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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-16
(54)【発明の名称】熱界面材料
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/80 20060101AFI20240409BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20240409BHJP
   C08G 18/16 20060101ALI20240409BHJP
   C08G 18/08 20060101ALI20240409BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20240409BHJP
   C08K 9/04 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
C08G18/80
C08G18/10
C08G18/16
C08G18/08 038
C08L75/04
C08K9/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562604
(86)(22)【出願日】2022-05-04
(85)【翻訳文提出日】2023-10-11
(86)【国際出願番号】 US2022027676
(87)【国際公開番号】W WO2022235802
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】63/184,330
(32)【優先日】2021-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】アガーワル、プラビーン
(72)【発明者】
【氏名】ハリス、ウィリアム ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】チャン、チー-ハオ
【テーマコード(参考)】
4J002
4J034
【Fターム(参考)】
4J002CK021
4J002CK031
4J002CK041
4J002CK051
4J002DA016
4J002DB016
4J002DE066
4J002DE076
4J002DE146
4J002DE186
4J002DF016
4J002DJ006
4J002DJ016
4J002DJ036
4J002DK006
4J002FB096
4J002FB166
4J002FD206
4J002GQ01
4J034BA06
4J034BA07
4J034BA08
4J034CA04
4J034CA15
4J034CB03
4J034CB07
4J034CC03
4J034CC08
4J034CC26
4J034CC52
4J034CC61
4J034CC62
4J034CC65
4J034DA01
4J034DB04
4J034DB05
4J034DB07
4J034DC50
4J034DG03
4J034DG04
4J034DG05
4J034DG14
4J034DG23
4J034HA01
4J034HA07
4J034HB11
4J034HC03
4J034HC08
4J034HC12
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034HD02
4J034JA01
4J034JA32
4J034JA42
4J034KA01
4J034KB02
4J034KB07
4J034KC02
4J034KC17
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4J034KD07
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4J034MA03
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4J034QA03
4J034QB13
4J034QB14
4J034QB19
4J034QD03
4J034RA14
(57)【要約】
熱伝導性組成物は、アルキルフェノール又はアルケニルフェノールのうちの1つ以上でブロックされたイソシアネートプレポリマーを含有するブロックされたイソシアネートプレポリマー組成物と、1つ以上のポリエーテルアミン、並びにカルボキシレート塩、三級アミン、アミジン、グアニジン、及びジアザビシクロ化合物からなる群から選択される1つ以上の触媒を含有するアミン組成物と、熱伝導性組成物の重量パーセント(重量%)において60重量%~98重量%の範囲で存在する熱伝導性充填剤と、を含み、熱伝導性組成物は、ブロックされたイソシアネートプレポリマー組成物とアミン組成物とが混合されたときに18℃~35℃の範囲の温度で硬化する。方法は、ブロックされたイソシアネートプレポリマー組成物とアミン組成物とを合わせることによって調製された熱伝導性ギャップ充填剤を調製することと、得られる熱伝導性組成物を、室温などで硬化させることと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導性組成物であって、
アルキルフェノール又はアルケニルフェノールのうちの1つ以上でブロックされたイソシアネートプレポリマーを含むブロックされたイソシアネートプレポリマー組成物と、
アミン組成物であって、
1つ以上のポリエーテルアミン及び
カルボキシレート塩、三級アミン、アミジン、グアニジン、及びジアザビシクロ化合物からなる群から選択される1つ以上の触媒を含む、アミン組成物と、
前記熱伝導性組成物の重量パーセント(重量%)において60重量%~98重量%の範囲で存在する熱伝導性充填剤と、を含み、
前記熱伝導性組成物が、前記ブロックされたイソシアネートプレポリマー組成物と前記アミン組成物とが混合されるときに18℃~35℃の範囲内の温度で硬化する、熱伝導性組成物。
【請求項2】
前記アミン組成物が、300~7000Daの分子量及び2を超える平均アミン官能価を有する1つ以上のポリエーテルアミンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記熱伝導性充填剤が、前記熱伝導性組成物と合わせる前に処理剤で改質され、前記処理剤が、脂肪酸、シラン処理剤、チタンネート、ジルコネート、アルミネート、及びシラザン化合物からなる群から選択される1つ以上を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記熱伝導性充填剤が、C5~C20アルキルシランで前処理されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ブロックされたイソシアネートプレポリマーが、前記熱伝導性組成物の重量パーセント(重量%)において1重量%~15重量%の範囲で存在する、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記アミン組成物中に超分岐ポリエステル分散添加剤を更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記熱伝導性充填剤が、0.1~20μmの範囲のD50を有する1つの充填剤と、10~200μmの範囲のD50を有する第2の充填剤とをブレンドすることによって製造された二峰性粒径分布を有するアルミニウム三水和物(ATH)充填剤の混合物を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記ブロックされたイソシアネートプレポリマー組成物及び前記アミン組成物がそれぞれ、1.0mm/秒の速度で0.5mmのギャップまで下げた40mmの直径を有するプローブを使用して圧縮することによって決定される250N以下の圧搾力を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記ブロックされたイソシアネートプレポリマー組成物と前記アミン組成物とを合わせることと、請求項1~8のいずれか一項に記載の得られる熱伝導性組成物を硬化させることと、によって調製される、熱伝導性ギャップ充填剤。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物を使用する方法であって、前記ブロックされたイソシアネートプレポリマー組成物と前記アミン組成物とを合わせることと、前記熱伝導性組成物をEVバッテリ中の熱源とヒートシンクとの間に据え付けることと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子機器及び自動車用途などの熱管理を必要とする用途において、ギャップ充填剤、接着剤、シーラント、又はペーストとして使用するための熱伝導性組成物、及びそれを使用するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
序論
ギャップ充填剤、接着剤、及びゲルなどの熱界面材料は、電子機器及び自動車用途における熱管理のために広く使用されている。例えば、電気自動車(electric vehicle、EV)バッテリは、そのバッテリモジュールの下に循環流体を有する冷却プレートによって冷却される。効率的な冷却のために、バッテリモジュールと冷却プレートとの間の良好な熱接触が必要とされる。ギャップ充填剤は、このギャップを埋め、バッテリモジュールと冷却プレートとの間の熱接触を提供する。熱ギャップパッド及び分配可能なギャップ充填剤は、主要なギャップ充填剤技術のうちの2つである。2つのうち、分配可能なギャップ充填剤は、熱パッドと比較して、より効率的な熱伝達及び材料のより少ない浪費を提供するという利点を有する。高い熱伝導度(>0.5W/m・K)、熱を加えずに硬化固体部分を形成する能力、低密度、及び容易に加工されることを有する熱界面材料組成物を有することが望ましい。
【0003】
しかしながら、現在利用可能な熱界面材料にはいくつかの重要な問題がある。例えば、イソシアネートモノマー、若しくは残留イソシアネートモノマーを有するイソシアネートプレポリマー、及び/又は残留イソシアネートモノマーを有するポリマーイソシアネートに基づくポリウレタン(polyurethane、PU)熱界面配合物は、イソシアネートを含有する材料の取り扱いに関する懸念を提示する。一部の材料使用者は、0.1重量%未満の遊離イソシアネートモノマー(例えば、遊離トルエンジイソシアネート(Toluene diisocyanate、TDI)、メチレンジフェニルジイソシアネート(Methylene diphenyl diisocyanate、MDI)など)の要件を強いることさえある。PU配合物の遊離イソシアネートモノマー含有量に関するこれらの規則は、(とりわけ)欧州連合規則に準拠するために存在する。
【0004】
PU系熱管理製品に関する他の問題としては、イソシアネート官能基の安定化が挙げられ、これは、充填剤の存在下で悪化/短縮される可能性がある限定された貯蔵安定性(すなわち、粘度の増加によって示されるようなより短い保存寿命)を有し得る。アルミニウム三水和物などの低コスト、低密度の熱伝導性充填剤は、利用可能なイソシアネート基と反応することができる表面ヒドロキシル基の存在のためにイソシアネートと適合せず、そのような配合物を不安定かつ使用不能にする。
【発明の概要】
【0005】
一態様では、熱伝導性組成物は、アルキルフェノール又はアルケニルフェノールのうちの1つ以上でブロックされたイソシアネートプレポリマーを含有するブロックされたイソシアネートプレポリマー組成物と、1つ以上のポリエーテルアミン、並びにカルボキシレート塩、三級アミン、アミジン、グアニジン、及びジアザビシクロ化合物からなる群から選択される1つ以上の触媒を含有するアミン組成物と、熱伝導性組成物の重量パーセント(重量%)において60重量%~98重量%の範囲で存在する熱伝導性充填剤と、を含み、熱伝導性組成物は、ブロックされたイソシアネートプレポリマー組成物とアミン組成物とが混合されるときに18℃~35℃の範囲内の温度で硬化する。
【0006】
別の態様では、方法は、ブロックされたイソシアネートプレポリマー組成物とアミン組成物とを合わせることによって調製された熱伝導性ギャップ充填剤を調製し、得られる熱伝導性組成物を室温などで硬化させることを含む。
【0007】
別の態様では、方法は、ブロックされたイソシアネートプレポリマー組成物とアミン組成物とを合わせることによって熱伝導性組成物を調製することと、熱伝導性組成物をEVバッテリ中の熱源とヒートシンクとの間に据え付けることと、を含む。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書に開示される実施形態は、バッテリ、電子デバイス、自動車用途などにおける熱伝達の向上を含む、熱管理用途で使用するための熱伝導性組成物に関する。熱伝導性組成物は、2成分混合物として配合され、これらは合わされ、その場で、室温で硬化して熱伝導性ギャップ充填剤を形成する。場合によっては、熱伝導性組成物を予備硬化させ、ギャップ充填剤パッドとして適用してもよい。2成分系は、使用のために合わされるまで安定化し、最小限の粘度又は圧搾力(squeeze force)の増加を示すブロックされたイソシアネートプレポリマー組成物及びアミン組成物を含んでもよい。本明細書に開示される組成物はまた、系成分のうちの1つ以上に分散添加剤を含んでもよい。
【0009】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。また、本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、参照により組み込まれる。
【0010】
本明細書に開示される数値範囲は、下限値及び上限値を含む、下限値から上限値までの全ての値を含む。明示的な値(例えば、1若しくは2、又は3~5、又は6、又は7)を含む範囲には、任意の2つの明示的な値の間の任意の部分範囲が含まれる(例えば、1~2、2~6、5~7、3~7、5~6、など)。相反する記載がない限り、文脈から黙示的でない限り、又は当該技術分野で慣習的でない限り、全ての部及びパーセントは重量に基づき、全ての試験方法は本開示の出願日時点で最新のものである。
【0011】
本明細書に開示される場合、「組成物」、「配合物」、又は「混合物」という用語は、物理的な手段によって成分を重量部で混合することによって得られる、異なる成分の物理的なブレンドを指す。組成物中の各成分の重量百分率の合計は、組成物の総重量に基づいて100重量%である。
【0012】
本明細書で使用される場合、「平均粒径」という用語は、例えば、Multisizer 3 Coulter Counter(Beckman Coulter,Inc.、Fullerton,CA)によって、製造業者によって推奨される手順に従って決定される、メジアン粒径又は粒子の分布の直径を指す。これは、体積平均粒径である。メジアン粒径D50は、分布中の粒子の50%がメジアン粒径よりも小さく、分布中の粒子の50累積%がメジアン粒径よりも大きいサイズとして定義される。D90は、分布中の粒子の90累積%が規定値よりも小さいサイズとして定義される。D10は、分布中の粒子の10累積%が規定値よりも小さいサイズとして定義される。平均粒径は、8-11 ASTM D4315に従って表面積を測定することに基づいて、又は様々なメッシュサイズのふるいを使用して各粒群の累積重量から平均を計算することによって、推定され得る。これらの代替方法は、レーザー回折法によって決定されたものと同様の平均粒径の推定値を与える。充填剤粒径分布のスパンは、(D90-D10)/D50として定義され、粒径分布の幅の指標である。
【0013】
本明細書で開示するとき、「及び/又は」は、「及び、又は代替として」を意味する。全ての範囲は、特に指示がない限り、終点を含む。
【0014】
本明細書に開示される場合、「室温」は、18℃~35℃の温度範囲を意味する。
【0015】
本明細書に開示される場合、「硬化する」及び「硬化された」は、混合後の粘度又は圧搾力の増加を意味し、材料の最終的な硬化及びポリマー鎖の架橋から生じる固体部分の形成を伴う。
【0016】
本明細書に開示される場合、「分子量」は、数平均分子量を意味する。
【0017】
本明細書に開示される場合、「熱伝導性充填剤」は、ホットディスクを使用してISO 22007-2によって測定される1W/m・Kを超える熱伝導度値を意味する。
【0018】
本明細書に開示される場合、「熱伝導性組成物」(硬化組成物及び未硬化組成物の両方を含む)は、ホットディスクを使用してISO 22007-2によって測定される0.5W/m・Kを超える熱伝導度値を有する組成物を意味する。
【0019】
本明細書に開示される場合、「圧搾力」は、ニュートンで測定される圧縮に対する熱伝導性組成物又は成分の抵抗を指す。圧搾力は、50kgのロードセルを装備したTA.XTplusテクスチャアナライザを使用して測定される。それぞれの試料を平坦なアルミニウム基材上に分配した後、40mmの直径を有するアクリルプローブを下げて、試験材料を平坦な基材に対して挟み、標準的な5.0mmのギャップ厚さを達成する。あらゆる過剰なオーバーフロー材料を、フラットエッジスパチュラで切り取った。切り取り後、試験を開始し、力を記録しながらプローブを1.0mm/秒の速度で0.3mmの最終厚さまで移動させた。0.5mmのギャップで記録された特定の力の値を、「圧搾力」として報告する。
【0020】
粘度は、TA instruments ARES-G2、AR2000型レオメーター又はAnton Paar MCRレオメーターを使用し、平行板固定具を使用して、当該技術分野で一般に知られている方法を使用して測定することができる。
【0021】
実施形態は、電子デバイス、バッテリ、自動車用途などにおける熱伝達の向上を含む、熱管理用途で使用するための熱伝導性組成物に関する。記載された組成物は、電気車両バッテリなどの熱管理を必要とする用途のための熱伝導性ギャップ充填剤又は予備硬化熱パッドとして使用することができる。
【0022】
本明細書に開示される熱伝導性組成物は、一般に、2成分硬化性組成物であるブロックされたイソシアネートプレポリマー組成物(「A側」)とアミン組成物(「B側」)とを合わせることから得られた生成物を含む。適用の間、A側とB側とが混合され、室温でブロックされたイソシアネートプレポリマーとアミン官能基との間の硬化反応を開始し、熱伝導性組成物を形成する。熱伝導性組成物はまた、熱輸送特性を向上させるために、A側及びB側に1つ以上の熱伝導性充填剤を含んでもよい。
【0023】
ブロックされたイソシアネートプレポリマー組成物は、ブロッキング剤と反応して遊離イソシアネートの存在を制限し(例えば、0.1重量%の濃度未満)、プレポリマーの早期ゲル化及び架橋を最小限にするイソシアネートプレポリマーを含む。遊離イソシアネート濃度を減少させることはまた、貯蔵、安全性、及び取り扱い特性を改善する。安全性の利点に加えて、プレポリマーのイソシアネート官能基をブロックすることはまた、熱伝導性充填剤を含む充填剤とのブロックされたイソシアネートプレポリマー組成物の相溶性を増加させる。場合によっては、充填剤は、熱伝導性組成物のA側及び/又はB側に、重量パーセント(重量%)において最大60重量%以上で添加されてもよい。本明細書に開示される熱伝導性組成物はまた、アルミニウム三水和物などの低密度かつ低コストの充填剤と適合する。
【0024】
熱伝導性組成物は、ブロックされたイソシアネートプレポリマー組成物とアミン組成物とを室温で混合して、室温で硬化固体を製造することによって調製することができる。室温硬化は、80℃以上の温度で硬化されることが多い典型的なブロックされたイソシアネート配合物よりも改善を表す。室温で硬化した熱伝導性組成物を製造する能力は、電気自動車バッテリなどの熱に敏感な用途への材料の適用性を増大させ、製作中のエネルギー消費量の低減という追加の利点をもたらす。
【0025】
本開示はまた、熱伝導性組成物の作製方法及び使用方法を対象にする。熱伝導性組成物は、ブロックされたイソシアネートプレポリマー組成物とアミン組成物とを合わせることによって調製することができ、ブロックされたイソシアネートプレポリマー組成物又はアミン組成物のうちの少なくとも1つは、熱伝導性充填剤を含む。充填剤及び熱伝導性充填剤はまた、表面疎水性及び貯蔵安定性を増加させるように処理されてもよく、一方で、早期の粘度上昇も減少させる。熱伝導性組成物はまた、分散添加剤又は可塑剤などの、熱伝導性組成物の粘度又は圧搾力を低減する1つ以上の添加剤を含んでもよい。熱伝導性組成物の成分の粘度及び圧搾力を低減することは、例えば、EVバッテリ用途などにおいて、熱源とヒートシンクとの間にギャップ充填剤を組み立てるのに必要な力を低減することによって、有益であり得る。システム中の低減された力は、バッテリモジュール構成要素を損傷する可能性を低減し、再現性及び安全性を増加させる。特に、ブロックされたイソシアネートプレポリマー組成物の使用は、高い熱伝導度を維持しながら、遊離イソシアネートモノマー又は揮発性シリコーンの懸念を低減する。
【0026】
本明細書に記載されるブロックされたイソシアネートプレポリマー組成物は、アルキルフェノール及び/又はアルケニルフェノールブロッキング剤を含む1つ以上のブロッキング剤でブロックされてもよい。ブロックされたイソシアネートプレポリマー組成物及び/又はアミン組成物はまた、水分捕捉剤、可塑剤、接着促進剤、チキソトロープ剤、触媒、着色剤、酸化防止剤、湿潤剤、充填剤処理剤、表面処理添加剤、又はこれらの組み合わせを含む1つ以上の機能性添加剤を含有してもよい。2成分硬化性組成物のB側に触媒を混合してもよい。本明細書に開示される2成分硬化性組成物は、いくつかの実施形態では、硬化されて、熱伝導性ギャップ充填剤又はギャップパッドを形成し得る。
【0027】
A.)ブロックされたイソシアネートプレポリマー組成物
ブロックされたイソシアネートプレポリマー組成物(又はA側)は、1つ以上のブロックされたイソシアネートプレポリマー、1つ以上の熱伝導性充填剤、及び他の任意選択の添加剤を含有してもよい。ブロックされたイソシアネートプレポリマー組成物は、重量パーセント(重量%)で1重量%~40重量%、1重量%~20重量%、又は1重量%~15重量%のブロックされたイソシアネートプレポリマーを含んでもよい。ブロックされたイソシアネートプレポリマー組成物は、重量パーセント(重量%)において40重量%~99重量%、50重量%~98重量%、60重量%~97重量%、75重量%~95重量%、又は80重量%~94重量%で存在する熱伝導性充填剤を含んでもよい。
【0028】
ブロックされたイソシアネートプレポリマー
ブロックされたイソシアネートプレポリマー組成物は、イソシアネート末端プレポリマー(任意の残留モノマージイソシアネートを含む)と1つ以上のブロッキング剤とを反応させることによって生成されたブロックされたイソシアネートプレポリマー生成物を含んでもよい。場合によっては、イソシアネート基をブロッキング剤と反応させることは、プレポリマー中の遊離イソシアネート含有量を0.1重量%未満、0.01重量%未満、0.001重量%未満、又は0重量%に減少させる。
【0029】
イソシアネート末端プレポリマーは、1つ以上のポリオールと化学量論的に過剰の1つ以上のポリイソシアネートとの反応によって調製された任意のプレポリマーであり得る。「ポリイソシアネート」は、2つ以上のイソシアネート基を含有する任意の化合物を指す。ポリイソシアネートは、モノマーポリイソシアネート、ポリマーイソシアネート、イソシアネートプレポリマー、又はこれらの混合物を含み得る。ポリイソシアネートは、芳香族、脂肪族、芳香脂肪族(araliphatic)、若しくは脂環式ポリイソシアネート、又はこれらの混合物であり得る。好ましいポリイソシアネートは、芳香族ポリイソシアネートを含む。芳香族ポリイソシアネートとは、芳香族炭素原子に結合した少なくとも2つ以上のイソシアネート基を有する化合物を指す。好適なポリイソシアネートは、1.9以上、2.0以上、2.1以上、2.2以上、2.3以上、そして同時に、4.0以下、3.8以下、3.5以下、3.2以下、3.0以下、2.8以下、又は2.7以下の平均イソシアネート官能価を有し得る。好適なモノマーポリイソシアネートの例としては、トルエンジイソシアネート(toluene diisocyanate、TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(diphenylmethane diisocyanate、MDI)、イソホロンジイソシアネート(isophorone diisocyanate、IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(hexamethylene diisocyanate、HDI)、テトラメチレン-1,4-ジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサヒドロトリレンジイソシアネート、1-メトキシフェニル-2,4-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジフェニルジイソシアネート、及び3,3’-ジメチルジフェニルプロパン-4,4’-ジイソシアネート、これらの異性体、又はこれらの混合物が挙げられる。好ましいモノマージイソシアネートは、TDIである。
【0030】
イソシアネート末端プレポリマーは、ポリエーテル骨格及びイソシアネート部分を含み得る。イソシアネート末端プレポリマーは、イソシアネート末端プレポリマーの重量に基づいて、1重量%以上、2.7重量%以上、5重量%以上、6重量%以上、8重量%以上、又は10重量%以上、そして同時に、30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、又は15重量%以下のイソシアネート含有量を有し得る。本明細書におけるイソシアネート含有量は、ASTM D5155-19に従って測定する。イソシアネート末端プレポリマーを調製するために使用されるイソシアネートとしては、上述のモノマーポリイソシアネート、それらの異性体、それらのポリマー誘導体、又はそれらの混合物が挙げられる。好ましいイソシアネートは、トルエンイソシアネート(Toluene diisocyanate、TDI)、そのポリマー誘導体、又はこれらの混合物である。
【0031】
イソシアネート末端プレポリマーを調製するために使用されるTDIは、とりわけ、トルエンジイソシアネートの2,4-異性体及び2,6-異性体であり得る。トルエンジイソシアネート系プレポリマーは、一般に、脱ブロック化及び反応の容易さとともに、より低い脱ブロック化温度をもたらすので、望ましい。2つ以上の有機ポリイソシアネートの混合物も使用され得る。
【0032】
イソシアネート末端プレポリマーを調製するために使用されるポリオールは、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブテンジオール、1,4-ブチンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチル-グリコール、ビス(ヒドロキシ-メチル)シクロヘキサン、例えば、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、2-メチルプロパン-1,3-ジオール、メチルペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレングリコール、又はこれらの混合物を含む、当該技術分野において公知の任意のポリオールであり得る。
【0033】
好適なポリオールとしては、エチレンオキシド(ethylene oxide、EO)、プロピレンオキシド(propylene oxide、PO)、ブチレンオキシド(butylene oxide、BO)、又はこれらの組み合わせなどのアルキレンオキシドを、2~8つの活性水素原子を有する開始剤に付加することによって調製されたポリエーテルポリオールが挙げられ得る(例えば、開始剤がヒドロキシル基を含み、アミンを除外するように)。例えば、ポリマー配合物のためのポリエーテルポリオールは、数平均分子量(ダルトン(Da)又はg/mol)において100~10000Da(例えば、1000Da~8000Da、2000Da~6000Da、3,000Da~5000Da、3500Da~4500Daなど)を有するものを含み得る。ポリエーテルポリオールは、1分子当たり2~8つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、最大8つ、又は最大6つの活性水素原子の官能価を有し得る。プレポリマー形成に使用されるポリエーテルポリオールは、10~200mg KOH/g(例えば、30~60mg KOH/gなど)のヒドロキシル価を有し得る。1つ以上のポリエーテルポリオールは、エチレンオキシドでキャップされたポリオキシプロピレンジオール若しくはトリオール及び/又はポリオキシプロピレンジオール若しくはトリオールなどのポリオキシプロピレン含有ポリオールを含んでもよい。例示的なポリエーテルポリオールは、VORANOL(商標)の商品名でDow Chemical Companyから入手可能である。いくつかの実施形態では、ポリオールの官能価は、1.9~3.1であり、数平均分子量は、500~10000Daである。
【0034】
開始剤のアルコキシル化によるポリオールの製造は、当該技術分野において公知の手順によって行われ得る。例えば、ポリオールは、アルキレンオキシド(EO、PO、若しくはBO)、又はアルキレンオキシドの組み合わせを、アニオン若しくはカチオン反応によって、又は複金属シアン化物(double metal cyanide、DMC)触媒の使用によって開始剤に付加することによって作製され得る。いくつかの用途では、1つのアルキレンオキシドモノマーのみが使用されてもよく、いくつかの他の用途では、モノマーのブレンドが使用されてもよく、場合によっては、モノマーの逐次添加(POに続いてEO供給、又はEOに続いてPOなど)が使用されてもよい。
【0035】
コポリマーの場合、ポリエーテルポリオールは、ブロック及び/又はランダムコポリマー並びにキャップされたコポリマーであってもよい。他の有用なポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ヒドロキシル末端ポリ(ブタジエン)ポリオール、ポリアクリレートポリオール、及びアミン開始ポリオールが挙げられる。アミン開始剤を有する(かつ任意選択で、自己触媒活性であってもよい)例示的なポリオールは、VORANOL(商標)及びVORACTIVE(商標)ポリオールの商品名でDow Chemical Companyから入手可能である。
【0036】
イソシアネート末端プレポリマーは、例えば、米国特許第4,294,951号、同第4,555,562号及び同第4,182,825号、並びに国際公開第2004/074343号に開示されている、当業者に公知の標準的な手順によって調製され得る。反応物を混合し、加熱して、ポリオールとポリイソシアネートとの反応を促進し得る。反応温度は、30℃~150℃(例えば、60℃~100℃)の範囲内であろう。反応は、水分を含まない雰囲気中で実行され得る。窒素及び/又はアルゴンなどの不活性ガスを使用して、反応混合物を覆ってもよい。所望であれば、イソシアネート末端プレポリマーの調製中に不活性溶媒を使用することができるが、不活性溶媒は、除外してもよい。ウレタン結合の形成を促進する触媒を使用してもよい。ブロックされたイソシアネートプレポリマーを製造するために、ブロッキング剤は、イソシアネートプレポリマーの形成中に、イソシアネートプレポリマーの形成後に、又はポリオールへのポリイソシアネートの導入前にポリイソシアネートに添加され得る。触媒は、少量で使用されてもよく、例えば、各触媒は、ブロックされたイソシアネートプレポリマーを形成するためのブロックされたプレポリマーの総重量の0.0015重量%~5重量%で用いられる。この量は、触媒又は触媒混合物、及びポリオールとイソシアネートとの反応性、並びに当業者によく知られている他の要因に依存する。
【0037】
イソシアネートプレポリマー及び/又はブロックされたイソシアネートプレポリマーは、いくつかの実施形態では、アミン系触媒及び/又はスズ系触媒を含み得る触媒を使用して形成され得る。例示的な触媒としては、三級アミン触媒及び有機スズ触媒が挙げられる。市販品の例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、N,N-ジメチルベンジルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジメチルアミノエチル、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,4-ブタンジアミン、N,N-ジメチルピペラジン、1,4-ジアゾビシクロ-2,2,2-オクタン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、トリエチレンジアミン、二ラウリン酸ジブチルスズ、トリエチレンジアミン、及びアルキル基が4~18個の炭素原子を含有するジメチルアルキルアミンが挙げられる。様々な触媒の混合物が使用されてもよい。
【0038】
ブロックされたイソシアネートプレポリマーは、いくつかの実施形態では、イソシアネートプレポリマー上のイソシアネート官能基のうちの1つ以上を1つ以上のブロッキング剤と混合及び反応させることによって形成され得る。イソシアネート末端プレポリマーとの反応のためのブロッキング剤は、モノフェノール類(例えば、芳香族環又は芳香族環に直接結合した単一水酸基[HO-])、芳香族環上の水素又はヒドロキシル以外の少なくとも1つの置換原子又は基を有する置換モノフェノール類、芳香族環上に少なくとも1つのヒドロカルビル置換基を有する置換モノフェノール類、ノニルフェノールなどのアルキルフェノール、又はカルダノールなどのアルケニルフェノールを含んでもよい。ブロッキング剤は、カシューナッツ加工の副産物であるカシューナッツ殻液(cashew nutshell liquid、CNSL)などのカルダノール系ブロッキング剤を含んでもよい(例えば、カシューナッツのナッツと殻との間の層から抽出されてもよい)。場合によっては、CNSLは、CNSLの総重量に基づいて、少なくとも85重量%のカルダノール含有量を有してもよく、その結果、CNSLは、カルダノールを主成分として含み、カルドール、メチルカルドール、及び/又はアナカルド酸を副成分として更に含んでもよい。CNSLは、加熱プロセス(例えば、カシューナッツからの抽出時)、脱炭酸プロセス、及び/又は蒸留プロセスにかけることができる。CNSLは、CNSLの総重量に基づく重量パーセント(重量%)において少なくとも85重量%(例えば、85重量%~100重量%、90重量%~99重量%、91重量%~98重量%、92重量%~98重量%、93重量%~98重量%など)のカルダノールを含む。CNSLは、8.5重量%未満(例えば、0.5重量%~8重量%、0.5重量%~5重量%、0.5重量%~3重量%など)のカルダノールを含んでもよく、合計100重量%に基づく残部は、メチルカルダノール及び/又はアナカルジン酸である。脱炭酸CNSLは、場合によっては、少なくとも1つの蒸留プロセスによって調製され得る。ブロッキング剤は、ブロッキング剤の基の当量がブロックされるイソシアネート基の量を超えるような量で使用され得る。ブロッキング剤は、ブロッキング剤の基の当量がブロックされるイソシアネート基の量に対応するような量で使用され得る。例えば、ブロッキング剤は、ブロックされるイソシアネート基のモルパーセント(モル%)において少なくとも100モル%、少なくとも110モル%、少なくとも120モル%、少なくとも150モル%、又は少なくとも200モル%で添加され得る。場合によっては、過剰のブロッキング剤の適用は、全てのイソシアネート基の本質的に完全な反応を得ることができる。いくつかの実施形態では、過剰なブロッキング剤は、ブロックされるイソシアネート基のモルパーセント(モル%)において20モル%以下、15モル%以下、10モル%以下、又は5モル%以下で添加され得る。例えば、イソシアネートブロッキングに使用されるブロッキング剤基の量は、ブロックされるプレポリマーのイソシアネート基の量に基づいて、100モル%~110モル%であってもよい。
【0039】
ブロッキング剤は、ブロックされたプレポリマーの重量パーセント(重量%)において少なくとも1重量%、3重量%、5重量%、7重量%、9重量%、10重量%、12重量%、及び/又は13重量%で存在し得る。いくつかの実施形態では、ブロッキング剤は、ブロックされたプレポリマーの重量パーセント(重量%)において最大14重量%、20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、60重量%、又は70重量%で存在し得る。いくつかの実施形態では、ブロッキング剤は、ブロックされたプレポリマーの重量パーセント(重量%)において1重量%~70重量%、5重量%~60重量%、7重量%~50重量%、又は10重量%~50重量%で存在し得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、ブロックされたイソシアネートプレポリマーは、カルダノールなどのブロッキング剤でブロックする前に、2~15%のNCOを有する、500~2500Daの数平均当量及び1.9~3.1の官能価の全てのPOポリオールを使用して、TDIから作製される。本明細書に開示されるブロックされたイソシアネートプレポリマーはまた、市販のブロックされたイソシアネートプレポリマーを含んでもよい。
【0041】
B.)アミン組成物
アミン組成物(又はB側)は、1つ以上のアミン、1つ以上の熱伝導性充填剤、及び他の添加剤を含有してもよい。アミン組成物は、モノアミン、ジアミン、及びより高次のアミン(例えば、トリアミン、テトラアミンなど)の組み合わせを含んでもよい。アミン官能基のタイプ及び数の選択は、いくつかの実施形態では、最終生成物の硬化プロファイル及び硬度を調整するために使用され得る。例えば、より高い反応性を有する1つ以上の一級アミンを含有するアミン又はポリアミンの選択は、熱伝導性組成物の硬化速度及び全体的な硬度を増加させるために使用され得る。
【0042】
いくつかの実施形態では、アミン組成物は、アミン組成物の重量パーセント(重量%)において0.2重量%~40重量%、0.5重量%~30重量%、又は1重量%~15重量%で存在する少なくとも1つのアミンを含み得る。アミン組成物は、重量パーセント(重量%)において40重量%~98重量%、50重量%~98重量%、60重量%~98重量%、75重量%~98重量%、又は80重量%~98重量%で存在する熱伝導性充填剤を含み得る。
【0043】
アミン組成物は、1つ以上の二級又は一級アミン(これらの混合物を含む)を含み得る。好適なアミンとしては、ジシクロヘキシルアミン(dicyclohexylamine、DCHA)、シクロヘキシルアミン(cyclohexylamine、CHA)、エチレンジアミン(ethylene diamine、EDA)、イソホロンジアミン(isophorone diamine、IPDA)、トリスアミノプロピルアミン、LAROMINE(商標)、及びJEFFAMINE(商標)ポリエーテルアミンが挙げられ得る。一実施形態では、アミンは、脂肪族アミンである。一実施形態では、アミン組成物は、独立して一級又は二級アミンであり得る少なくとも2つのアミン基を有するポリアミンを含んでもよい。別の実施形態では、ポリアミンは、独立して一級又は二級アミンであり得る少なくとも3つのアミン基を含有してもよい。更に別の実施形態では、ポリアミンは、独立して一級又は二級アミンであり得る6つ以下のアミン基を含有してもよい。本明細書に開示されるアミン組成物中のアミンは、少なくとも1.5、少なくとも2.0、又は少なくとも3.0の平均一級アミン官能価及び/又は平均二級アミン官能価を有し得る。アミン組成物はまた、6.0以下の平均一級アミン官能価及び/又は平均二級アミン官能価を有するアミンを含有してもよい。アミン組成物は、いくつかの実施形態では、液体として存在する1つ以上のアミンを含有し得る。
【0044】
アミン官能基と結合した他の部分も利用され得る。例えば、500Daを超える数平均分子量の一級及び二級アミン末端ポリエーテルポリオールを含み、2~6つのアミン官能基、好ましくは2~3つのアミン官能基、並びに100Da~7000Da、100Da~3000Da、及び100Da~2500Daのアミン当量を有する、ポリエーテルアミン(アミン末端ポリエーテルポリオール)が利用され得る。混合物もまた使用することができる。いくつかの実施形態では、アミン組成物は、300Da~7000Daの数平均分子量及び2より大きく3.5未満の平均官能価を有する1つ以上のポリエーテルアミンを含んでもよい。これらの材料は、当該技術分野において公知の様々な方法によって作製され得る。
【0045】
本開示において有用なポリエーテルアミンとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、又はこれらの混合物などの低級アルキレンオキシドが添加された適切な開始剤から作製された樹脂が挙げられ、得られるヒドロキシル末端ポリオールは、次いでアミノ化される。2つ以上の酸化物が使用される場合、それらは、ランダム混合物として、又は一方若しくは他方のポリエーテルのブロックとして存在してもよい。アミノ化ステップにおいて、ポリオール中の末端ヒドロキシル基は、アミノ化を容易にするために、本質的に全て二級ヒドロキシル基であってもよい。場合によっては、本開示において有用なアミン末端ポリエーテル樹脂は、それらの活性水素の50パーセント超をアミン水素の形態で有し得る。エチレンオキシドが使用される場合、ヒドロキシル末端ポリオールを少量の高級アルキレンオキシドでキャップして、二級ヒドロキシル基である末端ヒドロキシル基の数を増加させてもよい。そのように調製されたポリオールは、次いで、例えば米国特許第3,654,370号に記載されているような公知の技術によって還元的にアミノ化され、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0046】
実際には、アミン組成物は、二官能性及び三官能性材料並びに/又は異なる分子量若しくは異なる化学組成材料の混合物を含む、1つ以上の高分子量ポリエーテルアミンを含んでもよい。いくつかの実施形態では、アミン組成物は、一級アミンである。「高分子量」という用語は、300Da~7000Daの範囲の分子量を有するポリエーテルアミンを含むことが意図される。アミン組成物は、JEFFAMINE(商標)T-403、JEFFAMINE(商標)T-3000、及びJEFFAMINE(商標)T-5000を含む、Huntsman Corporationから入手可能なポリエーテルアミンの一級脂肪族JEFFAMINE(商標)シリーズなどの1つ以上のポリエーテルアミンを含んでもよく、又はBASFから入手可能BAXXODUR(商標)EC 3003及びBAXXODUR(商標)EC 311を含む。
【0047】
熱伝導性充填剤
熱伝導性組成物はまた、必要に応じて、A側及び/又はB側組成物中に1つ以上の熱伝導性充填剤を含んでもよい。本明細書に開示される充填剤は、少なくとも1W/m・K、少なくとも5W/m・K、又は少なくとも20W/m・Kの熱伝導度を有し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される充填剤は、1000W/m・K未満、又は100W/m・K未満の熱伝導度を有し得る。本明細書に開示される充填剤は、組成物の全体的な重量を低減し、自動車、EV、及び他の用途分野における重量を低減するために、低密度を有し得る。一実施形態では、充填剤密度は、<6gm/cc、<4gm/cc、又は<2.5gm/ccである。本明細書に開示される充填剤はまた、>0.5gm/ccの充填剤密度を有し得る。充填剤硬度はまた、材料の加工中の装置の摩耗及び引き裂きを減少させる要因である。いくつかの実施形態では、充填剤は、<9.5、<5.5、<4、又は1以上のモース硬度を有する。
【0048】
本明細書に開示される熱伝導性充填剤は、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属水酸化物、金属カルボネート、金属スルフェート、天然及び合成鉱物、主にシリケート、並びにケイ酸アルミニウムのうちの1つ以上を含んでもよい。充填剤の例としては、石英、溶融シリカ、天然シリカ、合成シリカ、天然酸化アルミニウム、合成酸化アルミニウム、アルミニウム三水和物(aluminum trihydrate、ATH)、中空充填剤、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化水酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、マイカ、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、炭化タングステン、ムライト、ウォラストナイト、タルク、グリマー、カオリン、ベントナイト、キソライト、アンダルサイト、ゼオライト、ドロマイト、ガラス粉末/繊維/布、他の有機又は無機粒子状充填剤が挙げられる。充填剤の例としては、チタン酸バリウム、炭素繊維、ダイヤモンド、グラファイト、オニキス、及びこれらの組み合わせも挙げられる。熱伝導性組成物は、それらの最終状態で配合物中に添加されるか、又はその場で形成されるかのいずれかである、例えば、1つ以上の充填剤、及びこれらの混合物を含んでもよい。場合によっては、充填剤は、10kV/mmを超える絶縁耐力によって定義されるように、熱伝導性かつ電気絶縁性であってもよい。熱伝導性充填剤は、当該技術分野において公知であり、市販されており、例えば、米国特許第6,169,142号を参照されたい。
【0049】
本明細書に開示される充填剤は、板状、繊維状、球状、顆粒状、針状などの形状を含む形態を有してもよく、これらは、結晶性、半結晶性若しくは非晶質、又はこれらの任意の組み合わせであってもよい。粒子は、電子顕微鏡写真によって判定されるように、アスペクト比が3以下である限り、球形、ほぼ球形、半球形、又は不規則形状であり得る。
【0050】
本開示の熱伝導性充填剤は、熱伝導性組成物のA側及び/又はB側に組み込む前に、処理剤で改質することができる。場合によっては、A側成分又はB側成分に添加する前に熱伝導性充填剤を改質することにより、貯蔵安定性及び取り扱いを改善することに加えて、成分の粘度又は圧搾力の増加を低減することができる。例えば、B側への処理剤の添加は、組成物のレオロジーの望ましくない変化をもたらし、これは組成物の粘度/圧搾力の望ましくない増加をもたらす可能性がある。
【0051】
本明細書に開示される処理剤は、熱伝導性充填剤の表面の疎水性/親水性を変え、充填剤とポリマーとの相互作用を改善し、得られる熱伝導性組成物の粘度及び圧搾力を改質するために使用され得る。例えば、充填剤は、シランなどの処理剤と反応させてもよく(シラン化とも呼ばれるプロセス)、これにより、充填剤のブロックされたイソシアネート及び/又はアミン組成物との相溶性を高めることができる。処理剤としては、脂肪酸、シラン処理剤、チタネート、ジルコネート、アルミネート、又はシラザン化合物が挙げられ得る。いくつかの実施形態では、シラン処理剤は、表面処理及び/又は充填剤への化学結合を容易にするために、少なくとも1つのアルコキシ基を含有してもよい。シラン処理剤はまた、例えば、アルキル、ヒドロキシル、ビニル、アリル、ヒドロシリル(すなわち、SiH)、又は配合物と反応し得るか、若しくは配合物と適合性若しくは混和性であり得る他の官能基を含む、別の基を含んでもよい。シラン処理剤は、Si(OR)(R’)4-nの化学構造を有し得、式中、nは1~3の整数であり、Rは独立してC1~C3アルキル基であり、R’は独立してC1~C20のアルキル基であり、少なくとも1つのR’はC5~C20から選定される。いくつかの実施形態では、シラン処理剤は、ヘキサデシルトリメトキシシランなどのC5~C20アルキルシランを含んでもよい。
【0052】
処理剤は、A側及び/又はB側への導入前の前処理として充填剤に適用されてもよく、又は未処理の熱伝導性充填剤とともにA側に提供されてもよい。濃度は、処理剤の性質及び熱伝導性充填剤タイプに応じて変動し得る。本明細書に開示される処理剤は、重量パーセント(重量%)において0.5重量%~10重量%、0.5重量%~7.5重量%、又は0.5重量%~5重量%で充填剤に添加され得る。いくつかの実施形態では、処理剤は、組成物のA側のみに添加される。いくつかの実施形態では、充填剤は、A側又はB側への添加の前に前処理される。
【0053】
本開示の熱伝導性組成物において有用な充填剤の添加量は、変動し得る。本明細書に開示される熱伝導性充填剤は、熱伝導性組成物の総重量の重量パーセント(重量%)において40重量%~98重量%、50重量%~98重量%、60重量%~98重量%、75重量%~98重量%、又は80重量%~98重量%で存在し得る。充填剤は、合わされたときに上記範囲内のいずれかの充填剤濃度を有する熱伝導性組成物をもたらす等量又は異なる量で、A側及び/又はB側に充填されてもよい。異なる充填剤サイズ/タイプをブレンドして、所望の充填剤の添加量及び配合物の粘度を得ることができることに留意されたい。
【0054】
本明細書に開示される熱伝導性充填剤は、広い粒径分布を有してもよく、かつ/又は二峰性粒径分布を有してもよい。熱伝導性充填剤は、硬化前に許容可能な加工粘度のバランスを促進し、硬化後に許容可能な熱機械特性のバランスを促進するのに十分な平均粒径(D50)及び幅を有し得る。本明細書に開示される充填剤の平均D50粒径は、0.05μm~500μm、0.1μm~300μm、0.5μm~100μm、又は0.5μm~50μmの範囲にあってもよい。本明細書に開示される充填剤の平均D90粒径は、0.05μm~500μm、1μm~300μm、5μm~100μm、又は10μm~90μmの範囲にあってもよい。本明細書に開示される充填剤の平均D10粒径は、0.05μm~30μm、0.1μm~10μm、0.1μm~10μmの範囲にあってよい。場合によっては、スパンを制御して、得られる熱伝導性組成物の圧搾力を低下させてもよい。
【0055】
本明細書に開示される充填剤は、2より大きい、3より大きい、又は4より大きい、又は50未満のスパンによって特徴付けられる広い粒径を有し得る。場合によっては、熱伝導性充填剤は、一方の充填剤が0.1~20μmの範囲のD50を有し、もう一方の充填剤が10~200μmの範囲のD50を有する、2つの充填剤をブレンドすることによって製造された二峰性粒径分布を有してもよい。
【0056】
好ましい充填剤は、その低密度及び低硬度のためにアルミニウム三水和物である。好ましい充填剤は、スパン>4を有する。0.1~10ミクロンの範囲のD10、5~50ミクロンの範囲のD50、及び50~200ミクロンの範囲のD90。一実施形態では、充填剤は、C5~C20シラン処理剤で前処理される。
【0057】
触媒
熱伝導性組成物は、ブロックされたイソシアネート官能基とアミン基との反応を促進するために、ブロックされたイソシアネートプレポリマー組成物又はアミン組成物のうちの少なくとも1つに混合された1つ以上の触媒を含んでもよい。触媒は、カルボンキシレート塩、三級アミン、アミジン、グアニジン、及びジアザビシクロ化合物から選択されるいずれか1つ又は2つ以上の任意の組み合わせ/混合物であり得る。いくつかの実施形態では、カルボキシレート塩は、金属カルボキシレートであり、更なる実施形態では、金属アルカノエートでのカルボキシレート塩、更なる実施形態では、カルボキシレート塩は、アルカリ金属カルボキシレートであり、更なる実施形態では、カルボンキシレート塩は、アルカリ金属アルカノエートである。好適な金属アルカノエートの例としては、オクタン酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス、酢酸カリウム、2-エチルヘキサン酸カリウム、又はこれらの混合物が挙げられる。いくつかの実施形態では、三級アミンは、立体障害三級アミン、長鎖三級アミン(すなわち、少なくとも6つの炭化水素のアミン置換基)、又は環状三級アミンである。好適な三級アミンの例としては、ジモルホリノジアルキルエーテル、ジ((ジアルキルモルホリノ)アルキル)エーテル、例えば、(ジ-(2-(3,5-ジメチル-モルホリノ)エチル)エーテル)、トリエチレンジアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジメチルピペラジン、4-メトキシエチルモルホリン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、又はこれらの混合物が挙げられる。いくつかの実施形態では、アミジン又はグアニジンは、N-ヒドロカルビル置換アミジン又はグアニジンである。更なる実施形態では、アミジン又はグアニジンは、環状アミジン又は環状グアニジンである。好適なアミジン又はグアニジンの例としては、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(1,8-diazabicyclo[5.4.0]undec-7-ene、DBU)、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、及びN-メチル-1,5,7-トリアザビシクロドデセンが挙げられる。触媒は、2成分硬化性組成物の総重量に基づいて、0.001重量%~5.0重量%、0.01重量%~2.0重量%、又は0.02重量%~0.5重量%の量で存在し得る。
【0058】
添加剤
熱伝導性組成物は、水分捕捉剤(例えば、ゼオライト、モレキュラーシーブ、p-トルエンスルホニルイソシアネート)、接着促進剤、チキソトロープ剤、染料若しくは顔料などの着色剤、酸化防止剤、界面活性剤などの湿潤剤、充填剤分散剤、増粘剤、相溶化剤、沈降防止剤、抗シネレシス剤、難燃剤、及び/又は充填剤処理剤を含み得る1つ以上の添加剤を含んでもよい。追加の任意選択の添加剤としては、熱安定剤、パラフィン、脂肪アルコール、ジメチルポリシロキサン、鎖延長剤、レオロジー改質剤及び増粘剤、例えば、ヒュームドシリカAEROSIL R202又はAEROSIL R805(EVONIK)、老化及び風化に対する安定剤、可塑剤、抗菌剤、静真菌及び静菌物質が挙げられるが、これらに限定されない。一例では、添加剤は、ゼオライトなどのモレキュラーシーブ粉末(例えば、W.R.GraceからのSYLOSIV)を含んでもよく、これは結晶性アルミノシリケートであってもよい。モレキュラーシーブは、全組成物の重量パーセント(重量%)において0.1重量%~2重量%で添加されてもよい。
【0059】
熱伝導性組成物は、それぞれの組成物の重量パーセント(重量%)において1重量%~20重量%、2重量%~16重量%、又は4重量%~15重量%の範囲の量で、ブロックされたイソシアネートプレポリマー組成物又はアミン組成物のうちの少なくとも1つに混合された可塑剤を含み得る。可塑剤は、ポリウレタンにおいて有用であり、当業者に周知の一般的な可塑剤であってもよい。可塑剤は、ブロックされたイソシアネートプレポリマー組成物又はアミン組成物のうちの少なくとも1つを分散させるか、又はその粘度を低下させるのに十分な量で存在してもよい。好適な可塑剤としては、ダイズ油、フタレート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレート(2,2,4-trimethyl-1,3-pentanediol diisobutyrate、TXIB)、テレフタレートなどが挙げられ得る。他の可塑剤としては、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジオクチル、及びフタル酸ジブチルなどのフタル酸アルキル、「HB-40」として市販されているような部分水素化テルペン、エポキシ可塑剤、クロロパラフィン、並びにアルキルナフタレンが挙げられ得る。
【0060】
熱伝導性組成物は、充填剤及び他の成分を安定化させる分散添加剤をB側に含んでもよい。分散添加剤は、立体的、電気立体的、又は静電的手段のいずれかを介して粒子を安定化するように機能し、非イオン性、アニオン性、カチオン性、又は両性イオン性であり得る。構造は、線状ポリマー及びコポリマー、頭-尾型修飾ポリマー及びコポリマー、AB-ブロックコポリマー、ABAブロックコポリマー、分岐ブロックコポリマー、グラジエントコポリマー、分岐グラジエントコポリマー、超分岐ポリエステル及びコポリマーを含む超分岐ポリマー及びコポリマー、星型ポリマー及びコポリマーであり得る。BASF、Lubrizol、RT Vanderbilt、及びBYKは全て、分散剤の一般的な製造業者である。商品名としては、Lubrizol Solsperseシリーズ、Vanderbilt Darvanシリーズ、BASF DispexシリーズBYK DisperBykシリーズ、BYK LP-C 2XXXXシリーズが挙げられる。グレードは、BYK DisperByk 162、181、182、190、193、2200、及び2152;LP-C 22091、22092、22116、22118、22120、22121、22124、22125、22126、22131、22134、22136、22141、22146、22147、22435;LP-N 22269;Solsperse 3000、及びDarvan C-Nを含むことができる。
【0061】
いくつかの実施形態では、分散添加剤は、ポリエステル側鎖によって立体的に保護されたアミン基を含有する超分岐ポリエステルである。本明細書に開示される分散添加剤は、組成物のB側中に0.01重量%~2重量%、0.1重量%~1重量%、又は0.1重量%~0.5重量%の量で存在し得る。
【0062】
C.調製方法
熱伝導性組成物を形成するために合わせる前に、ブロックされたイソシアネートプレポリマー組成物及び/又はアミン組成物は、250N以下、150N以下、又は85N以下の圧搾力を有し得る。ブロックされたイソシアネートプレポリマー組成物及び/又はアミン組成物は、35N~250N、35N~150N、又は35N~85Nの範囲の圧搾力を有し得る。いくつかの実施形態では、ブロックされたイソシアネートプレポリマー組成物及びアミン組成物は、3日間にわたる<50%の粘度変化、又は7日間にわたる60℃での加熱後に<20%の粘度変化を示し得る。
【0063】
本開示の熱伝導性組成物の調製は、ブロックされたイソシアネートプレポリマー組成物及びアミン組成物のそれぞれの成分を混合し、成分を合わせて最終混合物を調製することによって達成され得る。好適な混合技術としては、Ross PDミキサ(Charles Ross)、Myersミキサ、FlackTek Speedmixer、又は異なる成分を均一に分配する当該技術分野において公知の他のミキサの使用が挙げられる。それぞれの配合物成分及び組成物は、一般に、任意の順序、様々な組み合わせ、及び様々な添加回数で、好都合かつ所望に応じて添加することができる。熱伝導性組成物を形成するための混合中に、又は混合前に(例えば、ブロックされたイソシアネート及び/又はアミン組成物に添加される)、上述の任意選択の分類された添加剤のいずれかを添加してもよい。配合物の成分のうちの1つ以上はまた、予備混合されてもよい。
【0064】
組成物の様々な成分は、二軸押出などの連続プロセスを使用して混合することもできる。様々な流れを別々に押出機に供給するか、又は様々な組み合わせで予備混合して、ブロックされたイソシアネート組成物及びアミン組成物を形成することができる。そのようなプロセスは、大量生産に好適であり得る。
【0065】
本開示はまた、熱伝導性組成物を調製するためのプロセスを提供し、このプロセスは、アミン組成物をブロックされたイソシアネートプレポリマー組成物及び上記の任意選択の成分と混合することを含む。アミン組成物及びブロックされたイソシアネートプレポリマー組成物は、ブロックされたイソシアネート基対アミン反応性基のモル比が、0.90:1.1~1.1:0.9、例えば0.90:1.1、0.95:1.05、0.97:1.03、又は1:1の範囲にあるように合わせることができる。同時に、硬化性組成物中のアミン組成物対ブロックされたイソシアネートプレポリマー組成物の体積比は、0.90:1.1~0.95:1.05、0.97:1.03の範囲内、又は1:1の比で制御されてもよい。そのような体積比(すなわち、一貫した混合比)は、従来の2成分ポリウレタン系組成物のための既存の加工設備を使用して2成分硬化性組成物を調製できることを示す。
【0066】
熱伝導性組成物の2つの主成分(すなわち、アミン組成物及びブロックされたイソシアネートプレポリマー組成物)は、互いに反応性であり、適用時に接触又は混合されると、硬化反応を受け、2つの成分の反応生成物は、2つの表面間に熱伝導性界面を提供することができる硬化した熱伝導性組成物である。ブロックされたイソシアネートプレポリマー組成物とアミン組成物との混合物は、0℃~60℃、10℃~50℃、15℃~45℃、又は18℃~35℃(例えば、RT)の温度で硬化され得る。硬化は、測定可能な硬度を有する硬化した熱伝導性固体の最終的な形成を伴う、A側とB側との混合後の粘度の増加によって示され得る。硬化した熱伝導性組成物は、40~95ショアOO、50~90ショアOO、又は60~85ショアOOの範囲の、ASTM D-2240-15によって決定される硬度の範囲を有し得る。
【0067】
本明細書に開示される熱伝導性組成物は、14日未満、10日未満、又は7日未満で、一般に30分を超える時間スケールで硬化し得る。硬化した熱伝導性組成物は、>0.5W/m・K、又は>1W/m・K、又は最も好ましくは>1.5W/m・K、又は<50W/m・Kの熱伝導度を有し得る。いくつかの実施形態では、硬化した熱伝導性組成物は、1gm/cc~4gm/cc、1.5~3.5gm/cc、又は1.8~3.1gm/ccの密度を有し得る。更に、A側及びB側の粘度は、材料の容易な加工を可能にする。
【0068】
本明細書に開示される熱伝導性組成物は、エネルギー貯蔵デバイスのためのギャップ充填剤又は接着剤として、及び電子車両バッテリ熱管理において有用であり得る。場合によっては、熱伝導性界面を提供するために、冷却板などのヒートシンクとバッテリモジュールなどの熱源との間に組成物を適用することができる。
【0069】
組成物を標的表面に直接適用して無駄を最小限にするために、手動又は半自動分配ツールを使用することができる。一実施形態では、熱伝導性組成物は、ブロックされたイソシアネートプレポリマー組成物とアミン組成物とを合わせて、冷却プレート又はヒートシンクに自動混合計量分配システムを適用し、続いてバッテリセル、モジュール若しくはパック、又は他の熱源を設置することによって調製され得る。
【0070】
更に、熱伝導性組成物は、熱界面ギャップパッドなどの予備硬化物品を形成するために使用され得る。一例において、予備硬化物品は、熱伝導性組成物を所望の厚さで硬化させ、物品を所望の形状に切断し、次いで必要に応じて圧縮して所定の位置に固定することによって形成され得る。本明細書に開示される組成物によって調製されたギャップパッドは、ヒートシンクと電子デバイスとの間の熱界面を提供及び/又は改善し、不均一な表面、空隙、及び粗い表面テクスチャに適応し得る。場合によっては、硬化物品はまた、衝撃減衰のために振動応力を低減するのに役立ち得る。
【実施例
【0071】
本開示の組成物及び方法を試験するために、様々な実施例を調製し、以下に列挙する配合物及び試験方法に従って試験した。本明細書の実施例は、本開示を例証することを意図しており、その範囲を限定するものではない。
【0072】
実施例のための比較配合物及び試料配合物を調製するために使用した化学物質を表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
調製
配合物は、個々の成分を合わせ、高速ミキサを使用して混合することによって調製した。配合物のA側及びB側を別々に調製した。硬化のために、2液型組成物(A側及びB側)を、高速ミキサを使用して1:1重量比(別段の指定がない限り)で混合し、室温で硬化させた。
【0075】
試験方法
ショアOOデュロメータを使用して硬度を測定した。圧搾力は、50kgのロードセルを装備したTA.XTplusテクスチャアナライザを使用して測定した。それぞれの試料を平坦なアルミニウム基材上に分配した後、40mmの直径を有するアクリルプローブを下げて、試験材料を平坦な基材に対して挟み、標準的な5.0mmのギャップ厚さを達成した。あらゆる過剰なオーバーフロー材料を、フラットエッジスパチュラで切り取った。切り取り後、試験を開始し、力を記録しながらプローブを1.0mm/秒の速度で0.3mmの最終厚さまで移動させた。0.5mmのギャップで記録された特定の力の値を、「圧搾力」として報告する。試料の調製から7日以内に圧搾力値を測定した。
【0076】
試料の熱伝導度は、Hot Disk Thermal Constants Analyzer(TPS 2500S、Thermtest Instruments、Canada)を使用してISO 22007-2に従って測定した。全ての測定は、150mWの加熱出力及び5秒の測定時間で、2~6mmのカップによる両面測定を使用して、Kaptonケース入り熱プローブを用いて行った。
【0077】
実施例1:室温硬化性熱伝導性組成物
熱伝導性組成物及び比較配合物を調製し、硬化特性及び得られる硬度を分析した。表2は、試験された試料の組成及びそれらのそれぞれの特性を列挙し、E試料は、本開示に従って調製された組成物を表し、CE試料は、比較配合物を表す。試料成分について報告された値は、他に示されない限りグラムで提供される。
【0078】
【表2】
【0079】
試料E1及びE2は、高い熱伝導度(>1.5W/m・K)、<150Nの圧搾力、及び60~90の範囲内のショアOO硬度を示した。試料E1及びE2はまた、低密度ATH充填剤を利用し、推定約2.0gm/ccの低密度の最終生成物を与える。対照的に、CE1は、ブロックされていないイソシアネートプレポリマーを含み、充填剤と配合された場合、A側は、1日以内に急速に固体に増粘し、ブロックされていないプレポリマーの充填剤上の反応性基との非相溶性を強調し、許容可能なギャップ充填剤として使用できなかった。
【0080】
実施例2:硬化時間に対する触媒の効果
いくつかの触媒を評価して、熱伝導性組成物の硬化特性に対するそれらの効果を調べた。表3に示すA側組成物を、E3~E6用のB側組成物とともに硬化させた。触媒-1、触媒-2、及び触媒-3は、硬化反応を著しく加速することが見出され、触媒-3は、低い触媒充填量で1日で完全な硬化を誘導することができた。触媒-4を使用するCE2は、1日目ではるかに低い硬化硬度を有し、本明細書に開示される特定の触媒の利点を示した。
【0081】
【表3】

E5は、混合直後に硬化した。
【0082】
実施例3:圧搾力を制御するための可塑剤の使用
以下の実施例は、非常に低い圧搾力(<60N)が記載された組成物で達成可能であることを示す。更に、60℃で2週間の配合物の熱老化は、圧搾力の25%未満の増加をもたらし、組成物が安定であることを示す。
【0083】
【表4】
【0084】
実施例4:分散添加剤の効果
この実施例では、B側組成物の圧搾力を低下させるために分散添加剤を含有する試料を、分散添加剤を省いた比較試料とともに分析した。試料をRossダブルプラネタリーミキサで調製した。結果は、CE3が高い圧搾力(>200N)を示し、一方で、B側組成物も加工性の低い乾燥固体であったことを示す。対照的に、E8のB側は、より低い圧搾力(<150N)で加工可能なペーストのままであった。
【0085】
【表5】
【0086】
実施例5:充填剤表面改質
この実施例では、熱伝導性組成物を調製して、A側成分及びB側成分の得られる粘度及び圧搾力並びにそれらのそれぞれの保存安定性に対する充填剤表面改質の影響を調べた。保存安定性の評価のために、試料をガラスバイアルに充填し、窒素を詰め、テープで留め、60℃のオーブン中に保持した。60℃で1週間老化させた後、試料を室温に冷却した後、圧搾力を測定した。
【0087】
CE4及びCE5は、表面処理をすることなく、シラン処理剤が添加された、広い粒径を有する充填剤を有する。両方の試料についてのB側の圧搾力は、60℃で1週間老化させた後に有意に増加した。試料CE4及びCE5についてのB側はまた、室温で7日間貯蔵した後に硬い外観を有し、ペーストにするために60℃に加熱する必要があった。
【0088】
E9及びE10は、広い粒径及び疎水性表面処理を伴う前処理された充填剤を有する。60℃で1週間老化させた後、B側の圧搾力に有意な増加は見られなかった。B側もいかなる加熱も必要とすることなくペーストのままであった。実証されるように、E9及びE10は、それぞれ73及び71ショアOOの硬度を有する硬化した熱伝導性組成物を製造した。
【0089】
【表6】
【0090】
【表7】
【0091】
上記は例示的な実施形態を対象としているが、その基本的な範囲から逸脱することなく他の更なる実施形態が考案されてもよく、その範囲は以下の特許請求の範囲によって決定される。
【国際調査報告】