(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-16
(54)【発明の名称】修飾された抗TSLP抗体
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20240409BHJP
C07K 16/24 20060101ALI20240409BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240409BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240409BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240409BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240409BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240409BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240409BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240409BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240409BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240409BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20240409BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20240409BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240409BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240409BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20240409BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240409BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/24 ZNA
C07K16/46
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 U
A61P29/00
A61P37/08
A61P11/06
A61P1/04
A61P11/00
A61P11/02
A61P13/12
A61P17/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023563978
(86)(22)【出願日】2022-04-22
(85)【翻訳文提出日】2023-11-16
(86)【国際出願番号】 US2022025999
(87)【国際公開番号】W WO2022226342
(87)【国際公開日】2022-10-27
(32)【優先日】2021-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】500049716
【氏名又は名称】アムジエン・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボンダレンコ,パベル
(72)【発明者】
【氏名】シー,リウチン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ハオ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B064DA08
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB11
4C085BB17
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
4H045AA11
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA22
4H045FA74
(57)【要約】
本出願は、概して、長期間にわたって保存された場合にテゼペルマブと比較して上昇した安定性を有する抗TSLP抗体テゼペルマブの組成物又はバリアントに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片であって、
(A)軽鎖可変ドメインであって、
(i)配列番号3で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1配列;
(ii)配列番号4で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2配列;及び
(iii)配列番号5で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3配列
を含む軽鎖可変ドメイン;並びに
(B)重鎖可変ドメインであって、
(i)配列番号6で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1配列;
(ii)配列番号7で示される以下の残基D54又はG55の1つに変異を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR2配列、及び
(iii)配列番号8で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3配列
を含む重鎖可変ドメイン
を含む抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片。
【請求項2】
HCDR2の前記変異は、D54Eである、請求項1に記載の抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片。
【請求項3】
HCDR2の前記変異は、G55Aである、請求項1に記載の抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片。
【請求項4】
前記HCDR2は、配列VIWYX
1X
2SNKHYADSVKG(ここで、X
1は、D又はEであり、及びX
2は、G又はAである)(配列番号13)を有し、任意選択的に、前記HCDR2は、以下の配列:VIWYEGSNKHYADSVKG(配列番号14)、VIWYDASNKHYADSVKG(配列番号15)又はVIWYEASNKHYADSVKG(配列番号16)を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片。
【請求項5】
任意選択的に、配列番号4の以下の残基LCDR2 D49、D50又はS51の少なくとも1つに変異を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片。
【請求項6】
前記変異は、D49E、D50E及び/又はS51Aのいずれか1つである、請求項5に記載の抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片。
【請求項7】
前記LCDR2は、配列X
1X
2X
3DRPS(ここで、X
1は、D又はEであり、X
2は、D又はEであり、及びX
3は、S又はAである)(配列番号17)を有し、任意選択的に、前記LCDR2は、以下の配列:EDSDRPS(配列番号18)、DESDRPS(配列番号19)、EESDRPS(配列番号20)、DDADRPS(配列番号21)、DEADRPS(配列番号22)、EDADRPS(配列番号23)又はEEADRPS(配列番号24)を有する、請求項5又は6に記載の抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片。
【請求項8】
抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片であって、
(A)軽鎖可変ドメインであって、
(i)配列番号3で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1配列;
(ii)配列番号4の以下の残基D49、D50又はS51の少なくとも1つに変異を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2配列;及び
(iii)配列番号5で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3配列
を含む軽鎖可変ドメイン;並びに
(B)重鎖可変ドメインであって、
(i)配列番号6で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1配列;
(ii)配列番号7で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2配列、及び
(iii)配列番号8で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3配列
を含む重鎖可変ドメイン
を含む抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片。
【請求項9】
LCDR2の前記変異は、D49E、D50E及び/又はS51Aである、請求項8に記載の抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片。
【請求項10】
LCDR2の前記変異は、D49Eである、請求項8又は9に記載の抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片。
【請求項11】
LCDR2の前記変異は、D50Eである、請求項8又は9に記載の抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片。
【請求項12】
LCDR2の前記変異は、S51Aである、請求項8又は9に記載の抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片。
【請求項13】
前記LCDR2は、配列X
1X
2X
3DRPS(ここで、X
1は、D又はEであり、X
2は、D又はEであり、及びX
3は、S又はAである)(配列番号17)を有し、任意選択的に、前記LCDR2は、以下の配列:EDSDRPS(配列番号18)、DESDRPS(配列番号19)、EESDRPS(配列番号20)、DDADRPS(配列番号21)、DEADRPS(配列番号22)、EDADRPS(配列番号23)又はEEADRPS(配列番号24)を有する、請求項8~12のいずれか一項に記載の抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片。
【請求項14】
任意選択的に、配列番号7で示されるHCDR2の以下の残基D54又はG55の1つ以上に変異を含む、請求項8~13のいずれか一項に記載の抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片。
【請求項15】
前記変異は、配列番号7で示されるHCDR2のD54E及び/又はG55Aのいずれか1つである、請求項14に記載の抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片。
【請求項16】
前記HCDR2は、配列VIWYX
1X
2SNKHYADSVKG(ここで、X
1は、D又はEであり、及びX
2は、G又はAである)(配列番号13)を有し、任意選択的に、前記HCDR2は、以下の配列:VIWYEGSNKHYADSVKG(配列番号14)、VIWYDASNKHYADSVKG(配列番号15)又はVIWYEASNKHYADSVKG(配列番号16)を有する、請求項14又は15に記載の抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片。
【請求項17】
(A)軽鎖可変ドメインであって、
i.配列番号12に対して少なくとも80%同一のアミノ酸配列;
ii.配列番号11に対して少なくとも80%同一のポリヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列;若しくは
iii.配列番号11からなるポリヌクレオチドの相補体と中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列
からなる群から選択される軽鎖可変ドメイン;又は
(B)重鎖可変ドメインであって、
i.配列番号10に対して少なくとも80%同一のアミノ酸配列;
ii.配列番号9に対して少なくとも80%同一のポリヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列;若しくは
iii.配列番号9からなるポリヌクレオチドの相補体と中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列
からなる群から選択される重鎖可変ドメイン;又は
(C)(A)の軽鎖可変ドメイン及び(B)の重鎖可変ドメイン
を含み、前記抗TSLP抗原結合タンパク質又はその断片の前記CDRを保持する、請求項1~16のいずれか一項に記載の抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片。
【請求項18】
前記抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片は、配列番号10又は配列番号25~28のアミノ酸配列を含む重鎖、配列番号12又は配列番号29~36のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の抗原結合タンパク質又はその断片。
【請求項19】
ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、組換え抗体、抗原結合抗体断片、一本鎖抗体、単量体抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、Fab断片、IgM抗体、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体及びIgG4抗体からなる群から選択される、請求項1~18のいずれか一項に記載の抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片。
【請求項20】
前記抗原結合タンパク質は、ヒト抗体である、請求項1~18のいずれか一項に記載の抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片。
【請求項21】
IgG2抗体である、請求項19又は20に記載の抗体。
【請求項22】
前記抗TSLP抗原結合タンパク質又はその断片は、配列番号2のアミノ酸29~159で示されるTSLPポリペプチドに特異的に結合する、請求項1~21のいずれか一項に記載の免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片。
【請求項23】
前記抗TSLP抗原結合タンパク質又はその断片の両方の結合部位は、TSLPに対する同一の結合を有する、請求項1~22のいずれか一項に記載の抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片。
【請求項24】
数値的に10
-8M Kd以下の親和性でTSLPに結合する、請求項1~23のいずれか一項に記載の抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片。
【請求項25】
請求項1~24のいずれか一項に記載の抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片と、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤とを含む組成物。
【請求項26】
請求項1~24のいずれか一項に記載の免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片の前記軽鎖可変ドメイン、前記重鎖可変ドメイン又は両方をコードするポリヌクレオチド配列を含む単離された核酸。
【請求項27】
請求項26に記載の核酸を含む組換え発現ベクター。
【請求項28】
請求項27に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項29】
配列番号2のアミノ酸29~159を含むTSLPポリペプチドに特異的に結合する免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片を産生する方法であって、請求項28に記載の宿主細胞を、それが前記免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片を発現することを可能にする条件下でインキュベートすることを含み、前記宿主細胞は、(i)請求項1~24のいずれか一項に記載の免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片の前記軽鎖可変ドメインをコードする組換え発現ベクター及び請求項1~24のいずれか一項に記載の免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片の前記重鎖可変ドメインをコードする組換え発現ベクター、又は(ii)請求項1~24のいずれか一項に記載の免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片の前記軽鎖可変ドメインと前記重鎖可変ドメインとの両方をコードする組換え発現ベクターを含む、方法。
【請求項30】
配列番号10及び配列番号12で示されるアミノ酸配列を有する抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片と比較して、25℃で上昇した安定性を有する、請求項1~24のいずれか一項に記載の抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片。
【請求項31】
配列番号10及び配列番号12で示されるアミノ酸配列を有する抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片と比較して、4週間後に40℃で上昇した安定性を有する、請求項1~24のいずれか一項に記載の抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片。
【請求項32】
配列番号10及び配列番号12で示されるアミノ酸配列を有する抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片と比較して、4週間後に40℃で減少した高分子量種を有する、請求項1~24のいずれか一項に記載の抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片。
【請求項33】
配列番号10及び配列番号12で示されるアミノ酸配列を有する抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片と比較して、50℃で減少した異性化を有する、請求項1~24のいずれか一項に記載の抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片。
【請求項34】
前記抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片の2%未満は、SECによって決定されるとき、約25℃で少なくとも2週間(任意選択的に少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月又は少なくとも6ヶ月)の貯蔵後に異性化及び/又は脱アミドを示す、請求項1~24のいずれか一項に記載の抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片。
【請求項35】
前記免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片の2%未満は、SECによって決定されるとき、約22ヶ月~約36ヶ月の2℃~8℃での貯蔵、続いて少なくとも2週間又は少なくとも1ヶ月若しくは少なくとも2ヶ月の約25℃での貯蔵後に異性化及び/又は脱アミドを示す、請求項1~24のいずれか一項に記載の抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片。
【請求項36】
対象の炎症性疾患を治療する方法であって、治療有効量の、請求項1~24のいずれか一項に記載の免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片或いは請求項25に記載の組成物を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項37】
前記炎症性疾患は、喘息、アトピー性皮膚炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、好酸球性食道炎(EoE)、鼻茸、慢性自然発症蕁麻疹、Ig駆動疾患、IgA腎症、ループス腎炎、好酸球性胃炎、鼻茸を伴わない慢性副鼻腔炎及び特発性肺線維症(IPF)からなる群から選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
2週間ごと又は4週間ごとの間隔で前記組成物を投与することを含む、請求項36又は37に記載の方法。
【請求項39】
前記組成物は、少なくとも4ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、1年又はそれを超える期間にわたって投与される、請求項36~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記喘息は、重症喘息である、請求項37~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記喘息は、好酸球性又は非好酸球性喘息である、請求項37~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
複数の抗TSLPモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を含む組成物を製造する方法であって、前記複数の抗TSLPモノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、
配列番号3で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1配列;
配列番号4で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2配列;
配列番号5で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3配列;
配列番号6で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1配列;
配列番号7で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2配列;及び
配列番号8で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3配列
をそれぞれ含み、前記方法は、以下の属性:
HC位置54のイソアスパラギン酸(isoAsp)若しくは環状アスパラギン酸(cAsp)と比較したHC位置54のL-アスパラギン酸;
酸化HC W102と比較した非酸化HC W102;
LC位置49若しくは位置50のisoAsp若しくはcAspと比較したLC位置49若しくは位置50のL-アスパラギン酸;
脱アミド化LC N65と比較したLC N65;又は
LC位置91のisoAsp若しくはcAspと比較したLC位置91のL-アスパラギン酸
の少なくとも1つのために、IgG2抗TSLPモノクローナル抗体又はその抗原結合断片について前記組成物を濃縮することを含む、方法。
【請求項43】
前記抗TSLPモノクローナル抗体の0.9%以下は、異性化HC D54を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記抗TSLPモノクローナル抗体の2%以下は、酸化HC W102を含む、請求項42又は43に記載の方法。
【請求項45】
前記抗TSLPモノクローナル抗体の0.9%以下は、異性化LC D50又はLC D49を含む、請求項42~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記抗TSLPモノクローナル抗体の0.5%以下は、脱アミド化LC N65を含む、請求項42~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記抗TSLPモノクローナル抗体の0.9%以下は、異性化LC D91を含む、請求項42~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記抗TSLP抗体は、IgG2抗体である、請求項42~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記抗TSLP抗体は、(i)HC D54のL-アスパラギン酸、並びに(ii)LC D49及び/又はD50のL-アスパラギン酸を含む、請求項42~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記抗TSLP抗体は、HC D54のL-アスパラギン酸において、isoAspのレベルよりも少なくとも6倍濃縮される、請求項42~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記抗TSLP抗体は、配列番号10で示される重鎖可変領域と、配列番号12で示される軽鎖可変領域とを含む、請求項42~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
配列番号3で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1配列;
配列番号4で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2配列;
配列番号5で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3配列;
配列番号6で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1配列;
配列番号7で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2配列;及び
配列番号8で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3配列
をそれぞれ含む抗TSLPモノクローナル抗体を含む組成物であって、前記組成物の前記抗TSLPモノクローナル抗体が数値的に10
-8M以下のKdでTLSPに結合するために有効である、制限された含有量の異性化HC D54及び/又は制限された含有量の異性化LC D49若しくはD50を含む組成物。
【請求項53】
配列番号3で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1配列;配列番号4で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2配列;配列番号5で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3配列;配列番号6で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1配列;配列番号7で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2配列;及び配列番号8で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3配列をそれぞれ含むIgG2抗TSLPモノクローナル抗体を含む組成物であって、
前記抗TSLPモノクローナル抗体の0.9%以下は、異性化HC D54を含むか;
前記抗TSLPモノクローナル抗体の2%以下は、酸化HC W102を含むか;
前記抗TSLPモノクローナル抗体の0.9%以下は、異性化LC D49若しくはLC D50を含むか;
前記抗TSLPモノクローナル抗体の0.5%以下は、脱アミド化LC N65を含むか;又は
前記抗TSLPモノクローナル抗体の0.9%以下は、異性化LC D91を含むか
の少なくとも1つである、組成物。
【請求項54】
前記抗TSLPモノクローナル抗体の0.9%以下は、異性化HC D54を含む、請求項53に記載の組成物。
【請求項55】
前記抗TSLPモノクローナル抗体の2%以下は、酸化HC W102を含む、請求項53又は54に記載の組成物。
【請求項56】
前記抗TSLPモノクローナル抗体の0.9%以下は、異性化LC D49又はLC D50を含む、請求項53~55のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項57】
前記抗TSLPモノクローナル抗体の0.5%以下は、脱アミド化LC N65を含む、請求項53~56のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項58】
前記抗TSLPモノクローナル抗体の0.9%以下は、異性化LC D91を含む、請求項53~57のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項59】
前記抗TSLP抗体は、IgG2抗体である、請求項53~58のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項60】
前記抗TSLP抗体は、HC54のL-アスパラギン酸とLC49及び/又はLC50のL-アスパラギン酸との組合せを含む、請求項53~59のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項61】
前記抗TSLP抗体は、HC54のL-アスパラギン酸において、isoAspのレベルよりも少なくとも6倍濃縮される、請求項53~60のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項62】
前記抗TSLP抗体は、配列番号10で示される重鎖可変領域と、配列番号12で示される軽鎖可変領域とを含み、
前記抗TSLPモノクローナル抗体の0.9%以下は、異性化HC D54を含むか;
前記抗TSLPモノクローナル抗体の2%以下は、酸化HC W102を含むか;
前記抗TSLPモノクローナル抗体の0.9%以下は、異性化LC D49若しくはLC D50を含むか;
前記抗TSLPモノクローナル抗体の0.5%以下は、脱アミド化LC N65を含むか;又は
前記抗TSLPモノクローナル抗体の0.9%以下は、異性化LC D91を含むか
の少なくとも1つである、請求項53~61のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項63】
配列番号3で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1配列;配列番号4で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2配列;配列番号5で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3配列;配列番号6で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1配列;配列番号7で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2配列;及び配列番号8で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3配列をそれぞれ含む抗TSLPモノクローナル抗体を含む組成物であって、
前記組成物の前記抗TSLPモノクローナル抗体の98%超は、HC位置54のisoAsp若しくはcAspと比較してHC位置54にL-アスパラギン酸を含むか;
前記組成物の前記抗TSLPモノクローナル抗体の少なくとも99%は、酸化HC W102と比較した非酸化HC W102を含むか;
前記組成物の前記抗TSLPモノクローナル抗体の少なくとも97%は、LC位置49若しくは50のisoAsp若しくはcAspと比較してLC位置49若しくは50にL-アスパラギン酸を含むか;
前記組成物の前記抗TSLPモノクローナル抗体の少なくとも99.1%は、脱アミド化LC N65と比較したLC N65を含むか;又は
前記組成物の前記抗TSLPモノクローナル抗体の少なくとも99.1%は、LC位置91のisoAsp若しくはcAspと比較してLC位置91にL-アスパラギン酸を含むか
の少なくとも1つである、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年4月23日に出願された米国仮特許出願第63/178,915号明細書の優先権の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
電子的に提出された資料の参照による組み込み
本開示の一部である配列表は、テキストファイルとして本明細書と同時に提出される。配列表を含むテキストファイルの名称は、「55581_Seqlisting.txt」であり、2022年4月12日に作成されたものであり、サイズが32,649バイトである。配列表の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本出願は、概して、長期間にわたって保存された場合にテゼペルマブと比較して上昇した安定性を有する抗TSLP抗体テゼペルマブの組成物及びバリアントに関する。
【背景技術】
【0004】
環境刺激及び炎症誘発性刺激に応答して産生される上皮細胞由来サイトカインである胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)は、複数の炎症細胞及び下流の経路の活性化をもたらす(Soumelis et al.Nat Immunol 2002;3:673-80;Allakhverdi et al.J Exp Med 2007;204:253-8)。TSLPは、喘息患者の気道で増加し、Th2サイトカイン及びケモカインの発現(Shikotra et al.J Allergy Clin Immunol 2012;129:104-11 e1-9)並びに疾患重症度(Ying et al.J Immunol 2005;174:8183-90;Ying et al.J Immunol 2008;181:2790-8)と相関する。TSLPは、Th2免疫の調節の中心であるが、それは、炎症の他の経路でも重要な役割を果たし得、したがって複数の喘息表現型と関連し得る。
【0005】
テゼペルマブは、TSLPに結合し、そのTSLP受容体複合体との相互作用を妨げるヒト免疫グロブリンG2(IgG2)モノクローナル抗体(mAb)である。軽症のアトピー性喘息患者を対象とした概念実証試験では、テゼペルマブは、早期及び後期の喘息反応を阻害し、吸入アレルゲン曝露後のTh2炎症のバイオマーカーを抑制することが示された(Gauvreau,et al.N Engl J Med 2014;370:2102-10)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Soumelis et al.Nat Immunol 2002;3:673-80
【非特許文献2】Allakhverdi et al.J Exp Med 2007;204:253-8
【非特許文献3】Shikotra et al.J Allergy Clin Immunol 2012;129:104-11 e1-9
【非特許文献4】Ying et al.J Immunol 2005;174:8183-90
【非特許文献5】Ying et al.J Immunol 2008;181:2790-8
【非特許文献6】Gauvreau,et al.N Engl J Med 2014;370:2102-10
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
製剤中の抗体治療薬を経時的に監視することは、治療薬の分解を減少させ、製品の完全性を維持する貯蔵条件を決定するために重要である。本開示は、貯蔵中に経時的に変化し得る抗TSLP抗体の属性及び抗体安定性に有益又は有害であり得る属性の研究を提供する。
【0008】
一態様では、本開示は、抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片を提供し、これは、(A)軽鎖可変ドメインであって、(i)配列番号3で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1配列、(ii)配列番号4で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2配列、及び(iii)配列番号5で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3配列を含む軽鎖可変ドメイン、並びに(B)重鎖可変ドメインであって、(i)配列番号6で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1配列;(ii)配列番号7で示される以下の残基D54又はG55の少なくとも1つに変異を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR2配列、及び(iii)配列番号8で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3配列を含む重鎖可変ドメインを含む。様々な実施形態では、HCDR2は、配列VIWYX1X2SNKHYADSVKG(配列番号13)(ここで、X1は、D又はEであり、及びX2は、G又はAである)を有する。様々な実施形態では、HCDR2は、以下の配列を有する:VIWYEGSNKHYADSVKG(配列番号14)、VIWYDASNKHYADSVKG(配列番号15)又はVIWYEASNKHYADSVKG(配列番号16)。
【0009】
様々な実施形態において、HCDR2における変異は、D54Eである。様々な実施形態において、HCDR2における変異は、G55Aである。様々な実施形態では、抗TSLP抗原結合タンパク質又はその断片は、任意選択的に、配列番号4のLCDR2 D49、D50又はS51の残基の少なくとも1つに変異を含む。様々な実施形態では、LCDR2の変異は、D49E、D50E又はS51Aの1つ以上である。様々な実施形態では、LCDR2は、配列X1X2X3DRPS(ここで、X1は、D又はEであり、X2は、D又はEであり、及びX3は、S又はAである)(配列番号17)を有する。様々な実施形態では、LCDR2は、以下の配列を有する:EDSDRPS(配列番号18)、DESDRPS(配列番号19)、EESDRPS(配列番号20)、DDADRPS(配列番号21)、DEADRPS(配列番号22)、EDADRPS(配列番号23)又はEEADRPS(配列番号24)。
【0010】
様々な実施形態では、本開示は、抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片を提供し、これは、(A)軽鎖可変ドメインであって、(i)配列番号3で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1配列;(ii)配列番号4の以下の残基D49、D50又はS51の少なくとも1つに変異を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2配列;(iii)配列番号5で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3配列を含む軽鎖可変ドメイン;並びに(B)重鎖可変ドメインであって、(i)配列番号6で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1配列;(ii)配列番号7で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2配列、及び(iii)配列番号8で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3配列を含む重鎖可変ドメインを含む。
【0011】
様々な実施形態では、LCDR2は、配列X1X2X3DRPS(ここで、X1は、D又はEであり、X2は、D又はEであり、及びX3は、S又はAである)(配列番号17)を有する。任意選択的に、LCDR2は、以下の配列を有する:EDSDRPS(配列番号18)、DESDRPS(配列番号19)、EESDRPS(配列番号20)、DDADRPS(配列番号21)、DEADRPS(配列番号22)、EDADRPS(配列番号23)又はEEADRPS(配列番号24)。様々な実施形態において、LCDR2における変異は、D49Eである。様々な実施形態において、LCDR2における変異は、D50Eである。様々な実施形態において、LCDR2における変異は、S51Aである。様々な実施形態では、抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片は、任意選択的に、配列番号7で示されるHCDR2の以下の残基D54又はG55の1つに変異を含む。様々な実施形態では、HCDR2の変異は、配列番号7のD54E又はG55Aの1つ以上である。様々な実施形態では、HCDR2は、配列VIWYX1X2SNKHYADSVKG(配列番号13)(ここで、X1は、D又はEであり、及びX2は、G又はAである)を有する。様々な実施形態では、HCDR2は、以下の配列を有する:VIWYEGSNKHYADSVKG(配列番号14)、VIWYDASNKHYADSVKG(配列番号15)又はVIWYEASNKHYADSVKG(配列番号16)。
【0012】
様々な実施形態では、本開示は、抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片を提供し、これは、(A)軽鎖可変ドメインであって、i.配列番号12に対して少なくとも80%同一のアミノ酸の配列;ii.配列番号11に対して少なくとも80%同一のポリヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸の配列;又はiii.配列番号11からなるポリヌクレオチドの相補体に中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸の配列からなる群から選択される軽鎖可変ドメイン;又は(B)重鎖可変ドメインであって、i.配列番号10に対して少なくとも80%同一のアミノ酸の配列;ii.配列番号9に対して少なくとも80%同一のポリヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸の配列;又はiii.配列番号9からなるポリヌクレオチドの相補体に中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸の配列からなる群から選択される重鎖可変ドメイン;又は(C)(A)の軽鎖可変ドメイン及び(B)の重鎖可変ドメインを含み、抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片は、抗TSLP抗原結合タンパク質若しくはその断片のCDRの1つ以上を保持し、且つ配列番号7のHCDR2 D54若しくはG55又は配列番号4のLCDR2 D49、D50若しくはS51の1つ以上に変異を含む。
【0013】
様々な実施形態では、抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片は、配列番号10又は配列番号25~28のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号12又は配列番号29~36のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。
【0014】
種々の実施形態では、抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片は、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、組換え抗体、抗原結合抗体断片、一本鎖抗体、単量体抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、Fab断片、IgM抗体、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体及びIgG4抗体からなる群から選択される抗TSLP抗原結合タンパク質を含む。
【0015】
様々な実施形態において、免疫グロブリン、抗原結合タンパク質又は抗体は、ヒト抗体である。様々な実施形態では、抗体は、IgG2抗体である。様々な実施形態では、抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片は、配列番号2のアミノ酸29~159で示されるTSLPポリペプチドに特異的に結合する。様々な実施形態では、抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片の両方の結合部位は、TSLPに対する同一の結合を有する。
【0016】
様々な実施形態では、抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片は、数値的に10-8M Kd以下の親和性でTSLPに結合する。
【0017】
本明細書に記載の抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片と、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤とを含む組成物がさらに企図される。
【0018】
本開示は、本明細書に記載の免疫グロブリン、抗原結合タンパク質又は抗体の軽鎖可変ドメイン、重鎖可変ドメイン又は両方をコードするポリヌクレオチド配列を含む単離された核酸も提供する。
【0019】
本開示は、本明細書に記載の抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質又は抗体をコードする核酸を含む組換え発現ベクターをさらに企図する。発現ベクターを含む宿主細胞も提供される。
【0020】
配列番号2のアミノ酸29~159を含むTSLPポリペプチドに特異的に結合する免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片を産生する方法であって、宿主細胞を、それが免疫グロブリン、抗原結合タンパク質又はその断片を発現することを可能にする条件下でインキュベートすることを含み、前記宿主細胞は、(i)本明細書に記載の抗原結合タンパク質の軽鎖可変ドメインをコードする組換え発現ベクター及び本明細書に記載の抗原結合タンパク質の重鎖可変ドメインをコードする組換え発現ベクター、又は(ii)本明細書に記載の免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくは抗体の軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの両方をコードする組換え発現ベクターを含む、方法が本明細書でさらに企図される。
【0021】
様々な実施形態では、抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片は、配列番号10及び配列番号12で示されるアミノ酸配列を有する抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片と比較して、25℃で上昇した安定性を有する。様々な実施形態では、抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片は、配列番号10及び配列番号12で示されるアミノ酸配列を有する抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片と比較して、4週間後に40℃で上昇した安定性を有する。様々な実施形態では、抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片は、配列番号10及び配列番号12で示されるアミノ酸配列を有する抗TSLP抗原結合タンパク質又はその断片と比較して、4週間後に40℃で減少した高分子量種を有する。
【0022】
様々な実施形態では、抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片は、配列番号10及び配列番号12で示されるアミノ酸配列を有する抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片と比較して、50℃で減少した異性化を有する。
【0023】
様々な実施形態では、抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片の2%未満は、SEC、例えば抗体-抗原複合体のSECによって決定されるとき、約25℃で少なくとも2週間(任意選択的に少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月又は少なくとも6ヶ月)の貯蔵後に異性化を示す。様々な実施形態では、抗原結合タンパク質又はその断片の2%未満は、SECによって決定されるとき、約22ヶ月~約36ヶ月の2℃~8℃での貯蔵、続いて少なくとも2週間又は少なくとも1ヶ月、若しくは少なくとも2ヶ月、若しくは少なくとも3ヶ月の約25℃での貯蔵後に異性化を示す。
【0024】
対象の炎症性疾患を治療する方法であって、治療有効量の、本明細書に記載の免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片或いはその組成物を対象に投与する工程を含む方法も本明細書で提供される。種々の態様では、炎症性疾患は、喘息、アトピー性皮膚炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、好酸球性食道炎(EoE)、鼻茸、慢性自然発症蕁麻疹、Ig駆動疾患、IgA腎症、ループス腎炎、好酸球性胃炎、鼻茸を伴わない慢性副鼻腔炎及び特発性肺線維症(IPF)からなる群から選択される。様々な実施形態において、喘息は、軽度、中等度又は重度の喘息である。種々の実施形態では、喘息は、重度の喘息である。様々な実施形態では、喘息は、好酸球性又は非好酸球性喘息である。
【0025】
様々な実施形態では、方法は、2週間ごと又は4週間ごとの間隔で組成物を投与することを含む。様々な実施形態では、組成物は、少なくとも4ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、1年又はそれを超える期間にわたって投与される。
【0026】
様々な実施形態では、本開示は、複数の抗TSLPモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を含む組成物を製造する方法を提供し、複数の抗TSLPモノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、配列番号3で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1配列;配列番号4で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2配列;配列番号5で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3配列;配列番号6で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1配列;配列番号7で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2配列;及び配列番号8で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3配列をそれぞれ含み、方法は、配列番号7で示されるHCDR2のイソアスパラギン酸(isoAsp)若しくは環状アスパラギン酸(cAsp)と比較したHC位置54のL-アスパラギン酸;配列番号8で示されるHCDR3中の酸化W102と比較した非酸化HC W102;配列番号4で示されるLCDR2のisoAsp若しくはcAspと比較したLC位置49若しくは位置50のL-アスパラギン酸;LC配列番号12で示される脱アミド化N65と比較したLC N65;又はisoAsp若しくはcAspと比較した配列番号5で示されるLCDR3のLC位置91のL-アスパラギン酸の少なくとも1つを含むIgG2抗TSLPモノクローナル抗体について組成物を濃縮することを含む。cAspは、Asp又はisoAspと比較してH2Oの損失を特徴とするスクシンイミドとしても公知である。
【0027】
様々な実施形態では、抗TSLPモノクローナル抗体の2.0%未満は、異性化HC D54を含む。様々な実施形態では、抗TSLPモノクローナル抗体の0.9%以下は、異性化HC D54を含む。様々な実施形態では、抗TSLPモノクローナル抗体の2%以下は、酸化HC W102を含む。様々な実施形態では、抗TSLPモノクローナル抗体の2.0%未満は、異性化LC D49又はD50を含む。様々な実施形態では、抗TSLPモノクローナル抗体の0.9%以下は、異性化LC D49又はD50を含む。様々な実施形態では、抗TSLPモノクローナル抗体の0.5%以下は、脱アミド化LC N65を含む。様々な実施形態では、抗TSLPモノクローナル抗体の0.9%以下は、異性化LC D91を含む。
【0028】
抗TSLPモノクローナル抗体を含む組成物がさらに企図され、抗TSLPモノクローナル抗体は、配列番号3で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1配列;配列番号4で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2配列;配列番号5で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3配列;配列番号6で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1配列;配列番号7で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2配列;及び配列番号8で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3配列をそれぞれ含み、組成物は、前記組成物の前記抗TSLPモノクローナル抗体が数値的に10-8M以下のKdでTLSPに結合するために有効である、限定された含有量の異性化HC D54(配列番号7)及び/又は限定された含有量の異性化LC D49若しくはD50(配列番号4)を含む。
【0029】
IgG2抗TSLPモノクローナル抗体を含む組成物も提供され、IgG2抗TSLPモノクローナル抗体は、配列番号3で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1配列;配列番号4で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2配列;配列番号5で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3配列;配列番号6で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1配列;配列番号7で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2配列;及び配列番号8で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3配列をそれぞれ含み;抗TSLPモノクローナル抗体の0.9%以下は、異性化HC D54を含むか;抗TSLPモノクローナル抗体の2%以下は、酸化HC W102を含むか;抗TSLPモノクローナル抗体の6.7%以下は、異性化LC D49又はD50を含むか;抗TSLPモノクローナル抗体の0.5%以下は、脱アミド化LC N65を含むか;又は抗TSLPモノクローナル抗体の0.9%以下は、異性化LC D91を含むかの少なくとも1つである。様々な実施形態では、抗TSLPモノクローナル抗体の0.9%以下は、異性化HC D54を含む。様々な実施形態では、抗TSLPモノクローナル抗体の2%以下は、酸化HC W102を含む。様々な実施形態では、抗TSLPモノクローナル抗体の0.9%以下は、異性化LC D49又はLC D50を含む。様々な実施形態では、抗TSLPモノクローナル抗体の0.5%以下は、脱アミド化LC N65を含む。様々な実施形態では、の抗TSLPモノクローナル抗体の0.9%以は、異性化LC D91を含む。
【0030】
IgG2抗TSLPモノクローナル抗体を含む組成物も提供され、IgG2抗TSLPモノクローナル抗体は、配列番号3で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1配列;配列番号4で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2配列;配列番号5で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3配列;配列番号6で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1配列;配列番号7で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2配列;及び配列番号8で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3配列をそれぞれ含み;抗TSLPモノクローナル抗体の0.9%以下は、異性化HC D54を含むか;抗TSLPモノクローナル抗体の2%以下は、酸化HC W102を含むか;抗TSLPモノクローナル抗体の12.9%以下は、異性化LC D49又はD50を含むか;抗TSLPモノクローナル抗体の0.5%以下は、脱アミド化LC N65を含むか;又は抗TSLPモノクローナル抗体の0.9%以下は、異性化LC D91を含むかの少なくとも1つである。様々な実施形態では、抗TSLPモノクローナル抗体の0.9%以下は、異性化HC D54を含む。様々な実施形態では、抗TSLPモノクローナル抗体の2%以下は、酸化HC W102を含む。様々な実施形態では、抗TSLPモノクローナル抗体の0.9%以下は、異性化LC D49又はLC D50を含む。様々な実施形態では、抗TSLPモノクローナル抗体の0.5%以下は、脱アミド化LC N65を含む。様々な実施形態では、抗TSLPモノクローナル抗体の0.9%以下は、異性化LC D91を含む。
【0031】
様々な実施形態では、抗TSLP抗体は、HC D54のL-アスパラギン酸とLC D49又はD50のL-アスパラギン酸との組合せを含む。様々な実施形態では、抗TSLP抗体は、HC D54のL-アスパラギン酸において、isoAspのレベルよりも少なくとも6倍濃縮される。
【0032】
種々の実施形態では、抗体は、IgG2抗体である。様々な実施形態では、抗TSLP抗体は、配列番号10又は配列番号25~28で示される重鎖可変領域と、配列番号12又は配列番号29~36で示される軽鎖可変領域とを含み、且つ本明細書に記載される配列修飾の1つ以上を含む。
【0033】
本開示は、抗TSLPモノクローナル抗体を含む組成物も提供し、抗TSLPモノクローナル抗体は、配列番号3で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1配列;配列番号4で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2配列;配列番号5で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3配列;配列番号6で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1配列;配列番号7で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2配列;及び配列番号8で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3配列をそれぞれ含み;組成物の抗TSLPモノクローナル抗体の98%超は、位置54(配列番号7)のisoAsp若しくはcAspと比較してHC位置54にL-アスパラギン酸を含むか;組成物の抗TSLPモノクローナル抗体の少なくとも99%は、酸化W102と比較した非酸化HC W102(配列番号8)を含むか;組成物の抗TSLPモノクローナル抗体の少なくとも97%は、位置49若しくは50(配列番号4)のisoAsp若しくはcAspと比較してLC位置49若しくは50にL-アスパラギン酸を含むか;組成物の抗TSLPモノクローナル抗体の少なくとも99.1%は、脱アミド化LC N65(配列番号12)と比較したLC N65を含むか;又は組成物の抗TSLPモノクローナル抗体の少なくとも99.1%は、位置91(配列番号5)のisoAsp若しくはcAspと比較してLC位置91にL-アスパラギン酸を含むかの少なくとも1つである。
【0034】
本開示は、本明細書に記載の炎症性疾患の治療に使用するための、本明細書に記載の抗TSLP抗体又はその抗原結合断片を含む組成物も提供する。特定の実施形態において、本開示は、炎症性疾患を治療するための薬剤の調製における、本明細書に記載される抗TSLP抗体又はその抗原結合断片を含む組成物の使用を提供する。
【0035】
シリンジ、例えば単回使用又は予め充填されたシリンジ、滅菌密封容器、例えばバイアル、ボトル、容器及び/又は前述の抗体若しくは組成物のいずれかを含むキット若しくはパッケージも、任意選択的に使用のための適切な説明書と共に企図される。
【0036】
本明細書に記載される各特徴若しくは実施形態又は組合せは、本発明の態様のいずれかの非限定的で例示的な例であり、したがって本明細書に記載される任意の他の特徴若しくは実施形態又は組合せと組み合わせることが可能であると意図されることが理解される。例えば、特徴が「一実施形態」、「ある実施形態」、「特定の実施形態」、「さらなる実施形態」、「特定の例示的な実施形態」及び/又は「他の実施形態」などの用語を用いて記載される場合、これらのタイプの実施形態のそれぞれは、あらゆる可能な組合せを列挙する必要なく、本明細書に記載される任意の他の特徴又は特徴の組合せと組み合わされることが意図される特徴の非限定的な例である。このような特徴又は特徴の組合せは、本発明の態様のいずれかに適用される。範囲内に含まれる値の例が開示される場合、これらの例のいずれも範囲の可能な端点として考えられ、このような端点間のあらゆる数値が想定され、上端点及び下端点のあらゆる組合せが想定される。
【0037】
本明細書における見出しは、読者の便宜のためのものであり、限定的であることを意図されない。本発明のさらなる態様、実施形態及び変形形態は、詳細な説明、及び/又は図面、及び/又は特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】熱ストレスAMG157(40C4W)及びTSLPのSEC親和性結合によって決定される結合に潜在的に影響を与える残基及び修飾を特徴付けるためのワークフローを示す。インシリコ配列分析を示す(上)。修飾を有する残基のいくつかの変異は、室温でAMG157の安定性を改善すると考えられた(下)。
【
図2】抗原抗体複合体のSECによって決定されたAMG157のT0、40C4W及び22M5C+2M25C試料の潜在的属性の相対的存在量を示す。これらの属性は、インシリコ配列によるTSLP安定性に潜在的に影響を与えると予測された(
図1に示す)。白色、黒色及び灰色のバーは、それぞれAMG157 T0、40C4W及び22M5C+2M25C試料修飾率を表す。破線は、2%を表すように示されている。
【
図3A】AMG157 T0、AMG157 40C4W、TSLP、AMG157 T0+TSLP混合物及びAMG157 40C4W+TSLP混合物のSEC-UVプロファイルを示す。5つのSEC-UVピーク領域は、ピーク形状及び分子量に基づいて割り当てられる。ピーク3は、TSLPとのAMG157の結合画分を表し、ピーク5は、AMG157の非結合画分に対応する。割り当てられた各ピークのイラストは、対応するピークの上に示されている。
【
図3B】SEC結合の結合画分及び非結合画分における5つの属性の修飾率を示す。
【
図4】TSLP結合に影響を与えるためにAMG157の属性が統計学的にどのように分布するかを示すボルケーノプロットである。右上隅に示される属性は、TSLP結合に潜在的に影響を与えるAMG157の修飾である。X軸は、非結合と結合との間の変化倍数のlog2値であり、y軸は、統計学的有意性を表すp値の-log10値である。灰色の領域は、バックグラウンドと見なされる。
【
図5A】インシリコ配列分析に基づいて潜在的に重要であると考えられた10残基中の結合AMG157画分及び非結合AMG157画分の修飾率を示す。しかし、抗体-抗原のSECにより、非結合画分と結合画分との修飾の比は、統計的に異ならないことが明らかになった。修飾は、抗体-抗原法のSECによって測定される結合に影響を及ぼさないと仮定される。
図5A及び
図5Bは、それぞれ0~50%及び0~1%のパーセンテージスケールを有する。
【
図5B】インシリコ配列分析に基づいて潜在的に重要であると考えられた10残基中の結合AMG157画分及び非結合AMG157画分の修飾率を示す。しかし、抗体-抗原のSECにより、非結合画分と結合画分との修飾の比は、統計的に異ならないことが明らかになった。修飾は、抗体-抗原法のSECによって測定される結合に影響を及ぼさないと仮定される。
図5A及び
図5Bは、それぞれ0~50%及び0~1%のパーセンテージスケールを有する。
【
図6】AMG157 T0、40℃4W及び50℃1WのSEC-UVプロファイルを示す。AMG157 T0、40℃4W及び50℃1WのSEC-UVプロファイルは、それぞれ黒色実線、青色点線及び赤色破線で示されている。AMG157の溶出時間及び理論分子量に基づいて、約10.5分で溶出するピークは、AMG157(HMW)の高分子量種として割り当てられ、約15.5分で溶出するピークは、AMG157のモノマーとして割り当てられる。積分ピーク面積によれば、40℃4W及び50℃1WにおけるHMW種の割合は、それぞれ約9%及び67%であり、図の左上に示されている。
【
図7A】50C1Wストレス後のAMG157の属性がHMWとモノマー種との間でどのように分布するかを示し、統計学的有意性を示すボルケーノプロットを示す。右上隅に示される属性は、50C1WにおけるHMWの形成に相関するAMG157の修飾である。X軸は、HMWとモノマー種との間の倍数変化のlog2値であり、y軸は、統計学的有意性を表すp値の-log10値である。灰色領域は、バックグラウンドノイズと見なされるが、より低い信頼度を有する真値を含み得る。
【
図7B】AMG157 50C1W試料のHMW種及びモノマーにおける20の修飾の割合を示す。これらの20個の修飾には、右上の白いコーナからの統計的に有意な修飾(アスタリスクを有する7個の修飾市場)及び隣接する「統計的有意性に近い灰色領域」からの修飾が含まれる。これらの20個の修飾のそれぞれは、倍数変化及び有意性の比較的高い値を有する。これらの20個の修飾についての倍数変化のp値の-log10及びlog2値の合計は、4.6超であった。
【
図8A】ペプチドマッピングによる異性化レベル測定並びに40℃で4週間ストレスをかけた抗体原薬及び抗体の効力測定を示す。
【
図8B】抗体のCEX-HPLCプロファイルを示す。
【
図8C】ペプチドマッピングによる化学修飾及び相対効力についてのAMG157 40℃4W試料のCEX画分の特性評価の従来の方法の結果を示す。
【
図8D】貯蔵寿命の終わりに近い長期安定性研究の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
テゼペルマブによる治療は、日々の疾患活動を除去し、より多くの患者をステロイド不使用とすることができるか、又は喘息などの炎症性疾患の治療でのステロイドの使用の必要性を減少させることができるとさらに考えられる。
【0040】
特に明記しない限り、本明細書及び特許請求の範囲を含む本出願で使用される以下の用語は、下記の定義を有する。
【0041】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、不定冠詞「1つの(a)」及び「1つの(an)」並びに定冠詞「その」は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、複数及び単数の指示対象を含む。
【0042】
他に定義されない限り、本明細書で使用する全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。以下の参考文献は、本開示で使用される多くの用語の一般的な定義を当業者に提供するが、これらに限定されるものではない:Singleton et al.,DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY(2d Ed.1994);THE CAMBRIDGE DICTIONARY OF SCIENCE AND TECHNOLOGY(Walker Ed.,1988);THE GLOSSARY OF GENETICS,5th Ed.,R.Rieger et al.(Eds.),Springer Verlag(1991);及びHale&Marham,THE HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY(1991)。
【0043】
「約」又は「略」という用語は、当業者によって決定される特定の値に対する許容可能な誤差を意味し、これは、値がどのように測定又は決定されるかに部分的に依存する。特定の実施形態では、「約」又は「略」という用語は、1、2、3又は4標準偏差内であることを意味する。特定の実施形態では、「約」又は「略」という用語は、与えられた数値又は範囲の30%、25%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%又は0.05%内であることを意味する。「約」又は「略」という用語が一連の2つ以上の数値中の第1の数値に先行する場合には常に、「約」又は「略」という用語は、その一連の数値のそれぞれに適用されると理解される。
【0044】
用語「炎症性疾患」は、免疫系が自らの細胞又は組織を攻撃して異常な炎症を起こし、慢性的な痛み、発赤、腫れ、こわばり及び正常な組織の損傷などを引き起こす病状を指す。炎症性疾患としては、例えば、喘息、慢性消化性潰瘍、結核、歯周炎、副鼻腔炎、活動性肝炎、強直性脊椎炎、関節リウマチ、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、クローン病、潰瘍性大腸炎、変形性関節症、アテローム性動脈硬化症、全身性エリテマトーデス、アトピー性皮膚炎、好酸球性食道炎(EoE)、鼻茸、慢性自然発症蕁麻疹、Ig駆動疾患(IgA腎症及びループス腎炎など)、好酸球性胃炎、鼻茸を伴わない慢性副鼻腔炎、特発性肺線維症(IPF)などが挙げられる。例示的な態様では、炎症性疾患は、喘息、アトピー性皮膚炎又はCOPDである。例示的な態様では、炎症性は、喘息であり、いくつかの場合、喘息は、重症喘息、好酸球性喘息、非好酸球性喘息又は低好酸球性喘息である。
【0045】
本明細書では、「喘息」という用語は、アレルギー性、非アレルギー性、好酸球性及び非好酸球性喘息を指す。
【0046】
本明細書では、「アレルギー性喘息」という用語は、1つ以上の吸入したアレルゲンによって誘発される喘息を指す。そのような患者は、喘息反応を誘発する1つ以上のアレルゲンに対して陽性のIgE蛍光酵素免疫アッセイ(FEIA)レベルを有する。ほとんどのアレルギー性喘息は、通常、Th2型炎症に関連する。
【0047】
「非アレルギー性喘息」という用語は、診断時に低好酸球、低Th2又は低IgEを有する患者を指す。「非アレルギー性喘息」を有する患者は、通常、地域に固有のアレルゲンを含むアレルゲンパネルに反応するIgE蛍光酵素免疫アッセイ(FEIA)で陰性である。低IgEに加えて、これらの患者は、多くの場合、診断時、好酸球数が低いか又は全くなく、且つTh2数が低い。
【0048】
本明細書では、「重度の喘息」という用語は、良好な制御を維持するために、高強度の治療(例えば、GINAステップ4及びステップ5)を必要とするか、又は高強度の治療にもかかわらず良好な制御が達成されない喘息を指す(GINA,Global Strategy for Asthma Management and Prevention.Global Initiative for Asthma(GINA)December 2012)。
【0049】
本明細書で使用される「好酸球性喘息」という用語は、スクリーニング血中好酸球数が300細胞/μL以下又は250細胞/μL以下である喘息患者を指し、「低好酸球性」喘息は、250細胞/μL未満の血液又は血清を有する喘息患者を指す。代わりに、「低好酸球性」喘息は、300細胞/μL未満の血液又は血清を有する喘息患者を指す。
【0050】
「Tヘルパー(Th)1サイトカイン」又は「Th1特異的サイトカイン」は、Th1 T細胞によって発現され(細胞内に、且つ/又は分泌される)、IFN-g、TNF-a及びIL-12を含むサイトカインを指す。「Th2サイトカイン」又は「Th2特異的サイトカイン」は、Th2 T細胞によって発現される(細胞内に、且つ/又は分泌される)、IL-4、IL-5、IL-13及びIL-10を含むサイトカインを指す。「Th17サイトカイン」又は「Th17特異的サイトカイン」は、Th17 T細胞によって発現され(細胞内に、且つ/又は分泌される)、IL-17A、IL-17F、IL-22及びIL-21を含むサイトカインを指す。Th17細胞の特定の集団は、本明細書中に列挙したTh17サイトカインに加えてIFN-g及び/又はIL-2を発現する。多機能性CTLサイトカインには、IFN-g、TNF-a、IL-2及びIL-17が含まれる。
【0051】
「特異的に結合する」という用語は「抗原特異的」であり、「特異的」、「選択的結合剤」、「特異的結合剤」、「抗原標的」であるか又は抗原に対して「免疫反応性」があり、類似配列の他の抗原よりも高い親和性で標的抗原に結合する抗体又はポリペプチドを指す。本明細書では、本薬剤は、免疫細胞型、例えば、表面抗原(例えば、T細胞受容体、CD3)、サイトカイン(例えば、TSLP、IL-4、IL-5、IL-13、IL-17、IFN-g、TNF-a)などを同定するのに有用な標的タンパク質に特異的に結合すると考えられる。種々の実施形態では、抗体は、標的抗原に特異的に結合するが、密接に関連する種のオルソログと交差反応することができ、例えば、抗体はヒトタンパク質であり得、密接に関連する霊長類タンパク質にも結合し得る。様々な実施形態では、TLSPに特異的な免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片は、数値的に10-8M以下のKdで結合する。様々な実施形態では、本明細書に記載される抗TSLP抗体は、少なくとも10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、10-12M、10-13M以下の親和性(Kd)で結合する。
【0052】
「抗体」という用語は、それぞれ可変領域及び定常領域を含む、2本の重鎖及び2本の軽鎖からなる四量体糖タンパク質を指す。「重鎖」及び「軽鎖」は、実質的に完全長のカノニカル免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖を指す(例えば、Immunobiology,5th Edition(Janeway and Travers et al.,Eds.,2001)を参照されたい)。抗原結合部分は、組換えDNA技術又は無傷の抗体に酵素的若しくは化学的切断によって生成され得る。
【0053】
抗原結合タンパク質には、カノニカル四量体抗体の構造に構造変化を有し得る抗体、抗体断片及び抗体様タンパク質が含まれる。抗体「バリアント」は、公知の配列を有する親抗体と比較して抗体配列又は機能に構造変化を有し得る抗原結合タンパク質又はその断片を指す。抗体バリアントとしては、定常領域に変化を有するV領域又は代わりに任意選択的に非カノニカル法で、V領域を定常領域に付加することが挙げられる。例としては、多重特異性抗体(例えば、余分なV領域を有する二重特異性抗体)、抗原に結合することができる抗体断片(例えば、Fab’、F’(ab)2、Fv、一本鎖抗体、ダイアボディ)、所望の生物学的活性を示す限り、上記を含むバイパラトピックペプチド及び組換えペプチドが挙げられる。
【0054】
抗体断片には、とりわけ、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、ドメイン抗体(dAb)、相補性決定領域(CDR)断片、CDRグラフト化抗体結合領域、一本鎖抗体(scFv)、一本鎖抗体の断片、キメラ抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、線状抗体;キレート化組換え抗体、トリボディ若しくはバイボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP)、抗原結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、単一ドメイン抗体(ラクダ化抗体を含む)、VHH含有抗体又はこれらの変異体若しくは誘導体並びに抗体が所望の生物学的活性を保持する限り、ポリペプチドに特異的抗原結合を付与するのに十分な免疫グロブリンの少なくとも一部を含むポリペプチド、例えば1、2、3、4、5又は6個のCDR配列を含む抗体の抗原結合部分が含まれる。
【0055】
「結合価」は、エピトープを標的とする各抗体又は抗体断片上の抗原結合部位の数を指す。典型的な完全長IgG分子又はF(ab)2は、2つの同一の標的結合部位を有するという点で「二価」である。単一の抗原結合部位を有するF(ab)’又はscFcなどの「一価」抗体断片。三価又は四価の抗原結合タンパク質は、多価となるように操作することもできる。
【0056】
「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量で存在し得る天然に発生する可能な突然変異を除いて同一である。
【0057】
「TSLP活性を阻害する」という用語は、以下の任意の1つ以上を阻害することを含む:TSLPのその受容体への結合;TSLP存在下のTSLPR発現細胞の増殖、活性化又は分化;TSLP存在下の分極アッセイにおけるTh2サイトカイン産生の阻害;TSLP存在下の樹状細胞の活性化又は成熟;及びTSLP存在下の肥満細胞サイトカインの放出。例えば、米国特許第7982016B2号明細書、カラム6及び実施例8並びに米国特許出願公開第2012/0020988A1号明細書、実施例7~10を参照されたい。
【0058】
「試料」又は「生体試料」という用語は、本方法で使用するために対象から得た標本を指し、尿、全血、血漿、血清、唾液、痰、組織生検、脳脊髄液、インビトロ刺激を伴う末梢血単核細胞、インビトロ刺激を伴わない末梢血単核細胞、インビトロ刺激を伴う腸リンパ組織、インビトロ刺激を伴わない腸リンパ組織、腸洗浄、細気管支肺胞洗浄、鼻洗浄及び誘発痰を含む。
【0059】
「治療する」、「治療すること」及び「治療」という用語は、本明細書に記載の炎症性障害に関連する事象、疾患又は状態の臨床症状、発症又は進行を一時的又は永久的に部分的又は完全に排除、減少、抑制又は改善することを指す。関連分野で認識されているように、治療剤として使用される薬物は、所与の病状の重症度を低下させ得るが、有用な治療薬と見なされるために、疾患のあらゆる症状を消失させる必要はない。同様に、予防的に投与される治療は、存続可能な予防剤を構成するために、状態の発症を予防するのに完全に有効である必要はない。単に、疾患の影響を軽減すること(例えば、その症状の数又は重症度を軽減するか、又は別の処置の有効性を増大させるか、又は別の有益な効果を生じさせることにより)又は疾患が対象において発症するか若しくは悪化する可能性を低下させることで十分である。本発明の一実施形態は、特定の障害の重症度を反映する指標の、ベースラインを超える持続的改善を誘導するのに十分な量及び時間で、患者に治療薬を投与することを含む、治療の有効性を決定するための方法に関する。
【0060】
「治療有効量」という用語は、疾患又は障害に関連する疾患の症状又は兆候を改善又は軽減するのに有効な治療薬の量を指す。
【0061】
TSLP
胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)は、炎症誘発刺激に応答して産生され、主に樹状細胞(Gilliet,J Exp Med.197:1059-1067,2003;Soumelis,Nat Immunol.3:673-680,2002;Reche,J Immunol.167:336-343,2001),mast cells(Allakhverdi,J Exp Med.204:253-258,2007)and CD34+progenitor cells(Swedin et al.Pharmacol Ther 2017;169:13-34)。TSLPは、インターロイキン(IL)-7受容体アルファ(IL-7Rα)鎖及び一般的なγ鎖様受容体(TSLPR)からなるヘテロダイマー受容体を介してシグナル伝達する(Pandey,Nat Immunol.1:59-64,2000;Park,J Exp Med.192:659-669,2000)。
【0062】
ヒトTSLP mRNA(Brightling et al.,J Allergy Clin Immunol 2008;121:5-10;quiz 1-2;Ortega et al.N Engl J Med 2014;371:1198-207)及びタンパク質レベル(前出のOrtega et al.)は、対照と比較して喘息個体の気道で増加し、この発現の大きさは疾患重症度と相関する(前出のBrightling et al.)。最近の研究は、ヒトTSLP遺伝子座における一塩基多型と、喘息、アトピー性喘息及び気道過敏症からの保護との関連を実証しており、これはTSLP遺伝子発現の差次的調節が疾患感受性に影響を及ぼし得ることを示唆している(Ortega et al.N Engl J Med 2014;371:1198-207;To et al.BMC Public Health 2012;12:204)。これらのデータは、TSLPを標的とすることで、喘息に関与する複数の生物学的経路を阻害し得ることを示唆している。
【0063】
TSLPの初期の非臨床研究では、TSLPが気道上皮細胞又は間質細胞から解放された後、それが肥満細胞、樹状細胞及びT細胞を活性化してTh2サイトカイン(例えば、IL-4/13/5)を放出すると示唆されていた。最近発表されたヒトデータでは、重度の喘息において、組織TSLP遺伝子と、タンパク質発現、Th2遺伝子シグネチャスコア及び組織好酸球との間に良好な相関が示された。したがって、抗TSLP標的療法は、Th2型炎症を有する喘息患者に有効であり得る(Shikotra et al,J Allergy Clin Immunol.129(1):104-11,2012)。
【0064】
他の研究からのデータでは、TSLPは気道平滑筋と肥満細胞との間のクロストークなどのTh2非依存経路を介して気道炎症を促進し得ることが示唆されている(Allakhverdi et al,J Allergy Clin Immunol.123(4):958-60,2009;Shikotra et al.,上掲)。TSLPは、T細胞の誘導も促進して、Th-17-サイトカイン産生細胞に分化させ、その結果、より重度の喘息で一般的に見られる好中球性炎症を増加させ得る(Tanaka et al,Clin Exp Allergy.39(1):89-100,2009)。これらのデータ及び他の新たな証拠は、TSLPを遮断することが、限定されないが、Th2サイトカイン(IL-4/13/5)を含むものを含む複数の生物学的経路を抑制するのに役立ち得ることを示唆する。
【0065】
抗体
TSLPに特異的な抗体又は抗体バリアント又は抗原結合タンパク質は、重度の喘息、好酸球性喘息、非好酸球性/低好酸球性及び本明細書に記載の他の形態の喘息を含む喘息、アトピー性皮膚炎及びCOPDの治療において有用であると考えられる。
【0066】
標的抗原、例えばTSLPに結合する抗体及び抗体変異体又は断片などの特異的結合剤は、本発明の方法において有用である。一実施形態では、特異的結合剤は抗体である。抗体は、モノクローナル(MAb);組換え;キメラ;相補性決定領域(CDR)グラフト化などのヒト化;ヒト;単鎖を含む抗体変異体;及び/又は二重特異性;並びにそれらの断片;変異体;又は誘導体であり得る。抗体断片は、目的のポリペプチド上のエピトープに結合する抗体のそうした部分を含む。このような断片の例としては、完全長抗体の酵素的切断によって生成されたFab及びF(ab’)断片が挙げられる。他の結合断片としては、抗体可変領域をコードする核酸配列を含む組換えプラスミドの発現などの、組換えDNA手法によって生成される断片が挙げられる。
【0067】
モノクローナル抗体は、治療薬又は診断薬として使用するために修飾され得る。一実施形態は、重鎖(H)及び/又は軽鎖(L)の一部が特定の種に由来するか、又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一であるか、又は相同であり、鎖の残りは、別の種に由来するか、又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一であるか、又は相同である「キメラ」抗体である。所望の生物学的活性を示す限り、そのような抗体の断片も含まれる。米国特許第4,816,567号明細書;Morrison et al.,1985,Proc.Natl.Acad.Sci.81:6851-55を参照されたい。
【0068】
別の実施形態では、モノクローナル抗体は、「ヒト化」抗体である。非ヒト抗体をヒト化するための方法は、当技術分野でよく知られている。米国特許第5,585,089号明細書及び同第5,693,762号明細書を参照されたい。一般的に、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源から導入された1つ以上のアミノ酸残基を有する。ヒト化は、例えば、齧歯動物の相補性決定領域の少なくとも一部をヒト抗体の対応する領域に置換することにより、当技術分野で記述されている方法を使用して(Jones et al.,1986,Nature 321:522-25;Riechmann et al.,1998,Nature 332:323-27;Verhoeyen et al.,1988,Science 239:1534-36)実施することができる。
【0069】
TSLPに結合するヒト抗体バリアント(抗体断片を含む)も本発明に包含される。内因性免疫グロブリンを産生せずにヒト抗体のレパートリーを産生できる遺伝子導入動物(例えば、マウス)を使用して、そのような抗体は、任意選択的に担体に結合体化されたポリペプチド抗原(すなわち少なくとも6つの連続するアミノ酸を有する)による免疫化によって産生される。例えば、Jakobovits et al.,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.90:2551-55;Jakobovits et al.,1993,Nature 362:255-58;Bruggermann et al.,1993,Year in Immuno.7:33を参照されたい。PCT出願PCT/米国特許第96/05928号明細書及びPCT/米国特許第93/06926号明細書も参照されたい。さらなる方法は、米国特許第5,545,807号明細書、PCT出願PCT/米国特許出願公開第91/245号明細書及びPCT/英国特許出願公開第89/01207号明細書並びに欧州特許第546073B1号明細書及び欧州特許出願公開第546073A1号明細書に記載されている。ヒト抗体は、宿主細胞中で組換えDNAの発現又は本明細書に記載のハイブリドーマ細胞中での発現によって産生することもできる。
【0070】
キメラ、CDRグラフト化及びヒト化抗体並びに/又は抗体変異体は、通常、組換え法によって生成される。抗体をコードする核酸を宿主細胞に導入し、本明細書に記載の材料及び手順を用いて発現させる。好ましい実施形態では、抗体は、CHO細胞などの哺乳動物宿主細胞中で産生される。モノクローナル(例えば、ヒト)抗体は、宿主細胞中で組換えDNAの発現又は本明細書に記載のハイブリドーマ細胞中での発現によって産生し得る。
【0071】
抗TSLP抗体テゼペルマブは、米国特許第7,982,016号明細書及び米国特許出願公開第15/951,602号明細書に記載されている。ストレスを受けた貯蔵条件下、例えば40℃で4週間(40C4W)又は50℃で1週間(50C1W)では、テゼペルマブ抗体上の残基は、抗体安定性に有害な異性化、脱アミド又は酸化などの変化を受けることが本明細書で発見された。抗TSLP抗体テゼペルマブCDR(配列番号3~8)又は可変領域(配列番号10及び12)の安定性低下の原因として同定された残基には、CDRH1 M34、CDRH2 W52、CDRH2 D54、CDRH2 N57、CDRH2 D62、CDRH3 W102、FRH1 N25、FRH1 N26、CDRL2 D49、CDRL2 D50、FRL2 N65、CDRL3 W90、CDRL3 D91、CDRL3 S92、S93、S94、CDRL3 D95が含まれる。テゼペルマブ中の残基の番号付けは、それぞれ配列番号10及び12に記載の重鎖及び軽鎖配列に基づく。
【0072】
本方法において有用な抗TSLP抗原結合タンパク質(その断片を含む)は、抗TSLP抗体であって、a.軽鎖可変ドメインであり:i.配列番号3で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1配列;ii.配列番号4で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2配列;iii.配列番号5で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3配列を含む軽鎖可変ドメイン、並びにb.重鎖可変ドメインであり:i.配列番号6で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1配列;ii.配列番号7で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2配列;及びiii.配列番号8で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3配列を含む重鎖可変ドメインを含む抗体を含み、抗体又は抗体バリアントは、配列番号2のアミノ酸29~159で示されるTSLPポリペプチドに特異的に結合する。
【0073】
抗体又は抗体バリアントも企図され、抗体又は抗体バリアントは、a.軽鎖可変ドメインであって、以下からなる群:i.配列番号12に対して少なくとも80%同一のアミノ酸の配列;ii.配列番号11に対して少なくとも80%同一のポリヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸の配列;iii.配列番号11からなるポリヌクレオチドの相補体に中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸の配列から選択される軽鎖可変ドメイン;並びにb.重鎖可変ドメインであり、以下からなる群:i.配列番号10に対して少なくとも80%同一のアミノ酸配列;ii.配列番号9に対して少なくとも80%同一のポリヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸の配列;iii.配列番号9からなるポリヌクレオチドの相補体と中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列から選択される重鎖可変ドメイン;又はc.(a)の軽鎖可変ドメイン及び(b)の重鎖可変ドメインを含み、抗体又は抗体バリアントは、配列番号2のアミノ酸29~159で示されるTSLPポリペプチドに特異的に結合する。
【0074】
テゼペルマブは、例示的な抗TSLP抗体であり、a.i.配列番号3で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1配列;ii.配列番号4で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2配列;iii.配列番号5で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3配列を含む軽鎖可変ドメイン、並びにb.i.配列番号6で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1配列;ii.配列番号7で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2配列、及びiii.配列番号8で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3配列を含む重鎖可変ドメインを含む。
【0075】
テゼペルマブは、配列番号11で示されるポリヌクレオチド配列によってコードされる、配列番号12で示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン;及び配列番号9で示されるポリヌクレオチド配列によってコードされる、配列番号10で示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインも含む。
【0076】
テゼペルマブは、IgG2抗体である。IgG2鎖を含むテゼペルマブの完全長重鎖及び軽鎖の配列は、それぞれ配列番号37及び38に記載されている。
【0077】
種々の実施形態では、抗TSLP抗体又はその抗体変異体は、二価であり、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、組換え抗体、抗原結合抗体断片、一本鎖抗体、単量体抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、Fab断片、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体及びIgG4抗体からなる群から選択される。
【0078】
種々の実施形態では、抗TSLP抗体変異体は、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、Fab断片、単一ドメイン抗体、scFvからなる群から選択され、その用量は結合部位が二価抗体によって投与される場合と等モルであるように調節される。
【0079】
抗体又は抗体変異体は、IgG2抗体であると考えられる。ヒトIgG2定常領域の例示的な配列は、UniprotデータベースからUniprot番号P01859として入手可能であり、参照により本明細書に組み込まれる。他の抗体の重鎖及び軽鎖の定常領域に関する配列情報を含む情報は、Uniprotデータベースを介して並びに抗体工学及び産生の分野の技術者によく知られた他のデータベースを介して公に利用可能でもある。
【0080】
特定の実施形態では、抗体の誘導体は、親ポリペプチドのアミノ酸配列と比較してグリコシル化部位の数及び/又はタイプが変化した、四量体型のグリコシル化抗体を含む。ある特定の実施形態では、バリアントは、天然タンパク質よりも数が多い又は少ないN結合グリコシル化部位を含む。代わりに、この配列を削除する置換によって既存のN結合糖鎖が除去される。また、1つ以上のN結合グリコシル化部位(典型的には天然に存在するもの)が削除されて、1つ以上の新しいN結合部位が生成される、N結合糖鎖の再配置がもたらされる。さらなる好ましい抗体変異体には、親アミノ酸配列と比較して、1つ以上のシステイン残基が別のアミノ酸(例えば、セリン)から削除されているか、又は別のアミノ酸(例えば、セリン)に置換されているシステイン変異体が含まれる。システイン変異体は、不溶性封入体の単離後など、抗体が生物学的に活性な立体構造に再折り畳みしなければならない場合に有用であり得る。システインバリアントは一般に、天然タンパク質よりも少ないシステイン残基を有し、典型的には不対システインから生じる相互作用を最小限に抑えるために偶数個のシステイン残基を有する。
【0081】
所望のアミノ酸置換(保存的であるか又は非保存的であるかにかかわらず)は、そのような置換を所望する時点で当業者が決定し得る。特定の実施形態では、アミノ酸置換は、ヒトTSLPに対する抗体の重要な残基を同定するか、又は本明細書に記載のヒトTSLPに対する抗体の親和性を増加又は減少させるために使用することができる。
【0082】
特定の実施形態によれば、好ましいアミノ酸置換は、(1)タンパク質分解に対する感受性を低下させ、(2)酸化に対する感受性を低下させ、(3)結合親和性を変化させ、(4)高分子量(HMW)種の形成を阻害し、且つ/又は(5)そのようなポリペプチドに他の物理化学的又は機能的特性を付与又は修飾する。特定の実施形態によれば、単一又は複数のアミノ酸置換(ある特定の実施形態では保存的アミノ酸置換)は、天然の配列(ある特定の実施形態では、分子間接触を形成するドメインの外側のポリペプチドの部分)において行われ得る。特定の実施形態では、保存的アミノ酸置換は、典型的には、親配列の構造的特徴を実質的に変化させ得ない(例えば、置換アミノ酸により、親配列中に存在するヘリックスが破壊されるか、又は親配列を特徴付ける他のタイプの二次構造が破壊される傾向があるべきではない)。当業者に認識されるポリペプチドの二次構造及び三次構造の例は、Proteins,Structures and Molecular Principles(Creighton,Ed.,W.H.Freeman and Company,New York(1984));Introduction to Protein Structure(C.Branden and J.Tooze,eds.,Garland Publishing,New York,N.Y.(1991));及びThornton et al.Nature 354:105(1991)に記載があり、それぞれが参照により本明細書中に組み込まれる。
【0083】
安定性及びタンパク質結合に寄与する属性の同定
タンパク質の結合及び活性に寄与する属性を決定するために、本明細書に記載の抗TSLP抗原結合タンパク質は、その構造の変化、例えば治療用タンパク質のアミノ酸の構造の変化をもたらし、治療用タンパク質の種の形成をもたらす状態に置かれる。例示的な態様では、アミノ酸の変化した構造は、「属性」と呼ばれ、その化学的同一性又は属性型及び抗原結合タンパク質のアミノ酸配列内の位置(例えば、その属性が存在するアミノ酸の位置)に関して特徴付けられ得る。例えば、アスパラギン残基及びグルタミン残基は、脱アミド化に対する感受性を示す。タンパク質のアミノ酸配列の10位の脱アミド化アスパラギンは、属性の一例である。特定のアミノ酸の例示的な属性型の一覧を表Aに示す。したがって、本明細書で使用される「構造」は、表Aに列挙した属性型又は表Aに列挙した2つ以上の属性型の組合せを含み得るか、実質的にそれから構成され得るか又はそれから構成され得る。属性は、構造の例であり、特に明記しない限り、本明細書で「構造」に言及する場合には常に、構造の例として属性が企図されることが理解されるであろう。例えば、高分子量種(HMW)及び断片も属性の例である。
【0084】
【0085】
免疫グロブリン又はその断片として、抗体又は抗原結合タンパク質は複数のアミノ酸を含み、本明細書に記載の抗体又は抗原結合タンパク質は、2つ以上の属性(例えば、変更された構造を有する2つ以上のアミノ酸)を有し得、その属性プロファイルに関して記載され得る。本明細書で使用される場合、用語「属性プロファイル」は、抗原結合タンパク質の属性の一覧を指す。様々な例において、属性プロファイルは、任意選択的に、治療用タンパク質の天然構造に対して化学的同一性又は属性型、例えば脱アミドを提供する。様々な例において、属性プロファイルは、属性の位置、例えば属性が存在するアミノ酸の位置を提供する。いくつかの態様における属性プロファイルは、抗原結合タンパク質に存在する全ての属性の説明を提供する。他の態様では、属性プロファイルは、タンパク質に存在する一部の属性の説明を提供する。例えば、属性プロファイルは、タンパク質の特定の部分、例えば定常領域、可変領域、CDRに存在する属性のみを提供し得る。抗体又は抗原結合タンパク質などの治療用タンパク質の種は、タンパク質上に存在する属性によって特徴付けられる。標的結合タンパク質の種は、異なる属性プロファイルを有することにより、同じタンパク質の別の種と異なり得る。2つの治療用タンパク質が異なる属性プロファイルを有する場合、これらの治療用タンパク質は、治療用タンパク質の2つの異なる種を表す。2つの治療用タンパク質が同一の属性プロファイルを有する場合、これらの治療用タンパク質は、治療用タンパク質の同じ種と見なされる。
【0086】
様々な例において、免疫グロブリン、抗体又は抗原結合タンパク質は、その構造の変化、例えば1つ以上の属性の形成をもたらす状態に置かれ、構造の変化は、その標的に対する治療用タンパク質の親和性を変化させる。様々な態様において、免疫グロブリン、抗体又は抗原結合タンパク質は、その構造の変化、例えば1つ以上の属性の形成をもたらす状態に置かれ、構造の変化は、その標的に対する抗原結合タンパク質の親和性を低下させる。いくつかの態様における低下した親和性は、免疫グロブリン、抗体又は抗原結合タンパク質が標的と相互作用する(例えば、結合する)能力の部分的又は全体的な喪失をもたらす。様々な例では、免疫グロブリン、抗体又は抗原結合タンパク質が標的と相互作用する(例えば、結合する)能力の部分的又は全体的な喪失は、最終的に抗原結合タンパク質の有効性を低下させる。代替的な例では、免疫グロブリン、抗体又は抗原結合タンパク質は、その構造の変化、例えば1つ以上の属性の形成をもたらす状態に置かれ、構造の変化は、その標的に対する免疫グロブリン、抗体又は抗原結合タンパク質の親和性を変化させない。種々の態様において、構造の変化は、その標的に対するタンパク質の親和性を低下させない。いかなる特定の理論にも束縛されないが、本開示の方法は、免疫グロブリン、抗体又は抗原結合タンパク質と標的との間の相互作用に影響を及ぼす免疫グロブリン、抗体又は抗原結合タンパク質の属性を、相互作用に影響を及ぼさない属性から精密且つ正確に好都合に区別する。
【0087】
様々な態様では、本明細書の組成物は、免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片の種の集団を含む。様々な例では、集団は、免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片の均一な集団であり、任意選択的に、組成物試料中に存在する各タンパク質は同じ種である。様々な例において、集団は、本明細書に記載の属性を有する免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片の少なくとも2つの異なる種を含む不均一な集団である。様々な態様では、不均一集団は、免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片の少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ又はそれを超える異なる種を含む。任意選択的に、異種集団は、タンパク質の7つを超える、8つを超える、9つを超える、10を超える、20を超える、30を超える、40を超える、50を超える異なる種を含む。いくつかの態様では、集団の各種は、固有の属性プロファイルを有する。例示的な例では、免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片の種が、組成物中に存在する唯一のタンパク質である。いくつかの態様では、組成物は、(i)集団免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片、及び(ii)薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤又はその組合せを含む。いくつかの実施形態では、不均一集団の免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片の少なくとも80%、85%、90%、95%又は99%が、本明細書に記載の属性を含む。いくつかの実施形態では、不均一集団の免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片の20%、15%、10%、5%又は1%以下が、本明細書に記載の属性を含む。
【0088】
例示的態様において、本方法は、免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片試料にストレスを印加することを含む。様々な場合、ストレスは、免疫グロブリンのアミノ酸、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片若しくは標的の構造の少なくとも1つの変化をもたらす任意の状態であり得、例えば、ストレスは、免疫グロブリンのアミノ酸、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片若しくは標的において少なくとも1つの属性の形成をもたらす任意の状態であり得る。任意選択的に、ストレスは、免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片若しくは標的の2つ以上のアミノ酸の構造の変化をもたらし、例えば、ストレスは、形成又は2つ以上の属性(例えば、少なくとも若しくは約2、少なくとも若しくは約3、少なくとも若しくは約4、少なくとも若しくは約5、少なくとも若しくは約6、少なくとも若しくは約7、少なくとも若しくは約8、少なくとも若しくは約9、少なくとも若しくは約10又はそれを超える属性)をもたらす。様々な例におけるストレスは、ストレスの印加前に免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片若しくは標的に存在しない1つ以上の属性の形成をもたらす。したがって、いくつかの態様では、ストレスの印加は、ストレスの印加前に試料中に存在しなかった免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片若しくは標的の種の形成をもたらす。
【0089】
例示的な態様では、ストレスは、任意選択的に、1つ以上の緩衝剤又は製剤中における、例えば25℃、40℃、50℃の高い温度への暴露である。例示的な例では、このような高温への暴露は、加速ストレスプログラムを模倣する。
【0090】
任意選択的に、ストレスは、免疫グロブリン、抗体又は抗原結合タンパク質と標的との間で形成された複合体の約5%~約30%、約10%~約30%、約15%~約30%、約20%~約30%、約25%~約30%、約5%~約25%、約5%~約20%、約5%~約15%又は約5%~約10%を分解又は解離させる。様々な態様では、ストレスは、免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片とその標的との間の相互作用レベルの低下を引き起こす。いくつかの態様では、ストレスは、ストレスのない対応する条件における相互作用と比較して、相互作用を約10%~約50%(例えば、約10%~約45%、約10%~約40%、約10%~約35%、約10%~約30%、約10%~約25%、約10%~約20%、約10%~約15%、約10%~約40%、約10%~約35%、約10%~約30%、約10%~約25%、約10%~約20%又は約10%~約15%)減少させる。いくつかの態様では、ストレスは、抗体又は抗原結合タンパクのその標的に対するKDを増加させ、このKDは、より弱い結合に関連する。いくつかの態様では、ストレスは、非結合抗体又は抗原結合タンパク質の量を10%~約50%(例えば、約10%~約45%、約10%~約40%、約10%~約35%、約10%~約30%、約10%~約25%、約10%~約20%、約10%~約15%、約10%~約40%、約10%~約35%、約10%~約30%、約10%~約25%、約10%~約20%又は約10%~約15%)増加させる。特定の理論に束縛されるものではないが、本明細書に開示される方法において加えられるストレスは、製造中、貯蔵中及びヒト循環(ヒト対象における静脈内空間又は皮下空間)において作製され得る種の検出を増強させるための豊富且つ多様な種を得る抗体又は抗原結合タンパク質種のより迅速且つより強固で再現可能な方法での生成をもたらす。
【0091】
分離
例示的態様において、本開示の方法は、異なる種の抗原を含む混合物を少なくとも2つの画分に分離することを含む。いくつかの態様では、混合物を複数(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上)の画分に分離する。いくつかの態様では、本明細書中に開示される方法の分離工程は、抗原結合タンパク質及びその標的の天然のフォールディング、高次構造及び結合能力を保存する。様々な態様では、混合物は、非結合抗体又は抗原結合タンパク質又は標的を含む非結合画分と、抗体/抗原結合タンパク質-標的複合体を含む結合画分とに分離される。
【0092】
混合物を画分に分離する好適な方法及び技術は、当技術分野で知られている。例えば、Coskun,North Clin Istanb 3(2):156-160(2016);Snyder et al.,Practical HPLC Method Development,2nd ed.,John Wiley&Sons,Inc.1997;Snyder et al.,Introduction to Modern Liquid Chromatography,John Wiley&Sons,Inc.,Hoboken,NJ,2010;Heftmann,Chromatography:Fundamentals and applications of chromatography and related differential migration methods,6thed.,Volume69A,Elsevier,Amsterdam,Netherlands,2004;Mori and Barth,Size Exclusion Chromatography,Springer-Verlag,Berlin,1999を参照されたい。いくつかの態様では、分離は、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、キャピラリー等電点電気泳動(cIEF)及び/又はキャピラリーゾーン電気泳動(CZE)など、電荷に基づくか、又は例えば逆相(RP;例えば、RP-HPLC)及び疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC-HPLC)など、疎水性に基づく。種々の態様では、分離は、例えば、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC;例えば、SE-HPLC)、ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)、ドデシル硫酸ナトリウムを用いるキャピラリー電気泳動(CE-SDS)など、サイズに基づく。本明細書に記載の方法は、Met又はTrp残基の生成物酸化、断片化/クリッピング、Aspの異性化、脱アミド化、N末端でのピログルタミン酸の形成を検出するために使用される。種々の実施形態において、混合物は、サイズ、電荷、疎水性、捕捉分子に対する親和性又はそれらの組合せに基づいて混合物の成分を分離する技術を使用して少なくとも2つの画分に分離される。種々の例において、この技術は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、アフィニティクロマトグラフィー、ビーズ若しくは細胞を使用する沈殿、フリーフロー分画(FFF)、イオン交換クロマトグラフィー(IEX)、陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)又は超遠心分離(UC)である。任意選択的に、混合物は、サイズに基づいて混合物の成分を分離する技術を使用して少なくとも2つの画分に分離され、任意選択的に、この技術は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)である。
【0093】
種々の態様では、混合物は、固体支持体、任意選択的にビーズ又は細胞に結合された捕捉分子に対する親和性に基づいて混合物の成分を分離する技術を使用して少なくとも2つの画分に分離される。種々の例において、混合物は、(i)捕捉分子に結合されたビーズ又は細胞であって、その表面において捕捉分子を発現する細胞を含む容器、例えばチューブに混合物を加え、(ii)容器(例えば、チューブ)を遠心分離にかけて上清及びペレットを得、(iii)ペレットから上清を回収して非結合画分を得、(iv)ペレットから結合画分を溶液で放出させ、(v)ペレット及び溶液を含む容器(例えば、チューブ)を遠心分離にかけて、結合画分を含む第2の上清及びビーズ又は細胞を含む第2のペレットを得、及び(vi)第2の上清を回収して結合画分を得ることによって分離される。いくつかの態様では、混合物は、(i)捕捉分子に結合されたビーズを含む混合物をカラムに加えて、フロースルー及び結合画分を得、(ii)フロースルーを回収して非結合画分を得、(iii)ビーズから結合画分を溶液で放出させ、且つ結合画分を含む溶液を回収することによって分離される。好適な固体支持体としては、例えば、任意選択的にセルロース、シリカ、アルミナ、ガラス、プラスチック又はこれらの組合せから作製されたビーズ、樹脂、紙が挙げられる。例示的な態様では、固体支持体に結合された捕捉分子は、タンパク質である。捕捉分子は、標的と同一であり得る。有利には、捕捉分子は、特定の分子に限定されない。
【0094】
抗原結合タンパク質と標的との間の相互作用に影響を及ぼす免疫グロブリン、抗原結合タンパク質又は標的の属性を同定する方法の様々な実施形態では、非結合画分及び結合画分のそれぞれについて、方法は、抗原結合タンパク質又は標的の種に存在する各属性の存在量を同定及び定量することを含み、非結合画分中の属性の存在量が結合画分中の属性の存在量よりも大きい場合、属性は抗原結合タンパク質と標的との間の相互作用に悪影響を及ぼす。種々の態様において、方法は、質量分析計を使用して、非結合画分及び結合画分のそれぞれにおける抗原結合タンパク質又は標的の種の各属性の存在量を特定及び定量する工程を含む。
【0095】
抗原結合タンパク質又は標的の種に存在する公知の属性が抗原結合タンパク質と標的との間の相互作用に及ぼす影響を決定する方法の様々な実施形態において、方法は、非結合画分及び結合画分のそれぞれについて、公知の属性の存在量を定量化することを含み、非結合画分中の公知の属性の存在量が結合画分中の公知の属性の存在量よりも大きい場合、公知の属性は、抗原結合タンパク質と標的との間の相互作用に悪影響を及ぼす。種々の態様において、この方法は、質量分析計を使用して、非結合画分及び結合画分のそれぞれにおける既知の属性の存在量を定量する工程を含む。
【0096】
安定性は、アミノ酸残基の化学修飾及び生物物理学的タンパク質修飾、例えば、製造、貯蔵及び/又は追加の若しくは代替のストレス条件中に起こり得るストレス条件中のHMW種の形成に対する耐性を指す。本明細書に記載される実施形態の方法及び免疫グロブリン、抗原結合タンパク質及びそれらの断片について、「安定性」及び/又は「HMW」種は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を使用して決定し得る。免疫グロブリン、抗原結合タンパク質又は断片を含む組成物は、SEC-UVなどのSECによって分離し得る。SECは、100mMリン酸ナトリウム及び250mM NaClを含む移動相(pH6.8)を使用し得、流速は、0.5ml/分に設定され得、カラム温度は、37℃に設定され得、実行時間は、35分であり得、オートサンプラーは、4℃に設定され得る。SECに適したカラムの例には、ジオール官能基を含み、平均直径が5μmであり、平均孔径が約25nM(例えば、TOSOH BioscienceからG3000SWxlカラムとして市販されている)のシリカ粒子を含むゲルカラムが含まれる。SEC-UVの場合、紫外/可視分光法(UV/VIS)検出は、214nm及び280nmで実行することができる。分離後、モノマー及びHMW種を表すピークは、SEC溶出プロファイルの異なる時間に溶出することができることが理解されるであろう。
【0097】
安定性の測定の場合、SEC分析のための組成物は、ストレス負荷された免疫グロブリン、抗原結合タンパク質又は断片を含み得、これらは、高温で一定期間、例えば40℃で4週間ストレス負荷され得る。40℃で4週間は、一般的に、免疫グロブリン、抗原結合タンパク質及びその断片(貯蔵寿命安定性は、典型的には、2~8℃で2年(2Y4C)、その後、地理的位置に応じて25℃又は30℃である室温で1ヶ月である)の貯蔵寿命安定性に十分に外挿されることに留意されたい。追加的又は代替的に、紫外光(25℃で7日間、klux/hr冷却白色光及び10W/m2UVA光)、極端なpH(pH8以上又は3.6以下)又は酸化試薬(例えば、0.1%H2O2、25℃で5時間)をストレス源として使用し得る。本明細書で別段の記載がない限り又は科学的文脈により別段の必要がない限り、「安定性」の目的のためのストレスは、40℃で4週間を指すと理解される。ストレス要因及びSEC分析に関する追加の情報は、例えば参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開第2020/247790号パンフレットに見出すことができる。
【0098】
SEC分析に続いて、ペプチドマッピングを任意選択的に行うことができ、結合種及び非結合種に関連するペプチド修飾を、例えば本明細書及び/又は国際公開国際公開第2020/247790号パンフレットに記載されているように特定し得る。ペプチドマッピングのために、溶出画分を、分子量カットオフ(例えば、10kDa超)を有するフィルターを用いて回収し、7.5Mグアニジン溶出緩衝液で溶出し得る。抗原への結合に影響を及ぼす化学修飾を決定するために、ストレス負荷された免疫グロブリン(又は抗原結合タンパク質若しくはその断片)及び抗原を一緒に混合し、抗原結合複合体を先に溶出し、非結合免疫グロブリン(又は抗原結合タンパク質若しくはその断片)を後に溶出する際に分離することができる。HMWに影響を与えるか又はHMWと相関する化学修飾を決定するために、モノマー種及びHMW種を収集することができる。記載された研究では、40℃で1ヶ月間(40C1M)の熱的強制ストレス及び関連する抗体の分解を使用した。ストレス負荷した抗体をその標的(TSLP)と混合し、混合物を抗体-標的複合体及び非結合抗体についてSECによって分離した。この適用されるSEC抗体-抗原法の2つの制限に留意すべきである。40C1Mストレスは、25C又は30Cでの室温劣化と比較してより大きい劣化をもたらし得る。また、ある残基の分解/修飾は、別の残基の修飾を長距離のアロステリック相互作用によって引き起こされ得る。この効果は、構造が動的運動により適しているため、より高い温度で増加し得る。また、記載されたSEC抗原抗体法は、試料中の全ての種を分析する。これは、個々のピークでのCEX分離、それに続く特性評価を含む従来の方法と異なり、収集された種がより明確に定義され、1分子あたり2つ以上の修飾を有する「主ピーク間」の種が回避される。
【0099】
「親和性」又は「結合」は、表面プラズモン共鳴(SPR)、バイオレイヤー干渉法又は本明細書に記載のSEC結合親和性実験によっても決定し得ることが理解されるであろう。本明細書で別段の記載がない限り又は科学的文脈によってそうでないことが必要とされない限り、「親和性」は、SPRによって測定される親和性を指すと理解される。Kd値は、BIAcore(登録商標)システムなどのバイオセンサシステムを使用してSPRによって測定することができる。BIAcore(登録商標)システムによる分析は、表面に固定化分子(例えば、本明細書中に記載されるような抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質又はその断片)を有するチップからの抗原(例えば、TSLP)の結合及び解離を分析することを含み得る。10-6M未満の結合複合体は、SPRを用いて検出することができる。様々な実施形態では、SPRは、20℃、25℃、30℃又は37℃で行われ得る。
【0100】
組成物
様々な実施形態では、配列番号3で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1配列;配列番号4で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2配列;配列番号5で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3配列;配列番号6で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1配列;配列番号7で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2配列;及び配列番号8で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3配列をそれぞれ含む複数の抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片を含む組成物が提供され、イソアスパラギン酸(isoAsp)も環状アスパラギン酸(cAsp)も含まない、配列番号7のHC位置54のL-アスパラギン酸;配列番号8の非酸化HC W102;isoAspもcAspも含まない、配列番号7のLC位置49又は50にあるL-アスパラギン酸;脱アミド化N65を含まない、配列番号12で示されるLC N65;又はisoAspもcAspも含まない、配列番号5のLC位置91のL-アスパラギン酸の少なくとも1つを含む。
【0101】
様々な実施形態では、複数の抗TSLPモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を含む組成物が提供され、複数の抗TSLPモノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、配列番号3で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1配列;配列番号4で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2配列;配列番号5で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3配列;配列番号6で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1配列;配列番号7で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2配列;及び配列番号8で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3配列をそれぞれ含み;イソアスパラギン酸(isoAsp)も環状アスパラギン酸(cAsp)も含まない、配列番号7のHC位置54のL-アスパラギン酸;配列番号8の非酸化HC W102;isoAspもcAspも含まない、配列番号4のLC位置49又は50にあるL-アスパラギン酸;配列番号12の脱アミド化LC N65;又はisoAspもcAspも含まない、配列番号5のLC位置91のL-アスパラギン酸の少なくとも1つを含む。
【0102】
様々な実施形態では、0.9%以下の抗TSLPモノクローナル抗体が異性化HC D54を含む。様々な実施形態では、2%以下の抗TSLPモノクローナル抗体が酸化HC W102を含む。様々な実施形態では、0.9%以下の抗TSLPモノクローナル抗体が異性化LC D50を含む。様々な実施形態では、0.5%以下の抗TSLPモノクローナル抗体が脱アミド化LC N65を含む。様々な実施形態では、0.9%以下の抗TSLPモノクローナル抗体が異性化HC D91を含む。様々な実施形態では、抗TSLP抗体は、HC54のL-アスパラギン酸とLC 49又は50のL-アスパラギン酸との組合せを含む。様々な実施形態では、抗TSLP抗体は、HC54のL-アスパラギン酸において、isoAspのレベルよりも少なくとも6倍濃縮される。種々の実施形態では、抗TSLP抗体は、IgG2抗体である。
【0103】
一態様では、組成物は、抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片を含み、これは、(A)軽鎖可変ドメインであって、(i)配列番号3で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1配列、(ii)配列番号4で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2配列、及び(iii)配列番号5で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3配列を含む軽鎖可変ドメイン、並びに(B)重鎖可変ドメインであって、(i)配列番号6で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1配列;(ii)配列番号7で示される以下の残基D54又はG55の少なくとも1つに変異を有するアミノ酸配列を含む重鎖CDR2配列、及び(iii)配列番号8で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3配列を含む重鎖可変ドメインを含む。様々な実施形態では、HCDR2は、配列VIWYX1X2SNKHYADSVKG(ここで、X1は、D又はEであり、及びX2は、G又はAである)(配列番号13)を有する。任意選択的に、HCDR2は、以下の配列を有する:VIWYEGSNKHYADSVKG(配列番号14)、VIWYDASNKHYADSVKG(配列番号15)又はVIWYEASNKHYADSVKG(配列番号16)。
【0104】
様々な実施形態において、HCDR2における変異は、D54Eである。様々な実施形態において、HCDR2における変異は、G55Aである。様々な実施形態では、抗TSLP抗原結合タンパク質又はその断片は、任意選択的に、配列番号4のLCDR2 D49、D50又はS51の残基の少なくとも1つに変異を含む。様々な実施形態では、LCDR2の変異は、D49E、D50E又はS51Aの1つ以上である。様々な実施形態では、LCDR2は、配列X1X2X3DRPS(ここで、X1は、D又はEであり、X2は、D又はEであり、及びX3は、S又はAである)(配列番号17)を有する。任意選択的に、LCDR2は、以下の配列を有する:EDSDRPS(配列番号18)、DESDRPS(配列番号19)、EESDRPS(配列番号20)、DDADRPS(配列番号21)、DEADRPS(配列番号22)、EDADRPS(配列番号23)又はEEADRPS(配列番号24)。
【0105】
様々な実施形態では、組成物は、抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片を含み、これは、(A)軽鎖可変ドメインであって、(i)配列番号3で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1配列;(ii)配列番号4の以下の残基D49、D50又はS51の少なくとも1つに変異を有するアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2配列;(iii)配列番号5で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3配列を含む軽鎖可変ドメイン;並びに(B)重鎖可変ドメインであって、(i)配列番号6で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1配列;(ii)配列番号7で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2配列、及び(iii)配列番号8で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3配列を含む重鎖可変ドメインを含む。
【0106】
様々な実施形態では、LCDR2は、配列X1X2X3DRPS(配列番号17)(ここで、X1は、D又はEであり、X2は、D又はEであり、及びX3は、S又はAである)を有する。任意選択的に、LCDR2は、以下の配列を有する:EDSDRPS(配列番号18)、DESDRPS(配列番号19)、EESDRPS(配列番号20)、DDADRPS(配列番号21)、DEADRPS(配列番号22)、EDADRPS(配列番号23)又はEEADRPS(配列番号24)。様々な実施形態において、LCDR2における変異は、D49Eである。様々な実施形態において、LCDR2における変異は、D50Eである。様々な実施形態において、LCDR2における変異は、S51Aである。様々な実施形態では、抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片は、任意選択的に、配列番号7で示されるHCDR2の以下の残基D54又はG55の1つに変異を含む。様々な実施形態では、HCDR2の変異は、配列番号7のD54E又はG55Aの1つ以上である。様々な実施形態では、HCDR2は、配列VIWYX1X2SNKHYADSVKG(ここで、X1は、D又はEであり、及びX2は、G又はAである)(配列番号13)を有する。任意選択的に、HCDR2は、以下の配列を有する:VIWYEGSNKHYADSVKG(配列番号14)、VIWYDASNKHYADSVKG(配列番号15)又はVIWYEASNKHYADSVKG(配列番号16)。
【0107】
様々な実施形態では、組成物は、抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片を含み、これは、(A)軽鎖可変ドメインであって、i.配列番号12に対して少なくとも80%同一のアミノ酸の配列;ii.配列番号11に対して少なくとも80%同一のポリヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸の配列;又はiii.配列番号11からなるポリヌクレオチドの相補体に中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸の配列からなる群から選択される軽鎖可変ドメイン;又は(B)i.配列番号10に対して少なくとも80%同一のアミノ酸の配列;ii.配列番号9に対して少なくとも80%同一のポリヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸の配列;又はiii.配列番号9からなるポリヌクレオチドの相補体に中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸の配列からなる群から選択される重鎖可変ドメイン;又は(C)(A)の軽鎖可変ドメイン及び(B)の重鎖可変ドメインを含み、抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片は、抗TSLP抗原結合タンパク質若しくはその断片のCDRの1つ以上を保持し、且つ配列番号7のHCDR2 D54若しくはG55又は配列番号4のLCDR2 D49、D50若しくはS51の1つ以上に変異を含む。
【0108】
様々な実施形態では、抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片は、
【化1】
(HCDR2に下線を付す)
(式中、X
1は、D又はEであり、X
2は、G又はAであり、任意選択的に、
【化2】
又はそれらの混合物である)のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0109】
様々な実施形態では、抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片又は抗体若しくはその断片は、
【化3】
(LCDR1~3に下線を付す)
(式中、X
1は、D又はEであり、X
2は、D又はEであり、X
3は、S又はAであり、任意選択的に、
【化4】
又はそれらの混合物である)のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0110】
本明細書に記載の配列、例えば配列番号3~8及び配列番号13~24に記載の1つ以上のCDR並びに配列番号10及び12及び配列番号25~36に記載の1つ以上の可変領域を有するTSLP抗体をそれぞれ含む抗TSLPモノクローナル抗体を含む組成物も提供され、組成物は、組成物の抗TSLPモノクローナル抗体が10-8M以下の数値KdでTLSPに結合するのに有効な、制限された含有量の異性化HC D54及び/又は制限された含有量の異性化LC D49又はD50を含む。様々な実施形態では、本明細書に記載の抗TSLP抗体は、少なくとも10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、10-12M、10-13M以下の親和性(Kd)で結合する。
【0111】
本明細書に記載の配列、例えば、配列番号3~8若しくは配列番号13~24で示されるCDR及び/又は配列番号10及び12若しくは配列番号25~36で示される可変領域を有するTSLP抗体をそれぞれ含む抗TSLPモノクローナル抗体を含む組成物も提供され、組成物は、IgG2抗TSLPモノクローナル抗体を含み、抗TSLPモノクローナル抗体の0.9%以下は、異性化HC D54を含むか;抗TSLPモノクローナル抗体の2%以下は、酸化HC W102を含むか;抗TSLPモノクローナル抗体の0.9%以下は、異性化LC D50を含むか;抗TSLPモノクローナル抗体の0.5%以下は、脱アミド化LC N65を含むか;又は抗TSLPモノクローナル抗体の0.9%以下は、異性化LC D91を含むかの少なくとも1つである。
【0112】
いくつかの実施形態では、組成物は、本明細書に記載の製剤の一部である。いくつかの実施形態では、組成物は、本明細書に記載の製剤を製造するために使用される原薬である。
【0113】
投与方法
一態様では、本開示の方法は、本明細書に記載の治療用抗TSLP抗体又は抗体変異体を、任意選択的に薬学的に許容される担体又は賦形剤中に入れて投与することを含む。特定の実施形態において、医薬組成物は、滅菌組成物である。
【0114】
喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アトピー性皮膚炎、好酸球性食道炎(EoE)、鼻ポリープ、慢性自発性蕁麻疹、Ig誘発性疾患、IgA腎症、ループス腎炎、好酸球性胃炎、鼻ポリープを伴わない慢性副鼻腔炎及び特発性肺線維症(IPF)などの炎症性疾患、状態又は障害を、本明細書に記載の抗TSLP抗体又は抗原結合タンパク質又はその断片で治療する方法が本明細書で企図される。様々な実施形態において、疾患、状態又は障害は、重症喘息、好酸球性又は非好酸球性喘息及び低好酸球性喘息を含む喘息である。
【0115】
喘息は、気道の慢性炎症性障害である。毎年、喘息は、推定110万人の外来患者の診療、160万人の救急外来患者の診療、444,000人の入院(Defrances et al,2008)を占めている。Centers for Disease Controlのウェブサイト、www.cdc.gov/nchs/data/nhsr/nhsr005.pdf,で入手可能であり、米国では3,500人が死亡している。感受性個体において、喘息性炎症は、喘鳴、息切れ、胸部圧迫及び咳の再発性エピソードを引き起こす。喘息の病因は、両方の遺伝的環境機構(To et al.,BMC Public Health 2012;12:204;Chung et al.Eur Respir J 2014;43:343-73)に影響される多因子性であると考えられ、環境アレルゲンが重要な原因である(前出Chung et al.,;Pavord ID,et al.,NPJ Prim Care Respir Med 2017;27:17)。症例の大部分は、人がアレルゲンに対して過敏になるときに生じる(アトピー)。アトピーは、Th2細胞及びTh2サイトカイン発現の増加及びIgE産生の増加を特徴とする。米国では略1000万人の患者がアレルギー誘発性喘息に罹患していると考えられている。利用可能な治療選択肢があるにもかかわらず、喘息は、依然として主要な健康問題である。世界中で、現在略3億人が喘息に罹患しており、2020年までに、4億人が喘息に罹患すると予想されている(Partridge,Eur Resp Rev.16:67-72,2007)。
【0116】
アトピー性喘息患者によるアレルゲン吸入は、可逆性気流閉塞、気道過敏性、好酸球性及び好塩基性気道炎症を含む喘息の症状のいくつかを誘発する。アレルゲン吸入チャレンジは、多くの種において喘息の優勢なモデルになっている(Bates et al.,Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol.297(3):L401-10,2009;Diamant et al.,J Allergy Clin Immunol.132(5):1045-1055,2013)。
【0117】
ステロイド治療では効果がない、様々な喘息サブタイプが確認されている。好酸球は、Th2型CD4+T細胞によって特徴的に媒介される、アレルギー性喘息の重要な炎症細胞である。好中球性気道炎症は、重度喘息のコルチコステロイド治療と関連し、またTh1型又はTh17型T細胞によって媒介され得る(Mishra et al.,Dis.Model.Mech.6:877-888,2013)。
【0118】
喘息の診断及び評価の尺度には、以下のものが含まれる:標準化した単回呼吸画分の呼気一酸化窒素濃度(FeNO)(American Thoracic Society;ATS、Am J Respir Crit Care Med.171(8):912-30,2005)試験を使用して評価した気道炎症。肺活量測定は、ATS/European Respiratory Society(ERS)のガイドライン((Miller et al,Eur Respir J.26(1):153-61,2005)に従って行われる。気管支拡張薬後(BD後)肺活量測定試験は、対象がBD前肺活量測定を行った後で評価される。最大気管支拡張は、アルブテロール(90μgの計量用量)又はサルブタモール(100μgの計量用量)などのSABA又は最大8回の全パフ用のスペーサー装置と同等のものを使用して誘導される(Sorkness et al,J Appl Physiol.104(2):394-403,2008)。4回、6回又は8回のパフの後に得られた最高のBD前及びBD後FEV1は、可逆性の決定及び分析に使用される。喘息コントロール質問票(ACQ)6は、喘息症状(すなわち夜間の目覚め、目覚めた時の症状、活動制限、息切れ、喘鳴)及び毎日のレスキュー気管支拡張薬の使用及びFEV1を評価する患者報告の質問票である(Juniper et al,Oct 1999)。ACQ-6は、元のACQスコアからFEV1測定を省略したACQの短縮版である。平均ACQスコアは、応答の平均である。平均スコア≦0.75は、よく制御された喘息を示し、スコア0.75~≦1.5は部分的に制御された喘息を示し、スコア>1.5は制御されていない喘息を示す(Juniper et al,Respir Med.100(4):616-21,2006)。少なくとも0.5の個々の変化は、臨床的に有意であると考えられる(Juniper et al,Respir Med.99(5):553-8,2005)。喘息生活の質質問票、標準化(AQLQ[S])+12(AQLQ(S)+12)は、喘息患者が経験するHRQoLを評価する32項目の質問票である(Juniper et al,Chest.115(5):1265-70,May 1999)。喘息日報も評価に用いられる。
【0119】
関連する米国特許出願公開第2018-0296669号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)は、抗TSLP抗体による治療が、無好酸球/低好酸球集団において喘息症状を減少させるのに有効であることを、高好酸球集団においてそのまま開示している。また、対象の喘息増悪の頻度を減少させる方法が企図されている。
【0120】
また、本明細書では、高Th2喘息プロファイル又は低Th2喘息プロファイルを有する対象の喘息を治療する方法も企図されている。TSLPタンパク質がその受容体複合体と結合することを阻害するTSLPアンタゴニストは、本明細書中に記載の抗体と同様に、低好酸球性喘息集団を効果的に治療すると考えられる。同様に、TSLPがその受容体複合体と結合することを阻害するTSLPアンタゴニストは、Th2低喘息集団の治療に有効であると考えられる。また、抗TSLP抗体又は抗体バリアント又は抗原結合タンパク質を投与することを含む、対象の慢性閉塞性肺疾患(COPD)を治療するための方法が企図されている。治療される対象は、ヒトであることが考えられる。対象は、成人、青年又は小児であり得る。
【0121】
治療用抗体(又は抗体変異体)組成物は、複数の部位で患者に送達され得る。複数の投与は、同時に行われ得るか又はある期間にわたって投与され得る。特定の場合、治療組成物の連続流を提供することが有益である。追加の治療は例えば、毎時、毎日、毎週、2週間毎、3週間毎、毎月又はより長い間隔にわたって期間ベースで行われ得る。
【0122】
種々の実施形態では、2つのTSLP結合部位を有する二価抗体など、所定用量中の治療薬の量は、治療が行われる個体の大きさ及び治療される障害の特徴によって変化し得る。
【0123】
例示的な治療では、抗TSLP抗体又は抗体変異体は、1日用量あたり約70mg~約280mgの用量範囲で投与される。例えば、用量は、約70mg、210mg又は280mgで与えられ得る。種々の実施形態において、抗TSLP抗体又は抗体バリアントは、1回の投与あたり70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、10、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270又は280mgの用量で投与し得る。これらの濃縮物は、単回投与形態又は反復投与で投与され得る。上記の用量は、2週間毎又は4週間毎に与えられる。種々の実施形態では、抗TSLP抗体又は抗体変異体は、2週間毎又は4週間毎に70mgの単回用量で投与される。種々の実施形態では、抗TSLP抗体又は抗体変異体は、2週間毎又は4週間毎に210mgの単回用量で投与される。種々の実施形態では、抗TSLP抗体又は抗体変異体は、2週間毎又は4週間毎に280mgの単回用量で投与される。
【0124】
抗体変異体について、抗体変異体の量は、用量中にあるTSLP結合部位の数が上記のカノニカル二価抗体に対して等モル数のTSLP結合部位を有するような量であるべきである。
【0125】
抗TSLP抗体又は抗体変異体は、少なくとも4ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、1年又はそれを超える期間、2週間毎又は4週間毎に投与されると考えられる。種々の実施形態では、投与は、皮下又は静脈内投与である。
【0126】
抗TSLP抗体又は抗体変異体による治療は、対象の血液、痰、気管支肺胞液又は肺中の好酸球を減少させることが考えられる。投与は、高Th2集団から低Th2集団の対象の細胞数を変化させるとも考えられる。さらに、抗TSLP抗体又は抗体変異体の投与は、努力呼気肺活量(FEV)、FEV1可逆性、努力肺活量(FVC)、FeNO、喘息コントロール質問票-6のスコア及びAQLQ(S)+12のスコアからなる群から選択される、対象の喘息の1つ以上の尺度を改善すると考えられる。
【0127】
喘息の改善は、以下の1つ以上として評価し得る:AERの減少(年換算増悪率)、喘息での入院/重度の増悪の減少、最初の喘息増悪までの時間のベースラインからの変化(増加)(抗TSLP抗体による治療開始後)、治療の過程、例えば52週間にわたって、プラセボと比較して1回以上の喘息増悪があった対象又は重度の増悪があった対象の割合の減少、ベースラインからのFEV1及びFVCの変化(増加)(気管支拡張薬前及び気管支拡張薬後)、ベースラインからの血液又は痰の好酸球(又は生検若しくはBAL液が得られる場合には肺の好酸球)の変化(減少)、ベースラインからのFeNOの変化(減少)、ベースラインからのIgEの変化(減少)、ACQ及び変形版、AQLQ及び変形版、SGRQ並びに喘息症状日誌PROにより評価された喘息症状及び制御の改善、SGRQ、レスキュー薬の使用の変化(減少)、全身性コルチコステロイドの使用の減少、血中のTh2/Th1細胞比の減少。これらの評価のほとんど/全ては、高及び低好酸球(250以上が高く、250未満が低い)、アレルギー性及び非アレルギー性、高及び低Th2、高及び低ペリオスチン(中央値と比較して)並びに高及び低FeNO(24以上又は24未満)を含む全集団及び亜集団におけるべきものである。
【0128】
本開示では、限定されないが、抗炎症剤又は喘息治療を含む、本明細書に記載の第2の薬剤と併用した抗体組成物などの複数の薬剤の投与も企図されている。
【0129】
しかしながら、種々の実施形態では、その投与は、対象における同時投与治療の頻度又はレベルを減少させると考えられる。例示的な同時投与治療には、吸入コルチコステロイド(ICS)、長時間作用型β2アゴニスト(LABA)、ロイコトリエン受容体アンタゴニスト[LTRA]、長時間作用型抗ムスカリン薬[LAMA]、クロモン、短時間作用型β2アゴニスト(SABA)及びテオフィリン又は経口コルチコステロイドが含まれるが、これらに限定されない。種々の実施形態では、投与は、コルチコステロイド治療の必要性を排除する。
【0130】
製剤
いくつかの実施形態では、本開示は、薬学的に許容される希釈剤、担体、可溶化剤、乳化剤、保存料及び/又はアジュバントと共に、治療有効量の抗TSLP抗体又は抗体変異体を含む医薬組成物の使用を考える。さらに、本開示は、そのような医薬組成物を投与することによって対象を治療する方法を提供する。
【0131】
特定の実施形態では、許容可能な製剤材料は、好ましくは使用する用量及び濃度でレシピエントに対して無毒である。ある特定の実施形態では、医薬組成物は、例えば、この組成物のpH、モル浸透圧濃度、粘度、透明度、色、等張性、匂い、無菌状態、安定性、溶解又は放出の速度、吸着又は浸透性を修正、維持又は保存するための製剤材料を含み得る。そのような実施形態では、適切な製剤材料として下記が挙げられるが、これらに限定されない:アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリシン);抗菌剤;抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム又は亜硫酸水素ナトリウム);緩衝剤(例えば、ホウ酸塩、重炭酸塩、トリス-HCl、クエン酸塩、リン酸塩又は他の有機酸);増量剤(例えば、マンニトール又はグリシン);キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA));錯化剤(例えば、カフェイン、ポリビニルピロリドン、ベータ-シクロデキストリン又はヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリン);充填剤;単糖類;二糖類;及び他の炭水化物(例えば、グルコース、スクロース、マンノース又はデキストリン);タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン);着色、香味及び希釈剤;乳化剤;親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン);低分子量ポリペプチド;塩形成対イオン(例えば、ナトリウム);保存料(例えば、塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸又は過酸化水素);溶媒(例えば、グリセリン、プロピレングリコール又はポリエチレングリコール);糖アルコール(例えば、マンニトール又はソルビトール);懸濁剤;界面活性剤又は湿潤剤(例えば、プルロニック、PEG、ソルビタンエステル、ポリソルベート、例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート、トリトン、トロメタミン、レシチン、コレステロール、チロキサパール);安定性促進剤(例えば、スクロース又はソルビトール);等張化促進剤(例えば、アルカリ金属ハロゲン化物、好ましくは塩化ナトリウム又は塩化カリウム、マンニトールソルビトール);送達ビヒクル;希釈剤;賦形剤及び/又は医薬アジュバント。REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES,18’’Edition,(A.R.Genrmo,ed.),1990,Mack Publishing Companyを参照されたい。
【0132】
好適なビヒクル又は担体は、注射用水、生理食塩水溶液又は人工脳脊髄液であり得、場合により非経口投与用組成物で一般的な他の材料が補充される。中性緩衝生理食塩水又は血清アルブミンと混合された生理食塩水は、さらなる例示的なビヒクルである。特定の実施形態では、医薬組成物は、約pH7.0~8.5のトリス緩衝液又は約pH4.0~5.5の酢酸塩緩衝液を含み、ソルビトール又はその適切な代替物をさらに含み得る。
【0133】
製剤構成成分は、好ましくは、投与部位に許容可能な濃度で存在する。ある特定の実施形態では、緩衝液は、本組成物を、生理学的pH又はわずかに低いpH(典型的には約4.5~約8のpH範囲内)に維持するために使用される。約4.5、約4.6、約4.7、約4.8、約4.9、約5.0、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4、約5.5、約5.6、約5.7、約5.8、約5.9、約6.0、約6.1、約6.2、約6.3、約6.4、約6.5、約6.6、約6.7、約6.8、約6.9、約7.0、約7.1、約7.2、約7.3、約7.4、約7.5、約7.6、約7.7、約7.8、約7.9及び約8.0を含む。
【0134】
種々の実施形態では、抗TSLP抗体又は抗体変異体は、酢酸塩及びプロリン、スクロース、ポリソルベート20又はポリソルベート80の1つ以上を含有する製剤中に存在する。種々の実施形態では、製剤は、pHが4.9~6.0で、5~50mMの酢酸塩、3%(w/v)未満のプロリン、0.015%(w/v)±0.005%(w/v)のポリソルベート20又はポリソルベート80を含む。任意選択的に、抗体又は抗体断片は、約100~約150mg/mlの濃度である。製剤を-20℃~-70℃で保存し得る。これらの賦形剤を含む例示的な抗TSLP製剤は、参照により本明細書に組み込まれる国際出願第PCT/米国特許出願公開第2021/018561号明細書に記載されている。
【0135】
代替的な実施形態では、抗TSLP抗体又は抗体変異体は、界面活性剤と、少なくとも1つの塩基性アミノ酸又はその塩とを含有する製剤中にある。例示的な例では、塩基性アミノ酸はアルギニン又はヒスチジンである。様々な実施形態では、塩は、任意選択的に10~200mMの濃度のグルタミン酸アルギニン又はグルタミン酸ヒスチジンである。任意選択的に、製剤はプロリンをさらに含む。代替的な実施形態では、抗TSLP抗体又は抗体バリアントは、界面活性剤及びカルシウム又はその塩を含有する製剤中にある。様々な実施形態では、塩は、任意選択的に15mM~約150mMの濃度のグルタミン酸カルシウムである。任意選択的に、製剤はプロリンをさらに含む。様々な実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベート20若しくはポリソルベート80又はそれらの混合物である。任意選択的に、抗体又は抗体断片は、約110mg/ml超又は約140mg/ml超の濃度である。これらの賦形剤を含む例示的な抗TSLP製剤は、参照により本明細書に組み込まれる国際特許出願第PCT/米国特許出願公開第2021/017880号明細書に記載されている。
【0136】
非経口投与が考えられる場合、使用のための治療組成物は、薬学的に許容されるビヒクル中に、所望の抗TSLP抗体を含み、発熱物質を含まない、非経口的に許容される水溶液の形態で提供し得る。非経口注射のための特に適切なビヒクルは、無菌の蒸留水であり、その中では、抗体は、適切に保存された無菌の等張溶液として処方される。ある特定の実施形態では、製剤は、デポ注射を介して送達できる産物の制御性又は持続放出を提供し得る薬剤、例えば注射可能なミクロスフェア、生体内分解性粒子、ポリマー性化合物(ポリ乳酸若しくはポリグリコール酸など)、ビーズ又はリポソームと、所望の分子との製剤を含み得る。ある特定の実施形態では、循環中の持続期間を増進する効果を有するヒアルロン酸も使用され得る。特定の実施形態では、抗体を導入するために、インプラント可能な薬剤送達デバイスを使用し得る。様々な実施形態では、投与は、プレフィルドシリンジ又は自動注射器を介したものであり得る。様々な実施形態では、自動注入装置は、Ypsomed YpsoMate(登録商標)デバイスである。種々の実施形態では、自動注入装置は、国際公開第2018/226565号パンフレット、同第2019/094138号パンフレット、同第2019/178151号パンフレット、同第20120/072577号パンフレット、同第2020/081479号パンフレット、同第2020/081480号パンフレット、PCT/米国特許出願公開第20/70590号明細書、PCT/米国特許出願公開第20/70591号明細書、PCT/米国特許出願公開第20/53180号明細書、PCT/米国特許出願公開第20/53179号明細書、PCT/米国特許出願公開第20/53178号明細書又はPCT/米国特許出願公開第20/53176号明細書で開示されている。
【0137】
キット
さらなる態様として、本開示は、本開示の方法を実施するためのそれらの使用を容易にする方法で包装された1つ以上の化合物又は組成物を含むキットを含む。一実施形態では、そのようなキットは、本明細書に記載の化合物又は組成物を含み、密封されたボトル又は容器などの容器に包装され、容器に貼付されるか、又は方法を実施する際の化合物又は組成物の使用を記載する包装に含まれるラベルを有する。好ましくは、化合物又は組成物は、単位剤形で包装される。キットは、特定の投与経路に従って組成物を投与するか又はスクリーニングアッセイを実施するために適したデバイスをさらに含み得る。好ましくは、キットは、抗体組成物の使用を記載するラベルを含む。
【0138】
本開示のさらなる態様及び詳細は、限定ではなく、例示を目的とする以下の実施例から明らかになるであろう。
【実施例】
【0139】
実施例1:
テゼペルマブ(AMG157)を、高いストレス温度においてその安定性及びHMW種を形成する能力について試験した。テゼペルマブを温度ストレス条件に供し、抗体を37℃で製剤に入れ、温度を以下に記載される条件まで上昇させた。結合及び安定性に影響を与える属性を、サイズ排除クロマトグラフィー及びペプチドマッピングを用いて決定した。
【0140】
材料及び方法
AMG157及び潜在的に結合に影響を及ぼす不安定な残基:配列A5(及び鎖H5、L5として)としてのAMG157のアミノ酸配列及びいくつかの他のTSLP結合抗体も、米国特許第7,982,016B2号明細書に以前に記載されていた。
【0141】
A2G0F/A2G0Fグリコシル化を有する抗体(C6500 H9998 O2068 N1734 S52)の分子量は147189.4Daであり、重鎖N末端ピログルタメートが含まれており、且つC末端Kが除去されている。TSLPは、74%の単量体種、23%の二量体種及び3%の四量体種を含有した。
【0142】
分子評価に続く配列のインシリコ評価では、結合及び効力に影響を及ぼし得る化学修飾を潜在的に受けやすいCDR中のいくつかの残基が同定された。それらのCDR残基並びにフレームワークからのいくつかの他の残基が考慮され、それらは現在の理解に基づいて(
図1、上部)目標範囲を含む。CDR中の残基及びそれらの共通の修飾は、標的への結合及び効力に潜在的に影響を及ぼし得るため、可能な属性として選択される。
【0143】
結合に影響を及ぼす化学修飾の同定方法;サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)及び画分収集:インキュベーション後、AMG157混合物を、G3000SWxl TOSOH Bioscience、7.8mm ID×30cmカラム(カタログ番号08541、TOSOH Bioscience、San Francisco、CA)を使用するSECによって分離し、移動相は、100mMリン酸ナトリウム及び250mM NaCl(pH6.8)を含んだ。流量を0.5ml/分に設定し、カラム温度を37℃に設定し、実行時間を35分に設定し、オートサンプラーを4℃に設定した。紫外/可視分光法(UV/VIS)検出を214nm及び280nmで行った。溶出画分は、10kDa超の分子量カットオフを有するフィルターを用いて収集し、7.5Mグアニジン溶出緩衝剤で溶出した。溶出された画分を、以下に記載するペプチドマッピングのための試料調製に供した。
【0144】
リガンド複合体を有する抗体のSECとそれに続くLC-MS/MS特性評価は、抗体の非結合画分及び結合画分における修飾の比を決定する。この方法は、抗体自体の凝集だけでなく、抗体とリガンドとの間の結合を検出するため、典型的にはタンパク質の凝集、例えばモノマーとダイマーとの間の分化などを検出するSEC法と異なる。SEC結合親和性実験は、AMG157タンパク質をその標的と混合することによって開始した。SEC-UVによって抗体-抗原混合物を分離すると、治療用タンパク質、リガンド及び非結合治療用タンパク質含有属性の結合複合体を表すピークが、SEC溶出プロファイルの異なる時間に溶出した。これにより、結合した抗体-抗原複合体及び結合していない抗体の画分の収集が可能になった。回収した画分をトリプシンによって消化し、LC-MS/MS法を用いて分析すると、結合画分及び非結合画分中の治療用タンパク質の属性の存在量プロットが生成された。x軸をlog2倍、y軸を-log10 p値としてボルケーノプロットも作成した。Log2倍数変化は、非結合/結合画分における属性の比を表し、これは、属性が治療用タンパク質のリガンドへの結合にどの程度影響するかを示す。p値のマイナスlog10は、変化倍数がどの程度確信的に表されるかを表す。
【0145】
50℃で凝集に影響を及ぼす化学修飾の同定方法:同様のアプローチを使用して、AMG157の50℃1W試料の高分子量(HMW)種及びモノマー種の属性を研究した。AMG157 50℃1WのSEC-UV後のLC-MS/MS特性評価により、抗体のHMW及びモノマー画分中の修飾の比率が決定される。SEC分離時、同定された属性を有するモノマー及びHMW種を表すピークは、SEC溶出プロファイルの異なる時間に溶出することができる。AMG157 50℃1WのHWW及びモノマー画分を収集し、消化し、LC-MS/MS法を使用して分析した。HMW及びモノマー画分における治療用タンパク質の属性の存在プロットを作成した。x軸をlog2倍数変化、y軸を-log10 p値としてボルケーノプロットも作成した。log2倍数変化は、HMW/モノマー画分における属性の比を表し、これは、属性がHMW抗体の形成をどの程度引き起こすかを示す。p値のマイナスlog10は、変化倍数がどの程度確信的であるかを表す。
【0146】
ペプチドマッピング:(Ren et al.,Anal.Biochem.392:12-21(2009))に記載されているように、LC-MS分析に適したペプチドに対するグアニジンによるリフォールディング、ジスルフィド結合の還元及びアルキル化、緩衝液交換及びトリプシンによる消化を含む試料調製手順を使用して、収集した画分のペプチドマッピングを行った。簡潔に記載すると、AMG157を含む試料を0.5mlのpH7.5の変性緩衝剤(7.5M塩酸グアニジン(GdnHCl)及び0.25Mトリス)で約1mg/mlに希釈した。還元は、3μlの0.5Mジチオトレイトール(DTT)を添加し、続いて室温で30分間インキュベートすることによって達成した。カルボキシメチル化は、7μlの0.5Mヨード酢酸(IAA)の添加により達成した。反応は、暗所において室温で15分間行った。4μlの0.5M DTTを添加して、過剰のIAAをクエンチした。還元し、アルキル化したAMG157試料を、NAP-5カラム(GE Healthcare、Piscataway、NJ、USA)を用いてpH7.5の消化バッファ(0.1Mトリス又は0.1M重炭酸アンモニウム)にバッファ交換した。凍結乾燥トリプシンを水に溶解し、最終濃度を1mg/mlとした。還元、アルキル化及び緩衝剤交換された抗体1試料に1mg/mlのトリプシン溶液を添加することにより、消化を開始し、1:25の酵素/基質比を達成した。消化を37℃で30分間行った。最終消化物を、5tlの20%FAを添加してクエンチした。消化された抗体試料のLC-MS/MSペプチドマッピング分析を、Thermo Scientific Q-Exactive Biopharma質量分析計に接続されたAgilent 1290 UHPLCシステムにより、(Ren et al.,Anal.Biochem.392:12-21,2009)に記載のように実施した。得られたLC-MS/MS生データ並びにAMG157の配列を使用して、MassAnalyzerソフトウェアによって修飾を同定及び定量化した(Zhang,Anal.Chem.81:8354-8364(2009))。
【0147】
表面プラズモン共鳴(SPR)は、結合複合体に対する結合親和性を測定することができる伝統的なアプローチの1つである。10-6M未満の結合複合体は、SPRを用いて検出することができる。対照的に、SEC結合親和性実験は、10-8M未満のKdで抗体/リガンド複合体を測定することができる。弱く結合した複合体(10-8M超のKd)は、SECカラムで解離する。結果として、抗体分子及びリガンド分子は、非結合種として別々に溶出する。
【0148】
テゼペルマブの50℃1週間(1W)ストレスは、非常に大きい割合(約67%)の高分子量(HMW)種を産生した。HMW種は、いくつかの残基上の異性化及び脱アミド化、特にLC D91の異性化を含む高い割合の化学修飾を含んでいた。D91異性化は、HMW画分では約23%に劇的に増加したのに対して、モノマーでは1%であった。
【0149】
TSLPへのテゼペルマブ結合に対する40℃で4週間の4週間のストレス(40C4W)の影響も評価した。SEC親和性結合、引き続いてペプチドマッピングを使用することにより、TSLP結合に影響を与える可能性があるAMG157の5つの属性(例えば、化学修飾)を分析のために選択した:HC D54異性化、HC W102酸化、LC D49又はD50異性化、LC N65脱アミド及びLC D91異性化(
図3)。D49又はD50対について、2つの残基の両方が結合に寄与するため、それらの間の結合に対する影響を区別することは、困難であった。結合に対する影響は、D54>W102>D49/D50>N65>D91の順序であった。5℃で2年、続いて25℃で2ヶ月(2Y5C+2M25C)として確立された貯蔵寿命条件の試験終了後、修飾の1つ(LC D49又はD50異性化)のみが2%の検出可能レベルを超え得る。結合は、Kd=10
-10Mの典型的な抗体-抗原平衡解離定数から、Kd=10
-8Mより弱くなり、SECカラムでの抗体-抗原複合体の解離及び2つの分子の分離溶出をもたらした。この方法は、CEX画分の特性評価の従来の方法と良好な相関を示し、これにより、HC D54異性化が、細胞ベースのアッセイによって測定される効力の喪失と強く相関することが明らかになった。
【0150】
ペプチドマッピング方法の適合性を検証するために、CDR及び隣接領域の不安定な残基がインシリコで予測されており、テゼペルマブ(AMG157)の16個の修飾(属性)が起こる可能性があり、TSLPへのAMG157の結合に影響を及ぼし得ることを示唆している。ペプチドマッピングをAMG157 T0及び40C4W試料で実施し、16の予測される修飾を同定した。HC D62含有ペプチドは回収率が悪く、HC D62の異性化を確実に定量化することができなかった。ペプチドマッピング結果は、ペプチドマッピング方法が、HC D62を除く全ての修飾を検出することができ、研究に適していることを確認した(
図2)。
【0151】
HC D54E、HC G55A、LC D49E又はD50E、LC S51Aを含む、可能性のある抗体属性のいくつかの変異(化学修飾及び後続の残基を有する残基)が室温安定性を高めるために提案された。米国特許第7,982,016号明細書は、配列A5(また鎖H5、L5)としての抗TSLP抗体を開示しており、これは配列番号3~8のCDRに記載されている。
【0152】
テゼペルマブの50C1Wストレスは、非常に大きい割合(約67%)のHMW種を産生した。HMW種は、いくつかの残基上の異性化及び脱アミド化、特にLC D91及びHC D54の異性化を含む、高い割合の化学修飾を含んでおり、HMW画分が、結合に影響を及ぼす化学修飾(属性)のために、より低い効力を有し得ることを示唆している。また、テゼペルマブ40C4W試料のHMW種は、結合後も同じままであり、TSLP結合に関与しなかったことを示唆した。
【0153】
結果
合計で15個の修飾が、インシリコ配列分析に基づくTSLPへのAMG157の結合における潜在的な修飾属性と考えられる(
図1)。ペプチドマッピングを適用して、AMG157 T0及び40℃4W試料における予測された属性のパーセンテージを測定した(
図2)。40℃4Wは、液体製剤(4℃2Y)の貯蔵寿命に対応し、製造及び貯蔵の合理的な条件と考えられる。合理的な製造及び貯蔵条件下での2%を超える修飾は、HC D54異性化、HC N57脱アミド、HC D62異性化及びLC D49D50異性化であるが、これらの修飾の全てがTSLPへの結合に影響を及ぼすわけではない。
【0154】
TSLPへの結合に影響を与えるAMG157の化学修飾:AMG157 40℃4W及びTSLPのSEC親和性結合を使用して、結合に影響する残基及び修飾を実験的に決定した。SEC-UVプロファイルは、40℃4Wストレス後、15.5分で溶出する非結合AMG157が10%未満を構成することを示唆しており、効力の喪失が10%未満であるべきであることを示しており、これは効力測定値とよく一致する(
図8A)。AMG157(147kDa)及びTSLP(16kDa)の溶出時間及び理論分子量に基づいて、14分で溶出するピークを1つの抗体及び2つのTSLT分子を含む複合体とし、15分のピークを1つの抗体及び1つのTSLP分子を含むものとした。同じSEC条件及び多角度光散乱(MALS)検出器を使用した他の実験では、これらの時間に溶出する質量複合体において同様のものが同定された。AMG157 T0又は40℃4WがTSLPに結合した場合、約10.5~12.5分で溶出する大きい複合体も観察された(
図3A)。それらは、TSLPが23%の二量体種及び3%の四量体種を含有し(材料及び方法の節を参照されたい)、いくつかの抗体を潜在的に架橋し、より大きい複合体をもたらすことができるという事実によって説明することができる。CEX塩基性画分の生物学的特徴付けは、受容体-リガンド結合及び細胞ベースのレポーター遺伝子効力の減少を明らかにしたことに留意されたい(
図8C)。生化学的特徴付け(ペプチドマッピングを含む)により、CDRアスパラギン酸異性化と、断片化種(HMW)の凝集、部分的に還元された種、高マンノース及びフコシル化グリカン、非CDR Met酸化、重鎖C末端リジン及びN末端シグナル伝達ペプチド、ジスルフィドアイソフォームAを含む塩基性CEX画分が濃縮されたいくつかの他の修飾とが同定された。抗体-抗原のSECを含む方法を直交アプローチとして利用して、TSLPへの結合に影響を与える抗体の化学修飾を、結合に影響を与えない修飾から評価及び区別した。
【0155】
AMG157 40℃4W及びTSLP複合体のSECとそれに続くLC-MS/MS特性評価により、AMG157の非結合画分(5)及び結合画分(3)における修飾の比を決定した。統計学的有意性p<0.03で、以下の5つの残基を関連属性と見なした:HC D54異性化、HC W102酸化、LC D49又はD50異性化、LC N65脱アミド及びLC D91異性化。D49 D50対について、2つの残基のいずれが変異しているかの影響を区別することは、困難であり、両方が結合に寄与する。各修飾の相対的存在量を
図3Bに要約する。AMG157の結合画分及び非結合画分では、5つの属性は、全て10%未満である。結合画分と非結合画分との間の修飾率の最大の差(比又は倍率変化)は、AMG157のHC D54異性化に見られる。結合画分及び非結合画分中のHC D54異性化の存在量は、それぞれ約0.5%及び約3.5%である。LC D49D50異性化は、AMG157 40℃4Wの非結合画分中で最も高いパーセンテージ(約6.2%)を示す。
【0156】
アスパラギン酸(D)は、HCDR2の現在のDGモチーフにおける異性化を受けやすいが、残基の1つが、例えば、GからA又はDからEに変更される場合、異なる立体配置はそれほどではない。同様に、LCDR2は、アスパラギン酸が異性化しやすいモチーフDDSDRPSを有するため、残基への変化が、安定性、例えばDからE又はSからAを改善するために提案される。
【0157】
図4は、TSLPへのAMG157 40℃4W結合における関連属性を決定するためのボルケーノプロットを示す。統計プロットにおいて、log2(非結合/結合)は結合の強度を示し、D54>W102>D49D50>N65>D91である。TSPLに対する非結合AMG157の平衡解離定数(Kd)はKdが10
-8Mになると推定され、その時点で分解抗体はTSLPからカラム上で解離した。非結合AMG157は、nM範囲の典型的なAMG157Kdと比較してはるかに弱い結合を示した。SEC親和性結合法では、D54異性化は、非結合%/結合%の最大倍率変化(6の値)を示し、同定の信頼性が高かった(p値=4×10-4)。AMG157の属性モデリングと組み合わせて、SEC親和性結合実験は、関連する属性のいくつかの変異(化学修飾及び後続の残基を有する残基)が、HC D54E、HC G55A、LC D49D50E及びLC S51A(
図1、下パネル)を含む室温安定性を向上させ得ることを示した。
【0158】
結合に潜在的な影響を示す残基及び修飾(HC D54異性化、HC W102酸化、LC D49D50異性化、LC N65脱アミド及びLC D91異性化)を可能な属性として列挙した。一方、可能な属性と考えられるいくつかの他の残基は、SEC親和性法による結合に影響を及ぼさなかった。
図5は、結合画分と非結合画分との間で統計的に有意に変化しなかった11の修飾について、AMG157 40℃4Wにおける結合画分と非結合画分の相対存在量を要約している(
図1及び
図4)。また、HC M34酸化及びHC D62異性化を除いて、全ての修飾率は、製剤中40℃で4週間のストレス後に1%未満であり、有意な割合の修飾を構成しないことを示す。
【0159】
15.6分で溶出する非結合抗体(ピーク5)対10.5~12.5分で溶出する複合体(ピーク1+2)の属性は、ピーク5対ピーク3と同じであったが、統計は劣っていた。これは、大きい複合体が抗体-TSLP複合体であることを示している。
【0160】
本所見は、TSLPに結合するAMG157 Fabの結晶構造と一致し、HC D54、HC W102及びLC D49がTSLPと近接しており(6Å以内)、直接結合に関与する可能性が非常に高いことを示唆する。イソアスパラギン酸形成(HC D54、LC D49D50、D91)は、主鎖の伸長(及び短縮側鎖)をもたらし、これにより、これら及び近傍の残基の位置及び配向が変化することに留意すべきである。これは、結合の喪失をもたらし得る。複合体中の最も近い原子を選択して、相互作用の可能性のある性質(疎水性、水素結合、塩橋)を考慮せずに距離を測定した。要約すると、LC D49D50、LC N65及びLC D91での異性化後に長距離のアロステリック効果が起こり、TSLPへの結合の喪失をもたらし得る。
【0161】
従来の手法との相関:従来のアプローチに従って、AMG157 40℃4W試料を主画分及び3つの塩基性画分上のCEXによって分離し、それらを収集し、ペプチドマッピングによる化学修飾及び相対効力について特徴付けた。相対効力を細胞ベースのアッセイ及び結合アッセイによって測定した。アッセイの結果は、塩基性画分3が39%のD54異性化を含有し、その細胞ベースの効力がわずか61%であることを示し、この化学修飾がこの細胞ベースのアッセイにおける効力に影響を及ぼすことを示した。この結果は、TSLPへのSEC親和性結合と良好に一致しており、これにより、非結合画分対結合画分の比が最も高く、結合に最も影響を与えるHC D54異性化が特定された。
【0162】
50℃での凝集と相関する化学修飾:HMW種の割合は、AMG157 40℃4W試料で約9%であった。AMG157の50℃1Wストレスは、非常に大きい割合(約67%)のHMW種を産生し、これは、この温度での抗体分子の部分的なアンフォールディングを示唆した。SECによる分離時、AMG157 50℃1W中のHMW及びモノマー種を収集し、ペプチドマッピングを使用して分析した。SEC親和性結合測定で使用される同様の統計的手法を使用することにより、ボルケーノプロットを作成して、AMG157のHMW種の形成に関与する属性を評価した(
図6A)。ボルケーノプロットの右上隅では、7つの属性がHMW形成に関連していると思われ、統計学的有意性がある(
図6Bにおいてアスタリスクで示されている)。「略統計学的に有意な灰色領域」からのこれら及びいくつかの他の修飾の存在をHMW及びモノマーについてプロットした(
図6B)。異性化、脱アミド及びスクシンイミド形成(H
2O損失)は、HMW形成と強く相関する修飾の大部分を構成する。例えば、LC D91異性化は、HMW画分で約23%に劇的に増加したのに対して、モノマーでは1%であった。結合に影響を与える可能性のある別の修飾、HC D54異性化は、単量体中2%に対してHMW画分中10%であった。すなわち、LC D91異性化及びHC D54異性化は、それぞれHMW種の形成と相関していた。HMW画分中の結合に影響を与える高レベルの化学修飾は、それがモノマーと比較してより低い効力を有し得ることを示唆している。また、10.5分でSECから溶出するAMG157のHMW種は、TSLPへの結合後も「未消費」のままであり、HMW種が弱い結合を有することをさらに示唆した。AMG157 40C4W HMW種はサイズが大きく、サイズ分離の極端で溶出することに留意されたい。
【0163】
50℃1W後のAMG157で部分的なアンフォールディングが疑われ、劇的なHMW種形成が観察され、典型的なプロセスで曝露及び修飾されていない残基が曝露された可能性がある。HMW種及び改質がより少ない40℃4Wストレス材料の利用は、典型的なプロセスをより代表的に表すはずである。
【0164】
全体として、SEC親和性結合法は、AMG157のTSLPへの結合に影響する残基及び修飾を実験的に決定した。統計的有意性がp<0.03である場合、HC D54異性化、HC W102酸化、LC D49又はD50異性化、LC N65脱アミド及びLC D91異性化が、TSLPへのAMG157結合の関連属性であると思われる。40℃4W後に高い統計的有意性及び2%超で結合に影響を与える修飾は、HC D54及びLC D50異性化である。D49/50異性化は、生物学的アッセイなどの他の研究における効力の喪失と相関せず、高ストレス条件下での本知見は、本方法のアーチファクトであり得ることに留意されたい。化学修飾は、50℃1Wストレス後のHMW種の形成、特にLC D91異性化と相関する。これらの結果を考慮して、室温安定性を改善するために、HC D54E、HC G55A、LC D49E又はLC D50E、LC S51Aを含むAMG157属性のいくつかの変異(化学修飾及び後続残基を有する残基)が提案された。
【0165】
本明細書において論じられ、且つ引用された全ての刊行物、特許及び特許出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。開示した本発明は、記載された特定の方法論、プロトコル及び材料に限定されず、これらは、変化し得ることが理解される。本明細書中で用いられる専門用語は、特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、添付の特許請求の範囲を限定することを意図するものではないことも理解される。
【0166】
当業者は、本明細書に記載の本発明の特定の実施形態に対する多くの均等物を認識又は確認することができるであろう。そのような均等物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
【配列表】
【国際調査報告】