-8M、(a2)-(b2)はZIF-8M_Sに対するSEMイメージであり、(a1)-(a2)は低倍率および(b1)-(b2)は高倍率イメージを示す。(c1)はZIF-8M、(c2)はZIF-8M_Sに対するTEMイメージを示す。(d)はシミュレーションされたZIF-8のXRDパターンによるZIF-8MおよびZIF-8M_SのXRDパターンを示す。(d)で逆三角形の表示は、内部標準として利用されたα-アルミナを示す。
【0078】
図9で、(a1)-(b1)はZIF-8C、(a2)-(b2)はZIF-8C_Sに対するSEMイメージであり、(a1)-(a2)は低倍率および(b1)-(b2)は高倍率イメージを示す。(c1)はZIF-8C、(c2)はZIF-8C_Sに対するTEMイメージを示す。(d)はシミュレーションされたZIF-8のXRDパターンによるZIF-8CおよびZIF-8C_SのXRDパターンを示す。(d)で逆三角形の表示は、内部標準として利用されたα-アルミナを示す。
【0079】
図10は、各触媒粒子の粒径の分布を示す。各触媒粒子に対して、新鮮(斜線の棒)および使用済み(黒塗りの棒)の状態に対して、(a)ZIF-8W、(b)ZIF-8Mおよび(c)ZIF-8Cの大きさの分布を示す。大きさの測定は3種類のZIF-8それぞれに対して100個の粒子を測定し、長さの最も長いものは除いた。一貫性のために、ZIF-8W_Sで大きすぎる粒子(すなわち、新たに形成された粒子)は測定しなかった。
【0080】
図11は、ZIF-8WおよびZIF-8W_Sに対するSEMイメージを示す。(a1)-(a3)はZIF-8Wに対するものであり、(b1)-(b3)はZIF-8W_Sに対するものであり、(a1)-(b1)は低倍率、(a2)-(b2)は高倍率イメージである。(a2)-(b2)および(a3)-(b3)のイメージは、それぞれ(a1)-(a2)および(b1)-(b2)での点線四角形部分を拡大したのである。
【0081】
図12は、ZIF-8のシミュレーションXRDパターンによるZIF-8W、ZIF-8W_SおよびDPのXRDパターンである。図12で、ZIF-8WおよびZIF-8W_Sに対するXRDパターンは、ここで正規化された強度を除いては、図7(e)と同一である。ここで正規化された強度は、ZIF-8-WおよびZIF-8W_SのXRDピークが35.1゜のα-アルミナピークに対して正規化されたのである。三角形表示は、内部標準として利用されたα-アルミナに対するXRDピークを示す。
【0082】
ZIF-8フレームワークの中に完全に統合された場合、ZnまたはN原子は飽和されて、触媒的活性を示さないと思われた。しかしながら、3種類のZIF-8x(x=W、MおよびC)の間の特性を示す図7(a)で、ZIF-8Wのみが4時間反応した後に20.3%ほど高いCC収率を示しながら、ECHとCOの環化付加反応に目立つ触媒特性を見せた。驚くべきことに、他の2種類のZIF-8(ZIF-8MおよびZIF-8C)は、CCの収率がそれぞれ1.2%と1.5%に現われて、触媒的特性が少し現われるか現われなかった。また、ZIF-8WのCC収率は、反応時間の増加によって緩く増加し、反応時間16時間後には、55.4%の最大収率に達した(図7(a)挿入図面)。従来の研究で、触媒活性はZIF-8構造の表面に存在する配位的に不飽和されたZnまたは結合しないN種が主に寄与して来た。これによれば、XPS分析は、ZIF-8x(x=W、MおよびC)の表面における解離されたZnまたはN種を確認するために実行された(図7(b))。特に、3種類の新鮮なZIF-8触媒でZnおよびN種の寄与度は類似し、物理化学的特性の変化がある場合、CO環化付加反応をする間に発生したということを示唆する。
【0083】
3種類のZIF-8の表面における化学種の類似の特性と分布を考慮して、我々は、目立つ差を見つけるために、触媒の他の物理化学的特性を調査した。ZIF-8M(図8(a1)-(c1)および(d))の形態/大きさおよび結晶構造は、以前の研究で報告されたのと類似するが、商業的に利用可能なZIF-8Cは同じ物理化学的特性を有した(図9(a1)-(c1)および(d))。また、目立つ触媒性能を見せる(図7(a))ZIF-8Wの形態/大きさは、従来の研究で報告されたのと類似した(図7(c1)-(c2))。SEM解像度で感知されるZIF-8Wの見掛けにおける角をなした形態(図7(c2))を確認するために、TEM分析が追加的に実行された。図7(c3)で、点線四角形は、ZIF-8Wの角をなした形態を明確に示す。最後に、ZIF-8x(x=W、MおよびC)の粒子の粒径は、それぞれ、65±15nm、40±6nm、および206±68nmに測定された(図10)。また、XRD分析は、ZIF-8Wの純粋なZIF-8結晶構造を示す(図7e)。3種類のZIF-8x(x=W.mおよびC)全部TEM結果で見せるいくつかの他の微視的特徴(例えば、ZIF-8Mでさらに定義された面(図8(c1))とは関係なく、ZIF-8Mの結晶度の高い無欠性を有することに示した。今回の研究で、我々は、COのECHに対する環化付加反応は、主にZIF-8の外部表面で優先的に発生するはずであり、前述した粒子の粒径および同時に決まる外部表面積を有する3種類のZIF-8x(x=W、MおよびC)は、それらの物理化学的特性のある注目すべき差に基づいて、ZIF-8の固有の触媒活性を理解するための種は例示になり得る。ZIF-8Wの大きさおよび結晶度がZIF-8Mのそれよりも大きいか類似することを考慮すると、他の物理化学的特性がZIF-8Wの目立つ触媒的活性を説明するのに核心となるはずである。各触媒に対する表面積は表3に整理した。表3で、a(SBET)はブルナウアー‐エメット‐テラーの式(Brunauer-Emmett-Teller equation)を利用して、N物理吸着等温線データから計算され、b(Sexternal)は、改良されたt-プロット方法(t-plotmethod)を利用して計算され、c(Sinternal)は式8を利用して計算された。
【0084】
【表3】
【0085】
【数8】
また、我々は、ZIF-8Wの特性がCO環化付加反応をする間に変更されるか否かを確認するために、使用済みZIF-8W(ZIF-8W_Sで表示)の特性を特性化した(図7(d1)-(d3)および (e))。比較のために、ZIF-8M_SおよびZIF-8C_Sの特性も調査した(図8(a2)-(c2)、(d)および図9(a2)-(c2)、(d))。ZIF-8W_Sは新しく形成された粒子(図7(d1)-(d2)で矢印で表示)で、新鮮なZIF-8Wと比較して異なる形態を有する。図11で異なる倍率でのZIF-8WおよびZIF-8W_SのSEMイメージは、新しく形成された粒子(2μm粒径)のみを含むZIF-8W_Sを明確に明かし、これは元々のZIF-8W粒子のそれよりも遥かに大きかった。また、XRD分析は、新しく形成された粒子が異なる結晶構造(図7(e)に尻尾付き矢印で表示)で、ZIF-8構造から逸脱することを示す。また、我々は、厳格な分析のための内部標準として用いられたα-アルミナのXRDピーク強度(図7(e)に逆三角形で表示)がZIF-8Wのそれと比べて増加したことを認識した。よって、反応後の粒子の総重量の変化がないことを考慮して、α-アルミナ(2θ=35.1゜)に対するZIF-8(2θ=7.3゜)のXRDピークの比率が減少したのは、ZIF-8W_Sで元々ZIF-8Wの比率が減少したことを証明する。より良い実証のために、ZIF-8WおよびZIF-8W_SのXRDパターンは、α-アルミナピークによって正規化し(図12)、これは反応後にZIF-8の減少された比率を明確に裏付け、したがって、元々の結晶度の減少程度を裏付ける。したがって新しい相は、CO環化付加反応後に新鮮なZIF-8Wから由来されたことを示す。また、ZIF-8W_Sで新しく形成された相(phase)だけでなく、SEMイメージは、ZIF-8W_SでCO環化付加反応後にZIF-8Wに若干の形態的変化があることを示す(図7(d2)で尻尾が短い矢印で示す)。また、SEM技術は、CO環化付加反応以後に新しく形成された粒子(図7(c1)-(d1)および図11)での存在を明らかにするだけでなく、TEM分析で、ZIF-8W_Sの丸い表面を明確に見せる(図7(d3)で点線四角形で表示される)。ZIF-8WおよびZIF-8W_Sの間には差があっても、ZIF-8xおよびZIF-8x_S(x=MおよびC)は互いに類似した(図8、9)。また、ZIF-8x_S(x=W、MおよびC)の粒径は大きすぎる粒子を含むZIF-8W_S(すなわち、上記で言及した新しく形成された粒子)を除いては、新鮮な物質のそれと類似した(図10)。
【0086】
従来文献によれば、ZIF-8構造は、COおよび水蒸気の存在下で変形される可能性があると報告され、今回の研究でも類似した変形が発生した。水がCO環化付加反応に利用されないことを考慮すると、ZIF-8Wの変形は、その固有の特性のために発生するのである。特に、ZIF-8MおよびZIF-8Cと比較した時、ただZIF-8Wのみが気孔構造内部に溶媒(すなわち水)を含有した。これを確認するために、我々は、3種類のZIF-8に対してTGAおよびFT-IR分析を実行した(図13)。FT-IR分光はZIF-8Wでヒドロキシル基の存在を示して、明らかな特徴を見せた(図13(a))。また、TGA(図13(b))は、100℃から200℃まで温度が増加する間に、ZIF-8Wのみで重量の損失が発生することを示した。ZIF-8Wの合成で、水の使用に基づいた推論だけでなく、2つの特性ともZIF-8Wのみが気孔構造内に水分子を含有することを示す。ZIF-8W内に閉塞された水分子がZIF-8構造の変形と関連があると考えられ、活性サイトの付随的な形成は、CO環化付加反応に対するZIF-8Wの目立つ活性を説明することができる。
【0087】
3.CO環化付加反応に対するZIF-8W活性の原因
図14は、ZIF-8Wの触媒的特性を確認するために、ZIF-8Wを熱処理して水分子を除去したり、DPと混合して実験した結果を示す。(a)は、ZIF-8W(黒塗りの棒)、ZIF-8WおよびDPをそれぞれ異なる比率で混合(斜線の棒)した場合のCC収率を示す。この実験で、ZIF-8Wは、それぞれ0、0.18、0.36、0.54および0.72gを利用し、ZIF-8WとDP混合比率は、それぞれ0/0.72、0.18/0.54、0.36/0.36、0.54/0.18および0.72/0gを利用した。(b)は、100℃で、多様な熱処理時間熱処理されたZIF-8WのCC収率と水分含量を示す。(c)は、特定量の水(最大40%)が存在する反応条件で、24時間(ZIF-8W_T24)100℃で熱処理されたZIF-8WのCC収率を示す。図14で、(c)を除いた全ての反応は、以下の反応条件にしたがって実行された。(1)反応物:ECH(epichlorohydrin、10mL)およびCO(7barg)、(2)用いられた触媒の総重量:0.72g、および(3)反応温度および時間:70℃、4時間。(c)で、ZIF-8W_T24(0.72g)に対して、水の所定比率を満すようにするために、反応物に水を添加した。(b)-(c)で、触媒内部の水は、TGAによって決められた。
【0088】
図15は、二酸化炭素環化付加反応に対して触媒活性を有するZIF-8Wの状態を確認するために、ZIF-8WまたはDPをα-アルミナと多様な比率で混合して測定したXRDパターンを示す。(a)は、それぞれ異なる比率(0.1、0.5および1)で混合したDP/α-アルミナおよびZIF-8W/α-アルミナ混合物に対するXRDパターンを示す。(b)は、この混合物の重量比に対する線形回帰(Linear regression)であり、(b1)はDP/α-アルミナ、(b2)はZIF-8W/α-アルミナに対する。(c)はそれぞれ異なる反応時間(1、2、3、4、6、10および16時間)で、CO環化付加反応を実行した後に回収されたZIF-8WのXRDパターンを示す。便宜のために用いられた触媒をZIF-8W_Sxで表示し、ここで、xは1、2、3、4、6、10または16時間で、反応時間を示す。(a)および(c)で、逆三角形表示は、内部標準として用いられたα-アルミナを示す。比較のために、(c)で純粋なZIF-8WおよびDPに対するXRDパターンを含む。
【0089】
図16は、反応後に触媒内のZIF-8およびDPの重量比からZIF-8中間誘導体の重量比を推定したグラフおよび反応時間によるZIF-8中間誘導体の重量比とCC収率を示す。(a)は、それぞれ異なる反応時間(1、2、3、4、6、10および16時間)で反応した後に回収されたZIF-8W_SでZIF-8(黒塗りの棒)、ZIF-8W中間誘導体(推定値、斜線の棒)およびDP(塗りつぶしのない棒)に対する重量比(w/wα)を示す。(b)は反応時間の関数で表示されたZIF-8W_S中のZIF-8中間誘導体(推定値)の重量比およびCC収率(図7(a))に表示)を示す。
【0090】
図17は、熱処理されたZIF-8WのTGA結果を示す。各熱処理時間によってZIF-8W_Txで表示し、ここで、Txは、熱水処理(hydrothermal treatment)をx時間行ったことを示す。熱処理は、100℃で(a)0時間、(b)6時間、(c)12時間、(d)18時間、および(e)24時間実行された。
【0091】
ZIF-8Wの独特の触媒活性を明らかにするための初期試みとして、我々は、ZIF-8Wから新しく形成された粒子の触媒能力を調査した(図14(a))。図7(d1)-(d2)に表示された粒子をシミュレーションするために、先立って言及した新しく現われたXRDピーク(図7(e))で説明することができる濃密相(DP、dense phase)に命名された粒子を合成して利用した。特に、このDPは、従来文献に報告されたと同様であり、DP粒子は、ZIF-8がCOと気体相水を同時に含む環境に露出されたり、ZIF-8が液体相水に浸漬された場合に形成されることができる。説明のために、ZIF-8WおよびDPの重量部分は、体系的に変化させたが、全体重量は0.72gに固定し、このZIF-8x(x=W、MおよびC)の重量は、図7(a)に示した反応を実行するのに利用された。明らかにも、CC収率は同一量のZIF-8Wで反応させた結果とほぼ同一であった。したがって、触媒活性は、DPの量ではないZIF-8Wの量と関係があった。よって、ZIF-8Wが完全に変換されたのと同じDPは、CO環化付加反応に対していずれの触媒活性を説明することができることに現われなかった。したがって、CO環化付加反応でZIF-8Wの触媒活性は、ほとんど中間誘導体と関連がある。ZIF-8WのXRDパターン(図7(e))で推論されるように、DPおよびZIF-8の比率は、反応後にそれぞれ増加および減少するはずである。特に、内部標準としてα-アルミナの使用は定量分析に好ましい。このような接近法を参照して、我々は、反応時間に対する関数として、ZIF-8中間誘導体の比率を測定しようとした(図15)。図16は、CC収率およびZIF-8中間誘導体の比率が反応時間に対する関数と類似する傾向にしたがうことを示す。これは、今回の研究で、ZIF-8中間誘導体の可能な活性成分がCO環化付加反応から由来されたことを示す。
【0092】
ZIF-8Wの触媒活性の原因を明らかにするための次のステップとして、我々は、CO環化付加反応の間にZIF-8Wの変形を調査した。ZIF-8WがCO環化付加反応をする間に、DP粒子の形成を誘導することができることを考慮して、我々は、約100℃で時間を異ならせて熱処理を実行して、ZIF-8W内部に閉塞された水分子の量を減少させた。最終水の量は、TGAプロファイルで100℃および170℃の間の重量変化を考慮して正確に決められた(図17)。便宜のために、熱処理されたZIF-8は、ZIF-8W_Tyで表示され、ここで、yは熱処理時間(h)を示す。それぞれの熱処理されたZIF-8Wに相応する触媒活性は、CC収率が熱処理の持続時間の増加(すなわち、水含量減少)によって緩く減少することで明かされた(図14(b))。また、合成されたZIF-8Wの内部にある水の量と同じ量の水を完全に乾燥されたZIF-8(すなわち、ZIF-8W_T24)に追加して反応物に供給した。驚くべきことに、CC収率は、追加された水の含量と関連がなく、ZIF-8W_T24の収率と類似する触媒活性を見せた(図14(c))。最高40wt%の水が追加されても(vs.合成されたZIF-8Wの内部に約8wt%の水)、当該触媒活性はZIF-8W_T24のそれほど低く保持された。疎水性特性によって明白に19MPa以下の圧力でZIF-8の気孔の中に水分子を入れることが非常に難しいことを考慮すると、ZIF-8気孔構造外部の水分子は、所望の触媒活性の活性サイトを形成するのに寄与しない。完全に乾燥されたZIF-8x(x=W、MおよびC)で無視できる水吸着のより多い情報は、図2のグラフで示し、上で説明された。これは、ZIF-8気孔構造に閉塞された水分子が触媒を利用したCO環化付加反応の活性サイトを形成するキーであることを強く示す。また、水分子の減少によってCC収率が単調に減少すること(図14(b))は、活性サイトの生成が水の含量に依存することを示す。したがって、水分子を含まない他の2種類のZIF-8は、CO環化付加反応に対して注目すべき触媒活性を見せない。
【0093】
4.CO環化付加反応で触媒として作用するZIF-8Wの活性サイト
図18は、ZIF-8Wで触媒として作用するサイトを調べるために、各サンプルのN吸脱着等温線、気孔分布、およびFT-IRを測定した結果である。ここで、(a)はZIF-8x、(b)はZIF-8x_S(x=W、MおよびC)のN吸-脱着等温線を示す。(c)は対数x軸でZIF-8xおよびZIF-8x_S(x=WおよびM)のN吸-脱着等温線を示し、ここで、比較のために、DPに対する結果を追加した。(d)はZIF-8xおよびZIF-8x_S(x=Wおよびm)の気孔大きさ分布を示す。(e)はZIF-8W、ZIF-8W_S、DPおよび2-メチルイミタゾール(2-methylimidazole)(2-mim)のFT-IRスペクトルを示す。C=Nストレッチング、C-Nストレッチング、イミダゾール環の曲げおよびZn-N結合それぞれに対しては、当該ピークに逆三角形で表示してタグした。(e)で、サンプルは、サンプルとKBrの混合物を圧着してペレット形態に製造した。公正な比較のために、(e)で全てのサンプルはサンプル重量で正規化され、ZIF-8W/ZIF-8W_SおよびZIF-8W_S/DPに対するFT-IRを一緒に表示した。理解のために、(e)で尻尾付き矢印は、DPの一部特性を示すために含まれた(広いこぶのように見える)。(f)はZIF-8W、ZIF-8W_Sおよびこれらの熱処理されたサンプルのFT-IRスペクトルを示す。(f)でサンプルの一面は純粋なKBrペレットを蒸着した。
【0094】
図19で、(a)は対数X-軸(logarithmic x-axis)でZIF-8W_S、DPおよびZIF-8WとDPの混合物に対するN吸-脱着等温線を示す。(b)は対数X-軸でZIF-8CおよびZIF-8C_SのN吸-脱着等温線を示す。(c)は0.4nm~2.0nm範囲のZIF-8CおよびZIF-8C_Sでマイクロ細孔大きさ分布を示す。
【0095】
図20は、2nm~50nm範囲の(a)ZIF-8W、(b)ZIF-8M、(c)ZIF-8Cおよびこれらそれぞれの用いられた触媒(ZIF-8x_S;x=W、MおよびC)のメソ細孔の大きさ分布を示す。サンプルのそれぞれはタグで表示した。
【0096】
図21は、各サンプルのFT-IRスペクトルを示す。(a)はZIF-8W、ZIF-8W_S、DPおよび2-メチルイミダゾール(2-methylimidazoe)(2-mim)のFT-IRスペクトルを示す。(b)はZIF-8M、ZIF-8C、およびこれらの用いられた触媒状態のFT-IRスペクトルを示す。(c)は2000~650cm-1範囲でZIF-8M、ZIF-8C、およびこれらの用いられた触媒状態のFT-IRスペクトルを示す。C=Nストレッチング、C-Nストレッチング、およびイミダゾール環の曲げそれぞれに対しては、対応するピークに逆三角形とタグで表示した。(a)-(c)の全てのFT-IRスペクトルは、イミダゾール環の曲げに対応する684cm-1のピークに対して正規化された。(c)で、比較のために、ZIF-8MおよびZIF-8CのFT-IRスペクトルをこれらの用いられた状態の触媒に対応するピークと重ねておいた。
【0097】
ZIF-8気孔構造に閉塞された水分子の効果が明かされたが、触媒的活性の化学的原因は相変らず明かされなかった。Zn-N結合の窒素と亜鉛は、CO環化付加反応がルイス酸、塩基または2つとも存在する条件で実行されることができるため、この反応にほとんど活性がない。我々は、活性サイトがZn-N結合から由来され、明白にZIF-8の構造変形を伴う新しく形成されたNおよび/またはZn種と関連があると仮定した。このために、我々は、構造的差を見せるために、ZIF-8xおよびZIF-8x_S(x=W、MおよびC)のN吸-脱着等温線を調査した(図18(a)-(b))。ZIF-8xは、典型的なtype1の吸着挙動を示し、合成経路とは関係なく、低いP/P値(6.0×10-3および4.0×10-2間)で独特の段階的変化が現われた(図18(a)で、点線四角形で表示)。ZIF-8は、ガス分子が吸着される時に亜鉛と連結されたイミダゾレート(IM、imidazolate)を通じて構造的柔軟性を示し、これは、低いP/P0 値と77KでNの吸着が目立って増加することにより反映される現象であるぶらんこ効果(swing effect)現象である。N吸着でこのような段階的変化は、ZIF-8でZn-IM連結の存在を確認するのに利用されることができる。ZIF-8WおよびZIF-8Mでヒステリシスルーフが異なる相対圧力で閉じられても、見掛けでは非固有粒子凝集から始まったように見え、したがってどんな物理化学的または触媒的特性にも影響を与えないはずである。また、N吸着等温線(80℃で脱気された後に得られた)でZIF-8Wに対するBET表面積(表2参照)に対して、若干の不一致があることが注目された。しかしながら、より高い脱気温度である200℃では、ZIF-8WとZIF-8Mとの間にマイクロ細孔が類似することを確認した(図3および表2)。先立って言及したXRD結果とともに、N物理吸着は、今回の研究に用いられた3種類のZIF-8で全部比較できるほど高い結晶性を見せる(表2および3)。
【0098】
また、用いられた触媒(すなわち、ZIF-8x_S、x=MおよびC)で一般的な吸着等温線の傾向が保持された。しかしながら、ZIF-8W_Sは、よほど減少された吸着を見せた。したがって、ZIF-8WのBET表面積は、異なる2種類のZIF-8のそれと比較して、反応後に、1390m・g-1から530m・g-1に相当減少した。参考に、ZIF-8Mは、1592m・g-1から1501m・g-1に減少し、ZIF-8Cは、1626m・g-1から1473m・g-1に減少した。また、先立って言及した独特の段階的変化は、ZIF-8W_Sでは見えなかった(図18(b)で点線四角形で表示)。図18(c)で、容易に比較するために、ZIF-8WおよびZIF-8W_SのN吸着等温線をZIF-8M、ZIF-8M_SおよびDPに対するのと一緒に表示した。指数範囲のプロットは、ZIF-8W、ZIF-8MおよびZIF-8M_Sに対して、約6.0×10-3および4.0×10-2のP/Pで、2段階の変化を明確に示した。これと対照的に、ZIF-8W_Sは、吸着の減少だけでなく、段階的吸着の存在を見せた(図18(c))。CO環化付加反応の間に、ZIF-8Wの完全な構造的変形から発生する無視できるDPのN吸着能力を考慮すると、ZIF-8W_SでN吸着の相当な減少は、大体DPが形成される間にマイクロ細孔の減少を誘導する元の構造の崩壊のためである(図7(e))。逆に、DPが形成されることなく(図8(d)および9(d))、反応後にもそれらの構造が保持されるZIF-8x(x=MおよびC)は、本来のN吸着能力を保持することができる(図18(a)-(b))。それにもかかわらず、ZIF-8WおよびDPの物理的混合物が段階的吸着挙動を保有することを考慮すると(図19(a))、DPの存在だけでZIF-8W_Sで段階的吸収挙動の不在を説明することができない。反応の前と後に、段階的吸着挙動を存在および不在を調査するために、マイクロ細孔の大きさ分布が考慮された(図18(d))。ZIF-8W、ZIF-8MおよびZIF-8M_Sは、0.6、0.9および1.2nmで3つのピークを有する。このうち、0.6nmでの一番目ピークはZIF-8のマイクロ細孔構造で、N吸着と関連があり、0.9および1.2nmでの2つのピークは、ぶらんこ効果(swing effect)による追加的なN吸着と関連がある。しかしながら、予想したように、0.9および1.2nmでの2つのピークは、ZIF-8W_Sでは存在しなかった。また、ZIF-8CおよびZIF-8C_Sの吸着挙動(図19(b)-(c))は、ZIF-8MおよびZIF-8M_Sでのそれと類似した。ZIF-8Wのみ新しい濃密相に変換され、それによって形成されたZIF-8Wは、CO環化付加反応後に段階的吸収を示さなかった。これらの結果から、ZIF-8WがDP相以前に中間相(intermediate phase)への構造変形がZn-IM連結の解離を介して活性サイトを生成すると関連があることが示された。また、反応後、3種類のZIF-8のいずれにおいても、追加的なマイクロ細孔及びメソ細孔が形成されていないこと(図18(d)、図19(c)及び図20)は、構造的分解がZIF-8構造内部のZn-N結合の解離とともに始まったことを意味する。
【0099】
物理的な気孔特性だけでなく、我々は、化学的特性の不一致を調査するために、ZIF-8W、ZIF-8W_SおよびDPのFT-IR分析を参照した(図18(e)および図21(a))。2-メチルイミタゾール(2-methylimidazole)(2-mim)のFT-IRスペクトルも図18(e)に示した。比較のために、図18(e)に示した全てのFT-IRスペクトルは、サンプルの重量で正規化された。また、ATRモードで収集されて、図21で示すFT-IRは、イミダゾール環がZn-N結合の解離と関係ないため、基準ピーク(reference peak)に表示された逆三角形(図面のタグ参照、684cm-1)によって表示されたイミダゾール環の平面外(out-of-plane bending of imidazole ring)の曲げ振動のピーク強度に正規化された。これは、CO環化付加反応後、C=Nストレッチングピークの強度(図18(e)で、1578cm-1に逆三角形で表示)が増加し、一方、C-Nストレッチングピーク(図18(e)で、1180cm-1に逆三角形で表示)およびZn-N結合ピーク(図18(e)で、420cm-1に逆三角形で表示)の強度は減少したことに注目される。ZIF-8Wと対照的に、ZIF-8MおよびZIF-8CのFT-IRスペクトルは、CO環化付加反応以後に変化しなかった(図21(b)-(c))。ZIF-8W_SでDP粒子から現われるC=Nストレッチングの増加されたピークの可能性を完全に排除することはできないが、図18(e)でZIF-8W_SとDPの重なったFT-IRスペクトルは、増加されたC=Nストレッチングピークが主にZIF-8WにあるZn-N結合解離を犠牲して、追加的なC=N結合の生成から由来されたことを示唆する。そうではなければ、DPに対応する目立つ広いこぶ(図18(e)で尻尾付き矢印で表示)がZIF-8W_Sで観察されるべきである。したがって、FT-IR分析は、反応時間の間に、Zn-IM連結でN種がC=N結合を含むピリジン系Nになったことを示す。FT-IR Zn-N結合ピークの減少がZIF-8W_Sに対して大きく減少しなかったが(図18(e))、C=N結合のため、ピークが確実に増加したことから、Zn-N結合が壊れたということが説明される。また、このような傾向は、ZIF-8W_SでZIF-8構造が損傷された時に現われるXRDおよびN物理吸着結果と全部一致した。
【0100】
反応後、図21でZIF-8W_Sに対して追加的に約3400cm-1で広いピークが現われることは、N-HおよびO-H基によることを考慮すると、ピロール系N種も形成されることで現われた。特に、ピロール系N種は、ほとんどZn-N結合の解離と後続プロトン化後に形成され、若干のプロトン種と関連があることを示唆する。ZIF-8Wの濃密相への変換が水の存在下でZn-N結合の解離から起因することを考慮すると、ピロール系N種を生成した追加的なプロトンは、閉塞された水分子と密接な関連がある。ピロール系N種で、プロトンはZIF-8W内部に閉塞された水分子から始まったようである。したがって、明らかに水分子から発生した他のヒドロキシル基は、ZIF-8W_SのFT-IRスペクトルで発見されたことに予想される。4000から2000cm-1範囲の広いFT-IRスペクトルは、ZIF-8W_Sで追加的なヒドロキシル基の存在を明らかにしたが(図18(f))、これらはN-H結合に対応するピークとともに存在した。厳格な分析のために、熱処理されたZIF-8WおよびZIF-8W_SのFT-IRスペクトルを図18(f)で比較した。特に、熱処理されたZIF-8W_Sは、依然として熱処理で除去できないヒドロキシル基を含んでいた。新鮮と使用済みZIF-8x(x=W、MおよびC)の包括的な特性分析を通じて、CO環化付加反応をする間に、ZIF-8Wの唯一の構造的変形は、ZIF-8W気孔構造内に閉塞された水分子によって、Zn-N結合の解離から発生することに結論付けられた。また、Zn-N結合の解離は、ZnまたはN種の同時形成を誘導し、これは、DPに構造的に変形される過程で、ZIF-8Wの触媒的活性をもたらした。
【0101】
5.ZIF-8Wの外部表面にある化学種
図22は、(a)ZIF-8M、ZIF-8M_S、およびDP、(b)ZIF-8C、ZIF-8C_S、およびDPのO 1sに対するXPS結果である。
【0102】
図23は、各サンプルの表面にある元素の組成を調査したのである。ZIF-8xおよびZIF-8x_S(x=W、MおよびC)で、(a1)窒素、(a2)亜鉛、および(a3)酸素に対して外部表面の組成を示す。(a1)-(a3)で、比較のために、DPに対する結果を追加した。ZIF-8x、ZIF-8x-S、およびDPで、窒素、亜鉛および酸素に対する外部表面の組成は、それぞれN 1s、Zn 2p3/2およびO 1sに対するXPSスペクトルをデコンボリューションして得られたのである。
【0103】
酸-塩基サイトは、ZIF-8の外部表面またはそれらの欠陥部位に存在し得る。ZIF-8またはZIF-67に対するCO環化付加反応およびエステル交換(transesterification)のような触媒反応は、触媒の外部表面(それらのマイクロ細孔ではない)にある活性サイトで促進される。ZIF-8Wの目立つ触媒的活性がZn-N結合の解離によって新しくZnおよびN種を生成するのに寄与するが、CO環化付加反応の触媒作用を担当する実際活性成分は不明である。上記に言及したとおり、ECHに対するCO環化付加反応は、主にZIF-8の外部表面で優先的に発生するはずであり、XPS分析によるZIF-8の外部表面にある化学種に対する研究が要求される。特に、結果的な特性は、上記した各種特性化の物理化学的特性と一貫して補完的なものに理解されるべきである。まず、CO環化付加反応に対するZIF-8Wの活性サイトを確認するために、我々は、ZIF-8WおよびZIF-8W_SのXPS分析を利用して、外部表面にある化学種を参照した(図4)。特に、我々は、N 1s、O 1sおよびZn 2pのXPSスペクトルを追跡するのに集中した。比較のために、DPおよび他の2種類の新鮮および使用済みZIF-8(ZIF-8xおよびZIF-8x_S;x=MおよびC)のXPS分析を実行した(図4図5および図22)。特に、ほとんど0の残留値で裏付けられるZIF-8W、ZIF-8W_SおよびDPのXPSスペクトルの優れたデコンボリューション(deconvolution)は、Zn、NおよびO原子と関連された化学種の定量的の比率を示す。これに対応するフィット・パラメータおよび標準偏差は、下記の表4に要約された。ZIF-8x、ZIF-8x_S(x=W、MおよびC)およびDPの外部表面の化学組成は、図23(a1)-(a3)に要約された。
【0104】
【表4-1】
【表4-2】
~398.3eVのピークは、ZIF-8WのZn-N結合に参与する飽和されたN種を説明する。一方、~399.6eVおよび~397.8eVのピークは、それぞれピロール系(N-Hのため)およびピリジン系(C=Nのため)のN種に対応し、これは、Zn-N結合の解離によって形成されるのと同じである(図4(a1))。また、~1021.1eVでのピークは、ZIF-8WのN原子に飽和された連結されたZn種に対応し、一方、金属亜鉛(~1020.1eV)および酸化亜鉛(~1022.1eV)のような他のZn種も存在する(図4(b1))。酸化亜鉛の存在は、またO 1sのXPSスペクトルによって裏付けられる(図4(c1))。ZIF-8WのXPS結果は、ZIF-8MおよびZIF-8Cのそれと類似する(図5および図22)。金属亜鉛の存在は、全てのサンプルに対してX-線励起されたオージェ電子分光法(XAES、X-ray excited Auger electron spectroscopy)で確認されることができる(図6)。また、論議されなかったが、ZIF-8で金属Zn種が若干存在することは、従来の研究でXPSおよびXAESによって明かされた。新鮮なサンプルとは対照的に、使用済み触媒(ZIF-8x_S;x=W、MおよびC)のXPS結果は、明らかな特徴を見せる。特に、CO環化付加反応が発生する間にZIF-8WのXPS結果の変化(すなわち、ZIF-8WおよびZIF-8W_S間に)は明らかであったが、他の2種類のZIF-8は、新鮮および使用済みの全てで類似するXPS結果を示した(図23(a1)-(a3)。ZIF-8W_Sで3種類のN種は、ZIF-8Wのそれらと同一であったが、それぞれの比率は、CO環化付加反応後に変化した(図4(a1)-(a2)および図23(a1))。
【0105】
図23(a1)で、ZIF-8Wに対して明かされた纎細なピークデコンボリューションは、ピロール系Nおよびピリジン系N種の比率は、反応後に増加し、一方、飽和されたN種の比率は減少した。この傾向は、ZIF-8WおよびZIF-8W_SのFT-IRスペクトルでも一致した(図18(e)および図21(a))。このような補完的特性は、ZIF-8Wのみで発生するZn-N結合の相当な解離を指し、これは、CO環化付加反応後にN種の比率が変化することと関連がある。したがって、ZIF-8WおよびZIF-8W_SのZn種の分布も異なった。これらは、3種類のZn種(金属亜鉛、窒素に連結された亜鉛、および酸化亜鉛)を含んでいるが、ZIF-8W_Sはより高い結合エネルギー(~1022.4eV)でもう一つの少量のZn種を有する(図4(b2)および図23(a2))。図4(b2)で、主要ピークのデコンボリューションは、反応後に減少されたN-Zn-Nに対応するZn種の比率を示すが、酸化亜鉛および金属亜鉛のそれは、ほぼ一定に保持された(図23(a2))。したがって、~1022.4eVピークに対応する新しく形成されたZn種は、反応する間にZIF-8WのZn-N結合の解離から由来されると考えるのが合理的である。この部分で、我々は、外部表面に金属ZnおよびZnO種が共存するのがXPS測定時に真空状態を形成する時ZnOの比率を減少することに寄与することができると推測した。この推測は、ZnO単結晶(99.99%)のXPSおよびXAESスペクトルに金属Zn種が少量存在することから始まった。
【0106】
FT-IR分析は、ZIF-8W_Sに若干のヒドロキシル基があるということを明らかにした(図18(f))。NおよびZn種以外にも、我々は、XPS分析で、O原子の存在をさらに調査した。ZIF-8W_SでO種は酸化亜鉛(~530.8eV)およびヒドロキシル基(~531.9eV)の状態で存在した。O 1sのXPSスペクトルでヒドロキシル基の存在は、ヒドロキシル基と連結されたZn種と一致し(図4(b1)-(b2)、図4(c1)-(c2)および図23(a2)-(a3))、これは前述したZIF-8W_SのZn 2p XPSスペクトルで追加的な~1022.4eVピークを指す。XPS分析で、同じ酸化状態にある化学種の結合エネルギーは、他の結合原子の電気陰性度と関連がある。したがって、より高い電気陰性度の原子に結合したZn種は、より高い結合エネルギー(すなわち、N-Zn-N、ZnOおよびZn(OH)は、それぞれ~1021.1eV、~1022.1eVおよび~1022.7eVの結合エネルギー)を有し、~1022.4eVのXPSピークが現れる新しく形成されたZn種は、N-Zn-OHに対応することができる。
【0107】
ZIF-8WおよびZIF-8W_Sに対するFT-IRおよびXPS分析で、我々は、CO環化付加反応過程で、ZIF-8Wで発生し得る現象を提案する(図1)。ZIF-8WでのZn-N結合は、ZIF-8W構造の内部に閉塞された水分子によって大体解離される。これは解離されたNおよびZn種を形成する結果になる。解離されたN種は、ピロール系およびピリジン系になることができる一方、解離されたZn種は、N-Zn-OH形態で存在し得る。反応後に追加的なマイクロ細孔/メソ細孔が形成されないため、このような種は、主に外部表面に存在するはずである(図18(d)、図19(c)および図20)。特に、N-Zn-OH種は、ZIF-8の加水分解によって存在し得る種と一致する。結果的に、ZIF-8Wの独特の触媒的活性は、解離されたNまたはZn種から由来されたことで現われる。この部分で、我々は、ZIF-8Wの内部に閉塞された水分子が不安定な状態を有すると仮定する。
【0108】
6.ZIF-8Wで活性サイトの形成に対する水分子の役割
図24は、ZIF-8Wと水分子がどのように活性サイトを形成するのかを調べるための図である。それぞれ使用済みZIF-8W(ZIF-8W_S)および使用済みZIF-8W_T24に対して、(a)XRDパターン、(b)O 1sのXPSスペクトル、(c1)N吸-脱着等温線、(c2)0.4~2.0nm大きさ範囲でマイクロ細孔の大きさ分布を示す。ここで、ZIF-8W_T24に対しては、ZIF-8Wの内部に閉塞された水分子(8wt%)と同じ量の水分子を反応に追加的に添加した(ZIF-8W_T24_S_Hで表示される)。比較のために、ZIF-8WおよびDPの分析結果が(a)-(d)に添加された。(a)で逆三角形表示は、内部標準としてα-アルミナを示す。
【0109】
図25は、ZIF-8W、ZIF-8W_S、ZIF-8W_T24_S_HおよびDPで(a)N 1sおよび(b)Zn 2pに対するXPSスペクトルおよび外部表面の組成を示す。
【0110】
完全に乾燥されたZIF-8W_T24は、水(最高40wt%まで供給された水)が存在するCO環化付加反応で注目するほどの触媒的活性を見せなかった(図14(c))。ZIF-8Wの独特の触媒的活性で閉塞された水の役割を理解するために、我々は、CO環化付加反応後にZIF-8W(内部に8wt%の水を含む)およびZIF-8W_T24(外部に8wt%の水を有する)の物理化学的特性を調査した。便宜上、水を含む反応条件(水8wt%)での使用済みZIF-8W_T24は、ZIF-8W_T24_S_Hで表記し、ここで、文字Hは、高湿度反応条件を示すために追加された。図24(a)で、ZIF-8W_SおよびZIF-8W_T24_S_HのXRDパターンは、COおよび水が反応に供給される時、ZIF-8からDPへの変換が不可避的であることを示す。しかしながら、変換程度は、水分子の位置によって多様になる。同じ量の水がZIF-8WおよびZIF-8W_T24を含むCO環化付加反応に適用されると仮定する時、ZIF-8構造からDPに変換される間に、活性サイトの生成はZIF-8外部に存在する水分子に対しては鈍感であった。
【0111】
したがって、我々は、反応する間に、ZIF-8WでZnおよびN種が解離されることを見せ、これは、触媒的活性と関連があり、ZIF-8からDPへの変換を伴うのである。ZIF-8からDPへの変換が反応後ZIF-8W_T24に対しても観察されたが(図24(a))、ZIF-8W_T24は目立つ触媒的活性を見せなかった(図14(c))。したがって、ZIF-8構造の変換に対する水の効果を理解するために、我々は、ZIF-8W_SおよびZIF-8W_T24_S_Hの外部表面を特性化した。N 1sおよびZn 2p XPS結果は、ZIF-8W_T24_S_Hの外部表面成分がDPのそれと類似することを示すが、ZIF-8WまたはZIF-8W_Sのそれとはよほど異なることを示した(図25)。それに、O 1sのXPS結果は、ZIF-8W_T24_S_Hが~533.4eVで追加的なO種を有することを示し、これはDPと一致した(図24(b))。したがって、XPS分析によれば、ZIF-8W_T_S_HからZIF-8構造の変換度がより低いにもかかわらず、ZIF-8W_T_S_Hの外部表面は、DPのそれと類似した(図24(a)-(b)および図25)。より重要なことは、ZIF-8W_Sで示したヒドロキシル基に連結されたZn種は、ZIF-8W_T24_S_Hにはなかった(図25(b)。したがって、ZIF-8W_T24_S_HがDPのそれと類似する外部表面組成を有すれば、ZIF-8W_T24の変形が外部表面で始まって進行されたと見られる(図24(a)-(b))。
【0112】
また、図24(c1)-(c3)および(d)に示されたように、ZIF-8W_SおよびZIF-8W_T24_S_HのN物理吸着とNHのTPD結果の比較は、XPS分析から得られた結果を裏付ける。N吸着-脱着等温線は、ZIF-8構造の変形にもかかわらず、ZIF-8W_T24_S_HがZIF-8W_Sとは対照的にZIF-8の吸着挙動と関連して吸着容量および独特のぶらんこ効果(swing-effect)を全部保有することを示す(図24(c1))。予想したように、図24(c2)で、ZIF-8W、ZIF-8W_SおよびZIF-8W_T24_S_Hのマイクロ細孔の容積分布は、ZIF-8W_T24が反応した後にDPに変形されたにもかかわらず、固有のマイクロ細孔構造を保持しているということを示す。ZIF-8W_T24_S_HからZIF-8構造の変形は外部表面に制限される。NHのTPD結果は、ZIF-8W_T24_S_HがZIF-8W_Sのパターンから逸脱して、DPと類似する脱着パターンを有することを見せる(図24(d))。DPがCO環化付加反応で何れの触媒的活性を見せなかったことを考慮すると、ZIF-8W_T24_S_Hの外部表面で類似DP相の形成は、CO環化付加反応に適切な活性成分は生成しなかった。それで、このZIF-8W_SおよびZIF-8W_T24_S_Hの間に目立つ不一致は、閉塞水分子の不安定な状態によることであり得る。反応条件で、このような水分子は、ZIF-8気孔構造を出たがるが、脱出するに十分なエネルギーを有していない(合成されたZIF-8Wが70℃で少なくとも12時間乾燥されたが、依然として分子内部に水(8wt%)を含むことに注目する)。その代わりに、70℃の反応温度で、Zn-N結合の加水分解は活性成分を生成して、前述したZIF-8中間誘導体および外部表面にあるものなどを生成することと見える。しかしながら、DPへの構造変換が多すぎると、そのような誘導体または相を有することが許容されない。ZIF-8W_T24_S_Hの場合に、水分子を通じた加水分解が反応温度で活性されることが見えない。
【0113】
7.触媒を利用した環化付加反応でZIF-8Wの活性サイトの確認
図26は、各サンプルに対するTPD(Temperature Programmed Desorption)プロファイルを示す。ZIF-8xおよびZIF-8x_S(x=W、MおよびC)に対して、(a)COおよび(b)NHのTPDプロファイルを示す。(a)および(b)で尻尾付き矢印は、ZIF-8W_Sで現われる追加的なピークを示す。
【0114】
図27は、ZIF-8Wで活性サイトを確認するために、各種実験をした結果である。(a)は、ZIF-8W、ZIF-8W_SおよびDPでNHのTPDプロファイルを示す。(b)は、NH吸着の前と後(当該グラフにNHがタグされる)にZIF-8W、ZIF-8W_SおよびDPのFT-IRスペクトルである。(c)は、それぞれのタグされた脱着温度(50、100および150℃)によってNH-吸着されたZIF-8W_SのFT-IRスペクトルであり、(d)は、デコンボリューションされた曲線に沿って1800cm-1から1500cm-1範囲の拡大されたFT-IRスペクトルである。(b)-(d)で、FT-IR測定のために、30℃で、1時間、NH吸着を実行した後、NH-吸着されたサンプルは、それぞれ異なる温度((b)では50℃、(c)-(d)では50、100および150℃)で加熱したことを示す。全てのFT-IRスペクトルは、イミダゾール環((b)に逆三角形で表示)の曲げに対応する684cm-1でのピークに正規化された。(d)でのデコンボリューション曲線に対する詳しい情報は、表5および図29に示した。
【0115】
図28は、NH-吸着前と後のFT-IRスペクトルを示す。(a)は、吸着前と後のZIF-8M_SおよびZIF-8C_SのFT-IRスペクトルである(サンプルラベルにNHがタグされる)。(b)は、1800~1500cm-1範囲でNH吸着前と後のZIF-8M_SおよびZIF-8C_Sの拡大されたFT-IRスペクトルを示す。(c)は、1800~1500cm-1範囲でNH吸着前と後にDPの拡大されたFT-IRスペクトルを示す。FT-IR測定のために、30℃で、NH吸着を1時間実行した後、NH-吸着されたZIF-8M_S、ZIF-8C_SおよびDPをHe流れで設定された温度まで加熱した。ここで、(a)-(b)は、それぞれZIF-8M_SおよびZIF-8C_Sを示し、50℃まで加熱し、(c)はDPを示し、50、100および150℃まで加熱した。脱着温度は、各サンプルの末に表示した。
【0116】
図29は、デコンボリューション曲線に対する情報を示す。デコンボリューションされた曲線に沿ってそれぞれ異なる温度(50、100、150℃)で、(a)ZIF-8W_Sおよび(b)-(d)NH吸着されたZIF-8W_SのFT-IRスペクトルを示し、これは、図27(d)に示したのと同一である。デコンボリューションに対して、点線に表示された領域(1540~1700cm-1まで)が考慮された。適切なフィットの試演のために、当該残渣プロットが実験的に得られたFT-IRスペクトルが下に表示された。残渣プロットの場合、正規化された残渣(R)は、デコンボリューションされた曲線から合算された強度で実験的に測定されたFT-IRスペクトルの強度を引き、実験的に測定されたFT-IRスペクトルの強度でさらに割って計算された。
【0117】
【表5-1】
【表5-2】
ZIF-8xおよびZIF-8x_S(x=MおよびC)で、NおよびZn種が同様の比率を有することを考慮する時(図23(a1)-(a3))、ZIF-8Wの唯一の触媒活性は、CO環化付加反応の間に新しく形成されたZn種によるものである。新しく形成されたZn種の役割を明確にするために、我々は、COおよびNHのTPD分析を実行した(図26)。まず、COのTPD結果は、ZIF-8WおよびDPの全部で30、60および100~110℃で3つの主な脱着ピークを有し、一方、ZIF-8W_Sは、140℃で追加的な脱着ピークを有した(図26(a)で、矢印で表示)。ヒドロキシル基にある酸素がルイス塩基として作用することができるという事実を参照して、Znに連結された酸素は、CO環化付加反応でルイス塩基として作用した。また、約100℃で脱着されたCO分子の量はZIF-8Wで2.7μmol・gcatalyst -1であったが、ZIF-8W_Sで、7.7μmol・gcatalyst -1に増加した。これは、CO環化付加反応後にピロール系およびピリジン系N種の増加された比率に相応した。対照的に、XPSスペクトルでN種の分布から予想されたように、CO環化付加反応の前と後に、ZIF-8MおよびZIF-8Cに対する脱着COに対応する量は類似した(図26(a))。すなわち、約100℃で、新鮮および使用済みZIF-8Mに対する脱着されたCOの量は、それぞれ1.9および1.6μmol・gcatalyst -1であり、一方、ZIF-8Cでは同じ温度でそれぞれ1.6および2.4μmol・gcatalyst -1であった。したがって、約100℃で増加されたCO脱着は、追加的なピロール系およびピリジン系N種と関連がある。したがって、ZIF-8W_Sで、140℃の新しい脱着ピークは、ヒドロキシル基を通じてZnを伴う酸素の連結のためであり、これはルイス塩基として作用する。
【0118】
NHのTPD結果は、ZIF-8W_SのみがCO環化付加反応以後に、225℃で、追加的な脱着ピークを有すると示した(図27(a)および図26(b))。また、全ての脱着ピークで脱着されたNHの量はZIF-8W_Sの場合よりも多かった。特に、ZIF-8W_Sで脱着されたNHの量は、ZIF-8Wと比べて、ほぼ4倍も多かった。ZIF-8W_Sで脱着されたNH分子は、Zn-N結合の解離から発生する可能性がある酸性部分を滴定することができるが、これらは物理的吸着によって発生したりする。低い温度(<100℃)で、ZIF-8W_Sで脱着されたNHの量は、ZIF-8Wと比べてずっと多く、このような増加は、DPでも現われた。低い温度でZIF-8W_Sで脱着が増加するのは、CO環化付加反応で所望の酸性サイトを形成する代わりに最終構造としてDPを形成することと関連がある。225℃で追加的なピーク(図26(b)に矢印で表示)は、明確に理解されないが、これは大体CO環化付加反応の間にZn-N結合の解離から由来された酸性サイトのためである可能性がある。CO環化付加反応以後に元々のZn-N結合を保存するZIF-8MおよびZIF-8C(図21、22および図5)は、これらの使用済み形態で追加的なピークを見せなかった(図26(b))。
【0119】
CO環化付加反応は、ブレンステッド酸性サイト(Bronsted acidic sites)ではない、ルイス酸サイトで発生する。NHのTPD結果は、全ての酸性サイトに対する情報のみを提供するため、ZIF-8W_Sの酸特性を調査する必要がある。したがって、ZIF-8W_Sの酸性サイトを区別するために、NHの吸着後に、DP、ZIF-8WおよびZIF-8W_SのFT-IR測定し、これは、高い温度(>100℃)で、NHのTPD曲線を利用して解釈された(図27(a))。Zn-OH基は、ブレンステッド酸性サイトで行動することができ、これに対応するNH吸着ピークは約200~300℃で現われると知られている。Zn-OH基は、CO環化付加反応の間にZn-Nの解離で発生するため(図4(b1)-(b2))、ZIF-8W_SのNHのTPD結果で追加的なピークは、ブレンステッド酸性サイトためである。図27(b)および図28(a)で示すNH吸着のFT-IR結果は、ZIF-8W_Sのみが追加的なFT-IRピークを有することを示し、これは、ブレンステッド酸性サイトであるアンモニウムイオンでのN-Hピークに対応する(図27でアンモニウムイオンがタグされた矢印で表示、~2850cm-1)。ZIF-8W_SでのNH脱着は、それぞれ異なる温度(50、100および150℃)で実行され、これに対応するFT-IRスペクトルは、N-Hストレッチング(~2850cm-1)のFT-IRピーク強度が脱着温度にかかわらず類似することを示す(図27(c))。したがって、ZIF-8W_SのNHのTPD曲線が約60、95、140および225℃の中間で4つの主なピークを有することを考慮すると(図27(a))、150℃に対する脱着ピークは、ブレンステッド酸性サイトと関連があり、明らかに、Zn-OH基の形成のためである。1650cm-1~1600cm-1範囲のFT-IRスペクトルでの広いピークに対する強度は、NH吸着後に増加した。1645cm-1および1600cm-1でのFT-IRピークは、それぞれNH 対称およびNH非対称曲げモードに対応する。低い-配位結合されたZn種は、ルイス酸として行動し、ZIF-8W_Sは、Zn種のためルイス酸性サイトを含む。このような事実に基づいて、ZIF-8W_SおよびNH-吸着ZIF-8W_SのFT-IRスペクトル(50、100および150℃で脱着された)は、NH およびNH曲げモードを区別するために、ガウス分布(Gaussian distribution)を利用して、デコンボリューションされた(図27(d))。デコンボリューション結果は、ブレンステッド酸性サイトを示すNH 対称曲げモード(~1645cm-1)が脱着温度にかかわらず類似することを示した。この結果は、N-Hストレッチングピークでの傾向と非常に一致した。NH 曲げピークと対照的に、ルイス酸性サイトを示すNH非対称曲げモード(~1600cm-1)は、脱着温度に対応して漸進的に変化した。NH曲げピークの強度は、ZIF-8W_SでNHの脱着が150℃で行われたときに減少し、一方、50℃および100℃でのピーク強度は類似した(図27(d))。XPS分析によれば、図29に示すFT-IRの効果的なデコンボリューションは、定量的方法でNH およびNH曲げモードに関する傾向を提供する。したがって、相補的なNHのTPDおよびNH-吸着FT-IR分析結果は、225℃で、NHのTPD脱着がブレンステッド酸性サイトに由来したのであり、一方、150℃の場合には、ルイス酸性サイトで由来したことを示す。要約すると、低い-配位結合されたZn種の形成は、明らかにOH基と連結され、これは、反応中にルイス酸として提供され、CO環化付加反応の間にZIF-8の構造変化を伴う。
【0120】
ZIF-8W_Sと対照的に、NH-吸着されたDPのFT-IRスペクトルは、脱着温度にかかわらずDP粒子でNHによる酸性サイトが発見されなかったことを示すが(図28(c))、NHのTPD脱着ピークは存在した。それに、NHのTPD結果によって若干の脱着を経験したZIF-8M_SおよびZIF-8C_Sは、NH吸収ピークを見せなかった(図28(a)-(b))。ZIF-8W_SおよびDPに対するNHのTPD結果で、100℃で脱着されたNH分子は、CO環化付加反応の間に伴うZIF-8の構造的変化と関係があり(物理的に吸着されたNH分子と関連)、酸性サイトとは明らかに関連がなかった。
【0121】
本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者は、本発明がその技術的思想や必須的特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施され得ることを理解すべきである。そこで、以上で記述した実施形態は、全ての面で例示的なものである、限定的でないことを理解すべきである。本発明の範囲は、上記詳細な説明よりは特許請求範囲によって示され、特許請求範囲の意味および範囲、そしてその均等な概念から導出される全ての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれることに解釈すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27a
図27b
図27c
図27d
図28
図29
【手続補正書】
【提出日】2023-09-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0065
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0065】
上記のCO環化付加反応条件(標準条件)以外にもZIF-8W場合には、反応時間と触媒の重量を異ならせた実験が追加的に行われた。具体的には、0.72gのZIF-8Wで実行した反応は、反応持続時間を1、2、3、6、10および16時間にそれぞれ設定して実行し、ZIF-8Wの重量は、反応時間を4時間にして、gから0.54gまで0.18gずつ増加させながら多様にした。また、標準条件で触媒の総質量が0.72であるZIF-8WおよびDPの混合物は、ZIF-8/DP混合物の重量(g)比率が0/0.72、0.18/0.54、0.36/0.36、0.54/0.18に設定して実行された。最後に、完全に乾燥されたZIF-8W(すなわち、ZIF-8W_T24)の反応は、水を含む反応条件で実行され、ここで、ZIF-8W_T24(0.72g)に添加された水の比率は、触媒の8wt%(合成されたZIF-8Wに吸収された水と同一)、20wt%、および40wt%であった。また、便宜上、水を含む反応条件(8wt%)で用いられたZIF-8W_T24は、ZIF-8W_T24_S_Hに示し、ここで、文字Hは、高湿度反応条件(humid reaction condition)を示すために付けたのである。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0093
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0093】
4.CO環化付加反応で触媒として作用するZIF-8Wの活性サイト
図18は、ZIF-8Wで触媒として作用するサイトを調べるために、各サンプルのN吸脱着等温線、気孔分布、およびFT-IRを測定した結果である。ここで、(a)はZIF-8x、(b)はZIF-8x_S(x=W、MおよびC)のN吸-脱着等温線を示す。(c)は対数x軸でZIF-8xおよびZIF-8x_S(x=WおよびM)のN吸-脱着等温線を示し、ここで、比較のために、DPに対する結果を追加した。(d)はZIF-8xおよびZIF-8x_S(x=Wおよびm)の気孔大きさ分布を示す。(e)はZIF-8W、ZIF-8W_S、DPおよび2-メチルイミタゾール(2-methylimidazole)(2-mim)のFT-IRスペクトルを示す。C=Nストレッチング、C-Nストレッチング、イミダゾール環の曲げおよびZn-N結合それぞれに対しては、当該ピークに逆三角形で表示してタグした。(e)で、サンプルは、サンプルとKBrの混合物を圧着してペレット形態に製造した。公正な比較のために、(e)で全てのサンプルはサンプル重量で正規化され、ZIF-8W/ZIF-8W_SおよびZIF-8W_S/DPに対するFT-IRを一緒に表示した。(f)はZIF-8W、ZIF-8W_Sおよびこれらの熱処理されたサンプルのFT-IRスペクトルを示す。(f)でサンプルの一面は純粋なKBrペレットを蒸着した。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0096
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0096】
図21は、各サンプルのFT-IRスペクトルを示す。(a)はZIF-8W、ZIF-8W_S、DPおよび2-メチルイミダゾール(2-methylimidazoe)(2-mim)のFT-IRスペクトルを示す。(b)はZIF-8M、ZIF-8C、およびこれらの用いられた触媒状態のFT-IRスペクトルを示す。(c)は2000~650cm-1範囲でZIF-8M、ZIF-8C、およびこれらの用いられた触媒状態のFT-IRスペクトルを示す。(a)-(c)の全てのFT-IRスペクトルは、イミダゾール環の曲げに対応する684cm-1のピークに対して正規化された
【国際調査報告】