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特表2024-516537光導波路、光導波路システム、光閉じ込め構造、光エネルギー貯蔵構造、光エネルギー貯蔵システム、並びにエネルギー貯蔵及び/若しくは変換システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-16
(54)【発明の名称】光導波路、光導波路システム、光閉じ込め構造、光エネルギー貯蔵構造、光エネルギー貯蔵システム、並びにエネルギー貯蔵及び/若しくは変換システム
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/036 20060101AFI20240409BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20240409BHJP
   G02B 6/032 20060101ALI20240409BHJP
   G02B 6/00 20060101ALI20240409BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
G02B6/036
G02B6/02 376
G02B6/032 Z
G02B6/02 356
G02B6/00 Z
G02B5/20
G02B6/02 451
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561158
(86)(22)【出願日】2022-04-05
(85)【翻訳文提出日】2023-11-30
(86)【国際出願番号】 EP2022058979
(87)【国際公開番号】W WO2022214470
(87)【国際公開日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】21166866.0
(32)【優先日】2021-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523377276
【氏名又は名称】ペラ コンプレクシティー, ビー.ヴイ.
【氏名又は名称原語表記】PERA Complexity, B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】クルス, アルイジオ エム.
【テーマコード(参考)】
2H038
2H148
2H250
【Fターム(参考)】
2H038AA61
2H148AA07
2H148AA23
2H250AB02
2H250AB03
2H250AB32
2H250AB60
2H250AC53
2H250AD01
2H250AD32
2H250AD35
2H250AF22
2H250BB04
2H250BB06
2H250BB07
2H250BD05
(57)【要約】
本願は、光導波路、光導波路を備えた光導波路システム、光エネルギー貯蔵構造、光閉じ込め構造、光エネルギー貯蔵システム、並びに光導波路システムを備えたエネルギー貯蔵及び/若しくは変換システムを対象とする。一態様においては、光導波路であって、ファイバコアを含む光ファイバと、当該光導波路の第1の端部においてファイバコアに重なる光学活性クラッド構造とを備え、光学活性クラッド構造が、第1の波長領域での高い透過率と、第1の波長領域の波長よりも長い波長の第2の波長領域での高い反射率とを有するブラッグミラースタックと、光ファイバのファイバコアに重なる波長変換被膜とを含む、光導波路が提供される。波長変換被膜は、第1の波長領域の波長を含む放射線を、第2の波長領域の波長を含む放射線へと変換するように構成されており、ブラッグミラースタックは、波長変換被膜の上方に配設されている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光導波路であって、
ファイバコアを含む光ファイバと、
前記光導波路の第1の端部において前記ファイバコアの少なくとも一部に重なる光学活性クラッド構造と、
を備え、
前記光学活性クラッド構造が、
第1の波長領域における高い透過率と、前記第1の波長領域の波長よりも長い波長の第2の波長領域における高い反射率と、を有するブラッグミラースタックと、
前記光ファイバの前記ファイバコアに重なる波長変換被膜であり、前記第1の波長領域の波長を含む放射線を、前記第2の波長領域の波長を含む放射線へと変換するように構成されている、波長変換被膜と、
を含み、
前記ブラッグミラースタックが、前記波長変換被膜の上方に配設されている、光導波路。
【請求項2】
前記波長変換被膜が、前記第1の波長領域の波長を含む放射線の照射による誘導放出によって、前記第2の波長領域の波長を含む放射線を放出するように構成された波長変換色素を含み、及び/又は、前記第1の波長領域が、約380nm~約700nmに配置され、前記第2の波長領域が、約700nm~約1.4μmに配置されている、請求項1に記載の光導波路。
【請求項3】
前記光ファイバが、空気コアと、前記空気コアに隣接するガラス又はポリマークラッドと、を有する、請求項1又は2に記載の光導波路。
【請求項4】
前記波長変換被膜が、表面プラズモンを伴うプラズモン増強機能によって、蛍光を増強するように構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の光導波路。
【請求項5】
前記波長変換被膜が、ナノ粒子フィルムと、前記ナノ粒子フィルムを覆い、前記ブラッグミラースタックが配設された酸化ケイ素又はシリカマトリクス材料と、をさらに含み、及び/又は、前記ナノ粒子フィルムが、約500nm~約3μmの範囲の厚さを有する、請求項4に記載の光導波路。
【請求項6】
前記ナノ粒子フィルムが、サイズが約5nm~約100nmの範囲のナノ粒子と、厚さが約1nm~約80nmの範囲のシェルと、を含む、請求項5に記載の光導波路。
【請求項7】
前記光学活性クラッド構造が、前記第1の端部における領域において前記光ファイバが前記波長変換被膜により少なくとも部分的に覆われるように形成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の光導波路。
【請求項8】
前記光ファイバが、その全長及び/又はその全周に沿って、前記ブラッグミラー被膜により完全に覆われている、請求項1~7のいずれか一項に記載の光導波路。
【請求項9】
約25,000kmまでの範囲の長さを有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の光導波路。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の光導波路を複数備え、複数の前記光導波路のうちの少なくとも一部が、複数の前記光導波路の前記第1の端部において2次元エリア又は3次元配置を覆うように配置され、複数の前記光導波路が、前記第1の端部において実質的に平行に配置されている、光導波路システム。
【請求項11】
複数の前記光導波路が、第1の端部が実質的に平行に配置された光導波路の第1の部分集合と、第1の端部が実質的に平行に配置された光導波路の第2の部分集合と、を含み、前記第1の部分集合及び前記第2の部分集合の複数の前記光導波路が、前記第1の部分集合の複数の前記光導波路(501)がそれらの第1の端部において前記第2の部分集合の複数の前記光導波路を横切って延びるように、それらの第1の端部で織り交ぜられている、請求項10に記載の光導波路システム。
【請求項12】
不規則幾何学構造に依拠する光閉じ込め構造であって、
非吸収材料の基板と、
前記基板の表面に形成されたナノフォトニックキャビティの構造及び前記基板の前記表面に形成された量子ドットの構造の一方により実現されるナノフォトニック共振器と、
前記基板の前記表面に形成されたマイクロ又はナノ粒子構造であり、1より小さな低比誘電率のシェルと、誘電体材料のコアと、を含み、各シェルが、前記基板の前記表面上で少なくとも2つのコアを囲む、マイクロ又はナノ粒子構造と、
を備える、光閉じ込め構造。
【請求項13】
前記シェルが、光学的に透明な誘電体マトリクス材料で形成されている、請求項12に記載の光閉じ込め構造。
【請求項14】
前記シェルが、0.5未満、0.2未満、0.1未満、又は0.05未満の比誘電率を有する、請求項12又は13に記載の光閉じ込め構造。
【請求項15】
前記基板が、硬質膜、柔軟膜、硬質フィルム、及び柔軟フィルムのうちの1つで形成されている、請求項12~14のいずれか一項に記載の光閉じ込め構造。
【請求項16】
前記シェルが、誘電体材料又はプラズモン材料で形成されている、請求項12~15のいずれか一項に記載の光閉じ込め構造。
【請求項17】
前記シェルが、金属又は非金属プラズモン材料で形成されている、請求項16に記載の光閉じ込め構造。
【請求項18】
前記コアが、陶材、マイカ、及び石英、又は有機材料、好ましくは有機ポリマーのうちの1つで構成されている、請求項12~17のいずれか一項に記載の光閉じ込め構造。
【請求項19】
前記コアが、約100nm~約1μmの範囲のコア直径を有する、請求項12~18のいずれか一項に記載の光閉じ込め構造。
【請求項20】
前記シェルが、100nmを上回るサイズであり、及び/又は、シェルに囲まれたコアが、約100nm~約1μmの範囲の最近隣間隔を有する、請求項12~19のいずれか一項に記載の光閉じ込め構造。
【請求項21】
前記コアが、円筒形状、楕円形状、ナノロッド形状、球形状、ナノチューブ形状、及びナノワイヤ形状のうちの少なくとも1つの形状で設けられている、請求項12~20のいずれか一項に記載の光閉じ込め構造。
【請求項22】
前記シェルが、半球形状及び半楕円形状の少なくとも一方の形状で設けられている、請求項12~21のいずれか一項に記載の光閉じ込め構造。
【請求項23】
シェルに囲まれた前記コアが、実質的に直線状に配置されている、請求項12~22のいずれか一項に記載の光閉じ込め構造。
【請求項24】
少なくとも一部にナノフォトニックキャビティが形成されたInAs量子ドットで形成された複数の量子ドットの構造によって、ナノフォトニック共振器が実現されている、請求項12~23のいずれか一項に記載の光閉じ込め構造。
【請求項25】
前記ナノフォトニック共振器が、前記基板に形成された複数の孔の構造により実現されている、請求項12~24のいずれか一項に記載の光閉じ込め構造。
【請求項26】
前記複数の孔が、約100nm~約500nmの範囲、好ましくは約100nm~約300nmの範囲又は約150nm~約500nmの範囲、より好ましくは約150nm~約300nmの範囲の直径を有する実質的に円形の孔である、請求項25に記載の光閉じ込め構造。
【請求項27】
前記ナノフォトニック共振器が、約50%~85%の充填率で設けられ、及び/又は、前記シェルが、200~400nmの範囲の中心直径を有し、及び/又は、シェルに囲まれたコアが、460~700nmの範囲の最近隣間隔を有する、請求項12~26のいずれか一項に記載の光閉じ込め構造。
【請求項28】
前記充填率が、約5%~約20%の範囲のばらつきを有し、及び/又は、前記中心直径が、10%~約40%のばらつきを有し、及び/又は、前記最近隣間隔が、約10%~約40%の範囲のばらつきを有する、請求項27に記載の光閉じ込め構造。
【請求項29】
非吸収材料の基板と、
前記基板の表面に形成されたマイクロ又はナノ粒子構造であり、マイクロ又はナノ粒子が頂点に配置されている正多角形状又は正多面体形状の少なくとも1つの集塊にて前記マイクロ又はナノ粒子が配置された、マイクロ又はナノ粒子構造と、
を備える、光閉じ込め構造。
【請求項30】
各集塊の前記ナノ粒子の最近隣間隔が、前記ナノ粒子の平均半径の少なくとも2.048倍の間隔を有する、請求項29に記載の光閉じ込め構造。
【請求項31】
前記ナノ粒子が、最大で150nmの平均半径を有する、請求項29又は30に記載の光閉じ込め構造。
【請求項32】
前記基板が、TiO及びSiOの少なくとも一方で形成され、及び/又は、前記基板が、誘電体材料で形成された、ナノ粒子が少なくとも表面部に堆積した多孔質膜体であり、及び/又は、前記ナノ粒子が、シリカガラス、フェリチン、熱ショックタンパク、ヴォールトタンパク、及びプロテインナノケージのうちの少なくとも1つで形成されている、請求項12~31のいずれか一項に記載の光閉じ込め構造。
【請求項33】
誘電体材料で形成された、ナノ粒子が少なくとも表面部に堆積した多孔質膜体を備える、光エネルギー貯蔵構造。
【請求項34】
前記ナノ粒子が、約300nm未満の最大サイズを有し、及び/又は、前記ナノ粒子が、球状又は半球状の形状を有し、及び/又は、ナノ粒子間の間隔が、前記ナノ粒子の平均半径の少なくとも約2.048倍であり、及び/又は、前記ナノ粒子が、シリカガラス、フェリチン、熱ショックタンパク、ヴォールトタンパク、及びプロテインナノケージのうちの少なくとも1つで形成されている、請求項33に記載の光エネルギー貯蔵構造。
【請求項35】
前記多孔質膜体が、TiO及びSiOの少なくとも一方で形成されている、請求項33又は34に記載の光エネルギー貯蔵構造。
【請求項36】
請求項10又は11に記載の光導波路システム又は請求項1~9のいずれか一項に記載の光導波路と、前記光導波路システム又は前記光導波路の各端部における請求項33~35のいずれか一項に記載の光エネルギー貯蔵構造及び請求項12~32のいずれか一項に記載の光閉じ込め構造の少なくとも一方と、を備える光エネルギー貯蔵システム。
【請求項37】
液体を貯蔵するためのコンテナを備えるエネルギー貯蔵及び/又は変換システムであって、前記コンテナが、非直線状並置の耐熱セラミックタイルで構成された内面を有し、及び/又は、前記コンテナが、電磁放射線を閉じ込めるために内部に分散されたマイクロ構造体及び/若しくはナノ構造体を含む液体、並びに/又は、前記液体に浸漬された高導電性複合材及びグラファイトを含む、エネルギー貯蔵及び/又は変換システム。
【請求項38】
請求項10又は11に記載の光導波路システム、請求項1~9のいずれか一項に記載の光導波路、及び請求項36に記載の光エネルギー貯蔵システムのうちの少なくとも1つをさらに備え、前記第1の端部と反対の前記光導波路システム及び/又は前記光導波路の第2の端部が、前記光導波路システムから放出された放射線を前記液体に光学結合させるように構成されている、請求項37に記載のエネルギー貯蔵及び/又は変換システム。
【請求項39】
前記高導電性複合材が、硝酸塩混合物及び/若しくは炭素部分等の相変化材料で構成され、及び/又は、前記液体が、浸漬された金コア及び/若しくは銀コアを有するナノ粒子、銅ナノ粒子、並びに/又は酸化銅ナノ粒子をさらに含む、請求項37又は38に記載のエネルギー貯蔵及び/又は変換システム。
【請求項40】
前記液体中に分散された前記マイクロ構造体及び/又はナノ構造体が、コア及び前記コアのシェルとして作用するフィラメントで構成されている、請求項37~39のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵及び/又は変換システム。
【請求項41】
前記コンテナにおける配置及び/若しくは前記コンテナへの光学結合がなされた請求項12~32のいずれか一項に記載の光閉じ込め構造、並びに/又は、前記コンテナにおける配置及び/若しくは前記コンテナへの光学結合がなされた請求項33~35のいずれか一項に記載の光エネルギー貯蔵システムと、をさらに備える、請求項37~40のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵及び/又は変換システム。
【請求項42】
当該エネルギー貯蔵及び/又は変換システムを少なくとも1つの外部エネルギー供給システムと接続するように構成された少なくとも1つの接続端子をさらに備える、請求項37~41のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵及び/又は変換システム。
【請求項43】
前記少なくとも1つの接続端子が、当該エネルギー貯蔵及び/又は変換システムを蒸気供給システム及び電気エネルギー網の少なくとも一方と接続するように構成されている、請求項42に記載のエネルギー貯蔵及び/又は変換システム。
【請求項44】
前記少なくとも1つの接続端子が、熱エネルギーフィードバックシステムと接続するように構成されている、請求項42又は43に記載のエネルギー貯蔵及び/又は変換システム。
【請求項45】
ブラッグミラー被膜を含む光導波路の製造のための製造システムであって、
光ファイバが設けられたリールと、
真空環境から大気環境を分離する入力絞りと、
それぞれがポンプ及び絞りと関連付けられ、プラズマ低指数部及びプラズマ高指数部を含む、複数のチャンバプロセス部と、
を備える、製造システム。
【請求項46】
前記リールから前記光ファイバを引き出す際の入力側に色素被覆及び/又は量子ドット被覆のための製造部をさらに備える、請求項45に記載の製造システム。
【請求項47】
ナノ粒子で被覆するための製造部をさらに備える、請求項45又は46に記載の製造システム。
【請求項48】
請求項1~9のいずれか一項に記載の光導波路を製造するように構成されている、請求項45~47のいずれか一項に記載の製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、光導波路、光導波路システム、光エネルギー貯蔵構造、光閉じ込め構造、光エネルギー貯蔵システム、並びにエネルギー貯蔵及び/若しくは変換システムに関する。特に、本願は、光導波路システムに用いられる光ファイバ及び光学活性クラッド構造を備える光導波路並びにこのような光導波路システムを備えるエネルギー貯蔵システムに関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギーは、如何なる生物も生きていくために必要とするため、様々な形態において、この世界の生命及び発展にとって基本的に重要である。また、エネルギーは、生物にとって必要不可欠であるのみならず、文明にとっても基本的なものであり、技術及び開発は、この世界における人類の共存に影響を及ぼす。技術及び開発の進展の基礎となる下地には、発電及び配電によってもたらされるものがある。この発電及び配電は、技術及び開発が我々の生活に及ぼす影響の増加に伴うエネルギー需要の増大を満たす必要がある。
【0003】
エネルギー源としての化石燃料による汚染への懸念が高まっているため、再生可能エネルギーの利用を増やすための国際協定及び各国のエネルギー行動計画が大幅に増加している。太陽は、地球上の生命が存在するための基本的なエネルギー源であるが、太陽エネルギーに基づく世界の発電は、世界の総発電量のごく一部に過ぎない。太陽エネルギーを発電に利用する場合の主な課題として、太陽エネルギーに基づく電力ユニットの備え付けの高いコストが挙げられる。この状況を改善するための一般的な方略は、太陽電池の発電の効率を上げること、又は、電源から電力消費者への送電における電力損失を減らすことを対象とする。
【0004】
本願の主題の基礎となる基本的な考え方は、光導波路における光子エネルギーの伝送及び光の閉じ込めを対象とする。従来、光導波路は、電気信号に基づくデータの伝送の代替として、光学データの伝送に使用されている。
【0005】
既知の光導波路に鑑みて、本発明の目的は、光学エネルギーを伝送する効率が改善された光導波路を提供することである。さらに、改良された導波路システム並びにそのように改良された光導波路に依拠する導波路システムを備えるエネルギー貯蔵及び/若しくは変換システムを提供することを目的とする。
【発明の概要】
【0006】
上記目的は、種々態様において、独立請求項1に記載の光導波路と、請求項10に記載の光導波路システムと、請求項12に記載の光閉じ込め構造と、請求項29に記載の光閉じ込め構造と、請求項33に記載の光エネルギー貯蔵構造と、請求項36に記載の光エネルギー貯蔵システムと、請求項37に記載のエネルギー貯蔵及び/又は変換システムと、により解決される。これらのより有利な実施形態については、付随する他の従属請求項2~9、11、13~28、30~32、34、35、及び38~44において規定される。
【0007】
本開示の第1の態様においては、光導波路が提供される。第1の態様の例示的な実施形態によれば、光導波路は、ファイバコアを含む光ファイバと、当該光導波路の第1の端部においてファイバコアの少なくとも一部に重なる光学活性クラッド構造と、を備える。ここで、光学活性クラッド構造は、第1の波長領域における高い透過率と、第1の波長領域の波長よりも長い波長の第2の波長領域における高い反射率と、を有するブラッグミラースタックと、光ファイバのファイバコアに重なる波長変換被膜であり、第1の波長領域の波長を含む放射線を、第2の波長領域の波長を含む放射線へと変換するように構成されている、波長変換被膜と、を含む。これらの実施形態において、ブラッグミラースタックは、波長変換被膜の上方に配設されている。
【0008】
このような光導波路は、光ファイバ上の光学活性クラッド構造により改善された光透過特性を示すほか、光導波路の第1の端部においてファイバコアの少なくとも一部に重なる光学活性クラッド構造により可能となる改善された集光を示す。特に、光学活性クラッド構造は、当該光学活性クラッド構造を介した光導波路への光の結合を可能にすることで、光を光導波路に結合するための入力面として側面を提供する。光導波路の第1の端部において光学活性クラッド構造により覆われた部分のサイズにより、光導波路の光軸に沿った光導波路への光の結合と比較して、光導波路により光がより効果的に集められ得る。その理由として、光導波路の集光面として用いられる部分のサイズは、光導波路の半径、特に断面とは独立に選択され得る。
【0009】
第1の態様の例示的ないくつかの実施形態によれば、波長変換被膜は、第1の波長領域の波長を含む放射線の照射による誘導放出によって、第2の波長領域の波長を含む放射線を放出するように構成された波長変換色素を含んでいてもよい。誘導放出の使用は、再放出の回避を可能にする。この追加又は代替として、第1の波長領域は、約380nm~約700nmに配置されていてもよく、第2の波長領域は、約700nm~約1.4μm(約700nm~約880nmの範囲又は約750nm~約1.4μmの範囲等)に配置されていてもよい。誘導放出によって第2の波長領域の波長を含む放射線を放出するように構成された波長変換色素を含む波長変換被膜の使用は、誘導放出により放出される放射線のコヒーレンスを維持しつつ、光の損失の抑制を可能にする。したがって、光導波路における近IR光の伝送が可能となり、生物学、医療、農業用途のほか、太陽熱に基づく垂直淡水化及び太陽燃料等、多様な分野において採用することも可能であるため都合が良い。ただし、これは限定的なものではなく、第1の波長領域は、約300nmよりも短い波長により規定されていてもよい。一方、第2の波長領域は、約300nm~約400nmの範囲の波長により与えられていてもよい。これにより、導波路は、室内農業におけるUV光源として使用され得るUV光を伝送可能となる。例えば、約380nm~約1.4μmに配置された第1及び第2の波長領域は、比較的高い分光放射照度の太陽光のスペクトルの一部の使用を可能にする。いくつかの実例において、第1の波長領域は、UVスペクトルの一部とともに可視光を網羅し得る一方、第2の波長領域は、約700nm~約880nmの領域の波長により与えられる場合、太陽スペクトルのO及びHO吸収帯に曝されることなく、赤外光側で赤色光の一部を網羅し得る。実際のところ、実質的に吸収帯のない太陽スペクトルの赤色及び赤外部は、可視光領域のピークの分光放射照度で光導波路内を伝送され得る。
【0010】
第1の態様の例示的ないくつかの実施形態によれば、光ファイバは、空気コアと、空気コアに隣接するガラス又はポリマークラッドと、を有していてもよい。空気コアのファイバの利点として、空気コアを介して伝送される光は、ガラス又はポリマーのコアを有する光ファイバにおいて伝送される光よりも減衰が少ない。
【0011】
第1の態様の例示的ないくつかの実施形態によれば、波長変換被膜は、表面プラズモンを伴うプラズモン増強機能によって、蛍光を増強するように構成されていてもよい。プラズモン増強においては、光がナノ構造体と相互作用することにより、色素等の蛍光ベースの材料の感度を増強する電磁界を生成する。ここで、一実例においては、狭い共振の格子プラズモンをサポートする長距離回折結合を伴う周期的な金属、メタマテリアル、又は非金属ナノ粒子構成/アレイが使用されるようになっていてもよい。いくつかの実例によれば、コア/シェルナノ粒子の形状は、約5nm~約100nmの範囲の調節可能な直径を取り入れることができ、(例えば、シリカ又はSiOで構成された)シェルの厚さの範囲が約1nm~約80nmであってもよい。
【0012】
上述の例示的な実施形態のいくつかの実例において、波長変換被膜は、光ファイバ上に配設された金コア及び/又は銀コア等の金属ナノ粒子で形成されたナノ粒子フィルムを含んでいてもよい。ここで、特別な一実例において、波長変換被膜は、約7.5nmのシリカシェルを伴う約15nmの金コアを含むナノ粒子構造を含んでいてもよい。したがって、ナノ粒子フィルムを波長変換被膜に含むことで誘導放出の増強が採用されるようになっていてもよく、波長変換被膜は、光ファイバ及び光学活性クラッド構造中のブラッグミラースタックに対して良好な接着を与え得る。
【0013】
第1の態様の例示的ないくつかの実施形態によれば、波長変換被膜は、ナノ粒子フィルムを覆い、ブラッグミラースタックが配設された酸化ケイ素又はシリカマトリクス材料をさらに含んでいてもよい。この追加又は代替として、ナノ粒子フィルムは、約500nm~約3μmの範囲、好ましくは約1μm~約2μmの範囲、より好ましくは約1.1μm~約1.5μmの範囲の厚さ(約1.2μmの厚さ等)を有していてもよい。酸化ケイ素マトリクス材料は、粒子フィルムのナノ粒子コアと波長変換被膜の波長変換色素との間にスペーサ又はプラズモンナノレーザを提供し得る。さらに、酸化ケイ素マトリクス材料によって、ナノ粒子フィルムへの波長変換色素の接着を改善可能である。この追加又は代替として、ナノ粒子フィルムの厚さは、ナノ粒子フィルムの有利な光学密度を実現する。
【0014】
第1の態様の例示的ないくつかの実施形態によれば、光学活性クラッド構造は、第1の端部における領域において光ファイバが波長変換被膜により少なくとも部分的に覆われるように形成されていてもよい。すなわち、光導波路のクラッドの一部が集光面として機能するのが好都合である。さらに、第1の端部における領域のみにおいて、光ファイバを波長変換被膜により覆うことで、光導波路の製造が簡素化され、製造コストが抑えられる。
【0015】
第1の態様の例示的ないくつかの実施形態によれば、光ファイバは、その全長及び/又はその全周に沿って、ブラッグミラー被膜により完全に覆われていてもよい。したがって、光導波路において伝送される光は、その全長及び/又はその全周に沿って光導波路に閉じ込められ得る。
【0016】
第1の態様の例示的ないくつかの実施形態によれば、この光導波路は、約5nm~約7500kmの範囲の長さを有していてもよい。従来の光導波路と比較して、第1の態様の実施形態に係る導波路は、長距離で製造される。これまでのところ、従来の空気コアファイバは、850nmのマルチモード光ファイバの場合で最大860mの長さしか製造できず、TIA及びIEEEの規格を考慮すると、最悪のケースを想定している。一方、速度40ギガビットの1310nmで動作するシングルモード光の場合は、最大40kmの長さが可能である。これに対して、本発明の例示的な実施形態に係る光導波路は、最大数千kmの長さで提供され得るため都合が良い。
【0017】
本開示の第2の態様によれば、光導波路システムが提供される。ここで、例示的な実施形態において、この光導波路システムは、第1の態様の光導波路を複数備え、光導波路のうちの少なくとも一部が、光導波路の第1の端部において2次元エリアを覆うように配置されている。ここで、これら光導波路は、第1の端部において実質的に平行に配置されている。したがって、この光導波路システムの2次元或いは3次元集光領域が設けられていてもよい。
【0018】
第2の態様の例示的ないくつかの実施形態において、光導波路は、第1の端部が平行に配置された光導波路の第1の部分集合と、第1の端部が平行に配置された光導波路の第2の部分集合と、を含んでいてもよく、第1の部分集合及び第2の部分集合の光導波路は、第1の部分集合の光導波路がそれぞれの第1の端部において第2の部分集合の光導波路を横切って延びるように、それぞれの第1の端部で織り交ぜられている。光導波路の織り交ぜ又は交互配置は、有利な2次元集光領域を表す。したがって、この光導波路システムを使用することにより、任意の集光エリアが製造され得る。
【0019】
本開示の第3の態様においては、光エネルギー貯蔵構造が提供される。ここで、例示的ないくつかの実施形態において、この光エネルギー貯蔵構造は、誘電体材料で形成され、ナノ粒子が少なくとも表面部に堆積した多孔質膜体を含む。このような光エネルギー貯蔵構造は、光エネルギーの捕捉及び貯蔵によって将来的な使用を可能にする。基本的な考え方は、ナノ粒子とともに多孔質膜体が提供する不規則構造を使用して、光を光貯蔵構造にトラップすることにより、光エネルギーを光エネルギー貯蔵構造に貯蔵することである。このように貯蔵された光エネルギーは、貯蔵光が光エネルギー貯蔵構造から逃れ得る特定の条件を満たす外部光パルスによってトリガされるまで保持され得る。
【0020】
ここで、例示的ないくつかの実施形態によれば、ナノ粒子は、約300nm未満の最大サイズを有していてもよい。したがって、ナノ粒子では、有利な弾性散乱プロセスが生じ得る。この追加又は代替として、ナノ粒子は、球状又は半球状の形状を有していてもよく、これは、ナノ粒子での散乱に影響を及ぼすため都合が良い。この追加又は代替として、ナノ粒子間の間隔は、ナノ粒子の平均半径の少なくとも約2.048倍であってもよい。その結果、散乱光の不安定な周期軌道が指数関数的に急増するという考えに基づくカオス散乱又は不規則散乱が生じ、これは、いわゆる双曲線不変集合を含むカオス散乱が提供されることを意味する。この追加又は代替として、ナノ粒子は、好適なナノ粒子の有利な例を提供するシリカガラス、フェリチン、熱ショックタンパク、ヴォールトタンパク、及びプロテインナノケージのうちの少なくとも1つで形成されていてもよい。
【0021】
ここで、例示的ないくつかの実施形態によれば、多孔質膜体は、TiO及びSiOの少なくとも一方で形成されていてもよい。これらの材料は、貯蔵光の吸収による経時的なエネルギーの損失を回避する耐熱材料の例示的な実例を表す。
【0022】
本開示の第4の態様においては、光エネルギー貯蔵システムが提供される。ここで、例示的な実施形態において、この光エネルギー貯蔵システムは、第2の態様の光導波路システムと、光導波路システムの各端部における第3の態様の光エネルギー貯蔵構造、後述のような第5の態様の光閉じ込め構造、及び後述のような第6の態様の光閉じ込め構造のうちの少なくとも1つと、を備えていてもよい。このようなシステムにおいては、1つの光エネルギー貯蔵システムが集光器として使用され、収集光が光導波路システムにより別の光エネルギー貯蔵構造に運ばれて貯蔵され得るのが好都合である。
【0023】
本開示の第5の態様においては、不規則幾何学構造に依拠する光閉じ込め構造が提供される。ここで、例示的な実施形態において、この光閉じ込め構造は、非吸収材料の基板と、基板の表面に形成されたナノフォトニックキャビティの構造及び基板の表面に形成された量子ドットの構造の一方により実現されるナノフォトニック共振器と、基板の表面に形成されたマイクロ又はナノ粒子構造であり、1より小さな低比誘電率のシェルと、誘電体材料のコアと、を含み、各シェルが、基板の表面上で少なくとも2つのコアを囲む、マイクロ又はナノ粒子構造と、を備える。不規則幾何学構造は、密度又は充填率等のナノフォトニック共振器のパラメータが少なくとも5%の変化等、ゼロを超える最小の変化を有するという点において、ナノフォトニック共振器構造における不規則のレベルを示す。これにより光が集められ得る。
【0024】
第5の態様の例示的な実施形態によれば、シェルは、光学的に透明な誘電体マトリクス材料で形成されていてもよい。
【0025】
第5の態様の例示的な実施形態によれば、シェルは、0.5未満、0.2未満、0.1未満、又は0.05未満の比誘電率を有していてもよい。
【0026】
第5の態様の例示的な実施形態によれば、基板は、硬質膜、柔軟膜、硬質フィルム、及び柔軟フィルムのうちの1つで形成されていてもよい。
【0027】
第5の態様の例示的な実施形態によれば、シェルは、誘電体材料又はプラズモン材料で形成されていてもよい。
【0028】
第5の態様の例示的な実施形態によれば、シェルは、金属又は非金属プラズモン材料で形成されていてもよい。
【0029】
第5の態様の例示的な実施形態によれば、コアは、陶材、マイカ、及び石英、又は有機材料、好ましくは有機ポリマーのうちの1つで構成されていてもよい。
【0030】
第5の態様の例示的な実施形態によれば、コアは、約100nm~約1μmの範囲のコア直径を有していてもよい。
【0031】
第5の態様の例示的な実施形態によれば、シェルは、100nmを上回るサイズであってもよく、及び/又は、シェルに囲まれたコアは、約100nm~約1μmの範囲の最近隣間隔を有していてもよい。
【0032】
第5の態様の例示的な実施形態によれば、コアは、円筒形状、楕円形状、ナノロッド形状、球形状、ナノチューブ形状、及びナノワイヤ形状のうちの少なくとも1つの形状で設けられていてもよい。
【0033】
第5の態様の例示的な実施形態によれば、シェルは、半球形状及び半楕円形状の少なくとも一方の形状で設けられていてもよい。
【0034】
第5の態様の例示的な実施形態によれば、シェルに囲まれたコアは、実質的に直線状に配置されていてもよい。
【0035】
第5の態様の例示的な実施形態によれば、ナノフォトニック共振器は、少なくとも一部にナノフォトニックキャビティが形成されたInAs量子ドットで形成された量子ドットの構造により実現されていてもよい。
【0036】
第5の態様の例示的な実施形態によれば、ナノフォトニック共振器は、基板に形成された孔の構造により実現されていてもよい。
【0037】
ここで、いくつかの実例において、孔は、約100nm~約500nmの範囲、好ましくは約100nm~約300nmの範囲又は約150nm~約500nmの範囲、より好ましくは約150nm~約300nmの範囲の直径を有する実質的に円形の孔であってもよい。
【0038】
第5の態様の例示的な実施形態によれば、ナノフォトニック共振器は、約50%~85%の充填率で提供されていてもよく、及び/又は、シェルは、200~400nmの範囲の中心直径を有していてもよく、及び/又は、シェルに囲まれたコアは、460~700nmの範囲の最近隣間隔を有していてもよい。
【0039】
第5の態様の例示的な実施形態によれば、充填率は、約5%~約20%の範囲のばらつきを有していてもよく、及び/又は、中心直径は、10%~約40%のばらつきを有していてもよく、及び/又は、最近隣間隔は、約10%~約40%の範囲のばらつきを有していてもよい。
【0040】
本開示の第6の態様においては、光閉じ込め構造が提供される。ここで、例示的な実施形態において、この光閉じ込め構造は、非吸収材料の基板と、基板の表面に形成されたマイクロ又はナノ粒子構造であり、マイクロ又はナノ粒子が頂点に配置されている正多角形状又は正多面体形状の少なくとも1つの集塊にてマイクロ又はナノ粒子が配置された、マイクロ又はナノ粒子構造と、を備える。これにより光が集められ得る。
【0041】
第6の態様の例示的な実施形態によれば、各集塊のナノ粒子の最近隣間隔が、ナノ粒子の平均半径の少なくとも2.048倍の間隔を有していてもよい。
【0042】
第5及び/又は第6の態様の例示的な実施形態によれば、ナノ粒子は、最大で150nmの平均半径を有していてもよい。
【0043】
第5及び/又は第6の態様の例示的ないくつかの実施形態に係る用途において、この光閉じ込め構造は、太陽電池又は太陽電池構成等に搭載されていてもよい。これにより集光の効率が向上し得る。
【0044】
第6の態様の例示的な実施形態によれば、基板は、TiO及びSiOの少なくとも一方で形成されていてもよい。この追加又は代替として、基板は、誘電体材料で形成され、ナノ粒子が少なくとも表面部に堆積した多孔質膜体であってもよく、及び/又は、ナノ粒子は、シリカガラス、フェリチン、熱ショックタンパク、ヴォールトタンパク、及びプロテインナノケージのうちの少なくとも1つで形成されていてもよい。これにより、基板のコスト効率的な提供及び/又は簡単な処理が可能となる。
【0045】
本開示の第7の態様においては、エネルギー貯蔵及び/又は変換システムが提供される。第5の態様の例示的ないくつかの実施形態によれば、このエネルギー貯蔵及び/又は変換システムは、液体を貯蔵するためのコンテナを備え、コンテナは、非直線状並置の耐熱セラミックタイルで構成された内面を有し、及び/又は、コンテナは、電磁放射線を閉じ込めるために分散されたマイクロ構造体及び/若しくはナノ構造体を含む液体、並びに/又は、液体に浸漬された高導電性複合材及びグラファイトを含む。例えば、コンテナは、断熱材、表面ライニング、耐熱性レンガ又は耐火性レンガ等の熱処理材料で構成されていてもよい。ここで、いくつかの特別な実例において、このようなレンガは、低温の場合に酸化マグネシウム等の元素で構成され、高温の場合にシリカ等の元素で構成され得る。また、この追加又は代替として、コンテナの少なくとも内面壁を構成するための材料として、HRSIタイル等の高温(すなわち、1000℃超)再利用可能断熱体、並びに/又は、炭化タンタル(TaC)及び炭化ハフニウム(HfC)を含む高耐熱性セラミックスを採用することも可能である。このようなエネルギー貯蔵及び変換システムは、エネルギー貯蔵及び/又は変換を目的として、電磁放射線のコンテナへの閉じ込めに用いられるようになっていてもよい。
【0046】
第7の態様の例示的ないくつかの実施形態によれば、このエネルギー貯蔵及び/又は変換システムは、第2の態様の光導波路システムであり、液体がコンテナに貯蔵され、第1の端部と反対の光導波路システムの第2の端部が、光導波路システムから放出された放射線を液体中に案内するように構成された、光導波路システムと、第4の態様に係る光エネルギー貯蔵システム(例えば、液体と接触した光閉じ込め構造又はコンテナ上の光閉じ込め構造)と、をさらに備えていてもよい。さらにここで、いくつかの実例において、液体は、高導電性複合材及び/又はグラファイトが浸漬されていてもよい。このようなエネルギー貯蔵及び/又は変換システムは、光導波路システムにより伝送された光学エネルギーを効率的に使用することにより、熱を生成してコンテナに貯蔵するようにしてもよい。
【0047】
第7の態様の例示的ないくつかの実施形態において、高導電性複合材は、硝酸塩混合物及び/若しくは炭素部分等の相変化材料で構成されていてもよく、及び/又は、液体は、浸漬された金コア及び/若しくは銀コアを有するナノ粒子、並びに/又は、銅ナノ粒子及び/若しくは酸化銅ナノ粒子を含むナノ粒子をさらに含んでいてもよい。このような高導電性複合材及びナノ粒子の実現は、液体における光エネルギーの効率的な吸収を可能にし得る。
【0048】
第7の態様の例示的ないくつかの実施形態によれば、液体の熱容量は、水の熱容量以下であってもよい。例えば、液体は、水であってもよいし、水の熱容量と同様か、それより小さい熱容量を有する液体であってもよい。したがって、例えば液体の熱が電気エネルギーの生成に使用されるシステムにおいては、水の良好な加熱が実現され得る。この追加又は代替として、液体は、気化のエンタルピーが低くてもよく、これは、例えば電力を生成するためのシステムにおいてエネルギー貯蔵及び/又は変換システムを使用する際に、光学エネルギーが液体の気化に効率的に使用され、気化した液体の別途使用により、タービンによって電気エネルギーが生成され得ることを意味する。エネルギー貯蔵及び/又は変換システムが熱エネルギー貯蔵として使用される場合、液体は、高気化エンタルピー及び高熱容量を有するのが好ましく、水の気化エンタルピー及び水の熱容量以上であるのが好ましい。
【0049】
第7の態様の例示的ないくつかの実施形態によれば、液体中に分散されたマイクロ構造体及び/又はナノ構造体は、コア及びコアのシェルとして作用するフィラメントで構成されていてもよい。例えば、コアは、球が変形されたものであってもよい。いくつかの実例において、フィラメントは、フィラメント直径が約244nm±50nm、最近隣間隔が約580nm±120nm、平均スケール空隙充填率(例えば、全容積に対する空隙の容積の比)が約68%±7%のフィラメントのネットワークにて提供されていてもよい。いくつかの特別な例において、ナノ構造体は、キチン(若しくは、屈折率が1.56の同等のポリマー)、空気、並びに/又は同様の直径のTiO及びラテックス球の混合物を含んでいてもよい。
【0050】
第7の態様の例示的ないくつかの実施形態によれば、第1の端部と第2の端部との間の間隔は、約5nm~約7500kmの範囲であってもよい。したがって、長距離にわたるエネルギー貯蔵及び/又は変換システムまでの光子エネルギーの伝送が確立され得る。
【0051】
第7の態様の例示的ないくつかの実施形態によれば、光導波路システムは、光エネルギーの輸送に用いられる第1の光導波路と、光学データの伝送に用いられる第2の光導波路と、を備えていてもよい。例えば、第2の光導波路は、データシステムと接続され得るデータ端子を備えていてもよい。例えば、第2の光導波路は、データ伝送ファイバとして機能し得る。したがって、第1の態様において提供されるような光導波路は、エネルギー貯蔵及び/又は変換システムにおいて光学エネルギーを輸送し、データ伝送システムにおいて光学データを伝送するように構成された混成導波路として機能し得る。
【0052】
第7の態様の例示的ないくつかの実施形態によれば、第3の態様の光エネルギー貯蔵構造は、コンテナに配置されていてもよい。したがって、光エネルギー貯蔵構造がコンテナ内に貯蔵されたエネルギーを放出することにより、コンテナ内の液体が光エネルギー貯蔵構造内に貯蔵された光エネルギーを放出させ、放出されたエネルギーがコンテナに含まれる液体によって熱エネルギーに変換され得るように、これらの例示的な実施形態における第5の態様のエネルギー変換システムがエネルギー貯蔵構造と相互作用し得るのが好都合である。
【0053】
第7の態様の例示的ないくつかの実施形態によれば、このエネルギー貯蔵及び/又は変換システムは、コンテナ中の配置及び/又はコンテナに対する光学的結合がなされた上述の第5及び第6の態様の少なくとも一方の光閉じ込め構造をさらに含んでいてもよい。この追加又は代替として、このエネルギー貯蔵及び/又は変換システムは、コンテナ中の配置及び/又はコンテナに対する光学的結合がなされた第4の態様の光エネルギー貯蔵構造をさらに含んでいてもよい。したがって、伝送構造を必要としない現地集光により、エネルギー貯蔵及び/又は変換システムの光学的効率が向上し得るとともに、集光が増大し得る。
【0054】
第7の態様の例示的ないくつかの実施形態によれば、このエネルギー貯蔵及び/又は変換システムは、当該エネルギー貯蔵及び/又は変換システムを少なくとも1つの外部エネルギー供給システムと接続するように構成された少なくとも1つの接続端子をさらに備えていてもよい。したがって、エネルギー貯蔵及び/又は変換システムにより与えられる熱及び/又は電気エネルギーは、消費者に対するエネルギー供給として与えられ得る。ここで、いくつかの実例において、少なくとも1つの接続端子は、一致したインフラに熱及び/又は電気エネルギーが供給され得るように、エネルギー貯蔵及び/又は変換システムを蒸気供給システム及び電気エネルギー網の少なくとも一方と接続するように構成されていてもよい。例えば、少なくとも1つの接続端子は、熱エネルギーフィードバックシステムと接続されることにより、フィードバック接続端子として提供され、エネルギー貯蔵及び/又は変換システムにフィードバックされるエネルギーを貯蔵してエネルギーの浪費を抑えるように構成されていてもよい。
【0055】
第1の態様及び/又は第2の態様の実施形態は、本発明者が「LINERGY」と称する光エネルギー複合伝搬システムの実例を表す。
【0056】
第3の態様、第5の態様、及び/又は第6の態様の実施形態は、本発明者が「OPERAS」と称する光エネルギー貯蔵の実例を表す。
【0057】
第7の態様の実施形態は、本発明者が「HYDRAS」と称する親水コロイド吸収システムの実例を表す。
【0058】
本発明の他の利点及び特徴については、例示的ないくつかの実施形態に関する以下の説明から明らかとなるであろう。
【0059】
以下、原寸に比例しない添付の図面に関して、本開示の例示的ないくつかの実施形態をより詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】本開示の例示的ないくつかの実施形態に係る、光導波路を模式的に示した図である。
図2図1の光導波路の拡大部の模式断面図である。
図3】本開示の例示的ないくつかの実施形態に係る、ブラッグミラースタックの透過特性との比較として、太陽光の分光放射照度と波長との間の関係を模式的に示した図である。
図4】本開示の例示的な種々実施形態に係る、様々な角度での光照射に応じたブラッグミラースタックの透過と波長との間の関係を模式的に示した図である。
図5】3準位系における誘導放出の方式を模式的に示した図である。
図6a】本開示の例示的な種々実施形態に係る、ナノ粒子フィルムの様々な実施形態を示した図である。
図6b】本開示の例示的な種々実施形態に係る、ナノ粒子フィルムの様々な実施形態を示した図である。
図7】本開示の例示的な種々実施形態に係る、ナノ粒子のサイズが異なる場合の光学密度と波長との間の関係を模式的に示した図である。
図8】本開示の例示的な種々実施形態の背景において、ブラッグミラースタックが光ファイバに及ぼす影響を模式的に示した図である。
図9】本開示の例示的な種々実施形態に係る、光学活性クラッド構造を光ファイバ上に構成するための製造システムを模式的に示した図である。
図10】本開示の例示的な種々実施形態に係る、光導波路システムを模式的に示した図である。
図11a】本開示の例示的な種々実施形態に係る、光導波路システムを模式的に示した図である。
図11b】本開示の例示的な種々実施形態に係る、光導波路システムを模式的に示した図である。
図12】本開示の例示的な種々実施形態に係る、エネルギー貯蔵及び/又は変換システムを模式的に示した図である。
図13図12のエネルギー貯蔵及び/又は変換システムのコアの拡大部を模式的に示した図である。
図14】例示的ないくつかの実施形態に係る、光エネルギー貯蔵構造を模式的に示した図である。
図15】例示的ないくつかの代替実施形態に係る、エネルギー貯蔵及び/又は変換システムを模式的に示した図である。
図16】他のいくつかの代替実施形態に係る、エネルギー貯蔵及び/又は変換システムを模式的に示した図である。
図17】本開示の例示的ないくつかの実施形態に係る、光閉じ込め構造の拡大部の模式上面図である。
図18a】本開示の例示的ないくつかの実施形態に係る、光閉じ込め構造の基板の表面上の3つの球状ナノ粒子の配置を模式的に示した図である。
図18b】光閉じ込め構造の基板の表面上のナノ粒子の他のいくつかの例示的な配置に係る、複数のナノ粒子の3D配置を模式的に示した図である。
図18c】光閉じ込め構造の基板の表面上のナノ粒子の他のいくつかの例示的な配置に係る、複数のナノ粒子の3D配置を模式的に示した図である。
図18d】光閉じ込め構造の基板の表面上のナノ粒子の他のいくつかの例示的な配置に係る、複数のナノ粒子の3D配置を模式的に示した図である。
図18e】光閉じ込め構造の基板の表面上のナノ粒子の他のいくつかの例示的な配置に係る、複数のナノ粒子の3D配置を模式的に示した図である。
図18f】光閉じ込め構造の基板の表面上のナノ粒子の他のいくつかの例示的な配置に係る、複数のナノ粒子の3D配置を模式的に示した図である。
図19】他のいくつかの代替実施形態に係る、エネルギー貯蔵及び/又は変換システムを模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
図1及び図2に関して、例示的ないくつかの実施形態に係る光導波路をより詳しく説明する。図1は、光ファイバ2と光学活性クラッド構造とを備える光導波路1の模式断面図であり、光学活性クラッド構造は、光導波路1の第1の端部において光ファイバ2の少なくとも一部の上に形成されている。光導波路1の第1の端部は、光ファイバ2の2つの端部の一方、特に、光導波路1が集光の用途で使用される場合に光が光ファイバ2に結合される光ファイバ2の端部に対応し得る。したがって、第1の端部は、光導波路1の「入力」とも考えられる。
【0062】
ここで、例示的ないくつかの実施形態によれば、光ファイバ2は、ファイバコア3と、ファイバコア3に隣接するガラス又はポリマークラッド5と、を備える。ファイバコア3は、空気コアであってもよいし、ガラス又はポリマーコアであってもよい。例えば、ファイバコア3は、約10μm~約1mmの範囲の直径を有していてもよい。いくつかの実例において、光ファイバ2は、約20μm~約1.5mm(例えば、約300μm~約600μm(約400μm~約500μm等)の範囲)の直径を有していてもよい。特別な一実例において、光ファイバ2は、如何なる(任意選択としての)保護層(図示せず)も考慮することなく、約469μmの直径を有していてもよい。いくつかの実例において、クラッド5は、約100nm~約500μm(例えば、約1μm~約100μm(約50μm~約100μm等))の範囲(約86μm等)の直径を有していてもよい。
【0063】
引き続き図1を参照して、光学活性クラッド構造は、ブラッグミラースタック9及び波長変換被膜7を含み、ブラッグミラースタック9が波長変換被膜7の上に配設されている。さらに、導波路1は、図1において参照番号11により模式的に示すようなバッファ被膜・ジャケットをさらに備えていてもよい。バッファ被膜・ジャケットは、ポリイミド、アクリル、又はシリコンで形成されていてもよく、機械的損傷に対する保護のほか、湿度に対する保護として機能し得る。バッファ被膜・ジャケットは、少なくとも第1の波長領域において光学的に透明であることにより、少なくとも第1の波長領域の波長を有する光SLが実質的に減衰することなく当該バッファ被膜・ジャケットを通過し得るようになっていてもよい。
【0064】
図1に示すように、ブラッグミラースタック9は、誘電体材料の複数の薄層で構成された誘電体ミラーを表し得る。有利な実施形態によれば、ブラッグミラースタック9は、反射率を最大化するように製造され、低屈折率の層と交互配置された高屈折率の薄層のスタックから成る。これらの層の厚さは、異なる高屈折率層からの反射の経路長差がミラーの設計波長の整数倍となるように選定されている。低屈折率層からの反射は、経路長差において厳密に半波長となるが、高屈折率から低屈折率への境界と比較して、低屈折率から高屈折率への境界には、面シフトに180°の差があり、同じく同相になることを意味する。ブラッグミラースタック9は、様々な異なる波長の光で規定の反射率を有するように設計可能であり、当業界では、狭い波長範囲で99.999%以上の値を有する超高反射率ミラーが実現されている。例えば、ブラッグミラースタック9は、層5、7、及び9から成る第1の側面を表し、図1に示すように、照射と相互作用することになる。例えば、ブラッグミラースタック9は、第1の波長領域における高い透過率と、第1の波長領域の波長よりも長い波長の第2の波長領域における高い反射率と、を有するように設計されていてもよい。
【0065】
図1の背景において上述したような導波路1等、光を集めて伝送する光導管は、「複合エネルギーファイバ」又は「CEファイバ」と称する場合もあるが、これらの名称は、本発明者が光導管自体の物理的なファイバに与えたものである。
【0066】
図3に関して、ブラッグミラースタック9の光学特性をより詳しく説明する。図3は、ブラッグミラースタック9の例示的な透過-波長関係によって、透過率と反射率との間の関係をダイアグラム3bに示している。さらに、ダイアグラム3aは、UV領域、可視光領域(ダイアグラム3aの「可視」参照)、及び赤外領域に分割された太陽スペクトルを示している。ダイアグラム3aの曲線は、黒体スペクトルを示し、ダイアグラム3aの曲線bは、大気上部の太陽スペクトルを表す。一方、曲線cは、酸素、水、及び二酸化炭素の吸収帯を有する海面で測定された太陽スペクトルを表す。図3のダイアグラム3aに示すように、曲線a~cのいずれかの太陽放射線の分光放射照度は、可視領域にピークを有し、可視領域の分光放射照度と比較して、UV領域及び赤外領域の分光放射照度が低い。
【0067】
引き続き図3を参照して、本開示の例示的ないくつかの実施形態に係るブラッグミラースタック9の透過率及び反射率をダイアグラム3bに示している。ダイアグラム3bに示すように、ブラッグミラースタック9は、透過率が約380nm~約780nmの領域で高く、約780nm~約880nmの赤外領域において低くなる太陽スペクトルに基づいて調整される。言い換えると、図3のダイアグラム3bに示す特性を有するブラッグミラー被膜9は、約380nm~約780nmの波長領域において高い透過率を有する(特に、約380nm~約720nm又は約380nm~約700nmの波長領域に高い透過率が存在する)。一方、約720nm~約880nmに配置された第2の波長領域(約780nm~約880nmの領域等)において高い反射率を有する。したがって、ブラッグミラー被膜9を透過する太陽光の一部は実質的に、第1の波長領域の波長の光によって与えられる。表現「高透過率」に関して、これは、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%(少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、又は少なくとも50%等)の透過率を示すことが了解されるものとする。表現「高反射率」に関して、これは、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%(少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、又は少なくとも50%等)の反射率を示すことが了解されるものとする。この追加又は代替として、この「高反射率」という用語は、最大で50%、好ましくは最大で40%、より好ましくは最大で30%(最大で25%、最大で20%、最大で15%、最大で10%、又は最大で5%等)の透過率との関係で了解され得る。
【0068】
図4に示すように、ブラッグミラースタック9の透過特性は、光の入射角によって決まる。図4は、ファイバの長さ方向を横切る方向に沿ったブラッグミラースタック9の側面の法線に対する角度が0°、ブラッグミラースタック9の表面の法線に対する入射角が55°、ブラッグミラースタック9の表面の法線に対する入射角が45°での透過率を示す曲線を模式的に示している。基本的には、0°~55°の入射角の変化によって、透過領域及び反射領域がシフトする。光導波路1が集光する照射の入射角が異なることを考慮して、第1の波長領域及び第2の波長領域の適当な波長間隔が選択されるようになっていてもよい。例えば、光導波路1のバッファ被膜・ジャケットは、一定の入射角範囲の光が当該バッファ被膜・ジャケットを通過し得るように、当該バッファ被膜・ジャケットの一部のみで光学的に透明であってもよい。
【0069】
図4に関して示す一実例においては、約380nm~約650nm又は約380nm~約720nmの範囲の第1の波長領域を選定すると、この波長領域の光がブラッグミラー被膜を高い透過率で透過し得る一方、約650nm~約880nm又は約720nm~約880nmの範囲の光がブラッグミラー被膜によって実質的に反射され、0°の入射角で入射する光の場合にブラッグミラー被膜を通過不可能であることが明らかとなる。約720nmの小さな波長領域の光は、0°~55°の入射角で入射する光に対して低い透過率及び高い反射率を示すのが好ましい(すなわち、図4の3つの曲線の低透過率の部分である)。したがって、約720nm~約730nm、好ましくは約725nm~約730nmの波長領域で与えられるように第2の波長領域が選択された場合は、約0°~約55°の任意の角度で入射する光が高い反射率で反射され得る(最大で40%、好ましくは最大で20%の透過率に対応する)。したがって、図1の波長変換被膜7を照射する光は実質的に、第1の波長領域の光に対応し、図1のブラッグミラー被膜9により反射される光LRは、第2の波長領域且つ予め設定された入射角の光であってもよい。
【0070】
いくつかの代替実施形態において、光ファイバ2は、(実質的に単一色に対応する、一致した波長領域において)単一色の光のみを捕捉するようにしてもよく、それぞれが光ファイバ2に対応する複数の光ファイバを備えたシステムを考慮する場合は、異なる光ファイバが異なる色を捕捉することにより、システムが複数色に対応する集光の波長領域を連続して捕捉するように構成されていてもよい。
【0071】
図1を再び参照して、ブラッグミラー被膜9を透過した入射光SLは、波長変換被膜7へと案内される。波長変換被膜7は、第1の波長領域の波長を含む放射線を、第2の波長領域の波長を含む放射線へと変換するように構成されており、特に、ブラッグミラー被膜9を透過した波長領域の波長を含む光を、ブラッグミラー被膜9により反射された光に対応する第2の波長領域の波長を含む光へと変換する。したがって、ブラッグミラー被膜9を透過し、波長変換色素被膜7による波長変換を受けた光は、図1の光LRによって示すように、ブラッグミラースタック9に囲まれた空間において光導波路1内にトラップされる。このため、光LRは、光導波路1内で伝搬している。言い換えると、ブラッグミラー被膜9があることから、光LRは、ブラッグミラースタック9により反射されて光ファイバ2に戻るため、光ファイバ2から離れた場合でも光導波路1内に留まる。
【0072】
ここで、例示的ないくつかの実施形態において、波長変換色素被膜7は、(文献において知られているように)色素、量子ドット構造、又はベンゾオキサンテン等の蛍光分子の濃度の関数として広範な有機ポリマーにより構成された合成材料等の波長変換成分により提供されていてもよい。ただし、これが本開示を制限することはなく、広帯域の光を利用して単一の波長(例えば、可視スペクトルの波長)に集中させるランダムナノ構造化合物を含む他の化合物も可能である。このような化合物は、約5nm~約100nmの範囲の寸法を有するようなナノ粒子及びナノロッド(例えば、球体)を含むことも可能である。
【0073】
図2を参照して、この図は、図1の光導波路1の拡大部を模式的に示しており、本開示の例示的ないくつかの実施形態に係る波長変換被膜7の特徴をより詳しく示している。図2に示すように、ブラッグミラースタック9は、第1の波長領域の波長を含む放射線が照射された場合の誘導放出によって第2の波長領域の波長を含む放射線を放出するように構成された波長変換色素7c上に直接配設されていてもよいし、付加的な接着層(図示せず)がブラッグミラー被膜9と波長変換被膜7との間に挟まれていてもよい。波長変換色素7cは、ブラッグミラースタック9を透過した光を、図3のダイアグラム3bに示すようなブラッグミラースタック9の透過特性の最小透過率の領域に一致する長い波長の光へと変換するようにしてもよい。したがって、ブラッグミラースタック9及びブラッグミラースタック9と光ファイバ2との間に挟まれた波長変換被膜7の組み合わせにより「一方向ミラー」効果が生成されるため、光がブラッグミラースタック9を通じて光導波路1に入り、この光の変換部が光導波路1内にトラップされ続ける。
【0074】
本開示の例示的ないくつかの実施形態によれば、図3のダイアグラム3bに示すようなブラッグミラースタック9の特性は、高透過率と低透過率との間のスペクトルの鋭いエッジであるが、この表現「鋭いエッジ」は、透過率の変化が29nm当たり少なくとも40%(10nm当たり少なくとも50%等)又は5nm当たり50%(10nm当たり70%若しくは5nm当たり70%等)であることを示す。これは、鋭いエッジにおける少なくとも5nmの波長間隔において、鋭いエッジにおける透過波長特性の曲線の接線の傾きがこれらの値により与えられることを意味する。
【0075】
例示的ないくつかの実施形態によれば、ブラッグミラースタック9は、屈折率ウィンドウのサイズがシステムの効率に比例する一対のミラーに依拠する周期構造により形成されていてもよい。或いは、ブラッグミラー被膜は、屈折率ウィンドウに依存しない非周期的ブラッグミラー構造により形成されていてもよい。例えば、非周期的ブラッグミラー構造は、ブラッグミラースタック中の誘電体層の数を17層以上(24層、48層、又は64層等)含むように調整することにより提供され得る一方、周期的ミラーは、スタック中の誘電体層の屈折率に応じて得られ、例示的な周期的ミラー構造において16層以下を有する。
【0076】
図2を参照して、波長変換被膜7は、マトリクス材料7dに埋め込まれたナノ粒子フィルム7aをさらに備えていてもよい。例えば、ナノ粒子フィルム7aは、二酸化ケイ素で形成されたマトリクス材料7dに埋め込まれた銀及び/又は金等の材料のナノ粒子コア7bにより形成されていてもよい。波長変換被膜7は、波長シフトの蛍光放出プロセスを増強するように構成されていてもよい。このような波長シフトは、例えば色素、量子ドット、ナノロッド等により実現されるようになっていてもよいが、これらに限定されない。
【0077】
例示的ないくつかの実施形態において、波長変換被膜7は、ランダムレージング及び/又は増幅自然放出(AES)の機能を提供していてもよい。例えば、ランダムレージング及び/又はAESは、金属(金及び/若しくは銀等)のナノ粒子又はプラズモン表面効果を促進する2D若しくは3D構造によりもたらされ得る。当業者には当然のことながら、このような構造は、多様な材料を用いて構成されていてもよく、ナノロッドメタマテリアル、金属及び/又はメタマテリアルを含む柱状薄膜、グラフェンベースのアクティブランダムメタマテリアル、双曲線分散を伴うメタマテリアル等のうちの少なくとも1つが挙げられる(ただし、これらに限定されない)。材料が光る分子も含む場合は、ランダムな不規則材料に光を通すことで放出を増強可能となり得る。本発明者は、このような増幅の理由として、構造自体の不規則性を考え、これをカオス理論の原因と見ているが、これは「不規則性から完全な規則が生じる」と説明される。
【0078】
実例においては、波長変換被膜7がナノ粒子色素層を含んでいてもよく、ランダムレージング/AESのための環境を提供する。この場合は、小さなミラーのランダムな集合が本質的に、ナノ粒子(例えば、金ナノ粒子、銀ナノ粒子等のうちの少なくとも1つ)であることから、「ナノレージング」と称する場合もある。ここで、ランダム性は、埋め込み色素マトリクス内におけるそれぞれのランダム配向に起因する。これは、光がこれらナノ粒子(例えば、金、銀、メタマテリアルベースのナノ粒子のうちの少なくとも1つ)のすべてを通過してランダムに散乱され、ナノ粒子間の領域で能動的に干渉し、波長変換被膜7全体の局所的な「ホットスポット」で電界を効果的に増幅しているものと了解され得る。当業者には当然のことながら、プラズモン-光子相互作用においては、この電界増強によってナノ粒子に近い蛍光色素分子の量子効率が高くなり、それぞれの蛍光寿命が短くなる。その結果、色素全体においてナノ粒子が非常に周期的なパターンで配置されている場合よりも、蛍光強度がさらに高くなる正味の効果がもたらされる。
【0079】
図2に関して、例示的な実施形態によれば、ナノ粒子フィルム7aは、光ファイバ2のガラス又はポリマークラッド5上に堆積されていてもよく、マトリクス材料7dは、ナノ粒子フィルム7aと波長変換色素7cとの間のスペーサとして機能し得る。さらに、波長変換色素7cの接着が最適化され得るように、マトリクス材料7dによって、波長変換色素7cに対するナノ粒子フィルム7aの表面品質を向上可能である。ナノ粒子フィルム7aは、蛍光増強による波長変換色素7cの自然な輝度の増強に用いられるようになっていてもよい。このように、波長変換被膜7中の波長変換色素7cにより変換された波長変換光の強度は、ナノ粒子フィルム7aによって増大する可能性がある。ただし、当業者には当然のことながら、本開示を一通り読めば、ナノ粒子フィルム7aは任意選択に過ぎず、他の例示的ないくつかの実施形態によれば、波長変換被膜7が波長変換色素7cのみで形成されていてもよいことが分かる。すなわち、図1に示すような波長変換被膜7は、図2に示す波長変換色素7cによって直接与えられていてもよく、ナノ粒子フィルム7a及び埋め込みマトリクス7dが省略され、波長変換色素7cがガラス又はポリマークラッド5上に直接配設されている。
【0080】
図5を参照して、この図は、図1及び図2の波長変換被膜7の機能を模式的に示している。図1及び図2に示す光導波路1の例示的ないくつかの実施形態によれば、波長変換被膜7により実行されるような波長変換のメカニズムは、誘導放出又は増幅誘導放出等のコヒーレント放出であるのが好ましい。図5は、基底状態G、励起状態E*、及び準安定状態Eを有する3準位系を示しており、励起状態E*は、高速の非放射減衰を伴う状態である。
【0081】
図5に示すように、第1の波長領域の波長を有する入射光子p1は、状態を基底状態Gから励起状態E*に上昇させる。その後、放射を伴わずに励起状態E*から状態Eへの遷移が発生する。いくつかの実例によれば、励起状態*Eの寿命は、1~約100nsの範囲(例えば、約1~10nsの範囲)であってもよい。準安定状態Eからは、入射光子p1よりも波長が長い光子p2の放出によって、基底状態Gへの遷移emが生じる。ただし、準安定状態Eの減衰は、光子p2の放出を刺激する別の光子により誘起されるため、光子p2のコヒーレント放出となる。したがって、誘導放出により放射線を放出するように構成された波長変換被膜7の量子効率は、自然放出の場合よりも高い。また、放出される放射線がコヒーレントである。
【0082】
本開示の例示的ないくつかの実施形態によれば、ブラッグミラースタック9は、光導波路1において、その全長に沿って光ファイバ2を覆っている。波長変換被膜7は、光導波路1の入力端のみにおいて、光ファイバ2上に存在していてもよい。さらに、波長変換被膜7は、入力端において、光ファイバの側面の一部のみを覆っていてもよい(例えば、光導波路1に規定の入射角で入射した光に対応する表面部のみが波長変換被膜7を照射する)。
【0083】
本開示の例示的ないくつかの実施形態によれば、光導波路1は、5nm~約7500kmの範囲の長さを有していてもよい。
【0084】
図2を再び参照して、以下、光導波路1の光ファイバ2上に波長変換被膜7及びブラッグミラースタック9を製造する方法を例示的ないくつかの実施形態に関して説明する。
【0085】
最初に、光ファイバ2が用意されるようになっていてもよい。光ファイバ2は、加水分解によって当該光ファイバ2の表面を活性化するステップを受けるようにしてもよい。その後、活性化された光ファイバ2は、塩化のプロセスを受けるようにしてもよく、その後は、金及び/又は銀粒子が光ファイバ2の表面に結合されるようになっていてもよい。
【0086】
その後、マトリクス材料が堆積されるようになっていてもよい(例えば、プラズマ蒸着による1つ又は複数の酸化ケイ素層の堆積によって、ナノ粒子を埋め込むにようにしてもよい)。
【0087】
その後、マトリクス材料7d(例えば、第1の波長領域の波長を含む光を第7の波長領域の波長を含む光に変換する場合に、誘導放出及び/又は増幅誘導放出等のコヒーレント放出を実行するように構成された材料を含む単独ゲル層又はポリマーマトリクス)上に波長変換色素7cが堆積されるようになっていてもよい。
【0088】
最後に、既知の技術に従って、ブラッグミラースタック9が堆積されるようになっていてもよい。
【0089】
図6aを参照して、この図は、図1の波長変換被膜7の考え得る実施態様を模式的に示しており、これを以下に説明する。
【0090】
図6aを参照して、この図は、種々実例に係る、コロイド状ナノ粒子による色素の実現の選択肢を示している。ダイアグラム6aにおいては、ナノ粒子20に固定された色素22を模式的に示している。ダイアグラム6bは、ナノ粒子30のシェル34に組み込まれた色素(例えば、金又は銀ナノ粒子のシリカシェルに組み込まれた色素)を示している。ダイアグラム6cは、ナノ粒子40のシェル43上の表面結合色素42を示している。
【0091】
以下、一実例において本発明者が採用する色素の考え得る例を掲載する。
【0092】
1)ナイルレッド(励起ピーク536nm/放出ピーク638nm)
励起増強のため、この色素は、(約5nm~約20nmの範囲のシェルを有する)約50nm~約70nmのサイズのシリカ被覆金ナノ球等のナノ粒子を含み得る。この色素は、531nm~545nmの範囲に吸収を有する。別の例においては、(約10nmのシェルを有する)約50nmのサイズのシリカ被覆ナノスターとして設けられたナノ粒子が697nmにおいて吸収を与える。
【0093】
2)ピリジン2(励起ピーク564nm/放出ピーク690nm)
励起増強のため、この色素は、(5~約20nmのシェルを有する)95/100nmのサイズのシリカ被覆金ナノ球を含み得る。この色素は、569nmに吸収を有する。別の例においては、(10nmのシェルを有する)50nmのサイズのシリカ被覆ナノスターを伴うナノ粒子が697nmにおいて吸収を示す。
【0094】
以下の表(次頁の表1)は、異なる例示的な実施形態において本発明者が採用した色素をその特性とともにまとめたものである。
【0095】
図6bに関して、この図は、種々実例に係る、表面結合ナノ粒子による色素の実現の選択肢を示している。ダイアグラム6dは、固定色素62が表面50上の表面結合ナノ粒子60を示している。固定色素は、ナノ粒子60に短結合されている。図6eは、固定色素62’が表面50’上の表面結合ナノ粒子60’を示している。固定色素62’は、ナノ粒子60’に長結合されている。
【0096】
図6bのダイアグラム6f及び6gを参照して、これらのダイアグラムはそれぞれ、ナノ粒子(例えば、ダイアグラム6fのナノ粒子80)が組み込まれたナノ粒子フィルム層(例えば、ダイアグラム6fの84)の表面70及び70’に結合されたナノ粒子80及び80’を示している。例えば、ナノ粒子フィルム層(例えば、ダイアグラム6fの84)は、シリカ層であってもよい。ナノ粒子フィルム層(例えば、ダイアグラム6fの84)には、固定色素82及び82’がそれぞれ結合されている。
【表1】
【0097】
図6bのダイアグラム6hを参照して、ナノ粒子フィルム層(例えば、シリカ層)及び色素層104を含むナノ粒子フィルム100が基板90に表面結合されている。
【0098】
本開示を一通り読めば、当業者には当然のことながら、図2のナノ粒子フィルム7aは、マトリクス材料7d及び波長変換色素7cと併せて、図6a及び図6bの背景で上述したような例のいずれかに従って実現されるようになっていてもよいことが分かる。
【0099】
ただし、これは、本開示を制限するものではなく、例示的ないくつかの実施形態においては、NIR蛍光材料が採用されるようになっていてもよい。このような色素の一例は、インドシアニングリーン(ICG)ブリーチである。
【0100】
色素の有利な寿命に関しては、超高光安定性等の有益な光物理学的特性をナノ材料が与えるとともに、非線形エネルギー伝達を生じる可能性がある。
【0101】
例示的且つ非限定的ないくつかの例において、NIR蛍光ナノ材料には、InAs量子ドット、ランタノイドをドープしたナノ粒子、又は半導体の単層カーボンナノチューブを含み得る。量子収率の高い材料の例としては、カルシウム銅シリカ材料を適用可能である。グラフェン及び遷移金属カルコゲナイド等の既知の剥離プロセスの使用によって、寸法が直径50nm~5nm、高さ40nm~1nmのナノシートとして知られるカルシウム銅シリカ材料の層状構造を生成可能である。放射冷却周波数に関しては、このようなナノシート構造の長波長蛍光機能により、1.5マイクロメートルを超える赤外領域の大気放射(夜間の地表からの後方散乱)を含む広大な範囲の電磁放射を捕捉するように導波路を構成可能であると結論付けるのが論理的である。
【0102】
いくつかの実例においては、複素環化合物(例えば、ジアゾール等の等軸晶系化合物)を採用することによって、色素の光安定性を維持しつつ、寿命を実質的に延長可能となるほか、色素の輝度が向上する。
【0103】
ここで図7を参照して、この図は、様々なサイズのナノ粒子について、波長との関係での光学密度を模式的に示している。このダイアグラムは、20nm~約100nmのサイズのナノ粒子が光学密度のピークとなることを示している。例えば、図7に示すように、100nmよりも大きなサイズのナノ粒子は、実質的にピークを示さない。したがって、ピークの位置は、ナノ粒子のサイズに応じて、約500nmから約600nmまでシフトする。当業者には当然のことながら、ナノ粒子のサイズに応じて、図1の波長変換被膜7の特性が適応され得る。
【0104】
図8を参照して、この図は、ブラッグミラー被膜の機能を模式的に示している。図8は、光ファイバ210上の部分240aのみにブラッグミラー被膜220を有する導波路200を示している。光ファイバ210の部分240bは、ブラッグミラー被膜220に覆われていない。図8に示すように、光ファイバ210の内側を伝搬する光230は、光ファイバ210の部分240aにおけるブラッグミラー被膜220によって、光ファイバ210中に捕捉される。部分240aの外側すなわち光ファイバ210の部分240bにおいて、光ファイバ210内で適切なゲーティングが行われた光230(部分240bの光234参照)は、ブラッグミラー被膜220のない光ファイバ210内で全反射を受けない光による損失232を受ける。
【0105】
図9を参照して、この図は、ブラッグミラー被膜を備えた光導波路の製造を模式的に示している。図9は、リール310上に設けられた光ファイバ320から光導波路を製造するためのシステム300を模式的に示している。光ファイバ320は、大気環境においてリールから引き出され、製造システム330に導入される。製造システム330は、真空環境から大気環境を分離する入力絞り332を有する。製造システム330は、それぞれがポンプ340a~340d及び絞りと関連付けられた4つのプロセス部350a、350b、350c、及び350dを示している。製造システム330の端部には、出力絞りが示されており、これは、製造システム330内の真空環境を出力側の大気環境から分離する。製造システム330の出力側には導波路360が出てきて、リール370に巻き取られる。
【0106】
プロセス部350aはプラズマ低指数被膜であり、プロセス部350bはプラズマ高指数被膜であり、製造部350cはプラズマ低指数被膜であり、プロセス部350dはプラズマ高指数被膜である。また、任意所望数の低/高指数被膜層が設けられていてもよい。したがって、製造システム330の出力側の光導波路360は、ブラッグミラー被膜により連続して被覆される。入力側では、リールからの光ファイバ320の引き出しに際して、クラッド取り外し、p被覆、色素被覆、及び/又は量子ドット等の任意の波長変換が実行される。出力側では、リール370への導波路360の巻き取りに先立って、任意選択としてのクラッド装着が実行されるようになっていてもよい。コスト及び/又は効率バランス等の理由からブラッグミラーの周期構造が提供される場合は、別段の考慮がなされる16対の代わりに、48対等、より多くのブラッグ対が形成されるようになっていてもよい。このように、異なる(低指数及び高指数)チャンバーは、要求される厳密な屈折率を維持することに関して、より柔軟なものとなる。
【0107】
図11aを参照して、光導波路システム500が模式的に示されており、この図では、光導波路システム500の第1の端部530において複数の導波路501及び複数の導波路503が交互又は織り交ぜ配置で存在する。特に、光導波路501の第1の端部510及び光導波路503の第1の端部520は、織り交ぜ又は交互配置によって、導波路システム500の第1の端部530に対応する入力エリアを構成する。すなわち、導波路システム500の第1の端部530は、導波路システム500の入力領域に対応する。例示的ないくつかの実施形態によれば、第1の端部530は、集光システムの入力を表す。
【0108】
図11bを参照して、この図は、例えば図10に示すような超分子構造の形態で第1の端部610が実質的に平行に配置された複数の導波路601が存在する光導波路システム600を模式的に示している。第1の端部610は、光導波路システムにおける集光領域として機能し得る入力領域630を提供する。
【0109】
図12を参照して、この図は、エネルギー貯蔵及び/又は変換システム700を模式的に示している。エネルギー貯蔵及び/又は変換システム700は、(例えば、上述のような光導波路システム400~600のうちの1つに対応する)光導波路システム710と、液体743を貯蔵するコンテナ741と、を備える。光導波路システム710の第1の端部710aは、光730を集めるための入力領域720を表す。光導波路システム710は、当該導波路システム710の第1の端部710aと第2の端部710bとの間に延びた複数の光導波路712をさらに備える。光導波路システム710は、第1の端部710aと反対の第2の端部710bにおいて、当該光導波路システム710のファイバ端714から放出された放射線をコンテナ741に貯蔵された液体743へと案内するように構成されている。コンテナ741中の液体743は、当該液体743に浸漬された高導電性複合材744及びグラファイト745を含む。或いは、光導波路システム710の全長に沿って集光が行われ得る。
【0110】
本開示の例示的ないくつかの実施形態によれば、高導電性複合材744は、窒化塩混合物等の相変化材料で構成されていてもよい。また、液体743は、浸漬された金及び/又は銀コア等の金属ナノ粒子をさらに含んでいてもよい。ここで、いくつかの実例において、ナノ粒子は、細孔のランダムネットワークを含む複雑な多孔質構造としての不規則配置にて構成されていてもよい。このようなナノ粒子は、アモルファスシリコンへの埋め込みによって、コンテナ741中で高温(500~700℃等)に加熱可能となり得る。厳しい温度に曝されたコアの形態変化は、アンダーソン局在によって促進される蓄熱能力を高める可能性さえある。なお、不規則ナノ粒子は、広帯域光が「凝縮(condensate又はcondense)」される略理想的な黒体性能を示す。このようなNPの設計は非常に多用途の可能性があり、NPは、タンク741の液体中に容易に分散可能であって、各用途に応じて浮遊する可能性もあるし、一体的に保持するランダムな配置で埋め込むことも可能である(液体温度を決定するタンク741に到達する全体エネルギーを示唆する)。そして、ナノ吸収剤に捕捉された光から液体へと光-熱エネルギー変換が起こり得る。そして、液体に浸漬された材料の密度(可能性として、単位濃度3×1010cm-3前後)が全体的な吸収効率を特徴付ける。したがって、各用途に応じて密度を容易に調節可能であり、これによって、タンク中の全体熱エネルギーが決まる。この密度は、前述の単位濃度の5~10倍もの柔軟性が可能である。また、これらのナノ粒子は、水/液体との接触又は光学的近接によって光エネルギーを蓄え、これが後で熱エネルギーに変換されるような独立型の構造として構成することも可能である。
【0111】
本開示の例示的ないくつかの実施形態によれば、液体743は、水であってもよい。或いは、液体743は、水の熱容量以下の熱容量を有する液体であってもよい。例えば、塩は131℃で融け、288℃で液体として保たれる。伝送構造の用途/構成/エリアに応じた伝送メッシュからの全体エネルギーにより、コンテナ741に到達する全体的なエネルギーは、液体の塩を500℃前後又はそれを超える温度まで加熱することができる。(耐熱性レンガ等、コンテナ741に関して上に挙げた例のような)コンテナ741の適切な断熱によって、熱エネルギーは1週間にわたり貯蔵され得るものと推定される。別の例においては、約1400℃の高い貯蔵温度に達する固体若しくは溶融シリコン、又は、600℃前後の温度に達する溶融アルミニウムが採用されるようになっていてもよい。さらに他の可能性としては、合金の混合物(例えば、熱エネルギー貯蔵用の金属材料との関連の可能性の有無を問わない混和性ギャップ技術)が挙げられる。コンテナ分散の構成は、例えば1500℃を超えるような高いエネルギーが入る場合に適用され得る。
【0112】
図10に関して、この図は、導波路システム400を模式的に示している。導波路システム400は、複数の光導波路410(例えば、光ファイバ422を有する光導波路420)、波長変換被膜424、ブラッグミラースタック426、及びクラッド428を備える。クラッド428は、第1の波長領域の波長の光に対して透明であってもよい。入射光430は、複数の光導波路410に入射する光線の束として示している。例えば、光430は、3Dサイド結合を実現するため、ファイバ422の延伸部に沿って広範囲に入射するようになっていてもよい。図13に示す構造は、不規則形状である「超分子構造」であってもよく、光導波路に直接は入らない光線が複数の光導波路410をランダムに伝搬した後、光導波路内にトラップされる(例えば、光導波路420においてトラップされる光線を参照)。
【0113】
図13を参照して、この図は、図10の超分子構造の複数の導波路712のファイバ端714を示しており、これらの端部714は、複数の光導波路712により出力された放射線が液体743へと案内されるように、図12のコンテナ741中の液体743に関して配置されている。図13においては、参照番号750によって出力放射線を模式的に示している。複合材744、グラファイト745、及び任意選択として、金及び/又は銀コア等の金属ナノ粒子が液体743中に存在することから、出力放射線750は、コンテナ741において吸収される。コンテナ741における出力放射線の吸収に際しては、液体743が加熱される。したがって、図12のエネルギー貯蔵及び/又は変換システム700の第1の端部710aで集められた放射線730が与える光子エネルギーが光導波路システム710によって第2の端部710bのコンテナ741まで送られて吸収され、コンテナ741中の液体743の加熱に用いられる。このため、エネルギー貯蔵及び/又は変換システム700によって、熱を変換するための効率的なエネルギー貯蔵及び/又は変換システムが提供される。
【0114】
図12においては、コンテナ741内に配置されたものとしてファイバ端714を示しているが、これは、如何なる制限をも本開示に課すものではない。或いは、ファイバ端714は、当該ファイバ端714から放出された放射線が液体742に結合されるように、図12のコンテナ741及び液体742に関して配置されていてもよい。当業者には当然のことながら、ファイバ端714から放出された光を液体742に結合する場合には、放射線の損失を抑えるための適当な手段が実装される。
【0115】
ファイバ端714がコンテナ741内に配置された実例によれば、コンテナ741の内面は、エネルギー貯蔵及び/又は変換システム700の効率を高くするため、高反射面で覆われていてもよい。この追加又は代替として、コンテナ741は、当該コンテナ741の環境への放熱に対して隔離されていてもよい。したがって、例えば上述のような適当な材料を採用することにより、エネルギー貯蔵及び/又は変換システム700の熱損失が抑えられる。
【0116】
例示的ないくつかの実施形態によれば、光導波路システム710のいくつかのファイバ712は、光学データの伝送に用いられるようになっていてもよい。例えば、これらのデータファイバとして用いられるファイバ712は、データシステム(図示せず)と接続され得るデータ端子(図示せず)を備えていてもよい。この場合、ファイバ712のうちのデータファイバは、ファイバ端714がコンテナ741内に配置されず、コンテナ741の外側をデータシステム(図示せず)まで取り回される。
【0117】
図12及び図13とともに上述したようなエネルギー変換システムに関して、その効果及び利点を以下の一般的な背景において説明する。
【0118】
まず、過去の研究では、ミラー及び特殊設計の材料を用いることにより、光を有限の時間にわたって閉じ込めていたが、光を無限に閉じ込めることは現在まで概念的に証明されていないことが思い出される。理論的には、吸収を増加させるとともに熱変換をより効率的に行うことができる金属ベースの構成によって、表面プラズモンを用いることにより光を一時的に閉じ込められると考えられている。
【0119】
本開示は、例示的ないくつかの実施形態において、低出力金属又は高出力非金属材料を使用可能な不規則形状構造に依拠する光閉じ込め構造を提供するエネルギー貯蔵・変換システムに関する。光の閉じ込めが実現されるのは、光子が円形に移動して、これらのナノ構造形状に吸収されないためである。エネルギー値が正確な光は、無限の時間にわたって閉じ込められる。材料の不完全性による吸収でトラップされた光が失われるのを回避するため、これらの不完全性は、レーザと同様の光学利得で補償されるような散乱カオス形状によって、原理的に寿命が無限となり得るように構造化される。
【0120】
例示的ないくつかの実施形態においては、非ユークリッド幾何学の透明構造(リーマン多様体等)の使用により、光が特定の量子化エネルギー値に達するように、ボース-アインシュタイン凝縮の背後にある理論を考慮する場合に理解され得る非常に特殊な方法での散乱によって、光を閉じ込めることができる。この点、電子が量子化エネルギーレベルに達した場合のみ、原子によるスピン又は角運動量の占有が「許可」される。特定の不規則非ユークリッド幾何学の下では、放射損失の抑制によって、システムの固有振動の時間減衰が回避される。このような非線形形状のエネルギー等配分のため、ガラス等の非金属材料を使用可能であり、電磁放射から実質的に高出力のハーネスを得る余地がある。閉じ込められた光が特別に量子化され、狭い波長に「圧縮」されると、それを解除するため、外部の光信号が構造体に放射され、閉じ込められた光と衝突して混合される。このため、電子が原子内の軌道上で電磁気的な引力を失うのと同様に、光が脱凝縮(脱量子化)されることになる。この意味において、貯蔵された光エネルギーは、太陽電池、太陽熱力学的タンク、水素、エタノール等の太陽燃料を生成するための人工光合成システム等のOESに接続された任意のシステムによってエネルギー需要が必要となる場合にいつでも放出可能である。このような構造は、リソグラフィ、コロイド合成手順、湿式化学技術等の既知の技術によって製造され得る。
【0121】
特別且つ例示的ないくつかの実施形態において、光閉じ込め構造は、ボース-アインシュタイン凝縮によりもたらされるメカニズムに基づいて実施される。この考え方の起点として、本発明者は、幾何学的不規則及び波動的不規則(例えば、量子カオス構造)を特定した。本発明者は、このようなシステムにより、量子化エネルギー等分割の意味でボース-アインシュタイン凝縮と完全に等価なプロセスを通じて単一発光のコヒーレンスを増大させ、最大局在効果を誘起可能である(臨界値前後で自己組織化するまで光の波長が圧縮される)一方、プラズモン共振光閉じ込め構造とは関連しないことを見出した。
【0122】
室温での光子のボース-アインシュタイン凝縮は、非常に不安定である。本発明者は、シェル及びコアの両者の外面にカオスパターンの層を有する光共振器に類似した特定のシェル-コア構成内でのアンダーソン局在又は増幅自然放出による光子のボース-アインシュタイン凝縮の組み合わせによって、実現可能な実装での安定化を実現することを提案する。本発明者は、光子等のボソンがキャビティの内側に配置されると、ガラス(例えば、二酸化ケイ素)等の包囲物質のフェルミオンと相互作用すること、並びに、非線形誘電率を有する物質構造上へのカオス層の導入に際して、核内のエネルギー放射損失が補償され得ることを指摘する。したがって、電磁放射線が非線形材料に入射すると光散乱が発生し、コアの壁に対して光が特定の波長に圧縮されると光閉じ込めが実現され、プラズモン光学利得によって材料の不規則構造における損失が補償される。ここで、本発明者は、不規則性が十分に大きなシステムが無拡散のような特性を示し、原子のBECにおいて光の局在が原子上に起こることを認めた。言い換えると、原子のボース-アインシュタイン凝縮を実現するため、光の状態を不規則キャビティに結び付けること(局在)が提案されており、光がキャビティに閉じ込められたまま、ボース-アインシュタイン凝縮(光の減速)及び光の局在が顕著に現れることが望ましい。コア中の光の臨界波長は、各用途に応じて貯蔵されたエネルギーの量によって決まることになる。そして、不規則のレベルが相転移温度の決め手となるパラメータであるため、室温で光子をキャビティに閉じ込め可能となり、光子が共振器の内側、とりわけコアの周りを循環することで光が貯蔵される。言い換えると、カオスキャビティにおける乱流レベルを変化させることにより、光子エネルギーが相転移臨界温度に達して、環境温度での光の凝縮につながる。
【0123】
ここで、例示的ないくつかの実施形態においては、不規則幾何学構造に依拠する光閉じ込め構造が提供される。図17を参照しないで、この図は、光閉じ込め構造LCSの拡大部の模式上面図である。光閉じ込め構造LCSは、基板と、マイクロ又はナノ構造体と、を備える。
【0124】
図17に示すように、光閉じ込め構造は、適正なレベルの不規則が設定された不規則ナノフォトニック共振器構造として基板SUBの表面中又は表面上に設けられたナノフォトニック共振器構造NRSをさらに含む。ここで、ナノフォトニック共振器構造中の適正なレベルの不規則は、基板SUBの表面に分散した場合の密度がある程度不規則な高密度のナノフォトニック共振器により形成される。ここで、ナノフォトニック共振器の密度の不規則は、分散がゼロであると考えられるナノフォトニック共振器の理想的な均一分布からの逸脱を示す最小分散がゼロよりも大きな平均値前後の分布に密度が従うことにより特徴付けられるものと了解される。したがって、この背景においては、例えばナノフォトニック共振器の密度が基板SUBの表面全体にわたって、基板SUBの表面全体にわたる平均値前後の最小分散で変化する意味において不規則が示される。基板SUBの表面を規則的なグリッドのエリアボックスへと仮想的に分割した場合、各エリアボックスについて計算されるナノフォトニック共振器の密度は、規則的なグリッドのエリアボックスを異なるサイズのエリアボックスにスケーリングしても一定を維持する単一の値になるという意味において、均一分布はナノフォトニック共振器のスケール不変密度になると仮定される。これに対して、不規則なナノフォトニック共振器は、スケール及び位置に応じた密度を示す。仮想グリッドのあるスケールでの位置に応じた密度は、エリアボックス上での平均化による評価により、エリアボックス中の密度の平均密度値からの偏差の二乗平均値により与えられる分散と併せて、平均密度値を求めることができる。この分散がゼロより大きくなると、ナノフォトニック共振器の不規則分布が基板SUBの表面全体に存在することになる。ナノフォトニック共振器の不規則が評価され得る例示的なスケーリングは、単位エリアボックスと称する単一のシェルナノ粒子で形成された単一のマイクロ又はナノ粒子共振器を各エリアボックスが含むスケーリングであってもよい。ただし、これは例示に過ぎず、何ら限定するものではなく、代わりに、各エリアボックスが10個のマイクロ又はナノ粒子共振器すなわち10個のシェルナノ粒子、100個のマイクロ又はナノ粒子共振器すなわち100個の単一シェルナノ粒子、或いは1000個のマイクロ又はナノ粒子共振器すなわち1000個のシェルナノ粒子を含むスケーリング等、別のスケーリングが選定されるようになっていてもよい。また、エリアボックスが単位エリアボックスの一部(例えば、2分の1、3分の1、4分の1等、一般的には1/n(nは1より大きな自然数))を網羅するように寸法規定されるスケーリングを選択することも可能である。一般的には、不規則の程度の評価に関する所望の精度及び所要パラメータの決定に必要な利用可能リソースに応じて、任意数のマイクロ又はナノ粒子共振器すなわちシェルナノ粒子が選定されるようになっていてもよい。
【0125】
ここで、例示的ないくつかの実施形態によれば、ナノフォトニック共振器の密度は、ナノフォトニック共振器が充填された基板SUBの表面の空間の割合を表す充填率に従って評価されるようになっていてもよい。例えば、充填率は、ナノフォトニック共振器が消費する基板SUBの表面の総面積を基板SUBの表面の総表面積で除した割合を表し得る。ここで、いくつかの実例において、本発明者は、ナノフォトニック共振器の不規則が適正な程度となる充填率として、約50%~約85%の範囲(少なくとも5%のばらつきを伴う)を特定した。充填率が85%を超えると、ランダムパーキング(random parking)として知られる飽和効果が予想される。ここで、好適な例によれば、充填率のばらつきは、約5%~約20%の範囲、より好ましくは約5%~約10%の範囲(約7%等)であってもよい。一方、充填率は、好ましくは約60%~約80%又は約60%~約75%の範囲、より好ましくは約60%~約75%の範囲(約68%等)である。
【0126】
ここで、例示的ないくつかの実施形態において、ナノフォトニック共振器構造NRSは、基板SUBの表面に形成された量子ドットにより与えられるナノフォトニックキャビティの構造として形成されていてもよい。ここで、実例によれば、量子ドットは、均一でありながらも基板SUBの表面全体で高密度に形成されていてもよく、量子ドット内のキャビティは、上述のような不規則の所望の程度に応じて不規則に形成されている。例えば、量子ドット(例えば、InAsで構成された量子ドット)は、接着層(例えば、ポリイミドの層)を介して基板SUBの表面に付着していてもよい。いくつかの例において、量子ドットは、分子線エピタキシによって、基板SUB(例えば、酸化ケイ素基板(例えば、二酸化ケイ素又はGaAs基板等))の表面に形成されている。特に、均一に分布した量子ドットの高密度は、ナノフォトニック共振器の目標密度よりも高く、例えば、上述の通り、均一に分布した量子ドットの充填率は、ナノフォトニック共振器の充填率よりも高くなる。いくつかの実例によれば、量子ドットは、電子線リソグラフィ技術によって均一又は不均一に形成されていてもよく、量子ドット中のキャビティは、イオンビームエッチング、反応性イオンエッチング等により形成されていてもよい。
【0127】
ここで、他のいくつかの実例において、ナノフォトニック共振器構造NRSは、基板SUBの表面に形成されたナノ寸法の孔の構造として形成されていてもよい。これらの孔は、イオンビームエッチング、RIEエッチング、又はプラズマエッチングにより形成されていてもよい。
【0128】
例示的な実施形態によれば、マイクロ又はナノ構造体は、特定の誘電率を有するコア-シェルナノ粒子構造で形成され、基板SUBの表面に堆積されたマイクロ又はナノ粒子共振器を含む。マイクロ又はナノ粒子共振器は、基板SUBの表面に低誘電率のシェルSHが形成され、少なくとも2つのコアを囲む開放型共振器として機能する。図17は、コアCR1、CR2、及びCR3がシェルSHに囲まれた非限定的な実例を示している。シェルSHは誘電率が低く、理論的に無限長の時間を有する振動がもたらされる。ここで、低い誘電率とは、0.5未満、0.2未満、0.1未満、又は0.05未満等、より小さな比誘電率により与えられるものであることが了解される。
【0129】
ここで、実例によれば、シェルSHは、マイクロ又はナノ粒子のシェルにより与えられ、各コアCR1、CR2、CR3は、マイクロ又はナノ粒子のコアにより与えられるようになっていてもよい。いくつかの実例において、マイクロ又はナノ粒子構造は、マイクロ又はナノ球、マイクロ又はナノロッド、ナノワイヤ、ナノチューブ等の形態のコアを含む透明球状コア-シェルマイクロ又はナノ粒子構造等、異なる種類のマイクロ又はナノ粒子の混合物で形成されていてもよい。一方、シェルは、マイクロ又はナノ球或いはマイクロ又はナノ楕円球として与えられる。
【0130】
図17を参照して、コアCR1は、球状で半径R1を有していてもよく、コアCR2は、球状又はロッド状で半径r1’を有していてもよく、コアCR3は、球状又はロッド状で半径r1’’を有していてもよい。シェルSHは、半径r2によって決まる直径(又は、球形状と異なる形状の場合は最小寸法)を有していてもよい。したがって、寸法に関する第1の幾何学的制約は、r2>r1,r1’,r1’’である。コアCR1は、コアCR1の中心CCR1とコアCR2の中心CCR2との間の中心間隔により、CR2から距離r3だけ離隔しており、コアCR1は、コアCR1の中心CCR1とコアCR3の中心CCR3との間の中心間隔により、CR3から距離r4だけ離隔している。したがって、寸法に関する第2の幾何学的制約は、r2≧r3,r4及び2*r2≧r3+r4である。マイクロ又はナノ粒子構造の場合は、シェルSHの半径r2が各コアCR1、CR2、CR3の半径よりも大きいことを常に考慮して、光は、開放型共振器の直径前後の波長に閉じ込められることが了解される。さらに、マイクロ又はナノ粒子構造中のマイクロ又はナノ粒子の構造及び材料は、散乱光が室温で「自然放出及び/又は局在」(アンダーソン局在)により「凝縮」(ボース-アインシュタイン凝縮)しない限り、あらゆる方向への光の透過、吸収、及び散乱を回避するように選択されることが了解される。上記で明示的に説明した例は、何ら限定的なものではなく、当業者には当然のことながら、如何なる構成であっても一般的には、貯蔵される光エネルギーの総量等の考慮事項によって決まり得る。
【0131】
特別且つ例示的ないくつかの実施形態において、マイクロ又はナノ粒子構造は、サイズが数十~数百ナノメートルのオーダであってもよく、これによりナノフォトニックコア-シェルナノ粒子共振器(NPCSR)が提供される。ただし、これは本開示を制限するものではなく、マイクロ又はナノ粒子構造は、マイクロメートルのオーダであってもよい。
【0132】
ここで、特別ないくつかの実例によれば、楕円形状の非線形コアが採用されるようになっていてもよく、これにより放射損失を抑えることができる。
【0133】
例示的ないくつかの実施形態において、外側シェルは、低誘電率の材料で構成されていてもよい。例えば、εがゼロに近い材料は、望ましい性能の向上につながる。ただし、これは、本開示を制限するものではなく、如何なる誘電体材料が用いられるようになっていてもよい。好適な一実施形態において、外側シェルの誘電率は、圧縮周波数領域においてゼロに向かう傾向にある。
【0134】
例示的ないくつかの実施形態において、コアは、陶材、マイカ、及び石英等の誘電体材料で構成されていてもよく、誘電体材料として、有機ポリマー等の有機材料が用いられるようになっていてもよい。
【0135】
例示的ないくつかの実施形態において、シェルは、金属又は非金属材料等のプラズモン材料で構成されていてもよい。金属材料が用いられる場合は、当技術分野において知られているような高エネルギー貯蔵メタマテリアルが好ましい。
【0136】
例示的ないくつかの実施形態によれば、共振器は、ナノリソグラフィとして知られる製造方法と完全に類似して製造されるようになっていてもよく、Liu他「Fabrication of Si/Au Core/Shell Nanoplasmonic Structures with Ultrasensitive Surface-Enhanced Raman Scattering for Monolayer Molecule Detection」,J.Phys.,Chem.C 2015,119,2,1234-1246及びSusarrey-Arce他「A nanofabricated plasmonic core-shell-nanoparticle library」,NanoScale Journal,issue 44,2019等に記載されており、これらのすべての開示内容を本明細書に援用する。
【0137】
本開示に係るナノ粒子構造においては、光閉じ込め構造の製造中にカオス構造がマイクロ又はナノ粒子の表面層上に形成される。凝縮及び局在に達するため、本発明者は、コア及びシェルの表面への必要なカオス構造の形成に際して、3つの重要なパラメータを考慮すべきことを見出した。
【0138】
孔の数は、孔の数が増えるほど強いボース-アインシュタイン凝縮が実現される一方、BEC凝縮を阻害する低い臨界温度が回避されるという密度仮定に従う必要がある。ただし、孔の密度が高いと、ランダムパーキングとして知られる効果である飽和が発生する可能性もある。ここで、例示的ないくつかの実施形態において、この態様の定量化に適したパラメータは、スケール空隙充填率(第1のパラメータ)である。
【0139】
本発明者は、局在によって、適正なレベルの不規則が設定された場合に安定的に生じるボース-アインシュタイン凝縮の安定性がサポートされることを見出した。ここで、いくつかの実例において、代表的なコア直径は、244nm±51nmであってもよく、シェルは、295nm±51nmより大きくてもよく、最近隣間隔は、580nm±120nmである。例えば、平均スケール空隙充填率は、約68%±7%であってもよい。ここで、例示的ないくつかの実施形態において、これらの態様の定量化に適したパラメータは、散乱中心直径(第2のパラメータ)及び散乱中心間隔(第3のパラメータ)であってもよい。
【0140】
特別且つ例示的な実施形態においては、上述の通り、スケール空隙充填率(第1のパラメータ)が約50%~85%の範囲(例えば、68%)であってもよく、散乱中心直径(第2のパラメータ)が200~400nm、240~400nm、200~350nm、又は240~350nmの範囲であってもよく、散乱中心間隔(第3のパラメータ)が460~700nm、500~700nm、460~600nm、又は500~600nmの範囲であってもよい。
【0141】
特別且つ例示的な実施形態においては、上述の通り、散乱中心直径(第2のパラメータ)のばらつきが約10%~約40%の範囲であってもよい。例えば、このばらつきは、約10%~約30%の範囲又は約15%~約25%の範囲(例えば、20%又は20.9%)であってもよい。
【0142】
特別且つ例示的な実施形態においては、上述の通り、散乱中心間隔(第3のパラメータ)のばらつきが約10%~約40%の範囲であってもよい。例えば、このばらつきは、約10%~約35%の範囲又は約15%~約25%の範囲(例えば、20%又は20.7%)であってもよい。
【0143】
いくつかの実例においては、上述の通り、InAs量子ドット等の量子ドットの孔がGaAs平面状誘電体に構成されていてもよい。本発明者は、不規則なフォトニクス材料がランダム多重散乱によって光を拡散させ、局在化させ得ることを認めた。このような媒体中の光伝送は、有限のスペクトル幅及び空間的広がりを有する共振を特徴とする光子モードにより支配され、例えば波面成形技術を用いて、所与のシステムで利用可能なモードの特定の部分のみを励起するように入射波を成形することにより制御される。ここで、個々のモードは、選択的に設計される(光の制御)。例えば、2次元不規則フォトニック構造におけるモードの閉じ込め及び相互作用が設計され、構造を最適化することにより製造段階で強い光閉じ込めが実現され、モード共振周波数の正確且つ局所的な調節が製造後プロセスにより実現され得る。
【0144】
ここで、特別且つ例示的ないくつかの実施形態においては、厚さが100nm~約1μm(例えば、320nm)のGaAs平面状誘電体導波路上に不規則フォトニックシステムが実現されるようになっていてもよく、空気中に吊り下げられて縁部が固定されることで、横方向サイズが約1μm~約1mmの範囲(例えば、約25μm)の正方形パッドが得られる。この平面状導波路は、(例えば、分子線エピタキシにより成長させた)高密度InAs量子ドットの3つの層を含むことにより光学的に活性化され得る。これらの量子ドットは、スラブの中央平面に埋設され、サンプル全体に均一に分布し、広い波長範囲(例えば、1.15μm~1.38μm)で発光するものであってもよい。量子ドットの均一且つ高密度(約103μm)の分布により、量子ドットの密度の変動に起因することなく、多重光散乱によって生成された局在モードに対応する輝点が強度マップに現れる。導波路は、電子ビームリソグラフィ、反応性イオンエッチング(RIE)、及びウェットエッチングによって、キャビティ(例えば、円形孔)のランダム分布によりパターン化されていてもよい。いくつかの実例において、キャビティのランダム分布は、充填率fがf=0.13~f=0.35の範囲の密度と(ここで、充填率は、散乱体が占有する面積とサンプルの総面積との比として定義され得る)、約100nm~約500nm(約180nm~250nm等)の範囲の直径と、を有していてもよい。任意の構造パラメータの公称値からの偏差は、走査型電子顕微鏡で測定可能であり、許容範囲の偏差は、直径で5%以内、充填率で10%以内であってもよい。成長プロセスにおいて隣り合うキャビティの合体(近接効果)は、最近隣キャビティの中心間の最小距離をキャビティ直径の約1~2倍(例えば、キャビティ直径の約1.3倍)とすることで回避され得る。
【0145】
例示的ないくつかの実施形態において、上述のGaAs平面状誘電体導波路上に実現される不規則フォトニックシステムの製造は、当技術分野において既知の方法(ナノ球リソグラフィ(NSL)等)により、3Dカオス構造に適用され得る。NSLによって、単層最密六方パターン又は類似のパターンがマイクロ又はナノ粒子の表面に直接(例えば、まずはシェルよりもコアに)適用され得る。外層は、ナノ粒子アレイを製造するためのリソグラフィマスクとして、ラテックス又はシリカ球の平面状規則配列に当てはまり得る。
【0146】
ここで、同じ特別な実例においては、従来のトップダウン製造技術の代替として、半導体ナノ構造を低コストでパターン化及び生成するためのナノ球リソグラフィ法を説明する。ここでは、ナノ粒子リソグラフィの組み合わせ(例えば、ナノ球リソグラフィ及び深掘り反応性イオンエッチング技術)を用いることにより、基板の表面を覆う直径が500nm以下でアスペクト比が最大10の複数のシリコンピラーが製造され得る。このプロセスにおいては、基板(例えば、シリコン基板)がナノ粒子エッチングマスク(ここで、特別な一実例においては、ナノ球エッチングマスク)で被覆され、酸素プラズマ及び時間多重「ボッシュ」プロセスによってエッチングされることにより、長さ、直径、及び間隔の異なるナノピラーが生成される。走査型電子顕微鏡のデータにより確認できる通り、ナノスケールエッチングマスクを用いた基板のエッチング速度は、得られるエッチング構造のアスペクト比が大きくなるにつれて直線的に低くなる。ナノピラーのサイズ及び間隔は、異なるサイズのポリスチレンナノ球を使用し、これらの球を酸素プラズマでエッチングしてナノ球リソグラフィマスクの直径を調整することによって制御され得る。これらのマスクは、ナノスケールの間隔で高密度に密集している可能性があるため、それぞれの密集の密度は、エッチングプロセスにおける反応性イオンエッチャント及び流出するイオン種の流れに大きく影響する。このように、基板のエッチング速度は、エッチングされる「レジスト」の間隔及びエッチング時間によって制御されることが分かる。走査型電子顕微鏡(SEM)により、得られるエッチング構造のアスペクト比が大きくなるにつれてマスキング基板のエッチング速度が直線的に低くなることを確認可能である。したがって、リソグラフィマスクとして用いられるナノ球の単層は、複数の方法で生成可能である。
【0147】
上述の不規則に加えて、不規則の製造自体も最適化され得ることに留意する。当業者には当然のことながら、ある程度の不規則を調整するための技術は、Rothammer他「Tailored Disorder in Photonics:Learning from Nature」,Advanced Optical Materials,2021の記載と類似して適用可能であり、そのすべての開示内容を本明細書に援用する。
【0148】
そして、例示的ないくつかの実施形態によれば、カオス的なマイクロ又はナノ構造化ナノ粒子(例えば、カオス的なマイクロ又はナノ構造化球)は、球が安定化すると、すべてのナノ粒子を一体的に保持する任意の非吸収材料の基材表面に分散して密集することになる。ここで、いくつかの実例において、ナノ粒子は、入射光エネルギーの量に応じて、最大でマイクロメートルのスケールの大きな直径で製造可能である。最終的な支持構造として機能する基板は、光学的に貯蔵されることになる入射放射線に対向する剛性又は可撓性の膜又はフィルムであってもよい。ナノ粒子(例えば、球)の密集において、好ましい密集は、六角形の格子に最高密度で密集する六方密集であって、ナノ粒子間の空隙の回避等、最大限の効率がもたらされる。
【0149】
ここで、例示的ないくつかの実施形態によれば、マイクロ又はナノ粒子は、噴霧、印刷、パターン化、機械的なディスペンス蒸着、スピンコーティングのほか、電気蒸着/めっき、マスキング又はプログラミングによる選択的電気スプレー、自己組織化、インキュベーション等の多くの方法によって、基板の表面に設けることができる。
【0150】
ここで、特別ないくつかの実例においては、図17の基板SUBの表面中又は表面上への屈折率波不規則のランダム分布によって、幾何学的不規則性が光閉じ込め構造において実現されるようになっていてもよい。不規則性の正味の効果は、様々なモードの伝送光間のランダム結合源の生成である。図17の光閉じ込め構造LCSの効果は、入射電磁放射線が体積内に新たな光子を導入する一方、自然放出及び誘導放出の光-物質プロセスによって、例えばある周波数の光子の数が減少し、他の波長の光子が増加することにより、それぞれの分布が変化することである。したがって、任意の光学利得媒体、色素、ラマン増幅器、又は(実施形態の図に表される)量子ドット等の半導体ナノ構造が光閉じ込め構造LCSに用いられるようになっていてもよい。
【0151】
なお、量子ドットを採用した実施形態に関して、強く閉じ込められる量子ドットは、サイズの顕著な関数である放出波長を有するため、ドットのサイズを変えるだけで広いエネルギー範囲にわたって連続的にスペクトルを調整可能となる利点がある。例示的ないくつかの実施形態において、量子ドットは、少なくとも10nm(約20nm等)の比較的大きな横方向サイズを有していてもよい。例えば、量子ドットは、基板SUBの表面に適用されるコロイド状の量子ドット構造として調製されるようになっていてもよい。
【0152】
例示的ないくつかの実施形態によれば、コアCR1、CR2、CR3は、不規則形状及び/又は不規則配置で調製され得るナノ球により提供されるようになっていてもよい。例えば、基板SUBの表面上のナノ球のリソグラフィ製造には、これらのナノ球の微小なナノスケールに起因する十分な不規則性を生じさせ得る。ここで、実例において、ナノ球は、r1、r1’、r1’’が約20nmとなるように、約40nmの直径を有していてもよい。
【0153】
光の閉じ込めについて前述したように、この原理に従って、複数の異なる構成、形状、及びアーキテクチャを設計可能であるが、これらは、貯蔵されるEM出力の量に応じて用途ごとに異なる。例えば、球面又は20面体も考えられるが、例えば20面体の形状は球面よりも拡張性が高いと考えられる。
【0154】
別の例示的な実施形態においては、それぞれが無限に長い導波路を含むナノフォトニック共振器として、金属及び/又は非金属キャビティを細孔のランダムネットワーク内で使用可能である。また、2つの競合する影響すなわち細孔の好適に大きなサイズ及び好適に大きな密度の妥協によって、高効率散乱のための有利なシステムが実現され得る。
【0155】
図17に関して上述した通り、例示的ないくつかの実施形態に関しては、コアとして変形された球のシェルとして作用するフィラメントによってナノ構造が構成され得る。例えば、フィラメント直径が約244nm±50nm、最近隣間隔が約580nm±120nm、平均スケール空隙充填率が約68%±7%といったパラメータによって、フィラメントのランダムネットワークが提供され得る。
【0156】
複雑な光閉じ込め構造の例示的な設計には、マクロスケールで同じ形状内のナノ構造形状が先行段落に記載の同じパラメータに従う最終的な統合構造を含み得る。ここでの連想として、例えばシェルピンスキー幾何学が考えられる。
【0157】
いくつかの実例においては、プラズマ蒸着プロセスによって、複雑な光閉じ込め構造内のマイクロ構造体及び/又はナノ構造体が堆積されるようになっていてもよい。
【0158】
図14に関して、この図は、例示的ないくつかの実施形態に係る、光エネルギー貯蔵構造LESSを示している。光エネルギー貯蔵構造LESSは、複数の細孔Pを含む多孔質膜体MBを備える。膜体MBは、それぞれが少なくとも部分的に多孔質膜体MBを通って延びたチャネルの不規則ネットワークをさらに含むことにより、多孔質膜体MBの表面(例えば、上面US)に形成された細孔Pの少なくとも一部が多孔質膜体MB内を延びる少なくとも1つのチャネルと連通するようになっていてもよい。膜体MBは、円筒形状で提供されていてもよいし、その他任意の所望及び/又は適当な形状で提供されていてもよい。
【0159】
例示的ないくつかの実施形態によれば、膜体MBは、異なるサイズの細孔体及び細孔スロートにより提供される多孔質媒体の形状を有していてもよい。この形状は、細孔体及び細孔スロートの互いの接続により当てられるトポロジをさらに網羅していてもよい。なお、細孔の形態は、ネットワークトポロジ及び離散化に影響を及ぼす。異なる膜体MBを提供する場合には、同じ材料の複数のネットワーク構造を生成するのが好都合と考えられる。
【0160】
膜体MBを特徴付けるパラメータとしては、多孔度が考えられる(多孔度=(空隙の容積/総容積)×100%により与えられるものと了解される)。したがって、多孔度の大きな膜体は、膜体MB中の空隙の容積を大きくすることにより得られる。
【0161】
本開示の例示的ないくつかの実施形態によれば、膜体の提供に用いられる材料の多孔度は、材料の多孔度(P)と屈折率の2乗(すなわち、比誘電率ε)との間の線形依存性の仮定に基づいて修正され得る。ただし、これは、本開示を制限するものではなく、任意の数学的関数(例えば、べき級数)による2次又は一般的な依存性が仮定されるようになっていてもよい。
【0162】
例示的であるが非限定的な一実例として、TiOで形成された膜体MBが提供される。非限定的な一実例においては、1-ブタノールで希釈した約5nm~約100nmの範囲(約20nm~約50nm、好ましくは約25nm又は約40nm)の直径を有するTiOナノ粒子で構成されたTiOのペースト(ペースト対溶媒比は、例えば1:4又は1:6)を用いたスピンコーティング(例えば、4000rpm(30s)又は3000rpm~5000rpm(10s~50s))により形成されたメソ多孔質TiO(mp-TiO)層によって、変性TiOが提供されるようになっていてもよい。その後、スピンコートされた材料は、約100℃~約150℃(約130℃等)の温度で約10分~約30分(約20分等)の間、アニーリングされるようになっていてもよい。
【0163】
例示的ないくつかの実施形態において、膜体MBは、細孔ネットワークを有していてもよく、3D格子ネットワーク上では、実質的に規則的な格子点に細孔体が配置され、細孔スロートが細孔体の少なくとも一部を接続している。細孔スロートは、複数の異なる方向に配向可能である。例えば、これらの方向は、予め規定されたネットワーク平均に応じて、最大で13個の異なる配向であってもよく、3Dネットワークの規則的な立方格子には、最大26個(0~26個)の配位数の細孔体が配置されていてもよい。一方、これらの数は、円形3D格子においては実質的に増加する。
【0164】
特別ないくつかの実例において、本発明者は、文献に基づいて、例えば連続性、微分可能性等の不規則な特性、最適化の必要がある目的関数等の設計を最適化するために推奨される遺伝的アルゴリズムを使用することにより、約10%~約20%、好ましくは約12%~約14%の多孔度の多孔質媒体の3D立方構造上の多孔度の計算結果のデータサンプルを以下に提供する。例示的な膜体は、細孔数が5030、結合数が7605、平均配位数が約3、入口への結合数が238、出口への結合数が219、多孔度(%)が13.5として提供され得る。
【0165】
例示的ないくつかの実施形態において、膜体は、以下のようなサイズの細孔を有していてもよい。この点、国際純正応用化学連合(IUPAC)は、細孔直径(d)に基づいて、多孔質材料を3つのクラス(マイクロ多孔質(d<2.0nm)、メソ多孔質(2.0≦d≦50nm)、及びマクロ多孔質(d>50nm))に分割していることに留意する。この点、シリカ及びチタンは、直径が約2nm~50nmの細孔を含むメソ多孔質材料として特性化される。
【0166】
他の例示的ないくつかの実施形態においては、TiOの多孔度を大きくする他の設計上の選択肢が以下のように提示される。この点、多孔質二酸化チタンを成長させる格子再構成法が以下のように与えられ得ることに留意する。多孔質マイクロ構造、構造コヒーレンス、及びバンドギャップ設計の相乗的制御を考慮した単結晶は、例えばマグネリ相におけるP-SCアナターゼTi2n-1(n=7-38)の機能性を大幅に向上させる。
【0167】
一実例において、例示的な方法は、P-SC Ti2n-1結晶の成長を含む方法に基づいていてもよい。まず、例えばチョクラルスキー法を用いて単結晶KTP基板を成長させた後、約10mm×約20mm×約0.5mmの寸法の基板に制限なく切断する。その後、表面を機械的に研磨する一方、X線回折装置(Cu-Kα、Mniflex 600)及び原子間力顕微鏡(AFM、Bruker Dimension Edge)でそれぞれXRDを用いることにより、結晶ファセット及び粗さを分析するようにしてもよい。そして、H/Arガス(50~200sccm、純度6N)の圧力を67~333mbarに制御した真空システムにおいて、P-SC Ti2n-1結晶を600~800℃で成長させるようにしてもよい。P-SC Ti2n-1結晶は、30~60hの処理時間を維持した後、アルゴンガス(純度6N)中での自然冷却プロセスによって得られる。
【0168】
図18aを参照して論じる他の例示的ないくつかの実施形態によれば、3つのディスク形状の透明な構造体の使用によって、Fractal、Wada、Riddled等の高カオス次元におけるカオス散乱の理論を考慮に入れることが理解され得る非常に特殊な方法でカオス散乱をトリガ可能である。例示的な実施形態によれば、ナノ粒子NP1、NP2、及びNP3が形成された(図18aの紙面、場合によっては、図14の膜体MBの上面USに対応する)基板を備えた光閉じ込め構造LCS’が示される。例示的ないくつかの実施形態において、ナノ粒子NP1~NP3は、約300nm未満の最大サイズを有していてもよい。例えば、ナノ粒子NP1~NP3が半球状の形状を有すること、及び/又は、ナノ粒子NP1~NP3間の間隔がナノ粒子NP1~NP3の平均半径の少なくとも約2.048倍であることが考えられる。ナノ粒子NP1~NP3は、シリカガラス、フェリチン、熱ショックタンパク、ヴォールトタンパク、及びプロテインナノケージのうちの少なくとも1つで形成されていてもよい。
【0169】
ここで、いくつかの好適な実施形態において、ナノ粒子NP1~NP3は、約300nm未満の最大サイズを有するとともに、ナノ粒子NP間の間隔がナノ粒子NP1~NP3の平均半径の2.04821419倍である半球状の形状を有する。このような間隔によって、安定多様体及び不安定多様体のホモクリニック相互作用の結果である吸引領域境界の変質がもたらされ、この厳密な間隔の厳密な臨界点が見出される。
【0170】
図18aは、3つの球状ナノ粒子NP1、NP2、及びNP3の正三角形配置を示しており、これは、上述の通り、図18aに示す配置が、繰り返す三角形パターンの繰り返し配置となり得るように、多数のナノ粒子(図示せず)のうちの3つのナノ粒子を表し得る。この簡略図は、ナノ粒子NP1、NP2、NP3間の間隔がナノ粒子NP1、NP2、NP3の平均半径の2.04821419倍となる臨界点の出現を説明するために提示しているに過ぎない。本発明者は、図18aにおいてナノ粒子NP1、NP2、NP3が密着しているように、ナノ粒子が互いに密着している場合、ナノ粒子間を伝搬する光の軌跡がナノ粒子の接線となる臨界幾何学点が存在することを指摘する。
【0171】
引き続き図18aを参照して、入射光は、基準方向R1に垂直な基準方向R2に対する配向θを有し、基準方向R1に対する高さを示す散乱パラメータbを有する矢印で示される。このようにθ及びbで規定される入射光の軌道の位相空間においては、ナノ粒子間の間隔の臨界値において、特定のトポロジ境界を有する不安定多様体間の交差が発生する。この臨界点は、力学系ではヘテロクリニック軌道として知られ、2つの異なる平衡点を結ぶ位相空間経路を表す。本発明者は、図18aに示すナノ粒子の構成について、対称線をポアンカレ断面として選ぶことにより対称性を縮小して、この臨界幾何学点の計算を実行した結果、系がトポロジ的なカオスを起こし、周期軌道がエントロピーに比例して増大することを見出した。本発明者は、対称性の縮小の観点から、この系を2シンボルのトポロジ的ベルヌーイシフトを基準として同一視可能であり、この点、対称線のバーコフ法等の複数の方法によって、交差マッピングを決定可能であることを見出した。最後に、2つの球の中心間の関係により与えられる間隔は、4/√3=2.309401となった(Hansen K T 1992 Chaos 2 71;1993 Nonlinearity 6 753,770;1992 Symbolic dynamics:IlIに提示のような計算に従う)。また、ビリヤード及び平滑空間における分岐と、ハンセン定数の利用によって、2.04821419での厳密な臨界点が見出された。なお、図18aの斜線部分は、カオス次元(この場合は、Wada吸引領域の次元)を表す。
【0172】
図18aは、3つのナノ粒子NP1~NP3が正三角形に従って配置され、その角部にナノ粒子NP1~NP3が配置された一実例を示しているが、これは何ら限定的なものではなく、代替として、任意の正多角形配置(例えば、正方形、正六角形、又は正八角形等の正多角形)が実現されるようになっていてもよい。
【0173】
図18b~図18fに関して、これらは、本開示の他の例示的な実施形態に係る3D配置を模式的に示しており、図18b~図18fはそれぞれ、光閉じ込め構造(図示せず)の基板(図示せず)の表面上に配置さるように好適に配置されたナノ粒子の複数の集塊を示している。図18aに関して上述したような多角形配置のほか、ナノ粒子の多面体配置も可能である。図18bは、正4面体ミラーボール構造として配置されたナノ粒子を示し、図18cは、正6面体として配置されたナノ粒子を示し、図18dは、正8面体として配置されたナノ粒子を示し、図18eは、正12面体として配置されたナノ粒子を示し、図18fは、正20面体として配置されたナノ粒子を示している。
【0174】
図18a~図18fそれぞれに示すように、下層の基板(図示せず)と接触したナノ粒子は、球として設けられるか、又は、半球として設けられていてもよい。例えば、ガラスボックス等の基板と接触した半球は、エッチングにより設けられていてもよい。したがって、図18a~図18fに示すような基板と接触した球状ナノ粒子はいずれも、半球状ナノ粒子として設けられていてもよい。ナノ粒子は、下層の基板(図示せず)、好ましくはガラス等の光学的に透明な材料により作成された基板又は酸化ケイ素基板(例えば、単結晶酸化ケイ素)の表面に形成されていてもよい。ここで、特別且つ非限定的ないくつかの実例において、基板は、必ずしも平面状及び/又はディスク状ではないが、ガラス/透明ボックス等、その他任意の搬送体又は支持構造により提供されていてもよい。例えば、ガラスボックスの側面の上部には、外球を付着/接着させることも可能である。したがって、本願を完全に理解した当業者には当然のことながら、意図する用途に応じて、所望の光貯蔵容量を考慮に入れることにより、特定の配置形状が形成されるようになっていてもよい。
【0175】
図18b~図18fに関して上述したような配置のいずれにおいても、図18aに関して上述したような評価及び知見は、図18b~図18fのいずれにおいても、ナノ粒子が約300nm未満の最大サイズを有し、ナノ粒子間の間隔がナノ粒子の平均半径の2.04821419倍である球状の形状を有するように、図18b~図18fのいずれにもそのまま当てはまる。
【0176】
図18a~図18fのいずれかを参照して、ナノ粒子は、平面状の構造体(例えば、基板)の表面に取り付けられた球状ナノ粒子であってもよい。例えば、ナノ粒子は、以下に提案するような方法のいずれかによって、平面状の表面に付着又は接着されていてもよい。
【0177】
図18a~図18fは球状のナノ粒子を示しているが、これは、本開示に如何なる制限を課すものでもなく、代替として、楕円状及び/又は半楕円状のナノ粒子が設けられていてもよい。
【0178】
非限定的ないくつかの実例において、ナノ粒子は、量子ドットを介して接着されていてもよい。例えば、2つのモノマーから成るオリゴマーを結合(強弱のいずれを問わず、共有結合又は分子間結合が可能)により一体化することができ、これを通例は二量体と称する。特別な一実例においては、Agナノ球コロイドに連結ポリマー又は塩を制御添加することにより、二量体形状のAgナノ粒子をコロイド状に調製することができる。混合した場合は、2つの大きなサイズのナノ粒子を一体化する接着剤としてリンカー分子が作用し得る。この接着剤は微小であるため、同じ場所にナノ粒子がさらに付着することが防止され、望ましい二量体構造が得られる。他のいくつかの実例においては、コロイド溶液において、2つの大きなナノ粒子間にCdTe量子ドットを配置することも可能である。
【0179】
他の非限定的ないくつかの実例において、ナノ粒子は、超疎水性フルオロシランを介して接着されていてもよい。例えば、フルオロシランが自由なカーボンナノ球を接着させ得る2ステップ法によって、カーボンナノ球のフィルムにより安定した超疎水性表面を調製することができる。このような接着は安価で、超疎水性表面の大規模調製に適しているため、図18a~図18fのいずれかに関して開示したような実施形態の安価で時間節約可能な製造が可能であり、製造の制御が容易となる。
【0180】
他の非限定的ないくつかの実例において、ナノ粒子は、接着により取り付けられていてもよい。ここで、いくつかの例においては、エタノールの代替として、ジクロロメタン又はテトラヒドロフランにナノ球が懸濁されていてもよい。いずれの場合も、ジクロロメタン又はTHFに溶解したポリイミドの添加によって、透明な溶液が得られるが、ジクロロメタンを用いると、ガラスウェハ上の透明且つ均質で安定した被膜が容易に実現される。このため、ジクロロメタン1ml当たり20mgのポリイミド及び6.19*1011の金/シリカコア/シェル粒子の混合物による被覆が用いられるようになっていてもよい。
【0181】
本開示を完全に理解すれば、例示的且つ非限定的ないくつかの実施形態においては、ナノリソグラフィによって基板上に設けられ得るナノ球として、ナノ粒子が形成され得る。ここで、明示的且つ非限定的な一例においては、第1のステップにおいてナノ粒子のコロイドが生成された後、コロイドがシリカ層で被覆され得るように、ナノ球が提供され得る。
【0182】
例えば、小さな直径(例えば、約10~30nmの範囲(約15nm等))のナノ粒子の場合は、クエン酸ナトリウムによるテトラクロロラウリン酸の還元によってナノ粒子が生成され得る。ここで、明示的且つ非限定的な一例においては、95mgのテトラクロロラウリン酸が撹拌により、500mlの水性液体(例えば、水)に溶解していてもよい。このように得られた溶液が少なくとも100℃(例えば、約150℃)まで加熱されるようになっていてもよい。その後、撹拌中に、24mlのクエン酸ナトリウムの溶液(例えば、1%m/v)が添加されるようになっていてもよい。この温度では、反応が約20分間継続する。
【0183】
例えば、大きな直径(例えば、約30~80nmの範囲(約60nm等))のナノ粒子の場合は、より長い波長領域に最大吸収を有していてもよい。このように球状のナノ粒子を製造するには、このような大型のナノ粒子の製造にシード成長合成が用いられるようになっていてもよい。ここで、明示的且つ非限定的な一例においては、150mlの2.2mMクエン酸ナトリウムが少なくとも80℃(例えば、100℃)まで加熱されるようになっていてもよい。その後、1mlの25mMテトラクロロラウリン酸が添加されるようになっていてもよい。その後、この溶液は、少なくとも5分間(約10分間等)加熱されるようになっていてもよい。シードプロセスを起こすには、上述の100℃までの加熱の場合で、約10℃だけ(90℃等まで)温度を下げるようにしてもよい。適当な温度に達した後は、1mlのテトラクロロラウリン酸が再び添加され、少なくとも20分間(約30分間等)撹拌されるようになっていてもよい。テトラクロロラウリン酸の添加は、繰り返されるようになっていてもよい。その後、このナノ粒子懸濁液の55mlが53mlの水性液体(水等)で希釈されるようになっていてもよい。そして、2mlの60mM酢酸ナトリウム溶液が添加され、約90℃で撹拌されるようになっていてもよい。これは、各成長ステップにおいて繰り返されるのが好ましい。また、各ステップには、1mlの25mMテトラクロロラウリン酸の添加と、30分間の撹拌と、を含んでいてもよい。さらに、1mlの25mMテトラクロロラウリン酸を添加した後、次の53mlの水性液体(水等)での希釈を行ってから、次の成長ステップに進むようにしてもよい。
【0184】
本開示を完全に理解した当業者には当然のことながら、コア及びシェルを有する誘電体ナノ粒子、例えば、コアの直径が少なくとも5nm(例えば、約15nm)の誘電体/シリカシェルコア/シェルナノ粒子は、純粋な誘電体コロイドをシリカシェルで被覆することができる。ここで、非限定的な一実例においては、カップリング剤すなわちプライマとして、アミノプロピルトリメトキシシランが用いられるようになっていてもよい。シリカシェルは、Stober合成でテトラエトキシシランを用いることにより得られる。
【0185】
ここで、非限定的な一実例においては、25mlの誘電体懸濁液が用いられるとともに、1mMアミノプロピルトリメトキシシランの0.228mLの水溶液が添加され、少なくとも10分間(例えば、約15分間)撹拌されるようになっていてもよい。その後、活性シリカ(27wt%)の溶液がpH10超(例えば、約11)で0.4~0.6wt%(例えば、約0.54wt%)となるように希釈され、その1mlが撹拌中に添加されるようになっていてもよい。この反応は、ロッキングシェーカ上で約6日間にわたって行われる。その後、1mlの粒子のバッチが精製され、それぞれのケースで0.2mlの水性液体(例えば、水)及び0.8mlのエタノールの溶液に移される。そして、12μlのテトラエトキシシラン(10vol%)及び10μlの水酸化アンモニウム(25%v/v)が添加されるようになっていてもよい。この反応は、オーバヘッドシェーカにおいて一晩中行われる。粒子は、エタノールで1回精製され、エタノール中に保存されるようになっていてもよい。
【0186】
図14を参照して、例示的ないくつかの実施形態によれば、ナノ粒子NP間の間隔の上限は、約6~約1000の範囲、好ましくは約6~約10の範囲又は約100~約1000の範囲であってもよい。
【0187】
例示的ないくつかの実施形態によれば、多孔質膜体MBは、誘電体材料(例えば、TiO及びSiOの少なくとも一方)で形成されていてもよい。例えば、多孔質膜体MBは、誘電体材料の粉末の供給(例えば、誘電体材料の研削又は粉砕)により製造されるようになっていてもよい。その後、例えばプラズマ蒸着技術によってナノ粒子NPが粉末上に堆積された後、このように処理された粉末が圧縮され、例えばナノ粒子NPを含む粉末の焼結によって膜体MBが得られる。
【0188】
特別ないくつかの実例に関して、TiOは、その粒度が約100~3,000nmの平均粒径で与えられる場合は微細、約100nm未満の平均粒径の場合は超微細と考えられる。ここで、非限定的且つ有利ないくつかの例において、平均粒径は、約200nm~約300nmの範囲であってもよく、本発明者は、この範囲でTiOによる光の散乱が最大化されることを見出した。
【0189】
他の特別ないくつかの実例に関して、SiOのナノ粒子は、平均粒径が約12nm~約4nmであってもよい。例えば、SiOは、膜体MBにおけるナノ粒子NPとして用いられる場合、99.99%の純度であってもよい。
【0190】
図14を参照して、この図は、光エネルギー貯蔵構造LESSの考え得る用途を模式的に示している。図示のように、光エネルギー貯蔵構造LESSは、非限定的且つ例示的な光源としての太陽Sにより放出された太陽光線SLR等の光に曝される。
【0191】
本開示の観点で当業者には当然のことながら、光エネルギー貯蔵構造LESSのナノ粒子NPは、太陽光線SLRに曝された細孔Pによって、膜体MBに入る太陽光線SLRをカオス散乱させ得る。いくつかの実例において、ナノ粒子NPは、互いに近くなり過ぎないように、すなわち、当該ナノ粒子NPの間隔がナノ粒子NPの平均半径又は最大半径の2.0482142よりも大きくなり得るように、膜体MB全体に分散していてもよい。
【0192】
図15を参照して、この図は、エネルギー貯蔵及び/又は変換システム700’における光エネルギー貯蔵構造LESS’の例示的な用途を示している。ここで、例示的ないくつかの実施形態によれば、エネルギー貯蔵及び/又は変換システム700’は、光エネルギー貯蔵構造LESS’が配置されたコンテナ741’を備える。光エネルギー貯蔵構造LESS’は、光エネルギーに曝された後のコンテナ741’内に配置されていてもよい。或いは、光エネルギー貯蔵構造LESS’は、コンテナ741’内に配置され、当該光エネルギー貯蔵構造LESS’と光学的に結合された上述の光導波路のうちの1つ(図示せず)等の光導波路によって光エネルギーに曝されることにより、上述の光導波路(図示せず)により集められた光が光導波路(図示せず)によって当該光エネルギー貯蔵構造LESS’まで伝送されるようになっていてもよい。コンテナ742’は、液体743’が充填されていてもよく、また、液体743’は、上述のような液体743に対応していてもよく、その開示内容を本明細書に援用する。
【0193】
例えば、光エネルギーを熱エネルギーに変換するためのシステム700’の動作中、光エネルギー貯蔵構造LESS’に貯蔵された光は、光エネルギー貯蔵構造LESS’と接触しているコンテナ741’内の液体743’によって放出される。例えば、コンテナ741’は、光エネルギー貯蔵構造LESS’内に貯蔵された光エネルギーの放出が意図される場合、液体743’が充填されていてもよい。
【0194】
光エネルギー貯蔵システムLESS’に貯蔵された光エネルギーの放出は、システム全体のエネルギー需要が光エネルギーを何らかの技術(集光型太陽電池パネル、太陽光発電、太陽熱脱塩技術、水素、エタノール等の太陽燃料を生産するための人工光合成)に対して放出する必要がある場合に発生する可能性がある。例えば、コンピュータ自動化システム(図示せず)により、光エネルギー貯蔵構造LESS’から光子を放出するための光信号をトリガして、熱貯蔵タンク或いは光起電力パネル(図示せず)、人工光合成太陽燃料システム(図示せず)、又は任意の太陽ベースのシステム若しくは技術としてのコンテナ741’に放出することも可能である。このように、システム700’のコンテナ741’は、二重扉システム(図示せず)を介して液体743’が充填されたコンテナ741’内に移動するように自動的に制御されるようになっていてもよく、既存の熱エネルギーが保たれる。
【0195】
なお、光エネルギー貯蔵構造LESS’に貯蔵された光は、入射軌道の衝突パラメータが確率密度ρ(s)に従って統計的に分布する場合、このようなナノ構造の散乱体から出ていく可能性があり、エネルギーEにおける対応する時間遅延{t=-T(s;E)}は、確率密度p(t;E)=∫dsρ(s)δ[t+T(s;E)]を有する(式2)。これは、基本的に式2(確率密度)を満たす光パルスである外部光パルスによって放出がトリガされるまで、光エネルギー貯蔵構造LESS’に貯蔵された光エネルギーが保持され、これによりフラクタル次元が壊れて光学的な蛇口として作用すること意味する。
【0196】
図15は、エネルギー貯蔵及び/又は変換システム700’における光エネルギー貯蔵構造LESS’を示している。ただし、これは特に限定的なものでもなく、光エネルギー貯蔵構造LESS’は、コンテナ741’の上部又は側部に配置可能であり、光エネルギー貯蔵構造LESS’と液体743’との間の光結合は、光エネルギー貯蔵構造LESS’から放出された光の光結合を可能にする光学ウィンドウ部(例えば、ガラスウィンドウ等、コンテナ741’の透明壁部)を通して実現される。或いは、光エネルギー貯蔵構造LESS’は、液体743’の上方で液体743’と機械的に直接接触することなく、コンテナ741’に配置されていてもよい。いずれの場合も、光エネルギー貯蔵構造LESS’は、液体743’の高温との直接接触を回避する。
【0197】
図14及び図15に関して上述したような膜体MB、MB’は、上述したような図17の背景において採用されていてもよく、この場合、図17の基板SUBは、上述したような膜体MB、MB’の少なくとも一方によって与えられ得る。
【0198】
ここで図16を参照して、この図は、例示的ないくつかの実施形態に係る、エネルギー貯蔵及び/又は変換システム800を模式的に示している。エネルギー貯蔵及び/又は変換システム800は、光貯蔵部820と、光導波路(図示せず)によって光貯蔵部820に接続されたエネルギー貯蔵及び/又は変換システム(図示せず)のコンテナ(図示せず)と、を備えており、光導波路(図示せず)並びにエネルギー貯蔵及び/又は変換システム(図示せず)は、上述のような光導波路並びにエネルギー貯蔵及び/又は変換システムに対応していてもよく、これらの開示内容を本明細書に援用する。すなわち、エネルギー貯蔵及び/又は変換システム(図示せず)のコンテナ(図示せず)は、上述のようなコンテナ741及び741’の一方に対応していてもよく、これらの開示内容を本明細書に援用する。コンテナ(図示せず)には、図14に関して上述したような光エネルギー貯蔵構造(図示せず)が配置されていてもよいし、図15に関して上述したようなコンテナに光学結合されていてもよい。この追加又は代替として、図17及び図18a~図18fのいずれかに関して上述したような光閉じ込め構造がコンテナに配置されていてもよいし、ウィンドウを通してコンテナに光学結合されていてもよい。したがって、光貯蔵部820は、上述のような光エネルギー貯蔵構造及び/又は上述のような光閉じ込め構造を備えていてもよく、これらの開示内容を本明細書に援用する。したがって、光源の非限定的な一実例としての太陽SSの光線SLとして示される光エネルギーがエネルギー貯蔵部820により収集され、光導波路(図示せず)によってコンテナ(図示せず)に伝送される。
【0199】
例示的ないくつかの実施形態によれば、図16に示すように、光貯蔵部820は、タワー810の上部に配置されていてもよい。光線SLは、ミラーフィールドSFによって収集され、ミラーフィールドSFのミラーによって光貯蔵部820へと案内されることにより、光源SSによって放出された光が収集され、タワー810上の光貯蔵部820に向かって集中するようになっていてもよい。例えば、タワー810は、例示を目的として非限定的にミラーフィールドSFとして図16に表される平らなミラーのソーラーフィールド(ヘリオスタット)により囲まれていてもよい。
【0200】
この追加又は代替として、図16に示すように、エネルギー貯蔵及び/又は変換システム800は、硝酸ナトリウム及び硝酸カリウム等の溶融塩混合物が貯蔵されたタンク831(図15に関して上述したようなコンテナに対応し得る)を有していてもよい。タンク831の溶融塩混合物は、ポンプ833により導管を介してタワー810の頂部まで循環され、ミラーSFによりタワー810の頂部のレシーバに向けて反射された太陽光SLにより加熱される。この溶融塩は、例えば260℃の「冷たい」状態でタワーを循環した後、ミラーフィールドSFからレシーバに向けて集光された太陽光SLにより加熱される。溶融塩は、加熱されると(例えば、約565℃)、導管822を介してタワーを流れ落ちるため、その直後に発電に使用することも可能であるし、高温タンク825に熱貯蔵して後で使用することも可能である。
【0201】
ここで、いくつかの実例においては、熱交換器830がタワー810の上部に配置され、集光型太陽光発電(CSP)のレシーバ(図示せず)に統合又は結合されることにより、エネルギー貯蔵及び/又は変換システム800がCSPプラントに実装される。例えば、熱交換器は、レシーバ(図示せず)に統合又は結合されていてもよく、これは、タワー810の上部に配置された円形フレネル反射器(図示せず)であってもよい。レシーバ(図示せず)は、伝熱流体を含んでいてもよい。例えば、レシーバ(図示せず)中の作動流体は、約500℃~約1000℃(773~1273K又は932~1832°F)に加熱された後、上述のような発電又はエネルギー貯蔵システムの熱源として用いられるようになっていてもよい。
【0202】
当業者には当然のことながら、電力タワーは、加熱された作動流体をタンク831から貯蔵タンク825に運ぶための異なるシステムを有していてもよい。この追加又は代替として、当業者には当然のことながら、入射光線SLRは、レシーバ及び/又は光エネルギー貯蔵構造820に到達する前に、(図示しない散光器を通して)拡散させることも可能である。
【0203】
本開示を完全に理解した当業者には当然のことながら、少なくともいくつかの例示的な実施形態は、レシーバを含むタワーシステムと熱をタンクまで降ろすシステム全体とを容易に取り除くことができる新たなCSPプラントを提供することができる。例えば、エネルギー貯蔵及び/又は変換システムにおいては、貯蔵される光エネルギーの集光、伝送、及び/又は放出に対して、光エネルギー貯蔵構造及び任意選択として少なくとも1つの光導波路のみが用いられるようになっていてもよい。
【0204】
図16のいくつかの改良によれば、ミラーから入射する集束光線を拡散させ、集束光が一点に集中して加熱するのを防ぐため、散光器(図示せず)を使用することも可能である。
【0205】
当業者には当然のことながら、各設備に応じて、基本的に光エネルギー貯蔵構造をCSPプラントのレシーバに光学結合することにより、エネルギー貯蔵及び/又は変換システムを既存のCSPプラントに適応させ得る。
【0206】
図19は、上述したようなタンク831及び/又はコンテナ741に対応し得る熱貯蔵・電気変換ユニット931を具備するエネルギー貯蔵及び/又は変換システム900を示しており、これらのすべての開示内容を本明細書に援用する。すなわち、熱貯蔵・電気変換ユニット931は、上述のコンテナのうちの1つに係るコンテナであってもよく、これらの開示内容を本明細書に援用する。したがって、熱貯蔵・電気変換ユニット931は、図14に関して上述したような光エネルギー貯蔵構造(図示せず)が配置されていてもよいし、図15に関して上述した開示内容に類似する熱貯蔵・電気変換ユニット931に光学結合されていてもよい。この追加又は代替として、図17及び図18a~図18fのいずれかに関して上述したような光閉じ込め構造が熱貯蔵・電気変換ユニット931に配置されていてもよいし、ウィンドウを通して熱貯蔵・電気変換ユニット931の内部に光学結合されていてもよい。したがって、熱貯蔵・電気変換ユニット931は、上述のような光エネルギー貯蔵構造及び/又は上述のような光閉じ込め構造を備えていてもよく、また、これらと光学結合(内蔵又は結合)されていてもよく、これらの開示内容を本明細書に援用する。したがって、光閉じ込め構造により閉じ込められた光エネルギーが放出され、本明細書に開示の光導波路に対応する1つ又は複数の光導波路によって間接的に、又は、直接光学結合によって直接的に、熱貯蔵・電気変換ユニット931に光学結合されていてもよい。
【0207】
ただし、熱貯蔵・電気変換ユニット931は、消費者950との蒸気供給システム940を介して供給され得る(例えば、400℃超又は約100℃~約400℃の範囲の高温の)高温蒸気を生成するための蒸気システムと熱接触した熱交換器を有していてもよい。消費者950は、加熱又はエネルギー生成に高温蒸気を使用し、任意選択としてのフィードバックシステム955を介して、未使用の蒸気を戻すようにしてもよい。蒸気供給システム940は任意選択として、(例えば、蒸気供給システム940の高温蒸気の温度が400℃よりも低いか高いかに応じて、約100℃~400℃の範囲又は100℃未満の温度の)低温蒸気を供給するための低温蒸気接続部を提供していてもよく、これは、低温蒸気供給部945を介して、蒸気供給システム940から分岐していてもよい。
【0208】
例示的ないくつかの実施形態によれば、熱貯蔵・電気変換システム931は、上記の追加又は代替として、熱エネルギーを電気エネルギーに変換し、電気エネルギーを電気エネルギー網965に供給して、電気エネルギーを消費者950並びに/又は1つ若しくは複数の他の消費者970に供給するための変換ユニット960を備えていてもよい。例えば、熱貯蔵・電気変換ユニット931内で生成された蒸気を使用するタービン(図示せず)又は1つ若しくは複数の熱電素子を介して、熱エネルギーが電気エネルギーに変換されるようになっていてもよい。図示はしていないものの、電気エネルギーをフィードバックするための電気フィードバック接続端子が設けられていてもよく、この電気フィードバック接続端子は、電気エネルギーを生成する1つ又は複数の熱電素子に結合されていてもよい。
【0209】
引き続き図19を参照して、エネルギー貯蔵及び/又は変換システム900は、それぞれが本開示の第1の態様の光導波路及び/又は上述の光導波路に対応する複数の光導波路982を有する光導波路システム980を備える。複数の光導波路982は、当該複数の光導波路982の第1の端部984で2次元エリア(530、630、720)又は3次元配置(714)を覆うように配置されていてもよく、第1の端部984における複数の光導波路982の第1の部分集合の端部は、それぞれの第1の端部984で複数の光導波路982の第2の部分集合の端部を横切って実質的に平行に配置されている。例えば、複数の光導波路982は、第1の端部984で織り交ぜられていてもよい。ただし、これは、本開示を制限するものではなく、複数の光導波路982の端部は、第1の端部984においてすべてが平行であってもよい。したがって、複数の光導波路982は、太陽988により放出された太陽光986を非常に効率的に集め得る。
【0210】
図19は、光導波路システム980を含むものとして示しているが、これは、本開示に如何なる制限を課すものでもなく、当業者には当然のことながら、光導波路システム980は任意選択であって、例示的ないくつかの実施形態(図示せず)においては存在していなくてもよい。このような実施形態(図示せず)において、熱貯蔵・電気変換ユニット931は、光エネルギー貯蔵構造(図示せず)及び/又は光閉じ込め構造(図示せず)に直接、光学結合されている。例えば、光エネルギー貯蔵構造(図示せず)及び/又は光閉じ込め構造(図示せず)は、熱貯蔵・電気変換ユニット931内の配置及び/又は熱貯蔵・電気変換ユニット931に設けられた1つ又は複数のウィンドウ部(図示せず)を介した熱貯蔵・電気変換ユニット931との結合がなされていてもよい。
【0211】
本開示に係るエネルギー貯蔵及び/又は変換システム(例えば、上述のようなシステム700、800、及び900のうちの1つ)には、高濃度レベルの光子エネルギーが供給されていてもよい。ここで、光導波路システム(上述のようなシステム710及び980の少なくとも一方等)は、伝送線として作用する光導波路に沿った太陽光の一体的捕捉を可能にするため、エネルギー貯蔵及び/又は変換システムにおける熱エネルギー貯蔵の性能を指数関数的に向上させる能力を提供する。したがって、高温熱エネルギー貯蔵(当該技術分野においては、HTTESとして知られる)が効率的に提供され得る。
【0212】
本開示に係るエネルギー貯蔵及び/又は変換システム(例えば、上述のようなシステム700、800、及び900のうちの1つ)の例示的な実施形態においては、高温を強化及び/又は維持し、貯蔵時間を延長し、導電体の形態で電気を送達し得る材料又は複合材料を採用することも考えられる。例えば、本開示に係るエネルギー貯蔵及び/又は変換システムにおいて採用される内側被膜は、グラファイトと混合するセラミックスで構成されていてもよい。ここで、実例としては、酸化アルミニウム(Al)並びにグラファイトと焼結したTiO及びMgOが挙げられる。好適な機械的特性が得られるとともに95~110S/mの範囲の導電性を有するいくつかの好適な実施形態において、セラミックス・グラファイト混合物には、約25~35wt%の範囲のグラファイトと、約65~75wt%の範囲の酸化アルミニウム(Al)グラファイトと、を含んでいてもよい。
【0213】
本開示に係るエネルギー貯蔵及び/又は変換システム(例えば、上述のようなシステム700、800、及び900のうちの1つ)の例示的な実施形態においては、熱貯蔵・電気変換ユニット931、タンク831、及びコンテナ741それぞれの内部が3つの層(全体的な内部/外部ケース、断熱体、及び複合材料層)で被覆されていてもよい。全体的な内部/外部ケースは、200℃を超える高温にも耐えるように構成された高温用包囲体(鋼又は類似の支持体で構成された包囲体等)により提供され得る。断熱体は、コークス/木炭/カーボンパウダー/カーボンフェルト又はセラミックファイバ若しくはロックウールの組み合わせで構成された断熱材を提供し得る。複合材料層は、上述のような内側被膜等、セラミックス及びグラファイトの複合混合物であってもよい。この複合材料層は、熱貯蔵・電気変換ユニット931、タンク831、及びコンテナ741それぞれの内壁全体を囲むことができ、絶縁体は、熱貯蔵・電気変換ユニット931、タンク831、及びコンテナ741それぞれの高さ又は幅に並んで間隔を空けて配置されたセラミック/グラファイト混合物で構成された付加的なボードを組み込むことも可能である。
【0214】
図19を参照して、熱貯蔵・電気変換ユニット931は、適当な接続端子を介して、消費者に熱及び電気エネルギーを供給する外部供給システムと接続する3つの接続部、すなわち、蒸気供給システム940への結合及び電気エネルギー網965への結合のための2つの出力ストリームと、接続された消費者(例えば、産業界の消費者)からの蒸気フィードバック等、任意選択としてのフィードバックシステム955と、を有することができる。例えば、産業界の消費者は、通例として79%の熱エネルギー及び21%の電気を必要とする鉄鋼業であってもよい。上述の通り、蒸気供給システム940は、2つのサブシステムに分割することができ、一方のサブシステムは、低熱エネルギー用として最大200℃を供給し、他方のサブシステムは、高熱エネルギー供給用として400℃超(例えば、最大2000℃)を供給する。ここで、いくつかの実例によれば、エネルギー貯蔵及び/又は変換システム900は、高温エンドユーザをモデル化するため、直接鉄還元施設を代表するエネルギー需要プロファイルに基づいて毎日用いられるようになっていてもよい。例えば、エネルギー貯蔵及び/又は変換システム900は、79%の熱、21%の電気から成るエネルギー供給出力を提供するようにしてもよく、適用温度は、ボイラー使用のための150℃から、鉄鉱石還元用の少なくとも400℃、好ましくは800℃超までの範囲である。
【0215】
図14図15図17、及び図18a~図18fのいずれかの背景において開示されるような任意の実施形態に関して、電磁(EM)エネルギーは、構造体から光子を解放するとともに、熱貯蔵タンク、光起電力パネル、人工光合成太陽燃料システム、又は任意の太陽ベースのシステム若しくは技術に対して放出される光信号をトリガするコンピュータ自動化システムに応じて、任意の技術(集光型太陽電池パネル、太陽光発電、太陽脱塩技術、水素、エタノール等の太陽燃料の生産のための人工光合成当)に対して放出可能である。例えば、図16及び図19に関して上述したような実施形態のいずれか等、熱貯蔵タンクの場合は、基板又は膜のマクロ構造(表面、フィルム、又は膜)が自動的に制御され、例えばウィンドウを通して、二重扉システムを介した液体充填タンクへの移動及び/又は光学結合がなされ得るため、既存の熱エネルギーが保たれる。太陽光発電の場合、このようなマクロ構造は、太陽電池の上部に存在していてもよい。入射軌道の衝突パラメータがエネルギーEでの確率密度に従って統計的に分布する場合は、光がナノ構造散乱から逃れ得る。
【0216】
図16及び/又は図19は、「メタエネルギー網グローバルインフラ」の例示的な実施形態を表すものと考えられ、本発明者はこれを「MEGGIE」と称する。
【0217】
上述のような本開示の種々態様及び実施形態は、本発明者が用語「複合エネルギー」の下で一体的に包含する本発明者のプロジェクト作業において発展したものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図7
図8
図9
図10
図11a
図11b
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18a
図18b
図18c
図18d
図18e
図18f
図19
【手続補正書】
【提出日】2023-12-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光導波路であって、
ファイバコアを含む光ファイバと、
前記光導波路の第1の端部において前記ファイバコアの少なくとも一部に重なる光学活性クラッド構造と、
を備え、
前記光学活性クラッド構造が、
第1の波長領域における高い透過率と、前記第1の波長領域の波長よりも長い波長の第2の波長領域における高い反射率と、を有するブラッグミラースタックと、
前記光ファイバの前記ファイバコアに重なる波長変換被膜であり、前記第1の波長領域の波長を含む放射線を、前記第2の波長領域の波長を含む放射線へと変換するように構成されている、波長変換被膜と、
を含み、
前記ブラッグミラースタックが、前記波長変換被膜の上方に配設されており
前記波長変換被膜は、基底状態、励起状態、及び準安定状態を有する3準位系を有する材料を備える、光導波路。
【請求項2】
前記波長変換被膜が、前記第1の波長領域の波長を含む放射線の照射による誘導放出によって、前記第2の波長領域の波長を含む放射線を放出するように構成された波長変換色素を含み、及び/又は、前記第1の波長領域が、約380nm~約700nmに配置され、前記第2の波長領域が、約700nm~約1.4μmに配置されている、請求項1に記載の光導波路。
【請求項3】
前記光ファイバが、空気コアと、前記空気コアに隣接するガラス又はポリマークラッドと、を有する、請求項1に記載の光導波路。
【請求項4】
前記波長変換被膜が、表面プラズモンを伴うプラズモン増強機能によって、蛍光を増強するように構成されている、請求項1に記載の光導波路。
【請求項5】
前記波長変換被膜が、ナノ粒子フィルムと、前記ナノ粒子フィルムを覆い、前記ブラッグミラースタックが配設された酸化ケイ素又はシリカマトリクス材料と、をさらに含み、及び/又は、前記ナノ粒子フィルムが、約500nm~約3μmの範囲の厚さを有する、請求項4に記載の光導波路。
【請求項6】
前記ナノ粒子フィルムが、サイズが約5nm~約100nmの範囲のナノ粒子と、厚さが約1nm~約80nmの範囲のシェルと、を含む、請求項5に記載の光導波路。
【請求項7】
前記光学活性クラッド構造が、前記第1の端部における領域において前記光ファイバが前記波長変換被膜により少なくとも部分的に覆われるように形成されている、請求項1に記載の光導波路。
【請求項8】
前記光ファイバが、その全長及び/又はその全周に沿って、前記ブラッグミラー被膜により完全に覆われている、請求項1に記載の光導波路。
【請求項9】
約25,000kmまでの範囲の長さを有する、請求項1に記載の光導波路。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の光導波路を複数備え、複数の前記光導波路のうちの少なくとも一部が、複数の前記光導波路の前記第1の端部において2次元エリア又は3次元配置を覆うように配置され、複数の前記光導波路が、前記第1の端部において実質的に平行に配置されている、光導波路システム。
【請求項11】
複数の前記光導波路が、第1の端部が実質的に平行に配置された光導波路の第1の部分集合と、第1の端部が実質的に平行に配置された光導波路の第2の部分集合と、を含み、前記第1の部分集合及び前記第2の部分集合の複数の前記光導波路が、前記第1の部分集合の複数の前記光導波路(501)がそれらの第1の端部において前記第2の部分集合の複数の前記光導波路を横切って延びるように、それらの第1の端部で織り交ぜられている、請求項10に記載の光導波路システム。
【請求項12】
不規則幾何学構造に依拠する光閉じ込め構造であって、
非吸収材料の基板と、
前記基板の表面に形成されたナノフォトニックキャビティの構造及び前記基板の前記表面に形成された量子ドットの構造の一方により実現されるナノフォトニック共振器と、
前記基板の前記表面に形成されたマイクロ又はナノ粒子構造であり、1より小さな低比誘電率のシェルと、誘電体材料のコアと、を含み、各シェルが、前記基板の前記表面上で少なくとも2つのコアを囲む、マイクロ又はナノ粒子構造と、
を備える、光閉じ込め構造。
【請求項13】
前記シェルが、光学的に透明な誘電体マトリクス材料で形成されている、請求項12に記載の光閉じ込め構造。
【請求項14】
前記シェルが、0.5未満、0.2未満、0.1未満、又は0.05未満の比誘電率を有する、請求項12に記載の光閉じ込め構造。
【請求項15】
前記基板が、硬質膜、柔軟膜、硬質フィルム、及び柔軟フィルムのうちの1つで形成されている、請求項12に記載の光閉じ込め構造。
【請求項16】
前記シェルが、誘電体材料又はプラズモン材料で形成されている、請求項12に記載の光閉じ込め構造。
【請求項17】
前記シェルが、金属又は非金属プラズモン材料で形成されている、請求項16に記載の光閉じ込め構造。
【請求項18】
前記コアが、陶材、マイカ、及び石英、又は有機材料、好ましくは有機ポリマーのうちの1つで構成されている、請求項12に記載の光閉じ込め構造。
【請求項19】
前記コアが、約100nm~約1μmの範囲のコア直径を有する、請求項12に記載の光閉じ込め構造。
【請求項20】
前記シェルが、100nmを上回るサイズであり、及び/又は、シェルに囲まれたコアが、約100nm~約1μmの範囲の最近隣間隔を有する、請求項12に記載の光閉じ込め構造。
【請求項21】
前記コアが、円筒形状、楕円形状、ナノロッド形状、球形状、ナノチューブ形状、及びナノワイヤ形状のうちの少なくとも1つの形状で設けられている、請求項12に記載の光閉じ込め構造。
【請求項22】
前記シェルが、半球形状及び半楕円形状の少なくとも一方の形状で設けられている、請求項12に記載の光閉じ込め構造。
【請求項23】
シェルに囲まれた前記コアが、実質的に直線状に配置されている、請求項12に記載の光閉じ込め構造。
【請求項24】
少なくとも一部にナノフォトニックキャビティが形成されたInAs量子ドットで形成された複数の量子ドットの構造によって、ナノフォトニック共振器が実現されている、請求項12に記載の光閉じ込め構造。
【請求項25】
前記ナノフォトニック共振器が、前記基板に形成された複数の孔の構造により実現されている、請求項12に記載の光閉じ込め構造。
【請求項26】
前記複数の孔が、約100nm~約500nmの範囲、好ましくは約100nm~約300nmの範囲又は約150nm~約500nmの範囲、より好ましくは約150nm~約300nmの範囲の直径を有する実質的に円形の孔である、請求項25に記載の光閉じ込め構造。
【請求項27】
前記ナノフォトニック共振器が、約50%~85%の充填率で設けられ、及び/又は、前記シェルが、200~400nmの範囲の中心直径を有し、及び/又は、シェルに囲まれたコアが、460~700nmの範囲の最近隣間隔を有する、請求項12に記載の光閉じ込め構造。
【請求項28】
前記充填率が、約5%~約20%の範囲のばらつきを有し、及び/又は、前記中心直径が、10%~約40%のばらつきを有し、及び/又は、前記最近隣間隔が、約10%~約40%の範囲のばらつきを有する、請求項27に記載の光閉じ込め構造。
【請求項29】
非吸収材料の基板と、
前記基板の表面に形成されたマイクロ又はナノ粒子構造であり、マイクロ又はナノ粒子が頂点に配置されている正多角形状又は正多面体形状の少なくとも1つの集塊にて前記マイクロ又はナノ粒子が配置された、マイクロ又はナノ粒子構造と、
を備える、光閉じ込め構造。
【請求項30】
各集塊の前記ナノ粒子の最近隣間隔が、前記ナノ粒子の平均半径の少なくとも2.048倍の間隔を有する、請求項29に記載の光閉じ込め構造。
【請求項31】
前記ナノ粒子が、最大で150nmの平均半径を有する、請求項29に記載の光閉じ込め構造。
【請求項32】
前記基板が、TiO及びSiOの少なくとも一方で形成され、及び/又は、前記基板が、誘電体材料で形成された、ナノ粒子が少なくとも表面部に堆積した多孔質膜体であり、及び/又は、前記ナノ粒子が、シリカガラス、フェリチン、熱ショックタンパク、ヴォールトタンパク、及びプロテインナノケージのうちの少なくとも1つで形成されている、請求項12に記載の光閉じ込め構造。
【請求項33】
誘電体材料で形成された、ナノ粒子が少なくとも表面部に堆積した多孔質膜体を備える、光エネルギー貯蔵構造。
【請求項34】
前記ナノ粒子が、約300nm未満の最大サイズを有し、及び/又は、前記ナノ粒子が、球状又は半球状の形状を有し、及び/又は、ナノ粒子間の間隔が、前記ナノ粒子の平均半径の少なくとも約2.048倍であり、及び/又は、前記ナノ粒子が、シリカガラス、フェリチン、熱ショックタンパク、ヴォールトタンパク、及びプロテインナノケージのうちの少なくとも1つで形成されている、請求項33に記載の光エネルギー貯蔵構造。
【請求項35】
前記多孔質膜体が、TiO及びSiOの少なくとも一方で形成されている、請求項33に記載の光エネルギー貯蔵構造。
【請求項36】
求項1~9のいずれか一項に記載の光導波路と、前記光導波路システム又は前記光導波路の各端部における請求項33~35のいずれか一項に記載の光エネルギー貯蔵構造及び請求項12~32のいずれか一項に記載の光閉じ込め構造の少なくとも一方と、を備える光エネルギー貯蔵システム。
【請求項37】
液体を貯蔵するためのコンテナを備えるエネルギー貯蔵及び/又は変換システムであって、前記コンテナが、非直線状並置の耐熱セラミックタイルで構成された内面を有し、及び/又は、前記コンテナが、電磁放射線を閉じ込めるために内部に分散されたマイクロ構造体及び/若しくはナノ構造体を含む液体、並びに/又は、前記液体に浸漬された高導電性複合材及びグラファイトを含む、エネルギー貯蔵及び/又は変換システム。
【請求項38】
求項36に記載の光エネルギー貯蔵システムをさらに備え、前記第1の端部と反対の前記光導波路システム及び/又は前記光導波路の第2の端部が、前記光導波路システムから放出された放射線を前記液体に光学結合させるように構成されている、請求項37に記載のエネルギー貯蔵及び/又は変換システム。
【請求項39】
前記高導電性複合材が、硝酸塩混合物及び/若しくは炭素部分等の相変化材料で構成され、及び/又は、前記液体が、浸漬された金コア及び/若しくは銀コアを有するナノ粒子、銅ナノ粒子、並びに/又は酸化銅ナノ粒子をさらに含む、請求項37に記載のエネルギー貯蔵及び/又は変換システム。
【請求項40】
前記液体中に分散された前記マイクロ構造体及び/又はナノ構造体が、コア及び前記コアのシェルとして作用するフィラメントで構成されている、請求項37に記載のエネルギー貯蔵及び/又は変換システム。
【請求項41】
前記コンテナにおける配置及び/若しくは前記コンテナへの光学結合がなされた請求項12~32のいずれか一項に記載の光閉じ込め構造、並びに/又は、前記コンテナにおける配置及び/若しくは前記コンテナへの光学結合がなされた請求項33~35のいずれか一項に記載の光エネルギー貯蔵システムと、をさらに備える、請求項37に記載のエネルギー貯蔵及び/又は変換システム。
【請求項42】
当該エネルギー貯蔵及び/又は変換システムを少なくとも1つの外部エネルギー供給システムと接続するように構成された少なくとも1つの接続端子をさらに備える、請求項37に記載のエネルギー貯蔵及び/又は変換システム。
【請求項43】
前記少なくとも1つの接続端子が、当該エネルギー貯蔵及び/又は変換システムを蒸気供給システム及び電気エネルギー網の少なくとも一方と接続するように構成されている、請求項42に記載のエネルギー貯蔵及び/又は変換システム。
【請求項44】
前記少なくとも1つの接続端子が、熱エネルギーフィードバックシステムと接続するように構成されている、請求項42に記載のエネルギー貯蔵及び/又は変換システム。
【請求項45】
ブラッグミラー被膜を含む光導波路の製造のための製造システムであって、
光ファイバが設けられたリールと、
真空環境から大気環境を分離する入力絞りと、
それぞれがポンプ及び絞りと関連付けられ、プラズマ低指数部及びプラズマ高指数部を含む、複数のチャンバプロセス部と、
を備える、製造システム。
【請求項46】
前記リールから前記光ファイバを引き出す際の入力側に色素被覆及び/又は量子ドット被覆のための製造部をさらに備える、請求項45に記載の製造システム。
【請求項47】
ナノ粒子で被覆するための製造部をさらに備える、請求項45に記載の製造システム。
【請求項48】
請求項1~9のいずれか一項に記載の光導波路を製造するように構成されている、請求項45~47のいずれか一項に記載の製造システム。
【国際調査報告】